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武藤(山)議員 ただいま
議題となりました
国家公務員共済組合法及び
公共企業体職員等共済組合法の一部を
改正する
法律案につきまして、
提出者を代表して、その
提案の趣旨及び
内容の
概要を御
説明申し上げます。
最近の急速な経済成長の陰で、
わが国の社会保障の水準は、西欧先進諸国に比べ、依然として低水準に置かれております。しかも最近における
医療費の急激な増高は、各種
共済組合の短期給付財政の収支を悪化させ、そのため
組合員に過重な負担をしいる掛け金の引き上げを余儀なくいたしております。また一方、長期給付におきましても、ここ数年来の異常なまでの消費者物価の上昇のもとで、
年金受給者の生活は、極度に逼迫しているのが実情であります。
このときにあたりまして、主として
組合員の掛け金と、それに見合う使用主負担の財源で運営され、国庫負担が貧弱な
共済組合におきましては、従来の保険主義の
原則を廃し、大幅な国庫負担の導入により、その社会保障的
性格を強める必要があります。かようにして短期給付、長期給付とも、
組合員の負担がこれ以上過重にならないよう
措置いたしますとともに、退職
公務員の老後の生活を少しでも安んじさせるよう、前向きの
措置を行なうことは、社会保障の観点からはもとより、
共済組合の趣旨に照らしましても、当然、国の
責任というべきものであります。
以上の立場から、
共済組合の短期給付並びに長期給付の充実改善をはかるため、この
改正案を
提出いたした次第であります。
次に、この
法律案の
内容につきまして、その
概要を御
説明申し上げます。
まず第一は、短期給付に要する費用につき、新たに国庫は二割相当分を負担することといたしたのであります。これにより
国家公務員共済組合につきましては、国庫としての国二割、使用主としての国五割、
組合員三割の負担、
公共企業体職員等共済組合につきましては、同じく国二割、
公共企業体五割、
組合員三割の負担とすることにいたしております。
第二は、長期給付に要する費用の負担割合についてであります。第四十八
国会において
改正されました厚生
年金保険法の例にならい、国庫負担を一割五分から二割へ引き上げることにいたしたのであります。これにより
国家公務員共済組合につきましては、国庫としての国二割、使用主としての国四割二分五厘、
組合員三割七分五厘の負担、
公共企業体職員等共済組合につきましては国二割、
公共企業体四割二分五厘、
組合員三割七分五厘の負担とすることにいたしております。
第三は、
年金給付の算定
基礎についてであります。
国家公務員共済組合の長期給付につきましては、従来その算定
基礎は退職前三カ年間の
俸給の平均額とされておりましたが、消費者物価の上昇の中で、年々ベースアップが行なわれている現状等を考慮し、
公共企業体の職員等の
共済組合と同様にこれを退職時の
俸給といたしたのであります。
第四は、遺族一時金及び死亡一時金の支給
範囲の拡大と
年金者遺族一時金の創設についてであります。
現行法では遺族の
範囲が、主として死亡した
組合員の収入により生計を維持していた
範囲に限られており、たとえ配偶者や親がいても、
組合員の収入によって生計を維持していなかった場合には、給付の対象とされておりません。この際、遺族一時金および死亡一時金は、
組合員の収入によって生計を維持していない遺族であっても、その支給を受けることができることといたしますとともに、
遺族年金の支給の要件を満たしている場合において
遺族年金を受けるべき遺族がないときは、
組合員の収入によって生計を維持していなかった者に対して、
遺族年金の額の十二カ年分に相当する金額を
年金者遺族一時金として支給することにいたしたのであります。
第五は退職一時金の引き上げについてであります。現在、
国家公務員及び地方
公務員の
共済組合においては、退職一時金の支給額は、
組合員期間によりそれぞれ二十日から五百十五日分となっておりますが、
公共企業体の職員等の
共済組合では二十日から四百八十日分となっており、著しく不均衡であるばかりか、その支給額も低きに失しております。したがいまして、この不均衡を正し、かつ退職一時金の底上げを行なうため、三十日から六百十五日分といたしたのであります。
第六は、
国家公務員共済組合審議会
委員、
共済組合運営
審議会
委員などは
共済組合員でなければならないものとされておりますが、
共済組合運営の実態及びその
特殊性から、現在は非
組合員であっても、たとえば労働組合の役員として専従
業務に携わっている者等、かつて
組合員であったものについては、労働組合の推薦により、
委員に任命できるようにいたしたのであります。
以上、この
法律案の
提案の趣旨及び
内容の概略を申し述べました。
次に、
国家公務員等退職手当法の一部を
改正する
法律案につきまして、
提案理由並びにその
概要について御
説明申し上げます。
日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社が、いわゆる三公社として発足いたしまして、その職員は、
国家公務員法、一般職の
公務員の給与に関する
法律などの適用を離れ、賃金をはじめとする労働諸条件については労使の団体交渉により
決定するという
公共企業体等労働
関係法の適用を受け、もって企業の民主的、自主的経営の実をあげ、公社の福祉に資することと相なりまして、すでに二十年に及んでいるところであります。
この間、
恩給制度につきましてもそれぞれ
公共企業体職員等共済組合法による
年金制度に改められていることも御
承知のとおりであります。しかしながら、その職員にとって重要な労働条件の一つとなっている退職手当につきましては、公労法により団体交渉事項とされながら、依然として
国家公務員と同様、
国家公務員等退職手当法の適用を受けてきていることは
昭和二十八年三月十日、
公共企業体仲裁
委員会は仲裁裁定第一〇号をもって、当然公労法上の団体交渉事項であることを明らかにしていることなどに見られるように、それ自体問題を残しているのであります。
他面、日本電信電話公社をはじめとしてこれら三公社事業のごとく、技術革新、拡充計画などの遂行が今日のごとくその職員に多様複雑な影響を及ぼす状況にありましては、退職手当につきましても多角的な実情に沿った労使の団体交渉による
決定の
必要性が痛感されているところであります。
これらの
理由に基づく
改正のおもな点は次のとおりであります。
第一に、日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社のいわゆる三公社職員の退職手当については、
公共企業体等労働
関係法の関連において、現在の
国家公務員等退職手当法の適用を取りやめ、労使の団体交渉できめることと改めようとするものであります。
第二に、この場合、公社職員と
国家公務員相互間の在職
期間の通算、及び公社の定める退職手当の
基準など
所要の
措置を行なおうとするものであります。
なお、この
法律は、公布の日から起算して三月をこえない
範囲内において
政令で定める日から施行することといたしたいと考えます。
以上がこの
法律案の
提案理由並びにその
概要であります。
何とぞ、慎重に御
審議の上、すみやかに御賛同あらんことを切望する次第であります。