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舟橋参考人 石炭の問題で、国をあげて
批判をされ、さらにまた、国会としても大きく取り上げて、これの処理に連日お骨折りをいただきましたことを、
業界の
立場として厚くお礼申し上げ、さらに、おわびも申し上げるのでございます。
ただいま、両
参考人、なかんずく、
木曾参考人から、
石炭に対する手きびしい
批判を受けている、これはそのとおりであろうと思いますが、私は、
戦前戦後を通じて、
石炭くらい国に大きくお役に立った
産業がほかにどれくらいあるかということを検討しているものでございます。
戦争中は、勝つためと称して、その
戦争がいいか悪いかは別といたしまして、昼夜を分かたず
労働者を酷使しながら、
石炭の
増産に励んでまいったのでございます。敗戦後は、国破れて山河残り、ぼう然自失たる
国民の気持ちの中から、まず
再建は
石炭からということで、
石炭に力を入れて、
石炭の
増産をはかったのであります。あれだけの
戦争の末期に五千万トンの
石炭が出ておりました。
終戦と同時に、これらの
徴用労務者が全部散りまして、月間四十五万トンくらいまでになりました。
昭和二十一年から、国の立ち上がりはまず
石炭からということで、これに総力を注いで、ようやく
戦前と同一の
石炭の
数量に、五千万トン近くになったのが二十一年目でございます。
石炭というものはそれほどむずかしい
産業であるということをまず第一に前提に置いて申し上げておきたいと思います。
しかしながら、ただいま前者が申されたいろいろな悪条件その他が重なりまして、
石炭が今日の
危機に追い込まれた。同時に、
世界の
経済の中で立つ
日本の
経済でありますがゆえに、
終戦後とみに、
戦争をしないから油が要らなくなったということと、さらに、
油田開発が進みまして非常に余ってきた、
日本が
経済的にどんどんと向上してきた、そういう
観点から、外国の
エネルギーの宗家である油がどんどんと
日本に入ってくる。結局、
世界の油の
ダンピング市場として
日本がねらわれておった。油の
価格はいかに安くても、将来
日本から
石炭を駆逐して油にだけすれば
——日本の
経済は
世界の各国の
経済から見たら十指に入るのだという
観点から、
日本に
エネルギー資源の油を思い切って安く投げ出してきた。この
ダンピング市場が
日本であったということは、これはいなめないことで、過去の事実、現在の事実をもってしてもこれは明らかであろうと私は思うのです。しかし、
日本には、遺憾ながら、この
油資源というものが、一〇〇%のうち四%、最近では六%になっておりますが、ほとんどないのであります。したがいまして、
わが国唯一無二の
石炭にできるだけたよらなければならぬということで、
日本は、国も、
国民も、だんだんと
石炭の
増産に力を入れてきたことは事実であります。
昭和三十三年に
石炭鉱業合理化臨時措置法というものができました当時は、油に対抗するためにこれができたのであります。したがいまして、そのときの方策を、思い切って、先ほどの
木曽参考人が言われたような方法をとるならば、今日、
石炭がこういう問題をかもすことはなかったと私は思うのであります。何でもいいから油の
価格に合わせればいいのだ
——経済の目先は一年ごとに変わっております。それを長いような
観点に見比べて、まずとりあえず当時の油に換算して千二百円の引き下げをすればいいのだ、そうすれば大体油と対抗でき得るだろうということは、私も当時からの
審議会の
委員として携わっておりますが、まことに幼稚な考えであったことをいまさら悔いております。また、残念に思っておりますが、それが第一次
答申となり、第二次
答申となり、第三次
答申となって今日に至っておりますことは、私が申し上げなくても、諸
先生方がよくおわかりのことと思われます。しかしながら、ちょうど俗語で言いますると、
一般の
物価は急上昇しております。
政府の
施策は、七%とか六%とか言いましても、実際の
物価の上がり方その他は、
公共料金等は十幾倍に上がっている。十何倍ですか、一〇・何倍ずつ上がっている。その中で、私
どもは、ほとんどその資材を使いながら、いわゆる
昭和三十三年の算定の基礎においてつくられたものによって、今日もまだいろいろの角度から検討されている。そこに大きな矛盾があったわけであります。一方、諸
物価は上がる、
石炭は下げなければならぬ、それが今日の
石炭の大きな負担の問題となったわけであります。したがいまして、私は一銭も受け取りませんが、一千億の
肩がわりとして国の金を使った。
国民ひとしくこれに対していろいろのことを言っております。
石炭はかってなことを言う、国の金を一千億も使いながら、まだ
あと国にめんどうを見てもらっていると言う。私は、一千億の
国民の金を使ったのは、当然、当時の
合理化の
あり方に対して、
施策のまずさがあったのだと思う。
合理化設定は国の方針できめ、国の法律できめたのだから、これは国が立てかえて払ってやることが当然であると、私は今日でも思っております。また、それがために大きな負債になっている。こまかい分析をいたしますれば、その八割になるか、あるいは五割になるか、あるいは全部であるか、まだまだ国が負担すべきものがあろうと思うのであります。
申し上げますことは前段に申し上げましたが、
戦前、戦後を通じて
石炭がどれだけ国のためになったかということを考えますと、私は、
石炭というものは高いものではない、非常に安いものであると考えております。昔は、十円札一枚ありますと、われわれ友だち二人で
料理屋へ行って、めしを食って、酒を飲んで、
芸者買いをやって、おつりをもらって帰ってきた。いま一万円札一枚でどれくらいのことができますか。そのくらいのものの値開きができ、非常に違ってきている
時代に来ているのです。その
時代をわきまえないような
あり方が
石炭合理化審議会で
審議された。しからば、おまえも
合理化審議会の
委員であるならなぜそんなことを是認したのだとおっしゃるかもしれませんが、
合理化審議会の
あり方は、一昨日小
委員の
先生方にも申し上げたが、膨大な書類ができているやつを、その日会合へ集まった瞬間に出されて、時間が一時間半しかありませんからこれで御決定くださいと言われる。表紙だけ読むのに一ぱいで、われわれのような無学の者は、中身を熟読玩味して、これをそしゃくして回答するだけの時間がいつもない。けれ
ども、頭のいい
先生方がつくったのであるからこれはこれでのんでおこうということでのんでまいったのは、私
ども今日考えますると、非常に大きな失敗であったということを申し上げることができるのです。あの諸
先生方あるいはお役所の方々のつくられたことは正しいことであります。ただし、どんな学者といえ
ども、どんな算術家といえ
ども、一に一を足したらプラス二であります。
経済は生きておるのであります。一に一を足して二じゃ食べていかれない。一に一を足して二半なり三なりにならなければ
経済というものは生きていかれない。ところが仕事というものは、一に一を足して二にならずに零になる場合がある。それらの問題がこの学者の
先生方、役所の方々の算定の基礎の上にどう盛り込まれたかには不十分な点があったんじゃないか、私
どもはこう申し上げることができるのです。
さて、実は本論に入るのに前段が長うございましたが、これから本論に入らせてもらいます。
昨年私は、この衆議院に
参考人として呼ばれまして、公述の席上、ここまで来ますと、
石炭はもはや
私企業の域は終わりでなかろうか、ということは、現在
石炭は北海道と常磐と九州に分かれておりますが、いずれも掘りやすいところは掘り尽くし、そうして周辺の鉱区を掘ろうと思いましても、これは三菱の鉱区だ、これは三井の鉱区だ、これはどこそこの鉱区だということで、われわれ中小には行き場がないようなことになってしまう、実際に
増産のできるような
体制を持った中小
企業あたりは、むしろようやく追いついておるという形だ、これじゃいけないということを、私
どもは
石炭をやりながら考えまして、この際私は、海とか沼とかあるいは河川というものは全部国のものであるのだ、
石炭も国のものであるのだ、たまたま採掘権だけが鉱区権者に与えられている、ここを掘りますから許可願いたいと出願して採掘権は与えられている、したがって、国がこの機会に全部の鉱区を国有にし、そうして民営に移して、民間の手でほんとうに
石炭を掘るのに
努力する連中、最も力のある者に——力と金ばかりが力じゃありません、労働組合とほんとうに気脈を通じて、ストライキもやらないようにしてから掘ることが一つの力でありますが、そういうところに
石炭をどんどん掘らすならば、適当な
価格でもペイする
時代が来るのだということで、それにはむろん国の
施策が要りますし、
補助の
政策が要りますが、私は、まず国の鉱区を全部国有にしなさい、そうして民営でこれをやらしてくれ、やらすべきものだ、その時期に来たのだということを申し上げたのでございます。したがいまして、その後それらの問題がなかなか進まずしていろいろな形で生まれておりますが、私は残念ながら常磐の実態は知りません。また、九州の実態は一回だけ見せていただき知っておりますが、鉱区の炭層状況その他は知りません。北海道で生まれまして、七十四年間北海道におりますので、北海道の炭層状況、埋蔵状況、地理状況というものを詳しく知っておりますがゆえに、まず北海道を中心にまとめまして、他もこれにならうことが一番いいのじゃないかと思ったことが、私の提唱いたしました、この際これをやることが一番いいのだという三社案でございます。これを中心にして、最近それぞれの
方面に提出し御参考に供しております。これがどういうふうに運ばれるかわかりませんが、一番いい方法だと考えております。同時に、国としても
石炭をなくするわけにはいかない。どうしても原子力
エネルギーが相当に発達して
石炭に置きかえられる時期までは——われわれはあの
戦前にこき使われ戦後もこき使われたのですが、
日本人というものは、最近の若い人は知りませんけれ
ども、われわれの年配の者はりちぎ者で国に殉ずる報国の気持ちを一ぱい持っております。国がこれをいいとしてやるときには、わけのわからぬ
戦争でも命を投げ出して協力し、国がこれがいいんだ、
再建をしてくれといえば、これまたわけのわからぬ仕事にも命を投げ出して働くようないい
国民性を持っております。これが
日本人のいいところです。いいところであるから、
戦争に負けて二十年後に
世界の
経済の二番目か三番目かあるいは四番目と称する位置に上がってきたと思うのです。今後も
日本の祖国を守る限りはこれは維持していきたいということを考えておるものであります。
最後に、私の三社案を簡単に申し上げますと、私は
北海道石炭鉱業
協会の
会長をいたしておりまして、先ほど御
指名のあったとおりです。私は七十四歳でありますから、めがねを三つ持っておらなければ字が読めないことになっておりますのでお許しを願います。
石炭政策については、かねてから本
委員会の皆さま方に格別の御
配慮をわずらわし深く感謝いたしておる次第であります。本日はまた、次期
抜本策について
業界の
意見を述べる機会を賜わり厚く御礼申し上げます。
顧みますと、昨年六月七日、この席で
抜本策について
意見を述べた際、国有民営にすることが真の
抜本策で、
現状の
対策では安定化の足もとがすでにくずれている旨述べましたが、そのときより一カ年足らずして本日再び
抜本策について公述申し上げる羽目に相なりましたことは、あまりに私の考えが的中し、はなはだ残念に存ずる次第でございます。すでに私は、昨年十一月、次期
抜本策として全国三社案を提唱いたしました。これは私なりに諸般の事情を
考慮して最もいい案であると考えておりますが、各界並びに諸
先生方の率直な御
批判を受け、
日本の
石炭産業が真に生きる方策の一端となれば幸いと存ずるものであります。お手元に差し上げております資料に基づいて御説明申し上げます。
全国三社案について、
昭和四十三年五月九日に提出しております。
基本的な
考え方
一、
石炭鉱業は
現状のままでは総くずれとなることは必至である。国内唯一の
エネルギー源として、次期
エネルギーの安定実用化までは、
国民経済上の
立場から
経済的に国内炭の確保をはからなければならない。
二、しかし
現状の姿のままにさらに
対策を積み重ね、ただささえるばかりでは
資金の浪費となり、
国民経済上はなはだ不合理であるので、
石炭関係者は率直に利害、
立場を超越して、いかにすることが
わが国の
石炭産業を生かす道かを全身をもって判断しなければならない。したがって、今日まで累積されたすべてのあかを取り除き、
国民の納得を求められる姿に正し、前向きの
石炭対策費を受けなければならない。
三、
国民の納得でき得る姿は、最も合理的かつ効果的であって簡素化されたものでなければならない。すなわち、産炭地(北海道、常磐、九州)ごとにその諸条件に適合した方策をとり、また全国的に調整して、その効果をより高めることが最も合理的な
体制であると考える。
三社案の概要
一、全国三社を
政府指定会社として発足せしめ、合併希望
炭鉱会社は一定期間内に合併の申し入れを行なわしめる。
二、合併会社の株式は指定会社名株式に書きかえる。
三、一地区以上に
石炭事業所を有する会社の資本金は、当該会社とその事業所の資産、債務の案分により分割する。
四、指定会社は、合併会社の債権、債務を引き継ぐ。
五、
石炭以外の兼業、系列事業部門は段階的に分離し、将来指定会社は
石炭部門のみとする。
六、
政府は原
重油関税をもって積極的に指定会社の安定化に助成する。
七、未
開発炭田(国内外)の
開発を指定会社に行なわしめる。
八、指定会社以外のものには、新たな鉱業権の設定は認めない。
九、電力用炭代精算会社を改組して、電力用炭、鉄鋼用炭、輸入炭の取り扱いを行なわしめ、需給の確保をはかる。
十、三地区
企業体の連携
機関として中央協議会を設ける。
なお、
抜本策についての御
審議は今後急速に進められることと存じますが、この際、
先生方に特にお願いしたいことは、次期
対策ができ上がるまでには少なくも一カ年はかかるんじゃなかろうか、あるいは四十三年でなければ施行できないんじゃなかろうか、こう思うのでありまするから、この歳月の間、現在の
企業は経理的には完全に限界に達しております。先ほど第一に
大槻参考人から申されたとおり、
現状のままでは次期
対策を見ずに崩壊する危険性が多分にありますので、次の経過措置を急速に
実施していただきたいと思うのであります。
一、財政
資金の返済猶予措置とあわせて先行融資の
実施。
二、安定補給金の早期交付。実は安定補給金は御
承知のとおり昨年度の分をもらうのでありまするから、五月中に出せるはずなんです。もう予算がきまりまして国会を通過したように思いますから、あしたでも出せるはずなんです。これを急速にひとつ
実施していただきたい。
三、
合理化事業団業務方法書第四十一条の開設坑口の期日を撤廃していただきたい。そうしてこの進め方と同時に、先ほど、
スクラップ・アンド・ビルド、いわゆるビルド山の形成と同時に
スクラップを
実施し、あるいは社会党さんから提出された法案を見ますると、
スクラップは絶対相ならぬという御
意見でありまするが、幸いにも社会党さんを代表してここに人がいられる。特に
石炭の問題に対しては、前
委員長であられる
多賀谷真稔先生がいられます。非常にこの人は
石炭に明るいのでありますが、ライフのない、
あと一年か二年しかないようなところに大事な、ほんとうに金の卵という
労務者が残っております。これらの者をただいたずらにカニの第三番目のつめの中の肉を取らせるようなことをせずに、これをいいところの掘りやすいところに早く転換して、
スクラップと同時にビルドに向けることが、人が足りないだけに非常に急務であります。これをやらないことには名医の診断になりません。
この三点をこの機会に
陳情申し上げますが、あわせてお願いは、従来の
石炭の
対策はたいがい
答申書が出るまでに一年かかる。
実施するのに一年かかる。葬式出した
あとでお医者さんがかけつけるようなことばかりをこの十年間やられている。これでは、ただでさえよたよたした病人が生きるわけはない。
戦争するのに、
戦争が終わってから大砲のたまが届くような話です。これでは話にもどうにもならないのでありますから、どうかこれらの問題取捨選択よろしきを得て、現在の
政府のいわゆる自由
経済下でできるだけの範囲のことを私は申し上げているので、これはできないことはないはずでありますから、政党政治を超越して
石炭の問題に取り組んでもらっていることを私は二、三年前からよく
承知しております。この機会に、国会とわれわれ
業界ほんとうに力を合わせて国の大事な
エネルギーを守るべきものだ。そうして、とやかく言う
石炭に対する
批判は、
日本の国の
政策の
あり方であるのだから、これは必ず
批判があるべきものじゃない。それらの問題をよく御検討願って、私
ども石炭産業人、いわゆる
石炭企業家が言うから問題になりますが、
企業は放棄して
産業防衛をやろう、これがわれわれの腹でありますから、この
産業防衛にはだれも
国民は文句を言う者はございません。それらの問題等もひとつよく御検討願って、急速な
実施方法をお願いいたすことを申し上げて、私の公述を終わります。
ありがとうございました。