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1968-04-18 第58回国会 衆議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十八日(木曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 浦野 幸男君 理事 塚田  徹君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 受田 新吉君       内海 英男君    桂木 鉄夫君       菊池 義郎君    塩谷 一夫君       野呂 恭一君    淡谷 悠藏君       武部  文君    浜田 光人君       伊藤惣助丸君    鈴切 康雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      木村 武雄君  出席政府委員         総理府恩給局長 矢倉 一郎君         総理府青少年局         長       安嶋  彌君  委員外出席者         参  考  人         (元恩給審議会         会長)     新居善太郎君         専  門  員 茨木 純一君     ————————————— 四月十七日  委員武部文君及び華山親義辞任につき、その  補欠として江田三郎君及び栗林三郎君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員江田三郎君及び栗林三郎辞任につき、そ  の補欠として武部文君及び華山親義君が議長の  指名委員に選任された。 同月十八日  委員渡部一郎辞任につき、その補欠として鈴  切康雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十六日  旧陸海軍等爆発物爆発による被害者等に対  する見舞金支給に関する法律案岡田利春君  外十一名提出衆法第二二号) 同月十八日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一三号) 同月十六日  王子野戦病院開設反対に関する請願外四件  (河野密紹介)(第三九九六号)  同外四件(河野密紹介)(第四〇六四号)  同外二件(河野密紹介)(第四〇八九号)  国及び地方公共団体建設関係職員現場手当支  給に関する請願小川平二紹介)(第四〇三  四号)  同(浦野幸男紹介)(第四〇八八号)  金鵄勲章受章者処遇に関する請願久野忠治  君紹介)(第四〇三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  五四号)  許可、認可等の整理に関する法律案内閣提出  第九五号)  行政機構簡素化等のための総理府設置法等の   一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ————◇—————
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は参考人として元恩給審議会会長新居善太郎君の御出席をお願いしておりますので、この際、三月二十五日提出されました恩給審議会答申について御説明を聴取することといたします。新居善太郎君。
  3. 新居善太郎

    新居参考人 新居でございます。かぜのためにのどをちょっと痛めておるので、あるいはお聞き苦しい点があるかもしれませんが、あらかじめ御了承願います。  恩給審議会は、かねて諮問せられておりました恩給問題についての審議会処理意見を去る三月二十五日政府答申いたしましたが、その内容及び審議経過などにつきまして概略説明させていただきます。  恩給審議会は、昭和四十一年四月に設置され、その委員として私のほか学識経験者として九名の委員が任命され、同年五月十一日に内閣総理大臣から、恩給に関する重要事項について貴会意見を求めるとの諮問を受けたのであります。  諮問趣旨としては、「戦後における退職公務員及びその遺族に対する恩給上の処遇につきましては、いわゆる軍人恩給廃止ないしは復活あるいは公務員給与改定に伴う恩給年額増額等戦前には見られなかった消長と変遷を経てきました関係上、いろいろと検討を要する問題も多く、さき政府昭和三十二年に臨時恩給等調査会を設置し、同調査会の報告の線に沿って恩給問題の解決努力してきたところであります。しかしながら、今なお関係団体等から早期解決要望されている問題点は多数あり、他方公務員についての共済年金制度創設社会保障制度充実等諸般の情勢の変化と相まって、現行恩給制度あり方について総合的見地から根本的な再検討を必要とする時期にあるものと痛感いたす次第であります。本審議会におかれましては、これらの諸事情を十分に勘案され、適切な対策をお示しくださるようお願いいたします。」とあります。  自来、審議会は、本年三月二十五日まで二カ年間にわたり、四十三回会議を開き、その適切な処理方策について慎重に調査審議を重ねてまいりましたが、その結論を得るに至りましたので今回これを答申した次第であります。  一口に恩給問題と申しましても、これは戦後における社会的、経済的諸事情変動恩給制度改変によって生じてきたものであり、実に広範な分野にわたる事項を含んでおり、その内容複雑多岐なものが多いのであります。審議会審議した事項恩給年額調整の問題をはじめ、約六十項目の個別問題についてでありましたが、審議会としては、これら多年懸案となっていた事項について、その影響するところの大小を問わず、そのすべてについて解決めどとなる結論を出し、これらの問題処理に区切りをつけようとつとめた次第であります。  これら恩給問題の審議にあたっては、まず、問題のよってきた背景との関連において正しく問題を認識しておく必要がありますので、答申前文においてこの事情を述べておる次第であります。  すなわち、恩給問題について第一にあげられますものは、恩給年額調整の問題であります。これは経済事情変動社会状況変化に際して恩給価値をどう維持していくか、ということであります。言葉をかえていえば、物価上昇公務員給与改善国民生活水準向上など経済的、社会的諸環境の著しい変動の中にあって恩給年額価値をどう維持していくかということであり、これは恩給についての基本的な問題であります。この点につきましては、政府におかれましても、過去数回にわたって恩給年額増額改定を行なってきたところでありますし、また本審議会においても昭和四十一年十一月に恩給増額は緊急に措置すべきものと判断いたしましたので、「当面の暫定措置として、政府が、将来の調整規定運用を妨げない限度において、適当と考える恩給増額措置を行なうことが望ましい、」という中間答申を行ない、これによりまして政府では所要改善措置をとられたところであります。審議会では、この問題については昭和四十一年の法律改正により設けられた恩給年額のいわゆる調整規定を具体的にどう運用するかについて審議したところでありますが、これは審議会に課せられた重大な課題でありました。  恩給問題の第二は、昭和二十一年に廃止され同二十八年に再発足した軍人恩給をめぐる諸問題であります。この再発足した軍人恩給は、戦前制度に相当な改変を加えたものであり、その後の改正もそのときどきの社会的要請に沿って改正せられたものでありますが、このような消長を経てきた関係上、この制度をめぐって今日においても多くの問題があるわけであります。  恩給問題の第三は、満蒙など外国政府職員等琉球政府職員海外抑留者、いわゆる戦犯者追放者などを恩給上どう処遇するかということで、終戦によってもたらされた特殊事情に起因する問題であります。これまでもこの問題については、政府におかれて各種措置を講じてきておりますが、なお、未解決の問題が残されていたわけであります。  ところで、これらの問題を審議するにあたり、恩給理念とするところは何かということを考えてみたわけであります。恩給は、公務員が長年公務に従事して老齢となり、また公務により傷病にかかり、退職あるいは死亡した場合に国のために他を顧みることなくその職務に忠実に専念したことに対して、公務員本人あるいはその遺族に国がかつての使用者立場から、その適当な生活を維持するために支給するものであると考えたわけであります。したがって、まず、恩給問題は当然この理念に照らして見ていくことが必要であると考えました。一方、公務員共済年金制度創設各種社会保障制度の整備など他の社会的諸制度改変は、恩給制度あり方を考える場合において考慮すべきものでありますし、また社会的要請に沿って問題を見直すという配慮が必要なわけであります。さらに、ここで忘れてはならないこととして、恩給受給者の置かれております特殊な事情というものがございます。現在、約三百万人の恩給受給者がおりますが、このうち遺族傷病者老齢者が多数を占め、これらの人々にとっては、恩給問題は日々の生活に直結するきわめて切実な問題であることを考慮すると、その早期解決緊急性を痛感する次第であります。審議会では、これらの事情を十分に認識した上で審議に当たりましたが、この点については、昭和四十一年十月に東京において恩給関係の諸団体代表者から、詳細にその要望を聴取しましたが、さらに、また翌年七月から八月にかけて福岡市をはじめ全国八都市において、地方在住恩給受給者から直接その要望を聞くなどして、審議が現実に離れたものとならないようにつとめたところであります。  以上述べましたように、恩給本来の理念、社会的な要請恩給受給者の置かれている事情などいろいろな観点からこの問題を考え、客観的な立場恩給問題の解決策として、適正な結論を出すことにつとめましたので、この答申の示すところは、恩給に関する多年の懸案事項解決するめどとなり得るものであると信ずるところであります。審議会としては、政府がこの答申趣旨に沿い国家財政その他諸施策配慮しながら、すみやかに善処されることを望むという態度を明らかにしたのであります。概略以上のことを恩給問題についての審議会の基本的な態度として答申前文にあらわした次第であります。  次に、答申は、この前文に続いて調整規定の具体的な運用と個別問題について意見を示しておりますので、以下調整規定の具体的な運用及び個別問題について御説明をいたします。  まず、審議会に課せられた重要な課題であった恩給年額調整の問題について御説明をいたしますと、これは恩給法第二条の二の恩給年額調整規定を具体的にどう運用していくかという問題であります。  この規定は、恩給年額について、国民生活水準国家公務員給与物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案してすみやかに改定措置を講ずるというものであり、これをどう運用していくかということは、恩給受給者にとっては影響するところがすこぶる大きく、恩給の基本的な問題となっているものであります。  この規定にあります国民生活水準国家公務員給与物価等という要件を、恩給年額改定にあたってどう勘案していくか、また、どのような条件のときに、いかなる基準改定していくことが合理的であるかについて審議したわけであります。この場合の考え方としましては、物価特に消費者物価上昇年金恩給実質価値を低下させ、恩給受給者生活に直接的に影響を与えるということで、これを調整要因として取り上げたわけであります。そして、消費者物価が著しく上昇したときには、それに応じて恩給実質価値が維持されるように恩給年額改定することが、恩給年額調整における不可欠の要件であるとしたのであります。  この場合、その運用にあたっては、消費者物価が五%以上上昇した場合には、それに応じて恩給年額改定すべきものとし、将来におけるその実効性を確保するという観点から、これを制度化するなど所要措置を講ずることが適当であるとしました。  以上申しましたとおり、消費者物価上昇に応じて恩給年額改定を行ない、その実質価値を維持することによって、恩給年額調整については、ほぼその目的を達し得るとも考えられますが、恩給法第二条の二の規定にある国家公務員給与及び国民生活水準という要件についてみますと、恩給受給者はかつて公務員であった者またはその遺族であるということから、国家公務員給与上昇を勘案して恩給年額調整をはかることが考えられますし、また、経済成長に伴い、国民生活水準が著しく向上した場合には、恩給受給者にもこれをある程度反映させて、その生活内容改善をはかるような恩給年額調整を行なうことも考えられるところでありますが、このように国家公務員給与改善あるいは国民生活水準向上に基づく調整は、恩給受給者にも経済成長の成果を均てんさせる趣旨からみて必要なことであると考えた次第であります。  以上のことから、消費者物価上昇に応じて恩給年額改定を行なっても、なお、国家公務員給与水準恩給との格差が著しく開いている場合には、それをある程度解消することにより調整することが望ましいと考えた次第であります。  ただし、国家公務員給与上昇国民生活水準の伸びを上回るような事情が生じた場合には、国民生活水準推移を考慮して調整することが適当であるとしました。そして、この恩給年額調整における国家公務員給与上昇あるいは国民生活水準推移に対する配慮については、他の公的年金制度その他国の諸施策との均衡を考慮することが必要であり、消費者物価上昇に基づく調整補完的要因として政府の合理的な判断によるべきものとした次第であります。  ところで、現在、恩給受給者年齢区分により三本立ての仮定俸給制度がとられており、また遺族傷病者老齢者を厚遇する措置もこれまでの恩給年額改定においてとられてきていますが、これらの措置は、それぞれ妥当性が認められるところであり、また将来においてもこれらの方々を厚遇する必要性が生ずることも否定できないところでありますが、これら厚遇措置調整規定運用とは別の問題として考えることが適当であるとしました。これは、調整規定の適用による恩給年額調整は、恩給年額改定における最も基本的な措置であるので、各種恩給受給者を区別しないで、一律に調整するのが必要だと考えたわけであります。  また、この調整規定を具体的に運用していくにあたっては、経過措置として、その出発点となる現在の恩給額を是正しておくことがぜひ必要であります。すなわち、昭和四十二年十月一日改定前の仮定俸給国家公務員給与水準との格差調整基準として示したところを参酌して、ある程度是正するという措置をとることが必要であります。その際、現行年齢区分による三本立ての仮定俸給をも統合することが適当であるとした次第であります。  次に、調整規定運用以外の恩給の個別問題につきましては、それぞれ問題点処理意見を示しましたが、これらの内訳は、旧文官関係の問題、軍人恩給関係の問題、最低保障額に関する問題、傷病恩給関係の問題、外国政府職員等に関する問題、琉球政府職員等に関する問題、特例扶助料関係の問題、いわゆる戦犯者追放者に関する問題などとなっております。  これらの問題につきましては、審議会においてはさきに述べましたとおり、恩給本旨にのっとり、恩給受給者の置かれている特殊事情を考慮し、社会的要請に沿った均衡の取れた適正な解決策を打ち出したものと信じております。ここでは、そのうちおもだったものについて処理意見を御説明いたします。  まず、文官恩給につきましては、退職時における給与在職年によって恩給年額をきめていくというのが恩給制度の原則でありますので、退職時によって生じた恩給年額格差については、これを是正しないことといたしましたが、恩給制度の全面的な切りかえがあった昭和二十三年七月一日前後の退職者恩給については、当時における特殊な事情等を考慮し、調査の上、必要な範囲で是正することが適当であるとしました。  長期在職者最低保障額は、現在六万円、遺族については三万円となっていますが、これは、他の公的年金制度における最低保障額を参酌して、ある程度増額することが必要であるとしました。  軍人恩給につきましては、その仮定俸給文官との均衡上必要な範囲で引き上げること、また、特別な職務に従事した方の職務加算等につきましては、軍人恩給廃止前に裁定を受けた方の場合には認められているので、裁定を受けていない方についてもこれを認めて、その間の不均衡を解消するのが適当であるとしました。なお、旧軍人方々加算年恩給年額の基礎とすることについては、現在の老齢者遺族にとられている考え方は適当であるという意見を示したところであります。  三年以上七年未満引き続き勤務された旧軍人の方の一時恩給については、下士官以上の方は戦前恩給法においても認められていたところであり、また文官の一時恩給との均衡をも考慮いたしまして、これを支給するのが適当であるといたしましたが、兵のほうにつきましては、戦前においてもこれは認められていなかったことにかんがみまして、現行どおりとすべきものであるという意見を示したのであります。  傷病恩給につきましては、特に重症者である特別項症の方に支給せられている年額は、第一項症の年額にその十分の五を加えたものとなっておりますが、第一項症以下の増加恩給の額の割り増し率との均衡を考えまして、これを十分の七程度にまで引き上げること、また普通恩給支給せられている方の傷病年金につきましては、傷病程度の軽いほうの年額が高くなるという点がありますので、減額制をとっていたのでありますが、これをある程度緩和すること、また内地等職務に関連して負傷しあるいは罹病した方には、そのために死亡した方の遺族には特例扶助料支給せられていることとの均衡を考慮いたしまして新しく特例傷病恩給支給することなどを適当であるといたしました。なお、自症程度の軽い障害のある方に年金支給するかどうかという件については、支給することは適当でないといたしました。また、第二項症以上の常時介護を要するような重い傷病を負っております方に支給せられております介護手当を第三項症以下の方にも支給するかどうかという件につきましては、介護手当支給することは適当でないといたしました。  傷病恩給及び公務扶助料につけられている扶養家族加給の額につきましては、公務員給与において扶養手当が引き上げられていることを考慮いたしまして、これを増額することが適当であるといたしました。  公務扶助料につきましては、昭和十六年十二月八日以降内地等において職務に関連して死亡された旧軍人等遺族の方に支給せられる特例扶助料の額をある程度引き上げるとともに、支給条件である死亡時期の制限を撤廃することなどを適当であるといたしました。なお、この特例扶助料の負傷、罹病の時期は昭和十六年十二月八日以降の在職期間内となっておりますが、これをシナ事変にまでさかのぼらせるということは適当でないということにいたしました。  次に、琉球政府職員については、恩給法上の処遇としては本土公務員と同様に扱うという趣旨のもとに、できるだけその格差を解消するという方向で検討していくこと、海外に抑留せられた者及びいわゆる戦犯者については、これは一個人の責任とはみなしがたい理由で、自由の拘束を受けていたのでありますから、必要な改善措置をとることなどが適当であるといたしました。また、満蒙など外国政府職員等であった方に対する在職期間通算措置につきましては、恩給本旨に沿いながら、終戦という特殊事情を考慮して必要な範囲においてその通算条件廃止し、または緩和するという意見を示しました。  以上、個別問題についてそのおもなところを概略説明申し上げたわけでありますが、これらの問題の処理意見を出すにあたりましては、繰り返し申し上げましたとおり、恩給公務員が永年公務に従事して老齢となり、または公務によって傷病にかかり、退職あるいは死亡した場合に、公務員本人またはその遺族の適当な生活を維持するものであるという考え方から出発しております。すなわち、恩給一般勤労者対象とする厚生年金あるいは一般国民対象とする国民年金とはその対象者の点で異なり、また、同じ公務員対象とするものでありましても、保険数理に基づく共済年金制度ともそのあり方が異なっておるわけであります。また、恩給受給者の大多数は遺族傷病者老齢者で占めておるという特殊事情をわきまえて、前に述べましたとおりの改善措置をとることが望ましいとしておるわけであります。したがって、恩給問題については、できるだけすみやかに審議会答申の線で解決策を講じてもらいたい、以上のように答申をした次第であります。
  4. 三池信

    三池委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  5. 大出俊

    大出委員 たいへん二年という長期期間にわたって御努力いただきまして、実は本委員会恩給審議会をつくって御努力をいただく旨の決定をいたしておりますので、その意味で、私も委員の一員として感謝申し上げる次第でございます。  そこで、まずこの基本になるべきものにつきまして、たいへんな御努力の上に答申をいただいているわけでありますけれども、なおかつこれからの審議参考といたしまして、ぜひともお聞かせを賜わりたいというふうに考える点がございますので、承りたいわけであります。  調整規定といわれるもの、つまり、改正恩給法の二条ノ二というのを御存じのとおりに挿入をしたわけでありますが本来これは、この委員会提案者である政府諸君論議をいたしましたが、「年金タル恩給額ニ付テハ国民生活水準国家公務員給与物価其ノ他ノ諸事情ニシキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情総合勘案シ速ニ改定措置ヲ講ズルモノトス」こういうわけでありますけれども、これは一体どう解釈すべきものかという論議につきまして、政府諸君のほうは提案者でありますから、本来ならば、提案した法律案解釈権をお持ちでなければならなかったわけでありますが、実はこれをどう解釈したらいいかを審議会諮問をするということになっていたわけであります。非常にこれは奇妙な話でありまして、提案権政府にございますから、法律案を提案される、そこまではいいのでありますが、だとすれば、当然どう解釈をするかという解釈権政府側になければならぬことになる。そこを質問したところが、それは審議会におまかせをするという、こういう実は筋の通らぬ出発になっていたわけであります。したがって、諮問の中身というのは、ここで答弁をしておられる政府諸君の言い分が正しければ、間違いがなければ、つまりこの解釈のしかたを諮問したことになる、こう私どもは実は理解をしておるわけであります。そこで出てまいりましたのは、一つの中心としては、物価、つまり五%というところがポイントになっているというように考えるわけであります。そうなりますと、他の公的年金等との関係も出てまいりますので、おそらく審議会のお立場では、この恩給法といわれるもの、特に二条ノ二、これについて審議をしたのだという御答弁になりそうに思いますけれども、しかし、この答申全体をながめてみますと、最低保障等の問題の中でも、他の公的年金を勘案してという形の書き方も出ております。してみると、他の公的年金との関係を御審議はくださったのだろうと思いますが、そういう意味で、この物価、特に五%というところを中心におとりになった背景にあるいは論議の中に、他の公的年金との考え、あるいは他の公的年金との関係というものはどのようにお考えになっておられたかということですね。ここをひとつお聞かせを賜わりたいと思います。
  6. 新居善太郎

    新居参考人 二条の二の解釈というふうなあらたまった審議のしかたは、正直のところいたしませんけれども、これは法律できまったものであるから、それをどう具体的に運用していくかということを中心に調べました。それで、他の公的年金と言いますけれども、他の公的年金恩給との性格の違いというふうなことにも関連してくると思います。それで恩給は社会保障というものとは別個のものであるというふうな考え方審議を進めましたが、しかし現実の問題といたしましては、他の公的年金の存在、またその何といいますか実際に発動せられる場合というふうなことも考慮の中に入れて審議を進めたというのが実情であろうと思います。
  7. 大出俊

    大出委員 他の公的年金との性格の相違というお話がありますが、あわせてまた解釈というのではなくて、いかに運用をするかということを中心にいまお話がございましたが、これは当時の議事録にも残っておりまして、私が長時間質問したのであります。政府の皆さんの側は、解釈権がないのはおかしいじゃないか、こういう私の質問に対して、それは審議会で御論議をいただくのだ、こういう御答弁になっております。しかしこれは政府に私が言うべき筋合いでありまして、審議会会長さんに申し上げる筋合いではありませんから、その事情がつまびらかになればいいわけでありまして、主としてこの調整規定をどう運用したらいいか、こういうお立場であったというわけでございますね。  そこでこの他の公的年金との性格の相違と、こう言うのでありますが、実は恩給が復活をいたしました段階で、特に軍人恩給を含みますけれども、すでにかつての恩給の態様というものからたいへんかけ離れまして、先般のこの委員会における私と矢倉恩給局長との間の論議でも、社会保障といっていい政策的分野が多分に今日の恩給制度の中には入ってきている、こういう点がたくさん見受けられるわけです。旧来の恩給の観念では解釈できない問題もたくさんある。これが今日の事情です。本来、恩給というものはあくまでも当時の所得が中心になるべきものですから、所得という概念、その減耗を補てんするという概念からすれば、七十五歳以上だとか七十歳以上だとか六十五歳以上だとかというような年齢的なものを入れてくるという高齢者優遇というものが正面から出てくるということは、かつての恩給にはない。ところが戦後の事情からすると、政策的にそういうものも入ってきている。今回の答申の中からいきますと、つまり年齢その他の優遇措置というものは、これは別個に考えるべきものであるというふうに皆さんのほうもお出しになっている。これは何かというと、実質的価値の保存ということを強調されるからそうなるわけなんですね。そうすると、明らかにかつての旧恩給法の時代とは性格、態様を異にしている、今日の状態はこういわなければならぬと思うわけであります。そこに他の公的年金との違いが当然出てくる。だからこそ奇妙なことでございますけれども、この恩給法の二条の二の中には公務員給与あるいは物価、こういうふうなものを調整規定の中に他の公的年金と言わないものを入れたわけですね。歴史的には逆なんですね。ほかの公的年金があった。ところが二条の二調整規定を入れるにあたって他との振り合いをいろいろ考えたときに、恩給の場合にはそこに多少の色がつかなければならぬ筋合いだということで、物価公務員給与というものとを入れたわけですね、この恩給法の二条の二は。他の公的年金制度の中にはそういうものはなかった。ところが、いみじくも今回の審議会がお出しになったのは、色がついた部分、物価公務員給与、これの中で色のついた部分を取り上げて、奇妙な話ですが物価中心になった、公務員給与その他は補完的役割りということになった。つまり色のついた部分だけは、運用中心に御検討の上で出てきたのでございますが、ここが実は他の公的年金との関係の面で、つまり結果的にそうなったわけでありますが、どういう関係の御審議をいただいたものかということが実は気になるわけであります。もちろん、それは二条の二の中に書いてあったから、こういうことかもしれません。しれませんが、基本的に調整規定運用を御検討いただくならば、当然他の公的年金にないものが公務員恩給の中には入っているわけでありますから、恩給の場合にはそこの関係というものが論議対象になってしかるべきじゃないかというふうに思って質問いたしましたので、差しつかえなければもう少しその関係をお知らせいただきたいと思います。
  8. 新居善太郎

    新居参考人 ただいま御質問の趣旨は、あるいは取り違えるかもしれませんけれども、色がついたというふうなことをどう理解するか、ちょっと理解しかねるのですけれども、私どもは二条の二に、あそこに明瞭に三つのことがあげられておりますから、その三つのことを一面においては法律に規定せられている事柄でありますから、それを尊重して、それをどう標準に持っていくかということが一つです。  それからいま一つは、そこにあげられておるばかりでなしに、物価特に消費者物価については、この恩給経済価値を維持するという点からいって一番適当な標準ではないかというふうな——ほかのほうも検討しました、公務員給与が上がったら、ずばりそれにと、あるいはずばりとまでいわなくても生活給に該当するものをとってやるということもあるんじゃないか、いろいろなことをやったのですけれども、しかしやはりその三つの要素の中には、お互いにオーバーラップしているものもありますから非常にむずかしいですね。それで結局は、少なくも物価というものの上昇ということに応じてこれを改定するということが不可欠の要件じゃないだろうかというふうに落ちつきました。しからば今度公務員給与上昇あるいは国民生活水準上昇というものの二つはどうかといいますと、公務員給与上昇ということはまあこれはとり方によっていろいろのとり方があるようですけれども、公務員または遺族はかつての公務員であって、しかもきびしい制限の上にもっぱら公務に専念して、退職後のことなどを考えている余裕はないというふうな生活をしておるのだというふうなこと、それが現在の公務員の相当の、また待遇が上がればそれも考えてもいいんじゃないか。しかし物価で主たる要素としてやっていますから、それで事足りるわけでありますが、そうやってもなおかつ現在の公務員給与との間に著しい違いがあれば、それをある程度反映させるというのは恩給の本来の性質からいっても適当ではなかろうかというふうなことで、公務員給与上昇というものを補完要因として、そういう場合に一つ考えるんだということ。  それからいま一つ、さればといって、あるいは公務員給与は上がったけれども、その背景なりほかの事情との関係を考えると、国民生活水準よりも非常にかけ離れて、今度国家公務員のほうが上がった場合に、恩給の受給者がそれに一緒にならわなければならぬということはどうであろうかというふうなことを考えますと、そのときには国民生活水準というものを考慮していまの点を考えるべきだ、大体そんな考えで、それでいまのような——ですから物価ということを主要な要素とし、それから公務員給与上昇、それから国民生活水準というものを補完要因としたというふうに考えたわけであります。
  9. 大出俊

    大出委員 御論議いただきました御趣旨のほどはよくわかったわけでありますが、私が実は取り上げました趣旨は、まあ一番早くできたのは厚生年金なんですね。これはたしか昭和十六、七年ごろに、大東亜戦争のころにできたわけですが、戦費調達という背景もあったのでしょうけれども、厚生年金がいろいろな変遷を経てきておりますけれども、政府の側にすれば各種公的年金といわれるものをこの厚生年金基準に適合させたいという気持ちが今日まで非常に強くあった、これは事実であります。ところが、恩給法二条二を加える段階ではどうも厚生年金のほうに適合させ切れない面が出てきている。そこに物価なり公務員給与というものが入ってきた。ここが違うわけですね。そこでこの厚生年等金の例からすれば、国民生活水準あるいはその他の諸事情が入っているというかっこうが中心だと思うのです。そこに物価が入り公務員給与が入ったというのが恩給法の二条の二だと思います。これはこれだけでなくて、御存じのとおり地方公務員の場合の共済組合法がございます。国家公務員、当然、これまた共済組合法がございます。五現業、それから三公社ですね。これは私が組合運動をやっているころに、私の組織が参議院議員の永岡さん、横川さんという人を通じて提案をやったんですけれども、当時大蔵省の岸本さんが給与課長をやっておられまして、そういう趨勢になるんだとすればというので大蔵省が案を出した。それでこれは共済年金のほうに行ってしまったわけですね。二国会継続審議をいたしましてそういうかっこうになったわけであります。議員立法を取り下げて政府提案になったわけであります。おくれて地方公務員が右へならえをしている。こういうかっこうなんですね。国鉄、専売、それを追っかけて電電公社がなり、あと五現業が追っかけて、それが地方公務員にまで進んでいる。こういうかっこうになるわけです。これらの関係等もありますから、これが物価の下にあるわけでありまして、他との関連で切り離せない。そこであと国民年金があり、私学共済なんかも性格的にはある。さらに労災保険法があるわけであります。当然あわせて国家公務員災害補償法が出てくるわけです。国家公務員災害補償法の場合は二十六年に制定をされた法律でありますが、それまでは裁判所であろうと国会であろうとみんな一緒だったわけです。そういう歴史的経過を踏まえていまここで考えてみますというと、これが四月十五日の新聞でございますけれども、これを読んでみると、各種年金改定基準基本方針固まるというので、物価スライド制にというこの答申を受けた政府の皆さんの側が気がつかれたんだろうと思うのでありますが、大騒ぎになっている感じですね。したがって、他の公的年金にないものを、つまり恩給法二条の二に物価公務員給与を入れた。そこで審議会の皆さん御努力の結果、物価中心になってきた。そうすると、それが入ってない各種公的年金のほうをどうするんだという問題が逆に出てきているという、これは非常に奇妙な現象になった。私はこれは悪いことではない、ぜひそうあってほしいと思うのであります。  ただ、そこで念のために承っておきたいのでありますが、アメリカの場合とフランスの場合と形態が違うわけでございます。それでアメリカの場合ですと、一九六四年の公務員退職法という法律があります。これは物価中心になって年間平均で三%以上の変動というのが中心になっております。ところがフランスの場合には一九四八年法であります。文武官の退職年金制度の改革に関する法律というわけでありますが、こちらのほうは公務員に比例して上げなさいということになっているわけです。この関係を、物価中心にして公務員を補完的にとした何か著しい理由がありましたら、これから論議中心点の一つでございますので、いま概略のお話は承りましたが、特に物価中心になっているアメリカ法、公務員給与中心になっているフランス法を対比いたしまして、それらをおそらく御検討の結果だと思いますので、なぜそこに物価中心になって公務員給与を補完的という要素にお取り上げになったかという点ですね。ここのところを念のためにお知らせいただきたいと思います。
  10. 新居善太郎

    新居参考人 いまの点は外国の例も資料として出していただきまして、みんな各委員とも話し合いました。またそれに関連しまして、公務員制度といいますか、官吏制度も必然的に関連してくる事柄でありまして、そういう点ももちろん考慮に入れましたが、先ほど申しましたとおり、われわれとしては国会で制定した法律を尊重してというのが前提でございます。ですから、立法論はなるべくしないようにしよう、既定の法律を尊重してその運用をどうするかということ、それから日本の官吏制度公務員制度というもの、それから従来の恩給制度の変遷というものも考えに入れまして、結局のところ、具体的にはいまお話のあった二条の二がどうして出てきたかという政治的あるいは社会的のことはつまびらかにしませんけれども、それを尊重してやろうということにいたしますと、事実世間、といいましても、新聞で当時ちらほら見たりあるいはいわれているものが、スライド制——政府はスライド制とはいっていないが、しかしスライド制といわれておるものが、どうも公務員給与とスライドするというふうに一般にいわれているんじゃないかというふうなことも、少なくも私は考えました。そういうことからいうと、公務員給与というものをどうこれにあたって要素として取り入れるかというふうなことも相当真剣にやったんです。やりましたけれども、公務員給与というものは官吏制度が変革され、また給与制度が変わってきたというふうなこと、それから学歴とか職階とか職種ということで非常に複雑になってしまって、恩給と対比するのが技術的にも非常に不可能に近い困難だというふうな面もありますし、それからまた、公務員のほうは初任給を上げるとか、あるいは戦前と比較しまして、ある職種が非常にウエートをとってきまして優遇されるというふうな政策的な変化もある。そういうことでやる公務員給与上昇を、そのものずばりをそうでない時代の恩給受給者にやるというのは適当じゃないんじゃないか。そうなると、そのうちで生活給に該当するものを抽出してきてやるというのが理論上は考えられるのじゃないか。そうすると、その方法はどうするのかというふうなことになりますと、学者によっていろいろな方法が考えられるのですが、これでいいというきめ手は私の記憶ではちょっとないように思いますし、ですから世間の、ことに受給者の方々は、なぜいまの人の月給が上がるのにおれたちは上がらないのか、簡単に考えますとそういう点があると思うのです。そういう点はいまのようにわれわれは真剣に考えたんですけれども、そういう理由でこれは主たる要件だ、しかし公務員給与の中にはもちろん物価というものの要素も入っておりますし、いろいろ民間の会社の実情というものも入っていますから、尊重しなくちゃならぬけれども、やはり主たるということではぐあいが悪いんじゃないか。結局経済価値を維持するといえば何といっても物価というふうなものをとるのがいいんじゃないかというので、物価というものを中心の要素としてとり、先ほど申し上げましたように、かつての公務員でありその遺族であるということ、それからほかの公的年金対象者と違って国家に一意専心、しかも無定量の勤務の義務とまでいわれて、当時は超過勤務手当というようなものはもらえない、退職金も規定としてもらうのじゃないというふうなことで、いちずに公務に専念したというふうな遺族や何かのことを考えれば、今日、物価を考えて調整したその額と、現在の公務員上昇率と著しく違えば、そこは何とか考えてやったほうがいいんじゃないか、こんなような考えでございます。
  11. 大出俊

    大出委員 たいへんどうもありがとうございます。非常に御苦心のあとがうかがわれますし、かつまた現実的にものを見ておられると思いますが、ただ一つだけいまのお話の中で気がつきましたのは、欧州の各国の例などを調べてみますと、特に年齢の非常に高い、生存余命の長いところはスカンジナビア三国なんですね。あとはイスラエルが高いですけれども、各国の公的年金といわれるものあるいは退職年金といわれるものをながめてみますと、一つの思想的な背景が違うのですね。この定年制というのは退職年齢と合わせて考えられておりますが、年をとった方というのは一体どういう方々かといえば、いまお話にちょっとありましたが、長年この世の中で御苦労をされて社会一般に尽くしてこられた。じゃ、尽くしたその労働の価値というものを全部俸給という形でもらってきたかどうか、もらっていない。たとえて言えば三分の一俸給の形でもらって三分の二は社会に残してきた。それが今日のあるいは文明であり文化であるのかもしれない。してみると、完全にもらっていない、次の世代に残していく、そういう高齢の方々が、ある一定の年齢に達した場合には当然休息の権利があるはずだ。社会に対する貢献の度合いに応じた休息の権利があるはずだ。それを一歩進めて十分な休息の権利を行使していただこうということになると、そこに老後の生活が完全に保障される意味公的年金というものが考えられていいんだという一つの思想がありますね。ここが日本のいまお話しの官吏俸給令の時代から日本の旧恩給制度というものとの思想の相違があるのですね。それが、戦後新しい憲法のもとにいまの恩給制度が復活をして、軍人恩給を含めて今日にまいりましたが、この新しい思想に立つと、昔の恩給法あり方とはそういう意味で多分に違った面が出てきていいのだ、そこに社会保障的な要素が、政策的な要素が多分に加味された現在の恩給法になっている、こういうことなんですね。それがどうも実はこの答申の中身というのが、こういうことを言ったら言い過ぎになりますけれども、どうも旧恩給法というもののところにどうしても引かれるという形、幾つかありますけれども、旧恩給法にあったからと、あるいはあったけれどもいまの世の中に照らしてあまりどうも元に返ることは逆戻りが過ぎるからという点でがまんをする、あるいはもっともだけれども、旧恩給法にないからというような一つの基準が、これは会長の責任ではなしに、恩給局の責任ではないかという気がするのでありますけれども、それにどうもひっかかるものですから、こういう言い方に私はなるのですけれども、しかしながらいま私が申し上げた上に立って、何がしからば退職公務員の皆さんの基準になっているかというと、やはり退職時の俸給なんですね。その減耗の補てんなんですね、一貫したこの形にあらわれたものは。だから、これをこうすなおに読みますと、法律に基づいてという話でございましたが、すなおに読みますと、「国民生活水準、」とこう書いてありますのは、他の公的年金一般とほぼ同じことばであります。したがって、これは一般論としてそう見ていくべきだということになると思うのでありますが、その次に書いてありますのは「国家公務員給与、」とまず書いてあるわけですね。そうしてそのあとに出てまいりますのが、これがいま中心になっております物価なんですね。そうなりますと、公務員給与が一つの基準になって、物価が補完的になって、それを押えて全体は国民生活水準ということになっているという立て方にこの法律条文は読めるわけですよ。ところがいま皆さんが出しておられますのは、この下のほうに書いてあります物価中心になって、補完的に公務員給与があって、一番てっぺんに国民生活水準があって、一番下のほうに、その他の諸事情の中にべらぼうに公務員給与が高くなっちゃったというような場合には考えなければいけませんよということになっているのですね。そういう構成になるのですね。そこがどうも解釈権政府にないのですから、政府が悪いのですからしかたがありませんが、政府に一つの解釈権らしきものが初めからあって、こうだと言えばそれをすなおに審議すればこうなったという、あるいは変わった出方になったかもしれませんけれども、どうも法律にとおっしゃられると、この法律の立て方からすると、いささかひっかかるという気がするわけでありまして、そうそう年がら年じゅう物価ばかり上がるような政策をおとりいただいたのでは困るわけでありまして、そうすると、長い目で見て物価が安定して動かないという世の中がほしい。そうなると公務員給与というものに在職時の所得の減耗というものを補てんをするという形で見合っていくという形が、実は体系がどう変わろうとも、今日、だからこそ仮定俸給制度をとって恩給計算をしているわけでありますから、そこが私は正しいように思うのでありますけれども、これは会長さんのほうとかみ合わない私の意見でありますが、たまたま恩給局長さんもおいでになりますので、言うだけは言っておかぬとぐあいが悪いので申し上げますが……。そういうふうに思うわけでありますけれども、おそらくそういうことを、私がいま申し上げたようなことも、たくさんあった議論のどこかにはあったのではないかと思うのでありますが、そこらのところだけ、ひとつ承っておいて、多数意見、少数意見があるのだと思いますが、あとの論議に差しつかえますので、そこだけひとつ承りたいと思います。
  12. 新居善太郎

    新居参考人 いまの、二条ノ二にああいう順序である、これは順序に何か意味があるのか、それから「其ノ他ノ諸事情」というものはどんな事情があるのかというふうなことも一応検討いたしました。検討いたしましたが、私の記憶違いでなければ、その順序はたいして意味はないのじゃないか、それから「其ノ他ノ諸事情」というのは、立法技術としてエトセトラというのをたいがいつけておるからそんなものじゃないだろうかというふうなことも、これは一致した意見じゃありませんけれどもいろいろあったのです。われわれもその辺はずいぶん検討をしたのですけれども、あの順序はまず第一に出てくるから、三番目に出てくるから物価は補完でいいのじゃないかという考えは毛頭ございませんでした。実質上明瞭に出ておるのは三つだ。三つをどう組み合わせるか、みなオーバーラップしておるのだ。そうすると、そういうふうなことをやるにはといって先ほど申し上げましたような考えもほぼ順序でやったわけです。  それからいま一つは、旧来の恩給と——戦前恩給法を私はあまり勉強しておりませんけれども、だいぶ変遷してきた。その大きな要素は、この答申文の中にもありますように、終戦という特殊事情ということが大きくあると思うのです。それから、その後に来た経済的の激動あるいは社会情勢の変動というものがあって、従来の恩給法そのものずばりではこの解釈あるいは運用ができない問題をもまた対象とせざるを得なかったというふうな事情もある。ある人のことばをかりれば、終戦処理的のものを恩給のほうで引き受けたという形もあるのじゃないか、そういうものをそうかといってだんだんに広げていくとこれは切りがないのじゃないかというので、今度は恩給審議会という銘を打って審議会が発足しました。御承知のとおりその前、あれは三十二年ですか、臨時恩給等調査会としてあれは「等」がついていて恩給ばかりじゃないんですね。それで、私は今度の恩給審議会の発足にあたりましてはその点を確かめて、恩給の分野でこれは審議してよろしいのじゃないかといってやりましたから、恩給法の中でやる、しかも恩給法の中で、運用については、先ほどのような恩給以外のものを恩給の中に取り入れたといっては誤弊があるかもしれませんが、そういうものについては相当検討しないとそれからそれとだんだんにいくのじゃないか。言い過ぎかもしれませんが、私はざっくばらんに申し上げますが、そういう気持ちも多分に委員の中にはありまして、それでなるほどと思うものは早くやってやる、そうでないものはここできっぱりけじめをつけて、そういう問題があるなら恩給以外のほうの問題でやっていただくというふうなことがいいのじゃないかという考えがありました。それだけ申し上げます。
  13. 大出俊

    大出委員 よくわかりました。いまのお話もそうですか、古い恩給の法律、あり方がありまして、いまの世の中でそれをどう適合させるかという新しい一つのあり方なり試みなりが出てきまして、もう一つその中に介在するのは終戦処理、戦後処理というふうな形のものをどうけじめをつけ、決着をつけるかというのが私は当面の課題だと思うんですね。その課題をおのおの審議会の皆さんがお取り上げになっておられるわけであります。ところが、戦後処理にはいささかどうもきびし過ぎると見なければならぬ。私見でございますが、あまりにも法律条文にこだわり過ぎておるという感じの個所もあるように思います。ところで、新しい時代に適合する恩給という意味からすると、どうも古いところに引っぱられがちになっておるという感じのところもありますが、これは合議をされたんでしょうから私的な欲を言ってもしかたがありません。ありませんが、実はそういう気がしてなりません。  そこで、それはそれとして、一番私はそれらの根底になければならぬものは、どういうふうに間違いなく、いま審議をされました皆さんの思想が、この法律条文の面でこれから生かされていくかという点だろうと思うんですね。この二条ノ二を挿入したときに、世の中の新聞は、ようやく日本の恩給も、おっしゃるとおり昔苦労された先輩各位が退職公務員立場生活をされておりますけれども、物価変動でずいぶん苦しんでいる。これでようやく日の目を見るのじゃないかと、いわく物価スライド制という新聞の表題が出た。さああけてみると、スライド制ですかと矢倉さんに聞いたら、そうじゃございません、調整規定でございますという。調整規定とは何ですかと言ったら、審議会で御審議をいただくのです、こういうことになっているわけです。そこで出てきた答申でございますから、これはここまでくらいお書きになることが精一ばいであったのだろうというふうにはお見受けをするのですけれども、しかし欲をいえば、もう少しぴしゃっときめていただきたかったという感じがするのです。将来それが、恩給審議会がぴしゃっときめたんだから、これはそのまま尊重して法律条文になって、ほんとうに物価スライド制ですといって世の中の退職公務員が安心して生活ができるところまで実は行っていただきたかったという欲があるのでありますが、そういう意味で、これから一体どういうふうにこの調整をしていくかという調整の方法というようなのがここにございます。中心は実質的価値の保存ということを中心にして、さっき申しましたように高齢者等は別に考えろ、こういう基本はあくまでも実質的価値の保存だ、こういうことになっているわけですね。  そこまでで、さてそこから先、経過措置をながめましても、スライド——調整規定というのだそうでありますけれども、じゃどういうふうに具体的にやるのか。たとえば国家公務員法のように五%程度上がったらこれは何か政府は出さなければならぬ、こういうふうにきめつけるのかつけないのか、ここには書いてないけれども、きめつけてほしいということであったのかなかったのかというふうな点ですね。  例をあげて申し上げますと、さっき他の公的年金との比較を申し上げましたが、三十五年の労災法の附則十六条、ここで、平均給与の額が二〇%こえたときは、強制規定でございまして、強制的にこれは変えなければならぬことになっていますね。そうするとこれは、基準法を受けて労災保険法ができておりまして、国家公務員災害補償法にも関係がございまして、災害補償法のほうでは均衡性の原則となりまして、労災保険法にならわなければいかぬことになっております。こういう関係が一面あるわけであります。言うならば、そういったような形に最低保障なんかでも他の公的年金との比較を述べておられるわけでありますから、そういうところまで行くべき性格のものであろうと——私は実はこの答申をながめて、その意図するところがそこまで行くべきものというお考えで、しかしながら立法権は政府にあるのだからという御遠慮でここまでにとめたんだろう、実はこう理解をしたいのでありますけれども、そこらのところはいかがなものでしょう。
  14. 新居善太郎

    新居参考人 私ども、ものごとをすべて適当な判断ができたらすぱりすぱりといきたいという気持ちは多分にあったのです。あったのですが、何ぶんにも二カ年の期限がついております。それで、この点も御了承願いたいのですが、初めは毎月第二、第四の月曜に午後一時半から五時までということで忠実に、優先的に日取りをとってもらいまして、海外出張やら病気以外はほとんど皆出席です。それでしまいに、計算してみるとまだ足りないというので、回数をふやそうということになった。ところが、この忙しいのに回数をふやしては困るから時間延長をしようじゃないかというので、一時半から七時までにしたのです。それが十一月の半ばごろからですから、十一、十二、一、二、三は夕めしも食わずに一時半から七時までやったわけです。そういう制約がありますものですから、御承知のとおり関連する問題はだいぶある。それから、これをきめていいという問題ではなしに、これはこの程度にしておいて、こっちをまたやらぬとアンバランスが起こるというふうな問題もありまして、そこのところは非常に苦労したのですが、いまお話しのとおり、せっかくこういうふうにしても、これが確保されなければ何にもならぬじゃないかというのが委員全般の気持ちです。それですから物価というものを中心の要素としてとった。それも物価に見合ってというのではいかないので、それで五%という具体的の問題も、いろいろ議論はありましたけれども、持ち出しました。  それから、ただそれだけではなしにこれを制度化するということばを使いましたが、ざっくばらんにいいますと、この点はひとつ政府の義務としてやってもらうというふうな気持ちがあり、またそういう発言もあったのですが、政府の義務はあたりまえじゃないかというふうなことで、そういう表現はせずに制度化する。では制度化するのはどうするのだというふうな、法律を改正するのか、あるいは政令を出すのか、あるいは閣議決定するのか、いろいろあるでしょうけれども、それは政府でやるべきことで、われわれがいまここでその先をやったのでは時間もなくなるし、そう法律論もやっておられないからというのでそういうふうになったのであります。しからば、それでは非常に隔絶した場合に、その公務員上昇あるいは国の生活水準、これをどういうふうにまた織り込むかということも、おそらくもっと具体的なことを言ったらいいじゃないかという御批判もあろうとは思いますけれども、とてもそれをやっておる余裕はなかったので、これはそういう趣旨を尊重して政府が合理的にやる、いわば私ども政府を全幅的に信頼して私どもの精神を受け取ってくれるというふうなつもりでやったのが実情でございます。
  15. 大出俊

    大出委員 たいへんその点もよく御説明賜わりましてわかったわけでありますが、そういたしますと、皆さんのお気持ちとしては、ここに五%と物価の一つの水準をおあげになって、これを制度化して政府の義務としてやるべきだ、これが大体皆さんの御意見だった。しかしそこまで念には念を入れて書かぬでも、政府がやることは、われわれに諮問したのだから当然の義務ではないか、こういうことでそこまではお書きにならなかったというふうに理解を申し上げていいのではないかと思うのでありますが、よろしゅうございますか。
  16. 新居善太郎

    新居参考人 大体そんな気持ちでございます。とにかくこれを制度化して、言い過ぎかもしれませんが、政府がかわってもこれはずっと実行できるようにしてもらいたい、少なくとも私はそう思っております。
  17. 大出俊

    大出委員 どうも私も国会在職はそう長くないのですけれども、なかなか政府が義務としてお受け取りいただかぬで困ることばかり経験してまいりまして——しかし新居会長、ここまで御熱心な論議をおやりになって、しかもいまここでお話しになりましたように、皆さんずいぶん心配して、せっかくの検討の結果がそのとおり、政府がかわろうとどうしようと、形の上であらわれて、退職公務員の皆さんの生活を完全なものにしていかなければならぬという、そういうお気持ちでこれを進めてこられたというわけでありますから、これは総務長官も恩給局長もおいでになりますけれども、特に恩給局長も一緒になって苦労された結果でございましょうから、これは当然疑う余地なくそういうお考えだと思います。ひとつ総務長官にはいま会長がおっしゃっておる趣旨はおくみ取りをいただいて、できるだけこれは尊重して制度化して進めていくというふうにお願いをしたいわけであります。長官、別に御答弁いただかぬでも、またあらためてあれしますからいいですけれども、たまたまいまお入りになりましたので、ことばの上でつけ加えて申し上げたわけであります。  そこで、大体の大筋はいまお話しをいただきましてほぼわからせていただきましたからよろしいというふうに思うのでありますけれども、ただ先ほど私少し口にいたしましたので、何点かピックアップをして実はお聞きいたしておきたいと思うのであります。  私どものいただいておりますのにはページ数がついておりませんので、いささか不親切な答申案でございまして、何ページと申し上げられないわけです。しかしこれは私の責任ではございませんのでごかんべんを賜わりたいのですが、三月二十五日の新居会長さんの答申の、厚さから見てほぼまん中ごろになりましょうか、これは中身を申し上げればおわかりいただけると思うのでありますが、軍人恩給でございますが、将官あるいは佐官の仮定俸給表の号俸が文官に比較して将官が二号、それから佐官では一号、こういう差があるという点、これは「将官、佐官の号俸を低く押えておく理由は乏しい」ということになっているのでありますけれども、これが実は私が先ほど申し上げましたような、古い制度というものを復活して今日制度化しているわけでありますから、何もかも必ずしも旧来の恩給制度にあったからというのでそこに戻らなければならぬ筋合いのものではない、こういう気がしきりにするのであります。これはなぜこういう形になったかというと、御存じだと思うのでありますが、戦後、軍人恩給復活の時代というのは、いまでは私ども賛成をいたしておりますが、社会党という私どもの党の立場からいっても、これはまっこうから反対ということで、ずいぶんほうぼうに反対の声が強かった、軍人恩給復活については。したがって、かつての軍人時代の階級差というものが極端にあらわれるということはできるだけ避けなければならぬという思想があって、極端な階級差と見られるものを押えて出してきたわけです。したがって、それがいまの恩給法に定着をしているわけです。つまり、こういう極端な差というものを、旧来あったのだからといって復活するなら、ほかにもいろいろな矛盾が逆に出てくるところがあるわけであります。私どもはそう理解をしているわけであります。当時そういう配慮から、旧来の極端な階級差を押えて出している。それが今日まで続いている。これがあったからという理由で旧恩給法に戻っていくということは、どうもいささか理解しがたい点があるのでありますが、そこらのところの御論議等がございましたら、ひとつ伺っておきたいと思います。
  18. 新居善太郎

    新居参考人 何といいますか、階級的のことをどう考えるかというふうな方面から詳しく論議したというふうな記憶は私ありませんけれども、旧軍人文官との関係が非常にアンバランスだったというふうな中の一つの具体例として、いまの将官、佐官というものが——私の記憶が間違っているかもしれませんが、初めの仮定俸給をやるときには、一般軍人さんのほうが文官に比べて仮定俸給が低くされておった、それをだんだん改正して、その改正の方向は、おそらく文官均衡を得るようなという配慮じゃなかったかと思いますが、それに取り残されておるのが将官、佐官、二号、一号という違いだというならば、その流れも考え、また文官と武官というものを差別するという考えをそう固執しなくてもいいのじゃないかという気持ちからやったわけでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 その次のページにありますように、旧海軍特務士官等の仮定俸給表なんかの場合でいきますと、つまり在職中ば特務士官のほうが高額だったのです。これは間違いないのです。私も士官学校の教官をやっておったのですから、知らないわけじゃないのであります。したがって一般士官と特務士官の在職中の俸給は、特務士官のほうが高い。これはおそらく旧来そういう制度がなかったからということだと思うのでありますが、昔の制度にはないからというのでだめだ、こういうことだと思うのですが、新しい世の中で新しくものを考えるならば、かつてそうだった、俸給が高かったのだというところに中心を置いてものを考えるとすれば、高いものは上げたらいいということになるので、階級云々ではない。当時もらっていた給料が現に高かったのだとすれば、特務士官と一般士官の場合は、特務士官が高いのですから、旧恩給法にこだわることなく、これは認めるべきだ、そこらがどうもつじつまが合わない気がしてならないのですが、何かそこらについてございましたら、その辺をおあげいただきたいと思います。
  20. 新居善太郎

    新居参考人 旧海軍軍人の特務士官の点につきましては、俸給はなるほど高かったが、仮定俸給としては同じだったのだ、それで軍人さんはみな俸給ずばりを恩給の基礎にせずに、仮定俸給を基礎にしておった、これるずっとやられておった、それを今度その仮定俸給を別にするということになりますと、旧軍人に対してとってきた恩給の根本を改正することになるのだ、そこまでやるのはどうかというふうなことで、たぶんそのままということになったように記憶しております。
  21. 大出俊

    大出委員 だから私は申し上げているのですが、つまり旧恩給というものを一つの基礎にされるとなると、そこに引き戻せという議論になるのです。ところが、戦後いろいろ政策的な要素が多分に加味されて、たとえば前回の場合でも、三十八号兵のところですが、ここを中心に前回の恩給改正ではとりまして、これを月額一万円にするのだというので、十万円を十二万九十六円に引き上げた、月額一万円という原則で。そうすると、これを七十五歳のところを、ABCのCのランクを逆算すると、二八・五%の上昇にならざるを得ぬというので、年齢差をつけて一〇%、二〇%、二八・五%とこうやった。そうすると、これはどうも少しあまりといえばあまりではないか。どこかに公約があったからというので、無理にそこに持っていった。だから差がついた。十一月に中間答申を受けて、こんなべらぼうな話がありますかということを私が言ったら、不均衡是正だ、しまいには不均衡ではない、高齢者優遇なんだ、これは政策です、こうおっしゃる。今度は皆さんのほうは別個に扱えと言うのですから、なかなかうまい答申をお出しになったと思うのです。それは矛盾だと言って力説したら、今度お出しになったものを見ると、逆にひっくり返っている。それが矛盾だったから今度は逆にいたしましたと言わんばかりの——理屈はほかにちょっとついておりますよ。ついておりますが、これは論議していけば明らかになりますけれども、そういうことが今日まで恩給にはちょいちょいある。だから、そうなりますと、旧恩給にこだわってということになるならばなるように、それからそれを離れて、現時点に立って新しい世代に適合させるというように考えるなら考えるように、戦後処理なら戦後処理で割り切るようにしていきませんと、どうもつじつまが合わぬ点が間々出てきてしまうという気がしてならないのです。  それで、たとえば一時恩給でありますが、この一時恩給も、予算的には対象人員が、兵のところまで手をつけますと相当多くなります。これは七年以上というのを三年からに引き上げると当然多くなる。これなんかも、どうも下士官以上にはやれというのではないか。私もよく検討しておりませんからわかりませんが、ちらっと見たところ、そういう感じがするのであります。ここらあたりも何か特別な事情でもおありになりましたか。
  22. 新居善太郎

    新居参考人 具体的なことを一々私よく覚えておりませんけれども、もし間違っていたらお許し願いたいと思いますが、たぶん七年以上在職という条件を三年以上ということにしてもらいたいという要望の問題じゃないかと思いますが、いろいろ聞いてみますと、そういうふうにして兵にこの一時恩給をつけたその場合に、下士官以上が、いわばことばが悪いかもしれませんけれども、巻き添えを食ったというふうな形になったという経過のように私は承知しているのです。そうすれば、これ以上問題の全般として要望を是認するということは適当でないのではないか。ただし過去において、この兵がそうなったときに、一緒に不利益のような扱いを受けた者はもとのようにしてやっていいのではないかというふうであったと記憶しますが、もし間違っておったら、またあとで恩給局長に直してもらいます。
  23. 大出俊

    大出委員 会長さんの御努力の結果でございまして、実はこの各項目につきましては、私は恩給はしろうとでございますけれども、やはりしろうとなりに長く——人事院が始まりまして、公務員法の中で、人事院が恩給を研究しろ、研究の成果を発表せい、こういう法律になっているわけです。これは何かというと、旧来の恩給というものは過去のものであって、公務員法に基づいて恩給は新しくなる。新しくなるのだから、人事院は新しい時代に即した恩給を研究して成果を発表しろ、こうなっていたわけです。これはマイヤースが来まして、マイヤース勧告を出してお帰りになった。あの人は一週間くらいしか日本にはおりませんでしたが、りっぱな勧告を出された。人事院は苦心惨たんして、このマイヤースの勧告に基づいて無拠出制の恩給を勧告したが、これは日の目を見なかった、こういう経緯があります。戦後の法律のたてまえは、明らかに旧来の恩給法というものではなくて、公務員法に基づく新しい恩給というものを意図していたことには間違いない。だから、私はあまり古い恩給の型にとらわれていただきたくない。やはりいまの世の中に適合する合理的なものにしなければならぬ。なぜならば、この答申はおそらく政府にとっては、あるいは恩給局長さん以下の恩給局にとっては、これはバイブルだろうと思います。そう簡単に、二年間の日時をかけてまた制度審議会をつくりますというわけにはいかない。ここにあるものを取捨選択しながら、長期にわたって手直しが続いていくことになると思うのです。それだけに、そうおろそかにはできない勧告、答申なのです。だから、ほんとうのことを申し上げるとずいぶんたくさんあります。これは実は逐一会長さんをわずらわしたい気持ちなのです、一々気になるところがたくさんありましてね。これはソビエトが入ってきたときにいたとかいなかったという問題でも、旧来調査が不可能であったとかなんとかということもありましたし、飛行機に一ぺん乗ったとか飛行艇に一ぺん乗ったとかなんとかいうことで、問題はある。一々やっていけばずいぶんいろいろあるのですが、会長さんにこの際そこまでお手をわずらわせることは、御苦労の結果おまとめになった会長さんの立場に、私どもは少しく無理をし過ぎる感じになりますので、こまかい点につきましては御遠慮を申し上げたいと思うのであります。また別な何かの機会に、この答申が問題になることでもあれば御見解をいただかなければならぬと思いますけれども、あとの問題は、そういう意味恩給局の方々のほうに、あるいは総務長官にひとつ機会をあらためて承りたいと思うのであります。  いずれにしても、二カ年間にわたりましてたいへんな御苦労をいただきまして、この委員会審議いたしました者の一人として御礼を申し上げるわけでございますが、先ほどのおことばのように、ぜひひとつこの答申の真意が守られて、現に恩給生活をしている退職公務員の諸先輩諸君が、物価上昇する今日の事情の中で安心して生活ができるところまでこれが形づけられてまいりますように、いろいろな面で今後ともひとつ御尽力を賜わりますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 新居善太郎

    新居参考人 御丁寧なおことばをいただきまして、まことにありがとうございます。  一言つけ加えますと、私どもも、短期間ではありますが、その間できるだけのことをしたと思っておりますけれども、決して独善的な考えを持っておるわけでありませんので、この個別問題も結論だけ言えばいいのじゃないかというふうなことも考えましたけれども、やはり恩給を受けている人の身になってみれば切実な問題ですから、理由もちゃんとつけて、それで納得してもらったり批判してもらう、いわんや国民に対してもそういう態度でいくべきじゃないかというので、少し分厚くなったり——いろいろの御意見はありましたけれども、丁寧につけて、それで御批判は受けたいと思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  25. 大出俊

    大出委員 どうもたいへんありがとうございました。
  26. 三池信

    三池委員長 受田新吉君。
  27. 受田新吉

    ○受田委員 新居先生に、久しい間懸案恩給問題の処理に関する審議会会長として答申をおまとめいただいた御苦労に対して、深甚の謝意を表させていただきます。  新居先生御自身は、これまで恩給を詳しく御勉強されたわけではない、むしろ大所高所から国民の期待する方向に恩給あり方を進めていきたいという高度の判断力を用いられた会長としての御苦労であったと存じあげます。したがって、大出委員が質問された問題に引き続きまして、事務的な問題を避けて、恩給審議会長として御苦労をされた各種の問題の中で、審議会が十分討議をしたであろう過程を含めた意味の大まかなお答えだけをいただくことにさせていただきます。  私、十年前の臨時恩給等調査会委員をやらせていただいて、あのときの答申についていままざまざと記憶がよみがえっております。それを受けて、十年後の今度の答申を見ますと、時勢の流れというものも十分くみ取られた、ある意味においてはいい処理をされている点を数多く拝見をしております。もちろん前の調査会は等ということばがありましたから、援護の問題も討議しました。金鵄勲章年金の問題も意見だけ聞くという程度に進めたわけでございまして、金鵄勲章年金は、ついおととしの暮れに片づいたわけであります。まだ一時金の問題が残っておりますがね。それから援護の関係における恩給法あり方というものについても、前の答申にはその関係をある程度うたってあったわけです。今度は恩給とすかっと割り切られたので、たとえば、恩給法規定する公務扶助料と援護法に規定する遺族年金関係などを論及しておられないのです。これは恩給法のたてまえからはすでにそうなると思いますが、同じ国家の公務に従事しておっても、準軍属という関係のほうになると、同じ戦死者となって、全く公務の性格は同じだが、その置かれている身分の差だけで援護法へやられて低い年金をもらっているという、いまどき考えるとこれははなはだ不合理な問題等があるわけです。そういうものが今度全然問題にされておらぬようでございまするが、しかし答申になくても、そうした、これは当然恩給法の適用に入れるべき援護法の対象であるというような論議はされたかどうか、お答え願いたいのです。
  28. 新居善太郎

    新居参考人 いま受田さんのおっしゃられたように、前回は臨時恩給等といって、恩給以外のたとえば援護の問題も入っておりました。今回は、先ほど申し上げましたように、関連するところが非常に広くて、たとえば先ほどの個々の問題でも、一つぶつかると一日それで論議するという状態で実際のことを言うと、二カ年では時間が足らなかったわけです。それで、できるだけ恩給本来の分野の方面に重点を置いて、関連するところは考えるがという程度でやりましたので、この援護の問題とどう関連するか、援護の関係に、いまお話があるように、恩給対象じゃない、援護のほうの分野だ、しかしこれは何とかしなければならぬのではないかというところまで考える余裕はなかったというのが実情でございます。
  29. 受田新吉

    ○受田委員 そこでその関係をまずお尋ねして、今度は基本問題から、会長さん御苦労された道のりを振り返っていただくことにいたします。  つい改正されたばかりでありますけれども、恩給法の第二条ノ二の、いま大出委員が指摘された調整規定、これは他の法律にも類似の似通った規定が、共済制度等にも地方公務員を含めた諸法律にうたわれておるわけです。したがって、この規定恩給法を本家にして、他の類似の法律が新宅のようなかっこうで取り上げられておる。これは非常に年金制度のポイントになる基本問題であると思いまするし、したがってそこに力点を置かれておることもよくわかります。ところが、ここで恩給局長は、この審議会の責任ある幹事役として諸資料の提出からその説明に当たられると思うのでございますけれども、この調整規定の中にうたわれてある三本の柱の中で物価が一つ取り上げられてあるが、その他の諸事情のほうはあまり考えておらぬというようなお答えでありますし、また、そういうふうに出ておるわけですが、この国家公務員法の第百八条にもはっきりとうたってある規定は、この退職年金制度、これはペンションの解釈をいま採用してもらうとして、その中にはっきりと、例の、さっきから御説明になっおる、減損能力を補てんする学説を採用して国家公務員法第百八条はできておると私は解釈しておるのですが、この国家公務員法の第百八条の学説のほかに、なお恩恵説とか、あるいは賃金あと払い説とか、超勤説というような——あと払い説は超勤説に通ずると思うのですが、諸説があるわけです。その諸説の討議は十分されたでしょうか。どうでしょうか。
  30. 新居善太郎

    新居参考人 最初に、三回か四回でしょうか、恩給局から資料を出していただきまして、従来の経過やら個々の問題について説明を聞きまして、それから実質討議に入ったのですが、やはり恩給というものの本質については相当論議いたしました。それで、政府のほうの資料も、古くは大正十二年に法制局長官の馬場えい一氏が議会で言っていること、あるいは齋藤内閣のときですか樋貝詮三氏が言っていること、それから高木恩給局長が言っていること、それらのことも聞きましたし、また学説についても、戦前戦後の学者の説をすっかり資料に出していただきまして、われわれもそれを読みまして、十分論議したのでありまして、大体従前とられた政府解釈というものが、いま受田さんのおっしゃったように、結局経済的能力というものを消耗する、その補てんということを実質に考えて、国家が退職後に相当生活を維持するというふうなことをしてやるんだ、平たく言えばそうじゃないか、こんな考えでやっております。
  31. 受田新吉

    ○受田委員 私、減損能力を補てんするというこの学説は、非常に筋が通ると思いますし、またその学説に基づいた国家公務員法第百八条の規定も、現行制度として肯定をします。その中にはっきりうたわれていることは、すなわち経済能力を取得する上において、公務員であったがゆえに、私企業等に関係することなく、忠実に公務に従事しなければならなかったというので、別のもうけの道が断たれておったわけですね。非常にきれいに生活をしてこなければならない服務規定があるわけで、それを生き抜いてきた方々退職後、あるいは死亡後においてはその遺族が、その後においての適当な生活を維持するということを前提にしているわけですね。そうすると、この適当な生活の維持ということは、公務員であったその誇りも十分含めた適当な生活という意味であると私は解釈しているのです。そうしますと、ただ物価だけ——物価は、いま大出委員が指摘されたように、非常に安定する時代が来た、しかしそのほかに、国民生活様式というものが高度の文化水準を持つようになってくると、公務員であったということによって、やはりきちんとして生活をしなければならないという意味の文化生活部分というものが当然加味せられなければならない。現に昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた退職者に対する恩給改定措置が五回もされております。それから、昭和二十七年十月三十一日以前に退職給与事由の生じた公務員に対する措置も一ぺんほどされておる。昭和二十八年にされておる。そういうもので、ある程度古い公務員の救済を一応されておるのでございますが、しかしながら、現実に旧恩給法の適用を受けた、特に終戦間もないころにやめられた、以前の方は、たとえば学校の先生にしてもあるいは警官にしても、非常に低い。親任官、勅任官、奏任官さらに判任官——大体小学校の教員というのは判任官があたりまえだ、待遇は。巡査も判任官。そういう者がまれに特例で奏任官の待遇を受けるという制度であったわけですね。そういうところでやめた方々というものは、昔の判任官の給与でございまするから、小学校の校長にしても百六十五円が月給の最高で、百八十五円というのは特号俸であったわけです。ところがそのころの知事の給与といえば、大体五千円から七千円である、国務大臣が八千円、総理大臣が一万二千五百円、こういうような時代でございまして、もう学校の先生とか警官とかいうのは、ばかに低い水準で手当をもらっておる。それが退職して後に恩給をもらうのでございますが、その三分の一ですから、お話にならない低いものであるから、いまでも、年額六万円以下というのを整理したのだけれども、非常に低い恩給で、月に五千円にもならぬものが多いです。扶助料の半分しかないというようなかっこうの方々がおられる。しかしいまは、学校長を見ると、少なくとも、学校長の俸給の一番高い水準は、官庁でいうなら課長クラス——課長よりも高いところへいっています。都道府県でいえば部長級よりも高いところに学校長の給与はいっておるわけなんです。そういうのを見ると、当然かつての制度をそのまま踏襲した恩給法には是正すべき点があげられなければならないわけです。旧制度の身分に伴う、その当時の身分に伴う給与、この著しい給与の低い水準をそのまま根拠にして改定措置をしたにしても、まだ差が残っているという問題が一つあります。したがって、今度の答申を見ますると、昭和二十三年の六月以前の者がその六月三十日に在職したとしたならば、もっと高いものであった者の改定措置のことが、この答申の中に出ておりまするが、それだけでなくして、もう昭和二十七年ごろまでの退職者というものは、全体を通じて、当時の身分といまの身分とを比較した場合には、非常にバランスがくずれておるというのがまだ残っておるのです。これをこのたび何かの形で御処理いただいたらと思っていたのでございますが、それがまだ完全にないように思います。同時に、かつての公務員であった人の生活の維持というものは——昔の学校長というものは貧乏なあずま屋に住んでおればいいのだ、いまの校長はりっぱな家に住んでいればいいというわけにはいかない。いま先生御指摘のように、かつての公務員は、ただ本俸へささやかな年功加俸がついて、それを恩給の算定基礎にした。ところが戦後の二十三年以後の退職者には退職制度ができて、その後ものすごい退職制度増額措置国家公務員退職手当法などによって生まれてきておる。それをまるまる貯金するだけで恩給金額ほどの年金額が来るというふうな退職金をもらっておる。超過勤務があり、期末手当がある。期末手当というものは四・五までいっておる。昔はささやかな一月分ぐらいしかなかった。そうすると、以前の公務員で、非常に窮屈な暮らしをしながら薄給に甘んじておったという者の措置は、やはり恩給法において退職当時の給与というものを原則にしながら、時の流れを十分くみ取った措置をされるような形にしていただかなければならない。そのことは、さらに今後の調整規定の上におきましても、ただ物価だけを基準にして恩給改定をするという意味でなくして、生活様式あるいは公務員給与——私は、公務員給与基準にするのが一番筋が通ると思うのです。つまり、退職の時点の以前は現職の公務員だ、退職以後は退職公務員ですから、結局現職であろうと退職であろうと、一貫した流れがそこに見られなければならないのです。現職の間は公務員給与の人事院勧告でどんどん上がっていくが、退職すると同時に、物価上昇にすぐつながるだけで、あとはあまり考えられないというのでは、ぱっとダウンしますですね。これを考えてあげるという意味からは、私は、たとえば公務員給与の九〇%あるいは八五%を下回ったならば、これの年金額を改定しなければならないとかいうような調整規定、スライド制にしていただくほうが、つまり、まるまるとは言いません、九〇%か八五%以下に下がったら改定するとかいう具体的な数字を示した改定措置をされる。それに物価とか生活水準とかを大体考慮して、そういうものの総合的なものの比率でもけっこうですよ。そういうところへ力点を置いて、具体的にスライド制らしい答えをひとつ答申で実はすかっとうたっていただきたかったのですが、そういう比率を提案した人は一人もありませんか。内幕を暴露されなくてもけっこうですか。
  32. 新居善太郎

    新居参考人 受田さんのお気持ちは、私も実によくわかるような気が失礼ながらします。ことに臨時恩給等調査会当時、受田さんもずいぶん委員として御苦心されて、またその当時、主として従来の小学校教育に関係した人が一番不遇であるというふうなことも聞いておりますので、私も今度はそんなような気持ちもありましたけれども、先ほどお答えしましたように、公務員給与というものを基準にするということは一応考えたのですけれども、公務員給与の中には、戦前の官吏制度あるいは戦後の公務員制度のものに相当の変革があった。従来は身分というもの、今度は新しくは職務というものを中心にしてやった。それでいろいろ職務とか職責とか、あるいは学歴とか経歴とかというふうなことをやっておったので、どれをどれに当てはめるかということがなかなかできにくい。これは技術上の問題ですけれども。しかしそこを流れる問題としては、制度が変わったのを、そこまで恩給法のほうでやるということはどういうものであろうか。つまり従来は、たとえばある種の職にあった人は、非常にことばは悪いですけれども、低く見られた。今度は、戦後においてはそれが高く、厚遇されるようになったという、これは制度自身の変化の結果ですから、そこに手をつけなければ、恩給だけでそこをいくというわけにはいかぬのじゃないかという考えもありまして、ずいぶんこの公務員の俸給を主たる基準としていくということは研究し、それからそうなりますると、やはりそんな制度変化とか、あるいは政策的の変化とかいうものの要素を差し引いたものを見るという方法はないかといいますと、恩給局のほうでも苦労いたしましていろいろな方式も出ました。それからまた委員の中には学者がおられますものですから、学者からもいろいろな意見が出ましたけれども、なかなかこうというきめ手がありませんでした。それで、いまのお尋のような、これを総合的にやってすぱりとというふうな意見はあったかといいますと、それは遺憾ながらなかったのです。それで、やって結局一体何が一番困るかということを考えると、物価上昇ということで、それで困るというのはどの要素をとっても一致するのだし、またそれが一番端的なんだ。だから少なくもこれだけは確保しようじゃないかというふうな気持ちであったろうと思うのです。それで物価というふうにいきまして、それじゃ物価を具体的にやるというところまではどうしてもいこう。それは主たる要素です。しかし補完的要素として、やはり公務員給与上昇率と、それから生活水準上昇というものを見ますから、その要素としていろいろやるということは合理的にやっていただきたい。これは政府の責任でひとつやっていただきたい、こういう気持ちでやりました。
  33. 受田新吉

    ○受田委員 御苦心のほどはよくわかりますけれども、これは会長さんに申し上げる問題ではなくて、どうせ政府へ私たちが追及する問題になるので、会長さんには御苦労さまでしたと申し上げる以外には何ものもないわけです。その点について、ただその経過だけを一応伺っておきたい。その意味で気楽にお聞き取り願いたいのですが、退職後もその生活が適当な生活を維持できるということばは、決して物価だけにつながる意味の適当な生活じゃない。かつて公務員であったという権威を十分——もし公務員でなかったら、別にいろいろな商売をやってもうけてもよかったのですから、蓄積した財産もあるということになりますから、それを全部捨てて、厳格な官吏服務紀律に従ってやった公務員というものを考えていただく、またこれから後の公務員のこと、いま現職にある公務員が、将来物価だけにスライドするので、どうも公務員給与改定のような恩典に浴さないということになると、なるべく粘りに粘って、六十までも六十五歳までも粘らないとだめになるぞという、つまり公務員の新陳代謝にもたいへん影響する問題があるから、やっぱりこのあたりで、退職後も適当な生活というのは、すなわち現職の公務員の先輩として適当な生活という要素を十分考えていただかないといけない問題だと思う。そのほうの意見はありましたね。
  34. 新居善太郎

    新居参考人 これは実情いいますと、恩給の本質というものに、個々の問題をやっておると戻ってくるのです。そうすると、今度はその前提となる、昔のことばでいえば官吏の本旨というものに戻ってくるわけです。そういうことで、やはりいま御指摘のありました官吏服務紀律によれば、官吏ばかりでなくその家族も上官の許しを得なければ商業を営むことができないといって、経済活動は全部封じられておるということ、それから退職金ももらえない、年末賞与も予算には組んでない、それから時間外勤務なども無定量の勤務ですからないというきびしい生活をしておりましたから、それで国家が恩給というものをやるのは、その人自身に安心を与えるばかりでなしに、恩給のたてまえからいえば、現在の人に対しても、後顧の憂いなく専心職務を尽くすという大きな利益がある。これは昭和八年齋藤内閣総理大臣が議会で答弁したときにもそういうふうに言っております。ですから、過去の人に対するばかりでなしに、国家としてもそれで非常によく忠実の義務を尽くしてもらえるのだというふうな、これはお説のとおりでありまして、そういう気持ちは十分ありました。
  35. 受田新吉

    ○受田委員 ただ物価スライドだけでいきますと、将来生活保護の適用を受ける公務員がどんどん出てくる。現に薄給の公務扶助料をもらう奥さんたちというものが、そういう年をとった七十、八十になった方々は、もう生活保護の適用を受けている人も私聞いておるのです。かつて公務員であった人、またその妻が不遇になっておるというところの人は、年に三万とか四万とかいう扶助料、六万程度恩給では食っていけない。もう生活保護の適用を受けるほうがむしろ高額なのですから、そのほうへかわるということになってくる。だから、一応現職の公務員給与というものを前提にするという意味でみんなが言うてきたと思うのですけれども、そういうところを十分勘案してこういう答えが出たということでございますから、そこら辺にしておきます。  もう一つ、いま大出委員が指摘されたことに関連するのですが、この恩給法というものは時代とともに社会保障の要素をたくさん取り入れておる。家族加給制度など入れたということは、以前はなかったわけですからね。その後どんどん入ってきておるのです。若年停止などというのも、これは社会政策的な見地でこういうことが起こっておる。昔は、スタート時代はなかったわけです。三十歳でやめても恩給をもらったのです。恩給法そのものが軍人恩給出発しただけに、軍人になる人を求めるために、いかに若くやめても、恩給はそのままもらえたのですが、昭和八年若年停止規定が誕生してからというものは、今度それを現に現在の恩給法でどんどん活用して七十歳、六十五歳、六十歳というような差をつけておりますね。これは完全に恩給法の本質から逸脱して、スタート当時の恩給法の精神から逸脱しておる、こう思うのです。しかし、これは社会の情勢の変化に応じた意味でわれわれ歓迎せんならぬ面もある。特に傷痍軍人の場合など、普通恩給部分は階級差があっても、増加恩給部分は階級差を圧縮した。大将の負傷も兵の負傷も、負傷としてはもう同じに見ようという精神が増加恩給の上に流れてきた、これは非常にけっこうなことなんです。こういう意味で、恩給法は性格が変わってきつつあるということはもちろん討議されたと思うのです。  同時に、一つの例でございますが、私も質問しようと思っていたところ、大出さんが質問されたことですが、特務士官というのは、やめた当時の俸給は違っていたわけですね。ところが旧恩給法は階級差で一本にしておったからというこの理屈は、この機会には捨てていただく性質のものだと思ったのです。なぜかというと、退職時の給与を前提にしてその生活を維持するということでございますから、もちろん仮定俸給はそれよりもちょっぴり高いところに置かれていたから——普通の士官は非常な高いところで仮定俸給をつけられる、特務士官はちょっぴり上に積み上げられたところで仮定俸給がきめられたからいいじゃないかという理屈は、これはやめた当時の俸給を基礎にいまみんなやっているのですから、昔の制度の悪い点があったらいまの制度のいい点に切りかえて、該当者も少ないことでございますし、年をとって軍務に服したというこの老齢な旧特務士官に報いる意味においては、やはり本俸に準じた仮定俸給を設けてやる、多少の差でもいい、やめるときの俸給を基礎という新制度をここへ採用する英断をふるうべきとき、私は新居先生には特にそこの英断をふるってもらいたかったと思うのですがね。何となれば、国会では、すでに曹長であれば十二年で恩給がつく、准士官になったら十三年なければ恩給がつかぬというのを、終戦当時のきわどいところにおった皆さんに対しては、十二年で曹長であった人にも十二年で准士官になった人にも同じような恩給法の適用を受ける制度をつくってしまったのです。だから准士官に昇進の早かった人、少し早いと十三年にならぬ間の分は何ももらわぬでやめなければならぬのが、今度は恩給をもらうようになったわけですから、明らかにこの一角でそうした待遇のバランスを考える制度ができておる。これは討議の材料になりましたかしら。いまの十二年で下士官の場合、兵の場合は恩給になった、准士官になると十三年でなければ恩給にならない。そこで終戦当時十二年と十三年の間で、ちょうどきわどいところにおった者で准士宮になった人にも恩給をつけるということになったことは、恩給局長、説明されたかどうか。新居先生に進言されたかどうか、恩給局長にちょっと聞きたい。
  36. 新居善太郎

    新居参考人 私も記憶がはっきりしませんから、いま恩給局長に確かめたのですが、その説明は受けました。受けて、討議をいたしまして、やはり御不満でもございましょうが、現行どおりということになりましたのは、これはわれわれ十人を構成メンバーとしておりますから、それで——いまの点は説明を受けた中に、法律改正をしておるということで、それで、われわれもそれを受けまして、法律改正の結果のとおり過ぎたわけでございます。  それからいろいろ御意見ございますけれども、私どもも十人の意見をずっと総合しますから、なかなか御期待のようなことにいけぬところもあるということを御承知を願いたいと思います。
  37. 受田新吉

    ○受田委員 これは新居先生もいろいろ審議会の運営をやられてお考えでしょうが、やはり幹事役の政府関係方々がおぜん立てするのに押される危険がときどきありますからね。そういうときに、これは旧軍人恩給体系をこわすからなるべくやりたくないというような含みのある発言、そういうことは言われなくとも、なるべくこういうものはというように言われると、みんな委員が一斉になびくのですね。だからやはり恩給局長さんなどここはやはりすかっとやっていただいて、こういうものは直していただきたかったし、また英霊となられた准士官以下の方々の扶助料はせめて下級将校、少尉並みぐらいにして、英霊だけは、少尉以下は全部少尉の扶助料で、神となった人を階級差は設けるべきでない、兵の階級を圧縮して兵長に一本にし、それからいまのような下士官、准士官というような階級が出ておるのを漸次圧縮さして、百円か二百円刻みに圧縮しておるのですけれども、こんなものは整理したほうがいいという、この問題はどこでも討議されたことがないようですが、私が多年主張しておる問題で、英霊となった戦死者の遺族に対する公務扶助料は、いまの大出さんが指摘された上のほうの問題というのでなくして、下の者はやはり将校並みの扶助料を差し上げるという、この制度がどうかというような意見は、私の多年主張した意見が漸次恩給法にあらわれてきたのですが、そういう意見があることはお聞きになったかどうか、お聞きになっていないとすれば恩給局長怠慢であると思う。
  38. 新居善太郎

    新居参考人 ただいまの点は、一つ一つは申し上げられませんが、かなり資料としては詳細に出してもらい、また委員のほうからも要求し、それについては相当懇切に御説明をいただきました。  それから、恩給局のやり方と審議会との関係についてちょっとおことばがありましたが、審議会はあくまでも自主性を守るという態度は堅持いたしまして、事柄は申し上げませんが、恩給局で考えた意見と反対の意見を、相当審議会意見としてつけた点もありますし、これは申し上げたくはありませんが、ときには恩給局の力に全部御退席を願って、それで委員だけで審議したという点もありますので、非常に懇切丁寧に説明はしていただき、また教えてもいただきましたが、審議会審議会として独自の意見を出そうという気持ちのあらわれは、そういういう場合もあったということを御了承願います。
  39. 受田新吉

    ○受田委員 新居先生のことですから、政府の圧力に屈せられるような方でない、しんのある方だということはよく存じ上げておりますから、了承さしてもらいます。  時間の関係で、私これだけで質問を終わります。この膨大な答申書の中で、いま新居先生お読みになられた、ごあいさつされた中に、ちょっとおことばが違っていたのか、あるいは私の聞き違いであったかはっきりしない点があるのですが、外国政府職員の項のところです。「外国政府職員または外国特殊法人職員から公務員となった者について、その職員期間普通恩給についての最短恩給年限に達するまでを限度として通算することとしている」というあの項で、終戦という特殊事情を考慮してとられた特例措置であるので、この制限を廃止しまたは制限を緩和するという意見答申したというようなおことばがあったように記憶するのですが、間違っておりますか。
  40. 新居善太郎

    新居参考人 「外国政府職員等であった方に対する在職期間通算措置につきましては、恩給本旨に沿いながら、終戦という特殊事情を考慮して必要な範囲においてその通算条件廃止し、または緩和するという意見を示しました。」これでございますか。
  41. 受田新吉

    ○受田委員 ええ、それです。
  42. 新居善太郎

    新居参考人 このとおりでございます。
  43. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、この答申の中にある、いまの通算ということの「制限を廃止することは適当でない。」という、この意見の文章とはどういう関係になるのですか。
  44. 新居善太郎

    新居参考人 いまの申し上げましたことは、外国政府職員になるために公務員退職したというふうな条件が従来ついておったわけですね。しかしそれが実際上同様に認められるという場合には同じように通算してもいいじゃないかというふうな事柄や、またそういう条件を具備する者で、すでに日本で恩給年限に達していた者が外国政府の職員になったという者は、従来はその外国政府職員の在職期間通算されていなかったのでありますが、今回はそれを通算するということでございます。また同じような、いまの外国政府職員になるために公務員退職したという条件を具備する満州国の職員が今度抑留せられたというようなときに、その抑留期間は従来は通算されておらなかったわけです。それはやはり通算しようじゃないか、こういうようなことが内容になっております。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕
  45. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、その次の、抑留など、兼ねたことばとしていま言われたわけですか、廃止もしくは緩和という二つのおことばはその意味でございますか。
  46. 新居善太郎

    新居参考人 いま言うふうなことが内容となってこれを廃止またば緩和ということになっております。
  47. 受田新吉

    ○受田委員 そうするとこの答申書にある「この制限を廃止することは適当でない。」というのは、そのうちのどれにひっかかることになるのでしょうか。このことばといま先生の御発言との関係をちょっと……。
  48. 新居善太郎

    新居参考人 いまの点は、表現では「必要な範囲に」と言っておりますから、いま私が申し上げたのは通算するというふうになりますけれども、たとえば満州国の公務員であった人が今度は日本の公務員になったというふうなときには通算しない、従来のとおりだというふうなことも入っております。
  49. 受田新吉

    ○受田委員 違う場合を指摘されて二つをあげられた、この答申書にある「この制限を廃止することは適当でない。」というこのことばは、この文書に書かれた点はこのまま認めていいわけになりますか、答申書のこのことは。
  50. 新居善太郎

    新居参考人 答申書のあるほう、そのとおりを御了承願いたいと思います。つまり私のきょう申し上げましたのは、個々の問題が六十もありますものですから、その中のこれはと思った問題を申し上げただけで、それ以外はきょうは申し上げませんでして、それで、それ以外の問題ともし関係がどうであろうかというふうなお疑いがありましたら、この答申書のほうをひとつお読み願いたいと思います。
  51. 受田新吉

    ○受田委員 そこまでにしておきましょう。新居先生の御苦労に感謝するほんのあいさつだけで……。あらためて、どうも御苦労さまでした。
  52. 浦野幸男

    浦野委員長代理 伊藤惣助丸君。
  53. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままでいろいろ御説明がございましたので、私からは三点について御意見を伺いたいと思います。  初めに、たびたびお伺いいたしましたが、スライド制についてであります。調整基準を五%以上の消費者物価に置いているわけですが、審議会としては、これを実施するのに政府に対して、法律上これを明記することを望んでいるかどうかという点をまずお伺いした。
  54. 新居善太郎

    新居参考人 われわれ審議会といたしましては、法律にするか政令にするか、それは専門的に研究していただくとして、実行のできるような制度にしていただきたいという、それを法律に明記するかあるいは政令に明記するかと聞きますと、閣議決定なんということもあるそうでございますが、それはとにかく、将来これが必ず行なわれるという形にしてもらいたいということでございます。
  55. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、下士官以上の旧軍人の実在職年三年以上七年未満の者に一時金を支給すべきだとしております。そして兵については戦前においても一時金を支給されていなかったとして、支給の必要なし、このように除外しておるのは、あまりにも終戦前恩給法、ひいては戦前の旧軍隊組織にこだわって、戦後の一般国民感情にそぐわないものがあるのではないかと思うわけです。その点について御意見を承りたい。
  56. 新居善太郎

    新居参考人 ただいまの点は、先ほども申し上げましたように、そういう条件緩和、兵ばかりでなく下士官以上の者に対してどうかというふうな意見も実はあるのでございますが、それをいろいろ考えまして、それで戦前において受けており、しかも今度は戦後において兵が新たにそういうふうな処遇を受けるというときに、何といいますか、不利益な処遇を受けるに至った事情なども考えますと、少なくも下士官以上の人についてはそういうふうに緩和していいんじゃないか、兵のほうは戦後においてそういうふうに一歩進んだ厚遇をしてもらっているんですから、それでひとつがまんを願ったほうがいいんじゃないかというふうな考え方でございます。
  57. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 三番目でありますが、日赤救護員についても、事変地または戦前における勤務期間通算するという考え方は書いておりませんが、かつて白衣の天使などと、戦争遂行に対してきびしい職務をしいておきながら、戦前官吏でなかったという理由だけでこの職員としての勤務期間通算しないという考え方も、今日の国民感情から考えてそぐわないのではないか、こう思うわけです。会長の御意見をお伺いしたい。
  58. 新居善太郎

    新居参考人 戦争に協力し、戦争に非常に力を尽くしたという観点からいいますと、非常に分野が広くなるのでございまして、そういう点においてわれわれ決して敬意を払わないという意味ではございません。ございませんけれども、やはり恩給法というものは国家に対して公務員として忠実に勤務し、それで一定の条件を備えた者に恩給が交付されるんだということからすると、どうもそこまでやることはできないんじゃないか、そうなりますと戦争中あの空襲下においていろいろ協力したいろいろの方々がありますから、そういうことも考えますと、ちょっとこの辺で区切りをつけたほうがいいんじゃないかという考えでございます。
  59. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 以上で終わります。
  60. 浦野幸男

    浦野委員長代理 これにて新居参考人に対する質疑は終了いたしました。  新居参考人には御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございました。      ————◇—————
  61. 浦野幸男

    浦野委員長代理 次に、許可、認可等の整理に関する法律案を議題とし、趣旨説明を求めます。木村行政管理庁長官。
  62. 木村武雄

    ○木村(武)国務大臣 ただいま議題となりました許可、認可等の整理に関する法律案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  政府は臨時行政調査会意見趣旨を尊重し、行政の簡素化及び合理化を促進するため、許可、認可等の整理をはかってまいり、その一環といたしまして第五十五回国会において許可、認可等の整理に関する法律の成立を見たのでありますが、さらに同様の趣旨のもとに許可、認可等の整理を行なうため、ここにこの法律案提出することとした次第であります。  法律案内容について御説明申し上げますと、第一に、許可、認可等による規制を継続する必要性が認められないものにつきましてはこれを廃止し、第二に、規制の方法または手続の簡素化をはかる要があるものにつきましては規制を緩和し、第三に、下部機関において迅速かつ能率的に処理を要するものにつきましては処分権限を下部機関に委譲し、第四に、統一的に処理を要するものにつきましては許認可等を統合することにいたしました。これによりまして、各行政機関を通じまして、廃止するもの三、規制の緩和をはかるもの三、権限を委譲するもの一、統合するもの一、計八、関係法律数にしまして七法律を整理いたすことといたしました。  以上が、この法律案の提案の理由及び概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。      ————◇—————
  63. 浦野幸男

    浦野委員長代理 次に、行政機構簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
  64. 大出俊

    大出委員 委員長に御質問を申し上げますが、どなたもおいでにならない。私のほうは社会党二名、民社党さん一名、公明党さん一名で、私のほうは九人ですから、出席率は少し悪いんですけれども、与党のほうは非常に少ない。これでも審議をやれとおっしゃるのですか。
  65. 浦野幸男

    浦野委員長代理 至急人を集めますから、質問をお続けいただきたいと思います。
  66. 大出俊

    大出委員 委員長は質問を続けろという権限はないのじゃないですか。しきりに一局削減をやれとおっしゃるが、こういうことでやれと言う気持ちが知れないですね。きょうはやめようじゃないですか。
  67. 浦野幸男

    浦野委員長代理 ちょっと待ってください。今すぐ集めますから……。
  68. 大出俊

    大出委員 成立してなければ直ちに散会して帰ってこいという国対の指令なんです。いる人だけは一生懸命なので何ですが……。  ところで、総理大臣佐藤榮作さんが施政方針演説で青少年非行の問題その他を特に取り上げられまして、四十一年でありますが、青少年対策本部などというけちなものでなくて、青少年局を置くという意味のことをおっしゃったことがあります。これは行管の長官には質問をいたしません。総理府つまり総理大臣の直属でございますから、総理府の総務長官に承りたい。総理はいかなる心境で今回青少年局を廃止するというお考えになったのですか。長官の御答弁がいただけなければ総理に御出席をいただいて承りたい。
  69. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 いかなる心境で青少年局を廃止するかという御質問でございますが、御案内のとおり、佐藤内閣といたしましては、青少年問題、青少年に対するビジョンというものを掲げるということは、組閣以来の大きな柱でございます。かような意味からいわゆる青少年局といったようなお役所式な静的なものから、より一そう充実した機動性を出す、活動的なものにいたしたいというような意味合いのもとに、このたび青少年対策本部というような、むしろ後退ではなく一歩前進と申しますか、強化いたした、かような次第でございます。つまりいえば八条機関になった、かく申してもよろしいかと思います。
  70. 大出俊

    大出委員 ただいまの御答弁は総理の御心境というわけでありますか。
  71. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 こと青少年問題に関します限りは、私はさよう心得ております。
  72. 大出俊

    大出委員 私はということになるとこれは総務長官の御答弁でございまして、総理の答弁ではないわけです。したがって、その点は保留をさしていただきまして、総理の御出席をいただきまして御質問を続けさしていただきたい、こう思うわけであります。
  73. 浦野幸男

    浦野委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  74. 浦野幸男

    浦野委員長代理 速記を始めて。
  75. 大出俊

    大出委員 あとでそういう機会をつくるから質問を続行せよというお話に御回答がなるのなら続けてもいいです。
  76. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 総理の御心境をそんたくいたしまして私からお答えをいたした次第であります。
  77. 大出俊

    大出委員 総理は御出席をいただけますか、いただけませんか。
  78. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 つかさつかさがございますので、私がおります以上、その必要はないと思います。
  79. 大出俊

    大出委員 そんたくはしたけれども総理の答弁じゃないわけで、いやしくも本会議で総理が施政方針演説の中でおっしゃった。それがにわかにこういう変わり方をするということになると、これはやはり本会議国民に対してものを言っておられるのですから、それがなぜこういうことになったかという点は、これは総理が答えるべき筋合いだ、こう考えるわけでありますが、この一九六七年版の青少年白書によりますと、昭和四十一年四月一日、総理府に青少年局が設置されたが、これは多くの省庁にわたって所管されている青少年行政の総合性と一貫性を確保する上にきわめて大きな前進を示したものということができる。青少年局の発足に伴い、内閣総理大臣云々というところから始まるわけでありますが、これはたいへん大きな取り上げ方を皆さんされておるわけであります。そうだといたしますと、これはやはりこの青少年局を廃止をするとなると、八条機関だとか、強化だとか強弁をされましても、きわめて大きな国民に与える影響があるわけでありまして、何で一体あれだけ強調した青少年局をやめるのか、そこはどうしても総理に承っておかないと審議が進まない、こう思うわけであります。それで、重ねて承りたいのですけれども、当然むしろ総理が出てきて説明をすべきもの、御本人が一局削減というものを提起をされたのでありますけれども、私がアメリカに行って帰ってくるまでに各省から答案を出せ、総理府もそれによって答案をお出しになったにすぎない、そう考えるのでありますが、無理でございますか。
  80. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 考え方というものはいろいろその人その人によって違うかわかりませんが、私は青少年対策本部となりましたことは決して縮小にあらずしてむしろ強化である、かように信じている次第でございまして、総理の意向は十二分に反映されている、かように考えます。
  81. 大出俊

    大出委員 それでは総務長官に承りますが、一局削減というものは機構を縮小するというのがねらいではないのですか。強化することがねらいですか。
  82. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 一局削減の内容は、本旨はあくまでも行政効率を高める、そうして強力な政治を行なおうということにあると存ずるのでありまして、お隣に行管長官がおられますが、私どもは一局削減の本旨を決して行政効率の低下なりあるいはまた形式的なものとは心得ておりません。さような意味におきまして、一応は一局——局というものを廃止せよということでございますので、これは当然内閣の一部を担当するものといたしましては、その御趣旨に従うと同時に、半面また御趣旨を体して強化拡充いたしたわけでございます。
  83. 大出俊

    大出委員 これは学者でございますから少なくとも総務長官よりも学問的には詳しいだろうと思いますが、ここに岡部史郎さんの書物がございます。行政管理、これは新しい書物でございます。その中に機構というのはあくまでも国民に対するサービス行政を含む制度であるという書き方をしておりますね。そうすると、この内閣編にも書いてありますけれども、まさか内閣をやめてほかのものにして強化されたのだといばっているわけにいかない。局という制度がとられているものをやめて、何かわけのわからぬ本部というものをこしらえて強化というわけにはいかない。行政機構というものは機構論がある。あなたがそういう常識的な、中身はきわめていいのだからだいじょうぶなんだというのなら、各省大臣はみんなやめてもらいたい。次官以下で十分動いていく、そうでしょう。それでけっこうなんですからそう軽々しくものを言われては困りますよ。これの説明は二、三時間かかりますからやめますけれども、そういうものの考え方、局というものを本部にしたらそれで強化されたのだというのは、もってのほかだと思います。もうちょっと理論的に答えてください。
  84. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 行政組織論から申しまして、局というものの削減というものは確かに仰せのとおりでありますが、しかしながらこの機構を静態的なものから能動的なものにいたすということは申し得ると存ずるのでございます。私どもは、局の削減はいたしましたが、しかしながら佐藤内閣として非常に重要視いたしております青少年問題に対しましては、その趣旨に沿いまして改善をいたしたい、かように思います。
  85. 大出俊

    大出委員 青少年局をなくすることも、自治省の選挙局をなくすることも、労働省の安全衛生局をなくすることも、厚生省の公園局をなくすることも、機構という面からいけば、ひとしくこれは削減なんです、簡素化したわけだから。そうでしょう、複雑にしたのじゃないのだから。これをながめてみれば行政機構の簡素化でしょう。違いますか。
  86. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 私どもは、そういう面から申すならば、事総理府に関しましては、いまよりむしろ充実した、かように考えます。
  87. 大出俊

    大出委員 それでは、これは行政機構の充実のための総理府設置法の一部改正というふうにして出し直してください。あなたのところで出した法律案には、行政機構簡素化等のための総理府設置法等の一部改正というふうに書いてあるので、それが充実なり拡充というなら、そうしてお出しになってください。
  88. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 これは簡素強力という意味でございます。
  89. 大出俊

    大出委員 簡素強力というのは、どういうことですか。
  90. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 簡にして要を得、能率を高めることでございます。
  91. 大出俊

    大出委員 そうすると、簡素化には違いないのですか。どうなんですか。
  92. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 行管の趣旨に沿いまして、簡素化をいたすことにつきましては、軌を一にいたしております。
  93. 大出俊

    大出委員 それでは簡素化じゃないですか。そのあとの簡にして要を得てなんというのは、あなた個人の精神論じゃないですか。そういういいかげんなことをするから筋の通らぬ答弁が出てくる。これでは話にも何にもならぬじゃないですか。これはやはり組織論、制度論ですから、あなたがそう簡単に考えているように、簡にして要を得ているなんてそんなことを言うと笑われますよ。  ところで、青少年白書というのは、どういう趣旨で毎年お出しになっておるのですか。
  94. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 青少年白書の問題は、これは青少年の問題についての行政の内容を詳述しておるわけでございますが、これについては担当の局長からお答えをいたさせます。
  95. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 青少年白書は、毎年年次的に出しております青少年行政全般に関する政府の公式な報告でございます。現状を広く国民一般にお知らせいたしますとともに、将来の改善に資したいという趣旨で、現状を明らかにし、広く一般のごらんに入れている次第でございます。
  96. 大出俊

    大出委員 一九六七年の、つまり昨年の白書の特徴というのは一体なんですか。
  97. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま申し上げましたように、白書は毎年定期的に出しております報告でございますので、全体の立て方といたしましては、従来と特に変わった点はございませんが、昨年の全体の立て方の特色と申しますと、第十章に「都市化の進展と青少年」という新しい章を一章起こしまして、現在問題になっております都市化問題にある角度からスポットを当てまして、問題の解明をしたという点が六十七年度版の立て方としての特色でございます。
  98. 大出俊

    大出委員 このはしがきのところですが、ここにいまの趣旨のことが書かれてありますが、この青少年白書をながめて見まして、いずれも見方がきわめて極端で恐縮ですけれども、実情はこうである、対策は明らかではない、こういう書き方ですね。したがって、その意味では、この青少年白書一冊を取り上げて私が質問いたしますと、一週間くらいかかるだろうと思います、各省多岐にわたりますから。しかし、それにしても毎年お出しになってきて、特に都市化現象を中心にお書きになっている。この中身を見ると、青少年局がこれから取り上げてぼつぼつ方向づけをしてやらなければならぬという問題が山積している。だから、そう簡単にこの青少年局を廃止して、総理の施政方針演説から始まりまして、組織化したものをここでまた別の機構に切りかえていくなどという性格のものではないという気がするわけです。  そこで冒頭に承っておきたいのですが、対策本部と青少年局とはどう違うのですか。
  99. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 青少年局の場合は、総理府の長であります私が責任者となりまして、そうして局長がこの仕事を所掌するわけでございますが、対策本部の場合においては、総理大臣みずからが本部長となられ、そして局長が次長として仕事をいたすわけでございます。  以下、各種青少年団体に対します育成強化の行政指導の面、あるいはまた各都道府県等に対します組織の拡充強化の面におきましては、従来同様の既定方針で進めてまいります。
  100. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは局長が次長になって、その上に本部長がいて、それが総理だというわけですね。  それで法律の中身を見ますと、第十六条で「総理府の機関として、青少年対策本部を置く。」それから「青少年対策本部は、次の事務を行なう機関とする。」こうなっておりますが、この事務の内容というのは、一体青少年局とどう違いますか。
  101. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 法案の第十六条第二項にございます青少年対策本部の事務は、現在の青少年局の事務と同様でございます。
  102. 大出俊

    大出委員 全く同様でございますか。
  103. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 字句文言全く同様でございます。
  104. 大出俊

    大出委員 そうだと思って承ったわけでありますが、中身は一つも変わらない、全く同様だ、そうなりますと、違った点というのはどことどこですか。中身が全く一緒で何が違うのですか。
  105. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 八条機関に相なりましたことと名称が対策本部と相なったことと、本部長に総理大臣、局長が次長ということでございます。
  106. 大出俊

    大出委員 念のために承りますが、八条機関というのを詳しく説明してください。
  107. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 国家行政組織法の八条でございまして、一例を申すならば、たとえば検事局とか試験所とか研究所のごときも、あれだけ膨大なものはやはり八条機関でございます。
  108. 大出俊

    大出委員 検察庁もですか。さっぱりわからないので、もう一度答えてください。
  109. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 私がただいま申しましたのは、八条機関といいましても、非常に小さな審議会や協議というようなものもございますれば、また反面、検事局とか試験所とか研究所とか何かというふうな大きな機構もございます。
  110. 大出俊

    大出委員 そうなると、局と全く同じ八条機関、こういうわけですね。そういう例はどこにどのくらいありますか。八条機関の中には審議会から何から一ばいありますよ。そうでしょう。——きょうは行管長官に質問する気はありません。あとで一日でも二日でもぶっ続けでゆっくり質問しようと思っているのです。  そこできょうは総務長官だけに承っておきたいのですけれども、いま総理府をながめてみると、審議会なんというものはどんどんどんどんふえるばかりなのです。ふえっぱなしです。前の内閣官房副長官は、私と個人的に非常に親しい方がやっておられまして、いろいろお話を聞いてみると、審議会は花盛りということでありますし、きょうは休んだと思ったら、審議会が始まるんだ、だれか来てくれというので、副長官が専属で一日に四つも五つもかけ持ちで飛んで歩く、こういうわけだ。行管は、臨調の答申もあるわけでございますから、審議会は当然縮小の方向にいかなければならぬ。ところが、これは二百二、三十もあるだろうと思ったらもっとあった。最近また幾つもふえたという。それはどこだと言ったら、各省みななわ張り争いがございまして、みんな総理府につけておけというようなことになって、総理府は審議会の花盛りです。副長官なんというのは何もやることはない。そればかりかけずり回っていれば一日終わってしまう。現状はそういうことになっているでしょう。これも八条機関ですね。八条機関というのはずいぶん都合がいいんですね。  一つずつ承りたいのですが、総理府もたいへんだろう、また、対策本部長なんかをつくって対策本部もたいへんだろうと思うのですけれども、審議会の数というのは最近ますますふえておりますが、ここのところでどういうふうになっているのですか。
  111. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 政府全体の審議会の数が二百六十三でございまして、総理府の所掌いたしておりまする審議会が六十二ほどでございます。なお私どもは、これをぜひとも縮減していきたいと考えて鋭意努力いたしておりますが、最近の関係では、たとえば交通安全対策の問題でありますとか、あるいはまた公害の推進連絡本部でありますとか、そういうふうな各省庁の総合調整というふうな意味で、総理府に関します限りは、減るというよりはむしろ増加傾向にございますことは、御承知のとおりでございます。
  112. 大出俊

    大出委員 これは前に藤尾さんがここで机をたたいて質問したことがありますが、とにかくふえるばかりだというわけでありまして、ことごとく首尾一貫しない。簡素化に関する法律案というのを出しているけれども、片方ではどんどんふえている。局がなくなったと思っておると八条機関へ持っていった。しかも検察関係の本部みたいに大きなものがある。その大きなものに類似する局を、あまり中身は変えずに横すべりさせて本部に持っていったのですから、そういう性格の八条機関というものはどこにどのくらいございますかと聞いているわけです。総務長官の答弁によると、局ではなくなったけれども、たいへんに拡充強化されたのだというのでありますが、しかもこれは八条機関だという。そうすると、八条機関の中で、青少年局を青少年対策本部にしたようなケースはいままでたくさんありましたか、何省のどういうものがそれに該当するか、こう聞いておるわけです。
  113. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 私は寡聞にしてあまりよくその辺を存じませんのでお答えできませんけれども、しかし、たまたま総理府を対象にいろいろの御審議をいただきますといまのような状態でございますが、総理府以外の場合におきましては、やはり政府の方針に従いまして簡素化いたしてまいりつつある、かように存じております。
  114. 大出俊

    大出委員 どうもそれがおかしいのです。総理府は拡充強化いたしてまいりましたが、その他の機関については簡素化をしたというのですか。そうすると、これは総理府については拡充であり、他省については簡素化に関する法律案だ、こういうふうになるのですか。
  115. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 それは先ほど申し上げましたように、各省庁の総合行政というふうなことで、各省にまたがりますいろいろな調整事務というものがますます多くなりつつあります。さような意味におきまして、事総理府に関するいまの場合におきましては、連絡協議会でございますとかあるいは審議会でございますとかいうふうな機構がやむを得ない姿におきまして増加いたしてまいっておりますことはどうぞ御了承賜わりたいと思います。
  116. 大出俊

    大出委員 総務長官、そういう場当たりな答弁をしてはいけませんね。私は順を追って聞いていったんですからね。長官は、決して削減ではなくて、対策本部にしたんです、しかも本部長には偉い人がいるんです、そうして現局長は次長でございます。こういう御答弁ですから、その限りではことばどおり受け取らざるを得ない。それならば簡素化どころではなく、拡充強化です。そうでしょう。どこか違いますか。中身はちっとも変わらない。局長は横すべりで、いままでない本部長が乗っかってしまう。いまの局長一人でいいところが本部長が乗るというわけですね。そういうことをやろうと初めから思っておったわけではないでしょうが、総理が一局削減で答案を出せと言われたから、しようがないからというのでしょう。それまでは青少年局でちゃんと局長がおって、青少年白書には、これからわが青少年局はこの中身でいろいろな問題をやっていきますと書いてある。これは一貫した方針できた。四十一年の四月一日にできましてから、これは何の理由もないんですよ。いまあなたは総合的事務がやたらふえてまいりましたと言われたが、読んでごらんなさい。総合的事務がみなここに書いてあるんです。各省網羅して書いてないものはない。初めからこれだけあった。家庭生活問題審議会だとかなんとかいう審議会や、この中に七つぐらい青少年に関する審議会も全部書いてあります。新しくふえたものはないんですよ。交通だって私はここにちゃんと資料を持っております。大橋運輸大臣のときからちゃんとあって、この問題もいまに始まったことではない。そうなると、何もふえたわけでも何でもない。あくまでいままで総合的にやってきた。それをあなたのほうは、佐藤総理が言うからというので、しようがないから何とかしなければならぬ、しかし一局削減だから局をやめて部にいたしますというのでは、佐藤総理が施政方針演説でぶち上げておいて、こしらえて、青少年白書でいばって書いておるのに、何をやっておるのだということになるとぐあいが悪いから、総理を対策本部長とすることはおかしくはないかということで、そういう論議をいろいろおやりになったら、形だけでもつけておかないと、一般国民の受け取り方がまずかろうということになって、総理を対策本部長として乗っけたというわけですか。こんなことまでする必要が一体あるのか。総務長官、いまの局長でやっていったのでは不足ですか。りっぱな局長安嶋さんがおられて、不足ですか。青少年局はりっぱに動いているでしょう。どうですか。
  117. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 もっとよく動かすためにいたしました。
  118. 大出俊

    大出委員 あらわれてもこないような総理を乗っけて安嶋さんを次長にしたらもっとよく動く、ずいぶんどうもものを言う気力がなくなるような答弁で往生するわけですが、まあけさの理事会で、三十分ぐらい前にやめろということでもあり、二時に本会議で、その前にめしを食う時間がなければならぬのでやめろということですから、いま、一時三十五分になりましたから、一つだけ言って次回に譲りますけれども、たくさん問題があります。ありますが、いまあなたが口にされたからこれだけ聞いておきたいのですが、交通事故による青少年の死傷、これがたいへんふえているわけです。おたくの白書を見ると、私のほうの資料にもありますけれども、たいへんふえている。しかもその中で、時間帯、どういう時間が一番事故が多いかとか、どういう年齢が一番事故が多いかとかいう点をテキストを見ていきますと、昭和四十一年の交通事故による死亡者が一万三千九百四人、負傷者が五十一万七千七百七十五人、このうち青少年二十歳未満、これで見ると青少年の一応の目安は二十歳未満ということだと思うのですね、そう書いておられますから。これの交通事故による死者数は三千四百四十七人で二五・一%、負傷者数は十六万六千五十八人で三二・三%、このうちで男子の死者が二千六百九人、七五・五%、負傷者が十二万五千七百二十人、七五・七%、こういう高率を示しているわけです。それから年齢層別に人口十万人当たりの死傷者について調査の結果は九歳から十五歳が最も少ない、十六歳から十九歳の年齢層が最も多い、九歳から十五歳の二・三倍、こういうわけです。  そこで何が原因かということをここでは究明をしているわけです。十六歳から十九歳までというのは自分で自動車を運転する年齢層なんだというわけです。それから精神的に非常に不安定な年齢だというわけですね。したがって、これらの青少年が車両等を運転し交通事故の第一当事者となった件数は全件数の一七・五%、六万七千五百九十八件ある。これを二輪車事故、四輪車事故等に分けて書いてある。  それから特に十六歳未満の人たち、通学児童というところを対象にとっておりますね。ここでも非常に事故が多い。しかも、その時間帯が学校から帰ってくる時間帯、三時過ぎのところに非常に集中的に多いという表の出方です。そのうちで特に幼児、学童の交通事故というのは、歩行中の事故が八二・六%、これは学校から帰った解放感であるとかあるいは両親の注意力がひょっとそれる時間であるとかいうふうな理由がいろいろあげられておりますが、ところがここまであげておりましても、さて一体これからどういうふうな具体的な配慮でこの種の事故を防いでいくか。これは人間同士の注意力で防げることですから、やればできる。ここらあたりになってまいりますとさっぱり具体性がないわけです。したがって交通事故防止対策というところに何と書いてあるかというと、「交通暴力の排除を徹底し、さらに安全運転に関する雇用者等の責任体制の確立を図ることとしている。」こう書いてありますが、これは一体何ですか。事故防止の方向としてはいま申し上げたように交通暴力の排除を徹底するのだ、さらに安全運転に関する雇用者等の責任体制の確立をはかることにしている、これだけのことです。「このうち幼児・学童、老人に対しては交通安全教育等の徹底の一項目として、幼児および学童に対しては保護およびしつけを、」これはあたりまえのことです。「老人に対しては保護をそれぞれ徹底するよう保護者に対する指導を強化する。」ということが書いてある。そうでしょう。これだけであって、一体白書と称する限りは何かあってしかるべきなのにさっぱり具体性が何もない。よってきたる原因というものを究明してきているわけですから。しからば一体どうするかということについては、しつけを強化するなんということは、政府がそんなことを幾ら言ったってしようがないのですからね。そうするとそこに何かがなければならぬことになる。そこら辺は一体どうお考えですか。
  119. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま御指摘の御不満の点はまことにごもっともだと思います。ただ、この白書に限りませず政府が発行いたしております白書全体の性格は問題点を明らかにするというところに主眼があるわけでございまして、それに対して具体的な、つまり対策の方向というものはただいまお話がございましたように、ある程度は書いてあるわけでございますが、さらに突っ込んだ対策の方向でございますとか、さらには具体的な施策内容ということになりますと、これは予算上の問題、法律上の問題、その他いろいろの問題が伴うものでございますから、それについてはあまり深入りをしないというのが白書の基本的な性格、したがってそのワクでございます。この白書は御不満の点が多々あるかと思いますが、そういうワク内で執筆をいたしております関係上、御指摘のような御不満をお持ちになったかと思います。
  120. 大出俊

    大出委員 理事会の約束の時間も過ぎて恐縮なんですが、一つぐらいは具体的な点を申し上げておかぬと質問の意味がありませんので申し上げますけれども、法律的な予算的なものには深入りをしないということではほんとうの意味で問題の解明にならない。何が法律的に不備であるか、何が予算的に不足であるかという点が指摘をされなければ、解決の方向にほんとうに取り組めない。  そこで私例をあげますが、私のおります横浜で五大新聞にでかでかと載った学童の朝の集団登校に対して、ダンプが飛び込んでたくさんの人が死んで大騒ぎになった。いまそこに碑まで立っている。これは三十八年のことです。そのダンプ、これはもう白ナンバーの営業類似行為ですね。そういう怪しげなものが一ぱいある。ところがこれは法的にも不備であり、予算的にも足りない、現実問題として取り締まれない。対策本部を幾らこしらえたって三文の価値もない。  そこで例をあげますが、ダンプのひき逃げだとか、あるいは白トラの問題だとか自家用車による営業類似行為とか、この取り締まりの問題は——東京の陸運局自動車第一部旅客第二課監理第一係、こういうふうなところは免許、許可、認可の事務をあずかるところ、あるいは事業監査、行政訴訟事務などをやるところですが、これは一括やらなければいけないのですけれども三名しか人がいない。約四千五百件あるこれを三人で処理をする。これは東京陸運局です。これから見ていくと貨物関係などにいたしましてもそうでありますが、免許を出したあとの行政指導、事業監査から街頭に出て街頭監査まで全部やるように法律上規定されております。ところがもうこれはどうにも手の下しようがない人間しかいない。こういうふうなことは皆さんのほうが法的に予算的に具体的な点を指摘しなければ正常な取り締まりができない、普通の取り締まりもできない。こういうかっこうに現になっている。こういうふうな点について何も触れないというのはどういうわけですか。
  121. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま申し上げましたように、各省自体のワクということがあるわけでございますが、交通問題についてだけではなくて、この白書に指摘されておりまするいろいろな問題につきましても、問題点を指摘するという程度にとどまっているわけでございます。ただしかし、この交通対策の問題につきましては、青少年局のほかに総合調整をやる組織といたしまして総理府に別個の組織がございまするし、またその方面の特別ないわゆる白書というものも出ておるわけでございますから、私どものほうの白書におきましては比較的簡単に取り扱わざるを得ないということでございます。
  122. 大出俊

    大出委員 つまり、それらのものはこれから青少年局が中心になってやっていこうという意欲なんでしょう。法律的な問題あるいは予算的な問題等々ひっからむのですから、白書は全体を明らかにした、明らかにした中で対策を立てなければならない、だから表に出す出さぬはともかくとして、隘路というものがこういうところにあるから、これはこうしなければならないということを逐次究明していかなければいかぬことだけは事実でしょう。それはおやりになる意欲があるわけでしょう。  そこで、これを見ますと、これは念のために読み上げておきますが、「東京陸運局自動車第二部貨物第一課は、関東地区一部七県の路線、区域貨物事業の免許、許可、認可、事業監査、街頭監査をたった十一名で行なっており、年間の申請件数が七百件以上もあり、現地調査をぬきで聴聞会を行なって処理しても」——これは現地調査をやることになっているのですが、やらないで聴聞だけで処理しても、年々申請事案がたまっていく一方だというんですね。街頭取り締まりなんて全く時間がない。しかも業者数は東京で千六百五十八業者、地方二千四百八十二業者、この事業監査のための要員は三名です。それから白タクだの、白トラだのの取り締まりの本拠は、これは陸運事務所なんですが、たとえば東京陸運事務所の貨物課、これはたった五人で四千四百四十七業者を相手にしている。一カ月約二万一千件の許認可、届け出件数をかかえて、一カ月約四十件の車庫の確認業務を行なっている。そのほかに街頭監査もやらなければならぬということになっている。四十一年度の街頭監査日数は十四日、こうなっているのですが、これは全然行けない。行ってない。こういうことに現になっているところに、白トラだの、とんでもない営業類似行為などでやみ行為をやっている、そういうものが集団登校などに飛び込んじゃう。そうすると、そういうところを押えなければならないということになれば、法律的にも、予算的にもそこまで手を入れていかなければ押えようがないですね。ところがそういうふうなところまで実は青少年局がものを言うとすれば、白書に限界があるならある、ワクがあるならあるでいいけれども、現にそこまでいかなければ、ここで取り上げている事故対策は実際には成り立たないわけです。ところが、そうなると、そういうものは一体どこでやるのかということです。青少年局というのは、こういう現実について何をどういうふうにしようとする、あるいはどういうふうに言おうとする組織、機構なのか、ここがわからぬのですがね。
  123. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘のとおり、この青少年の交通事故という問題も、これは青少年問題の中の非常に重要なものの一つでございます。が、しかし、青少年問題は御承知のとおり非常に間口の広い多数の問題をかかえておるわけでございますので、先ほどもちょっと申し上げましたように、交通問題につきましては、青少年も含めまして総理府に陸上交通安全調査室という、もっぱらそれを担当する総合調整の機構があるわけでございますから、私どもは主として交通対策につきましてはそちらのほうの総合調整の推進に期待をいたしておるわけであります。非常に重要な問題でございまして、もちろん青少年問題は私どももやらなければならないわけでございますが、それは主としてそちらに期待をいたしまして、その他の青少年問題いろいろございますので、そういう方面に力を注いでいきたいというふうに考えます。
  124. 大出俊

    大出委員 この白書に、いま私が一例をあげたのでありますが、この本年の特徴である十章「都市化の進展と青少年」というところに至るまでほとんど読んでみましたけれども、ずっといまと同じ羅列のしかた、それは全部おのおのそういうものがあるのだから、そこでやるのだということになれば、国際交流だって、青年の船までみんなありますけれども、ほんとうを言うと、青少年局がやらなければならぬ仕事は一体何と何と何かということになる、少なくともこれを見ると。だからこそ統括をして、青少年局は青少年対策の一元化をはかったはずです。冒頭にそういうふうに書いてある。だということになっているのに、交通事故対策はこっちでございます。何々対策はあっちでございます。公害対策だって厚生省でございます。通産省でございます。こうなったのでは、何が一体一元化なのか。私がここで問題を取り上げて質問しようとするならば、関係各省全部ここに並んでいただかなければ質問ができない。そうなると、青少年局をつくった意味がない。総理は大向こうに対してものを言うという意味でぶち上げたというだけである。こうなると、今度対策本部をつくったのも、中身は何にもないのだけれども、年間青少年白書をこしらえるときだけだ。これを見てごらんなさい。各省の各事務官の諸君がこの編さんをしてくれた労を多とすると書いてある。あなたのほうはこんなものをつくってくれと言っておいたら、文部省は文部省で、青少年教育といって書いてある。ただ、ワクはこれだけです、法律に触れてはいけません、予算がないなんて書いてはいけませんということで、ずっと書いてある。だから、労を多とする、こういうことでは対策本部もへちまもあったものではない。そんなことを言うならば、ほんとうに対策本部も青少年局も要らない。白書編さん局だ。青少年白書編さん局です。それじゃ意味がない。だから、そこのところを、あなた、もう少し器用に答弁できませんか。
  125. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま大出先生が交通問題をお取り上げになりましたので、交通問題につきましては総理府に陸上交通安全調査室という特別な機構がございますから、勢い私がただいま申し上げましたような答弁になったわけでありますが、青少年問題は、繰り返し申し上げておりますように、非常に広範な間口の問題でございまして、その中の一例として非行対策という問題を取り上げてみますと、非行対策については、青少年局ができます前でございますが、中央青少年問題協議会がございました。これは、警察庁の問題あるいは法務省の問題等がございますが、そのほかに、たとえば学生生徒の非行対策について学校がどういう処置をとるか、あるいは有職少年の非行対策について職場の関係者がどういう対策をとるか、あるいは非行の問題に関しまして、いわゆる不良マスコミの問題等が非常に大きな問題でございますが、そういった問題についてどういう対策をとるか、非行対策を一つ取り上げてみましても、そういうことが各方面にあるわけでございまして、そういうものを総括しながら全体を推進していくというのが青少年局の任務であるわけでございます。そういう面につきましては、ただいま申し上げましたような活動をいたしておるわけでございます。交通問題につきましても、もちろん基本的にはそういう立場でございますが、それにつきましては総理府に特別な機構があるものでございますから、そちらに期待したい、こう申し上げたわけでございます。
  126. 大出俊

    大出委員 そう言い出せば、学校の問題は文部省があるのですから、非行少年というのは警察あるいは法務省があるのですから、みんないいことになってしまう。そうでないところに青少年局の意味があるのでしょう、実際は。しかし、それを言っているとますます時間がなくなりまして、本会議が始まってしまうからやめますが、たくさんありまして、対策本部にしたことと局の性格と含めて、あらためて一日ばかり時間をいただいてじっくりやりたいと思います。  それから、これは理事会等で御論議いただきたいと思っておりますが、やはり総理にお出かけをいただかないと話の口があきませんので、ひとつそういう点をつけ加えまして、保留をさせていただきます。
  127. 浦野幸男

    浦野委員長代理 次回は、明十九日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時散会