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前田参考人 お説のとおりでありまして、私といたしましては、
NHK全体もそうでありますが、料金は安きにこしたことはないという
考え方を持っております。
たとえば、
ラジオ料金は全廃されますけれ
ども、
ラジオ放送に要する直接的経費だけでも百数十億かかることになっております。したがいまして、私としては、
現状維持か、それとも大衆―大衆と申しますと語弊がありますが、端的に申しますと、
明年度末の約二千百万世帯の
契約の中で、少なくとも二千万世帯の分については、私としては、敢然として、いまの
経済情勢にもかかわらず負担軽減の
方向に向かうべきであるという判断をしたわけでございます。ただし、百四十万世帯につきましては、私としては、将来の発展、
放送の内容、あるいは
カラーといえ
ども、宇宙中継との
関連その他を
考えますときには、今日二千万世帯が
カラーテレビを享有できないという
段階においては、そのコストを二千万世帯にも負担さすべきではないという
考え方を私はとったわけでございます。したがいまして、その
部分については、原価計算をいたしまして、その平均値としての百五十円の追加料金の御
協力を願うということを
考えたわけであります。
将来この問題がどうなるかという点になりますと、
NHKは、
基本的には、事業
計画を上回る財政の余裕というものを
考える必要はないわけなんです。これは国民の機関でありまして、われわれ
NHKに働く者の機関ではございません。したがいまして、これは国民と表裏一体の
関係にございますので、今後五カ年間に、それではこの追加料金の
部分がどうなるかという見通しも立てました。
一応私
どもは、この五カ年間に把握世帯数の増加は四百万
内外であろう、したがいまして、最終的には二千四百万
内外の世帯が料金の対象になるという計算のもとで、それでは、一体
カラーセットをお持ちの世帯はどのくらいになるかという計算をいたしまして、これが二千四百万世帯のうちでおおよそ六百五十万
内外に達するであろうという
考え方のもとに、その五カ年
構想を基礎としてもこの問題をさらに検討して、そして実は百五十円という数字を出したわけでございます。この数字で、もしわれわれが
考えるように順調に
契約ができるといたしますならば、少なくとも今後三カ年間はきわめて緊縮、自制の
方式をとらなければなりませんが、四年後はおそらく数億、五カ年目にはそれが十億台に乗るかどうかという
意味で、これまでの事業
計画と比較いたしますと、やはり全体的にはそれをお認め願っても、今後五カ年間は、時代の
技術の革新あるいは社会の発展に応じて常に後退せずというたてまえをとって事業
計画を進めるためには、かなりの苦心を必要とする、このように
考えるわけでございます。
もちろん、これに対して、メーカーの製造の台数であるとかその他等を勘案して、この
考え方は甘くはないかという御
意見はございます。しかし、私
どもは、セットの台数によって
契約するのではなく、
基本的には世帯を対象として
契約するわけでございまして、台数とは
関係がございませんし、それからまた、今後の
社会生活、経済生活の内容が名実ともに豊かになるかどうかという経済の発展についても、私
どもなりの計算を立てているわけでございます。したがいまして、私
どもとしては、事業を進める上には、
一つのうわ立った
考え方で数字の検討はできません。いかなる場合においても、この限度においては事業を後退さしたり、あるいは、国民の機関である
NHKの性格を失わせるようなことがないというぎりぎりの数字を
考えるのが、私
ども執行機関としては、当然
放送法による義務を遂行するただ
一つの基礎になる、このように
考えるわけであります。
これと
関連しまして、私
どもは、この
目標を達成するためにはやはり一万五千の職員の日常の努力が必要である、こう
考えるわけです。たとえば、税金等につきましては、一定の目減りがあったとしても、税率の
決定によって最小限度の収入は実際にも確保できるという国家権力を使う
方式でございます。私
どもの場合は、すべて一世帯ごとに
話し合いの上で
契約して、相互理解のもとに
契約を完成するという企業体でございますので、これは一万五千の職員の努力なくしては、ある
意味では、最低の
目標を立てても達成し得ない場合がある。逆に申し上げると、この最低
基本線を上回るということは、私
どもの理解では、一万五千の職員の努力の結果にまつということと全く同じことになると思います。その
意味では、私は、われわれが想定したこの
予定数を上回ることを内心実は期待しているわけでございます。
それから、この問題と
関連して、過般も御
質問をいただきましたが、これが
予定をはるかに上回るということは、五カ年目に、二千四百万世帯を
目標として一千万世帯をこえて追加料金の対象があるという場合には、先ほど来申し上げましたように、私
どもとしては、国民の機関であって、われわれがプラスと
考える必要のない機関であるという点においては、そのときは、外からの御要請がなくても、われわれとしては当然料金の調整を行なうべきであるという
考え方を持っており、過去四十三年の
NHKの歴史の中でもこのことは明らかに四回行なわれており、ことに、戦後の
経済情勢のこんとんとした時代においても、ある
意味では二回行なっているということを御理解いただきたいと思います。