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1968-04-18 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十八日(木曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 神田  博君 理事 多賀谷真稔君    理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    佐々木秀世君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       西岡 武夫君    井手 以誠君       石野 久男君    中村 重光君       田畑 金光君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君  委員外出席者         内閣法制局第四         部参事官    小松 国男君         農林省農地局建         設部災害復旧課         長       松井 芳明君         通商産業省石炭         局炭政課長   村松  寿君         通商産業省石炭         局計画課長   佐藤淳一郎君         通商産業省石炭         局調整課長   織田 季明君         通商産業省石炭         局産炭地域振興         課長      真野  温君         通商産業省石炭         局鉱害課長   藤谷 興二君         建設省住宅局市         街地建築課長  上野  洋君         自治省財政局地         方債課長    山本 成美君         自治省財政局指         導課長     亀谷 礼次君         参  考  人         (鉱害基金理事         長)      天日 光一君         参  考  人         (産炭地域振興         事業団理事)  堀坂政太郎君     ――――――――――――― 四月十八日  委員八木昇辞任につき、その補欠として井手  以誠君議長指名委員に選任された。 同日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として八  木昇君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第九八号)      ――――◇―――――
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱害賠償担保等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  なお、本日は、本案審査のため、参考人として、鉱害基金理事長天日光一君、産炭地域振興事業団理事堀坂政太郎君の両君が御出席になっております。  質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 昨日鉱害紛争裁定問題について質問を若干続けておりましたところ、定足数不足で散会になりましたので、続けて質問をいたしたいと思います。  いやしくも、国が鉱業法の一部改正として、いわば鉱業基本法ともいうべき法律の中で、鉱害紛争についての裁定制度を明確にした。しかるに、その後今度出ましたところの法案によりますと、それをきわめて限定をしておるということはどうも私はふに落ちない点がある、こういうふうに解せざるを得ないのです。しかもこの鉱業法審査というのは、鉱業法改正審議会まで設けて数年にわたってこの審査を続けてきた。そうして裁定制度というのを打ち出して、いわば迅速に処理をするために、紛争の円満なる解決をはかるために法律として数度にわたって国会に提出した。なるほどその法律は成立いたしませんでしたけれども、いたさなかったのは別の、いわば地上物件地下資源との競合の問題で議会においていろいろ意見があって成立しなかったのですが、裁定問題については何ら異議がなかった。それをわずかの期間を経て今度は別の法律で出された場合に制限をするということはきわめて穏当を欠くのではないか、こういうように考えるのですが、これは一体どういうように判断をされるか、もう一度御答弁をお願いいたしたい。
  4. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 鉱業法改正にあたりましての紛争解決のための裁定条項につきましての経緯は、ただいま多賀谷先生がおっしゃったとおりでありますが、新たな時点で私どもが今回の改正案裁定条項を起こす場合の政府部内の協議といたしまして、関係の向きといろいろディスカスをし相談をしたわけでございます。本来鉱害紛争のような私法的な当事者間の紛争解決司法機関である裁判所にゆだねられるべきものであるという本筋はやはり変わらない。したがって、行政機関裁定による紛争解決というものは、公共的な政策遂行上特に簡易迅速に解決しなければならないものである場合に限って限定的に認められるべきものであるという了解に相なったわけでございます。今回の裁定制度もこのような見地から、裁定の対象となるべき鉱害紛争を総合的、計画的な鉱害復旧促進見地から、通商産業大臣が指定した地域内に生じている紛争等に限って設けるということにしたのはその次第でございます。ただし、この場合の地域の指定は鉱害問題が地域的に深刻なものとなっており、早急に復旧基本計画を作成して復旧しなければならない地域に限られますが、具体的には従来鉱害復旧事業団を設立するものとして指定されていた地域、これを指定することに相なろうと考えておりますので、実体的には必要な紛争解決手段としての裁定には実害はない、かように私ども判断をいたしたわけでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業法の場合の紛争解決というのは石炭だけではないでしょう。
  6. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 そのとおりでございます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかもこの紛争というのは、本法が書いておりますような制限も何もない。要するに賠償制度というようなものは裁判に不適当だといえば問題はありますけれども、迅速に処理をしなければならぬという面から見ると非常に不適当だ。ですから、ある中間的な審査会を設けて行政的にピリオドを打とう、こういう制度じゃないかと思う。でありますから、その制度に非常な条件をつけるというのはきわめておかしいことじゃないか、こういうように私は思うわけです。これはやはり同じ内閣が出した法案です。佐藤内閣でなかったですか、池田内閣だったか、何にしても自民党内閣であることは間違いないので、わずか一、二年のうちに方針が変わる、ことに裁定制度というようなものの方針が変わるというのは、何も鉱害紛争だけの問題にとどまらないと思うのです。ですから私は、少なくとも法制局を呼んでいただいて、一体どういう方針法律を出すのか、これをひとつぜひお尋ねしたい。ですから委員長におかれては、法制局長官をひとつ呼んでもらいたい。
  8. 堂森芳夫

    堂森委員長 多賀谷委員の申し出をそのように実行いたします。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 続いて質問をいたしますが、条文の解釈はあと回しにいたしまして、昭和四十一年度石炭鉱業審議会答申を出しておる。その中で、鉱害につきましては、「昭和四十二年度から昭和四十六年度までの五ケ年間を計画期間とする鉱害復旧長期計画を策定し、おおむね、この期間内に、不安定鉱害の安定をまって処理すべき一部の有資力安定鉱害を除き、その他の安定鉱害処理を完了する。」こういうことを答申しておるわけです。この答申に対しては、政府責任を持って実行すると言っておるわけですけれども現実そのような方向にいっておるかどうか、これをお面か願いたい。
  10. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 鉱害復旧に関しましては、石炭鉱業審議会答申、ただいま多賀谷先生述べられたとおりでございまして、私どもとしましてもこの趣旨に基づきまして鋭意努力をいたしておるのでございます。かつまた、予算的に見ましても毎年相当量の増額をして企業規模の拡大をいたしておるわけでございますが、五年間に完全に答申どおりのことを実施し得るかどうか、目下この長期計画の策定について検討をいたしておるわけでございますが、率直に申しまして残存鉱害量大づかみにつかんだ状況考えましても、この期間に完全に答申どおり処理をなし得るかどうかというところには若干の問題があろうというふうに考えております。もともと法律そのものが時限的な定めに相なっておりますので、いまの法律考えます限りこの期限内に完了いたしたいという努力はいたしておりますが、率直に見通しを申しますと若干のものが残るという感じがいたすわけでございます。そうなりますと、形式的にと申しますか、論理的に申しますと、その期間内に完全にやるようにするか、あるいはその時点で若干の延長を考えるかということにならざるを得ないわけでございますが、私どもは、趣旨の実現に対しましてせっかく努力をした上で、その時点であらためて考えたいと思っておるわけでございます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その計画書はもうすでに出きておるわけでしょう。
  12. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 内部的にはかなりの準備をいたしておりますけれども、まだ計画として公表し得る段階までのものはできておりません。検討中であると申し上げるよりほかないかと思います。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 四十二年度から始まる復旧計画が、四十三年度に入ってまだできないというのはおかしいじゃないですか、五カ年計画の第二年目にもまだできないというのは。これは四十一年の答申ですよ。四十一年の答申ですから、四十二年度、初年度計画書ができていなくてはおかしいですよ。
  14. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、この期間内に完了しなければならない筋合い法律定めになっておりますので、そこに若干の危惧がございますために、形式的に――われわれの腹づもりは持っておりますけれども計画として外に出せないという状況があることをひとつ御理解いただきたいと思います。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 全く、お役所仕事とはこのことですね。法律時限立法になっておるから、その範囲内でやらなければならぬから四十六年度にしたんだ、こうおっしゃるのですが、必ずしも経過はそうでないのです。安定鉱害については四十六年度までにやりますということを、再三再四にわたってこの委員会で答弁しておるのです。そういうことでこの答申が出た。ですから、いま法律お話をされますけれども、できないと思うなら、やはり審議会において答申が出た時点法律を延長すべきですよ。法律が五年間であるからといって、できもしない答申を書くなんて全く不見識ですね。ですから、そういう点が、役所というのはまるきり責任者のないような話。局長もかわっておるわけですからね。何ともぼくは言いにくいのだけれども、この答申というのは、役所が――こんなことは審議会先生なんかあんまり知らないでしょう。これは役所が書いた作文ですよ、ほんと言うと、内容的に言うと。ですから、審議会先生が論議された部分と、役所の書いた作文部分はもうはっきりわかっておる。役所がこういうことを書いておって、そして、二年目になってもまだ計画書ができないなんという、こういう権威のない行き方というものは間違いじゃないか、私はこういうように思うのです。法律が五年になっているから鉱害が五年で復旧されるなんて考えていませんよ。また、できない、現実問題として。それなら、法律を長期的に延ばせばいい。こんな五年、五年で区切るような法律にしなければいい。ですから、臨時期間であるということに対して、復旧事業団につとめられておる従業員の方も、やはり臨時的なという観念がある。それは払拭できない。気持ちでは、長く続くだろう、鉱害は少なくとも十年以上はあるだろう、こういうことを考えておるけれども法律は五年という。こういうお役所仕事というのは、あらゆる点においてきわめて不都合なことが起こるんじゃないか、こういうように私は思うわけです。そこで、まだ公表はしていないけれども内部的に案があったらお示し願いたい。
  16. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ただいま先生からおしかりを受けたような議論は、実は過般石炭鉱業審議会鉱害部会を開きましたときにも、坂田委員その他から同様な意見がございまして、率直に申しまして、私も若干窮地に立ったわけでございますが、ざっくばらんに申し上げまして、いま私ども把握しておる残存鉱害量というものも、なお精査いたしますとふえる可能性がございますし、それから毎年の復旧規模につきましては、あるいはこれも役所的だというおしかりを受けるかもしれませんけれども、毎年度の予算で大蔵省と話をきめていかなければならない筋合いのものでございます。私は鉱害部会におきましても、率直に言って少しラフな計算ではありますけれども、これくらいの残存鉱害量判断して、これくらいのテンポで一応やっていくということをいたしました場合には、大ざっぱに言ってこの期間の外にはみ出す量としてまだこれくらいのものがあるのではなかろうかという趣旨のことを、若干大づかみ数字ではございますけれども、申し上げて御了解を得たような経緯があるのでございます。したがって、そういう意味での試算というような形のものでございましたならば、先生にも率直なペースで申し上げてもよろしいかと思いますが、鉱害課長は、いまのところ計画を出すということは非常に苦しいということを申しておりますので、御了解を願いたいと思います。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、試算でもけっこうですよ。
  18. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いま申しました趣旨のことでのラフな試算でございますれば、鉱害課長から説明させます。
  19. 藤谷興二

    藤谷説明員 それでは、ただいまの御質問につきまして申し上げます。  御承知のように全国鉱害量調査、先般行ないました調査は、三十九年度末現在として調査しておる次第でございます。したがいまして、三十九年度価格として表示されております。ですから、その後年々物価上昇がございますので、鉱害復旧事業費そのもの物価上昇を加味しなければなりません。その後現在まで足かけ四年あるわけでございますから、その間に鉱害復旧が行なわれておりますので、その復旧事業量を引きまして、それから……。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっと数字をおっしゃってください。
  21. 藤谷興二

    藤谷説明員 そうしますと、四十二年度末現在で残存鉱害が約四百億という数字になると思います。これは三十九年度価格でございます。御承知のように四十三年度は九十五億の復旧でございますけれども、これをデフレートいたしまして計算いたしますと、三百六十九億という残存鉱害ということになります。その間の復旧事業量がデフレートしておりますから、これは仮定でございますけれども――年率九%でデフレートしておりますので、四十二年度は六十億、それから四十三年度は六十八億。あとは大体一割見当をオンしていけばよろしいのではないかと思うのでございますけれども、そういうことで考えますと、四十六年にも約百億程度の数字が残るという計算になりますが、これはただいま局長お話のように、その後鉱害がふえていく面もありますので、かなり不正確なものになると思います。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、三十九年度に安定をした鉱害調査量ですね、これは六百七十二億。これは物価上昇を加味しての話ですか。
  23. 藤谷興二

    藤谷説明員 いま申し上げました数字は、いずれも三十九年度価格に戻しているわけでございますので、物価上昇を加味しておりません。逆に言えば、その後復旧が、たとえば本年度でございますと七十七億鉱害復旧が行なわれたわけでございますけれども、その七十七億を六十億とデフレートしているわけであります。そういうことで差し引き計算した結果でございます。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 むしろ物価上昇を三十九年度に直した額の事業量として計算をして四十六年度には約百億残るという話ですが、むしろ鉱害というのは現実問題として相当直しても金額は減らないというのが実態ですね。これは現実鉱害地におられる方はわかるわけですが、確かに復旧はかなり行なわれているように感ずるけれども、しかし、金額的に見るとあまり金額は下がっていないというのが実態である。それから大正炭鉱は当時三十九年度にどのくらい算定したかわかりませんか、おそらく十億代くらいだったかと思いますけれども現実閉山をしてみると、三十数億だというような数字が出てきておる。これはどこの炭鉱でもあに大正だけではないだろう、こういうように考えるわけです。そこで私はやはり長期計画というものを率直に出して、そして堅実にやはり一つ一つ復旧計画を立てていく必要があるのではないか、こういうように感ずるわけです。大臣見えておられませんが、この点はひとつ大臣にただしたいと思うのですけれどもあとから大臣質問しますが、局長どういうようにお考えですか。
  25. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 先生おっしゃいましたように、確かに私ども感じからいたしましても、たとえば四十二年度でも四十三年度におきましても、石炭特別会計の中では鉱害復旧関係の経費につきましては重点的な配慮をいたしておるつもりでございます。したがって、復旧事業そのものはかなり進んでおるというふうに御評価願えるのではないかと思っておりますが、にもかかわらず、いま多賀谷先生おっしゃいましたように、やはり大きいものが残っておるという感じ、消されたものがかなり大きいにもかかわらず残っているものが大きいという感じはぬぐい去れないところがあろうかと思うわけでございます。これはもういま大正鉱業の例でお話しになりましたように、やはり実際の鉱害量というものの把握に問題があるわけでございまして、私のほうではいま復旧事業団基本調査費を投入いたしまして鋭意残存鉱害量についての把握につとめておるわけでございまして、これが若干不確かでございますと、その上に立つ計画というものを整斉とかつ積極的にやっていくという先生の御趣旨から見まして問題が残ることに相なると思います。いまの基本調査は大体二年でかなりの精度のところで結論が出るのではないかと思っておりますので、その段階法律のいまの期限問題それから計画の問題というものを基本的に御趣旨のとおりに考え直してみたいと思っておるわけであります。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 本院においても二度にわたって決議をされているのですが、要するに統一賠償制度ですね、有資力、無資力あるいは金銭賠償復旧そういうのを含めて統一賠償制度をつくったらどうかということは、本院で二度にわたって決議をされておるところです。一体これについてどういうようにお考えであるか、また、私たちは国有化法案を出しており、公社経営するということになっておりますけれども既往閉山炭鉱等考えると賠償制度というのは、公社のもとにおいてやはり統一的に行なう必要があるのではないかと考えておる。公社賠償制度というのを全部かぶるのではなくて、賠償はやはり公社納付金を出して、そうして過去の閉山をした炭鉱あるいは無資力炭鉱、こういうものを含めて賠償制度というものは、公社にしてもやはり独立さす必要があるのではないか、こういう考え方をわれわれ寄り寄り協議をしておるわけであります。これは施行法においてわれわれは出したいと思っておるわけでありますけれども、ましてやいろいろな企業が存続をするという状態、たとえ一社になっても、三社になっても、これはやはり統一賠償制度というものは必要ではないかと思うのであります。ですから、そういう企業形態議論の中に入らないで、やはり賠償制度というものは一本にしてやらないと、新しくできたどういう形の会社にしても、これは相当足を引っぱる問題となる。そこで私は統一賠償制度というものについてどういうようにお考えであるか、もう少し高い角度から一つ一つ解決する必要があるのではないか、こういうように思うのですがいかがですか。
  27. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 確かに今回石炭鉱業安定策考えていく上で、経営体制上のいろいろな施策が行なわれているわけでございますので、そういうものとの関連において鉱害をどう考えていくかという問題は、これは社会党案であれ、植村案であれあろうと思います。植村案の場合、いまの鉱害法理で申しますと、第一会社も第二会社も共通に鉱業権者としての鉱害債務を連帯して負わなければならぬというような形になるわけでございまして、石炭産業というものを安定さすという趣旨での案を考えていきました場合に、新しい機関鉱害債務の負担を負いながら安定的な経営を続け得るかどうかという点には、先生指摘のように、いろいろ問題がありまして、なろうことならば、鉱害問題というものをもう少し実際的に考えられないかという感じは私ども持っております。しかし、そもそも論に立ち戻ってみますというと、鉱害債務鉱業権者が自分の責任において解決すべきものであるという法理は、これは動かし得ないのでございまして、それが石炭産業経営的な実態から申しまして、どんどん国の援助に待つ分野がふえてきておる、こういう状況でございます。その辺の基本的な法理実態論とのかみ合わせというものがなかなかむずかしい問題でございます。御意見のようなことは私どもも有力な細意見として十分考えなければならぬものを含んでおると理解はいたしておりますものの、基本法理との関連において、なかなかむずかしいものを持っておりますので、今後の検討事項として検討いたしたいと思っておるのでございます。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は基本法はやはり鉱業法に基づいて鉱業権者が持つということでいいと思います。私が言っているのは、いわば労災制度のようなものの考え方をしたらどうかということであります。いま労働災害基準法上、当然使用主責任を持つたてまえになっておる。しかし、労災制度というものが横にあるわけでしょう。ですから私は鉱業法を、基本法を変えろと言っているのではない。ましてや、いまから鉱害がどんどん起こる。企業責任の追及が起こる。ですから法理論としては、鉱業権者が持つというのは当然ですけれども、さらに、それをカバーする制度をつくる必要があるのではないか、こういうことを言っておるわけです。そうしないと、非常な不合理がいまから出てくる。植村案にしても何にいたしましても、とにかく財産を別会社にしさえすれば、残った無資力になったものは政府が見てくれるという制度になるわけです。ですから、要はその本体会社からどんどん子会社をつくって別会社にして、そして本体親会社をつぶせばもう無資力鉱害ということになる。これは私は今後植村案が推進される場合に幾らでも出てくると思う。そうすると一体どういうようになるのか。鉱業権の移譲があるから連帯債務だ、こういう可能性もある。そこで連帯債務ということになれば新しい鉱業権者が持つ。ところが鉱業権のいかないものがあるのです。すでに終閉山をして、そして合理化事業団鉱業権譲渡しないで消滅をしている、これが筑豊にはほとんどです。いま筑豊炭田を見ると、鉱害の大部分は稼行している鉱業権を所有している炭鉱鉱害ではないのです。すでに終閉山をしている炭鉱なんです。でありますから鉱業権譲渡はない、鉱業権譲渡がなければ、結局親会社が破産をすれば、これはもうみな無資力になる。ですから若干の財産があればそれは分離すればいいわけです。ですからそこに私は非常な不公平な政治が行なわれ行政が行なわれると思う。このことはやはり考えておかないと、植村構想、何をするにしても、いろいろな政策をするにしても問題がある。要するにいま稼行している炭鉱鉱害、稼行している鉱業権に基づく鉱害よりも、すでに終閉山になった炭鉱鉱害量のほうが大きいということです。それは消滅をしておりますから結局合理化事業団責任でもない。ということになれば、みな無資力鉱害ということになる。ですからこれは好むと好まざるとにかかわらず統一賠償制度というものをつくらないと非常な不公平な施策を行なうことになる。非常な不公平な行政になる。でありますから、私はもうすでにそのことを十分に用意をする必要があるのではないか、こういうように思うわけです。
  29. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、今度何がしかの石炭産業についての新しい政策考えました場合に、その政策との関連において鉱害問題を十分に検討しなければいかぬという気持ちは、私は先生おっしゃるとおりだと思います。これは私どもも今回の諮問を予定いたしておりますけれども、諮問の際に鉱害問題の解決というものを捨てて安定策だけを考えるというわけにはいかぬものだというふうに理解しておりまして、御意見をひとつ貴重な御意見として参考にいたしまして今後検討を加えたいと思います。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 労働者の退職金等は、要するにどういう形態になろうと新しい会社に移行するという話ですが、鉱害も、鉱業権はなくなっても石炭鉱業を営んだことによって起こった一つの債務ですね。でありますからこれも一緒に移すつもりですか。一緒に移せばまたその議論は新しい会社の問題として起こるのですがね。どういう考え方ですか。
  31. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いまの点は問題点としては意識しておりますけれども、まだ私どもはその解釈なり対策なりというものをこれから審議会の審議の間に並行して勉強したいと思っておりますので、確定的な御答弁をいたしかねるのでございますが、ざっとした気持ちでは、やはり先ほど申しましたように植村案であれ何であれ、多賀谷先生のほうが十分この鉱害問題は御勉強になっていらっしゃるようでございますけれども鉱害問題があるなという意識はございますけれども、これについて十分な見きわめはまだいたしていない状況でございます。私ども通俗的な理解としては、会社形態がどうであれ、鉱業権の移転がある限りにおいて、いまの法律関係の理解からいけば連帯債務になるというのではなかろうか。そうなると新しい機関鉱害債務を背負ったままで安定的な経営をやっていくということはどうも相当な桎梏になる。これはひとつ何か考えなければいかぬという状況でありまして、勉強をこれから開始しようと思っているところでございます。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 役所はきわめて近視眼的なすぐ手を打つ。鉱害を持ちたくなければ日本の鉱業権を全部消滅させる、そして新しく設定すればいいのですよ。それを、鉱害は新しい会社にいかないのですよ。そういうことを現実合理化事業団のときはやったわけです。鉱害が移るのをこわがって新方式と称して消滅させた。ですから役人は幾らでも次から次へ知恵が出る。それを長期的に見るとひとつもプラスになっていない。結論からいえばむしろ鉱害を増加しただけです。ですからやはりそのことは早く考えておかないと、一千億以上の鉱害があるのですよ。二千三百億の債務、債務といっているけれども、なるほど銀行の残高は二千三百億のうち一千億は政府がすでに肩がわりをする約束をしているけれどもあとの千三百億に匹敵するぐらいの鉱害があると見なければならないから、鉱害問題を考えないで石炭政策の再建というものは不可能である。頭のすみのどこかにあるということでは、局長、この大問題を解決するわけにはいきませんよ。
  33. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 どうも頭のすみにあるという程度ではございませんで、実は非常に大きな問題としてあるという意識は持っておりますが、先ほど率直にお答えしましたように、どう考えたらいいかというものを持っておりませんために、はなはだお気に召さぬお答えをしているわけでございます。ウエートとしては非常に高いということは先生おっしゃるとおりでございます。
  34. 井手以誠

    井手委員 関連して。  ただいま非常に重要な問題を提起されております。私もお伺いしたがったのでありますから、この機会に統一賠償機関についての問題をさらに詰めてみたいと思っております。この前の答申にも書いてある。私のほうからお尋ねするまでもなくあなたのほうから検討の結果こうなるという説明があるのが私は順序であると思います。  答申によりますと、「鉱害処理を総合的に行なう機構を整備し、有資力賠償義務者に処理事業量に応じ一定限度の金額を納付させる等の制度についても検討する必要がある。」それはそういった意味が含まれております。  また、去る本特別委員会決議もあることは多賀谷委員、御指摘のとおりです。私は本来なら鉱害問題を通産省が取り扱うことに疑義を持っております。通商産業という企業の保護をやり、貿易の振興をはかる通産省が鉱害被害者の立場を守っていこうという、そこに私は矛盾があると思う。どうしても行政を行なう場合には生産に重点がいく。いまの中川局長の答弁のことばじりは私は問題にいたしませんけれども、やはり何としても最後の段階になりますと、国会の答弁はいかようであれ、生産に重点がいくことはこれは争えない事実です。通産省に公害部が設けられましたが、これも私はむしろ別の意味に解釈をいたしております。言いかえるならば、通産省に公害部を置くことは、検事が裁判官を兼ねたり、場合によっては弁護人も引き受けるという、そういう三者の利益を代表するような器用なことはできないはずです。私はこのことは別の機会に行政機構としてひとつ取り上げたいと考えておる。本来なら土地調整委員会のごとき機関が扱うことが私は正しいと思っております。しかしきょうはそのことは本旨ではありませんので、本論に帰りますが、この鉱害問題については、申し上げるまでもなく、民法による当事者主義、これは当然です。しかし当時者にまかせておっては、国土保全、民生の安定に重大な支障がありということから、鉱害に国が介入することになったことは御承知のとおり。最近では、農地、農業用施設等については八割五分を国が負担をしておる。その一事によって、私はいかに社会的重要性があるかということが明らかであると考えるのであります。しかも多賀谷さん御指摘のように、炭鉱が、結論はでなくても、一元化されようとするときに、炭鉱経営形態が一変しようとするときに、この鉱害賠償についてもやはり考え方を一変させねばならぬことは、私は当然の成り行きであると考える。今回の諮問にわたっても私は当然並行して行なわれねばならぬ問題であると思う。私はあわせてお伺いしたいのですが、多賀谷さんからも御指摘があったように、終閉山、しかし買いあげにならない炭鉱があるために、同じ鉱害被害者でありながら、一方は若干の金銭賠償も受けられる、鉱害復旧もできる。ところが隣接した別の炭鉱の被害者には一銭の鉱害賠償も行なわれておらない。私の近所にもたくさんあります。国が国土保全、民生安定のためにこれだけの金を出しておるのに、こういう差別があってはならないはずです。買い上げがあったから鉱害賠償がある程度できる、一方は全然できない。特に個人経営炭鉱です。私のほうの多久市でも幾つもあります。聞いております。二、三日前もたくさん見えて訴えられました。これは今回のこの改正案の中にも関連いたしますが、不服の訴えという問題があるのです。それは救済の道を開かなければならぬことはわかります。けれども、この不服の訴えに対して、これはあとでお伺いしますが、不服の訴えの場合には、やはり一つの期限というものが必要であろう。いまひとつ大事なことは、国がこの当事者主義に介入するという国土保全、民生安定の立場から申しますならば、農業用施設などの八割五分の国の負担に対して、その範囲内だけはやはり国が鉱害賠償責任を持っていいんじゃないか。賠償義務者の分は訴えの結果に待たねばならぬ。けれども、いやしくも行政機関裁定を下したものに対しては、その国の負担分については国が賠償の責めに即時に当たってもいいのではないかという考えを私は持っております。このことは同時に、閉山した炭鉱で買い上げにならない炭鉱についても同様の措置があってしかるべきじゃないか。かみ砕いていうならば、買い上げにならない炭鉱鉱害被害について、通産省でこれは鉱害被害であるということを認定したならば、国の負担分についてとりあえず賠償行為を進めていこうじゃないか。農業用施設については八割五分、あとの一割五分については被害者がとりあえず立てかえるなりなんなりの方法もあるでしょう。それは裁判の結果に待つという場合もあるでしょうし、いろいろな方法がある。それが全然できないで放置されるということは、私は許されないと思う。したがって、いま少し長くお話し申し上げたが、今回の石炭政策の再建案の諮問にあたっては、生産と同時に鉱害についても若干お触れにはなりましたが、取り急いで通産省の案をまとめて諮問なさる御用意があるかどうか、もう少し明確にお答えがいただきたい。  いま一つは、買い上げのできない炭鉱の国庫負担分について、あるいは不服の訴えがあった場合における裁定に対して、不服の訴えがあった場合は、国の国庫負担分についてはこれを支払う道を講ずる必要がありやしないか。大まかに申しますと二つの点についてお答えをいただきたい。
  35. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 今回の石炭鉱業審議会に対しましての諮問につきましては、基本的安定策そのものについても、私どもは腹案を示すということではなくて、問題点を提起をいたしまして、あらゆる角度からの審議をいたしていただきたい、かように考えておりますので、井出先生いまお話しになりました審議会の諮問につきましては、鉱害問題の、本件とのかかわりの大きさにかんがみまして、鉱害制度をどう考えるかということについては確実にはかりたいと思いますが、私のほうから、まだ検討も不十分でございますので、試みの案とか腹案とかいうものを示すということにはしばらくは相なるまい。審議の過程で私どもも私どもなりに考えてまいりたいと思います。  後段の御質問に対しましてはやや専門的になりますし、私も理解不十分な点もございますので、鉱害課長から答弁させていただきます。
  36. 藤谷興二

    藤谷説明員 ただいま御指摘のございましたように、臨時石炭鉱害復旧法によりまして、農地を復旧いたします場合には、納付金という形で賠償義務者の賠償部分のお金を復旧事業団で徴収いたしまして、それに国と県との補助金を加えたもので農地の復旧を行なうというのは御承知のとおりであります。いまのお話は、不服の訴えとかあるいは裁定の申請とかいうものがあった場合に、国ないし県の負担する部分についてだけでも国が当事者としての責任を負うべきではないかという御意見でございますが、鉱害復旧法は鉱害復旧をするということのために補助をいたしておるという制度でございますので、この基本的な法律改正をしない限りは、国が当事者としての責任を持つものではないと私は思うのであります。したがいまして、いまの鉱害復旧法を基本的に改正するかどうかという問題になります。そういう問題になりますと、これは再三先ほどから局長もお答えしておるように、鉱業法におきます損害賠償責任、これは不法行為であるか適法行為であるか私はよくわからないのですけれども、そういう私法上の損害賠償責任を国が一部でも肩がわりをするという議論になるのか、あるいは鉱害復旧の際の民生安定とか国土保全のために補助をしていく、そういう補助の責任というか、そういうものが追及されるという形になるのか、そこら辺の法律構成の議論もあると思いますが、直ちにはそういう結論には達しがたいのではないかというふうに私は思っております。
  37. 井手以誠

    井手委員 私どもここで論議しておるのは、いまの解釈なりいきさつを聞いているのではないのです。政治的判断を聞いておるのです。それだけは間違わぬようにしてほしいと思います。いま困っておりますのは、局長、一番問題は、買い上げできなかった小さな炭鉱鉱害被害者です。隣の炭鉱は買い上げになって復旧もできる、賠償もできる、一方の炭鉱は個人経営であった、それじゃ破産させればいいじゃないかということでは、本人はほとんど承知しないのです。九分九厘までは承知しないのです。その場合の措置をどうするかということですよ。これはやっぱり、全国的に見ました場合に、かなりの量になると思う。ウエートを占めると私は思うのです。民生安定、国土保全の立場からいうならば、それを放置してはならぬと思うのです。それじゃ一体全部まかなうかといえば、そうもいかぬだろう。それじゃ農業用施設などについて八割五分の補助の負担を県はしているのだから、その分だけについては執行できないのか、そういう必要があれば法律改正するとかあるいは行政指導によってできるものはそれによってできないかということを承っておるのです。
  38. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いま井出先生からお話のありました点は、実際問題として確かに御指摘のように非常に被害者からいって不公平であるということと、国の立場から見ても適当な状況ではないという感じはいたします。私まだ勉強不十分でございますので、なぜ鉱業権者鉱業権を放棄しないのかあるいは負担しないのか、勉強いたしたいと思いますけれども、これについて制度の欠陥あるいは実際上の指導上の問題というものがあろうかと存じますが、御指摘の点を十分配慮いたしまして何か検討を加えてみたいと思います。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に担保制度についてお聞きいたしますが、その前に、天日参考人見えておりますので、鉱害基金としては一体いままで幾らくらい融資をされておるか、これを項目別にひとつお聞かせを願いたい。
  40. 天日光一

    天日参考人 ただいま多賀谷先生から鉱害基金としまして貸し出しました金額についてお尋ねがあったのでございますが、三十八年の七月一日から業務を開始いたしまして、ただいま四十二年度の決算を精算中でございますので、四十二年度のごく末期につきましての一部の見込みと申しますか、精算未了の分を多少含んでいることを御了解願って数字を申し上げますが、貸し付けましたのが、三十八年から四十二年度末までに、御承知のとおり第一項目は鉱害賠償に対する貸し付けでありますが、これが七十一億二千三百六十万六千円、それから鉱害の発生防止、予防関係に貸し付けましたのが十億二千三百三十万円、さらに第三項目といたしまして鉱害復旧事業団復旧工事に関連しまして貸し付けました金額が二億五千万円、これは契約高でございます。この合計が八十三億九千六百九十万六千円、かように相なっております。  一応いまのお尋ねの点はそういうことでございます。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 返済してきた分がありますか。
  42. 天日光一

    天日参考人 御承知のとおり貸し付け金の償還につきましては、据え置き期間とそのあとに五年均等償還というような方式に最近変わっておるのでありますけれども、当初は少し据え置き期間が短かったり償還期間が短かったりいたしますが、概見して申し上げますと、償還を受けました金額は、賠償関係貸し付けにおきまして十四億一千四百万円、端数は切り捨てて申し上げますが、防止関係において一千七百万円、事業団に対する貸し付けにおきまして一億円、それだけの償還を受けております。したがいまして、当然数字的に出てまいるわけでありますけれども、貸し付け金の残額は合計いたしますと六十八億六千四百七十九万八千円、かように相なる次第であります。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 担保制度によって、前の供託金引き継ぎのものもあるが、いま一体幾ら担保制度で供託金も含めて積め立てられているのか。
  44. 藤谷興二

    藤谷説明員 積み立て金とそれから担保施行以前の供託金がございますが、それを合計いたしまして大体十九億くらいございます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 積み立て及び供託金の全額と、それから要するにその供託並びに積み立て金を一部返しておりますね、その返しておるのが幾らか。おそらくこれは残額じゃないかと思うのですがね。
  46. 天日光一

    天日参考人 私の小さなメモで申し上げますですが、メモは間違いないと思っていますけれども、自分でちょっと急いで書きましたものですから、御了承願います。  旧供託金であります。私のほうでは預託金という名称でただいま処理いたしておりますけれども、これの受け入れた金額が六億九百七十二万四千円であります。しこうして払い戻しました額が二億七千四百七十五万五千円、したがいまして四十二年度末の預かり残が三億三千四百九十六万九千円、かようになる。これは供託金であります。それから新制度によります積み立て金のほうを申し上げますと、受け入れの累計が十三億八百八十万四千円、これにつきまして払い戻しましたのが三千四百二十二万円であります。したがいまして預かり残が十二億七千四百五十八万四千円、かような数字になっておるわけであります。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 炭鉱企業というのは非常に経理に困っておりますから、部分的に鉱害復旧すれば払い戻しを請求するわけです。しかし、いまお話がありました二億七千万円にのぼる供託金、いまの預託金の払い戻しにしても、あるいは積み立て金の払い戻し三千四百万円にしても、ではその鉱業権に基づく鉱害が完全に処理されたかというとそうでない。依然として鉱害は続いておるわけですよ。ただ部分的にこの農地は復旧しましたからひとつ供託金を払い戻してくれ、こういってきておるけれども、全体の鉱業権に伴う鉱害というものは完全復旧してない。依然として復旧は続いておる。それに一方においては金を払い戻しておる。結局この積み立て金制度とか供託制度というものは役に立たなかったということを、率直にぼくは言わざるを得ない。というのは終閉山のときに――いままでの累計ならはかなりいくだろうけれども終閉山のときには途中で払い戻しておるのですから、また払い戻さなければ現実炭鉱賠償できないという問題とぶつかっておるわけです。ですから私はいつも法制局を呼んでやかましく言ったことがあるのですけれども、大体この制度は、終山のときに円満に賠償ができるようにというためにある制度です。それを部分的に積み立てては部分的に払い戻しておったのでは、これは現実にさいの川原のような制度になってしまっている。ですからこの制度も実に、羊頭狗肉と言うと何だけれども制度としてはなるほどわかるけれども現実困っておるので払い戻しておるから、最終的になるとさいふの中身はない、こういうことになる。こういう点も、積み立て金制度というものを考えなければならぬということと、やはり何をいっても、金利よりもむしろインフレ、消費者物価が上がるあるいは工事費が上がるということで、早く払い戻して復旧したほうが安い、こういうことで、どうも制度はあるようだけれども中身は案外薄いというのがこの制度です。ですからこの点も私はやはり統一的に考えなければならない問題ではないか、こういうように思います。ひとつ石炭局長、これはあなたが局長になられる前からの問題ですけれども、これについて御答弁願いたいのですが、供託制度というのは昭和十五年に鉱業法賠償規定が実施されて以来の問題です。しかし実際はあまり役に立たなかったというのが現実ですね。私は供託制度とかあるいは積み立て金制度をなくせと言うのじゃないのですよ。しかしこれは何か方法がないものだろうか、こういうような気持ちがしてならないのです。御答弁願います。
  48. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 制度考えましたことと現実のこの制度の効能というものとの間に、いま先生指摘のようなかなりのギャップが実際上出てきておるというふうには理解しております。鉱害制度全般の問題として私ども検討を加えなければいかぬと考えております。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この積み立て金は損金として経理から落とされるわけでしょう。
  50. 天日光一

    天日参考人 それは私どもとしては所管外でありますけれども会社経理の方式論でありますから、みだりに発言をしないことにさせていただきます。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私がなぜそういうことを聞くかといいますと、大臣も見えましたけれども、日本の鉱害がこんなに累増されて、一千億にのぼる鉱害があるようになったのは、その積み立て金制度というものが完備してないからですよ。制度としてもない。損金にもならない。それで現実に直すときだけ初めて損金になってくるのです。ですからいわば明治、大正時代から昭和の初めにかけて非常に鉱害の原因をつくった採掘に対しては、何ら賠償制度もないし賠償金も払っていない。ところがその後戦争中から戦後にかけての賠償というものは、いわば明治、大正昭和の初めの賠償まで払っておるという状態です。それは、坑内を掘れば当然一トン当たりの賠償が地上にやがて出てくることは想像される。ところが出てきてもそれを損金に入れない。現実復旧したときに初めて損金になる。この点は、私はメタルマインの減耗控除制度というようなものを大いに見習うべきだと思うのですね。ですから、最終的に全部しわ寄せがくるように制度がなっているのです。現実にいま積み立てて金がわからぬようでは、すでに工事をする予定であってその金をたくわえておる、この場合は一体損金に落としてもらえるかどうか。積み立て金は、これは国の制度ですから当然損金に落とし得ると思う。ところが、社内で退職積み立て金のように引き当て金をとって積んでおくという制度は、いまないのですね。そこで、せめて復旧計画の中に入っている鉱業権者予定の金額くらいは損金として一応認めてもいいのじゃないか、こう言っているのですよ。
  52. 藤谷興二

    藤谷説明員 お答えします。  現在、鉱害賠償未払い金の損金算入制度というのが実施されておりまして、安定鉱害についての復旧に要する経費を積み立てまして、それを鉱害賠償未払い金として損金に算入するという制度が国税庁に認められまして、通達が出ております。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ところが実際は国の費用が少ないものだから、鉱業権者はせっかく積み立てても国の費用がこないから予定どおり工事が執行できない。そうすると今度は税金をとられるということになるのですよ。要するに自分は積み立て金を持っておるけれども――国の費用とタイアップして農地は大部分復旧しておるでしょう。そうすると国の費用がこないものですから、予定どおり工事がいかない。工事がいかないものだから、せっかく積み立てたものも今度は益金になって上がってくるわけです。これはどこもみな赤字の炭鉱かからあまり耳に入っておらぬだろうけれども制度としてそういう制度になっておるのです。ですから黒字の炭鉱は往生しておるのです。というのは、せっかく未払い金に充当すべき金額をたくわえて持っておっても、国の予算がつかないために思うように復旧ができないとなると、益金になって上がってくるのです。これはひとつ考えていただきたいが、要するに鉱害に対する手当てというものは制度的にできていないのですよ。そうして最後になれば何とかなるという式できておる。ここに問題がある。そこで一千億の累増した鉱害がかさむという状態を現実に呈しておるのですね。ですから私は、さっき鉱業権者責任だという話がありましたけれども、もう炭鉱は、おっぱいを吸っていた子供が大きくなっておばあちゃんになっておるのです。ですからほんとうならば、鉱業権者からどんどん出ていった子会社関連会社は連帯をして鉱害復旧賠償する責任があると思う。ですから三井なら三井化学も東洋高圧も東洋レーヨンも、少なくとも石炭から発祥した会社は連帯をして三井鉱山に、あるいは三菱ならば旭硝子もあるいは三菱化成も三菱セメントも、連帯をして鉱害賠償を払う義務があると思うのですよ。とにかく鉱害の引き当て金なんか認めないで、みんな出資をして子会社をつくったわけですから、それができないとすれば日本資本主義が連帯をして持たなければならぬということで、やはりものの考え方を、局長の原則論けっこうですけれども、原則のほかに一つ制度考える必要があるのじゃないかというように考えるわけです。  そこで、大臣見えましたけれども、いままで鉱害質問をしておったわけですが、まず第一には、昭和四十六年までに鉱害は直すということを答申にもうたっておるし政府も実施すると再三再四言明したけれども、いまだその復旧基本計画もできてない。四十六年度までに復旧するという見通しも立たない、こういう状態。これに対して一体政府はどう考えているかということ。第二点は統一賠償制度というものをぜひ考える時期に来ておる。そうしなければとても現実鉱害処理もできないし、また行政としてもきわめて不公平な行政になる。少し知恵を回して会社を分離していけば鉱害は免れるという制度になる。これはひとつ統一的な賠償制度をする必要があるのではないか、こういうことを質問をしたわけですが、これらに対して答弁をお願いいたしたい。
  54. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お約束したことはやはりやらなければいかぬと思います。鉱害の解消する計画を立てて、長期にわたってでもこれの解消につとめるということは当然の義務だと思います。  第二点は制度上の問題のようでございますから、この点は事務当局に検討させます。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法制局見えておるようですが、この法案の大きな柱である鉱害賠償紛争に関する裁定の条項ですけれども、同じ政府のもとで再三再四にわたって鉱業法の一部改正が出された。しかもその鉱業法の一部改正を出すについては、改正準備室まで設けて数年にわたって検討した結果出た法案です。その鉱業法の一部改正法案には、単に石炭だけでなくて、鉱害紛争については広範囲に裁定の申請ができることになっておる。ところが今度の法案ではそれが限定をされて出ておる。これはきわめておかしいじゃないか。しかも国会で論議をされていわば不成立になった原因は、地上権と地下資源の調整の問題であったのであります。この裁定の問題については、各委員異論のなかったところです。なぜそういうように後退をされたのか、どうも統一しないではないか、こういうふうに思うわけです。それに対して御答弁願いたい。
  56. 小松国男

    ○小松説明員 この問題は法制局からお答えするのが適当かどうか若干問題がありますが、結局今回の制度は非常に臨時的な制度でございまして、しかも地方鉱業協議会というところに臨時的にやらせよう、非常に臨時的な制度ということが中心になっておりまして、最終的には立法政策の問題になると思いますけれども、こういう臨時措置としてどこまでこういう裁定制度を認めるのが適当であるか、裁定制度を特に認める以上は、ある程度積極的な理由、そういうものがなければいけないわけですけれども、一応石炭について今回臨時的にしかも地方鉱業協議会の臨時的な業務ということでやらせる場合に、必要最小限はどの程度か、これは通産省その他関係省十分検討した結果、これで十分政策的な目的は達せられるということできまった内容でございまして、改正鉱業法の恒久的な、しかも地方鉱業審査会という制度を設けたものと直接関係はしないのじゃないか、臨時的に必要最小限のものというふうに考えております。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは恒久的な、むしろ立法の中に――しかも石炭のみならず、メタルマインの鉱害を含めて紛争処理について地方鉱業審査会裁定を申請することができるとこうなっている。それほど裁定には制限がないわけですよ。それなのになぜ石炭のこの法案には制限を設けたのか。実質上同じものなんですよ、石炭に関しては。それがなぜ今度の場合は制限を設けられたのか。恒久的なものならばよろしい、こうおっしゃるのですか。
  58. 小松国男

    ○小松説明員 恒久的なものならいいというのではなく、結局どこまでそういう裁定制度を設ける必要性があるかという場合には、裁定機関の問題それから裁定制度の問題、両方からむ問題だと思いますけれども、今回は機関としても一応その地方鉱業協議会という座敷を借りて、そこで臨時的にやらせる、しかも石炭については特に緊急にそういう制度を設けて鉱害復旧を促進する必要があるのだという政策目的、そういう両面から検討して政府としてこういう結論に達したというふうに考えております。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 制限をされた理由は何ですか。
  60. 小松国男

    ○小松説明員 特に法制局として制限したというわけではございませんで、立法政策の問題とそれからこういう裁定制度を置く積極的な必要性とを検討した上で、政府としてこれで十分だということできまったというふうに私ども考えております。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私があえて法制局を呼んだのは、裁定制度の問題として聞きたい。裁定というものはきわめて広範囲なものであるならば困る、やはり裁定制度というものは訴訟というものが一方にある以上制限をしなければならぬとおっしゃるのかどうか、もし、裁定そのものにはそういう必要はないのだ、ただ、いま掲げております法律臨時的な法律でありますから制限をしたのです、こうおっしゃるのか。裁定制度というものは本来制限をしなければならない問題である、こうおっしゃるのか。その点をお聞かせ願いたい。
  62. 小松国男

    ○小松説明員 行政機関裁定行為は、ある程度両当事者に行政処分という形で拘束力を持つという意味であれば、無制限にこういう制度が認められていいのだというふうには考えておりません。政策的に必要な範囲内で認めるということであります。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、鉱業法と今度の法律改正案との差を設けられた理由はどうですか。
  64. 小松国男

    ○小松説明員 これは一般的な制度として、特に鉱業法については一般的な制度を認められながら、今回は非常に制限されたということで、特に法律的な意味でその差を設けたという理由は実はございませんで、臨時措置で、しかも地方鉱業協議会、本来諮問機関であるところにやらせる裁定制度として、通産省が鉱害復旧を迅速にやる場合にこういう制度を設けたいという趣旨等、総合的に検討した結果、この範囲で認めるのが適当だろう、これも実は法制局として最終的にそういう結論を出したといいますよりも、政府部内として政策的にこれで十分だというふうに判断してきめたということでございます。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政府部内といいましても、最終の調整はあなたのほうでやるわけでしょう。これは法律論ですよ。制度の問題です。ですから、じゃこの本院で、裁定についてはかって鉱業法改正をせんとしたような条文でもいいわけですね。少なくとも石炭賠償に関しては制度として問題ないわけですね。
  66. 小松国男

    ○小松説明員 改正鉱業法のときの裁定制度の必要性というものについての問題と、今回の問題とを検討した場合にどうかということだと思いますけれども、一応どこまで認めるかというのは、最終的にはもちろんこういう行政機関裁定制度というのは何ら政策的には必要性なしに乱設されるということは不適当でございますので、そういう意味から限定は当然されるべきだと思います。けれどもあとは立法政策の問題としてどこまで認めるか。今回はこれで十分目的が達せられるということできめられたというふうに考えております。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は鉱業法の一部改正並びに石炭鉱業審議会答申等もそういう条件をつけていないのですね。そこで今度の法律の場合に制限がついたというのはわれわれは非常に納得しにくい。臨時立法であるから制限をしたというならば、なぜ臨時立法ならば制限をするのか、これもよくわからない。恒久立法の場合には制度として非常にむずかしいのですが、臨時立法の場合には簡便でというならばこれはちょっとわかる。しかし、恒久立法の場合に認めておって、それが臨時立法の場合には制限をしなければならぬという理由がきわめてわれわれは納得できないわけです。ですから、私は制度で問題を起こしておるんじゃないかと思うのですが、どうも制度ではない。政策の問題だ、こうおっしゃるならば、これはわれわれとして考えざるを得ない。ですから法制局としてはその裁定という制度、訴訟という制度、この制度間の問題で裁定の場合は相当の制限をしなければならぬというような意思がないとするならば、これはわれわれとして本院で考える性格のものでございますからお引き取りを願っていいわけでありますが、その点もう一回御答弁を願います。
  68. 小松国男

    ○小松説明員 先ほどいろいろと申し上げましたけれども裁定制度というものがあらゆる場合に認められていいということではございませんで、そういう行政機関がある程度当事者間の問題を裁定して拘束性を持った裁定をするという以上は、できるだけ必要最小限に限定したほうがいいという考え方はもちろんございますけれども、ただその場合にはどこまで認めるかということについてはこれ以上いかぬという決定的なものがあるわけではございませんで、その点の判断は地方鉱業協議制度を使って臨時的に鉱害復旧をしようという政策目的と総合的に検討した結果、これで十分であるということできめたというふうにお答えしたいと思います。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると鉱業法の一部改正の場合には、いわば法制局としては現在もこのような仲裁制度を実施してもいい、こういうようにお考えですか。
  70. 小松国男

    ○小松説明員 法制局としてと言われると若干お答えしにくい問題でありますけれども、一応改正鉱業法が出た段階ではそれでいいということで踏み切ったというふうに考えております。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、いま別に変化はないわけですね。ものの考え方の変わりはない、こう考えてよろしいですか。
  72. 小松国男

    ○小松説明員 特別に変化はございません。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりました。
  74. 井手以誠

    井手委員 ちょっと関連して。小松さん、少し苦しいような御答弁でしたが、助け舟に立ったわけじゃないのです。大臣にお伺いします。  この裁定制度というのは、当事者主義では民生安定、国土保全に支障があるというので、いろいろ論議された結果、鉱業法改正裁定制度が盛られたものです。いま多賀谷さんのお話のとおり。その必要性というのは今日はますますふえておるわけです。倍加しておるはずです。裁定制度の必要性はますます加わっておるはずです。ところが内輪を申しますと、椎名さんのほうの石炭局と鉱山局の意見が対立した。鉱山局では地上権との調整を加えなくては裁定制度は設けてもらっては困る。私どもは、多賀谷さんお話しのように、薬と毒を一緒に持ってきてもらっちゃ困るというので、この前つぶしました。そういうことでいろいろ検討された結果、窮余の一策としてこういう案ができたので、しかも、これは法務省の意見によってさらに後退したのですよ。一体通産大臣は、椎名さんは審議会答申にも盛られておる裁定制度についてどれだけ努力をなさったか、それを聞きたいのです。この裁定制度というのは従来の当事者主義を排除しなくちゃならぬ。これは立法上も大きな問題です。そうであるならば、大臣もかなり努力されたであろうと私は信じております。されねばならぬ責任です。小松さん、あんたにはもう聞かないから。そういう政治的な情勢があった。なぜこれを、国会の決議もあり、審議会答申もあっている重大な問題について、その意思に沿い得なかったのか、椎名通産大臣のお考えをちょっと――それは大臣に、なかなか大ものだから、あなたもそうしたいだろうけれども、ちょっと待ってちょうだい。これは聞いてあなたのほうの事情を知っておる。今後は鉱害問題でいろいろ椎名さんには言うておかなければならぬことがあるから、腹をきめてもらいたい。あいまいなことは許されません。一体、この裁定制度にどれだけ努力なさったか、お伺いいたします。
  75. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 聞いてみますと、これは裁判所と話が十分につかなかった。いや、法務省です。問題の解決が迫られておりますので、かような便宜規定を設けたような次第でございます。
  76. 井手以誠

    井手委員 椎名さん、多賀谷さんも申しておりましたが、この前は鉱業法改正裁定制度を出したじゃないですか。この前出したのは、あなたが言う裁判所――法務省も法制局もみな話し合いが済んで、鉱業法改正裁定制度を盛り込んで国会へ出したのじゃないですか。裁定制度の必要性はますます加わっておる。であるのに、なぜ今回は制限をした内容の臨時的立法を持ってきたのかと、それを聞いておるのです。そんなに後退せざるを得なかったものに対して、椎名さんはなぜ努力をしなかったかということを聞いておる。
  77. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 基本的な改正の際にそれは譲りまして、とりあえず必要最小限度の事柄を処理するために、かような改正に踏み切ったわけでございます。
  78. 井手以誠

    井手委員 椎名さん、一千数百億円といわれる鉱害問題で一番大事なことは、当事者主義では解決できないから、何とか早急に解決する方法はないかという、その結論としての裁定制度です。当事者主義を排除する裁定制度。いま一つは、鉱害復旧予算をふやすという、これが一番大きな問題です。その裁定制度で、根本的改正に譲るというなら、これは五年前だったらその答弁で済むのですよ。三年前にはその裁定制度改正案が出ているのですが、その改正案は、法務省も法制局も各方面一致して出されているのです。なぜあなたは、石炭局が苦労しておるときに鉱山局に対してそのことを注意できなかったのですか。あなたが省内をまとめ切れなかったところに根本があるのですよ。根本改正のときに出ておるのですよ。それをなぜ今日後退したかということを多賀谷さんも私も聞いておる。
  79. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 根本改正のときは確かに出ておりましたが、他の理由でこれが成立しなかった。ところが、この問題をさらにこの次の根本改正のときに譲るということは、もう緊急性からそのいとまがない、それで、今回、これを局限して出したのであります。
  80. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ちょっと大臣の御答弁に補足させていただきますが、いま大臣おっしゃいましたことは、改正鉱業法の場合にいまのような対象制限を加えてやるかやらないかということは別個の問題であると思います。鉱業法改正を行なうときには、いまの御意見をよく承知して措置したい。ただ、井出先生お話ございましたように、石炭鉱害につきましては、仲裁制度のすみやかな実現が審議会答申にもございましたし、国会の決議にもございましたし、私どもとしては、事柄の緊急性から見まして、鉱業法で一般的に仲裁制度考える場合と切り離して、一刻も早く、いまお願いしております法律改正をおはかりして、御審議をいただくことが、答申なり国会決議なりにこたえるゆえんのものだと思いまして、措置をいたした次第でございます。おっしゃいましたように、かつての改正鉱業法のときの法務省の意見と、今回この法律で法務省と協議いたしましたときに、法務省側でだいぶ違った意見が出てまいりまして、政府部内といたしましては、各省間の了解を得ませんと法律が出せません。出さないとまたこの問題はいつまでもじんぜんとして見送るということになりますので、私は、これで措置すべきだと考えたわけでございます。なおかつ、先ほども御説明いたしましたように、法律的な条文としての限定は加わっておりますけれども地域の指定については、通産大臣が指定できることに相なっておりますし、この指定のしかたを私ども実際的に考えました場合、現実問題として起こっておる迅速なる紛争解決の手段としての裁定制度を動かしていく上にふぐあいがあるとは思えない。私どもは、支障のない範囲で大臣地域指定をきめたい、かように考えておりますので、形式的には、あるいは法理論としては、両先生から御指摘がございましたような、改正鉱業法経緯との関連で不満は残っておりますけれども、これを急ぐべきだと考えたわけでございます。また、私は、実態問題としては、これによって決して必要のある紛争についての裁定が、この制限によって支障を来たすことのないように地域指定を考えたいと思っておるわけでございます。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、恒久立法では裁定の申請は広範囲にできるが、臨時立法の場合は制限をするんだという理論もまるきり通らないわけですけれども、まあ実質上広範囲にできるように指定をするということですから、これはあとはわれわれの判断委員会判断になりますから、質問は留保しておきます。  続いて、事務的に若干質問したいと思いますが、この理事長のほかに専務理事というのが出てきています。他の機構の中にも専務理事というのがあることを知っておりますけれども、これは会社じゃないから、専務理事なんていうことばはきわめて私は不適当だと思うわけです。この専務理事は一体どこでどういう仕事をするのか、これをお聞かせ願いたい。どういう予定ですか。
  82. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 御承知のように、今回の機関統合は、鉱害基金と四つの鉱害復旧事業団と合わせて一つの機関にするということでございます。在来、五つの機関で行なっておりましたものを一つにします事柄から言いまして、ある意味では、合理化、簡素化に役立つわけでございますけれども、それだけに、執行責任というものは、管理的なものを中心にいたしまして、よほどしっかり組織を整えないと、かえって統合によって事業処理が不円滑を来たすということがあっては相ならないわけでございます。統合後の機関の仕事量の大きさ、これから考えまして、簡素化の姿、理事長の下に理事がおるだけという形ではふぐあいであるというのが一つの理由でございます。  それから、もう一つの理由は、何と申しましても、復旧業務に関しましては、九州地区のウエートが圧倒的に高いわけでございまして、ここでの業務の円滑なる処理というものを欠きますと、統合の趣旨というものは生かされないことになるわけでございます。そこで、私ども感じといたしましては、名称はともあれ、理事長を助けて、この統合後の機関を円滑に運営できるような、理事の上の理事長の補佐役というものが必要であるし、加えて、実際問題としては、九州地区の鉱害量の大きさから言いまして、九州での復旧事業を、ほとんど理事長からの全面的なといって近いくらいの権限を受けて処理できる方がほしい、こういう感じがございまして、そこで、行政管理庁とも相談の上、専務理事という制度をつくったわけでございます。統合後の機関理事長に次ぐ責任者という意味合いと、現地における包括的な処理のできる人ということを考えたわけでありまして、実際問題といたしましては、大部分期間を福岡におっていただいて、組織としての理事会その他の主要な会議に東京に来ていただくというくらいの運営に当たるべき方として、専務理事を私ども考えておるわけでございます。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、専務理事というのは、九州に大体常駐するのですか。
  84. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 機構の性格から申しますと、通常の場合でございますと、専務理事は、理事長と居をひとしくして、東京にいなければならぬという感じでございますけれども実態と地元の要請、これらを考えますと、相当の部分を福岡におっていただく方というふうに考えております。これは運用上の問題でございます。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、専務理事が一人しかいないのに、それが福岡というのもおかしい。しかし、現実は八〇数%を占める九州の鉱害というのが、一番大きな問題点、でありますから大臣大臣自身も行政管理庁長官に折衝されたわけですか。副理事長という要望が地元では非常に強かったわけですが……。
  86. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 両省の折衝段階の一番最終のころ折衝いたしました。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 確かに専務理事という職名が現在の事業団等の中にあることも知っております。知っておりますが、それはやはり本団におる性格のものである。でありますから、これはやはり九州に置くのなら副理事長か何か置かないと、肝心かなめの扇のかなめが九州へ行くというのではおかしい。ですから、これは理事の数を増すわけじゃない、役員の数を増すわけじゃないのですから、専務理事というのを削って副理事長にしたらいいと思いますが、大臣はどうですか。軽く答えたらいい。
  88. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 専務理事を置かないで副理事長を置くということになると、何か形が少しおかしいと思います。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そんなことはない。あなたの関係で一番大きな事業団は石炭鉱業合理化事業団でしょう。合理化事業団理事長と副理事長、専務理事はいませんよ。形なんかおかしくないでしょう。形がおかしかったら改正しなくてはならない。
  90. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 せっかく置かれたやつを今度改正して改悪するような形になりますから、どうかと思います。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣、いいかげんな答弁をしてはいけませんよ。現実に田口さんは副理事長ですよ。それから雇用促進事業団も副理事制度があるのですよ。ですから、専務理事というのが置かれたのは、これは出先なんかはなくて、中央だけで行なって、そしてそれも、何といいますか、かなり実権を持っている人というような場合が想定されて専務理事というものが置かれたので、本来副理事長的なものを専務理事にしてそれを置くというのはおかしいので、現実石炭関係を取り巻く事業団の中でもみな専務理事はないけれども理事長があるわけですから、役所は統一をしたらどうですか。
  92. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 これは、副理事長というものがどういうものであり、専務理事というものはどういうものであるかということについては、特別明確な区別があるわけじゃございませんで、副理事長だから福岡におってもそうおかしくないが、専務理事だと東京におらなければならぬ感じが強いと、感じの上ではそれくらいの差はあるかもしれませんが、では副理事長だから福岡におってよろしいのかと聞かれますと、さほど違いはなかろうかと思うわけでございます。この辺はことばからくる感じではなかろうかと思うわけでございます。私どもとして必要最小限考えたくて確保したいと思いましたことは、先ほど申しましたように、福岡の業務量が大きい。これが一々東京の指図を仰がないと処理ができないということでは、属地的な鉱害復旧というような仕事にはなはだ不適切である、かといって統合前の姿を考えますと、独立した機関でこれを行なっておったわけでございますので、平理事が福岡におるということでは、地元の感じからいっても、幾ら権限委任をいたしましても、どうも感じの上で心もとないというお受け取り方が、私は、被害者代表あるいは地元公共団体の方々とお会いしている過程におきましてそういう感じをつかみましたので、要するに理事でない、理事よりぐっと上の理事長との間のランクを確保することが必要であるということで、行政管理庁とたびたび折衝いたしまして、かつ最後は大臣からも折衝していただいたわけでございます。原案は、先生承知のように、私どもは副理事長ということで、大臣も御苦労なさったことは、先生方も御承知のとおりだと思います。いまのような状況考え方でこのような設定をいたしましたことを御理解願いたいと思います。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、評議員は「学識経験のある者のうちから、通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。」その学識経験者の前に珍しく「鉱害復旧に関し」ということばがついておりますね。これは他の法令にあまりない。普通何々委員を選ぶというのには、学識経験者ということばはあるけれども、その前に、何々に関し学識経験者ということばは珍しいのですが、これは一体評議員の構成はどう考えておるか、この文句にかなりウエートがかかっておるのかどうかですね。
  94. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 これは統合前の機関の形と統合後の形との関連において御理解をしていただきたいと思うわけであります。実は今度統合の対象になりました鉱害基金には、このような意味での諮問機関と申しますか、評議員会のようなものはなかったわけであります。逆に鉱害復旧事業団には評議員会という、これは当事者団体でございましたので、執行機関としての評議員会があったわけであります。そこで統合後も鉱害復旧に関しましては、鉱害復旧事業団が持っておりました評議員会という形の性格は変わりますけれども、機能としては同様のものを置く必要があるというのが今回の趣旨でございまして、したがって、基金の行なっておりました仕事に対してまでもこの評議員会で意見を求めようという気持ちはないわけでございます。従来との関連におきまして御理解をいただきたいと思うわけであります。なおそういうことでございますので、法文上は学識経験者と書いておりますけれども、構成といたしましては、従来の鉱害復旧事業団にございました構成、これを相なるべくは確保いたしたい、と申しますことは、鉱業権者側、被害者側、それから地元公共団体と学識経験者といった在来の狭い意味の学識経験者、こういう三者構成で評議員会を構成いたしたい、かように考えております。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に二十七条の三、鉱害復旧評議員会の性格の問題であります。一項は「評議員会の議を経なければならない。」として、「復旧基本計画の作成及び変更」の事項について書いてある。二項は「理事長の諮問に応じ、鉱害復旧に関する重要事項を調査審議する。」と書いてある。そういたしますと、復旧基本計画の作成並びに変更については、これは決議機関、その他の重要事項については諮問機関、こういうように理解してよろしいのですか。
  96. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 そうではございませんで、二項にございますように、評議員会は諮問機関である、ただし、復旧基本計画の作成及び変更というものは、これは評議員会にはかってもいいし、はからなくてもいいしというものではなくて、必ずはからなければいけないし、議を経るということばを使っておりますことは、その答えにつきましても、単に意見を聞くという程度よりはよほど強くこれを尊重しなければならぬという趣旨を生かすために議を経る、経なければならないということばを使ったわけでございます。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法文の感じと、おっしゃることが違うようですけれども、それならそれで法文の書き方がありそうなものだと思うのです。少なくとも復旧基本計画の作成及び変更については評議員の議を経なければできないのでしょう。
  98. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 そのとおりでございます。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、これでノーと返事をした場合、これは執行できるのですか。
  100. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 法律的には執行できます。ただし、これには相当の拘束力を持ったものとして、執行機関はさようなことのないように運営するというくらいの気持ちが、単純なる諮問でなくて、議を経るということばにあらわれておるものと御理解願ったらよろしいと思います。
  101. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際問題としてはいままで過去、基本計画の作成及び変更について評議員会において結論の出なかったことはありますか。
  102. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 経過はいろいろございましょうけれども、最終的には意見の一致を見て、了解を得たところでやってきておるというのが実態でございます。
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、役所としてはあくまでも意見の一致を見るまで努力する、こう考えてよろしいですか。
  104. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 新しい機関ができまして、委員長等がおきまりになりましたら、私のほうから、方針としてはそういう方針で運営をしていただきたいということを言うつもりでございます。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それでは次に、これはちょっと小さな問題ですけれども、最近秘密保持義務ということを言われておる。これの中に「秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」――盗用なんということがありますかね。事業団の役員及び職員でそういうことが考えられましょうか。これは東洋レーヨンと違うのですよ。
  106. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ここでいう「盗用」とは、職務上知り得た秘密を自己または第三者の利益のために利用することでございます。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ではわかりました。  それでは次に、この復旧事業団の機構改革によりまして職員はどういうような身分移管になっておるのか、あるいはその際の退職金はどういうようになっておるのか、組合との関係はどういうようになっているのか、これらをお聞かせ願いたい。
  108. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 細部につきましては、今度の新しい機関の創立準備を関係機関において行なっておりますので、その辺のところで詳細を詰めることにいたしてはおりますが、基本的には今度の石炭鉱害事業団は、鉱害復旧事業団の一切の権利及び義務を承継することといたしておりますので、復旧事業団の職員の身分も石炭鉱害事業団に承継されることに相なります。したがいまして、基金及び四つの鉱害復旧事業団についてのそれぞれの給与基準、退職手当支給基準等には若干の格差がございますが、これについては統合後の問題として処理をいたしたいと思っておりますが、この統合にあたってそのまま身分を引き継ぎますので、退職金の支払い云々というようなことはいたさない、通算して処理する、こういうことになっております。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、実員は整理されるということはないわけですね。
  110. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 今回の機関新設に伴いまして、整理をいたすというようなことはございません。ただその機会に希望者があったり、あるいは定年になったりされる方はあると思いますけれども、特別の希望がない限り全部引き継ぐつもりでございます。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では次に、産炭地振興状況についてお伺いいたしたいと思いますが、事業団の堀坂理事見えておりますが、最近における企業の進出あるいはこれに対する融資の要求あるいは土地造成の状態等々についてお聞かせ願いたいと思います。
  112. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 事業団の事業全般についての御質問でございますが、事業団の事業のうち、融資事業及び土地造成、工業用地の譲渡に関します点等について、特に申し上げたいと思います。  事業団の発足以来、設備資金及び運転資金を貸し付けておりますが、この貸し付け実績は大体六百十件、百五十五億になっております。その工業生産高は相当高いものになっておるのでありますが、産炭地への企業進出状況は、発足当初から四十年ごろまでは決していい状態ではございませんで、政府から予算としていただきましたものの消化につきましても非常に困難をきわめておったのでございますが、四十一年度ごろからよほど活発になってまいりまして、四十一年度におきまして大体四十億、四十二年度で四十三億円の設備資金を融資いたしたのでございますが、四十三年度に至りまして産炭地への進出の状況が非常に活発になってまいりまして、私ども四十三年度で約四十三億の融資をいたしましても、なおかつ二十億以上の融資を必要とするものに対して四十三年度に持ち越さねばならないという状況でございましたし、なおかつ、現在におきまして産炭地に新たに工場をつくりたいということで具体的に計画ができているもの等を加えますならば、五十億円以上の設備資金需要の状態が、四十三年度分として現在すでにあるのでございます。御承知のように、四十三年度におきますところの当事業団の設備資金の融資ワクは三十八億でございますので、それに対しまして、現在におきまして約一・五倍程度の資金需要があるという状態でございます。したがいまして、これから後一年間の経過を考えました場合において、この金額は相当大きな設備資金需要額になってくるであろうというように思っておるのでございます。  単にそういう需要があるということだけでなくて、産炭地に出てまいりますところの事業の規模及び業種に相当の変化があるのでございまして、石炭産業合理化によるところの地域の疲弊が叫ばれました三十六、七年ごろにおきましては、産炭地に出てまいりますところの事業というのは、婦人労働力等を利用する非常に軽工業的なもの、あるいは地元の資源をできるだけ活用するというようなもの、あるいは炭鉱の離職者に何とか職の場を与えたいというようなことで、無理に計画をしたというようなものもないわけではなかったのでございますが、御承知のように、日本の産業の発展に伴いまして、労働力の不足が非常に強くなってまいりますとともに、炭鉱の離職者が他の方面に行かれて働かれましたところの結果が非常によかったというようなことで、今日の日本経済全般に通じますところの労働力不足に対する企業の対策といたしまして、新たに企業を拡張するならば産炭地等でやってはどうかというようなことで、相当各種の産業にわたって産炭地へ着目をされるようになってきたということが言えると思うのであります。また、その他のいろいろな融資制度あるいは政府の減税の制度等も非常に有益であるということがいままで幾らかの実績が出ましてそういうふうになってきておるのでございまして、最近におきましては、化学工業あるいは機械工業あるいは金属加工工業あるいは最近は紡績工業等も産炭地に立地したいという希望を申し出てきておるというような状態でございます。  御承知のように、日本全体といたしまして、設備投資の抑制が非常に活発に行なわれているときでございますので、そういう面で、それをのがれて産炭地に来るのではないかという観測も行なわれないわけではございませんけれども、そういうふうな面からではなくて、産炭地に立地することが労働力の確保あるいは最近までの工場用地あるいは道路整備等が進捗した状況から見まして有利である、こういう観点から産炭地への進出が活発になってきておると思うのでございまして、現在決して各方面に対して御満足のいくような状態ではないのでございますが、ようやく産炭地にも企業が相当立地できるというきざしを私どもは十分感じ取れるところへ来たのではないかと思うのでございます。  第二に土地造成事業でございますが、土地造成事業といたしましては、私どもいままで約四百万平米近くの土地を完成いたしておるのでございますが、そのうち六〇%以上が土地の譲渡ができております。これにつきましても、ただいまの企業の進出の状況と同じように、実は三十八年から土地造成を始めましてから土地の取得その他にもいろいろ困難をきわめましたが、事業団がつくった土地がなかなか売れないということは御承知のように国会等におきましてもいろいろ御注意をいただいたところでございます。その状況考えてみますと、三十八年度から四十年度までの間に、金額にいたしまして約十六億円の売り上げであったのでございますが、四十二年度だけで実は十七億円以上の土地の契約ができたのでございまして、過去四年間の土地の譲渡を一年間で上回ったという状況でございます。四十三年度分につきましても現在すでに事業団の土地に対する需要というものは相当活発でございまして、前年度程度の申し込みをいま審査いたしておるという状態でございます。御承知のようにこの土地は炭鉱の工業用地等を整備いたしまして炭鉱離職者が造成をいたしましたボタ山処理事業によるところの土地というものが半分以上あるのでございますが、そういうふうな土地が政府の公共資本を利用さしていただいた事業によっていままでもちこたえてきたということによりまして、御承知のように地価が非常に騰貴いたしております今日から申しまして必ずしも高くないという状態にだんだんなってきておるということと、日本の土地が全般に、利用できる土地が非常に少なくなってきておるという点から見まして、それに先ほど申し上げました一般工業立地上の産炭地の条件というものが改善されてきているということからいたしまして、こういう工業用地に対する需要もやや活発になってきておるのでございます。このような状況でございまして、産炭地振興は、決して十分なところに行っておるのではございません、かつ二百数十カ所の市町村に対しまして御満足のいけるような状態ではございませんが、幾らかこの事業を政府の事業として進めていくということの意義というものは私ども感じられると申しますか、相当自信を持って進めていいことではないかというように思っておりますし、また、これはやや大それた言い方になるかと思いますが、人口と産業の都市への集中によりまして過大都市化されておりますところのこの日本の現在の問題、そういう点を考えました場合に、一般に僻地的性格を持っているといわれる産炭地にこういうような企業が出てこられてそれぞれの場で仕事が得られるということは、非常にけっこうなことであると私どもは存じておるのでございます。
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 堀坂理事現実に産炭地振興をやっておられるわけですが、かなり夢を持てる期待した発言でございました。  大臣、きょうの102の石炭をめぐる問題について、その放送を聞かれましたか。
  114. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 聞きません。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実はきょうは筑豊炭田の坂田市長が出て、いわば急激に衰退をした筑豊炭田の都市の状態のお話があった。これは、昭和三十六年、当時の通産大臣の佐藤さんあるいは水田大蔵大臣あるいは安井自治大臣等が見えてとにかくしっかりやれということであったけれども、さっぱりその成果があがっていない、この山は残るのだということで期待をされた日本の二番目の三井田川炭鉱はついに閉山になった、こういう話から、最後には、筑豊の市長というのは市長をやめるととたんにみな死んでしまう、それだけ心労が多いのだろうという話に終わったわけでありますけれども、生活保護世帯にしてもあるいはその生活保護費用あるいは失対の費用等々が出て、三割行政といわれるけれども、一割行政にも満たないのだというお話があったのです。いま堀坂さんは新しい息吹きのお話がありましたけれども現実は、これはあとから出していただきたいのですが、地域的に見ると新産業都市と一緒になっておりますような常磐地域とあるいは筑豊とか長崎の北松地域というのとは非常な差がある。トータルでお話しになりましたからはっきりしないのですが、これは地域差というのは同じ産炭地振興でも相当出ておるのじゃないかと思います。  そこで大臣、時間がないそうですから二つだけ大臣にお願いしておきたいのですが、第一には、産炭地振興政策というものもひとつ積極的にやってもらいたいということと、もう一つは、いまの制度は市町村で最も疲弊している市町村は救済の対象にならないという点ですね。これはどういうことを言っているかといいますと、公共事業一つするにいたしましても、ある平均水準以上出ておる市町村については国はめんどうを見るけれども、平均以下のところはめんどうを見ないのだという制度になっているのですよ。ですから、極端にいえば、もう疲弊してどうにもならないところは国は助けてやらないのだ、ある程度自力のあるところは助けてやりますよ、こういう制度になっているわけです。ですから、まだ炭鉱が健在で若干閉山した炭鉱があるというところは新しい土地づくりができるけれども、もう疲労こんぱいをしたところはどうも手の差し伸べようがない、こういう制度になっている。法律がなっているのです。産炭地域振興臨時措置法の十条、十一条というところでそういうようになっている。これは本委員会としては非常に矛盾じゃないかということを再三再四にわたって言うけれども、新産都市の問題とか、あるいは工業整備特別地域法案関連とかといいましてなかなか自治省、大蔵省、言うことを聞かない。ところが一方新産都市とか工特地域というのはこれは力があるのですよ。産炭地域というのは力がない。ところが制度はさかさまになっている。こういうところに非常に大きな問題があるし、苦悩がある。ですから、ぬるま湯にじっとすわって何も市町村はしない、赤字も出さない、こういうような行き方しかできない。こういう情勢になっておるわけですが、大臣、どういう決意で産炭地域振興に臨まれようとするか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  116. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 同じ産炭地振興政策にしても、やはり立地条件の法則に従って、見込みのあるところ、それから見込みのないところと出てくることは、これはどうもそこまでは当然だと思うのです。ですから、見込みのないところをどうするかということなんでございますが、それはやはりその土地のその環境あるいは交通運輸の問題、いろいろな社会的な条件を考えて、そしてこれで、いくというような方針を立てて、これには大蔵当局が同調をするようにしむけるということ以外にはどうもなさそうに思われます。それで、産炭地振興は一向どうもたいした期待が持てないのではないかといわれたが、最近は非常に、もちろん立地条件のいいところでありますが、こういう場所に着目して、そうして新しい産業を建設をしようという経済人が出てきたということはたいへんけっこうなんでありますが、もう一歩も二歩も進めて、いまのあのもうどうもものになりそうもないというようなところを、くふうをこらして何とかやるということにすべきでありますが、私は産炭地の状況をよくつまびらかにいたしておりませんが、ずいぶんひどい山の中にはさまれたような町でも、ちょっとした道路ですね、林道とか、あるいはトンネルを掘って、そして交通の便をよくすることによってまるっきり生き返ってくるようなところがあるのです。だから、まあくふうすれば何でもできると言うのは少し言い過ぎですが、もう少し世間の識者を動員して、もっと考えることによって結論を見出すべきではないか、さように考えております。
  117. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 確かに地域的に不適当であるというところもないことはないでしょうけれども、まあちょうど掘坂さんにさらにお尋ねをせんとしたのと大臣質問したのが大臣の頭の中で錯綜しておるようですが、私が大臣質問をいたしましたのは、補助率等の問題で、たとえ地域的には開発の余地があり期待をされても、当該市町村が多くの炭鉱閉山させたというような場合には力がない。そういう場合には、いま道路の話がありましたけれども、公共事業をやろうとしても補助金がつかないというのです。そこに問題があるんじゃないか、こう言っているんですよ。要するに力がぐっとなくなったらもうお手上げだ、こういう制度になっている。それは新産都市や工特地域とは違うのに同じような制度になっておるところに問題があるんだということなんですね。ですから、これはひとつ、大臣以外なかなか解決する人がないのですよ。われわれ、大蔵省やあるいは自治省を呼んでやっておるけれども、なかなかこれは解決しない。口をすっぱくして言うけれども、わかっておるだろうけれども、その政策を改めようとしない。ですから、この点をひとつ大臣、ぜひ御努力願いたいと思うのですが、もう一度御答弁願いたい。
  118. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 どっちが無力でどっちが有力か、私は必ずしもあなたの判断には従いかねるのでありますが、あなた方が声を大にして大蔵当局に詰め寄れば相当なところまでいくのじゃないか。われわれが言うより……(笑声)
  119. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、こういう制度になっているんですよ。要するにある一定限度以上の公共事業をした場合には補助率を多くしますよ、こういう制度になっているんですね。ところが、産炭地域の最も疲弊したところはその一定限度までいかないのですよ、力がないから。そういうものについては補助率は高くしないという、こういう制度は間違っておりはしないか、こう言っている。ですから、同じ産炭地域といってもある程度以上の力をまだ持っている、保有している市町村は生き返る方法が何とかできるけれども、もうどん底におちいった市町村はその再建することすらできないという制度になっておる。それは実は新産都市等の例によったからそういうことになっておるということを言っておるのです。ですから、これはあなた、行政の最高責任者でしょう。ですから、ひとつ大臣から御努力を願いたい。
  120. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま御指摘のような点を何とかして制度解決するように大蔵省に向かって努力を進めておりますが、まだ十分な実りがないのでございます。今後ますますこれを続けてまいるつもりです。
  121. 堂森芳夫

    堂森委員長 石野久男君。
  122. 石野久男

    ○石野委員 ちょっと関連。いまの点ですが、大蔵省に交渉しているけれどもうまくいかない、こういうことの前にやはり政府方針がなければならぬじゃないか、こう思うのです。ただやはり金の使い方というだけじゃなくて、政府方針が変えられないと、地元に力がなければそれに相当する補助を出さないという、この方針がある以上は、地元が疲弊してしまえば、大蔵省が幾ら出そうといってもこれは出せないのですよ。ですから大臣努力をしなくちゃならないのは、大蔵省に金の出し方をどうせい、こうせいということじゃなくて、政府の補助をするという、あるいは育成するという方針を変えることが大事なんだろうと思うのです。そういう点で、大臣がただ大蔵大臣にものを言うだけではなくて、佐藤内閣自身の一つの考え方を、特に産炭地域振興については改めないというと、やはり画竜点睛を欠くということになってくる、こういうように考えられる。そのことを多賀谷君も聞いているのだと思うのですが、もう一度そういう点について大臣がどういう所信を持っておるかをひとつ聞かしておいてもらいたい。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 産炭地振興がやや、全面的じゃない、少しまだまだ目を広げて考えていかなければならぬような問題があるようでありますが、そういう点に着目してこの制度改正を迫っておりますけれども、なかなかそれに乗ってこない。今後もその点は進めるつもりです。いきなり金を出せ、こういうことを言ったらそれはもうすぐ逃げる。しかし金がかかりそうだという政策を持ちかけると、やはり非常に敏感ですからまた逃げる。どうもまことに困ったものでございますが、ですから、まあ私の選挙区や何かではずいぶん山に囲まれたような山村がありましたが、峰越し林道というやつがあるのですね。峰まで木を出すために林道をつける。しかしそれだけじゃいかぬ。峰を越してまた向こうのほうに突き抜けるという、それを二回ほどやって成功したことがあるのですが、これは小さな話でございますが、何かやはりもう少しその土地に即したくふうというものは私は決してあきらめるべきじゃない、こう考えております。いずれまたときを得て産炭地のひとつ視察をして見せていただく機会がありましたら十分に見学をしたいと思っております。
  124. 石野久男

    ○石野委員 もう一つだけ、大臣、それでいま大臣は、ときを得てなるべく近いうちに視察をして、具体的な問題に対処する考え方を持っておるということを言われたので、それはけっこうです。  ここで特にわれわれが大臣に希望したいことは、それは地元で一つの産炭地に対するいろいろな施策の要求を中央に対して持っております。しかし先ほどやはり多賀谷君からも言われたように、地元に力がないために、願いは持っておるけれども具体化しないという実情にある。大蔵省はやはり規定によってそういうふうに処理してしまう。このとき通産のほうから一言申すべきだ。一言横から意見を出して、大臣が一つの型式によって決定してしまうものを、これは違うんだぞということで、政府政策が基本的に変わらないまでも、そういう具体的な政策面での工作をする、これが生きた政治だろうと私は思うのです。そういう政治を大臣がやらなければ、金は生きてこないと思うのです。事業団の資金が幾らあったってこれは生きてこない。そういうことについて大臣が特別の指示を行ない、また具体的に政策を施行するという考え方、そういうものをこの際明確にしていただくことが必要だと思いますので、もう一度、大臣にその点についての考え方をお伺いいたします。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 現地をよく見た上でないと、めくらめっぽうにただ抽象論を振り回したって当たるか当たらないか、まことに不安でございます。ひとつ産炭地の堀坂専務理事にもよく聞きまして、この問題を打開するようにつとめたいと考えます。
  126. 石野久男

    ○石野委員 大臣、これは日韓条約の審議をしているときの答弁のようなふうにされては困ると思うのです。めくらめっぽうにどうだこうだという問題ではないでしょう。大臣は自分自身が一〇二にきのうかおととい出ておったでしょう、産炭地の問題で。あなた、出ておったじゃないか。出ていて、めくらめっぽうなんということをいま言っておるんだったら、全く無責任といわなければならない。それはだめですよ。調べるも調べないもないのだ。ちゃんと問題はあなたのところに来ているのだ。あなたが見ないだけだ。見ないでただごていさいにその場に出ているだけだ。それではいけないので、現実には問題は山積しているし、たくさんあるんだから、それを処理することを考えなければいけない。いまから調査するどころではないですよ。もし調査しなければならないような大臣考え方だったら、これは徹夜でもして、調査しに行かれるなり資料を見ていただくことが大事だ。大事なことは、やはり起きている問題を処理してくれることなんですね。どうぞ大臣も、調査ではなくて、出ている問題を処理するという方針を明確にしてほしい。どうなんです大臣、まだめくらめっぽう云々ということを言っているのですか。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 現実の問題がすでに提起をされておるならば、これは私まだ存じませんから、それをよく勉強いたしまして、打開の方法を考えたいと思います。
  128. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから大臣、連休もあることですし、ひとつこの国会中に産炭地の悲惨な状態を視察なされたらどうですか。この国会中になされないと、次には石炭プロパーの問題がかかる。ところが石炭プロパーの問題は、先ほどから鉱害問題、産炭地の話をしておるのですが、やはりこれを十分把握しておかないと、石炭プロパーの問題が十分な政策ができないと思うのですが、そのお約束ができますか。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よく考えておきます。
  130. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に事務当局にお尋ねしますが、地方公共団体に対する補助ですね。この規定、すなわち産炭地域振興臨時措置法の十条、十一条、これらの規定を改正する意思があるかどうか。
  131. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 目下いろいろと検討しておりまして、かつ四十三年度予算の予算折衝のときには、先ほど多賀谷先生おっしゃいましたような、財政力上補助を受けがたいという弊害を是正するための具体的な通産省案もつくりまして、大蔵と話をしたのでございますが、先ほど大臣からお答え申しましたとおり、まだその成果を得ていないわけでございます。引き続きこの問題は大蔵省当局と話し合いを進めておる状況でございます。
  132. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも局長大臣に対する補佐が足らぬようですね。あれは教えてもわからないのか教えないのか、やっぱりもう少し大臣に的確に問題点だけ教えておかないと、こちらも質問をする意欲を失いますよ、ああいう答弁をされたら。ですからぜひ努力をしてもらいたい。  次に、われわれは離職対策として、むしろいままでは他地区への移住促進をかなりやってきたわけです。しかし現実にはかなり成果をあげた面もありますけれども、いろいろな事情でやはり地域を去ることができないという事情の方々も相当多い。ことに炭鉱あとにおける住宅の問題、これは各地においていろいろ紛争が起きたりしておる。現実はすでにその住宅というのは、このままで放置するとスラム街になる可能性もある、こういう状態です。でありますから、これについてはひとつ政府としてはどういうようにお考えであるのか。これは必ずしも石炭局長だけの権限ではありませんけれども石炭局長としてはどういうように考えておるか。さらにひとつ建設省としてはこれらの住宅についてどういうようにお考えであるか。あわせて両局から答弁を願いたい。
  133. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いわゆる炭住につきまして、現在炭鉱労働に従事している人たちが利用している炭住問題と、もう一つはその炭鉱閉山等によりまして旧社宅を市町村営等に移管いたしまして、住宅として使われているものと二つあるのでございますが、先生の御質問はおそらく後者のほうであろうと思います。これらがかなり、維持費用等の関係もありましょうか、あるいは地方公共団体の能力の問題もございましょうか、維持補修の面で十分なものがなくて、非常にスラム化した状況になっているものが多いようでございます。産炭地振興という角度で考えます限り、炭鉱に従事されていた方々を地元雇用をしていくという上からいいますと、石炭産業の従事者でなくなったあとにつきましても、そういう方々の住宅その他については、当然にやはり一種の離職者問題あるいは産炭地域振興問題として考えていかなければならぬのでございますが、一番悲惨なケースは、やはりそれらの住宅を何がしかの形で地方公共団体の手で改造をしていただいて、これには建設省等の御協力もいただき、補助等も考えなければいかぬのだろうと思います。私ども承知しておるところでも、不良住宅の改良の制度というようなものもありますから、そういうものを活用する方向でお願いをいたしたいとは思っておりますが、中に一番悪い状態では、きれいな住宅にした場合に入居者が直ちに一定の家賃その他を払えないというような状況におられる方、これは生活保護を受けられているとかいろいろな方もいらっしゃるようで、事柄はなかなか単純ではないように承知しております。それから場所的に考えましても、新しい住宅建設のときに、旧炭住地以外のところに場所を求めるということになりますと、やはり地価の関係等から見ましていい住宅ができましてもそういった人たちの入居条件と申しますか、そういうものがなかなか一致しないという状況もあるようでございまして、何よりもやはり私どもとしては適当な所得をあげられるように産炭地関連の一連の施策の中で雇用というものを考えていって、あと住宅等につきましては建設省に私どものほうからお願いをいたしたいと考えておる次第でございます。
  134. 上野洋

    ○上野説明員 現在住宅地区改良法という法律によりまして都市のスラムのクリアランスを中心に仕事をやっておりますけれども、ただいま御指摘のように、炭住につきましてもスラム化する、あるいはスラムになっている例もございますから、これらの法律の適用を考えまして炭住のスラム・クリアランスをやっていきたい、かように考えております。
  135. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 従来の政策は、どちちかといえば他地域に転出さすということが非常な重点であった。しかし、もうある期間が過ぎましたし、それから若干将来の雇用情勢を考えると、ある一定の離職者を滞住をさすことがまた国の政策でもある、こういう面もあらわれてきたと思う。そこで、いま家賃等の問題もございましたけれども、あまり放置をしておきますとそういうことになるのですけれども、やはり炭鉱閉山をする、不良住宅の改良を計画的に行なえば、私はそういう問題は比較的起こらないのじゃないか、こういうように考えるわけです。それかといって、私はいまの離職対策の移住制度というものを廃止せいと言うのじゃない。また、両々相まってやらなければならない面もあるけれども現実におる労働者の労働力を確保する意味においても、いまのままではどうにもならないのじゃないか、こういうように思うのです。  そこで具体的に、この補助率は大体三分の二程度でありますけれども、これは大体炭住向けといったら問題はありますけれども、いま建設省のほうで炭住あとの改良をどの程度考えられておるのか、さらにそれに対する地方債を自治省のほうはどの程度見ることに腹をきめられておるか、これらをあわせて御答弁願いたい。
  136. 上野洋

    ○上野説明員 まず第一に、公営住宅の炭鉱離職者向けというワクがございますが、これは実は炭鉱そのもののある町じゃございませんで、もっと都市のほうでございます。炭鉱地そのものにつきましては計画的建てかえという線はもちろんございますが、ところがたいへん残念ながら、現在まではなかなか住宅の長期計画に乗ってこない点が実はあったと思いますので、この一年ぐらい前からだいぶそういう話が出ておりますので、住宅の長期計画の中の一環といたしましても対処しなければならないと考えております。  なお、補助率はいまは三分の二でございますが、家賃がおおむね三、四千円ぐらいになると思います。
  137. 山本成美

    ○山本説明員 ただいま建設省からお話がございました住宅地区改良法に基づきます住宅地区改良事業、これにつきましては地元負担が三分の一になりますが、これの八五%を起債で見ることにいたしております。なおどれくらいの数になるかというお尋ねもございましたが、炭住地域だけのためのワクをあらかじめ設定するのじゃございませんで、全国的に四十三年度でいいますと五千五百戸程度を考えておりますが、その中から炭住地域にも出ていく、こういうふうになっております。
  138. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭局長産炭地域振興臨時措置法の十一条の対象工事の中に、いまお話しになった住宅地区改良法に基づく改良の費用というのは入るのか入らないのか、また改正の要があるのかないのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  139. 真野温

    ○真野説明員 お答えいたします。  現在の産炭地域振興臨時措置法十一条の補助の対象事業とはなっておりません。
  140. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですからこれをひとつ制度として考えられたらどうかと思うんですね。一般的な制度は先ほどお話しになりました。今後は関係市町村はそういう方向に向かっていくだろうと思う。ですから建設省も自治省にもお願いに行かなければならぬでしょうけれども、財政措置にまた他の地域と違う面がある。そこで先ほどから申し上げましたように、ほかの地域と違うのだという点を御考慮になって、住宅地区改良法の中で補助率を変えるということはむずかしい問題ですから、これは産炭地振興のほうで別にカバーする方法をとってやったらどうか。そうすると十一条の対象事業というものを先ほど申しました不用住宅の改良にも対象にするようにしたらどうか、こういうように考えておるわけです。局長どうですか。
  141. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 私もいままで考えていなかったことでございますが、ただいまの御意見趣旨から見て非常に適切な御意見だと思いますので、御趣旨に沿った線でひとつ検討してみたいと思います。
  142. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時間もありませんから、最後に一点だけ鉱害復旧に関して聞きたいと思いますが、実は先ほどから私が無資力と有資力との区別を云々しておりましたけれども、今度復旧事業団に、いままでもそうでありましたけれども、今後も鉱業権者の負担金というのがある。この負担金の中に無資力鉱害家屋の、本来ならば鉱業権者負担の分が相当含まれて使われておる。これは当該負担金を持つ鉱業権者としては、他人のものに金を出しておるという形になってきておる。これが一体どういう実情であるのか。そこで私は言う、現在制度はすでにプール的になっておるのではないか。無資力鉱害の他人の鉱業権者の分を、家屋においては有資力鉱業権者現実に負担しておるではないか、制度がそこまで進んでいるんですよと局長に言いたい。ですからその問題についてどういうようにお考えであるのか、あわせて、もう制度はプール的に進んでおるのだということを御理解を願いたいと思うのです。
  143. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 賦課金の中から無資力の家屋の復旧工事をやっておるというのは、先生も御承知のように制度的な解決がなかなかはかられなかった結果の苦肉の策でございます。これは御承知のとおりでございますが、しかし現実にはそういうことをやっておるということから見ると、この分については実際上プール的なものはもうすでに出ておるのではないか、こういう御意見だと思います。それはその限りにおきましては私もそうだと認めざるを得ないわけでございますが、そもそもの趣旨の賦課金は事務経費の分担ということで、無資力の家屋の復旧工事というのは苦肉の策から出たものでございます。その辺の立て方の問題と実態がどうなっておるかということのからみの問題だと思いますが、御承知のように鉱害制度は非常にがっちりした大きな法律体系になっておりますから、おそらく先ほど来の御意見のように根本からやり直すということになりますと、やはり相当時間もかけなければいけないし、やっかいな論議を招くだろうと思います。部分的に何かやるというようなことではおそらくがっちりした体系でありますだけになかなかやりにくいし、現実はいまおっしゃいましたように、ある程度部分的な運用も行なわれておるということでございますが、どの時点で、どういう形で取り上げたらいいかということを、正直申しまして苦慮しておるというのが実情でございます。御意見もひとつ参考にいたしまして今後検討をいたしたいと思います。
  144. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いまの他の鉱業権者が無資力鉱害の家屋の鉱業権者分を負担しているという分については、とりあえず国が出しておる鉱害復旧事業団の事務費で落としたらどうですか。どうもその家屋の無資力の分だけは他の鉱業権者から取って出すというのも苦肉の策とはいえ、制度として実におかしいのですよ。それから、だんだんと無資力鉱害がふえていくわけでしょう。ですからもうそれではとてもまかない切れないくらいになっておるのですから、国が直接家屋の無資力鉱業権者の負担分が出せないとするならば、せっかくできた制度が――新しく発足しようという復旧事業団の事務費で出したらどうですか。
  145. 藤谷興二

    藤谷説明員 若干事務的なことになりますので、その点を御説明申し上げますと、いま鉱業権者が事業団に納付しております賦課金は事務経費と準備金と家屋自体の費用というものに充てられるわけでございますけれども、それが現実には鉱害復旧事業量が非常にふえておりますものでございますから、事務費もそれだけにふえておるわけでございます。したがって、家屋自体のほうに充てますと事務費の分がそれだけ減っていくということになりますので、実際問題としましてはどの部分がどこに充てられているかというような説明は必ずしも十分にはつけがたい、したがいまして、一方におきまして御承知のように補助制度についてのたてまえ論と、それから実際の賦課金をどの辺にきめるかというような事業団運営にあたってどの程度の賦課金をきめたら事業団運営がぐあいがよろしいかということのかね合いになると思います。それから一方、事業団に対しましては国から事務費なんかは補助金が出ておりますので、補助金との見合いで、それぞれのかね合い論ということになるのが実態でございます。したがいまして、そこで妥当な姿が出ておれば実情としてはよろしいのじゃないか。ただ、いまおっしゃいますように、基本的な鉱害復旧制度についてのたてまえ論をどうするかという問題になりますと、これはにわかに申し上げかねる問題があろうと思います。事務的にはさように考えております。
  146. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、将来の問題としてはとりあえず賦課率を若干でも下げてやるわけですか。
  147. 藤谷興二

    藤谷説明員 場合によってはそのような検討もあろうかと思います。
  148. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 けっこうです。
  149. 堂森芳夫

    堂森委員長 中村重光君。
  150. 中村重光

    ○中村(重)委員 保安局長に重大事故の発生の状況についてお尋ねしたいと思います。坑内火災だとか、あるいはガス爆発といったような重大災害というのは新聞等にも報道され、また保安局のほうからそうした事故報告を当委員会にされるのでわかるのだけれども、一人であるとか二人であるとかいうような死亡事故等が発生した際、そうした報告もないし、また新聞等の報道というものも全国紙には報道されないということでわからない。そうした死亡事故というものが最近どういう状態にあるのか。実は、昨夜長崎県西彼杵郡の高島炭鉱で転石、石が飛んで来て死亡するという、異常な死亡事故が発生をしておる。どうしてそうした転石によって死亡するといったような事故が起こったのか、全く安心して仕事などできないということになるのですね。だから御調査になっていらっしゃるのかどうか、その点を伺いたいことと、当初申し上げた最近のそうした死亡事故等の発生の状況はどうか伺いたい。
  151. 西家正起

    ○西家政府委員 最近におきます炭鉱の死亡事故でございますが、これは確かに先生指摘のように一度に多数の死亡者が出ました場合あるいは一人だけで済んだ場合、これは死亡については全く変わりがございませんので、われわれといたしましては、極力死亡者を出した限りは現地の監督局から必ず現地を調査させておるような次第でございます。最近の死亡状況を見た場合、やはり同時に多数の死亡者を出しますガス爆発あるいは自然発火、こういったような災害による死亡者と、ほぼ同数あるいはそれ以上の死亡者がいわゆる頻発災、落盤、飛び石によって、一名ないし二名程度、事故によって死亡するものでございますが、こういう頻発災害で、ほぼ同じ数の死亡者が年間では出ておるような次第でございます。  ことしになりましての死亡者の数は、一月に北海道におきまして美唄炭鉱で一挙に十六名というとうとい犠牲者を出しておるのでございますが、そのために当初は昨年より死亡者の数が多かったわけでございます。三月末をもちましてこれを挽回いたしまして、昨年はたまたま死亡者の数は少なかったのでございますが、昨年と全く同じ数にまで挽回をいたしております。なお三月までにやはり数十名の死亡者を出しておるような次第でございます。今回の、昨夜の事故につきましては、ただいま現地のほうと電話連絡をいたしておる最中でございまして、詳しいことはわかっていないのでございます。いわゆる重要災害ということで、同時に五名以上の死亡者が出る、羅災者が出る、こういったものにつきましては、即刻電話報告があるのでございますが、死亡者一名ないし二名につきましては、若干報告がおくれまして、現地の調査が終わりましてから報告が来る、こういうようなしかけにしておるような次第でございます。
  152. 中村重光

    ○中村(重)委員 一人であろうとも、二人であろうとも、人の生命が奪われるということは重大な事故なんですね。それと盤が弱ければ転石ということが多くなってくるわけなんだから、そういう場合は特別の注意が払われなければならぬと思うのです。だから重大災害で、一時に何十人というような死亡者が出る事故が発生をした場合は、保安当局としても十分注意を払うということになるのだけれども、一人、二人は炭鉱では当然のことだというような、全く人命軽視、保安軽視の風潮というものがあると私は思う。そういうことが次から次に起こってくるということになると浮き足立っておるところの炭鉱に労働者を引きとめるということはできない。だから高島の事故にいたしましても、ゆうべ六時半にそうした死亡事故が発生をしておるのだし、とうとい人命が奪われたんだから直ちに昨夜のうちにあなたのほうに報告がくるというくらいの注意が払われておらなければならぬと思う。だから至急に調査されてもう少し生命を尊重する――そうした転石等に対しては、非常に注意を払っていくということにしてもらわなければならぬと思う。ひとつあなたの考え方を伺って、質問あとであらためていたすことにいたします。
  153. 西家正起

    ○西家政府委員 死亡者につきましては、先生指摘のとおり、一名でも何名でもこれは全く同等に扱う重要な事故だと考えておる次第でございます。ただ、現在の役所の報告様式といたしましては、事務能力等もございまして、保安局にくるのは若干おくれますけれども、現地におきましては、これは全く同じウエートで監督をするようにさしておるわけでございますし、むしろ大災害による死亡者の全体の数よりも、頻発災害による全体の死亡者の数のほうが年間を通じますと多い、こういうことでございまして、今年からはそういう頻発災害も、災害の芽をなくそう、こういうことで、今年度の監督方針にも一番に掲げまして、この点監督いたしておるような次第でございまして、先生の御趣旨に沿いましてますます監督を厳重にしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  154. 堂森芳夫

    堂森委員長 次回は来たる二十三日、火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十三分散会