運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-17 第58回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十七日(水曜日)    午後一時二十九分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鹿野 彦吉君 理事 草野一郎平君    理事 熊谷 義雄君 理事 坂村 吉正君    理事 森田重次郎君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君       小澤 太郎君    齋藤 邦吉君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       中山 榮一君    丹羽 兵助君       長谷川四郎君    湊  徹郎君       伊賀 定盛君    工藤 良平君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    西宮  弘君       美濃 政市君    森  義視君       神田 大作君    中村 時雄君       樋上 新一君  出席政府委員         法務省刑事局長 川井 英良君         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         水産庁長官   久保  高君  委員外出席者         労働省労働基準         局監督課長   藤繩 正勝君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月十六日  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第八  七号)  国有林野の活用に関する法律案内閣提出第八  八号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第八九号) 同日  農林漁業金融公庫総合資金制度の運用に関する  請願井出一太郎紹介)(第四〇四七号)  同外二件(藤山愛一郎紹介)(第四〇四八  号)  同(小泉純也君紹介)(第四〇五四号)  同(森清紹介)(第四〇五五号)  同(森清紹介)(第四〇八三号)  農業者年金制度創設に関する請願大村襄治君  紹介)(第四〇五八号)  同(山下元利紹介)(第四〇五九号)  圃場整備事業補助率引上げに関する請願(大  村襄治紹介)(第四〇六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  魚価安定基金の解散に関する法律案内閣提出  第九〇号)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石田宥全君
  3. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、いわゆる阿賀用水汚職事件についてお尋ねしたいと思うのでありますが、阿賀用水工事というのは愛知用水に次ぐ大規模なものといわれておりますが、実は昭和二十四年、私が発起人の一人となって今日に及んでおるわけでありまして、また、私の農地は全部これに関係をしておるのでありますから、こういう事件が起こることによる被害者の一人なのでございます。  そこで、簡単にお尋ねしたと思いますけれども、もうすでに相当日もたっておりますので、大体おわかりだと思いますが、今日までの汚職事件概要を承りたいと思います。
  4. 和田正明

    和田(正)政府委員 阿賀野川用水改良事業所事件を起こしましたことを、まず内容お答えをいたします前に、農地局長として非常に申しわけなく思っております。  事件概要でございますが、四月四日に阿賀野川用水農業水利事業所長の前所長でございます中田と申します者と、そのほかに現在信濃川の水系調査事務所課長をしております者と、二名が、いずれも新潟東警察署に呼ばれましてそのまま逮捕されました以後、翌日の五日に阿賀野川用水事業所捜査を受けまして、四月の十五日でございましたか、金沢農政局に現在つとめておりまして、かつて阿賀野川の現場の工事課長をいたしておりました者の関係で、金沢農政局家宅捜索を受けたわけでございます。  容疑内容は、四十年の九月から四十一年の六月までの間に事業所の、逮捕されました計四名でございますが、それらの者が、料理屋ツケ等鹿島建設その他の業者に回して供応を受けたという容疑でございまして、その後、まだ四名とも逮捕されましたまま帰宅をいたしておりませんので、それ以上の状況は、農林省関係としてはわかっておりません。  そのほかに、業者関係で数名と、右岸土地改良連合というのがございますが、そこの副理事長小林という方とが、贈賄の容疑で逮捕されております。  非常に大まかな、承知をいたしております現在の状況は以上のとおりでございます。
  5. 石田宥全

    石田(宥)委員 ただいまの概要の御報告にありますように、この問題は、私は二側面からとらえる必要がある、こう考えるのです。一つ役人業者関係、これは国に及ぼす影響が大きい。もう一つ役人土地改良団体関係、これは直接農民負担による資金によって贈収賄等が行なわれる、こういう二つ側面があると思うのであります。  そこで、局長にお尋ねしたいのでありますが、この事件概要を承っておりますと、どうも初めから、阿賀用水工事事務所所長中心として、請負人指名の問題、それから請負人同士談合の問題、それと監督手かげんといいますか、故意に設計どおり事業をやらない手抜き工事を見のがしたという、いろいろの角度からこれをとらえることができるわけです。  そこで、最初に伺いたいことは、業者指名というものは、一体どういうところで、だれがこれを行なっておるのかまずひとつ……。
  6. 和田正明

    和田(正)政府委員 会計法及び予算決算及び会計令によりまして、契約担当官というのが定められるわけでございますが、これは現在、農地局所管事項について申し上げますれば、法律及び大臣の通達によりまして、それぞれ地方に置いてございます農政局長所管になっております。各農政局では、毎年二月に局長以下関係者審査会をつくりまして、指名入札を希望いたします各建設会社につきまして、建設省等基準等にも準拠いたしましてランク分けをいたしまして、あらかじめABCDEという五ランクに、過去におきます実績でありますとか、あるいは経営内容等ランク分けをしておきまして、そのランク分けに基づきまして、契約をいたします金額のそれぞれに対応いたしましたものを指名して競争入札をするわけであります。ちょっとごたごたいたしますが、あらかじめ地方農政局長以下関係者による資格審査会で、ABCDEという五階級に分けた入札希望者の一年間における資格審査をした上で登録をいたしておきまして、それ以後個々事業ごと契約金額に対応して、そのつど指名入札者をどれにするかということを、局長関係者と打ち合わせをする会議を経まして指名をいたす、そういうたてまえでございます。
  7. 石田宥全

    石田(宥)委員 五つランク登録してあるその中から選び出す、そういう具体的な指名はだれがやるのですか。
  8. 和田正明

    和田(正)政府委員 予定価額金額に対応いたしましてそのランク業者を選ぶわけでございますが、その場合に、その工事実情に応じまして、必要な機械を持っているかどうか、あるいは現在手持ちの契約がどの程度の残事業量があるか、当該事業専門技術者を雇用しているかいないか、過去における工事の成績がいいか悪いかというような状況を総合判断いたしましてきめるわけでございますが、その指名競争に参加いたします会社をきめますのは、各農政局長関係の部下と当該事業所所長とを集めまして選定会議を開いてきめる、こういうたてまえであります。
  9. 石田宥全

    石田(宥)委員 前段の説明は要らないのですが、そうすると局長がきめるということですか。何か十名のうち七名は所長がきめることができるというようになっておるといわれておるのですが、それはどうなんです。
  10. 和田正明

    和田(正)政府委員 一件予定価額三百万円未満事業所長権限でございます。それをこえますものは、最終決定権地方農政局であります。
  11. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、この業者指名というところに一つ問題があるわけですね。あとでこれは伺いますけれども、ひとつこの問題を指摘しておきます。  それから業者が、今度の場合は全国でもトップクラスの業者指名をされておりますが、ここでは談合が行なわれておる、こういう事実が明らかになっておる。談合が行なわれれば、まともな競争入札ではないわけですが、業者談合をして適当な高い価額入札することが可能になるわけですが、談合というものは、これは許されるべき筋のものではないと思うのですが、これに対しては、一体どうお考えになっていますか。
  12. 和田正明

    和田(正)政府委員 現在、会計法なり予算決算及び会計令で、原則として契約は、指名競争入札という形をとっております趣旨は、いまさら私の口から申し上げるまでもなく、石田委員承知のとおりでございまして、本来談合などが許されるべきものでもございませんし、また私どもも、そういうことが事実上存在するというふうには承知をいたしておらないということでございます。
  13. 石田宥全

    石田(宥)委員 刑事局長にちょっと伺いますが、いま農地局長は、談合などというものは許されるべきでない、こういうお話ですが、いままでの捜査の中で、談合の事実があったやに伺っておるわけです。その点について、検察当局はどのように把握をしておられるのか、お聞かせ願いたい。
  14. 川井英良

    川井政府委員 四月の六日から十五日までの間に、新潟地検は合計九名の被疑者の送致を受けて勾留をして、目下取り調べ中であるという報告を受けております。その容疑事実になりましたのは、先ほど農林省からお答えがございましたような、大体同趣旨報告が参っております。その他に、いま御指摘になりましたような談合の点については、まだ私の手元へは報告が参っておりません。おそらく関連しておることでありますので、その点をも含めて地検目下捜査中であろう、こういうふうに考えております。
  15. 石田宥全

    石田(宥)委員 これは捜査中のことでありますから、これ以上お伺いいたしませんが、すでにその事実は明らかになっておるわけであります。もう新聞でも発表されておる、こういうことでありますから、やはり談合の事実については厳正な態度でひとつ臨まれるように、これは要望申し上げておきます。  そこで、この指名をするにあたっての問題でありますが、実は農地局長新潟では、先々代の北村知事さんというのは、県内業者を育成するために、鹿島建設とか清水建設とか大成建設とかいうものは、新潟県から追い払うというとちょっとどうかと思いますけれども、とにかく県内事業指名をしないという方針をとってきた。ところが、塚田さんにかわってから、新潟県内建設事業が、鹿島建設に急に大きくウエートがかかってきておるわけです。このことが、私はやはり問題の一つであろうと思うのでありますが、指名をするにあたって、登録業者としてそこに登録をされるかどうかという場合には、これは単に地方農政局長だけじゃなくて、本省農地局長建設部長のところまで必ずいくような習慣になっておる。私はその事実をよく知っておるわけでありますが、そういうことはございませんか。
  16. 和田正明

    和田(正)政府委員 毎年二月に、先ほど申しましたように、地方農政局長登録を希望する業者資格審査をいたしまして、登録をいたします場合は、各農政局長所管事項でございますので、どの会社がどこの局で登録を何ランクにされておるかということまでは、本省農地局長としては、一々は実は存じませんわけでございます。
  17. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうすると金沢農政局長権限であって、本省からかれこれ指示をするようなことはございませんか。
  18. 和田正明

    和田(正)政府委員 この阿賀野川用水の一番大きな頭首工入札は、実は三十八年に実施をいたしておりまして、当時少なくとも私はおりませんでしたので、金沢に対してそういう特定指示をいたしたことは私どもとしてはございませんし、また一般論といたしましても、そういう指示をいたす立場にはございませんので、あくまでも地方農政局長権限で処理されておるわけでございます。
  19. 石田宥全

    石田(宥)委員 あなたの在任中でなかったからとおっしゃるけれども常識的に、これはやはり本省では農地局長が窓口になっておる。しばしば知事国会議員が足を運んでおる事実を私は知っておるのです。そういうことでありますから、これはもう少しあとでいろいろ伺いたいと思うのでありますけれども知事国会議員の圧力というか、要請というものが事実上どれくらい影響をするものであるか。地方農政局長権限であるとすれば、本省局長が電話を一本かければかなり影響するのではないか。地方農政局長の身分というものは、本省局長が掌握をしておるわけだから、かなり影響を受けるのではないか、こう思うのですが、和田さんはその後に農地局長になられたから、直接それは関係なかったとしても、常識的にはそういうものであるということはお認めになりましょうね。
  20. 和田正明

    和田(正)政府委員 先ほど来お答えを申し上げておりますように、少なくとも阿賀野川用水土地改良事業に関して、知事なり国会議員から特定会社についてお話を伺ったことは、神明に誓って私はないのでございます。それから一般論といたしましても、そのようなことはないのが普通でございます。
  21. 石田宥全

    石田(宥)委員 あなた御承知ないのだからいいと思いますけれども、とにかく、私はそういう事実をたくさん知っておる。私も同行したこともあるのですから。それ以上はあなたを責めてもしかたがないから、 これ以上責めませんけれども……。  そこで中田所長というのが、実はちょうど二年前、大和田さんが局長の時代に、中田所長というのはどうも遊び過ぎるようだ、ことに農林省の官吏だとか、あるいは農林省関係全国事業所役人を招待しておいて、そうして料理屋どんちゃん騒ぎをしたツケを、土地改良区に回しておるという事実が明らかになっており、しかもその額が大き過ぎるから、あまりひどいことをやっちゃ困ると、私はこれを表に出さないで、大和田君に直接勧告をするように注意をした。その後大和田君は、いや、先生からお話があったので中田所長によく伝えておきました、こう言っておったにもかかわらず、ますます紊乱しておったわけです。  そこで、ここで一つ問題になるのは、私は今後お考えを願いたいと思うのですが、定年近しという時分になると、あとは野となれ山となれで、もうでたらめざんまいなことをやっておるというのが、大体どうも常識のようです。そこで百十八億という工事ですから、百億以上の工事に、われわれが全くはたから見ておっても目に余るような、そうしてそのどんちゃん騒ぎをしたのが、農民負担になるというような状態が平然として行なわれておるというところに、私は一つ問題があろうと思うので、これは局長の問題じゃなくて、大臣がおられれば大臣によく言っておきたいのですけれども定年が近くなれば、どうせもう食い逃げだということで、検査員も金をもらったりしている。それも今度事実が明らかになっておるのですが、金をもらったり、供応を受けて手抜きをやらしておるのです。この事実も明らかになっておりますが、手抜きをやらしておる。そういう関係で、定年近いような者を大事業所所長などにしておくということが一体適当かどうか、私は非常な疑いを持っておるのです。これは全国たくさんの事業所がありますから、今後それらの点を十分御配慮をいただかなければならないと思うので、ひとつ政務次官から、それについてのお考えを承っておきたいと思うのです。
  22. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 ただいま石田委員の御質問の阿賀野川の問題につきましては、農林省全体としてもまことに申しわけない事件であると思っております。いま石田委員のおっしゃいました問題につきましても、十分これを大臣に伝えまして、厳正な立場でひつこれからの人事をやっていかなければならないと考えております。
  23. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、土地改良団体役員の問題ですが、土地改良団体というものは直接は知事権限を持っておりますが、土地改良団体役員が、自分の身内の者を工事請負人に入れてもらうために、あるいはまた工事を促進するという目的のためと称して、相当膨大な金を使っておるのです。とにかく百万円以上飲むなどということは、われわれちょっと常識考えられないのですね。みんなそれはわれわれ農民農地負担を強制されておるわけです。これについては、直接は知事権限に属するものであるけれども、何といっても五〇%、六〇%の負担をしておる農林省発言権監督権というものが一番強いものであるし、適切な指導が行なわれるものであるというふうに理解をしておる。一体農地局長、そういう点についてはどのように監督監査をやっていらっしゃいますか。
  24. 和田正明

    和田(正)政府委員 土地改良区の監査は、現在土地改良法に基づきまして、農林大臣都道府県知事監査をする権限を与えられておりますが、そのうち本省実施をいたしますものは、受益地が五千ヘクタール以上のものということでございます。内地にはそのような土地改良区が七十七、北海道で三十一ございます。それと、全土連それから地方農政局が千ヘクタールから五千ヘクタールの間の土地改良区の監査をいたす権限を持っておりまして、これが単独の土地改良区で五百二十五、それから連合体が四十五。千ヘクタール未満のものは知事監査権限に属しまして、これが全国に一万一千八百二十七ございます。予算その他の関係もございますので、毎年検査をいたすというわけにはまいりませんが、検査自身は、おおむね一つ土地改良区については、少なくとも三年に一ぺんは全体の調査検査ができるようにいたしており、また検査の結果指摘すべき事項については、それぞれ指摘をいたしておるわけでございます。  ところで、阿賀野川の問題に関連して、百万円ぐらいの飲み食い土地改良区の金でしておるというお話でございますが、関連土地改良区及び土地改良連合で毎年収支予算をつくっておりまして、私ども検査もその収支予算支出状況、あるいは賦課金徴収状況等中心監査指導をいたすわけでございますが、本関連をいたしました土地改良区における食料費というのは、四十一年の予算決算では年間六十万円ぐらいの計上になっておるようでございます。  なお、私どもとしては、当然事業費一定割合は農家の負担になるたてまえが現在の土地改良事業実施のやり方でございますので、それ以外の負担農民にかかりませんようにということは、一般的な指導方針としては当然でございます。やはりその土地実情に応じた処置は必要ではございましょうが、極力いまお話しのようなむだな経費が支出になりませんように、一般的にも従来指導してまいりましたし、今後もそういう方向で努力をいたしてまいりたいというふうに思います。
  25. 石田宥全

    石田(宥)委員 土地改良団体と申しましても、いま御説明のように土地改良区があり、連合会があり、協議会がありいたしまして、今度問題になった土地改良区の役員、同時に連合会の副理事長をやっておる小林政次君の関係しておる地域などでは、土地改良区が三つあり、その上に協議会があり、連合会がある、こういうことで四つ五つもあるわけですね。それがやはり全部農民負担、一枚のたんぼで四つ五つもの団体事務人件費をはじめとする、そういう贈収賄というような資金がとられ、使われておるわけです。農民負担というものはいかにひどいものであるかということが明らかなんです。  でありますから、そういう点について、私はこれは多年本委員会で主張してきておるのでありますが、たとえば、北蒲原郡というところは郡の土地改良区がある、そのほか今度問題になっておるところの新江土地改良区がある、あるいは南部土地改良区がある、安田土地改良区があるというふうに、実に何重にもかかっておる。こういうものは統一すべきではないか。郡上改などは農林省が強く指導をしてつくらせたのです。私は、郡土地改良区というものが単一の土地改良区であって、そうしていままであるところの土地改良区を事業所というものに改めて一つ執行機関とするならば、郡土地改良区もよろしいけれども、それは不可能ではないか。また、郡土地改良区の中に三十幾つかあるようですが、たくさんの土地改良区というものがある。それぞれやはり事務人件費を使い、飲み食いをし、役人買収費にも使う、こういうようなことが許されていいのかどうか。その組織を単一化させる努力農林省はやっていないのじゃないか。土地改良区というものは農民が自主的につくるのだからとおっしゃるかもしれないけれども郡土地改良区をつくるなどというときには、これは私も土地改良区の役員をやっておりましたが、かなり強制的に農林省は押しつけてきたものです。今後そのようなことがないように、かなり強力な指導が必要だと思いますが、局長さんどうですか。
  26. 和田正明

    和田(正)政府委員 阿賀野川沿岸区域につきましては、ただいま石田委員お話しのように、別に国営阿賀野川排水事業をいたしまして、その受益地区関連して北蒲原土地改良区があります。その土地改良区の中での個々団体実施をいたしますための土地改良区が、そこにダブリまして二十五、六現在存在しております。さらにその二十五、六のうちの十幾つかが、今回の事件関連をしております阿賀野川右岸土地改良連合という形で、阿賀野川用水事業受益地帯にダブってできておりまして、私も、同じ受益地区の中が国営用水国営排水、あるいは末端の県営、団体営というふうに、事業種類が違うのに対応していろいろな土地改良区が現地にできたのだとは思いますが、こういうダブリ方がありますことは適当ではございませんので、実は土地改良法では、従前は事業種類ごと土地改良区をつくるのが原則だというたてまえになっておりましたのを、昭和三十九年に同法を改正いたしましたときに、一つ土地改良区で二つ以上の事業ができますようにいたし、また三十九年の法律改正にあわせて、なるべく土地改良区を統合、合併いたしますための必要な予算措置をとってまいりましたわけでございます。  四十三年度につきましては、石田委員の御指摘もございましたので、このような地帯についての統合をさらに促進をいたします意味で、いろいろな実態調査をいたす予算も新規に計上いたしたわけでございます。私どもとしては、たとえば事業が別であるにせよ、同じ地区農民の上に幾つもの土地改良区ができ、その組合員であるという形でダブることは、決して好ましくないと思っておりますので、従来も統合のための助成等措置もとってまいりましたが、本年以降も、必要な調査実態把握につとめながら、できるだけ統合をしてすっきりとした形で処理できますように、強力な行政指導をいたしてまいりたいと思っております。  お話しのございました阿賀野川沿岸、特に北蒲原区域については、御指摘のような問題もございますので、県の関係当局も、現在そこらの点につきましては、すっきりとして、しかも土地改良区がやはり強力な組織として存在をいたしますことが、事業の推進のためにも必要なものでございますので、県庁も現在せっかく努力をいたしておる次第でございます。
  27. 石田宥全

    石田(宥)委員 農林省監督監査ですが、手薄のために三年に一度ぐらいだということですから、それはほとんど実態把握は困難であろうと思います。また、最近の行政府の腐敗ぶりというものも、先般新潟の県議会で問題になったわけですけれども会計検査諸君が一回に十万円くらいずつ飲み食いをしておって、二回分明らかになっておるわけですから、農林省諸君腐敗ぶりだけを問題にするわけにはいかないと思いますけれども、少なくともこのようなものがオール農民負担という問題については、やはり五〇%も六〇%も事業費負担をやっておる農林省発言権が一番強いわけですから、これは、今後こういう事件が起こって農民に迷惑のかかることのないように、ひとつ御配慮を願いたい。これは要望をしておきます。
  28. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いまの石田委員の御心配はもっともな点があると思います。農林省としても、十分厳格な立場監督指導していかなければならぬと思っております。
  29. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、刑事局長にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど来お聞きのとおりでありまして、工事を請負に付す場合に、請負人談合してしまえばこれはどんなにでもできるわけです。指名された人間が全部談合してしまって、そして役人がそれを、大体この程度ならば落札しますということで、必要以上に高い額で落札をしてしまう。形式的には入札をして、そうしてその一番高いところへ落とす。しかし安いところに落とす場合もあるのですね。そうして問題を起こすこともあるのだけれども……。そこで、今回はたとえば鹿島なら鹿島、そのときに選に漏れたものは、たとえば大成建設なら大成建設というものがその次の工事は受け取る、その次の工事は佐藤工業が受け取る、こういうふうにちゃんと談合してしまうというと、もうどうにもならないわけです。これは国費の乱費以外の何ものでもございません。その上に工事手抜きを見のがす。今度もそれで収賄をして、工事手抜きを認めたために逮捕されておる人もありますから、私は、この問題がここでしり切れトンボになってはならない、こういうことで実はきょういろいろお伺いをしておるわけですが、いやしくも国会議員であるとか、本県の場合は塚田前知事が、特別に指名の中へ入れる努力をしておる。  それからもう一つは、これは局長から特に答弁をいただく必要はございませんけれども、実は昭和四十年の参議院の選挙に際して、相当多額の金が某参議院議員の手に渡されて、その金が関係土地改良区の理事長に配分されたのです。多くの理事長はどうももらったようです。個人的にもらったようです。ところが私どもの系統の、荘之江土地改良区の理事というのは、これはどういう意味があるのだ、どういう性質の金だ、いや何も含みはないんだ、そうか、ということでこれを理事会にはかったんです。何の意味もないというのならばまあもらってもいいじゃないか、こういうことで、当時参議院議員に立候補を予定しておった議員さんが渡した金を、その土地改良区は理事会にかけて、雑収入としてこれは帳簿に入れてあるのです。私はここをひとつ掘っていけば、必ず参議院議員や県知事やそういうところにつながりができてくるし、そうしてそれは、いま検察当局が手を入れておられる鹿島建設新潟営業所などの帳簿からは、そういう多額なものは出てこないと思うのです。おそらくこれは本社だろうと思うのです。ところがあなたのほうでは、新潟地検では本社に手を入れていないのです。本社に手を入れなければ、何百万円、何千万円などという金が営業所の所長の手から出るはずはないのです。ところが、新潟営業所だけが逮捕もされておるし、帳簿も押収されておるけれども、それではざこばかりさらっておいて、大もののところには及ばないおそれがある。そうお考えになりませんか。  そこで私は、小さな問題だけれども、そのつながりのあると思われるところの金が、荘之江土地改良区の理事長を通して荘之江土地改良区の雑収入の中に入っておる、そうしてその周辺の土地改良区の理事長が応分の金をもらっておるという事実を突きとめて、その金の出所を追及されれば、これは営業所などでとどまる問題ではなくて、当然本社に波及する問題だ。しかし、鹿島建設といえば全国でもトップクラスの土建業者でもあり、外国での工事受注にしても一、二を争う立場でありますから、いまの佐藤内閣の体質からいってそこまで手が届くかどうか、私は非常に疑いを持たざるを得ないのですけれども、とにかく、そういう問題の本質的なものがあるということを私はあなたに申し上げて、早急にお手配をされないと、これまたわけがわからなくなるおそれがある、こういうことを考えておる。  実は私、時間があれば新潟地検に参りまして、具体的に話をしたいと思っておりましたが、ちょっと時間がないので申し上げておりません。ぜひひとつ新潟地検が勇断をもってそこまで手を伸べていただくように要望を申し上げ、同時に、先ほど来申し上げますように、この種の性質のものは、一面においては国費の乱用となり、一面においては不当な農民負担を強要することになる。私はその被害者の一人なんですから、そういう点もお含みの上で、本事件捜査を積極的に行なわれるように要望を申し上げたいと思います。
  30. 川井英良

    川井政府委員 よく御趣旨は拝聴いたしました。適当な方法で新潟地検のほうへ御趣旨を伝えるように、善処したいと思います。
  31. 石田宥全

    石田(宥)委員 終わります。
  32. 足立篤郎

    足立委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  33. 足立篤郎

    足立委員長 速記を始めてください。  佐々栄三郎君。
  34. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は農林漁業団体、つまり農協、漁協それから農業共済、たばこ耕作組合、こういうところで働いておる職員の待遇の状況、いわゆる労働条件についてお尋ねをいたしたいと思います。  これはもう局長も次官も十分御承知と思いますが、こういう農林漁業団体の職員の給与が非常に低いということは。今日のわれわれの常識でございます。ところが、よく考えてみますと、政府が農漁村対策というものをいろいろ打ち出されて、その政策を末端にあって執行するのは、手足となって活動するのは、こういった団体の職員であるわけであります。そういうような点から考えましても、また、今日農村の青年が都会へどんどん出ていく、学校卒業者でも農村へ滞留する者が非常に少ない、そういう中にあって農漁村、山村に踏みとどまって働いておるわけでありまして、いわば今日の農村における中核的な存在であるとともに、また、将来の日本の農山漁村を背負って立つところの人であります。そういう点から言うならば、今日のこの人たちの待遇、労働条件というものを、このまま放任しておいてよいというはずはないわけであります。  四十一年五月二十六日のこの委員会におきまして、「農林漁業団体職員の給与が著しく低位で、給与水準に不均衡が認められる実情にかんがみ、給与の改善、給与体系の整備等のため、適切な指導を行なうこと。」こういう附帯決議が行なわれておるわけでありますが、農政局あるいは農林省という立場から申しますと、直接間接の指導監督の責任の地位にあるわけでありますから、こういう附帯決議が行なわれなくても、もちろん、十分これらの人たちが働きやすいような方策が講ぜられなくちゃならぬわけであります。特にこういうような附帯決議が本委員会で行なわれました以上は、当然その方向に向かって努力しなくちゃならぬと思うのです。すでに二カ年の歳月を経過しておるわけですが、この間、この問題について、農林省としてどういうようなことをやられたかということにつきまして、まずお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  35. 森本修

    ○森本政府委員 御指摘のように、農林漁業団体は、農林業の発達のためきわめて重要な役割りを負っておりますから、そこに働いておられますところの職員に対しましても、できるだけ待遇なりあるいは労働の環境なりというものが、整備されていかなければいかぬということは同感でございます。ただ、ただいま言われました給与等につきましては、御案内のように、やはり一つの自主的な団体でございますから、私どものほうで直接財政的な援助をはかる、その他直接的な手段でもって給与を引き上げていくとか改善するというふうなことは、必ずしも適当でないというふうな関係になっております。  したがいまして、考え方としましては、そういった関係団体の環境条件といいますか、そういうものを整備いたしまして、その結果、自然に労働条件なりあるいは給与の改善が行なわれていくようにしむけていくというのが、役所としてのつとめであろうと思っておるわけであります。そういう関係から、従来やってまいりましたことは、御承知のように、農協につきましては合併の促進その他体制の整備をいたしますれば、自然給与条件その他も改善してくるといったような実績があります。そういうふうな面で、できるだけ私どもとしては環境条件の整備といいますか、そういう点に努力をするし、また将来もしていきたい、そういうふうに思っておるわけでございます。
  36. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農林省としては、非常に監督のしにくい立場にあるということは、私にもわかるわけであります。わかるわけでありますけれども、やはりこの問題は、そのままに放任しておいてよいという問題ではないので、農林省監督立場からいって、積極的な姿勢ををもってこれらの職員の待遇改善に努力する熱意を持っていただきたいと私は思うわけです。  そこで、ただいまの局長お話では、合併の促進によって待遇の改善が期せられるのではないか、そういう期待のおことばがありましたが、私、香川県でありますけれども、香川県は全国的に見まして一、二を争うところの合併促進県でございまして、非常に合併がうまくいっております。ところが、合併がうまくいったから職員の給与がよくなっておるかというと、そうではなくて、合併の一つの条件として、事業面が優先をされるというような形の合併が非常に多うございますために、むしろ職員の給与というものは、二の次三の次というふうにされておるというのが現状であります。決して局長の言われたような結果にはなっておりません。  そこで、私は全国的な給与状況の御報告を求めるつもりでありましたけれども、時間の都合がありますのでそれは省略しまして、香川県における状況をごく簡単に私は申してみたいと思うわけです。これは単協の状況でありますが、四十二年の八月に調べたわけですから比較的に新しいわけでございます。これによりまして単協の平均賃金を見ますると、男が二十八・五歳で二万二千四百六十八円、女が二十五・九歳で一万七千九十一円、平均にしまして、二十七・二歳で一万九千七百七十九円でございます。この中にはいろいろな手当を含んでおるわけであります。これを他の産業、製造業などと比較してみますると、最近若年労働者が非常にふえた関係もあって、また労働力不足の現状でもありますために非常に上がっておりまして、これと比べて半分ぐらいの線といっても過言ではないと私は思うわけです。それから公務員なんかの場合と比較をいたしましても、公務員の賃金というのは、企業の賃金の大体中ぐらいのところじゃないかと思いますが、これと比べましても非常に低い。これはわれわれ町村に在住しておりまして、役場の職員の給与と農協の職員の給与を比較してみますと、そこにかなりの差があるわけなんです。こういうのが実態でございます。  それで特別な例を一、二申し上げますと、これは私のほうの香川県の調査の結果でありますが、男の三十四歳、勤続年数二年、家族四人で一万六千四百円というのがあります。それからもう一つは、男の三十一歳、勤続年数四年、家族三人で一万九千七百円というのがあります。最低一万円ぐらいの賃金の人もおるわけです。  それから諸手当の状況を見ますと、もちろん県連のほうでは手当がいろいろ出ておりますが、単協ではあまり出ておりません。たとえば家族手当を見ますると、実施しておる組合はわずかに三分の一ぐらいの組合でありまして、その金額にしましても月に五百円ぐらい。それから時間外手当を見ますと、実施しておるのが三分の一から二分の一ぐらい。総会なんかで予算をきめまして、その予算の範囲内で、まあいいかげんなところで出しておるというのが現状でございます。それから退職手当なんかを見ましても、一年について一カ月分くらいということになっておるようでありまして、これは普通の場合と比べて、公務員は一年について一・七カ月になっておりますが、非常に悪くなっておるわけです。  こういうような実情を見ますると、先ほど当初に私が申し上げましたように、合併したからよくなったというようには結論づけられない。香川県の場合は、合併した町村が、先ほど申し上げたとおり非常に多いわけでありますから、そういうようなことで期待をせられるということはどうかと私は思うのです。  そこで、これは中央会を通ずるという形になるだろうと思いますけれども、もっと積極的に、将来の日本の農漁村を背負って立つところの人たちのために、こういうような非常に貧弱な給与体系の改善を行なうということが、どうしても必要だと私は思うわけです。これについて政務次官はどういうふうにお考えになられるか、同時に、これから一体どういうような考え方でやっていこうと思うか、ひとつお考えを聞きたいと思います。
  37. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いま佐々委員のおっしゃるように、農業関係団体の職員の給与がほかと比べまして相当低位にあるということは、われわれも率直に認めざるを得ないと思いますし、団体が仕事をやる場合におきましても、やはり職員が中心になってやるわけでありますから、農政を推進する上におきましても、職員の使命は非常に重大であるというふうに考えております。そういう意味で国会の附帯決議もなされたものであると思いすが、さっき佐々委員のおっしゃいましたように、農業団体は、政府がかってにこれを上げろといってもできる問題ではなくて、やはり農業団体が給与を決定するわけですから、いま農政局長も言いましたように、環境その他を整備していくとともに、農協あるいはその他の農業関係団体の力が強くなることが給与の改善にもつながる、こういうふうに考えるわけでありまして、そういう意味では、やはり農業関係団体の力を強くするということに、政府としても力を注いでいくということではないか、かように考えております。
  38. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 労働省の方おいでになっておりますか。——労働基準法違反の問題が農協に非常に多いわけでありますけれども、まだ労働省の方が出てこられないようでありますから、それではあとに回しまして、農林年金、いわゆる農林漁業団体職員共済組合、これは農協、漁協、土地改良、たばこ耕作組合等八団体、三十五万人の人を対象にした共済制度でありますが、この制度の現在の運用の状況、現在の法律の体系につきまして、以下若干御質問をしたいと思うわけであります。  このいわゆる農林年金というのは、いま申し上げましたように、こういう団体の職員の賃金が非常に低いというところから、最低の賃金、最高の掛け金ということばでいわれておりますように、非常に安い賃金の中から非常に高い掛け金を支払わされておるという現状でございます。大体農協だけを例にとってみましても、社会保険料として農協の職員が払っておりますのは、農林年金、健康保険、失業保険を合わせまして八・六五%というようなずいぶんたくさんの社会保険料をかけておるわけなんです。まあたくさん月給をもらっておりましたならあまりこたえぬと思いますけれども、先ほど申したような非常に低い賃金の中からこういう掛け金をかけていかなくてはならぬということは、私はこれらの人たちにとって非常に大きな痛手だろうと思うわけです。  そこで、この掛け金が高いという問題について二、三お尋ねをしたいわけでありますが、現在のこの共済の掛け金は給与の千分の九十六を団体との折半でかけておるわけであります。つまり、個人負担は千分の四十八ということになるわけでありまして、二万円の給料をもらっておる人でありますと、自分の負担として九百六十円を天引きされるということになるわけでございます。  それで、これを他の年金、いわゆる公的年金と比較してみますると、個人負担が四・八%、千分比にいたしまして四十八でございますから、他の厚生、船員、国公、地公、公企、私学、こういう共済と比較しましても、数字はありませんけれども、これは最高でございます。  この最高の原因が一体どこにあるかということでありますが、一つは、給付費に対する国庫負担の割合が非常に低いということ、二つ目は、整理資源が掛け金の中へ繰り込まれておるということ、三つ目は、事務費の国庫負担が低いということ、こういうようなことが大きな原因になっておると思うわけです。  そこで、私はこれらの問題について少しくお尋ねをしたいわけでありますが、ちょうどいま労働省の方が来られたそうですから、時間の関係で、ごく簡単な質問でありますので、いまの質問をあと回しにいたしまして、先に労働省の方に労基法違反の問題についてちょっとお伺いしたいと思うのです。これだけでございますので、先に済ませます。  労基法の違反が非常に多いわけでございまして、農協とかあるいは漁協とか、農村の内部にある職域の性格という問題がありますので、そういうところからこういうことになるんじゃないかとも思われるのでありますが、労働省として、こういう団体の労基法違反についてどういうような取り締まりの方法を講じておられたかということと、それから全国的な違反の摘発の数とか、そういうことについてお伺いしてみたいと思います。
  39. 藤繩正勝

    藤繩説明員 農協に対する労働基準法の監督はどうなっておるかという御質問でございますが、私ども労働基準監督機関は、先生御承知のように、労働基準法が原則としてあらゆる産業に適用がございます関係上、数少ない職員で多数の事業場を監督しなければならない段階にございますので、従来ともそういった関係で、主として工業的業種と言っておりますが、製造業あるいは建設業等に重点が向けられておりまして、ただいまの農協の問題もさようでございますが一般に商店あるいは旅館等いわゆる非工業の分野については、いろいろ問題がありながらも十分な監督ができないという点につきまして、かねがね私ども、もう少しやらなければと思っておったわけでございます。  そこで、昨年あたりから、少し非工業のピッチを上げようということで、問題になっております病院、診療所あるいは旅館、商店、それから、ただいま御指摘のこういった分野につきましても監督をやっていこうというふうに、監督の重点を少しずつ移しておるような段階でございます。したがいまして、農協についての監督は、いままでの実績で申し上げますと、過去五年間に五百二十一の事業場に対して実施をいたしておるにとどまっております。その結果について見ますると、監督実施したすべての事業場において、何らかの労働基準法違反が発見されておる。そして、主要な違反事項についての違反率を見ましても、全産業の平均の違反率よりも、ほとんどすべての条項で上回っておるということであります。率直に申し上げまして、農協における基準法順守の状況は低調でございます。  そこで、私どもとしては、ただいま申し上げましたように、それではいけないということで努力をしてまいりたいと思いますが、労働基準監督官による監督だけでは十分でございませんので、中央、地方を通じまして、農協中央会というようなものにつきましても警告を行ないまして、関係行政機関等の御協力も得まして、これらの労務管理の近代化につととめてまいりたいというふうに考えておりまして、地方の基準局長から、それぞれ地方の農協の中央会に対して、また中央におきましても、せんだって、労働基準法をもう少し守ってもえるようにという警告と申しますか、指導を行なったような次第でございます。今後ともそういう方向で努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  40. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでお伺いしたいのは、たくさんの農協の中で監督をやったところとやらぬところとがあるわけなんでしょうが、たとえば、昨年でもよろしいわけですが、実績として大体何件くらい、何割くらいの監督をして、その監督した結果出てきた違反の状況を、ひとつお調べになったのがありましたらおっしゃっていただきたい。同時にあわせて、そういう違反に対してどういう処罰の方法を講じておるか。単にその結果が出ただけで、違反しておるというだけで済ましておるのか、あるいは厳重な処罰をやっておるのか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  41. 藤繩正勝

    藤繩説明員 私ども承知いたしております数字では、四十一年三月末で単位農協の数は二万一千三百二十七、連合会が千三十九というふうに理解いたしておりますが、ただいまもお答えいたしましたように、昭和三十七年から四十一年までで、実際に労働基準監督官が臨検監督を行ないました事業場は五百二十一でございまして、ほとんど違反が見つかった状態でございます。  たとえば、おもな違反について申し上げますと、男子の労働時間違反はそのうち三百二十四事業場、休日の違反が百九十二、女子の労働時間、休日違反が同じく百九十二、賃金支払いの違反が百四十一、割り増し賃金の違反が二百二十三、就業規則の違反が百三十、賃金台帳の違反が百四十八、おもな点を申し上げますとさようになっております。  労働基準監督官は、一般に、労働基準法違反を発見いたしました場合に、責任者に対しましてまず是正勧告を行ない、その是正を迫るわけであります。普通の場合は大体それで直していただけるわけでございますが、勧告をしてもなおかつ直されないという悪質な事案については、労働基準監督官の司法警察職員としての権限を発動いたしまして、事案を検察庁に送致するということもあるわけでございますが、農協の問題については、最初に申し上げましたように、私どもも、工業的業種に比べまして、また先ほど先生の御指摘のように、農林業等の限界点というような点から、いろいろ問題があるように思っておりますので、指導あるいは監督という点に重点を置いて、まず労務管理の改善をはかるという点に力を入れてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  42. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私ども香川県の農協労働者の組合の連合会で、香川の基準局長とこの問題について交渉をしまして、こういう申し合わせをしておるわけですが、その申し合わせの前に、こういう要請をやっておるわけです。一つは、違反の実態調査を行なうこと。二つ目は、違反している農協経営者の指導を強化すること。こういう申し入れをしまして、次のような両者の確認という結果になったようであります。一つは、農協に悪質な違反があることはいわれるとおりである。第二は、基準局としてはきびしい態度で指導を強化する。第三は、具体的には農協労連と相談しながら指導を進めるが、当面、時間外労働に対する賃金不払い、女子の長時間労働などの悪質な違反を中心に摘発を行なっていく。こういうような申し合わせが、地方の基準局と農協労連との間にできたようでございます。  それで、こういうことは、農協労連という組織が基準局のほうにそういう申し入れをしなくとも、私はもっと積極的に労働省のほうから農協に対して、こういうような違反の絶滅のために力を入れるべきだと思うわけです。特に、最近の農協なんかを見ますと、合併以後非常にノルマを課されている。これは最近の中央の事業ぶりを見たらわかるわけです。あるいはいろいろな保険業であるとか、物品の販売であるとかについて一定のノルマを課しながら、それに対して賃金を払わないで、非常に過酷な労働条件にますますなってきているようであります。だからこういうものについては、時間外賃金を出すとかいろいろなことが行なわれるべきはずでありますが、それが実際は行なわれておらぬというところに問題があるわけで、特にこういうような一つの近代的な組織の中におる人でありながら、労働基準法の保護を受けておらないというのは、この農村における農林漁業団体が最も大きい比率を占めておる。こんなに基準法が無視されておるものは私はないように思うのです。そういう点から、地方にまかすというのじゃなしに、労働省はもっと積極的な姿勢でやっていただきたいと思うのです。  それから、先ほど検挙とか送検というお話がありましたが、そういう実績の数字があるかどうか、何件くらいそういう送検をしたかということを、ひとつ教えておいていただきたいと思います。
  43. 藤繩正勝

    藤繩説明員 御指摘を待つまでもなく、関係労働組合がいったから初めて労働基準監督機関が動き出すということは適当ではございませんで、積極的にわれわれのほうで動き出さなければいけないことであるわけですが、何せ全国で二百四十万の事業場、約三千万の雇用労働者に対しまして二千六百人の監督官で仕事をいたしております関係上、先ほど来申し上げましたようにどうしても重点傾斜ということで、十分なことができないことはたいへん残念でございますが、今後とも御指摘のような点につきましては、能力の許す限り十分監督をやってまいりたいというふうに思います。  送検件数につきましては、農協に対して幾らという数字は、私ども統計上とっておりませんので申し上げかねるのでございますが、ただ、全体の監督の態度といたしましては、私ども現在の経済情勢あるいは国民生活水準の上昇というものを考慮いたしまして、きびしい監督態度をとっております。送検件数も、たとえば昭和三十二年のころは、全国で年間二百六件にとどまっておりましたが、三十九年は五百五十八件、四十年は千百二十六件、四十一年は千六百二十件、四十二年は二千三百六十八件という送検をやっておりまして、私どもとしては能力の許す限りきびしい基準法順守のための監督をやってまいりたい、またやっておるということでございます。
  44. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農政局長にちょっと申し上げたいのでございますが、先ほど私が申し上げましたように、香川の農協の合併状況全国で一、二であります。その全国で一、二の香川において、労基法違反が一番多いという問題があるのです。それは三十七年から四十一年の間に、違反しておるという指摘をされた組合が七十八組合、それから違反件数が三百七十五件というふうに最高を占めておるのです。農協の合併というものが、必ずしも農協労働者の待遇の改善につながっておらないということは、私はこの数字が物語っておると思うのです、将来はとにかくといたしまして現実は。それは、やはり合併ということで農協にとってやらなくてはいかぬ仕事をずいぶん背負わせる、ところが人は合併によって減らされるというようなことから、結局、この労基法違反というところへ追いやられるように私は考えるわけなんですが、農政局長、どういうふうにお考えになりますか。
  45. 森本修

    ○森本政府委員 香川県の実例を私、実は十分承知をしておりませんけれども全国的な統計によりますと、給与の上昇率からまいりますと、合併をした組合と全体の平均との上昇率を見ますと、合併をした組合のほうがどうも上昇率は高そうだというふうな数字が、私どもの手元にございます。そういう状況でありますが、御指摘のように、所によりあるいは組合によりまして、個々の事情によってまだ残念ながらそういう実績が出ていない、あるいは労働条件自体が、御指摘のようにまだ十分整っていないというふうなところもあろうかと思います。私どもとしても、そういった労働基準法違反というようなことは全く困る事態でありますので、監督官庁としても十分今後戒めてまいりたいというふうに思っております。
  46. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 参考までに申し上げますが、合併したいところが給与がいいというようなことをおっしゃったが、これも所によってというただし書きがつくのですけれども、香川県の例を言いますと、先ほど申し上げたように、単協の平均賃金、男女平均しまして一万九千七百七十九円でございます。ところが同年の全国的な平均賃金は、私が調べたところによりますと、二万七千二百七十四円になっておるのです。その間七千円以上の開きがあるわけなんです。こういう点、これは一律にはいかぬでしょう。傾向としては合併したところがよくなっていくということは私は認められますが、現実、現在の段階においてはまだそこまでいっておらぬという一つの実例として申し上げたいと思います。  それで、私、時間が制限されておりますので非常に忙しいのでございますが、労働基準法違反についてはこれで質問を終わりまして、先ほどの農林年金に戻りまして質問を続けたいと思うわけであります。  まず、第一にお尋ねをしたいのは、先ほど申し上げて途中でやめたわけですけれども、掛け金の高い原因には、給付費に対する国の負担率が低いという問題があります。現在、国庫補助一六%でありますが、これを二〇%へ引き上げてくれという要求が、年金当局なり農共連からもしきりに出ておるわけなんです。ことしの予算を見ましても、これが取り上げられておらないというのは一体どういう理由によるものかということを、まずお伺いしたいと思います。
  47. 森本修

    ○森本政府委員 御案内のように、こういった年金の制度はたくさんございます。国家公務員にいたしましても、あるいは全体のものもありますし、それぞれ現業別に共済組合がございます。また他の私学とか地方公務員、いろいろなものがございます。そういうことで、私どもとしても相なるべくは補助率を高めていきたい、いま言われましたように、できるだけ組合員負担が安くなることは私どもとしても好ましいことだと思いますから、そういう考え努力をいたしておるわけでありますが、何ぶんにもこういう制度は、他の諸制度との均衡ということが、いろいろなことをやってまいります際に一番大きな問題になるわけで、これはすでに御承知のことと思いますけれども、国家公務員にいたしましても、あるいは地方公務員にしても、補助率は一五%といったようなことになっております。農林共済のほうと私学共済は一、二年前にかなり大騒ぎ——と言うとおかしいのですけれども予算折衝の際に非常に大きな問題になって、やっと一%上がったといったような経緯がございます。そういうことでありますから、毎年予算編成のときに努力はいたしておりますけれども、他の諸制度との均衡、また財政問題としても、これは単に単年度の金ではないわけで、国の恒久的な義務負担といったような性格の金でありますので、きわめて重要な問題だというふうなことで、現在は一六%になっておるという実情でございます。
  48. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ただいまの局長の御答弁によりますと、たとえば国家公務員なんかの例をお引きになりましたけれども、国家公務員の場合は給付の内容が相当いいと言ってよいと思います。それから、これは整理資源に関連をした問題ですけれども、ことしですか昨年でございましたか、私ちょっとそれはいま申し上げかねるのですけれども、国家公務員の一五%の給付の補助に対して農林年金の場合は一六%だということについていまお話があったわけなんですけれども、現在、国家公務員が受けておる給付というものに対する国家の援助というものは、農林年金と比べて非常にいいと私は思うのです。たとえば、対象の人員から申しますと、国家公務員は農林年金の三倍の人が対象になっておる。ところが、政府がこれに出しておる補助金の額は幾らになっておるかというと、私の調べた数字によりますと、十倍以上の四十六億七千八百万円という数字が給付の補助として出されておる。人員が三倍だから三倍でいいようなものの、十倍の補助が出ておるだけでなしに、さらにその上に、私はあとで申しますが、整理資源についても五十億余りでございますか、やはりお金が出ておる。この整理資源も、農林年金にはごくわずかしか出しておらない。そういうようなことで、国家として、人員が三倍である国家公務員に対しては十倍以上の国の補助を出しておるわけですから、その給与がよくなるのは、これはきわめて当然なんです。そういうようなことをおっしゃられたのでは、私はどうも受け取れぬと思うのですが、いかがでございましょう。
  49. 森本修

    ○森本政府委員 国家公務員のほうが手厚そうだというふうな感じは、私も否定はいたしません。しかし、先ほどの予算の数字と対象人員の数でもって、単純に比較することはできないと思います。といいますのは、これは給付費に対する補助でありますから、それぞれ給付の時期に到達した人の給付額は幾らかといったようなことに応じて、国の負担の計算が出てまいりますから、それぞれその制度の古さ、したがってまたその制度から支出される対象人員といったようなことによってきまってまいりますので、単純に加入者の数でもって比較するような性質のものではないというふうに思っております。しかし、国家公務員の関係は、恩給制度から引き継いでまいりましたようなことで、非常に古い歴史を持っております。農林年金のほうは、まだそう年限がたっていないといったようなこともありまして、なお整備を要する点があるだろうということは、私は否定はいたしません。
  50. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 この問題については、先ほど局長のおことばで、農林年金の補助率と国家公務員の補助率を比較しても、何も悪いことはないじゃないかというおことばがあったので、私、いま申し上げたようなことを申したわけなんです。実際制度全体として、どちらが政府の手厚い保護を受けておるかということについては、これはもうあまり論ずる必要もない、こう考えておるわけですけれども、この問題だけに限らず、いろいろ差別的に扱われておる問題が多いわけです。これも制度の歴史の問題であるとかその他いろいろな点で、局長として言われることも私は予想できないことはないんですが、しかし、考えてみると、国家公務員だけに限らず、地方公務員あるいは対政府の関係において同じ立場にある私学なんかの場合を考えてみても、あるいは厚生年金の場合を考えてみましても、私はやはり農林年金というものがよくないという結論に達するわけなんです。  そこで、第二の問題は整理資源の問題であります。この整理資源が大体掛け金率の中の千分の二十四を占めておるわけですから、これを全額国が負担をいたすということになりますと、個人の掛け金というものが、現在の千分の四十八から千分の三十六というふうに低くなってくるわけなんです。そこで、その他の制度の状況はどうかと申しますと、いまお話の出ました国家公務員、これは全額、五十八億円国が整理資源として負担をしております。それから地方公務員も、全額地方自治体が負担をしておる。それから公共企業体は、国鉄などの当局が全額負担しておる。それから私学の共済にあっては、二分の一を私学振興会が負担をしておりますが、これも私学振興会というものの実態を見ると、やはり国のお金がそこに出ておるわけですから、これまた全額国が負担しておると見てよいと思うのです。  そういう点から見ると、他のこういうような共済制度と比較をいたしまして、整理資源を全額組合員負担をさせて、それが掛け金の中へ割り込まされておるということは、言うまでもなく給付金が低くなる原因であると私は思うのですが、こういう不公平なことは、私は一日も早くやめるべきだと思うのです。これについては、もういままでもたびたび要求が出ておったわけなんです。今度の予算で見ますると、大体六千万円ぐらい金額が認められておるようですが、この金額というものは、全体の整理資源の金額と比較いたしますと、九牛の一毛にすぎない金額でございます。これについて、大蔵省とどういうような折衝をせられたかというようなことについて、局長の見解を聞きたいと思うのです。
  51. 森本修

    ○森本政府委員 これは、前からきわめて重要な関心を持って見られておる問題であります。ただ、形式的な理屈からいきますと、地方公務員なりあるいはその他言われましたことは、予算折衝の過程でもずいぶん議論があったわけでありますが、国庫から出しておるというふうには理解をされておらないわけであります。地方公務員でありますれば、雇い主たる地方公共団体が持っておるというふうな一例でもわかりますように、国からこういった整理資源を補助すべきかどうかということは、ここ数年来予算折衝の過程において、きわめて深刻な議論を財政当局といたしたわけでありますが、先ほど言いましたように、ものごとの整理としては、雇い主たる地方公共団体なり、あるいは私学のほうでありますれば、しかるべきそういったものというふうな整理になっておりまして、国の金をもって、国庫からこういうものを出すべきであるという議論には、なかなか到達をいたしません。そういう経緯がございまして、二、三年来予算折衝の過程でずいぶんやりましたけれども、そういった整理はなかなかしにくいということで、現在は、御指摘がございましたように、先般の法律改正によりましてできた財源調整の規定を活用いたしまして、財源調整の名目でことしは六千万円ですか、国庫補助がされておるという実情でございます。
  52. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、大体整理資源というのは何かという問題になってくると思うのです。これは申すまでもありませんが、農林年金が発足したときの厚生年金期間の引き継ぎと、それからその後行なわれた給付の引き上げによって生じた財源の利子相当分というのが整理資源ということになっておるのです。そうすると、これは現在の組合員が掛け金の中で負担をしなくちゃならぬ性質のものじゃ全然ないわけなんですね。それで、局長はいま、国が負担をする責任の問題を論ぜられたわけですが、それならば、自分に関係がないのに、あと組合員がさかのぼってこれを負担しなければならぬ責任があるのですか。
  53. 森本修

    ○森本政府委員 それはなかなかむずかしい話でありますけれども、ともかくもだれかが負担をしなければいかぬ関係であります。しかも、その負担が生じてまいりました原因は、加入者たる人に対する給付を行なった、あるいは将来行なうというところの金であります。したがいまして、加入者がどういう形で負担するかは別といたしまして、現在の加入者がするか後代の人がするかは別といたしまして、第一次的には、加入者が負担すべき性質の金であるということは言えると思います。ただ、それが膨大になりまして、組合員の掛け金負担が非常に高いから、国でもっていかなる処置をするかということは、別個の政策問題として出てくるというふうにお考えをいただきたいと思います。
  54. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、私学振興会が二分の一負担しているという問題はどういうふうに解釈したらいいのですか。私学振興会は、政府の補助金でやっておると思うのです。その補助の金が出ておると思うのですが、これは一体どういうわけでございますか。
  55. 森本修

    ○森本政府委員 私学振興会のほうのことは、私はそれほどつまびらかにしておりませんけれども、ああいった性格の団体でありますから、私学振興というふうな名目でもって、私学共済に対して何らかの財政援助をしておるのではないかというふうに推定をいたしております。
  56. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あまりこの問題の論議に費やすと、あと時間がなくなりますからもう申しませんけれども、私学振興会はああいう性格だからと言われるが、私学の先生より農協労働者なんかの職員の給与が低い。この現実を考えたならば、あなたのいま言われたそういう御弁明というものは、弁解にならぬと私は思うのです。やはりもっと公平に農林省として——私学は文部省の関係でしょう。農林漁業団体はあなたのほうの監督下にあるのですから、もっと自分の子供のことを弁護する立場に、よくすることを考え立場に立っていただく必要が私はあると思います。これはこれだけにしておきます。  それから、その次は事務費の問題です。これもいま申したことともう同じようなことを繰り返すことになるのですが、国家公務員、地方公務員、公共企業体、これは全額国が補助しておる。これについては、いま言われたような御議論があると思います。ところが、厚生年金については国が八割の補助をしておるわけなんですね。こういうようなものと、現在の農林年金に対する事務費の補助との均衡がとれておるかどうかということと、それから、これも毎年一人当たりを増額してほしいという要求が出てきておるのですが、ことしはこれがどういうふうになったかということをお聞きしたいと思います。
  57. 森本修

    ○森本政府委員 事務費のほうは、大体一人頭幾らかというふうなことで、ほぼ各年金間にバランスをとって予算がついておるというふうに私は承知をいたしております。
  58. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 非常に不満足な御答弁ですが、私はそれにあわせて、ことしのいわゆる予算折衝のことをお伺いしたのですが、それはどうなんですか。従来一人当たり百円だったのが、今度はどうなったのですか。
  59. 森本修

    ○森本政府委員 端的に予算折衝の過程を申し上げますと、事務費についても、単価をふやすというようなことで折衝をいたしましたけれども、私学等のバランスからいって、それはちょっと行き過ぎではないかというふうなことになりまして、現在、四十三年度予算に載っておるような姿になっておるわけであります。
  60. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いままでお尋ねしたのは掛け金についてのお尋ねでございます。そういうようなことのために掛け金が非常に高くなっておるので、ひとついま申し上げた三点については、これから御努力を願って、掛け金率が下がるように御尽力を願いたいと思います。  それから、次にお伺いをしたいのは支給額の問題であります。先ほど局長は国家公務員の場合を例に引かれましたが、国家公務員の場合は、四十一年ですから最近とは言えませんが、四十一年の調査によりますと、国家公務員の年金の支給平均額、年額でありますが、これが二十万六千五百六十八円という数字になっておるのですね。農林年金は幾らかというと、その約半分の十一万八千七百八円です。先ほど局長は、いろいろ総合的にものごとを考えなければいかぬというふうにおっしゃった。掛け金だけでなしに給付の点も考えろとおっしゃった。その例として国家公務員の例を言われたのだが、掛け金率としては一%しか違わないのに、現実にもらう金は半分しか農林年金の人はもらっていないというこの問題を、局長はどういうふうにお考えになるか。先ほど言われたこととつじつまが合わないのです。
  61. 森本修

    ○森本政府委員 これは御案内のように、給付額も現実の俸給の何%ということできまっておるわけでございます。それから掛け金のほうも、俸給に対する一つの割合ということできまっておりますから、現在の共通の仕組みでまいりますと、給与額が低い場合には給付額も低くなるというふうな形であります。もちろん掛け金等については、議論としては、そういった比率でもっていかないで、国が援助をする額は絶対額で均衡をとるべきじゃないかといったような議論もないわけではありません。しかし現在の各種共済組合の共通の制度は、いま言いましたように、現実の俸給に対して、給付額もスライドしており、それから掛け金も、その月給に対して掛け金率をかけて掛け金額が出てくるというふうな計算になっておるわけであります。  なお、先ほど申し上げましたことは多少舌足らずであったかと思うのですが、別段私は給付の額が、農林年金と国家公務員、これが合っておるということを申し上げたのではありません。ただ、先ほどの予算の額といいますのは、給付時における補助でありますから、給付を受ける人が、ある共済組合ではそのときに多くて、そのときには他の共済組合では少ないといったような関係が、その数字の中には入り込んでくるということを申し上げたにすぎないわけでございます。
  62. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 やはり基本の給与が低いという点が問題になってくると思います。標準給与に対する四〇%の支給額ということになりますから、結局、基本的には給与が低いというところから、国家公務員に対して半分ということになるわけなんですけれども、そのほかにもいろいろな原因があると私は思います。その原因の二つの問題についてお尋ねしたいのです。  そのお尋ねをする前に、もう一つお聞きしたいのですが、この十一万八千七百八円という年額を月に直すと九千八百九十二円です。二十年間掛け金をかけて、もらえる金が九千八百円というのでは、これはあまりにみじめだと思うのですが、いかがですか。局長はどういうようにお考えになりますか。
  63. 森本修

    ○森本政府委員 確かに、そういうふうな形でものごとを提起されますと、決して十分だとか多いとかいうことは言えないと思いますけれども、年金の計算は、先ほど来申し上げておりますように、現実のといいますか、過去における月給の多寡、それに対して給付率というものがかかって給付額が出てくるということであります。給付率においては、各種年金にそう差はないと思います。したがいまして、給付の額が比較してたいへんみじめであるということは、やはり原因は、過去におけるその人の月給の多寡ということにかかってくると思います。
  64. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 月給が安いということが、あらゆる点に不利益になっておるということは、いまの局長のことばからいっても明らかですから、ひとつ月給を上げるように御努力をお願いしたいと同時に、やはり年金制度そのものにも、取り扱いの上でずいぶん不公平な取り扱いがなされておるように私は思います。  そこで、支給額の低いという問題について、三つの点から局長の御見解を承りたいのですが、一つは、完全通算といわれる問題でございます。現在、旧法期間について新法の支給の適用が行なわれておらないという問題です。ところが、現実の組合の状況を見ますと、旧法期間の人が非常に多いわけなんです。だから、そのために給付が非常に低くなっておる。これをやはり一律な四割の給付というふうにすべきじゃないかということについては、もういままでもたびたび要求があったところでありますし、この衆議院農林水産委員会でも四十一年の五月二十六日に、「旧法の組合員期間の給付については、新法の給付を適用する等の改善措置を講ずること。」こういう附帯決議が行なわれておるのですが、その後、この附帯決議実現のためにどういう努力をせられたかということをお伺いしたいと思います。
  65. 森本修

    ○森本政府委員 これは、附帯決議がございますことは承知をいたしております。私どもはそういう線で努力すべきものと思っておりますけれども、何ぶんにも先ほど来繰り返して申し上げておりますように、他の制度との均衡がございます。他の制度でも、実はそういった問題については、まだ制度的な整備は行なわれていないというふうなことでありまして、附帯決議の線は、私どもとしては尊重して努力すべきものということは肝に銘じておりますけれども、そういった関係がありまして、まだ実は実現を見ていないということであります。
  66. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 時間の制限があるので、ただいまのおっしゃったことにも申したいことがありますが、省略いたします。  支給金の問題についてもう一つの問題は、御承知のように、すでに支給されておるところの人の問題でございます。いわゆる既裁定年金について新法を完全に適用せよという要求がいままで出ておるわけですが、これもまだ実現をされていない。これは一体どういうようにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思うのであります。
  67. 森本修

    ○森本政府委員 これも、先ほど申し上げました完全通算と同種の性質を持った問題であります。そういう関係から、私どもとしても、他の共済制度においてまだ制度的に実現をされていないといったような関係で、大蔵当局とも二、三年来折衝をいたしておりますけれども、残念ながら実現を見ないということであります。  ただ、御案内のように、全体にこういった社会保障制度といいますか、年金制度については、それぞれの年金制度ができた時期も違いますし、環境も違うというふうなことで、若干ずつ制度的な比較においてはズレがあるわけです。そういったことは、ここまで整備をしてきた段階で調整すべきではないかという議論がありまして、せっかく政府部内において、この問題の解決をはかろうというので、いま連絡協議会等を設けてやっておるところでございます。
  68. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ひとつ支給額の問題につきましては、以上の二点を特に御尽力をしていただきたいと思います。  もう一つ、これに関連をいたしまして、四十一年に改正になりました第一条の二の、いわゆる年金額を賃金や物価にスライドさせるという原則規定ができましたが、これが現在まで具体化されておらない。これはどういうふうにお考えになっておるか。こういう原則規定ができた以上は、一日も早くこれは具体化していくということが、今日の物価上昇のおりから必要だと思うのですが、いかがでございますか。
  69. 森本修

    ○森本政府委員 これも、年金制度としてはきわめて根幹に触れる大きな問題であります。物価が上がる、貨幣価値の変動といったようなことに対して、年金制度はどう適応していくべきであるかということであります。他方また、そういったことは財政問題にもきわめて大きな影響を及ぼすわけです。掛け金は従来の金で掛けておる、ところがもらう金はもらう時期の貨幣価値といいますか、そういうもので、ノミナルには上がった形で支給をしていくというふうな問題でありますから、当然、財政問題としてはその間に大きなギャップが出てまいります。そういった、及ぼすところの影響が非常に大きいというふうなことでありますが、考え方としては、当然スライド制は導入すべきであるということで、各種の年金法にそういった原則だけはうたい込んであるというのが現状であります。原則をうたった以上、細目をつくって実施すべきではないかというのは当然だと思います。目下スライド制の具体化について、政府部内においても、各制度共通でありますから、研究をしておるところでございます。
  70. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 もう一つ、この給付の問題についてお伺いしたいのは、遺族給付金の問題でございます。三十九年に改正になりまして、配偶者、子、父母、孫、祖父母に限り、かつ、その者が死亡した者におもに扶養されていたことを条件とするというように、従来のとだいぶ改悪されておるわけです。このためにいろいろ問題が出てきておりますが、これはやはり死亡した以外の人におもに扶養されていた遺族でも、その死亡によって生計がそこなわれる人には、遺族給付金を支給するということにすべきではないかと私は思うのです。  それから、少なくとも掛け金の払い戻しである遺族一時金だけは、扶養されていた家族がないときでも、相続人などに支給をするということが必要じゃないかと思うのです。  それと、もう一つは、この問題に関連して、共働きで一方が死んだという場合に、一体この遺族給付金というものがどういうふうに適用されるかということを、この際ひとつお聞きしておきたいと思います。
  71. 森本修

    ○森本政府委員 私、いまその点は、急に呼ばれたものですから、十分勉強が足りませんで恐縮でありますが、ひとつ将来研究さしていただきたいと思います。
  72. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 もうあと二、三問で質問を終わりますが、その第一は、受給資格の勤続期間の問題でございます。現在の制度によりますと、先ほど申しましたように、二十年間掛け金を掛けぬことには退職年金をもらえないということになっております。ところが、私は冒頭に申し上げましたように、待遇が悪いので非常に移動率が激しい。どこかいいところがあったら変わりたいという気持を持っておる人が多いわけなんです。統計数字によりますと、これは四十年度の数字でありますが、この年金が発足以来の退職者の数が二十八万人であって、現在退職年金を受けておる者が三千三百二十五人しかない。すなわち%にしてわずかに一・二%の人しかこの年金をもらっておらぬという状況です。  それから、もう一つの数を申し上げますと、これは三十九年度の数字でありますが、三十九年度で退職いたしました者が四万人でありましたが、その中で十年以上勤務しておりました者が五千三百五十七人、二十年以上の人がわずかに百十六人しかおらぬということになっておるわけなのです。こういうように非常に長期間かけるということになってきますと、長い間掛け金をかけて恩典を受ける人が少ない。たとえば、終身二十年間つとめ抜くというようないい職場ならともかく、どこかいいところがあったらやめたいというような低賃金のところですから、自然こういうような現象が起こってくるわけだろうと思いますが、これをやはりもう少し短縮するべきじゃないか。少なくとも退職年金については、二十年を十五年ぐらいにすべきじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  73. 森本修

    ○森本政府委員 よく研究させていただきたいと思います。
  74. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 どうぞひとつ御研究をしていただきたいと思います。  それでは、この期間に関連したもう一つの質問をしたいのですが、これも研究してもらっていいですから、聞くだけ聞いておいてください。女子の勤務上の特殊性を考慮しなければならぬと思うのです。女の職員は非常に勤続期間が短いわけなのです。統計などで見ましても、これは三十九年末でやや古いのでありますが、大体女の八割以上が五年以下で退職しております。それから三十九年度の退職者の二万三千二百二十九人、三十九年度にこれだけの退職者があったわけなのですが、この中で二十年以上勤続をして年金をもらえる人がわずかに七人しかおらぬのです。大体女子の十二万人の平均加入在職期間というのが四年一カ月というふうになっておるのです、四十年度の調査で。こういうことを考えると、在職期間というものは、特に女子職員の場合に、掛け金をとられるけれども一向恩典にあずかれぬということが、最もきわ立って制度の上に見えると思うのですが、これについて一体どういうふうにお考えになるか。厚生年金の例を見ますと、女子には支給の期間を五年早めて支給する。それから掛け金も、女の子と男とでは掛け金の率に差をつけておるのです。これは私は合理的だと思います。こういうような考慮を加えられていいように私は思うのですが、ひとつ御研究になっていただきたいと思います。御研究の結果があるならば、ぜひこの際御発表いただきたいと思います。
  75. 森本修

    ○森本政府委員 詳しいことは、私ちょっといまお答えを申し上げる準備はございませんけれども、いずれにしてもそういった掛け金に対する優遇あるいは給付に対する優遇、これは全体の負担としてかかってくるわけであります。その一部分だけをとりますと、女子には確かに優遇になっていいようには見えますけれども、全体の制度としては、その財源はどこからか生み出さなければいかぬという性質のものだろうと思います。したがいまして、いま言われましたような部分についての要請と全体の負担関係をよく見比べて、どのように対処すべきか検討すべきものと思います。
  76. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 要するに、厚生年金ではそういう合理的な方法が講じられておるのでありますから、やはり農林漁業団体の共済関係においても、女子のやめる率が非常に高いという点に着目せられて、安い月給の中から毎月掛け金はとられるわ、やめるときには金は一文もくれぬわというのでは、私はあまりにも酷だと思う。これはひとつ鋭意御研究していただきたいと思います。  そこでお伺いをしたいのは、年金の積み立て金の問題であります。これは四十年度の私の調べですから、今日もっとふえておると思いますが、四十年度でも大体四百億円以上の積み立て金が年金にはできておりますが、その積み立て金は、ほとんどが有価証券とか不動産とか信託とか、そういうほうへ投資をされまして、いわゆる組合員の福祉事業のほうにはわずかに四・三%の十七億円しか回されておらぬのです。しかも、その福祉事業のほうへ回された十七億円というのは、どういうようなやり方になっておるかというと、農林年金福祉団へ五分五厘の利息で貸し付けて、この福祉団に事業をやらせるということになっておるわけです。そういうようなことのために、この福祉団がやっておる宿泊施設であるとか保健施設であるとか、それから福祉貸し付けというものは、料金が高くて利用者が非常に少ない。これは、こういう組合員の間で非常に人気が悪いわけなのですね。これはひとつ農政局として積極的に指導して、もっと組合員の福祉に役立つような形に改めぬと、せっかくいろいろな福祉をしても、組合員は喜ばぬと思うのです。高い金利で貸し付けてそれにやらせるのですから、結局、料金が高くなるのは当然です。これはやはり直営にするとか、あるいは別にこの福祉のほうへ無利子で金を繰り入れて事業を運営させるとか、そういうようなことが考えられて至当ではないかと私は考えておるわけです。  以上で私の質問を終わりますが、最後に、総括的に私の考えをまとめて申し上げたいと思いますが、私は、今度農林年金などをいろいろ研究してみまして、全くまま子扱いというか、いま局長は、御質問してもまだ研究ができておらぬと言うくらいに、あまり関心がないのかもしらぬが、実に日陰に置かれた存在のように思うのです。しかも、賃金は安く掛け金は高い。そしてそのかけた掛け金で何百億という積み立て金ができても、自分たちは一向に利用できない。そのほか、ほとんど一〇〇%近くが有価証券になったり不動産投資になったりしておるのですね。こういうような行き方を見ると、何か私はこういう農協の職員が、非常な犠牲になっておるような感じがするのです。現在の日本の農村において、また将来日本の農村、漁村、山村を背負って立たなければならぬ青年、こういう人たちのために、もう少し御研究をしていただいて御尽力を願いたい。これについて、最後に次官からひとつお答えをいただきたいと思います。
  77. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いま佐々委員の御質問の農林年金につきましては、先ほどから局長お答えをいたしましたように、その政府の負担の率あるいは事務費の負担の問題にいたしましても、四十三年度の予算折衝の際におきましても、いろいろの方面からの御要請もありまして、また実情といたしましても、農林年金が他の公的年金等と比較をいたしまして、足らざる点のあるところも認めておるわけで、農林省としても財政当局とも鋭意折衝をいたしたわけですけれども、御案内のように、思うような成果をあげられなかったわけであります。  そこで、いまお話しのいろいろの問題点につきましては、十分勉強もやっておりませんけれども、いまのお話を聞きまして、納得といいますかうなずける点もあるわけでございます。これから農林省としても鋭意検討いたしまして、前向きの形で進めていかなければならない、こういうふうに考えております。
  78. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 これで終わります。      ————◇—————
  79. 足立篤郎

    足立委員長 魚価安定基金の解散に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  魚価安定基金の解散に関する法律案審査に資するため、参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  82. 足立篤郎

    足立委員長 この際、お知らせをしておきますが、都市計画法案及び都市計画法施行法案についての建設委員会との連合審査会は、建設委員長と協議の結果、明十八日午前十時から開会いたす予定でありますので、御了承をお願いいたします。      ————◇—————
  83. 足立篤郎

    足立委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。伊賀定盛君。
  84. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 私は、今回提案になりました魚価安定基金の解散に関する法律案について、以下順を追って御質問申し上げたいと思います。  この法律の目的は、結局のところ中小漁業者の価格安定対策にその基本があったことは言を待たないところだろうと思います。そこで、私は長官にお尋ねしたいのですが、今回この法律案が通過しますと、この基金が解散になるわけでありますが、今回この法律案提出するにあたって、いうところの臨調勧告の公社、公団の廃止というその線に沿ってこの法律案提出されたのか、あるいは、この基金が昭和三十六年から発足いたしましたが、その間の運営上、必要がないという考え方に立って提案に踏み切られたのか、その点についてお答えいただきたい。
  85. 久保高

    ○久保政府委員 魚価安定基金につきましては、御承知のとおり、当時サンマの、いわゆる大漁貧乏との関連におきまして、数次にわたりまして予算措置で処理してまいりましたものを、恒久的な形に考えようということでああいう形のものができたわけであります。  御承知のように、漁況が相当大幅に変わりまして、発足当時予想しておりましたような形の運用にならないまま今日に至ったわけでございます。さような観点で、私どもといたしましても、この問題をどう処理すべきか検討いたしておったわけでございますが、ただいま特殊法人の整理問題も出てまいりましたので、両方考え合わせまして、この際一応この問題につきましては廃止をいたしまして、さらに本格的な将来の対策を考えたいという気持で提案をいたしておる次第でございます。
  86. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 御趣旨はそういうことでありましょうが、この法律案提出する限りは、少なくともそれにかわる、あるいはそれ以上の魚価安定対策というものを構想された上で提案されるべきだと思います。しかし、いま長官のお答えを承りますと、まだそこまではないようであります。いずれこの問題につきましては、基本に関する問題でありますから、最後の締めくくりでひとつ触れてみたいと思いますので、この際私は、のこ魚価安定基金の解散に関する法律案は、直接魚価に触れるものでありますから、この魚価を構成するいろいろな要素を考えてみますと、いろいろな多面的な要素があるわけであります。したがって、これを包括的にあるいは全体的にとらえまして一つ一つ質問をしてみたいと思います。  これは時間等の関係もありますから、すべてというわけにまいりませんが、私は、一つはこの生産基盤の問題です。もちろんこの生産基盤には、漁場の問題でありますとか、漁業権の問題、あるいは漁協の整備、あるいは漁船の設備、あるいは安全操業等々ありますが、この際、この点については省略いたしまして、直接この魚が水揚げされて陸揚げをされた、そこからひとつ出発してみたいと思います。  これは一口で言いますと、結局、豊富な水産物を国民に安定的に安く供給をするというのが、水産行政のすべてだろうと思うのであります。ところが、今回の法律案というのは、いずれ後ほど触れたいと思いますが、漁業生産調整組合法という法律によって一つの生産調整をして、そしてその生産調整によって被害を受けたものをこの基金で補償しようという、二つ法律がセットになっておるわけであります。そうしますと、元来からいいますと、先ほど申し上げましたように、よけい魚をとって、それを安く国民に供給するというのが本来の姿であるのに、とれる魚を制限をいたしていこうというのは、これは逆行する姿になるわけです。しかし、これを部分的、局部的に見ますと、そのことによってその地域の漁民の所得がはなはだしく阻害をされる、圧迫をされるというところに、この法律の必要性というものも私は認めるわけであります。  そういうふうに考えてみますと、ここで問題になってまいりますのが、水産物が陸揚げされてそこから価格形成に入る、それを、いままで産地ということばがあります。私は、水と陸との接点、これを産地といい、この産地を価格形成の場、こういう解釈に立つ。もちろん、いままでのいろいろな法律の中に、産地市場だとかあるいは加工だとかいろいろな分野がありますが、私はそういう見地に立って、産地市場、加工、冷蔵、保管、輸送、貯蔵というようなものを含めた、産地の総合的な対策というようなところから申し上げてみたいと思うのであります。  そこで、まず産地市場ということでありますが、これに関連いたしまして、今回農林漁業金融公庫法の一部改正で、中央市場と地方市場が、これは仲買い人を含めまして、農林漁業金融公庫の今度の近代化の対象となる。それから魚介類の小売り人は、今度国民金融公庫の対象となったわけです。   〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕 ところが、水産業でいいます産地市場が、この農林漁業金融公庫の対象に入っておるのか、おらないのかという点についてお尋ねしたい。
  87. 久保高

    ○久保政府委員 産地を、価格形成の場としてこれを総合的にとらえたいという角度からの御質問でございますが、今回の流通近代化資金の対象といたしましては、制度の上では含まれております。  そこで、具体的にはこの問題につきまして、おそらくこれから御指摘があるだろうと思いますが、漁港の整備の問題でありますとか、特に漁業協同組合のあり方の問題も含めましてこれに関連してまいるわけでございますし、さらに産地の加工処理施設の整備の問題、それらの一連のものを総合的に考えようといたしますと、ここに一つの焦点があるわけであります。さような意味におきまして、産地市場の整備方針を確立いたしました上でこれを取り上げていくという段取りになろうかと思うわけでございます。さような意味におきまして、制度の上では組み入れられておるわけでありますが、実施の方向につきまして、まだ相当検討すべきものがあるということで留保をいたしたわけであります。
  88. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうしますと、いまちょっと申し上げるのを忘れたのですが、産地市場にも中央市場とかあるいは地方市場のように仲買い人がおりますね。この仲買い人も、やはり対象には入っておるわけですか。
  89. 久保高

    ○久保政府委員 ただいま申し上げましたように、普通産地市場産地市場と申すわけでございますが、これがほかの農産物の関係とは、若干働いております機能も違うのではないかというふうに思われます。したがいまして、これが系統で、たとえば物を運用しようといった場合におきましてもそこが問題になるわけでございますので、産地市場も含めました協同組合のあり方、あるいはそれに伴います一連の施設、あるいは漁港との関連、こういったものにつきまして素材は出そろったのでありますが、御指摘のような、それを総合的に運用いたします場合にどう対処すべきかという問題が、まだ最終的に煮詰まっておらないわけでございます。  さような意味におきまして、私どもといたしましても、制度の上ではいわゆる産地市場が取り上げられるようにしておきまして、その基本方針に従いまして近代化の金が出るわけでございますので、それの中でこれのあるべき形、つまり整備方針を確立するのを待ちまして動かしてまいりたい、こういうつもりであります。
  90. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 次は、産地市場に関連いたしまして、昭和三十六年にこの基金法が通過しましたときに、議事録を拝見いたしますとやはり問題になっておりまして、そのときの当局の御答弁によりますと、産地市場問題協議会におはかりをしておりますので、その答申を待って云々という御答弁が見えます。この際、その後産地市場問題協議会がどういう御答申をなされて、それが今日まで具体的に施策の上にどう生かされてきたかということについて、お答えをいただきたいと思います。
  91. 久保高

    ○久保政府委員 お尋ねがございますということで、私どもも実は大急ぎで読んだわけでございます。私、当時別の経済局のほうにおりまして、この時期のことを若干覚えておるわけでございます。その前年あたりから生鮮食料品の価格問題が非常にやかましくなりまして、一連の検討なり施策なりというものが次々に打たれた時期でございました。さような意味におきまして、これは三十五年の暮れでございましたですか、水産物の産地市場問題協議会というのを開催いたしまして、全国からいろいろな御関係の方に参集していただきまして、水産物市場をめぐる諸問題という形でいろいろな御意見の開陳をいただいたわけでございます。最初の会は二日にわたりまして御意見を伺ったわけでございますが、当時、流通問題が取り上げられた当初でございますので、それぞれの方の御意見の開陳に終わりまして、それをすぐ結論にしぼるに至らなかったというふうに聞いておるわけでございます。  しかしながらその当時、御指摘を受けましたこの産地市場の問題につきましては、水産庁といたしまして一番この辺の実情が不明確でございましたので、三十六年、三十九年、四十三年と都道府県を通じまして調査を行ないまして、この実態の把握に今日まで実はつとめてきているわけでございます。最終的な問題といたしましては、これらがもちろん現在の協同組合のあり方とも関連するわけでございますし、また、しばしば御指摘を受けますような流通問題につきまして、生産の場から最終の消費に至るまで、一貫して総合的に取り上げるべきだという御意見に沿って検討いたしますと、いわゆる産地市場のあり方につきましては、なお若干吟味を要する問題が残っておるわけでございます。さような意味で、結論から申しますと、この協議会そのものの検討がそのままある施策になったと申すよりは、これが一つの契機になりまして産地市場の実態の究明、これに突き進んでいったというのが実情でございます。
  92. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 実は産地市場問題協議会が、お話の三十六年十二月、三十九年十一月、四十三年の四月におのおの持たれて、これをよく調べてみると、産地市場問題協議会というのも法的な根拠があるかといいますと、そうではなかったようでありまして、水産庁のほうで必要だと思われる人を必要なときに、ちょっとおいで願いたいというようなかっこうで相談をかけた。したがって、それが答申でもなさそうですね。しかし、一応漁業団体その他の関係団体の代表者から構成された中で、結論ではないけれども、ほぼ問題点はここら辺だろうというものがまとまっておるんです。その一つは、水産物の供給の安定的増大、二つ目は、産地加工施設の改善強化、三つ目は、産地市場の施設、四つ目は、出荷の合理化、五つ目が、容器改善などを指摘されたということになっておるわけでありますが、もちろん水産庁としては、これが正規の法的な根拠を持った諮問機関でもありませんから、何もこれを尊重しなければならないという義務はなかろうと思いますが、少なくとも道義的な責任はあるはずでありますから、したがって、いま直ちにわからなければいいですけれども、ただいま申し上げました五つの点について、具体的な努力あとがあればひとつお示しをいただきたいと思います。
  93. 久保高

    ○久保政府委員 先ほどの御質問が、産地市場問題協議会の結論をどうしたかというお尋ねでございましたので、先ほど申しましたようなお答えをいたしたわけでございます。つまり会といたしましては、非常に外で騒がしいし、私どもも実態がよくつかめていないということで、それぞれのエキスパートの方に来ていただきまして、問題点の御意見を開陳いただきましたのが実態でございます。  したがいまして、そこで何か非常に突っ込んで整理をいたしまして、答申をするという形では実はなかったわけでございます。ただいま御要約いただきましたような幾つかの問題は、当然常識的にも出るものでありまして、さような五つの問題が要約されております。これは、同時にこの安定基金法の制定の際の国会での御論議、あるいはそれに基づきましてつくられました附帯決議にも、大体それに近い問題がみな御指摘があるわけであります。それに伴いまして私どもといたしましては、個別には一々並べませんが、これらの問題についてできるだけのことはいたしたつもりでございます。しかしながら、それが集約されまして最終的に一つの、御指摘のような総合的な施策になってほんとうに効果を発揮しておるかどうかというところには、まだじくじたるものがあるわけであります。
  94. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 引き続きまして、産地構成の中で次に問題にしたいと思いますのは、冷蔵、冷凍、保管、加工といった問題であろうと思いますが、昭和四十一年からでしたか冷凍魚の試験実施をしておられますね。その後四十一年、二年と二年目がまだ終わっていないわけですから、直ちにその結果がどうかという指摘は、むしろ指摘するほうが無理かもしれませんが、これは消費拡大等との問題とも関連してこようと思うのであります。順次国民の食生活が転換してまいりまして、なまのままそのままをということから、だんだんと一次、二次、三次と高次の加工の需要が増大してくるわけであります。こういうことについて、冷凍魚あるいは冷凍魚の運搬等を通してのその後の御努力は、具体的にどういうことがありますか。あるいは今後どういうことをお考えになっておりますか。
  95. 久保高

    ○久保政府委員 冷凍魚の問題につきましては、いまの附帯決議の中でも、やはり消費拡大の問題がございまして、それと関連いたしまして冷凍魚それ自体のPRと申しますか、さようなことを冷凍魚協会を中心といたしまして実はやってまいったわけでございます。しかしながら、それは主として、消費者に直接的にアプローチするという形よりは、たとえばデパートにおきます普及でございますとか、そういう段階がある期間ございまして、最近になりましてそれをもう一段下げまして、小売りの関係の方の協力を得まして、消費者に一番近いところにおいて冷凍魚そのものの認識をしていただくということで、その問題は進めておるわけであります。  しかし、冷凍魚そのものについての悩みを申し上げますと、現在の消費者の装備と申しますか、冷凍庫を持っておられる方は少ないわけでございます。したがいまして、冷凍魚を冷凍魚のままで最終的に家庭に持ち込みました場合に、一体どうなるかという問題で実は大きなギャップがございます。したがいまして、現在のところでは、加工されたもので特に大量に消費されるものとの関連において、実は冷凍魚が一番経済的な意味を持っておりまして、それによりましてコストが下がって、それが確立していけばさらに需要を広げていける、またそれに生産が追いついていける、こんなような順序になろうかと思うわけであります。ちょうどその過渡期にあると思います。  それから、もう一つ別の施策でございますが、前々から流通問題につきまして、いろいろな角度からの検討をいたしたわけでございますが、なかなかこれという的確なものがつかめない。そこで、二年ほど前からでございますが、冷凍水産物の流通改善事業ということで、生産者団体中心といたしまして、流通の御関係の方、荷受け機関でございますとかあるいは冷蔵庫業者というものの協力を通じまして、多獲性魚を盛漁期に産地で冷凍いたしまして、これを消費地の冷蔵庫に保管しておきまして、消費地におきます水産物の需給状態を見ながら、計画的に放出していくような仕事を試験的にやってみようじゃないかというので、これは四十一年から始めたわけでございまして、サンマ、アジ、サバ、スルメイカといったものが主たる対象でございますが、四十一年度から四十二年の十二月までの事業実績といたしましては約一万二千トン、それから販売をいたしましたものが約七千五百トン。これは、主としてこういうやり方をやっておりますうちに、年末の対策との関連におきまして実際には動いたものが多いわけでございますが、さようなことをやっておるわけでございます。  四十三年度におきましてもこれをやりました場合、実はいろいろな問題が出てまいりまして、つまり、ある特定の機関が他のものと合わせて買って、それを保管して放出するやり方でほんとうにやっていけるのかどうかという問題が、実は根本問題であるわけでございますので、さようなことも含めまして、四十三年度も引き続きましてこの問題をもう少し詰めていきたいということで、実は試験の実施を継続しておるわけでございます。  いまのところ、これによりまして、何かすぐに施策化されますのにはあまり問題が多うございまして、いろいろこの関連の経験について吟味をいたしておるわけでございます。この冷凍水産物の流通改善事業というのは、冷凍魚の将来におきます価格問題と関連いたしました場合にどの程度生かせますか、まだ私どもといたしましても試験が最終的には終わっておりませんので、いまやりながら検討しておるのが実情でございます。
  96. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 おっしゃるとおりのこともあろうと思います。冷凍、冷蔵等につきましては、農林省が先年来コールドチェーン方式で、いわゆる消費地に冷蔵庫を順次こしらえていっておる。それからさらに産地に、ただいま申し上げておりますように、たとえば漁業協同組合とかあるいは水産加工組合とかいったものが、冷蔵庫あるいは冷凍庫を持っておるということで、順次整いつつあるようでありますが、これに関連いたしまして、やはり加工というものも流通過程で重要な意義を持とうかと思います。  加工の点でお尋ねしたいのは、一つは、水産加工といいましても、いわゆる中小企業協同組合法に基づくものと水産業協同組合法に基づくものと二本立てになっておるようであります。したがって、融資その他の面から考えますと、両方から融資を受けられるという一見利益に見える面と、一面から見ますと、いずれでもないというたてまえになってしまうということがあります。最近の政治の情勢というものが、いい悪いは別にしまして、何か力のあるものが予算なりあるいは補助金なりその他の政治の恩恵というものをもぎ取っていくという今日の政治情勢の中で、比較的漁業協同組合のほうは強力に展開していっているようでありますけれども、加工協同組合が比較的弱い。全国組織ができたのがここ二、三年前だったと思いますが、全国組織がおくれたというのも、やはりこうした法的根拠が二つにまたがっており、したがって行政庁も、一方は通産省になり一方は農林省になるというようなところにもその原因があろうかと思うのでありますが、ここら辺業者そのものが、いやわしは水産業協同組合法に基づくほうがいいのだ、あるところでは中小企業協同組合法に基づくほうがいいのだという、本人の恣意ということもありましょうから、一方的に水産庁のほうでこれを押しつけるというわけにまいらぬかもしれませんけれども、やはりある程度行政指導の面でそれらを統一して、そしてそれら水産加工協同組合からあがってくる政治に対する要望、要求、要請といったものをくみ取るような姿に、強力に行政指導する必要があろうかと思うのでありますが、こういう点についてのお考えはいかがでしょうか。
  97. 久保高

    ○久保政府委員 御指摘のような、若干混乱した形があるわけでございます。ただ、私どもの反省といたしましては、水産業協同組合の中に加工の関係を含めながら、どちらかというとやはり十分指導が徹底しなかったという点は、過去においていなめないと思うのであります。それでまた、加工業者の方々の実態が、非常に零細な方々が多いわけでございますので、それと、産地におきます生産者との関係をどうするかというような点に、主として従来も頭がいっておりまして、その後急速に拡大いたしました消費の高度化でございますとか、この高い成長の中で、加工品の持ってまいりましたウエートが急速に高まっている中で、必ずしもこれを十分フォローいたしまして、それに的確に合うような指導ができなかった点を、非常に遺憾に思っておるわけでございます。その点で、法制的にもこれは必ずしもそうはっきり割り切れませんが、どちらかと申せば、水産業協同組合法のほうの体系のものが、主として産地におきます加工の型としてウエートがあるように思いますし、いまの中小企業協同組合法の関係では、これも一がいに申せませんけれども、つくだ煮類でございますとかそういったものを中心にいたしまして、消費地におきます加工企業がこの分野に近い動きをしておるように思うわけでございます。  そこで、これは結果でございまして、いずれにいたしましても、ともかく金を借ります場合に、どこが世話をして、どこから借りるかというような問題もございますので、私どもといたしましては、役所におきますいろいろな権限問題とかそういうことを離れまして、加工の実態から見ましてこの問題をどう調整していくべきか、急速にこれを、ただ制度的に割り切るよりは、もう少し実態に即しまして検討してまいりたいという気持ちでございます。  現在のところは、主として資金面その他から見ますと、かりに商工中金のほうでごめんどうを見ていただく場合におきましても、全体の中小企業の中のある部分という形になりますので、制度的にはお扱いになれるかっこうになっておりましても、必ずしも量的にも十分でないといったような現実の問題があるようでございますので、最近の加工業というものが、中小企業に持ってまいりました社会的な機能も含めまして、また御指摘のような、生産から消費に至る問題を組織化してまいります場合におきます加工の重要性というようなことを考えまして、あらためてこの加工の分野につきまして、行政のウエートを十分考えた上で適当な指導をしてまいりたいと思っております。ただ、一ぺんに手をつけるということよりは、もう少し実態に即しながらやっていきたいというのが、現在の気持ちでございます。
  98. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 たとえば、農林省一つ方針を立てて農協の合併助成法というものを出し、さらに漁協の場合にも、補助金等を通して合併を促進していったわけですね。したがって、御指摘のとおり、今日の食糧事情から加工の持つ社会的な地位、分野、任務といったようなものを考えるときに、この際行政指導なんということでなしに、もう少し積極的な合併促進、あるいはその場合に融資とか補助金とか、さらに赤字組合とか弱小組合とかいう問題が出てくると思いますけれども、それらに対する財政上の措置であるとかというようなものを法的な根拠を持たして、積極的にやる時期にきておるのではなかろうかと思うのであります。  私は兵庫県でありますが、二、三年前の統計でありますけれども、一般的に兵庫県といいますと、御承知のとおり重工業あるいは造船、鉄鋼なんというものがあるという印象なんですが、兵庫県の各産業別の生産額を見ますと、実はこの食料加工が、兵庫県において産業の中の第二位を占めておるのです。これは水産加工だけではありませんで、食料品の一般の加工ですね。ですから、産業的に見ましてなかなか無視できない状態になってきておると思うのです。そういう意味からいいまして、いまやこの水産加工につきましては、そうした行政指導だけでなしに、積極的な法的な根拠を持った強力な指導が必要な時期にきておると思うのです。そういう御意思があるかどうか。  それからもう一つついでに申し上げますと、そうした重要性が高まってきておるわけでありますから、食品加工研究所とか、まあ名前はいいのですけれども、これも昭和三十六年のこの法案の審議の際に、そういうことばが出ておりますが、もちろんこれは農林省所管するのか、あるいは通産省が所管するのか、いろいろな問題が出てきましょうけれども、これらについてのお考えも、ひとつあわせて承りたいと思います。
  99. 久保高

    ○久保政府委員 別の角度で出ております問題で、たとえばコールドチェーンといったような発想もございまして、生産から最終消費に至ります関連をつないでいこうという問題が実はあるわけでございます。そういう問題を一つ考えましても、加工の持っておりますウエートは非常に高まったということは事実でございますし、また、現に消費の形態といたしましても、加工されたものの分野が非常に顕著に伸びておるわけでございます。したがいまして、さような意味のものを担当いたしますものを、生産から消費に至る一連の関連として法制的にもしっかり掌握してやったほうがいいじゃないかという御意見は、そのとおりだと思うのでございます。  ただ、今日までその加工の分野が、生産といわば非常に切り離されました地帯で行なわれておった場合もございます。あるいは、兵庫県の御事情はよくわかりませんが、私も近いところで広島におりました当時、やはり産地とは全く別なところで、いわば食品加工が集団的に形成されて、そこの経営自体を考えますと非常に零細で、これをまた何か組織しなければいかぬ、こういった問題もあるわけでございますので、いきなりすぐ私どもの体系だけで考えたほうがよろしいかどうか、立地の関係も入ってまいると思います。さような意味で、いま御指摘の意味はよくわかるわけでございますが、現実の行政といたしまして、すぐ私のほうの体系だけで考えてやるのがいいのかどうかという点につきましては、若干検討を要するのではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、加工という問題を、生産から流通、消費と至ります場合に、これに組み入れて考えていけという問題、あるいは加工業そのものの近代化なり、そういう問題につきましては、私の省では、私のほうは水産関係を担当しておりますが、経済局におきまして、機構も含めました食品加工業の問題、これが一つの大きなテーマでございますので、これと取り組んでおるわけでございまして、それの一環としても考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、食品加工に伴います研究所の問題につきましては、中央におきましてもいろいろな問題がございますけれども地方に参りますと、試験研究の担当をどの局でやっておるかといったようなことが、これまた実は全国非常にばらばらになっておりまして、ある県では、農林水産部局におきまして同時に食品の加工の研究所を直接所管して  おりますものもございますけれども、いわゆる農林水産部局でない商工部局におきまして御担当のところもあるわけでございまして、実はその辺も若干の交通整理が要るわけでございます。しかしながら実際の御相談といたしましては、それぞれ  の県におきますところの研究所の所管にかかわりませず、共通のテーマについて相談しようといっ  たような試みが数年前から行なわれているわけでございまして、これも、御質問と非常に関連のある問題でございますが、もう少し経緯を見てこれ  の交通整理を考えていくべきじゃないだろうか。現状におきましては、非常に混満した形になって  おるわけでございます。
  100. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 これは御指摘のとおり確かに、私、昨年当選して出てきまして、水産庁の水産課の加工班というのですか、あそこに加工関係の資料を要求しました。そうしたらわかりません、これからひとつ御指摘のとおり調べさせてもらいますというようなことで、中央がそういう混乱状態ですから、まして府県に参りましても、やはり交通整理の必要なことは私もよく認められます。しかし、だからといってこの問題をあと回しにしてもいいということにはなりませんので、そうした組織といいますか実態がおくれておるが、その加工の持つ社会的意義というものは、実態と逆に大きなウエートを占めつつあるわけでありますから、したがって、いま水産庁長官の御答弁で、私の所管では云々というお話がありましたが、それもそうでしょう。  そこで、政務次官にお尋ねしたいと思いますが、長官もそういう必要性は認めておられるわけです。したがって、これを関係各部局、農林省内部もしくは通産省あるいは企画庁その他関係各省庁とも総合研究、検討、判断をされて、ただいま申し上げました水産加工の積極的な合併促進とかあるいは交通整理とか、あるいはまた、ただいま申し上げましたが中央の食品加工研究所といったような、これも府県に参りますと、水産試験場あたりで部分的に加工をやっておるところもあります、各府県によりますと。ところが見ておりますと、私はまだ全国的に調べていませんからわかりませんけれども、たとえば、私の選挙区の香住というころに農林省の水産試験場の出先がありました。そうしたら二、三年前に廃止してしまいまして、あとは地元で管理せいというようなことで、むしろ試験研究というものが、農林省として全国的に見ましても後退しているのではないか。その後退しておる水産試験場の中に、部分的に加工の分野を担当させるということになりますと、一方において社会的な必要性にもかかわらず、実は農林省自身が試験研究を逆行せしめておるというようなことになっておるわけであります。したがって、この際水産試験場に、部分的に加工を一部門として研究させるということでなしに、独立した食品加工の中央の研究機関、ないしはその地域、地域の特性あるいは環境というようなものがありましょうから、だから全国数カ所なりあるいはその特性に応じて、専門のそうした試験研究機関を設置するとかというようなことが、いまや必要な段階にきておろうかと思うのであります。そういう意味で高度な政治的な判断からおやりになる意思があるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  101. 久保高

    ○久保政府委員 先生の御指摘は、私は地方にもおりましたし、試験場にもおりましたし、いま水産を担当しておりますので、実は非常によくわかるわけでございます。ただ、うまく説明できないのですが、こういう問題がございます。一つは、たまたま御指摘のございました協同組合の問題にいたしましても、水揚げ地ですぐ低度な加工をする、こういうものは密接不可分に関連をしておるわけでございますが、たとえばそれよりももう少し、そう高度な加工ではございませんでも、食品加工ということになりますと、非常に零細な食品加工業者の方が、たとえば町中に非常にまとまって、よそから原料を持ってこられてやっておるというのが、実は非常に多いわけでございます。そういうことになりますと、現実の県の指導で参りますと、産地のほうに近いところは水産の担当のところで同時に指導ができるわけでございますが、消費地の中で、実は原料は近所の漁村から持ってまいりますけれども、そこに集団的に加工業者の方が、いろいろな便宜もございますので集まっておられる場合になりますと、これは他の商店と申しますか、つまり水産加工以外のその他の関連と一緒に、商工部で実際には所管をなすったほうがいわばごめんどうが見やすい、こういったような現実もございます。  そういうような経緯から、理論的にどちらと割り切らないうちにそれぞれの県で、商工部が加工業者指導につきまして御担当になっているところと、あるいは農林関係のところでそういう町中におきます零細加工の方々の御指導をやっております場合とが、県によりましていろいろであるわけでございます。そこで、そういう事実関係のほうが先行しておりますので、各県で試験場をお持ちになります場合にも、これが必ずしも、いわゆる農業関係の試験場で全部統一的にやっているという形ではございませんが、他の商工部なら商工部が所管しておられるというような形になっておるものが、いわば自然発生的にそういう地盤があるわけであります。  ただ、そということでは、実際ここまで加工の問題が高度になってまいりますと、中央で皆さんお集まりになりまして、加工の研究問題にテーマをしぼるというような場合に、それぞれのところでばらばらにやっておったのでは非常に困るということでそういうワクをはずしまして、ある特殊なテーマにつきましては、中央で府県におきます研究、これは中央と地方で共同して試験の項目を分担するようなこともございますが、そういうことを実はやっておる現状でございます。  したがいまして、いまおっしゃられる意味はよくわかりますし、また農林省におきましてもこの問題につきましては、いわゆる水産の加工品のみならず、食品工業それ自体につきまして、いわばいままで非常におくれを指摘されておりました企業対策といたしまして、初めて本格的に経済局におきまして、食品工業のあり方につきまして検討を始めようとしておるわけでございます。私どもそれの一環といたしまして、問題を考えていこうというふうに考えておるわけでございます。いまこの段階で、すぐ何か方針を申し上げますと、逆にいわば役所のセクショナリズムをあおるような感じに受け取られるのは、私はどうもこの問題について必ずしも適当でない、こう思うわけでございます。若干の時間をいただいたほうがよろしいんではないかと思うけわでございます。
  102. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いま長官が具体的に説明をいたしましたが、私も、日本経済が著しい発展をする中において、食品加工あるいは水産加工というのは非常に重要な分野を占めつつあると思うわけで、そういう中で、やはり食品行政あるいは水産加工に対する行政というのも、これを総合的に考えていくような時期になりつつあるんじゃないかと思っております。具体的には、いまの県、地方の段階においてそれぞれ特色があるといいますか、それぞれの立場から行政をやっておるようで、必ずしも一貫をしていないというのが現状じゃないかと思いますが、いま長官も言いましたように、やはり農林省といたしましても、こうした水産加工あるいは食品加工については、総合的に考えていくということが必要ではないかと私も思うわけであります。  ただ、食品加工なんかの場合になりますと、ほかの省との関連も出てくるわけでございます。しかし、研究等につきましては、先ほども長官が言いましたように、全国的にそうした会議が開かれて、そしてこれを統一的にやろうという動きもあるようでございますので、いまのお話のように、われわれとしてもひとつ総合的な立場に立って、これから積極的に検討を進めていかなければならないと考えております。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 時間が四時半ということのようでありますが、実はまだ本論に入っていないわけでございます。これはまだ前触れでありますから、次回に持ち越したいと思います。しかし、切れ目がありますから、もう一つだけお伺いしておきたいと思うのであります。  そういうことで時間の制限がありますから、これは簡単でよろしいですが、生産から流通、消費、こういう一つの流れの中で、やはり運送、運搬というものが重要な意味を持ってくるわけであります。もっとも最近は漁免道路なんていいまして、漁業用のガソリン税を道路に持っていくというものですけれども、これはわずかなものでありまして、水産物の流通が漁免道路によって一挙に解決するなんというものではないわけで、二階から目薬をさす程度です。  したがって、先ほど来何回も申し上げておりますが、この法律が三十六年に審議されたときにも、こういう問題がずいぶん論議されておるのであります。たとえば、国、県、町村道、最近は町村道にも国が補助を出したりしておるようでありますが、こうした建設省の行なう道路行政の中で、水産行政を推進する上にどうしてもこの道路は早く拡幅してもらいたい、あるいは舗装をしてもらいたい、あるいは格上げをこういうふうにしてもらいたいというようなことを、建設省で年次計画もしくは当該年度の計画を立てるにあたって、予算の割り振りをするにあたって、それがどういう姿で配分されるのか、審議されるのかわかりませんが、やはり水産庁あたりもそういう会議の中に、あるいは審議の中に入る必要があろうかと思うのであります。あるいはまた鉄道の場合には、これはなかなか規模が大きいし、そう簡単にできるものではありませんが、たとえば、重要なその地域の集散地あるいは中心地というようなところには、たとえば引き込み線というようなものも、場合によったら必要な場合もあろうかと思うのであります。そういう場合にも、運輸省だけにまかせずに、水産行政の推進上どうしてもこういうことをしてもらいたいというような意見を強力に反映するような場を、あるいは制度的に発言する場を持つ必要があろうかと思うのであります。しかも、三十六年の審議からすでに七年も八年もたっておるわけでありますから、それくらいまでは制度的にも御努力があってしかるべきだと思うのでありますが、その後具体的にどういう御努力があったかどうか、あるいは今後そういうことをおやりになる意思があるかどうか、御見解を承りたいと思います。
  104. 久保高

    ○久保政府委員 発想といたしましては、私どもよくわかりますし、その必要を痛感しておるわけでありますが、現実の問題といたしましては、いまの引き込み線の問題にいたしましても、あるいは道路の促進、あるいはこちら側を回ってくれというような問題が個別に、漁港との関連のときなどにはそういうお話が出まして、私どもも、それを個々の問題として一緒に建設省に話しに行くというようなことは、実は今日までもしておるわけであります。御説のように、それをあらかじめもっと基本的に、計画的に初めからやったらどうかというお話でございますが、私どももさようなことができれば一番よろしいと思うのでございますが、これはどうも一般的なことではございませんで、やはりある地帯におきます具体的な問題として出てまいるのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、もちろん道路の御計画があります場合に、漁業の基地との関連でこちらを迂回してほしい、あるいはこういうバイパスがほしいというような問題につきましては、私ども考える以前に、それぞれの地方で相当の要望を持って検討しておりますので、さようなものを計画の中に盛り込むような努力は、さらに続けたいと思うわけでありますが、全体計画を初めから私どもが入ってつくってしまうということば、一般的には考えられますけれども、具体的な道路計画の中で、一々こちらのプランをそれにつけるというような作業は、実は非常にしにくいのではないか、行政的には非常にこなしにくい問題ではないかというふうに思います。  ただ逆に、たびたび御指摘を受けておりますような漁港のほうの計画は、こちらの問題でございますので、実はこの前からも申し上げておりますように、今日までやってまいりましたような漁港の行き方に、先ほどからずっと御指摘のような一連の、生産から加工、流通に関連を持った総合施策をいたそうといたしますと、漁港の計画を考えます場合に、何らかの意味で社会資本の投下と申しますか、背後地との関連を組み入れたような計画が、もし出せるならば出したいということで、いま苦慮いたしておるわけであります。さような形でいまのような問題に対処したらいかがかと思っております。
  105. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 もう一つだけ。冷凍船、運搬車というようなことについて、現在どういうことになっておりますか。簡単でけっこうです。
  106. 久保高

    ○久保政府委員 御指摘の点、例の科学技術庁でやりましたものも若干ございますので、次回までに資料で差し上げさせていただきたいと思います。
  107. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それでは、あとは次回に譲ります。
  108. 足立篤郎

    足立委員長 次回は来たる二十三日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会