○広沢(賢)
委員 私は、
日本社会党を代表して、
日本開発銀行法の一部を
改正する
法律案に反対する討論を行なうものであります。
同
改正法案は、
日本開発銀行の借り入れ及び債券発行の限度を自己
資本の四倍から五倍に引き上げるものでありますが、これに反対する理由の第一は、開発銀行の
融資内容が、今日の
国民経済及び
国民生活の実情と課題から見て、あまりにも独占大企業本位に片寄っているからであります。
開発銀行の
資本金は、
政府の産投特別会計からの
出資金二千三百三十九億七千百万円からなっております。この産投特別会計は、
一般会計、すなわち
国民の税金及びその他の特別会計からの繰り入れで構成されています。さらに、今年度でも
資金運用部
資金借り入れ金千八百三十億円を繰り入れております。いわば、間接的に
国民の大切な血税や預貯金が使われているこの開発銀行の
融資がどのように使われているかは、税金や
一般会計が厳密に
国会審議を経ているように、本来は一切
国会で明らかにしなければならない事柄であります。ところが、本
委員会の
質問、
審議で明らかにされたとおり、
政府は、どこの会社やホテルに
融資されているか、一覧表さえ
提出することをためらっているのであります。きわめて遺憾なことであります。
この問題は、
国会審議のあり方として、あらためて大きな問題とすべきでありますが、当面おおまかな業種別
融資を検討しましても、一兆一千七百九十九億円の
貸し付け残高の六一・八%を電力、海運の二つの独占的大企業に集中しており、しかも、その貸し出し条件は、六分五厘の安い利子で貸し出されております。さらにまた、電子工業が同じ
措置をとられており、しかも
貸し付け年限が非常に長期にわたるため、開銀の基準金利は八分二厘であるといいながら、実際には、たとえば四十二年度
貸し付け金利息
予定額を四十一年度末
貸し付け残高と四十二年度
貸し付け残高
予定の合計で割った年平均利子は五分七厘の安い利子で、しかも平均貸し出し期間は十八年の長きにわたるものであります。もし今日の金融引き締め下で、一方的に引き締めのしわ寄せを受け、五−六月には、倒産の危機は未曾有の量に達するであろうといわれている中小企業に対して、こうした二千数百億円の大量に及ぶ
資金が、このように安い利子で長期の
貸し付けが行なわれるとしたら、事態は目立って急変し、中小経営の構造的な改善、近代化も大きく前進することは明らかであります。
ところが、前
国会で大蔵
大臣は、物価対策の上からも、中小企業近代化と経済の二重構造の解消のために、中小企業金融公庫、
国民金融公庫商工金庫など、
政府三機関の
貸し付け条件をこれ以上よくするためには、これらの
資本金の増額が必要であることを認め、次の
予算で考えるといいながら、四十三年度
予算では、産投からの中小企業金融公庫への
出資わずか三億円以外に何ら
資本金増額は行なっていないのであります。そのため、これら三機関は、一けた低いわずか二、三百億円の
資本金のまま、しかも
融資ワクの増加も主として自己
資金増でまかなうというやり方です。
さらに、開銀と同様に、主として独占大企業に対して
融資をしている輸出入銀行の
資本金をも開銀と合計すると、実に四千四百六十七億円に及ぶのであります。この一事をもってしても、
政府の施策が、いかに独占大企業偏重であるか、明々白々たるものがあるではありませんか。私たちは、こうした開銀
融資のあり方を断じて許すことはできないのであります。
反対理由の第二は、最近の開銀
融資の
役割りの変遷において、きわめて不明瞭なものがあるということであります。
第一に、このたびの大蔵
委員会で明らかにされたことは、開銀
融資が、軍需
産業に貸し出されていることであります。初めはその額が少なくても、第三次防衛力増強計画、兵器国産化が進むにつれて、次第にこうした軍需
産業への
政府融資が増額されていくことは、平和憲法のもとの経済運営として断じて許すことはできません。
第二に、開銀の歴史は、二十年代の復興期には、石炭、電力、海運、鉄鋼を中心に
融資が行なわれ、三十年代半ばには、貿易自由化に対処するとして自動車、石油化学、特殊鋼への体制金融が行なわれ、さらに、四十年以降、
資本自由化への対処として、電子工業、特定機械、繊維、アンモニア等への
融資が加わりました。すなわち、基幹
産業が、それぞれこれらの特別優遇によって巨額な利潤をあげて自立するにつれて、
融資の重点が体制金融、構造金融へと移行してきたわけでありますが、同時に、その
融資先はさらに広がって、地域開発、観光ホテル建設、さらに、これらのための土地取得
資金にまで
政府融資を広げているのであります。先年、汚職不正の重大問題となった共和製糖に対しては、その一部は地域開発という名目で開銀
融資も行なわれているのであります。これらホテル建設にまで開銀
融資が行なわれているということは、輸出振興と経済建設の基本
性格からはるかにはずれた消費的
融資となるおそれを持っているのであります。大切な
国民の
資金が、再び黒い霧に使われるおそれを持っていることを強く警告しなければなりません。
しかも、こうした独占的大企業や観光会社、大ホテル等は、いずれも傘下に二つも三つもの不動産会社を持ち、物価よりはるかに高い、戦前比二、三千倍の値段にはね上がった土地の投機買い締めを行なっているのが
常識になっているのであります。この会社の土地買い締めこそ、
政府の住宅建設を困難におとしいれている大きな原因の一つであります。春秋の論法を借りれば、
国民の大切な
資金、
政府資金が、開銀等を経由してそれが住宅建設の阻害要因となるおそれを持っているわけであります。
こうしたばかげたことにならないためには、今後の開銀
融資のあり方及び
融資先について、
国会は徹底的に究明しなければならないと思うのであります。
以上が、第二の反対理由でありますが、同時に、今回の法案
審議を通じて大蔵
大臣は、
資本金一億円程度以下の中堅企業に対しても、開銀
融資の道を開くことをお約束なさいました。このことは、中堅企業にとって一つの大きな前進の拠点となることを確信して、反対討論を終わります。(拍手)