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1968-05-09 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月九日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 田中 六助君 理事 中川 俊思君    理事 野田 武夫君 理事 多賀谷真稔君    理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    始関 伊平君       菅波  茂君    西岡 武夫君       井手 以誠君    渡辺 惣蔵君       稲富 稜人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     大槻 文平君         参  考  人         (日本石炭鉱業         連合会会長)  木曾 重義君         参  考  人         (北海道石炭鉱         業協会会長)  舟橋  要君     ――――――――――――― 四月二十四日  委員岡本富夫辞任につき、その補欠として大  橋敏雄君が議長指名委員に選任された。 五月九日  委員池田正之輔君石野久男君及び田畑金光君  辞任につき、その補欠として始関伊平君、井手  以誠君及び稲富稜人君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員井手以誠君及び稲富稜人君辞任につき、そ  の補欠として石野久男君及び田畑金光君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十四日  石炭産業国有化に関する請願(多賀谷真稔君紹  介)(第四五三九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十五日  石炭鉱業国有化に関する陳情書外三件  (第二八六号)  石炭労働者の生活安定に関する陳情書外一件  (第二八七  号)  石炭産業安定に関する陳情書外一件  (第二八  八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭対策の基本問題)      ――――◇―――――
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、石炭対策の基本問題に関連して意見をお述べいただくため、参考人として日本石炭協会会長大槻文平君、日本石炭鉱業連合会会長木曾重義君、北海道石炭鉱業協会会長舟橋要君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。  わが国石炭鉱業現状は、関係各位の御努力にもかかわらず、ますます逼迫の度を加えてきていることは御承知のとおりであります。政府も去る四月二十六日には、さきの抜本策実施後わずか半年にして石炭鉱業審議会に対し、再度今後の石炭対策について諮問を行なっておりますが、本委員会におきましては、石炭鉱業の今後のあり方等に関して、政府をはじめとする関係方面に対する質疑等を通じて、石炭鉱業の真の長期安定策樹立のため真剣に努力を重ねてまいっております。直接企業に携わっておられる参考人各位には、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、最初一人十五分程度意見をお述べいただき、そのあと質疑を行なうことといたします。  まず大槻参考人にお願いいたします。
  3. 大槻文平

    大槻参考人 私、日本石炭協会会長をやっております大槻文平でございます。  石炭政策の確立につきましては、かねてから本委員会の諸先生方に格別の御配慮をいただきまして感謝いたしておる次第でございますが、またまた石炭鉱業がピンチに立ちまして、ここに基本施策につきましてお願いをしなければならぬというような状態になった次第でございます。  御承知のように、昨年の九月石炭抜本策実施せられましたにもかかわりませず、今日の石炭危機を招来いたしておるわけでございますが、その理由はいろいろございますが、一つには、抜本策の検討からその実施までに二カ年間の時間を経過し、その間に経営内容が一段と悪化してきておるということでございます。したがいまして、抜本策実施せられました当初から、業界といたしましてはいわゆるアフターケアが必要だということをお願いしておったのでございます。二つには、予期しなかった自然条件の悪化、労働力が他産業に流出した、それによるところの出炭減、これによって相当に経営が悪化いたしておるのでございます。しかし、私ども計画そのものもまた甘かったということを反省せざるを得ないのでございます。  石炭危機の実情につきましては、大日本炭鉱倒産に象徴されておりますように、四十二年度における各社の純損益は、トン当たり五百十七円の赤字が出ておるわけでございます。これは再建整備計画におきましては二百八十六円を予定しておったのでありますが、実際は五百十七円の赤字ということになってまいっております。四十三年度は、このままでまいりますならば、さらにこれを上回るような赤字が見込まれるわけでございまして、そのために資金不足が、われわれの計算では約二百億くらいになるのではないか。しかも赤字経営であるがゆえに、その資金の調達はきわめて困難だということになると存ずるのであります。  業界はこのような状態に対応いたしまして、昨年の十一月十三日に、協会といたしましては共同決議を行ないまして、各社の利害を越えて国民経済的な視野に立って石炭産業あり方至急に検討しようということを取りきめております。また昨年末には、五千万トン体制にこだわり、各社が全部生きようとすればかえって共倒れを招来するという認識のもとに、縮小均衡もまたやむを得ないのではないか。ただし、その場合のスクラップ費用特別会計ワク外にしていただきたいということを政府並びに関係方面にお願いした次第でございます。  その後二月になりまして、石炭現状を非常に御心配になられまして、植村経団連会長から個人の資格で、しかも非常に非公式に、いわゆる巷間伝えられる植村構想なるものを示唆されたのでありまして、それに基づきまして業界考え方至急に取りまとめてはどうかという勧告があったのであります。これに対しまして三月の九日に、管理機構を中心として石炭業界の再編成を進めるという植村構想の大筋には賛成であるけれども、これが取りまとめにあたって三つの要望事項を付して回答をいたしておるのであります。  最近政府におかれましても、石炭鉱業審議会に今後の石炭対策の根本的なあり方について諮問をされておるのでございますが、これから先業界といたしましては、審議会審議とにらみ合わせつつ具体的に業界要望を申し上げまして、石炭産業の安定をはかりたいというふうに考えておるのでありますが、私は、これから、若干協会としての基本的な考え方及び要望を率直に申し述べて、御理解と御支援を得たいと考える次第でございます。  まず第一は、五千万トン体制の維持ということでございますが、これは従来政策の根拠でもあり、また業界としても、もとより望ましいと考えておる次第でございますが、財源に限りがあることでもありますし、数量自体に固執することは再び破綻を招くのではないかというふうに心配されるのであります。したがいまして、今後どういうような生産規模が適切であるか、妥当であるかということにつきましては、炭鉱生産力及び需要の見通し、並びに政策の幅というようなものによってきめられる問題でありまして、弾力的であることはやむを得ないと思います。もし生産規模をどうしても定めなければならぬという場合は、業界といたしましては、少なくとも四十八年度におきましても四千万トン以上にしてもらいたいというふうにお願い申し上げる次第でございます。巷間三千万トンというようなことが流布されておりますが、これでは従業員に対するショックも大きいし、従業員の離山を促進する、したがって炭鉱の崩壊を早めるのではないかということが危惧されるからでございます。  石炭産業再建するためには、非能率、非採算企業の円滑、しかも計画的なスクラップをはかると同時に、ビルド炭鉱はできるだけ増強対策を講じていかなければならぬ。しかもこれを同時に行なうということが必要でございます。その実効をあげるためには、従来のように個別企業創意にまかせることなく、やはり計画的にこれを推進する必要があると同時に、したがって何らかのメカニズムと申しますか、管理機構が必要であろうと思います。ことに企業スクラップ業界同士の話し合いできめるということは、性質上きわめて困難、ほとんど不可能であると思いますので、どうしてもこれをジャッジするような機構が必要であろうというように考えます。  また、このスクラップ・アンド・ビルドを計画的にかつ円滑に実施するためには、企業の背負っておる重荷異常債務というものの排除をすることが先決であろうと存じますが、国によりますこの重荷肩がわりの見返りとして、各企業がある程度管理機構支配指示を受けることはやむを得ないというふうに考えておるわけでございます。   〔委員長退席多賀谷委員長代理着席〕 ただしこの場合、管理機構支配スクラップ指示以外はできるだけゆるくして、傘下企業創意が発揮できるような形、言うなれば私企業的な色彩をできるだけ残すような仕組みが適当ではないかというふうに考えるわけでございます。  また、管理機構につきましては特殊法人としまして、国のほか金融機関大口消費者等の参加を希望する次第でございます。  現行対策につきましてはあまりに細目的にわたっておりまして、そのために効果が十分に発揮しがたい点がございます。また、すでに設けられたときと、その緊要度が非常に違ってきておるという面もございます。したがいまして、この際、十分ひとつ対策を検討していただきまして、前向きのほうにでき得る限り費用を持っていけるようにお考え願いたいというふうにお願いする次第でございます。  また、対策財源といたしましては、最小限度現行の原重油関税ひもつき分、つまり一〇%というものは今後の伸びも含めまして石炭対策に充当せられるように希望する次第であります。  今後急増するエネルギー消費に対応するエネルギー資源確保対策として、海外原料炭開発あるいはまたウラン鉱開発等をはかる必要があると考えられますが、この面にはでき得る限り炭鉱技術者を活用していただきまして、彼らに希望を与えるような御配慮を願いたいものであると考えておる次第でございます。  最後に、政策決定までの間、当面の緊急対策としてつなぎ資金対策の早急な実施をこの上とも特に御配慮願いたいということをお願い申し上げまして、私のお話を終わらしていただきます。
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員長代理 次に木曾参考人にお願いいたします。
  5. 木曾重義

    木曾参考人 私は、大槻さんの意見と一致する点は省略いたしまして、中身だけを簡単に申し上げたいと考えるのであります。  三十七年以来、数度にわたる手厚い保護政策を受けてきましたが、今日御承知のような瀕死の状態に追い込まれておるのが石炭鉱業界の姿でございます。その原因はいろいろありましょうけれども、実際仕事に携わっておる私らといたしましては、一に炭価が不当に安い。補助政策もいろいろありましたけれども炭価政策に対してあまり考慮を払われておらない、極端に言えばちょっとも考慮を払っておらないという結果が、今日の窮状に追い込んだおもな原因であろうと私は考えておるのでございます。  いかに安いかと申しますると、戦前すなわち昭和十四、五年ごろの炭価はおよそ十四円内外であったと思います。今日の炭価補助を加えまして三千六百三十円。これは一般炭でございますから、原料炭は別です。六千カロリーを基準といたしまして三千六百三十円という炭価。およそ物価上昇率は二百四十倍程度でございます。他の物価を見ますると、六百倍ないし千倍近い倍率を示しておるのであります。郵便切手は、御承知のようにその当時三銭のものが現在十五円になっております。これは五百倍であります。   〔多賀谷委員長代理退席委員長着席〕 米価も、補助を加えても六百倍でいま販売されております。にもかかわらず石炭補助を加えて二百四十倍。要するにコストをはるかに下回る炭価で取引されておる。いかなる名人でも、こういう炭価ではやっていかれないことは明らかでございます。  ただ、いろいろのばく大な補助金を受けておりますが、その補助のしかた、種類、いろいろのことを考究いたしますと、適切な補助政策であったかないかということは、私たちは非常に疑問に思っておるわけでございます。このごろしきりに新聞等で報道されております労務倒産とか、労務者不足がたいへん騒がれておりますが、これとていかなる名人が来ましても、この安い賃金で使おうというのではとうてい質のいい労務者は集まるわけがございません。従来、炭鉱労務者は非常に若い労務者を要求するのでございます。いままで二十八、九から三十歳前後の労務者でございましたが、今日では四十歳、四十一歳になっておりましょう。労務者の絶対数も足りませんが、頭数をそろえましてもその構成内容が十歳か十一歳年齢の高い労務者を使っておるから、就業率その他から見ても能率が上がるわけがございません。要するに労務者の新陳代謝がないわけでございます。いまおる頭数というのは、古くて炭鉱に離れがたい執着を持った人がほとんどでございまして、新しい青年層はちっとも来ないという現状でございますから、ますます中高年齢層労務者がふえる。従来、炭鉱坑内労務者賃金は、一般賃金よりは一・三ないし一・五倍の賃金を払ってきたのでありますが、今日では一般産業よりは下回った賃金を払っておるから逃げていくのは当然であり、新しい労務者がこないのも当然でございます。労務者対策についても、要するに炭価が低いからそういう手当てができないという結果になってきますから、私は一に炭価政策に重点を置いた対策至急に講じてもらいたい。  しからば具体的にどういうことを考えておるかと申しますと、補助金内容は非常に複雑で、われわれさえも覚えないくらいな補助種類がございます。非常に複雑でございます。そして五百九十二億円という四十三年度の石炭対策補助費は、内容を見ますと前向きの金というのは五割か五割五分くらいの程度で、あとあと始末のほうが多くて、何々公団、何々公団という公団がたくさんありますが、その事務費とかまたは出資金とかというものも含まったのが五百九十二億。一般の人は、炭鉱業者は五百九十二億というばく大な金をもらっておるだろうということでございますが、そういうことじゃございません。内容を御検討願えば明らかでありますが、前向きの金は五割そこそこではないかと思います。私は、そういう複雑な補助をしていただくより炭価一本でいってもらいたい。適正な炭価にしてもらえるならば、その間おのおのくふう、努力、研究してコストをダウンさせ、りっぱな事業として成り立つようなほうにやっていきたいと思います。また巷間こういうことをちらちら耳にしたことがあります。炭鉱業者ほどかって気ままな業者はないのだ、もうけるときには黙っておって、少し損をすると政府に向かってどうしてくれ、こうしてくれという陳情をやる、こういう手きびしい批判を受けつつあるでしょう。しかしわれわれ業者に言わせると、そういう批判はあまり納得しがたい。何となれば、十四、五円しておりました炭価時代能率というのは月一人当たり十三トン八五ですか、十四トン足らずの能率でございましたが、今日ではこの四十三年度が四十トン五、六分で、四十二年度は四十二トン六五になっております。ちょうど三倍強の驚くべき高能率の成績をあげておるのであります。もちろんこれは労務者の協力もありましたし、近代化の設備を急速にやったということもありますが、いずれにしましても三倍強の能率の増進をはかっておるわけであります。日本のあらゆる産業におきましても、これほどの三倍という高能率をあげ得た産業はそうざらにないと思います。かりにあったとしまするならば、その企業体はおよそ裕福でなくちゃいかぬ、豊かでなくちゃならぬはずであります。この石炭鉱業は三倍の能率をあげ得ましても倒産に次ぐ倒産という現状であります。その原因は、ただいま申し上げたように、一に炭価政策を誤ったとは申しませんけれども考慮が足りなかったのではないか。この結果によって今日の窮状に追い込まれた、こう私は申し上げたいのでございます。ゆえに、いろいろの補助をお考えくださると同時に、石炭買い取り機関というものを設置されて、そして、適正価格でお買い上げ願いたい。われわれ石炭業者にはもう一銭の補助金も要らない。そこで、有効な競争原理を生かして、この炭価でやれ、そういうふうな機関を設けていただきたいというのが私の本心でございます。  また、要するに、私企業で競争させいというのでありまするが、社会情勢その他の情勢が、管理機構を設置しないとそういうことはできないとおっしゃるならば、私は、あくまでできないことを主張するのではございません。管理機構ができましても、私企業のいい面をあくまでも生かしてもらいたい。大きな組織になると、管理が不徹底になるから、生産部門は従来の業者に委託してやらせることが一番コストが安くあがるのではないか、こういうふうに考えておりますから、こういう点もひとつ十二分にお考え願いたいと思います。  以上、簡単でございますが、あとは質問がございますれば、お答えいたしたいと思います。
  6. 堂森芳夫

    堂森委員長 次に、舟橋参考人にお願いいたします。
  7. 舟橋要

    舟橋参考人 石炭の問題で、国をあげて批判をされ、さらにまた、国会としても大きく取り上げて、これの処理に連日お骨折りをいただきましたことを、業界立場として厚くお礼申し上げ、さらに、おわびも申し上げるのでございます。  ただいま、両参考人、なかんずく、木曾参考人から、石炭に対する手きびしい批判を受けている、これはそのとおりであろうと思いますが、私は、戦前戦後を通じて、石炭くらい国に大きくお役に立った産業がほかにどれくらいあるかということを検討しているものでございます。戦争中は、勝つためと称して、その戦争がいいか悪いかは別といたしまして、昼夜を分かたず労働者を酷使しながら、石炭増産に励んでまいったのでございます。敗戦後は、国破れて山河残り、ぼう然自失たる国民の気持ちの中から、まず再建石炭からということで、石炭に力を入れて、石炭増産をはかったのであります。あれだけの戦争の末期に五千万トンの石炭が出ておりました。終戦と同時に、これらの徴用労務者が全部散りまして、月間四十五万トンくらいまでになりました。昭和二十一年から、国の立ち上がりはまず石炭からということで、これに総力を注いで、ようやく戦前と同一の石炭数量に、五千万トン近くになったのが二十一年目でございます。石炭というものはそれほどむずかしい産業であるということをまず第一に前提に置いて申し上げておきたいと思います。  しかしながら、ただいま前者が申されたいろいろな悪条件その他が重なりまして、石炭が今日の危機に追い込まれた。同時に、世界経済の中で立つ日本経済でありますがゆえに、終戦後とみに、戦争をしないから油が要らなくなったということと、さらに、油田開発が進みまして非常に余ってきた、日本経済的にどんどんと向上してきた、そういう観点から、外国のエネルギーの宗家である油がどんどんと日本に入ってくる。結局、世界の油のダンピング市場として日本がねらわれておった。油の価格はいかに安くても、将来日本から石炭を駆逐して油にだけすれば——日本経済世界の各国の経済から見たら十指に入るのだという観点から、日本エネルギー資源の油を思い切って安く投げ出してきた。このダンピング市場日本であったということは、これはいなめないことで、過去の事実、現在の事実をもってしてもこれは明らかであろうと私は思うのです。しかし、日本には、遺憾ながら、この油資源というものが、一〇〇%のうち四%、最近では六%になっておりますが、ほとんどないのであります。したがいまして、わが国唯一無二石炭にできるだけたよらなければならぬということで、日本は、国も、国民も、だんだんと石炭増産に力を入れてきたことは事実であります。昭和三十三年に石炭鉱業合理化臨時措置法というものができました当時は、油に対抗するためにこれができたのであります。したがいまして、そのときの方策を、思い切って、先ほどの木曽参考人が言われたような方法をとるならば、今日、石炭がこういう問題をかもすことはなかったと私は思うのであります。何でもいいから油の価格に合わせればいいのだ——経済の目先は一年ごとに変わっております。それを長いような観点に見比べて、まずとりあえず当時の油に換算して千二百円の引き下げをすればいいのだ、そうすれば大体油と対抗でき得るだろうということは、私も当時からの審議会委員として携わっておりますが、まことに幼稚な考えであったことをいまさら悔いております。また、残念に思っておりますが、それが第一次答申となり、第二次答申となり、第三次答申となって今日に至っておりますことは、私が申し上げなくても、諸先生方がよくおわかりのことと思われます。しかしながら、ちょうど俗語で言いますると、一般物価は急上昇しております。政府施策は、七%とか六%とか言いましても、実際の物価の上がり方その他は、公共料金等は十幾倍に上がっている。十何倍ですか、一〇・何倍ずつ上がっている。その中で、私どもは、ほとんどその資材を使いながら、いわゆる昭和三十三年の算定の基礎においてつくられたものによって、今日もまだいろいろの角度から検討されている。そこに大きな矛盾があったわけであります。一方、諸物価は上がる、石炭は下げなければならぬ、それが今日の石炭の大きな負担の問題となったわけであります。したがいまして、私は一銭も受け取りませんが、一千億の肩がわりとして国の金を使った。国民ひとしくこれに対していろいろのことを言っております。石炭はかってなことを言う、国の金を一千億も使いながら、まだあと国にめんどうを見てもらっていると言う。私は、一千億の国民の金を使ったのは、当然、当時の合理化あり方に対して、施策のまずさがあったのだと思う。合理化設定は国の方針できめ、国の法律できめたのだから、これは国が立てかえて払ってやることが当然であると、私は今日でも思っております。また、それがために大きな負債になっている。こまかい分析をいたしますれば、その八割になるか、あるいは五割になるか、あるいは全部であるか、まだまだ国が負担すべきものがあろうと思うのであります。  申し上げますことは前段に申し上げましたが、戦前、戦後を通じて石炭がどれだけ国のためになったかということを考えますと、私は、石炭というものは高いものではない、非常に安いものであると考えております。昔は、十円札一枚ありますと、われわれ友だち二人で料理屋へ行って、めしを食って、酒を飲んで、芸者買いをやって、おつりをもらって帰ってきた。いま一万円札一枚でどれくらいのことができますか。そのくらいのものの値開きができ、非常に違ってきている時代に来ているのです。その時代をわきまえないようなあり方石炭合理化審議会審議された。しからば、おまえも合理化審議会委員であるならなぜそんなことを是認したのだとおっしゃるかもしれませんが、合理化審議会あり方は、一昨日小委員先生方にも申し上げたが、膨大な書類ができているやつを、その日会合へ集まった瞬間に出されて、時間が一時間半しかありませんからこれで御決定くださいと言われる。表紙だけ読むのに一ぱいで、われわれのような無学の者は、中身を熟読玩味して、これをそしゃくして回答するだけの時間がいつもない。けれども、頭のいい先生方がつくったのであるからこれはこれでのんでおこうということでのんでまいったのは、私ども今日考えますると、非常に大きな失敗であったということを申し上げることができるのです。あの諸先生方あるいはお役所の方々のつくられたことは正しいことであります。ただし、どんな学者といえども、どんな算術家といえども、一に一を足したらプラス二であります。経済は生きておるのであります。一に一を足して二じゃ食べていかれない。一に一を足して二半なり三なりにならなければ経済というものは生きていかれない。ところが仕事というものは、一に一を足して二にならずに零になる場合がある。それらの問題がこの学者の先生方、役所の方々の算定の基礎の上にどう盛り込まれたかには不十分な点があったんじゃないか、私どもはこう申し上げることができるのです。  さて、実は本論に入るのに前段が長うございましたが、これから本論に入らせてもらいます。  昨年私は、この衆議院に参考人として呼ばれまして、公述の席上、ここまで来ますと、石炭はもはや私企業の域は終わりでなかろうか、ということは、現在石炭は北海道と常磐と九州に分かれておりますが、いずれも掘りやすいところは掘り尽くし、そうして周辺の鉱区を掘ろうと思いましても、これは三菱の鉱区だ、これは三井の鉱区だ、これはどこそこの鉱区だということで、われわれ中小には行き場がないようなことになってしまう、実際に増産のできるような体制を持った中小企業あたりは、むしろようやく追いついておるという形だ、これじゃいけないということを、私ども石炭をやりながら考えまして、この際私は、海とか沼とかあるいは河川というものは全部国のものであるのだ、石炭も国のものであるのだ、たまたま採掘権だけが鉱区権者に与えられている、ここを掘りますから許可願いたいと出願して採掘権は与えられている、したがって、国がこの機会に全部の鉱区を国有にし、そうして民営に移して、民間の手でほんとうに石炭を掘るのに努力する連中、最も力のある者に——力と金ばかりが力じゃありません、労働組合とほんとうに気脈を通じて、ストライキもやらないようにしてから掘ることが一つの力でありますが、そういうところに石炭をどんどん掘らすならば、適当な価格でもペイする時代が来るのだということで、それにはむろん国の施策が要りますし、補助政策が要りますが、私は、まず国の鉱区を全部国有にしなさい、そうして民営でこれをやらしてくれ、やらすべきものだ、その時期に来たのだということを申し上げたのでございます。したがいまして、その後それらの問題がなかなか進まずしていろいろな形で生まれておりますが、私は残念ながら常磐の実態は知りません。また、九州の実態は一回だけ見せていただき知っておりますが、鉱区の炭層状況その他は知りません。北海道で生まれまして、七十四年間北海道におりますので、北海道の炭層状況、埋蔵状況、地理状況というものを詳しく知っておりますがゆえに、まず北海道を中心にまとめまして、他もこれにならうことが一番いいのじゃないかと思ったことが、私の提唱いたしました、この際これをやることが一番いいのだという三社案でございます。これを中心にして、最近それぞれの方面に提出し御参考に供しております。これがどういうふうに運ばれるかわかりませんが、一番いい方法だと考えております。同時に、国としても石炭をなくするわけにはいかない。どうしても原子力エネルギーが相当に発達して石炭に置きかえられる時期までは——われわれはあの戦前にこき使われ戦後もこき使われたのですが、日本人というものは、最近の若い人は知りませんけれども、われわれの年配の者はりちぎ者で国に殉ずる報国の気持ちを一ぱい持っております。国がこれをいいとしてやるときには、わけのわからぬ戦争でも命を投げ出して協力し、国がこれがいいんだ、再建をしてくれといえば、これまたわけのわからぬ仕事にも命を投げ出して働くようないい国民性を持っております。これが日本人のいいところです。いいところであるから、戦争に負けて二十年後に世界経済の二番目か三番目かあるいは四番目と称する位置に上がってきたと思うのです。今後も日本の祖国を守る限りはこれは維持していきたいということを考えておるものであります。  最後に、私の三社案を簡単に申し上げますと、私は北海道石炭鉱協会会長をいたしておりまして、先ほど御指名のあったとおりです。私は七十四歳でありますから、めがねを三つ持っておらなければ字が読めないことになっておりますのでお許しを願います。  石炭政策については、かねてから本委員会の皆さま方に格別の御配慮をわずらわし深く感謝いたしておる次第であります。本日はまた、次期抜本策について業界意見を述べる機会を賜わり厚く御礼申し上げます。  顧みますと、昨年六月七日、この席で抜本策について意見を述べた際、国有民営にすることが真の抜本策で、現状対策では安定化の足もとがすでにくずれている旨述べましたが、そのときより一カ年足らずして本日再び抜本策について公述申し上げる羽目に相なりましたことは、あまりに私の考えが的中し、はなはだ残念に存ずる次第でございます。すでに私は、昨年十一月、次期抜本策として全国三社案を提唱いたしました。これは私なりに諸般の事情を考慮して最もいい案であると考えておりますが、各界並びに諸先生方の率直な御批判を受け、日本石炭産業が真に生きる方策の一端となれば幸いと存ずるものであります。お手元に差し上げております資料に基づいて御説明申し上げます。  全国三社案について、昭和四十三年五月九日に提出しております。  基本的な考え方  一、石炭鉱業現状のままでは総くずれとなることは必至である。国内唯一のエネルギー源として、次期エネルギーの安定実用化までは、国民経済上の立場から経済的に国内炭の確保をはからなければならない。  二、しかし現状の姿のままにさらに対策を積み重ね、ただささえるばかりでは資金の浪費となり、国民経済上はなはだ不合理であるので、石炭関係者は率直に利害、立場を超越して、いかにすることがわが国石炭産業を生かす道かを全身をもって判断しなければならない。したがって、今日まで累積されたすべてのあかを取り除き、国民の納得を求められる姿に正し、前向きの石炭対策費を受けなければならない。  三、国民の納得でき得る姿は、最も合理的かつ効果的であって簡素化されたものでなければならない。すなわち、産炭地(北海道、常磐、九州)ごとにその諸条件に適合した方策をとり、また全国的に調整して、その効果をより高めることが最も合理的な体制であると考える。  三社案の概要  一、全国三社を政府指定会社として発足せしめ、合併希望炭鉱会社は一定期間内に合併の申し入れを行なわしめる。  二、合併会社の株式は指定会社名株式に書きかえる。  三、一地区以上に石炭事業所を有する会社の資本金は、当該会社とその事業所の資産、債務の案分により分割する。  四、指定会社は、合併会社の債権、債務を引き継ぐ。  五、石炭以外の兼業、系列事業部門は段階的に分離し、将来指定会社は石炭部門のみとする。  六、政府は原重油関税をもって積極的に指定会社の安定化に助成する。  七、未開発炭田(国内外)の開発を指定会社に行なわしめる。  八、指定会社以外のものには、新たな鉱業権の設定は認めない。  九、電力用炭代精算会社を改組して、電力用炭、鉄鋼用炭、輸入炭の取り扱いを行なわしめ、需給の確保をはかる。  十、三地区企業体の連携機関として中央協議会を設ける。  なお、抜本策についての御審議は今後急速に進められることと存じますが、この際、先生方に特にお願いしたいことは、次期対策ができ上がるまでには少なくも一カ年はかかるんじゃなかろうか、あるいは四十三年でなければ施行できないんじゃなかろうか、こう思うのでありまするから、この歳月の間、現在の企業は経理的には完全に限界に達しております。先ほど第一に大槻参考人から申されたとおり、現状のままでは次期対策を見ずに崩壊する危険性が多分にありますので、次の経過措置を急速に実施していただきたいと思うのであります。  一、財政資金の返済猶予措置とあわせて先行融資の実施。  二、安定補給金の早期交付。実は安定補給金は御承知のとおり昨年度の分をもらうのでありまするから、五月中に出せるはずなんです。もう予算がきまりまして国会を通過したように思いますから、あしたでも出せるはずなんです。これを急速にひとつ実施していただきたい。  三、合理化事業団業務方法書第四十一条の開設坑口の期日を撤廃していただきたい。そうしてこの進め方と同時に、先ほど、スクラップ・アンド・ビルド、いわゆるビルド山の形成と同時にスクラップ実施し、あるいは社会党さんから提出された法案を見ますると、スクラップは絶対相ならぬという御意見でありまするが、幸いにも社会党さんを代表してここに人がいられる。特に石炭の問題に対しては、前委員長であられる多賀谷真稔先生がいられます。非常にこの人は石炭に明るいのでありますが、ライフのない、あと一年か二年しかないようなところに大事な、ほんとうに金の卵という労務者が残っております。これらの者をただいたずらにカニの第三番目のつめの中の肉を取らせるようなことをせずに、これをいいところの掘りやすいところに早く転換して、スクラップと同時にビルドに向けることが、人が足りないだけに非常に急務であります。これをやらないことには名医の診断になりません。  この三点をこの機会に陳情申し上げますが、あわせてお願いは、従来の石炭対策はたいがい答申書が出るまでに一年かかる。実施するのに一年かかる。葬式出したあとでお医者さんがかけつけるようなことばかりをこの十年間やられている。これでは、ただでさえよたよたした病人が生きるわけはない。戦争するのに、戦争が終わってから大砲のたまが届くような話です。これでは話にもどうにもならないのでありますから、どうかこれらの問題取捨選択よろしきを得て、現在の政府のいわゆる自由経済下でできるだけの範囲のことを私は申し上げているので、これはできないことはないはずでありますから、政党政治を超越して石炭の問題に取り組んでもらっていることを私は二、三年前からよく承知しております。この機会に、国会とわれわれ業界ほんとうに力を合わせて国の大事なエネルギーを守るべきものだ。そうして、とやかく言う石炭に対する批判は、日本の国の政策あり方であるのだから、これは必ず批判があるべきものじゃない。それらの問題をよく御検討願って、私ども石炭産業人、いわゆる石炭企業家が言うから問題になりますが、企業は放棄して産業防衛をやろう、これがわれわれの腹でありますから、この産業防衛にはだれも国民は文句を言う者はございません。それらの問題等もひとつよく御検討願って、急速な実施方法をお願いいたすことを申し上げて、私の公述を終わります。  ありがとうございました。
  8. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  9. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより質疑に入ります。  通告がありますので、これを許します。田中六助君。
  10. 田中六助

    ○田中(六)委員 ただいま大槻木曾舟橋、三参考人から、るるそれぞれのお立場から御意見の開陳がございました。私どもも非常に参考になったのでございます。皆さまがおっしゃるように、現在石炭産業というものが国の内外において大きな問題になっておりますし、ドイツあたりでも現にラインシュタール法案も一応可決の状態になっておりますし、わが国におきましても、現状のままではいけない、何か体制の変革をしなければならないということは、三参考人も申し述べておりますように、私どもも痛感しております。御承知のように一次、二次、三次の答申案が出ている。抜本策と銘打っておりながら、少しも抜本対策にならない。今度は、このたび第四次の対策が出ようとしておりますが、これとても、へたをすると国民に大きな迷惑をかけるだけで、私ども当事者もそれでは済まされない立場に追い込まれております。したがって、こういう観点から、若干の時間をいただきまして質問をしたいと思います。  まず私がお聞きしたいのは、石炭業者である皆さんが石炭産業の将来というものをどういうふうにお考えか。つまり、現在まで石炭再建論議は、御承知のように植村試案あるいは国有化論、その二つの軸を中心といたしまして国会の中で渦巻いておりますし、国会外でもこの国有化論と植村試案というものが中心になっております。それほどの重要な問題でありますし、最近は特にこの二つの形態論に肉づけをすべく、政府石炭局も一生懸命やっております。たとえば、実際に管理会社をつくったらどれだけコストが軽減されるか、あるいは十年後の石炭の収益性はどういうぐあいになるかとか、いままでより以上に真剣に取り組んでおるのも事実でございますので、私はあらためて皆さまに、石炭産業の将来についてそれぞれ三人のお方がどういうふうに考えておられるかということをお聞きしたいと思います。
  11. 大槻文平

    大槻参考人 石炭産業の将来の形態の話ですか。
  12. 田中六助

    ○田中(六)委員 石炭の形態というよりも、将来性。電力というエネルギー革命がございますね。そういうものにミックスしたものですね。石炭そのものについてどういうふうにお考えか。
  13. 大槻文平

    大槻参考人 これはまず一般炭というものと原料炭というものと分けて考えなければならないと思うのでありますが、原料炭の場合には、日本の製鉄業がこれからますます盛んになりますので、原料炭の需要というものはますます増大していくのではないか。日本原料炭が非常に小さなものになってしまえば、現在外国からくる原料炭日本よりも安いですけれども、それがだんだん値上がりしていく傾向にありますので、非常に困る事態になっていくのではないか、したがって原料炭については、今後ますます増強させるべきではないかというふうに思います。  それから一般炭に関しましては、これは純然たる燃料でございますので、どうしても重油との競争というものはやむを得ない。重油との競争において一般炭が勝てる見込みがあるかといえば、これは絶対にない。したがって一般炭に対しましては、どうしても国としてどの程度石炭を燃料として残すべきかという国策、つまり外貨問題あるいはその他の社会問題というものを加味した形において規模をきめらるべき性質のものではないかというふうに私は考えております。  それにはどういう形態でやったらいいのかという問題でございますが、私どもといたしましては、国有化という問題については、一応ただいまのところは賛成できないという態度をとっておるわけでございます。やはり自由主義経済下の中におきまして、なるほど石炭企業というものは純然たる私企業の形を失っているかもしれないけれども、しかし、生産並びにその他の面においてやはり私企業的な色彩を持たせながら有効な適当な競争をさせながら能率をあげていく、また価格も低廉にするように努力させるということが国としても一番いい方法ではないかというふうに考えております。
  14. 木曾重義

    木曾参考人 石炭あり方が将来どうなるかということは大体大槻さんから申されたとおりであります。原料炭はいまより以上に、日本にはいま約千三百万トン生産されておりますが、二千万トンぐらいまで持っていくべきじゃないか。これに付随して、それくらいの一般炭が出ますから、一般炭数量というものはやはり国策に従ってわれわれは生産していきたい。  それからどういう形態でやるべきかということは、さっき私が申し上げたように競争原理を生かして私企業にやらせる。ただし私ちは、ただ自分の業を守ればいい、もうければいいというそんな低い考えではなくて、やはり国家的意識を持って仕事をしておる私たちとしましては、どういう形であろうとコストが安くなるという方法があればそれに従っていきたいと考えております。イデオロギーにとらわれて、いや国有はいかぬとか何がいかぬとは申しません。一番いい、コストの下がる方法があればそれに従ってやっていきたい、こう考えております。
  15. 舟橋要

    舟橋参考人 多少意見を異にする点があるかもしれません。異にするといいましても大局的には同じことになるのですが、現在昭和四十二年度四千七百万トン石炭が出ております。先ほど前段に申し上げましたように、それまで出すのに二十年かかっております。そうしてようやく戦前数量に近いものに復活しておる、これは並みたいていの努力ではないのであります。しかし、このままの姿でいくとこれが保てない。これを保つためにはコストが相当高くなる。こういうことから、私の提案いたしました三社案というものが、国管と自由企業の末端、いわゆるアベック闘争のような形の案であろうと私は考えております。まずこれを形づくっておくならば、社会党さんが何十年か後に天下をとっても、すぐ取りかえれば国管になるのでありますから、それまでの下準備をしてあげたい。私は、先ほど申し上げたように、人生の最終列車に乗っておりますから、下車駅が棺おけでありますから、とてもそれまで生きておれぬと思うのですが、そういうことを考えております。そのことが一番いいと思う。ただし私、現在の段階では、それが現政府の持てる最終案ではないか、こういうふうに考えております。私どもは急いでおります。また、国も、石炭対策を急いでおります。十年、二十年後社会党さんが天下をとるまで待っておれない問題ですから、端的に申し上げて一番いい、すぐにできる方法をおとりになったらいかがであるか。そうして現在の四千七百万トンは、まず現在は生かすべきものだ。国の情勢によって、世界経済情勢によって、ふやすなり減すなりは今後に残る問題ではないか。いつも石炭を論ずるときは何か先のことの見通しがついたような形で論じておりますが、それが一回として実行されたことがない。イギリスのポンド切り下げから、ドルの防衛に移って、しかもいま輸入関税でもとられますと、日本の輸出が相当の大きな打撃を受ける。したがいまして、それらの問題がはね返ってくると、国際収支の問題に非常に大きな問題が起きると思う。二億ドルも三億ドルも赤字が出ることをやらずに、石炭の問題に金の二千億や三千億使ったって安いものです。輪転機を一回回せば一億の札ができるのです。いまは見換紙幣じゃなくなっている。不換紙幣なんです。それによって国の大事なエネルギーであるところの石炭が確保できるなどというのは、これくらい安いものはないのです。そういう意味で、私は、現在の四千七百万トン、雑炭を入れて五千二百三十万トンになりますが、それを出していく。したがって、多少余るような場合には、電力というものには何ぼでも使えるのです。コストが合うとか合わぬとかいっておりますが、油をたけば多少よくなるかもしれませんが、てまえのところがよくなるので、国全体としては損をする。国の損することを防いで、国民の得になることをやることが一番いいと思う。これをぜひひとつお考え願いたい。これを強く要請いたします。
  16. 田中六助

    ○田中(六)委員 いま、体制と、それから石炭の将来について、二点お伺いしたわけでございますが、前回の答申の実行にあたりまして、昨年七月、結局石炭会社の一千億円の肩がわりを国がやったわけでございますが、そのときは国が私企業に対する援助の限界であるというふうにまでいわれた肩がわりであったことは皆さま御承知のとおりだと思います。ところが、その抜本策がすぐさま破綻し、具体的には大日本炭鉱というものがそのあとあっという間につぶれて、肩がわりの条件も、御承知のように、十年間の勘定が合って、将来の企業の運営ができるということが大きな前提でありました。それがそういうふうになって、これも国民に対してどういうふうな申し開きをしていいか。あるいは、石炭関係に携わっている私どもは、だれよりも理解をしておるつもりでございますが、与野党含めて他の国会議員に説明がつかない。こういう点を考えますときに、やはり、そういうことが起こった理由、そういう背景、そういうものをどうしても聞いておかなければいけないと思います。その理由と背景というものを皆さまの立場から、先ほどの三人の説明の中にもありましたけれども、もう少し具体的に御見解を三人の方々から述べていただきたいと思います。
  17. 大槻文平

    大槻参考人 ただいま大日本炭鉱の破産した原因はどこにあるのかというお尋ねだと思いますが、私は詳しくは存じませんけれども、大日本炭鉱の坑内事情がきわめて急激に劣悪になって、非常に盤ぶくれがして、とうていできないような状態になっていった。そこで、政府の保護にもかかわらず、将来ともどうしてもペイしないという見通しのもとにやられたのではないかと思います。そう言うと、石炭産業というのは、何だきのうは非常に能率が上がるような話をして、今度はだめなのかという非難が必ずあるのでございますけれども、地層の変動とか、いわゆる自然条件の変化というものはなかなか予測しがたい場合があるわけです。たとえば、私、三菱鉱業の社長をしておるわけでありますが、十年くらいやろうと思っておりました古賀山炭鉱におきましても、やはり洪水等のために水没するとかいうような事情のためにやめざるを得なかったというようなことがございますので、そういう意味の危険性も非常に多い仕事であるということは、御了解を願わなければならないのじゃないかと思います。したがいまして、大日本炭鉱の場合には、故意に肩がわりをしてもらった直後にやめたというのではなくて、ほんとうにやめざるを得ないような自然条件になってやめたのであるというふうに、われわれは理解したわけであります。
  18. 田中六助

    ○田中(六)委員 ちょっと参考人の方々に参考までに言っておきますが、大日本炭鉱だけに焦点を合わさずに、抜本策そのものが全部くずれておりますので、そういうものを背景に含めて、例に大日本炭鉱をあげただけでございまして、やはりいろいろな事情があると思いますので、具体的に御説明願いたいと思います。
  19. 大槻文平

    大槻参考人 このことにつきましては、実は冒頭の陳述の際に申し上げたのでありますけれども抜本策実施に移されるときすでに、大手の石炭協会といたしましては、五百円以上のマイナスになるから、この抜本策ではとうていやっていけません、したがってアフターケアをしていただきたいということを、再三にわたって陳情しておるわけであります。その抜本策がなぜそういう状態になったのかということは、結局政策が立てられてから実施に移されるまでの間に相当な時間がたった、炭鉱は薬のない病人であるから病状がだんだん悪くなっていった、こういうことが一番大きな原因じゃなかったか。そのほかに、もちろん労働力の流出とかその他の問題もございますけれども、一番大きな問題はそこにあったのじゃないかというふうに考えております。
  20. 木曾重義

    木曾参考人 炭鉱の終山、閉山ということを——私、中小のほうの大部分の世話をいたしておりますが、炭鉱というのは、いつやめるんだという計画的なことをやった場合に、その月から生産ががたっと落ちます。最後までそういうことをそぶりも見せられないというので、やめるときにはあっという間にやめるというのは、そういう内部的に大きな事情があります。  それから、だれしも何とかなるならばと、最後までがんばる。結局不渡りになって、その時期に手をあげておるのが実情でございます。  また、一千億の肩がわりを受けたらよほど経理が豊かになっただろうという想像は、だれでもするものでございますが、これは逆効果になっておるのが現実です。と申しますことは、一千億が一度会社に入ってそれを支払いするならば、その問に相談のしかたもありますけれども、その数字が通るだけのことで、現金の顔は見ない。金融業者のほうにおきましては、いつかしたら取れるだろう、政府が何とか方法を講じてくれるであろうという期待を持っておりましたら、手のうちがわかった。要するに一千億以上はもう絶対出さないんだ、これでつぶれるのはやむを得ぬということまで付言されて、肩がわりした一千億を取ったならばもう貸さないわけです。ですから、金融は逆なんです。締められる。それまでは、つなぎ資金でも貸しておかぬと、いまつぶしたならば元も子もなくなるからといって、多少無理な融通もきかしておりましたけれども、一千億ときまったとたんに金融が引き締められた。逆効果になってつぶれていくというのが現状でございます。
  21. 舟橋要

    舟橋参考人 二人とも、申し上げたことは卑近の例でありますが、やはり遠因するものは石炭政策の抜本対策の初めからあったんだ。先ほど私が言ったように、物の土がっていく最中に逆に下げていった。ここに大きな原因と結果が生まれた。したがいまして、一千億の肩がわり石炭を救ったのではなく、抜本対策のやり方が悪かったからあの分だけは見ておこうというので一部の金を払ったんです。私は一銭ももらっておりません。したがいまして不満があります。けれども、私はそう見ております。あと二千億、三千億を出すことがいいかどうかということは、今後の問題に課せられてくると思います。先ほども申し上げたように、石炭を無理に相当の馬力をかけて掘ったことによって、日本経済の復興に大きく寄与しております。鉄鋼においても、世界二位になっておるのは石炭のおかげです。鉄鋼の場合の石炭というのは、決して燃料ではありません、原料であります。その面から見ましても、それらの還元を見ていただきたい。ほかの産業は相当伸びている。たとえば電力はどこもみな一割配当をしておって、渇水準備金を何百億円も使われておる。これらの問題は、場所によっては、動力の発電費用に多くかかった場合もありますが、北海道のごときは発電費用は他の電力の三分の一、しかもこれは送電にかかっている。そういうものから見て、結局それらの電力、九電力とも一割の配当をやっておるのは、私は今日までの石炭が寄与したんだ。これらのいままでの配当した金、さらに渇水準備金、全部合わせると二千数百億円になっておるはずです。あの金あたりは、電力がりっぱになったのは石炭のおかげだということで、全部お礼の意味で戻して差しつかえないと思う。二千億戻してもらったって、三千億戻してもらったっていい。そういう社会情勢経済の組み立てをお考えになる。私どもは、これは経済界とか学者とかその他に申しません。そういう点を考えていただくのが国会であります。国会議員には田中先生のようなえらい人がおることを非常に信頼しております。こういうことをよく見ていただいて、この組み立てを、おまえらどうしてだということではなく、私どもの口から申し上げたほうが先生方が動きやすいと思って遠慮なしに申し上げますが、これは先生方は百も知っておるはずであります。  私は、炭労もしくは社会党さんから石炭の国管を出したときに、なぜ電力を一番先にやらないんだ、石炭のような脆弱のものをやるよりも、電力をやるのが一番先である、こういうことを申し上げておった。その次は銀行をやらなければならない。人の金を預かっていてあれだけ大きな——ここのかどに三菱銀行、その次のかどは大和銀行、その次のかどは東京銀行というように、東京の目抜きのかど、世界の目抜きのかどは銀行の支店ばかりです。そういうような建物がどんどん建っていった。これはみんな国民の預金の利ざやなんです。昔なら、高利貸しの上前はねて建てたのです。ところが、今度政府の一千億——先ほどもお話があったが、あれは一ぺん何かでわれわれの手に——われわれは一銭も受け取っておりませんが、一ぺん会社に入って、これを会社が彼此検討して使いますと、あの一千億は二千億に使える。それを十年、二十年の肩がわりをして、政府から貸した金だけは六分五厘の利子を取って、銀行は五分五厘にした。これには銀行は非常な不満を持っておる。したがいまして、あれからは、銀行はもう全然、政府が何と言おうと石炭には金を貸さない。三井、三菱の系列銀行でさえだんだんお手上げしていくような実態である。このことはひとつ国会で掘り下げていただいて、よき政策をとっていただくことを、国民の一人としてお願いいたします。
  22. 田中六助

    ○田中(六)委員 いい政策をしようと思って質問しているわけでございますので、どうぞあしからず。  それから、大槻参考人にちょっとお聞きしたいのですが、木曾さんといま舟橋さんは、たまたま金融の問題を具体的にあげていただいたのですが、実はこの大日本炭鉱も、その金が金融機関に移って、そうしてこの次の融資を、ぼくははっきり知りませんが一億五千万円ですか、それを頼んだところが、撤退作戦でパーにしたのが、これが倒産の大きな原因と世間ではいわれておりますね。国がいろいろなことをやるといままでの借金をまず第一にとってしまって、それが少しも実態面の再建資金に使われてないということはやはり大きな問題なんです。何にもならないわけですから、前向きのことを考えろ、考えろとおっしゃるのだが、そういう点が非常に抜けているし、ここに大きな歯どめをしなければいけないと私も思っているのです。大手の十六社の会長であられる大槻さんは、いろいろな具体的なことを、会社のことで細部にわたってまでは言えないと思いますが、そういう金融機関との関係ですね。そういうことを参考までに述べていただきたいのです。
  23. 大槻文平

    大槻参考人 金融問題は大手、中小ほとんど変わりません。たとえばただいま木曾さんが申し述べられました十年ないし十二年の肩がわりの弁済の金は、会社のふところにちっとも入らないでよそからすっと金融機関にいってしまう。そういうことでは困るということを政策決定前に、私どもは自民党の小委員会でもお願いしたし、また私自身が参議院の公述人としてそのことも非常に強く実はお願いしておったわけです。結果的にはそういうことでなしに、政府からすぐに金融機関にいってしまうというようなことになってしまったわけです。したがいまして、金融機関炭鉱に貸すと、結局最後には利子もぶった切られてしまうというような考え方から、返済する金額さえも貸し方を渋ってくるという銀行が非常に多いわけです。そのためにわれわれは、先生方も御承知のように、たとえば植村構想に対する希望の場合も、金融機関その他に損害を与えないようにしてもらいたいということを実は要望しているのは、そういう観点から金融機関にも安心させて、金を貸してもらいたい、そういう魂胆でああいうものを実はつけ足しておったわけです。現在大手もみな金詰まりでありまして、やはりこれから先対策なしでは資金面からもう手をあげてしまうという状態であることは確実であります。
  24. 田中六助

    ○田中(六)委員 私どもの責任もあるわけでございますが、これからの対策が特に金融面で、金がなければ仕事は何にもできぬわけでございますので、そういう面で十分配慮しようというふうに考えてはおります。  次の問題は植村試案でございますが、植村試案はほんとうは私が簡単に説明すべきでしょうが、もう皆さん十分御承知のことと思いますので、その上に立って質問をしたいわけでございますが、まず大槻参考人にお聞きしたいのは、この植村試案についてどのようにお考えかということです。
  25. 大槻文平

    大槻参考人 協会の中にこういう考え方が一つございます。それは現在の体制のままで保護を厚くしてもらうのが一番生産体制にも変更も与えないし、また現実に関連産業からのプラスもだんだんできてくるので、そのほうが社会的にも一番摩擦がなくていいのじゃないかという意見がございます。しかし大多数の意見といたしましては、それがほんとうにできるならばけっこうだ。しかしながら、石炭業者というものはどうも虫のいいことばかり言っておる。一千億肩がわりしてもらってまたやってもらいたいのかというようなことで、手ぶらのままでは国民感情としても許されないのではないか。また単なる現在の政策の上塗りということになるのでは、ほんとうの意味の抜本対策というものは講ぜられないのではないかというような観点から、先ほども申しましたように、管理機構を中心とする植村試案というものに、大筋の上においてはやはり了承して話に乗っていくべきじゃないかというのが大方の意見です。もちろんその植村構想の中にいろいろ問題点がございます。たとえば第二会社をつくる場合に、新旧分離をする場合に、はたして株主総会の承認を得られるかどうかというような問題、それからまた従業員の身の振り方に関しまして、これは大体大手の会社ですと、特に職員層などはやはり三井、三菱という中で身分を確保されたいという考え方がございます。そういう問題をどういうふうにアジャストしていくかとか、いろいろまだまだ掘り下げなければならない問題が非常に多いと思いますけれども、しかしそういう問題はお互いの研究なり努力によって調整して、何とかそういう植村案に肉づけをした形において実施に移すことが一番いいのではないかということが、これが協会内部の多数意見です。
  26. 田中六助

    ○田中(六)委員 ついでに舟橋さんと木曾さんにも植村試案についてちょっと御意見を伺いたいと思います。
  27. 木曾重義

    木曾参考人 私はさっきも申し上げたように、機構は簡素が一番いい、それから国として一番コストが安くあがる方法がいいのだ、その意味において競争理念を生かして私企業でやらして、炭価政策一本でやってもらいたいというのが希望でございますが、ただしあとで申し上げたように、諸般の情勢がどうしても私企業として許されぬというならば、私企業のいいところを生かしていくような方法をとってもらいたい、これでございますが、植村案というのは検討しますと、不可解な点がたくさんある。かりに統合統合と申しておりますが、どういう方法でやるのか。第二会社をつくれといっても容易でない。これは株主総会で同意が得られるか得られないか。あとの運営等もはっきりした点がいまだわかりませんが、そういう点、一番国として要望するコストが安く出るという方法であれば、私もあえて自説を通すものではない。植村案については疑問点がたくさんあるということを申し上げておきます。
  28. 田中六助

    ○田中(六)委員 舟橋参考人にも、植村試案は大手十六社だけを対象にした案というようなお考えがあるかどうかということをちょっとお聞きしたいのですが、中小まで含めたような考えがベースにあるかというようなことです。
  29. 舟橋要

    舟橋参考人 私この植村試案というものについてまだ植村さんと対談をしておりません。一昨日私から意見を申し上げただけで、植村さんの意見を聞く時間がございませんので、まだ聞いておりません。私どものほうで分析しまして、そうしてこういう図解をいたしました。これが植村試案ということになりますと、大手十六社に対する案だけであり、中小なんかは問題にしていない。これはたいへんなことです。現在でも三分の一近くは中小が出している。しかもその中小は一千億の肩がわりしているのはごくわずかで、あとほとんど私企業の限界で自分の力でやっているものが多いのであります。これらの点も十分検討してもらおうと思っております。したがいまして、おそらく政府がこれを取り上げて実行に移す場合は、植村さんは大手の傭兵であればこれは大手のことだけ言っておればいいでしょうけれども、少なくとも国会は大手のことだけ言うわけはないのです。国全体を取り上げてどうするかという問題に波及してくると思う。したがいまして、私はこういうトラスト会社をつくって、国も金を出す、大口消費者、いわゆる鉄鋼、電力も出すんだ、それから、われわれ業界も大手業界なら出すんだ、こういうことで、その下に何か管理会社をつくってする。その下にまた第二会社をつくって、石炭部門だけこっちへ持ってくるんだ。それで、現在のいろいろな会社をやっている大手さんは——大手さんはたくさんやっております。大槻さんのところでもやっております。ほかの会社においては、北炭なんか二十何ぼあります。その中で、利益が上がるものだけを自分のところに持ってくる、損をするものだけこっちに持ってくる、あるいはどうするのか、ほんとうはそういうところは、私どもまだこまかいところを掘り下げた見解を持つ段階ではない。ただ揣摩憶測をして人を中傷することはこの際避けたい。少なくとも、大手といえども、中小といえども石炭業界であるということにおいては一本でありますから、相協力して、そして大手も中小も全部が満足するわけにいきません。ほっかむりしても、うしろと前、両方のほっぺたは出るのです。これらの問題を大局から見て、こうやることが一番国としてもいいんだということに私どもは協力する用意を持っております。それが私の信念でありますから、先生方に次いだ国士としてお取り扱いを願いたいと思います。
  30. 田中六助

    ○田中(六)委員 私も実は必配するのは、その植村試案が、大手を中心にしたことの考えで、中小はあとについてこいというようなことで、この構想が成り立っておったらいけないという懸念があったから、お聞きしたわけでございます。  大槻参考人にお聞きしたいのですが、この植村試案については、大手の大多数は何とかこれをということですが、かつて植村試案が出されて、のむかどうかということで、多分前の会長のときだと思いますが、三つの条件を出しているわけですね。つまり、官僚統制にならないように、二番目が、私企業を生かすように、三番目は、いろいろ各関係のものに迷惑をかけないようにという三条件が出ているわけでございますが、これと、植村試案の内容を分析したそのものと並べますと、大きな矛盾だらけではないかと思うのです。のんでおいて、これはどうだ、三つの条件を出しているわけでございますが、それとどういうふうにかみ合うのか。それから、それが、あなたが会長になってもまだ生きておるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  31. 大槻文平

    大槻参考人 お話しのように、そしてまた、ほかの参考人からも言われましたように、植村試案というものは全くの試案であって、いうならば、点と点だけを書いておるものだ、その点と点との間の連絡というものが示されていないというのが現状だと思います。したがいまして、私どもといたしましては、この点と点とをつなぎ合わせることによって、そして大多数の会社が了解を得られるならば賛成ということになるんだろうと思うのであります。ただ、なぜこの植村試案というものに業界が一番賛成——大筋としてはいいということを申し上げたかと申しますと、これは先ほど申し上げましたように、協会といたしましては、石炭鉱業の保護の現状から見まして、やはり縮小均衡というものはやむを得ない、しかしながら、その場合のジャッジをするために第三機関というものが必要だ、こういうようなことを公式の意見として発表しておるわけでありますが、その大筋の線に植村構想というものが合っているわけですね。そういう意味で大筋としては賛成だ。しかしながら、点と点だけでありますから、この点については、十分にひとつこれから先も検討しなくちゃいかぬ。検討をいろいろやってみますと、やはりいろいろな問題点があります。あるいは解決困難ではないかと思われるような問題もあります。しかし、さらに知恵をしぼってみまして、われわれとしては肉づけをしてみたいものだというふうに考えております。したがいまして、協会といたしまして外部に向かって発表をしました従来の意見というものは、会長がかわったからといって、それは消えるものではないのでありまして、依然としてその発表したものが協会の公式の意見であるというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  32. 田中六助

    ○田中(六)委員 次の質問者も控えておりますので、最後に一つ聞きたいのですが、細部にわたっていろいろお聞きしたいこともございますが、この石炭問題は非常に重大な問題でございますので、参考人の方々は変わるかもしれませんが、現在の参考人の方々でも、たびたび国会に出てもらって、私どもとの意見の開陳を私どもの前でしていただきたいこととあわせて、私は、最後の質問をいたします。  この今回の石炭問題が、植村試案と、社会党から提出されております国有国営論、この二つが大さな軸になって渦を巻いておるものであるということは冒頭に申し上げましたのですが、大槻参考人木曾参考人のこれの問題に対する意見は先ほど聞いておるのでございますが、舟橋参考人にお聞きしたいのでございますが、国有民営論だというふうにおっしゃっておられますが、国有民営論では、国が持っておって、あとは民間にまかせるということでしょうが、もう少し掘り下げて、具体的にどういうふうに持っていくのかということをお聞きしたいと思います。
  33. 舟橋要

    舟橋参考人 まだ私は自分が責任を持ってやるという段階まできておりません。したがいまして、私どもが申し上げることが他に累を及ぼすといいますか、いろいろの問題をかもすようなことがあっては、業界意見の食い違い等ができるので、差し控えておったのですが、実は、私の国有民営論というのは、今度の三社案というのとよく似ておるわけであります。三社案の機構は、各地区に国策会社をつくる。これは国策会社ということは、国が投資をしてもらわなければいかぬ。そこに株式を集めて、そうして今後石炭特別会計の金を全部ひとつ中央の機関、私のつくる中央機関、その中央機関でこれをあんばいして、そして有効適切にビルドに使い、さらに返済に使い、さらにスクラップに使っていくということなんです。したがいまして、私は、国有国営論ということは、昨年の国会で申し上げたわけです。現在では、国有国営論と似て非なるものでありますが、三地区に国策会社をつくる。したがいまして、植村さんの言う、中央にトラスト機関的な管理会社をつくって、そこに一本に株を買い集めて、そうして各地区に——これはもう石炭は地区に行かなければ、東京のまん中で掘れないのですから、各地区にそれぞれの需要会社をつくっていくということとよけい変わらぬと思うのです。ただ、植村さんの構想を読んでみますと、石炭だけの事務はこの第二会社に持っていくんだ、あとの株式その他はもとの会社に置くんだ。これは私は、大手といえどもどうにもならないことになる。これはおそらく、先ほど大槻参考人の話のごとく、株主は承知しないじゃなかろうか。これらの問題を株主に承知してもらうためには、私は、中央に機関が先にできるのか、私の言うようにあとからできるのかは、これは私はどちらにできても差しつかえないと思うのです。それらの問題で、国の力の入れ方、今後の見方というものとあわして、私は、実行に早く移してもらいたい。いつまでもやるべきものじゃない。  それから、この機会に私は、遠慮なしに申し上げると、大手とか中小とかいうものじゃなく、石炭産業というものはもはや個々の企業の防衛じゃなく、産業全体の防衛をいかにするかということが問題であろうと思うのです。そういう形で、ほんとうに大政奉還するだけの気持ちにならないといけないと思う。その点が国のためにもなり、自分たちの会社のためにもなり、株主のためにもなるんだということに私は観点を切りかえるべきだと思う。それをいつまでも、大槻さんを前に置いてはなはだおそれ入りますが、王政復古された明治初年の旗本や大名のような意見を持っておることは、私は、非常に不可解に考えております。この際、すっぱだかで出すんだ。ただし、意見としては、こうしてくれということは、これは強く出すべきである。われわれは産業人であるし、石炭を守ってきた。戦前戦後を通じて、先ほど言うように守ってきた産業人だから、これからの石炭産業人として、いかなる意見を持っているかということは、これは堂々たるものだが、三井を残せ、三菱を残せということでは、日本の国は明治百年になっているが、これは明治百年になっていない。慶応百年なんです。いつまでも慶応百年で、明治百年でない。明治百年なんだから、この際私は大政奉還すべきだ、姿勢を正すということは——そこに私は姿勢を正すということばであらわしておりますけれども、それらの問題をよく御検討願っておきたい、このとおりでございます。
  34. 田中六助

    ○田中(六)委員 三参考人とも非常にありがとうございました。ただ私どもが憂えるのは、企業努力について一点の曇りもないようにしていただきたいのです。というのは、国がめんどうを見るのだから何とかならあねというような気持ちがどこかにあったならば、これはもうそれこそ私どもやそれから皆さんが、ここに出席の方はそうではないでしょうが、そういう考えが炭鉱業者の中にあればこれはほんとうに問題でございますし、いま舟橋参考人も申されましたように、まず石炭界が大手も中小も多少の利害得失はあっても一緒になってこの問題を解決していこう、国にすがるということよりも、自分で自主的にまずやるという根性から出発すれば国の援助がさらに倍加して生きていくと思うのです。したがってそういう点を十分、私が小なまいきにそういうことを申し上げなくても十分おわかりでありましょうが、その点の配慮も重ねてお願いします。特に参考人の方々が申しましたように、この抜本対策実施するまでのつなぎ融資、つなぎ資金の問題は前回からもその前からも問題でございました。この点もわれわれも十分配慮していきたいと思っておりますので、その点もつけ加えまして私の質問を終わりたいと思います。
  35. 堂森芳夫

  36. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いま大きな石炭政策の転換期で、しかもきわめて急速に処置をしなければならない重大な問題でありまして、すでに石炭鉱業審議会審議を開始しているわけであります。私も岡田君と一緒にこの連休を利用してドイツを中心に英国、フランス、ベルギーを回ってまいりました。そして時間の許す限り各関係省、経営者団体、労働組合を歩いてきたわけですが、日本と同じ共通の悩みを各国とも持っておるようであります。しかしその中でも違う幾多の点があることを発見をいたしました。  まず第一には、日本ほど経営状態が悪くないということであります。ドイツはいまルール炭田一社にするとかあるいは六社にするとか、いろいろ議論がありますけれども、まだ石炭専業の会社において配当しておる、赤字の会社はごく少ない、こういう事情であります。それからそういう中でも統合問題が現実に起こっておるということであります。そこで私はいろいろ自分の頭の中で、岡田君と話し合いながら、考えたわけですが、第一なぜ日本企業の体質がかくまで悪くなったかといえば、それは退職金制度というものがよそにない。ですから、これらはみな年金制度に切りかわっておるわけでありますから、すでに企業の操業中、力があるうちに納付しておった金額から支払われる。ですから閉山費用というのが、政府が奨励金を出しておる、あるいは補助金を出しておる範囲でとんとんでいくということでございます。ここに私は非常に大きな問題を感じました。  その次に感じましたのは、鉱害問題であります。これは水田でない、でありますから、牧草地であり、あるいは日本でいう畑作地であり、あるいは小麦の地域でありますから、比較的陥落が起こってもすぐ処置をする必要がない、こういう点に非常に異なる点を感じたのでございます。  そこで、いま大槻参考人並びに木曾参考人舟橋参考人からいろいろ意見の陳述がありましたが、舟橋さんは統合案でありますからいまの形態が変わるということを前提にお話しになっておりますから、私はこの点については触れませんけれども、少なくとも英国、フランスは国有にしたということについてはやはりよかったと評価をしている。これに異論をはさむ人は現時点においてはない。そして英国でもフランスでも、ドイツの姿を見るとやはり統一した管理機構でやるという必要がドイツにも早くあったのだということを主張しおりました。そのドイツは御存じのように、鉄鋼会社が石炭経営している。石炭会社がみずから発電をして電力会社に送電をしておる。そうして重油の約四〇%の販売シェアを石炭会社が持っておる。そういう中でも統合しなければならぬという事態、それにも経営者には異論がないのです。むしろ異論があるのは労働組合であって、労働組合でなぜいまの一社案に反対しておるかといえば、第一には発電所を分離して石炭部門だけ新会社にいくという点について非常に反対をしておる。要するに、石炭会社の形骸の会社を新会社に移されてはたまらない、やはり発電所は利潤があるから発電所をぜひくっつけていってもらいたい。それから石炭会社が所有する膨大な土地、さらに住宅についても一緒に新会社に移行してもらいたい。これは炭鉱施設の土地ではない、炭鉱施設以外の土地が争点になっているのであります。  次には共同決定に基づく経営参加の問題であります。これは特殊事情でありますが、その点が非常に争点になっておりますが、何にいたしましても一社になるか六社になるかわかりませんけれども、とにかく統合問題というのが争点になっておることは事実であります。それからベルギーは私企業といっておりましたが、私企業ですかと聞いたら、いや、これは国家管理私企業ですとこう言いながら、しかも最も大きな炭田であります北部のカンピーヌ炭田は近く一社になる。ここで半分以上の石炭を掘っておるわけです。  こうしてまいりますと、日本は、これらの国に比べましてさらに経営が悪い。悪い中でなおそのままの私企業の姿でいこう、競争原理を生かしていこう。しかもいまドイツあたりも配当しておるのに、日本は十年間配当していない。しかもいまからスクラップをやろうといえば退職金が要る。一体こういった事情で私企業の形態を生かすという方法があるだろうかという疑問に逢着をしたわけであります。  そこで私は大槻さん並びに木曾さんに率直に聞くわけですけれども、相当なスクラップを進めなければならぬ。舟橋参考人は社会党はスクラップをしないという話ですが、私のほうの提案はスクラップもします。しかし優良炭鉱で集中するのですということを前提でいっている。しかし、いまのままでは新鉱開発もできなければスクラップも困難であるスクラップすると倒産の形になってあらわれるということをいっておるのでありますが、統合という形をしないで、いまのままの私企業形態を生かして、しかもスクラップをして、一体そういう方法ができるだろうか、こういう点を政策立案者として悩むわけですが、この点についてお二方から意見をお聞きいたしたいと思います。
  37. 大槻文平

    大槻参考人 私どもは統合とかあるいは国家管理とかいうような問題を考えるにあたりまして、原則的に先ほども申し述べましたように、やはり経営も、組合も、親方日の丸的にならないような形態を選ぶべきである。それにはどうしても私企業的な色彩——私企業そのものとは申し上げませんけれども私企業的な色彩というものを多分に織り込んで、やはり業者の間においても競争させ得るような仕組みが一番いいのじゃないかという考え方であります。したがいまして、先ほどお話しの中に国家管理のもとにおける私企業形態ということばがございましたが、私は、国家監督下における私企業形態、そういう形が現状においてはいいのじゃないか、やはりこの問題に関しましては一足飛びに統合すべき性質のものではなくて、世論とともにまた日本経済事情とともに進むべき性質のものである、一足飛びに国有国営とか、あるいは国有民営というようなところまで走るのは早いのではないかというふうに考えております。
  38. 木曾重義

    木曾参考人 ドイツもフランスも国営で成功したというお話しでしたが、私もドイツ、フランスに行って向こうの業者と会ってきたのですが、そのときに、フランスは日本円に直して約二千円、ドイツは二千三百円の消費税をかけておる。こういうことはそうでなくてはやれぬ、いかに国営でもやれないのだということを聞いておりましたが、現在までその政策は続いておるのでしょうか、打ち切ったのでありましょうか。ドイツが配当しておるということですから、日本でも二千三百円の消費税をかけたらおそらく配当ができるのではないかというふうにいまでも考えております。  そこで私企業でやれるかということですが、この整理の方法いかんの問題も残っておるのでございますが、昭和三十年ごろにはおよそ千に近い炭鉱があったのが現在百六十ぐらいまでに整理されております。中小は、政府のお世話にならずに、自主的に自分の力によって整理してきたのであります。今日労働者不足だ、労務倒産だと叫ばれておりますが、そのときには私は、名前は控えますが、政党の有力者のところに飛んできて、三カ年間失業保険を延ばすというので、これはやめてもらいたい、離職者にあまり優遇すると離職者製造になるではないか、それよりも、他の方法で離職者に対して優遇してもらいたい、そういう金を出すならば、離職して就職するときに奨励金を出すならいいけれども、三カ年やるということはたいへん悪例を残す、これはやめてくださいと言ったら、そうか、これが一番いい方法と聞いておったからやることにしておったのだが、そういうことか、これはやったらたいへんなことになりますぞ、そうしたまま、そのあとでもうすでにきまっておるからどうにもならぬということでありましたが、私は、今日そういう政策労務者不足に加勢しておるのじゃないかと思います。それで私企業がいけるかというと、私は炭価政策が適正な炭価で引き取るようになればいけると考えております。  次に、付帯条件みたいなことを申しましたのは、さりとて社会情勢その他の一般が、いま私企業でいけないから統合するとか管理するとかいうならば、私はあえて自分の主張を曲げぬことはありません。ただし、目的はコストが一番安く出ることが国のためになるから、そういう方法であれば協力いたします、ついていきますということを思っておりますから、私は、何がいいかにがいいということは、私の乏しい知識においては私企業が一番いい、こう考えております。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が申しましたのは、国有というものにかなり重点を置いて話をしましたが、いまのままの私企業形態でないという、要するに統合という形が出てくる。ですから、やはりいまのままの私企業形態ではいけないのではないかということが一つ。しかし、さらに突き詰めていけば、それは国有形態ということにならざるを得ない。それが、いま木曽さんからお話しがありましたが、フランスは、御存じのように、いわば原価と販売価格の差がありますから、それは国が補助をするということはあります。しかし、そのことは、次のように言っている。すなわち、国有あるいは公社であるから国民が許したのだろう、こういうことを前提に言っておるわけです。それから、英国も、御存じのように、日本の一千億の手本というべき九千六百億ぐらいの金額のうち四千億を政府が公社に対する債務の肩がわりをしました。これもわりあいにスムーズにいったのはそういう点だろう。そのほかに、彼らが言っているのは、やはりわれわれが主張しております鉱区問題であるとかあるいは流通機構の問題であるとか、要するに他の産業に安い石炭を供給することができた、こういうことを言っておるわけです。でありますから、その点、やはりわれわれは、国有化という形を、イデオロギーを抜きにしていえば最も適当な形じゃないか。もう十年間配当ができぬ時代に、現在のままの私企業でやってくれといっても、それは無理じゃないか。いまから費用が要らないならともかくとして、ますますいまから費用がまだ相当要るじゃないか。コストの上昇する要因というものは現実に相当見込まれるではないか、こういうことを言っておる。私企業でやるというならば、いかにして私企業でやるのですか、こう私は聞いたわけですが、それについてはいささかイデオロギー的な返事がありまして、残念ながら聞けなかったわけです。  次に私は、この際ですからお話ししておきたいのは、非常に経営者に対する義務を課しておるという点は、いささか意外な感じほどきびしい条件です。それは、たとえば国の政策に沿わないものについては一切の優遇措置を排除するという。これは御存じのようにドイツの今度の法律がそうです。それからフランス等も、若干の独立した地域において、小さな炭鉱で国有に入っていない炭鉱がありますが、これらは離職対策はやらないという。ですから、われわれとしましては、そういうことができるだろうかというぐらい、国の政策に沿わないものは一切政策の外におくということを厳格にやっている。われわれと若干観念を異にするかもしれませんけれども、非常にきびしい姿を見てきたわけです。  そこで私は質問をしたいのですけれども、従来いわれましたコスト上昇要因、一体これをどういうようにしてカバーするのか。  それから、労働力の不足ということも、いまの形態のままでいって、はたして労働力が集まるだろうかどうだろうか。  それから、舟橋さんがおっしゃいましたけれども、もう掘ろうといったって鉱区がないのだ、しかし隣に膨大な遊休鉱区が遊んでおる。こういうものを一体いまの企業の形態で活用できるかどうか。  それから、ドイツにおいて国有にしない理由として、債務を国が負うというのは国が多大な犠牲を負うことになるから政府としてはできないんだというのを国有にしない理由にしておりました。そうすると、これは逆に考えれば、国はあくまでも企業にその負担を負わすという意味になる。ところが日本経営者のほうは逆にそのことは必要ない、債務は必要であるけれども国有にする必要はないのだ。こういう点も私、疑問に感じておるわけです。何にいたしましても、いままで未解決な企業間の調整の問題ができるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  40. 大槻文平

    大槻参考人 日本石炭鉱業が今日のごとき状態になっておりますのは、これは全くエネルギー革命の所産でありまして、私は必ずしも経営者の罪ないしは労働者の罪ではないというふうに考えるわけであります。言いかえると、要するに重油の法外なる輸入、そしてその低廉、政策的な重油価格、それに圧迫された。しかも急激にそれが圧迫されたというところに私は原因があるんじゃないかというふうに考えるわけであります。したがいまして、この特殊的な事情によって生じた異常の債務というものは、やはり国によってめんどう見てもらってもいいんじゃないか。経営者がそういうことをあまり言うと、いろいろたたかれますけれども、私はそういうふうに考えているわけであります。  先ほど先生が諸外国のことをいろいろ申し述べられましたが、私は全く前から同感でありまして、日本炭鉱で、いまかつかつやっていっている炭鉱はどういう炭鉱かというと、それはまず第一にスクラップのなかった炭鉱ということです。それがまず第一です。ですから、退職制度そのものがいいとか悪いとかではなくて、退職金を払わなければならなかった炭鉱を多く持っておる会社がまいっている。第二には鉱害であります。鉱害のない会社は、そうたいして響いてない。第三は陸送のない会社は非常に条件がいい。日本炭鉱会社がいいか悪いかというところは、全くその三点に尽きるというふうに思うわけであります。具体的に申し上げますならば、もうすぐわかることでありますから、具体的に申し上げませんけれども、そういう状態である。そして、その悪くなっておる炭鉱というものは、結論的にいえば、いま申し上げたようにエネルギー革命に基因するものであるから、政府に相当にめんどう見ていただいてもいいんではないか、また、めんどう見てもらわなければやっていけないという状態である。  それから、御質問の第一点、コストの問題でありますが、御承知のように石炭価格はくぎづけにされておる。そして賃金並びに物資だけは値上がりしていく。その賃金も、組合側に話をしまして、ともかくも世間並みよりも以下の賃金でがまんしてもちっているという状態でございます。私は、現在各会社が持っておるマイナスというものがかりに一掃されて、異常債務というものが一掃された暁におきましても、炭価くぎづけの政策をとられる限りにおきましては、やはりベースアップの金額並びに物資の値上がりによる差額、その程度補助というものは年次的にやっていただかなければ、日本炭鉱は立っていかないじゃないかというふうに考えます。  第二点の労働力の問題でありますが、この労働力の問題は、ただいま申しましたように、地下産業という、いわば人間の本能に反する仕事、この仕事に対して与える賃金としてはあまりにも低い。かつての日本石炭鉱業が払っておったのは、日本でも一、二を争うような高額賃金であった。ところが現在は十何番目に下がっておる、これが実情であります。したがいまして、企業に力がついて、そして相当高い賃金を払うことができるということでありますならば、賃金は高くなり、その他の福利施設もよくなるということであるならば、私は労働力の流出も防ぐことができるし、また、ある程度連れてくることも可能ではないかというふうに考えます。  第三点の鉱区の問題でありますが、なるほど観念的には鉱区というものが各会社に分属されておって、そして、おれのほうでここを掘ればいいんだというところがあるのに掘れないということは観念的にはあります。しかしながら現実の問題といたしましては、少なくとも大手間においてはそういう問題は解消しているというふうに私は理解しております。したがいまして、観念的なアドバルーンとしてはまことに大きなアピールがありますけれども、実質的にはそれほどの問題はないのじゃないかというふうに私は考えております。
  41. 木曾重義

    木曾参考人 私が先ほどから申し上げますように、コストをはるかに下回る炭価に置いて補助をいろいろやったということでございますが、補助なくしてやれぬじゃないか。炭価という位置づけは他の物価と同じ程度に——それよりか少なくていい。せめて郵便切手並みの五百倍にしたならば、ゆうゆうとやっていけるんじゃないか。もちろん配当もできましょう。私の現在考えておりますことは、せめて三百倍にしても現在の経営ならいけるんじゃないか。それは永久にはいけませんけれども……。そういう考えを持っておるのに、この倍率を低いところに押えておいて、やれ補助だどうだと言われることは、私はあまり感心しておらない。要するに、一に炭価を適正な炭価で売れるような政策をとってもらいたい。極端にいえば政策が少し誤まったんじゃなかったか、こういう考えが強いのであります。ですから、現在のような炭価に押えておいてやっていけるかといえばできません。私はさっきも申し上げたように、イデオロギーにとらわれるものじゃない。国として一番安いコストであがる方法ならば、それに協力いたしますということを重ねて申し上げておきます。  それから労働者が集まるかということであります。これもさっき申し上げましたとおり、これは一般産業賃金に比べて一・三あるいは一倍半くらいな高賃金を払わなければならぬものを、かえって安い賃金で使うから逃げてしまうのだ。これを魅力を持たせるには、やはり相当な高賃金を払えば魅力を持つし、また新しい青年も集まってくるだろう、こう考えております。  それから鉱区の調整については、さっき大槻さんが言われたとおり、現在そう問題ないです。もとからありましても、私北海道まで行きませんけれども、筑豊におけるそういういさかいのときは十分調整もしましたが、自主的に調整もつきます。またいまはっきりはしませんが、そういう法律もできておるじゃありませんか、整理統合については。  以上でございます。
  42. 舟橋要

    舟橋参考人 答弁を省略しまして、あとのほうからいきます。鉱区の調整のごときは、北海道ではほとんどついておりません。それは一年か半年の分のわずかぐらいの売買はできておりますけれども、抜本的の調整はついていない、こういうことをはっきり言います。私はここに、北海道において企業合同した場合のメリットというもの、これは一年かかって作成しております。業者から出しました五十年度までの長期計画、さらに四十六年度までの長期計画、さらに四十五年度までの暫定的の計画、そういうものを全部統合いたしましてつくり上げておるのがこの資料でございます。それによって図解までいたしまして、私は、どこの山とどこがどういうふうに合併しますればこういうメリットがあるということを全部出しております。したがいまして、一部ごくわずかな大手といえども、きわめて少ないところの北海道においては、北炭とかあるいは三菱、さらに住友、雄別、これあたりが調整の対象になっておりますが、そういうものは急速に行なうべきものだ。ところが現時点ではなかなかやっぱり各社とも計画がありまして、それは何十年度におれのところの計画に入っているのだとなかなかむずかしゅうございます。しかしながら、北海道が一番合併の条件がやりやすいし、なったら効果が一番あげやすいです。鉱害というものはございませんし、まあ一県でありまするから調整もごく簡単だ。九州あたりになると、七県ありましてなかなかむずかしい。東北においては限られたところが福島県と一つ二つの県でありますが、こまかいところからいきますと十何県にわたっておる。北海道はいわば一県でありますから、こういうことがきわめて簡単であるから私は三社案を提唱した。私は北海道をよく知っておるから、こういうことが一番いいのだ、こういうことで出しておるわけなんです。  たとえば夕張の地区でも、これからの原料炭の産炭地でありますが、まだまだやり方によっては増産になる。現在北海道ではことしは人間が二割減りまして、出炭が四割上がる、こういうような案を北海道における企業合同後におけるメリットを指数的にあげておりますので、いずれ国会に提出するつもりでおりますが、きょうのところはそれだけを申し上げておきます。  それからいまの労働問題ですが、労働問題をいかに押えても、やはり石炭よりレジャーを楽しめる都会に集まるという風潮が非常に多いのです。最近では各山でやめなくてもいい人間がやめて、どこへ行ったかというと札幌へ出てきた。札幌の人口が毎年五万ずつふえておる。百万人口、百万人口と札幌が提唱しておりましたが、私は札幌の商工会議所の副会頭をしておりますが、これはもうしまつに悪いくらいふえてきている。これをどうするかという大きな問題にいま逢着しているのです。ちょうど九十万をこえました。そういうような問題で、しかもその人間が何をしているかといったらほとんど何にもしていない。そういうようなことで問題の考え方がだいぶん変わっております。  それを定着させるためには、やっぱり年金制度の確立を急がなければならない。今度ようやく年金制度が確立して、五十六歳以下でやめた場合には七千五百円が当たるようになっておりますが、あんなことではとてもだめなんです。少なくともあの三倍——普通公務員の係長クラスの三万一千円はだめにしても、二万五千円くらいの年金が炭鉱で三十年以上働いた者に当たるのだという方策を早く制定すべきものだ。これを私は、企業合同して民営でやる場合に、トン当たりから出すなりあるいは重油の還付金の中から積み立てて早く原資をつくるべきものだ。百億なり二百億の原資をつくりますればその利子だけで年々出る退職金が払っていけるのだ。先ほど多賀谷先生から退職金は要らない、年金制度ができておるから、わが国においても石炭はこの年金制度を急がなければいけない、こういうことを考えておりますので、そのとおりでございます。  それから、あとの二点は多少意見が異なりますが、私はあくまでも国有化というものに反対ではありませんが、今日の国の情勢からいって国有化にすぐするということには抵抗します。なぜかというと、国有化になる限りは、小型三輪車の運転手まで全部公務員です。そういうものが公務員になってはたして出るかという問題です。あなた方のほうから提出されたあの内容を見ますと、こうやることによってコストが上がるのだ、生産がこう上がるのだというものがないのです。そこまで論議することはむずかしゅうございますが、おのおの観点の相違、意見の相違でございましょうが、これらのものを考えると、石炭がトン一万円にならなければ間に合わない。先ほど木曽さんが言われたように、いまの三千六百円を一万円くれるならばどんな資金でもどの山も生きられよう、私はそういうことのないようにしていきたい。そういうことで早く業界が大同団結をしていく。いずれにしても鉱害のなくなるところ、しかも掘りやすいところは北海道であります。私は北海道から出ておるから、北海道ばかり言うのはてまえみそのように聞こえますけれども、そういう意味ではない、私は国全体をながめて国の政策のうちで一番安くついて増産ができて掘りやすい、そういうところから大事なものは出すべきだ。そうして原子力がだんだんふえてきて利用価値がつきますれば、石炭のごとき大事なものはなくす必要はない、国で保有しておけばいいのです。何百年後に——満州に力を入れておったが、北海道を残したことが最も大きな財産として、四つの島に残った。北海道に力を入れることは、将来北海道の石炭が要る場合に掘ればいい。ほかの仕事でもうかって、国で保有しておいても必要がなければ石炭は掘らなければいい。現時点で二十年かかってようやく五千万トン近い石炭ができておるのだから、これをすぐに三千万トンとか四千万トンにすることは絶対に承服できません。現在の時点を考えながら漸進的にどうするか、国の政治政策がどうなるかということとかみ合わせて逐次これを実行することは決していなむものではございません。それだけのことを申し上げます。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まあ鉱区問題につきましても北海道と九州では事情の違いもあるでしょう。  先般、私のところに大日本炭鉱倒産をした後にある人が見えまして、大日本炭鉱の磯原の坑道を使って重内の鉱区を掘りたい、こういう話があった。それならばこれは早く合併しておれば問題なかったのだという感じを受けた。このことは志免炭鉱の勝田鉱区の調整も同じ、しかし、もう今日はこれらの山は死んだわけでありますからいまさら繰り返してもしかたがないのでありますが、実際問題としては筑豊のようなほとんどくしの歯の折れたようなところはいかんともしがたいと思いますが、まだ相当の鉱区の調整の余地がある。しかもそれが三年、四年ということでなくて、相当長期にわたっての採掘計画が総合的にできるのではないか、こういうように考えるわけであります。  本日は大体皆さんの意見がわかりましたが、これは何も最終的ではなくて、審議会のほうでも検討されておりますし、本院におきましてもさらに問題点によっては詳細に検討を進めていきたい、こういうように思いますので、本日はこの程度にいたしたいと思います。
  44. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終わりました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  次回は明十日金曜日委員会を開会、開会時間は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十八分散会