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1968-04-23 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 田中 六助君 理事 中川 俊思君    理事 野田 武夫君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    篠田 弘作君       澁谷 直藏君    中村 寅太君       西岡 武夫君    井手 以誠君       八木  昇君    渡辺 惣蔵君       岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君  委員外出席者         農林省農地局建         設部災害復旧課         長       松井 芳明君         通商産業省石炭         局鉱害課長   藤谷 興二君         自治省財政局地         方債課長    山本 成美君     ————————————— 四月二十三日  委員中村重光君及び大橋敏雄辞任につき、そ  の補欠として井手以誠君及び岡本富夫君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として中  村重光君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第九八号)      ————◇—————
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  石炭対策に関する件について、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人出席日時及び人選などにつきましては、委員長にすべて御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 堂森芳夫

    堂森委員長 石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君
  6. 井手以誠

    井手委員 鉱害対策につきまして、先日多賀谷委員から、去る一昨年の答申について、その実行状況お尋ねになりましたが、私も引き続いてお伺いをいたします。  第一に、鉱害復旧長期計画策定であります。先日も論議いたしたのでありますが、四十二年度から四十六年度までに安定鉱害処理を完了するという答申、これがまだ計画も立っていないというのは、明らかに失態といわねばならぬのです。先日鉱害課長から、残存鉱害がいかにも減っておるような印象を受ける答弁がありましたが、実態は逆であります。おそらく千数百億にのぼるでありましょう。復旧しても復旧しても、残存鉱害量はふえていくのであります。実態のつかみ方に誤りがあると私はかねがね申しておるのでありますが、きょうお伺いしたいのは、従来この委員会で、歴代の大臣石炭局長も、終閉山した炭鉱鉱害復旧は、必ず五カ年で復旧しますという約束をいたしております。そういういきさつもございますので、たとえ事務的にどうであれ、この答申に沿った長期計画はすみやかに立てねばならぬのですから、この機会に、いつまでに策定するか、いつまでに完了するかということをはっきり言明をいただきたいのです。  調査をしようと思えばできます。そんな、できないはずはございません。何も実施設計するわけではないのです。鉱害に詳しい人が一月前後調査をすれば、大体のところはつかめるはずです。したがって、私の見たところでは、いまからゆっくり余裕を見て三カ月間あれば、大体の鉱害量はつかめるはずですから、予算編成要求書を出す八月一ぱいぐらいまでには長期計画策定できると私は信じております。その方針でやっていけるかどうか、策定の時期と復旧完成の時期を、この機会にお示しいただきたいと思います。
  7. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 前回お答え申しましたように、ただいま鉱害復旧事業団に対しまして、残存鉱害量についての基本調査を進めさしておる状況でございまして、事務的には今年度と来年度、なお二年ぐらいかかるものと考えておりますが、これは精緻さの程度その他によっていろいろまた受け取り方が違うわけでありますけれども、私どもとしましては、ただいま先生おっしゃいましたような三月程度ということではできないのではないかと考えておりますが、二年という中におきましても、できるだけこれを短縮する努力はいたしてみたいと思っております。事業団を督励いたしすして、なるべく早い時点で残存鉱害量を把握し、これによる復旧計画策定するための努力をいたしたいと思っております。  なお、第二点のお尋ねございました計画によって復旧そのものが最終的にできる年度はどうかという御質問でございますが、私ども現在考えて泊ります感じによりますと、四十六年内にこれを処理し得るという確実な見通しはいまつきがたい状況でございます。これは一つには、井出先生指摘ありましたように、調査が終わらなければわからないことではございますけれども、なお残存鉱害量は、先生も御指摘のように相当大きいものになるのではなかろうか、こう考えまして、いままでの予算の額というものに実績にひとしいようた伸び率等を勘案して考えました場合に、大ざっぱには、時限的な定めになっております期間内には、なお処理し得ないものが残るのではないか、こう思っております。残存鉱害量調査に待たたければいかぬことではございますが、なお一、二年処理そのものに要するのではなかろうか、さように考えております。
  8. 井手以誠

    井手委員 大臣、いま石炭局長から答弁がありましたが、今度はあなたから承りたいと思います。  四十二年度から五カ年間に安定鉱害復旧を完了するという答申です。ところがいまの説明では、今後二カ年間に鉱害量調査して復旧計画を立てようというお話であります。二カ年間と申しますと、実際実行に入りますのは四十五年度、六年度になるわけです。復旧調査に二カ年もかかるというゆうちょうなことは、いかにお役所の仕事とはいえ許されないと私は思うのです。実施計画の場合は、それは精査しなければならぬでしょう。大体どこの炭鉱鉱害量は二十億だ、三十億だという見当はもうすでに市町村ではやっておるのですから、大体わかっているのですから、大まかのつかみができないはずはないのです。私は大臣に特に指名してお尋ねしますのは、事務的ではなかなかむずかしいようですから、大臣のお戸がかり促進をしていただきたい。三カ月間ぐらいで一もう調査費事業団にいくわけですから、そのように答申をし、県、市町村協力を求めてやるならば、大まかの鉱害量はつかめると思う。そしてすみやかに計画を立てることがこの際緊急な問題であると私は考えます。私は、いまになって四十六年にそれを全部完了せよと無理なことは申しませんが、それじゃ来年度から四カ年なら四カ年でやるならやるという大体のめどだけはお示しにならぬと私は引っ込みがつかないのですね。大臣から……。
  9. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ごもっともな御質問でございます。ただ事務がどうしても二年かかるというものを三カ月でつかむということがはたして可能であるかどうか、私もどうも確信がございませんが、しかしこういうものは、できるだけ大綱をつかんで、そうして直ちに実行可能なものから着手するということで、全部調査が完了して、それから実行計画を立ててと、こういうようにやればそれは非常に理屈の上では整然としておりますけれども、そうなると非常におそくなるということにもなりますので、やはり時間的にこれを短縮するということが大きな要素だと思います。でありますから、できるだけひとつ大綱をつかんで、そのかわり地元市町村全面的協力を得て、そうして実行目安のついたものから実行をしていく、こういう方向に進むように私から督励いたしたいと思います。
  10. 井手以誠

    井手委員 もう一言念を押しておきますが、それでは残存鉱害復旧計画は四十四年度予算から組み出して、四十七年度には完了するようにしたいということですか。それならいいですか。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはいつの間にか五年計画が四年計画になった……(井手委員「四十二年度からやるべきものをやらないからそうなったのです。あなたのほうが悪かった」と呼ぶ)でありますから、それはまあ懲罰として一年ぐらいスピードアップするのが筋だと思いますが、できるだけ誠意を持って、四十七年にもしできなければ、四十八年にできるだけ早く実行するように督励いたします。
  12. 井手以誠

    井手委員 大臣椎名さんの答弁としてはまあ上のほうでしょう。  次にお伺いいたしますが、答申の第二にあります鉱害復旧促進地域制度の拡充という、その実績なり今後の見込みを簡単に御説明いただきたい。
  13. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 鉱害復旧促進地域指定対象地域の拡大につきましては、三十九年度以降昭和四十二年度までに全国で二十二地区指定いたしました。これによりまして、鉱害復旧促進をはかっている。なお本年度予定といたしましては、新たに七地区について、調査の上追加指定をする予定といたしております。
  14. 井手以誠

    井手委員 この復旧促進制度は、融資力というよりも、稼働炭鉱も含めたものでございますか。それはどうなんですか。
  15. 藤谷興二

    藤谷説明員 ただいまそのようになっております。
  16. 井手以誠

    井手委員 次に、今回本題となっております臨時措置法改正案の大きな柱であります鉱害審査会、これは先般申し上げましたように、答申に対して時期がおくれたことと、その改正性格について私は非常に不満を持っておりますが、しかしいきさつについては承知をいたしておりますから、この点については先般も申し上げたし、きょうは触れないことにいたします。  そこでお伺いいたしますが、先日も論議がありましたが、通産大臣指定する地域というのはおおむねどういうことになりますか。
  17. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 裁定対象となるべき鉱害紛争は、総合的計画的鉱害復旧促進見地から通商産業大臣指定した地域内に生じている紛争でございます。なお、この場合の地域指定は、従来鉱害復旧事業団を設置するものとして指定されていた地域、これになろうかと考えております。
  18. 井手以誠

    井手委員 その紛争のいわゆる査定の対象になるもの、これは農地、家屋、公共施設、水、汚濁水、そういった紛争について認定や復旧同意は全部含まれますか。
  19. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 そのとおりでございます。
  20. 井手以誠

    井手委員 それでは、炭鉱がある地帯におけるほとんどの鉱害はこれに含まれると解釈していいことになりますか。
  21. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 そう御理解していただいてよろしいと思います。
  22. 井手以誠

    井手委員 裁定委員の問題ですが、三名の構成に、最も公平な意見が述べられると思われる公益代表、県、市町村、あるいは農林業であれば農業団体、そういったものが含まれることになるのですか。
  23. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 農地の場合でございました場合には農業関係学識経験をお持ちになる方、それから、物件のいかんにかかわらず、地元地方公共団体関係学識経験者という方々を任命することは当然必要なことだと思います。それで、事案性質に従いまして適正な構成をそのつど考えていけるようにあらかじめ考えておきたい、こう思います。地方鉱業協議会は、御承知のように現在あるものを利用さしておりますので、その意味で多少の委員の差しかえということをこれから考えなければいかぬと思います。
  24. 井手以誠

    井手委員 裁定という段階になってまいりますと、その裁定という性格から申しましても、利害代表というものは好ましくないものだと思う。また、世間では大学の先生については権威があるものと一般に印象づけられておりますが、実態は必ずしもそうではないようであります。公開の席ですから多くは申し上げませんが、とかくの批評のある人が従来審議会あたりに相当入っておるようでありますから、今後協議会人選その他には十分御配慮を願いたいと思っております。これ以上は遠慮をしておきます。  そこで、この裁定制度は、率直に言えば、民法の当事者主義同意主義を排除して裁定しようというのですから、不十分であるけれども、私は画期的な立法であると期待をいたしております。この裁定を行なわねばならなかった事情から考えますならば、裁定の時期というものを、いつまでも、意見対立なり事務関係などいろいろな理由から遷延さすべきものではないと私は考えております。したがって、この条文にはございませんが、大体一年以内であるとかあるいはおそくとも二年以内には裁定するとか、何かひとつ終着駅みたいなものを運用の基準として置く必要がありはしないか。いま二年と申しましたが、ちょっと長過ぎるような気がいたします。半年か一年のところでやはり裁定を行なうべきではないだろうか、そういう運用上の御用意がありやいなや、お伺いいたします。
  25. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 御意見のとおり、裁定に持ち込んでから実際に裁定が下るまでの期間というものは、今回このような法律改正をやろうとする趣旨から見ましても、被害者救済見地から見ましても、できるだけ短いということが私ども気持ちでございます。これは御指摘のとおりの性格のものであるべきものだと考えております。ただ、事柄の性格上、法律の中で期間明定をするということは避けたわけでございますが、御意見のとおり、運用上の趣旨といたしましては、事案性質ごとくらいにおおよその目安をつけること、あるいは概括的にどんなに長くてもこれくらい以内でやってもらいたいという趣旨のことは、私どもも考えてみたいと思います。あるいは裁定に持ち込まれる状況で、その事案がどれくらいの期間かかるかということの見当はわれわれとしてもっけ得るわけでございますので、ケースごとに大体どれくらいでやってくれという意見協議会に伝えておくというような運営上の配慮は当然いたしたい、ケース・バイ・ケースで考えてみたい、あるいはなお、先生指摘のように、必要があれば全体を通じてマキシマムを、幾ら何でもこんな長い期間は困るということくらいは定めてもよろしいかと思っております。
  26. 井手以誠

    井手委員 ひとつ運用については、私の申し上げた趣旨が生かされるようにくふうを願っておきたいと思います。  次に、条文の第十一条の六でございますが、裁定に対する不服の訴え。裁定に不服がある者は訴訟をすることになるでしょう。そうなりますと、結局強硬な意見を持った者は同じことになりはしないかと思う。そこで、私のお伺いしたいのは、十年訴訟といわれる、被害者が泣かねばならぬこの鉱害問題について、何か救済方法はないかということであります。農業用施設等は、御承知のとおり八割五分を国、県が負担いたしておりますから、せっかくの裁定の効果を生かすために、賠償義務者負担は、裁判に持ち込むとしても、国が負担すべき程度のものは、裁定権威のあるものという前提ですから、裁定権威あるものという前提のもとに考えますなら、国や県が負担する農地等にあっては、八割五分の分については賠償実行してはどうかということです。いわゆる炭鉱負担については、それは訴訟に持ち込んでいいだろう。それを私どもとめるわけにはまいりません。けれども、いやしくも国にかわって裁定を下した以上、国や県が負担すべきものの分については鉱害賠償実行さしていいんじゃないかという私は気持ちを持っておりますが、御見解を承りたい。
  27. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 井出先生のお気持ちはわかりますけれども裁定に対して当事者間に不服があるといった場合の最終的な解決は、本則に立ち戻って裁判においてこれを行なう以外には方法がないわけでございます。その際に、裁定性格から見て、国の負担分だけを裁定の結果に基づいて処理をしてはいかがかという御意見でございますけれども、これは、鉱害債務につきましてこれがはっきりいたしました場合に、その復旧その他に対して国が援助をするという思想でございますので、本体が定まっていないときに、援助だけを切り離して前に施行するということは、法律上のたてまえからも、制度上のたてまえからも、私はとり得ないと思っております。むしろ、せっかく起こしました仲裁条項でございますので、裁定をなるべく権威あらしめるということの努力をいたしますと同時に、この裁定当事者がなるべく服してもらうということで解決すべき問題ではなかろうかと思います。
  28. 井手以誠

    井手委員 法律の解釈なり運用というものは、やはり実態に沿うようにその趣旨が生かされるようにしなくてはならぬと思います。いまお話しの、本体がきまらないからというけれども本体裁定がきめようというのです。当事者同士ではらちがあかない、解決ができない、鉱害賠償が進まないというために裁定を行なうのですから、国にかわって裁定委員会裁定を下したものは、私は本体がきまったものと理解していいと思うのです。それを無理に私は賠償義務者の分までとは申し上げておりません。その分は不服があるならば訴訟を起こしていいでしょう。十年訴訟、二十年訴訟じゃ困るからこういう裁定の道を開いたわけです。裁定が私は本体だと思っています。これはたちの悪い者が考えますならば、全部訴訟に持っていかれるおそれもなしとしませんよ。もう一ぺんひとつ考えてみてはどうですか。そういう従来の戦前のような法のたてまえや考え方じゃなく、実態に沿うためにこういう制度を設けたのですから、その国や県が負担する分だけ債務の履行、賠償しても私は必ずしも不法な行為であるとは考えません。どうですか。
  29. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 御意見のように、裁判という場に持ち込むことによって単に時間をかせぐという気持ちの方もあるいは一部にはあるかもしれませんけれども当事者間に争いがある、裁定に不服があるということは、そのことだけをとってみますと、それぞれの人々に国の全体の法制の中で認められておる裁判における権利というものを残してあるわけでございまして、これを奪うことはできなかろうと思うわけでございます。また、鉱害解決につきまして国の助成分債務者負担分とを分割して考えるということは、先生おっしゃるようにできるだけ実態に沿って制度を考えていくといたしましても、原理的にはどうしても乗り越えられない問題ではなかろうかと私どもは考えます。かような問題はやはり裁定制度を創設しようとしました経緯等から見ましても、裁定という制度を起こしました以上、ある程度この裁定運用実績というものを見きわめませんと、あらゆることを実態に即してと申しましても、骨格的な国の法制に必ずしも十分な実績なしに制度変更を加えていくということには限度があろうかと思いますので、せっかくの制度でございますので、この制度運営実績というものをひとつ見させていただきたい、かように考えるわけでございます。
  30. 井手以誠

    井手委員 ただいまの問題は、立法論からいっても実体論からいっても論議の余地があるものだと思います。このことは答申の最後にありました。これは大臣もお聞き願いたいと思います。  一昨年の答申の末尾にこう書いてあります。「鉱害処理を総合的に行なう機構を整備し、有資力賠償義務者処理事業量に応じ一定限度金額を納付させる等の制度についても検討する必要がある。」一定限度金額納付金を納むれば鉱害については免責されるという裏づけになるわけです。先般も論議された賠償処理機関というものを一本化してやろうということ、これは二十六日、近く石炭鉱業審議会にこのことについても諮問するというお話があなたのほうからございました。私ども期待をしております。ただいま論議いたしました裁定制度も、もしこういう一定金額を納付させて鉱害賠償義務者鉱害の免責をしようということになってまいりますと、いまの問題はすべてが解決をしてくることになるのです。  もう一つ大臣にわかりやすく申しますと、鉱害が、水田が陥没した、水路が陥没した、そういう場合には国と県が八五%金を出し、炭鉱は一五%納むればいいことになるわけです。本来は炭鉱が全額負担しなければならぬはずのものです、被害を与えておるのですから。それを炭鉱は経営に因るだろうというので、それだけの多額の金を国や県が出しているのですから、もっと国は発言権々増していいはずです。そういう意味でこの答申が出ているわけです。そこでこの二十六日には鉱害についてどういうふうに御諮問なさるつもりでしょうか、少し安心させるような案があればお示し願いたい。
  31. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 かつての答申の御趣旨は、私どももその後いろいろ検討を引き続いてやってきておりますけれども、もともとが鉱害関係法制と申しますものは、先ほど井出先生おっしゃいましたように、本来ならば鉱業権者がその鉱害債務の責めを負うべきものでございます。一〇〇%負うべきものを、いろいろな実態から見まして、漸次国助成というものをふやしてきた。結果として国の助成負担分のほうが大きくて、当該鉱業権者負担するものが小さいという形になっておりますけれども本則は、先生もおっしゃいましたように、もともと鉱業権者負担すべきものでございます。この本来の原則というものは、私ども考えます限り、全体のわが国の法制の中から見て、この性格を否認するというわけにはいかぬのではなかろうか。補助率がかりに八五%から九〇%になったとしても、鉱業権者責任を持っておるという体制はくつがえすことができないはずのものでございます。そうなりますと、鉱業権者実態をよく判断をして、被害者救済見地から鉱害復旧というものを考えていく、あるいは国土保全見地から鉱害問題を考えていくということになりましても、おのずからそこには限度があろうかという感じがいたします。もっと端的に言いますと、そういう形で鉱害問題を進めるよりも、鉱業権者が本来の債務を十分に果たし得るような経理的な能力を持たせることのほうが本筋ではなかろうか、こう考えております。今回の施策も、当然のこととして不安定な石炭鉱業を安定させようということにねらいがございますので、私も、あらゆる鉱害債務鉱業権者が一〇〇%負担するだけのところまで石炭鉱業の力を強くすることができるとは思いませんけれども、少なくとも現在の鉱害制度の上に立って鉱業権者がその負担をいたしていくということに支障のない程度のものにいたさないと、これはほんとうの意味での安定策とはいえないのではなかろうか。そういう鉱業権者側に本来の責任を果たさせる方法いかんということと、その限界を見きわめた上での鉱害制度の改善なり運用なりということがからみ合う、かね合いとして考えなければならないところでございますので、今回の諮問に際しましても、鉱害だけを切り離してどういう制度でいくべきであるというふうに考えるかということではなくて、全体の石炭政策の中の一環として鉱害問題というものも考えていただきたい、こういうことで今後審議会にいろいろおはかりをしたいと思っておりますが、なお具体的なことは全体の政策体係の中で考えなければいけませんので、審議進展度合いに応じて何がしか輪郭がはっきりしていくのと並行して鉱害問題について御議論を願いたい、こう考えておるわけでございます。先生指摘の点は、確かに実際問題としてはいろいろあることは承知いたしております。鉱業権者側能力がないところから、鉱害から見ますと鉱害復旧がおくれるという事態はございますけれども、これを先ほど申しましたように、くどいようではございますけれども鉱害法理原則をくつがえすような形で鉱害制度を考え直すということには、なお私どもは多大の質問とまたその実効の見通しを持ちませんので、御指摘のような諸制度につきましてはなお慎重に検討いたしたいと考えております。
  32. 井手以誠

    井手委員 いまの御答弁に私は不満です。能力がないとして国がこれだけ負担せざるを得ない事態になっておるときに、鉱害賠償義務者炭鉱になお権利を留保させようという考え方がちらりと見えることは私は不満です。  とにかく結論的に申しますならば、石炭鉱業審議会の意思はここに明確に答申に出ております。国会の決議もすでに行なわれております。大臣は、その答申なり国会の決議を尊重して、賠償処理機関の一元化をはかられる御意思がおありになるかどうか、その点だけお伺いしておきます。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 考え方がどうも二つに分かれておりますが、やはり現状をよく見て、これに即した解決方法をとるよりしかたがないと考えるわけであります。十分に趣旨を尊重してやっていきたいと思います。
  34. 井手以誠

    井手委員 次に、さきの答申には地方公共団体負担軽減がうたわれております。大臣、御承知かどうか知りませんが、地方公共団体鉱害についての責任はないはずです。鉱害復旧をたてまえとして原形復旧——国土保全、民生安定のために昔の姿に復旧するのですから、地方公共団体負担させるいわれも何もないのです。それを農地についても家屋についても水道についても市町村負担しなければならぬような法制になっておる。それは産炭地としては困るというので負担軽減が盛んに叫ばれ、答申にもうたわれておる。ところが実行されたのは最初に水道の補助金を四分の一から三分の一に引き上げただけです。今後、地方公共団体負担軽減について努力をなされる御意思があるかどうかお伺いいたします。
  35. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御意思に沿うて努力するつもりでおります。
  36. 井手以誠

    井手委員 十分な答弁が得られないことは残念ですが、問題だけ提起しておきます。  そこで自治省はお見えになっておりますか。——私どもは昨年北海道を視察いたしまして小平町に参りましたら、そこにあった炭鉱が全部閉山いたしまして、起債をして建てた校舎に生徒は一人もいなくなりました。それは極端ですが、福岡でも佐賀でも、四十何名の定員の中に十五名しかいない。あるいはそれを集めて十教室のところを二教室くらいしか使っていないという実情です。国の石炭政策のために閉山をする、そして炭鉱の子弟のために建てた市町村の起債が残って、毎年元利償還をしなくてはならぬという産炭地市町村の苦しい立場に対して、この起債を免除するということは、私はちょっとこれはむずかしいだろうと思いますが、何か特別の措置がとられないのか、あるいは国が校舎を買い上げるという何か方法はないのか。あの繊維業だって過剰設備を買い上げるということはあるわけですから、炭鉱だって校舎だけ買い上げられないということもないと思う。自治省に御検討願っておりますから、まず自治省からお伺いして、あとで国務大臣からお答えを願いたいと思います。
  37. 山本成美

    ○山本説明員 いま御指摘のように、北海道あるいは九州の産炭地域におきまして、市町村ごとに見ますとでこぼこがございますけれども、相当児童生徒数が激減しておる実情が見られます。ただ、この現在の制度からまいりますと、建てました校舎の償却につきまして普通交付税の中で算定をされておるわけでありますが、これが御指摘の元利償還を見る問題とあるいは一体になって考えられるべきではないかという考え方もございます。しかし、現在すでに普通交付税の中での減価償却費を見ていく制度そのものについて、建設的な事業につきましていろいろ批判もございますし、いま御指摘のような学校の元利償還金が相当残っておる。しかも現段階で相当財政力が疲弊しておるといったような場合におきましてどうするかという問題が確かにあるわけでございまして、私どもとしては学校の施設あるいは土地を府県あるいは国で買い上げてどうするかという問題は非常に大きな問題でございますので、特に府県が買い上げる、財源補てんのために、特に元利償還費の捻出のために校舎なり土地を売るということにつきましては、これは制度として取り入れるということになりますと、その目的なりやり方なりということを義務づけなければならないという問題が大きく出てまいりますので、非常にむずかしい問題が出てまいります。ただ私どもとしては、一種の災害でもございますから、特別交付税をなるべく弾力的に運用いたしまして、当該市町村の財政上の圧力があまり大きくならないようにということで処理してまいりたい、かように思っておるわけでございます。  なお、くどくなりますけれども、公債費がいま北海道あるいは九州の地域市町村におきまして、でこぼこがございますが、大体一般財源に対しまして八〇%程度になっておる実情でございますけれども、特に産炭地市町村においてきわめて過重な実情にあるとは必ずしもまだ数字の上では出てまいりません。しかし加速度的にそういうふうな実情が深まってまいると思いますので、なお十分検討してまいりたい、かように考えております。
  38. 井手以誠

    井手委員 椎名さん、いまお聞きだったかどうか知りませんが、この閉山炭鉱の学校の問題、私なんか現地に参りましてももう生徒はいない、あき家同然です。その借金を払わなければならぬ。払うのに、交付税で若干見てくれるけれども、依然として産炭地市町村の重圧になっております。どうもいまお聞きしたところ、事務的ばかりでは解決できませんが、ひとつ善政のつもりで自治大臣とあなたと話し合いをされて、たくさん産炭地で問題があるけれども、その中で一番大きな問題、目立った問題は学校の起債の償還です。生徒がいないのに借金だけは払わなければならぬのですから、これは何か特別の措置ができないものか、買い上げにするかあるいは特交で二、三年間でやってしまうのか。何かひとつここであなたから——いままで私も抽象的な努力しますくらいの答弁で済ませておりますけれども、これはひとつはっきり、何とか解決しますくらいの色よい返事をいただきたいと思っておりますが、どうですか。国務大臣としてひとつ自治大臣と打ち合わせて。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 自治大臣くらいまでは何とかいきましても、最後には大蔵大臣、これがなかなか難物でございます。しかし、とにかくこれはいままで例のない問題だろうと思いますね。災害ならば例がありますが、災害以上の災害であります。だからこういうものに対してはやはり特別の考え方をすることが必要じゃないかと私は考えます。でありますから、私の出席した委員会においてこういう問題についても非常に熱心な議論があったということをよく伝えまして、関係方面に相当奮発して考えてもらうように私のほうからお願いしたいと思います。
  40. 井手以誠

    井手委員 椎名さん、いまのあなたの御答弁に私は非常に期待をいたしております。通産大臣として、その成否によって私は評価したい、失礼なことばですけれども、そう思っております。たぶん私ども期待にたがわないと私は思っております。ひとつこの通常国会中に、来月の半ばまでくらいにはあなたの朗報を期待いたしておりますから、あらためてお伺いすることにいたします。  次に具体的問題で特鉱水道、特別鉱害によって上水道をかけたところが、当時炭鉱側の古い材料で布設したものが多いものですから、もうほとんど改修の時期に入っております。漏水して困っております。閉山炭鉱の場合には、当委員会でいろいろ論議いたしました結果、百五十リットルに対してすでに国庫補助を行なっておる。六十リットルを差し引いた九十リットルについて閉山水道として取り扱ってくれました。この問題について、稼働中の炭鉱をどうしていただくのか。理屈からいけば臨時鉱害復旧事業でやれば簡単ですけれども、しかしその炭鉱はもう能力がほとんどないのです。この稼働炭鉱の特別鉱害水道を改修する場合に特別措置ができないかどうか。これは局長からでけっこうです。
  41. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 有資力の場合の鉱害水道についての御質問だと思いますが、これはもう当然のこととして、もしその老朽化によって十分な水道の機能を果たし得ないということであれば、鉱業権者が行なうべきものと考えております。
  42. 井手以誠

    井手委員 それだけの返事ならば簡単ですけれども、それができないところに悩みがあるわけです。特鉱水道の改修が炭鉱の地帯ではできないから、何か特別の措置がとれないかということをお伺いしておるわけです。できないのですか。
  43. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いまのところ私のほうでは確固たる御意見に対する具体的な案は持っておりませんが、実態をもう少し調査いたしまして、何か先生の御意見のようにうまい方法がないか検討をいたしたいと思います。
  44. 井手以誠

    井手委員 次に家屋の復旧について。軟弱地盤については、たとえば一メートル五十地盤をかさ上げした家屋等の復旧について、軟弱地盤であるがためにまた五十センチ、七十センチ上げなければならぬ地区がございます。これはまとまった地区がございます。そういう場合には再鉱害であるか、あるいは効用未回復という立場から臨時鉱害復旧処理できるかどうかお伺いしたいです。
  45. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 これはいま井出先生がおっしゃいましたように復旧後の問題でございますけれども、これが鉱害外の原因で沈下したのかあるいは復旧工事の不完全さによって起こったものであるか、これによって本来取り扱いが変わってくるべきものでございますが、なかなかその辺がどちらとも言いにくいところからただいまの御質問があったのじゃなかろうかと思うわけでございますが、そういうことでございますならば私どもとしては、復旧の不完全さによるものである限りにおきましては、何らかの施策を講じて効用回復をはかるべきものであると考えております。この場合復旧費の負担関係等むずかしい問題がございますけれども、具体的な案件に応じてどういう施策を講ずべきか具体的に個別に検討することとしたいと思います。
  46. 井手以誠

    井手委員 軟弱地盤の地下を採掘したために軟弱地盤が収縮した。復旧する場合にそれが収縮することを予想して設計するわけにはまいりません。したがって一メートル五十かさ上げしたものがさらに収縮してなお七十センチ程度上げねばなぬというものは、私は効用未回復であると思う。それは後段のお話実行できますか。
  47. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 具体的案件に応じまして解決方法はあり得ると思いますので、その努力をいたしたいと思います。
  48. 井手以誠

    井手委員 次に鉱害復旧の換地処分の問題ですが、換地処分には反当たり三千円ないし四千円の負担がかかります。この換地処分の費用が鉱害被害者にとっては大きな負担になっておりますが、原形復旧をたてまえとする鉱害復旧でございますから、原形復旧の費用の範囲内であるならば、換地処分の費用は復旧費の中に織り込んでも差しつかえないのじゃないか。事務的なことはまだいろいろあろうかと思いますが、方向としてはそうあるべきだと私は思いますが、農林省の見解を承りたい。
  49. 松井芳明

    ○松井説明員 ただいま先生指摘のように、原形復旧費の範囲内で処理できる場合には復旧費に含めて処理していきたいという考えで、なお細部の点につきましては今後さらに関係各省周で十分検討してまいりたいと思います。
  50. 井手以誠

    井手委員 炭鉱を買い上げる場合に、鉱区の分割については問題があります。しかし実態もありますから、私はあえてそのことは問いませんが、鉱区を分割して買い上げる場合の鉱害賠償の範囲はどうなっておりますか。その買い上げる鉱区の鉱害分については賠償義務があるというふうになるわけですか。その点を伺いたいと思います。
  51. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ただいまのは旧方式でございますか。
  52. 井手以誠

    井手委員 いや新方式ですよ。
  53. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 新方式でございますと閉山交付金が一般の場合出るわけでございます。これの二五%は当該消滅鉱区にかかる鉱害債務処理に充てられますので、その範囲において被害者の申し出に基づいて配分することとなるわけでございます。鉱区を分割して一方の鉱業権を消滅させた場合の残存鉱区の鉱害債務処理というものにこれを充当させるということにはならないわけでございます。
  54. 井手以誠

    井手委員 前段だけでけっこうでした。  鉱山保安局見えておりますね——お伺いいたしますが、椎名さん、最後にこれだけ聞いておいてください。  産炭地で一番困っておるのはボタであります。ボタがどこでも風化作用を起こして非常に困っております。いま離職者のほうも問題ですが、これはこういう労働力不足の時代ですから、困ったところもありますけれども、一時ほどではございませんが、ボタ山には手をやいております。そこで閉山にあたってはボタ山の処理を完了させるということを私は強く要望いたしますとともに、ここでお伺いしたいのは、ボタ山の防災工事に金がよけいかかるということがあってかどうか、ボタ山を売買するおそれが出てまいりました。その場合の法律上の責任はどうなるであろうか、ボタ山が崩壊した場合にだれが責任を持たねばならないか、そういった点について法律上の解釈を伺いたいと思います。
  55. 西家正起

    ○西家政府委員 ボタ山の崩壊防止につきましては、いろいろ具体的に先生の御指導を仰いでおりますが、及ばずながらわれわれ努力をしておるわけでございます。  ただいまの御質問でございますが、鉱業権が存在しておる場合には、これはたとえボタ山の売買が行なわれましても、ボタ山の移譲がございましても、鉱業権者にその管理責任はあるものでございます。鉱業権が消滅をいたしました後の問題でありますが、鉱業権が消滅いたしました場合でも、鉱山保安法の第二十六条によりまして、消滅後五カ年間は、その鉱害の原因となりました鉱業権者であった者に対しまして鉱山保安監督部長が必要な防災工事を命令することができるということになっておる次第でございます。なお鉱業権が消滅して五年以上たちました場合でございますが、この場合には鉱山保安法上の適用はないようでございまして、この場合にはわれわれといたしましては、できるだけ行政指導でそういう防災工事をやらせようということで現在やっておるわけであります。なお鉱業法上の賠償責任が五年を過ぎた場合でもあることは当然でございます。  それからなおボタ山の場合に有資力の場合と無資力の場合とがあるわけであります。有資力の場合にはそのようなことでやっておりますが、無資力の場合には、これはいずれにいたしましても現実にそういう工事はできないので、先生承知のとおり、地方公共団体に防災工事の補助金を出しましてこれで防災工事をやっておる、こういうことでございます。
  56. 井手以誠

    井手委員 いまの御説明で、防災工事を免れるために売買をしても鉱業権者責任がある、これはわかります。それから有資力の場合は、五年間はそのボタ山については賠償責任がある、これもわかる。しかし多くの場合、法人組織ですから会社が解散して消滅する、あとはどうなるかという問題です。問題はこれです。大体ボタ山の被害が激増してまいりますのは、いまは二十五度くらいの傾斜ですけれども、以前は三十五度、ひどいところは四十度近い山の中腹に三十度以上の傾斜でボタ山があるのです。それが七、八年たちますと風化作用によってぼろぼろとどんどん下にボタが落ちてくるのです。水田をおかし、家屋をおかして流れるのです。それが五年を過ぎた場合には、会社が解散してしまえばその責任者はなくなって、地元市町村国土保全のために責任を持たなければならぬことになるが、これをどうするのか。それは将来まで完全な防災工事はできませんが、私は、ここで大臣に特に御留意いただきたいことは、閉山にあたってボタ山の処理は完全に終了させるということが第一の問題であると思う。閉山交付金の中で、少なくともこれならば大体防災にはだいじょうぶであろうという工事を完了させるということが第一。そして多くのボタ山についての防災工事、危険ボタ山をどうするかという——ただいまボタ山の防災工事については無資力の場合はございますが、有資力の場合はございません。現に私ども地元でも困ったボタ山がございます。この有資力について全然国の助成がない。だから、炭鉱はやらない。洪水の前はたいへんなことになるのです。したがって、もう一ぺん繰り返して申し上げますと、閉山交付金を交付する場合に、ボタ山の防災工事は完了させるという強い行政指導をやってもらいたい。第二には、現在のボタ山について、五年を過ぎた場合はどうするかという行政上、法制上の対策を検討していただく。そしてさらに第三には、危険なボタ山についての防災主事をさらに拡大していただく。この三つが私は非常に大事だと思うのですが、これに対して特段の努力をなさる御用意があるかどうか、大臣にお伺いいたしたい。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 閉山の際にできるだけ五年以内に完了させるように努力いたします。それからその後の問題については、十分に防災工事がなし得るような検討を今後やっていきたいと思います。
  58. 井手以誠

    井手委員 あとで何しては困りますから申し上げますが、その防災工事について、一応国土保全、民生の安定のためにはこの程度でよかろうというボタ山の防災工事は、必ず閉山交付金の中で処理させるという原則を立てることです。それは五年の問題とは違うのです。これははっきりしてもらわなければ困る。これが第一点。それから第二に、会社が解散して、災害が起こった場合の責任者がなくなる場合には、市町村にまかせていいかという問題がございます。それといま一つは、現在の危険なボタ山をどういうふうに処理するかというこの二つの問題は、行政指導にもなろうかと思います。あるいは立法上の措置が必要であるかもしれませんが、この点については十分検討するという御返事があればけっこうです。
  59. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 閉山時のボタ山の処理について私から御答弁いたします。  これは閉山という事態でございますので、あとをきれいにするという趣旨からいって、先生の御意見はそのとおりでございますので、これは努力させたいと思います。  そこで問題は、いまの交付金の制度の中では、特にそのことを意識した形になっておりませんので、先ほど御答弁いたしました二五%の鉱害債務の中で具体的に処理するということが一つでございます。それから倒産的な形で閉山をしておるという場合には、やはり最後の終戦処理として金融機関等の援助も受けながら、なるべくこれはあと始末をきれいにするという意味での努力はいたしたいと思っておりますが、個別のケースについては、少し具体的に検討させていただきたいと思っております。
  60. 井手以誠

    井手委員 もうこれで終わりですが、記録になるといけませんので、一言申し上げますが、ボタ山については鉱害債務の二五%の分ではないんですからね。これは会社保有の分から本来出すべきである。有資力の炭鉱はどこから出そうと、閉山処理と同時に解決するということですからね。これは御返事は要りません。大臣から、ボタ山については、今後地元に迷惑のかからないように努力をしますという一言だけ聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ボタ山の処理については、御指摘のとおりどうも法制上もまだそう完備しておらない、しかし実際問題として近所に非常な迷惑をかけておりますので、かようなことのないように極力努力してまいりたいと思います。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと一言だけ。先般、私が評議員会の性格について質問をいたしましたが、この評議員会というのは、現行法でありますと、これは決議機関でありますが、今度通産省では、諮問機関だとおっしゃっている。ところが条文では、一項は「復旧基本計画の作成及び変更は、評議員会の議を経なければならない。」とあります。そして二項では「理事長の諮問に応じ、鉱害復旧に関する重要事項を調査審議する。」とある。そこで、なぜ現行法から変わったのか。この条文から受けることは、やはり一項では決議機関になるのではないか。というのは、現行法が同じ条文をもって決議機関としている。すなわち臨時石炭鉱害復旧法の二十三条に「左の事項は、評議員会の議決を経なければならない。」としていろいろ書いてありますが、その中で「復旧基本計画の作成及び変更」とうたつている。同じ条文の中で、その一方は決議機関になり、一方は諮問機関になるというのは、一体どういうことであるか、これをひとつ述べていただきたいと思います。
  63. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 多賀谷委員指摘のとおり、前の鉱害防止事業団、これはもともとの性格当事者によってつくられた機関でございまして、評議員会が決議機関であることについては一つも疑いはございません。これは何も復旧基本計画に関することだけでなくて、防止事業団の運営一切についての決議機関でございます。しかし今回は基金を含めまして、国の機関としての、政府機関としての性格変更をいたしたわけでございますので、評議員会は、その趣旨からいいますと、当然に諮問機関に相なるわけでございます。ただ復旧基本計画の作成及び変更につきましては、特に評議員の意見というものを十分に反映させる必要がございますので、「復旧基本計画の作成及び変更は、評議員会の議を経なければならない。」と定めたわけでございます。また二項において「評議員会は、前項に定めるもののほか、理事長の諮問に応じ、鉱害復旧に関する重要事項を調査審議する。」ということで、前項を含めこの機関の調査審議機関であるということを明らかにしたわけでございます。これらの表現は、ほかの機関におきましても同様な表現をとっているケースが多うございまして、一項と二項との関係におきましても、いま私が述べましたような解釈は統一的に行なわれておるわけでございます。
  64. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も、たとえば高圧ガス取締法等の条文を十分承知しております。しかし、同じ政府の中で、一方のほうは決議機関であると呼んでおる。一方のほうはいや諮問機関だと呼んでおる。これはきわめて不統一もはなはだしい。そこで私は、この点は、約束通り本日上げることになっておりますから、一応質問を留保して、理事会どおり議事の進行に協力いたしたいと思いますけれども、別の機会にさらに質問をさしていただきたい、かように思います。     —————————————
  65. 堂森芳夫

    堂森委員長 本法律案に対しまして、田中六助君外八名より修正案が提出されております。
  66. 堂森芳夫

    堂森委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。田中六助君。
  67. 田中六助

    ○田中(六)委員 ただいま議題となりました石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨の御説明を申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただきます。  要旨を申し上げます。  今回の改正案により創設される石炭鉱害事業団の役員の中に専務理事を一名置くことになっておりますが、本修正案は、これを副理事長に改めるということであります。  簡単に理由を申し上げます。  当該事業団は本部を東京に置くことになっておりますが、御承知のとおり、鉱害の大部分は北九州に発生いたしておりますのが現状であります。かかる実態に照らし、当該事業団の業務を円滑に推進するため、理事長と同等に近い責任者を九州に置くことが強く要望されますので、専務理事を副理事長に改め、北九州の鉱害に対する実務を行ないやすくせしめようというのが、本修正案を提出した理由であります。  何とぞよろしく御賛同をお願いいたします。
  68. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  ほかに御質疑もないようでありますので、本案並びに修正案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  69. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、田中六助君外八名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  70. 堂森芳夫

    堂森委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  71. 堂森芳夫

    堂森委員長 起立総員。よって、本案は修正議決いたしました。
  72. 堂森芳夫

    堂森委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の各派共同提案にかかる多賀谷真稔君外八名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者の趣旨説明を求めます。多賀谷真稔君。
  73. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ただいま提案されました四党共同提案にかかる附帯決議案の趣旨の御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   現在、石炭鉱害の問題は、終閉山にともなう無資力鉱害の激増、膨大な鉱害量の残存等によりますます深刻化している実情である。よつて政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一、鉱害復旧計画促進を図るため、鉱害量を適確に把握するとともに、早急に長期計画策定し、その鉱害処理については石炭鉱業審議会答申にそつてその実現に努力すること。  二、鉱害の総合的かつ急速な復旧並びに金銭賠償の円滑化を図るため強力な統一賠償機関を設けること。  三、鉱害紛争裁定については、制度創設の趣旨にかんがみ現実の事態に十分対応しうるよう運用すること。  四、鉱害復旧評議員会の運営については、その性格上、鉱害被害者意見が十分反映されるよう配慮すること。  五、鉱害復旧に関し地方公共団体負担軽減をはかるとともに上水道の国庫補助率及び賠償義務者が納付する賦課金について十分検討すること。  六、すでに、処理された鉱害地区の現状にかんがみ、必要に応じその再復旧等について検討すること。  七、石炭鉱害事業団の発足に当たつては、職員の身分、労働条件等に不利益を生じないよう十分な対策を講ずること。  以上でありますが、若干問題点について御説明申し上げたいと思います。  まず第一の、長期計画策定でございますけれども、すでに石炭鉱業審議会において答申がなされておるにもかかわらず、いまだその策定ができておりません。これについては早急に策定をし、さらに石炭鉱業審議会は、安定鉱害については昭和四十六年度までにおおむね完了する旨をうたっておるのでありますが、これについてもその実現方に努力をしていただきたいと思います。  次に、鉱害復旧並びに金銭賠償の統一的賠償機関の問題でありますが、御存じのように、今日無資力及び有資力炭鉱の問題、さらに閉山炭鉱あるいは操業炭鉱等の問題、おのおのアンバランスになっております。でありますから、これについては、有資力について納付金を納付せしめて、そうして統一的な賠償機関によって迅速に処理をすべきである、かように考え、すでに本委員会において二度にわたって決議をしておるわけでありますから、この点政府においては十分対処していただきたいと思います。  次に、裁定制度でございますが、これは法文上は一定の限定がございますけれども、現実の処理にあたりましては、実際の紛争解決できるよう運用していただきたいと思います。  次に、復旧評議員会の運営につきましては、従来決議機関でありまして、今度機構の改革によって諮問委員会になるわけでありますが、その鉱害性格上、被害者の声が十分反映するよう運営を配慮していただきたい。  第五点は、鉱害に関する地方公共団体負担が無資力鉱害が漸次増大するに従いまして急増しているわけでありまして、この負担軽減の問題、さらに特鉱水道等の問題、さらに賠償義務者の納付する賦課金等の問題・これらはみな鉱害の激増とともに非常な負担過重になっておりますから、十分検討していただきたいと思います。  さらに再復旧の問題でございますが、復旧をいたしました当時と現状とでは、かなりいろいろな問題ができております。あるいは地盤がゆるんできたために再被害が起こるという場合もありましようし、さらに、従来は脱水陥落が主としてあった。終閉山とともにむしろ湿地帯になる、こういうような大きな変化もあるわけであります九ら、再復旧の問題については十分制度的に検討していただきたい。  最後に、従来の鉱害復旧事業団が、このたびは統一的な石炭鉱害事業団になるわけでありますから、職員の身分、労働条件についても遺憾のないように考慮していただきたいと思います。  以上で趣旨説明を終わります。よろしく御賛同をお願いいたします。
  74. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて提出者の趣旨説明は終わりました。  これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  75. 堂森芳夫

    堂森委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を承ることといたします。椎名通商産業大臣
  76. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その内容を尊重いたしまして、御趣旨を体して善処いたしたいと思います。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。〔報告書は附録に掲載〕
  79. 堂森芳夫

    堂森委員長 次回は来たる五月九日木曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時七分散会