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戸谷参考人 ただいま
紹介をいただきました、私は
戸谷義次であります。私は、ただいま
安井さんから説明されたこととできるだけ重複しないように、避けて申し上げたいと思います。
私は、茨城県の霞ケ浦の出島というところで、直接
自分で一町五反の
経営と
乳牛七頭を
飼育して、そしてまた
土浦酪農という
酪農組合、六百戸の
組合員を擁して、一日三万六千
キロの
牛乳を集めておる
組合長もしております。ただいま
紹介がありましたように、
全国酪農協同組合連合会の
理事もしております。
そこで、私は、皆さんのお
手元に
陳述要旨というのを差し上げてございますが、ただいま
安井さんから申し上げた点を全部避けて申し上げたいと思います。
まず、「現在の
需給関係を是正するため、
生乳生産の促進を急速にはかると共に、
国内自給体制の確立を期せられたい。」というこのことは、
先生方に
お願いをしたいことなのであります。そしてその
内容を申し上げたいわけでございますが、実は、こういうことについてやはりわれわれ
酪農民がなすべきことと、国がなすべきことというのが、現在ごっちゃになっているのではないかというふうに私は思うわけであります。
例を申し上げますと、われわれが直接
牛乳を
生産する場合に、
子牛の
育成をやります。
子牛の
育成をやるのに、私どものところのような低
団地になりますと、あまり
放牧場がございませんから、うちの庭先に、くいに
子牛をつないだぐらいでおきますと、その牛は非常に弱く育ちます。したがいまして、
育成牧場に放した牛と、それからうちに縛っておいた牛とでは、お産をするときに非常に差があります。
牧場に放牧しておったほうの牛は、安産で簡単にいきますが、
自分のうちで首を縛って棒につないでおいたような牛は、非常に難産が多い。それから
出産回数も、
放牧場に放牧したほうは七回も八回もとれるけれども、うちで、小さなところで放牧しておいた牛は、三、四回で身体がまいってしまう、こういうふうでございますから、やはり
放牧場がほしいわけであります。
そこで、実は数年前から私も、ここへしばしば傍聴に来させていただいているのですが、
農林大臣が
国有林を開放するとかいろいろなことを言っておられますけれども、
現実問題として私のところでは、県の
酪農連合会で、筑波山に適地があるから払い下げてもらいたい、こういうことで
関東農政局、
東京営林局等に申し入れをしますと、これは
調査だけでも三年かかる、それから実際に仕事にかかれるのは五年くらいかかる、こういうふうなことをいわれるわけであります。それが
一つと、もう
一つは、規制がございまして、
傾斜度は二十度以上はいけないんだ、こういうふうにいっております。そうなりますと、もうほとんど開放する場所はなくなってくる。ところが実際には、われわれも
放牧場を使っておりますが、牛は三十度でも四十度でも、高いところは前足を折っても上がっていきます。そういうところほど健全な牛ができるわけであります。そういうのにもかかわらず一定の線を引いて、いかにしたらば開放しないように――
大臣の答弁ではちゃんと開放できるようになっておるけれども、実際には開放しない。したがって、
全国各地でずいぶん
国有林開放を要求しておるけれども、それが
現実には行なわれないというのが実際でございますので、そういう点を
先生方にぜひ是正していただきたいということであります。
それから、その次に
資金の問題でございますが、最近非常にいい
制度として、
畜産関係については
畜産物の
総合融資として、
経営拡大資金というのが数年前から貸し出されることになりました。ところが、この
資金を借りるにあたりまして、手続をいたしますと、早くて半年、おそければ一年かかります。そうなると、いまのように
物価の激しく変動する時期においては、一例を申し上げますと、
乳牛は申し込みをするときには二十万円ではらみの牛が買えたのが、金が出たときには二十五万円になります。二〇%も上がることになれば、せっかく安い利息の、しかも
長期の金を出してもらったといっても、その
値上がり分によってかえって
マイナスを生ずる、こういう問題が多分にございます。
そこで、これも一例なんですが、やむを得ずしてわれわれは、高
金利でありますけれども、国民金融公庫が一部
乳牛に
貸し出しをしております。それのほうはきわめて簡単ですけれども
金利が高い。これは申し込んでから一週間ぐらいで
貸し出しができる。こうなりますと、やはり
金利が高くても、そのほうに飛びつかざるを得ない、結果的にはそのほうが安いという結果になります。聞くところによりますと、今度
総合資金というのが出るそうでありますけれども、それも相当低
金利の
長期のようでございますけれども、それもやはり
相当選別――いろいろなことをやかましく言われるならば、おそらく先ほどの
経営拡大資金と同じように、
金利が安いほうがいいのか、早く貸し出されたほうがいいのかという問題になりますので、そういう点を十分しんしゃくしていただきたい。ありがたがらせて、そして実際は非常に迷惑するということにならぬように
お願いをしたいわけであります。
それからその次に、実はわれわれは
乳質改善ということをわれわれ
自体がやっております。その場合に、これはわれわれ
自体がやるべきなのか、国がやるべきなのかということを
考えていただきたい。もちろん、われわれはりっぱな
牛乳を出せば高く売れるわけですから、われわれがしなければならないけれども、
牛乳冷却機を買えばすぐそれが
冷却できるのじゃない。
牛乳冷却機を買っても、
電線をしがなければならない。
電線をしくのに
冷却機と同じくらいかかります。隣からどこから全部、みんな牛を飼っていれば別ですけれども、一軒で牛を飼って、二
キロも三
キロも離れているところに
自分が
電線をしがなければならない。もし
電線をしくということになると、その
費用までひっくるめると、倍も三倍も
冷却の金がかかる。
現実に低
団地においては、六、七、八、九月の半ばごろまでは水の温度が二十度くらいになります。
牛乳の細菌のふえるのが進まないのは
プラス五度くらいのところでございますが、
プラスの五度に夏下げるのにはどうしても
冷却機を使わなければならない。そのときに、
冷却機を買ったほかに別に
電線をわれわれの
費用でやるというようなことであってはいけないのじゃないか。こういうことはやはり国が持って、設備についてはしていただくべきじゃないか、こういうことを
考えるわけであります。
そこで、大体一日の量の一トンくらいを
冷却するのに、
牛乳冷却機そのものが十万円くらいかかります。それから試算しますと、大体一
キログラムの
牛乳に換算しますと、要するに
電気の線をしいたり、それから
冷却機の装置の
償却を引いたり
電気料金を払ったりしますと、少なくとも一円くらいかかってしまう。ところが、
牛乳代は一円も高く売れません。こういうところに問題があるわけでございます。そういう点について、
酪農民が持つべきところと国が
考えるべき点ということを、十分
考えていただきたいわけでございます。
それから、その次に
資金の問題です。前後しましたけれども、一頭から三頭、五頭から十頭、十頭から十五頭というふうにふえていくに従って、そのままの
施設ではいけない。一頭から三頭くらいのときはいいけれども、また肉牛、豚の場合にはある程度追い込みがききますけれども、
乳牛の場合は一頭一頭係留をしなければならない。そうすると、五頭までの
施設をしたときに十頭にふやす場合には、いままでの
施設は全部投資無効になってしまいます。そういうことになりますと、
償却の限界までそれは使用できないわけでございますから、そういうものをぜひ
資金融資なりあるいは
乳価の
算定のとき等についても、十分
考えていただきたいわけでございます。
それから、
共同化でなければ
融資しないというようなことがございますけれども、
共同で
融資をしていただく点と、
個人でなければできない点とを分けてしていただかなければならない。
補助金なんかの場合ですと、どうしても
共同でしなければならぬというような場合が多いようですけれども、たとえば一、二頭の牛を飼っているときに、わずか一頭か二頭の
牛乳であれば、自転車で五百メートルも千メートルも朝、昼、晩持っていっても差しつかえないけれども、それが一人で五百
キロも千
キロもということになりますと、それを三度三度一
キロも二
キロも持っていくわけにはいかない。こういうことになると、やはり
個人で
施設をしなければならぬわけでありますから、こういうふうなことについて、
共同融資でなければ
補助をしないとか、あるいは優先的に金を貸さぬとかいうことを言わないでほしい。そういうことについては、
十分実情に沿ったようにして金を貸していただきたいということを要求したいわけであります。
それからその次に、
保証価格の
算定のところでございますが、昨日の
答申のときに、私いろいろ
政府から出された
資料を見せていただきましたが、これによりますと、大体今度の
労働費が一時間
当たり百九十一円三十二銭になっておるようであります。ところが、われわれがいろいろな
政府の
調査資料の
内容を見ますると、
全国の五人以上の他産業の
製造業者は二百十八円六十六銭になっています。そうして百人以上になりますと二百九十円で、われわれが直接
牛乳を出している
乳業者、われわれの仲間といっても差しつかえない
乳業者、その
人たちの
労働賃金は二百九十五円になっています。そうしますと、同じ国民でありながら、同じ
牛乳をいじくる者でありながら、そういう
人たちの
賃金格差というものが、一方において農民は百九十一円三十二銭、そして五人以上でも二百十八円というふうに、同じ国民の中に
格差をつけ、要すれば、
加工原料乳を扱うところの地区というものは、これは低開発地区というふうに解釈をされておる。同じ国民でも、そういうふうに
政府みずからが
格差をつけるというふうに解釈せざるを得ないわけでありますので、この点については、少なくとも今年から二百十八円はぜひ守っていただきたいという
考え方なのであります。
それから最後に、市乳の問題でございますが、市乳については、われわれは乳業メーカーとずっと交渉しております。ところが、いまだに乳業メーカーの各社の社長たちは、ことしは一銭も出せません、われわれは社会事業のためにやっているのじゃない、株式会社なんです、したがって、皆さんの生活を守るために会社はできているのじゃないから、われわれのもうからないものは払うことはできません、こういうことをはっきり言っておるわけであります。
そこで、
牛乳というものは農産物の中で一番やっかいなものでございます。皆さんも御
承知のように、一日といえどもしぼらないわけにいかない。また、一日といえどもためておくわけにいかぬわけです。そういうわけでためておいて交渉することはできない。最近、春になりましたら盛んに各産業の
労働者はストをやっておりますが、われわれがあんなストをやっておった日には、その日その日の
牛乳は全部腐ってしまう。一日でも
牛乳をしぼらなかったならば、
乳牛は乳房炎になってしまって、それが直るのに二週間も三週間もかかります。そういうことになりますと、ばく大な損失をこうむらなければならない。したがって、安くても何でも泣き泣きそれを売らなければならない。こういうところに非常に問題がございますので、われわれはスト権を確立するとかそんなことは
一つも言いませんから、つくったものが正当に売れるようにしていただきたい。そのためには、やはり
加工原料乳と同じように、
価格支持制度というものをぜひつくっていただきたいわけであります。
私も、実はうちで
牛乳をしぼっておるということを先ほど申し上げましたが、もう三日間うちへ帰らぬから、きのう電話がきて、乳房炎になるから早く帰ってこい、こういうことなんでありますけれども、この
乳価がきまらぬと、組合の代表でもございますし
全国の
理事でもございますから、責任がございますから、一頭や二頭乳房炎になってもしかたがないという
考え方でございますけれども、
全国の
牛乳を扱う者はそういうことでございますので、ただいま皆さんのところに提示しております
陳述要旨の
内容を、できるならばぜひここで決議を
お願いしたいということを申し上げまして、私のほうからの説明を終わらせていただきます。