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1968-05-09 第58回国会 衆議院 地方行政委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月九日(木曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 大石 八治君 理事 奥野 誠亮君    理事 塩川正十郎君 理事 古屋  亨君    理事 細谷 治嘉君 理事 山口 鶴男君    理事 折小野良一君       青木 正久君    岡崎 英城君       亀山 孝一君    辻  寛一君       中屋 栄一君    永山 忠則君       野呂 恭一君    長谷川四郎君       藤田 義光君    太田 一夫君       河上 民雄君    三木 喜夫君       山本弥之助君    依田 圭五君       門司  亮君    小濱 新次君       谷口善太郎君  出席国務大臣         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         自治政務次官  細田 吉藏君         自治省行政局長 長野 士郎君  委員外出席者         専  門  員 越村安太郎君     ――――――――――――― 五月九日  委員木原津與志君辞任につき、その補欠として  三木喜夫君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  都道府県合併特例法案内閣提出、第五十五回  国会閣法第二三号)      ――――◇―――――
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についておはかりいたします。  ただいま沖縄及び北方問題等に関する調査特別委員会において審査中の小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案について、連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、開会日時等につきましては、両委員長で協議の上公報をもってお知らせいたします。      ――――◇―――――
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 第五十五回国会内閣提出にかかる都道府県合併特例法案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野誠亮君。
  5. 奥野誠亮

    奥野委員 第一に、現在の府県ができてから何年になるか、いろいろな数字が世に出ていますので、ただしておきたいのですが、少なくとも現在の府県区域が定まってから何年かと言う場合には、九十年の歴史を経てきていると言ったほうがよろしいのじゃないか、こう考えるのでございます。廃藩置県によりまして、数百にのぼった藩が廃止せられて県が置かれたわけでありますけれども、その企国的な配置によりまして明治四年に七十五の府県を数えておるわけでありますが、漸次整理されて明治九年には三十九に縮減しております。その後若干の増減が行なわれておりますけれども、しかし今日の四十数府県にとどまっておるわけでございます。ことしは明治百年でございますので、明治九年前後にいまの府県区域が定まったのだということになりますと、九十年をこえているという計算になるわけでございます。したがいまして、現在の府県区域が定まって以来九十年という言い方は正しいのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  その後行政単位には異動はございませんが、その間の交通通信経済社会文化発展は隔世の感を思わせるものがあるわけでございます。大都市を包括する府県にあっては、社会経済圏府県区域との間に乖離を生じ、適切に行政機能を果たし得ない実情になっていると思います。また、人口都市集中というような問題もあったりして、府県庁所在都市規模が充実してきた結果、府県庁所在都市府県とが競合関係に立っていたりしてしっくりいかないところがずいぶん多くなっている。かように私判断をしているわけでございます。  このような事情はありますけれども、しかし、とにかく府県が今日なお行政需要の質、量にわたる飛躍的な向上、増大にどうにか対処してきているということも言えると思うのであります。ということは、一面には、明治先覚の大英断を高く評価すべきである。他面には、また、われわれの時代において根本的な府県改革の問題と取っ組まなければならない、これが緊要の課題になってきている、こうも言えると思うのであります。ここらについて政府所見をただしておきたいと思います。
  6. 細田吉藏

    細田政府委員 ただいま御質疑の中にございましたが、明治四年に廃藩置県が行なわれました。その後府県の問題は幾多の変遷を経ておるのでございますが、大体何年だったかという点につきましては、明治九年――現行のとおりではありません、その後若干の変更はございますけれども、今日の府県制が確立されたのは明治九年であると私どもとしては通常考えておるわけでございます。その後若干の変更はございましたが、明治九年という時点であると、結局九十一年たっておるということに相なるかと思うのでございます。  ただいま質疑の中にもございましたように、その後日本国民生活状態文化状態あるいは経済状態が非常に変わってまいっておりますことは、この百年間の日本発達というものが世界に類例を見ないような形で行なわれておることは、これは私ども世界に誇っていいことではないか、かように思うわけでございまして、廃藩置県はこういう発達発展の基礎になったというふうに、私ども明治先覚の大英断に対して感謝しなければならぬ、かように思っておるわけでございます。  しかしながら、その後の発展によりまして、特にまた、交通事情等も激変をいたしておりますし、行政のやり方につきましても、いろいろ考えていかなければならぬ点が多々出てまいっておるのであります。そういうことでありますればこそ、広域行政につきましていろいろ世上学者皆さん方の御意見もございますし、また、累次の地方制度調査会答申等もございます。いずれにいたしましても、今日この府県制というものにつきましては再検討いたし、そして、ただいま御質疑のございましたとおり、これと取っ組まなければならぬ、こういう時点にまいっておるということははっきり申し上げることができると思うのでございまして、自治省といたしましても、また地方制度調査会といたしましても、これまでいろいろな考え方が行なわれておるわけでございまして、答申等も御承知のようにいろいろ出ておるわけでございますが、私たちは、少なくともこの機会に一歩でも二歩でも前進させたい、より根本的な解決への前向きの姿勢をこの際確立したい、こういうことで、今回この都道府県合併特例法案が提案になっておる、かように私ども存じておる次第でございます。
  7. 奥野誠亮

    奥野委員 府県について自主合併の道を開く今回の法案は、十年の時限立法になっているわけであります。このことは、府県区域については依然として国の立場を重視している、それに過ぎているという感じを持つわけでありますので、この点についてただしておきたいと思います。  戦前から都道府県廃置分合をしようとするときは法律でこれを定める、こうなっているわけであります。法律は国全体の立場から制定されるわけでありますし、同じ法規でも、地方立場で制定されるものは条例であることは申すまでもないと思うのであります。市町村は、戦前からも、今日におきましても、関係市町村の申請に基づいて合併を進めていけるという仕組みをとっているわけであります。戦前府県は国の出先機関的性格が非常に強かったと思うのでありまして、府県制という法律よりも地方官官制という大権命令のほうが重要な地位を占めておった、こういうふうに思うのであります。戦後、府県知事公選をはじめといたしまして、完全な地方自治団体に組織がえが行なわれたわけでございます。そのときに合併方式についても、少なくとも現行方式のほかに、府県自治体の側から合併の問題を進めていくという、この法案に盛られているような仕組み、これも加えられるべきものではなかったか、かように考えるのであります。府県発展をはかっていくためにはやはり合併の道を選ぶべきだという地域も多々あるわけであります。しかし、権能が与えられていませんと、自分の問題として真剣に、事合併の問題に関しては考えていかないということになってしまうわけでございます。自治団体になったのですから、発展の道が合併にあるとすれば、その問題にも自治団体の側で取り組んでいけるような制度改正を行なうべきではなかったか、かように年来考えておるのでございます。幸いにして今回自主合併の道を開く法案が提出されたわけでありますが、依然として十年の時限立法にされていますことは、私は理論的に割り切れない感じを持っておるのでございます。やはり府県というものについて国全体の立場を重視し過ぎる、重視することはけっこうでありますが、府県立場を軽んじ過ぎるということになりかねないわけでございます。この点についてのお考えをただしておきたいと思います。
  8. 細田吉藏

    細田政府委員 申し上げるまでもなく、いま提案しております法案は、特例法という名を持っておるものでございまするし、また、地方制度調査会もそのような形でやることを答申をいたしておりますので、こういう形で出しておるわけでございます。  ただ、ただいまの奥野委員の御質問は、地方自治法第六条の本則自体が、これがむしろ変わるべきものではないか、私もその点については実は同感の気持ちを個人的には持っております。市町村につきましては、ただいまの第七条ではっきりいたしておるわけでありまして、都道府県につきましても、国が法律できめるという一つの方法しかないということは必ずしも適当でないのじゃないか、かように実は存じておるのでございますが、一挙に基本的な制度をそこまで改正をいたさないで、これは地方自治体の府県自主性といいましょうか、そういう立場を尊重するということで、十年間ということにしたのでございまして、現行法よりは、その趣旨に対しまして前進をいたしておる、かように思うわけであります。  ただ、より基本的なもので解決すべきであるという御意見でございますが、十分傾聴に値することでございますが、私ども気持ちといたしましては、提案いたしました趣旨は、調査会答申にもございまするように、十年間これを実施しまして、その間における府県合併の動向、そういうものを十分考えまして、さらに恒久的な制度にいたすかどうかというようなことにいたしたい、こういう意味で、非常になまぬるいとおっしゃればあるいはそういうことであるかもしれませんが、何と申しましても三年、五年ということでなく、十年ということでいたしておりますので、私たちといたしましては、現在よりは地方自治立場都道府県立場を十分考えた上で提案いたしておる、こういうふうにお答え申し上げるわけでございます。これまでの状況よりは自治体立場を十分尊重するということにしたわけで、これではまだ不十分だという御意見はごもっともでございますが、十年間ということで、その間の状況を私たちといたしましては十分見てまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  9. 奥野誠亮

    奥野委員 現行制度に問題があるのだということを指摘いたしておるわけでございまして、また、それについては認識を同じゅうしているようでございます。要するに、府県というものが国の出先機関であり、府県区域を変えるという問題について国がイニシアチブをとって進めていくのであって、出先機関である府県イニシアチブをとって進めていこうなんということはとんでもないことだ、この考え方はわかるわけであります。従来はその考え方で律せられてきたわけであります。戦後完全な自治団体になったにかかわらず、依然として府県住民の側にイニシアチブを与えていないということは穏当でないのじゃないか。形は自治団体にしたけれども自治団体としてのわがままな発展は認めませんぞという態度が法律の上に残っているような感じがするので、この点を私指摘さしていただいたわけであります。  第三に、昭和二十六年の地方行政調査委員会議勧告は、府県人口おおむね二百万を目途として規模合理化をはかれと言っているのでございます。行政事務の再配分についての勧告でございますので、それについては器を整えることが先決だという感じを私は示しているのだ、かように考えるわけでございます。同時に、昭和二十六年から計算しますともう十七年もたっているわけでございまして、非常な変化が生じているわけでございます。昭和二十六年の地方行政調査委員会議行政事務配分に関する第二次勧告の中で、特に「都道府県規模合理化」という項目をあげておりまして、そこにこう書いてあります。「総合開発治山治水運輸等市町村区域をこえて処理しなければならない広域行政をより能率的に処理するためには、その規模は現在よりも大きいことが望ましい」こう述べまして、「当会議としては、人口おおむね二百万を目途として、藩その他の沿革にとらわれず、文化的、経済的、社会的に密接な関係のある地域をもって区域とし、広域行政を能率的に行うことができるように規模の小さい都道府県について、その合理化を検討することが適当であると考える。」こう述べておるわけでございます。  昭和二十六年といいますと、まだ敗戦の痛手がそのままになっている時期でございます。そのときから交通通信その他について格段の進歩があったわけでございまして、今日ではもっと高い基準があるいは生まれたかとも思えるのでございます。もちろん二百万という人口だけを基準として考えることにも問題があると思うのでございますが、かりに二百万の府県をとってみた場合、四十年の国勢調査について見ましても、七、八割が二百万以下になっているわけでございます。ということは、昭和二十六年のあの昔において、いまの府県については根本的な改革が必要になっているのだという指摘をしている、こう私は見てよろしいと思うのであります。同時にまた、行政事務の再配分、それを合理的、効果的にこなすためには、まず受け入れ体制を整える必要があるのだ、器の大小によって事務の盛り方も考えなければならないのだという配慮、行政事務の再配分を積極的に行なおうとするには地方公共団体地域的な再編成が必要だ、こう考えられていると思うのでございまして、今日行政事務配分意見が非常に活発になっているのですが、その前提として地方公共団体規模の問題があるのじゃないか。順序としてはそれから進められるべき問題だ。十七年の昔にそのことが指摘されていることをもう一ぺん思い起こしたい、かように考えるわけでございます。しかも昭和二十六年以後の経済社会交通文化等発展には目ざましいものがありますだけに、すでに過密と過疎の問題にわれわれは悩まされているわけであります。過密地帯にありましては、土地利用の問題でありますとか、水の問題でありますとか、住宅の問題でありますとか、交通の問題でありますとか、公害の問題でありますとか、その他生活環境整備をめぐる問題など、国民経済社会生活における重大問題が続出して、いずれも緊急な解決が迫られているわけでございます。これらはひとしく区域の問題を除外しては解決できない事態に迫られておることをわれわれもう一ぺん思い起こしたいのでございます。  一般的にも住民生活向上に対応して住民行政需要が質、量ともに飛躍的に向上増大してくる傾向にありまして、能率的、効果的に経済開発社会開発等行政遂行に当たる行政主体としての府県考える場合に、力の弱さを感ぜざるを得ないものが多々あるわけでございます。これらについての政府所見を伺っておきたいと思います。
  10. 細田吉藏

    細田政府委員 昭和二十六年地方行政調査委員会議の第二次勧告は、ただいま御指摘のとおりでございまして、その後の経過等もございますので、先に行政局長からお答えいたしまして、あとから私それについてまとめの考え方を申し上げたい、かように思う次第でございます。
  11. 長野士郎

    長野政府委員 御指摘がございましたように、地方行政調査委員会議におきましては、おおむね人口二百万で府県の再編成考えることが適当であるということを指摘をいたしております。その当時は町村合併府県合併、いずれも行政事務の再配分ということのために、その体制を整えるということを一つの大きな中心にいたしまして、全国的な再編成というような意味考え方中心にしておりましたので、器をまず整えるという考え方が強かったということが言えると思います。しかしながら、そのときの指摘におきましても、総合開発とか治山治水、そういう広域行政を能率的、合理的に処理するためには、その規模が必要だということでありまして、事務の再配分ということの前にもこのことが妥当することでございまして、最近の情勢はまさにそのような時期になっておるわけでございますので、そこで今日では事務配分前提として、器を整えるというより、今日の府県行政あり方そのものとして規模拡大ということをはかっていく必要があるということになると思われるのであります。しかしながら、府県がそういう意味で全国的な再編成という形でなくて、自主的に統廃合していく、そして、規模拡大をはかるということは、国、都道府県を通じますところの事務配分を促進するということにもこれは役立つわけでございます。方向といたしましては、調査委員会議勧告は、まず器を整えて事務配分するということで、全国的な再編成という一つの目標を示しておるわけでございます。今日、府県合併特例法案の場合には、自主的な府県合併を行なっていくということでございますけれども、その結果はやはり事務配分を促進するという方向に大体沿っていくものではないだろうか、このように考えておるわけでございます。
  12. 細田吉藏

    細田政府委員 大体いま行政局長からお答えをいたしましたが、昭和二十六年のこの勧告趣旨につきましては、ただいま御質疑にもございましたように、その必要性というのは非常に強まりこそすれ弱まるようなことはない。最近、行政の実態をいろいろ考えてみますと、どうしてもそういう必要がある、かように考えておるわけでございまして、もっとより根本的な地方制度改革というようなことも日程にのぼして、われわれとしては大体この勧告の線に沿ったような――二百万が適当であるかどうかという問題は別としまして、そういう趣旨に沿ったようなことを考えていく必要性が非常に強まっておる、かように思っておるわけでございます。ただ、そういう点が今回の提案したものではむしろ弱いんじゃないかというようなお考えも十分あると思いますし、また、そういう御議論が出る点につきましても、私どももちろん考えたわけでございますけれども、しかし、こういう方向に踏み出して、特に前段御指摘がございました府県自主性というものを強く考えてまいりたい。その辺をいろいろ彼此勘案した結果が今回のような法案になってまいっておる、かように存じておる次第でございまして、方向としましては、おっしゃるとおり私ども今後ともさらに引き続いて十分の検討をいたさなければならぬ。その際に大切なことは、やはり国が押しつけるということでなくて、自主的なものを尊重していく、こういう立場地方自治の本義であると思いますので、そういう点も十分尊重しながら考えていく、かように思う次第でございます。
  13. 奥野誠亮

    奥野委員 第四に、三十二年の地方制度調査会答申では、府県広域化して国の出先機関統合も主張しているわけであります。ところが逆に、府県事務が国に移され、国の出先機関が充実強化され、公社公団事業団が数限りなくつくられてまいってきておるわけでございます。府県総合行政の力が弱められてきておる。府県改革がおくれていけばこの傾向を阻止することは困難ではないか、私はこのような判断をいたしておるものでございます。  二十八年に町村合併促進法が制定されました。たしか議員立法ではなかったかと思います。自来非常な勢いで合併が推進されたわけでございまして、今日、この町村合併促進法あるいは町村合併前進に、大多数の人たち商い評価をしておる、かように考えておるものでございます。この当時から引き続いて府県改革の機運が十分醸成されておったと思うのであります。市町村も当然その順序だと考えておったようでありますし、国民の多くも期待しておったと思うのであります。そのような中にあって、政府から地方制度調査会府県改革についての諮問を発し、そうして地方制度調査会で数年にわたる議論をした結果、三十二年の答申になった、かように記憶いたしておるのでございます。その答申の中で「府県の間に近代的行政遂行上の必要な能力に顕著な不均衡を生じており、資源の開発、国土の保全等広域行政事務を合理的に処理するためには、現在の区域は狭あいに過ぎる場合が多く、更に、近代的な高度の行政能率的運営及び行政経費の節減の見地からも、より広域において行政事務を処理することが合理的であると考えられる。」こういうような前置きを加えまして、現行府県はこれを廃止し、国と市町村との間にはいわゆるブロック単位に、地方とかりに称する中間団体を設置すべきだ、こうしたわけであります。ただ、加えて、地方の長は、地方議会の同意を得て内閣総理大臣が任命するといたしておりました。これに対しましては強い反発もあったわけでございまして、結果的には、またこの答申には三、四府県統合という少数意見が付せられたわけでございまして、市や町村側答申に賛成し、府県は反対して、三、四府県統合論に同調しておったわけでございまして、同時に答申には参考として、地方区域に関する試案と、事務配分及び国の地方出先機関整理統合に関する試案とがつけ加えられておったのでございます。  後者には、農地事務局地方建設局等地方府に統合すべきだ、こういたしておったのでございます。しかし、あの答申の中で国民の多くの同調を得られない面があったりしたこともございまして、府県改革がおくれてまいりました。その中に、若干の例をあげますと、道路法改正されて、いままで府県知事が管理しておりました二級国道の管理権が国に移されたわけであります。あるいはまた、従来府県知事のもとにありました河川管理権が国に移され、河川法改正が行なわれたわけでございます。その他いろいろな問題が相次いでおります。これはやはりいまの府県のままでは水の有効な利用ができない、いまの府県のままでは、自動車がこれだけ激増した今日において、道路網の全国的な整備というものがはかられない、いろいろな国民のそういう希望が結びついている、ただ地方自治一点ばりでは防ぎ切れない事態になった、私はこう判断をしておるものでございます。  同時に、農地事務局地方建設局農林省建設省直轄事業担当機関であった性格から、農林省建設省の総合的な出先機関になってきたわけであります。全くの下請機関になってまいりまして、行政事務運営については府県中央各省との二段階から、府県と国の出先機関中央各省との三段階に複雑化してしまったわけでございます。その上に、特に名前をあげることは避けますが、公社公団事業団が幾十となく設置されまして、府県の力が十分でないから国として公団事業団を設けて取っ組まざるを得ない事態にあったわけであります。  このような経過、これを私は非常に心配をしておるわけでありまして、ただ地方自治確立だ、充実だということだけでは、現に国民の要望が十分に満たされない姿になっているのだから、いまのような変化が生じてくるのも私はやむを得ないと考えるわけであります。その結果は、一番大切な、国は縦割り行政を専門的にやっていくけれども、それを全部引き受けて地方公共団体が総合的に把握をして住民立場を十分に考えながら運営していく、そのいままでの仕組みがこわされつつあると心配をしておるのであります。あくまでも国は縦割り行政だけれども、結局は国民を対象にするわけだから、どこかのところで総合的に受けとめていかなければならないのであります。その受けとめ方が不十分にならざるを得ない。府県総合行政力というものが弱まっているわけであります。これは国民にとってふしあわせなことになるわけであります。このようなことから、私が当初申し上げましたような疑問を感じているわけでございます。これについての政府所見を伺っておきたいのであります。
  14. 細田吉藏

    細田政府委員 昭和三十二年に行なわれました地方制度調査会答申は非常に意欲的でありまするし、また、かなり大きな理想を掲げたりっぱな答申ではないかというふうに私ども拝見をいたしておるわけでございます。しかしながら、いろいろな事情からこれが国民の一部の皆さんからも反対がありましたりいろいろして実現をいたしておらないことは、私どもたいへん残念なことだと思っております。  そこで、いま縦割り行政の話が出ました。また公社公団等の問題も出ましたが、私は率直に申しまして、府県の範囲が非常に狭いということがただ一つの原因であるとは決して考えません。しかしながら、もっと別な、大きな政府としての考え方、これを根本的に検討しなければならぬ事態にまいっておる。各省がそれぞれ出先機関を設け、国の縦割り行政をどんどん強めていくという傾向、これは政府全体として考えなければいかぬ。ある意味では戦後のゆがめられたと申しても言い過ぎでないような状況ではなかろうか、かように思うのでございます。府県の範囲が狭いということは、そういうふうになることをさらに助長する大きな原因であった、こういうふうに実は把握いたすものでございまして、こういう点につきましては、何といたしましても府県の現在の範囲をさらに広域化するということと、そういう入れものをつくりますと同時に、政府の縦割りをどんどん進行していくという考え方自体をこの辺で修正をするという形に持っていかなければならないのではないか、そういう点につきまして、自治省としての今後の努力をさらにいたさなければならぬ、かように実は考えておる次第でございます。  私は、いつも思いますることは、いまお話の中にもそのようなことが出ましたが、たとえば首都圏整備法ができたと思うと近畿圏整備法ができる、そうすると今度は中部圏ができる、今度は東北圏か奥羽圏かというものを出そうじゃないかというような話もあるそうでございまして、こういうものが出てまいりますことそれ自体は、いまおっしゃったような趣旨のことがそこへそういう形になって出ておるのじゃないか。それじゃ首都圏や近畿圏がうまくいっているかどうかということになりますと、これは主管官庁の問題その他いろいろな問題がありまして、必ずしも当初考えられておったようには順調にいってない。私どもは、どうもそこらに非常に大きな今後残されておる問題があるのではないか。府県の範囲を拡充しまして、もっと一般行政としての、また地方自治の本義を生かすような方向に持ってまいりますならば、もっともっといわゆる圏と称せられるようなものが充実して、いろいろ施策ができるのじゃなかろうか、かように実は考えておるわけでございます。  いろいろ足りない点は事務当局からさらにお答えを申し上げることにいたしたいと思います。
  15. 奥野誠亮

    奥野委員 第五に、三十八年、四十年と地方制度調査会からこの問題に関連する答申が出ているわけでありますが、過去の考え方からはかなり変化してきていると思うのであります。政府も、三十二年の答申に盛られたような方向ではなしに、府県市町村との二重構造、これはやはり必要だ、適当だ、こう考えられているのじゃなかろうかと思うわけであります。自然また知事の選任方法、これはさしあたりこれでいいのじゃないか、こう考えておられるのじゃないだろうかと思うのでありますが、この点についての考え方をただしておきたいのと、今日広域行政立場からだけ府県合併論が出ているわけじゃありませんけれども広域行政の処理方式としては、やはり究極的には関係地域一つ世帯の自治団体になることではなかろうか、こう考えるわけでございますけれども、これらについても政府考え方をただしておきたいと思うのであります。  三十八年の地方制度調査会行政事務配分に関する答申でこう書いております。「社会的、経済的に密接な関係にある都道府県が自主的に合併することは、都道府県広域地方公共団体としての行政能力を充実強化することになるので望ましいと考え、その実現を期待する。」ということであります。  さらにまた、四十年の府県合併に関する答申、これが今回の法案の基礎になっていると思います。さらにこれをふえんして、「府県性格及び府県市町村との二重構造は、これを変更しないものとする。」こう述べまして、さらに「広域行政処理の要請は、ますます増大しつつあるが、府県合併は、府県区域をこえる広域行政の、より合理的かつ効率的な処理を可能ならしめるとともに、広域地方公共団体としての府県の自治能力を充実強化するために、効果のある方法である。」、こう主張しているわけであります。  ここで二つの問題について、先ほど申し上げましたように所見を伺っておきたいわけでございまして、府県性格変更考え方は、地方制度調査会の中で著しく後退してまいった、こう判断されるわけであります。具体的には、知事の選任方法の変更は、いまのところ政府でも企然考えていないだろうと思うわけでありますけれども、それを明確にしておいていただきたい。  同時に、今日市町村の側から、府県廃止論も出ておりますが、やはり府県市町村との二重構造、これは必要じゃないだろうか、こう考えるわけでございまして、相関連する問題でありますが、この点についてただしたいのでございます。  もう一つは、広域行政の処理方法でございます。  地方自治法の中に、一部事務組合でありますとか、事業団でありますとか、協議会でありますとか、数限りなくと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、いろいろなことが法律に書かれているわけであります。また、一部事務組合なり協議会なりを連合とかあるいは何とか適当な呼称をつけます。これも自由にできることだと思うのであります。しかし、基本的には一つ自治団体になってその内部の利害の調整を一つ世帯の住民にゆだねることによって解決をしていく、そういう行き方でないと、根本的には解決をはかっていくことができないのじゃないだろうか、かような考え方を私個人は持っておるものでございます。たとえば、山があれば従来では府県境であります。土木技術も発達しておりますから、山をくり抜いて道路をつくることは至難のわざではございません。むしろこの山を利用して、山はレクリエーションセンターにしていく、山の向こうは工場地帯にしていく、山のこちらは学園地帯、住宅地帯にしていくというようなことが現実に必要になってきているわけでありますけれども府県を異にしている限りはこれはとてもできないことであります。一つ府県になって初めて可能になってくるのじゃないかと思うのであります。あるいは、川があれば府県境になっております。しかし今日では、地勢にそんなに問題があるわけじゃなくて、より以上にその水をどう利用するか、利水のことが重大問題になってきているわけであります。川が両府県にまたがっている、上流と下流とで府県が違っていると、ダムをつくって効率的にこの水を利用しようとしても、上流県が水没地帯になって下流県が利水地帯になるというようなことでは、とてもこれを解決していくことはできない。事務組合をつくろうと、協議会をつくろうと、解決していくことはできない。しかし、一つ世帯になりますと、同じ一つ世帯の住民なんだから、利害いろいろあるけれども、まあがまんをしようじゃないかということも私は可能になってくるのじゃないか、こう思うわけであります。広域行政考えていきます場合には、一つ世帯の住民に利害の調整をゆだねるという態度、これが非常に大切なことだ、かように思うわけでございます。こういう問題、住宅の問題、交通の問題、公害の問題、その他、生活環境をめぐりましてたくさん生じてまいってきておるわけであります。そういうふうに考えますので、いま申し上げました二つの点を中心にして所見をただしておきたいのであります。
  16. 細田吉藏

    細田政府委員 御指摘のように、昭和三十二年の地方制度調査会の案では、長を任命制にすることが考えられておりまして、この点につきましては後退と申しましょうか、地方制度調査会も最近は非常に変化がまいっておるわけでございます。自治省といたしましても、現在府県合併を推進しようといたしておりますが、その長につきましては、選任方法の公選制度、これを変えるという考え方は現在持っておりません。これは私ども政府といたしましては、やはり残しておくべきである、こういう立場をとっておるわけであります。  なお、国、都道府県市町村という三段階を改めて二段階にするというような意見もないわけではございませんけれども、これも現在の時点におきましては政府としてはとらない。あくまでも三段階制のほうが日本の現実の行政に合っておる、かようにすら考えておる次第でございます。  広域行政必要性につきましていま幾つかの例示もございまして、全くそのとおりと思います。現在までも、地方制度連絡協議会を新設強化して、そしてこれを活用していただくとか、あるいは事務組合等によります各種の共同処理の方式を活用いたしますとか、あるいは府県連合、府県合併、こういうようにいろいろあるわけでございますが、究極的には、御指摘ございましたように、これらのものでは中途はんぱでございまして、やはり関係地域一つ自治体一つの世帯になることが一番いいことであり、望ましいことである、かように実は考えておるわけでございまして、直ちに合併に踏み切り得るというようなことができますならは、これは私は最もいいケースである、こう思っておるわけでございます。しかし、なかなかいろいろのいきさつや行きがかりもあるわけでございまして、直ちに行ない得ないというような地域につきまして、現実の問題としましては、協議をいたしますとか、あるいは相互に協調をしてまいる、あるいは事務を共同処理する等、広域行政に対する努力を払ってまいらなければならない、かように思うわけでございます。これもやはり究極は一体化をする、一つ自治体になるということに対する一つのステップといいましょうか、段階といいましょうか、そういうものとして考えてまいらなければならない、こういうふうに実は存じておる次第でございます。
  17. 奥野誠亮

    奥野委員 九十年前といいますと馬が唯一の乗りもの、かごで通ったという時代でございます。今日は、世界のできごとが数時間のうちにみんなにわかってしまう。電話が大体のところは即時に通話ができる。交通についても、道路が整備され自動車が発達してきている。全く格段の変化があると思うのであります。同時にまた、合併に伴って府県にどういう変化があるのか、こういうことについても必ずしも認識が十分でない面もあろうかと思うのであります。いろいろただしていきたいのですけれども、時間の問題もありますので、時間を節約する意味において、そういうような府県変化、あるいはまた府県区域拡大必要性、これをどのようにとらえているか、あるいはまた、その効果をどのように具体的に考えているかといったような問題について政府所見をただしまして、私の質問を終わるようにしたいのであります。  府県合併になりますと数府県の知事が一人の知事になっていく。それはよくわかるわけでありますけれども、それに関連して、公安委員会でありますとか、選挙管理委員会でありますとか、人事委員会でありますとか、監査委員会でありますとか、ずいぶん数があります。こういうようなものをひとつ一ぺん具体的にあげてもらったらどうだろうかと思うのであります。あるいはまた、いろんな府県の施設がございます。各種の試験もございますし、各種の指導機関もございます。今日の交通状態から考えますと、必ずしも全部残す必要はない、整理統合することによってほんとに役に立つ施設に切りかえられるという問題もあると思うのであります。自治団体でございますから、独立した世帯でございますから、どうしても世帯道具は全部そろえなければならない。小さな規模の団体では、いまの時代に役に立つ施設を整えるだけの力がない。力がなくても、とにかく世帯道具だから整えざるを得ないというような、まことに不経済なことにもなっている面も多分にあると思うのであります。こういうような点にも触れて私はお教えを願いたいと思うのであります。  同時にまた、各種の役職、部長の数にしても、課長の数にしても、かなり減ってくると思うのであります。三県一緒になれば、三分の一になるとは言いませんが、かなり減ってくると思うのであります。同時にまた、所要の職員数も私は減ってくると思うのであります。こういうようなところが私は職員組合の方々が反対をされる一つの原因になっているのじゃないだろうかという心配を持つのでございます。しかし、少なくとも、職員の首切りの問題がよくいわれるのでありますけれども、この法案の中にも、現在の職員についての身分を保障しなければならぬ、こう書いてあるわけであります。その限りにおいては、現在の職員の身分に関する限り何らの心配はないと私は思うのであります。ただ、こういうようないろんな部局が減ってくることが、自分たちの将来の発展の道が少なくなってくる、こういう心配を持たれているのじゃないだろうか、かような感じも持つのであります。それはそれなりにまたいろいろ救済の道を講じていかなければなりませんし、反面、もろもろの厚生施設を強化する、また職員の生活を多方面に考えていけることもあるのじゃないか、こう思うのであります。反面、住民立場考えていきました場合には、やっぱり大きな規模のほうが、必要な、有力な、有能な職員を確保していける。役に立つ施設を充実していくことができる。経済的、効率的に行政をやっていくことができる。いろんな利点が非常に大きく出てくるんじゃないだろうかと思うのであります。  いろいろこまかくお尋ねしてまいりますと時間がかかりますので、総括的に府県区域拡大必要性をどのようにとらえておられるかということを具体的に述べていただきたい。また、その効果をどのように考えているかということを具体的にお教えをいただくことにして私の質問を終わっておきたいと思います。
  18. 細田吉藏

    細田政府委員 御指摘のように、最近における社会経済の目ざましい発展に伴いまして、広域行政の合理的処理及び府県の自治能力の強化という観点から、府県区域拡大は時代の要請であると考えております。私どもは、先ほども申し上げましたが、府県合併等によりまして区域拡大が行なわれました場合には、具体的な点はあとから局長が申し上げますが、土地利用の問題にいたしましても、あるいは都市問題の解決等にいたしましても、いろんな点で大きな効果があるものと考えておるのでございます。まあ私ども歴史を見ますと、北海道に県があったことがある。北海道は都道府県一道として、あれだけの広域なところを北海道庁一つで管理をいたしておるわけであります。四国四県、九州七県よりも広い面積でございます。人口が当時は希薄であったということは事実でございましょうが、北海道の行政の実情を見ておりますると、これは非常に広いためにいろいろな補わなければならぬ点はありますけれども、しかしながら、現在の状況に照らして考えてみますると、やはり小さな府県が併存しておる状況よりは、北海道という一つ行政組織でやられておることによるプラス面のほうがはるかに大きく出ておるのではないだろうか、かように私ども実は考えるわけでございまして、そういう点から、いろいろございますけれども、大きく言いまして、私ども、現在の府県が狭過ぎる、これをより広域にすることの効果ははかり知るべからざるものがいろいろある、かように存じておるのでございます。  なお、職員の首切りとか整理というようなことについて心配があるのではないかというような御指摘もございましたが、そのような点は、私どもは心配は要らない。これは同じ行政を行ないますならば相対的に人数が少なくて済むことはむろん当然でございまして、一つの効果であるというふうに考えているわけでございますが、そうであるからと申しまして、行政がほんとうに住民立場に立ちますならば、まだいろいろやらなければならぬ仕事がたくさんあるわけでございます。そういうわけでございますから、これによって首切りの問題等は私は生ずる心配はない。これはむしろ行政をそれこそ簡素、合理化すると同時に、行き届いたものにするということに役立てることができる、かように存じておる次第でございまして、具体的ないろいろ御指摘の点は、先ほど申し上げましたように行政局長からお答えをさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、北海道について私の申し上げましたような気持ちでございまして、どうしても今後とも、単にこの法律案の問題だけでなくて、広域化につきましては絶えざる努力をいたさなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  19. 長野士郎

    長野政府委員 御指摘がございましたように、府県合併をいたしますと、行政機構というような問題以外に、あらゆる面、たとえば社会経済的な諸関係において相当な変化が生じてまいるということは当然であろうと思うのでございます。自治体としての都道府県が、合併によりまして府県の自治能力といいますか、行財政能力が強化され、そして広域行政に対する合理的であり、かつ効果的な処理がしやすくなる、これはもう当然のことでございます。そういうことで、府県が、先ほどもお話のございましたいろいろな広域的な見地に立ちましての地域開発計画というものを一体として策定をいたし、一体として処理をしていく、そして十分総合調整の実をあげていく、これはもう当然考えられることでございますが、それと同時に、府県の各行政機関、府県に所属する行政機関もございますし、そういうものも全部一つ統合されていく、しれがいまして、広い地域について一つの目で見ていくことができる、いままでは府県がそれぞれ分かれておりました関係上、数多くの目で見る、それも長所はございますが、やはり一つの目で全体をながめ回すということが各機関について行ない得るわけでございます。たとえば法律をもって府県区域をその区域あるいは地区として定めておりますものを見ましても、いろんな産業団体あるいは相互の共済団体でありますとか行政団体、経済団体、いろいろなものが府県単位にしてつくられております。同業組合的なもの、あるいは信用基金等の基金的なもの、あるいは協同組合的なもの、あるいは公社、その他あらゆるものが、現在では、社会経済地方一つの大きな単位としての府県というものを基礎にしてつくられております。それ以外に公共的な団体で申しますと、文化、教育団体あるいは社会福祉団体、その中には婦人団体とか青少年団体、あるいは労働組合の諸団体、あるいは身体障害者とか社会福祉協議会とかいうような団体、あるいは産業振興の諸団体、観光とか中小企業の団体でございますとか、あらゆるものが、自主的な任意団体がございますが、そういうものもすべて府県というものを地方中心として組織化されておるのが現状でございます。そのほか、衛生団体でありますとか、あるいは建設業界の諸団体、数えあげますと数限りもないと言ってもよろしいぐらいでございますが、これらの諸団体なり諸組織なりというものも、また現在の府県単位にした行政なり経済なり社会の流れの中で大きな作用を営んでおるわけでございます。こういうところが非常に強い形で府県行政の中にも反映されまして、ある面では府県自治体の自治能力を大いに強力にし、あるいは自治能力を伸ばすという点に役立っておるかもしれませんが、また同時に、いわゆる府県の割拠主義と申しますか、そういう面にも大いに役立っていることもまた間違いのないことでございます。こういうものがそれぞれ広域なものに再編成されていくということになりますと、人々のものの考え方そのものが非常に広域立場でながめていくという、広い視野に立つという大きな影響を物心両面において与えていくことができるのではないだろうかと思われるのでございまして、そういうことからいたしますところの広域行政能力、処理能力というものが、府県としても、自治体としても強化されます。また、それを受けとめる府県住民としても、そういう意味統合された広い視野の中で行政に参画をしていく、こういうことによって非常に大きな効果が出てくるのではないだろうかというふうに考えるわけであります。
  20. 奥野誠亮

    奥野委員 時間の関係があって行政局長もかなりはしょったんじゃないかと思うのですけれども、非常に大きな変化があり、経済的、能率的に行政を進めていく、関係団体のこともおっしゃいましたが、国の行政の上にも大きな変化が出てくるということを私は期待できると思うのであります。いずれにしましても、住民の側からそれを押し上げていける、それが今回の法律の大きな特色だと思うのであります。私はそれを政治家は可能にしていかなければならない、それがまたこの法律を成立させることだ、かように考えておるわけでございます。  いずれにしましても、なお足らないところがいろいろあるのじゃないかと思いますので、いま私が申し上げました点についてメモみたいなものを参考にしてお配りいただきたい、それを要望して質問を終わらしていただきます。
  21. 細田吉藏

    細田政府委員 ただいまの資料をもとといたしましてお配りをすることにいたしたいと思います。
  22. 吉川久衛

    吉川委員長 細谷治嘉君。
  23. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最初に、委員長に御質問いたしたいのでありますが、昨日、八日正午から開かれた自民党の衆院常任委員長、特別委員長会議に、特に佐藤総理が出席をされまして、いわゆる重要法案に全力を傾注して保守党らしい国会運営の成果をあげてほしい、こういうことを述べられまして、具体的に重要法案を佐藤総理があげられたそうでありますが、昨日のことでありますから、ひとつ委員長からその内容を御披露いただきたいと思うのであります。
  24. 吉川久衛

    吉川委員長 お答えいたします。  佐藤総理が常任委員長会議に出席されたことは事実でございます。そこで具体的にどの法案が重要法案であると指摘された事実はございません。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)
  25. 細谷治嘉

    ○細谷委員長 私の質問に対して不規則発言がありますけれども、これは新聞に書いてあります。首相は重要法案として教育公務員特例法改正案、学校教育法改正案、外国人学校法案の教育三法案、インドネシアの経済援助に必要な海外経済協力基金法改正案、行政機関の職員の定員に関する法律案の名をあげて、その成立を目ざす意向を明らかにしたといわれ、このためには他の法案が多少犠牲になってもしかたがないとの考えのようだと、こう書いてあります。そうしますと、委員長のことばよりも新聞のほうが少し具体的に書いてあります。委員長、もう少しざっくばらんにお答えいただきたいと思います。
  26. 吉川久衛

    吉川委員長 先ほど申し上げましたように、総理は具体的な法案を言われませんでしたが、国対委員長が、いま細谷委員のお話しになったようなものが重要法案であるということは申されました。
  27. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この新聞を読みますと、などとか等という字はないのです。きわめて制限されております。(「地方行政委員会は犠牲になっている」と呼ぶ者あり)地方行政委員会は犠牲になっているが、こういうような出席はそのとおり示しているのです。きのうの国対委員長会談の例で私もけさの理事会で申し上げたのですけれども、ほかの委員会に行きますと、総理があげた法案のところはちゃんと定足数が満ちておるのですよ。こういうところは定足数不足ですよ。私はこれは問題があると思うのです。どうですか委員長
  28. 吉川久衛

    吉川委員長 細谷委員に重ねてお答えいたしますが、国対委員長の言われたことは、細谷委員指摘された法案を重要法案である、それはぜひとも成立させなければならないとは言われましたが、他の法案を犠牲にしてもとは言われておりません。
  29. 細谷治嘉

    ○細谷委員 新聞にそう書いてありますからね。私はたいへん気がかりなものですから、言ってみますとたいへん重要なものですから委員長に聞いておる。委員長は、他の法案は多少犠牲になってもしかたがないと新聞に書いてあることは言ってない、こういうことで、総理が重要だと考えるものを、等とはつけなかったけれども例示したのだ、こういうことなんですね。
  30. 吉川久衛

    吉川委員長 総理でなくて国対委員長がそう言われたので、総理は抽象的なあいさつをされたものであります。
  31. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そこで、法案に入る前に「都道府県展望」の五月号というのがございます。この「都都府県展望」の冒頭に「第五十八国会審議をめぐる地方行財政の諸問題」、こういうことで都道府県合併特例法案についての記事が出ております。そこにはいろいろな問題点があるのですが、ちょっとお尋ねしたいのです。大臣でもいいし、あるいは政務次官でもよろしいのであります。  司会者からの質問として、都道府県合併特例法案が継続審議で今国会に引き継いでいますが、見通しはどうですか、こう書いてある。それに対して、「まずダメですね。というのは肝心の阪奈和と東海地区ですね。両地区の自主的合併を目ざしてこの法案を作ったわけだが、四十一年に提出した当時と比べだいぶ状況が変わっている。」こういうふうに言っております。私もだいぶ変わったと見ておりますが、大臣どうごらんになっておりますか。
  32. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 変わったという意味は、その必要性がますます強まっているという方向へ変わった、こういう考え方でございます。
  33. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは私は後段を読まなかったのでありますけれども、この記事とは全く逆の甘っちょろい観測だ、そういうふうに申し上げざるを得ないと思うのであります。  ところで、これにも書いてございますけれども、昨年の七月七日の新聞記事に、佐藤総理は地方行政連絡会議代表知事との懇談会で都道府県合併明治百年記念にやるんだ、こう言っていらっしゃるのです。この記事ばかりじゃありません。これは大臣どういう意味でしょうか。明治百年記念と都道府県合併というのはどういう関係を持っているのでしょう。
  34. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 地方行政連絡会議の九ブロックのそれぞれ代表者の方々と総理を囲んで懇談がありまして、私もその席におったわけですけれども、総理が明治百年記念で都道府県合併をやるんだといったようなことばはなかったと記憶しております。あるいは何かの話のついでにちらっと出たかもしれませんけれども、記念事業としてやるんだという認識は総理は持っておらぬと私は判断しております。
  35. 細谷治嘉

    ○細谷委員 「都道府県展望」にこう書いてあるのですよ。この「都道府県展望」に書いた記事は、そううそは言っておらぬ。ときどき少し勇み足のときもあったという記事を大臣みずから告白されたこともあるわけです。これには、「この法案の目下の必然性というのは明治百年だけといってもいいくらいだ。いま下からの盛り上がりは下火になっている感じだ。」大臣の観測と全く逆ですね。「たまたま佐藤総理が、テレビなんかで、明治百年に引っかけて、広域行政の一環として、都道府県合併すべきであるというようなことを言って、」云々と書いてあります。冒頭「必然性というのは明治百年だけ」だ、こう新聞記者は言っているんですよ。そして、新聞をちょっと読んでみます。朝日新聞の七月七日の記事であります。「地方行政連絡会議代表知事との懇談会を開いた。……会食のあと、正午過ぎから……首相は①府県合併は時の流れであり、民主的なやり方でこれを進めたい ②国道の整備が進んできたので、今後は地方道とくに市町村道の整備に力をいれたい ③過密、過疎地帯とも医師不足に悩んでいるそうだが、政府地方公共団体が力を合わせて対策を考えたい ④都市づくりは計画的にやるべき」だ。たいへんけっこうなことを言っているのです。そのとおりいっていないことはもう御承知のとおりであります。そこで、「府県合併の問題は桑原愛知県知事が「愛知は合併したいのだが、これに消極的な岐阜や三重の考え方もある」」こう言っているのですから、桑原知事も大臣が先ほど分析しておる情勢とは違った見方をしております。「口でいうほど簡単には行かないことを述べたのに対して発言したもので」云々、こう書いてあるのですよ。そうしますと、どうもやはり百年記念と都道府県合併と何か関係があるのじゃないか、こう考えざるを得ないので、ひとつ大臣、明快な答弁をいただきたい。
  36. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 それはおそらく総理の申した速記ではないと思いますが、えてしてそういう記事が外へ流れますので、私どもたいへん残念に思います。都道府県合併などということは記念事業でやるべき性質のものではありません。そんなことを総理が言うはずはないのでして、ただ、やはりさっきお読みになった記事の中にも「時の流れ」ということばがありましたが、私は同感でございます。何も百年事業でやるわけではないけれども明治初年に廃藩置県をやったのはそのときの人の見解でやったわけでございまして、それから百年の時の流れというものは確かにいろんな痕跡を残して今日に至っておる。ただいまの話の中に、交通機関の発達もありましたけれども、いまは農家の諸君だって、都会に住んで自動車で自分の耕地へ耕作に出かけるような時代にだんだん入ってきておるわけですから、集落の再編成の問題も起こってくるでしょうし、逆に過密地帯の場合は、東京都の例をとってみましても、昼間は東京都心に人間が集中しているけれども、夜になったらみな周辺に住んでおる、こういうようなことは明治初年には考えられなかったことです。私は、百年の時の流れというものは確かにたいへんな変化をもたらしたというふうに考えておる。ただ、いまお読み上げになったものの中にもありましたが、百年事業としてこれを指導すべきものではなくして、やはり民主的に行なわるべきものであるが、いま民主的にやろうとしたって、そういう道がないわけでございます。だが、もし地域住民がみな府県合併をしたほうが、広域行政を処理する上においても有利であるし、また希望する、地域ガバメント構成にそのほうが効果的であるという判断に立って合併に踏み切るという機運が生まれました場合には、政府はあえてそれを阻止する必要はないという考え方でございまして、ひとつそれをいいほうにおとりいただきたい。何か百年事業で強引にそういうふうな計画をやっているかのごとくとられますと、はなはだ迷惑するわけでございます。細谷さんも、腹のうちでは知っておられてそういうことにひっかけるのではないかと思うのでございますけれども、そういうことではないということは、私からはっきり申し上げておきます。
  37. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ひっかけてはおらぬので、これは百年記念事業なんということで都道府県合併を扱うなんというのは軽率しごくだ、こう私は思うのです。しかし、新聞に何べんも出て、私は昨年の朝日新聞の記事をここに持っておりますからそれをいま朗読したのだし、それから「都道府県展望」という雑誌には、その法案を出している必然性というのは明治百年だけだ、こう断定しておりますから、これはたいへんな問題でありますから、あえて大臣に御質問したわけで、関係ないわけですね。
  38. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 明治百年事業では決してございません。
  39. 細谷治嘉

    ○細谷委員 委員長、これは後ほどいろいろ質問いたしたいのでありますけれども、この問題の審議の過程におきまして、この問題は、法律はきわめてちゃちなものでありますけれども地方自治からいきますと、たいへんな、憲法上も幾多の問題点を含んでおりますから、ひとつ総理のこの委員会への出席というものも、いまの赤澤大臣のことばはことばでありますけれども、総理としてそういうことばが言われておるようでありますから、やはり総理の真意も確かめておく必要があろうと思いますから、適当な機会に総理にこの委員会に出席していただくようにお願いしたい。あらかじめお願いしておきます。  そこで、次の質問に入るわけでありますが、今日まで地方制度調査会が幾多の答申を行なってまいりました。その中で、地方制度の問題についても何回かにわたって答申もされてまいっております。そのうち何と何が法律になっておるのか、いま法案として国会に出されておるのか、これをひとつお答えいただきたいと思うのであります。
  40. 長野士郎

    長野政府委員 従来から地方制度調査会はいろいろ地方制度改革につきまして答申を行なっております。おもなものは、いま思い出しますと、たとえば特別区に対する首都制度関係事務移譲の問題でありますとか、あるいは、ただいま提案をしておりますところの府県合併特例法案関係でありますとか、そういうものが最近においてはおもなものだというふうに考えられます。それ以外に地方制度調査会答申しておりましたところの、先ほどもお話のございました地方制に関する答申、あるいは地方公共団体の連合に関する答申、こういうものもございますが、地方制につきましてはいろいろ議論がございまして、その当時もわずかの意見の差で、いわゆる二、三府県統合論という意見少数意見になったような関係もございまして、これはそういう意味のいろいろな異論があるということで、現在まで見送られておりますが、地方制度調査会自身は、その後地方制のような考え方をとらないで、府県市町村自治体の二重構造というものをあくまで堅持しながら、広域行政に対して取り組んでいく。そのためには府県連合なり府県合併なりという方向でものを考えていこうということでございまして、そういうような関係から府県合併特例というものは提案をされております。  それから、自治体の連合につきましても、たしか答申があったと思いますが、これは技術的になかなかむずかしい点もございますので、なお検討しておる段階でございます。  そのほかに、ずっと昔になりますと、教育制度、警察制度あるいは町村合併促進措置等につきましてもたしか答申がありましたし、あるいは地方公務員の共済制度、それから定年制の問題、行政事務の再配分の問題、これらについても答申がございました。その中で、定年制の問題もこの国会に提案をしておるというかっこうに相なっております。それから、行政事務配分につきましては、これはそれぞれの法律改正その他の関係で逐次多少ずつは実現を見ておるものもございますが、これは全部がそのまま実現をするというかっこうに至っておりません。なお、今後努力を重ねなければならないと思っておるのであります。
  41. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、もういまの地方制度調査会というのは、第十二次の地方制度調査会でございますから、少なくとも十三、四回の答申が行なわれておるわけですけれども、その中で地方制度の根幹に触れるような答申としては、三十二年十月十八日、先ほど奥野委員からの話もありましたが、「地方制度改革に関する答申」いわゆる地方庁案というものが外数意見、この中には少数意見という数県の合併というものが答申されておるわけですね。少数意見というのは三十三名のうち十二名だったというのであります。この地方庁案というのが三十三名中十六名、そして中立、すなわちどちらにも賛意を表しなかった人が五名、こういうふうにいわれておるわけですね。そうして三十七年になりますと、いわゆるブロックによる連絡会議についての答申が行なわれたわけですね。これは、いま連絡会議という法律が何年かにわたって審議されてできております。これもあとでどういう実動の状態かお聞きしたいのでありますけれども、そして三十八年に「行政事務配分に関する答申」が行なわれて、その中に、自主的合併は望ましいと考える、こういうことが言われた上で、地方公共団体の連合制度、いわゆるEEC方式というものがかなり具体的に、連合要綱というものもこの答申の中に織り込まれておるわけですね。これはあなたのほうは法律を出してはおらないわけですね。連合制度については出してない。そして四十年に出されましたこの「府県合併に関する答申」というのが、今度の法案の骨になっておるわけです。そしてこの四十年九月十日に行なわれました府県合併というのは、言ってみますと、三十二年の少数意見の数県の合併というものに類似したものなんですね。この辺の地方制度調査会の取り上げ方を見てみますと、私は、ずいぶん自治省というのはつまみ食いがお好きだな、こういうふうに指摘せざるを得ないのであります。つまみ食いでないのだという根拠があったら、お答えいただきたいと思います。
  42. 長野士郎

    長野政府委員 御指摘がございましたが、この府県合併特例法は、お話しのとおり地方制の答申がありました三十二年の答申の際の少数意見――先ほど二、三府県と言いましたが、三、四府県に言い直しておいたほうがいいかと思いますが、その少数意見は、この当時企国的に再編成を行なうかっこうでできたのが少数意見でございますが、その少数意見を、さらに地方自主性を重んじながら促進する形に取りまとめられたものと申してよかろうかと思います。そういう意味府県合併の推進というものが現在のような社会経済発展段階におきましていよいよ必要になってまいったということが、これはだれの目にも明らかと思われるわけでございますが、そういうことで問題は非常に古くから、さらにさかのぼれば、地方行政調査委員会議当時から、そういう考え方というものはあったわけでございます。それの一つの現在に置き直された形が現在の府県合併特例法案という形で出てまいった、こういうふうに考えてよかろうと思うのでございます。さらに、その過程を通ります間に、いわゆる広域行政体制についての共同処理方式というものをどのように考えていくかういうことについて、各段階において地方制度調査会もいろいろと検討を加えられまして、御指摘のございました地方行政連絡会議でありますとか、地方公共団体の連合方式というようなものも新しく研究が加えられて答申という形になったわけでございます。  そこで、府県合併という考え方は、最近の地方制度調査会答申をしたその答申だけに基づくものじゃございませんで、非常に古くからこの考え方地方制度調査会の中で研究され続けてきたと申してもよかろうと思うのであります。そういう意味府県合併特例法案というものが取り上げられてまいった。  それから共同処理方式につきましてはいろいろございますが、それは現実の問題として非常に機構が複雑になりまして、研究してもしっかりした結論をつけるためになかなか困難をいたした。だいぶ前に地方制度調査会から地方開発事業団という答申もございました。これも一つの共同処理方式でございます。これにつきましては、地方自治法にその規定を加えて、現在、制度としてはでき上がっておるわけでございますが、これも従来までの共同処理方式を何とか一歩抜け出す形に持っていきたいというのでいろいろくふうが行なわれましたけれども、やはり共同処理方式というものに一定の限界があるというようなことがございまして、地方開発事業団というものが地方に自主的に置かれておりますが、公社公団にとりかわって非常に合理的な開発事業の推進母体になるということがなかなか実現をしかねておるような状況でございます。したがいまして、共同処理方式のほうにつきましては、なお検討を重ねてまいりたいというようなかっこうでございますので、答申につきまして多少前後になったようなきらいがございますが、府県合併のほうは、昔から地方制度調査会が終始これに関与してきた問題でございますし、当時の地方答申の場合の少数意見というものは、大方の賛成を得た意見と私も思うのでございますが、それに若干の修正を加えた合併考えるということが妥当ではないかということで出された答申を成案にして提案をした、こういう形になっておるわけでございます。
  43. 細谷治嘉

    ○細谷委員 くどくどと述べましたけれども、私が聞いているのは、つまみ食いじゃないか。地方制度調査会がずっとやってきた――三十二年のは多数意見少数意見が併記されておったので検討を要したかもしれませんけれども、三十七年の連絡協議会方式というものは法律案にして、三十八年答申というものはほったらかして、そして、四十年の府県合併だけの問題を取り入れてきたというのは、確かにこれはつまみ食いじゃないかと、こういうふうに私は言っているんですよ。つまみ食いでないという論拠をひとつ大臣にお聞きしているわけです。
  44. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そうではないのでして、こういう時代に入ってきますと、やはり行政的にも財政的にも広域に処理をしなければならぬ必要性が至るところに出てきておることは、これは細谷さんもお認めになると思う。どうしてこれを合理的に処理するかということをいろいろ考えました結果、ちょうど私、前回、自治大臣をいたしましたときには、大体もう府県の連合方式でいこうということに重点をかけて議論が煮詰まっておりましたけれども、省内にもやはり議論がありまして、また、そういう合併論と連合論とが十分結論が出ないままに一方に進むということは、はなはだ危険であると考え、一年ばかり冷却期間をつくって、そして、さらに根底から再検討した。府県連合方式よりは、幾らか中途はんぱであるから、いっそ、もし理論的に合併を可とするという議論が勝つ地域については、それが可能であるという方向を選ぼうということに落ちついたわけでございます。そして、今回継続審議に回っておりますこの府県合併特例法という運びになったわけでございます。それは、いろいろつまみ食いとおっしゃいますけれども、単にあれこれいいところを拾ったということでなくて、ここに至るまでにはいろいろな紆余曲折があるわけでございまして、いまの段階では、この道を開くことが一番賢明だという考え方に立っておるのでございます。そういうふうにひとつ御了解願いたいと思います。
  45. 細谷治嘉

    ○細谷委員 どうしてもつまみ食いということをお認めにならないようですが、地方制度調査会でも、いま鹿児島県知事をやっている当時の事務次官であった金丸さんが、連絡協議会方式というものをやっている、府県合併も必要だ、連合方式答申がありました、これは一体どれが必要なんですかと聞いたら、みんな必要ですと、こう言っているのですよ。みんな必要であります。――それなのに、前のほうにあった答申法律に出さないで、そうして、あとで出てきたものをやったとなれば、これはつまみ食いでしょう。そうじゃないですか。つまみ食いのことは、私はまたさらに議論を展開したいと思うのですけれども、これはつまみ食いでしょう。つまみ食でないという絶対的なものがあればそれは別ですよ。
  46. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 つまみ食いなどという法律用語はないと思いますが、結果的に、いろいろな説がありましたものを検討の結果、これがいいということできめましたものは、まあ俗につまみ食いということばがありますから、使えばそれにはまるかもわかりませんが、私どもはいいところだけつまんだというつもりではありません。いいことをやればいい、こういうふうな考え方に立っておるわけでございます。
  47. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いいことなんでつまんだという大臣の御答弁なら私は理解するのでありますけれども、大臣、三億の巨費をかけて長年の間検討されてやられました臨時行政調査会の「広域行政改革に関する意見」、こういうものがございます。その中で、この地方制度調査会のいろいろな答申について検討が加えられております。その検討が加えられておる中に、こういうことを書いてある。「合併方式には、最初からその適用事例と効果に限界があるものといわざるを得ない。」こう書いてあります。いわゆる、いま審議されつつありますこの府県合併方式では、一体広域行政とはどういうことなのか、この辺も私は後ほど吟味したいと思っておるのでありますけれども、こういうふうに臨時行政調査会答申をしているのですね。合併方式というのはもうそもそもにおいて限界があるものなんだ。そして注として、四つの点をあげております。そして、それでは合併方式、いわゆる連合方式についてはどういうことを書いてあるかというと、「広域行政のあり方として国と協同する地方公共団体体制は、合併、連合事業団等現地の実情に応じて種々のものが考えられるが、連合方式は特に評価さるべきものといえよう。」こういうふうに臨時行政調査会答申しております。そして、はからずも先ほど大臣のことばの中に、この連合方式というのは真剣な問題として検討して、そして四十八国会かと思うのでありますけれども、連合方式法案が出されるというような、かなり信頼できる消息すらもあったくらいであります。ところが、今日依然として出てこない。そしてこれだけが出てきているということになりますと、大臣はいいからと言うのですが、臨時行政調査会は、いいばかりじゃないよ、限界がありますよ、連合方式もやはり特に評価される点があるのだ、こう言っているのですよ。金丸さんは三つとも必要だ、 こう言っているのです。当時の事務次官ですから、これはいまは鹿児島県知事だからおれは知らぬというわけにいきませんね。そう言っているのですよ。そういう点から見ますと、いいんだという理由が別のところにあるんじゃないですか。
  48. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 別にいいところって、何も隠しておるわけではありませんので、それが先ほど申しましたように、行財政を通じてやはり広域的にものを処理しなければならぬ時期になってきておりますし、その方式はどれをとったらいいのか、どの道を開いたらいいのかということにつきましては、金丸君は私の次官をしておりましたから、そのころもずいぶん議論はいたしました。大体明治百年から始まっておりますが、もっとも、こういう行政区画は、一つ川があると川を境にするとか、山の稜線を境にするとかいうようなことできめられたのじゃないかと想像できる面もあるわけでございます。しかし、今日の時期になってみますと、やはり行政、財政ともに合理的で、しかも一番住民福祉に沿うといったようなことを重点にして再編成する道を開くということは、私は決して悪いことじゃないと思う。そのために町村合併なんかもずっと進めてまいりまして、いまかつての何分の一かの町村数になってしまったわけでございます。都道府県の場合も、やはり全然動かす道はないのだということではなくて、地域住民がそのほうがいいという判断に立ちました場合には、それぞれ合併を選んでいく。その調査会の場合も、私も当初そう考えたわけでございますが、都道府県合併ということになりますと、ちょっと強い感じでございますので、かえってなかなかやりにくいのではないか、むしろ連合方式のほうがワンステップとしてはやりいいのではないかと思ったこともありましたけれども、先ほど申しましたように、全国を、またどの府県をどう合併させるということでなくて、いま必要だと地域住民考えておるところだけを合併できるような道を開くというだけのことでございますので、むしろ中途はんぱなやり方よりは、この際合併を希望されるところはその道を選ばれるようにしたほうがいいという判断でやったのでありまして、別に何か魂胆があったということでは決してございません。
  49. 細谷治嘉

    ○細谷委員 臨時行政調査会も、必ずしもこれがいいとは書いていないのですよ。EEC方式、連合方式も評価できると書いておるのに、そういうものは見向きもしないでこれに飛びついた。私のことばはきれいじゃありませんけれども、つまみ食いと申し上げたのは、これは大臣お読みになったかと思うのですが、「全国知事会続十年史」という本があるのです。これは知事会でありますから、やはり責任ある立場で書かれているものです。大臣、おっしゃいませんけれども府県合併問題についての原因が私はどうもここにあるのじゃないかと思うのであります。読んでみます。「府県合併については、始めに記したように第四次地方制度調査会地方答申」」――いわゆる三十二年答申であります。「「地方答申」において少数意見としての府県統合論が出されたが、」――いわゆる三、四県合併論であります。「近年におけるこの問題は具体的な立法化の過程に入っていることで重要な様相をおびてきている、といってよい。近年におけるこの府県合併論のおこりは、特に昭和三十八年に始まり中部経済連合会による」――中部経済連合会というのは、これは経済団体であります。「中部経済連合会による愛知・三重・岐阜の東海三県合併案、関西経済連合会による大阪・和歌山・奈良の近畿三府県合併案など、主として財界から出されてきたものである。」これは「府県政白書」の五二ページにもそう書かれております。「そしてその中心の推進力が財界であることは今日でも変りはなく、四十年十二月には経済同友会は合併促進の意見を提出し、四十一年十二月には経済団体連合会の行政改革特別委員会も、調査結果として合併提案をしている。」こういうふうに知事会の続十年史は書いてあります。これはうそですか、事実ですか。
  50. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 経済団体が、この合併問題に対してたいへん御熱心なことは認めます。たびたび陳情も受けました。しかし、経済団体だって地域住民には違いないわけでございますので、これが何も自分たちだけの利益をはかるために、こういうことで陳情を御計画になるなら、私はあえて積極的に取り上げはいたしませんけれども、そうではなくて、やはり地域住民全部がこういう方向を選ぼうというものを、あえて押しとどめる必要はない、都道府県合併なんといったら、法律的にも不可能だという考え方は捨てていただいていいのじゃないかということを言っておるわけでございまして、別にこういう団体の利益をはかるために法案を出すわけでは絶対にございません。
  51. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それは、大臣の答弁としてはそうでしょう。しかし、強い推進力になっておるのは経済界だということはお認めになったわけですね。  そこで、ついででありますから、全国知事会はどういう方針を持っているかということを十年史に書いてありますから、読んでおきたいと思います、「本会は」いわゆる知事会であります、全国知事会は「当面の合併法案に対しては、特に態度を明かにしてはいない。」いわゆる府県合併については賛成だとか反対だとか、態度をはっきりしてない、こういうふうに前置きいたしまして、結論として、そういう合併を推進する方法としては「適当な調査機関を設け、これによって実情に即する科学的調査を厳密に行い、合理的基礎の上に権威ある具体案を作成し、その上で関係住民の充分な理解の下に、真に下から盛り上る熱意と協力とによって、民主的にこれを促進解決する方向をとるべきである」、知事会はこういっている。この知事会の方針について、大臣どうお思いになりますか。
  52. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのとおり私たち考えておるわけでございまして、先ほどから申しますように、計画的に国のほうでこれこれの県は合併せよということで指導するわけでは決してない。やはり地域住民の意向を参酌して、大部分がそうしたほうがいいというお考えならばそうなさい、こういうことで考えておるわけでございます。
  53. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それならばもっと科学的な調査が行なわれるべきはずのものでありますけれども、いただいたのは、たいへん分厚いこれですよ。いつつくったか知りませんが、張り紙してあるのですよ。そうして、これが私どもの手に入ったのはおとといの話ですよ。刷ったのは、透き通してみますと、四十二年六月と書いてあるのです。これほど重要で、知事会ももっと科学的にやって下から盛り上げるあれをやらなければならぬというのに、せっかくできたこの資料は、私は完ぺきだと言っているわけではありませんよ、それと、法案が出てないなら別ですよ、継続審議になっているにかかわらず、法案が衆議院に出されておるにかかわらず、こういう資料を渡さないで、おととい渡すとは何事ですか。けしからぬことですよ。一体どういう態度なんですか。全く国会軽視ですよ。知らしむべからず、よらしむべしという、過去の官僚の姿勢じゃないですか。お答え願います。
  54. 長野士郎

    長野政府委員 資料につきましてのお話でございますので、私からお答え申し上げます。  先ほどの、知事会の非常に科学的な調査をいたしまして、綿密な検討の上で考えるべきだということとこの資料とは全く関係がないとは申しませんが、この資料は、府県合併の、いわゆる府県の自主的な合併イニシアチブがとれるような方向を示すということ、そういう道を開くという意味特例法、その特例法関係で作成をいたしました資料でございまして、知事会の申しておりますような科学的な権威ある調査と申しますのは、これは具体の府県がどう合併をするのが一番適切であるかということのために行なう、府県自体としてそういう合併イニシアチブをとりますときにつくるという資料、そういう科学調査ということを強調しておるものと私ども考えておるのでございます。したがいまして、この資料は、そういう制度の道を開くというために御参考にお目にかけるためにつくりました資料でございますが、そこで実は何回かつくり変えたわけでございます。最近におきまして、最近の資料は四十三年度決算等を待ちますために、四十三年度に入りまして新しい資料にいたすために多少手控えておったわけでございまして、その資料を整理いたしますいとまもありませんままにお目にかけるということになりましたので、こういう表紙のままで張りかえなどをいたしまして、まことに不手ぎわなものをお目にかけましたことはたいへん恐縮でございまして、おわびをいたします。   〔委員長退席、大石(八)委員長代理着席〕
  55. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは答弁にならぬ。四十二年にできたのならば、去年は総選挙、地方選挙後で、六月はまっさかりのときだったのだから、四十二年六月にできた資料なんですから、渡しておいて、十分に議員に審議のための勉強ができるような配慮をあなたのほうはすべきですよ。それを渡さぬで――一年後になれは新しい資料ができるのはあたりまえですよ。新しい資料をつけ加えも何もせぬで、一年前にちりの積もったやつを、大体色の白いのがきたなくなっているじゃないですか。こういうことは大臣いかぬですわ。ですから、あなたが知事会の言うとおりですと、こう言っても、あなたの部下にはそういう気持ちはないのですよ。たいへん遺憾に思うのです。しかし、これはそれだけをひとつ大臣に言って、今後そういうことのないようにお願いしたいと思うのであります。  そこで大臣、つまみ食いと私が申し上げている証拠は、さらにあるわけですよ。四十年の九月十日に第十次の地方制度調査会が、「行政事務配分に関する第二次答申」というものと「府県合併に関する答申」とを二つ行なったのであります。部厚いほうの「行政事務配分に関する第二次答申」については、何も出てないじゃないですか。何ができたというのですか。おそらく経費の伴わない事務等の整理をいたしましたとか、あるいは許認可事務等を去年の特別国会以来若干の整理をしたということでありますが、これには非常に重要な国と県と市町村との間の事務配分という問題が出ておる。これについては何もやっておらぬじゃないですか。つまみ食いでしょう。おそらく大臣が、いまちょうどこれに即応する財源のことを第十二次地方制度調査会でやってもらっておるから、それを待ってからだ、こういうふうにおっしゃるかもしれないけれども、そんなことはないですよ。これはやればやれるのですよ。やる意思はないということでしょう。だからつまみ食いだということですよ。そうじゃないですか。――私がもうあらかじめ答弁申し上げたのですが、そういうことではないですか。
  56. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 もう先回りして答弁までやられてしまったわけですから、もう言うことはないわけですけれども……。  つまみ食いとおっしゃいますけれども、やはり地域住民のためにいいことは、私はつまんで食ってもいいのではないかと思うのです。それで、その答申のことは私も存じております。大体それより先に、この臨調あたりの答申がなかなか実現が行き悩みになっておることは、たいへん残念に思っております。ですから、今月来月のうちに私は地方行政の大改革に手をつけてみたいと考えております。ただ、いま地方団体ではそれぞれ改革すべきことはしておりまして、これから先になりますと、御案内のとおりに、国の法令だとかあるいは補助金政策なんかにからんで複雑なことになっておりますので、そういう一つの壁を突き破って、やはり地方行政自主性と申しますか、いままでいろいろ隘路になっておりますことにメスを入れたいと考えております。制度調査会答申も、やはり行政措置としてやらるべきことは逐次やっております。何もやっておらなかったわけではございません。ただ、法律でやるべきものは、なかなかそこに関係各省との間にもやっかいな問題がありますので、手をつけかねておった面がありますことは御指摘のとおりでございますけれども、決して制度調査会答申を無視しておるわけではないわけでございまして、その点はひとつ御了承をいただきたいと思います。
  57. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、十二次地方制度調査会で財源問題についていま検討されているからということに藉口した自治省の消極的態度であろうと思う。私も、後ほどあるいはまたわが党の同僚委員から、この辺の問題は幾多ありますから、質問が出てくるかと思うのでありますけれども、ちょっと保留しまして、つまみ食いという問題についてもう少し申し上げてみたいと思います。  この「府県合併に関する答申」の中でも、たいへん重要な点が取り上げられておりませんね。わずか一〇ページに足りないこの「府県合併に関する答申」の中だけでも、合併の点だけつまみ食いしているじゃないですか。
  58. 長野士郎

    長野政府委員 府県合併答申と今度の府県合併特例法案とは、私どもはおおむね答申と一致した内容の法案になっておると思っております。ただ、法案作成の際にまたいろいろ議論いたしまして、関係当局ともいろいろ討議をいたしましたときに、多少ずつ理論的といいますか、現実的に調節をした点は、これはございますが、また同時に現実の府県合併ということがもっと進んでまいりますときには、この府県合併特例法あるいは答申の内容だけでは、なお十分ではない点もあるかもしれない。そういう点については、さらに現実に府県合併が進みますような時期には、さらにまた整備をしていくということも当然考えなければならないかと思っております。
  59. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは、私がこのたった四ページの合併に関する答申の中で例をあげますと、幾つかありますけれども、たとえば末尾のほうに「合併に関連する問題」ということで「府県行政水準は、できるだけ均衡がとれていることが望ましいので、合併と並行して開発のおくれている府県に対しその開発を進めるため、行財政上の施策を講ずることが必要である。」合併と並行してということですよ。そういうことならば、こういう開発のおくれているところに対しては、行財政上の――しかも過疎過密という問題がたいへん重要になっている段階で、開発行政が云々されている段階において、行財政上の施策を講ずる必要がある。しかも合併と並行してということですよ。やっておらぬじゃないですか。何やっているんですか。これは片手落ちですよ。大臣、お尋ねします。
  60. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そういう目的を達成するためには、やはり合併一つの手段であると私たち考えております。
  61. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうじゃないんですよ。合併をしますね。そうすると、府県というのはできるだけ均衡がとれておることが必要なんだから、他のほうの開発のおくれている府県に対しても、並行的に開発を進めるための行財政上の施策を講ずる必要がある、こう書いてある。何もやってないでしょう。
  62. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 この並行ということは、まだ海のものとも山のものともわからぬわけでございまして、ですから何かお話を聞いておりますと、この特例法が通りますとすぐにどの県かが合併になるというような印象を受けますけれども、実はこの道を開いて、さてこれからどうしようかということです。私は、具体的には中京の三県も、また阪奈和地区あたりも、それぞれの知事その他と懇談してみましたが、なかなかさあ合併ということになりますと、容易ではないと思うのです。   〔大石(八)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、ただいま資料の提出がおくれたことはまことに申しわけないところですけれども、そういうこともこれからみな検討して、そして合併に踏み切るなら踏み切ることになると考える。ただいま御指摘の点も、並行してということは、やはりまだどこもそういった形になっておらぬわけですけれども、そういう機運が出てくるんなら、やはり繁栄したところだけが二県、三県合併して、あとはほっておいていいというわけではございませんので、やはりその過程を通じて、落ち込むところがないようにしかるべき措置をとっていかなければならぬという判断に立っております。
  63. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いまの大臣の答弁は、たいへん重要な意味を持っているのです。この法律は出したけれども、当てはないんだ、やみ夜の中をカラスが飛ぶような法案だ、こういうことなんですね。法律をつくっておいて、もし自主的に合併するようなら、道だけはあけておく。しかし、その道を歩いてくれる人、走ってくれる人があるかどうかはわからないんだ。そんな法律なんですか。もしそんな法律なら、審議する必要はありませんよ。
  64. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そういう機運が生まれてきておるから、そういった地域合併ができるんだという道を開くわけでございまして、国のほうで計画的に指図するわけではないということを申したわけでございます。
  65. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それなら、おそらくいまの大臣のお考えは、東海三県なり阪奈和の問題をおっしゃっているんでしょう。合併の機運があると言われる大臣と、ほかの人たちが雑誌や何かに書いているのと、だいぶ分析が違います。情勢は後退した、こう言っているのですけれども、大臣はたいへん上昇している、こう言うのです。そこまで具体的に東海三県なり阪奈和なりが明らかになってきておるのなら、それに対応するものとして、合併と並行しておくれておるところはどうするのかということについての行財政上の施策を同時に出しておくべきですよ。出していないのですから、これはつまみ食いですよ。これはたいへん重要な点ですよ。過疎過密という問題がたいへん重要になっている段階において、しかもわざわざこの制度調査会開発のおくれている府県に対して、その開発を進めるため行財政上の施策を講ずる必要があると、こうわざわざ念を押しているのですから……。
  66. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 合併の道を開くことに急で、あとはほうっておくのはおかしいじゃないか、答申には並行してやれというふうになっておるが、その点つまみ食いじゃないかということを言っていらっしゃるのじゃないかと思うのでありますが、いままでとて過密過疎問題をどう解消するかということについては、国全体としていろいろ悩んで、いろいろな施策を進めてきた。産業の分散にいたしましても、またいろいろな総合開発の取り上げ方にいたしましても、国全体がそういう配慮でやってまいりましたけれども、そのうちの一部分が自力でやろうという考え方に立って府県合併に踏み切ろうという方がありました場合には、それを進めていただく道を開く。そのためにほかのほうはほうっておくというわけでは決してございませんので、その点はひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  67. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この点は、私は理解ができないのです。やはり自分の都合のいいところ、知事会のことばをかりますと、経済界の要望もだしがたく、合併の部分だけ取り上げていった、たいへんなつまみ食いだと、こういうふうに申さざるを得ないと思うのであります。  そこでこの答申にも書いてあるのですよ。いまのやつは(イ)の部分ですが、合併に関連する問題の(ア)に「各種共同処理方式の積極的な活用と改善を図る必要がある。」と書いてある。共同処理方式は、連合方式もそうですね。連絡会議方式もそうですよ。積極的な改善、活用をはかるというのでありますが、連合方式は出さない。連絡会議は一年に一ぺんか二へんくらいです。出席が悪い、半分くらいは代理人、こんな状態です。一年に一ぺんくらい連絡会議報とかなんとかいうちゃちな四、五ページくらいの雑誌を出して、連絡会議というものがありますよという形です、こういう状態なのです。こういうことについての何らの措置も考えないで、やはり合併する部分だけ取り上げたわけですね。これをつまみ食いと言わぬで何と言うかです。これはどうなんでしょう。もう連絡会議法で、連絡会議ども一部事務組合の方式で十分だとおっしゃるのですか。
  68. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 その連絡協議会も、これと同じように継続審議になっておりましたものを、この前私自治大臣をいたしましたときに通過さしていただいたわけでございます。そのときも、やはり連合方式でいくか合併方式でいくかということでいろいろ議論をいたしましたことは、ただいま申し上げましたとおりでございます。そういうことがなぜ起こるかと申しますと、やはり基本的な問題の一つとしては、国の行政が縦割りになっているということを始終御指摘になるわけでございます。その縦割りの弊害というものをどこで防いでいくかということについていろいろ頭を悩ましましたのは、やはり地方団体の自主性というものを極力尊重して、そして自由に地方行政が運べるようにということを考えて、それぞれの名案をつくったつもりのものが所期の運びになっておらぬということは、私は御指摘のような面があると思います。おとといも九州ブロックの代表者が集まって会をいたしましたが、結局あのときに私たち考えましたことが、実際は実っておらぬのじゃないか。まあ法律でたくさんの参加者をきめたものですから、膨大な会議になってしまって、何かセレモニーみたいなことになって実がないということ、実際の地方団体としては、やはり都道府県といたしましても、農林省の出先あるいは建設省の出先、ここらを小人数でみっちり話したら効果があると思いますね、ということも聞いたわけであります。これは最初私たち考えておりました、一々東京でやらなくとも、ここらでブロックごとに会議をやって、そうして総合的な開発をはかる道を開いたら、非常に地域のプラスになるというふうに私は考えておったのだが、なかなかそこまで運ばれておらぬようでございます。いずれにいたしましても、やはり私たちといたしましては、地方自主性というものを尊重して、これを生かすという方向へ運んでいくのが一番正しいと考えておりますので、ただいまの行政事務処理の問題も含めて、連合方式でいくのがいいのか、それとも合併方式をとるかにつきましては、ずいぶん長い間議論をいたしました結果、合併方式に踏み切ったほうが賢明であるという結論に達しまして、この法案を提案いたしたわけでございますので、ひとついい面もくんでいたただきたいと思います。
  69. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はいい面をくもうくもうと努力しているのですけれども、どうしても答弁からいい面が出てこない。わずか四ページの中に集約された制度調査会答申を土台にして法律が出されたということであるならば――富士山の美しさというのは、頂上が高いからじゃないのです。やはりすそ野があるから美しいのです。過密があるから過疎があるわけなんですよ。そういうことでありますから、せっかく視切に制度調査会がこの辺のことを心配されて出しておる。それから前のほうには、合併と同時に行政事務の再配分を徹底的にやるべきだということも書いてあるわけです。それは先ほどちょっと触れておきましたが、このあとの部分も合併に関連する問題として、あるいは府県合併に伴い、国は、国の地方行政機関等について、新府県区域を基礎として整理統合の措置を講ずべきだ。もしこの法律ができて十年の間に合併するようなところがあったならば、自治大臣はそういう整理統合について確信をお持ちですか。いわゆるいまの近畿ブロック、中部圏、そういうもので、すでに一つ開発計画があるのとかみ合っているところもあるのです。それに出先には農林省とかいろいろなものがあるのですが、自信おありですか。こういうものについて何らの構想も示されないと、富士の頂上のようなこういうかっこうならいいですけれども、ぽつんと棒が立ったように、一万尺の棒を立てようとしているところに問題があると私は申し上げているのです。もっと行政というのは整っておらぬといかぬじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  70. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 府県合併をやったから、いろいろな地方行政の面で悩んでおります懸案が一ぺんに解決するとは、私は考えておりません。しかし、ただいまの議論は、臨調の連合方式是か、合併方式否かといったようなことが中心になっての御質問と思っておるわけでございまして、私が申し上げることは、行政事務を連合あるいは共同処理方式でやる、と申しますよりは、とにかく単独の行政体をつくって割り切って合併にいったほうがすっきりすることは、間違いはないことでございます。ただ、そうなると、踏み切るということにはなかなか問題があると思うけれども、そこは地域住民の御判断で、とにかく一緒にやろうということになれば、あえて拒む必要はないという考え方でございます。
  71. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はつまみ食いということであるということをいろいろな例をあげて申し上げたので、どうしても大臣のことばでは納得できない。  そこで、質問を先に進めることにいたしますけれども、今度のこの法律は、広域行政を進めると同時に府県の力を充実強化しよう、そうして住民の福祉を増進するのだ、これが第一条の目的なのでありますけれども広域行政という問題は、この臨時行政調査会答申にも書いてありますが、行政区画の問題ではないのだ、広域行政には四つの原則があるのだ、こういうことをいっておるのですね。四つの原則とは何かというと、現地性がなければならぬ、総合性がなければならぬ、計画性がなければならぬ、協力性がなければならぬ、これが臨時行政調査会広域行政に対する四つの柱なんですよ。こういうものから見ていきますと、この臨時行政調査会も、府県合併ということは、先ほど申し上げたような一面の利益はあるかもしれないけれども、いろいろ問題点をあげられておるわけですが、大臣、その辺はどうですか。大臣は合併すれば万能だと言っているが、広域行政というのは、先ほど言ったように臨時行政調査会の四つの柱、これが重要なのだ、こういうことなんですよ。それは確認できますか。
  72. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 初めて一面いいところもあるとおっしゃったが、その一面というのを私たちは重大に評価いたしておるわけでございます。やはり協力とかいろいろ申しますけれども、単一行政機関でやれば協力も何もないのでございますので、スムーズにそういう移行ができるならば、そのこと自体が統一性、総合性ということで、すべていま御指摘地域における問題の解決になる、かような判断に立っております。
  73. 細谷治嘉

    ○細谷委員 こういう点からいきますと、いささか自治省はもがいているのではないか。財界から押されたということが一つと、各省から押されて、いろいろな点で自治省考えているような地方自治というものが他の省のほうから侵食を受けている。もっとも、自治省自体というのは昔の内務官僚かたぎを持っておりますから、他省以上に中央集権化の意識を持っていることは、これはもう何人もいなめないことでありますけれども地方団体の自主性を守るのだということで、他の省に対しては一生懸命がんばっておりますけれども、万策尽きたところで、やみ夜にカラスを飛ばすかのごとく、いまちょうど答申が出たからその部分だけに食いついた、こういうふうに批評できると思うのでありますが、私の批評は間違っていますか。もがき過ぎでいますよ。これは知事会の指摘のように、準備ができていないんですよ。
  74. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 決して自治省はもがいているわけでもございませんで、きわめて冷静に事は進めておるつもりでございます。冒頭から一貫して同じようなことを申し上げておりまするが、昭和四十三年ともなってくると、百年も前とはずいぶん趣は変わっておるわけであります。いまの都道府県の境界ができましたときとはずいぶん違っておるわけでございまして、それは人口の面でも、あるいはいろいろな産業構成の面でも、状態が非常に変わってきておる。しばらく以前には、今日の状態を予測した者はなかったはずだと思うのです。具体的には、たとえば地域住民生活の面でも、ちょっと先ほど申しましたとおりに、東京都に職のある人が千葉県に住んでおるとか、あるいは最近では、大阪につとめておる人が住む場所は公害の少ない空気のきれいなところがいいというので奈良のほうに行くとか、このために、いろいろな公共投資なんかは結局大阪の人のために奈良県がやらなければならぬとか、 いろいろなそういった問題が、水道の面でもあるいは宅地造成の面でもいろいろなことが出てきておる。こういうことは、しばらく前には予想もされなかった。いまそれが急激に進んでおることは、細谷さんもお認めになると思う。ですから、単に経済団体に押されたと言われるが、経済団体は都道府県合併でどれだけの利益があるのか、どんな計算をしておるのか、そんなことは私は知りません。陳情があったということだけは申し上げます。しかし、私は自治行政を担当する者として、地域住民の福祉をはかるにはいかにあるべきかということが中心課題でございますので、そういった面に集中いたしましてこの問題も扱っておるわけでございます。ひとつ誤解がないようにお願いしたいと思います。
  75. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は答弁を求めているわけではないのです。大臣、あとで開発行政との関連において――広域行政というのは開発行政なんです。  そこで、私はこの制度調査会のときの委員でしたから、私は阪奈和なり東海に行ったのです。ある大学の教授がこう言いましたよ。東海三県で、名古屋で都道府県合併に反対を主張する学者はもうテレビとかなんとかに出られないんだ、雇ってくれないんだ、言論界からはずされてしまうんだ、こう言っていますよ。これは圧力でしょう。どれだけ財界が熱を入れているかおわかりでしょう。単なる陳情どころじゃないですよ。これは参考までに申し上げておきます。それははっきり私どもの公式の席上でそういうことをお述べになったのですよ。大臣は、そういうあれはないでしょうけれども、これはたいへんな問題だ。  それだけ申し上げて、次に私は質問したいのですが、憲法九十二条の……。(「明らかにしろ、名前も言ってくれ」と呼ぶ者あり)明らかにしましょう、そういうことがあったかなかったか、じゃお答え願います。
  76. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そういう学者がいたということですか。何を明らかにするのですか。財界人が合併特例法に反対する学者をどういう扱いをしたか、そのことは存じませんけれども、大体学者やマスコミなどは、日本では強過ぎて、幾ら佐藤内閣の悪口を言ったってつぶすわけにいかぬわけです。財界だって同じことであろうと思う。そんなに学者だとか報道機関は弱々しいものではないと思っております。しかし、中には何かの意図があって、どういう機会かにそういったことをおっしゃった方もあるかもしれませんけれども、私どもはそういう一つ意見を圧迫して、その人が窮地に立ったという事例は知っておりません。
  77. 細谷治嘉

    ○細谷委員 明らかにしろという委員の間からの不規則発言がありましたから明らかにしておきたい。これは岐阜県において地方制度調査会が地元の人を参考人として呼んで事情を聴取した際に、私は、そういうことがあるということは事実かと言いましたら、参考人の名前は覚えておりません、当時の記録を見ればその参考人ははっきり出ておるでしょう、いまここで覚えていないだけでありますが、そういうことはございますとはっきり言っているのですよ。そういうことからいって、なみなみならぬ財界の姿勢であるということは、先ほど知事会の記録を読んでおわかりだろうと思う。ですから、私はここでいいかげんなものとして言っているわけじゃないということであります。  そこで、私は次に進めますが、憲法九十二条には「地方公共團體の組織及び運營に關する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と、こういっているわけですね。ですから地方公共団体の組織及び運営に関する事項については法律で定めるだけじゃいかぬのです。地方自治の本旨に基づくという大前提、その土台の上で法律はきめられなければならぬ、こういうことになるわけてすが、大臣にちょっと――長野さん、あなたは答えなくていい。あなたの書いた本に、たいへん悪い考え方なんだけれどもあなたの考え方が出ているんだから。大臣は地方自治の本旨というのはどういうふうにお考えなんですか。
  78. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 なかなか定義といいますか、概念というか、簡単にはいまここでちょっと頭に浮かびませんが、要するに、住民が自分たちを治めていく、地域を治めていくということが、簡単に言えば本旨じゃなかろうかと思う。
  79. 細谷治嘉

    ○細谷委員 住民が治めていくということは、住民が主人公だということですか。
  80. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのとおりです。
  81. 細谷治嘉

    ○細谷委員 しかし大臣、もう少し法律的に解明していただきたいのですよ。地方自治の本旨というのはいろいろ議論されておるところなんですよ。
  82. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 法律的にといったって、なかなか私は急に思い浮かびませんが、先ほど申しましたとおり、地域住民が主人でございますから、自分の地域内の公共的ないろいろな問題について相談合いで解決していくということが、私は地方自治の本旨であると考えております。
  83. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうすると、住民のことは住民がかかわらないということは、地方自治にはないということですね。そういうことでしょう。
  84. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 大体においてそのとおりだと考えております。
  85. 細谷治嘉

    ○細谷委員 長野さん、あなたが単なる地方行政局長ならそれおよろしいわけですが、あなたにはたいへん部厚い地方自治に関する権威ある本があるわけですね。その前文というか、序説か何か知りませんが、そこにあなたの見解が書かれてあるのです。いささか問題があるように私は思っているのですが、ちょっとここで言ってくれませんか、本の影響力は非常に大きいから。
  86. 長野士郎

    長野政府委員 地方自治の本旨という問題につきましては、いろいろな見方や考え方があると思いますが、基本的には先ほど大臣がおっしゃいました地域社会住民の自主的な決定によって、地域社会の公共の仕事を処理をしていく。そして、それによって住民の福祉の向上をはかっていく、こういうことだと私ども思います。  その住民自治を実現する方法といたしまして、地方公共団体というものが設けられておる。近代国家におきましては、その地方自治というものにつきましてのものの考え方が、国家以前に自治が存在するという考え方ではなくて、やはり地方自治というものも国の一つの統治作用の一環であって、地方自治も、その意味では国家の統治権の所産であるということは、これは合理的な説明としては当然だというのが多数の考え方だろうと思います。しかし、憲法はそれについて、いわゆる本来地方自治の本旨というものの考え方に即して、地方公共団体のことを考えます場合に、組織や運営について、そういう自治本来の考え方というものに徹して組織づくりをする、こういうことを憲法は要請しておるのだろうと思うのでございます。そういう意味で。地方自治を組織的、制度的に考えますと、住民の自治ということではございますけれども、近代行政を処理していくということの必要からいたしまして、住民が直接行政に参加するということは不可能でございます。したがいまして代表者を選び、地方団体という組織をつくり、それに自主的な財政権、人事権、組織権、立法権というものを持たしましてやっていく。そのために住民の代表者を選んで、議会あるいは首長を構成していく、こういうことで近代自治の制度の補完ができておるというふうに考えてよろしかろうと思うのでございます。  しかしながら、国と地方団体との間におきまして、地方自治は、国という中央政府に対して対立するという存在ではなくて、近代の行政は、中央政府が分担しますものと、地方公共団体、すなわち地方政府が責任を持ちますものと、お互いに分かち合いながら相互に協力をしていく、こういう体制が自治本来の姿でもあると思います。その国との関係のかね合いをどのように考えながら自治の自主性を認めていくかということが常に問題になりますが、社会経済の伸展に応じて、行政というものはそれぞれの時代に合うように考えていかなければならぬ。しかし、それを考える場合にも、地方自治の本旨という考え方に基づいて考えていくというのが、憲法の申しておる意味ではなかろうかと考えております。
  87. 細谷治嘉

    ○細谷委員 長野さんのいまの発言は、時代のときどきによって地方自治の本旨が変わるなんという印象のことばがあったのですが、そんなものはないのです。地方自治の本旨というのは日本国憲法そのものですよ。いろいろ学説があることはそのとおりであります。あなたのいまのことばでありますと、住民というもの、あるいは人間としての基本的なもの、こういうものは完全になくて、場合によりますと、倉石発言とは言いませんけれども、それは憲法の解釈そのものが、時代によって、情勢によって変わっていく、こういう印象を与えるようなあなたのことばです。これは危険です。あなたの本にもそんなことは書いてない。あなたの本に書いてあるものは、住民の固有の権利だという、いわゆる確認説、こういうものには立ってないけれども、そういう学説もあるけれども、国から承認されたものという学説があるわけですが、その承認説に近い立場をあなたがとっていることは私は認めます。しかし、いまのあなたのは、時代時代によって変わりますということになると、これはたいへんなことだ。そういう立場に立っているからそうおっしゃるのでしょうけれども、大臣のことばと少し違いますよ。住民が主人公だというのだから、一〇〇%住民固有のものだ、これは侵すべからざる基本的なものだ、こういうものに近い大臣の発言だったのですが、あなたのは完全に否定していらっしゃるじゃありませんか。どうなんですか。
  88. 長野士郎

    長野政府委員 私の申し上げたのが少し不十分であるようでございますので、補足さしていただきます。  私は、地方自治の本旨という考え方は、考え方としては一つの人類普遍の理念といいますか、そういうものがあるということで、憲法はそれに基礎を置いているというふうに考えます。しかしながら、現実の地方公共団体の仕事、国との関係における地方団体の任務、国の任務、こういうものは時代の進展、社会経済の情勢によりまして、それぞれ分担する分野というのが常に一定ではございません。それぞれの状況に応じまして変わってくるわけでございます。変わってくるけれども、その変わり方と国との関係をどう調節するかということに地方自治の本旨といいますか、そういう住民自治なり団体自治にささえられるという考え方に従ってその関係の調節をすべきだ、これが憲法の申しておることだろうと思うのでございます。  しかしながら、国との関係や国の任務や市町村府県の役割りというのは時代の変遷によって変わっていく。これは現に国会におきまして百幾つの法律ができ、新しい行政ができるということでもわかるように、常時変化してやまない地方自治の任務、地方団体の任務があるわけでございます。したがって、そういうことの関連で相互の関係というものはそれぞれ変わってくるというか、そういうことはあり得るけれども、その変わり方の中でも、地方自治というものは十分に貫かなければならない、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
  89. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はちょっと申し上げたのですけれども、これは岩波新書で、東京大学の辻という人が書いたものですが、この学説、これに書いてあることには十分満足してないのでありますけれども、こう書いてある。「「地方自治の本旨に基いて」という文言である。これは地方自治の原理に対する法律万能論に向ってなされた厳しい拘束条件と見てよかろう。それは単なる拘束条件というよりも、憲法そのものである。」こういうふうに辻さんは言い切っておるのですよ。この人も完全に確認説をとっているわけじゃないのです。確認説という面と承認的な面と両面ある、こういうのがこの人の学説でありますけれども、それでも憲法そのものである、こう言っておる。ですから、九十二条に書いてある「地方自治の本旨に基いて、」ということばはたいへん重要なことですよ、憲法そのものだというのでありますから。時代によって、解釈によって変わると言うが、憲法が変わらぬ限りは、地方自治の本旨というのは永久不変のものだ、そういうふうに理解しなければならぬと私は思うのですが、大臣どうなんですか。私は、法律はしろうとなんですけれども、基本的な考え方だけは明らかにしておきたいと思う。
  90. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 御指摘のとおりであると思います。
  91. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私の指摘のとおりだということでありますから、そこで次に進むわけでございますが、地方自治法というのはこの九十二条を受けてできた法律ですね。長野さん、そうでしょう。
  92. 長野士郎

    長野政府委員 そのとおりだと思います。
  93. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうしますと、地方自治法の第六条に「都道府県廃置分合及び境界変更」ということがあるのであります。第七条にも「市町村廃置分合及び境界変更」、こういうふうになっております。ところで、この第六条と第七条、都道府県市町村のはなはだしい違いは、都道府県の場合は、「都道府県廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。」こういうふうにはっきりしておるのです。市町村の場合は、「市町村廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を自治大臣に届け出なければならない。」こう書いてある。ですから、都道府県廃置分合、境界の変更ということは、自治法ではたいへん重要なものだ。言ってみますれば、都道府県の境界を変えるということは、この九十二条に基づく地方自治法の根底に関係する問題だ、こういうふうに理解しなければならないと思うのでありますが、いかがですか。
  94. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 正面から理論を言えばそういうふうに言って言えぬことはないかもわかりませんけれども、結局、冒頭細谷さんもおっしゃったように、地域住民そのものが主人公なのですから、地域住民が、たとえば何々県に所属しているけれども、いろいろな交通その他の便宜上、村民こぞって何々県に行きたいというものをあえて拒否するわけにはまいりませんので、そういう場合は、その規定の手続を経て府県の境界の変更もあるわけでございます。私どもといたしましては、地域住民がそういうふうな決意を持たれました場合には、境界変更ということが行なわれましても、地方自治法やまた憲法には違反するものではない、地方自治の本旨にもとるものではない、こういう判断を持っております。
  95. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そうなると、地方自治法六条に規定されておるわけなんです。今度の法律は、あてどもないような、合併するのかしないのかわからぬ、これは恋愛結婚みたいなものなんだから、法律をつくって窓口だけは細くあけておこうやということなんです。それもつまみ食い程度。それなら、この六条でやったらいいじゃないですか。いかがです。こんな法律要らぬじゃないですか。どうしてこんな特例をわざわざつくらなければいかぬのですか。大臣、どうですか。
  96. 長野士郎

    長野政府委員 六条は御指摘のとおり現在府県廃置分合につきましては法律をもって行なうということになっておるわけでございます。しかし、市町村につきましては、関係市町村が協議をいたしまして意見の一致を見ました場合には、申請に基づき都道府県の議会の議決を経て定める、こうなっております。現在の立法はこういうことでございまして御指摘のとおりでございます。これを考えてみますと、府県という地方公共団体市町村という地方公共団体は、憲法における地方公共団体という位置は同じでございます。したがいまして、法律で直接に廃置分合を行なうということをするのがいいのか、それとも、それぞれの関係住民の代表者である議会というものが、関係の公共団体の合併についてまず発議をしてやっていくのがいいのかという点は、はからずもこの地方自治法府県合併方式と市町村合併方式とがあらわしておりますように、二通りの方式を私ども地方自治法の本旨に基づいておるものとして考えておるわけでございます。したがいまして、これは法律論になり過ぎるようで恐縮でございますが、府県の場合に、そういう関係府県の議会が協議をいたしまして発発案をするという制度を開くということは、府県の場合と市町村の場合と、いまの合併手続から考えまして、この範囲のことは相互に許されるというふうに考えられておるのであろうというふうに思うのでございます。府県だけがどうしても法律でなければいけないということではなくて、法律で行なう場合もできる、しかしながら、法律でなければできないということでなくて、市町村合併手続と同じように、関係の議会で協議をいたしまして、議がととのって手続を踏んでいく、こういうことがあっていいと思うのでございます。また、その辺のところは、府県だから法律でなければいけない、市町村だからそういうことでいい、こういうことではないので、実は地方自治体は両方のこの範囲というものが立法可能の範囲のこととして一つの幅を持っておるというふうにも考えられると思うのでございます。そこで、今回の府県合併特例法におきましては、市町村合併方式に似たと言っては語弊がありますけれども府県イニシアチブによって合併の手続を進められる、こういう方式をとるということが考えられる。先ほど大臣が御指摘になりました、府県の境界にわたる市町村合併ということは、府県の境界にわたって市町村合併いたしますと、実質的には府県の境界が変わるわけでございます。しかし、これも市町村合併によって当然変わる、こういうこともございまして、それぞれのやり方というものは、いずれも立法可能な範囲であるということを示しているように私ども考えます。
  97. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いま、たいへん重要な点でありますけれども、約束の時間が来ましたので、次回にその辺の問題と、それから行政事務配分の問題、あるいは開発行政の問題等について質疑を続けたいと思いますから、ひとつ企画庁長官と行管長官の御出席をお願いしたいと思っております。  きょうはこれで打ち切ります。
  98. 吉川久衛

    吉川委員長 次回は、明十日金曜日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十四分散会