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1968-03-27 第58回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十七日(水曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 堂森 芳夫君    理事 鹿野 彦吉君 理事 西岡 武夫君    理事 野田 武夫君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 池田 禎治君       大坪 保雄君    佐々木秀世君       齋藤 邦吉君    菅波  茂君       廣瀬 正雄君    中野  明君  出席政府委員         通商産業政務次         官       熊谷太三郎君         通商産業省石炭         局長      中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君 委員外出席者         労働省労働基準         局監督課長   藤繩 正勝君     ————————————— 三月二十七日  委員大橋敏雄辞任につき、その補欠として中  野明君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中野明辞任につき、その補欠として大橋  敏雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業経理規制臨時措置法廃止期限等を変  更するための法律案内閣提出第二七号)      ————◇—————
  2. 堂森芳夫

    堂森委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱業経理規制臨時措置法廃止期限等を変更するための法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和四十二年の生産実績も三月末で集計をされるわけですが、過般の委員会で大体その見通しについて承ったわけです。しかも減産最大理由として労務者不足がその大きな原因である、こういう説明を実は受けたわけですが、もちろん今日の炭鉱人手不足、こういう理由一つ生産減理由であろうかと思います。しかしもう一つは、五千万トンの石炭を確保するという前提に立って、昭和四十五年にしかも各炭鉱が自立をする、こういう方向計画が組まれたわけです。しかし、その後のスクラップ計画を見ますと、このスクラップ計画を相当上回って、なかんずく四十五年度肩がわりをして自立安定をする中でも、大手で三菱の古賀山の閉山あるいはまた大日本炭鉱の倒産、こういう問題があって五千万トンの計画処点といいますか、維持炭鉱そのものが消え去った、こういう実は大きな理由があるわけです。したがって、そういう面を総括をして四十二年度の生産実績見通しと、その減産理由というものは、具体的にどういう事由によるか、この際明らかにしてもらいたいと思います。
  4. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 四十二年度の出炭実績は、ただいま先生おっしゃいましたように、今月末の実績を持ちまして、ある時点集計が完了するわけでございますが、大体のところ四千七百万トンぐらいと考えております。若干はこれを下回るかもしれませんが、大体四千七百万トンということに相なるはずでございます。これは合理化実施計画に対しまして約三百三十万トン下回る数字になるわけでございます。これらの減産理由につきまして、非常にはっきりしているものとそうでない、見方によってだいぶ動くものとがございますが、私どもなりに石炭局で見ました内訳を申し述べたいと思います。  一つは、いま岡田先生おっしゃいましたように、予想していなかった終閉山あるいは計画をしておったけれども、その時期が繰り上がったという終閉山の進行に伴いますものが約百万トンとお考えいただきたいと思います。  それからこれはある意味において非常にはっきりした客観的な数字でございます。見方によっていろいろあろうかと思いますが、自然条件の予想以上の悪化によるものを大体九十万トンと考えております。労働力不足によりますものが約五十万トンを考えております。その他スト、災害あるいは原因の解析を十分はっきりした断定のできないもろもろの原因によりますものが約六十万トン、こういうふうにお考えいただければよろしいかと思います。かつて分析をいたしましたときに、計画に対してショートしておりますものを全部原因分析をいたしまして、その集計に対しまして、他面計画を上回る増産をしておるものを差し引いた数字で申し上げたことがございますが、いま申しました数字増産分を差し引きいたしまして結論として三百三十万トンの分析ということで出してみた数字でございます。  お話もございましたように、採炭切り羽機械化が順次増加しておりますために、山たけ、炭たけ炭質等炭層条件でございますとか、上下盤変化、褶曲あるいは小断層の予想せざる出現というものが機械化による生産に支障を与えましたことを、自然条件悪化によるものということで表現しております。これらは見方によっては十分予測可能であったとも言、えますし、あるいはまた機械化をはかります上でもう少し手順よく考えておれば、あるいはまた予備切り羽等を準備しておれば避け得たものでなかろうかという感じもいたしますが、そういう要素も込めまして自然条件悪化によるものというふうに考えております。  また、労働力不足によりますものには人員の不足もございますけれども出荷率の低下が非常に大きな役割りを占めておるということであります。  なお、おしなべて申しますと、これらの減産理由は上期において非常に著しく発生しております。下期はやや好転しております。四十二年度の第四・四半期の生産ース、これは若干の季節修正的な考え方から見ますと、大体四千七百万トンかあるいはこれを少し上回るべースになっておるというふうに御承知いただいてよろしいかと思います。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 従来人手不足ということが相当大きなファクターになっておったわけですが、いま局長説明ではっきりしたように、問題はこのスクラップ計画というものが当初見込みよりも上回った。もちろんスクラップ予定炭鉱もあるでしょうが、これがある程度長期的に持続する炭鉱である、こう認定したものにかかわらず、この炭鉱閉山になった。したがって、余裕のないセットをしておるわけですから、当然その面だけは穴があいてくるということはきわめて明瞭なわけです。しかし一方、石炭鉱業審議会は五千万トンの出炭を確保する、あるいはまたエネ調は、石炭わが国エネルギー源として五千万トンを確保する、こういう方向が打ち出されて、この方向が閣議でもすでに決定を見ておるわけですから、そういたしますと、このビルドスクラップ調整という問題が当然必要ではないか。私に言わしめると、やめるものはなかなか強制的にやめさせるわけにいかないから、したがってやめるものについては非常に野方図である。まだ閉山予定でなかった山でも、閉山をしたいというと閉山を認める、こういう傾向が私はあるのではないかと思います。したがって、五千万トンの生産を確保するということは、スクラップビルドというものの調整をはかっていかなければ、一定生産規模を確保できないことはきわめて明瞭だと思うわけです。この面について通産省としては今後どういう指導体制で臨むのか。もちろん石炭鉱業自体の再編成問題がいま論議をされておりますけれども、聞くところによると、たとえば肩がわりを受けた中で、古河のごときは炭鉱閉山したいというような積極的な希望を持っておるという意向が、新聞でも全面的に石炭鉱業から撤退をするということが出て、しかもそれは肩がわりを受けておる。こういうものがスクラップをするところは、一応歓迎するとまでいわなくても、きわめてあっさりと認めていくということになりますと、幾ら力んでみても生産は確保できない。また閉山に伴う炭鉱労働者をどう一体石炭鉱業に再吸収するか、こういうことを考える場合に、この間の調整というものが綿密になされない限り生産規模自体が不安定になる、こう私は思うわけです。この点についての見解を承りたいと思います。
  6. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 私ども先生方と同じように、せっかく総合エネルギー政策における石炭の位置づけというものが行なわれ、それに基づいての対策が出たわけでございますので、可能な限りこの規模を確保いたしたいという気持ちは持っておるわけでございます。ことにいま岡田委員からもお話がございましたように、これらの規模数字は、あるいは安全保障、あるいは国際収支、それから地域経済への影響、労働者の問題といったような点に着目してつくられておりますので、石炭生産規模というものを可能な限り大きなものとして確保していくという気持ちにおいては、私どもも同様でございます。しかし反面、生産コストでございますとか、あるいは労働力の確保についての状況なり見通しでございますとか、あるいは需要の面の問題でございますとか、鉱害面での負担の問題、いろいろな面でこれを確保していくことに無理のないものであることが必要なわけでございます。ことばをかえますと、石炭生産規模を可能な限り大きなものとして維持したいという理由と、それをそうさせるために生ずる無理というものとをやはり国民経済的な観点から見て総合的に考えていく必要があろうかと思うわけでございます。企業を中心に考えますと、やはりある程度収支損益というものを前提にしてある山を経営していくかどうかということに相なるわけでございますし、その点で非常な無理がある、これの操業を続けるならば、当該鉱山収支だけでなくて、企業の残りのビルド山に対しましても大きな圧迫になるというようなことが明らかである限りにおきまして、それらのものを無理にささえなければならないというふうにも思えないわけでございます。要は、先生もおっしゃいましたように、ビルド山とスクラップ山とのバランスが絶えずそのときどきの情勢あるいは全体としての国民経済的な負担というものの中で調和がとれた形でささえるようにしなければいけないのではないか、かように考えております。私どものほうは無理に終閉山を強要する立場にもございませんし、逆にまた非常に悪いものを無理にささえなければならぬというふうにも考えていないわけでございます。この点はある時点で成り立つものと考えておりましたものにつきましても、状況変化等によってもはやその前提条件が奪われるということはあり得ることでございます。状況変化によってある時点想定どおりにいかないからといってただ見送ればいいというものではなくて、その際どんな補強なり助成なりをすれば成り立ち得るかということは、全体とのバランスにおいて政策として絶えず考えていかなければならぬ問題だろうと思います。御説と大体同じような考えでおりますけれども、ある限度以上になりますとやはりささえることが無理なものが出てくる。これを無理にささえるということには疑問のある場合が相当あるということだけは御理解願えるのじゃなかろうかと思います。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 当初の考え方よりも人手不足による減産が少ないという理由、私はその中では、やはり炭鉱労働者の今日の労働密度が非常に高まってきている、また、炭鉱労働者の時間外労働というものがやはり依然として高い、こういう大きな理由があり、しかもそういう中である程度自然条件の面や人手不足の面を補って生産増強という面に非常に努力をしている、実はこういう受けとめ方をしているわけです。  労働省からきょう参っておりますけれども石炭鉱業における最近の労働時間の推移について伺っておきたいと思います。
  8. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答えを申し上げます。  石炭鉱業における総労働時間の推移は、三十九年から四十二年までを申し上げますと、三十九年月間百九十九時間でございましたが、四十年百九十七・四時間、四十一年二百・四時間、四十二年百九十七・三時間というぐあいでございまして、その改善は遅々たる状態にあるわけでございますが、ただいま御指摘がありましたように、内容を見ますると一般製造業等に比べてむしろ所定内労働時間は短いのでございまして、所定外労働時間が約三十時間程度あるということによりまして、総労働時間が製造業に比して若干長い状態にあるというような数字でございます。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま労働省から答弁のあった内容は、三十人以上の規模の比較だと思いますから、そういう意味では、中小炭鉱だから時間外労働が多くて、大手炭鉱の場合には時間外労働が少なくて、労働時間がきわめて安定しているということを意味するわけではないわけです。これは最もすぐれている炭鉱であろうが、中ぐらいの炭鉱であろうが、中小であろうが、労働時間というのはぎりぎりの限界、法違反という問題を別にしても、むしろ内容的に見ますと、休憩その他の問題等もございますから非常に高い労働密度、こう私は理解することができると思うわけです。そういたしますと、今日の実績である四千七百万トン自体、やはり相当時間外の超過労働によって生産維持されておる、こういう認識はきわめて容易にできると思うのですが、この点、石炭局としてはいかがですか。
  10. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 私自身労働条件その他について詳細に承知しておりませんので、密度の非常に高い労働になっておるのかどうなのかということは自信を持ってお答えできないわけでございますが、労働力総体として見ましたときに、五千万トンの規模一つ念頭に置きまして、ここでその生産をささえている十分な労働力が現状あるのかないのかということを考えますと、私はないと思うわけでございます。しかもその傾向はおそらく今後も相当進んでいくのではなかろうか、こういう感じがいたすわけでございます。そこで個々企業立場もございましょうけれども、それぞれの鉱山におきまして、平均して一定労働力が足りないという状況が各所に出てまいりますと、総体としての生産計画は全くくずれることに相なりますので、最も能率のいい、そうして労働条件からいっても望ましい仕事ということを前提にして考えましたときに、現状の労働力需給の問題から考えますと、五千万トンにこだわることがむしろ出炭減を大きくするゆえんではなかろうか。全石炭鉱業として不足労働力というものに見合うスクラップを考えて、残る維持山なりビルド山なりに十分な労働力があるという形をつくり出すこと、これにはどういう手段が要るか、いろいろ議論があろうかと思いますが、やはり先生のいま御指摘になりました労働条件観点から見ても、あるいは全体としての労働力需給状況から見ても、そういうことをそろそろ考えなければいかぬのじゃなかろうかという感じがいたしておるわけでございます。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 私が指摘をしたいのは、エネ調で五千万トンが位置づけされ、五千万トンを確保するということが再建計画肩がわりで組まれた。しかるに本年の実績が四千七百万トン、来年度は四千七百七万トン、こういう出炭規模昭和四十三年も想定されておるわけです。いわば今日の石炭鉱業生産体制というものが非常に硬直化しておるのではないか、こう私は指摘を実はいたしたいわけです。  と言いますのは、いま申し上げましたように労働時間の面から見ても、これは修正値を出して、時間外労働を普通常識的な時間外労働にこれを修正をして推定をした場合の生産というものは一体どの程度に追いつくのか、こういう予測を立ててみる。あるいはまた今日の自然条件変化によって減産理由があげられた。そういたしますと、今日進めておる機械化採炭体制というものは一体どうなるのか、こういう点について、まだまだ掘り下げて実情を把握する必要が当然あるのではないか、こういう議論が出てくる。あるいはまたスクラップ計画については先ほど申し上げたとおりであります。私はこれ自体が今日の石炭産業生産体制が非常に硬直化してきておる、余裕のない体制できておる、計画もまたそういう体制で生まれておる。だから石炭生産体制というものが非常に不安定な要件を抱えつつ推移したところに、今年度のこういう実績になった最大理由があると思うのです。この問題を解決しないと、次にどういう政策を立ててみても、結局は再び計画どおりにいかないという結果におちいるのではないか、この点を非常に心配をするわけです。したがって、この点の徹底的な解明がない限り、次への政策というものはなかなか立ってこないのではないか。しかも個々企業別に見た場合には採算の問題がありますから、当然大きく採算割れをするというのであれば、むしろやめたほうがいい、こういう議論が出てくるわけでありますから、この点の徹底的な解明というものは今日非常に大事な問題点になってきておるということを実は指摘をいたしたいわけです。  そこで私はこの点について、特に昭和四十三年度はすでに予算が組まれておりますけれども石炭局としてこの四十二年度の実績にかんがみ、さらに当初四十五年度までの計画書が提出されておるわけですから、この計画書に見合った実際の生産の実力というものは一体どうなのか、その面から見た採算制というものは一体どうなのか、こういうものを見通さなければ、確信のあるものが把握できないと次の政策というものは全く立たない、こう言っても私は過言でないと思うわけです。こういう点について、そういう反省の中からこの面の検討というものが十分進められておるのかどうか、こういう点について伺っておきたいと思います。
  12. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 いま御指摘いただきました点は私どもも全く同感でございまして、おっしゃいましたようなことを技術力の上からも労働力の上からも、あるいは経理的な面からも十分な予測を持たないと、次の政策というものを実施する上におきましてまた失敗を起こしかねないという点には私も全く同じ気持ちを持っております。ただ、労働力の問題もある意味賃金と申しますか、そういうものが基本にあるわけであります。賃金ということになりますと支払い能力ということになってまいります。支払い能力は即また採算の問題にもなってくるわけであります。そこで、一体石炭鉱業採算というものをマクロで見ました場合に、どの程度まで考えていいのかということが一つ問題点になるわけであります。政策助成手段を全部取り払いまして、いまの石炭鉱業採算的に成り立たないことは先生方も御承知のとおりであります。この辺、どこまでの財政負担というものを前提にしていまの石炭鉱業採算というものを考えていったらいいのか、そこからいろいろな問題が出てくるわけでございまして、私どもも考えます場合に絶えず迷いますことは、どこまでが国として応援できる限度であるかということでございます。その辺のところと、いまの労働力あるいは技術力といったものをからみ合わせて考えていかなければならない問題だと思っております。御指摘労働時間その他からチェックというようなことは、いま御指摘を受けますまで実は考えておりませんでしたが、単に労働力総体需給の問題は念頭に持っておりましたけれども、たいへん貴重な御意見をいただきまして、これら全部をあわせて考えてみたいと思います。先の予測になりますのでいずれもたいへんむずかしい問題でございますけれども、御趣旨は私もそのとおりだと思いますので、できる限りの努力をいたしたいと思います。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭鉱業審議会答申を得てそれぞれ政策が立案をされておる。第一次から第三次の調査団答申、これを受けた審議会答申を受けて、私ども国会としては、委員会としてはその答申に盛られている内容前提として、これがやはり信用できるものだ、こういう意味でいままで政策を組んでまいったわけです。ところがその前提がくずれ去りますと、その政策は当然、的はずれであり、また当を得ていない、結果的にそうなってまいるわけです。そういう意味では、画期的なこの石炭調査団答申あるいは石炭鉱業審議会答申というものは、いずれも結果的に見込みが違った、極端なものの言い方をすればそれに踊らされた、こう申し上げても実は過信ではないわけです。そういう意味ではその責任というのは私は重大だと思うわけです。そこで私は、この石炭鉱業審議会のこれまでの石炭政策に対する答申について、まず石炭鉱業審議会が重大な反省をしなければ、ほんとう石炭の諸問題に対する総括実情把握というものができないのではないか、こう実は考えるわけです。したがって、政府として昭和四十三年度の生産規模等の問題について、いずれ石炭鉱業審議会に諮問するのだと思うのですが、そういう点について、政府として審議会政府見解といいますか、考え方というものを明確に示す必要があるのではないか。そういう上に立って四十三年度の当面の問題、またこれからの基本的な石炭政策問題等について諮問するという態度をとらないと、国民全体が信用しないといいますか、だれしもが、答申が出てもこれでまた実際には石炭政策というものは成り立たぬではないか、こういう不信感というものをぬぐい去られないと思うのです。やはり審議会ですから、答申したものが大きくはずれた以上、それに対する反省総括をするということは、私は今後の石炭政策を打ち立てていくためには一番大事だと思うのですが、そういう点について、政府としては審議会に対してこれらの反省総括を求める意思があるかどうかお聞きしたいと思う。
  14. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 私は審議会先生方には職掌柄ときどきお目にかかっておりますが、今日この事態になりましたことについて、審議会先生方からも、そういう意味での遺憾の意をたびたび聞いておるわけですけれども、よく考えてみますと、審議会と申しますものも、実は判断材料としてのデータ通産省がこれを出しておるわけです。先生方からその点で申しわけないというようなことをお聞きすると、実はこちらのほうでたいへん恐縮な気持ちに相なるわけで、われわれのデータも、これまた企業からある程度のものをとっておりますので、われわれ自身もいろいろな意味反省もざんげもしたい気持ちでございますけれども数字そのもの企業からもかなり来ております。よくよく考えてみますと、業界なり私たちのそれを見る目がなかったために、審議会に対する非難、そしりを招いているのではないかという感じがいたしております。  今後は業界に対しましても希望的な数字というようなものは出させないように、去年以来ずいぶん出てきますものにつきましても、私どもはたたきにたたいて数字を見ているわけであります。今後いろいろな形で審議会におはかりすることもあろうと思いますが、役所側として提供する数字あるいは見通しというものにつきましては、私どももよほど真剣にかつ謙虚に考えなければいかぬのじゃないか、かように考えます。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国石炭鉱業について、かつてフランス石炭公社だったと思うのですけれども、ちょっと名前の記憶がはっきりしておりませんが、日本石炭鉱業についての概括的な診断と申しますか、そういうものを得た経験を実は持っているわけです。ソフレミンの報告ですが、これが出ているわけですが、私は、この際ほんとう最後最後といわれる石炭政策を樹立するにあたって、日本マイニング技術の面で見ますと、企業別にみな編成されているわけですね。その企業別に編成されているマイニング技術というものは残念ながら学校の先生に依存せざるを得ない。しかし、実情からはうといと申しますか、実情ほんとうに把握するにはなかなか困難な面もあろうかと思うのです。私はそういう面から考えると、この際、日本石炭産業自体を解剖する、そういう意味では最もわが国と近い、しかもわが国石炭政策が目ざしているヨーロッパ——ドイツフランス、イギリス、こういう面から積極的なサゼスチョンといいますか、こういうものを得るというくらいの大きな気持ちがあってしかるべきではないか、私はこう考えるわけですが、こういう点について一体どう考えられるか。  それと同時に、石炭鉱業審議会の中には技術部会もありますけれども、いわゆる炭鉱生産近代化という面はずいぶん意見が出てまいるわけですが、実際各企業別単位炭鉱実情把握ということになりますと、やはり欠ける面があるのではないか。そういう意味では横断的な編成をした調査団、またそういうヨーロッパの技術者の意見も客観的に聞いてみるくらいの大胆率直なものごとの考え方に立たないと、なかなか思い切った政策というものは出てまいらぬのではなかろうか、実は私はこういう感じがするわけですが、こういう点についてどう考えられるか。  また、鉱業審議会がいずれ問題をさらに深めて検討するでしょうけれども、いま局長が言われているように、結果的に企業別数字が出てくる、企業サイドとしては、どうしてもこの採算制というものを意識して、これに合わせて、そうしてその方向生産体制を持っていこうという前提に立ってこの経営が組まれる。だから、これが実施面において大きくくずれるという結果を招いているんだと私は思うわけです。したがって、そういう面について一歩前進的な、意欲的なものごとの考え方に立たないと、やはり問題は解決しないのではないかと思うのですが、こういう点について御見解があれば承っておきたい。
  16. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 全般的な石炭政策というものは世界的にみんなが苦しんでおりますので、われわれも可能な限り諸外国、特にヨーロッパの政策というものについては心をいたしておるつもりでございます。また、ヨーロッパにおきましても日本石炭政策というのは相当高い評価になっておりまして、われわれの政策を英訳したものを、調査団等が参りますと向こうが克明に読んで承知しておるということでもございます。ただ、いま先生指摘になりましたのは、いろいろな政策あるいは政策の項目、柱というものはずいぶんありますけれども、基礎になっている生産力なりあるいは技術的な能率の見通しなりという根本が誤っていると、政策がいかによくてもくずれるではないか、こういう御意見だろうと思います。まさにそのとおりでございまして、企業から出てくる数字をいろいろな意味でチェックをいたしておるということを申しましたけれども、いままでのところ私どもがやっておりますことは、せいぜい大手でございますと、石炭協会内部でそれぞれの企業数字を他社が見るとか、あるいは協会の事務局がフリーな立場で、そうは言ってもいままでの実績その他からいってこの会社はそうはいかぬのじゃなかろうかというふうに見るとか、それをさらにわれわれのところで、たとえば計画課あたりが中心になって見るというような感じで進めてきておる程度でございます。もっと思い切った何か横断的な権威のある機関でやるというようなことができないかという御指摘に対しましては、十分これは参考にいたしまして検討いたしたいと思います。ただ、当たるか当たらぬかということで見ますと、これは多少差しさわりがあるかもしれませんが、私は事務屋でございますので、技術のエキスパートにものを頼みますと、どうしても希望と申しますか理想と申しますか、技術の限度を追及するという意味合いでどうしても数字が大きくなりがちな傾向というものを私は感じております。その意味で、おっしゃいましたいろいろな原因立場からということは必要だろうと思います。何か適当な形が考えられますならば十分検討いたしたいと思います。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここ数年来の石炭政策の流れを見ますと、競合エネルギーである油との価格的な調整をするために千二百円のコストダウンというものが基礎になった、しかも炭鉱生産体制は前時代的な体制というものが多く体質的に残っておる、これを近代化をしていかなければならぬ、そういう点ですべてが集約された形で合理化が今日まで進んできたと思うわけです。たとえば炭鉱機械化一つ見ましても、初めはドイツの技術というものを取り入れられたということで、各社ともカッペ採炭からホーベル採炭という方向にいきましたし、また最近になりますとこれが変わって、アメリカとソビエトの機械が米ソ共存体制わが国石炭生産体制の中で生かされておるという面が非常に強くなってきたという傾向もございますし、ようやくにして国際的な炭鉱の機械、こういうものが一応最近は、各山別によっては違いますが、全国的に見ますとある程度そろってきた、こういう体制下に入ってきたと思うのです。こういう経験というものがやはりあるわけですね。ですから、そういうことから考えれば、私は、時期としては最終的な石炭政策を立てる上にはむしろ妥当な時期ではないのか、こういう感じが実はするわけです。こういう面について、ぜひひとつ十分検討を願いたいということをこの際問題を提起をしておきたいと存じます。  それと同時に、最近の炭鉱の経理状況でありますけれども昭和四十二年度は大手関係で見ますと、トン当たり二百八十六円の赤字という計画が組まれて、昭和四十五年度までの自立体制計画が各社から出され、これが承認をされてまいったと、こう思うわけですが、先ほど減産理由はそれぞれあげられましたけれども、四十二年度の収支は、一体どういう落ちつき見込みになるか、伺っておきたいと思います。
  18. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 御指摘のとおり再建整備計画では、大手十四社の昭和四十二年度の出炭を三千五百二十四万トンと見込みまして純損益九十九億円、トン当たり換算いたしまして二百八十三円の赤字ということで想定をいたしておったわけでございます。先ほど申し述べましたような減産がございましてコスト増がございますし、他方手取りのいい原料炭比率が低下しておるというようなことによりまして、山元手取りも減少いたしておりますために、損益は計画に比しまして非常に悪化いたしております。純損益で計画よりも七十億円悪くなるということで、百六十九億円くらいの赤字、トン当たりで言いますと、五百円程度の赤字というふうに考えていいのではなかろうかと見ております。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 大日本炭鉱閉山もありますから平均値では違いが出てくると思いますが、昭和四十三年度ではトン当たり百九十七円の赤字である、こういう一応当初計画であったわけですが、しかし来年度の生産規模が四千七百七万トンといたしますと、当然この面について相当狂いが出てまいると思うわけです。したがって、四十二年度の実績見通しから四十三年度を見通した場合、大体どの程度の赤字が大手の場合見込まれるか、この点の想定はできておりますか。
  20. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 これはまた賃金の上昇率その他いろいろなファクターがございますが、いま先生がおっしゃいましたようなことし並みの生産実績と見ておりますので、それらの点から大づかみに見ますと、やはり五百円強の赤字になる、こういう試算は一応いたしております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 四十五年度までの再建計画、しかも四十二年度はトン当たり五百円の赤字、しかも四十三年度が四十二年の状況で大体推移するとするならば、この面から根本的に再建計画は崩壊し去った、単に大日本がつぶれたとか、あるいは古賀山やその後残る予定の山がつぶれたとか、あるいは肩がわりした太刀別炭鉱が会社更生法の適用を受けたという意味ではなくて、結局根本的に崩壊をした、あるいは日鉄有明のようにわが国二つの原料炭の新鉱開発の一つが中止せざるを得ないという事態が出てきた、こういう面から考えて、いわゆる第三次調査団答申に基づいた抜本的な石炭対策というものは根本的に崩壊をしたのだ、こういう認識に私は立たざるを得ないと思うわけですが、この面については同感ですか。
  22. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 遺憾ながらそのとおりだと思います。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、四十三年度の生産規模について、聞くところによると四月三日ごろに審議会に諮問をする、こういうことを実は私は聞いているわけです。特にこの四十三年度の政策というものは、次への安定政策を樹立するための一定の期間の問題でありますから、四十三年度というのはそういう年度になるわけですから、この面については従来のような、単に生産規模審議会意見を聞いて確定をしてもらうというような、単純な形式的に審議会に付託するということはこの際やめたほうがいいのではないか。もちろんそれはそれなりに付託はしなければなりませんけれども、まず四十三年度の今日の各社別に編成されている石炭鉱業体制というものをどうまず乗り切るか、こういう面についても少なくとも確たる答申を求める必要があるのではないか。それは採算割れがございますし、しかも国際環境からいいましても、わが国の経済の趨勢からいいましても、金融引き締めはより一そうきびしくなる、そういうきびしい環境下に置かれていることは間違いのない事実でありますから、そういたしますとこれらを含めて四十三年度、次への政策が立てられて、これに大きく転換するまでの間の諸問題についてのことを審議会に付託して審議会意見を求める。審議会意見を求めなくても、こういう点についてはいまから明確に方向を確立しないと、さらに波紋は大きく広がって混乱が拡大するだけではないか、こういうように実は私なりに今日のわが国石炭鉱業の実態を認識をいたしているわけです。こういう点について通産省はどう対処するつもりか、あるいは昭和四十三年度の生産規模について審議会に諮問する場合に、これらの面について従来どおりの方向でいくのか、ある程度項目を追加していくのか、この点についてまず伺っておきたいと思うのです。
  24. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 現状と先行き見通しに立ちますと、考えておりました再建整備計画と相当かけ離れた姿になってきておる、したがって、石炭鉱業の長期的な安定策というものを求めるためには、いままでの方針を相当変更して、かなり思い切ったことを考えなければいかぬのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。したがって、こういった長期的基本的な施策につきましては、いずれ石炭鉱業審議会にあらゆる角度から思い切った検討をお願いしたいと思っておるわけでございますが、ただ四十三年度の出炭数字につきましては、これはある程度そのような基本的な問題との関連において四十三年度がたいへんな時期であることは岡田先生指摘のとおりでございますけれども、やはり当面しておる具体的な問題の処理ということのためには、四十七年度の出炭計画というものにつきまして切り離して申しますといささか語弊がございますけれども、このような情勢をも踏まえていただいた上で御審議をしていただくという必要があるわけであります。たとえば四十三年度における電力石炭の引き取り量というものも、ことに電力の引き取り量のごときはこれを年初において定める必要があるわけであります。またいろいろな諸法規によりまして、合理化事業団による閉山処理等のこと、あるいは雇用対策の運用といった面で一通り数字は確定しておかなければいけない。その時点でも明らかに閉山をするということで予定されているものもございますので、そういうものを確定しておく必要はあるわけでございます。ここで、四十三年度がたいへんな時点であることは申すまでもないことでございますが、われわれは、長期的な、基本的な政策ができるまでのつなぎ期間としての大きな問題もございますけれども、きめなければならぬことはきめておかなければいかぬ。非常に流動的な事態でございますので、電力の引き取り量をきめないということでいたしますと、逆に経営者側にも労働者側にも先行きについての不安感を一そう大きくするようなことに相なりますので、実は私が電力業界と話をしております段階でも、四千七百万トンそのものに問題があるというような議論にもたびたび遭遇しているわけでございます。  いま申しましたような立場で、いずれ基本的な政策は立てざるを得まいと思いますし、そういうふうに進めるつもりでおります。四十三年度についてはその意味で経過期間でございますので、四十二年度の実績を踏まえてそう背伸びしないもので考えておるから約束してもらいたいということで、漸次軌道に乗りつつある状況でございます。  問題の深刻さは十分承知しておりますけれども、これをまたあまり大きくこれらの具体的な問題にからませますと、四十三年度の運営そのものを苦しくすることに相なりますので、この辺かね合いを考えながら進めている。したがって、審議会の合理化部会なり資金部会におはかりするというのもそういう意味合いで大きな問題としては若干切り離した形で御審議いただく。しかし、大きな問題もやらないということではない、必ず追っかけてすぐやります、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在の炭鉱の経理状況を見ますと、問題は運転資金の枯渇、こういうものが非常に顕著に目立ってきておるわけです。そこで、私は少なくとも通産大臣が言明しているように、抜本的な長期的な石炭産業の安定政策を出すまでの間、特に金融問題が非常に大きな焦点になってくると思うわけです。もちろん三井、三菱をはじめとするかつての財閥形成の中心であった各企業というものは、一応それぞれメーンバンクを持っておりますから、その点でも問題はあるでしょうけれども、そういう関係があるという面でのある一定期間の持続的な維持というものは可能ではないか、こういうような気がするわけです。しかし、そういう主要銀行からはずれている各炭鉱を見ますと、憂慮すべき状況に進みつつあるのではないか。たとえば坑道掘進補助金が内払いされるということになれば、それだけ融通はついていいわけですけれども、期間が推移してまいりますと、ずんずん深刻の度合いを増してくるのではないか、五月、六月にかけて非常に深刻化するのではないか、実はこう私は認識をいたしているわけです。したがって、その面についてはもちろん方針が出ることによって、展望が明らかにされることによってまたそれぞれ協力関係の認識も変わってくるでしょうけれども、しかし、それはそれとして、そういう面については最大の留意をして対策をいまからやはり立てなければならない事項ではないか、こう私は認識をいたしておるわけですが、その点はいかがですか。
  26. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますようなことでございますので、四十三年度の資金繰りという問題はたいへん苦しい問題でございますが、実は四十二年度自体が同じようなことでございまして、先ほど申しました出炭減によります経理悪化によりまして資金繰りが非常に苦しかったのでございますが、各種の政府補助金、それから開銀資金、事業団融資、こういった財政資金の支出、あるいは事業団の融資保証、金融機関の協力依頼あるいは会社の資産処分というようなことで、ともかくも本年度の資金不足は切り抜けてきたわけでございます。ただ、先生指摘のように、四十三年度の状況もたいへんきびしいものがございますから、各社の損保余力も漸次枯渇をしてくるということから、金融機関の協力はいよいよ得にくくなってきております。ことに一般的な金融引き締めの影響もございまして、当面四−六の資金繰りについても相当な問題があると私は考えております。特に昨年来出炭実績のよくない会社でございますとか、あるいは近く切羽の転換等を行なうので大きな資金需要があるというような会社、これには相当の不足資金が生ずるものと予測しております。われわれといたしましては、事業団、開銀の先行融資あるいは事業団の融資保証、金融機関に対する協力依頼等あらゆる手を打ちたいと思っておりますが、現状では率直に言ってまだ見通しが立っていないということでございます。先生のおっしゃいました御趣旨は、基本問題は基本問題として、この資金繰りを切り抜けるために少なくとも何がしか思い切ったことをやらなきゃいかぬのではないかという御趣旨だろうと思いますが、先生自身おっしゃいましたように、やはり先の展望と政策の大まかな方向づけがきまりませんとなかなか金融機関もおいそれとは応じてくれないという実態がございます。そういう意味合いから申しますと、少なくとも基本的、長期的問題に取りかかっておるということ、あるいはその政策の幅はいろいろございますでしょうけれども、大まかな方向づけができておるという状況をやはり早くつくりだしまして、その間の政策決定までのつなぎということで金融協力を呼びかけるという手しかないのではなかろうかと私は考えます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま炭鉱労働者側、いわゆる炭労、全炭鉱、炭職協、こういうそれぞれの組織があるわけですが、特に炭労の場合には、春闘にかけて賃上げの要求と、さらにまた炭鉱の国有化の要求をいたしておるわけです。あるいはまた全炭鉱、炭職協についても、石炭鉱業に対するそれぞれの意見というものがすでに出され、政府に対してもその点の要請が行なわれ、要求が実は出されておるわけです。そうして炭労自体は五月から一応の日程に従ってストライキをも準備をしている、こう私どもは聞いておるわけです。このことは、先ほどから局長議論をしてまいりましたように非常に重要な問題だと思うわけです。今日相当長期にわたってストライキが行なわれるということになりますと、いろいろな面に与える影響は非常に大きいのではないか、こういう認識を実は私は持っておるわけです。一方社会党から今国会に対して、炭鉱の国有化、石炭公社法の二つの法律がすでに提出をされて、これが本会議説明を通じて委員会に付託をされるか、それとも来週早々直接委員会に付託をされるか、こういう状況にあるわけです。こういう石炭再編成をめぐってそれぞれ動きが活発になってまいりましたし、また与党の自民党としてもそれぞれこれらの問題に対していま意見を集約しつつある。一方石炭経営者側は植村試案をめぐってそれぞれ会議をし、それに対して意見を述べているというのが実は昨今の実情であるわけです。私はこれらの情勢を判断をいたしますと、石炭再編成の問題について、いわゆる抜本的な対策について引き続き石炭鉱業審議会に諮問をする、こう先ほど局長が答弁をされておるわけですが、私はそういう意味では非常にいろんな意見が出されて議論がいま非常に活発になろうとしている情勢下にあることだけは間違いのない事実だと思うわけです。私どもとしても、これはそれぞれ各党の意見は違ってもこの機会に十分意見を出し合って、わが国石炭鉱業の安定の方向を確立するためにひとつ努力をいたしたい、こういう積極的な気持ちを持っているわけですから、そういう意味ではこういう国会の審議状況や一連の動き、こういうものを十分判断に入れた上に、通産大臣は、石炭鉱業審議会にどういう内容で諮問するかは別にして、諮問することが妥当だと思うわけです。この時期を誤るとむしろ波紋が広がったり混乱が拡大をするんではないか、実はこういう感じを私は非常に強くいたしておるわけです。これは通産大臣も言明いたしておるのでありますが、鉱業審議会にかける日にちを、そういう予定をすでにきめられておるのかどうか、そういう点を十分把握をしながら通産大臣としてしかるべき時期に鉱業審議会に諮問するという考え方なのか。ここが非常に大事だと私は思うわけです。やはりある方向も全然なくて審議会にかける、諮問をするというわけにはまいらぬと思います。しかしそれが独断的であってもいけませんし、また客観的ないろんな情勢もそういう方向に煮詰まっていくという面もなければいかぬではないか、こういう気がするのですが、こういう点についてはきまっておるのかどうか、どう考えられておるのか承っておきたい。
  28. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 状況からいいましていろんな意見が出ておること、また相当の切迫感を持って皆さんがおっしゃっておること、これは当然のことでございまして私よく承知をいたしておりますし、大臣にもその旨はたびたび報告をいたしておりますので、大臣御自身もよく御承知のことだと思います。それらの議論の幅というようなことも考えあわせまして、われわれもわれわれなりに一定の幅を持ってのことではございますけれども一つの対案を用意しなければいかぬだろう、心づもりは持っていなければいかぬだろうという感じはいたしておりますが、その事柄自身につきましては、まだ通産省ではきめておりません。大臣にもいろんな御意見の御紹介はお話ししてございますし、私なりのコメントも加えてはおりますけれども通産省全体として何がしか大まかなめどというものをつかむところまでまだ来ておりません。なるべく早くこれをつかみたいということと、その時点先生の御質問にある審議会の諮問、あるいは審議会審議の再開についての日取りをきめたいと思っておりますし、大臣にもこれはなるべく早い時期が適当だと思いますということは申し上げておりますが、なかなか腹づもりができないというところで少し延びてきておる、こういう状況だと御理解いただきたいと思います。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働者側の一つの問題としては、来年度の賃金の問題があるわけですが、昨年は従来どおりいわば計画できめられた年率七%、管理炭鉱は三%、しかもこの点は物価上昇については当初計画前提にして組まれた賃率アップなわけです。しかるに昨年は他産業は一四%もアップするが炭鉱は七%、こういう中で老齢化していく労働力を確保しつつ、また新規若年労働力をも求めていかなければならない、こういう苦境に実は立たされておるわけです。しかし賃金上の問題が大きなトラブルになりますと、これまたいろいろな面で影響もしてまいるわけですが、ただ言えることは、計画全体が狂った、むしろ悪化をしたという中で、なおかつ賃金前提になっている物価の見通しについても大きく狂っている。そして依然としてそういう総体的に計画が狂った中で、賃金だけ七%と三%が押しつけられている。こういう面ではなかなか安定的な労働力を確保していくということはむずかしいのではないか、こう私は判断をするわけです。もちろんここで労使がいろいろ賃金についてどうする、こうするという議論にはならないでしょうけれども、ただ七%、三%の賃金というものが、少なくとも地下労働賃金のアップ率としては、今日他産業の趨勢から見れば非常に劣っておるということだけは、はっきり言えるのではないか、こう思うのですが、労働省はどういう見解ですか。
  30. 藤繩正勝

    藤繩説明員 私どものほうの所管でございませんので、私からお答えすることは適当かどうかと思いますけれども、ただいまも御指摘がありましたように、賃金は、本来は労使が決定すべきものである。るるお話がありましたような非常に困難な事情の中におきましてどうすべきかということは、当事者の最も苦悩しておられるところだと思いますが、私どもとしましては、これからの石炭産業、そこに若い労働力を吸収していくというためには、単に賃金のみならず、いろいろな面におきまして労働条件の改善をはからなければならぬ。その前提となる技術革新等の推進がなければならぬと思うわけでございまして、当面賃金がどの程度であるべきかというようなことにつきましては、ただいま私から申し上げるのはいかがかと思います。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭局としてこれから長期的に安定した炭鉱をつくっていかなければならない。このために抜本的な再検討を加えざるを得ない、こういう立場に立ってみた場合に、やはり賃金についてもとにかく低いところに押えていて、石炭鉱業が安定できるものではないと思うのです。他産業並みあるいは他産業に近づくといいますか、そういう体制前提にしないで、長期的に石炭鉱業の安定策というものは成り立たないと私は思うわけです。そういう意味で、この面についてはどういうような見解を持たれておるか。その見解があればこの際承っておきたいと思うのです。
  32. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 今後検討されるべき基本策につきましては、多角的な検討が要ると思います。その際、賃金につきましても全体の労働力確保に問題のある現況からいたしまして、相当大きなウエートを置いたものの見方をしなければいけないと私は考えております。先々の安定策を考えます場合も、石炭鉱業の原価をどれくらいのものと見ていくか。これは能率問題も大きなファクターでございますし、反面またコストの面からいたしますと、人件費をどのように見るかというのも大切な一つ見方に相なるわけでございます。  そこでどれくらいにきめたらいいかというのは、いろいろな角度からきめるべきだと思いますが、試算といたしましては、私どもはいまきまっておる七%の数字で一回はじいてみること。それからもう一つは腰だめでございますけれども、一〇%ぐらいのもので計算をしてみるというような、やはり幾つかの試算をやっていく必要があるんじゃなかろうか。どれくらいの労働条件であるべきかということも確かに大きな問題でございますが、反面、それから出てくる答えから見まして、どこまで合理化で吸収できるか、吸収できないものをどこまで国の援助で出せるか、これとの見合いでございますので、いま申しましたように二つくらいの数字数字を組んでみて、ほかの角度からそれをチェックしてみるというようなことをやる必要があるんじゃないかと存じて、内々石炭協会あたりに作業をしてもらっている経緯がございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭鉱業審議会について、前の委員会での質問に対して、通産大臣は、一応メンバーについては検討するが、考え方としてはいまのメンバーで石炭鉱業審議会に諮問したい、こういう意見を実は述べられているわけです。私はやはり先ほど申し上げましたように、いろいろな情勢を十分把握し、適切な判断をしないと、たとえば石炭鉱業審議会に参加をしている労働者側がこれをボイコットするとか、あるいはまたある政党が審議会を相手にしないとか、こういう不幸な状態の中で政府審議会意見を求めざるを得ないということはぜひ避けなければならぬのではないか、こう思うわけです。私は実はそういう心配をいたしておりますので、この面特に注意を強くこの機会に喚起をいたしておきたいと思います。  それと同時に、労働省から来ておりますから、二点くらいでありますので、先にこれだけ終えてしまいたいと思うのですが、一つは社内預金の問題なわけです。大手関係でも、社内預金が炭鉱の場合にはむしろ他産業よりも高い。四十一年度では一人当たり預金残高が二十二万円もある。一方、中央労働審議会答申を受けて、労働省はすでに労働基準法施行規則の一部を改正する省令の施行についてということで各都道府県の労働基準局長に通達を出して、新しい協定を結ぶようにいま指導いたしているわけです。しかも炭鉱の社内預金というのは、他産業と違った側面を強く持っていると私は思うわけです。これは中小企業とは違うわけです、大手炭鉱ですらそうなんですから。こういう点の実情とこれに対する指導を一体どう考えておられるのか、この面を承っておきたいと思います。
  34. 藤繩正勝

    藤繩説明員 社内預金につきましては、いま御指摘がございましたように、山陽特殊鋼の倒産等を契機といたしまして、一昨年国会でも非常に問題になりまして、その結果、中央労働基準審議会答申を得まして、ただいま新しい規制措置と申しますか、そういった指導を進めている段階でございますが、石炭につきましても、私どもの貯蓄金管理状況報告という統計に基づきまして見る限りにおきましても、石炭鉱業は、昭和四十一年度に本社を含まず百五十一億五千九百万円の社内預金があるという状態になっております。石炭鉱業におきましては、単に従業員の社内預金が相当あるというだけではありませんで、退職者の社内預金がかなり含まれておるということが実は問題でございます。ただいま本社を除いた私どものほうの報告の数字を申し上げましたが、かつて通産省大手十七社につきましてお調べになりました資料によりますと、昭和四十一年三月末で従業員の預かり金は二百六十四億という数字になっておりますが、そのうち退職者の分が百三十九億という数字になっておるわけでございます。  そこで、退職者の社内預金ということになりますと、私どものほうの労働基準法に基づくいわゆる貯蓄金管理という範疇からはずれてまいりまして、むしろ出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律にも触れるおそれがあるのではないかということを私ども憂慮いたしまして、退職者の社内預金の非常に大きな額を持っております二、三の会社につきましては、担当者を呼びまして警告を発したこともございますし、また大蔵省銀行局にもこういう問題があるんだということをお話もいたしました。私どもしろうとながら、何らかの、たとえば事業団の保証等による銀行融資というようなことで返還手続がとれないものかというアイデアもかつて炭政課にも申し上げたことがありますが、いまるるお話があったような、それどころではないような金融事情もございまして、問題はなかなか困難であるといういきさつもございますが、そういう非常に特殊な問題がございます。  ただこの点につきましては、御承知のように、社内預金は当事者から返還の請求があれば、基準法の上では直ちに返還をしなければならないということになっております。現在のところ、そういった返還の動きもない。これは請求してもなかなか払ってもらえないだろうという見通しに立つのか、あるいは実際問題としてかなり金利がいいという実情に立つのか、その辺の判断もございましょうが、私どもは、従業員の社内預金につきましては既定の規制措置で今後推進してまいりたい、退職者の社内預金につきましては、関係労使また関係各省ともさらに話をしまして、何とか解決の道を講じたいというふうに思っております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま労働省から説明がありましたように、従業員及び退職者の預金を含めると大手で二百九十一億、こう私どもは推定いたしておるわけです。これは非常にたいへんな問題だと思う。中小炭鉱のようなところでは、退職金払わぬといえば人はやめていかぬだろう、労働者確保の一助になる、こう公言する話をも私は聞いておる一わけですが、実はゆゆしき問題だと思うわけです。しかし、この問題を看過するわけにはまいりませんし、この面については当然、これからの政策を立てる場合に解決をしていくといいますか、そういう方向というものはやはり明確に打ち出されてまいらなければならないと思うわけです。との面に対する見解をひとつ石炭局から承っておきたいと思います。
  36. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 ただいま岡田委員から御指摘がございました、また労働省から御答弁がございましたように、この社内預金問題というのは非常にやっかい、かつ好ましくない事態でございます。いろいろ指導を加えておりますけれども、結局は資金繰りの問題に帰結する状況でございます。ただ先ほど労働省からもお話がございましたように、特にホワイトカラーに多いようでございますけれども、高金利を念頭に置きまして、また会社に対する信頼をもとにして、いわば本人の利益という立場からやっておるような社内預金も部分的にはあるようでございます。こういうものはこの際なるべくはずしていくべきではないかという指導は協会にも申しておるのであります。これから長期的な安定策を基本的に検討します上におきまして、実はこの社内預金問題というのはいろんな仕組みを考えます上で体制切りかえの障害になる非常に大きな難物の一つでございまして、いろいろ考えておりますけれども、帰するところは融資によって解決する以外にはない。通常の産業であり、通常の企業でございましたならば、むしろその前に倒産しておるというのがあるべき姿というか、そうなる姿であるはずでございます。何とかこれを受信し得る、融資を受けるという形で解決できないか。それもいままでは何回も試みながらできなかったという状況でございまするが、基本的な問題をこの際考えなければならぬといたしますと、この際にできるだけテーマの一つに加えて解決すべきではなかろうか、こう考えております。お聞き及びのような巨額な金額でもございますし、いまの石炭産業の実態から申しまして、おいそれと全くしりぬぐい的な退職金の未払いに該当するものを金融で解決できるかどうかという実際問題としての見通しもございます。困難でもございますけれども、今回対策を考えます上には忘れ去ることのできない、かつまた希望的にいいますと、この際解決をいたしたいテーマだと思います。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して。局長も若干御存じのようですが、退職者の社内預金というのは退職金の未払いが大部分です。結局金がないから通い帳だけやっておるわけですね。それから退職者も実際預金を引き出すことがほとんど不可能だ。ですから、子供が入学をしたから一万円あるいは二万円引き出す、こういう程度であります。ところが、この権利が一たび他の高利貸し等に渡ると、会社は完全にその高利貸しに支払わなければならぬような仕組みになっている、これはそうですね。当然そのこと自体は管理貯金の違反になる、基準法違反になる。ですから、黙っておるうちはいいわけだけれども、第三者に権利が渡ると必ず会社は支払っている、事実上支払わざるを得ない、現実にこういう状態になっている。ですから、この問題はそういう意味で早く処理する必要がある、こういうように考えるわけです。そして政府から一回融資を受けている、融資を受けておって本人に払っていない、こういうことなんですよ。こういう者もおる。というのは、融資率が御存じのように六割という融資率です。それでやはり足らないから結局残額が社内預金になる。ですから、融資の対象に一応なったものとならないものがある、あるいはなった部分とならない部分がある。もう少し言いますと、ある炭鉱整理をしてそこで退職金を払った、そうして同じ経営内部におけるBの炭鉱に配置転換をした。しかし一回雇用契約は切れておりますから退職金は払っておる。Bの炭鉱に行かない者については全額払う。Bの炭鉱に行った者については社内預金の通帳だけを渡しておる、こういう状態ですね。ですから、Bのところに行った労働者にはすでに融資の六割は受けておる。しかしそれは他のものに転用されておる。ですから、これは非常にむずかしいケースですが、事実上早く片づけてやらなければならない問題だと私は思います。ですから、局長のほうにおかれても、いま岡田さんが質問しておりましたが、これはやはり大きな課題として片づけてもらいたい。
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま多賀谷委員からもお話がありましたように、この問題について特に処理の方針を示してもらいたい。なお労働省との間にも、最近特にいま多賀谷委員が言われた傾向が続発するのではなかろうか、この面を私は非常に心配をいたしておるわけです。そのために非常に大きな混乱が起き、社会問題が発生するということになりかねない傾向を私自身でも感じますので、この点を私からも強く要望いたしておきたいと存じます。  それと労働省関係のもう一点でありますけれども、CO中毒患者はそれぞれ、軽作業につく方もあるだろうし、それから作業復帰をいたしているわけですが、その後の若干の報告を受けますと、一たび職についた中毒患者の労働者がその仕事に自信が持てないということになりますと救いがたい状態に入っていく、この非常に大事な時期に来ているのじゃないかと私は思うわけです。私どもも、現地の情勢をもう一度実態調査をしなければならぬのではないか、こういう受けとめ方を実はいたしておるわけですが、こういう面について企業に対する指導なり実情をどういった把握をされておるか、この機会に承っておきたいと思います。
  39. 藤繩正勝

    藤繩説明員 ただいまのお話の前に、先ほど多賀谷先生からお話がありましたが、もし誤解がありますといけませんので、ちょっと弁明をさせていただきたいと思います。  退職者で、先ほど御指摘のありましたように、同じ企業の中の別の坑内に再就職した、つまり雇用関係があるというものにつきましては、基準法の上の規制が働きますけれども、純然たる退職者でございますと基準法とは無縁のものになりまして、高利貸しに渡ってからというお話でございますけれども、渡るまでもなく、その出資法との関連は出てくるという問題でございますので……(多賀谷委員「出るけれども、従業員ならやらぬからね」と呼ぶ)従業員である者はよろしゅうございますが、従業員でないと基準法とは関係がなくなって、そちらの問題になるということになりますので、一言お答えを申し上げておきたいと思います。  それからただいまの問題につきましては、私所管ではないのでございますけれども、例の問題以来、労働基準局といたしましても絶えず関係労使と接触をいたしておりまして、ただいまもいろいろな問題をめぐりまして炭労及び三井鉱山とも連日のように接触をいたしておりますので、そういった面につきましても研究して、誤りのないように、念には念を入れて十分な指導をそれぞれの所管においていたすということであろうと思いますので、帰りまして局長にもよくその点は申し上げておきたいと思います。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府のことですから、特に労働問題が非常に大きなウエートを占めている石炭鉱業石炭政策を立てる場合に、通産省及び労働省の間では綿密な連絡をとっているということになるだろうと私は思うのです。しかし私の感じでは、これからの石炭政策を樹立するためにはさらに一そう詰めた双方の議論というものも必要ではないのか。そういう上に政策を立てないと、結局は立てた政策がまたぐらつき始めるということになるわけですから、雇用の問題であれば労働省の職業安定局でしょうし、こういう問題になりますと労働基準局でしょうし、労働行政一般ですと労政局になると思うのですが、この面、特にこれからの石炭政策樹立の上に綿密な打ち合わせといいますか協議をして、万遺漏のない対策を立てるようにこの機会に要望いたしておきます。  次に、生産体制の若干の問題について承っておきたいと思うのですが、日鉄の有明は、日鉄鉱業としては開発中止をいたしたわけです。もちろんこれは私企業ですから採算に合わない。また石炭政策も、なかなか期待する政策というものが樹立されない。石炭鉱業見通しについてもそういう角度から問題点がある。こういう中で実はこの開発の一時中止ということになったわけです。しかし国策上から見れば、大夕張、有明は原料炭確保の先兵といいますか、そういう輿望をになってこの開発が進められてまいったわけです。いわば国の政策でその方向を打ち出したわけですから、単にその企業がいろいろな理由でやれないということだけでこれを見過ごしてしまうということは、私はきわめて重大な問題だと思うのですが、その後、日鉄鉱業の決定に伴って通産省としてはこの問題をどう把握をされ、どういう方向で検討されておるか、との機会に承っておきたいと思います。
  41. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 日鉄有明鉱が開発中止をいたしましたことの経緯から申しますと、あるいは岡田先生おっしゃいますような今後の投資あるいは有明鉱を経営していく上での採算的な問題点というものが基本にあろうかとも思いますけれども、当面の開発中止の理由は、予想以上の水が出ましたことによりまして、これの防水、排水対策に技術的な見通しが立たないという状況で中止をしておるのでございます。基本的にはそういう問題もあろうかと思いますが、と申しましたことは、私の想像でございまして、必ずしもそれを表面に持ち出していま日鉄が考えておるということではないわけでございます。基本問題がかりにあるといたしましても、それらを考えていく上で、当面しておる技術問題に対しては少なくとも見通しを立てなければいかぬ。その上のことである、かように考えておりまして、日鉄の技術だけでいまの水の対策というものに見通しが得られないという状況は確かでございます。したがって、私どもといたしましてはこの技術的なトラブルというものを解決する見通しを早く立てたい。その上で、まあ基礎にもし先生おっしゃるような問題がこれはないとは言えません。あろうかと思いますが、そのほうを考えていくという手順に相なろうかと考えておりまして、できればなるべく早い時期に第三者を主体にいたしましたこれの調査団のようなものを編成いたしまして、これでこの水の問題に対しての見通しをひとつ立ててもらおう、かように考えております。計画課長のほうで具体的にこの話を進めておりまして、ごく数日前ではございますけれども、この問題についての専門家の意見も聞いております。これはまた日鉄自身の希望でもございますので、炭鉱関係者のみならず、たとえば国鉄が青函でずいぶん苦労をしておるというようなこともございますので、こういう権威者も場合によってはお願いすることにして、非常に近い時点でひとつ調査を本格的になってみたい、かように考えておるわけであります。
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 これと関連して、原料炭確保ということは、私は国策上非常に重要な課題であるという認識を持っているわけです。そういう面からこの有明鉱開発の促進をしなければならない、こう思っているわけですが、現在通産省としては国際的な原料炭炭価の動向をどう一体把握をされているのか。少なくとも鉄鋼業界としては割り安な豪州原料炭に依存をする、こういう方向で米炭依存から豪州原料炭の依存へ大きくウエートが変わって、四割程度豪州炭に依存をしている。しかし、最近の長期契約はその契約どおり原料炭がわが国に出荷されていない。遅延をする。こういう中でスポット買いをある程度し、このつなぎをしなければならないという立場に立っておるように私は認識をいたしておるわけです。しかも豪州自身はオープンカットの段階から坑内掘りに入っていく。しかも白人労働力を坑内労働力として確保することが非常にむずかしい、またそういう技術上の訓練の問題も当然ある。一方において米炭に依存するとするならば、これはメキシコ湾のほうになりますから、どうしてもパナマ運河で船が押えられる。したがって、大型専用化できませんから、海上運賃の値上がり等もあわせて高上がりにつく、こういう状況に実はあるわけです。少なくとも長期的な見通しに立つならば、わが国の原料炭の確保先は豪州であり、アメリカであり、一応カナダ、この三国に依存せざるを得ない条件に私はあると思うのです。こういう一般的な趨勢、それと炭価の動向、こういうものを考え合わせて、わが国の原料炭の確保あるいはまた一般炭、原料炭価の方向というものが政策的に考えられなければならぬのではなかろうか。これと原料炭開発が関連を持つものと思うわけですが、どういう一体認識に立たれておるか、承っておきたいと思います。
  43. 中川理一郎

    中川(理)政府委員 現状から先にお答えいたしますが、豪州炭の四十二年度の輸入量は八百八十六万トンで、全輸入量の約三六%でございます。豪州炭は埋蔵量から見まして量的に非常に期待が持てるということでもあり、また地理的にもわが国に近いために輸送費も節約できる、炭価も安いということで、依存度は今後ますます高まるものと予想しております。しかもいまお話がございましたけれども、長期契約のものがやはり圧倒的に多いわけでございまして、スポット買いは豪州炭全体の輸入量のうちの約二〇%にすぎないという状況でございます。今後の増加買い付け分につきましては大部分が長期契約のものになる見込みでございます。  カナダ炭は、輸入が米国及び豪州に片寄る傾向に対しまして危険分散のねらいもあって輸入しているものでございます。四十二年度で約九十四万トン、全体の約四%の見込みでございます。しかしカナダ炭につきましては、概して積み出し港より遠い状況にございまして、インランドの輸送費がかさむために、これらを含めて開発については慎重に検討するというのが需要業界傾向のようでございます。  先生御承知のように、当委員会の御見解もそうでございますが、私どもは長い目で見て、日本の鉄鋼業というものは相当の伸び率でふえていく、所要の原料炭のうちで国産でまかなうものの率をある程度確保したいという気持ちは変わりはございませんで、むしろ国内原料炭の開発に力を入れることとの関連で、長期契約等があまり過大な数字にならないように鉄鋼業界に頼んできた、こういう経緯がございまして、鉄鋼業界自身も、感じといたしましては私ども立場をかなりサポートしてくれておりますので、低目に長期契約分を押えてきておるという感じがございます。したがって、先ほど来申しておりますように、わがほうの生産計画の狂いが原料炭で大きく出てまいりますと、需要家にはずいぶん迷惑をかけることに相なるわけでございます。スポット買いのあるものはそういう理由から出てきておる。向こう側の事情で出てきておるものもあろうかと思いますけれども、こちら側の事情で出てきておる分もある、こういうことでございます。私どもとしましては、原料炭はひとつ重点的に国内炭を確保するということで進みたいと思っておりますが、諸外国の今後の原料炭の見通しがどうなるかということは、いろいろ見方もあろうかと思いますが、大まかに見てそう心配はない。ただし相当先に手を打たなければいかぬという感じにあるようでございます。若干のコスト高要因もあるようでございますけれども、他方、また輸送費というものは、大型船の進歩に従いまして漸次輸送費のコストというものは小さくなってきておるような状況でございますので、契約のあるものにつきましては原価アップにスライドするような契約方式をとっているようなものもあろうかと思いますけれども、国内炭と輸入炭との値差というものは当分はやっぱり同じような状況で進むのではなかろうか、私はかように考えております。いまの価格差補給を前提にする限り鉄鋼業界は優先して国内炭を使ってくれるということには変わりはございませんで、むしろ出炭割れをしないように原料炭にこれからどれくらいの手だてを講じていけばいいかということが今後の問題であろうかと考えております。
  44. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま局長から答弁がありましたけれども、私は非常に甘いと思うのですよ。そういう情勢にないという判断であります。その変化は昨年から今春にかけて非常に大きな変化がし始めてそれが深化していくというのが実は私の認識なわけです。この点特に詰めてもらいたいということが一つ。それと同時に、今年度予算に海外原料炭開発の予算が計上されておるわけです。聞くところによると、海外原料炭開発の調査団を近いうちに派遣する、聞くところによれば、四月中くらいに派遣する、こういう話も実は聞いておるわけですから、この点についてはもう少し整理をして御答弁願いたい、こう思います。  なお、あとの質問を保留いたしまして、きょうは終わりたいと思います。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員長 次回は明二十八日木曜日午前十時三十分理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十六分散会