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1968-03-21 第58回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十一日(木曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 草野一郎平君 理事 熊谷 義雄君    理事 坂村 吉正君 理事 森田重次郎君    理事 石田 宥全君 理事 角屋堅次郎君    理事 稲富 稜人君       小澤佐重喜君    佐々木秀世君       齋藤 邦吉君    田澤 吉郎君       田中 正巳君    中村 寅太君       中山 榮一君    丹羽 兵助君       本名  武君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    粟山  秀君       赤路 友藏君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    實川 清之君       柴田 健治君    西宮  弘君       美濃 政市君    森  義視君       山田 耻目君    神田 大作君       中村 時雄君    樋上 新一君  出席政府委員         防衛庁教育局長 中井 亮一君         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省農政局長 森本  修君         食糧庁次長   田中  勉君         水産庁長官   久宗  高君         海上保安庁次長 井上  弘君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部長 吉田 文剛君         外務省北米局安         全保障課長   松原  進君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 神林 三男君         農林省畜産局参         事官      立川  基君         食糧庁業務第二         部長      荒勝  巌君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月十五日  委員兒玉末男君及び柴田健治辞任につき、そ  の補欠として野口忠夫君及び山内広君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員野口忠夫君及び山内広辞任につき、その  補欠として兒玉末男君及び柴田健治君が議長の  指名委員に選任された。 同月十六日  委員柴田健治辞任につき、その補欠として畑  和君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員島口重次郎君及び畑和辞任につき、その  補欠として赤路友藏君及び柴田健治君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十一日  委員實川清之辞任につき、その補欠として山  田耻目君議長指名委員に選任された。 同日  委員山田耻目君辞任につき、その補欠として實  川清之君が議長指名委員に選任された。 三月十九日  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の  一部を改正する法律案内閣提出第七九号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第八〇号)  南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案(内  閣提出第八一号) 同月十五日  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願外百件  (塚本三郎紹介)(第二七五六号)  同(北山愛郎紹介)(第二八一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の  一部を改正する法律案内閣提出第七九号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第八〇号)  南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案(内  閣提出第八一号)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告を申し上げます。  長らく本委員会委員として御活躍をされておりました島口重次郎君が、去る十七日逝去されました。つつしんで御報告を申し上げます。  この際、故島口重次郎君の霊に対し、ここに哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。御起立をお願いいたします。   〔総員起立黙祷
  3. 足立篤郎

    足立委員長 御着席願います。      ————◇—————
  4. 足立篤郎

  5. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 農林漁業金融公庫法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案提案理由説明をいたします。  わが国農業金融制度につきましては、逐年整備改善を行ない、融資額農業者資金需要に応じて年々増大しているところでありますが、最近における農業動向に即応し、農産物等流通改善を含めて農業近代化のための諸施策を推進するためには、一そう内容整備充実をはかる必要があると考えられますので、新たに総合資金制度卸売市場近代化資金制度を設けることとし、農林漁業金融公庫法等改正提案する次第であります。  まず、総合資金制度について申し上げます。近年におけるわが国農業動向を見ますと、経済全般が高度な成長を続ける中にあって、農業近代化を推進する必要がますます強まっているところでありますが、特に、農業生産の中核的なにない手となる生産性の高い農業経営育成し、農業生産維持増大をはかることが緊要であると考えられます。  総合資金制度は、このような観点から、農業者に対し必要な各種資金を総合的かつ円滑に融通するとともに、融資に伴う営農指導を充実することによって、金融の面からも自立経営育成を促進しようとするものであります。  このため、農林漁業金融公庫総合施設資金を新設し、自立経営たらんとする農業者に対し、経営規模の拡大、資本装備高度化等農業経営改善に必要な各種施設資金を、一つ資金として、包括的に融資することとしております。  また、この場合、農業経営改善するのに必要な運転資金融通を円滑にするため、農業信用基金協会債務保証を行なうときは、これは農業信用保険制度の対象とするよう農業信用保証保険法改正を行なおうとするものであります。  次に、農畜水産物卸売市場近代化資金制度について申し上げます。生鮮食料品等農畜水産物卸売市場が、生産物の販売の円滑化をはかるためにも、また国民消費生活安定向上をはかるためにも、きわめて重要な役割りをになっていることは申すまでもないところであります。  特に、近年における生鮮食料品流通をめぐる諸情勢の変化の中で、その施設近代化運営改善は強く要請されるところであります。現在、生鮮食料品等卸売市場としては、中央卸売市場が二十五都市に五十五市場開設されているほか、地方卸売市場全国で一千九百余設置されております。しかし、その実態を見ますと、全国に分散する多数の地方卸売市場につきましては、施設計画的整備運営改善をはかることが急務となっております。  また、中央卸売市場につきましても、市場運営改善合理化を進めるため、卸売り人仲買い人等関係事業者施設近代化が強く要請されております。  以上のような観点に立ち、政府といたしましては、生鮮食料品等流通近代化のための施策の重要な一環として、卸売市場改善整備をはかるため長期低利融資を行なうこととし、これについては、農畜水産物生産と密接な関連を有する点に着目し、農林漁業金融公庫法改正し、同公庫卸売市場近代化資金制度の創設をはかることといたしました。本資金制度においては、民営地方卸売市場開設者卸売市場卸売り人中央卸売市場仲買い人等に対し、卸売市場施設及びそれらの者の業務近代化のために必要な各種施設整備のための資金融資することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びおもな内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  次に、北海道寒冷地畑作賞農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法は、北海道における寒冷のはなはだしい特定の畑作地域寒冷地畑作振興地域として指定し、この地域内の農業者営農改善計画を立て、これに基づいてその営農改善をはかろうとする者に対し、農林漁業金融公庫が必要な資金貸し付けることにより、当該農業者経営の安定をはかることを目的とするものでありまして、昭和三十四年に制定されたものであります。  この法律は、二回にわたる改正を経て今日に至っておりますが、この間における北海道畑作農業を取り巻く諸条件変化等にかんがみ、かつ、昭和四十一年春におけるこの法律改正の際の本委員会における附帯決議の御趣旨に沿い、政府におきましては、昭和四十一年度以来鋭意対策調査を実施し、本制度につきまして種々側面から検討を加えてまいったのであります。  この調査の結果によれば、寒冷気象条件に加えて排水不良で、かつ、土壌の物理的、化学的性質等の劣悪な畑が広く分布している寒冷地畑作振興地域において、安定的な農業経営育成を総合的かつ効率的に行なうためには、現行の融資措置及び一般土地改良事業のみでは必ずしも十分とはいいがたい点があるのであります。そのため、北海道寒冷地畑作営農改善資金貸し付けの種目を拡充し、かつ、貸し付け条件改善することにより、本地域寒冷気象条件に積極的に適応した営農確立をはかるとともに、新たに畑地における劣悪な条件改善し、営農基盤整備するための土地改良事業を総合的に実施するほか、家畜の飲用水等を確保するための営農用水事業を実施することとしたのであります。  本法律案は、これらの対策のうち立法措置を必要とする営農改善資金融通制度改善について所要措置を講じようとするものであります。  以下、この法律案要旨につきまして御説明申し上げます。  改正点の第一は、農林漁業金融公庫貸し付け営農改善資金として、新たに乳牛もしくは肉用牛の購入に必要な資金を加えることであります。  第二は、営農改善資金貸し付け利率据え置き期間中は年四分五厘以内、償還開始後は年五分以内とし、据え置き期間につきましても八年以内に改めることであります。  第三は、営農改善資金貸し付け資格認定申請期限を五カ年延長して、昭和四十八年三月三十一日とすることであります。  以上が、本法律案提案理由及びその主要な内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  南九州における畑作農業は、夏季の多雨及び特殊な火山噴出物の広範な分布等はなはだしく不良な自然条件のもとで行なわれているため、その農業生産力はきわめて低く、農業所得は恒常的に低位な状態にとどまっているのであります。  政府といたしましては、かねてから所要対策を講じてまいりましたが、去る昭和四十一年春、本委員会における北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案の御採決の際に行なわれました附帯決議の御趣旨に沿い、昭和四十一年度以来対策調査を実施し、南九州畑作農業振興についての基本的な方策のあり方について種々側面から検討を加えてまいったわけでございます。  この調査結果によりますと、南九州の劣悪な気象条件土壌条件等を克服して安定的かつ合理的な畑作営農確立をはかるためには、地域営農条件に適応しつつ、高収益作目積極的導入によって作目転換をはかる必要のあることが指摘されるのであります。しかしながら、南九州畑作農家は、その生産性及び農業所得の低さから資本蓄積はきわめて低い現状にありますので、営農改善を進めるためには、必要な資金を総合的かつ長期低利貸し付け資金融通制度確立をはかる必要があります。また、劣悪な土壌条件に対処し、かつ、合理的な農業経営確立をはかるためには、防災のための農地保全事業とともに営農近代化のための圃場整備事業畑地かんがい事業等を行なうことも必要であります。  したがいまして、今回策定いたしました本地域に対する対策は、農林漁業金融公庫による畑作営農改善資金融通と、農地保全事業中心とする土地改良事業総合的実施等をその根幹としているわけでございますが、このうち畑作営農改善資金融通制度につきましては、特別の立法措置を必要といたしますので、ここに御提案申し上げたわけであります。  以下、この法律案要旨につきまして御説明申し上げます。  まず第一に、農林大臣は、関係県知事からの申請に基づき、南九州地域のうち、政令で定める基準に適合する畑作地域南九州畑作振興地域として指定することとしております。  第二は、農林漁業金融公庫は、南九州畑作振興地域内の農業者で、営農改善計画を立て、これに基づき営農改善をはかろうとする者に、必要な資金長期低利条件が総合的に貸し付けることとしております。  第三に、営農改善資金貸し付けを受けようとする者は、営農改善計画を作成して、一定の期限までに関係県知事に提出して、その認定を受けなければならないこととしております。  第四に、関係県知事指導等に関することを規定しております。  以上が、この法律案提案理由及びその主要な内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  6. 足立篤郎

    足立委員長 以上で趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 足立篤郎

    足立委員長 引き続き、農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田健治君。
  8. 柴田健治

    柴田委員 まず、水産庁長官にお尋ねしたいのですが、昨日から日本海で、米軍韓国軍合同演習を兼ねて射撃訓練が行なわれるということを、その前日にわれわれは耳にしたのでありますが、あまりにも不意打ちで、こうしたことが日米地位協定その他法的に、国際的にどういうやり方をしているのか、われわれはちょっと理解できない点でありますが、われわれはあくまでも漁民を守るという立場で判断をして取り組んでいかなければならぬと思うわけです。そういう見地からお尋ね申し上げたいのですが、この問題について水産庁としてどういう見解を持っておられるか、お答えを願いたい。
  9. 久宗高

    久宗政府委員 日本海におきます漁業問題が、一応小康を保っておりましたその際に、いま御質問のような事態に立ち至りました。水産庁といたしましても非常に困惑をいたしておるわけでございますが、このニュースは日曜日でございましたか、ハイドロパックと申しまして、水路通報のような形で、この地域が三月二十日から四月二十日、約一月間にわたりまして米軍演習があるという通報があったわけでございます。  そこで、水産庁といたしましては、御承知のとおり、当該漁場におきましては、たまたまいま盛漁期でございまして、統数にいたしまして、まき網関係で約五十カ統沖合い底びき関係で約七十カ統フグえなわ、アマダイはえな関係で約七十隻というものが集中的に操業をいたしておりますので、この実情をできるだけ早く伝えまして善処を促したいということで、外務省を通じまして、いま申し上げましたような操業実態を詳しく説明いたしました。何らかの措置をとっていただくようなことを、現在折衝中でございます。
  10. 柴田健治

    柴田委員 はなはだたよりないお答えでぴんととないのですが、漁民生活というものが非常に苦しいことは御承知だと思う。それをあすから向こう約一カ月間射撃訓練をやるのだ。それも航空母艦中心とする駆逐艦、また護衛艦を含めて二十何隻が参加する。それに韓国軍艦が幾ら出てくるのか、われわれよくわかりませんが、そういう大規模合同演習射撃訓練だということになれば、その地域漁民にとっては、もっと早く事前に話をして理解を求めるべきではないか、こう思うわけです。水産庁はいろいろな実態外務省にいま報告して、何らかの措置を求めておる、こういうお答えですが、どういう措置を求めておるのですか、お答え願いたい。
  11. 久宗高

    久宗政府委員 こちらが承知いたしましたのは非常に最近のことでございますので、これは在日米軍でございますともっと早く事前通告なり、また演習場所にいたしましても限定されておるわけでございます。どうもそういうルートではございませんで、いきなり米軍ハイドロパック事態を知る、公海上の演習という形をとっておるわけでございます。したがいまして、私どもに対しましては事前の御通告がなかったわけでございますので、急速当該水域におきまする漁業実態、特にこの一カ月間は盛漁期でございますので、さような事情を外務省を通じまして、それぞれの在日大使館に対して申し入れを行なっておるわけでございます。水産庁申し入れといたしましては、これを絶対困りますので、やめてもらいたいということを申し入れておるわけでございます。
  12. 柴田健治

    柴田委員 演習場所は北緯三十五度十分、同じく四十分、東経百三十度十五分、同じく四十分というような海域になっておるわけですが、山口県の萩市の見島という島があるわけですが、見島の北西六十キロの地点から北に五十四キロ、西に三十六キロの長方形で合同演習という、大体大ざっぱな数字が示されておるわけですが、これは山口県を中心とする漁民の一番の宝庫といわれておる漁場なんです。いかに公海地域であっても、日米行政協定でどんな訓練をしてもいいんだというようなむちゃな協定があるからしかたないんだ、こういう御理解のもとで黙認しておるならいざ知らず、あまりにもこれは侮辱した、日本独立もまた日本の民族のことも何も考えない、むちゃなやり方だと言わざるを得ないと私は思うのですよ。こういうものを水産庁は、ただ外務省を通じて抗議——抗議というか、それもしない。ただ申し入れ程度にするということは、何としても民族的にわれわれは割り切れない。日本人としてどう考えるのか。われわれは非常に不満である。きょうは大臣見えておりませんが、次官、この点について見解をひとつ述べていただきたいと思います。
  13. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 この問題については、いまおっしゃいましたように、漁民安全操業という観点におきましてもきわめて日本にとっても重大な問題でありまして、ただいま水産庁長官お答えをいたしましたように、農林省水産庁としてもこうした日本漁業が行なわれておる地域、さらに盛漁期でもあります。そういう時期において演習が行なわれるということは、たいへん日本漁民を圧迫することになりますので、絶対に困ることであります。したがって、水産庁中心といたしまして外務省を通じまして強力に要請いたしまして、すみやかに演習の中止あるいは区域の変更を行なってもらうように目下交渉を続けております。
  14. 柴田健治

    柴田委員 外務省来ておりますか。——来ていない。それならあとにします。  いま次官が、はなはだ遺憾だということの意思表示をされましたけれども漁民にとっては遺憾だとか、残念だとかではなしに、ほんとう生活基盤を奪われていく、将来どうして生活していくのかという、それこそ憲法に照らし合わしてもこういう問題は十分当局が取り組んで解決しなければならぬ問題である。それを、漁民のほうからいわれ、一般の者からいわれてから抗議をするとか、適当な措置を要求しているというようななまぬるいことで——いま米軍訓練日本近海至るところでやっている。いま地域のきめられた点があるわけです。その範囲内で訓練をするならいざ知らず、どこでもかしこでも一片の通告でいつでも始めていくということ、これはもうほんとう日本独立を侵害をする。いま韓国軍隊と一緒にやっているらしいのですが、それなら、もうどこの国の軍艦でも引っぱってきて日本近海どこでも演習ができるのだ、いまはたまたま韓国だけの軍艦ですが、米国と組んでおるそうした同盟国の国からは、軍艦日本近海へ引っぱってきてどこでも演習ができるのだ、こういう一つの疑問もわれわれは持たざるを得ないのでありまして、そういうことは断じて許すべきではないとわれわれは思っておるわけです。  特に今日、あの付近の漁民がいまフグのはえなわの漁船を繰り出し、またはヒラメだとかその他の底びき船を出して、いま水産庁長官の言われたように、五十、七十というような多数の漁船が出て操業をやっておるわけであります。前の倉石農林大臣は、日本軍隊がたくさんあったり、原爆があったり、三十万の軍隊があれば、日本漁民安全操業を守るために軍隊が必要だということを言われたようでありますが、アメリカの軍艦がみな来て、日本近海日本漁民を圧迫しておるということは、われわれは何としても割り切れない問題だと思うのであります。だから外務省を通じて米国大使館なり米国に強硬に抗議を申し込むというのでなくして、もっと政府として閣議でこれをきびしく追及していくという姿勢を出すべきではないか。閣議でこの問題を取り上げたことがありますか、次官にお尋ねしたいと思う。
  15. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 閣議で、昨日でしたか、西村農林大臣から、この演習の問題につきましては正式に取り上げて議題といたしまして、外務大臣に対して強力な交渉方を要請したのであります。公海上における演習でございますから、国際法的にどういうふうな対抗措置がとれるか、私、十分承知しておりませんが、いまおっしゃいましたように、何としても漁民生活と直接結びついておりますから、こうした地域での演習はぜひとも取りやめてもらわなければならない、私はそういうふうに考えております。そういう考え方に立って、ただいま強力に交渉いたしておる段階でございまして、きょうじゅうにおそらく回答があるのではないかと思っております。
  16. 柴田健治

    柴田委員 きのうから訓練を実施してやっておるのでしょう。その確認はできておるのですか。
  17. 久宗高

    久宗政府委員 先ほどもお話ししましたように、在日米軍の問題でございますれば当然事前通告がありまして、また場所といたしましては、指定された場所でなされるのが通常でございます。先ほど申しましたようなことで在日米軍ではございませんので、こちらの大使館を通じまして本国政府交渉をいたしておるわけであります。ルートとしましては外交交渉になりますので、外務省を通じてやらざるを得ないわけでございまして、私どもといたしましては、先ほど申しましたような決意に基づきまして、詳細に内容説明した上で、ぜひ取りやめてほしいということをはっきり申し上げておるわけでございます。
  18. 柴田健治

    柴田委員 そこまで手続論としてやっておられるようですけれども、万一やめなかったらどうするんですか。一カ月間どんな抗議を申し込んでもやめなかった場合には、水産庁として漁民安全操業という立場、また漁民生活基盤を守るという立場で、やめなかったらどういう処置をとられるのですか。
  19. 久宗高

    久宗政府委員 私のほうはぜひやめさしたいと思っておるわけでありまして、この段階におきまして、最終的な申し上げ方はできないわけでございます。
  20. 柴田健治

    柴田委員 長官、それならばぜひやめさしたいという決意を持っておられますか。それは自信が十分ございますか。
  21. 久宗高

    久宗政府委員 いまのあそこの漁業状態から見まして、あそこで演習するということは非常に適当でないと考えるわけでございます。また少なくとも、私は軍事的なことはわかりませんけれども水域につきましても他の水域もあり得るわけでございまして、あの場所でぜひやらなければならぬというふうには考えられないわけでございまして、少なくとも実情をはっきりいたしまして、ぜひやめさせたいと考えております。
  22. 柴田健治

    柴田委員 水産庁長官は非常に強い自信といいますか、それだけの決意を持って臨んでおられることは理解できますが、相手は秋の天候みたいなもので気ままな国でありますから、日本がどう考えようと、日本漁民がどう考えようと、日米地位協定によって日本の安全を守るんだ、そういう美名で、かってしほうだいなことを今日までやってきておるわけです。それをただ国民に知らせないだけで、実質的には至るところでやっておる。そういう国柄でありますから、もうアメリカという国はのぼせておるのですから、日本外務省がどう言おうと、だれがどう言おうと、やろうと思ったらかってにやる。水産庁長官がそういう決意で臨まれることはわれわれはよく理解できます。またその努力に対しては敬意を表したいと思うのですけれども、相手というものはほんとうにわからぬ国だとわれわれは理解しているのですよ。全世界が、もうベトナム戦争をやめなさいといってもわかっていない。そういう国ですから、かってに日本近海に来てかってに訓練をやる。射撃をやる。日本漁民がどう苦しもうと、どんな生活に追い込まれようとそれはもう自由だ、こういう考え方に立っておる国でありますから、われわれはアメリカの国を信用するわけにいかない。このことを一つ取り上げてみても、米軍やり方については非常に不愉快である、理解ができない、われわれはこういう考え方を持っておるわけです。いずれこの問題については同僚委員から関連質問が出ると思いますからやめますが、この問題について、先ほどお答え願った点については、十分効果のあるような折衝を願いたい、こう思います。  次に、水産庁長官にお尋ねしたいのですが、前々から問題になっておりますことで、この国会に提案されようとし、まだ提案されるかどうかわかりませんが、当局としては非常に心配しておられるようでありますけれど、昨年の十二月二十日の委員会で、私、海上保安庁長官水産庁長官においで願って御質問申し上げた海上交通法の問題であります。これは運輸省から出してくる法案で、この農林水産委員会にはかからない法案であります。しかしながら、向こうは加害者であり、被害者は水産関係であります。あの原案を——正式な原案ではございませんけれど、原案に目を通してみますと、七つの区域が大体指定を受けるということになっております。その中で、瀬戸内海の狭水道関係、この狭水道関係にあの法案が万が一にも適用されるとするなら、また法が実現するとするならば、漁民にとってはたいへんなことだ、こういうことで、瀬戸内海の沿岸漁業として内海漁業に従事しておる漁民が四万四千ですかあるわけですが、その漁民が、命がけで反対しなければならぬというような悲壮な一つ決意をいま、しておる。そういう決意の中でこの法案が出るとは思えない。思えないけれど、われわれは事前に、漁民立場を考えて心配せざるを得ない。そういう見地から昨年十二月にお尋ね申し上げたところ、運輸省、海上保安庁と問題点をよく協議いたします、水産庁水産庁立場で、漁民立場を守るという立場で折衝いたします、こういうお答えをいただいて、いずれ具体的な法案が出てくるとするならばあらためて御質問申し上げる、こういうことで、誠意ある善処方を強く要望しておいたのであります。御承知のとおりだと思います。その後保安庁とどういう折衝をせられたのか、お答えを願いたいと思います。
  23. 久宗高

    久宗政府委員 ただいまの御質問にもございましたようなことで、その席でもお約束申し上げたわけでございます。水産庁といたしましては、その後いろいろ折衝をいたしておるわけでございますが、若干の問題でぎりぎり二、三むずかしい問題がございまして、実は、政府案といたしましてもまだ固まっていないというのが現在の段階でございます。
  24. 柴田健治

    柴田委員 具体的に御説明願いたいと思ったのですが、具体的に御回答がいただけない。問題点を二、三の点で話をしておる、まだ煮詰まっていないということなんですが、それでは法案としては、長官見解では京だまだだというお考えですか。
  25. 久宗高

    久宗政府委員 運輸省の所管でございますので、また政府部内でまだ最終的な案が固まっておりませんので、この段階で申し上げるのは適当でないかと思うのでございますが、前の経過がありますので、経過だけ申し上げますと、ちょうど十二月の段階で海上交通法の問題が、御承知のとおり狭い水道におきましては、ある程度漁業の制限禁止を伴わざるを得ないという問題が一つございます。それと関連して漁民の方々も非常に不安を持っておったわけで、特に現在やっております制度が、特定水域というものがございまして、私どもといたしましては、これが本来の趣旨から申しますともっと限定されたものであるべきだと思うのでございますが、末端の実施の過程におきましてこれが相当広範囲に残りまして、その中では、漁船が全部避航義務を負うというような形になっておりますので、一般漁民といたしましては、この海上交通法関係につきましては非常に拡大されて適用される、また事実そうであったという不安がありました。そこへ持ってまいりまして一部に制限禁止といったような問題が出ましたので、実は保安庁の考えておられますのはさような広範囲なものでなくて、非常に限定されたものであることが最近わかったわけでありますが、それ以前にそういう漁民の不安がございまして、いろいろな反対運動その他が実は燃え上がってしまったわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、海上交通法の必要はもちろんわかるわけでありますが、その際に、従来の特定水域といったような大ざっぱなものでなくて、それをもっと非常に限定して考え、かつ、その中でも非常に狭い、ごくわずかな地域だと思いますが、どうしてもぎりぎり制限禁止をせざるを得ないところがあり得ると私は思います。そういうところにつきましては、その場合の補償の規定でございますとか、そういったものを非常にはっきりする必要があるのではないか。その辺のところが、実はまだ煮詰まらないで今日にきているわけでございます。  考え方といたしましては、現在まで煮詰めました段階でも、最終的にいまの制限禁止を、ごく特定なごくわずかな水面であってもやるべきかどうかといったような問題、それから、根本的にはいまの避航義務でございますが、どのくらいの船から避航義務を考えるべきか、この辺のところが相からみますので、実は私ども両方の役所でまだぎりぎり、具体的にそこが詰め切れないというのが現在の段階でございます。
  26. 柴田健治

    柴田委員 長官、海上保安庁の出先や本庁を動員して、海上交通法の法案を作成する前提として、いろいろ調査をせられたり、また各関係の都道府県の漁民の団体である漁連、漁業組合の幹部の皆さんに集まっていただいて説明なり、またいろいろ趣旨のPRといいますか、説得といいますか、海上交通法をつくりたい、つくるためには何としても漁民の協力を得なければならないというので、そういう漁民の代表者に集まってもらってPRをやったことを御承知ですか。
  27. 久宗高

    久宗政府委員 存じております。  若干海上保安庁のために弁じますと、この前の十二月の御質問のときにもございましたけれども、つまり、当初海上保安庁のほうといたしましては、港の中の問題と狭水道、非常に狭い水道の問題を、現行制度よりも合理化したいということで、それに限定して法案の改正を考えておられたようでございます。ところが、それをだんだん法律問題として検討してまいりますと、やはり海上交通法の全体系に及ぶというようなことで、法案といたしましてはたいへんむずかしい法案になりまして、たしか八十条近い条文が出てきたわけでございます。これは主として昨年の暮れまでの段階で、私どもは、とにかく抽象的では判断がつかないので、具体的にどの程度のことをするのかということがはっきりすれば、お互いにそれについての可否が論じ合えるから、なるべく早く狭水道なりあるいは漁業を制限する必要があるとすれば、その内容を具体的に詰めてはしい、その上で判断しようじゃないか、こういったつもりでおったわけでありますが、結果は逆になりまして、法律問題のほうが先に出てまいりまして、具体的な内容を詰めるのと並行いたしましていろいろな法文を、全体系をいじるというようなことになってきたわけでございます。その法文を拝見いたしますと、もちろんこれは試案でございますが、全部どの程度やるかということが非常に問題になりまして、一条一条文句をつけなければならぬような形に実はなったわけでございます。  そこで、そういうものがすでに検討されておりましたので、それをおそらく海上保安庁としては関係者に御説明になったものと思うわけでございます。まあ結果論でございますが、さような法文の問題よりも、むしろ先ほど申しましたような、今回ぎりぎり必要といたしますような規制なりあるいは狭水道におきます避航義務の具体的な内容につきまして御説明なさったほうが、一般漁民も問題の焦点がわかったと思うのでございますけれども、どうもその辺が煮詰まらないままに法文の素案のようなものを先に御説明になりましたために、非常にそこに誤解が生じてこじれておるというのが実情でございます。
  28. 柴田健治

    柴田委員 われわれが外部から見ておると、水産庁というものはあってなきがごとしで、十二月に私が御質問申し上げたときも、十分話し合いをいたしますと言っておった。それは漁民に対する理解を求めるのは水産庁がやるべき仕事であって、海上保安庁のほうが、運輸省のほうが、かってに漁民の代表者を集めてかってに説明し、言いたいほうだいのことを言って、水産庁のほうは何にも知らないという立場でかってに法案の原案をつくって、そして下に流すというやり方水産庁はこういうやり方をどう感じておるのですか。農林省には水産庁という庁があるということを運輸省は理解しておらぬのじゃないですか。この点はあなたはどういう感じで受け取っておられますか。
  29. 久宗高

    久宗政府委員 御鞭撻いただくのは非常にありがたいわけでございまして、いつも結果において受け身の場合が多いわけでございます。ただ、今度の海上交通の問題につきましては、私どもがやはり水産をやってまいります上において、海上交通がいまのままでは不安がある、こういう問題もございまして、特にいままでがいままででございますので、よほど政府部内におきましてもこの問題は十分めどをつけて、特に関係者には十分わかっていただけるような体制で事の可否を考えたいという態度で一貫してまいったわけでございますが、いまお話のございました海上保安庁が末端に御説明になった時期には、必ずしも現実に規制を考えておられます内容が、あまり熟していない段階一般的な御説明があったように思うわけでございまして、これは結果から見て非常にまずかったのじゃないだろうか、むしろ、具体的に規制の内容なり狭水道で考えておられるような問題をもっと具体的に提示されまして、そういう段階において説明をされたならば、もっとよかったのではないかと思うのであります。  水産庁がその時期に、漁民大衆を集めまして御説明をいたしませんでしたのは、海上保安庁の具体的な案がそのときにはまだ熟しておらなかったわけでございます。ただ、府県の地方庁の役所の関係には、少なくともいまこういう段階に来て、こういうことが論議されているということは、ことしに入りましても数回にわたりまして、担当者については逐一説明をいたしておるわけでございます。何ぶんにも具体的な案が非常に固まりつつございましたのは、ごく最近になりまして規制の内容が詰められてまいりましたので、それまでの間に憶測を生んでもいかぬと思いまして、私のほうでは一般漁民に対する説明を、直接水産庁がいたすということはいたきなかったわけでございます。
  30. 柴田健治

    柴田委員 私は水産庁長官でないから、私の見解と違うかわかりませんけれども、大体農林省というところは、農民や漁民や林業者をかばわなければならぬ最高の機関であります。どうも運輸省の一海上保安庁が、日本の水産業全体を取りまとめておる水産庁を無視して、かってに末端へ出かけていって、まだ水産庁としての話し合いもしない、何ら打ち合わせもしない前に出かけて、それこそ一方交通の法案をつくろうという一方交通のやり方、それから水産庁なり林野庁でもそうですが、農林省自体が姿勢を変えなければいかぬと私は思うのですよ。水産庁ここにありという気魂を示してもらいたいと思う。あなたら農林省の外局はどうもおとなし過ぎる。予算もよう取らない。漁民のことは形式的に考えるだけだ。こういうことで実際漁民はどこをたよっていいのか、どこを信頼したらいいのか、こういう感じを持つわけですよ。次官、どうですかこの点について。こういう運輸省の一方交通的なやり方について、どうあなたは受けとめておられますか。
  31. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 この海上交通法案は、世間的には少なくとも一方的といいますか、海上保安庁の考え方が先行していまして、水産庁との調整といった面がずいぶんおくれておるような印象を与えたわけで、この点につきましてはいま御指摘がありましたように、私もきわめて遺憾であると思うわけであります。しかし、何としてもこの法案は水産庁、いわゆる漁業の権利義務、そういうものとの調整がつかなければ、もちろん国会にも提出することもできませんし、政府の統一した意見ともなり得ないわけですから、今日までの段階におきましては、いま水産庁長官お答えをいたしましたように、漁業の制限禁止あるいは避航義務等についてまだまだ煮詰まっていないのでありまして、最終的な政府としての統一した法案に至るまでにはまだ時間がかかるわけです。  ただ、私は全般的に、いまおっしゃいましたような農林省がおくれてついていっておるというふうな御意見に対しては、これからも十分注意してまいらなければならないと考えております。
  32. 柴田健治

    柴田委員 農林省全体が、ひとつ反省してもらいたいと思います、これをいい経験にして。こういうやり方はわれわれは何としても納得できない。  それから水産庁長官、今日まで漁民の、この法案が出てくるだろうという予測のもとにいろいろ意見が出ておると思うのですが、漁民の切実な問題点はたくさんあるでしょうけれども、その中でどこに重点を置かなければならぬのか、そういう点はもう集約というか、把握されておるのか、そういう問題だけ一つ……。漁民立場で要求が出たその中で、漁民はこういう問題点を強く要望しておるという集約されておる点があれば、お答え願いたい。
  33. 久宗高

    久宗政府委員 その点はよく存じておるつもりでございます。いずれにいたしましても相当交通量がふえました場合に、制限禁止というような形式があるなしにかかわりませず、相当漁業には影響があり得るわけでございますので、さような点を少なくとも政府といたしましては十分考慮いたしまして、両省におきましてその問題を煮詰めて措置すべきものというふうに考えておるわけでございます。
  34. 柴田健治

    柴田委員 大ざっぱにお答え願うのですから、いずれあらためてまたそのときになって御質問申し上げるとしても、漁民は、先ほど長官言われたように、現行の法規の中で特定水域の航行令、通称特水令といわれるのですが、この設置当時のあれ一つだけ取り上げてみても、漁民は非常に不信感を持っておるのですよ。あの時分には、戦後の狭水道に機雷や何かあって、航行の安全を阻害する危険度が高いということであの法案をつくった。そのねらいはそういうねらいだった。ところが、いつの間にやらその法律が拡大解釈されて、その時点では、この特水令の区域指定をするけれどもいずれ解除する、安全に航行できるなら、また漁業安全操業ができるようなら解除いたしますというような政府方針であったが、それがいつの間にやら拡大解釈されて、一つも解除されないで、よけい拡大して区域を広げて操業できないようにする。そういうふうに過去の特水令の設置当時の政府の考え方が大きくその後変わってきている。それで今度出してくる法案も、また漁民を苦しめる法案だ、だますんだ、信用できない。だから、要するに人間というものは、法をつくる者もまたそれを運用する役人も、またそれの適用を受ける住民も常識がなければならぬと思うのですよ。問題は基本的な常識だと思うのです。その常識の上に立って運用をやらなければ、そこに自然と不信感が出てくることは間違いないと思う。不信感が出てきたら、これをもうどんなにいいりっぱな法律をつくっても、それは十分生かされるものじゃないと私は思う。現在の漁民の持っている不信感というものは非常に根強い。この不信感をまず政府当局は誠心誠意挽回するように、信頼を取り戻すように努力しなければならぬと私は思うのです。  こういう点について、水産庁はかってな運輸省の拡大解釈に追従してきたというところに、そういう姿勢に私は問題があると思うのです。ほんとう漁民立場を考えてないということがいえると思う。今度この法案について、水産庁長官見解として、もうこの法案は出さない、どんなことがあっても農林省としてのめるような案になるまでは出さないというくらいの気魂があるのですか。
  35. 久宗高

    久宗政府委員 御指摘のように不信感が根底にございまして、それがそれぞれの運用と非常に関連があったというふうに考えておりますので、今回この種の問題を取り扱うといたしますれば、さような点をぬぐいまして、政府といたしまして漁業立場からもあるいは海上交通の立場からも、これならよろしいという案にしておはかりすべきが当然だというふうに考えております。
  36. 柴田健治

    柴田委員 時間があまりないようですから先へ進みます。いずれまたこの問題についてはあらためてお尋ねするといたします。  水産庁長官に伺いますが、これは昨年私が御質問申し上げて、その後研究課題として、調査課題としてお願いして、長官も十分研究して直ちに作業をやります、こういうお答えをいただいているわけですが、御承知のように去る二月の二十七日ですか、本土−四国の連絡橋の問題が、工費、工期の問題で出てきたわけですね。明らかになってきた。どこにかかるかそれは知りません。けれども、五つのルートの工費、工期が明らかになってきた。これは技術的な問題だけです。今度は経済的な問題の段階にいま入って、ことしじゅうに場所を設定するというような声も聞くわけであります。ことしになるか明春になるかそれはわかりません。政治のことですからわかりませんけれども、いまのスケジュールの方針からいうと、この年内に経済効果を経済企画庁を中心としてやっていく、最終決定は閣議できめる、こういうことになっておるようでありますが、お尋ね申し上げて問題点を提起しておいて、長官も快く調査いたします、広島の水産研究所を中心として関係府県の水産技術員の御協力をいただいて調査いたしますという御回答をいただいておるのです。その後本土−四国連絡橋によって——どこのルートになってもそれはわれわれ別の問題でありますが、漁業について考えるとするならば、ここのルートにきまったならどうなるのだ、このルートにきまった場合どうなるのだということを、漁業もやはり一つの産業でありますから、これから産業の経済効果ということが取り組まれて入っている段階でありますから、どの程度まで調査研究がされておりますか、お答えを願いたいと思うのです。
  37. 久宗高

    久宗政府委員 これもまた受け身な話でどうもお答えしにくいのでありますが、前回申し上げましたように、この問題につきましては、もちろん私どもといたしましては漁業に一番影響のない形でやっていただきたいと思っているわけでございます。具体的にあの幾つかのルートにつきまして、どの程度漁業に被害があるかということにつきましては、それぞれの具体的な工事の内容が明らかにされませんと、これは測定ができないわけでございます。さような点で今日まだ具体的に、こういう計画で、したがって漁業にどういう影響があるかということを算定するまでに熟した案としては、担当の省から御連絡を受けておらないわけでございます。
  38. 柴田健治

    柴田委員 ぼくは長官の御答弁がどうもよくわからぬのです。水産庁は、どんなに地域的な産業形態が変わろうとも、海の魚で生活しておる漁民というものは変わらないのだから、常に魚族の保護、それから漁民操業の安全、資源の拡大といういろいろやらなければならぬ仕事は続いているわけですね。どんなにほかの第二次、第三次産業が変わろうとも、漁業というものは綿々と続いていくわけですよ。だから、ほかの省から連絡があるからどうするんだとか、ないからほうっておくんだということではなくして、常に実態を把握しなければ、これからの漁業振興というのはどうなるのですか。いま調査をやっているのでしょう。私がお願いをして調査研究をやりますという答弁をいただいている。具体的に、水産庁の出先機関である広島の水産研究所を中心としてやりますというお答えをいただいておる。もう一年近くなるのですよ。
  39. 久宗高

    久宗政府委員 前回もはっきりお答えしていると思うのでございますが、この種の問題は、具体的に計画そのものが出てまいりませんと、それについての被害も算定できませんし、またそれについての水産庁としてのいい悪いという意見は言えないわけでございます。さような意味におきまして、前回申し上げておりましたのは、少なくともわれわれがそれについて漁業への影響を判断し得る程度の素材を提供されれば調査いたしますというふうにお答えしたはずでございます。私どもは決してこれを怠っているわけではございませんで、かりに幾つかのルートの中で橋がどういうかかり方をするか、またその橋の橋脚がどの地点にどういうかっこうでということまでいきませんと、これは被害の算定ができないわけでございます。私どもといたしましては、もちろんそういうことがなくて、あそこで漁ができればいいわけでございますが、かりに橋をかけるということがいろんな意味で御必要な場合に、その具体的な計画そのものが出ませんと被害の算定はできないわけでございまして、もちろん、私どもといたしましては関係の部局にいろいろな形で、これは必ず問題になりますので、できるだけ早く御連絡いただくように、またいまどの辺までお話がいっているかということは、私どもしつこく聞きにいっておるわけでございますけれども、先方からこういう形でということで、すぐ被害を算定してみてくれというところまで熟しておらないようでございまして、これは作業的に不可能でございますので、私どもは、いつでもそういうものが出てまいりますればやるつもりでございますし、また必要だと考えておりますが、現在の段階では、すぐに取りかかるという段階ではないと判断しているわけでございます。
  40. 柴田健治

    柴田委員 経済企画庁を中心として経済効果の問題で取り組んでいる場合に、漁業という産業を無視してかってに経済効果を出すということはあり得ないと私は思うが、その点については長官どうですか。
  41. 久宗高

    久宗政府委員 私どもといたしましては、この橋に限りませず、原子力の問題でございますとかあるいはロケットの問題でございますとか、目的が非常に大事なものとの関連で漁業がよく議論されるので非常に困るのでございまして、ある適当な段階にそういう考慮を初めから織り込んで相談すべきだと考えておりますので、今回の橋の問題につきましても、御注意もございますので、時期を失しないときにおきましてそのような判断ができるよう協議いたしてまいりたいと考えております。
  42. 柴田健治

    柴田委員 関連質問でお見えになっておりますけれども、畜産局に一口お願いしたいと思うのです。家畜伝染病のことについてちょっとお尋ねしたいのですが、乳牛、和牛、養豚にかけて炭疽病が発生している。炭疽病が発生してから相当長い期間ですが、こういう伝染病については、火災と同じように初期動作というものが非常に肝心なんです。それがいまだにやられていない。この点について、畜産局の衛生を担当する出先を含めてのそうした初期動作の予防対策、防疫対策というものが不完全だと思うのです。この点についてどういう処置をとっておられるのかということが第一点。  それから和牛のほうは別としても、乳牛のほろで炭疽病が発生しても適切な、敏速な処置ができないために、法的には危険区域、防疫の区域指定をするわけですが、その防疫区域指定をきめた区域内で、他のまだ何も感染してないような地域まで毎日乳を捨ててしまう。かかった牛は命令屠殺させるわけですけれども、それ以外に区域だけかってにきめておいて、その区域にきめられた中の酪農家は毎日乳を捨ててしまう。もう被害がものすごく甚大なんです。酪農家の経営基盤が根底からくずれようとしている。この点について、法的に指示して命令屠殺したものは手当て金が出る、また家畜共済をかけておるから、それは何らかの保護がある。けれども、何にももらえない、乳は毎日捨てなければならぬ、こういうような酪農家に対して——感染経路がまだはっきりしない、そういう技術体系というか調査体系というものは、農民の立場からいうと非常に不満を持っておる。この点について、区域指定の中における酪農家の救済措置はどうするのか。一カ月も二カ月も毎日乳を山の中へかついで穴を掘って捨てなければならぬという酪農家の救済措置をどうするのか、特に、酪農振興法に基づいて集約酪農の区域指定をしているのは農林省の責任です。農林省が指定しておる区域内における処置である限りにおいては、もっと敏速にやってもらわなければならぬとわれわれは思うのです。この点については何ら適切な処置をとっていない。もう後手後手だ。おくればせながら人に言われてやっておるというような実態であります。こういう点についてもっと責任を感じてやってもらいたい、こう私は思うのですが、時間がございませんから、簡単にその救済措置についてお答え願って、あとバトンタッチしたいと思います。
  43. 立川基

    ○立川説明員 時間がございませんので、簡単に御説明いたします。  第一点の、伝染病が発生した場合にどういうふうに迅速に処置をするかという点については、先般の国会でも先生から御指摘があったとおりでございます。そのときにもお答え申し上げましたように、要するに、病性鑑定をどういうふうにして早くやるか、早く病性を鑑定いたしましたものに基づきまして、必要な予防注射その他の措置をとってまいりたいということでございます。  炭疽につきましては、本年は一月に、牛につきまして三頭、これは大分、兵庫、宮崎各県に一頭でございます。二月に牛が五頭ございまして、京都府が一頭、岡山県が四頭でございます。それから三月におきまして岡山県、熊本県、徳島県各一頭ということで牛が三頭発病しておりますが、この炭疽につきましても、病性がはっきり鑑定でさましたらすみやかな措置をとっておりまして、岡山の場合も直ちに必要な地域における予防注射を行ないますとか、その他の措置をとっておるわけでございます。  第二点の汚染されました牛乳につきましてのことでございますが、ことに死亡しました以後における当該乳牛の乳の問題につきましては、死亡いたしました牛が炭疽であるということがはっきりいたしますと、御案内のとおりに強制的にいろいろな予防措置をとるわけでございまして、その予防措置が完全でございました以後、若干の日にちは万が一を考えまして廃棄命令を出しますけれども、残余については心配がないと考えておりますので、それ以後のものについては補償ということはとっておりません。また、法律的にもそうする必要はないんじゃないか。現在の炭疽の状況なり何なりから考えまして、少なくとも五日なり一週間以後において新しくそういう炭疽の病気が発生しなければ、別に廃棄を命ずるような措置をとる必要はないというふうに考えておるわけでございます。
  44. 柴田健治

    柴田委員 この家畜伝染病については、ニューカッスルもまだまだ終息してない。まだ継続しておる。昨年からもう相当論議してきたのにもかかわらず、はなはだしいのには、ある県においては試験機関みずから発生をさしておるような実態であります。今度の炭疽病を含めて、家畜伝染病のいろいろな救済措置その他の問題についてあらためて質問さしていただくことにして、きょうは時間がございませんから、打ち切ります。
  45. 足立篤郎

  46. 山田耻目

    山田(耻)委員 柴田委員のほうから冒頭質問のございましたように、山口県の萩の沖三十二マイルくらいのところから広範囲にわたりまして米軍の実弾演習がある。そのことのために、多くの漁民、沿岸住民が非常に不安におののいておるわけでありますけれども、これに対して、従来の日本近海における米軍演習とかなり異なった様相を呈しておるように思いますけれども、一体こういうふうな措置のしかたが地位協定に違反をしていないのかどうか、これらについてまず外務省のほろから伺っておきたいと思います。
  47. 松原進

    ○松原説明員 ただいまの演習につきましては、実は先週の日曜日にハイドロパック日本でいいますと水路通報と称するものでございますが、それで連絡がございまして、以後私どもその地点その他につきまして米側につきさらに確認をいたしました。その結果判明いたしましたのは、ただいま御指摘のように、日本近海におきまして米軍演習区域として提供しております区域とは異なります、日本海における公海において実施をするということが判明したわけでございます。  この問題につきましては、何ぶんにも演習公海でございますので、国際法上いろいろ問題がございますけれども、その後私どもといたしまして米側と種々話し合いをいたしておりましたところ、昨日になりまして、最初の演習に関する通報を、たぶんきょう取り消すということの内報を実は受けた次第でございます。したがいまして、ただいま最初の水路通報による演習の取り消しの通告をまだ私ども確認いたしておりませんので、現段階におきましては、その通告の確認を待っいてるところでございますけれども、一応内報といたしましては、本日その通報が取り消されるということでございますので、事実上本件は問題がなくなった、こういうふうに考えておるわけでございます。
  48. 山田耻目

    山田(耻)委員 演習を中止することになってたいへんけっこうのございますが、問題は、今回これだけの事態を引き起こして、地域漁民なり住民、また迷惑を受けておる漁協が四漁協でありますし、しかもその中には、かつてプエブロがああいう事件を起こしまして、アメリカ艦隊に包囲された福洋丸の事件を起こした越ケ浜漁協の諸君がおりますし、非常に不安に思っていたわけです。今回取り消しの公報はまだ入ってないとおっしゃわけですけれども、こういう事態を招いてしかも取り消すというその過程に至る根拠は、いわゆる指定水域以外であるということ、あるいは七日前に予告をしなければならない、こういろふうな地位協定に違反をしておるとアメリカが承知をしてやめることになったのか、それとも外務省とアメリカとの折衝の過程でそうなったのか、そこらあたりの見解を明らかにしてほしいと思います。
  49. 松原進

    ○松原説明員 先ほど申し上げましたように、本件の米側が通告をしてまいりました区域は公海上でございます。しかも、その演習をいたします米軍が、日本におります米軍とは限定されておらないわけでございます。そういう問題もございますので、今回の演習実施の通告が直接地位協定の違反とか、そういう問題は私どもないと考えておるのでございます。
  50. 山田耻目

    山田(耻)委員 地位協定の違反ではないという紋切り型のことになれば、そういう立場も言い得られるかもわかりませんけれども、何しろ今度の演習規模、海上保安庁のほうから地元の管区に連絡された文書を見ますと、艦対艦の実弾演習、艦対空の実弾演習、空対空の実弾演習と非常に広範囲にわたるものであります。しかもこの公海には、私が申し上げましたように四つの漁協が出漁しておりますし、いま魚の最盛期でありますし、しかも五十そうと七十そうの網を張りめぐらしておりますし、公海とはいえどここで働いて生存をする日本漁民にとっては、非常に大切な魚の宝庫なのですよ。そういう意味から、ただ公海論でこれを逃げ去られておったのでは、今回の問題の片づけになりません。そういう意味から、この種の日本近海のアメリカの演習については、事前に相談をされてそうしてやっていかなくては、操業の安全も保障されないという事態、こういう事態とからみ合わせて、私はやはり日本の防衛庁、外務省あるいは水産庁、こういうところは緊密な意思の連絡を保ちながら、アメリカに対してきちっと将来の保障までしておくという立場を今回おとりになったかどうか、その点もあわせて伺っておきたいと思います。
  51. 松原進

    ○松原説明員 今回の通告に関連しましては、私ども関係各省は十分緊密な連絡をとって事に当たった、こういうふうに考えております。  ただ、将来の問題につきましては、先ほど先生から当該地域日本漁業にとって重要な利益があるところであるという御指摘がございましたが、私どもそれは十分承知いたしておりますので、その点も考慮いたしまして米側と話し合ったわけでございます。  ただ、公海の使用につきましては、一般公海の使用の自由というのが国際法上の原則でございます。したがいまして、自分だけがこれを使うというわけにはなかなかまいらないのでございますけれども、ただ公海を使用いたしますときには、他国の利益に対して合理的な考慮を払うというのが、またもう一つの原則でございます。したがいまして、私どもといたしましては、当該地域日本漁民操業上の重大な利益を持っているという点を米側も考慮するのは当然である、こう私ども実は考えておるわけでございます。
  52. 山田耻目

    山田(耻)委員 せんだって和歌山の沖で無通告砲撃がございまして、たいへん心配したことでありますけれども、最近の米軍日本近海における実弾演習というものは、予測もつかぬような形であらわれてくる。こういうふうに公海という一つの名によって海賊みたいな態度をとられたのでは、日本漁民の安全、仕事の保障、こういうものは全きを期することができないわけですよ。今回の荻沖のやり方につきましても、十六日の夜ワシントンから直接放送があった。それを受けて保安庁のほうで関係各船に通報するといろ、全く無通告やり方に似たような横着な態度なんですね。この点はやはり今回中止に至るまでの一つの過程の中でも、外務省なり防衛庁なり水産庁は厳重に、公海を使用する場合には相手国の利益も十分保障する、この原則の立場に立つのならば、そういう立場もこの際明確にして、厳重な申し込みをしておくという立場一つ。  それからいま一つは、少なくとも十九日から操業がもう中止をされております。大体朝の八時から夕方の五時までの演習のようでありますけれども、この間にこの魚の最盛期に出漁することのできなかった漁民に対して、どのような補償措置をするのか。これらについては水産庁関係があると思いまずし、あるいは防衛施設庁も関係があると思いますし、外務省米軍との折衝で関係があると思いますが、一体この補償はどうなるのか、答弁を願いたいと思います。
  53. 久宗高

    久宗政府委員 今回の問題に限りませず、この前のエンタープライズ以降の状況におきましても、さような問題が実はあったわけでございますが、出漁できなかったことによる損失をどうカバーすべきかという問題につきましては、やはり事態の推移をよく見ました上で、また他の事例との関連も考えて処理をいたす必要があるわけでございますので、この段階で申し上げるわけにいかないと思います。
  54. 山田耻目

    山田(耻)委員 しかしあれでしょう。魚というのはとってくれるまで待っておるわけではないので、水温が変わってくると別の魚場に逃げていくわけですから、だから最盛期を一日でも二日でも三日でも失うということは、沿岸漁民にとってはたいへんな問題です。だから、少なくとも水産庁はそうした問題については専門家なんですから、やはり漁穫が少なくなってきた、その演習によって減ってきたという立場に立って漁民は当然補償を要求することになるでしょうし、それらに対してはどのようなお立場で臨まれるのか。これはその国の利益を原則的に保障するという、公海上のこういう演習によって生ずる被害についての原則もあることですし、国とそういう漁民との関係の中にも、不可能なこういう操業状態におとしいれられて損害をこうむるのですから、これらについての補償をやはり当然考えていただけるものだと私は思っておるわけでありますけれども、いかがでございますか。
  55. 久宗高

    久宗政府委員 水産庁といたしましては、もちろん漁民の利益をフルにカバーするたてまえのつもりでございますが、先ほど申しましたように、やはり被害の態様なり他との関連ということも考えて処理をいたすべきものと考えますので、この段階で補償について申し上げるのは、適当でないというふうに思うわけでございます。
  56. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうもよくわかっていただけませんね。操業できないのですよ。朝の八時から夜の五時までは操業できない。実弾がぼんぼん飛んでくる中で、そうあんた漁船を出して魚をとるわけにいかぬ。さっきあなたも言っておったように、五十そう、七十そうの網をおろしておるんですよ。それを撤去させるために緊急指示を出しておるのでしょう。だから、そういうふうな状態の中で操業のできなかった漁民に対しては、明らかに操業したとせぬの差額が出てくるじゃないですか。それが明確になっているはずですから、それらについては当然補償を考慮するという措置がとられてしかるべきでしょう。
  57. 久宗高

    久宗政府委員 この問題は度合いの問題であると思うのでございます。損害の度合いの問題を考慮いたしませんで補償を論議するのは、適当でないと申し上げているわけでございます。
  58. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは、度合いの問題は当然考慮される具体的な数字が出ると思いますから、そういう損害の度合いが明らかになれば当然考慮し、検討する、こういう裏側からの意味にも受け取れるのですが、そうとってよろしゅうございますか。
  59. 久宗高

    久宗政府委員 御承知のとおり、公海上である演習があってそこへ入れなくなるという事例は、カツオ・マグロその他にもあるわけでございまして、その実態から見まして、何らかの措置が必要であるかどうかという社会的な妥当性が考慮され判断さるべきものだと思うのでございます。現在の段階では、私は補償ということは考えておりません。
  60. 山田耻目

    山田(耻)委員 補償が考えられない、こういうふうなことですけれども、実際にある近海三十二マイルあたりで、ぼんぼん実弾が飛んでくる中で操業ができないということは事実なんですよ。それによって被害を受けた漁民に対して、水産庁としてはなかなか補償の結論を導き出すのには苦しいような答弁ですが、外務省としてはどうなんでしょうか。こういうふうな公海における実弾演習が、一方だけの主張なり行動が保障されて、その公海上で一方の国の利益が損をさせられる、こうしたような場合には、今日の公海上の原則の上に立ち返って、米軍に対して補償要求をなさる、こういうことは当面当然のことだと思いますが、いかがでございますか。
  61. 松原進

    ○松原説明員 ただいま私どもといたしましては、今回の演習区域の設定に関しまして、米側との間に補償の問題について交渉するということは考えておりません。
  62. 山田耻目

    山田(耻)委員 演習は中止をさせる、これは米軍からもきょうじゅうにも公報が入ろう、こういうことはこの委員会で述べられたので、私も信頼したいと思います。だけれども、やはり私、多少心配になりますのは、あしたはやめる、あさってはやめる、こういうふうに一日延ばしにずらされて、事実上演習がやられてしまうというふうな懸念すら、今日の日本近海において起こっているできごとから見たら推測もされる。しかし、いま御答弁いただきましたように、おそらくきょう中止をするという公報が入るであろう、このことばを私はやはり信頼をしたいと思います。  ただ問題は、こういうふうなことが公海上でわがまま一ぱいにやられるということのために、どれだけ多くの日本漁民が苦しんでおるか、利益を失っておるか、このことを頭から離してもらわないようにしていただきたい。そうしないと、一体日本漁民の利益を守ってやるのはだれなのか。どこの国なのか。やはり私たちはそういう立場の中にも、アメリカに非常に追従をしておる日本政府のにおいというものを強くかぎ取るわけですよ。いまのお話では、外務省水産庁も補償はしないということをおっしゃっていますけれども、いまの演習中止に至る過程における被害については、やはり日本政府漁民立場に立ってものを言ってあげなければならぬ。この立場を失うということは私は許せないと思う。こうしたことばもひとつ十分念頭に入れて、安倍さん、あなたは次官でありますし、特に山口県の出身ではありますし、こういう事柄で、先般来しばしば山口県の沿岸漁民は大きな利益を失って、絶えず不安に悩まされている。こういう問題に対処するに、一体政府としては、あるいは副大臣である次官としてはどのように考えて前進させるための努力をなさるのか、その答弁をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  63. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 われわれも心配をしておりましたが、いまの外務省からの答弁によりまして演習を中止するということがきょうじゅうにも発表されるということで、たいへん安心をいたしたわけでございます。これによって演習は中止されまして、漁民の不安も解消されるわけですけれども、今回の問題の過程を振り返ってみますと、アメリカ本国の直轄の部隊による演習で、日本側といたしましても連絡その他が突然過ぎたような感じがいたすわけでありまして、こういう問題につきましては、やはり事前に十分な連絡があってしかるべきものではないかと思います。  また、今日まで、いろいろとこれに関連した問題が起こっておりますが、いま山田さんがおっしゃいましたように、やはり日本として、漁民の安全をはかるというふうな立場から、言うべきことは率直に、また要求することは率直に要求するのが、私は日本政府立場ではないかと思うわけでありまして、日本政府は今後ともそういう方向で、責任を持った立場でこれからやってもらいたいと念願をいたしております。  また、補償の問題につきましても、山田さんがおっしゃいましたことはよくわかるわけで、実は私も山田さんと同じ山口県で、そうした問題がたくさん起こる地域におりまして、こうした補償問題等についてのいろいろな陳情を受け、あるいは強い要請等も聞いておるわけで、私もこうした演習によって、いろいろとそうした不測の事態が起こって漁民が非常に大きな被害を受けたときはどうなるだろうか、どういうふうな補償措置がとれるものかということについて水産庁にも相談をいたしまして、いろいろと調査もしていただいておるわけでありますが、今回の問題につきましては、いま長官からお話をいたしましたように、国際法的にもあるいは国内法の問題からも、補償のいわゆる根拠法規というものがないということで、なかなか補償は困難のようでございます。しかし、こうした事態はこれからも起こってくることは当然であろうと思いますし、そういうことも予想されますので、われわれとしてはこうした事態を十分再検討いたしまして、もっと前向きの形で対策を進めていかなければならない。そうして漁民が少しでも安心するような措置がとれるように、ひとつ考えていかなければならない、私はこういうふうに考えております。
  64. 山田耻目

    山田(耻)委員 以上で終わりますが、次官のお話にありましたように、公海を乱用するアメリカ軍のやり方に対しては、厳重なる抗議を申し込んでいただく、それから、それによって生じた日本漁民の被害についてはこれから十分検討していただいて、安心をして操業できるような措置を講じていく、そういうことを検討するというお話をいただきましたので、これで終わりたいと思います。
  65. 足立篤郎

    足立委員長 石田宥全君。
  66. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ただいまの質疑応答の中で、ようやく取りやめになったということがこの場でわかったというようなことで、農林省水産庁外務省に寄りかかっておる。外務省はまた外交案件であるからということで高姿勢で、漁民安全操業とかいうような問題についてはあまり関心を持たないような感じを受けるのです。これは私は外務省にも問題があるし、農林省にも問題があると思う。農林省側はもっと積極的にアメリカ側に対して交渉を持つと同時に、外務省にまかせっぱなしでなしに、なぜもっと独自に行動をとられないのか、はなはだ私は不満にたえないわけです。この点は、外務省ももう少し漁民というものに対する思いやり、配慮が必要であるし、同時に、配慮をしながらアメリカ側との折衝を積極的にざれなければならない。私はそういうところの配慮が足りないと思うのです。今後はますますこういろ事案が多くなりそうな国際情勢でありますから、外務省農林省というものはもうちょっと積極的な態度をとっていただきたい。私はいまの質疑応答を聞いておりまして、これはどっちもはなはだけしからぬ、農林省も悪いし、外務省も悪いのじゃないかと思う。全く心もとない話なんです。今後前向きに、積極的にとおっしゃるけれども、いままでがいつもそうなんです。ですからこれを契機としまして、今後起こってくるかような事案に対しては、もっとあらかじめ外務省農林省の間によく連携を保って、もっと積極的に取り組んでいってもらいたい。そうすれば、もっと早く漁民に安心を与えることができたのではないかという感じを持ったわけでありますが、そういう点についての姿勢、その態度をひとつはっきりしておいていただきたい、こう思います。
  67. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 今回の外交交渉といいますか、相手国のある問題につきましては、農林省が独自で動くということは、これまでのあり方からしてもできないことでありまして、常に外交交渉にたよらざるを得ない、そういうことで外務省とも綿密な連絡を保って、今日まで水産庁等もやってきたと思うわけであります。またこの問題につきましては、農林大臣が一昨日の閣議におきまして、正式に外務大臣に対して演習中止の強い要請を行ないました。その結果、外務省米国と話し合って、こうした中止という結論になったと思うわけでございます。私は、水産庁としても、こうした対外関係の問題につきましては、外務省と積極的な交渉を持ちながら今日までやってきていると思うわけでありますが、この中止につきましては、正式なことではないようですが、本日突然中止になるだろうという内報があったということを聞いたわけで、私たちは安心をしておるわけであります。
  68. 足立篤郎

    足立委員長 ただいまの石田君の発言に関して、私からも一言申し上げますが、私もいまの経過を聞いておりまして非常にふしぎに感じたわけで、水産庁長官のお話によると、つい先ほどまで演習中止の情報は得ていなかったように聞いておりましたが、外務省の松原課長が出席されると、とたんにまさに朗報が伝えられたわけでありまして、その間の事情がどうなっているのか非常にふしぎに思いますので、この際松原課長から、その情報はきょうの何時何分に外務省に入ったのか明らかにしていただきたいと思います。そして水産庁に連絡をするひまがなかったのかどうか、その辺の事情も明らかに願いたいと思います。
  69. 松原進

    ○松原説明員 ただいまの内報につきましては、実は私、昨日その内報を受けまして、直ちに関係の省庁には連絡をいたしました。ただし、先ほど来私、申し上げておりますように、これは内報でございまして、正式な確認があるまでの内報でございますので、その旨をあわせて各省の方にもお願いをいたしまして、本日確認の措置をとられるのを実は待つということでお願いをしておったわけでございます。  ただ、先ほど来正式な確認が、私、外務省を出ました時点においてはまだございませんでしたので、あらためて米側と打ち合わせまして、内報はすでにあったということを申し上げるということで米側と打ち合わせたのでございます。その米側との打ち合わせを了したということを、私は、まだこちらへ参ります直前のことでございますので、関係各省の方に申し上げている実は時間的余裕がなかったわけでございます。その点は御了承願います。
  70. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 安倍政務次官に申し上げますが、いま質疑応答の中で明らかになったわけですが、農林大臣閣議でこれを取り上げたことも私ども承知をしております。承知しておりますが、向こうが取りやめてもいいような事案のようでありますね。それをもっと北方水域に移してもらいたいという要望をするというようなことは、そんなに遠慮される必要はないと思うのです。これは外務省ではある程度情報をキャッチしておられたのじゃないかと思うけれども、北のほうへ移せなどと言う必要はない。これはやめるべき、日本漁場に対する被害甚大であるから中止してもらいたいということくらい言えないのか。それほど遠慮しなければならない理由はどこにあるか、実は私ふしぎにこの間じゅうから感じておったわけです。いまの答弁でもやはりそういうことなんですね。そんなに高姿勢で出ろなどとは言わないけれども、大体この演習はどうしてもやらなければならない性質のものかどうか、あるいはどんな性格のものかくらいの情報は外務省にあると思うし、それならば取りやめということを強硬に申し入れるべきが当然であると思うのですが、どうもわれわれ見ておると、そこに非常に不満な点があるわけです。今後ますますこの種の問題が多くなろうと思いますので、もっと外務省と連絡を密にして、正確な情報に基づいて、き然たる態度をとっていただきたい。ひとつ要望を申し上げて質問を終わります。
  71. 足立篤郎

    足立委員長 ここで休憩いたしたいと存じますが、午後は美濃政市君、樋上新一君、佐々栄三郎君の順序で質疑をお願いいたします。  午後二時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後二時十七分開議
  72. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き農林水産業振興に関する件について質疑を行ないます。美濃政市君。
  73. 美濃政市

    ○美濃委員 北海道のてん菜の集荷地域の変更をいましようとしておるのでありますが、私は、今回変更しようとする地域に不合理性があると思うのです。変更案をどういう角度でつくったか、最初に御意見を伺いたいと思います。
  74. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  昭和三十九年に北海道にいろいろな工場ができました過程で、ビートの集荷地域の多少の変更を行ないまして、そのまま今日に至っておる次第でございます。ところが、その後北海道におけるビートの生産事情が順調に伸びましたが、多少地域によりましてアンバランスといいますか、非常に伸びたところと少ししか伸びなかったところというのがございまして、そして大体その当時に、四十二年以降において多少地域の再検討を行なうという含みの話がありましたので、今回ビート地域の再編成をあらためていたすことにした次第でございます。  その後昨年あたりから、いわゆる北海道後発三社といっておりますが、台糖、大日本製糖、それから芝浦精糖、三社の現地における三工場が、営業成績が十分にあがらなかったようないきさつもございますので、農林省中心となりまして三社の工場の合併をして、そして強力に北海道におけるビート糖業の振興をはかるように慫慂してまいりましたところ、今回、昨年末からことしにかけまして合併いたしまして、北海道糖業株式会社という新会社が設立されまして、この四月一日から正式に発足することになった次第でございます。しかし、先ほど少し御説明いたしましたように、後発三社の規模があまり十分に伸びなかったというようなこともありまして、われわれといたしましてはこれを機会にひとつ再編成をいたしたい、こう思った次第でございます。  政府でやっております北海道のビート糖の事業団買い入れ価格は、毎年定めることになっておりますが、いわゆる会社の個別価格ではございませんで、一本価格で決定しております関係がありまして、非常に操業度のいい工場はきわめて採算が有利になり、操業度の悪いところは採算があまりよくないというふうな因果関係もありますので、極力各工場別の操業規模が均衡になるようにするというのがわれわれの気持ちでございまして、その関係で、今般出発いたしました北海道糖業株式会社に対して、ホクレン並びに日甜から、相当経営規模が大きいので、多少地域を譲るようにしたらいかがかということで、今般北海道庁と十分協議をいたしまして、おおむね約九万四千トン程度の地域を、後発の北海道糖業のほうに譲り渡すような措置を、今回指示したような次第でございます。
  75. 美濃政市

    ○美濃委員 操業度の均衡ということは、いまの説明の中で一番大切なことだ、こういうふうに考えますが、しかし、ああいう重量の農産物を加工するのでありますから、その原則は、九工場それぞれの周辺地域で均てん操業になるような政策を進めるのが一番大切だと思うのですが、その点どのように考えておりますか。
  76. 荒勝巌

    荒勝説明員 われわれといたしましても、ただいま先生御指摘のように、工場を中心になるべく集荷地域を再編成したほうがいいという考え方のもとに、今回作業をいたしたわけでございます。そして、いろいろと検討したわけでございますが、やはり実際問題といたしまして、非常に近いところの町村を工場に結びつけるというふうな再編成案も考えたわけでございますが、しかし、少し俗っぽい表現ですが、帯に短したすきに長しというのでございますか、あの近所の町村は非常に町村が大き過ぎまして、われわれといたしましてはなるべく町村単位で工場に結びつけたほうが、行政的にもまた経済的にもいろいろ諸般の事情がからみますので、極力町村単位で結びつけたいということで、なるべく至近な距離をという考え方ではありましたが、いろいろ検討の上、やはり実際問題として今回のような案が一番いいのではなかろうかということで、町村を割らないようなかっこうで工場に結びつけるような集荷地域を決定したような次第であります。
  77. 美濃政市

    ○美濃委員 同時に、北海道のてん菜の作付はまだ固定していない。たとえば水稲のように——水稲は田と畑の条件の相違がございますけれども、水稲などというものはきちっと固定しておるわけです。畑ですから将来とも多少流動はするにしても、いまのところまだてん菜の作付というのは流動的要素がかなりある。それからもう一つは、過去の操業の中で、この前の集荷地域もあるわけですが、その中に、糖業のいわゆる企業努力あるいはそれぞれの町村の考え等がありまして、これから北海道の寒地農業確立する過程においては、北海道が計画しておる面でも、その計画面積をこえておる地域もあるし、五0%くらいしかまだ達成されていないというところもある。こういう状況でありますが、今回の集荷地域の変更にあたって、十年、二十年先というのじゃないですが、ここ二、三年くらいで、やはりてん菜の耕作が固定化するであろう過程における展望を考えておるかどうか。今回のこの集荷地域の変更をする中で、そういうことを考えておるかどうか。
  78. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま御指摘の点でございますが、一応今回の集荷地域の再編成にあたりましては、いわゆる四十二年産のビートの一つの実績というものを基調にいたしまして、過去から現在までの伸び方というものを多少検討しながら、将来の、大体五年後くらいの見通しを立てまして再編成したような次第でございます。  具体的に申し上げますと、ことしの四十二年産のビートにつきましては五万八千四百ヘクタール前後でありまして、農家各位の非常な御努力によりましてこの面積も、一昨年といいますか、四十一年産のビートに対しまして非常に伸びましたし、また去年天候にも非常に恵まれまして、反収も非常にあがったような次第でありますが、生産量としてはおおむね百九十四万トンのビートを達成するに至った。それを前提にいたしまして、将来可能な可能性といたしまして約六万三千五百ヘクタール、いわゆる五万八千四百ヘクタールから六万三千五百ヘクタールというふうに、五千ヘクタール前後の相当な伸び方を前提にいたしまして、そうして反収も、いわゆる三十六トン半というととで、大体二百三十二万トンをいわゆる全ビートの生産量ということで策定いたしまして、そうして大体各工場の操業規模が均等化するようにということで、との二百三十二万トンを現在の工場規模の九工場で算出して、多少の修正をして出したような次第でございます。その間先生の御指摘のように、ビートは北海道において生産的にはようやく安定しつつありまして、現在まだ十分に安定したとは申し上げにくいのでございますが、過去から現在に至りまして、一部の地区では非常に伸びましたが、またある地区ではその他の工業都市化といいますか、そういったものが進行する過程で伸びが十分でなくて、ある別の地区では逆に非常に伸びていくということでアンバランスがありましたので、そういったアンバランスを、会社側の経営の方針の責めに帰し得られないような事情も内在しておるようにも見受けられましたので、今回、あらためて地域の均衡化をはかるように地区割りを再編成したような次第でございます。
  79. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、てん菜といえどもかなり過去の歴史の中で災害等が発生しておるわけですが、これから災害等で各工場間の原料が不均てんになった場合はどのように措置するのか。うんぷてんぷでそのまま操業をやらすのか。それとも、たとえば昭和三十八年の干ばつ、風害によりまして、せっかくまきつけたてん菜が、春先の風害で消えてなくなりまして、かなりの面積が他作物に転換されて、三十八年度の操業というのはかなり低下したわけです。この風害によって被害を受けた反別というのは、全部で一万二千ヘクタールくらい。ことしは大体六万ヘクタールくらいの作付になろうとしておりますが、しかし、三十八年のような干ばつ、風害が来ますと、そのうち一万三千ヘクタールくらいが被害を受けて、せっかくまきつけたてん菜を他作物に転換しておるわけです。こういう災害が起きたときに、風害状況というのは、九カ工場均等に起きるものではなくて、ある地区においてはほとんど風害がない、こういう災害に合わないという立地条件のところもある。その反面には、かなりひどい災害を受ける工場地域があるということになると、その場合の措置はどういうふうにするのか。どう考えておるのか。
  80. 荒勝巌

    荒勝説明員 われわれといたしまして、昭和三十八年の強風による被害、多少干ばつもからんだと思いますが、そのときに、ただいま御指摘になりましたように一万三千ヘクタール程度の被害面積が出たことは一応確認しておる次第でございますが、そのうち再播種いたしまして、もう一ぺん種をまき直しました面積が約二千ヘクタールあり、またその他いわゆる苗を再植えしたりいろいろしまして、結局、結果論といたしましてどうにもならないということで作付転換をいたしましたのが、一万三千ヘクタールのうち約二千五百ヘクタールくらいが作付転換をしておるような次第でございます。こういう大災害がありましたことを契機といたしまして、まだ十分とは申しかねますが、北海道においてその後いわゆるポットによるビートの作付が非常に普及いたしまして、三十九年以降現在まで、比較的順調に面積も伸びましたし、またいわゆる反収も増大して、過去二、三年来の冷害等にも十分に耐えて、非常にビートは安定的な作物に現在なりつつあるのではなかろうかというふうに理解しておる次第でございます。  したがいまして、災害のことにつきまして、今後あり得ないとかあり得るとかいう議論は、私いたしたくないのでございますが、やはり多少は災害というものはあり得るものというふうに理解しております。しかし、現在の段階では、こういう災害が起こりましても、今回再編成を行ないましたビートの地区については、原則としてこの地区はそのまま守って、いわゆる集荷を実行してまいるように指導していきたい、こういうふうに思っております。  ただ、実際問題といたしまして、今回の地区割りの再編成におきましても、徹底的といいますか、根本的な再編成ではございませんで、やはり非常に現実的な実際的な地区割りであります関係で、工場別から見ますと、企業の合理化という点からいたしますと、比較的長距離から原料を運ばなければならない。すぐ近所に隣の地区割りのビートが余っておるのがあるにもかかわらず、やはり自分のなわ張りということで、他の相当遠い距離から運ばなければならないというような不合理性もありますので、そういう点につきましては、やはり実際問題といたしまして企業の合理化を進める過程で、両企業者間の等量交換による数量交換を話し合いで実行するよう指導してまいりたい、こういうように思っておる次第であります。
  81. 美濃政市

    ○美濃委員 いまお尋ねしたのは、災害が起きても、従来やったように糖業者間の原料調整をやるのかやらぬのかということを聞いておる。そういうものは今後一切やらないという方針に基づくものですか。
  82. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま私、原則としてというふうに申し上げましたが、やはり地区割りは地区割りとして認めつつ、非常な異常事態が起こりました際におきましては、ある程度そのときの事態に応じまして、われわれとしては検討しなければならないのではなかろうかというふうに考えております。
  83. 美濃政市

    ○美濃委員 そこで、一応原則はお尋ねしたわけですが、ただいま御答弁のあった原則とかなり食い違った地域調整が、今回全面的ではないですが、一部に指示されておる。これは具体的に申し上げたほうがいいと思いますので、申し上げますが、ホクレンの清水工場ですね。これは、去年も周辺で原料自立ができていないわけですね。去年でも原量調整によるものか、等量交換によるものかどちらかだと思うのですが、まだ自身の地域が安定してなくて、搬入が二万トンほど行なわれておる。ここから一町村を他に削るというのが案でありますが、この一町村を削ってほかにやると、もう原料の確保六0%くらいの規模になる。しかも、先ほど申し上げたようにこの地域は、三十九年から今日まで増産に異常な力を入れておりますから、伸び率は少ない。これから見込まれる、新たに耕作するという状況は不可能に近い。片やその町村をやろうとするところは、これを一村つけることによって七カ町村になる。片や四カ町村になって、将来とも近隣からの原料の確保は全く見通しのない状態になる。片一方の七カ町村は、さらにこれから三千ヘクタールくらいの新たな作付が見込まれる。まだ畑面積に対するてん菜の作付比率が低いのです。北海道畑作の寒冷対策の中のビートの正常な作付比率といえば、もう三千ヘクタールくらい作付が見込まれる。これは私、単独の意見でなく、むしろ北海道庁なりあるいは農業団体なりがそういう考え方を持っておるということになりますと、近き将来において、片や一工場以上の原料確保はできる、片や取られてしまって、もう根本的に将来とも原料の自立ができない、こういうことで指示が行なわれたということは、これはまことに間違ったことだと私は思うのです。こういう点に対してどうお考えになっておるか。それと、この状態に対してもう一ぺん再検討するという考えがあるかどうか。
  84. 荒勝巌

    荒勝説明員 今回とりました措置の中で、ホクレンの町村を、今回の北海道糖業株式会社の地域に再編成したことについての御指摘だと思いますが、われわれといたしましても、先ほど申し上げましたように、極力各工場別に独立できるような地域再編成をやりたかった、原則としてもう少し広範囲な、徹底的な再編成をいたしたかったのでありますが、実際問題として、従来長い間何十年もかかってできてきたビートの地域を、そう一方的に全部やり直すというわけにもまいりませんので、実際できる範囲内での地区再編にせざるを得なかった。  そこで、大体後発企業であります北海道糖業に十万トン前後のビート地区を、この際再編成して確保させたいという前提から、いろいろ検討いたしました結果、それによりましてもおおむね北海道糖業は後発でありますので、ことしの実績から逆算いたしましても、北海道全部が一工場当たり二十一万五千八百トン前後の操業度でありましたが、三社のほうは、今回改正しなければ十五万八千トンくらいで、二十一万五千に対して十五万八千では非常に操業度が少ないということで、それに足しまして、今回の再編成によりまして十八万九千トン、約十九万トン前後にまで何とか持っていきたいということで、数字をいろいろ調整した次第でございます。その間におきまして、先ほど申し上げましたように、ある町村をいろいろ参酌したのでありますが、非常に大きな町村でありまして、一カ町村だけで十万トンに近いような町村等もございまして、なかなか分割がむずかしいということで、具体的に今回指示いたしましたような、上士幌町をこの北海道糖業の地域に入れざるを得なかったというふうな結果になっております。  その結果、ただいま御指摘がありましたように、清水工場の数量が減るではないかという御質問でございますが、しかし、清水工場といたしましては等量交換の方法は、先ほど私が申し上げましたように今後も残されておりますので、あるいは日甜なりその他の企業との間でお話し合いになって、等量交換によりまして、あるいは合理化の方法によって、今回の地区再編後においても、でき上がりましたビートをすぐ運んだほうが企業の採算といたしましてはむしろ多少よくなるのではなかろうかというふうに判断して、今回の案を指示したような形でございます。  われわれといたしましていろいろと検討いたしましたが、やはり現在の段階においてこれが一番実際的だ。根本的な再編成をするとか、あるいは不当に遠いところの町村をまたくっつけたりというようなやり方よりも、いろいろ不十分な点は多々あるとは思いますが、われわれといたしましては今回の指示しました線で、道庁も含めて協議してきた関係もこれあり、今後関係市町村におかれましては、十分御協力をお願いしてこの線で実行してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  85. 美濃政市

    ○美濃委員 その説明を何ぼ聞いても、これは了解できないのです。時間の関係で単純にお答えを願いたいと思うが、そうすると、清水工場というものは四カ町村に削って、それで原料の確保ができるという考えですか。
  86. 荒勝巌

    荒勝説明員 ホクレンの清水工場の件につきましても、過去におきまして非常に面積がふえてきたといいますか、成長率が高かった関係もありまして、今後それほど高い成長率を期待するというわけにはまいらぬのではなかろうかというふうに私も理解しております。したがいまして、ホクレンの清水工場を中心とする地区が、これによって将来、いわゆる完全な自給自足の体制に入れないのではなかろうかというふうにも考えております。しかし、今回の上士幌地区を北海道糖業に引き渡しましても、従来からのいわゆる非常に近い他の周辺地区から等量交換によって原料ビートを搬入しておった経過もありますので、その件につきましては今後ともさらに、いわゆる日甜地区あるいはホクレンのその他の地区のほうからの、その年の原料生産事情を勘案しつつ等量交換制度によってこの工場へ搬入することによりまして、操業において何ら支障を来たすような結果にはならず、経営的にもかえって合理化されるのではなかろうかというふうに理解しておる次第でございます。
  87. 美濃政市

    ○美濃委員 それは経営的に合理化できるなどということは全く詭弁だと申し上げたい。二百キロも離れているもう一つの工場、いわゆる北見の斜里工場は原料的に有利だから、それを等量交換という方法でやるというのであれば、まだてん菜の作付状況というのが固定化していない現況において、いわゆる原料調整体制でしばらく様子を見るということが正しいのである。これは去年の実績でもかなり上回っておりますから、固定的でない。全然原料の自立できていないところの集荷地域を動かすというのであればなぜ−その前に、その二百キロも離れておる工場の原料が有利だからという解釈に立っておると思うのです。なぜその有利な地域、じきそのそばには日甜の磯分内という二十一万トン、平均二十万トン以上の原料に対して、この地域には六万トンという工場があるのですから、基本的に有利なところできちっと町村を主体に再割りをするというのであれば、どうして基本に立った政治の姿勢をとらないのか、これは私どもとしても理解ができない。二百キロも離れているが原料が多い、こっちのほうは原料が足らぬのだがまだ減してもいいということは、これは私は全くでたらめなやり方だと思うのです。こういうことは断じて私どもは了解できないので、そういう不自然なるものを、合理的になるんだなどという答弁をするということは私はどうかと思うのです。
  88. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま御指摘になりましたように、北のほうの地区とホクレンの現在の清水工場を直ちに結びつけて、そこへ原料を運ぶという直接的な考え方ではございませんで、毎年の原料の生産事情を勘案しながら、いわゆる等量交換の考え方によりまして、日割とホクレンとの間で等量交換の考え方さえ基調になれば、いわゆる帯広地区のビートも相当大量に過剰ぎみになっておりますので、ただいま御指摘の磯分内に送るべきものをあるいは清水工場のほうへ搬入することにより、その等量分をあるいは北から磯分内のほうへ運ぶというふうなやり方等もございまして、これはその年その年の作柄にもよりますから、断定的なことは私たち申し上げられませんが、いわゆる企業者間の運賃距離をいかに少なくするかということで、合理的な方法は相当考えられるのではなかろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  89. 美濃政市

    ○美濃委員 私の聞いているのは、あなた方は原料調整なんかというややこしいことをしないで、全然原料のまだ足らないところの工場の地域を減らすのでなくて、余っておるところのそのそばに足りない工場があるのですから、どうして余っておるところの一町村なら一町村を、磯分内工場なら磯分内工場の地域にしてきちっとしないのかということを言っておるのです。どうしてそういうおかしなことをやるのか。等量交換も、それはどうしても避けられない実情だとはっきりしておるのでしょう。どうして余るところの町村をそのままにして、二百キロも離れているところの全然原料の足りない工場の地域を一町村削除して、基本的に六〇%くらいの原料しか自体の集荷地域ではできないという条件をつくるのか。日甜の磯分内工場も余っておって、そこでは調整がつかないというので、どうしてもそうしなければならぬ原因があるのであれば私も了解しますけれども、そうじゃなくて、片一方は足りないのでありますから、そこを、なぜ地域調整するのならするような基本線で地域調整をやらないのか、こう尋ねておるわけです。これは再検討するのでなければ、私はこの問題はやはりおさまらぬと思います。  それからまた、私は去年の国政調査で青森等の実情を見ましたが、この中にかなり不自然なものがあります。こういう姿勢で農林省が指導していくということは、私はもう許されぬと思うのです。断じて今回の場合も許されぬと思うのです。そういう間違ったことをやって、従来よりもよくなるのだとかなんとかという論弁を使って、メンツにこだわって非常に間違った案を押し通そうとするならば、それはそれなりに私どもは考えなければならぬと思う。もう一ぺん御意見を伺いたい。
  90. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  われわれといたしましては、この地区の再編成につきましては、先ほど申し上げましたように矛盾は十分感じておりまして、スタートのときには非常に根本的な地区再編も考えたわけでございますが、現実問題といたしまして、全町村にまたがるような徹底的な再編成の手を打つということは、あまりにも各方面に御迷惑をかけるというふうに判断いたしまして、やはり必要最小限度の地区割りの再編成にいたしたいということで、今回の措置に踏み切ったというふうな次第でありまして、これが完全無欠というふうには私自身思っておりません。しかし、これによって従来よりは多少、毎年毎年ある一定の数量を後発会社に供出するというか、提供するような措置よりも、今回ある程度永久的な措置として地区割りで再編したほうが、今後のビートの安定的な発展のためにはプラスになるのではなかろうかというふうに判断して実行した次第でありまして、現実問題として、これ以外に考えられなかったというのが今回の経過でございます。
  91. 美濃政市

    ○美濃委員 踏み切った、こう言うのですが、踏み切り方が間違っておると非常に問題が出るわけです。たとえば、昨年閉鎖がきまってからの東北のビート事情を私は見たわけですが、全く話にならぬということですね。それは第一に東北の実情に合う品種を用意していない。しかも、どこから持ってきた種か私はよく知りませんが、どういうふうにして持ってきたのか交雑品種で、三品も四品も混合した品種を使わしておる。しかも、昨年行ってみたのですが、てん菜はわりかた温度には敏感なのに、高温の地帯に向かない混合された品種を使っておりまして、昨年の場合非常に褐斑病にやられて、二次生長をいたしました。第一頸葉の葉は全部枯れてしまって二回目の葉が出ている。これは私どもの測定では、含糖率は一0%くらいしかないのではないかと思う。非常に農民は手入れをよくしておりますけれども、全く品種が悪いために、てん菜の収量よりも砂糖をとるという作物の体系から見た場合には全くなっていない。こういうことが行なわれておった。そういうのは、いま踏み切った、踏み切ったと言いますが、いわゆる企業は、フジ精糖はやはりビート工場を建てたくて申請したのでありますから、失敗してもその企業はいいだろうけれども、実際政策的に見た場合、てん菜という作物を東北に入れて、そうして経済作物として農民につくらしているのに、てん菜の収量の中から砂糖をつくるという工程の指導も行なわれていない、私ども考えるのに。その結果は、昨年四億九千万というつくっただけのビートは食管で買い上げて泣いたわけです。こういう膨大な国家補償的な損失を国に生ぜしめたわけです。私はこれは行政責任があると思うのですね。  そのことは別にして、北海道の今度のような非常に間違った地域を、踏み切ったというて強行するということは、再び青森の二の舞いを起こす。そういう踏み切った行政の姿勢というものは、私はあり得ないと思うのです。あなた方は踏み切ったかもしれぬが、私どもの見た場合には、踏み切った姿勢ではやらせない、こう思うのです。踏み切った姿勢が間違っておるときに、私どもはそれを注意するために国会があると思うのですよ。それを検討するという意思もなければ、踏み切ったからやるということは、断じて許せぬと思うのです。もしそれをやるというならば、私はこれから調べて、青森の工場における行政責任をやはり追及しなければならぬ。  たとえば、これは北海道のある町村ですが、それは全然ビートとは関係ございませんけれども、その町村で職業安定所をつくるために、四百七十万と思いましたが補助予算を申請した。ところが、たまたま請負金額がそれを下回ったが、設計金額で補助金を受領しておった。ところが、町村長は、設計金額よりも請負金額が四十万下回っておったが、それに伴う補助金を受領しておったということで、補助金適正化法違反で、今回控訴はいたしましたけれども、第一審で懲役一年、執行猶予二年というのであります。四億九千万からの国費を国家補償的に使う、そのうしろにそういうことを認可なりあるいはそれを進めてきた行政責任というものは、これは司法事件に該当せぬと思うけれども、いわゆる行政責任、その上に立った行政処分というものは行なわれなければならぬと思います。行政的にやったことで間違ったことをやって、そうしてそれで何でもないんだということは、私は許せぬと思うのですね。断じて今度の北海道地域調整は許せない、そういう意思に立っておるわけです。この問題は部長に言ってもしようがないから、きょうは政務次官が何か答申が行なわれるので席をはずしておりますから、これは次の機会にそこまで行きます。今度の問題は、どうしても踏み切ってやると言うならばやらぬと言うならば、終わったことまで私は言いたくないのです。始末の終わったことまで引っぱり出してあらさがしをしたいというのではないが、今度の間違った踏み切りをとめるために、どうしても青森問題を追及しなければならぬ。行政責任を追及する、行政処分を要求する、そうしなければ日本の政治は改まらぬと思います。何でもかんでも実情に合わない間違ったことを中央で判断して、踏み切ったからこれでやるんだ、これは許せぬと私は思います。  きょうは大臣もおりませんから、この問題は次の機会に、やはり行政責任を追及しなければどうしても許せぬと思いますからやることにして、本日はこの程度で終わります。
  92. 足立篤郎

    足立委員長 樋上新一君。
  93. 樋上新一

    ○樋上委員 私は厚生省にお伺いいたしたいと思います。  戦後日本海でとれる魚がめっきり少なくなりましたので、このために東シナ海、インド洋、アフリカ、カナダ沖と、日本漁船が世界の至るところに足を伸ばすようになりましたが、所変われば品変わるでとれる魚にもこれまでとは違ったものがあって、姿形がグロテスクなものをそのままあちらの名前で出しており、消費者の購買意欲を減退させるようになる。魚はしろうとにはそれと見分けがつかない。それをいいことにして、そしらぬ顔で日本の高級魚の名をつけて小売り店で売られておる。こうしたインチキ商法が横行し始めたが、それが慢性化して、いまや魚はにせものの時代になってきた。さすがに主婦連あたりでも黙っておれないと立ち上がって、実地に小売り店へ行ってこれを買って、うそつき表示について調査した。そして各省関係者を招いて全体研究会を行なったというように聞いておりますが、その調査の結果を明らかにしていただきたいことと、また、このようなことは何が原因で起こるのですか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  94. 神林三男

    ○神林説明員 魚の名称につきまして、それを表示するとかそういう問題につきましては、直接食品衛生法の取り締まりの対象には現在なっておりませんが、正しい名称で売買されるということは公衆衛生上好ましいことでございますから、農林省であるとか、あるいは水産庁であるとか、それから公正取引委員会なんかともよく連絡をとりまして、今後販売業者に対しまして正しい名称で売られるように行政指導をしていきたいと考えております。
  95. 樋上新一

    ○樋上委員 これはいま始まったことでなくして、過去何回もこういうことは言われて、善処をするとそのつど言われておるのですけれども、いまだにそれが直らない。規則はないんだけれどもといまも御答弁がありましたけれども、やはり消費者としてはもうこの辺で改めてもらわなければ、味もみな変わっておる。表示したその魚を買ってそれだと思ったら、味は全然変わっておる。ところがそれを知らない。それでは、規則はないといえばないのですけれども、これは言わなかったらいつまででもそのままに表示されているのか、こういうように私は思うのです。  その原因として、もともと遠洋漁業の範囲の拡大につれて、いままで市場に出回らなかった魚種が売られてきた。これらの新しい魚種に対する商品としての名づけが適切に行なわれなかったことに原因の一半があるのだと私は思うのですが、この点どうでしょう。
  96. 久宗高

    久宗政府委員 御指摘のように、遠洋漁業関係でいろいろ新漁場の開発でございますとかそういう努力をいたしておりますので、ここ数年逐次いろんな新しい魚種がふえておるわけでございまして、ただいま御指摘を受けましたようなことがございます。魚関係は、小売りと申しましても非常に気っぷのいい仕事でございまして、まさかと思ったのでございますが、そういうような御指摘を受けまして非常なショックを受けておるわけでございます。  私どもといたしましては、だんだん漁場が拡大いたしますにつれて、恒久的にわが国に入れても大体消費者になじむといったようなものもだんだんめどがついてきているわけでございますが、その過渡期におきまして十分なPRと申しますか、さようなことを非常に怠っておりまして、この点まことに申しわけないと思うわけでございます。いろいろ消費者団体のほうの御指摘を受けまして、急速関係各省と御連絡をとりながら対処いたしているわけでございますが、水産庁といたしましては、一つには、前々から御承知のように冷凍魚の普及問題につとめておったわけでございます。従来デパートで冷凍品に消費者がなじんでいただくような施策を講じておりましたけれども、非常に不十分でございますので、本年度からでございますか、小売り業者も参加していただきまして、小売り業者を通じまして消費者に冷凍品になじんでいただく。その際に、新しい品種につきましても解説をし、消費者にもなじんでいただくということを小売り業者を通じてやるのが一番徹底するというふうに考えてやっておるわけでございますが、規模も非常に不十分でございます。  それから、ただいま御指摘を受けましたような名称の統一問題でございますが、ごまかして売ろうというのはもちろんけしからぬわけでありますけれども、いろいろ区分いたしますと、はたして特別な名称をつけるべきかどうかという議論も多少専門的にございます。さような意味で、消費者の方も含め、学識経験者も含めまして、現在大日本水産会の中に特別委員会をつくりまして、どの程度に区分をして消費者にわかっていただくような形の名称に統一するかという問題を、急速いま勉強いたしておる最中でございます。たいへんおくれて申しわけないと思っておりますが、御指摘のような御批判を受けないように努力いたしたいと考えております。
  97. 樋上新一

    ○樋上委員 農林省業務統計処理上にメルルーサという名前が新規に入ってきた。その名前を適当な和名に統一をするようにやっていらっしゃらないのですか。そういった外国名のメルルーサという魚を日本名にするというような……。
  98. 久宗高

    久宗政府委員 メルルーサは、いままで各国で追っかけておりました魚の中では比較的まだ群として相当のものが残っているわけでございますので、これらの種類のものが相当消費されてしかるべきだというふうに実は考えておるわけでございます。名前を和名にいたしますかどうかの問題も含めて、いまの御専門の方々、特に消費者の御意向も含めました形で検討いたしたいと思っているわけでございます。一応メルルーサというのは相当普及してまいったような形でございますので、あえて和名にしたほうがよろしいかどうか、その辺のところも検討して結論を出したいと考えております。
  99. 樋上新一

    ○樋上委員 いま検討されておるということを聞いたのでありますが、メルルーサの名前もかなり知れてきたからそのままでいいじゃないかということになりますと、全部和名に統一しなかったら、メルルーサをくださいというようなことを言うて、主婦が英語の名前を紙に書いて出さなんだらわからぬ。そういうややこしいのは和名に統一したらいい。もしやっていなかったら、取引上非常に不都合な場合が生じるのではないかと考えるわけです。たとえばメルルーサなどは、その名前で市場取引されているが、このままで小売り店に行くと商品性を著しく阻害することにならないか、こういったことも私、考えるのですよ。その点はどうでしょう。
  100. 久宗高

    久宗政府委員 食ってみたのでありますが、けっこう食えるわけでございます。ただ御指摘のように、名称になじみがないために食わずぎらいでは困るといったようなことから、おなじみの奥さま方に御説明して食べていただくといったようなことが初めにあったと思うのでありますが、それが多少習慣化いたしまして、御指摘を受けるような、いわばごまかしで売るというような形のものになったように思います。  ただ名称でございますが、かりにこれを日本名にいたそうといたしますと、別にまぎらわしいという問題も起こり得るのではないかというふうにも考えられますので、その辺のところはいま申しましたように、やはり専門家で相当吟味していただきまして、その中には特に消費者の関係の方も加わっていただいておりますので、適当なところに結論を得たいと考えております。
  101. 樋上新一

    ○樋上委員 うそつき魚の正体調べというものをやってみたのですが、メルルーサはどんなように売られているかといったらクロダイとして売られている。これは非常に安い値段で、三分の一の値段ですが、クロダイとして売られているのです。こういうことをずっとあげてみますと、メヌケというのがアコウダイとして売られたり、ハタがタイとして売られたり、ギンダラがムツとして売られている。それからアフリカのタイがこっちのタイとして売られている。なおまだあげますと、オヒョウがヒラメになっている。それからカレイがマガレイとして売られている。三十一種類のうちで合格したのが十三で、不合格が十三、産地の不合格が五、こういう統計になっておるのを御存じでしょうか。
  102. 久宗高

    久宗政府委員 御指摘のようなことが調査の結果わかりまして、たいへん申しわけないと思っておるわけでございます。
  103. 樋上新一

    ○樋上委員 これは農林省当局の怠慢であると私は思うのです。水産庁の行政担当者として当然対策を講ずべきだと思いますので、どうかひとつ早急にそういろ点を統一するなり、うそつき魚が出回らないように和名に統一するなりやっていただきたいと思います。たとえば、メルルーサはタラの一種であるためにスペインダラという名称をつけてもいいんじゃないか。これは一つ提案ですけれども、スペインダラというぐあいにつけたらどうか。そうすれば、遠海でとれたものであるということが消費者には明確になってくる。ただ単にメルルーサとつけるのじゃなしに、スペインダラというふうにつけたらどうか。こういうようにして市販をしたら、安心して買っていけるんじゃないかと思うのです。  それはこの辺にしておきまして、今度は公取委員会にお願いいたしますが、オヒョウがヒラメとして売られていることが明らかになったが、これは確かに学問上の分類からはヒラメの一種である。しかし、高級魚とされている近海もののヒラメとは、なまの場合などはかなり癖がありまして、味が違うのですが、現実にヒラメとして店頭で売られているのです。さらに問題になるのは、業者間の相場ではオヒョウはヒラメの三分の一の値段であるにもかかわらず、消費者にはヒラメと同じ値段で売られている。また、タイ類に名称詐称が多いとただいま申しましたが、たとえばニュージーランドのタイを大ダイといったり、アフリカダイをタイといったりしている。このようなことで、主として魚の小売り段階で、消費者を惑わす不当表示が横行しているのはまことに遺憾である、私はこう思うのです。これらの行為は不当表止防止法違反の行為であると考えておりまするが、公取のほうはどうでございましょうか。
  104. 吉田文剛

    ○吉田説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のありましたオヒョウをヒラメ、あるいはメルルーサをクロダイといったようなことで、価格の点において非常に安いものを高いものの名前で売っている、あるいは内容が非常に劣るものを内容のすぐれたものの名前で売っているということになれば、これは景表法第四条の不当表示という違反の疑いが非常に強いと思うのです。公正取引委員会といたしましては現在この点検討中でございますが、新聞紙等で見ますと、主としてそういうことで小売り店の店頭で売られているように書いてございますので、現在価格、品質の点について調査を進めております。  それから、これを一々私どもで各店を個々的に調べるということになりますと非常にひまもかかりますので、業者の組合等と連絡をいたしまして、できれば、これを違反かどうかきめつけて措置をとる前に、表示の基準というものをつくらしまして、それは関係官庁あるいは学識経験者の意見も伺いまして、もちろん消費者の意見も伺って、表示基準というものをつくらして、それによって効率的な取り締まりをやっていきたい、こういうふうに考えております。
  105. 樋上新一

    ○樋上委員 ただいまお話を承りまして思うことですが、先ほど来申しましたように、これはいま起こった問題ではない。かなり前からこの問題をやかましゅういわれて、新聞やラジオや主婦連で騒いでおる。それをいまこれからやるというのは、私はおそきに失する、これはいままでの怠慢を反省してもらって早急にやってもらわなければもろ世間は承知しない、こう思うのです。日常のことですから、主婦連はこういうことに対して非常に敏感で、やってくれているのだろうかどうなんだろう、ほかの電気製品なんかは公取がやかましゅういうけれども、日常の市場に売られておる魚の点についてはいつまでたっても行なわれていない、こう思っている。この点を私はつとめてお願いし、要望しておく次第でございます。  それから、今度は価格の問題ですが、国民生活白書によると、三十五年から三十九年までの五年間の各種の値上がり状況を見ると、中小企業の手になる加工食品が四0%、民間の家賃、部屋代は六五%であり、理髪、パーマネントなどのサービス料は八0%程度であるが、総理府統計局の調査によると、同期間におけるマグロ、 アジ、イワシ、サバ、イカなどは二倍にも値上がりをしておる。この間にも、さきに述べましたように遠海産の安価な魚の水揚げ量が増加しておる。全体的には他商品に比べて割り安になっても当然でなければならないと思うのですが、高くなっていることは監督官庁の怠慢であるし、今後もっと具体的な処置をとってもらいたい、こう思う次第でございますが、この点はどうでございましょうか。
  106. 吉田文剛

    ○吉田説明員 お答えいたします。  ただいまの御指摘のありました点につきましては、私どもといたしましてはそういうふうなものがほかのものに比べて値上げの幅が非常に著しい、その原因がどういうところにあるかということは、もしそれがカルテルによって値段をつり上げている、業者間の協定でつり上げているということでございますれば、これは独禁法によって処置をいたしたい、こういうふうに考えております。私のほうは取引部でございまして、そういうほうは審査部でやっておりますので、ここで責任のあるお答えはできませんけれども、もしカルテルがございますれば、違反ということですぐ処置をとりたい、こういうふうに思っております。
  107. 樋上新一

    ○樋上委員 じゃ、うそつき魚の表示はそのくらいにしておきまして、もう一件厚生省にお伺いいたしたいのでございまするが、最近における輸入食品の状況及び検査状況はどうなっているのか、お伺いいたしたいと思います。
  108. 野津聖

    ○野津説明員 お答えいたします。  最近におきます輸入食品は非常に増加してまいっておりまして、たとえば昭和三十七年に年間約五万九千件の輸入があったわけでございますが、それが昭和四十一年には十一万七千件をこえているというふうな状態になっております。  この輸入食品につきましては、現在、食品衛生法に基づきまして輸入時に届け出をしていただくようになっているわけでございます。そうしまして、その届け出に基づきまして、必要があります場合に検査を行なっているわけでございます。昭和四十一年度におきます検査の件数は約七千件となっております。この検査の結果、不合格となりました件数は約一千件というふうな現状になっておるわけでございます。
  109. 樋上新一

    ○樋上委員 先般横浜において、輸入米から黄変米らしいものが摘出された。その実態についてひとつ説明をお願いしたいと思います。
  110. 野津聖

    ○野津説明員 お答えいたします。  昨年の十一月二十四日に、川崎港に入りました中国からの玄米約四千五百トンにつきまして、横浜検疫所に駐在しております食品衛生監視員が検査をいたしましたところ、一部に黄変米菌を発見したわけでございます。したがいまして、国立衛生試験所にその資料を送付いたしまして精密検査を実施いたしましたところ、約二百二十一トンにつきまして黄変米菌によっての汚染が確認されたわけでございます。  黄変米菌の汚染の程度でございますが、これは約一ないし二%、百粒につきまして一ないし二粒という形で出ておるわけでございます。  なお、この黄変米菌に汚染されました玄米につきましては、これを搗精いたしましてできました白米を再検査いたしまして、その結果、黄変米菌によっての汚染がないということが判明いたしましたら、食糧に供するようにいたしたいと思っておりますし、また、その際に生じましたぬかだとか砕け米につきましては、これは食糧に向けないようにするということで処置いたしたいと考えておるわけでございます。
  111. 樋上新一

    ○樋上委員 中国産米については、輸入に際して書類検査だけで、実物はノーチェックだという手ぬかりがあったことが今度明らかにされましたが、それに対して政府はどう考えておるか。
  112. 野津聖

    ○野津説明員 お答えいたします。  現在の検査の状況は、十の主要港に十九名の食品衛生監視員が駐在しておるわけでございます。その間、先ほど申し上げましたように、入ってまいります食品の件数が約十二万件というふうな状態でございまして、これの検査につきましては、全数の検査ということは現在の段階では非常に不可能な状態にありますし、また食品の、ものによりましては検査を必要としないというものもあるわけでございます。したがいまして、いわゆるサンプリング調査という形で検査を実施しております。その関係で、最近入ってまいりました中国産米につきましての検査は、この十一月に入ってまいりましたものが最近の事例でございますが、昨年の四月に長橋に入ってまいりました中国産米について検査をいたしておりまして、これにつきましては黄変米菌は発見されておらない、こういう現状であったわけでございます。
  113. 樋上新一

    ○樋上委員 最近五カ年の検査所の駐在食品衛生監視員の増員状況と、輸入食品件数の増加と、その概況を調べてみると、お答えになるとひまがかかるのでこちらから言いますと、その件数においては一00%増加しているのに、監視員は三五%しか増員されておらない。これでは、輸入食品の品目がますます複雑化してくるおりに全く逆行するものである。三十七年には十四名でした。五万八千九百二件について十四名、三十八年は十四名で七万六百十六件、三十九年は十五名で八万三千三百八十三件、四十年には十六名で九万四千九百八十六件、四十一年には十九名で、ただいまおっしゃいましたが十一万七千二百九十八件、これだけ件数がふえてきているのに監視員が少ない。検査を厳重にしておると言いますけれども、もし発見されなかったならば、この黄変米が検査の人手が足りないというようなことでわれわれがそれを食べたときには、どういう結果になるかということを考えてみますと、いろいろな病気が出てくる。肝臓障害とか、肝硬変とかいうものが出てくる。おそろしい結果になる。米だけでなくすべての問題について考えてみますと、まことにおそろしい結果になる。  そこで、名古屋と大阪では監視員が何人いるのですか。
  114. 野津聖

    ○野津説明員 お答えいたします。  名古屋の検疫所に駐在しております監視員は一名、それから大阪の検疫所に駐在しております食品衛生監視員は一名でございます。
  115. 樋上新一

    ○樋上委員 こうした物件がふえてきたにかかわらず、名古屋、大阪でわずか一名ずつしか駐在しておらない。もしその監視員が病気になったときにはどうするかを考えたときに、私は非常にはだ寒い思いがするのです。要らぬところにはたくさんの人間がおって、肝心の輸入して検査するところにはおらぬ。横浜の事務所におきましては技官が四人、職員が二人しかおらぬ。いま聞いてみたら、大阪や名古屋には一人ずつしかいない。こういうことでは、細菌やカビ、そういうものがあるかないか抽出検査するのにどれだけの能率があがるか。だからついルーズになってきて、そしてああいうようなたまたま抽出してみたら問題が出る。早急にこの監視員の数を増員しなければならない、私はこう思うのですがどうですか。これでいいのですか。
  116. 野津聖

    ○野津説明員 お答えいたします。  先生の御指摘のとおり、現在食品の多様化というふうなことに伴いまして、非常に多くの食品が輸入されている現状にあるわけでございまして、これに対処します食品衛生監視員の数が非常に少ない、こういうふうな状態でございまして、私どもも毎年できるだけの数の増員ということを要求いたしておるのでございますけれども、なかなかむずかしい問題があるわけでございます。ただ、今年度は一名の増員ということがやっと認められたというふうな現状にあるわけでございます。
  117. 樋上新一

    ○樋上委員 どういうところがむずかしいのか。私はこういうところにこそどんどんやってもらわなければならぬと思う。余っているところはたくさんある。そこであなた方が腰強く要求して、これだけではとてもだめだ、こういう状況だということを言ってもらわなければならぬ。遠慮していたら取れませんぞ。  最近、東南アジアから生鮮食品などを航空輸送する場合がある。その検査はどうなっているのですか。また、近年の輸入件数はどのような傾向にあるのか、これを御説明願いたい。
  118. 野津聖

    ○野津説明員 お答えいたします。  最近、航空機による生鮮食料品の輸入が非常にふえてまいっておりまして、羽田に入ってまいります生鮮食料品の輸入件数についてみますと、昭和三十八年度には二千九百五十九件輸入されていたわけでございますが、それが昭和四十二年度、これは四十三年の二月まででございますが、約四千三十件というふうに増加してまいっているわけでございます。現在は、東京検疫所に駐在しております食品衛生監視員のところで輸入の届け出が行なわれまして、検査等につきましても、東京検疫所に駐在しております食品衛生監視員の手によって実施されているという現状でございますが、交通が発達してまいりますと、ますます航空機によります輸入というふうなものがふえてくるということが予測されるわけでございます。これに対処しまして、先ほど申し上げました一名の増員を東京空港に振り向けるというふうに考えておるわけでございますが、問題は、航空機で到着します貨物類が二十四時間を問わず、特に夜間に到着するものも非常に多いわけでございます。したがいまして、一名の増員では実際の勤務には非常に問題が生じてくるというふうに考えておりますので、その間、東京検疫所に駐在しております食品衛生監視員あるいは横浜検疫所に駐在しております食品衛生監視員等の再配分なども実は検討しながら、できるだけ安全な食品が国内に持ち込まれて国民の口に入るようにいたしたいということで、最大の努力をいたしておる状態でございます。
  119. 樋上新一

    ○樋上委員 そのように、年々増加の傾向にある航空便による輸入食品は検査が怠慢である。またお話を承りますと、夜到着するものがある。わずかの検査員でこうした管理が非常に危ぶまれる。これは重要な問題になってくると思います。  私は、ここで再度この検査員の増員を願って、安心してそういう——生鮮食料品を航空便でやるということは最も新しいものですが、国民の食に供するという点から考えてみたら厳重に衛生管理をして、そして完璧な布陣をしいてもらいたい。最後にそういう要求をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  120. 足立篤郎

  121. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は農民年金、一名農業者年金につきまして御質問をいたしたいのであります。きょうは農林大臣の御出席がないということは承知しておりましたが、政務次官は。——いま来られますか。それでは質問を進めます。  私どもは従前から、農民にも恩給をということを一つのスローガンとして農村で戦ってきたものでございます。農民の実情は、御承知のように非常に低所得でありまして、戦中戦後のあの困難なときに、そういう低所得に甘んじて農民が国民食糧の確保のために非常に力を尽くしたということは、もろ周知の事実でございます。しかし、一生懸命に働けるときに働いて、そのあとどうなるかと申しますと、公務員には恩給があるが、農民にはそういうものがない。これについて、私たちは非常な不満を持っておったわけであります。  特に最近におきましては、農村においても家族主義の崩壊と申しますか、非常に個人的な風潮が生じてまいりまして、農業に従事する老人の老後の安定の問題が非常に大きな問題になっておるわけであります。そういうようなときに、たまたま昨年一月の総選挙において、ちょうど選挙のまっ最中でございました、佐藤総理大臣が、農民にも年金を出す、農民年金をつくるのだ、こういうようなことを声を大にして叫ばれたわけであります。農民は非常にこれに期待をいたしまして、このことばのために、自民党に対して投票した農民もずいぶんたくさんおると思うわけでございますが、あれから一年以上を経過いたしました今日、政府はみずから農民に公約をいたしましたこの問題について、どういうような措置をこの一年間に講じてこられたかということを、私はまずお伺いいたしたいと思います。同時に、昨年度及び本年度において、この問題についてどういうような予算的な措置を講じられたかということをお伺いしたいと思うわけであります。
  122. 森本修

    ○森本政府委員 農民年金の検討の模様でございますが、四十二年度の予算におきまして、農民年金の検討のために、農村における老後の生活の状況あるいは老後生活に対する農民の希望、また経営の移譲といったようなものが実態としてどういうふうに行なわれているか、その他農民年金に関します各種の実態ないしは学識経験者、その他農村の指導層の意向といったようなものを調査をするということで、予算的には約一千万円の予算がございまして、これは構造政策のための調査費の一環ということで計上され、実態調査を進めております。  そのやり方といたしましては、農民年金問題研究会というのがございまして、それに対して、先ほど申しましたような調査やり方、また結果についての取りまとめ、ないし評価というふうなことを委託いたしましてやってもらっております。なお、それとの関連におきまして、農民年金についての考え方なり、あるいは内容の主要な点について、どうあるべきかということもあわせて同研究会で検討していただくということで、目下鋭意検討してもらっております。  なお、国民年金審議会におきましても、全体の社会保障の一環として、こういった問題をどういうふうに扱うべきであるかというふうな観点から、調査検討が進められておるという段階でございます。
  123. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 この問題について昨年、海外の農民年金制度調査をいたしますために、農林省から派遣して調査をせられたというふうに聞いておりますが、この調査報告は出ておりますか。もし出ておるのでございましたならば、その報告書をお出しを願いたい、こう思うわけです。
  124. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げました構造政策の調査の一環といたしまして、全体の農業構造の関係につきまして、海外に農林省の職員を派遣いたしまして、一、二カ月だったと思いますが、調査をいたしました。その一環として、ヨーロッパにおける農民に関する年金について、これは必ずしも全部の国を当たるわけには、期間関係でいきませんでしたが、主要な国二、三カ国について調査をいたしました。調査の結果につきましては、大体整理をしておる段階でございます。
  125. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ただいまの調査の結果については、ひとつぜひ御提出を願いたいと思います。  そこで、いまのお答えにつきまして私が感じますことは、ことしの予算におきましては、軍事費は非常にふえておるけれども、社会保障費というもの、いわゆる社会保障制度というものが、財政の硬直化を名といたしまして総退却をいたしておるというような印象を受けておるわけであります。それからさらに、最近におきましてはアメリカの金恐慌、いわゆるドル危機、こういうような国際的な情勢の影響を日本の経済自身も受けまして、政府におきましても従来行なってまいったいわゆる財政金融政策、これはわれわれの見たところによりますと、負担を大衆に転嫁するという方向、すなわち社会保障制度のたてまえから申しますと、より一そうの社会保障費の節約というような方向に進んでまいるのではないかというようなことを、私どもは痛感いたすわけなんです。  こういうような実情のもとにおきまして、農民もまた、はたして政府があの公約を実行するかどうかについて、非常に大きな疑惑を抱いておると私どもは思うわけなんです。あたかも六月になりますと参議院選挙に入りますが、参議院選挙に入りますと、これまた当然佐藤総理をはじめとする自民党の諸君は、農民に対して農民年金の実施ということを、前回の選挙と同じように叫ぶだろうと私は思うのです。  そういうことを考えてみますると、ほんとうに腹の底からこの制度を実施して、気の毒な立場に置かれておる今日の農民層に対して、老後の安定をはかるというこの年金制度を確実に実施するだけの決意があるかどうか、また実施をするのであるならば、ことしの予算には計上されておりませんが、それならば一体いつこれを予算化して農民の期待にこたえるつもりであるかということを、私は農政局長立場としては言いにくい問題であるかと思いますけれども、大臣もおらなければ政務次官もおらぬのでありますから、あなたがやはり代表して、政府のうそのない決意を、単に私に答、えるのでなしに、農民に対してお答えを願いたいと思います。いつから実施をするか。
  126. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど落としましたけれども、四十三年度予算でも多少、従来の調査を補完するといいますか、継続するといいますか、そういろ形でたしか二百万円でしたか、若干の予算を計上いたしております。  なお、どういう目途で検討を進めるかというお話でございますが、先般の予算の分科会でも大臣からお答えがございましたように、四十四年度が厚生年金につきましては再計算時にあたっておりまして、制度改正を目途にして検討を進めております。これは厚生省の話であります。国民年金についても、同時期に何らかの改善をすべきではないかというようなことで、検討を進めるやに聞いております。ほぼそれと時期を同じゅうして、その一環として農民年金問題も解決すべき問題だというふうなことを念頭に置きまして、そういったことを目途にして私ども検討を急ぎたいというふうに思っております。
  127. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ただいまの答えによりますれば、四十四年度から実施をするという、そういう決意を持っておられるわけですね。よろしゅうございますね。
  128. 森本修

    ○森本政府委員 あの際にも大臣からたしかお答えがあったかと思うのですが、各種の政府部内における検討あるいは財政問題といったようなこともございますので、われわれとしてはいま言ったようなことを目途にして検討を進めるということを申し上げるということでございまして、農林省としては、準備としてはそのような運びで取り進めたいというふうに思っております。
  129. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 先日の予算分科会で、農林大臣が四十四年度から実施をするという答弁をせられたということは、私も承っております。ただいまの農政局長お答えも、四十四年実施を目途として準備を進める、こういうようなお答えのように承ったわけでありますが、ぜひひとつうそを言わないように、農民をだまさぬように、そのおことばを忘れずに、ことし実施にならなかったことは残念でありますけれども、四十四年からはぜひひとつ実施をしていただきたい、こう申し上げておきたいと思います。  それから、私はもう一つこの問題に関連いたしまして政府に申し上げたいととがあります。さきに「構造政策の基本方針」というのを農林省から出されました。御承知のように「この構造政策の基本方針」には七つの柱があります。七つの柱の中には、確かにこの農民年金制度というものが入っておるわけであります。そうして他の六つの柱につきましては、とにかくわれわれとしては非常に不満であり、中には絶対反対の立場に立たなければならない問題もありますが、それはともかくといたしまして、その七つの柱の中の六つについては、ほぼ今度のこの国会にこれから提案をしようとしておるように思うのであります。  ところがその中で、たとえば農地法の改正のごときは、昨年の一月の総選挙のときに、総理は農民に対して公約はいたしておりません。はっきり公約をしたのなら、私はむしろ票は減ったのではないかと思いますが、しなかった。公約をしない問題についてこの国会において通過をはかろうとし、公約をしたところの農民年金制度についてはほおかぶりをして過ごそうとするそういう態度、私はこれは批判されていいと思うのです。言うならば農民年金には金がかかる、しかし農地法には金はかからない、まあ金のかからぬことからやろう、金がかかるのはとにかくやるやるといいながらやらない、そして農民をだまかす、こういうような姿勢が政府にある、こういうふうに私は考える。この農民年金制度の問題は、政府のいわゆる安上がり農政の最も好見本だ、こう私は考えておるのですが、農政局長立場からお考えになって、これに対して何か弁解のことばがあるならばお聞きをしたいと思うのです。
  130. 森本修

    ○森本政府委員 別段安上がり農政といったような見地から、それぞれ取るべき手段を選択しておるというふうなつもりはございません。他のことに言及をして恐縮でありますが、農地法の問題にいたしましても、御承知のように数年来各種の研究会等を設けて検討をしてきた結果、その結論がまとまって近く御提案を申し上げるというふうな段取りになってきたわけでございます。  農民年金の問題は、御承知のように社会保障制度といったような実態ともきわめて深く関連をいたしますし、また他の諸制度との関連も十分考慮しなければならないといったような各種の検討のプロセスといいますか、そういった検討段階がございます。私どもとしては、お説のように、できるだけこういったものについては早急に実現をはかるべきものという考えにおいては何ら変わりはございませんが、そういった一定の検討の手順といったようなものもございますので、そういった問題についてはひとつ御了承をいただきたいというふうに思います。
  131. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 その問題はそれだけにしておきまして、この農民年金制度について、厚生省所管のいわゆる国民年金との間にかなりの問題があると承っておりまするが、その問題の内容なり経過及び農林省のこれに対する考え方、そういうことにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  132. 森本修

    ○森本政府委員 御承知のように、現在農民について適用されておりますところの老齢の保障制度は国民年金制度——国民年金の中には、御案内のように農民が約八百万ということで、全体の国民年金の加入者の約四割を占めるというふうな状況であります。したがいまして、農民についての社会保障制度検討する際には、どうしてもそういった実態なりあるいは制度的な関連を考慮しないで検討を進めていくというわけにはいかない性資のものであろうと思います。私どもとしましては、現在農民年金の考え方なりあるいは主要な内容なりについて検討を深めておりますが、そういった内容がほぼ固まりますれば、従来の国民年金なりあるいは社会保障制度の一環としての制度的な関連について研究をしていかなければいかぬ、検討をしていかなければいかぬというふうに思っております。
  133. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 端的にお尋ねをいたしますが、厚生省は厚生省の立場からこの問題に対して主張をしておる。農林省立場からは、一体この問題についてどういうような主張をなさっておるかということを聞きたいと思うのです。それをはっきりとおっしゃっていただきたい。つまりは厚生年金の付加給付的な形で厚生省が主張しておるが、そういう付加給付的な形の年金にしてもいいと思っておるのか、あるいは独自の農民年金というものをつくらなくちゃならぬ、こう考えておるのか、あなたの考え方、政府の考え方を聞きたいと思うのです。
  134. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、制度的に最も関連の深いのは国民年金との関係であろうと思います。私どもの現在のところの考えとしましては、別段国民年金制度の一環として実施すべきもの、あるいは別個に実施すべきものといったような点については、必ずしも態度を明確にする段階ではないというふうに思っております。つまり、農民年金の考え方なりあるいは主要な内容について、ほぼ構想が固まりましたならば、そこでいま言いましたような制度的な関連についていかにすべきかということが、その上で検討さるべきものというふうに思っておるわけであります。
  135. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私、御答弁を聞きまして、この問題について研究中であるとか検討中であるとかいうおことばが非常に多い。そういうところからもこの年金を、いわゆる選挙の道具でなしに、ほんとうにまじめにやろうという考え方が政府にあるのかどうかということについて、大きな疑問を抱くわけなんです。  そこで、いま一つお伺いをいたしますが、農林省がいま考えておる農民年金の種類——種類はいろいろありますが、その種類と、その種類ごとの目的をどういうふうに考えておられるかという点について、お考えを聞きたいと思います。
  136. 森本修

    ○森本政府委員 現在の段階におきまして、具体的に申し上げられるだけの準備ができていないのでございますが、私どもがいま農民年金を検討いたします際に、一つは社会保障の問題として農民に対するそういった制度が、いわゆる他産業の従事者に適用されておるところの年金制度と均衡がとれておるかおらないかといったような、いわゆる制度間の均衡の問題、それからもう一つは、農業政策なりあるいは農業近代化を進めていきます上において、社会保障制度というものがどういう関連を持っておるか、そういろサイドから社会保障制度に対してどのような要請があるであろうかといったような、いわば大きくいいまして二つの側面から、こういった問題について考えを深めていこう、検討を進めていこうということでございまして、まだどういう種類の、どういう目的のといったようなところまで、さだかにお答えをできるだけの検討が現在ではできておりませんので、目下のところ、いま言いましたような観点から検討を進めておるというふうなことでございます。
  137. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 農林省が諮問をいたしました農民年金問題研究会という団体から答申が出ておりますが、これは中間答申でありますから結論的なものとは私も考えておりませんが、その答申によりますと、いわゆる老齢年金というのと離農年金ないしは経営移譲年金、そういうような種類のものが考えられておるようでございますが、これは局長も御承知のことと思います。  そこで、私がお伺いをしたいのは、老齢年金に重点を置くのか、離農年金あるいは経営移譲年金に重点を置くのか、これをひとつお聞きしたいと思うわけです。
  138. 森本修

    ○森本政府委員 農民年金問題研究会では、研究会自体として、中間的な取りまとめなりあるいは最終的な取りまとめが行なわれて、私どものほうにその結果が報告されておるというふうなことはもちろんございません。ただ、研究会の過程におきまして、検討の素材として各種の資料が事務局によってつくられ、検討されておるということであろうと思います。  どちらに重点を置くかということでございますが、先ほど申しましたような視点からいきますならば、どちらに重点ということは、必ずしも研究会の内部としては、そういうプライオリティーといったような考えでやっておるのではないのだろうと思います。両方のサイドから詰めてまいりまして、最終的な姿としてはどうであろうかというふうなことを、目下検討されておるというふうに私ども承知しております。
  139. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 局長はそういうふうにおっしゃいますけれども、私の手元には農民年金問題研究会から中間的な取りまとめの報告書が来ておる。それを私、持っておるので、これはもちろん局長も御承知だろうと私は思うのです。これはごらんいただいてもよろしいが、それによりますると、先ほど私、申しましたように老齢年金、離農年金ないしは若返り年金、いわゆる経営移譲年金、この三つがあるわけです。それについて私はもう一度念を押したいと思うのですが、局長がその中間的な報告書をごらんでなかったらなかったでよろしいが、局長として一体どの年金に重点を置くか、来年度から実施する年金の重点を老齢年金に置くのか、あるいは構造改善政策の一環としての若返り年金あるいは離農年金に重点を置くのか、これを一ひとつ局長見解でよろしいからお考えを聞きたいと思います。
  140. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、老後の保障として他の被用者年金とどういう関係になっておるかといったような観点、それから農業近代化なりあるいは経営改善なりにつきましても、やはり老後保障ということが、そういった観点からどういう影響なり関係を持っておるかというふうな観点から研究を進めていきたいということで、目下やっておるわけでございまして、その両者が必ずしも二者択一といいますか、どちらが先でありどちらがあとでありといったようなふうに考えなければならないというふうにも私どもは思っておらないのでありまして、経営の移譲なりあるいは他経営への移譲なりというふうなことと、農民に対する老後保障というものの関係検討していけば、二者択一といいますか、どちらが優先すべきものといったような形でものごとを詰めていかなくとも、十分検討が進め得るのではなかろうかというふうな感じもいたしております。  ただ、私の見解というふうなことをお聞きいただきましたけれども、まだいまのところ最終的にはっきりとした段階に立ち至っておりませんので、その点はひとつお答えを留保さしていただきたいというふうに思います。
  141. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 つまり、こういうふうに解釈していいのでしょうか。老齢年金とか経常移譲年金あるいは離農年金というようなものを、いずれを先、いずれをあととせずに平等に考えて立案をしていきたい、平等に扱いたい、こういうお考えと解釈してよろしいのでしょうか。
  142. 森本修

    ○森本政府委員 平等であるかあるいはどちらかが優先するといったようなことは、両方を詰めてみないとちょっとわからない話でございますが、必ずしもいま申しましたように、その一方が優先するとか一方が優先しないとかいったような形でものごとを割り切っていかなくとも、整理ができるのではないかというような、これはばく然たる予感でありますが、いまのところはそういう感じを持っておるということを申し上げておるわけであります。
  143. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 いまのお答えで、局長自身のお考えとしては差別をしない、年寄った老人に対するいわゆる年金制度というものと、政策的な年金というものとの間に差別をつけない、こういう考えだというふうに解釈していいのだろうと思いますが、よろしいですね。
  144. 森本修

    ○森本政府委員 先ほどお答えを申し上げましたように、最終的にどっちがどうということを申し上げるわけにはまいりません。その差別をつけるとかつけないとかいったようなことについて、最終的にもちろん結論を得ておりませんが、両方から詰めて研究をしてまいりますということを申し上げておるわけであります。
  145. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 局長お答えどうもはっきりせぬ点がありますね。これはまたあとであわせて申したいことがありますから、そのときにただしたいと思います。  そこで、あなたは研究会の答申についてはこれをまだ正式のものと認めておらないと言われるのですが、この中に書いてあることは、これは正式であろうとなかろうとまことに妥当なことが書いてあります。それは年金の給付の問題についてですが、こういうことがあります。勤労者の受けるべき年金給付水準と実質的均衡を実現することを目的とする、こういうふうに書いてあるのですが、つまりいまの農民年金というものは国民年金の中に包括されておるわけなんです。これではいけないから、他の厚生年金なりその他の年金と均衡のとれる年金制度にしょう、こういう意味なんですか。これはあなたも農民年金制度をつくる以上は、給付金についてこういう考え方で臨まれるということについては問題はないでしょうね。どうでしょう。
  146. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、中間的な取りまとめということで、必ずしも研究会のほうで最終的なまとまりがあったというふうな報告を私どもは受けておりません。したがいまして、研究会の検討の素材というふうなものを材料にいたしまして、私がいまここで、検討中の段階でございますので、先走ってそれに対してあまり深い意見を申し述べるということは、差し控えておくほうが適当であろうと思います。  先ほど御質問になりました点については、農民年金といったようなものを検討する一つの視点としては、農民に対する社会保障の程度なり方式と、被用者に対するそういった制度との均衡問題というのは、検討にあたっての一つの大きな視点であろうというふうには私としても思っております。
  147. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでは政務次官にお尋ねをします。  農民年金が創設されようとしておるのは、従来の国民年金の内部で農民を取り扱いの対象にするというのでは、これは不均衡であるから、他の勤労者並みの年金にしなくちゃならぬというので、そういう意味で農民年金をつくろうとしておる、こう私は思うわけです。したがって、この農民年金の対象になる農民に対しては、今日の国民年金によって給付される年金額以上のものが、つまりは厚生年金と同等あるいはそれ以上のものが給付せられるものと考えてよいかどうかということを伺いたいと思います。これについてひとつ政務次官からお答えをいただきたい。
  148. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 まずお断わりしておきますが、先ほど中座いたしましてたいへん申しわけありませんでした。  ただいま御質問の農民年金でございますが、いま農林省におきまして研究会を設けて検討しておりまして、この三月一ぱいには大体取りまとめることになっております。その後国民年金審議会等の議を経て制度が実施されるわけでございますが、この農民年金は、もちろん社会保険制度の一環といたしまして実施しなければなりませんし、これまでの国民年金の制度よりもさらに前進したものであることは、当然であると私は思っております。
  149. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると厚生年金を標準にとっていいのじゃないかと思うのですが、四十四年度で、大体厚生年金が二万円になるというふうにわれわれは承っておるのです。そうしますと、農民に対する給付金も、厚生年金並みの月額二万円くらいの給付はお考えになられるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  150. 森本修

    ○森本政府委員 まだ、給付の水準なり方式なりについていかようにするか、現在の段階では十分固まっておりません。
  151. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 少なくとも、先ほどから申しておりまするように、勤労者の受けるべき年金水準との実質的均衡をはかるということが、これが結論的ではありませんが、研究会の一応の考え方なんです。そうすると、いまの国民年金の水準ではもちろんいけない。同じであるならば、むしろこれはつくらぬほうがよい。国民年金のままのほうがよいということになるわけですから、国民年金より金額は上になることは間違いない。他の勤労者との均衡をとるというならば、他の年金において一番最低のものが厚生年金です。そうすると、最低の厚生年金との均衡くらいはお考えになってしかるべきでないかと私は思うのですが、いかがですか。ひとつこれは政務次官お答え願いたい。
  152. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 大体、それに近い方向で進めていかなければならないと私は思っております。
  153. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、大体月額二万円くらいを農民は期待いたしますから、ひとつそのつもりでやってください。  同時に、これはちょっとこまかくなりますが、いま年金問題について一番の問題は、いわゆる物価、生計費とのスライド制ということなんです。新しく立案される農民年金については、スライド制をお考えに取り入れられるかどうかということを、この際お聞きしておきたいと思います。
  154. 森本修

    ○森本政府委員 御承知のように、年金制度の中に具体的なスライド制を取り入れるかどうか、これは社会保障制度全般を通じるかなり基本的な問題でございます。政府部内におきましても各種の年金を担当しておる部局がございますが、そういった各省の連絡協議会というのが設けられておりまして、そこで主として各種年金制度のスライド制の採用問題について、目下政府部内で検討をいたしております。したがいまして、そういったスライド制についての全体の考え方の一環として——もちろんこういうものができましたあとでありますが、一環としてそういった問題についても検討さるべきものというふうに、私どもは思っております。
  155. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それは私の希望であります。ぜひひとつそういう方向で、スライド制を取り入れるようにしていただきたいと思います。  それから、もう一つあわせてお聞きしたいのは、農民年金を一体何歳から支給するかということですね。検討中、検討中というお答えでありますので、おそらくここまでは検討しておられぬかもしれませんけれども、しかし他の年金よりよくするのですから、他の年金と比べてやはり支給年齢は低くなるのが当然だと思います。国民年金なり厚生年金と比較して、この程度の水準でいくのかどうか、こういう点についてもひとつこの際お伺いしておきたいと思うのです。
  156. 森本修

    ○森本政府委員 先生御案内のように、他の年金制度におきましても支給開始年齢は必ずしも同一ではございません。国家公務員なりあるいは、いわゆる共済制度でやっておりますものは、そういった支給対象者の、何といいますか退職年齢といったものを考慮しつつ行なわれておりますし、また厚生年金におきましても、民間の通常想定される退職の年齢といったものが支給開始年齢として考えられておるようであります。したがいまして、これはそういう制度の性格なり、あるいは対象となる人の退職の時期といったものと深く関連をしておるわけでありますから、私どもとしても、そういう観点からこういう問題を具体的に煮詰めていきたいというふうに思っておるわけであります。
  157. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 参考までに私、申し上げますが、あなたが知らないと言われる年金問題研究会の中間報告によりますと、こういうふうにあります。「他の被用者年金制度との関連を考慮して、現在農民に適用されている国民年金制度に比し、年金支給開始年齢の適切な繰上げを行なう必要がある。」こう書いあります。それから「適期の適切な経営移譲の促進、他経営への経営移譲の適正化の観点から、上記の年齢支給開始年齢の繰上げを行なう必要がある。」こういうような中間報告が出ているわけなんです。これは私が知っておるのに、あなたが知らぬと言われるのは実にどうかと思いますけれども、しかしそういうのが出ております。同時に、これは適正だと思います。せっかく国民年金と違う農民年金をつくる以上は、支給金額についてはもちろんのこと、支給年齢にしても、従来の国民年金よりは一歩進んだ制度であるべきであり、ならないのであるならばむしろつくらぬほうがましだというふうに言って差しつかえないと私は思うのです。これはこれでいいでしょう。  そこで、政務次官にもう一つお尋ねをしたいのです。これは先ほど局長にお尋ねしたことと関連をするのですが、あなたは老齢年金と経営移譲とか離農という年金、いわゆる構造改善政策の一環としての年金というものと、いずれに重点を置くべきか、いずれに重点を置いた制度をつくろうとしておるか、政府はどういうふうに考えておるかということを、ひとつ政務次官としてお答えをいただきたいと思うのです。
  158. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 いまそういう問題について検討を進めておりますが、いずれに重点を置いてということでなくて、並行的に考えて制度化していくべきではないかと私は思うわけです。老齢年金並びに経営移譲とかいうものを並行的に考えるべきではないかと思っております。
  159. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そうすると、これで私はよくわかりました。局長が研究会の中間報告を否認せられる理由がわかりました。研究会の中間報告では実はけしからぬことを言っておるのです。どういうことかというと、老齢年金とそれから経営移譲なり離農年金等を差別扱いしておる。たとえば、給付金額につきまして申し上げますと、この研究会案によりますと、いわゆる老齢年金は経営移譲年金なり離農年金の八割を支給する、こういう考え方です。それから支給年齢については、経営移譲なりあるいは離農の場合は五十五歳ないしは六十歳であるけれども、老齢年金の場合は国民年金と同じ六十五歳、こういうような中間報告をやっておるのです。あなた方は平等に扱うんだ、こう言われておりますが、この中間報告なるものは、老齢年金というものを離農年金とかあるいは経営移譲年金より一つ下のものに、いわゆる構造改善政策のつけ足しにした考え方なんです。だから支給の金額は八割、年齢は六十五歳で国民年金と同じにする、こういう中間報告ができておるのですね。あなたはこういう報告は認めないのでしょうね、先ほど平等に扱うと言ったのですから。
  160. 森本修

    ○森本政府委員 これは制度の解説になるかと思うのですが、たとえば、厚生年金におきましても六十歳で退職をいたしますれば、支給額の満額というふうなことで支払われるわけでございますが、六十五歳になりましてまだ退職をしていないというふうなときには、八割の年金しか支給をされないというふうなかっこうになっております。そういうことで、支給要件と支給金額並びに支給開始年齢というのは一つ制度としては相関連を持つものでありまして、必ずしも一方を優遇し一方を冷遇しておるというふうな目で見るべきものでもなかろうというふうに、私どもは厚生年金を見ております。  そういった観点から、いろいろな制度問題を検討していかなければならぬということでありまして、先ほど申し上げましたように、中間的な書類は種々検討の素材としてつくられますけれども、まだそれは研究会として最終的にまとまったものというふうに私どもは了解をしておりません。いずれにせよ、そういったものが最終的に出てまいりますれば、私どもとしては十分そういうものについても検討をしていきたいというふうに思っております。
  161. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 あまり長くなるとぐあいが悪いようにも思いますので、少しはしょって重要な点だけにしぼってお尋ねをしておきたいと思いますが、この農民年金はすべての農民、全農民に適用されるのかどうかということです。
  162. 森本修

    ○森本政府委員 支給対象のお尋ねであろうと思いますが、これもたいへん歯切れの悪い答弁になって恐縮でありますが、制度の目的なりあるいは性格によって支給対象といったようなものも、それに応じた形で整備をされてくるというふうに思います。西欧の農民に対する年金の例を見ましても、フランスでは経営主、従事者両方加入といったような形になっておりますが、西独等におきましては、当然加入の対象は、同じ老齢年金でありましても経営主になっておるといったようなことで、それぞれ制度の目的なり性格なりといったようなもので、適用対象が最終的にきまってくるというふうに私ども理解しております。
  163. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 研究会の中間報告によりますと、この年金制度には強制加入制度と特別加入制度とがあって、強制加入制度の場合は一種農家の下限規模、つまり五反以上の経営主ということが強制加入の対象になっております。それから特別加入の場合は、五反以下の農家であっても家族員が現に自家農業に専従する経営者、これが特別加入というふうに考えておるようです。しかし、この特別加入はまだ現在どういうふうにするかということは検討中だ、こういうようにいうておるのですが、これについてのお考えはいかがでしょうか、
  164. 安倍晋太郎

    安倍政府委員 先生のおっしゃる中間報告というのは私もまだ聞いていないのですが、その研究会の最終的な取りまとめは、今月一ぱいかあるいは来月になるのではなかろうかと思います。それから段階を経て政府の最終案に達するまでには相当時間がかかるわけでありまして、四十四年度実施ということを一応目標にしておりますが、それまでに各段階において政府間の調整を行ない、そうして最終案に達するわけであります。中間報告とおっしゃる意味がよくわかりませんけれども農林省の研究会におきましてもまだ中間報告ということは出ていないわけであります。  いまの特別加入につきましては、局長から答弁させます。
  165. 森本修

    ○森本政府委員 研究会の研究の途中におきましては、いろいろな検討の素材として研究会内部においてもつくられ、あるいはそれを対象にして検討されるということは、もちろんあることは承知しておりまして、私どもとしても、そういった書類を研究会からいただいてないわけではございません。しかし、それが最終的にまとまって私どものほうに提示をされておりません段階におきまして、その中に書いてあるといいますか、検討の素材になっております個々の問題についてお尋ねをいただく、あるいは私どものほうで意見を言うことは、必ずしも適当でないんじゃなかろうかということを、先ほど来くどくお断わりを申し上げておるわけであります。  適用対象につきましてお尋ねがあったわけでございますが、各種の制度におきましても、当然加入の対象といったようなもの、それから当然加入以外でもそれぞれ特別加入を認める、あるいは任意加入を認めるというふうな制度の立て方がございますので、研究会においてもさようなことで種々検討をされておるものというふうに私どもは思っておるわけであります。
  166. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでは研究会案を離れて、私は政務次官にお考えを聞きたいのです。農民年金の対象とする農民はいかなるものをお考えになっておられるか。農民の中にもずいぶんいろいろおります。それをいかなるものを——経営主に限るのか、農業に従事しておる者までも入れるのか、あるいは経営の反別で区別をつけられるとするならば、何反以上は対象とするが何反以下はしないとか、そういうことについてあなた方のお考えを聞きたいと思うのです。
  167. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、適用対象につきましても、そういった制度の立て方なりあるいは性格、目的によって立て方が多少違ってくるということはあり得るというふうに私は思います。  それで、先ほどちょっと例にあげましたようにヨーロッパにおいてもそういったことで、フランスでは経営主も従事者の当然の対象に入れておる。しかし西独においては、経営主といったようなことが当然加入の対象になっておる。一部従事者についても任意加入という道が講ぜられておりますが、そういったようなことでございまして、いま全体の立て方が必ずしもはっきりいたしません段階で、適用対象についてどこまでどうだというふうなことは、なかなかお答えをしにくいというところでございます。もちろん、経営主だけということでありましても、ある経営の代表者としての性格を持つものでございましょうから、その経営全体を代表して、その代表たる資格で個人が加入者としての地位を持つというふうな考え方の制度になるのではないかというふうに思っております。
  168. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 現在、農民年金の問題につきましては、非常に農村で大きな問題になっておるわけです。先ほど政務次官がおりませんでしたけれども、事の発端は、一月の総選挙のときに、佐藤総理が農民に公約をしたわけです。言うならば火つけ役は政府なんですね。それをいまだに具体案を持っておらない。しかも、「構造政策の基本方針」の七つの柱の中の六つまではこれから提案しようとしておる。この中で公約した年金の問題については、私がここでお尋ねをしても、適正なお答えをすることができないということは、私は政府の誠意を疑わざるを得ません。農民をだまかす、ごまかす、極論すれば詐欺だ、そういうふうなことを言われても私はしかたがないように思うのです。たとえば、委員の中から発言がありましたが、農業会議所を中心にしまして、全国の農民が、この制度を早く実現してもらいたいという運動を行なっておる。この四月には東京で一万人余りの農民が集まって、農民年金の早期実現の大会をするというような段階になっておるのです。しかも、ある地域によれば、農民から一戸当たり百円ずつのカンパをとっておるところもあるのです。それほどこの農民年金についての関心は深いのです。  そこで、私がここで特に言いたいのは、研究会案によりますと、五反以上の農家に限ってその経営主に限る、こうある。ところが、この運動に参加している人は五反以下の人も参加しておる。それから経営主だけでなく、農村の青年や婦人も参加をしておる。この研究会案が実現されるとするならば、せっかく農民年金が実現されても適用されないところの小農であるとか、ほんとうにおやじにかわって百姓をしておる婦人や青年がこの適用から除外される。そういう人たちを巻き込んだ運動にいまなっておるのですよ。そういうことであるからこそ、私は先ほど来、一体適用対象はどういうものであるかということをお尋ねしておる。これをお尋ねしておかぬと、いま一生懸命運動をやった、お金も出した、ところがこの制度ができ上がったあとの結果を見ると、法律になったものを見ると、われわれ一生懸命この運動をしたけれども、何だ、われわれは対象にならないのじゃないかということにこれはなるのですよ。だから、私はこの問題について、特に政府はまじめに考えるべきだと思うのです。しかし、こういうことについてもまだ成案ができておらないとすれば、ただもう私は不熱心さを責めるだけで、また何をか言わんやでございます。  そこで、もうごくわずかですから、またあらためて質問をするのもどうかと思いますから、もう二、三の問題だけをお尋ねしたいと思うのですが、それは掛け金の問題でございます。農民の生活は非常に苦しいのですから、高い掛け金をかけるということは非常にむずかしいのですが、これについて一体政府はどういうふうなお考えを持っておられるかということをお聞きしたいと思います。
  169. 森本修

    ○森本政府委員 御承知のように、こういった制度は、いわゆる保険数理のようなことで計算をされてまいります一定の掛け金というのが、必然的に計算上出てまいります。したがって、農民の負担の問題は、国がどの程度持つかというふうなことに関係を持ってくるわけでございます。もちろん、そういった給付の水準と掛け金の水準はある程度相関連を持つということになるわけでございます。  ただ、農家のほうは、やはり一定の掛け金負担の限度といったようなこともございましょうから、私どもとしてはそういった限度というふうなものをにらみながら、また給付の水準についての要望といったようなもの等にらみながら、そういう問題についてやっていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
  170. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それはそれでよろしゅうございます。満足したわけではありません。もっと具体的にお答えを聞きたかったのですが、これはこれでやめておきます。  そこでもう一つ。この制度が実施されたときに年が寄っておりまして——二十年間かけなければならぬということになるようです。ところが、年が寄って、この二十年間の掛け金の期間を満たすことができない老人なんかについて、どういう救済策を講じるかということについてお考えになっておられるかどうか。
  171. 森本修

    ○森本政府委員 御承知のように、これは制度発足のときの経過的な措置をどうするかということであると思います。農民のほうは、御指摘がございましたように、年齢の分布を見ますと中高年齢者が多いといったことから、そういった掛け金の期間を満たし得ない人について、経過的な何らかの措置、過去勤務債務というようなものの見方というようなことにも関連してまいります。そういう者については、実情に即して検討しなければならぬものだろうというふうに思っております。
  172. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 これはやはり過渡的なやり方としては、国家がいわゆる整理資金という名でやはり予算的な措置を講じて、これが実施されたときに年とっておる人でも、その年齢に達した人には年金を交付するという措置を講じるようにしてもらいたいというのが私の希望でございます。  それから、この農業者年金あるいは農民年金は、農民だけでなしに漁民にも適用されるのかどうかということを、やはり聞いておきたいと思います。
  173. 森本修

    ○森本政府委員 私どもの局でいま検討いたしておりますのは、主として農民を対象にした年金の考え方なり内容なりというのを検討いたしております。もちろん、水産庁のほうにも十分御連絡しつつ検討をしておるということでございますので、そういった農民を対象にして検討を進めました構想が、各種の部門の従事者に対してどういうふうに扱うべきものであるかということは、その段階において検討してまいりたいというふうに思っております。
  174. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、水産庁と連絡をとっておるようなことを言われるけれども、疑うのじゃないけれども、おそらくとっておらぬのじゃないかと思うのです。しかし、私は農民に対してこういう年金をつくるのなら、やはりこれと同じ立場にある漁民もこれに含めるのが当然だと思いますから、どうかこれからの段階では、この漁民という問題を忘れないようにひとつしていただきたいと思います。  もうこれで私は終わりたいのですが、最後に一問だけお尋ねをして私の質問を終わりたいと思います。  それは、私の予感から申しますと、この農民年金制度は佐藤総理の公約とは反して、佐藤さんは、その公約をしたときには、これを構造改善政策の一環として考えたわけじゃないと思うのです。やはり農民にも年金をやると言えば自民党に一票がたくさん入るだろうという、そういう単純な気持ちで私は言われたと思います。しかし、農林省当局の現在の考え方は、佐藤さんのあの公約とは違って、これを構造改善一つの方便として、経営規模拡大の政策の一環として、むしろ離農年金なり経営移譲年金に重点を置いた考え方を持っているのじゃないかと思うのです。しかし、これについて私は反対であるということは、先ほど来申し上げたとおりです。  ただ、私がここで最後に一言つけ加えておきたいのは、この農民年金というものを構造改善あるいは経営規模拡大というようなことのために利用するといろ気持ちがもしあるとするならば、これは私は、まことにけちくさい考え方であると同時に、その効果のほどもまことに疑わしいと思います。このことは、単に農民年金だけに限らず、今国会に上程されようとしておるところの今度の農地法の改正の問題についても、私は同様に言いたいわけです。現在の農業のいわゆる零細性というもの、これを経営規模を拡大するためには、そういうような方法では私はだめだと思う。農村から人口が流出しておるが、戸数が減らないということには、いろいろな理由がありますが、一つはやはりいまの農地の値上がりの問題、土地の財産保有的な傾向、それからそれに関連をして、土地を離したら老後が心配であるという問題ももちろんこの中に入りますが、いわゆる社会保障というものが非常に貧しいというような問題や、よそへ出て働くのに、特に高年齢、中年、こういう人たちに仕事がないというようなことが、いま経営規模の拡大を阻害する大きな原因になっておるのであって、農地法の改正などで現在の経営規模の拡大などがはかれるというふうにお考えになると、私は認識不足もはなはだしいと思います。それに比べると、離農年金は、ややこれはいい点もあります。あるけれども、これもやはりそれに大きな期待をかけるということについては、私は問題点があると思います。そういう点から、そういう不純なと言うと語弊があるけれども、構造政策の一環としての離農年金というようなそういうけちくさい考え方でなしに、今日まで長い間乏しい所得で働いてきた、戦中戦後を通じて下積みになって働いてきたところの農民、そして、先ほども申しましたけれども、農村における家族制度の崩壊、個人主義の風潮の中で、農家の老人というものはますます孤立化し、経済的にも非常に不安になってきておる。こういう人たちの老後の安定をはかるという、そういう純粋な気持ちでこの農民年金というものを考えていただきたいと思います。  われわれがこういう意見をはくのは、まだ案ができておらぬのにおまえらそういうことを言うなと言うかもしらぬが、あなた方は一般の民間人に対して研究会をつくらしておる。そうであるならば、われわれ農林水産委員がこの問題について、法案ができる前にわれわれの意見を述べる権利があるということは、これはきわめて当然のことなので、法案ができておらぬのに質問するなという考え方がもしあるとするならば、私は反省してもらいたいと思うのです。  私のきょう言うたことは、時間的にも制限されて十分なことは言えなかったけれども、どうかひとつこういう意見を取り入れて、ぜひとも、先ほど局長の言われたのは、四十四年度から実施します、こう言われたのですが、次官も、幸い農林大臣も四十四年度実施と言われたようでありますから、必ず四十四年度から、ほんとうに農民が期待をしておる、佐藤総理が公約をしたところの純粋な農民年金を実現するように、御尽力をお願いしたいと思います。  これで私の質問を終わりたいと思います。
  175. 足立篤郎

    足立委員長 次回は来たる二十六日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会