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1968-03-08 第58回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月八日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君       大久保武雄君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    河野 洋平君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       砂田 重民君    西岡 武夫君       古屋  亨君    村上信二郎君       村山 達雄君    吉田 重延君       阿部 助哉君    井手 以誠君       加藤 万吉君    佐藤觀次郎君       中嶋 英夫君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       田中 昭二君    樋上 新一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省銀行局長 澄田  智君  委員外出席者         経済企画庁調整         局参事官    赤羽  桂君         外務省経済協力         局政策課長   野村  豊君         大蔵省主計局主         計官      原   徹君         大蔵省理財局国         債課長     大谷 邦夫君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         大蔵省国際金融         局投資第一課長 田中啓二郎君         日本開発銀行総         裁       石原 周夫君         日本輸出入銀行         副総裁     藤澤徳三郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月七日  委員岡沢完治辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として岡  澤完治君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員平岡忠次郎君、岡沢完治君及び石田幸四郎  君辞任につき、その補欠として加藤万吉君、西  村榮一君及び樋上新一君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として岡  澤完治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月六日  昭和四十二年度における旧令による共済組合等  からの年金受給者のための特別措置法等の規定  による年金の額の改定に関する法律等の一部を  改正する法律案内閣提出第六二号) 同日  国立医療機関特別会計制反対に関する請願外  二件(島本虎三紹介)(第二一三二号)  同(只松祐治紹介)(第二一三三号)  同(井上泉紹介)(第二一八〇号)  同外一件(大柴滋夫紹介)(第二一八一号)  同(加藤万吉紹介)(第二一八二号)  同外一件(工藤良平紹介)(第二一八三号)  同(佐々栄三郎紹介)(第二一八四号)  同外五件(柴田健治紹介)(第二一八五号)  同(田中武夫紹介)(第二一八六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二一八七号)  同外五件(長谷川正三紹介)(第二一八八号)  同外二件(広沢賢一紹介)(第二一八九号)  同(美濃政市紹介)(第二一九〇号)  同外一件(村山喜一紹介)(第二一九一号)  同(安井吉典紹介)(第二一九二号)  同(柳田秀一紹介)(第二一九三号)  同(米内山義一紹介)(第二一九四号)  同(阿部哉君紹介)(第二二七六号)  同(淡谷悠藏紹介)(第二二七七号)  同(井岡大治紹介)(第二二七八号)  同(唐橋東紹介)(第二二七九号)  同(實川清之紹介)(第二二八〇号)  同(島上善五郎紹介)(第二二八一号)  同(田代文久紹介)(第二二八二号)  同(田中武夫紹介)(第二二八三号)  同外一件(楯兼次郎君紹介)(第二二八四号)  同(千葉佳男紹介)(第二二八五号)  同外一件(中村重光紹介)(第二二八六号)  同(西宮弘紹介)(第二二八七号)  同(浜田光人紹介)(第二二八八号)  同(福岡義登紹介)(第二二八九号)  同(穗積七郎紹介)(第二二九〇号)  同外一件(三宅正一紹介)(第二二九一号)  同(森義視紹介)(第二二九二号)  同(森本靖紹介)(第二二九三号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第二二九四号)  同外一件(依田圭五君紹介)(第二二九五号)  入場税撤廃に関する請願工藤良平紹介)(第  二二七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第二二号)  製造たばこ定価法の一部を改正する法律案(内  閣提出第三号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第四  号)  物品税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)  アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  日本開発銀行法の一部を改正する法律案アジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中昭二君。
  3. 田中昭二

    田中(昭)委員 私は、まず開発銀行総裁並びに政務次官のほうにお尋ねしたいと思いますが、重複する面もあるかと思いますが、何ぶん私も初めてでございますし、ひとつわかりやすく、具体的に説明をお願いしたいと思います。  去る六日の当委員会におきまして、同僚の廣瀬委員から、開銀の使命といいますか、そういうことについてお尋ねがあったわけであります。総裁のほうから、開銀方針としていろいろお述べになったわけでございますが、現在の開銀融資目標並びに方針というものを聞いておりまして、現在、この財政硬直化ともいわれる時点におきまして、そのような方針にのっとる開銀方向というものに対する根本的な考え方につきましてお伺いしたいと思うわけであります。
  4. 石原周夫

    石原説明員 開発銀行につきましては、開発銀行法がございまして、開発銀行法の第一条に、「経済再建」「産業開発」ということが目的にうたわれているわけでございます。したがいまして、一番大きな目的の前提からいいますとそれが目的になるわけでございます。  ただ、開発銀行法昭和二十六年でございますが、出まして以来幾つかの法律が出ておりまして、それが私ども業務関係をいたすものが幾つかございます。一つは、地域開発促進法というものがございまして、これは北海道、東北から始まりまして、北陸中国四国九州——北陸中国四国九州の四地域は、その開発促進についての財政資金を確保するということが書いてございまして、その役割り開発銀行が取り持っておるわけでございます。なお、そのほかに若干の事業法がございまして、特定機械振興事業法でありますとか、あるいは電子工業振興法というものがございまして、これは主として通産関係法律でございますが、そういうものにつきましては、やはり今後におきます日本産業発展の非常に重要な、中心になるものにつきましてのいろいろな助成がございます。   〔委員長退席金子(一)委員長代理着席〕 これに関連いたしまして、融資をいたすという役割りもになっておるわけでございます。そういうようなものを合わせまして、形式から申しますと、毎年これは政府で、政府金融機関運用基本方針というものをきめていただきますが、その中で開発銀行は、今年度どういうことをするのだということをきめていただいておるわけでございます。それに基づきまして、私ども金融機関としての業務をやっておるわけでございます。  従来、どういうことをやってまいったかということは、この前も御説明申し上げたわけでございますが、設立当初におきましては、電力海運、鉄鋼、石炭といういわゆる四大重点産業重点を占めておりまして、一番最初のころでございますと八割、場合によっては九割をこしたときがございます。うちの貸し付け額の大体八、九割を占めておったということでございます。ところが、その後になりまして、ただ重点産業基幹産業に金を流すだけでは政策目的を達しがたいということになりまして、日本産業もだんだん高度化をいたす、あるいは国際収支というような観点からいいまして、たとえば、先ほど申し上げました特定機械関係電子工業関係、あるいは観光の関係というようなものが入ってまいり、そこに今度は、いま申し上げました地域開発というものが三十四年に入ってまいりまして、これがだんだん大きくなった。最近になりますと、開放経済と申しますか、産業構造を改善する必要がある、いわゆる体制金融体制整備と申します金融が出てまいりました。そのほかに、経済開発に伴いまして社会開発ということがございまして、大都市の過密問題の解決あるいは流通円滑化というものが起こりまして、こういうような社会開発的な部門もだんだん仕事の中に入ってきておる。ごく最近には、仕事そのものはだいぶ前から始まっておるのでございますが、実は新年度におきましては、新しく国産技術振興につきましてワクを設けましてやる。大体そういうところが最近におきまする仕事動き方でございます。大体そういうようなところにだんだん仕事重点が移りつつある。  ただ、依然といたしまして四大重点産業というものが大きなウエートを持っておりまして、現在におきましても、私ども年度別貸し付け計画を見ますと六割内外のところになっておりまするが、そういうような状態にございます。
  5. 倉成正

    倉成政府委員 お答えいたします。  ただいま開発銀行総裁から非常に詳しく御説明がありましたけれども、ほとんどそれに尽きておると思いますが、開銀法の一条にあります「経済再建及び産業開発を促進する」ということが、時代の要請に従ってだんだん変わってくる。戦後の壊滅した日本経済再建するためには、どうしても基幹的な電力とか、海運とかあるいは鉄、船舶、こういうものが重点になったのは当然でございますが、その後産業構造の改善、輸出振興というのがだんだん重要項目になってまいりましたし、また、特に最近になりましては、資本の自由化に対処してやはり産業体制整備ということが必要になってまいります。また、物価問題と関連しまして流通近代化ということも、現在の時点では非常に重要な問題になってくると思うわけでございます。したがいまして、政府産業経済政策に対応して、開銀法目的に従って今後開発銀行の運営はやっていただきたい、かような考えでございます。
  6. 田中昭二

    田中(昭)委員 丁寧に御説明がありましたが、また一昨六日の総裁の話を聞いておりまして、私は少し心配になった点があるわけでございます。  と申しますのは、現在の融資先の中で防衛産業融資しておるものはわずかである、かようなお話があったわけでございますが、それを聞いておりますと、初めからそういう防衛産業融資の対象に入れておるのだ、それはわずかだから問題はないのだ、そのようにも聞き取れたわけでございます。私の聞き違いかもしれませんけれども、ただ聞いておりまして、一般融資先の中にはそういうものがあるかもわからない、個々的にはその具体的な数字も明らかになっていないから、こういうふうなお話でございました。私は、開銀目的からいきましても、そういうものが防衛産業の大企業融資されておるということについては、当然今後はっきりした考え方を持っていかなければならないのじゃないか、このように思いますが、それについて御説明をお願いしたいと思います。
  7. 倉成正

    倉成政府委員 お答えいたします。  今後の開発銀行融資防衛産業をどう取り扱うかという問題だと思いますが、これは先般もお答えいたしましたように、防衛産業であるからといって特別な取り扱いはしない、そういうふうに今後いたしたいと思っております。
  8. 田中昭二

    田中(昭)委員 それはそのようにお聞きしました。特別なワクをもって融資するということじゃないけれども、現在の融資先の中には、個々的にはそういうものがあるかもわからないというような御回答だったと思うわけです。そうするならば、そのようなものを具体的に教えていただければ私たちの心配も除かれるのじゃないか、こう思うわけでございますが、その点についてもう一回御説明願いたいと思います。
  9. 澄田智

    澄田政府委員 防衛産業に対する開発銀行融資は、御承知のように、経済援助資金特別会計というものが従来、昭和三十年以降ございまして、この特別会計開発銀行にその目的のための資金貸し付けまして、それによって開発銀行融資をしている。しかし、防衛産業に対する融資自体は、先ほどから御説明申し上げております、開発銀行目的経済再建産業開発という中には含まれるというものでございますが、やはりそれは特殊なものとして、経済援助資金特別会計を通じて融資が行なわれておる、こういう仕組みになっております。今回特別会計法が廃止されて、そして、これからの開発銀行融資につきましては、防衛産業ということのための融資というもののは、特別会計もなくなりましたし、当然なくなるわけでございます。ただ、現在の開発銀行融資目的の中で、特定企業防衛産業に当たる業種も営んでいるというような場合もありますし、それを開発銀行目的に照らして、その目的に妥当する範囲内において行なわれる融資という中に、防衛産業を経営している企業融資先になる、こういう場合もあり得ると思いますが、防衛産業なるがゆえの特別のための融資ということは、今後はなくなるわけでございます。  そうして、ちなみに申し上げました点は、従来の経済援助資金特別会計がありましたときでありましても、その融資額は、開銀の総貸し出しの中ではきわめてわずかなウエートしかない。〇・〇四%というようなことを申し上げましたが、その程度のウエートしかない。今後はそういうワクがなくなるわけでございますから、開発銀行融資の中において、そういうものが大きなウエートを占めるというようなことはとうてい考えられない、かような意味で、この前ウエートも低いのである、こう申し上げたわけでございます。
  10. 田中昭二

    田中(昭)委員 それはそれで打ち切ります。  いまお話しになりました国産技術振興ということでございますが、これは具体的にはどういう融資高になっておりますか。それが第一点。  それから、融資状況を見てみますと、案内にありますように、業種別融資が片寄った傾向にあるのではないか、このように思うわけです。かりに取り上げてみましても、約三分の一は海運関係に向けられておる。海運融資先はどういうところであって、それが産業発展のためにどのように影響してきたものか、当然そういうものも明らかにしていかなければならないと思うわけでございますが、開銀金融機関としての役割りを果たす上においては、海運に向けられております融資が多く占めておるというのは、金融機関として異常な姿ではないかと思うわけです。そういうことにつきまして、三分の一を占めており戻す海運関係融資先については今後どのようにお考えなのか、修正すべきものか、そういう点についてお尋ねしたいと思います。
  11. 倉成正

    倉成政府委員 総括的に私からお答えして、あと具体的には総裁からお答えいたします。  御承知のとおり、日本戦前有数海運国でございました。しかし、御承知のとおり、敗戦によって壊滅的な海運の打撃を受けまして、ほとんど日本に見るべき輸送船がなくなったというような戦後の状態でございました。そういう状態から立ち直らせるためには、ここにどうしても海運再建しなければならないということは、国家至上命令であったと思うわけであります。したがいまして、海運再建について重点を注いできたということは、これは当然のことであると私ども考えております。  同時に、御案内のように、日本国際収支赤字の問題と関連いたしまして、貿易収支は非常に黒字でありますけれども貿易外収支であります、特に海運とか保険料とか、そういうので非常に赤字が出てきた。したがって、海運再建をするために、どうしても現在あります海運業を再編成する必要があるということで、海運業の再編成ということで利子補給問題等が出発したわけであります。したがいまして、海運についてこれまで非常に重点を注いできた、開銀融資海運かなりウエートを占めてきたということは、これらの時代的な、政策的な要請に基づいたものでございまして、私は、日本経済再建のために必要なものであったと確信をいたしております。
  12. 石原周夫

    石原説明員 ただいま政務次官からお答えがございましたような政策方針に基づきまして、開発銀行としては開業早々から、先ほど申し上げましたように、四大重点産業一つとして、相当大きな割合海運融資をいたしております。ただ、三十八年に、御承知のような海運再建整備に関する法律ができまして、いままでとかく弱体でありました企業を集約化いたしますとともに、利子補給あるいは財政資金というような助成を集中いたしまして、海運業再建をはかってまいっておるわけでありまして、実は、昭和四十三年度がその最終年度に当たるわけであります。この経過は、大体から申しますると、所期目的を達しつつあると申していいかと思うのでありますが、この間におきまして、相当な大量建造というものができておるわけであります。トン数で申しますると、四十年度に百八十万トン、四十一年度に百九十万トン、四十二年度に二百万トン、四十三年度は二百二十万トンというトン数になるのであります。これは、いわゆる経済社会発展計画と申しまする長期計画がありますが、この中では八百九十万トンという船を、これから四年間でつくるという一応の計画があります。したがいまして、大体二百万トンくらいの大量建造というものが、一応平均的規模考えられるわけであります。  そこで、御指摘のように、私どものほうの融資の中におきまする海運業貸し付けはふえてまいりまして、現在、残高で申しますると、この四十二年の九月末でございますが三千八百億、融資割合から申しますると三割三分という割合に相なっているわけであります。四十三年度は二百二十万トン、大体八百九十億ほどの予算を組んでおるのでありますが、四十四年度以降におきましては、再建整備の期間が一応終了いたしますので、今後どういうようなやり方をやるかということは、政策当局において御検討願うことだと思っております。  ただ、御指摘の、割合が非常に高いから金融機関としてはいかがであるかという点につきましては、私ども政策金融機関のことでございまするので、融資割合が分散するというふうな、通常金融機関とは別途の政策的な考慮がございまするから、その点は、特に高いから直さなければならないということはないかと思います。ただ、海運界の現状を見まして、四十四年度以降どうするかということは、先ほど申し上げましたように、今後政府において御検討いただく問題であろうかと思っております。
  13. 田中昭二

    田中(昭)委員 国産技術振興についてはどうですか。
  14. 石原周夫

    石原説明員 国産技術振興につきましては、従来のところから申しますると、実は二種類の項目がございます。一つは、新技術工業化という項目がございまして、これはだいぶ前からやっております。もう一つは、重機械開発と申しまするのは、日本機械工業のレベルが相当上がってまいったわけでありますが、非常に大型の機械につきましては、依然として輸入機械にたよっている場合が少なくないわけでございます。したがいまして、その二つの柱を立てまして、ここ数年間、金額で申しますると四十億内外でありますが、それくらいの融資をしてまいったわけであります。重機械工業化につきましては、実は、七分五厘という特利を出しておったのでありまするけれども一般技術工業化につきましては八分二厘という、この間から申し上げております基準金利でまいっておるわけでございます。したがいまして、その仕事内容からいいますると、八分二厘という利率では、何ぶんにも相当リスクを伴う仕事でございますので、なかなかむずかしいのではないかということがございまして、先ほど申し上げましたように、年々、最近まで四十億ぐらいの実績がございますし、現在の残高で百二十億ぐらいの残高を持っておりますけれども所期の伸びを出すに至っていないという状況でございます。したがって、今回また別のワクを設けまして、六分五厘という、これはうちといたしましては一ぱいの特利を出しまして、金も九十億ほどの金を用意する。  以上申し上げました新技術工業化あるいは重機械開発ということもございまするが、それにさらに、新技術をとなしましてこれを商品の形態にいたしますまでに、これまた一つプロセスがあるわけであります。その間の設備投資もまかなうというふうに多少範囲を広げ、金額もいま申したように広げ、金利につきましても六分五厘ということにいたしまして、今後は、開放経済におきまする最も大きな問題でありまする技術開発というものが行なわれますように私どもとしても努力してまいりたい、こういうわけであります。
  15. 田中昭二

    田中(昭)委員 この開銀業務内容についてでございますが、それを見てみますと、ここにも書いてありますとおり、「銀行その他の金融機関から供給を受けることが困難なものを貸し付ける」こういうふうになっておりますが、現在、中小企業は非常に融資面で困っておるような状態であると思うわけでございます。今後、このような中小企業融資に対して、何らかできる範囲融資考えておられるのかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。
  16. 倉成正

    倉成政府委員 お答えいたします。  中小企業に対する融資については、政府機関として中小機関があることは御承知のとおりでございます。おそらく田中先生の御質問の御趣旨は、開銀にはかなりの出資があり、こういう低利のものがあるけれども中小金融についてもっと低利のものをもっと大幅にと、こういう御趣旨だろうと思います。そういう意味から申しますと、私ども中小機関に関する財政投融資の繰り入れをできるだけ多くしてまいりたい。同時に、御案内のように、開銀については特殊な政策目的がございまして、その政策目的を積み上げた結果こういう融資になっているわけでございますが、中小企業融資については、やはり質的な補完というよりも、むしろ量的な補完が非常に大切だということでございまして、その量的な補完をさらに将来質的な補完にまで高めていくということが、やはり今後の中小企業金融一つの課題ではないかと考えておるわけであります。そういった点も、今後いろいろと努力をしてまいりたいと思っております。
  17. 田中昭二

    田中(昭)委員 なかなか貸さないのですね、実際問題として。いま国産技術振興という面でお聞きしたわけですけれども、現在の日本でもいろいろあると思いますが、かりに具体的に取り上げてみれば、カメラの製造関係におきましてもだいぶ困っておる。こういうものは、私は、国産としましては大いにわが国の技術振興に役立つ業種じゃないか、このように思っていまのようにお尋ねしたわけなんです。そういう点、中小企業に対しましては、今後有効適切なる政策をお願いするということにとどめまして次に移ります。  開銀は、国家的長期計画に基づいて融資を行なっておる金融機関でございますが、今後もその金融機関の代表としてどのような方向で進んでいくのか、もう一回お尋ねしたい、こう思います。
  18. 澄田智

    澄田政府委員 開銀の今後の融資のあり方という点についてのお尋ねでございますが、この点につきましては、これはこれからの日本経済の成長の姿というものとの関連もございまして、今後、そのときの情勢に応じて、最も政策的に開銀固有の経済再建産業開発という目的と、そのときの経済情勢、国際経済環境も含めた経済情勢、こういうようなところから出てくることではございますが、最近、開銀重点が逐次移ってきておるという次第は、先ほども総裁のほうから御説明ございましたが、開放経済体制が進んでいくのに伴いまして、わが国産業の再編成、高度化、さらには国産技術開発というような方面に、今後も開銀ウエートが指向されるということは当然予想されるところでございますし、さらにまた、大都市の開発あるいは地方開発流通近代化といったような社会開発面の要請というのも当然強く行なわれる。そうして国際収支の観点からの先ほどお話の出ました海運等の問題も、やはりここ当分はウエートを持っていくのではないか。今後の推移に応じて、逐次、その間のいろいろ新たな問題等考えられないこともございませんが、現在の重点の移りというようなものから見まして、目下のところさようなふうに考えられると思います。
  19. 田中昭二

    田中(昭)委員 現在、社会経済方向としまして、産業の構造の高度化というようなことも掲げていかなければならないと思いますが、この場合に、原子力の平和産業利用については、その目標も考えていかなければならないと思われますが、現状においては、その原子力の利用というものは電力面に限られております。将来このような面におきます開銀考え方をお聞きしておきたいと思います。
  20. 石原周夫

    石原説明員 ただいまお話がございましたように、原子力発電につきましては、相当前の東海村の原子力発電株式会社の一号炉のときから、私どものほうの融資の対象にいたしておるわけであります。一号炉が完成をいたしまして、続きまして現在敦賀において二号炉に着手しておるということでございます。また、関西電力の一号炉と東京電力の一号炉というものに着手をし、そのおのおのにつきまして私ども融資をいたしておるわけであります。現在の残高で申し上げますと、貸し付け金額にいたしまして四十二年の十二月末現在で百五十七億ございます。このほかに、原子炉の発電機部分を相当国産化をいたしておりまして、その国産の分もわれわれが融資をいたしておりますが、輸入いたしている分がございます。この部分につきましては、アメリカの輸出入銀行並びにメーカーからの延べ払いに相なっておる、あるいは借り入れ金になっておる、これにつきまして私のほうが保証をいたしております。これも同じく三百八億ほどに相なっておりまして、この両面から日本の原子力発電というものがだんだん育っていっておるわけで、私どものほうはそういう国産化部分に対します融資と、輸入部分に対します債務保証と、両面からのお手伝いをいたしておるわけであります。  今日までやっております原子力平和利用の関係における私ども融資関係は、以上でございます。
  21. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後に、事務的なことになるかと思いますが、知っておきたいと思いますが、開銀の法定準備積立金というものはどういうふうな率によって積み立てられておりますか。また、四十三年度貸し付け計画でございますが、見てみますと、四十二年度の当初の金額と改定金額が掲げてあるようでございますが、これはどういうような状況で、どういうふうな変化を来たしたものか、お尋ねしておきたいと思います。
  22. 石原周夫

    石原説明員 開発銀行法の第三十六条にございまして、日本開発銀行は、利益金を生じた場合には、準備金として以下の二つのいずれか多い額、第一号は当該利益金の百分の二十、第二号は毎事業年度末における貸し付け金の残高の千分の七——現在のところこの第一号を適用いたしましたケースは一件でございまして、あとは全部第二号、すなわち貸し付け残高の千分の七という額、これが限度に相なっておるわけでございます。現在におきましての準備金の残高は、ちょうど七百九億六千九百万円というのが現在の額でございます。
  23. 田中昭二

    田中(昭)委員 数字に間違いはないと思いますが、そうしますと、四十二年末の貸し付け残高の千分の七が四十三年度の準備金になるわけでございますか。
  24. 石原周夫

    石原説明員 四十二年度の積み立て額は、先ほど申し上げました千分の七ですね。それで九十億一千二百万円というものを見込みまして、それが準備金の額として七百九億六千九百万円という額に相なります。四十三年度におきましても、大体千分の七という額に相なるかと考えます。
  25. 田中昭二

    田中(昭)委員 ちょっと私が間違えたんでしょうか。四十二年度貸し付け残高の千分の七になりますと、それが七百九億ですか。
  26. 石原周夫

    石原説明員 それは九十億でございます。累積額が七百九億。千分の七と申しますると、四十一年度未でございますると貸し付け残が一兆二千億弱でございますが、その千分の七ということで九十億でございます。
  27. 田中昭二

    田中(昭)委員 端数は切り上げてあるわけですね、一兆二千億ですから。
  28. 石原周夫

    石原説明員 正確に申し上げますと、端数を切るわけにまいりませんので、九十億一千二百万円は……。
  29. 田中昭二

    田中(昭)委員 計算の基礎になる貸し付け残高は幾らですか。
  30. 石原周夫

    石原説明員 失礼いたしました。一兆二千八百七十四億五千二百万円、先ほど申し上げました数字は、外貨貸し付けを入れましていまちょうど一兆二千八百億。それに対する千分の七で九十億。七百九億と申しますのは累積額でございますから、いままで積んでまいりました累計額でございます。
  31. 田中昭二

    田中(昭)委員 だから、この案内に書いてありますのは、これはあくまでも見込みですね。四十二年度未は一兆二千四百九十九億と書いてある。それの千分の七ならば九十億にならない、こう言っているのです。いま総裁のお答えになったのは一兆二千八百億だということになっておりましたから、計算の間違いではないかと思いましたけれども、それは大体想像がつきますからそれでけっこうだと思いますが、間違いないでしょう。どちらですか。
  32. 石原周夫

    石原説明員 そちらに差し上げておりまする数字は、開発銀行ができましてから融資をいたしました残高が、いま一兆二千四百九十九億という数字になっております。私が申し上げました、この法律三十六条に基づきます積み立ての千分の七の親になりまする数は、私どもが復興金融金庫並びに政府の見返り資金特別会計融資残を引き継いでおります。それが四百十七億あります。一兆二千八百億というのは見込みであるという点は、田中委員のおっしゃるとおりであります。その見込みによりますると、正確に九十億一千二百万円、こういう数字になります。
  33. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうすると、もう一つお尋ねしておりました四十二年度の当初の数字というものがここに書いてあります。改定額は移動を来たしておるものがございますが、たとえば海運であれば、当初八百四十一億のものが八百八十九億。その移動しましたおもなる原因でございますか、そういうことについてお尋ねしたいと思います。
  34. 石原周夫

    石原説明員 海運関係につきましては、二百万トンという船を四十二年度中に建造いたすという予定で予算を組んでおることは、先ほど申し上げたとおりであります。それが八百四十一億。それに対しまして、これは工程がございます。工程払いで四回に分けて払うわけでございますから、着工払いあるいは進水払いとかそういう払いのしかたがございます。したがいまして、その年度中にどういうような進行をいたすかということでありますが、これはたしか四分の二・七五という進行割合を見込みまして予算の積算をいたします。ところが、現実にはそれよりも進行状況が進んだものであります。それで四十数億の不足を生じまして、これは財投の追加をお願いしまして四十八億を加えまして、現在、田中委員指摘の数字になったわけでございます。
  35. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、四十三年度貸し付け計画には、そのような移動はあまりないわけでございましょうね。なぜそういうことを申し上げるかと申し上げますと、今度の倍率の引き上げによりまして、資金の余力も相当出ると思われますが、その余力も前年度よりも多額な余力が出るわけです。そうしますと、その余力があるということにおいて、その計画が膨大化するかもしれないというような心配を持ちましたものですからお聞きしたわけですが、四十三年度貸し付け新規計画というものについては、今後ふえるものかふえないものか、そういう点をお聞きしておきたいと思います。
  36. 石原周夫

    石原説明員 四十三年度におきましても工程割合を見込んでいるわけでございます。ただ御承知のように、最近は輸出船が非常に多いわけでございますから、したがいまして、船台をどういうふうに割り当てますか、一応二百二十万トンにつきましては船台割合をこれからきちんときめるわけでありますけれども、船台がどういうような順序で輸出船、国内船とこういうふうにはまっていきますか、このはまり方によりまして工程進行ぐあいが変わってまいりますから、現在はこの程度であろうという見込みで、これは運輸省と御相談をしてきめた額でございますが、もしそういうことになりますれば不足を生じない。これはこれからの船の船台の乗りぐあいでありますので、これで絶対だいじょうぶかとおっしゃられますれば、それはもう少し進行模様を見ないとわからないが、現在は、こういうような程度でまいるように船台の組み方も考えてまいりたいというのが現在の状況でございます。
  37. 田中昭二

    田中(昭)委員 ふえるのですか、ふえないのですか。
  38. 石原周夫

    石原説明員 目下のところ、別にふえる見込みであるということは申し上げるわけではございません。ただ、船台のきまり方がきまっておりませんので、それによりまして若干前後に動くことはあるだろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
  39. 田中昭二

    田中(昭)委員 最後になりますが、貸し付け計画の中でも業種別にその他というものがございます。また、貸し付け残高のほうにもその他というのが相当なウェートを占めておるようでありますが、これは、業種別にある程度教えていただくことができますればお願いしたいと思います。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 石原周夫

    石原説明員 いまごらんをいただいておるのは、幾つかございますが、電力海運、地方開発、石炭、特定機械、その他ということになっておりますか。——それでは、その他は電子計算機、国産技術振興、石油、産業公害、大都市再開発及び流通近代化体制整備というようなものでございます。金額的に一番大きいのは大都市再開発及び流通近代化でございまして、これだけで大体二百五十億くらいございます。
  41. 田中昭二

    田中(昭)委員 終わります。
  42. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  43. 田村元

    田村委員長 それでは始めて。  佐藤觀次郎君。
  44. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 柏木局長がおられませんので、奥村次長にお尋ねいたします。  実は、アジア開発銀行がマニラにできましてから二年を経過しておると思うのです。たまたま、御承知のようにいま東南アジアは、ベトナムの危機とそれからポンドの動揺——ドルもそうですが、非常に不安を与えております。イギリスは今度の戦争で植民地を失ったのですが、戦後にもまだポンドの威力というものが相当あったのですが、そのイギリスの力は、今度は軍隊を向こうへ持っていってしまいますから、そういう点で非常に様相が変わってくるんじゃないかと思うのですが、その点について、ポンドのアジアにおける動向はどうなるかということをまず伺いたいと思うのです。  実は、私は十年くらい前に東南アジアに行きました。そのときにはむしろ、ドルよりもポンドのほうが強かった。それが、四年くらい前にもシンガポール方面に行きましたが、ポンドの勢力がまだあったのですが、現在、ポンドの切り下げ以来どのような動揺をしているのか、まず奥村さんにお伺いしたい。
  45. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ポンドの最近の状況でございますが、御承知のように、去年の十一月に切り下げが行なわれました。その後、一ポンド二ドル四十セントよりもポンドの価値が高かったわけでございますが、最近報ぜられているごとく、一ポンド二ドル四十セント以下という状態になっております。これは三月四日の状況でございました。その後また、平価、通常いわれます一ポンド二ドル四十セントよりもポンドは強くなっているというふうな状況でございます。  こういうふうにポンドが弱い第一の原因は、来年度のイギリスの予算が期待されていたほど緊縮予算でなさそうである、こういうふうな見方、それから先般のポンド切り下げの効果を確保するためにいろいろな増税とか所得政策、こういうものの実行の可能性に若干心配もある、こういうことでイギリス経済に対する信頼感、イギリスの国際収支の将来に対する信頼感、それからアメリカの国際収支の見通しも関連がございますが、こういうものを含めて、相当部分はやはり投機筋の動きもその原因になっていると思うのでございます。  これから先の見通しでございますが、イギリスの経済再建というものは決して平たんな道ではないと思うのです。しかし、御承知のようにいろいろな国際協力も行なわれております。それからイギリス自身の自主的な努力というものがさらに推進されるということで、私どもはポンド不安は、多少の起伏はあっても、いずれは一掃せられるものであるというふうに期待をいたしておるわけであります。
  46. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 いま御説明のとおり、ポンドの将来については大蔵省はわりと楽観的であると思うのです。しかし、ベトナム戦争がどれくらいエスカレートされるかという問題は、これは大蔵省に聞いても無理でありますが、しかし、大統領の選挙くらいまではあるいはこのまま続くのではないかといわれております。そういう中に入ってドルの不安も増大してくる、それに関連してポンドがもっと深刻化するというように私は見ておるのです。御承知のように、ポンドやドルというのは世界の通貨の中心であったということだけに、非常に影響力が大きいと思うのですが、こういう中に入って、日本経済がどのようになるかというようなことを、ひとつ奥村さんからお伺いしたいと思います。
  47. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ドル、ポンドがこれから先どうなるかということについては、先ほどポンドについて申し上げました。ドルについても同じことでございまして、先生おっしゃるように、なかなか平たんな道ではない、その点はお説のとおりでございます。国際協力とアメリカ自身の努力がなければ、やはりドルの安定というものは期待どおりスムーズにまいりませんので、そういう線に向かってアメリカも努力し、国際協力も進んでいるわけでございます。  こういうポンドとかドルとかいう世界の基軸通貨の不安定というものが、日本経済にどういう影響を及ぼすかという御質問でございますが、私どもは、まず第一に考えなければならないことは、やはり世界経済の安定的拡大ということであろうと思います。世界じゅうから失業を少なくする、そして経済がふくらんで繁栄をしていくというふうに持っていかなければならぬというふうに考えておるわけであります。これは、現にアメリカが国際収支を改善する一つの方途といたしまして、みずからいろんな策もとっておりますけれども、主たる問題は、アメリカとヨーロッパのEECの黒字国との間の問題である。国際収支の悪い日本にむちゃな協力を求めて、それでアメリカの国際収支をよくするという筋であってはならない。ヨーロッパの黒字国がその黒字を減少する、赤字を出さないまでも黒字が減少するということによって、アメリカの国際収支がよくなる面があるわけでございます。そういうふうな方向でいまアメリカも努力いたしておりますし、日本も、そういう線が世界経済発展的な拡大と申しますか、そのために有効であると考えているわけでございまして、あらゆる場を通じてそういう主張を繰り返し、われわれの主張も大きな効果を生じているわけでございます。したがって、私どもは来年度の——暦年で申しまして一九六八年の世界経済というものは、去年に比べてやはりいささか拡大歩調をとるのではなかろうかと思います。何しろいろんな不安定な要因があることについては御指摘のとおりでございます。したがって、その不安定な要因については、いろんな方策を通じてこれを切り抜けながらうまく持っていく、それがひいては日本経済が痛手をこうむらないで国際収支を回復する、こういうふうな道につながってくるのではないかと思います。  したがって、私どもは、政府見通しで出しましたように、総合収支で三億五千万ドルの赤字というものを昭和四十三年度に見込んでいるわけでございますが、これは予期しないいろんな事件が起こることによって、あるいはその数字はどうなるかわかりません。わかりませんが、そういう事態を起こさないように努力するとともに、国内経済の引き締めと申しますか、予算、金融措置を通じてこういう国際収支の目標、努力目標を達成するようにやってまいりたい、こういうふうな考えでおるわけであります。
  48. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まあ奥村さんの意見、私はもっともだと思うのですが、しかし一面において、どうも日本経済というものをアメリカ——イギリスとはあまり関係がなくなりましたけれども、そういうような範疇の中で考えていく場合に、日本の自主性というものがないんじゃないかというような不安を実は私は持っておるわけでありますが、それ以外に、最近、ちょうどきょうの新聞に出たのですが、インドネシアのスハルト大統領代理が日本へ来るということになっておるのですね。私は、これはインドネシアの人が来ると日本に借金をしに来るのだろうと思うのですが、実はインドネシアには前々から焦げつきの債権がありまして、これには非常に痛手を食ったということは御存じだと思うのです。そういう中にあって経済協力基金の関係をふやす、向こうは九千万ドル持てということを言っておるらしいんですけれども、こういう日本の円が、あとでまたお尋ねしますが、非常に不安なところへ持ってきて、また道楽むすこが借金に来るというような国際情勢にあるわけなんです。先回もたしかインドネシアに対しては供与をした面もあるのですが、こういうところはひとつ、日本経済も弱ってきておる今日、また道楽むすこのインドネシアを助けるようなことをやるというようなことは、何か私たちは、自分の日本を捨てて処理をするように思うのですが、その点はどういうふうに国際金融局では考えておられますか、お伺いをしたいと思います。
  49. 奥村輝之

    ○奥村説明員 いまの御質問は非常に大きな問題を含んでいると思います。単にインドネシアの問題のみならず、後進開発途上にある国に対する援助一般の問題と、日本経済情勢との関連をどう考えて問題を処理していくかというような方向をどう考えるかということであると思うのですが、私どもはやはり長い目で見て、後進国に対する援助というものは必要であると思うのであります。いま世界経済は非常に密接な関連にございまして、日本の立場からかりに申しますれば、やはり日本の輸出というものは世界経済の拡大がなければ行なわれないわけでございます。そういう意味で、後進国がその生活水準を高めて経済を拡大していくということがどんどん行なわれるのと、反対の方向をとるのとによっては、これは先進国を含めて世界経済全体の情勢に大きな影響を及ぼします。また、日本状態にも悪影響を及ぼすわけでございます。そういう意味で、私どもは、発展途上にある国に対して日本の国力、国力と申しますればこれは財政のほうもそうでございます。それから国際収支のほうもそうでございます。この両面から考えて、適当であるというその限度の協力を行なう。もう一つ大事なことは、こういう協力を行なうにあたって、それがやはり真に相手国の役に立って、そして相手国の繁栄に結びつく、世界の繁栄にひいてはつながってくる、こういうことが大事でございますので、そういう有効な協力というものが私どもとしては努力の対象でなければならぬ、目標でなければならぬというふうに考えております。  そういう意味で現実のスハルトさんの問題でございますが、これはスハルトさんがおいでになるということもちょっと私どもも聞いておりますけれども、私どものインドネシアに対する協力額というものは、この次どれくらいにするのか、総額幾らにするのかということは、まだ決定している段階ではございません。  それから、経済協力基金法の改正という点についての御質問があったわけでございますが、いままで、商品援助は輸出入銀行でやってきたわけでございます。先般も当委員会で御質問がございましたが、一体商品援助というものはいいのか悪いのかというお話であったわけでございます。私どもは、やはり商品援助というものは長く行なうべきものではない、非常に一時的にその場を何とかつないでいく、民生の安定その他ということで、経済の安定その他ということでその場をつないでいく、そうして経済を拡大するというふうに持っていく、プロジェクト援助のほうに持っていくということが大事だと思うのでございます。そういう意味でこの経済協力基金法の改正についてもお願いを——企画庁がこれの主管でございますが、するわけでございます。そういうふうな非常に差し迫った困難にある国に対して、幾分金利の安い商品援助をやれるようにという趣旨でございまして、こういうものを大いに広げて、大きな流れとして推進していこうという考えではございません。
  50. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 奥村さんの意見、わからぬわけではありませんけれども、インドネシアの例を見ても、政情不安という形にあると思うのです。これはよその国をどうこう言ってもいけませんけれども、どうも私たちの観測では、インドネシアはなかなか楽観ができないような、そういう国情にあるということも想像できると思うのです。そこで日本から考えた場合に、インドネシアはむろんでありますが、たとえばインドの食糧不安、それからマレーシア、シンガポール、これは幾分かいま安定しておりますが、東洋の日本関係の深い国々でも、必ずしも資金を出しても返ってくる見込みのないような不安がないでもないと思うのです。そういう立場に立ってやると、結局アブハチとらずになるような、そういう感じがするのです。  御承知のように、たまたまことしの正月の二日にロストウ次官補が来られて、佐藤さんとどういうお話になったか知りませんけれども、おそらくいい話で来られたんじゃない。少なくとも、何とかアメリカのドル防衛の片棒をかつげというようなことを言われたと思うのですが、そういうように内外非常に多事なときに、しかも日本は非常に経済的に弱い。あとでまたお伺いしますが、そういうときに、インドネシアなんという国に、焦げつき債権を持っておって何でまた言い出すかということについては、これは日本の国民として考えなければならぬと思うのです。経済の事業は慈善事業ではありませんから、そういうようなこちらに対する債務を履行しなくなる、そういう国に対して、どこまで手を差し伸ばすかということについては、非常に私は不安を持っておるのですが、それはあなた方のほうの大蔵省ではどういうように解釈されているのか、その点の、われわれはそれならしかたがないじゃないかというような納得のいくような、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  51. 奥村輝之

    ○奥村説明員 一般的に債務が履行できないような国に対して、どういうふうな考え方で協力していくのかという御質問であると思いますが、確かにそれは大きな問題点でございます。私どもは過去にインドネシアに対して、あるいはその他の国に対し債権を持ち、それがそのまま履行せられないで、いわゆるリファイナンスとかリスケジュールという名前のもとに繰り延べが行なわれ、現に行なわれておるわけでございまして、御指摘のとおりでございますが、しかりとしてこういう国に対して全然私どもは救いの手を、あるいは協力の手を差し伸べないのかどうかということについては、先ほど長期的な観点から見た考え方、それで申し上げたとおりでございます。  ただ、むやみにこういう国に対して——こういう国というのは一般的な話でございますが、こういう国に対して協力の金額をふやしていくということがあってはならない。こういう国はみずからどの程度の努力をしているか、こういう国に対してわれわれが与えた協力というものがどういうふうに実を結んでいるかということをよく調べながら、しかも、もう一つは、日本だけが債権国ではございません。そこで、国際的な債権国の集まりで忌憚のない議論をいたしまして、経済を正しい方向に持っていかせるような努力を一方でとりながら、まあこれくらいならば日本の現在の国情、相手国の状況からやむを得ないであろうという程度の協力をしていくということになろうと思います。
  52. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 御承知のように、いまヨーロッパではイギリスとEECとの対立問題、それからドイツとフランスと珍しく経済的には結んで、欧州圏経済の確立をやっておるのですが、何といってもいま、世界の通貨の中心になっておった米英が、ドル危機、ポンド危機に悩まされておる、その中にあってフランスのドゴールさんは金本位制を言うというように、自国のためには他の国の犠牲を顧みないような現状にあるときに、何で日本だけがお人よしにそういうような中に入っていくのか。それが日本の国が経済的にいいというなら別でございますけれども、二月には国際収支がだいぶ黒字になっておりますけれども、いまは二十億ドルを割っておる現状だと思います。そういう中にあって、私は、おそらくあなたのほうの局長もユーロダラーの金のあっせんに行かれたのか、パリかにおられるそうでありますけれども、どうも日本の、自分の国の経済の不安をよそにして、外国のことにおせっかいをするような余裕がありそうにもないと思うのですが、その点は一体だいじょうぶでしょうか。私はそういう不安を非常に持っておるのです。一体日本の現状は、アメリカのドル防衛、ポンドの切り下げ、それからヨーロッパのEECの問題、それからフランスが自国繁栄のための政策をとっておるときに、何だか日本だけが施すような——施すような力があれば、せめて六十億ドルくらい持っておればいいのだけれども、二十億ドルを割って、おそらく本年度は三億ドルくらい赤字になると思いますけれども、そういう円の不安のときに、どうして日本がそういうようなのんきな、安心したような形でやっていけるかということについて、私たちは疑問に思うのですが、大蔵省のほうではだいじょうぶだ、そう心配せぬでもこういう方法があるというようにお思いになっておられるのかどうか、これをひとつ御説明願いたい。
  53. 奥村輝之

    ○奥村説明員 いろいろな御指摘があったわけでございますが、いまパリであります会議は、OECDの経済政策委員会、それから大蔵大臣代理会議等でございます。この会議日本の立場は、アメリカの政策、イギリスの政策によって日本のような国にしわが寄るのは困る、黒字国であるEECがこれを吸収するようにすべきである、アメリカのほうから話が出ております課徴金の問題なども、世界経済の縮小の方向に向かうような処理のしかたでは困るではないかということを私どものほうは主張することが、一つ会議目的であるわけでございます。そういうふうなことで、決してのんきな会議に出ているわけでなくて、まさにいま御指摘の問題をいかに処理するかというための重要な会議でございます。  これはそれだけといたしまして、日本がこういう際にどれだけ施す力があるのかということでございますが、私どもは、こういうふうな国際収支の現状でございますし、また国内の財政の引き締めもこういう状態にございますので、やはり外国に対する協力というものも、おのずからそういうものを考慮して適当な程度におさめなければならない、こういうふうに考えております。ただ問題は、やはり発展途上の国との約束は、相当長い間協定等結ばれまして行なわれているものがあるわけでございまして、都合が悪いから全部やめた——相手国もやはり前につぎ込まれた金、次につぎ込まれる金、それぞれ関連がございます。もうやめたということで、そこで打ち切るということにもまいりません。したがって、そこのところはそういう相手国の状況考えながら、当方の事情をよく頭に置いて、適当な協力というものはどの程度であるかというふうにきめてまいらなければならぬと思います。
  54. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 これは柏木さんに聞きたかったのですが、たしか一月だったと思うのですが、佐藤総理に国際金融局長が会われて、だいぶ日本国際収支赤字のことについて深刻な報告をされたということを聞いておるのですが、奥村さん、そのことを何か御存じございませんか。また、あなたの感じでけっこうですが、あなたが行ったのじゃないですけれども、おそらく国際金融局からそういういろいろな材料が出ていると思いますが、その点はどういうふうになっておりますか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  55. 奥村輝之

    ○奥村説明員 大臣、総理との連絡はたびたび行なわれておりますので、私そのときにどういう話があったかよく記憶はしておらないのでございますが、いずれにいたしましてもアメリカが国際収支の防衛策をとるということになって、EECその他の黒字国の協力は十分得られないときには、やはり日本経済としては健全な財政金融政策というものを進めなければならぬわけでございます。そういう意味で、外国の経済状況あるいは国際的な関係がどうなっているかということは、大臣、総理にはしばしばお耳に入れなければならぬということでございます。おそらくはそういうふうな情勢についての説明に上がったのではないかと思います。
  56. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 どうもそのところが国民に不安感があるのですが、何か政府は楽観論ばかりやっておいて、あとでがばっと円のあれがなくなる、いや、ドルがこんなにあぶないのかというようなことが出てくるのではないかというような不安を持っているわけです。それはいろいろなこれからの情勢の推移でわかるわけですけれども、どうもいまはユーロダラーをだいぶうまくせしめて、ヨーロッパのほうでうまくつじつまを合わせているのじゃないか。柏木局長は会議には出席されたけれども日本の現状を考えて、そういうような買い集めといってはおかしいけれども、そういうようなあさりにも行ったのじゃないかというような、そういう声も聞くわけです。  そこで、これは柏木さんに聞いてみなければわからぬけれども、そういう何か日本の悪いところを隠して、そして国民には楽観論を振りまいているのではないか。それだから、国民の中に消費規制をやろうと思っても、首相がぜいたくな物を買うなと言っても、国民はいや、だいじょうぶだ、まだ景気はいいんじゃないかというようなことで、なかなか消費規制をやろうと思ったって承知しない。これは何もそういうことばかりではなくて、日本人の国民性がそういうふうになっているのですが、どうもそういう不安がまじめに考える人にはあると私は思うのです。これはやはり政府みずからが、日本は戦争をやっているわけではないのですから、そういうような日本の円の不安というものがあるということを意識しなければ問題にならぬですけれども、どうもそういう点で何か隠しているのではないかというような懸念を私は持つのですが、そういうことはありませんか。
  57. 奥村輝之

    ○奥村説明員 事態が楽観的なムードであってはならないという点については、お説のとおりであります。政府が隠しているのではないかという点については、お説には同意いたしかねます。  問題の一つは、国際収支のしりをよくするためにユーロ資金その他の資金の導入をふやして、それで糊塗するのではないかというような疑いがあるというふうに私は伺っておりますが、実はこの点についての考え方は、失礼でございますけれども、正反対でございます。私ども国際収支を毎月発表いたしておりますけれども、そのどこを見ていただきたいかといえば、貿易を見ていただきたいのでございます。最近、御存じのように金融もいささか締まってまいりまして、日本企業が国内で調達できないで金を外国に求める、あるいは日本銀行が国内で調達十分でない企業に貸すためにみずからユーロダラーをよけいにとるというような動きがあるわけでございますが、これは過度にわたりますと日本の対外信用をなくするもとでございますから、やはり秩序正しく、返済のときのことも考えておいて計画的にやっていかなければならぬことじゃないかと思います。したがって、私どもは短期資金の動きあるいはインパクトローンの動きについてはむしろこれを警戒する。それによって最後の外貨準備があまり変わっておらぬじゃないか、それで安心してしまう——あえて引き締めムードを出そうという気持ちではございませんが、事柄の本質をよく理解していただくために、そういう問題はそういうところに注意して見ていただきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  それからもう一つ、御質問の中で重大な点があると私思いますのは、ユーロ資金の取り入れということで、何か大蔵省が一生懸命になっておるんじゃないかという点でございます。そうでございましょうか。——それは私ども、毎年金融の引き締めがありますにかかわらず、輸入、輸出ともに増加してまいりまして、そのときに、やはり日本が貿易金融として必要な金は、毎年貿易規模の増大に伴って必要とするわけであります。その資金を、いままでアメリカに相当依存しておったわけでございますが、多角的に集めていくということで、これも適当な額を無理をしないようにヨーロッパからも取り入れていく、こういう考え方でございますが、今度の国際金融局長の出張は——出張と申しますか会議出席は、決してそういうふうな取り入れをやるためではございませんことをはっきりと申し上げておきます。
  58. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 奥村さん、私は觀次郎とあるくらいに、自分でも勘がいいと思っているのです。実は、去年の暮れからことしにかけて、どうも日本経済的な恐慌に近いことがあるんじゃないかという予感がしたわけです。そこで実は、私は非常に現在の経済事情については批判論なんです、非常に批判的な目で見ているのです。それはどういう理由だということは、これはきょういろいろ一ぺんには質問できませんけれども、たまたま御承知のように、ロンドンタイムスに円の切り下げの記事が出ました。日本の現状では円の切り下げということはそう簡単にできるものではないし、ポンドがやったからすぐやるようなことではないと思うのです。けれども、ドルの切り下げの前にあるということを私は考えておるわけです。しかし、それはないという保証があなたはできますかどうか。おそらく私は、たとえば二百五十億ドルの戦費を使っておるアメリカが、御承知のように今度は金の準備金をやめたり、それから、私は戦地に行っておったからよく知っておりますが、おそらくもっと兵隊をふやさなければあの軍司令官も承知できぬと思う。そのばく大な費用というのが、これが御承知のようにアメリカのドル不安の理由になっておるわけでありますが、そういうことはないという保証が全然ないということも考えられるわけです。だから、少なくとも現在は、ウ・タント事務総長の、せっかくの戦争をやめるチャンスもいまの大統領が受け入れないということになれば、もっと戦争は長引く、長引けば戦費がよけい要る。戦費がよけい要れば——今度のドル防衛の中心になっておるのは何といってもベトナム戦争ですね。ちょうど日本中国大陸や南方に行ってにっちもさっちもいかなくてどろ沼に入ったのと同じような、そういう懸念が決してなしとはしない。これは戦争のことはわかりませんよ、けれども、かりにこのベトナムの戦争がなお継続するとなれば、そういう不安を決して私は等閑に付するわけにはいかないと思うのですが、そういう点で、私は、いまあなた方は全然不安がないと言われますけれども、何かいろいろな日本の周囲を取り巻く現象では、日本経済がよくなるようなきざしは現在ないと思うのです。何かこういうことがあるからだいじょうぶだというだけの確信を持った御返事ができますかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  59. 奥村輝之

    ○奥村説明員 先ほどお答えしたことの繰り返しになって恐縮でございますけれども、やはりドルの価値についてアメリカ自身の努力……(「努力してないじゃないか」と呼ぶ者あり)  それではもう一ぺん御説明しますけれども、アメリカ自身がことしの一月一日に国際収支面での改善策を打ち出したわけでございます。その一つは対外直接投資について削減を行なう、対外与信について規制、節減を行なう、海外旅行について制限を設ける、その他EECの非関税障壁撤廃、輸出の振興等々の策を出して、これによって一九六八年には三十億、ドルの改善をしたいということを言っておるわけでございますが、まあこういうふうな対外的な方策だけでなくて、アメリカ国内においてもしかるべき政策がとられるし、という努力がいま行なわれておるわけでございます。EECのほうでも経済成長率を、去年はずいぶん低かったわけでございますけれども、これを相当高める、外貨準備の増加が減ってもいいから協力していこうという空気が最近のEECの蔵相会議その他の会議で出ておるわけでございます。  したがって、そういう意味でこういうふうないろいろな協力、自己の努力を通じまして、ドルの価値というものが私どもとしては変わることはない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  60. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 奥村さんの言われることは半面の真理であって、アメリカがそういうようなドル防衛をやるために日本は困っておるのでしょう。今度の輸入課徴金の問題なんかは、アメリカが自分のドルを守るために日本なんかにこういうひどいことをやってよこすのでしょう。これは計算すれば最低五億から十億ドルぐらいになるそうでありますが、それはアメリカのドルのためにはいいかもしれませんが、日本はそれがために被害を受けるんじゃありませんか。  それから、EECが御承知のように高まれば高まるだけ日本経済がよくなるという理由にはならぬと思う。EECがよくなったらアメリカはそのためによくなる、犠牲になるのはこっちだ、日本が犠牲になるように思うのです。そういう点がどうも外国を主にして、日本がうまくそれに肩寄せすれば何とかよくなるのじゃないかという、そういう安易な気持ちがあるのじゃないかと思うのですが、その点は奥村さんどうですか。
  61. 奥村輝之

    ○奥村説明員 この問題は、やはりアメリカの赤字をEECの主要国の黒字というものとの間の調整で行なわるべきが筋であると思います。そういう方向で私どもも主張し、EECもそういう方向において了承し、つまり先ほども申し上げておりますが、世界経済の縮小のない形でこの問題が処理せられていくというのがほんとうの方向ではないかと思われます。
  62. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そこがどうも私は納得できないのですが、アメリカとヨーロッパのEECの中でうまく操作すれば、そのことによって日本が何かの利益を得る、何か情勢がよくなるのじゃないかという、そういう考えは甘い考えではないかと思うのです。日本自体はやはり日本自体で自主的に、そういう経済がよくなるような条件がなければ、アメリカやEECがよくなっても日本には関係のないことだと思う。そういう点、どうも日本の国の経済が自主性がないという点に、私は非常に不安があると思う。それは、御承知のようにフランスを中心としてヨーロッパでEECが発達してから、イタリアなんて十年ぐらい前と違って非常によくなってきた、これは事実でありますが、日本は残念ながら東洋、アジアの一角の中にあって、どこかと協力をしてやろうと思うのに、韓国や台湾ではしようがない。七億の民を持っておる中国とやろうと思えば、古井君なんかが行ってやっと一年間一億ドルばかりのものをもらったらしいのですけれども、とにかく中国やあるいは人口の多いソ連などと何かの貿易をやれる道ができれば、あるいはそこに道が開かれると思うのですが、いままでのアメリカとの関係の貿易がこういうような関係で悪くなれば、私は、日本は必ずしもそれによって得るものがあるとは思われない。そういう点で、これは政治論になりますからあまり奥村さんに言ってもあれですけれども、私は大蔵大臣がどういうように考えておるかということについては議論があるわけです。そういう点で高官ではあるけれども、まだそういう政治論にまでくちばしをいれることはできない立場でありますから、あまり政治論はしませんけれども、率直に国際金融局次長として、ひとつあなたも責任者の一人だから、そういう点でこういう点がありますからだいじょうぶですと——この間名古屋に行ったらちょうど経済企画庁の戸田君が来ておって、ぜひひとつ奥村さんに金融のことを聞いてくださいと言っておりましたが、たまたまきょうこういうチャンスを与えられたので、私はあなたに根掘り葉掘り聞きたいのですが、ひとつそういう点で私ならこう思う、こういうことを言ったって首になることはありませんから、多少思い切って、私はこう考える、私はこう思うというくらいのことは言わなければ、だんだんぼくは日本経済事情というのは、ちょうどあのおもちゃの菓子を食ったら中はがらんどうだったというような、そういう杞憂が一つあるのですが、この点をどういうように私らに納得させて、なるほどあなたの意見ならうなずけますという意見をひとつお示し願いたいと思うのですが、どうですか。
  63. 奥村輝之

    ○奥村説明員 なかなかむずかしい御質問でございます。私は、やはり日本の成長率、昭和四十三年度の予算の前提となりました成長率、それは前年に比べて非常に低いものであります。こういうふうに経済のある程度の引き締めというものがなければ、これから流動的な国際情勢には対処できない。これはもう私ども国際金融関係に従事する者が、去年からずっと痛感してきたところでございます。そういう意味で、予算の面でも、あるいは金融の面でも施策がとられようとしているわけでございます。繰り返して申しますれば、やはり日本もしっかりしていかなければならぬわけです。それから、先ほど申しました世界の主要国の経済が一体拡大するか縮小するかというのは非常に大事な点でございますが、去年はOECDの資料を見ますと、成長率が三%であった。一九六八年、本年は四・五%程度成長を見る。この成長は、やはり世界の主要国が成長していかなければ、世界全体のこれだけの成長率は考えられないわけでございます。そのために、話はもとへ戻りますけれども、やはりお互いの間の協力ということを進めてまいらなければならぬ、私としては、そういうことで日本の努力が非常に必要であるということは申すまでもありませんが、同時にまた、世界の各国の協調というものも大事であるというふうに考えるわけでございます。
  64. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 先ほど奥村さんの返事がもらえなかったわけですが、円の切り下げの、イギリスから出た二つの新聞と雑誌ですね。これが誤解であったこともわれわれはわかるのですけれども、しかし、何にも根拠がなくてやっぱりこういうことが出たんじゃないと思うのです。日本経済を知らなかったという点もあると思うのですけれども、そういうような円の切り下げの説が出たというこの根拠ですね。これはどういうことが、誤解であってもいいけれども、どういうように解釈されておりますか。重ねてお伺いします。
  65. 奥村輝之

    ○奥村説明員 先般ファイナンシャル・タイムス、イギリスの新聞でございますが、これのロンバードに円の切り下げに関するうわさの記事が出ました。それから、ザ・タイムズに続いてそれによく似た記事が出たわけでございます。私どもはこの原因は一体どこにあるのか、実はそういううわさを飛ばしたのにあったことがございませんのでわかりませんが、しかし、一つは、やはり日本国際収支というものは昭和四十二年度においては総合収支で七億ドル程度の赤字が出る、これは政府の見通しでございます。来年度は、三億五千万ドルの赤字が出る。したがって、適切な施策をとらなければならないということを私どももそれに参加して大いに力説したわけでございます。こういう場合に非常に困るのですが、国内で言うことと国外で言うことは受け取り方が違うわけでございます。なかなかそこの使い分けというのはできません。そういうことで、私どもが先生のさっきおっしゃったような事態の重大性、楽観を戒めるという趣旨のことを少し大きな声で言えば、そういうふうにとる向きも出てくるということでございましょう。しかし、日本産業の競争力、これから見ますれば、そういうことは全然ない、また、日本のこれからの施策はおそらくよろしきを得るとわれわれは確信しておりますので、そういう心配はないというふうに考えております。
  66. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 どうも私は、日本国際収支がことしには好転をするというような材料はない、こう見ておるのです。そこであなたにお尋ねするのですが、まあ三億五千万ドルより上回ることはない、このままでいけばどうにかそのくらいの赤字でおさまるように思っておられるか、それには何か根拠があるかということと、あるいは国際収支がもっとよくなる可能性はないか、この二つのことをあなたの見通しで伺いたいと思う。
  67. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私ども、これから先の国際収支については、財政金融の面の施策というものによって国内の需要がどうなるかということが一つのポイントであると思います。もう一つは世界経済がどうなるか、世界経済の成長が低くなれば日本の中で幾ら需要が少なくなりましても輸出には向かない。この両点が一つは問題でございます。そういう意味で国内経済の点につきましては、現在の施策というものがおそらく需要を引き下げるのには相当の力を持つ。世界経済の一九六八年の貿易額の伸び、私どもは六・五%程度と考えております。これは実は去年OECDから発表されました数字が七%であったわけであります。この七%というのは私どもの立場で考えてみてどうしても高過ぎる、やはりいろいろなポンドの切り下げの影響、あるいはアメリカがとるであろう影響というものを考慮に入れて下げたほうがいいということで、七%を六・五%に下げたわけであります。国内の輸出の弾性値、これは過去のいろいろの経験によりまして、私どもは今回はまあ二・三前後出てくるのではないか。そこで輸出は一五%伸びる。こういう計算が根拠になりまして三億五千万ドルの赤字、これも下期に均衡を達成することを目標とするというふうに考えておるわけでございます。
  68. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 私は、アメリカの今度の国境税あるいは輸入課徴金の問題は、これは先のことはわかりません。日本で代表団が政府間の委員会に行かれるかもしれませんが、しかし、この前陳情をしたときに、アメリカにおる下田大使が、アメリカはいま戦時体制にある、そんなよその国なんかかまっておれぬというような表現があったことを伺っておるのですが、しかし、私はそういうような情勢の中で、日本の対米貿易がふえるという予想がつかないのですね。どういう影響を受けるかということを考えると、必ずしも私は楽観はできないと思うのですが、アメリカだけにおいてもそういうような考えを持つのですが、一体そういうような点はどういうように認識をされておるのか。アメリカだけのことでけっこうですからひとつ見通しを伺いたいと思います。
  69. 奥村輝之

    ○奥村説明員 御指摘のように、日本の輸出の相手先としてはアメリカが約三〇%でございまして、非常に重要なウエートを占めるわけでございます。私どもは輸入課徴金の問題についてはいま御指摘のようにやめさせるということで交渉中でございます。その制度の内容いかんによっては、これは仮定の話でございます、内容いかんによってはやはり日本の輸出の受ける影響が相当大きいことは懸念されるわけでございます。しかし、いまの段階では内容もわからないし、どれだけの影響を受けるかということも、これは申し上げることは、私は非常にむずかしいのではないかと思います。
  70. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それから、アジ銀のことについて、本論に入るわけですが、いまアジ銀の貸し出しの状況はどのようになっておりますか。  それからそれについて、私は、アジ銀に出資される国際環境にあった三年前と現在とは非常に違っておるという事実を御認識になっていると思うのです。奥村さんは名古屋におられたのだから御承知だと思うのですが、非常に倒産がふえて、特に繊維業者が非常に多いのですが、戦後最高の率をあげておる。その大きな原因は、人間の不足という点もありますが、何といっても資金繰りがうまくいかぬという点と、手形が長期にわたって、お産手形以上の手形が出るというような、こういう現状があると思うのです。日本中小企業者が倒れておるのに、何もマニラへ行って金を出さなくてもいい、銭もありませぬのにやらぬでもいい、こういう声があると思うのです。だから私は、これとあれとは別でありますけれども、現状の中でアジアジ開発銀行にたくさんの資金を出すということについては、やはり私たちとしては納得のいかないような面もあるのですが、この点は  一体どのように考えておられますか、奥村さんに伺いたいと思います。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席
  71. 奥村輝之

    ○奥村説明員 第一は、アジア開銀の業績いかんという点であろうと思います。アジア開発銀行はいま準備段階をやっと終わりまして、去年の暮れあたりから徐々に活動を開始したということでございます。まだ取り立てて申し上げるほどの業績はございませんが、さしあたり去年から開始されましたのは、タイの工業金融公庫へ五百万ドルの借款を供与したわけでございます。それから、去年の暮れから今年の一月にかけまして、インドネシア政府要請で食糧増産のための技術援助のチームを同国に派遣したわけでございます。それから本年二月に、韓国の要請によって、韓国にできました農漁業開発公社、これに対する技術援助のミッションを派遣することを決定したわけでございます。  こういう日本国内の状況の際に、こういうふうな機関に多額の金を出すということは問題ではないかという点でございますが、私どもとしては、確かに現在の国内情勢は御指摘のようにいろんな問題もあろうかと思います。しかしながら、また長期的に見れば、日本全体の繁栄、アジアの繁栄を通じて日本の繁栄というものも考えてまいらなければならぬ、そういう両面の問題がございます。私どもとしては、現在のこういう事態を十分頭に置きながら、やむを得ない必要な最低限というものを出している。しかも、できるだけ国際的な機関というような多角的な方式を通じて金を出すというような、協力を有効にするというために多角化を行なっているということも一つの必要な方向であろうかと存じますので、そういうことも頭に置いて資金を出すというふうに考えているわけでございます。
  72. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この法律は、私は成立をするときに反対したのです。なぜ反対したかというと、反対した理由は、今日はっきりわかっていることは、御承知のように台湾の労働者、韓国の労働者それからおそらくタイもそうなると思うのですが、それが結局日本の労働者に非常に不安感と、それからこれは御承知のようにチープレーバー、安い賃金ですから、非常に悪い影響がある。よその国がよくなったかわりに日本が非常に悪くなるということは、私はどうも日本資金を出すということに不審があるのです。こういう点は、役所の人はあまりお考えにならぬと思うのですが、われわれ現実に深刻に考えてくると、何か敵のために、上杉謙信じゃないけれども、塩を与えるような結果になる。それは低い国を開発することはけっこうだけれども、まずみずからの国を助けることが大事だ、こういうふうに考えておる。これは奥村さんに考えてもらいたいのですが、いまアジア開発銀行総裁をやっている渡辺さんが、十六年ぐらい前にニューヨークの公使をやっておられたのを私は知っておる。あの人は別段悪い人じゃないけれども日本の金を貸して日本の労働者をいじめるような結果がでてくるのです。どうも日本政府のやることは、結局あなた方は個人的に日本の労働者を憎んでおられぬと思うのですが、どうも結果はそういう結果が出てくるのです。いまタイの話が出ておりました。私もタイに行ってきましたから知っておりますが、結局、日本資金を出してもやがては日本一般労働者を圧迫するような形が出てくるのじゃないかという心配が出てくる。だから、マニラの銀行が非常によくなって、それが発展すればするほど、結局、日本一般労働者に対して非常にひどい目にあわせる結果が出てくるというようなことが心配されるようになってきた。  そこで、マニラの開発銀行資金は円で、国債でやられるらしいのですけれども、どうもそのところがわれわれと考え方が違うのですね。こういう点は奥村さんに罪はないのですよ。ないけれども、結果はそういうようなことが出てくることをあなた方はお考えになったかどうか。これは大臣か倉成さんに聞いたほうがいいかと思うのですが、そういう点であなた方は低開発の国だといって、結局、韓国の人間や台湾人、タイ人を助けて日本の国の人を苦しめるような結果がどうも考えられるのですが、その辺どういうふうにお考えになっておられますか。
  73. 奥村輝之

    ○奥村説明員 確かに御指摘のような点は十分頭に置いてやらなければならぬことと存じます。しかし、また反面考えてみますと、こういう発展途上にある国の経済が伸びまして、日本からの輸入がふえてくる。そういうことによっても、日本の労働者の生活水準がやはり上がっていくという面が考えられるわけでございます。その間できるだけ摩擦を少なくして、うまく持っていく、こういうことが肝要であるというお話であろうと私は思います。
  74. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 一昨年アメリカに行ったときに、ワシントンで向こうの上院の繊維委員長——名前は忘れましたが、パストーレとかいっておりましたが、その委員長に会ったときに、日本の繊維貿易についていろいろ話した中で、最近、日本の繊維業界が韓国やその他の未開発国に押されるという話をしたのです。そうしたら、そのときに向こうの委員長が、冗談じゃない、日本の国は大体アメリカの繊維業を圧迫したじゃないか、君らが外国にやられるのはあたりまえじゃないかと言われて、二の句が継げなかったことがあります。これは三年ばかり前なんですが、おそらくいまの日本経済のことを考えてみると、結局日本は、あなた方のように外国へ行って、日本資金を出して、向こうの低開発国をどんどん発展させて、そして日本の労働者は——繊維なんかもその一つの例ですが、そういうようなことでまいってしまうような心配があるのです。だから私は、アジア開発銀行をあまり好きじゃないのです。それはアメリカがどんどんやろうと言ったと思われますが、これはどうも今度は、アメリカはおそらくそう力を入れぬと思うのです。そうすると、日本はそういうものばかりしょって、そして日本の労働者を苦しめるような結果が出てくる、そういうような不安が私にはあるのです。これは他日お尋ねをしたいと思うのですが、とにかくこういうような問題について、よほど考えていただかないと、結局日本の国民が、日本の国民の税金からまかなわれた金で返り血を浴びる、こういうような結果になるということを考えておるのですが、こういう点は皆さん方はお考えになっていないのかどうか。この点は先ほども言いましたけれども、そういう点のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  75. 奥村輝之

    ○奥村説明員 これは日本産業政策全般の問題にもわたりますので、私からこういう御答弁をするのはいかがかという感じもいたしますけれども、しかし、御指摘の点については十分頭に置いて、いろいろなプロジェクトその他を選択するときには、日本からも理事が出ておるわけでございますから、まあ日本の国益だけを主張するわけにまいりませんけれども日本の立場ということも日本から出ております理事考えて行動をするということにも相なろうかと思います。  また、先ほど申し忘れたのでございますけれども日本から拠出します金は、現金の外貨を貸すわけではございません。日本の生産物とか日本の役務、これで出すわけでございます。金額は幾らときめてありますけれども、どこの国から買ってもいいという形式のものではございません。現にいま第二世界銀行というのがありますが、これは私どもが出資しておりますパーセンテージよりも高い率の輸出を日本からやっておるわけでございまして、そういうことで、日本産業に当面関係のないことであるかどうかといえば、これはやはりかなりのプラスになる面があるのではないか。もちろん御指摘の点が重大な問題点であると思いますけれども、補足的に申し上げればそういうことであると思います。
  76. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 もう一つほかのことで伺っておきたいのですが、いまヨーロッパでドル防衛の関係からユーロダラーが非常に問題になってきているのですが、現状はどうなってきておるのか。これはいま重要な時期的な問題でありますから、ちょっと伺いたいと思います。
  77. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ユーロダラーは、実は最近非常に堅実に発展してまいった市場でございます。その全体の資金量は、推測して申し上げるほかはないのですけれども、百四十億ドルとか百六十億ドルとかというふうな話があるわけでございます。アメリカがドル防衛策を発表いたしましてから、このユーロダラー市場というのはかなりタイト化するのではないかという話があったわけでございます。ところが、現在までのところでは、金利情勢はわりあい安定いたしております。しかし、これから先こういうふうな国際的な金融市場の状況というものは、私どもは、楽観を許さない、資金的にも金利の面においてもタイト化する可能性が十分ある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  78. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最近の世界の通貨の中心であったドル、ポンドの不安ということは、同時に、この世界経済の中で資本主義が崩壊の過程に逐次向かっているのじゃないかと思われますが、そういう点で、そういう中にあって私らは外国のことは第二として、日本経済をどのように展開していくかという問題が大きな問題になってくると思います。そういう点で私は、円の価値をどのように維持し、どのように円というものを守っていかれるのか。これは大蔵省の人に伺っておきたいのですが、その点はどのようにお考えになっておるのか。私たちは、アメリカやイギリスの、これはイギリスは労働党内閣でありますけれども、世界の通貨の一番重要なものが権威が落ちた。それに対比して円がどのようになるかということが問題になると思うのですが、どうもその点で、日本の国はアメリカに占領された点もありますが、ややもするとアメリカと心中するような形があるのじゃないか。私はそういう点を非常に憂えるわけです。日本の国は何でアメリカのために——佐藤総理大臣が、いわゆるアメリカの核のかさに従っていく。それは安保条約もあるからやむを得ないといわれればそれまでかもしれませんけれども、どうもアメリカにたより過ぎる点があるのじゃないか。しかし、アメリカは爛熟した資本主義経済の国であるし、日本経済と根本的に違うのですから、日本のような貧乏な国で——戦争に負けたのはアメリカに負けたのであります。それがいまになって何だかアメリカに盛んにおべっかを使っておるような感じは、どうもいかにも自主性がないように思うのです。そういう点で私は、資本主義は崩壊の過程にあるという、そういう大きな前提のもとに日本の円がどういうようにいくかということについて、その経済的な立場からでもけっこうでありますが、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  79. 奥村輝之

    ○奥村説明員 非常に大きい問題でございますが、私どもが日夜努力しておりますのは、円の価値をいかにして維持するかという問題でございます。そういう意味で財政金融政策も運用してまいる。国際収支の見通しについても絶えず慎重な予測を立てて、それに相応する弾力的な措置をとってまいるようにしていきたい。また、そのためには、国際協力をやっていくということで、すべてが円の価値の維持、私ども仕事の根本は円の価値の維持でございます。この点については日本が自主的な立場で今後とも行動してまいる、私どもはそれが必要であると思っております。
  80. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に、倉成さんに一つだけ伺っておきますが、きょうはいろいろ奥村さんから伺ったのですが、アジア開発銀行の問題は、これはただ単にアジア開発銀行の問題でなくて、やはり日本の円の問題と関連をし、またポンド、ドルとも関連があると思うのです。そういう点で、日本経済的な独立性を持つという意味においても、ひとつぜひそういう点については考えていただきたい。先ほど奥村さんは非常にマニラの銀行を期待しておられるようでありますが、私たちはいろいろな点から、こういう海外へ援助資金をやってもむだになる可能性がある。ちょうどインドネシアのスカルノに貸した金がいま返ってこないのと同じような結果になる心配がありますので、そういうことについての善処方、いわゆる日本国民が損をしないようなそういう立場をとっていただきたいことをお願いしたい。
  81. 倉成正

    倉成政府委員 先ほどから経済専門家であります佐藤先生からいろいろ御高説を拝聴いたしまして、静かに傾聴いたしておりました。先生のいろいろ御質問された要点は、一つは、日本の対外経済協力のあり方についての問題であったかと思います。この点につきましては、御指摘のように、率直に申しまして、いろいろ過去において必ずしも適切でなかった点もあったかと思います。したがいまして、今後その協力のあり方等については、やはり根本的にいろいろ検討いたしまして、さようなことのないように対処をしてまいりたいと思います。  また、円の価値の維持という問題は、日本経済至上命令でございますし、単に日本経済のみならず世界経済にもかなり大きな影響を及ぼすことであろうと思うわけでありますが、御案内のように、日本経済の成長率も、三十年から四十年の間は実質九・六%、アメリカが三・七%、イギリスが三・三%、あるいは西ドイツが多少高くて六・五%というところですが、とにかく日本国民の旺盛なる意欲というので成長率も高いし、また輸出の伸びも、先ほど奥村次長が申しましたように、世界の貿易に比して二倍以上の弾性値を持っておるということでありますから、経済の運営よろしきを得ていくならば、私は、円の価値は必ず維持できると思っております。また、アメリカにつきましても、いろいろいわれておりますけれども、少なくとも貿易収支、経常収支については大きな黒字でありますから、ドル防衛というのも政策さえ適切であれば必ず成功するということを考えております。  そういう観点から、非常に困難な時期にいま世界も日本も当面しておりますので、ひとつこの状況を踏まえまして、ちょっとしたことにも関心を払って、日本経済、財政、金融政策が誤りのないようにこれから努力してまいりたいと考えております。
  82. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 再開は午後一時二十分とし、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  83. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  製造たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案物品税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上の各案を議題といたします。     —————————————  製造たばこ定価法の一部を改正する法律案  酒税法の一部を改正する法律案  物品税法等の一部を改正する法律案  租税特別措置法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  84. 田村元

    田村委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。水田大蔵大臣。
  85. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま議題となりました製造たばこ定価法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案物品税法等の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和四十三年度税制改正のため諸法律案のうち、さきに所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案について御説明申し上げましたが、今回は、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案外三法律案について申し上げます。  まず、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  製造たばこの小売り定価は、十数年来据え置かれておりますが、政府といたしましては、この間における所得、消費水準の上昇及び諸物価の動向等にかんがみ、また、昭和四十三年度における財政収入の確保をはかるべく、製造たばこの小売り定価の引き上げをはかることといたしております。  この法律案は、製造たばこの小売り定価を引き上げるため、種類別、等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり五円ないし十五円、パイプたばこについては十グラム当たり十円ないし二十円、葉巻きたばこについては一本当たり十五円ないし六十円、それぞれ引き上げる等、所要の改正を行ない、本年四月一日から施行しようとするものであります。  なお、製造たばこの各銘柄別の小売り定価につきましては、この最高価格の範囲内で、日本専売公社が大蔵大臣の認可を受けて定めることとなっております。  次に、酒税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  酒税は、その税率が所得水準、物価水準の変動にかかわりなく定額に据え置かれているため、税負担が相対的な低下を来たし、他の諸税の負担との間に均衡を失していると認められますので、清酒特級及び一級、ビール並びにウイスキー類に対する税率を引き上げ、あわせて所要の規定の整備合理化をはかるため、この法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容について、その大要を申し上げます。  第一に、清酒特級及び一級、ビール並びにウイスキー類の税率の引き上げをはかることとしております。  すなわち、これらの酒類に対する従量税率を種類別、級別間の格差を考慮しつつ、おおむね一〇%ないし一五%程度引き上げることといたしました。この結果、通常の容量の容器一本当たり、清酒の特級は六十円、一級は四十円、ビールは七円、ウイスキー類の特級は六十一円、一級はアルコール分四十二度もので四十一円、四十度もので二十八円、二級は三十九度もので二十円程度の増税となります。  また、ウイスキー類特級の従価税率につきましては、従量税の税率の引き上げに見合ってその税率の引き上げを行ない、新たにウイスキー類の一級及び二級の一部のものにつきましても、税負担の適正化をはかるため、昭和四十六年四月から従価税制度を導入することとしております。  なお、その税率の引き上げが行なわれる酒類を一定数量以上所持する酒類販売業者等に対しては、手持ち品課税を行なうこととしております。  第二に、酒類の定義の整備をはかることとしております。  すなわち、しょうちゅうについて、一定の限度内での砂糖等の混和を認め、また、ウイスキー類のうちウイスキー原酒またはブランデー原酒が混和されていないものは、ウイスキー類の範囲から除外してスピリッツ類とする等、酒類の定義について所要の整備を行なうこととしております。  第三に、酒税に関する手続規定の整備簡素化をはかることとしております。  すなわち、酒類製造者または酒類販売業者が従価税率適用の酒類を詰めかえまたは改装する場合に届け出を要することとするとともに、未納税移出に関する承認制度の一部を申告制度に改める等の措置をとることとしております。  次に、物品税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  物品税につきましては、国際競争力の強化等の見地から、カラーテレビジョン受像機等十品目につきまして暫定的に税率の軽減または非課税の措置を講じてまいりましたが、この暫定措置の期限は、本年中に到来することとなっております。これらの物品のうち、小型カラーテレビジョン受像機等六品目につきましては、すでにその目的を達成したものと認められるところから、その期限到来とともに本則税率を適用することといたしました。他方、パッケージ型ルームクラー等四品目につきましては、その生産及び取引の実情に顧みまして、なおしばらくの間、その税率の軽減または非課税の特例措置をとる必要があると認められます。また、アンサンブル式レコード演奏装置に対する軽減措置の期限到来に伴い、その構成部分品に対する税率の調整を行なう等の措置を講ずる必要がありますので、ここに物品税法等の一部を改正する法律案提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、その大要を申し上げます。  第一に、パッケージ型ルームクーラー等四品目につきまして、その税率を漸進的に引き上げまたは非課税措置を延長することとしております。  すなわち、パッケージ型ルームクーラーにつきましては、一五%の軽減税率を、小型の白黒トランジスターテレビ受像機及び温蔵庫につきましては、五%の軽減税率をなお二年間適用し、あわせて、他のトランジスターテレビ受像機及び電子楽器につきましては、非課税措置をなお二年間継続することとしております。  第二に、アンサンブル式レコード演奏装置の暫定措置の期限到来に伴い、その構成部分品に対する税率の調整をはかることとしております。  すなわち、アンサンブル式レコード演奏装置につきましては、暫定措置の期限到来とともに一五%の税率が適用されることになりますが、その構成部分品に対する税率もこれと同一となるよう所要の調整を加えることとしております。  なお、これによりまして著しく税負担の増大するものにつきましては、転嫁の状況等を考慮し、二年間その税率の引き上げ幅を五%にとどめる経過措置を講じております。  第三に、オールチャンネルテレビ受像機につきまして、UHF放送の受信回路に関する課税標準の特例を今後二年間設けることとしております。  このほか、受信用真空管等を非課税とする等所要の規定の整備をはかることとしております。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  この法律案におきましては、最近の経済情勢と当面の政策上の要請にこたえ、税制上の特別措置について、新設あるいは整理合理化、適用期限の延長等を行なうこととしております。  第一は、輸出の振興に資するための措置を講ずることであります。  その一は、輸出割増償却制度及び海外市場開拓準備金制度を拡充し、輸出貢献企業については、その割り増し率及び準備金の積み立て率を割り増しすることといたしております。  その二は、技術等海外取引の特別控除制度の適用対象に農業及び漁業に関する技術指導並びに開発途上国の一次産品の仲介貿易を加え、また、海外投資損失準備金につきましても、特定地域において石油資源を開発する法人をその適用対象に加えることとしております。  このほか、今後二年以内に発行される民間外貨債の利子について所得税を免除し、国際観光ホテル整備法による登録ホテル業等の減価償却資産について耐用年数を短縮することとしております。  第二に、技術開発を促進するため、試験研究費が増加した場合の税額控除制度を拡充し、年率一二%をこえて増加した試験研究費については、その控除率の割り増しを行ない、また、電子計算機産業の育成に資するため、電子計算機買戻損失準備金の制度を設けることとしております。  第三は、中小企業の構造改善を促進するための措置を講ずることであります。  すなわち、構造改善促進計画を実施する商工組合等の組合員である中小企業者につきまして、工場用建物、機械等の二分の一割増償却制度を創設するほか、事業協同組合等が組合員等の職業訓練のための共同教育施設を設置した場合には、五年間十割増しの償却を認めることといたしております。  また、中小企業者の機械等の割増償却制度について業種指定の期限を二年間延長するほか、中小企業構造改善準備金、中小企業の貸倒引当金の特例等中小企業に関する課税の特例の適用期限をそれぞれ二年間延長することとしております。  第四は、既存の特別措置につきまして、実情に応じた整備合理化を行なうことであります。  その一は、価格変動準備金制度につきまして、その積み立て限度が既往の積み立て額を下回ることのないよう所要の措置を講じつつ、積み立て率を二%程度引き下げてその整理合理化を行なうことであります。  その二は、特定設備を廃棄した場合及び合併をした場合の税額控除制度につきまして、その適用範囲を縮減する等の合理化を行ない、その期限を延長することとしております。  このほか、今後二年以内に発行される国債について、別ワク五十万円の少額貯蓄非課税制度を設け、また、原油備蓄の増強のために緊急に必要とされる貯蔵施設及び大都市における送配電設備の整備のために必要な地中送配電設備について、特別償却を認めることとしております。  また、土地税制のあり方について引き続き根本的な検討を加えることとされていることに関連して、事業用資産の買いかえの特例の適用期限を一年間延長するほか、期限の到来するその他の特別措置、すなわち資本構成を改善した場合の特別控除制度、農地等の現物出資の登録免許税の軽減措置等について、実情に応じ二年ないし五年間適用期限を延長することとしております。  なお、以上のほか、税制の簡素化をはかる見地から、収用等に伴い代替資産を取得した場合の圧縮記帳の特例等に関する申告要件についての宥恕規定を設ける等所要の整備合理化を行なうこととしております。  以上、四法律案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し述べました。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  86. 田村元

    田村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  87. 田村元

    田村委員長 引き続きアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  88. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 予算委員会のほうがもし十分間ばかりお許しいただけるならば、非常に重大な問題があるので、ひとつ大臣に意見を承りたいのです。  というのは、アジア開発銀行に本年出資は幾らし拠出は幾らするか。幾らになりますか。
  89. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 代用公債をもって二千万ドル拠出する予定をしております。
  90. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは特別基金のほうでございますね。出資のほうは幾ら出しますか。
  91. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 出資は三十六億円でございます。
  92. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 三十六億円の出資は予算書に明らかに記載をされております。予算書の三一ページに三十六億円、さらに添付書類のほうにも明らかになっておりまして、三十六億円ということになっておる。ところが、特別基金のほうについては、拠出をするのでありますが、一銭も予算書に計上されてない。計上されておりますか。
  93. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは計上されておりません。
  94. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 財政法上から、国の歳出、すなわち支出をする場合には、当然予算を経なければいかぬと思うのでありますが、なぜ予算にそのことを計上しなかったのか。
  95. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度アジア開銀から現金が支払いを求められる可能性はない、来年度になるという見通しでございますので、そのようなことにいたしております。
  96. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 来年度実際上そのお金が必要だという見通しならば、なぜ本年あわててこういうこそくな措置をとる必要があるのですか。もし来年お金が必要だというならば、いま財政硬直化のおりからも、また国際収支悪化のおりからも、来年に持ち越したっていいじゃありませんか。なぜこういうこそくな、財政上予算を経由しないで支出をしようとたくらむのですか。
  97. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、アジア開銀のこの基金は、日本が提唱して各国にも賛成を得たものでございますし、そういう意味で今年度じゅうこの問題の相談はございますので、やはり日本が率先してこの二千万ドルというものをこういう形でここできめておくということが日本の姿勢として必要であるというふうに考えたわけでございます。
  98. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 必要と思うのでしたら、当然予算書であるいは予算総則で、どこかで国会の審議になるように、この支出は当然計上すべきじゃありませんか。載っておるのですか。
  99. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは御審議を願えるように措置しております。
  100. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 何ページにありますか。
  101. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四ページです。予算総則の十条です。
  102. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは「アジア開発銀行の特別基金に充てるため拠出する金額の合計額」こう書いてありますね。これを何で出すかも全然書いてない。どこから出すかも書いてない。添付書類のどこに書いてありますか。
  103. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま御審議を願っておりますアジア開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の中で「予算で定める金額範囲内において、本邦通貨により拠出することができる。」という、いま御審議を願っておるこれによって、そういう措置をとろうとするものでございます。
  104. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは予算で定める金額範囲内において支出することはできる。しかし、それを普通ならば、金額で本年は何ぼ出しますと当然この添付書類のどこかに説明されていなければいかぬですよ。これは限度額をただ一応ばんときめているだけですね。それを金がないから国債で出そうというのでしょう。国債というのは歳入を得るために国がきめた措置ですよ。それを支払いの道具に使おうというのですから、まるで国債発行の精神に反するじゃありませんか。六千四百億円の来年度発行される国債を一応預けるのですか。それともいままでに発行された国債をアジア銀行に預けるのですか。どうするのですか。それが公共事業にどういう関係があるのですか。
  105. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま主計官から答弁させます。
  106. 原徹

    ○原説明員 財政法の話でございますからちょっと私から技術的なお話を申し上げますが、今度の拠出は、これは確かに債務負担でございます。債務負担でございますが、債務負担は財政法上法律に基づく債務負担が可能でございます。そしてその債務負担の根拠として、今度の改正法におきましては従来のIMF等の加盟法の規定を準用しておりますから、それで法律に基づく債務負担が可能になるわけであります。そして予算というのは現金の支出でございますから、それも予算がなければ支出はできませんが、債務負担はそういうことによって法律に基づいて債務負担ができますので、別に財政法上の問題ではないわけでございます。
  107. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 主計官、いまあなたそういう答弁をしましたが、現金でなければよろしいと言うなら、ことしの六千四百億円の国債発行の額をきめる議論のときに、すでにこの金額を予定して国債発行をしているのですか。   〔委員長退席金子(一)委員長代理着席
  108. 原徹

    ○原説明員 今度の拠出の公債は交付公債と申しますか、従来で申しますと、たとえば在外財産の補償、そういうような場合には法律に基づいて交付公債で出せる規定を通常置きます。今度の場合はそういうことでございますから、拠出のために公債を発行するという法律の規定を置いている、そういうことでございますので、財政法四条にいう建設公債とは話が違うわけでございます。
  109. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 すでに新聞なんかにも二千万ドル出すのだということをどんどん報道しておいて、国会には全く国会開会中の審議の最中でも——そういう形なら、大蔵証券と同じようにばたばた発行して、しかもそれを外国へ出資するというようなことを一役所の仕事としてどんどんやっていいのですか、そんな簡単に国債発行を。
  110. 原徹

    ○原説明員 一役所の仕事ではなくて、法律にそういう規定を置いてそれでやろうということでございます。
  111. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうしたら当然、来年度は国債はこういう発行にいたします、さらにアジア開発銀行の出資もこういう形で交付公債の発行をいたしますと、親切に国会に出すのがあたりまえではないですか。そういうことは出さなくてもいいのですか。
  112. 原徹

    ○原説明員 法律の規定でそうやることにつきまして、まず法律の御審議を願って、そしてその法律に基づいて、予算の定めるところによりその限度をきめるということで、ただいま申し上げました予算総則にその限度額が書いてある、こういうことでございます。
  113. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、アジア開発銀行への基金というものは、日本政府から見れば歳出でしょう。それはどうですか。
  114. 原徹

    ○原説明員 それは歳出でございません。歳出というものは、財政法に書いてございますように、現金の支出を歳出と申します。これは債務負担ではございますが、歳出ではございません。
  115. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、債務負担行為であっても、やがてはその国債は現金にするんでしょう。アジア開発銀行へ出す国債というものはやがては現金化するわけでしょう。ただ最初だけ国債という形でもってごまかしておいて、やがては、向こうが金がほしいと言えば、日本の円をやるのでしょう。あるいはドルをやるのでしょう。そうなったら、あなた、これは間接的には歳出じゃありませんか。
  116. 原徹

    ○原説明員 財政法的に申しますと、現金の支出が歳出でございますので、これは債務負担でございます。債務負担は法律に根拠が要る、そういうことでございますので、法律があるわけでございまして、それは従来の、たとえば、先ほど申しましたが、在外財産の補償をやる際に、その補償のやり方として交付公債でやるというのと同じでございます。それは法律の根拠に基づいて交付公債をつくった、こういうことでございます。
  117. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 かりに一番妥当な方法というのは、日本の円でもって出資金と同じように出すのが一番ノーマルな形なんでしょう。ただ、ことしの財政上の特殊事情から、金がないからということで交付公債で一応払い込みをしておこう、こういうわけなんでしょう。だから、これは異例なんでしょう。本来ならこういう方法をとるべきでないんでしょう。ただ財政が苦しいからこういうことをやるんじゃないですか。
  118. 原徹

    ○原説明員 それは、財政が苦しいといいますよりも、むしろ相手方がいつ金が要るかということがわからない、そういうことが根本的な問題でございまして、そういうわからないものでございますから、一応公債という形でやる、そういうことでございます。
  119. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それだったら、あなた、わかってから出したっていいじゃないですか。本年度は使わないんだ、四十三年度はまだ間に合うんだ、政府がそういう見通しがつくなら、なぜ四十四年度の予算であらためて出すことにして何が不都合なんですか。
  120. 奥村輝之

    ○奥村説明員 先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、アジア開発銀行はそもそも日本が主唱いたしまして設立されたものでございます。今度の特別基金への拠出の問題も、日本が非常に大きな役割りを買っておりますので、したがって日本としては、日本の姿勢を示す意味でまずこういう形をとらしていただくという考えでございます。
  121. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかもその交付公債は、やがて円でそれを交換をする、あるいはドルにかえなければならぬということになるわけでしょう、行く行くは。その場合には、今度は日本から正式に金が出るわけですね。だから、それはとどのつまりは歳出なんですよ。政府から見れば歳出なんですよ。形だけ国債あるいは債務負担行為だといっておいて、とどのつまりは円なりドルで払うのですから、最後は歳出でしょう。
  122. 原徹

    ○原説明員 最終的に円で出す場合に、それが現金の支払いになりますから、そのときには歳出になります。そうしてその歳出になる際には、当然その歳出予算を計上し、そしてまた予算として御審議を願わなければならないわけでございます。
  123. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、アジ銀のほうで四十三年度中に現金にしてくれ、そうなった場合には補正予算を組みますね。いまのところ、予算でちゃんと上程するというのですから、国会の審議へはかるというのですから、補正予算組みますね。それを確認しておきましょう。
  124. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ちょっと前提としての問題について私から御説明いたしますが、いままでから、IMFとか世界銀行とか、第二世銀とか、こういうものに対する出資でございますが、これは法律において、一部は現金でやる、一部は国債でやる、そういうことで御承認いただいて、それで国債でやっているものが現にすでにあるわけであります。
  125. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が聞いているのは、現にあるかないかということを聞いているのではない。先ほど主計官のほうで、そういう場合には、現金にかえるときにはちゃんと予算に組みます、そう言ったから、そう答えたから——議事録を見てごらんなさい。だとしたら、そういう前提に立つならば、四十三年度中にアジ銀のほうから現金化してくれと言われたときには補正予算を組むのですな、こういう質問をしているのだよ。
  126. 原徹

    ○原説明員 私が聞いておりますところでは、いまの見込みとしましては、四十三年度中にそういう要求はないだろうという前提に立っております。
  127. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あなたは先ほどは、途中で現金化してくれということになれば、ちゃんと予算にのせて御審議にかけますと言ったのだよ。議事録を調べましょうか。だから、そういう事態がもし四十三年度中に起こったら——私はちゃんとイフと言っているのだよ。そういうイフの前提で答えてもらわなければ困る。そういうことはあり得ないという答えでは困る。
  128. 原徹

    ○原説明員 私が申しましたのは、現金の支出は財政法上歳出である、歳出を出すためには予算がなければならないという財政法の仕組み、それを御説明したわけでございます。いま現実にはありそうもないというお話を申し上げました。実際にそうい場合があった場合には、IMF等の加盟措置に関する法律の第七条というのがございまして、日銀に買い取り請求を求めることができるという規定もございますので、それは現実にありそうもない話でございますので、あった場合にはそういう手だてもある、そういうことになっております。
  129. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうなると、あなたのいまの発言は取り消しますか。議事録をちゃんと調べますよ。先ほどの私の質問は、四十三年度中にアジ銀から円なりドルにかえてくれと申し出があったときには、こちらは円で出す場合には当然歳出になりますから、予算はどうするのですかと言ったら、ちゃんと予算にかけます、こう言ったのですよ。予算を組みますとあなたは言ったのだよ。だから私は、それじゃ補正予算を組むんですな、こういう質問をしたわけだ。そこのところの食い違いはあとで議事録を見てから明らかにいたしましょう。あなたそう答えていないと言うなら、次に進みます。いまの問題は保留しておきます。  第二の問題は、世銀やなんかに出したそういう公債を日本銀行が引き受けるという例があるといま言いましたね。だから今度もおそらく、現金が必要だと言われれば日本銀行に引き受けさせるつもりだという意思表明だと思うのですが、そう受け取っていいですか。
  130. 原徹

    ○原説明員 そういう規定がございますので、そういう規定に基づいてやることはあり得ると考えます。
  131. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、財政法第五条の精神に反するのではございませんか。そういう措置をとることは第五条には「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額範囲内では、この限りでない。」そうすると、今度の国会の議決の中で、これは特別な事情だからぜひこういう方法をやりたいという、いろいろ想定したことを当然この項目の中に書くべきじゃありませんか。何も書いていないじゃありませんか、この予算総則には。
  132. 原徹

    ○原説明員 財政法第五条でいっております公債発行といいますものは、いま出資公債を出すというそのことでございまして、その出したものを日銀が買うということ、これは引き受けという概念には法律上なりません。したがって、財政法五条には関係がないと思います。
  133. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし、財政法の精神というものは、インフレーションにならないように、かつての戦時公債が日本銀行にみなぐるぐる回っていいったためにインフレになった、もう再びそういうインフレになるような働きはさせまいという精神がある。それをただ国会で、予算総則で目のつかぬようなところにささっと書いておいて、どんどんそういう形で海外出資や援助なんかの場合でもやって、それが日本銀行へ還流してきて現金化されていったんじゃ、これはインフレの原因になりますよ。また、国会でチェックできないじゃないですか。そうなった場合に、これは重大な手続のごまかしですよ。確かにいまの法律を、重箱のすみをようじでつつくように逃げ道を考えるなら、そういう解釈もあるいは成り立つかもしれない。しかしやはり私は、歳出を常に考えている大蔵省としては、もっと法の精神というものをまじめにきちっと解釈して、こういうこそくな方法で出資をするような、拠出をするような態度というものはけしからぬと思うのですよ。もしどうしても金がないなら、アジア銀行がすぐ使わないなら——まだタイ一カ国しか申し込みがないでしょう。貸してはいないのですよ。アジア銀行のいまの貸し付け状況なり承諾状況なりをあなたよく検討してこの予算というものを組んだのですか。アジア銀行はそんなにすぐせっぱ詰まって金がほしいという情勢じゃないのじゃないですか。まだいまタイ一カ国しか貸していないじゃないですか。
  134. 奥村輝之

    ○奥村説明員 御指摘のように、アジア銀行はこれから仕事を始める段階でございますので、現在までにタイに対して五百万ドル貸すことにきめただけでございます。しかし、先ほどから申しておりますように、そもそもアジア開発銀行におけるわが国の立場というものは相当の指導性を持っていますので、そういうことで今回の特別基金もわが国としては一つの姿勢を示す——実際に資金が出るということは、四十三年度じゃないと思います。一つそういう姿勢を示すというところに意味がある、こういうように考えております。
  135. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでしたら、一般予算に出資と同じように載せて、それでどうしても歳出の金がないということで、その時点考えたっていいんじゃないですか。おそらく初めからアメリカの要請で——アメリカはいまこう言っているそうですね。日本のいまの基金が一億ドルは少ない、アメリカは二億ドル出すのだから、日本もぜひひとつアメリカと同額の二億ドルにしてくれぬか、こういう要請があるということを新聞は報じておりますがね。大蔵省にはそういう声は耳に入ってないのですか。
  136. 奥村輝之

    ○奥村説明員 いまの問題につきましては、あくまでも日本の自主的な立場で考えるべきものと思っております。  それから、私どもは、財政資金がないからこういう形で無理をしているのじゃなくて、こういう形で姿勢を示すということがいいのである。こういうふうに考えておるわけでございます。
  137. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは、初めから公債発行でこの農業開発基金のほうは出そうということを、もうアジア銀行創立当時から大蔵省は考えたのですか。
  138. 奥村輝之

    ○奥村説明員 アジア銀行設立当初においては、特別基金の話はまだそれほど具体化してなかったわけでございます。出資の話があったわけでございます。それに加えまして、やはりいろいろな方法で資金を調達する、いろいろな方法でアジア以外の国からも資金を調達する、そういうことで、わかりやすく申せば、奉賀張にだれが名前を先に書くか。これは非常に平易な比喩でございますので恐縮でございますけれども日本がまず指導性を持っているということで、今度こういうふうな措置をとろうということございます。
  139. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、現金で出すよりも、すぐ使わないかもしれぬから、出資金も拠出金も全部または一部を国債で出せるような改正をしておこう、すぐアジア開発銀行で使わない場合にはとにかく国債でみんなやっておく、こういう精神で今度の改正案というものを出してわけですか、どうなんですか。
  140. 奥村輝之

    ○奥村説明員 そういうことでございます。
  141. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だとすると、いま言った必要になるたびに日本銀行にそれを引き受けさせる、こういうことになると、通貨増発というものが、これは全く無制限に行なわれますね。われわれとしては通貨増発をチェックできませんね。しかもそれは、行政当局が向こうの要請でいつやっているか、全く国会の議論にならぬからわかりませんね。日本銀行は、普通買いオペを国内でやる場合には、幾ら買いオペしたとかどうとかいうことがすぐわかりますが、外国へ出資したそういうものは、全くわれわれが知らぬ間に行なわれていきますよ。これは通貨増発の悪例になりますね。どうですか。
  142. 奥村輝之

    ○奥村説明員 先ほどから申しておりますように、日本銀行に引き受けさせるつもりはございませんので、四十三年度には支出は行なわない、四十四年度には、そのときまでには様子が明確になってまいりますので、予算を通じまして御承認の手続をとる、この国債の現金化について、償還について財源の予算措置をお願いするということになろうかと思います。
  143. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、本年は国会でこの改正だけとっておいて、それから予算総則だけ取りつけておいて、おそらく四十三年度は要求がないだろうから、四十四年度予算のときに今度ははっきりそれをうたう、こういうことなんですね。
  144. 奥村輝之

    ○奥村説明員 そういうことでございますが、これから先はあるいは主計局のほうでお答えしたほうがいいかもしれませんが、それから先は四十四年度の全体としての先ほどのどんぶりの中でどういうふうに処理できるか、こういうふうな問題も含めて予算の御審議ということになると思います。
  145. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一つ、けさの読売新聞だと思いましたが、特別基金の問題でかなり大きいスペースをさいて新聞報道しておりますね。この新聞は読んでおりますか、主計局。
  146. 原徹

    ○原説明員 私は読んでおりません。
  147. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これによると、とりあえず「現金支出の請求があれば国債整理基金特別会計の余裕金を使う予定」だというのが一つ書いてある。それでどうしても余裕がない場合には日本銀行に買ってもらうのだ、引き受けさせるのだ、二つの方法が書かれておるわけです。これは大蔵省がしゃべらなければおそらくこういうことは書けないと思うのです。火のないところに煙がたたないと思うのです。こういう記事が出ているのをあなたは見て、この記事は全く新聞記者の憶測で書かれたものであって、事実こういう考えは全く大蔵省にないとここで言い切れますか。
  148. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 お答えいたします。  いま奥村次長からも御説明がありましたように、四十三年度ではまず償還はないということでございますが、万々一あった場合でございますが、整理基金の償還金、たとえば本年二月タイとの五百万ドルの契約一本しかなかったというお話がありましたが、実はアジア開銀に対しまして現在七十二億の国債で出資をしております。その償還があるかないか実はわからないわけでございます。万一あった場合に備えまして相当額見込んでおります。われわれといたしましても、日本銀行買い取りといった制度は、これは万やむを得ざる措置であると考えておりまして、これを軽々に使うつもりはございません。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、整理基金のワク内で処理したいということで、予算を組むに際しましても償還予算を組んでおりますので、万々一この特別基金に対しまして償還が出た場合には、そのワク内でまかなえる場合にはそのワク内でまかないたい、いま組んでおります。十二億に対する交付公債の償還金の財源として相当額組んでおりますので、その中からまかないたいと考えておるわけでございます。
  149. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 整理基金の中にすでにそのことをある程度予定して、余裕金が出るように予算編成が行なわれておるというのですね、いまのあなたの発言は。
  150. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 実はちょっと話がそれるかもしれませんが、なぜこの出資国債という方式を使っておるかということでございますが、一方で現金出資、一方交付国債、たとえばアジア開発銀行には併用しておるわけでございます。先生がおっしゃいましたように、現金で全部出しておくということになれば、そういった償還その他一切の心配はないわけでございますが、しかし相手方は金融機関でございまして、こちらが金を渡しても一ぺんに全部使うわけではございません。こちらからいたしますと、税金とかそういったものを現金で向こうに渡してしまうことになりますので、そのときどき要るときに間に合うように渡すのが一番望ましい方法であろうと思いますし、またアジア銀行自体もそのことを認めておるわけでございます。したがって、すでに御審議いただきましたアジア開発銀行への出資は、現金と国債と両方でやっておるわけでございます。したがって、本件につきましてはそういう考えをとっておるわけでございます。ところが、金融機関でございますから、どの程度仕事が進捗するかわかりません。わかりませんが、ないであろうといって非常に少ない金額を見込んでおりますと、先生お話しのように日本銀行にいかなければならないかもしれない、そういうことはなるべくやりたくないということで、余裕があるということではございませんが、あり得べき姿を想定して予算には計上しておるわけでございます。したがって、それが実行上いいかどうかわからない状況であることも確かでございまして、模様によりましては、その中からこちらに向けることもでき得ようかということでございます。初めから余裕を見込んで組んでおるというわけでは必ずしもございません。
  151. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、予算書一二四ページの国際整理基金特別会計の中の国債償還に必要な経費一千六億三千五百万円、この中にその予想された数字は大体幾ら含まれておるか。
  152. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 お答え申します。  アジア開発銀行に対しましては、交付国債に対する償還分といたしましては五十四億と考えていただいてよろしいと思います。この算出根拠といたしましては、四十二年度までの交付国債の出資が七十二億でございます。さらに四十三年度三十六億、合計百八億になります。それに対しまして必要な資金五十四億、大体半額を見込んだということでございます。
  153. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あとでひとつ主計局のほうで資料を出していただきたいのですが、この国債償還に必要な一千六億三千万円の内訳を資料として手元へ出してもらいたい、よろしゅうございますね。
  154. 井手以誠

    ○井手委員 関連してちょっと質問いたします。  いま主計官ですかの御答弁では、万一の場合はアジア開発銀行に出さねばならぬであろう。そうしますと、万一の場合は——それが万一であるか半々であるかはわかりませんよ。国費を支出することになるわけですね。これは間違いございませんか。
  155. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 はい、整理基金の歳出に立つわけでございます。
  156. 井手以誠

    ○井手委員 それは国の支出になるわけでしょう。どれを出すにしたって国の支出でしょう。いかがでございます。
  157. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 はい、さようだと思います。
  158. 井手以誠

    ○井手委員 憲法八十五条に基づく財政法の第二条第十四条を見れば、問題は明らかであると思います。先刻は債務負担行為であると逃げられた。債務負担行為であるならば、負担行為の中にその議案がなくてはならぬはずです、防衛庁などと一緒に。それは四十三年度からやってもいいはずです。それは予算委員会においても説明をされました。二重になってはいないかという北山君の質問に対して、二重にならないという統一見解が先般出されました。そうであるならば、四十三年度に予想されるものは——出さない場合もあるでしょう。予算ですから、見込みですから。その分は予算に計上しなくてはならぬはずです。まあ大蔵委員会であんまり財政法の議論がましいことは言いたくないですが、少し大蔵省考えてみぬですか。ここであまり議論を詰めたくはないのですが、こんなでたらめな歳出というものはないでしょう。国の財政支出に必要なもの、国の財政需要を満たすために一切の歳入は予算に計上しなくてはならぬというのは、これは鉄則ですよ、何で出そうと。また、国債の問題は、武藤さんが触れられておりますが、これも問題です。だけれども、第一には、国費の支出ですから、七十二億円の範囲内では出すことができる。しかし出さねばならぬ場合もあるわけですから、七十二億円は予算に計上するのが当然ですよ。少しこの点はあなたのほうも考えてからひとつ答弁していただきたい。法制局も呼んでおりますし、必要があればいろいろな方面も呼んでいいのですが、これは問題ですよ。よく研究して御返事をいただきましょう。国費の支出ですよ。国債整理基金から出せるものじゃありませんよ。ほどほどにひとつ答弁はしてくださいよ。
  159. 原徹

    ○原説明員 私が先ほど申しましたのは、やはり  これは拠出国債をするということでございまして、債務負担であります。  債務負担には、財政法十五条によりまして、法律に根拠を求めるか、あるいは債務負担行為に求めるか等の方法があります。(井手委員「定義はどこにある」と呼ぶ)法律に基づく債務負担行為でございまして、法律に基づかない債務負担行為については、T号として国庫債務負担行為をとつておるわけでございます。したがって、これは法律に基づくものでございますから、T号のほうはございません。そして、法律に基づくもので、法律に予算の定めるところによりと書いてございますから、その予算総則十条に七十二億の規定が書かれておるわけでございます。それから、法律に基づく債務負担行為がございましても、現金の支出が必要である場合には、確かに、おっしゃるように、債務負担行為で現金の支出をするわけにまいりませんから、これは歳出予算がなければならない。ただいまのお話の国債整理基金の支出も、これは歳出予算でございますから、もしそういう場合には歳出予算に基づいて金を出すということでございますから、財政法の問題は全然関係ないと思っております。
  160. 井手以誠

    ○井手委員 債務負担行為は、それならそれでよろしい。あなたがそうおっしゃったから聞いたのです。しかし、七十二億円を出そうというものであるならば、出すか出さないかわからぬからということですが、出す場合もあるわけですから、出すこともあるならば、これは予算に計上しておかなければならぬ。七十二億円計上しておかなければならぬ。その七十二億の内輪は何であろうと、それはまた別個の問題。国費を七十二億円払おうとするならば、予算に計上すべきですよ。当然です。これは予算外ですよ。そんなことじゃ許されません。
  161. 原徹

    ○原説明員 七十二億の債務負担がまずあって、そしてお金を出すのについては、確かに歳出予算がなければ現金の支出ができないことも当然でございます。したがってまた、当面の見込みといたしましては、これはありそうもない話に近いという先ほど来の話でございますが、万一あった場合にどうするかということについては、先ほど国債課長から申しましたように、相当額の予算がございますから、それでその歳出予算で出す。それからまた、これも万一の話になりますが、それでもできないような場合には先ほどの日銀の買い取りによって手当てをするということでございますから、財政法的には別段問題はないと私は考えております。
  162. 井手以誠

    ○井手委員 関連ですから、解明できねば後日あらためて私は本格的な質問をいたしたいと思います。  このぐらい明白な問題はないと思いますよ。国費を支出する場合に、出すことがあり得る、あり得ない、それは見込みである。見込みについて予算を出すこともあり得るから、予算に計上しなければならぬ。その場合にはやはり国費の支出ですから、総計予算主義のたてまえから、その最大限の数字は歳出予算にあげなくてはならぬはずです。そんな便法は許されません。断じて私は許しません。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いま井手委員がおっしゃるように、私たちとしては、財政法の精神から見ても、また日本の通貨の発行、それから国債整理基金の性格、こういうような問題から照らし合わしても、どうもこの処置は適切でない。この点については法制局も呼んで、あとでひとつ十分議論をいたしたいと思います。  それから、国債整理基金の償還金の中に含まれていると申しますが、一体この交付国債は、発行するものは年限は何年なんですか。
  164. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 要求払いでございますから、特に期限はございません。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 期限がないものを国債整理基金で支出するということを予定するというのは、発行されているものの額は全額をいつも載せるんですか、一体どういうことなんですか。大体この国債整理基金に載せる償還金額というものは、年限がきたもので、恩給や、あるいは地主補償や、そういうものに対する支払いを予定して計上してあるんですよ。年限のない国債を計上するというのは、あなたたちの恣意でことしはこのくらいあるだろう、何年度はこのくらいあるだろうという皆さんの大体目算でそういうことをかってにきめているんですか。期限のこないものをどういう計算で償還の額に入れておるのか。
  166. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 たいへんむずかしい問題でございますが、先ほど井出先生おっしゃいましたように、したがって、安全度を見れば交付国債全額を常に載っけておけばよろしいわけでございます。ただし、それでは現金で相手方にすべてを渡すと同じことでございまして、つまり歳出予算に計上するということは、歳入にもそれだけの金を見込んでおくということになるわけでございます。したがいまして、もし償還要求がこなければ、それだけの金が常に残ってしまうということになりますので、その辺の見通し、たいへんむずかしいわけでございますが、要求払いの国債につきましては、過去の実績等々勘案いたしまして算定しているわけでございます。と同時に、絶えず日本銀行の買い取りということを起こしますこともわれわれ避けるべきでございますので、その辺は明白なやり方というのはなかなかむずかしゅうございますが、そういった先例とか実績とか、そういうものを勘案してきめておるということでございます。
  167. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうでしたら、国債整理基金支出の項の中で、この項を一つでなくてもっと親切に二つ起こして、要求払いの国債はこれだけ出ている、それに対して本年の見込みがこの程度、こういう積算で一応目安として償還金額に載せます、それが専門家の大蔵省のとるべき態度じゃありませんか。恩給や地主補償や、そういうものまでみんなひっくるめて、そういう海外への出資や拠出金までごっちゃに載せたって、不親切でわかりませんよ。ですから私たちは、大蔵省は専門家でありながらわれわれの目をごまかすためにこんなことやっているのかと疑いたくなるのですよ。これを直す意思ありますか。今後はそういうものはひとつ項を分けて、同じ国債償還でも、性質の違う国債については中身をもっと親切に分けてやろう、そういう前向きの改善をする意思ありますか。
  168. 奥村輝之

    ○奥村説明員 先ほどから何回も申し上げておりますように、当面本件については支出の見込みのないものでございます。したがって、予算支出の立てようがない、こういうことではなかろうかと思います。
  169. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そのことと、先ほどあちらから答弁をして、すでに出してあるもので償還しなければならぬ、あるいは現金にかえなければならぬと思って五十四億円載せてあるというのでしょう。国債整理基金の中に五十四億円予定しておると言っておるじゃありませんか。いまの答弁とは全然次元が違うじゃありませんか。だから、この一千億円の中に五十四億含まれているとするならば、もっと親切に、期限のない国債についてはこうですというので、もう一項、項を起こすべきじゃないですか。それが国会審議のためにも親切であるし、当然じゃなかろうか。今後そういう改善をする意思はないか、こう言っておるわけだ。政務次官、私の議論をどう思いますか。それが当然親切な予算書じゃありませんか。
  170. 倉成正

    倉成政府委員 だんだん議論を聞いておりますと、法律的には私は全然問題ないというふうに承知しております。ただ御指摘のように予算総則の十条でここに七十二億の債務負担行為を掲げて、それからこれを実際拠出金として国債で出しておりましても、いわば請求払いの債務でありますから、全然使われない場合があるかもしれないし、あるいはまた井手委員、武藤委員お話しのように、特別な場合に若干これが現金にかえられる、要求があるという場合が出てくるかと思います。そういう際に備えては、法律的には、先ほどからお話しのように、国債整理基金でまかなっていくことが十分できるんじゃなかろうか。それでもできない場合には、この法律に基づいて日銀の買い取り命令でまかなっていくという組み合わせになっておるわけでございますが、予算書全体が非常に技術的にわかりにくいというような御指摘であれば、いいくふうがあればそれは直していってもけっこうでありますけれども、ただいまの問題に関する限りは、法律的には別に問題はないんじゃなかろうか。ただ親切な説明をすべきじゃなかろうかという御意見であれば、それは十分承らしていただきたいと思います。
  171. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私が先ほどから議論しているように国債整理基金で出すのが第一原則だ。第一原則だとするなら、償還しなければならないだろうという予定される金額を五十四億と見ているというのですから、それを普通の内国債と同じ欄に全部ぶっこんでおくというのはまことにわかりにくいし、不親切だし、これではわれわれは何をごまかされてもわからぬということです。そうでしょう。だから、これはあとに議論しますよ。一千億円の中身をどういう国債に幾ら償還するのかということを、さっき出すと言っていますから、全部一覧表を出してください。その後にこれは議論しましょう。  これは一応これでチョンにして、次に少し質問をしたいと思いますが、ことしもまたインドネシアに緊急援助をするのですか。
  172. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ことしと申しますか、来年度のインドネシアに対する援助については、債権国会議等でいろいろと議論をしている最中でございまして、ある程度はしなければならないと思いますが、金額は決定はいたしておりません。
  173. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あなたはその国際会議へ出る責任者ですか。
  174. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私は大蔵省国際金融局の次長でございますので、直接そういう国際会議に常に出てはおりませんけれども、報告は受けております。
  175. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 聞くところによると、その債権国会議で六八年分として三億二千五百万ドルの援助をアメリカとしてはインドネシアにいたしたい、日本とアメリカはイコールパートナーだから、アメリカと同じ金額ぐらいひとつ援助してくれぬか。そうなりますと、一億ドルを突破する。三億二千五百万ドルを三分の一ずつまずアメリカと日本が負担する、あとをその他の諸国に頼む、こういうアメリカの方針だということになりますと、日本の援助はかなり金額になると思いますが、あなたのいまの感じではどんなぐあいになりそうですか。
  176. 奥村輝之

    ○奥村説明員 去年の十一月にアムステルダムで開催されましたインドネシアに対する債権国会議、こういうところで三億二千五百万ドル、先ほど御指摘のあった数字が出て話題にのぼったことは確かでございますけれども、私どもは、こういう財政の切り詰め、金融の引き締め、国際収支の際に、そのまま三分の一を出すということをお約束することはむずかしい、こういう感触を持っているわけでございます。ただ、一体どれくらい出すことになるかという点につきましては、これはいろいろとなお検討を要するところがございますので、いまこの場合申し上げるわけにはまいらぬと思います。
  177. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 四十一年度に三千万ドル、四十二年度に六千万ドル、ことしまたかなり金額をインドネシアに援助しようというのですが、なぜインドネシアだけにこんなにも援助しなければならぬのですか。その積極的理由は大蔵省はどんなぐあいに感じておりますか。
  178. 奥村輝之

    ○奥村説明員 全体のわが国の後進国に対する援助の方針については、すでにこの委員会でもお話し申し上げたことがあると思いますけれども、インドネシアについては、特に最近経済の改善について非常な努力をしてもらっております。私どもも、すでに相当の債権も持ち、インドネシア経済は今後着実に改善していくということを望んでいるわけでございまして、これは単にインドネシアのみにかかわらず、東南アジアの国々について私どもが願っておる問題でございます。いま御指摘のインドネシアについては、世界の主要各国集まりまして、債権国会議でこの国の経済政策の問題もあわせて取り上げて、いかにして状況をよくしていくかというような話し合いが行なわれている。その中にあって、私どもがインドネシアに対する態度もそういうものとのにらみ合わせで対処していかなければならぬ、こういうことであろうと思います。
  179. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 インドはもう食糧危機で餓死者が続出をする、食糧暴動が起こる、たいへんな危機的状態にある。そのインドに対して日本政府はインドネシアに援助するのと同じような姿勢でやっておりますか。なぜインドネシアだけこんなに多額の援助をしなければならぬのかというのが私には理解できない。
  180. 奥村輝之

    ○奥村説明員 インドに対しましては、すでに昭和三十二年、第一次円借款を実施しましてから、相当多額の援助をしておるわけでございます。インドに対する全体の協定総額は、去年の九月五日までに行ないました協定について申しますと、四億二千七百万ドルの直接借款をやるという約束をしたわけでございます。それに基づいて貸し出しを実行しました金額が二億九千三百万ドルでございます。インドネシアは賠償が先にございまして、そういう意味で直接借款は、先ほどお話のございましたように、昭和四十一年から始まったわけでございますが、リファイナンスも含めまして、協定総額が現在一億二千三百万ドル、四十一年以降でございます。貸し出し実行額は一億一千四百万ドルでございます。
  181. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょう私どうしても三時十分に出なければならぬ用件があるので、質問がほんの五分の一程度しか、こんな問題で時間をつぶしてしまって、できませんから、あとでまたやりますが、資料でひとつ日本のアジア地域に対する民間投資と政府借款あるいは政府投資、そういう項に分けて、おもなアジアの国々への日本からの投資状況、これをひとつ表にして出してもらいたいと思いますが、どうですか。
  182. 奥村輝之

    ○奥村説明員 直接借款は、これは外務省その他政府が関与して貸し付けを行なっているものでございますので、この数字は非常に正確にできているわけでございます。ただ、その他の商業的なものにつきましては、数字が非常に計算がむずかしゅうございますので、したがって、いまのお話に対しましては、わが国のアジアの諸国に対する直接借款の貸し出し残高、協定の総額、貸し出し実行額等について明細をお出しいたしたいと思います。
  183. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 輸出入銀行は、去年一年間で、インドネシアに五千万ドルの借款をした。これは結局、日本の国内の輸出業者が商品でインドネシアに輸出をする、その資金を延べ払いで輸銀がめんどうを見た、そういう意味ですか。
  184. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 ただいまお話しのように、昨年度五千万ドル相当額の、これは円借款という形で、それに基づきまして輸出入銀行から、日本からの消費財の輸出に充てるべく貸し出した、こういうことでございます。
  185. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、日本の業者が輸出入銀行のそのワク範囲内でインドネシアに商品を売る、それをきちっと保証しているわけですね。輸出入銀行が出すわけですからね。その品物をインドネシアが国民に売りつけて、その収入をインドネシア政府の歳入にする、こういうことですね。それは実際上はうまくその五千万ドルというのは効果を発揮しているかどうか疑問があるのです。輸出入銀行ではどんなぐあいに見ていますか。
  186. 藤澤徳三郎

    ○藤澤説明員 五千万ドルのうち、この二月末までに百六十七億円ほど貸し出しを実行しております。そうしてその実行の結果、効果はどうであるかというお話でございますが、この効果につきましては大蔵省から御答弁願いたいと思います。
  187. 奥村輝之

    ○奥村説明員 非常に重要な問題でございます。インドネシアに対して私どもが援助しておりますのは、私どもだけがやっているわけではございません。債権国全体として集まって、そうして共同歩調をとることによって、集中的な援助をしてよくしていこうというねらいでございますので、われわれだけの援助効果ということでなくて、いろんな総合的な、全体としての援助がどういう効果をインドネシア経済に及ぼしているかということが御質問の点ではないかと思うのです。その意味で申しますと、インドネシアが独立しましてからしばらく非常に悪性インフレが高進いたしまして、生産も停滞いたしますし、輸出も不振である。全体としては、相当大きな対外負債を負って、経済的な破綻の段階に立ち至ったわけでございます。それに対してその後スハルト新政権が、経済の安定を目標とするいろいろな施策を講ずると同時に、各国に対して経済協力を要請したわけでございますが、こういう要請に対して、わが国もドイツもオランダもアメリカも、主要債権国が債権国会議を開いて、先ほど申しましたような会議でIMFの助言をもとにいたしまして、当面のインドネシアの経済困難を克服するためにどうすればいいか、こういうことでさきの去年からの援助も行なわれたわけでございます。その結果どういうことかと申しますと、インドネシア経済は去年の秋ごろから次第に——次第にというのは、非常に急速にという意味ではございませんけれども、安定の兆が見られまして、物価も一九六五年、六六年中には各年約七倍の上昇を示したわけでございますが、六七年にはこれが二倍程度になる。また、ルピア通貨の相場でございますけれども、六五年じゅうには六分の一に下落する、六六年中には三分の一に下落した、これが六七年には二分の一にとまるということで、結局各国の集中的な協力によりまして、ある程度漸次その効果をあげつつあるという段階ではないかと思われます。
  188. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 インドネシアの食糧米の物価上昇率も、去年の十月現在でわずか一年間で三倍になっている。あるいは公定交換レートが十二もあって全く混乱の状態にある。しかも、こういうところへ日本が商品で援助をしてもこれが有効にカンフルの働きをしないんじゃないか、そういう感じがするわけですよ。結局この商品援助というのは、業界が、業者がもうけるためにこれに飛びついて、そういうものに甘い汁を吸わせるという面がかなりあると私は推察をする。だけど、きょうは時間がないからその個々の商品については申し上げませんが、そういうおそれは全くないと大蔵省は見ているかどうか。どうですか。
  189. 奥村輝之

    ○奥村説明員 お説のとおり、私どもは、商品援助は非常に望ましい恒久的に実施すべき援助の形ではないと考えております。やはり経済状況が非常に問題であり、窮迫しているという段階のもとにおいてのみ実施せらるべきものだと思っております。  もう一つ、商品援助と申します場合には、消費財が出るわけでございますが、プロジェクト援助と申します場合にはプラントが出るわけでございます。プラントにいたしましても、消費財にいたしましても、日本の商社、メーカーというものが関係があるわけでございまして、この間に私どもは差がそれほどあるという感じは受けていないのでございます。
  190. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きのうあなたの部下が来て、きょうの質問は何ですかといろいろ聞かれたから、ジャカルタで、経済評論家が現地にいて、いろいろ現地の経済援助の実態をえぐった三橋幸吉さんのエコノミスト三月五日号の論文があるが、これをひとつよく読んでおいてもらいたい、こう注文をつけておいたのですが、これを読んでみて、あなた、この書いていることはやや事実だなあ、あるいは当たらずとも遠からずだなあ、こういう実態があるのだという認識をされたか、それともこれは全くオーバーであって、日本の援助というのはもっとうんと効果があるのだと、こう感じたのですか。これを読んでみたですか、読まなかったですか。
  191. 奥村輝之

    ○奥村説明員 実は先生御指摘の前に、私このエコノミストが出ましたときに、こういうふうにリコピーにとりまして、もうすでによく読でおったわけでございます。それで、この論文は非常によく勉強されております。私ども今後、インドネシアのみならず他の地域についても同じでございますが、こういうふうないろいろな問題点についてはかねがね大蔵省も考えておる点でございますけれども、よく注意して、過去の状況を反省し、今後いかに援助を効果あらしめるかという点に重点を置いて問題を処理していかなければならぬと思います。
  192. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そういたしますと、今度、海外経済協力基金の法文を直して商品援助ができるようにしようという形に変更するということは、私は逆行だと思うのですよ。インドネシアの実態あるいはアジアの低開発国の実態というものを企画庁は全く認識不足である、こういう感じがするのですよ。企画庁、来ているのですか。海外経済協力基金の商品援助の項を今度設けるというのは逆行だ、こう私はきめつけたいのですが、あなたは担当官としてどう思うかね。
  193. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 一口に経済協力援助と申しましても、いろいろな形態があるかと存じます。ただいままでやっておりますところの資本援助と申しますか、産業開発援助、技術援助あるいはいま問題になっております物資援助というぐあいにいろいろあろうかと存ずるわけでございますけれども、言うまでもなく、低開発国におきますところの経済の成長を願い、経済の基盤を確立する、こういう観点から申し上げますと、この産業開発援助、こういったものを中心に考えるべきである、最も重大なものであるということは言をまたないことと存じます。  それで、経済協力基金は御案内のとおり昭和三十六年から発足したわけでありますけれども、この協力基金はまさにこういった意味産業開発援助というものを中心に——中心ではございません。それだけに限りまして発足をいたしまして、おいおいと業績をあげてきておるわけでございます。しかしながら、いま問題になっておりますとおり、低開発国の一部の状況を見てまいりますと、非常なインフレに悩み、外貨不足だというようなことで、せっかく産業開発援助というような本来の援助を考えましても、それすらもうまくいかぬというようなことになってまいったわけでございます。したがいまして、やや長期的な視点に立ちますところの産業開発援助、これはあくまでも従来どおりやってまいるわけでありますけれども、それと並行いたしまして、今回の場合のような緊急と申しますか、足下の緊要、緊急な要望に応じましてまずこの経済安定をはかる、こういうことは経済協力全般の立場からいたしましてもぜひ必要なことである、かように考えて今回の法律改正をお願いするわけでございます。ただいまいろいろと御指摘がございました経済評論家の論文といったようなものもございます。われわれもあれを一読いたしまして、全くこの記事がうそであると言い切るだけの自信もないわけではございますが、しかしながら、今後の経済協力、特に問題になっております物資援助といったものの実施にあたりましては、そういった効果を減殺するような実行、運営といったものを極力排除してまいりたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  194. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 外務省もみな呼ばないと、それは技術協力の問題から、日本の援助の効果の問題いろいろございますが、きょうは三時十分にどうしても出かけなければなりませんのでやめますが、海外経済協力基金は三百五十一億円のまだ残金がある。それに加えて、ことしまた資金運用部から二百億円。この予算書の財投計画に載っているのは、この三百五十一億円の中から二百四十億円の自己資金というものを計上しておるのですか。それともう一つは、三百五十一億円もまだ残っているというのは、承認額が実行できない何か困難があるのか。
  195. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 いま先生のおっしゃいました三百五十一億円というのがよくわかりませんが、貸し付け残高は三百五十一億円程度でございます。それは貸し出していま残高として残っておるものです。
  196. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 金のほうの残高は幾らあるのですか。
  197. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 余っているという意味でございますね。四十二年から四十三年にかけて、いわゆる常識的な意味で申します繰り越し、ほんとうは使うつもりでいたのだけれども、来年度に繰り越しちゃったという金がどのくらいあるかというお尋ねだと思います。それは七十七億程度見込まれております。
  198. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、財投計画の自己調達二百四十億円というのはどこから借りるのですか。
  199. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 この四十三年度の事業計画につきましては、四十二年度、ただいま申し上げました繰り越し金七十七億を含みまして事業計画を立っておるわけでございます。七十七億の繰り越し金とそれから回収金が見込まれるわけでございまして、これは十二億弱でございます。それを引きまして自余の資金につきまして一般会計並びに運用部からの借り入れを行なうということで、一般会計から六十億円、それから運用部から二百億円、二百六十億円の予算措置をしているわけでございます。で、全体といたしまして四百四十億円ばかりの事業計画になっておるというわけでございます。
  200. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは、この次、また来週質問しますから、四十三年度以降の事業計画をひとつ質問までに間に合うように出してもらいたい。  以上で質問を終わります。
  201. 田村元

    田村委員長 阿部助哉君。
  202. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず、アジ銀が発足をいたしましてから新しく加盟した国はどことどこですか。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席
  203. 奥村輝之

    ○奥村説明員 アジア開銀の設立以後、正式の加盟国、それから加盟意思を表明した国でございますが、昭和四十二年十二月スイスから五百万ドルの出資額で加盟がございました。その後香港が加盟の意思を表明いたしまして、出資額八百万ドルで正式手続を準備中でございます。  脱退につきましては、カンボジアは去年の九月七日付で脱退を決定した旨をアジア開銀に通知がございました。アジア開銀は九月に返書を送りまして、効力を発生するのはアジア開銀の通告書受領日から六カ月以降であるという点を指摘し、その間にカンボジア政府が再考するように要請しているわけでございます。
  204. 阿部助哉

    阿部(助)委員 このアジ銀の中で、域内ということで「アジア及び極東の地域」というふうに書いてありますが、これはどの辺まで入るのですか。中東まで入るのですか。
  205. 奥村輝之

    ○奥村説明員 域内はエカフェの加盟国であります。
  206. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、エカフェへ入っておるということになれば、国連に加盟しなくともいいわけでね。それは全部国連に加盟しているわけではないですね。
  207. 奥村輝之

    ○奥村説明員 エカフェは国連の機関でございますので、エカフェの加盟国は国連の加盟国であります。
  208. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、韓国なんかどうなるのですか。
  209. 奥村輝之

    ○奥村説明員 入っております。
  210. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは出資の状況は、これを見ると大体順調に入っておると思うのですが、これは順調に入っておるのでございましょうね。
  211. 奥村輝之

    ○奥村説明員 順調に入っております。
  212. 阿部助哉

    阿部(助)委員 四十年の四月にアメリカのジョンソン大統領がボルチモアで演説をしまして、そのときには十億ドルを何かアジアのこういう関係で出すような演説をしておられるわけですし、それがまた開銀を発足させる上に非常に大きなてこ入れになった、こう私は読んでおるわけでありますが、この十億ドルというのはどうなったか、わかりませんか。
  213. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私どもはそのような話があったことは聞いておりますが、その後の進展、具体的な問題については存じておりません。ただ、あくまでもアジア開銀の設立は、日本その他アジア諸国の創意、自主性ということで設立に至り、推進されている、こういうふうに考えているわけであります。
  214. 阿部助哉

    阿部(助)委員 アジアの自主性ということになると、あとでまたその点はお伺いしますが、そう簡単じゃないのじゃないですか。アメリカとの話し合いというものが相当に入っておると私は思うのでありますが、それはあとでお伺いすることにして、アメリカはいまの農業開発基金の二億ドルを出すということは、もう国内では可決しておるわけですか。きまっておるわけですか。
  215. 奥村輝之

    ○奥村説明員 まだでございます。
  216. 阿部助哉

    阿部(助)委員 このアメリカと日本との日米貿易合同委員会では、何かアメリカが二億ドル出す、日本もそれに対し、一億ドルを出すという話し合いが合意した、こういうふうに私聞いておるのですが、そのとおりですか。
  217. 奥村輝之

    ○奥村説明員 日米合同会議の際の合意はコミニュケで発表されたとおりでございますが、その中にそういうふうな金額についての決定はございません。
  218. 阿部助哉

    阿部(助)委員 では、その決定はなかったということですね。
  219. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ございませんでした。
  220. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは昨日の毎日の夕刊ですが、このワシントンのAPから共同へ打ってきた電報ですが、これをごらんになりましたか。アメリカのバンディ次官補が意見を述べたということがここに出ておるのですが、お読みになったですか。
  221. 奥村輝之

    ○奥村説明員 これはさっそく拝見いたしまして、いまここに持っております。
  222. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この報告は大体正確でございますか。
  223. 奥村輝之

    ○奥村説明員 これはたくさんの項目が並んでおるわけでございまして、その最後の項目には、「日本は約束した」云々ということばがございますが、こういう点については、私が先ほどお話ししたとおりでございます。一番最初のところに戻りまして、「日本は特に農業、漁業、運輸、通信関係を中心に、東南アジアに対して従来以上の規模で効果的な援助をすることを約束した。」これは共同コミニュケの中にございまして、「総理大臣は、日本政府としては、この必要に応えるため、援助量を拡大し、その条件を緩和することにより、特に農業、漁業、運輸、通信の分野において、東南アジア地域に対し、より有効な二国間ないし多角的な援助を供与することに引き続き努力する意図であることを表明した。」こういうかっこうで、共同会談のときに話はあったわけでございます。
  224. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこはわかりました。  その次に、「インドネシアに対しては、米国と同じように同国の海外からの援助の必要額の三分の一を与えた。」こう出ておる。そうして「われわれはことしも日本がインドネシアの援助必要額の三分の一を分担してくれるものと期待している。」というのだが、日本はこの期待どおりにやるおつもりですか。
  225. 奥村輝之

    ○奥村説明員 期待どおりにやれるかどうかは私どもわかりませんので、私どもの自主的な判断でもって対処するほかはないと思います。
  226. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ここで書いてあるように日本はやるかやらないか、いまやるつもりであるかないか、こういうことを聞いておるのです。
  227. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私どもは、総額三億二千五百万ドルという数字がアムステルダムの会議で討議にのせられたということは知っておるわけでございますが、その中の三分の一をやるということを約束したこともございませんし、まだこれから先に債権国会議があるわけでございますが、そういう討議を通じて、いまの日本の国内状況、あるいは国際収支状況から見て、一体いかなる額が適当であるかということをこれから検討し、決定するということに相なろうかと思います。
  228. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、これはもっとも、この新聞でいっておるとおり、期待するということでありまして、これから決定される。しかし、大体の腹づもりくらいはあるでしょう、全然白紙ということはないでしょう。皆さんは国会のときには、なるたけそういうあいまいな答弁をしておって、国会が終わるとばたばたときめてしまうという例が多いのでありますが、それではやはり困るのであって、国会という場で、国民の前でやはりできるだけ明快にするのが民主政治じゃないですか。どうも先ほど来話をあれしておりましても、原則はどこにいっておるか、わけがわからない。それで、国会ではなるたけ答弁はぼかしてしまう。国会が終わるとそれが非常に具体的にすみやかに処理されていくというようなことは、これは困るのであって、もう少しその辺は具体的な腹づもりは、わかる程度の範囲は発表すべきじゃないかと思うのですが、どうもその辺が私たち了解できない。次官でもけっこうですが……。
  229. 奥村輝之

    ○奥村説明員 まことに仰せのとおり、できればこの際、こういう方針であるということを申し上げて国民に知っていただき、あるいはいろいろと御意見を伺うのが適当かと思いますけれども、もともと大蔵省といたしましては、海外経済協力については、その効果その他について非常に望みが高いと申しますか、効率化について期待するところが大きいわけでございます。したがって、いまなおこの問題については検討をしておるわけでございます。結論がもしも出ておれば申し上げてもいいわけでありますが、真に結論が出ておらぬ。しかもアメリカのこういうふうな期待については、私どもは応ずることはむずかしいではないかと思っております。
  230. 阿部助哉

    阿部(助)委員 しかし、何ぼかこれは援助するんでしょう。全然しないんですか。全然しないと言い切れるのですか。
  231. 奥村輝之

    ○奥村説明員 インドネシアに対する来年度の協力は、全然しないというわけにはまいらぬと思います。しかもその中の六百万ドルは、正確には六百四十万ドルはリファイナンスでございまして、これはすでに去年の債権国会議において国際的に相談をし、合意した方針に基づいて出てくる数字でございます。その他の金額についてはいまだきまっておらないわけでございます。
  232. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いまニューデリーで国連の貿易会議が行なわれておる。その中で、何か新聞の報道するところによると、日本やイタリアは国民総生産の一%まで達していないということで、だいぶ評判が悪いというような記事が載っておるんですが、やはりこれはそのとおりでありますか。
  233. 奥村輝之

    ○奥村説明員 ニューデリーの最終的な結論はまだ出ていないわけです。まだいろいろの討議のある最中でございますので、いろいろなことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、私どもとしては、さきに一九六四年春の国連貿易開発会議、UNCTADでございますが、そこで、先進諸国はその援助額を国民所得の一%にできる限り近づけるべきであるという勧告が出まして、これに賛成しているわけでございますが、これはあくまでも国力の許す限りその範囲内でやっていくということでございます。  新聞に報ぜられておりましたところは私も読みましたが、日本、イタリアがそれに対して消極的な態度をとっておるというふうに報じておりましたが、まさにこれは日本の現在の国内の経済情勢、国際収支状況も反映して、私どもとしては、こういうふうな目標を、かりに努力目標であっても高くするというようなことは、これはできる国もありましょうが、できない国もある、それぞれ特殊な立場にあるので、そういうふうに扱ってもらいたい、こういう気持ちを持っておるわけであります。この限りにおいては、新聞の報道は私どもの気持ちを反映している点があろうかと思います。
  234. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは次に、アジア開銀のほうでは、もう発足してからしばらくたちますが、調査や企画の進行状況というのはどの程度までいっておるのかわかりませんか。
  235. 奥村輝之

    ○奥村説明員 アジア開銀が発足しましたのは大体一年前でございます。それから銀行のスタッフを集めましたり、あるいは貸し付け規程その他の規程の整備をしてまいったわけでございます。それからあと総裁が各国を歴訪いたしまして、あるいは加盟しておる発展途上国に対する調査のミッション、それから特に農業調査団の派遣というようなものが行なわれたわけでございます。  そのうちのおもな活動を申し上げますと、まず第一に、ことしの一月でございますが、タイの工業金融公庫に対して五百万ドルの借款を与えたわけでございます。次に去年からこの一月にかけて、インドネシア政府要請によりまして、食糧増産のための技術援助のチームを派遣いたしました。本年二月には韓国の要請がございまして、同国の農業開発公社に対する技術援助のミッションの派遣を決定いたしました。
  236. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次に、今度新しくできようとする農業開発基金の性格といいますか、目的というのを一応御説明願いたいのです。
  237. 奥村輝之

    ○奥村説明員 この特別基金につきましては、主として農業開発のためにこれを使うということにして、こういう形でこれからこれに出されました資金が運用せられることになろうと思います。
  238. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この場合には開銀地域と違って東南アジアというふうになっておりますが、これはエカフェの範囲と違うのでございましょうね。
  239. 奥村輝之

    ○奥村説明員 これは、これから先大体私ども方針がきまれは——われわれ発言権を持っておるわけでございますからきめるわけでございます。エカフェの加盟国、アジア開発基金の加盟国全部が対象になりますけれども、特にその中でも東南アジアというものに重点が置かれることに相なろうかと思います。
  240. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この農業投資の場合、私、非常にむずかしいと思うのだが、その成果というものは、一体どういうファクターで測定をされるのですかね。
  241. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私どもも、この農業投資の問題については特に専門家ではございませんので、明確なことは申し上げられませんけれども、いずれにいたしましても、東南アジアの地域経済の地道な発展ということを考えますと、こういう面の努力は必要になろうかと思います。また、今後農業に重点を置いた施策を進めるに至りましては、先生の御意見もよく伺いまして、適切な運営のしかたをわれわれとしても努力してまいりたい、いい知恵を集めて適切に運営できるように意見を申し立ててまいりたいと考えます。
  242. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほどお伺いしたなんでございますが、いまタイ国に五百万ドル出た、インドネシアに食糧増産のあれで派遣した、韓国へ派遣した、こう見てくると、こういう国々は、まあインドネシアは南ベトナムに兵隊を出しておりませんけれども、何か非常に問題のある国々にまず第一に金がいく。タイ国は、御承知のようにあそこからB52が飛び立っておるというような国である、韓国はアメリカに次ぐ派兵国であるというような点からいくと、どうもアジア開発銀行というものは、名前はアジアの開発でけっこうであるけれども、いまの時点では少し問題があり過ぎるのじゃないですかね。その点のお考えはどうですか。   〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  243. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私どもアジア開発銀行総裁からごく最近に話を聞きましたところでは、これは公表していいのかどうかちょっと存じませんけれども、セイロンに対して紅茶の——私は正確に記憶しておらないので間違っておる点があるかもしれませんが、紅茶の葉っぱの精製、こういうふうな援助をしようという話もございます。したがって、私は御指摘になった地域がどういう意味を持つのかよくわかりませんけれども、いずれにしてもそういう政治的な決定でなくて、経済的な考え方でプロジェクトが選ばれているというふうに考えておるわけでございます。また、アジア開銀総裁日本人でございます。したがって、私どもこういうところで論議していることについてもよく伝えまして、地域的な加盟国に関する限りは経済上の考慮のみに基づいて貸し付けの決定をやる、こういうふうにアジア開発銀行を設立する協定三十六条にも特に明記してございますので、そういうふうに運営が行なわれると信じております。
  244. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたのお気持ちはそういうことであろうと私、善意に解釈しますけれども、大体いままでのアメリカの経済援助をごらんになってみても、歴史的な事実をごらんになってみてもわかるわけでありまして、国民の血税をそこへ出す場合に、自分の国の立場を全然考慮しないで仏さまのように金を出すなんということはそうないのじゃないですか。アメリカ自体が今度の二億ドル出すのも、自国の産品を、まあことばはどうか知らぬが、押しつけるという態度をとっておる。それでまたさらに、いまアメリカで先ほどの二億ドルがきまらないというのにも、いろいろとアメリカの国内でも批判があるのじゃないですか。たとえば、ことしの二月二十八日の新聞の報道するところによれば、アメリカ上院の外交委員長フルブライトさんの話ではこう伝えておる。現在戦争で破壊されつつある地域経済開発を行なうなどということは無意味だ、こういうことをおっしゃっておるわけですよ。それをあなたは、日本の自主性でアメリカから指示されたのじゃないんだ、こうおっしゃるけれども、だれが見てもいまの地域の点では多少疑惑を持たざるを得ないのじゃないですか。それがあなたの言うように、ほんとうに経済と政治を全然竹を割ったように切り離してしまえるものでもないでしょう。そんな切り離せるものですか。そうすると、やはりそこには日本の意図というものもないわけじゃないでしょう。
  245. 奥村輝之

    ○奥村説明員 御指摘のような点につきましては、全体の投票率というのをながめてみますと、エカフェの域内の国が六二%の投票率を持っております。日本は一七%でございますが、アメリカはやはり一七%持っているわけでございます。私どもは、エカフェの域内諸国の投票率が六二・六%であるということで、やはり自主性はエカフェの域内の加盟国が持っておる、こういうふうに考えておるわけでございます。  繰り返して申しますが、銀行の運営等にあたっては、関係加盟国の政治的性格によって貸し付けの決定その他が行なわれてはならない、その決定は経済上の考慮のみに基づいて行なわれなければならない、こういうふうに特に書いてあるわけでございます。これは先ほど申しましたアジア開発銀行を設立する協定に書いてるので、よく注意して運用が行なわれると考えております。
  246. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だけれども、いまおっしゃったように、アメリカが一七%持っておるのですね。日本が一七%持っておるのですね。まあそういうことを言うと失礼に当たるかもわからぬが、大体日本政府というのはアメリカの言うことなら何でも聞く、こう見られておるわけですよ。そうすると、これでもう三四%の票になってくる。それでいまも、調査に行っておるところが韓国だ、タイだということになってくると、やはりその疑惑を持たざるを得ないのでありますが、まあそれはここで幾ら言っても水かけ論でありましょうから先へ移りますけれども、そう簡単に割り切れないものをみんな持っておる。それだから、アメリカとともに一番大きな出資国である日本にアジア開銀の本店が置かれないでマニラに行ったという経過も、その辺やはり日本に対して、加盟国、援助を受けたいその国ですら、何ぼかの疑惑を持っておったということは事実なんじゃないですか。やはりその辺で、奥村さんがおっしゃるように、できるだけ経済あるいは民生安定にこれを使うということはけっこうでありますけれども、そういう見方があるということだけは事実じゃないですか。
  247. 奥村輝之

    ○奥村説明員 いま本店の所在地について議論があったわけでございますが、それは、そういう議論をいろいろといたしましてもなかなか煮詰まらない点があるかと思うのでございます。フィリピンに落ちつきましたことは、地理的に関係国のまん中にあるというふうな説明も行なわれておるわけでございます。ここらのところは、私はしいていろいろと議論の種にいたそうとは思っておりませんが、しかし、あくまでも先ほどから申し上げましたような趣旨でいろいろな法令も書かれておりますし、運営で行なわれるということであろうと考えるわけでございます。
  248. 阿部助哉

    阿部(助)委員 先ほどの武藤委員の質問の場合でもあれですが、いろいろと法律に書いてあるからそうだといったって、皆さんはいろいろと知恵をめぐらしてひん曲げていくという事実は、幾らでも例をあげれば切りがないほどあるじゃないですか。だから、法文に書いてあることはみんなりっぱなことが書いてありますよ。だけれども、そのまま行なわれておるかどうかということになると問題があるんじゃないかと思う。また、みな意見があるところだと思う。それをいまここであれをしてもなんですが、私は、ほんとうに東南アジアの低開発国に、住民が希望するような、正しい援助がいくということには必ずしも反対ではありませんが、日本の農業自体も、大蔵省も農林省もやっておるんだろうけれども、もう少し考えてもらわなければいかぬような段階にあるのに、日本の農業のほうはどんどん出かせぎがふえてくるというようなときに、何か日本の国内の農業との関連というものは少し考えておるんですか。前は東南アジアで米をつくって輸入するなんという話もあったけれども、いまはなかなかそうはいかない状態になっておることもわかりますが、日本の農業自体も少し考えたらどうなんですか。
  249. 奥村輝之

    ○奥村説明員 私の立場は国内の農業政策について専門でございませんので、その点についてはお答えができないわけでございますが、あくまでアジア開発銀行の特別基金を主として農業へという考え方は、長い目で見て日本経済がほんとうに発展する、農民を含めましてすべての日本人が生活水準を上げてよりよい生活をするためにはどうしたらいいか、そのためには、日本は孤立している国でございませんので、やはり近隣諸国が生産を伸ばし、経済の交流を豊かにするということによって達成できる部面が大いにあるわけでございます。そういう意味で、低開発国に対する援助も、私どもは、長い目で見れば日本のためになる、こういう気持ちで今日まで臨んできたわけであります。  その際に、農業というものは、低開発国のいろいろな計画の中で最も地道な計画でございますけれども、人口状態その他から見て、この問題に取り組むことがまず経済を安定させるのに効果的であるという考え方が専門家の中にあるわけでございます。そういう意味で、私どもは、ほかのいろいろな計画の中で、農業政策、農業の改善というものが全体の経済の改善に及ぼす影響が大きい、効果が大きいということを考えましてこういうふうな方針をとったわけでございます。
  250. 倉成正

    倉成政府委員 お答えいたします。  非常に広範な御質問でありますので、御質問の趣旨がよくわかりませんけれども、要するに、アジアの諸国には援助するけれども日本の農業をそれと関連してどう考えるかという御趣旨だと考えます。その観点から考えますと、ただいまも奥村次長が申しましたように、アジアの諸国については、やはり農業の基盤を整備し、農業を産業として確立することがその国の発展、民生安定の基礎であるということを考えております。  日本の農業の問題については、御承知のとおり農業人口が日本の就業人口の二割を割るという、ここ十年の間に全く大きな変貌を示してまいりましたので、おそらく新しい段階に入ったと申しても過言ではないと思うわけであります。しかし、いずれにしても非常にむずかしい問題を国内の農業問題にかかえておるわけでありますので、今後の農業政策については、やはりこういったアジアの諸国の農業あるいは世界各国の農業というものとの関連を絶えず考えつつ、これから先の日本の農業政策も進めていくべきである、そのためにはやはりいろいろな財政投資等についても十分考えていくべきだ、かように考えております。
  251. 阿部助哉

    阿部(助)委員 考えていくというが、それは政府の中でどこが考えるのですか。東南アジアの農業と日本の農業との関連とか調整とかいうような問題を考えて投資をされ援助をされていくわけでしょうが、その機関はどこなんですか。
  252. 倉成正

    倉成政府委員 お答えします。それは、当然日本の農林省が中心で考えていくべきだと思っております。
  253. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この援助の場合、大体どこの役所が中心になっておるのかちょっとわからぬのですよ。これは通産省から出ておるいわゆる「経済協力の現状と問題点」というのを一応見せてもらいましたが、経済協力白書とかいっておるようでありますけれども、こういうのが出ておる。何かほんとうのあれは企画庁であるようなことで、先ほど武藤委員の持っておった資料は企画庁から出おる。いろいてろ大きな東南アジアの農業の援助、また、そういうものと日本の農業との調整ということになると農林省でございます、こうおっしゃる。そうすると、一体日本の援助体制というものは、そのときどきの出たとこ勝負でやってくる。もっと悪くいえば、佐藤総理でも東南アジアをぐるっと回ると、アヒルが卵を産んでくるように、あっちこっちそのときの思いつきで置いてくるというようにしか思えないのですが、どうなんですか。
  254. 奥村輝之

    ○奥村説明員 まず、政府はどこが責任を持っておるのかというお話でございます。低開発国に対する援助については関係省がたくさんございます。これは事実でございます。これは外交、財政、通商、こういうふうな方面に密接な関係がございますので、現在は通常の場合には、何か問題がございますとこの三省と経済企画庁が大体集まって協議をする。農業の問題が起こってまいりますと、これは農林省が一緒になって相談をいたしております。現実に、アジア開銀のうち農業の問題については、農林省はきわめて緊密な連絡を相互に私どもとの間でとっておるわけであります。その場合に、どこか一カ所役所をつくればこれで済むか、そういう議論もあるわけございますけれども、結局また同じようにそれぞれ関係の専門の役所と連絡をとらなければ独立して意思が決定できない。これは日本のみならず西欧の国においてもそういう例がありまして、経済援助庁というふうなものを設けた国もあるわけでありますが、みなそれぞれそういうことで困難があるわけで、それによって問題が解決するわけではないのであります。したがって、この問題をもっと効果的にしていくためにはどうしたらいいかという点が御指摘の点ではないかと思うのですが、これはやはり関係各省が緊密によく連絡をとって問題を処理していくということがいいのではないかと思います。現在までの私どもの処理の方法については、だんだんと援助というものの額はふえてまいります。経験も積み、これから先もさらに改善をしていくことについてはくふうを重ねてまいるつもりでおります。
  255. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま奥村さんのおっしゃるように、何も私も一つ機関をつくったらそれで解決するとは思いませんが、日本の役所はそれでなくてもセクショナリズムが強い、こういわれておる。それに、いまの援助を効果的にするためには、もう少し機構が整備されていかなければならぬし、せっかく国民の血税を出して援助をするのだから、もう少しその辺の調整やなんかがあってもいいのじゃないかという感じを強く受けるわけですが、次官、そういう点でのこれからの努力というもの、決意をお聞かせ願いたい。
  256. 倉成正

    倉成政府委員 ただいま御指摘のように、いまの海外援助のあり方について、関係各省の連絡を緊密にしていくということが中心だと思いますけれども、まだ今日の段階で改善すべき点がたくさんあると思います。したがって、そういう問題については、今後御質疑の趣旨を生かして、これから十分その体制に遺憶がないように勉強してまいりたいと思っております。
  257. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、時間をなるたけ早くせいということでありますのでもう少しでやめますが、これから日本の場合にも援助の金額はだんだん大きくなろうと思います。しかしまた、大きくなる半面、それが今度の開発銀行に対しても、あるいは中国であるとか、あるいは北ベトナムであるとか北朝鮮とかいうものは入っておらないし、またソビエトやフランスも入っておりません。そういう国々の批判を見ると、やはり新しい植民地政策ではないか、こういう批判をしております。また、いままで過去のアメリカの援助の大半を見れば、これはやはり政治的な軍事的な色彩というものを否定するわけにはいかないだろうと思う。そういう点からいって日本の援助も、先ほど武藤委員指摘したような問題と同時に、もう一つは、やはりこの新しい植民地的な進出になるという危険というものを内蔵しておるのではないか、こう思うのでありますが、そういう点での配慮は役所としてはどうなんです。しておられるわけですか。
  258. 奥村輝之

    ○奥村説明員 戦争前の各国の低開発国に対する資本投下あるいは融資というものが、多分に御指摘のような性格があったということは確かでございます。しかし、戦争が終わりましてから逆に各国は反発をいたしまして、むしろ警戒的な態度をとるところが多くなっているわけでございます。私ども方針としては、やはりほんとうに苦しい中から円資金を調達し、国際収支に何らかの負担をかけて行なう協力でございますから、これがほんとうに相手国のためになり、喜んでもらえる、こういうものに協力をしていかなければならない。ところが、間々相手国の国民全体のためにならない一部的な協力というものがあるわけでございます。こういうことがあってはならないので、ほんとうに効果をあげるような協力になるように、私どもとしてはこれから先もいろいろな努力を積み重ねていかなければならぬと考えております。
  259. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その点を特に私は念を押したいのでありますが、いま、現在の国々のことを言うと差しさわりがありましょうから、過去の例をあげれば、四九年の国務省のいわゆる中国白書というようなのに出ておるのを見れば、まあ蒋介石政権の腐敗、あるいは前の南ベトナムのゴ・ジン・ジェム政権の腐敗なんというものは、これは全くひどい。それでアメリカの国内でも、アメリカの援助は、貧乏人を助けないで金持ちばかりを利したり、あるいは腐敗、わいろという忌まわしい事件ばかり起こしておる、あるいはまた軍事援助が中心過ぎる、こういう批判、あるいはまた受け入れ国の要望というものを考えないで、アメリカの方針だけを押しつけ過ぎておるとか、独裁政権の維持に利用され過ぎておるというような幾つかの問題をあげて批判をしておるわけでありまして、いまの東南アジアの国々に、いまこの批判が全然当てはまらないほど民主化しておるわけではないだろうと私は思う。それだけに、これからの日本の援助というものも、よほど気をつけていかないと、このアメリカの轍を踏むのではないかと、こう心配をするわけでして、この点で注意をしてもらいたい。それだけにこの「経済協力の現状と問題点」というのを読ましてもらいましたけれども、これはどこへ何が行ってどうなっておるというのは書いてあるけれども、私が先ほど言った、日本には援助の体系もないし、基本方針というか、そういう筋の通った、こういう方針で、こういう機構で、こういう体系で、これからの援助政策を進めるのだというものが、これには一つも出ていないのです。やはりそういうものが一本ないと、筋の通った援助というのが出てこないのではないかと、こう私は心配をするわけでありますし、また、いまアメリカで二億ドルの問題がまだ議会でもたもたしておるということにも、やはり問題はベトナム戦争というのが一番大きな論議の問題になっておる。そうすると、援助もいいけれども、やはり日本政府がほんとうに東南アジアのしあわせを考えるならば、ベトナム戦争をやめさせるというところに一はだ脱ぐというような努力をするという立場をもっと堅持すべきだと思うのですが、それなしに何か金をつぎ込んでみても、どぶの中へ金を捨てるみたいになることが多いのではないかということを心配しておるのでありまして、そういう点での政府の御努力をお願いをしたいと思います。  きょうは時間をせかれておりますので、これで終わります。(拍手)
  260. 田村元

    田村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  261. 田村元

    田村委員長 速記始めて。  中嶋英夫君。
  262. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 私は、主として政務次官に質疑を深めたいと思います。私は、何も故意にいじめるわけではなくて、政務次官がお役所の人に比べて、答弁がちょっともたもたしたって、ぼくはそれでいいと思うのです。だから、大胆に発言してもらいたい。政務次官という制度は非常に大事な制度で、答弁のうまい、へたがねらいじゃないんで、こういう機会によく国民の声あるいは各党の意見というものを吸収して、大蔵大臣なら大蔵大臣によく注入をして、国政に反映できるような、そういう役割り意味で、政務次官というのは非常に大事な存在だと私は思うんで、決して、政務次官が答弁になれていないから、あそこをやったらおもしろい、そんな意地悪い意味で質問するんじゃありませんから、よろしく。  先ほど佐藤委員の質疑の際に、対外経済協力については今度根本的に検討したい、こういう倉成さんの答弁がありました。非常に大事なことだと思うんです。いまの阿部委員あるいはその前の武藤委員等の発言の中にも、その点についての問題に若干触れておられたようですが、その焦点をまずどこに置かれるのか。十分に検討に値するものを二、三おもなものをあげてもらいたいと思います。   〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席
  263. 倉成正

    倉成政府委員 対外協力に関する本質的な、基本的な問題の御質疑を先ほどから、阿部委員からるる承っておったわけでありますけれども、戦後の対外援助については、先ほどアメリカの例をいろいろあげられましたが、アメリカのみならず、ソ連、中共を含めまして、やはり政治的な若干の意図があったという批判があるということも聞いております。そのほか、経済援助を人道的見地でやるのか、あるいは経済的見地のみでやるのか、いろいろ見方があると思いますけれども、基本的には、低開発地域の人民の幸福と申しますか、生活水準を上げていくということが援助の中心になるのではなかろうかと思います。そういった角度から日本の対外援助を考えていく場合には、やはりアジアの唯一の先進工業国として、重点的には東南アジア地域への援助を考えていくということがやはりまず第一の問題ではなかろうか。このことをはっきりすることが必要だ。それからまた、各国々で非常に諸般の実情が違いますから、十分その国の実態を把握して、実態に即した、各地域の実情に即した多角的な方法を考えていくべきじゃないか、そういったことを頭に置きつつ、現在の援助体制について、いろいろいままでも深く連絡をやってまいりましたけれども、さらに効果的に援助できる方法をひとつ考えてまいりたい。また、特にその際に注目すべき点は、国際間の協力、協調ということをやはり考えていくべきじゃないか。結局は、この対外援助の最終的な目的は、今世紀後半の最大の課題である南北問題の解決と世界の平和と繁栄ということが最終の目的になるのではないか、さように私は考えております。
  264. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 最終的には南北問題の解決、同時に、平和に寄与する効果をあげたい、こういうねらいのようで、非常にけっこうだと思います。その場合には、アジアでは事実苛烈なる戦乱の場があるわけです。たとえばスウェーデンなどでは、あそこでは航空機をつくっておりますね。あるいは武器もつくっておりますが、平和国としての宣言をしておりまして、戦争に関係している国には一切売らない、アメリカには売らない、こういうことをぴしっときめているわけですね。同じように、平和を目標にしておるならば、戦争に寄与する形に間接的にでもなるような援助というものは、佐藤総理がよく言う平和に徹するという日本の国是からいっても、政府方針からいっても、これはやはり考えなければならぬと思うのです。そういう点などは十分配慮されておられるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  265. 倉成正

    倉成政府委員 大体さような考えで進めております。
  266. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 よく後進国ということばはまずいというので、低開発国とか開発途上国とか言う、そのことばはけっこうなことだと思います。ただ、いまお話があったように、東南アジアを主として援助の対象に考えているが、東南アジア諸国の中には、むしろ援助にもたれかかって、精神的な自立心というようなものが出てこないでいる国がある。あるいはその援助を享受するのが政府だけであり、特に政局の不安な政府がむしろそれにもたれかかっている。この政局不安というのは、二つの面があるわけですね。その国の持つ諸条件からいっても最も好ましい政権、特に民主的な政権、これが不安定になっているという場合と、民主的な勢力が伸びていくという、それをむしろ弾圧し、押えつけておることに無理があって政局が不安になっているという国、こういういろいろな国があると思うのです。そういう国々との関連において、むしろ援助をすることによって、政局に対するメスが入れられないために不安状態が長年にわたって続いていくという場合、それから援助をすることによって、自立心がその国の政府にも国民の中にも出てこないという場合、こういう場合があろうと思います。こういう場合が、当面東南アジアで日本との関連において連係のある国々の中にあるのか、ないのか。おありと考えているかどうか。私は、この問題について、最終的にあるともしおっしゃったならば、それじゃそれはどこの国であると言えとは決して申しませんから、楽な気持ちでお答え願いたいと思います。
  267. 倉成正

    倉成政府委員 お答えします。  ただいま御指摘になりましたのは、援助をされる国が、自主努力と申しますか、自立の精神がなければ援助が効果的に行なわれない、そういう御趣旨だったと思います。特に、援助をしたためにかえって自立の精神が失われていく場合があるじゃないかという御叱責だったと思いますが、さような感じが全然なきにしもあらず、かように考えております。
  268. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 そういう点のためだと思うのですが、いま奥村次長から、援助の効果について、若干数字をあげて武藤委員にお答えがあったようです。あの援助の効果というものが、もし援助が打ち切られた場合、あがった効果のところでストップし、それからまただんだんあがっていくのか、もとへ返ってしまうのかという点で非常に危惧される面が多いのです。というのは、開発途上国だと言い切れるのか、あるいは開発が停滞している国であって、援助によって若干開発が進んでいるというだけで、援助が終わればまたもとへ返ってしまうというような国が、わが国の海外経済協力の対象の中に実際にあり得るんじゃなかろうか。お互い国を持っておれば、どんな国でもその国の国民の意識というものがありますし、プライドがあるだろうと思いますので、国の名前をあげることはいたしませんが、そういう点の懸念というものはどうお考えですか。
  269. 倉成正

    倉成政府委員 お答えします。  ただいま御指摘のようにやはり、非常に援助が生かされてますます発展していく国と、むしろその援助が食いつぶされて停滞しておる国と、二通り型があるんじゃないかと思っております。
  270. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 そういう実態の上で、いま一つの転換期を迎えておると思うのは、いわゆる俗に先進国という国々の中では、ここ数年来ずっと後進国に対する援助、いわゆる海外経済協力というようなものが世界の一つの潮流のようになっている、この潮流がいよいよ幅広くたくましく流れていくのか、あるいは一つの壁にぶつかったのかということを反省すべきときがいま来ているんじゃないか。たとえば、イギリスが、御存じのように、スエズ以東の——香港には若干の守備兵を残すようですけれども、海外の軍隊を引き揚げてしまう、あるいはアメリカから購入する予定になっておった戦闘爆撃機をキャンセルする、西ドイツもキャンセルする。それから、フランスの国際政局に臨むかまえというものが、いろいろ批判を受けながらも、一応大きく破綻を見せないで景気は非常によろしいという状態、しかし、フランスはアジア開発銀行加盟国には加わっていない。こういうことなどを考えあわせると、援助の効果に対する疑問と同時に、一方、それぞれの国において、自分の足元を固めようということに重点が移っていくんじゃないか、そういう何か転換期を迎えたような感じが私はするのですが、政府のほうとしてこういう点をどうお考えでございましょうか、これをちょっと伺っておきたいと思います。
  271. 倉成正

    倉成政府委員 私の感じでございますが、先ほど申しましたように、やはり南北問題は今世紀後半の最大の課題である。したがって、援助についていろいろな反省なり停滞が若干あるかもしれませんけれども、大きな方向から見れば、この問題については将来大きく伸びていくものじゃなかろうかと思っております。  それから、アジア開銀はアジアを中心としておりますが、御案内のように、米州開発銀行もありますし、アフリカ開発銀行もありますし、それぞれの地域、また、それぞれに関係の深い国々がこの開発機関に投資をしておるということも御承知のとおりでございます。
  272. 中嶋英夫

    ○中嶋委員 趨勢としてそういう方向へいくだろうという観測のようですけれども、どっちかといえば、現にイギリスの平価切り下げ後の対応策、アメリカのドル防衛、こうなってくると援助を与える側の経済基盤が動揺を示しておる。こういう危機——その潮流は続くとしても、ここ一、二年、二、三年の中期の見通しに立って、むしろ援助というものは潮流としていつも来るものだということを、与えるほうもそう思っておるし、与えられるほうもそう思っておる中で、逆にマンネリというようなものが開発途上国の中にびまんをして、政局不安のささえにするとか、あるいは政権担当も、無理やりに民意に反して政権を維持するためにそれに寄りかかるというものですから、プラスの面よりマイナスの面のほうが出てくる。そのことの関連において一種の反省期に来ておるのではなかろうか。いわゆる南北問題その他を取り上げる必要はないという暴論を吐くのではありませんが、一応反省期に来ておると思うのですが、この点いかがですか。   〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕
  273. 只松祐治

    ○只松委員 さっきから委員長も努力され、いま国対まで行かれたようですが、それにもかかわらず与党の出席がきわめて悪いわけです。きわめて重要な本院の運命を決するような法案が山積しておるにもかかわらず、こういう状態では審議を続行するわけにはいきませんので、いろいろな意味からも本日はこれで散会をしていただきたい。
  274. 田村元

    田村委員長 ただいまの中嶋君の質問に対する答弁が残っておりますから、政府側からその答弁を行なって、その上で委員長の発議で善処したいと思います。
  275. 倉成正

    倉成政府委員 中嶋委員の御指摘の気持ちと申しますか、考え方は十分理解できるわけでありますけれども、今日、日本は一人当たりの国民所得が八百ドル前後になったということから考えますと、アジアの諸国と比べると比較にならないほどこれは高いわけです。逆に言うと、ほかの諸国の所得が低いということを考えますと、援助を受ける側は十分自立の努力をしていく、また、援助を与える側のほうは効果的な援助をどうやって与えていくかということで、相互に協力していかなければならないのではなかろうかと思っております。
  276. 田村元

    田村委員長 本日は、与党、野党ともに出席状況が悪いようでありますから、次回は、来たる十二日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会