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中川(進)
政府委員 ただいまの先生の御
指摘、ごもっともでございますが実情を申し上げます。
まず、横浜港からイントレピッドの乗員が四名出国したという点でございます。横浜港は、先生も御承知だと思いますが、年間に、たとえば
昭和四十二年に九千八百三隻の船が出入りしております。それからわが入管で扱いました件数と申しますか、要するに先ほど
大臣も御
答弁になりました人の数でございますが、これは五十二万九千三百三十三人という数でございます。これに対して、わがほうの入管の
職員は三十七人いまおります。今度
予算の御協賛を得まするならば二人ふやしていただくことになっておりますが、大体その程度でございます。これを割ってみますと、船が一日に大体二十七隻ぐらい出入りするわけでございまして、それに人が一人一人行って船員の上陸を見てやる、あるいは日本人が出ていくのを見届けるということは、これはまあたいへんな
事務量でございまして、事実上やってはおりますが、たまに手ぬかりが起こり得るということは、これはあってはいけないことでございますが、絶無ではないのではないかと思います。ただし、ただいま御
指摘のイントレピッドの四人は、御承知のごとくアメリカ軍の構成員でございます。そうしますと、日米地位協定というのがございまして、それのたしか九条でございますか、これに対しましては日本の入管令は及ばないことになっておるのでございます。したがいまして、先ほど先生、
責任の問題からも大いに検討を要するとおっしゃいました。まさにそのとおりでございますが、しかしこの点から申しますと、米軍の構成員が米軍によって兵籍を離脱するというようなことでもありません限りは、これはわが入管令の適用の外に立っておるわけでございまして、その意味では形式的に入管にこの人たちが日本を無断で出ていったということに対して
責任がないということにもなるのでございます。しかしながら、そうは申しましても、先生御
指摘のごとく白昼公然と
外国人が日本の官憲の知らない間に出国して、しかもその
写真が
新聞とか週刊雑誌に載っておるということははなはだ好ましくない事態でございます。そこで、私も
入国管理の
責任者である、ただいま御
指摘の小宮山所長によく事情を確かめたのでございますが、これは次のようでございました。すなわち、普通の乗客は全部
入国管理事務所に出頭いたしまして、そうして旅券その他の必要なペーパーに出国の証印を取けまして、それから船に乗って出かける、こういう順序でございまして、その当日の
バイカル号もまず大部分はそういうことになったのでございますが、ただ、
バイカル号に限りませず、
一般的に横浜港から商船、すなわち人を乗せる船が出ます場合には、見送り人とそれから訪問者と申しますか、そういうものが非常にたくさん参るのでございます。そこで、ただいま申し上げましたように、一日平均二十七隻にのぼる船に対する訪問者の取り締まりは、これはもうとても入管当局ではできませんので、船会社の
職員がやっておるのでございます。ただいま御
指摘の
バイカル号に関しましても、その船会社がこれを訪問する人のチェックを自己の
責任においてやっておるわけでございますし、またやったのでございます。そこで、私
どものほうの
入国管理の門を通って正規に出国した人の中にはこの四名はもちろん入っておらないのでございまして、私
どもの想像でございますと、そうしてまたあの
週刊誌や、一昨日、昨日の毎日
新聞に載った
写真などが本物であるといたしますと、おそらくこれは訪船客を装って出帆まぎわに船に乗って、そうして結局下船しないでそのまま出帆したものであろうと、かように推察しておるわけでございますが、残念ながら必ずそうしたということは、
事務的確証はあがっておりません。その
バイカル号が出帆しまして、その次に寄港しましたときに、
事務長などに言ってよく事情を聞いたのでございますが、要するに知らぬ存ぜぬの一点ばりでありますし、船長にも尋ねましたがやはりわからないということであります。それからまたその次の便でその船が帰ってまいりましたときに、また尋問しようと思いましたところが、今度は船長もパーサーも交代しておるというようなことでございまして、それは自分がこの船に乗る前のことであって、その前のことを聞かれても何も知らないという一点ばりでございます。そういうことでございまして、御
指摘のごとく、どうもあの日の
バイカル号にあの四人が乗ったであろうということは十分推測されるのでございますが、しかし確実に乗ったという人的確証というものは、いまのところは得られておりません。しかし先ほど私が申し上げましたように、ともかく白昼堂々と入管令の適用を受けない
——形式的には受けないといたしましても、
外国人がわれわれの知らないうちに出国する、あるいは入国するというようなことがありましては私
どもとしましてははなはだ残念に思いますから、
入国管理当局といたしましても極力、先ほどから御
指摘のごとく
人員を充実し、そうしてまた
仕事の
能率をあげることによりまして、そういう不祥事態が起こらないようにつとめますとともに、また一方、この船の会社にもよく注意を喚起いたしまして、その船に対する訪問者のチェックは厳重にやってもらうように、すなわち乗った数だけではなしに、必ずおりたかどうか確かめる。たとえば、乗船券を破って半分ずつでもやって、帰りにその数を洗ってみてまだ四人が帰っておらぬとかなんとかということでもやるように、若干大福帳的なやり方があるんだろうと思いますが、ひとつもう少し具体的に科学的にぴしっとすみまで行き渡るようにしてミスのないようにやってもらいたいという注意を与えておるわけでございます。