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1968-04-10 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 田中 六助君 理事 中川 俊思君    理事 野田 武夫君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    八木  昇君       渡辺 惣蔵君    田畑 金光君       大橋 敏雄君  出席政府委員         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君  委員外出席者         議     員 岡田 利春君         議     員 多賀谷真稔君     ————————————— 四月十日  理事西岡武夫君同日理事辞任につき、その補欠  として田中六助君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  石炭鉱業国有法案多賀谷真稔君外十四名提出、  衆法第一三号)  日本石炭公社法案多賀谷真稔君外十四名提出、  衆法第一四号)      ————◇—————
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についておはかりいたします。  西岡武夫君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  次に、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  西岡武夫君の理事辞任に伴い、理事が一名欠員となりましたので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。それでは田中六助君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 堂森芳夫

    堂森委員長 多賀谷真稔君外十四名提出石炭鉱業国有法案及び多賀谷真稔君外十四名提出日本石炭公社法案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。田畑金光君。
  6. 田畑金光

    田畑委員 ひとつ多賀谷提案者にお尋ねしたいのですが、私、今回社会党提案されました国有法案公社化法案を見ましてなかなかりっぱな案だと感じたわけであります。現在の混乱しておる石炭行政あるいは石炭施策についてこういう考え方でいけば安定するであろう、国有化にすることによって石炭産業の混乱に終止符が打たれて、わが国エネルギーの中に占める重要な石炭の地位と役割りが確保されるであろう、こういうことを前提としてこの法案を出されたと考えておるわけでありますが、国有化することによってどういうようなメリットが生まれてくるのか、まずこの点について多賀谷通産大臣からお尋ねしたいと思います。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 御承知のとおり、提案理由でも説明申し上げましたが、昭和三十年に石炭鉱業合理化臨時措置法が出されましたときに、当時両社会党は、日本炭鉱私企業の形においても次のような方法を講ずれば、かなりいわゆる近代化合理化が行なわれるのではないかということを対案として出したわけであります。  それは第一には、鉱区問題で当時遊休鉱区をどうするか。さらにまた新鉱開発問題がございましたので、当時は鉱区整理並びに遊休鉱区の活用、さらに新鉱開発、こういうことをうたいました。次には流通機構一元化の問題をうたったのでございます。この点がやはり今度の場合でも大きな柱でありまして、われわれは第一には鉱区問題においてメリットがあるのではないか、こういうように考えておるわけであります。  ちなみに具体的に各炭田を洗ってみますと、政府からも答弁がございましたが、北空知における総合開発の問題がございます。これは茂尻炭鉱、赤平、赤間、空知、歌志内あるいは三井の一部、これらを総合開発する必要がある。また北海道では雨龍地区における、やはり鉱区統合の問題がございます。さらに夕張地区における総合的な施設利用あるいは鉱区統合、これらの問題も新清水沢の開発と伴ってあると思うわけであります。また雄別における北陽、住友及び雄別炭鉱、これらの問題もございます。さらに白糠地区、これは雄別株式会社鉱区並びに三菱住友鉱区統合がございます。さらに御存じのとおり常磐地区総合開発の問題がございます。これは先般大日本炭鉱が倒産いたしましたけれども磯原炭鉱重内炭鉱鉱区統合をすれば、現在の磯原炭鉱から車内の鉱区が掘れるという問題もございますし、また宇部興産か持っております向洋炭鉱、これらを含めて常磐地区における総合開発の問題もございます。さらにまた、この日炭高松炭鉱を中心とする宇部、三菱鉱区統合の問題もございます。さらにまた日鉄有明、三池あるいは山口鉱区、これらの総合開発もございます。さらに杵島、古賀山等の問題もございますが、大きなものとして離島の総合開発の問題があるわけであります。これはすでにみな稼行中でありますが、池島、大島、伊王島、崎戸、二子、端島、それから古河鉱区、これらを総合的に開発する必要があります。それから北松地区における深部開発の問題もやはりございます。  これらをあわせますと、実効ある処置がいま直ちにというわけにはなかなかいかないでしょうけれども、将来にわたっては相当のメリットが出るのではないか、かように考えます。  それから直ちにすぐメリットのあらわれるものは、流通機構一元化の問題であります。これは二つございまして、管理機構の問題もございます。何といいましても、百幾つの会社がありますし、重役もそれに沿うておるわけであります。さらにまた販売関係合理化もあるわけであります。管理費は大体トン当たり百八十九円ぐらいについておるわけであります。そして大手管理費が大体六十六億円程度一年間に要っておりますが、これを四分の一ぐらいにして、それで中小を含めての管理費用をまかなえるのではないか、こういうように考えております。このメリットは直ちにあらわれてくるだろうというように考えてかるわけであります。  それからまた、全体的にいいますと労働力確保問題があるわけであります。さらに技術の交流問題もございます。さらにまた、現在のままでいきますと、スクラップ即倒産という形があらわれてまいりますけれども、これは今後は炭鉱が新しく出発をする時点に立って、損益分岐点以上の損失を出しておる炭鉱から逐次整理をしていくということになりますと、総合的に安くなっていく、そして優良炭鉱集中採炭をする、こういう方式に変わるだろうというように考えておるわけであります。  その他、福利施設の総合的な利用とか、さらに最も大きい問題は、一応国内を安定させて海外開発に乗り出す、こういう問題も大きなメリットではないかと思います。  それから産炭地振興の面から申しましても、整理をする場合に、わが党案によりますと公社所有土地建物になりますから、閉山後においても総合的利用ができるのではないか。いま御存じのようにみな個々の会社でばらばらにやっておりまして、ある炭鉱譲渡をする、ある炭鉱は依然として自分で所有をしておる、こういう状態でありますけれども、今度は公社でありますから、国の政策として総合的に産炭地振興のために活用できる、かように思っております。ドイツは御存じのように閉山後におきましては炭鉱出資をいたしまして、閉山後の土地建物については管理する会社をつくり、総合開発をしているわけでありまして、そういう点からもやはりメリットがあるのではないか、こういうように考えておる次第です。  以下、質問に応じまして答えていきたいと思います。
  8. 田畑金光

    田畑委員 御答弁メリットの具体的な内容について詳細に説明がありましたのでわかったわけでありますが、鉱区統廃合の問題についても、流通機構一元化の問題についても、しばしばこの委員会で今日まで政府に対してその政策実行存迫ってまいったわけでありますが、いま直ちに国有公社化しなければ鉱区の調整の問題あるいは流通機構一元化問題等については前進した体制がつくれないのかどうか、こういうことが疑問として出てくるわけです。と申しますのは、いまの政治情勢のもとでもありますので、あなた方の提案理由の最後のところの、この案は資本主義政党のもとでも十分とり得る現実的な案であるということばは私も理解できるわけでありますが、ただ、いまの政治経済体制のもとで直ちに国有化であるとかあるいは公社化であるとかいう方向に切りかえるということは容易でない、こういう背景があるわけです。そういうことを考えてみたとき、先ほど御説明がありました鉱区統廃合の問題、あるいは流通一元化等々の問題については、現行法の改正あるいはまた政府政策の転換によってその目的の達成ができないのかどうか、こういう点についていささか疑問を持つ面がなきにしもあらずでありますが、この点について提案者はいかようにお考えでございましょうか。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 御存じのとおり、もう三度も答申が出ましたので、ここにまたある政策を打ち出してさらに次の政策を予想するということは非常に困難だと思います。でありますから、われわれが三十年に提案をいたしましたときは、むしろ鉱区統合整備とそれから流通機構一元化でいいと思いましたけれども、今日の情勢はあまりにも石炭企業の体質が弱っておる、こう考えざるを得ないわけであります。すでに一千億円を含めまして、大手でも借り入れ残が二千三百億円もある。あるいは二百数十億円の従業員管理貯金がある。しかもその半分は退職者の分である。あるいはさらに社債等もあるというような状態でいきますと、金利だけでもトン当たり四百数十円かかっておるという状態であります。ですから私は、政策的には段階を追うことができない、もう最終的な形態をやる以外にはない、このように思います。  それからわが党としましては、ここに相当の金を政府が出さなければなりませんから、私企業へそれだけ援助をすることを国民がはたして許すかどうかという問題があると思います。ですから、雑誌などにも石炭についていろいろ批判がなされておりますが、その面から見れば、単純に国有にする以外にはない。そうすると、経営形態はおのずから公社という形態にならざるを得ない、こう考えたわけであります。
  10. 田畑金光

    田畑委員 この案によりますと、石炭鉱業を営んでおるものからその事業買収する、そして買収にあたってはすべての権利義務を国が承継する、こういうことになっておるわけでありますが、いま現存する石炭鉱業をこのように買収するとすれば、どの程度財源を見積もればいいのか、またこの権利義務を承継するということは、読んで字のごとく、いわばすべての債権債務その他の権利義務関係を承継するということだと思いますが、これは国の財政面にどういうような——どの程度財政規模ならば許容できるのかどうか、消化できるのかどうか、こういうような点について御説明をいただきたい、こう思うのです。  あわせて、この第十四条「買収価額」についていろいろ説明があるわけでございまして、一応これは読めばわかりますが、買収価額についてはどういう基準でこれを買収されようとするのであるか。そしてまた、これがための所要財源というのは幾らくらいを見積もっているのか、こういう点について御説明をいただきたい、こう考えます。  さらに、ついでに、第十五条の「鉱業権等消滅」についても、鉱業権者あるいは租鉱権者に対して補償する、こういうことになっておりますね。そして「補償すべき損失は、当該鉱業権又は租鉱権消滅によって通常生ずべき損失とする。」となってわりますが、「通常生ずべき損失」とはこの際どういう内容なのか、何をさしているのか、このあたりをひとつ説明願いたいと思います。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 第一点の財源問題ですが、一応われわれは、現在行なわれております石炭特別会計財源としての重油関税のうち一〇%という財源を依然として続けていきたい、このように考えておるわけです。そういたしますと、四十四年度から始まりましたといたしまして四十八年度までに約四千億円——一〇%ずつの伸びということを政府がいっておりますから、一応政府の試算でまいりまして四千億円と考えるわけであります。  それから、一体債権債務をどういうように見るかということでありますが、債務は先ほど申しましたような状態で、借り入れ残あるいは従業員の預かり金、長期社債というようなものがございます。さらに、あとからも申し上げますが、私どもは、買収をする際には、専業炭鉱については、その会社の一切の事業を買うわけでありますから、一応その会社が持っております有価証券あるいは炭鉱を除く子会社への投資、長期貸し付け金というものが当然換金できるものである、こういうように考えております。一応国の財産にいたしますけれども、これは公社が引き継いでその後譲渡をする、こういう考え方を持っておるわけです。そういたしますと、そこにかなりの財源が逆に浮いてくると考えております。  それから、私どもがいまとりあえず必要であります金額は、公社出資金であります。また、あとから申し上げますけれども買収費すなわち買収価額というものを長期に払いますけれども、これも当然必要とするわけであります。  これらを考えまして、まず第一点としては、現在政府がやっております政策のうちで、産炭地振興離職者対策費は四千億円から除いていきたい。残り政策をこの四千億円でまかなっていきたい、こういうように考えておるわけです。  まず、財源といたしましては、専業十二社、買収をいたします会社の持っておる有価証券が約百七十八億円であります。これは本来ならば時価で売るということになるでしょうけれども、一応計算ができませんから帳簿価額ということにいたしまして百七十八億円。それから炭鉱を除く子会社への出資、株式並びに長期貸し付け金がございます。これから炭鉱関係を除きますと、約三、四百億円という財源が出てくるわけです。そこで、ざっと申しまして五年間に四千四、五百億円程度財源が出るわけです。  それに対しまして、五年間に返済を予定いたします金額は一千億円、肩がわり元利補給金につきましては、これは政府が入って銀行と契約をいたしましたから、幾ら制度が違っておるといいましてもこれを切りかえることはなかなか不可能だろうと思います。でありますから、これをそのまま継続をすることとし、残りの一千三百億円程度から、実はその金額の中に合理化事業団貸し付けがございますが、合理化事業団貸し付けの中には財投の分と出資の分がございます。出資金の分は政府が一応一般会計からすでに支出しておるわけでありますから、これは返済しないこととし、差し引いていきたい、こういうように考えております。  それから、われわれは一千億円を除く借り入れ残金につきましては、二十年の年賦で返したいと考えております。これは金融機関に泣いてもらわなければならぬ、かように思っておるわけです。  それから長期社債がございますが、これは三十億程度でございますので、予定どおり払っていきたいと思います。それから、鉱害の費用がございます。  さらに管理貯金も払わなければなりませんから、それらを合わせますと二千三百億円程度要るわけです。  その二千三百億円をいま申しました財源から支出をしますと、二千百ないし二百億円という金が直接炭鉱の運営に使える、かように考えるわけです。年間五千万トンといたしますと、五年間平均トン当たりちょうど八百円程度使えることになります。そのうち、われわれは今後の金利は、一千億円を除く分については打ち切りますから、現在払っております金利、及び先ほど申しました管理費の節減、これらを合わせますと約六百円程度財源が出るわけです。ですからトン当たり千四百円くらい金額が浮くことになる。それをひとつ石炭政策に総合的、積極的に使っていきたい、かように考えておる次第です。  それから、十四条の関係買収価額でございます。  まず第一点は、私どもが考えましたのは、買収をする場合、憲法にも正当な補償をするということになっておりますし、その憲法に適応する買収価額というのは一体何か、いろいろ調査をいたしました。日本におきますと、過去において鉄道国有法、すなわち西園寺内閣のときの鉄道買収法があります。その次には日本製鉄株式会社法がございます。それから日本発送電株式会社法、近くは電力九分断のときの評価のしかたがございます。これらは国有鉄道の場合は建設費を主として行なっておりますけれどもあと会社の場合につきましては、大体建設費から償却費を引いたものと、それから三年間なら三年間の収益平均を年額にいたしまして、それを十年ないし二十年掛けたいわゆる収益還元方式とを足して二で割っているのがいままでの方式でございます。でありますから、鉄鋼とか電力のように、高炉をつくるとか発電所をつくって収益が上がるという場合には、その方法は私はわりあい正確に出てくるのではないかと考えるわけです。」しかし、炭鉱は十年間以上益金が出ていないという状態ですから、収益還元法は使えないということであります。  それから資産といいましても、いまからとにかくスクラップをする炭鉱もかなりあるわけであります。スクラップが予定されている炭鉱資産というものは本来ゼロである。それを擬制して資産と見なければならぬ、こういう問題があるわけであります。ちなみにいまの簿価を見ますると、非常な有望な鉱区を有する会社でたった二千万円しか鉱業権評価されていない。反面、経営悪化炭鉱を有する会社鉱業権が六億円も評価されている、こういうことでありまして、現在の貸借対照表から見ても、とても実体に合うような状況はつかめない、こういうように考えまして、結局私どもは各国が国有化しております実例、すなわち最近に赴いてはイタリアの電力国有法、さらにイギリス鉄鋼国有法、さらにその前の第二次世界大戦直後のフランス並びイギリスの例、ただしイギリスの場合はイングランド銀行と炭鉱収益還元方式をとっております。しかし、その他は全部株でやっております。英国労働党が第一党となる前日から過去三年間の平均株価でやっております。  そこで、私どもも一応経済が安定しておりますならば、過去三年間の平均株価でいきたいと考えておりましたけれども、その三年間に二百億以上も借金がふえているという実情でありますから、われわれが記者発表をいたしました以前一年間の株価でいきたい、こういうように考えておる次第であります。それが第一号の買収方式であります。  次に、上場されていない会社がございますから、上場されていない会社にはどうも評価のしかたがありませんから、遺憾ながらわれわれは資産合計額から負債合計額を引く、こういう方式をとらざるを得なかったわけであります。  それから兼業がございます。兼業の場合は、御存じのように、だれが見ましても常識的に兼業会社があるわけです。正確に言いますと、いまの会社は全部兼業だと言って言えないことはございませんけれども一般にいわれている兼業会社専業会社というおのずからの区別がありますが、それは政令で指定をいたしまして、兼業会社については石炭鉱業関連する分だけを買い上げる、こういうことで資産から負債を引いたものを買収価格とすることにしました。  それから鉱業権消滅でございますが、現在稼行していない鉱業権につきましては、国有にする場合に買収をするのはいかがなものかと考えまして、消滅さすことにいたしました。ですから通常生ずべき損失というのは、まあ鉱区税ないしそれに関連をするもの、こういう程度に理解をしているわけであります。  以上でございます。
  12. 田畑金光

    田畑委員 非常に親切な答弁であり説明内容でありますのでよくわかりましたが、ただ、いろんな面にわたっての説明でありましたので、率直に申しまして資料でもいただかぬとよくのみ込めない点もあるわけですが、それはそれといたしまして、結局御説明によれば、要するに国有化に持っていっても、その財源はいまの特別会計ワクの中で処理していこう、ただし産炭振興事業関係離職者対策の予算は別にして現在の特別会計ワクの中で処理していこう、こういうことだと拝見いたしました。さらに、いろいろ買収にあたって資産評価なり、あるいはまた上場株算出方法なりについては、非常に技術的にこまかな説明があったわけでありますが、端的にお聞きすることは、いまの炭鉱について、お話のように資産あるいは負債、この差額を買収価額にするというようなことでありますならば、第十四条の第一項の第二号「当該事業に属する資産価額合計額から当該事業に属する負債価額合計額を控除した額」ということになってきますと、いまの炭鉱資産関係を見るならば大体マイナス面が多いように私は観察しておるのでございますが、こういうことと第十三条の権利義務の一切を承継するというようなこととはどのような関連になるのか、この点ちょっと御説明をいただいておきたいと思うのです。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 マイナス炭鉱も出てくると思いますけれども、これは基準でありまして、その内容については政令で定めるということにしておるわけです。というのは、資産というものは先ほど申しましたようにぴしっとわからないわけです。スクラップする予定の炭鉱資産というものはほとんど皆無でありますから、結局資産はある程度擬制をせざるを得ない。われわれは原則として株価方式でありますから、大体株価で、たとえば専業十二社の株価、これが二百億少し出るわけでありますが、それは子会社ももちろんその株の中には入っておるわけでありますから、それが大体三千五百万トン程度です。それによって買収をされるとするならば、これは逆にあとの千五百万トン程度は大体百億以内におさめたい、こういうもとで結局基準政令で定める、評価価額を定める、こういう逆算方式をとらざるを得ない、現実問題として。そうしませんと一号と二号と三号とバランスがとれなくなる、こういうように考えざるを得ないわけです。そういう中で結局権利義務を承継をしていくということになると思うのであります。
  14. 田畑金光

    田畑委員 そのあたりがなかなかむずかしいところで、またこの法律案についての賛否あるいは評価の問題につながってくる点だと思いますが、それはその辺でとめておきます。  それで、いまお話の中にもありましたように、国有化するのですから結局強制買収ということになりますね。そうした場合に憲法私有財産の尊重という原則から見た場合、これは強制で国が買収するというような法律の体系になっておるわけですけれども、いまの憲法との関係は、これはどのようなことになるのか、そのあたりひとつ御説明を願いたいと思います。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 御存じのように、日本でも戦後農地の買収をめぐりまして訴訟がございました。最高裁までいきまして、憲法違反でないという判決が出ておることは御案内のとおりであります。また、財産権についてそれほどはっきりした保障のなかった時代でも、すでに日本においては強制買収的な鉄道国有法というのが明治憲法下にできておりました。ですから、正当な補償を出せば憲法違反の問題は起こらない、かように考えるわけです。少なくとも現在売買をされておる株価評価して補償するということは、正当な補償になるのではないか、かように私は考えております。また私どもは、株を買うわけではないのです。株価評価するわけです。株を買って会社を吸収できるわけですから、一応現在の商取引の中で現実に行なわれておるそういう程度補償はする。しかも債権債務は引き継いでおるわけですから、憲法上は何ら抵触をしない、かように考えております。
  16. 田畑金光

    田畑委員 一番心配することは、公社組織あるいは公社経営という場合は、えてして能率が悪くなる、非能率だということがいわれておりますね。一番心配するのはその面にあるわけですよ。やはり民有のよさというのは、私企業の競争原理の上に立って、能率というものが非常に大切な機能を果たすわけです。ただ、国有化とか公社化とかになってくると、非能率の代名詞のようなことにもいわれておるわけですね。この辺は一体どのように考えていらっしゃるのか。  それからまた、先ほどの憲法との問題に関連しての御答弁、それもよくわかるわけですが、上場株といっても、よく十二社ということをいわれておりますが、上場してない会社もありますね。大体石炭の株なんというのはどこのがのぼっておるのか、のぼっていても、まことにどうも額面割れのした状況ですね。また上場していないところもあるわけで、それは先ほどの擬制に基づいていろんな算定方法を考えるのだという、こういうお話しのようですが、それも一つの案だと思うのです。ただ、私、気にかかるのは、先ほどの権利義務の承継の問題にもう一度戻りますが、権利義務の承継の問題というのは、端的に言うと、すべての石炭会社の債権も債務も一切この公社が肩がわりする、こういうように考えればいいのですか。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 そのとおりです。  それから、非能率の問題は、御存じのように日本でも公社形態をとっておる国有鉄道あるいは電電公社、専売公社、これらは公社方式をとっておるわけですが、あまり非能率という話を聞かないわけです。新幹線が、それが非能率であるならば——新幹線ができるときは、だれが考えましても企業として採算がとれるわけですから、私企業にするという議論もあったはずですけれども、依然として国有鉄道でおやりになっておる。ですから、非能率という問題は、私は、現在のような企業がマンモス化した時代においては、いわゆる経営者の意図が末端まで反映するというような状態ではないのではないか、こういうように考えるわけです。  それからもう一つは、競争と安定化という問題でありますが、それは産業によっておのおの違うと思います。たとえば、電力私企業でございますけれども、これはまさに地域的独占でありまして、競争原理は動いていないのであります。でありますから、石炭の場合はもう競争原理は結局ロスをつくる、むしろマイナスになる、こういうように考えていいのではないか、かように思います。販売の競争にいたしましても、それはマイナスの要因だけである、かように考えるわけであります。それから、御存じのように働くものは従業員でありますから、結局従業員が安定をして働ける作業環境をつくるということが炭鉱の場合一番必要なことではないか、かように考えておりまして、私は、現在の合理化というのは、提案理由説明でも申しましたが、もう非近代的な状態になっておる、むしろ安定をさして、真の意味の近代的方向に向かわすべきではないか、こういうように考えて、現時点における状態から見れば相当能率化される、かように思っておるわけであります。
  18. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、すべての会社権利義務を国が肩がわりする、そうして一切の炭鉱、といっても特に私は先ほどお話の中の原価計算以下の、どんな内容の悪い山でもすべて債権債務は一切国が肩がわりして、この公社の責任で始末をつけていく、あるいは開発するものはビルドしていく、こういうことなんですね。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 はい。
  20. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、そこに膨大な債務を背負ってくるということになると思うのですが、この点は一体どのようにこれを処理していこうというのか。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 問題は、個別的にいままでの状態に放置しておきまして、倒産の形で債務を打ち切るという形がいいか、総合的、プール的にものを扱って、そして制度的に、たとえば一千億円を除きます借り入れ残については元金だけを二十年で返済するというような方法がいいか、その分かれ目だと思います、負債だけを考えれば。ですから、個別企業を倒産に追い込んで、その地域経済に非常に迷惑をかける、労働者の退職金も払えない、売り掛け代金もそのままにして閉山をする、銀行のほうは比較的に抵当権を取っておるでしょうけれども、その他の債権者は泣かなければならぬという状態閉山をすることは、社会的摩擦が非常に大きいのではないか、こういうように考えておるわけです。ですから、確かに多くの負債を背負うわけでありますけれども、これは金融機関にひとつ泣いてもらって、元金を二十年で返済をする、そうすると金利が浮く、こういうように考えて、そこで短期的には処理をしない、長期的に処理をするのだという考え方に立っておる。その点がやはり、私企業の場合でありますと倒産の形で混乱を起こしながら処理していかなければならぬという点と違うのではないか、こういうように思うわけであります。
  22. 田畑金光

    田畑委員 そうすると、銀行にも泣いてもらう、株主にもそれ相応に泣いてもらう、しかし、労働者については、この法律考え方は、あくまでも権利関係を尊重していこう、既得権をあくまでも守っていこう、こういう立場ですね。そうしますと、実体はまだよくわからぬけれども、植村構想が管理会社構想なんというものを発表されて、この間われわれもその考え方というものを一応お聞きしましたが、あの案についてはどのように考えておられますか。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 われわれ植村さん自体からも聞きましたけれども、いわば問題点を提起したということで、細部についてはまだはっきりしたことはわかりませんですけれども、私の理解をいたしましたところでは、問題は先ほど申しました第一点の、いまあります会社から分離した会社、その会社資産だけを持っていく。そうして親会社はその資産に見合った負債政府のほうへ肩がわりをしていく。そうしてさらに資産負債と比べて負債が多かった場合は、倒産とはおっしゃらなかったが、倒産もやむを得ないという結論になると思いますが、その形でいきますと、いま申しましたように、私は非常に地域経済に迷惑をかける問題ではないか、こういうように思います。  それから私どもは、今度は公社で職員を雇うわけでありますから、ある山が閉山をされましても、その人は解雇という方式はとらないわけです。職場がえ、配置転換という形になります。しかし、やむを得ずいろいろな事情から次の炭鉱に行けないという方には退職金を払いますけれども、ほかの方は公社が退職金を保証しながら次のところに働いていただくというので、退職金の支給というのがない。  そこで、短期的に見ますると、植村構想とは違って非常に支出が少ないという面が出ておるわけです。いま私どもが考えなければならぬのは、この数年に金が要るわけでありますから、それを考えればむしろ植村構想は非常に泣かす者は泣かし、そうして金は短期的に非常に要るという形になるのではないだろうか、私はこう考えます。  それからそのほかの不安は、たとえばいまあります会社が倍になったり、その上にまた管理会社があったり、それからまたその管理会社が指揮命令をするといいますけれども法律的に一体どういう法律によってそれができるのか、あるいは管理会社が、できました新しい会社の株を保有するのかどうか。現在の商法が生きておりますから、株主の了解を受けなければならぬ。一体権限はどこまで管理会社が持つのか。その場合分離されました会社の責任は何であるのか。私をして言わしめれば、複雑でわかりにくい。そんなにむずかしく複雑な、管理機構もそうでありますが、状態日本炭鉱の再建というものはむずかしいのではないか、かように考えるわけです。
  24. 田畑金光

    田畑委員 石炭の需要の確保をどのように考えていらっしゃるんですか。そうして言うならば、いまの政策需要というものをもっと強化していこうということなのか。それから出炭体制についても、五千万トン出炭はけだし当然だという説明がなされておりますが、五千万トンの出炭体制を確保して、そうしてそのためにはいまの政策上さらに強化する。その場合、先ほどお話しの現在の特別会計ワクの中で操作していくということが大前提のようでありますが、その特別会計ワクの中で五千万トンの体制を維持し、しかも政策上柱にしてやっていこうということなのか、このあたりを承っておきたい。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 一応私ども政府の例の再建計画に沿うて検討してみたわけです。これが一体無理かあるのかないのか、いろいろ検討しました。短期的に見ますと、本年は四千七百万トン程度ですから、ここ一年は私はいろいろな手だてをしなければならない、機構の再編成もございますから、無理と思いますが、全体として見ると、やはり五千万トンベースを、若干前後はいたしますけれども、維持していきたい、こういうように考えるわけです。  需要は、政府の想定をとりましても、たとえばここに昭和四十七年度の資料あるいは五十年度の資料あるいは四十五年度の資料といろいろ出ておりますけれども、四十七年度の政府の資料を見ましても、原料炭で千七百万トンの供給、それから一般炭が約三千百九十八万トンという数字が出ております。そのほかに無煙煽石、これは用途は特殊でありますが約百七十万トン出る。そうすると五千七十万トン、そのほかに雑炭が四百万トン程度あるわけです。  需要のほうで見ますと、大体原料炭が鉄鉱、ガス、コークスで千七百万トン、これはむしろ足りないくらい売れていくわけであります。それから無煙煽石も同様特殊な用途で全然足りませんから、これは問題ございません。問題は一般炭でありますが、九電力は依然として二千三百万トン、これは四十五年もそうですか、二千三百万トンベースでいきたい、こういうように思っておるわけであります。それから電発関係御存じのように五基伸ばしていただく。共同火力も御存じのように常磐にも七号機かできることになりました。これで約三千百十六万トンという数字が出ております。大体電力は雑炭四百万トンを入れまして三千万トンを若干上回わる程度というように考えておるわけであります。そのほか一般産業五百三十万トンという数字が出ておりますが、暖房用炭を含めれば大体それはやっていけるんではないか、こういうように思っております。そうして精炭で五千七十万トン、雑炭で四百万トンないし三百万トン程度ということは無理がない数字である。いままではむしろ電力には、特に九電力には、いわば過重くらいに押しつけたという感じがありましたけれども、一応二千三百万トンベースというものはずっと維持するわけですから、それ以上の負担には九電力はならない、こう考えますが、あとは電発と共同火力で、いまのままで、大体それ以上の増加をあまりお願いをしなくてもいいのではないか。現在建設中の発電所で十分まかなっていけるんではないか、こういうように思っております。
  26. 田畑金光

    田畑委員 次に質問者がまだ公明党のほうが残っておりますから私はこの辺でやめたいと思いますが、将来社会党の内閣ができたときには、これを足がかりにわが国のエネルギーを全体として国有化して、さらにエネルギー省みたいなものを設けて、わが国の総合エネルギーの安定を確保していこうという構想に通じておると思うのですが、そういうような構想なのかどうか、この辺ちょっと説明願いたいと思います。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 御存じのように電力事情は、原子力というものがどのくらいのキャパシティで伸びていくかというのが一つ問題で、それから地域的に見ますると、東京あるいは関西電力のように、いわば配電コストが非常に安い。ところが最近は発電コストというのは、むしろ大容量の発電所をつくるほど安くなるということで、地域経済開発をしなければならないところほど電力は高いという情勢に漸次なりつつある。その傾向は一そう強くなってくるわけです。一方原子力発電は、一会社ではとても原子力発電の大容量のものはやれないという状態になれば、どうしても広域の流通という問題が電力にも起こってくるわけです。ですから、どういう形をとるにいたしましても、電力も各国がみなやっておりますように、それは国有にするか公社にするかわかりませんけれども、やっぱり国の介入というものをだんだん必要とするような情勢になりつつあるんではないか、こういうように考えます。そういう中でエネルギーの安全保障などもありまして、社会党としては、いま動力省というようなお話しがありましたが、動力省のもとで何らか統一的にやっていきたい、こういうふうに考えております。しかし、いまの政治的な情勢からいって、それは早急に実現するという状態にありませんが、とりあえず石炭だけは限定をしてお願いをしておるわけです。
  28. 田畑金光

    田畑委員 早く社会党内閣ができて、多賀谷通産大臣が出現するように願っておりますが、さらに一そうそういう面で御精進を願いたい、こう考えるわけです。  それから、ちょっとこまかな質問になりますけれども公社ができた場合に、いろいろ役員が出、職員ができる、こういうかっこうですが、公社で働く従業員というのは全部職員なんですか、労働者というのですか。これを見ると、役員が出たり、職員が出たり、労働者が出たり、いかにも身分が職員と労働者と二つあるようにとれる個所もあるのですが、これはどうなのですか。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 法律上は職員であります。これは職員と役員というもので構成をされておる。ただ、そこに労働者の代表ということを入れておりますのは、たとえば経営委員会等に——これは職員はもちろんこの経営委員会の委員になれますけれども、その際には職員をやめなければならない。職員が自分の会社の経営委員会の委員になるわけにいきません。ですから、そこのところに書いておる労働者の代表という労働者は、広く一般的な労働者という意味で使っておるのでありまして、従業員に関しましては、役員と職員としか書いておりません。こういう関係です。
  30. 田畑金光

    田畑委員 そうすると、経営委員になるのには、「労働者を代表する者」というのは、公社の職員以外の一般の労働者の代表を参加させる、こういう意味ですか。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 職員出身者がなり得る場合があると思います。しかし、その人は経営委員になったとたん職員の身分を失うことになる、経営委員ですから。排除しておるわけではありませんが、広い意味の労働者の代表ということです。ですから、経営委員になった直後を申し上げますと、職員は経営委員になっていない、こういうことでございます。
  32. 田畑金光

    田畑委員 これで私の質問を終わります。
  33. 堂森芳夫

    堂森委員長 大橋敏雄君。
  34. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、きょうは社会党提出された国有化法案に対して、二、三点御質問申し上げたいと思います。私たちも国有化そのものに対しては、基本的には賛成であります。ありますけれども、現在の政治情勢下、特に自民党の資本主義政策のもとにおいて、非常に問題点があるのではないかという気持ちで一ぱいであります。そこで、私なりに考えたわけでございますが、昨年の慶に一千億円の異常債務の肩がわりがなされた。これは思い切った再建策だと思っておりましたけれども、それが石炭産業の人手不足あるいは資金難、出炭不振等でいよいよ行き詰まってしまった。そういうところから、言うならば、わが国の石炭産業は残すべきか、廃止すべきかというところまできておるわけです。そういうことから、何とか再建しようということで植村構想が出たり、また社会党から画期的な国有化法案が出ました。また政府のほうも、今月には審議会の審議を進め、答申を待つというようなことも聞いておりますが、私は一般的な国民の立場からきょうはお尋ねしてみたいと思うのですが、たとえば大口需要家の立場から石炭はほんとうに必要なのか、それともどうなのかということなんですけれども社会党さんはその点をどうとらえられておるか、まずお願いします。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 どうも大口需要ではないので答弁しにくいのですけれども、先ほどお話しになりましたように、資本主義体制のもとで炭鉱だけを国有にしてどれだけ価値があるかという問題は、イデオロギー的にとらえますとなかなかいろいろ問題点あるいは批判点があるだろうと思います。しかし現実の日本の崩壊をしていく石炭について手当てをする、手だてをせんとするならば、これ以外にないのではないかという気持ちでわれわれは提案をしておる次第であります。  それから、大口需要家の場合はどうか、こう言われましたけれども、ちょっとこれは鉄鋼電力の業界に聞いてみないとわかりませんけれども一般的にいえることは、原料炭につきましては確かに現在豪州炭が安く入っております。しかし将来原料炭というものがずっと安く入るかどうか、ことに豪州における露天掘りから坑内掘りに切りかわるという時点、ことに現在入っております原料炭の供給先というのはみな労働力不足の地点でございますから、はたして豊富に現在どおり入ってくるかどうかには疑問があるだろうと思います。鉄鋼の伸びは御存じのように飛躍的に伸びておるわけでありますから、私はこの程度の弱粘はやはり国内において確保しておくべきではないか、こういうように思い、あまり鉄鋼については反対はないのではないか、こういうように思っております。国有ということとは別に、需要家はどう思っておるかということであります。  それからもう一つ、電力については、これは私はいろいろ意見があると思います。将来における原子力の伸びをどう見るかということ、その安全性と安定性をどう見るかという問題、それから現実に重油が安く入っておるではないか、こういう問題等、いろいろあると思いますけれども電力の伸びは、これまた国民生産力の伸びよりもさらに一そう上回って伸びておるわけでありますから、雑炭を含めて少なくとも三千万トン程度はコンスタントに使っていただきたい。直接一般の消費者に石炭を使わすということはだんだん無理がきておりますから、電力にして一般消費者に、あるいは家庭に使ってもらいたい、こういうことで、いわば保険料といいますか、そういう意味で三千万トン程度はぜひ使ってもらいたい。ことに北海道、九州あたりは、重油に対抗して別に遜色ないわけでありますからお願いをしたい、かように考えております。これはむしろ私どもの希望でありまして、需要業界としてはいろいろ意見があるのではないか、こういうように思っております。しかし、いまからより多く増加してお引き取りを願うわけでありますから、いままできておる程度をずっと維持していただけばけっこうだ、かように思っております。
  36. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 現在大口需要家はどの程度使っておるのか。現在を維持していけばいいとおっしゃったのですが、先ほど説明があったと思いますが、もう一回お願いします。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 御存じのように四十二年で——まず鉄鋼は引き取りが増加をしましても、実際は必要なわけですから、これはあまり問題はないわけです。ですから、問題はやはり電力にあるのではないかと思いますが、四十二年度、九電力が二千百三十万トンであります。今後われわれがコンスタントにお願いしたいのは、四十四年度から二千三百万トン程度にお願いしたい。それ以上はずっとコンスタントにいきたい。あとは共同火力と電発でございますが、共同火力は漸次伸びておりますし、電発のほうは政策需要——これは一種の政府機関でありますから、あまり問題ないんではないか、こういうように思うのです。
  38. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは九州電力の小出常務さんが話していることを新聞で見たのですけれども、九州電力としては、昨年の秋にできた唐津発電所を最後に、当分石炭火力の新設は考えていない、今後の中心は重油と原子力になるだろうというようなことで、今後はそうした新設はしないのであるというふうに言い切っておりますけれども、いまの多賀谷先生のお話では、現状のままで二千三百万トンは受け入れられるというふうにお考えなのですか。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 この新しい施設は、いま電発の計画——二基増加計画、それから常磐の共同火力七号機というものを除けば、あと石炭専焼火力としては新設の必要がない。そしてそれは、できれば混合比率を若干変えてもらえば済むではないか、こういうように考えております。ですから、九電のほうで新設はしないんだとおっしゃっても、大体従来の引き取り、あるいは若干プラス程度は引き取っていただけるのではないか、稼働率も変わってきますし。かように考えております。
  40. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 エネルギー政策というものは、一つには、とにかく安い価格だ。もう一つはいわゆる安定性である。この安い価格と安定性との調和を求めてなされると思いますが、日本の現状としては、輸入エネルギー源にたより切っているという感じを受けるのですけれども、はたして安い価格がこれで確保できるかどうかというような心配もあるのですが、そういう点はどうとらえていらっしゃるでしょうか。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 問題の電力——御存じのように、電力料金かきまります際に、おおむね石炭幾らだとか、重油は幾らだという値段を算定して、その上に立って電気料金というものがきめられるわけです。日本におきましても、いわば現在料金が昭和二十九年ごろにきまったところは、料金に組み込まれている石炭の値段よりも非常に安くなっておる、現実に。重油はさらに安くなっておる。こういう状態。ごく最近料金の改定になったところは、大体現在納めておるような炭価で料金の中に織り込まれておる、こういうように考えておるわけでありまして、一応電力料金を上げるというような必要は全然ない。それは安ければ非常にけっこうですけれども、一応われわれは電力料金の範囲内においても十分まかなっていける、こういうように考えておるわけであります。ですから、この点はもうすでに見込んであるわけでありますから、われわれは問題ないと思います。  また中国電力のように、過去、はっきり覚えておりませんが、昭和二十九年ごろにきまった炭価を、この前三%料金を値下げするということで、石炭のほうは大いに削られた。要するに料金算定の石炭の価格を削られた、こういうことがあるわけです。われわれは一応、現在の引き取り価格で安定をしておるんではないか、こういうように考えております。
  42. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 日本経済の立場から見た場合、いわゆる外国の資本に価格が自由に動かされないためには、わが国のエネルギー源を少なくとも三〇%は確保すべきではないかという話はよく聞くんですけれども、この三〇%確保するということは、大体どの程度の出炭規模になるんでしょうか。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 ちょっと、総合エネルギー調査会の資料を持ってきておりませんけれども、実は三〇%という数字は石炭だけの話をしておるんではない。国内の石油、それから、御存じのように水力、さらに日本が海外に投資をした、たとえばアラビア石油であるとか北スマトラ石油であるとか、とにかく日本開発をした原油、これを合わせて何とか三〇%にしたい、こういうことでありまして、石炭に換算いたしますと、三〇%が現時点で一億トンに当たるそうです。しかし、これは飛躍的に伸びるわけであります。しかし、一方石炭のほうも、一億トンの石炭を掘れといわれましても、供給に限界があるわけですから、安定供給という意味で五千万トン程度をぜひ確保していきたい、こういうふうに考えております。
  44. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、そういう中にありまして出炭規模は大体どの程度が適当なのか、現時点から見た場合ですね。私はこのようなことも聞いたんです。出炭量が年間一千万トンふえたとしても、これは全エネルギーの三%程度にしかならない。つまりエネルギー政策としてはたいした影響はないんだ。むしろ石炭産業を安定させるためにはどれだけの規模にするかという点ですね。それから、他のエネルギーを安くするためには、国内炭をどの程度確保すべきかというところが非常に大きな問題点であるというふうに聞いたわけです。そういう点はどのようにお考えになっておりましょうか。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 おっしゃるように一千万トンがちょうど三%でありますから、三〇%は一億トンということになるわけであります。まず供給に限界があるということが一つと、それから、たとえば三千万トンでいいというような意見も出ておりますが、三千万トン、あるいは三千万トンを割るような情勢になれば、先ほど申されましたように、一体日本のエネルギーの中で三千万トンぐらいの石炭を確保して何になるか、安全保障に役立たないではないかという議論が一方に台頭すると思うのです。ですから、ある程度の出炭を維持しておかないと、ちょうど鉄鉱石と同じような運命になる可能性がある。鉄鉱石は製鉄原料としては不可欠であります。必要なんですけれども、あまりにも国内の鉄鉱石のウエートが低いものですから、政策の外にほうり出されておるというのが国内の鉄鉱石の現状であります。でありますから、私ども石炭の場合もそういう轍を踏まないようにある程度の規模というものがぜひ必要である。これは石炭側からの考え方であります。ところが国といたしましては御存じのように、最近は農作物におきましても自給度が非常に低くなっておる。輸入エネルギーは非常に増大をしておる、あるいは金属鉱業における銅等のああいう鉱物においても輸入依存度がだんだん高くなってくるということになりますと、いままで日本は飛躍的にこれこそドイツの経済の奇跡以上といわれる成長率を示して輸出が伸びてきたわけですが、いまから輸出の伸び率というものがある程度鈍化をするのではないか、こういうように考えざるを得ない。そういたしますと、国際収支という問題が非常に大きな日本経済の重点になってくる。そういう意味からも私どもはどうしてもある程度の国内エネルギーの確保ということが必要ではないか、こういうように思います。それからもし石炭がないとすると、重油の値段は私は急激に上がってくるのではないか、こういうように考えるわけです。確かに世界的に見まして重油は過剰ぎみでございますけれども日本ほど安い重油の入っている国はない。それは日本は新しい市場であるし有望な市場であるというので、国際石油カルテルが非常な勢いで競争をしながら進出しておるという面もあるわけです。ですから日本にある程度のエネルギーを持たないと輸入価格まで高くなるということ、そのメリットは相当なものである、そういう意味においては保険料的な意義があるのではないか、こういうように考えておるわけです。
  46. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは石炭産業は残していくという前提に立った場合、私企業形態ではもうどうにもならない。私もこれは率直にそう認めるわけです。そういう意見も強いし、それでは石炭産業を残す上に最も重要なことは一体何だ。いままでもいろいろ聞いたほかに、たとえば若い労働力を確保するという問題、そのほかにいろいろあろうと思いますが、そういう点はどこを一番とらえていらっしゃるでしょうか。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 それは第一には、いま日本御存じのように、かつての労働力過剰経済から労働力不足経済に入ってきて、ちょうど欧州型の経済体制になってきた。ですからいまからは労働力を確保するというのが最大の必須の条件になってくる。ことに労務者の稼働にほとんど依存している石炭の生産体制というものは、まず労働者を確保しなければ労働力不足で壊滅をするということは必至でありますから、労働力を確保するためには労働者の安定した住みやすい職場というのが必要ではないか、かように思います。御存じのようにいま炭鉱におる労働者はおのおのの炭鉱の将来に非常に不安を持っておるわけです。また鉱山というものは明治以来掘られてまいりました。親子三代炭鉱につとめ、その不安を持たなかったわけです。炭鉱は確かに鉱量とともに運命をともにするわけですが、そういう不安は明治時代なかったのです。しかし最近のように閉山が相次いでおりますから、一生の職場としてはたして炭鉱は適当であるかどうかということは、当然何人といえども疑問を持たざるを得ない。でありますから、私どもは個々の会社あるいは個々の炭鉱が雇用するのでなくて、石炭産業全体が雇用する、そうして石炭産業のある間は永遠に職場たり得る、こういう体制の確立が必要では互いか、この点は私企業であればできない、こういうように考えておるわけであります。  第二は、先ほどから申し上げましたように、いま販売のロスというものが非常に大きいものがある。ですから販売機構を一元化する、それから管理体制一元化するということが必要ではないかと思います。ドイツのように、生産は私企業で自由経済でございましても、販売はほとんど実質的には一社のカルテルでやっているわけです。でありますから、販売の一元化というものはどうしてもしなければならない問題だ、こういうように思うわけであります。  それから常に問題になっております鉱区統合の問題でありますが、これは提案理由でも申し上げましたように、イギリス国有にいたしました最も大きな理由は、英米法というのはみな土地所有権に鉱物が付属しておるのでありまして、みな土地所有者の承諾を得て使用権を契約をして、そうして鉱物を採掘をしているというのが現状であります。それだけにイギリスでは群小の鉱区ができまして、近代的な大規模炭鉱ができなかった。そこで労働党が政権をとる前から、常に国有問題がイギリスにおいては早くから叫ばれておったというのは、一つはそういう面がある。われわれはやはり現在の鉱区整理統合するといいましても、私企業間では非常にむずかしいし、ことに労働者すらも自分の職場が、他の会社鉱区譲渡されるならば、少なくなるという不安を持つ、こういう事情でございますから、いわば鉱区統合というのは言うべくして実際は行われがたい。そこで大規模な再編成をするためにはどうしても鉱区統合が必要、それがためには国有が必要である、このように考えている。第二次世界大戦後最も開発をされましたポーランドにおいては、要するに古い鉱区を新しい鉱区にして統合した成果が現在のポーランドの石炭の非常な発展を見ているわけでありまして、その意味においては近代化の必須条件が鉱区統合である、それがためには私企業間では無理であるから国有にしたい、こういうことを考えているわけです。  あとはいろいろ問題がございますが、先ほど申しましたように、ビルド、スクラップといっても、すでに日鉄有明等水の関係もございますけれども、自己資本を百億入れても私企業ではなかなかむずかしいといっていま中止をしている状態でありますから、これはどうしても何らか国が積極的に政策を出して、そうして少なくとも三百万トン程度炭鉱にしなければペイしないのではないか、こういう点もございます。あるいはまた先ほども申し上げましたけれども閉山あとの問題を考えますと、やはり公社所有に土地とか家屋をいたしまして、これを産炭地振興と結びつけて将来の活用に資することも必要ではないか、かように考えている次第です。
  48. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いままでの説明を聞いて、私もその点は同感でありますが、若い労働力を確保するということが私は最大の要件ではないかと思います。現在の炭鉱労働者の平均年齢は四十歳というふうに聞いておりますが、坑内労働の肉体的限界を越す状態である。老廃とさえ言われております。したがいまして、私はこういう観点から植村構想もかなり勉強さしてもらったわけですけれども、そういう点からは、その内容においてはかなり画期的ではありますけれども、若返り策にはならない、こう判断しております。反面、国有化にしてしまえば、若い労働力を完全に確保していけるのか、この点についても多少疑問を持っているわけです。いままでの説明で大まかなことは大体わかってはきましたけれども、たとえば、今度年金等ができたわけでありますけれども、いまの考え方でいくと、国有化になった場合、そういう年金の支給額等も私企業の場合と変わるということになるのでしょうか。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷議員 いま退職金制度があり、そうして年金は厚生年金のほかに石炭の特別年金がございます。この切りかえをどういうようにするか。現在公企体等の労働者は共済法によって年金が支給されておるわけですから、新しい姿は、やはり国鉄とか電電公社とか専売公社と同じような形になると思います。ただその切りかえの経過でいろいろめんどうな問題があるのではないか、これをどういうふうに案分をして切りかえていくかということが問題だと思います。  国有になり公社になって、ではすぐ若い労働者が来るかとおっしゃいますが、これは石炭産業というものに魅力を持たせないと、ただ国有にしたから、公社にしたからすぐ人が集まるというものではありません。われわれは現在おります従業員を何とかして確保をしていく、そうして、徐々ではありますが若い労働者を入れる、こういうように考えていきたいと思っております。御存じのように、国鉄の志免炭鉱を民間会社譲渡をするという問題がありましたときに、国鉄の諸君が非常に反対をしたというのは、やはり国鉄という企業の中におれば将来が不安でないというところに問題があったと私は思うのです。ですから、日本炭鉱を一社にして、それも公社だということになれば、急速に若い労働者が来るということはないでしょうけれども、しかし、徐々にいまよりも若い労働者が集まる体制になるのではないか、こう期待をしておるわけです。
  50. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまから、この提出されました法案内容にちょっと触れてみたいと思うのですが……。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  52. 堂森芳夫

    堂森委員長 速記を始めて。  次回は、来たる十七日水曜日午後十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十三分散会