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1968-03-13 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十三日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大久保武雄君    大村 襄治君       奧野 誠亮君    鯨岡 兵輔君       河野 洋平君    小山 省二君       笹山茂太郎君    砂田 重民君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       古屋  亨君    坊  秀男君       村山 達雄君    山下 元利君       吉田 重延君    阿部 助哉君       井手 以誠君    佐藤觀次郎君       中嶋 英夫君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    岡沢 完治君       田中 昭二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         総理府人事局長 栗山 廉平君         経済企画庁長官         官房長     岩尾  一君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       前川 憲一君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         国税庁長官   泉 美之松君         農林省蚕糸局長 池田 俊也君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         経済企画庁調整         局参事官    赤羽  桂君         外務省経済局外         務参事官    鈴木 文彦君         農林省畜産局参         事官      立川  基君         食糧庁業務第二         部長      荒勝  巌君         通商産業省通商         局通商政策課長 佐々木 敏君         日本輸出入銀行         副総裁     藤澤徳三郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月十二日  国立医療機関特別会計制反対に関する請願  (井上普方紹介)(第二三五八号)  同(伊賀定盛紹介)(第二三五九号)  同外三件(小川三男紹介)(第二三六〇号)  同(太田一夫紹介)(第二三六一号)  同外二件(折小野良一紹介)(第二三六二号)  同(小松幹紹介)(第二三六三号)  同外二件(兒玉末男紹介)(第二三六四号)  同(鈴木一紹介)(第二三六五号)  同(田邊誠紹介)(第二三六六号)  同(田原春次紹介)(第二三六七号)  同外二件(中谷鉄也紹介)(第二三六八号)  同(西村榮一紹介)(第二三六九号)  同(芳賀貢紹介)(第二三七〇号)  同外八件(華山親義紹介)(第二三七一号)  同(古川喜一紹介)(第二三七二号)  同(武藤山治紹介)(第二三七三号)  同外二件(本島百合子紹介)(第二三七四号)  同(森義視紹介)(第二三七五号)  同(森本靖紹介)(第二三七六号)  同(山口鶴男紹介)(第二三七七号)  同(山本政弘紹介)(第二三七八号)  同(浅井美幸紹介)(第二四六九号)  同(有島重武君紹介)(第二四七〇号)  同(伊藤惣助丸君紹介)(第二四七一号)  同(石田幸四郎紹介)(第二四七二号)  同外五件(江田三郎紹介)(第二四七三号)  同(枝村要作紹介)(第二四七四号)  同(小川新一郎紹介)(第二四七五号)  同(大野潔紹介)(第二四七六号)  同(大橋敏雄紹介)(第二四七七号)  同(近江巳記夫紹介)(第二四七八号)  同(岡本富夫紹介)(第二四七九号)  同(沖本泰幸紹介)(第二四八〇号)  同外二件(神近市子紹介)(第二四八一号)  同(北側義一紹介)(第二四八二号)  同(小濱新次紹介)(第二四八三号)  同外一件(斎藤実紹介)(第二四八四号)  同(島本虎三紹介)(第二四八五号)  同(鈴切康雄紹介)(第二四八六号)  同(田中昭二紹介)(第二四八七号)  同(田原春次紹介)(第二四八八号)  同外一件(武部文紹介)(第二四八九号)  同(内藤良平紹介)(第二四九〇号)  同外一件(中井徳次郎紹介)(第二四九一号)  同(中野明紹介)(第二四九二号)  同(樋上新一紹介)(第二四九三号)  同(広沢直樹紹介)(第二四九四号)  同(伏木和雄紹介)(第二四九五号)  同(松本忠助紹介)(第二四九六号)  同外一件(八木一男紹介)(第二四九七号)  同外一件(山内広紹介)(第二四九八号)  同(山口鶴男紹介)(第二四九九号)  同(山田太郎紹介)(第二五〇〇号)  同外一件(山田耻目君紹介)(第二五〇一号)  同(渡部一郎紹介)(第二五〇二号)  同(川崎寛治紹介)(第二五九一号)  同(木原実紹介)(第二五九二号)  同外三件(山本幸一紹介)(第二五九三号)  中小企業に対する国民金融公庫の融資制度改善  に関する請願本島百合子紹介)(第二三九二  号)  同(大出俊紹介)(第二五九〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第四七号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  六号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  七号)  製造たばこ定価法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  号)  物品税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  3. 只松祐治

    只松委員 昨日に引き続きまして、関税定率関係をお尋ねいたします。  大蔵省局長さん連中は、非常に頭がいいか何か、自信がたいへん強いわけです。自分たちのきめたことは絶対だ、こういう考えが非常に強いようですね。きのうの答弁や何か見ても、これは明らかでございます。そこで、質問に入る前にお尋ねしますが、この関税定率法については、私たち野党はもちろんですが、与党にもいろいろ問題があります。しかし、こうやって一ぺん出した法案というのは、自分たち考え方が絶対に正しいんだ、大所高所、あらゆるところから検討してきたのだから絶対だ、一字もこれを動かしてはならない、こういう考え方が強いようです。この関税定率法に関しても、そういう与野党を通じてのいろんな疑義や問題点があるにかかわらず、自分たち一指も染めさせないのだ、こういう態度でこの法案を御提案になり、また論議をされておるわけです。きのうの質疑応答なんか聞いても、私はそういうことをありありと感じるわけです。ひとつ局長さんの武藤さんのお答えを聞いておきたいと思います。
  4. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いま御審議願っている法律、たとえばその中の主たるものは税率の問題だというふうに思いますが、これはどういうふうにして案ができるかという経過を申し上げますと、まず、関係の各省と事務レベルで折衝いたしまして、そして事務レベルで大体まとまったものを関税率審議会へ提示しまして、関税率審議会でよろしいということになったものが法律の案となって国会に出ているわけであります。私どもいろんな省と相談し、また、審議会意見も聞いて案を出している、こういうことでございますので、私どもとしてはこれが一番いい、そういうふうに思っております。
  5. 只松祐治

    只松委員 あなたたちが一番いいと思っている線と、それから国民がこういう線がいいと思っている、あるいはこういうふうにしてもらいたいと思っている点とでは違う場合があるわけですよ。そこに結局議会というものがあるし、政治の舞台というものがあるわけです。日本政治というのは官僚の機構なり権力があまりにも強いということで、議員立法なりあるいは議員のそういう修正というものがわれわれの面からきわめておろそかにされておる。別な面で見れば、ないがしろにされておる、こういう面があるわけですよね。確かにあなたたちは、学校を出てからすぐそういう専門のことをしているわけです。われわれはいろいろな事業なり各種団体に携わってきておるわけですから、そういう内容についてはあなたたちが多少詳しいということはこれはあり得る。しかし、そういうのをどういう大所高所から判断していくか、あるいはどういう国民の要望に従ってそれを法案化し、審議し、決定をしていくかということは、これは私たちの任務なんですよね。それを、ある意味では一顧もしない、あるいは一指も触れさせない、こういう態度に終始して法案の通過をはかっていく。私は何年か大蔵委員会に来ていても、大体そういう結果になっておる。まあ話がそれますけれども、そういうことですから、LPGならLPG法案修正をする、こういうことになりますと、何かいかにも法案修正をしたのが悪くて、業者だけがもうけた、こういう形のPRというものがなされている。そうじゃなくて、あのときの客観情勢というものを考えれば、修正せざるを得ない、こういう情勢があったわけですね、タクシー料金値上げという問題で。だから、修正して悪いのだったら、国会は必要ないだろう。国会はやめておったらいい。ただこうやっておしゃべりをするのだったら、あえてレーニンのことばを引くまでもなく、議会はお茶飲みの場で、おしゃべりの場だ、こういうことになります。そういうことじゃないわけですよ、いまの民主主義国家は。だから、もう少し皆さん方も、いわゆる国民の代表としての議会において、きのうのあなたの答弁を聞いておっても、あるいはこういう法案の取り組み方にしても、私たちからいえば、まともといいますか、謙虚に、やはりそういう点もあるのか——極端な話が、社会党の内閣になればこの法案の出し方が違うわけですよ。あなた方が幾ら正しいと思っても、こういう案件も、あなた方が絶対と思っていることが政治的な面から見れば絶対ではないわけです。したがって、本委員会なり本国会においてあなたたちとそういう面の多少違った意見が出てきたり、方向が出てくれば、やはりそれに事務当局として考えられる最善の努力をし、考慮をしなければならぬ。それが一つも考慮しないということになれば、これはおしゃべりですよね。とにかくここにおける時間つぶしというだけなんです。ぼくらもそれは幾らひまかもしれぬけれども、あなたたち相手おしゃべりしようとは考えていない。もう少しまともな考えをしていただきたいし、そう考えれば当然そういうことになる、こういうことになると思う。きのうはアメリカドル防衛からくる課徴金の問題についていろいろ尋ねたわけだけれども、これは速記録を見てみればわかるけれども答弁らしい答弁はほとんどないわけですね。おしゃべりに終始した、こういうことです。きょうは対中国問題についてお聞きしますから、あなたたち答弁さえよければ、これは五分でも十分でも終わるのです。法案審議がおくれているから早くしろ早くしろと言っても、あなたたちがまともな答弁をしないでは幾らだって時間がかかるわけですから、ひとつそういう意味答弁をしてください。  今度のケネディラウンド適用になりますと、いろいろな問題が出てきますけれども、一番象徴的にこれが出てくるのは、対中国貿易相当影響が出てくる、こういうことだと思う。中国貿易に対してどういう影響がどの程度出てくるか、皆さん方のほうで調査になっておる範囲でひとつお答えいただきたい。
  6. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ケネディラウンド中共貿易関係でございますけれども、御承知のように、いまの日本関税の体系というのはいろいろな段階がございまして、一つガットで譲許した税率適用される、こういうグループがございます。それがガットのメンバーであるほかに、また二国間条約でもって最恵国約束をしている、そういうところにも適用になります。それが第一のグループ。それから第二のグループとして、便益関税適用されているというグループがございます。これは国交はあるのでございますけれども条約では最恵国約束はしていない。しかし、事実上向こう最恵国待遇をしている。こちらもしたがって便益関税最恵国待遇をしておるグループがございます。それからその次のグループとして、国定税率適用されるグループですが、この中には、国交はあるけれども、しかし向こう差別的な扱いを日本に対してしている、したがってこちらも譲許税率適用しない。それからそのグループに入るものとして、さらに国交がない、こういう国、そういうグループに分かれております。  そこで、ケネディラウンドが実施されますと、中共関係国交のない国に入っておりますので、ケネディラウンド譲許税率そのもの適用になりません。ただ実際問題として、品目を選びまして、そうしてこれは国定税率ケネディラウンドに合わせて下げてもいいというものは下げることにいたしておりますので、今度のケネディラウンド関係で申しますと、中共からの輸入品の約六割は差別がないのですが、残りの四割のうちで二割は、今度ケネディラウンド影響国定税率を下げるということによって実質的に均てんさせるということにいたしておりますので、結局大豆銑鉄国定税率の引き下げということで、二割の影響はこれはまたケネディラウンドと同じことになります。残りのところで約二割が譲許税率国定税率と差がある、こういうことになるわけでございます。その中で一番大きな品目ということになりますと、生糸でございます。生糸については差ができる、こういうことになっております。
  7. 只松祐治

    只松委員 およそ何品目で、金額にしてどのくらいになりますか。通産省の(二字分判読不能)でよろしいですが……。
  8. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 品目数で申しますと、現在格差がないもの、これが二百五十九品目でございます。金額で申しますと五百六十四億円。この中には、米とか、石炭とか、塩とか、アズキとか、クリとか、こういうものが入っております。それから、今回の国内法のいま御審議願っております改正格差を生じなくするものというものが十九品目あります。これが二百八億円。このおもだった品目は、先ほど申し上げました大豆銑鉄でございます。合計しまして、格差がないものが二百七十八品目金額で申しまして七百七十三億円、こういうことになります。それから、いま御審議願っております法案でなお格差が残るものというものがございますが、これでケネディラウンド関係なしに格差が残っているものが十一品目、五十八億円でございます。これはエビなどがそういうものです。それからケネディラウンド譲許税率が下がる、しかし国定税率は下がらない、その関係で差ができるもの、これは品目数で申しますと三百四十五品目金額で申しますと百三十七億。これが生糸絹織物、ブラウス、肉、魚、こういうものでございます。そこで格差の残るものは十一品目、三百四十五品目と合わせて三百五十六品目金額で申しますと百九十六億円でございます。
  9. 只松祐治

    只松委員 いま示されましたとおり、今回のこの適用によりまして三百五十六品目、百九十六億前後、これは現在でそれだけの影響が出てくる。この中身を一々洗うわけにはまいりませんけれども、おおよそこの品目というのは中小企業に属するような面が私はきわめて多いと思いますけれども、通産、大蔵当局も、中の品目個々におっしゃらなくてもけっこうですけれども、大体そういう中小企業や何かの製品や何か、そういうところに及ぼす影響が多いというふうにお考えですか。いや、そういうことじゃない、一般的なものとお考えですか。
  10. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 中共からの輸入品の中でおもだったものというもので十億円以上のものを見ますと、十億円以上のもので全然差別のないものが大部分でございますが、差別のあるものは、先ほど申しましたエビでございます。これは水産関係。それから大豆につきましては、今度の改正で差がなくなる。それから生糸ケネディラウンドのほうが下がりますが、国定税率を下げませんから差ができる、こういうことでございます。それからロジンは現在も差があって、これはケネディラウンド関係ございません。それからその次は絹織物でございますが、これはケネディラウンド関係で下がりますが、国定関税のほうは下げませんので、これは差が生ずる。それから先ほど御説明しましたように、銑鉄については、今度の法律改正で差がなくなる、こういうことでございます。そのほかの品目を見ますと、水産関係でもって差が残るというものが相当ございます。
  11. 只松祐治

    只松委員 日中間貿易は、二、三日前に古井さんなんかがお帰りになりまして、一応解決されたわけですが、こういう経過なりあるいは結果を見ましても明らかなように、個々品目あるいはいわゆる資本主義国との貿易と異なって、国対国貿易であり、いわゆる総量総量の、交換といってはなんですけれども、そういう面の強い貿易になっておるわけですね。したがって、個々向こう輸出品目やあるいは何かということと違って、今回のこのケネディラウンド適用になって、約二百億円近い品目影響を及ぼしてくる、そういう品物が不当に差別をされてくる。こういうことになりますと、全体の輸出入というものが減ってくる、こういうことになりますね。こちらからも輸入するのを手控えるし、したがってその見返り品物が少なくなっていって、いわば漸減状態になっていく。貿易は拡大するのじゃなくて萎縮していく状態になってくる。これは資本主義国家間の貿易と異なってそういう面を持っておるということをお認めになりますか。
  12. 宮沢鉄蔵

    宮沢(鉄)政府委員 御承知のように先般LT貿易交渉が行なわれたわけでございますが、そのときの感じでは、中共サイドとしては、日本でできるだけ輸入してもらいたい、その限度において向こうもできるだけ買うようにしましょうというような一応の考え方でございます。厳密にぴしっと合うわけではございませんけれども、一応考え方としては、できるだけ日本が買ってくれればできるだけ向こうも買いたい、こういうようなことで交渉が行なわれたように聞いております。
  13. 只松祐治

    只松委員 だから、資本主義国家間の貿易と違って、いわゆる個々の問題でなくて、全体の貿易が、いわば総量と申しますか、それが増大するかしないか、こういう形で行なわれておる。米なら米を十五万トン買ってくれるか、その見返り日本から幾ら出すか、こういう形の交渉なんですね、現在のこの日中の貿易というものは。だから、そういうふうなものであって、資本主義国家間の、これは値段が幾らだから、安いから高いから、買おうとかなんとかという、そういう面を主としたものではい。こういうふうに、いわば資本主義国家間の貿易とは相当趣を異にする、こういうふうにお考えですか、と聞いているのです。
  14. 宮沢鉄蔵

    宮沢(鉄)政府委員 日本サイドとしては必ずしもそういうふうにきちっとバランスしなければならぬというふうに考えておりませんけれども向こう側態度としては、やはり日本で買ってくれた限度内において自分のほうは買う、というようなことを一応考えておるように思われます。
  15. 只松祐治

    只松委員 こっちは思ってないといっても、現実に行なわれておる貿易がそういう形で行なわれているわけです。また、その協定が結ばれたことによって取引がある。この覚書協定がなければ日中間貿易というものは行なわれないわけですからね。実際上はそういうことなんです。そういうことになれば、これはこの法案をどうするかという問題に関連をしてくるわけですけれども、ただ品目を並べる、あるいは国交回復国ですから、国名をどういうふうにあらわす、あらわさない、こういう、皆さん方から考えれば、非常に技術的にむずかしい問題というのは——私の言わんとしておるところを解決するのはたいへんむずかしい問題があるわけです。こういう問題を、国交回復の問題から通常の貿易における品目を洗い直したりあるいはなにしたり、こういうことをやって皆さん方論議をしておるとたいへん長い時間がかかりますから、あとの方はそういう論議もあるかと思いますが、私はきょうはそういうことは触れようとは思っておらない。聞いておるのは、資本主義国家社会主義国家の間の貿易、特にいまの国交回復しておらない中国との貿易というものはたいへんにむずかしいし、微妙な問題がある。したがって、こういう格差が二百億円前後の品目について出てくるということが明らかになってきた以上は、しかもこれが見返りとして出ていくものの、日本側の場合には中小企業の方々、貿易業者はもちろんですが、その製品をつくっておる人々も、そういうものに類する人が多いという場合には、何らかの形でこれの解決のために——皆さん方は百二十何億ドル予定しておる貿易の中から見ればわずかなものだ、たいしたことではない、品目も三百五十品目前後、こういうふうに軽くお考えかしりませんけれども、私はそうは見ない。これはきのうも私が輸入課徴金の問題で論議をしました。なかなかお答えになりませんでしたが、通産省のほうでは、相当打撃を受ける、こういうことであった。四億ないし五億ドルぐらいの打撃が予想されておるわけですけれども日本貿易の三〇%以上を占める、一番大きなアメリカでもしりすぼみになっていく。いまから発展していこう、いまから開拓していかなければならない社会主義国家、一番近い中国貿易、これがやはりケネディラウンド適用によって、拡大発展どころか困難になっている。そういうことになれば、日本経済発展一つの大きな柱である貿易というものは、どこに皆さん方は発展させていく、伸ばすという見通しを、本年ももちろんでありますが長期的に見た場合も、お持ちになっているか。私は、皆さん方がどこまで貿易に熱意を持っておられるのか、そういう面を見るとたいへんに疑わしいのです。もっと輸入課徴金の問題についても勇敢に取り組んでいく、本心を吐露してこの問題に対していく、あるいは日中貿易の問題についても、もう少しそういう技術的な面ではなくて、大所高所から判断し取り組んでいく、こういうことがあって初めて日本貿易というものも伸びる可能性が出てくると思う。しかし、皆さん方はあまりに技術面にとらわれて、そういう点に対する勇断に欠けているように思われてならないわけです。そういうことで、品目なり金高から見れば、全体の貿易額から見れば、皆さん方はそれほどではないと思っていますが、私は、そういう面から見るならば、たいへんに大きな問題である、ある側面から見れば、大きな問題だと思っています。この問題に皆さん方はどう対処しよう、どう取り組んでいこうとしておられるか、基本的な方向だけ——このままで今度出した法案をそのまますんなり通してもらえばいいんだ、こういうふうにお考えであるのか。そうではなくて、現状ではこうだけれども、こういう点に打開の方法があるのだ、こういうふうに将来はしていきたい、どういうことをお考えになっておるか、お考えがあればお聞かせを願いたい。
  16. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほど関税率の体系のことを申し上げましたが、そこでこれからどういうふうにしたら中共貿易が拡大するようになると考えているかという御質問だと思います。  私ども考えておりますのは、今度御提案いたしましたように、大豆銑鉄等については国定税率を下げて譲許税率との差をなくす、こういうことを御審議願っております。その他の品目につきましても、これは品目別に国内にどういう影響があるかということで、この程度ならば関税率を下げてもいいということになれば、品目を拾って関税率を下げていく、こういうことをいたしたいと思っております。たとえば、いま差別されている一番大きなものは生糸でございます。生糸についても相手国の中の状況も考え、国内の状況も考えて、それで中共に対しても譲許税率と同じ税率適用してよろしいという判断がつけば、それを国定税率を下げるという形で広げる。その他の品目についてもそういうふうにして下げてもよろしいということになれば、次々と追加していく、そういうことにいたしたい、そう考えております。
  17. 只松祐治

    只松委員 私がきょう一番最初抽象的に聞きましたように、将来の話がいま出ましたけれども、本委員会においてもそういう類似の意見なり何かが出れば、大蔵省側としても考慮をする余地というものがございますかどうか。具体的でなくてけっこうですけれども、そういう余地があるかどうかということだけをお聞きしておきたい。これはこの問題だけじゃございませんが、ほかの問題に関しても次官答えてください。
  18. 倉成正

    ○倉成政府委員 お答えしたいと思います。  関税率の問題につきましては、現時点では現在御提案申し上げているのが最善だと信じて御提案いたしておりますので、十分国会で御審議いただいて、われわれの主張を御理解いただけば幸いだと思っておるわけでございます。
  19. 只松祐治

    只松委員 いや、その主張は御理解いたしましても、やはりそれぞれの意見があるわけですから、私はこの場でそういう全般の問題を詰めようとは思っておりませんけれども、大臣がいままだおいでになりませんから、特に基本的な考え方だけもう少し柔軟性のある考え方をしていただきたい、こう思って聞いておるわけです。ここでいかなる決議をしても、そこまでは突き詰めてものを言おうと思っていないわけです。
  20. 倉成正

    ○倉成政府委員 国会は国権の最高機関でありますから、国会の御意思としていろいろな御提案があれば、これは政府としてそれに従うのが当然であると思っております。ただ、生糸等の問題はわれわれもいろいろ検討したのであります。しかし、御案内のように国内産業への影響も非常に大きいし、これはやはり慎重に考えなければならない。大臣につきましては、みそ業界その他、やはり中共産であるから差別するということでは、国内のそういう業界も困るということでありますので、この国定税率を排除して譲許の税率に合わせた、こういうことでございます。
  21. 只松祐治

    只松委員 通産省蚕糸局長、いま大蔵当局からお答えがあったわけですが、農林省としては、いろいろありますけれども、特に生糸の問題について弾力的な考えと申しますか、この問題に対して前進的な考え方をしておられる、こう聞いておるわけです。本年ただいま直ちに、幾ら弾力的考え方でもそこまできているのかどうか私知りませんが、皆さん方考え方が那辺にあるか、ひとつお聞かせいただきたい。
  22. 池田俊也

    ○池田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど関税局長からのお答えがございましたが、私どもは、現在におきましては直ちにそれらの関税率を引き下げるということは若干困難があるのではないかというふうに考えているわけでございます。それは、過去におきまして生糸の価格というものが非常に変動が激しいわけでございます。十年ぐらい前でございますか、生糸の価格が大下落をいたしまして、政府が非常に多額の財政資金を出しまして買いささえをした。それでもなかなか生糸の価格の下落がとまらなかった、こういう事態がございます。それで、私どもといたしましてはそういうようなことも一面においては考えておく必要がある。現在は、御承知のようにそういうような価格安定制度あるいは事業団というものがございまして、そういうようなときに対処するような形になっているわけでございますが、実はこの生糸の輸入につきましては、きわめて最近の事態でございます、ちょうど二、三年前から生糸の輸入がだいぶふえてまいりまして、過去においてはそういう相当量の生糸が入ってきたという経験が実はないわけでございます。それで、私どもといたしましては、実はこの生糸の輸入につきましては、今後新しい事態を頭に置きまして相当基本的な考え方を練っていく必要があるんじゃなかろうか、そういうようなことで今後これにどういうような対処の方策を考えるかということを現在検討中でございます。したがいまして、関税率につきましてもその一環として考えてまいりたいということでございます。    〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  23. 只松祐治

    只松委員 きわめて抽象的なお話があったわけですが、これもここでの答弁だけではなくてけっこうですから、今後検討というか、今後三年後か五年後か十年後か、そういう話ではなくて、あとこの問題に関していろいろ私たちも話し合いをしたいと思いますけれども、長期的な今後じゃなくて、きわめて近い期間においていま述べられたような趣旨に基づいて善処するということをひとつお約束いただきたい。よろしゅうございますか。
  24. 池田俊也

    ○池田政府委員 これは私どもの予定といたしましては、実は本年中に大体その生糸の輸入問題を含めましてもろもろの制度の検討をいたしたい、こういう予定にいたしております。
  25. 只松祐治

    只松委員 個々の問題については時間がありませんからこの程度でやめますけれども中国とは国交未回復の国でございますから、皆さん方としてもなかなか困難な問題があったり、勇気が要ったり、事務をやっておられる皆さん方としてはそういう面があるだろうと思います。しかし、いままでの歴史を見ましても、英国とソ連の間とか、あるいは日本においても日ソ間の漁業問題にいたしましても、いろいろ国際間で国交が回復しておらなくても、こういう問題を勇気を持って解決した事例がございますね。したがって、あまり事務的側面やあるいは四角四面な解釈だけではなくて、こういう問題についてはきのう佐藤総理もなんなら中共に行きたいということを言ったとか言わないとかということを新聞にも書いておりますけれども、この問題につきましては、ひとつ勇気を持って当たっていただきたい。  最後に、お聞きをいたしておきますけれども、未回復国におきましても便益関税が可能である、私たちはこういうふうに考えるわけですが、皆さん方としてはこれは絶対不可能だというふうにお考えですか。それとも場合によっては可能性がある、こういうふうにお考えでございますか。その点ひとつお聞きしておきたいと思います。
  26. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほども御説明いたしましたような体系になっておりますので、国交回復していない国について便益関税適用するということは、いまの全体の関税率の体系と根本的に違うことになりますので、私どもとしてはそうでなくて、実際に大豆銑鉄について行ないましたように、品目を選びまして、そうしてその税率を下げていく、譲許税率と同じにするということになりますと、実際は実はとれるわけでございます。そういう方法でこの問題は解決していきたい、そう考えております。
  27. 只松祐治

    只松委員 一つとしてはそれがあると思いますが、一括して便益関税適用するということは全然考慮の余地がないということですか。私は、時間がありませんからいろいろな歴史的な問題を言いませんけれども、ほかに例はあるわけですね。だから場合によっては、日中だけの問題じゃなくて、そういうこともあり得るのだ。対インドネシアの問題も、終戦直後そういうことでやっておりますね。だから、場合によってはできるのだ。中国だけじゃないですよ。今後ほかにこういう問題がある場合どうお考えですか。
  28. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ほかの面、いろいろあるかと思いますが、関税率の体系としては、国交の回復していない国に便益関税を供与するということは考えておりません。それは根本的な変更になるので、できないことだと私ども考えております。
  29. 只松祐治

    只松委員 関税率という形でなくても、関税の取り扱いについて、何か一括してそういう政治的な配慮を行なうということが可能であるかないか。
  30. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 現在の関税率の体系から考えますと、それは私どもは無理だ、そう思っております。
  31. 只松祐治

    只松委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、いわゆる法のもとに私たちは生活しておるわけですが、しかし、日中間の問題というのは、ある面から見れば法以上に——皆さん方は、たとえば中国という名前を表示することをきわめておそれられておりますが、しかし、パスポートには中華人民共和国というものを日本人が堂々と書いて中国へ渡航しておるのですね。こういうこまかいことを法律論議すると、じゃどっちが正しいのか、外務省が正しいのか大蔵省が正しいのか、あるいはいろんな問題が論議の対象になるわけですが、私はきょうはそういうことを論議しようと思いませんでしたからそういうことを詰めなかったわけです。したがって、私は勇気とか英断とかいうことばを使ってお尋ねをしたわけですけれども、この問題の解決は多分にそういう面からなさないと、法律の面や事務的な面からだけではなかなか解決はできない、困難だろう。しかしそういう面があることと、それから佐藤さんが常に言っておられる国益という面から見るならば、そういうことをすることが、私は、特にアメリカへの貿易がふさがれてきつつある現在、さらに必要なことだと思う。ぜひひとつそういうことを考慮してこの問題に対処していただきたい。私たちも別な面からこの問題にも取り組んでいきたいと思いますから、ひとつぜひそういう姿勢を貫いていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。
  32. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 村山委員。
  33. 村山喜一

    村山(喜)委員 経済企画庁の官房長がお忙しいようでございますから、まずそこから入っていきたいと思います。  OECDの経済政策委員会に出席をした岩尾企画庁官房長は、EECの関税引き下げの問題等に関連をいたしまして、帰ってみえてから、米国の輸入課徴金の問題はアメリカとして断念するとは思われない、日本がその適用除外国になることもむずかしい、日本への影響はだからできるだけ小さくする努力をしなければならない、こういうような意味の発言を新聞を通じてやっておられるわけでありますが、まさにそのとおりであろうと思うのです。そこで、これをできるだけ縮める努力とは一体どういうふうな内容をあなたは意味しているのか、お答えをいただきたい。これが一点でございます。
  34. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 新聞に出ました関税ケネディラウンドの一括繰り上げあるいは課徴金に対する処置につきましての私の発言は、新聞によっていろいろ違っておりまして必ずしも正確ではないと思いますので、もう一度どういうふうに申し上げたかを申し上げまして、その上でお答えをいたします。  御承知のようにEPC、エコノミック・ポリシー・コミッティと申しますのは、OECDの中で各国の経済成長をどういうふうにするかということを議論する場でございまして、したがって、本来ならばアメリカ貿易問題あるいは課徴金の問題というものを議論する場ではないわけでございます。ただ今回は、昨年あるいは本年の初めかう始まりましたドル、ポンドのいろいろな問題がございますので、そういうものについて両国の方針を聞きながら欧州各国がこれに対してどういうふうに対処していくか、その成長率等について考え直す必要はないかということが中心に議論をされたわけでございます。  そのアメリカの方針についての議論の際に、これは先生方も御承知のように、年頭の大統領の教書によりまして大体五つの方針が発表されておりまして、三十億ドルの国際収支の赤字を消したいということで、その一項目に、貿易あるいは海外からの人を入れることによって五億ドルぐらいの国際収支の改善をはかりたいという項目があるわけでございます。そういうものを中心に議論がされまして、会議の雰囲気といたしましては、まず私らが出発をいたしますころにいろいろ新聞等で感じておりました、アメリカは欧州と国境税についての調整をやってみたが、どうもなかなかうまくいきそうもない、そこで必ず課徴金をやるのではないかというような雰囲気が出発の前に私は非常に強く感じておったわけでございます。  会議アメリカのほうは、この問題についてはいろいろ検討しておるけれども、いわゆる輸入制限をやるということはよろしくないのでそういうことは考えていない。しかしトレードにおけるいろいろな赤字についてこれは消さなくちゃならぬ。どういう方法があるかいま検討中である、きまっていないということをはっきり申しておりました。また、きまった場合には正式の機関、ガットだろうと思いますが、正式の機関にしかるべく措置をとるということを申しました。  これに対しまして各国の議論は、特にドイツ、イタリア等から、ケネディラウンドの繰り上げによってアメリカはそういうことをやめたらどうか。本来はやはり世界貿易の拡大という線でアメリカの国際収支というものも改善すべきであって、貿易上黒字を出しておるアメリカがさらにそういう措置をやるのはおかしいではないかという議論があったわけでございますが、一方フランス等におきましては、本来アメリカはこういった国際収支の赤字についてはアメリカの国内を引き締めることによって対処すべきであって、対外的な措置はとるべきではないという意見が強く出されまして、私の印象といたしましては、どうもケネディラウンドをEECが一括繰り上げて実施をしようというようなことにはなかなかまとまらないのではなかろうかというような感じがいたしたわけでございまして、どうなるかということはこれはまだわかりません。ただそういうような感じがいたしたわけでございます。  なお、輸入課徴金につきましては、これは本題とは別に、先生方も御承知のようにアメリカにおきます国内問題といたしまして現在増税法案がかかっておりますが、これと並行いたしまして非常に保護貿易的な法案が約二十、アメリカでは提出されております。そういう状況からいいまして、何らの国内的な措置もとらないでアメリカがいくということはなかなかむずかしいのではなかろうか。そういう意味から、もちろんきまっていないと言っておりますからきまっていないと思いますけれども、私個人の見方としては、やはり何かの課徴金のような措置はとるのではなかろうかというような気がいたしたわけでございます。  そこで、そういたしますと、さっきの御質問に対するお答えでございますけれども、われわれとしては輸入課徴金をやめてしまえということを言ってみてもなかなか始まらぬじゃないか。むしろやはり日本のほんとうのプラスというのは、かりに輸入課徴金が行なわれた場合でも、その他の輸入制限措置が行なわれた場合でも、一番被害の少ない方法をとるべきではないか。たとえばこれがガットの場に出された場合に日本が反対をするとかいろいろな方法があると思います。思いますが、終局的には、いろいろ新聞の情報を見ておりましても、たとえば現在UNCTADで特恵関税の議論がされております。輸入課徴金につきましても、後進国については、低開発国についてはこれを除外しようということをいっております。そういったきめのこまかい配慮で課徴金が取られるならば、たとえば国別あるいは品目別にいろいろ特別な扱いがやられるのではないか。前回の金利平衡税につきましても、カナダについては特別な扱いをしておる。そういう意味で、特に品目等につきましては低開発国と非常に競合する面もあるわけでございますから、特恵関税とダブルパンチを食うということでは非常にたいへんなことになります。そういう意味できめのこまかい行政的なものになりますけれども、国別、品目別等についてできるだけ日本に被害のないような措置をとるということに努力をするのが一番いいのではなかろうか、かように私個人としては考えております。
  35. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、被害が少ないような措置をとる中身の問題をあなたに聞いておるのであって、前段で演説をされたことはまさにそのとおりだと私も思う。だから、いま具体的にいろいろな動きが民間においてもあります。あるいは政府としてもこの問題を重視して、宮澤長官をアメリカに派遣をするという話も聞いておる。しかしそれは、阻止するための措置ではありますが、最悪の場合というものを予想しなくてはならない。その場合に、はね返りを一体だれがかぶるのかということが問題になります。それについては、通産省通産省で輸出払い戻し税制の問題等もすでに考えているように新聞は伝えている。あなたとしては、企画庁としてはどういうような有効な対策をお持ちでありますかということを私はお尋ねしておるのです。
  36. 岩尾一

    ○岩尾政府委員 対策ということにつきましては、再三、大臣その他がお答えになったかと思いますけれども、現在まだきまっておるわけではございません。したがいまして、企画庁としてどう考えるかということについては、私としてお答えできる範囲ではございませんが、私は、いろいろのことをやる場合に、もしこういうことをおまえのほうがやるならば、おれのほうはこうやるからこうしろというような交渉上のファイトを持ってないとなかなか交渉もしにくいのではなかろうか、そういう意味で、実際上の交渉についてどういう態度でいくかということはこれから政府部内でよく検討されるところだと思いますが、私の申し上げたのは、そういうような方法は別にいたしまして、いまの見通しとしてはそういうような状況だから、日本の被害の一番少ないような方法、これは、たとえばさっき申し上げましたように、通産省なりあるいは外務省なりその辺でよく御検討になればどういうような配慮をしていけば少なくなるかということはある見通しがつくと思います。そういう配慮をなすべきじゃないかという個人的な意見を申し上げたのでございます。
  37. 村山喜一

    村山(喜)委員 通産省大蔵省に逃げられたのではかなわないのであって、あなたとしても有効な対抗策をお持ちでないように——個人の意見としてはお持ちかもしれないが、それはなかなか発表されない。だから、これ以上あなたを追及しても始まりません。そこでこの問題は、事務レベルの問題でなしに政治的の次元の問題でありますから、大蔵大臣が見えましたときに質問をいたすことにいたします。あなたは分科会があるそうですから……。  そこで、武藤関税局長、お尋ねいたします。今度のケネディラウンドの実施に伴いまして関税の引き下げをやる。二年分まとめて七月一日から実施するということでありますが、これに伴う日本の国の貿易あるいはその他の国際収支の上から見て、どれだけの効果というものが出てくるのですか。貿易総量に対する効果です。
  38. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは非常にむずかしい問題でございます。端的に申しますと、日本のほうも関税を下げて、それから日本が輸出する相手国も関税を下げていくということですから、両方拡大するということは確かでございます。御承知のように、ガット関税交渉というのは、両方の国が、こちらもこれについてこれだけ下げる、これは据え置きを約束するというようなことを言いまして、相手国もまたそういうことを持ち出しまして、結局この辺が、売りと買いみたいになりますが、妥当だろうということになりまして話が落ちつくわけであります。そこであとは、ただいま先生がおっしゃられましたように、これでどれだけ日本の輸出が伸びる、これでどれだけ輸入がふえるということがわかりますと非常に話がしやすいのでございますが、それはなかなかわかりませんものですから、実際問題としては、輸入金額でもって関税を下げるものがどれくらいになる、それから輸出のところで下げてもらうものがどのくらいになる、——幅ですね。それから無税の据え置きの譲許をするものがどれくらいある、そういう貿易の過去の実績の金額を目安に置きまして、それで交渉は結局まとまるということになっておりますので、この関係でもってどれだけ日本の輸出が伸び、あるいは輸入がどれだけ伸びるかということは、これはなかなかむずかしい問題でございます。
  39. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、日本の国益という点から考えていきますならば、日本の国が加工貿易を中心にやっておるわけですから、原材料を安く入れて、そうして貿易を拡大していくという中において関税を引き下げていくということは、当然基本的に日本の利益につながるものである。だから、そういう立場に立つ以上はそれだけ賛成をしなければならないと思うのですが、問題は、一体やり方というものによってどれだけの利益があるのかというその政策効果というものを、あなた方が明示することができないということはおかしいじゃないですか。すでに民間においては、ケネディラウンドの実施に伴って日本の国としては貿易がこれだけ拡大をして、これだけの総合収支においては黒字になるという、そういうような出し方というものはしておるでしょう。それを政策当局のほうが持たないで、アメリカの要請に従ってやったんだというような行き方になったら、これはおかしいということになってくるのじゃないですか。
  40. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ケネディラウンドでどのくらいの日本関税の譲許があるかと申しますと、これは六四年基準でございますが、ケネディラウンド交渉のときにこの数字を使いました。総輸入が七十九億のうち、四四%に当たる約三十五億ドル、これを譲許しておる。これに見合ったものをまた各国から譲許をとっておるわけでございます。そういうことで、こちらもこれだけ関税について譲許をする、それから相手の国もそれに見合う譲許をする、そういうことでまとまるわけですが、もう少し交渉の中身を申しますと、たとえばこちらでこれだけ下げてもいいといたしますと、その場合に、それに見合う代償を相手から取ろうといたします。そこで相手のほうがそれに見合う分を出してくれないというときには、こちらはまたこちらが譲許しようと思ったものを引っ込める、こういうこともあります。それから今度は、逆に相手の国がこれだけ譲許しようということを申し出ましても、それに見合う代償が日本から取れないということになりますと、今度は相手が用意したものを全部使わないで、あとの交渉のためにポケットに入れておく、こういうことが起こります。そういうことで、ここのところが、先ほど先生がおっしゃられましたように、これでどれだけ日本の、たとえばアメリカに対する輸出が伸びる、その他に対する輸出が伸びる、そして日本の輸入がどのくらい伸びるかということが客観的にわかりますと、交渉は非常に早く妥結するわけでございますけれども、なかなかそういきません。したがいまして、お互いの交渉が非常に骨が折れるわけでございます。  大体からいいますと、そういうことで、関税引き下げがどのくらいか、それから無税の据え置きがどのくらいか、またこちらの引き下げがどのくらいか、無税の据え置がどのくらいか、そういうことを見合いながらその辺でまとめる、そういう形をとっております。
  41. 村山喜一

    村山(喜)委員 関税というのは双務的なものなんだということはよくわかるわけなんですが、しかし、この関税率を変更して、そして世界貿易の拡大をはかろうという考え方のもとに日本の国が法律改正をやっていこうという体制を示される以上は、そこには政策的な目標というものをもっとわかりやすく提示する必要があるのじゃないか。ただ、ケネディラウンドのそういうような妥結に伴って、後進国の場合にはさらに譲許する分をふやします、これだけでは、法律改正のいわゆる目的というものが明らかにされないわけですね。だから、やはり非常に困難な作業だと思いますよ。困難な作業だと思いますが、一つの経済見通しというものをあなた方が立てられるその中には、当然のファクターとしてこれが入ってこなければ、政策効果というものは判定ができないわけですね。そういうような点が欠けているのではないかと私は思うのですが、倉成政務次官、いかがお考えになりますか。
  42. 倉成正

    ○倉成政府委員 関税を引き下げていくということで相手国もまた引き下げていく、こういうことでこのケネディラウンドの譲許が行なわれるわけでございますけれども、相互にバランスがとれるということから一応関税交渉は出発いたしております。したがって、その影響がどうかということになると、グローバルで相互主義をとるわけですから、やはり個々品目について、たとえばトウモロコシはどうか、大豆はどうかというふうにそれぞれ検討すべき問題でありまして、全体として金額幾ら、どういう影響を受けるかということを判定するのはなかなかむずかしいのではなかろうかと思っております。しかし、村山委員の御指摘は、これが国内産業にどういう影響を及ぼすかということについてもっと勉強しろという御指摘だと思いますが、その点は、これからもなおそういう方向でわれわれ努力してまいりたいと思っております。
  43. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣はまだ見えないのですか。——大臣が見えてからお尋ねする分は残しておくことにいたします。  この四十三年度の経済見通しの中で、貿易の拡大という問題をとらえてみまして、私、不思議でならないのは、アメリカの大統領教書の中で、今回も名目経済成長率というのを七・七五%見込んでおる、実質は、経済企画庁からいただきました資料によると、四・五の伸びだ、こういうようにアメリカ経済を見ていらっしゃるようです。その場合に、日本の輸出の弾性値というものはどういう中身を占めてくるのかということを、いろいろ過去の数値によって測定してまいりますと、アメリカの名目経済成長率が七・七五%であった場合には、輸入の伸び率というのは大体それの二倍だ、しかし日本の輸出弾性値はアメリカに対しては非常に強いので四くらいの比率になる、したがって対米貿易というものは、関税障壁等がつくられたら別でありますが、従来のケースからいえば、これはもっと大きく伸びるべき内容になっているのじゃないかということが指摘できると思うのであります。ところが、これは日本の輸出弾性値という問題を、経済成長の見通しの中では、四十三年については二・二九ということで押えておられるが、二・二九という弾性値を出したその根拠というものは一体どういうようなところからお出しになっているのかということをお尋ねしたいのであります。これはアメリカは弾性値が四であるとするならば、アメリカの場合はこうだ、しかし中国貿易については弾性値をどういうふうに見て計算をしているのか、あるいは東南アジアの国々、EECに対してはどのような弾性値を打ち出して、それによっていわゆる日本の輸出というものはこれだけになるであろう、こういうような一つの政策課題に対する測定が行なわれていると私は思うのであります。ところが、そういうふうなものを、経済企画庁に経済成長の見通しに関する資料として要求いたしましたが、残念ながら全体的なものは二・二九という弾性値の数値は出されておりますが、そのほかのものは資料としていただいておりません。これは出し得ないというのであるか。この点については、通産省はそういうような弾性値に基づく各地域別の貿易の見通しというものをお持ちでありますか。また、そういうようなものに対する一つの計画的な達成目標というようなものもお持ちであるかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  44. 宮沢鉄蔵

    宮沢(鉄)政府委員 全体の輸出の規模をどのくらいに押えるかということにつきましては、経済企画庁で通産省とか大蔵省とかそういうところからいろいろ資料を集めまして、そしてその辺を総合勘案してきめるわけでございます。一応物資別の積み上げ等も参考としてはつくりますけれども、いままでの経験によりますと、そういう積み上げはあまり権威がございませんので、全体の数字を押えます際には、そのときの日本の経済の姿がどうなるかというような、景気の上昇期にあると見るかあるいは下降期にあると見るかというようなことであるとか、それから外国の経済事情が大体どういうふうに動くだろうかというようなことを考えて、そしてそのためには、まずトータルの数字を一応見当をつけるわけでございます。そのときに一つ使いますのが、いま言われました弾性値の問題でございます。私は今年度のこの輸出見通しをつくります際にタッチしておりませんので、あまりはっきりしたことは申し上げられませんけれども、大体二ないし二・二という数字は、おそらく過去十年間くらいの弾性値の平均に当たるのではないかと思います。四十三年度の見通しを立てます際には、世界経済、貿易の伸びを幾らと見るか、おそらくこの場合は六・五か七と見てあったのではないかと思いますが、それに弾性値の平均をかけましてそして全体の数字を押える。それから一応どういう市場にどのくらいということは、最近までのいろいろ数字をずっと積み上げてみまして、いろいろな特殊事情等もございますので、そういうことも考えまして一応の見当は内部でつけておるのでございますけれども、それはおそらく、企画庁で私、前に調整局長をやっておりましたけれども、そのときは内部資料として、一応見当をつけて持っているわけでございますが、積み上げてやったわけではございませんで、これは一応の参考資料として内部で持っているにすぎない、こんなようなことが実情でございます。
  45. 村山喜一

    村山(喜)委員 弾性値を二・二九ということで見て、そして輸出の伸び率一四・九イコール一五%の輸出は増大をする。いま宮沢さんがおっしゃったように、世界の輸入の伸び率を六・五に見ていることは事実であります。そういりようなことで輸出目標というものを一五%に押えた経済の見通しがつくられた。ところが今日、経済見通しというのは天気予報と地震観測の予測との間におけるぐらいしか信用がないそうです。大幅に狂ってくることは、四十二年度の経済の実態とのずれから見ても明らかなとおりであります。そこで、私は「通産ジャーナル」というのをいただきました。名前は申し上げませんが、ある人は、一五%という政策目標を掲げながらも二二%にしかならないであろうというようなのが書いてあるわけですね。ですから、あなた方が貿易を拡大していこうという方向を打ち出しておられる、そのいわゆる考え方というものを基礎づける具体的な対策というものが非常に欠けているのじゃないか。たとえば輸出比率が九%である現状を数年後には一五%にするのだということは出されているけれども、ではどういうような具体的な政策をもって対応していくのかというものが政策課題として出されていないのじゃないか、こういう気がしてならないのであります。したがって、中国貿易という問題一つ考えてみましても、それの確たる目標というものがないがゆえに、それに対する対策が事務的なびほう策に終わっているという感じがしてならないのであります。せっかく古井さんや田川君が中国に出かけて覚書貿易協定を結んできた。それに対して佐藤総理は、たいへん御苦労であった、これは重視しなくちゃいかぬということまでは言うけれども、一体それに対するところの佐藤内閣なりあるいは自民党政権としての考え方、取り組みというものは、具体的な問題になればなるほどこれは明らかでないのであります。(発言する者あり)そこで、いまもやじが出ましたように、三木外務大臣は委員会を通じて、吉田書簡には拘束されない——拘束をされないというところまではいいのですが、三十九年に制定をしたその事情というものはまだ残っているのだ、こういうような考え方を出される。そうするならば、一体日中貿易に対する全体の姿勢というものはどういうふうになっているのだろうか。  そこで私は、輸銀の副総裁がお見えでございますからお尋ねをいたします。輸銀の使用というものはこれは純然たる内政の問題だ、まさにそのとおりでございます。しかし、吉田書簡はこれは特殊ないきさつがあるのだから、この問題については高度の政治的判断を政府首脳部に仰がなければならない、こういうような考え方のもとに、中国に対するプラント輸出の問題等についてはチェックする立場にあるのが輸銀の立場であろうと思うのでありますが、そのとおりかどうかということについてお答えください。
  46. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 私どもといたしましては、政府のおきめになりました大きな方針に沿いまして、その実施機関として通常の金融判断に基いて、たとえそれが中共向けの輸出でありましても他の一般案件と同じように、つまり金融ベースに乗る限りにおきましては同じような判断をもって処理するつもりでございます。
  47. 村山喜一

    村山(喜)委員 日中貿易につきましては、日中間の覚書貿易にいたしましても、あるいは友好商社の貿易にいたしましても、この貿易を拡大しようという考え方を立てるか立てないか、これがもう基本的な問題であります。これについて佐藤内閣の政府の姿勢というものは、ことばだけはよくて実体がこれに伴わない、こういうのが現実の姿であります。そこに第一の問題点がある。  第二の問題点は、吉田書簡は政府を拘束するものではないといいながら、なお輸銀の使用等についてはこれをチェックしてきたことは、今日まで、三十九年の日立の貨物船の輸出契約が破棄されたのを見れば明らかなように、今日なお依然として輸銀を使って輸出をしようという、そういうこともない。また、そういうような事実があっても、現実に事務を取り扱うところでチェックできるような仕組みになっている。  第三の問題は、昨年の六月、天津で開かれました日本科学機器展に見られますように、いわゆるココムリストに縛られた日本の国の姿、その中において一方西欧諸国はこのココムを無視しながら、しかも政府ベースで貿易の拡大をはかっていく。日本のほうはアメリカの言うとおりにココムリストを守りながら、そうして業界ベースで貿易展を開いていく。今度九月、十一月に北京と上海で日工展が行なわれますが、これに対しましてはやはりそのココムリストに縛られて、今日ほとんど実効性のないいわゆる禁輸リストの百五十四品目というものは時代おくれだというのが世界の趨勢であるということで、西欧諸国は貿易拡大をする立場からやっているわけでありますが、日本のほうはこれも尊重していくということになる。  次に、ケネディラウンドの実施に伴いまして、先ほど只松委員の発言内容を聞いておりますと、それに対する回答としては便益関税のような取り扱いは積極的にしようという考え方をお持ちでないようであります。そういうような差別の政策を続けていくところに、今日の日中貿易のみならず、日中間国交の正常な回復がおくれている根本的な原因というものは、これは一本のつるにつながっているいろいろな障害だろうと思うのでありますが、一つ一つについてこれは大臣から私は答弁をいただかなければ、倉成政務次官は非常に優秀な方でありますけれども、閣議で政策を決定する立場においでにならないのでありますから、これは午後大臣がお見えになったときに、これらの基本的な問題については御回答をいただくつもりでございます。それは質問の予告として申し上げておきます。  そこで、時間がありませんので次の問題に入ります。トウモロコシの輸入をめぐる問題であります。この問題の詰めば具体的な数字に基づいていかざるを得ませんので、中身の論議がこまかくなりますが、最近のでん粉市況から見まして、今度三段階によります新しい関税制度ができまして、二次関税で八円六十銭の措置を講じたとしても、なおその効果は疑問ではないかという見方が出されております。低迷が続いていくという見通しが新聞等に報道をされているわけでありますが、今日までこの問題について関税率審議会に資料を提出をした農林省の具体的な資料の基礎算定、それから今回その免税資料として農林省が大蔵省と協議したときに用いた資料との間には、資料の食い違いはありませんでしたか。
  48. 大口駿一

    ○大口政府委員 いまの、免税資料と仰せられたのが、ちょっと意味がわかりかねますので、どういうことでございますか。関税率審議会のほうに出しました資料の御説明はいたすつもりでおりますけれども……。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 では、具体的な内容から申し上げますが、でん粉はだぶついておって、抱き合わせがうまくいっていないのではないか、これはいかがでございますか。
  50. 大口駿一

    ○大口政府委員 でん粉の需要確保のために輸入トウモロコシを原料とするコーンスターチとの抱き合わせ販売は、いろいろな困難な事情を克服してわれわれ全力をあげてやっておるつもりであります。私どもの立場からいたしますと、支障なくとり行なわれておるというふうに考えております。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 支障なく行なわれている。——そうすると、調整団体が現在手持ちの分は幾らですか。
  52. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  いま、われわれのほうでようやくことしの国内産のイモでん粉の需給事情が、推定でございますが計算されまして、カンショでん粉につきましては、大体ことしの生産見込み量は四十九万五千トン前後ではなかろうか。それからバレイショでん粉につきましては二十万八千トンばかりできまして、それから小麦粉でん粉という、いわゆるふなどをつくりますときの副産物として約七万トンの、一年間の供給見込み量でございます。そのほかに大体外国産のでん粉を約三万七千トンばかり入れざるを得ない。大体全体の供給といいますか、需要見込みを、昨年は大体百二十万トンでございましたが、ことしは百二十七万トン前後と押えまして、その差額を、ことしいわゆるトウモロコシによりますコーンスターチによって約四十七万トンを生産したらいいのではなかろうか。おおむねこの百二十七万トンのトータルの数字で国内における需給の見込みがバランスがとれるのではなかろうか、こういうふうに見ております。それに対しまして上半期、三月末までの一部推定を含みますが、カンショでん粉につきましては、四十九万五千トンのうち、上半期で二十二万六千トン消化した、残りカンショでん粉としては二十六万九千トンがこの四月以降九月までの下期で片づけなければならない、こういうふうに見ております。また、バレイショでん粉につきましては、二十万八千トンのうち十一万四千トンばかりを上半期で消化いたしまして、下期で約九万四千トンほど消化せざるを得ない、こういうふうに判断している次第でございます。カンショでん粉はただいま申し上げました下期二十六万九千トンを消化する予定でございますが、上半期の調整団体で十五万六千トンばかりをわれわれ予定しておりましたが、一部でん粉市況の悪化等に伴いまして、二月ごろには一部持ち越しが多くなるのではなかろうか、そういう情報等も入りまして、われわれといたしましてもいろいろ努力いたしまして、特にカンショでん粉のなま粉の系統につきましては、四月に入りますと腐敗するおそれもあるということを懸念いたしまして、二月末から三月上旬にかけまして、各調整団体を動員いたしますとともに、需要サイドのほうの糖化メーカー、あるいはブドウ糖あるいは水あめ、こういったメーカーに対しまして強力にコーンスターチとの抱き合わせ調整販売を強行いたしまして、大体三月末までに全部引き取り完了になるのではなかろうか。最近鹿児島あるいは宮崎方面からのいろいろな連絡等によりましても、この上半期に予定しました調整販売数量は、おおむね完了というふうに聞かされている次第でございます。なお、二十六万九千トンがカンショでん粉の下期の用途に充てるために現在在庫していると思われますが、このうち自由販売しておりますアウトサイドといいますか、調整販売の対象にならないものは、約一万九千トンほどありまして、調整販売計画にのせるものは一応約二十五万トンを予定しておる次第でございます。これにつきまして、今後関税率法案が通りますれば、四月早々から二十五万トンにつきまして一つの抱き合わせ販売を並行しつつ、ことしの年度内に十分に消化してまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、総合需給の狂いがあったのではないかと思うのですよ。そういうような問題が出てきて、十月から三月までかけまして、販売ができる見込みまで含めて二十二万六千トン、四月から九月までの販売量が二十六万九千トンだ、その中で抱き合わせ分は十五万トンしかないわけでしょう。その十五万トンのいわゆる抱き合わせ比率といいますか、月別あるいは期間別の計画を、では示してください。
  54. 荒勝巌

    荒勝説明員 月別に具体的にまだこのことはやっておりませんが、調整団体のほうで今後われわれと十分にやっていきたいと思いますが、この抱き合わせの対象となりますカンショでん粉は十五万トン、それに対しましてさらにバレイショでん粉が、先ほど九万四千トンと申し上げましたが、そのうち糖化用に約二万トンを回したい、九万四千トンのうち約二万トンを回したいということで、大体カンショでん粉とバレイショでん粉合わせまして約十七万トンの国内産のでん粉がわれわれの抱き合わせ調整販売の対象にいたしたい、こういうふうにことしは理解しているわけでございますが、これに対しまして、コーンスターチのほうで多少のキャリーオーバー等もございますか、この四月から九月末までの間に大体十三万トンを抱き合わせの対象にし、いろいろリンクの関係もございまして、九月にイモでん粉を引き取った者に対して十月にコーンスターチの〇%のものを渡す、こういうふうな構想を持っておりますので、そういうことを合わせますと、大体全部で十五万トンばかりのものをコーンスターチの抱き合わせ分に渡すことになるのではなかろうか。    〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 大体コーンスターチの抱き合わせ率から勘案しますと、毎月平均約二万トンばかりのコーンスターチを抱き合わせすることによって、このカンショでん粉なりバレイショでん粉の消化につとめてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十二年度でん粉年度のワクの中では消化ができないということは、十月の分もこちらのほうに移しかえをして、そして抱き合わせをするという計画の中身を見てもそのことは指摘できますね。同一会計年度の中における操作ではなくて、十月分、来年、四十三イモ年度の分を二万トンは入れなければならないということの計画のようにお伺いしていいですか。
  56. 荒勝巌

    荒勝説明員 コーンスターチのほうを来年の分をちょっと借りるような御説明を申し上げましたが、国内産のイモでん粉につきましては、この九月末、いわゆるイモ年度の、でん粉年度の終わりに最後の二万トンばかりをまず糖化メーカーに引き取らせておいて、その一種のリンクの見込み量といいますか、その把握した実績をもとに来年度のイモ年度で精算というとおかしいのすけれども、抱き合わせで安い〇%の関税のものを渡すのでありまして、国内産イモでん粉は九月末までに消化するという前提で作業している次第でございます。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 これから四月から九月までに売らなければならないカンショでん粉ですね、これは抱き合わせが十五万トンだとすると、残りが、一般の分が十万トンありますね。この十万トンはいわゆる基準価格を中心にして消化ができますか。抱き合わせ以外のものとしてこれが消化できますか。この中にはこのでん粉をいわゆるアルコール原料として使うという計画も入っているんじゃないですか。
  58. 荒勝巌

    荒勝説明員 従来からのわれわれの推定といいますか、いろいろの他との経験からの判断でございますが、このカンショでん粉につきましては先生のほうがお詳しいことと思いますが、十月から三月までの間は主としてわれわれの判断ではなま粉で、乾燥されないなま粉が販売の対象になる。それから干し粉は大体四月以降に継り越されまして、これが九月末までに使用される。実際はカンショでん粉の出回りが十一月以降にならないと出回ってまいりませんので、このバレイショ、カンでんとを判断して、イモ年度というのは九月−八月というふうに計算して、一応イモ年度としてはそういうふうに整理されておりますが、九月、十月というふうに、その辺を多少持ち越しておかないと、ランニングストックとして持ち合わせておかないと、実際の話としましては、たいへんな端境にイモのでん粉の不足を来たして、たいへんな相場が出てくるということもありますが、従来の経験からいいまして、カンショでん粉約二十五万トンはこの抱き合わせに十五万トンのコーンスターチのリンクを適用すれば、残りの十万トンは糖化用以外の部門にも相当アルコールとかあるいはその他の固有用途のほうにも適宜回っていきまして、毎月、十万トンでございますから二万トン前後のカンショでん粉は消化されていくのではなかろうかというふうに判断している次第でございます。
  59. 村山喜一

    村山(喜)委員 なかなか苦しい答弁です。ということは、でん粉としてつくり上げたやつをまた今度はアルコール製造用のほうに、最終製品の中からまたこれをもとに還元してやっていったら、これはアルコール源の原価というものは高くなるにきまっているわけですよ。そういうような措置をとらなければならないほど需給の問題が私はうまくいっていないと思う。大体カンショでん粉の生産が昨年に比べて四万五千トンも減少をしたにもかかわらず、その価格は前年に比べて低下をしている。供給過剰の状態が出ているというところに、今日でん粉対策の問題がうまくいっていないということがいえるのではないですか。私の見通しでは、やはり市況がこういうような状態でございますから、食糧管理特別会計の農産物等安定勘定の中で買い入れをしなければならないような状態になるおそれがあるのじゃないかと思うのですが、食糧庁としてはこれに対しては、そういうような事態にはならない、うまくこれから売りさばいて、そうして基準価格を守っていくだけの用意ができる、八円六十銭に二次関税率を引き上げたら、それで操作ができるという自信がございますか。これは業務部長じゃないです、やはり長官だよ。
  60. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま、でん粉の今後の需要確保の問題の細目につきましては部長からお答えいたしましたが、目下御審議をいただいておりまするトウモロコシのいわゆるタリフクォータの関税率改正することに伴いまして、もしこの法律が成立をいたしました後におきましては、食糧庁といたしまして、さらに調整販売についての具体的な方策等も現在せっかく検討いたしておりまするので、これらの新しい税率の運用並びにその制度のもとにおけるイモでん粉の需要の確保という具体的な措置等を並行的に行ないますことによりまして、現在のでん粉の事情、ひいてはイモ作農家の保護に万全を期してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  61. 村山喜一

    村山(喜)委員 万全を期してもそれができないこともあるわけです。結局見通しをもっと明確につかんで、どうしたら基準価格で売られたものを守ることができるかという立場に立ってやはりこの問題を考えなければならないと思う。八円六十銭の二次関税率を打ち出しましたときの基礎算定の数字についても非常に疑問を持っている。それを指摘を申し上げます。関税率審議会に出された政府算定の国産でん粉の価格は安く見積もり過ぎている。コンスの価格は高く見積もる。そこで抱き合わせの平均単価も安く押えて関税を低くするような操作を意図的にやっているのではないかと私たちは見ておるわけです。  そこで、具体的にお尋ねをいたしますが、原料の価格は、これはもう実際どの生産者団体でありましても、政府の計算でありましても、基準価格というものはきまっている。この諸経費あるいは運賃、これの計算が的確になされておるかどうかということが問題になるわけでありますが、この諸経費の中で金利負担分をどの程度見込んでいらっしゃるのですか。
  62. 荒勝巌

    荒勝説明員 金利負担分につきまして関税率審議会に出しました資料でまいりますと、一応日歩二銭三厘というふうに単価を押えておる次第でございます。ところが、その点につきまして、政府のほうで食糧管理特別会計で、農安法で実際買います場合の基準価格、いわゆる政府が買い入れる場合には、その買い入れ価格に織り込んでおります金利は日歩二銭一厘で計算しております。政府が買います場合には相当苦しいときの場合でございますので、また、いろいろな方面で金利等を調べましても、単協並びに生産者団体の借り入れ計算の実質金利は平均大体二銭一厘前後になるということで、二銭一厘に押えている次第でございます。
  63. 村山喜一

    村山(喜)委員 その保管の日数というものを、これを非常に短縮して計算をしておるのではないですか。それから生産者団体と政府との間で一番値が開いておるなにを見てみますと、政府が積算基礎の中でバでんの場合、三十七・五キログラムの運賃を百五十円と押えていますね。これは二十五キロもので実際の運賃計算をしてみると百四十円かかるのじゃないですか。三十七・五キロだったら百五十円でオーケーだというのは、これは具体的な実勢価格に合わせた数値としてとらえられているわけですか。
  64. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  ただいまの運賃につきましては、実際の計算を、従来バでんにつきましては、過去二、三年前に政府でバでんを買ったいきさつ等がございまして、そのときの運賃を現在の国鉄運賃なり海上運賃の計算に置き直しますと、おおむね百五十円あれば相当量運賃はカバーできるのではなかろうか、こういうふうに判断しているわけでございます。
  65. 村山喜一

    村山(喜)委員 実勢価格に合っていないのですよ。過去のものをスライドして倍率をかけて出してみても、それは今日の価格に合っていない。こういうふうにして詰めて諸経費並びに運賃を低く見積もりながら、そして原価計算、トン当たりの価格を出して、それから引き直して関税率を打ち出している、そこに問題があります。時間がありませんので、この問題についてはここで論争をしておりましても限りがありませんので、このあたりでやめますが、具体的な問題について、私はもっと理事会あたりで資料の突き合わせをやりながら、これがはたして八円六十銭という二次関税率日本の農民の利益を守ることができるかどうかということについては、問題が非常にあるということを指摘しておいて、具体的には私たちも各委員の了解を得まして修正案を出したいと思っている。それによってこの問題についての処理をやりたいと思っておりますので、きょうのところはこのあたりでイモの問題についてはやめておきます。  大蔵大臣、先ほどお待ちしておりましたが、中国貿易の問題についての基本的な問題について一つずつ大臣からお答えをいただきたいと思います。  第一点、予算委員会等で吉田書簡は政府を拘束するものではない、ここまではみんな一致しておる。貿易拡大というのは、これは今後日本政治姿勢のいかんにかかわるということは、今回帰ってまいりました古井さん、田川さんの報告を聞くまでもございません。水田大蔵大臣は、この日中貿易の拡大の方向について基本的にどういうようにお考えになっているのかというのが第一点目でございます。  第二点目は、輸銀の使用について、これは純然たる内政問題でございますが、しかし高度の政治問題である。そういう立場から、政府首脳部の判断にまたなければならない、こういうふうになっております。だから、プラント輸出をいたそうといたしましても、輸銀の段階でチェックされたら現実にそれが実行できないという問題は御承知のとおりであります。過去の例を見るならば明らかであります。だから、これに対する政策当局として、輸銀の使用にどのような態度を大蔵大臣としてはおとりになるのか、この点についてまずお答えをいただきたい。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 中共貿易は、これは私は拡大しなければならぬというふうに考えております。先般、いまはなくなられましたが、南漢宸氏が日本に来られましたときに、私ども会っていろいろ日中貿易の問題をお話ししましたが、私は、日本のいまの経済成長があと五年もいったらどういうようになるかということを考えますと、中共という隣にある市場とのいろいろな関連なくして日本の経済のこれ以上の成長というものは非常にむずかしい問題がある。と同時に、中共自身日本の経済力と組まなくてほんとうの建設計画ができるかどうかという問題について話した結果、四川省に大きい鉄の資源がある。これを開発することはやさしいが、開発したあとでこれをどこで消化するかということになると、中共自身も自分で製鉄所を持ってこれを全部消化するという計画は完全にできない。したがって、開発については、やはり日本がどの地点でどれだけのものを必要とするかというような問題とからめないと、中共の開発計画というものは実際に立たないという非常に正直なお話でした。私どももそうであって、日本の製鉄力はもうアメリカに次ぐ製鉄力になってくる。そのときに、世界じゅうの鉄資源を開発しなければならぬという必要に日本も迫られてくるというときに、中共の開発計画と日本が組むということは、何年か先にいったら必ず必要な事態になるのだから、両方で長期計画を立て合おうではないか。いま政治的にはやれ政経不可分だとか可分だとか言うが、そんなものはもうやめにして、五年先にいったら日本はこういうものを必要とし、向こうもこういう計画を必要とすれば、日本の経済との連係がとれて両国のためになるのだという、ある先の一定の時点をとらえた組み方の計画を両方でやったらどうか。その間に国際情勢も変わるだろうし、そういうものをいますぐやろうというと、いまの政治情勢からは組めないが、四年先、五年先の長期計画を両方で立て合って組む方法なら考えていいじゃないかと言ったら、これはもう自分たちは賛成だ、そういうようなことで、お互いが考える必要があるというお話でございましたが、やはり日本経済のこれから何年か先の発展を考えたら、中共との経済連係というものを考えなくてはほんとうの計画は立たぬと思いますので、これはできるだけ拡大する基礎をいまのうちから両国でつくるべきだというふうに考えております。  そこで、もう一つお尋ねの吉田書簡の問題ですが、これはもう外務大臣や通産大臣がしばしば答弁しているとおりだと思います。したがって、輸銀というものは、日本貿易促進のためにある機関でございますから、これは中共に対する今後の問題にしても、輸銀に関する限りは従来どおりやはりケース・バイ・ケースで処理していくという方針が一番いいのではないか。いまのところ、いままでの方針を私どもは変えてはおりません。
  67. 村山喜一

    村山(喜)委員 大蔵大臣、輸銀はあなたのところですよ。そしてケース・バイ・ケースでいままで逃げてきたんですよ。だから、そういうような大臣の将来の見通しの上に立つような考え方であるならば、輸銀使用については、少なくともこれをチェックしないということだけは言えませんか。
  68. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、ケース・バイ・ケースで処理するということは、実際にいうて差しつかえないケースが出れば、そのとおりに処理されるでしょうし、そういう方針でいけばいいと私は思っております。
  69. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間がもう来ましたのでやめますが、最後にココムリストの問題については大臣はどういうふうにお考えになりますか。もう古くさいですよ。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、もういままでは、国際的な約束でしたから、一応日本も守っており、外国も、どこの国がこれについて特にゆるいとかきびしいとかいうことはございません。一律でございますが、これはもうだんだん緩和していっていいものだというふうに考えます。
  71. 村山喜一

    村山(喜)委員 残念ですが、このあたりで終わります。
  72. 田村元

    田村委員長 午後一時より再会することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時十三分開議
  73. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案、製造法たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案物品税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上の各案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。大村襄治君。
  74. 大村襄治

    ○大村委員 本日は、総理がせっかくお見えになりましたので、財政金融各般にわたりいろいろお尋ねしたいことがたくさんありますが、時間の制約もありますので、税制にしぼって若干の質疑を試み、総理の所信をお尋ねしたいと思います。  まず、第一にお尋ねしたいことは、今後における税制改正のあり方についてであります。  さきに答申されました税制調査会の長期税制に関する答申においては、公債発行を契機とする財政政策の転換など、新しい事態の進展に対応して財政政策の一環をなす租税政策のあり方について方向を示しておりますが、特に今後における税制改正の重点を、所得税の負担軽減と間接税の負担の調整に置いております。最近における財政経済の推移から見ましても、今後においては社会福祉や公共投資などをはじめとする歳出各般の動向及び公債発行の程度などとにらみ合わせながら租税負担の適正化をはかり、もって財政経済の実態に適合した税制の弾力的運用をはかるべきものと考えますが、今後における税制改正のあり方に関する総理の御方針をまず承りたいと思います。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  ただいまお話しのように、今後いろいろ歳出の増が予想されるおりからであります。また、同時に国民の所得、これも経済の発展に従いまして増大すると予想されます。そういうことを考えると、税というものは今後どうあったらいいか、私は、ただ単に税負担を軽くするというだけでなく、また、それかといって重くすることは困りますから、これは実際に国民負担の実情というもの、そのあり方、これはたいへんむずかしい問題だと思います。そこで、税制調査会にまず働いていただいて、長期税制計画というものを立てる。この長期の税制計画の答申が近く出る予定でございます。近く出ましたら、その答申の線を尊重して、そうして最終的に税制のあり方、税のあり方、これをきめていく考えでございます。しかし、いままで、もうすでに一つきめたものがある。いわゆる所得税の減税につきまして、四十五年までに標準家庭における百万円減税、こういうものを公約いたしておりますから、それだけはひとつこのまま進めてやるという考えでございます。他は長期的な観点に立っての調査会の答申を待つ、かように御了承いただきたいと思います。
  76. 大村襄治

    ○大村委員 次にお尋ねいたしたいことは、いま総理の触れられました所得税の負担の軽減についてであります。  昭和四十三年度の税制改正は、財政上の重大な転換期にあたり、特に総合予算主義の採用や国債依存率の大幅引き下げという歳入、歳出両面にわたる重大な制約のもとに行なわれました関係上、増減税を同時に行なうこともやむを得なかったものと認められます。しかしながら、このような財政状況のもとにおいて、公約の所得税の減税を断行して、夫婦子三人の標準世帯において年間十万円程度の課税の最低限の引き上げをはかり、もって標準世帯において初年度八十万八千円、平年度八十三万三千円までの所得階層の税負担をなくしたことの意義を高く評価するものであります。  すなわち、わが国の所得税負担が諸外国に比しても重い。とりわけ中小所得者において重い現状にかんがみ、その負担の軽減をはかり、国民生活の安定をはかることは、現下の急務でございます。今回の所得税の改正によりまして、国税だけで平年度千二百五十億円、初年度千五十億円、地方税を加えますと平年度実に一千四百九十億円の巨額の減収となります。地方税について触れますると、今回の改正による給与所得控除、これは所得計算上の控除でありますので、いわゆる遮断がきかない、後年度必ず地方財政の減収を来たすものであります。そういったものを加えますると、いま申し上げましたとおり、平年度実に一千四百九十億円の巨額の減収となるのでありますが、総理はただいま申されましたとおり、今後も引き続いて所得税の負担の軽減をはかるお考えであるかどうか。特に昨年公約もされ、国会の附帯決議でも強く要望されている所得税の課税最低限を百万円まで引き上げることについて、いつまでにこれを実現するお考えであるか。なお、所得税と並んで負担の重いといわれる住民税についても、地方税の性格を考慮しながらその負担の軽減をはかるべきものと思うが、どうでありますか。これらの点について総理の御決意を承りたいのであります。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねになりました標準家庭におけるいわゆる百万円減税、所得百万円までは免税にする、これは四十五年を目標にしてという公約でございます。すでに皆さん方も御承知のとおりであります。ところで、この問題は、ことし減税と取り組むという、そういう財政状況では私はなかったと思います。しかし、これは何と申しましても公約優先というか、また中小所得者が非常に期待をかけておる、こういう意味でこの問題と取り組んだのであります。しかし、おそらく財政当局とすれば、こういう際は減税はしなくてもいいんじゃないか、こういう考え方のほうが強かったろうと思います。政治の姿勢といたしまして、当然そういう問題はありましても、公約を優先するという形でこの問題を処理したのでございます。その後の、これができた後に一体どうなるのか、こういう問題でございますが、これは先ほど第一問でお尋ねがありました、税制調査会が長期にわたる税制の計画を立てますから、その答申を待った上でさらに私どもの減税計画というものと取り組むべきものだ、かように私は考えております。  また、いま住民税についてのお尋ねがございますが、所得税あるいは住民税、これは性質が違うものでありますけれども、しかし納める国民から申せば、これは所得税、国税であろうが、また地方税であろうが、この負担に変わりはないのであります。そういう意味で税の性質の相違はあるが、これもやはり負担を軽くする、こういう意味考えていくべきだ、取り組むべきだ、かように私は考えております。ことしなど住民税の問題に取り組んだのも、これは地方財政のあり方から財源がことしはやや好転しているというようなこともありましょうが、まず住民税と取り組む、所得税と非常な格差がある、こういう点にも着目したその結果でございます。今後住民税はどういうようになるだろうか、この事柄でありますが、これはなかなかむずかしい問題です。これはしかし、地方財政の状況をも勘案し、ただいま申すような住民の負担軽減というようなところと、それから財政需要、歳出というものもにらみ合わして、そして適正であるようにこの上とも努力してまいるつもりであります。
  78. 大村襄治

    ○大村委員 所得税については税制調査会の長期見通しに関する答申を待って実現に移したいというおことばでございましたが、お気持ちとしては四十五年までに実現したいというお気持ちでありましょうか、重ねてお尋ねいたします。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりであります。
  80. 大村襄治

    ○大村委員 次にお尋ねしたいことは、間接税のあり方とその負担の調整とに関する問題であります。  わが国の直接税と間接税との割合はおおむね六対四でありまして、先進諸国に比較しましても遜色が認められません。したがいまして、この割合は今後においても原則として維持されてしかるべきものと考えます。しかしながら、間接税の中でも、酒、たばこなどの嗜好品に対する課税のあり方については、検討の余地がきわめて大きいのであります。すなわち、酒、たばこに対する課税は、諸外国の例から見てもかなり重く課されているのが例であります。ところが、わが国のこれらの税負担は、価格や税率が長く据え置かれ、一方、国民の所得水準も高まった結果、相対的にかなり軽いものとなっております。例をたばこにとりますと、昭和二十六年度のたばこ益金率は七三・六%でありましたが、その後生産コストが上昇したにもかかわらず、定価が長く据え置かれたため、昭和四十一年度においては、たばこ消費税を加えても——初めはたばこ消費税はなかったのでありますが、最近においてはたばこ消費税ができております。これを加えましてもその割合は六〇・三%と、かなり低下を示しております。また、諸外国の代表的な銘柄について価格を比較しますと、日本のハイライトは七〇円、フランスのゴロワーズは百十六円、イギリスのエンバシーは二百七十二円、西ドイツのハーベーは百五十円、アメリカのウインストンは百二十六円で、日本のたばこの価格が一番安いのであります。ところが、税率のほうは日本が六〇・三%であるのに対して、フランスは七〇%、イギリスは八〇%、西ドイツは六六・六%と、いずれも高いのであります。このように比較してみますと、わが国のたばこに対する税負担は、諸外国に比してかなり低いと言わざるを得ないのであります。また、価格改定時の昭和二十六年の消費者物価指数を一〇〇とした場合、昭和四十二年のそれは一八九と、実に二倍近くとなっているのにかかわらず、その間十六年も定価が据え置かれていたために、たばこに対する税負担は著しく低下し、他の諸税との間にバランスが失われていると断ぜざるを得ないのであります。酒に対する税負担も、その税率が所得や物価水準の変動と無関係に定額に据え置かれているため、税負担が相対的に低くなり、他の諸税との間に均衡を失しているものと認められます。  このような観点からしますと、この際、酒やたばこの負担を見直して、これらを適正な負担に改めることは、まさに健全な財政政策に沿うものであり、税体系のひずみを是正する意味合いからいたしましても適切な措置であると考えられますが、総理の御所見を承りたい。  なお、その際、大衆負担の増加の抑制についてどのような配意を加えたらよいか、あわせてお考えをお示し願いたいのであります。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの間接税と直接税との割合、また、外国の実情等についてもお触れになりました。これはお説のとおりである、かように思っております。したがいまして、現行の比率をできるだけ維持したいというのが税制調査会などの考え方でもございます。また、政府もさような意味でこの問題と取り組むつもりであります。しかし、その時々ときどきによりまして、その間の調整をしなければならない。ただいま大村君があげられましたように、他の税と酒、たばこに課せられた税と比較してみると、どうもその均衡がとれてない、昔のような状態ではない、最近非常に変わっておる、こういうようなものは調整をする必要があるし、それが健全なる行き方ではないか、かように思います。これらの問題は、ただいまの均衡をとるという問題も一つでございますが、同時に、ことしの特別な歳入状況から見ましてその必要に迫られた、かように御理解をいただければいいのじゃないか、かように思います。
  82. 大村襄治

    ○大村委員 大衆負担の軽減のほうについてお答え願います。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大衆負担の軽減、売り上げ税というようなものでもつくるかというお尋ねかと思いますが……。
  84. 大村襄治

    ○大村委員 違います。たばこの価格の改定に際して、負担の増加を招かないようにということはどういうお考えかということであります。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の酒、たばこを上げる場合でも、いわゆる大衆酒、あるいはまた、たばこも「朝日」「ゴールデンバット」こういうようなものは上げないということで、いわゆる大衆負担についても十分考慮を払った、かように御了承いただきたいし、また、最も利用率の高い「ハイライト」におきましてもその値上げ幅が小さい、こういうところにこまかな注意が払われておる。そういう点をひとつ国民にもぜひ理解していただきたいと思います。
  86. 大村襄治

    ○大村委員 次にお尋ねしたいことは、付加価値税についてでございます。  最近、EEC諸国におきましては、付加価値税を採用して税制上の国際間の均衝をはかるとともに、輸出に対しては戻し税の制度を活用して貿易の自由化に対処いたしております。わが国においては、かねてから企業課税のあり方とも関連して付加価値税の検討が行なわれております。この際、貿易の自由化の進展などの状況ともにらみ合わせて、新たに付加価値税の採否を検討する必要があると思いますが、総理のお考えを承りたい。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、税制のあり方は税制調査会に譲っておりますので、いずれその答申が出てまいりますから、それにひとつ譲らしていただきたいと思います。
  88. 大村襄治

    ○大村委員 最後に、租税特別措置についてお尋ねいたします。  租税特別措置は政策的配意に基づくものでありますから、絶えず経済の状況に応じ、洗い直し、検討を加えるべきものであります。今回の改正案におきましては、輸出の振興、技術開発の促進、中小企業の構造改善などに必要な措置を追加するとともに、価格変動準備金の積立率の引き下げをはかるなど流動的な改廃を行ない、その結果、四十三年度の特別措置による減収の総額は二千六百四十八億円となり、国税総額に対する割合は五・六%でありまして、一二十八年度の六・七%または四十一年度の六・五%に比較しても、その割合がかなり低下を示しております。しかしながら、わが国経済の実態は刻々と推移しておりますので、国際経済の動向ともにらみ合わせながら、引き続いて租税特別措置の改廃を検討すべきことは当然だと考えられます。この観点からいたしますと、懸案の交際費課税や配当利子の課税のあり方、さらには地価抑制に関する税制上の措置につきましても、慎重な検討を加えた上で所要の改正を行ない、もって時運に即した税制の運営をはかるべきものと信じますが、これらの点について総理の所信を承りたいのであります。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 租税特別措置、これはいつも問題になるのであります。特別措置という以上、それは問題になるのは当然である。したがって、この種のものが特別な政策の面から必要だ、そういう目的達成のために必要だということでありますが、同時に、税が公平でなければならない、かように思いますので、この制度自身をやはり慢性化しないように、硬直化しないように努力しなければならない、かように思います。ことに、ただいまおあげになりましたような税は、特に批判の多いことでありますから、私どもも絶えずこれが硬直化し、慢性化しないように、特権化しないように留意していくつもりでございます。また、そういう立場で税制調査会なども十分気をつけておるのでございますから、その趣旨を尊重してまいるつもりであります。
  90. 大村襄治

    ○大村委員 先ほども申し上げましたように、わが国内外の経済状況は刻々と推移しておりますので、そういった状況をにらみ合わせながら、租税特別措置の改廃について勇断をもって対処されることを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  91. 田村元

  92. 只松祐治

    只松委員 私たち大蔵委員会は、当委員会を歳入委員会としてひとつぜひ予算委員会とともに重要視していただきたいと常に繰り返し言っておるわけです。なかなかお見えにならないで、きょう初めて見えたわけです。そこで、いろいろ聞きたいことがあるわけでございます。  まず、最初にお聞きしますことは、必ずしも当委員会と直接の関係はありませんが、安保条約の前文にも軍事的な側面とともに経済的な面が強くうたわれておる。そこで一点だけお尋ねしておきたいのですが、十条に基づく解釈がいろいろ近ごろ行なわれてきておりますけれども、自動延長ということが論議されている。総理としてはこれに対してどうお考えになっておられますか。そのことは一つの考慮の中にあるということでございますか、それとも、まだ当分そういう時期でないからということで考慮しておらない、こういうことでございますか。ひとつ現在の御心境をお聞きしたい。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在の心境を率直に端的に申し上げます。その問題は、他の委員会でも答えましたように、そのときになって考えればいいことだ、かように思っております。
  94. 只松祐治

    只松委員 これは白紙ということでございますか。それとも、そういうことも考慮の中にあるということを含んでまだ考えておられぬ……。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは白紙ということではございません。私は、現在の日本状態から見ましても、安全保障体制、この条約体制を維持していく、かような考え方をしているわけで、どういうような形でそれをやるかということはそのときになって考える、こういうことでございます。
  96. 只松祐治

    只松委員 純然たる白紙ではなくて、そういうことも一つの考慮の中にある、自動延長ということだけを持っているわけではないけれども、そういうことも一つの考慮の中にある、こういうふうに解して、現在は固まっていない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御理解は、これは御自由ですが、私が申し上げるとおり、ひとつ額面どおり御採用願います。
  98. 只松祐治

    只松委員 これが本題でございませんから、この問題はその程度にいたします。  本年度の経済見通しにつきましては、政府もすでに発表いたしました。いろいろ論議が行なわれております。政府発表によりますと、名目一二・一%、こういうことですし、物価も四・八%、こういうことになっておりますが、別の見方としては、たとえば勧銀の見通し等を見ますと、名目一〇・七%、実質五・六%、それに比例して物価は六・五%くらい上がるだろう、こういうことを勧銀の頭取がじきじき発表いたしております。たいへんな違いがあるわけでございますが、政府といたしましては一こういう違いから見通しというものはたいへんに違ってくる。見通しが違えば対策もまたおのずから違ってくるわけでありますが、政府は当初立てた見通しに絶対の自信がある、そのとおりに違いない、勧銀のほうなりそういう民間のほうでいろいろ出ておるのは誤りである、こういうふうなお見通しでございますか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申しますと、政府はただいまの見通しを変えるようなデータをまだ持っておりません。したがいまして、現状におきましてもすでに発表したその見通しのもとにすべての対策を進めていくつもりでございます。しかし、この問題をめぐりまして勧銀なりあるいはその他諸所、民間でもいろいろな批判が出、いろいろなデータを出しておりますが、そういうことも政府はもちろん今後の成り行きといいますか、そういう場合に参考にすることはもちろんでございます。ことに銀行としては日本銀行をまずその金融の代表として政府は考えておりますから、日銀の見通し、同時に、政府の見通しというものを絶えず対照して対策を立てておるのが実情でございます。私は、いま勧銀の見通しを批判するというのでなしに、そういうことも参考にしておるのだ、かように御了承願いたいと思います。
  100. 只松祐治

    只松委員 いろいろ見通しはございますが、あとでお尋ねいたしますように、貿易の見通しも必ずしも明るくはございません。そう景気が上向くというふうに、見通しはいろいろな面を総合しても出てこない。そうなってまいりますと、とりわけ中小企業に対するしわ寄せと申しますか、貿易の面からもそういう面が出てくるわけですが、国内の当面の金融の引き締めあるいはいろいろな面を見ましても、中小企業に対する予想外のしわ寄せというものはきております。先月の倒産も戦後最高になったことは御承知のとおりでございます。三、四月といわれたり、あるいは五、六月といわれたり、いろいろいわれておりますが、いわゆる中小企業の金詰まりあるいは倒産というものが、皆さん方がお使いになる神武以来というか、戦後最高の状態を現出するだろうということはほぼ間違いないと思います。一般的な経済の見通しとともに、私たちの面から見れば、中小企業者の立場から見る経済の見通しというのは、また別の問題として出てくると思います。そういうふうになかなか中小企業は容易でない、こういうふうにお思いになりますか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう結論としては、只松君の御指摘のとおり、私も中小企業はたいへん困難な状態に当面しておる、かように思っております。ただ、全体から申しまして、ことしの景気そのものは——昨年が私どもが予想した以上の成長率でした。そういう意味でこれを押えにかかっておる。したがって、その効果がいまだんだん出てまいっております。そういう際に、特に弱い部門である中小企業、これが影響をこうむるだろう、これは御指摘になったとおりであります。私は毎日の新聞を見ておりますが、今朝の新聞なども中小企業者が夫婦自殺をしたというような胸を痛めるような記事が出ております。政府自身がこういう際にこそ中小企業に必ずしわが寄るだろう、かように実は考えておりますから、そういうので特別な対策を立てたつもりであります。しかし、全体が引き締めの過程でございますので、そういう引き締めの際に中小企業だけを優遇する、そういうことはなかなか困難ではないのか。そのためにわれわれが心配しながらも次々に犠牲者を出しておる、そういう痛ましい状況になっておるということのように思います。しかし、この上ともその実情に合うように中小企業対策には一そう留意するつもりでございます。
  102. 只松祐治

    只松委員 そういう中で、具体的に私たちはいまちょうど関税問題を論議しておるわけですが、その前に論議しましたアジ銀その他の対外投資なり、あるいは国内の大規模産業に対する財政投融資、こういうものを見ますと、わりあい気前よく出してありますが、中小企業になるときわめて微々たるもので少ないわけです。そういう中小企業のたいへんな危機のときに思い切ってそういうものの施策をする、こういうことを私たちは望みたいわけであります。特別お考えがあるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、ただ単に金融ばかりではなく、税制の面でも特に留意をしているつもりであります。先ほど議論があり、また、これから只松君からもお尋ねがあるかと思うが、租税特別措置におきまして、中小企業が近代化をはかる、あるいは中小企業の輸出振興等について金融や税制に特別に私ども考えるべきものがあるんじゃないか、こういうこともこまかな注意のうちの一つだと思います。また、ことに最近ドル防衛あるいはEECあたりの各国の貿易に対する対策などから考えますと、さらにいまやっておる事柄、これを強化する必要があるんじゃないか、そのように思います。しかし、何としても実情を把握すること、形式的に資金を幾らふやしたとか、こういう道を開いたということじゃなしに、もっと実際の実情に即した措置をとることが必要のように思う。だから、実情把握に一そう気をつけなければならぬと思いますし、そういう意味の業界の指導などは通産省も特に留意しておる、かように私は理解いたすわけであります。
  104. 只松祐治

    只松委員 いま一つ、一般国民にとって最大の関心事は物価問題であろうかと思います。これも個々にお聞きしますと、その問題だけで時間が終わってしまいますが、昨日物価安定推進会議で公共料金の問題について一つの結論が出た。よく総理は委員会の結論が出れば尊重する、こういうことをお答えになりますけれども、国鉄の再建計画がきまるまで基本料金を上げるな、こういう一つの方針が出ました。全般的な物価対策もさることながら、当面するこの問題について、総理は、せっかくこれが出たわけですから、尊重して上げない、こういう御趣旨でございますかどうですか。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまちょうど中山会長から私会見を申し込まれております。きょうではございませんが、この物価安定推進会議のその結論を持っていらっしゃるんだと思います。これはよく十分にお話をしてみないと、ただいま国鉄の予算は一応今回の定期値上げで予算が組まれておりますから、ことしの問題も同様なんだ、かように言われるのか、一般的な今後の問題として、これをひとつ今後の措置として強く要望されるのか、その点が時間的に一つの問題のように思います。これはまだ新聞の報道だけでございますので、私は実態をよくつかんでおりません。いずれお話を聞いた上で善処したいと思います。
  106. 只松祐治

    只松委員 新聞に報ずるとおりならば、私が申し上げておりますように、委員会の審議を尊重するという立場をとっておられるいままでの方針として、ずばり言うならば、値上げをしない、こういうふうに私たちは理解してよろしゅうございますか。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その新聞の報道よりも、近く中山さんも見えるのですから、それをひとつお待ちをいただきたいと思います。私は、いまちょうど予算審議の最中で、これらのことを見込んで予算も御審議を願っておりますので、いま新聞の一部で報ぜられたようなことだと、なかなかむずかしい事態がある、かように実は思っております。
  108. 只松祐治

    只松委員 私は、物価問題の象徴的な問題としてこの薫だけ——ひとつ物価値上げを何とか阻止したいと、よく総理おっしゃっておりますから、これぐらいずばりお答えがいただけるものと思ったのでありますが、なかなかいただけないようですが、尊重するということには変わりはないと思いますが、どうですか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この中山会長に大体政府からも委嘱をし、私が特にお願いをして、物価安定推進会議を開いてもらっております。したがって、これは政府の諮問機関の一部でもある。しかも私自身、総理の実はお願いした問題でございます。だから、そういう意味で尊重するという程度ではなく、もっと腹を打ち割って双方で話し合って、しかる後に結論を出すべきことだ、かように実は考えております。
  110. 只松祐治

    只松委員 次に、経済の一つの大きな柱であります貿易の問題について、一、二お伺いをいたしたいと思います。  本年度の貿易の見通しは、通関ベースで百二十五億ドル前後、昨年よりも一四・五%ぐらいふえるだろうという見通しに立っておられる。しかし、すでに御承知のとおり、アメリカドル防衛体制固めの一環として、いわゆる五億ドルの国境税、輸入課徴金というものが課せられようといたしております。それがそのままほんとうに実行されますと、これは日本相当の面に重大な影響を及ぼしてまいります。特にこれも、繊維をはじめとして中小企業関係のものに品目が多いように見受けられます。いま一つは、現在当委員会で審議中でございますけれども、ケネディランドの適用によりまして、対中国貿易がきわめて苦しい立場になっております。これは二百億円近い金額貿易が、生糸をはじめとして差別関税適用される、こういう形になって、この当初の百二十五億ドルの見込みが立つかどうか、これはなかなか容易でない。貿易振興政策とあわせて貿易の見通しについてお伺いいたしたい。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしの課題、先ほど当委員会質疑の問題でもないと言われましたが、政府に課せられた問題、これは何といっても物価安定ともう一つは国際収支の改善であります。  物価安定の問題は先ほど一言触れられましたが、私どもいま見ていて、大体政府の見通しどおりにおさまるのではないか。いわゆる四・五程度にことしはおさまるというのがいまの現況でございます。  しかし、国際収支のほうになりますと、赤字幅は時にだんだん大きくなる、またそれが心配である。したがって、特に第三、第四・四半期になりまして留意し、政策を強化したものが輸出振興でございます。もうあとは三月一ぱい、もうわずかですが、この輸出振興をいたしましたけれども、なかなか思うようにいっていないんじゃないか、これは御指摘のとおり心配な材料でございます。また、最近の国際情勢から見まして、各国とも輸出競争、輸出の方向に全部が向かっております。したがって、輸出市場はなかなか楽じゃない。日本だけが輸出振興じゃなくて、各国ともそういう方向でやっておりますので、輸出競争は激化しておるという状況であります。したがって、私どもが特別に留意してその推移を絶えずこまかく注意しておらないと、意外な結果になるんじゃないか、これを心配しております。そこで、ただいま御指摘になりましたように、私どもドル防衛の点から、対米貿易が非常に多額だと申しましても、アメリカだけに貿易を依存するわけにまいりません。東南アジアその他開発途上の各国とも輸出の相手方としてこれと取り組んでいかなければなりません。またその場合に、中国との関係におきましてもこれは同様でございます。したがって、最近LT貿易について、一年の貿易ではあるが、一応ある程度妥結を見たという結果は、実は私どもも喜んでおるような次第であります。そこで、ただいま言われますように、中国との間では日本国定関税だ、いわゆる協定関税ではない。おそらく今後の行き方として、あるいはドル防衛はやかましくなってき、米国自身の貿易収支を改善するために、あるいはKR、ケネディラウンドの実施期を早めるんじゃないか、こういうようなことも一部でいわれております。そういたしますと、この中共との関係国定関税、だからKR、ケネディラウンドとの間には非常な差額が出るんじゃないかということで、一部で心配をされております。そこで、いまあげられました生糸というような問題があります。生糸の場合は、国産生糸との競争の問題でありますから、これはひとつその中国のものだけでなしに、やはり国産生糸、それを念頭において適正な関税のあることが望ましい。しかし、その他一般の銑鉄大豆等につきましては、ケネディラウンドに大体あまり開きのないような国定関税を設けるべきではないだろうか、こういう議論もあります。そうして、すでに中共貿易の八〇%は大体国定関税ではあるけれども、この協定関税とあまり差はないように実は私どもは見ております。しかし、とにかく貿易の拡大を考えて輸出の振興をはかろうとしている日本として、特別に差等が設けられて、そのために貿易が拡大しないということ、もしさような事態が起こるなら、これは一つの問題だと思いますので、十分留意してこれらに対する対策を立てるべきだ、かように私は考えております。
  112. 只松祐治

    只松委員 時間がありませんから、ひとつおそれ入りますが簡単な御答弁をお願いしたい。  具体的に輸入課徴金に対して、なかなか大蔵省等は発表しませんが、四・五億ドルとかいわれておりますが、まあたいへんなことになりますが、これに対して適当なる対抗策をとるかとらないかということが一つ。  それから、いまケネディラウンド適用による内容についてお話しになりましたけれども関税定率法第五条による便益関税適用するかどうか。また、一般的にいって輸銀を、これはほかの委員会でもケース・バイ・ケースというようなお話があったようでありますけれども、活用するということについて、もっと積極的な、きのうあたりの古井さんとのお話では、中共に行ってもいいようなお話があったように書いてありますけれども、そういうことについてはひとつ積極的な適用をなさるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの国定関税の問題は、もうそれでいいと思います。  ただいまお話しになりましたドル防衛アメリカにどういう処置をとるか、こういうお尋ねかと思いますが、この問題はただいまアメリカがまだ最終的な態度を決定しておりません。    〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 私どもアメリカが特別なボーダータックスその他類似の処置をとることに反対してきておりますから、今日も反対しておる、その状態でございます。したがって、これが明らかになりました場合にいかなる処置をとるか、こういうことになろうかと思います。いましばらく事態の成り行きを見ておる、そうしていままでのように反対をし続けている、かように御了承いただきたいと思います。貿易そのものは申すまでもなく縮小均衡であってはならない、均衡しても、拡大均衡でなければならない、私はかように思っておりますので、このドル防衛でうわさされるような処置は、私は基本的に反対であります。  次に、中共に対して輸銀を使うかどうかという問題でありますが、これはもうすでに政府がたびたび態度を表明しておりまして、ケース・バイ・ケースできめていく、かようなことでございます。これは非常にはっきりしておると思います。  それから、私が行くか行かないかというこの問題は、実はときどき冗談の話もしておりますので、そういうことが新聞に出たと思います。私はそういう状態になればたいへんよろしいな、かように申しておる次第でございます。
  114. 只松祐治

    只松委員 次に、税制の問題についてお尋ねをいたします。  先ほど自民党のほうから、えらいりっぱな税制が今回提案されたような話がありました。私はまあ反対でございまして、今回、まあ自民党内閣というのは、佐藤さんとしても一番悪い税制をお出しになったのではないか、こういうふうに考えております。    〔毛利委員長代理退席、金子(一)委員長代理   着席〕 というのは、これは増税になる。いままではいろいろなことがありますけれども、私たちは税の調整というような問題——減税というのは調整ですけれども、減税的な方向をとられてきた。ことしはどの側面から見ましても、全体の額あるいは国民の負担率を見ましても、一九・六%という、昭和三十八年にひとしい高率の課税になってきておるわけでございます。時間があれば私は先ほどの自民党の方々に反論して、そしていかに増税になっておるかということの実態を示したいわけですが、時間がありませんから、そういうことはやめますけれども、増税ということを確認しろと言ってはなんでございますけれども、ひとつお考えをいただきたい。今後こういう形の増税をさらに——さっき減税をするかという話がありました。私は、佐藤内閣が続けばまた増税をするお考えでございますか、こういうことをまずお聞きしておきます。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたが、標準家庭で所得百万円、これは公約しておりますから、四十五年までに中小所得者の負担のために必ず実施する、このことをこの機会に重ねて公約しておきます。  また、長期にわたっての税制のあり方については、先ほどもお答え申しましたように、税制調査会で近く出すことになっておりますので、その答申を待ってきめたい、かように思っております。  そこでもう一つ、社会党の皆さんにも申し上げたいのでありますが、それは負担は軽くなることが望ましい、かように私は思いますけれども、同時に、国民所得も増加しておる、そういう観点から考えますと、税の負担を国民自身が持つように、そういう社会状態をつくる、経済状態をつくる、そのことが実は必要じゃないだろうか、かように思います。これからもっと社会保障も充実いたさなければならない。財政需要がございます。そういう場合に、国民のこの税負担の度合いというものは、やはり所得によりましてだんだん変わってくるのじゃないだろうか。だから、国民所得をふやすというそういう政策はとって、そして税をたくさん納められる、こういうようにすべきじゃないだろうか、かように思います。
  116. 只松祐治

    只松委員 原則、一般論としてはそういうこともあり得ると思います。しかしたとえば、それでは今度のたばこなり酒なりの値上げ、特にたばこの一いまいわゆるインフレがたいへん進んでおります。社会保障制度は低い、あるいは退職金も非常に少ない。そういう中で老人の話、あとでちょっとまたお聞きしますが、お年寄りの方を見ると、収入がほとんどふえない。そういう中で、あるいは社会保障制度のもとで生活をしておる人々が、「朝日」や「ゴールデンバット」を買えばいいわけでしょうけれども、これはほとんど店にありません。これを店に置いておいて、たとえば酒の二級酒のように上げないようにすればいいけれども、「新生」以上を全部上げる、そういうことになれば、きわめて過酷な精神的の圧迫を加えるということになる。だから、私たちは「新生」や「朝日」というものをひとつ先に手当てしていただきたい、こう思っております。「ゴールデンバット」や「朝日」なり、全販売店に置いておけばいい。それを十軒に一軒しか置かないで、そういう生活扶助を受けておる人、そういう人々は精神的に意思の弱い人が多いと思う。そういう人がたばこをやめるということは、これは非常につらいだろうと思うのであります。やはり無差別に間接税を上げてたばこを上げていくということは、税制技術上は専売当局の言っておることは納得できますけれども、しかし、政治の上から見ればたいへん問題があるだろう。だからそういうことで、総理のいま言われた一般論としては私もそれに同調する面もありますけれども、どこから税金を取るかということが私は問題であろうかと思います。そういう意味で、私は、むしろ一般論じゃなくて庶民の側から立って——時間がございませんからあれですが、勤労所得税その他、これはある意味の間接税的な意味をなしておる。いま二千万人から国に所得税を納めておるのです、昔のように三十万、五十万ではありませんから。そういう意味で、社会党が言っておる立場の減税ということをひとつお考えいただきたい、こういうことを言っておるわけです。そういう形で四十五年——初めは四十四年ごろという答弁だった。四十五年百万円ということですが、佐藤さんいつまで内閣をおやりになっているかわからぬですが、少なくとも、たとえば四十五年百万円目標に努力するとともに、五十年には百五十万円までというぐらいの最低の目標を立ててやはり努力する。こうやって減税に努力をするということなら、いま言われた所得も上げて税金を納めるということはわからぬことはありません。どうです。百万円までの話は大体ついておりますから、五十年に百五十万円ぐらいに上げる目標で努力をする、こういうふうにお考えでございますか。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、五十万円のときは六十万円、六十万円のときは八十万円、八十万円のときは百万円、百万円になればさらに百五十万円だ、こういうようなお気持ちもあろうかと思います。しかし、私はいまお申し上げる——これは佐藤内閣がいつまで続くかわからぬと言われるが、いまの四十五年まではお約束はできる。それから先は税制調査会で約束していただくようにひとつお願いしたいと思います。
  118. 只松祐治

    只松委員 たいへん税金が重いものの一つの例として、四十一年度でも四万八千六百十七件の不服の申し立てが来ております。うち申告所得が二万七千件、こういうことで、いま税調の中でも租税審判所を設けたらどうか。特別の裁判所を設けますと、憲法上問題はあるようでございますけれども、いまの協議団じゃ、これは協議団にうかつに持ち込むと逆ににらまれる、こういうことで、国民側から見て財産の侵害が行なわれる。こういうことに対する救済手段というものはほとんどないわけでございますが、協議団を一歩進めるという形で、暫定的にでもこういう不服に対して国民意見を十分に聞く、こういう形のものをつくるべきではないかと思うのですが、総理の見解をお聞きしたい。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 税についていろいろな不平不満がある。ことに、公平であるべき税制、それがどうも公平を欠くということ、あるいは所得の見方が違うとか、こういうような意味で非常な不平がある。お説のとおり相当多数のものがございます。そこで、税についての特別の裁判所を設けたらどうかというのはいままでたびたび出た意見でございます。しかし、これはいまの裁判所のたてまえから見まして、どうも適当でない。しかし、この不平不満、これを何か解決するような適当な方法はないものか。いま裁判とまではいかないにしても、大蔵省自身が積極的に不平不満をなくすること、国民の積極的協力を得ること、これが望ましい姿なのである、そういう意味の協力を得るような制度はできないか。これはいろいろくふうしておるようです。したがいまして、ことに税法自身が解釈のむずかしいもののようでありますし、ちょっと私どもも申告というような点になると、なかなか思うとおりできなくて、専門家からしばしば直されるという、それほどむずかしいものですから、こういう点が民主化できてわかりやすくなる、こういうようなことにひとつ努力しなければならない、かように思います。具体的にどういう措置をとったらいいか、大蔵大臣から答えさせます。
  120. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、もう御承知だと思いますが、第三者的な機関で、やはり裁定のできるような機関、いまの協議団というようなものでない、もう少ししっかりしたものを税においては必要ではないかということを中心に、これもいま税制調査会の討議の議題になっておりますので、近いうちにこの問題の結論がついて答申されるものと思っております。
  121. 只松祐治

    只松委員 次に、多少問題を異にいたしますが、先ほどお話がありましたように、いまの一つの大きな社会現象として老人対策というのがあるわけです。男子は六十八・三五歳、女子は七十三・六一歳と長生きをする。しかし、社会保障制度は依然として六十歳から施行される。多くの会社は、五十七、八というのが多少あるけれども、五十五歳で首切りになります、定年退職になります。わずかな退職金をもらっても、現在インフレが進行をいたしております。退職金はまだまだ低い。こういう状態の中で、老人というのは、私は昭和のじじ捨て山といっても過言でないような苦しい精神状態にあるわけでございます。一国の総理として、この新たな社会開発という総理の立場から、いま一つ地域的なものを最後にお伺いいたしますが、人間としての社会階層の中で、積極的な老人の開発——いま申しますようにきわめて悲惨な面が出てきております。したがって、定年制を延長する、あるいは社会保障制度をインフレに伴ってスライドする、これはなかなかたいへんな問題でございますけれども、そういう老人対策について、もう少し積極的に、一番具体的な問題は定年制の延長だろう。官公吏に幾ら公社、公団をつくるな、いろいろ御苦心なさっておりますが、行政機構を簡素化しようといっても、五十五歳で定年になればそのうしろにすわっておるような人はだまらぬから、公社、公団をつくる。あるいは防衛庁の人に幾ら機密を持ち出すなといっても、五十五歳で首になれば、中将や大将になった人が会社に行って門番をするわけにいかない。それで結局どこかに天下る。天下るときにおみやげの一つも持っていく。それは私は別な面で人情のしからしめるところだろうと思う。やはりそういう面を規制するには、根本的には六十歳まで定年制を延長するということがなければ、私は、いままでできておるたくさんのいろいろな社会の矛盾というものを解決することはなかなか困難だろうと思います。ひとつこの面に対する総理の積極的な御発言をお願いいたしたいと思います。    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、只松君のただいまの老人能力の開発と、こういうことばを使われたことにたいへん敬意を表します。確かに老人、これがいま、私も一昨年各地の施設を見てまいりました。お年寄りが、自分たちは年を取ったからもうただ恩給だけで食っているとか、あるいは小づかいだけもらっていればそれでいい、こういうようなものでは実はない。これは、人間というものは生命のある限り働くようにできているんじゃないかと思います。そこで能力の開発ということが大事なことだ。だから、病気で現に寝ておられましても、何か役つことはないだろうかといろいろ苦心しておられる。でありますから、いろいろな施設ができましても、十分働いていただくという、その孤独感を持たないような施設をしない限り、老人も満足されない、かように私は思ったのであります。したがって、ただいまの定年制なども、いま短いじゃないか、これは御指摘のとおりであります。なかなか、この定年制というものをつくることについても全面的に御賛成はなかなか得にくいかもしれません。しかし、ただいま言われたことによって、現状のものが短い、もっと長くあっていいのではなかろうか、かように私は思います。したがって、この点では、まじめに考えるし、同時にまた、いま言われました社会保障の充実あるいは社会福祉のさらに積極的な施策、これも必要でございますが、何といっても年を取られた方でもその能力を再開発するという、そういうことに重点を置いて施策をしないと制度が生きてこないと、私はかように考えております。
  123. 只松祐治

    只松委員 最後に、地域開発の問題についてお尋ねいたします。  地域開発の一つの側面としていろいろ矛盾が出てきておりますが、いま関東周辺に、日本の人口の約三〇%をこすものが集中をしてきておる。したがってその結果、時間があればデータをずっとお示ししようと思ったのですが、埼玉県なんか、二百万こしておったのが三百二十六万と、こういうふうに急速にふくれ上がってきておる。あるいは、前回の人口調査から今回の人口調査までに、全国で四カ所倍増した市町村があります。中でも草加、朝霞というのが、埼玉県で二つ、人口が倍増しております。ところが、こういうふうになってまいりましても、学校や何か、依然として自分の市町村で処理する。単に処理するだけでなくて、起債その他を申し込んでも一般的であって、なかなかそうめんどう見てもらえない。参議院でも多少問題になりましたけれども、こういう問題について、少なくとも緊急を要する教育なら教育の問題について、二分の一くらいは国庫負担をする。文部大臣も努力するという返事があったそうでありますけれども、社会開発の結果として出てまいっておりますこういう問題に、佐藤さんの一番最初唱えられた社会開発を完遂する意味においても、ひとつ御考慮をいただきたい。  時間がありませんから同時に言っておきますが、人口だけはそうやってどんどんふえてまいります。それで埼玉県で百万からふえた。千葉も、神奈川も人口がずっとふえております。ところが、山陽道のほうはわりあい鉄道網あるいは道路も整備されておりますが、東北に入っていくと、こういう方面についてはやっとことしの秋、京浜線の三複線が完成する、こういうことで、あとは私鉄まかせで何にもなされておりません。あるいは道路も、途中はできておりますけれども、東京から抜けるこういう道路はほとんど手をつけられておりませんし、つけられても未完のままです。人口だけ五十万、百万というのが大移動した。そこで定住する。しかし、そこに行く道路もなければ行った先の学校もない。こういうことでは、私は社会開発が完全に行なわれないと思う。あるいは、そういうことを抜きにしても、国民がそこへ安住することは困難だ。通勤でも一つの恐怖状態になる。ぜひひとつそういう面について、特に関東周辺の急増しておるこういう問題について、ひとつ格段の御努力をいただきたい。ここに来ておりますが、春日部、福岡町なんか、予算の五九・四%は教育予算に食われております。春日部、上尾その他こういうところ、全部三〇何%、教育予算に食われている。ほかの仕事がなかなかできない、こういう状態になっておる。十分なる御配慮をひとつお願いいたしたいと思いますが、総理のお答えをいただきたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過密都市問題についてお触れになりました。これはいま引き受けるところ、人口が急増するところ、その悩みを次々にあげられました。これは私が申すまでもなく、あるいは交通問題、住宅問題、あるいは公害問題、あげて都市集中の結果、そういう問題を引き起こしている。それがただいま言われるように、学校の急増になる。その他自治体としての財源を強化してくれなければ、単独事業はもちろんのこと、その他にいたしましてもついていけない、これがただいまの地方財政の悩みでもあると思います。しかし、こういう事柄については、これからふえていくところですからそういうものに一つの希望が持てる、対策を立てましてもまだ見込みがあるように思います。同時に、人口が集中するというその結果は、逆に過疎状態が地方において起こっておる。政府としては全国を一律に考えてものごとを見ていかなければならぬ、過密対策は即過疎対策でもなければならぬ、かような実はむずかしい問題にぶつかるのであります。この辺はとにかく人口自身が減っていく。したがって、住民税も思うようには取れない、現実に自治体の財源は枯渇する、そうして将来にもう望みはないのだという。そこで地域開発、適当なる事業を誘致する、あるいは公共施設も整備する等々が問題になるのであります。したがって、私はいまの過密対策、都市対策、これが何といっても今日の近代国家の悩みでもありますから、そういう意味で特別な処置を講じて、財源を強固にする、同時に、いま悩んでおる具体的な各種の公共施設について適当な対策を立てていく、こういうことが計画的であってほしい、かように私は思っております。
  125. 田村元

  126. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理大臣に答弁できそうな問題だけを質問いたしますから、必ずひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。  いままで大蔵省は年々減税を進めてまいりまして、三十六年度以降毎年自然増収の一定部分を減税に配分するという方式をとってまいりました。こういう方式は最近の日本財政に定着した財政運営方針だったと私は思います。すなわち、名目所得が上昇するに従って負担率の急速な増大がもたらされます。そこで、そういう名目所得に対して、急速に税額が増大するということを調整をしなければならぬ。すなわち、調整減税という意味を含めて、年々減税を行なってきたわけであります。ところが、佐藤内閣は、こういう長い間続いてきた運営方針というものを全くここで変更いたしました。まさに増税内閣の汚名を後世の歴史家が大きく取り上げるであろうと思われるような増税方針をとりました。  私は、まず第一に、総理大臣に考え直していただきたいのは、本年は所得税一千五十億円減税をする、間接税一千五十億円増税をして、減税はゼロだ。しかし、それは数字の上における比較がゼロであるという意味であって、国民の税負担はゼロではありません。物価は政府の見通しでも四・八%は上がるというのであります。しかし、おそらくこれではおさまらないでしょう。総理はいま、四・五から四・八%でとどまるだろうという見通しだと述べましたが、とてもそんな程度ではとどまらない。すでに予定されているたばこ、酒、ビール、国鉄定期、電話架設料、さらに年内にはおそらく消費者米価も上がるでしょう、あるいは私鉄の運賃も上げられるでしょう。地方自治体が管理する高等学校の授業料、ふろ代、こういうものが軒並みにいま上がらんとしておる。こういうときに、それに連鎖反応を起こして諸物価がかなり上がって、四・八ではとどまらぬとわれわれは思います。おそらく六%台の物価上昇率になるだろうと思います。  いずれにしても、総理の言う四・八%程度だとしても、その分の調整減税がびた一文も行なわれておりません。こういう措置をとったことを総理はどう弁解されますか。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 武藤君にお答えいたしますが、武藤君はこの大蔵委員会のベテランでございまして、私が大蔵大臣時分からの長いつき合いであるように思います。  ただいま名目所得ということばを言われましたけれども、私は、所得は名目所得じゃない、実質的に所得がふえておる、こういう実情にぜひ立っていただきたいと思います。相変わらず、所得が上がっているのは名目だけだ、インフレが片一方で高進しているから同じことだ、あるいはもっと苦しくなっておる、かように言われると実は困ると思います。ことしの千五十億円の減税にいたしましても、いわゆる物価調整減税、これを申しますと、調整減税は三百四十億円といっておりますから、それも千五十億といえばはるかにそれをこしておる、かように私は考えております。したがってこの点は、ぜひさように御訂正をしていただきたい。  それからもう一つですが、たばこや酒等を上げた、間接税を上げた。これは確かにお説のような議論も成り立とうかと思います。しかし、私は先ほども御説明いたしましたように、いわゆる大衆酒、あるいはどうも専売公社は「朝日」や「ゴールデンバット」を店に並べてないというおしかりは受けておりましたが、こういうものは据え置かれておる。さらにまた実情において、そういうものを売るように専売公社に努力してもらいたいと思いますが、私は、この点でも必ずしもおっしゃるようにはなっていないのだ。しかし、これからの物価が一体どういうようになるのか、ここになると、おまえが答えることができるものと言われたが、その辺のところはちょっと答えができにくいのですが、しかし政府自身が四・八という一つの目標を持っておりますから、あらゆる努力をそこに集中するつもりでおります。したがって、ただいまのように今回のは減税ではなくて増税だと言われる。しかし、中小所得者に対する所得税の減税、これはもうはっきりしている。しかし、国民全体として負担は一体どうなったか、こういうようなことになるといろいろ議論があろうかと思います。同時に、地方税も今回は安くしておりますから、そういう点もひとつお考えをいただいて、そうして実際にどうなったかを十分考えていただきたいと思います。
  128. 武藤山治

    武藤(山)委員 かりに総理の言う立論に立ったとしても、地方税は七百四十二億円減税をして、さらに増税三百九十三億円いたすのでありますから、差し引き三百四十九億円で、かりにそれを基礎にして考えましても、今日の物価上昇率の減税が目一ぱい行なわれていない。やはり物価調整減税が行なわれていないということははっきりしておるじゃありませんか。国のほうは、千五十億円の中身は何かといえば、四百三十億円が物価調整分だという、いまの大蔵大臣のサゼスチョンは確かにそうでしょう。しかし、一千五十億円また間接税で取るのですから、これは差し引きゼロだ。全く国税においては減税は行なわれていない。だから、物価の上がった分だけは当然減税すべきではないか、なぜやらぬのか。佐藤内閣は、そういうやれない理由として、おそらく財政硬直化だの、支出が非常に過大になっているとか、あるいは歳入が思うように伸びないだろうとか、そういう理由があるから減税ができないのだ、こう答えたいのでしょう、どうなんです。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう武藤君が御指摘になりますように、ことしなどは、いわゆる減税などには大体合わない年なんだ、しかしそれでもいまの所得税だけはひとつ中小所得者のためにやろう、こういうことで踏み出したわけです。そのあとは、どうしても財政需要が強いから、財源の必要上ふやした、かように御了承願います。
  130. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、あなたは総理大臣として、財政硬直だのあるいは歳入が不足しておるという場合には、過去の政策の失敗を、その犠牲を国民に転嫁して解決をする以外に道がなかった、こういう考え方ですか。なぜ調整減税をやらぬのですか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま申したような実情ですが、国民を犠牲にしたとは思っておりません。また、所得は実質的にふえておる、かように考えておりますから、この際に国民にもやはり国の財政に寄与していただきたい。長い目で見れば必ず、ことし四十三年に協力したことは報いられる、かように私は考えております。
  132. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理はいまから追加の減税をしようという意思は全くないようであります。  第二に、たばこと酒の値上げは行ないますか。——総理。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま法案をお願いして御審議をいただいておるそれ以外におっしゃるのかと思って、ちょっと立ちかねていたのですが、ただいまのものをひとつ御審議をいただくことで……。
  134. 武藤山治

    武藤(山)委員 たばこと酒の値上げは、五百五十億円見込まれて、国民にたいへんな負担増になります。たばこだけで五百五十億ですからね。今度の物品税を入れたら千五十億円です。だから、減税したと称しながら、そっくりまた……。払うのは同じ国民ですからね。税目では間接税と直接税で、担当は直税と間税と違うでしょうけれども、払う側に立ってみるならば、国民は、同じ人が払うわけであります。  そこで私は、先ほど最初に述べたように、本年は三十六年から続いてきた自然増に対する一定割合の減税すらも行なわなかった年であるから、このたばこ、酒の値上げはやめべきである。まずたばこだけでも、低所得者層に思いやりのある総理大臣であるならば、いまからでもおそくはありません、たばこの値上げはやめるべきであると思いますが、あなたの御意思はいかがですか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さような御意見ならば、先ほど大村君にもお答えしたように、私は、租税のあり方等から見まして、やはり税のあり方はすべてが均衡がとれることが望ましいと思います。私は、たばこの税は低い、かように思っておりますので、そういうものをやはり上げざるを得ないと思います。ただ、大衆たばことでも申しますか、そういうものは据え置いた、かように御了承をいただきたいし、酒におきましても、大衆酒は据え置いた。ここにその問題があるのでございまして、私は、苦しい中におきましても、国民のことを考え、それらの点の配慮をした、かように御了解をいただきたい。
  136. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、たばこはどうしても値上げをする、この意思は最後まで貫くのだと——これはまさに庶民を犠牲にする態度じゃありませんか。物価がさらに四・八%も上がるのに、そのほうの、所得税における調整減税はやらない。おまけに今度は、間接税でたばこや酒を上げていく。これ、大衆犠牲と言わずして、何と言うでしょう。まさに大衆に負担を転嫁したものである。もし犠牲ということばが悪いならば、大衆に負担を転嫁したものである。ますます大衆には負担過重と言わなければなりません。間違いですか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま言われるように、安ければそれに越したことはございません。安いことが望ましい。また、そういうものも、据え置くことができれば、これはたいへんけっこうです。しかし、御承知のように、ずいぶん長い間たばこは据え置いたと思います。しかし、もう今日これを上げざるを得ないような状況になったというので、これはひとつしんぼうしてください。これはお願いであります。ただいま言われるように、大衆についての負担は一切上げるな、これも一つの行き方でしょう。しかし私は、この程度のことはひとつしんぼうしてください、こう言って実はお願いをしております。これを上げるのはあたりまえだ、かように胸をそらしておるつもりはございません。御了承いただきたいと思います。
  138. 武藤山治

    武藤(山)委員 その問題については、来たるべき参議院選挙において国民が審判するでありましょうから、これ以上議論はいたしません。総理は、おそらく財政硬直化とか歳入が足りぬとか、あるいは歳出、需要が非常に大きくなってきた、だから国民にある程度その負担をしてもらうのはやむを得ない、喜んでやってもらうわけじゃないがしかたがないのだ、こういう気持ちのようでありますが、私は違うのであります。歳入は他にある。他にあるのになぜ大衆に転嫁するかということであります。自然増収だっておそらく三百億やそこら出ますよ。日銀の公定歩合を一月六日から一厘引き上げただけの日銀の納付金だってふえますよ。たばこの値上げをしなくとも、たばこの自然売り上げの伸びだけでも、収入は五十億ばかりふえますよ。そういうものをきれいに洗って歳入源を検討するならば、庶民にこんな重い増税の年を迎えさせなくも、処理のしかたはあったはずであります。その処理をしなかったところの態度、姿勢というものに国民は批判を向けているのです。私もそういう点から政府に、できることなら、いまからでもおそくはないから、たばこの値上げだけは思いとどまったらいかがでしょうか、こう言っているわけであります。あなたはその国民の声、天の声、神の声を聞き入れるだけの耳をお持ちにならぬということはまことに残念であります。  そこで総理、租税特別措置が膨大な金額にのぼっており、あなたはこの間その中の有利な点だけを本会議で、生命保険料控除も特別措置だと、いろいろ政府の都合のいい点だけを反論をいたしました。しかしまた、まだ整理しなければならぬ問題は租税特別措置の中にたくさんございます。時間がありませんから一々あげませんが、そこで佐藤さんに的確な答弁を願いたいのは、配当に対する分離課税だけは四十四年度からやめよう、このくらいな決意になりますか、いかがでございますか。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはこの前改正していただいたその期限が明後年まででございますから、それまでひとつごしんぼういただきたい、かように思います。
  140. 武藤山治

    武藤(山)委員 それまでごしんぼういただくということは、しんぼうした上の質問なんですよ。だからことしの三月からやるべきことなんです。四十四年度から配当所得の分離課税は当然やむべきである。というのは、いまはなき池田前総理大臣は、この大蔵委員会であなたのすわっているその場所で、私が総理大臣をやっておる間は断じて配当の分離課税は認めません、こう答えたのです。私は池田さんのりっぱさ、えらさだと思うのは、その約束を最後まで果たしました。したがって、池田内閣のときには分離課税は行なわなかった。ところが、佐藤内閣になったらとたんに配当の分離課税が認められた。したがって、これは次の総理に引き継がずに、あなたの任期中にこの分離課税を廃止すべきものと私は思います。明年度から、四十四年度からやめますか。    〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく昨年に改正したばかりでございますから、一年だけでなくて、いましばらく模様を見たいと思います。
  142. 武藤山治

    武藤(山)委員 一年じゃなくて二年になるのですよ。四十四年度から期限がくるのですよ。だからこういうときには当然そういうものを検討する。あまりにも証券業界と癒着したような感じを国民に与えますよ、この制度を残すことは。だから、本年こそ租税特別措置を大なたをふるって整理をすべきだ。ちまたでは佐藤内閣を端的にどう言っているか、佐藤さん耳にしたことはありますか。昭和四十三年度の予算をめぐって、佐藤内閣は特徴的な悪い面が出てきた。一つは軍事強化である。軍事予算は要求どおり削らない。増税は、三十六年以降なかった増税を本年は行なう。増税内閣である。受益者負担だと称して、公共料金は軒並み値上げをしようとする。おまけに金融はじゃんじゃん引き締められて、中小企業はばたばた倒産をする年だ。物価もどうも政府がきめたような状態ではなさそうだ。まさに佐藤内閣は物価を値上げする内閣であり、税金を上げる内閣であり、中小企業を倒す内閣である。こういう非常な国民の批判というものにやはり内閣総理大臣としては謙虚に耳を傾け、非を改めて国民に報いるのが為政者の常ではないかと私は思います。どうも佐藤さんが今日やっておる四十三年度予算やそれをめぐる諸法律というものは、われわれ国民に背を向けているような気がいたすわけであります。十分ひとつ耳を傾けていただきたい。  総理も御承知のように、去年は中小企業が戦後未曽有の倒産の件数を出しました。これは一千万円以上の負債で倒産をしたという企業が八千二百件、それ以下の五百万、六百万の負債で倒産した零細企業に至ってはこの数倍に達するでありましょう。さらにこの二月には、倒産の件数はまたまた記録を更新いたしました。総理、御存じでございますね。この中小企業の倒産をする状況、これらの業者に対して、あなたの頭の中からはどんな感じでこういう状況をいまここでお答えになりますか、まずあなたの感触からお尋ねいたしたいと思います。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど只松君にお答えしたばかりでございますが、お聞き取りいただいたと思います。私も、中小企業の方々がいまたいへん困難な状態におられ、そして苦しい思いをして事業の振興に努力しておられる、かように思っておるのです。今朝も非常に悲惨な、気の毒な記事が報道されており、ほんとうに私は心を痛めておる次第でございます。私が申し上げるまでもなく武藤君も御承知のように、本年の経済としては、昨年の行き過ぎた経済を鎮静さすべく、あらゆる面で引き締めをやっておるときでございます。予算の規模もそういう意味で小さくなっておるし、また、公債の発行等もそういう意味で縮減をいたしました。そういう事柄が必ずまた中小企業の方々にたいへん困難さを増しておるのじゃないか、かように実は心配をしております。したがいまして、先ほどもお答えいたしましたように、やはり特別な資金を中小企業向けに増額すること、あるいは税制の面で特別なくふうをすること、さらにまた実態を把握すること、そういう意味における中小企業の指導、これなどに特に重点を置きまして中小企業問題と取り組んでおる次第でございます。ことに最近の輸出産業、そういう面で中小企業が果たしておる役割りは非常に大きいのであります。そういうことをもあわせ考えまして、特に輸出振興に努力しておる中小企業の強化にこの際特段の留意をするつもりであります。したがいまして、いまの政府自身の行き方について、私は十分だ、これで万全をやっている、こういうことはなかなか申し上げかねますから、武藤君も具体的にこういうことをやれ、そういうことをお気づきでありましたら政府にも教えていただきたいし、私はそういうことは謙虚に伺うつもりでおります。
  144. 武藤山治

    武藤(山)委員 総理みずから心を痛めており、何か提案があったらいい案を示せとおっしゃいますから、一つ示します。  いままだ三月の十三日でございますからおそくない問題で、ひとつ総理大臣みずからが決断をしてもらいたいのは、中小企業金融公庫、商工中金、この二つの政府関係金融機関から三月に申し込みが殺到している。ところが、政府は四半期別に融資ワクを割り当てしている。先食いができない。したがって、何とも救済ができないという事態である。こういう事態に各支店なり本店から大蔵省に申し出があれば、本年は異例の措置として三月に繰り上げ使用を認める、こういう態度はとれますか。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 金融は申すまでもなく一年、さらにそれだけではいかぬから小分けをして四半期ごとにやる。しかし、それだけでいいものでもございません。もっとこまかく月々にその状態によって対策を立てる、これが金融だと思います。したがって、ただいまのようなお話がある、これは大蔵大臣も私と一緒にお話を聞いておりますから、これについて善処するようにいたします。
  146. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、中小企業倒産防止のために、中小企業倒産救助法か倒産防止法というような、仮名のものでありますが、そういう専門のものをつくらなければ、なかなか個々業者というものは安心ならぬと思うのであります。しかし、これを資本主義社会でつくるということはなかなかむずかしい。なぜならば、資本主義社会は自由競争、弱肉強食であります。企業家責任であります。したがって、政府がそこまで中小企業をかばうことはできないとおそらくお逃げになると予想しての質問であります。この際、これだけ日本経済発展してきたのでありますから、さらに自民党の生命を長く続けさせようとするならば、おそらく中小企業に対して何らかの適切な措置をとらざるを得ないのではないかというのであります。そういう法律をつくるような検討をする御意思はございませんか。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま武藤君の中小企業倒産防止法というものは、仮称にしろどういうことをねらっておられるのか私にちょっとわかりませんから、それを批判するわけにまいりませんが、私は中小企業のただいま弱いと見られておるものは、やはり近代化がおくれておる、こういうように実は考えております。したがって、その近代化資金については特に力を入れて、業界の積極的な立ち直りについて協力するつもりでおります。したがって、そういう意味での中小企業自身が自立できるような、そういう体制をつくる法が、いまのようにただ倒産防止というだけでなくて、積極性を持った法が必要じゃないか、かように私は思いますので、ただそういう点がどういうことになるのか、十分考えてみたいと思います。いまのお話も、ただ倒れるのを防ぐというだけでなくて、何か一つのねらいがある効率的なものを考えていらっしゃるのか、そういうことについての力を私はかす、かようにしたいと思う。
  148. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの私の言わんとした中身は、具体的にたとえばこの百万の手形が落ちれば何とか——次の入金が三日後に来るんだが、一週間後に来るんだが、どうしても金策がつかぬ、そういう業者がかなりおるわけですよ、こまかい業者は。その百万円の手だてを適切にしてもらえば次の手形は順次落ちるんだけれども、その当座の金がどうしても見つからぬ。そういう際に、地方自治体にそれぞれ中小企業相談の専門の機関があって、そういう場合には政府がある程度めんどうを見られる。    〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 あるいは適切にそれを政府公庫を通じて別ワクでめんどうを見られる、そういう相談機関というようなものは、総理がやろうと思えばできる。いまは歩積み・両建ての問題のかけ込みをする相談所はできたけれども中小企業がほんとうにそういうときにたよりになる機関が何にもないのであります。ぜひこれはひとつ今後の検討事項として政府としても検討されたいと思います。  時間があと五分しかありませんから、最後に、中国貿易日本との今日の関係の中で、総理は先ほど今度のケネディラウンドが実施されても、中国にはそれほど影響はない。八〇%の品物協定関税と同じようになるだろう、先ほどはそう答えておる。八〇%は協定関税と差はないと思う。しかし、実際はあとの残った二〇%の品目が問題なのであります。八〇%の品物は、いま中国と取引をしていないものが格差がなくなっても、現実にいま取引をしている三百品目ばかりのものが二〇%のほうに含まれているという事態になりますと、事はたいへんなのであります。総理、いま中国と他の国との輸入品について、関税がずいぶん不公平に取り扱われているという事実は御存じでしょうか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはもう先ほども説明いたしましたように、協定関税とそれから固定関税、その相違がございますから、確かに違っております。
  150. 武藤山治

    武藤(山)委員 その相違が、まことに日本の国益や日本の農業に無関係にひとしいようなものまで関税を高くしているわけであります。時間がありませんから品目を言いませんが、たとえば天然黒鉛あるいはガーネット、こういうのは、輸入関税ゼロのはずのものが一〇%、一五%取られている。ここにその品目一欄表がありますから、あとでひとつ時間のあるときにゆっくり質問したいと思いますが、そういう差をつけているために、日本の輸入業者中国から買わずによそから買うほうが得だという問題が出てくる。そういたしますと、中国日本の民間貿易を拡大するためには、日本中国からの輸入をまずふやさなければいかぬ。中国は輸出、輸入とも割り当ての国ですから、関税の一〇%、五%というのは、さほど中国そのものの政府では頭になくも、日本の輸入業者にしてみれば、一〇%取られる、二〇%取られる、ただのものが、ゼロのものが。それじゃよそから買おうということになるから、中国からの輸入が減り、日本から中国への輸出がふえないという問題があるわけであります。ここに関税の問題が中国貿易一つの障壁になっている。私はそう見ている。したがって、これを政府はいまこそはずして互恵平等の態度をとるべきだと思うのでありますが、総理大臣の御見解はいかがですか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお話ですが、私が伺っているところでは、日本が輸入しているうち、まず米、石炭、塩、これが約六〇%を占めている。これは従来からの協定税率関税上の格差はない、かように考えております。その次が大豆銑鉄、これらのものは二〇%、したがって合計して八〇%というもの、ただいまのような大宗といいますか、向こうの扱っている貿易のうちの一番大きな品物影響がないのです。  それから先ほど言われました生糸のお話が出ております。生糸については、これはやはり国産生糸の問題と比較して考えなければならぬ。これはひとつ注意していただきたいと思う。これは農家の方が困るようなことになっても困ろうかと私は思います。だから、ただいまのような点でやはり……(「日本は輸入国ですよ」と呼ぶ者あり)これは確かに輸入国に違いありませんが、さらに輸入国になるというか、いまの養蚕家がほんとうに困るようなことだけはやらせたくない。
  152. 武藤山治

    武藤(山)委員 日本生糸の需要というものが非常に旺盛な国で、日本の農家がつくった生糸では日本の需要にはとても追いつかないのですよ。それよりももう百姓が、選択的拡大だ、やれ果樹がいいのイチゴがいいの酪農がいいのという農林省の指導に基づいて、過去十年間の間に養蚕というものはどんどんやめていっている。もう一つは、労働力の関係からも養蚕はやめていっている。政府がふやそうといっても現実にふえない。それを議論する時間がありません。去年一カ年の中国貿易量というものを各国別に分けてみますと、日本は前年に比較してマイナス九・五%です。日本の輸出はマイナスになったのです。ところが、日本のこんな近くにある中国日本関係がマイナスになっているのに、それに反比例してドイツ、イギリス、フランスはどんどんふえています。イギリスは五二%ふえております。西ドイツは七五%ふえておる、イタリアは五六%ふえておる、こういう傾向にある。(佐藤内閣総理大臣金額は」と呼ぶ)私は時間があと一分しかない。総理があんまりつまらぬ答弁をしておるから時間ばかり食ってしまう。何を私の質問にけちをつけるか。  そういうようないまの情勢のときに、政府は中国貿易を正式にやろうという御意思がない。おそらく、国交が回復されてない国と貿易についての協定を結ぶことは、アメリカにちょっと申しわけないというような気がねがあり過ぎるのではなかろうかと思うのであります。かつて日本の外交官であった西さんは、国交未回復の国と個別の協定を結んでもその国を承認したことにはならないのだ、そういう事例があるということを一冊の書物に書いております。そういうような事実から見ても、すでに日本の例でも、昭和八年、昭和十年に満州国とソ連との関係である。また、イギリスがソ連の革命後ソ連といち早く貿易協定を結んでも、ソ連国家を承認をしたことではないという事例もある。したがって、せっかくいま覚書貿易が、また協定が結ばれて、総理大臣は先ほど覚書貿易中国と結ばれたことは好ましいことであって喜ばしいことである、こらあなた自身が答弁をいたしておる。そこで、中国国交回復なり独立を認めるということではないが、商売だけは、貿易協定だけはひとつこの際ふん切っていこうという、過去の惰性を克服する御意思があるか、中国との貿易協定だけは考えようという前向きの姿勢があるか、この点をひとつ総理の見解をただして、私の質問を終わりたいと思います。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど貿易についてのパーセンテージの増加を武藤君読み上げられた。しかし、金額的にこれを見てほしい。日本中共貿易はその地位としてたいへん高いところにあると思います。そのことを見のがさないように……。減りましても、全体としては二位、三位にあるんじゃないか、かように理解しております。その点を言われないでただ増加率ばかり言われては、たいへん近いところの貿易がふるわないように思われるから、こういうことはやはり公平に国民にひとつわかるようにしていただきたい。(武藤(山)委員「時間があれば反論しますがね」と呼ぶ)  そこで、私は先ほども中共との貿易については態度を申し上げたのであります。私はそれは望ましいことだと思います。しかしそれは別に、いま政経分離ということを言っているのは、アメリカに対して私どもが遠慮して言っているのじゃありません。何かといえばアメリカが引き合いに出されますけれども、私はアメリカに参りまして最初にジョンソンに会いましたときに、日本中共とは政経分離の形においてつきあいはする、貿易はします、アメリカがどうしようが日本はちゃんといままできめた方針をやっていくということをはっきり言っていますから、これはアメリカにはちっとも遠慮ではありません。しかし私どもは、国際法規、これは守っていく。国際上の権利と義務、そこは十分尊重する。これが日本が信用のあるゆえんだと思います。しかし、私が中共に対して申しておることは、政治的には今日つき合いができないけれども貿易や文化的な交流はひとつ進んでやろうじゃないか、こういうことを言っている。  そこで、先ほど日本関税についての御不満を披露されました。一体中共日本から行く品物についてどういうような関税をしているか御存じですか。したがいまして、これはやはりここらあたりもよくお考え願って、国定関税というものは協定関税と違うのですから、そこらに差のあることははっきり認識しておいていただきたい。そういうことを十分……。私は、いま一年間の——もとLT貿易というものは五年も続いていた、ところが今回は一年限りなんだ、かようにいわれている。これは日本側とすればもっと長期的な話し合いをしたい。古井君、これは政府の代表じゃございませんが、民間側としての岡崎君にしてももっと長期的な話し合いをしたい、そういうことをずいぶん希望を述べたようです。しかし、これができなかった。そういうことを考えてごらんになれば、ただいまのことは御理解がいくのじゃないか、かように考えます。
  154. 武藤山治

    武藤(山)委員 協定を結ぶのが好ましいか好ましくないか、また結ぶ意思があるかどうかという質問ですから、それをちょっと最後にお答え願いたい。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府は関係する意思はございません。政経分離の形で取り行なうとはっきり申し上げております。
  156. 田村元

    田村委員長 広沢賢一君。
  157. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これから私が質問することは、総理の御答弁によっては数千億の税収が確保できる非常にいい話でございますから、しっかりと答弁していただきたい。  三月五日の衆議院の本会議で、佐藤総理はわが党の広瀬議員に対する答弁として、租税特別措置の基本的性格についてこう答弁されております。全部はしょりまして、一番重要な点は、「大企業は三百二十一億であります。中小企業はこれより以上の三百九十四億であります。この点を十分委員会等におきましても御審議をいただきたい。」次が重要です。「そうして社会党の方や皆さん方も、ただ政府をお責めになるのはいいですが、この制度が大企業だけに幸いするんだ、かような政策的な特殊な立場からの御批判だけはやめていただきたい、」こう言っておられます。  そこで、私はいろいろと政府の公式に発表した租税特別措置についての資料を調べました。そうしますと、総理の言っていることは数字的にいって——まず政策目的とか政策の必要性ということではなくて、数字的にいってまっかな偽りである。  申し上げます。この前衆議院大蔵委員会の要求によって提出しました四十二年七月の大蔵省の正式な文書がございます。それによりますと、租税特別措置による準備金、特別償却額等、これは一千万円以下が百三十億円、一億円以下が百四十二億円、一億円をこえるものは六百五十五億円、合計で九百二十七億円ですが、これはたとえばあとで申します利子配当の問題とかそういうものを除いての数字ですね。九百二十七億円。これですら何と一億円以下とそれから一億円をこえるものと合わせるならば、七百九十七億円対百三十億円。それから、一億円以下を中小企業とするということにしましても、六百五十五億円対二百七十二億円ということになります。これが正式の——念のため申しますが、これは最大限大蔵省がいろいろ逃げて逃げ回って、低目に低目に見積もった、減価償却もその他の問題もいろいろありますが、そういうものが入らないでこういう数字でございます。そうすると、総理は明らかに本会議答弁は間違っておるということをお認めになりますか。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が本会議で読んだのは四十二年度の数字でございます。私、大蔵省から実はその数字をもらっているので、いま二重になっているというお話ですから、それを出した事務当局のほうから、どういうわけでそういうように違っているか、一応説明させます。
  159. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 いま総理に質問しているのです。大蔵省事務当局に質問しているのではないのです。  それで、大蔵当局はよくそういう答弁をいたします。中小企業に有利なんだ有利なんだという答弁をいたします。ところが、いま申し上げました数字は全く大蔵省が認めた数字ですよ。私が出しているのは、たとえば、前に非常に有能な答弁をしていた塩崎さんが主税局長の時代に、塩崎さんが出した正式の本の中にもやはりそれが入っているのです。このとおりのものが出ているのです。それ以外のものはないのです。そうすると、あとでその議論は租税特別措置でやるにしても、総理としては逃げないで、正式にいままで発表された数字と総理の言っていることは違っているということを認めなければいかぬ。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、私が数字をこしらえたわけじゃありません。私がしゃべった数字は大蔵事務当局からもらった数字ですから、それがなぜ違っているかを一応事務当局から聞いてください。それが必要なようでございます。
  161. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 とんでもない話です。総理大臣ともあろう者が本会議答弁で、自分が納得しない、ただ紙をもらったら、それだけ答弁したら済むと思うのですが、まじめな話。そんな逃げ口上は許さない。一回本会議の資料に入り、しかもいろいろと新聞にも出て、それで社会党に対して挑戦をしている総理は、この点については大蔵省に逃げないで自分としてお答えになったらいいです。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、その私が説明した数字は自信を持ってお答えした、かように御了承いただきます。いま変える考えはございません。
  163. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしますと、私は次から次へいろいろ内容を申し上げますが、その内容で、総理が、もっとひどい租税特別措置の性格というものについて十分お答え願いたいと思うのです。  まず第一番目に、先ほど武藤委員が配当の問題を出しました。ところが、私どもがずっとあげますと、もうたいへん不合理な租税特別措置が一ぱいあるのです。その中で一番悪名の高いのは、さっきの配当分離課税もそうですが、利子配当についてのものです。この額ですね。大体これによって恩恵を受けるのは、いつも申し上げているとおり、四人世帯でもって不労所得の人たちが二百二十六万円までそれで減免されているのに対して、勤労所得税を納めている人は二十八万円プラス住民税十二万円で四十万円までしか、四人家族ですが、これは恩恵を受けない。これはいつも議論しているから、この数字は間違いないです。塩崎さんの本にも出ています。大蔵省の本にも出ていますよ。したがって、これは不公平だと思いますか、思いませんか。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 金額だけでごらんになると、これはもうだれもそんな状態はおかしいじゃないかと、だけど何がゆえに配当所得を軽くしているか、これは政策目的がある、そういうことをやっぱりお考えいただきたい。
  165. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、こういうことでございますか。この利子配当の「貯蓄の奨励」ということが書いてある項目ですね、この中に入っているわけです。これは先ほど言われました大企業と中小企業の分類ですね、これには関係してないわけです。範囲に入ってないわけです。総理は全然わからないでしょう。そういうことをわからないで答弁しているのですよ、ぬけぬけと。社会党に本会議で挑戦しているのですよ。  ではもう一つ聞きましょう。利子配当の問題に入る前に、たとえば総理がいま大企業と中小企業と分けた、その大企業とはどのくらいなのか、中小企業とはどのくらい以下なのかということを、うしろの事務当局の間違った答弁を聞かれないでお答えいただきたい。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも事務当局から聞いちゃいかぬ、総理をくぎづけにしようという、そんなのはずいぶん乱暴じゃないですか。私、いま聞いて答える、聞いてもやっぱり正確な答えをするほうがいいのですから。そのくらいな余裕は認めていただきたい。一億円が限度です。
  167. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 中小企業の基準をどうするかという問題については、大蔵委員会でもずいぶん議論しております。ところが、中小企業基本法というきちっとした法律がございます。その中小企業基本法でどのくらいを中小企業というか、御存じですか。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 資本金と人員についての制限と二つあったと思います。五千万円と三百人ですか……。
  169. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それではお聞きしますが、中小企業基本法では、おっしゃるとおり資本金五千万円以下、それから商業、サービス業では一千万円以下ということになっております。そうすると、いま総理があげられた分類でございますが、大体一億円以下を中小企業とするというのは間違っていると総理はお認めになりませんか。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいろいろの見方がありますが、税法でいっているのは、中小企業一億というそういうところで線を引いております。これはやっぱりいわゆる中小企業基本法と一緒にしよう、こういうことも一つのりっぱな議論だと思いますが、慣行を尊重すると一億が本筋でしょう。
  171. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 政府としては、これは今後も重大な問題ですから論争の一つのけじめ、尺度がなければなりません。それで五千万円ということでの基準でやれば、もっと大企業に偏重するということは総理はお認めになりますね。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その単位を変えれば、これはもう確かにふえるかと思います。
  173. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすれば総理の本会議でのお話は、ただ数字の基準の取り方は間違ったというだけなら、私どもはそれについて数字の基準の取り方が間違っていましたということで納得しますが、納得できないのはその次の御答弁なのです。つまり大企業だけに幸いする、大企業に偏重だという社会党の言い方は、これは一定の意図があるのだというような言い方は全く不謹慎だと思いますがどうですか。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 広沢君に申し上げます。いま税法上で特別な処置がとられておりますことは御承知のとおりです。それで特別にいわゆる中小企業並みというこの扱い方をしている。税が軽くしてある。これは一億を基準にしてやっている。一億以下の場合はただいまのようにいわゆる中小企業の軽減税率がかかっている。このことをやっぱり頭に置いて御議論なさいませんと——このことは広沢君百も御承知と思うのであります。私は言わないだけで、もうよく御承知のことです。
  175. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それがもっと内容に入りますと、たとえばさっき言った配当の問題、総理もこれはあまりいい特別措置ではないと思っておられるですね。前池田総理は、これはもう絶対にやらぬと言ったこの配当の問題ですが、たとえばここで塩崎さんをあげていくとあれだけれども、ずっと長年携わった塩崎前主税局長が、中小法人は配当にたよるものではありませんということを繰り返し言っている。だから、やはりこの中で、いま総理があげた数字の中に利子配当の問題が入ってないのです。そうなんですよ。事務当局に聞けばよくわかります。こう書いてある。いいですか。たとえば国民の貯蓄奨励千五百十四億円でありますと、これは大企業ではございません。これは除外しているのです。ところが、いま言った利子配当の分離課税の問題といい、中小法人にはこれは非常に薄い。中小法人はなかなかそれにたよれないといっていますけれども、このくらいのことは佐藤さんもよくおわかりだと思いますが、どうですか。
  176. 田村元

    田村委員長 広沢君に申し上げます。事務当局が、いろいろといま疑義が広沢君のほうにあるようでありますから、一言発言をしたいと言っております。この事務当局広沢君の、つまり広沢君に対して事務当局から発言をいたしますのは時間外といたしますから、一言どうですか。
  177. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 はい。
  178. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま私どもの手違いで古い資料を出して、たいへん総理に御迷惑をかけました。内容を私から御説明申し上げたいと思います。  まず第一点は、先ほど広沢先生がおっしゃいました、昨年主税局が提出した資料では、損金算入額の額が非常に多い、総理の言われるような少ない額じゃないというお話がございましたが、これはそのとおりでございます。なぜかと申しますと、昨年出しました資料は損金算入額の調べだと思います。こちらへ出ておりますのはその結果の減税額でありますから、どうしてもその差が出てまいります。  それから第二点といたしましては、先ほど二百二十六万円まで配当所得の非課税になっているということをおっしゃいましたが、これは特別措置としては私ども考えておりません。したがって、特別措置の減税の中には入っておりません。これは御承知のとおり、法人、個人の二重課税を排除する特別の制度でございますので、特別措置ではございません。  なお、ついでに申し上げておきますが、一億円というのは、一昨年の税制改正におきまして、たとえば大企業に合併あるいは資本構成改善その他の特別措置をとる見返りといたしまして、中小企業には貸し倒れ引当金の割り増しを認めました。その際に、中小企業と大企業に一線を引くために一億円がよろしいという御判断で法律を制定していただいておりますので、税の上で計算をして出すときには一億円を基準にしてやったわけでございます。中小企業のとり方はいろいろございますけれども、これは注に書いて、注でまたはっきりいたしたいと思っております。
  179. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうしますと、いまの御答弁ではこれは除いている。除いてますよ。ところが、ここにはこう書いてある。昭和四十二年度、四十三年度も同じですが、政府からきているのは、「租税特別措置及び減収額一覧」となっている。都合のいいときにははずして、都合の悪いときには入れる。資本金の額でも同じです。中小企業基本法でもって国会でぴしっと議論したその正式の定義、国会できめた定義は大体五千万円ということになっている。ところが、かってに大蔵省のほうではこういうふうに分ける。私は申し上げますが、何で中小企業に薄くて大企業に片寄っているのだということを言いたくないのか。これも時間外でもう一回……。
  180. 田村元

    田村委員長 広沢君、何か数字が違っておると言っておりますから、時間外で主税局長の発言を許します。
  181. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま利子配当の特例として、この間の資料に入っておりますものを御指摘になりましたが、これは配当の源泉分離及び少額の申告不要額による免除額でございます。先ほど先生がおっしゃいましたのは配当控除による減収額でございますから、これは特別措置の減税額には入ってない。これはちっとも矛盾いたしておりません。
  182. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 大体そういうことはわかって質問しておるのですがね。  そこでもう一つ先に進みます。そうしますと、たとえば異常危険準備金というのがございますが、その異常危険準備金は何を対象にしてやっているか、総理は御存じですか。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 知りません。
  184. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 租税特別措置法の中身を知らないで、事務当局が持ってきたその数字を読み上げて、社会党に対して、こういうように広瀬委員がまじめになって大企業偏重ということを言っているのに対して、パンとはね返すような御答弁をするというのは、私は答弁のやり方が間違っていると思うのです。もっと租税特別措置にきちっとした関心を持っていかなければ——租税特別措置というのは、佐藤総理、あなたの答弁でおっしゃっているとおり、非常に政界の黒い霧とかその他と関係があるというように世上いわれているのです。不合理な点は幾らでもあるのです。たとえばさっき配当を言いましたが、利子の非課税の問題についても、これも全く政策目的に合わない。これは大蔵委員会で結論済みなんです。たとえば、これは貯蓄の増強と書いてあるけれども、しかし、これは貯蓄の増強には相関関係は全然ないということもきまっているのです。大体そうですな。そういう利子非課税の問題なんですよ。こういう問題についてはやはり十分お調べにならなければならぬ。去年は不当な財界からの圧力があってこれがあいまいになったということで、大蔵当局は歯がみした、じだんだ踏んだというような新聞記事があるのですよ。だから、やはりこういう問題についてもっと関心を持って——幾らでも材料はありますよ。たとえば資本構成の是正なんていっても、中小企業は資本構成の是正よりか、借金をするのがやっとですよ。借金を返したら税金をまけてやる、ところがその余裕はない。まして中小企業の問題でいえば、零細企業なんかの問題が最も悩みが多い。したがって、総理としてはもう一回この数字を洗い直し、租税特別措置全体について洗い直して、いま事務当局の言った金額が正しいのか、十分考え、内容をただ形式的にとってくるのではないかという点を考えなければいかぬと思うのです。私は、総理が基準のとり方が違うとか、その他言われましたけれども、ここにある正式に大蔵省が出している資料は、これは総理としては、中小企業よりも大企業偏重であるということはお認めになると思いますが、どうですか。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大蔵事務当局が出したものがどんなものか、私は知りません。いま持っていらっしゃってお認めだろうとおっしゃる、その表は私は知らないと申し上げます。
  186. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 先ほど総理は、これは知らないと言った。それから今度は、大蔵当局が出したこの金額についても十分確かめたことではないですね。それから、いま私が申し上げましたこの中の異常危険準備金についても知らない。これは損害保険会社です。あとずっと一ぱい並んでいます。この中の一々をもう少しよく洗い直していただきたい。一般の世の中では、これは完全に大企業偏重である。  もう一つの例を申し上げますが、たとえば減価償却特別割り増しとかいろいろあります。減価償却についてどんどん年数を早めていますが、そうすると、これで見ますと、たとえば製造業の規模別諸指標というのがあります。三十四年で古いのですが、しかし大体大勢はわかると思います。減価償却の額は、大企業は中小企業を五千万円で基準をしてみますと二倍になり、そういう基準で特別償却その他を進めていくと、総理としては、こういう税制は、数字にあがらない額でも相当やはり中小企業に不利になっておる、そういうことはお認めになりますか。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 数字にあがらない点でも中小企業に非常に不利になっておることがわかるかと申しますが、数字にあがらないものは私にはわかりません。
  188. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 大蔵省のこの租税特別措置の数字に出てこない問題でも、いろいろ洗い直しをやってみると、たとえばもう一つあります。法人税の問題ですが、法人税はよその国と比べて実効税率で高くなっていると思いますか、安くなっていると思いますか。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法人税はよそに比べては安いのじゃないですか。ことに中小企業などは、法人税は安いのじゃないか、かように思います。
  190. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そのとおりです。法人税は、全体としてはよその国から比べたら安いのです。そうすると、こういうことを聞きたいのですが、総理としては、大蔵大臣もそうですが、税負担率はよその国よりか若干低い、ところが給与所得税は非常に重い、これはだれも認めていますね。税金を納める人が二千数百万人に及んでいるのですね。そうすると、法人税の実効税率がよその国よりか軽い、その軽い中でもって規模別に分けますと、外国の法人税に比較しますと、日本の法人税はことに大企業の部類において低くなっています。これは実際の統計で出ていますが、そういう点で大企業に対する法人税をもっと強くする。いま設備拡張を非常にやっています。政府が幾ら引き締めを要請しても聞かないほど、大きくもうけて設備拡張している、そういう大きな法人から税を取るということについて総理はどうお考えになりますか。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねの中の御意見の点がいまちょっと私もわかりかねるのですが、先ほども私申しましたように、税制調査会がいろいろ検討しておる。まず税制調査会に諮問し、そしてその意見を徴して、そしてこれからの税のあり方を考えていくということを申したのです。ただいまのように、法人税あるいは個人所得、あるいは勤労所得等々の間に十分均衡がとれているか、とれていないか、こういうようなことは税制調査会においても重点を置いて調べるものだ、私はかように理解しております。いましばらくそのほうにまかしていただきたいように思います。
  192. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私は租税特別措置の不公平について、それからたとえば先ほど利子の問題を言いましたが、利子とか配当とか、この問題についてはもうほとんど大蔵委員会でも結論がついている問題だと思うのです。しかも、大蔵大臣もこの間言いましたが、大きな法人に対して税率を若干引き上げて、それから中小法人については税金を軽くする、こういうようなことは法人利潤税が実施されればできるわけです。それについての討議は大体十一月までにやると大蔵大臣は言われております。そうですね、国会答弁でそう言っていますね。したがってそういう問題について、この特別措置についてむきになってこれを擁護するのじゃなくて、もっと虚心たんかいになって——全然政策目的に合わないものが出てきているので、あと時間があればこれをとことんまで究明したいと思う。これはまじめな話で、国の一番大事な税制の問題ですから、ひとつ総理はこの問題について、租税特別措置についてもっと十分な関心を持って、大蔵大臣とともに、これが国民の非常な不信を買っているということをお考えになって取り組んでいただきたいと思うのです。私のこの数字の問題について、これがいいか悪いか、合っているかどうか、それについてはあとで大蔵当局と徹底的に討議します。  ただ、そのあとの部分、社会党に対して挑戦するような言い方、これはやめていただきたいと思いますが、どうですか。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは社会党に挑戦するというようなものじゃございません。私は国民に理解してもらいたい、かような立場で説明をしております。  租税特別措置、これはそのことばにしても、そこにいろいろな議論のあるのは当然だ。それでありますから、当時も申し上げましたように、特別措置はいわゆるそれが固定化し、特権化する、慢性化する、そういうことでありてはならない。だから、そういうものの内容をよく見まして、政策目的に合致するものかどうか、それをよく検討してまいります、こういうことを実は前置きとして申し上げている。政策目的がなくてこういう特別措置がとれるものではございません。また、一ぺんそういうものをとりますと、それが固定化される、そういうところに税の公平を欠くということにもなりますから、それはよくないことなんで、だから、そういう点では絶えず私どもも留意してまいります。そうしてこれは税制調査会におきましても、そういう意味で、その政策が適正なりやいなや、これは多くの場合において政府が決定することが多いのですが、それが了承できるものかどうか、また税率が了承できるものかどうか、またその期間がそれで適当なりやいなや、十分批判を受けて、そうしてこれはきめられるものでございます。でありますから、私は租税特別措置、これは永久不変なものだ、かようには思いません。これはむしろ変えるべきものだ、どんどん変えていく、かように私は考えております。
  194. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 最後に一言申し上げておきますが、流動的に改廃をしていく、政策目的に合致しないものはなるべく縮めていくのだと言われましたが、重要な問題は、現在輸入課徴金の問題で、これにどういうように対抗するかという問題が出ております。その際に、新聞では、アメリカに対して輸入課徴金の問題その他で強く当たるということよりも、どうにもしようがないのだから、それでは輸出所得控除をひとつやってもらいたい、そういう形での要望が新聞に大きく出ています。これはいわゆる特別措置です。結局そうすると、アメリカドル防衛体制で輸入課徴金その他の問題をどんどん出してくれば、輸出業者その他財界は、そのしわ寄せを中小企業とか、中小企業ばかりじゃなくて、国民大衆の税の問題についてどんどんやってくる。私はこれではだめじゃないか。かえって租税特別措置を大きくする動きがずっと出ている。そういうことじゃなくて、もっと大きく、先ほど言われたとおり日中貿易の拡大とか、輸入課徴金に対してはアメリカに対してこちらも輸入課徴金をやる、なかなかむずかしい問題があると思いますが、いろいろとそういう強い態度でやっていただきたい、このように要望します。  以上で終わります。
  195. 田村元

    田村委員長 竹本孫一君。
  196. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、総理に三つ四つお伺いいたしたいと思いますが、まず最初にお伺いいたしたい点は、景気にあまり山をつくったり谷をつくったりしないように、日本の経済を総理の言われる安定成長に持っていくべきであるということであります。ただしこの際、総理に御理解をいただきたい点は、安定成長ということば自体が非常に内容が矛盾しており、その点がいろいろな経済施策の面にあらわれてきておるのではないかと私は思いますので、若干、経済の安定的な成長、そういうことのために議論をしてみたいと思います。もちろん、今日は資本主義経済でございますし、私有財産であり、自由競争がたてまえになっておりますので、きちっと計画どおりにすべてを窮屈に縛っていくということはできません。それはよくわかっておりますけれども、あまりにも日本においては景気の山と谷があり過ぎるということであります。いつであったか忘れましたが、三十二年ごろでございますか、不景気になったときに、経済白書の中で、山高ければ谷深しといって、えらい文学的な表現で不景気を説明しておりました。文学としてはそれでいいけれども政治はあまり景気の波に山があったり谷があったりしては困ると思うのです。そういう意味で、総合計画ができないまでも総合調整はすべきであるという立場に立って、私は若干意見を申し述べてみたいと思います。  そこで、日本経済センターに招かれましたロンドン大学のプロフェッサー、ジョンソンが次のような講演をいたしております。「ポンド切り下げ後の国際経済」という演題で、次のようなことを言っておる。大体私が言いたいことが書いてありますので、時間の節約のためにその講演を読みます。   一、総需要を常に追加していくことによって、雇用を完全雇用に近づけられるという考え方は、確かに革命的であったし、当時としては正しかった。しかし戦後の政策担当者たちが、このケインズの伝統的な考え方をそのまま引き伸ばすことによって経済成長を刺激しようと試みたときに、多少の破綻が生じたわけである。   二、彼らに従えば、経済に対し、非常に高い需要の圧力を恒常的に課すことによって、労働力の不足の状態を引き起こし、これが企業家たちの設備投資活動を高め、生産性を上昇させる。この結果、一つには高度成長を実現できる。  二つには、国際競争力を持つことができる。  ジョンソン教授はそれだけしか言っておりません。私はそのほかに、生産力効果で物価もある時期が来れば引き下げ得ると思いますし、下村理論はそれを盛んに言っておるようであります。これまではいいのです。  三番目、しかしこれら成長派のエコノミストが見のがしているのは、高度の需要を長期間にわたって維持した場合、すなわち高度成長をやった場合には、これは番号はないのですが私がつけて、一、国内の価格及び賃金水準に必然的にあらわれてくる影響、二、輸入に対する影響、これが問題であるということを非常に指摘している。要するに、生産性の上昇より以前に物価が騰貴し、輸入需要が増加してしまうという悩みがあることで、事実英国はこの種の経験を何回も繰り返してきた、こういうことを講演されておる。  おおむね私は、池田さん以来の高度成長経済の理論の長所と短所をよくついておると思うのであります。  私は、経済成長については高度成長のメリットも十分認めております。それがあるがゆえに今日まで世界三番目の地位を獲得もできたし、あるいは国際競争力も増強せられたと思って認めておりますけれども、それだからといって、高度の成長がいいものかどうか、その度合いが問題だと思います。設備投資にいたしましても、四十二年度あたりは大体一四・三%予定しておったのが、最後には二七・五%になって、予測したものの倍になっておる。財政の引き締めも、ことしは大いに硬直化とかいうことで引き締められましたけれども、ほんとうならば、これは大蔵大臣に特に私は申し上げたいのだけれども、去年あたりから本格的な引き締めに入るべきであった。私はそのことを言ったのだけれども、大蔵大臣は聞かなかった。そういうことで、ああいう予算を組んで、九月に——私はたしか去年の三月の大蔵委員会でも、この予算は大き過ぎるということを言ったのです。九月になって初めて気がついて引き締めをやった、こういうような状態でございまして、日本の財政のふくれ方、あり方、設備投資のあり方というものにあまりにも計画性がないと思うのです。そういう考え方が出てくる根本は、いわゆる安定成長といういささかあいまいなことばによって、安定に重点があるのか成長に重点があるのかわからない。安定ということはむしろ押えることであり、成長ということは伸びることである。この上りと下りの相反することばを一つにして言っておるために、どうも政治の指導理念の中に混乱がある。  そこで、私は先般ドイツの経済の安定及び成長の促進に関する法律、一九六七年六月八日という法律をちょっと読んでみました。これが非常に参考になるので私は申し上げるのです。  まず第一に驚きましたことは、安定成長というようなあいまいなことばは使ってなくて、この法律では「スタビリテート・ウント・バクストゥーム」安定及び成長と書いてある。ドイツの経済の安定及び成長の促進に関する法律、安定及び成長なんです。二つのことを一つにして安定成長というような乱暴な言い方はしていないのみならず、安定が先に書いてある。安定及び成長である。私はこの考え方は非常に正しい考え方であり、これからの日本経済に景気の山をつくったり谷をつくったりしないようにするためには、安定及び成長でなければならぬと思います。  特にこの法律の第一条、これも簡単に読んでみますが、第一条、連邦及び州は経済財政政策上の措置を講じる場合、経済全体の均衡の必要性ということがうたってある。経済全体のグライヒゲビヒト、均衡の必要性を考慮しなければならない。これらの諸措置は市場経済秩序のワク内において——これは日本と同じです。資本主義的な市場経済秩序のワク内において安定した、かつ適度の経済成長のもとに、と書いてある。もとに物価水準の安定、高度の雇用水準及び対外経済均衡——これは国際収支です。対外経済均衡に同時に寄与するように講じるものとする。これが第一条なんです。私はこの考え方は実に正しいと思う。  それを受けて、財政運営のあり方についてもこういうことが書いてある。第五条に財政、予算が安定と成長のかぎであるという立場に立って、第一条の目的達成に必要な限度において財政はなければならぬと書いてある。  第九条には、連邦の予算運営は五カ年計画を基礎とするものとしなければならぬということが書いてある。その中の初めのほうに、イとして、aですが、経済全体の給付能力の見込みに対する相互関係において歳入歳出を説明しなさいと書いてある。すなわち全体の経済の給付能力、これが大事なんですね。給付能力、これを離れてとっぴなことを考えてもだめだということがはっきり書いてあるし、さらにそれを受けて第十条には、財政計画の参考資料として、連邦大臣は、その所管行政に関し、多会計年度にわたる投資プログラムを策定し提出しろ、こういうことが書いてある。  その他、言えばきりがありませんけれども、私が申し上げたい点はこれで終わりますが、要するにドイツの経済の安定及び成長を促進する法律、その中では長期五カ年計画を連邦予算の運営については考えなければならぬといっておるし、経済全体の給付能力の見込みに対する相互関係において財政の歳入歳出は考えなければならぬと書いてあるし、さらにこれは各省だけの範囲かもしれませんけれども、多会計年度にわたる投資プログラムをもって予算というものは考えなければならぬということが書いてある。日本の財政法のような規定を見ましても、全く違った行き方をしておる。  そこで、私はここで総理にお伺いしたいことは、日本には日本なりの経済安定法をつくれとは私申しません。しかし、つくるのが私は正しいと思いますが、少なくとも経済安定法をつくらない場合でも、経済運営についてはここに書いてあるような投資プログラムも必要でありましょうし、多会計年度にわたる総合的な見通しも必要でしょう。いずれにいたしましても、経済は安定成長といったようなばく然たる言い方でなくて、安定、そして成長、こういう考え方にひとつ指導理念を明確にしていただきたいと思うのです。そういう意味で総理に伺いたいことは、安定中心の考え方にこの際考え方を切りかえられる御意思はないか、またそれに従って経済並びに財政については、特に五ヵ年程度の長期計画を持たなければならぬと思いますが、いかがでございますか。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 竹本君にお答えいたします。  竹本君は、特に経済方面に若いころ関係しておられただけに、さすがにただいまのような御批判、ケインズ学説に対する批判も当たっておると思いますし、また、ドイツの最近の財政経済から踏み切った態度も、私どもがいま参考にして、いろいろ教えられるところのものがあるのであります。  そこで、いま御説にありましたように、私どもが安定成長ということばを使いますが、これが高度成長に対応することばとして見て、高度成長というのはそれなりにわかるが、安定成長というは一体何なんだ。確かに御説のように、首をかしげられる。しかし、いまのように分析して考えれば、高度成長、それに対応するもので低度成長というものもないだろう。それじゃないんだ、だから安定及び成長だ。とにかく経済の成長というものを度外視して私どもはどうも取り組めない。成長には非常に魅力を感ずる。しかし、その成長を、成長しさえすればいいんだ、こういうことで高い山をつくれば、必ずや成長に取り残された部門を生ずる。そこにいわゆる経済のひずみがある。それはもう耐えられない。そこで、そういうものを生じないような、経済が安定したうちに成長を遂げていく、これを実は望みとして、いわゆる安定成長ということばを使っておるのであります。しかし、分析して安定成長とは何かと言われれば、安定及び成長、これにほかならないと思います。したがって、日本人はことばを簡単に使うことがなかなかうまいようでありまして、そういう意味の特別のことばだとひとつ御理解をいただきたい。  そこで、私は申し上げるのですが、成長には非常な魅力がある。同時にその成長が続いていく、そのためには高度成長では必ず破綻をする、そこで安定成長ということばに表現されるいわゆる持続可能な成長、そういうものを実は考える。ところが、私どもそれを申しましても、昨年の経済のごとく、私どもの予期以上の成長をもたらした。ことしはもうどうもいけない。どうしてもこれにブレーキをかけなければならなくなった。一昨年は一体どうだったのか、不況を克服することが一昨年の私ども政治目標でもあった。しかし、簡単に不況を克服した。そうして、ただいま言うように、昨年は予想以上の成長だった。ここでブレーキをかけた。いまようやくそのブレーキが各方面に影響をあらわしておるようです。もう今度はそこらで次の段階を考えなければならない、こういうところへ実は来ているのではないかと思います。それがいわゆる安定成長だろう、実は私はかように考えております。  そこで、長期的な計画を持つこと、これが必要であります。過去におきましても五ヵ年計画を持っておった。しかし、五ヵ年計画は三年もしないうちに解消せざるを得なかった。ことしは一体どうしようか、経済社会発展計画というものを持っておる。これがいま私ども一つの中期指針としての経済の指標であります。その意味において、今日の経済が一体どういうようになっておるだろうか、ただいまのところではこの経済社会発展計画を変える段階ではない。もう少し模様も見なければならぬ。ただ、いまの状況から見ましても、下り坂になったが、これをこの辺でとめるとか、こういうものをすでに手を打たないとその時期を失することになるのではないだろうか、かように実は心配しておる次第でございます。ただいま竹本君から教えられ、明確になったこと、たいへんお礼を申し上げておきます。
  198. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこでもう少しこれに関連して申し上げたい、お尋ねをしたい点がございます。  私は、日本の財政と設備投資が常にどうも行き過ぎている傾向があるんじゃないか。きょうは時間がありませんから、特に関連して設備投資の問題を申し上げたいのは、民間の設備投資、ただいま総理もお話ありましたように、去年は予定の倍にいったわけでございました。二七・五%いきました。日本経済新聞が調べたところによりますと、今度は大きな会社だけでしょうが、ことしもまた二八・五%設備投資の計画を持っておる。先ほど経済企画庁長官も、どうも一定の一部の企業は行き過ぎて困るということを非常に悩んでおられました。そこで御提案をいたし、御質問をしたいと思うのですが、アメリカでは、御承知のように設備投資が十分行なわれない、むしろこれを促進するという側に立って、投資控除制度というものができております。すなわち税制を通じて民間に利益誘導で、とにかくあまり設備が行なわれないときには、設備投資を活発にするような税法の処置があります。ところが、日本の国柄は、いま申し上げたように走り過ぎるくせがある。設備投資をやり過ぎる傾向がどうしても改まらない。こういう情勢の中で、日本におきましては、むしろアメリカと逆に、設備投資が行き過ぎるのを押えるための税法的措置があってしかるべきではないかと思うのです。この考え方に、すなわち税法を通じて設備投資をある税度押えるというくふうをしてしかるべきであるかどうか、これについて総理のお考えを承るとともに、先般通産省ではその点を考えてでありましょう、投資平準化準備金というような考え方を出しました。これに対しては、減収になるものですから、大蔵大臣が反対をされたということで、その立場もよくわかりますし、またいろいろの理由もよくわかる点がありますが、投資平準化準備金という制度は一応別にしまして、私がいま申し述べ、総理にお伺いしておる、税制を通じて設備投資の行き過ぎをチェックする、こういう考え方——日本のように行き過ぎて困るんですから。アメリカはいかないときは税法上の特別措置で前進させる。日本のように走り過ぎるところはむしろ税法上の措置で引きとめる、歯どめをかける、こういう考え方について、大蔵大臣は、この平準化準備金には反対されたかもしれないが、そういう制度自身に賛成であるのか反対であるのか、総理大臣並びに大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいつも考えることが、金融並びに税制、この両面から——こういうことについての刺激もまたブレーキも、両面で使うべきが適当だと思います。ただ税制でこれをとめるということは、また進めるということは、非常に短期間の場合は困難だ。相当長期にわたったときにはじめてそれが発動される、かように私は考えております。
  200. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもは税制によっても設備投資の行き過ぎをとめられるような、調整できるような措置も必要だと考えて、昨年ああいう法律をつくりましたが、少し検討が足らなかったかと申しますか、今回のようなときにこの法律を発動しようとしてきますというと、法自身なかなか、欠陥とは申しませんが、むずかしい問題を含んでおる。産業情勢とからんで相当考えなければならぬ問題がありましたので、検討しておった。発動しておりませんが、もしここに欠陥があるとするなら、これをさらに私どもは練り直してでも、やはり税制で準備することは必要であるというふうに考えております。
  201. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵大臣のお考え、よくわかりました。ぜひひとつ前向きにこの問題は、いま総理もおっしゃったように、金融と税制と相並んで日本の経済のスムーズな発展ができるように措置を講じていただきたいと思います。  第三番目の問題に入ります。これは減税の問題で、所得減税を中心としてでございますが、私が調べたところによりますと、今回の減税はたとえばこういうふうになっておる。ただ大臣級の個人個人のプライバシーは別としまして、大体の減税額というのは約三万円くらいだろうと思います。ところが百万円、夫婦子供二人の人が今度の減税で受ける恩典は六千八百九十三円であります。独身者で四十万円の所得のある人が受ける恩典は千五百四十三円であります。非常に各階層ごとに違う。先ほどいろいろ議論も出ましたけれども、これは主税局長御存じでしょうが、給与所得者のうちで税金にあまり関係のない人は私の計算で千三百三十三万人おります。三千百十六万人のうちで千七百八十三万人は税金を納めておる。あと千三百三十三万人は税金を納めていない。これらの人は今度は何もいわゆる減税の恩典は受けない。しかし「ハイライト」を一日に一箱吸えば十円ずつ、年間三千六百五十円の増税になります。そういう意味では、私はきょうは時間もありませんから結論だけで、これはむしろ要望なんですが、これを要望するゆえんは、社会開発と総理が言われる。私は非常に賛成なんです。ぜひこれを大いにやってもらいたいと思うのだけれども、最近は社会開発の予算もどうも少し怪しくなってきたのですけれども、何よりもその考え方が単語が一つふえたという形なんです。考えの根本に、社会開発という一つの社会理念が行政なり政治の根底にアンダーカーレントとして流れていない、ときどき思い出して社会開発ということばを使われるけれども。社会開発というのは、すべての場合にこれがわれわれのものの考え方の根底になければならぬ哲学の転換でなければならぬと思うのです。その点においてまた、総理がせっかく言われた社会開発は、政府全体の行政庁の施策の根底に流れていない。これを私は非常に残念に思いますので、そこでこういう質問をするのですが、たとえば先ほど武藤委員から具体的な御質問がございました。減税をやる場合でも、たとえば同じ一千五十億円の減税をやる場合にも、どういう減税をやるかという額よりも内容が問題です。その内容を議論するために必要なことは、今回の間接税を中心とした増税案、今回の減税案、これが大体所得階層で申しますと、一、二、三、四、五と大体五つの階層くらいに分けるのが常識であり、財政学でもあるいは社会学の本でもそうなっております。その五つの階層別にいかなる課税の負担になり、いかなる減税の思典が与えられるかということについて、——千五十億円の減税をやる場合には、この減税はだれがために行なわれ、だれを利するのであるかということをやはり真剣に考えてみる必要があるのです。ところが、これは時間がありませんから、私きょうは討議はしませんけれども、また所得税のこの減税がどういう階層別にプラスになっておるか、今度の増税がどういう階層別にマイナスを大きくしておるかということについての調査は主税局にないと思うのです。あれば承ってもけっこうだ。ありますか。
  202. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ことしの階級別表はまだできておりません。古いもので推算をしたものはできるわけであります。
  203. 竹本孫一

    ○竹本委員 何年のがありますか。
  204. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 四十年のものはございます。しかし若干階層が変わってきておりますので、ことしのものをずばりと出すわけにはまいりません。
  205. 竹本孫一

    ○竹本委員 この問題はまた別に議論いたしますが、少なくともことしのはできていない。事務的に複雑でめんどうな面もわかりますが、少なくとも減税しようという場合には、この減税でどのくらいの層を潤そうとしておるのか、この増税でどのくらいの層が苦しめられるのかということについて、ぼくは、むしろ増税案とともにこの委員会提出して、われわれはその基礎の上に立って議論をすべきだと思うのです。そういう意味で、いずれにいたしましても、私が申し上げておる点は、個々の小さな問題ではなくて、社会開発という考え方は、増税の場合にも減税の場合にも、予算の編成の場合でも、常に根底に流れている一つの指導理念でなければならないと思うがどうか。また、そういう意味から、あらゆる施策をやる場合には、その施策の階層的な影響がいかにあるかということを必ず調査するということにしてもらいたいと思いますが、総理のお考えはいかがですか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 竹本君のお説、私も賛成です。申すまでもなく、私は社会開発ということばを使いますが、新しい単語をあるいは新しい熟語をつくったつもりじゃございません。私の一つ政治の基本理念でございますから、そういう意味では、あらゆる場合にそういう考え方をすべきだ。したがって減税の場合、ただいま言われますところのものは、これは中小所得者に対しての今回の減税だ、いわゆる所得百万までというのは大体中小所得者、かように考えられておる。それから今度酒、たばこは、所得層いかんにかかわらず全部が支払うものであります。そうしてその場合におきましても、特に大衆の酒あるいは大衆が好む安いところのものについてこれを据え置いた。これは大衆のたばこ、酒。したがいまして、私は今回の増税、これはいかにもなにのように思いますが、所得税も払わない者までもやるということだが、大いに所得税を払っている連中にもやはりこの増税は影響しておるのですから、その辺のこともよくお考えいただいて……。
  207. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がもうあまりありませんし、深刻な議論も展開できませんから、あとはひとつ考え方として承っておきたいと思いますが、一つは農地の問題で、農地の相続の問題です。これは農業基本法の第十六条にもありますように、農地の細分化を防止しなければならぬということがうたってありますし、第五国会等でも農業資産相続特例法といったようなものが提案されたことがあるようであります。そこで、これはひとつ結論としてお伺いしたいのでございますけれども、現在、一括生前贈与の場合については一つの特例措置が講じてあります。しかし、それが必ずしも全部にうまく恩典がいかないのですね。それは大蔵省当局ではよくおわかりの点でありましょうし、時間もありませんから、結論として私が申し上げたいことは、たとえば都市の近郊の農村あるいは市街地、今度の都市計画法でいろいろまた出てまいりますが、要するに農業をやめようかやめまいかということで、思案投げ首で悩んでおる人がたくさんおります。その中で、先祖伝来の土地であるから自分はこれをひとつ相続してやろう——この間も私、農地の流動化問題を取り上げていろいろ話し合ったときに、そんなことは問題でない、こう言うのですね。農村の次を背負って立つ長男の人たちの会合のときでございましたけれども。それはどうしてかというと、われわれはいま農業に何の魅力もない、農業はそんな引き合う仕事じゃない、だからやめたいのだ、けれどもまあ先祖伝来の土地だから、何とかこの土地だけはひとつ維持してまいりたいという、ただその一点でわれわれは農業を引き継いで相続していくつもりなんだ。ところが、相続のたびごとに相続税を払わなければならぬので、えらい税金を納める、その税金を納めるために土地を売ればまた所得税を課せられる、両方で相続のあるたびに一割縮小再生産になる。一方では構造改善とかなんとかいうて、あるいはいま農地の流動化とかいいながら、実はまじめにおやじの農業をそのまま引き継いで、せめてそれだけはやっていこうという者が、相続のあるたびに困るような形に現実はなっておる。これだけはぜひとも考えてもらいたい、こういう声をわれわれはたびたび耳にするのであります。要するにこれは、土地は財産として見るか、生産手段として見るか、いろいろ議論が出てくると思いますけれども、そして現実にいま長男の一括生前贈与の場合には一定の措置が講じてありますけれども、それで救うことのできない人たちがたくさんおります。これについてはやはり別個に、均分相続、民法との関係もありますけれども、第五国会以来の懸案でもありますから、この辺で、まじめにお家を継いで農業をやろうとする人たちが、相続のたびに一割から一割五分の土地は売ってしまわなければならぬというような残酷なことでないように、ひとつ特別な方途を講ずべきではないかと思いますが、この点が一つ。  それから、三つばかり伺いますが、第二番目には教育費の特別控除の問題でございますが、これも、小学生が十万、中学生が十万、高校生は三十万、大学は五十万から、下宿すれば百五十万、こういうふうにかかります。この場合に、私は福祉国家というのは一つは教育国家だと思いますが、ひとつ教育費について特別控除を考えるということはどうなんだろうか。これについてもひとつ政治家としての総理のお考えを承りたい。  三番目に、自動車の損害賠償責任保険の問題でございます。これはいろいろ研究してみますと、実際問題としては、そういうものを特別保険料を控除してみても、恩典を受ける者は幾らもないと思います。逆にいえば、しかし幾らもないんだから、税収入にはあまり関係ないからやってやったらどうかとも言えるのじゃないか。のみならず、これは強制的なものであることはもう申すまでもありませんが、交通禍ということについての問題意識を与えるという意味において、これはやはり取り上げて考えてみる価値があるのではないかということを考えますので、この点についてのお考え。  最後に、これは先ほども議論が出ておりましたが、生命保険の問題であります。これは所得水準も上がってくるし、加入者も七千万、八千万にもなっておるようでございますが、これは従来二年ごとに控除について額を引き上げるということでいろいろ考えられてまいりました。サラリーマンの年末調整は唯一の楽しみである。生命保険はそういうことでもいろいろ意味があるということを言う人もありますけれども、いずれにしましても、長期資金の面から見ましても、あるいは生命保険というものが福祉国家に果たす役割りから考えてみても、この点もやはり考えてみる価値があるのではないか。  こまごまとした点でございますけれども政治家としてのお考えにおいて以上の諸点について総理のお考えを承りたい。あんまり専門的じゃなくてけっこうです。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第一の耕地の細分化並びに農業の後継者をつくる、そういう観点に立ってその適当なる税制が望ましい、かように思います。ただ生前の贈与、こういう問題になりますと、その場所にもよりましていろいろ弊害も生ずるだろうと思いますから、ただ気持ちだけを申し上げて、その具体的な措置は事務当局に、もっと専門家に譲りたいと思います。  第二の教育費の特別措置の問題でありますが、私はこれはまたもつと適当な方法があるのかと思います。ただいまのような気持ちが全然ないわけじゃありませんけれども、現実の問題としてなかなかむずかしい問題じゃないか。  第三の自動車について、ちょっとこれ私聞き漏らしたのですが……。(「強制保険の掛け金」と呼ぶ者あり)損害保険、これはどうもそこまで考えなければならぬかどうか。もっといまは自動車損害賠償保険というか、金額のほうの問題が先ではないだろうかというような気がします。  それから第四の場合、これは生命保険の場合にはぜひ調整をしていただく、そういう意味で控除額を引き上げるという、私はそのほうに賛成ですが、これは大蔵当局もそういうことを考えておるだろう、かように思います。
  209. 竹本孫一

    ○竹本委員 大蔵大臣、いかがですか。
  210. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま生命保険の問題、総理が答えられましたが、今度の税制調査会にもことし生命保険料控除の問題について審議をお願いしました。結論としましては、やはりいま所得税の課税最低限を引き上げることのほうが急務である。したがって、基礎控除等の基本的な控除の引き上げを先に取り上げて、あとからこの問題は考えたいということで、本年度の税制調査会はこの問題は取り上げないという答申でございましたので、私どもはそのとおりにいたしました。これは御承知だと思いますが、いま生命保険の保険契約高、保険料契約総数というものから割り出しますと、一件当たり掛け金が一万六千円という数字も出ておりますので、いますでに政府が三万七千五百円までの控除をやっているということから見ても、ことしは急がなくてもよいという結論でこの問題は省いた、こういうことであります。
  211. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  212. 田村元

  213. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私は、本日はひとつ総理に詳しくお尋ねしたい。なぜかならば、去る五日の本会議におきましての私の質問に対するあなたの答弁は、国民にとって重大なる発言があったと思っております。多少の時間を延ばしていただいてもお答えを願いますことをまず約束いただきたい。名委員長である理解ある委員長もその趣旨をお考えいただきまして、許可をお願いしたいと思います。どうでございますか。
  214. 田村元

    田村委員長 田中君、どうぞお続けください。
  215. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 現在重大な時期に差しかかっております政府は、財政硬直化、そういう問題も投げかけておりますが、先日の本会議におきます総理の答弁を、私もう一回ここで読んでみたいと思います。おそらく記憶がないのじゃないかと思いますから、読んでみます。初めのほうは省略いたしますが、「しかし私は、諸外国と比べてみまして、今日のわが国の税は、国民にたいへん軽いものを課しておる、」これは総理としては専門的なことばを使っておる。「課しておる、」課税の課でございます。「かような確信を持っております。いずれこれらの点は数字で他の機会に十分お話をしてみたいと思います。」「十分」という点も入っております。もう少し先がございますがそれはまたその次にしまして、国民にたいへん軽いものである、それを課税しておる、かような確信を持っておる、このように総理の確固たる決意でございます。  そこで、わが国の税金が各国に比べてどのように低いものであるか、それをひとつ数字をもって十分に詳しくお答え願いたい。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民所得に対する租税負担率の国際比較、そういう数字が手元にございますから、日、英、米、この辺で比べてみると、日本の場合、租税負担率は四十二年当初並びに補正後——当初の場合で一八・五、補正後は一九、アメリカの場合は、これは当初、補正はございませんが、二七・七、それからイギリスの場合は、これは四十一年でございますが三四・八、こういう数字になっております。そこで私は軽いということを申したのであります。
  217. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 数字でおっしゃったわけでございますが、それは税金がどういうものであるかということを御存じあっての御答弁とは——私はあまりにも冷たいものだと思うのです。なぜならば、いまおっしゃった負担率は、その国の歳入をまかなう上においての税金の負担率であります。アメリカとわが国とただばく然と比較してよろしゅうございますか。アメリカのその歳入でまかなわれます歳出は膨大な軍事費が含まれておるのです。わが国の軍事費は幾らでございます。そういうことも検討の上でお答え願わなければ、その趣旨が私は了解できません。おそらくそういうお答えがあるだろうと思って、私は調べてまいりました。申し上げておきます。日本は、国税、地方税も含めまして、税金の負担率は一八・三%、これは四十一年の補正後の数字でございますが、この中から軍事費を除いてみますと、約二八・九%になるようでございます。アメリカはどうかといいますと、軍事費を除きますと二二・五%、あのような膨大な国民所得のアメリカがわが国よりも軽いということを、まず認識していただきたい。  総理、それでは、あなたがおっしゃる、低いというように思われておること、それは直接税ですか、間接税ですか、まずそういうところから聞いてまいりましょう。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 田中君は税のほうの専門家だから、これと議論することは、私、たいへん損なんですけれども、しかし、私が先ほど申したのは、国民所得に対する租税負担率を申したのです。そして、軍事費を除くというのは、国民負担でないのですか。そうじゃないのでしょう。やはり税でまかなわれているのでしょう。だから私は、総体として都合の悪い、これだけは軍事費だから、日本には軍事費はあまりないから、その他において負担が高いと、こういう説明はいかがかと思う。日本が今日のように繁栄をしている、そういう国民所得に対する負担で日本のような発展ができたのは、いま軍事費がたくさん出てないからです。これはもう確かにそのとおりです。そういういいところは十分認めてやっていい。私は、いずれにしても国民負担になるもの、これが国民所得に比べて外国と違う。その税が何に使われているか、これはそれぞれの国がそれぞれの国でやっているのですから、それを比較する必要はない、かように思います。
  219. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 私も十分その点はわかって申し上げておるのですが、ただ、総理が低い、安い課税になっておるとおっしゃるから、それを説明する場合に、ただ各国の租税負担率をおっしゃるというようなことは、少し私のようなわからない者に対しても説明が冷た過ぎるのではないか、こう申し上げておるわけです。ようございましょうか。それで、私がいま質問したことのお答えになっておりません。総理が思っております安い、低いという税金は間接税ですか、直接税ですかというお尋ねをしたのです。これで約二、三分損をしました。その分だけ延ばしてもらいます。重複しないように、それのお答えを願います。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは田中君御承知のように、外国の場合は間接税が非常に多い、それから日本の場合は直接税だ、こういうことだと思いますが、これを各国の率を直接税と間接税に分けて比較してみると——もしそれが必要なければこの辺でやめておきますが、さっきのは国民所得に対する全部です。したがいまして、いまのように直接税と間接税は各国によってそれぞれの事情がありますから、外国の場合は間接税が非常に大きい、かように思います。したがって、その必要があれば一応読んで見ます。日本の場合は直接税四十三年で五九・七、アメリカ八六・六、イギリス五七・三、西ドイツ四七・七、フランスは四十二年で三六・五、イタリアは四十二年が二七・八。しかし間接税のほうになりますと、日本の場合は四〇・三、アメリカは、これは四十二年ですが二二・四、先ほどの直接税のほうがうんと多い。イギリスは、これは日本よりも多くて四二・七、西ドイツは日本よりもだいぶ多くて五二・三、フランスになると六三・五、イタリアは七二・二、こういうような状況でございます。それぞれの税制が違いますから………。
  221. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それでは、私の簡単な、幼稚な質問でございますが、その幼稚な質問に対してお答えを願いたい、こう思うのです。  そのように総理が安いと思っている、それは直接税、間接税のどちらですかと聞いておる。もう一つ、かりに直接税なら直接税とします。その直接税の中では、それではどういう税金の種類が各国に比べて安いのですか。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいまのように分けてでなくて、総体としての国民の負担と、こういうことを申したのであります。  それから、どの点が多いかというようなことは、私、わかりません。
  223. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それでは私が質問していることに忠実に——これは議論を抜きにしまして、為政の責任者である総理であるならば、低い税金があることはけっこう、高い税金があるならば、それを低くするというのが私は一応の姿勢じゃないかと思うのです。そこで、直接税、間接税を含めて、租税負担がわが国が安いということについてはいろいろな問題があることは、ここにいらっしゃる方もほとんど御存じじゃないですか。イギリスにおいては、あれだけの社会保障がなされておる。そういう社会保障がなされておりながら税金が高いならば、それは負担する上において十分なんです。ですから、私は総理がおっしゃっている、わが国の税金の中で安いというように思われるのはどういうものなのか、それをお聞きしたい。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私、どういうようなお尋ねなのか、趣旨をつかみかねております。しかし、日本の場合、支出のほらで軍事費の少ないことは先ほど御指摘がありましたとおりです。したがって、軍事費は少ない。同時にまた、いま社会保障ということばが出ておりますが、社会保障の面におきましてはまだまだ充実しておらない、かような状況でございます。だから、いまの田中君のお話を聞いておると、英国的な社会保障ならば税金をたくさん納めてもそれは軽いというようにもとれるように、私、聞き取ったのですが、私は、どうも国民負担の実情というものはそう簡単にいかない。そこで、パーセンテージでいっている場合は非常に誤解を生じやすい。ことに国民一人一人の所得が高い場合は、相当の税を払っても、そうして社会保障その他を充実さしても、感じとしてはあまり強く感じなくて済むのじゃないだろうか、かように思います。ここらは、これからも国民所得をふやし、そうして税の適正化をはかっていくという、そういう政治を行なうべきじゃないか、かように思います。
  225. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 総理のお話の中にも、自己矛盾するところがあるようでございますよ。いまの負担率でいろいろ言うのは誤解を生ずるとおっしゃった。ところが、初めに総理が私の質問に対して答えたときには、負担率で比較をされた。どういうことですか。そういうことになりますと、ここでは私の思うような結論が出ません。ですから、私のほうから総理に、その税金が高いという面で申しますと、いま世間でも、直接税であれば所得税、特に所得税は、給料取りの所得税、これが高い。ですから、世間では、給与所得者が法人を設立して、そうして脱税しよう、また税金を安くなす本とか、税金にたかる方法とか、いろいろそのようなものがちまたに出て物議をかもしておる。そういう所得税について、私、総理にひとつ御披露しておきますが、まず所得税の納税人口から見てみました場合に、戦前は六千八百六十四万人の所得税納税人員が、昭和四十年——主税局のほうでまだ四十一年をつくっておりませんから四十年で申し上げますと、九千九百二十二万人、約一四四%、この一四四%を覚えてもらえばけっこうです。その納税人員の中で、いわゆる高額所得者と低い所得者を比較してみたのです。いわゆる所得七十万円以下の納税人口の比較をしてみました。そうしますと、昭和十年で百人中二十六人、昭和四十年では何と七十一人も占めておる。いいですか。納税人口は一四四%しか伸びてない。ところが所得の低い層の納税人員は二十六人が七十一人にふえているということなんです。またその反面、二百万円以上の所得者は、百人中、昭和十年で十六・三人、昭和四十年は一・九人と減っている。約八分の一に減っておりますよ。いわゆる高額所得者は納税人員がぐっと減っている。これは民間給与実態の中から見ましても、年収百万円以下の人口は全納税人口の九三%にも当たっている。これを今度は税金の負担の場合から見てみますと、小額者がいかに高い負担を課せられておるかといいますと、所得七十万以下の人が、戦前では約二%であった。いわゆる七十万以下の階層の人は、その所得に対して二%の税金を負担しておった。ところが昭和四十年は何と約二二%の税金を納めている。約十倍なんです。いいですか。その反面、また今度は高い所得者、七十万以上の人は、昭和十年、いわゆる戦前では全納税額の九八%を占めておったのです。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが昭和四十年は七八%、約二〇%も全納税額に占める割合が減っておる、こういうことなんです。そういうことを私はいま申し上げたわけでございますが、総理、そのことについてどう思われますか。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまのはたいへんけっこうな数字を読み上げられたと思う。高度成長の結果、貧富の差がなくなったということじゃないか、かように思うのですが、何か違いますか。だから、いわゆる非常に所得の高いものが減って、そうして平均した数、金額になっている。これは日本の特質で、貧富のないことを一つ示しているのじゃないか、かように思いますが、いかがでしょう。
  227. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 それでは私続けます。年収百万円の給与所得者で独身者の場合は、戦前は九千四百七十五円の税金で済んだわけです。それが昭和四十年では十万一千円となるのです。ここでも税金は十倍になっている。これが標準世帯の場合には、戦前は五千九百二十三円に相当するものが、四十年は五万一千三百円、これも約八・六倍。その反面、年収五百万円の人の場合は、その倍率が減っております。独身者の場合で約七倍くらいにしかならない。標準世帯の場合で約六倍にじかならない、こういう結果になっている。  これを私、総理がお考えになっておるものから、いま国民所得との比較、いわゆる所得税の負担率を、国民所得とそれから納税者の所得、これは大体同じ伸び率であるならば、負担は重くなったといえない。この国民所得対納税者の所得の課税範囲を比較してみます。戦後の昭和二十五年には、いわゆる国民所得と納税者の所得、国民所得から課税されている納税者の所得は約五八%だった。それが昭和四十一年には六七%になっておる。ということは、国民所得の伸びよりもずっと多額の額を給与所得者は課税されておる、こういうことになるのです。  それからもう一つ、これも総理から聞かれなかったのが残念でございますが、課税最低限をかりに取り上げてみましても、わが国は一番低いのです。アメリカの約半分です。その他の各国から見ましても——数字を申し上げてもけっこうです。そちらの書類にも書いてあります。世界各国の中でわが国が最低の課税最低限です。またその負担率を見てみますと、年収百万円の場合で、これは標準世帯の場合、日本では約二万五千円くらいの所得税の負担率になっている。いいですか、負担率ですよ。わが国は年収百万円の標準世帯の場合には二万五千円の所得税がかかる。アメリカは全然かかりませんよ。イギリスでも一万二千円で済むのです。フランスでも全然かかりません。このような、さっきおっしゃった課税の負担率で総理が御説明になるとするならば、この課税最低限の各国比と並びにその同じ所得を見た場合の負担率がこのように違うのはどういうことですか。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ここに数字がございますが、課税最低限の、これは夫婦子供三人の給与所得者の場合、日本の今度の改正案によって、今度は八十万八千六十三円、アメリカは確かに言われるとおりこれよりも多い百三十三万二千円、しかしイギリスは日本より低い七十八万八千八百三十二円、西ドイツは日本よりもわずかに高い八十八万二十円、フランスは日本より高い百十六万九千七百八十三円、日本の場合、私は、ただいまそう課税最低限が低い、かようには思っておりません、今度改正されたところで。  それでもう一つ、他の場合でよくいわれることですが、国民所得が非常に日本はふえた、非常に多くなりました。しかしパーキャピタ、国民一人当たりの所得というものは世界で二十二番目とか二十二番目だとかいわれている、これが日本の特徴じゃないだろうか。私は日本のように、国民所得が非常に多くて、そしてこれは人口も多いが、同時に所得が平均化している。非常な金持ちがいて、そして非常な貧乏人がいる、そういうところと違って、所得はだんだん平均してきた、ここに日本の繁栄があるのではないか、私はさように思っております。したがって、いまの数字はいろいろ見方があるだろうと思いますが、とにかく田中君は税をずいぶん長いこと担当しておられたのですから、税の実際の苦情はずいぶん聞いておられるだろう。しかしこのごろのように、所得税をだんだん課税最低限を引き上げることによって、いわゆる不平はだんだん減っていくのではないだろうか。さらに所得百万までにする、こういうことを約束しておりますが、そうなってくると、確かに日本はよくなるだろう、かように私は思います。
  229. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そのように、事務当局の数字をだっと聞いて答えたら、重大な誤りですよ。いまの記録にとっておりますからね。もう一ぺん言うておきます、誤りの点を。いま総理がおっしゃった日本の課税最低限は四十三年度でおっしゃった。そのほかの国の比較は四十一年じゃないですか。アメリカだけ合っておった。イギリスは違う。そのようないいかげんな当局の数字によって、そういうことで日本の税金が安いとかなんとか考えられたら大きな間違いだ。あとで見てください。いまの事務当局のやったのは、日本の場合は四十二年度で、アメリカの場合は四十一年度で合っている、イギリスは違う。そういう議論はやめましょう。同じなんです、わかりませんから。問題は、世間の人が重い税金であると思っていることは間違いないです。ここにおられる全部の方が給与所得者ですが、税金は軽いと思っておられますか。税金は重いのです。心の中では税金は重いと思っておるのがあたりまえなんです。これは失礼な言い方になりますが、総理は月々自分がもらっている歳費の中から幾ら所得税を納めているか御存じですか。またちょうどいま確定申告の時期でございます。これは昨年でございましたか、私うろ覚えでございますが、総理の所得について長官が発表したことがあります。そういうものから見たら、総理自体が税金が重いと思われないのがおかしいんじゃないか。申し上げてみましょうか。昭和三十八年で総理の所得が約四百四十万円と申告されている。そのときの所得税が約百二十万円ですよ。それに地方税の、長官は三〇%と言いました、三〇%と見れば三十六万円で、合計百六十万近い税金を住民税と所得税だけで納めるのです。そうしますと四百四十万から百六十万の税金を引いてみなさい。そのほかあなたが言うような物品税、電気、ガス、水道、ゴルフにいけばゴルフの税金がかかっております。酒を飲めば酒にも税金がかかっております。そういうことを考えたならば——先に続けますが、三十九年六百四万円の所得だ。そのうち所得税が二百十七万円、地方税が六十五万円、そうしますと二百八十万円が六百万の所得の中の税金ですよ。四十年が六百三十四万円、所得税が二百十万円。真剣に聞いてくださいよ、いいですか。六百万円の所得の中に二百八十万円もの税金がかかっておるのです、所得税と住民税だけで。昭和四十年は六百三十四万円で所得税が二百十万円、地方税が六十三万円。昭和四十一年は所得が九百五十万円と総理は申告されたそうです。その中に税金ははっきりしておりませんが、約三百八十万くらいになる。住民税で百二十万、合計五百万の税金です、九百五十万所得のある人が。これは他人じゃありませんよ、総理ですよ。  そこで昨年、私が大阪に視察に行きましたときに、銀行協会の住友の堀田頭取も言っておりました。いまの税法では三十年、四十年つとめてどんな高い月給をもらっても全部税金に持っていかれてしまう、自分の住む家さえつくれない。それがほんとうなんです。どうですか総理、九百五十万のうちで五百万税金を納めるようなことで、自分の老後の安定並びに住宅をつくったり、そういうことはできますか。  それから時間もございませんが、先ほど総理は百万円免税のことにつきまして、昭和四十五年を目標に百万円減税を公約しておるからやりたい。そこでこの百万円も、ことばを間違えてはいけないのです。総理は重大なる決意と確信を持ってとおっしゃったのです。所得が百万円までは免税にする。ようございますね。これは私がいままで聞いておるところでは年収百万円を免税すると聞いておりました。ところがきょうは、年所得の百万円を免税する、このように重大な決意を持って総理は発表された。そのように理解してよろしいでしょうか、その点お願いします。
  230. 田村元

    田村委員長 田中君に申し上げますが、田中君の持ち時間を九分超過しております。冒頭、田中君から御要望がございましたので、私は格段の高配をしたつもりでありますが、九分も超過しております。しかも総理大臣が四時半から官邸で次の行事が行なわれるので、すでに青少年か何かがもう待っておるそうでありますので、質問をその程度にして、総理大臣の答弁だけを聞かれて、この際質疑を打ち切っていただきたいのであります。
  231. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 そのために、たくさん用意してきておりましても省いて最後だけ言っているのです。もう一ぺん答弁を聞きますけれども、その答弁によりましてもう一問だけさせてください。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまたいへんいいことを聞いてくださいました。実は私の発言で誤解を受けておられると困るのです。これは標準家庭における年収百万円、それまでを課税最低限にする、こういうことでございます。
  233. 田中昭二

    ○田中(昭)委員 だから自己撞着なんです。前に言われたことと違う。いいことを教えてもらったというが、そこは総理にわかってもらいましたから私は感謝しているのです。総理もわかられることはわかられるのですね、自分の言ったことですから。そういうことを言いますとまたあれでございますが、しかし年収百万円にこだわらずに、所得の百万円ぐらいやるくらいの決意はしていただきたい。そうでないと、先ほどの記録に載ったことと違いますよ。その決意ができなければ、今後の機会に私はまたもう少し申し上げていきたいと思う。  まだたくさんあるのですけれども一つだけ、最後と申し上げましたから。さっき総理は、本会議でも安く課税しておることに確信を持っておるとおっしゃった、そうですね。読みましょうか。そうおっしゃっているのです。それで先ほど武藤委員の質問に対してあなたは、この年収百万円の問題については胸を張って言えるものではない、そのような姿勢なんだ、こうおっしゃった。このことは総理がきょうここでおっしゃったことにおいても、初めにおっしゃったことと私に答えていただいたこととは、ネコの目が変わるように変わっている、専門家から見れば。いずれにしろ総理の今度の本会議での発言は、自民党、佐藤内閣としては、国民に税金は高くありませんと言われたから、今後は国民の支持も相当あるものだ、こうも思います。総理は、日本の国の税金は安いとこう言われたことによって、佐藤自民党内閣の名誉を大いに挽回し、票のよけい入ることを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  234. 田村元

    田村委員長 引き続き関税定率法等の一部を改正する法律案について、質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  235. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣に質問いたしますが、昭和四十三年度の経済見通しで、国際収支関係で約二億五千万ドルないし三億ドルぐらいの赤字という予想が立てられておりますが、輸出、輸入の関係では、輸出が大体百二十四億ドルくらいですか、ある程度の幅を持って今回は予想を立てておられるわけですが、それに対して百一億ドルの輸入、こういうことで見込みを立てておられるわけであります。一体この輸出、特に輸出関係の目標額が、はたして今日のきびしい国際情勢の中で達成されるであろうかどうか、このことをまずお聞かせいただきたいわけであります。  その一つは、アメリカの景気が一体六八年度はどうなるか。大体七%ぐらいは伸びるんじゃないか、実質で四、五%伸びるだろう、こういわれておるけれども、ポンドショック以来ドル防衛、一月には非常にきびしいドル防衛の五大政策が出されるというようなことで、アメリカの場合にも増税をある程度成長率の中に見込んであるということもありますが、金融もかなり締まってきているというような情勢考えますと、おそらく、少なくともそうした見通しを一%ぐらいは下回るのではないか、こういうものがあるようであります。またヨーロッパ、EEC諸国関係等におきましても、大体この沈滞の時期を脱して上昇というところへもってきて、例のポンド切り下げという異常な事態に遭遇して、きわめて高金利時代を迎えておるというようなことから、その沈滞からはい上がる年だといわれておったものが、どうやら横ばい程度で、OECDあたりで予想したよりも、やはり成長率一%ぐらい下がるのじゃないか、そういう状況なんです。そこへもってきて、特に最近問題になっておりますアメリカドル防衛の中で、いわゆる輸入課徴金というようなものまでつけ加わり、またアメリカに根強く残っておる保護貿易論者の相当な動きというようなものも目立っておる。というようなことを考えますと、はたしてこのような目標が達成できるだろうかという心配を私ども非常に持っております。見通しにおいても幅を持たしておるわけでありますが、輸出のほうは小幅の金額がやっとだ、輸入のほうは国内の景気引き締めが若干ずれ込むというようなことで、一番上のほうの見通しになると、これはかなり三億ドル程度では済まなくなるのじゃないかというようなことも考えるわけですが、この貿易を中心にした国際収支の見通しについては楽観的に、政府見通しどおり、大体いまの情勢からいっておさまるのだと、そういうように大蔵大臣お考えでしょうか。
  236. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 最初、政府の見通しを立てるときも、あなたのいまおっしゃられたような要素を全部考えて、百二十一億五千万ドルという輸出見込みは多過ぎるのではないかと私ども考えて、ずいぶんこの見通しについては各省ともいろいろ苦心して検討したところでございますが、いま言ったような国際環境がきびしいという事情も相当考慮に入れ、しかもEEC諸国は、ここでやはり経済の成長政策を四十三年度はとる、もしそうだとすれば日本貿易はどういうふうになると、いろいろな要素を取り入れまして、そうして来年度の世界貿易の伸びが大体六・五%程度になるだろうということも推定し、いままでの日本貿易の伸び率に対する弾性値も考え、二・二、この弾性値というのは結果としてあらわれてくるものでございますが、過去、やはり一つの世界貿易の伸びと日本貿易の伸びとの率がございますので、そういう点も考え、かたがた通産省当局におきましては相当各物資について一応積み重ね計算をやっておる、そういうようなところから、来年度はやはりどうしても一四%をこす日本の輸出の伸び率を見込めるということでございまして、最後に政府見解がああいうふうな見通しに落ちついたのでございます。  それから、いまアメリカ課徴金というような問題が起こってはまいりましたが、一応私どもは、当時においてそういうきびしい国際環境を相当見通したあげくのことでございますので、いまやっておる国内政策がうまくいって、輸出圧力というものがかかってくるのでしたら、何とか政府の目標は達せられるのではないかというふうに考えております。
  237. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 経済見通しを一応予算編成の基礎に据えて見通しを立てて、また、その予算も通らない段階で、おそらく軽々には困難なんだというようなことを言えない立場にあることはよくわかりまするけれども、その程度に楽観していただいていていいのかどうかという心配が依然として私残るわけです。  そこで、関税局長にちょっとお伺いしたいのですが、いまケネディラウンドの妥結に伴って、それを中心にして関税定率法の諸改正を提案をされておるわけでありますが、一体これが日本貿易にどういう影響を持つか。まあ南北問題という観点からながめれば、先進国に片寄り過ぎた、先進国が有利になるのだという評価もあるわけでありますが、日本の立場において、このケネディラウンドの妥結というもの、そしてそれを一部については五年計画というのを繰り上げてやるというようなことや、あるいはアドバンスカットなどもやっておる。こういうものが日本貿易、特に輸出の増強、それから輸入のある程度の抑制の年でありますから、そういうものに対してどういう影響を持つか、このことをひとつ伺いたいと思います。
  238. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先生、先ほどおっしゃいましたように、ケネディラウンド日本関税を下げる。それから、それは主として参加国は先進国でございますが、先進国のほうも関税を下げる。そういうことでお互いに下げるわけでございますから、それがお互いの間の貿易に対して拡大的な影響を持つ、そういうふうに考えております。そこで、日本のように天然資源が少ない、そういう国については、特にこういうふうに関税が下がっていって貿易が拡大するということは望ましいことだと考えております。  それから、いまお触れになりましたアドバンスカットでございます。後進国の産品に対しまして五年間、あるいは日本の場合は四段階でいきますが、それをだんだんに下げていくのでなくて、一ぺんに終点のところまで下げる、こういうことを今度の改正考えておりますが、それは、後進国に対して——承知のように国連の貿易開発会議でいま後進国と先進国がいろいろと意見の対立を来たしておるわけでございますが、そういう中で日本が後進国に対してもこういう特段の配慮をしているのだということを示すということは非常にいいだろうということで、ほかの先進国もいたしますが、日本もアドバンスカットというものをやっておるわけでございます。これは金額としてはそう大きな影響はないと思いますけれども、後進国に対する日本の姿勢を示すという面では役に立つと思っております。  それから、後進国以外のところに対する繰り上げの話でございますが、これも、いろいろ伝えられるところによりますと、アメリカ輸入課徴金に対して、ヨーロッパの、特にドイツを中心として、ケネディラウンドを繰り上げ実施するということで、ケネディラウンド課徴金をやめてもらえぬか、こういう動きがございます。それはまだヨーロッパで、そういうことで検討しているという段階でございます。
  239. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私が聞いているのは、このケネディラウンドの実施段階に入って、特に輸出を伸ばしたい日本にとって、どういう作用を直接的にもたらすであろうかということをお聞きしたかったわけです。
  240. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 日本に対して先進国の関税が下がりますから日本が輸出しやすくなる。それでどのくらい下がるかという話でございますが、これはケネディラウンドで各国が計算の基礎にしましたのは六四年の輸入でございます。それで先進の十一カ国で申しますと、全体の輸入が六百億ドル、その中で今度譲許したものが三百二十億ドル、その中で無税のものもありますが、また有税のものを下げるというものもございますが、有税のを下げるというものは二百六十億ドル、こういうことになっております。これはガットの大きな関税引き下げとしては第六回目のものでございますが、従来一番大きかったといわれるジロンラウンドというのが四十九億ドルですから、それに比べまして非常に大きな関税の引き下げでございます。したがいまして、これが実施されるということは日本の輸出に非常に大きな影響があるだろうと思っております。それで、日本の輸出の面でどのくらい影響があるかということでございますが、日本の輸出を、これは先進の十六カ国で見ますと、約二十一億ドルぐらいのものが関税が譲許される、そういうふうに考えております。
  241. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いまの御答弁によりまして大体わかりますが、関税はやはり相互主義であります。したがって、輸出に非常に力を入れる立場において、一方においては有利であると同時に、ほかの国にとっても、今度は日本に向けて、日本からいえば輸入になるものがやはり有利になる。日本から出すもの、それから日本が輸入するもの、これはそれぞれの品目によっていろいろ差もあるわけでありますが、その差を差し引きをして、なおかつ日本の輸出にとっては非常に有利になった、こういう判断の上に立っておられる、こういうように了解していいわけですか。
  242. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この関係はなかなかデリケートでございまして、ガット交渉のときにはお互いに自分の国が得をして、差し引きでもって相手が損をするというようなことだとなかなか話がまとまらぬわけであります。そこでお互いにまとまるときには、これで両方とも利益をするだろうというようなところで話がまとまるわけでございますが、先ほど先生おっしゃられましたように、根本的には日本のような国は輸出を伸ばすということが日本の成長に非常に役に立つということでございますから、こういう交渉関税が下がるということは、基本的にいえば日本のためになるのだ、そういうふうに考えております。
  243. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣に、時間がないようですから、少し予定した段取りからはずれますが伺っておきます。  特恵関税の問題、これはまだ先のことだといえば先のことかもしれませんが、これは今日における非常に大きな問題になっておりますし、この特恵関税日本を除く先進国では日本ほどの影響はないという見方が一般的なんですが、中小企業あるいは農業というようなものはいわゆる二重構造、最近はあまりいわれなくなったのですが、二重構造がいまだに現存している非常に立ちおくれた分野、近代化がまだ進まない、格差が存在する、こういうようなことから、この中小企業を中心にする輸出が後進国の特恵でいわゆる関税ゼロか、あるいは最恵国待遇関税よりもかなり思い切った大幅なものがとられるに違いないわけであります。そういった場合に、これに対して日本の近代化の立ちおくれた中小企業の立場、これはいろいろあろうと思いますが、食器類だとか、はきものだとか、合板だとかあるいは輸出玩具のたぐいだとか、こういう中小企業製品というものは非常に打撃を受ける。ということは、中小企業がいまたいへんな恐怖を抱いている問題でありますけれども、しかし、大きな世界的な立場で、南北問題の解決、低開発国に対してある程度援助をしていくという立場からも、やはりこれは煮詰まる段階では日本の主張ばかり通すことはなかなか困難な場面も出るだろうと思うのです。この交渉に臨んでの態度は、去年の十一月ですか、閣議決定もされております。そういう方向だけで足りるのかどうか、もっとこれに対する日本の立場、かまえというものについてこの際大蔵大臣の考え方をお聞きいたし、特恵関税交渉、いわゆるUNCTAD等における日本態度がどういうものであって、どの辺までいま進行をしているのか。そして、この間須磨公使の談話によると、七〇年過ぎだというようなこともあるようですけれども、これは後進国のかなり強い要請もあって早まる可能性もあるのじゃないか。それに臨む日本の基本的な態度と、さらにこれが実施される段階においてどういう影響を受けるか、これに対して国内の対策をどうすべきか、こういう問題についてひとつ大臣からお答えいただきたい。
  244. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本の産業はまだ一面後進性を持っておりますので、その点において他の先進国よりは特恵関税問題の影響が大きいという事情はございますが、しかし、いずれにしろこの問題は踏み切るべきであるというので、政府の態度としましては、特恵関税問題はもう踏み切っております。そこで、他の諸国と比べて日本にはいま言ったような一つの特殊性がございますので、単に輸入だけじゃなくて、輸出においても各国が平等の負担をすべきだということを日本はいままで主張してまいりましたが、当初はなかなか他国は聞かなかったのでございますが、ようやく先進国間においても日本の主張はもっともだというので、これを一応取り入れる方向へ来ましたので、したがって今後、最後にこれがきまるときには、こういう問題は相当考慮されるというふうに考えております。後進国といっても、もう相当の競争力が出ているというような商品につきましては、これは例外品目にしてよろしいのですし、そういう点において今後日本の主張もある程度いれられるという状態になろうと考えています。  そこで、そういう意味日本もいろいろ準備しておりますが、いまの状態を見ますと、低開発国側は農産加工品を原則としてこれに含めるべきだということを強く主張しておりますが、先進国間においてはなかなかこれを承知しないというようなことでいま会議が対立しているときでございますので、こういう問題を解決しながら、いま言った日本の主張している、日本中小企業影響をなくするような方向のいろいろな諸措置が合意されるというまでには、まだまだいまの情勢では私なかなかひまがかかることではないかというふうに考えています。いずれにしましても、ひまがかかりましても、特恵関税というものを踏み切ろうとする以上は、もうこれから国内における低生産性部門の産業に対する近代化施策の推進というものは急速に進めなければなりませんので、今後並行してこちらの施策に力を入れる必要があるというふうに考えております。
  245. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵大臣、もう一つだけ伺いますが、先ほどから中国との貿易の問題も、総理並びに大蔵大臣に午前中から御質問があったわけでありますが、こういう特恵関税ども含めまして、日本の国際輸出環境がだんだんきびしくなってくる中で、やはりこういうときにこそ、いままで伸び悩んでおってようやく覚書貿易の段階で一年契約された、こういうものにもう少し積極的な立場を当然とるべきだろうと思いますが、たいして前進した答弁がいただけないわけです。こういう問題でやはり中国貿易というものをもっと前向きに前進をさせていく、貿易規模も拡大していく。ようやく六八年一年限りの覚書貿易で往復で一億二、三千万ドルぐらいですか、こういうものが妥結をされましたけれども、これは七億の人口のいる中国相手の貿易なんですから、しかも隣国なんですから、こういうものをわずか一千万人足らずの台湾、国民政府というようなものに何か遠慮をしたような形で、輸銀の延べ払いなんかにも踏み切れないというようなことであってはならないだろうと私は思うのですね。こういうときこそやはりふん切っていく、そしてそのほうを拡大させていく方向をいろいろな形で一これは政経不可分、可分というようなことがあるにしても、もっと日本の輸出も拡大し、また輸入も拡大する、そういう方向を当然とっていくべきだろうと思うのですが、それについてのお考えを……。これはいろいろあると思うのです。そういう政治原則を政府が言われるなら言われるでよろしい。しかしながら、貿易をその立場において拡大する方法というものがあるだろうと思うのですよ。そういうものについては、今度の関税の問題なんかについても、中国に対して差別待遇をやるというようなことぐらいはせめてやらない。それでこちらに対する輸入が増大すれば必ず輸出は増大するはずです。今日でも輸出のほうが多いわけです、いわゆる出超になっている国なんですから。そういうことで、その点からも少なくともこの関税の問題などはいわゆる便益を供与するという立場にお立ちになるべきだと思うのですが、いかがですか。
  246. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この協定税率国定税率の間に差ができてきて、これが貿易の縮小に働くようなことは私どもも望んでおりませんので、したがって今回の場合も、中共主要輸入品である銑鉄とか大豆についていま御審議を願っておるようなああいう措置をとって、相当部分は影響のないようにするという考え方を私どもは持っております。しかし、これはやはり相互主義の問題でございまして、急に全部この協定税率に直せるというものではございません。日本で必要だと思いますものは、これは関税日本でも直していくことも必要でございましょうが、やはり日中の貿易をもっと拡大しようというからには、先方もいま持っておる二重税率日本には一つ適用しないという差別を持たれたのでは、これは一方的になりますので、今後こういう問題についても、協定税率に近づいていくような措置を両国でやはり研究するという方向へいくことを私どもは希望しておりますが、一方的ではなかなかこの問題は解決しないんじゃないかと思います。
  247. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 もう一つだけ答えてください。大蔵大臣は中華人民共和国は低開発国と思われますか。
  248. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 低開発国とは思いません。
  249. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 あまり引きとめても悪いですからこの辺でけっこうです。またあとでこの問題、繰り返しやりたいと思います。約束ですからどうぞ。  通産省、来ておられますね。先ほど大蔵大臣が、通産当局においてもこの輸出目標を達成するために品目別に非常に精密な積み重ねの予測の作業もやられた、こういうことでありますが、百二十億ドルの輸出を達成するために、どういう品目を中心に、そしてどういう輸出先で、どういう国に対してどの品目がどのくらい伸びるのだという、大どころだけでけっこうですから、その非常に精緻な計算をされた大づかみのところをひとつ、かくかくによってかくかくでかくのごとしというものを数字で、主要なるものでけっこうですからお願いいたします。
  250. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 ただいまの御質問でありますが、来年度の一四・五%、百二十五億の具体的な品目別、市場別の昨年度に比較いたしますアップ率等につきまして、実は本日手元にその資料がございません。具体的なその数字につきましては、ただいまお答えできないのでございます。
  251. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 資料の持ち合わせがないということでございますから、これはそれではあとでひとつ百二十一億五千万ドルのこの輸出の見込み、こういうようなものがどういう品目がどこの国に対してどのくらいの伸びであるかというような、大蔵大臣もさっきそういうことで精密な計算ができているんだ、こういうことがありますから、ひとっこれを資料としてこの委員会提出していただけますか。
  252. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 ただいま先生のおっしゃいましたように、精密な具体的品目ごとの積み上げ計算という作業でもっていたしておりませんから、先生おっしゃいましたような御趣旨の資料というものはございません次第であります。
  253. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 先ほどの大蔵大臣の答弁と違うわけであります。私はかなり心配があると言ったのですよ。これは私もそういう精緻な数字というものを持ってないから、したがって全般的な情勢なり動向なりというようなことから、あるいは輸出先国の経済見通しなりというようなものについて、大まかな推定に基づいて、ちょっとこれは困難があるのじゃないか、よほどしっかりしないとこれはだめだぞという気持ちで言ったわけですよ。そうしたら大蔵大臣は、通産当局においても非常に品目別に積み重ねの計算等もしておりまして、それとも突き合わせて十分検討したんだからこれは間違いのない数字だ、こうおっしゃったわけですよ。だからあなた方は、当然それはあるはずなんですよ。どこの国に一体どのくらい伸びるだろうか、そうしてどういう品目が何%くらい伸びるだろうか、こういう主要なものぐらい——これは何万とある品目全部を出せということは不可能でありますけれども、大どころのものを、一番金額の多いほうから十なり二十なりという程度の品目をとる、それから主要な輸出国十ヵ国なり二十ヵ国なりとるという程度で、そのほかのものはその他でくくってもけっこうですから、その程度のことはやっていらっしゃるでしょう。それすらもないのですか。ないとすれば、大蔵大臣の答弁はまさにうそを言ったことになりますよ。これはいいかげんな答弁をしたということですよ。
  254. 倉成正

    ○倉成政府委員 ちょっと私から補足したいと思いますが、大蔵大臣が申しましたのは、弾性値というのはさまってある数字ではなくて、いろいろ過去のトレンドをずっと伸ばして大体こういうことになるという、結果的に出てくるのが弾性値ということは、広瀬委員御承知のとおりであります。したがって大蔵大臣は、通産省は各地域別にもそういうトレンドなりなんなりの数字を積み上げておる数字があるだろう、こういうことを精緻なということばで表現したと思うのです。ですから、通産省のほうでおそらく、こまかい弾性値とかなんとかいうことでこまかくぎりぎり詰めていくと問題があるかと思いますが、大まかなそういった過去のトレンドについての数字はある程度出せるのじゃないかと思います。
  255. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そういうトレンドであるとかあるいは弾性値が二ぐらいだとかそういうようなことは、これはもうわかっているのですよ。そういうものをわかった上で、いろいろな情勢からいって心配だと言ったら、そういう積み重ね作業もやっております、それとの突き合わせにおいてと言うのですから、これはあるはずなんですよ。なければ、通産省だってこれはおかしいじゃないですか。だから、そういうものについて出せる限りの資料は出してもらわないと、審議は十分できませんよ。これは必要最小限——私もわからぬ話をしているわけじゃないです。何もかも出せと言っているわけじゃない。さっきも言ったように、限定つきのもので、その程度のものは出せるんじゃないですか。そうすればお互いに審議にも非常に便利だし、それから今度の関税とのからみにおいてもお互い分析することも可能になるわけですね。だから、そういうようなものについて出せる限りのものはやっぱり出してもらいたいと思うのです。政務次官、そう通産省を弁護してよけいなことを言わぬでもらってけっこうです。
  256. 倉成正

    ○倉成政府委員 通産を弁護する意味ではなくて、通産省でもこまかく責任のある弾性値とかいうことになると、とてもそういうものは、結果的に出るものですから、ないと思います。また、共産圏貿易等については必ずしもそういうトレンドがものを言わないという面もございますし、いろいろなむずかしい点があると思います。しかし、広瀬委員のおっしゃる意味もよくわかりますから、部内でできるだけ御検討に参考になるようなぐあいにくふうをいたしてみたいと思います。
  257. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それじゃ、政務次官がいま答えられたように、通産当局もできる限りのものを出してください。ぼくは不可能を要求していません。  そこで、特恵関税の問題へ入りましたものですから通産省に聞いておきますが、この特恵関税が実施された場合に一番影響を受ける産業、こういうようなものはある程度地域ごとにそれぞれ片寄るといいますか地域性を持つものがあります。たとえば新潟の食器のごとく、あるいは名古屋地方の合板のごとく、あるいは東京とか関東近辺の玩具類とか、それからはきものとかいろいろあると思いますが、こういうようなものがいまどういう状態で、それらの特恵関税適用された場合にそういう日本業者影響を受けるわけですけれども、そういうものがどういうぐあいに——あるいは韓国だとかあるいは台湾だとか、あるいは香港だとか、そういうようなものとの関係においてどういう程度の影響を受けるかという、こういうものについて大体どういうものが競合するだろうかという品目、あるいはそういうものが輸出の中でどの程度占めているのか、こういうような資料もひとつ出しておいていただきたいと思うわけです。
  258. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 ただいまのお話でありますが、申し上げるまでもなく特恵関税の問題はいまUNCTADで協議中でございますので、まだ対象品目なりあるいは例外の規定なり税率の下げ幅なり等々につきまして具体的なものはきまっておらない段階でございます。もちろん日本の産業といたしましては、先生のおっしゃいましたように、特に低開発国の追い上げといいますか、競合いたします労働集約的な、特に繊維、雑貨等の中小企業につきましては、それらの具体的な下げ幅、例外品目等の内容によりましては相当影響があるものがあると考えられます。しかし、まだそういった特恵の内容それ自体がきまっておらない段階でございますから、業種別にどういう業種がどういう影響があるかということは、まだ通産省といたしましても具体的な検討はいたしておりません。
  259. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 具体的な検討をいたしておらないというのではしようないのですけれども、しかし、これはそれぞれの業界においていま最大の問題になっている。しかも日本の輸出の中でもこういう軽工業品目と申しますか中小企業製品というものがまだまだ相当なウエートも持っているわけであるますから、それらについて……。    〔金子(一)委員長代理退席、渡辺(美)委員長代理着席〕 いま特恵供与を求めている国が、たとえばアメリカと前提しましょう、アメリカに対して輸出しているもので、日本がたとえば先ほど私が幾つか品目をあげましたが、そういうようなものや、あるいは繊維製品やこういうもので競合関係に立って特恵の影響を非常に受けるであろうと思われる業種を、それではあげてみてくれませんか。
  260. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 ただいま申し上げましたように、前提条件といたしまして……。
  261. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 前提を置いてもいいです。
  262. 佐々木敏

    ○佐々木説明員 下げ幅あるいは対象品目、例外規定ということがきまっておりませんから、それがどの程度、どういう品目がどの国の商品と競合して影響を受けるか。私ども影響というものは輸入面と輸出面の両方あろうと思いますけれども、ただいま申し上げましたような条件がはっきりいたしておりませんから、具体的な品目につきましては申し上げられない段階でありますので……。
  263. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 あなたは課長だから、何か非常に遠慮をしておるわけでありますが、商工委員会ですか、あそこあたりではもっとかなり突っ込んだ対策を、一体どうするんだというようなところまでやっているわけですよ。それなりに通産大臣もいろいろな場合を想定してお答えになっている。現実に、大体日本の対米輸出の中でどういうものが、たとえば香港からの輸出、あるいは韓国からの輸出、あるいは台湾からの輸出というようなことと競合する品目であるかということがわからぬはずはないですよ、この段階に来て。まだきまってないからそれは検討もしていないのだという言い方では、これは非常におかしなことになります。これはこれ以上あなたを追及しても何も言いそうにないから、いずれ局長なり通産大臣なりに来てもらってやらなければいかぬと思います。私も商工委員会にちょっと出席していまして、そのやりとりも聞いたわけでありますけれども、もっと正確なかなり突っ込んだ答弁もあるわけなんですよ。だから、そういうようなものについてさらにそれを深めようとしたわけですけれども、なかなかそれができないというのならば、これはやはり大臣なり局長なりに来てもらってやらなければいかぬと思います。その点については質問を留保しておきたいと思います。  農林省に伺いますが、農産加工品、これもまた非常に問題になるところだと思いますが、この問題について、特恵関税について検討をしている状況をひとつこの際御説明していただきたいと思います。
  264. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 農林省の担当の人が来ておりませんので、私からかわって概略答弁させていただきます。  特恵につきましては、四カ国の報告というものができまして、それに対して日本は特に輸出の面での影響が困るから、その面も考えてくれというようなことを申しまして、四カ国の報告というものが修正されまして、OECDできまりまして国連の貿易開発会議に出たわけでございます。その段階では農産加工品はケース・バイ・ケースでやるということになっております。国連の貿易開発会議に出ますと、これは御承知のように、後進国の中のおくれた後進国のほうが製品、半製品では自分らのところにあまり利益がない。そこで農産加工品について非常にやかましく言っておる段階でございます。それに対して先進国のほうは、農産加工品はケース・バイ・ケースでなければだめだということでいま突っぱっている、そういう段階でございます。
  265. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いずれまたこの問題詳しくやりたいと思いますが、今度関税局長にお伺いしますが、今度の予算書の中で関税の収入見込みが二千六百八億円、それで説明によりますと現行法による収入見込みが二千六百八億円、改正法による収入見込みもやはり二千六百八億円である。まことに数字をきちんと合わせたものだと感心をしておるわけでありますが、これはたまたま偶然にそうなったのでありますか、それとも何かこういうようなスタイルをとる、国際的なあるいはガットあるいはOECD、あるいはUNCTAD、そういうようなものとの関係においてこういうものが出てきましたか。全く同額にぴしゃっと、関税収入においては改正をしなくてもしても同じだ。そういう数字が出た理由を説明していただきたい。
  266. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 関税収入の一般会計のほうの内訳でございますが、四十二年度の補正で二千六百十九億と見込んでおります。そこで今度は四十三年度の計算でございますが、これは一応税制の改正がないという前提で四十三年度の税収を計算いたします。そのあとケネディラウンドその他いま御審議願っております改正がございますので、そういうのを引きますと、結論として二千六百八億、これがいま御審議願っております法律改正と、それからケネディラウンド条約と両方通ったときの数字でございます。結局しりだけを見ますと、大体二千六百十六億と八億とあまり違わぬじゃないかという御質問だと思いますが、それはしりを合わせようとしてやったわけではございませんで、そういう作業をした結果がこういうことになった、こういうことでございます。
  267. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それじゃたまたまそういうことに計算上なったということ以外にほかの理由はない、こういうことに理解していいわけですね。あまりにも数字がぴしゃっと合い過ぎておるし、しかも現行法による収入見込みというのと、それから改正法による収入見込みが一億も違わないで出てきておるというところに何らかの背景というようなものが、国際的に気がねをするというふうな事態があったのかどうかというような疑問を持ったものですからそれを聞いたわけです。
  268. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 御質問のような御疑問を持たれた原因は、この四十三年度の租税及び印紙収入のところで、税制改正による増減のところがゼロになっております。そこで先生おっしゃられますように、増減がゼロということで結論を出したのではないか、こういう御質問だと思います。それは実は、この税制改正というのは内国税の関係だけなものですから、そこでここのところには増減税の関係はゼロとなっておりますが、関税だけ申しますと、先ほど申しましたように二千六百十六億と二千六百八億、これは別にしりを大体同じにしようという意図があったわけではございませんで、何ら措置をしない場合の税収の見積もりを計算いたしまして、そのあとケネディラウンドとかその他の増減を計算いたしまして、結果として二千六百八億ということになりまして、大体の数字が非常に合っておりますから、何かしりを合わせたのではないかという御疑問を持たれたと思いますが、それはそうではございません。
  269. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それじゃそれはけっこうです。  次に進みたいと思います。十分ぐらいでやめろということでございますが、もうちょっとお願いしたいのですが、対中国貿易関係で午前中からいろいろ問題が出されているわけですけれども、たとえば生糸あるいは絹製品絹織物ですか、これらについてたとえば現在一五%のものが譲許税率で七・五%になる。ところが、中国は非適用の国であるということで、おそらく一五%そのままになるだろうと思うのですが、そういうことに了解していいわけですね。
  270. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これはあとで蚕糸局のほうからまた補足の説明があると思いますけれども、いまの御質問の点でございますが、ケネディラウンドというのは大体五年間に日本の場合は四段階でございます。だんだん下がっていって、先生おっしゃるように一五%が最後は七・五になる、こういうことでございます。今度は日本で申しますと、四月一日第一回の五分の二だけの引き下げがある。将来どうするかという問題でございますが、それはあとで蚕糸局から説明があると思いますけれども、私ども国内に対する影響一つ一つ考えまして、下げてもいいというものができれば、ちょうど今度大豆銑鉄ケネディラウンドに合わせまして国定税率を下げておりますから、そういう措置をとりたい、こういうふうに考えております。なお、具体的に生糸に関しましては蚕糸局からまた御答弁をしていただきたいと思います。
  271. 池田俊也

    ○池田政府委員 生糸関税でございますが、これにつきましては、実はただいまのところは従来どおり中共に対しましては一五%の関税でいきたい、こういう気持ちでございます。けれども、ただ、これは生糸の輸入を今後どういうふうに考えていったらよろしいだろうかということと実は関連がある問題でございます。最近、御承知のように生糸の輸入が非常にふえているわけでございます。現在の市価水準から申しますと、輸入があるということは国内にさほどの影響を実は与えておりません。しかしながら、われわれといたしましては関税制度というのは、いまさら言うまでもございませんけれども、これは長い目で考えなければいけない。そうなりますと、国内の需給状況が非常に悪いときに多量の生糸が安い関税で入ってくるということになりますと、そこに生産者に対する影響等も考えなければなりませんので、私どもといたしましては今後輸入制度をどうするかということとあわせて関税率の問題も検討してまいりたい、こういう気持ちでおります。
  272. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、ちょっと数字を聞きたいのですけれども、現在国内の生産量が、昭和四十二年度で、一九六六年までしか見ておりませんが、三十一万一千五百七十二俵だ、これに対して、輸入が六六年の段階では一万八千九百七十俵程度、六・一%くらいしか輸入はないわけなんですが、これは国内でこの需要の増大の傾向というものが、たとえば六五年には輸入は五千百十九俵だけだったのが、一躍一年に三倍にも伸びた。これは数量はまだ六・一%というわずかであるにしても、伸び率はきわめて高い。こういう伸び率でいったら、これはかなり需要が旺盛であろう、一体国内の生産がそういう需要を満たすだけ伸ばしていける計画になっているのかどうか、そして養蚕業というものの性格からいって、そう急速に今日の農業の構造の中で伸ばし得るのかどうか、こういうような点について数字をひとつ、計画があればその計画に従って需要とそれから国内産業の供給の自給できる度合いというようなものをどの程度にお考えなのか、こういう点について伺いたい。
  273. 池田俊也

    ○池田政府委員 最近におきます需給の数字は、先生御指摘になりましたようなことでございます。ただ、これは今後私どもの政策努力が非常に影響するとは思いますけれども、最近におきます農村における繭の生産に対する意欲は非常に強いわけでございます。これは、糸価が非常に高いために、農家の栽培する作物といたしましては、他の作物と比べてかなり採算がよろしいわけでございます。そういうわけで、今後私どもといたしましては、かなりの生産増を実は期待しておるわけでございます。これは非常にはっきりした数字ではございませんけれども、従来、私どもが作業いたしておりますところでは、昭和五十一年、大体十年先におきましては、生産量といたしましては約四十九万俵の生糸の生産をいたしたい。その時期におきます生糸の需要でございますが、これは約五十万俵程度ではなかろうか、こういうふうに想定をいたしておるわけでございます。もちろん、これはかなり政策努力が要るということは承知いたしておるわけでございますけれども、それまで生産を伸ばすことはあながち不可能ではない、こういう感じを持っておるわけでございます。
  274. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 先ほど局長は、関税をどんどん安くして外国から安いものが入るということが、日本の農民にとって脅威にならないということを言われたわけですが、私もそれは、そういう一面が当然あってしかるべきだと思うわけであります。それならばこれは、関税局長にまたお伺いしたいのですが、中国のほかに韓国からもかなり入ってきておりますね。あるいは台湾からも少し入っておるのだと思います。あるいはイタリアからも入っておるのだと思いますが、それらの国は、いずれもケネディラウンドによる譲許税率がやはり適用される、そういう国じゃございませんか。
  275. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 まず初めに、ことばが足りなくて誤解を招くといけませんので、ことばを足しますと、いろんなものがどんどん輸入になって、たとえば農業に限っても、どんなものが輸入になってもちっとも困らぬということではございません。ものによって非常に困るものがあるということで、結局一般論としては、関税を引き下げていくということが好ましいのでございますけれども、具体的にどれを下げるかという場合には、一つ一つ影響考えないといかぬ、そういうふうに思っております。  そこで、いまお話がございましたように、中共のほかにも、ほかの国から、ガット加盟国からの輸入が生糸について起こって、それは関税が下がるのではないかとおっしゃいますが、それはそのとおりでございます。その他の国につきましては、関税が下がりましても何とかやっていける、困るような状況はさしあたり起こらぬだろう、そういうことでそちらのほうは譲許いたしましたけれども中共につきましては、これは蚕糸局から先ほども説明がございましたように、まだいろんな問題があるので、それをすぐ中共に及ぼすというのは、現在の段階では無理だ、そういうふうに考えております。
  276. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、ガット加盟国である韓国等から輸入するものについては、譲許税率を徐々に適用して、五カ年間で七・五%まで引き下げていく。中国生糸がいまこういうぐあいにかなりな速度で伸びてきた。それに対して、今度のガットによる関税率改正をもって中共品物はできるだけ締め出したい、韓国のようなところからはどんどん買いたい、こういうような矛盾がやはり当然出てくるわけですね。韓国をもうけさせて、中共はシャットアウトしたい、こういう意図が——これは疑うなと言っても、当然出てくる議論になりますね。これは中国生糸が非常に品物が悪くてどうにも使いようがないんだとか、あるいは中国のやつは採算が非常に高いんだとか、そういうようなことがあるから、そういうことをするのですか。それとも中国からの値段の問題、韓国からの輸入の問題、この価格の問題はどういうことになっておりますか。
  277. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 まず第一に、今度暫定措置法で生糸につきましては何も措置しておりません。しかし、将来とも全然措置しないのかどうかということは、先ほど蚕糸局長が説明いたしましたように、いろいろの条件を考えて将来のことはしなければならない。さしあたり来年度は、暫定措置法では下げない、こういうことでございます。  それから、価格、品質ということでございますが、これはまた関税の問題について非常に不思議なことが起こるわけでございますが、相手の国が非常に質が悪いとか、それから価格が高いとかいうことは、別に関税を下げましても影響はないわけでございます。ところが、相手が非常に生産量が多いだろう、あるいは価格が安いんだろう、そういう場合には、そこの関税を下げるということはよほど慎重にしたい、考えなければいかぬ、そういうことでございまして、国別に差別しようということではありませんで、生糸の問題については、そういうことを考えて、いま直ちに譲許税率を同じにするということには踏み切れなかった、そういうことでございます。
  278. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 委員長からだいぶしばしばの御注意で時間時間と言われておりますので、まだまだ質問の五分の一くらいしかやっていないのですけれども、いまの局長答弁の中にやはり重要な問題があると思うのです。もし、そういう生産量も非常にあるという国で、しかも価格も安いんだという状況が一つある。それで日本の場合には、いま生産が四十九万俵くらいに——これは五十年の目標ですか。
  279. 池田俊也

    ○池田政府委員 五十一年でございます。
  280. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それにしても、一万俵くらいの輸入は当然と言わなければならぬ、需給の関係からですね。そういうところであったならば、日本の国内の需要もそういうようにふえていく、それに見合いながら日本の国内産業、養蚕業を圧迫しない、日本の農民をちゃんと保護しながら、しかもそれはこういうような不平等税率適用するということじゃなしに、いわゆるタリフクォータというか、割当関税ということだって、これはできるのじゃないでしょうか、そういう措置だってある。ところが、こういうことで税率そのもので極端に差をつけてくるというようなことは、いかにも対中国貿易においても敵視政策をとっているというような印象をぬぐい切れないと思うのです。ほかに何も方法がない、これは国内産業がもろにかぶつちゃうというような場合だったら、日本の農業を保護するという立場も当然あってよろしい。しかし、それには方法があると思うのです。こういうようにきわめて露骨な形で、片方は七・五%まで引き下げていきます、しかもそれは韓国あたりが中国からの輸入と並行しながらふえてきているわけですから、そのほうには極端なメリットを出している、中国にはそれをシャットアウトする、こういう形というものは何としてもわれわれ納得できない。日本の養蚕業を保護するというたてまえを貫きながらなおかつそういうやり方だってあるじゃないか。こういうことを考えれば、これはいま局長がおっしゃったような答弁では私どもどうしても納得できない。これは政務次官、どうですか。
  281. 池田俊也

    ○池田政府委員 ただいま先生御指摘になりましたことは、非常にごもっともな点があるわけでございます。私どもといたしまして、中共と韓国とをことさらに取り扱いを違えようという気持ちは本来ないわけでございます。ただ考えなければなりませんことは、これは的確にはわかりませんが、中共と韓国の生糸の生産に対する力の違いといいますか、あるいは生産費というような問題があるわけでございます。もちろん生産費も韓国がどうで中共がどうということは的確にはわかりませんけれども、従来輸入しております価格等から想定をいたしますと、中共のほうがキロ当たりにいたしまして約千円くらい安いわけでございます。おそらく生産費もやはりある程度は安いのじゃなかろうかというような感じを持っているわけでございます。それから生産の量でございますけれども、これは韓国も非常に熱心でございますが、やはり潜在能力としては中共のほうがあるんじゃなかろうか、こういう感じを持っているわけでございます。そういう問題がございますが、しかしながら私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、価格が下がりましたときに生産農民に大きな被害を与えないという保障がございますならば、あるいは関税率を下げるということも考えられるわけでございます。そこいらにつきましては今後いろいろ検討いたしまして、何か適当な結論を得たい、こういう気持ちでいるわけでございます。
  282. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これ一問でやめますが、政務次官答えたがらないようですから、関税局長にもう一つお聞きいたします。  いま微妙な言い回しをされたわけですけれども、対中国貿易におきましても事態の推移を見ながら、日本の政府が不平等な扱いをしている、こういうような印象を与えないように、情勢に応じてガット加盟国でないいわゆる非適用国であるということであっても、特定な関税というか便益関税というか、そういう措置を弾力的に講じて、あまりにも差があるというような事態については考慮の余地はあるんだというような答えをされたと思うのですが、そういうことにとってよろしいんですか。  それから、これきりだということですから資料をひとつ要求しておきたいと思うのですが、いまの答えをいただくと同時に、ケネディラウンドの非適用国の一覧表をひとつ出していただきたいと思います。それから、それとの日本貿易、輸出入の実績、こういうものを資料としてお願いをいたしたいと思います。それから、便益関税の供与国及びその地域の一覧表、これら諸国との輸出入の実績表、こういうものをこの委員会にぜひひとつ出していただきたいと思います。  どうぞひとつお答えをいただきたい。
  283. 倉成正

    ○倉成政府委員 前段の点をお答えしたいと思います。  中共貿易を拡大していきたいということは政府としても考えておるところでございます。しばしば大蔵大臣その他関係大臣からも申したとおりでございます。  そこで、いま広瀬委員の御発言中、私は多少誤解があるんじゃないかと思いますので申し添えておきたいと思いますが、中共を特に不利な扱いにしておるということをしばしば言われますけれども、私どもはそう考えておりません。大体中共と外交がない、国交が回復してない、したがって正規のルートで中共のいろいろな情報を知ることができない。また、かりにわが国の輸出がありました場合にこれにクレームがついたりいろいろした場合でも、正規の外交ルートでこれをいろいろ保護するというわけになかなかいかないというような問題があるわけであります。それからまた、中共のとっておりますわが国に対する税率にしましても、最低税率とそれから普通税率とあることは御承知のとおりでございますが、高いほうを適用しているのではないかというようなこともいわれておるわけであります。したがって、中共とわが国との関係でそのまま何でも協定税率適用するということはいかがか。そうすれば、協定税率をお互いに関税交渉をやって、お互いの利益を——相互主義でありますから、利益を得た国もそうでない国も全部一緒に扱うということになるわけですから、これはやはりいささか問題があるのじゃなかろうか。しかし、そういう前提はありますけれども、やはりいろいろな点から考えて、銑鉄であるとか大豆であるとか、そういうものについてはやはり国定税率協定税率に近づけていく、変えていく、こういうことはわが国の産業上からも好ましいということで、やはりわが国の産業の立場、関税政策の立場から、わが国の国益を中心として中共に対する関税考えていくべきだと考えております。したがって、生糸の問題についても、農林省からもお答えがございましたように、決してわれわれも非常にかたくなに形式的に考えているわけではございません。したがって、将来いろいろそういった産業保護の面その他考慮しながら、そういう諸般の情勢を考慮していかがするかということを検討すべき問題であろうと考えておる次第であります。
  284. 村山喜一

    村山(喜)委員 関連。ただいま倉成政務次官からお話があり、さきに総理大臣のほうからも同じような趣旨のものがございました。いまお話のありました関税というのは双務的なものだ、これは私たちもその通り考えます。そこで国益を損するようなことにしたらまずいということもよくわかります。  では、お尋ねをいたしますが、中国関税制度というようなものについて、私もそういうような点を考えまして、いろいろ通産省関係のその専門に当たっておる諸君から資料を要求いたしまして聞いたのでございます。海関輸出入税則というものが一九五一年の中国法律でできておる。中身といたしましては、日本関税定率法に該当するものであるということは私たちも知っているわけであります。その中でいま普通税率と最低税率の二区分があるということもわかっております。しかし、これはそういうような制度があるけれども、一体これが発動をされているのかどうかということも、またいろいろ通産省に問いただしてみたのであります。ところが、制度はあるけれども中国との貿易は総輸入量と輸出量とのバーター的な関係に立つので、この税率幾らかけて幾らのなにで出しているのだというようなことについては、実際問題としては発動をしていない、こういうように報告を聞いております。  そこで、お尋ねをするわけですが、現実に貿易をやっている諸君に言わせると、関税の問題がこういうような制度になっているからこの問題についてはこのようにしてもらいたいという中国側の要求というものはない、かつてそのようなものがなされたことはない。これが友好貿易にいたしましてもあるいはLT貿易にしましても、実務からいえば同じそのような取り扱いになっているとわれわれは聞いている。だから、制度はあってもそれが発動されていないということになると、一体それはどういうようなことで、制度があるからだめなんだということをおっしゃるのか。    〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 それともその制度を日本と同じような制度で取り扱いをするように改正をしてからでなければ話にならないとおっしゃるのか、その点を明確にしておいてください。
  285. 倉成正

    ○倉成政府委員 先ほども前提として申し上げましたように、正規の外交ルートがないので正確な情報はなかなかわからないということが実態であります。私も、中国にも参りまして、いろいろ先方の関係の人、勇竜桂その他関係の専門家とお話をしましても、なかなか統計等を出してくれない。そういういろいろな点で、中国に対してわが国が知りたいことについて、まだ的確なものがつかめてないというのが実態じゃないかと思うわけであります。したがって、日本がこういった貿易のいろいろな態度をきめます場合には、やはりある程度的確な資料をもって自信を持たなければ、なかなか軽々にいろいろなことをきめるわけにはまいらないというふうに考えております。
  286. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 広瀬先生御要求の資料、なるべく早くつくって提出いたします。
  287. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  288. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題については、いまも政務次官もお認めになりましたように、国交関係が確立をされていないので、正確な状況をつかんでいないとおっしゃるのが正しいと思う。それで実際の貿易の取り扱いをしているのに対して、あなた方政府が直接タッチできなければ、ジェトロというような機関もあるわけですから、そういうようなところをなにして、的確な状況の把握を願わなければ、こういうような制度があるから、日本の国としても国益を考えなければならないというのが当たらないことになりますから、その点だけはまた次の機会でも、わかっておりましたら、この委員会に資料としてお出しをいただきたい。
  289. 田村元

    田村委員長 広沢賢一君。
  290. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 広瀬委員がいろいろといま聞きましたけれども生糸絹織物の問題については、以上のとおりで、広瀬さんは納得していないと思うのです。時間がないからやめただけで、納得はしていません。  私も、もう一つ関税局長にお聞きしますが、こういう問題についてお聞きしたいと思います。ちょっと読み上げますが、これは家畜の内臓の問題です、御承知のことと思いますが。「一部の友好商社は日本の家畜の内臓の消費量が増えていることから、メーカーの強い要請もあって中国産の冷凍品を輸入することをきめた。去年の秋のことである。このためわれわれは通産、農林、大蔵省に足を運んで輸入手つづきを相談し、指示を受けた。ご承知のように農林省では中国からの食肉の輸入をいまだに禁止したままでありこの内臓についてもきびしい態度をとって「一〇〇度C一時間煮沸して急速冷凍をかける」ことで輸入すると話がついた。これを基にして、通産、大蔵省は「これはAA物資で無税」という話だったことから話は予想外にすすんで輸入契約も結び、去年の暮から二〇トン、三〇トンと数社が荷揚げをはじめた。ところがである。゛ちょっと待った゛がかかった。大蔵省が「この内臓は煮たもの」であるから「調整品」つまりIQいわゆる外割物資として二五%の関税を支払えというのだ。特例としていま輸入したものは二五%の関税を支払えば内貨にしてもよいという妥協案が出されていると聞く。農林省の動物検疫の指図で仕方なく、煮てきたものを「調整品」としていまさら、IQ物資であるというやり方はまったく同意できない。輸入の」云々であと省略しますが、「アメリカ、 フランスから輸入している同一商品はいわゆる「湯通し」のためAA物資、無税であることに変わりはない。」という問題があります。こういうおかしい問題が一ぱい出てくるのです。たとえばいまの生糸の問題でも、全然これは釈然としない。それから次にこの問題、それから先ほど言われたいろいろの問題でもそうですが、まずその問題についてお答え願いたいと思います。
  291. 立川基

    ○立川説明員 ただいまお話のありました家畜の内臓についてでございますけれども、御存じのように口蹄疫その他の関係がございますので、現在中共から輸入できますものについては煮沸したものに限るという考え方をとっております。冷凍いたしましても口蹄疫その他の病疫につきましては心配がございますので、冷凍物については一応現在は輸入を認めておりません。
  292. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 そうすると、ここに書いてある事実はどうなんですか。全部相談して輸入を始めた、もう荷揚げした、そうしたら待ったがかかったという問題について、どうなんですか。
  293. 立川基

    ○立川説明員 その事実については、私たちはその輸入を始められた方に、現在われわれは、先ほど申し上げますように冷凍いたしましたものにつきましても輸入ができないというふうに考えておりますので、それを解除いたしまして輸入をしてよろしいというふうに言ったようには聞いておりません。
  294. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 それでは、アメリカやフランスから輸入している同一商品は、湯通しして無税であるということは事実ですか、どうですか。
  295. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 アメリカのものも煮沸すれば二五%ということでございます。
  296. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 アメリカのものも煮沸すれば二五%というけれども、ここにはやはり冷凍品は無税であることとなっていますが、どうですか。
  297. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 煮沸したものは二五%になりますが、煮沸してない冷凍品は一〇%だと思います。
  298. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これは私は質問を頼まれてこういうことをお聞きしているのですが、口蹄疫の問題についても、あれは農林省の役人ですね、行って、帰って、相当証明したことを、この前横山委員がここでもって質問しました。この問題についてもまだ全然片づいてないけれども、これはどういうわけですか。
  299. 立川基

    ○立川説明員 ただいまお話のございました中共の口蹄疫の問題でございますけれども、確かにお話のございましたように二回調査団が派遣されまして、向こうの事情を調べたことも事実でございます。それによりますと、戦前なりあるいは従来いわれておったよりか、中共における衛生状態が非常に改善されておるという御報告も出ておるわけでございます。ただ、その報告の内容につきまして、しからばそれだけで従来の伝染病予防法の観念からいたしまして、口蹄疫の心配がなくて輸入してよろしいかということにつきまして、その報告を受けまして国内におきます学識経験者の方々、ことに獣疫関係の方々に御相談をしたわけでございますけれども、現在までの段階での資料で十分だというふうに判断するにはまだ尚早ではなかろうか、そういうことで、さらに向こうにおける口蹄疫その他につきましての状況、ことにどういう型のビールスであるのか、それをどういうワクチンでやっておるのか、どういう判断をしておるのかというようないろいろな資料について要請をいたしまして、その資料が整った場合において、それによってはたして輸入すべきかどうかということを判断するのが適当だ、そういうふうに考えまして、そういう資料がない前に輸入を認めるということは早計だというふうに考えて今日まで至っておるわけであります。
  300. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほどの説明、ちょっと補足さしていただきます。  税率の話でございますが、胃と腸につきましては無税冷凍品、そういうことになります。
  301. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私の聞いているのは、初めから内臓だと言っているのですから、胃と腸は内臓なんですよ。  そこで、その問題を詳しく追及するより、私の主とした質問の目的は、つまり、口蹄疫でも、長いこと、いいと言ったり悪いと言ったりしてずっと引っぱってしまう、それから生糸の問題についても、韓国のは入れておいて、それからあとは国内生糸業、養蚕業のほうからいろいろ考えなければならぬということで、これもずっと引っぱってしまう。国別にやるのはむずかしいから物品別にいろいろ考慮すると言っていながら、今度一番焦点になっている、大豆銑鉄のあと焦点になっている生糸についてもこういう状況だし、総理大臣は先ほどわりあい否定的な意見も言っておられるということになると、これはどこまでがほんとうの理由なのか、どこまでが政治的理由なのかわからなくなってしまうのです。そういう状態だから、物でもって商品別にやっては、あとあと問題がずっと残ってしまうということをわれわれは強く主張するのです。  そこで、関税局長にお聞きしますが、中国便益関税国として、政令によって引き下げ措置を行なうことは可能ですか。
  302. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いまの便益関税という制度でございますが、まずガット等でお互いに代償を出して譲許した関税がございます。この譲許した関税ガットの加盟国に適用されます。それから二国間の条約でもって最恵国待遇を与える、こういうところにも適用されます。それからその次に、ガットにも入っていない、二国間条約にもない、あるいはガットで三十五条を適用される、そういうグループの中で国交があるというものがございます。そこで、実際にそういう国の中で、日本に対して差別待遇はしていない、そういうものにつきましては便益関税適用国に指定している、そういたしております。
  303. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 こういうことなんです。大体それはわかりましたけれども、もう一回聞きますけれども、政令でいろいろ手続はあるけれども法律的には政令でやるということは差しつかえないことなんでしょう。いいですか。差しつかえないことなんでしょう。
  304. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いまの関税の体系から申しますと、したがいまして、国交のない国を便益関税適用にあげるということは根本的に問題がある、そう思っております。
  305. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 私が念を押したのはどういうことかというと、あなたのほうの課長さんですが、政令で行なうことは可能だということを言っておられるはずなんですがね。それは、政令によって行なうことが可能だということは、法律的にですよ。それはどうですか。
  306. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 いろいろな問題がございますが、先生が御質問されているところは、そういう問題を無視して、便益関税の国のところへ中共ということを書くことができないのかどうかという御質問だろうと思います。
  307. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 政令で……。
  308. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 その問題につきましては、ほかのいろいろな問題ももう御承知だろうと思いますから、その関税率の体系とかそういうことは抜きにいたしまして、そこでそういう問題を無視して、非常に抽象的に申しまして、政令で中共と書くのはできるかできないかという問題にしぼりますと、それは非常に問題がある、そういうふうに思っております。
  309. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 何で問題があるのですか。非常に問題があるというのは、具体的な中身をお聞きをしたい。
  310. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これはなかなかむずかしい問題でございますが、承認していないところを国ということで扱うのがいいかどうかということにつきまして問題があるということでございます。
  311. 広沢賢一

    広沢(賢)委員 これはきわめて重大な問題です。笑いごとじゃないのです。笑っている人は国の利益を考えないと思うのです。なぜかといったら、日中貿易というのは、古井さんがあんなに一生懸命になってようやくLT貿易をつないできた。これは一年の期限ですよ、前はずっと長かったが。先ほど大蔵大臣もおっしゃったとおりです。そういう状態中国貿易というものは危機にある状態なんです。その危機にある状態で前向きにいくということが大切なんです。ところが前向きにいかないで、だんだんだんだん、今度の関税定率の改正でも、品目貿易するに従って広がっていくような場合、どんどん抵触するものが出てくる。それで品目別に、一番大きい生糸ですら明らかでないということになれば、これは大問題としてやはり真剣に取り組まなければならぬ問題です。そういう場合に何か方法はないかということで真剣に聞いているわけなんです。そうすればそこのところへ、ただその政令にそういうことばを入れていいのかどうかという問題になる。これは北朝鮮も同じだし、その他の未回復国もみなそうだと思うのです。そういう場合に、何らかの措置がないかということをお互いに相談し合って、これは問題だ、問題じゃないかといってやる。私のほうから見れば、政令に中共と書いても何にも問題はない。それに対して、第三国なんか騒ぐ、こういう問題があるのではないかといわれております。これは、名委員長がもうこれでいいのではないかと言うから私は留保して、それできょうはやめにしますけれども、この問題の決着がつかなければ、これはただでは済まない問題だと思います。  以上です。
  312. 田村元

    田村委員長 次回は、来たる十五日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時九分散会