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1968-04-04 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月四日(木曜日)    午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 神田  博君    理事 中川 俊思君 理事 西岡 武夫君    理事 野田 武夫君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    齋藤 邦吉君       始関 伊平君    澁谷 直藏君       菅波  茂君    廣瀬 正雄君       石野 久男君    中村 重光君       八木  昇君    渡辺 惣蔵君       田畑 金光君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君     ————————————— 四月四日  委員佐々木秀世辞任につき、その補欠として  始関伊平君が議長指名委員に選任された。 同日  委員始関伊平辞任につき、その補欠として佐  々木秀世君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業経理規制臨時措置法廃止期限等を変  更するための法律案内閣提出第二七号)      ————◇—————
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱業経理規制臨時措置法廃止期限等を変更するための法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。田畑金光君。
  3. 田畑金光

    田畑委員 石炭鉱業経理規制臨時措置法、この法律について若干お尋ねしたいと思うのですが、まず、局長にこの法律運用状況について、現在どのような状況になっておるかということを説明願いたいと思います。
  4. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 田畑先生承知のように、一千億の肩がわりをいたしました際に、再建整備法律国会で成立させていただきまして、石炭鉱業の主要な会社はほとんどこの再建整備法適用を受けるように相なっております。そこで、再建整備法には経理規制法と同様の経理規制に関しての条項を含んでおりますので、経理規制を受ける石炭企業といたしましては、二つの法律適用を受けておるわけでございます。  そこで、当経理規制法だけが根拠でこの経理規制を受けていると申しますのはごく限られた肩がわりを受けなかった会社数社でございますけれども、この経理規制法にございますように、財政資金借り入れを受けた金額一つ基準に相なっておりますので、これから先、肩がわりを受けていなくてこの経理規制対象になり得る企業もあと出てくる可能性がございます。そういうことで、私ども一つ再建整備法に基づきまして、もう一つは、その適用を受けない会社に対しまして、ただいま御審議をいただいております経理規制法に基づきまして規制実施しているわけでございます。
  5. 田畑金光

    田畑委員 いまのお話によれば、再建整備法によらざる幾つかの炭鉱ということでありますが、幾つかの炭鉱というのがどの程度の数にのぼっておるわけですか。さらにこの法律の第二条によれば、「次の各号に該当するときは、その会社を指定しなければならない。」こういうことになっておりますね。借り入れ残高、さらに年間の出炭量、これが財政資金だけについてこの法律は規定されておるわけでありますが、市中借り入れについてこれをはずしているということについては、どういういきさつでこうなったか。立法当時いろいろ議論があったと思いますが、この点についてもあわせてひとつ説明願いたいと考えるわけです。
  6. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 御質問の第一点でございますが、再建整備法によらないで、再建整備法ではその対象にならないが、この法律によって規制を受ける対象になります会社は、現在のところ日鉄鉱業と宇部鉱業、それから松島炭鉱、この三社でございます。それから、先ほど申しました財政資金借り入れ残高が漸次ふえてくるという形でこの法律適用を受ける可能性があるという炭鉱といたしましては、太平洋、山野、空知等が逐次その対象になり得る状況でございます。  第二点の御質問は、この法律を制定いたしましたときに、財政資金だけに限定したのはどういう経緯であるかということでございます。経理規制法は、御承知のように、一般的な法制から見ますと、かなりきつい規制民間企業に加えることになっておりますので、規制を加える理由と申しますか、実体的な背景といたしましては、やはり財政資金借り入れ残高に着目するというのが適当であろう、民間からの借り入れ等につきましてこれを基準に求めるということは、規制の強さというものとの見合いにおいて適当ではなかろうということで、この法律が定まったように承知いたしております。  一方、再建整備法のほうは、そのような規定とはかかわりなく、肩がわりを受けた以上は当然に経理規制対象になる、こういう定めに相なっておるわけであります。
  7. 田畑金光

    田畑委員 この経理規制臨時措置法対象財政資金を焦点において考えざるを得ないということは、この法のたてまえから見て、けだしそうであろうと考えるわけでありますが、この法律によりますと、いろいろな利益金処分あるいは配当等々についての規制がなされておるわけでありますが、現在、この法律適用を受けておる会社が三つ、あるいは今後予想される会社幾つかある、こういうことでございますが、この法律の第三条の利益金処分、この点について、実際この法律適用によって、利益金処分などについて規制を受けておる会社というのは何社くらいあるのか。さらに現在の石炭企業の中において、現実に昨年の九月期をかりに例にとった場合に、実際配当している会社幾らぐらいあるのか。あるいは減配に転じたもの、あるいは無配に転じたもの等々あると思いますが、これらの点について、ひとつ説明を願いたいと考えるわけです。
  8. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 現在の石炭鉱業で、たとえば肩がわりを受けたような会社、これはもう先生も御承知のように、配当ができるなどという事態ではなくて、肩がわり要件として、経理状況に一定の悪さがあることを要件にして肩がわりしておりますので、大部分のものはさような状態ではないわけでございますが、一つには石炭プロパー経営だけでない会社で、会社全体として他部門収益もございまして配当しておるというのが宇部日鉄でございます。それから専業会社配当をただいまいたしておりますのは、太平洋だけでございますが、これもかつて一二%の配当をいたしましたのを一〇%に落とし、今回は八%というふうに落としております。そのほかには配当ができるという会社はございません。
  9. 田畑金光

    田畑委員 例の肩がわり措置法審議された際にも私指摘したわけですが、せっかくの政府財政資金肩がわり機会に、市中銀行炭鉱から手を引くのではないか、こういうことを指摘いたしましたが、現実にその傾向が強く出ておると見ておるわけです。ただ心配されたこの一−三月の資金ぐりが、特に出炭計画から見ても相当計画割れをして、これが融資の面、金融の面あるいは経理の面にはね返って、この一−三月の金融をどうやりくりするか、こういうことが一番心配になっていたわけです。ことに金融引き締め政策政府のこの金融指導、あるいは日銀窓口規制、あるいはまた、日銀のさらに窓口引き締めを二〇%前後前年度同期に対して引き締めておるという影響などを考えたときに、特に石炭産業に対する金融措置というものが非常に心配されていたわけでありますが、とにかくこの一−三月の間切り抜けたということは、これは深刻な事情をはらみながらも、どういうからくりかでとにかく切り抜けたということは、もちろん通産省石炭局協力もあったと考えておりますが、最近の金融事情について、どのような歩み方をしておるのか、この点ひとつ局長から御説明を願いたい。
  10. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 田畑先生おっしゃいますように、石炭鉱業は、ことに大手会社につきまして、当面の資金ぐりというものはたいへん苦しい状況でございます。かねがねお答えしておりますように、四十二年度再建整備計画に比べまして非常に大幅な赤字になる状況でございまして、再建整備計画で平均二百八十三円の赤字と四十二年度は見ておりましたものが、大体五百円前後という状況に相なっております。しかも、この状況を中心にして四十三年度を見ましたときの損益状況も、似たり寄ったりという状況に、推定で相なるわけでございまして、このような実態から見ますと、金融機関石炭鉱業に対して融資を渋るということは、いわば金融サイドから見れば当然のような気がいたすわけでございます。四十二年度の第四・四半期につきましては相当どもも苦慮いたしまして、何とか切り抜け得ましたのは、財政資金の支出をやりましたこと、それから合理化事業団で若干の会社につきましては融資保証制度を思い切って使ってみたということ、それから金融機関に対してそれぞれ協力を依頼して切り抜けたわけでございます。これには企業側も、たとえば担保の積み増しをするというようなところで精一ぱい努力をなすったおかげでございまして、これから先の資金繰り、これを考えますと、御指摘がございましたように、引き締め基調は変わりがない状況でございますし、各社の担保余力というものもほとんど底をついておるという状況でございますので、四−六の資金繰りあるいは年度内資金繰りというものには相当の困難があろうかと思っております。しかし、合理化事業団なり開銀の融資というものをある程度先行させるということによりまして、これらの融資をてこにして市中金融を引き出すということで鋭意努力いたすつもりでございます。ここいらになりますと、おそらく個別の資金繰りについて相当きめのこまかい措置をわれわれとしてもやらざるを得まいと考えておるわけでございます。
  11. 田畑金光

    田畑委員 いま局長お話にありましたように、再建計画においては四十二年度大手十七社について見た場合に、対策後の純損益赤字が二百八十三円。四十三年度マイナス百九十七円、四十四年度マイナス八十五円、四十五年になればマイナス二円でまあとんとんという経理計画に基づいて出発したわけでありますが、その初年度マイナス二百八十三円がマイナス五百円をこす、こういう状況に立ち至っておるわけであります。しかも、一般的な経済状勢推移を見るならば、特に四−六月の間が金融面においても一般的にも引き締めがさらに強化されるであろうし、また、日銀総裁の発言などによりますと、さらに強化するということをはっきりいたしておるわけであります。幸い最近の貯炭状況というのは一時のようなことでなくて、おおよそこれは正常の貯炭ということになると考えておりますが、しかし、これからいよいよ夏場に向かうというようなこと、あるいはまた、春闘に伴う労働者賃金の引き上げも検討しなくちゃならぬ、当然考えねばならぬ、こういうことなどを考えたときに、あるいはまた、物価の一般的な値上がりを予想したときに、これが石炭経営上のもろもろのコストにはね返ってくることは明らかであるわけでありますが、これから先の金融措置について政府としてはどのような手を打つ考えであるのか。ことにことしの予算については、いわゆる総合予算主義ということをとって、年度補正を考えないというような方針政府はとっておるようでありますが、いま局長の答弁にありましたように、一−三月については政府財政措置によってとにかく切り抜けた。昨年の暮れの臨時国会政府としても財政措置などを講ずることによって、とにかく石炭についてもこの一−三月を切り抜けたわけでありますが、こういうようなことを考えたとき、今後この総合予算主義という、財政硬直化に原因する予算の追加をやらないなどというようなことになってまいりますと、石炭金融というものは一体今後どういう方法で打開していくのか、こういうことを強く憂えるわけであります。ことに最近の傾向を見ますと、炭鉱借り入れ金というものは、大手を見ますると、これは中小も同様かと思いますが、財政資金に比重がぐっとかかってきておるわけですね。一般市中銀行というものはもう明らかに手を引いておるというのが今日の状況だ、こう考えておるわけです。こういうことに対して一体政府としては今後どういう措置を考えてやっていこうとするのであるか、この辺いま一度今後の方針なり計画なりについて御説明をいただきたいと思います。
  12. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、四十三年度資金繰りには私自身非常な困難性があるという心配をいたしております。お説にございましたように、大手融資につきましては大体六対四の比率で財政のほうが大きい状況でございます。ただこれは、あくまで財政市中とのコンビネーションで金融は処理されるべきものでございますので、財政資金を出しますときに、その機会市中と十分話し合って金融機関協力を得ながら進めてまいりたい、かように考えております。  もう一つ年度内補正をやるのかやらぬのかという点がございましたが、金融に関しましては、予算と申しますよりは財政投融資の問題でございまして、予算補正なしということで今度の特別会計でも若干の予備費を計上するという形で進んできておりますから、これは政府全体の問題としてなかなかさようなことはできにくいのではないか。財投のほうがどうなりますか、これは実態がまた放置できないようなことでございますと、実績として四十二年度相当財投補正石炭鉱業に関しましては行なったわけでございますので、その際また政府部内で御相談していただくことになるのではなかろうかと考えております。全体の基調補正を組まないということで進んでおりますので、いまの時点でお答え申し上げるのは不適用ではなかろうかと考えます。
  13. 田畑金光

    田畑委員 いまの時点局長が答えられるというのはその範囲だと私も承知しておりますが、いずれにいたしましても、四十二年度相当財投補正を組んでとにかく一−三月の炭鉱金融措置も一応のめどがつけられたわけでありまするから、財投に関する限りは、四十二年度予算と四十三年度予算を比べますと、四十三年度財投は前年度に比べますと、まだ少ないわけだし、低いわけでありまするから、こういうような問題については今後ひとつ石炭実情に即して考慮を払うことを強く希望しておきたいと思っております。  さらにこれに関連して、私は、いま申し上げた労働者賃金ベースアップ問題等についても、一応この再建計画経理基礎には年々七%、こういう前提に立って立てられておるものと考えておるわけです。しかし七%が七%で終わっておるのか、あるいは臨時的な手当などを加えて七%以上になっておるのかどうか。この点は、ひとつ四十二年度について、昨年の炭鉱労働者賃金ベースアップは何%になっておるのか。御承知のように、昨年、一般産業労働者の賃上げは平均して一二%、こういわれておるわけです。これに比べますと、著しく低いというのが炭鉱労働者ベースアップ実情になっておるわけです。今日の石炭産業を維持するための大きな問題として、労働力確保ということがなされておるわけです。しかも労働力確保については、四十一年の例の七月の答申の中において、いろいろ炭鉱労働者の雇用安定のために、環境整備であるとか、あるいは炭鉱医療問題の改善であるとか、住宅の近代化措置であるとか、いろいろなことがうたわれておるわけでありますけれども政府は口に労働力不足だ、労働力確保が大事だ、こういうことをしばしば申しておりますけれども、具体的に何一つ実効のあがる成果を示していないのが実情です。たとえば、昨年から炭鉱労働者年金制度というものが発足いたしましたが、年金制度実態についても、まことにこれは魅力の薄いものであります。しかもこれを強化するためには、いまの石炭企業経理実態では、トン当たり四十円の負担ということも相当重荷になっておるわけで、せめて私は四十三年度予算措置の中で、それに見合うぐらいの措置は当然見るべきであるし、それぐらいの措置はとられるものだと期待していたにかかわらず、現に何にもなされていない。このことは私は、局長も率直にお認めになると考えておるわけでありまするが、こういう面について、今後政府としてはどういう具体的な手を雇用安定について打たれるおつもりであるのか、方針をひとつ伺っておきたいと考えます。
  14. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 御指摘のように、労働力確保対策は、現在の石炭鉱業状況から見まして非常に大切な事項であり、また非常にむずかしい事柄でございます。政府といたしましても、ただいま不徹底だという御指摘はいただきましたけれども特別年金制度等を採用いたしまして、炭鉱労働力確保には努力をいたしてきた状況でございます。しかしながら、ただいまお話しがございましたように、減少傾向というものはなお多大の懸念を持って見ざるを得ない状況でございます。今後の問題として、たとえば社宅等生活環境あるいは技能教育といった技能を持った労働力確保といった面に相当配慮を加えなければ、石炭鉱業の真の安定は労働力面からくずれるのではなかろうかという心配をいたしておるわけであります。ただ、施策といたしましては、石炭鉱業労働者だけについて他とのバランスを全然失するようなことを国の予算でやるということは許されないところでございます。より基本的には、やはり石炭産業相当労働条件確保できるような支払い能力を持たせることが基本でございます。その意味合いにおきまして、いろいろな面から出ております石炭鉱業対策も、ほんとうの意味での安定対策というものを欠いておりますと、個々の労働対策だけで問題が解決するとも考えておりません。より基本的な石炭鉱業安定策というところにただいま関係各位の御意見も集約されておるわけでございますので、この問題の中で労働問題も考えていきたいと思っておる次第でございます。
  15. 田畑金光

    田畑委員 これはむしろ鉱山局長にお尋ねするのがほんとうでありますけれども、今後の石炭対策財源である原重油輸入に基づく関税財源、これはどのような推移石炭局としては見ておられるのか。わが国の原重油輸入状況というものは毎年一千五百万キロリットル、あるいは昭和四十一年から四十二年を見ますと、四十二年度はかれこれ二千四百万キロリットル以上の輸入増ということになっておるわけであります。したがいまして、原重油輸入がふえていくということは、それだけ石炭財源としての金額もふえていくということになるわけでありまするが、今後どういう見通しを持っておられるのか。本年度予算は五百九十六億というのが石炭予算でありますが、これはほとんど全部原重油関税でまかなっておるわけですね。まあ数年先とは申しませんが、四十四年度幾らぐらいに当たるのか、四十五年度幾らぐらいを見込んでおるか、したがって、石炭財源としては来年度はこれだけふえる、四十五年度はこれだけふえる、こういうことになろうと考えております。その見通しについて明らかにしていただきたいということが一つ。  それから、結局政府としては、このきめられた予算の中で石炭産業の安定をはかる、あるいはその予算の中で、先ほど私が取り上げました労働者の雇用安定についてのいろいろな施策を講ずる、その予算財源範囲内において新しい施策を講じていく。昨日大臣は、四月中には石炭鉱業審議会に諮問する、こういうことになっておりまするが、その諮問に基づく今後の石炭政策というものは、要するに、この石炭財源ワクの中においてどうするか、こういうことを審議会審議していただこうというのが政府方針なのかどうか、この辺をひとつ明確に答えておいていただきたいと思うのです。
  16. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 原重油関税収入見通し、逆に申しますと、原重油輸入見通しというのは想定がたくさんございまして、先生もおっしゃいましたように、鉱山局でいろいろな作業はいたしておるようでございますが、私のほうは公式には固まったものをまだ得ていない状況でございますので、お答えするのが適当ではなかろうと思うのでございますが、大ざっぱな私の承知しておる感じといたしましては、この先を見込みました場合、大体平均して年率一〇%ぐらいの伸びで考えておってよろしいのではなかろうか。これは大づかみに申しますと、来年以降近い時点伸び率のほうが高くて、先へいくと少し寝る、落ちるという感じ担当局は持っておるようでございます。それを五、六年で見ましておしなべて見れば、おそらく一〇%前後のものではなかろうかと思っております。  それから第二点の次の政策を考える場合に、原重油関税収入、これによって石炭特別会計財源の中でまかない得るものとして案を考えるのかどうか、こういうことでございますが、私ども、これは事務の立場ではございますけれども、そういう前提で考えざるを得ないのではなかろうか。理論的に申しますならば、特別会計ができましたときの経緯にもございましたように、需要が大きくて収入が小さければ、一般会計の繰り入れば当然に考えていい。これはできないということではないということにはなっておりますけれども、ただいま申しましたように、四十三年度で六百億近いものになる。それから先これはいろいろまた過程がございましょうけれども、一〇%ぐらいの年率伸びていくということになりますと、国の財政の中でも相当大きな財源でございますので、これを上回る対策費が必要だというような案では、なかなか政府部内の意見がまとまりにくいんではなかろうか。したがって常識的に言えば、その収入の中でものを考えていくというのが普通であろうと私は考えております。
  17. 田畑金光

    田畑委員 昨日の石炭鉱業審議会の経過を見ますと、四十三年度出炭計画というのは四千七百七万トン、こういう計画で検討されておるようでありまするが、これは結局四十二年度出炭実績に横ばいということになろうと考えておるわけです。そうしますと、ここに約六百億の財源がある。年々一割くらいは原重油輸入増によって財源がふえるであろう。そうしますと、その財源ワクの中で四千七百万トンということを考えたならば、一応経理の面から見ても石炭が安定するというような前提で、石炭鉱業審議会にあのような案を出してこられたのかどうか、この点はどうなんですか。
  18. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 昨日実は石炭鉱業審議会合理化部会雇用部会連合会を開き、きょう午後需給部会を開くことにいたしておりますが、これはどちらかと申しますと、法律定めによりまして、四十三年度生産需給を確定しておかないと、予算でつきました金額等実施に移し得ないという制約がございまして、これをとにかく決定しておこうということで、合理化実施計画をきめておるわけでございます。端的に申しますと、たとえば法律によりまして、この合理化実施計画でスクラップする山の規模等定めませんと、逆に閉山交付金が出せないという仕組みに相なっておりますので、その意味合いで昨日開き、きょうも需給部会を開くことをいたしておるわけでございます。その際四千七百万トンと考えましたのは、予算の執行にからむことでもございますし、なるべく実情に合ったものにいたしたいということでございまして、四十二年度実績は、先生承知のように、上期の出炭減が非常に大きうございまして、下期は相当回復して、おそらく一月から三月ぐらいの実勢をとりますと四千七百万トンよりはもう少し大きいものであってもおかしくないという状況でございますが、季節修正をやってみたり、上期の状況も少し判断に加えまして検討いたしました結果、大体四千七百万トンという考え方でいいのではなかろうか、こういうことで定めたわけでございます。その際、先ほど申しましたような閉山規模等につきましては確定しておるものだけにとどめて、四十二年度に比べまして非常に少ないスクラップで考えております。このことは、いま申しましたように法律上の制約もございまして、やらなければならぬものを当面処置したということでございまして、将来の石炭鉱業をどう持っていくか、いわば四十四年度以降の基本問題とはあまり関連づけないで、実勢ベースで考えていこうということで処理したものでございまして、これにつきましては予算なり——四十三年度予算とはもちろん関係いたしますが、四十四年度以降の予算なりあるいは政策なりというものとの関連づけはいたさない方針で、当面の問題として処理をいたしたのでございます。
  19. 田畑金光

    田畑委員 私はあと大橋委員質問がありますのでもう幾ら質問はいたしませんが、ただ、まだしかもこれからやろうとする段階にあるわけです。それからまた、今後の石炭政策についてこれから答申を求めようとする時期に立っておるわけです。そういうときに、すでに昨年の実績に応じて四千七百万トンの前提で四十三年度計画が立てられたということは、昨日るる申し上げた五千万トン体制を維持するという前提一つ政府政策を前向きに進めてもらいたいという私の持論からすると、非常に不満です。しかしそれはまあそれとして、ただ、昨年は五百六十億の財政措置、今年は約六百億の財政措置石炭施策というものが行なわれるわけでありますが、この六百億なら六百億の財源の中をあれこれ検討してみますと、石炭をもっと前向きに発展させるという点から見るならば、限られた六百億の予算運用措置においてもっと考慮すべき余地があるのではないかという感じを強く受けるわけです。たとえば初年度計画でもうくずれてしまったと言われておりますが、この再建計画に基づく大手十七社とこうなっておりますが、これの損益計算の基礎になっておる政府のいわゆる諸般の対策に基づく対策効果、これはどれくらいあげておるかというと、総額にいたしまして百六十六億五千八百万ですね。その内容は何かと申しますと、例の坑道掘進の補助金であるとか、安定補給金であるとか、近代化資金、開発資金、整備資金等々、あるいは機械貸与もその中に入っておるわけでありますが、こういうものがいわゆる政府対策効果として企業経理にプラスしておる要素であるわけですね。御承知のようにあの六百億の財政措置の中には、離職者対策であるとかあるいは鉱害復旧等々、これが相当金額を占めておるわけです。もちろん石炭に伴って発生した問題でありますから、これを積極的に進めることについては何人も異議を差しはさむものではありませんが、とにかく現存する石炭を立て直して、国民経済にもっと貢献する石炭産業を樹立するためには、この限られた予算の運用についてもっと考慮する必要がありはしないか。すなわち、言いたいことは、やはりこの予算は積極的に石炭の前向き施策に充当して、石炭のあと始末に伴うものについては、できるだけ公共事業等々によって、一般会計によって処理するということなどが当然検討されていいんではないか、私はこういう感じを持っておりますが、この点についてどのようなお考えか。これはひとつ政務次官からお聞きしておきたい、こう思いす。
  20. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 御指摘の点は、限られた予算、しかも石炭企業が直面しておる困難な諸問題、こういったものを考えた場合、予算執行にあたっても効率的な使い方をせよという、うしろ向きな金の使い方は極力控えろという、こういう御趣旨だと思うのでありまして、御趣旨の点は全く同感でございます。うしろ向きということばは適当であるかどうか。いわゆる公害対策とかいろいろな問題がございますけれども、これも実はほうっておけない問題でございまして、こういったものをひっくるめまして、これもまた石炭鉱業審議会の場においていろいろな角度から御意見を拝聴して御指摘の点に沿うように今後も善処していきたい、このように考えております。
  21. 田畑金光

    田畑委員 私の質問を終わります。
  22. 堂森芳夫

    堂森委員長 大橋敏雄君。
  23. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、ただいま議題となっております石炭鉱業経理規制法の問題について、またそれに関連いたしまして四、五点お尋ねしたいと思います。  いま、田畑委員のほうからもいろいろと質問がありましたので、大体のアウトライン的なものはつかめたわけでございますが、私は、また立場を変えてお尋ねしてみたいと思います。  要するに、石炭鉱業に対して、他産業に比べますと、相当手厚い国の助成措置が講じられております。したがいまして、その経理内容について、とにかく放漫になってはいけないという立場から、国として当然その監督あるいは指導に留意していくという要請からこの法律が制定されたと思います。たしか昭和三十八年に制定されたということでございます。したがいまして、指定会社となったものについては、事業計画を届けさせるとか、あるいはその改善を命ずることができるとか、利益処分の認可並びに業務及び経理の監督を実施していくということになっておりますけれども、先ほどのお話を聞いておりましても、実際問題として、この経理規制法がどれほどの実効をもたらしているか、非常に疑問を抱く一人であります。そういう意味から、これがある意味ではざる法的に、あるいは空文化されているのではないかというような感じを受けますので、その点について説明を願いたいと思います。
  24. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 先ほど田畑先生にお答えいたしましたように、この法律及び再建整備法によりまして、各社の経理が適正になるようにということにつきましては、私どもは、それぞれの条項に従いまして、法律実施を誠実にいたしておるつもりでございます。石炭鉱業がいま置かれております状況は、これらの経理規制が適正に行なわれているかどうかということとは、かなり実態的に違ったものが基本にございまして、経理の適正化をはかっておりましても、企業としての経営の苦しさが出ているという実態はいなめないわけでございます。私どもは、実態的に申しますと、この法律によりまして経理規制を適切に行なわしめることを確保すると同時に、その仕事をやりますことによりまして、企業の置かれております。あるいは石炭産業の置かれております経営的な実態というものを十分に把握いたしまして、いまいろいろ御議論がございますように、どこに無理があるかということを突き詰め、将来の基本的な安定策というものを求める手がかりにもいたしておるわけでございます。これらの法律がございませんと、法律的根拠に基づいて各社の経理状況というものを知る手がかりが失なわれるわけでございます。  御承知のように、たとえば再建整備計画でございましても、経理計画の基礎になっておりますのは生産の計画でございます。生産の計画がくずれてまいりますと、当然に経理計画もくずれてくる。こういうことでございまして、本法の施行と、これを適切にやっていくということ——石炭産業が一向によくならないということとは、経理のもとになっている生産の実態が狂っていることだというように御理解願えればよろしいのではないかと思います。
  25. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 政府は、去年、一千億円の肩がわり措置をとられたわけでありますが、それには、大手、中小ともにその恩恵に浴したわけでございますけれども、その手始めとなったのが、私の感ずるところでは、昭和四十年六月、通産大臣が、石炭鉱業の非常に険悪な状態を察して、石炭鉱業審議会への諮問なさった。そのときに審議会は、個別石炭企業経理状況の詳細な検討を前提にして、慎重な検討をなされたというふうに聞いております。そして、四十年の十二月に中間答申があって、四十一年の七月に答申されたそれを受けて、八月には閣議決定されたというわけでございますが、そのときに、出炭規模が五千五百万トンが五千万トンに縮小され、また一千億円の肩がわりがなされたという経過であろうと思いますが、私がここで聞きたいことは、そのような一千億円の肩がわり措置を受ける対象炭鉱会社ですね。それは、当然この経理規制法に基づていろいろと調査なされて、その内容を掌握されたものが基盤となり、裏づけとなって、さらに検討を加えられて決定したと思うわけです。ところが、実際問題として、その一億円の肩がわりがなされてわずか一カ月後に、大日本町炭鉱が急遽閉山してしまった。こういう現実を見ますと、経理規制法というものがあっても、いま局長さんは、生産の立場からものごとをとらえているために、生産の状態が変われば当然経理内容も変わるという、これは当然のことでありますけれども、しかしながら、私はもっと実質的に、現実的にこの山が将来少なくとも十年生きなければならぬ見通しが立つか立たないかということになれば、わずか一カ月後に倒れていくような山を対象にするということは非常にずさんではないか、怠慢であったのではないか、こういう感じを持つのですけれども、その点はどうでしょう。
  26. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 大橋先生ただいまおっしゃいましたことは、私ども立場を離れまして、公正に、冷静に考えてみますと、御指摘は当たっておるのではなかろうか、私ども自身が相当反省すべき点があるのではなかろうかと思っております。もちろん先ほどお答えいたしましたように、肩がわり会社は、肩がわることの要件がむしろ借り入れ金が非常に大きくて苦しいということが一つの条件でございますから、非常に経営の安定しておる会社に対して肩がわりをいたしたわけではございませんので、肩がわり会社というのは、程度の差はございますけれども、いずれも経営上ウイークなポイントをずいぶん包蔵していた会社でございます。しかしながら、再建整備計画を認定して肩がわりするということのためには、先生おっしゃいましたように、将来に向かってその計画実施していけば安定し得る、再建し得るという見通しがなければ、これまた肩がわりをいたすべきでないことは当然でございまして、その意味での判断を結果として誤っておったではないか、こういう御指摘に対しましては、私どもも率直に反省いたさなければいかぬのではないかと思っております。大日本の場合は、当委員会でも御報告いたしましたように坑道維持に非常な支障を起こしまして、異常盤圧によって相当の期間生産が出ないという状況が続きまして、これが私どもの判断と全く狂った条件の相違でございまして、これが急激な当該会社経理の破綻を来たしたゆえんでございまして、幾らか御理解をいただきますならば、やむを得なかった事情もあると思います。冷静に第三者的に見まして、私は大橋先生の御指摘は当たっておる、私どもはやはり今後の仕事につきましては相当慎重に、堅実に考えていかなければいかぬのじゃないかと思っておる次第でございます。
  27. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、いまさら大日本炭鉱のことを蒸し返して申し上げるわけではないのですが、石炭再建にあたって、こういう経理問題というのは非常に重要な問題でありますので、そのときの状態をもう一回ここで私なりに申し述べてみたいと思います。  大日本炭鉱経営不振の実態というのは、すでに昭和四十一年に給料が遅配していた。そのあくる年の四十二年の九月には四千五百万円の資本ショートを来たしていた。そこで会社としては、通産省に毎日のように泣きついてきたわけですね。ところが通産省としては、いわゆる再建計画の中にこの大日本炭鉱を入れているというメンツの上から、何とかしなければならない、そういうことで石炭鉱業合理化事業団を通して十一月には約五千万円の安定補給金を支払いますからというような意味をまず相手に与えて、そして地元の常陽あるいは東邦の両銀行につなぎ融資を依頼した、こういう事実があると思います。ところが銀行側は十月以降の資金援助については、政府系の金融機関財政資金でやってください。いわゆるていよく断わったというわけですね。したがいまして、もう大日本炭鉱としてはこの九月は乗り切れたとしましても、年内には一億五千万円程度の資金不足を生じる見込みが立っていたということで、非常に悩んだわけですね。地元の市中銀行かはら見放されるし、そういうことで再び社長以下経営幹部が財政資金を仰ぐために通産省参りをやった、繰り返したというわけですね。そのときに通産省は、あえなくこの大日本炭鉱を見放してしまったわけです。実際問題としまして、大日本炭鉱の倒産が決定的となった十月の十七日は四百五十万円の不渡りを出しております。それから翌々日の十九日は二千百万円の手形の不渡りになっておりますね。したがいまして、負債総額が三十億円あるいはその累積赤字が約十億円だ、このようにもいわれておりました。私はここでもまた繰り返すわけじゃありませんが、この経理規制法があるからには、それに基づいてその目的どおりにもっと力ある運営を行なってもらいたい。これは大臣にひとつ答えてもらいたいのですがね。
  28. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 大日本炭鉱のケースは大臣御就任の前でございまして、私が石炭局長になりました直後でございまして、取り立てて大臣には御報告してありませんので、あと通産大臣としての心がまえについては御答弁いただきますが、大日本炭鉱状況につきましては簡単に私から……。私のほうとしましては、全力を尽くしまして大日本の再建に当たったのでございますが、先生指摘のように常陽、東邦に見放されたということが、最終的にはつまづきになったわけでございます。
  29. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、その大日本炭鉱の事柄を通して、経理規制法があるにもかかわらず、ある意味ではざる法になっているのではないか、あるいは空文化しているのではないか、生きた運営がなされていないのではないか、それを認めて今後経理に対しては厳重なる立場で進んでいく、このような趣旨の答弁をいただければけっこうなんですがね、大臣
  30. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御趣旨の線に沿うて今後監督上遺憾なきを期したいと思います。
  31. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 規制法の中に罰則規定があるのですけれども、いままでこの罰則規定に該当した会社はありましたでしょうか。
  32. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いままでございません。
  33. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは次に進みますが、石炭産業というものは、いまもう生きるか死ぬか、この深刻なぎりぎりの線まで追い詰められてきていると思うんです。したがいまして、新聞などでもうすでに発表になっておりますが、植村構想だとか、また、きのう当委員会で説明がありました社会党から出ました国有化法案、こういうものはいわゆる石炭産業の最終段階の抜本対策であろう、貴重な成案だと私は思いますが、政府といたしましてもこれを慎重に検討し、右にするか左にするか、これは急がねばならぬと思うのです。そこでお尋ねしたいことは、過去三回にわたって答申ないしは抜本対策が打ち出されながら、結果的には再建策とはなり得ず過ごしてきたわけです。後手になった、後手になったという悪評を買っておりますけれども、これはいい意味では慎重を期し過ぎたためにその機を逸した、いわゆる再建のチャンスをのがしたのではないか、あるいは情勢判断が甘かったのではないかと、両面が考えられるわけでございますが、そういう点について大臣はどうお考えでしょうか。
  34. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 結果から見ると、十分な情勢判断ができていなかったということだろうと思います。
  35. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 こういうことわざがあります。安もの買いの銭失い、つまり金を惜しむがゆえに結局無価値なものを手に入れたということわざでありますけれども、この石炭産業については特に早急に、またチャンスをとらえて打つべき手を打つ、思い切った手を打つべきである。たとえばこの一千億円の肩がわりにしましても、これが昭和三十四年度ころにこのくらいの思い切って措置がとられたならば、あるいは石炭界の情勢というものは百八十度転換した方向に進んだのではないか、私はこう思うのであります。したがいまして、社会党の今度の国有化案も、その内容についてはまだまだ検討すべきだとは思いますけれども、漸新な、画期的な内容だと私は思います。そういう方向に対して大臣はどうお考えになりますか。
  36. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 十分に御説明を拝聴いたしました。石炭産業の抜本的更生のための一つの重要な参考資料だと考えております。
  37. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 参考資料程度でしょうか。私はもっともっと真剣に取っ組んでもらいたい。  時間がありませんので次に移りますが、出炭規模についてお尋ねします。  これはまず中川局長さんに、中川局長さんがある日このようなことをおっしゃったそうですか、唯一の国内資源である石炭が不要というのならば簡単だ、しかし反面、石油だけに頼っていけば、日本のエネルギー源は外国の言うなりにならざるを得ない、こう話されたということを聞きまして、私は同感する一人でございます。国内資源の確保あるいは国際的経済の防波堤という立場から、日本のエネルギー源が守られ、しかも国際収支のバランスをとる上からも、どうしてもこれだけは必要だ。その出炭規模はどのくらいの位置づけ、いわゆる総合エネルギーの中における石炭の位置づけは、論理的に考えた場合どのくらいなければならないのか、これをお答え願いたいと思います。
  38. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 エネルギーの安全保障という観点でございますとか、国際収支の観点あるいは地域経済との関係でございますとか、これらの要素をとりますと、私どもの立場としては、石炭出炭規模をなるべく大きなものとして維持したいという気持ちは持っております。ただ、それだけの生産をいたします上にどれくらいの労働力が必要であり、その労働力ほんとうに手に入るかどうかという問題でございますとか、かりに炭が出るといたしましても、上に非常に稠密な生活環境がある場所でございまして、鉱害量を計算すると、炭を掘るよりは掘らないほうがいいというような場所もあり得るわけでございます。物量的に石炭が賦存いたしておりましても、それを採掘し、掘り出す上での費用が、社会的な意味での費用も含めまして非常な大きなものでございますと、これはまたほどほどに考えなければならぬわけでございます。そういういろいろな多元的な要素から出炭規模というものは定められるべきものでございますので、これを何か電子計算機にかけてすらすらと規模が出るというふうに、いわゆる計算上出てくるものではございませんので、いま申しました出炭規模を大きくしなければならぬ理由、あるいは小さく考えざるを得ない理由というもの、総合的に勘案していかざるを得ないと思っております。その意味におきまして、昨日も大臣から、規模の問題も含めてこの際基本的にひとつ審議会で議論していただこう、かように御答弁申し上げたわけであります。
  39. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 審議会で検討なさるということでございますが、とにかく日本のエネルギー源は外国の言うなりにならざるを得ないという立場から、ぎりぎりの線、この程度の規模を持っておらねばならぬという、その点を聞きたいわけです。
  40. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 私には私なりの数字も頭の中にございますけれども、これから権威のある方々の御意見を聞こうということでございますので、予見を与えるというようなことではなくて、皆さんの意見をすなおに聞いていきたいと思います。
  41. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実質的な考え方からいきまして、最近の出炭の動向、推移から見ると、いわゆる出炭規模はどのくらいに見られておるのか。
  42. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 先ほど田畑委員にお答えしましたように、四十三年度の規模としては四千七百万トンということに落着するであろうし、これにもかなりの努力が要る、かように考えております。  それから先のことになりますと、たとえば原料炭をなるべく確保したいという気持ちを一つ持っております。地域別の構成がだんだん北のほうにウエートが出てまいりまして、輸送費のことも考え合わせなければいかぬという問題もございます。それからサルファ分の多い炭と混炭すべき炭というものも念頭に置かなければいけませんのは、いろんなことを考えざるを得ないわけであります。  先ほど先生から御指摘ございました生産のにない手になる会社経理状況というものも、もう一つこの時点ではやはり見直してみて、ほんとうに生産のにない手として考えるに値するかどうかというようなことも考えなければいかぬと思いますので、いろいろ多角的に、慎重に皆さんの御意見を聞きながら考えてまいりたいと思います。
  43. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 出炭規模を何千万トンにするかということは非常に重大な問題だと思いますが、昭和三十七年が五千五百万トン、それから四十一年になりますと五千万トン、そして今度は四千七百万トン、ぐんぐん縮小されていくわけですね。こういうことになりますと、働いている立場から見ても、あるいは企業のほうから見ても、需要のほうから見ても、非常に不安を抱くのではないか。やはりここはもっと本格的な検討の末にがっちりとした位置づけをやるべきである、私はこう思います。  そこで、まず出炭規模に対するその位置づけというものが、労働者の労働意欲に直接影響するのではないか。したがいまして、今日のようにぐんぐん縮小されていく姿を見ると、それだけで労働者は労働意欲を喪失していくということになって非常に悪い状態におちいっていくのではないか、こう私心配するものであります。  そこで立場を変えまして、労働意欲の低下、これは石炭産業においては非常に著しいものがございますが、これまた大日本炭鉱の話になりますけれども、閉山通告を受ける五カ月前に、これは五月五日だそうですか、すでに山元では組合員の投票で閉山を決定しておった。ところが労働組合の幹部の話によれば、この日の大会は、ほんとういえば会社側の再建原案を承認するかしないかという大会であったというわけですね。しかしながら、再建よりも閉山を希望する従業員が三分の二を占めていた、こういうことから大会の目的が急遽早変わりして閉山を決定した大会になった、こういうふうに聞いているわけですが、これこそ石炭産業に働いている人たちの心境あるいは実態、これを端的にあらわした実例ではないかと私は思うのです。政府も今度こそは本格的な真に恒久的な安定策を確立しなければならない。そうしないと先ほど局長さんがおっしゃっていたように、労務倒産、これが私は発生するのではないかと心配しております。これについて石炭の位置づけとそれから労働生産力の確保、これには特段の配慮を払ってもらいたい、こう思うのですが、大臣はこの点どうお考えでしょうか。
  44. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 やはり労働意欲の高揚ということは私は環境の整備だと思います。労働環境をよく改善をいたしまして、そして労働意欲を高揚させるということが一番じゃないか。ただいたずらに生産規模の大小ということが労働意欲の高揚ということになる場合もあるでしょうし、ならぬ場合もある。すべての場合に共通する問題は労働環境の整備改善であると私は考えます。
  45. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに画期的な具体的な対策が打ち出されない限り労務倒産は免れないという心配ですが、具体的にまず労働者賃金について、従来の長期計画の計算基礎となっておりますのは七%の賃上率だと思いますけれども、これは実質的に現実に即さないのではないか。そこで何らかの財源措置を講ずべきだと私は考えておりますが、こういう点についてどうお考えでしょうか。
  46. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 大橋先生おっしゃいますように、石炭産業がどうなるのかわからぬ、何回政府が考えてもそのつど計画が変わっていくということが非常な不安定感を与えておるのでございまして、今回長期的な安定策を考えますゆえんは、大臣もお答えになりましたように、かりに大きい規模をいって、労働者の感覚からいって、そんな規模はとてもならぬと、こう思われたのじゃかえって不安感が増すわけでありまして、最悪の場合でもこうだ、こういう手だてで考えろということの言えるものにすることがいまの御質問の趣旨からいっても一番当たるのではなかろうかと私は考えております。そのためには全体として不足がちな労働力でございますので、全石炭産業として労働力確保するという考え方は社会党の案の中にもそういうお気持ちがあらわれておるのだと思いますけれども、何かの形でこれはやはり考えなければいかぬ。一社一社が一〇%ずつ労働力が足りぬということになりますと、生産力としてはこれに相当上回ったものが足りないということになって、計画がくずれるのではなかろうかと思います。そういう要素は十分考えなければいかぬと思います。それから賃金は確かに大きな問題でございますが、これに対しましても無理な計画を組んだために考えた賃金も払えないという実態よりは、確実に払えるという形態を確保することが必要だろうと思っております。七%につきましては実情から見ていろいろ御議論もございますことは承知しております。したがって、今後の審議会審議等につきましては、そういう要素も入れていただいて、無理のない計画、くずれるあるいははずれることの幅がおおよそ予見し得るようなもので、そのつど計画を変えていかなければならぬというようなものでないことを私どもとしては念願したいと思うわけでございます。
  47. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では次に、炭価の引き上げについてどのようなお考えであるかということを尋ねてみたいと思いますが、その再編成あるいは機械化の充実は今後の石炭政策の上から当然考えられると思います。しかし、いかに体制を整えたとしてみても、物価や賃金の上昇率から見て、はたしてどこまでそれを吸収できるか、こういう心配が出てきます。いわゆる限度がありますからね。どうしても収支の安定策としては、その炭価を引き上げる以外にはないのじゃないか、私はこういうふうに思うのです。特に国内資源の保護という立場からも炭価の引き上げは必要ではないか、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  48. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 前に井手先生の御質問にも同様なことがございましてお答えしたのでございますが、これから先の石炭対策を考える上で炭価引き上げが可能だという前提に立ちますと、いろいろと問題解決がやさしくなることはそのとおりでございますけれども現実に電力についていいますと、輸入の油との間の値段の差がある。鉄の需要に対しましても原料炭で約二ドルくらいの値差があるという状況でございますので、これは需要家のサイドからいってはなかなか値上げという問題は容認されないと思います。逆にこれを政府の手でということになりますと、現在あります価格差補給でございます増加引き取り交付金制度というものがございますが、これをふやさなければならぬことになりまして、いろいろの対策を打つ財源がまた食い込まれることになるわけでございます。いろいろ問題がございまして、これらのこともひとつ念頭に入れて御議論いたされるだろうとは思いますが、なかなかむずかしいというのが実情でございまして、御承知を願いたいと思います。
  49. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 石炭需要というのはいわゆる政策需要でございますので、炭価の引き上げということは需要業界は特に反対することは明瞭だと思いますが、と言いましても少なくとも消費者物価にスライドするくらいまでは上げるべきではないか。毎年平均二%ですか上がっていると思いますが、その程度の炭価の引き上げは当然していくべきでないか。そういう立場から政府に特にお願いがございます。こうした業界の問題、あらゆる問題を考慮して適切な措置をとられるようにこれは要望します。どうか大臣ひとつお願いします。
  50. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 なかなかむずかしいのですが、十分検討いたします。
  51. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 なかなかむずかしいということはわかっておりますが、そのような措置をとる方向に努力なさるのかどうかという問題ですが……。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう方向に十分検討いたします。
  53. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 特別会計の総ワクの拡充についてですけれども、先ほど田畑委員にも局長さんが答弁していらっしゃいましたのですが、結論的に聞きますけれども、今後漸増していく特別会計財源をすべて石炭予算に投入されるかどうかという問題ですね。自然にふえていくことが予想されますね、重油輸入が。そのワクはその漸増に従って拡大されていくのかどうか。
  54. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 政府全体としてはいろいろ異論のあるところだと思います。少なくとも石炭局長としてはそう考えております。
  55. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いままでの予算の執行を見ておりますと、非ビルド対策費相当金が使われて、肝心のビルド対策費にはきわめて少ないようであった。これはビルド対策費に大いに集中されるように、これも強く要望いたしたいと思います。  それでは時間の関係がありますので、一つお尋ねしますが、四十三年度における純損失の見込み総額は一体どのくらいか。先ほど四千七百万トンという立場でいろいろ計算なさっているようでございますから、そういう立場でけっこうですからお答え願いたいと思います。
  56. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 大手だけでございますと百八十億前後ばかりになります。トン当たりになりますと五百円強になると思います。
  57. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 立場を変えまして石炭企業の全国の累積赤字、いわゆる借金ですね、現在では全部で幾らなんでしょうか。
  58. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 累積赤字は四十二年九月末で約千二百億円強でございます。それから借り入れ金といたしましては二千三百億前後あると思います。
  59. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 二千三百億。たいへんな問題だと思いますが、一切がっさい含めて共同化の問題や国有化の問題が出ておりますので、そういうのを十分検討した上で具体的な、そしてほんとう石炭産業が再建できる方向に進んでいただきたい。以上要望を申し述べて終わりたいと思います。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員長 渡辺惣蔵君。
  61. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 ちょっと一点だけ質問さしてもらいたいと思います。  実は、いまわれわれの手元に配付されています本法案の修正案の項目のうちで突然出てきている問題であります。臨時石炭対策本部は云々という項目がその第二項に出ておりますが、臨時石炭対策本部というのはどこにあるのか、いつできたのか、どういう仕事をしているのか、たいへん重要な、通産省設置法の中で規定をしておるほどの法に基づく臨時石炭対策本部が何であるのか、大臣ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  62. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 昭和三十八年に福岡に設置されました。
  63. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 こういう重大な使命を帯びた臨時石炭対策本部というものが本省になくて一体何で福岡に置かれておるのか。もし福岡に置かれておれば北海道にも置かなければならぬことになるのですが、一体福岡の通産局と札幌通産局との中における補助的な機関なのか、それとも何か特殊な大きな任務があるのか、それはどういう機構なのか、どういう仕事をやっておるのか、これを明確にしておきたいと思います。
  64. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 渡辺先生承知のように、この対策本部は、急激な終閉山に伴いまして起こりますいろんな問題が特に九州には多かったわけでございます。渡辺先生承知のように、石炭全体の趨勢はだんだん重点が北海道に向かってまいりまして、終閉山に伴う問題というのはお気の毒なんですが九州が一手に引き受けているというかっこうでございます。そこで、終閉山に伴う離職者対策問題でございますとか、ことに北海道にはない鉱害問題でございますとか、それから産炭地振興問題これは北海道にもあるわけでございます。これらのことを各省の出先と協力体制をとって円滑に進めていくという趣旨で、三十八年に福岡に置かれたのでございます。北海道にはそれほどやっかいな問題はございません。
  65. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 何人でやっておりますか。
  66. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 三人でございます。通産局長石炭部等の職員を使いまして——私の申し上げました三名は専任の職員でありまして、他は局長以下全部兼務でこの仕事をいたしております。     —————————————
  67. 堂森芳夫

    堂森委員長 本法律案に対しまして、鹿野彦吉君外八名より修正案が提出されております。
  68. 堂森芳夫

    堂森委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。鹿野彦吉君。
  69. 鹿野彦吉

    ○鹿野委員 ただいま議題となりました石炭鉱業経理規制臨時措置法廃止期限等を変更するための法律案に対する修正案の趣旨の御説明を申し上げます。  案文はお手元にお配りしてありますので、朗読は省略させていただきます。  要旨を申し上げます。  原案では、施行期日が「昭和四十三年三月三十一日」になっておりますが、すでに期日も経過いたしておりますので、これを「公布の日」に改め、なお、臨時石炭対策本部はその設置の期限である昭和四十二年三月三十一日がすでに経過いたし、その効力を失っておりますので、臨時石炭対策本部はこの法律の施行の日に新たに置かれるようにいたしたいということであります。  よろしく御賛成をお願いいたします。
  70. 堂森芳夫

    堂森委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  ほかに御質疑もないようでありますので、本案並びに修正案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  71. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに石炭鉱業経理規制臨時措置法廃止期限等を変更するための法律案について採決いたします。  まず、鹿野彦吉君外八名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  72. 堂森芳夫

    堂森委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これを可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  73. 堂森芳夫

    堂森委員長 起立総員。よって、本案は修正議決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 堂森芳夫

    堂森委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  75. 堂森芳夫

    堂森委員長 次回は来たる十日水曜日午前十時理事会、十二時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会