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1968-05-10 第58回国会 衆議院 地方行政委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十日(金曜日)    午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 大石 八治君 理事 奧野 誠亮君    理事 塩川正十郎君 理事 古屋  亨君    理事 細谷 治嘉君 理事 山口 鶴男君    理事 折小野良一君       青木 正久君    岡崎 英城君       亀山 孝一君    永山 忠則君       野呂 恭一君    藤田 義光君       山口シヅエ君    太田 一夫君       河上 民雄君    山本弥之助君       依田 圭五君    門司  亮君       小濱 新次君    谷口善太郎君  出席国務大臣         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         自治政務次官  細田 吉藏君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 五月十日  委員三木喜夫辞任につき、その補欠として渡  辺惣蔵君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺惣蔵辞任につき、その補欠として三  木喜夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  都道府県合併特例法案内閣提出、第五十五回  国会閣法第二三号)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  第五十五回国会内閣提出にかかる都道府県合併特例法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 昨日の私の質問に対しまして、都道府県合併なり、いわゆる自治体の廃置分合、こういうものは自治法六条の規定によらないで七条の規定でもよろしいのだ、市町村合併促進あるいは特例、そういうような様式で、七条の考えに基づいてもよろしいのだ、こういう意味行政局長答弁があったのでありますが、それでよろしいのですか。
  4. 長野士郎

    長野政府委員 昨日申し上げましたのは、府県廃置分合方式市町村廃置分合方式とが地方自治法の中に規定されております。そして、御指摘のように府県の場合は法律でつくる、市町村の場合は市町村議会できめて手続をとる、したがって府県とか市町村とかいうことを抜きにして、地方公共団体廃置分合ということで考えますと、地方自治法の中には、法律でつくる方式と、それから関係議会議決をしまして手続をとる方式と二通りのものが規定されておる、こう言ってよろしいかと思うのでございます。したがいまして、府県市町村との関係において手続が違っておりますけれども地方公共団体という意味考えました場合には、地方自治法の中には法律による方式地方団体イニシアチブによって合併を進めていく方式と二通りをつくっておるわけでございますから、地方自治法の体系から言いますと、地方団体廃置分合方式は、こういう両方のいずれでも、この両者方式をとり得ることにしておるものということができるのではないか。したがって、そういう場合に、府県廃置分合方式について、府県イニシアチブをとって手続を進めるという方式を、市町村廃置分合と同じような方式をとることは立法において許容されておる、すなわち、立法政策の中に許されておる範囲ではなかろうか、こういうことを申し上げたのでございます。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 私はいまの答弁は間違っていると思う。たいへんおかしいと思うのですよ。きのうも申し上げましたように、自治法の六条の規定というのは、都道府県についての規定でありまして、この境界変更あるい廃置分合というのはたいへん重要なのでありますから、六条で「都道府県廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。」こういうことになっておって、市町村廃置分合及び境界変更というのは七条で規定されておる。その市町村の場合でも、特に市の場合等については、また、市町村といっても区別がされておる。これが七条の規定なんですね。そういうことからいきますと、六条でも、七条でも、都道府県廃置分合ができるのだという長野行政局長解釈は、これは新しい見解ですよ。あなた、それは間違いですよ。そうじゃないですか、もう一度お答え願います。
  6. 長野士郎

    長野政府委員 都道府県廃置分合市町村廃置分合方式法律方式関係議会議決を経て進める方式があるということはさいぜんから申し上げておるとおりでございます。市町村合併方式を使うということが私は立法的に許されないものではないということを申し上げたのであります。そして法律でやる、あるいは市の廃置分合については協議があるということが、地方団体としての重要度というものを考えて、国家的な大きな影響があるものについて取り扱いがいろいろ定めてありますが、ただ、地方団体として、市町村廃置分合は、重要でないからそういう自主的な手続を進めることを認めたのだということではないと私は思う。やはり府県市町村廃置分合方式両方方式をとり得るということでございます。ただ、置かれている団体の規模その他影響の大きさから、府県内にとどまるようなかっこうのものは府県内で始末をする、国の段階まで持ってきて、全体をながめ渡すものは国で始末をする、こういうことを考えておるのだろうと思うのであります。したがいまして、この合併特例法におきましても、法律によって定めるということをいたしませんけれども関係府県議会議決を経まして内閣総理大臣にその旨申請いたしまして、そうして、それにつきまして内閣総理大臣国会議決を経るわけであります。したがって、それは国として国会の議を経て全体との調節を考える、言ってみれば法律による議決重要度において同じ取り扱いをしておるものだと私は思います。したがいまして、それは町村合併方式をとるとは申しましても、国会でその点の審議がされるという点につきましては、いささかも取り扱い重要性ということからいって欠けるところがないのではないか、そんなふうに考えるわけでございます。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 そんなばかなことはないですよ。それでは申し上げますが、あなたの書かれておる「逐条地方自治法」こういう本がございます。きょうそれを持ってきておりませんけれども、あなたの自治法六条についての解釈は、いまのお答えと違うのであります。参考のために読んでおきます。あなたの書いた本の五九ページ。「都道府県廃置分合又は境界変更は、国家全般政治行政上に重大な影響を及ぼすものであるので法律によってのみ行ない得ることとせられている。この法律憲法第九十五条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」となるものと解される。三 都道府県境界変更のうち法律によらないでなされる例外があるが、それは都道府県境界にわたって市町村境界変更があった場合である。」いわゆる法人格の喪失とかそういうものが行なわれない場合のことなんであって、このあなたの解釈はいまのあなたの答弁と違いましょう。あなたの六条の解釈というのは、いま言ったように、都道府県廃置分合境界変更というのは、国家全般政治行政上に重大な影響を及ぼすのだから、法律によってのみ行ない得るのだ、この法律憲法九十五条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」になるのだ、こういうふうにあなたは明解に「逐条地方自治法」に書いているのですよ。いまの答弁とまるっきり違うじゃないですか。
  8. 長野士郎

    長野政府委員 私はいまの解釈とちっとも違わないと思います。と申しますのは、現行法の第六条の解釈としては、それが法律できめられるという意味は、国家的重要性を持っているから、現在の立法としてはそうする、したがってその立法について、憲法九十五条にいいますところの「一の地方公共団体のみに適用される特別法」という関係が起こる、それは現行法解釈としては私は当然そうだと思います。しかし、それでは立法の上としてそういう方法しかないのか、要するに、立法政策として新しい方式を開くか開かないかという問題、新しい方式を開いた場合には、両方方式というものが考えられるのか考えられないのかという問題だと思うのでございます。  そこで、この合併特例法におきましては、新しく都道府県合併特例を開こうとしておるのでございます。そうして、その開くことの意味が一体どうなのかという問題になると思うのでございまして、先ほどお読みいただきましたことは、現行法解釈としてはそうだということで私は考えておるのでございますが、新しくそういう合併特例手続を開くことが一体できるのかできないのか、法律上可能なのか可能でないのかという問題になれば、先ほど来申し上げておりますように、市町村合併方式というものと、いまの県の法律のみによって行なう合併方式というものと両方方式がある。したがって、府県合併方式の中に現在の市町村のような合併方式を導入することはあえて不可能ではないのではないか。そうしてそれを、しかもそのことの重要性にかんがみて、国会議決にかからしめるということであれば、矛盾もなく考えられていけるのじゃないか、これがこの特例法にいっておる合併に伴う特例の部分だというふうに考えておるのでございます。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 私があなたの「逐条地方自治法」というのを丁寧に読んだのを、それを落とさないで頭に入れてくださいよ。あなたの書いたことなんです。「法律によつてのみ行ない得ることとせられている。」、「のみ」という字句があるのですよ。法律によって行ない得ることとせられていると書いてないのですよ。「法律によつてのみ行ない得ることとせられている。この法律憲法第九十五条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」となるものと解される。」断定しているのですよ。ほかの道はないということでありますよ。日本語はそれ以外に解釈できないでしょう。これはどうなんですか。
  10. 長野士郎

    長野政府委員 現行法におきましては、都道府県廃置分合境界変更は、地方自治法第六条しか道はございません。したがいまして、現行法だけでございましたならば、都道府県廃置分合境界変更法律によってのみ行なうこととせられておるのでございます。したがって、その関係では「一の地方公共団体のみに適用される特別法」になる、こう解釈されるわけでございます。しかし、いま申し上げているのは、別の立法の道を開くか開かないかということでございます。現行法解釈としては、ただいまにおきましては、地方自治法の六条しか府県廃置分合境界変更方式はないのであります。したがって、その方式は何かといえば、法律によってのみ行なうこととせられておるのであります。そういうことをしるしておると思うのでございます。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 そんなばかなことはないですよ。九十二条の地方自治本旨に基づいて地方自治法がつくられておる。その地方自治法の六条に、国の行政に非常に重要な関係を持っておる都道府県廃置分合については法律できめるとあり、その法律は九十五条の適用を受けるというのです。そうでしょう。憲法九十五条の適用を受けるわけです。憲法というのは、これは変わらないのですよ。これは未来永劫の不磨の大典なんですよ。九十五条は適当に解釈して別の法律ができればいいんだ、九十五条は何かといったら、必ず住民投票が要るというのであります。そうしますと、今度の第五条は住民投票はなくてもいいのでありますから、これは憲法九十五条違反、あなたの考えはそうなりますよ。それは、ことばでどうあろうと、新しい法律をつくった、こう言っても、これは九十五条の適用を完全に受けるわけですから。あなたはきわめて明快に書いてある。これはひとつはっきりしてもらわなければ進めませんよ。
  12. 長野士郎

    長野政府委員 さいぜんから申し上げておることに尽きるのでございますが、先生おわかりいただいておると思うのでございますけれども、いろいろお話しがございますので、重ねて御説明を申し上げたいと思います。  現在の地方自治法では、府県廃置分合なり境界変更方式としては、法律でこれを定めるということになっております。したがいまして、個々具体の県の合併なり境界変更というものは、具体の県と県との間の合併考えるわけでございますから、具体の名前を法律において制定をするわけでございます。そうして合併をきめるわけでございます。そうなりますれば、それは一の特別な地方公共団体のみに適用される法律という特別法としての関係が生ずる、こういうことでございます。それは現行法ではまさにそのとおりだと思います。しかし、立法の上で考えます場合には、府県市町村、同じ普通地方公共団体として、憲法にいいますところの地方公共団体の中の廃置分合境界変更方式の中に、地方自治法は二通りの方式をとっております。一つは、そういう法律による方式でございます。一つは、市町村廃置分合というものは、市町村議会議決を経て手続を進めていくという方式でございます。これは普通地方公共団体としては同じ価値の、上下の差はないわけでございますが、その地方公共団体廃置分合とか境界変更方式にそういう二通りの方式があるわけでございます。これはもう現行法にちゃんとあるのでございますから、間違いはないといいますか、それはお認め願わなくちゃならないと私は思います。そうすると、その場合に、府県合併方式の中にそういう市町村合併方式を取り入れることが立法上許されないのであるかといえば、市町村についてそういう合併方式があると同じように、府県についてそういう合併方式考えることは、立法政策としては可能であろうと思うわけでございます。そういたしますと、そういう方式考えてつくり上げたものが、この府県合併特例法条文、第二章に掲げられておる条文のような形になって立法化され得るという考え方に立っておるわけでございます。  そういうことでございますので、市町村が重要でないからそういう任意的な合併方式をとったんだということでは万々相なかろうと思うのでございます。しかしながら、同時に、市町村合併につきましても、国が国会法律をつくりまして、ある市なりある町村なりの合併法律できめるということも、私はあえて不可能ではなかろうと思います。そうすると、そのときには、やはり一の特別法になる、こういうことも間違いなかろうかと思います。この関係両者において同じことでございまして、これはやはり立法のしかた、その範囲におきましては、立法政策として許されている範囲ではなかろうか、そのことがたまたま今日地方自治法の中の第六条と第七条にあらわれておるのではないか、こういうことを申し上げたかったのであります。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 長野さん、詭弁だ、あなたのは。論弁ということを腹の中で思っておるから、ちょっと答えにくいだろうと思うのですけれども、私も申し上げたのでありますが、私どもの先輩である阪上さんが私の指摘と同じようなことを、いまちょうどここに見えておりますけれども、本会議でこういうふうに言っております。重要な点でありますから参考に読んでおきます。「いま一つのミスは、この立法手続に関するものであります。すなわち、憲法九十二条及び九十五条を受けて、地方自治法第六条は、「都道府県廃置分合をしようとするときは、法律でこれを定める。」としている。そしてその法律とは、地方自治本旨に基づき住民投票で決する特別法であることは、今日の定説であります。また、「しようとするとき」とは、まさにしようとするそのときに、つど特別法をつくることである。ところが、今回の特例法案は、将来の合併を予想しての一般的、普遍的な規定となっております。もちろん、地方自治法市町村合併について特別法を必要としないたてまえをとったのは、市町村は、元来、基礎的地方公共団体としてその住民との結びつきがきわめて強固であり、住民意思の反映が容易であるからであります。ところが都道府県は、そもそも中間的地方公共団体であるので、市町村ほどに住民との結びつきが強固でない。したがって、府県合併という重大な事件については、特別に住民投票により住民意思を確認する方式を採用したと解すべきである。この点、住民投票を省略するこの特例法は、明らかに憲法違反のそしりを免れることはできないのであります。」こういう意見であります。きわめて明快でしょう。あなたと同じ立場に立っておるのです。ところが、残念ながら、いまあなたは法律を出してしまっておるから、腹の中は豹変してないでしょう、あなたも君子ですから。豹変はしてないのだけれども、そう答えざるを得ないところに問題があるわけだ。あなた自体が、さっき読んだように、住民との直結と阪上委員は言っておりますけれども、あなたのは、国家全般政治行政上に重大な影響を及ぼすものであるので法律によってのみ行ない得る。この法律憲法九十五条の適用を受けるのだとはっきり言っておるのですよ。ですから、法律をおつくりになることはいいかもしらぬが、五条のように住民投票を省略しておることは憲法違反だ、こういうのがあなたの説からも出てくるし、六条、七条についての定説からいっても出てくるのじゃないですか。大臣、これははっきりしていただかぬと、このときの答弁というのは、佐藤総理大臣永山当時の自治大臣も全くまともに質問に答えていないのですよ。これははっきりしてもらいたい。
  14. 長野士郎

    長野政府委員 さいぜんから申し上げていることに尽きておるように私どもは思うのでございますが、結局それはこの特例法の第二章の都道府県合併特例という、そういう立法をすることが立法として適当かどうかという議論範囲と思うのでございまして、私どもとしては、この立法をすることが直ちに、現在の地方自治法のそういう特例を開きますことが憲法との関係を生ずるということにはならないというふうな考えのもとにこの法案を提案さしていただいておる次第でございます。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 これはどうしてもあなたの従来の考えと違った考えで、独断ですよ。大臣お答え願います。
  16. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 これはきわめて基本的なことについての御質問ですが、私どもは、憲法は言うまでもなく国の政治形態だとか、あるいは国民の基本的権利義務、その他政治全体の運営についての根本を定めてある。それに従っていろいろな法律が、地方自治法ほか全部あるわけでございます。私たちといたしましては、地方自治本旨というものは、きのうも御質疑にございましたとおりに、やはり住民考え方というものが一番基本になる。だからあなたは、いま住民投票に問うべきかどうかということを中心に、いろいろ憲法違反じゃないかというような御議論があるようですが、それについていま行政局長がるる御説明申し上げました。私は、このこと自体は決して憲法違反するものではないという観点に立っております。しかし、憲法違反するじゃないか、いや、しないということをいつまで言い張っておりましても、結論は出ないわけだ。とても細谷さんが、そうか、それはわかったとおっしゃるはずもなかなかなかろうと思う。ここに至りますまでには、もちろん憲法に触れるようなものを法制局が見のがすわけもありませんし、そういった点には重点を置いて十分検討して提案しておるわけでございまするので、この議論でしたらひとつ法制局も入れて、別途専門家意見というものを御聴取になって、次にお進み願いたい、かように思います。
  17. 細谷治嘉

    細谷委員 それでは定足数も成立しておらぬようですから、法制局にも来ていただき、それまで私の質問をちょっと休んでおきます。
  18. 吉川久衛

    吉川委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  19. 吉川久衛

    吉川委員長 速記を始めて。  細谷君。
  20. 細谷治嘉

    細谷委員 法制局にあらためてお尋ねいたしたいのであります。  現行地方自治法第六条は、都道府県廃置分合及び境界変更についての規定であります。第七条が市町村廃置分合及び境界変更に関する規定でございます。ところで、「都道府県廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。」と六条一項はうたっておるわけです。この法律というのは——ここに実際にも非常に詳しいし権威ある人の「逐条地方自治法」という厚い本があるのであります。それにつきましては「都道府県廃置分合又は境界変更は、国家全般政治行政上に重大な影響を及ぼすものであるので法律によってのみ行ない得ることとせられている。この法律憲法第九十五条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」となるものと解される。」こういうふうに明確になっておるのであります。これが今日の支配的な定説だと私は思っているのです。現に、この本の末尾を見ますと、これを書いた人は自治省選挙局長を経て現在同省行政局長というのですから、少なくとも中枢に位する人の書いたものであるわけですね。  ところが、この点について質問をいたしますと、いや、都道府県合併というのは現行法ではそうだけれども、別に法律をつくれば七条の方式でもよろしいんだ、こういうお答えが出てきたのであります。これはたいへん重要でありまして、この本に書かれてある権威ある解釈と違いますので、法制局の明快な御見解を承りたいと思うわけであります。質問の趣旨はわかりましたか。
  21. 荒井勇

    荒井政府委員 ただいまの御質問のことでございますが、現行地方自治法第六条によりますれば、都道府県廃置分合あるいは境界変更法律できめる、その法律というものは地方公共団体の組織の基礎に関するものでございますから、憲法九十五条の特別法になるという点は、これは定説であると考えられますが、それに対しまして、すべての地方公共団体廃置分合についてそのような法律で定めるということが現在の地方自治法上もなっておるかと申しますと、お隣の条文であります地方自治法の第七条を見ますと、市町村廃置分合はどうかといいますと、これは「関係市町村申請に基き、都道府県知事当該都道府県議会議決を経てこれを定め、」すなわち都道府県知事処分という形で行なわれるわけでございますが、ただその処分をする前提といたしましては、当該都道府県議会議決を経るということによって、その住民意思を十分反映するという方式考えているわけでございます。そのように地方公共団体廃置分合をすることが常に法律でなければならないかと申しますと、その点は自治法の六条、七条にわたって書いてありますように、立法政策の問題であると考えておりますし、今回の都道府県合併特例法案におきましては、その第五条におきまして、まず上からの法律という形できめて、あとで住民投票をするということではなくて、先にその都道府県の、地方自治本旨に基づいたといいますか、そちらの意思決定というものを民主的にする方法考えまして、その上で、下から都道府県の側の申請に基づきまして内閣総理大臣処分をする、告示をしてきめるという形になっておりまして、その場合の地方自治本旨に基づいて地方団体側意思が十分反映する形というのが、この法案の第五条におきましては合併関係都道府県議会議決を経た上その申請をする。合併関係都道府県議会議決におきまして、それが半数はこえているけれども、三分の二に満たないという多数でされたという場合には、住民投票に付するのだということで、いわば事後的な住民投票手続ではなくて、事前に住民あるいは地方団体意思というものが民主的に表明されるという手続を経た上で、内閣総理大臣処分という形で行なわれる。これは現行地方自治法の七条におきまして、市町村廃置分合都道府県知事処分という形で行なわれるというのと同じでございますけれども、そういう形を考えておりますので、それは内閣総理大臣処分であるという意味憲法九十五条に乗りようがない。そして、民主制あるいは地方自治本旨というものは、こういう制度によっても十分担保されているというふうに考えるわけでございます。
  22. 細谷治嘉

    細谷委員 どうも少しおかしな議論なんですね。第七条の市町村の問題についてそれでは著者はどういう解釈をとっているかといいますと、読んでみます。「市町村廃置分合並びに境界変更に関する手続を定めた規定である。」いわゆる自治法七条であります。「廃置分合及び境界変更の意義は第六条の解釈で説明したとおりである。市町村廃置分合又は境界変更関係市町村申請に基づいて、都道府県知事が行なうのであるが、この処分の性質は、議論の存するところではあるが、国の行なう処分であり、都道府県知事も国の機関として行なうと解することが、都道府県に関する当該処分法律で行なうことと併せ考えて、妥当の解釈のようである。」こういうふうに言っております。この解釈からいきますと、明らかにこの著者が言っているように、国の代表者は内閣総理大臣ですよね。しかし七条の規定では内閣総理大臣ということばは出てこないのでありまして、たとえば七条の規定については市町村の場合は議会議決を経て自治大臣に届け出る。「市の廃置分合をしようとするときは、都道府県知事は、予め自治大臣に協議しなければならない。」いってみますと、市町村という中において、市の区画の変更というものは非常に重要であるから、届け出でなくて、あらかじめ自治大臣と協議をしてきめなさい、こういうふうにやったわけですね。さらに「都道府県境界にわたる市町村境界変更は、関係のある普通地方公共団体申請に基き、自治大臣がこれを定める。」こういうふうにしておるわけです。こういうことでありますから、この著者が言っておるように、都道府県廃置分合または境界変更というのは国家全般政治行政上に重大な影響を及ぼす、いってみますと、憲法九十二条の「地方自治本旨に基いて、法律でこれを定める。」単に法律でこれを定めるのじゃないのですよ。ノーズロじゃないのです。地方自治本旨に基づいてやらなければならぬ。そして、できたものがこの自治法第一条に書いてありますように地方自治法なんですね。だから、いかなる場合でも、地方自治本旨に基づかなければならぬ。地方自治本旨というものは一体何か。これも学説の存するところであります。けれども、少なくとも都道府県というのは国の行政に非常に密接な関係があるのだから、これは法律でやらなければならぬ。したがって、そういう「合併をしようとするときは、」しようとするときですからまだ結論が出てないのです。未来ですね。そういうものは法律でやって、その法律憲法九十五条の規定を受けるのだ、こういうことになっておるわけですね。ですから、いまあなたが言うように、いや六条でもいいのだ、六条はそういう道が開かれておるけれども、あらためて七条で別の法律をつくればいいのだ。しかも今度の法案の五条には、三分の二以上の場合は、圧倒的多数ということだから住民投票は要らないのだ、それ以下の場合に住民投票に付するのだ、それだから合法なんだ、合憲なんだ、こうおっしゃいますけれども、それはあなた法制局らしくないことばですよ。憲法は厳然たるものですよ。法律は厳然たるものですよ。政治によって曲がってはいかぬものです。あなたのいまの御答弁ではどうしても理解できない。了承できない。
  23. 荒井勇

    荒井政府委員 地方自治法第七条に規定しておりますところの市町村廃置分合手続というもの、あるいはそれについての都道府県知事の権能というものは、これは本質的には国の機関委任事務であるというふうに考えられます。で、市町村廃置分合の場合と都道府県廃置分合の場合とで、その及ぼす政治的、社会的、経済的影響なるものは、その差はございますけれども、本質的にこのような廃置分合を進めるのかどうかといった問題は国の重要な政策の問題でございますし、今回の合併特例法案の中でも、それは国の法律でそのような手続をきめ、いわば国民代表としての国会法律制定という形におけるその議決の趣旨にのっとって行なわれるわけでございますが、その場合に現在の第六条で「法律でこれを定める。」と書いてありますこと自体は、直接その住民意思をどのように反映させるかについて自治法自体としては規定をしておりません。それに対してこの特例法は、そういう法律でいわば上からきめていくという形に対して、下から地方団体関係意思決定機関、それは第一次的には議会であり、最終的には住民でございますけれども、その意思に従って申請が行なわれ、関係地方団体としては異議はないのだということが先に、地方自治本旨にのっとってといいますか、明らかになった上できめてよろしいということを法律自体で制度をつくるということでございますので、憲法にいうところの地方自治本旨という点にかんがみましても、決してやましいところがあるわけではございませんで、むしろそれは地方自治本旨を本来の姿で生かした一つの行き方であるというように考えます。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 現在の地方自治法に基づいて、都道府県廃置分合をしようとするときには法律でこれを定める。この法律憲法九十五条につながるのだ。これはこの自治省が編さんいたしました六法に書いてありますように、憲法九十五条、国会法六十七条、地方自治法二百六十一条、二百六十二条、こういうものが関係してくるわけですね。したがって、いってみますと、都道府県廃置分合を行なおうというときには法律で定めるのですから、国会で発議をします。そしてその法律国会を通りますと、憲法九十五条に基づきまして、二百六十二条等の地方自治法手続によって住民投票に付せられるわけです。そこで、まあそういうコースがいまの現行法でありますけれども地方公共団体議会なら議会一つの発議をいたしまして、合併をしたいということになって、それを持ち込んでくる。そしてその結論というものを国会法律議決する。いまのところは国会が発議でありますが、都道府県議会が発議をして、そして法律によって住民投票を経て、九十五条の規定によってやるということであれば、いまは一方交通でありますが、発議権を地方にも与えるということについては、私は原則的には反対しているものじゃないのです。それはいいだろう。いま一方交通だから、それならばそれで住民が最終的なものなんですから、やはり住民投票というのは絶対必要なものだ。それでなければ憲法九十五条違反だ、私はこう思うのですよ。そういう主張なんですよ。あなたの言うことはわからない。それから何のために六条——私は端的に言いますと、こういう法律はつくらぬでもいい、合併したいのならば、六条の規定に基づいてやっていけばやれるのですよ。やれないようなことならば、やれないような情勢があるのですから、こんな、憲法違反と言わぬでも疑いのあるような法律をつくるべきじゃないですよ。おかしいですよ。
  25. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 細谷先生の学説は承りましたが、しかし提案するほうといたしましても、衆議を集めて、もちろん憲法違反などの疑いが毛頭ないという観点に立って提案いたしておるわけでございます。最終これが憲法違反するかどうかという決定は、最高裁が、これは憲法の番人でございますから、たとえこの法律が通過いたしましても、憲法違反であればまたしかるべき措置がとられなければならぬと思うわけです。細谷先生の御議論も私はたいへん傾聴に値すると思って拝聴しましたけれども、しかし、いまの段階では平行線をたどっておりまするので、この点は、政府のほうとしても、憲法違反にあらず、そういう疑いはないという観点に立って提案をいたしておりまするので、両者の主張が平行しておるからといって、ここで議論が先に進まないということじゃなくて、どっちが正しいということは私はこの段階で申し上げませんけれども、ひとつ議論をここらでおさめていただきたい、かようにお願いする次第でございます。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣国会法律を審議する場合には、基本法というのは憲法であります。大臣がどうおっしゃっても、憲法の問題について疑念が晴れないで法律の審議に入るわけにいきませんよ。それはほっておけ、おれにまかしてくれというわけにいきませんよ。これはやはりはっきりと疑いを晴らしてもらわなければ——私は何も先入観を持って言っているわけじゃないのです。こういうお役人さんが書いた解釈等ももとにして議論を申し上げておるわけであって、先入観で申し上げているわけじゃない。ですから大臣、もっと明快にしてもらわなければ先に進めませんよ。
  27. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は、学説として細谷さんの御議論を拝聴したわけでございまして、決してそれが誤りであるとは申し上げませんが、最初住民自治の本質とは何ぞやということからのお話でございました。また、議会制民主主義のルールにのっとって——私たちは、こういう方法を採用いたしましても、いずれもこわすものではない。ただ本質的に憲法九十五条にこれは違反ではないかと指摘なさいます場合において、法制局また私のほうの行政局長も、違反ではないということを申し上げておるけれども細谷先生は違反あるいは違反の疑いがあるという主張ですから、学説として承っておく、というよりは、両者どっちが勝ち負けということをいま判断する段階ではないと思います。これは基本問題のまた基本的な問題ですから、この議論はひとつあとにお預け願いたい、こういうことをお願いしておるわけでございます。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣がこの問題はお預けしてくれという答弁だから私は前に進めないわけです。やはりお預けしてはいかぬのであって、お預けしてはこれは前に出るわけにいかぬわけです。そうでしょう。憲法九条の問題、自衛隊なり防衛問題については長い間いろいろな議論がされてきて、今日どういう姿になっているか。これは議論のあるところでありますが、この問題だってたいへん重要でありますよ。地方自治というのは国よりも下だという問題じゃないのですから。
  29. 荒井勇

    荒井政府委員 依然として憲法問題であるようでございますのでお答え申し上げますと、憲法九十五条は、一の地方公共団体のみに適用される特別法というものは、その地方公共団体住民の投票で過半数の賛成がなければ制定できないのだということでございますけれども、この都道府県合併特例法案で定めておりますのは、一般的な制度として合併手続現行地方自治法第六条第一項に定める場合のほかにもう一つ設けるということでございまして、その結果、その地方公共団体、まあ都道府県合併が行なわれるというときに、それが法律できめられるという方法だけではないということになるわけでございますけれども、その都道府県合併手続をどのようにきめるかということ自体は、立法政策の問題ではないかというふうに考えられるわけでございます。先ほど私が第七条の例をあげたりいたしましたのはその点でございますけれども、そのような別個の立法政策がとられまして、都道府県合併自体法律によって行なわれるということでない方法もできるとした場合に、その法律によらない方法であるということで、憲法九十五条の条文を読みましても、それが法律ではない、いわゆる特別法ということにならないという意味でその九十五条の規定違反するとか抵触するということにはならないと思います。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、私は法律のしろうとですからね、私はしろうとだけに国民としての直感としてこれを考えておるわけです。  ちょっと参考までに読んでみますと、四十一年六月二十日に大阪府議会はこういう決議をしております。「政府は広域行政をはかるため、府県合併を目ざして都道府県合併特例法案を今国会に提出した。本府議会においては、これが法案の内容を慎重に熟慮検討した結果、憲法第九十五条に規定する住民意思尊重の趣旨に反するものであり、住民投票による現行法の外に特例を設ける必要が認められない。かつまた住民合併意欲が十分に盛上がっていないので、地方自治本旨に則り本法案の成立に強く反対する。」これは大阪府議会が満場一致で議決したことです。与野党あげての満場一致の決議なんです。  地方制度調査会が府県合併についての答申をする際に、きわめて不十分でありますけれども、こういうふうに書いてあるわけですね。「この場合、関係府県議会議決については、住民の理解と支持を得てなされるよう、十分な配慮を加えなければならない。」こういうふうになっておるわけであります。六条は、しようとするときは法律できめていけばいいのです。これからしようとするところがあれば六条にのっとってやればいいわけです。それが不可能だからこの法律を出すと言っている。今度出たこの法案とどこが違うかといいますと、六条で逃げようとする、関係都道府県議会の三分の二以上ということで、住民投票を省略することによって、そして都道府県合併をつくり出そう、これはこの点しかないのじゃないですか。何も違ったところはないですよ。違っているところはそれだけじゃないですか。三分の二のところ、住民投票はすべての場合に必要だ、これが憲法に一点の疑いもない法の姿だ、こういうふうに私は申し上げなければならぬと思うのです。どうなんですか、法制局
  31. 荒井勇

    荒井政府委員 先ほども申し上げましたように、地方自治法第六条第一項の規定のほかに、最近におけるような地方行政の実情に照らして、広域自治体というものをつくることが国政全般の見地からいって好ましい。その場合に、この方法以外の方法をつくることが憲法上禁止されているということであるかといえば、それは一つ立法政策の問題として書かれているというふうに考えますので、立法機関としての国会でそのような法律をおきめになるかどうかということで、それ自体がその憲法上の問題を招来するということはないと考えております。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 立法政策の問題で片づけるわけにいかぬですよ。この種の法律をやる以上は、憲法のワクから出るわけにいかぬですよ。地方行財政に関係のある問題というのは、立法政策の問題だといって片づける前に、地方自治本旨に基づくという憲法のワクからはずれたら、いかに立法政策だからといっても、憲法違反のことはやれませんよ。憲法上疑いのあるようなそういう法律をつくることはできませんよ。法制局が何と言おうと、いかに詭弁を弄しようと、そんなことはできませんよ。あなたの言う立法政策は、国会でやることですからいいということでありますが、それも憲法にのっとらなければいかぬ、地方自治本旨にのっとらなければいかぬ、こういうことです。
  33. 荒井勇

    荒井政府委員 もし、地方公共団体合併法律による方法だけが合憲な道で、それ以外の道は一切ないというならば、現行地方自治法七条は憲法違反だということになるわけでございます。これも同じ地方公共団体であるわけでございまして、その点が決してそういうことはないというふうに私ども考えますし、その点から言いましても、その唯一の方法が六条一項のような方法であるということにはならないというふうに考えます。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 法制局見解にはおそれ入った。これは私は当時議席を持っておりませんでしたけれども、二十八年ですか、市町村合併促進法、こういうものができたときに、憲法問題が論議されたということは私も聞いております。しかし、住民に非常に密接な関係を持っておる、そうして住民意思というものが非常に浸透しやすい市町村のものについては七条なんだ、しかし六条の問題は、都道府県というのは国の行政上も非常に重要な問題だ、言ってみれば地方自治の土台だ、これがくずれたら地方自治法というものの土台がくずれてしまうわけですから、このことについては、やはり法律でやらなければならぬ。そうして、それは憲法九十五条につながっていかなければならぬ、こういうことです。七条の場合でも、町村あるいは市の段階、あるいはそうでない場合には、直接自治大臣に届け出るもの、あらかじめ協議するもの、自治大臣の処理するもの、こういう段階が設けられているのは、やはり国政との関連において、その地方自治上の重要さということが判断されて自治法というものはできている。ですから、いまさら七条でもいいんだ、こういう自治省の主張をあなたがまねて言うのはおかしいですよ。
  35. 荒井勇

    荒井政府委員 私は自治省の側の答弁を聞いて、それをまねているわけではございませんが、憲法論としましては、地方公共団体、その基礎的な地方公共団体と、その上にある包括する地方公共団体とで、憲法の目から見ました場合には評価は異らないと思うわけでございます。その意味から言いまして、市町村合併について、地方自治法七条なりあるいは合併特例法というようなものの規定がされているということと、都道府県合併手続をどのようにすべきかということは、憲法の目から見ました場合には、格別の差異はない。あとは立法政策の問題があるのではないかというのが私の考えでございます。
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、言ってみれば、原則的にはそれは県と市町村は六条と七条で仕分けしたことには問題がある。いずれも住民が主人公なんだから住民投票すべきだ、私の基本的な考えはそういうことです。しかし、百歩譲って行政当局のこの六条、七条のいままでの解釈、そういうものに基づいていっても——私の考えから言っているんじゃないですよ。一般のいろいろな有力な定説等からいっても、この都道府県合併法五条の規定というのは、九十五条に触れているではないか、そういうことを申し上げているわけです。私どもはずばり言うならば、六条と七条の問題について九十五条とつながらせないという、住民をある意味では無視するかもしれないようなこういう七条の規定については、心から賛成しているわけではないですよ。それをあなたが逆用してものを申されたって困る。私はいま言ったように、自治省行政局長の六条の今日までの解釈、そういうものに基づいて議論を申し上げておるわけです。
  37. 荒井勇

    荒井政府委員 現行地方自治法第六条第一項に定める法律というものが、憲法規定と照らし合わせてみました場合に、憲法九十五条の特別法になるということは、私も一番最初に申し上げましたように、これは定説であると思っております。その点、一点も疑いをいれているわけではございませんが、さればといって、その方法のみが唯一の方法であるかといいますと、地方自治本旨を実現するための手続としては、先に法律できめていく、関係団体の意向というものはあとから聞くという方法だけが唯一の方法であるとは考えませんで、関係団体意思なり、希望なり、そういう要請というものが先に行なわれ、それの結果を見たところ、まず住民の過半は賛成していると見られるといったような事態の場合に、法律以外の形でつくるということが憲法の趣旨に違反するかとか抵触するかとかという問題になりますと、それはそのように先に住民意思をいろいろ聞く方法考えまして、その上で国の行政について責任を負っている内閣なりあるいは内閣総理大臣というものがそういう基礎の上に立ってきめるということも、一つ立法のあり方ではないかと考えるわけでございます。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 住民意思なんてごまかしてもらっちゃ困るわけだ。ものすごく合併問題の熱が上がっている、こう言っておりますね。東海三県のアンケートの例を見てごらんなさい。こんなものを知っているというのはわずかしかないですよ。東海三県合併についてあなたは賛成ですか反対ですか、こういうアンケートに対して、賛成するというのは四分の一だ、わからないというのが五五%もある、しかも名古屋で。私が申し上げるのは、どういうコースでいくにしろ、新しい法律で六条の規定のコース以外に他のコースを選びたいならそれでいいでしょう。そのコースもいいでしょうが、その場合でも、都道府県合併に関する限りは憲法九十五条の適用は受けるのだ、それがいままでの定説であるし、長野さんがはっきりとこの「逐条地方自治法」にも書いている解釈なんだ、こういうことを申し上げているわけです。ですから、いまあなたが、いや県議会議決があればそれはそっくりそのまま住民意思を投影しているんだ——しているかもしれません、していないかもしれません。いまのアンケートが示しているのですよ。
  39. 荒井勇

    荒井政府委員 国の憲法をはじめとする現在の政治あるいは地方の自治に関する法制というものは、代議制民主主義という原則の上に立っております。すなわち、国会議員は国民の意思を代表しているんだということで、国民の代表者たる立場で国民の権利義務を規制する法律を制定されるということでございますし、地方公共団体議会の場合には、住民意思を代表して、住民から選ばれた議員の方が、その多数によって条例を制定されるとか予算の議決をされるということによって、住民の総意というものを代議制民主主義の機構の中に取り入れてその執行に当たっているというふうに考られるわけでございまして、住民意思あるいは国民の意思と議員の行動というものが分離した場合どうなるかということはございますけれども、それは制度として考えればそういうことはなくて、ちゃんと国民の総意を代表しているんだという前提で現行の法制はできていると思うわけでございます。この合併特例法案の五条第二項で、合併関係都道府県がその合併申請をする場合の手続としましては、単純に、その住民の代表と考えられる議会の議員の議決の評価をしまして、それが単純過半数であるというような場合にすぐ合併手続が実現できるというふうにはしておりませんで、それは三分の二もこえるというような議決である場合に限っては住民の投票に付することは要しない。しかし、この三分の二というのは、いわば憲法改正ができるような非常に重要な割合でございます。その割合に達しない場合には、過半数であっても必ず住民投票に付するということでございますので、現在の代議制民主主義というものの上に立った憲法なり関係法律の目から見ますならば、おかしいということは毛頭ないというふうに考えます。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 答弁になってないよ。憲法議会制民主主義というものに基づいてできているのです。その中においても、重要な問題、一つ地方公共団体に関するようなものについては憲法九十五条というのが規定されておるわけです。そして自治法六条の都道府県廃置分合というような重要か問題は、地方自治本旨に照らして九十五条の規定を受けるのだぞと、こういうことなんですよ。ですから、あなた、代議制度がどうのこうのと言うが、私、それを否定しているわけじゃないんだよ。そんなことでは答弁になりませんよ。
  41. 吉川久衛

    吉川委員長 太田君の関連質問を許します。太田一夫君。
  42. 太田一夫

    ○太田委員 ただいま、いわば地方自治本旨に基づいての議論が平行線をたどっておるわけでありますが、これは自治大臣も来ていらっしゃいますし、その方面では権威者と見られる長野行政局長も御出席のこの席において、地方自治本旨が平行線というのは奇怪千万なことだと思うのです。  私は別の角度からちょっとお尋ねしますが、今度かりに、世にうわさされております阪奈和合併、大阪、奈良、和歌山、ないしは東海三県、愛知、岐阜、三重の三県の合併ということが本特例法によって行なわれるとするならば、少なくともその人口は、まことに府県というよりは、はるかにそれを超越した非常に多くの人口を擁することになる。ともに八百万以上の人口である。しかも、住民自治の原則から、先ほど奥野さんからも、いざといったときにはリコールというものがあるとか、直接請求があるといういささかの御教示をいただいておりますけれども、この八百五十万ないしは八百万以上の人口を持つ新しい県ができました後において、県会議員の定数というのは現行自治法によればいわば百二十人をもって頭打ちとする。これは早く言うと六百万ちょっとの人口までを想像した自治法でありまして、八百万というものを想像した自治法ではないと私は思う。そうするとこれは県会議員の定数についての再検討を行なわない限り、住民意思議会に反映することはますます粗になる、荒くなってまいります。それを、いまの法制局の部長さんのお話だと、いかにも議会というものは十分住民意思を反映しておるがごとき受け取り方においての御発言です。けれどもこの県会の定数が百二十人をもって頭打ちするという自治法そのものは、この新しい事態に備えて、少なくともこれは改正さるべきものだと思うのです。それがこれに出ておらない。こういうところに、リコールはどうするんだ、八百万からの人口で、リコールなんてたいへんではございませんか。その首長の選挙はどうするんですか。選挙の期間でもいまと変わりないです。公職選挙法の期間も何も現行と変わりない。これは七十万や百万の県会と現行の面積を基本としたこの公職選挙法の首長の選挙期間と、今度の非常に広大なる地域ができ上がった後とは事情は大きく変わっておるのだから、首長選挙の期間だって、これは相当大幅に特例を設けられて延ばさなければならない。回り切れないじゃないですか。だれを投票するんですか。どうして住民がどの人がいいということを選択するのですか。こういう点の民意反映の方法に全然触れておらない現行特例法、これは私は、非常に住民自治の原則を無視している、地方自治というような考え方はないのだ、こう考えざるを得ないのでありますが、そういう点について、この際法制局の部長さんの御見解を承っておきたい。
  43. 荒井勇

    荒井政府委員 都道府県議会の議員の定数をどのようにすべきか、この点は地方自治法の制定以来、かなりの年数もたっておりますし、それは立法政策の問題として検討に値しないかと言われれば、それは値する余地は十分にあると考えますが、その問題は法制局が直接担当することではないということを申し上げます。
  44. 太田一夫

    ○太田委員 しからば私は大臣にお尋ねしたい。そういうことでしょう。やはりいま法制局の部長さんが、いまの特例法を合憲なりと御判断なさるについては、民意の反映十分なりという前提がある。それに対して、県知事選挙をやるにしても、いままでと選挙期間は一緒だ、あるいは県会議員の定数もいまのままで一緒だ。そうすると、たとえば、大ざっぱに大体の試算をしてみても、大阪は現在百十人の府会議員の定数がありながら、これは十七人減じて九十三人、奈良は四十二人が三十人減って十二人、和歌山は四十六人のいまの県会定数が三十一人減って十五人、計百二十人ということになれば、現行百九十八人に比べてみますと七十八人も減るわけです。愛知におきましては、現行九十四人は、この新しい三県合併によって、百二十人でありますと、おそらく七十二人、二十二人減員でございます。岐阜は四十九人の現員を持ちながら二十五人と相なりまして二十四人の減、それから三重は五十三人が二十三人となって三十人減、こういうことで、百九十六人の現行議会定数に対しまして百二十人と相なりますれば七十六人減るわけです。しかもそういう場合に、この減り方というのが、大府県のほうはさほどではないけれども、たとえば奈良のごとく四十二人のところは三十人も減る。和歌山のように四十六人のところは三十一人、三重が五十三人が三十人、岐阜が四十九人が二十四人、格段に減ってしまう。三重県など非常に大きな面積を持っております。和歌山も同様でありますが、そういうところの民意がどうして県議会に反映するか。これは県議会議会制民主主義で、この国会とは違うんです。住民自治の立場から県議会は存在しておるのでありますから、ここのところに手を入れて定数はいかにするか、あるいは公職選挙法上の運動期間はどうするか、そういう方面まできめこまかな配慮がなければ、地方自治に対する尊重と配慮をしたとは言えないと思う。これは自治大臣見解を承っておきたい。
  45. 長野士郎

    長野政府委員 合併特例法におきましては、御承知のように八条及び九条におきまして、合併関係都道府県議会の措置を、暫定的でありますが規定をしております。これも一つ特例でございます。その場合に、一つ方式としては、一般の選挙を行なう。一般の選挙を行ないます場合には、地方自治法の原則にかかわらないで、その任期中に限りましては、従来の議会の定数の合計数をもって一任期をやることもできる。それから、九条におきましては、残任期間の最も長いものに相当する期間まで、現在議員の任期をそろえていく。したがって、短いものもその長いものまでそろえる。現在はこの関係のところは大体同じところが多いようでございますが、そういうこと、あるいは二年以内で協議して定める期間までは、現在議員を全部任期を延長する、こういうことを認めておりまして、そういう点での合併前後におきますところの議会住民との関係なり、旧地域との関係におけるところの住民意思の反映を十分にはかりやすいような措置は講じてあるわけでございます。それから、その後に至ってはどうなるかということになりますと、これはもう地方自治法の原則に返りますから、御指摘のございましたように、大きな人口になりますと、百二十人で頭打ちをするというのが現行の制度でございます。それは、ある一定期間後は、合併をいたしました広域の新しい府県というものは、なるべく一日でも早く一体性を確保するということが必要でございます。そうなると、なるべくは原則に立ち返ることが望ましい。現在東京都も百二十人で頭打ちをいたしております。地域が広大ということになりますと、北海道もずいぶん地域は広大でございます。これはやはりわれわれいろいろな条件が、地方団体府県の区域によって違いますけれども、まあ言ってみますと、現在程度の府県——人口にいたしましても、面積にいたしましても限界はあると思いますが、現在の最も大きな人口を擁し、最も大きな面積を擁している程度の府県というものは、府県というかっこうで自治体として構成をし得るということに考えていいのじゃないか。非常に広げていくということになれば、また新しい問題も出てまいるかもしれませんけれども、現にそういうかっこうで考えられておるわけでございます。根本論として、そういう人口の多いところを百二十人で頭打ちをしていること自体が問題だということでございますと、これは一般論として地方自治法議会の定数をどう考えるかという問題として考えなければならない問題でありまして、その点については合併特例法の問題ではない、こういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。
  46. 太田一夫

    ○太田委員 局長の答弁は、暫定法の暫定期間であって、せいぜい三年くらいの間のことでありまして、これはそれから先には及んでおらない。だから、それから先はいまの地方自治法の本則に戻るのだから、これは百二十人頭打ちでございます。しかたがないじゃないか、いまの法律がそうなっているんだから、こういうわけです。そのことばの間に、なるべく経費を節約するために、都道府県の県会議員の数を減らすことによって議会費の節減をはかりたいというような意思がちらりほらりとうかがえた。もしそうとするならば、そんなばかな話はない。そういうところで費用を節約して、安上がりの地方自治をやろうなんということは、とんでもない間違いじゃありませんか。広域行政を行なう、しかも今日の都市計画法に至りましても、あるいは今度できますところの農村地域の振興法等に至りましても、あるいは首都圏とか近畿圏とか中部圏というこの開発法にいたしましても、ともに非常に広域のいろいろな行政のあり方についてのビジョンが盛り込まれつつあるわけなんです。それを今後住民意思と離れないように、密着させつつ地域の発展をはかっていくためには、県議会が弱体化しておっていいということはありません。これは少数精鋭主義なんというような理屈で律するものではないと思うのです。そういう点で、北海道は面積が広いじゃないかとおっしゃるけれども、北海道の人口は八百万はない。だから、そのような理屈で今後百二十人頭打ちにするんじゃなくて、現行よりも、和歌山県だろうが、あるいは奈良県だろうが、三重、岐阜だろうが、半分以下に県会の定数を減らすというようなことをあたりまえだというところに、地方自治軽視の、住民意思の反映を期することを何か拒否しようとするかまえがあるんじゃないかと私は心配をするわけです。ここのところが問題だ。だから、そうでなかったら、そういうことを今後もこうするんだ、このことをどこかに盛り込まれておらなければいかぬじゃないですか。大臣、どうですか。
  47. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は長い間選挙制度審議会委員をしておりました。同じような議論がたくさん出まして、それは私、だれがどういう御議論をなさったか申し上げませんけれども、とにかく議席の割り当ては人口だけでは困る、地域という観念も入れなければ不公平だという考え方をなさる方もあるし、そうでないんだ、やはり基準は人口にあるんだ、人口で単純に割っていくのが一番いいんだという御議論もある。それぞれ委員の方々によって言い方は違うわけですけれども、しかし私は、これはいま細谷君が御提案になった問題とはちょっと切り離していただきたいと思う。私は別途方法はあり得ると思います。先ほどからまるでデッドロックに乗り上げてしまっておるわけなんですが、結局憲法九十五条にきめてあります地方自治本旨に反するではないか。つまり九十三条二項によって直接選ばれた議員が三分の二で賛成しても、都道府県合併問題につきましては、ここで三分の二以上の議決があっても民意を反映しているとは認めがたいとはおっしゃらぬけれども、そのことは憲法九十五条にいう地方自治本旨ということからかんがみて疑わしいじゃないかという御議論です。そこで私、先ほどこの議論はひとつお預け願いたいと申しましたことは、私が提案者でございまするから、これは絶対憲法違反ではございませんと言い切ってしまえば、また細谷さん、せっかくこういう御研究でもありますし、私も傾聴いたしました。ですから、ここでどっちが正しいんだということじゃなくて、最終は言うまでもなく、憲法違反法律をつくれば八十一条にありまするとおりに、最終決定は最高裁判所がやるわけでございまするので、ここはわれわれの言うこともひとつ認めていただいて、議論はあとへ残してもいいじゃないでしょうかということです。先ほど平行線だということを太田さんおっしゃいましたけれども、全く平行線のままで進みましたのでは、この法案は一歩も進まぬわけでございまするので、その点をよく御理解いただきまして、そしてこの問題はひとつお預け願いたい。政府のほうが正しいとか、細谷さんのほうが正しいとかは、いまここで差し控えて、前進していただきたいということをお願いしておるわけでございます。
  48. 太田一夫

    ○太田委員 いま大臣のせっかくの御答弁でありますが、大臣は万能の士でありまして、それ行政でこい、財政でこい、選挙法でこい、まことにどうもあれでございます。何でも知っていらっしゃる。それだけにあなたは、よく考えてみると、この法案にはいささか場当たりのきらいがあった。三年前には阪奈和合併の機運があり、東海三県合併の機運はあったけれども、今日になってくると、その一角も二角もくずれてきた。今日はいささかほこりをかぶっておるけれども、しかし、行きがかり上出さざるを得ないであろうというわけで、何とか特例法としてこれを通したいというお気持ちでありましょうから、そういうお話になったと思う。しかし問題は、細谷委員の申し上げておることも、住民自治の基本の体制の問題です。私は別のことばで申し上げております。県会の定数ないしは首長の選挙期間の問題等についても、これまた同じ発想から出ておるわけです。住民自治、地方自治本旨からいって、これはともに改めるということでなければうそじゃないか、住民自治を尊重しておるということばはうそではないか、こう私は申し上げておるわけです。明確なる御答弁がありませんと、そういう意見もあったけれども、大多数はこうでございますということではいけない、こう思うのです。したがって、その点についてあなたもなお検討をする必要がある。この問題を抜きにしておいて、そしてほかの問題を議論してくれとおっしゃっても、枝葉末節を論じても始まらぬじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
  49. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私が申し上げましたのは、細谷さんのお説に敬意を表して申し上げておるわけでございまして、提案者といたしましては、これは憲法違反では絶対ありませんと申し上げなければならぬ。そういう憲法違反法案をてん然として出すようなことはいたしません。これには、やはり自治省といたしましても、法制局といたしましても、政府全体として十分検討し尽くした上に出しておるわけでございます。しかし、いずれにしても、地方自治本旨に反するではないかという御指摘でございまして、これは一番根本的なことでございまするので、これはひとつ最高裁判所に持ち込まなければ、なかなか細谷先生も御承服にならぬと思うのでありますから、ひとつお預け願いたいと言ったまででございます。われわれとしては、疑わしいまま皆さんに御審議を進めていただきたいと申し上げておるわけではございません。先ほど大阪の議会の決議というものをお読み上げになりましたが、そういう事実であるなら、第一、いかに合併しようと思っても議会そのものが承服しないのじゃないでしょうか。全然成り立たぬということになるわけですね。ですから、私は地方自治本旨というものを考えました場合に、やはり住民が九十三条二項によって直接選挙した議会というものが、三分の二以上の議決をいたしました場合には、住民地方自治本旨にもとるものじゃないという考え方に立っておるわけでございまして、その基本的な一番大事な点が意見が合わないのはたいへん残念でございまするけれども、この点はここでどっちの筋が正しいということでなくて、ひとつお預け願って先へお進み願いたい、こういうことでございます。
  50. 細谷治嘉

    細谷委員 最高裁に持っていってきめてもらえばいいじゃないか、そんな国会が不見識なことはできません。国権の最高機関なんですから、疑わしきものは排除しなければならぬ。私は言いたいことがあります。先ほど法制局は何か立法政策なんという差し出がましいことをおっしゃって——立法政策、政策上の問題は国会でやりますよ。あなたのほうは法の番人であればいいのですよ。けしからぬことを言っている。けれども私は、もう人数が足りませんから質問はしません。代議制度ということで選挙ということなら選挙局長を呼んでください。選挙のことについて私は一つ聞きたいことがあります。たいへんな問題がありますから呼んでください。その上で質問をやりますよ。成立していないでしょう。
  51. 吉川久衛

    吉川委員長 この際暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  52. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  都道府県合併特例法案の審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、日時、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  55. 吉川久衛

    吉川委員長 都道府県合併特例法案について質疑を続行いたします。細谷治嘉君。
  56. 細谷治嘉

    細谷委員 先ほど私の質問に対しての法制局第三部長の答弁、それに関連いたしまして議員の定数、こういう問題が太田委員のほうから関連として質問があったわけでありますけれども、私はこの際、議員等を選ぶ選挙に関連して自治省の姿勢の問題、政治資金規正法等の問題もありますけれども、その問題でなくて基本的な姿勢の問題について伺っておきたいと思うわけです。  なぜかといいますと、先ほどの質疑応答の根底をなすものだからであります。選挙局長いらっしゃっていますか。「選挙」という雑誌が都道府県選挙管理委員会連合会から出ておることは御存じですね。
  57. 降矢敬義

    ○降矢政府委員 承知しております。
  58. 細谷治嘉

    細谷委員 その「選挙」という雑誌の二十一巻三号、したがって、昭和四十三年三月一日発行のものでありますけれども、それに自治省選挙局の課長補佐をなさっておる浮須誠という人がいらっしゃいますか。
  59. 降矢敬義

    ○降矢政府委員 おります。
  60. 細谷治嘉

    細谷委員 その浮須誠という課長補佐の「昭和四十二年度常時啓発のあり方」という論文がございます。論文といっては少し語弊がありますけれども、いわゆる解説記事のようなものがございます。この中にはたいへん重要なことが書かれておるのであります。いま明るい正しい選挙という形で自治省は年来努力されてまいったのであります。この解説記事の中にたくさんありますけれども、一、二具体的な例をあげますと、選挙は小選挙区制を実施すべきだ、こういうことが書いてございます。それから第二は、戦前に行なわれた翼賛選挙、その翼賛議員推薦運動というものを模範にすべきだ、こういうことが書いてあります。さらには、特定の県に、おおむね三市町村程度の重点啓発地区をつくっていこう、それには余分な金をやろう、こういうようなことが書いてある。それから、選挙をやるのは、選挙管理委員会だけではいけないので、そういう常時啓発をしたり、養成をした人たち、いま何か知りませんが、こういう組織が二十万人くらいあるのだそうでありますが、伺うところによりますと、それは大体特定の政党に所属するか、はっきりした支持者だそうであります。そういうものを中心といたしまして、常時選挙啓蒙活動という形で選挙管理委員会がやるべきものを常時啓発運動という形でやらせる、こういうことが書いてあるのであります。しかもそれは国の予算を使いました公明選挙推進運動の柱として推進するということであります。これはたいへんなことなんです。選挙局長御存じですか。
  61. 降矢敬義

    ○降矢政府委員 ただいまあげられました雑誌の論文は私はまだ読んでおりませんので、いまあげられたものは承知しておりません。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、お読みになったでしょう。
  63. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 雑誌のあることは知っておりますし、私も寄稿したことがありますが、その論文は読んでおりません。
  64. 細谷治嘉

    細谷委員 論文というより、まず解説的に書きまして、そうしてその次に「資料」といたしまして、「昭和四十三年度明るく正しい選挙推進運動の推進要領について」こういうことがずっと書いてある、これはおそらく自治省府県選管に通知したものでしょう。その前段としてこういうものも、これは府県選管に出されておるわけですね。市町村の選管が言っておるんですよ。一課長補佐が、小選挙区はどうのこうの、翼賛選挙でなければならぬ、議員の推薦は翼賛議員の推薦を学ぶべきものである、こういうことを言うに至ってはたいへんなことである。しかも選挙管理委員会のやるべきことを、啓蒙ということで選挙運動をやれというのですから、そういうことを示唆しているのです。これはたいへんなことですよ。かつて文部省の一官僚が、教特公務員のあの問題について言っておりますけれども、同じような意味においてたいへんな問題です。私の一々申し上げた点があるいは不十分かもしれません。必要があれば全部読んだらたいへんなことです。どういうことですか。
  65. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私は内容をつまびらかにいたしておりませんが、あとでよく熟読をいたしまして考えてみたいと思います。
  66. 細谷治嘉

    細谷委員 こう書いてありますよ。「運動に当って特に参考とすべきことは、戦前に行なわれた選挙粛正運動であろう。この運動は、昭和十年から十七年までの間、一大国民運動として展開されたものである。その運動の目標は、買収、供応等による腐敗選挙の防止等選挙の「粛正」にあった。」なかなかりっぱなことを言っております。「その運動の方法は、各市町村の選挙に当り、候補者の選出上注意すべきこと、例えば「定職がなく日頃悪いことをしている者は選挙しないようにしよう」と呼びかけるなどし、さらには、候補の推せん運動を大々的に展開する等であった。これが、後期に至って、大政翼賛運動の翼賛議員推せん運動に吸収されることとなったのである。」全くこれは翼賛運動だ。そして二十万人をやってそういうものを運動しようというのですから、これはもう全く法律違反です。選挙局長、いま私が読んだことで、これでいいと思いますか。
  67. 降矢敬義

    ○降矢政府委員 昭和九年ごろから民間における粛正運動が、いまお述べになったようなかっこうで展開されたことは事実でございますが、最後のほうに、その翼賛選挙に吸収されたというところは、私はそのようには理解されないものと思っております。(山口(鶴)委員「間違っているというわけじゃな」と呼ぶ)私はそのように理解しておりません。
  68. 吉川久衛

    吉川委員長 山口鶴男君の関連質問を許します。
  69. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、このことは非常に重大だと思うのです。先ほど細谷委員指摘されましたが、今村という文部省の前地方課長、当時は文部省の審議官だったそうでありますが、これが文部省が関係しております教育委員会月報の予定原稿を抜き書きいたしまして、これを六千部ばかり全国にばらまいた。その中に、教育公務員特例法に反対する者は、通常な読書力を欠くとか、あるいは精神鑑定医に回す必要があるというような文章を書きまして、そしてこれが文教委員会で問題になり、文教委員会はこのために約一週間審議がストップをいたしまして、当人であります今村審議官は頭をすって坊主になって、そうして大臣が、それでもいかぬ、委員会で正式に、与野党の間で相談をいたしました文章を読み上げて、責任者である本人に対してもきちっとした措置をとるということを、文教委員会でやっておるのです。大政翼賛会と同じようなことをやろうというのは、これは何事ですか。そういう文章を書いて——前例が文教委員会であるのですから、当然これは、大臣にしても、それからまた選挙局長にしても、この問題については、真剣に考えて対処すべきだと思うのです。大臣いかがでしょう。
  70. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私はそれを読んでおりませんので、何とも判断をいたしかねますが、いま細谷さんのお読みになった部分から考えますと、要するに買収、供応などを絶対的に戒めるということで書きましたものの中に、当時の大政翼賛会——書いた諸君もまだそのときに子供か赤ん坊であったと思うけれども、そのころの記録か何か読んで筆がすべったのかもしれませんけれども、それが頭をするかどうかに値するかということを、一ぺんよくそれを私見せていただきまして、その上で判断いたしたいと思います。
  71. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これは過疎状態ですよ。当然こういった重大な問題について大臣読んでいないならば、読む時間を与えましょう。そのかわり、その間は委員会を休憩して、当然、大臣なり選挙局長なり責任者にきちっと文書を読んでもらって、その上で大臣としての正式な考え方なり見解なり釈明なりというものを、当委員会でお聞きいたしましょう。だめですよ、これじゃ。
  72. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、いま審議中の法案と無関係なものとして言っているんじゃないですよ。選挙の問題は非常に重要でありますから、そういう自治省の姿勢なんだ、ここに書いてあるのは。そういうことでこれを申し上げておるわけです。切り離すことはできないですよ。
  73. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 大政翼賛会と申しますか、これはたしか昭和十六年にやった選挙でございまするけれども、私どもはそのときもうすでに投票権を持っておりました。その選挙は体験をいたしております。私がここへ出ます一期前の選挙でございますから、よく知っておるわけでございます。しかし、あれは戦時中の特殊事情でありまして、政党解消論まで起こった、それを背景にしてできた大政翼賛会という一つの組織でございます。それをいま持ち出して、大政翼賛会のとおりのことをやったらどうかなどということを、かりそめにも自治省の一角で、そういう声をあげようはずはないのでございまして、それは、大政翼賛会をまねるということは、そうではなくて、察しまするのに、選挙がやはり乱れておる、買収、供応などということを戒めるためには、そのときにやりました方法というものも参考にしたらどうかぐらいは書いたかもしれませんけれども、大政翼賛会を地でやろうなんということは、書いた諸君だって、当時子供であったか生まれておったかわからぬくらいなときでございまするが、そういうことはないと私は判断いたしますので、先ほど申しましたように、あとでゆっくり研究いたしますから、時間をかしていただきたい。
  74. 細谷治嘉

    細谷委員 これは大臣、大政翼賛会は過去のものだ——翼賛議員というものは追放された、それほど重要な問題です。それを、過去のもので知らなかったというのではなくて、これは私がいま指摘したように、金のかからないという理由で小選挙区だ、議員の推薦というのは、翼賛選挙のような、ああいう推薦の方法がいいのだ。町内会、自治会みたいなものに金をやって、そこを組織して、そうして常時それで啓蒙をやろう。それは何かと言いますと、一党一派に偏した組織、しかも選管を経ないで、選管でなくて、常時国民の血税によって選挙運動をやろう、そういう姿勢がありありとあらわれたこの論文ですからね、論文というか、文章ですから、これはたいへんなことですよ。こんなようなことを考えて、そして多数でありさえすれば、それでもう草の根民主主義だと考えられては困る。いまの大臣答弁では先に進めぬ。
  75. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は委員長にお願いしたいのですが、これも私議運に出ておりますから、議運で問題になったから申し上げますが、大蔵委員会で、大蔵省の専売監理官が、たばこを値上げするにあたって、大体たばこは毒なんだ、すぱすぱとたばこなど吸うとよろしくない、だからこの際値上げをすることは適当だというような暴言を吐いて、そうして大蔵委員会でもこれは問題になりまして、特にあの当時の、現在もそうでありますが、大蔵委員長の田村さんが、委員長として発言をして、こういう暴言を吐くことでは審議はできぬ、あやまるならばきちんとあやまりなさいというようなことでもって、委員長の裁断で処理をした事例もありますね。しかもそれがあとで運営委員会で問題になりまして、大蔵大臣が運営委員会に出席をして、この専売監理官の言動についてはまことに申しわけなかったというような陳謝をして、そうしてケリをつけたという事例も今国会にはあるわけです。  私は委員長にお伺いしたいのですけれども細谷委員もいま指摘しておりますような、事、大政翼賛会というような、大臣も言われましたが、戦争中の忌まわしいいわば記憶だと思います、議会政治の上からいって、日本の歴史における汚点だと思います。そういったものを、自治省の選挙局の公務員たる者が、公の雑誌に書くというようなことは、これは言語道断だと思うのですよ。当然私は、委員長として、こういう問題が提起された以上、やはり大臣が言っておるように、ゆっくり見て云々というようなことではなしに、こういう重大問題でありますから、今後の審議の進め方にあたってのお考え方というものをひとつお示しをいただきたいと思います。
  76. 吉川久衛

    吉川委員長 速記をやめて。   〔速記中止
  77. 吉川久衛

    吉川委員長 速記を始めて。
  78. 細谷治嘉

    細谷委員 私もこの雑誌を二日くらい前に読んだのです。たいへんなことが書いてある、こう思いました。しかし、課長補佐ということを確認されたんです。これは、書いた人がどういう真意でやったのか、これは政府委員じゃありませんから、私どもがここへ呼んでただす必要はありません。これは大臣なりあるいは政府委員のほうでただしてもらわなければいかぬ。同時に、これだけが県の選挙管理委員会連合会の雑誌に載っており、そういう形で国費による明るい公明選挙運動というものが推進されておるわけですから、たいへんな問題です、これは。ですから、これははっきりしていただかなければ先へ進めませんよ。
  79. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 何を書いてあるのか、その者のために弁解する気持ちは毛頭ありませんけれども、選挙のための常時啓発をいかにして行なうかということは、これは私が全責任を負っておるわけでございまして、たまたまそこに何を書いたか知りませんけれども、やはり課長補佐だとて、選挙権のある一有権者という立場もあるわけでございまするから、先ほど申しましたとおりに、その内容をよく調べまして、しかりおくところはおかなければならないと考えておりますので、それが自治省の姿勢であるととっていただくことは、私どもたいへん迷惑であると思いますから、そこらのところは十分御了承をいただきたいと思います。
  80. 吉川久衛

    吉川委員長 私から申し上げますが、細谷委員山口委員も、大臣がああ言われるのでございますから、大臣が読んで、そして検討をして、どのような措置をとられるかを委員長が聞いた上で、委員長としての態度をきめたいと思っておりますから御了承願います。
  81. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの問題、大臣からたいへん誠意あるおことばを聞きましたから、これは早急に——三月号に出ているわけですから、大臣としての責任ある処置をお聞かせいただかなければならぬと思うのです。私は、午前中から質問いたしまして、いま審議中の法律案の問題についても、どうしても納得できない、しかも大臣が、この問題については最高裁にまかせればいいじゃないか、こういうことばで、それ以上私どもを納得させるようなことについては一歩も出なかった。これはまことに遺憾であります。少なくとも国権の最高機関でありますから、憲法上疑いがあるならそれは明らかにしていただかなければならぬ。ただ、自信があります、これだけではいけないのじゃないか、説得力がなければならぬのであります。文部省の今村審議官のように、おれの言うことがわからないやつは精神病院に入れなければいかぬ、こうおっしゃられるなら別ですよ。そうじゃないとするならば、これはもう出発点でありますから、根幹でありますから、地方自治本旨というのは具体的に何なのか、こういう憲法上の問題でありますから、やはりどうしても納得しなければ先に進むことができないのじゃないか、こう私は思うのですよ。しかも、残念ながら、いまこの程度では、質問を続行することはできませんから、私はやめておきます。
  82. 吉川久衛

    吉川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時十四分散会