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1968-03-25 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十五日(月曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 毛利 松平君 理事 渡辺美智雄君    理事 只松 祐治君 理事 村山 喜一君    理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    奧野 誠亮君       鯨岡 兵輔君    河野 洋平君       小山 省二君    笹山茂太郎君       四宮 久吉君    砂田 重民君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       古屋  亨君    村上信二郎君       村山 達雄君    山下 元利君       吉田 重延君    阿部 助哉君       佐藤觀次郎君    中嶋 英夫君       平林  剛君    広沢 賢一君       河村  勝君    田中 昭二君       広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         国税庁長官   泉 美之松君         郵政大臣官房電         気通信監理官  柏木 輝彦君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   渡辺 哲利君         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         国税庁税部長 川村博太郎君         文部省初等中等         教育局審議官  佐藤  薫君         農林省農政局参         事官      中澤 三郎君         通商産業省貿易         振興局輸出保険         課長      平松 守彦君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部資本協力課長 竹谷 源氏君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 三月二十二日  国立医療機関特別会計制反対に関する請願外  二件(川上貫一紹介)(第二八二三号)  同外一件(田代文久紹介)(第二八二四号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第二八二五号)  同外一件(林百郎君紹介)(第二八二六号)  同外一件(松本善明紹介)(第二八二七号)  同(工藤良平紹介)(第二八七〇号)  同(栗林三郎紹介)(第二八七一号)  同(野口忠夫紹介)(第二八七二号)  同外九件(広沢賢一紹介)(第二八七三号)  同(阿部哉君紹介)(第二九一二号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第二九一三号)  同外三件(神田大作紹介)(第二九六五号)  同(中村重光紹介)(第二九六六号)  同(中村時雄紹介)(第二九六七号)  同(只松祐治紹介)(第三〇〇〇号)  同(平岡忠次郎紹介)(第三〇〇一号)  同(古川喜一紹介)(第三〇〇二号)  同(森義視紹介)(第三〇〇三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  六号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)  物品税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 今回の所得税法並びに法人税法の一部改正についていま質疑に入っているわけでございますが、私は、この際、税と教育の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  第一にお尋ねをいたしたいのは、国税庁長官のほうから文部省に対しまして、納税についての道義の高揚について協力要請をするとともに、学習指導要領改定についていろいろな要求をしておいでになりますが、文部省はそれを受けてどのように対処してきたのか、このことについて当事者のほうから報告をいただきたい。
  4. 佐藤薫

    佐藤説明員 現在、小学校学習指導要領改定、さらには中学校につきましても近く着手いたします。また高等学校につきましては、この四月か五月に教育課程審議会に諮問をいたしまして、その答申を受けまして、それから具体的な学習指導要領検討作業に入るわけであります。言いかえれば、目下検討中ということであります。もちろん、国税庁のおっしゃることは十分に尊重して検討をしていきたいと考えております。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 国税庁長官いかがですか。
  6. 泉美之松

    泉政府委員 国税庁といたしましては、戦後の学校教育課程におきまして、納税についての教育が十分徹底しておらないのではないか、申告納税制度になっておる以上は、やはり納税者がみずから自分所得を計算して納税するのだ、そういう意識が十分教育される必要があろうというふうに考えまして、元長官であります木村長官時代に、昭和三十八年に文部次官にそういった要望をいたしました。次いで、前長官であります吉岡長官時代に、四十年の六月に同様趣旨のことをお願いしているわけでございます。私が長官になりまして昨年の十二月に、同様趣旨のことを文部省にお願いいたしまして、小学校及び中学校学習指導要領改定される際に、ぜひそういうことを織り込んでいただきたい、こういうことを、要求ではなくて、御要望申し上げておる事情にあるわけでございます。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 この「学習指導要領そう入を希望する必要事項について」という、泉さんが出されました内容について私も拝見をいたしました。中身を拝見しながら、税務行政としてはなるほどこういうようなことを希望したいだろうなという気持ちにはなります。しかしながら、これをどういうふうに学習指導要領の中で生かし、あるいは教科書の中で生かしていくかという問題になってまいりますると、これを端的に表現ができないような状態が私はあると思うのです。  そこで、いまの教育課程は、これは小学校中学校高等学校について私も調べてみました。小学校の三年生とそれから小学校の六年生、これは社会科の中で取り上げられておる。それから中学校の三年生、高等学校の三年生、この中で取り上げられておるわけですが、これを私は拝見いたしまして、どうも教育課程の中で、重複をしている問題並びに混乱があるのではないかという気がしてならないのであります。  その中身について申し上げますと、たとえば、小学校の三年生の社会科の中に、これは文部省のほうからある教科書について写しをいただいたわけでありますが、その中身を読んでみますと、税金というのはみんなのために使うのだということが書いてあるわけです。学図小学校社会、三年の下です。ところが、同じプリントをいただいた中で、同じ学図社会の六年生の上、ここにはこういうふうな表現教科書ができ上がっておる。「税金は、自分たちのために使われることを理解して、きめられた期日までに、必ずおさめるようにしたいものです。」税金を納める人は、その税金というのは自分たちのために使われるのだ、だから期日までに納めなさい、こういうような教科書になっておるわけです。小学校の三年生のほうは、税金はみんなのために使われておるというようなことが書いてあり、六年生では、税金を納める人は、税金自分たちのために使われることを理解して納期内に納めなさいと書いてある。一体こういうような教科書が正しいのかどうか、これが一つ問題点であります。  それから第二の問題点は、私は各教科書をずっと調べてみたわけですが、全部に当たるわけにはまいりませんでしたので、具体的な例を一、二申し上げてみたいと思います。それは中学教育出版社の「社会のしくみ」、この中を読んでまいりますと、税の仕組みというものについて、非常に不十分な表現内容であります。非常に不十分であります。私、具体的には一つ一つ申し上げるなにはございませんが、これに対しまして中教出版の「現代社会」というのを見てみましたら、これは税金分類にいたしましても、直接税とかあるいは間接税、あるいは累進課税とか、あるいは間接税種類の内訳とか、そういうようなものが出されまして、そうして生活必需品には税金を低くして、ぜいたく品には高くするというような方式とか、あるいは累進課税とか、そういうふうないろいろなくふうがなされているのだ、こういうふうな表現が使われて、これはわりあいに税の中身について一つの考え方というものを明示しておるようであります。ところが、片一方のほうの先ほど申し上げました教育出版の「社会のしくみ」のほうは、そういうようなことはほとんど書いてない、非常に不十分な表現であります。  そこで、今日は高等学校に行くのがほとんど大部分でございますから、この子供たちがかりに高等学校に、七割五分から八割ぐらいまで高等学校に行く時代でありますから、これが入ったとして、そのときに、高等学校山川の「現代政治経済」というのを見てまいりますと、この中に、中教出版の「現代社会中学の三年生で出ます内容のものが、高等学校の三年生のところに掲げてあるわけです。  そこで、小学校はそういうような問題があるとしまして、中学から高等学校に行く課程の中において、いま申しましたように、中学において教育出版社の「社会のしくみ」を使い、高等学校山川の「現代政治経済」を使った場合には、これで一応の、一通りの税教育という体系ができ上がると私は思います。ところが、中教出版の「現代社会」を使った子供が、高等学校に入りましてから山川の「現代政治経済」を使った場合には、中学の三年生に書いてあるものが、高等学校でも同じような形でほとんど変わりがありません。教科書をごらんになったらおわかりになると思いますが、同じような形で表現をされるとしたら、これは重複になるわけですね。それから、中学のほうで教育出版社の本を使いまして、高等学校で実教出版の「高校政治経済」のほうの本を使いました場合には、これは税の体系をずっと調べていく中において、全体的な角度から財政の一環の中における税制として非常にうまく表現がされておりまして、その場合には高度な教育を受けられるという形です。  そこで、そういうようなのをとらえながらいろいろな問題点を考えてまいりますと、いまの税に対するところの教育というものは、教育課程の中において抽象的には表現はしてあるけれども、きわめてずさんなといいますか、重複をした形において問題が処理され過ぎているのじゃないか。だから、今日は中学が一応の義務教育の完成の年でございますから、それまでの問に終わっておくべき筋合いのものではないか。それを、高等学校になってから税の仕組みの問題について学ばなければ、全体的に問題の把握ができないというような形の教科書編成では困るのではないかと私は思うのでありますすが、そういうような問題についてあなた方は、教育課程の問題は国税庁のほうから要請によっていま十分検討中でございますと先ほどは言われましたが、やたらに教育課程改正するわけにはいかぬと思うのです。これらの問題を私は指摘したいわけでありますが、これに対しまして、文部省教科書関係担当責任部局のあなたはどういうふうにお考えでございますか、お聞かせをいただきたい。
  8. 佐藤薫

    佐藤説明員 教科書というのは、著者の自主的な編集を認めております。その場合に、一番著者が基準とすべきものは学習指導要領でございまして、中学校につきましては大体この程度のことを示しております。先生にも資料を差し上げたと思いまするが、たとえば税の問題は、「日本経済」の「財政家計」というところでございますが、それについては、「家計の収支、貯蓄と投資などについて学習させて、家計が生産と結びついていることを理解させる。また、予算、租税、公債などの学習を通して、国や地方財政国民経済との関係を理解させる。」この程度指示をしておりまして、著者はこれに基づきまして創意くふうをこらして特色ある教科書編集する。したがって、結果的には教科書によりましていろいろバラエティーが出る。言いかえれば、先生のおっしゃるような重複ということもあるいはありましょうけれども、あくまで文部省としては、指導要領に書いてありますこの点さえ確保されれば、その上に高等学校の積み上げが可能であるというふうに考えておるわけであります。しかし、おっしゃるとおり、教科書を見ますと、現実問題としていろいろ結果的には重複があるかもしれませんので、そういう点はもっと指導要領自体が的確な指示をしたほうがいいという点があるかもしれません。そういう点につきましては、今後中学校高等学校教育課程の具体的な検討をするわけでございますから、御意見を尊重していきたいと考えております。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 お尋ねいたしますが、文部省としては、中学社会の中において間接税なり直接税の中身はわからなくてもよろしいという指導をしておられますか。
  10. 佐藤薫

    佐藤説明員 租税でございますから、当然その中には間接税、直接税があるということは教えるべきものと思います。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、あなたのところからいただいたこの中学教科書の中には、その分類をしてございませんね。
  12. 佐藤薫

    佐藤説明員 それは、何のどこの教科書でございましょうか。
  13. 村山喜一

    村山(喜)委員 一九六四年度の「税金とそのゆくえ」、教育出版の「社会のしくみ」、三年。これは私、文部省のほうから資料としていただいたわけですがね。
  14. 佐藤薫

    佐藤説明員 教育出版の「社会のしくみ」、三年ですね。それには、「税金にはいろいろの種類がある。課税の対象によって、所得税法人税消費税(酒税・砂糖消費税など)に、また税のとり方によって、間接税・直接税にわけられる。」また、国に納める国税あるいは地方に納める地方税があるというようなことを書いてあると思いますが……。
  15. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、それは表現だけであって、その中身については書いてありませんね。うしろのほうの付表を見ましても、いわゆる国税地方税の区分はありますが、そういうようなことは中学の三年の社会の中では知らなくてもよろしいということになるわけですか。片一方の中教出版の中には、間接税にはどういうようなのがある、直接税にはどういうようなのがあるというのが本文の中に規定してあるわけですよ。  そこで、国民として税についての必要な知識というものを、どういう程度まで把握をするという一定の水準というものがなければならないと思うのです。これはやはり教育課程の中であなた方が明示されたものに従ってつくられているのじゃないかと私は思う。どうですか。
  16. 佐藤薫

    佐藤説明員 お答えします。  指導要領だけではわからないという点もありまして、文部省は各教科ごと指導書というものを出しております。これは絶対に著者を拘束するものではございませんで、参考になるものでございまして、言いかえれば、文部省解釈といってもいいわけでございますが、それにはこの程度書いてあります。歳入のうちその最も大きな部分を占める租税については、直接税と間接税があることや、納税国民義務であるとともに、税金の使い方について十分関心を持つことが大切である、こういう点を理解させるということにとどまっております。したがって、これ以上のことをやれということは、指導要領あるいは指導書も期待いたしておらないわけでございます。もちろん、いろいろ教えればそれに越したことはないのですけれども、何といいましてもきわめて限られた時間でございまして、たとえば「財政家計」につきましても、このほかにたくさん教えることが多いわけでございまして、あまり細部に入ってはむしろ根本を逸するのではないかということを、むしろ指導要領自体で注意をしてあるというような現状でございます。
  17. 村山喜一

    村山(喜)委員 いまお聞きのとおり、高度の教科書のほうには取り上げられて、そうでない、それよりも低い内容のものといいますか、それには取り上げられていない。それらの子供たちが今度高等学校の試験で、間接税というのはどういうようなものがあるのですかという問題が出されたときに、答えることができない、こういうような状態になったら、これは私は非常に問題があるのじゃないかと思うのです。  そこで、あなた方にお尋ねしたいのは、ブルジョア民主主義国家租税原則というもの、それから社会主義国家租税原則というものについて、一体どういうような認識をお持ちになっていらっしゃるのですか。
  18. 佐藤薫

    佐藤説明員 私、専門家でありませんで、まことに申しわけないのですが、むずかしいことはわかりませんが、中学校までの段階高等学校におきましても、特に日本経済を教えることに主眼を置いております。したがって、その場合租税の問題につきましては、私たちが期待するところは大体次のようなことでいいのではないかと思いまするし、指導要領もそう書き、指導書もそう書き、あるいは教科書も大体それらの期待に沿っているように考えます。
  19. 村山喜一

    村山(喜)委員 まあいいですわ。あなた答えにくいでしょうから。税の専門家でもないし……。  そこでお尋ねしますが、あなた方の嘱託をされているというのですか、教科書専門調査官――教科書調査官というのは、文部省の役人ですね。それから教科書編集委員とかいろいろな段階に分かれて、教科書編集作業教育課程に対する問題、それから教科書のチェックをやっていらっしゃいますね。あなた方の文部省の中に、そういうような税に関する専門官みたいな人がおいでになるのですか。
  20. 佐藤薫

    佐藤説明員 おります。
  21. 村山喜一

    村山(喜)委員 おいでになる。その方から聞いたほうがほんとうはいいと私は思うのですが、この納税教育必要性というものを盛んにいっている段階の中にあって、この中身の問題について、もう少し義務教育段階であらましがわからなければ、これはやはり憲法との関連における問題として国民把握できないと思うのですね。私が指摘をいたしました内容については、ひとつ十分に検討をしておいていただきたい、こういうようにお願いをいたします。  それから、泉長官に私はこの際要望申し上げておきますが、世上笑い話があります。火事だ、どこだ、税務署だ、じゃほっとけ、こういうようなかっこうで、国民の中に税務署が存在をしておったら、幾ら納税教育要請されましても、私はそれにこたえることはできないと思うのであります。最近新聞にも、あれは大阪税務署課長が、にせの税理士として相当かせぎ込んでいる、あるいは汚職をやったとか収賄をやったとかいうようなのが新聞に大きく出ていましたね。こういうような問題について一体今日まであなた方は、そういうような税務官吏犯罪あるいは汚職というようなものについてどのような措置を講じてこられたのですか。その措置された内容について、この委員会報告を願えますか。
  22. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり、国税庁といたしましては、毎年税務運営方針というものをつくりまして、職員にそういう基本的な方針に基づいて行政を執行するようにということを申しておるわけでございますが、その中で、基本的な方針といたしましては三つございます。一つは、近づきやすい税務署にする、第二番目は、適正な課税を行なう、第三番目は、綱紀を正しくして明るい職場をつくること、こういう三本の柱を打ち出しております。そして綱紀の問題につきましては、ひとりそういう税務運営方針だけでなしに、しばしば長官通達を出しまして、職員国家公務員としての規律を守り、厳正な態度で執行に当たるように、汚職といったようなこと、非行事件を生じないようにということを通達いたしております。また、国税局長会議あるいは部長会議等の席上におきましては、そのつど非行防止について言及をいたしておる次第でございます。  最近、四十一年におきましては、比較的非行事件の発生が少なかったのでありますが、四十二年に再び若干増加いたしております。しかし、以前に比べますと非行はかなり少なくなってまいっておるのでございます。しかし、お話しのように、間々そうした不心得者がおりますことは、納税者税務行政に対する信頼を失墜することになります。私どもとしては非常に遺憾に存じておる次第でございます。特に、今回の大阪旭税務署課長事件は、課長という要職にある者の事件でございます。まことに遺憾に存じておる次第でございます。そういうことが起きないように私どもとしては今後とも十分戒心してまいりたい、このように考えております。
  23. 村山喜一

    村山(喜)委員 「学習指導要領そう入を希望する必要事項について」の中の中学校の第五に書いてありますのは、こう書いてある。「税務署は、国民の正しい申告納税を助けるための相談に応じ、また課税の適正や公平を実現するための調査、検査、徴収などの仕事をしていること。」こういうようなのを教科書にまで入れてもらいたいとあなた方は要望されているその中において、新聞をにぎわして、しかも管理、監督の地位にある課長脱税容疑でつかまり、そして収賄の疑いで逮捕されて、調べてみたら税金申告も受け合って、もぐりの税理士仕事までしておった。こういうような者が出てきますと、子供たちの前に、税務署というのは公明正大なこういうようなものをやりますということを、よう載せ切れないだろうと私は思うのですよね。だから、これはいまも私のほうから要請をいたしましたが、税務署関係犯罪の刑法上起訴されたもの、これはごく最近のものでけっこうですが、その経過を税制小委員会あたりにお出しをいただきたいと私は思うのですが、それはできますね。
  24. 泉美之松

    泉政府委員 そういった資料提出いたします。
  25. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、この問題についてはこれで終わります。  第二点は、今回改正法案として出されております法人税法改正案内容についてお尋ねをいたしてまいりたいのであります。これは、いままで質疑をだいぶされている中において、まだだれも触れていない問題でありますのでお答えを願います。  第一番目には、今回農協等が行なう有線通信放送について、圧縮記帳の特例を適用しようということになりました。減価償却を通じて課税の延期をはかろうとするものでございますか、これは実際面においてどういうような適用になってくるのか。  さらに、これは各その法人の経営の実態を見てみなければわかりませんが、国庫補助金等はいままでも引き当て金勘定の中にたしか入れられたと思うのでありますが、市町村がこれらの法人が行なうものに対しまして補助金等を行なった場合には、それは引き当て金勘定の中に入れるようになってくるのか。  それから所得税法律の上から見てまいりますと、いままでは加入者出資金という形でこの資金を提供してやってきたと思うのですが、これが今度は工事負担金という形で徴収をされるということになってくる。したがって、それを受けて圧縮記帳をやるということになってきたわけですが、そうなった場合には、この出資金については、農家が出資金を出した場合には、それは損金勘定としては所得税法上は処理されなかった。しかしながら、今回は負担金でございますから、確定申告等を出す場合において、処理については当然損金として経理されるということに私はなろうと思うのであります。それだけ法人のほうも、それから加入者のほうも、ともに利益を受けるというかっこうになってくる、このように解釈をして間違いございませんか。
  26. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまお尋ねが二点ございました。  第一は、今度の改正法による措置内容でございますが、御承知のとおり、有線電話に関しましては、従来は電信電話公社の専業として行なっておりましたが、昭和三十二年以来、農協その他の法人が有線放送電話を設置することができることになりました。この有線放送電話を設置いたしますためには、加入者からその工事に関す負担金徴収することにいたしておりますが、この有線放送の主体である法人は、この受け入れました負担金有線電話の施設をするわけでございます。したがいまして、受け入れました年には、受け入れた工事負担金の額が益金に算入されますのに、その工事によって取得した資産は、資産に計上されますから損金に計上されません。第一年目に非常に大きな利益が出て課税される結果になります。しかも、この法人は公益を目的とした法人でございますから、自後利益が出ることはまず考えられない。したがって、その後の減価償却課税を取り戻すことはできないわけであります。そういうことから、今回、これらの工事負担金によって取得した資産につきましては圧縮記帳の制度を認めまして、たとえば、百万円の工事負担金を受け入れて百万円の資産をつくった場合には、一年目の償却分が若干ございますけれども、ほとんど百万円の利益が出ます。その場合に、百万円で取得した資産をゼロに記帳をする。圧縮して記帳することによって、百万円の資産がゼロになりますから百万円の損が出る。そこで、工事負担金の受け入れの百万円と相殺をして、その課税年度は利益はない、したがって課税はないということになるような制度を設けたわけでございます。  それから第二点の、地方団体がこれらの機関に補助金を出した場合でございますが、これは一般の国庫補助金等圧縮記帳の制度が適用になりますから、圧縮記帳をするなり、特定引き当て金を設けるなりの方法が認められるわけでございます。  それから、加入者側の措置につきましては、国税庁からお答えをいたします。
  27. 川村博太郎

    ○川村説明員 有線電話の施設に対しまして、負担金を出した場合の課税上の措置でございますが、これは一般の電話加入権と異なりまして、その加入権自体を売買するというような性質のものではございません。したがいまして、これを資産と考えることは適当でないと思います。ただ、現実には、その電話線等の施設は農協の所有になっている場合が多いと考えられますので、一般の共同的施設のために出しました負担金課税と同様に、これを繰り延べ資産として考えております。したがいまして、直ちに損金にはなりませんけれども、その償却も、毎年必要経費として取り扱うことにいたしております。
  28. 村山喜一

    村山(喜)委員 負担金所得税法上繰り延べ資産として、その年分に対応する部分の金額が繰り延べ資産の償却費として、その年分の必要経費に算入をされるわけでしょう。現行の取り扱いでは、三万円以下は全部償却ができるようになっている。  そこで、全国のものを大体調べあげてみますと、一戸当たり四万ないし五万円の負担金ということになるようであります。そうなってさましたら、自分が便益を受ける公共的な施設または共同的施設等の設置または改良のために支出した経費については、耐用年数の十分の七に相当する年数のなにができるということになっております。この四万ないし五万円の工事負担金の場合には、どういうような処理をされますか。   〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
  29. 川村博太郎

    ○川村説明員 おっしゃるとおり、こうした共同的施設のための負担金につきましては、繰り延べ資産といたしまして当該施設の耐用年数の七掛けの償却を認めております。年数に応じた償却を必要経費として認めているわけでございますが、現実に電信設備等通信施設につきましては、一般的に十年程度の年数と考えられますので、七年の耐用年数で償却を認めるということにいたしておるわけであります。
  30. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、私がお尋ねいたしたいのは、これは倉成政務次官にお答えをいただきとうございますが、いま全国に有線放送と称するものが三百万戸ある。その中で今回税法上のメリットを与えようとするものは、単なる有線放送だけではなくて有線通信業務をやるものについて限られておるわけです。そこで、この三百万戸というものを改良いたしまして、そして有線通信放送ができるようにしようという政策的なねらいをもって提出をされたものであろうと思うのであります。とするならば、現在電電公社は農村集団自動電話というものを架設していく計画を持っております。これは御承知のように設備料は一万円ですが、今度国会で法律が改悪をされまして、これが通ったら三万円、それから、いわゆる債券をこの場合には六万円ほど買わなければならないということになります。債券でありますから、これはそれを購入しても売却はできるわけでございますので、これは負担金のような取り扱いにはまいらない。しかし、設備料というものは、これはやはり電電公社の品物でございますますから、これも償却の対象にならないと思うのであります。だから、税法上のメリットから考えた場合には、農村集団電話というものよりも、今度新しく設ける税法上の利益を与えることになりました有線通信放送というものが、税法上優遇をされることになると思います。ということは、今後の農山村僻地におけるところの電話のあり方という問題をめぐりまして、当然この有線通信放送のほうが優先をするのだ、農村集団電話よりもそちらのほうが優先をするのだという、これは政府のそういうような政策課題にこたえて提案をされたものだと受け取る以外にないと思いますが、そういうように受け取って差しつかえございませんかということです。
  31. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 今回の法律改正では、この有線放送に関しまして、有線放送の事業主体に対して圧縮記帳の制度を設けるということにいたしたわけでございまして、ただいまの農集電話につきましては、事業主体が電電公社でございますので圧縮記帳の必要がないわけでございまして、非課税で、その限りでは両者がいわば平等になるという結果だと思います。法律の問題としては、今回の法律改正はそれだけを意味しているとお考え願っていただけばけっこうだと思います。
  32. 村山喜一

    村山(喜)委員 表のほうはなるほどそのとおりなんですが、しかし負担金については、先ほど国税庁のほうから説明がありましたように、三万円以下はその年分の必要経費に算入をして、償却費として繰り延べ資産の償却ができるようになっておる。そうなっておるんですよ。だから、出した金についても、これは出す農家のほうもいいわけだ。それから法人のほうもいいわけだ。両方とも、裏、表ともいいということになるんですよ。
  33. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまの有線放送につきましては、先ほど申し上げましたように、公共的施設のための負担金といたしまして繰り延べ資産として取り扱いをしておりますが、農集電話につきましては、これは一般の電話加入権と同じように譲渡が可能なものでございます。したがいまして、負担金等、いまの債券をも含めまして、一切を資産の取得価額と考えております。したがいまして、これを売ったときの取得価額として譲渡した場合に必要経費に考える、このような取り扱いにしております。
  34. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから両方ともいいわけですよ。だから、私はあなたにお尋ねをしているのではなくて、そういうふうな政府の政策、私はそれが悪いとかいいとかいうことを言っているわけじゃございませんよ。しかし、税法上から見ていくならば、そういうような政策をあなた方政府としておとりになるでしょうねという事実関係を確かめているわけです。これは倉成さん、あなたが答えなければだめですよ。
  35. 倉成正

    ○倉成政府委員 農村の有線放送を使うかあるいは農村集団自動電話を使うかということは、やはり地域によって違うのじゃないか。その場合に、どちらを使ったほうが負担が軽いかということは、やはりその地域、地域、また加入者の意向によって若干違うのじゃないかという感じがするわけであります。  それから、先ほどもお話がございましたように、結局農村集団電話のほうは、一応一般の電話と接続できるわけですから、一般加入電話と同じです。だから、これは形の上では一応流通性があるというか、この権利を譲ることができるということになっておるものですから、こういう取り扱いになっていると思います。しかし、実際は、これを譲るかどうかという問題等が農村であるのではないかという感じもいたしますけれども、いま申し上げましたような角度で、どちらを優先するということじゃなくて、たてまえ上こういうことになっているというふうに御理解いただきたいと思っております。
  36. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうも答えにならぬですよ。たてまえ上そうなっているのだったら、あらためて法人税法改正案を出すまでのこともないでしょう。今度出したのは、そういうような放送と通信と両方やるものについては、税法上のメリットを与えようということでお出しになったわけでしょう。ということは、それだけの必要性というものを認めた上で提案をされたに違いないわけですよ。そうでなければ提案の理由にならぬじゃありませんか。だから、私は、そのいわゆるよって来たる根本の政策のあり方というものについてあなたにお尋ねしたわけですが、ケース・バイ・ケースのような答弁になってしまったのですが、これについては、郵政省と農林省のほうからお見えになっていますから、それぞれの立場から御説明をいただきましょう。
  37. 柏木輝彦

    ○柏木(輝)政府委員 ただいまの御質問にあります有線放送電話と、それから電信電話公社でやっております農村集団自動電話、この二つの考え方につきまして簡単にお話し申し上げたいと思います。  有線放送電話のほうは、昭和三十二年の法律によりまして、地方自治体、農協その他のものが、地域住民の電話の不便なところにおきまして、告知業務をあわせまして、つまり、同じ線を使いまして各戸に、あるいは……。
  38. 村山喜一

    村山(喜)委員 中身はいいですよ。
  39. 柏木輝彦

    ○柏木(輝)政府委員 そういう電話通話の機能のほかに、大事な地域住民に対しての放送機能を付加したものとして発足いたしております。現在、全国に約三百十万ばかりの加入者がございますが、これは電話のほかに放送の設備も付置した設備を利用しているわけでございます。  一方、電信電話公社におきましても電信電話の拡張の第一次五カ年計画以来、ことしで第三次の五カ年計画が終わったわけでございますが、この間の電話の普及は、まだ一千万程度でございます。それでこの一千万のうち――従来までは、主として都会地の電話の需要に追いつくのが精一ぱいでございまして、農山漁村その他に対しましての需要の充足はまだかなり低くございます。現在ようやく三百万程度までになってまいりましたのですが、まだまだ地方の農山漁村の需要は、最近の農村の近代化あるいは生活の水準の向上に伴いまして急速に伸びておるわけでございます。電信電話公社といたしましても、この間、農村公衆電話とか、地域団体加入電話でございますとかというようなほうにおきまして、無電話部落の解消等につとめてまいりましたのでございますが、特に最近の情勢にかんがみまして、昭和三十九年の七月から、この農村集団自動電話という制度を試行業務として始めまして、現在まで約五十万程度のものがその業務で利便を受けております。これは電話だけでございまして、有線放送電話と比べますと基本的に違う点は、有線放送電話のほうが放送機能を付置しておるのに比べまして、電電公社のほうの農集と称せられますものは、全国通話ができるとか、ただいまお話が出ておりますように、加入権というような形での利点があるというようなものがあるわけでございます。  それで、現在まで一つの地域におきまして、一体どちらの電話、あるいは有線放送電話がいいかあるいは農集がいいかということがしばしば問題になりまして、それぞれのメリットがあり、また、それぞれ地区、地域によりまして創設費というものが有線放送電話は違いますが、農集の場合には、ただいまお話がありましたように、設備料と債券の負担ということで全国均一になっております。それらの経済的な負担を比べ、また、地元自体の業務運営の能力等というような問題もありますが、いろいろ地元におきまして、どちらをやるかということがまず問題になることが多いのでございますが、たまたまこの二、三年におきましては、そういう問題を含めまして、有線放送と農集といずれがいいかということが、一つの部落、一つの自治体の中で二派に分かれて相争うというような事例も間々あったわけでございます。これにつきましては、電信電話公社のほうの販売の方法についての欠陥があるとか、あるいは地元の住民が両者の制度を公平、客観的に判断するだけの材料がないとかというような問題もありますし、また、有放の業者の売り込みというような要素もありまして、なかなかむずかしい問題もあったわけでございます。  ところで、郵政省といたしましては、これらはそれぞれの特徴を持って、それぞれの違う経済条件、地域条件に合った存在でございまして、どちらがいい、どちらが悪いというわけでございませんで、それぞれの特徴をそれぞれの地元において公平、客観的に自由に選択して、これを今後の農村の生活、経済活動に役立てていくのがほんとうに望ましいのではないかと思っている次第でございます。  たまたまこの問題をめぐりまして、一昨年、四十一年の六月に郵政審議会、これは郵政省の付属機関でございますが、ここが、有線放送電話の基本的なあり方についての諮問を受けたわけでございます。その中の一つの項目といたしまして、有線放送電話と農集との関係を、将来どういうふうに考えるかということも種々議論になりまして、昨年の十月にその御意見を結論としていただいたわけでございますが、この答申の趣旨といたしましても、地域住民の選択が適正に行なわれるように措置をし、またそういうことを期待するという趣旨の答申でございます。この線に従いまして、今後とも私どもの役所といたしましても、適切な措置をとりたいと思っておる次第でございます。
  40. 中澤三郎

    ○中澤説明員 農林省といたしましては、いわゆる農協等が行なっておりますところの有線放送電話施設の設置につきまして、ただいま郵政省からもお答えがございましたが、農林漁業地帯におきまして、単なる通話ではなくして、共同利用施設としての放送事業というところに特異な機能なり目的がございますので、従来から公庫資金あるいは近代化資金、特定の場合の補助というような対象といたしまして、農林漁業地帯におきまして、地元の要望がある限りは、これに対しまして助成するなりあるいは長期、低利の資金を融資するという体制をとってきたわけでございます。  御質問にございました今回の工事負担金に関する圧縮記帳の問題でございますが、農協の共同利用設施でございますから、できるならば出資金という形でやることが望ましいと一般的には考えられるわけでございますが、御承知のように、現在の農協が四千万円に近いところのこういう施設をつくる場合に、その全額を組合の出資でまかなうということはなかなか困難な実情にございます。したがいまして、工事負担金という形でかなりの負担が行なわれているわけでございます。従来、これが益金として処理されますと、多額の金でございますので、その他の事業からどういう益金が出るかということも関連いたしますけれども、経営基盤の弱小な農協といたしまして、非常に大きな負担でございます。したがって、今回の法人税法圧縮記帳についての特例措置は、そういう農協の実態及び有線放送電話施設の特異な効用ということを十分お考えいただいた措置だということで、まことに適切な御措置というふうに考えるわけでございます。  ただ、農林省といたしましては、この措置が行なわれることによりまして、これが農村集団電話よりも特に有利になることによって、格別有線放送電話施設というものが数多くこれを契機として設置されるということも、特にないのではないかという感じを持っておるのでございます。
  41. 村山喜一

    村山(喜)委員 農林省は、いま有線放送事業だけをやっているのが大部分ですね。だからこれを近代化して、通信業務ができるようなものにまでやっていこう、こういうような政策的な目標を持っていらっしゃるのですか。
  42. 中澤三郎

    ○中澤説明員 現在農協が有しております施設は、大体が放送と通話両方の機能を持っておるわけでございます。
  43. 村山喜一

    村山(喜)委員 放送と通信とやるのは、私のほうの鹿児島県全体の中で三カ所だけですよ。どうなんですか。
  44. 中澤三郎

    ○中澤説明員 昨年、郵政省からいただいております資料によりますと、四十年度の数字でございますが、通話及び放送受信の施設を持っておるものが、加入者数から見ますと、先ほど先生の御質問にもございましたが、二百六十万戸のうち約二百五十四万戸ほどがその両方の機能の受益者でございまして、それ以外の放送のみの受益者数が十二万戸というふうになっておるところから見ますると、ほとんどが両方の機能を持っておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  45. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうしたら、私の県が非常におくれておるということですね。まあいなかだということになるのですが、これは自民党の田中参議院議員が中央会の会長でございますので、私のほうでも注意したいと思いますが、しかし、そんなに現在あるのだったら、これは出資金としていままで処理してきたわけですね。だから、これを負担金としてそういうような税法上の利益を与える必要性というものは私はないと思うのですが、必要性は、あなた方のほうから要求をされて、大蔵省としては税法の改正をしたのじゃないのですか。違うのですか。
  46. 中澤三郎

    ○中澤説明員 従来、出資金処理というふうにやってきたと先ほど申し上げたつもりではございませんが、本来、こういう長期の固定資産でございますので、農業協同組合の施設としてはそれが望ましいということを申し上げたわけでございます。ところが現実には、現在の農協は単協でございますが、ほぼ総合単協の出資金の平均が千六百万円くらいでございまして、その上、四千万円の施設をするために全体を出資でするということは非常に問題があるばかりでなく、出資が可能となりましても、また出資配当という問題がつきまとうわけでございます。そういう関係から、やはり放送電話施設はつくりたいけれども、農協としてこれをいかに扱うかという問題に非常に苦心するわけでございます。そういう観点から工事負担金ということ、あるいは借り入れ金ということをとっているわけでございます。そういう実情からいいますと、今回の措置によりまして、かなり実質的に農協の負担の軽減になる、こういうふうに考えるわけでございます。
  47. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうなるとおそきに失した、こういうことになるわけですね。四千万円もかかるようなそういう施設に対して、それを出資金として、それに対する配当金まで考えておらなければならなかったが、今日までそれが解決をしなかったのがおかしいのであって、これからは、こういうような税法をつくった場合に、それを更新期といいますか、つくり直しをする場合に、またさらに負担金を集めて工事をやり直すというようなときにしか使えない、こういうことになる。だから、有線放送が始まったその段階の中において税法もそういうことをやっておけばよかったのだ、こういうことになりますか。
  48. 中澤三郎

    ○中澤説明員 有線放送施設が、いつごろから一つの施設といたしまして四千万円ほどの経費になったかということにつきましても、よく存じないわけでございますが、当初はこんな大きな金額でなくても、そういう機能を持ち得たというふうに考えられるわけでございます。いわゆる技術の進歩に従いまして固定資産の額が多額になる傾向が最近多くなってまいった。こういうふうに考えますと、御指摘のように適切な時宜を得た措置であったかどうかは別といたしまして、やはりそういう技術革新の実態に合わせた措置であるというふうに考えるわけでございます。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 いまの運営を見ておりますと、基本料金が二百円ぐらいですね。それから度数制によって七円ぐらいのいわゆる送信負担というものは加入農家が支払いをしますね。ところが、受信についてはこれは法人が負担をすることになっておりますね。そういうような関係で、一体貧弱な農家を相手にそのような仕事をやることによって、これは電電公社と違いますから、受信については法人が負担をしているということに私たちは聞いているのですが、その点はどういうような改善策を講じようとしているわけですか。
  50. 柏木輝彦

    ○柏木(輝)政府委員 ただいまのお話は、有線放送の受信料と申しますのは、おそらく有線放送あるいは有線放送電話設備を設置した施設の受信料、NHKなりに払う受信料のお話じゃないかと存じますが、私のほうで承知しておりますのは、受信料はそれぞれの組合なりそれぞれの施設主体のほうで負担することになっておると思っております。  また、利用料、通話料その他につきましては、月額二百円の基本料というのはわりあい少ないほうでございまして、三百円あるいは五百円というようなところにまでいっているのが最近は多くなっております。  なお、度数料というお話がありますが、度数料ということで一度当たりに五円とか三円とか、あるいは高くて十円というものもございますが、これは全体からしますと数は少のうございまして、受信料、通話料といたしましては、基本料だけでまかなっている組合が大部分でございます。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、これはあなた方のほうでは、それらのいわゆる基本料金にすべきか、あるいは度数制にすべきかというのはその法人にまかしてある、こういうように解釈してよろしいのですね。
  52. 柏木輝彦

    ○柏木(輝)政府委員 一応法律的な根拠というものはございません。ただ、行政指導といたしまして、適正なる原価が確保されることによって、保守あるいは改修、あるいは災害時の復旧等が円滑に行なわれることが望ましいという立場から、ある程度指導はいたしておりますが、しかし、これとてもどういう施設については幾らが適当であるというような標準を設けてあるというようなことはいたしてございません。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 大体わかってまいりましたが、問題は、この有線放送通信の場合の運営のあり方だろうと思うのです。私は、これは郷土の新聞を持ってきているわけですが、非常に便利になったというので喜んでいる点があるわけです。そうして農協とか役場のお知らせば、上のほうから非常にスムーズに伝わってきて、だから部落の集会には、これを通じて呼び出されるので欠席者がゼロ。それから、道路補修などの共同作業も休むわけにはいかなくなった。行政当局や農政の上から見たら、非常に便利になってきたということがいわれている。ところが、これは通信と放送と両方やるわけですから、自分で選択をするわけにはまいりません。法人のほうでNHKのニュースを知らしたり、あるいはそのほか農事放送を、これは必要ですから、いろいろな番組編成をやりましてやるわけですが、その場合に、やはり画一的な文化財というものが上のほうから押しつけられるという問題点はありますね。だから、一体これの運営についてどういうふうにして民主的にやるのかということが、私はやはりこれらの計画を、税法の上においても進めていく場合においてそこら辺を検討して、一方的な上から下へのそういうような片側通行みたいな形にならないような運営の方法を考えなくちゃならない。これらについては、私はやはり問題があるんじゃないかと思うのですが、農林省としては、これらに対するところの指導の上において、苦情というようなものはございませんか。
  54. 中澤三郎

    ○中澤説明員 農協の有線放送電話に関しまする運営上、特に組合員の方々から、いわば上からだけの規制を受けるというようなことに関する苦情は、これまで聞いたことがございません。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 では第三点の問題、所得税関係の問題です。  妻の地位の問題について、先般横山委員のほうから問題の指摘がございました。内職の妻については二十二万五千円までですか、資産所得のある人の場合には、分離課税でたいへん所得があってもそれは課税の対象にしないというような問題の指摘がありました。そこで、この税法の上から見て、今度の配偶者控除が、所得税関係において一万円ふえて十六万円になるわけですね。それから住民税においては、これまた一万円ふえて八万円が九万円になるのですか、そうですね。そうなってまいりますと、今度青色申告の場合と白色申告の場合との比較をとってみた場合に、白色申告の場合には所得税で一人につき十五万円のやつを一万円上げて十六万円にする、こういうことになる。それから専従者控除のほうも、住民税の場合には、これが八万円であるやつを十一万円に引き上げるわけですか。  そこで、先般のある所得税法改正によりまして、青色申告のものについては完全に給与制度が生まれました。そこで、その運営のやり方の問題になってくるわけですが、労務の対価として相当であればよいという指導のもとにいままでやっておいでになったわけです。そうなってまいりますると、青色申告の完全給与制度のもとにおいて最高をどのあたりということは、業種別によってこれはまた違うだろうし、あるいは労務内容、業務内容によって違ってくるとは思うのでありますが、これをどの程度まで認めるかということによって、私は、非常に大きなバランスの違いが、いままでと違って生まれてくると思うのであります。そこで国税庁は、確定申告をもう受け付けておるわけでございますから、これはどの程度まで認めるのか、大体標準的なものをこの際教えていただきたい。どうですか。
  56. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり昨年の税法改正によりまして、本年一月一日から青色申告の専従者につきましては、その専従者に対する給与の支給を必要経費として認めるということにいたしておるわけでありますが、その給与の金額につきましては、法律にございますように、労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、それからその事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他に照らして相当であるものと認められるものについては、必要経費に認めるということにいたしております。具体的には三月十五日までに専従者に支払う給与の額を届け出ていただくことになっております。国税庁といたしましては、こういった給与の額は、それぞれ事業主がその専従者の労務の提供の程度であるとか、その労務の内容であるとかいったようなものに照らして適正な額をきめるべきであるというふうな考え方のもとに、一定の基準を設けて、これまでは認めるとか、これ以上は認めないというような措置はとっておりません。事業主が適正に定められることを期待いたしておるわけでございます。ただ、そういったばかりではきわめて抽象的で、事業主も幾らにきめたらいいかわかりかねるだろうということからいたしまして、そういった事業を営んでおる法人の場合に、その法人の親族従業員に対してどの程度の給与を払っているかということの平均の数字を手元に持っておりまして、事業主のほうから質問がございますれば、法人の場合にはこの程度の支給がなされておりますということをお知らせして、事業主が専従者給与の額をきめる場合の御参考に供しておる、こういった程度でございます。国税庁として一定の金額基準を持っておって、それまでは認め、それ以上は認めないというような措置は別段とっておりません。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、限界はおそらく引いていないだろうが、そこには常識的に考えられるものが何かあるわけですよ。それで、そういうふうに見ていった場合には、家事と労働と両立させながら妻はやっていくわけですから、だから労務に見合う対価として相当であればよろしいわけですから、その場合に白色は十六万円に、まあ据え置きじゃなくて一万円だけ上げるわけですね。青色が一体どれくらいになるのか。これはやはりいままでの対比の上において、この妻の地位というものを給与所得者の場合には十六万円にする、白色申告の事業者の場合にも妻の地位は十六万円というふうに見る。青色はまあ五十万円ぐらいになるのかどうかわかりませんが、幾らなんですか、大体標準的なことをおっしゃってください、そうでないと対比ができないじゃないですか。
  58. 泉美之松

    泉政府委員 まだ三月十五日までに提出されましたそういった資料について集計をいたしておりませんので、具体的な金額は判明いたしておりませんけれども、個々の事例について聞いてみますと、大体において妻の場合には月二万円あるいは二万五千円といった程度のようでございます。したがって、お話しのように五十万円になるというようなことはないと存じますが、しかし、そういうふうになりますと、いまの白色申告者の場合の十六万円とはやはり差異が出てまいりますことは、これはまあ税法上そういうふうになっておるからやむを得ないことだと思っております。
  59. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、地方税においてもこの歴史を振り返ってみますと、三十七年から四十年までは八万円対五万円ということで三万円の差があった。今度は四十一年になりますと、十万円対六万円で差が四万円、それから四十二年は十二万円対八万円で同じく四万円、今回は十七万円対十二万円で差が六万円に拡大をしていますね。これは地方税においてもそうなっている。ところが、今度は所得税関係で見た場合には、昭和四十一年が二十四万円対十五万円で九万円差、四十二年も同じであります。四十三年は一月からですから、これは若干違ってきますが、いまの二万五千円で十二カ月分ということで計算をいたしてみますと、三十万円対十六万円ということになるわけですね。私はこれが悪いということは言いません。完全給与制というものは必要だと認めます。しかしながら、三十万円対十六万円、白色のほうのおかみさんは働きが悪いから、おまえのところは半分でよろしい、青色のほうは働きがいいからその倍上げましょうというような形になってくる。それから給与所得者の奥さんは白色と同じで十六万円でございます。こういうような妻の地位について税法上の差別というものがこれからますます拡大をしていくようなかっこうに、歴史的な過程を見ると出ているわけでありますが、私は青色申告のほうにできるだけ持っていくというたてまえ、税法の申告制度というものを否定するものじゃありません。しかし、中には私のところにもいろいろ苦情を言ってこられる人たち中身を聞いてまいりますと、そういうようなことにしたいと思うけれども、字も知らないのだ、自分は字も知らないのにそういうことができますかというような年寄りの人たちもいるわけですよ。そういうような場合に、汗水たらして夫婦で働いておって、それをだれかに頼んで白色申告で出した場合に、おまえさんのところはもう半分でよろしいのだというふうには、これはちょっとあまりにも極端な妻の地位の差別ではないかと私は思うのですが、倉成政務次官どうです。
  60. 倉成正

    ○倉成政府委員 白色と青色の差別が少しつき過ぎじゃないかという御趣旨の御質問だと思うわけです。これは村山委員もお認めになっておりますように、一方は記帳をしておる申告者でございますし、一方はそうでないわけですから、若干の差別がつくのは当然だということは村山委員が御指摘のとおりであります。そこで、なるべく青色告申の要件と申しますか、いろいろな記帳のやり方その他を簡便にして、できるだけやりやすいようにして青色申告に移ることができるようにという配慮を実はいたしておるわけであります。したがって、そういう方向にこれからだんだん持っていくということで、白色申告の方がちょっと努力をされれば青色になれる、そういうことにこれから持っていくのがやっぱり筋ではないか。この区別を全然なくするということはなかなかむずかしい、これは村山委員もお認めになっておるとおりでありまして、問題は、白色のほうをもう少し上げたらどうかという御議論であれば、これまた、将来だんだん税法全般の問題とにらみ合いながら考えていくべき問題ではないか、かように考えております。
  61. 村山喜一

    村山(喜)委員 只松君が緊急質問があるそうでございますから、私これで一ぺん中断をいたしますが、四十二年の十二月に出されました税調の資料を拝見いたしますと、昭和四十年の青色と白色の事業所得の対象人員が出ております。青色が七十七万、白色が百六十八万、専従者数というのが同じく八十七万ずつ、同数のようなかっこうになっておるわけですが、私は、やはりこの際、青色のほうが上がり過ぎて白色がどうのというようなことではなしに、いま倉成さんもおっしゃったように、青色のほうの妻の地位は、あなたは内助の功が大だということで三十万円認めて、そして白色のほうは、あなたは無学で働きが悪い、そういうようにとられるような十六万円という差別、これが拡大をしていくということは、私は税の理論と政治の理論と対比して考えなくてはならぬと思うのですよ。なるほど税法上の技術論からいえば、そういうことは成り立ち得るとは思う。しかしながら、政治の問題としてはあまりにもこれは官僚的な処理の方法ではないかという気がしてならないのですよ。そういうようなことを考えてまいりますと、四十三年度の国民租税負担率の中で国税が一三・四%、地方税六・二%、合わせて一九・六%という租税負担率が出て、その中でやはりわれわれが考えなくてはならないのは、税金としてそういうような国はじめ地方公共団体に公的権力で取られるわけですから、それは国税だけでなくて地方税ともからみ合わせながら考えていった場合に、今回地方税においても差がある、六万円開いてきた。国税においてはそれが二倍に開いてきた。両面からやられておるかっこうになるわけですね。ですから、ここらはもっと政策的にあなた方のほうでも再検討を願いたいということを私は意見として申し上げたいと思うのですが、もっと前向きの答弁はできませんか、白色の場合。
  62. 倉成正

    ○倉成政府委員 今度の青色の完全給与制は、私はやはり非常にいままでの考え方からすると前進であると思うわけです。いわば払ったものを経費として認めるというわけですから。ですから、この実態が一体どういうものかということをやはり見きわめることが一番大事なことじゃないかと思うわけでありまして、やはり白色のほうは、御案内のように定額を引くわけですから、これをむやみに上げるというわけにはなかなかまいらない。しかし、御指摘のようにやはり妻の地位というようなことから考えてまいりますと、ほかのいろいろな要件、経済状勢、税その他にらみ合わしてだんだん上げていくという方向、これは私どもも考えておるわけでございます。ですから、しばらく様子を見ることが必要じゃないかというのが現在のところの考えでございます。
  63. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 只松祐治君。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 同僚委員からすでに大かたの問題は論議し尽くされているので、私はきょうは国税庁や税務当局の皆さん方が多少お喜びになるような問題を中心に質問をしたいと思います。  まず第一点といたしまして、前回も少しばかりお聞きして、泉さんがお答えになったと思って、私は議事録をいろいろ調べてみたんですが、塩崎さんが大体中心にお答えになっておったわけです。不動産関係所得についてお尋ねをいたしまして、そのときに私は、近代社会の構造の変化、経済の変化に伴って税制もそれに対応した取り方をしていかなければならない、こういうことを私はいろいろお話を申し上げた。そういうものの一つの例として、土地というのは一つの大きな産業といいますか、日本経済の中で非常に大きなウエートを占めた面として見ていく必要がある。したがって、税対策上もそういう面に新たな角度から、権利義務関係、それから当然発生してくる所得関係に対して調査をし、課税をしていく必要があるんじゃないか、こういうことをお話ししたわけです。これは、当時塩崎さんやなんかは、まあ大体そういうことをやっておりますというようなお話があったわけですが、やっておらない。当時私は、こういうふうに大きな概算をいたしまして、日本全国ではおそらく一兆円をこす脱税、戦後最大の脱税というものが行なわれておるのではないか、こういうお話をしたら、夢みたいな話のような顔をされておった。ところが、実際に――まあそのときは、私が私の地元や何かの例を少しお話ししたわけです。その後国税当局でも、御承知のように豊島税務署やその他で具体的に調査を始めたわけです。私の予言は大体的中をいたしたと申しますか、決してほらでも何でもなくて、事実そういう膨大なものが出てきておるわけです。  まず、私がここに一例を――これは泉さんも御承知かと思いますが、申し上げますと、豊島区内で起こった顕著な例、一カ月ほど前にも豊島関係で三億円からの脱税があるのを国税当局は発表されました。まあそれに類似をするものでございますけれども、豊島区内に居住しておるAという人は三千二百坪の土地を持っております。借地人は六十五人。そういう土地関係の中で一番大きなのは土地の更新料、契約更新に伴うもので、四十一年までに七百五十九坪、二十五人の約四分の一の更新がありました。繁華街でございますので、一〇%前後の更新料が取られ、四千七百九十九万円の脱税がありました。  いま一つは、これは住宅地でございますが、三千五百坪の土地を持ち、二百十三人の借地人がある。この人は平均六%、まあ約一万円の権利金を取りながら、一銭も申告しておらない。こういう例がございますが、御存じでございますか。
  65. 泉美之松

    泉政府委員 お話の事案は承知いたしております。  最初のお話の、繁華街を中心として一〇%程度の更新料を取るという例の場合は、申告価額と税務署調査額との差額が所得で四千七百九十九万円でございまして、税額ではそれまでにのぼりませんので、脱税額としてはそこまでいかないわけでございますが、お話のような事案がございます。私どもといたしましては、こういった事案を基礎にいたしまして、そのほかの地域におきましても――只松委員がかねてからおっしゃっておられるように、不動産の更新料が、ちょうど戦後二十年以上たったという段階で相当更新が行なわれておるということがわかるのでありますので、ほかの地域におきましても、そういう事例が当然あるわけでありますから、そういった点についての課税の充実をはかるように、それぞれ指示をしておるような次第でございます。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 法務局来ていますか。――じゃ、本問題を詰める前に、法務局が来ておらないようですから、関連した事項を聞いてまいりますが、いま賃貸権利の問題を聞いたわけでございますが、そのほかに不動産所得として、国税当局でどういうものがあるとお考えですか。
  67. 泉美之松

    泉政府委員 先ほどお話のありましたのは、借地権の場合の更新料の問題でございましたが、そのほかに借地権を設定する場合の権利金、あるいは土地の上に家屋を建築する場合にその礼金といったような各種のものを地主が徴収をいたしておるようであります。したがって、単に更新料だけでなしに、当初借地権を認める場合の権利金あるいは家屋を増築する場合の礼金、こういったようなものも調査しなければならない対象になってまいるわけでございます。
  68. 只松祐治

    ○只松委員 私が、ずさんだ、そういう面に対して国税当局があまり熱意がないと言うのは、いまの答弁でも明らかですが、私が知っておる限りでも、新たに土地を借りる場合の――これは東京都内は少ないようです。郊外は少しあるでしょうが……。埼玉、千葉、神奈川というような新興地、きのうの新聞にも出ておりましたが、この三県で東京都の一千二百万の人口を今月中に追い越す、このぐらいふくれ上がっておる。こういうところでは、結局新たな土地をなかなか売らないから借りておる。二分の一以上の権利金の場合、譲渡課税がかかりますから、これは大体取られるだろうと思います。それでもこういうものがある。それから、いま言われたこれの更改、戦後二十年以上たって大体更改期に当たる更改、あるいは家を新築する、新築はいままで借りておるところに新築する。それから新築じゃなくて増築、いままで借りている家を建て増す、あるいはひどいのになると、下じゃなくて二階を建て増しても取るわけです。坪二千円から一万円。私も三千円取られた。私の近所でも大体坪五千円から一万円取られております。こうやって取ります。たとえばプレハブ住宅は、建てるのはもちろんですが、住宅金融公庫から金を借りて建てる場合にも、地主さんの判こを持ってこいと役所が言う。したがって、持っていくためにまたこれが何がしかの判こ料を取られる。あるいは泉さんはほかに引っ越されることはないと思いますが、課長さんが東京で家を持っておられた、今度名古屋に転勤だ、だから売っていこう。こういうことになりますと、売買する場合に地主さんの承諾料が要る、ここでまた判こ代が取られる。こうやって、およそ土地に関して何らかの変動がある場合、これは皆さんがそこらの町で売っている土地の賃貸借契約書をごらんになればわかります。この前は私持ってきました。きょうは持ってきておりませんが、賃貸借契約書の中にはちゃんとそのことがうたってあります。とにかく、少なくとも土地に何らかの変更を加える場合には、すべて地主の承諾が要る。そういう契約書でないと初めから土地を貸しませんから、そこでそういう無理やりな契約を結ばされるわけです。したがって、土地に何らかの造作を行なう場合にはすべて取られていくわけです。取られていくけれども、なぜ皆さんが課税をしないか、なかなか容易でない。容易でないというのは、そばやならそば粉の出入り、しょうゆ、こういうものの出入りを押えればよろしい。靴屋なら革なりそういうものの出入りでいい。とにかく、普通ののれんを張っている商店はそういう品物の出入りを押えればわりと簡単に調査ができます。なかなか執拗に調査をされる。しかし、土地の場合には、銀行や郵便局その他からサラリーマンや一般の人がおろしてきてそれを支払うわけですね。そうすると、地主とこの借地人の方が、十万円払っておるけれども、一万円です、こう言えば、それ以上調べる方法というものがなかなかないわけなんです。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 こうやって皆さん方のほうは、めんどうくさいのとどっちもでそのままにされております。この額はきわめて膨大です。私があとで東京都内だけでも試算したのを発表いたしますけれども、きわめて膨大です。たばこの値上げなんかやめたって十分に間に合うだけの金があります。そこできょうはあなたたちを激励する、こういうことばを最初に使ったわけですけれども、そういう意味でお聞きいただきたい。  泉さん、そういういろいろな面がある。しかもそういうものがまだ完全に捕捉はされていない、こういうふうにお考えですか、されておるとお考えですか。
  69. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、土地の需要が非常に多い関係からいたしまして、特に最近になりましてお話のような傾向が顕著になってまいっております。ただ、この借地権につきましては、御承知のとおり借地権慣行というものが必ずしも全国一円にあるわけではございませんで、お話の東京都とかあるいは大阪、しかも最近は中心部よりも周辺部のほうがそういった問題について問題が大きく出てまいっております。したがって、私どももそういうことを税務署のほうに指示いたしまして、その課税の適正を期するように努力をいたしておりますけれども、いまお話がございましたように、金を払った方、更新料なり承諾料なり礼金とかあるいは権利金といったようなものを払ったとき、そのほかに譲渡所得の場合の対価の支払いをした場合も同じようでございますけれども、これは、なかなか真実に支払った額を言ってくれない。ほんとうのことを言って、地主がそれだけ課税されると、あとあと借地権の上にいろいろ影響してくるのではないか、そういったことを心配いたしまして、なかなかほんとうのことを言ってくれない。その関係もありましてその課税がなかなか十分にできない、こういった事情にありますことはお話のとおりでございます。私どもといたしましても、まだまだそういった面においての課税が徹底しておらないということを痛感いたしております。
  70. 只松祐治

    ○只松委員 なかなかほんとうのことは言わない、そのとおりでございます。  法務省の人が来れば続いて聞きたいと思っておりましたが、なかなか来ませんから、先に事案を申し上げます。  御承知のように、私がいまあげたAという事案は、地主と弁護士と借地人がぐるになりまして、裁判所を利用して脱税をはかっておる。これはたいへんなことですね。とにかくわが国で最高の一つの機関、もちろん簡易裁判所ではございますけれども、裁判所というものを舞台にして脱税行為が行なわれておる。これを今日まで国税庁も見破ることができなかった。この事案は発見されましたけれども、こういう類似の事案というものは、おそらくはかにもあるだろうと私は思う。これは地主が悪徳弁護士――悪徳かどうかしらぬが、とにかく弁護士に頼む。それで弁護士と地主がぐるになって高い金を吹っかける。そうすると借地人が、これは高いから困るといって簡易裁判所に調停を申し立てる。簡易裁判所では、百万円の金額だったのを二十万円に話し合いをつけて和解調書をつくる。だからあなたのほうは二十万円だと思って、裁判所の判決は信用せざるを得ないから、和解調書でも信用せざるを得ないから信用する。ところが、実際上は百万円の権利金が支払われておった。こういうばかげたことが、日本の法治国家に公然として行なわれておる。これは私はゆゆしい問題だと思います。長官、これは法務省は法務省として私聞きますけれども、こういうことがあっていいとお考えでございますか。
  71. 泉美之松

    泉政府委員 お話の事案はまさにおっしゃるとおりでございまして、実際に授受された金額の一割程度が和解調書によって支払われた金額であるということに偽ってできておったわけでございます。これを税務署のほうで調査いたしまして、その真実が判明いたしまして課税をいたしたような次第でございます。和解ということが、民事訴訟の場合多数件数がありますのと、処理の促進をはかるという意味では重要な手段だとは思いますけれども、しかし、こういう脱税のために和解が利用されるということはたいへん遺憾なことだと思っておる次第でございます。
  72. 只松祐治

    ○只松委員 大蔵大臣、村山君のほうが聞くそうですから、私はこの一問だけちょっと聞いておいて、時間があればまた質問しますけれども、いま私は、土地の脱税問題を聞いておるわけでございます。土地は、御承知のように日本の産業の中に非常に大きなウエートを占めておる。そういう問題について聞いておるわけですが、その中に一点だけ関連しておるので聞いておきますが、裁判所を利用して脱税というものが行なわれておる。これはたいへんなことだと私は思います。裁判所というのは、神聖にして侵すべからざる最高のものだと国民は思っておった。ところが、豊島で摘発されたこの事案、これはいま私がお話ししましたように、地主と弁護士がぐるになって、借地人と話し合って、本来なら百万円の権利金を取るところだが、借地人のほうが、それは高いからといって簡易裁判所に異議を申し立てる。それで話し合って二十万円の和解調書をつくる。ところが、実際上は百万円の授受が行なわれておるわけですね。にかかわらず、そこの和解調書は二十万円になっておりますから、国税庁としては二十万円しか課税ができなかった。こういう事案がある。これは一件です。しかも五千万円からの大きな額ですが、こういうことがおそらくはかにも私はあるだろうと思う。その弁護士が扱った事案、その悪徳弁護士はほかにも知恵をつけておるだろうと思う。法治国家としてこういうことがあっていいものでしょうか。おそらく日本国民は、裁判所にはこういうことはないだろう、夢にも思っておらなかったと思うのですが、裁判所を利用して公局と、しかもまた、最も至高なるべき納税義務を怠り脱税行為が行なわれておる。大臣、一体責任はどこにあると思いますか。そして、こういうことが今後も許されるべきかどうか。きょうは私は法務大臣を呼んでおりませんからあれですが、ただ法務当局に来いと言っておりますがなかなか来ない、閣僚の一人として大臣の見解を聞いておきたい。
  73. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは非常に不正なよろしくないことだと思いますが、問題は、そういう和解調書に基づいた課税をするという税務署が悪いのか、そういう裏事実を知らないで和解させたほうに責任があるのか、これはなかなかむずかしい問題だと思います。
  74. 只松祐治

    ○只松委員 いや、むずかしい問題というよりも、裁判所というのは非常に神聖だ、至高だと思われておるわけですね。ところが、脱税の舞台に使われておる。こういうことは、これをきょう新聞の人がどの程度書くか知りませんけれども、一般国民に知れればこれはたいへんなことになると思います。だからこういうことは、ほんとうは簡易裁判所そのものは法務大臣の管轄下で水田さんの管轄下じゃございませんけれども、これは税金関係しておりますから、税金というものもまたきわめて重要なものです。それがこういうふうに最高の権力舞台を利用して脱税が行なわれておるというのは、私はゆゆしい問題だと思うのです。少なくとも閣僚の一人として、きわめて遺憾である、今後ないようにそれぞれ法務大臣やその他にも連絡をとるくらいのお答えがあってしかるべきだと思います。ひとつお答えをいただいて、あと村山君が質問をいたします。それが終わればまた引き続いていたしたいと思いますけれども、そのお答えだけいただきたいと思います。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう不正のないように、これは十分私は法務大臣にもその点をお願いいたします。
  76. 田村元

  77. 村山喜一

    村山(喜)委員 私が大蔵大臣にお尋ねいたしたい点は一点だけでございます。あとまた事務当局のほうと政務次官に詰めてまいりますが、リファイナンスの供与に伴う繰り越し欠損金の繰り越し控除の問題や、欠損金の繰り戻しや、あるいは海外市場開拓準備金の取りくずしの問題があったかどうかという問題について尋ねるわけでございますが、それに関連をいたしまして、今度二十八日の日にスハルト大統領代行がインドネシアから日本に見えられ、四月一日まで滞在をするということになっている。この問題については、この委員会におきましても、ほかの法案の審議を通じまして、第一次円借款の問題から第二次円借款、さらに四千三百六十万ドルのリファイナンスの供与というような問題については、今日まで論議をしてまいりましたが、しかし、角度を変えた税法上の問題として論議はいたしておりませんので、後ほど私はその問題を追及いたしたいと思います。  そこで、大蔵大臣にぜひお答えをいただきたいのは、日本の国際収支が御承知のような非常に危機ラインに立たされておりますし、海外の経済事情も非常にむずかしい困難な異常な状態を迎えている中において、昨年の十一月、アムステルダムでIMF主催の債権国会議が開かれた席で、三億二千五百万ドルのインドネシアに対する援助計画が決定をし、その場合に、日本が三分の一引き受けることをほかの国も期待をしているというようなことで、ことしの予算の中では六千万ドルは計上されているが、とてもそれじゃ引っ込みがつかない。少なくとも一億ドルは日本に持ってもらいたいというような要請がスハルト氏からあるいはあるのではなかろうかというのが新聞等にも出ているわけでございますが、それらの問題について大蔵大臣はどのような考え方で対処されるつもりであるのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 スハルト大統領代行が訪日されましたら、当然にその際援助の要請があるものと私どもは考えております。したがって、いま外務省、大蔵省等関係各省の事務段階においてこれを検討することを始めておりまして、その結論を見て閣僚の相談会も開こうということになっておりまして、まだ参議院の予算審議の関係等からおくれておりますが、近日のうちに政府の態度の相談をしようということにいまなっておるところでございます。
  79. 村山喜一

    村山(喜)委員 事務レベルの中で煮詰められる問題ではない。やはりこれは対韓援助に見られるような、いかなる政治判断のもとにどういうような措置をするか、こういうことに結果的にはなろうかと思います。その際、大蔵大臣は、日本財政金融の責任者として、特に外貨収支の問題や、この日本の国際経済上の状態の中で、困難な今日の財政事情というようなものを考えた上で慎重な態度をとられると思うのでございますが、そういうような方向で確認をしてよろしゅうございますか。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、インドネシア援助につきましては、援助のしかたを、従来の輸銀を通すということではなくて、海外経済協力基金を通じてやりたいということで、法案の審議をいま国会にお願いしているところでございますので、この法案が通らなければ援助の形がきまらないということが一つございますし、また私どもは、日本のいろいろな財政事情から一応これくらいまでの援助をしたいという一つの見積もりを持ってやはり国会の審議もお願いしているところでございますから、その点は慎重にやりたいという考えでいまおりますが、まだ結論が出ておりません。
  81. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうもありがとうございました。
  82. 只松祐治

    ○只松委員 法務省来ていますか。
  83. 田村元

    田村委員長 川島司法法制調査部長が来ております。
  84. 只松祐治

    ○只松委員 先ほど御質問を申し上げたのですが、おいでになりませんでしたので、重ねてということになります。東京都の豊島区で、地主が脱税をはかるために弁護士と、それから借地人と共謀いたしまして、膨大な脱税をいたしました。ここに例をあげますのは一件ですけれども、おそらく一件だけではないだろう、類似のことが行なわれているだろうと私は推測をいたします。この例というのは、その地主が弁護士を利用して東京の簡易裁判所に和解を申し立てた。和解を申し立てるのはおそらく借地人だろうと思います。この地主は横暴だ、たくさんの地代、権利金をよこせと言っている、それでひとつ裁判所のほう助けてくれ、こういうことで簡易裁判所に和解を申し立てた。そういう結果、この裁判所に申告をしたのが九百九十一万円でございますから、脱税額が四千七百九十九万円でございます。これだけのものを東京簡易裁判所を利用して脱税行為を行なった、こういうことであります。まあ直接に裁判所がそれを使嗾したりあるいは知って行なった行為ではない。しかし不作為だろうと思いますけれども、とにかくこうやって裁判所が脱税のために利用されておる。こういうことに関してどういうお考えでございますか。またこの事実を御存じでございますか、どうですか。
  85. 川島一郎

    ○川島説明員 ただいまお話のございました事件につきましては、私存じておりません。存じておりませんが、何か裁判所の調停制度が脱税に利用されたというようなお話でございまして、もしそういうことが事実であるといたしますれば、これは裁判所といたしましても困ったことであるというふうに考えておりますが、御承知のように現在の調停制度というのは、当事者が裁判所に紛争の解決を依頼してまいりまして、裁判所としては当事者の言うことを聞いて、なお疑いのある点は事実を調べた上で妥当な解決を当事者にすすめて調停条項を作成する、こういう手続で行なわれておりますので、当事者の真意がどういうところにあるかということは、裁判所としてはわからない場合もあろうかと思います。現実にどういう形で行なわれたのか詳細を知りませんし、実際の事件もわかりませんので、それについてお答えすることはできませんけれども、何らかの脱税が行なわれたとすれば、それは税法上別個の手段でもって脱税分を徴収することができるのではないかというふうに考えております。
  86. 只松祐治

    ○只松委員 私はそういう技術的なことをあなたにお聞きしようというのじゃないわけです。いいか悪いか、悪ければ上司に報告して、こういうふうにしたい、改めたい、こういうふうなお答えをいただきたいつもりで聞いているわけです。あるかないかは国税庁にお聞きになれば、そばにおりますから、あとでもお聞きになってください。それで、あれば私のほうにひとつ資料をよこしてください。だれがいつどういう事件でこうやって脱税したか、ひとつ資料として私はいただきたいと思います。  私がこう言うのは、税金というのは、国の政治の基本をなすほど非常に日本国民にとって重要な問題であります。裁判所というのは、私たち国民の権利義務を守るきわめて至高の場所でございます。こういう重大な問題が非常に至高の場所で行なわれておるというところに、これは看過してはならないたいへんな問題を含んでおる。こういうことを私は思っておりますから、わざわざおいでをいただいたわけなんです。おそらくこの事件だけじゃなくて、類似の事件が私はあるだろうと思う。さっき水田大蔵大臣がおいでになりましたから、法務大臣にもひとつお話ししていただくように話はしておきましたけれども、ひとつこの事案をお調べになりまして――いまおっしゃったようになかなかほかの裁判と違って調停というのは扱い方がむずかしゅうございます。私も多少法律を学んだ人間として知っております。しかし、いま申しますように裁判所で――これはかご抜け詐欺どころじゃないですね。裁判所を利用して、和解を利用して、こうやって脱税行為を働く。これはあなたがお見えになりませんときに、私が、地主に対して大きな脱税があるということをたびたび指摘をいたしまして、それで国税庁がやっとみこしを上げまして――なかなかいままで上げなかったのです。みこしを上げて、本格的な調査をお始めになったところがこういう――これは顕著な悪い例の一つとして申し上げているわけです。たくさんあるわけです。たくさんある中で、一番悪い例の一つとして、こうやって裁判所を利用して脱税をはかる。これはもう日通のああいう脱税とは違った別な意味のえらい大きな社会問題ですよ、裁判所を利用して脱税するということは。皆さんはどうお考えになっているかしれませんが、私はこれはえらい問題だと思う。そういうことが行なわれている。知らないけれども、きわめて遺憾である、あなたたちはそうおっしゃって、なかなかむずかしい問題であるけれども、少なくともこういう国民の権利義務を守る裁判所を利用してこういうことが行なわれないよう万全の努力をするということを上司に対して報告するというのが、あなたの立場ではなかろうかと私は思う。どうですか。
  87. 川島一郎

    ○川島説明員 事件につきまして、ただいま仰せになりましたように、国税庁のほうから事情を伺いまして、十分に検討いたしまして、あらためて御報告申し上げたいと思います。
  88. 只松祐治

    ○只松委員 遺憾でも何でもないわけですか、これだけの問題が。
  89. 川島一郎

    ○川島説明員 事実が実はよくまだのみ込めておりませんので、よく調べました上で申し上げたいと思います。
  90. 只松祐治

    ○只松委員 法務省としてはまだあなた御存じないかもしれぬけれども、私が言っているのは、国税庁当局の報告や、実際に調べたものに基づいて言っているのですよ。しかもこれは国会の場ですよ。でたらめに抽象的に言っているわけじゃないですよ。現にあるわけです。しかし、あなたから見ればイフで、もしあったならばというものでもかまわないです。遺憾であるかどうかぐらい言うべきだ。
  91. 川島一郎

    ○川島説明員 客観的に、そういう脱税行為が行なわれたということは私も遺憾だと思います。  ただ、私が事実をよく調べてと申し上げますのは、現在の裁判所の制度、特に調停制度というものが果たしている機能は、ほかに非常に大きなものがあるわけでございます。したがって、その機能を果たすために現在行なわれている調停制度そのものについて何か疑問があるということになりますと、これは非常に大きな問題になりますので、その辺はこの事件をよく拝見した上でないと、はたして現在の制度が欠陥があるのか、あるいはそうではなくして裁判所の立場から見た場合には避けがたい問題であるのか、そういった点についてよく検討をさせていただきたい、こういう趣旨でございます。
  92. 只松祐治

    ○只松委員 きょうは調停制度に欠陥があるかどうかというそういう本質論まで論議しようと私は思っているわけじゃないわけです。少なくとも現実にこういうことがあって、納税義務を怠る行為が裁判所という舞台を利用して行なわれるということは、法治国家の日本にとってはたいへんなことだということなんです。しかも、これは一件だけでなくておそらく他にもあるだろう、いまの裁判所の調停制度の持ついろいろな欠陥やそういう問題から見れば。だからそういう点については今後――離婚や何やらは別ですよ、これは双方がおのおの言い分を言うわけですから。したがって、土地制度や何かの問題については別な角度からもよく検討したい、こういうことが皆さん方のお答えだろうと思う。私はきょうは税金の問題をやるのが中心で、法務省と論争しようというのでおいでいただいたわけじゃございません。ただ、あるということだけを御確認いただいて、あとひとつ資料をいただきたい、こういうふうに思います。
  93. 川島一郎

    ○川島説明員 御趣旨はよくわかりました。  ただ、いま仰せになりました資料の点でございますが、裁判所のほうは法務省とは権限が違う別個の役所でございますので、その点裁判所によく連絡をいたしまして、必要があればそういう措置をとるということにさせていただきたいと思います。
  94. 田村元

    田村委員長 川島君、さっそくそれでは裁判所とよく相談しなさい。
  95. 川島一郎

    ○川島説明員 国税庁のほうから事実を伺いました上で、裁判所に連絡いたします。
  96. 只松祐治

    ○只松委員 いま顕著な一、二の例を申し上げたわけでございます。こういうことに対しまして豊島税務署をはじめとして、モデルケースをつくって取り組みをお始めになっておりますが、全国的には、先ほど長官もお話しになりましたように、関西や何かでは権利金の制度がまだ少ないようでございます。しかし、これも新たな土地のこういう情勢の中から、土地を貸すのに権利金なしで貸す、東京や名古屋や福岡のどまん中を権利金なしで貸すということは常識上考えられません。あなたはドーナツ型に外が広がるとおっしゃったけれども、外もさることながら、中の坪何百万円とするのを無権利金で貸すということはありません。鉄筋の場合は、私の調査では大体二〇%、普通の権利金は五%ないし一〇%ですけれども、鉄筋の場合は二〇%更改の権利金が大体取られております。そのかわり三十年になっていますからね。こうやって取られているわけです。  こういうのを全国で推定すると幾らになるか。たとえば私がここで試算をいたしますと、東京都の旧市内の宅地面積が一億二千百二十九万九千七百七十坪、借地面積は、東京都の調査あるいは商工会議所等の抽出調査によりましても約三分の一、したがって概算これを四千万坪といたします。地価は、東京旧市内で最低でも約二十万円、最高は数百万円もいたしますけれども、まあ最低に毛のはえたくらいで三十万円と仮定をいたします。四千万坪乗じますと十二兆円。更新料平均一〇%といたしまして、十二兆円の一〇%は一兆二千億円。一兆二千億円の中で課税になるのが――こういう地主、土地を持っておられる方々には大体ほかに所得がございます。したがって累進度は高い。四〇%といたしまして四千八百億円、これが旧市内でございます。しかもこれは更改の権利金、これだけが取れば取り得る額だ、こういうふうに思うわけでございます。これは私のあまりにもずさん過ぎるという――もちろんことし一年じゃないですよ。更改期に当たっております一昨年あたりから、あと二、三年先、四、五年を通じて、この旧市内においてもこういう課税対象額がある。これをお認めになりますか、どうですか。
  97. 泉美之松

    泉政府委員 東京都の例をあげて、どれくらい更新料で課税できるかというお話があったわけでございますが、お話の趣旨、ごもっとものように承る点もございます。ただ、借地は大体全面積の三分の一ということはお話のとおりだろうと思います。したがって、約四千万坪というようなお話でございますが、この東京都の全宅地面積の中には国有地あるいは都有等がございますので、したがって民有地だけの面積からいたしますと、そこまでないのではないかと思っております。  それから、われわれのほうの調査からいたしましても、たとえば豊島税務署調査内容によって契約の更改時期について見ますと、その調査した件数のうち、四十二年以前に更改時期の来ておりますのが二八%、それから四十三年以降に更改時期が参りますのが七二%でございます。いまおっしゃいましたように、必ずしも一年間だけの税額というわけではないわけであります。これが数カ年間に分かれて課税されてまいる、こういうことになりますので、確かに更新料全体を一ぺんに課税いたしますことになれば、お話のような数字も出てまいりますけれども、それを年々に割ってみますと、そこまでまいりかねる。しかし、いずれにいたしましても、この課税を徹底することによりましてかなりの税収が期待できるということはお話のとおりだと思います。
  98. 只松祐治

    ○只松委員 まことに正直言ってはなにですが、いま豊島税務署を中心に調べておる調査結果から見ても、おおよそこういうことが推定される。あるいは私が東京都庁の住宅局なんか多少調べてきた結果から見ても、これはそう違いない。そういたしますと、関東周辺を中心に、あるいは関西でも、先ほどから言っておるように、いままでは少なかったかもしれないけれども、こういう土地の少なくなった時代になりまして、新たな権利義務関係が明確になってきた。こういうことをいろいろ考えますと、日本全国で土地の更改に伴う課税対象額というものは一兆円をこすと言っても、私はそう言い過ぎではないような気がするわけです。その上に、先ほど申しますように、いろんな判こ料というものを地主さんは取っておいでになる。これが、私が知っておる限り、ほとんど課税をされておりません。  さっきからいろいろお話があったのですが、それじゃ大体幾らくらいいま国税庁がこれを捕捉しているだろうかということの論議でございます。これはあなたのほうで確実なものが捕捉されておらないから、論議以上には出ないわけですね。私は、極端にいえば十分の一と言いたいところだけれども、去年、ことしあたり相当熱を上げておやりになっているから、去年、ことしあたりは大体五分の一くらいは捕捉が可能になっているじゃないか。これも皆さん方、豊島なり板橋なり幾つか捕捉されている。板橋なんか文書回答ですからあれは対象になりませんよ。こんなことはできやしませんよ。豊島は熱心におやりになっています。そういうことからいって、あまり十分の一とか五分の一とかいう論議をしても、そう益のある論議じゃありませんけれども、完全に捕捉はされておりません。相当の大幅な脱税といいますか、捕捉されておらなかった部面があるということをお認めになりますか。
  99. 泉美之松

    泉政府委員 私ども、先ほども申し上げましたように、ここ数年そういった更新料の形態による収入が非常に多いという事実を知りまして、各税務署を督励いたしまして、こういった課税を充実するように指示いたしておるわけでございます。豊島の税務署あるいは練馬の税務署におきましては、かなり努力のあとがあらわれておりますけれども、そのほかの地域におきましては、なお今後努力を要する面が多うございまして、把握程度、五分の一というようなお話がございましたが、私はもう少しうまくいっているとは思いますけれども、しかし、まだまだ十分でないということはおっしゃるとおりだと思います。今後十分努力いたしてまいりたい、このように考えます。
  100. 只松祐治

    ○只松委員 理事の打ち合わせその他がありますから、一応私もこれで中断をいたしまして、午後からまた質問を続行いたしたいと思いますけれども、私がほんの一、二の例、それから東京都旧市内の概要、これだけを申し述べましても、こういう事態だと思うのです。一方、サラリーマンはほとんど課税が捕捉されておるようであります。中小企業者の中の零細企業者というものは非常に捕捉率が高いわけでございます。私は、この次にさらにまた銀行、生命保険、相互会社、こういうものの不動産がいかにでたらめきわまるものであるか、全部これは不動産会社を持っております。これがいかに大きな金を使い、土地のつり上げを行ない、みずからが脱税を行なっておるか、こういう問題を私を次回にやりたいと思います。したがって、いまの問題はこの程度できょうはとどめておきまして、あとでまだ午後からも私は質問を続行しますけれども、ひとつ税務当局、大蔵当局も、課税対象額部面として、ぜひこういう問題についてもう少し真剣に――しかも私は言うんですが、たとえば一千万円脱税しておっても、百万円の土地を持っている人は十坪売れば取れるわけですから、ほかの業種と違って脱税額の捕捉も容易である、こういうふうに思うわけです。したがって、へたな大衆課税、新規増税を行なうよりは、こういう部面に少し目を向けて税を正しく執行されると、まだまだ容易に税が伸びる。そういうことで、一番最初申しましたように、きょうはいい話をするということで私は質問をしたのです。税金を取るなという話をきょうはしているわけではありませんから、ぜひひとつ研究の上努力をしていただきたい。一応この点だけ区切っておきますから、次官からひとつこういう確約のお答えをいただいておきたいと思います。
  101. 倉成正

    ○倉成政府委員 国税庁を御激励いただいてまことにありがとうございます。税務職員の能力その他機構をできるだけ整備いたしまして、これから努力いたしてみたいと思っております。
  102. 田村元

    田村委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ――――◇―――――    午後二時十九分開議
  103. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行します。村山喜一君。
  104. 村山喜一

    村山(喜)委員 経済社会発展計画の中で昭和四十年度を起点にいたしまして、四十六年までの長期経済計画における租税負担率の計画と実績というのがございます。これによりますと、四十年が二〇・八%それを受け、四十六年には二二・三%ということになっておる。そこで、この中には税外負担まで入っているという説明もお聞きいたしておるわけでございますが、これが二二・三%という数値に策定をされました。四十二年三月の十三日の閣議においてこのことが決定を見ているわけでございますが、こういうような租税計画というものが長期的な計画の中で立てられておるという問題について、どのような理由がこういうような増徴計画というものを立てているのか、これについて経済企画庁のほうからまず説明を求めたいと思います。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  105. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 お答えいたします。  おっしゃられますように、経済社会発展計画では、租税負担率を四十六年度ではおよそ二二%、詳しくは二二・三%程度に高まるのもやむを得ないであろうというふうに計画で述べておりますが、これは、一つは、これからの財政、需要が各分野にわたってかなり必要になってくる。社会資本の充実もそのような一つでございますが、また、社会保障も充実していくというようなことで、これから五年間の姿を描いてみました場合に、財政需要の増大でかなり考えざるを得なくなってきている。一方、財源の一つの柱である公債につきましては、今後の一般会計の公債発行に対する依存度でございますが、これを低めるように努力していきたいということを計画で考えておりますが、その結果、財源としての租税についてかなりの増収を期待せざるを得ない。一方、国民所得も当然高まりますから、全体の租税負担率としては、いま先生のおっしゃられましたように、四十年度を基点に考えますと、大体二%弱ぐらいの程度引き上げられるのではないか。もちろん租税のほうも、全体の所得水準がまだ低いということもありまして、負担感も非常に重いものがございますので、それらを勘案して、大体二ポイント程度の引き上げはやむを得ないのだというふうに考えられたわけでございます。二ポイントと申しますのは、四十一年度のベースに直しますと、大体二ポイントぐらいの高さになると思います。
  106. 村山喜一

    村山(喜)委員 したがいまして、二〇・八というのを、地方税それから国税の純粋な形に引き直した場合には一九・三だというふうに考えるわけですが、ことしは租税負担率が一九・六%になっておる。そこで来年度はこれを一挙に二二・三%、これを計算をしてまいりまするならば、純粋の税だけで計算をすると二一・八くらいになるわけでございますから、それに向かって少しずつその率を引き上げていくのだ、こういうような長期のいわゆる税収計画租税負担率を引き上げる計画というものを大蔵省としてはお持ちでございますか、どうですか。
  107. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この経済社会発展計画の一つの見通しとして、将来の経済財政の運営を前提にしてお立てになったものだと思いますが、その際に財政需要その他の総需要その他を計算すると、財政として見合う負担はこれくらいであろうということで計算をしたものと思います。  大蔵省でどうかとおっしゃいますと、これは御承知のとおり、税制調査会で長期税制というものをやっておりますけれども、このような、何年計画でどの程度の負担に持っていくというような計画自体をやっておるわけではないのでありまして、長期の計画で、長期の見通しを立てたところで、各種の税体系のあり方、あるいは各税のあり方というものを個別に考えておるわけでございます。それを実際の財政に当てはめて、いかにして実現していくかというのは、具体的に各年度で考えていくということになると思いますので、これに即した計画が大蔵省にあるというわけではありません。
  108. 村山喜一

    村山(喜)委員 閣議で決定をして、四十六年には国民租税負担率がいまよりも約二%ほど上がるであろう、上げなければならない、こういう策定をされている以上は、当然それに基づいた大蔵省なりの、いわゆる税の体系についての考え方というものがなければならない。それは毎年、毎年、きまるのではなしに、そういうような長期税制のあり方の問題に関連をしながら、国民の負担率をきめていくわけでありますから、そうでなければ経済社会発展計画などというものは絵にかいたもちみたいなもので、これは実行性のないものだということで無視してかかることになる。私はそういうものではなかろうと思う。したがいまして、当然そういうような負担を国民要求をしなければならないという立場において、あなた方はやはりそういう計画のもとに仕事をしておられるというふうに見るのが正当ではないですか。  この問題については、事務当局の考え方もさることながら、やはり政務職の段階である倉成さんにお答えをいただかなければ納得はできないと思うのです。四十三年度は一九・六%、これを四十六年度には二一・八%に負担率を改正する予定である、そのためには現在の最低税率を九・五%に引き上げて、来年はこれを一〇%に引き上げる、その次はまたさらにそれを引き上げる、こういうような考え方を基本的にお持ちなのかどうか。あるいは、私はあとからこの問題を触れますが、現在の累進構造の組み立て方というものについて、直さなければならない段階を迎えておる点を感じておるわけですが、そういうようなのを直さないで、それを直したら何かたいへんな減税になるのでそれをやめにする。こういうようなことをしない限り、あるいは間接税を増徴をするなりそういうような政策が伴わない限り、国民財政負担の負担率を引き上げることにはならないでしょう。だから、そこに長期計画というものが出されておる以上は、ことしはこのようにします、来年は、この次にはこういうふうにいたしますという一つの構想というものをあなた方は持っていなければ、政府の租税政策というものはないということを言われてもしかたがないと思いますが、どうですか。
  109. 倉成正

    ○倉成政府委員 経済社会発展計画における考え方は、村山委員よく御承知のとおり、国民の税負担の公平適正化をはかりながら、できるだけ負担の上昇を緩和するという観点が一つ。それから、経済社会の緊要な各般の要請にこたえるため必要な財源を確保するという観点。この二つの観点から、これから先の租税制度を合理的に進めていかなければならぬ、こういうふうになっているわけであります。したがいまして、これからやはりどういう税負担を国民にお願いするかということは、これから先の財政が、今日の経済の中でどの程度のウエートを占め、社会各般の財政要求される要請に、どういうようにこたえていくかという、財政支出の問題との関連において考えていかなければならない問題であろうと考えるわけであります。そういう観点から考えますと、経済社会発展計画は、福祉国家を実現するために、社会開発ということに非常に重点を置いているわけでありまして、そういう財政支出が福祉国家の中で大きなウエートを占めるという意味からいいますと、所得の上昇につれて、今日よりも若干租税の負担率は上がってくるのではないか、上がっていくことを期待する、こういう意味の計画であろうと思うわけでありますが、一応この閣議決定になりました経済社会発展計画を頭に描きつつ、租税政策を進めていくのが妥当であろうと思います。しかし、もちろんこれは経済事情その他を勘案しながらやっていくべきものであろうかと思うわけでありますから、特に景気の動きにつれて公債を徹底的に圧縮しなければならないというような時期においては、そういう租税についても影響が出てくるということも当然のことであろうと思いますし、いろいろやはり各般の経済情勢をにらみながら、一応この目標を頭に描きつつ毎年の税負担率というのが考えられていくべきであろう、こういうように考えます。
  110. 村山喜一

    村山(喜)委員 経済企画庁にお尋ねをいたしますが、国民財政に対する需要というものは特に今後大きくなるであろう、特にまた、経済社会発展計画の上から見ても、当然そういうような国民の生活のレベルアップをはからなければならない、社会のひずみは直さなければならない、これはよくわかります。わかりますが、そのときのいわゆる国民の税負担率というものを策定するのには、ただ漫然と、そういうような財政需要が出るであろうということを想定をして、この負担税率というものをきめたわけではないと思う。それにはやはりこういうような要素があるからこのような形に持っていかなければならないという、一つの積み上げた計画というものがなければ、私は二二・三%という数字は出てこないと思うのであります。だから、この時点においてはどういう内容社会保障制度をやり、それに対しては国民はこれだけの税というものを負担をしてもらわなければならないんだ、こういうような基本的な構想のもとにおける税の負担率という問題の定義がなされて、国民の同意を求めようとしているんじゃないのですか。いまの政務次官のお話を聞いておりますと、それについてはどうもはっきりしない。そのときどきの、その年々の情勢によって負担率をきめていくような話でありますが、その今日の時点と昭和四十六年という時点との間を、どういうふうに継続的に結びつけているのかということを、あなたのほうから説明を願いたい。
  111. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 経済社会発展計画の中には、一応財政のいわば荒っぽい骨組みを示す財政収支の姿を描いています。四十六年度の財政収支が大体どうなる、これは地方財政も全部含めましたいわば国民経済計算ベースでの財政収支の表になるわけでございますが、そういったものを一応描いておりまして、そこで、いわば財政の支出の面として、一般的な政府の経常財貨サービス購入、つまり人件費、一般の物品、消耗品的面でございますね、そのほかに政府が資本的な支出をする、そういう面、それから政府の移転的な支出という面、そういった一応全体の姿を描いておりますので、それに対応する収入を一応見積りまして、大体租税収入がどれくらいになるか、あるいは社会保険の負担収入がどうなるかというふうな姿を大ざっぱに描いてもおります。ことばをかえていいますと、計画の中では社会資本の充実ということで、社会資本の計画期間中においての累積の投資額二十七兆五千億というふうに想定しております。また振替所得の水準をおよそ二ポイント程度高める。五・五%、国民所得に対する比率が現在そのくらいになっておりますが、それをおよそ二ポイントぐらい高めるということも計画にあがっております。  そういった比較的大ざぱではございますが、大きな骨組みとしての具体的な水準が示され、片一方、それに対する財源をどういうふうに考えるかというようなことから、公債の発行額も比較的今後は一般会計の依存度を低めていくというようなことを織り込みまして、いわばもう少し大ざっぱなといいますか、全体的な姿を申し上げますれば、国民経済計算的なものに基づきました経済全体の動きを、いわば計量経済学的手法でとらえたモデルといいますか、幾つかの方程式によってあらわされたものによって、今後の推移がどうなっていくか、財政支出そのものも、すべて国民経済の各般にはね返ってまいりますので、そういうものを入れながら、将来どういうふうにおさまっていくかということを、幾つかの計算をやって、一つの四十六年度の姿を想定したわけであります。その中に幾つかの柱として、財政支出面なども一応とらえて、全体のバランスがとれるようにというふうな考え方ででき上がったもので、たいへん抽象的に申しましたけれども、そういったことをいろいろ勘案しながら、片一方では先ほど申し上げましたように、租税の負担感が、まだ所得水準が低うございますから非常に強い、重いということを勘案して、いろいろ各方面の方々が参加されて議論された結果、一つの骨組みが大体想定される、そういうふうなきめ方をしております。
  112. 村山喜一

    村山(喜)委員 国民経済をマクロ的にとらえる中でいまの租税負担率を出したんだという、かいつまんでいうならばそういうような話でございます。そこで、私は、そういうような想定のもとに現在の政治が進んでいるという前提のもとに、これから質問をしていくわけです。  いまの税収の弾性値の問題が、さっそくその中では問題になると思います。過去十年間の弾性値の平均をとってみますと、平均は一・三五でありますが、所得税が二・二だ、法人税が一・三、相続税が二・二、間接税が〇・九、地方税が一・二というのが税調の資料の中に出されておりますね。そういう中から、所得税の弾性値が高い理由もわかっておりますが、これを外国に比べてみたときには異常に高過ぎるわけです。そこで、租税収入の見積もりには税収の弾性値というものは使えないにいたしましても、しかしながら、この弾性値が国民総生産に対する比率として打ち出されている中において、私はミクロ的にはそういうような指数には適用ができないとしても、これをマクロ的に見た場合には、この問題についてこういうような税収の弾性値ではノーマルな姿ではない、こういうようなとらえ方のもとに、現在のいわゆる所得税なりあるいは法人税の基本的な形というものを、現在の累進構造というものを組み立て直すといいますか、組み直すといいますか、何かそうしなければいつまでも弾性値が高いという形の中で皆さんはちびちびと減税をやりながら、それで恩恵を与えたようなかっこうに事務的には感じておいでになるのかもしれないけれども国民税金を納めるほうからいうと、それはいわゆる自然増収になったものの一部を還元をするにすぎないのであって、かえって実質は物価が上がり、名目所得が上がっていけば、増税という形になってはね返ってきているから、減税の実感はひとつも国民は味わっていないわけなんですね。そういうような現象から抜け出られないような状態が今日の姿だと思うのですが、そういうようなものを、どのようにして組み立てていこうとお考えになっているのか。私は、いわゆる租税のあり方の問題と関連をして、いまの長期見通しの上に立ったその中においては、政策当局はどういう考え方を持っているのか、これを説明願いたいと思うのです。
  113. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま企画庁のほうから御説明がありましたように、経済社会発展計画の見積もりをする際にも、租税についてはちょうどその直前に出ました調査会の中間答申の基本的な考え方を取り入れておられるようであります。つまり、所得税については租税負担が増高するのをできるだけ緩和していく、企業課税については適正化をはかる、間接諸税については現在のシェアをできるだけ維持するということを前提にしておるわけです。つまり、この経済社会発展計画に見られます税外収入を加えた租税負担率というものは、いまの租税制度に手を加えないでおいてそうなるというものではないのでありまして、でその間の財政支出、それから租税政策というものを、いわば抽象的に勘案してつくられたものである、こう理解しておるわけでございます。ただいま御指摘がございましたように、税の各税目については、長期的に見ますと平均的な弾性値というものが見られますので、たとえば、五年とか十年とかいう期間を見積もるとすると、かなり弾性値というものを使っても間違いが少ないという点もあると思います。そういうことから、おそらく弾性値等を勘案されて計算されたものであると私は思っております。ただいまお話のございました、弾性値が大きいからこのままほうっておけば所得税はふえる一方だというのは、全くそのとおりだと思います。したがいまして、毎々申し上げておりますように、税制調査会の中間答申においても、将来課税最低限だけではなくて、税率についても――むしろ中間答申は、課税最低限よりも税率のほうに片寄っているかと思いますが、というような改正を行なうという考え方がかなり出ておるわけでございます。私どもといたしましても、この中間答申が最終的に固まって長期答申としてあらわれてくる姿も、やはり所得税については、この課税最低限とともに、税率についても今後緩和をはかっていくんだという思想が出るのであろうと予期しているわけでございます。  なお、経済社会発展計画の負担率というものが、いま申し上げましたように、全然租税に手を加えずにやっていった場合の負担率ではなくて――そういう手を加えなかった場合の負担率というものを想定すれば、もっと高いんだと思いますので、そこに減税の余地というものは十分あるはずでございます。それを租税制度としての合理化という面からどういうふうに当てはめていくか、これがいわば税のほうの長期の考え方の基礎にならなければならぬのじゃないか、かように思っております。
  114. 村山喜一

    村山(喜)委員 この際、あなた方の、あなた方でなくて政府のいわゆる租税政策の原則というものを、一体どういうふうに踏まえておるのかということをお尋ねしたい。というのは、日本税制というのは、天下の秀才大蔵官僚と、長い間政治のベテランでこの日本政治を牛耳ってきた自由民主党との合作による税制であって、私たちが見るならば、庶民大衆の課税に対するところの不平不満というものをいかになだめ、押え、すかしていくかというような形が、税制政策のかなめになっているような気がしてならないわけであります。これはやはり資本主義国家であれば、税金というのは剰余価値から取るというのが一つの自由資本主義の原則だろうと思うのですが、いかなる資本主義の国であっても、そういうのが実行された国はどこにもない。税金の大半は、日本に限らず、各世界の資本主義国家の租税をおしなべて見れば、これは大衆課税、大半は大衆課税に依存せざるを得ないというのが今日の世界の実情であろうと思うのであります。その中において、一体いまの佐藤自民党政府は、どういう租税原則というものを立てて、それに従って基本的な政策を打ち出し、そうして具体的なきめのこまかい租税制度というものを確立しているか。私はその日本所得税法人税だけにとどまらず、あらゆる税制体系というものを総括的にながめた場合に、どういう租税原則のもとに今日の日本税制というものは動いているのだということを説明ができないわけです。そこで倉成政務次官は、このあなた方の佐藤政府の租税原則というものについては、どういう原則のもとに税制を動かしているのだということを説明することができるか、ひとつあなたの見解をお聞かせ願いたい。
  115. 倉成正

    ○倉成政府委員 非常に広範なむずかしいお話でございますけれども、御質問の趣旨をもう少し焦点をしぼっていただけばお答えできるかと思います。
  116. 村山喜一

    村山(喜)委員 私がお尋ねしておるのは、政府の租税政策の原則は何かということでございます。
  117. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私が事務的に御返答するのはいかがと思いますが、御承知のとおり、いまの財政の大原則というべき一つは、資源の適正なる配分であるといわれております。公共部門と私経済部門にいかに適正に資源を配分するか、これは昔申しました租税原則でいえば、収入充足の原則に当たるわけです。第二は、所得再分配機能、所得の再分配をして国民問の福祉の公平をはかる。第三は、景気変動を調整する機能、財政の力によって経済の成長を最適にもっていく。そのためには景気変動を最も少なくもっていく。これら三つだといわれておるのです。  租税政策も財政政策の一環でございますから、それぞれの税制を作成する場合にも、この三つの原則の片面をになっておるわけでございまして、たとえば所得税制を中心に税制体系を組み立てるという場合には、最も強く所得再分配機能が働いてきておるということがいえると思います。租税収入を充足する意味の資源適正配分としては、各税の収入の力というものを最も適正に発揮するように考えるべきであるということでございましょうし、さらに法人税等につきましては、法人課税のあり方によって財政に対するビルトイン・スタビライザーとしての働きを期待する。これらがそれぞれの原則の一つのあらわれだと思いますが、その基本的原則に沿ってそれぞれ税につきましても個別の原則があることは、言うまでもないことでございます。ただ基本的には、そういう大きな原則に沿ってわれわれ考えているというふうに申せるかと思います。
  118. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま吉國さんが言われた財政の三原則、これは高等学校教科書にそのとおり書いてございます。私もゆうべ見てみたのですが、そのとおり、御名答でございます。ただ、税制租税原則というものの中には、所得配分機能だけにとどまらないことは言うまでもないことでございますが、私はやはりこれも教科書を調べて、租税原則というのはどういうものがあるだろうかと思ってずっと調べてきた。ここには持ってきておりますが、それを一つ一つ種あかしをするわけじゃありませんけれども、問題はいまの日本税制というものが、普通考えられる資本主義、自由資本主義の租税原則というものに照らし合わせたときに、はたして日本税制というものはまともなものであるのかどうかということについて、私、疑問を感じているのですよ。というのは、所得税を納める階層というものは、大体四割ですね。数の上から、有業人口の四割一分くらいです。それから、地方税所得割を納めるのまで入れましても六割五分くらい、あとの三割五分というのは、これはいわゆる所得税にしても、国税にしても、地方税にしても、負担ができない階層ですね。そういうようなものを納める能力を失った、いわゆる税金を納める能力を喪失した階層だ。ところが、この人たちからも間接税のような形の中で税金を取り立てることはやっているわけですね。そこで、全体をながめていけば、当然剰余価値というものに対して課税するという原則ではないわけですね。剰余価値のないものに対しても課税をしているということを認めざるを得ないのが日本税制です。これが最近は強化されようとしている、こういうふうに受け取って差しつかえない。  将来においてはどうであるか。将来においては、その構想はまだはっきりされていない。しかし、いずれにしても四十六年には二二・三%という税の負担率に――いまよりも約二%ほど税の負担率は上昇をする。そのときにいわゆる租税の負担の公平の原則というのが、やはり自民党の政府の中の租税原則の中に取り入れられなければならない段階に来ているのじゃないか。そうでなければ、いまのような形でいくならば、これはいわゆる資産所得者を優遇をし、非資産所得者を収奪をする税体系というものが、さらに強化されるということを意味することになるじゃありませんか。だから、そういうようなふうになさないためには、いまの税体系というものを一つの原則――私はどんな原則をお持ちになっているか知りませんが、いま一つだけ言われたのは、いわゆる所得の配分機能というものを強化する、これも一つの識見でありましょう。そのほかに負担の公平の原則というものを徹底的に推し進めていくという形のそういう方向というものを出すんだということが言えるかどうか、倉成政務次官、言えますか。
  119. 倉成正

    ○倉成政府委員 お答えします。  先ほどから主税局長が、一応現在の租税の基本的な考え方について二、三申し上げましたけれども、いまお話しになっておりますのは、公経済と私経済においてどういうふうに資源を配分していくかということについて、公平の原則と申しますか、これは租税教科書に書いてある意味での原則が適用になるかどうかというお話のようでございます。それはもちろん公平の原則と申しますか、そういう考え方がこの根底にあることは当然のことだと思います。
  120. 村山喜一

    村山(喜)委員 しからば、最低生活費に対しては免税をするという原則ですね、これはどういうふうになりますか。
  121. 倉成正

    ○倉成政府委員 それは、御承知のとおり所得税について課税最低限を設けるとか、そういうことでその思想があらわれております。御指摘の点は、おそらく酒やたばこの間接税等が――たとえば生活保護世帯が昭和四十一年で六十五万七千戸ある、こういうのについて、酒もたばこもやはり税金がかかっているじゃないか、こういう意味の御質問も含めてじゃないかと思いますけれども、そのほうは私はやはり社会政策で別の見地から考えるべきだ。たとえば生活保護費についてことしは一三%以上のアップをいたしましたので、そういう方面から考えていく。間接税はどうしても逆進的といわれますけれども、やはり世界各国で間接税を取っておる。日本は世界の国々から比べますと、アメリカ、イギリスと比較すると、むしろ直接税のほうがウエートが重い、こういうふうに理解いたしておるわけであります。
  122. 村山喜一

    村山(喜)委員 倉成さん、あなたは直接税を減らして間接税を増強をしようという思想なんですか、いまの説明を聞くとそのとおり聞こえる……。
  123. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいま村山委員が、所得税を納めてない階層、あるいは非常に困っている階層、これに税がかかっているじゃないかという御発言がございましたので、そういう方面にかかる間接税については、やはり世界各国も間接税の制度をとっておることであるし、日本における間接税の負担はそれほど各国と比べて重いものではない。また、生活保護世帯等につきましては、社会政策のほかの見地からこれはやるべきであって、その方面に若干負担がかかるのはやむを得ない、そういうお答えをしたわけでございます。決して間接税を重くしようという議論ではございません。
  124. 村山喜一

    村山(喜)委員 まあ、これはつとにみんなの立場から指摘をされているわけですが、日本では企業資本充実の重要性があまりにも強調され過ぎておる、資産所得者に対して不当な利益を与え過ぎておる、総合課税主義というものを破壊をしている、このことがよくいわれております。これは法人利潤税の問題等にも関連をしてまいるわけでありますが、あるいは租税特別措置の整理の問題にも関係してくるわけでありますけれども、予算では、総合予算主義というものを今度から始められた。ところが、税制においては総合課税主義というものは行なわれていないわけですね。それがますます経済情勢の変化に伴って、そういうような資産所得者に対する優遇措置が今回の場合もまたワクを広げようとしておられる。こういうようなことを見てまいりますると、どうも政府のいうている租税原則というものは一体どういうものなのか、それはブルジョア民主主義の租税原則と世間一般でいわれているものに照らし合わせて、日本の政府のとっておる租税原則というものは異質のものではないかという気がしてならないわけです。だから、そういう立場から私は租税政策というものについても根本的に洗い直して、もっと国民が喜んで納税ができるような、そういうものにもっていってもらいたいと思うんですよ。そうでなければ、税務署が焼けた、火事だ、さあそれはほっとけというようなことになって、幾ら教科書の中で納税は大事だということを教えろといわれても、これは国民が実感としてそれを受け取らないという形になってくる。これでは私はまずいのではないかと思いますので、そういう立場からひとつ前向きの答弁を政務次官からお聞きしたいと思いますが、できますか。
  125. 倉成正

    ○倉成政府委員 おそらく御質問の趣旨は、いわゆる公経済、私経済の資源の配分ということはよくわかるけれども、そういう中で租税特別措置法その他、そういうのがあって、非常に公平の原則がゆがめられているじゃないか、むしろ負担の能力のある者から少なく税金を取っているんではないか、こういう意味の御質問を、非常にむずかしくおっしゃっているんじゃないかと思うんですけれども、私は必ずしもそう思わないわけです。ということは、租税特別措置法はやはりその時代時代の政策の要請によって生まれてきたものでございます。したがいまして、たとえば現在昭和四十三年の特別措置による減税額が二千六百四十八億といわれておりますけれども、その中にたとえば生命保険料控除というのが五百億、全体の五分の一あるわけです。この生命保険料を納めることによって老後の生活を安定したい、不時の災厄に備えたいというのは、これはもう国民すべての願望でありまして、これに税の面でめんどうを見るということは、政策的な要請として当然のものであろう。中小企業についても貸し倒れ金の問題であるとか、いろいろな施策がこの中に盛られております。もちろん、ただいま御指摘のような点で、いろいろ割り増し償却であるとか、その他輸出についてのいろいろな税の軽減であるとか、比較的大企業に優遇と申しますか、大企業が恩典を受けるような税の制度があることも否定いたしません。しかし、パイは大きくして切るほうがいいというか、日本経済はやはりある程度成長していかなければ、これはいろいろいわれておりますけれども、何といっても日本経済の成長なくして今日の国民生活の向上も賃金の上昇もあり得なかったわけでありますから、その成長の問題についていろいろなひずみをおそれるあまり、成長力までなくしてしまうのはいかがであろうかというふうに考えております。
  126. 村山喜一

    村山(喜)委員 あまり別な方面に発展をさせないでいただきたい。私に言わしめれば、いまの生命保険の問題であっても、社会保障制度が充実してくれば、国民自分の命を自分で守っていくというような体制はつくらなくてもできるんですよ。しかしながら、そういうような情勢でないから、国会議員でも三百万円の団体生命保険に入っている。この前島口さんがなくなった。そうしたら弔慰金まで入れても五百万円ぐらいのなにしかない。しかも年金はついていない。これは何とかせにゃいかぬなという話が出ておるような状態なんですね。だから、だんだん物価が上昇をしていけば、そういうふうにして生命保険金もまた引き上げなければならない、こういうようなことにならざるを得ない。そういうふうにして、人間の命というものは金には換算はできませんけれども、あとに残った人たちの生活のめんどうが十分に守られないからそういうような生命保険制度というものが発展をしていくわけですね。だから、これらの問題は、社会保障制度との関連性の中において、国家がそういうようなことを実現ができないから、それぞれ自分で責任を持たざるを得ないということから生まれてくるわけであります。それを助長していく中において、生命保険は国民のそういう掛け金を集めて、また、大きな経済の発展に寄与するのだという理屈だろうと思いますが、そういうような形ではなしに、もっと租税の原則的なあり方の問題から私はこれらの問題については御検討願いたい。  そこで、この問題は原則論はやめまして、次にお尋ねをいたしたいのは、リファイナンスの供与に伴ったその結果とその税制関係についてであります。  これは参議院の木村禧八郎先生が、予算委員会で追及をしてだいぶ新聞に出ました。また、この席におきましても、いろいろ産投会計の問題をめぐる論議をいたす中において、リファイナンスの問題も阿部君あたりから追及をされたことは御承知のとおりでございます。  そこで、去年の十二月十二日に調印がされまして、四千三百六十万ドルという資金、これは円で供与されておりますから、日本円に直しまして百五十七億五千万円というものが、インドネシアの中央銀行に対しまして輸銀を経由して貸し付けられておる。そこで、その結果、輸銀の条件を私もあとで調べてまいったのでありますが、四十一年の七月一日から四十二年の十二月末までの間に期限が到来しておるもの、それから六カ月以上の長期分であること、それから第三点は輸出保険法による輸出代金保険に入っているものという三つの条件をつけたものについて、六カ月以上の債務の履行が遅滞したものについて、インドネシア中央銀行のほうから日本の輸出の商社に対しましてドル建てで支払いがされたわけであります。それを受け取ります場合に、インドネシア関係に対する輸出業者の諸君は、いまの輸出保険特別会計から保険金を受け取っているわけです。これは調べてまいりますと、長短合わせまして一千余件余りの、百八十億円を輸出保険特別会計から支払いを受けております。こうなってまいりますと、この輸出保険で支払いを受けた分についてはリファイナンスの結果、インドネシアの中央銀行がドル建てで日本の商社に支払いを済ました関係がありますから、当然その代金は二重所得になってはいけないわけでございまして、その分について回収をしなければならない、こういう結果になるわけであります。  そこで、その結果、これが日本の商社関係に税法の上においてどういう影響を与えているのかという点をお尋ねしているわけでありますが、四十二年十一月期の決算で、一億以上の資本金をかかえております法人の売り上げ高と申告所得を見てまいりますと、申告所得は二〇・九%の大幅増益でございます。ところが、貿易商事関係の二十二社について調べてまいりますと、申告所得額は昨年同期に比べまして九三・八%ということで減収をしているわけであります。ほかの企業については、これは軒並みに売り上げもふえ、しかも申告所得もふえておるにもかかわらず、貿易商事関係だけは、これは二十二社の分だけではありますけれども、九三・八%と、かえって減になっている。私はそれを見まして、リファイナンスして、インドネシアの中央銀行に金を貸し、それをもとにしてインドネシア中央銀行からドル建てで日本の商社に支払いが済まされた、それで長期の分については保険金額の百分の九十に見合う分は当然手に入ったわけでありますから、では税法上どういうふうな措置をとることによってこういうふうになってきたのであろうか、そこで具体的な問題として疑念を感じましたので、次の事項についてお尋ねをいたします。  この繰り越し控除や欠損金の繰り戻しをやった例が商社関係であるのかどうか。それから海外市場開拓準備金を取りくずした例があるかどうか、これについてまずお答えをいただきたいと思います。
  127. 泉美之松

    泉政府委員 あいにくとそういう資料をいま手元に持っておりませんので、さっそく調べましてお答え申し上げたいと思います。
  128. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、この際通産省にお尋ねをいたします。  輸出保険特別会計から保険事故として一千件余りのものについて百八十億円を支払いましたね。これは補正予算で百五十億九千万円を予算に計上して、そして長短合わせて百八十億円を支払った、これは事実ですか。
  129. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 保険課長が来るまでちょっと待ってください。
  130. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは私が保険課長から事務的に調べた数字でありますから間違いない。百八十億を払っているのです。そこで私がふしぎでならないのは、四十二年の十二月の十二日にリファイナンスの分について契約調印をいたしましたね。これは間違いございませんね。
  131. 竹谷源氏

    ○竹谷説明員 調印いたしました。
  132. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは一週間後に効力を発生しますね。
  133. 竹谷源氏

    ○竹谷説明員 おおよそそのとおりであります。
  134. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、私は輸銀のほうを調べてみたのですが、輸銀のほうの実務をやっている諸君から聞いたのでは、それに基づいて十二月の下旬から四十三年の一月末にかけて決済が完了をいたしました、輸出代金を担保物件にして質権設定をしたものについては、輸銀は一〇〇%回収をいたしました、こういうふうに答えている、まさにそのとおりだろうと思うのです。  そこで、私は、輸出保険特別会計を調べてまいったのでありますが、四十二年度には百五億九千百万円の回収金が計上されておりまして、四十三年度には七十六億九千六百二十万余円が予算に計上されておる。ここで二十二億だけしか回収されない。計算をしてみるとこういうことになるわけであります。そのリファイナンスの結果、百五十七億五千万円というものが商社関係に返ってきながらも、支払いがされたにもかかわらず、これは短期資金まで入れて百八十億払ったというのですから、そのうち長期資金が何ぼになるかわかりませんけれども、その回収金は一月の末までには全部支払いが済まされているにもかかわらず、保険の回収金だけはわずかに二十二億しか歳入に見込まれていない。一体これはどういうことなんでしょう。
  135. 竹谷源氏

    ○竹谷説明員 保険課長が参りましてからお答えいたしたいと思います。
  136. 村山喜一

    村山(喜)委員 あとで保険課長が説明に来るまでその問題については保留をしておきますが、ここで大蔵省のほうにお尋ねいたします。  こういうような場合に、長期資金、いわゆる長期ものについては、リファイナンスの結果、日本のほうが円資金を供与することによって、インドネシアの中央銀行がそれをドルにかえて日本の商社に支払った、それによって百五十七億も焦げついたやつが返ってきたわけですね。そういうような措置をとった。これは商社にとってはたいへんありがたかったわけでしょう。その前には、いまの輸出保険特別会計制度によりまして、保険事故として前もって百八十億は支払いがされておる。百五十七億は返ってきたのですから、今度は、短期の分については、あるいは九割についてはそういうようなことで見てくれる。保険制度なりあるいはリファイナンスの結果、それの裏づけをしたわけですから見てくれる。あとの残った一割というものは、企業の自己負担の責任において損失をこうむって、取れなければそれは損失金として落とせる。短期のものについては輸銀のほうでも補償をしないし、まあ輸出保険特別会計のほうでは補償してくれるけれども、いずれにしてもこれもまた一割は補償をしてくれない。こういうことになってまいりますと、貿易の輸出業者が、これらの所得の税法上の経理を進めていく場合において、その自己負担として危険負担をしているものについては、貸倒引当金なり、それの取りくずしをやるような形で決算を認めておいでになるのですかどうですかということをお聞きしたいわけです。
  137. 泉美之松

    泉政府委員 輸出保険の場合は、御承知のとおり輸出保険特別会計で九〇%を補償するわけであります。そのほかに都のほうで五%補償いたします。したがって、残りの五%だけが純粋に商社の自己負担になるわけでございます。その自己負担になるべきものが債権として計上されておる場合におきまして、それが貸し倒れになりますればこれは当然貸倒引当金を取りくずすことができるわけでございます。
  138. 村山喜一

    村山(喜)委員 その場合に、その輸出業者の場合には、海外市場開拓準備金ですね、これには該当しますか。
  139. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり海外市場開拓準備金は、そういう海外市場開拓のために支出したものを基礎として準備金を積み立てるということになっておるわけでありまして、本件の場合には、これは貿易でございまして、海外市場開拓のために支出したものではございませんから、海外市場開拓準備金とは関係がございません。
  140. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、貸倒引当金は、貸し倒れが発生しても直ちにその貸倒引当金の取りくずしはできない。それには三つぐらい条件がついていますね。そこでこの場合には、その条件を満たしたものとしてその貸倒引当金の取りくずしを承認されたわけですか。
  141. 泉美之松

    泉政府委員 私、具体化な商社に当たっておりませんので、本件の場合にどういうふうな処理をしたかは、後ほど調べました上でお答えいたしたいと思います。御承知のとおり、債権が焦げついたということだけですぐ貸し倒れとして認めるわけではございません。最終的に、債権の回収できないということが、相手方の倒産であるとか、破産であるとか、あるいは不渡り手形の発行であるとか、そういった一定の事実によって確認される場合に、とりあえず債権額の半額を債権償却引当金勘定に入れておきまして、その後貸し倒れになるかどうか、あるいは五〇%の債権償却引当金では不十分だから、八〇%まで債権償却引当勘定を設けたいというようなことがありまして、そういうことを認めていって、最後にやはりどうしても債権の回収ができないということが確認されて、初めて貸し倒れとして損金に認めることになるわけでございます。したがいまして、商社の場合どういうふうに相手方が経理をし、また、これを税務上どういうふうに承認したかは調査の上お答えいたしたいと存じます。
  142. 村山喜一

    村山(喜)委員 いま泉さんのほうが言われるように、債権償却特別勘定の中に設定をして経理をしたものがどの程度あるものだろうか、私はそのあたりが――今度の四十二年の十一月期の決算法人の売り上げ高と申告所得を見まして、どうもこんなに保険でも認めてくれた、しかもそれの裏打ちをリファイナンスでもした、そしていまおっしゃるように都のほうが五%、自己負担の危険負担は五%というような、そういうような状況にありながら、それの貸倒引当金の取りくずしをしたのか、それとも債権償却特別勘定に繰り入れたからこういうような減益収入になってきたのか、そこら辺をお尋ねしたかったわけであります。それが事実問題としては、いまこの場では出し得ない、後ほどまたお出しいただけますね。
  143. 泉美之松

    泉政府委員 そういった点は取り調べました上で資料としてお出しいたしたいと思います。  ただ、村山委員すでに御承知だと思いますけれども日本商社の場合におきましては、海外に売ります場合、かなり競争が激しいようでございます。したがいまして、他の法人が、かなり利益をあげているような状況のときにおきましても、商社の場合には非常に利益が少ないし、また、それが貸し倒れというようなことになりますと、なかなか利益がふえない、むしろ利益が減るといったような傾向があるように私どもは考えております。
  144. 村山喜一

    村山(喜)委員 質疑進行に協力をする意味で、私は保険課長質疑だけを残しまして一応終わりたいと思います。あとから見えたときにちょっとお尋ねいたします。
  145. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 只松委員
  146. 只松祐治

    ○只松委員 午前中、不動産の税制に関する部分的な御質問をしたわけでございますが、これの基礎になるのは所得税法の二十六条の一項、二項が大体不動産所得の法的根拠をなしている。これを見ますと、非常に簡単なものであり、「不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶」その他云々があって、他人に不動産等を使用させることによる所得をいうというようなことで非常に簡単なわけです。簡単ですから、これは広義に解釈して、政令その他で適用していけば、これはそれなりにまたできますけれども、しかし、このほかの給与所得その他を見ると、わりあいこまかに書いてあるわけです。先ほど私が一、二、例をあげましたように、あるいは近代的な私たち社会主義社会になればこれはまたおのずから多少異なりますが、いまの資本主義社会において、私有権というものを絶対に認めていくというようなことであれば、いまのように核家族――どんどん家族構成単位が小さくなって、私いつも言うように、五人家族と皆さんおっしゃるけれども、すでに四人家族、諸外国では三人家族になってきておる。家はふえていく、あるいは産業の発展に伴って工場敷地その他がどんどんふえていく、こういうことになって、いわゆる地産といわれる、土地の産業といわれるように、資本主義社会であれば土地による収益というのは、別な角度から非常に大きなウエートを占めてきておりますね。しかも、それが複雑になってきておるわけであります。もう少し私は、この不動産所得というものに対して厳密といいますか、この二十六条を具体的なものにしたほうがいいのではないか、こういう気がいたします。抜本改正のときでないとなかなかむずかしいかと思いますけれども、この不動産関係の法規を解釈して、もう少し遺漏のないような方向に努力する意向があるかどうか聞きたいと思います。これはどちらでもけっこうです。
  147. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 不動産所得の発生形態についてはいろいろございましょうが、二十六条では、不動産並びに不動産の上に存する権利の貸し付けその他によって生ずる所得一切を不動産所得と定義しておりますので、先ほど先生の御指摘になりましたような、貸し付けて、たとえばそれによって権利金を取るとか、あるいは貸し付けて手数料を取るとか、あるいは貸し付けの継続のために更新料を取るとか、これはすべて不動産所得であるということで、法律自体としてはすべてを含んだものとしておりますので、むしろこれを具体的な形態別に捕捉する方法をより的確にするということが、不動産所得課税の充実の基礎になるのではないかと思います。
  148. 只松祐治

    ○只松委員 政令あるいは通達で個々にそういう具体例をあげて取り締まるのも一つであるかと思いますが、私たちが常に言うように、法定主義を租税の基本にしているわけですから、そういう意味ではもう少し――いわゆる地上権というのは、きょうは朝、取れという方向だったのですが、逆に裁判所で、三カ月前になりますか、判決を下した。池袋のほうだったと思いますが、幾らが妥当であると権利金に対する判決を下しましたね。ぼくの部屋にはそれについての切り抜きがありますよ。この前国税庁に私は尋ねましたから御存じだと思いますが、裁判所で、権利金は幾らとか、こうやって判決を下しました。こういうふうに権利それ自体が一つの今度別の権利を生む、こういう時代にもなってきておるわけですから、これを税制だけから規制するのはいかがかと思いますが、しかし、税制もこういう一本で抽象的じゃなくて、法定主義という面から見ても、そういう面にもう少し具体性を持たしたらいいんではないか、私はこう思うのです。したがって、皆さん方のほうでもひとつ御検討をいただきたい。ほかの課税ですと相当詳しくいろいろ具体的に書いてありますよ。それから皆さん方がこの前これもやったんですが、解説として不動産所得に対する解説書を出しておられますよ。それを見ても、調査が非常にずさんなくらいですから、その解説もきわめてずさんですよ。不動産所得とはという項をあとからでもごらんになってください。そうすると、私がきょう述べたようなことは半分くらいしか書いてないですよ。言っておきますけれども、何なら取り寄せて読み上げてもいいのですが、主税局じゃなくて国税庁だと思いますよ。不動産所得とはということで解説したのをずっとごらんください、こういうのは載っておりませんから。そういうことを含んで、私は、この不動産所得に対する課税というものをもう少し明確化したらいいんではないか、こういうふうに思います。研究課題としてひとつお考えをいただきたい。この問題は私は別な角度からもう一ぺん質問をいたしますので、この問題はこれで一応終わっておきたいと思います。  次に、法人税の中で皆さん方が否認をされる事項があります。あるいは調査されてあとで否認が出てくる。そういう中で、いわゆる不正所得あるいは使途不明、こういう金というものが出てくるわけでございます。たとえば三十六億円の資本金の会社、土建会社ですが、二流それから以下、この程度の会社、ここで不正所得が六千八百十一万円、それから使途不明の金が一億二百十四万円、こういう金が出てきております。この金は何かといいますと、大体主として土建会社のリベート、こういうものです。リベートというのは、受注するときに競争したり何かして、いろいろなところの談合から始まり、それから取らせてもらった謝礼その他になるわけです。あるいは政治献金ということにもなるだろうと思います。これはまあ中くらい、二流以下の会社ですが、私は四つ、五つその二流以下の会社の使途不明金というもののサンプルをいただいておるわけでございます。さらにこれが零細な会社やあるいは商店あたりになりますと、私はこれも一ぺん質問いたしましたけれども、石屋や何か、こういうのは慣習的にお寺に三%か五%くらい、注文を持ってきてくれると返す、こういうことであります。こういうのは非常にシビアに取っている。ここに出てきているこれは、サンプルとしていただいたくらいですから、一応調査された形だと思うのです。大会社に至っては、日通のああいう経理が不明確であったように、私は相当のものがあると思います。全国的にこういう使途不明の金、否認された金が総額幾ら、あるいは会社の中で――きょう答えることができなければ資料としてでもけっこうですけれども、百億、五十億、一億五千万円、一億、一億以下の五段階くらいでいいですから出していただいて、そして使途不明の金が総額幾らになっておるか、きょうお答えできなければひとつ資料として出していただきたいと思います。
  149. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように、法人税調査をいたしておりますと使途不明出金が出てまいります。これは業種、業態によって必ずしも一律ではございませんし、また、資本金の多寡にもよっていろいろ違ってまいるわけであります。なかんずく使途不明出金の多いのは、建設、土木関係が多いようでございます。ただ、いまお話しのように、資本金別に法人から使途不明出金を集計したことございませんので、もし御必要でありますれば、全国の国税局から資料を取り寄せた上でお答えいたしたいと思います。
  150. 只松祐治

    ○只松委員 困難なら局と署別の分け方でもいいです。ひとつ資料としていただきたいと思います。  さらに、これがいわゆる零細企業の使途不明――使途不明というといろいろあると思うのです。商売を始めて一、二年目くらいで一生懸命で新分野を開拓したいというようなことで、交際費として認められる面が中小企業は少ないですから、いろいろなことで使って、どうしても言えないというような面もあると思います。そうじゃなくて大きな会社は、もう初めから談合、入札、そういう形でとにかくもう言えない、あるいは通常の工事を請け負う場合に一%ないし二%はリベートとしてそれが流用される、こういうことを私たちは聞いておるわけです。そういうことで、下請や何かの発注費にこれはいろいろなことでごまかしているけれども、それがなかなか大きな額になってごまかし切れなくなって、この使途不明という形で自分のほうでしょっかぶる。これは形にはいろいろあるだろうと思います。私が言っておる趣旨は、大きなところの――きょうは交際費は論じませんけれども、交際費や広告費や何かも使った上でこれだけの使途不明金が出てくるというのは、私はけしからぬことだと思っております。広告費や交際費の問題についても、私たちはいまの状態はけしからぬと思っておるわけです。その上にさらに、こうやって幾つかの例を拾っても使途不明金というものが出てくる。こうやって発見できた面は、皆さん方が調査されたという形になるわけですが、発見されてない面で、さんざん交際費や広告費を使った上にこういう使途不明の金というのがこうやってあるということは、私は、必ずしも大会社の経理が正しいものである、したがって税務調査がりっぱなものであるとは思わぬわけです。そういう角度から言ったわけで、これをさか手にとって、ひとつ中小企業やなんかもびしびしと否認する、私が知っているところでも、否認されていまいじめられておるところがあるわけですが、そういう形で取るのではなくて、大会社や何かのものを厳格にするという意味からひとつ資料をいただきたいと思います。  それから、こういうふうに皆さん方が一生懸命でむずかしい仕事をなさる。あまりほめられない仕事をする。しても、国民のためにしておるわけで、必ずしも報酬を求めて皆さん方はしておるわけではない。公務員は国に対する奉仕でやるわけです。しかし困難な仕事なりつらい仕事をすれば、それなりに一つの正しい報酬というものが与えられなければならない。諸外国においては、同じ労働者でも、炭鉱、鉄鋼労働者、これは社会主義国家の中共あたりに行ってもそうです。上海あたりは戦前から生活が高かったというので、例外的に軽工業労働者でも多少高い面はありますけれども、大体重工業労働者のほうが高い。日本の場合には、ホワイトカラーや何か頭脳労働者のほうが高い。同じ税務署の役人も、諸外国で見ますと、いろいろ手当なり何なりそういうものがあるようでございます。国税庁でやれば自画自賛になりますから、人事院かどこか来ておりますか。諸外国における税務官吏の給与その他特殊的なものがあればひとつお示しをいただきたいと思います。
  151. 渡辺哲利

    渡辺説明員 いま御質問の点でございますが、私どもも諸外国の制度につきましては、給与に関していろいろ調査をしておりますが、ただいま御質問の税務職関係につきましては、イギリス及びアメリカにつきましては、特段に税務職の職員に対して特別の手当を出しているというような資料は、現在のところまだ入手した資料の中では見当たっておりません。ただドイツにおきましては、税務の中級職員につきまして、大蔵省がきめる特定の手当を出すということになっているようでございます。それからフランスにおきましては、税務職員につきまして、ほぼ一〇%程度の特別手当を出しているというような状況でございます。イギリス、アメリカ等につきましては、どうもいろいろ調べてみましたのですが、特段に出しているというような資料は見当たらないような状況でございます。
  152. 只松祐治

    ○只松委員 諸外国によって多少異なりますが、私が調べた範囲内でも、フランスでは出しておりますね。それからドイツでは三号俸ぐらいいっております。日本でもちょっと上がっているようなところもあるようですが、いまだんだん同じになってきたようですね。初めは警察官も上がっていたわけですね。そういうふうに給与全体としてもそう特別なあれはない。それから出張旅費その他、たとえば税務職員の場合は大体七割以上ですか、いわゆる地区内出張あるいは地域外、県外出張等も調査のためにあるわけですね。こういうのに対して順次聞いていきますが、手当や何かも一般公務員と変わりない、特別のものはほとんどない、こういうことのようでございますが、何か特別に手当を出したりそういうものがありますか。あるいは諸外国と対比して、諸外国にそういうものがあればお教えをいただきたい。
  153. 渡辺哲利

    渡辺説明員 税務職の職員につきましては、いままでお話の出ましたように、非常に複雑な税法の知識を必要といたしまして、それを公正かつ的確に実行しなければならないというような点もございますし、なお心身の危険その他不快性等もございますので、それなりに給与の面で考慮する必要があると思います。そのような意味で、現在は税務職俸給表を適用することにしておりまして、税務職俸給表につきましては、従来から行政に比べまして大体二号もしくは二号半の有利性をずっと維持してきております。割合で申しますと大体一〇%ないし一一%、本俸ですでに見ているというようなことで優遇をはかっているわけでございます。  なお、税務職員につきましては、特殊の事情といたしまして、終戦後に非常に大量に採用になったようないきさつがございますが、それらの人々が中ぶくれというような状況で非常に大量にいるわけでございますけれども、それらの人たちにつきましても、その二号アップの俸給表の上にさらに等級別定数等でいろいろと努力をいたしまして、税務職員としてのふさわしい待遇を考えていきたいというふうに現在も努力しておりますし、将来とも努力していきたいというふうに考えている次第でございます。本給で一〇%見ておりますので、その点はややドイツあるいはフランス等に近い数字ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  154. 只松祐治

    ○只松委員 税務職員はいま申しましたように非常に出張が多いわけですが、この出張に対する現在の手当制度といいますか、地区内二キロ以内幾ら、二キロをこした場合に幾らといういわゆる規程がございましたらお示しをいただきたい。
  155. 泉美之松

    泉政府委員 税務職員が出張いたします場合は日額旅費というのを支給することになっております。この日額旅費は、その管内の状況によりまして、宿泊を伴う場合と宿泊を伴わない場合とあるわけでございます。宿泊を伴わない場合におきましては最低百十円。それからその職員の等級によりまして若干差異があるわけでございますが、最低が百十円で、だんだん百三十円あるいは百八十円、二百四十円というふうに分かれております。それから宿泊を伴います場合にはこれがもっと大きく、五百円が最低になりまして、その上に八百円とかいったような階層があるわけでございます。この日額旅費につきましては、大体の考え方一といたしましては、交通費が半分、昼食代が半分、こういった考えでできておるのでございますが、最近交通費がだんだんと上がってまいりましたために、必ずしも初期のように半額が交通費で半額が昼食代というふうにはまいりかねておるような事情にございます。
  156. 只松祐治

    ○只松委員 詳しく言う時間はございませんからまた別な場所で言いますけれども、百十円の基本に二二%プラスアップして二十二円、これが通常の出張旅費。それからいまおっしゃったように、半分が弁当代やら何かである。いま何軒平均歩くか、そこまで私は聞きませんけれども、三軒なり五軒なりいろいろな調査をして歩く。百円やそこらでとにかく歩く。まあ弁当は、庁内におったってどこにおったって食うわけですし、たばこもどこへ行っても吸うわけですけれども、よそのところに行けば、たばこの一本もよけいに吸う、緊張してやりとりしますから。税務署が来たからと歓待して喜ぶ人はない。おっかないからお茶を出すけれども、歓待してお茶を出す人はないわけです。そういう中で税務職員が苦労といいますか、そうすると、当然に私はそこには何らかのやはり手当といいますかをしなければ、つい出張旅費が足りないからたばこを一本ごちそうになる。紅茶までいい通達になっておるのですか、つい紅茶がコーヒーになる。そうするとケーキまではいい。ケーキまではいいということになるとライスカレーはどうだろう、こういうことになって、やはりもとっこが足りないからだんだんこういうことになる。これは旅費にいたしましても、歩くだけが能ではなくて、歩けば当然くつの裏が減る、あるいはくつがいたむ、あるいは洋服がすり切れる、こういうことになるわけです。たとえば私が言うのは、それだけ出張が多ければ出張の多い人は――官服を着れば、これは税務職員だと警察みたいにすぐわかるでしょうけれども、税関員じゃないけれども、少なくともズボンの減り代くらいは、警官の中の刑事に私服費をやるみたいに、何らかそういうものを与えるべきじゃないか。私はまあこれは税務署の、国税庁の威信にかかわるから、このことの裏の質問はあまりいたしませんけれども、一昨日も課長さんが裏の計理事務所をやっていたのを摘発されたのが新聞に載っていますね。税務職員犯罪件数というのは決して少なくないのです。少なくないのは、結局こういう金を扱う誘惑の非常に多い仕事、その中であまり好まれない仕事をやっておりながら、給料なりそういう諸手当というものがほとんどほかの公務員や何かと変わらない。これは当然によほど意思の強い人でない限りは負けていく。これは私はむしろ人情のしからしむるところだろうと思う。税務職員だけにすべて正しさを求めても、特に警察官のように官服を着ておれば自分の身の引き締まる場合もあるだろうが、そうではなくて、一般職員として銭のうごめいておるところに調査に行ってそういう扱い方をされると、これはついよろめく。だから、何らかの形でそういうものに対して報いる扱い方をしなければなるまい。非常にこまかいことを言うならば、転勤が非常に多い。二年ごとの転勤ですね。転勤すると当然に友だちなり何なりに引っ越しのはがきなり何なりする。地域外の転勤ならば旅費も出るけれども、地域内の転勤ならば旅費も出ない。そうすると、名刺のつくりかえから始まっていろいろなことをしなければならない。こういうことになれば必ずしも一〇%ぐらい俸給が現在高いからといって報いられているとは私は思わないのです。私は今朝来、税務職員がもっと緊張して土地や何かを十分調査し、脱税しておるものを――私は泉さんに責任追及までしておりませんけれども、しかし本来は取るべきものを取っておらないのですから、公務員として責任追及さるべき立場にあると思う。そういう面はそういう面として、私たちは公務員の立場で働くことを求めますけれども、こういうふうに相当強い責任のある仕事をしなければならないのに何らの報われるものがない。しかも転勤をして、私が言うように、七月の転勤ですから、四月の転勤でないから子供はたいへん困るのです。私は二回ばかり頼んで問題を解決してもらいましたが、七月の転勤というのは、子供の入学や何か――子供をそっちへ置いたまま来なければならないということで、ほかの官吏とは違う並みたいていでない苦労というものがあるわけです。そういうものに対する報い方というものをやはりしていかなければ、それは働けといっても働かないし、悪いことをするなといっても、それはよろめきますよ。こういうものに対して、国税当局、責任者としての泉さんあるいは人事院として、そういう実態というものをよく調査した上で、税務職員にやはりそういう犯罪が多ければ――日通の事件がこうやって起こりますと、日通の職員がバッジをつけたり黄色い帽子をかぶるのさえも気がひけるというのと同じで、税務職員のこういうものがたくさん起こりますと税務職員仕事というものはしにくくなるので、そういう点について考慮する余地があるかどうか、ひとつそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  157. 泉美之松

    泉政府委員 税務職員に対しまして御同情のあるおことばをいただいて、たいへん感謝いたしております。私どもといたしましては、先ほど人事院からお話がありましたように、確かに税務職員は二号俸ないし二号半一般職員より給与がいいことになっております。しかしその割合は、昭和三十二年の給与法の改正当時は一七%程度であったのであります。その後だんだんベースアップのたびごとに格差が縮んでまいりまして、現在では平均一一%程度の開きになっておるわけでございます。私どもとしましては、かつて三十二年の俸給表の改正の当時と同じ程度まで一般職員と税務職員との格差を開いてもらいたいということをお願いしておるのが一点でございます。  それから、いま日額旅費についてお話がございました。先ほどもお答えいたしましたように、日額旅費というのは、本来交通費が半分、半分は昼めし代ということでできておるのございますが、しかし先ほど申し上げましたように、最低百十円ということでは、交通費だけでもこのごろはそれくらいかかるようになってまいりました。昼めし代どころではなくなってまいっておるのであります。そういう意味で、私どもとしましては、これは同じ大蔵省部内でありますけれども、主計局のほうには日額旅費の増額ということをお願いしておるわけであります。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、税務職員と同じような支給を受ける他の官庁がございます。たとえて申し上げますと、農林省の林野庁の職員、これは山を歩く場合同じように日額旅費が出ておるわけであります。ただ、税務職員は都会を交通機関を利用して歩いておるのでありますが、林野庁の場合には山を足で歩いておる。足で歩いてもはくものがすり切れることは確かだと思いますけれども、交通機関を利用して歩く場合に比べるともう少し安いのではないかというふうなことも考えられます。そういう点からいたしますと、税務職員の日額旅費については、いまなお、もう一そう考慮していただきたいものだというふうに考えてお願いしておるのであります。ただ、これは昭和四十二年に改定したばかりだから――といっても昭和四十二年は最低額は改定してもらえなかったのでありますが、なかなか改定はむずかしいということで非常に苦慮しておるのでありますが、いまお話しのように、最近交通費がだんだん上がってきておる実情にございますので、そういった点を十分調査いたしまして、こういった点についても是正を要望したい、このように考えておるわけであります。  なお、先ほど言い忘れましたが、徴収職員の場合には、御承知のように滞納処分に参りますのはなかなか割りのいい仕事ではございませんので、日額旅費について二〇%の割り増しを支給するようにいたしております。
  158. 渡辺哲利

    渡辺説明員 税務職員の待遇につきましては、先ほど申し上げましたように、現在本俸で二号ないし二号半見ておりますけれども、これらの問題は、俸給表の水準差以外に、なお等級別定数でございますとか、あるいは税務職員俸給表の適用範囲そのものにもいろいろ関連のある問、題でございまして、それらを十分慎重に検討した上で水準差その他の検討もしなければならないというふうに考えております。いずれにいたしましても、税務職のそういう困難性につきましてはいろいろ十分わかる点もございますので、今後ともそういういろいろな方面との関連におきまして十分研究していきたいというふうに考えております。
  159. 只松祐治

    ○只松委員 ひとつ当該委員会ででもこういう問題を論議しないと、なかなか税務署職員の方々に対するそういうもののめんどうを見るというか、公務員は自分で見る面もあると思いますが、私たちが実際上はたで見ておって無理な点がやはりある。あまりにもそういうものが少な過ぎて、私この前ちょっと言いましたけれども、もう少しきれいに掃除せぬかと税務署で言ったところが、一ぺんやると油代が三万円から五万円くらいかかるのですよと言って、ちりが積もっているわけですよ。昔のように、女の子が早く来て掃除をするというようなこともなくなってきたわけで、まあ、こまかいことを言えばそういうことから始まるわけでございますが、そこまで私は申しませんけれども、少なくとも交通機関をこれだけみな使うようになって、なかなか私たちの選挙一つやるのだって、自転車で行ってくれと言ったって行く者はいないですよ。自動車を与えなければ選挙運動はしない。こういう世の中になってきて、徴収や何かを事とする人々に、昔ながらの百十円で一日歩き回れと言ったって、これは無理だろう。そこに必ず収賄や何かそういう問題が発生してくる余地が多分にあるわけですから、十分お考えをいただきたい。  それから最後に、そういうように世の中にはすべて不平不満があるわけですが、今度は片一方取られる側の国民はいろいろまた不平不満を持っておる。ところが、それの唯一の救済手段は協議団、こういうことでございますね。協議団というのは局の中にあってほとんど税務署が実権を握っておる。こういう形でございまして、よく議員の歳費がお手盛りだといわれますように、協議団の裁定もお手盛り裁定であって、私は公正なものであるというふうにはあまり思わないわけであります。したがって、何らかの形で第三者的な判断機関を、裁判機関をつくれ、こういう要望が強いわけです。私も少し前に総理大臣にそういうことを要望しました。ただ、別途の司法裁判所的なものをつくると、憲法上の問題も出てくるということで、その権能自体について問題があるようでございますけれども佐藤総理も前向きの形でこの問題は考えたいということですし、あるいは税調等においても、何らかの形でこの問題に取り組み、あるいは前進させたい、こういう考えのようです。当然にこの民主国家において、それは裁判にすればできぬことはないわけですけれども、一々裁判にするだけの――またへたに裁判にすれはにらまれる、こういうことで、いきなり税務署だけの所管ではなくて、やはり不服申し立てをできるような形のものを国民は待望をいたしておるわけでございます。税制の民主化のためにも、私はこれはぜひ必要だと思いますけれども長官なり主税局はどういうふうにお考えか、具体的にそういう問題に取り組んでおられれば、その進捗状況等を示していただきたい。
  160. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま仰せの納税者の不服申し立て機関につきましては、現在の協議団が第三者的立場から見ると十分でないという御指摘もよくございます。現在その点を含めまして、主として納税者の不服を解決する手段として、不服申し立て機関あるいは更正の請求の問題等一切を含めまして、税制調査会に特別の部会を設けて審議をいたしております。現在二回程度の審議を終わりまして、この四月から再び審議を開始する予定でございますので、ここで十分な検討を遂げていただきまして、その結果によって私どもとしても善処いたしたい、かように考えております。
  161. 只松祐治

    ○只松委員 そのめどと申しますか、およそいつごろまでにそういうことの案をつくりたいというお考えですか。
  162. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在の税制調査会の委員の任期が七月で終了いたしますので、私どものスケジュールとしては、七月末には答申をいただきたい、かように考えております。
  163. 只松祐治

    ○只松委員 この前、武藤君かだれか要求しておればけっこうですけれども資料要求でございますが、私たちは反対でございますが、今度の酒、たばこが上がったと仮定をしまして、たとえば一番国民の需要の多いハイライトが二十円上がる。すると、一箱のむと二十円だから、月に六百円、年間七千二百円、平均して上がります。酒も全然飲まない人はいないと思いますから、幾らか平均して飲みます。この酒、たばこの税金を納めるのに対比して、独身者で高校出で大体半年目か一年目くらいから税金がついてまいりますが、その独身の最低所得者で幾ら減税になるか。それから、八十三万三千円をこして八十三万四千円ですか、五人家族で税がかかるようなところが幾ら減税になるか。それから、それの倍の百五十万円くらいで今度幾ら所得税が減税になり、酒、たばこで幾ら増税になるか。あまりこまかいのはけっこうでございますが、三段階くらいに分けた試算が、これは私たちも少し考えればできるわけですが、皆さん方のほうでできれば試算をしてひとつ資料として御提出いただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  164. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまの資料に非常によく似た資料を、竹本先生から御要求があって出すことにいたしております。階層別に所得税の減税額、酒、たばこの消費支出金額からあらわれた部分についての増加分、それを対比したものをつくって出しますので、それをごらんになればたぶんわかると思います。それはきょうくらいに提出する予定で準備しておりますので、もうできていると思います。
  165. 只松祐治

    ○只松委員 以上で終わります。
  166. 田村元

  167. 村山喜一

    村山(喜)委員 先ほど質問をいたしまして、課長が見えないと答弁ができないということでございましたのでお待ちしておったのですが、私がお尋ねしたいのは、四十二年度において輸出保険特別会計から保険事故として約一千余りの件数で百八十億円の支払いがされた。これは長短合わせて百八十億円。ところが、御承知のようにファイナンスの結果、百五十七億のものがドル建てで日本の商社関係に支払いが済まされたわけです。したがって、この輸出保険特別会計のほうから支払ったものについて還流をしてこなければならない。ところが、その還付されるものが、これを輸銀のほうで調べてみましたら、十二月の下旬から一月の末にかけて、長期の分については向こうのほうは輸出代金を担保物件として質権設定をやっておりますから、それの分については一〇〇%もう返されました、こう言っているわけであります。ところが、今回提案をされました特別会計の中身を見てまいりますと、四十二年度中の回収金の見込み額は百五億九千一百万円ということです。当初に予定しておったのは八十四億ですね。だからそれに比べたら二十二億、わずかにふえたにすぎない。残りは四十三年度に七十六億九千六百二十万円ですか入るという勘定になっておる。そこで、リファイナンスした結果ドル建てで商社に代金が入ったのだから、当然輸銀と同じように保険会計の中にも代金のいわゆる回収がなされなければならないはずだ。その当初に八十四億見込んでおったころは、年末の十二月十二日に調印をしたわけですから、当時にはそれは見込みは立てなかったはずじゃないか。そして十二月になってからそういうようなふうになったのですから、これは二十二億しか増徴ができないというのはちょっとおかしいじゃないかということを考えたので、これに対する説明を求めたわけです。
  168. 平松守彦

    ○平松説明員 ただいまの件、御説明申し上げます。  リファイナンスは十二月に行なわれましたが、四十二年度当初回収金として八十四億計上して、補正で、いま先生おっしゃいましたように百六億になったわけでございますが、この八十四億の中に実はインドネシアのリファイナンスの回収を四十八億見ているわけでございます。これはリファイナンスが昨年の十二月に調印が行なわれましたけれども、リファイナンスは御存じのように、四十二年の十二月までにオーバーデュー、決済期が来ても弁済ができないものが対象でございますから、四十一年にも決済期が来て弁済できないもので保険金の支払いをしたものがございますので、当初は四十八億で済むということで当初予算八十四億の中に四十八億を組んだわけでございます。それから補正後は百五億九千二百万ということで二十二億ふえたわけでございますが、この百六億の中では回収金の見込みを八十五億ということで見ているわけでございます。で、輸銀のほうが百五十七億リファイナンスいたしましたが、これは御存じのように元本、金利について一〇〇%出すわけでございます。輸出代金保険の場合は元本、金利の九割の回収でございますので、回収は大体百億から百八億くらいの回収金としてわれわれのほうに還流するわけでございまして、現在のところ補正予算で八十五億組んでおりまして、四十三年度の予算案では、またその残りが回収されるという積算で予算を組んでございます。こういう事情でございます。
  169. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、四十三年度に延びた分が二十三億ある、こういうことになりますね。
  170. 平松守彦

    ○平松説明員 補正予算を昨年組みました際に、四十二年度に回収金として八十五億、それから残りは四十三年度という見通しで予算を組んだわけでございますが、実際のリファイナンスは四十二年度中に百八億行なわれておりますので、歳入はそれだけよけいになる、こういうことに相なるわけでございます。まだ三月までの決算はいたしておりませんが、見通しは当初よりも金額としてふえた回収金として歳入に入る、こういうことに相なるわけでございます。
  171. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういたしますと、百五億九千二百万円の回収予定額が、このうちにインドネシア分が八十五億、したがってそれの回収金が百八億出てくるから、インドネシア分については約二十三億くらい回収金としては増加の予定である、こういうことですね。
  172. 平松守彦

    ○平松説明員 そうでございます。
  173. 村山喜一

    村山(喜)委員 わかりました。  そこで、私はこの予算書を見ると、どうも回収率が悪いじゃないかといったことを考えたので、それをお尋ねをしたわけです。その結果、見込みがそういうふうに変わってくれば話がわかります。ただ、この際保険特別会計の窓を通じて十分の九しか保険金は支払いをしないわけでありますから、残りの一割については、先ほど五%は都のほうが何か再保険みたいなことで保証して、残りの五%は、これは企業の自己負担だ、こういうことになっているのだそうであります。それについては貸倒引当金等の取りくずしをするような形の中でその経理の措置をとっているはずだという説明であったわけですが、そういうふうに受け取ってよろしいですか。
  174. 平松守彦

    ○平松説明員 私どものほうは輸出保険法に基づきまして、手形保険では八割、輸出代金保険では九割いたしまして、手形保険については、東京都、愛知県、大阪府等々主要府県で、自発的に残りの一五%について市なり県で追加保証する制度がございます。これは手形保険だけについてでございまして、輸出代金保険につきましてはそういう制度もございませんので、九割払いました残りの一割につきましては商社の自己負担になる。その負担につきまして、それは準備金の取りくずし等で行なわれましたかどうかにつきましては、私そのほうについては、はっきりしたことをいま申し上げる立場にございませんので、失礼いたします。
  175. 村山喜一

    村山(喜)委員 わかりました。  そこで、百八十億保険金を払ったうちの長短分の区分はわかりますか。
  176. 平松守彦

    ○平松説明員 百八十億は、昭和四十年度、四十一年度、四十二年度通じましての金額でございまして、そのうちの短期分は約五十八億弱でございます。それから長期の分が百十六億弱でございます。残りは輸出不能と申しまして、これは輸出債権にもならないで、船積みする前に事故になりまして、国内で処分して、その処分の差損を保険金で支払うという、いわゆる輸出不能分と保険で申しますが、その分が八億円弱という数字でございます。
  177. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十二年度のこの特別会計の中身では、一般会計から三十億受け入れておりますね。そしてこういうような見積もりであるから資金が不足をするということでやったわけだけれども、実際は二十三億ぐらい、回収金があなた方の努力によって返ってきたということから考えたら、一般会計からの継ぎ足しの三十億は必要なかった、こういうふうに結果的には考えられるわけですが、それでよろしいですか。
  178. 平松守彦

    ○平松説明員 輸出保険は、インドネシアの支払い保険金のみならず、四十二年度におきましては、アフリカのガーナーがやはり外貨不足で非常に大きな保険事故が発生しております。それからアラブ連合、これがやはり国立銀行の外貨不足による送金遅延ということで、これも保険事故になりまして、全体を通じまして特別会計として保険金支払いに要する資金が不足いたしまして、これに見合わせるために三十億を繰り入れて予算を組んだわけでございます。
  179. 村山喜一

    村山(喜)委員 このように金融の面においても、輸出業者等については、国家資金を一般会計からつぎ込んで救済をしていくような非常に手厚い保護をしているわけですね。そしてリファイナンスの結果は、結果的には輸出商社というものに対して救済策の結果になった。こういうようなことを考えてまいりますと、いまの輸出に対する政府の熱意というものは、なるほどそういうふうな面から見られると思いますが、一面においては、こういうような事態に対して国がそういうような保険措置を講ずることによって、一般会計の資金をつぎ込みながらそういうような商社関係を援助している。国民の犠牲の上に商社関係のそれが成り立っていることを如実に物語る数字だと私たちは思うのであります。そういうような意味から、それの営業収支の関係を今度の十一月期の分について調べてみましたら、そういうふうな落ち込みもあってのことだろうと思いますが、申告所得が非常に減っている。輸出保険特別会計の裏づけをリファイナンスでしたような結果になっているにもかかわらず、申告所得が昨年同期に比べたら、これは売り上げ金高はふえているにもかかわらず申告所得は減っているという状態を見受けましたので、おかしいじゃないかということを追及をした次第です。  以上でございます。
  180. 田村元

    田村委員長 田中昭二君。
  181. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 四十三年度の予算の財源収入から、いろいろ税制改正も小幅な改正にとどめてあり、またその減税額も少ないようでございます。いろいろ各委員からいままで討議されましたから、私は簡単に所得税法改正されました基礎控除の引き上げ、そういうこまかい問題からお尋ねしていきたいと思います。  まず基礎控除、配偶者控除でございますが、これを十六万円にされましたその計算の根拠を御説明願いたい。
  182. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 基礎控除をはじめといたします諸控除の引き上げにつきましては、従来から各控除間のバランスというものに配慮をいたしております。むしろことしは、四十五年度に給与所得者の収入金額百万円まで課税最低限を引き上げるという目標のもとに、十万円程度課税最低限の引き上げを配慮いたしまして、その場合の各控除間のバランスをとりまして、基礎控除並びに配偶者控除は一万円――配偶者控除につきましては、従来から配偶者の地位というものを考えまして基礎控除と同額といたしましたので、一緒に引き上げることにいたしたわけでございます。
  183. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまの主税局の説明では、私はまだ納得いたしません。もう少し親切に説明していただければけっこうだと思います。いまお聞きしておりますと、十万円の控除引き上げをただばらばらに、基礎控除に一万円、ほかの控除に幾ら、こういうふうにやったんですか。そういうふうに聞き取れます。  再度申し上げますが、基礎控除というものはいままでの税法の組み立てから見れば、一人の人が生活する場合にこのくらいまでは、いわゆる課税最低限といいますか、課税最低限は標準世帯で立ててございますが、それを演繹したといいますか、そういうもので基礎控除というものはできておると思いますが、もしも今度の引き上げがそういう生計費というものから見たものでなければ、昨年までの基礎控除の算定の根拠から実はそれを一万円引き上げたんでございます、このような説明でもけっこうですから、もう一回お願いします。
  184. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のとおり、各控除をばらばらに考えるというわけではないのございまして、各控除間のバランスをとるわけでございますが、各控除を引き上げる、もっといえば課税最低限を引き上げる場合に、二つの考え方があると思います。一つは、基礎控除、配偶者控除、各控除ともいずれも金額で、定額できめられておりますから、いまの御指摘のような生計費という観点から見ますと、消費者物価が上昇すればその分だけは不足してくるわけであります。たとえば四・八%来年度消費者物価が上がるといたします。十五万円に対しては大体七千二百円ぐらいの上昇があるということになるのであります。またもう一つの考え方としては、所得水準が上がっていくなら、できるだけその所得水準が全体として上がるのに即して課税最低限も上げていこう。その両方を考えあわせますと、今回の場合、一万円という数字が大体どちらの面から見ても妥当であろうということで、十万円の課税最低限の引き上げの中では、基礎控除に一万円というものを充てることにいたしたわけであります。
  185. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 だいぶ理解ができたようでございます。  そこで、きょうは資料を前もって要求しておりませんでしたから御無理な要求かとも思いますが、ひとつ昨年の課税最低限の基礎もあると思いますし、また、いまの十五万円の約五%近い七千何百円というような考え方もあるようでございますから、そういうものをあわせて計算の基礎を教えていただけますか、後日でけっこうですから。
  186. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま私が考え方と申しましたが、各控除のバランスというのはずっと昔からの伝統的と申しますか、引き継ぎで出てきたものでございまして、各控除を一つずつ幾らで積み上げるということはやっておりませんので、その資料は私どもちょっと持ち合わせておりませんから、ただいまの説明で御満足いただければと思います。
  187. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 ちょっと私が言うことと主税局でお考えになっていることが食い違っているようですが、私が申し上げているのは、大蔵省できめました生計費の見積もりというのがいままでございましたね。一食幾らに見て、エンゲル係数でどう見た、そういうものなんですよ。そういうものも参考になるかと思いますから、その点の資料を後日出していただきたい、こうお願いしておきます。よろしゅうございますか。本年度は特に生計費の計算というのはなされていないかもしれませんけれども、前の分でけっこうですから。
  188. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先日阿部先生の御質問のとき何回も申し上げましたけれども、最初のメニューをつくりましたあれが昭和三十九年でございますが、それからただいままでに物価の上昇率というのは二二%程度。ところが、課税最低限のほうの引き上げは、独身者で七六%、夫婦子三人のところで七三%と非常に格差が出てまいりました。あの生計費の逆算の形式では実際上もう妥当しなくなってまいりましたので、ことしはそれはつくらなかったわけでございます。去年もつくりませんで、去年はおととしのものに消費者物価をかけたようなもので御説明したと思います。その資料がとまりになっておりますので、もう一回その資料をお出ししたいと思います。
  189. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、いま局長のほうからお答えがあったようでございますが、基礎控除と配偶者控除を同額にしたという点について、もう一回、もう少し詳しく説明していただきたい。
  190. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 配偶者の課税につきましては、御承知のとおり非常にむずかしい問題がございまして、わが国では、最初配偶者控除というものを別ワクにしませんで、扶養控除の一つにしておりました。しかし諸外国の例を見ますと、たとえばアメリカでございますと、いわゆる二分二乗制度、基礎控除が同額である上に、所得を二人合算いたしまして、それを二つに分けてそれぞれ税額を適用して、そして税額を合算する。つまり夫婦者であるとぐっと安くなるようなやり方をしております。また、ドイツも昨今その制度を採用してまいりました。各国の姿を見ますと、大体基礎控除と配偶者控除というのは同額というものが多いようであります。妻と夫の関係というものが、妻がいわば内部において家を守り共同してつくっていく考え方からすれば、扶養控除の中で配偶者控除だけを何とか考えるのが適当じゃないかということで、たしか昭和三十六年から配偶者控除というものをやや高めにいたしました。その後基礎控除と同額まで持ってまいりましたが、四十二年に同額にいたしました。その前に一応同額であったのが財政需要の関係で五千円も差がついたことはございますが、原則としては配偶者控除は基礎控除と同願でいきたいのが今後を通じての方針だと申せると思います。
  191. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大体わかりました。この配偶者の控除でございますが、かりに奥さんがアルバイトで、日給でも月給でもいいんですが、月に一万二、三千円、年間で十五万円の収入があった人も配偶者控除の対象になりますか、なりませんか。
  192. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この配偶者につきましては、所得が十万円以内であれば――所得というのは、事業所得あるいは給与所得、その他のいわゆる稼得所得と申しますか、イギリスのアーンドインカムに相当するものが十万円までということになっておりますから、もしそれが給与の収入金額であれば給与所得控除が働きますので、二十二万五千円までは配偶者控除が受けられるということになるわけでございます。
  193. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま私は給与所得で申し上げたつもりでございましたが、十五万円ではなくて一年間二十二万円までの内職収入のある奥さんは配偶者控除がある、片方は全然内職がなく同じく配偶者控除は同額だ、これは不公平のようでございますね。しかし、税法がきめました範囲でございますからしかたないようですけれども、それはそういう力のある奥さんをもらった人が得だということになるかもしれませんが、片方は全然収入がなくてかえって病気してお金が要る、神経痛か何かでサロンパス張るだけでももう月何千円か要るというような配偶者でも同じく十六万円、片方はピンピンして月に二万円近くの月給もらっておっても同じく十六万円の配偶者控除でございますが、どうも納税者に説明する場合に、またこれは何とかならぬものだろうか、こういうような気持ちもするのですが、ひとつ主税局長並びに政務次官の――政務次官は政治的にひとつ、奥さんの地位を向上するというような話もあっておりましたから、そういう意味であたたかい前向きの御答弁をお願いしたいと思います。
  194. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 おっしゃるとおり、確かに所得のある配偶者、あるいは扶養親族の場合もそうでございますが、そうでない扶養親族と同じ控除はおかしいじゃないかというような意見はあると思います。現に昭和二十五年ころの税制では、扶養控除にいたしますかわりに、扶養親族の所得は主たる納税者に合算をして課税をするというやり方をとっておりました。しかしその後、税制の簡素化の意味から、一定の金額以下の所得の者を扶養親族控除あるいは配偶者控除にするということで、御承知のように、五万円までは所得があっても扶養親族にするという制度に変わりました。そのうち配偶者についてだけは、昨年の改正で、五万円では配偶者が内職している場合あまりにかわいそうじゃないかというので、十万円に上げた経過がございます。そういうことで、むしろそういう小さい所得のある人のほうが実際問題としては非常に苦しいということもあるし、まあ配偶者控除として引くほうは同じであるけれども、その所得として合算されないと申しますか、所得として課税されない範囲として考える場合には、やや差がついてもやむを得ないのではなかろうか。基礎控除をこえるまでは課税にはならないわけでございますから、それをあえて所得が基礎控除だけはないけれども、かなりあるから配偶者控除は飛ばせというのは、これまた酷ではないかということで、ほぼ配偶者控除の七割程度所得程度ならば配偶者控除を与えてもいいんではないか、こういうことで去年十万円にお上げになったのだと思いますので、その点は私としては、不公平というよりもやはりあたたかい配慮のほうが働いておるんではあるまいかという感じがするわけであります。
  195. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいま主税局長が申したとおりだと思います。ただ、いろいろ各家庭の実情で、田中委員のおっしゃるような場合もあるかと思いますので、これはひとつ十分勉強したいと思いますけれども、現在のところはこの程度でやむを得ないと考えております。
  196. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 実情はそういう場合がなかなか多いんですね。納税者税務署に来て何でも引いてもらうというような感じで来るわけですね。それはそれとまた別の問題でございますからどうかと思いますが、次に移ります。  次に、扶養控除の金額が八万円となっておりますが、これはちょうど配偶者の基礎控除の半分というわけでございますが、この扶養控除の八万円の控除額の妥当性並びにそれに対する今後の引き上げ等について、何かお考えがあればお聞きしておきたいと思います。
  197. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 扶養控除がどの程度であるかという点がいろいろ問題になりますが、大体基礎控除の半分近くをめどとしてずっと動いてきたという経緯がございます。最初のころは非常に苦しかった。これは家計が一人ふえるたびに幾らふえるかというような計算もいたしまして計算を出してまいりましたが、それでやってみますと大体五、六割というところが主でございます。また、それは人数がふえますとやや下がりまして、あるところまでいくとまた上がるというような統計もございましたが、大体において五割程度ということでございますので、今回の場合、一万円引き上げてちょうど半分になるので一万円を引き上げたということでございますが、御承知のとおり、これくらいに上げてまいりますと一人目の問題は解消するということで、いままで八万円と七万円となっておりますが、今度は全部一律に八万円ということになったわけでございます。
  198. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、給与所得の定額控除と給与所得控除でございますが、特に定額控除は給与所得者の基礎控除というような性質で設けられたものと聞いております。ところが、その額ははなはだ低い、こう私は思うのですが、いわゆる定額控除の算定基準がありますればその基準と、またその妥当性についてお願いしたい。
  199. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この給与所得控除全般につきまして、この間いろいろ御質問がございましてお答えいたしましたように、なかなか給与所得控除をいかに算定するかというのは非常にむずかしい問題でございまして、これもやはり課税の実績あるいは納税人員が一体どれくらいになるかといったようないろいろの角度から複数的に考えてまいります。  定額控除の場合も、最初は定額控除はなかったわけでございますが昭和三十六年に初めて定額控除を一万円つくったのでございます。その後ずっと定額控除を据え置いておりましたが、御承知のように、独身の給与所得者、ことに中学卒、高校卒の連中が直ちに課税になるような税制というのはいかにも無理があるのじゃないか。したがって、給与所得控除をする場合にも最低の必要費というものがあろうじゃなかろうかということで、定額控除について最近急激にこれを上げてまいりました。去年の改正でも相当大幅に上げたわけでございますが、たまたま税制調査会の中間答申におきましても、給与所得控除の定額控除は十万円程度まで上げるのが適当であろうということをいっておりますし、定率控除も百万円程度まで上げるということをいっておりますので、今回、ほかの諸制度、八十三万円の最低限を採用いたしますにあたりましては、大体この税制調査会の中間答申で煮詰まった線を採用するのが適当であろうかということで、定額控除を二万円引き上げる、さらに定率控除を百万円まで引き上げるということにいたしたわけでございます。
  200. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまの、定額控除は十万円になっておりますが、そうしますと、その十万円には特別な計算の根拠はないわけですね。とにかく、いま言いましたように、基礎控除的な性質もあるとするならば、私は、そこに何らかのそういうものがあってもいいのじゃないか。そうしませんと、いま特にサラリーマン課税が重税感におびえて、そうして、この前のような、北海道のほうでしたか、地方税を町長さんがかってに減税して、それで問題になったという問題もございますし、ああいう問題は、ほんとうに税制調査会並びに大蔵当局が率先して――ああいう問題の起こってきたところの責任は大蔵省にあるのじゃないかと思うのですが、違うのでしょうかね。そうしますと、その定額控除なり給与所得控除というものは、私は、当然そこに責任ある、ここまではこういう計算なんだ、これから先は税調、一般の世論としてこういうように上げていく、こういうふうに説明してもらったほうがいいのじゃないかと思うのです。特に給与所得控除につきましては、世間では、低いのでもう少し引いてもらいたい、こういう希望があると思うのです。そういう意味から、もうひとつ局長並びに政務次官のお考えを聞いておきたいと思います。
  201. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 この定額控除を引き上げるという方法は、いま申し上げたように、独身の、しかも給与所得者の課税、公務員ベースで申しますと、今度の改正で高校の卒業生の年間所得というのが大体この範囲内に入る、一般の平均的な給与と認められるものもほぼこの範囲内に入るという程度になるわけでございます。そういうところをねらって考えたわけでございますが、何しろ定額控除にいたしましても、この間詳しく御説明いたしましたように、経費を積み上げてみようといたしますと、これはなかなか出てこない。そういう意味では、むしろできるだけ早く高校卒第一年生の年間給与から課税になるという体制だけは直したいということから考えますと、定額控除を引き上げるのが一番的確であるということで、いろいろな全体の控除を勘案しながら、かなりの減税額をこれに引き当てて二万円控除をやった。これはもちろん上のほうにも全部響きますから相当の額になる。そういう意味で、個別な計算の基礎になると、これはなかなか理論のあるものはちょっとつくりがたいということを御了承願いたいと思います。
  202. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいま主税局長からお答えしたとおりでございますけれども、田中委員承知のとおり、所得税納税人員の中で給与所得者が占める比率が非常に高い。昭和三十九年で八六%ということでございます。そういうこともございますし、一面給与所得者については、先般の委員会でもお答え申し上げましたように、非常に捕捉率が高い、あるいは財産所得に比べて非常に不安定だ、あるいは労働で拘束されるとか、そういういろいろな特色を持っておるわけでございますので、どうしても給与所得者としては、自分たちだけがどうも税金を完全に取られて、ほかのほうの捕捉が非常に薄いという感じを持っておることはまことに御指摘のとおりだと思います。しかし、一面において事業所得その他の面においても、やはり、十分捕捉していく。また、申告納税については納税意識の高揚をはかっていくということが必要であろうかと思うわけでありますので、そういう事業所得その他給与所得以外の所得についての納税ということの状況も検討しながら、給与所得について前向きで処理していきたいと思っております。
  203. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 政務次官は政治家でございますから、そのような気持ちもわかっていただいたように私も受け取りましたが、ここで一つ、二つもう少し話を進めておきたいと思うのです。  実は大蔵事務当局の中には、この給与所得の控除は高過ぎるのだ――もってのほかだと私は思うのです。そんなことを大蔵省が考えておるから、こういう委員会とかいろいろな説明のときにはもっともな話をされますが、現場で仕事をやっておる事務当局の中には、いまの給与所得控除は高過ぎるのだ、こんなことを平気で言うのですよ。名前をあげますとまたいろいろございますから、名前まであげませんけれども、そういうことと、いま主税局長がおっしゃるようなこととを考えてみますと、これはなかなか私たち理解できない。また、もちろん税制調査会の問題もあるかと思いますが、税制調査会についてはまたあとでもう少しお話を聞いてみたいと思うのです。  そこで、かりに計算の上でそういうことがされるならばされるでけっこうなんです。こういう計算になりますけれども、現在までの給与所得に対する課税の状況においては、こうこうこういうふうにやって、こういう金額になるのだという説明ができればいいのです。ところが、ただばく然と、それは本人にはそういう計算があるかもしれませんけれども、いま給与所得の控除は高過ぎるのだ、ほんとうはもっと低くていいのだ、こういう意見を吐く人さえいるのだ。こういうことになると、主税局がどんな説明をしましても、私は納得ができない。全然逆のことなんです。そういう考えがある以上、絶対に国民の要望する声なんかを主税局が先頭を切ってしてやろうという気持ちは全然出てきませんよ。抽象的な言い方でございますから、これ以上は申し上げませんけれども、まあひとつ主税局長のお考えをお聞きしたいことは、今度の、町長さんが地方税を減免した問題がございましたね。大体いきさつは御存じと思いますが、あの問題を通して、主税局長個人の考えでもけっこうでございますから、偽らざるサラリーマン課税に対する現在の心境――主税局長としては言いにくいでしょうから、その辺は主税局長個人の立場で、そういういま私が申し上げたようなことと、現実に起こりました問題にどのようなお考えを持っておるのかお聞きしておきたいと思います。
  204. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま給与所得控除が高過ぎると言っている者があるというお話でございますが、これは、私はそんなことはないと思うのです。おそらく私がさっき説明したように、なかなかそこまで計算を積み上げるのがむずかしいということを申し上げたのじゃないかと思うのですが、その計算を積み上げるということと、実際に昔の給与所得控除があった時代といまの給与水準も違うし、社会生活基準も違う、職場も非常に整ってきて、いろいろ給与所得者としての必要経費というものもかなり限界が明確でございませんので、その辺はかなりずれてきていると思います。そういう意味で、個々の積み上げ計算というものほどぎくしゃくせずに給与所得の実態を考える、生活水準が上がれば控除自体についても当然上げていくべきものだという考え方でございます。  最近の税制改正をごらんになりますと、給与所得控除が非常に大きく上がっておることはお認めだと思います。現に、ことしの千五十億の減税額のうち、給与所得控除に引き当てました額は六百十九億でございまして、非常に大きな額でございます。そういう意味で、主税局が給与所得の控除を――主税局というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、税制調査会を通じ主税局として考えております線は、やはり給与所得控除をできるだけ合理化したいということだけは今後も変わりないということを申し上げておきたいと思います。
  205. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私が最後に申し上げました質問には全然お答えになっていないようでございますから、もう一回お願いしたいのですが、それと同時に、総理大臣が日本税金は安いと言うくらいですから、それはほんとうにたかが知れていると思うのです。しかし、そういうことになりますと問題が大きくなりますから、いま起こっておりますいわゆる地方税を減免したという問題、この問題に対して主税局長並びに政務次官のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  206. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 私は、あの処置が条例を改正せずに行なわれたということであったように思いますので、これは不適当だと思います。また、条例としても、地方税法の範囲内で、御承知のように税率についてはいろいろ変更ができることになっておりますが、課税標準については、その点がなかったわけです。その点では私は不適当だと思います。ただ、町長が、地方税自体として考えた場合、また国税よりも一そう課税最低限も低いわけでございます、その点を考慮したものではなかろうかと思いますけれども、やはり隣の市町村その他、同じ公平なる課税を実現するという意味では、やや町長の考え方に欠けるところがあったのではないか、かように考えております。
  207. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいま主税局長がお答えしましたとおり、やはりやり方としてはいささか不適当だと思います。しかし、国税に比して地方税の負担が重いじゃないかという国民的な感情があることも事実でございますから、頂門の一針として、これからいろいろ勉強させていただきたいと思います。
  208. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 主税局長のお答えは表面的なあの問題をとらえての、またよく御存じないような点もあるようでございますけれども、私お聞きしていることは、ああいう問題が起こってきた根本の原因に対して、今後の国民税金というものも軽いにこしたことはないのですから、そういうことから考えて、基本的には、ああいう問題が起こってきた根本の問題はどうなんだ、はっきり把握しておってもらわなければ困ると思うのです。特に政務次官も、ただいま主税局長の説明したとおり、では私は不親切だと思います。どうでしょうか。いまサラリーマン課税がこのようにいろいろな問題を起こしておりますよ。  それじゃ、法的にあとでまたもう一回お聞きしようと思っておりましたが、法的に許されておるように、いまの給与所得者が法人を設立しよう、税務署職員が全部で、一署の三十人か四十人かで法人をつくって、そうしていまの給与所得を受けますといったら税金はかかりませんよ。そういう問題が起こっておるときでしょう。事実はまだそういうことはあっておりませんが、そういうことまでちまたにはうわさされておる時期なんです。私は、給与所得者が法人を設立して、課長でも係長でも職員でも、一括して全部署長からまとめて給料をもらって、それを法人が一回受け入れて、そうして経理をやっていった場合にどういうことになるのか、これは大いに興味を持って見ております。このことも最後にお尋ねしようと思っておりましたが、あまりにも表面的な説明であったからそこまで申し上げたわけでございます。もう少し問題の把握をしっかりしておっていただきたい、こう思うのです。そういう意味でもう一ぺんお願いいたします。
  209. 倉成正

    ○倉成政府委員 私が申し上げましたのは、やはりわれわれ大蔵省当局としては、租税法律できめられておりますから、あるいは条例が県議会できめられておりますから、これらはあくまでも守っていただきたいという基本的な立場を主税局長が申し上げました。それは当然のことであるということを一応申し上げたわけでございます。しかし同時に、先ほども申し上げましたように、国税は減税になっても課税最低限が地方税と違うじゃないかとか、いろいろ国民の税を納める立場からいいますと、国税のみならず、地方税について負担感がかなり重いということは事実でありますから、これらの事件をいい教訓として前向きで勉強してまいりたい、こうお答えしておるわけでありますから御理解いただきたいと思います。
  210. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 先日でしたか、武藤委員のほうからいろいろ質問の中に話も出てまいりましたいわゆる独身者の給与所得者ですね。現在と戦後の比較があっておりましたが、確かにあのようにいまの新卒者で月給二万円くらいもらえばもう税金がかかる、独身者で課税最低限が年間三十万。ところがいまの物価の上昇ぐあいから見ただけでも、かりに二万円であれば、物価の上昇を五百倍と見ても七十五万までの給与所得者の独身者まではかかってなかったのです。これは私がいまから二十何年前に給料取りになったのですが、そのときにも所得税を納めておる人は、終戦ちょっと前ですが、税務署でいえば課長さんくらいから所得税を納めておりましたね。そういうことと、いまの給与所得の定額控除なり給与所得控除というものをよくひとつ――それはそれなりに、現在すぐできないにしましても、そういうものが主税局のほうにちゃんと資料としてあるのです。そういう点をよく考えていただいて、税調なんかでいろいろ討議なさるときには、そういう意見を言う人もあっていいのではないかと思うのです。ところが税調も、昨年の終わりでございましたか、松隈さん出てきたときには、もう大蔵省の隠れみのじゃないか、ほんとうにそうなんです。私たちが知らないことが税調のほうできまって新聞発表になってしまう。それがそのとおり大体きまってしまうのです。大蔵省の御用団体じゃないか、そういうことは私も同感です。しかし、それをいまさら申し上げてもしかたありませんから、この税調の問題についてはまた後ほどお聞きいたしますが、どうかそういう点も、主税局長もよくお考えになって勉強していただきたいと思います。主税局長からもう一言簡単でけっこうですから……。
  211. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま仰せのとおり、日本の現状から申しますと、所得税の負担というものは戦前に比べると重くなっておるということは事実であります。これは戦前の税体系間接税中心であったということで、所得税にあまり負担をかけていなかったということでございますが、その後税負担が漸次重くなるような、戦争の最中におきまして所得税の負担をだんだんふやしていって、そして、ことにインフレーションのあとでこの問題が急激に重くなってきたことは、御承知のとおりであります。昭和二十四年には国民所得に対する負担率が二八・五まで上がりまして、そのうちの五〇%近くが所得税であったという時代がございます。そのときから徐々に減税を続けてまいりました。所得税だけでも、現在振り返って二十五年税制でもし課税をしたら、十何兆という課税になるくらい減税は進めてまいったわけであります。しかし、今後も同じ速度で減税を進めて、できるだけ所得税の負担を軽くしたいというのが私どもの念願でございまして、ただいま田中委員仰せのとおり、私どもも努力してまいりたい、かように思っております。
  212. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に移ります。  いわゆる課税最低限の問題でございますが、これは先日も総理大臣は百万円までをやりたいというようなことでしたが、いまの定額控除とかそういうものから見ますれば、これは当然四十三年、四十四年と行なわれなければならない。これはもうほんとうに国民の切なる悲願みたいなものじゃないか、こうも思いますし、そういう点については、できるだけ総理の公約を、それ以前にできますようにお願いしておきます。  そこで、わが国の課税最低限――この前お聞きしたときに、総理は間違えて言われたようでございますが、もう一回ここではっきり、主要各国の課税最低限の四十二年分、四十三年分について、わかっておりましたならばお知らせ願いたいと思います。
  213. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 実は、主要諸外国では最近課税最低限を引き上げておりません。邦貨換算でございますが、アメリカは百三十三万二千円、イギリスは、平価切り下げ前でございますと九十二万三百四円だったわけでありまして、一五%ばかり切り下げたわけでございますから、現在では七十八万八千八百三十二円、逆に日本より低くなっております。西ドイツは八十八万二十円、フランスが百十六万九千七百八十三円。いずれも夫婦子供三人の給与世帯でございます。
  214. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次は、一昨年からでございましたか、昨年からでございましたか、所得税の最低税率を〇・五%ずつ引き上げております。まず、その引き上げなければならない理由、それから、その〇・五%引き上げた税率のところの課税人員と課税所得と税額とを教えていただきたい。
  215. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先日もお話しいたしましたが、課税最低限を引き上げてまいりまして、できるだけ納税者の数を少なくする、しかもできるだけ多くの税収をその少ない人員であげるためには、課税最低限はできるだけ引き上げる、その財源としては、むしろ所得税の最初の税率を高目から始めるということが適当であるというのが税制調査会の考え方でございます。  わが国の最低税率は一〇%でございましたが、地方税との調整で八%に下がっております。もちろん、その当時としてはそれでよかったわけでございますが、その地方税と調整をいたしました当時の課税最低限は五十数万でございまして、それが現在八十万まで上がってまいりました。したがいまして、課税最低限が上がってくるにつれて最低税率を引き上げていく。課税最低限を上げて課税人員を減らすとともに、税収の確保をはかる意味ではやや高目の最低税率から始める。それは各国とも、たとえばアメリカでございますと一四%から始めておると思いますし、イギリスは軽減税率が二〇%でございますが、原則としては四一・二五%から始めるというようなことで、かなり高いところから始めております。そういう意味で、課税最低限を上げる際にはこれをできるだけ是正していこうというので、一昨年から〇・五%ずつ引き上げをいたしております。なぜ一昨年からやったかと申しますと、この〇・五%引き上げをいたしますと、課税最低限すれすれの独身者にかなり強い影響がございます。そこで、独身者と申しましても、いま課税になっている独身者は給与所得者がすべてでございますから、給与所得の定額控除を引き上げる際には、大体基礎控除と合わせまして二万ないし三万の引き上げがございますので、この機会に〇・五%ずつ引き上げるということで、三年間〇・五%ずつ引き上げるようにいたしたわけでございます。さっき御質問の納税人員その他は、これはすべての納税者に適用がございますので、むしろ増収額が幾らかという御質問かと受け取りまして申し上げますと、初年度で七十二億、平年度百四億ということになるわけであります。それをオフセットしたところがことしの千五十億の減税ということでございます。
  216. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 どうもその点が私はすっきりしないのです。国民には減税、減税と言われておるが、そうして最低の税率をわずか〇・五%上げて、四十二年は、初年度で七十五億、平年度では百五億ですか、また四十三年度も、平年度では百四億、初年度が七十二億。政務次官、いま税金は上がるところなんですよ。政府は千五十億の減税をしたと言いながら、最低限課税所得のところの税率をわずか〇・五%上げて、毎年百億も税源確保をしていかなければならないというのは、そののまますうっと受け入れられない。最低税率は各国より低いと言いますけれども、各国より低いと言いましても、それは三十六年には所得十五万円幅で一〇%だった。そして三十七年ですか、八%にして、その後はずっと引き上げは行なわれていない。三十六年までは一〇%だったが、課税所得の範囲が大きくて十五万円だった。三十七年は、その最低の課税の刻みを十万円にして八に下げた。それはいいことなんです、下げたんですから。その後三十八年、三十九年、四十年――四十年なんかは自然増収が千億ぐらいしかないのに二千億も減税したんでしょう。そういうときには上げてないんです。結局、税金のことは主税局の言うとおりなんです。理屈なんか全然合いませんよ。そのほかのことでも、あげればたくさんあります。それは大蔵省の言うように理屈はありますよ。それは大蔵省だけが納得する理屈であって、私に言わせれば全然逆の理屈が成り立ちます。そこをいま言うんじゃなくて、考えてみてください。昭和三十六年まではいまのような小刻みなあれじゃなくて、最低十五万円の所得の幅に対しては一〇%の課税をしておる。三十七年になってその小刻みをもう少し小刻みにして、そのかわり税率を下げた。そこまではいいんですよ。その後三十八年、三十九年、四十年と、減税もずうっとやってきた。全然減税がやれないときにやってきた。佐藤さんが総理になったときですが、あまりにも減税をやり過ぎて赤字になった。有名なことですね、自然増収の倍も減税したのですから。ほんとうにいつも得意げに水田さんもおっしゃる。そういう流れを見てみまして、昭和四十一年から〇・五%ずつ上げて、課税所得の刻みは一つも変わらないのですよ。変わらなくて〇・五%ずつ上げて、そして百億も一番下のほうから取る。そんなことせぬでも収入歩合を正しく見てください一大蔵省が千億か二千億くらいの財源をいつも補正予算とかなんとかいって、私たちは隠し財源と言うのだけれども、いやそれは正確に計算をしました、こういうことでいろいろ言いわけをなさいます。今度は補正予算も組まないと言っておりますが、これは補正予算を組まぬと大きなことになる。見てみなさい、四十二年の収納状況から見てみれば、当然問題が起こってきます。私もようようその辺のいきさつがわかってきた。まあそれはどっちがどう狂うか、私も初めて源泉所得税の収入歩合九八%、少ないじゃないかと大蔵省を理論的に追及しました。ところが、補正予算でじわっと九九%にした。当然初めから九九%でいいわけなんです。収納はそれ以上入っているのですからね。  それで話はまたもとに戻りますが、いまの最低税率を上げなければならない。しかし、これは予想もできておることだし、いまさらこれをどうするということはできないかとも思いますけれども、こういう改正を毎年やっておるようじゃ、どんなことを言われても、それはあまりにも大蔵省の主税局が独断で、国民の声なんか全然無視して税制についてはやっている。そしていろいろな問題が出てきて不合理なことが出てくると、そこだけまた変える。もちろん税体系の大きなことは私はわかりませんけれども、あまりにも現実の国民が重税感を味わうのを少しでも取り除こうというような努力がなされてない。所得税だけではなしに、法人税でも相続税でも同じです。相続税なんかここ二、三年倍くらいになっておるのじゃないですか。相続税の税収についてはまたお尋ねしようと思っておりますけれども。  ですから、その最低税率の〇・五%については、私は、ほんとうにこれは血も涙もない税制改正で、増収しようとする政府の腹じゃないかと思うのですが、どうですか、ことし一回くらいは最低税率を上げぬで、かえって減らしたらどうですか。
  217. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のございました昭和四十年には減税をしていない、二千億の減税をしたのは四十一年でございます。そのときから〇・五%ずつ上げたわけでございまして、毎毎申し上げておりますとおり、四十一年から実は給与所得の定額控除を引き上げ始めたわけでございますから、その点は御了承願いたいと思います。  それから十万円にいたしましたのは、一〇%の適用税率が十五万円であったものでございますから、八%をつくりましたときに、一〇%の適用税率を二十万円まで上げたわけでございます。現在ではそれが三十万円まで一〇%ですから当初は十万円まで一〇%であったのを十万円までを八%にし、三十万円までを一〇%にしたわけでございますから、むしろ一〇%適用の税率のほうは幅を広くした、いまそれを一〇%に統合をしようということにほかならないわけでございます。
  218. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 どうですか、政務次官。
  219. 倉成正

    ○倉成政府委員 税の専門家の田中先生の御質問でございますが、私は、実は理論的に若干いまの点はこういうふうに考えているわけです。所得税というものはそもそも所得の再配分をやるべき税だと思います。そういたしますと、どうしてもこれはやはり課税最低限が上げられますと、結局課税最低限以上の人に税がかかるわけです。その以上の人の全体の負担の量というのはふえてくるわけですから。課税最低限の下の人にかかってくるわけじゃないです。やはり九・五%というのは松下幸之助以下全部の所得にかかってくるということになるわけですから、課税最低限の上げぐあいと見合いでこれは考えるべきものではなかろうかと思うわけであります。しかし、もちろんこの課税最低限が低いという議論になれば別でありますけれども、やはりある程度最低税率は一〇%程度にして、将来減税の財源が出てきた場合にぎくっぎくっと段階的に上がっている税率をなだらかにしていく、これが本筋じゃなかろうかと思っております。しかし、そう申しましても、課税最低限は上げたけれども、独身者がかえって増税になるとかいうことになるといけませんので、そういう点のないように十分研究をいたしまして、この際、大幅に上げた機会にこの税率の改正に踏み切った、こういうことでございます。この点は理論家の田中委員はもう十分御承知で御質問になっていると思いますが、ひとつ御理解いただきたいと思います。いつかそうしないと、結局いつまでも税体系というのがすっきりしたものにならない。どこかでやらなければいかぬわけでありますから、これはもう十分御承知で御質問なさっておるわけで、税の重圧感をなくそうという意味のお話だと思いますから、その点は十分われわれ御意見を参考にいたしたいと思っております。
  220. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 参考にしてもらってなかなかありがたいのですけれども、事実そのとおりにならないのですよ。これは私たちの努力の足りない点もあるかと思いますけれども、いずれにしろ、いまの所得税法累進課税というのはこの前もちょっと申し上げましたが、かりに月給五十万円取っても、それでたくわえてということは――結局ほとんど税金に取られるということなんですよ。それじゃいわゆる政府の社会開発といいますか、所得倍増といいますか、そういうこととは実際の個人個人の実態というのはかけ離れるのですね。そういう点、私はよく考えてもらわなければいけないのじゃないかと思うのです。どう理屈を言おうとも、最低税率〇・五%上げだけは見るからにぞっとしますね。毎年毎年百億から七十億くらいの税収をそんなことで確保せぬでもいいじゃないかと私は言いたい。しかし、ここで議論し合っても先に進みませんから、次に移ります。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕  いわゆる今度の税法改正で、雑所得の損益通算ができないような改正になっておりますが、その改正をした理由、並びに改正をしなければならないという根本の原因、特にこの問題が起こってきた発生原因といいますか、そういうものについて御説明願いたいと思います。
  221. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 雑所得の計算上生じました損失を他の所得から控除するいわゆる損益通算の制度につきましては、御承知のとおり雑所得という所得は前に並べてあります九つの所得以外の所得ということでございまして、いわば全く雑所得、したがって内容的にはいろいろな所得があるわけでございます。その中には事業所得等に類似したものもございますけれども、大体は全体として必要経費のないもの、あるいは必要経費がきわめて少ないものが多いわけでございます。またその中には、必要経費があっても、家計の、家事関連経費に非常に近いものがあって、はたして損益通算が妥当であるかどうかというような点もあったわけでございます。そこで、従来からこの雑所得の損益通算につきましては問題があるということで、御記憶と思いますけれども、競馬の所得、いわゆる競争馬を持って賞金を獲得した場合の所得につきましては、その損益はその収入からは引けるけれども、他の所得からは控除できないことにするということをやってまいりました。  一方においては、非営利の貸し金というのが昔からございますが、この非営利の貸し金については、逆に営業所得でございますと、貸し倒れが無制限に引けるわけでございますけれども、非営利の貸し金の場合は、貸し倒れ損失は引けないということで、昭和四十年の改正の際に、その年の雑所得である利子、つまり非営利の貸し金の利子の範囲内で貸し倒れの損失は控除ができるということに直した記憶がございます。この場合も、損益通算としてはその利子の範囲内である。他の所得からは通算できないということになってきております。  こういうような整理をやってまいりました結果、現在残っておりますのは、しいていえば商品取引、これも営業者が、いわゆるほんとうの意味のヘッジングをするために自分の商品を売りつなぐ、買いつないだ場合の所得は、事業所得としてもちろん損益通算ができますけれども、たまたましろうとがそういうことをやった場合に、損失が出たならば自分の商品についての利益から引けますけれども、それ以外から引くのはおかしいじゃないかという問題が一つ残っております。  そういうことから、全体としての雑所得については、損益通算をはずすほうが適当であろうかということで、これも税制調査会に相談をいたしまして、それから通算をはずすということで御審議を願うことといたした次第でございます。
  222. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 やはり事務当局の説明らしい説明をなさいましたから、拝聴しておったわけでございますが、ほんとうにいまのお話のように、非営業貸し金でも貸し倒れ損失はその年だけ見るというふうに改正をした。りっぱな改正じゃないかという御意見のようでございますが、事業上の貸倒引当金の損失を見るようであれば、非営業貸し金の貸し倒れ損失こそ、何年も見てやって、そうして救ってやるのがこれはあたりまえじゃないですか。非営業貸し金というのは、貸し金を営業としていない、たまたま事情があって金を貸したという場合なんです。その場合も必要経費は要らないような御答弁でございますが、そういう場合ばかりもありません。金を借りてでも貸す場合もあります。また、商品取引のお話がありました。それはあくまでも大蔵事務当局の理屈です。そういう議論をしておりましたら、これはもう何時間かかっても終わりませんから、私は初めに申し上げましたように、今後の損益通算をはずした根本の原因は何ですか、こう聞いていたのです。それは自発的に大蔵省が、先ほども言いましたように、自分のほうの都合の悪いのはどんどん改正していく。これはいいことであればけっこうです。だけど、今後のこの雑所得の損益通算については、昨年あたりから一つの問題があって、それを契機にこの問題が提起されたと聞いております。またそれしか考えられないのです。かりにそうじゃないとするならば、この雑所得の損益通算ができたのはいつですか。そして、どういう思想のもとにこの損益通算が許され、税法の上でこういう特典を許して税法をきめたのですか。それじゃ、雑所得の損益通算をきめたそのときの法の精神をお聞きします。
  223. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 雑所得は、御承知のとおり昭和二十五年にできたものでございます。当時は大体において損益通算をすべて認めるという体制をとっております。その後、譲渡所得について損益通算に制限を加える、あるいは損益通算についてだんだんときめをこまかくしていったのはその後のことでございます。
  224. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 だから、その後の雑所得の損として通算を認めた法の精神を言ってください、こう言ったのですよ。それでないと、肝心のところの私のお聞きしているところの説明にならないでしょう。私も昭和二十五年には税務署におりましたから、当然知っています。  もう一回お聞きします。それじゃいままでの、四十二年度までの雑所得の損益通算をすることが納税者に有利か、今度の四十三年で、その損益通算をやめたことは、それが納税者に有利なのか、どっちが納税者の立場から見て有利ですか。改正案が有利ですか。
  225. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 損益通算が認められなくなれば、従来若干ではございますが、あった損益通算がなくなるという意味では、その該当者は不利をこうむるかと思いますが、全体の考え方といたしましては、雑所得の性質上こういう改正が必要であった、こう言わざるを得ないと思います。
  226. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまの答弁は簡単でよろしい。ところが、まだ問題がある。全体的に見た場合には何か問題がある。その全体の裏に隠されているのは何ですか。それが今度の改正になってきた根本の原因がそこにあるでしょう。  それじゃ申し上げますが、主税局長はあんまりそういう例がないとおっしゃる。それは私におっしゃるのですから、いいでしょう。それじゃ全国の税務署で起こってきたこの雑所得の損益通算が何件で、どういう性質のものかお調べになって検討した上ですか。税務署には、毎年税務統計をつくるための所得種類別表というのがあります。その中には必ず出てきます。その出てきた所得がどういうふうに損益通算されておって、何件で、どういう所得で、どういう損益通算をして、納税者が有利になっておったか、今度のこの改正によってそれが全部なくなる。それに対しては問題だ。局長もおっしゃったように、納税者の有利な立場がなくなるのですから、この納税者の有利な立場をなくする上においては相当の検討もなされる。そうしてやってもらわなければ困る。私は、この前大蔵大臣にもその点は念を押したつもりなんです。私がここでこの起こってきた根本原因を言わなくても、おわかりでしょう。言えといえば言いますよ。しかし、あんまりよくないことばを並べねばならぬから、長官にも言った、名前も発表しようかと言ったけれども、してくれるなと言うから発表もしていない。しかし、そういう問題にも触れてきますよ。私の知っている人でも十余人いますよ。あなたのときにはしません。大臣や総理大臣が来たときには発表します。ですから、そんな改正はやめたほうがいいのですよ。こんなものをいま出す必要はない。まだまだ根本的なものを解決して、そうして納税者に有利なものを残しておいていいのではないですか。それとも主税局長が、四十一年も四十二年も過去にさかのぼって、このように雑所得の損益通算は納税者に有利な事例があったけれども、この四十二年にきたって、四十三年の税制改正の上においてこれを全面的になくす、そういう大英断をもってあなたが一人でそれをやったのか。それとも検討したとするならば、何月何日だれだれと、どこでどういう検討をしたのか、それを明らかにしてもらわなければ私は承知しない。当然じゃないですか、納税者に有利な規定を変えるならば。検討したとおっしゃる、検討したならば税調にもかけたでしょう、税調のだれがどういう意見であったか、いつどこで。そしてそれを、主税局のほうは、このように納税者の有利にこれは直しておけと言ったと思います、主税局長ですから、吉國さんですから。だけれども、税調の世論として、また政府のほかの委員の世論として、これを改正したほうがいいという話があった、そういう記録を突き詰めてここで見なければ、私は納得がいきません。ですから、もう一回はっきりしておきます。この雑所得の損益通算については、納税者の有利な項目、規定であった、それは認められますね。
  227. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほども申し上げましたように、この制度があるとないとを比べれば、これはなくなったわけでございますから、適用がないので不利であるということはいえるかと思います。しかし、実績から見ますと、昭和四十一年度の全申告者の中で雑所得の損益通算になるものは約三百人ございます。三百人のうち、大体は株式の売買、手形の売買、商品取引というのがおもなものでございます。その他若干ございますけれども……。
  228. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 何といいましても、三百件からの適用者があったのです。ですから、ここで納税者の有利なそういう規定を、どうして損益通算をやめなければならなかったのか。それならいままで損益通弊を認めておったのが悪かったのですか。それとも悪かったけれども、大蔵省が気がつかずに黙っておったのですか。いままで損益通算を認めておったことは、いいから認められてきたのじゃないのですか。それは時代の流れによって、環境の変化によって変わってきたといえば、そうでしょう。しかし私は、その三百件の一つ一つを明らかにして、そうして先ほども言いましたように、いつどういう御検討をなさったか、そこが問題なんです。変えることは、何も私はいいように変えられて――変えるなと言っても、大蔵省は変えるのですから、かりに気持ちの上でそう思っておっても、変えるのですから、それは変えることはいいでしょう。しかし、それにはそれなりの努力をし、また国会も、こうやって国民の代表として審議する場所もあるのですから、当然審議をされていくのがほんとうじゃないですか。いままで私が申し上げたことを、これはもう一ぺん大臣にも内々私はお話をしておきます。ですから、先ほど言いましたような、昨年の政治家の雑収入の問題までいろいろ言うと問題になってくるから、そういうような意味で、内々大臣にもこういう問題は引っ込めたほうがいいですよ、私はこういうふうにお話をするつもりだったのです。ところが、簡単な説明でそれを通そうとするならば、これは私のほうもそう黙っておくわけにはいかぬ。どうでしょうか、倉成政務次官、十分審議をして、国民に有利な規定を不利に変えるのですから、十分な審議がいつだれとだれと、どこにおいて、どういう機関においてなされたか、それくらいは発表なさるのあたりまえじゃございませんか。
  229. 倉成正

    ○倉成政府委員 この問題につきましては、税制調査会で御審議をいただいておるわけでございます。いつどの委員がどういう御発言をしたかということは、税制調査会の性質上発表いたさないことにいたしております。その点は御了承いただきたいと思います。  なお、この雑所得の中で商品取引などのものが若干ございます。ただ、しろうとがいろいろな商品取引に手を出して損をした、これを損益通算するのがいいかどうかというのもやはりいろいろ議論があろうかと思うわけでありまして、そういうことをいろいろ考慮いたしまして、結局雑所得についての損益通算はしないという税制調査会の御意見を承りまして、今回の御提案に踏み切った、こういう次第でございます。
  230. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまの政務次官の答弁は、私はなはだ不満です。それじゃ税調は何のためにあるのですか。税調でやることを私はここで言いなさいとは言っていない。しかし、そこまで要求するのは、これは税制を審議する上においては当然じゃないですか。言えない規定になっておれば、言えないでもけっこうです。そういう税調なれば、大蔵省が国民の目をごまかすための――だから、さっき言ったように御用団体みたいになってしまう。かりにその審議の発言の内容が言えないにしても、いつごろからこういう問題でこういうことを審議なさって、こういう結果になってきている、こういうことくらいは当然言うべきですよ。通達でもここの理事会で発表するじゃありませんか。取り扱い通達一つ変えるのでも全部理事会で発表しておりますよ。だから私は、いまのような御説明ではなおなお不満になってくる。ですから、大臣の来られたときに、もう一回初めから大臣に今度はこの席でお伺いもし、御意見も聞いておきたいと思います。委員長いいですか、この問題はいまのような結果です。ですから、大臣が来られたときに質問することにして留保いたします。
  231. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 はい。
  232. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 次に、話の出ました税制調査会でございます。税制調査会というのはどういうことをやり、どういうことを毎年どういうふうに運営されていくのか、ひとつきょうはこまかく聞いてみたいと思います。
  233. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 税制調査会は総理府の付属機関といたしまして、税制の重要事項を審議するものとして内閣に設けられたものでございます。その委員は、三十名以内ということになっており、別途専門委員を置く形でやっております。事務局は、大蔵省の主税局と自治省の税務局が担当いたしております。これは実際は総理府でございましょうが、税制関係でこの二局が事務局を事実上担当しているということでございまして、運営は、総会に会長、副会長を置きまして、その下に小委員会を設けることができるようになっております。小委員会委員長並びに委員は、会長の指名できめるということで、大体いままで――小委員会というよりは部会と申し上げたほうがよろしいかと思いますが、現在までの動き方といたしましては、総会と所得税を中心といたしました一般部会、それから企業税部会、地方税部会という分け方が最近は普通でございます。昭和三十二年ごろには直接税部会、間接税部会、地方税部会という分け方をしておりましたが、最近企業税の問題が中心になってまいっておりますので、一般部会で所得税並びに間接税、企業税部会では大体法人税を中心として事業税等をやっております。それから地方税部会では地方税プロパーの問題を取り扱う、こういうことで運営をしておりまして、大体国会のないときと申しますか、普通の時期には金曜日を定例日として、その日に総会あるいは部会をやるということで進めてきております。
  234. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 税調の問題になりますと長くなりまして、時間的に私が聞きたいことが聞けないようになりますから、これまた後ほどに譲りまして、次に法人税の問題で一、二お尋ねしたいと思います。  まず、法人課税のいろいろな詳しい沿革とかそういうものは別にしまして、現在主要各国がとっております法人税率を言っていただきたい。
  235. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 表面税率で申しますと、アメリカの場合、二万五千ドル以下二二%、州税五・五%で合計が二七・五%になっておりまして、二万五千ドルをこえたところ、これが原則税率でございますが、これの基本税率が二二%、これに二六%の付加税がつきますから四八%、それに州税がかかりまして五三・五というのがアメリカの場合です。それからイギリスは、御承知のとおり新しい法人税率になりましてから四〇%一本ということになっております。地方税はございません。西ドイツは、配当に充てた分は一五%、留保した分は五一%という税率でございまして、それに営業税が別途つきますが、これが一八%、したがいまして配当分は三三、留保分は六九という表面税率になります。フランスは五〇%一本。  実効税率になりますと、アメリカは二万五千ドル超のところで五〇・七一%、イギリスは事業税の問題がございませんから四〇%のまま。それから西ドイツは、営業税が日本の事業税と同じに損金に算入されますので、それを置きかえまして実効税率をはじきますと四九・三二。フランスは地方税はございませんから五〇のままということになります。
  236. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 各国の法人とわが国の法人というものは少し趣を異にしておると思いますが、税率だけ聞いた場合には、わが国の税率の二八%、三五%というのは安いようですね。まあ税率が安いことはいいことだと思うのですが、ただ、わが国の法人は中小零細法人といいますか、いわゆる個人事業者が法人、いわゆる税務署では法人成りといいますが、所得の百万、百五十万以上くらいになったならば法人にしたほうがいいぞということは世間でいわれておると思うのですが、いまはだいぶそれの計算の基礎も上がっておるかと思います。大体自分一人でやっておりましても法人というのがだいぶあります。そういういわゆる個人事業者とあまり変わらないような零細法人並びに中小法人、いわゆる低額所得法人に対しては、税率が二八%というのはちょっと高いんじゃないか、こう私は思うのですが、主税局のお考えはいかがでしょう。
  237. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 法人になりますと、御承知のとおり主宰者並びに家族等の給与所得についてもこれが損金に算入されるという関係がございますので、御承知のように法人成りの現象というのは、小さな所得者まで所得税よりも法人税のほうが有利だということで変わっておるという実情がございます。ただ、法人と個人を比較する場合に、給与所得等を調整して考えませんとなかなかむずかしい問題があると思います。それが一つ。  それから、現在の日本税制、御承知のとおり法人、個人一体説というのになっておりまして、法人税の負担は所得税の負担を計算する場合に、配当控除という形で調整をするということになっております。そういう面から申しますと、できるだけ一律の税率でないと理論が一貫しない。現在ではむしろ中小所得者のほうはその方面では配当控除で優遇され過ぎるという結果になっているということになっております。なお、最近の改正でこの軽減税率は一億円以下の法人に適用することにいたしましたから、大法人が甘いことになるということはなくなりましたけれども、大体において、法人税というものの性格にもよりますけれども、軽減税率はよほど例外に扱っているのが各国の実情ではなかろうか。いろいろ問題がございますのは、むしろ留保所得課税の問題にあるのじゃなかろうかという感じがいたします。
  238. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 委員長のほうからも時間がというようなことですから、法人のことにつきましてもう三点だけお聞きしたがったのですが、いまの中小法人についてもう一言だけお願いして、これは倉成政務次官のほうからもひとつ御意見を聞いておきたいと思います。  いわゆる中小法人に対して特別控除を認めてくれないか、中小企業がいまばたばたいっているような状態から見ましても、私はこれはなかなかいいアイデアじゃないかと思うのです。財源問題もいろいろあると思いますが、中小所得法人については中小企業特別控除というものをつくるようなお考えはございませんか。
  239. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはなかなかむずかしいと思いますのは、法人の場合は所得というのが年度によって非常に違うわけでございます。ですから、所得幾らの場合は幾ら控除するというのはなかなかむずかしいし、今度は資本金でまいりますと、五千万の資本金で非常に大きな法人があったというようなことで、この基準がなかなかつけにくいという点がございます。そういう意味でいまのところ二八%という軽減税率を使っているというところで所得控除ということは、結果においては税率を下げるということにもなるかと思いますが、ただ、所得の高が違う場合には、税率とは違った効果が及んでまいります。そういう意味で、所得が浮動する、たとえば半年事業年度で、初めの事業年度では非常に利益が出る、次の事業年度では出ないという季節的な産業もございます。そういう意味では、所得控除をやるとなると、なかなか問題があるのじゃなかろうかと私考えるのでございますが、いまの御趣旨の点も、今後の法人税の問題は税制調査会の長期答申の中心問題になりますから、十分検討してまいりたいと思います。
  240. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいま税制調査会でもいろいろ法人税の基本的なあり方で検討中でございます。現在の体系をとる限りにおいては、やはり資本金一億円あるいは所得三百万円以下ということで税率を若干変えるというのが至当な措置じゃなかろうかと思います。      ――――◇―――――
  241. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 次に、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案に加えて、物品税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。広沢賢一君。
  242. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 租税特別措置法の問題についてお伺いいたします。  佐藤総理に対してこの前のときに私どもが質問いたしました。それは、御承知のとおり大法人よりむしろ中小法人租税特別措置のいろいろな金額が有利であるということでございました。私どもはそれは間違っていると思っていろいろ資料検討し、国税庁からも「昭和四十三年度租税特別措置減収額の事項別規模別内訳試算」というのをいただきました。これをいろいろ検討しました。その中でいろいろな重大な疑問点が出ましたので、それについて御質問いたします。  この減収額一覧表というのですが、これはことしの減税額ですか、それとも減収額ですか。
  243. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ことばの問題でございますが、新しくアクションをとった場合を減税と普通呼んでおります。これは前にやったものでそれだけ減っているということで減収額と申し上げました。ことしの分も入っておりますが、その分は減税額といってよいかと思います。
  244. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 別のほうから私どももいろいろ計算しなければならぬと思うので、それでここに大蔵省証券局企業財務第二課監修の御承知のとおりの「有価証券報告書総覧」、例を八幡製鉄にとってみます。二つ持ってきましたから、一つごらんになってください。この八幡製鉄の損益計算書、これを見ますと大体このように書いてございます。四五ページをごらんになっていただきたい。これは正式に、法律に基づいて八幡製鉄が大蔵省に提出したものであります。一部上場会社は全部やっているわけです。その中を見ますと、大体法人税にしても個人事業税にしても取るほうの道筋がずっと「損益及び剰余金結合計算書」に出ていると思うのです。まず第一番目に売上高、次にそれに必要な経費、その次に今度営業外収益がありまして、最後に残った利益から、これに対して税金をかけるということになると思うのです。そこで私がこの数字に基づいて計算しました。そうすると、未処分利益剰余金の減少高の内訳としまして、特別償却引当金繰入――ほかの製鉄会社の有価証券報告書を見ますと、繰入差額と書いてあります。これが七十三億ありますね。それから価格変動準備金が四十一億、海外市場開拓準備金が十億、海外投資損失準備金が五億一千万円ありますが、かりに価格変動準備金に三五%の税額をかけると十四億になるのです。そうすると、先日いただきました四十三年度租税特別措置による減収額試算の価格変動準備金の項目を見ますと、これは合計して大体十三億。それで大企業は、そちらの基準では資本金五千万円でなくて一億円ですね、私のほうは五千万円、これはあとで検討することにしまして、八億です。そうすると、日本全国でもって大企業の減収額が八億円、ところが八幡製鉄だけで税率をかけると十四億円、八幡一社が大企業を突破してしまっているのですね。これは数字が全然かち合いませんが、この点についてはいかがお考えになりますか。
  245. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いま先生おあげになりましたのは四十二年度だと思います。今度の減収額は、価格変動準備金を整理いたしまして新しい積み立てを一切できなくしてしまった結果でありますから、これはあたりまえの話で、下がるのは当然でございます。四十三年度からは積めなくなるわけです。それからなお二十一億繰り入れと申しますけれども、前期に積んだものは当期に繰り入れて新しく積みますから、その差額だけが減収分になるわけです。二十一億入れたということは、そのものが減収になるのじゃなくて、その前に十八億あればそれを益金に入れまして、期末にあらためて洗い直しますから、その差額が減収額になるわけでございます。その分も今度の改正では全部切ってしまいましたから、全国で例外的に十数億残るだけで、もっともこれはことしからでございますから、四月からでございます。
  246. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それが非常に重大だと思うのです。私が減収か減税かと聞いたのはそれなんです。実を言いますと、いろいろの学問的資料、本にいろいろ出ておりますが、一つここに例をあげます。「租税特別措置による非課税準備金・引当金などの推移」という資料がここにございます。これは税制調査会「当面の税制改正に関する答申」という資料の中に入っています。これは暦年度、昭和二十五年度から二十六年度、二十七年度、ずっと続いていまして、三十五年度までの全部の累積のあれが出ております。その中でたとえば価格変動準備金で見ますと、三十五年度は総額で二千五百六十三億、その中でカッコに入れまして三百七十億が純増ということになっておるのです。そうすると、私がお聞きしますのは、いつもここに出してくる紙きれ二枚の租税特別措置の減収額、これは、これにある純増分だけを対象にしてやっているのではないでしょうか。そうですね。
  247. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そのとおりでございます。
  248. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私が重要だと言うのはこういうことなんです。これは大きな会社が毎年毎年積み立て金を積みますね。次の年に取りくずします。八幡製鉄でいいますと、これは二十一億を取りくずして、上下期でもって四十一億ですね。もっと数字をきちっと言いますと、期首残高二十一億、それを当期減少額二十一億で取りくずしまして、四十一億当期増加額としておりますね。そうすると四十一億は損益結合計算書にちゃんと残って、それは利益から税額としては引かれないことになりますね。所得から取ることになりますね。そのとおりですね。
  249. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 その分は控除されることになります。
  250. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしますと、私がさっき御質問しましたのは、その取りくずしがあったとしても税金がかからないのは四十一億に税金がかからない。だから、これに税率をかければ減収額が出てくるということについては、どうお思いになりますか。
  251. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十一億の新しい積み立て額はそのまま引けることになりますが、そのかわりに前の二十一億を益金に算入いたしますから、その分がオフセットされまして、二十億が結局損金になるということでございます。
  252. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そのとおりです。だけれども、私どもは減収額だけを見ますと四十一億、それからあなたのほうの言われるとおりの二十億としても、それに三五%かけても七億ですね。そうすると、鉄鋼の各社のあれを全部、四社調べました。鉄鋼四社での特別償却引当金繰り入れ額を全部調べます。これに税額をかけます。そうすると大体百二十七億になるのです。そうすると、ここにある特別償却の中は大企業が三百六十八億ですね。その中で鉄鋼四社で百二十七億だと、これも相当窮屈になるじゃないですか。どうでしょう。
  253. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまおっしゃった数字でございますが、特別償却引当金は、八幡では四十億になっておりますが……。四社合わせて百何億でございますか……。
  254. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 八幡製鉄のことをもう少し言いますが、八幡製鉄の場合をずっと私がやったのを読み上げます。――さっき私が言った百二十七億というのは、これは日本鋼管、川崎製鉄、富士製鉄、八幡製鉄、この四社の特別償却引当金繰入額もしくは繰入差額と書いてあるところもあります。これは貸倒引当金繰入差額と書いてある。これは損益計算書のところにずっと出ているのです。そうすると、百二十七億というのは、これは四社の合計です。八幡自体につきまして、私が調べたところを言いますと、特別償却引当金繰入は七十三億ございますね。それは上下両朝ですから、一年を通じてですよ、私の言っているのは。そうすると、これは三五%かけると二十五億になりますね。それから海外市場開拓準備金……。あるでしょう。
  255. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと違うようでございますが、何年度ですか。こちらは六七年三月ですが……。
  256. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これは九月です。
  257. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それじゃ一つずれています。
  258. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 失礼しました。こっちでごらんください。私はもう写してあるから。   〔広沢(賢)委員吉國(二)政府委員に書類を   示す〕 ごらんになりましたね。そうすると、もう一回申し上げますが、特別償却引当金繰入は七十三億にかける三五%で二十五億、価格変動準備金は四十  一億にかける三五%で十四億四千五百万円、海外市場開拓準備金は十億かける三五%の三億五千万円、それから海外投資損失準備金は五億一千三百万円かける三五%で一億七千九百五十万円、計大体四十五億くらいだと思いますね。それから退職手当引当金繰入は、これはちょっと酷だから除きまして、交際費が十七億五千三百万円なんですが、この交際費の許容限度額を私自分でむずかしい数式をはじいて計算しました。六億八千万円は、これは非課税部分です。それから貸倒引当金と貸倒準備金、さっきのあれですが、貸倒引当金は十七億ありまして、三五%でこれが六億になります。それからこれは許容額は、売り掛け金に千分の五十五をかけるというやつでやると、大体三十八億になるのです。それから受け取り配当の差額の不算入、これが六億ですが、しかしこれは支払い配当のほうを今度は損金に算入するということになってしまうから除きます。全部合わせますと相当の額ですね。六十億くらいになっちゃう。八幡一社でそういうぐあいですから、だからこちらにお示しになった全国でもって祖税特別措置の減収額が大体大企業は三百六十七億だというのはとてもこれは合わないのじゃないかと私は思います。それについて主税局長どう思われますか。
  259. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまの計算ちょっと違いますのですが……。価格変動準備金繰入は三十四期二十一億繰り入れて、三十五期に二十億繰り入れましたから、差し引きマイナス一億なんで、これは減っちゃったわけです。ですからこれをお足しになりますと二重計算であります。これは差し引き両期通じてふえたのは一億です。それから特別償却はお足しになってけっこうだと思います。  それから特別償却、この期は高炉の特別償却が残っていた時期なので、かなり大きかったと思います。いま、御承知のとおり、特別償却をしている中で一番大きいのは鉄鋼でございます。ですから、この鉄鋼と石油化学と自動車で三分しているくらいでございます。ですから、鉄鋼の三倍くらいがちょうど特別償却の全体だとお考え願えばいいので、これは鉄鋼は確かに多うございます。これは高炉をつくりました、その関係が大きく残っております。  あとの計算は、貸倒引当金は、これは差額繰り入れでございますから合計していただいていい、そういうことだと思います。
  260. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私もまた別の資料検討しました。これは国税庁で出している「法人企業の実態」というので計算しました。資本金別に一億円以下と以上と分けて計算しました。そうしますと、特別却償について、それから割り増し償却については、ほぼこれに近いと思います。これは鉄鋼が多いですから……。ところが、貸倒引当金と価格変動準備金とそれからその他の項目についてはずいぶん違うのです。どうしてかというと、私が先ほど申しました、つまり価格変動準備金を取りくずしてまた積み立てる。それが前と大体同じだったら、これはそちらのほうはゼロと見ているのですよ。ところが、私たちは常識上そんなことないと思うのです。それは税法で頭が固まっているからそうなるんでして、つまり大きな会社はそれだけずっと毎年毎年会社の合併か解散か――八幡が解散するなんということはないでしょう。未来永却にそれを続けているのです。そうすると、それは税額控除というか、それをされていることなんです。そうでしょう。
  261. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それは毎期それだけずつ引かれているわけではないので、たとえば前の年に一億損金算入いたしました。そうしてその次それが二億になったといたします。そうしますと、残高は二億でございますが、その次の事業年度で引かれているのは一億でございます。それがもし三億になれば残高は三億円ですが、その事業年度で損金になっておるのは一億、そういうことで前期繰り入れた分だけが税を減らしているので、あとはずっとその分が留保されているだけであります。
  262. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 だから、私は減収額と減税額というのを聞いたのですよ。いいですか。ここにはこのように書いてあるのですよ。こういうような書き方だったらば、私たちは全部納得するのです。たとえば貸し倒れ引き当て金が二千八百七十三億あって、ことしはその部分が四百四十億ふえたというように書いてあれば、だれだってこれでわかるのです。  もう一つ言いましょう。そうすると、ここに各議員に配った二枚の白い紙の資料があるのですね。それには、たとえば万国博覧会の準備金が入ってませんよ。万国博覧会の準備金は、昭和四十五年度まではずっと積み立てを続けるのでしょう。どうですか。   〔毛利委員長代理退席、渡辺(美)委員長代理   着席〕
  263. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは輸出振興のその他の中に入っております。それから、いまおっしゃいましたように、減収額を出すのは、毎年その特別措置によって幾ら減るかを出しているものでございますから、留保額全体を出せという御要望であればこれは別でございます。
  264. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 もう一回言いますよ。たとえば、それじゃこの損益計算書、利益金処分の結合書を見れば、それは明らかに利益金から引き当て金を引いて、それで税率をかけるのでしょう。
  265. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そこをごらんになるとそうなりますが、価格変動準備金を繰り入れた場合には、翌期繰り戻しをしているわけです。その部分を差し引かなければ減収額になりませんから、価格変動準備金が前の年に二十一億あれば、それを期首において取りくずして二十一億を益金算入して、期末にまた二十一億積むわけです。ですから損益はとんとんになって、減収はその年はない。ですから増加額しか減収にならないわけです。
  266. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それはおかしいですよ。いいですか。結局利益があって、引当金繰入額というものはそれから引くのでしょう。
  267. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そうです。
  268. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしたら、引いた額はたとえば私がそこに言ったように二十億というふうになっているでしょう。損益計算書どおりになっているでしょう。減がみんなそうなんですよ。
  269. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 もしかりに百億利益があるといたします。そこで価格変動準備金をそれに加除する場合には、前の年二十億で繰り越してきた価格変動準備金があれば、それを取りくずしますから、百二十億に利益がなるわけです。新しく二十一億積んだとすれば、それを引きますから九十九億になります。結局百億が九十九億になるだけで、一億円しか減らないわけです。
  270. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私の言っているのは、毎年毎年を言っているのじゃないのですよ。ことしのですよ。ことしの分だけはやはりそれだけ減税になっている。三五%かけるから減税になっている。そうでしょう。
  271. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 それは違います。ことし減税になっている分は、前の年に積んで減税になった分をことし戻しまして、また利益に立てまして、それからことしの減税になる分を引くわけですから、その差額だけが減税になるわけです。ことし繰り入れた分は全部減税になるのじゃなくて、ことし新しく取りくずした分と繰り入れた分との差額だけが減収になるわけです。それが私どもが出している減収額なんです。
  272. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、引き当て金と準備金全体がそう言えますか。
  273. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 準備金の中で、海外市場開拓準備金は累積型でございますから、損金に引き当てたものが追加になっているという形でございまして、これは取りくずしの時期がちょうど五年たちますと参りますから、その時期までは追加だけになってまいります。それは先生のおっしゃるとおりです。――失礼いたしました。海外市場開拓準備金の場合は、積んだ額の五分の一ずつを翌年からずっと取りくずしていくわけです。ですから、毎期積んでいくと同時に前の分を一部ずつ引いていくという形になります。ただし、これは輸出が伸びてくれば累積型になります。  なお、価格変動準備金、貸倒準備金等は大体洗いがえでございますから、私が申しましたように洗いがえた差額だけ、つまり前期に繰り入れたものを益金に入れて、当期新しく繰り入れて損金に入れた、その当期の差額だけが減収になるという形でございます。償却はもちろん、当期の償却はずっと損になっております。
  274. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、八幡製鉄の場合はそこにありますが、当期繰り入れた額が二十一億ですね。くずした額が二十一億ですね。それで今度は新たに四十一億ありましたね、増加額が。だからそう見ると、やはり四十一億は取りくずした額と積み立てた額なんだから、その差額は、二十億は、これは対象になるんじゃないですか。
  275. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 新しく積んだ額が四十一億で、取りくずした額が二十一億であれば、まさに二十億が対象になります。
  276. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、たとえば日立製作所、トヨタ自動車の損益計算書を見ますと、価格変動準備金繰入差額と書いてあるのですよ。そういうのは全部それに当たるわけですね。
  277. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 繰入差額と書いてあるのはその差し引き額だけだと思います。当期ほんとうの純増だけだと思います。
  278. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、損益計算書の中では、純益の次に繰入差額と書いてあるものもあるし、それから全部繰入というものもあるということに理解していいですか。
  279. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在税法の正式の形から申しますと、益金に戻せるものは新しく繰り入れるという形をとっておりますが、差額の繰り入れ方式をとっても計算上よろしいと簡素化で認めたものですから、差額繰り入れ方式をとっているもののほうが最近は多いと思います。正式の形はまず益金に算入して損金に算入する、こういう形になります。
  280. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、この損益計算書ですね、剰余金結合書からやはりきちっといろいろな積算をして――減収額のもとになる引き当て金や何かについてはこれではわかりませんね。どうですか。
  281. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは一つは、これをごらんになりますと、会社のほうは有税引き当てをやっている場合がございます。つまり、限度額以上に引き当てをしている。これがよくいわれる逆粉飾であるかどうかということで議論を呼んだ問題でございますが、その分は税務署申告をする場合に、いわゆる自己否認ということをやってまいりまして、所得のほうはちゃんと出してまいりますけれども、純利益を出すときには有税償却と称して、その分は当然税金を払うのですが、損益計算上は損金にしているというものがございますので、これで所得をごらんになるのはちょっと無理だと思います。これを修正して税法の申告どおりのものをして直すのが申告書の提出でございますので、これはどこの会社でもどうも違っているようであります。
  282. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこで私も変だと思うのです。いま法人税法においては、申告額と公示制度、これを出しておりますね。松下幸之助がトップだとかなんとかとよく出ますね。損益計算書と貸借対照表についてこれからいろいろ考えまして、それを公示するというようなことはできないのですか。たとえば大体引き当て金はどのくらいで、純益から引いて税金をかけたらどのくらいになるという、そういう告示はできないものなのですか。
  283. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 現在の法律でございますと、所得の金額と税額ということできまっておりますものですから、そうこまかいものは表示しておりませんが、こまかいほうはこれで出しておるわけですね。そこのところちょっと食い違いがあるわけでございます。
  284. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 取りくずし額との差額でもって、八幡は、四十億がたとえば二十億が実際の形だとしても、大体七億円くらいかかりますね。それから私が見たのではトヨタ自動車でも、特別減価償却は十三億五千万円だ。そうすると、そういうものを全部累積しますと、どう見てもこの額に合わないような気がするのです。なぜかといいますと、法人企業の実態というものから見ても、償却と割り増し償却の点がほぼ合うということでがまんするとしても、そのほかの金額では、私はやはりこんなわずかな額が減税になっていると思わない。たとえば価格変動準備金が、全国で全部合計十三億なのですね。これしか減税になっていないということは、私の勘からいってどうにも納得いかない。そこで私は、さっき言いましたあれを問題にしているのです。
  285. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 二つ御返事申し上げたいと思うのですが、自動車のほうの例をおっしゃいましたが、先ほど申し上げましたように合理化機械の特別償却のことしの対象額は全部で八百億、そのうち、鉄と石油化学と自動車がほとんどを占めております。そういう意味では、確かに特別償却は自動車と鉄は多い。  それからもう一つ、価格変動準備金の点は、先ほどちょっと御説明いたしましたが、ことしは四月から、この引き当てをするのに新しく増加した――いままで八、六、三というパーセンテージで積ましておりましたのを、六、四、二にいたしましたから、取りくずし額よりも今度新しく積める額のほうが少なくなる。ですから、ほんとういえば、価格変動準備金はマイナスになっちゃうはずなのですが、それは一応据え置いてよろしいということで、ことし出ております十三億というのは、新しくできた法人とか、たなおろし資産が急にふえる可能性のある法人が十三億で、ことしの税制改正では百五十七億、価格変動準備金による減収額を切っておりますから、前どおりの計算にしようと思えば減収の額は百七十億という数字になるはずです。それは減収額。当期増加額ですね、これは税額でございますから、損金の額に直せば約三倍でございますから、四百五十億ぐらいになるはずでございます。それを、ことしは税制改正で百六十億減収になるものを、十三億に切ってしまった。ことしの税制改正がきびしいということは、そういう点からも御理解願えると思います。   〔渡辺(美)委員長代理退席、毛利委員長代理   着席〕
  286. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこで、これは何年ですか、三十五年まで書いてありますから、大体三十五年の資料だと思うのですが、「租税特別措置による非課税準備金・引当金などの推移」というのは大蔵省で出したのですね。そういう資料はおありになるわけですね。いまもつくっていますか。
  287. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 国税庁のほうでつくっているはずでございます。
  288. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それではなるべく早く、この租税特別措置を審議しているときに、この推移の表を伸ばしてつくれますか。すぐつくれますか。
  289. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これは実績でございますから、四十一年まででございますけれども、それまでならつくれるそうでございます。
  290. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その資料をつくっていただきたいと思うのです。一応まだこの問題で数字的に検討しなければならぬ問題もずいぶんありますから、この問題はあと回しにしまして、大蔵大臣来ましたから、大蔵大臣に租税特別措置その他の点についてお伺いしたいのです。  まず第一番目、最近の日本経済ですが、金融引き締めはさらにきびしくしなければならぬ、堅持しなければならぬ。したがって、財政は三十億ぐらいやはり繰り延べしなければならぬ、去年と同じように。ということは新聞でも書かれていますが、その中で金融引き締めをやっても、なかなか言うことを聞かないというのですか、強気である。この強気はだんだん変わってまいりましたが、鉄がそうであって、自動車がそうであって、何々がそうである。これの大きな原因に、租税特別措置によるいろいろの減収、減免税というものが相当働いているのではないか。これはいろいろな学者や何かの書いたもの、新聞で書いたものにも、そういうふうに一つの原因になっておると書いてあるのですが、そこで、大臣が去年自慢にしましたこの特別償却を停止するという問題これはずいぶん議論がありました。いまこそ好機というときに、なかなかむずかしいことになったという、この前おっしゃいましたが、これを将来やはり全面的に適用する、一部じゃなくて、それじゃ全面的に広げて適用するということは、お考えになっておりますか。どうでしょう。
  291. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、この租税特別措置は、結局日本の設備の近代化、ことに中小企業を中心として設備の近代化をどう促進させるかという目的を持った特別措置でございます。したがって、この措置によって内部留保ができ、これが設備に回るということは悪いことではなくて、むしろ、そういう方向へいってもらうというための措置でございます。それと今度は、自由化を控え、また特恵関税というようなものを控えて、ますます設備の近代化、合理化というものはまだ必要だという必要性に直面していながら、いまもう一つの問題は、国際収支の改善というところへ直面しておるということでございまして、それじゃそのためにはどうしたらいいかといいましたら、やはりある程度の設備投資の自粛というようなものをしてもらわなければ困るということになります。大企業もしかりですが、中小企業もしかりで、これがもし統制経済というようなことでしたら、もう簡単にいくことですが、いまのままで、行政指導も通産省はむずかしいというようなときでございますので、これはやはり金融政策、財政政策で全体としてこの総需要を押える、そういうことによって企業家にもこれに協力してもらう、節度を持ってもらうという、財政金融政策で締めていくことよりほかにしかたがない、こういうことになっておりますので、その政策をきつくして全部締めてしまうということにしますと、今度はイギリスに見られるような、一方国際競争力をなくするし、生産力も落としてしまう、そういう結果になるということになりますので、ここが非常にむずかしいところで、私どもは、ほかに問題がないのだ、国際収支の問題だけからきておるのだということでございますから、この引き締めについてもいろいろやり方がある。一方、将来の日本の生産力を殺してしまってはいけませんので、国際収支を改善するための輸出力の基礎であるものを全部なくさないで培養しながら、しかも国際収支対策を打つということでございますので、これはなかなか理論的に一本調子にはいかないというふうに私は思っております。これを適当にどういうふうに調整してやっていくかが、いまの経済政策のむずかしいところでございますが、大体私は、この引き締め政策というものはきいてきた、相当浸透してきたということを見ますので、そうしますと、いま言った税制の、あなたのおっしゃられるようなものも、そう発動しなくても、この調子でいったら自然に、企業界が非常にそういう問題で節度を持っていきましたから、また現にそうせざるを得ないように引き締めの効果が出てきましたので、ここできついことをやらなくても、この調子で所期の目的は達せられるのじゃないかというような気持ちを最近持っております。
  292. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そこのところがちょっと問題なんですがね。たとえば、今後輸入課徴金の前途はどうなるかわかりませんが、これが五%で済まないとか、一〇%だったらたいへん日本経済に響くとか、いろいろいわれておりますが、この動きはまだわからないのですよ。ドル、ポンドの非常に危機という、そういう問題はいまちょっと鎮静しただけで、もうドル切り下げの――実勢はそうなっているのですから、アメリカの物価は二倍になっているのだから、そうすれば、ドル切り下げという、始終そういう不安がある。それに伴っていろいろな問題が起きてくるとか、きびしい国際環境ですよ。もう一つは、そういうきびしい国際環境で、いまはこういう形になって小康を得ているけれども、将来は、これを展望すると、やはり日本の景気抑制の問題についてのいろいろな対策はもっと真剣にいまから準備しないと、ここでいいから、これでもういいのだということにはならぬと思う。  たとえばもう一つ申し上げますが、こういう問題があると思うのです。たとえば今後自己資本が非常にふえるというのはいいことだといわれております。確かに一面ではいいことなんです。でも、これも借金をすればすぐ、幾ら自己資本を税制で手厚くしても、今度は企業がどんどん借金をしてでも国際競争力に備えるのだといってやれば、ずっとまた自己資本比率が悪くなる。よその要因が加わると思うのです。それにしても自己資本をよくするのはいいということで、これは日本の趨勢であり、世界もそうなっているのだからということでやったとしますと、自己資本がずっと大きくなればなるほど、先ほど私が心配しました今後の趨勢として設備拡張に対して金融引き締めをやる場合にポリシーミックスといわれる財政の繰り延べとかそういうものをいろいろ取りまぜてやらなければ、金融引き締めだけで簡単にいくという前の状態とは時代が違ってきた。そうですね。したがって、設備拡充がこう進んでくると、そうすると、やはり税制上でもただ資本を優遇するのじゃなくて、資本がわがままをいって言うことを聞かないという場合には、それに対して適用する、そういう意味で去年胸を張っておやりになったのがあれでしょう。それで私はお聞きしているのです。だから、いまの小康の状態ではなくて、では将来そういう情勢になっていけばそういう税制については――それでおやりになったと思うのですが、そういう問題についてぴしっともっと新聞記事によりますと、小さな範囲ではなくてもっと広げなければ効果が出ないから大がかりなものをつくるためにいまは用意しているのだ、新聞ではそう書いてある。したがって、今後この問題については本格的にどういうように取り組むのか。広げていくという、全般的に広げれば相当きき目があるのだということについては大蔵大臣はどう思われるのですか。
  293. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 結局は産業政策の問題でございまして、日本経済がさっき申しましたように産業の構造改善を迫られているという時期にある以上、税のそういう特別措置というものはやはり必要だ。また、それが景気調整の役を果たすようにという意味で昨年ああいう法律をつくりましたが、この法律をそれじゃ発動しようとなりますと、産業を管理している当局からは、一律でやられることは困る。ここでどうしてもこういう国際収支の問題が起こっているときでも、これだけは急速に合理化しなければならぬ産業というのと、これは少しおくれてもいいというものがある。税制では一律に全部それを締めることになるので、その点においてもう少し考慮してくれとか、いろいろな問題が出てきまして、それを検討しておって、発動はいましておりませんが、それを検討している過程において、私どもは今後経済調整をするために、景気調整をするために、これからやる設備投資を締めようというものと、過去必要があってやったものを、いまこういう状態が来たからといって過去の人の特権まで全部奪っていくというようなやり方は少し考えなければいかぬのじゃないか、そういう問題が出てきましたので、この法律はもう少し考えて、将来に備えるために今度は必要が出たらすぐに発動ができるようにもう少し考慮した法制に私自身は直したい。そうでないと、いまのままで発動ということはなかなかいろいろな問題を起こすというふうに考えております。
  294. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 その問題は今後も非常に重要な問題だと思うのです。今後の日本経済というのは、やはり自己資本が充実する方向にあると思うのです。どうしてもそうなると思うのです。そうなればなるほどこの問題については真剣に取り組んで私どももやらなければいかぬと思う。それでいま同僚委員が大蔵大臣に質問するので、さっきの表は、その貯蓄の項目は全然これは中立になってしまっているのですね。大企業も中小企業も全部あるというので中立に置かれているのです。いろいろ調べてみたら相当いろいろの問題がありますから、あしたにでも議論することにして、以上で終わります。
  295. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 田中委員
  296. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大臣もお疲れのところたいへんだと思いますが、私は委員長にも許可をいただきまして、大体一時間ぐらい予定をいただいたのでございますで、時間もないようでございますから、大臣に私の意のあるところをくんでいただきまして、明快な簡単な答弁であれば一問 やめたいと思います。大体の内容はいままで大臣も御存じだと思いますから、そういう点を含んでいただきましてお答え願いたいと思います。  今度の四十三年度の所得税改正の中に雑所得の損益通算ができないような改正がなされておるわけであります。これは先ほどから倉成政務次官並びに吉國主税局長とも一、二議論をいたしましたが、吉國主税局長の答弁の中にも納税者に有利な規定をなくするということは確認いたしました。ところが、この雑所得の損益通算ができたときの趣旨から、また、いままで認めてあった規定のいきさつから考えてみまして、四十三年度の改正は、大臣も御存じのとおり四十一年、四十二年に国税庁指導に誤りがあって、この雑収入の赤字をどうするかということで問題がございました。その被害者は実はわれわれなのです。その被害者の起こってきた原因は国税庁指導に誤りがあった、こういうことにつきまして私は何度もこの問題についてはお話ししてきたわけでございますが、特にせんだっての委員会において大臣にもその点の最終的な御質問を申し上げたわけです。そこで私は、おそらく大臣がそういう改正がなされておる、またそれがどういう影響を及ぼすものがよくお確かめになっていない、御存じない点もあったかと思まして、事前にお話もしたわけでございます。私がここで強く申し上げたいことは、大蔵省が税制改正することは、これは事務当局がやることは私どもがとめることもできません。ところが、その改正のしかたが問題なんです。納税者に有利な規定をなくしていくとするならば、相当の議論も、また検討もなされて当然かと思うのです。聞いてみますと、その恩典に浴しているのは、全国では三百人くらいが雑所得損益通算による規定を適用されておるとも聞いております。その点は、先ほど主税局長にも確認いたしました。ですから、この問題が起こってきた原因は何か、こうお尋ねをしますけれども、主税局長は、その点はぼかして、申し上げられない、ただ、改正することがいいと思ったから改正した、こういう御返答なんです。それでは全然私の申し上げている点は寄せつけない、そういう答弁になってしまう。ですから、雑所得の損益通算を一年でも――いままでの経過から見れば、根本のいわゆる雑収入をどうするかという問題が、もう四十三年、四十四年にはある程度根本的な改正もなされていこうという段階でございますから、それと同時に、その雑所得の損益通算も廃止していいではないか、こちらはここまで譲歩した意見をいま、大臣ですから申し上げているわけなんです。先ほどは申し上げませんでした。ですから、それをしいて、四十三年度にどうしても雑所得の損益通算をやめるというならば、私のほうもその根本原因からもう一回さかのぼって、そうして言いたくないことも言わなければならない、こう私は考えております。ですから、まず主税局長のほうから――いままで私の言ったことは、先ほどやりとりしましたことにおいてうそはないと思います。また、主税局長も、納税者に有利な項目であるということを認めております。そういう点から、まあ大臣に直接お聞きしますと、またあとから言いたいこともあったということになると困りますから、主税局長なり政務次官なり、そうして最後に大臣からお答えいただきたい。ひとつ大臣の政治力で、私の要望していることの御返答をぜひいただきたい。そうしたならば、これでもう私はきょうはやめます。
  297. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま田中先生が私とのやりとりをサムアップされた点は、確かにそうだと思います。ただ私の申し上げたいのは、有利な制度をなくしたということではなくて、特殊な所得者の場合、損益通算ができていた人は、その点からいうとその人には不利だ、こういうことを申し上げたのです。そういう意味で約三百人の人が商品取引、証券取引等で損を出しておられる、それが通算されている例がございますことは申し上げておるわけです。それ以外には確かに先生のおっしゃるとおりだと思います。
  298. 倉成正

    ○倉成政府委員 先ほどの田中委員との質疑応答におきまして、雑所得を損益に通算しないということをきめましたのは、税制調査会でいろいろ御検討いただいたその結果こういうことになりました。また、商品取引等でしろうとが、商品の取引に手を出して損をしたのを通算するというのは、いささか妥当性を欠くからいかがなものであろうか、そういうことを御説明申し上げた次第であります。
  299. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 雑所得の計算上生じた損失の金額について他の所得との通算を認めるという従来の制度を、御承知のように昨年度あるものに適用しようとするときに、やはり指導のミスがあった、こういうことから問題が出まして、この事態はやはり避けなければならぬということから、税制調査会にも相談しました結果、一応経費が雑所得以上にあるというような事態は、ほとんどまれであるから、これを通算する実益はないというようなことから通算しないということにしましたが、これはやはり昨年来のいろんな問題を合理的に解決したいというところから税制調査会も研究いたしますし、また、国会におけるこの大蔵委員会理事会とか、そういうところの御意向も伺ってきめた措置でございますが、こういう形で解決するのがいいのか、また、いわゆる政治所得というものは、もう少し別個な考え方で、別の体系で考えるのがいいのかというのは、今後の問題でございまして、そこらの矛盾がございましたら、私どもはさらにこういう問題の研究をしたいと思っております。
  300. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いいところまで来て、最後のところがぼやけてしまったように聞こえるのですが……。ほんとうにまだいろいろ、言えばたくさんございますが、いま大臣がおっしゃったように、この問題が起こってきて、いわゆる雑収入の損益通算だけでも、それはやらない。いままで有利に認められた雑所得の中でも雑収入以外の――いいですか、政治家の雑収入の問題で問題が起こってきたのだから、これは損益通算をやらないというように規定を変えよう、これならいいのですが、それ以外の雑所得内容についてまで損益通算をやめるというようなことはいけない、こう言っておるわけであります。  そこで、あくまでも大臣に聞いてもらわなければならないことは、納税者の有利な規定を変えるならば、いま大臣も、税調の審議にもかけた、この委員会にもかけたとおっしゃっていましたが、この委員会では一言もそのことは言っておりませんよ。そうして税調でも、この前私大臣にお尋ねしたときも、はっきり大臣は御記憶があると思いますが、この問題は、根本的な問題は税調にかけて、いままだ諮問して考慮中だ、こうおっしゃったですよ。会議録を読んでみましょうか。私は、それを善意に、何も大臣がそこまでこまかいことをおっしゃられたことではない、根本的な問題は今後の税調にもかけて検討してみたい、こうおっしゃったと思っておるのです。そうでしょう。そうするならば、しいてこの改正で、政治家の雑収入の損益通算すべきこと以外までも、納税者に有利になる規定を変えなくてもいいではないか。どうかそういう点に立ちまして、はっきりわかってもらうところはわかってもらいたいと思うのです。どうでしょう。
  301. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税調におきましては、やはり相談をいたしまして、検討してもらった結果、この問題は、一応こういうふうに片づいて、さらに問題になった政治所得というようなものの取り扱いをどうしようかというようなそちらの問題は、まだ未解決の問題として検討を続けておるというような状態になっておりますので、そういうものをひっくるめてもう一ぺん私ども慎重に検討したいということにしたいと思っております。
  302. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それじゃ、その問題に関連してこの雑所得の損益通算はもう一ぺん考えたい、こういうように理解してけっこうですね。そのように理解していいですか。
  303. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはいま申しましたように、一ぺん税調の議を経てこういう方向にきまっていま御審議を願っておるときでございますから、これはこれとしてお認めいただいて、さらにいま残った問題との関連で将来はどういうふうになるかということは研究いたしますが、一応この通算しないという問題だけはこれはもうこのとおりにお認めを願いたい、こう思うわけであります。
  304. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そうしますと、もとに戻りました。あくまでも事務当局が考えた雑所得損益通算ははずす、だれが何と言おうともはずす、こういうふうに理解いたします。そのかわり、この問題につきましては十分検討もし、私も腹をきめます。この問題については去年からの問題もございますし、いままではその間違いを起こした国税庁長官とも話し合いもしてきましたし、そちらのほうで発表してくれるなと言うから発表もしませんでした。また、三十何件の確定申告内容も私は不満な点をたくさん持っておりますから、そういうのを全部ここに出しまして一つ一つ検討した上、いかにこの雑収入の損益通算すること、それをやめるということは、私は初めから言っておるように、それはいいでしょう、こう言っているわけなんです。だけど問題がそこまで、大臣のほうもどうしてもこの事務当局の改正するという点を曲げられないとするならば、そういう方法を私はとっていきたい、こう思うのです。そのときになって、私の発言をどのようにおとりになるか知りませんけれども、私は、そのために事前に大臣にも御相談したはずなんです。まあきょうはこれでやめます。どうかその点をお考えいただきまして、この問題については、所得税のこの改正質疑も終わったとしないほうがいいんじゃないかと私は思います。それでけっこうでしょう。
  305. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 お互いにわかった話ですからざっくばらんに申し上げたのですが、いろいろ政治所得というような問題がからんできたから、これはここらで一応解決しておかなければいかぬ、これはそうすべき問題だと私は思います。しかし、まだその問題は今後根本的にいろいろ検討すべき価値がありますので、引き続き検討いたしますが、一応この通算しないということによってこの問題を解決しておいて、次にもう一ぺん検討の機会を私どもは持ってやろうということでございますから、それをいまのままにしておいていくというと、やはり国民に対していろいろ問題を残すようなことは好ましくないというようないろいろな政治的配慮も当委員会にございましたし、むろん税制調査会でもございます。その問題さえなければ通算を残しておいてもいいと言われるかもしれませんが、ここらは、やはりそういう問題がございますので、一ぺんこの程度で解決しておきたいというのが私どもの気持ちでございますので、その点はひとつよろしくお願いしたいと思います。
  306. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それで大臣、そこはおっしゃることもわかるのですが、言われたことが自己相違みたいになるんじゃないですか。いわゆる雑所得の雑収入の損益通算をやめたいということですね。そのやめたいことをやめなくても、いままでの現行法でもその問題は適法に適正に処理されたと大臣はおっしゃったわけですよ。何もいままでの雑所得関係法律を変えなくても適正に適法に処理されてきたのです。その適正に適法に処理されたことが、どうも政治的におかしい、それを残しておくのはおかしいから改正する、こういうことになるのでしょう。そうすると、大臣が言われた適正に適法に処理されたということはそのときだけのことばであって、いまになってみると、雑所得の損益通算をするという改正を出した以上は、その改正をすることが正しいのである。前のやったことはおかしい、おかしいから今度改正して法的にも問題がないようにしたい、こうおっしゃっているように受け取れますよ。そのとおりでしょう。ですから、そうしますといわゆる自己相違になってくるのです。ただ、あのときはここで適法に適正に処理されておると言うておけばいいというお考えでおっしゃったというふうにしか私は理解できないのです。どうでしょうか。先日の委員会で大臣は、二回ほど私の質問に対して適正に処理された、適法に処理されたもの、私の責任でありますし、そう思っておる、そう確信するとおっしゃっていますよ。それがいまになっては、どうもそれを改正しないとおかしい、だから改正さしてください、こうおっしゃっていることになるのです。これでは自己相違もはなはだしい。もう一回その点について御答弁ください。
  307. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 前に起こった問題の処理は、御承知のように、御質問もございましたように、ややこしくてなかなかわからないというような、説明を要するところが多うございましたので、それよりもやはり今回のこの、税制調査会にも相談いたしましたが、こういう形で解決をすることがすっきりするだろうということで、私どももそのように感じてこういう改正をお願いするということでございます。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  308. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 だから、その雑所得の中の雑収入だけでも改正したいというならば、いいでしょうとこう言っているんじゃないですか。それを何も関係のないほかの雑所得の損益通算までやめる。だから無理押しなんです。それは無理押しも、間違ったものを正しい方向にするのならいいですよ。しかし、納税者に不利になることじゃないですか。いままで認めてきておったことを、それが正しいという判定で昭和二十五年からやっておるというんですよ。何べん言ってもこれは同じ自己相違を繰り返す。私の主張は一貫して変えておりません。ただ、段階的に全部引っ込めたほうがいいけれども、それができなければ雑収入の損益通算だけでも、そこだけでも変えて、あとの部分は損益計算の規定は残しておきなさい、こうしたほうがいいのではないですか、こういうふうに筋どおりにお話ししているのですよ。大臣の御発言に対しても、税調に諮問していま考慮中だとおっしゃるから、ああそれはいいことだ、そうしてもらわなければいけない、こういうふうに理解して進んできた。ところが、改正案はその損益通算だけ出してきた、そういうことになっておるのでしょう。大体これを改正して政府の財源の収入がどれだけふえますか。財政硬直化の問題の解決になりません。大蔵省の事務当局の理論を聞くならば――私も課長補佐を呼んででも課長を呼んででも、どれだけでも討論しますよ。それは大蔵省の理論は理論です。私のほうから言わせれば、私のほうから言う理論はどれだけでもあります。そこを大臣が、どちらが筋の通った話か、それともどうしてもこの改正はやらなければならないというならば、それはどうせやられるのですから、それならばこちらでもいままでのいきさつもお話ししていかなければいけない、こうなるわけです。  同僚委員からも関連質問をさせてくれということでございますから、私は一時間の予定でございましたけれども、三十分というものもいただいておりますから、どうぞ……。
  309. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 ちょっと関連して伺っておきたいし、同時に強く要求しておきたいことがあります。  いまの田中委員の発言、取り上げた問題は、この委員会でこれで三度目なわけです。この三度の問、この中には国会議員の処遇の問題を含めてお話しになっている。国会議員の処遇の問題は、これは各党一致して、そろった議運委員会の場所で、国会の事務当局との話し合いの結果を大蔵当局あるいは国税庁と話し合いをしている。今度田中さんがおこるのは無理がないのは、衆議院の庶務部長が中心になって国税庁と話し合った昨年の取り扱いの方法は、その後違った方法に変わった。その変わったのでもけしからぬと思うが、その後いろいろ話し合いの結果、新しい方法で各党、議運では納得したわけです。すでに三月十五日までにはそれぞれ国会議員は、私どもの党では申告を済んでいるわけです。この事態になるまで公明党に対して積極的に、なぜこうなったか、それがしかも議院運営委員会の席上でこうなったということを徹底しておかないということは、怠慢だと思う。社会党の場合は、これは不満はあります。不満はあるけれども、国会議員の処遇の問題ですから、現にいま国会議員の、国家から支払いを受けている、報酬を受けているものの中には、無税のものもあるわけです、それぞれの理由があって。そのほかにという問題だから、不満はあっても一致したものとしてそれを理解して、その理解の中で、もう申告が済んでおるわけです。それを何べんも田中さんに質問されるということは、私は、公明党に対して特別の説明が不十分である、怠慢であろうと思うのですよ。そういう点をちゃんと手を打たれたかどうか、打ってなかったら打ってもらう、その点をはっきりしてもらいたい。
  310. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはそうではございません。田中さんの質問もごもっともでございますので、私どものほうでは説明に主税局から何人も参りまして、手を尽くしておったのですが、これはやはりまた田中さんの御主張がございまして、今日まで納得してくれないということでございまして、この点はずっと無視しておったわけでもございません。これは田中さんがよく存じております。私どもは、まあ政治家の所得というようなものは、たとえば私の経済と公の経済の二つの勘定を持たせてそして解決すれば、いろいろ合理的な解決はできるのじゃないかというようなものをいろいろ考えておりますが、まだ税制調査会でもそこまでいっておりませんで問に合いませんでした。しかし、いままでのような通算方式でいきますと、今後やはり昨年のような問題を起こして国民の前にいろいろ批判されるというようなことがあっても困りますし、とにかく国会として一応この問題の解決をしようということでございましたので、それは若干無理があるかもしれませんが、一応そういうふうな形で解決しておけば問題がなかろうというようないろいろなことを考えて、各党には御説明して了解を得ましたが、公明党にきょうまで手は尽くしておるのですが、まだほんとうの了解を得るに至っていない、こういういきさつでございます。
  311. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それは違うのですよ。私も了解することは了解しておりますよ。しかし、雑所得の損益通筋については、事務当局のほうがでたらめじゃないですか。だれが聞いても筋を通した話ならば――いまの大臣のお話の中でも、いいですか、政治家の雑収入の損益通算をとどめたいならば、それはとどめたいことはもちろん私は了解できるのです。いいですか。大臣もそうおっしゃっているわけでしょう。政治家の雑収入の損益通算、いわゆる赤字申告なんかはいけない、それをとどめたい。それじゃそれをとどめる範囲に改正してはどうですか。何かこっちがむちゃくちゃ言っているような言い方をなさって、納得しない――納得するものですか。そういう納税者に不利な改正をぽっと出してきて、課長補佐が一ぺん私のところに説明に来て、税務に実際経験のない課長補佐が、そんな私たちやってきたものを、一々大蔵省の理屈として私聞きますけれども、ものの順序としてそういう順序はおかしいでしょう。どうですか。大臣が改正したい、ほんとうに法的にも間違いのないようにしたい、そこを改正したいというならば、そこは何かといえば、いわゆる雑所得の中の政治家の雑収入の赤字は認めないという点じゃないですか。大臣、よく聞いておってください。わかりますか。あなたのほうの事務当局の説明は、ただ雑所得の損益通算を全部やめたいというそれだけの理論なんでしょう。何にもないです。その起こってきた原因をたずねてみれば、政治家の雑収入を損益通算できないようにしておかぬと、法的にはいまのままじゃ損益通算するぞと言ったら説明のしようがないから変えたいというんでしょう。原因はそうでしょう。それをただ雑所得の損益通算を残しておくことはいけないと思うから改正します、そちらのほうが筋が通らぬじゃないですか。
  312. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと申し上げますが……
  313. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 ぼくにお答えがあって、その中に間違いがあるから、それを先に直してください。  大蔵大臣、私は田中さんに対する説明、納得を得る努力が足らぬと言っているんじゃないのです。政党政治ですから、各会派があってやっておるんですから――社会党にも納得しないのがいますよ。だが、党の国対委員長、党の議運の代表が了解したので、不満の者もそのままになっているのです。ですから、私の言うのは、議運の場では公明党に対しての了解が私は得られたと思っていた。正木理事が出ておって、そこでは特別の反応がないから、私は終わっていると思っていた。ただ、それが不十分だからこういうふうになるんだ。公明党の国会対策委員長あるいは公明党の代議士会長なり、公明党の議運の理事なり、ここのところできちっと了解を得ておれは――自民党にも不満な人がある。だが、自民党の代表が了解すればしようがない。三月十五日に申告が済んでいる。ただし、田中さんが言うのは、次の段階を見て直したらどうかというのは、これは当然大蔵委員会で議論の対象になるし、要望も出されておるし、掘り下げてもいいと思う。私は田中さんに了解を得ていないと言っているのじゃないのです。公明党に対しての了解が得られていると思っていたが、まだ得られないのでしょう。公明党に対しても回答が不十分です。そこをはっきりしなさいということです。
  314. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ちょっと申し上げますが、ことしの申告の問題は済んでいるわけでございます。雑所得の通算をする問題は、理事懇談会で再三お打ち合わせをいたしまして、将来根本的な解決をはかるけれども、さしあたり雑所得は通算をやめるということで大体支障がないかどうかということで検討をいたしまして、雑所得については先ほど来詳しく申し上げましたように、所得種類の中でその他の所得でございまして、その中をずっと洗ってまいりますと、実際に損失が出るという可能性がある所得というのはごく限られております。ことに競馬等については、競馬の馬主の所得については損益通算を切るという規定をわざわざ置いております。それから貸し金についても同じことをやっておりますので、実際上残るのはしろうとが商品取引をやった場合に損が起こるかもしれない、それは利益を通算すれば済む話で、それを他の所得から引くのがはたして妥当かどうかという点が残りますけれども、この点は税制のたてまえからいえば、競馬の所得と比較するのは悪いかもしれませんけれども、いまの商取引の実情で、ほんとうにヘッジングで商売でやるのとは違うということから申しますと、ここを切ることは必ずしも税制上も不当ではない、そういうことで損益通算を切ることは差しつかえないのではないかということで、各党のおいでになるところでお話しもいたし、一応の御結論も得たのでやったことなんでございます。もちろん田中先生、そのときに十分納得されなかった点はあると思いますけれども、そういう経緯でございます。
  315. 田村元

    田村委員長 田中君に対する答弁がまだないでしょう。
  316. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 どうですか、大臣。私のほうが何か無理を、筋違いのことを申しておるように……(「いや、そうじゃない」と呼ぶ者あり)しかしそうなるのですよ。それじゃその次の段階まで、雑収入の損益通算をしなかったらどうですか。それも何ぼでもない。納税者にどんなに有利な問題が改正されようが関係がない、納税者の立場なんか考えられない、有利な規定をどんどん改正していくんだ、はっきりいえばこういうことなんですよ。納税者の立場に立てば、そう急いでといいますか、そんなにしてまでこれを改正しなければならないということはないんじゃないかということを言っているんです。
  317. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま主税局長も言いましたように、そんなにしてまでというのではなくて、いきさつがございますので、各党の理事の方の御了解も得るし、それから税制調査会にも検討してもらって、そういうことで、この通算を切っても大きい支障がない、かたがたいろいろな問題の解決にもなるということで、私どもはこの法案を出したということでございまして、あの最初の御了解を得るときに、私は了解しなかったと言われればですが、それ以後の御納得がいかないところがあるようでございましたから、私どもはときどき説明者をあげてきょうまできたわけです。まあいきさつがそうでございますから、この際はひとつ――将来これをまたどうするということは、さっき申しましたように十分検討いたしますが、この際はそういういきさつを経たことでございますし、また雑所得の性質から、それを切ることが特別に大きい支障を来たさないといういまの局長の説明もございますので、その辺で今回は御了解が願えないかというのが私どもの考えでございます。
  318. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 もう一言最後に言わしてもらいます。  いま大臣がおっしゃる各党の了解も得てやったということは、政治家の雑収入の損益通算はやめていい、これは法的にはっきりそういうふうにしたほうがいいというところを了解しているわけですよ。雑所得の中にもいろいろ所得がある。そっちのほうの雑所得の損益通算もやめていいなどという意見は、私はずっと理事懇談会にも出ておりますが、一回も出ておりませんよ。そこなんです。いいですか、大臣。それと、いま説明に何回も来させた、それも言っておるじゃないですか。たった一回課長補佐が私どものところに来ただけなんです。理論的にはそういう改正をするほうがいいから改正するんだ、結論はこういうことなんです。しかし、それが納税者に有利な規定であるならば、もう少し検討していいんじゃないかと言っている。そうでしょう。わかっていただくでしょうか。そういうところでもう一言……。
  319. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 十分わかりますが、しかし、今回の場合はその政治所得の問題を切るだけではなくて、この際は雑所得を通算しないということをやりたいという御了解を私どもは実際は得たということでございまして、あなたが、一方だけ了解したけれども一方は了解していなかったというのじゃなくて、各党の御了解を得たときには、この際は他の所得の通算をしないという措置をとりたいということで私どもは御了解を得たものというふうに思っています。また、現にそういうことであったと思います。だから、それはそれとして認めていただいて、いまおっしゃられるような問題は、どうせまた政治所得というようなものの扱い方を今後研究しなければならないから、そういう際にこれは検討しましょう、しかし、この際は各党で御了解を得たことでもございますので、いまの措置でお認めを願えまいかというのが私どもの考え方でございます。
  320. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いま竹本さんからもちょっとお話がありまして、それをそのまま申し上げるのですけれども、どうも大臣は、雑収入については政治家の雑収入のことに頭がいき過ぎて、何かそっちのほうばかり話がいっているように聞こえるが、それは違うじゃないかという御注意を受けたのです。政治家の雑収入の損益通算はこれはいけない、改正しましょう、その点は了解した。大臣が了解してもらったとおっしゃるから、それはそれでいいのです。政治家の雑収入以外の所得が雑所得の中にある、そっちまで損益通算をはずしていいという了解なんか、一言も聞いていないと言っているのです。それを聞いたことがある人があったら、聞いてみてください。私だけの聞き間違いじゃないはずなんです。そうでしょう。雑所得の中には所得が幾つもあって、その中の政治家の雑収入となるものはこれは損益通算はしないというように大臣は各党の了解を得た、こうおっしゃる。それはそれでいいでしょう。そこを改正する分はいいでしょうと言っている。ところが、それ以外の雑所得の中のいろいろな所得の損益通算までできないようにするのはおかしいじゃないか、こう言っているわけです。
  321. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、さっき主税局長が言いましたように、雑所得にはいろいろ種類がある。しかし、一つ一つ検討してみると、特にここで他の所得との通算を断ち切ってもそう問題を起こすようなものはなさそうだ、だから、今回はこれを機にこの通算をやめたいという御相談を私どもはしてあったわけでございまして、それがもしいけないというのでしたら、今後またこの問題は検討してもよろしゅうございますが、今回はこういう措置で皆さんの御了解を願ってあるので、このとおりにいたしたい、私はそう考えます。
  322. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 どうも、今回も出したから全部それを一ぺん認めて、この次にまたその雑収入以外の雑所得の問題については考えよう、こういうふうに私は了解しましたが、そうでしょう。
  323. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この通算をされないために特別に支障を来たす雑所得というようなものが出てきましたときには、当然それはまた何らかの措置を考えなければならなくなるかもしれませんが、いまのところは、それじゃどういうものが支障を来たすかということを考えますと、いま局長の言ったとおり、これを通算しないという措置をとってもそう大きい支障はないだろうと私どもは考えております。
  324. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それなら、大きい支障がなければ改正する必要はないじゃないですか。
  325. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 改正してもです。
  326. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 しても問題がなければ、改正せぬでもいいじゃないですか。政治家の雑収入が問題があるから改正しますよ、そのほかのやつは改正しても問題がないのだから、改正しなくても問題がないのなら、そのままおいておってもいいじゃないですか。そこで、主税局長がさっき商品取引の問題だと言われますけれども、それはいままで三百人あるというのですよ。いままで三百人の納税者が雑所得の損益通算があるために有利な適用を受けている。大臣、ちょっとここは聞いておいてください。いま大臣は、それはたいしたことはないんだという主税局長のアドバイスで、それが頭にある。それはたいしたことはなくても、三百人の納税者が有利な扱いを受けておる規定が問題なんです。それをしいて政治家の雑収入のほうを改正するために、一緒にして、その納税者の有利な規定をなぜ改正しなければならないのですか。
  327. 倉成正

    ○倉成政府委員 誤解もあるようで……。
  328. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 誤解も何もない、私が言っていることは。それじゃ――ちょっと待ってください。もう少し言います。それじゃ主税局長、いま三百人と言われましたけれども、商品取引の雑所得だとおっしゃいますけれども、それだけじゃありませんよ。全国の国税庁種類別表を見てください。そこまで用意して、こういう一つ一つの場合、こういう場合は問題はない、こういう場合は問題はないと検討をなされてないです。その証拠に三百人、商品取引の問題でそういうことでごまかしている。しいてそこまで言うならば言いますよ。それじゃ全国の種類別表から拾ってみなさい。そうじゃないです。それはすぐわかることです。どうもいまから訂正するわけにいきませんから、全国の税務署種類別表から全部出してごらんなさい。そんな商品取引の雑収入の計算なんか、東京か大阪にくらいしかありません。いなかのほうはそんなものはないですよ。ですからそこまでなると、大臣に一々そんなこまかいことを申し上げる必要はないのですけれども、ただ、いま言いましたように、それじゃ政治家の雑収入の損益通算をやめることはよろしい。そのほかの雑所得の中の所得の損益通算という、納税者に有利な規定までなぜ一緒に改正しなければならないか。それはたいしたことなければ、この改正のときにそれはそのままにしておきましょう、こういうのが納税者の立場に立った政治家でもあり、また行政官庁としても当然そのくらいな納税者の有利な規定は残してやるべきがほんとうじゃないですか。
  329. 田村元

    田村委員長 ちょっと大蔵省側に申し上げますが、先ほどから伺っておると、どうも水かけ論争のような感じがするのですけれども、もう少し何とか答弁のしようがないですか。このままだと、いつまでたったって同じことだが、何とかものの言い方を――ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  330. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。
  331. 倉成正

    ○倉成政府委員 ちょうど大臣も途中から来られましたので、つなぎがよくわからないと思いますから、便宜私から整理してみたいと思います。  雑所得につきましては、給与所得、事業所得に入らないものの所得でございまして、田中委員専門家ですからよく御存じのとおり、たくさんございます。あげてみますと、郵便年金、生命保険年金、離職年金から、著作家以外の原稿料、印税、講演料、非営業貸し金の利子、身元保証金の利子、人格のない社団等から受ける分配金、云々とたくさんございます。その中に政治家の所得も入っているわけであります。そこで雑所得については、先ほどから商品取引や、あるいは株のことはここにあげませんでしたけれども、損益通算することについては弊害があるということもわれわれ考えておったわけでありまして、雑所得については、損益通算をやらないでもいいじゃないかという議論もあったことは事実でございます。たまたま政治家の所得の問題が、この雑所得、損益通算をしないということが一つの原因になったことも認めますけれども、これだけが原因じゃないわけで、田中委員が言われるのは非常に抽象的にはわかりますけれども、現実的に雑所得の損益通算をしないからといって、大きな弊害は私は出てこないと思うのです。むしろ、もしそういう弊害が出るなら、そういうことについて御議論いただいたほうがもっとわかりやすいのじゃなかろうか。そういう角度から、大蔵省としては雑所得の損益通算をしないという原案を提出しておるわけでありますから、この委員会の場におきまして、これについて御賛成の御意見もあろうし、また御反対の御意見もあろうし、委員会の意思をひとつ御決定いただくようにお願い申し上げたいというのがわれわれの立場でございます。
  332. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 いまの政務次官のお話では、この雑所得の損益通算は前々から議論されてきたんだ、そうですね。では前々から議論されてきた証拠を見せてください。ですから、いずれにしろ、かりにそれがあったとしても、ここで私が初めから言っているように、納税者に有利な規定を、しいて政治家の雑収入の損益通算をしないときに、なぜ一緒に改正をやらなければならないか、こう言っているのです。一年おくらしてもいいじゃないですか。政治家の雑収入については損益通算をやらないという改正をやって、それで一年間そのほかの雑所得については、損益通算をするほうが納税者にどのくらい有利なのか、そういうことを見てから改正してもいいんじゃないですか。そういう検討をする、この際は政治家の雑収入については損益通算をしないという規定にとどめる、こうなぜはっきり言えないのですか。
  333. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 雑所得について前から議論があったということを政務次官おっしゃいましたが、まさにあったわけでございます。競馬の所得を切るか切らぬかというのも、雑所得ということで競馬をやって、さんざん損をして――損をしてといったって、馬を買う費用をそのまま給与所得から引っぱって、有名な会社の社長が給与の所得はゼロ、損益通算してゼロと申告してくるということがさんざんあったものですから、競馬についてはこれを切るということにいたしました。それから、いま同じことが商品、株についても起こっていることは御承知だと思います。これも名前をあげればすぐおわかりになるような方が、一文も税金を払っておられないのです。しかもそれが有名な株の大手であるということも皆さん御承知だと思います。そういう弊害のある点はわれわれも考えておったわけでありますが、ちょうど雑所得という問題になって残ったものはこれだけだ。そうしてもう一つ残るのは政治家だということで、そこで、雑所得をそれじゃ切りましょうかということで御相談をいたしたわけであります。これはもうよく御承知だと思います。おいでになった方皆さんおいででございますから……。
  334. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  335. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。
  336. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 大臣から、同じ答弁でもいいからいただきましょう。私もさっきからけつまくったような言い方をしました。しかし、これは当然でございますよ。その問題と別です。その問題とは別に、いま煮詰めましたように、大臣もおっしゃった雑所得の損益通算については、それはそのまま残しておくとまずい、そこは改正したい、それから出発して今度のこの改正規定ができたとするならば、そこでとどめてはどうですか。いわゆる政治家の雑収入を損益通算することは法的にもはっきりしておきたい。去年はそれがはっきりしてなかったために、一応便宜な処置であったけれども――それじゃ説明が苦しい。しかし、私が質問したときには、それは適正に処理されたとおっしゃった。私はそういうことばにこだわっているのじゃないのです。それは大臣も苦しいながら、その処置の方法としては各党にも協議をしてそれできめたんだから、適正に適法に処理したという御発言があった。ところが、今度の改正では損益通算の規定はなくしたい。なくしたいならば、そのなくしたいところだけを改正に出してはどうですか、こう言っているわけです。どうでしょう。
  337. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政治所得は損益通算できないようにする、これは問題ございませんが、それじゃ、それ以外の雑所得がどうなっているかと申しますと、実際においては弊害こそあっても、これを損益通算しなくもほとんど支障のないものが大部分だという、検討をした結果、この際、これを一緒にあわせて損益通算できないということにする措置のほうがいいというふうに一応御了解を願っておる措置ということでございます。もし、これでそういう措置をとって非常に困る雑所得があるというようなことでございましたら、これは将来の検討事項になると思いますが、いまのところでは、むしろ雑所得も一切損益通算しないという措置のほうがいままでいわれておるいろんな弊害をなくする措置であるというふうに私どもは考えます。
  338. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 だいぶ大臣もわかっていただいたようですから、いまから検討してはどうですか、先で検討すると言わぬでも。そうすれば私もやめますよ。大蔵当局も、一ぺん出したけれども、言われてみれば言いがかりがつくから、政治家の雑収入についてはいいんだから、そのほかのものについては将来検討するということではなしに、いまから検討する、どうですか。
  339. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御意見は十分わかりました。しかし、私どもはすでにこの委員会に提案して御意見を伺っておるところでございますから、この御処理はひとつ委員会でお願いいたします。
  340. 田村元

    田村委員長 ただいま議題となっております各案中、所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきましては、質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日火曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十三分散会