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1968-05-21 第58回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月二十一日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 海部 俊樹君 理事 中川 俊思君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    小笠 公韶君       大橋 武夫君    岡本  茂君       神田  博君    木野 晴夫君      小宮山重四郎君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    始関 伊平君       塩谷 一夫君    島村 一郎君       田中 六助君    二階堂 進君       丹羽 久章君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    岡田 利春君       久保田鶴松君    佐野  進君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       古川 喜一君    三宅 正一君       吉田 泰造君    伊藤惣助丸君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         外務政務次官  藏内 修治君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局特         別金融課長   小宮  保君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   柳田誠二郎君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 五月二十一日  委員水野清君及び松本忠助辞任につき、その  補欠として武藤嘉文君及び岡本富夫君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員岡本富夫辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、先ほどの理事会の協議のとおり、通商産業基本施策に関する件、特に製鉄企業構造改善等の問題について参考人から意見を求めることとし、参考人の人選、日時等については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 私は、この海外経済協力基金改正案審議をする中でいつも感じるのですが、海外経済協力基金運営は、むしろ外務省であるとか、あるいは通産省であるとか、大蔵省、そうした省が実施省という形になると思うのです。これが生まれるときに外務省は、国際経済立場から外務省が当然所管すべきであるという主張をされた。一方、今度は通産省は、貿易為替管理のほうの立場から、これは通産省所管すべきであるという主張であった。大蔵省は、これまた金融上の関係があるわけですから、それなり大蔵省所管が妥当であるというような意向が非常に強かったようであります。結局、俗なことばで言うとなわ張り争いというような形になって、落ちつくところ、中立的な省ということになりますか、経済企画庁所管にするということになった。ところが、具体的な実施段階になってくると、経済企画庁というのは直接的にこれを担当しない。ところが、この改正案を議することになってくると、宮澤長官が当面の責任者として連日質疑応答に当たっておられる。長官もたいへん海外経済協力というものの重要性ということを認識されて、見識ある答弁をしておられるということには敬意を表するわけでございますけれども、どうもこの経済企画庁というのは実際何をする役所であろうか。なるほど設置法を見てみると、それなりのことを書いてある。任務の第三条の中で、第四号に「経済に関する基本的な政策総合調整」とあるのですね。この海外経済協力基金というのは総合調整ということになるのかどうか、総合調整ということになってくると、どういうことを具体的にやっておられるのであろうか。海外経済協力ほんとうに、各同僚委員から指摘されましたように、各省ばらばらにならないで、一本の強い線によってその協力が強力に推進されておるということであればよろしいのですが、私どもが知る限りにおいては、どうもそうした強い線、いわゆる一本化した形においての協力体制というものがなされていないように思うのです。技術協力に至っては、これは資金協力というような面と比較をいたしまして、さらにこれはばらばらになって、いわゆる連絡調整総合調整というものは行なわれていない等々、考えてみると、どうもこの経済企画庁というものの性格そのものに若干の疑問を私は感じるわけですが、長官としてはその点、これでよろしいとお考えになっているのであろうか。私は先般の商工委員会において、もっと強力な企画立案をし、これを実施段階に移していく上について企画庁考え方というものが実施面に強く反映し、これを推進する役割りを果たしていくというような体制が確立されなければならないのではなかろうかということを大臣見解をただしたことがあるのでございます。そのときには大臣の御答弁はございましたが、私は満足しなかったわけでございましたが、その具体的な法律案審議をするにあたりまして、さらに大臣見解をひとつ伺っておきたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず経済企画庁仕事のことでございますけれども、大きく分けまして、一つは御指摘のように経済計画の策定でありますとかあるいは経済調査国民所得についての分析でありますとか、そういう系統の仕事一つございまして、そのほかに各省総合調整という仕事がございます。この二つが本来の本体であったと思うのでございます。それに加えまして、ただいま御指摘のように、各省のどこにも属しがたい事務を所掌するというようなことになってまいりました。その一つは、たとえば水資源のようなものでございますし、もう一つは、ただいま御指摘になりました海外経済協力のような仕事であろうと思うのでございます。  それで経済企画庁権限は、経済計画、これは時系列的な計画と、今度は地方的な総合開発計画のような両方がございますけれども、この点についての権限はなるべく強いほうがいいというふうに思いますけれども、それ以外のたとえば調整権限といったようなものが実はあまり強うございますと調整になりませんし、水資源とか経済協力とかいうことになりますと、これは一種の権限争議のようなことで企画庁に来ておりますから、これも独自の立場で強い行政をやっていくということはできないわけでございます。ですから経済企画庁そのものが強くあっていい部面と、あまり強くないほうがいい部面と私は両方あるように感じております。  経済協力基金につきましては、確かにいまの行政機構というのはあまりうまくできておりませんで、あまり機動的に動けないようないまの仕組みになっておりますことは私どももしょっちゅう感じております。せいぜい各省意見を聞きながら結論を出していくというようなことに努力しておるような現状でございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 経済企画庁としては、経済に関する基本的な政策総合調整というものが一番重要な柱であると私は思う。局長通産省におられた赤澤局長というベテランがすわっておられるが、ほんとう力一ぱい仕事ができるのだろうか。それだけの分野が与えられておるのであろうかということを私は疑問に思って、おりがあれば尋ねてみたいと思っておったのですが、きょうはこれに触れたのですからさらに突っ込んでお尋ねしてみたいと思いますが、限られた時間でございます。したがって、いずれまた適当な機会にそのお尋ねをしてみたいと思うのですが、この海外経済協力基金、これは企画庁所管をしているわけですが、実際この運営をやってみて、長官はどのようにお考えになりますか。私が指摘いたしましたような点があるとすれば、当初実は生まれたときに申し上げたように、たいへんな争いというようなことであったわけですね。ですから、その争いの吹きだまりみたいな形で企画庁に持っていったんですね。それが結局運営の面においてうまくいっていないということになる。うまくいかせるためには、海外経済協力というものを本来あるべき姿、それを受ける開発途上国からほんとうに信頼され、感謝されるというような方向推進をしていくためには、現在の姿でよろしいのかどうか。後刻総理も参りますから、総理見解もただしてみたいと思うのでございますが、長官としてその点ひとつ率直に見解を伺ってみたいと思うのです。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 率直に申しまして、どうも現在の姿はあまりうまくないと思っております。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 それではということでお尋ねをしていくべきでございますけれども、時間の関係がございますから、その点はいずれまた適当な機会お尋ねをしたいと思います。  この経済協力ということになってまいりますと、非常に範囲が広いように思う。賠償であるとか、あるいは賠償担保の借款であるとか、あるいは緊急援助であるとか、あるいは長期信用供与技術協力企業進出というものも入るのだろうと思うのですが、船舶あるいはプラント類の輸出、こういうのが経済協力ということになるのかどうかですね。経済協力ということになってくると、確かにそれはそうだろうと思う。ところが経済援助という形でいつも表現されてきておるし、またそういう形で政府も説明をし、われわれとしてもいわゆる経済援助という形で判断をし、そういうことで質疑も進めてきておるわけです。経済援助定義は何かということですね。それをこの際ひとつ長官から伺ってみたいと思うのです。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども普通経済協力経済援助国民所得のたとえば〇・七%とかなんとかいうふうに申し上げております数字は、DACで認められた範囲のものを一応全部あげておるわけでございます。  さて、DACがどういう定義をいたしておりますか、ちょっと私正確に存じませんので、政府委員から知っておりましたら申し上げます。
  11. 上田常光

    上田(常)政府委員 DACでも経済援助あるいは経済協力というものを正確に定義づけたものをまだ私知っていないのでございますが、一応DACでは後進国に対する資金の流れというような形で事態を把握しておりまして、それで大体事務局があげました項目に従って、各国それぞれ昨年度はどういうような支出をしたかということを報告して、それをまとめておりますのがDACの統計になっておるわけでございます。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 どうもはっきりしないのですが、DACのほうでそういうことだというんだけれどもわが国経済援助を進めていくのは東南アジアが中心になっておるわけですね。それで、いかにもいわゆる開発途上国に対して特別のことをやっておるんだ、恩恵を与えておるというような理解と認識ですね。それで相手国はどういう受けとめ方をしておるのであろうか。そこで経済協力あり方というものはどうあるべきかということが当然私は出てこなければならないと思う。この経済協力あり方にいたしましても、アメリカ、あるいはヨーロッパ諸国わが国とその条件も違っているのですね。違っておるんだけれども開発途上国というのは非常に外貨不足に苦しんでおるわけですし、開発は何が何でも積極的に進めていかなければならない。問題のインドネシア等のごときは慢性化したインフレ、それから食糧不足というのに悩んでおる。おぼれる者はわらをもつかむという気持ちで、とにかく求めたい。ところが内心は非常な不満というものを持って、いわゆる信頼と感謝の方向ではなくて、その運営よろしきを得ないということになってまいりますと、むしろ反感というのが出てくるのではないか、友好親善方向ではない。そうなってくると、肝心の経済協力経済援助というものがほんとうに本来のあるべき姿から逸脱をしておるということも私は指摘されるのではないか。ですから経済協力あり方というものはどうあるべきか、現在進めておることの評価と反省の上に立って、この際ひとつ宮澤長官見解を伺ってみたいと思う。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 戦後アメリカヨーロッパに対するマーシャル・プランあるいはわが国に対するガリオア、エロア等援助というものをいたしましたが、これはあの段階でまず比較的純粋な立場での援助であったように考えております。それからあと米ソの角逐というものがございまして、米ソによる援助というものが、お互い相手を意識した、多少自分勢力圏を確保しておくといったような時代がかなり続いたように思います。それから、それと並行いたしまして、旧植民地を持っておった国が、昔からの縁の続きで、独立をしてもなお援助をしてきた場合もあるように思うのでございます。そうしておりますうちに、御承知のようにUNCTADのような動きが出てまいりまして、そしてプレビッシュなどは、いつぞやも申し上げましたが、援助というものは、かっての植民地主義との関係で、先進国発展途上国に対して償いをする、そういう性格のものであるというような強い主張をいたしたこともございます。ですから、そういう気持ちが多かれ少なかれあるだろうということは想像するにかたくないわけでございますが、私どもプレビッシュには、それは腹に置いておいて、そういうことはあまり表に出さずにやったほうがいいんじゃないかということを個人的に申したこともございます。わが国立場といたしましては、やはりいつぞやも申し上げました、何度か繰り返して申し上げておりますように、平和憲法を希求する立場から申しまして、第三次大戦が起こりそうな原因を除いていくということ、その一番大きな原因は、やはり南北間の格差でございましょうから、これを解消していくことが世界平和につながりますし、わが国憲法の目的にも合うという立場から、できるだけ純粋な立場からやっていきたいというのが基本理念だと考えております。ただしかし、わが国自身が全くそういう人類愛的な立場でのみ援助をするほどまだ力がございません。援助貿易とが多少からまり合ったような援助をしている場合が数量的には多いと思います。DACでもときどきそのことを指摘を受けておるわけでございます。しかし基本理念といたしましては、やはり援助というのは一応そういう世界平和を希求するという根本理念に出なければならないものではないか、こう考えておるわけであります。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 根本理念はおっしゃるとおりだと思うのです。それじゃ、具体的にはいまお答えの中に大体出てまいりましたが、大臣のいまの考え方を私なりに解釈をしてみると、自分の国のいわゆる経済力に応じた援助というのが一応考えられておるのではないか。これはDACの中においてもそうでございますし、国民所得の一%といわれておったのが、今度はフランス等の強力な主張によっていわゆる国民総生産の一%ということがいわれている。それが確立をしておるのかどうか。そうなってまいりますと、御承知のとおりわが国国民所得の〇・七%ということですから、相当な援助を拡大をしていくということでなければ、そうした要求にははるかに遠いものがある、こういうことになってまいりますが、いまのわが国の国力からいたしまして、いわゆる国民総生産の一%ということが可能なのかどうか。もちろんこれは年次計画でもってやろうというお考え方のようですが、その点はっきりしておるのかどうかということを伺いたいということと、もう一つは、相手国経済計画を確立させなければならないのではないか。なるほど相手国主権というものは尊重していかなければならない。ならないのではあるけれども相手国のいわゆる自主性のみにまかしておいていいのかどうか。やはり援助する側の意向というものが、そういうものが有効に反映をしていくというようなことをいま考えられているのであろうと思うのでございますが、現在のようないま進めておる方向反省の中で、この後はどうあるべきかということ、これはいま私ども審議いたしておりますこの法律案の中にも当然具体的問題としてあらわれてきておるわけであります。それらの点についても考え方を伺ってみたいと思うわけであります。  それからわが国利益というもの、自分の国の利益をもたらすということを念頭に置いて経済協力経済援助というものが進められておるように感じられるわけでございますが、その点どの程度ここにウエートを置いてお考えになっていらっしゃるか。まだいろいろありましょうけれども、いま大臣答弁の中から引き出されるものは、やはりそうした三つの柱というものが総合的にからみ合い、調整されていかなければいけないというようなお考え方にも受け取られるわけでございますが、基本理念はそのとおりであるといたしましても、具体的な協力あり方ということについて、いま一度ひとつ考え方を伺ってみたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国援助国民所得あるいは国民総生産の一%に近づいていくということは、国際的にもゆるい約束ではありますが、そういう大まかな約束があるわけでございます。ただそのときに、せんだってもニューデリーの場でこれを国民総生産の一%云々という話がありましたときに、わが国のように経済成長の著しい国ではGNP伸びが非常に大きいわけでございますから、その一%ということもさることながら、毎年援助実額が相当ふえていっているということは、それなりに、GNPとのパーセンテージでなく、実額伸びていくということも相当評価してもらっていいのではないかということを、わが国の代表が先般もニューデリーで述べております。これは私は確かに、要するにGNPの一%あるいは国民所得の一%というような考え方も、先細りにならないようにふえていくという思想に立っておるのでありましょうから、わが国のようにふえ方が著しいというところでは相当その点を買ってもらっていいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ国際的にわが国援助についてございます批評は、その実額伸びは確かに認めるけれども、どうもからい種類のものが多い、どっちかといえば商業的な色彩のものが多いということは始終批判を受けておるわけでございます。それはある意味でわが国自身国益というものとかなり近いところで援助が結ばれておる、もう少し遠いところで結ばれればいいわけですが、非常に間近なところで結ばれておるということで、批判が実はそこにあるわけではございましょうから、わが国としてはまだまだ身近な国益というものと援助というものがおそらく先進国の中ではかなり近く結ばれておるのではないかと思います。  それから相手国との関係でございますが、われわれ自身も二十数年前にいろいろ援助を受けて、そうしてときとして非常に不愉快な思いをしたことをまだ忘れておりませんので、なるべく相手方考え方を尊重してやるべきだと思いますけれども、技術的にはやはりいろいろアドバイスをして、向こうもそうだと思ってくれる点もたくあるあるわけでございますので、それをバイラテラルにやることもございますが、できるならば国際機関なりあるいはコンソーシアムなり援助を与える側が共通の立場相手方アドバイスをしていくということのほうが先方の自尊心なり主権なりを尊重するゆえんではないか、こういうふうに考えております。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 要求大臣は大体どういうことになっておりますか。どうも質問を進めていくのにやりにくいですね。
  17. 小峯柳多

    小峯委員長 運輸大臣は入っております。ほかの大臣はいま交渉中ですから……。
  18. 中村重光

    中村(重)委員 運輸大臣には全体の関連の中からお尋ねしたいことがあるわけですが、いま外務大臣大蔵大臣農林大臣もお見えでないようです。  そこで運輸大臣に、十一時二十分までということでございますから、全体の関連の中で質問しないのでぽつんとした質問になるわけですが、フィリピンであるとかあるいは韓国であるとか、その他通商航海条約がまだ結ばれていない国がある。もちろんそれは通産省が主として関係ありますけれども、運輸省の関係というものもあるわけです。だからこのことは非常にわが国当該地に進出している企業にも重大な影響というものが具体的に出てきている。この点に対しては強力に推進をしておるとは思いますけれども、なかなか実現をしない。韓国との関係におきましても日韓条約締結の際、当時の三木通産大臣であったと思うのですが、強力にこれを推進しておるということを言ったわけです。先般フィリピンでも問題が起こったことは御承知のとおりであると思う。この点運輸大臣としてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。いろいろ船舶等の積み出し等におきましても、そうした条約が結ばれていないということにおいての不利益というものは多々あるであろうと思うわけですが、それらに対してのお考えをお聞かせ願いたい。
  19. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本のような海運国は、通商の自由あるいは公海航行の自由というような原則を最も貴重な原則として順法し推進すべき国柄でございまして、そういう点から見ると、通商航海条約領事条約ができてないという国は、非常に不便であることは事実であります。しかし、実際の必要という面から見ますと、両方とも、政治のワクを越えて商売の話というのは進むもので、たとえば、航空協定というようなものはない場合でも、商務協定でやったり、あるいは現実的にお互いがギブ・アンド・テイクで話をしてやるということはございます。そういう便法によって、いま暫定的に時をかせいでおるわけでございますが、やはり、政治経済文化、全面的にわたる友好関係のあたたかい雰囲気で包んで、そしてできるだけそういう障害を解消していくということが、日本の外交やその他のやり方としては賢明だろうと思います。単に商売だけというわけでは、なかなか進むものでないと思いますので、政治経済文化、あらゆる面から友好親善関係を促進するということが非常に重大であるとは考えております。
  20. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるとおりだと思うのですよ。だから、政治経済文化、そういう全体の中から、いわゆる友好親善推進していかなければならない。その場合、便法的な形というようなことではうまくいかない。むしろ領事条約にいたしましても、韓国等も、御承知のとおりまだ結ばれていない、通商航海条約も結ばれていないと私は思います。日韓条約締結をされましてから、御承知のとおり相当の期間がたっている。当時すぐ締結をされるというように伝えられたのだけれども、まだ、今日に至るまでそのままこれが締結されていない。いま大臣がお答えになりましたような、いろいろな努力によって、それらの親善というものは結ばれておるであろうけれども、やはり問題というものは御承知のとおりに出てきておるわけでございますから、その障害となっているのはどういうことか。いま大臣がお答えになったような、いわゆる便法という形で親善を続けていくということにも限界があるのではないか。それらの点に対して、具体的な形で結んでいないことに、いろいろ問題はお感じになっていらっしゃらないのか、あるいは、そうした関係条約を結ぶことについての見通しというものはどういうことなのか。
  21. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 発展途上国との関係において、一番考慮さるべきはナショナリズムの問題だろうと思います。特に東南アジア諸国におきましては、長い間植民地下にあった経験もあり、先進国に対する非常な猜疑心というものは当然あり、その立場はわれわれも深く了解し、同情しなければならぬことであろうと思います。したがって、西欧と普通のことで行なわれることでも、発展途上国との関係においては、ナショナリズムの観点から特に考慮しなければならぬという要素も非常にあると思います。また、インドネシアその他において華僑が現地政府から弾圧を食ったり、いろいろしている情勢なんかも、われわれとしては他山の石として考うべきものでありまして、そういうナショナリズムというものに対して、最大限の考慮を払った通商政策とか文化政策とか友好政策というものが一番大事である、そのように考えます。
  22. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるとおりなんだが、だから当然条約締結することが望ましいことであることは間違いないのでございますから、私がそのことについて伺ったわけですが、時間の関係もございますから、いずれまた適当な機会お尋ねいたします。  日中関係の問題について伺いたいと思います。大臣は日立造船所の船舶輸出に対して、いわゆる輸銀使用の延べ払い輸出は当然望ましいことであるし、そういう方向で主管大臣としては進めてまいりたいということを、たしか委員会における質疑応答の中でお答えになったように記憶するわけですが、その点はいまもお変わりにならないのか。佐藤総理との話し合いも持たれたということでございますが、その点はどうなっておるか。
  23. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 政府もケース・バイ・ケースでこの問題は処理すると言い、あるいは総理大臣も吉田書簡を超越するとかいうような由のことを言われたそうでありますが、私もできるだけ周囲の国々とは、隣人の道と申しますか、そういう世界に対して公明な、どこに出しても恥じない道徳的な要素を持った隣人の道を歩むことは望ましいと考えるのであります。貿易文化、可能な限りそういう手を差し伸べていくということは、われわれの憲法にも合致いたしますし、国是でもあると思います。そういう観点からいたしましても、日本と中国間の貿易を促進していくということは、一面においては世界の平和にもつながり、極東の緊張緩和にも大きく貢献し、あるいはさらに日本貿易発展のためにも非常に多とするところでもあるのであります。そういうわけで輸銀による船舶輸出の問題も、私はできるだけ推進したいと思っております。それには前に日立造船が向こうと話をしまして、ある時点までは話がうまく妥結しそうでありましたが、途中でこわれました。それが復活できるものかどうか、事務レベルで話し合いをいま、してもらっておりまして、その事務レベルの話し合いの結果を聞いて、いろいろ総合的に判断をしてみたいと考えておるのであります。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 伝えられておるように、日立造船が、当時これは非常に意欲的であったし、むしろ成約ができておった。それが輸銀が使用できないというので取り消しになっておる。だから日立としてはこれはぜひ輸出をしたいというので意欲的だということは、これは新聞紙上にも伝えられておるところであります。いま大臣のお答えで、事務レベルでこれができるかどうかということを検討しているとおっしゃったのですが、その事務レベルというのはおそらく運輸省内のことであろうと思うのですが、できるかできないかという点は、どういうところでございますか。
  25. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事務レベルと申しましたのは、日立造船が、あるいはダミーを通じて先方といろいろ話し合いをしてみて、条件に変化はないかとか、値は上がるのか上がらないかとか、そんないろいろな面について、向こうの意思を聞いてみる必要があると思うのです。あるいはそれ以外に先方からの要望や条件がついてくるかもしれません。そういう実態を把握した上で考えませんと、こっちがねじりはち巻きでやってもひとり相撲に終わるということもあり得るわけです。ですから環境や条件をよく調査した上で、できるだけ善意をもって推進していきたい、こういう考えでおるわけです。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 大臣のおっしゃるとおりだと思うのです。そこで事務レベルでいろいろ検討、折衝した結果、これは支障はない、こういうことになってまいりますと、当然輸銀使用による船舶輸出というものは可能であるし、またそれは実現をするのだ、させるのだ、こういう考え方であるのかどうか。
  27. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 事務レベルで可能であれば、当然私は許可してやりたいと思っています。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 では運輸大臣はけっこうです。  外務大臣がまだお見えでございませんが、しばらく時間がかかるようでございますから、政務次官お見えでございますので、政務次官にひとつお尋ねしてみたい。  私がいつも感じておることで、また委員会等においても政府見解をただしておるのですが、海外経済協力、その中におけるいわゆる資金協力と相関関係を持って強力に進められていかなければならぬのは、技術協力であると私は考える。ところが、わが国技術協力というものは他の先進諸国と比較いたしまして低調であると思っております。具体的にはどういう点かと言われるならば、私なりにこの点非常に関心を持って研究をいたしておりますから申し上げられるわけでございますけれども、時間の関係もございますから省略をいたします。外務大臣もたいへん熱心に海外経済協力技術協力の点については勉強していらっしゃると思いますから、ひとつ外務大臣の率直なお考え方をお聞かせ願いたい。そして現在のような技術協力が先進諸国と比較をして非常に条件も悪い、低調であるということをお認めになるならば、どうしようとお考えになっていらっしゃるのか。
  29. 藏内修治

    ○藏内政府委員 わが国の海外に対します技術協力の歴史はすでに十数年を経過しております。この技術協力が特に開発途上国については外交上も非常に大きな一つの柱になっておることは事実でございますので、これを今後とも最も有効に推進をいたしたいと思いますが、過去に行ないました技術協力の効果が一体どのくらいあがっているのか、この追跡調査をしておく必要がございます。そういうことで五十一カ国に関しまして調査をいたしました結果が、大体のところいま調査の資料としてまとまっておる次第でございます。この資料をさらに検討いたしまして、最も有効なる技術協力の効果を発揮させる新しい方法をさらに具体的に検討を重ねようという段階にいま来ております。その検討の結果ができました上は、新しい方針を具体的に定めまして遂行してまいりたい、かように存じておるところでございます。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 調査をしてそれをまとめていこうとおっしゃるのだし、前向きなんだから、私はそれはいけないとは言わないですよ。ところが、いまごろかと私は言いたいのだ。私ども技術協力を強力に推進しろということを要求してまいりましたのも、これももう四、五年前からであります。御承知のように外務省所管がある、通産省がある、農林省がある、その他各省がこの技術協力についてのそれぞれの所管事項によって推進をしていらっしゃると思う。その間において総合的な関連を持たせてこの技術協力を効果あらしめようという点については不十分であるということよりも、私はいま政府の進めておるそうした技術協力はきわめて低調といっていいのか不十分といっていいのか、むしろ適当な表現を求めにくいくらいに非常な憤りを持って政府の施策を批判しておるわけです。だから、外務省としては、諸外国との関係においての窓口でございますから、当然それらの苦情であるとか不満であるとかいうものを諸外国からいろいろ聞いておられるであろうと思う。その結果の調査であろうとは考えますけれども、その点どのようにしようと具体的にはお考えになっていらっしゃるのですか。
  31. 藏内修治

    ○藏内政府委員 先ほば申しました調査の結果から一応概括的に申し上げますと、わが国技術協力の全般的な評価はかなり高く評価をされておるというぐあいに見ていいだろうと思います。しかしながら、その中におきましてはいろいろな問題点がございまして、一そう規模を拡大してほしいとか、あるいはまた徹底した協力体制がとられていない、その大きな理由といたしまして、わが国から出ていきます技術者の身分の不安定であるとか、現地の風俗、習慣との違い等もございまして、安定した、要するに一生そこへ骨を埋めていくほどの体制というものがなかなかつくられていかない、そういう点などがございます。そういう一つ一つ部面を具体的に調査してまいりますと、かなりたくさん改善すべき点があろうかと思います。しかしながら全般的な評価といたしましては、かなり高度に評価されておるという事実をわれわれは認識をして、その高度の評価を文字どおり効果あらしめるための施策を今後具体的に考え直していかなければならぬ点があろうかと存じております。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 技術協力あり方について考え直していかなければならぬと思うとおっしゃったのだから、私は時間の関係もありますからそれ以上は入りません。なるほど個々の技術協力については、日本の技術は優秀であるとかいうことにおいての評価はあるかもしれぬ。しかしそれでこと足りるという考え方はいけない。いろいろ研修生であるとかあるいはこちらから専門家を派遣してそれなりの研修をやっていらっしゃる、それがどういう効果をあらわしておるのかとか、また帰ってきた者がどういうことをやっているか、そうしたものは総合的に追跡調査を含めた中で技術協力を強力に推進して、ほんとうに効果ある協力資金協力と一体化した、いわゆる二者択一じゃないわけで、相関関係があるわけですから、そういうような形の協力体制を進めていかなければならない、私はそのように考える。関心を持っておることでございますから、いろいろと具体的な問題についてまだ申し上げたいのでございますが、時間の関係からはしょることにいたします。  そこで、インドネシア関係について触れてみたいと思うのでございますが、今日までインドネシアに対しては、日本としては経済協力を非常に積極的に進めてこられました。先ほど私は項目をあげて、日本がやっている協力の具体的なことに触れたのでございました。ところが、どうもそうした援助の効果というものがあがってない。このことは外務大臣も率直にお認めになったところでございます。どうして効果があがらぬのか。その理由を外務省はどのように把握していらっしゃるのか。その点ひとつ伺ってみたいと思います。
  33. 藏内修治

    ○藏内政府委員 インドネシアに対する技術援助を含めた広い意味での援助わが国協力、こういうものが効果をあげていなかった、それは一九六六年まで、いわゆるスカルノ政権時代までは、インドネシア側の受け入れ体制の不備とか、経済的基盤が非常に不安定であった、そういう個々の事情がございまして必ずしも効果をあげなかった、というよりもむしろ問題を投じた援助が一、二あったことは事実であろうと思っております。一九六六年から今日まで約二年を経過いたしておりますが、約半年間の政治的空白期間を経過いたしました後のスハルト政権になりましてからは、わが国及びその他の諸国から行なっておりました経済援助、これは徐々に効果を発揮してきておるのではないか、そういうことがインドネシアの経済上のいろいろな統計からも少しずつ看取されるのではないかと思っております。たとえば物価の上昇率も、六七年と六八年を比較いたしますと、大体七、八倍のところから二倍ちょっとくらいまで下がってきた。国の財政赤字も百六十億ルピアをこえておりましたのが五十億ルピア程度にまで減少してきた。さらに国際収支も、ごくわずかではございますが、だんだん黒字の傾向にある。こういうことを見ましても、一九六六年以後今日の政権になりましてからは、だんだん安定を示しておると同時に日本を含めての外国からの経済援助も徐々に効果を発揮してきておるのではないか。そういうのは政治的な安定、経済的な基盤、こういうものの相関関係がございまして、それらの安定とともに経済効果も徐々に発揮をしてくるのではないか、かように判断をいたしております。
  34. 中村重光

    中村(重)委員 スハルト政権下になりまして、確かに政情が安定化の方向に進んでおるということがいわれておる。いまあなたがお答えになりましたように、経済的にも政治的にも安定をしておるかということについては、見解の分かれるところでもあろうと思う。しかしいずれにしてもそうした方向にないということは、それは言えないと思う。だがしかし、いまお答えになったような効果の面ということになりますと、私の調査では必ずしもそうではない。具体的に考えてみなければならぬ点があるであろうと思う。おっしゃったように、経済基盤の、いわゆる非常にインフレである、あるいはそのために国際収支が悪化しておるというようなことですね。さらにいわれておるのは、いま輸銀資金によるところの商品援助というものがなされておる。その商品援助というのが、いわゆる企業、商社にまかして、そして輸入されるところの商品が一部のものに片寄っておる。それが大きなマイナス要因として働いておるということもいわれている。さらにこの商品を売却をして換金をいたしますその資金というものが、これも同僚委員から指摘されるところでございますが、軍人であるとかあるいは官吏の給料に充てられていく、そういうことで、肝心の開発援助というような形の効果というものはあらわれてない。あらわれておるとおっしゃるならば、それでは具体的に、いままで計画され実施されているはずの、いろいろなダムであるとかその他の施設というものが計画のとおり進んでおるのかどうかということになってくると、政務次官も、進んでおるときっぱりお答えになることはできないであろうと思うのです。私は、この法律案審議をするにあたりまして、商品援助というものを基金がしようということに対して非常に批判的でありますのは、従来、輸銀の中において、輸銀使用によって進められてきたいわゆる商品援助というものが、効果ある形において運営されていないという点、それを問題にいたしておりますから非常に批判的であるということであります。以上私が申し上げましたようなことに対して政務次官はどのように把握をしていらっしゃるか。
  35. 藏内修治

    ○藏内政府委員 この問題は、前に企画庁長官がほかの委員の方にお答えになったと思いますが、海外援助の形としては、やはりプロジェクトによる援助が主体を占めていくべき方向にあろうかと思います。ただインドネシアの場合には、まだ経済的な不安定の状態を離脱しておりませんために、まず安定をしたい、インフレを収束してまず安定したい、その上でプロジェクトによる開発援助のほうに逐次移行してまいりたい。こういうことでございまして、今後行なわれます援助も、このBE援助とプロジェクト援助のバランスの問題がいま検討されておる段階であることは御承知のとおりでございます。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 あとで外務大臣が参りましてからいろいろな問題についてお尋ねいたしますが、宮澤長官一つ、これをあなたにお尋ねをすることが適当なのかどうかということになりますけれども、基金の担当大臣でございますからお尋ねをいたしますが、昨年の十一月にアムステルダムで債権国会議が実は持たれた。そのときにインドネシアから三億二千五百万ドルの開発資金というものを求められたということでございますが、またことしの四月でございますが、ロッテルダムで同じような要請というものがなされている。この両会議において、関係各国はどのような反応を示してこられたのか、いろいろと同僚委員から、これと関連をいたしまして質疑がなされたわけでございますけれども、その点、大臣承知でございましたら、ひとつお答えを願いたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も詳しいことはこまかく存じませんけれども、結局昨年三億二千五百万ドルというような数字が出まして、そうしてアメリカとしては、他の国が応分の負担をするんなら自分のほうとしては三分の一程度でございますかというようなことを言った段階がございまして、そして先月でございますか、ロッテルダムの会議になったわけでございますけれども、ロッテルダムの会議では、第一わが国が最終的な態度を表明することができなかったわけでございますし、そのほかにアメリカヨーロッパわが国のほかに国際機関がどのぐらいの負担をするかということも必ずしも明らかでございませんでした。そういったようなこともありまして、三億二千五百万ドルそのものが、これがもうみんなの受け入れ得る数字であるということも必ずしもはっきりしないことになってまいりまして、それは一つにはそれ全部が商品援助ということでは必ずしもなくて、プロジェクトもあり得るでありましょうしいたしますから、そこでアメリカとしては六千万ドル程度のコミットメントは一応根っこにあるのだと思いますけれども、何かこうはっきり合意ができないままにロッテルダムの会議が終わったように私は報告を聞いております。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 それでは大蔵大臣が見えるそうでございますからそちらにお尋ねいたしますが、はっきりした承認というのか、そういうものはこの会議では決定をしなかったと言われますけれども、インドネシアの一九六八年の予算の中に同額の三億二千五百万ドルが開発必要資金として計上されておるという事実であります。いわゆる必要外資という形で計上されておるということです。そうなってまいりますと、ある種の、期待感ということよりも、むしろこれを形式的には決定という形はなされてはいないけれども、これをやはり承認するという意思表示がなされたのではないかというように考えられる。その後のインドネシアの動きということから総合して考えてみますと、どうも私はそういう感じがしてならない。だからこの事実を長官が御承知なくて通算大臣がおわかりになっていらっしゃるならば、ひとつお答え願いたい。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点、先般のインドネシアの大統領はじめ閣僚が参りましたときに聞いたことでございますけれども、二億五千万ドル相当額のBEを歳入予算に見ておる、こういうことのようでございます。そのときに、実は私申しましたのですが、ドルをルピアにどういうふうに換算するかという換算率の問題が当然のことながらあるわけでございまして、まだまだインフレがおさまったわけではございませんので、換算率の適用いかん、それもむやみに高い率を適用しろというわけではございませんで、ある程度リーズナブルな率をどういうふうに適用するかということで、ルピア表示の金額は全く変わってくるわけでございましょうから、そういうこともあるではないかということを私申しましたところが、むろんそのこともいろいろ考えているのであるという答えでございましたので、多少その辺にはいろいろな弾力性があるのではなかろうかとも考えられるのでございます。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 どうも必要以上にそうした会議等において議題となり審議され、そしてまた日本だけじゃなくて債権国会議は全部が参加しているところでございますから、明らかにしていいようなものが明らかにされないということがどうも割り切れないような感じをいつも受けておるわけです。率直にお話し願ってもいいのではないか。佐藤総理が昨年の十月でございましたか、インドネシアを訪問され、その際にこの三億二千五百万ドルのことについてもいろいろと話し合いをされたであろうと私は思う。その一カ月後の債権国会議において、三億二千五百万ドルが必要外資なのだから、これをぜひひとつ認めてもらいたいということを強く要請をされておる。なるほどそのときはその話を聞くにとどめたという形にはなっておりますけれども、実際はそうではないのであります。昨年十月にインドネシアを訪問されたときのスハルト大統領との話し合い、それから先般大統領が日本に来られたときの話し合い等については後刻総理から伺うことにはしたいと思いますけれども、いま提案されておるところの改正案とそうしたインドネシアの必要外資ということと、いま一億ドルの援助であるとかあるいは八千万ドルあるいは六千万ドル計上されておるというような問題とは、直接的にはどうも法案の改正とは関係がないけれども、これが結びついておることは間違いはないわけです。  そこで、いま予算の中には四百四十億円を計上されておる。それをいま私ども審議をいたしておりますのは、これを商品援助にするということが中心になっておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、私はその商品援助というものに対しては従来の経過からいたしまして批判的であります。だからして、この商品援助というものがどの程度考えられておるのか、同僚委員から若干の質問がなされましたが、必ずしも明快な答弁がなされていなかったようでありますから、その点についてひとつお答えを願ってみたいと思います。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国援助の内容でございますが、相当部分の商品援助があることは、これは法律さえ御承認をいただければそういうふうにしたいわけでございますが、そのほかにプロジェクトが、先方との話し合いの結果でございますけれども、おそらく何がしか入ってくる。場合によりましてまた食糧援助が入ってくるかもしれないと思っております。しかしこれらは、これから法律が成立いたしましたら交渉できる権限を私ども持てるわけでございますので、これからの交渉でございますし、総額そのものがきまっておりません。したがって、その内訳についても数字で申し上げることが現にできない。これはきまっていないからできないわけでございますが、相当部分が商品援助になりますことは、法律が成立いたしましたらそういたしたいと思っておるのでございます。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 相当部分とおっしゃるけれども、もっと率直にお答えになっていいのじゃございませんか。IMFから三億二千五百万ドル、その中の二億五千万ドルは商品援助に、七千五百万ドルは開発援助だというような要請というのか指示というものがなされておるのではないか。そうなってまいりますと、日本援助も当然その比率によってなされるであろうと私は考える。そうしたIMFにおいて指示されておる、要請されておる内容を日本だけが自主的な形においてこれを変更し得ることが可能なのかどうか、その点はお答えはできるであろうと思います。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは概してごもっともな御指摘ではございますけれども、プロジェクトになりますと、つまりただいま、かりに三億二千五百万ドルを総体といたしましたら、七千五百万ドルがプロジェクトであろうとおっしゃいますが、そのプロジェクトにつきましては各国とも、自分のしかけた仕事でありますとか向こうから頼まれた仕事でありますから、御承知のようにおのおの平等ではございませんで、たとえば三Kダムなら三Kダムというのでございますか、わが国に特別に関係の深いものがあったりいたしますから、プロジェクトの数字は各国みんな平等にすぽっと割れないわけでございます。ですから、わが国の場合でも、かりに総体がきまりましても、そのうちプロジェクトの分がどれだけになるか、逆に申しましたら、自動的に商品援助の二五〇に対して七五の割合になるのじゃないかということは、必ずしもそうならないというふうな感じでございます。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるとおりだと思うのです。きちっとは割れないと思うのですよ。しかし、IMFでそうした要請がなされておる、関係諸国はこれを承認する方向である、二億五千万ドルが商品援助であり、七千五百万ドルが開発援助である、こういうことになってまいりますならば、大臣お答えになったような点はありますけれども、大筋としてはそういう方向であるのではないかということを申し上げたい。  それから、大蔵大臣からその六千万ドルの上のせについてもいろいろお話があったわけですが、いま長官は食糧援助もあるからとおっしゃった。これはおそらくKRのことであろうと思う。ところが食糧援助、いわゆるKRということになりましても、予算として二十五億円を計上しているにすぎないはずである。二十五億円であるということになってまいりますと、これはほんのわずかな金額でございますが、これがインドネシアにどれだけ配分をされるのかということになってまいりますと、たいした額ではございますまい。してみると、三億二千五百万ドル、その中の、大臣お答えになりましたように三分の一であるということになってまいりますと、これは一億ドル程度になる。ところがいま六千万ドルというのは、これは閣議決定をしたということも伝えられておるのだけれども、必ずしもそうではない。どこかの委員会において、実は大蔵委員会かどこかであったと思いますが、企画庁の担当者が積算の基礎として六千万ドルだということを答えられた。その六千万ドルというのが積算の基礎として出ているのでございますから、一つの既成事実みたいになっている。それで大蔵大臣は、若干上積みがされるかもしれないと言っている。そしていま企画庁長官は食糧援助、いわゆるケネディラウンドにおける二十五億円の問題を持ち出された。いろいろとお答えになるのだけれども、大体三億二千五百万ドルというのが承認をされておる。そして三分の一ということになってくると、これは六千万ドルでは足りないということになってまいりますから、八千万ドルなのか一億ドルなのか、これに対してはインドネシア政府は幾ら要求をしておるのか、これらの点についてはある程度確実な線に近いお答えができるのではないかと私は思う。この点は、いま大蔵大臣がお見えでございますから、大蔵大臣からひとつお答えを願いたい。
  45. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 インドネシアとの間でどれだけ日本援助するかという額は、御承知のとおりまだ全然きまっておりません。これから両国の折衝をしてきめるということでございますので、いまのところこれはほんとうにきまっておりません。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 きまっていない、こう大蔵大臣がお答えでございますから、いやきまっておるだろうと押し問答をいたしておりましても、時間が幾らあっても足りませんから、これ以上は申し上げませんが、肝心のこの商品援助ということに対して、私は先ほど来申し上げましたように適当ではない。これを商品援助にしなければならない、しかもIMFからのそうした要請があるということになってまいりますと、国際的な関係もあるであろう、だからして政府が商品援助をしようという提案をされたということも、そういう関連の中からはわかるわけでございますけれども、実際問題としてこれはできるだけ避けたほうがよろしいのではないかということを私は感じる。  それから商品援助をいたします場合に、御承知のとおり輸出入銀行も従来商品援助をやってまいりましたし、今度基金が商品援助をやるということになってまいりますと、この両者がこれを担当することになってまいりますから、そこいらの関係も問題になってくるのではないかと私は思う。これを調整をするのか、整理をする必要がないのか、それらの点に対してのお考え方を、ひとつこれも大蔵大臣からお答え願ったほうがよろしい。
  47. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 援助基本的なあり方としましては、やはり生産力と結びついているプロジェクト援助のほうが好ましいことでございまして、商品援助はあまり好ましいものではございません。しかし、かつての敗戦後の日本もそうでございましたように、非常に物資に窮乏しておって、インフレが激しいというようなときには、一定期間どうしてもこの商品援助が必要となると思いますが、そういう必要に迫られているのが今日までのインドネシアでございましたので、したがって、この商品援助はいたしましたが、できるだけ商品援助を減らしてプロジェクト援助へ切りかえていくという方向へ私どもも努力いたしますし、また受け入れ国のインドネシアもそういう方向へ努力すべきものというふうに考えております。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 あとの私の質問、輸出入銀行と基金と両方が商品援助を扱うことになってまいります。だからこれは経済協力基金というのは——大体政府借款を輸出入銀行が扱うということがどうも筋が通らない。これはやっぱり貿易の補完業務として輸出入銀行は当たることにおいていいのではないか。だからして政府借款、そういうものは基金がこれを担当するというので商品援助はやれる。この法律案が成立をするということになってまいりますと、両者でございますから、これは一本にする必要がある。その点に対しての考え方はどうですか。
  49. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 将来におきまして他の国の商品援助というような問題が起こりましたときには、やはりこれはおっしゃられるように基金においてもできるというふうにしたほうがいいと考えますが、今回の場合はもうインドネシアだけに限るというのが私ども考え方でございまして、将来はやはりそういうふうに基金で統一することがいいと私は考えます。  いま輸銀のほうでも商品援助を他の国にやっておりますが、これは条件が違いまして、輸銀ベースにおいてこれはやれるという限りにおいていままで輸銀でやったのでございますが、インドネシアの場合は、向こうの負担を軽くするという要請が非常に強うございますので、したがってこれは輸銀ベースではできないということから、本年度改正を願ってこの基金でできるようにするということでございまして、いまのところインドネシア一つしか考えておりませんが、そのほかの国でも同様の問題が起こりましたら、将来はこれは基金で統一してやることはいいと私は考えます。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 他の国で同様なことが起こったならばということでありますが、同様なことというのはインドネシアのようないわゆる経済危機という状態をさしていらっしゃるのかどうかということですね。だからしてこれからは——今度はインドネシアだけをお考えになっていらっしゃるようでございますけれども、一たんこういう制度ができますと、いまお答えになりましたように、他の国々も商品援助という形が必ず実施されてくるであろうと思う。そういう場合はインドネシアと同様なことがというお答えがございましたから、これはことばじりをとらえるのではなくて、たいへん重要な問題でございますから、この点はひとつ実施する条件として明確にしておいていただきたいということでございます。
  51. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今後他国ということを言いましたが、いま考えられる限りにおいては、こういう要望の出てくる国はおそらくもうどこにもないというふうに私は考えております。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 それでは商品援助はインドネシアに限る、こういうことで理解をしてよろしゅうございますね。
  53. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 現在インド、パキスタン、セイロンに商品援助をしておりますが、これは非常に条件が違いまして、輸銀ベースで一般にできるという条件でございましたので、この三国に対してはただいま輸銀がやっておる、この程度なら、輸銀で従来どおりやれるのではないかというふうに考えております。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、なるべく弾力性を持たせるのではなくて、そのつど国会においてその審議を求められればいいわけですよ。だからしてどこでもできるのだという、できるだけ広い範囲でやれるような形にしておかないで こういうことはひとつきちんとしておいていただきたい。またそのときの情勢において他の国にも広げていかなければならぬというときには、そのときにまたいろいろと相談をするということであってよろしいと私は思う。だからその点は明確にしておいていただきたいということが一点であります。  それから、いま大臣がお答えになりました中で、いわゆるこの商品援助をいたしましても、できるだけ開発援助方向へこれが使用されていくようなことが望ましいというお答えであった。そのことは、かりに六千万ドルとなりますと、六千万ドルのいわゆるBE証券というものが発行されるであろう。それが発行されまして、それを買いますと、その証券を買いました商社というものが、自由に日本から物を輸入することができるということになってまいります。もちろんそれは中央銀行の特別勘定に入ってまいります。そこで今度は通貨の交換というような形に進められてまいりましょうし、宮澤長官が昨日の当委員会においてお答えになりましたように、何でも購入するというわけにはいかないということではございますけれども、やはりその指定された商品の範囲であるならば、どういう商品を輸入するかということは商社にこれがまかされることになってくる。従来行なわれてまいりましたような一部の商品に片寄ってくるということになりますと、それはインドネシアの国民生活にもほんとうの潤いを果たさないという形になってくるのではないか、私はいろいろな弊害というものが出てくるような感じがしてならないのであります。さらにまた占領下においていわゆるガリオア、エロアということで、見返り資金特別会計というものがございました。ああいうようにGHQが絶対的権限を持って、これ以外には使ってはならないのだ、こういうことができるならばよろしいでございましょうけれども、これはそうはまいりません。あまり干渉すると、内政干渉であるとか、いろいろと国際的な問題も出てまいるわけであります。したがいまして、従来行なわれたような形というものが、これは、いろいろ今度は新しい制度、方法を考えておるようでありますから、従来のとおりにはいかないでございましょう。いわゆる給料であるとかなんとかというのに従来どんどん使われてきたが、その点はチェックされるということはある程度は期待されるのでありますけれども、いわゆる開発援助によりますように、はっきり計画のとおりに進められておるかどうかということを把握することはなかなかむずかしい。それらの点において、商品援助というものは、ほんとうにその国の経済発展、経済安定をはかることにおいて出てまいりますところの民生の安定というような期待とは非常にほど遠いと申し上げてよろしいのか、期待どおり行かないという面が弊害としてどうしても出てくるのではないかということを心配するのでありますが、そうではないということを明確にお答えできるのかどうか。
  55. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、おっしゃるとおりだと思います。したがって、今後はこの商品援助につきましては、インドネシア国も見返り資金制度をつくるということになっておりますし、それによって、だいぶ事態が改善されると思います。  また、その援助がどういう効果をあげておるかということは絶えず追跡してみなければならぬ問題でございますが、これには、一国だけが自分の出した援助の行くえを追及して効果を見るというようなことはいろいろむずかしい問題を起こしますのでIMFとかあるいは世銀とか、国際機構の手によって、この援助の効果を常に見てもらって、そして助言してもらうというような方法をとることが一番いいと思いまして、インドネシアに対しても、そういう国際機構も、今度はこれについていろいろ協力してくれるということになっておりますので、事態は相当改善されると考えます。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど私が申し上げました商品援助はインドネシアに限る、これは法律案として提案されるという形ではございませんけれども、少なくとも何らかの形において国会の了承がない限り、インドネシア以外の国々に商品援助を拡大していくということはあり得ないというように理解してよろしいのかどうか。この際、きっぱりお答えを願っておきたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当面、この基金を通じましてこのような商品援助をしなければならないという国は、いま頭に浮かびませんけれども、法律のたてまえから申しますと、これはインドネシアだけに限るものではない、こう考えております。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 だから、それは私が申し上げた、これを拡大するということになっても、別に法律の改正の必要は出てまいりますまい。だけれども、何らかの形において国会に相談をしなければ、これは、他の国々にも商品援助を拡大していくということはあり得ないと理解してよろしいかどうか。先ほど大蔵大臣からも、ほかの国にはそういう必要はないんだというお答えがあったわけでありますから、ほかの国々にもこの制度を適用しなければならぬというような情勢が生まれました場合、政府が、これは一つ行政措置でございますから、やれるわけでございますから、そういう形でやろうとお考えになっていらっしゃるのかどうかということなんです。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、率直に申しまして、いま考えているものはもちろんございませんし、インドネシアのような状態になるべくよその国がなってもらいたくないと考えておりますけれども、しかし、可能性としては、これは可能性が絶対ありませんということを申し上げるわけにはまいりません。もしそういうことが起こった場合にどうするかということでございますが、私は、それは行政府に関する限りは行政府限りで処置してよろしいことであろう、こう考えております。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 それはわかりながら質問しているのです。だからして、行政権に介入しようとは考えていない。だけれども、いまインドネシア以外はあり得ないということであったのだから、それでは、何らかの形でと申し上げたのは、その意味であったわけであります。ですから、商品援助は好ましくないという考え方の上に私は立っておりますから、いろいろ弊害として出てくる問題に対しては、先ほど水田大蔵大臣からお答えがあったわけであります。その点に対しては考え方の違いがないわけでございますから申し上げておるのであります。しかし、時間の関係がございますから、農林大臣に簡単にお尋ねをいたします。  開発途上国に対して、——これは東南アジアという形になってまいりまして、インドネシアが中心になることは言うまでもないわけでありますけれども、この農業開発援助ということに対してどのようにお考えになっていらっしゃるのか。私が持っておりますところの資料によりますと、たとえば農業開発基金の創設であるとか、プロジェクトベースの農業開発協力の開始であるとか、東南アジア諸国に対するいろいろ具体的な援助あり方というものが考えられているようでございますが、それらの点に対して、いわゆる日本の国内農業との関連の中において、開発途上国における農業開発に対するところのわが国としての考え方というものをひとつお聞かせ願いたい。
  61. 西村直己

    ○西村国務大臣 東南アジア、特にインドネシアを中心に考えてみますと、食糧の不足、これが非常に慢性化している。そこで、経済開発をその国が進めるということ自体について、必要な外貨をそれによって食われてしまう。言いかえますれば、経済開発を制限される。こういう意味から、米の輸入がどうしても多い。したがって、こういうような国の政治経済の安定のためにも、食糧、特に米の増産ということについては必要だというふうに私も考え、また、御説もそうではないかと思うのであります。そこで、米の増産を中心にした経済協力といいますか、農業協力と申しますか、特に技術協力と申しますか、こういうものをやはりわれわれとしては積極的に進めてまいりたい、これが一つ考え方でございます。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 農業協力あり方という形においていまお答えがあったわけです。なるほど、インドネシアは米が非常に不足している。そのことがインドネシアの国際収支を非常に悪化さしているところの一つの要因でもあるということがわかるのですね。ところが、インドネシアのように未開地というものが非常に広大なところに、いわゆる米作一辺倒というというような形での協力というものが好ましいのかどうか。たとえば、輸出農作物であるところのゴムであるとか、あるいはヤシであるとか、あるいはお茶であるとか、いろいろとわが国と競合しないものについて、アメリカと輸入地域を転換するといったようないろいろなことが考えられる。それらの国々に対しての農業協力あり方開発援助というものに対して、いま私が申し上げたような点に対して、具体的にどのようにお考えになっていらっしゃるのか。
  63. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん中心は米でございます。しかし、インドネシアは、御存じのとおり、非常に大きな地域が島嶼的に散在いたしております。また、地域によって気候その他条件が相当変わっております。したがって、それに適するような形での農業の開発が行なわれることが望ましい。ことにわが国の農業との関係におきまして、飼料、わが国も、これにつきましては、自給飼料をなるたけふやしたいと思いますが、特に、他の国から買っているものを、できればそういう開発輸の入形で——たとえばトウモロコシ、そういったようなものが東南アジア、特にインドネシア地域において生産され、増産されて、これをわが国が受け入れるというようなことが好ましいことだと考えております。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 時間が参りましたから、最後に……。  これは外務大臣が御出席になったところでいろいろお尋ねしたいことが多々あったわけです。決して政務次官を軽視するわけではございませんが、同僚委員からの質問に対して外務大臣がお答えになったようなことと関連して私は質問したかったのです。蔵内次官はずいぶんがんばっておられるようですが、大臣はまだ御出席がない。そこで、後刻総理が参りますから、適当な機会お尋ねいたしますが、ただ一点、あなたにお尋ねするが、インドネシアの政治経済に対して大きな影響を与えているのが、いわゆる華僑の存在であると思うのです。私どもがインドネシアに対するところの経済協力を進めていく上において、インドネシアの政情であるとか、そうしたインドネシアに大きな影響力を持っておるところの華僑の存在を無視するわけにはまいらない。だからして、スハルト政権の中においてはこの華僑をどのように処遇をしておるのか、この影響というものは現在どういうことなのかということについてお答えを願いたいと思います。
  65. 藏内修治

    ○藏内政府委員 一九六六年の九月三十日のクーデターの前後には、非常に国民感情といたしまして、いわゆる反中国的空気が横溢をいたしました。そのために、一部の民衆等によりまして、華僑に対する相当なる圧迫が加えられたことは事実でございます。しかしながら、スハルトの政権に入りましてからの政府要路は、インドネシア経済における華僑の力というものを十分認識しておりまして、華僑に対するその後の取り扱いは正鵠を得ておると私どもは判断をしております。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 それでは具体的にどういうことかということをお聞かせ願いたかったのでございますが、その華僑というのはインドネシアの経済とかあるいは流通部面の約八〇%の支配をやっておるんでしょう。人口においては一億一千万の中の三%、約二百七十万程度といわれるのでございますから、人口は非常に少ない。その少ないところの華僑が八〇%の経済支配をしておるということは、これはインドネシアに対するところの経済援助を進めていこうとする日本としては、これを重視していかなければならない。現在どう処遇しているか、いまあなたがお答えになったような、そういうような、うまくいっておるようだというような、そういう簡単な受けとめ方でよろしいのかどうか。中国人問題の機関というものができておるということも承知しておる。だがしかし、やはりこの華僑に対しては、反インドネシアというような認定をいたしますとこれを追放するという弾圧も非常に行なわれてきている。それがいわゆる地下活動をやっているところの共産党の活動というものと結びついていくというような形において、インドネシアの政情というものは、必ずしも政府がお考えになっているように安定をしているという安易な受けとめ方は私は危険であると思う。だからそれらの点に対してはもっと十分にひとつ調査をし、把握して、せっかくインドネシアに対して経済協力をされるなら、それに対して有効な、先ほど基本理念として宮澤長官がお答えになりましたように、ほんとうに平和な、有効な形が実現をされますように、私は積極的な取り組みをされる必要があるであろうと思うのであります。  あとで午後に総理が出席をしていただきました際に、なお基本的ないろいろな問題についてお尋ねするといたしまして、一応保留して質問を終わりたいと思います。
  67. 小峯柳多

    小峯委員長 午後零時四十分から再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ————◇—————    午後一時一分開議
  68. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私、昭和四十一年の三月十一日の本会議で外為法の一部改正の案件のございましたときに、このDAC関係する問題を取り上げて質問をいたしました。  そのときに私が申しましたことは、御承知のようにDACの、国民総生産の一%くらいをひとつ援助に回せという決議が出たわけでありますけれども、私は日本の状態というのは、なるほどGNPはどんどん大きくなっておりますけれども、きわめて不均等な発展をしておりますから、必ずしも西欧の先進諸国のようなバランスのとれたかっこうでの成長の中身というものではないので、この点、安易な形で一%ということを考えるのは無理ではないか、こういう問題提起をいたしたことがございます。  御承知のように、西欧の先進諸国の経済成長率に比べて、日本は今日も依然として異常な高度成長を続けておるわけでありますが、樹木の場合でも、急速に大きくなる木というのは大体中がやわらかい。ゆっくり成長するものは年輪がしっかり締まっていて、充実をした木質になる。樹木の場合でもそうでありますから、ましてや、日本のような高度の成長というのは、ウドの大木というほどではないと思いますけれども、中身があまり詰まっていないというように、国際的に理解をしてもらわないと困る点があると思うのです。それらについて、これまでUNCTADなり、そういうところの会議で低開発国の諸君は日本というものをどういうふうに理解しておるのか、その点をひとつまず外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  70. 三木武夫

    三木国務大臣 私もしばしば国際会議に出る機会があって、何か過大の期待を後進国に与えてはいけないということで、日本にも問題はたくさんかかえておるのだ、アジアの貧困という問題、このためにわれわれはその解決に努力したいということを考えながらも、日本自身が貧困の問題をかかえておる、貧困というのは、必ずしも貧乏ということばかりでなしに、公共的ないろいろな投資も立ちおくれておる。できるだけこの貧しい日本のイメージを私は与えるというか、そういう人たちにあまり過大な評価を持たせないように、そういう努力をするのですけれども、納得しないということです。うなずいてきかないということですね。彼らが持っておる日本に対するイメージは、いろいろなことはあっても、もう少し日本はアジアの開発のために寄与できるのではないか。向こうの期待に比べて、問題をかかえておるであろうけれども日本の寄与というものはやはり少ないという感じをみな持っておるわけです。なかなか説得できないわけですね。それはやはり東南アジアなんかでは、国民の一人当たりの所得というのは大体百ドル以下ですからね。日本は千ドルとこういうわけでしょう、今日では。そこに日本は貧しいのだと言っても、やはり実感としてはこない。そういうことからどういうことが起こるかというと、非常に期待が大きいのに日本はその期待にこたえていない、やはり非常にセルフィッシュな国民であるという感じを与えておるのですよ。  そういうことで、どのようにしてこういう国内的な事情と国際的期待とのギャップを埋めるかということは、アジア外交の私は一番大きな問題点だと思います。そのためには、何もアジアの援助のために日本を犠牲にするということはできませんね。しかし、やはり日本のいろいろの問題を解決してからというのでは期待にこたえられないから、どのようにして国内事情と国際的期待との調和をとっていくかということが非常に大きな問題点ではないか、そのためには一%というものは、堀さん御指摘のように成長率が高いですから、たいへんですけれども、一%といっても、内容を見てみますと、一年以上の延べ払い、みな入っているのですからね。いまの援助の中で条件は平均したら、金利は五分二厘、あるいは年限では十四年というのですからね。援助といっても金利五分二厘ということになれば、やはりこれは世界的な水準から見た援助というカテゴリーの中には入りにくい金利ですね。大体三分以下、二十五年以上というのが世界の状態です。だからここで、日本の事情もあるにしても、もう少し日本がその一%ですか——その一%をすぐにやれとは言わぬのですよ。しかし、そういうふうな一%を計算する内容は、かなり貿易と一緒になったような面もありますから、それをだんだんと近づけていくという誠実な努力が日本は要るのではないか。しかも、それだけの努力をしないと、よそに対しての説得力にならぬ。アメリカに対しても、アメリカはベトナム戦後においては軍事力よりも、やはり経済あるいは社会開発の面でアジアに寄与してもらいたいと願う。それに対して説得するものは、やはり日本だと思うのです。よそを説得するものは、やはりみずからそれだけの実績を示さなければ説得力がないですからね。そういう点で、もう少し日本が、国内事情はあっても、ことに東南アジアなどは、よその国は頭当たり五ドルくらい援助を受けておるのですね。ベトナムを除いたら一ドル六十セントくらいですよ。世界の中でアフリカとかラテンアメリカなどに比べたら、取り残されていく地域のような——人口の多い関係もありますけれども、そういう点で、これは単に与党とか野党とか言わずに、国民にもいろいろ言いたいことはあるだろうけれども、やはり後進国、ことにアジアに対しては、日本もできるだけのことはしようではないかという日本国内における一つの雰意気が出てこないと、私は、アジアの一員、アジアの一員といい、アジアの指導的国家といっても、国民同士で太鼓をたたいておっては意味ないですからね。よその国が、やはりアジアの指導国家としてのそれだけの敬意を払うようにならなければだめですからね。いまのままでは私はなかなかそうはいかぬと思う。そういう点ですぐに一%とはいかないまでも、それに向かって誠実な努力をするという態度が要るのではないか、こういう感じを、国際会議に出てどう思うかという御質問でございましたので、お答えをいたしました。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 実はDACが十五ヵ国ありますけれども、十五カ国の中で一九六五年ですから少し資料は古いわけですが、国民所得の比率で見ますと、日本は一九六五年は九番目のようですね。ところが一人当たりの国民所得を比べてみますと、これは七一・二〇%ということで日本アメリカ、フランスに次いで実は三番目です。一人当たりの国民所得の順位はこの十五カ国中十四位で、その下にあるのはポルトガルだけなんです。私も実は低開発援助ということは当然日本としてはやるべきだと思っております。やるべきだと思っているが、やり方とやっていく道筋に問題が少しあるのじゃないか、こう考えておるのです。私がいまこの問題を提起しておりますのは、まずやはり私はアジアの諸国も、日本がいかにして今日の先進国になれたのかという経緯を通ることなくしては、アジアの諸国も先進国段階に発展することはできないのではないかと思うのです。私ども医者の世界では有名なエルンスト・ヘッケルというドイツの学者の「固体発生は系統発生を繰り返す」という有名なことばがあります。要するに、私どもは単細胞でおなかの中に宿ってから、われわれがいま十カ月で人間になるわけですが、この単細胞から十カ月で人間になるまでの間おなかの中でわれわれが歴史的に単細胞であったところから人類に発展するまでの系統発生を繰り返していくというのが実はエルンスト・ヘッケルの有名なことばでありますけれども、私はやはり、後進諸国が将来日本のようになるためには、そういう一種の固体発生を繰り返してくることなくして、突然変異によって国が発展をするわけにはいかないと思うのです。私は今日の日本の発展を裏づけた最大の理由は何かというと、これは私は日本の教育が、普通教育及び高等教育がきわめて一般的に普及をしてレベルが高かったということにあると思う。もちろん素質の問題もありますけれども、しかしこの教育の問題をおいて私は今日の日本考えられない、こう考えておるわけです。この点については企画庁長官どうでしょうか。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりだと思います。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 ところが、実は援助という問題を考えてみますと、援助はすべて経済的な行為が主体になっておりまして、特にその点については私は日本は大いに反省しなければならぬ問題があるのじゃないだろうか、こう考えておるわけです。実は企画庁からいただいた資料を少し整理してみたわけでありますけれどもDAC技術協力をずっと見ておりますと、日本の場合には技術協力というのはウエートしてわずか三・三%しかないというのが企画庁からいただいた一九六六年の資料に出ております。先進諸国の中で異常に少ないのは、日本とイタリアとオーストリア、オーストラリアというのが一けた台でありまして、カナダも八・八ですから低いのですが、その他の諸国はこの技術協力については非常に高いレベルになっておるわけであります。私はずっとこれを見ておりまして、たとえばその次にまた農業だとか社会基盤というような問題について見てみますと、日本の場合には農業と社会基盤と合わせましてわずかに六・八%、九二・九%というのはこれは経済基盤とか鉄鋼業とかというものになってくる。要するに日本はこれまでの経済協力というのは物で協力をして、要するに物以外ではあまり協力をしない国だということがここで非常にはっきりしているわけです。私はこの問題はなぜそういうことに中心を置いておるかといいますと、今度の海外経済協力基金の改正でもそうでありますけれども、なぜ日本援助はこんなに物に片寄っているのか、私は物を与えることの中にメリットを求める人たちが非常にたくさんあって、その結果が経済協力をこういうかっこうにゆがめてきたのではないか、技術協力というかっこうでやるものは、これは人間の仕事でありますから、これでは実は金もうけの対象にはなりません。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕 しかし、少なくとも物を与えるかっこうになれば、それは大体日本の品物を向こうに与えることになるわけですから、日本の生産に関係する人たちは必ずそれによって利得を受ける、いうならば、海外協力という名のもとに利益を求めておるという批判が、おそらく海外諸国にもあるのではないか。しかし私は、いま申し上げたように、日本ほんとうに親身になって海外協力をやるのならば、われわれの通って来た道を、東南アジアの諸国ができるだけ短期間の中でもいいからやはり通られるように協力をすること、それはやはり教育に対する協力であり、技術に対する協力であって、これは人間がやることであって、物がやる問題ではないと思うのです。ですから、私は今度の改正は、これは長期的に継続されるべき性格のものではありません。商品援助というのは全部消費物資に流れていくわけでありますから、これは緊急避難だと私は理解をしているわけでありますから、緊急避難以外ではおそらく政府は認めることはないだろうと思いますけれども、しかし根本的に私は援助の姿勢というものを、より多く技術協力に切りかえていく、この技術協力というのは、そんなに金がかからなくて効果は非常にたくさんあがるものだとこう私は思うのですが、その点については企画庁長官どうでしょうか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど外務大臣が言われましたように、国際会議などで日本は——たしかセルフィッシュということばをお使いになったように思いましたが、そう言われることは実は私も経験しております。それはまさにいま堀委員が仰せられましたようなことからそう見られておるのだと思いますので、何といっても、先日から申し上げておりますように、その国が興るか興らないかということは、結局は人の問題になってしまうわけでございますから、私どもとしても、できるだけ、多少時間はかかっても、やはりそういう本格的な協力のしかたをできるだけすべきだ、いままでやっておりますかなりの部分が、実は確かに援助という名の貿易であったりいたしておりますから、その点は国力の充実とともにそういう方向で心がけなければいけないと思います。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 私、特に今度インドネシアの問題を調べておりまして、インドネシアには、資金が切れたために鉄骨のままになっておる建物があったり、あるいはダムでも途中まで工事をやってそのままになったりしておるものがあったというふうに実は聞いておるわけですが、これはまさに私は援助が目的でなくて、金もうけが目的であったことの一つの象徴、シンボルをそこにさらしているような気がしてしかたがないのです。日本という国が援助をする気持ちならば、ともかくもそこへ物を建ててやって、物に効果が出ることなくして援助というものではないだろうと私は思うのです。援助というものは効果が生まれたときからが援助になるのであって、効果も生まれない鉄骨だけが放置されておるということは、私は援助ではなくて、恥をさらしておるにすぎないと思いますが、外務大臣その点はどうでしょうか。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 援助というものに徹すれば、堀さんの言われるとおりだと思いますが、しかし、インドネシアの場合は、日本援助のほかに現地通貨によっていろいろ工事を完成していく面があったわけですが、経済的にああいう状態になったので現地通貨の調達ができない、日本賠償などによる援助はやったのだけれども、インドネシアの経済の場合はそのあとが続かなかったという特殊な事態だと思います。しかし、日本がやろうとする目的は、ダムならダムをつくってそれが農業開発に役立つということですから、その目的からすれば不徹底な結果に終わっている。今後いろいろな事情はあるにしても、現地の人から見れば、そういうものの工事が中途はんぱで終わっているということは、日本の誠意というものが曲げて考えられる材料になることは御指摘のとおりだと思います。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから私は、そういう点を見ても、金の切れ目が縁の切れ目という感じがいろいろなところにするわけです。  そこでちょっとお伺いをいたしますが、これは文部省に入ってもらっておいたほうがよかったのですが、入っていますか。留学生とかそういうことがあるから、文部省をだれか入れてください。具体的なことはあとで文部省が来てからあれしますが、外務省でもわかりますか。  日本賠償でインドネシアから留学生を受け入れておりましたね。御承知のように、賠償が借款のあれでほとんど終わってしまったというので、いまとぎれているんじゃないですか。インドネシアのそういう留学は、私の資料ではそうなっているわけです。
  78. 上田常光

    上田(常)政府委員 お答えいたします。インドネシアからの留学生は依然として来ております。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私が見たところでは、賠償に関して来ていた六十何人というのはやめになったと出ているわけです。そうすると、そのあとはどういう費用で引き続き来ておるのか、その点をちょっとお答え願いたい。何人来ているのか。どうなっているのか。
  80. 上田常光

    上田(常)政府委員 お答えいたします。ちょっと私失礼しましたが、完全に全部が賠償で来ていた留学生ではなくて、インドネシアからの留学生は来ているという意味で申し上げたので、内訳を申し上げないと若干間違ってくると思います。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 あとで文部省が入られてから詳しく聞きますが、どうもそういうものを見ても、留学生というのは賠償とは関係なく勉強に来ているわけですね。制度としては賠償のあれで来たのでしょうが、賠償というのはもっと先があるはずなんですが、先に借款の担保にしてしまって、それが落ちるから金がなくなる、それでおしまいですというような感じがします。なるほど、賠償なら金の問題は金の問題でいいのですけれども、そういう技術協力という角度から見るならば、とにかく六千万ドルだ七千万ドルだとインドネシアに金を出すという日本が、要するにそういう商品援助、プロジェクトなら出すけれども、国の中で、そういう教育のためにはそいつが切れたらおしまいだというようなところにも、いまの政府のかまえ方に——何か海外経済協力という名のもとに一部の人たちが利益を得ることのほうが国内的に見ても問題があるし、そのことが、実は私どもがこの海外経済協力基金法に反対をしている最大の理由になっているわけです。この前から、御承知のように、例の保険の問題だとか、政治献金の問題だとか、昨日もいろいろお話が出ましたが、そういう点を考えてみて、私は、きのうの三木さんのお話しのようにだんだんということです。確かに急に一ぺんにはいかないことかもしれませんけれども、そういうことはほんとうにすみやかに解決して、真意から東南アジアの諸国に対して、われわれとして、ほんとうにその国の国民のためになる援助をやるというかまえに徹していただかないと、私どもとしては、これまでの安易な協力援助のやり方についてはどうしても納得ができないというのが実は現在の姿です。  そこで、話を少し前に進めますけれども、この基金のプロジェクトの一般案件のほうですけれども、この承諾率と実行率の間にかなり開きがありますね。これは基金の総裁にお伺いをいたしますが、これはどうしてこんなに承諾額と実行額の間に開きが多いのでしょうか。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 柳田誠二郎

    ○柳田参考人 私が基金の仕事を担当しましたのはいまから七年前でございます。当時基金の活動が非常に鈍いという話がありまして、私が非常にやかましいことを言うために仕事が鈍いのではないかという非難を受けたわけです。国家の金でありますので、むろん私は十分な注意をもって金を貸すということを考えておったのでありますが、実際に仕事の進行しない根本の理由は、相手の国は、御承知のように戦後できた国が多いわけであります。政府もしっかりしておりませんし、行政能力も非常に少なく、また、国内において政治的に紛糾をしているという情勢がありまして、案件ができましてからそれをお互いに話をしている間に二年、三年というふうにたってしまうのが実情であったのであります。その実情は今日どうなっているかと申しますと、むろん戦後二十三年でだいぶ改善をしてまいったのでありまするが、大きく考えますると、やはり依然としてそういう仕事の進行が非常に思うようにいかぬという相手国の内部情勢があるわけであります。それがただいま申しました、一応その支払いの承諾をしても実際の実行額はこれに応じて進んでいないということの一つの大きな原因でありまして、あるいはこれをもって唯一の原因であると申してもいいのではないかと思います。こういう実情でございます。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私一般案件のこの率を国別についてちょっと分析をして出してみました。そうしますと、東南アジアのものは、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ラオス、ブルネイ、北ボルネオ、合計で一般案件が二十出ているわけです。その中で、ラオスとフィリピンと北ボルネオは承諾額、実行額一〇〇%、実行率一〇〇%です。それからブルネイとタイとマレーシアはいずれも九〇%台で、ブルネイは九四・五%、タイは九三%、マレーシアは九〇%で、インドネシアだけが五二・二%ということで、その他の国の半分しか実行率がないわけです。私はこの実行率を見ながら感じておるわけでありますが、おそらくこの実行率が九〇%以上の国の部分については償還がきちんと行なわれているだろうと思うのですが、インドネシアの償還は、この基金の分については一体どうなっているのか、この点をひとつお答えをいただきたい。
  84. 柳田誠二郎

    ○柳田参考人 御承知のように、インドネシアに対しましては、直接政府相手にした貸し付け金というのはございません。すべて日本の事業家がインドネシアの開発に資するために援助の形式を持った会社をつくっているわけであります。石油、ニッケル、森林というものをやっているわけでありまして、大体これは仕事がまずまず順調にいっていると申してよろしいと思うのであります。御承知のように、どこの国でもそうでありますが、ことにインドネシアにおいては非常に民族意識が強いので、私どものほうで援助すると申しましても、技術その他については自分たちに十分の力があるからして、そうこまかく日本のお世話にならなくてもいいという感じを持って仕事に当たられるのでありますが、実際はなかなかそうはいきませんので、ほんとうの意味の日本のかゆいところにまで手が届くという援助が実際できない、そういうことで、援助をしておる事業の成績が思うように進まなかったのでありますが、最近になりまして、インドネシアの政情がだんだん安定をしてまいるにつれまして成績が向上いたしてきましたので、概観してみますと、まず初めの見通しのとおりに仕事が進んでおる、こう申してよろしいかと思います。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 私の質問はそんなことを聞いてないのですよ。企画庁で答えてください。一体金が返っているかどうかということを聞いているわけです。
  86. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 今年三月末現在で基金からインドネシア関係の各種の事業に融資をいたしました総額は承諾額で八十二億八千三百万円ございますが、実行額は四十六億八千九百万円、現在までの回収額は二億三千二百万円、残額が四十四億五千七百万円でございます。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 この回収率は、もちろん時期にもよりましょうししますけれども、条件もあるのでしょうが、その他の国に比べると非常に少ないのじゃないですか。
  88. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 先ほどの御質問にも関連をいたしますが、インドネシアの案件は、ただいままで全部民間案件でございまして、御承知かと思いますが、全部で件数にいたしまして十四件でございます。そのうち三十九年度以前のものがわずかに五件、四十年度から四十二年度一ぱいのものが残り九件でございます。したがいまして比較的近間のところで話が始まっておるということもございますので、回収額が少ない。あるいは承諾額と申しますのは、一つのプロジェクト全体を承諾いたしまして、必要な金を年次的に出していくわけでございますから、承諾額と実行額の間が開いておる、こういう事情かと存じます。  その他の国の案件について、たとえばマレーシアでございますが、マレーシアは五十二億九千八百万円の承諾をし、四十七億七千九百万円の実行をいたしております。回収額が十億四千二百万円、非常に率としては高い回収額を示しております。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ、実はいただいておる中に三井物産がインドネシアのブル島森林開発事業に対して承諾額二億九千五百万円で実行額ゼロというのがありますね。これはどういうことですか。
  90. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいまの御指摘の点はブル島の森林開発事業だと思います。これは実は計画ができまして、まだ現地にいまこれから人を入れるという段階でございますので、承諾をいたしましたのは四十二年、昨年でございますが、まだ実際の貸し出しに至っていない、かような事情でございます。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私ずっと資料を見ながら感じております点で、大蔵大臣が間もなく入りましょうから、一つどうもわからない点があるわけです。それは一体何かと言いますと、実は海外経済協力基金法の中身の、法律のほうは、第一条に「その開発に必要な資金日本輸出入銀行及び一般の金融機関から供給を受けることが困難なものについてその円滑な供給を図る等のために必要な業務を行ない、」こうなっているわけです。  そこで企画庁長官に伺いますが、供給が困難なものということは、これはできないものではなくて、できるけれども困難だから、こういうことですね。できるのだが困難だと判断をする、こういうことだと思うのですが、どうですか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはり不可能という意味ではなくて、困難だということでございますから、できないということとは違うと思います。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いま海外経済協力基金法の話に入ったのですが、海外経済協力基金法は第一条で「その開発に必要な資金日本輸出銀行及び一般の金融機関から供給を受けることが困難なものについてその円滑な供給を図る等のために必要な業務を行ない、」こういう基金法になっているのです。だから「困難な」ということは不可能ではないのだ、できるけれどもむずかしいという判断だ、程度問題だ、こういう法律の規定だというふうに私は理解して聞いたのだが、企画庁長官はそうだと言うわけです。それでいいのですか。これはやっぱり重要な点ですから大蔵大臣から御答弁いただきたい。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まず一つは、今回の例に見られるように、金利の問題、非常にソフトな金利というようなことはこれはいまの輸銀ではできない。いま言った不可能ではないのですが輸銀では困難である、こういうようなものは明らかに輸銀でできないものという中へ入ると思います。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 実は協力基金の定款には、今度はもうちょっとおもしろいことが書いてある。十八条に「その開発事業につき日本輸出入銀行及び一般の金融機関から通常の条件により資金の貸付けを受けること又は基金以外の者から出資を受けることが困難であると認められる場合」これはもっとはっきりしてきたわけですね。「通常の条件」ときている。輸出入銀行における通常の条件というのは一体どういう条件ですか、大蔵大臣
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 業務方法書できまっているのは四分から七分というような、条件ではそういうことになっておるそうでございますが、結局いままで輸銀の運営で私どもがやってまいりましたのは、輸銀の資金コストをやはり五分を中心にしてそれ以下になるという運営は輸銀としてはなかなか無理だというような形に資金構成の関係から大体そうなっております。業務方法書では四分と七分というふうに幅があるにしましても、実際においては運営はいままで五分何厘ということを中心にやってまいりましたので、それ以下はいまのところはやはり輸銀としては困難ということになるだろうと思います。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、いま業務方法書で四%から七%と言われたのですが、いま私どもが問題にしている外国法人等に対する輸出資金の貸し付け及び債務の保証に関する業務方法書には、利率のところは「輸出入市場の開拓または確保のための緊要度、償還の期限、長期の国際金利その他の事由を勘案して定める。」こうあるのです。これは条件はちっとも書いてないのですよ。外国向けのものは期限も書いてなければ、据え置きも書いてない。金額も書いてない。その条件によって勘案してきめると業務方法書には書いてある。だからあなたの言われたように四%から七%、一般のほうだけのことは書いてある。これは別に定めると業務方法書で書いて、その別に定めた業務方法書の中身は、何も条件は書いてないのです。書いてないなら、四%まではよくて三・五%はいけないというのは理由にならないのじゃないですか。どうですか、大蔵大臣
  98. 小宮保

    ○小宮説明員 業務方法書の技術的な問題につきまして、私から御説明させていただきます。  いま堀先生おっしゃいましたように、日本の輸出入銀行の業務方法書は何通りかに分かれておりまして、普通一般に使っております業務方法書には先ほど大臣から御説明申し上げましたように、四ないし七%ということになっておるわけでございます。直接借款につきましては、ただいま先生お持ちになっていると思いますが、別の業務方法書がございまして、その中には確かに金利についての具体的なたとえば何%というような規定は書いてございません。ただ、通常の商業ベースの延べ払い金融等の場合でありますと、たとえば品目によりないしは日本の輸出先の市場等によって一般的な金利というものがある程度想定されます。もちろん幅はございますにしても、経験率として一つの水準が考えられますけれども、まあ直接借款の場合には結局一つ一つの融資が相手の国が違うわけですから、融資条件と申しましても一律的にきめることができない。つまりそのときどきの外交政策なり貿易政策によって個別にきめていかざるを得ないということがございますので、そこら辺の規定が抽象的になっている。別にそのこと自体は運用にあたりましてルーズになっているという意味ではございませんけれども、規定の態様としてはそうせざるを得ないというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 だから私が言っていることは、金利を明示してない限りは、業務方法書で金利を明示しなかったということは、何も四%以下はできないということにはなってないのじゃないかということを聞いているわけです。いま課長が言うように相手方の条件によってきめるわけですから、要するに三・五%のソフトローンにしてくれというなら、リファイナンスなら四%はできて、いまの五%ぐらいにしたいということはわかりますけれども、原資の関係で五%にしたいのを四%でリファイナンスで出しているなら、三・五%はいけない理由はないのじゃないか、こう聞いているわけです。これが今度の法案の最大の中心なんですからね。できないことはないと思うのです、やらないということで。この法案を出した理由というのは一体何です。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは先ほど申しましたように、資金構成の問題もありと言いましたが、もっぱら資金構成の問題で、輸銀に対して一般会計からそう無制限な繰り入れをするというわけにはいきませんので、したがってやはり輸銀の融資については、資金構成において一定の限度がある。そうしますと、融資条件についても輸銀として可能であるというおのずからそこに基準もできてきますので、そういう点から申しまして、インドネシアの経済援助というようなものは、すでに輸銀においては困難であるということを考えて、この基金によってこれをできるように、可能にしようということを考えたわけでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、大蔵大臣ここで確約をしていただきたいのは、今後四%以下になるソフトローンは輸銀ではやらないわけですか、やりますか。どっちですか。輸銀でもしやるのなら、この法律を改正する必要はない。やらないのなら法律を改正しなければしかたがないでしょう。どっちですか。そこだけはっきりしてください。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ソフトな条件の援助は、やはり今後輸銀ではやらないようにしたいと考えております。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、ソフトな条件だって、私ははっきり四%と区切ったわけですから、四%以下の要するに借款その他はやらない、もう一ぺん答えてください、やるのかやらないのか。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 はっきりやらぬということも私は言えないと思いますが、たとえばインドネシアのように援助額が非常に大きいというようなものは、輸銀においては資金構成の問題から見ても非常に困難だということは言えますが、どんな小さいものでも何でも四分と名がついたらもう輸銀ではやらない、こういう原則はまだ立てられぬと思います。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、四%は実績があるんですよ、リファイナンスでやったんだから。しかし四%以下になるものも、あなた方もしそれでやるのならいいですが、基金だって政府が出資しなければ三・五%のものが出せるはずがないじゃないですか。資金運用部から借りてきているのは六・五%でしょう、それに政府の出資で三・五%にして出している。輸銀だって出ていくのは、やはり資金運用部から出ていって、出資は薄めて安くする、こういうことじゃないですか、仕組みは全然同じじゃないですか。だからなぜ今度これをどうしてやるのかということになれば、輸銀では今後やらないということをはっきりしない限り、われわれはこの法案の審議にこれから協力しませんよ。そんなばかなことを、輸銀でもやれるんだというときに、こっちの基金法もやっておいて、あれもこれも自由にかって気ままにやろうなんということは、これは問題があります。  さらにもう一つ、この点ちょっと伺っておきたいのですが、資金運用部というのは金が余ってしょうがないのでしょうか、どうでしょうか、いまの資金運用部資金というのは。
  106. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 決してあり余っているわけではございません。  それからいまのその前の御質問でございますが、私は、四%というものはやらぬのかといいましたら、そうは言えないと言いましたが、四%未満という条件は、やはり今後輸銀ではやらないと思います。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 それならけっこうです。四%は実績があるのですから、よそから言われたときに四%で出さなければならぬ場合もあるでしょうが、要するに三・九九%以下ですね、以下のやつはやらない、これははっきりしましたから、この点は確認をいたします。  そこで、実はこの基金の予算と実績をちょっと見ていて、非常に驚いたことがあるわけです。というのは、基金は四十二年度から四十三年度に九十八億五千九百万円の繰り越し金がありますね。調べておりますと、この年度の借り入れ金というのは実は七十五億円借り入れているわけですよ。七十五億円資金運用部から借り入れて、九十八億円繰り越した。いいですか、貸し借りの問題ですから、金が必要になったときに運用部から借りればいいんですよ、何も運用部が逃げるわけじゃないのですから。ところが当初の予算でのキャリーオーバーの予想は、三十二億を予想しておったわけですよ。三十二億を予想しておったのに対して、もしこれを借りなかったとしても、七十五億借りなかったとしても二十八億キャリーオーバーするんですよ。いいですか。二十八億繰り越しになることがわかっておりながら、資金運用部は七十五億を基金に入れて、四十二年度から四十三年度に九十八億繰り越したというのは、これはおかしくないですか。資金運用部、金が余ってしょうがないからここへ預けておいたというなら別だけれども、ここへ預けておいたというのだったら私は問題があると思うのですが、大蔵大臣どうですか、この処置は。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 理財局を呼んでおるそうですから、来ましてから……。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃちょっと問題を前に進めますが、大体これまでの経緯を見ておりますと、承諾額と実行額というのの——承諾額というよりも支出額ですな、支出額の予算と実績との間を見ますと、大体五五、六%から九%というのが予算と実績との大体の関係になっておるわけですが、それから見ますと、きのうからたいへん実は問題になっているのが——私は別に六千万ドルへ幾ら上積みするかなんて聞きませんから、御安心いただきたいわけですが、ただ財源的には、過去の沿革から見ますと、少し余裕があると思うのです。そんな大きな余裕じゃありませんけれども、少し余裕はある。しかし私は、余裕があるからといって安易な処置をしてもらっては困ると思いますよ。ですから、この点について、理財局長はもう時間がありませんから、ここで予鈴が鳴りましたから終わりますけれども、私はやはりいまのいろいろな経緯を見ながら、実は少しどうも基金のいろいろな運営は安易な感じがいたしてならないのです。この点は午後引き続きやらしていただくとして、もう少し予算上の問題等についても、基金の監督は企画庁でございますから、これは理財局長が来てから、なぜこうなったのかを聞きますけれども、監督している企画庁として、企画庁長官、こんな処置どうなんでしょうね。見積もりでは、過去の例から見ても大体二十億ぐらいもキャリーオーバーすれば十分なんだろうと思います。それを九十八億もキャリーオーバーするようにして七十五億も借り入れたなんということは、そのときに返せばいいと思うのですが、要らないものを持って越す必要はないと思うのだが、そこは一体どうなのか。監督上の責任者からひとつお答えをいただいて、ちょっとここで質問を一応打ち切ります。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特定の場合で申しますと、政府借款の見通しが実はどうもかなり大き過ぎたといいますか、向こうとの詰めに時間が相当かかったりいたしまして、相当不要なものが残ったということのようでございます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 それは基金の場合はそういうことはたくさんあると私は思うのです。しかし、年度を越すときに必要のないものは運用部へ返したほうが、基金財政として当然じゃないのか。先に借り入れしてあったかもしれません。しかし、運用部の金というのは、話がついてから借りたっていいんじゃないですか。どうなんでしょう。話もつかないのに、初めにどんと七十五億も借りておいて、話がつかなかったからじっと一年借りて——運用部へだって金利を払っているのでしょう。基金から運用部へ金利を払って、そうして九十八億も繰り越しているような管理、これは私どう考えたって、必要なときに借りて出せばいいので、全然おかしいですね。どうでしょう、長官
  112. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 御指摘の点はまことにごもっともだと存じます。基金を監督しております立場で見ておるわけでございますが、四十二年度分の七十五億の借り入れをいたしておりますが、これは実は財投計画といいますか、基金のほうで予定をしておりました際の分は、四十一年度に借り入れる予定をしておったわけであります、七十五億は。四十一年度は不用であったわけです。そういう意味で一年持ち越しておりまして、ワクだけとってもらっておった、そういうかっこうでございます。それで年度ずっと参りまして、四十二年度ぎりぎりのところで、いま申し上げましたように、主として政府の直接借款の案件につきまして、両国政府間の最後の詰めがだんだん延びておりますので、実行額として少し開きが出てまいった。しかし、それは年度とともにもうすぐ解決がつくという見通しがございましたので、そこで四十二年度の終わりになりましてそれを借り入れた、こういう状況でございます。なお詳しいことは基金のほうが承知しておると思いますが、私どもが見ておりますと、そういうことであります。
  113. 小峯柳多

    小峯委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  114. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。中村重光君。
  115. 中村重光

    中村(重)委員 委員会で総理に久方ぶりに質問することになりますが、実は、海外経済協力について連日政府経済協力あり方ということを中心にして質疑をいたしております。総理も御承知のとおりに、資金協力であるとか、あるいは技術協力という形の経済協力を進めておる。先進諸国と比較をいたしますと、残念ながらわが国協力体制というものは非常に弱い。それは国力の問題もありましょうし、それから東南アジアという相手国関係というものもいろいろ出て、条件としては、他の諸国との違いというものも実はあるだろうとは思います。ですけれども、私どもが調査をし、あるいは当委員会においていろいろ質疑をしてまいりますと、政府経済協力体制そのものに問題点があるように感じます。  いま審議をいたしております海外経済協力基金、これは経済企画庁所管になっておりますが、経済企画庁自体は実質的にこれの推進に当たらない。外務省経済外交の立場から、大蔵省金融上の立場から、通産省貿易、為替管理の立場から、それぞれ実施官庁としての役割りを果たしてまいりますが、経済企画庁総合調整という役割りを果たすことになってまいりますから、せっかく行ないます経済協力が、有効的に、さらにまた相手国の信頼と感謝、そうしてほんとう経済協力の意義を遺憾なく発揮するような総合的な体制のもとに行なわれなければならぬと思いますけれども、その点が欠けておるというように感じます。それと、技術協力というものにもつと力を入れなければならないのではないかというように考えられますけれども、その点も非常に先進諸国と比較をいたしますと弱い。だから、いまのようにばらばらの、総合性のない経済協力あり方をこの際清算をして、一本化した形の協力体制を総合的に進めていく必要があるのではないか。それにはいろいろあるでありましょう。いまのように、海外経済協力基金というものを経済企画庁所管にそのまま置いておくことがいいのかどうかといういろんな問題がございましょうが、ともかく、経済協力というものをどういうかまえでもってこれから推進していこうとしていらっしゃるのか、それから、私がいま指摘いたしましたような点について総理はどのようにお考えになられるのか、一応見解を伺ってみたいと思います。
  116. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 中村君にお答えいたします。  大体、基本的な問題ですから、各大臣からお答えしただろうと思います。ただいまお尋ねがありましたように、私ども協力する場合、経済協力だと、かように申しましても、その態様はいろいろあると思います。その態様の中には、ただいま御指摘になりましたように、資金的な援助ばかりではなく、技術援助、そういうものにも力を入れろ、これはもうお説のとおりであります。ことに私ども開発途上の国に対しましてのいわゆる資金援助、これによって経済を立て直す効果はございますが、技術的な援助をいたさないと、基礎がどうしてもはっきりしたことになりません。ことに、日進月歩の状態のもとにおきましては、この技術援助こそその骨子をなすとまで言い得るのじゃないか。もちろん経済援助そのものはその国の態様にもよりまして、インフレが高進しているとか、あるいは非常に物資が欠乏しているとか、こういうような場合には、その国に応ずるような経済援助の形が必要だ、かように思いますから、一つの形を限ることはたいへんだと思います。したがって、その国々に適応した技術援助なり、あるいは資金援助なり、あるいは企業進出なり等々を考うべきだ、かように思います。  もう一つは、いま言われますように、外務省通産省大蔵省経済企画庁、それぞれの役所がある。さらに建設省や運輸省や郵政省等々あるわけでございます。そういう場合に、ばらばら援助は効果がないのじゃないのか、こういう御指摘ですが、このために、いま関係閣僚がそれぞれの場合に十分打ち合わせを緊密にいたしまして、そうして政府としてばらばら援助にならないように、統制のとれた方法をとっておる次第でございます。しかし、ただいまのところ、さらにそれを突き進めて一官庁を設けるかという、そういう問題になりますと、よほどこれは慎重に考えていかなければならぬだろう、かように思いますが、ただいまの段階では関係各省が十分連絡を緊密にして、ばらばらにならないように気をつけるという状況であります。
  117. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、いま総理がお答えになりましたように、ばらばらにならないように——いま私が非常に俗なことばで申し上げると、日本援助あり方は非常に散発的である、そうして総花的だということなんですね。これを、じゃ口によるところの注水援助、こういう形に切りかえていくべきだ。これは私だけでなくて、総理もそうでございましょうし、各委員もみな同じような考え方で、実はいまのあり方というものに対する批判を持っているのですが、国会の大先輩である三宅委員が当委員会において質問をされたのですが、こういうふうに提言をされたのですね。この際海外経済協力省をつくったらどうか、それから海外経済協力閣僚会議というようなものをもって、そうして総合的な協力体制を確立をして、ほんとうに有効適切な、そして経済協力基本理念であるところの平和達成に役立つようにする——若干三宅委員質問に対して私もつけ加えて申し上げたわけでございますが、何かそういうことが必要ではないかという具体的な提言もあったわけですが、総理、それらの点についてはどのようにお考えになりますか。
  118. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 日本援助は散発的であり、あるいは重点がぼけている、これが公平であるということはいいけれども、どうも重点がぼけている、こういうような御批判、これはそういうこともあろうかと思います。そういうことは、わが国の力自身にもよりますから、十分の力がないときに、すべての国と仲よくしていく、そういう場合に、どうもやっぱり各国にもある程度資金援助が必要だ、こういうようなわけでどうしても散発になるとか、どうも重点をはっきりさせないというような批判は受けるだろうと私は思います。しかしわが国自身としては、こういうものが効果があがるようにぜひつとめたい、かように思っておりますから、ただいま散発だとか重点を欠いている、こういう御批判がありましても、ともかくも経済協力の実はあげつつある、かように私は思っております。  そこで、いまの協力省をつくれというお話ですが、先ほどお答えいたしましたように、そういうことについてはさらにもっと慎重によく検討しなければならぬ、かように私は思います。それから関係各省で相談することは当然でございますが、経済協力というような問題になれば、やはり閣僚自身事務当局を指導する、こういう立場会議を持つことが必要だと思いますから、必要によりましては関係閣僚会議を開きます。また普通の閣僚会議で方針がきまっておれば、これは事務的におろしていいことですから、これは各省事務当局の会議、それぞれの援助の態様等によりまして力の入れ方、表現のしかた、これは一様ではございませんけれども、あらゆる会合等を通じまして調整のとれた、統一された意見のもとに援助を行なう、こういうのが基本的な態度であります。
  119. 中村重光

    中村(重)委員 経済協力あり方、同時に経済協力の効果が私がただいま申し上げましたような点等からあがっていない、これは国内的な立場になるわけですが、一方、受け入れ側の相手国のいろいろな事情というようなもの、やり方、そういうところで経済効果があがらないという点もある。具体的な問題等いろいろ申し上げたいのですが、限られた時間でございますから省略をいたしますが、最近輸出入銀行で商品援助というものが相当実は活発に、現状の中では大きなウエートを占めてきておる。そういうことから、この商品援助というのが案外開発計画というものに効果を発揮していないという点もあるのではなかろうか。商品援助ということになってまいりますと、当然企業や商社が輸入を担当するということになってまいります。もちろん何でもよろしいということではなくて、一応ワクはあるわけですが、その中でどうしても特定の商品に片寄った輸入というのがなされていくという点、それからいままでは実は輸入いたしました商品を売却しこれを換金いたします。それが相手国の軍人であるとかあるいは官吏の給料に支払われていくといったようなこと、さらに高官であるとかあるいは将軍といったその国のえらい連中の私腹を肥やしていったという事実もいろいろと伝えられておるわけですが、そういうようなことですね。それから開発援助ということになってまいりますと、一応わがほうではその計画がうまく行っておるかどうかということを把握することができますけれども、商品援助ということになってまいりますと、それがなかなか把握できない。そこいらからこの援助効果があがっていないのではないかと思われるわけであります。  ところが、いま私ども審議をいたしておりますこの海外協力基金でも、今度は商品援助をやろうというたあの改正案になっております。しかもIMFの指示によって、援助の中に商品援助というのが、この後は基金の中でも一番ウエートを占めることになってまいります。そうなってまいりますと、従来の商品援助といたしますと、その反省の上にこれは立っておると思うのでございますが、若干チェックはすることができる。ですけれども、私どもは終戦直後にあの占領下において、ガリオア、エロアによるいわゆる余剰農産物を輸入をしてこれを売却するいわゆる見返り資金会計というものによって、その資金はどこに使わなければならないということをきちっときびしいワクの中にはめ込まれてやった。ところが、いま私ども審議をいたしております商品援助によるインドネシア援助というものは、必ずしも私どもが体験をしたような形のものではない。してみますと、従来の弊害というものは避けることができないことになっていくのではないか。だからこれは商品援助というのではなくて、プロジェクト、いわゆる開発援助というものに重点を置いていく必要があるように私ども考えておるわけでございますが、それらの点に対して総理見解はいかがでございますか。
  120. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 基本的には、ただいま中村君が御指摘になりましたように、開発援助というものが望ましいことだと思います。しかしその国の実情によりましては、開発援助と申しましても、いきなりそれに取りつかれない場合があります。ただいま例に出されました日本の戦後の情勢、これは非常にインフレが高進しており、物価は高い、こういう場合に、これに対しての援助としていまの開発援助をやろうとしても、インフレは高進で、なかなか計画どおり思うようにいかない、まず経済を安定さすことに力をいたすべきだ、かように考えますと、商品援助というものも使い方によっては十分効果をあげるものであります。ただその場合に、使い方がよほど軌道に乗るというか厳正でないと、これは批判を受けることになると思います。たとえば海外援助でどうも好ましくない怪獣映画を輸入する、そしてその利益が特定の人に壟断される、こういうようなことがあったら、これはたいへんだと思います。したがいまして、商品援助をやる場合には、十分打ち合わせもし、厳正に約束が守られるということでないと協力の効果をあげないと思います。私どもがいま経済協力をやろうということは、申すまでもなく、その国の経済が安定し発展する、その力になるための協力でありますから、そういう意味で商品援助も場合によったら必要だ。しかし本筋から言えば大体開発援助方向に向かうべきものだ、かように考えてしかるべきものだと思っております。
  121. 中村重光

    中村(重)委員 総理がお答えになりましたように、援助の効果を十分発揮するために何かチェックするいわゆる歯どめがあればよろしいわけですけれども、なるほどリストによってこれ以外のものは輸入してはいけないのだというようなことをきめるわけですね。その範囲はわかるのです。しかし実際にその金が目的どおり使われなければならぬということがはっきりしていない。これは内政干渉ということにもなってまいりましょうし、なかなかそうきびしくできないという形になってくるのですね。総理がお答えになりましたように、経済安定というのが民生安定につながっていく。日本から援助が来るかどうかによって、インドネシアの物価が上ったり下ったりする。来そうだというので下がったり、おくれそうだということで上がるということも伝えられているようですけれども、お答えになったような一面もあると思う。しかし、そこらあたりあまり期待感がありますと、開発のほうがお留守になってくるということもありましょうし、大蔵大臣もこの点は頭を痛めておるのではなかろうかと思うのです。その点総理も歯どめということを十分お考えになっていく必要がある。私どもは、どうしても商品援助というものに対して、物をつくる側の人たち——物と金というものは特定の人が潤うことになりましょうが、どうしても大衆の生活安定には結びつかないというものの考え方から実は基本的には賛成できないわけです。  私が特に感じるのは、いわゆる開発というものがいかにその意義が高いかということは歴史が証明しておる。平清盛の音戸瀬戸の開発、ヒトラーがアルプスのほうへ向かって非常に大規模な軍用道路をつくりましたね。開発というものは悪い者がやりましても後世に大きな役割りを発揮していくということになると思うのです。ですから問題はあったにしても、相当無理しても、後進国いわゆる開発途上国等においてはこの開発援助を十分受け入れさせるような、やはり先進諸国が、援助する側がこれに干渉するということではなくて、十分これを説得し、そして援助する国を信頼させる、そういうような形において援助効果をあげていくというようなことが私は必要ではないかというように思うわけなんです。いま総理がお答えになりましたようなことでも大体同じような答弁になろうと思いますから、この点は御答弁をいただきませんが、ともかく多数でございますから、これは多数決という形できょう当委員会をおそらく通過する見込みでございますが、そうなってまいりますと、これは必ず成立するでございましょう。だがしかし、その点は十分配慮してもらわなければならない、このように私は思います。
  122. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 別に答弁要求されなかったようですが、ただいま中村君の御指摘のとおりです。本来の筋からいえば開発援助をすべきだ。しかしながら、いきなり開発援助をしようとしてもその国が安定してない、あるいはインフレが高進して非常な物価高だ、こういうような際はやはり商品援助一つの意義もある。それはただいまお話しになりましたように、援助する側もまた受ける側も十分効果があるように、理解してその方向へ努力しなければならない。だから、いま言われたことを私どももただこの場限りで聞きおくということでなしに、その方向お互いに努力する、こういうことで努力したいと思います。  ただ、いま御審議をいただいております法律案は、どうも商品援助があるから後退するもの、かように言われますと、これは必ずしも後退ではない。それを理解してもらいたいから私実は立ち上がったのでありまして、ただいま開発援助の必要なことも、これは御意見は一致して別にどこに食い違いもない。また、時に商品援助の必要なこともちゃんと御理解をいただいたようでございます。そういうものがいままで全然日本の法律、基金法にはなかった。こういうものをちゃんと政府に授権立法をしてやる、そういう権利を与えてやることによりまして協力の効果があがる、かように私は思いますので、積極的な意味を持つものだ、どうかそういう意味で御理解を賜わりたいと思います。
  123. 中村重光

    中村(重)委員 実は総理、いま政府考えている商品援助というのはインドネシアだけを考えているのですよ。ところが、そうでなくて、法律的にはどこへでもやれるのですね。だから歯どめの方向ではなくて、そういう安易な方向へ進められていくであろう。それらの点で実は私どもがなかなか賛成しにくい点があるのです。大蔵大臣はきわめて慎重であるということは私は認める。認めるのですけれども、これは法律的にはインドネシアだけに限ってないのですね。そこいらも総理は特に注意をしてもらわなければならない点だと思います。  それから総理、昨年の十月にインドネシアを訪問なさいました。その際に、いわゆる三億二千五百万ドルの外資が必要であるということから、アムステルダム会議の一カ月前でございましたか、そのときはインドネシア政府のほうでは成案ができておった。総理にもいろいろと要望というのか何かあったんだと思うのですが、同時にいろいろなことが報道されたわけですが、その際どういうような話し合いがなされておったのか。総理がある種の言質を与えたということも言われておるのでございますけれども、その点はどういうことでございますか。
  124. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 もちろん結論から申すと、言質を与えたようなことはございません。ただインドネシアの場合は、日本からの経済援助もさることですが、国際的な経済援助を与える各国で相談し合いまして、そうして援助計画を立てて、その援助計画実施し、それぞれの国が分担に応じて援助しよう、こういう各国協議の一つの問題があります。  それで、私が参りました際は、三億二千万ドルがきまっておるという説があるし、それはまだなかなかきまらないという問題があるし、これはそう簡単においそれときまる問題でもない、こういうように実は思っていたのであります。したがいまして、この話が出ましても、私どもは——インドネシアが日本に対していろいろな期待を持つことは、これはインドネシアの御自由でございますけれども日本自身としてこれについて口火を切るというか、あるいは一つの確約を与えるとか、あるいは言質を与えることは、これはもう行き過ぎであって、出かける前から実はそれらの点について十分注意もありましたので、私もなかなか軽率な男ではあるが、一そう慎重にいたしたわけでございます。いろいろなうわさは立っておりますが、もちろんこれについては確約あるいは明言したものではございません。でありますから、インドネシアに参りました際に、そういう意味の共同声明もございませんし、またスハルト大統領がその後日本を訪問いたしまして、これを確かめたいという非常な熱望を持ってきました。しかし、当時は、訪日の際はまだ予算もできておりませんし、ただいま御審議をいただいております基金法はもちろんまだ成立もしておらない状況でありますから、当時としては私どもも慎重ならざるを得ない。でありますから、多くの場合に共同コミュニケを出すものでありますけれども、スハルト大統領が来た場合には共同コミュニケも出せない、そのままで帰られた、こういうような実情で、政府はこの点についてはあるいは必要以上に慎重であったともいえるような状態でございます。したがいまして、いろいろなうわさが立っておりますけれども、そういう意味では政府は絶対に権限以上のことをいたしてはおらない、かように御了承いただきたいと思います。
  125. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるように、いろいろうわさが立っておるわけです。またインドネシアの一九六八年の予算の中にも三億二千五百万ドルの歳入予算が計上されておるわけです。それでアメリカ日本が三分の一ずつ、いわゆる三分の二、ほかの債権国が三分の一というようなことであった、それが日本でもって積算の基礎として六千万ドルということをおきめになったというので、たいへんうろたえてミッションの数度にわたる来日となった。それで先般スハルト大統領が見えられたときも、その点について相当総理に迫ったということ等も伝えられておる。しかし、時間の関係がございますから、この点はいま伺った程度にとどめたいと思います。  最後に、輸銀資金のことについてこの際ひとつ総理にはっきり見解を伺っておきたいと思うのですが、総理がいろいろな委員会において輸銀資金はケース・バイ・ケースでいくとか、あるいは中曽根運輸大臣の日立造船所の貨物船輸出の問題についての発言に関連をいたしまして、運輸大臣と話し合いをして意見が一致したとか、いろいろなことが伝えられているのです。また総理は吉田さんが死んだと同時に吉田書簡は死んだんだということも言ってまいりました。これは新聞を通じて知るわけですが、そういうことも言っておられる。総理、この点についてどうお考えになっていらっしゃるのですか。輸銀資金というものは、総理が言う政経分離だ。輸出入銀行において輸銀資金を扱うということになると、これは純粋な経済ベースになる。これをとめるということ自体が、私は政経分離という総理のことばに矛盾を感じるわけです。総理自体がアメリカに気がねをしたり、あるいは台湾政府に気がねをしておられたり、いろいろしておられるということは、これは政経分離じゃない。だから、ほんとう総理が言われるように政経分離、だから、純経済ベースとしてこれを扱っていくということが正しいんじゃないでしょうか。
  126. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねにもいろいろな問題を含んでいます。一つは、輸銀というものの資金、これは日本貿易拡大のためにそういうものが計上されている、これはそのとおりでありますから、私もさように考えております。その場合に相手の国、これは一体承認した国だけに限るのか、未承認の国でもそういうことが使えるのか、こういう問題があると思います。いま問題になります中共との問題は、これは毎度申し上げておるように、承認、未承認ということに関係なしに、とにかく政経分離の形において処理しよう、こういうことを実は申しておるのでございます。したがいまして、輸銀の資金貿易拡大の用に使われるなら、そういう場合にワクはないはずだ、こういうことにもなります。問題は一年ぽっきりの通商取りきめをしている国に、数年にまたがるような輸銀の資金の使い方があるか、こういうような問題にもなろうかと思います。したがいまして、この輸銀のケース・バイ・ケースで処理するという、こういうところに一つの妥協点を見出しておる、かように私は理解しておるのですが、そういう点に皆さん方のお話を聞き、御了承をいただきたいと思います。そうして、いま吉田書簡というものを出されましたけれども、吉田書簡というものは政府間の取りきめではございません。これは政府意向を受けて吉田さんが行かれ、政府と全然別行動で吉田書簡が出されたわけのものでもない。これは当時、もし吉田書簡が、時の政府が全然関知していないということなら、時の政府がはっきり吉田書簡は、そういうものはきめないとか、あるいは無効だ、そういうことを言うべきものだろうと思います。しかし、そうじゃなくて、やはり出された形は政府の書簡ではない、それは吉田さんの書簡だけれども、そこらに暗黙のうちに了解のあったものだ、しかし、形式的にはどこまでもこれは個人の手紙だ、それで初めてこういう外交問題の処理ができる。したがって、これは個人的な書簡でございますから、それを無効にするとか、あるいは修正するとか、こういうような本来の筋のものではないと思う。だから、吉田書簡は吉田書簡だ。これも吉田さんがなくなったから野辺送りをしたとかというものでは実際ないと思う。吉田書簡というものは吉田書簡なんです。しかし、政府自身はそれはまた、ただいま申し上げますように、当時はこの吉田書簡を歓迎したと思いますけれども、ただいまの状況のもとにおいて、私どもはいわゆる政経分離の形において貿易の拡大は望む、そういう意味でケース・バイ・ケースでこのことをきめていこう、こういう実は態度であります。何だかいかにも矛盾しておるようなお気持ちがあるかもわかりませんけれども、私はいまの日中の関係というものは正常な関係だとどうも考えるわけにいかない。これはいまはこういう状況でございますけれども、いつまでもこういう状況でいいというものではないだろうと思います。したがいまして、ただいまのように考えることによって、将来の何らかの一つの手づるは見つかるのではないか、かように思っております。いま直ちにこれを変えるというわけにはいかないけれども、おそらく双方で理解でき、また、関係国で理解のできるような望まして解決方法があるのではないだろうか、かように私は思っております。
  127. 中村重光

    中村(重)委員 総理、ケース・バイ・ケースでいく、ことばとしてはわかるのですよ、政経分離とケース・バイ・ケースと結びつくのですから。ところが、政府の態度というのはケース・バイ・ケースでいくというのが態度じゃなくて、ケース・バイ・ケースでいくというように答弁をしようという統一したのが態度であろうと思うのですね。そういうことですよ。大蔵大臣もそう言われた。大蔵大臣、たいへん前向きになっていますけれども、通産大臣外務大臣もケース・バイ・ケースでと言う。少しも前進はないのですね。情勢の変化もあるだろう、大いにあっていいと思うのです。けさの新聞でも、自民党の党内でも、この輸銀資金を使って中国に対するところの延べ払いをやろうということをきめて総理に強く申し入れをするということも伝えられている。先般の覚書貿易というものも、自民党の中の党員の方々がおいでになってこの話もきめられた。国際的にも大きく情勢が動いている。情勢は変わっているが、佐藤内閣のケース・バイ・ケースでまいりましょうという国会答弁の態度は一向変わっていない。そこに問題を感ずる。政経分離であるとおっしゃるが、政経分離ではない。むしろそれを混同していらっしゃる。ここに私どもは問題を感ずるのです。それと、国交回復だとかなんとかだとおっしゃるのですが、前はずっとやっておっておったのです。吉田書簡というものがぽんと出てきて、それからこれをさっと中止された場合に、総理答弁というものに一貫性がない。いわゆる矛盾というものがそこに出てきている。いわゆる純経済ベースでものを考えていないということになっている。しかし、時間がまいりましたからこれ以上申し上げませんが、ただ、午前中中曽根運輸大臣に実は貨物船の輸出の問題についてお尋ねをいたしました。いま事務レベルで検討させている、これが支障がないということになってきたならば、これを輸銀による延べ払いによる貨物船の輸出を実はやる考え方であるということをきっぱりお答えになりましたが、総理、その点はどのようにお考えになりますか。
  128. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 まだ研究の段階だ、かように思います。
  129. 小峯柳多

    小峯委員長 堀昌雄君。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 私どもは今度のこの海外経済協力基金法に対して反対をしておるわけです。なぜ反対しておるかといいますと、法律そのものの形態に実は問題があるのではないのです。法律そのものによって起こってくるであろう事態に対して実は私どもは反対をしなければならぬ立場に立っておるわけです。これは総理もすでにお感じになっていると思いますけれども、特にこれまでの日本賠償なりいろいろな協力の問題の中に望ましくないうわさが非常に多いわけです。これは私もいまここで時間がありませんから申し上げませんけれども、そういう問題をはらんでおるために、商品援助というようなことは、最も安易にそのような利益を求める人たちのために食いものになる可能性があるということを私どもは非常に心配しておるわけです。商品援助そのものがきわめてフェアにガラス張りで行なわれるならば、私どもはそういう不安もないわけですが、その点が非常に私どもは不安なわけです。総理はこの点について、今後こういう海外経済協力の問題について、そういううわさの出ないような処置をいかようにしてとられるのかをひとつ承りたいと思います。
  131. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまの堀君のお話では、必ずしも反対じゃない、しかしいろいろ危険がある、あるいはこれは間違って使われるかもわからぬ、こういうことをたいへんに心配する、かように言われます。日本の過去において、戦後やられた商品援助、そういうものが日本経済を救ってくれたとまで実は私は思います。これは日本の扱い方が当を得たということだろうと思います。でありますから、受け入れ方にも一つの問題があるし、また与え方にも問題があると思います。当時におきましても外国の映画などが日本にどんどん来ておりましたが、しかしその利益は外国自身に持って帰らすわけにいかない、日本にとめておく、こういうような制限までした。だからいろいろ受ける側の国で注意することによりましても防げることじゃないだろうか。それによってはたいへん効果のあがるものではないだろうかと実は思います。いまこの問題は、この委員会を通じ、堀君をはじめ、中村君もですが、皆さん方からこの問題の欠点、弊害におちいりやすい点を指摘されておりますので、政府もこれは十分心がけて、ただいまのような点を、弊害におちいらないようにいたしたいものだと思います。もちろん両政府間におきまして話し合いがもっと進行し、そして経済不安から起こる生活不安、そういうものをなくするという意味に商品が使われること、そういう商品に限られること、これがまず第一だろうと思います。それにいたしましても、時期の問題もありますし、また受け入れ側の問題もありますし、これはまあ相手方はよほど気をつけてくれることも必要だろうと思います。もちろん、これだけの議論が展開されておりますから、扱うほうでも十分注意すると思います。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私は総理約束をしてもらいたいことが一つあるわけです。それは、インドネシア側におけるいろいろな問題もありますが、日本国内における問題のほうが実はより重要なわけです。実は最近私この商工委員会に参りまして、いろいろな商品の価格の問題をこの間から一連として取り上げておるわけですけれども、私どもは、商品援助をするときに向こうへ送られる商品の価格は一体公正な価格なのかどうなのかという点が一つ非常に重要な問題だろうと思うのです。その商品に見合う公正な価格で品物が実際に渡されておるのかどうか。これは今後非常に重要な問題だと思いますので、これをきちんとしていただいて、価格の公開制といいますか、この商品はこの価格でこういう品物が行ったんだということが、これは全国民にというわけにいきませんけれども、たとえば国会のような場で要求があればそういうことが明らかにされ、そのことによって不当な利益を商社なりいろいろなところが得ないということが確認をされるならば、この問題についての国民の不安というものはかなり除かれると思うのです。その点について、今後のこういう海外経済協力がガラス張りの中で行なわれて、これは国民のとうとい血税によってまかなわれるものでありますから、国民が納得のできる処置をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  133. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま言われますように、相手の国のことを、これはもう内政干渉になってもいけませんから、それは多くは言わない。もちろん、これはただいま言われるように、わがほうについてはきびしくなければならない、これは国民の税金によってまかなわれたものだ、かようなことを考えると、国民の負担、それがまた公平に使われる、公正に使われる、こういうことでなければならないと思います。ただいままでのところでは、価格はいわゆるコマーシャルベースということになっておるようでございます。私は、政府が一々価格にまでなかなかタッチしにくいのじゃないかと思いますけれども、ただいま言われるように、この点を通産省におきましても特に留意するように、気をつけるように、そうしてあとで問題を起こさないように十分ひとつ責任を持ってこの問題を処理してもらう、こういうように私督励するつもりでございます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 実はある資料を見ておりますと、インドネシアで非常にコミュニケーションに使われておりますトランジスターラジオが、たくさんに賠償関係で向こうに渡された。ところが、そのトランジスターラジオというのはきちんとしたメーカーの商品でなくて、部品をかき集めてつくられたトランジスターであったためにきわめて不十分なものになった、こういうことが実はある資料で伝えられておるわけであります。これは現地へ行っておる人からのレポートでありますから、おそらく間違いはないだろうと思いますけれども一つがすべてではありませんが、こういう場合に、価格を安くするためには正当な商品でないものが送られるというようなことでは、その中には不当な利益というものが介在したのではないかと国民は疑惑を持つでありましょうし、インドネシアの国民にしても、日本の製品はいいのかと思ったらこんなに粗末かというインドネシア国民の疑惑を招くことにもなろうかと思うのです。ですから、私は少なくともこの点について、この間から価格問題をこの商工委員会でだいぶやってきたわけですが、ひとつ通産大臣通産省側として監督といいますか、公正な商品が公正な価格で送られるということを通産省の責任において何か明らかにしていただきたいと思うのです。
  135. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまのは国の信用の問題ですから、信用をそこなうようなことがあってはならないと思います。通産大臣からもお答えいたさせます。
  136. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今度のスハルト内閣になりまして、とかくこういう問題に、どっちの責任かわからぬけれども、必ずも明朗でないことがありましたので、いわゆるボーナスエクスポート制度というものがとられております。円借款の場合に、それを政府が一般に入札制度で向こうのエクスポーターに売る、向こうのエクスポーターはそれを入札して落として、それで綿糸であるとかあるいはその他の食料品であるとか、そういったような必ず売れるというものを選んで日本の商社から買い付ける、こういうことをして——それでもどこにどういうわながあるかそれはわかりません。わかりませんけれども、こういうことによって、少なくともインドネシアの監視のもとに不正が行なわれないようにしよう、こういうことで、このBE制度というものが採用されておるわけであります。結局、日本から一つの円借款なら円借款を取りつけて、それを種にして不正をやろうと思えば、どんなことでもできると思います。BE制度でもできると私は思う。しかし、そういうことがそう簡単にはできない、そういう方法をとったものと私は考えております。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 私もいまのお話のBE、ボーナスエクスポートの制度は調べておるわけですが、実はそれで買い付ける商品の問題なんです。結局これは普通の正常な貿易と同じようになるわけですけれども、しかし正常な貿易とはいいながら、これはやはり普通のコマーシャルのものは別にあるはずですから、そうではなしに、いま日本から持っていったものがBE制度によって輸入業者に売られるわけですから、それを売ったものによってこっちは買い付けるわけですから、その権利によって買い付けるもののところで起こる、ここの関係のところに私は問題の起こる可能性がないとは言えないと思うのです。だから、その点について、特に過去におけるいろいろな問題をはらんでおった問題だけに、この点についてのそういう取引、要するにBEを使ってやる取引については——とれはその他の取引でも当然ですけれども、その他のものはコマーシャルの問題ですから、そこまで国が介入するというのは問題があろうと思いますが、少なくともBE制度を使って日本が輸出をするもの、日本から向こうが買い入れるその商品についての問題は、いま私が申し上げたように、価格その他の点においても公正であるべきであるし、商品も公正でなければならぬ。これこそやはり国民の血税によって処置をしているものと理解されるからということを特に申し上げておきたいわけであります。  その次に、総理にもう一点ここだけはっきり確認をしていただきたいのは、抽象論ではだめなんですけれども、前段でちょっとやりましたけれども、インドネシアの問題というのは、実はきょう午前中には外務政務次官が来られて、物価は安定している、こういうようにお話しになったのですが、実はインドネシアの物価は安定していないのです。資料を見てみますと、特に一番上がっているのは食糧でありまして、一九六六年の十二月のルピアの価格とことしの三月のルピアの価格を一九六六年の十二月を一〇〇として見ますと、食糧は四〇九と一年三カ月で実は四倍になっています。その次に高くなっているのは雑費でして、しかしこれは一九六六年の十二月を一〇〇といたしますとこの三月は二三七ですから、まだ実は少ないのです。一体この問題はどうしてこういうことになっているのか、こう考えてみますと、単に農業生産だけの問題では実はないようです。場所によって、たとえばジャワでしておる米の価格とそれからその他の地域との価格の中に三〇%、四〇%の米の価格の値開きがあることが資料で明らかになっている。輸送その他の問題あるいは流通の問題にやはり一つの問題があろうかと思いますけれども、しかし何にしても、いまインドネシアで一番必要なことは米をたくさんつくるということだろうと思うのです。商品を幾ら向こうに持っていってインフレをおさめようと思っても、それより一番肝心なのは、私はやはり食糧、特に米だろうと思うのです。あれだけの耕地があって、高温多湿のところで、現在の反収量というのは実は非常に少ないわけです。日本は少なくとも農業技術においては世界ですぐれた国ですから、もっと真剣に農業技術の協力をすること、このことが私はインドネシア国民に対してのほんとう協力であるし、そういう意味で技術協力を大いに高めなければならぬと思うのでありますが、残念ながら、資料で見ると、一九六六年に日本がいたしました農業に対する、これはインドネシアだけでありませんけれども、全体に対する協力はわずかに五・三%にしかなってないのです。  そこで総理にお約束をいただきたいことは、まずインドネシアに大型の農業研修所をつくって、日本から適当な技術者を送って、現地でもひとつ指導をする。向こうからも少し大量の人を日本に入れて、日本の耕作の条件やその他を見せて、そうして日本でも教育をして、この日本で教育をした人たちをまたインドネシアへ帰して、この人たちが次の人たちを教えるというこの問題。あるいは農業協同組合のあり方をいかにして農村の中に広めるかということについても、やはり日本にその人たちが来て、日本の農業協同組合の組織化を見ることが非常に重要であろうし、そういう点について抽象論でなく具体的に、日本のインドネシアに対する協力について、円借とかいろんなものがありましょうが、それをほんとうに生かしていくのは技術援助をもっと真剣に考えることじゃないか、私はこう考えているのです。ですから、ここで少し具体的に農業援助を含めた技術援助技術協力というものをどういうふうにされるつもりか。それなくして、今後幾ら借款で金をつぎ込んでも生きてこないと思いますが、総理大臣はいかようにお考えですか。
  138. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 堀君のいま言われるような問題があるのです。米の不足はきのうきょうに始まった問題ではないのです。インドネシアはただいま言われるように高温多湿、つくり方さえうまければ三回はとれるだろう、二回は必ずとれる、そういうような場所でなお米が足らない、いままではビルマやタイから買っておる、こういうところに問題があるのですね。そこで、いまの耕作の技術の問題もありますが、肥料の問題があるし農薬の問題がある。三Kダムという多目的ダムをつくろうというのも、ただいまのような耕地に対するかんがいの便にしよう、そういうことであります。そういう基本的、基礎的な問題があると同時に、今日とにかく米がないから、いま言われたように四倍にもなっている。これは一部で言っておりますように、四倍程度ならたいへんいいんだ、十倍あるいは十数倍にまでインフレが高進するというたいへんな状況なんだ、四倍程度に一応おさまったんだ、こういうように言う方もございます。私は、確かにいまのスハルト政権になりまして、ややインフレの高進は落ちつきつつあるとは思います。しかし、私ども考え方に比べたら、これは一体何事だというような、実はたいへんな状況であります。でありますから、ただいま商品が要るが、まず第一は米が要るんだ、米は何とかならないか、これは例のケネディラウンドの小麦の輸出ともなりますし、あるいはまたかつていわれたようにライスバンクの思想にもつながっている。何とかして東南アジアの米をこの地域に送る方法はないか。しかしそういうことも言われると同時に、自分たちも米をつくりたいから、この際肥料がほしい、肥料はやっぱり四月じゅうでないと十分でない、だからことしの施肥の時期に間に合うように四月じゅうには肥料をよこしてくれ、米は一応他の国から援助をもらえた、こういうような問題があるのです。でありますから、いま言われましたような基本的な、基礎的な恒久対策の問題と、応急的な臨機の対策の問題と、二つに分けてこれをやらなければならない。日本の場合に、恒久的なものもやりたいが、臨機な処置をとること、これはいまのわれわれの力として可能なのではないか、こういうことで、いま予算もいわゆる六千万ドルというものが一応計上されたわけであります。いろいろ問題がございますし、ただいま言われるように研修所を設け、本格的な農業試験所を設けて指導すること、これはもう本筋の問題で、必要でございます。ただ、ただいまの問題として、そんなことも言っておれない、こういう状況がありますので、これは二つに分けてそれぞれ対策を立てなければならぬ、かように思っております。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいま肥料のお話が出ましたが、これは資料で見ると、日本の肥料の輸出というのはだんだん減っていますね。一九六四年が五万八千トン、それが一九六五年は七万トンまでいったものが、六六年には五万五千トン、六七年には二万二千トンとだんだん実は減ってきておる。これはどうしてこう減ってきたのかわかりませんが、何にしても、しかしいまいきなり肥料をどんどん入れても、たけの高い稲のようですから、これはやはり品種の改良からしなければ、一ぺんに肥料を入れれば倒れてしまうという問題もありましょう。しかし私は、急がば回れではありませんが、基本的な対策なくして、対症療法だけやっていては、たいがい病人というのはよくならないのです。病人をなおすには、やっぱり原因を取り除かなければ実はだめなんです。だから原因を取り除く方向政府はもっと真剣にならなければいけない。その原因を取り除く前に、では何が必要か、ここが今後非常に重要な問題です。ところが対外経済援助をするためには、その国の実情を十分に調査して把握しているかどうかというところが私は一つの問題点だろうと思う。実は前にスカルノ大統領がケネディに対して八カ年計画援助を申し入れたときに、アメリカはハンフリー使節団というのを送って、非常に詳しい調査をしております。今日私もこのハンフリー報告を読んでみまして、なるほど時代は違いますけれども、その分析の正確なことは、私は非常にりっぱだと思います。私どもはまずどういう病気かという現状を十分調査をして、診断をして、そうしてその根本的な原因を取り除くための対策を立てるというところから問題を始めないと、日本援助が必ずしも十分に効果的でないといわれる原因の一番中心的なものは、私はそこにあると思うのです。ですから今後これからインドネシアの問題というのは、やはりここまでくれば日本として中途はんぱでやめられないと思います。しかし物価はどんどん上がるし、為替レートと予算のレートとその他のレート、みんなばらばらになっているような、非常に経済情勢が複雑になっておる国は、もう少し総合的に調査団を送って、十分調査をして、われわれとしてアドバイスすべきものはアドバイスしながら協力をしていくのでなければ、結局この前の賠償のときのようなことを繰り返すことになるのではないか、こういうように思いますので、ひとつこの際、特にインドネシアの問題については、権威のある総合調査団を、少し長期間にわたって送って、その報告を少なくともこの国会に報告をしてもらうぐらいのことは、これだけの法案をやり、国の費用を出す以上は当然行なわるべきことだ、こう考えるわけでありますが、その点総理、どうお考えになりますか。
  140. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それに関連してちょっと。おととしですか、東南アジア開発の閣僚会議を開いて、それから三度目を開きましたか、それに関連してまず食糧の自給ということを考えなければならないというので、農業会議というものがそれの一つの派生的な機構としていまできて、それが集まって、どうすれば東南アジアの、まあ国によっていろいろ違いますけれども、食糧自給に向かって最も効果のあがる方法がとれるかということをいま研究しております。農林省のほうの係官がおりませんので、いま具体的には申し述べることはできませんけれども、そういう方向にいま進んでおります。
  141. 小峯柳多

    小峯委員長 農林省の係官、おりますよ。農林経済局長
  142. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 インドネシア関係で農業開発につきまして具体的な話が起こりましたのは、一昨年の十二月の農業開発会議以来でございます。それ以来、私ども農業関係で具体的な相談を受けましてやりましたことは、ジャカルタの市民に米を安定的に供給するという趣旨から、西部ジャワにおける稲作の改善と、東部におけるトウモロコシの増産についてでございます。なお開発輸入ということを含めまして、最近も農協の職員を含めた調査団が行っております。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私が申しておることは、今度この問題についてインドネシアのいろいろな問題を調べようと思っても、日本の側に適切な総合的な調査報告がないということなんですよ。そして結局調べたら、ハンフリー・レポートというアメリカのものがまだ一番総合的で本質的な調査になっている。これでは困るのじゃないかということを私は言いたいわけなんです。ハンフリー・レポートというものはいまから十年ぐらい前のレポートでありますから、日本がいまそれを読まなければならぬようでは困るので、やはり日本で総合的な調査団を出して——経済機構の問題あるいは工場の状態、いまのダムの関係でも、輸送の問題でも、あらゆることが少なくともここには分析されて書いてあるわけです。その程度のことは、日本もこれからこれだけの援助をやろうというのなら、当然調査団が行き、そのレポートが国会に報告されるぐらいのことはあってしかるべきじゃないかというのが私の意見なんです。ですから、それについての総理のお考えをひとつ承りたいわけです。
  144. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 堀君はいまのハンフリー・レポートをどこで手に入れられたか、御承知のようにアジア研究所というものがあります。そしてこれが全部のものについて総合的な調査を進めております。また特に問題が起こると、その場所に権威のある調査団まで派遣している。ただいま言われますように、こういう事柄は基本的な問題でありますから、ちょうど堀君のお仕事関連すると思いますが、やはり問題が起きたときにすぐこればどれによるべきだということが判断できないと、臨時応急の処置もできないだろうと思います。ただいまインドネシアの場合におきましては、そういう基礎的な問題もありますが、とにかくいま発熱して非常に苦しい状況にいる、とりあえずカンフルを打たなければならぬ——いまはカンフルはないか知りませんが、そういう状況だろうと思いますので、そういう意味の対策をいま立てておる。しかし基本的には、お説のとおり、根拠のある総合的調査のもとにわれわれが経済援助を進めなければならぬと思います。また、ただいまは一国だけの援助ではなくなっておりまして、いわゆる先進国が共同いたしまして開発途上の国を助ける、こういう形でございますから、私ども援助をするにしても、なけなしの金で援助をするのでありますので、十分生き目にいくようにわれわれも努力する、この心がまえが必要だと思います。ただいま御指摘になりました点は、そのとおり、私も賛成であります。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは最後に、実はこのインドネシアの問題が特に中心でありますけれども、最近の情勢を見ると、昨年からことしへかけてだんだんと援助額の希望はふえてきておるわけです。いまの諸情勢から見て、おそらく来年はさらにふえるのではないかという感じがするわけです。現在すでに二十八億ドルか幾らかの債務を負っていて——インドネシアにどんどんつぎ込むことはちっともかまいませんけれども、底なしのふちのようなことになったのでは、これは国民の側といたしましても困るわけです。ですからその点についても、やはり私がいま申し上げたような基本的な対策を欠くことなく——消費物資のようなものを幾らつぎ込んだってこれは基本的な対策にならないわけです、みんなそれは使ってしまうわけですから。その点は何もプロジェクトをやれとかそういうことではなくて、いま私の提案しておるところの技術協力の基礎的なものをやることなくしてはこの対策にならぬ、こう私は考えておるわけですから、その点について、ともかく日本経済的負担も考慮しながらでありましょうけれども、すみやかに技術協力によって、根本的対策で日本の今後の支出をできるだけ合理化する点をひとつはっきりさしていただいて、私の質問を終わります。
  146. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 基本的には、お話のとおり、技術援助に力を入れるべきだと思います。しかし、技術援助には、援助した後に今度はまたわが国が競争関係に立つという、いろいろな問題もございます。しかし、全体がしあわせになることならそういう方向でやるべきだと思います。  ところで、ただいま言われますように、援助というものがだんだんふえやしないかということですが、これは一国だけの援助でなしに、先進国が共同して援助をするということでありますし、多分に国際的の環境に左右される問題でもあります。最近のようにポンドあるいはドルの危機等の問題があると、各国それぞれみんな悩みを持っておりますので、そう相手発展途上国から援助要求されましても、そのとおりはなかなか応ぜられない、こういうものがあると思います。  それからもう一つは、援助はどこまでも援助でありまして、主体は自立するといいますか、自助の精神が必要だと思います。その自立計画というものが十分理解ができない限り、われわれもわが国の国民に苦しい思いをさせて援助をするというのには限度がありますから、それはできることでもございませんので、おのずから受ける側における自主自立の意気込み、その計画というものを十分に理解して初めて援助できる、かように私は思っております。ただいま言われますような、将来は問題があるにいたしましても技術的な援助に力を入れるべきこと、また開発援助すべきこと、これはもうお説のとおりであります。
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 終わりに、この前実は輸銀を使ったので、それの金利を下げるために予備費から一千万ドル出すということが起こりました。もしこれが結果として通りますならば、そういう処置はしなくてもいいわけですから、今後はそういう借款その他の問題については要するにこの海外協力基金を通じてやるのであって、輸銀と抱き合わせでやるようなことは二度とないというふうに確認をしておきたいと思いますが、それだけをお答えいただいて終わります。
  148. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 今回の改正によりまして、経済協力はこの基金による、それから輸銀は貿易拡大のために使う、こういうことで目的が非常にはっきりすると思います。したがいまして、これは今後輸銀の活用、運用等についてもたいへん幸いするのじゃないだろうかと私は思います。ものごとをきめてかかることがよろしいので、まあ前回輸銀から一部特別な扱い方をした、あの援助の形は、もうああいう形のものはいたさない、かように御了承いただきます。
  149. 小峯柳多

    小峯委員長 玉置一徳君。
  150. 玉置一徳

    ○玉置委員 総理にお伺いいたしたいと思います。  結論から申しますと、わが党は、一国の総理がスハルト大統領と約束されたことでもありますので、この法案が早く成立することをこいねがうものでありますが、さような意味におきましてひとつ親切な答弁をこれからお願い申し上げたい、こう思うのです。  一昨年でございましたが、私はイランの首都テヘランにおきます列国議会同盟会議に参加いたしました帰途、幸いでございましたので、インド、その他のいわゆる後進国の諸国の実情を見させてもらって帰ったのでありますが、そこで非常にこの地の諸君が熱望しておりますのは、日本援助であり協力であります。すなわち、境を共産圏諸国、中国等と接しておる諸国でございますので、いずれもいざというときの不安を非常に感じております。しかしながら、そうしたときにわが国の武力による援助を求められないということもよく熟知しております。そういう関係で、勢いわが国経済協力をたよらなければならないわけでありますけれども、いよいよたよろうと思えば、よその国から考えれば非常に金利が高い。それから長期ではない。せっかくたよりにしておる、ほかでは借り得ない、東南アジアの唯一の兄貴分である日本に、一番自分の生命の危険のときにはたよれない。米ソにひとつたよろうと思っても案外にこれは高いのだということを非常にみんな言うておりました。ややもすると経済動物というようなことを言われるようなゆえんもそこらにあるのじゃないだろうか。韓国に参りましても、わが国は三十八度線に接しておるのじゃないのだ、そこで防衛は非常に安くあがっておるじゃないか、その分で日本経済の非常な発展を見ておる、したがって援助していただくのが当然であるというような考え方の国もあるわけであります。  そこで、北ベトナムもようやく平和のきざしを見せました今日、わが国はよほどここに力をいたさなければ、道義的にもあるいは政治的にも問題があるのじゃないだろうか。ある一部では、いろいろな角度から日本を置いてきぼりにするような空気すらどこかに見られたようなことも伺っております。こういう意味で、今後東南アジアの経済協力関連いたしまして、どのような態度でわが国の外交を進めていくか、ひとつ基本的な点を御説明いただきたいと思います。
  151. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 玉置君の、いま発展途上の国々をみずから視察して、そのとき感じたというお話。確かに日本は金利が高い、あるいは期間が短い、援助するにいたしましてもどうも条件が他の国に比べてたいへんきつい、こういうような感じを持たれる。しかし私は、日本の国柄として、もうかってのような侵略国家じゃない、さらにまた経済膨張をはかろうとしておる国でもない、いわゆる欲ばっておらぬ国だ、こういう意味でだんだん日本の理解が高まってき、信用があり、そういう意味で日本援助を受けよう、かようになったのではないかと思いますし、また、ことにアジアの問題で日本を除いて他の国がそれぞれの国々を援助しようとしてもそれはできないことだ、だからやはり日本と話し合って、日本協力のもとにお互いに提携して発展途上のアジアの国々にひとつ協力しよう、こういうような気運の出ていることは、私はたいへん喜びにたえません。  そこで問題は、いまの金利その他の条件の悪いことですが、これらのものも、いまの国内の問題と比べて、これはある程度やむを得ないものがございます。しかし日本経済がだんだん進み、国際的地位が高まるにつれまして、国際並みの方向に移ってまいりますから、そういう際にはきっとその援助を受ける側においても納得してくれるのじゃないだろうか、かように思います。  最近の援助の形で、私が昨年各国を回りましたが、ビルマとの問題は、日本の場合は条件がきびしくて話がまとまらないでいる。タイは日本援助の条件をのんでくれましたからこれは最近でき上がった。今度タノム首相が参りましたけれども日本では問題なしに協力問題が進んだ。インドネシアの問題は、金額そのものについても問題があるし、また条件等につきましてもなかなかきびしいことを言われている。これはこれからの問題だ、かように思います。フィリピンも同様な点があります。したがいまして、私これらの点もさらに注意しなければならないが、いずれにいたしましても日本自身経済的膨張を策しているのじゃない、さらにまた領土的な侵略の野心がないのだ、こういう真の日本あり方を理解していただけば、お互いに金利が高く、あるいは期間が短いとかいうような不平もよほど変わるのじゃないだろうか、かように私は思います。しかしこれをいまのままでいいというわけじゃありませんから、さらにこの上とも努力するつもりでおります。
  152. 玉置一徳

    ○玉置委員 答えがもうひとつ満足を得ないのですが、韓国へ行きましたときに釜山で見ましたが、あそこの水道のために西ドイツが五年据え置き二十年年賦の、金利たしか三分というやつで非常に喜ばれておりました。こういうふうなものは領土的野心でも何でもないことはわかり切ったことであります。私はわが国が、佐藤総理のおっしゃる、外国とそういった武力で事をかまえることは一切しないのだという態度を常に鮮明にするならばするほど、そのかわりにせめて後進諸国の民生安定と経済復興のために、ほんとうに率先して力を尽くすのだという態勢を示さないと、そこまでの納得と、ほんとうに慕ってきてくれるというような信頼感がわかないのじゃないか。よほどの覚悟をひとつきめていただきたい、私はこう思いまして実はお願いをしたわけです。  そこで具体的にちょっと入って伺いたいと思うのですが、御承知のとおり、この間ニューデリーでございました決議を見ましても、わが国がいかに各国の海外協力に平均以下であるかということは数字で出ておるわけであります。ましていわんや今度国民総生産の一%を目標にしようじゃないかというような話が、まとまったというわけじゃございませんけれども、努力目標としようじゃないかというようなことが話にあがっておりますが、そういう点を考えますと、なかなか財政硬直化、わが国自体も総生産はなるほど多いでしょうけれども、国民一人当たりの所得はそこまでも行っていないというようなので、この程度でひとつがまんしてもらいたいというような言い方もあると思います。中小企業等の問題もあると思います。いろいろありますけれども、私はやはりこの努力を相当本気で続けなければ、言いわけばかりで過ごしていかなければならぬように思うのでありますが、これにつきまして、これだけの資金量と質とをどういうように備えておいきになりますか。ここ三年ぐらいで何とか追いつくように、目標に達するように御努力をするというお気持ちがあるかどうかお答えをいただきたいと思います。
  153. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 UNCTADの会議におきましても、国民所得の一%海外協力、これはまあ目標だ、かように申しております。わが国の実績は一体どのくらいか、〇・七、一%にまだ達しない。できるだけ早く一%にしろ、こういうお話でありますが、これは私どもも努力はいたしておりますが、御承知のように日本経済はどんどん成長していきます。したがいまして、去年の〇・七%とことしの〇・七%は同額ではないのです。金額はもちろんふえておる。ふえておるが経済はどんどん成長いたしますので、なかなか一%まで消化するということは非常な努力が要るというのが現状であります。もちろん私は現状をもって足れりとするものではない。できるだけこの一%というものを、せっかくメンションしたのですから、努力して援助をそこまで引き上げていきたい、かように思います。しかし、同時に、ただいまのように経済がどんどん成長している、そこに一%実現することに非常に努力が要る。これはお互いに自慢しながらやはり弁解する、こういうふうな気持ちであってほしいと思います。
  154. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、私が東南アジアを回ってまいりまして感じましたのは、やはり戦後の日本の行き方としては、どうしてもこの問題を国民の御理解を得て佐藤理総はなし遂げなければいけない。その当時、帰りに考えてまいりましたのは、国民の皆さんに三百六十五日の一日分を拠出していただくようなことが提唱できぬだろうか、あるいはその利子を一日だけは無利子にしていただく方法がないだろうかというようなことを考えて帰ってきたのですが、すぐに選挙がありましたものですから、そんな問題は飛んでしまったのでありますが、そこでいまでも考えますのは、せめてやっておいでになります現在の政府ベースの一九六七年三億九千五百万ドル、円換算で一千四百三十億円、これに政府のいまの行政費の五兆八千百八十五億円の千分の一、五十八億円を各省庁から節約をするということになれば、現在行なっておる政府ベースの一千四百三十億円、円換算はこのごろどうとでも申せましょうけれども、一応公定のものをやりますとこういうことになりますので、これは三分四、五厘に値するわけであります。現在の平均率五分二厘でありますが、三分五厘というものをそこから引きますと実に安い、外国にもどこにも大きな顔をして通れるようなこともでき得る。それから先ほど申しました国民所得の三百六十五日の一日分のあれを換算いたしましても五十四億円という金ができますから、これでまた先ほどの同じような利子補給をいたしましてもどんな方法にしても、私は、総理がやろうという、率先垂範する、国民の理解をいただいてほんとうにやらなければいかぬのだ、これこそが東南アジアと世界の平和につながる道であり、しかもわが国がなし得る唯一の——唯一と言ったらおかしいですが、一番手っとり早い世界平和への協力である、そのことがひいては日本の、また貿易に非常にしあわせをするんだというような点から考えれば、何らかの方法が考えつくのじゃないかと思うのですが、そういうような意味で、これはただ帰りの飛行機の中で思った感想だけなんですが、そのくらいのつもりで、ひとつ政府ベースの分だけは世界的金利の三分以下に何とかしてするという努力をしていただきたいと思うのですが、所見をお伺いします。
  155. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 玉置君、ただいまそろばんをはじいていろいろないい数字を出されますが、しかしこれはそろばんだけの問題じゃないと思っております。たとえば私は、五十八億の金がここへ出ておる、この金を一番先に何に使うか、かように言われると、必ずしも海外援助が第一だ、こうはちょっと考えかねるのです。したがいまして、そこらにも問題がある。国内で使う金もいろいろありますし、また海外援助も海外援助である、比較考量してただいまのような援助金額がきまり、そうしてただいまのような条件がきまっておる。しかしこの条件が、これで日本は大いばりで大手を振って通れる、かようには実は思っておりません。おりませんからあらゆる努力はいたしますけれども、ただいま設例にあげられたような方法でその金自身を直ちにここに持ってこられるとも私は思いませんけれども、さらによく検討する力にさせていただきたいと思います。
  156. 玉置一徳

    ○玉置委員 私も、ただ一つの努力をすればどんな方法でもあり得る、いかなる方法をもってしてもこの努力だけはしていただきたい、海外の様子を見ましても、向こうに行って大きな顔ができないようなことでは民間の経済外交でも非常にやりにくいのではないか、こういうふうに考えますから、お願いをしておるわけであります。  そこでもう一点でありますが、日本経済協力はそもそも賠償から始まっていろいろまいったような関係もありまして、そのおい立ち、由来からいろいろございますが、ことに先ほど申しましたパーセンテージにいたしましても、輸銀使用の海外進出、経済ベースの貿易あるいは海外開発協力、そういういわば経済ベースに乗り得るようなものを除きますと非常に少ないというようなこともこれは事実だと思います。これも考えていただかなければいけませんが、先ほど堀委員質問にお答えいただきましたように、この経済協力の改正法案が通りますと、輸銀ベースでいけるような商業ベースのものはなるべく輸銀独自の考え方でやり、輸銀ベースでやり得ないものは経済協力基金でおやりいただくようになったほうが、ものがはっきりしていいのじゃないだろうか。そこで、からんで言うのではございませんけれども、そういうことになりますと、対中国の輸銀使用なんという問題も、おのずからそれが経済ベースでどうかということをお考えになるだけで片がついていくような感じもいたします。なるほどシベリア開発の問題にいたしましても、協力するのにはまず民間でいろいろなベースで折衝いたしました上に、なおその上に立ちまして……政府の考慮が要ると思います。だからソ連や対共産圏の貿易が輸銀ベースオンリーでいくとは思いませんけれども、どこの国を見ましても、共産圏の諸国といえども経済オンリーの問題はどんどんやっておるわけでありますので、輸銀と経済協力基金の問題をある程度仕事の分類ができますと、おのずから解決する日があり得るのじゃないか、かように思いますが、御所見を承りたい。
  157. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 玉置君の言われるとおりでございまして、今回この法律ができたら、基金の使い方、それから輸銀の運用の方法と、おのずからちゃんとそれぞれの問題を担当するのでございますから、たいへん見やすくなる、またものを考えやすくなる、かように思います。したがって、ただいますぐどうこうするというのではございませんが、これは一つの将来の発展への布石だ、かように考えております。そういう意味でこれも大いに期待が持たれるのではないか、かように思っております。
  158. 玉置一徳

    ○玉置委員 総理もしばしばおっしゃるように、わざわざ中国の貿易を阻害しようというお気持ちはないのだろうと思いますので、いろいろないきさつがあってなかなかむずかしかったのだろうと思います。一つの道が開けてくるのだ、こういうように解釈して、ひとつ前向きで取り組んでいただきたい、こう思います。  次に、先ほどの委員の諸君からも御質問がございましたので、若干重複いたしますけれども総理は責任ある立場でだんだんとお逃げになるところはお逃げになりますが、いずれにいたしましても、いろいろないきさつでやってまいりました日本経済協力機構というものは、これからますます一つの外交方針と申しますか、国の施策に基づいて輸銀は輸銀、経済協力経済協力、民間ベース、それから政府ベースと分けながら、この海外の要請にこたえていかなければならない、こう思うのです。  そこで、機構の問題ですが、ダブって恐縮でございますが、これは経済企画庁が主管してやっているということも何か一つの法案のいきさつできょう出てきました。どこがほんとうに主管されてやられるのがほんとうか。企画庁長官おられたら、なぜあなたはこういうようにされておるのですかと、ちょっと聞こうかと思っておったくらいなのですが、いずれにいたしましても、機関、仕組みはできております。できておりますけれども、懇談会的性質でございまして、総理一つの方針に基づいて、強引にそういう方向に農林省、建設省、各省の業務を所管されて、それで外交的な一つの視野から裁断をされるような仕組みに早く向けていかなければ有効適切なあれができないのではないか。先ほどもお話がありましたように、乏しい国民の税金の中でやるのでありますから、それが有効な方法にならなければいかぬし、しかも強引に与えるのではなしに、それぞれの要求に応じてやっていくわけですから、現地現地の開発の意欲に応じてやっていくことでありますので、もう少し企画性を持った形にものをまとめていかなければいかぬことも間々指摘されているところだと思いますが、今後こういう問題をどういうように処理されていくか、ひとつ総理の御所見を承っておきたいと思います。
  159. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 海外発展途上の国を援助して開発を進めていく、そうして経済の繁栄、発展、同時に独立達成、こういうことをやるのにつきましては、いろいろ金の問題もありますし、技術の問題もありますし、いろいろ行き方があると思います。ピースコア、平和部隊もその一翼をになっておりますし、あるいはまた問題によりましては、こちらから特殊の、たとえばインドにおける宮崎博士のらい療養所のごとく特殊な目的を持ったものも出ております。それぞれが援助し、それぞれの効果をあげております。これを日本国内の機構の面から見ますと、各省にまたがっているたいへんな問題だと思います。外国に関することだから全部外務省が一まとめにする、かように申しましても、やはり外務省もいろいろ努力はしておりますが、ときに専門的なものを尊重しなければならない場合もあります。たとえば、鉄道建設というようなことで話を持ってこられたときに、外務省の人が鉄道の設計ができるわけじゃありませんし、また電気通信等におきましても同様なことが言えると思います。問題は、やはり全部の各省仕事をまとめあげていくという、そういうことが最も必要じゃないだろうか。今回、経済企画庁が担当省になったのもそういう意味で、経済関係調整関係だから経済企画庁がいいだろうというようなことでいったのだろうと思います。しかし、経済企画庁でも、ただいま手が全部そろっているわけではありませんし、また、それぞれの専門のところを生かしていかなければなりません。そういうことを考えますと、やはり連絡協調が緊密になる方法をとらなければいかぬ。また、事柄が政治基本方針にかかわる場合には、高いレベル、いわゆる閣僚レベルでものごとをきめなければいかぬし、また単なる事務的な調整の問題ならば、閣僚をわずらわすまでもなく、事務調整段階ですから、各省の連絡会議でできるであろう、かように実は思っております。まあ、よほど進んで、いわゆる特別な大臣まで設けろ、こういうようなことが意見としてないわけではありませんけれども、しかし、地につかない大臣でもこういうことはできませんから、ただいまのようなのが一番いいのではないだろうか、実際に合っているのではないだろうか、かように実は思っております。しかし、お話もありますし、御指摘もありますから、経済協力は十分成果をあげるために、絶えずわれわれも反省しながら前進していくということに努力するつもりでございます。そういう意味で御注意等があれば、この上ともひとつ御叱正のほどを賜わりたい。かようにお願いいたしておきます。
  160. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後に、御注文を申し上げておきたいと思いますが、アジ銀や農業基金とか、いろいろ機構だけは一応そろったように思います。これからがいよいよ実施段階でございますので、先ほど申しましたように、有効な調整と能率ある実行を期待するわけでありますが、最後にお願いしておきたいのは、前のスカルノ大統領時代、あるいは賠償金の形の時代に間々問題があったことは、先ほど来、御質疑によって指摘されたとおりであります。今後はそういうことは一切ないと思いますけれども、せっかくの協力でありますので、目的の達成に有効な援助になるように、いわゆる国民の指弾を受けるようなことのないように、総理みずからよほど督励し、監督をしていただきたいということを御注文申し上げたいと思います。  これで私の質問を終わりたいと思います。
  161. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 玉置君の御注意までもなく、政府はそういう点において国民の不信を買うようなことがあってはなりませんから、この上とも努力して信用を高めるようにいたしたい。また、協力の目的を達成するように努力するつもりでございます。
  162. 小峯柳多

  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理にお伺いいたしますが、三月の三十一日、第二回目の佐藤・スハルト秘密会談の結果、わが国のインドネシアに対する最終援助額は決定した。当時の新聞は、このように伝えておりますが、この会談の模様、特に援助に関する交渉の経緯をお聞かせ願いたいと思います。  また、援助額が未定とすると、総理の腹づもりをひとつお聞かせ願いたい。
  164. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 スハルトが私のうちに来られまして、私とスハルト大統領との間に余人を交えないで、ひざを突き合わせてお話をいたしました。しかし、その記事、新聞に出ました記事等は、必ずしも真相を伝えたものではございません。私は、当時の状況から、インドネシア側が日本に対する経済協力の強い要望のあることは承知しておりますが、日本の実情をよく理解していただくことが何よりも大事なことで、両国間に間違いを起こさないゆえんだ、かように思って——当時まだ予算は成立をしておりません、その予算には一応六千万ドルが計上をしてある、さらにまた、その予算より以上に大事な予算支出の基本法規であるただいま御審議をいただいておる基金法がまだできてない、こういう状況のもとにおいてその話を相談することはできないのだということをるる説明をいたしたのであります。実はこれらの問題はこの国会の審議等から見ると、スハルト大統領が日本を訪問されるその時期について、一応そのころになればある程度見通しがつくのではないだろうか、こういう安易な考え方をいたしておりました。そこでスハルト大統領の訪日を決定してもらったのですが、御承知のように思わない事件が起きてこの国会では十数日むだにした、そのためにただいまのような諸点で明確な返事ができない、それを率直に実は申して、そうしてスハルト大統領の了解を得たのでございます。その後の模様におきましても今日まで同じような状態が続いている。これは私は皆さんにこれだけ熱心に御審議をいただいておるにかかわらず別に不平を申すわけじゃありませんが、予算は成立いたしました。この基金法で授権立法がやはり早くできること、これは心からお願いしておるような次第であります。こういう事柄ができない限り、政府自分たちに権限のないことを外国に向かって約束することができませんので、私は皆さん方に本法の御審議をお願いしているのもそういう意味もあります。どうかひとつよろしくお願いいたします。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした諸般の状況から見ますと、六千万ドル・プラスアルファになることは、これは衆目の見るところでありますが、このアルファの財源というものは何によって求めるのか、この点をお伺いしたいと思うのです。むろん補正は組まない、さらに予備費は流用しない、輸銀は使用しない、このように聞いておりますが、その点についてひとつ確認願いたいと思います。
  166. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまアルファというものはどうなるかというお話でありますが、実はまだそこまでは行っておりません。六千万ドルというものは一応予算が通っておりますし、ただいままでの御審議を通じましても、そういう点で明確な予想、予定等をお話をまだ各大臣ともしてないだろうと思います。私もまだその点について具体的に触れていません。ただ抽象的に言えますことは、この海外経済協力基金はインドネシアだけの問題じゃありませんし、各国のいろいろな予算が計上されておりますから、そういうものの融通がつくかつかないか、こういう問題はあります。そういう問題はしかし限度はそう余裕のある予算じゃございませんから、まず非常にむずかしい状態じゃないかな、かように私は思っております。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 この間からずっと審議を通じまして、この基金の資金以外は考えてないというような意味にわれわれはとっておるわけです。そうしますと、この基金の余裕金というのは、宮澤長官の国会答弁からいたしますと、大体一千万ドルないし二千万ドルと考えられるわけでありますが、そうしますとアルファ額というものは最高二千万ドルどまりと考えていいかどうか。以上の二点について簡単にお伺いします。
  168. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 先ほど答えましたように、まだ私そこまで検討しておりませんから、これは私ちょっと答えられないと申し上げておきます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほども話しましたように、基金でそれをまかなっていく、こうしていきますと、基金の本年度の投融資計画というのは、総計で大体四百四十億。またその大半はコミットされている、未定分というのはインドネシアを除きますとアフガニスタンとフィリピンに予定されている約十一億、このように見ております。総理として、いままで国会の審議で、補正予算あるいは予備費等流用しない、そうしたいろんな話の中で、基金だけでいく、そうしたときに、総理はどのようにして——このプラスアルファはきまってないとはおっしゃっていますが、しかしこれはそういう線はみんな大体見ておるわけです。そうした場合に、ないそでをどうして振るのか、この点をもうひとつほんとうのところを聞かしていただきたい。
  170. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしい話で、ないそでをいかにして振るかという、ただいま大蔵大臣からどういうようにしてそでを振るかひとつ答えさせたいと思います。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四百四十億の基金の範囲内でやりくりをつけたいというふうに考えております。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで明確に大蔵大臣から答弁いただいてわかったわけでありますが、じゃあ私がここで考えておることを総理にお教えしたいと思うのです。お教えというとおかしいですけれども、間違っておればまた指摘もしていただきたい。この基金の予算には、当初から私はからくりがあると思います。まず韓国との契約は十年間に二億ドル、毎年平均約二千万ドル、これはここに私も資料を持っております。すなわち七十二億円ときまっているわけです。ところがことしの予算は、大体私の聞くところによると、八十四億、すなわちここで十二億の上積みがある。タイとマレーシアの額は大体二十四億程度と思いますが、この工事の関係から年度内には使えそうにもない。台湾の曽文水庫も工事が非常におくれているので、大体予定されている四十五億のうち二十五億は残りそうに思います。それを合計すると、大体七十二億、いままでいろいろと話がありました大体二千万ドルにぴったり符合するわけです。総理にとっては、二千万ドルは地獄に仏かもしれませんが、しかし当初から、適切でないかもしれませんが、そうした水増し予算を組んだその責任、それと私は別ものだと思うのです。そうした予算を組んだ責任はすべて柳田総裁と経企庁長官に私はあると思うのです。このお二人の責任を総理大臣としてどのように追及されますか。(笑声)
  173. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 どうも笑うことじゃないように思うのですが、私ちょっとわからないですが、私どもしばしば経済協力にこういうことをしてほしいと申しましても、予算がありませんというと、それができない。いわゆるないそでは振れない、こういうことです。一々総理がその予算の運用あるいは流用まで指図はいたしませんので、そこらはひとつ事務当局からこの皆さんから与えられた権限範囲内でこういうものをくふうし、流用あるいは運用をしていく、かように御了解を得たいと思います。私自身どうもそこまで一一わかりません。それはわからぬでもいいではないかと思いますが、御了承を願います。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは限られた時間でありますし、私もっとここでいろいろ突っ込みたいのですが、次に進みます。  いずれにいたしましても、このインドネシアに対する経済援助というものは各般のそうした情勢から見まして、まあ七、八千万ドルでは終わりそうにないように思います。きのう宮澤長官は微妙な発言をなさっていると思うのです。とりようによっては、政府手持ちの古米を援助に振り向ける、そういう可能性もあるように受け取れるわけです。私はかつてそういうことについて閣議でそういうことが話題にあがったことも聞いているわけですが、実際にそのような計画が進んでいるのかどうか、その点をひとつお聞きしたいと思うのです。本年で約三百万トンをこえるとも言われておる政府手持ちの古米を処分するということは、日本、インドネシア双方にとって私は適切な処置ではないか、このようにも思っておりますが、その場合の問題は、日本の米は御承知のとおり非常に高い、そうした場合に食管会計に生じるそうした赤字処理の問題が大きな問題になってくると思うのです。その間の事情をひとつお聞きしたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、古米を振り向けることがあるかもしれないとは実は申し上げませんでした。ケネディラウンド関係の食糧援助の金を、予算を持っておりますので、インドネシアは食糧等の援助を受ける資格がありますから、それも一応法律的には使用が可能だ、こう申し上げたのでございます。現実に古米をどうするかという問題は、ただいま御指摘のように、金の問題が第一非常に問題でございますし、それから米の質の問題もあろうかと思います。したがって古米を出すということは、具体的に政府部内で議論になったことはないように私は承知しております。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんので進めますが、ところで、こうした賠償とかまた経済援助というものは非常にうまみがある、世間ではこのように言っておるわけです。昨日も三木外務大臣が、この委員会の答弁で、日本、インドネシア両国の自薦、他薦のそうした業者たちが数多く外務省にも出入りして困っている、こうした旨の発言をされたわけです。総理にはまことに気の毒でありますが、佐藤氏といえば、だれでもやはりにいさんの岸さんを思い出す。その岸さんといえば、またインドネシアを思い出すわけです。それだけにまた経済援助は特にシビアな立場に立たなければならぬ、このように思うわけです。そのためにも、もう一度十年前の三十四年二月十三日における予算委員会で時の総理大臣岸信介氏と木下産商をめぐってのインドネシア賠償汚職の質疑が行なわれたことを思い起こしてもらいたいと思うのです。佐藤総理も、当時たしか蔵相だったと思いますが、その席にいらっしゃったと思います。当時インドネシアは、オランダの海運会社KMPを接収したわけでありますが、島嶼間の連絡内航船が極度に不足しておったので、わが国に緊急の援助を求めてきた。そういう事情のもとに、わが国として賠償基金を担保として木下産商によって船舶九隻、二十八億四千二百万円の供与がなされた。国会で問題となったのは、この船舶でありますが、インドネシアに回航もおぼつかない老朽船であったが、新造船を上回る法外な値段でこれをインドネシア側に売りつけた、そういう疑惑であります。しかしながら大山鳴動結局何も出なかった。しかし、これらの船は、国会での疑惑を裏づけるかのように、当初から役に立たず、いまなおジャカルタのタンジュンプリオク港に廃船同様の姿で、わが国のそうした不明確な取引のモニュメントのように係留されたままである。このような事実を総理大臣は知っていらっしゃいますかどうか。この点をひとつお聞きしたいと思うのです。
  177. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私はそういう詳細を知りません。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 このような事例をあげれば切りがないわけです。私はここに外務省の第五次賠償調査団の報告書を持っておりますが、この中に賠償プロジェクトのむざんな現状というものが数例あげられておる。総理はたぶん読まれたことだと私は思いますが、そうしたことについて、具体的な事例をあげて所感をひとつ伺いたいと思うのです。
  179. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは先ほど来、今回の経済援助につきましても、国民から疑惑を受けるようなことがあってはならないということを強く申し上げ、また政府の態度等も明確にいたしてきたつもりでございます。ただいま言われますような第五次賠償についての報告、これもまだ全部私は読んでおりません。読んでおりませんけれども、言われる、また御指摘なさる点は大体わからないではございませんから、こういうような不正、汚濁等がありまして、国民から不信を買う、こういうようなことがあってはならないと思います。どうしても政治の信頼を高める、こういうことで最善を尽くしていかなければならないと思います。また先ほど来、今回の商品援助というものはそういうことの起こりやすい危険もあるんじゃないか、こういうことが各党の質問者からも指摘されております。したがいまして、政府におきましても、そういう点について十分留意するつもりでございますし、万全を期して間違いのないようにいたしたい、かように思っております。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理も確かにお忙しいし、そうした点でこまかいところまで知らなかったとは思いますが、しかし大事な国民の血税がいかに使われているか、そういう点において私はつぶさに知っておいてもらいたかった、こういうふうに思います。私がこの報告書を見て、その中で特に抜粋した二、三の点をここで総理にお知らせしたいと思う。一つは、マルタプラ製紙工場の資材は、六〇年五月に現地に着いたが、どういうわけか発電機二台は四年も海中に沈んだままである。二つ、ラワン及びデンパサル紡績工場は、工事中止のまま、機械の大半は野ざらしのまま腐食にまかしている。三つ、プラウラウトの合板工場も、六〇年契約のものだが、資材は野積みにされたままである。四つ、シンプル紡績工場は、六五年一応の完成は見たが、機械や部品が四年近くも放置されていたため、半分以上が腐食したり、盗難にあい、フル運転は不可能である。これは外務省の報告書からの抜粋です。とにかく賠償とか経済援助の実態というものは、一、二例をあげてみれば、このようなものです。ですから、金さえ渡せばあとはどうでもいい、またもらえばどうでもいい、あとは知らないというのが、いままでの賠償援助の実態ではなかろうか、このように思うわけです。またインドネシア賠償のそうした取り扱い商社というものは、政界の大ものと特に関係があるとも言われておりますが、数社で大半を占めている。まことに奇妙なことが行なわれている。このことについてば、同友会や経団連は——私はレポートを持っておりますが、このレポートで、今後はグリーンビジネスにしなければならない、裏を返せば汚れたビジネスとさげすんでいるわけです。こういったことを言っていけば切りがないと思いますが、総理は、過去の援助の実態をどのように感じておられるか、感想をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  181. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 過去の援助、それは目的を達したものもありますが、目的を達しなかったものもある。またわが国から進出して、中途はんぱで工事が進捗していないもの、骨組みだけできているようなビルも見てきた、これは私自身が見てきたのでございます。したがいまして、そういうような目的を果たさない、成果のあがらないような援助はこれからはしてはいけない。またそれは、先ほどもいろいろ社会党の堀君ともお話をいたしましたように、お互いに、日本側も注意するが、受け入れる側におきましても厳正に注意してもらいたいし、十分効果があがるように持っていきたい。もちろん私どももあり余る金、そういう金を湯水のように使う気持ちはございませんし、これはほんとうに尊い金を使うのでありますから、受けるインドネシア側におきましても、日本側のこの気持ちに即したように有効にこれを使ってもらいたい、かように思います。私はスハルト大統領とこういう点で話し合いをいたしました。その意味におきましては、二回の会見はたいへん役立ったと思います。私は、インドネシアを訪問した際、スハルト大統領と懇談し、さらにまたスハルト大統領を日本に迎えて、そうして賠償、さらにまた経済援助、これが役立つようにしようじゃないか、そういう意味でお互いにさらに商社その他についても特別な厳選をして、間違いの起こらないようにしようと率直な話を実はいたしたのであります。私はそういう点ではたいへん効果があったように思います。今後行なわれる経済協力におきまして、ただいままでのような指弾を受けるとかあるいは不信を買うような、そういうことがないように、この上とも努力するつもりであります。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまのはプラントでありますからまだ追跡もできるわけでありますが、先ほどから話にも出ておりましたが、消費財となればそれもできないわけです。したがって、ここでプラントすら満足にチェックもできないところに、消費物資がどしどしおくり込まれるということは、まことに国民としてはそらおそろしい限りなんです。この点について総理として所感をお聞きしたいわけでありますが、またそうした過去のあやまちを再び繰り返さないための制度上のそうした措置を今後どのように講じていかれるつもりか、まずその二点についてお聞きしたいと思います。
  183. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これも先ほど堀君や中村君にお答えしたので、近江君にもお聞き取りいただいたと思います。大体経済協力というものは、技術協力あるいは開発援助、こういうようなものを主体とすべきだ、BEというような制度は特別な場合でないと行なうべきではないということを申しておりますから、本来の経済協力の筋は御理解がいただけたと思います。そうして消費財の商品援助をする場合の心組み、これは先ほど来いろいろ申し上げたのであります。しかし、それにいたしましても、BEになりますと、いわゆる向こうの商社に切符を売るか何を売るか、売りつけるわけでありますし、商社が今度は商品を扱うわけでありますから、十分効果的にいくかどうかという一つの問題もあると思います。しかし経済を安定さすには確かに効果があるだろうと思いますし、特に不足している物資あるいはインフレで高くて困っておる、こういうような物資が選ばれて援助の商品になりますから、確かに経済効果はあがると思います。さらにその上に特殊な商社だけがもうけることのないように、またそういうものが、日本でもブローカーその他によってその利益が占められる、こういうことのないように、理屈のつくことなら関係の者がもうけたからといってとやかく言えませんけれども、しかし、そこで政治不信を買う、こういうようなことがあってはならない、かように思いますので、なかなか一々チェックすることは困難な事柄のようには思いますけれども、たてまえとして、またお互い気持ちとして、十分扱い者にもこの点が納得がいき、理解してもらえるように政府はさらに努力するつもりでございます。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 ただいまの説明では、私は現在のそうした経済援助というものが、再びそうした愚を繰り返さないという保証は感じることはできないわけです。そうした援助効果というものが測定できる十分な処置を講じてから私はこの基金法も改正すべきであるし、援助を開始するのが至当だと思うのです。少なくとも国民のそうした血税を使うにあたっては、それくらいの配慮があっても当然だと思います。  ここで私は総理にお聞きしたいのですが、今後援助費の内訳を予算書に計上して、国会において十分審査ができるような法的な処置をとるべきである、私はこう思うのです。また確定するまでは暫定措置として内容を国会に報告する、そういう義務を課すべきだ、私はこのように思うのですが、総理のお考えはどうでしょう。
  185. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまできるだけ予算も審議ができるように、こういうように思いましての今回の基金法の改正でもございます。これならばある程度審議ができる、かように私思います。しかしいずれにいたしましても、概括的な、総括的な授権を国会から政府がいただいて、その範囲において、法令の範囲において運用していくというのがただいまのたてまえだと思います。したがいまして、項、目、そのどの辺まで審議されるか、ただいま事業別予算というものにはまだできるところまで行っておりませんから、予算編成上の問題もございますが、ただいまのところは、いま申し上げるように、総括的な全体としての御審議をいただき、法令によって政府権限をもってその範囲内で運用していく、かように実は思っております。事後においてのいろいろの調査等に政府協力することは当然であります。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから、あと一、二点で終わりたいと思います。  椎名通産大臣振興局長に申し上げたいわけでありますが、この六五年十二月二十八日に船積みされた三千万ヤード、六百万ドルの綿布というものは形式的にはともあれ、実質的には川島借款の綿布そのものであるということは、ここに経団連のリポートでも明らかにされております。またこの点に触れている一九六六年の六月十二日号の朝日ジャーナルの記事によっても、それは明らかです。そこで大臣は胸を張ってそういうことはありませんとおっしゃいましたが、昨日の発言を取り消すかどうか。また取り消す気がないなら、経団連と朝日ジャーナルに反論できるだけの証拠を提出してもらいたいと思うのです。通産大臣局長答弁を求めます。
  187. 小峯柳多

    小峯委員長 近江君、総理はもういいですか。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 けっこうです。
  189. 原田明

    ○原田政府委員 その記事は拝見いたしておりませんが、川島借款と言われておりますのは、四十年の八月ごろ川島副総裁でございますか、その当時の方々がインドネシアにいらっしゃいまして、三千七百万ドルにのぼる話し合いをされたわけでございまして、その内訳は綿糸二千二百万ドルとその他の商品が一千五百万ドルで、三千七百万ドルと伺っております。しかし、これは全く話し合いだけに終わりまして、全然実行されておりません。先生御指摘の六五年の終わりごろに出ましたのは、全く別の二年あと払い六百万ドルの綿布の輸出でございまして、これは正月を控えましてインドネシアの風習によりまして、緊急に必要とされる綿布についての輸出が行なわれたものでございまして、その点におきまして川島借款と言われるものとは全然別でございます。
  190. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいま貿易振興局長からお答えしたとおりであります。  それから、ちょっと御注意申し上げておきますが、お互い政治家なんですから、根拠のないことに固有の名称を使ってこういうところで言うべきもんじゃない。以後お慎み願いたいと思います。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまの局長答弁また大臣答弁、私もここに経団連のリポートを持っています。実質上はと私は言っている。だからはっきりと納得させるだけの資料を出しなさい。それじゃこの点はここで要求しておきます。きょうは時間がありませんから、この問題についてはこれで終わりますが……。
  192. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 かってに雑誌や新聞に書かれたことに対して、一々私は責任を負うわけにいかぬから、あなたから要求があっても、私はその要求には応じない。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 その間の事情の納得させるだけの資料を提出してもらいたい。  それからその次に昨日の追加質問として外務大臣にお聞きしたいわけでありますが、六五年のわが国のインドネシアに対する焦げつき債権を増大せしめた原因というものは、情勢の判断が非常に甘かったのではないか、このように思うわけです。この証拠として、第五次賠償調査団の報告書を私はここで指摘したいと思うのです。調査団は六五年の十二月一日から四日までジャカルタに滞在しておりますが、その報告書に、現地日本大使館の見解として次のように報じているわけであります。「インドネシアの外貨勘定は、既に一年以上に亘って赤字を続けているにも拘らず、統計上の数字に出ない外貨が相当あって、これ迄のわが国に対する借款の返済もこの種外貨によって行われた模様である。一〇月分、一一月分の返済が遅れたのは、九・三〇事件の余波による一時的なものか、或は一層根本的な原因によるものかについては、あと二、三カ月間様子を見なければ分らない。」こうしたことが出ているわけであります。こうした判断、いうならば、非常に甘い、誤った判断によって焦げつきを一そう大きくしたということは明らかです。その点について、外務大臣として、また当時大使でおられたのは官房長と思いますが、この点についての責任をどのように感じていらっしゃるか。これは、民間だったらたいへんな責任だと私は思います。この点について答弁願いたいと思います。その答弁によって終わります。
  194. 三木武夫

    三木国務大臣 四千五百万ドルのリファイナンスがございました。そして、昨年は六千万ドルの援助、そういうふうな援助を世界各国がインドネシアに対して与えなければならぬようになったのは、インドネシアの経済情勢の見通しを誤ったのではないかという御質問のようでありますが、ああいう新興国というものは経済的にまだ安定の基礎ができていない。したがって、そのときのリーダーというもののやり方におっては常に不安定な状態を一気にかもし出すような弱点を持っているのです。すでに安定したような基礎の上に立っておるならば、見通しはつきますけれども、安定した条件は全然ないのですから、そういう点で見通しが甘かったではないかと言われれば、そのとおりだと思いますが、見通しをちゃんと立てることはなかなか容易ならぬものだと思います。結局は、多少の——やはりそういう点では日本自身としても石橋をたたいて渡るような形での援助というものはなかなかできにくいのではないか、そういう面がありますから、これは、甘いと言えば甘いけれども、容易なものではないのです、というのがお答えでございます。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、以上で終わります。
  196. 小峯柳多

    小峯委員長 佐野進君。
  197. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いままでいろいろ質問がありました。私は最後の質問者だということでございますから、各大胆にそれぞれ御質問し、できるだけ早く終わるようにつとめたいと思いますので、答弁もできるだけ簡単に要を得てお願いしたいと思います。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕  外務大臣に御質問いたしたいのですが、海外経済協力については、UNCTADの会議の結論として、国民総生産の一%を海外経済協力に向けるのだということがいろいろの場合に強調されているわけです。この前の質問のとき、大臣に、私は、外務省が昨年八月作成した資料に基づいて、そういうようなことについてどう考えるかということを御質問申し上げましたが、大臣は、そんなことは知らない、事務当局のほうでそういうものを新聞記者のほうに発表したことはある、こういうことを言われているわけですが、あとの質問関連がありますので、この経済協力五カ年計画というものについて、大臣はその後やはり何も知らないというような御返答であるのかどうか、この際ひとつお聞きしたいと思います。
  198. 三木武夫

    三木国務大臣 やはり、日本海外経済協力計画的に考えていく必要があるでしょうが、そういう意味において外務省も——これは各省ともそうだと思いますよ。一体今後どのように海外経済協力というものはふやしていかねばならぬものかという作業はありますけれども、これは外務省なら外務省の案であるということでみなが正式に外に出せるような案はできていないということでございます。公式な外務省の案ではないということですが、作業はいたしておることは当然のことだと思います。
  199. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、外務大臣は、この一%達成についてはどのようなお考えであるのか、この際お聞きいたしたいと思います。
  200. 三木武夫

    三木国務大臣 この数年間という短期間を限って一%に持っていくということは、なかなか容易でないと私は思っています。ことに、国際収支上にも問題が起こってくる年もあって、その年その年の経済的な事情もございまして、日本経済で、数年間という時間を限って、国民総生産の一%に向かって年度的に計画を立てるのには、今日の条件というものはまだ整っていない、しかし、方向としてはそれに向かって進んでいくことが国際的責務を果たす道である、しかし、何年間という期間を政府がいまここで述べるには、日本経済的諸条件はまだ整ってはいない、こう考えています。
  201. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、総裁が、昨年の十二二十五日号の「政府の窓」における座談会で、この一%は国の公約である、したがってこれを果たさないことは不都合きわまるというような表現の発言をしておられます。ジュネーブ会議においてこのことを国の公約としてわが国は世界に約束しておる、こういうことを言っておられるのですが、いまの外務大臣の発言と若干違うようですが、ひとつ総裁の見解を聞いておきたいと思います。
  202. 柳田誠二郎

    ○柳田参考人 ジュネーブに参りまして、UNCTADの第一回の会議に列席をいたしました。その際に、日本協力をしないということで非常な反撃を各方面から受けたわけです。ことに、東南アジアの諸国からもそういう非難を強く受けたわけでありまして、そのときに、朝海政府代表が日本に帰られまして、池田総理とお話をなすったあとでジュネーブに参られまして、そして、その決議に賛成をされたわけであります。これは日本の国の持っている一つの大きな約束だと私は思っております。ただし、これをいつ達成するかということは、ただいま外務大臣のお話しのとおりだろうと思いまして、日本経済の諸条件がもう少しはっきりしませんと、年次計画によってこれをどういうふうに達成するかということは確言をすることが非常に困難ではないかと思う。私は、座談会のときにもそういう意味で話をいたした次第であります。
  203. 佐野進

    ○佐野(進)委員 外務大臣に御質問しますが、私のいま質問しようとしているところは一時的な御答弁をお伺いしようとしておるのではないのです。私は、UNCTADにおけるそれぞれの取りきめ、いわゆる国際的な取りきめは外務大臣所管になると思うのですが、これが国の公約として世界に対して責任を果たさなければならないというようなことを、総裁が、国の代表として私は行ったからそういうことについてはということで、いま胸を張って答弁をされておるわけです。そうすると、こういうような取りきめに対して、大臣日本の国会の承認をお求めになりましたか。この点ひとつお伺いしたいと思うのです。
  204. 三木武夫

    三木国務大臣 国民所得の一%、最近は総生産の一%、このことは条約のような拘束力はないわけです。道義的な拘束力を持っておる。国際的にいろんな決議が行なわれるわけですね。その決議というものは国連においてもどれだけ行なわれるか、数限りなく行なわれるわけでございます。これに対して、条約ではないけれども、それに賛成するということは道義的な責任を持っておるわけでございまして、国民総生産の一%というのは決議ですから、これに日本は賛成をしたわけです。留保条件をつけたけれども賛成をした。これを一一国会の承認を受けるべきものであるとは私は考えません。しかし、いわゆる南北問題といいますか、後進国に対して先進国ができる限りの援助を行なって、そして先進国後進国との格差を是正するということ、このことはもうどこの国においても否定される考え方は世界にないと私は思うのです。これは国会においても、そういう南北問題の解決のために努力するというこの考え方が否定を受けるとは思わない。ただしかし、どういう年限においてやるかということについていろいろ政策上の判断はあるでしょう。したがって、これが国会の御承認を受けるべき事項だとは考えておりません。
  205. 佐野進

    ○佐野(進)委員 おかしいんですね、いまの御答弁ば。私はだから要点だけをお話しを願いたいと申し上げておる。抽象的な御答弁を受けようとは思わないのです。柳田総裁が、一%は国の公約である——国の公約ということは対外的に、道義的であっても何にしても、世界に対して責任を負わなければならない問題なんです。しかも国民総生産の一%を提供するというのです。しかも日本における経済企画庁の長期の見通しによれば、一九七一年度、昭和四十六年度におけるところの国民総生産に対応する対外一%という金額は十三億六千三百六十万ドルにのぼるというのです。巨大な金額ですね。これがわずか、これからの年月にしたところが三年そこそこにこれだけの総生産にのぼるのですよ。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 去年が六億八千六百十万ドルにしかすぎないのですよ。二倍以上になる海外経済協力をしなければならないという、急激にあらゆる支出項目に比べて最大の伸びを示すこの海外経済協力費に対比して、これを国の公約だとして諸外国に約束してきたことを日本の国民の代表である国会に対して何ら報告をする必要もない、その審議を受ける必要もないということは、一国の外務大臣として正しいとお考えですか。私は、三木さんともあろう方がそういうようなばかげたお気持ちはないと思うのですよ。
  206. 三木武夫

    三木国務大臣 これはこういうことなんです。何年の間にそれを達成する、毎年幾らにする、そういうふうなことは各国の経済事情によって約束できないという留保条件をつけて賛成をしたわけですから、これに対して国会の御承認を受ける場合には、予算上の支出が伴ったときにはこれは当然に受けなければならぬでしょうが、年限も切らず、あるいは毎年幾らということも切らずして、南北問題のために日本が努力するという決議が国会の承認を得べき事項だとは私は思わない。このことが具体的になって、そして予算的に計上されたときには、むろんこれは当然受けなければならぬことであることは申すまでもございません。
  207. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は実はそのことについても疑義があることは、あらゆる外交上の国民の利益関係する事項が、いわゆる外交上の一つの慣例に基づいて、国会の議決を経ずしてその権限を行使する場合が非常に多い。しかしそれはそれとして、過去の実例の中からやってきておることはしばらくおくとして、海外経済協力に関する事項については、その点が非常に飛躍的に増大する問題であるだけに、非常に不備な点があるのではないか、こういう点を強調したいがゆえにいまの御質問をいたしておるわけであります。したがって、この点についてはひとつ大臣のほうで、今後の海外経済協力は、その時期時期で予算上の問題となったときあるいは一つの具体的な問題が出てきたときだけ審議を得るのだということでなく、憲法上のあるいは法律上の問題として再検討する余地も相当あるのではないか、こう思うわけですが、時間もだいぶたちますから、私はその点についてはこの程度にとどめて、次の問題に入ってまいりたいと思います。  そういたしますと、海外経済協力は一%程度の目標に向かって政府はやるのだ、それはしかしいまの現状の中においては非常にむずかしい条件が多い、したがってこれは単なる努力目標だ。総裁も、国の公約とはいいながら、日本の国の実情に合致して、諸外国の相当激しい非難というものがあろうとも、国の利益に反してまでこれを通すのではないという、いまの外務大臣答弁と同じだということですから私も安心したわけですが、これがしゃにむに行なわれるということになると、たいへんいろいろな問題が出てくると思うのです。  そこで、問題を外務大臣関係したことだけまず最初にお聞きしたいと思いますが、そうすると、今度のインドネシアをはじめとする基金法の改正に基づいて商品援助を行なうことができるという、その中でいろいろ議論がありました。私はこれは総理大臣に聞くことが妥当かとも思ったのですが、外務大臣にお聞きしたいことは、経済上の事情その他はあるとしても、なぜインドネシアだけに限定して今度のような六千万ドルの資金を提供するために法律を改定しようとしたのか、その背景について、あとの質問関連がございますので、ひとつここで御答弁をお願いしたいと思うのです。
  208. 三木武夫

    三木国務大臣 今度の場合はインドネシアが大きな対象になっておることは事実ですが、この基金法の改正は、いまはインドネシアが対象になったことは事実でしょうが、インドネシアのためというばかりでなくて、基金法自体がもう少し幅広く資金が活用できるということで、私は個人的な見解としては、輸銀のほうは貿易の拡大のために使うし、基金は、援助というものを今後これを整備していって、そういう形で、日本海外経済協力というものが、いままでは援助貿易も一緒になっておったですから、これを機会に、この法案というものは将来に向かって整備していくことが日本の海外援助の上において好ましいと、これは個人的見解でありますが、思っております。
  209. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、午前中の中村さんの御質問を聞いておられなかったからそうおっしゃるのですが、宮澤さんの答弁とまるきり違うのですよ。宮澤さんの答弁は、いまはインドネシアに限定しておる、しかし法律というものはそのものだけを対象にしてやることができないからいまのような表現になっている、こう言われておるのですよ。そうすると……(三木国務大臣「そのとおりです」と呼ぶ)いまの答弁は違うじゃないですか。インドネシアに限定することなく、あらゆる地域にもそういうことをやりたいんだ、こういうことでしょう。午前中の速記録を見てごらんなさい。
  210. 三木武夫

    三木国務大臣 佐野さん、いま宮澤君ともちょっと自席で手ち合わせたのですが、これは法律はどこにでも適用になる。いまの場合はインドネシアということが目標になっておるけれども、基金法それ自体は法律ですから、これは全部に適用になるということで、二人の答弁は食い違いありませんよ。
  211. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私の聞いていたニュアンスとしては、宮澤さんは、法律としては、行政上のたてまえからいえば、あらゆるところにと解釈できることが好ましい、ただ、しかし、現在の対象としてはインドネシア以外にそういうことは考えられない、こういう御答弁があったので、そこでいまの外務大臣答弁とニュアンスがだいぶ違う、少なくともいまの法律を審議している過程の中における問題としては違う、将来の問題は別としても違う、こう感覚的に私は受けとめたわけです。それは宮津さんのおっしゃることと外務大臣同じだということですね。(三木国務大臣「同じです。」と呼ぶ)  それではそこで御質問申し上げますが、私は、なぜインドネシアだけについて六千万ドルの援助をひとつここでしようということで法律改正したかということと関連して、次のことを御質問したいと思うのです。これは新聞記事ですからそのとおりかどうかわかりませんが、二十三日からインドで債権国会議を開く、これについては、返済繰り延べをするんだ。返済繰り延べということばは、日本は輸銀融資しかしておりませんからリファイナンスをするということになろうと思うのですが、こういうことで、わが国はインドに対してすでに毎年のように無償援助を含む援助を行ない、本年度においては、本年度を含めて第八次の円借款、いわゆる七千万ドルを行なおうといたしておるわけです。そして、その総額の金額に至りますると、日本は五八年二月から始まる第一次円借款から第七次まで、ことしと去年のを入れないで一千四十六億四千万円、これだけの融資が行なわれておる。しかも、インドネシア以上にインドの国情は悪性な経済情勢の中にある。いわゆるインドネシアはスカルノ時代における放漫というか何というか、一時の政治的な情勢の中で混乱が起きて今日のような状況になり、日本はこれに対して緊急融資をするということになっておるんだが、インドはもう少し広範な、いわゆるインドネシアは一億、インドは五億の人口を有するわけですから、諸外国への債務は、インドネシアが二十三億ドルに対して八十億ドル以上にのぼると言われ、巨大なる債務を持っておる。このインドの国民の生活の状態とインドネシアにおける国民の生活の状態はどの程度そこに差があるのかということになると、われわれが見だ場合においても、インド国民の生活の悲惨さは、世界最低であるとさえ言われるほどきびしい条件の中に生活している。日本政府はインドネシアに対してのみこのような非常に熱心な討議をしておるけれども、インドに対してはきわめて冷淡——ということではないが、相当のことをやっておるけれども、積極的な取り組みをしていない。その根本的な理由はどこにあるのか、この際ひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  212. 三木武夫

    三木国務大臣 確かに佐野君御指摘のように、いまのこの時点から見れば、インドネシアの条件に比べてインドの条件というもののほうがきびしいのですが、しかし日本の場合も、金額の点では、やはりインドに対して何年かにわたって非常に大きな援助を与えたわけであります。そのときのいろいろな条件で、各国が全部同じような条件ということはむずかしい場合があるのですね。そのときそのときのいろいろな条件で一つのその国に対する援助というものは変わってくるということで、それはいろいろなその条件を考える場合に、いろいろな条件の上の基礎に立って判断するものですから、インドもインドネシアもどこもかしこもみな同じような条件だと言えない場合ができてくるということは、やむを得ないと思っております。
  213. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私のお聞きしておることは、インドとインドネシアと、その置かれておる立場は非常によく似ているけれども、むしろインドのほうが、その国民生活の困窮の度合い、日本が対外援助で投じた金額の割合、そういうものから比較すると、相当程度この援助というか協力ということについてわが国政府が果たさなければならぬ責務というものが非常に大きい状況になっておる。そういう中においてインドネシアに対してということで六千万ドルの援助を、今度基金法を改正しようということでやっていることに対して、インドに対しては、これがそれ以上の条件にあるにもかかわらず、これに対して具体的な取り組みがない、いままでと同じペースだ。そして先ほど宮澤長官あるいは冒頭私が一%の援助費の問題で御質問申し上げたような経過になっているとき、この取り組みがきわめて弱いではないかということを御指摘申し上げているのです。そうすると、その形の中で、債権の繰り延べということについていまこれから債権者会議が開かれるわけです。そうすると、これについてリファイナンスの問題がまた当然出てくるわけですが、このインドの経済が今日の状況に立ち至った最大の原因は、実態を無視したプロジェクト、いわゆる重工業に対して力を入れ過ぎたことによって今日の問題が出ておるとか、いろいろ議論があります。しかしいずれにしても、わが国としてはこれに対して当面債権国会議においてどうするのかという問題に迫られるわけです。このどうするかという問題は必然的にインドネシアの債権国会議以上の問題となって出てくる可能性を持つわけです。このとき、これもまた海外経済協力基金の対象になりますよということになったとき、予算上におけるこの金額四百四十億の中でどのような措置ができるわけですか。これは絶対やれないということですか。やれないということであるとするとちょっとおかしいということになるのですが、この点いかがか、お聞きしたいと思うのです。
  214. 奥村輝之

    ○奥村説明員 事務的な話でございますので、外務大臣が前にお答えになりましたことをちょっと補足させていただきますと、インドに対するわが国のいままでの援助、いろいろな協力、それの政府間の取りきめは四億ドルをこえる金額になっているわけであります。これは相当早い時期から日本はいろいろと力を尽くしてきたわけでございます。  いまの御質問でございますが、今度インドについて債権の繰り延べをどうするかということでございますが、去年もおととしも私どもは全体として四千五百万ドル程度の援助を重ねてきたわけであります。ことしはおそらくこの四千五百万ドル程度というものは過去の例で申しますと頭にあるわけでございますが、この中で一体どれだけのものを債権の繰り延べでまかなっていこうということになると思いますが、インドとインドネシア、これは窮迫の事情はいろいろとあるわけでございますが、インドの場合には、去年、おととしと干ばつで食糧に非常に困ったわけであります。そういうときに、私どもは相当の援助をいたしました。今回の場合は、このインドネシアの援助とは別に、金利は過去は五・五%でございましたが、先ほどから議論がございましたような世界の状況にかんがみて、やはり金利を若干下げてやらなきゃいかぬと思っておりますが、しかし、輸銀ベースで融資をする、リファイナンスをする、こういうふうな考え方で臨みたいと思います。これは過去の経緯、他国との関係で、一貫してそういう扱いが適当であるという考え方を持っておるわけでございます。
  215. 佐野進

    ○佐野(進)委員 外務大臣、いまお聞きのようなことなんです。いまは大蔵大臣質問するようなことになったのですが、そうじゃなくて、私は外交上の問題としてお聞きしているわけですから、その点お間違いのないようにしていただきたいと思います。  いまインドとインドネシアと二つに分けていろいろ説明がありましたが、資料その他いままでの取りきめの経過を見ると、実は全く同じなんです。インドネシアには去年商品供与をいたしました。五千万ドルにこの一千万ドルの贈与を含めて金利を下げるということだけで全然変わりがない。食糧の緊急援助もいたしております。したがって、私がいま申し上げようとすることは、今回の海外経済協力基金法の改正というものは、単にここでこの基金法はインドネシアに六千万ドルを供与するために、いままでのいろいろな不都合な点を是正するために出すということでなく、無限に広がる可能性があるということなんです。このことについて宮澤大臣は、午前中の質問に対して、いま私どもの頭の中にはそういうことは浮かんでおりませんと言っているが、浮かんでおらないのではなくして、浮かび得る条件があるということなんです。ただ、浮かび得る条件があるけれども、いまここでやるかやらないかは政治的な判断になろうということですから、その政治的な判断をおきめになるのは外務大臣ではないかと思いますので、私が心配することは、債権国会議における取りきめその他からいって、この法律が通れば、宮澤さんのおっしゃっているように、ワクは無限に拡大されるわけです。あとは行政上の措置として、この経済協力基金に予算をつけることによって、政府の判断に基づいて、どこの地域、どこの国に対してもこれと同じようなことをやることができるということなんです。すなわちそのことは、諸外国のいわゆる経済協力の実績に徴してみても、それぞれの条件は日本が一番きびしいという形になって、それに対応するということになれば、安い金利で長い年限で多額の金をこの基金を通じて支出することが可能になるということでございますから、その歯どめをする意味においても、非常に大切なことじゃないかと思って御質問申し上げておるわけです。
  216. 三木武夫

    三木国務大臣 基金法の基金は予算的な措置を講じなければ出てこないわけですから、そういう点で大きな財政上の制約を受けるので、無制限に拡大するという性質のものではありません。日本には無制限に拡大するだけの財政的な余裕があるとは思いませんから、むしろ諸外国からもう少し援助してくれと言われ言われしてこれを拡大していくのがやはり現実の姿だと思います。いま佐野君が御心配になるように、この基金というものは歯どめがないからどこまでも拡大していくのではないかという、そういう心配は私はしていない。そこまでは拡大しません。やはり日本は、財政上の制約のもとに基金というものがだんだんと拡大していくより現実的には方法はないと考えております。
  217. 佐野進

    ○佐野(進)委員 インドのほうはどうするのですか。
  218. 三木武夫

    三木国務大臣 インドの場合は、日本が輸銀を使ってやるということに対して世銀も同意をしておるようですから、この基金を使う必要はない。輸銀でいけるわけです。
  219. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、インドに対する問題その他については基金は使わない、基金はインドネシアの今回の援助に限定する、こういうぐあいに理解していいわけですね。  そこで、結論に入ってくれという注文もありますので、できるだけ早く結論に入るように努力してまいりたいと思いますが、私は一番先に、いまの基金を使って今度の援助を行うのだということでございますから、基金ということについて、これは大蔵大臣に御質問いたしたいと思うわけです。先ほども近江君のほうからいろいろ御質問がありましたが、政府から提出された資料によりますと、四十三年度の投融資計画は、現在のところ一般案件六十億円、韓国、中華民国、 マレーシア、タイ、インドネシア等のアジア諸国に対する直接借款三百八十億円、合計四百四十億円の投融資が予定されている。こういうことになりまして、この四百四十億円のうち六千万ドル、すなわち二百十六億円がインドネシアの物品供与に提供されるということになるわけです。そうすると、残額百二十四億円のうち六十億円が一般予算として留保されるとすると、六十四億円に相対比するのは前年度予算の二百九十億円ということになりますと、いわゆる本年度の海外経済協力基金によるところの海外経済協力については、わずか六十四億円程度の海外経済協力しかできない、いま言われたような六十四億円程度しか他の経済協力はできないということになりますと非常に少ない。二百九十億に対して六十四億円というのでは、ことしの海外経済協力というものはほとんどやれないで、インドネシアにのみ集中するということになるのですが、この点はどういうことになるのでしょうか。この業務方法書等に関連してひとつ大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。
  220. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま予想される各国への援助額というものを一応積算してこういう資金の予定を立てているということでございますが、各国への援助もこの予算の範囲内で今後折衝するということになろうと思います。
  221. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、私は数字をもって申し上げておるわけです。四百四十億円のうち二百十六億円、すなわち六千万ドルは商品供与に基づいてインドネシアにやるのだ、そうするとあと百二十四億しか残らないわけですね、百二十四億円に対して二百億幾らですか、しかし、それにしても去年の二百九十億円に対して非常に少なくなるわけです。さらに大蔵大臣は、私がこの前質問したときお答えになって、何とかこの予算の範囲内で、この中で、基金の範囲内で、節約して上積みをするのだ、上積みも可能だ、こうおっしゃっている。そうすると、百二十四億が三百二十四億になったとしても六十億とれば、二百九十億が去年の実績ですから、それに相対比して、去年は輸銀と贈与でインドネシア援助をやっておりますから、したがって、ことしは、それよりずっと少なくなるわけです。そうすると、この基金の中から上積みする分は当然出ないと思います。出ないどころか、ほかのところが非常に少なくなると思いますが、この点はどうですか。
  222. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 数字の問題でございますので、私から簡単に御説明申し上げます。  ただいまお示しのように、本年度は四百四十億円、それからインドネシア予定分を差し引きますと、先ほどお示しのように百二十四億円という全額になります。このうちの六十億円余りのものを一応一般案件というふうに考えておりますが、昨年度の実績と対比して考えますと、ただいま先生のお話しになりました二百九十億というのは、実は当初の計画でございまして、基金としての実績から申しますと、一般案件が八十五億余り、それから直接借款がだいぶずれまして七十八億余り、合計百六十三億となっております。そういった関係からいたしますと、ことしにつきましては、昨年の実行ベースのものよりも計画上は金額がふえている、こういうことになるわけでございます。
  223. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、大蔵大臣が御説明になっているように、この基金の範囲内の運用上の問題としてインドネシアの上積みは行なうのだ、こういうことは間違いないですね。
  224. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そのとおりでございます。
  225. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、まだこの問題についてはお聞きしたいことが非常にあるのですが、時間がなくなってきましたから、あと二問ばかり聞いて終わりたいと思います。  一点は、これは加藤清二先生から、特にこれを聞いたほうがいいだろう、聞かなければいかぬという強い御指示があるのでお聞きしたいと思うのですが、これはどの大臣でもけっこうですが、先ほど来、総理大臣に対する質問答弁の中に、過去におけるインドネシア援助の中には非常に不正不当と考えられるような問題について幾多指摘されるような事項もあった、しかし、今後は、こういうことについては絶対しないんだというような総理大臣以下の御答弁があったわけです。しかし、これは、たびたびもうこの委員会でも問題になり、これらの不正防止あるいは不当なる金の使い方ということがないようにするためにはどうするかという議論があったのですが、具体的なこれをさせないための処置というものがそれぞれの場所において出ていないわけです。特に通産当局の場合において、この問題については、具体的な不正防止というか、一たんこの予算が決定すると、商社の選定、品目の決定、資金の利用、それらはすべてと言ってもいいほど通産当局にその問題が移されていくわけです。したがって、これらの問題について通産当局がどのような歯どめを考えておるか。これは大臣でなければ局長でもけっこうですから、この点、品目の決定その他いま申し上げたようなことについてひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  226. 原田明

    ○原田政府委員 援助で出ますものは、結局、物が出る場合が非常に多いわけでございます。したがいまして、先ほどから先生方るる御指摘のございましたような、きわめて公正なやり方によりまして、援助の効果が確保されるようにつとめたいと思っておるわけであります。ただ、今回の援助もおそらく、債権国会議等で定められました方針に従いまして、BEによって行なわれるということになろうかと思います。BEによりますと、インドネシアの輸入業者が需給の関係に従いましてBEを取得して、それを使用いたしまして、コマーシャルな立場日本の輸出業者と、通常の輸出入貿易のような話し合いをした上で契約をいたしまして、それによって輸出が出ることになろうかと思います。再々御指摘のございますような怪獣映画とかそういったふうなものは、ネガチブリストでのけられておりますから出る心配はないと思いますけれども、なお、個々の輸出につきまして、できるだけ公正な輸出ができますように、具体的な輸出の段階で、私らの力の及ぶ範囲で努力してまいりたいと考えております。
  227. 佐野進

    ○佐野(進)委員 局長、私の聞いているときいなかったからわからないのです。私の言うのは、総理大臣も各大臣も、ともかく過去においてはとかくのうわさがあった、したがって、そういうことは今後は絶対いたしません、いたさないようにしますということを表明しておるわけですね。そして私も、一昨日ですか、一昨昨日ですか質問したとき、この問題についていろいろな面から強く御質問申し上げておるわけですよ。したがって、それは日もたっているのだから、いま一番問題になるのは、そこにいわゆる政治家が介入しておる、あるいは、悪質な商社がそこに、インドネシアの国民の利益考えないで、そのきめられた予算を、ただ自分利益をはかるためにこれを使おうとしておる、その使うことについていろんな暗躍がある。これは過去においてもあった。したがって、これからも当然予想されるだろう。それをどうして防ぐかという何か歯どめがあるのか。当然あらねばならぬ。いまのは、この前のよりももっと後退した答弁じゃないですか。私はもうこれで最終的な質問です。したがって、その終わりの意味において、いま少し具体的な答弁をもらわなければ、そういうのなら大臣に聞いてもいいんだ。あなたの言われるようなことは大臣もそう言うんだから、局長にわざわざお聞きしているのは、もっと具体的な対策、たとえば商社の選定についてはこれこれこうやる、インドネシアの商社についてはこれこれこうやる、品目についてはこれこれこうする、あるいはその品目についてもっと幅を狭める——この前抽象的に幾つかおっしゃいましたけれども、そういう点をいっていただいてあと、通産大臣から具体的に答弁をもらえば、私の質問は終わるわけですよ。
  228. 原田明

    ○原田政府委員 たてまえとしましては、コマーシャルな輸出入取引を通じて話が私どものほうへ上がってまいります。したがいまして、その段階で非常に綿密なチェックを最初からやるということは事務的にはなかなか困難ではございますが、しかし、輸出業者の選定、出てまいりました輸出の申請の段階で、輸出業者がちゃんと名の通った業者であるか、あるいはまた、一部商社に非常に偏しておるようなおそれはないか、あるいはまた、新聞紙上等でとかくうわさのあるような会社でないだろうかとか、それからまた、商品につきましても、一応BEで選定せられた品物ではありますが、常識から考えましてインドネシアの経済復興、開発といったような観点からいかがであろうかと思われるようなものがないかどうか、また、価格につきましても、これは非常にむずかしい問題ではございますが、一見して、これは非常におかしいのではないかというような点については、十分輸出の段階でチェックをして、先生御指摘のような点についての努力をしてまいりたい、かように考えております。
  229. 佐野進

    ○佐野(進)委員 原田さん、もう少し具体的に聞きたいのだよ。向こうでもって、インドネシアで商社を選定するわけでしょう。——いや、違うんですか、それは。向こうのほうでBE、ボーナスエクスポートという形になってあと、それからの次の段階で、インドネシア側は業者を選定する、こういうことじゃないですか。そうすると、その選定される業者というものは、全然こちらのほうにまかされる、こちらのほうが選定することができるわけですか。それからもう一つは、そうした場合、いずれにしろ、供与される物品というのは、非常にいかがわしいものが多いというようなことも過去の例にありますね。したがって、そういう場合における商品を検査するとかどうとかいう、いわゆる輸出される商品についてそれを検査するとか一定の基準を設けるとかいうことは不可能なんですか。
  230. 原田明

    ○原田政府委員 昔の援助方式によりますと、商品の選定ということが行なわれたわけでございます。しかし、商社あるいは商品を選定するという手続が間に入りますと、どうしても先生御指摘のような問題が起こりやすいというようなこともございまして、インドネシアの経済復興のための債権国会議等でも、それからまたインドネシア側においても反省をせられまして、先ほどからお話の出ておりますボーナスエクスポートという証書を売り出すという方式をとったわけでございます。したがって、インドネシア側では、先着順でだれでも市場の状況を見まして一番需要の多い商品というものを輸入したいと思う者がそのBEをルピアを払って買うわけでございます。そのルピアによって輸入業者が取引契約を、話し合いをして契約をするということになりますので、いわば商取引の自動的なコマーシャルな調節作用を通じまして自然に向こうの輸入業者がきまってしまうという形がこのBE制度でございます。したがいまして、その相手方となりますこちらの輸出業者も、向こうとの通常の輸出の場合におけるようなコマーシャルな輸出入商談ということできまるということでございます。
  231. 佐野進

    ○佐野(進)委員 したがって、いまの問題については通産大臣のほうから、いま言われた問題について、ひとつ総括的な御答弁を願うということと、(「時間、時間」と呼ぶ者あり)時間、時間とたいへんお急ぎですから、あと一つだけ宮澤さんにお聞きして、質問を終わりたいと思います。  それは、この前も御質問申し上げて、事務的な処理だということで御答弁がありましたが、その3、「基金の業務範囲の拡大に伴い、その事務の一部を日本輸出入銀行のほか一般の銀行」という表現の、一般の銀行ですね。これは事務的な処理だからたいしたことはないんだという答弁です。私は、事務的な処理ということが、いわゆる輸出入銀行ほか一般の銀行にその事務の一部を委託するという形の中で、いま言われたような金融的な機関の中においてもインドネシア政府に供与することによって、そのBE制度を利用して、一般のいわゆるインドネシアの輸入業者がこれを利用するということで、非常に問題が予想されるわけです。したがって、一般の銀行ということになると、この事務の一部を委託された銀行が、実質的にはこの六千万ドルなりあるいはこれから出される多額の金についての権限を掌握する。たとえ事務の一部という形であろうとも、輸出入銀行と対等な形の中において、インドネシアの輸入業者並びに日本の輸出業者との間に立って一部の権益を独占する可能性があるわけです。したがって、そういうことはしないんだということでございますが、これもまた法律のたてまえ上でございますから、あとあといろいろ問題が起きるわけです。だから、ここでお聞きしたいことは、この一般の銀行とはいかなる銀行をさすのか、そして、輸出入銀行に相対する一般の銀行ですから、この銀行の果たすべき役割りはどういうものか、この際ひとつ明確に御答弁をお聞きしておきたいと思うのです。
  232. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま局長からお話ししたのは、商品の問題についてお話ししました。それから、一般のプロジェクトの問題は、いままで日本政府に頼むようなかっこうをして、実は政府のほうに頼んだような頼まないような、かってにこっちに来て、相手方をあさっておったような関係がありますが、今度は経団連その他の業界の団体があります、その団体にやらせる、こういう方針でまいりますから、いろんな誤解や弊害は起こらないと考えます。
  233. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そういう問題を起こさないようにするという歯どめについて、決意をひとつ…。
  234. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 起こさないように、そういう点を十分に心して指導したいと思います。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、せんだっても申し上げましたとおり、業務、つまり判断を伴うようなものを委託するつもりはございませんので、事務だけを委託いたすつもりでございます。おそらく事務の性質上、為替銀行になりますことは間違いないと思います。
  236. 佐野進

    ○佐野(進)委員 宮澤さん、だから、為替銀行になるということだけでは私はちょっと不安心なものがあるわけですよ。要すれば、この一般の銀行ということは、その地域のいわゆる輸出入銀行なり、あるいは海外経済協力基金なりが、現地の状態並びにこちらの輸出業者との関連の中で、なかなか事務的にそれを処理することが繁雑を加えるという意味で、一般の銀行という表現を用いたと思うのですよ。しかし、この際明らかにしておかなければならぬのは、一般の銀行といえばどこでもなるんですね。銀行法の改正によれば、今度はまた統合等が行なわれて、どこでもこれが行なえるということになるんですから、きわめて不安心になるわけですね。だから、ある特定の輸出業者が特定銀行とタイアップすることによって、特定の政治家を使って——そんなことはないというかもしれませんが、特定の大臣に陳情して、そして一般の銀行の一部に入ったとすれば、海外経済協力基金が年間使うべき——いま四十四億だけれども、あとどのくらいになるかわからぬけれども、その基金の金について、一般の銀行はその事務の取り扱いをすることができることになるわけですよ、この文章上の表現だけによれば。これはこの審議が終わるに際して、やはり明らかにしておかなければならない重要な問題だと思うのですよ。したがって、その点について、一般の銀行の範囲、特にでき得るならば、輸出入銀行と相対するがごとき形の中において、具体的にここで一般の銀行という文字についていま少しく解釈を明確にしておかれることのほうがいいのじゃないですか。
  237. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どういう御心配でございますか、ちょっとはっきり私にのみ込めないところがございますけれども、まず事務を銀行に委託する、その銀行というのは、当然これは為替銀行でなければできないと思いますし、何か適当な銀行を、だれかが連れてきて、というようなことを言われますけれども、おそらくはインドネシア政府側の名義の預金を扱っているような銀行でありませんと、事務はうまくいかないのではないかと思います。  なお、その銀行に委託いたしますときには、基金は経済企画庁長官の認可を受けること、それから会計検査院がその事務の委託を受けた銀行について会計検査をすることができるように法律に書いておりますので、まずこれで運用誤りないかと思っております。
  238. 佐野進

    ○佐野(進)委員 すみませんが、これは最初から気になっている問題なので、私、基金法の問題で、あまりほかの方々は触れておらないから特に念を入れてしつこくお聞きするわけですが、今度の改正の重要項目の一つになっておるんですよね。もちろん、経済の安定に資するとか、物資の輸入のために必要な資金当該地域の外国政府に貸し付けるとかいうのは、それはもうすでにやっていることに対して、ただ金利を安くするからということでそういうことをするということだけなんですね、いままでの説明を聞いていれば。ところが、この「輸出入銀行のほか一般の銀行」という文字は、基金法の重要な改正点なんですよ。何回も申し上げますけれども大臣は心配なされておらないとおっしゃるのですが、基金ができたのは輸銀から離れてできたわけでしょう。それで輸銀の行ない得ない対象について基金が取り扱うのだ、こういうことになって、やっているわけですよね。今度はその基金が、輸出入銀行は提携銀行でいいのだけれども、一般の銀行にその事務の一部を取り扱わせることができるということになるわけですから、この法文の解釈からすれば、どの銀行でも基金としては事務の一部を取り扱わせることができるということになるんですよね。あなたがさっき午前中の質問に答えたように、これはどこの地域でもこの条文が適用されると同時に、どの銀行でもいいのですよ。したがって、どの銀行でもいいということになると、いわゆる低利長期の国家資金を特定の銀行を通じてやれるということになるわけですね。これは大蔵大臣いかがですか、この点についてもう少し明確になりませんか。
  239. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実際問題といたしまして、はボーナスエクスポートになりますので、商品の数が非常にたくさんあると考えておかなければならないと思います。それも一つずつあまり数量が大きくない。そうしますと、これを輸銀だけでやるという、そういうルーティンの手続だけでもたいへんでございますから、やはり銀行にもそういう判断を伴わないことをやらせたほうがいい、こう思っておるのでございますが、銀行と書いたのが不安であると仰せられれば、まさか何々銀行と書くわけには事実上まいりませんし、そういうものでもございませんので、国会のこの席での御質問に対して、私ども為替銀行のうちしかるべきものを選ぶ、こういう方針でございますということを申し上げておきましたら、御心配のような弊も防げるのではないかと思います。
  240. 小峯柳多

    小峯委員長 おはかりいたします。  本案の質疑はこれにて終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、本案の質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  242. 小峯柳多

    小峯委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、これを許します。千葉佳男君。
  243. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本案の採決にあたり、反対の意を表明するものであります。  あらためて言うまでもなく、いわゆる南北問題は、先進諸国と発展途上国との間の格差の解消を目ざし、抑圧と不満から生ずる紛争を未然に防ぐという意味におきまして、二十世紀後半の世界政治において最も重要な課題であります。昭和三十五年十二月に施行せられました本法に対しまして附帯決議を付して賛成したのも、この世界史の流れの中で、わが国もその国力にふさわしい貢献をすることに心から賛意を送ったがためであります。しかしながら、今回の法改正は、特定の国を特定の国に肩がわりして行なおうとする点におきまして、その動機と性格に、反世界史的、反国民的な誤りがあると思うのであります。すなわち、南北間の格差の解消は世界平和に通ずるがゆえに、先進諸国の理解と協力を得た上での国連中心主義で行なわれるべきものであります。しかるに去る四十二年九月、わが国がイニシアチブをとりましていわゆるコンソーシアムを結成し、同じく債権国であるはずのソ連、中国等を除外し、ひたすら現在のスハルト政権にてこ入れをする、こういうふうなことは、国際協力による南北間の格差解消という世界史の流れに逆行すると考えるものであります。  基金法の目ざす東南アジアの開発援助を待つ国々は、ひとりインドネシアのみならず、インド、ビルマ、それにカンボジア、ラオス等、しかりであります。にもかかわらず、三十五年の施行以来、最大の貸付け国は韓国と台湾であります。いままたさらにこれにインドネシアを加えるということは、中国を取り巻く反共体制の確立を目ざしたもので、いわゆる佐藤・ジョンソン共同声明の中国敵視政策と軌を一にすると考えるものであります。ベトナム戦費の増大によるドルの不安、そしてそのドル防衛のための対外経済援助費の削減、これがコンソーシアムという穴をくぐり抜けまして、アメリカと同額の三分の一の重荷というものをわれわれに課せられているのであります。国民の税金が、インド、ビルマ、カンボジア、そしてインドネシア、こういうように真に経済協力の目的にかなう使い方をすれば、これは格別でありますが、ベトナム戦争によるドル防衛の肩がわりというのでは、これは納税者である国民の利益に相反すると思うのであります。  動機において反国民的であり、性格において世界史の流れにさからうというこの改正に対しまして反対する第一の理由です。  振り返りまして、いまから十年前の一九五八年四月に発効した賠償協定以来のわが国とインドネシアの関係を、主としていうところの経済協力について見た場合はどうなっておるか。  賠償協定、緊急援助の贈与、円借款、さらにリファイナンス合計が実に一千百九十八億にのぼっております。しかしこのような巨大な援助にもかかわらず、委員会の審議でも取り上げられましたように、百メートルの多目的ダムが、建設が変更になりまして、六十メートルに変更を余儀なくされておる。これは単なる洪水調節用にすぎない事態になっておる。百九十隻の船が、喫水線が浅過ぎたり、故障を直す部品がなかったりして、百五十隻が岸壁につながれておる、ただひとりモニュメントやホテルだけがむなしく建っておる、しかもその裏側には数々のスキャンダルが見えつ隠れつしておるということは、国民衆知の事実であります。  おそらくスカルノ時代とは違う、スハルト政権に入った今後は期待できるとあるいは言いたいのでありましょうけれども、これまでのどぶに捨てるようなものといわれた援助の実態と、何よりもそれをささえる利権構造が根本的に変革し得るという保証が一体あるでありましょうか。  これまた審議の過程で明らかになりましたが、昨年の六千万ドルの援助に対するルピアの積み立て金の大半は、軍人を含む政府職員の給料に充てられた事実、この法案の通過を待って直ちに正式契約されるであろうといわれておる八十億円にのぼるジープ、ステーションワゴン、救急車などの軍需品、これは、インフレを抑制し、民生を安定させることと一体何の関係があるでありましょうか。これが今回改正の商品援助という名のもとに行なわれることであり、少なくともこれまで、百メートルのダムがかりに六十メートルになっても、なおかつそのあとに残るものがあったのでありますが、これと比べまして、商品援助ということは実にでたらめな時代逆行を物語るもの、このようにいわざるを得ないのであります。  さらに、焦げつき債権救済のリファイナンス、そこの商社からの政治献金のことについては、すでに言及されておりますが、最近スマトラのランポン開発に非常に期待を寄せられておるアラムレヤ将軍が参りまして、スハルト大統領の親書を携えてまいりましたが、これが外交ルートを飛び越えてきたということの事件が起こったのでありますが、これは従来のやり方、そしてまたその底にある利権構造というものが決して改まったものと思えない象徴的な事柄ではないか、このように考えておるわけであります。  第三に指摘しなければならないのは、経済外交を唱えながら、はなはだ場当たり的であり、便宜的なまずさがあると思います。  スハルト大統領が初めての外国訪問に日本を選びまして、政治生命をかけて援助の増額を申し入れたといわれておりながら、確答を得られないまま帰国したわけでありますが、先月末、セダ大蔵大臣は、経済的報復措置をとると語りまして、他国に例を見ない〇・四%の大使館査証料をわが国から徴収することが通告されております。これはマニラにおける日本商社の営業停止と並びまして、東南アジア各地における対日感情をいみじくもあらわしたものではなかろうかと私は思うのであります。  スハルト政権が新外資導入法をとりながら、旧宗主国であるオランダ等に対しまして接収財産の返還を進めて以来、将来の債務返済の原資となるべき銅、すず、ニッケル、ボーキサイトなどの資源は、資本間の冷厳な鉄則によりまして、現在アメリカ、カナダ、西ドイツなどの巨大会社によって独占開発権がもぎとられ、内水面宣言により日本漁船の安全操業はいまだに確立されておらない状況でございます。これが、日米対等のパートナーシップでアメリカと同額の三分の一を負担するという高価な代償の事実であろうと思います。  むろんアジアの唯一の先進国であるというのも事実であろうかと思いますが、しかしながら、それと同時に、生産力においては世界第三位、しかし国民所得においては第二十一位であるのも現実であります。私はあえて、この足らない社会資本とか、倒産する群小の会社、低所得に苦しむ諸階層、これを放置してまでなぜ出すのかという、多少次元の低いことは申すつもりはございません。しかしながら、先進国の一員として、それにふさわしい経済援助は、当然しかあるべきでございますが、唯一の返済の原資が食い荒らされ、次の金の出し方が渋いということで経済的な報復を受けるのでは、国民は泣くにも泣けない状態ではなかろうか、このように思うわけであります。  この海外経済協力基金大蔵省の予算に計上されておりますが、御承知のように、監督は経済企画庁、指導が外務省、輸出のチェックが通産省と、こういうわけで、援助体制が非常に不備であり、今後再融資、再援助、再々融資、こういうふうな悪循環がとめどなく続いていくのではないかと、第二の賠償になる運命を私は非常におそれるものであります。  最後に申し述べたいのは、前にも言いましたように、予算どおりの六千万ドルが経済援助に充てられるのか、アムステルダム会議でIMFから明示された三億二千五百万ドルの三分の一である一億一千万ドルになるのか、これを値切って九千万ドルになるのか、こういう事実でありますが、審議の過程でも、相手のある交渉ごとであるからという理由でついに明らかにされなかったのでありますが、国会の予算審議権を拒否する、これは憲法上のゆゆしい問題ではなかろうかと考えると同時に、これは今回のこの法改正が持つ暗く解きがたい性格というものをあらわしておるのではなかろうか、私はこのように考えるわけであります。  総じて、るる申し述べましたけれども、この法改正の動機、その性格、はたまた内容、いきさつ、そのねらい、これをいずれをとりましても、経済援助の持つ本来的な性格から見まして、世界平和、国際協調、善隣友好、国家利益、国民の利益、こういったものとは縁のないというふうに私は考えまして、反対の討論を終わる次第であります。(拍手)
  244. 小峯柳多

    小峯委員長 玉置一徳君。
  245. 玉置一徳

    ○玉置委員 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま提案になっております法案に賛成の討論を行ないたいと思います。(拍手)  従来の海外経済協力につきましては、その方法等につきまして種々難点があるわけでございますけれども、ただいま問題になっておりますインドネシアその他の低開発国の救済の非常に急務なることを考えまして、これに賛成をいたしますけれども、今後こういう国々の経済援助が能率的に行なわれて、いやしくもその間わが国の国民の皆さんから指弾を受けることなきよう、十分な配慮を政府に要望いたしまして、賛成の意思を表明いたします。(拍手)
  246. 小峯柳多

  247. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は公明党を代表いたしまして、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行ないます。(拍手)  近年、わが国の国際的地位が向上したことから考えると、政府も民間企業も一致協力して発展途上国経済援助推進しなければならないことは申すまでもありません。経済援助の成果は、一方においては、発展途上国の工業化の傾向に応ずるプラント輸出や中間製品の輸出の拡大となり、他方においては、わが国の不足する原材料や燃料等の確保に貢献するところがきわめて大きいものがあります。したがって、アジア諸国に対する経済援助は、相互援助理念に基づくアジアの繁栄と、今後のわが国経済発展のためにも、重大な意味を持っていると思うのであります。  しかしながら、わが国の過去の経済援助はとかく汚職の疑惑に包まれ、またそれとうらはらの関係にある援助の非効率がつきまとっていたのであります。このことは、国会の委員会で再三問題になったことからも明らかなところであります。  また、審議の過程で明らかにしたように、賠償調査団の報告書の中でも、多くの賠償プロジェクトが当初の計画に反してむざんな結果に終わった例が列挙されております。これらの例は形の残るプラントであるからまだ追跡できるが、どこにどのように消えてしまうかわからない消費財となれば、それも不可能であります。プラントすら満足にチェックできないところへ、その上に消費物資がどんどん送り込まれたら、これまでの不始末の上塗りをしようという、まことにおそろしいことになります。  いま述べたように、汚職の疑惑といい、非効率といい、政治モラルもさることながら、制度上、運用上の欠陥に大きく原因があると思うのであります。  経済同友会の経済援助についての政府に対する勧告の中にも、わが国援助資金は、産投から輸銀や基金の資金の補てんとして計上されるだけで、その後は政府が自由に使って、国会審議を経る必要がないような制度になっている、アメリカでは、対外援助費は予算に計上され、議会やマスコミで活発に討論されていることを考え合わせると、わが国のそれは、議会制度を無視した、まことに非民主的な制度であると述べているのであります。  現在のような政府の非民主的な、また汚職を生みやすい体質を前提とするとき、一見きれいごとのような外観を有するこの法改正の内容は、このような政府のゆがめられた運用を通じて、まさに汚職奨励法ともなりかねないのであります。  法の目的とするところを真に効果的に達成するためには、その前提条件として、援助費の予算化と援助行政の一本化という制度自体の抜本的是正と、この制度を運用する政府与党の政治姿勢を改めることが絶対不可欠であると信ずるのであります。  以上の理由により、本案に反対し、討論を終わります。(拍手)
  248. 小峯柳多

    小峯委員長 これにて討論は終局いたしました。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  249. 小峯柳多

    小峯委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。(拍手)  おはかりいたします。本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  251. 小峯柳多

    小峯委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十五分散会