運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-03-18 第58回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十三年二月六日(火曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十七日  本小委員委員長指名で、次の通り選任され  た。       奧野 誠亮君    砂田 重民君       西岡 武夫君    古屋  亨君       村上信二郎君    村山 達雄君       毛利 松平君    吉田 重延君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       広沢 賢一君    武藤 山治君       竹本 孫一君    田中 昭二君 二月二十七日  村山達雄君が委員長指名で、小委員長に選任  された。 ————————————————————— 昭和四十三年三月十八日(月曜日)    午前十一時六分開議  出席小委員    小委員長 村山 達雄君       西岡 武夫君    古屋  亨君       村上信二郎君    毛利 松平君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       広沢 賢一君    武藤 山治君       村山 喜一君    河村  勝君  出席政府委員         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君  小委員外出席者         大 蔵 委 員 井手 以誠君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十八日  小委員広沢賢一君同月十四日委員辞任につき、  その補欠として広沢賢一君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員広沢賢一君及び竹本孫一君同日小委員辞  任につき、その補欠として村山喜一君及び河村  勝君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員村山喜一君及び河村勝君同日小委員辞任  につき、その補欠として広沢賢一君及び竹本孫  一君が委員長指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件(国際金融に関する問題)      ————◇—————
  2. 村山達雄

    村山委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  今般、皆さまの御推挙によりまして、小委員長に就任いたしました。金融並びに証券行政、幾多の問題が山積しておりますから、本小委員会の使命もまたきわめて重大なものがあると存じます。  つきましては、皆さまの御協力を心からお願いいたしまして、就任のごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 村山達雄

    村山委員長 金融に関する件について調査を進めます。  本日は、後ほど参考人として宇佐美日銀総裁出席されますが、まず、大蔵省より最近における国際金融情勢及びその影響について説明を聴取した後、質疑を行ないます。柏木国際金融局長
  4. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 国際金融情勢が、昨年の十一月のポンド切り下げ、以来非常に緊迫しているというか、いろいろな事態が起きていることは、すでに当委員会においてもたびたび御説明申し上げているところでございます。ことに先週の海外市場における金の動きドル不安というものは、もう新聞等において詳しく報道されておるとおりでございます。この問題に対処するため、先週土曜日、日曜日と二日間、ワシントンにおきまして、金プールを組織しております七カ国の中央銀行総裁及びIMF専務理事国際決済銀行専務理事が集まりまして、今回、この非常にむずかしい国際金融情勢に対処するための措置につきまして、会議をしたわけであります。  その結果につきまして、けさ東京時間で八時ごろ共同コミュニケが発表になっております。なんでございましたら、共同コミュニケ仮訳がございますので、一応お読みいたしましょうか。——これは役所が訳したものでございませんで、これは時事通信の翻訳でございますけれども、これをお読みすれば、大体今度の会議で何が行なわれたかわかると思いますので、一応ゆっくり読ましていただきます。重ねてお断わりしますけれども、これはまあ非常に急いで訳したものと思いますので、必ずしもすべて正確とは思いませんけれども、大体のところはこれでつかめると思いますので、一応お読みします。   ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、英国米国中央銀行総裁は三月十六日、十七日、ワシントン会議を開き、これら諸国が積極的に拠出している金プール運営を検討した。IMF専務理事国際決済銀行専務理事もこの会議出席した。   各国総裁は適切な財政通貨措置によってドル価値を守るのが米政府の断固たる政策であること、及び米国際収支の大幅の改善が高い優先目的であることを了承した。  各国総裁はまた米議会に承認された立法によってドル価値防衛のため米国保有金全部を使えるようになることを了承した。  各国総裁米政府通貨当局との取引において一オンス三十五ドル現行価格で金を引き続き売買していく方針であることを了承した。各国総裁はこの政策を支持し、それが為替安定の維持に寄与するものと信じる。各国総裁英国当局ができる限りやみかに同国国際収支赤字を解消し、大幅な持続的黒字の立場に移行するために必要なあらゆる措置をとる決意であることを了承した。   最後各国総裁は、大部分の欧州諸国政府経済安定に合致した国内拡大を促進し、金利上昇金融市場引き締めをできる限り回避し、すべての諸国国際収支の均衡に向かうのに役立つような条件に寄与する金融財政政策を進める意向であることを了承した。   各総裁国際通貨基金IMF)協定の諸条項に基づく義務に従って現行平価を維持し、為替市場における秩序ある状態を維持するために全面的に協力することに合意した。各総裁は今後当局の保有する金は通貨当局間の交換を行なうためにのみ使用すべきであると信じ、したがって総裁たちロンドン金市場、もしくは他のいかなる金市場にも今後金を供給しないことに決定した。さらに現存の通貨用金の在庫が予想される特別引き出し権(SDR)大綱の創設にかんがみて十分であるため、総裁たちは今後市場から金を買い入れる必要はないと考えている。最後総裁たちは今後通貨当局に対しても、民間市場で売却した金を補てんするための金売却を行なわないことに合意した。   各国総裁為替市場の不安定の一因となっている資金の移動を最小限にし、今後生ずるかもしれないこうしたいかなる移動をも必要に応じて相殺するため、従来より一そう密接に協力することに意見一致した。   国際通貨制度におけるポンド重要性にかんがみ各国総裁英当局が直ちに使用できるクレジットの総額(IMFスタンド・バイを含む)を四十億ドルにする追加便宜を供与することに意見一致した。   各国総裁は以上に示された政策に他の諸国中央銀行協力を要望する。  以上のとおりのコミュニケを発表いたしました。  こういう政策の合意によって、現行IMF体制のもとにあるいわゆる金ドル体制というものをあくまでも堅持しようというわけでございます。その結果としまして、一方では金につきましていわゆる二重価格制が出てくる。産業用金あるいはその他の私的用の金につきましては、必ずしも一オンス三十五ドル価格では売買されない。むしろ自由市場において形成される価格によってその価格がきまっていく、そういうふうになるわけでございます。  先週来、あるいはもう少し戻りまして昨年のポンド切り下げ以来、国際通貨体制についていろいろの不安がありました。そのとどのつまりが今度の会議の開催というふうになったわけでございます。  こういう形において各国が総力をあげて現行体制を維持しようという方向を打ち出したわけでございますが、これについて、意見と申しますか、感じとしまして一つ言えることは、アメリカも非常に努力するということをうたっております。それに対応して各国協力する。アメリカが何をするかということでありますが、この共同コミュニケにありますように、財政金融政策の適切なる運営、これは具体的に何をさすかというと、けさ電話で聞いたところによりますと、八十億ドルないし九十億ドル歳出削減を行なうということをいっております。これがかねて懸案になっております増税法案の通過にどういうふうに関連を持つか。金融政策につきましては、御存じのように先週の半ば、アメリカ公定歩合は〇・五%上がっております。今回の措置でさらに上がるかどうかということが先週来いろいろうわさされておりますが、けさほどまで聞いた話では、公定歩合がさらに上がるという様子はございません。目下のところ、財政政策をできるだけ活用するという線のようでございます。アメリカとしては、このように思い切った予算の削減増税によって国際収支健全化努力を重ねる。それを通じてドル不安を解消していこうという決意をあらわしております。  それを受けて西欧側諸国は、一つは、為替市場における安定のために努力する。米ドル不安に対して、米ドルをサポートするという決意をあらわしております。もう一つは、この共同コミュニケにありますように、各国とも拡大政策積極政策をとっていく。欧州諸国経済安定に合致した国内拡大を促進する、金利上昇金融市場引き締めをできる限り回避する、そういうことをいって、この際いわゆる黒字国としての責任を果たしていきたい。  これは、当委員会でも、たしか先週申し上げたと思いますが、現在の国際通貨不安に対処するには、一つアメリカ節度を守る必要がある。もう一つは、国際協力である。今度の会議にあらわれております結果というものは、まさにアメリカ節度を守る決意を示した。また、それを受けて西欧諸国現行ドルを守るということを、非常にはっきりと打ち出しております。この結果、海外市場においてどういうふうな反響があるか、これはまだ私ども全然情報を持っておりませんし、何とも申し上げられませんが、これはかねがねいわれておることが実現したというか、かねがねヨーロッパ諸国も要請しておるアメリカ節度ある政策というものが具体化されようとしております。こういう措置及び西欧諸国協力を得て、通貨不安は漸次解消する方向に進むものと期待しておる次第でございます。  簡単でございますけれども、以上で終わります。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)小委員 ちょっと質問があるのですが、かりに今度の正式な三十五ドルの金と、いま、やみドルといえばおかしいけれども、ほかの自由市場ではドルが、現在フランスあたり五十五ドルとかしているのでしょう。その開きがだんだん広がってくるのだから、どうせ一時しのぎをやることだから、幾らこんなことをやったって、どの程度まで——たとえば自由市場でもしも七十ドルになったらどうするかというような限界があるのですか、その点をひとつお伺いしたい。
  6. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 公的金が三十五ドルで動くということは、今度の申し合わせというか、これで確認されたわけですが、自由市場の金がどうなるかという点は、これは自由市場に出回ってくる金の需給によってきまるだろうと思います。問題は、需要のほうから申しますと、正常なる産業用というか、産業需要というものが幾らあるかという問題、これは別に世界的な公式な見積もりはございませんけれども一般的にいわれていることは、年間四、五百トンくらいの需要があるだろう。一方供給のほうは、今度のコミュニケにも明らかでありますように、通貨当局としては、大体現在の金のストックで十分で、これ以上買う必要はない。ですから、新産金は今後全部自由市場に回るであろうというふうに推測される。自由圏金生産年間千三百トン、うち南アフリカが千トン近いものだろうと思いますが、千三百トン、そのほかに共産圏の金があるわけです。共産圏金生産の数字は、全然発表されておりませんからわかりませんが、ソ連は、数年前まで、ロンドンで毎年二百トンないし三百トンずつずっと売っておりました。この二年来金を売っておりませんから、その後どうなっているかわかりませんが、一般の推測は、年に二、三百トンの生産があるであろうといわれております。したがいまして、金の生産は千五、六百トン、それに対応して、産業用と申しますか、具体的に工業に使うとか、あるいは歯医者に使うとか、あるいはいろいろ工芸品に使うとかいうふうな、いわゆる私的退蔵でないような形の需要というものが五、六百トン、でありますから、ここにスペキュレーションという要素がなければ、金の価格というものはそんなに上がらないはずだ。ところが問題は、いま佐藤委員からお話がありましたように、どんどん上がるだろうという期待があった場合に、そこにどういう需要が入ってくるか。ですから自由市場における金の価格動きというものは、一つ一般の人が金はこれから上がるであろうといって、いわば投機的に買い込む需要、あるいは私的退蔵としてしまい込んでおきたいために買う需要幾らあるかということと、一方では南アフリカとかあるいはソ連とかいう金を売りたい国、それが幾らの値ごろなら売るかという供給側要素と、両方の要素からきまっていくだろうと思います。したがって、自由市場の金の価格がいまどうなるだろうかという予想については、非常にむずかしいと思います。これは先週パリ市場が、ロンドン市場が閉鎖されたあとも一日開かれまして、そのときに出た相場が一オンス四十四ドルということでございます。そういう相場が長く続くのか、上がるのか下がるのかということが一つ。これはむしろ短期的には上がるというふうにいわれておりますが、長期的に見れば、そう長く続かないんじゃないかというふうなこともいわれております。私どもにその価格がどうなるかというお尋ねがありましても、ちょっとここで、こうなるだろうという見通しを立てることは非常にむずかしいと思います。
  7. 村山達雄

    村山委員長 それでは、政府委員に対する質疑がありましたら、宇佐美参考人に対する御質疑が済んでから、また逐次やっていただくことにいたします。  ただいま宇佐美日銀総裁参考人として御出席になりましたので、宇佐美総裁から、最近における国際金融情勢の変動の状況及びこれがわが国に及ぼす影響について、まず御意見をお述べいただきたいと存じます。宇佐美参考人
  8. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 御承知のように、昨年九月に国際収支改善のために公定歩合を上げ、そのほかの処置をとったわけでありますが、英ポンド切り下げ以降、海外経済情勢はだんだんきびしさを加えてきておることは御承知のとおりでありまして、それに対処するために、昨年の暮れから考えておりました公定歩合をさらに一厘引き上げることを一月早々実施したわけでございます。こういう情勢で、だんだん国内情勢慎重ムードが出てまいりまして、まず金融面もかなり抑制態度になってまいりました。また実際いろいろの点で、きわめてまだこれでいいという状態にはなっておりませんけれども、次第に引き締め効果は出てきておることは御承知のとおりでございます。  ところが、最近に至りまして、これはポンド切り下げが行なわれた後にすぐに起こったことでございますけれどもドル不安が強くなってまいりまして、それが金の問題に関係してまいりました。現在、ワシントンにおいて会議が最近行なわれたというところまで進んできたわけでございます。  海外経済情勢は、アメリカをはじめ若干上向いてきておりますけれども、またフランスその他西ドイツの経済は上向いてきておりますけれども、今後どういうふうになるのか。やはり経済情勢はきわめて流動的であり、ことにアメリカの場合は、今度の金プール会議の結果、確かに、もうすでに御報告があったと思いますけれどもアメリカ経済は今後きびしくなってくるわけでございます。したがって、非常にアメリカとの貿易が多い日本といたしましても、さらにきびしさが加わってくるのではないかと考えておるのであります。しかしいまのところ、きわめて決定的な判断をするのに不適当な時期でございますので、日本銀行といたしましては、いまの情勢をよく注目いたしまして善処をいたしたいと思っております。今度の処置は、まあいろいろ方法は考えられるわけでございますけれども、しかしいまのところ、これ以外の方法はまずないというようなことでございますし、ことにアメリカイギリスが今後国内努力によりまして国際収支改善につとめるということを強く表明しておりますので、これが効果をあらわしてくれば、今度の処置もだんだんと、いますぐには不安もございますけれども改善方向に向かってくるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、アメリカイギリス努力各国協力によって、このむずかしいときを過ごさなければならぬと思っておりますが、われわれとしましても、一方において国際環境のきびしさをよく見て、日本国際収支改善に一そうの努力をやらなければならぬ、その必要はさらにきびしくなってきた、かように思うのであります。  なお、私どもといたしましては、現在として、一ドル三百六十円という相場を堅持していくという点には従来から変わりございませんで、そういう意味からいいますと、今回の処置が直接日本貿易取引の上において支障が起こってくるとは考えておりません。ただ、貿易はいろいろ相手の国があることでございますので、そこいらの変化は十分注意しなければならぬ、こう考えておるところであります。  なお、あとは御質問によって……。
  9. 村上信二郎

    村上委員長 それではこれから質疑に入りますが、質疑希望者がたくさんございますので、この際、委員長からひとつお願い申し上げておきます。  発言しようとする方は、そのつど委員長の許可を求めていただきたいと思いますが、なるべく要領よく、簡潔にお願い申し上げたいと思います。  それから、宇佐美参考人にお願い申し上げたいと思うのでございますが、ずいぶん質問希望者がございまして、ことによりますと一時間というのが多少おくれるかもしれませんので、十分か十五分くらい、何とかひとつお願いいたします。  それではこれから質疑に入ります。只松祐治君。
  10. 只松祐治

    只松小委員 いま宇佐美さんからも、その前に柏木局長からもお話を聞いたのですが、それほど心配をしておらない、楽観的なお話のように承るわけです。腹の中はそうじゃないだろうと思いますが、ことばは大体そういうこと。それはアメリカに対しても、あるいは日本国内に対しても、あまり心配をかけないというおもんぱかりもあるかと思いますが、私はとてもいまのような説明で済むとは思わない。特に私たち大蔵委員会においても、そのものずばりは取り上げませんでしたけれども、これに関連してたびたびこういう問題を取り上げ、論議して、今日にこういう事態に立ち至るだろうことを警告をしてきておった。そのつど、やはり大蔵大臣当局は、いやそれほど御心配は要りませんということで、非常に楽観的な見通しを述べられてきておるわけなんです。そういうことからいろいろ考え合わせましても、私たちはとてもこの状態では終わらないだろう、しかし、ここで短い時間に論戦をいたしましても結論のつく問題でもございませんから、そういう論戦はいたしませんけれども、この際でございますから、まず第一に、今日このような事態に立ち至った基本的な原因と、それから今日のゴールド・ラッシュを招いた直接の原因、ひとつ簡単に宇佐美さんのお考えをお聞かせいただきたい。
  11. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 今日の国際金融の問題がこういうふうになりましたのは、いろいろ原因はございますけれども、さしあたってのいまの問題は、アメリカ国際収支が悪くなってきたということだろうと思うのでございます。アメリカ国際収支は最近急に悪くなってきたのではございませんで、年によって金額はいろいろでございますけれども、一九五〇年以来、たぶん五七年だと思いますが、黒字になったことがありますが、ずっと赤字が続いております。ところが、そういう赤字はなぜ起こってきたかといいますと、アメリカが非常に海外民間投資をやった。それは、日本を含めていろいろの援助をしてきておったわけでありますが、同時に、政府も非常に各国に対して援助をいたした。この二つが非常な赤字原因だと思うのであります。これは、アメリカ経済が非常に大きな力を持っておりますので、こういうことができたわけでありますが、やはり一方において、世界が今日まで発展してまいりました大きな功績だと私は思うのであります。  同時に、そういうことをやっておりますと、当然にドルが出て金が、だんだん出ていくこともいたし方ないと思うのであります。そこにさらに政府の支出を増加したものは、確かに軍事費の増大ということも原因しておることは否定できないと思うのであります。同時に、最近は国内の景気もだいぶ回復してきておるという点もあろうかと思います。そういうアメリカの基本的の赤字がずっと続いておる。赤字が続くということは、各国ドルが出ていく、そしてそのドルが、次第にアメリカから金を引き出すということになるわけであります。そういうことで、長年にわたって今日にきたのが私は最大の原因であろうと思うのであります。  したがって、こういうふうに国際収支が悪くなってきた場合は、これはどの国でも当然とらなければならぬ原則的なものがございます。それは、国際収支を直すためには、まず国内を締めるということが必要であります。アメリカも私は例外じゃないと思います。その点でアメリカ政策がどういう理由か、表面的には国会の関係もあるように思いますが、なかなか国内引き締めが実行できないというところに……。
  12. 村山達雄

    村山委員長 宇佐美参考人にちょっと申し上げますが、時間の関係がございますので、ポイントだけをお願いいたします。
  13. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 そういうことが原因だろうと思います。
  14. 只松祐治

    只松小委員 まだいろいろ私から見ればあると思いますが、一番大事な点はそういうことだろうと思います。直接の原因や何か一々お聞きしたいわけですが、時間がありませんから……。原因がわからないと出てくる影響対策というものはおのずから違ってくるわけです。しかし、原因についてお互いの意見を一致させることは困難でございます。  そういう結果、さっきお話がありましたけれども、主としてアメリカ国内政策によってこの問題を解決していこう、各国への協力というような点がワシントン会議からも出てきているわけであります。しかし、私はそれにもかかわらず、金の二重価格制というものがあらわれてきて、金市場がまだまだ混乱を続けていくだろう。金価格が上がってくると、当然に相対的にドル価格が低下してくる。これは円にも影響を及ぼしてまいります。あるいは公定歩合もこれはまだ引き上げる可能性が出てくるだろう。そういうことで高金利時代に入れば高金利の競争というものが行なわれてくる。したがって、貿易の縮小というようなことも懸念されてまいります。皆さん方おっしゃるように明るい方向と申しますか、それほど心配がないという面だけ見れば御説のようなことであるいは済むかと思いますが、しかし、これはいままで大体はずれてきているわけです。私たち心配しておった悪い結果というのが結局ずっと出てきております。今日の時点においても、したがって私は、みなさん方のおっしゃったそれほどの心配はない、明るいということは的中しない、むしろ私たち心配しておることのほうが、予測が的中するんじゃないかと思うのです。そういうことを考えながら、いまから出てくる悪いほうの影響というものについて二、三お示しをいただき、それからそれに対応する当然の措置というのが、まあ私がざっとしろうと的に考えても六つや七つ対策というものがあるわけでございます。それ全部は、あとの方々も質問いたしますから何ですが、日本に及ぼす影響、それからとられなければならない日本対策ということを、今日の時点において、あまり楽観的見方だけではなくて、きびしい見方に立った場合の対策というものをひとつお示しいただきたい。
  15. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 きびしい見方、また私どもが非常に楽観に過ぎているとおっしゃいますが、決してそうではないのでございまして、いろいろの場合を考えなければならないわけでありまして、まああげますといろいろございますが、まず第一には、やはりアメリカがいっておるように、国際収支改善がはたしてうまくいくだろうか。いろいろいままでも努力してきたんですが、国際収支がどういうふうに予定のとおり直っていくか。さらに、イギリスはこの十九日でございますか、強い線を出すといっておりますけれども、そこいらがどういうふうにいくだろうかという点も心配されるわけであります。さらに、各国は非常に協力体制をとっておりますけれども、しかし、何といいましても二重価格というものは不自然な点もございますので、これがその間に、つまり各国国際収支改善とうまくタイミングが合っていくかどうか、ずるずるしておりますと、二重価格の悪い面が出てくるのではないかという心配もございます。さらに、そういうような状態になりますと、おっしゃるように各国はなるべく金利を上げないようにといっておりますけれども、国際金利がどういうふうになっていくか、やはり国際金利が上がってまいりますと、日本に対する影響もかなり出てくる。また、アメリカが非常に縮小均衡をとりますと、日本貿易はどういう影響を受けるか、この対策をわれわれは向こうの情勢を考えながら考えていかなければならない、かように考えます。
  16. 村山達雄

  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)小委員 二点だけ……。  宇佐美さんが三菱銀行の頭取ならもっとフリーに言えると思うのでございます。日銀の総裁だからそう自由なことは言えぬと思うのですが、しかし、いまあなたがおっしゃった中で、最近ドルが不安になったということは毎年のことだというように言われておりますが、一番大きな原因はやはりベトナム戦争をやって、毎年二百五十億ドルずつも使うのでこういうことになったと私は思うのです。私は去年から悲観論でしてね、去年のポンドの引き下げ以来どうも私は日本金融恐慌を考えているのですが、宇佐美さんにそう追及してもしかたないことだけれども、直接関係のあることは、アメリカ公定歩合を〇・五%上げた、そんなことでは追っつかぬと思うのです。おそらく私は公定歩合はもっと上げざるを得ないだろうということが一つ。それから、それに引き続いてドル切り下げをやらざるを得ない。少なくともこれは、先ほどから柏木さんにちょっと聞いたんだけれども、金の需要の問題よりも心理的影響が非常に大きい。これはベトナム戦争という大敗をしているアメリカの現状では、これをやめればいいけれども、また兵隊をふやしたり何かしてやるので、これは収拾つかぬと私は思うのですね。そういう点が大きな原因をなして、私はアメリカドル切り下げをやるのは必至だ。  それに関連して日本は、残念ながらアメリカにあまり深く入り過ぎた関係上、日本公定歩合の引き上げをもう一ぺんやらなければならぬのじゃないか。これはおそらくここでは言えぬと思うのですけれども、あなたの腹の中にあるのではないか。おそらく公定歩合の引き上げをやらぬことには、ドルが不安になってごたごたして下がっていくのに、日本だけやらぬわけにいかないと思うのです。それに引き続いて、私はもしドル切り下げがあれば日本の円たって——この間国際金融局次長の奥村君に質問したのですけれども、そのころは平気でおった。柏木さんはヨーロッパのOECDに行っておったんだが、こっちに帰ってきて、知りませんでした、びっくりしました。ほんとうは腹の中では知ってたんだろうけれども、そう言わざるを得なかったんだろうと思うのです。そういう点から、私はへたをやると円の切り下げも起こらざるを得ない、こういうふうに見ているのですが、その二点のことについてちょっと御意見を承りたい。
  18. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 非常にむずかしい、いまおっしゃったとおり言いにくいだろうけれどもというところが率直に申してあるわけなのです。しかし、まあ私の立場からベトナム戦争のことについては申し上げられないのですが、しかし、せっかくアメリカが、今度最も優先的に考えるのは国内引き締めだということをいっておりますから、これに大いに期待するということでございます。  それから、いま日本が外貨準備が少ないというのは確かでございますが、しかしこれはいままで、一口に申しますと、外貨をためずに国際競争力をふやしてきた。これは、もしあれをどんどんためることばかり考えていたら、現実にこんなに貿易も伸びませんし、またどういうふうになっていたか、外貨準備もあるいはもっと悪くなっていたかもしれないというので、まあ過去のことは私はここで申し上げないほうがいいと思うのです。ただ、これからどうするかという点でございますが、やはり私は日本がここまで伸びてきたのですから、よく安定成長、安定路線ということを言いますけれども、やはりこれからは外貨準備もバランスをとるようにしていかなければならぬというふうに考えておるのです。これは一挙にできませんけれども、次第にそういう考えで、国際競争力は非常に大事でありますけれども、その国際競争力を拡大することにつとめながら、一方においてやはり高度成長というものはもう押えていかなければならぬ。そうしませんと、いつまでもいまのような外貨の状態におりますので、やはり金を借りるというようなことはごく短期のことでありまして、根本的には日本貿易をよくして、そして輸出輸入をよく考えて、だんだんためていくということがこれから最も大事な政策じゃないか、かように考えております。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)小委員 アメリカの平価切り下げの問題と日本の円の切り下げ、それをちょっと言ってください。
  20. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 それはきわめて先のことでありまして、この小委員会は何でも話せるというお話でありますけれども日本銀行総裁が、いまそうでないことをやろうといって努力をしている相手に、それはだめだということはとうてい言えないのでありまして、やはり国会論議——論議と言っていいか、話としてそういうことは慎むべきだと思うのでありますし、また単にそれだけ言うのでなくして、ぜひそんなことにならぬようにしてもらいたいと私は考えております。
  21. 村山達雄

  22. 武藤山治

    武藤(山)小委員 総裁、いまおっしゃったように、これからどうするかということが大切なんだ、そういう視点から二、三点お尋ねいたします。  総裁は過般予算委員会で、日本国際収支は四十三年度内に均衡するだろう、そういう答弁をしたことが議事録に載っております。そこで、その後つい最近、アメリカ、カナダが公定歩合の引き上げをやり、さらにアメリカ増税をやり、総需要の抑制をやる、こういう事態が新たに生まれてまいりましたね。そこで、国際収支は年度内に均衡をしようという見通しはいまでも変える必要がないかどうかという点が一点。  それから第二は、日銀としての対策としては、この四月から六月が調整策の行くえをきめる山場だ、こういう判断でいろいろIMFからの借り入れやスワップ協定の発動やそういうことも手当てをして、さらに国内的にはこの時期に窓口規制を強化する、そして地銀や信金や普通の雑金融機関まで日銀としてこの際規制をしていきたい、こういうような方針のようでありますが、この四−六月ごろが山場だ、調整策を左右する一番重大な時期だ、こういう見通しはこの段階で変える必要があるのかないのか、やはり依然としてこの時期が山場なのか、これが第二点。  それから第三には、日本国際収支、外貨繰りを乗り切るためにユーロ外資を当て込む、こういう方針で日銀はいろいろ苦心をされていますね。そこで、ユーロ外資の流出は心配はないのか。こういう措置が新たに起こってきて——というのは、ユーロ外資でロンドン市場や。パリ市場で金の買い付けが行なわれている。そういう面がかなりある。したがって、ユーロがヨーロッパに流れていくという可能性もあると思うのです。そこで、日銀のほうのコールレート、二銭四厘から二銭五厘程度のコールレートにしておけばユーロの流出はとめられるのかどうか。これについて一体日本銀行としてはどういう見通しを立て、どんな対策を考えているのか、これが第三点であります。  もう一点あるけれども除いて、最後に、いま佐藤先輩のおっしゃいましたドルの問題、金の価格の問題は重大問題で、トリファン教授やあるいはサミュエルソンという有名なアメリカ経済学者は、結局黒字国の通貨に対して、相対的にドルは過大評価されているんだ、したがってどうしても一平価切り下げの治療をする以外に手だてはないだろう、ワシントンにおける今度の金プール会議というものは単なるアメリカの時間かせぎにすぎなく終わるだろう、こう辛らつにアメリカ経済学者、しかも世界的有名な経済学者が、けさ日本経済新聞に出していますね。アメリカ人自身がこう端的に、率直にこの金プール会議を指摘しているんですから、やはり日本の日銀総裁としてそこまで——黒字国の通貨に対して平価切り下げはやらざるを得ないんじゃなかろうか。同時に第二点として、そういう国際収支黒字国の通貨との関係において、金価格をいじらざるを得ないだろう。二倍になるかあるいは一・七倍になるかはいずれとして、とにかくいじらざるを得ないだろう。そうなるとドルとの関係においても、ドルは現在の金の価格が引き上げられる結果、いまの八五%ぐらいにドルの値打ちというものは切り下げされざるを得ないだろう。こういうことをサミュエルソンやトリファンは述べております。私は重大な発言だろうと思うのです。そこで、日銀総裁としてそういう問題については全く心配ないとおっしゃるか、アメリカの時間かせぎで、これから半年後なり一年後にはあるいはそういう学者の評論も当たるかもしらぬぞという程度まで言えるのか。そこらも含めて、いまの四点をひとつお答え願いたい。
  23. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 第一点の国際収支均衡回復の時期、まあ年度末ぐらいまではいくだろう、私は現在でも何とかしていかしたい、かように考えておるのです。しかし、海外情勢がいろいろ変わってきますから、あるいはこれに対応して何か考えなければならぬと思っておりますけれども、しかしそういつまでもだらだらと回復をおくらすということは日本経済のためにならぬですね。これは皆さまも御心配になっているように、日本の企業は確かに弱いところがございますので、そういうふうにだらだらいつまでも引き締めを続けておるということは、あるいはさらに強化しなければならぬということは非常に困るわけですから、なるべく年度内には均衡回復のめどを立てたいというふうな気持ちは現在でも同じであります。  それから四−六が山場だ、こう申しましたのは、何しろ一月から公定歩合を再引き上げしたわけなんですが、国際情勢は非常に流動的であり、どう動くかわからぬということでございますので、また各企業も四月−六月の、つまり四十三年度の計画はいまやっておるから、それに対して警告を与えて、その計画は十分今後の変化に対応できるようにしてくれ、そういういろいろなものが四−六の間に出てくるだろう。で、この山場というのは、そこで見当をつけて、それから楽になるという意味で申したのではないのでありまして、そこで見当がつけられる。そうすると、われわれとしてはその見当が適切であるとすれば、それで押していくというふうに、この四月−六月が、従来の考えからいいまして非常に大切な判断をする時期、だ、かように考えているのです。ただ、おっしゃるとおり四月−六月の間にまた新しいきびしい状況が出てきますので、非常に困ったことだとは実は思っておりますけれども、しかし何にしても四月−六月あたりに何かめどをつけないといけないのではないか、そういうふうに考えております。  それから、ユーロダラーあるいは短資が日本にたくさん入っていることは事実であります。ところが最近、まあ今度の会議でもおそらく出たんじゃないかと思いますが、やはりユーロダラー・マーケットを急に圧縮しないようにしようじゃないか。いま相当の金額になっていますから、これがほかに流れていくと、たとえば金の買い付けにこれが流れていくというようなことになりますと非常に困るわけでございます。これは日本だけじゃございません。かつては日本も全体の大きな取り手でありましたが、このごろはユーロダラー・マーケット自体が非常に大きくなってきていますから、各国影響する。そういうわけでございますけれども、しかしユーロダラーだけをたよっておるということは非常に困るんじゃないか、危険ではないか、かように考えておるわけでございます。したがって、ユーロダラーの金利が今後どうなるかわかりませんけれども、しかし、そういうことをしさいに見ていかなければならぬと思っております。  それから、金の将来あるいはドルの将来について外国の学者たちがいろいろ申しておるお話、私も読みました。そうしてそれは確かにわれわれも考えなければいかぬ問題でありますけれども日本としましてはそういうことにならないように、先ほども申したのですが、いま努力をしようというときですから、いまその危険性ありとここで申し上げることはむしろ慎むべきことだと思っております。
  24. 武藤山治

    武藤(山)小委員 いまの答弁にちょっと漏れているのを伺いますが、具体的に窓口規制を、一−三月は大体前年同期の貨し出し増加額の三〇%を締めたわけですね。四、五月、六月ころまでは、さらにそれを強化するのかしないのか、前年同期三〇%減ぐらいの程度で六月ごろまで推移するのか、それともさらに強化するのか、強化をした場合に地銀、信金、相互銀行の資金が非常に逼迫をする、それが中小企業にはね返って中小企業の倒産にまで追い込むのではないか、こういう心配について総裁どう思いますか。
  25. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 どうもすみませんでした。  四月−六月をどうするかということについてはいま検討中でありまして、こういう情勢も含めて考えなければいかぬと思っておるので、どうするか、数字でいまの段階で申し上げることはできませんけれども、少なくとも、私も再三申し上げますとおり、日本の中小企業なんかに対する影響を考えますと、それは別個の取り扱いをしなければいかぬ、かように考えております。したがって、従来も相互、信金などについては窓口規制も、その精神は守ってもらいたいけれども、一々指図するということはいたしておりません。この方針は続けていきたいと思っております。
  26. 村山達雄

  27. 広沢賢一

    広沢(賢)小委員 いま日銀総裁は、ドルの平価切り下げについてはなかなか微妙な発言をされて、私も日銀総裁の気持ちを尊重しまして深くは言いませんが、私どもの見ているところは、ドルの平価切り下げはいつかはある。これはアメリカの物価が当時の二倍になっているのですから、どう見たってそれはあると思うのですけれども、それをどういうふうにうまく各国一斉にやるか、混乱なくやるかということの問題だと思うのです。いろいろな論調を見ると、大体そういう論調です。したがって、いま混乱なく過ごすためにいろいろな配慮をされると同時に、もう一つは、こういう冷厳な事態を見て、それでそれが日本の非常にポジションの悪い外貨準備、金等いろいろなことですね、これにどう響くか、これはやはり厳重に立てなければならないと思うのです。具体的にいうと、たとえば四十四ドルという実勢でいっていますが、二倍になるとして一オンス七十ドルにすれば、終局金準備はいま三億三千万ドルですから、これが二倍になったとしても、あとの手持ちのドルは半分になってしまう。それからいろいろドルを借りている分が、これは返すときにはやはり半分になりますから、そこでとんとんにはなると思うけれども、きわめて背筋が寒くなるようなことでしょう。これについてはっきりとした準備をしておかなければならぬと思うのです。  それから第二の質問は、今後の国際収支の問題ですが、輸入課徴金——やはりアメリカとしては増税法案を通すとか、各国に対しての意思表示をするためには、輸入課徴金を五%といまいっていますが、新聞によると一〇%ということになっているが、その日本に与える損失は五億ドルでは済まないんじゃないか、七億ドルまでいくんじゃないかというようなことが出ています。これを計算に入れていろいろ金融引き締めの態度をおとりになっているかどうか。  それからもう一つは、金融引き締めをやりますと、非常にきついことをやらなければならぬと思うのです。いま総裁が言われました年度末までに片づけなければならぬということになれば、やはりこれはちょびちょびでなくて思い切ってやらなければならぬという事態になると思う。そういう場合には、公定歩合をまた上げるということは、いまは言えないかもわかりませんが、やはりこれは相当きびしい態度で臨まなければならぬ、事態はそういうところまで来ているんじゃないか。  それからもう一つは、中小企業と大企業の問題を言われましたが、いまだんだん金融引き締め金融市場が引き締まりの状態になってきている。それにもかかわらず、企業金融が引き締まらないというのがいろいろな論調にあらわれております。例を言いますと鉄鋼、これはひどいもので四千億円ですが、八幡一社で一千億円の設備投資をしている。このことはもういいとは言えないんじゃないかという問題になっておると思うのです。鉄ばかりでなくて、石油化学、石油精製、普通鋼の強気が目立っていますが、これに対して、やはりこの間なんかは特別償却の取りやめも、公定歩合が上がったら、それをやるということを法律できめていながら、それもやらないという状況です。そうすると、やはり総体的な窓口規制の強化になれば、いま武藤委員が言ったとおり、四−六月の中小企業の危機とか、そういう問題がくると思う。そういう問題について、企業は、たとえば有価証券の手持ちが多いとか、それから企業間の信用を持っておるから、ゆとりがある。それが今度もっと引き締まってくれば、下請にぐっとしわ寄せがくる。こういう問題に対して、いま総裁は、中小企業については別途に措置をすると言われましたが、別途に措置する問題について、具体的にお考えはどうでしょうか。
  28. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 いろいろ御質問がございましたが、総括的にいいまして、これから御承知のように非常にきびしくなりそうだ、対米輸出もどうなるか、課徴金のお話もありましたが、そういうものをひっくるめて、私はなかなか金融だけではいかぬと思うのです。  そこで、今後の情勢によっては、やはり財政に訴えなければならぬし、また民間に対しても訴えなければならぬ。今後の情勢がどういうふうにきびしく出てくるかという点をよく考えないと、やみくもにやるわけにもいきませんが、さしあたりはやはりいろんな総合政策的な考えをとらないと、これを金融だけでいくということは私は許されないと思います。そうしませんと、ただ金融面だけでいまのような企業間信用がやたらにふえたり、あるいはまた倒産がふえたりいたしますので、全体としての政策を考える。その意味におきまして、ポリシーミックスということをいいますけれども、これからこそ最も大事なところであろうかと考えております。そういう問題は、いまここでどういうふうにするかということは申し上げられませんけれども政府とよく相談をする、相談をするという以上に強く要請しなければいかぬのではないか。ただ政府もよくいまの時勢をわきまえておられると思いますので、その辺はどうか、これからお話をするわけですが、いずれにいたしましても、そういう総合政策的なことをやり、さらに民間にも考えてもらわなければならぬ。いま、一つの業種の例をおとりになってお話しになりましたけれども、これらの問題をもっと真剣に考えていかなければならぬ。しかし、これもやはり一方において海外情勢がどうなるかということも頭に入れていかなければならないと思います。  それから、相互、信金などのいわゆる中小企業向けの金融機関についてのお話でございますが、これはもうすでに、そういうふうに窓口規制を去年の九月やるときから、特別扱いにしておるわけであります。都市銀行を中心にいたしましてきびしくやり、そしてだんだん地方銀行にはややゆる目にやる。その都市銀行のうちでも、大きいものと小さいものに対しては、私のほうの要請も段を変えております。さらに相互、信金などに対しても、それぞれ引き締め方を差別をつけてやっておるつもりであります。したがって、中小企業の機関の方に機会あるごとに申しておるのですが、地元の産業についてほんとうに真剣にめんどうを見てくれということを言っておるわけでありますが、最近は都市銀行に対してもそういうことを申しておるのであります。  そういうことで、中小企業の方にはなるべく影響のないように——ただ中小企業問題は、もう申し上げるまでもないのですが、非常にむずかしい問題でして、倒産のときは確かに金融で倒れるのですけれども、少し洗うと、そこには金融以前の問題があるわけです。そこいらもよく考えて、また最近中小企業の方も、その辺は海外経済のきびしさをよく認識されている方がだんだん多くなってきておるということも事実で喜んでおるわけであります。そういうようなことでやっておりますので……。
  29. 村山達雄

  30. 村山喜一

    村山(喜)小委員 簡単にお尋ねいたします。  最近の金の不安、金の国際的な騰貴の傾向の中から生まれてきた現象、ドル不安という状態もありましたが、それ以上に円売りというものが非常に起こってきている現象、それから片一方においては資産株を中心に株価が上昇をする。そういうふうな情勢から見ていくと、これは国際的に見た場合には、ドルよりも円のほうが不安だという見方が強まるおそれがあると私は思うのですが、この円の価格というものを保持するための日銀の具体的な政策というものがありましたら、それをお示しいただきたいということ。  第二点は、金融引き締め政策をやっておりますが、これは見ておるとだらだら調整ではないかという批判が非常に強い。たとえばインパクトローンの導入にいたしましても、これはしり抜けになっているんじゃないか。国際収支の面においては改善要素になりますが、金融引き締め要素の上においては、大企業の場合はしり抜け要因になっている。さらに、最近のように設備投資が大型化してまいりますと、工事着工ベースと支払いベースのズレが出てくる。日銀のシビアーな見方からしましても、このドル不安の問題が出る前は、吉野さんあたりの見解としては、年を越したら、一月ころになったら金融引き締めというものも緩和できるんじゃないだろうかというようなニュアンスの発言をしておられる記事を見たのですが、こういうふうになってきますと、結局設備投資をした分の支払いがその金融緩和期に大企業の場合にはやってくる。そういうような段階においては、下請のほうにこれを企業間信用でしわ寄せをするという方式も考えられる。こういうふうになったら、大企業は二つのしり抜けの方法を講ずることによってそう大きな被害を受けない中で、そのしわ寄せは下請関係、中小企業関係にあらわれてくるんじゃないか、こういうようなネックがあると思うのですが、これをどういうふうに総裁として処置をしようとお考えになっておるか。金融政策の上から先ほど、これは金融だけではだめなんだ、財政もあるいは民間の設備投資に対する協力態度も必要だとおっしゃいました。まさにそのとおりだと思います。そういうような場合に、現実行なわれている金融引き締めの実態の上から見たときには、やはりそういうような問題点があるんだ。だから、これはどういうふうにしてしわ寄せが一方的に起こらないように措置をするのかという方策をお示しいただきたいと思います。
  31. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 まず、円不安と申しますか、ドルよりも円が悪いんだというような説が出ており、円は売られているではないかということでございますが、先ほども冒頭に申し上げましたとおり、私ども——どもはというのは政府も込めて、ドルと円との相場は三百六十円は全然動かすつもりはございません。したがって、まずそれが突っかい棒になっていると思うのであります。それで、円についてのうわさも海外でも多少出ておりますが、しかし、いまは各国ともそれぞれの国について非常に神経が過敏になっておりますので、いろんなうわさが出るんだと思いますが、私どもは円についてはそういう意味においてそういううわさは全然とるに足らぬことだと思っておりますけれども、しかし同時に、そういううわさが出るということはわれわれも十分考えて国際収支改善、まあ、できれば、これはなかなか急にはできませんけれども、将来の問題と思いますが、外貨準備の蓄積も努力しなければならぬ。いままでのように成長一本ではいかぬというふうに考えておるわけであります。  それから、インパクトローンその他でしり抜けになっておるのではないか。これにつきましては、私どもも、確かにインパクトローンは非常にふえてくる傾向にございますので、それぞれの銀行を通じ、その他でいろいろこまかく調査をいたしておるわけでありますが、これもいまお話しのとおり、外貨としてはいいんですが、国内引き締めに逆行することになっては困るというので、十分注意して、激しくならないようにいたしておるところであります。  円とドルとの関係はただいま申し上げましたとおり、そういうことによって国内的にも海外的にも不安を除去するように努力しなければなりませんと思います。  それから、支払いベースと工事ベースの問題でございますが、これも確かに昨年はかなり設備投資が高く行なわれまして、支払いが今期にずれ込むおそれが多分にあるわけであります。そこらのことにつきましてはいま調査中でありますが、しかし、自分でかってに——かってにと言っては悪いかもしれませんけれども、とにかく工事をやっておいて、そうして当てもなくいろんな支払いをあとに延ばしておくということは非常に困るわけでありますから、そういう事業に対しましては厳重に警告を与え、少なくとも下請中小企業に影響をなるべく少なくするようにつとめるように指導してまいりたいと思っております。
  32. 村山達雄

  33. 河村勝

    河村委員 四点だけ御質問申し上げます。  第一点は、先ほどの武藤委員質問に関連いたしますけれども、ユーロダラー対策で、ユーロダラーの今後の金利の推移を見て考えるというお話でございましたけれども、確かに流出の危険性は私は相当あると考えておりますし、現在取り入れ残高が十四億ドルくらいじゃないかと思いますが、非常に金利に敏感なものでございますから、対策としたら公定歩合を上げるより以外にちょっと方法が見当たらないような気がいたしますが、今後の推移をごらんになってというのは、今後のユーロダラー市場の状況を見て、そっちの金利が上がり出したならばわがほうも公定歩合を上げるということも考える、こういう意味でございますか。それが第一点。  第二点は、広沢委員から、企業設備投資のほうがなかなか押えられないという話が出ましたけれども、二月一日の開銀の調査で見ますると、今年度の民間設備投資の見込みが対四十二年二三・九%増ですね。政府の九・七%よりはるかに上回っております。昨年も大体開銀の調査がほぼ当たっておるようでありますが、現在企業の手元流動性というものはまだかなりあるのじゃないかと思われます。そこで、先ほど総裁は、窓口規制だけでなしに、企業に、民間に対しても訴えたいというようなお話でございましたが、単に訴えたいということくらいで済むのか。非常に大きな企業設備投資を抑制するためには、いま一歩強力な抑制あるいは調整の措置が必要であるとお考えになっていないのかどうか。その点が第二点。     〔小委員長退席、毛利委員長代理着席〕  第三点は、これは時間が短いので御説明を省略しますが、現在、証券市場の公社債の滞貨というものは非常に大きいようでございます。引き締めに伴って金融機関売りとそれから企業の手持ちの公社債の売りが相当多くて、その額は相当だろうと思うのでありますが、二月の引き締めでも日銀は一千億円のオペレーションをやっておられますね。その中に証券市場に対するものが政保債、公債を含めて百四十億円くらいあるわけであります。一般公社債にはそれは及びませんが、非常に大きくなって、行き詰まりますと何か滞貨金融が行なわれて、それが抑制のしり抜けになるような危険があるので、何か対策をとらなければならぬような懸念はないのか。それが第三点。  第四点は、IMFからの借り入れ予約はすでにおやりになっているのか、それとも現在検討中であるというのか、その四点を御質問いたします。
  34. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 ユーロダラーの先行きについて、ことに日本は相当とっているが、その流出は日本の外貨に直接影響するから非常に心配だというお話なんですが、ユーロダラーは確かに十億ドル以上あるわけなんです。これはしかし、毎月割り振りをいたしておりますので、そう一ぺんにこれが出るということはないと思います。  それから問題は、期日がくるものがだんだんあるわけです。それがつなげるかどうかということもある。そういう期日的のいろいろの問題がありますので、これがどういうぐあいになるか。つなげるにしても長くつなげるか、短くでないとつなげないのか、これはいろいろな今後の情勢によってきまりますので、そういう点は十分重視していかなければならぬと思っております。  それから設備がやはり非常に高いのじゃないかということでございますが、これはさっき私が冒頭に申し上げましたとおり、総合政策が非常に必要だ。日本銀行が先に立って、おまえのところやめろとかなんとか——日本銀行は総合的に考える、そこいらはわれわれとしても意見を述べるべきだと思うのであります。今後政府に対して総合的に——やはり団体の自主調整をしているところにはわれわれとしても助長していくことが必要ではないか。そういうふうにこまかく、ただ金融一本でいくのじゃなくて、いろいろな具体的なことをやっていけば、調整の余地は、まだ私は方々で集計をされているときよりももっと調整ができるのじゃないか、かように考えております。  それから証券でございますが、これはやはりこういうショッキングなことがありますと、どうしてもそういう空気が出てまいりますけれども、少なくともドルよりも円はだめだ、物にかえなければいかぬということは、われわれも極力そういうことが起こらないように、先ほど繰り返して申しましたとおり、ドルと円との関係は三百六十はわれわれ堅持するのだという点で、円からドルに逃げていくようなことは、あるいはいまさしあたりすぐに円を証券にかえるとか何かということはいけないと思います。ただ問題は、おっしゃるとおり証券界には相当手持ちもふえているではないか。これはそのために日本銀行はいろいろまた心配しなければいけないのじゃないかというお話がございますが、これはやはり証券——株式だけでなくて公社債すべてに関係するのですが、そういう時勢になれば、まず基本的には量を減らしていくということもぜひやらなければならない。ただ金融をつけてやればそれでいいということではないわけです。したがって、このごろ社債あるいは金融債についてもそれぞれ、また国債についてもそうですが、量の調整ということはもう始まっておるわけであります。ですから、これを情勢によって調整を進めていくということが基本的で、出すものをうんと出しておいてそれでどうにもならぬから金を出せということは、私どもとるべきではない、かように考えております。  IMFの借り入れば、いま私が知っている限りでは申し込んではおりません。
  35. 武藤山治

    武藤(山)小委員 一つは、これは日銀の直接担当でないかもしれませんが、日本の四十三年度予算では工業用の金を十四トン外国から買おうということになっていますね。これはロンドン市場から最初買おうという予定だったのでしょうが、今度。入りかあるいはスイスかどこかわかりませんが、こういう金の情勢のときに、十四トンの輸入というものは、やはりやるのが適切な処置だろうかどうか。それともう一つは、いまはメッキ、通信・電気機器、あるいは接点材料、金歯、めがね、万年筆、かなり需要があるわけですね。やがてここ数年のうちに、現在は日本は二十八トンくらい使っているようですが、数年中には四十トンくらいになるだろう。ここ二、三年たつとこれはだいぶふえてくるだろう。そういう時代に金の値段がぽんと上がってきて、外貨をかなりまた金を買うために支出しなければならぬ。私は、額の多い、少ないの絶対量の問題を議論するのじゃなくて、その姿勢ですね。そういう姿勢で一体十四トンの輸入という既定方針どおり進めることがいいのか、この際は国際経済環境から見て取りやめるほうがいいのか、その辺の総裁としての一応の御見解でけっこうです。  第二点は、なるほど公定歩合の引き上げや金融引き締めにあまりにもおんぶし過ぎて財政のほうが放漫になって、結局どうにもならぬということになりはせぬかという心配もあるわけですね。そこで財政支出の繰り延べ、上期はなるべく繰り延べてくれ、これは財政資金対民間資金のバランスからいっても上期はどうしても繰り延べてほしいという総裁の意向のようでございますが、大まかなめどはどの程度の額を繰り延べれば適切な措置といえるだろうか、これは大ざっぱなめどでございますがややのめどですね、どのようにお考えになっておるか。  この二点をちょっと教えていただきたい。
  36. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 非常にむずかしい問題でありまして、政府の都合もありますので、私が幾ら減らしてくれと言ってもそうはできぬと言われると……。ただ、私どもがいまのような情勢ではできるだけ考えてみなければならぬという程度を申し上げておるのです。だんだん詰めていきますと、何を切ろうとかなんとかいうことになりますと、これはむしろ政府、国会の問題だろうと思いまして、私は差し控えておるわけです。しかし、いずれにいたしましても、今後の情勢によっては相当考えてもらわなければいかぬということを感じておるわけです。それは単に繰り延べをするだけでなく、一方において公債発行とかという問題資金調達面もありましょうし、そこいらはむしろ、まず大蔵省がどうするのだということを聞いて一また私はそれを聞いておりませんので、いまほかのことで大蔵省忙しいようですから、何にも聞いておりませんからなんですが、しかし、これもなるべく早くひとつ聞いて、そうして一方において海外を考え、あるいは国内の浸透状態も考え、それから先ほど御指摘のようないろいろな企業の態度も考え、いろいろあわせて、そうして総合的にやらぬと、金融だけでは、あるいは窓口規制とかなんとかいうことはやはりいろいろな影響もございますので、もう総合的にやるということが一番必要だ、かように考えて、いまどのくらいが適当だというようなことは申し上げかねるわけであります。  それから、金の輸入、それも実は大蔵省の問題で、柏木さんからお答えになったほうがいいのですが、私もおっしゃるとおりやはり金の需要はいろいろな意味においてふえていく。私、詳しく知りませんけれども、いろいろな工業用のものがふえていくのじゃないか、奢侈的なものも多少ふえるかもしれません、また金が上がるということになると買い手もふえるのじゃないかと思います。しかしそういうことは、やはりわれわれとしては極力——これは御質問がありませんからなんですが、大体において消費自体をどうするかという大きな問題にもつながるわけです。しかし、実際金をどれくらい買うかということは、予算の問題にもなってきますので、大蔵省からお答えを願ったほうがいいのじゃないかと思います。
  37. 只松祐治

    只松小委員 いろいろ各委員から質問をいたしましてお答えをいただいたわけですが、にもかかわらず、私が一番最初お話し申し上げたように、ドル不安というものはそう簡単になくならないと思う。これは、きょうは論争しようというわけじゃありませんが、アメリカの百十四億ドルの保有高に対して、民間だけで百五十億ドルの国外の保有、あるいはほかのものを合わせまして三百億ドル近いものがございます。そういう側面、あるいはアメリカ経済一つのこういう後退の原因をもたらしているベトナム戦争が、今日すぐやまるという見通しはない。いま幾つかの大きな条件を考えましても、七カ国会議が終わったからすぐドル不安がなくなる、こういうことは私はないだろうと思う。いま起こっておるゴールドラッシュの問題にいたしましても、直接の原因が幾つかありますけれども、たとえば産金価格にいたしましても、七百円近いものが実際南アでかかっておる。そうすれば、結局日本で四百五円の価格というものは非常に安い、三十五ドルは安い、こういうことにもなるわけです。こういう直接の、一審身近な具体的な産金という問題、どんなことをとりましても、ゴールドラッシュと今度のドル不安がそう簡単に消え去ると私たちは思っておらない。しかしきょうは、ここで論争をしようということじゃなくて、お考えを聞く会でございますから、これ以上論争はいたしません。ただそういう結果、たとえば日本では金保有が非常に少ないわけです。三億三千万ドルしかない。ドル価格が実際上相対的に下がってまいりますと、こういうふうに現物の金を持たないで、ドルを持っておる日本というのは、これは損をすることになる。こういう問題についても、これは国益という面からは非常に大きな問題があります。それからいずれにしても、こういう状態の中から各国が緊縮政策をとってまいりますと、貿易というのがたいへん困難になってくる。特に輸出が容易でない。  一つだけここでお尋ねしておきますが、輸出振興策その他について、あなたはさっき、いろいろな面を積極的にやりたい、こういうお考えを申されました。金融政策上、何か特別のことをお考え  になっておるかどうかということをお伺いしておきたいと思います。と同時に、いろいろ論議をされておりましても、無責任と言っては失礼だけれども、今度の七カ国会議にもいわばつんぼさじきですね。今後IMFや何かに、呼びかけがあればおいでになると言いますけれども、世界第一の成長国家とか、あるいは国際貿易に非常なウエートを持ってわが国の産業を発展さしておる日本が、こういうときになっても現実に国際的に発言権をほとんど持っておらない。また何らかの形でオブザーバーでも行くかと思ったら、オブザーバーも行かない。いわばなすがままというのですか、もっとこういう事態に、日本政府はもちろんですが、日銀等においてもこういう問題に積極的に発言をしていく、あるいは意思表示をしていく。あるいはさっき私が一番最初にちょっと触れましたけれども、ベトナム戦争問題についても、これは金融政策上から見れば、ベトナム戦争という問題も非常に大きな問題で、政治面から見れば宇佐美さんだけで発言はできないかもしれませんが、ドル防衛なり円の維持ということになれば、きわめて重要な関連を持つ。こういうことに一つも発言しないし、他人事のようにしていて、単にドル防衛に無条件に追随をしていく、円の維持をはかる。私は無責任過ぎやしないかと思うのです。日銀総裁といえども、国の政治の重要な一部面を金融政策上になっておる。そういう人はそういう面に対してもっと積極的な考え方をし、発言をしていくべきだと思う。私たちはきょうは単に質問ということで、論争しておりませんから、委員会の大臣対委員じゃありませんから、そういう意味の詰め方はきょうはしておらないわけです。しかし、本来参考人でなくて、対政府ならこういう形では終わらないわけですね。しかし、一応きょうは表面上は参考人でございますからそう詰めばいたしませんけれども、そういう点についてもっと責任をお感じになるというか、責任ある積極的なお立場というものをとっていただきたい、こういうふうに思います。たくさん論争したいこともありますし、質問したいこともありますが、時間の関係でやめますが、せひひとつそういうふうにお願いしたいと思います。私の質問いたしました一点だけお答え願います。
  38. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 いろいろ御意見を承りまして、私もおっしゃるとおり、日本が一方において非常に進歩してきておる国という立場からいいますと、もっと発言しなければならぬと痛切に感ずるわけです。ただ、たとえば金の問題なんかにしましても、いままでの政策の結果でありますけれども、きわめてこっちが弱いという点があります。ただ、いろいろのことはマーチン議長をはじめ事務的にもわれわれに対していろいろ連絡がありますので、全然つんぼさじきではありませんし、今度はたてまえが金プール国だということでありますので、われわれ情報をとることにつとめております。また、私もいまの段階におきましてはあの方法以外にない、かように考えております。別にこれに対して疑義を持つことはないと思うのです。ただ従来も言っておりましたが、国内的のいろいろな態勢を整えてまいりたいということはやはり申しております。その点は向こうも日本の真意はよく知っておるだろうと思います。  それから、今後の方針につきましては、再三申し上げましたとおり、やはりわれわれとしては一方において一ドル三百六十円というものを堅持しながら、大勢に応じていくということ以外にないと思うのです。これにつきましては、いま海外は非常に流動的でありますので、いまここでどういう方針をとっていくかということは申し上げられないし、また申し上げることでもない、かように考えております。
  39. 只松祐治

    只松小委員 輸出振興策、何か金融面からの特別のものがありますか。
  40. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 輸出振興につきましては、金融的にはかなりいろいろな手段を講じておるわけであります。ものによっては一番優遇しておるともいえるわけです。しかし同時に、まだ残っているところが何かありはしないかという点で研究をいたしております。輸出保険といいますと、金融政策もむろんあるのですが、予算の関係もありますので、大蔵省と一緒に考えていこうということでございます。
  41. 毛利松平

    毛利委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  宇佐美参考人には、御多用中のところ長時間にわたって御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。小委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十一分散会