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広沢(賢)
委員 私は、日本社会党を代表しまして、両案に対する討論を行ないます。
今回の
中小企業金融再編成は、本来、
金融機関の同質化による
混乱を是正して、
中小企業に対し、安定的に
資金を
供給するための
専門機関が必要であること、その際地域性が強く、
中小企業の経営内容を熟知して、きめのこまかい
金融を行なうことができる相銀、信金、信用組合のそれぞれの特色を明らかにして、今日の
経済実態に即応して事業分野を確立することにあるわけであります。このことについてはわが党も前から
指摘してきたことでありますから、
中小企業金融制度の
整備改善のための
相互銀行法、
信用金庫等の一部を改正する
法律案に対しては、基本的に賛成するものであります。
ところが、もう
一つの
金融機関の
合併及び
転換に関する
法律案では、以上の根本的な趣旨とはなはだしく矛盾し、ときには反対の性格を持つものすらあるのであります。
第一、
合併の道を開くことは、各般の
金融機関が一斉に
普通銀行を最終ゴールとして、同質化していくことにかえって拍車をかけられることになります。その上で、いわゆる共通の土俵で適正な競争をさせることになれば、ますます地域を同じくする同質の過当競争となり、
金融機関同士の預金の奪い合い競争をむしろ激化し、その結果預金コストの引き下げにはならず、むしろ、引き上げ
要因をはらみ、そして大は小に勝ち、弱肉強食となることは資本主義
経済の法則であります。その結果、各種
金融機関は同種または異種の大規模なものに吸収されて、やがては中小専門
金融機関が縮小していく方向をとるおそれがあります。
第二、
日銀考査局の課長ですら、たとえば相銀が形だけの
普通銀行化を追うことは、大
企業向けの
融資比率や大口信用供与比率をいたずらに
上昇させ、勢い
中小企業との密着度の希薄化から、
中小企業金融専門機関としての特質をみずから放棄することにもなりかねないという心配の念を表明しているように、
中小企業、特に零細小
企業に対する
金融が置き忘れられ、切り捨てられていくおそれを多分に持っているのであります。
第三、
合併・
転換によって、それに伴うのは、今日の
大蔵省の銀行検査、経理指導でも明らかなように、安い利子、 コスト引き下げの
しわ寄せが、ただ一方的に、不当労働行為による
従業員の人員整理、労働条件の引き下げにのみ求められることが心配されます。先日
指摘しましたように、諸外国に比較して、
人件費率については、中小
金融機関ばかりが高いとはいえないのでありますが、将来さらに電子
計算機の導入など、再編成、合理化が進められることが予想されるとき、正常な労使
関係の確立、合理化の展望と事前協議等が明らかにされない中で、ただ
合併・
転換のみが先走ることには反対であります。
第四、いま世界、イギリス、フランスでも、日本でも、
資本自由化その他による大きな
経済転換期に直面し、
金融再編成を重要な課題としています。特に、日本では、間接
金融によるオーバーローン方式で、
企業体質の悪化、重過ぎる金利負担を招き、その反面、銀行割り当て方式による国債発行の売れ行き不振、発行条件の改定と金利体系の
混乱、証券市場の不振、さらに
金融債の行き詰まりによる長期信用銀行の前途不安定、さらにまた、直接
金融方式を取り入れた場合の
金融の
引き締めのあり方等、いわゆるポリシーミックスを含めて、根本的に再
検討をしなければならない
段階にあります。
特に、大
企業、
中小企業、勤労大衆等の階層別の観点から見るとき、都市銀行をはじめ、信託、保険に至るまで、諸外国に比べて異常なまでに高い率の国民の貯蓄を銀行等が吸収し、これを独占的大
企業の高度成長に回している一方、他方、
中小企業においては、
中小企業が国民
経済の中で、その付加価値や生産高、輸出高とも全体の半分を占め、
従業員では七〇%を占める重要性を持ち、しかも、人手不足と
資本自由化、
特恵関税に
はさみ打ちされ、物価安定対策のためにも、その構造近代化のために低利長期
資金を大量に必要としているときです。その
資金需要を満たすためには、開銀、輸銀、長期信用と中小
金融政府三
機関、農漁業
金融機関、さらに信用補完制度など、これらが全般的に再
検討されて、その上で、その一環として
中小企業金融再編成を考えなければ、この弱肉強食の資本主義
経済法則下で、真に
中小企業の
金融充実を考えたものとはなり得ないと思うのであります。したがって、今後、一般及び政府
金融機関再編成を行なう際、以上のような根本的課題を十分に組み入れなければなりませんが、そうした意味において、本
委員会が慎重
審議の結果、相銀法、信金法等の一部改正及び
合併・
転換に関する法案について、それぞれ附帯決議を採択する予定であると聞きますが、今後、行政執行にあたっては、この附帯決議が厳格に誠意をもって守られることを強く要望して、反対討論を終わるものであります。(拍手)