○荒井
政府委員 新憲法のもとでできました新しい
公務員制度に即するように
年金制度がどのように設けられるべきであるかという点は確かに問題でございまして、その点につきましては、
昭和二十三年に
国家公務員共済組合法旧法が制定されまして、これによる
退職年金制度というものが生み出されたわけでございます。これは
恩給とは違って、
社会保険の理念に基づいて、その被用者としての掛け金を
負担し、
使用者及び国庫がまたこれに対応する
負担をするという形でできたわけでございます。ただ、その当時におきましては、旧官吏
制度に基づく
恩給制度と並行して存在する雇用人についてだけの
共済年金制度、
退職年金制度であるということでございましたけれ
ども、その点は
昭和三十三年の新
国家公務員共済組合法の制定、施行によりまして、三十四年一月あるいは十月から、
恩給制度と従来雇用人についてのみ存しました
共済組合による
退職年金制度というものが統合せられ一本化されているわけでございまして、現在
公務員である人につきましては、すべてこの
国家公務員共済組合法による
退職年金というものが適用されるようになっているわけでございます。その場合に、新しい
共済組合法による
退職年金制度が施行される前に
恩給受給権が発生したというものについてどのようにすべきかといいますと、これはすでに権利の裁定があり、一つの
年金債権として確定しているというものでございますので、三十四年一月なり三十四年十月一日に現に在職する者について、従来の
恩給を受けるべき地位というものを新
制度に切りかえるのに伴いまして、これは
恩給ではない新しい
退職年金を受給するべき
組合員期間としてそれを評価するのだというふうにしたわけでございますけれ
ども、既往の
恩給受給権をいきなりやめるということは、これは憲法二十九条の財産権尊重という点からいってそう簡単にいく問題ではございませんで、それが既裁定のものについてはそのまま存続し、まだ裁定の時点に至っていないというものについては新しい
退職年金制度の中に吸収するというふうにしたわけでございます。
その場合、その等価のものであれば、他の一時金に切りかえるとか交付公債という方法によることができはしないかということでございますけれ
ども、これは一時金ではございませんで、
年金であるというようなもの、しかも一昨年、
昭和四十一年の改正によりましてスライド制というようなことも入っている、その
年金債権というものをいかに現価に評価するかというような点も問題でございますし、それの
財政負担というものを
考えますと、結局等価のものが等価のものに変わったというだけであるならば、国家
財政的に見ましても、あるいはこういう
社会保障的な
考え方からいいましても、積極的なプラスはちっともないではないのかというふうに
考えられますし、結局、既裁定のものはそのままになり、新しい
退職年金制度においてはその既往の
恩給公務員期間を
組合員期間の中に通算するという形において承継し発足せざるを得なかったということでございます。この点は、
国家公務員共済組合法が新たに制定される前に、議員立法で
公共企業体職員等共済組合法が制定されたわけでございますけれ
ども、これにおいても同じ行き方をとっておったわけでございます。
そのように、
恩給公務員期間というものを新しい
共済組合による
年金制度の
組合員期間の中に通算する、そして既往の期間についてどれだけの
恩給額が算定されるべきであったかというものをその
年金計算の基礎の中に織り込むという形で発足しておりますので、今回のような
恩給についての
措置がとられたとしますと、それとの
均衡からしまして――というのは、
恩給公務員として
退職されたのは
昭和三十年であるとか三十二年であるという人と、三十四年十月にやめた人、三十五年にやめた人というものとの権衡を
考えますと、どうしてもやはり向こうの
改定に対して調子を合わせないと、その間のアン
バランスが起こるということで、昨年あるいはその前にも何度かございましたけれ
ども、そういう
恩給における
改定措置を
共済年金についても準じてとらざるを得なかった。これはたとえば戦時中の旧令
共済組合等につきましても、官吏たる自分を持っておった人については
恩給法の改正によってその
年金の
改定が行なわれる、しかし、雇用人たる身分を持っている者についてはそれが行なわれないということでは不合理だということで、従来のような
措置がとられたのだと思います。