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1968-03-15 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十五日(金曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 渡辺美智雄君    理事 只松 祐治君 理事 村山 喜一君    理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       砂田 重民君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    古屋  亨君       坊  秀男君    村上信二郎君       村山 達雄君    山下 元利君       吉田 重延君    阿部 助哉君       井手 以誠君    兒玉 末男君       佐藤觀次郎君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    岡沢 完治君       河村  勝君    田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         農林省蚕糸局長 池田 俊也君  委員外出席者         外務省総済局東         西通商課長   川出  亮君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         農林省畜産局食         肉鶏卵課長   小島 和義君         農林省園芸局特         産課長     須賀  博君         食糧庁業務第二         部長      荒勝  巖君         通商産業省通商         局通商政策課長 佐々木 敏君         通商産業省通商         局輸入業務課長 小林 慶基君         通商産業省貿易         振興輸出業務課         長       間淵 直三君         日本輸出入銀行         副総裁     藤澤徳三郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十四日  委員加藤万吉君、広沢賢一君及び岡沢完治君辞  任につき、その補欠として久保三郎君、阪上安  太郎君、西村榮一君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員久保三郎君、阪上安太郎君及び西村榮一君  辞任につき、その補欠として加藤万吉君、広沢  賢一君及び岡沢完治君が議長指名委員に選  任された。 同月十五日  委員野口忠夫君及び岡沢完治辞任につき、そ  の補欠として兒玉末男君及び西村榮一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員兒玉末男君及び西村榮一辞任につき、そ  の補欠として野口忠夫君及び岡沢完治君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 三月十三日  所得に対する租税に関する二重課税の回避のた  めの日本国デンマーク王国との間の条約に伴  う所得税法法人税法及び地方税法特例等に  関する法律案内閣提出第七一号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員における参考人出頭要求に関する件  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三一号)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中昭二君。
  3. 田中昭二

    田中(昭)委員 最近心配をされております金並びにポンド価格の下落につきましてお尋ねしたいと思っておりますが、まだ関係局長がお見えになっておらないようでございますから、途中でその問題に入らさせていただきたいと思います。  まず、関税局長にお尋ねいたしますが、輸入課徴金ガット第二条で全面的に禁止されておるのは承知しておりますが、現在アメリカ輸入課徴金制度の実施は条約違反ではないか、このように思うのですが、この点の見解をお聞きしたい。
  4. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先生のおっしゃるとおり、輸入課徴金ガット規定ではこれを認めるような規定はございません。したがいまして、これはガット違反ということになります。イギリスの場合にはそこのところを隠れた税の調整だということでガットでいろいろと説明したのですが、各国が納得しませんで、それでそういうものはすみやかにやめろということでイギリスはやめた、こういう経緯になっております。
  5. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に、ガットは税を引き下げるということを目的にしたものでありますが、実質的には関税引き上げになる課徴金は明らかに違法であるわけです。協定加盟国輸入課徴金を実施する場合に、ガット第二十五条によりまして第二条の例外となるための義務免除を申請することになっております。以前一九六二年にカナダ、六四年には英国がウエーバーを申請したが、正式には認められなかった。実際には実施し、かなりの効果もあげたようでございます。ここで問題なのは、違法を犯してまでも課微金を実施した場合に、他の加盟国がその報復処置をとれるかどうか、またガット条約の中に罰則規定が設けられているかどうか、お尋ねしたい。
  6. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほどの説明で、輸出リベートと混同しまして、隠れた税と申しましたのは訂正いたします。  課徴金については何も規定がございませんので、これはガット違反だということで、すみやかにやめるようにということで廃止した、こういう経緯でございます。  それからガット違反措置をとった場合に、各国がどういう対抗措置をとるかということでございますが、実際問題としては、ガットでは直ちに対抗措置をとるということよりも、各国が集まりまして、その国にそういうことはけしからぬから早くやめるようにということで、各国の話でもって取りやめる、そういうことが実情でございます。これは一つは、ある国が措置したから各国がまたそれに対抗して輸入のほうを締めるということになりますと、だんだん世界貿易が縮小して困る、そういう配慮からだと思います。
  7. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、罰則規定がないということになりますと、その報復措置としまして、いまお聞きしたわけですけれども、くどいようでございますが、具体的な方法、何かそのようなことでもう一回お尋ねいたします。
  8. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 罰則規定はございますけれども、実際は先ほど申し上げしたような形でもって事が処理される、そういうことが多いのでございます。そこで日本かこれに対して、万一いま——御承知のように、こういうことは世界貿易の拡大という観点から困るので、ぜひやめるように、これは日本ばかりでなくて、各国ともそういう意見をアメリカに出しておるわけでございます。そこで万一アメリカがそういう措置をどうしてもとるということになった、そのときに日本はどうするかということでございますが、これは日本もいろいろ検討いたしております。それから各国もいろいろ検討いたしておりますけれども日本ばかりでなくどこの国も、また日本のほうも、おまえのほうではどういう措置をとるのだということを聞いておるのですが、どこの国も内容については検討中、そういうことで、日本の場合にも検討中でございます。
  9. 田中昭二

    田中(昭)委員 その検討中のところを少しお聞きしたかったわけですが、次にこの問題が日本に及ぼします影響についていろいろな大きな影響があると思われておりますが、国境税の場合は輸出の戻しがついてくる。課徴金の場合はその輸出の戻しがあるのかないのか。その辺の事情はどうでございましょう。
  10. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 国境税調整の場合には、これは輸出輸入とに同じ率がかかるということになります。どうしてそういうことになりますかと申しますと、たとえばいまカメラならカメラについて物品税がかかっています。これはもし一ぺん日本の中で物品税をかけたカメラ外国輸出されるというときには、これは物品税を戻すことになります。それから外国から入ってくるときには関税のほかに物品税をかける、こういうことをやっております。ところが、それはどこでもやっていることですが、国境税調整の場合にはさらにそれに直接かかった税金でなくてそういう間接の税金まで戻そうということになります。また、外国から入ってくるときはその率で徴収できる、こういうことになりますので、国境税調整としては輸出輸入と両方にかかるという制度になります。  それから課徴金の場合は、これはそれ自身では輸入のところだけでとまる、こういうことになりますので、輸出輸入両面措置するということになりますと、今度は輸出の面では論理的にはこれは別の制度でございますが、輸出リベートということをやる。課徴金リベートと両方組み合わせるとちょうど国境税調整、これは輸出輸入に関連しますが、同じようなことが起こる、こういうことになります。
  11. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういたしますと、輸出業者というのはたいへん困るんじゃないですか。
  12. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この輸入課徴金を万一かけられるということになりますと、直接には輸出業者も困りますし、さらに輸出品を生産している業者も困る、こういうことになります。その場合の影響ですが、この辺はアメリカが、中身がさっぱりどういうことを考えているのかまだ固まっていないのでわかりませんのですが、簡単に申しますと、輸出品について先進国と競合している物資後進国と競合している物資とこう分けますと、先進国はみんな一律に輸入課徴金をかけるということになりますと、日本ヨーロッパ先進国とが同じ条件で競争する、したがいましてここのところは特に日本が困る、そういうことはないと思います。それから後進国に万一かけないということになりますと、後進国と競合している物資については日本は非常に困る。したがいまして、いま特に騒いでおります繊維雑貨というようなものは、新聞に伝えられるところだと後進国例外にする。そうしますと、後進国からアメリカに行くものは課徴金がかからない、同じ商品日本からアメリカへ行くものは課徴金がかかる、こういうことになりますと、そこでちょうど特恵関税ができたようなことになりますので、そこで特に日本がひどく打撃を受けるということで心配している、そういう状況でございます。
  13. 田中昭二

    田中(昭)委員 たいへんなことになると思うのです。アメリカに引きずり回される、外交の上でもそういう問題がございますし、また、このように世界経済も立ち直ってきた段階におきまして、わが国業者が困るようなことに対しては十分なる保護対策、並びにわが国の世論というものも、アメリカに対して十分に主張すべきじゃないかと思う。この点はいままで何回も述べられてきたわけでございますけれども、どうかそういう点は、何もアメリカの犠牲になることだけがわが国の為政者の姿勢であってはならない、こういうことを申し上げておきたいと思います。  こういうことになります、その影響力がいろいろ変わってくる場面が出てくるわけですが、日本の対米輸出現状では三割ぐらいを保持しておるというふうに聞いてもおりますし、課徴金が五%、輸出の戻しがないと仮定した場合に、日本輸出は大体どのくらい減少するのか、その予想されます減少額をお尋ねしたいのであります。
  14. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは非常にむずかしい計算でございまして、特に困りますのは、アメリカ措置中身がまだわからない、後進国との関係がどうなるかということは相当大きく影響します。それからさらに、アメリカがそういう措置をとった場合に、アメリカ物価がどのくらい上がり、それから日本と競争する相手の国がどういうふうに出るか、それがわかりませんと、日本輸出にどういうふうに影響するかということは日本国内のことだけを調べましてもわかりません。非常にむずかしいことでございます。いま関係業界がいろいろ心配しておりますのは、自分たち商品輸出にこのくらい影響するだろう、おのおの業界がいわば勘でいろいろしゃべっておるという状況でございます。この前いろいろお尋ねがございましたが、計算はまことに単純な仮定の計算ですが、今度のドル防衛策アメリカ貿易の面で五億ドル改善を考える。その場合にこれからいろいろな計算になるわけですが、かりに先進国からの輸入で五億ドル減らそうと考えておるとしますと、先進国からアメリカ輸出するその中で、原料のようなものは除かれるのではないか。そうしますと、先進国からのアメリカへの製品、半製品輸入額、そのうちで日本がどのくらいの割合を占めておるかというと二割であります。ですから、ものごとはそう単純にいきませんが、五億ドル改善目標に二割をかけますと一億ドル、こうなるわけであります。しかし、なかなかこれはそう簡単にはいかないと思っております。
  15. 田中昭二

    田中(昭)委員 大体その額はわかったわけでございますが、いわゆるわが国から輸出します製品、半製品というのは、いま現在で予想されるのはどういう商品でしょうか。どういう業者……。
  16. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いま一番心配しております業界繊維雑貨でございます。
  17. 田中昭二

    田中(昭)委員 ここでまた個々の業種につきましていろいろ影響がありますが、かりに五%の課徴金輸出の減が五億ドルと見込みますと、日本業界にとってたいへん深刻な問題になるとお聞きしたわけです。アメリカの言い分は、必需品は除くというような程度に言っておるようでございますが、その他具体的に大きな影響力のある品目、特に輸出依存度が高い商品についてはどの程度影響を受けるのか、今度は数字でもってお示し願いたいと思います。
  18. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これが品目別にどういう影響を受けるかということは非常にわかりにくい問題でございます。先ほど申し上げましたのは、非常にマクロと申しますか単純な計算でございまして、品目別に申しますと、一つ一つ品目につきましても課徴金をかけたことがアメリカ物価にどういう影響を与えるか、そうするとアメリカ国内の供給がどういうふうになるか。それから今度はその場合に日本と競争して輸出している国がどういうふうに出るか、これはコスト、売り渡し価格を下げるかどうか、その辺のことがありますので非常にわかりにくい問題であります。各業界がいろいろと数字をあげておりますけれども、これも業界によっていろいろと弱気のところ強気のところありまして、これは品目別にどういう影響を与えるかというのは各省いろいろと相談しておるのでございますが、いまのところ全くまとまらないという状況でございます。
  19. 田中昭二

    田中(昭)委員 なかなかわからないような模様でございますが、その大きな影響力のある品目の中で、いろいろな中小企業製品が大半を占めておるのではないかとも思われるわけです。たとえば鉄鋼を除いて洋食器とかおもちゃ繊維製品、それから軽機械類雑貨等製品、そういうものがありますが、これらは競争力の弱い中小企業製品でございますし、中小企業を保護する上からも何らかの保護処置が必要ではないかと思うのですが、この点はどうでしょう。
  20. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは大体、いま特に心配しているような中小企業業種というのは、特恵関税のときにいろいろと心配をしておるという業種が多うございます。ちょうど今度の措置でかりにそうなると非常に困るのでございますが、後進国に対してはかけないとかいうことになりますと、後進国に対する特恵が繰り上がって実施されるような経済的効果を持ちます。したがいまして、その場合に、特恵のときにどうすべきかということを議論いたしましたのですが、これは根本的に申しますと、そういう生産性の低い後進国と競合するような産業は何とか高度化して、後進国ができないような産品をつくるようにしていかなければならない。そうでないと、労賃が後進国は低いので、どうしても苦しいことになります。根本的には、そういう産業製品なり業種なりを高度化していかなければいけない、そういうふうに考えております。
  21. 田中昭二

    田中(昭)委員 また、それの対抗策として、短期的な処置、または長期的な処置があると思うのですが、ここで思い切った対抗策を講じていかなければならないと思いますが、その具体的な何かよい方法があるのかどうか、もう一つお答え願いたいと思います。
  22. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 どういう対抗策をとるかということ、なかなかむずかしい問題でございまして、これは国際的な反響もよく考えないといかぬ。したがいまして、日本としても、まだどういう措置をとるというようなことをにおわしておりませんし、ヨーロッパの国もまたそれを言わない。とにかくいまは力を合わせて、アメリカのこういう貿易面の障害を高めるという措置をやめさせようということに努力していく、そういう状況でございます。
  23. 田中昭二

    田中(昭)委員 次に、アメリカのこの課徴金制度が実施された場合に、わが国だけじゃなくて各国ともその対抗策をいろいろきめまして、報復処置がとられると思うのです。たとえば、現在では、EECにおける国境税等があるが、西独では、従来の取引高税方式を、EECの一〇%課税という付加価値税方式に移行した。こういう結果、輸入品に対しては、従来よりも三%程度割り増し課税をされるようなことでありますし、輸出品価格は、その分だけリベートといいますかそれがふえまして、輸出競争力が以前よりもつく結果となると思うのです。そうなってきますと、日本においても、アメリカ課徴金制度に対する処置として、また、ヨーロッパEEC諸国に対するためにも、西独のような何らかの処置がとられてしかるべきだと思うのですが、この点はどうでございましょう。  また、アメリカは、EEC国境税対抗処置として課徴金制度を実施したともいわれておるわけです。その真意は別としましても、課徴金制度を実施すれば、今度はEEC諸国もまた対抗処置をとるんではないかと思われるのですが、この二点、お答え願いたいと思います。
  24. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 今度アメリカがこういう——初めは国境税調整を主に考えておったようですが、最近は、課徴金のほうにウエートがかかっているようですが、こういう措置をとるようになった経緯は、いまおっしゃられましたように、ドイツが非常な黒字国、そこが国境税調整で率が上がる。そうしますと、ドイツ輸出競争力はふえ、輸入面ではまた各国からの輸入がしにくくなる、こういうことで、これをやめてくれということをアメリカは強硬に申しておったわけです。ところが、ドイツ国境税調整は、現在のガット規定では合法的な方法であります。したがいまして、これに対して、合法的な方法をしたわけですから、経済的にはアメリカの言うように、黒字の国がまたそういうことをやって、それ自身はなお黒字が大きくなるじゃないか、だから、やめろということは通るのでございますが、ガットの規則の議論になりますと、ドイツ国境税調整は合法的であるということになります。しかし、そういう努力をしておりましたところへ、国内的には輸入制限運動が強い、国際収支は非常に悪いということで、アメリカも何らかの処置をとらざるを得ない、こういうふうに考えて、いま、あるいは国境税調整とか、あるいは輸入課徴金、そういうことを考え出したわけでございますが、こちちらのほうは、ガット規定にないことでございますので、ガットにひっかかる、こういうことでございます。したがいまして、アメリカは新年以来、特使を派遣したりいろいろしまして、いろいろと各国説得工作を続けておるのは、特にヨーロッパ報復措置に出ると困るということで、自分のほうはやっても、何とか報復措置で相殺されることのないようにということでいろいろ説得工作を続けている。現状のところでは、まだ各国は、アメリカ国内措置でやるべきだ、こういう国境における水ぎわ措置は適当じゃないということで反対をしておる、そういう状況であります。    〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  25. 田中昭二

    田中(昭)委員 ここで、国際金融局次長がお見えいただきましたから、けさほどの新聞報道によりますと、金並びにドルの不安が増しておるようでございますが、これにつきまして、政府の今後の施策なりお考えをお聞きしたいと思うのです。ひとつ詳しくお願いします。
  26. 奥村輝之

    奥村説明員 金とドルの問題は、去年の秋十一月でございますか、ポンド平価切り下げ前後から、いろいろと問題が出てまいりました。ロンドン金市場、金の取引がときどき量がふえる。ロンドン金市場価格には二種類ございます。一つは、フィクシング・プライス、一つはクロージング・プライというのがございまいます。これを、どれを見てどう判断するかということはございますけれども、いずれにしても、間欠的に金の取引がふえる、こういう状態であったのでございます。この二月の末ごろから再びロンドン金市場における金の取引が量がふえました。これは私どもとして、やはりその原因は、アメリカ国際収支改善がかねがね、アメリカの声明あるいは政策発表によって対策の表明があったわけでございますが、しかしながら、先般とられた水ぎわ対策と申しますか、直接対外投融資規制とか、あるいは対外与信規制とか、政府海外支出の削減とか、その他種々の対策に並行いたしまして、国内需要をどう押えていくか、こういう国内対策の面での前進というものが望まれておったわけでございます。現在までのところ、財政、予算、この面ではいろいろな論議が続いているようでございます。しかし、本質的には、やはりアメリカ国際収支ヨーロッパ黒字国協力というものと相またなければならない面があるわけでございます。同時に、アメリカ自身がこれを改善する努力をしていかなければならないという点が大いにあると思うのです。けさ入りました連絡では、アメリカの九つの連邦準備銀行が公定歩合を四・五%から五%に上げたいということでありますが、財政面からするいろんな対策検討、これに加えて金融面からする需要の抑制という政策が一部行なわれたと私どもは見ているわけでございます。  したがって、これから先の見通しといたしましては、先ほども申しましたアメリカ国内財政金融面での引き締め政策、これが十分に実施せられて効果を発揮する、それとともにいろんな現象形態でのいろんな問題が解決に向かっていく、こういうことを私ども——アメリカドルは国際的な基軸通貨でございます。これが不安定な状態に置かれるということは、現実の国際貿易に非常な悪影響を与えるわけでございます。したがって、いろんな施策が適切に行なわれ、これと関係ヨーロッパ諸国協力と相まって一日も早くこういう状態が鎮静化する、安定の方向に向かうということを望んでおるものでございます。
  27. 田中昭二

    田中(昭)委員 先日の柏木さんのここでの発言でございますが、また新聞でも取りざたされておりましたフランスからお帰りになっての発表がございましたが、この楽観論的な見方がもうここで狂ってくるじゃないか、やはり不安な状態が早くなった、このようなことも思うわけでございますが、こういうことにつきまして、政務次官のほうからもう一度お答え願いたいと思います。
  28. 奥村輝之

    奥村説明員 先般の柏木国際金融局長がパリで開催せられました経済政策委員会、OECD第三作業部会、それから十カ国大蔵大臣代理会議に出席したわけでございます。その会議議論も、いま私が申しましたように、ヨーロッパ諸国アメリカ政策に対して協調的な態勢をとっていく。同時に、アメリカがみずからを規律ある節度ある経済政策によって事態を改善する、こういう必要性、この両面が強調せられたわけであります。    〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席〕 したがって、現在進行している状態というものが、アメリカは先ほど申しましたように、公定歩合の引き上げというようなことで対策を打ち出しているわけでございます。したがって、柏木局長が帰国いたしましたときと現在とでは本質的な事態の相違というものはないと思います。これから先もこの二つの筋で事態の改善ということを行なっていくのが、やはり世界の国際金融機構なり国際貿易なりというものをうまく持っていくために必要である、こういう認識はすべての者が持っているわけでございます。
  29. 田中昭二

    田中(昭)委員 だいぶ洗脳されてきて、いま節度あるとかなんとかおっしゃいましたけれどもアメリカ自体が自由貿易という線に自分から違反して、こういう課徴金問題も起こってきておるような状態の中で、あまりにもアメリカの言うなりになっている、アメリカの受け売りでは私は困ると思うのです。それは見通しが変わることもあるでしょう。もう少しはっきりした姿勢、もう少し強い姿勢で臨んでもらわなければ、この発言についてはわが国だけで——いろいろな不安な状態が待ち受けておるわけですから、そういう点におきましても、もう一度わが国の姿勢としてはっきりしておかなければならない。そういう点につきまして、政務次官の御答弁をお願いしたいと思います。
  30. 倉成正

    ○倉成政府委員 御指摘のように、いまアメリカは非常に苦悩しておる。いろいろな点で、今日のドル不安をどうして防止していったらいいかということでいろいろと苦心しておると思うのであります。したがって、今度の公定歩合の〇・五%の引き上げの問題は、金融面からしてアメリカの経済を少し引き締めをやるという姿勢を示したものと思うわけであります。  しかし一方において、御承知のようにアメリカの国会においてただいま増税法案が提案されておる。また、連邦銀行の二五%の金準備を撤廃するというのが下院は通りまして、上院でいま審議中である。この増税と連邦銀行の二五%の金準備を廃止するということをすみやかにやりたいというのが、アメリカ政府当局の意向であろうと思うわけであります。財政、金融両面からそういった対策を講じてドルを安定させ、世界の通貨の不安をなくそうというのがいまの姿勢であろうかと思うわけであります。  しかし、ただいま田中委員から鋭く御指摘のありましたように、国際通貨不安というのがいろいろな点で世界の各国に非常に心理的な影響を与えておりますので、こういったアメリカの姿勢と相まって、世界の各国協力して一日も早く国際通貨の不安をなくするように努力していかなければならない。日本もまたやはりその線に沿って円の価格の維持ということについて最善の努力を払っていく。そのためには国内財政金融の体制をさらに慎重に、こういった情勢を見きわめながら進めていくことが大切ではないかと考えておる次第であります。
  31. 田中昭二

    田中(昭)委員 ここでいろいろおっしゃることは、なるほどそれで一応お聞きもしますけれども、実際問題としまして、これはたいへんな問題でございますし、より以上の慎重な態度で、また発言もただ受け売り的な発言を不用意になさる——不用意になさったとは思っておりませんけれども、そのような見通しについての不安といいますか、おそれがないようにしていただきたいと思います。  最後になりますが、ケネディラウンドの実施によりまして関税の引き下げが行なわれたわけですが、この関税引き下げを適用されない国があると思うのです。わかっているようなところですが、どういうようなところですか、それについての関税局長の御答弁をお願いいたします。
  32. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 譲許税率が適用されない国ということになりますと、国定税率が適用されている国ということになりますが、この名前を申し上げますと、北朝鮮、中国本土、モンゴル、北ベトナム、モルディブ、ネパール、レバノン、東ドイツ、マルタ、アルバニア、ルーマニア、ブルガリア、グアテマラ、パラグアイ、 リビア、スーダン、モーリタニア、セネガル、ガンビア、象牙海岸、上ボルタ、南アフリカ、レソト、ボツワナ、西サモア、南イエーメン、ナウル、これだけの国でございます。
  33. 田中昭二

    田中(昭)委員 その中国の問題でございますが、かりに中国を例にとって見ますと、最近、いままで関税格差といいますか、そのようなものがあったわけでございますが、このケネディラウンドの実施によりましてその適用もされない、そうすることによってさらに大きな格差が出てくる、そのように聞いておりますが、このような差別措置があってよろしいのかどうか、その点に対する御見解をお聞きしたい。
  34. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 元来ガットの譲許税率のきまり方と申しますのは、たとえば日本外国と交渉する場合を申しますと、日本のほうもこういう品目についての関税を下げる、したがってアメリカならアメリカと交渉しますときは、アメリカでもこういう品目関税を下げてくれということでお互いに関税を下げよう。今度アメリカ日本が交渉して下げたものが、これが加盟国には無差別に適用になりますから、アメリカと交渉して日本輸入品の物を下げたのが、ほかの国がまたそれで利益を得るということが生じます。そうしますと、そういう波及的な効果計算いたしましてまたおのおの交渉する、お互いに譲許を出し合って相互主義で関税の引き下げができる、こういうことになっております。したがいまして、お互いに代償を出さない国にそれをそのまま適用するということは、これはそれ自身無理なことなのでございます。そういうことをしますと、結局ガット関係、それから二国間の条約で一番低い税率を適用するという約束をしている国には、またガットの譲許税率が適用になりますから、そういうグループについてはケネディラウンドで関税が少しずつ下がっていくわけでございます。だんだんに下がっていく。そうしますと、国定税率が適用になっている国との開きができるということが起こります。それは抽象的に考えますと、お互いに代償を出さないところに代償を出してきた国と同じようなものを適用するということは無理なことでございますが、しかし今度具体的に品目別検討いたしまして、これは譲許税率と同じ待遇を与えてもいいという判断に立ちますと、それについては国定税率を下げるという形で実質上譲許税率と同じ待遇になります。今度もそういう方法で一番大きな品目の大豆と銑鉄につきましては国定税率を下げました。そうしますと、中共はこれでケネディラウンドの譲許と同じ扱いを受けるという形になります。先般来問題が出ておりますのは生糸でございますが、そういうものにつきましても、国内に対する影響を一々考えまして、これは差しつかえないということになりますと、品目別に国定税率を下げる、そういうことで差を縮めていくということをいたしたい、そう思っております。
  35. 田中昭二

    田中(昭)委員 政務次官にお尋ねしたいのですが、このようにわが国と中国とは隣同士でございます。今後の日本貿易にとっても重要な役割りを占めておると思いますが、それにしては政府の対中国対策というものがあまりにも貧弱に過ぎまして、なおざりにされているんじゃないかというような声も聞かれるわけです。積極的な対策をひとつ講ずべきであると思いますが、先日から総理大臣も大蔵大臣も長期的な計画があるんだ、このようにも聞いておりますが、関税の面におきましてもこの貿易の障壁になっております関税措置関税格差をなくする、そうして日中貿易の推進をはかっていくというようなこと、これに対して政府はどのような意思をお持ちになっておるか、再度お聞きしたいと思います。
  36. 倉成正

    ○倉成政府委員 お答えいたします。  中共とわが国との貿易を拡大していきたい、将来とも拡大の方向で努力するということは政府の方針でございます。したがって、ただいま御指摘の関税の面については、関税局長からお答えいたしましたように、国交のない国、しかも最恵国待遇を相互に認めてない国、そういう条件のもとから申しますと、協定関税を適用することには当然ならない、差別するのが当然だというのが一応形の上の当然のことになるわけであります。しかし、そうばかりはいきませんので、御承知のとおり石炭や米、また今回のKRに関連いたしましては大豆や銑鉄について協定税率を適用する、こういうことで実質的に関税交渉のあった国と同等に取り扱うということで、中共からの輸入の八〇%を大体協定税率をもって扱っておる、こういうようなことになっているわけでありますから、かなり前向きで関税政策としては中共貿易に対処しておると申すことができるのじゃないかと思っておるわけであります。しかし、先般の委員会で申し上げましたように、なかなか中共の中の事情がわが国として的確につかみにくい、情報がつかみにくい、また外交関係がございませんので、わが国輸出品に対してのいろいろな利益を外交ルートを通じて守ることが非常にむずかしいという事情がございますので、中国に対してわが国として要求すべき情報の提供、あらゆる点について主張すべき点は主張いたしまして、その見返りとしてわが国産業の立場から譲るべき関税はひとつ譲っていく、こういう態度が相互対等の立場ではなかろうかと思っておるわけでありますので、そうかたいことばかり申しませんで、その品目についていろいろそういうものを検討しながら前向きに考えていきたいと考えておる次第であります。
  37. 田中昭二

    田中(昭)委員 まだあとダンピングの問題などお伺いしたいと思いますが、だいぶ時間もとりまして、また局長のほうからもわかりやすい説明をいただきましたからこれで終わりたいと思いますが、ただいまの政務次官のお話を、私は前向きにこの関税格差をなくするために関税を引き下げる意思が十分あるのだ、このように受け取って終わりたいと思いますが、そのように受け取って解釈してよろしいでしょうか。
  38. 倉成正

    ○倉成政府委員 そのとおりでございます。わが国の国益を守る立場を堅持しつつ前向きに善処したい、こういうことであります。
  39. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  40. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。阿部助哉君。
  41. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、たいへんお忙しいようでございますが、何か、けさロンドンでは金市場、証券市場が閉鎖したというお話でありますが、それはほんとうでございますか。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのとおりであります。
  43. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまのこの国会で大臣の財政演説、それでは、円はゆるぎないということを非常に強調しておられました。私は、そうではないだろうということで聞きましたし、またつい三、四日前に、わが党の武藤委員からは、いまのドル問題あるいは金問題についていろいろ質問がありましたけれども、全く政府は楽観的なお話をしておられた。三日、四日たった今日、もうこのような事態になっておるが、大体政府はそれに対する対策というようなものを検討しておられたのでしょうか。どうなんですか。
  44. 奥村輝之

    奥村説明員 やはり金の問題、ドルの問題はいまの世界の国際通貨機構の問題、国際貿易の発展維持の問題、こういう点で非常に重要でございます。したがって、これらを安定させることが必要でございます。私どもとしては、アメリカの経済の節度ある運営というものを国際会議を通じて強く要求し、今回発表されましたように、アメリカ連邦準備銀行九行がすでに公定歩合を〇・五%引き上げたということもこれに対する対策一つでございます。したがって、現在の状況における問題私どもの立場というものは、いかにしてドルを安定させるかという、こういう努力を一生懸命やっていくということであろうかと思います。
  45. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私が申しましたのは、何といってもこの問題は、アメリカの対外政策じゃなくてむしろアメリカ国内政策にある、これをしっかりすることによってドルの不安が解消されるだろうということを私は申しました。おそらくこういう事態になったら、アメリカの、たとえばいま議会に出ておる増税案とかいうようなものが、当然に国内問題として解決するだろうということを期待しておりましたが、これが間に合わなかったために、こういう大きいドル不安を起こしたということは事実でございますが、これを解決する方法として、さっきお話がありましたような、まずロンドンで銀行休日、金曜日の銀行休日ということがきまり、金市場を休むということをやって、そして十六日にアメリカで、まだ内容がわかりませんが、おそらく中央銀行の総裁の会議だろうといわれておりますが、金を中心とした国際会議が十六日に開かれる、ここで対策が協議されると思います。と同時に、それに先立ってアメリカの議会で、法定金準備率の撤廃というものがいま上院を通過した。これが片づきましたし、それから公定歩合を上げるということで——増税案が片づきませんが、しかし、財政政策がおくれても金融政策に入ってきて、金融引き締め政策アメリカが決定した。こういうことがございますので、それによって、十六日の国際会議を通じて一応この問題の鎮静化が行なわれるのではないかというふうに私らは予想しているところでございます。
  46. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまのお話を聞いておりますと、何かアメリカ政策、あるいは十六日からの会議、そういうものにみんな期待しておる。いままでもそういう期待をしながら楽観論を述べておられたのですが、水田さんは日本の大蔵大臣なんですから、日本の立場でもっと客観的な情勢というものを、事実を客観的に見て、その上で日本の国民に対して方向を与えるのが任務だと思うのだが、いまのお話でも、アメリカは何かこうするだろう。ああするだろうと言うけれども、皆さんの期待に一つも沿ってないじゃないですか。ベトナム戦争はやめていないじゃないですか。また、いろいろな面であなたたちが期待するような形とは逆にどんどん悪くなっていっておる、こういう事態をもっと客観的に見れないのですか。いまのお話では、まだ、アメリカ国内政策に期待をしておるというだけで、それならば日本の大蔵大臣としてどうするか、日本の国民にはどういうことを望むのかというものが一つも出てこないじゃないですか。ただ、日本の国民は何か不安な気持ちでおるのじゃないですか。そういう点で、いまの情勢をもう少し客観的に検討した結果を国民の前に示すべきだ。その上で政策を立てなければ、いつでも何かアメリカのあなたまかせ、しかもそれを非常に希望的な観測をここで述べておられるだけじゃないですか。そういう点でいまの事態をもう少し客観的に述べてもらいたい。
  47. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 別に楽観しておったというわけじゃなくて、国際金融情勢がこういうふうであってドル不安が起こっておる、ドル不安に対処する方法としては米国自身国内政策がここではっきりしなければならぬ、私どもはその政策の樹立をいままで要望しておりましたが、それがおくれたということは遺憾だったと思いますが、ようやくアメリカ自身が対外政策じゃなくて国内政策にはっきり入ってきたということは、非常にいいことだというふうに思っています。  そこで、日本はどうするかということでございますが、何といっても、円の価値を守るといっても、結局その国の国内政策が基本となるべきものでございまして、日本国際収支の均衡回復ということができるのならもう問題はございませんので、そこで昨年から引き続いてこの対策を考え、また、本年の予算においてもこの国際収支の均衡を回復するということを中心の予算を編成し、そうしていまやっている引き締め政策というものを堅持していくのなら、必ず私のほうが所期する方向へ来るだろうと私は確信を持っておりますが、とにかくこの際はっきりいままでの方針を堅持していくことが日本でやるべき一番重要な仕事だというふうに私は考えております。
  48. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなた、おっしゃるような希望的なことを言っておるうちに、日本の円自体も、きょうの朝日の報道によればもう七千万ドルも売られておる。円も下がっておる。強力であるみたいなことをついこの前の臨時国会でお述べになっておられたけれども、もうこういう事態になっておる。どこに欠陥があるのかということをまず、やはりいままでの見通しの誤りというものをきちんとここで整理されて、それからでないと出発ができないのじゃないですか。また、国民もそれを信頼しないのじゃないですか。そういう点で、私はあげ足をとる意味じゃなしに、大臣のほう自体で、いままでこういう点で見通しが狂った、だけれども、今度はこういうふうな形でいくのだというものがなければ、何か物価の安定を努力しますみたいなことを言って、物価は一番大事なんですと言っているうちに物価が上がってくる。国民はそれでは政府のやり方を信頼しない。いまのドルの問題、円の問題も同じだと思う。そういう点で、いままでなぜ狂ったのかということをここでもう少しはっきりしてもらいたい。
  49. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 なぜ狂ったかということでございますが、これはたとえば昭和四十二年の予算、いま私どもは顧みていろいろ分析もし反省もしておりますが、もう少し、内需抑制といいますか、総需要抑制のためにきびしい予算であっても昭和四十二年度はよかったのじゃないかということを考えています。しかし、昭和四十一年の不況のあとを受けて回復期にあったときでございますので、なかなか経済の実勢が強いということで、予算ができても一その経済の強い実勢を見ましてきめた予算ではあるが、この予算の執行において相当の弾力性を発揮しなければならぬということを考えて、昨年以来国債を減額するし、予算を繰り延べるというようなことをやってきたことは御承知のとおりと思います。そういうことをやって、今年度の予算編成に取りかかり、そうして今年度においてはさらに国債の削減をするし、景気調整から見た一番大きい問題が公共事業費をどうするかの問題でございますが、これも昨年から繰り越されてきている分を考慮して、本年度の予算は非常にこれを抑制してございますので、そういうような昨年の経験から省みて一連の考慮を払ったのが今年度の予算でございますので、私は今年度の予算がきまって、この予算にのっとってわれわれがこの執行に万全を期するのなら、最初から考えておったとおりの国際収支の均衡というものは、今年の下期において実現できるんではないかという考えをいま私どもは持っております。何としても国際情勢がこうきびしくなってさましたら、やはり日本自身国際収支を急ぎ早く直すということがあらゆる対策のうちで一番急を要する対策だというふうに考えています。
  50. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまいろいろ大臣おっしゃられた予算の問題については、それなりに私も意見がありますが、ここではそれには触れませんけれども、それならば、いま円が売られておりますが、これに対する具体的な対策としてはどのようにお考えになっておりますか。
  51. 奥村輝之

    奥村説明員 私ども外国における円の先売りというものの情勢については絶えず注意を払っておるところでございます。現在まで私どもが総合的に把握しておりまするところでは、これはどういう原因で円が売られるか、それはスペキュレーションのために、円のアタックのために行なわれている円売りであろうか、あるいは実需に基づく円売りであろうかということでございます。いま日本国内でいろいろな外国関係が事業に関与しているわけでございますが、たとえば技術提供をいたしました場合に、ロイアルティーを送金するということがございます。あるいは株式を日本で持っている場合には円の配当金を回収するという問題がございますし、その他外国人が先になって円を本国に法令に従って回収する、そのときに円をドルにかえる、そのためにあらかじめ予約をしておく、こういうふうな場合、これは実需に基づく円の売りでございます。こういうものが、日本の場合にはこれは時期によって多少の大小はございます。それを実行するのが、会社の決算期、受け取り日の関係はございます。時期によって大小はございますけれども、いままでのところはそれほど玉はないと申しますか、外国に比べてそういうふうな種はないわけでございます。しかも、外国における円の売買状況を見ますと、いまの実需というものを背景に置いて考えた場合に、それほど大した量ではない。ただし、私どもとしては絶えずスペキュレーションに対する対策というものを研究をいたしておく必要がございます。したがって、実態については注意を払いまして遺憾のないように処理をしていきたい、こういうふうな態度で臨んでおります。
  52. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 注意をして見守っているというのは当然のことでして、私が聞いておるのは、その上でいまどういうことをお考えになっておるか、こういうことを聞いておるのです。
  53. 奥村輝之

    奥村説明員 ことしになりましてからも去年からも……(「きのうの話だ」と呼ぶ者あり)きのうも、円の売買はあるわけでございます。私どもはその情勢は絶えず把握しておるつもりでございますが、いまのところは、実需に基づく円の売買であるというふうに考えておるのでございます。
  54. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、いまのところは実需によって売られておるのでやむを得ない、その限りにおいてはやむを得ない、こういうことでございますか。
  55. 奥村輝之

    奥村説明員 そのとおりでございます。
  56. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、いまのところこの円の売られているのは心配する種はない、こういうことですか。
  57. 奥村輝之

    奥村説明員 現在までのところでは実需に基づくものでありますので、お説のように心配をする必要はないというふうに考えております。
  58. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 非常に楽観的ですが、しかし、いまのような海外の情勢からして、このままで、実需に基づくものばかりでおさまるといって楽観するわけにいかぬのじゃないですか。その場合にはどういうふうに対策を考えておられるか。
  59. 奥村輝之

    奥村説明員 イギリスの場合、アメリカの場合、カナダの場合におきましては、非常にドルの短期債務残高が外いわけでございます。あるいはイギリスの場合にはポンドの短期債務残高が多い。したがって、いま国際的な基軸通貨国の悩みというのは、こういうふうな膨大な短期債務というものが絶えず撹乱要因になっているというところであろうかと思います。日本の場合には御存じのような自由円勘定というものもございますけれども、これは金額はそれほど大きくはないわけでございます。  将来、一体どういうふうにそういうふうな事態において対処するのかということでございますが、私どもはいまの事態ではやはり現実を見て、これはどういう性質の売りであり、買いであるかということで判断をしてまいらなければならぬわけでございますが、たとえばイギリスにおいては先物相場にイギリスの通貨当局は介入をするというふうなことも行なったことがございます。行なわなかった時期もあったわけでございます。これはやはりそのときそのときに、その情勢に従ってそういうふうなことが必要であるかないか、あるいはそういうことをやってかえって状況を悪くするということもあり得るわけでございまして、それはそのときの状況判断によってそのつど対処してまいるというのが正しい姿ではないかと思います。
  60. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣にお伺いしますが、いまロンドンの市場が閉鎖されておる。これはどれくらい続くという見通しでありますか。
  61. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この見通しは、いま私どもいろいろな情報を集めておりますが、正確な見通しはつきません。十六日の国際会議によっておそらく見通しがつくのだろうというふうに考えております。
  62. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これからアメリカは、金がこういう事態になってきまして、ドルも非常に少なくなってきた。この辺でドルと金との交換を停止するということはありませんか。
  63. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 停止の事態は、私はなくて済むのではないかというふうに考えております。
  64. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これを停止しないでおるというのは、私非常に甘いと思うけれども、まあ停止しないでいるとすれば、日本にも金プールに参加しろ、こういう要請が出てきませんか。日本の場合は金をほとんど持っていませんので、非常に少ないけれども、これはどうですか。
  65. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 金プール参加の要請はただいまのところございませんし、現在金の保有状況から見て、あるかどうか疑問だと思います。
  66. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、要請があった場合に日本政府はどうされるか、大蔵大臣からお答え願いたい。水田国務大臣 おそらく要請はないだろうと私は思っております。
  67. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 政府の見通しは、先ほど来話がありますが、いままではずれとおしでありますから、見通しでおっしゃらないで、あったらという質問でありますから、そのときにどうするかというのをやはりここではっきりしておいてもらいたい。
  68. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まあいまの事態であったらばという仮定の質問もあまり望ましいことでないと同様に、またこのときには日本はこうするという答えも、いまのところではまだ早過ぎると思います。
  69. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もうすぐじゃないですか。そこへもってきていまのようなこういう情勢の中で、しかも日本は金を三億五千万ドルくらいしか持ってない。いままでアメリカの言うことを聞いてきたのか、非常に少ない。こういう中で、おそらく参加はしないだろう、断わるだろうと私は思っておるのだけれども、その辺はここまで事態が来ておればはっきりすべきではないですか。それもできないですか。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 断わるだろうとあなたは思うかもしれませんが、私のほうは、おそらく参加しろということにはならぬだろうと思っております。
  71. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それならもう少し前へ戻りまして、アメリカが金の交換を停止するという事態が、いろんな新聞とか外国の報道等によればもう百億に近くなれば当然交換の停止だろうということは、もう新聞等では常識じゃないですか。その常識的なことを私はお伺いしておるのだけれども、皆さんの政府のほうでは、これはそういう事態にならないだろう、こうおっしゃるのですね。そういう見通しはしょっちゅうはずれるけれどもも、そういうときにやはり何がしか政治責任というものをお感じにならないですか。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、そういうことは予想されていたり、いろいろのことはございましたが、きょうアメリカが法定金準備率の撤廃をしたということでございますので、これによって、いままで考えられておった不安の一つは除かれたということになろうと思います。
  73. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 法定準備率を撤廃したということは、いま百十四億ドルか何かの金を金買いに動員できるということだけでしょう。しかし、金がなくなるということはアメリカ自体も困ることなんでしょう。また、あまり少なくなって六十億や七十億ドルになってから金価格を引き上げてみたところで何にもありがたみがなくなってしまう。そういうことから、百億ドル近くになれば、当然交換の停止あるいは金価格の引き上げ、平価の切り下げという事態になるだろうということは、もう世界の世論じゃないですか。もう常識じゃないですか。それを天蔵大臣は否定をされるわけですか。日本の大蔵大臣一人否定をされるということになるのじゃないですか。世界の常識からはずれてそういう見解を保たれるには、何かよほど確固たる理論がなくてはいかぬと思うのですが、その点はどうですか。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういういろんな問題がありますからこそ、アメリカ政府は再三にわたって声明して、どういう事態が起こっても、最後の一オンスまで自分はこの売りをとめることはないということを言っておるので、アメリカがあれだけ声明したことでございますから、そう簡単に停止するというような措置はおそらくとらぬでしょう。しかし十六日の国際会議においては、あるいは市場再開のために、規制を考えるとかいろんなことは、国際間の相談があると思いますが、基本的には、私は、アメリカが最初から声明している線を最後まで貫くだろうというふうに予想しております。
  75. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それならば何でロンドンで市場閉鎖をしたのですか。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 とにかくこういう混乱になってきたのですから、対策を立てるまで一時市場を休場にするという措置は、私はやはり一つの適切な措置じゃないかというふうに考えます。
  77. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 アメリカの言うとおりに、最後の一オンスまで金買いに応ずるという態度でいけは、何もロン、ドン市場、それほど混乱しないでもいい、その辺でブレーキをかけようということで閉鎖をしたのだろうと私は常識的に考えるのですが、そういうことからいけば、アメリカが言っておるからだいじょうぶだというのでは、何か日本の大蔵大臣の見識としては私はどうもいただけないのですが、どうなんですか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 アメリカひとりの考えでなくて、国際協力というものが現にありますし、この協力がくずれていない限りはそういう事態にはならぬというふうに私は考えておるわけでございまして、いまのところ国際協力がくずれていません。
  79. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、ロンドンの市場閉鎖という事態は、やはりそういうことの前ぶれといいますか、準備だというふうに受け取るのがほんとうではないのですか。  それならこの問題、もう最後に、大臣は、日本の国民にはどういうことを要望するというか、やはり政府の、大蔵省としての態度というものを、もう一度ここで明確にしてもらいたい。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私に要望せよということでございましたが、いままでのずっといきさつを見ますと、対策というものが早くとられて、不安の原因をなくすることが一番大切で、たとえばアメリカのいまとっている対策も、もう一カ月くらい前にとられるということでしたら、この混乱はなくて済んだかもしれませんし、また、カナダの公定歩合の引き上げの事情を見ましても、税制その他のことについてまごつきがあったということがいろいろ不安の原因を起こして金が逃避する、そして七分の公定歩合をきめざるを得なかったとか、イギリスしかり、各国のあれを見ますと、こういうときにはえてしていろいろなルーマーが飛んで、それがいろいろ予期しない事態を招くということがありがちでございますので、そういう不安原因を除去するということが一番必要だと思います。そういたしますと、私は、日本においても国内政策をはっきりして、世界にも安心を与えるし、国民にもはっきりしたいろいろの考え方を持ってもらうということが基本的には一番大事だ、そういう意味からいいまして、今年度の予算が早く成立して、そして国際収支改善の道を早めるということについて、政府、民間が協力するということが円に対する一番いい擁護の方法であるというふうに私は考えます。あえて要望しろというのでしたら、私は日本国内政策を早くはっきりして、もやもやした変な空気を国内に置くということが一番弊害があるというふうに考えます。
  81. 只松祐治

    ○只松委員 いま御要望がありましたように、本委員会でも重要法案が山積をいたしておる。こめ問題をまだ論議したいわけですが、あなたたちのそういう要請もありまして、本来に戻して議案審議をしなければならぬ。そこで私たちはこういう重要な問題を、しかしほうっておくわけにいきませんので、月曜日でも金融小委員会を開いてひとつ審議したいと思っているのです。ひとつ大蔵大臣にもぜひ時間をさいて御出席をいただきたいと思います。  それから、さっき十六日に国際会議がある、各国の中央銀行の総裁が集まるというようなお話でございましたが、宇佐美日銀総裁においでいただきたいと思っているわけですが、日本から日銀総裁がおいでになるのですか、どういうことになっているのですか。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 十六日の会議には、日本には招待が参っておりません。  それからさっきのお話でございましたが、誤解があるといけませんのでもう一ぺん申しますが、大蔵委員会などは非常に審議を順調に願っておりまして、審議がおくれているとかなんとかということはございません。予算のおくれについても、これはいろいろ理由があって、野党が悪いとか与党がどうとかいうことではございませんが、こういう事態になってきました以上は、国内の予算とかそのほか財政金融政策というものがここらではっきりきまるということが特に重要になってきたということを訴えたわけでございまして、皆さん方がサボっているということを言ったわけではございませんから……。
  83. 只松祐治

    ○只松委員 それでは、これだけ重要な問題にオブザーバーもだれも派遣しない、こういうことでございますか。オブザーバーを派遣しますか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今月の未に特別引き出し権の問題を中心とした十カ国の蔵相会議が開かれることに一応予定がなっておりまして、これがどうなるかわかりませんが、そういう問題もございますので、今度の十六日の国際会議はおそらく金問題を中心とした金プールの諸国の会議じゃないかというふうに考えます。そういたしますと、日本はいままでの例から見て、ここには参加しないということでございますから、結局日本は参加しないのじゃないかというふうに思っています。
  85. 只松祐治

    ○只松委員 いま関連して問題を一、二聞いておきたいと思いますが、こういう緊急の事態ですから、そう全部予測することは困難だろうと思います。それぞれの国力がそれぞれの手を打つわけですが、アメリカはもう金準備率の撤廃をした、連邦銀行で〇・五%の公定歩合の引き上げをした、これ以外に手は打たないだろう、大体これで十分だ、こういうふうにお考えですか。あるいはもっと上げて、一分引き上げるのではないかという当初の予測もありましたが、まだこういう状態が続けば米国としては次にいろいろな手を打つだろう、こういうふうにお考えでございますか。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはアメリカのことですからよくわかりませんが、アメリカとしてはやはり国際協力をする各国の要望も、大体アメリカが支出を思い切った削減の措置に出るか、しからずんば増税の措置に出るか、まずやはりアメリカ自体がそういう財政政策をとってもらいたいということは全体の希望でございますが、これはなかなかむずかしいようでして、金融政策の強化という方向へアメリカは出てきましたので、必要によってはまたこの公定歩合を上げることがあるかもしれませんけれども、そうじゃなくて、私どもとしてはいま出ている増税案を、財政政策のほうの処置をやはりアメリカに希望しておりますが、これはどっちのほうに比重を置いた政策アメリカがとってくるか、これはわかりませんが、いずれにしろ、アメリカアメリカ自身国内政策をやはりはっきりさせてくると思っております。
  87. 只松祐治

    ○只松委員 そうすると、その事態によっては、日本にまだこれ以上のいろいろな問題を及ぼしてくる、こういうことが当然に予測されますね。そうすると、アメリカがこういう強硬策なら強硬策、対外的な手を打つ、あるいは国内的な手を打つ、そういう幾つか仮定をされると思いますが、さっきの阿部君の質問を見ましても、いままでは、出てきたあとで、後手後手と対策を打っている、こういうことが非常に多いようでございます。特に本委員会においてお答えになる場合には、きわめて楽観的な見通し、国民を安心させるという政治的な配慮もあるのかもしれませんが、とにかく楽観的な見通しが多い。そういうことではたいへんに困ると思います。日本に及ぼしてくる影響というものについて、関連でございますから、詳しくは必要でありませんから、私もそう追及はいたしませんが、おもな点だけひとつここでお話をしておいていただきたいと思います。
  88. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 日本といたしましては、やはり何といっても国際通貨制度の安定というのが一番必要なことでございます。アメリカ財政金融政策の運用によってドルの安定を期せられれば、それによる利益は非常に大きいと思います。しかし反面、御指摘のとおり、たとえば公定歩合を上げる、またさらに金融政策を強化するということになれば、金利が上がってくるという問題、あるいは財政政策の活用によって歳出の削減をやる、あるいは増税による購買力の吸収をやるというふうになれば、アメリカ経済がスローダウンを来たす、これが一面ではアメリカ国際収支のために必要でありますが、それが世界経済にもだんだん波及してくるという意味で、一面非常にいい面と、一面日本経済としては、国際環境がきびしくなっていく面と両方ございますから、的確にどうなるかという見通しを立てることはもちろんむずかしいと思いますけれども、方向としては、現在、あるいは国際環境としてはきびしくなっていくであろうということも考えられる。そういう場合に、日本としては国際収支をどういうふうに早く均衡させるか、これについては十分考えていかなければならぬと思います。
  89. 只松祐治

    ○只松委員 これで終わりますが、俗に言って、世界的なデフレ傾向というのがこの結果出てくるのが一番危惧をされますね。だから、そういうことも含んでひとつ十分御検討いただくとともに、できるだけ早く私ども委員会を開きたいと思いますので、そのときまでにそういう対策をできれば御研究の上ひとつ御出席をいただきたい、こういうことをお願いしまして私の質問を終わります。
  90. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣は先ほど対策としては、いい予算だから、この予算を早く通してくれ、そうすれば対策はすべて成り立つというようなお話ですが、予算自体に対して私たち意見を持っております。もちろん、いままで予算委員会で言われてきましたように、むしろ四十三年度予算もまた刺激型の予算ではないか。また、いまの設備投資の状況を見ておっても、鉄一つとってみてもなかなかたいへんな設備意欲であります。こういうところからいって、いまこれだけ大きな国際的な問題が起きておる中で、何か政府の打つ手というか対策というものが非常に手ぬるい。ただ一筋に、アメリカがよくなってくれる、アメリカが何とかしてくれて、ドルが安定してくれるだろうという神頼み程度のことしか私たちには感じられないですね。そういう点で、やはりもう少しきちんとした日本の立場というものも堅持しつつ見ていかないといかぬのではないか。まあ二九年恐慌のときのいろいろな歴史を見ても、その直前まで、各国の大蔵大臣というのはみんな楽観論を吐いておる、学者もなかなか恐慌がくるとは言ってない、そういう時代にああいう恐慌になってきた。だから、対策の立て方がみんな手おくれになっておる。そういう点で、私はこの事態、もうここまで来ておる事態ですから、もう少し問題を深刻に考えて、そうして客観的な分析の上で政策をお立てになる必要があるのではないか。アメリカだけをたよりに、アメリカが何とかするだろうということだけではこの事態に対処する日本政府の態度ではないだろう、こう考えますので、その辺ひとつ十分な対策を立てていただきたいということをお願いして、この問題を終わります。
  91. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまニューヨークから電話連絡があったそうでございますが、それによりますと、先ほどのお話の十六日のワシントン国際金融会議は、金プール国の中央銀行総裁だけが出席するということにきまったそうでございますので、日本は出席いたしません。
  92. 田村元

    田村委員長 午後一時三十分再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十九分開議
  93. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  94. 兒玉末男

    兒玉委員 大蔵省のほうにお伺いしたいと思うのですけれども、いま提案されております関税定率法等の一部を改正する法律案の中において、特にコーンスターチに関する面についてお伺いしたいのでございます。  御承知のとおり、昨年五月、ジュネーブにおけるケネディラウンドの成立の過程におきまして、当初日本側が考えておった以上に、関係各国の自国の保護政策という立場に立ついわゆる保護貿易主義的な色彩が依然として強かったと思う。これに対して日本側の主張というのは、各省間の調整なり、また業界等の態度というものが非常に後手後手の感を催したというようなことを新聞論調としても取り上げておるわけですが、こういう情勢の中にありながら、関税定率法の改定というものは問題が非常に大きいと思うのですけれども、このケネディラウンドの成立過程における、このような諸外国のいろいろな出方というもの、こういう情勢というものをどういうふうに判断されておるのか。この点、まずお伺いしたいと思います。    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席
  95. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ケネディラウンドの交渉ですが、基本的にいいまして、日本のような国は貿易を振興していくということが非常に大切でございます。御承知だと思いますけれども、その面で、ガットとの交渉で非常に苦労してまいったわけであります。これで一番困りましたのは、日本に対して差別待遇をするということであります。そのほかにも、ガット日本はあとから加盟いたしました。そして、当時日本商品競争力というものは相当強いということを外国がいろいろと知っておりましたものですから、したがって、日本との交渉はなかなか慎重でありました。しかしそういう中で、こちらもこういう商品関税を下げるから、相手国も下げてください、お互いにこういう交渉をするわけでございます。そこで、実際のやり方で申しますと、日本がある国と交渉するとしますと、こちらがこういうものを下げる、それで向こうもこういうものを下げる、そして日本の下げ方が足りないと思うと、向こうも一ぺん出したものを一部引っ込める、お互いにそういうことがございます。そこで、日本アメリカが交渉する。その次にイギリスと交渉する。そのときに、ガット関係は、加盟国には無差別に譲許が提供されます。アメリカに対して譲ったもので、反射的にイギリスも利益を受けるということがございます。そういうことで、お互いにそれがあるわけです。そういうことと見合いながらまた話を進める。そういうことで、ガットの交渉はお互いに譲り合って関税を下げるということになるわけです。そうすることによって、基本的には、特に日本のような貿易立国の国は利益が大きいという考え方でございます。  ただし、実際問題として、関税を下げていきますときに、どこの国も、当然ですが、国内産業の保護ということを考えていかなければいけない。そこで、抽象的にいいますと、こちらが関税を下げますと、相手のほうも関税が下がるわけですから、国内産業で、輸出のほうはふえるわけですけれども、しかし、こちらが関税を下げると、今度輸入の面でどういう影響が及ぶかということを考えますときに、一番心配になりますのは、中小企業関係がどうなるか、それから農林水産の関係がどうなるかということであります。そういうことを心配しまして、そういう面でこの程度ならば忍べるだろうという限度にとどめる、そういうことでケネディラウンドの関税交渉もまとまった、こういうことになっています。
  96. 兒玉末男

    兒玉委員 いずれにしましても、結局、日本は工業先進国という立場からの対策なり、あるいは全体的な情勢分析等が相当おくれたために、かなり守勢に立たされた。宮澤長官も非常に奮闘しておりましたけれども、結果的にはやはり日本が押されている。その一つのあらわれとしまして、特に対日差別のひどいイギリス、フランス、イタリアあるいは西ドイツ等が依然として非常に強い姿勢で日本に臨んでおる。しかも、先般のイギリスの一五%の課徴金等の問題、こういうふうな情勢というものは、どういうふうに認識をされておるわけですか。この点、お聞かせいただきたいと思います。
  97. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ケネディラウンドのときに特に問題になったのは、関税だけ下げても、相手の国が輸入制限をしておっては、輸出をふやすという効果は何もないということでございます。それで、そういう非関税障壁と申しますか、関税以外の障壁をどうするかということがだいぶ議論されました。この面はなかなかむずかしい問題がございまして、非常に簡単に申しますと、そういう面ではそれほど各国の間でまとまらなかった。したがいまして、この問題はガットで引き続き検討を続ける、こういうことになって一おります。  非関税障壁の撤廃に関しましては、実は一つ一つの国をくどき落とすということが必要でございますので、これは別途また各国にいろいろと働きかけておりまして、以前に比べまして対日差別待遇の非関税障壁というものは非常に減ってまいりました。しかし、非常に残念なことに、まだ残っております。関税だけで申しますと、日本はほかの国に比べまして大きな譲歩をしておって得るものが少なかった、そういうことは決してないと思います。また、どうも日本のほうは得るところが多かったのじゃないかというふうに見られておりますけれども、私どもは、外国では別に手を打ったのだから、それはお互いに得るところは同じじゃないか、日本は別にそれで借金してはたまりません、同じだと言っておりますけれども、根本的にいいますとこれは成り立つと思うのであります。日本のような貿易立国の国では、各国がお互いに同じくらいに関税を下げても、長い目で見れば利益が大きい、こういうことはいえると思います。
  98. 兒玉末男

    兒玉委員  コンスターチの問題に入る前に、もう一つ私は認識したい問題があるのです。  今回アメリカは、貿易収支が黒字であるという状況であるという状況があらわれながらも、ドル防衛の一環として、国境税あるいは五%の課徴金制度をやって、自主的ないわゆる輸入制限といいますか、非関税障壁をより強化していく。しかも自由貿易主義から保護貿易主義へと、ケネディラウンドの提唱をしてきているアメリカがこういう措置をとるということは、まさに逆行するやり方じゃないか。今回の関税法の改正にあたって、特に日本と最も取引額の多いアメリカのこの措置に対して、どういうふうな対策なり見解をお持ちであるか、この点をお伺いしたいと思います。
  99. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先生がおっしゃいましたように、いままで、戦後の世界の貿易の自由化というのに、アメリカは連隊旗手のような役割りをしてきております。したがいまして、それは、日本のような国にとっては、先ほど来申し上げましたように、貿易の自由化、それから関税の引き下げということは、長い目で見ると非常に利益がある。そういう点で、国際通貨基金とか、ガットとかいうものがそういう考え方に立っている。そして、そこに各国協力しているわけですが、特にアメリカがそういう点で前向きで努力してきた、これは非常に都合がよかったわけであります。ところが、先生おっしゃいましたように、今度、国境における税調整とか、あるいは輸入課徴金とか、アメリカのほうでも案はまとまっておりませんけれども、要するに簡単にいいますと、貿易面の障害を高くする、それから輸出にボーダータックス・アジャストメントで戻しをするということになりますと、正常でない輸出を促進する効果を持ちます。これは非常に好ましくないということで、これが、戦後ずっと流れてきました正常な世界貿易の拡大という方向を逆転するという契機になることは非常に心配でございますので、アメリカドル防衛策の中で、特に貿易面の障害という問題について、ヨーロッパ各国現状では強く反対をしております。日本もあらゆる手段を通じて向こうに、こういうものを思いとどまるようにということを話しているという段階でございます。  もしそういうことをしたらどうするかということでございますが、これは予算委員会でもたびたび閣僚に御質問があったわけでございますけれども、いまの段階では、とにかくやめてくれということに全力を注いでおる、そういうことでございます。
  100. 兒玉末男

    兒玉委員 次に、食糧庁のほうにお伺いしますが、本年度のでん粉の需給関係並びに今回の関税定率の改定によって、国内産でん粉等の価格調整等については、現在出されておるこの原案において、十分その目的を達成し得る可能性といいますか、それがあるのかどうか、需給関係等を含めて、食糧庁の見解を承りたいと思います。
  101. 荒勝厳

    荒勝説明員 お答えいたします。  いわゆる四十二年度のでん粉の需給の見通しでございますが、四十二イモ年度は大体において、われわれは年間を通じまして、去年の十月からことしの九月までのでん粉年度という関係で、百二十七万トンの総合需給バランスを前提にして考えておる次第でございます。それに対しまして、昨年は大体百二十万トンということで、四十一イモ年度は需給が均衡しておった次第でございます。  それで少し数字に入りまして、内訳を申し上げますと、カンショでん粉につきましては、四十一イモ年度は五十四万トンの供給があった次第でございますが、この四十二イモ年度、ことしは西日本地方の非常な干ばつの影響を受けまして、相当減産いたしまして、現在まで食糧庁として把握しております数字が四十九万五千トンというふうに見込んでおる次第でございます。その四十九万五千トンのうち、内訳といたしましては、約四十万六千トン、これをおおむね調整販売計画にのせまして価格の安定を期してまいりたい、こういうふうに理解しております。その残りの八万九千トンは、いわゆる自由販売で、自由にいま売られていくものでございます。バレイショでん粉につきましては、昨年の十三万トンに対しまして、北海道が非常な好天気に恵まれまして、大豊作になりまして、一応二十万八千トン、これも大体数字的には確定した次第でございます。そのうち調整計画といたしまして販売計画にのせるものが十四万トンでございまして、その他自由販売に回るものが六万八千トンというふうに見込んでおります。さらに小麦粉でん粉というのができるわけでございますが、これは別に特に生産するという過程のものではございませんで、いわゆるふだとか、あるいはそういったものをとります副産物としまして、小麦粉からでん粉がバイプロダクト、いわゆる副産物で出まして、約七万トンを見込んでおる次第でございます。この小麦粉でん粉につきましては、昨年は約八万四千トンという実績が出ておる次第でございます。それからさらに外でんは昨年四万五千トンの輸入を、去年はバレイショでん粉が非常に不足したものですから、ポーランド方面、東欧諸国から多少でん粉を入れました関係もございまして、四万五千トンでありましたが、ことしは多少需給が緩和しておりますので、外でんは二万七千トンを見込んでまいりたい、こういうふうに大体需給上は見込んでおる次第でございます。  それに対しまして、大体この上半期の十月から三月までの一部推定を見込むわけでございますが、カンでんにつきましては、二十二万六千トンの大体の消化が見込まれるのではなかろうか。その二十二万六千トンのうち、十五万六千トンが大体調整販売計画にのって、なまいもがほとんど消化されてしまった。なまでん粉でございますが、なま粉は十五万六千トンが消化されてしまった。これは大体コーンスターチとの抱き合わせによってほぼ達成したような次第でございます。その他一般販売では、先ほど申しました八万九千トンのうち、約七万トンがやはり大体なま粉として消化された、こういうふうに理解しておる次第でございます。バレイショでんぶんについては二十万八千トンのうち、十一万四千トンが大体消化されたのではなかろうか。そのうち調整計画としては約五万七千トン、それから自由販売としては約五方七千トン、こういうふうに販売された。  それからコーンスターチにつきましては、先ほどちょっと説明を漏らしましたが、百二十七万トンの需給見込みから逆算して、国産の供給量から引きますと大体四十七万トンのコーンスターチが本でん粉年度で必要となるのではなかろうか。このうら上半期で約二十三万トンを、大体トウモロコシからでん粉を生産して国内に供給した、こういうふうに判断をするわけでございまして、二十三万トンのうち、いわゆる一般の固有用途に大体十二万トン、それからいわゆる糖化用の抱き合わせに八万トン、それからわれわれ二五%の関税をかけて、いわゆるなまでつくれるなまコンというのが大体三万トンぐらいということで、大体二十三万トンを予定しておる次第でございます。  したがいまして、いま申しました数字から逆算して考えますと、この下期四月から九月末まで、この関税定率の改定によりまして新しいコーンスターチの問題が出てくるわけでございますが、下期の需給事情を簡単に御説明申し上げますと、カンショでん粉につきましては、先ほどのあれで二十六万九千トンを消化しなければならない。そのうち大体二十五万トンを調整販売計画にのせていく、自由に処分されるものは一万九千トン、こういうふうに判断しておる次第でございます。バレイショでん粉につきましては、残る下期で約九万四千トンでございまして、そのうち八方三千トンが調整販売の対象でいろいろ調整してまいりたい。自由になるのは、一万一千トンが自由な処分に回されるのではなかろうかというふうに理解をしております。それからコーンスターチにつきましては、先ほど申し上げました年間四十七万トンのうち、上期で二十三万トンを消化いたしまして、下期で二十四万トンのコーンスターチを消化する。そのうち一般用、いわゆる固有用途に振り向けるものを十一万トンというふうに判断しておる次第でございまして、いわゆる糖化用に抱き合わせ調整販売で回されるものが約十三万トン、こういうふうに考えておる次第でございます。  以上、本年の大ざっぱな需給の見込みを申し上げたわけでございますが、これによって価格調整の見込みはどういうふうに考えておるかという御質問でございますが、先ほど申し上げました数字のうち、カンショでん粉につきましては、下期で二十五万トンを消化すると申し上げましたが、そのうち約十五万トンを抱き合わせの対象にいたしたいというふうに判断しております。それからバレイショでん粉につきましては、従来あまり糖化用には回っていなかったのでございますが、八万三千トンのバレイショでん粉の消化すべきもののうちから約二万トンを糖化用に相当無理して回すということで、糖化用に二万トン、合わせまして、国内産イモでん粉十七万トンを糖化用にコーンスターチとの抱き合わせ販売の対象にいたしたい。また、コーンスターチにつきましては、先ほど申し上げましたように、本イモ年度の対象といたしましては、十三万トンを甘味用のコーンスターチとしてゼロ%の関税を受けた安いものを適用いたしまして、先ほど申し上げましたカンでんの十五万トンとバでんの二万トンと抱き合わせしていわゆる平均価格を安くいたしまして国内の消化に充てる、こういうふうな結果によりまして、われわれといたしましては、この国内産のイモでん粉につきましては、安いコーンスターチを相当大量に調整販売用に回すことによりまして、糖化用に相当消化されましてことしのでん粉年度は終えるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  102. 兒玉末男

    兒玉委員 いろいろと今後の問題についてお聞きしたいわけですけれども、実はきょうの日経新聞によりますと、現在食糧庁の考えているこの改正案に反対をして、いわゆる後発の十三社の代表が、いわゆる一次税率の独自用途の十一万トンのうち、三万トン程度後発十三社にも割り当てろ、こういうことが発表されておりますが、もしこういうことがまかり通るとするならば、国際的な諸情勢の中にあって、せっかくの定率の改定ということの意味が全くなくなる。いま二部長が説明されましたような価格調整の意義というものは抹殺される、こういうことは懸念が十分されるわけでございますが、この辺の取り扱いについてはどういうふうな措置をとるお考えなのか、明らかにしていただきたいと思います。
  103. 荒勝厳

    荒勝説明員 きょう日本経済新聞に、後発十三社が三万トンばかりを希望をしておるという、あるいはそういうことで陳情をしているという記事が書いてありましたが、私たちのほうは、具体的に三万トンというお話は、まだあまり現在の段階では聞いていないのでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、政府、食糧庁といたしましては、いわゆることしの下期のコーンスターチの調整販売としては、甘味用にいわゆるゼロ%のトウモロコシでできるものを十三万トン予定いたしまして、一〇%の関税のかかるいわゆる一般固有用途を十一万トンに考えている次第でございます。十一万トンの固有用途でございますが、このうち九万トンは、いわゆるタリフクォータ方式といいますか、約三年ほど前にこういう制度が出発いたしました当初のときに九万トンということでワクをスタートしておりますので、一応九万トンは従来からの割り当て方式で臨んでまいりたい。それからその三年間に増加いたしました二万トンについて、しかるべき適正な方法によりまして二万トンがある程度公平に配分されるように努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  104. 兒玉末男

    兒玉委員 いま主張されている点は、特に私はぜひこれを実行していただきたい。そうしなければ、せっかく今回の、大蔵省等でも非常に苦労をして改定しようとすることの意味が全く失われる結果になるということになりますので、この点ひとつ食糧庁としてはがっちり受けとめてもらいたい。  次に、私は御質問申し上げたいのは、先ほど二部長から説明がありましたが、カンショの価格でございますけれども需要はどんどん増大をしている。しかも生産量は、いま御説明がありましたとおり、五十四万トンから、干ばつその他の天候の状況もあって、四十九万五千トンに、約四万五千トンの減収である。こういう情勢から考えますならば、むしろ価格は高くなるのが常識ではないかと思うのです。こういうようにむしろ減収にもかかわらず価格が基準価格以下に下がった、こういう市況というものをどういうふうに判断されるのか、この辺をお聞かせ願いたい。
  105. 荒勝厳

    荒勝説明員 確かに国内産のイモでん粉のみをもって需給をいたす、あるいは外国産を原料とするコンスとかあるいは外でんの極端な輸入制限をするという前提に立てば、あるいはことしは非常に値段が高騰して、一応形式的には農家サイドから見れば非常にいいということになるかもわかりませんが、こうしたでん粉が従来は水あめ、糖化用が主たる用途先でございましたが、最近の産業の発展に伴いまして、でん粉に対する需要が開発されたといいますか、非常にいろいろ多岐の目的に使われるようになりまして特にこの固有用途の系統のコーンスターチにつきましては、将来今後どういう方向にでん粉コーンスターチが使用されていくか、われわれ役人にはわからないようなくらい非常に前途の明るい問題を含んでおる次第でございますが、そういう関係もございまして、輸入を極端に制限するというふうな措置は従来からとってまいっていない次第でございます。それで、われわれ過去三、四年の経験値からいたしまして、大体年々五%ずつの需要増を見込みまして、その範囲内において国産のでん粉の不足分をいわゆるコーンスターチによって置きかえていく、あるいは場合によってはタピオカ等にも置きかえるというような制度できておる次第でございます。  それで、需給上国内で非常にでん粉が逼迫するようなかっこうにはならないように指導してきておりますが、特に輸入のトウモロコシによりますコーンスターチにつきまして多少問題が残っておりますのは、過去三年間の平均ではトウモロコシの輸入価格が比較的高うございまして、こまかい計算は別といたしまして、大体平均しまして六十八ドル前後の価格輸入されておったように私は理解しておりますが、昨年の十月以来国際的にトウモロコシが豊作だったせいかとも思いますが、非常に低落してまいりまして、特にアフリカ諸国の後進国のトウモロコシの生産価格が安くなり、その結果、またトウモロコシ用にはホワイトメイズというのを使っておりますが、これが安い値段で日本に入って参りまして、こういう関税の暫定措置をお願いするような結果になった一つの原因になっておりますが、六十ドル、場合によれば五十九ドル何セント、平均しまして六十ドル前後の値段に昨年の年末以来続いておりまして、こういうふうに輸入価格が安いということで、したがってできるコーンスターチも比較的安い値段のコーンスターチができる。したがって、国内産のイモでん粉の足を引くようなかっこうになっているのじゃなかろうか。一方、われわれ政府のほうで立てておりますこの農安法に基づきますでん粉の基準価格は、年々法律改正等のおかげを受けまして、多少基準価格はパリティに基づいて上げざるを得ないかっこうになっておりまして、基準価格は上がっていっておりますが、実際の取引価格は多少コーンスターチの影響を受けまして安値になっておる。その辺を、こうした安いコーンスターチと比較的高い国内産のイモでん粉をプールすることによりまして、国民にはある程度平均した安定的な価格で今後供給してまいりたいこういうふうに判断いたしておる次第でございます。
  106. 兒玉末男

    兒玉委員 再度食糧庁にお伺いしたいのですけれども、一番私が懸念をしますのは、非常に御苦労いただきまして価格調整で消化をはかっていくという御意見でありますけれども、先ほど二部長が誤明されました一般向けのカンでん約十万トン、それと、これは大体類推されますが、五万トン前後のバでん、これは情勢いかんによっては、やはり農安法に基づく政府買い入れ措置をしなければいけないような最悪の事態ということも十分予測されるわけでございますが、その辺の見通しといいますか情勢といいますか、それはどういうふうに分析をされておりますか。
  107. 荒勝厳

    荒勝説明員 先ほど御説明いたしましたように、カンでんにつきましてはこの下期で二十五万トン消化しなければならない。そのうち十五万トンは甘味用の抱き合わせである。その他の残りの十万トン、これは一応現在の段階では抱き合わせの対象にいたしませんでおりますが、カンショでん粉につきましては、従来からそれぞれ非糖化用に相当固有用途といいますか用途先を持っておられまして、この抱き合わせにします十五万トンはあくまで水あめあるいはブドウ糖等の、いわゆる糖化用に予定いたしておりますが、糖化用以外の固有用途につきましては、当然国内的にまたカンショでん粉でなければならないそれぞれの用途先も相当ございますので、これはいまの段階では、過去の経験値によりまして年間十万トン前後のカンでんは非糖化用に当然向けられて販売されるものというふうにわれわれは理解している次第でございます。  それからまたバでんにつきましても、九万四千トン、先ほども申し上げましたように残っておりますが、これのうち約四、五万トン、四万トンと五万トンの間くらいでございますが、ことしあるいは余るのではないか。といいますのは、これも過去の経験値でございましてはっきりしたことは申し上げられないのですが、バでんの大体の用途は十五万トンであるというふうに過去何年間かいわれてきておりますが、ことし二十万八千トンのバでんができました関係もありまして、約四、五万トンのバでんが余るのではなかろうか。二十万八千トンうのち十五万トンを引きますと、大体五万トンばかりが残るということで多少心配している向きもあり、またわれわれも相当これについてはそういうこともあり得べしという判断に立っておりまして、特にバでんの用途を、ことしにつきましては臨時的な強行措置として何か開発せねばならないということで、先ほど申し上げましたように、約四、五万トンのうち、現在の段階で、従来バでんは水あめなどいわゆる糖化用にはほとんど回していなかったのでございますが、二万トンほどをコーンスターチと抱き合わせによっていわゆる水あめ業者のほうに引き取らせるというように強行的にやってまいりたいということで、大体現在の段階でこの話はついておるというふうに思っております。  それからさらに、このバでんは最近の年次ではほとんどアルコール用、蒸留酒用には向けないということになっておりましたが、ことしは相当余るのではなかろうかということで相当大量のものを、コーンスターチでは抱き合わせというわけにはまいりませんので、本件につきましては緊急的に糖蜜を割り当て輸入いたしまして、バでんを引き取ったものに糖蜜を相当量割り当てる。それからまた、グルタミン酸ソーダのほうでございますが、これにも約一万五、六千トンくらい引き取らせる。これにつきましても同様に糖蜜を抱き合わせ調整販売いたしまして、コストを、ある程度バでんを引き取っても、グルソのほうから見れば逆算的に採算の合うところへ安い糖蜜をいわゆる調整販売することによりまして消化いたしてまいりたい。こういうグルソ、高級アルコールあるいは糖化用に約四万五千トン前後を導入することによりまして、バでんの需給はおおむね安定するのではなかろうかというふうに判断している次第でございます。  したがいまして、先ほど児玉先生のほうからも御質問がありましたが、まあほうっておけばカンでんについて十万トン、バでんについて約四万五千トンばかりのものがあるいは余るかもわからぬということに数字的にはなるわけでございますが、われわれとしましては、政府としてはあらゆる努力を払って農安法に基づく食糧管理特別会計の買い入れにならないように、あらゆる手段を講じてこれを何とかして本イモ年度は切り抜けてまいりたい、こういうふうに現在のところ考えておる次第でございます。
  108. 兒玉末男

    兒玉委員 大蔵省並びに食糧庁にお伺いしたいのですが、今回の改定の中で、従価税としてキログラムにつき八円六十銭、トン八千六百円の関税をかけることになっておりますが、現実に南アフリカ等から輸入するホワイトメイズというのは、常識的にもまたいままでの実績から見ても、特に現在試算している六六%よりも少なくとも一、二%は歩どまりが高い、こういうことが指摘をされておるわけでございます。そういたしますと、特に今回の調整の意味というのは、私はこの程度の金額ではたして対抗できるかどうかという懸念を非常に持つわけでありまして、特に歩どまりとの関連から考えますと、場合によってはこの一、二%程度が無籍もののコーンスターチとして出回る可能性といいますか危険性といいますか、その点も十分考えられるわけでございますが、この辺の試算についてはどういうふうな分析をされておりますか、大蔵省と食糧庁の御見解を承りたい。
  109. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この関税率をきめますについては非常に悩んだのでございますが、それは先ほどもお話がございましたように、いまこういうふうに世界じゅう関税を下げていく、特に後進国も、おくれているものについては関税を下げる、上げるというのはもってのほかだという状況の中で、これは事実上は上げるという形になります。そこで必要最小限度に上げたい。ただ、その必要最小限度のところがどこかということで非常にわれわれ苦心をしまして、農林省と相談してこういう案をきめたわけでございますが、関税率審議会では、これは非常に天下の大勢に逆行するということでたいへんおしかりの意見が多くて、ようやく附帯決議つきで通してもらったというようなものでございます。  数字の算出の基礎につきましては、食糧庁のほうが専門家でございますので、食糧庁の二部長から説明していただきたいと思います。
  110. 荒勝厳

    荒勝説明員 ただいま、歩どまり等の誤差があって、この誤差の分をどうするかという御質問でございますが、確かに最近、アメリカから入りますトウモロコシにつきましてはいろいろ來雑物も多く、またイエローメイズで黄色うございまして、歩どまりもあまりいいものではありませんが、アフリカ産の系統に属しますいわゆるホワイトメイズのコーンスターチに最も適している品種につきましては、非常に歩どまりもいいようにわれわれ聞いております。ただ、そういう結果、この六六の歩どまり率は少し甘いのじゃないかという問い合わせかと思いますが、従来政府でコントロールしておりましたいわゆる先発八社といいますか、この辺は長い産業技術の発展といいますか、そういった苦労の過程をやってこられました関係もありまして、年々技術も向上してきまして、確かにものによりましては六七近い歩どまりもあげておりますが、このたび後発十三社というものもこのコーンスターチ行政のワク内に入れまして、現在、ただいま申し上げました二十四万トンを消化していただくことになっておりますので、この後発組十三社につきましては、なお技術が多少未経験で、ようやく最近工場が落成したばかりという方もおられます関係もありまして、その方は場合によっては六六を割る方もあるいは出てくるのではなかろうかということも想定いたしまして、さしあたり従来の経験値からはじき出しました六六を前提に置いて歩どまり計算をしている次第でございます。もしかりに万が一余った、歩どまりが多く出てでん粉が多くできたらどうするかという御質問でございますが、数量的に全体としてたいした大きな——先ほど申し上げましたように、ことしは一部技術の完全でない方もおられる関係もあって、そんなに大きな誤差は出ないものと判断しておりますが、今度の関税定率法のほうでまいりますと、いわゆる調整販売の対象といたすべき予定の糖化用のものを不当に糖化用途以外に流用するということは法律で禁止されておりまして、われわれ従来はいわゆる行政措置によって指導した程度でありましたが、今回は〇%のものは調整販売の対象以外に自由に処分することをある程度われわれの制度として制限し、かつまた制限に違反したものは、法律的にある程度の違法的なものが出てまいりますので、われわれとしては、そういった余分な歩どまりのものが出てまいりました場合においては、それを十分に行政指導によって自由な処置にまかせずに、われわれの指導のもとにできるだけルートに乗せた販売をするように指導してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  111. 兒玉末男

    兒玉委員 次に、園芸局のほうにお伺いしたいのでございますが、特にカンでんにいたましても、バでんにいたしましても、とにかく土地条件、気象条件、いろいろなものを含めて、このような関税定率の改定によるこういう価格政策関税政策だけでは将来の問題として抜本的な解決にならない。やはりどうしましても反収をあげるための品種改良なりあるいは基盤整備等、国の強力な助成のもとに反収をあげ、国内の自給度を高めながらコンスの価格に対抗できる、こういう一つの前向きの姿勢で取り組んでいくべきだと思うのですが、園芸局としては将来への展望として、どういう施策を考えておるのか、この点明らかにしていただきたいと思います。
  112. 須賀博

    ○須賀説明員 イモ作につきましては、それぞれの地域地域におきまして、農家経営上、重要な作物となっている地域が多いのであります。したがいまして、これらのイモ作の生産性の向上をはかる必要があるわけで、そのために、ただいまお話ございましたように、優良種イモの増殖普及、あるいは農作業の省力化によります生産の合一理化というような対策を進めてまいるのが必要となってくるのでございます。したがいまして、四十二年度におきまして、地域特産農業の一環といたしまして、全国でカンショ、バレイショそれぞれ二十三カ所の推進地区を設けまして、その生産性の向上をはかるため省力用の機械を入れるとか、あるいは種イモ管理舎または貯蔵庫の設置をいたしまして、それぞれ国の助成をいたしております。金額にいたしますと、約五千万ほどになります。将来もこういう対策を強力に推進してまいりまして、それぞれの地域のイモ作農家の生産の合理化を進めてまいりたいというふうに考えております。
  113. 兒玉末男

    兒玉委員 大蔵政務次官にこの際お聞きしたいのでございますが、いままでいろいろと意見をお聞きしましたわけですけれども、カンショというものは次官も十分御承知のとおり、生産地帯においてはこれ以外に代替作はないという一つは宿命的な立場にある。もう一つは、先ほど食糧庁も見解を披瀝したとおり、国内におけるでん粉の需要というものは、この統計が示しておりますとおり増加の傾向にある。こういう点から考えますならば、特に関税定率の操作ということは非常に国際的に困難性があったといたしましても、冒頭申し上げましたとおり、イギリスにいたしましても、あるいは最も持てるアメリカにおいても、自国産業の防衛という立場から課徴金等の制度をとって、きびしい条件にあったにしてもやはり国内産業優先という立場をとっております。しかも、先般イギリスにおいては、特に国内における自給度の向上という立場から、農業政策についても相当思い切った予算措置をとることが労働党内閣によって声明されておりますが、今回のこのでん粉対策にいたしましても、私、先ほど質疑の中でも申しましたが、現在提案されておる八千六百円の線ではせっかくの調整としての効力ということが十分に発揮できるかどうかということについて一まつの懸念を持つものであります。そういう点から、特にこれから国内におけるカンショ等の自給度を高めながら、品種改良等の抜本的な政策についても園芸局も取り組んでおるし、こういう情勢から考えますならば、今回の改定についても前向きの姿勢でひとつこの結論を出すことについて格段の御努力を私は特にお願いしたいと思うのですが、次官の御所見を承りたい。
  114. 倉成正

    ○倉成政府委員 先ほどから兒玉委員と各政府委員の応答を伺っておりましたが、関税をきめます場合に国内産業、特に農業に対する影響を真剣に考えなければいけないということは御指摘のとおりであります。そういう観点から二次税率をキロ八円六十銭、四〇%前後の非常に高率の関税をきめたい、こういう御提案を申し上げておるわけであります。もちろん、これでは足らないじゃないか、いろいろな不安があるじゃないかというような御懸念があるようでありますけれども、この点は主管官庁であります農林省がこの数字をもとにして責任を持ってひとつやってもらいたいと私ども思っておるわけであります。同時に、関税についてわれわれも最善の努力をいたしますけれども、先ほどから御指摘がありましたように、関税政策では、世界の大勢から考えて一定の限界があるということを考えてまいりますと、どうしてもイモ作の合理化と申しますか、生産性を向上したり、あるいは適地におけるイモ作の振興ということをさらに真剣に考えて対処してまいらなければならないと思っております。そういう点につきましては、私ども適切な計画については十分お力添えいたしたいと思っております。
  115. 兒玉末男

    兒玉委員 終わります。
  116. 金子一平

    ○金子(一)委員長代理 阿部助哉君。
  117. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま関税定率の議案をやっておりますし、いままでいろいろとわが党の委員から輸出増進ということについてお話がありました。四十三年度の輸出目標は百二十五億ドル、一四・五%の伸びを見込んでおるようでありますが、これもなかなかたいへんだとは思います。しかし、輸出を増進しようというときに、けさほどもありましたが、ドル危機の問題であるとか、いろいろな対外情勢がなかなかきびしい。そういう中でこの目標を達成し、さらにそれを伸ばそうとするには、いろいろ困難な要因があろうかとこう思うのでありますが、その点で政府は、この困難な要因というのには大体どんなものがあるのか、考えられておることをちょっと述べてもらいたい。
  118. 倉成正

    ○倉成政府委員 非常に広範なお尋ねでありますので、適切なお答えが十分できないかもしれませんが、やはり問題は世界の貿易が拡大していく、その前提として世界の景気がやはり十分立ち直っていくということが、輸出振興の基本の問題であろうと思います。したがって、アメリカの経済が安定し、ヨーロッパの経済が安定し発展をたどっていくということがやはり一番基本の問題であろう。その次の問題といたしましては、各国間のやはりいろいろな貿易の障害になるものを排除していくということが必要ではないかと思うわけであります。それと同時に、国内的に考えてまいりますと、やはり今日の日本の経済の実勢から考えまして、できるだけ国内経済をさらに安定的に引き締めを強化いたしまして、輸出のドライブがかかるようなぐあいになっていくことが大切なことではないかと思っております。したがって、国内消費があまり走り過ぎましたり、設備投資が非常に過熱ぎみになったりするようなことになれば、なかなか輸出目標を十分達成することはむずかしい。総合的な、国際的な見地からと国内的な見地からと両方からあわせて考えていかなければならないんじゃないかと考えております。
  119. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまいろいろお話がありましたが、一つ大きなところは、やはり中国であるとかあるいは北朝鮮とかベトナムとか、共産圏貿易というものをおっしゃらなかったわけでありますが、こういうところに輸出拡大の可能性がこれまた大きく存在すると思うのですが、その点はいかがですか。
  120. 倉成正

    ○倉成政府委員 私からお答えいたしたいと思います。  これは御指摘のとおりでございまして、現在日本の市場はアメリカが三〇%、その他はヨーロッパその他の諸国にたよっておるわけでありますが、共産圏に対する貿易も御承知のとおりソ連についても相当伸びておりますし、それから中国についても、昨年ちょっとダウンいたしましたけれども、ここ数年来で八倍に伸びており、だんだんに伸びておるわけでありますから、そういう地域についてもできるだけ貿易を拡大する方向に持っていくことが必要だと考えております。
  121. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 共産圏貿易についてはいろいろ努力しておる、だけれども昨年は中国は落ちた。一四%ばかりずつ伸ばしていこうとする中に、やはりそれが落ちてくるということはうなずけないわけでありますが、やはりこれが伸びない、また全体の総ワクが伸びる中でこれが伸びないということには、むしろそれを困難にしておる阻害要因というか、そういうものが日本の側にあるのではないのですか。
  122. 倉成正

    ○倉成政府委員 中国貿易について焦点を合わせてお話でございましたが、ここ数年来とりますと急速に伸びております。往復大体六億ドル前後のベースを続けておるわけであります。昨年は特殊な事情があって伸びなかったと思うわけでありますが、私はこの対中国貿易が伸びると申しますかこれから発展していくためには、やはり中国側と日本側と両方が相互に理解し合って、双方の立場において利益になるように、そういうお互いの理解が一番前提になることかと思っております。     〔金子(一)委員長代理退席委員長着席
  123. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 最近急速に伸びておると言うけれども、あれだけの人口と歴史的な点また地理的な点というのを考慮すれば、年々伸びていくのが普通だと思うのであります。  そこで、一番不可解な問題でありますところの  ココムについてお伺いをしたいのでありますが、政府はココムというものを大体どのようにお考えになっておるのか、加盤国としてどういう方針で臨んでおるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  124. 川出亮

    ○川出説明員 お答え申し上げます。  日本は、昭和二十七年、一九五二年の秋にココムに入りまして今日に至っておりますが、それ以来一貫いたしまして、他の自由諸国との協調ということで戦略物資規制を行なっておりまして、日本だけが特にきびしく対共産圏貿易規制しておるという事実はございませんし、またそのような方針は一切ございません。
  125. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何も、いま私は日本だけがきびしいのだ、こう聞いておるわけではないので、まああなたのほうでひけ目を感ずるのか、そういうお話ですが、そうするとココムで戦略物資や何かの制限を行なっておる、こう言うのですが、このココムの性格をお伺いしたいのでありますが、これは条約ではないのですね。また、協定等によるものでもない。何か自由主義諸国間の任意の集まりで秘密の取りきめをしておるように思うのですが、これはどういう性格のものですか。
  126. 川出亮

    ○川出説明員 ココムは、ただいま先生御指摘のとおり、国際条約とか協定とかいったものではございませんで、西欧諸国の間の非公式の相談会といったものでございまして、その合意は協定、条約と同じ法的な拘束力を持つものではございません。
  127. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だけれども、先ほどは戦略物資なんかの輸出をこの申し合わせによって制限をしておられる、こうおっしゃったんじゃないですか。
  128. 川出亮

    ○川出説明員 実際上の問題といたしまして、各国が話し合いの趣旨に基づきまして、それぞれの判断によりまして合意を実施しておるという実態になっておるわけでございます。
  129. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうするとこの話し合いの結論、取りきめといいますか、話し合いにはサインをするとか——調印ということはないかもしれませんが、サインをするとかいうことがあるわけでしょうね。
  130. 川出亮

    ○川出説明員 国際条約とか協定といった性格を持っておりませんので、政府代表による署名行為は一切行なわれておりません。
  131. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 このココムに対しては、日本は分担金というようなものは納めておるわけですか。どれくらい納めておるのです。
  132. 川出亮

    ○川出説明員 ココム加盟国十五ございます。NATOの十四カ国にわが国の合計十五カ国のうち、各国がそれぞれ分担いたしておりまして、わが国の分担の比率は、総経費の三・三%に相当いたします約三千ドルでございます。
  133. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ここへ日本政府の代表が参加して話し合いをしておられるわけでありますが、その場合本国政府からの方針というか、そういうものを持ってやはり話し合いをしておられると思うのですが、その場合、日本政府はどういう方針でおるわけですか、たとえば緩和する方針でいくのか、もっと強化したほうがいいということで訓令をしておるのか、どういうことですか。
  134. 川出亮

    ○川出説明員 科学技術がどんどん進歩しておりますことは、日本、西欧諸国のみならず、共産圏の内部におきましても同様でございまして、科学の進歩が共産圏の内部で進みますとともに、古い規制はだんだん意味がなくなるので、漸次これを緩和するという方向で努力いたしておるのであります。
  135. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまそこにおられますが、きのう通産省の間淵さん、いろいろと説明をしてくれたわけですが、ココムで話し合いが行なわれる、それで外務省から通産省に連絡をしてくる、それを通産省では、学識経験者と相談をしたりしながら日本製品に合うような翻訳をしてそれを管理令の付表につけ加える、そういうことで規制をしていく、こういうふうにお伺いしたのですが、間違いありませんか。
  136. 間淵直三

    間淵説明員 間違いございません。
  137. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうしますと、この管理令というのは外国為替及び外国貿易管理法の規定を受けてそのワク内でやるべきだ、こう思うのですが、この点はどうなんですが。
  138. 間淵直三

    間淵説明員 輸出貿易管理令第一条によって、国内的には実施しておるわけでございますが、これは外国為替及び外国貿易管理法第四十八条に基づいて実施しております。
  139. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 第一条にはココムのあれを加えるような規定はあるのですか。第一条のどこです。
  140. 間淵直三

    間淵説明員 外国為替及び外国貿易管理法第四十八条に基づいているわけでございましてそこには外国貿易及び国民経済の健全な発展をはかるため、必要な範囲において通産大臣の輸出の承認を受ける義務を課する、そういうふうになっておるわけでございます。
  141. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたは一項の前のほうを読みましたけれども、その次に、「前項の政令による制限は、国際収支の均衡の維持並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲をこえてはならない。」こういうあれがあるのですが、それはやはり第一条から見ても少しおかしいんじゃないですか。ココムの取りきめたそれをすぐここに政令のほうに移しかえるというには無理があるのじゃないですか。そこをもう少し詳しく説明してください。
  142. 間淵直三

    間淵説明員 私どもといたしましては、ココムの性格、自由主義諸国の一員としてその協調を保ちつつ共産圏貿易の拡大をはかるという方針から見まして、そこに法律にうたわれております外国貿易及び国民経済の健全な発展をはかるために必要だ、こういうふうに判断して政令に規定しておるわけでございます。
  143. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だけれども、この管理法はそれ以前にできておりますし、そういうようなことも考えてないし、大体第二条をごらんになってください。これにはむしろそういうふうにだんだん拡大することを禁止しておるじゃないですか。この第二条には、もうあなたのほうはおわかりでしょうけれども、再検討をするというけれども、これは縮小の方向で再検討しろ、こういっておるのであって、拡大する方向で再検討しろなんということは書いてありませんよ。
  144. 間淵直三

    間淵説明員 基本的にはでき得る限り制限を縮小していくという方向で検討することになっておるわけでございますが、そのときどきの情勢に応じて、この第一条の目的に合致すると認められる場合は政令で指定してもいいという解釈をしております。
  145. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、どうなんですかね。これは国民の権利義務をそれによって規制するわけです。そういうものをかってな解釈で——少なくともこの一条を見てもそういうふうにはわれわれは常識では考えられない。二条では明らかに縮小の方向で再検討しろ、こう明文をしてある。それにかかわらず、そのときどきの情勢に応じてなんという程度で国民の権利義務というものを制約しているということは許されないので、もしそれならば法律をはっきり改めた上でそれをおやりになるなら別だけれども、それは許されないと思うのです。大臣、いかがですか。
  146. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はうっかりしておって最近の現状を知りませんが、かつて通産大臣になりましたときは、ココムの緩和については各国とひとつ相談しようということで、外務省にお願いをしまして各国との相談をやって、緩和の方向で非常に努力したのでございます。そのうちにやめて、それ以後この仕事に携わっておりませんので、最近どうなっているか知りませんが、やはりこれは緩和する方向で常に努力すべきものだというふうに私は考えております。
  147. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま大臣の御答弁を願ったわけでありますが、私もそう思うのです。この法律を受けて政令をつくるのでしょう。そうすると、この法律にそういうことを書いてない。また大臣のおっしゃったように、これを緩和する方向をおとりになっておる。また第二条を見れば、これは再検討してゆるめろ、緩和しろ、こういっておる。それにもかかわらず、かってに政令のほうにどんどんつけ加えていくというのは、やはり条約であるとかあるいは法律であるとか、はっきりしたものなしに皆さんがかってな判断をして、国民の権利義務を制限していくということは、これは許されないんじゃないですか、どうなんですか。
  148. 川出亮

    ○川出説明員 先ほど申し上げましたように、パリでココムの他の十四カ国の代表とともに、日本の代表が話しております話し合いの内容は、条約、協定といったものではございません。
  149. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、条約やそういうものでないから、そこで、取りきめたとしても、国内の国民の権利義務を制約するわけにはいかないじゃありませんか、私はこう聞いているのです。どうなんですか。
  150. 川出亮

    ○川出説明員 法的には、条約、協定といったものではございませんが、わが国だけがそのような話し合いを実際上守らないといたしますと、他の自由諸国との関係におきまして、非常に悪い結果が出て、協調を妨げるという観点から、今度ただいまのような国内的な扱い、解釈をされたものである、このように了解いたしております。
  151. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そんなかってな解釈をしてもらっても、国民は困るんですね。国民の権利義務を制限する場合には、ちゃんとした法律をつくってその法律に基づいておやりになるなら、これはやむを得ないでしょう。私は、ココムそれ自体に反対でありますけれども、百歩譲って、制約をするというならば、それは当然法律に基づいておやりになればいいのであって、かってな秘密な会合というような形でそれを国内へ持ち込んで制限するということは許されないんじゃないですか。それでもいいのですか。
  152. 間淵直三

    間淵説明員 ただいま外務省のほうから答弁いたしましたように、これは非公式な申し合わせではございますが、自由主義諸国間の協調を保つという上から、これは十分尊重していかなければならないというふうに解釈しております。したがって、これは国内の法制的に申しますと、外国為替管理法の第一条の目的にいうところの、外国貿易及び国民経済の健全な発展をはかるために必要だというふうに考えて、政令に指定しておるわけでございます。
  153. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、第一条のそんなものには、これは予定してないのですよ。そんなものは入らないのですよ。そんなかってに——だから私は、条約であろうと条約でない約束であろうと、それが国内の国民を規制する場合には、はっきりとした法律を改正するのならして、その上で制約をされるならは、これはやむを得ないでしょう。しかし、あなた方が感じだけで国民の権利義務というものを制約するということは、これは許されない。ことに第二条を見てごらんなさい。第一条でもそんなことは書いてないですよ。
  154. 間淵直三

    間淵説明員 私どもといたしましては、それが外国貿易及び国民経済の健全な発展になるという考えに基づいて指定しておるわけでございます。
  155. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それは皆さんのほうでの、政府かっての解釈ではいかぬのであって、そういう場合にはもっと具体的に、どういう点で国民生活にプラスなんだということを——むしろまたマイナスの面もある。そういう点をずっと並べてごらんなさい。抽象的じゃ困りますよ。
  156. 間淵直三

    間淵説明員 ココムの規定を守らないということによって、他の自由主義諸国間との協調が乱れるということになりますれば、これによって日本人に対する排斥運動とか、その他いろいろの経済関係に支障を来たして、それがひいては、国民経済の健全な発展の阻害になるという考え方でございます。
  157. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、そういうことをおやりになるならば、私は、繰り返して言うけれども、法律をちゃんと改正をして、それが入るようにして、それからおやりになるならばこれはやむを得ない。だけれども、いまのような形の中で、ココムできめたから、すぐそれを政令の付表につけ加えるなんということは、これは国内法の上で許されない、私はこう思うのですが、どうですかね大臣、やはりそうじゃないですかね。大臣、どうですか。
  158. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはココムの約束をした当時は、いま政府委員が答えられましたように、日本がこの諸国間と協力をしないというようなことで、そこに日本の不利というものは、やはり相当具体的なものが予想されるぐらいの情勢でございましたので、これは日本も守ってずっと来たわけでございますが、さっき話しましたように、これは日本にとって緩和が望ましいという面が出てきていると同時に、他の国にもこういう傾向がありましたので、日本ひとりがかってにこれをやれることではないというので、他国と相談して緩和すべきものはしようじゃないかということで、通産と外務当局で相当この運動をいたしまして、ある軽度実績が出るところまで行ったところまで私は責任を持ってやっておりましたが、そのあとのことはどうなっておるか、いま知りません。やはりこれは関係諸国間で相談をしなければいかぬことだと思います。
  159. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも私の申し上げるのと、皆さんの答弁のところがなかなかかみ合わぬようであります。私は、やむを得なければ、そこできめたものをこういう形で国民を規制するならば、やはり法律を改正をいたしまして、それで付表の改定をするということならば、やむを得ない。だけれども、それなしにかってにココムできめてきた、それですぐ付表を改定するということでは、これは困るのではないか、法律違反ではないか、こういうお伺いをしておるわけです。だから、そこがどうもかみ合わぬようですがね、どうですか。
  160. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの時点でこういうことをしようとしたら、これはやはり独立した法律が必要かもしれませんが、当時の情勢でございましたら、この協定を守らないということのほうが、貿易の問題にしましても、何にしましても、明らかに日本に不利なときでございましたので、さっき政府委員が言いましたように、健全なというのは、いまから見ると、何だと言われるかもしれませんが、当時はやはりこれを守ることが日本の経済にとって健全化が約束されることだというので、法律の解釈によってこれに便乗したということだろうと思います。
  161. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ大臣、なかなか前向きな話でありますが、それだと、なおさらこういうわけのわからない秘密協定、しかもそれが国民の権利義務を拘束する。大体、日本の憲法のたてまえからいって、こういう秘密協定なんというものは、しかも国民にひとつも公表しないで、それが国民の権利義務を制約をするというようなことは、憲法のたてまえから大体許されないのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  162. 間淵直三

    間淵説明員 私どもといたしましては、このココムの規定というものを自由主義諸国の一員として協調を保っていくという根本の姿勢ではございますが、それが共産圏諸国との貿易の障害にならないようにするという態度で、この緩和と申しますか、そういう障害を除去するという姿勢で平生取り組んでおります。
  163. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それならば、具体的にどういう点で努力をしたのですか。私たち一般の見る目からいうと、むしろこれに一生懸命なのはアメリカと、それの言うことを聞いている日本だけじゃないか、こういう見方が一般には非常に多いわけです。むしろアメリカのほうは電子計算機なんかまで輸出しておる段階で日本だけがばかの一つ覚えのようなかっこうでそれを守らされておるという言い方をする人すら多い。日本アメリカの言うことを聞いてやっておるというふうにしか思えないのですが、どうなんですか。どんな努力を具体におやりになったのか、それをお伺いしたいと思います。
  164. 川出亮

    ○川出説明員 二年に一度くらいの割合をもちまして、だんだん技術の進歩が進んだために古くさくなってまいりました、アウト・オブ・デートになったリストを改定、緩和していくという作業がございますが、そういう場合には、日本政府はなるべく緩和するということで具体的な提案を出し、緩和につとめてきておるのが一つでございます。もう一つは、ココムの他の加盟国に、日本から特に、本来禁輸品であるけれども、こういうものを特別に出したいと思うがどうかという、いわゆる特認の申請ということを熱心に行なっておるわけでございまして、本来ならば禁輸になると考えられておるものを、特別に他の国々を説得して出しておるという努力もいたしております。
  165. 田村元

    田村委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  166. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。
  167. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 名委員長のあれがありますので、いろいろありますけれども——私もそういうことを言いたくないのだけれども、二年に一ぺんやりますね。そういうときには、その前にアメリカに行ってちゃんと打ち合わせをしていくようなこともいままでのあれを見るとおやりになっておる。私たちはどうも理解できない。  大臣にお伺いしたいのですが、大臣は先ほど、情勢も非常に変わってきた。なるほどこれをつくったときは冷戦時代というか、そういう時代であったわけですな。情勢もずいぶん違ってきておる。それで、日本の憲法のたてまえ、また地理的、歴史的な関係等も考慮すればなおさらでありますが、こういうところに入っておるよりも、むしろここから抜け出して、そういうことはやめたほうがいい、こういうふうな立場で脱退する方向をとるべきじゃないかと思いますが、特に貿易を伸ばそうという大蔵大臣の立場からいけは、なおさらそうだろうと思いますが、大臣、いかがですか。
  168. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、いきさつのあることでございますから、これはこれとしておいて、今後やはりココムの制限緩和というような方向に努力していけばいいのじゃないかというふうに考えております。
  169. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣の気持ちはわかりますが、やはりいろいろな場合にこれが非常な大きな貿易の支障を来たしておるわけでありまして、できるだけ私は、やはりこれは入っておって実行しないなんていうよりも、ここから抜け出してやめてしまうということのほうが、むしろすっきりとした形になるのじゃないか、こう思いますから、日本国内——この秘密協定というようなものが即日本の国民の権利義務を拘束するということについては、どうも合点がいかないので、またいずれ機会を見てこれをお伺いしたいと思います。  次の問題に移らしていただきます。輸出入銀行の立場は、けさの朝日新聞等にも出ておりますように、日本貿易を伸ばす上では非常に大きな役割りを持っておるわけであります。そういう立場で輸銀の方にお伺いをしたいのでありますが、この業務方法書の中で、第九章でありますね。第九章というのは一条しかないが、その二十四条には「次に掲げる資金の貸付については、別に定めるところによる。」こういうことで、ほかのことは全部業務方法書で書いてあるのですが、なぜこれだけ「別に定めるところによる。」ということで、この方法書の中に入れてないのですか。
  170. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 御指摘の点は、業務方法書の中で「別に定めるところによる。」として、この内容をはっきりここでうたってないのはなぜかというお尋ねでございますが、輸出入銀行が、今日まで数多くの直接借款をやっておりますが、それは輸出入銀行が、ある場合には、直接借款の契約相手国を対象とする多国間の申し合わせあるいは双務的な話し合いによりまして、輸銀が自主的に相手国との間で、あるいはそこの中央銀行等との間で直接借款の契約を結ぶわけでございまして、その場合に利率とかその他こまかい条件につきましては、これは国内の一般延べ払いの場合と違いまして、やはり対外的な相手国との契約でございますから、それぞれの場合に応じたいろいろな条件があるわけでございます。したがいまして、ケース・バイ・ケースでそのときどきの最も適当な条件を考えて、輸出入銀行が自主的にこれをきめるというふうにしてきておるわけでございます。個々に取りきめるのが一番適切であり、また実情にかなったことであるということで処理をしてまいってきたわけでございまして、したがいまして、一般的な定めを最初に御指摘の業務方法書の中にはうたっていないのでございます。
  171. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 しかし、そうすると業務方法書というのは何のためにつくっておるんですか。
  172. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 業務方法書は、日本輸出入銀行法という法律に基づきまして、さらに輸銀法の第二十二条でございますが、「日本輸出入銀行は、業務方法書を作成し、」云々とございますが、これに基づきまして、実際銀行の業務をやるにあたりましてのこまかいやり方をここに規定するようになっておるのでございます。
  173. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これはやはり銀行法の規定を受けまして、それで具体的にそれを実施するためにやるということが一つと、もう一つは、輸出入銀行は多くの国民の血税をそこへ預かっておりますから、でたらめのないようにということでこれをおつくりになっておるわけじゃないんですか。
  174. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 お話しのように、個々の取引につきましてこまかいことを一々法律に書くわけにはまいりませんので、それを業務方法書できめる。もう一つ、国民の税金をもとにして運営をしております以上、これを大切に使うにはどうしたらいいかということをきめる意味で業務方法書をつくっておるものと思っております。
  175. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これから一番問題になりそうな問題点をここに記載しないで別に定めさしておるところに、何かちょっと理解のできないところがあるんですが、監督の立場にある大臣、これはどうなんですか。こういう形で「別に定める」というようなことでここに記載してないのは、いわゆる民間借款を自由自在におやりになるために初めから何かしり抜けにしてある、こういうふうで、初めから、これは監督官庁としては意図してこういう形の業務方法書を承認しておられるわけですか。
  176. 澄田智

    ○澄田政府委員 私のほうからお答えさしていただきますが、輸出入銀行の業務方法書につきましては、いまおあげになりました一般の業務方法書のほかに、いま御指摘のように、「別に定める」という形で外国政府等に関する輸出資金の貸し付け等について業務方法書をきめております。いずれもひとしく業務方法書でございます。そしてその直接借款等は、発生的に申し上げますれば、逐次あとから出てまいりました。当初は輸出の延べ払い等の融資がまず当初の仕事でございます。そしてまた、その業務の態様も非常に違うものを持っておりますので、一般の業務方法書のほかに別の業務方法書、いわば一般法と特別法というような関係で、効力は同じ、ひとしく業務方法書である、こういうわけでございますので、いまおっしゃいましたような意味で分けているということでは毛頭ございません。
  177. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 しかし、この業務方法書は初めからいままでに十四回ですか改正してあるんですね。そうすればこの業務方法書のところにこれを入れておられるのが、これが今日普通じゃないんですか。
  178. 澄田智

    ○澄田政府委員 いま御指摘のような方法をとってできないかという仰せであれば、それはできるわけでございますが、便宜と申しますか、ほかにも間々例があることでございます。一般の最も広く行なわれている業務に対する業務方法書と、その中でやや特殊なもののための業務方法書というのを分けております例は他にもございますし、そういうやり方もある。仰せのようなことも、改正のときに中へ入れていくというようなこともそれはできない方法ではないと思いますが、その点はこういうような方法も従来からとられておる、かようなわけでございます。
  179. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると澄田さんのほうでは、入れろと言えばこの業務方法書の中に一本におさめることもできる、こういうことでありますが、私は、やはりこれは一本におさめてやることが正しいと思うので、ぜひそうしてもらいたいと思います。というのは、けさの新聞でもありますし、私の調べたところでもそうですが、これだけ大きな八千億円近い金を現在すでに貸しておる。おそらく四十三年度一ぱいには一兆円をこすだろうという。しかも国民の金をここへつぎ込んでおるという立場からすれば、できるだけこれを明快にしておくことが望ましいのであって、二、三日前からの委員会で、どうも最近は金の出入りがルーズであるという指摘が幾たびかなされておるわけでして、こういう抜け穴のような形でつくられるよりも、一本にすっきりしておくのがまず正しいのではないか、こう思います。そうすることが可能だし、そうする御意思がおありになっておりますので、次に移ります。  それならば、こういういわゆる民間借款というのは輸銀法の第一条の規定とちょっと違うのじゃないか。これは「金融を補完し、又は奨励することを目的とする。」こういっておるのですが、民間借款の場合なんというものはこの第一条の目的からははずれておるんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  180. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 いまのお尋ねの「補完し、」ということばの意味でございますが、これは、一般の金融機関がやるにつきましては十分になじまないようなものを輸出入銀行が主として担当するという意味に私どもは解しております。
  181. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもそれは少し幅を広げ過ぎておるのじゃないですか。これをちゃんとここで初めからずっと読んでごらんなさい。では、一般の金融機関がやれないものは何でもやれる、こういうふうにやったら、業務方法書もへったくれも何もないじゃないですか。日本語はそんなに広げて解釈できるのですか。
  182. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 そういうことではございませんで、市中銀行あるいは市中の金融機関にその金融をやってもらいますには、当該取引あるいは貸し付けの性格上、市中金融機関がそれを当然の業務としてやるにはふさわしくないと申しますか、性格的に必ずしも適合しないというものを、輸出入銀行が主として取り上げておるというふうに考えております。
  183. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうも私、理解ができないのですが、これは一般の金融機関がそれだけでは行なえない、それぞれを補完する立場でおやりになるということであって、実際は政府が行なっている。いわゆる民間借款と称するものは全然この第一条のワクの中には入らないのじゃないか。私は入らないと思うのですが、大臣、どうなんですか。大体民間借款なんということでおやりになるのは、これは国会にかけないように、国民の目をくらますようにやることなんですか。ほんとうに国がきめてくるならば、やはり国会にかけて審議をして、それでおやりになるというのがたてまえじゃないんですか。それを国会にかけないようにかけないようにしてやろうとするところに、こういう無理な解釈が出たり、抜け道をつくったりせざるを得ないんじゃないですか。
  184. 澄田智

    ○澄田政府委員 先に私のほうからいまの御質問に対してお答え申し上げます。  お話しの直接借款等につきまして、これが「一般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する金融を補完し、」という中に入らないのじゃないか、一般金融機関の行なう金融とは違うのじゃないか、全然違うのではないか、こういうような御趣旨が含まれておると存じましたので、まずそこの点でございますが、現在の借款の場合の輸出入銀行の金融は、市中銀行が二割は協調融資で融資をいたしまして、八割は輸出入銀行が融資をする、こういう協調融資方式をとっているわけでございます。一般の民間の金融機関の融資になじみにくいという面があることは否定できませんが、しかし、とにかく二割は協調融資で引き受けている、八割は輸出入銀行が融資をするというようなところは、やはり一般民間金融の補完、一般民間金融も全然使わないのではない、ただそれだけではとてもできないというようなところを補完する、こういう趣旨でございます。そういう意味があるわけでございます。
  185. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それだから、そういうことは第一条に規定した補完だ。だけれども政府が出かけていって、この前佐藤さん出かけていかれてきめてくるような、いわゆる民間借款と称するようなものをここへ持ち込んでここから出していくというのは無理があるのではないか、私はこうお伺いしているわけです。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  186. 澄田智

    ○澄田政府委員 交渉の段階におきましては、政府の間で交渉が行なわれるというような形は、しばしばそういう形をとるわけでございますが、しかし、これが実際の融資という形になりましたときには、やはり輸出入銀行が先方と話を取りきめて融資を行なう、かようなことで、これはやはり国家の間の交渉という面も同時に含まれておりますが、金を貸す融資の行為自体は輸出入銀行が主体となって行なう、こういうような形をとるわけでございます。
  187. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、借款がみんないかぬとか、やつちゃいかぬとか、こういうことじゃないのですよ。けれども政府が取りきめられるものはやはり国会にかけて筋を通しておやりになればいい。それの業務は輸出入銀行が当たろうとどこが当たろうといいけれども政府が取りきめてきてそれで輸銀を使っているような、こういう行き方だと、国民の金がどういうふうに曲がっていくのかわからないでしょう。だから、それはやっぱり国会軽視だ。国会軽視ということは、やっぱり国民を無視しておるのだ。大蔵省や一部の権力を握っておる人たちのわがままだけでそういうものが進められていくようになっては困るんだ。だから、借款を全部否定しておるんじゃないんですよ。おやりになるのはいいけれども、それならば国会で審議をするような方法でおやりになればいい。そうすると、いまこれをやっておるのは、銀行法の一体どこからそれがやれるのか、私には幾ら読んでみてもわからないのですがね。
  188. 澄田智

    ○澄田政府委員 ただいまのお話を伺っておりますと、補完するという、先ほど私が御説明申し上げました輸出入銀行の目的の第一条の規定でございますが、そういう規定は、これは政府がその前の交渉を行なっているというような場合等も含めまして、この中には政府借款あるいは民間借款といろいろなそういうすべてを含めまして、輸銀の融資という場合に、これは市中金融だけでは無理である、市中金融も協調という形で参加はいたしますが、輸銀がこれを補完して、輸銀が出なければとうてい無理である、こういうことで輸銀が金融を行なって市中がこれに協調する、こういう形をとっておるわけで、これは輸出入銀行法の規定がまさにそういう規定になっておりますので、そういう点を申し上げたわけでございます。
  189. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 関連でちょっとお聞きしたいのですが、いま手元に資料を持ってきていないのですが、先週か十日ぐらい前だと思いますが、輸銀の金を借りて日本の企業が、これは民間借款の系列の中でとらえられるのか、あるいは独自の立場で輸銀から借りて、いわゆる企業進出というような形で出たか、その点資料が手元にないものですからわからないのですが、いずれにしても輸銀の金を利用して海外に企業進出をして事業をやって、それでほとんど欠損でどうにもならぬ、輸銀から貸した相当額は全部きれいに負債になってしまった、こういうようなものが二十数社。そうして大蔵省も見るに見かねて、そういう不健全な企業は引き揚げろということを言っておるという、これは新聞報道がなされておるわけであります。その点について、やはりいま阿部委員が追及されているような問題もからんで、こういうような輸銀の金を四分とか四分五厘で借りられる、どんなに高くてもせいぜい七分以下だというようなことが、まずそういうものにとって、外で仕事をすればすぐにもうかるのだ、しかも労働力も安いのだ。ところが行ってみれば、いろいろな悪条件があって、労働力も質のいい労働力は集まらない、あるいはまた、その他のいろいろな取りきめをやっていくのでしょうけれども。それと反したようないろいろな条件が出てくる、困難な条件が出てきて、そういうように非常に輸銀の金がむだづかいされている。われわれの国民的な立場から見れば、ほんとうに企業の安易な、そういう安い金利で幾らでも借りられるというようなことでやって、その成果が何一つあがらぬで、借金だけ残して引き揚げ命令を出さざるを得ないというのが二十数社に及んでいる、このようなことがいわれているわけでありますが、その実態についてこの際明らかにしてほしいと思うのです。どういう企業がどういう事業をやって、どのぐらい輸銀から借りて、そしてどういう失敗をして、いまどういう状態になっているかということも資料を当然いただきたいと思うのです。これはもう重大な問題です。いまわかっておりましたらその数字もあげてほしい。
  190. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 いまそういうケースが二十数件あるというお話でございましたが、私ども具体的に手元にそれをつかんではおりませんけれども、海外投資につきましては、なかなか困難な環境下で、その投資者としてはずいぶん苦労をしてやっておるわけでございます。それで、そのすべてが現地で操業を開始しまして、必ずしも当初予定をしましたとおりうまくいくというわけのものではございませんで、いろいろな事情の変化からあるいは予期のごとくいかない、収益も思うようにあがらないという場合もございます。しかしそれは、私ども金を貸す立場として、まず貸す際に十分審査をして出すわけでございますが、その後の状況につきましても常にこの操業状況その他を調査しております。また、投資先から必要な資料を徴して指導もしております。うまくいっている例もあり、必ずしもそうでない例もございます。たとえば、うまくいっている例のほうが多いのでございますが、ブラジルでジープの生産をするために投資をした例がございますが、これは必ずしも予定どおりいっておりません。あるいは大きな投資で、たとえばブラジルにおけるウジミナスなども相当苦心をしてまいった一例であろうかと思います。だんだんと軌道に乗ってきておりますから、私どもはやはり長期的に見てそれが所期の目的を達成するように助けていきたいというふうに考えてやっておるわけでございます。
  191. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 関連ですからきょうはそう詳しくやるつもりはございません。  監督官庁としての大蔵省、これは銀行局長でも大蔵大臣でもいいですが、できれば大蔵大臣から答えてもらいたいのですが、大蔵省として、そういうものでせっかく輸銀から融資をしても回収困難な状態になり事業が失敗をした、その中に非常に安易な輸銀の態度というものがあったり、あるいは調査や審査が非常に不十分なままにやられているということをあなた方は——二十何社という新聞の報道でありますから、私一つ一つチェックしたわけではありませんが、そういうものがあるという現実に対して、監督官庁としてどう思うかということと、そういうことで全額負債になって焦げつきになってしまったというものに対して——これは輸銀の債権としても、言うならは国民の債権です。そういう立場において、そういう不健全なものに対して回収のための担保というものなんかはこの審査の段階でつけておるのかどうか、その点大蔵当局と副総裁のほうと両方からお答えをいただきたいと思います。
  192. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 すべての場合に共通でございますが、海外投資の金融につきましても、十分な担保をとり、輸銀債権について何の不安もないような措置は講じております。  それから、先ほど二十数社がおかしいというお話でございましたが、私どもはそういうことは聞いておりません。(「焦げついて回収がうまくいってないのは何社くらいあるのだ」と呼ぶ者あり)焦げついておるのはございません。投資しておる本社から最初の計画に従って回収を受けております。また、十分な債権保全の措置を講じております。御心配いただくようなケースは私どもの銀行としてはございません。ただ、海外に出て事業をやっておりますその操業の結果として、必ずしも当初の予定どおりいっていないというケースはあるかと思いますが、これは二十数社というふうには私は聞いておりません。
  193. 澄田智

    ○澄田政府委員 新聞の記事は、実は私十分注意しておらなかったのでございますが、ただ聞きましたところ、それは海外に進出した企業全体のことを取り上げまして、二十数社というようなことで取り上げまして、その中にはうまくいかないものが相当ある、こういう話であります。そうして輸銀のそういった日本の海外に進出した企業に対する投資金融というものについては、例も非常に少ないわけでございますが、しかも輸銀当局としては非常に厳重に審査をしてやっておりまして、進出企業の中にはいろいろな場合が出ておることは事実でございますが、その中に輸銀が融資をしておって、それの採算が非常に悪いというようなものがどれだけあるかというふうなことになりますと、そういう例は非常に少ないのではないかと思いますが、なおその点についてはお説のとおり十分注意していかなければならない問題でもございますので、よくその内容等も、輸銀も調査をいたしていることと思いますが、私どものほうでもよくその実情を見てみたい、調べてみたい、かように存じております。決していままでの態度がルーズであるというようなことではなくて、むしろもっと積極的にやったらいいのではないかというような声をしばしば聞いておる次第でございます。
  194. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 関連ですからこれ一問で終わりますけれども新聞記事を全面的に信用するわけではございません。しかし、新聞には、二十数社に対して引き揚げ勧告を指示する、こういう強い態度をとったのは、リスクがあることは当然ですけれども、その危険負担を考えない安易な海外進出が多く、進出件数の八割が業績不振である、こういうような記事まで出ておるわけであります。したがって、少なくとも二十数社というもののリストを、そしてそれにどのくらい融資をしておるのか、そういうものをぜひひとつ資料として出してください。  また、これはいろいろ将来の問題として、このことによって少なくとも——それは融資したものの返済が、本社がしっかりしておるからというようなことで回収はできるかもしれない、焦げつきはないということですから回収はできるでしょう。しかし、日本の海外進出ということでむだ金使ったということには変わりないと思うのです。そういうようなことについてもっともっと問題点というものはあろうと思います。そういう点でも、先ほどから阿部委員が問題にしているような点がやはり輸銀の態度の中にあるのではないか。むしろこれは政府の態度かもしれませんけれども、そういうものが流れている。こういうような事態なんかも、われわれを疑わしめる十分な理由になってくると思うのであります。そういう点において、そのリストを出してもらうことを大臣から約束してください。
  195. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまのお話は、海外へ進出したたくさんの会社のうちでうまくいってないのがある、これと、輸銀と関係しておる会社ということてすか。——一般のは調査するのがむずかしいかと思いますが、輸銀と関係しておる限りでは、これは調査できると思います。
  196. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 先ほど澄田さんは、非常に厳重に審査しておって、少し厳重過ぎるという批判すらあるというふうなお話でありますが、政府の約束をしてまいりましたいわゆる民間借款というものは、輸銀のほうに対してはもうほとんど自由自在に輸銀をお使いになるというふうにしか見えないんです。この二十四条で、輸銀は政府から言われればそれはそのまま認めるというか、大体いままで言われたのは全部認めてきたんじゃないですか、どうですか、輸銀の副総裁。
  197. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 輸銀は申すまでもなく政府機関でございますから、その借款契約自身は輸銀が当事者となって相手国と締結をいたしますけれども政府と御相談をしながらやっておるわけでございます。したがいまして、いままでやりました借款契約につきましては、政府と御相談済みであるということは申せると思います。
  198. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、やはり、いまここに表がありますけれども、非常によけい輸銀だけで出しておる。いわゆる民間借款というか、政府が約束をしてきた金があるわけですが、これをほんとうは政府間の約束であるならば、国会に出して審議をすれば、相当に論議もされるでありましょうけれども、そういうことなしにこれを使うのは、やはり第一条の解釈が非常にわがままだと私は思う。この補完というのは、銀行がある程度先行して、パーセンテージは別にしても、それだけではできないので、輸銀がそれをバックアップする、こういうのが補完ということじゃないですか。全然銀行をのけものにして、全然そういうものは関係なしに、輸銀だけでかってにやれるというのは、これが補完ということになるんですか。これは一番大事な第一条の目的ですから、そこをきっちりしておいてもらいたい。
  199. 澄田智

    ○澄田政府委員 いまの御指摘の点ですが、先ほどから私申し上げておるわけでございますが、一般の金融機関が全然そういう融資というようなものに手が出ない、民間の金融機関としてはそれは成り立たないというようなものでありますと、これはいささか補完というところからは読めないんではないかと、御指摘のようなことになるのじゃないかと思いますが、現在の協調の割合は二割ということではございますが、とにかくそういう場合に、民間金融機関も一翼をになっている、こういうような形であれば、それが輸出入及び海外投資に関する金融ということであれば、これは補完のそういう目的に適合する範囲においては、これは補完の中に入るんではないか。輸出入銀行がとにかく出すということによって民間の金融も出てくるわけでございますから、これは補完である、こういうふうに解釈をいたして従来から運用いたしてきておるわけでございます。
  200. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ところが、この借款の表を見ますと、銀行は全然なしに——私かさっきから言っておるのは、輸出入銀行だけで政府借款のしりぬぐいをしておるというのがあるから私は聞いておるんであって、そういうのはないんですか。私の表ではそれがあるんですがね。澄田さんのおっしゃるように、銀行も参加してそれに輸銀が加わっておるというのなら私は認めるですよ。そうじゃないのじゃないですか。
  201. 澄田智

    ○澄田政府委員 私、大半の場合が協調融資という形態をとっておりますので申し上げましたが、単独融資ということも例がないわけではございません。私の先ほどの答弁はそういう点に触れませんで、その点は訂正をいたしますが、輸銀の単独融資、これはまあ期間の点とかあるいはプロジェクト等の関係上単独融資ということになっている場合もございますが、これとても、民間の金融というものが全然つくはずの性質のものでない、そういうものであればそれは補完という範囲から逸脱するかもしれませんが、条件等の点で民間がこの場合は加わらないという場合であっても、それは程度の違いでありまして、事柄はやはり民間金融が全然なじまない性質のものでないというものであれば、そういう貿易金融あるいは投資金融というものに輸銀が融資をする、これもやはり民間金融の補完である、そういうふうに読めるのではないか、こういうことでございます。
  202. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもその辺あまりにも拡大解釈で、ことに私は先ほどから申し上げておりますように、いろいろと不良な貸し付けもあるわけです。特にインドネシア等においてはいろいろそういう問題が出ておる。それだけにここの補完というあれは厳重に解釈をすると同時に、やはり政府間の話し合いはやはり国会にかけて、それで国会の承認を得ておやりになるのがほんとうであって、政府がかってにいまのようなやり方をしておると、そこにいろいろな間違いが起きてくる。そういうことで私は申し上げておるのであって、いまの澄田さの御答弁は、やはり第一条の解釈が甘過ぎるし広げ過ぎておるという点で、私はどうしてもこれは納得できない。また、輸出入銀行のほうもやはり国民の金を預かっておるのですから、そういう点で業務方法書の整備にしましても、また、これからの金の出し出れにしましても、もっと厳重な立場でおやりにならないと間違いが起きるのではないかとこう思いますが、まあ時間も来たようでありますのでやめますけれども、この問題はやはり澄田さんの解釈には私は納得できません。やはり補完という第一条であれだけ明文で書いてあるわけですから、それはやはりきっちりお守りになると同時に、政府間の約束したものは国会へかけるという原則をやはり守っていただきたい、こう希望しまして、私の質問を終わります。
  203. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 佐藤觀次郎君。
  204. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 水田大蔵大臣にお尋ねいたしますが、ちょうど、わずか一週間ばかり前にOECDの会議に出ておられた国際金融局長柏木さんがお帰りになりました。そこでその情報、ヨーロッパのほうのポンド安などいろいろな話は報告をお聞きになったかどうかということを、まず聞いておきたいのです。
  205. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ポンドをめぐるいろんな国際情勢は逐一局長から聞いております。
  206. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そうすると、OECDにおいでになった柏木さん、それから奥村さん、まあ大蔵省で一番国際金融の権威だといわれておるのですね。その人がこの間までヨーロッパへ行っておって、きょうあわてふためいて——金の市場の停止された問題がきょう起きておるのですが、この点は大臣、どのようにお考えになっておられますか。私はどうも大蔵省があまりアメリカにたより過ぎて、日本の目を失っておるのではないかというような気がするのですが、そういう点で私は、この前の八日の大蔵委員会で、柏木さん見えませんので、奥村君に約一時間半にわたって質問いたしました。そのときにもやはり楽観論で、ポンドドルの不安はないということをはっきり明言されておりましたが、柏木さんにもこの間聞きましたところが、非常に楽観論で、そんなことはありませんという話でした。こういう点について、どうも日本の大蔵当局は、私は個人的には責めたくないけれども、こういう見通しの誤っておることが非常に多いのではないかと思うのですが、この点は、大臣、それから柏木さん、どのようにお考えになっておりますか、承りたいと思います。
  207. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 私、先週パリのOECDの会議に出てまいりましたのですが、帰りまして、大臣にそのときの情勢を御報告いたしましたが、もちろんいま問題になっておりますドルとかポンドというものについての不安があるということは申し上げたわけであります。ただ問題は、その不安がどこまでいくというか、解消する方向なのかどうかという点につきましては、これは金のスペキュレーション問題につきましては、結局アメリカの態度と、関係しておる金プール諸国の国際金融協力がどこまでいけるかということにかかっておるので、この点については各国とも非常に固い決意をしておる。アメリカも必要なる措置をとるという方向で考えておるという状態であるということを申し上げております。
  208. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それでは、柏木さんはきょうのようなこういう状態があるということを多少予想されましたか。
  209. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 正直に申しまして、BISの会議の結果、騰貴がやまっていく方向に進むものと思っておりました。
  210. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そこで、われわれ野党が絶えず政府に注意もし、またいろいろそのときにも、あなたのかわりに奥村さんが来ておられましたから言いましたのですが、どうも私は不吉な予感がすると——これはあしたあたり速記が出ますから、読んでいただけばわかりますが、いまのドル不安、ポンド不安というものは、私たちは世界の情報を全部持っているわけじゃありませんけれども、少なくとも大蔵当局は、これくらいのことがわからないはずはないと思うのです。それがわからないのは、あな方の考え方が、ぼくは水田さん、りっぱな人だと思うのですけれどもアメリカを過信しておる。現にベトナムの戦争でアメリカが非常に苦戦におちいっておるということは、どういうようにあなた方がお考えになっておるかしりませんけれども、そういうことの分析が足らない。私は、今月、中央公論に大森実君が、ベトナムの現状と佐藤政権の問題について非常に詳しく書いておられますけれども、もうベトナムは絶望だといわれております。原水爆でも使えば別でございますけれども、そういうベトナムの戦争にアメリカが入り込んで、ちょうど日本が蒋介石を相手に入っていって戦争に負けたと同じような状態が起きておるのじゃないかという心配を持つわけです。私は、アメリカのために持つわけじゃなくて、日本のためにそういう心配を持っておるわけですが、その点については、大蔵大臣はどのように認識しておられますか、これを承りたいと思います。
  211. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ドル不安というものははっきり存在しておりましたし、これをどう解消させるかということは、一つは国際協力の体制がうまく整っているかどうかということと、一つアメリカ自身政策、態度というものでありますが、根本的にはやはりアメリカの態度が一番重要な要素をなすというふうに私は考えています。そこで、結局こういう不安が出てくると、いついろいろな事態が出てこないとも限らぬ。ごくわずかなうわさが出ても、これが恐慌にまでいく一つの原因になることがたくさんある。したがって、やはりこの不安を解決していくためには、アメリカとしてとるべき措置が幾つかございますので、これについての要望は欧州の各国においても強かったという報告を受けています。したがって、おそらくこういう事態が予想される以上は、アメリカがもっと早く必ずいろいろな措置をとってくるに違いない、そういうふうに私どもは思っておりましたので、必ずこの事態は切り抜けられると思っておりましたが、遺憾ながらアメリカのとる措置がやはりおくれておった。これが私は一番原因だと思いますが、御承知のように、きようになって法定金準備制度の撤廃をしたり、金融引き締めの措置をとるとかいうようなことをやってまいりましたので、これと、十六日における国際協力がどういう形をとるかというようなことによってこの問題の解決の方向が大体出てくるのだろうと思うのですが、私どもは決して楽観したわけではございません。
  212. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 十六日にワシントンへ西欧の銀行の総裁が行かれるそうですが、何か水田さんは行かれぬと言われたそうですけれども、やはりオブザーバーとして行かれるという話を聞いております。これは新聞記者から聞いた話なんですが、これは非常に大事なことだと思います。  それから、いまアメリカ協力と言われますけれどもアメリカの経済のけたと日本の経済のけたとはけたはずれに違う。日本人がちょっとしたくらいでは、ちょうどアリがカメか象に向かうようなわずかな経済力だと思うのです。それに協力して何のためになるか。現にアメリカ輸入課徴金を取って自国の防衛をしておるのに、日本は何でそれ以上に協力する必要があるかということについて私は疑問に思う。少なくとも日本のいまの経済というのは、そんなアメリカの経済とはけたはずれに違うことは事実でございますし、それから、御承知のようにいまベトナム戦費は年間二百五十億ドルといわれております。日本の総予算に匹敵するくらいの金を使っておって、そうしてドルの不安がないなどと考えるところに私は甘さがあると思う。少なくともぼくはそういう点で、大蔵当局がややもするとアメリカだけのことしか見てないと思う。よその国は見てない。たとえば、私はそのことがいいことか悪いことかわかりませんけれども、フランスのドゴールなんかはやはり早くからそのことを盛んに言っておりました。ポンドの切り下げからドル不安のときには金本位の問題も出ましたが、私は、日本という国はアメリカの属国ではない、軍隊は来ておりますけれどもアメリカの言うなりにならなければならぬということは毛頭ないと思うのですが、少なくともそういう点でこういう機会にやはり反省をしていただきたいと思うのです。  そこで、私は柏木さんにお伺いするのですが、〇・五%の公定歩合の引き上げをやったそうでありますが、こんなことで済んでいくのでしょうかどうか、これをひとつ見通しを承りたいと思います。
  213. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 先ほど大臣から説明がございましたように、ドル不安の問題は、やはりアメリカの態度、アメリカがどういう姿勢でいろいろ施策をやるかということにかかっていると思います。今回アメリカの公定歩合を〇・五%上げたそれだけで今度のドル不安を解消しようというのであれば、それはとても無理だと思います。それはやはり財政政策の面におけるいろいろの措置が必要だと思います。現在アメリカの行政府としましては、所得税の増税法案その他の増税法案を幾つか出しておりますが、その成り行きにつきまして、実はヨーロッパ各国がいま非常に注目しておるわけであります。アメリカが節度ある財政政策をとるかとらないか、財政面から国内における過熱を予防し、国際収支の健全化をはかることができるかどうか、それを見ておるわけです。増税法案は、御案内のようにもうすでに半年以上もアメリカの議会で討議されないままいろいろ意見が言われておる段階でございます。アメリカのこの増税法案の取り扱いに対する婆勢ということがヨーロッパで非常に問題になっておる。それがいまだに議会を通過し得ないというところに、今回のドル不安の大きな要因があるのだと思いますので、いまお尋ねのありましたように、公定歩合を〇・五%上げてそれで済むのかというお話でありますが、そうじゃないだろう。やはりもっと強力な政策が必要だろうと思います。
  214. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 これは大蔵大臣に聞いていいかどうかわかりませんけれども、ベトナム戦の将来はどういうような観点に立ってやられるのか。これはやはり日本財政金融と関係がありまして、この点について水田さんはどういうようなベトナム戦の終結の状態、そういう点について感想でけっこうですからお伺いしたいと思います。
  215. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ベトナムのことはわかりませんが、私は昨年アメリカへ行ったときも言いましたが、アメリカがこのドルを防衛する一番の道は、やはり支出を削減するか、これができなかった場合には増税するかのいずれか態度をとらなければ、これは将来のドル不安につながるということを申しましたが、ベトナム戦をどうするかという一定の方針をアメリカが持ったとすれば、持ったことに対する措置、とるべき措置をはっきりとらなければいかぬ。このことが今度のドル不安にもやはりつながっていることでございますので、ようやくアメリカがそういう措置をとり出してきたというふうに私どもは最近見ておるわけでございます。
  216. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 お互いに日本人である限り考えなければならぬことは、いま日本の一般の空気の中に、何かアメリカにたよるというような考え方が強いと思うのです。たよれるだんなならばいいけれども、たよれないだんなのような気がするのです。アメリカは、御承知のようにいろいろなことは言っておりますけれども、最後は——アメリカに限らずどこの国もそうでありますが、やはり最後には自国の繁栄ということが中心であって、やはり日本なんかはどうせ最後にはけ散らされるというような感じをわれわれは持っているわけです。そういう点で、いま日本の経済というものはアメリカ貿易の三分の一のあれもありますから、そういう点でいろいろとたよっておられる点も多いと思うのでありますけれども、しかしこういう乱調になってくればおそらくアメリカドルの平価の切り下げをやるんじゃないかということが第一と、もう一つは、これは先回もちょっと質問したのですが、ドル平価切り下げになれば円もなるんじゃないかというような不安が、最近の情勢を見るとだんだんそういう感じがするのです。そういう点について、いろいろあなた方に御意見があるかと思いますけれども、そういう不安を国民は持っていると私たちは思うのですが、その点はどういうふうにごらんになっておりますか、伺いたいと思います。
  217. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはいましばらくの動きを注視するよりほかしかたないと思いますけれども、いずれにしましても国際経済というものはこれから相当流動いたします。その間に処して日本はどうするかといいましたら、国際経済の中にすでにもう溶け込んでおるのですから、国際協力の中で自国の経済を伸ばさなければならぬ。そういうことでございますが、その国際協力の中でという国際協力を有効にするためには、各国がそれぞれ自分の国の経済をしっかりとやっていくということを前提とした協力でなかったらしょせん効果的なものにならぬ。そういう意味から考えまして、流動する国際経済の中でわれわれのする仕事は、まずほかをたよらぬで自分自身国際収支の回復をはかるという措置をはっきりととって、政府、国民が協力していくこと、これよりほかには基本的な態度はないだろうということをいま私は考えておる次第であります。
  218. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 新聞などでは大臣の発言も出ております。それから日銀の総裁の意見も出ておりますが、日本では公定歩合の引き上げというようなこともやらないで済んでいくだろうか。あるいはこのままではやはりじり貧の形になると思うのですが、そういう点についてはどのような見通しを持っておるか、伺いたいと思います。
  219. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 各国施策を見まして、これはわれわれ政府側が言うのはおかしいと思いますが、日本のやり方はわりあいにしっかりしているのじゃないかと思っております。いろいろ御批判は受けましても、世界のこういうときに、私ども策を考えて、実質減税をことししないのはどういうわけかとか、だいぶいろいろ批判は受けております、か、やはり国際情勢に対処するためには、ことしの日本経済の持って行き方というものは普通の考えではいかぬということを考えて、いままでかってないこういう措置を私たちはとっていこうというくらいで、私どもとしては相当このきびしい国際経済の中で処するためのいろいろな腹がまえ、持った施策をいま考えておりますので、これでいけば私はある程度自分の問題だけは解決できると思っています。したがって、当然外国のいろいろな情勢に対応しなければなりませんが、いまこの問題を中心に、若干の国にいろいろな動きがありましても、いままでの方針でやっていけるのではないかと私は思っています。
  220. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 減税をされぬというようなことをばかに言われますが、一千億減税というのは自民党の公約です。それをやらないで、むしろ酒やたばこ、それから物品税を上げて、それで帳消しにして、減税にならぬですよ。それはあなた方みずから天に向かってつばを吐くようなものだ。一千億減税というのは国民が言ったのじゃないのです。あなた方が言ったのです。佐藤総理はじめ水田さんたちもその一味ですから、減税されないということになれば、やはりあなた方に責任があるわけです。だからあなたが誇らかに、減税減税と言われるけれども自分たちはやらぬということを言われておりますが、自民党自体が減税をやるといったって、むしろこれじゃ増税だと思う。こういう点はやはり正直に——水田さんは正直だからそう責めませんけれども、少なくともそういう考え方が、何か自分たちしゃべっておいて、公約を掲げておいて、あとでしわ寄せは全部国民になすりつけるような状態があって、いずれ所得税法案、法人税法案その他いろいろ増税法案も審議するわけですが、もう少し政府みずからが反省して、自分の言ったこと、やったことについては責任を持ってもらいたい。これは水田さんだけを責めるわけではありませんけれども、佐藤内閣にはそういうあれがありますから、もう佐藤さんの言うことは信用できぬ、こういう意見がちまたの一つの声になっている。したがって、政治家がうそを言うということがいま原則的に国民の相ことばになっているような形であります。私たちは減税賛成でありますし、またそういう声を政府も出しているじゃないか。しかし、実際には増税を結果するように私は思っているのです。そういう点で、あなた方が減税しないと言っても、それは自分みずからが言ったことを実行しないということで、公約違反というような形になるのでありますが、そういう点についてはどういう解釈をして国民にこのことを訴えられますか、伺いたいと思います。
  221. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 所得税の減税はやるというのが公約でございましたが、それは今回所得税の減税はやっております。やっておりますが、全体として今年度に処する財政政策としてはどうかといいますと、私どもはここでやはり国際収支の問題を考えた場合には、ここで公債を削減することが急務である。そのためには減税の犠牲もやむを得ないということで、約束した減税はいたしましたが、そのかわり税の調整によって、実質的な減税というものをやらなかったということは、われわれのフィスカルポリシーのことしの予算に見られる一つの特徴だと思いますが、これはやはり国際情勢に対するわれわれの考え方としては、ある程度しっかりしたものだとあとで評価されるものだというふうに私は思っています。
  222. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それは自画自賛でありまして、やがてそれはわかるだろうと思うのです。  もう一つ柏木さんにお伺いしたいのですが、四十三年度の国際収支の赤字の大体の見通しはどういうようになっておりますか。
  223. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 四十三年度の国際収支の赤字の見通しは、政府見通しによりますと三億五千万ドルでございます。
  224. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 その赤字というものは去年の一つの見通しであって、その後いろいろな悪い材料が出てきたのですけれども、それでもそういう赤字で済むでしょうか。
  225. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 国際収支の見通しを立てるということは、非常にむずかしい問題でございます。ことに、現在の流動している国際情勢のもとで今後の見通しを立てるのは非常にむずかしいことでございまして、一面、たとえば輸出環境は非常にきびしい。政府見通しでは六・五%の世界貿易の伸び、それに対して日本輸出は二・三倍に伸びて、十分伸びる。世界貿易そのものが一体六・五伸びるのかという問題と、日本輸出弾性値がはたしてそこにいくのかという問題についてはなかなかむずかしい、輸出を伸ばしていくことがむずかしい環境だということは間違いないと思います。一方、資本収支の面では、この一月以来の資本収支の動きを見ておりますと、かなり改善されてくるという面もあります。でありますから、来年度の見通しにつきましては、一面むずかしい面、一面前よりも楽になる面もあるということから、今日ただいま見通しを改定する、三億五千万ドル数字を改定するというような考え方は出てまいりません。大体そういうことであろうか、さように考えております。
  226. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この際、柏木さんに、最近ヨーロッパに行っておられた関係もあり、また、あなたは国際金融界の権威でもありますから、 ヨーロッパのフランとかマルク、ポンドが今後どうなるかということについての見通しがあったら、伺いたいと思います。
  227. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 先週のパリのOECDの合議では、ポンドの切り下げ、ドル防衛の結果、それがヨーロッパ諸国にどういう影響を与えるであろうかということが一つの議題でございました。一方からいえばポンド切り下げ、ドル防衛の結果、両国経済の引き締めというかスローダウンが期待される。その中で、それがそのままEECにも、あるいはヨーロッパ諸国にいけばそちらのほうもスローダウンする。両方スローダウンすればお互いにイタチごっこというか、循環的に世界全体を不況に落ち込ませるんじゃないかということが一時いわれまして、そういうことになってはとてもいかぬ、やはりこういうときには、黒字国であり、同時に外貨準備の豊富な国は、世界経済の今後の発展のために積極的に拡大政策をとるべきではないか。そういうことが一月、二月以来いろいろ議論されまして、そのためにその拡大政策をみんなで申し合わせようじゃないか、一国だけが拡大政策をとればその国が赤字になるということになりますので、ヨーロッパ全体で積極拡大政策をとってはどうかという趣旨で、そういう機運を醸成するのが実は先週の会議の目的でございまして、その結果、聞いておりますと、ドイツ、フランス、イタリア、いずれも拡大政策をやりましょう。たとえばドイツあたりは、昨年は成長率ゼロというか成長率がマイナスでございますが、それが少なくとも本年は四%いく。これは現在の段階としては非常に急激なる成長率の上昇カーブをとるであろうといっております。イタリアは五・五%くらいの成長が達成できるだろう。フランスは、五カ年計画は、それを五%上回るということはむずかしいだろうけれども、そこまでは必ずいくだろう、六九年は五・五%までいくかもしらぬ。そういうふうにヨーロッパのほうの主要な国が積極的な姿勢を示したので、周辺のオランダ、ベルギーあるいはその他の小国が、それじゃ自分のほうももう少し拡大政策をとろうといったような機運も出てまいりまして、一方ではアメリカイギリスがいままでの経済をスローダウンさせる、それに対応してヨーロッパ黒字国のほうが拡大政策をとる、それによって世界全体の経済のスローダウンは避けられる。ですから、先ほど申し上げました循環的なデフレというような心配は非常に遠のいたということでございます。むしろ先週の会議の雰囲気といたしましては、世界のデフレを心配するというよりも、やはり問題は通貨不安の問題があるじゃないかということでございます。通貨不安と申しますと、ドルの不安及びポンドの不安、それは先ほどいろいろ御説明したとおりでございます。
  228. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、今度のヨーロッパ措置で金プール制度を廃止するというような意見がありますが、日本ではユーロダラーによっていろんなつじつまを合わせているといわれておりますが、そういう点で日本に対する大きな影響はないでしょうか。
  229. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 通貨不安がユーロダラー市国にどういう影響を及ぼすか、私ども非常に注意しています。ただ、ユーロダラー市場はとにかくきのうきょうの問題じゃなくて、この戦後十何年間育ってきた市場でありまして、非常に大きな市場でございます。これが急激にどうこうするということもございません。しかし、通貨不安の状態が続けば、これはやはり何といっても貸すほうの態度からすれば慎重になっていく、市場がタイトになるという問題がございます。日本としてもその点国際環境として非常に問題があるというか心配すべき点があるということで、私どもは十分注意いたしております。
  230. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 EECの中でイタリアの態度がだいぶ問題になっておりますが、ここでドルの公定歩合を引き上げたのですが、ヨーロッパのほうでは金利の引き上げというようなことは行なわれないものですか、どうですか。この見通しをひとつ……。
  231. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 先ほど御説明いたしましたように、ヨーロッパとしては、今回は世界経済の発展成長を維持するために、むしろ金利を下げるべきだということなんです。これはちょっと忘れましたけれども、前々週のEEC蔵相会議で申し合わせができまして、お互いに金利水準は下げる方向へ持っていこうということでございますので、今度のアメリカの公定歩合の引き上げとかあるいはカナダの引き上げに伴いまして、ヨーロッパが上げるというようなことは、いまのところは予想されません。
  232. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私たちがいろいろ心配しておった状態が出てきたのでありまして、しかし、そうはいっても、私たちは等閑に付するわけにはまいりませんが、ただ私は、アメリカ一辺倒の政策、それから、もともとドルポンドは世界の通貨の中心であったのですが、しかし、いまのこういうような不安定なドルポンドにあまり依存し過ぎるととんでもないことになるような感じがするのですが、こういう不安というものはおそらくきのうの問題から全世界に蔓延すると思いますが、そういう点安心していけるだろう——いま大蔵大臣から、増税案がうまくいくとか、あるいは金準備の問題があるということになっておりますけれども、それだけではたしてアメリカドルが安定するかということになると、まだまだ不安定要素がたくさんありますが、そういう点についての見通しはどのように考えておられますか。
  233. 柏木雄介

    柏木(雄)政府委員 お説のとおり、金とかドルだけに依存する体制をいつまでも続けていくと、いずれ行き詰まるだろう。これはいわばもう四、五年前からの懸案であります。この四年来ずっと十カ国蔵相会議等で研究してまいりましたし、そのほかIMFの中でも研究されてまいりました。その成果が、昨年のリオのIMF総会における特別引き出し権をつくろうという動きというかそういう申し合わせでございます。昨年のIMFの総会では新しい特別引き出し権の大綱というものがきまって、それに基づきましてIMFの理事会で必要ならIMF協定の改定案を用意することになっております。したがいまして、結局こういう新しい準備資産、現在の金やドルを補完する新しい準備資産をつくることによって、国際的な協力によって国際通貨体制を安定していこうという動きになっておりますので、いわば今日のこういう混乱を予想したわけではございませんけれども、今日の金、ドルだけにたよる体制ではいけなくなるということは予想されることでございまして、それに対処する案というものを目下関係国及びIMFで準備にかかっておる段階でございます。
  234. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一点、大蔵大臣に伺いたいのですが、いろいろこういうような不安が起きるということになると、これは宮澤君に聞いたほうがいいかもしれませんけれども日本のいまの政府が考えておられる経済の見通しが少し甘過ぎるのじゃないか、そういうことによるいろいろな蹉跌が起こるように思うのですが、そういう心配はありませんか。
  235. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ今年度の見通しを変えなければならぬというような情勢には全然なっておりませんので、もう少しまた今後の情勢が変わってさましたらともかく、いまのところはあの見通しで別に変更の必要はないだろうと思っています。
  236. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そうすると、これは経済見通しをお出しになったのは、たしか去年の十月前後だと思うのですが、そのときと、その後半年の間の変化というのは、もう大変化がきておると思うのですけれども、それでもそのままでいいという自信がありますか。
  237. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは見通しは、一月になって四十二年度の見通しの変更もいたしましたし、四十三年度のも一月になってつくったものでございますので……。
  238. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 武藤さん、関税定率法の問題ですね、私は毎年大蔵委員会に出るたびにこの問題が出るのですが、現在アメリカ輸入課徴金をやるということについて、日本関税政策というものは反対にいくのですけれども、どういうようにお考えになっておりますか。
  239. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 日本関税政策といたしましては、基本的に、これは関税に限りませんけれども貿易を拡大していくということが日本のためにはなる、そういう観点に立っております。そこで関税につきましても、なるべく日本関税を下げますけれども、相手国の関税も下げてもらうということが貿易拡大に役に立ちますので、ガットで交渉をいたしまして、そうしてお互いに関税を下げ合う、こういう交渉を何度かいたしておるわけでございます。そうしてきた最近までの一番大きなものがケネディラウンドの交渉でございます。そういうふうにして各国とも長年かかって交渉しまして、お互いに譲り合って、そうして関税を引き下げるということでケネディラウンドの交渉がまとまったわけでございますが、そのまとまったあとで、ことしに入りましてアメリカが、先生いまおっしゃいました貿易面の障害、あるときは国境税といい、あるときは輸入課徴金といい、まだアメリカの腹はきまっていないようですけれども、要するに貿易面の障害を高くするというようなことを検討を始めたということが起こっております。これは非常に困ることだ。特に困りますのは、いままでの世界の貿易の自由化という点でアメリカが先頭を切って各国を引っぱってきたわけでございます。ジロンラウンドでもケネディラウンドでも、これはアメリカが先導しておったわけでございます。その先導者である、リーダーであるアメリカがこういう措置をとるということは、世界貿易に対して非常に縮小的な影響を与える心配がある。そこで、これはぜひやめてもらわなければいけない、こういうことで日本も強くアメリカに撤回を要求しておりますし、 ヨーロッパの国も同じように、これは何とかしてやめてもらおう、こういうことをしています。こういうことでございます。
  240. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 ケネディラウンドに反しているようなことをアメリカ自体がやるということは、非常に残念なことでありますが、しかしEECの国も、特に西ドイツなんかも農産物を一〇%の税を取っておるのですが、EECもやはり関税の障壁をなかなかはずさない。アメリカもそうであるというと、日本だけがお人よしでそういう中に入って関税をできるだけ下げて、そして貿易の自由化に対処していくというようなことは、どうも少し非常に危険な状態があるのじゃないか、そういうように思うのですが、その点はどういうふうに考えておられますか。
  241. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 お話しのように、もし日本だけ関税を下げるということですと、たいへん問題があるわけでございますが、このガット関税交渉というのは、お互いに交渉しまして、日本もこういうものについて関税を下げる。アメリカと交渉しますときも、アメリカ日本輸出したいものについてこの関税を下げてくださいという交渉をいたします。そしてお互いに譲り合って、これとこれとこれとをこういうふうに下げます、こういうふうに交渉がまとまるということで、簡単に申しますと相互主義、お互いに下げるということでございますので、これは日本だけが下げるということにはなっておりません。これはある国だけが下げるということですと、なかなか下げるのがうまくいきませんので、お互いに下げ合う、こういうことでできております。
  242. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 その後の状況は知りませんけれども、バナナの関税で、日本の農産物との関係でいろいろ問題になっておった。いまはバナナ関税の問題はどういうところに落ちついておりますか、伺いたい。
  243. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 バナナの関税は、先生御承知のように、いろいろといきさつがございますが、現在は六五%になっております。それに至ります経緯は、暫定税率でそれまで七〇%でございましたが、四十二年度の関税暫定措置法の改正で、昭和四十四年の三月末までの二年間において各年度五%ずつ下げる、合わせますと一〇%になります、こういうことになっております。そこで、このうちで四十二年度の引き下げ分については、四十三年の一月一日から五%の引き下げということをいたしましたので、現在は六五%になっております。
  244. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろ多岐にわたっておりますから、一々こまかいことを言いませんけれども、たとえば日本のビール麦の輸入のことについて、実は私のほうの近くにキリンビールの工場、また今度はアサヒビールの工場ができるようです。あの付近は非常に麦がよくとれるところなんです。特に私どものほうの稲沢市を中心として丹羽郡は非常に麦がたくさんとれる。ところが、この二、三年前から麦をつくらない。どういうことでつくらないかといいますと、結局生産費の割りに合わぬ、安いから合わぬということで麦をつくる人がどんどん減ってきました。そこで、この輸入のビール麦が非常に安いということになっておりますが、その点について、これはおそらく飼料なんかもそうじゃないかと思うのですが、トウモロコシのことは出ておりますけれども、そういう問題をどういうように勘案して関税のあれをしておられるのか。これは直接関係のあることでございますから、おそらく日本にそういう関係が相当あると思うのです。そういう点でどういうような処理をしておられますか、これも武藤さんに伺いたいと思います。
  245. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは、農産物については非常にむずかしい問題があるわけでございます。その一つのあらわれが先ほど先生がお話しになったバナナでございます。バナナは直接国産ではございませんが、日本の国産のリンゴとの競合が非常に騒がれたわけであります。全般的に申しますと、国際価格が大体からいうと安定している、ところが国内では所得が上がりますのでコストが上がりがちである、そうしますと開きがだんだん大きくなってしまう、そういうことでございます。そのたびに関税を上げるということは、これはまた農産物については特に後進国が非常に強い関心を持っておりまして、ガットで、一切の農産物、後進国の産品についての関税のような貿易障害は、高くしたり新しく始めたりするな、だんだん下げていけ、こういうことでございます。いま国連の貿易開発会議でも非常にもめております問題の一つは、農産加工品についての関税を、先進国側はこれはケース・バイ・ケースで、差しつかえないというものだけは特恵をやれるけれども、原則としてはそういうものはやれない、こういうことを言っておるわけでございます。そういうことで農産物につきましては非常にむずかしい問題が起こります。片方、国際的な要請、それから国内的に物価政策から見ましても、なるべく外国の安いものを安いままで入れたいという要請がありますが、また競合する国内の農業については、それはそのままで入ってきては農業が困ってしまう。そこでこの間の調整に非常に苦労をしながら、間を縫うようにしていま関税政策がきめられているということでございます。  なお、いまお話しになった麦につきましては、関税ではございませんで、食糧管理制度という形で保護しているということになっております。
  246. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 トウモロコシの問題が盛んに問題になっておりますが、その辺の説明を承っておきたいと思います。
  247. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは先ほどから農林省が詳しく説明をいたしておったのでございますが、簡単に申しますと、トウモロコシが外国から入ってきますと、それからとれるコンスターチと、日本のイモからとれるでん粉とが競合する。そこでこれを何とか国際的に非常に強い批判を受けないようにしながら、しかも日本のイモをつくっている農業に深刻な打撃を与えないようにしよう、このむずかしい要請にこたえまして、たいへん複雑なんでございますが、関税割り当て制度、これは一次税率という安い税率は割り当ての証明書をもらった人に適用される、それからそれをもらわない人は、二次税率といって高い税率を適用されるわけでございますが、その一次税率のほうは下げて、そして二次税率のほうを上げる、こういうことで関税面だけは処理いたしまして、それだけでは解決しませんので、今度は一次税率の安い割り当て証明書をもらった人は調整販売ということをやる、そういう形でこれを解決しようという、たいへん複雑なことをやっております。これは先ほど申し上げましたように、国際的な要請と国内的な要請と、その調和ということで非常に苦心した制度をやっておるわけでございます。
  248. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一つ伺いたいと思うのですが、いま輸入課徴金ということが新しいことばとして非常に大きな問題になってきております。近くこの国会でも決議されるようになるのですが、これともう一つ国境税というのはどういうあれがあるのか、この区別と、それから実際に行なわれておる国のあれをひとつお知らせ願いたいと思います。
  249. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先に国境税調整というほうから御説明いたします。これは新聞等に国境税と出ますので、何か関税のほかにまた国境税というものがあるのかどうかという感じを持ちますが、正確に申しますと、国境税というよりも国境で内国税の関係調整をする、国境の税の調整、こういうふうに考えたほうがいいと思います。それはどういうことかと申しますと、現在たとえば輸出する場合に、輸出関税がかかりません。しかし国内でもし物品税がかかっている商品カメラならカメラ輸出するというときには、そのカメラにかかっている物品税は戻します。それから外国から入ってきますときには、関税をかけてその上にまた物品税をかけます。そういう形で、カメラに直接かかっている物品税のようなものは、輸出のときにはそれをはずしてやる、輸入するときにはそれを関税にさらに上積みをする、こういうことはどこの国でもやっていることでございます。ところが、これは輸出入されるものに直接かかった間接税ですけれども、さらに広げまして、原料にかかっている間接税も戻していいのじゃないか、あるいはそれをまた入るときにかけてもいいのじゃないか。ガットの現在の規則は、直接のものも間接のものもそういう戻したりかけたりしていいようになっております。そこで、ヨーロッパのほうは御承知のように間接税の比重が高いものですから、その間接のものまで戻したりあるいはかけたりということをしますと相当な率になる。そこで今度アメリカのほうは、特にアメリカが今度の年初に国境税調整というようなことを言い出した動機となりましたのは、向こうの国内輸入制限運動国際収支が悪くなったということもございますけれども、もう一つは、ドイツが御承知のように非常に黒字の国であります。ここが黒字をためるのがいろいろと問題になる原因である。ところが、ドイツ国内法を改正しまして、その結果先ほどの国境の税の調整率を上げるということをいたしました。フランスも前からやっておったのですが、ドイツは内国税を直しまして外国から文句を言われぬような形にしまして国境税調整の率を上げた。そこでアメリカは、黒字の国がそういうことをするとなお黒字が大きくなるのではないか、ぜひやめてくれということを言っておったのでございますが、ドイツが一体となってそっちのほうに動いておりますので、今年の一月一日からとうとう実施するということになりましたので、それで一時アメリカは、向こうがやるならこっちもやろうかというようなことで、アメリカもそういうことを考え出したわけでございます、ところが、アメリカ国内の税が間接税の比重が小さいということと、もう一つ、これは省略しますが、税がドイツのような間接税になっておりませんので、アメリカではなかなかこれがうまくできない。そこで最近では、先ほど先生がおっしゃいました輸入課徴金という話が出ております。  輸入課徴金というのは、簡単に言いますと臨時の関税のようなものであります。これは国際収支が悪くなったときにカナダ、イギリスが取りました。そうしてガットその他で非常な非難を受けまして結局はやめた、こういうことでございます。輸入課徴金ガットに違反しますので、そういうふうに違反してもかまわずやって各国から非難を受けるというやり方をいままでのカナダ、イギリスはしたのでございますが、いまアメリカの場合は、もしそういうことをやるときにはガットで特別に許してもらう、ウエーバーという手続でやろうというようなことを考えているようでございます。
  250. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 大臣にお伺いするのですが、大臣は先ほどアメリカドル防衛に協力するというようなことを言われましたが、しかし、いま輸入課徴金という問題が武藤関税局長からも、説明があったのでございますが、アメリカに対してどういう対策を大臣としてとられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  251. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 たびたび申しますように、ガット違反でもありますし、自由貿易の旗を掲げたアメリカが、そしてケネディラウンドの提唱者のアメリカがこういう措置というものはとるべきじゃない、お互い貿易の縮小に作用する危険性を持ったこういう措置をとるべきではないということで、いま極力、ひとり日本といわず国際的な働きかけもいたしまして、何とかしてアメリカにこれをやめてもらうということにいま全力を尽くしている最中でございます。もうあらゆる機会を通じ、また、ある程度外交交渉的な問題にまで入っておりまして、近く民間ではまた使節を向こうに出すという計画もございますが、あらゆる力をあげてこれをやめさせるということをまずやるべきであるというふうに考えております。
  252. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いろいろ御説明を伺いまして、理解した点もありますが、ひとつ水田さんにお願いしたいのは、日本の経済の大元締めをやっておられる大蔵大臣、ひとつ自主性を持って、アメリカがどうなろうがイギリスがどうなろうが、日本の経済は絶対引き受けたというような形で日本の国民のためにやっていただきたい。少なくとも私たちから見ておると、どうもアメリカに加担をして日本の国を忘れておるのではないかと思うぐらいアメリカにほれ込んでおられるようでありますが、しかし、そのほれ込んだアメリカでも現実はこういうように、表は非常にいいようだけれども、内面では相当の矛盾があって、いまいわれるような輸入課徴金までかけて自国の経済を守るというような国であります。どうかそういう点で、私らは排米主義でありませんけれども、やはり日本を中心にした経済をやっていただきたい、財政をやっていただきたいという希望を申しまして、同僚委員もたくさん質問がありますから、私の質問を終わります。
  253. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 武藤山治君。
  254. 武藤山治

    武藤(山)委員 関税定率法の質疑に入るわけでありますが、先ほど同僚の阿部委員から大蔵大臣に質問をされた際に、大蔵大臣はアメリカが金の交換を停止することはあり得ない、こう答えました。これは重大な発言だと思うのであります。アメリカが金の交換を停止することはあり得ないか。いつまであり得ないか。先ほど大蔵大臣は、国内の法定金準備率を今度廃止する法案も通ったし、また、公定歩合の引き上げ措置をやり、国内引き締め政策が徹底をする。さらに、アメリカは一オンスになるまでドルの価値を守ると声明をしているからと答えたわけであります。すなわち、前段の、アメリカが金の交換を停止することはあり得ないということであります。ところが、すでにきょうの夕刊では金プールの一角であるロンドン市場の閉鎖が行なわれた。このことは金の交換制というものを一部分ではあるが停止したことを意味すると思いますが、いかがですか。
  255. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この金の混乱を終止させるために一時的にとった措置であろうと思います。問題は、今後どうするかということでございますが、私は、アメリカがいままで再三声明しておることでございますので、金の交換停止ということを簡単にやるとは思いません。しかし、十六日の会議によって何をするか、この市場を再開する場合に一定の制限をつけることを各国で考えるのか、これはいろいろの相談がなされるのだろうと思います。これはいまのところわかりませんが、そういう市場の規制というようなものはあり得ると思いますが、この交換の全面的な停止という措置はおそらくとらないだろうというふうに見ております。
  256. 武藤山治

    武藤(山)委員 金の交換を停止することはいまの時点ではあるいはないかもしれぬ。しかし、私はこの三日はかり前、やはり大蔵大臣にこの一年くらいの間にいろいろな事態が起こってきて、とどのつまりは最終的には金の価格の引き上げが行なわれざるを得ないだろう、こういう意見を申し述べて大臣の見解をただしたのでありますが、大臣は、アメリカが一オンスになるまでとにかくドルの価値を維持すると声明をしておるからこれを信頼するんだ、信ずるんだ、こう答えたわけであります。しかし、大臣が信じようが期待をしようが、現実の国際経済の動向は、水田さんが予想しないような方向に残念ながら進んでいるわけであります。そこで、これから考えられるのは、まず金プールの停止がほんの間近に、近い時期に起こり得る経済情勢になってきたと思うのであります。イタリアは金プールに金を供出することを非常に渋っているということを各新聞が二日前に報道いたしております。したがって、国際決済銀行の金プールの機能そのものが近いうちに停止されるのではないだろうか、こういう心配があるわけでありますが、そういう心配は全くないと断言できますか。
  257. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、最後の一オンスまでという声明をしたアメリカでございますから、これは何らかの措置をとって簡単に金交換の停止という措置はとらぬだろうと考えておりますが、しかし、問題がここまできて市場が一時休場になってこれを相談の上で再開するということでございますから、普通の形で再開されるということも想像できません。何らかの市場に対する規制策というようなものを考えるかどうか、これはこの十六日のときに相当にいろいろな深刻な相談があると思いますが、これについてはもういまのところ注視しておるよりほかしかたないと思っております。
  258. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、先ほどの大臣の答弁の、金の交換を停止することはあり得ないという意味は、アメリカの連邦銀行が各国通貨当局、すなわち各国中央銀行に対する一オンス三十五ドルという交換は停止することはない。すなわち政府の持っている、各国中央銀行の持っているドルについては交換制を否定する、停止することはないだろう、こういう意味ですか。しかし、金プールにおいてはすでに停止したんですから、ロンドン市場で。片方は停止あり得ないという概念では、両方どっちだかわかりませんからこれははっきりしてもらいたい、どういう意味だったんだか。
  259. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ロンドンのは市場の休場でございまして、停止したとかしないとかじゃなしに、市場を開かないという措置でございますので、これからどうするかという問題が出てくると思います。私は、いまあなたがおっしゃられたような金の値段をどうこうするという問題、交換を停止するということはおそらくしないだろう。しかし、市場再開についてはいろいろな市場についての規制とかなんとかいうことは関係国で考える可能性はあると思っております。
  260. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間がありませんから、先ほどの金の交換を停止することはあり得ないという大臣の答弁だけを確認をして、その内容を明らかにしたいと思ってちょっと質問したわけであります。  関税率の法案の質疑に移りたいと思います。  関税局長、いまケネディラウンドの関税一括引き下げ、すでに国内条約を批准をした国は何%くらいに達しましたか、また、国数はどのくらいになりましたか。
  261. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 一月十日の状況でございますが、最終的に受け入れたという国がオーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、ドミニカ、 マラウイ、ノルウェー、ペルー、ポルトガル、スウェーデン、スイス、トルコ、米国、EEC、十五国になります。それから批准を条件にして受け入れた国がブラジル、チリ、フィンランド、フランス、西独、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、八カ国、こういうことになっております。
  262. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいま読み上げた国数は批准をすべき国の中で何%くらいを占めますか。半分はもうこしておりますか。
  263. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 参加国全部ということになると四十六になります。しかし、この中には後進国で譲許はしておるけれども非常にわずかだという国が相当たくさん入っております。
  264. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても国家の大小は別として、まだ批准をしない国が大ざっぱに言って約半分あるわけですね。  そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、アメリカ輸入課徴金を課するかどうか、今日まだわかりませんが、その課するか課せないかがはっきりするのは大体いつごろだと大臣見通しておられますか。
  265. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もよくわかりませんが、十六日に国際金融会議を開き、さらに月末には十カ国蔵相会議が開かれる。そうしてそこで問題が論議されるときでございますので、それ以前にはたして、各国がみんなこれはやめてくれといっているものを断行するかどうかわからない、やはり月末ごろまではアメリカはこの問題を決定しないのじゃないかというような予測をいたしております。
  266. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、大臣、月末にもしアメリカ課徴金を課する、日本にも援用する、そういう結論が出た場合には、日本の今日国会に上程されているこの一括引き下げ批准を少々ストップをして、アメリカに反省をさせてもいいのではないか、かように私は考えるのでありますが、かりに課徴金がこの月末に通るかもしらぬ、そういう段階でいまあわててこの関税定率法を国会に、大蔵委員会において議決する要はなかろうと思うのであります。アメリカに反省させるためにも少々延ばしたらどうかと思うのですが、御見解いかがですか。
  267. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 局長から説明してもらいますが、日本がこれを押えて日本のためになるところはない。これは押えるのではなくて、日本としてはすみやかにこれをきめるほうが日本の国益になるというふうに考えております。
  268. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま大臣は、かりにアメリカが五%の課徴金を課しても、ケネディラウンドは直ちに批准をし、あるいは関税率は直ちに改定をするほうが日本の国益になるのだ、こういう大臣の御見解でございます。私のそれを延ばせという議論は、アメリカ課徴金を課したという前提で言っておるわけですよ。五%の課徴金アメリカが課した場合でも、日本はケネディラウンドの税率を直ちに実行するほうが利益になるという、その利益になる根拠をひとつ明らかにしていただきたい。
  269. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 一々条文を読みませんけれども、今度のケネディラウンドの譲許の関係は、もし日本——御承知のようにアメリカ等は一月一日から実施しているわけでございます。日本はおくれまして、七月一日から実施する予定でございますが、日本がこれを実施しないということになりますと、日本が主として輸出に関心を持っている品目というものは、相手の国がみな実施をとめてしまうということになりますので、結局こちらも実施しない。日本輸出関心品目はまた実施されないということになりまして、その差し引きだけでもマイナスでございます。それから世界貿易の拡大と輸出の振興という面から考えますと、これはまことに困ったことになってしまうわけでございます。  そこで、その次の先生の御質問は、かりに五%の課徴金をかけられたときにどうだということでございますが、五%——幾らになるかアメリカはわからぬといっておりますし、中身もわからぬといっておりますが、それはそれとして、ガット等の場で議論するということが日本のために一番いいのだと思います。
  270. 武藤山治

    武藤(山)委員 アメリカはまことに手前かってで、いま一括引き下げを各国に批准を要請しておきながら、また自分がリードしておきながら、今度は課徴金を課するというこの態度は、ほんとうにアメリカのエゴといっても間違いないと思うのであります。したがって、私はそういうものを——これから自民党では福田一さん、政府では宮澤経済企画庁長官をアメリカに派遣して、課徴金問題については思いとどまるようにというアメリカに注文をつけに行く、こういうことを新聞記事で報道しているわけであります。こういうときであるから、私は自由貿易を唱えていたアメリカがこういう態度をとるということはあまりにもけしからぬから、この国会審議を通じてアメリカに少しは反省をさせたい、こういう気持ちを私は持つのであります。あなたたちは与党としてあるいはまた政府として、なかなかそういう態度はとれないと思いますが、われわれがそういう考え方まで秘めているということを、あなた方もひとつ頭に置いていただきたいと思うわけであります。  次に、一括引き下げ措置が及ばないわが国との貿易相手国はどこかという問題であります。これは皆さんのほうから配付された資料ですが、この二枚目がそうですが。
  271. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 お配りしました表の二枚目のほうが現在便益関税を適用してない、それから譲許税率も適用を見ないということで、国定税率を適用しているということになります。
  272. 武藤山治

    武藤(山)委員 国定税率ということばは、これは法律用語としてこういう税率があるのですか。
  273. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これはわかりにくくなるといけないと思いまして、法律用語ではございませんか、譲許税率と比べて——譲許税率というのは、元来はガットで譲許している税率でございます。それを別な税率という意味でわかりやすく国定税率ということにいたしましたので、正確に申しますと暫定措置法がないものについては定率法の税率、それから暫定措置法があるものについては暫定措置法の税率、こういうことでございます。
  274. 武藤山治

    武藤(山)委員 したがって、これは普通法律語でいう場合は、基本税率という意味にも解せるわけなんですか。どこの法令集を見ても国定税率ということは出てこない。
  275. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 基本税率ということばを使いませんでしたのは、基本税率ということにしますと、定率法のほうの税率じゃないか。暫定措置法の税率がある場合には暫定措置法が優先するわけですけれども、暫定措置法の税率がない場合には定率法の税率、ある場合には暫定措置法のほうが優先しまして暫定措置法の税率が適用になるわけでございますが、それをわかりやすく国定税率と書いたわけでございます。
  276. 武藤山治

    武藤(山)委員 ここに書かれている二十七カ国がなぜ一括引き下げの今回の措置影響を受けないか、効果が及ばないか、その理由を一つずつすべての国について説明をしていただきたいと思います。
  277. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この二十七カ国でございますが、こういう形になっております。  まず第一に、ガットで交渉をし、そうしてお互いに譲り合った国にはお互いにガットの税率が適用される。これは当然のことですが、無差別になります。  このほかにまた二国間条約で、相手の国も最低の税率を日本に適用し、日本も同じように最低の税率を適用する。こういう条約がありますと、たとえばソ連の場合がそうでございますが、その両国間には、最低の税率はガットの税率になっていますから、それがまた適用になる。それが二番目のものであります。  その次にいきまして、今度は、ガットのメンバーになっておりますけれども日本に対して三十五条を援用しているという、ガットのメンバーにはなっているがお互いの間はガット規定が適用にならぬというグループがございます。これが二つに分かれまして、三十五条は援用しておりますけれども、事実上日本に対しては差別待遇をしていない、そういうものに対してはこちらも差別待遇をやらない。そういうふうに、事実上日本に対して差別待遇をしてない国に対して、お互いにこちらとしても差別待遇をしないということをやっているグループが三番目でございます。  その次に、今度は三十五条を援用している国で、事実上日本に対して差別待遇をしておる国に対しては、日本のほうも一番有利な税率はこちらに均てんさせるということになっております。  そのほかに、国交のない国というのはどういう待遇をするかということがわかりませんので、これも最低の税率は適用しないということになっています。  いま申しましたあとの二つのグループがこの表の二十七カ国ということになります。
  278. 武藤山治

    武藤(山)委員 そこで、まずこの中で、一、二、三、四、五の範疇を出したわけですね、その五つを全部この二十七カ国に当てはめて、これは二、これは四というぐあいに言ってください。
  279. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この国定税率を適用している国というのは、いまの分類のほうの二になりますから、その中で三十五条を援用している国とそうでない国とだけ申し上げればおわかりになると思いますが、三十五条を援用しているところは、マルタ、モーリタニア、セネガル、ガンビア、 コートンボアールーこれはこの表では象牙海岸となっております。それから上ボルタ、南アフリカ、そういうことでございます。
  280. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと国交の回復していないあるいは二国間条約できめてないその範疇はちょっとわからないですね。国交が回復されていないために一括引き下げの影響が全然及ばないという国はどことどこですか。
  281. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 未承認のほうを次に申し上げますと、北朝鮮、中国本土、北ベトナム、東ドイツの四つでございます。
  282. 武藤山治

    武藤(山)委員 あとのモンゴル、ネパール、アルバニア、ルーマニア、これは二国間条約できめてないというのはどういう理由ですか。
  283. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 向こうがどういう税率を適用しているのかよくわからないということで、こちらも一番有利な最低税率は適用しないというようなことをやっております。
  284. 武藤山治

    武藤(山)委員 向こうがどの程度関税率になっておるのかわからないという国はどことどこですか。
  285. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 未承認のところは省略させていただいて、モンゴル、アルバニア、南イニメン、ナウルであります。
  286. 武藤山治

    武藤(山)委員 アルバニアやモンゴル、この辺の国はどの程度関税をかけてどうなっているかというのは全然わからないですか。調べようとしないのですか、それともわからないのですか、相手が一切関税率を見せないのですか、それとも政府が故意に見ようとしないのですか、どの範疇に入りますか。
  287. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この譲許税率を適用するときには、大体において、条約ばかりでなくて、たいていは無差別待遇のことを約束する条約ではありませんから便益関税になってしまいます。そういう形で責任のある回答があるということになっております。そういう形でなくて、いろいろと調べてみますとどうもこうらしいというようなところには、軽々しくそれによってどうするかということはやっておりません。
  288. 武藤山治

    武藤(山)委員 この間、局長は、ここの質疑応答で、なぜ中国に差別関税をするか、こういう質問に対して、一つは、中国が差別関税をしておるからだ。しかも、あなたの入れ知恵によって、佐藤総理自身同じ答えをここで私にいたしたわけです。しからば、中国の関税率はどうなっているか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  289. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは国交がございませんので、正式にそちらの関税はどういうことかということをこちらは手に入れておりませんけれども、しかし、われわれが手に入るいろんな資料から見ますと、中国は日本に対して差別をしている。関税は、税率が二つあって、そうして日本には一番、安いほうを適用していない、こういうふうに考えております。
  290. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは事実と違う。それでは、その資料は、どの資料に基づいてそういうことを・言っているのか、何年に発行されたどういう資料であるか、まず明らかにしていただきたいと思います。
  291. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほども申し上げましたように、国交がありませんから、向こうの政府から、正式にこういうものだということは手に入れておりません。したがいまして、いろんな資料を参考にして見るわけでございますが、たとえば、日本貿易振興会の四十一年九月に出しております中国対外貿易部編「中国対外貿易の基礎知識」これはロシア語のものでございますが、それから訳したものにつきましてもそういうことになっております。
  292. 武藤山治

    武藤(山)委員 それをひとつ内容を明らかにしてもらって、一体どういう税率で最低あるいは最高、普通——日本から輸出したもので、そういうものが一度でも発動されて課税をしておるという事実はキャッチしておるのかどうか。
  293. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 たとえば、こういうことが書いてあります。輸入商品に対する関税率表には二種の関税規定される必要がある。中華人民共和国と通商条約または協定を結んでいない国に対しては、通常より高い関税額を課さねばならない。中華人民共和国と通商条約が結ばれている国に対しては通常の関税率を適用する。こういうふうになっております。
  294. 武藤山治

    武藤(山)委員 その場合、それは何年に中国がどういう規則でつくったものですか。どこからさっきの資料か——入ったところは言いましたね、あなたはちょっと。中国は何年にそういうものをきめて、日本品についてそういうことが発動された事実があるのかどうかということを私は聞いているのです。
  295. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 それは普通の国の貿易ですと、たとえばアメリカの場合ですと、向こうに日本の会社が子会社をつくって、そこが輸入をする、こういうことになります。そうしますと、そこが関税を払いますから、関税は幾らだということは非常にはっきりするわけでございます。中国の場合は、そういう状況でございませんから、幾ら払ったということは、実際の取引では業者に聞いてみるというわけにはいかぬ、こういうことでございます。  なお、これはその後改正になっている部分もあろうかと思いますけれども関税に関しては中央人民政府政務院命令、これの五一年ので見ますと、相当な差別がございます。
  296. 武藤山治

    武藤(山)委員 五一年というのは昭和二十六年ですよ。中国はまだ、蒋介石が台湾に撤去をして——撤去なのかあるいは逃げたのか知りませんが、いずれにしても、その当時はまだ中国は今日の独立国家の健全な基礎をつくってないですよ。独立したのは四九年でしょう。だから、ちょうど混乱が終わったくらいのときだ。政府ができたばっかりだ。だから、おそらくそれは古い当時の政府のでしょう、その規則は。何を基礎にして、中国はまだ差別関税をやっているという認識が私は疑いたくなるのです。中国に対してもうちょっとお互いが理解を持とう、中国との貿易をもうちょっとお互いにふやそうという前向きの姿勢があれば、そういう事実関係というものはもう少し正確なものがきちっとつかめると思うのですよ。しかもいま関税局長の答弁の中で重大なことは、相手は自由主義の国ではない、商社が輸入する国ではない、輸入というものは国が割り当て輸入しておるわけですね。公司が割り当てをやっておるわけですから、国内関税を向こうの公司が幾ら払いますなんという国に払う仕組みではない、割り当て制度なんだよ、輸入が。そうでしょう。だから、この品物に幾ら税関で取ったかなんということを調べようといったって、そういう規則があっても、実際取っていなければ、証拠を出せと言われても武藤さん、困るわけです。だから、私は、大臣に伺いたいのは、中国は割り当て制の国ですから、そういう税関関係のことを基礎にして、中国を差別関税に取り扱うということは、この際改むべきではないか。事実関係をきちっと調べれば調べられるのですからね。しかも自民党の、与党の代議士が北京に覚書貿易をちゃんと結びに行ってきてくれておるのですから、こういう人たちに頼んで調べてもらったってすぐわかることです。そういう点を全く関税局長は証拠も持たずに、ただ相手は差別関税をしておる、中国は高い税率をとっておる、こういう立場で中国に対する差別取り扱いをするといういまの態度は間違いだと思います。改むべきだと思います。いかがですか。
  297. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 「中国政治経済総覧」の四十一年版というのを見ますと、低い税率を適用している国と、そうでない国との表がございます。これで見ましても、そのとき現在でも二つの体系の関税率があるということは大体間違いがないと思います。
  298. 武藤山治

    武藤(山)委員 二つあることは間違いがない。問題は、それが発動されておるかどうかということです、日本商品に。
  299. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 その事実でございますが、これはなかなかむずかしい問題になりますのは、国営貿易の場合、たとえば関税だけは対外的にゼロだという形にしまして、そうして中で差益を取るというようなことをされますと、関税がゼロになっても、実質はさっぱり役に立たぬ、こうういうことが起こります。
  300. 村山喜一

    村山(喜)委員 関連して。先ほど関税局長説明を伺っておる中で、第一表の中の便益関税適用国五十二カ国、この中でガットの三十五条の適用国でありながら、なおかつ、そういう規定はあっても、事実上は発動をしていないので援用をしていない国かあるとおっしゃいましたね。その国は、私が調べたのでは、クウェートであり、ルワンダであり、あるいはポルトガルあるいはアイルランド、タンザニア、トーゴ、ウガンダ、ダオメー、ケニア、これらの国々はそのものに該当をすると思うのでありますが、いかがですか。とするならば三十五条の適用国であっても、事実上それを援用をしていない国については、便益関税の取り扱いを事実上はしておるわけですね。中国のほうが事実上日本輸出業者について、そのような関税政策をとっていないということになれば、同じような方法をとるのが当然ではないかと思いますが、その事実関係、これは海関輸出入規則に基づいてその規則を発動をしてやっているという事実がありますか。事実があったら、それを出してください。
  301. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほど来申し上げておりますように、中共との関係は、国としての交際がない、そういうことで、これがたとえば三十五条を援用しておる国でございましても、両方で話をして、そして貿易取りきめができたというようなことになりますと、それでもってお互いが一番有利な税率を事実上適用する、そういうことができます。その場合には、先方も日本に対して有利な税率を適用いたしますし、こちらも便益関税で一番安い譲許税率を適用する、そういうことになります。中共の場合には、国交がございませんので、われわれ先ほどいろいろな資料から差別をしていると考えているわけでございますけれども、しかし、それをどういうふうになっているかということをはっきり確認はできない。そこで根本的にいいまして、譲許税率といいますのは、お互いに自分の国も利益を受け、相手の国も利益を受けということでお互いに関税を下げるということでいっているわけでございます。たとえば日本が相手の国に三十五条の援用撤回を迫まるというときにも、これはおまえの国が三十五条の援用を撤回してくれれば、日本も最恵国の扱いをするのだからというのが大事な武器になっているわけでございます。そういうことでございますので、国交もない、向こうも差別をしているようだという国に対して便益関税を適用するということは、いまの関税率の体系からいうと非常に無理なことだと考えております。
  302. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は関連ですからこれでやめますが、そのような措置をとっていると疑わしいものについてはとおっしゃった。しかし、事実関係で、現に輸出業者の諸君がそういうような関税障壁のために非常に不当な差別を受けているという事実をわれわれはいままで聞いたことはないのであります。あなた方はそういうのは疑わしいとおっしゃっている。疑わしいとおっしゃるのだったら、事実関係を調査をした上で疑わしいとおっしゃっているに違いないのですから、それをお示しを願いたい。
  303. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この便益関税という制度は、元来から申しますと、最初のグループはお互いにガットで税率譲許をし合って、それを交換する。さらに、ソ連のように二国間条約でもって一番有利な待遇を与える、お互いにそういう約束をする。これが条約、これは譲許税率が適用になる。その次に、今度は条約ではないけれども、事実上一番低い税率を適用しますと、こういうことがはっきりしている国に対して便益関税ということを適用しているわけでございます。したがいまして、国交のない国に対しても、先ほどからおっしゃられますのは、相手方が差別をしているという確証はないじゃないかということと、だから便益関税を適用するということと、これは別なことだと思います。お互いに犠牲を払って、あるいは利益を交換してということでできている相互主義の関税制度というものは、やはりこれはある国に対して適用するかどうかというときには、日本としてはこれは一つの武器になります。三十五条援用の撤回のときにはこれを日本は武器にして相手に要求しているわけでございますから、はっきりしないところ、国交のないところへ、確証がないからといって便益関税を適用しろということは無理だと思いますので、私どもはそういう形ではなくて、事実上大豆や銑鉄のように品目ごとに検討していきたい、そう考えておるわけでございます。
  304. 武藤山治

    武藤(山)委員 便益関税はこの次に質問しようと思っていて、いま便益関税の前の段階まで質問がきたわけですね。そこでまず覚書貿易を北京に行ってきちっと一応きめてきた。一年、とにかくこれはまた交渉するわけですね。この交渉団が中国側の関税率について、覚え書きの中にきちっと中国は安いほうの税率です、しかし輸入割り当てですから、われわれのほうは税率というものは実際上は発動していないのだ、そういうような事実関係日本の使節団の中ではっきり確認をされれば——北京に行ってはっきり確認をされ、しかも日本製品については決して関税というものはかけていない、かけているとしたらこういう率ですと、その率が日本国から見てなるほど差別でないということが立証されれば、少なくとも貿易協定はできていなくても関税率だけはいまのような差別を緩和する、あるいは差別ははずしていく、そういう姿勢にはなれるものかなれないものか。
  305. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 まず中共に限らず国家貿易の国について、相手が関税を極端にいいますと全部無税にする、しかし関税を無税にしますと、普通の資本主義国では、それが貿易障壁、輸入制限がなくなれば、それが障壁ですから、それでもって国内に対して高いものが入ってくる、そういうことで外国需要されない、そういうことが起こるわけです。国家貿易の場合には、それはたとえば資本主義国でも、国が独占して輸入するというときにはそういうことが起こるわけでございますけれども関税をただにした、たとえば米について関税をただにしたというようなことでどれだけの実益が輸出国にあるか、これはまた別の問題でございます。したがいまして、なかなか国家貿易の国との関税の問題というのは非常にむずかしい問題がある。この点は先生おわかりだと思いますが、含んでおいていただきたいと思います。
  306. 武藤山治

    武藤(山)委員 私の質問に答えておらぬです。私が聞いておるのは、国交回復されてないから、覚書貿易をやっている、やることになった。これは年々また更新をするか、その時点で交渉することになるでしょう。総理大臣も好ましいことであったといって、ほめたたえたわけですよ。皆さんが行って骨を折って覚書貿易をやってきたということは労をたたえると言っているわけですよ。しかも今度は大蔵大臣も、いままでよりはニュアンスが非常に変わってきて、輸銀もかなりいままでとは違った態度で取り扱うというところまで来ているわけですよ。これはかなりの私は前進だと見ていいと思うんですよ。そういうときであるから、そういう協定を結びに行ってくれた日本の民間の代表が、中間の関税というものを調べてきて、事実はこうです、そういうものが明らかになってくれば、いまのような差別というものは、ケネディラウンドと同じように全部するというわけにはいかぬが、この程度まではある程度手直しは可能なんだ、そういうものが明らかになれば。しかし今度は、どうしても国交が回復してないから、これ以上は譲れないのだというものもあると思いますよ。しかし、いまの差はあまりにもひどいから私は言っているわけです。あとで品目別に一々聞きますが、そういうようなケースを考えて、前向きに対処できるかできないかと聞いているわけです。これはほんとうは大蔵大臣なんですよ。
  307. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いまのお話のように、理屈だけで申しますと、ケネディラウンドというのはお互いにメンバーが譲許し合って、そのメンバーにだけ適用する、そういうことでたとえば大豆の関税も銑鉄の関税も下がることになったわけです。しかし、そういう先生がおっしゃられたような御趣旨も考えまして、それで二割に及ぶものはこの際、国定税率を下げまして、それで事実上はケネディラウンドの譲許に均てんさせる、そういうことをいたしたわけでございます。  それからまたついでに申し上げますと、あと二割残っておるわけでありますが、この二割につきまして一番問題になるものは先般来の生糸でございます。この生糸につきましては、蚕糸局長も参りまして答弁をいたしましたが、その要旨を紹介いたしますと、四十三年度中に検討いたしますということで、それで個々の検討の結果、国内に対して生糸をケネディラウンド並みに下げてもいいという結論が出る、これは検討するというのはそういうことができないかということで前向きに検討するという意味だと私は思いますが、そういうことで生糸が片づきますと、おそらく絹織物についても同じように片づくだろうと思います。そういう形でもって品目別国内に対する影響を考えながら解決していきたい、そういうふうに考えております。
  308. 武藤山治

    武藤(山)委員 蚕糸局長おりますね。いま局長が答弁いたした中であなたのほうの責任に類するものが一つ出てまいりました。というのは、一年以内に検討して生糸の輸入というものが日本の農業とどの程度関係があるかという問題を農林省は検討する。あなたは関税のほうは一切しろうとでございますが、中国から入ってくるものはKRが適用されない、韓国から入ってくる生糸はKRは適用されて安い関税だ、こういうことになりますと、やはり同じ隣国であっても、輸入商社は、中国もののほうが関税が高いから買えなくなりますね。買っても利益が薄くなりますね。そこでやはり農林省が真剣に、この一年以内に、ほんとうにあなたたちが考えているような形に、日本の養蚕というものがなるのか、ならぬのか。この前広瀬代議士にあなたが答えた、昭和五十一年までに四十九万俵の生産に持っていくんだ、こういう計画は一体何を基礎にできたのか。そんなことは私は不可能だと思うのですよ。日本は生糸は足りなくてしょうがない。非常に生糸を使う国民であるということです。もう一つは、生糸は輸入しても絹織物で輸出できるという利点もあるわけです。だから、そんなに中国や韓国からの生糸の輸入というものが日本の養蚕家をそんなに圧迫しないと思う。そういう判断に立ってこの一年間にひとつ前向きの検討をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  309. 池田俊也

    ○池田政府委員 先般広瀬委員の御質問に対しまして、五十一年におきます生産なりあるいは需要なりの見通しを申し上げたわけでございます。これは見通しでございますから、はたしてそのとおりになるかどうか、断言はできませんけれども、私どもといたしましては、四十九万俵の生産をあげ得る余地は十分にある。ただ、それには相当な政策努力が要るわけでございます。しかし、現在におきます生産のいろいろな動向から、それを、うまく指導すればその程度の生産をあげることは決して不可能ではない、こういう確信を持っておるわけでございます。ただ、現在の時点を頭に置いて考えますと、確かに需給状態がかなりきついわけでございますし、糸価水準も、われわれが想定しております糸価水準よりもやや高いわけでございます。現在の事態だけで考えますと、中共生糸があるいは低い関税で入っても一向差しつかえないというような印象も確かにあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはり関税制度というものは長い目で考えなければならない。御承知のように、中共の輸出価格、私どものわかりますのは輸入価格でございますが、これは非常に低いわけでございます。韓国もかなり低いわけでございますが、韓国以上にさらに低い。そういうような点から考えました場合、あるいは中共の生産能力と申しますか、そういうような今後の生産の拡大の余地等を考えますと、将来さらにふえる余地があるわけでございます。そういうような事態を前提に置きまして、かりに需給状態が現在よりゆるんだ場合に、かなり糸価水準が下がりました場合に、わが国におきます生産農民に大きな打撃を与えないと、こういう要請と関税率の引き下げの要請とをどう調和するか、これがわれわれの課題でございます。これにつきましては、先ほど関税局長からお答えがございましたが、私どもといたしましては鋭意検討いたしたい、こういうつもりでございます。
  310. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは蚕糸局長、中国ものは一俵について何ぼで、韓国ものが何ぼで、日本で生産されたものが何ぼですか、価格は。
  311. 池田俊也

    ○池田政府委員 これは若干前の数字でございますが、私どもの持っております数字で申し上げますと、たとえば本年の一月に入りました品物でございますが、中共生糸は大体五千円前後のものが多いようでございます。それから韓国生糸でございますが、これ本若干異同がございますが、大体の水準から申しますと、六千円前後でございます。この時期におきます日本の現物価格でございますが、約七千九百円ぐらいでございます。
  312. 武藤山治

    武藤(山)委員 養蚕がそう簡単に、蚕糸局が考えているように増産ができるとは私は考えない。それは労働力の問題、いまの選択的拡大という農林省の指導方針——過去の成長率を見ても、養蚕があまり伸びないというのは、やはり他の農産物に転換をしたほうが有利である、そういう考え方が農民に非常に強いわけであります。ですから、私は日本の農業を圧迫しない範囲内において、もしいよいよ日本の農民に犠牲がいくというときには、そのときには緊急にまた関税は操作ができるわけでありますから、そういう点にあまりにも固執し過ぎて、消費者に高い生糸を買わせ、消費者になかなかサービスができないという関税のあり方もいかがかと思うわけであります。したがって、蚕糸局としては、そういう点大きな見地から、十分ひとつ御検討をすみやかにやっていただきたいと強く要望しておぎます。きょうは中心があなたのほうに対する質問ではないので、あまりその問題のこれからの年次計画を聞くわけにまいりませんが、そういう点は十分ひとつ今後留意して、韓国の生糸だけが入ってきて中国のが入らぬというようなことが起こらぬように、われわれは公平にひとつ取り計らいたいと思いますので、その点を御考慮して検討してもらいたいと思います。  先ほどの中国の覚書貿易で、日本から協定に行った人たちが向こうの関税実態というものを調べて大臣に報告をするならば、かなり再検討する余地が残されていると私は思うのであります。そういう調査を、もし覚書貿易に携わっている人たちがきちっと調査をして政府に報告をするならば、大臣、検討の余地があると思いますが、その際はいかがですか。
  313. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきから局長が答弁しておりますように、いまの実情から見ましたら、便益関税というのは無理だ、しかし国定税率において、国内の経済事情というものと、それからいま言われましたように、向こうの関税の取り扱いがはっきりしておるということでございましたら、これは検討の余地があると思います。
  314. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはよく田川代議士などにも相談をして、はっきり向こうの関税実態を調査をして、ひとつまた大臣と相談したいと思います。検討するといま言われましたから、ひとつ忘れずにお願いいたしたいと思います。  次に、ここにいま大蔵省から配られた「便益関税適用国との貿易状況一覧」とあります表によると、何カ国になりますが、この国で間違いはない、これ以外に便益関税をやっている国はないと言い切れますか、関税局長
  315. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは五十二カ国でございまして、現在は便益関税を適用している国はこのとおりでございます。
  316. 武藤山治

    武藤(山)委員 局長、ほんとうにいいですか。間違っていたらどうします、この表が間違っていたら。
  317. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 間違いないと思っております。
  318. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、この「現行法規総覧」二十五巻、この中に政令できめている便益関税を与えている国と、この表とは違うじゃありませんか。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席〕 どっちがほんとうですか。この政令がほんとうですか、表がほんとうですか、間違いないというなら。
  319. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いつ現在のあれか存じませんけれども、あるいは先ほどから再々申し上げておりますように、国の名前の呼び方が違うというようなことがあるかもしれませんけれども、内容は間違いないと思います。
  320. 武藤山治

    武藤(山)委員 武藤さん間違っていたら、きょうの委員会もうやめますから。この政令のほうによると、千五十七ページにあるのですが、千五十七ページに、昭和四十一年三月三十一日の政令まで載せてあります。その後政令でさらに変更をした例がありますか。その後に政令が出ていますが、この法令集は昭和四十一年三月三十一日の政令が最後になっている。
  321. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 最終の改正が四十二年八月になっております。
  322. 武藤山治

    武藤(山)委員 四十二年八月の改正ではどういう国が減ったのか。便益関税からはずされたのか。どういう国ですか。
  323. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 一カ国減っておりますのは、それは譲許税率のほうへ移ったせいだと思います。
  324. 武藤山治

    武藤(山)委員 それはどこか。
  325. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いまちょっと調べてみます。
  326. 武藤山治

    武藤(山)委員 局長、それでもまだ合わぬのです。だから、この表はわれわれの目をかすめるためにつくったのか、ほんとうの政令をそのまま書いたのか。私は、大蔵省というのはしっかりした官庁であるから、よもやわれわれにごまかしの資料は出すまいと思って、いままでは一度も疑ったことがありません。しかしこうなると、これからは大蔵省の資料でもよく見ないと都合の悪いことが落とされたり何かする前例になるから、これはひとつきょうははっきりしておこうと思ったわけです。もういいです。ほんとうはこの法令集でいきますと、五十六カ国になっております。この法令集は大体正確ですよね。このほうが正確ですね。そうすると、いま一カ国、四十二年八月にかりにこの中から除いたとしても、この政令ではアイスランドが載っている。マダガスカルが載っている。トリニダー・トバゴが載っている。三カ国も合わないじゃないですか。おそらく一カ国四十二年に手当てしたのは大韓民国でしょう、韓国でしょう。韓国がはずれたわけでしょう。だけれども、三カ国まだ落ちているじゃないですか。単なる過失であるか、何ですか。
  327. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 それは四十一年の三月かと思いますけれども、私どものほうの信用がたいへんなくなったようで困るんですが、私のほうで出しております税関六法に出ておる表と同じでございますから、全然間違いをする、あるいは意識的に隠すというようなことはあるはずがないということでございます。御信用願います。
  328. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうなると、今度は個々に聞きましょう。アイスランドは便益関税を適用してないかしているか、マダガスカルはしていないか、トリニダード・トバゴはしているかしていないか、こう聞いたほうが早いでしょう。
  329. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この表にあります以外のところには便益関税は適用しておりません。これは政令できまりますから、政令で指定されなければ便益関税は適用できない、こういうことになります。
  330. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、局長のさっきの答弁は間違っておる、取り消す必要がある。四十二年八月に一カ国だけはずしたと言ったでしょう、そうでしょう。これは四十一年三月の政令改正がちゃんと載っているんだ、五十六カ国。その間に何か変化があったかと聞いたら、四十二年八月に一カ国だけはずれたと言ったでしょう。
  331. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 たいへんあわてまして申しわけありませんが、四十二年八月の改正で削除した国は大韓民国、アイスランド、マダガスカル、トリニダード・トバゴ、この国でございます。さっき申しましたのは間違いでございます。
  332. 武藤山治

    武藤(山)委員 すなおに局長がさっきの答弁は間違いだったと取り消したから、これ以上は追及いたしませんが、この便益関税を与えている国の中で、さっき言った三十五条の援用国、これを援用国でありながらなぜ八カ国認めているのか。この理由をちょっと明らかにしてください。
  333. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほどの説明をもう少し詳しく申しますと、ガット加盟国で三十五条を援用しなければ当然にガットの税率が適用になるわけであります。ところが、三十五条を援用されますと、その国と日本との関係ガット規定が適用にならない、こういう形になります。しかし、事実上相手が日本に対して関税で差別してない、その場合に日本条約上は三十五条を援用されていますから適用になりませんが、便益関税という制度でそちらに適用する、お互いに最低のものを適用するということをいたしておるわけでございます。
  334. 武藤山治

    武藤(山)委員 ベネゼラという国はかなり差別関税をやっていると聞いておりますが、そういうベネゼラが便益関税が適用されているのはどういうわけですか。ベネゼラは全然いま差別してないのですか。
  335. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 日本に対しては関税は差別してないということでございます。
  336. 武藤山治

    武藤(山)委員 局長はまだ局長におなりになってあまり年数もたっていないから、あるいはそういうケースにぶつかったことはないかもしれませんが、中国からの商品日本に入ってきた場合、日本の税関が、あるいは日本輸入の許可などを与える官庁が、中国生産品に対しては非常な差別扱いをしているというケースにあなた、局長になってからぶつかったことありますか。
  337. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 御承知のように、税関で七千五百人の人間が働いております。そのほかにたとえば輸出貿易管理令、これで通産省の仕事を税関でやっておるわけであります。したがいまして、私どものところへ一々の案件が上がってくるわけではございませんが、私が聞いている限りでは、特に中共のものに対して何か冷たい扱いをした、それで輸入がとまったとかなんとかいうことは聞いておりません。
  338. 武藤山治

    武藤(山)委員 これはおかしな話なんでありますが、中国から人髪を輸入していますね、頭の毛の長いのをかつらにするために。これを年間大体五百万ドル輸入している。その場合に十インチ以上の長さのものは輸入してはいけないというのは、何の規則に基づいてそういうことをやるのですか。
  339. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 それは関税関係ではございませんので、通産省から答弁をお願いいたします。
  340. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 ただいまの御質問でありますが、輸入貿易管理令の第十条で事前許可制になっております。そこで十インチ以上のものにつきましては十条でもって禁止をいたしております。
  341. 武藤山治

    武藤(山)委員 輸入貿易管理令の第何条でなぜそういう規定をしておるのか。
  342. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 申し上げるまでもなく、現在人髪を原料にいたしましてかつらとかつけひげとかそういったものを米国に輸出しておるわけでありますが、そういった製品の大半が米国向けになっておるわけでありますけれども、米国は現在中共等の国からの輸入品を原料にいたしましてこれをつくりましたものにつきましては輸入禁止をしておるわけであります。人髪につきましても、その人髪が中共産品でありました場合には輸入を禁止するという措置をとっておるわけでありますが、現在米国は十一インチ以下の人髪につきましてはすべて輸入を禁止いたしております。十一インチ以上のものにつきましては原産地証明をもって輸入しておるというような状況でありまして、通産省としましては米国市場が人髪製品の大きな市場でありますから、その輸出増進という観点から中共製品の十インチ以上のものにつきましては輸入を禁止しておるわけでございます。
  343. 武藤山治

    武藤(山)委員 管理令の第何条に書いてあるのですか。
  344. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 輸入貿易管理令第十条であります。
  345. 武藤山治

    武藤(山)委員 一口にいって、アメリカのチンコムの政策日本の政令を合わせたということですな、端的にいえば。アメリカのチンコムという中国の貿易関係をシャットアウトしていこうというあの政策を、日本の政令の中に入れたということですな、端的にいえば。どうです。
  346. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 日本といたしましては、ただいま申し上げましたように、米国は人髪製品の大半を占める市場であります。したがいまして、その人髪輸出の増進という観点から、米国の制度に即応いたしまして実施をしておる次第であります。
  347. 武藤山治

    武藤(山)委員 それならば日本輸出の場合だけ規制をしておいたらよかろう。輸入品まで十インチ以下にしてこいという規制はする必要がないのじゃないか。大蔵大臣、これは中国品に対する差別のほんの一例として私は取り出したわけであります。一年間五百万ドル日本が中国から買っている人間の頭の毛までアメリカはこういう差別をして、十インチ以上長いものは切ってこちらに持ってこなければならない。こんなばかげた規則というものは私は直ちに廃止すべきだと思うのです。大臣いかが考えますか。しかも中国では子供のころから非常に長い髪の毛をつくり、非常に高価なものになる。長ければ長いほどいい値打ちのものになるわけであります。それを日本輸入するのに十インチでぶつ切ってこなければならぬというようなこんなこそくな政令は私は直ちにやめさすべきだと思います。同時に、輸出のほうでうまくそこは指導すればよろしいと思います。アメリカのそういう中国封じ込めの政策というものを髪の毛にまで及ぼすに至ってはまさに言語道断ですよ。日本政府は反省すべきだと思います。直ちにこういう不合理なものはやめるべきだと思いますが、担当の大臣ではございませんけれども、閣僚の一人として、佐藤内閣をになう一員として、こういう事実がいまここで論議されているということになったら、これは何とか通産大臣とも相談しなければならぬくらいな気持ちにはなっていただきたいと思いますが、大臣の御見解いかがですか。
  348. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 検討いたします。
  349. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産省としても、日中貿易をさらに好転させるためにも、拡大するためにも、こういう好ましからざる政令というものはすみやかに改正すべきだと思います。政令でございますから、あなた直ちに上司にあるいは大臣に、きょうのこの議論を進言をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  350. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 本日の先生の御意見につきましては御報告は申し上げます。
  351. 武藤山治

    武藤(山)委員 まだまだ一ぱいあるのです。大臣、こういう例が四つばかりあるのです。もう一つあげてみますと、中国から美術品を輸入する場合に、それが美術品であるか美術品でないかという認定の問題が一つある。とにかく百年も二百年も昔の骨とう品を税関の認定官が、これはにせものだ、いまのものだと、輸入のところで決定をされたらえらい問題になる。輸入商社としてはべらぼうな損をする。一例は大阪でもって中国の骨とう品の販売をやった。展覧会をやった。そこで即売ができるように、税関は通ってきた。ところが、二百年ばかり昔の刃渡り三十センチの刀がある、かなり高価なものである。ところが、これは一応短くとも刀であるからというので、公安委員会の認可をとらなければ展示ができない。公安委員会に行ったら、公安委員会日本の刀について監督するのであって外国の刀に対して監督権はない、あっち行けこっち行けと、とうとう展覧会の日に間に合わぬ。そのままではいかぬ、切って売れというんだ。とうとうその美術品を半分に、その刀を半分に切って展覧をした。まことに気の毒な話じゃありませんか。それを輸入した商社は泣いたそうでありますよ。私はそういうような中国品に対しては思いやりも涙もないような仕打ちというものはこの際もう改めるべきではないか、こう思います。  もう一つの例は、いまはやめたんでございましょうけれども、中国からのエビの輸入はしっぽを切って持ってこい、冷凍になってかん詰めになってアメリカに行ってもわからないからしっぽは切ってこい、一時そういう輸入をエビについてはやっておったそうであります。これはいまはやめたそうであります。  もう一つは、これは日本国内法との関係があるから障壁であるといえるかどうか、私はここで少し質問をしないとわかりませんが、お菓子には、あるいはブドウ酒とか甘納豆には、色が変わらないように亜硫酸を少し使うそうであります。しかし、その亜硫酸はほんのわずかで、長い間にはみな消えていくそうでありまして、日本のお菓子もそういう亜硫酸を使っているものがたくさんある。そこで、日本の食品衛生法では煮豆の場合は亜硫酸は十万分の十、果汁については十万分の十五、ブドウ酒は十万分の四十五、甘納豆十万分の十となっている。ところが、中国品だけは税関を通るときに十万分の三以下でなければいかぬという、これなども私はあまりひどいと思います。関税局長、中国の干菓物はなぜ十万分の三の含有量以上では許可しないのか、これひとつ見解を聞かしてもらいたいと思います。
  352. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほどの美術品のお話でございますが、これは実は中共に限らず非常に困っておるわけであります。と申しますのは、ほかからも入りますときにほんとうに美術品と認定されますと関税はゼロということになります。したがいまして、ときどきこっけいなことが起こるのでございます。ほんとうの骨とう品だと思って買ってきた、ところがそれはまやかしもので新しいものだ、そうすると関税はかかる、本人も買うほうも損したというようなことが起こりまして、この鑑定は非常に苦労しておりますが、いま美術品は国際的にも関税ゼロとなっておりますので、中共に限らずこれは税関でなかなか判定できませんで困っておるということを御了承願いたいと思います。  それからほかの関係は、私のほうの税関が仕事をしておりますけれども、もとはほかの省の関係で、先生おっしゃるとおりにやっておるわけでございますので、食品衛生法の関係や何かは私から何とも申し上げられません。
  353. 武藤山治

    武藤(山)委員 厚生省は来てないかな——じゃ、この問題は厚生省来てないからやめましょう。  農林省畜産局長、来ていますか。——では食肉課長、あなたは去年中国から豚の胃袋とか腸ですね、これを輸入する話を商社から相談を受けた。その場合に、中国の豚の内臓は百度の熱で一時間煮沸してくればよろしい、そういう規則を農林省で指示したことは覚えておりますか。
  354. 小島和義

    ○小島説明員 ただいまのお話は、家畜伝染病予防法に関係いたしまして、畜産局の中では衛生課の所管でございますので、私、直接にはその相談を受けた事実はございません。
  355. 武藤山治

    武藤(山)委員 畜産局長を呼んでおいたんだ。この問題を聞くからと言って、ちゃんと中身まで親切に言っておいたんですよ。あなたわからぬのじゃ困るな。では、これできようは保留にしようか。
  356. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  357. 田村元

    田村委員長 速記を始めて。
  358. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、去年の二月から三月ごろ、中国の冷凍品、いま言った豚の胃袋と腸を輸入する相談が農林省にあったことを聞いておりますね。
  359. 小島和義

    ○小島説明員 私は直接相談を受けた者でございませんから、その経緯はつまびらかにできないのでございますが、輸入する内臓につきまして、どの程度のものであれば家畜伝染病予防法パスできるかということについて相談を受けたことはあるようでございます。
  360. 武藤山治

    武藤(山)委員 通産省のこの係の方、これも内容を言っておいたのだけれども、来ていますか。——それでは輸入業務課長にちょっとお尋ねしますが、通産省輸入業務課に昨年十一月十一日、関税番号〇五〇四で輸入することオーケー、こういう一応認可といいますか許可といいますか、それを与えたことは事実ですね。
  361. 小林慶基

    ○小林説明員 そういう事実はございません。実はこの事件は、この貨物がまいりましたときに、輸入申告はAA品目でございますが、税関のほうで鑑定の結果、IQ品目であるというような税関のほうの御判断で、それで、IQ品目の貨物につきましてはAAの輸入承認証では通関できないたてまえになっておりますので、そういう場合にどうするかという相談が私どものほうにございます。これは検討依頼と申しておるわけでございますが、これによって初めて承知したような次第でございます。
  362. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは十一月十一日ですか。
  363. 小林慶基

    ○小林説明員 日にちはちょっと現在のところ記憶いたしておりません。
  364. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの話には食い違いがあるので、実は私は確認をいたしたいのは、輸入業者は荷物がまだ届かないうちに、輸入の契約を結ぶ前に、通産省に相談に行っているはずですよ。それで通産省も、農林省がそういうことならばそれは心配ない、輸入してもオーケーだ、そう言ったというのです。あなたは言わぬというのだったら、私はきょうはこれでやめて、だれが言ったかその証人を連れてきますよ。どうですか。そういう相談は全然なかったのですか。
  365. 小林慶基

    ○小林説明員 お答えいたします。  私どものほうで調査いたしまして、私どもの課の関係ではそういうことはございません。
  366. 武藤山治

    武藤(山)委員 輸入業務課で相談をしたら、百度の熱で一時間程度浸して、それを冷凍にしたものならば農林省はオーケーということになったから、通産省のほうはどうでしょうかと相談したら、オーケーだ、だいじょうぶだ、それで業者は直ちに中国側とそれを輸入する契約を結び、入ってきたのです。その相談を受けたことは全然ない——あなたは受けないけれども、部下か受けたかもわからないね。
  367. 小林慶基

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  私どもの課員では、そういう相談を受けた者はないと存じております。
  368. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま最後の答弁よく聞こえなかったのですが、そういう相談は全然なかったのか、それともあったかもわからないからこれから調べるというのですか。
  369. 小林慶基

    ○小林説明員 私の課の関係では、ないと存じております。
  370. 武藤山治

    武藤(山)委員 ないと存じておるのだが、あるいはだれか係員が輸入業者に相談を受けたかもわからないということもありますか。
  371. 小林慶基

    ○小林説明員 私の知っている範囲では、ありません。
  372. 武藤山治

    武藤(山)委員 その点はちょっと話が食い違っておりますが、輸入業者のほうは、いままで中国ものについてはなかなかうるさいからというので、大事をとって通産省にも相談したらだいじょうぶだ。そこで、農林省もオーケー、しかもAA物資だということでオーケーだ、こういうことでいよいよ契約を結んで輸入をしたわけであります。大臣、輸入をいたしましたところが、昨年の十二月荷揚げが始まったところが、税関のほうではこれはAA物資ではない。無税のはずだということで輸入をしていよいよ荷物が着いたら、これは二五%の税金をかける、こういう処置をとられたわけであります。この処置は、中国貿易をやっている商社に対する大きな差別だと認識をして、実はきょう私はこの問題を取り上げたわけであります。もしそういうことがあるならば、それは指導した役所としても責任があるのでありますから、そういうものは一切無税にして通関をすべきである、こう私は思うのですが、大臣いかがですか。
  373. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまお聞きしていますと、一方はそういう相談に乗ったことはないと言うのですから、指導した役所がないということにもなりましょうし……(武藤(山)委員「農林省は指導しているとはっきり言った」と呼ぶ)いや、農林省はあっても、通産省はそうでなかったと言うのです。そこの辺、何かこの問題はもう少し調査しないと、私何とも言えません。
  374. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いまの豚肉の税率の関係でございますが、非常に複雑になっております。そこで申しますと、まず内臓の関係も、一般の内臓と腸、膀胱または胃というものが別になっております。それで、一般の内臓は関税が一〇%、それから腸、膀胱、胃というものは簡単に申しますと無税、こうなっております。そこでいまのこれは焼き鳥の原料らしいのですが、これがなまのままで入ってきますと、腸、膀胱、胃の無税が適用になるわけでございます。ところが、動物検疫の関係で加熱処理をするということになりますと、加熱処理をしたものは二五%という別な分類に入ってくるわけでございます。そこで二五%になっわけでございます。
  375. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの税率表は私もここへ手元に持ってきておるからそれはわかっておる。ただAA物資輸入できるということの確認をして輸入の契約を結んだ。おそらく業者だって、それはあなた、二五%取られるか無税であるかということを調べないで、また通関できるかできないか調べないで輸入するばかはありませんよ。だから私は、業者の言う農林省、通産省に一応打診して大事をとってこの契約を結んだであろうということを信頼します。しかし大臣は、証拠がないからだめだと言うから、私は大臣とのやりとりならこれで質問をやめます。次回に本人を連れてきて、だれと会ったかということを確認した上でやりましょう。先ほど大臣は、通産省は知らぬと言っておるのだからそういうことはわからぬと突っぱねたですから、私も証人を連れてきてやるまでこれは質問をやれませんから、次回にやります。大臣が証拠を持ってこいということなんですから、そこまで開き直るなら私も開き直ります。
  376. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 開き直ったわけじゃございません。いまここで聞いたら、両省がいいと言ったものをこういう扱いをしたのはどうかというお話でしたから、一方の省はいいと言ったらしいし、一方の省は知らぬと言っているらしいから、それならこうしようという回答は、両方聞いて調べた上でなら大体見当がついて、こうしろということは言えると思いますが、突然聞かれて、両方がそう答弁していますから、こうしますということは言えないというだけのことでございます。
  377. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは私としては十九日の委員会まで保留をいたしたいと思います。私は、はっきりその事実を確認して、大臣にも事実だということをはっきり認識してもらえる証拠を並べてきちっとやりたいと思いますので、あとの分は保留にします。      ————◇—————
  378. 田村元

    田村委員長 この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  金融及び証券に関する小委員会において、来たる十八日、金融に関する件について、日本銀行総裁宇佐美洵君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  379. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来たる十九日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十五分散会