運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-03 第58回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月三日(水曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 鹿野 彦吉君 理事 熊谷 義雄君    理事 坂村 吉正君 理事 森田重次郎君    理事 石田 宥全君 理事 角屋堅次郎君    理事 稲富 稜人君       小沢佐重喜君    小澤 太郎君       小山 長規君    佐々木秀世君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       中村 寅太君    中山 榮一君       本名  武君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    赤路 友藏君       伊賀 定盛君    工藤 良平君       兒玉 末男君    佐々栄三郎君       實川 清之君    柴田 健治君       西宮  弘君    美濃 政市君       神田 大作君    中村 時雄君       樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省農政局長 森本  修君         農林省園芸局長 黒河内 修君         水産庁長官   久宗  高君  委員外出席者         農林大臣官房企         画室長     小沼  勇君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月三日  委員齋藤邦吉辞任につき、その補欠として菅  太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員菅太郎辞任につき、その補欠として齋藤  邦吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  魚価安定基金解散に関する法律案内閣提出  第九〇号)  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の  一部を改正する法律案内閣提出第七九号)      ————◇—————
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  魚価安定基金解散に関する法律案議題とし、趣旨説明を聴取いたします。安倍農林政務次官
  3. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 魚価安定基金解散に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  御承知のように、魚価安定基金は、昭和三十六年に、当時のサンマその他の多獲性魚生産及び流通をめぐる諸事情の推移にかんがみ、漁業生産調整組合水産業協同組合等がこれら多獲性魚価格安定のため自主的に行なう調整等事業につき助成することを目的として、同年八月に施行された魚価安定基金法による特殊法人として設立されたものであります。  その後の魚価安定基金運営状況を見ますと、昭和三十六年、三十七年及び四十年には、助成対象魚種たるサンマ価格が暴落したため、同基金による交付金交付が行なわれ、魚価の安定のために相応の寄与をしてきたのであります。しかしながら、この助成対象魚種サンマ以外の多獲性魚にまで拡大されるには至らず、また、サンマにつきましても、近年その漁獲量が漁海況の変動等により大幅に減少していること、水揚げ地における冷凍保管輸送施設等処理能力も相当程度整備されてきていること等のため、サンマ価格が暴落して同基金が機能するという事態も少なくなり、特殊法人として魚価安定基金を設立した当時と今日の事情とは著しく異なってきております。  このような多獲性魚生産及び流通をめぐる諸事情の変化にかんがみまして、特殊法人整理統合に関する政府方針に沿って、この際特殊法人たる魚価安定基金解散することとし、これに伴い同基金清算手続及び剰余財産帰属について定める等の必要からこの法律案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、魚価安定基金は、この法律施行のときにおいて解散することといたしております。なお、この法律公布の日から施行することとしております。  第二に、魚価安定基金解散後における清算手続について、農林大臣による清算人の任命、清算人の行なうべき職務、清算事務監督等につき所要規定を設けることといたしております。  第三に、清算人は、魚価安定基金法規定により残余財産を分配した後なお剰余を生じたときは、これを魚価安定基金目的に類似する目的のために処分することができることとする等、剰余財産帰属についての規定を設けることとしております。  第四に、以上のほか、関係法律規定等につきまして所要整備を行なうとともに、必要な経過措置を定めることといたしております。  以上が、この法律提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  4. 足立篤郎

    足立委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  引き続き補足説明を聴取いたします。  お断わりいたしますが、補足説明の印刷物はただいま取り冷せておりますので、到着次第配付いたします。  久宗水産庁長官
  5. 久宗高

    久宗政府委員 無価安定基金法解散に関する法律案提案理由につきまして、補足して御説明申し上げます。  本法案は、提案理由で御説明申し上げましたとおり、魚価安定基金解散及び清算に関して定めることとしておりまして、法案内容といたしましては、第一には、魚価安定基金解散の時期、第二には、魚価安定基金解散後における清算手続、第三には、剰余財産帰属、第四には、関係法律規定等についての所要整備及び経過措置について規定いたしております。  以下、その細目につきまして若干補足いたします。  まず第一に、魚価安定基金解散の時期についてでありますが、これは第二条に規定しております。特殊法人整理統合に関する政府方針に沿って、この法律施行のときにおいて解散することといたしております。この法律施行のときは、附則第一条に規定しておりますように、公布の日といたしております。  第二に、魚価安定基金解散後における清算手続についてでありますが、これは第三条から第六条まで及び第八条から第十条までに規定しております。清算事務を適正に行なわせるため、農林大臣清算人を任命し、清算人基金財産の現況を調査するとともに、農林大臣の定める清算計画に従って清算を行なうことといたしております。この場合、財産目録等の作成や基金財産処分等基金財産の管理、処分に関する行為については、農林大臣の承認ないし認可を受けることといたしております。  第三に、剰余財産帰属についてでありますが、これは第七条に規定しております。清算人は、魚価安定基金法第四十三条第一項及び第二項の規定により、残余財産を各出資者に対し、出資額限度として、出資額に応じて分配した後に剰余を生じたときは、これを基金目的に類似する目的のために処分することができることとし、なお処分されなかった剰余財産は、国庫に帰属することといたして、おります。  第四に、関係法律規定等についての所要整備及び経過措置についてでありますが、これは附則第二条以下におきまして規定しており、附則第二条で無価安定基金法を廃止するとともに、関係法律規定等について必要な整備を行なうことといたしております。経過措置としては、解放後の清算所得等についての所得税法人税等非課税措置を講じております。  以上をもちまして、魚価安定基金解散に関する法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 足立篤郎

    足立委員長 以上で補足説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 足立篤郎

    足立委員長 引き続き農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ツ林弥太郎君。
  8. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 提案されております農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案について、若干御質問をいたしたいと思います。  農業近代化農業所得増大等に果たすべき農業金融役割りはきわめて大きいものであり、また、ますます大きくなることは御承知のとおりでございます。そこで、農林省がここ数年、農業金融整備について努力いたしておりますことは認めるところでありますが、最近におきましては、補助金より金融へという方向で、政府はともすれば安易に金融整備をはかるにとどまり、他の施策をおろそかにする傾向にあるのではないか。この現象を安上がり農政という人も実はおるわけで、ありますが、農業金融整備拡充ももとより重要ではありますが、同時に、他の諸施策整備もあわせ総合的に施策推進するのでなければ、農業構造改善の成果は期しがたいと思います。この点に関します農林省の基本的な考え方、またこれと関連いたしまして、農林漁業施策中における金融の位置づけというものをどう考えているか、明らかにしていただきたいと思います。
  9. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 お答えいたします。  農業近代化あるいは農業所得増大のための農業金融が、補助金と並んできわめて重要な施策であることは、御説のとおりでございます。農林省としましては、ここ数年間に農林漁業金融公庫資金及び農業近代化資金資金ワクの増加、あるいは利率の適正等につとめてきておりまして、昭和四十三年度におきましても、総合資金及び卸売市場近代化資金の創設など、新しい制度の樹立に努力しておるような次第であります。  もとより、金融政策一つ手段でありまして、農業金融だけでは万事農政がうまくいくとは考えておりませんで、農業金融補助行政、これらを適正に組み合わせて、農業生産の増強あるいは農業構造改善価格安定等につとめてまいりたいというのが、農林省の基本的な考え方でございます。
  10. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、昭和四十三年度におきまする農業金融に関しては、政府においては、ここに提案されているように、農林漁業金融公庫総合施設資金制度卸売市場近代化資金制度等新たな制度を設けることといたしておりますが、これらに関する質問の前に、昭和四十三年度におきまする農業金融の全体的な施策について御説明を願いたいと思います。
  11. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども農業金融、特に制度金融の問題として、農林漁業金融公庫資金近代化資金とを考えておりますが、まず資金ワクをふやすことが一つでございます。これは公庫資金で申し上げますと、四十二年度が千六百億のワクでございましたが、それを四十三年度に千八百億に、二百億の増ワクをいたしました。近代化資金につきましては、九百億を千億にふやしたわけでございます。これが資金ワクの問題でございます。  それから、さらに公庫につきましては、いまお話がございましたように、新しく総合施設資金制度というものを設けましたことと、流通近代化という問題に農林省といたしまして正面から取り組むために、公庫卸売市場近代化資金をつくったわけでございます。すなわち、公庫につきましては資金ワクをふやすと同時に、新しい内容を相当盛り込んだわけでございます。  さらに、公庫融資等につきまして、実際に資金を欲する人にうまく資金が渡ることが第一でございますから、利子を下げたりあるいは資金ワクをふやしたりすることももちろん必要でございますけれども、そういう事務簡素化といいますか、迅速化といいますか、そういうことが大事でございますので、その点については、十分公庫を指導してやるつもりでございます。  さらに、担保の問題といたしまして、新しく農業動産信用法施行令を改めまして、家畜あるいは農機具等動産抵当権を設定しやすくするようなことを、現在検討中でございます。
  12. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 提案にかかる総合資金制度は、農業構造政策推進一環として農業経営規模拡大し、自立経営育成をはかるため総合的かつ計画的に農業経営改善をはかり、農業者に対し土地取得近代的施設整備等に必要な各種施設資金と、これに関連する運転資金を総合的に供給する措置として新設したといわれていますが、農業構造政策推進一環としてとなっておりますので、資金制度のみでなく他の構造政策についても、ひとつ説明をいただきたいと思います。また、準備されております農業振興地域整備または農地法の一部を改正する法律案等は、これと関連して出される予定かどうか、こういうこともお伺いしたいと思います。
  13. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 ただいま御質問がありました農業振興地域整備に関する法律案あるいは農地法改正等法律案につきましては、ただいま国会に提案をいたしております総合資金制度とともに並行して、重要な政策として進めておる次第であります。  訂正いたしますが、農業振興地域法律案は、まだ準備中でございまして、提案されておりません。
  14. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 また、総合施設資金は、「農業者に対し必要な各種資金を総合的かつ円滑に融通するとともに、融資に伴う営農指導を充実することによって、金融の面からも自立経営育成を促進するもの」であるということでありますが、その内容を具体的に明らかにしていただきたい。たとえば、この資金はいかなる農業者をとらえて融資しようとするのか、融資の際の農家の選定はだれがどのようにして行なうのか、融資機関信連単協を使うのか、実際の融資やり方はどのようにするのか。
  15. 大和田啓気

    大和田政府委員 ただいま政務次官から申し上げましたように、総合資金制度も、いわゆる構造政策一環というふうに私ども考えておりますけれども総合資金制度だけで農業を相当動かすという、それほどのものとは実は考えておりません。これは金融措置でございまして、私ども最近の農村を見ますと、従前と変わりまして、とにかく農業で相当な生活程度を確保していこう、あるいは確保している農家の数もだんだんにふえてまいりまして、公庫資金ワクは千八百億、あるいは近代化資金ワクは千億で、農業金融についての手当ては私ども相当やっておるつもりでございますけれども、いま申し上げましたような伸び盛りの、あるいは伸びようとする農家にとりましては、一般公庫資金貸し出しやり方は必ずしも適当でないわけでございます。たとえば、土地取得資金あるいは畜産経営拡大資金果樹園経営改善資金等々、それぞれの使途に従って資金が貸し出され、融資限度も限られておるということでございますから、伸び盛り農家といたしましては、とにかく経営一体と考えて、経営改善のために相当まとまった資金融資が私ども望ましいというふうに考えております。  それで、総合資金というのは、そういうようにまず公庫から貸し出しております施設資金を総合的に総合施設資金という名で、一戸当たりおおむね八百万円を限度として、相当な長い償還期間あるいは据え置き期間低利ということで貸し出しますと同時に、運転資金農協等を通じて同時に貸し出して、施設資金は借りられたけれども運転資金が欠乏しているために農業がうまくいかない、そういう憂いのないようにいたしたいという意味総合資金でございます。  それで貸し出しの相手といたしましては、農業生活できるような農家、これは自立経営というふうに普通呼んでおりますけれども、そういう農家になることが確実に見込まれるような農家ということで、技術なりあるいは経営能力なりもすぐれておることはもとよりでございますが、できるならば比較的若い人々に着目してこのような資金を運用いたしたいというふうに考えております。したがいまして、それ以外に特別に、何か非常に大きな農家でなければならぬというような条件を、私どもつけるつもりはございません。  どういう農家に貸すかということは、これは資金ワク初年度二十億で、対象農家も大体千戸程度というふうに考えておるわけですが、県段階融資協議会をつくって、県も入り、公庫信連等々の融資機関も入って、そこで営農改善計画を十分練って、これでいいだろう、りっぱな経営ができるというふうに見込まれますと、公庫から施設資金が出、信連等から運転資金が出るというふうにいたしたいというふうに思います。  それで、融資機関といたしましては、施設資金逆転資金信連を通じ、あるいは信連から出ることが大体のたてまえになっておりますけれども、最近の農協合併によって農協規模が相当大きくなって、しかも、こういうものに対する融資の熱意が高いような農協でありますれば、私は、農協がおやりになってもけっこうだというふうに考えております。また、農協取引関係がない農家がたまたまおるわけでございますから、それらの人が農協信連から金を借りるということがなかなかむずかしいわけでございますが、そういう場合は、県なりあるいは公庫なりに直接頼んで、市中銀行地方銀行等を利用することもできるようにいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  16. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 今度の総合資金制度は、従来の農林公庫資金制度反省の上に立って設けられたものだというふうに聞いているわけでありますが、従来の公庫資金は、貸し付け限度も限られていますし、手続がきわめて繁雑であり、貸し付け条件資金種類ごとにまちまちである等、借り受ける農業者にはその内容がわかりにくいようになっております。そこで、今回の総合資金を設けるにあたってはどのような反省の上に立って、これらの諸問題をどのように解決しようとしているのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  17. 大和田啓気

    大和田政府委員 従来の公庫資金は、いま御指摘になりましたように、いわば事業種目ごと資金ができております。たとえば、土地取得資金は年利三分五厘で償還期間が二十五年、個人の借り受け限度が百万円、そういう形になっておりますし、果樹園経営改善資金あるいは畜産経営拡大資金は、それぞれ利子が五分五厘で、融資限度が、個人で二百五十万円というふうになっておるわけでございます。これは私は、公庫資金というのは相当低利資金でございますし、一定の農業振興上の目的に従ってそういう制度をつくっておるわけでございますから、公庫一般のそういう種別ごと資金制度をつくるということが、あながち悪いというふうには考えておりません。また、通常農家通常資金需要に対しましては、私はりっぱに公庫資金が運営されているというふうに考えるわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、相当大きくなろうとする農家が金を借りようといたしますと、土地取得資金が百万円、果樹畜産が二百五十万円というふうにそれぞれ頭打ちをされております。そうしてまたいろいろ土地も買いたい、土地改良もいたしたい、果樹も植えたい、あるいは畜産もやりたいというそういう農家が、いろいろな資金をかき集めて、しかも、十分の資金が得られないという嘆きが実際問題としてあるわけでございますから、総合資金はそういう農家の希望といいますか、期待にこたえようとするために新しく生まれた制度だというふうに私ども考えております。したがいまして、一般公庫資金につきましては、今後もそれぞれ種目別に検討いたしまして改善をいたすつもりでございますけれども総合資金があるからといって、一般資金制度やり方が悪いというふうには、私ども考えておらないわけでございます。
  18. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 農林公庫融資のあり方でありますが、農業経営一体であるので、いまのお話しのように、総合資金という立場で貸すというのが本来的ではないか、かように考えるわけでありますが、従来の融資融通方式は、今後は逐次現在の制度を改めて、総合施設資金のような融通方式に改むべきではないか、かように思っておりますが、いかがでしょう。
  19. 大和田啓気

    大和田政府委員 ただいまも申し上げましたように、公庫資金は、ある意味補助金が変形したというふうに考えられる向きもあるわけでございます。土地改良資金あるいは土地取得資金等々それぞれの種目別相当低利条件をつけて、たとえば、これによって土地取得を進めたい、あるいは土地改良を進めたい、あるいは果樹園芸または畜産経営拡大をいたしたいというそれぞれの造成目的に従っておるわけでございますから、それを全部そういう、いわば障子をはずして一本の経営改善資金ということになりますと、どれを伸ばしたいという目標がぼやけてしまって、制度金融の本旨に必ずしもそぐわないという問題が私はあろうかと思います。これは、現在の資金の区分なりあるいはやり方なりが、全然これでもういいので、いささかも改善する余地がありませんというふうに申し上げるつもりはございませんけれども、総合的な経営に注目して、経営一体として融資するということを、全部の公庫資金に広げるというふうには、私ども考えておらないのでございます。
  20. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、総合資金制度対象となります農家は、四十三年度では千戸程度と考えられておりますが、これでは一つの県に二十戸程度であって、公庫役割り政策金融といわれる立場から考えますると、政策手段とはいえるが、政策とはいえないような気がいたします。初年度は、準備その他の事情がありますのでやむを得ないとしても、平年度ではどれだけの農家対象とすることを考えているのか。また、果樹経営の場合でも、畜産経営の場合でも、地帯的な振興ということを重視いたしております。ところが、自立経営育成ということに重点を置きますと、個々になって点の政策になりやすい。この地帯別振興ということと自立経営育成ということを、どういうふうに調和して考えておりますか。
  21. 大和田啓気

    大和田政府委員 総合資金対象となる農家の数は、御指摘のように初年度千戸でございます。融資ワクは一応二十億というふうに考えております。これは千八、百億の公庫資金の大部分が農業者に貸し出されるわけで、一般の場合、あるいは相当大きな農家でも、土地改良をやろうというような場合は、それぞれの土地改良資金が借りられるわけでございますから、一般農業融資が相当あるという前提に立って、総合資金的な制度でなければ資金需要を満たしがたい農家ということでありますれば、もともと私は、数はそれほど大きな数にはならないのではないかというふうに思います。また、農業コンサルタントを何人か置きまして、普及員なりあるいは専門技術員等を通じてアフターケアも十分やるつもりでございますから、そういう面で、将来におきましても総合資金対象農家というのは、それほど大きな数を占めるというふうには、私ども現在のところこう考えておりません。  ただ、初年度千戸、それから二年度、三年度は何千戸にするかというふうに、いままだ申し上げられません。千戸がどういう形で総合資金がうまく運用されるか、どういう問題があるかということを十分見きわめませんと、二年度以降の計画については申し上げられませんけれども、とにかく、千戸というよりは、だんだんにふやしていきますけれども、それほど大きな数には、将来ともならないというふうに考えておるわけでございます。
  22. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 政府農業金融制度整備拡充を考えるにあたって、構造政策推進という観点から、今後特に自立経営育成重点を置くということになると、より基本的な、たとえば土地基盤整備のような、従来の経営構造改善資金等一般農業者に対する資金ワクを圧縮し、エリート農業者というか、一握りの農業者のみを優遇するような結果を招くおそれなしとしない。政府は、今後農林公庫資金ワクの確保についてどのように考えておりますか。また、今後の数年先における農林公庫資金全体の融資ワク総合施設資金融資ワクは、それぞれどの程度のものになると想定しておりますか。
  23. 大和田啓気

    大和田政府委員 総合資金育成を助長しようといたします農家というのは、要するに、農業生活できる農家ということでございますから、私は、特別にそれがエリートであるというふうには考えておりません。これは農業職業として人が選ぶ以上、その職業によって生活ができるということばあたりまえのことでございますから、それをつくるということに、何か特別きわ立った問題があろうとも私は思わないわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、総合資金は現在千戸で、資金ワクが二十億で、これはだんだんにふやしていきますけれども一般農業金融ワクを脅かすほどの大きなものにいたすつもりは私どもございません。  農林漁業金融公庫ワクの将来の予測は、実はいたしておりませんけれども、この二、三年の伸びを申し上げますと、四十三年が千八百億、四十二年が千六百億、四十一年が千四百二十億というふうでございます。今後そういうテンポで伸びるかどうかはまた別問題でございますけれども、その点につきましては、私ども、単に一般農家に対する融資を軽視して総合資金だけに熱を上げるという考えでもございませんし、また、総合資金でつくろうとしている農家が、何か農家として特殊な農家であるというふうにも考えておらないわけでございます。
  24. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、総合資金の金利、貸し付け限度額、償還期限等の融資条件については、今度の場合相当の努力のあとが見られますが、自立経営育成の助長という観点から見ると、さらに低利、長期であることが望ましく、限度額についても八百万円にとどまることなく、また融資率も、必要に応じて八〇%をこえるように配慮する必要があると考えます。今回の総合資金制度についての融資条件は、農業構造改善推進の見地から、たとえば、農地管理事業団法案において構想した三%、三十年程度まで改善をはかるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  25. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども総合資金で考えました融資条件といたしまして一番重く考えましたことは、相当の額の資金量を一農家に対して確保するということ、さらに酪農、果樹等々の新しい経営をいたします場合にも、償還期間が長く、また据え置き期間ができるだけ長いことがいいわけでございますから、資金量も、個人に対するいまの制度金融といたしましてはおおむね八百万円ということにいたして、もし特段の事情があって八百万円ではどうしても足らないという場合には、私どもこれを何とか、個別農家について個別的に引き上げることも検討いたしたいと思います。  利子につきましては、したがいまして、ある意味で安ければ安いほど農家にとってけっこうであるようでございますけれども公庫資金は、一番安い資金が、土地取得資金あるいは土地改良資金三分五厘というものもございますし、個人が借りるものとして、果樹園芸畜産等々五分五厘というのもございますし、農林大臣指定施設で家畜の畜舎等六分五厘というのもございますので、そういうものを見渡して、まず大体中ごろのものということで利子五分、ただし、相当長期にわたる据え置き期間中は四分五厘というふうにいたしたわけでございます。  いま御指摘になりました農地管理事業団法案につきましては、これは国家的な機関が土地を買い、土地を売って、土地取得についてだけの問題でございますから、三分、三十年という特別な利子が構想できたのでございまして、総合資金制度のように、土地取得を含めてあらゆる経営改善に一切行き渡るような資金と農地管理事業団法案資金とは、私は直接には比較できない性質のものであろうと思います。
  26. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 農林公庫資金は長期、低利ではありますが、運転資金が必ずしもこれに伴って円滑に融通されないため、その融資の伸長がはかられていないような実情にあるのではないか。この点につき、今回の総合資金についてはどういう配慮が加えられておりますか。
  27. 大和田啓気

    大和田政府委員 現行の公庫資金あるいは近代化資金につきましても、たとえば、乳牛の育成資金近代化資金で見ておりますし、果樹育成資金はたしか公庫資金で見ておるわけでございまして、たとえば畜産をやり、あるいは果樹をやる場合に運転資金が必要である部面は、わりあい少ないというふうに私ども考えております。しかし、それにいたしましても運転資金は必要欠くことのできないものでもございますから、せっかく総合施設資金公庫から借りても、運転資金が欠乏しているためにいい経営ができないということでは困りますので、私ども今回考えましたことは、主としてこれは系統が予定されておるわけでございますが、系統から運転資金を貸します場合に、先ほど申し上げました県段階融資協議会でその営農改善計画が納得されますと、それによって公庫施設資金を貸し、系統等が運転資金を貸すというふうに、いわば一挙動で運転資金が貸せるようにいたすと同時に、この運転資金につきましては、県段階農業信用基金協会というのがございまして、その信用保証に付する、あるいはその信用保証に付したものを農業信用保険協会の保険にあげるというふうにいたしまして、農業信用保証保険法の改正もお願いをいたすわけでございます。
  28. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、農林漁業金融公庫融資ワクは逐年増大しておりますが、融資実績の伸びはこれに伴っておらず、融資計画に対する融資実績の比率はむしろ落ちているのが実情だろうと存じます。融資の阻害要因としては、農林漁業金融公庫の貸し付け手続が繁雑であることもそうでありますが、担保徴求のきびしさに基因するところが大きいと考えられます。担保保証制度は、農林金融の重大な問題であることは言うをまたないところでありますが、この際、農林漁業金融公庫の担保については、その適正化と弾力化をはかるべきではないか、これについての考え方を承りたいと思います。
  29. 大和田啓気

    大和田政府委員 公庫資金融資を円滑化するために、担保の問題が非常に大きな問題でありますことは、御意見のとおりでございます。公庫も十五年ほどの仕事を通じまして、だんだん業務も、いわばうまく運営されるようになりまして、以前に比べまして担保の問題で摩擦が起こりますことは、よほど少なくなったというふうに私は考えております。特に、従来といいますか、数年前までは、農地を担保にとります場合に、大体時価の五割ぐらいまでしか担保価値を囲めておりませんでしたのを、最近、時価の八割にいたしましたことが一つでございます。それから物的担保と人的保証とをうまく組み合わせて、そう無理なことをいたさないように、私ども絶えず公庫と話をいたしておるわけでございます。  ただ、何といいましても制度金融でありまして、まさに金融でありますから、担保の問題をそう軽く扱って、あぶない融資をするということもいかがか。結局、国の資金を貸すわけでございますから、そうゆるい貸し方をいたすことは好ましくございませんので、制度金融としての意味金融機関としての債権の保全との、いわば調和をできるだけうまくはかっていきたいというふうに思います。  それから、先ほど申し上げました農業動産信用法の関係でございますが、従来から動産信用はわりあい狭い範囲でございましたけれども、家畜とか農機具につきまして動産抵当制度が多少活用されておったわけでございますが、担保にとる金融機関といたしましては、従来は農協信連、漁協、漁信連というものに限られて、公庫なり中金なりがその金融機関として指定されておらなかったわけでございます。それで、近く農業動産信用法の政令を改正いたしまして、公庫と中金とを指定金融機関といたすつもりでございますから、これによって、たとえば乳牛を相当大規模に導入するために総合資金農家が借りるという場合に、その乳牛を動産信用抵当の対象として公庫がとれるということになって、私は、担保問題は相当前進するのではないかというふうに期待をいたしておるわけでございます。
  30. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 金融がその効果を発揮するためには、事前及び事後の営農指導が大切でございます。この点につきまして、総合資金制度においては、融資コンサルタントの設置等がなされておりますが、営農指導については、広く改良普及員制度の活用をはかるべきではないか、こういうふうな考え方を私ども持っているわけでありますが、これらについての所見と、また、コンサルタント三名を置くことになっておるのですが、三名だけでこういう問題はうまくいくのかどうか、これについてひとつお伺いいたします。
  31. 大和田啓気

    大和田政府委員 公庫におきます農業コンサルタントの数は、御指摘のように三名でございます。これは、私どもこの三名のコンサルタントが、ぐるぐる回って農家を指導するというふうには考えておりません。具体的に農家に接して営農改善についての相談にあずかりますのは、主として普及員でございますし、その背後に専門技術員があるわけでございますから、アフターケアの主体はあくまで普及員、あるいは場合によりましては農協の指導員が登場いたすこともございましょうけれども、主として普及員を頭に置いて私ども考えておって、農業コンサルタントは、普及員なり専門技術員なりの相談相手になる程度のものというふうに考えております。
  32. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 いずれにいたしましても、自立経営育成重点を置いて、金融の面においていままでより脱皮してこの総合資金制度を設けられたことにつきましては、敬意を表したいと思います。  なおこの際、制度金融に関連いたしまして、系統金融についてお尋ねいたしたいと思います。  まず、全国段階の農林中金には相当の金といいますか、余裕金があると承っておるわけでありますが、農林中金の内容融資の実績、また、系統金融について農林省として今後改善、検討すべき重点事項について、この際承っておきたいと思います。
  33. 大和田啓気

    大和田政府委員 農林中金の資産の運営内容につきましては、お手元に資料としてお配りいたしております一一ページにございますが、調達資金といたしまして、四十一年度末で預金の九千九百七十一億、農林債券の二千九百六十九億等を含めまして、全体の調達、運用の資金が計で一兆四千七百六億でございます。これに対しまして、員内の貸し付け、これは、信連でありますとか漁信連等々に対する貸し付けが二千三百一億でございます。員外と関連産業貸し付けが四千八百四十九億、それから有価証券が三千八百四十八億、コール、金融機関貸し付け等が二千五十四億、これがおもなものでございます。  確かに御指摘のように、中金といたしましては一兆四千億をこえる運用資金があるわけでございますが、系統に対する貸し付けは二千三百億程度であるわけでございます。これは、中金から金を借りるはずの信連なり漁信連なり等の資金内容が、最近におきまして相当充実をいたしてまいりまして、員内としての資金需要が少ないことに基づくわけでございます。私ども中金に対する指導といたしましては、当然員内貸し付けに大いに努力をしてもらいたいこと、特に共同経営その他普通の信連なり農協なりがなかなか金を貸しにくいような農業経営に対して中金としても相当な努力を最近払っておるようでございます。  しかし、いずれにしろ相当な資金量が余裕金として残るわけでございますから、これは有価証券なりあるいはコール等の運用は別といたしまして、関連産業貸し付けにつきましては、中金の融資先として明確に融資先の範囲をきめる。とにかく、関連産業として農林水産業の振興に資するようなものの範囲を明確にいたしますことと、さらにそれと同時に、中金が関連産業貸し付けをいたします場合に、最近までは、短期資金につきましては農林省が大ワクをきめて、その範囲内で包括認可をいたしておりましたが、中金法の十五条の二による長期の貸し付けにつきましては、一つ一つ事案を農林大臣、大蔵大臣が認可をしていたわけでございます。これは金融機関といたしまして、実際そういうことに役所が一々こまかくタッチすることは適当でございませんので、昨年の暮れでございますか、関連産業貸し付けにつきまして、いままでのようにやむを得ざる融資というたてまえより、むしろ関連産業を強化育成するという趣旨で、中金が余裕金を使ったらいいというふうに私は思っておるわけですが、関連産業の貸し付けの相手方を明確にすると同時に、一件一件農林大臣が認可するということをやめまして、包括認可に改めたわけでございます。  これが中金に対する私どもの態度でございますが、農協なり信連なりに対しましては、金融事情がゆるんだり締まったり、なかなかこれは予測しがたい生きものでございまして、そう硬直的な指導はできませんが、最近の農協経営についてごくあらまし申し上げますと、信用事業がいわば黒字の源でございまして、五百万円程度の黒字を信用事業がかせぎ、購買事業がやや黒字で、販売事業、利用事業は相当な赤字で、収支で、大体二百万円あるいは三百万円くらいの黒字が残るということでございますが、農協経営にとって人件費の圧力その他だんだんございまして、農協経営というのは、必ずしも今後楽ではございませんので、また金融がゆるめば、中金あるいは信連の奨励金等も減っていくわけでございますから、農協経営を確立するためには、信用事業についても相当な努力、つまり貸し出しの努力、これは農業振興という面から見てもそうでございますし、たとえば、近代化資金でありますれば九分で基準金利が見られるわけでございますから、近代化資金農協資金で貸すということは、農協経営にとってもプラスでございますから、貯金の受け入れを強めるばかりでなしに、貸し出しについての努力をすべきであるということを、あらゆる機会を通じて申し上げておるわけでございます。
  34. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、卸売市場近代化資金についてお伺いいたしたいと思います。  この件につきましては、昨日、市場関係者が参考人として参っていろいろ論議されましたが、参考人の全員の皆さま方が、大体この制度に賛意を表しておりますし、実施がおそ過ぎたというようなことも実は言われておるわけでありますけれども、私は、この卸売市場近代化資金についての基本的な問題についてだけ若干お伺いいたしたい、このように考えます。  まず、地方市場の問題でありますが、この地方市場の問題は、いままで論議の対象となってからもう十年を経過しているのでありまするが、いままでに政府といたしまして、何か見るべき施薬というものを講じたかというと、講じていないように考えられるわけであります。しかし、地方市場は生鮮食料品の流血の約半量を扱いまして、中央卸売市場と肩を並べるような地位にあるわけでありまするが、特に、最近のように都市と農村消費との格差が少なくなり、全国的な規模で消費の高度化が進み、かつ、産地の大型化と出荷の計画化が進んできますと、経営規模の零細な地方市場業者は、十分な集荷力がないため、勢い間接的な集荷にたよらざるを得ない状況にあるわけであります。  以上の事情のほか、都市交通の渋滞等により、従来の狭隘、老朽化した施設では、取り扱い一一の集配が渋滞するほか、都市交通上からいいましても、都市計画上からも阻害要因となってきております。  以上の事柄からいって、地方市場の整備というのはもうすぐやらなくちゃならぬというふうに実は考えておるわけでありますが、こういう事態に対処いたしまして、政府は地方山陽の整備についてどういうふうな措置を考えておりますか、承りたいと思います。
  35. 大和田啓気

    大和田政府委員 地方市場の問題は、実は農林省にとりましてもここ十数年の懸案でございまして、昭和四十年前後から二、三年の間調査し、また協講会等を開きまして、どういう方向で地方市場の整備を行なうかということを十分検討してまいったわけでございます。その検討の結果、あるいは調査の結果が、四十三年度におきまして実を結んだというふうに私どもは考えておるわけでございまして、地方市場につきましては、資料でも差し上げてございますが、千九百をこえるほどの地方市場があり、大小を取りまぜ、また公設市場もございますと同時に、ほとんどすべてに近い数が、株式会社その他のプライベートなものでございまして、種々雑多なものがあるわけでございますが、種々雑多でありながら、全体としては中央卸売市場に匹敵するほどの大きな役割りを果たしおるということも事実でございます。  したがいまして、私ども四十三年度の予算で考えましたことは、株式会社が経営している地方市場に対しまして、中央卸売市場と同じように補助行政はできませんから、公設市場であってしかもその地方における拠点的な地方市場につきましては、これは中央卸売市場と同じように、施設整備補助金を出すということが一つでございます。これは四十三年度において六千万円の補助金を計上して、大体三カ所程度の公設地方市場についての整備に対して補助金交付いたしたいと思います。  それから、一般の民営市場につきましては、御審議をお願いいたしております農林漁業金融公庫法の改正で卸売市場近代化資金制度を設けまして、それによって逐次整備に対して融資をして、補助金融資と両々相まって中央卸売市場の行政と並んで地方卸売市場の整備を進めてまいりたいというふうに考えております。
  36. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 この卸売市場近代化資金融資ワクでありますが、三十億円が予定されているわけであります。この資金が、中央卸売市場の卸売り人及び仲買い人の施設整備近代化に必要な資金、また地方卸売市場の整備、ことに民営の地方卸売市場についても融資対象となっておりますので、この三十億円の融資ワクで十分なのかどうか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  37. 大和田啓気

    大和田政府委員 初年度でございますから、私は三十億で大体よいのではないかと思います。ただ、需要が相当強くて、三十億の資金ではどうもまかない切れないという場合がありますれば、公庫資金ワク、千八百億でございますから、その中で内部のやりくりをやったらどうかというふうに、現在考えております。
  38. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 それから、きのうの参考人の意見にもありましたが、貸し付けの利率が高い、こういう意見であります。そこで、この貸し付け利率は年八分二厘以内、こうなっておるのでありますが、きのうの参考人の意見は、年四分、こうしていただきたい、こういうことでありますが、これについての考え方といいますか、それをひとつお伺いいたしたいと思います。
  39. 大和田啓気

    大和田政府委員 利子は年利八分二厘以内というふうにいたしておりますが、私ども考えておりますのは、地方市場の整備につきましては七分五厘、なおパブリックといいますか、公的な色彩が強くて、相当大規模な地方市場につきましては六分五厘というふうに考えております。  それから、それ以外の卸、仲買いにつきましては八分二厘、事宜によりましては七分七厘というふうに両建てで考えております。まあ業界の方々のいろいろな希望としては、利子も安ければ安いほどいいわけでありますけれども、いまいろいろな制度金融全体をながめて、私どもが申し上げております数字はまず無理ではなく、よその制度に比べて遜色があるというふうには考えておらないわけでございます。
  40. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、改正公庫法でいう農畜水産物の卸売市場というのはどういうことか。それから、産地市場は含まれるのかどうか、ひとつお伺いいたします。
  41. 大和田啓気

    大和田政府委員 卸売市場の定義でございますが、そう厳密な定義もございませんが、一定の施設に大量の農畜産物を荷受けして、そこで主としてせりにより大量販売が行なわれる施設及びそれに関係する業者全体を観念しての考え方でございます。  なお、産地市場につきましては、産地市場も法律で申します卸売市場の中に含まれるわけでございますが、産地市場で問題になりますのは、水産物の産地市場でございまして、これをどうするかということは、一つは漁港整備等の関連もございますし、また、産地市場をどうするかということ自体が一つの行政上の大きな問題であるようでございますので、私どもしばらくその検討を待って、すぐには、水産物の産地市場に対する貸し出しは、やらないほうがいいのではないかというふうに思っております。
  42. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、最近国民の消費生活の高度化とか多様化に伴って、市場が小売り人等の買い出しセンターというような方向になって、取り扱い品目も多様化して、これからできます市場というのが総合市場的なものになってきているわけでありますが、この卸売市場近化代資金の融通にあたって、こういうふうな総合市場について考慮する必要があるのじゃないか、このように思っておりますが、ひとつお伺いいたします。
  43. 大和田啓気

    大和田政府委員 生鮮食料品の流通関係で最近の注目すべき動きは、小売り店自体が総合食品店化してきておるわけでございます。これは、家庭の主婦が一カ所でできるだけ必要なものを全部買いととのえたいという、そういうことからでございます。したがいまして、中央卸売市場なり地方市場なりも総合市場化の傾向が強いわけでございますから、私ども、そういう方向で市場の整備についての運営をいたしたいというふうに考えております。したがいまして、今回御審議を願っております公庫法の改正につきましても、卸売市場の区域内にあるもの、あるいはこれに隣接して設置される付設集団売り場、これで日用品あるいはかん詰め等々を売るものがありますれば、それもあわせて融資対象といたしたいと考えております。
  44. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 大体、基本的な事柄につきましては了解をいたします。ただ、今後さらに融資ワク拡大をはかってもらい、制度の積極的な展開につとめてほしいと思います。しかし、地方市場問題解決のためには、施設の整備だけでは不十分でありますし、市場の統合、卸売り人の統合、代金の支払い機構の確立等、今後解決しなければならない問題が多いわけであります。  それから、地方市場行政についてでありますが、各都道府県のばらばらの規制、指導にまかせることなく、国が所要の立法措置を講じ、これに基づき統一的な指導を行なう必要があろうと思います。これは、単に国の政策的な姿勢を示すだけでなく、都道府県の条例による規制に有効な法律上の準拠といいますか、根拠を与えるためにもきわめて必要なことであろうと思いますので、これについての考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  45. 大和田啓気

    大和田政府委員 地方市場に対する法制化の問題等につきましては、全く御指摘のとおりであろうと思います。私ども、先ほど申し上げたように、地方市場は千九百をこえてなかなか多種多様でございますから、直ちにこれを法制化して統一的な基準に従って規制することが、今日の時点において適当であるかどうか、実は疑問でございますので、まず、融資あるいは補助によって相当な道筋を立てて、それとあわせて法制化の準備をいたしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  46. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、中央卸売市場の整備を、政府は今後どのような方針で進めようとしているか、また、今回の卸売市場近代化資金においても、中央卸売市場の却売り人、仲買い人も対象としておるが、これは中央卸売市場の改善強化にどういうふうな意味を持っているか、伺いたいと思います。
  47. 大和田啓気

    大和田政府委員 現在、中央卸売市場は全体で五十五市場があるわけでございますが、都市の数もたしか二十五都市でございます。したがいまして、人口十五万人以上の都市でまだ中央卸売市場を開設していない都市が相当たくさんございまして、最近の物価問題あるいは生鮮食料品の流通合理化ということが、単に東京、大阪だけの問題でなくて、中都市にも及んでおりますので、中都市から中央卸売市場開設の要望の声が相当高まってきております。したがいまして、こういう中都市に対して中央卸売市場を新設するということが、私どもの行政の一つのポイントでございます。  それからもう一つは、現在ございます二十五都市、五十五の市場について、何といいましても関係者が、口を開けば市場が手狭で設備が古いということでございますから、その改善もやらなければなりません。また、東京、大阪等過密地帯につきましては、相当大がかりな新市場の施設を行なうことが必要でございますので、その点についても東京都あるいは大阪府、大阪市等々と話を進めて、五年後あるいは十年後の将来を展望しながら、市場の施設の強化に当たってまいりたいというふうに思います。  それから、卸あるいは仲買い人に対する融資のことでございますが、市場はただ施設ができればそれでうまくいくというものではございませんで、小売りを含めて卸あるいは仲買いがしっかりして、しかも生産者にも小売り人にも迷惑をかけないという経営の堅実さが必要でございますし、また、倉庫あるいは冷蔵庫等、さらに運搬施設等の改善も必要でございますので、私ども、卸、仲買いに対する融資を行なうことが一つの呼び水になって、卸、仲買いの経営改善あるいは大型化の方向に進むことができるというふうに期待いたしておるわけでございます。
  48. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 次に、政府卸売市場近代化資金と並んで、食料品小売り業関係企業の近代化についても、別途制度金融準備しておると聞いておりますが、その具体的な内容についてお伺いいたします。
  49. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども、生鮮食料品の流通改善の問題は、卸をよくすればいいとか、仲買いをよくすればいいとか、小売りをよくすればいいとか、そういう個々のことではなくて、産地の問題ももちろんございますので、産地から卸、仲買い、小売りを通じて一貫した改善策を講ずる必要があるというふうに思います。したがいまして、卸、仲買いにつきましては、農林漁業金融公庫卸売市場近代化資金を設けますと同時に、国民金融公庫に生鮮食料品の、小売り商を含めての経営改善のために特別のワクをつくりまして、初年度百三十億の資金を予定しております。そして、これらの生鮮食料品を中心とした小売り商のために、八分二厘、七分七厘、六分一五厘——衛生施設的なものは六分五厘とかいうそれぞれのきまりがあるわけでございますが、これに基づいて、単に国民金融公庫の従来の融資ということでなくて、これは農林省が一々こまかく指導するということはできませんけれども、大筋として卸、仲買い、小売りを通じて、生鮮食料品の流通近代化の線に沿うて融資をしてもらうというふうに考えておるわけでございます。
  50. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 その件に関して、きのうの参考人の意見としては、金融が二本立てなのは残念である、将来これは農林省の窓口一本にしていただきたい、こういうふうな、意見があったわけでありますが、これについてひとつ……。
  51. 大和田啓気

    大和田政府委員 私どもも、実は最初の考えといたしましては、小売りも含めて農林漁業金融公庫一つの生鮮食料品の流通改善のための資金を設けるという案でございましたが、現在、政府機関といたしまして環衛金融公庫あり、あるいは中小企業金融公庫、商工中金等、さらに国民金融公庫があるわけでございます。中小企業向けの金融機関としていろいろなものが現在あるわけでございますし、私は、農林漁業金融公庫資金ワクをつくりましても、最初から公庫が直接に融資をするのではなくて、国民金融公庫に委託をすることを考えておりましたわけですが、いろいろ政府部内の話し合いがございまして、まず卸、仲買いは農林漁業金融公庫を、それから小売りは、いままでの経験からいって国民金融公庫が適当ではないか、しかし、単に金を貸すということだけではなくて、やはり生鮮食料品の近代化行政の一環として農林省でいろいろ注文を出すし、また大ワクの指導をするということで話し合いがついたわけでございます。私は、まずいまの体制を今後も続けることが、この問題については適当な解決策ではないかというふうに考えております。
  52. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 最後に、中央卸売市場制度というのですか、現行の市場法は、東京が人口三百万のときの法律だというふうな話で、きのうの話も、とってもこれは合わないから、これをどうしても抜本的に改正してもらいたい、このような意見等もございますし、また卸売り制度の問題については、相当強い御意見があるのじゃないかと思うのであります。これにつきまして、農林省制度改正についての考え方をひとつお伺いいたします。
  53. 大和田啓気

    大和田政府委員 きのうも御意見がございましたけれども、中央卸売市場については、単に市場の設備の改善ばかりでなしに、取引内容改善についても、私ども現在いろいろ努力いたしておるわけでございますが、確かに中央卸売市場の問題、あるいは地方市場の問題を含めて、何らかの法的な改正の措置が必要であるというふうに私ども考えております。  ただ、これはなかなかむずかしい問題でございますし、時間の関係もございますから詳細申し述べはいたしませんけれども、まず、中央卸売市場法と地方卸売市場法という二本立てがいいかどうか、中央卸売市場の中で、たとえば東京、大阪その他の大都市の中央卸売市場と中都市の中央卸売市場と、同じような規制をすることが適当であるかどうか、さらに、これだけ流通圏が大きくなりますと、東京都は東京都でいいわけでございますが、大阪等につきましては大阪府と大阪市の問題がございますし、幾つかの市にまたがる共通した流通圏の問題がございます。それを法律で、一体どういう手当てをするかという問題がいろいろございます。私ども、現在せっかく勉強をしておる最中でございます。
  54. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員 終わります。
  55. 足立篤郎

    足立委員長 この際申し上げますが、午後は農林大臣の出席を求めておりますが、ただいまのところ、大臣出席の時刻はまだはっきりいたしませんが、委員会は午後二時、時間厳守で再開いたしたいと存じます。  これにて休憩いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後二時十二分開議
  56. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  57. 美濃政市

    ○美濃委員 この農林漁業金融公庫法一部改正の中で、総合資金制度というのは、昨年八月に発表されました新しくやろうとする農業構造政策、こういうものの資金だと私は考えるのですが、そのとおり了解して間違いあるかどうか、お伺いいたします。
  58. 大和田啓気

    大和田政府委員 私どもも、いわゆる農業構造改善に関する施策一環としてこれを考えておりますけれども総合資金制度自体をまた別の目でながめますと、先ほども申し上げましたが、農家のいろいろな資金需要、特に果樹畜産等新しい分野に分け入って、果樹の新植をしたり、あるいは草地を新しく開いて相当大規模に酪農経営をすることを願う層、特に若い農家の層が多いわけでございますから、そういう者たちに対して、現在の公庫資金ワクではなかなか応じ切れない資金需要を満たしたいというのが念願でもあるわけでございます。
  59. 美濃政市

    ○美濃委員 そこで、確かに構造政策には、余裕のある開発を進めて経営拡大をする、こういう面もありますが、問題は、これからの国際情勢あるいは最近非常に問題になっておりますポンド切り下げ、あるいはドル防御、それにつながる日本の円の問題、こういう問題と農業経営、国内農業の農産物価格、農産物価格から出てまいります農家経済というものを政治的に整理しませんと、単に大型の資金制度をつくったからそれで農業が安定する、こういうものではないと私は思うのです。  そこで、この構造政策を打ち出したときに農林大臣談話というものが文書で出ておるわけですが、これはあとから農林大臣が出席すれば農林大臣にもお伺いしたいと思っておるのですけれども質問の順序としてまずこれをお伺いしたいと思っておりますが、この中で、私どもが一番重要な関心を持たなければならぬと思うのは、いわゆるケネディラウンドや後進国貿易拡大と書いてありますけれども、これは特恵関税ですね。こういう関税や国内農業政策などを含め、農業の保護制度の緩和が問題とされている。そこで、この政策の意図、こういう問題に対する農業の位置づけは、どう考えて構造政策を進めようとするか、それを承りたいと思います。
  60. 大和田啓気

    大和田政府委員 日本の農業は、最近におきましても、まずケネディラウンドの経験をいたしましたし、さらに、ごく最近終わりましたインドのニューデリーにおけるUNCTADの会議の経験をいたしましたし、日本の農業に対して、国際農業的な側面でいろいろな問題が提起されておることは事実でございます。私ども、そういう諸会議において繰り返し主張をしておりますことは、日本の農業の問題は日本自体の問題でございますから、特に国内政策に対する規制、たとえば価格政策その他について、国際的な規制についての要求がいろいろな形で出てきますけれども、それは日本自体がきめるべき事柄であって、国際的な取りきめで価格を押えたりあるいは生産を制限することについては、日本としては絶対反対だということを申し上げておるわけでございます。しかし、これは日本だけの問題ではございませんで、ヨーロッパの諸国におきましても、そういう国際的な規模における国内政策の規制については反対でございますから、ケネディラウンドあるいはUNCTADの会議等を通じて、そういうことは現実の日程にまだ上がってきておりません。  ただ、構造政策等々で私どもが考えておりますことは、全体の農業の方向としては、今後国際的な交流がますます盛んになることは、農産物について間違いございませんし、農林水産物の輸入もすでに三十億の大台をこえておるわけでございますから、そういう国際的な動向として日本の農政が、いわば制約されることは万ないとしても、国際的な競争力を強化することが何といっても急務でございますから、そういう意味で、国際的に強い農業を打ち立てることがわれわれの一つの課題ではないか、そういうたてまえからいろいろなことが考えられておるわけでございます。
  61. 美濃政市

    ○美濃委員 国際競争の中で一つの例を申し上げますが、一昨年私は中国に行ってまいりました。幸いにしてことしも中国貿易が再開されるようでありますが、いま貿易が再開されて中国のアズキが入るということになりますと、中国のアズキは、私ども行って市場を全部見ておりますが、六十キロで三千六百円です。これは昭和三十年、三十五年も三千六百円です。中国と日本円の換算は、為替レート上は中国円一円に対して日本円百五十円というのが換算率になっておるわけですね。ドルを通じての換算をいたしますとそうなっておるわけです。  そうすると、日本は昭和三十五年以降このようにいわゆる通貨膨張といいますか、物価が変動しておるわけですね。国際競争力といいますけれども、たとえば中国のアスキに北海道の畑作が——一例をアズキにとるので、アズキが私は北海道の安定作物だというのではない。一つの例をアズキにとって申し上げますが、昭和三十六年と同じ日本の国内物価の水準であれば、生産性の向上やその他で、三千六百円というアズキに対する生産性の向上の対応も、全然できないというものじゃないわけですね。しかし、中国は昭和三十年以降全然通貨は変動していないし、物価も上昇していないというのであります。それとこのようになったものとが、国際競争力の対応性を持たすといっても、この面はどうにもならぬと私は思うのです。構造政策拡大で持っていけるものではないと思うのです。この点だけは政策の位置づけで、価格政策をやるかどういう政策でやるか、あくまでもきちっと政策で保護しなければ、農民に責任を帰したら、貿易対象にならない農産物は別といたしまして、貿易対象の農産物は、どんなことをやっても、構造政策で八百万の金を借りてやっても、そんなものでは日本の農業は対応できないと思うのです、こういう通貨状態にしてしまったら。これは、一つは固定レートの上にあぐらをかいた放漫な金融政策が、このような原因を起こしている。これが、ポンドの切り下げ、ドル不安といっていま叫んでおる最大の原因だと私は思うのです。  この問題を論議しないで、ただ、金を貸すからおまえら国際対応力をつくれといっても、それは農民はやりようがないと思うのです。輸入の条件に合う農産物については、国内の需給に見合って——輸入対象外の農産物は別だと思いますよ。そういうものもある程度ありますからそれは別ですが、この問題をどうしようとするのか。まずそういう問題を整理しないと、ただ、金融だけ窓口を広げて、これで選択的に自由におやりなさいといっても、そういう政府資金を借りてやっても、全然農業の様相というのは変わってきます。国際環境から押されてくる、そこに農業様相というものの変わる最大の原因があると思う。昭和三十六年以降日本の物価が変動しないで据え置きになっておったとしたら、海外から買うものが安いといって、農民はいまほどいじめられなくてもいいと思うのです。その為替レートの、いわゆる鋏状格差をそのままにしておいて日本の農業を論ずるということは、大きな間違いだと私は思う。それをどう整理するつもりなのかお伺いしたい。
  62. 大和田啓気

    大和田政府委員 総合資金制度は、構造改善政策一環でございますけれども、この総合資金制度だけで構造改善が進むというふうに私、先ほどから申し上げておるわけではございません。あくまでその一翼をになうというか、金融の面から構造改善を助長するというほどの意味であります。また、構造改善政策全体に対する評価といたしましても、構造改善をやれば、農業に対する保護政策が不要であるというふうに、われわれ毛頭申しておらないのでございます。これは、ヨーロッパのドイツにしろ、フランスにしろ、相当構造政策に熱心である国におきましても、農業保護政策については、きわめて慎重な、また相当手厚い保護をいたしておることは御承知のとおりでございます。  したがいまして、構造改善によって日本の農業の体質を強くする、あるいは国際競争力を養うといいましても、それだけで、たとえば個々の具体的な農産物につきまして、価格制度はもう不要であるとか、あるいは輸入制限は不要であるとかいう趣旨で申し上げているわけでは毛頭ございません。価格政策あるいは輸入制限等々の農業保護政策は、かりに構造改善が相当なスピードで進むといたしましても、そういうものが必要であることは、言うまでもないところであろうと私は思います。
  63. 美濃政市

    ○美濃委員 それは、表現としてはそういうふうに言いますけれども、現実の農政というものは、たとえば農業基本法をつくった当時は、まず政策の基調は、日本農業の二重構造を解消するということを、基本問題調査会でも盛んに言いましたね。ところが、現実に進めてくると、二重構造は解消されないで、兼業農家が反対にふえてきた。こういう政策の基調とは反対現象が起きてきた。そこで、農業構造政策を進めるにあたって、農業構造改善事業というもの一つを考えてみましても、これは自立経営育成という政策で、まず標準自立農家をつくって、それをモデルとして農業を刺激して、農業の構造改善を進めるという政策のねらいであったと私は思うのです。  しかし、昨年八月に打ち出したこの構造政策というものは、農業構造改善事業を進めてきた政策の基調より、今度はかなり上回っている。たとえば、付属参考統計表を見ても、専業農家は、昭和六十年にほとんどもう四百二十万戸の一三・何%ですか、約五十五万戸にしてしまうというのでしょう。また、あなた方は言っていないけれども、この政策の基調を論ずる学者の説によると、内地では田は十ヘクタールなどということをいう。そうなってくると、一体どこまでやればいいのか、これは今日、日本全体の専業農家の不安だと思うのです。政策の基調が二年か三年で変わっていくわけですからね。たとえば、畜産経営でも、政府資金を借りて、これで自立経営は安定できるだろうということで生産構造をつくったのが、農業構造改善で、自立経営だ、これでやれるのだということでつくった構造では間に合わぬということになるのですね。次に打ち出す構造目標はそれ以上のものを打ち出してくるわけですから、こういうことでは専業農家の安定性というか、いわゆる農業職業としてわれわれは一体やれるのかやれないのかという不安が増大しておるというのが現実だと思います。  したがって、先ほども申し上げたように、輸入と関係のない部面の生産を主幹作物としている地域には、そういう不安がない一面もあるから、全部だとは言いませんけれども、特に、輸入対象農産物を主幹作物としてつくっている農民は全然不安ですよ。こんな資金をつくったって、借りてやっていいのか悪いのか、そのめどが農民につかないということです。その政策をきちっとしなければ、こういう金融政策だけつくっても、いたずらに農民に資金を借りてやらして、また次の段階で政策基調が変わっていく。これでは際限がないと思うのです。そういう政策をとるのであれば、政府資金でありますから、政策基調が変わった場合、貸した金は返さないでもいいくらいの考え方で出すのならいいですよ。農民としてはその点で全く困っているのです。それはどうなっているのか。政府として、これから以降の構造政策法律を出して、一体日本農業をどういうふうにしようとするのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  64. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いまのお話でありますが、私は、日本農政の基本的な方向は変わっていないと思います。自立農業を確立していくという根本的な基調に立って、生産政策構造政策をこれから本格的に進めていくわけでありますが、国際的ないろいろの圧力につきましては、主要農産物については、もちろん輸入制限その他の強力な保護措置をとっていかなければなりませんし、また、輸入される農産物については、今日いろいろな問題が出ておりますけれども政府として、私はこの保護政策を緩和していくということは毛頭考えられない。いまおっしゃるように、むしろ保護的なものを強化していかなければならないのではないか、私はそういうふうに思っております。
  65. 美濃政市

    ○美濃委員 農政の状態は、いま政務次官の答弁どおりになっていないのですね。表現としては、そういうふうにいずれも言うのですけれども。  そうすると、具体的な例を申し上げますが、たとえば、先日きまりました加工乳の保証価格ですね。これは三%ちょっとしか——まあ審議会に諮問した案より一キロ当たり七十五銭上げて最終決定したわけですね。これは生産事情からいうと——経済事情は先ほど申し上げておりますか、この経済事情の責任は、これは経済政策にあると思うのです。これは農民の責任じゃないですよ。世の中の諸物価は七%上昇する、加工乳は三%しか上げないというのでありますからね。それで生産性の向上で所得確保をするということになれば、上げなければ  あのときにも私、申し上げましたが、二頭買い増ししなければ前年度の所得を確保することができない、酪農民は。しかし、三%しか上げないから、もう一頭搾乳牛を買い増ししなければ、前年度の実質所得の確保ができないのですよ。ですから、たとえばあの基準を八頭体系の時間体系にしたんだから、五人規模の他産業並み労賃を今後適用する、こういう保証乳価に政策がきちっと立てば、十五頭標準でいけるんだという安心感を酪農民は持つわけですよ。そうするとそこで位置づけされて、十五頭で変動があれば、変動率をかけて保証されて、あと生産で努力すればいけるんだというめどが農民にはつくわけですね。そうするとこういう資金も、十五頭の体系でそれを設備するに合う限度額でいいんじゃないですか。私は、八百万貸そう一千万貸そうというこの資金制度そのものに対しても疑問を持つわけですね。ただ資金の最高限度額をきめて、そうして、先ほどの質問者も言われておりましたが、一県に二十人くらい、町村数で割ったら三町村に一戸くらいの人数を出して、これでどうするんだということですよ。その資金ワクもそういうきちっとした、ここまでやれば、あとは、日本通貨はどのように変動しようと、これは別なことなのでありますから、国際状況はどうであろうと、日本国内の全産業との関連における職業の位置づけとして、就業人口の位置づけとして、農業はこの線で政策的にきちっと守ってやるから、それまでは農民もがんばりなさい。たとえば乳業であれば、三頭や五頭の生産性の低い体系で、生産費所得補償方式の補償はできませんよ。これは一面やむを得ないと思うのです。生産性のごく低いものを対象価格政策をやるのなら、かなり高い水準の価格になります。しかしどの時点かで、ここまでやればそれ以上は安心しなさいというものがなければ、こういう資金制度をつくったって、借り入れて改善する意欲は農民に起きませんよ。また、これを取り扱うほんとうの末端の受託金融機関、農協等においても、どうしたらいいのかわからないというのが現実の姿であります。一体政府資金を借りて、経営拡大をさせていいのか悪いのか、三年ぐらいたったら、そんなものはだめだということを言い出すかもしれぬのでありますから、わからない。  構造改善事業と今度の構造政策とは、構造標準において、同じ自立経営といいながら、その意図する政策の構造目標というものは、かなり引き上げた構造政策を打ち出したわけですから、同じだという説明は、私どもは了解できません。かなり構造の規模拡大して、今後はこれでやりなさい、そうして農業構造改善事業はことしの計画をもって打ち切る、こういう点をやはり整理をしないと、以下こういう法律に対する審議に入れぬと思う。審議は審議でよろしゅうございますが、そのめどづけをしないと、こういう何かムード的に、全国の農家戸数から見れば、ほんとうに二階から目薬のような、よしのずいから天井をのぞくような制度を設けて、それでもって政策なれりというようなことでやっておったら、いわゆる兼業農家、二種兼農家は、その農家の所得の構成は、ほとんど賃金所得が構成主体になっておりますからいいのじゃないかと思うが、しかし、専業農家はやりにくくなるのですね。この点、ひとつはっきりと見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  66. 大和田啓気

    大和田政府委員 私ども自立経営農家の問題は、先ほども申し上げましたけれども農業で相当な生活ができる農家というふうに考えてよかろうと思います。具体的な所得水準で、最近のデータによりますと、それが農業所得九十万円ほどということになっております。したがって、要するに他産業従事者と生活水準なりあるいは所得水準が、おおむね均衡する農家ということが自立経営の概念でございますから、日本のように相当なスピード成長する社会におきましては、自立経営の所得水準がおのずから上がっていくことは、これはやむを得ないことであろうかと思います。このことはまた、ただ日本だけの問題ではございませんで、たとえば、フランスあるいは、ドイツ等においてバイアブルユニットという形で自立経営を押えて、最初に想定した規模よりも五年たち、六年たつとまた新しい規模なりあるいは経営内容を考えざるを得なくなるということがあるのと同様、固定し、あるいは静止しておる社会ではございませんから、一たん自立経営のいわば類型として若干の経営熱型を考えましても、それが五年たち、十年たちますと、それがおのずとまた変わって、さらに前進を余儀なくされるということは、これはむしろ農家にとっても非常に不幸な事態ではないというふうに私は思います。  したがいまして、今回私ども総合資金制度によってつくろうとする自立経営は、五年あるいは十年先を見て、最近における経済成長に合わして、それでも五年あるいは十年先に、おおむね他産業従事者と均衡する生活水準あるいは所得水準が得られるような農業所得が可能な農家というものを想定いたすわけでございます。これは地方によりましても若干の相違がございますし、経営類型によっても規模の違いはもちろんあるわけでございますから、そうかたく考えて、それからちょっとでも水準が下がればどうこうというふうには申し上げるつもりはございません。これはおおむねの考え方でございます。したがって、いま御指摘のように、一つ規模を想定して、かりに水田なら何町歩——三町歩とかあるいは四町歩ということを想定して、それが五年たち十年たてば、やがていろいろな経済条件に合わして、そういう類型もまた多少の変化があって差しつかえないのではないか。したがって、自立経営というものはこういうものであるから、それが五年、十年あるいはもっと将来にわたって動かないのでなければいかぬというふうには、私は考えません。  ただ、先生も御指摘になりましたように、たとえば水田十町歩というように、いわば日本の現実にとって夢であるような経営規模をわれわれが論じても、行政の実際あるいは農家の実践からいって、無理な、意味のないことであろうと思いますので、私ども総合資金の借り手として考えておりますのは、もっと穏当な、いわば日本の現在及び多少将来にかけて、これならば農業で十分生活していけるという程度の、農家として希望すれば達し得られるような程度の類型を想定しているだけでございます。
  67. 美濃政市

    ○美濃委員 農業構造が変化していくのは不幸でない、こう言うけれども、私が先ほどから言っておるのは、それは最大の不幸だと思うのですね。具体的な例を乳価にあげておるでしょう。諸物価が七%上がって乳価が三%しか上がらぬければ、一頭多く飼わなければ前年度の生活ができない。こんな不幸はないですよ。しかも、それば一定水準の規模のものを基準としてですから、十五頭というものを基準としておるわけですから、きわめて小規模をさしておるわけではないのです。年々そういうふうに変動していく、それに対応して構造をふやしていくなどということは、実際に農業をやっておる者はできることではないですよ。実際に農業実験のない人の空論ならどうか知らぬけれども、実際農業がそういうふうになるということは、これはもう農民の不幸これに過ぐるものはないと思うのですね。この点、私は不幸だ、こう言っておるのですから、不幸でないという理由をひとつ……。
  68. 大和田啓気

    大和田政府委員 私どもが考えております総合資金の借り受け者の将来の経営の姿というのは、これは決して役人が図上で絵にかいたものではございませんで、そういうものが現実の日本の農村において少しずつ育ってきておるというふうに私は思います。農業基本法を議論いたしました前後では、自立経営というのは必ずしも農村にまだ定着していなかったと私は思いますけれども、数は決してそれほど大きいものではございませんけれども、とにかく北海道から九州至る所の農村において、そういう農家が、とにかく農業をやれば農業生活ができるという、そういう経営が現実にあるわけでございまして、私ども総合資金で期待しておりますのも、そういう芽をできるだけ伸ばすということで、私ども役人どもが、机上である種の営農類型を設定して、それを無理に当てはめるという、そういうことを私は全然考えておりません。
  69. 美濃政市

    ○美濃委員 農林大臣が見えましたのでお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど来、見える前に質問をしておったわけですが、まず第一点は、最近のポンド切り下げ、ドル不安、それともう一つは農産物の輸入の関連において、私どもはやはり了解できない点がある。物価の変動しない、通貨水準を据え置いておる国と、このように変動した日本の円との間における——為替レートは据え置いておりますから、三百六十円のこの為替レートをつくった昭和三十年当時と今日とは、ものすごく違っておるわけですね。ただし固定レートということで、為替レートは据え置いておるというところに、私どもが現実に見て、為替レートの鋏状格差というものが貿易の中に出てきておる。この部分を、国際競争力の対応といって、構造政策でこの面も農民に、生産性の向上で対応性を持てなどということはできることではない。これをいま資金制度、いわゆる総合資金という大型資金制度をつくって、昨年八月に打ち出した構造政策を進めようとするのであるなら、この問題に対する政策はどうしていくのか。これがはっきりしなければ、輸入対象の農産物を主幹作物として生産しておる農家は、こういう資金制度をつくって大型化しても、いまの状態では、自立経営として生産を維持することが困難である、こう言っておるわけです。片やこの政策を出したときの農林大臣の談話は、いわゆるケネディラウンドや後進国特恵関税の問題で、農業の保護政策の緩和が問題とされておるといっている。緩和という表現を使う以上は、保護政策の後退ということを意味しておるわけですね。じょうずに緩和といっておるけれども、保護政策を緩和、するというのでありますから、強化しようということとはおよそ意味が違うので、ここの政策をきちっとしないと、日本の農業は安定しないと思うのです。別な要素に起因する輸入農産物が安いという現象が大幅に起きてきておるわけですからね。  たとえば、金価格の二重価格制なんかいまいっておりますが、あれからの標準から見ると、日本の円は国際的にどれだけ信用価値が低下しておるという測定も、おおよそつくのではないですか。そういうものを農業構造政策で解消するなどということは、農民にはできないわけですね。この政策はどう考えておるか。そうして、こういう金融政策をつくることはけっこうです。つくった金融政策が悪いというのではないが、しかし、政策をもっと進めるには、ただいたずらに政府資金を貸したら、それで農業が安定するというものじゃないわけですね。その関連を政策的にきちっと整理をして、その上に金融が行なわれるのでなければならぬと私はいま質問しておったわけです。大臣の見解を承りたいと思います。
  70. 西村直己

    ○西村国務大臣 農業だけでございません。日本経済全般をめぐる国際環境がきびしい関係に立っている。これは日本の経済だけではないと思いますけれども、日本の経済もまたそれは免れていない。この打開のためには、日本経済といたしましてもいろいろな考え方を持って進んでまいっており、またまいっていかなければならないと思います。農業におきましても、その一環として当然国際経済の中のきびしさの中へ入ってまいると思いますけれども、日本農業におきましては、価格支持の制度と輸入割り当て制度と、この二つにつきましては、今後とも必要に応じてこれは十分やってまいりたい、こういう考えでございますし、同時にあわせまして各方面の施策でもって国際競争力を強めてまいる、こういうことも当然やらなければならぬ、こういう姿勢でございます。
  71. 美濃政市

    ○美濃委員 私も、この生産性を高めて、正常な生産性の向上をはかっていくということに努力はしなければならぬと思う。その努力がいけないとこう言っておるわけではないのですが、そうすると、前段で聞きましたいわゆる経済政策上の、片や為替レートは固定レートでありますから、ドル不安もかなりきびしいようでありますから、いつまで続くか、どういうふうになるか、今後の推移がありますが、とにかく価格政策としては、そういう計算上、生産性の食い違いでない経済上の食い違いについては、価格政策で必ず守る、こう考えてよろしゅうございますか。
  72. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは経済全般の問題で申し上げまして、その中における日本農政としての特殊性からくる価格支持あるいは輸入割り当て、こういう制度でもって守ってはいかなければならぬと思います。したがって、たとえば金と円の関係あるいはドルの動きによる円の動き、これは日本経済全体として受けていく、こういう考えで、単にそれを農業だけでどうということではないと私は思うのであります。しかし、農業の部門におきましては、農業のいわゆる押されやすい体質というものは十分持っております。そこで、価格支持あるいは輸入割り当て、それからかたわら、できるだけやはりその間におきましても体質の改善と申しますか、競争力をつけてまいる、この柱でやってまいりたいと考えております。
  73. 美濃政市

    ○美濃委員 それからもう一つの問題は、一定水準のこういう資金制度をつくる。そうして一定規模経営目標、先ほど質問をしておったわけですが、たとえば酪農であれば十五頭、あるいは果樹であればどれだけ、こういう一つの目標を立てて、その目標に向かって構造政策というものは進めませんと、いまのように選択的拡大、あるいはことしきまった乳価のように、国内の物価は七%上がる、それから国外との関係もございますし、また急激に変動する国内物価に対する——一定の規模自立経営に達しても、その物価と農産物価格が並行していないと、これはもう七%上がって三%しか乳価が上がらぬと、十五頭で百十万ないし百三十万の所得の三%というと、現実に計算上四万だけ生活上の所得後退が起きるわけです。名目所得じゃなくてその後退が起きるわけですね、物価の値上がりについていけないで。そういう点はどう考えておるか。こういう金を借りて、たとえば十五頭なら十五頭の畜産経営で、これで自立経営をやれると考えても、一年に、あの家族労賃評価で所得向上を考えていくと、大体ことしきまった保証乳価のような体系であれば、乳牛を一頭ずつ多く飼っていかなければ、昨年は十五頭でやれた生活が、ことしは十六頭でなければならぬ、来年になれば十七頭飼わなければならぬ、農業収支というものは現実にこういう推移をたどっておるわけですね。これでは畜産にしても果樹にしても、そう簡単に毎年二反ずつ果樹園をふやしていけるというものでもなし、また、一応の標準世帯の労働力の限界というものもあるわけですね。その規模を消化する労働力の限界というものがあるわけです。酪農であれば、普通水準の標準世帯労働力、いわゆる家族労働では十五頭が限界だと私は思うんです。そういうものが全く無視された政策が行なわれていくと、農民はついていけなくなって、そこに固定化負債というものができてきて、やがては経営が破壊されてしまう。これが現実の姿なわけです。現実の姿がそうなってきたわけです。そこに農民の不安というものが、特に輸入対象農産物を主幹作物として作付しておる農民の、将来に対する希望もなければ、大きく不安が増大しておる。もちろん後継者はとどまろうとしない。こういう現実が起きてきたわけですから、これではもう農民を非常に政策的に刺激して、農民の経営を破壊していくと思うのです。この点をこれから先位置づけをして、政策的に確実な体制をつくって、安心してこういう資金を入れて、そうして生産性の向上もはかり、もちろん国際競争力の対応性もやはり高めていかなければならぬ。この両面でいかなければならぬと思うのですね。  ところが、一方では政策のほうがちょっとざるになっておるわけです。ですから、農民はこういう資金を借りてつくっても、特に輸入対象になる農産物あたりですと、こういう資金を借りて拡大していいのかどうかということになる。またもう一面は、構造改善事業自立経営として進めてきた構造政策の、いわゆる事業対象の審査標準と、今回打ち出した構造政策とはかなり食い違っておる。かなり大きい規模を目標に構造政策を打ち出した。二年か三年でそういうふうに農業を刺激をしていくと、農民はどうもならぬわけですね。農民の感覚としては、もうどうにもならぬという状態が起きてくるわけです。この点をどうお考えになっておるか。どうしようとするのか。
  74. 大和田啓気

    大和田政府委員 自立経営の観念が、それほど数字で固定した観念でございませんから、それが少しでも下がれば、すでに自立経営でなくなるという問題では私はないと思います。また、現在農業で十分生活できる農家が現実に農村にあり、またそれが前進しておることも私は事実だろうと思います。経営規模拡大し、飼養頭数をふやし、前進しておることは確実であろうと思います。  今後の問題といたしまして、私は長い将来を考えますと、現在の時点でこれでいいと思ったものが、十年先あるいは二十年先に、これでは自立経営として他産業従事者並みの所得を確保することがやや困難になって、もう少し前進せざるを得なくなるということが私はあり得ると思います。自立経営といいますか、とにかくこれだけ変転する社会において、他産業従事者並みの生活水準なり所得なりを上げるということは、なかなかむずかしいことである。したがって、自立経営を守ることが大事であると同時に、自立経営を維持していくことが——たびたびよそのことを言って恐縮でございますが、フランス、西ドイツ等においても、現在非常に大きな問題になっておるわけでございますが、自立経営自体の規模が、やはり少しずつ上にいかざるを得ないという問題は私はあろうと思います。  しかし、先ほどから申し上げておりますように、構造政策あるいは自立経営育成ということは、そういう規模のものができれば、あとはもう国として農民に対して、いかなる保護も加える必要がないということでは毛頭ございません。私は、ある意味でそういう農家が健全に発達をするためにこそ、農業保護というのは今後も強く要望されるという面が出てくると思います。したがいまして、価格政策あるいは輸入制限措置その他私どもがやっております農業施策の種類はいろいろあるわけでございますけれども、そういうものを動員して農業の保護につとめるわけでございますけれども、しかし、そういう価格政策その他の保護政策につとめながら、やはり自立経営内容というのは固定するものではないということ、これは御了承いただかざるを得ないというふうに思います。
  75. 美濃政市

    ○美濃委員 どうも質問にすりかえ答弁するからきちっとしないのですが、私は五年、十年先に大きな労働力の変遷や何かの問題で変わる変わらないと、それを言っておるわけではない。私の問うておるのは、具体的に、これからてん菜価格の問題も一出てまいりますけれども、いままで支持価格で、国内政策において物価が上がっただけ保証されないわけですね。一年一年の問題なんです。それを聞いておるのです。それは五年、十年先の労働力の変遷や何かによって起こり得るであろうということも言えます。そしてその五年、十年先にそういう要素で変わることがあるということはもちろん想定もできますし、それもそうだろうと思いますけれども、私の言っておるのは一年一年の問題を言っておるわけです。これがどうもならぬということを言っておるわけですから、これは大臣からひとつ御答弁を願いたいと思います。
  76. 西村直己

    ○西村国務大臣 酪農中心の例でございまして、総合資金制を中心のお話であろうと思います。そこで自立していくのについて、経済の変化、ことに国際環境からくる変化がきびし過ぎて、そういうようなものでは追いつけないじゃないか、農民が不安ではないかというお考えのように承りました。御質問を十分受け取っているかどうかわかりませんが、そこで問題は、私ども施策一つの根幹は、物価というものをどう安定させていくか、これは国内問題では大きな問題だと思います。これは、政府もほんとうに真剣に取っ組んでいかなければならない一つの大きな問題だと思います。これはすでに御存じのとおり、今年度四・八という努力目標を立てて、消費者物価指数を立てて、これを守り抜いていきたいという努力はしていきたい。その中において、すべての経済を運営していくという中において、農業、酪農、それらを勘案しながら、最近も御存じのとおり、皆さんの御尽力によって酪農の保証価格等も、ある程度の値幅上げをして価格保証というものはやってまいる。  したがって、私どもとしては、国内的には、やはり価格、安定という基礎が非常にくずれてまいりますときには、おっしゃるような自立の前途というものも非常にくずれてまいりますが、そうでない限りにおいては、自立を維持し、あるいは自立を少しでも推進さしていくという努力については、こういうような一つ総合資金制のようなもので包括的に資金を融通していくほうが、よりベターではないかというような考え方で今回提案しているのじゃないかと思うのでございます。
  77. 足立篤郎

    足立委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  78. 足立篤郎

    足立委員長 速記を始めて。
  79. 美濃政市

    ○美濃委員 私も三%と限定しておらぬのです。私の計算では、やはりいろいろ生産性を加味するとそうなる。しかし、私もそれにはこだわりませんが、必ずしも五%上がったというふうには解釈していないわけで、そういうこまかい議論を言っていると時間がかかりますから……。  その次。そうしますと、もうちょっと大臣のお考え方が前向きになってもらわなければ困ると思うのです。私は牛乳だけをさしておるのではないので、例を牛乳に言っておるだけであって、牛乳に固定して質問しているわけではないのですから。最近きまった一番近い例を言っているわけです。去年の農産物の支持価格全般を見ても、必ずしも支持価格は国内物価の上昇に伴っていないわけですね。そこに農民の苦しみがあるわけです。これは外国農産物の輸入に対する対応の前に、国内政策で上がってくる。物価が変動するのと価格とが即応しないということはまことに苦しい。そういう面ができる中に、為替レートの鋏状格差が非常に大きく目についてきた。鋏状格差という表現は、必ずしも経済用語として適当かどうか、私の思いつきの表現でありますが、そういうものが大きく出てきたということを言っておるわけでありますから、それをもっと前向きに、これからの支持価格にそういうものを分析して、そういうものは農民の責任にしないで、やはり一定基準のこういう資金で、国が標準とする規模経営をこういう借り入れ金で拡大した場合、それで安定するのだというめどづけをしなければならぬということを言っているわけなんです。  ところがその答弁が、変動するのはあたりまえだとか何だとかと言っても、私の考えでは、そういう物価変動や通貨変動で移動してくるものを、それに即応する価格政策をとらないで、変動するのがあたりまえだという考え方を持つ考え方には、私としては同調できないわけですね。将来労働人口の変遷や何かで、十年、二十年光に起き得るというような問題は、それはそのときの時点でありますから、そういう問題を私は言っておるのではありません。そういうときには、全体的な社会情勢で構造が違っていく場合は予測もされますし、またそういうことが起きた場合には、それなりにその時点でやっていかなければならぬ。一年一年に起きてきておる最近の状態というものは、自立経営が、こういう資金を安心して借り入れるめどづけがないということを言っておるわけです。このめどづけに対して、前向きの姿勢でやはり農政は取っ組んでもらわなければならぬ。それさえ聞けば私はこの質問はやめるわけです。それで了解できるわけなんです。
  80. 大和田啓気

    大和田政府委員 私が申し上げておりますことの多少繰り返しになりますけれども、私は、自立経営的なものが農業生活できるといいますか、農業で相当な生活水準を得られるようにするということが、価格政策一つの重要な目標であろうというふうに思うことは、これはおそらく先生の御見解と同じだろうと思います。ただ、自立経営的な類型に即してそれを全部価格で見るかどうかというと、これは別問題でございますし、それから価格政策あるいは輸入制限等の施策の実施を、私は国が怠っていいというふうに申し上げておるわけでもございません。それは自立経営がかりに相当多数つくられるといたしましても、農業保護政策というものは、今後大いにやる必要があるというふうに思います。ただ、長い目で見ますと、これだけ経済が動いておる時期でございますから、相当長期的になってくれば、やはり農業経営のあるべき姿というものは、だんだんに変わるだろうということだけを申し上げておるわけでございます。
  81. 美濃政市

    ○美濃委員 同じあれでどうも食い違うのですが、大臣の見解を承りたいと思います。
  82. 赤路友藏

    赤路委員 関連してちょっと言いたいのですが、どうもちょっと食い違っておるように思うのです。委員長がいま乳価問題を持ち出して、美濃君が、言っておる数字に差があると言うが、美濃君がいままで聞いた範囲内では、一つの例としてこれを取り上げた。少し違っておるのは、いままでの大和田局長の答弁をずっと聞いていますと、長期展望の上に立つ、長期計画の上に立った御答弁をなさっておる、こう思います。そして美濃君は、当面の農政としては価格政策を無視してはいかぬじゃないか、価格政策を確立することによって農民の生産意欲を高めていく、そして長い目で見ていけば、それはそれなりにコストタウンもするじゃないか、もっと近代的に進むじゃないか、こういうことを言っておるので、それがどうもどこかで食い違っておるものだから、ぴたっとこないのですよ。よく聞いて入ると違っていないのだが、何かぴったりしないんですね。だから大和田さんは、根本的な日本農政の姿というものを一応浮き彫りにして答弁をされておるように思うわけだ。それはそれで私けっこうだと思う。日本農業が将来いつまでもいつまでも、関税を引き上げるとか、また価格対策でこれを保護していくというようなことでは、日本農業のほんとうの国際的な発展というものはあり得ない。やはり国際農業と太刀打ちし得るというところまで日本農業を高めていくというのが、私だれしも考える一つの方向だと思うわけだ。その点を押えておられると思う。ただ当面、ことし来年、この間における農政の姿としては、そういう長期展望もいいが、その長期展望だけではいかぬのじゃないか、こういうことだと思います。あまり違いはないのだけれども、何かずれておるように思うので、その点ひとつ心がけていただけばいい。答弁は要りません。
  83. 足立篤郎

    足立委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  84. 足立篤郎

    足立委員長 速記を初めて。
  85. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、ただいま赤路委員から表明になったことと、外国農業との正常な生産性の違いですね。これは段階的に進めるべきであるということと、もう一つは、さっき言った国際為替レートの鋏状格差——ということは、私の独断的な思いつき表現でありますから、必ずしも経済用語として当を得ているかどうかは別といたしまして、これだけドル防衛、ポンド切り下げ、それに特にドルにつながっておる日本の円というのは正常でないのでありますから、この格差を構造政策で補うといったって補いようがないと言っている。それだけです。それを当面の政策として、農民が困らないように、価格政策なり、あるいは関税なり、あるいは輸入規制なりできちんとしなければならぬということを言っておるのです。その政策の姿勢を聞いておるわけです。
  86. 西村直己

    ○西村国務大臣 お気持ちは、だんだん私もお聞きしましてよくわかりました。また、赤路さんからおっしゃるような補足の御説明でもわかります。長期展望に立っての局長からの説明も、長期にわたっては御納得がいただけると思います。  そこで、当面の問題を非常に御心配なさるし、また、農民の諸君もそれで不安というものが出やすい。これはやはり農民だけではなくて、日本経済全体が、国際経済から来る波を受けておられる方々が非常な一つの不安を持っておられる。それをどう、安定させるかというのが国の大きな内政、外政の中心でもございます。と同時に、私どもとしては、割り当て制なりあるいは価格支持なり、特に価格支持制度というものにつきましては、われわれもやはり十分気をつけてまいらなければならぬと思います。と同時に、その基礎に立ちます物価の問題というものに対しましても、政府が絶えず真剣な努力を払ってまいるということが大事なことだ、こういうふうな姿勢でまいりたいと思うのでございます。
  87. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、この構造政策を見ますと、昭和六十年までに、付属参考統計表では農家戸数四百二十万戸にする、それからその中で専業農家率は、昭和六十年までに一三・四%だったと思うのですが、そうすると約五十五万戸ということになるわけですが、反面、日本の限られた領土と日本の社会構造として、労働白書で見るように、一次部門、二次部門を除きまして三次部門、いわゆる非生産的労働というものが四二%と昨年は出ておりますが、ことし一年推移すると五〇%近くになってくるのじゃないかと思うわけですが、さらにこの農業部門等も——地下資源産業も、日本の地下資源産業は衰微している。特に石炭産業等は衰微している。これはエネルギー革命との関連でそうなっておるわけですが、こういうふうにしていくと必然的に、日本の地域社会では非生産部門労働がもっと多くなるのではないか。  先ほどフランス等の話が出ておりましたが、フランスの農業政策は、日本の今度の構造政策のように、専業農家を大型化するという政策は、いまだ打ち出しておりません。フランスの農業構造は、やはり日本とは前から様相が違いますから。しかし、問題にはしておるけれども、フランスの農業構造政策というものは、昭和三十五年当時からずっとそう変わらない政策をとっておるというてふうに私は理解しておるわけです。そしてあの日本の労働白書が出たときに、これは新聞の社説でも出ておりましたが、EEC共同体の非生産部門就業率というものは二五%である。日本は四二%になった。四二%は労働白書に出ておるわけです。あるいはソ連は二〇%くらいである。中国に至っては非生産部門労働が一六、七%である。そうすると、地域社会において五〇%近く非生産部門労働になってくるということは、この農業を減しますと、片や企画室からもらった資料によりますと、たとえば北海道のような、いわゆる二次産業がきわめて成長しない地域で今度の構造政策を進めていくと、北海道の人口は四百万くらいになるのではないか、こういう観測も政、府内部の部局でも出ておるわけですね。それが都市周辺にさらに過密化して、正常な社会地域が、こういう農業政策で維持できるかどうか、私は非常に疑問を持つわけです。そういう社会地域になると、この農業構造政策が完了したときは、おそらく非生産部門労働が五〇%をこすのではないか。そういう社会地域は世界にもないわけですね。また、実際の就業経済構造の社会地域としては私は維持できぬのではないかと思う。もちろん、非生産部門労働というけれども、これも社会的な役割りで大切な労働でありますけれども、一定基準を上回ってくると、これは維持できない問題が出てくるだろうと思う。これも一つの社会形成上の原則でないかと思うのです。そこに、日本は日本の国内なりの調和か必要でないかと考える。したがって、今度の構造政策で打ち出しておるこの就業構造というものは、これを進めると大きなあやまちを犯すのではないかと思うのです。大臣の御見解を承りたいと思います。
  88. 西村直己

    ○西村国務大臣 おそらく日本の就業構成の問題だと思うのでございますので、企画室長からちょっとお答えさせていただきましょう。
  89. 小沼勇

    ○小沼説明員 お答え申し上げます。  全国的な国民経済の中での農業の地位というか、就業人口につきましては、現在総就業人口の中で二一・九%という状況でございます。今後の労働力の移動によりまして、若干減小の傾向は続くであろうというふうに思ってておりますが、地域別にどうかという問題でございますが、これにつきましては、やはり全国的に農業の状況を現在見ておりまして、地域によってかなりの差が、たとえば太平洋ベルト地帯、あるいは北陸、あるいは北海道というふうな差も出てまいるかと思いますが、しかし、今後遠隔地帯におきましては、本格的な農業を展開する可能性を十分持っておるし、また、そういう農業の就業構造が形成されるのではないか、また、そういう農業構造を形成していくように努力すべきであろうというふうに考えておるわけでございます。
  90. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、この付属参考統計表どおり構造政策を進めるというのでありますか。
  91. 小沼勇

    ○小沼説明員 付属参考統計表におきましては、就業人口の減小の傾向を機械的にマルコフ方式というもので推計をしただけでございまして、こういうふうに政策を展開しようというものではございません。
  92. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、政策の基調はどうなんですか。これは単に測定であるならば、政策の基調はどうするというのですか。
  93. 小沼勇

    ○小沼説明員 今後の傾向といたしまして、こういう、ふうに就業人口が、都市の変動によってかなり差があるかもしれませんが、傾向としてこういう方向に進んでいくのではないかという推計、見通しでございますけれども、その減小の傾向に対応させながら農業の体質を強化してまいるという考え方でございます。
  94. 美濃政市

    ○美濃委員 そうすると、こういうふうに政策は進められる、どうもそこはちょっとまだあいまいですが、政策の基調はこのようになるだろうということを測定して、それに即応するように進めていく。しかし、私はそうなった場合、非常に日本全体の調和を欠いてくるのではないかということを聞いておるのです。欠かぬという見解に立っておるのですか。欠くという見解になれば、ここで構造政策の問題としては、欠かないようなてこ入れ政策政府としては行なうべきであると思うのです。
  95. 小沼勇

    ○小沼説明員 全体としての就業のバランスが狂ってくるのではないかといふうな御指摘かと思いますが、就業人口が二一・九%の割合でございまして、これはイギリスあるいは西ドイツ等よりも就業人口の割合は、現在は高い状況でございます。今後、地域によりかなり発展の様相、逆に言いますと、就業人口の減少の形も違ってまいるかと思いますが、経済社会発展計画におきましても、大体一五、六%の就業人口ではなかろうかということも推定いたしておりますけれども、私ども、その就業人口の減少の傾向に対応させながら、これに合わせるという考え方ではございませんが、できるだけ体質の強い農業の構造に持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  なるほど、中には兼業農家等もかなりあると思いますが、同時に、新しく農業学校、局校等を卒業して農業に残る人も、年々大体六万人くらいずつおりまして、それが今後の農業の中核になって、農業生産をささえていくということに大きく期待もしておりますし、地域的にそれぞれ農業構造を非常に強い体質のものに持っていきたいということで、構造政策を進める場合にも、その地域、地域の実態に対応させながら進めていくという考え方でおるわけでございます。
  96. 美濃政市

    ○美濃委員 これはいずれも仮定の問題であるし、私としては非常に警戒を要すると考えておりますが、これ以上この問題は質問しませんけれども、どうかひとつ、先ほど申し上げた問題とこの問題は日本全体の将来にきわめて大きな影響のある問題でありますから、十分検討して、将来間違いを起こさないように、強く要望しておきます。  委員長に申し上げますが、せっかく大臣が見えておりますので、あと私の質問は、この資金制度事務的な問題だけで他の質問はもうございませんので、一応質問を保留して、どなたか大臣に質問があれば、ここで中断をさせていただいてもよろしいと思うのであります。お計らい願います。
  97. 足立篤郎

    足立委員長 それではそうお願いします。  西上官私君。
  98. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、大臣に若干お尋ねをしたいのでありますてが、今度のいわゆる総合資金制度は、頭から、自立経営育成、こういうことを標榜しておるわけです。あるいは、さっき美濃委員質問いたしましたように、農林省が大きく取り上げております構造政策一環だ、こういうことを看板にいたしておりまして、これが重大なる政策目標になっておるわけです。  したがって、まず最初に伺いたいと思いますのは、いわゆる自立経営というのに対して、政府は現在具体的にはどういう計画をお持ちなのか、こういうことであります。その点、まず第一に伺いたいと思います。
  99. 西村直己

    ○西村国務大臣 御答弁にならぬかもしれませんが、自立経営というのもわれわれとしては一つの目標でありますが、同時に、日本の実際としては、零細な農家、いわゆる兼業農家というものは七割近くあるわけで、したがって、これらが生産能率を高めていただく、また少しでも所得を向上していただくという意味での協業助長、こういう車の両輪のような形で私ども進めてまいる。その中においての自立経営というものを、やはり今回のような一つの方法で、もちろんその上には、資金だけではなくて他の全般的な施策というものが伴ってまいらなければならぬと思うのであります。
  100. 西宮弘

    ○西宮委員 他の全般的な施策ということを言われたので、それではついでにお尋ねいたしますが、いわゆる他の施策として現にどういうことを考え、おられますか。
  101. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは抽象的に申し上げますと、構造政策なり、あるいは生産政策なり、あるいは価格政策なり、こういったものをあわせまして進めてまいりたい、こういうわけであります。その中においてのあるいは協業であり、あるいは自立経営育成、こういう思想でまいりたいと思うのであります。
  102. 西宮弘

    ○西宮委員 特に私が、今度の重大な政策目標に掲げられております自立経営について政府はどういう計画をお持ちか、こういうことをお尋ねいたしましたのは、かつていわゆる所得倍増計画をつくりましたときには、十年間に自立経営を百万戸つくるのだ、こういうことを発表しておったので、したがって、その計画は今日はどうなっておるかということをお尋ねしたい。
  103. 西村直己

    ○西村国務大臣 なお補足は政府委員のほうからいたさせますが、長期見通し等におきましては、生産シェアの半分ぐらいのところを自立経営に持っていけばというめどは立てている、こういうふうに私は考えておりますが、長期の見通し等につきまして、政府委員のほうから詳細申し上げたいと思います。
  104. 小沼勇

    ○小沼説明員 お答えを申し上げます。  現在、四十一年度で自立経営が、農家経済調査によりますと全体の農家の九・九%ということで、年次報告でも出ておりますけれども、それを戸数に直しますと、大体五十四万ぐらいの戸数になろうかというふうに思います。しかし、今後どういうふうに自立経営農家育成していくかということになりますと、いろいろの経済の発展の情勢等を勘案しなければいけないと思いますけれども、現在の発展の傾向を伸ばしてまいりますと、大体四十一年度で、下限の農業所得が九十二万円で自立経営農家の線ということになりますが、今後の経済成長率を見てまいりますと、それはかなり上がってまいるだろうと思います。  それにしましても政策的な考え方として、できるだけこの自立経営農家が数多く育成されて、それによりまして、できるだけ多くの農業生産の中でのシェアを占めるという方向に進めてまいりたいということでございまして、たとえば現在、農業生産額全作の自立経営農家が二七%の生産額のシェアを占めておりますけれども、今後少なくとも五〇%以上に持っていきたいという、そういう願望を持っておるわけでございます。
  105. 西宮弘

    ○西宮委員 幸いに西村農林大臣は政調会長をやっておられましたので、その辺の事情に詳しいということでお尋ねをするわけですが、実はその所得倍増計画に掲げた自立経営農家百万戸というのが、今日どこかへ消えてしまったのではないか、こういうことを私は心配するためにお尋ねをするわけです。もちろん、いま企画室長の言われたような一つの願望、まあどんな理想的な願望を持っても、願望ならばけっこうでありますが、そうではなしに、これがいやしくも政府計画である以上は、相当の具体性を持った実現可能なものでなければならぬ、あるいは少なくともそれが十分期待できるようなものでなければならぬということをわれわれは考えるわけです。そういう意味で、かつて唱えた十年間に百万戸という自立経営の目標は今日はどうなってしまったのか、こういうことをお尋ねしたいわけです。
  106. 西村直己

    ○西村国務大臣 所得倍増計画で、たしか百万戸を目標にしたことは、そのとおりだろうと思います。しかし、御存じのとおり、最初の所得倍増計画を中期計画に変え、その後におきまして、経済の異常な高度成長というような現象にぶつかって、必ずしもこの目標自体が十分でなかったという形で、今日では経済社会発展計画という一つの五カ年計画のめどを立て、私どものほうの農林省といたしましても、昭和四十一年から起算いたしまして、十年ぐらいのところをめどにした場合に、総生産のシェアの半分ぐらいを、自立経営農家の力によって生産し得るというような方向へ一つのめどを置きまして努力してまいりたい、こういう考えでございます。
  107. 西宮弘

    ○西宮委員 いま大臣が言われたとおり、所得倍増計画は途中で中期計画に変わった。その中期計画に変わった際に、自立経営についてはこういう表現になったわけであります。「自立経営育成は、政府農業従事者等の長期にわたる努力をまってはじめて可能となるものである。したがって計画期間後も施策を強力に推進してなるべく早い時期に百万戸程度自立経営育成されるような配慮が必要である。」こういうふうに表現が変わったわけですね。つまり、これで見ると、政府あるいは農業従事者の長期にわたる努力によって初めて達成できると、もう前のように何年間に云々というようなことはいわなくなってしまったわけでありまして、長期にわたる努力をまって初めて可能となるのだ、こういうことになって、したがって、中期計画期間後も施策を強力に推進をして、なるべく早い時期に百万戸をつくりたい、こういうことに変わったわけですね。ですからこれで見ると、たとえば十年間とか、あるいはまた中期計画の期間中とか、こういうことはもうあきらめてしまったのではないかというふうに私は思うので、その点をお尋ねしたような次第です。
  108. 西村直己

    ○西村国務大臣 経済社会発展計画におきましては、後退という意味ではないかもしれませんが、農業のそういった見通しにつきましては、最初の所得倍増計画が目算が狂っております。それから中期計画におきましても、長期にわたって努力しなければならぬ、しかも農家自体の非常に強い意欲をもってということを中心にしてやっているわけであります。したがって、経済社会発展計画におきましては、おそらくそれは戸数等もあげないで、長期にわたって多数の自立経営農家ができるようにというような、言いかえれば最も実行可能な、妥当な目標に移りかえている、こういうふうに御了承願いたいと思うのであります。
  109. 西宮弘

    ○西宮委員 経済社会発展計画についてまでお話があったので、先回りして答弁をされたわけですが、この経済社会発展計画では、もうそういう目標は具体的には掲げなくなってしまったわけですね。だから、これは最初の所得倍増計画では十年間に百万戸、こういうことを努力目標として掲げ、さらに二、三年たったらば中期計画で、これでは長期にわたって云々と、こういうことで、非常な長期の間に百万戸をつくりたいということをいっておったのだけれども、さらにそれから二、三年たった今度の経済社会発展計画では、その目標もおろしてしまった。私は、少なくとも最初に掲げたあの所得倍増計画というのは、申すまでもなく農業の面については、農業基本法ができるときにそれと相対応してつくられた計画なんでありまして、農業の面については、農業基本法と時期を同じくしてできた計画なんでありますから、あの農業基本法をつくるときのそういう政策目標というのは、もう今日では消滅しまった、そう言わざるを得ないと考えるのですが、いま大臣が言われたような、なるべくたくさんつくるというようなことならば、これはまあだれでも考えていることで、それが妥当な計画であるというふうに言われものでは、私どもはとうてい納得できないと思うのですが、どうですか。
  110. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもは、おそらく、この所得倍増計画、中期計画、それから経済社会発展計画の推移を見まして、できるだけ実際に近づけためどというものを立てる、したがって、その間において数字をはっきりさして、その目標で計画的にやるというよりは、少しその点を後退さしたほうがいいという考えで経済社会発展計画というものは答申された、こういうふうに解釈をしておるのであります。
  111. 西宮弘

    ○西宮委員 そういうふうに最初の計画を後退さしたのだと言われるならば、全く何をか言わんやで、それが政府の姿勢だというならば、私どももそのとおり理解をいたします。非常に、いわば正直な大臣の答弁だと思う。あの農業基本法をつくりました当時は、農業基本法をつくれば日本の農業が一躍大躍進をするのだ、こういうことを盛んに宣伝をされたわけですね。だから、一面においてそれを具体化した姿が十年間に自立農家百万戸、こういうことを具体的な目標に掲げて、非常に農村にバラ色の夢を振りまいたわけです。ところが、それは現実に沿わないので、もっと現実面を重視して政策を後退さしたのだ、こういうことであれば、もとより私ども何をか言わんやで、これ以上論議する必要はないと思う。しかし私は、せっかく今度も自立農家育成ということを大目標に掲げて新しい金融制度をつくる、こういう際に、その肝心な目標が後退をしているというのでは、いささか情けないのではないかと思うのですが、どうですか。
  112. 西村直己

    ○西村国務大臣 具体的に戸数というものはもちろん示してないのが今回の計画であります。ただし、農林省立場におきましては、先ほど申し上げましたように、総生産の中のシェアの半分くらいをめどに自立経営というものを育成していきたい、こういうめどは一応担当の省としては、やっておるわけであります。またそれ自体が、むしろ計画そのものよりも、われわれとしては、一つの実行推進官庁でございますから、責任をとれる立場でございます。
  113. 西宮弘

    ○西宮委員 農林省だけの考え方あるいは計画は、さっき企画室長の言った願望というような点ならば、これは特に願望というようなことになれば、どういうことでも考えられると思うのでありますが、この所得倍増計画なりあるいはまた経済社会発展計画なり、これはいずれも閣議決定を経た計画であるわけですね。だから、そういう閣議決定というオーソライズされたものの中には、すでにそういうものは影をひそめてしまっておる。こういうことになると、私は非常に権威のないものになってしまったのではないかと思う。そういう意味で、その点は農林省としての、あるいはまた農林大臣としての願いである、こういう点はわかるとしても、国の政策全体の中には生かされていないのではないかということを憂慮するわけであります。したがって、もう一ぺんその点について解明をしてもらいたいと思います。
  114. 西村直己

    ○西村国務大臣 なお経過につきまして、もう一度企画室長から補足をさせますから……。
  115. 小沼勇

    ○小沼説明員 所得倍増計画並びに中期経済計画、さらに経済社会発展計画というふうに、経済の発展に対応させながら政府計画か積み重ねられてまいっておりますが、その中におきましての自立経営農家をどう考えるかということでございます。これにつきましては、すでに昭和三十五年の段階と昭和四十一年とでは、自立経営農家規模あるいは生産のシェアもかなり変わってきております。今後経済の発展に対応して、自立経営農家経営規模等につきましてもかなりの変化が出てくるのではないかと思います。そういう点からいいますと、直ちに幾ら幾らの経営面積のものを何戸つくるというふうな行き方ではないのではないか。むしろ考え方として、今後の農業の体質を経営の面から強化していくという意味では、やはり農業生産の全体の中でのシェアとして、相当、少なくとも五〇%以上を占めるような、そういう形に持っていくということでありまして、そういう方向で自立経営農家をできるだけ数多く育成していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  116. 西宮弘

    ○西宮委員 そのいわゆる規模が変わってきた、このことは私は理解できるわけですよ。これはだんだん経済社会全体の変動に伴って、たとえば、所得倍増計画の当時は一町五反を基軸にしておったわけだけれども、一町ないし一町五反、あるいは一町五反ないし二町、こういうことを「農業の基本問題と基本対策」の中では表現をされておったはずであります。それがだんだんに、いわゆる限界基軸が上昇してくる、こういうことはわかるわけだが、しかし、農林省ではそういう表現のしかたを改めて、あるいは昭和三十九年の農業白書からだったと思いましたが、そういう耕地面積によって区分をするというやり方を改めて、農業所得によって表現をすることにしたはずですね。したがって、農業所得を基準にしていくならば、これは物価の上昇なりその他そういうものに合わせて毎年毎年——たしか一番初めは六十万だったと思うんだけれども、それをいまでは九十二万というふうに、だんだん物価の変動に合わせて引き上げてきているわけですから、そういう点からいうならば、これは必ずしも規模拡大さして自立経営農家を算定している、こういうことにはならないと思うのですが、その点はどうですか。
  117. 西村直己

    ○西村国務大臣 企画室長から答弁をさせますから……。
  118. 小沼勇

    ○小沼説明員 御承知のとおり、三十五年には自立経営農家の下限、つまり他産業従事者と均衡する下限というのは四十八万円でございました。そういう農業所得が四十年には八十三万円に上がりまして、四十一年には、現在九十二万円になっております。ただ、その間に他産業の所得が上がってまいりましたということが一つと、それからもう一つは、農産物価格がかなりの上昇率をもって上がってきておりますので、実質的に経営面積で、九十二万円をまかなう面積というものと三十五年の四十八万円をまかなう場合の面積、これはそれほど大きく変化はしておらないで、若干大きくはなってきておるという状況でございます。
  119. 西宮弘

    ○西宮委員 毎年発表されるいわゆる農業白書でございますが、それに、ことしは初めて自立経営農家という一項目を加えたわけですね。これは何か特殊な意味がありますか。
  120. 小沼勇

    ○小沼説明員 お答え申し上げます。  私ども、毎年自立経営農家についての分析をいたしておりますが、昨年の白書から自立経営農家ということをはっきり打ち出しまして、そこで今後の進むべき道につきまして、協業の助長、自立経営育成という農業基本法の線に基づく展開の方向を明らかにしておるわけでございまして、白書ではそれを動向のところではっきりさせるとともに、講じようとする施策におきまして、構造政策を展開していく場合の基本的な考え方のもとにしておるということでございます。
  121. 西宮弘

    ○西宮委員 農業基本法による自立経営というものを基準にしているというお話でありましたが、それでは大臣にお尋ねいたしますが、今度設けた金融制度、これは自立農家育成を目標にする、だから、将来自立農家たらんとする自立農家候補者、こういう人に貸し出しをする、こういうことになるわけですが、その際のいわゆる自立農家というのは、農業基本法の十五条にうたわれているあの条件に該当するものをさすわけですか。
  122. 西村直己

    ○西村国務大臣 そのとおりでございます。
  123. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、実はくどいように自立農家という問題をお尋ねしてまいりましたけれども、これは先刻来申し上げたように、政府全体の計画の中ではだんだん影が薄くなって、あるいはおしまいには影がなくなってしまう、こういうことに非常に不安を感ずるために、それがために繰り返しお尋ねをしてきたわけです。それを裏づけるかのごとくこの自立経営農家、これを提唱しましたのは、御承知のように「農業の基本問題と基本対策」の中で取り上げられたわけでありますが、そしてそのときこの問題を最も熱心に主張されたのは、当時農林事務次官でありました小倉武一さんであったわけですね。この人が最近書きましたものを見ると、非常に悲観的な書き方をしているわけです。たとえば「四十年の農業白書によると、自立経営とみなされるものが農業戸数で約一割である。その農家生産農業生産総量の三割程度と想定するとして、そういう自立経営を、今後の農業経営のあり方、あるいは今後の日本農業のにない手として考える場合に、一体それが重要な目標たり得るであろうか。数にして一割、生産において三割というような程度では、一体それに今後の日本農業のにない手たる役割りを期待することができるのかという疑問が大きいわけである。」あるいはまた、「日本の農業の現状では、自立経営が日本の農業の中核である、あるいはにない手であるというわけにはなかなかいかない。」それからもう一つのことばは、「兼業がふえていくことは、自立経営が育っていくこととは全然逆な現象である。」こういう言い方をしまして、自立経営を日本農業のにない手である、あるいは中核であるというふうに見るのは間違いではないか、こういうことを小倉さんが言っておるわけですね。ほかの人でない、小倉さんがそういうことを言っているということは、私どもは、いわばこの自立経営の生みの親ともいうべき人がそういう見方をしているということに非常な不安を感ずる。こういう点について、大臣の見解はいかがですか。
  124. 西村直己

    ○西村国務大臣 それは私としては拝見してない御意見であるわけですが、それはそれなりのあるいはそういう意見はあるかもしれませんが、しかし同時に、われわれとしましてはやはり十年ぐらいを目標に、総生産の半分ぐらいのところを自立経営農家に持ってもらいたいという考え方のもとに進んでおるのでありまして、一つのそういう考え方だけで、全体を律するわけにもいかないんじゃないかと思うのであります。
  125. 小沼勇

    ○小沼説明員 ただいま申されました意見でございますが、私どもはやはり今後の農業、国民に食糧を安定的に供給していくという場合には、兼業農家も含めまして農業生産を上げていくということが必要であろうかと思いますが、その場合に、もちろん単に自立経営農家だけということではございませんで、兼業農家を含めて協業等の体制をとっていかなければならないことも事実でございます。しかしその中心になります農家、これはあるいは専業農家という場合もございましょうし、若干の兼業もしながら相当経営規模を大きくやるという農家もあると思いますが、やはり農業によって十分な所得を得、また豊かな生活を営むような、そういう農業に専念する農家がまん中にありまして、それが中核になって、兼業農家も含めて全体の生産を上げていくということが必要であろうということでございまして、やはり自立経営農家育成と、あわせて兼業農家を含めた協業等の生産組織でバックアップしていくということが必要ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  126. 西宮弘

    ○西宮委員 私どもももちろん、自立経営農家ができて、農業だけで十分生活ができるという農家がたくさん出てくることを希望するわけです。希望するわけだけれども、ただ、現実はそれが容易ではないということのために、先刻来申し上げておるような政策の後退——政策というか、計画上これが次第に後退をしていったり、あるいはいま読み上げたような小倉さんなどの意見が開陳をされたりというようなことになる。願望としては非常にけっこうだけれども、実現はなかなか容易ではない。そういう現実を認識するために、私はそういうことを言ったわけです。  そこで、いま企画室長は、たとえば兼業等の農家についても、協業組織等を拡充することによって日本農業の中の重要なる役割りを果たさせていきたいという意味のことを言われたのですが、大臣いかがですか。私はもちろん、自立農家ができることは、前段申し上げたようにたいへんけっこうなことだと思うのですよ。思うのだけれども、現実にはなかなか容易ではないというならば、そこまで到達できない農家、それは兼業農家であったり要するに不完全な農家だと思いますが、こういう人の経営規模拡大をするためには、共同経営、協業経営というようなことがどうしても必要だと思うので、私はむしろ、政府施策として力を入れるならばそういうところに相当力点を置いてもらいたい、置くべきだ、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  127. 西村直己

    ○西村国務大臣 私どもももちろん、自立経営というものが一つの中核になると思います。それはやはり実際上非常に困難であろうとおっしゃる。全体の農業の問題というのは、現在の高度化していく社会の中において農政というものは、日本だけではございませんが、困難な問題をしょっておることは御存じのとおりでございます。しかしその中におきまして、中核的な自立農業経営というものを置きながら、兼業とともに一つ農業生産というものを上げてまいる。そこで兼業におきましても、最初に申し上げましたように協業組織をやはり強めてまいる、そうして総生産を上げてまいる、こういう考えでございます。
  128. 西宮弘

    ○西宮委員 ヨーロッパの国では、いまの日本でいう協業経営、協業組織、特にそのものに対してだけ、あるいは補助金を出し、あるいは手厚い融資をする、こういうことで、協業経営、共同経営によって規模拡大をはかる、あるいはそういうことだけを中心にして農業政策を進めている国があるわけです。私はむしろぜひそうであるべきだと思うのです。もう一ぺん大臣にお尋ねをいたしますが、そういう協業経営、共同経営というようなものをどの程度に重視をされるか。これは農業政策全体の中で、どの程度それに力点を置かれるかということをもう一ぺんお尋ねをしておきたいと思います。
  129. 西村直己

    ○西村国務大臣 総生産を上げるためには、私は、先ほど最初に申し上げましたように、中核は何といっても一つの専業農家として豊かな農業をやっていける、専業にいけるものか先達になってもらわなければならぬが、同時に兼業におきましても協業組織というものを助長する、そして両者が合わさって両輪のようになって農業の総生産を高め、農村全体を世かにしていく、こういうような考えでございます。
  130. 西宮弘

    ○西宮委員 いままでの政府が発表したもろもろの文献、計画等によると、常に協業経営というのは、いわばさしみのつまくらいに扱われておるわけです。ですから、私はそれでは逆だということを繰り返し主張をしておるので、大臣がその点もあくまで重視をしていくというのならば、私はそれに期待をしたい。大臣の今後の施策に大いに期待をしていきたいと思うのです。もちろん私は、自立経営か共同経営かといったような二者択一の関係にあるわけではないので、その両者を合わせながら日本の農業全体を進展させる、こういうことにあるわけですから、いわゆる二者択一を要求するわけではありませんけれども、従来、常に協業経営というのは、いわばまま子扱いにされてきておるので、これはもう農業基本法ができた当時から、そのことは大臣十分御承知だと思う。つまり共同経営、たとえば社会党のいう共同経営というようなことばそのものも、非常に毛ぎらいをされたわけです。それほど毛ぎらいをして、しろうとにわからない協業経営というような、協業というようなことばを案出するほど共同経営がまま子扱いをされてきた。そういう経過は、大臣は、かつて農業基本法ができた当時からの問題として、おそらく認識をしておられると思う。  そこで、私はくどいほどこの問題を繰り返したわけですが、このことは大臣も大いにやるというお話ですから、それに期待をすることにいたしまして、ちょっと話題をかえて、この構造政策の中には、たとえば農民年金なども入っておったはずですが、あれはどういうお考えですか。一言だけ聞かしていただきます。
  131. 西村直己

    ○西村国務大臣 農民年金につきましては、農林省といたしましては、農民年金の研究の機関を民間に委嘱いたしまして研究をするかたわら、国民年金として農民も今日は参加されておるわけでありますので、国民年金の研究ということも、やっておられるのは厚生省でやっておられる。そこで、それらをいずれは相持ち寄りまして、そして国民年金審議会というようなもので成案を得てまいる、こういう経過をたどると思うのであります。
  132. 西宮弘

    ○西宮委員 農民年金は、やはり構造政策一環というふうにとらえておるわけですか。
  133. 西村直己

    ○西村国務大臣 われわれのほうの立場といたしましては、やはり構造政策と申しますか、経営移譲等に政策として意義あらしめなければ、農業年金としての意義はないわけでありまして、農民年金なり農業年金としてとらえていく場合には、そういう考え方になると思います。
  134. 西宮弘

    ○西宮委員 具体的にいえば、たとえば経営の若返りあるいはまた離農の促進、こういうことに農民年金をお扱いになろうとしておるのかどうかということです。
  135. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは、したがってこの扱いは、政府全体としての問題の場合にいろいろ煮詰める段階にはなりますが、農林省立場におきましてこれを検討していく場合におきましては、農業経営移譲、いまおっしゃるような構造政策推進政策的に寄与するような意味において取り上げていきたい、こういうのがわれわれの立場でございます。
  136. 西宮弘

    ○西宮委員 そうすると、いま大臣は経営移譲ということを言われたけれども、たとえば、老齢年金というようなことは考えていないわけですね。
  137. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん、それは老齢年金としても当然入ってまいりますが、それに政策的なものが加わっていくわけでございます。
  138. 西宮弘

    ○西宮委員 いわゆる老齢年金というものも政策として加えていく、こういうことで、いわゆる構造政策一環だということになると、大臣が言われたような経営移譲というようなことが、まず第一あるいはそれが中心、基準になると思います。農業者生活を保護する、長い間農業で苦労した人の老後の生活を安定させる、こういうことが政策のねらいであるとすれば、老齢年金というようなことが中心になるべきだと思うのですが、その点もう一回明確にしておいてもらいたいと思います。
  139. 西村直己

    ○西村国務大臣 これらの点につきまして、細部は所管の局長から御説明申し上げますが、いずれにいたしましても、国民年金自体も老齢の一つの年金的な性格を持って組織しております。しかし、農民年金の場合におきましては、老齢年金にプラスそこにさらに農業の若返りと申しますか、経営移譲と申しますか、円滑な転換をしていくというような場合に資するような意味で取り上げていく。なお細部にわたりましては、局長からひとつ御説明を聴取してもらいたいと思います。
  140. 森本修

    ○森本政府委員 農民の老後保障を考えます際に、一つは、農民が純粋の社会保障の面で、他産業に比べて劣っておる点はないかといったようなこともございます。それからまた農業近代化という観点から見まして、農民に対する社会保障ということがいかなる関係に立つか。従来も、農業政策なりあるいは農業近代化を論ずる場合に、やはり社会政策の問題が、広い意味農業に関連をする政策として問題になってまいりました。そういう点からいきまして、必ずしもこれは相離れた問題、二者択一といったような形でものごとを整理しなくても十分検討が進むのではないかということで、両者の観点から農民の社会保障のあり方についていま検討をいたしておるわけであります。  ただ、農林省としましては、農業近代化という側面から見て、農民の社会保障が今後いかにあるべきかという点についてやや力点を置いていま検討しておる、そういう関係でございます。
  141. 西宮弘

    ○西宮委員 また農民年金の問題は機会をあらためてお尋ねをしたいと思います。ちょうど大臣が出てこられたのでこの問題をお尋ねしたわけですから、またこの問題専門に別の機会にお尋ねをしたいと思うのですが、ただこの問題について一言だけ大臣に重ねてお尋ねをしておきますが、実施の時期はいつですか。
  142. 西村直己

    ○西村国務大臣 一応これは、最終的には国民年金審議会と申しますか、それで成案を得ることになっておると思うのであります。そこで、国民年金というものの再計算の時期がたしか四十四年度になるので、それらと関連してまいると思いますから、われわれとしては、成案をそこいらに得てまいりたいというのが考え方であるわけであります。
  143. 西宮弘

    ○西宮委員 簡単に言えば、四十四年実施だというわけですね。
  144. 西村直己

    ○西村国務大臣 まだそこから実施をするということまでは、私どものほうはこの席を通しては御確約できないわけです。と申しますのは、これは単に私が実施するというよりも、国民年金審議会というもので一つの国民年金との関連で成案を得る。これが四十四年になるでありましょう。それからもう一つは、こういうものについては当然国の財政というようなものも考えてまいらなければなりませんから、四十四年から実施ではなくて、一つのそういうめどを置いて努力をしてまいりたい、こういう考えであります。
  145. 西宮弘

    ○西宮委員 いまの大臣の答弁で非常に失望するわけです。これはいまさら申し上げるまでもなく、去年佐藤総理が、農民にも恩給を与える、こういうことでみずから公約をされた問題でありますから、私どもはほんとうはことし実現をするのではないかというふうに考えておったのですが、ことしは一向その気配はないし、さらに四十四年も確約ができないというようなことで、全くわれわれは失望せざるを得ないわけでありますが、さっき申し上げたように、またあらためて別な機会にお尋ね申し上げたいと思います。  要するに、今度の金融政策構造政策一環として打ち出されたことは当然でありますが、ただ、構造政策としてはたくさんの問題を政府はかかえておったわけです。その中で、この金融問題だけが今回一つ出てきた。こういうことで、われわれはこれでは構造政策全体の議論にはならないのじゃないかというふうに強く考えるわけでありますが、特にこの構造政策、あるいは自立経営育成と言ってもよろしいですが、そういうのを今回金融にだけ担当させる。最近、特に金融農政というようなことをいわれるが、金融農政という傾向はいまに始まったことではありませんで、数年来の傾向ではありまするけれども、今回は特に露骨に金融農政の性格を出してきているということに、われわれは抵抗を感ぜざるを得ないわけです。もちろん、金融もけっこうですよ。金融もけっこうだけれども金融だけの問題ではないはずであります。特に今回は金融に大幅におんぶをして構造政策推進しよう、こういう姿勢に対して、私どもはどうしても満足できないわけですが、これについて大臣はどういうふうにお考えですか。
  146. 西村直己

    ○西村国務大臣 農業近代化、それから農業所得増大、こういうような事柄等をはかるためには、農業金融補助金等とが並んでいくということが大事だと思います。言いかえれば、補助政策、助成政策とそれから金融政策が並んでいくことが大事だと思いまして、私どものほうとしては、なるほど今回金融整備について御提案申し上げておりますけれども、同時に予算面その他におきましても、他の助成政策施策等も推進するよう御審議を願っておるわけであります。
  147. 西宮弘

    ○西宮委員 今回は、特に金融に非常なウエートをかけて、この面でいわゆる自立農家育成する、こういうことでこの点を非常に強調してこられたわけですね。したがって、これに対しては構造政策の基本方針が不在なまま金融で糊塗している、こういう批判が相当にあるわけなんです。私は、そういうやり方ではいけないと思う。特に、これが金融であるからには、補助政策などとは根本的に違うわけですから、貸した金は返してもらう、こういう冷厳なる、いわゆる俗にいう金融ベースということが基本原則になっておるわけですね。貸した金は返してもらう、これは当然の要求だと思う。そういうやり方は、いわゆる経済合理主義というようなものに律せらるべき筋合いのものでありまして、したがって、そういう点で構造政策推進にあたって、金融ベースでものを考えていくというのにはかなり根本的な無理があるのではないかというふうに考えるわけです。もう一ぺんお答え願います。
  148. 西村直己

    ○西村国務大臣 おことばを返すようでありますが、私どもただいま進めております。あるいは御審議願っておる農政のあり方につきまして、金融だけではなくて、他の施策も進めておるのは、予算におきましても、いろいろな施策を皆さんに御提示申し上げており、また法案におきましても、金融以外の構造政策を進める基礎になる法律案等を御提案申し上げて、あわせて農業近代化をはかっておるのであります。
  149. 西宮弘

    ○西宮委員 実は、今度の問題はそういう意味において非常に重大な問題でありまするので、私はこの制度を通して大臣として、政府として何を期待しておられるのかというような点についてお尋ねをしたい問題がたくさんあるわけでありますが、実は大臣の時間の関係で、同僚神田委員がお尋ねをしたい、こういうことでありますから、私も、それじゃこの次また大臣の御都合のいいときに質問させてもらいたいと思いますので、委員長、よろしゅうございますね。
  150. 足立篤郎

    足立委員長 はい、わかりました。
  151. 西宮弘

    ○西宮委員 それじゃ、そういうことで交代することにいたします。
  152. 足立篤郎

    足立委員長 神田大作君。——神田君に申し上げますが、大臣はあと三十分ぐらいで退席されなければならないそうでありますから、なるべく集中的にひとつお願いいたします。
  153. 神田大作

    ○神田(大)委員 この際大臣に質問申し上げますが、先ほど前の委員からも話がありましたように、自立経営農家をつくるというようなことが、今度の総合資金制度の骨子をなしているようでありますが、先ほどのお話を聞いておりましても、自立経営農家というものの定義があいまいなようでありますし、それでは一体どの程度自立経営農家をつくるか、一つの見通しと計画というものがある、だろうと思いますので、この点についてお尋ね申し上げます。
  154. 西村直己

    ○西村国務大臣 この総合資金制度におきまして育成の目標とする自立経営農家と申しますか、経営体、これは簡単にというか、端的に申しまして、農業によってその生活を維持するに足る所得を十分確保することができるもの、農業で十分生活ができるもの、これを一つの目標にしていきたい、こういうことでございます。
  155. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは日本にその自立経営農家というものは、こういうような総合資金制度でもってどの程度育成していくつもりであるか。
  156. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは数字の問題でございますから、後ほど関係局長あるいは室長から御答弁させますが、たしか全体の戸数の一割足らずが現在自立農家といわれているのじゃないかと思うのであります。ただ、先ほど来しばしばこの問題、御論議をここでいただいたわけでありますが、私どもとしては昭和五十一年ごろをめどに、総生産の半分ぐらいのものを自立経営農家の手によって生産する、そういうふうな生産力に持っていきたい、こういう目標を立てて、自立経営というものを育成してまいりたいということでございます。
  157. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、これらに対して事務当局として一つ計画があるだろうと思いますが、それらの見通し、長期計画について御説明願います。
  158. 小沼勇

    ○小沼説明員 お答え申し上げます。  現在の自立経営農家を、今後におきまして、大体五十一年には全体の総生産の中で、少なくとも五〇%を生産の面で占めるというぐらいには持っていきたい。ただし、経営規模条件がかなり変わってまいりますので、戸数で幾らというふうにきめられるものではないのではないかというふうに考えております。生産の面で少なくとも五〇%を占めるように持っていきたい、そういう考え方で、総合資金その他の制度によりまして進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  159. 神田大作

    ○神田(大)委員 そうすると、先ほど西宮委員からも言われたとおり、前の皆さんのいわゆる自立経営農家育成の基準というものは、大体年間粗収入百万程度農家を百万戸程度つくるというような、そういう話で県連まできたと思うのですが、政府はそういう構想を転換したわけですか。
  160. 西村直己

    ○西村国務大臣 先ほど西宮さんにお答えを申し上げたのでありますが、最初の所得倍増計画の当時、長期にわたって百万戸を目標に自立経営農家というものをつくってまいりたいという政府一つ計画があった。中期計画におきましてはこれをはっきり、百万戸であっても長期にわたるというような表現に変え、それから最近の経済社会発展計画におきましては、多数という表現を使っております。そのかわり農林省といたしましては、総生産の半分のシェアを自立経営農家でやってもらうというような方向でこれを強化してまいりたい、育成してまいりたい、こういう経過でございます。
  161. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは総生産の半分というものを目標にすべきであるか、たとえば農家戸数のうちの何割程度をそういう自立経営農家にすべきかという問題で、その点私は非常に問題があると思う。このことは後ほどわれわれとしても検討を加えて御質問していきたいと思いますが、そういうふうにいかに経済情勢というものが変わるからといって、農家に与える印象というものを異ならせるということは、これは政府の長期見通しの一つの誤りでございますからして、そういう点においては私は非常に遺憾だと思うのです。こういうような大事な基本計画を変更するということに対しましては、われわれは納得いかないわけでありますが、この点について大臣としては、今度の総生産五〇%というような目標に対して誤りのない施策で今後進んでいくのか。また二、三年たったら、それは変わった、今度はこういうふうにするのだというふうな、そういう考えに変わると、これは農民は非常に迷惑をすることでありますので、この点大臣はどうお考えになっておりますか。
  162. 西村直己

    ○西村国務大臣 最初、御存じのとおり池田内閣が所得倍増計画というのを立案した当時、内外の事情、ことに国内事情からも、高度成長という異常な経済成長がありまして、そういうような変化が激しかった時期から見まして、今日はどちらかといすと、もちろん経済情勢の変化は激しゅうございますけれども、安定成長ラインというものをできるだけとってまいりたい。こういうような中から持ってまいりたいということと、もう一つは、単なる戸数というものよりは、われわれとしては実質をねらっていきたい。こういう意味から、いま御説明申し上げているような総生産の中のシェアというような考え方は、私は十分その方向へ近づけることができるのではないか、その努力もまたいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  163. 神田大作

    ○神田(大)委員 そういうことになりますと、たとえば、非常に大きな日本の現在の資本主義経済下において、農業経営も資本化するということになって、生産規模の小さい農業経営を、たとえば、何も自立経営ばかりでなくて株式会社にするとか、そういう大規模経営によって相当の生産力が高まってくるということになると、その占める割合というものが少数によって占められていって、農業戸数とか人口というものは非常に減っていくわけだろうと思いますが、そうすると、そういう農業から離れていく零細農をはじめとするこれらの農業就業者に対する農林省としての対策と考え方をお尋ね申し上げます。
  164. 西村直己

    ○西村国務大臣 日本全体の経済構造のあり方を、どの辺にめどを置くかということが一つの基本的な命題でございます。そこで、先ほど来議論になっております諸外国の例から申しますと、今日日本のあれがたしか、数字は的確ではないかもしれませんが、新しい方式によりますと、農業の就業人口が二〇%を割ったといわれておる。しかし、経済会社発展計画等では一六%、一五%くらいをめどに一応全体の中の就業人口を考えていく。したがって、そういう意味で農村の就業労働というものが人口構成の中において減るということは、一つの計算の過程においてわれわれとしては立てざるを得ない。そのかわり労働の質をよくするとか、生産性を上げるとかいう努力をしてまいる。  それから、その中で、そうなると資本家的な一ものが中心になるのじゃないかというような御議論がありましたが、われわれは、自立農業というものの経営は家族経営というものを中心に考えておりまして、今回の農地法の改正その他におきましても、従来の農地法の精神はあくまでも堅持しながらの範囲内で、農地の規模拡大というものを考えてまいる。そこに、ただ資本だけが入ってきてかき回すというような農業というものを考えておるのではないのであります。
  165. 神田大作

    ○神田(大)委員 それは農地法というもので限られておるから、現在、日本の農業が家族中心の自立経営というようなことでありますが、いま農地法も改正の方向に向かいつつあるようでありますし、たとえば果樹畜産等においては、やはり膨大な山林、原野をかかえておる現在において、相当の山林を確保して、大規模果樹経営あるいは畜産経営を行なおうとしておるのであるからして、これは大臣の言われるように、日本の農業が資本主義的になっていかないとは言えない。私はそういう傾向は急速に伸びてくると思うのです。これはその点において、いわゆる家族中心的な自立経営農家だけがりっぱに育成していくというようには考えない。現在の政府考え方だというと、相当の大規模農業経営が行なわれる可能性は十分にあると思うのでございますが、その点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  166. 西村直己

    ○西村国務大臣 その点につきまして、さらに官房長から御答弁いたします。
  167. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 日本の農業果樹畜産部門等で、いわゆる資本農業が、株式会社等による資本農業が非常な力を持つようなことの可能性があるのではないかという御質問でございますが、私どもは、資本農業といいますか、そういうものが全く可能性がないとは申し上げられないと思います。ただ、会社組織の農業経営が大宗を占める、非常な力を持つという可能性は、私はないと思うのでございます。現実に見ましても、たとえば畜産経営で会社経営等が進出いたしましたのは、養鶏、養豚等あったのでございますが、多くの場合これは分解の方向へ向かっております。  これはやや幼稚な議論になるかと思いますが、御案内のように、農業はいわゆる有機的生産でございまして、したがって、一定の労働時間を集中的に管理してその効率をあげるという産業とは性質を異にするものであります。したがって、私どもの事実を見ました判断からしても、いわゆる雇用労働を中心にする生産形態としては、どうも適当な産業ではなさそうであります。これが世界的にも、農業はいわゆる家族経営というものがベースである、基本であるということをいわれておる実態的な理由ではないかと思うのであります。そういう観点から、私は、御指摘になりましたような会社経営等の資本農業というものが、大きく支配的になるということはあり得ないであろうというふうに考えております。
  168. 神田大作

    ○神田(大)委員 皆さんの答弁では、大体自立経営農業が主体でもって、そういりような大きい経営農業というものは不可能であろうというような話でありますが、この点については、また後刻御質問を申し上げることにいたしまして、いずれにいたしましてもこのような施策を施せば、零細な者は農業を離れて、そういう人口が多くなってくるわけでございますが、この離農対策について大臣はどのような考えを持っておりますか、お尋ねします。
  169. 西村直己

    ○西村国務大臣 今度の農地法改正等で、かりに職業転換をなさる方がありましても、農地等を農協に委託経営とかあるいはその他賃貸借とかの形によって、その所有権を持って、不在地主の制度で制限されたる範囲内において持っていくというようなことによっていける道もありますし、同時に、職業転換の場合におきましては私どもとしては十分、これは労働省等におきまするところの職業転換というようないろいろな制度もありますから、それらと連携もとってまいるし、もう一つは、就業の機会というものをもっと、これは国土の全体の利用計画あるいは地域開発の問題に関連してまいりますが、交通状況も変わってまいりますから、私は就業機会というようなものも広がってまいると申しますか、くふうをしてまいる、こういうようなことによって、かりに農業労働人口というものが今後多少流出をしてまいる方向をたどりましても、安定した形でそれが円滑に流れていくような努力をしてまいりたい、こう考えておるのであります。
  170. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは非常に重大な問題でありまして、われわれから見まするというと、たとえば都市近郊の農家が、いろいろの関係でやむを得ず土地を売って、ある程度資金を持って商売を始めるとか転業するという例をしばしば見ておりますが、これらの人たちは必ずしも成功しておらない。成功しないで没落していった農家のほうが多い、だろう。その実例はたくさんありますが、これらを考えてみましても、政府は一方において自立経営農家育成に力を注ぐと同時に、これらやむなく離農する、農業では食っていけないというのでやむなく離農していくところの対策が非常にこれは手薄である。いわば放任しておくのではないか。どうせ食えなくなれば、自分で何らかの道を見つけてどこかで生活するのではなかろうかというように、何らこれら離農対策に対する積極的な計画——計画といいますか、世話やきをやっておらない。これは非常に遺憾なことであると思います。二〇%を割ろうとしておる日本の農業の今後の方向とにらみ合わせて、これらの離農対策については、農林省のみでなく内閣全体として確固たる方針を打ち立ててもらいたいと私は考えるのでありますが、これらについて大臣の所信を伺います。
  171. 西村直己

    ○西村国務大臣 確かに神田さんのおっしゃるように、職業転換というのは人間にとっては大きな問題だと思います。一人一人の人生あるいは家族にとっては大問題である。それだけに、われわれはきめこまかな気持ちを持っていかなければならぬことだけは事実でございます。御存じのとおり、日本の国全体の経済の発展の中においてそういう姿があるから、それはそのままで流していけばいいじゃないかという考えは毛頭ございません。それはできるだけ私ども努力をしてまいります。  そこで一つ大事なことは、都市近郊におきまして就業の機会というものをできるだけ正常な形でできるような努力をする。現在でも御存じのとおり、農業委員会等に連絡相談員と申しますか、相談連絡員と申しますか、そういう職業あっせんの相談などももうすでに開始をしておりますし、農業改良普及員のごときも、農業経営ももちろんでありますが、そういった面における一つの相談の場になっていかなければならない。土地を売った金は手に入れた、それでただ没落をしていくというような経過をたどっていくのでは、これはいけないと思います。同時にまた、これから求められていく人たちは、かりに転換される方々であっても、技能者であることが非常な強みであると思います。そういう意味において労働省等とも連携をとって、技能の訓練あるいは職業転換の給付金の制度の活用、いろいろなそういう諸施策を丁寧にやってまいりたい、こう考えて、おります。
  172. 神田大作

    ○神田(大)委員 あとでこまかい点は御質問申し上げることにいたしまして、時間の関係で先へ進みますが、今度のこの金融公庫法の改正によって総合貸し付け制度を設けた場合に、いろいろと制度金融がややっこしくなる。非常に複雑である。総合貸し付けもやるが、今度はほかの、たとえば畜産資金の貸し付けをやるとかなんとかいろいろな貸し付けをして、単一でもっていままでやってきたのを、総合でまたやっていくというような非常に複雑な面があるが、これは金融の行政を単一化し、単純化するという方向と逆行していると思うのでありますが、この点はどのようにお考えになっていますか。
  173. 西村直己

    ○西村国務大臣 細部は経済局長から御説明申し上げますが、制度金融の中に、従来あった制度にさらに今度また新しい制度を御審議願っておるのでありますが、それぞれの政策目的はあるのでございます。私、考えますに、制度金融でございますから政策目的があって、事態が進むにつれましてきめこまかにいくという意味からいくと、確かにきめこまかに応ずるには分化していくという面もあろうと思うのであります。しかし、一方において受けるほうの立場から、わかりやすいと申しますか、利用しやすいという面も十分考えていくということも当然だろうと思います。  なお、細部につきまして経済局長から御説明申し上げます。
  174. 大和田啓気

    大和田政府委員 大臣から申し上げましたとおりでございます。公庫資金につきましては、農業者が借りる資金の数だけでも、実は十幾つ種類がございまして、土地改良資金土地取得資金畜産経営拡大資金果樹園経営改善資金等々たくさんあるわけでございますが、それは一つ一つ大きく考えますと、やはり一つ事業を達成するための補助金的なものが、制度金融に、実質的に変形したというものが私は相当あろうかと思います。したがいまして、そういう目的なり事業内容なりに従って、償還期間とかあるいは利子等を定めております関係で、これを一くくりにくくることが、はたして事業を的確に運営する面においてプラスであるかどうかというと、私は相当疑問があると思います。農家に対する周知徹底の必要でありますことはもとよりでございますが、それと同時に、やはりある種の事業を的確に実施を確保するためには、それなりの特別の資金があったほうがいい面もあろうと思います。こういう現実を、私ども全然いまのままで画定をしていいというふうには思いませんけれども総合資金制度は、現在のそれぞれの個別の資金ではまかない切れないようなまとまった資金の需要を、いわばプラスアルファあるいは現在の資金制度の上のせで新しく見ようとするものでございます。
  175. 神田大作

    ○神田(大)委員 いろいろ理屈はあるようですが、これは政府の意図するところの——農民は制度資金というものがいろいろあって、いろいろ金利が複雑で、専門的にでも研究しなければ、どれがどうだかさっぱりわからないというような状態です。われわれも、おまえ何と何と制度金融があって、どれだけの利率で、何年間だなんで言われてもちょっとわからない。ちょっと局長から制度金融資金の種類というようなことを話してみてください。
  176. 大和田啓気

    大和田政府委員 素手でございますから、十幾つの資金一つ一つあげることもあるまいと思いますが、土地取得資金について申し上げますと、年利三分五厘、償還期間二十五年、据え置き期間三年でございます。個人につきまして資金ワク限度が百万円でございます。それから果樹園経営改善資金利子が五分五厘で、償還期間は二十五年、据え置き期間はたしか十年と承知しております。個人に対する貸し付け額の限度は二百五十万円でございます。畜産経営拡大資金について申し上げますと、これが利子は五分五厘で、償還期間が十五年で、据え置き期間三年ございます。個人に対する貸し付け限度が二百五十万円。そういうことで、各種の資金に応じてそれぞれ償還期間あるいは据え置き期間、金利等が異なっておるわけでございます。
  177. 神田大作

    ○神田(大)委員 そのほかにまだあると思うのですが、ひとつ資料にして印刷してあとで出してください。これは全くわれわれも困っておるのです。農民も困っておる。だから、こういう今度の総合資金制度で借りて、そのほかに今度は単一の資金も借りるということになると、二重になったりなんかして政府方針と非常に異なった方向へ行く。われわれとすれば、総合資金一本でやるべきだと思うのです。今度のそういう方向はいいですよ。いいですから、ほかのほうを整理して、この資金に一本化するとかいうような、もっと単純に農家がわかる制度金融をやったらいいと思うのです。ところがおのおの、たとえば農林省の中の畜産局とかあるいは土地改良関係もあって、その人たちがやはり資金を貸すことによって指導するというようなことで、なかなかむずかしい状態にはなろうと思いますけれども、私はこれは逆行だと思うのです。これはひとつその点において御検討を願いたい、こういうように考えるわけであります。  ところで、今度の総合資金制度において金利を五分に統一したようでありますが、この中には、三分五厘のものとかいろいろのものを五分にしたようですが、そうすると、いままで三分五厘で貸したものはだいぶ不利になると思うのですが、その点はどうなんです。
  178. 足立篤郎

    足立委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  179. 足立篤郎

    足立委員長 速記を始めて。
  180. 神田大作

    ○神田(大)委員 それでは大臣にだけ質問しましよう。  今度の改正で役員の改正をしておりますね。国会議員あるいは地方の議会の議員らが金融公庫理事になれるというような改正がありますが、これは現職の国会議員や地方の議員等が、農林漁業金融公庫というような非常な公的機関にそれらの人たちが役員に就任できるということは、これは、われわれとしては非常に不都合なことが起きるのではないかと考えられるわけだし、また、そういう人たちがこういう金融公庫に入るべきではないと考えておりますが、この点は、大臣はどうなんですか。
  181. 西村直己

    ○西村国務大臣 これは内閣におきまして、他のいろいろなそういった機関との統一をはかって、法文上形を整えたというふうに私は承知いたしておりますので、経済局長等からさらに御説明申し上げます。
  182. 大和田啓気

    大和田政府委員 役員の欠格条項につきましては、昭和四十年に内閣の法制局で統一的な取り扱いをきめまして、そうなっておりません法律につきましては、改正のつどこれを改正するというたてまえでございます。したがいまして、現在まで畜産振興事業団でございますとか、あるいは農業機械化研究所でございますとか、そういうものについて改正のつど、いま私どもが御審議をお願いしているように直したわけでございます。ただ、農林漁業金融公庫につきましては、金融機関の性格もございますし、また、現に役員は全部常勤でございますから、実際の役員選定の運用方針は、変わらないというふうに私どもは考えております。
  183. 神田大作

    ○神田(大)委員 それじゃ、私は大臣に考えておいてもらいたいと思うのですが、内閣でもってそういう公庫あるいはその他の外郭団体等において、国会議員並びに地方の議員等が役員になれるというようなことを改正したから、画一的にこれを統一するというお話でありますが、その点は、私は悪用しないとは言い切れないわけですね。法律できまった以上はこれはあれですが、この点について大臣は、内閣全体として根本的に再検討の必要があろうと思いますが、その点についていかがですか。
  184. 西村直己

    ○西村国務大臣 これの方針は、内閣全体で他の機関とあわせてつくられたものでございます。具体的な人事につきましては、これは十分気をつけてまいるつもりでございます。
  185. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは非常に重大な問題でありますし、そのほかの政府関係機関にも関係することでありますから、十分に運用に気をつけると大臣は言いますけれども法律できめられた以上は、国会議員が総裁になってもこれは異議がないわけですから、これはまことに不都合であると思いますので、今後政府において善処するように、われわれは強く要望いたします。  それでは、あと一つだけお尋ねしますが、この資金を貸し付けるときに、信連を通じて貸し付ける、単協というものをないがしろにするようでありますけれども、この点はどうなんです。
  186. 大和田啓気

    大和田政府委員 私は、単協をないがしろにするというつもりは実は持たないのです。ただ、農業協同組合の性格からいって、何といっても村の協同組合でございますから、そこの農家にどんな伸び得るいい芽がありましても、個々の少ない農家に特別に多額の融資をするということは、私は、協同組合の性格からいってなかなかむずかしい点があるのではないかというふうに思います。したがいまして、協同組合といいましても、幾つか組合が合併いたしまして相当大きなものになっております組合で、自立経営育成といいますか、こういう総合資金の運営について熱心でありますようなところでは、私は、当然単協を利用すべきであろうと思います。したがって、信連を使うと申しますのは、原則として信連を使うということで、単協がぜひ自分がやりたいという場合に、単協はだめですというつもりは全くございません。
  187. 神田大作

    ○神田(大)委員 これは局長の答弁はあべこべだと思うのです。原則として単協を便って、単協がそれだけの力がないと認めた場合には信連をやるというのが常識ですね。これは局長考え方とわれわれの思うことは非常な違いであって、単協を中心にすべきであろう。もう最近は、単協は合併をいたしまして相当大きく、強固になりつつあるのですよ。もしこういう制度資金を、単協を素通りして信連でやらせるということになると、単協の運営には大きな支障を来たす。世話だけはやる、通すのはおまえのところは通さぬというそういうやり方は、ぼくは納得できないと思うのですが、その点はどうです。
  188. 大和田啓気

    大和田政府委員 農家総合施設資金あるいは運転資金を借ります場合に、単協を窓口として書類の申請をいたしたりすることは当然でございます。また、信連が金を貸す場合でも、単協を窓口として資金交付することは当然でございます。ただ、私が申し上げておりますのは、公庫資金を、そういう資金交付の窓口としてではなくて、単協自体が貸す、あるいは運転資金単協自体が貸すということは、これは単協にお願いしてもなかなかむずかしいのではないかというふうに思います。これは決して単協をないがしろにするのでもございませんし、そういう面について単協が努力をすることを、不必要だというふうに私が考えるのではございませんで、おおむね八百万円を限度とするような大きな資金単協が組合員に貸すということは、これはなかなか容易なことではない。私も、この総合資金考え方をもって幾つかの単協をたずねましたけれども、それは単協にとってなかなかむずかしい問題で、単協内部の平和を乱すことになるから、単協がタッチすることは当然だけれども、むしろ信連に貸し付けをお願いしたほうがいいのですという回答がほとんど全部であります。まれに単協にやらしてほしいと申しますのは、合併された相当大きな単協でございまして、私は、これは私が申し上げているほうが、実際の運用としても間違いがないというふうに考えておるわけでございます。
  189. 神田大作

    ○神田(大)委員 これはどうも、だいぶ局長は自信があるようでございますが、私も、単協その他農協のほうの現役ですから、それをよく私も検討しておりますが、このことについては、いろいろ私も意見があります。時間の関係もありますから、局長の話すこととぼくの考えていることはあべこべであるということだけをはっきり申し上げまして、あとの機会に御質問申し上げたいと思います。質問を保留しておきます。      ————◇—————
  190. 足立篤郎

    足立委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま審査中の農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案について、その審査に資するため参考人の出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は明四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後四時五十一分散会