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1968-05-17 第58回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十七日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 海部 俊樹君 理事 鴨田 宗一君    理事 中川 俊思君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    小笠 公韶君       大橋 武夫君    岡本  茂君       神田  博君    木野 晴夫君      小宮山重四郎君    齋藤 邦吉君       櫻内 義雄君    始関 伊平君       塩谷 一夫君    島村 一郎君       田中 六助君    登坂重次郎君       丹羽 久章君    橋口  隆君       箕輪  登君    佐野  進君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       永井勝次郎君    古川 喜一君       三宅 正一君    山本 政弘君       吉田 泰造君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         農 林 大 臣 西村 直己君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    馬場 豊彦君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         外務政務次官  藏内 修治君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         文部政務次官  久保田円次君         文部省文化局長 安達 健二君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君  委員外出席者         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   柳田誠二郎君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 五月十六日  委員佐野進辞任につき、その補欠として西風  勲君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西風勲辞任につき、その補欠として佐野  進君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員坂本三十次君、田中六助君、丹羽久章君及  び久保田鶴松辞任につき、その補欠として齋  藤邦吉君、箕輪登君、登坂重次郎君及び山本政  弘君が議長指名委員に選任された。 同日  委員齋藤邦吉君、登坂重次郎君 箕輪登君及び  山本政弘辞任につき、その補欠として坂本三  十次君、丹羽久章君、田中六助君及び久保田鶴  松君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  北海道地下資源開発株式会社法を廃止する法律  案(内閣提出第九六号)  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 これより会議を開きます。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案審査に際し、参考人として海外経済協力基金役職員等から意見を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 本日は、本案審査のため、参考人として、海外経済協力基金総裁柳田誠二郎君が出席されております。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三宅正一君。
  5. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 私の考えるところによりますれば、東西問題というものは、三月三十一日のジョンソンの声明、アメリカが力ずくで共産圏の包囲をするというような封じ込め政策というものを改めますれば、そうでなくとも米ソ関係がここまで来ておりますし、私は、東西問題というものはもうともかくいわゆる峠を越したと思うのでございます。今日の一番大きな問題は南北問題だと思うのでございます。  きょうはたまたまその問題の一つ経済協力基金の問題でございますので、私は、その法案自体につきましてのこまかいことは同僚の諸君に譲りまして、大局的な見地から、大まかな問題だけを承りたいと存じます。  ともかく、アジアアフリカラテンアメリカというものは、独立はいたしましたけれども、多年の植民地の遺制が残っておりまして、社会制度の上におきましても、経済力近代化、あらゆる点におきまして、いわゆる発展途上国という立場におりまして、しかも、まだ植民地時代のいろいろのしこりが残っております。私は、その意味におきまして、南北問題というものは実に今日の重大な問題だと思うのでございます。そして、南のほうの経済が安定いたしまして、政治も安定いたしますれば、そこに世界平和というものも樹立されることになりまするので、そういう意味におきまして、日本国家安全保障という見地からいきましても、私は、非常に重要な意義を持っておると思うのでございます。したがいまして、南北問題を片づけまするためには、もとより、独立を回復いたしましたそれらの国々が、みずから助けるという自助の体制を確立いたしまして、あらゆる面で前進しなければならぬことは申すまでもありませんけれども、われわれは、これに対しまして、先進国と申しますか、共産圏も含めたあらゆる先進国が、できまするならば、共同の力でもって、大国自分の国のインフルエンスをそこへ持っていこうというような気持ちでなしに、後進国開発援助ということを本気にやる段階だと思っておるのでございまして、この点については、何も大臣の御答弁を求めるまでもありませんけれども、宮澤長官から、ひとつその点についての御感想を承りたいと思います。
  6. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 その点につきましては、過日橋口委員にも申し上げましたとおり、三宅委員の御指摘のとおり、私も全面的にさように考えております。したがいまして、現実援助にいたしましても、たとえばDACでありますとかあるいは世銀でありますとか、一国の主張なり力なりが単独で前へ出ませんように、なるべく共同体制援助をすべきである。コンソーシアムなどもそういう思想に基づいておると思います。
  7. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 ニューデリー国連貿易開発会議ですか、その他南北問題に関する国際会議あるいは国連等におきましても、近ごろ見ておりますと米ソの超大国が多数の開発途上国に、団体交渉のように、どうやっていろいろの要求がくるのを適当にかわそうかというようなことで、実にぎゅうぎゅういわせられているというのは、私は歴史一つの皮肉と考えまして見ておるのでありますが、日本につきましても援助の額も足らぬし、利息も高いし、そうしてぐずぐずしておるし、そうしてほんとうに役に立つ、たとえば技術開発などでなしに、それこそ商売のための延べ払いの金を出したのを、これを後進国開発援助費だというような、ほんとうに身がってな経済アニマルだというような批評でもって、宮澤さんなどもしばしばそのような会合に出られたと思うのでありますが、出た当事者は冷や汗をかいておるという実情だと思うのであります。その点についていかがでありますか。
  8. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 率直に申しまして、確かにあまり得意な顔はできないほうのわが国実情でございます。国内金利水準も高うございますし、先進国といいましても、何ぶんにも二十年前に敗戦をした国でございますので、先進国らしい援助が十分にできないというのが実情でございます。しかし、それでも賠償以来、ともかくできるだけの最大限の努力はしておるという誠意はある程度はわかってもらっておるのではないか。ただ、実際にあらわれましたところが、いかにも金額的にも、また条件も十分でない。国際会議などでは、非常に経済発展が高いといわれる国にしてはどうも十分ではないではないかということをしばしば発展途上国からいわれておるのが実情でございます。
  9. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 今日何といったって南北問題が歴史の中心の問題であります限り、たとえば超大国である米ソ両国にいたしましても、軍備費に使っておりまする金なんというものを発展途上国開発費に回すというようなほんとうに思い切った態度をとりませんと、私はアジアアフリカラテンアメリカというのはほんとうに火をふくのではないかという感じがいたすのであります。ベトナム問題が幸いにいたしまして片づきましても、あとからいろいろ具体的にお伺いをいたしますけれども、世界がいまのような気がまえでいると、ほんとうに私は火をふくのではないかという感じがいたすのであります。日本につきましても、かりに短い期間には少ない金しか出ないというような状態でありましても、国の姿勢ほんとうに整っておりますれば、私はそれはそれなりに一つの大きな効果をあげると思うのでありますが、いままでの経済協力援助というものを見ておりますと、最初は賠償から出ておるのでありますが、そんな古い話をほじくりましてかれこれ申したくないけれども、ともかく大東亜戦争という大きな犠牲の上に数百万の同胞や、相手のほうも数百万以上を殺したあの恥ずかしい問題、その後賠償日本政治家わいろを取ったし、向こう政治家わいろを取ったというような、そういう姿勢後進国援助をやりますならば、アメリカ世界の半分くらい後進国援助をやっておりながら、実はちっとも感謝されないというようなあの現象がきておりますのは、そういうところから来ておると思うのでありまして、私は、南北問題が重大であり、そうして、日本としてもアジア貧困を解決するためにできるだけの力をひとつ注ごうという気がまえであります限りは、まずその姿勢を正さなければだめだということを考えるのでありますが、いかがでありますか。
  10. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 本来発展途上国援助というのは、冒頭に三宅委員から言われましたとおり、世界平和を希求する気持ちから出るべきものであります。したがって、動機としては人道主義的な動機であるべきものでございますけれども、これはわが国ばかりではございませんが、やはりそこにどうしても商売も兼ねるという動機が入りやすうございまして、そういう事実がありましたことは現実には否定できないであろうと思います。共存共栄と申しますとことばは、よろしいわけでございますが、なかなか発展途上国相手にすぐにそれがこちらの利益になるというようなことばかり考えておっては、ほんとう援助はできないわけでございます。わが国自身実情等考えながら、だんだんにもう少し人道主義的な方向へ心がまえとしても移っていく必要は確かにあるであろうと思います。
  11. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 くどいようですけれども、南北問題というものが非常に重大になっているということで、偶然に同じことばでいまアメリカにまた南北戦争が起きかけている。キング牧師が暗殺されましてあとアメリカほんとう意味南北問題国内における南北問題が起きておりますが、アメリカ南北問題というもの、黒人問題というものは、われわれも本気にこれをひとつ分析して考えて、その上に立って東南アジア開発援助等をやらなければいかぬと思うのであります。それはどういう意味かと申しますと、キング牧師が暗殺せられましたあとに暴発いたしましたあの全米にわたるデモをテレビで見ておりますと、黒人が一番先に酒屋に入りまして酒を略奪して飲みます。そしてまたテレビを見ておりますと、八百屋へ行って野菜を略奪している。それほど富めるアメリカにおきましても何千万かの黒人生活というものは低いのであります。それで黒人が、宮澤さんよく御承知のとおり、ワシントンのあるアパートに入りますと、白人が逃げていってしまって、そこがまた一種空疎地帯になっているというようなことで、困ったものだ、困ったものだといって、かの思慮の浅い右寄りの青年などは、非暴力主義キング牧師を暗殺するというようなばかなことをやるのであります。しかし、私はあとから日本心がまえとして申しますけれども、アメリカ人というものは、ヨーロッパにおける圧政に反抗いたしました新教徒が、半分くらい死んで、船で渡って自由平等の天地をつくろうと思ってアメリカに渡ったのであります。アメリカに渡りましてほんとうにりっぱな、政治的には民主主義の国をつくったのであります。しかしあのアメリカにおきましても、白色人種の平等の世界はつくりましたけれども、黒人に対しましては一種の人種的な偏見を持っておって、ひどいのは、御承知のとおり南部の綿をつくるために、アフリカ黒人を鎖でつないで奴隷として金で買って連れてきて働かせる。職業機会教育機会も与えずに、黒人と犬入るべからずという公園をつくったり、バスをつくったりいろいろいたしまして、そのために教育がないからひがむし、職業がないからひがむし、貧困だから教育がないという悪循環をやっている。またあの連中はきたならしいからといってさらにこれを隔離するというような政策をとりますれば、ますますひどくなることはあたりまえだと思うのであります。アメリカ人が、いま黒人生活に困っておるからといって暴動が起きたらすぐ酒屋へ行ったり八百屋へ行って略奪することを憎む前に、白人先祖がそういうばかなことをしてそういう境遇におとしいれた業を現代の者がこうむっているんだというそういう感覚のもとに、ひとつ本気一緒になってやるという気持ちでなければ、私は問題は解決しないと思うのでありますが、これは日本にとっても私はほんとうに思い当たることがあるのでございます。これはあとから申し上げまするけれども、その点について、宮澤さんの御意見を承ります。
  12. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 私も深くはわかりませんけれども、アメリカ黒人問題というのは、多くのアメリカ人理性ではわかりながら、またわかろうとつとめながら、感情がついていけないというところに一番問題があるのではないかと思います。感情というものは、ただいま御指摘のような長いいろいろなことの所産でありますから、理性の命ずるとおり感情が動いていくというのには、相当時間のかかることであろうと思います。多くのアメリカ人理性的な判断で感情を克服しようとしておる、そういう努力は確かにあるように私見ておりますし、時間がかかりましても、そのほうへ問題は進んでいくであろう。御指摘のように、黒人貧困、あるいはむしろそこからくる知的な無知といいますか、それと貧困とが循環をしておるように見るわけでございます。これなどは、やはりいまのジョンソン政権の偉大な社会あるいは都市問題といったような施策から、だんだん黒人社会的地位及び知的水準が上がってくる、こういうところに問題の解決の糸口を見つけるべきものではなかろうか、そう見ておるわけでございます。
  13. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 私が申しましたのは、別に意味を取り違えておられるわけじゃありませんが、現実に低いとか無知だとかいろいろの点がありますけれども、それはお互い先祖のやった責任だというその自覚があって、そして偉大なる社会計画なんというものを謙遜な立場でやらなければだめだという意味であります。それは御了解願っておると思うわけでありますが、私はアジアアフリカラテンアメリカなどの開発途上国諸君国際会議でいたけだかになって、なぜ援助しないのか、援助のしかたが足りないとあたりまえのことのように要求をされますその心理は、みずから助けるという精神がなければだめだということは言いながらも、われわれとしてはどうしてそんなことを言っているかということがのみ込めないと、私は後進国開発援助というものがほんとうに理想的には行なわれぬと思うのであります。こんなことはもう釈迦に説法でありまするけれども、白人帝国主義植民地にいたしまして、ともかく小さいなら小さいなりにアジア植民地が調和のとれた社会で進んでおりましたときに、紅茶がいいといえばセイロンで紅茶だけをつくらせる、そういう単作地帯にしてしまう。そうして原料だけ持っていく。綿がいいといえば綿だけ持っていって、紡績にしたものは高く植民地連中に売りつけるというような状態で、ともかく現地の生産物向こう都合のいいように編成がえをして、そうして安く持っていって高く売りつけるということで、搾取とそうして貧困に追い込んでおった。そこへもってきて、さらに最近においては、科学の進歩が、たとえばインド天然藍というものは化学染料に変わっちゃった、天然ゴムというものは人造ゴムに変わっちゃった、絹はナイロンに変わっちゃったというようなことで、ほんとう産業が破壊されてしまって、しかも新しい産業がない。それは新興開発国責任じゃなくて、実は私はやはりその先進国責任だと思うのであります。そういう点についての怒りというものを押え切れない、そうして無知にする政策をとる、それから階級制度はそのまま残しておいて、インドなどにおきましても、そういう実に狡知にたけた残酷な植民地政策をやりましたことが、その問題を起こしている原因であります。そういう意味におきましても、私は世界各国がもう少し謙遜になって、本気一緒にひとつ後進国開発をやるんだという気持ちにならなければうそだと思うのでありますが、この点いかがですか。
  14. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 過般もニューデリーのUNCTADの会議のときに、開発途上国から不足融資といったようなものについての強い要求があったわけでございますが、これは沿革的に申しますと、一九六三年でございましたか、初めてこの会議がございましたときに、プレビッシュはこの融資補償融資というふうに説明をしておったわけでございます。その補償ということばは、償いという意味補償融資という主張をしておりました。コンペンセーションと言っておったと思います。その意味を聞いてみますと、ちょうどいま三宅委員の言われましたように、自分たちが現在こういう状態にあるのは先進国植民政策の結果である、三宅委員のおことばであれば、過去における業ということになるのでございましょうか、それに対して補償、償いをしろ、コンペンセートをしろ、そういう非常に強い主張でございました。私どもそれに対して、言っている意味はわからないわけではない、しかしこれからこの問題を本格的にお互いの間に取り上げるとすれば、そういう持ち出し方お互いのためにあまり有利ではないのじゃないか、償いという考え方は腹にはどうしてもあるではありましょうけれども、表には出さずに、話をこれから将来にわたって進めていこうではないかということを申した経緯がございますので、発展途上国が、いま三宅委員の言われましたような気持ちを持っておりますことは、その具体的な例にかんがみましても、おそらくそのとおりであろう。それに対して私どももある種の共感は、実は気持ちの中では持たねばならないであろうと考えております。
  15. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 ある種の共感なんという考え方が実は私は——相手のほうがそんなことを言いますることは、それはいつまでもそんなことを言ったってしょうがないですからなんですけれども、われわれのほうとしては、向こうがだんだんおとなになって言わなければ言わないだけ、そういう点についての反省というものは深めなければうそだと思うのであります。本気に腹の中からそういう反省があっての上でないと、私は日本のこれからのアジアにおける声望なんというものも、実はアジアの孤児になるのじゃないかということを心配をいたしておりまするから、それを承っておるのであります。その点については、具体的な実例でひとつ外務大臣が来たときに一緒にやりたいと思っておるのですが、外務大臣はどうしましたか。
  16. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 外務委員会に出ておりまして、いま理事が行って交渉しております。
  17. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 私は、以上の前提の上に、日本の国の姿勢をどう整えたらいいか、第一経済協力後進国開発援助といってもフィロソフィーを持たなければだめだ、しかもそのフィロソフィーが国民全体に浸透いたしました、どこに出しても正しいフィロソフィーを持たなければだめだと思うのでございますが、一体開発援助に対する大体の心がまえとか、それからその裏にある哲学とか、そういうようなものについてひとつ政府態度を聞かしていただきたいと思います。
  18. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 先般も橋口委員のお尋ねに対して一部申し上げたことでございますけれども、わが国は新しい憲法戦争を放棄したわけでありますが、そのことは、同時に第三次大戦を何としても起こしてはならないという願望につながっておると思います。今日、第三次大戦がかりに起こるといたしましたならば、その一番大きな原因はやはり南北間の格差であろう。かつての植民地であった国が自立できない、そのために生ずる不満、それをめぐっての先進国側との角逐というようなことから、起こるとすれば一番起こる危険性が多いわけでございましょうから、したがって、これを防ぐためには、発展途上国に対して、国が自立できるように、経済が向上するようにという援助を与えることが、これが第三次大戦の危険を防ぐ一番の道であると考えておるわけでございます。したがって、なかんずくわが国としては戦争を放棄いたしまして、世界の平和を希求する憲法立場を持っておるわけでございますから、乏しい中でもできるだけそのような見地から援助をしていくということが基本理念であろうと思っております。
  19. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 私もただいまのお考えに賛成でありますが、アジアにおきます日本の評価というものは、アジアだけでもありませんけれども、非常に高いことは、私も去年回りまして、つくづく痛感いたしました。二十年前にずいぶん迷惑をかけておって、中国のことは別といたしまして、あと東南アジア各国について、たとえばフィリピンなんというものは、向こうとすればそれは思いもよらないところに、油を取ったりいろいろする都合があったんでしょうけれども、全く日本と戦おうとも何とも考えておらぬところへ日本軍が押し込んでいきまして、南方各地を荒らしたわけであります。豪州などにいたしましても、私は先般豪州からニューギニアへ行きましたが、あの南海の空を飛行機で飛びますと、山本元帥暗号電報を解読せられまして撃墜されました場所を通りました。そうしてニューギニアに入りますと、ニューギニアのポートモレスビーに豪州人兵隊の墓があります。その兵隊の墓は、何か英語で、彼らの名前は永久に忘れられないであろうというようなことが書いてあって、ずっと兵士の墓がありますが、それの年を見ますると、十八だとか、二十一歳だとか、青年が何千人とやはりあそこで死んでいるのであります。聞いてみますると、緒戦の段階、それからガダルカナルなどのときに船に乗っておって飛行機で爆沈されたりいろいろした諸君だそうですが、全くあんなところまで、関係のないところの豪州人が殺されておるのであります。しかるに、まだ二十年しかたたないのに、ともかくアジアにおいて日本が非常に人気がいい、声望が高い。そうしてたよりにされているというのはどういう意味とお考えになっておりますか。
  20. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 深く考えたことはございませんけれども、とかく有色人種というのが劣等であるというふうに思われがちな中で、ともかく戦前にもある程度の国家をなし、また戦後急速に回復してきたといったような実績に対する、同じ有色人種としての共同的な誇りと申しますか、希望、それをわが国の内に見出しておるということ。あるいはまた人によっては、第二次大戦の結果独立し、結果としては自分たちの国もこのようになった。その間にわが国が知ってか知らずか果たしました役割りといったようなものを、ある程度評価しておるかもしれません。  それからもう一つ感じますことは、わが国には奴隷というものについての慣習、記憶というものはほとんどございませんので、その点がやはりつき合う上で敏感に相手方が感じるのではないだろうかといったようなこともあるいは言えるかと思います。  乏しい経験でございますので、ほかにもいろいろあるのであろうと思いますが、そんなようなことを私としては感じております。
  21. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 私も大体あなたと同じ意見でありますが、ともかくインドなどは別に侵略しておりませんからまた事情も違いますし、豪州などもそんなようないろいろの事情はありますけれども、アジア全体がともかく日本に対して恨みを忘れて非常なたよりにしておりまする根本の原因は、やはりあの戦争におきまして、いいことだ、悪いことだという弁証法がありますが、ともかく半世紀植民地独立が早まったことだけは確かであります。だからして、あのまずい戦争ではありましたけれども、あの副作用として半世紀アジア独立世界植民地独立が早まったということは、これは非常に大きく彼らは感謝しておりまして、インドのパール博士が戦犯無罪論を唱えて引き揚げられましたのもそれじゃないかと思います。それとともに、あなたも言われましたけれども、戦後われわれは平和憲法を持ちまして、ともかくもう日本は軍隊を持って侵略する心配はないということで、資本主義国が資本的にも押えてくる、軍事的にも大きな力を持っておるということでは、これは私は非常な危惧を感ずるし、特に日本に対しましては好戦的な国民だということで危惧を感じますが、平和憲法で軍事的に侵略される心配はないということと、それから半世紀独立を早めてもらったという、この大きな二つの事実というものがアジアの信頼をわれわれが二十年にして回復しておる一番大きな原因だと思うのであります。でありますから私どもとしてはともかく——私なども戦争のときに議席を持っておりまして、戦争を防ぐことができなかったので、いまも責任感じておるのでありますが、ともかくあのときに戦争にもし——戦争を起こさないことが一番よかったが、勝っておりましたらば、それこそ憲兵だとか特高だとかがいばって、われわれ平民は大きな顔をして歩けないほど日本の国はたまらなかったと私は思うのであります。歴史を汚しまして数百万の人を殺しました。それを犬死にさせないということはどこにあるかといえば、私は、ある意味におきまして日本の古い体制が破れまして、そうして婦人が参政権を得られた。労働者が団結権を得た。農民が土地解放によって土地の主人公になれた。そうして平和憲法を持ったという、これが私は、国内的に見れば、数百万のなくなられた同胞を犬死にさせない一つのとりでだと思います。もう一つは、アジア独立を半世紀早めたということが世界史的に見れば大きな事実なのでありますから、その一つ独立を完成させて、ほんとうにりっぱなアジアをつくっていき、後進国を引き上げることが日本民族の歴史的使命であるという、その使命観の上に立って後進国とつき合うという、世界とつき合うというそ姿勢がなければならない。その姿勢ほんとうに厳粛に国民に徹底しておりますれば、賠償でもって日本政治家わいろを取ってもうけたり、向こう連中わいろを取ってもうけたりして、高いものを押しつけるなんという、そういうばかなことはなかったに違いないと思うのでありまして、この点をもう一ぺんここで再確認することが、後進国開発援助に本格的に国内体制をつくって取り組みまする前提条件だと私は思うのでございまして、これもひとつ、御答弁をいただくことかどうか知りませんけれども、御感想を承りたいと思います。
  22. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 御指摘のように、これらの国に対するわが国援助というのは、やはり大東亜戦争のいろいろな反省の上に立って始められていることだと思います。現在の憲法がすでにそうであると考えるわけでございます。しかし、時間がたちますと、ときどきそういうことを忘れがちであって、いま御指摘のような事例も過去にあったように思いますが、常に戒心をしていかなければならないと思います。
  23. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 そこで私は具体的な実例をあげまして心配していることを申し上げたいと思うのでありますが、ほんとうにたががゆるんできたということを私が痛感いたしましたのは、ともかくそれほど信頼をしてきていました日本に対して、最近少なくともサイゴンなどでも非常に悪い空気がありますし、アジア全体にわたりまして、バンコクなどでも日本人に対しまして非常な、一種アジアの孤児になるような傾向ができつつあるのであります。それはどういうことかと申しますと、私がこれだなと感じましたことは、インド感じたことでありますが、インドにおける日本の三井、三菱などの商社の代表でありますとかあるいは日本の在外公館の諸君などを見ておりますとみんな——みんなとは申しませんけれども、会いますとインド人の悪口ばかり言っているのであります。そうしてその姿勢を見ておりますと、彼らはともかく気候の悪い、文化のおくれたインドに長くおりたくない、早くロンドンなりワシントンなりニューヨークなりに行きたいという感じを持って落ちついておらない。落ちついておらないだけでなしに、彼らはさらに白色人種に対しましては一種の劣等感を持ち、そうして同じ有色人種であるインド人に対しまして侮べつ感を持っている。そういう態度というものが——そうしてさらに悪いことは、商社の関係について言いますと過当競争をやっておりまして、しかも無理はないと思いますけれども資本の蓄積がありませんから早く利益を回収したいということでもって、エコノミック・アニマルといいますけれども、全くエコノミック・アニマル的な過当競争をやっておるのであります。こういうことを許しておきますれば、私はそれはもうほんとうにだめになると思うのであります。  カルカッタだったと思いまするけれども、私は一人で旅行しましたけれども、総領事館かどこかで、日本から来ました国会議員などと一緒に、向こうの領事館員とそれから商社の諸君が集まりましたらば、もう何か言うことはないかと言ったらインド人の悪口だけを言っている。インド人はこれまたアメリカにおける黒人と同じです。それはあれだけ長いこと植民地支配をされておりますからインド人が道徳的に低くなっているのも無理はありません。ありませんけれども、私の知っておる青年僧がインドのUP州というところに行って修行しておりまして、私はそこをたずねたのでありますが、その青年僧などに言わせますと、ほんとうに対等でつき合いますとインド人は決してうそなんか言わないと言うのです。ごまかしもしないと言うのでありますが、支配するような立場で上から来ますから、彼らは彼らなりにもとの大国民としての、釈迦を出した四千年の文化を持っておりますから反抗するのでありまして、私はそういう点が実に危険だと思うのであります。これは何も在外公館だけの責任ではなしに、日本国内にそういう空気があることがそういうことをさせておるのだと思うのでありまして、 これは全く困ったことと思うのであります。こういう点について、外務大臣おりませんけれども、ひとつ椎名さんは外務大臣をやっておられたんだし、それから過当競争の問題につきましても宮澤さん、椎名さんの御意見を承りたいと思います。
  24. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 私もそういうことは自分でも経験がございます。やはりわが国が物質的にある程度繁栄してきた、それを幾らか鼻にかけまして、相手が物質的に劣っているということから、ことに相手の持っておる長い文化だとか歴史とかいうようなものを軽く見がちな——そういうことは国内でも幾らかそういう風潮がございますが、外へ出るとそういう気持ちになりやすいのではないか、非常に注意をしなければならないことだと考えております。
  25. 椎名国務大臣(椎名悦三郎)

    ○椎名国務大臣 人種的な観念が漸次変わってきているのではないかと私は考えております。御承知の国連の会合なんかにしばしば参りましたが、アルファベット順序で白黒白黒入りまじってずっと居並んでいる状況は、初めは全くびっくりするような状況でございました。   〔委員長退席、天野(公)委員長代理着席〕 そうして、どうすれば世界が平和になるか、戦争を絶滅する方法いかん。こういうことを絶えずいろいろな角度から考えて、すでに二十数年もたっておるのであります。前回の国際連盟と違って、二十数年を経た今日においては、やはり完全ではないけれども唯一の平和機構というものをもっと強化して、世界に永遠の平和をつくり出していかなければならぬという考え方がずっとびまんしておるわけでございまして、したがって人種間の従来の偏見というものも非常に薄らいできておるのではないか、こういうふうに考えております。日本の外務省なんかでも任地の悪口は絶対に言ってはいかぬ、そういうことを禁句にしておるようでございます。したがってそういう考え方も、日本人というものに対する考え方もずっと変わってきていると思うわけでございます。私は世界の人たちがお互いに軽べつしたり嫉視反目したりするという対立の関係を解消して、そうしてどこまでも協力していこう、こういう大勢に世界の舞台が回りつつあるということを、わずかの任期でございましたけれども外務大臣当時しみじみ感じておるわけであります。そういうわけでございまして、日本はこの新しい舞台に十分に注意しながらあくまで平和建設、共存共栄の線に向かって進んでいかなければならぬ、こういうふうに、通産の行政を担当する今日の私の立場からいたしまして、これを心棒にしてやっていきたい、こう考えております。   〔天野(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  26. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 通産大臣は居眠りをしておられたと見えて、話がとんちんかんで食い違っておるのですが、要するに、申しましたことは、そんなことを再々やっておったって時間ばかりたちますが、確かに私は日本の在外公館というものがまだそういう感覚だと思うのです。あとから三木君来られたら話そうと思っておったのですけれども、たとえば外務省なんかではひとつ一番素質のいい人を東南アジアなどに出す。しかもそれだけでなしに、あらゆる在外地に二年や三年で帰るということではなしに、半分ぐらいは、それはそれぞれポストを入れかえてけっこうですけれども、そのうちの半分ぐらいの館員は二十年でも三十年でもその土地におって、その国のことばも知り、その国の風習も知り、その国にほれ込んで、その国に骨を埋めるというような外交官というものを配置しなければ、私はほんとう意味の連携なんというものはできやしないと思うのであります。第一に私はことばでびっくりしたんだけれども、外務大臣おりませんけれども、あなたがとんちんかんな答弁をされたから言うんだけれども、デンマークに行きましたら、デンマーク語のわかる人が大使館員に一人もおらぬというんだ。そんなことでほんとうにかゆいところに手の届くような話ができますか。そういう点でも外務省の機構はここでもう一ぺん再検討する必要がある。第一、国際交通路が変わりまして、ソ連へ日本の直通の飛行機が行きます。そうしてフィンランドあたりへお客さんがうんとふえてきているのであります。しかるに昔はフィンランドは辺僻の地であまり日本人が行かなかったから大使館員は非常に少ない。トルコにおきましても、あすこのテヘランへはほとんど日本人が入らない。イスタンブールへはうんと日本人が行くんだけれども、大使館のほうはテヘランのほうに十何人館員がおって、イスタンブールには二人しかおりません。そういう人員の配置をしておりますと、ほんとうにかゆいところに手が届かぬ。産業経済、人間の動きなんというのは変わるものでありますから、そういう点をひとつ直さなければいけませんが、それよりも何よりも、一番根本の問題は、何といっても私は、落ちつかない、エリートのそういう気持ちがだめだと思うのであります。それに反しまして、東南アジアで非常に信頼を得ておる人々はどういう人々であるかと申しますれば、お気づきになっておるかと思いますけれども、大使館員や三井、三菱の諸君ではありません。それは、たとえば農業技術センターに行っております技師の諸君なんかは、人にもよると思いますけれども、非常な信頼を得ております。たとえば、インドでは御承知のとおり上流階級は働かぬことがいいと思っている。そこへ場長でありまする技師が先に立って田植えに入るというようなことは、インドにおける間違った社会的な制度を平和的に直す大きな役割りを果たしておりまして、信頼を得ております。また、さらに申し上げますれば、中小企業の技術センターなどへ行っております者、これも人によると思いますけれども、全部が成功しているわけでもないと思いますけれども、こういう人々というのは非常に向こうととけ込んで、よろしいのであります。さらに申しますというと、カルカッタに日本山妙法寺というお寺がありますが、その日本山妙法寺というものは、これもむろん御承知かもしらぬ、しばしば行かれた諸君、御承知かと思いますが、妙法寺は予科練の海軍の人が人生に無情を感じまして、あそこにお寺をつくっておるのであります。お寺をつくっておりますというと、いま日本の学生などが無銭旅行で非常に行っておりますが、中には迷惑をかける者もありますが、大使館では、迷惑だといって世話をしません。しかるときはしかるが、ともかく大ぜいが来ているときに、そのうちの一人ぐらいは行き違う者もあるから、かわいがるところはかわいがって、それらをほんとうに世話をするという人間的にできた者がおりませんと、外地でほんとうの仕事はできませんけれども、その日本山妙法寺の予科練から出ました坊さんというのは、そういう学生が来れば泊めて世話をする。それが非常に大事なことでありまして、われわれは、旅行に出るときによそで迷惑をかけるような気がまえで出てはいかぬというようなことは内地で教えますけれども、同時に、外地へ出ましたときにはそれくらいの世話をする気持ちがなければ——閣僚が来たり、国会議員が来たりしたときには非常にサービスするけれども、学生が来たりなんかして、ちょっと困った者が来ると迷惑千万だというような顔をしている、そういう感覚をもってしては、私は貧困と無知にいまださいなまれておるところの新しい国々の信頼は博せないと思うのであります。その日本山妙法寺の坊さんがそういう人でありますから、私がぴっくりいたしましたのは、不可触賤民という一番下の階層がありますが、その不可触賤民のものが日蓮宗に改宗している。ほんとうにばかにせずに、それこそ——椎名さんよく聞いておってください。ともかく、日本の商社の人でも大使館の人でも、非常に向こうは給料が安いですから、五、六人使用人を使っておる。もっとも掃除するのは掃除するの、めしを運ぶのはめしを運ぶの、みんな仕事が分かれておりますからしかたがありませんけれども、使っておるという状態ですが、それで一番下の層などに対しては、初めから悪いやつだ、ごまかすやつだと考え相手にしない。ところが日本山妙法寺のその予科練を出た坊さんが非常にそれと人間として対等なつき合いをいたしますから、日蓮宗に改宗をいたしました不可触賤民の諸君がたくさんあるという話を聞いたのでありまして、私は在外公館がそういう姿勢をとるような空気に国内姿勢自体がならなければだめだということで申し上げておるのでありまして、それに対して何か聞き違えてとんちんかんな返答をされて、寝ておられるのもお疲れだろうから文句は言いませんけれども、そういう点で私は国の姿勢を直さなければだめだという、そういうことを申し上げておるのであります。もう一ぺんそれじゃ、だれか閣僚を代表して御答弁をいただきます。
  27. 椎名国務大臣(椎名悦三郎)

    ○椎名国務大臣 けっこうなお話でございまして、よく承りました。同感でございます。
  28. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 それで、私はそういう意味国内体制をそういう姿勢でもって整えなければいかぬと思うのでありますが、いままでの日本経済協力なんというのは、ほんとうにばらばらでありまして、各省それぞれ縦の線でかってに自分意見を固執いたしまして時期を失する。早くやればありがたがられるものを、時期を失してしまって、条件が悪くなってかえって恨まれるというようなこともしばしばやっておるのでありまして、ともかくよその国では、西独だとか方々では経済協力省のようなものをつくっておるようでありますけれども、私は必ずしも新しい省をつくれというようなことではないけれども、経済閣僚だけでなしに、あとから申しますが、文化の関係もありますし、いろいろありますから、文部、厚生、科学技術、みんな加わりまして、ともかく関係のあるものが、しかもただ商売だけのことでなしに、ほんとうに人的交流だとか技術援助だとか、いろいろに役に立つ意味において、それが仕事がまとまるように、外務省が幹事役になってもよろしいし、経済企画庁がなってもよろしいが、ひとつしっかりした内閣の姿勢を、閣僚会議と申しますか、何かをおつくりにならなければいかぬと思いますが、これはどうなっておりますか。
  29. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 海外経済援助をめぐる仕組みはかなり御説のように複雑でありまして、各自おのおの意見がございますために、ときとしてやや機宣を失したような結果になったこともあると思います。なるべくそこのところを、各省間、各閣僚間の連絡を密にしまして、タイムリーに結果が出るようにいたしたいとは努力をしておるのでございますが、何ぶんにも相手方がある関係もありまして、なかなか従来思うようにはいっておりません。今後わが国のそういう仕事はますます重くなりますし、ことに、先ほど御指摘のように、やはり農業であるとか中小企業であるとか、あるいは医療であるとか、そういったようなものが望まれることが非常に多いのでございますから、もっと連絡を緊密にして、結論が早く出せるようなふうにしなければならない。これは確かに何か新しいくふうが要る段階にきておるというふうに考えております。
  30. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 経済同友会もそんなような進言をしておって、ごらんになったと思うのでありますが、何かそういう意味では、別の省をつくるなんということを考えておられればなおけっこうですが、それはないとして、閣僚会議などをほんとうに内閣につくるというような話し合いだとかあるいはそういう意思だとか、それをやってもらわぬと、本気に取り組むということになりますと、だめだと思うので、そういう関係が進んでおりますかどうですか、ひとつ承りたいと思います。
  31. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ただいまのところ、経済関係の閣僚会議はございますけれども、対外援助の問題につきましては、随時、具体的なケースになりますと、相手国がどういう種類の援助を望んでおるかということがおのおの違いますので、それに関係する閣僚が集まって協議をするということにいたしております。ただ、確かに機動性を欠いておりまして、予算編成の時期にこの一年間に各国がどういう新しい希望なり要望なりを持つかということは、これは見通せということがむしろやはりむずかしゅうございますから、何かもう少し機動的に運営できるような方法はないだろうかということを、実は寄り寄り話し合っておるところでございます。
  32. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 至急ひとつそういうものをおつくりを願いたいと思います。同時に、民間のほうにもそれに対応するような組織をつくらせる必要があると思うのでありますが、それについては何かお考えはありますか。  それからもう一つ、そういたしまして、今日まで、少ない少ないといいながら、まだ国民所得の七%にもならぬかもしれませんけれども、ともかく相当な金額を出しておるのでありますが、その使い方だとか出し方だとかいうようなものも非常にばらばらになっておりまして、やっぱり予算として一括して国会で審議をする、そうして効果については追跡調査をするというようなことをしないと、全くどこへいったかわからぬということでは、国民の血税を出しても何にもなりません。したがって、民間にもこういう機関をつくらせることが進んでおるかどうか、それからその意思があるかどうか。同時に、予算として一括して、海外協力の費用が、文化協力にしたって、あるいは延べ払いの問題にしたって、一括してわかるように予算化して、不明朗でないようにする必要があろうかと思いますが、その点についてどういう御準備をなさっておりますか。
  33. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ただいまのところ、経済団体連合会が経済協力委員会というものを持っておりまして、そことは密接に連絡をお互いにいたしております。この態勢で一応いまのところいいのではなかろうかと思っております。  それから予算の追跡の点でございますけれども、これは非常に微妙な問題を含んでおりまして、相手国に対して心から親切だということは必要なんでございますが、その老婆心がまたいろいろな意味にとられたりする場合があったりいたします。ただ、たとえばインドネシアなどの場合には、各国ともコンソーシアムを組みますし、IMFが直接に指導いたしておりますので、これからの問題といたしましては日本がということでなく、やはり国際機関の立場援助が有効に使われるということを確認する方法が今度はとれるであろうと思っておるのでございますが、一般にその他の国に対して援助をするその援助が有効に使われておるかおらないかといったようなことをどの程度立ち入って、相手方の自尊心を傷つけることなくやり得るかということにはやはりいろいろむずかしい問題もあるように思います。
  34. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 その予算として一括して国会などに審議を願うというようなことについてのくふうだとか考え方というものはございませんか。
  35. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ただいま大蔵大臣とも御相談をしておったところでございますが、いまのところは経済協力省といったような機構がございませんから、あるいは海外協力省といったような機構がございませんから、かなりあちこちにばらばらに予算がついておりまして、一括して御審議をいただくのに御不便だという点はあろうかと思います。大蔵大臣が何かくふうをしてみようと言っておられますので、私どもも努力してみたいと思います。
  36. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 省が一つできなければばらばらになっておるのは明らかで、調べればわかるということですけれども、もう少し国会などが審議しいいように考えていただくようにお願いをいたします。  それで、大蔵大臣が途中から退席されるそうでありますから、大蔵大臣に関する点を承りたいと思うのでありますが、一つは、この間もニューデリーでフィリピンかどこかがひやかしたそうですけれども、日本経済協力というのは、輸出の延べ払いだとか何とかという金が出ておるだけで、技術協力だとか教育協力だとか学術協力だとかいうような直接協力のほうの体系に入るものは非常に少ないのです。私は、国民総生産ですか所得ですか、どっちか知りませんけれども、最近では国民総生産の一%を出せという決議をしているようですが、外務省がともかく五カ年計画でその年次計画を一応長期的につくっておる。日本はもう原料を世界じゅうから買ってきて世界じゅうにばらまいて生きていかなければならぬ国になっておるのでありますから、大蔵省としてもこの問題はもう少し奮発して金を出さなければだめだと思うのであります。金を出すのも輸銀の金で、これは商売の延べ払いだ。そんなものは援助になるかならぬかわからないのでありまして、それもあとからいろいろ申しますけれども、開発輸入やいろいろな点からいけば異議がありますけれども、私は直接国が出す金をもっと奮発しなければだめだと思うのであります。外務省はともかく年次計画をつくっておるそうですから、これはひとつ大蔵省とも協議されまして、そして年次計画というものを内閣としてもお持ちになるべきだと思います。そのかわり姿勢をちゃんと整えて、使い方を間違いのないようにするという、そのたてまえをとるべきじゃないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  37. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 対外援助の方針を先ほど企画庁長官から述べられましたが、私は、先進国の義務として開発途上国援助しなければならぬ、したがって、この援助には力を入れるつもりでございますが、その際やはり必要なことは、私は一国だけで援助するという方針をとらないで、特に日本としては世界各国からいろいろ援助を求められておりますが、やはりアジアに重点を置くということ、それからアジア援助についてもやはり国際機構の中で日本の持つべき分野を分担して協力するというふうに、アジアに対して関係のある先進諸国は非常にたくさんありますから、これらの諸国をみな道連れにして、そして日本が中心になって各国の協力を求める、国際協力という形でアジア経済援助をするという姿が一番好もしいと考えています。そうしますと、いまおっしゃられたような援助のしかたも、日本独自というよりは先進国間の均衡を得、この協力によって果たしていくというような形で今後強化していくことがいいんじゃないかというふうに思っています。そして、その目標はすでにきめられておりますように、国民総生産の一%を目標として各国努力するということをきめましたので——これには国際収支の関係もありますし、ことに日本は国民一人当たりの所得というようなものを比較しますと、他の国よりまだずっと水準が低うございますので、そういう点で目標はきめますが、国際収支そのほかの問題がありますから、毎年の年次計画を長期にわたってきめるということはなかなか困難だと思いますので、国の経済に応じて一定の目標に近づくように年々予算をもって努力するという形がいいんじゃないか、私はそういう方向へ努力したいと考えております。
  38. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 ともかく教育援助にいたしましても、技術協力の援助にいたしましても、たとえば農業技術のセンター一つつくるといったって、いままでは三年か五年という短期でやっておりますが、少なくとも農業なんというものをほんとうのものにいたしますためには、十年や二十年落ちつかなければだめですから、そういう意味において、長期計画というものを立てなければいかぬと私は思うのです。そして金を使えば使うほどますますきめこまかくしなければいけませんけれども、つくらなければいかぬと思うのでありますが、議論になりますからひとつ私の意見として聞いておいていただきたいと思います。  同時に、これは通産大臣に主たる関係があると思いますけれども、大蔵大臣は退席されるそうですから、私は、中小企業の特恵関税の問題、農産物輸入の問題及び中小企業と競合いたしまする軽工業などの問題につきまして、あとからいろいろ御質問したいと思うのですが、それと関連いたしまして、一つ共産圏などとの貿易におきましても、日本の商社が過当競争いたしまして、たたかれて、非常な不利をこうむっております。それから今度は、東南アジアに出ますのもまた過当競争をしておるのであります。その過当競争を防ぐという意味もございますが、いま東南アジアなどを見ておりましても、中小企業が出ていくということについての援助が非常に少なくて、大商社だけが出ておって、そしてまたさっき言いましたように、大商社のエリートというものは早くロンドンへ行きたい、早くニューヨークへ行きたい、そして現地人をばかにしておるのが多いというような実情でございますが、中小企業がほんとう東南アジアの全体の引き上げをやりまするためには、労働力が非常に要りまする産業だとか軽工業なんというものについては、こっちの業者が出ていきまして、こちらの経営と技術とをもって向こうと合弁でやるという仕事をだんだんと考えさせるべきだと思うのであります。それに対しましては、しかしよほど大きな商社と違いますから、かゆいところに手が届くように世話をしてやりませんとだめでございますし、そういうこととの関連におきまして、輸出入公団のようなものをつくりまして、そうしてそこがひとつ世話をやくということを私は考えなければいかぬと思うのであります。それから同時に、たとえば、あとから申しますけれども、アメリカから農産物を十億ドル買っておりまして、そして東南アジアは、日本の出超が八億ドルです。貧乏な国から毎年八億ドルを貿易でもってもうけをこっちへ取ってきて、そして援助のほうは実際はその何分の一ということをやっておりますれば、向こうはますます貧乏するし、不平を起こすことはあたりまえであります。したがいまして、たとえば農産物などにつきましては、アメリカから輸入する農産物をだんだん減らしまして、それを東南アジアに切りかえていって、そして貿易の収支が大体とんとんになるようにしてやって、それに援助をさらに加えるということでなければ、後進国援助だなどといっていても何を言っておるかということで開き直られるのはあたりまえだと思うのでありまして、それらのことを考えますときに、ひとつ輸出入公団というようなものをつくりまして、中小企業が企業として合弁で出ていくことができるように、それからまた、そういう関係で多少アメリカから買ってきたよりは、大豆なら大豆、何にいたしましても、精度の悪いものを買いました場合に、国内でそれをうまくさばきましてやりまするために輸出入公団というものをほんとう考える必要がありはしないかということを私はつくづく考えておるのです。これは所管としてはきっと通産省だろうと思いますけれども、大蔵省との関係があります。同時に向こうへ出ていって合弁で仕事をやりましたら、向こうであげた利益は、ちょうど日本が食糧援助アメリカから受けましたときに、それを売った金は積み立てておきまして日本開発に役立てたと同じように、向こうに積み立てておいてやるとか、そういうきめのこまかいことを考えてやる必要があると思うのでありますから、輸出入公団というようなものを、仮称ですが、そういう性格のものを考えてみる必要があるのではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。
  39. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございまして、向こうの資本投下についての管理の問題でございましたら私の管轄でこれはどうにでもなりますが、いまおっしゃられたようなことをやるための公団が必要であるのか、あるいはそういう企業の進出についての援助の機関として、いま御審議を願っておりますこの海外経済協力基金というようなものが、そういうことへも寄与するような機能を持たせるというようなことがいいのか、これはなかなか大きい問題でございますので、十分検討させていただきたいと思います。
  40. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 通産大臣、いかがですか。
  41. 椎名国務大臣(椎名悦三郎)

    ○椎名国務大臣 特別の公団をつくる必要があるかどうかは、これはなお研究を要する問題ですが、そのためには日本にもりっぱな商社がありますので、それを使って中小企業の製品あるいは低開発国の一次産品の輸入をする、こういったようなことを考えていったら、さしあたりの問題の解決にはそのほうが早いと思うのです。この間も、いま現にタイの総理大臣それから経済開発大臣外務大臣等がおそろいで日本に来ておられます。それで総理大臣をはじめわれわれもその席に連なったわけでございますが、両国の貿易拡大問題についていろいろ話が出ました。御承知のとおり、タイと日本とは非常なアンバランスになっていて、こっちからは倍も売っているのだが、向こうからはようやく半分くらい買っておる、こういうわけです。買うものがないわけじゃないのですが、いま御指摘のとおり、先進国の農産物のほうが調製もよければ輸送、保管すべての関係がみなそろっておるのであります。そっちのほうから買ったほうがはるかに品物が安くて、しかもいいものが買える。でありますから、これを改善して、そして低開発国のものを買おうとすると、やはりある程度の開発輸入と申しますか、その商品の調製、輸送、保管、そういう施設をまず整備させて、そして一流国の農産物と同じような程度までこれを引き上げて、そしてだんだん輸入量をふやしていくという努力が必要でございますが、それを商社にまかしておったのではやはりだめだ。公団をつくったからといってぶなれな公団がそういうことを独自の力でやれるとは期待できませんので、やはり国としてそういう方面に力を入れて漸次改善していくということが相当必要であろうと思われます。今後東南アジア等との物資の交流を盛んにしてまいりますには、そういうところに目をつけて、そして相当な努力をしてまいらなければ成果はあがらない、せっかくそういう方向にただいま努力をしている最中でございます。
  42. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 もう少しこまかいこと、それからほかのことを少し聞きたいと思いますので質問を急ぎますが、先ほど申しましたように、日本経済協力というものは技術協力が足らない、それから学術協力、教育協力と申しますか、そういうものが足らない。ともかく輸出入銀行を通した商売だけやっているというのでは、また日本の国が経済アニマルだといわれる危険が私はあると思うのでございまして、ほんとうに親切なやり方というものは、たとえば研究室を開放いたしまして、向こうの学者などもどんどん使えるようにする、こっちからもどんどん出ていく。いまもやっておられますけれども、それはフランスやイギリスの十分の一くらいしか研修生などもとっておらぬというやり方であります。そしてまた教育、文化、通信等の交流をほんとうにもっとしげくすることが必要だと思うのであります。それこれのことを考えます上におきましても、国の姿勢が、閣僚会議などのほんとうに権威のあるものができてやるという姿勢をおとりくださらなければならないと思うのでございますが、これは答弁を求めずに次の貿易の問題に入ります。  経済協力本気にやります上におきまして、第一は貿易の協力でありますが、貿易の協力におきましても、これは統計を申し上げるまでもありませんけれども、タイとフィリピンだかが日本は入超であります。ともかく六七年におきまして東南アジア向けの輸出は日本は二十二億ドル、輸入が十四億ドル、そして出超八億ドルという状態であります。したがいまして、こういう状態で貿易のもうけで向こうの通貨、金を一年に八億ドル巻き上げておいて、その何分の一を延べ払いでやるなんということでほんとうによくなるわけはございませんので、そういう意味におきまして、どうしてもひとつ貿易のパターンを変えまして、大体とんとんには持っていってやるというふうにしなければならないと思うのであります。そのためにも幾つもの手を打たなければならぬと思うのでありますが、第一にこの基本方針を立てる。二番目には、そのためには、鉱工業の関係におきましては長期開発輸入ということを、いまもやっておられますけれども、本気にひとつ考えなければいけない。ともかく日本は、石油だけだって、中東だけにたよっておりますれば、結局ああいう事件が起きますれば四十五日分しかなくてたいへんな値上がりをするということにもなりまして、鉄鋼だとか、非鉄金属だとか、石油だとか、森林だとか、飼料だとか、畜産だとかいうようなものは、本気開発輸入をやる気になりますれば私は相当に東南アジアでもできると思うのであります。現にタイにおけるトウモロコシの開発輸入が相当に伸展をいたしましたことは御承知のとおりでございます。これは私は大体輸出入銀行やこの協力基金でもってできる線だと思うのでございまして、これについてもひとつ本気になってやっていただかなければならぬと思うのであります。  その次はやはり軽工業の育成。さっき大蔵大臣にも申しましたとおり、もう今日日本の内地におきまして労務倒産などをやっておる軽工業もたくさんある。それから賃金の関係で造花なんというものはもう香港にとられてしまっておる。ともかく将来の国際的な分業の意味におきまして、労働集約的な面で低い産業だとかあるいは軽工業などは、ほうっておいてとられるのでなしに、私どもはだんだん向こうを育成していく必要がある。ただ問題は、これをやりますには国内における中小企業の関係もありますので、それらの点を勘案しながらだんだんとそういう方向へ弊害のない形で持っていかなければいけない。その意味におきましても、さっき私はそれを指導したりめんどうを見る公団のようなものが必要じゃないかということを申し上げたのでありますが、そういう機構についてはお考えを願うこととして、ともかくそういう点にほんとうに力を入れなければならぬと思うのでありますが、これらの点について企画庁の長官なり通産大臣なり何か特別にお考えになっておることがございましたならば御答弁を願いたいと思います。
  43. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 相手方の発展のためを思いますと、一般論といたしましては農業を育てる、そしてその基盤の上に中小企業を育てる、それからまたどうしても基本になるのは人であると思いますので、やはり技術者をこっちへ受け入れる、あるいはこちらから出ていって技術指導をする、そういったようなことがどうしても相手方のために、結局は人でございますので一番必要であろうと思うのでございます。開発輸入のようなこともだんだんにやっておるのでございますが、先ほど通産大臣の言われましたように、経済ベースで申しますとなかなか思うにまかせません。そこである程度コンペンセーションのようなことも商社間でやっておるのでございますが、それにも限度がございます。結局片一方で中小企業あるいは農業、それから技術者の教育と申しますか訓練と申しますか、そういうことをやりながら、他方でだんだんにその基礎になるようなプロジェクトの援助をしていく、こういうことでございましょうと思います。いまのところ確かに相当わが国の出超になりまして、極端に申しますと、毎年の援助が累績した援助額の利子の支払い額に近づいていくといったようなことになってきますと、これは先方はもうただ利子を払うために援助を受けているというようなことになってしまいますので、だんだんにそうなりませんようにできる限り貿易の転換をしていく必要がある。仰せられましたように、わが国自身も実は労働集約的なものがだんだんできにくくなっておりますので、その辺から先方に仕事を移すあるいは合弁でこちらから出ていくといったようなこともだんだん起こってまいります。これはわが国自身経済の変化からも起こっておりますから、だんだんにこのギャップというものは縮まっていかなければならないわけで、もう少し広がる時期があるかもしれませんが、しかしそれから先を見ますと、先方の経済の発展に従ってわが国もだんだん買うものが出てくる、そういうふうに持っていくべきだと思います。
  44. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 なかなかこういう問題は国内との摩擦もありましてなんですけれども、少なくともそういうことに対する基礎調査だとかプランニングだとかいろいろなものを持って、そうして行かないとだめでありまして、そういう意味においても私は何か省が一つ必要じゃないかという気がするのですけれども、少なくとも経済閣僚会議のような強力なものがあり、民間にもひとつもっと強力なものをつくらせまして考えていただきたいと思います。  それで、東南アジアの一番の大きな開発の中心は私は農業だと思います。農業も食糧として買ってやるということよりは、まず第一に腹をふくらましてやることが必要だと思うのであります。アジア経済研究所の東畑君がかつて言うておられたのでありますが、ちょうど終戦後のころの日本と同じでみんな栄養不良、腹が減っている、あれは腹の減らぬ状態にその東南アジアの農業が進んでくれば、それだけで労働力などはほんとうに強くなって働きが出てくる、あのときと同じ状態なんだから、まずひとつ東南アジア自体の農業開発について日本ほんとうに力を入れてやらなければいけない、その点については、さっきは農林大臣おられませんでしたけれども話しましたが、大きな商社や在外公館などの考え方よりは、農業の指導に行っておる技師だとか中小企業の指導に行っている諸君のほうがずっと地についておるということなんです。農業指導のセンターなども実に少ないのであります。そういう意味におきまして、ひとつ現地の農業をもっとほんとうに起こして、現地人が腹がふくれる程度に持っていきますことについて日本としては力を入れなければいけない。いまのような輸出入銀行や基金だけの金でいくのでなしに、ひとつ日本が直接金を出すところの技術協力と、そして農業協力などについては、大蔵大臣はおられませんけれども、もう少しそっちのほうに力を入れないと、上ずった、それこそ日本の金もうけだけのためにやっているという短期的な利益だけになるので、長期的な安全と利益という点からいくことが一番大事だと思うのでございますが、この点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  45. 西村国務大臣(西村直己)

    ○西村国務大臣 アジアを中心にしました開発途上国に対しましての農業開発の問題、それに対する協力の問題でございますが、ただいま経企庁長官からもお話がありましたように、これらの国々が食糧が安定するということ、これはたいへん大事なことでございまして、むしろ現在御承知のとおり入れるような形になっております。それが資本財を入れるために外貨を食ってしまうというようなかっこうになって、そこで一面穀物協定等の援助という中にも食糧というものが入ってきているような状況であります。そこで基本的にはどうしても農業開発を積極的に進めるように協力をしてあげる、これは私のほうも望ましいことでございます。  そこで現在までどの程度派遣をしておるかというのは、研修員の受け入れば受け入れでやっております。派遣しております専門家は、御存じのとおり延べで千三十八人という人数をセンターなり農業調査なり青年協力隊として出しております。それから政府機関としての海外技術協力センターとして、昭和四十二年現在でパキスタンの農業機械化訓練センター、インドの水産加工技術訓練センター、インド模範農場、カンボジア農業技術センター、カンボジア畜産センター、農畜水産物についての技術指導の協力にもこちらから出しております。それから予算面でも、四十二年からは特に海外技術協力事業団分としまして農業開発協力事業、これに四十一年までなかった新しい経費というものを四億円、ことしにおきましては五億三千万円というものが出ております。財政の制約もございますが、私どもとしてはさらに積極的な姿勢でもって技術協力等をして、現地のそれぞれの国々の食糧の安定、それからくるところの繁栄、前進ということについてはわれわれ前向きに御協力申し上げたい考えでございます。
  46. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 ぜひひとつ、くどいようですが、技術協力の面と、教育協力と申しますか、それと、農業開発のほうにはお力を入れていただきたいと思うのです。  それと同時に、農林大臣に伺いますけれども、アメリカの食糧生産の中で、日本が十億ドルの農産物を買っておるのですが、さっきも話しましたように、日本の出超が東南アジアだけで八億ドルというときに、アメリカも余剰農産物をかかえておって、それから品質が均一だったり上等だったりして、扱いは楽に違いありませんけれども、私はこういう点について、日本の農業を圧迫するということでなしに——飼料などについてはうんと輸入しておる。タイなどがトウモロコシの開発指導でもって相当な成績をあげておりますが、まだまだそれは問題になりませんけれども、ともかくこれこそひとつ年次計画でもって、アメリカから十億ドル入れておって、さらに年々ふやしていこうとしておるのをよそに転換してもらいながら、東南アジアの少なくともこっちが輸出超過している分くらいは——農産物だけではありません。一次産品、それからさらに石油だとか、林木だとか、ガスだとか、銅だとか、いろいろなものがありますから、それはそれで開発輸入もするということで、大体とんとんにはいくような努力をしなければならぬと思うのであります。私ども農村畑で、へたな輸入をしますと、バナナを入れればリンゴが困るし、ノリを入れれば日本の業者が困るという事情もありますけれども、大局的に、内地の業者を圧迫しないように、アメリカから現実に入れておる分の品目転換ということならば、日本の農民にはちっとも影響ない、一応入れているんですから。その点についての特段の努力が必要じゃないかと考えますが、それらについての御構想についてもお考えをいただきたいと思います。  同時に、日本がいま食糧管理米でもっております中古米というのがたくさんありますが、まずい米をますます長くもっておくというのもなんでございますから、これらについても、一ぺん出して、またできたら新しく入れかえるというようなことについてもお考えになっておるだろうと思いますが、お考えがあったら承りたいと思います。
  47. 西村国務大臣(西村直己)

    ○西村国務大臣 農林水産物の、いわゆるわが国における国内の輸入量が年々増大しておる。それは一面におきまして、農業増産、水産増産、あるいは畜産増産をしっかりやれという御意見。またわれわれも相当な量、外貨を食べておりますから、気をつけてまいらなければならぬ。その中で特に多いのが、御存じのとおり林産。年々ふえておる木材でございます。しかし、一方におきまして、それはそれなりとして、国際収支にあまり悪い影響を与えてはおけない。いろいろな消費構造や需要を考えつつ、国内と国外から入れるものの調節をしつつ、国際収支も考えてまいるといたしまして、今後は海外から入れるものにつきまして、アメリカから入ってくるものが相当あるんじゃないか。これは御説のとおりでございます。そこで、木材等につきましては、御存じのとおりアジア地域におきましても、海外開発輸入のような形である程度入れておるのであります。ただ問題は、丸太で入れたいのでありますが、そうすれば、内地の製材業者が助かりますが、最近はフィリピンその他も、できるだけ加工材を入れたい、製材したものを入れたい。こういうところに、内地の業者の営業と申しますか、利害と対立するような問題はございますが いずれにしましても、アジア地域からまだまだ入れていく。ことに全体として基本的に考えますと、先進国から来ている農林水産物は、できれば買い付け可能な条件を東南アジアの方面のそれぞれの国々につくり出すようなもとにおきまして、低開発国から入れてまいるように、私どもも市場転換等は努力してまいりたい、こう考えます。  実は先般課徴金等の問題がありましたとき、アメリカから農務長官関係者が参りましたときにも、私ども、アメリカのほうであまり御無理をおっしゃるならば、市場先を急激に転換しなければならぬと御返事を申し上げたような事情もありまして、われわれとしても低開発国が可能な条件が整うような形に漸次持っていきつつ、その中でもって、私どもとしてはそういう方面からの買い付けをふやしてまいる。特に日本の農業や、日本国内産業と競合してはいけませんから、輸入に依存しないでいいというものは——トウモロコシ、マイロ、木材、これらが今後もほしいものであります。特に飼料、木材であります。それから品質、価格があまりこちらのほうと違ったり、あるいは非常に経済的負担が多くなるというと、これは国内的にどういうふうに調整するかという問題が出てまいりまして、これは研究しなければならぬのであります。  それからもう一つは、輸入である以上は、やはり輸入源というものがある程度安定していないといかぬ。こういう点は御了解いただけると思うのでございます。  しかし、いずれにいたしましても、御説のように、こちらが援助し、農業開発をやってもらってその国も安定繁栄する以上、こちらもそれに見合うような努力をしてまいることは、アジアの繁栄のため当然だと思うのであります。  それから米の問題であります。御存じのとおり持ち越しが多い。そこでこれを輸出に充てたらどうかという声なり御意見もございますし、私どもも多少そういう点については研究はいたしておるのであります。ただ御存じのとおり、日本の米というものは国際比価におきまして相当高い。それから品質、あるいは輸送費とか保管とか、そういう面を考えますと、これにはなかなか技術上のむずかしい点がございますけれども、穀物協定の精神もありますし、いろいろな面も活用しながら、何かくふうができますればそういうこともくふうしてまいりたい、こういう考えでございます。
  48. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 だんだん時間も参りましたから、結論を急ぎたいと思うのでありますが、私はさっきもインドの話をいたしましたけれども、文部大臣来ておられましょうか。文部省、だれがおいでですか。
  49. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 政務次官が見えております。
  50. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 日本の在外公館や大商社の諸君など落ちつかぬというようなことをお話いたしましたが、落ちつかせる体制ほんとうにつくってもらわなければいかぬと思うのであります。その意味におきましては、たとえば日本の小学校などをほうぼうにつくりたがっているけれども、なかなか先生に困っている。南米などにおきましても、だんだん日本語を忘れてしまう二世、三世ができてまいりまして、それでは実にもったいないと思うのでありますし、それから、だんだん行く人がふえればふえるほど、先生の需要なども多くなります。この問題について現地の諸君が痛切に感じておりますのは、向こうに行って働いておりました間に休職になったりいろいろして、こちらにおる諸君は給料が上がってしまう、ポストはなくなってしまうという状態です。これは単に小学校だけじゃありませんけれども、文部省に特にお願いをするのは、いままで南米の関係にしても、日本を出ておる関係にいたしましても、この点についての姿勢が少し不親切だと私は思うのであります。ほんとう向こうに行って働いたならば、かえって——昔の、外に出て働いたならば恩給年限に半分の年数で達するというように、むしろよけい昇進するような方策をもちまして、うんと日本人を出さなければうそだと思うのであります。そうすれば、若い諸君などは喜んで出ていくと思うのであります。これは技術者にいたしましてもだれにいたしましても、日本から外に出ました人々が、帰りましてポストなどに困らぬように、また、出ておる諸君自分の子供の教育に困らぬように、ほんとうに落ちついてやれますように持っていかなければならぬと思うのでありまして、こういう点について、全体の技術者その他のそういう優遇措置については、最近だんだん考えてきておられるという話でありますが、わかりますれば経済企画庁長官から、それから文部省のほうからは先生の問題について、そしてまだそういう点が不徹底でありましたならば、この機会ほんとうに固めてやっていただきたいと思うのであります。
  51. 久保田政府委員(久保田円次)

    ○久保田政府委員 文部大臣が来ておりませんので、政務次官の私がかわりましてお答えいたします。  先ほど来、三宅先生の世界平和の原則から南北問題につきまして御意見を拝聴したわけでございますが、ただいまの御質問は、海外におきましての日本人学校に対しましての熱意の程度がどのくらいであるかというような点に集約されると思うわけでございます。私も先生と同じような意見を持っているわけですが、まず第一点といたしまして、海外協力につきましては物と、それから精神と二つあると思います。当面せる経済協力というその裏には教育投資をいかにするかということが最大の問題であろうと思います。そのような点で先ほど来、御意見がございました。現在の日本経済開発というものは、おそらく日本教育というものが非常に世界的に見て前進しておる。これがまず基本にあげられなければなりません。これを通して、海外協力をいかにするかというような問題は重大な問題でございます。その中から文部省といたしまして、あるいは大使館等それぞれの勤務者が安心して教育に従事できるということについては、やはりその地域において、いわゆる日本人学校、これの教育を充実させる。たまたま私は最近におきまして、東南アジアあるいは中近東方面にも参ってまいりましたけれども、昨年の暮れタイに参りましたところが、タイの大使館のある事務官でございますけれども、帰りましてこの点はぜひひとつ考えてもらいたい。これは一つの例でありますけれども、タイに現在三百人の子供さんがおられる。その中で、親として自分の子供の教育というものがほんとうにできるかどうかということが一番の心配なんだ。これを切実に訴えられたわけであります。  そういうふうな観点からいたしまして、これからはその地域において腰を落ちつけてやはり努力しようというのには、まず子供の教育というものを真剣に考えてやらなければならない。かような点から申しまして、いま文部省といたしまして日本人学校及び日本語講習会についての現状というものは、次のような点でございます。  現在、海外在住の日本人子女に対しては全日制、全教科の教育を行なう教育施設、いわゆる日本人学校はアジア地域に十二カ所あります。中近東、アフリカ地域に三カ所、ヨーロッパ地域に一カ所、中南米地域に一カ所、計十七カ所に設けられております在外公使館と日本人会等の協力により運営せられておる次第でございます。  文部省といたしましては、これら日本教育施設における指導の充実をはかるため、外務省に協力をいたしまして、国立大学付属小学校教官の派遣、講師のあっせん等を行なっております。欧米のほとんどの地域においては、日本人子女は現地の学校またはアメリカンスクール等の国際学校に通学をし、希望者が多い地域では休日等に日本語講習会が実施され、外務省において講師謝金、教材費等の一部補助を行なっているのが現状であります。文部省といたしましては学識経験者、海外勤務者の派遣側関係者、関係省庁職員等よりなる海外勤務者子女教育対策連絡会を開催して、これら子女の教育の整備充実について研究を行なうこととしておりまするが、外務省とも協力をいたしまして、必要の高い地域に全日制の教育施設が増設できまするよう、積極的に検討いたしておる次第であります。  以上、お答え申し上げます。
  52. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 ちょっとそこにおってください。  それは非常にありがとうございましたが、私の言いたいことは、向こうへ行った者が昇進だってずっと同じように昇進され、むしろ向こうにおれば昇進が早いくらいにひとつほんとうに奨励して、そうして帰ってきてもちゃんとポストがある、そういう仕組みにしなければだめじゃないか。そういう仕組みにすれば若い先生だって喜んで中南米だって行きますし、またうんと出さなければならぬ。それは向こうにほれ込んでおってくれればよいし、戻ってきてもけっこうでありますけれども、そういう制度を考えておられるかどうか知りたいのです。
  53. 久保田政府委員(久保田円次)

    ○久保田政府委員 担当の政府委員から説明申し上げます。
  54. 安達政府委員(安達健二)

    ○安達政府委員 先ほど政務次官からお答えいたしましたように、在外勤務者の日本人の子弟のための全日制を行なっている施設が十七ございますが、そのうち十三カ所に対しまして、国立大学の付属学校の教官を現職の身分のまま出張という形で派遣いたしておるわけでございます。したがいまして、これらの方々につきましては、先生のお話しのとおり身分が保障され、帰った場合は当然また復職できるわけでございますが、そのほかに現地あるいは日本で募集をいたしまして、派遣する講師がございます。これらの人たちは外務省のほうの費用で講師の手当が出ておりますが、それらの人につきましての身分の点は、こちらに帰った場合、なお不十分の点がございます。これらの点につきましては、お示しのような点に従いまして十分検討いたし、向上するようにいたしたいと思います。
  55. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 たとえば中南米などにおきまして日本人がたくさんおります。大使館などから離れたへんぴな土地にたくさんおるというようなところでは、先生が足らぬでほんとうに困っておるのであります。だからして、たとえば正規な、国内における学校のようなものでなくても、ひとつ身分の保障をいたしまして、優良な人をどんどん出すという一つの交流の方法を考えていただきたい。これは文部省、それから同時に経済企画庁になりますか、外務省になりますかわかりませんけれども、ひとつその他の技術者を呼ぶについても、身分上そういう恩典が及びまするような制度をどんどん考えておられるという話を聞きますが、御存じありませんか。これはもしできておっても拡充するようにお願いします。御答弁は要りません。  それでは外務省の政務次官おいでくださったそうでありますから——先ほどもちょっと言いましたけれども、御答弁を求めて置かなかったのであります。  それで、むしろ言いたかったことは、ほかの大臣から御答弁を得ましたから、事務的なことになりますが、最近の時代の動きから見まして、外務省は在外公館の数の入れかえだとか、ほんとうにいろいろ考えなければならぬ段階ではないかと思うのであります。考えておられるかもしれませんが、さっき例として申し上げましたのは、日ソ航空ができまして、フィンランドが近くなりました。それで、あそこにぐっと行きますけれども、三人くらいしかおらない。それからトルコに行きますと、イスタンブールとアンカラで、アンカラには十二、三人おりますけれども、人の行きますイスタンブールには人が二人くらいしかおらない。そういうやり方では、実際問題として旅行者は行きますけれども、学生などの旅行者がうんとふえて、そういう世話もふえておりますし、いろいろですから、やはり経済状態がいろいろ変わりましたならば変わったように、ひとつ人員の配置を考えられる必要があると思うのであります。ただし、あまり定員をふやしては困るという国全体の姿勢がありますから、むずかしい点もあるかもしれませんけれども、入れかえてやれるところはそれを考えていただく必要がある。  それから第二は、そういうところだって実際上仕事ができないのではしようがありませんけれども、方々でやっておるようでありますので、制度として適当かどうか知りませんけれども、熱心な学生がその国の大学に入りましてアルバイトをしている。それは非常にいいことでありまして、その国のことばのわかった者を何人か置かなければ問題にならない。私はデンマークだったと思いますけれども、デンマーク語のわかる人がその大使館に一人もおらぬ。英語でやっているというのでは、ほんとうにかゆいところに手が届くことができないと思うのでありまして、語学のできる人を置かなきゃならない。それには、やはりイギリスがやったようなことをまねればいいと思います。それは、半数ぐらいの在外公館の館員はそれぞれ転勤させてけっこうですけれども、あとの半数くらいは、十年でも十五年でもおって、おればおるだけまた待遇もよくなるという方式によりまして、できたら、その国を愛してその国にとどまってくれるくらいの人をつくっておかなければ、東京のほうばかりねらっておって、早く帰りたい、帰りたいというようなやり方をやっておったのでは問題になりませんので、それについてお考え願いたい。  それから、ことばの問題を申し上げましたけれども、近ごろは学生がうんと旅行するのですが、無銭旅行などでずいぶん迷惑をかけている者もあります。ありますけれども、これは国民的な元気の発露でありまして、たくさん行けば、何百人もの中には、一人や二人迷惑をかける者もあるかもしれませんけれども、それなどに対しましても、在留同胞がたくさんおるところは、苦労した在留同胞に世話をしてもらう、そうして大使館が関与されるというやり方がいいし、そういうような人がおらぬ、あるいは少ない地帯におきましては、大使館は臨時に人を入れられてでも、ほんとうに親切に指導するという立場をとらなきゃいかぬと思うので、この点について申し上げたいと思っておったのであります。  それと同時に、外務大臣に申し上げたかったことは、東南アジアにおる日本の在外公館の館員だとか、大商社の社員というものは、白人に対する劣等感を持ち、有色人種に対する優越感を持ち、そうしてさらに、早くヨーロッパへ行きたい、アメリカへ行きたいというような落ちつかぬ状態でおるのではしようがないんじゃないか、そういう根性ではしようがないんじゃないかという点を申し上げたかったのでありますが、外務省全体の空気がそういうふうに反映されていると思うので、日本のエリートというものがかえって反省しなきゃいかぬと私は思っておるのであります。頭がいいなんていったって、人間の頭がいいのはたかが知れているのでありまして、自分がばかとわかったときに初めて人間ものになるのであります。そういう意味におきまして、ひとつ外務大臣にお伝え願いたいと思いますが、御答弁をいただきます。
  56. 藏内政府委員(藏内修治)

    ○藏内政府委員 三宅先生にお答えを申し上げます。  一番最初の御質問で、外務省の在外公館の定員の配置が、現在必ずしも妥当ではないのではないかという御指摘がございましたが、そういう面が確かにございます。かようになりました経過は、もう私から御説明するまでもなく、第二次大戦後新しい国家が続出をいたしましたために、在外公館に派遣すべき外務省の館員の数が非常にふえてまいりました。ここに、できるだけ兼轄方式をとりまして、中心になるべき国の公館が近隣諸国はできるだけ兼轄をするようにしてやっておりますが、もうこれも先生御承知のとおり、新しい国はすべて大使を要求してまいります。これはやはり、わが国だけの事情で、大使館の館員数、機構等を決定するわけにまいりません。向こう側の都合もございますので、その間はできるだけ相互に話し合いながら、公館の設置を今日まで進めてまいったわけでございますが、いまお話しのとおり、必ずしもバランスがよくとれておりません。そういう点は、ただいま外務省の中におきまして、在外公館の適正なる配置をいかにすべきかということで、機関を持ちまして、再検討を加えておる段階でございますので、今後はできるだけ機動的な能力の発揮できるような、そういう公館のあり方の実現を期してまいりたいと思っておるところでございます。  それから第二番目の語学でありますが、これは外務省の中におきましても、いわゆるキャリアオフィサーという連中でも、自分の専門外国語のほかに必ず一カ国語は専修せしめる、特に語学研修生には重点を置きまして、現在でも三十四カ国語は研修をいたさせております。しかしながら、まだまだそれらの土地土地の特有の言語がございまして、これらに習熟することは外交活動上必要なことでありますので、できるだけ在外公館におきましてこれらの研修をさせたいと思っております。それが先ほどの定員の問題とも関連いたしまして、語学の修得に必ずしも多くの時間をさき得ない事情もところによってはあろうかと存じますが、いま申しましたような事情で、御指摘のようなことでございますので、できるだけ語学の研修には今後も努力をさせてまいりたいと思っております。  それから、外地旅行者あるいは滞在者のために、在外公館でできるだけのめんどうを見る必要がある。これも御指摘のとおりでございます。ただ、先ほど申しましたような事情で、非常に館員の数が少ない。特に先進国の相当大きな国でございましても十名以上の館員を持っておる公館は非常に少のうございまして、その中に館長がおり、さらに経理事務等をやっておる者を除外いたしますと、外地に出てまいりました日本人のお世話をする活動のできる数が非常に限られてまいることも事実でございます。これらの点に非常に御不満を与えておる点が多々あろうかと思いますが、これらも先ほど申しましたとおり、できるだけ改善をして、外地旅行者、滞在者のための便宜に欠けるところのないように努力をいたそうかと思っております。これらを含めまして、ただいま外務省の機構の中でどう改善したらいいかという案を立案中でございますので、そう長くはかかりません。わずかの時間をひとついただきたいと思っております。  それから、外務省の在外に出てまいりました館員がとかくいいところにばかり行きたがって悪いところに行きたがらないということでは、今後の世界政局、外交の舞台では、はなはだ不適当であろうと思います。後進国先進国とを大別いたしましても、後進国のほうがはるかに多くの国数があり、人口を擁しておるところであります。それらの中にあって日本が生きていかなければならぬというのが今後の国際情勢でございますから、外交官たるもの、自分の任地において最大の愛情を注ぎ得るような教育を今後外務省の基本方針といたしまして指導をしてまいりたいと思っております。  以上お答え申し上げます。
  57. 三宅委員(三宅正一)

    三宅委員 どうもありがとうございました。
  58. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 本会議散会後再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後三時七分開議
  59. 鴨田委員長代理(鴨田宗一)

    ○鴨田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。千葉君。
  60. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 休憩に入る前に三宅委員のほうから、いわゆる南北問題の本質といいますか、それから経済援助に対する基本的な姿勢ということについてお話がありましたけれども、私はこれに関連して、今回の法改正の性格という点について、ひとつ宮澤長官の御意見を賜わりたいと思うのであります。  この性格ですけれども、実は今月十日の日経新聞に中小二社といいますか、具体的な名前は印和通商という名前が上がっておるのですが、この印和通商が現在のインドネシアの国防省と話し合いを進めておって、内々約八十億円にのぼる大口輸出についてほぼ合意を見ておる、こういうふうな報道があるわけなのです。この中身は、トラック、ジープ、救急車、ステーションワゴン、ブルドーザー、こういうふうな軍需品であるというふうにいわれているのですけれども、一体こういう問題が実際に現在進行中なのかどうかですね。性格に入る前に具体的な例について一言御説明を受けて、それからいろいろ論議を尽くしていきたいと思います。
  61. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 通産省の政府委員からお答えを申し上げます。
  62. 原田政府委員(原田明)

    ○原田政府委員 日本経済新聞に御指摘のような件が載っておりますが、私どものところにはまだ全然そういう話がまいっておりません。兵器類につきましてはBE援助のネガリストに掲げておりますので、インドネシアの援助の対象からすでに除外されております。したがいまして、こういう話が実際にもし具体化しました場合には、その品目その他を見ました上で検討させていただくということになろうかと思います。
  63. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 まあ、いま具体的な話を聞いておらぬというようなことでありますが、BEリストにはこの種のものが車両一般というようなぐあいに載っておるかどうか、その点はどうなんですか。
  64. 原田政府委員(原田明)

    ○原田政府委員 BEリストは通常インドネシアが需要いたしております品物はたいていのものが入り得るわけでございます。したがって、入り得ないのは兵器でございまして、トラックとか、ただのワゴンでございますとか、こういったものはごく通常の工業品でございますので、その意味では兵器ではないということで輸出は可能になるのではないかと思いますが、なお具体的にその品目等々を検討した上でないと、はたしてBEの中に入るかどうかということは判断しかねるのではないかと思います。
  65. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 実はその点が非常に注目すべき点ではなかろうか、私はこういうように思うわけでございます。このBEリストの中に一般的に車両ということで書かれてあって、実際それの具体的なケースになれば、ジープだとか、ここでいわれております救急車、ステーションワゴン、ブルドーザー、こういうようなものがこれは軍需品、こういうふうに明記して書いてありますが、その中に私は入るんじゃないかと思うのですが、そういうふうなところの車両一般という中で行なわれ得るかどうか、この点を非常に注目しておるわけです。と申しますのは、昨年六千万ドル援助しました中で、具体的にインドネシアのほうでそれをBE、ボーナスエクスポートによって蓄積をした金を一体どこに使ったか。世上、これは開発その他には使われなかったので、政府職員の給料に回ったんじゃないか、このようにいわれておりますけれども、それと関連してこの問題は私は注目していきたい、このように思うわけです。
  66. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 それは必ずしもはっきりいたしませんが、せんだってインドネシアの首相以下関係閣僚が見えましたときに、今回からは輸入権の売り払い代金は別途区分をして開発に使うという方針であるという話がございました。そのさかさを考えてみますと、前回まではそれほど明確に区分されておらなかったのではないかと推測ができます。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕 そういたしますと、いわゆる一般会計というようなものであったといたしますならば、その一部が給与の支払いの財源になったということはあり得ることではないであろうかと、ただ、これは実情を存じませんので、せんだってそういう説明がございましたことの裏側を推察してみて、そういうことがあったかもしれないなということは考えられます。
  67. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 実は私、これをせんさくするのは、政府職員の中に軍隊の給料が入っておるんじゃないか、こんなようなぐあいに実は考えるわけなんです。  そういたしますと、昨年の六千万ドルに対する向こうでの資金の使い方が、政府職員ということで、まあその何分の一かは知りませんけれども、そこの中に軍隊の給料が入っておる。さらに、この日経で指摘しておるように、もし今年度の成約を待ってこういうふうな軍需品というようなものを輸出するということになると、これは非常に今度の法改正の性格の一端を物語るんじゃなかろうかというようなぐあいに、これは単なる邪推に終わればけっこうでありますけれども、私はそういうふうにも考えざるを得ないわけなんです。その辺は軍隊の給料に使われておるかどうか、ひとつはっきりしていただきたいと思います。
  68. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 もし政府委員の中ではっきり存じておる者がございましたら追加してお答えをいたしますけれども、どうも政府職員——広い意味政府職員でございますが、これに米の現物給与をしておるということをこの間も申しておりました。そういたしますと、そういう米を政府が一般会計で買いまして、そうして給与に充てておるというらしゅうございますから、その対象にいま御指摘のような人々があるいはあるのかもしれない。しかし、これは実情がわかりませんので、推測しかできないわけでございます。
  69. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 実は冒頭にこういう具体的な点を申し上げたというのは、この前の橋口委員の質問にもありましたし、先ほどの三宅委員の質問の中にもありましたけれども、今回のこういうような法改正が、一体国際協議機関といいますか、主として国連を中心にしたようなUNCTADというのですか、DACというのですか、そういうふうな流れに沿って法改正が行なわれようとするのか、それとも、俗に東京クラブといわれたコンソーシアムの流れに沿って法改正が行なわれるのか。非常にこういう基本的な問題に関係するのではないかという点で具体例を御質問したわけですが、その点、今回の法改正は一体どういう流れに沿っておるのか、はっきりしていただきたい。
  70. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 その点はインドネシアばかりじゃないかもしれませんが、インドネシアの場合におきましても、現在の経済状態から見て、プロジェクトのほかに現実の消費物資が必要である、食糧その他商品が必要であるということは、これはIMF当局もそう見ておりますし、コンソーシアムのメンバーもそう見ておるわけでございます。しかも、それを各国並みのゆるい条件で与えるというコンソーシアムのメンバーの一人の立場として申し上げますと、輸銀を使うこともできない、協力基金を使うこともできないということになるわけでございますから、協力基金の許し得るゆるい条件で商品援助をいたそうという二とで、それが法改正をお願いしております主たる目的でございますが、これはコンソーシアムの流れから見ましても、IMF等々の世界機関の考えから見ましてもほぼ同じことを要請されておるというふうに考えております。
  71. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 私がお尋ねいたすのは、経済協力一般ということでは、三宅委員指摘されましたように、先進国である以上、UNCTADの一%決議といいますか、DACによる援助条件の緩和、こういうふうな点で当然わが国も入らなければならぬというふうに思うわけでありますけれども、それが今回の法改正にストレートにいまおっしゃったように私はつながっておらぬと思う。むしろインドネシアをめぐる債権国会議というのが中心になって今回の法改正というものをやらざるを得ないようなぐあいになったのかどうか、その辺をもう少し具体的にお話しいただきたいと思うのです。
  72. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 インドネシアが緊急に援助を必要としておるということは、おそらく世界の多くの国が認めるところでありまして、昨年もこの問題がございました。わが国としては、昨年法令のたてまえから他の国と歩調をそろえることがなかなか困難でございましたために、一部を御承知のように贈与で与えることにいたしまして条件を整えたわけであります。しかし、本来先方は贈与をしてくれと言っておったわけではございませんで、返済をするという意思を持っておったわけでございますから、できるならばこれはやはり貸し付けるのがほんとうなんでございまして、ただそういう条件が現在の法令ではどうしてもできない、こういうことございました。したがって、将来また似たような国々が出てまいることも考えられますので、この際改正をお願いいたしたい、こういうことで御提案をしたようなわけでございます。
  73. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 私の疑問というのは、たとえばロッテルダムの会議ですか、大体アメリカ同額の三分の一程度、こういうふうなぐあいにきめるような向こうからの要請もあり、各国の意向というものもそうであった、こういうふうにいわれておるわけですが、それが六六年の東京会談以来、俗にどうもアメリカのドル防衛の肩がわりになるのじゃないか、こういうような批判が強いわけでありますけれども、そういう点で今回の法改正というものも引っぱられておるのじゃないか、このように考えざるを得ないわけであります。そうなりますと、長官橋口さんに御説明になったように、平和憲法という点から格差を是正することが望ましい、そういう一般論と多少ニュアンスというものが違ってくるのじゃないか、そのように私は考えるわけですが……。
  74. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 インドネシアに対する関係につきましては、わが国は従来アメリカとは同じ立場ではなかったように考えております。すなわち、前政権の時代にもわが国インドネシアに対して賠償以来ずっと援助を続けてまいりました。米国は途中で前政権といろいろ確執を生じましたことは御承知のとおりでございます。したがって、わが国の一貫した立場は、非常に独立の道に苦しんでおりますところのインドネシア国民の生計を助け、国の再興を援助するために援助をし続けてきた、このことは、いわば政権のいかんにかかわらずやってまいったように考えております。この点はアメリカ立場とは沿革的に違っておったというふうに考えておりますが、今回も従来と同じような人道的な立場からわが国のできる限りの援助を与えるということでございまして、二の点は先日橋口委員に申し上げたとおりでございます。  さて、わが国がそのコンソーシアムの中でどのくらいの負担をすべき国であるか、あるいはし得る国であるかということについては、私ども国内経済お互いによく千葉委員も私どもも知っておりますから、できるだけ少なく済ませたい。それが身分相応だと考えるわけでございますけれども、国際的には相当な工業国であるということも認められており、また、地域的に同じ地方にあるということも事実でございますから、まあコンソーシアムのみんなの意見も聞きながら、客観的に身分相応と思われる程度の援助をしてまいらなければならないだろう。それはコンソーシアムのメンバーの中で相当大株になるということも、同じ地域にある国に対するものでありますだけにやむを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  75. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 これにこだわるというのは、たとえばインドネシアに対する債権国会議をもし日本が提唱して開くとするならば、同じ債権国という点では、共産圏も約十三億くらいですか、たしか借款があったと思うわけでありますけれども、もしOECDの流れをとってほんとうに何らの邪心のないところで後進国援助するというような点ならば、債権国会議を開くにあたっても、西側の債権国会議も必要でしょうけれども、それと同時にやはり共同の債権国会議というものも当然あってしかるべきではないのか、むしろそういうふうなことが長官の言われておる平和憲法の流れをくんだ真の海外経済協力ではないのかと私は考えるわけですが、その点はいかがですか。
  76. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 将来の理想を申しましたら、私も御指摘のとおりだと考えるわけでございます。   〔委員長退席、海部委員長代理着席〕 ただ、現実の姿は、共産圏の中の主たる債権者はソ連でございまして、そうしてその援助の内容がほとんど武器援助であったということから、他の国のいたしております援助、債権と性格がかなり異なりまして、したがってソ連は今後インドネシアと二国間で交渉をしていくということになったわけでございます。これは将来の理想といたしましては、もう共産圏、自由圏にかかわりなく一つになって援助をする、それもなるべく、先ほどまさに御指摘のように武器援助などはいたしませんで、平和的な援助をするのがほんとうと思いますが、過去の実績がそうでございませんために現在の取り扱いがそういうふうに二つに分かれておる。これは理想からいえばまだまだ理想にはほど遠いということになろうと思います。
  77. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 この問題については最後にお尋ねしますが、長官がかねがね言われておる平和憲法の精神に従った海外経済援助ということになりますれば、やはり私は、国連を中心にした流れをくむ経済開発経済協力というものを少なくともやられるべきではないのかというふうに思うわけであります。単に、いまのお話しのように性格が違うというだけでいわゆるコンソーシアムを結成するということは、どうも何らかのてこ入れというようなそしりを免れないのではないか、このように思うわけであります。まして、先ほど私が具体例として申し上げましたように、昨年度の六千万ドルの援助の中で向こう政府の職員の給料に払われた、政府の職員の中には軍隊の給料もあった。これはどうなるかわかりませんけれども、しかし、三井物産なんかでも談話を発表しておりますように、この情報、この記事というものは私は信憑性があるのじゃないか、そういうふうにして、ことしの援助額がまだきまらぬわけですけれども、きまるのを見越して、大体内諾のところにジープだとか救急車とかステーションワゴンというものがもうすでに話し合われておる。こういう問題は、どうしても先ほど私が言いましたような何らかのてこ入れという印象を非常に国民に与えるのではないか、このように思うわけであります。  そういう点、巷間伝えられておる日経の記事というものが今後もし具体的に出てきたならば、一体どのように対処されるお考えであるか。そうなりますと、一般新聞紙上に軍需品など約八十億というふうに明記されておるわけでありますから、国民の疑惑というものも非常に高まってくるのではないか、このように考えるわけであります。いまは新聞記事の段階でありますけれども、これがもし現実に起きてきた場合にどのように対処されるか、その点はっきり、確約といいますか、確言を得たいと思います。
  78. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 過去におきまして、インドネシアをめぐりまして、米ソあるいは中共等のイデオロギーの対立がかなり渦巻いたことは、これは事実であったと思います。しかし、わが国は一貫して前政権とも友好関係にありましたし、現政権とも友好関係にございます。これは午前中三宅委員が御指摘になりましたように、わが国がもはや他国に対して軍事的意図を持たない、またそれらの能力をみずから放棄しておるということの結果であったろうと考えます。   〔海部委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、今回までのコンソーシアムがこういうふうに分かれましたのは、過去のそういうイデオロギー的な対立のやはり残滓であるというふうに考えております。米ソ関係もだんだん緩和されてまいりまして、将来の理想としては、そういうことがなくなって、インドネシアに対する援助も武器などでなく、平和的なものになることが願わしいのでありますが、わが国は一貫してそういうことをやってまいりました。また、そういう憲法を持っておるわけでございます。したがって、今回援助いたします際にも、BEの対象に兵器が輸出される、輸入されるということは、これはたてまえとして認めない。ネガチブリストに入れておるわけでございますから、そういうことは今後とも許さない、こういう立場であります。具体的に、ジープあるいはワゴンのごときが兵器であるかないかということになれば、それは常識的には兵器ではないというふうに考えるのが穏当かと思いますが、いやしくも兵器であるということになりますれば、これはネガチブリストでインドネシア側が輸入することは認めない、そのためにはボーナスエクスポートは使えないということでございます。
  79. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 ジープが兵器であるかどうかという点につきましては、私もさしあたり確信はございませんけれども、くどいようですが、向こうの国防省とこの話が話し合われておるというところに、直接大砲とか火薬というものではないでしょうけれども、やはり軍隊で使われるという点については、軍需品といいますか、それに変わりはないと思うのです。最後に、もし将来こういう巷間うわさされるものが現実にこの六月なり七月に起きてきた場合には、そういうふうなつもりで対処されるのですか。
  80. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ネガチブリストに載っておりますものにつきましては通産省で認証を一つ一ついたすわけでございますから、その際に、いやしくも兵器であるといったようなものについてはこれを認めないというのが政府態度でございます。
  81. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 この問題はこのくらいにしまして、次に、従来まで行なわれておったインドネシア賠償から始まって、賠償による援助といいますか、賠償を担保にしたところの援助その他の緊急援助という、いろいろの援助がありましたし、中には、最近問題になりました例のリファイナンスですか、そういう形の援助ということもあったでしょうが、こういう点、インドネシアに関する援助というのは、八〇%ほどがほとんど有効ではないというふうにいわれておるわけですし、従来からもそれに伴ったいろいろのスキャンダルなども起きておるようでありますけれども、橋口さんのお話にもありましたような、たとえば三Kダムを例にとりまして、私どもが援助として出した金が一体向こう開発に実際に具体的に役に立っておるのかどうか、そういう点、どのようにお考えになっておりますか。
  82. 上田(常)政府委員(上田常光)

    ○上田(常)政府委員 お答え申し上げます。インドネシア賠償、もしくは賠償を担保として出しましたいろいろなものが、先生御指摘のとおりに必ずしも当初の目的を完成しておらないものがあるということは事実でございまして、そういう意味におきまして、一〇〇%所期の目的を達した、もしくは一〇〇%相手の国の経済発展に寄与したとはいえないことは事実でございます。  ただ、これはその理由を考えてみますと、その場合、必ずしもわれわれの側の理由ばかりではございませんで、あるいは先方の政変以来の国内事情による現地通貨の不足その他の理由によってできてないものもございます。しかし、たとえば賠償賠償担保をとってみますと、大体三十二のもののうち完成しているものが十幾つございまして、機材だけを渡すようなものが六つあります。あとのまだ完成していないものは十一くらいでございます。いまおっしゃいました三Kダムなどはまだ完成してないほうに入っておるわけでございます。そういう意味で、必ずしも完全ではございませんけれども、さりとて、そう全然相手の国の経済復興に寄与してないとか、あるいは全然むだであったというようなことは毛頭ないと存じております。  なお、三Kダムにつきましては、まだ本年度の援助の額もきまっておらないものでございますから、まだ本年度の手がついておらないのでございますけれども、これにつきましては、インドネシア側も、またわれわれのほうも額がきまり次第さっそく手をつけて完成したいと考えている次第でございます。
  83. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 実は、従来までの援助というのが具体的にどうであったかということを正確に調査するということは、今後のあり方にも非常に関係してくると思うわけです。必ずしも十分じゃないというお話がありましたが、先ほど私申し上げたように、一般的に巷間八〇%はだめだ、こういわれておりますから、その辺の食い違いは非常に大きなものがあるのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  ですから、たとえば具体的にそういう三Kダムの場合はどうだとか、さらにその他の鉄道、有名な、鉄骨だけでそのまま引き上げてきたというホテルといいますかデパートですか、そういうような二、三の例をあげて、必ずしも巷間伝えられるような八〇%はほとんどむだであるという、そういう意見のものではないというもし確信があるならば、具体的な例をあげてひとつお示し願いたいと思う。
  84. 上田(常)政府委員(上田常光)

    ○上田(常)政府委員 お答えいたします。この援助と申しますと、先ほど私が申しましたのは、賠償及び賠償を担保といたしました借款でございますけれども、そのほかに昨年度出しましたような援助、つまり借款でございます。もちろん借款を含めて考えなければいけないわけでありますが、そこで八〇%効果がなかったというが、算定のしかたに実はいろいろあってむずかしいと思うのでございますけれども、たとえば昨年度出しました六千万ドルのいわゆる借款について考えてみますと、これは第一の目的が、現在インドネシア経済におけるインフレの収束、経済を復興する前にまず安定させるということ、そういう目的のために各国と協同いたしましてわが国も六千万ドルの借款を出したのでございまして、その結果どうかと申しますと、たとえば物価の上昇率を見ましても、一九六六年と六七年を比較してみますと、昨年は物価が大体二倍くらい、その前の年を見ますと、もっとこれは七倍にも八倍にもなっていたときもあった。もちろん完全に所期の目的を達しているとは申せませんけれども、これは何と申しましても、インドネシアの経済の混乱の根が深いのでございますから、なかなかそう一朝一夕には直らぬと思いますけれども、しかし、インフレ収束の点につきましても徐々に安定の方向には向かっていると言えると思うのでございます。  それから、なおまた賠償及び賠償を担保といたしましたものについて例を示せという御指摘でございましたが、たとえば賠償を担保といたしましたもの、これは先生方インドネシアにおいでになりました方々が必ずお泊まりになっていらっしゃいますホテル・インドネシアでございますが、これは賠償を担保といたしまして建てたホテルでございまして、現在ジャカルタではもう外国人が泊まるホテルと申しますとこれしかございませんし、これはまたオフィスも不足しているものでございますから、ほとんど半分はオフィスのように使われておる。これは非常に効果があがっているといわざるを得ないと思います。それからまた、御指摘がありました百貨店でありますが、サリーナ百貨店などもやはり賠償を担保として建てたものでございますが、これもジャカルタの町でりっぱに経営をいたしております。  ただ、先生がおっしゃいました三Kダムについて見ますと、先ほど私が申し上げましたように、これはまだ所期の目的を達しておりません。具体的に示せという御指摘でございますので三Kについてちょっと申し上げますと、まず三Kダムは東部ジャワにございますカランカテス・ダムとそれから同じくカリコント・ダム及び南カリマンタンのリアムカナン・ダム、この三つが俗に申します三Kダムでございます。これはいずれも多目的ダム、つまり洪水の調整及びかんがい並びに発電というようなものでございますが、このうちカランカテス・ダムにつきましては、仮締め切りダムとそれから仮拝水トンネルは完成いたしました。ただ、まだダムの本体のほうが完成いたしておりませんので、約一四%程度でございます。それからカリコント・ダムにつきましては、これも仮排水トンネルは完成しておりますが、ダムの本体のほうはいま基礎工事を実施中でございます。なお、リアムカナン・ダムにつきましては仮排水トンネルと仮締め切りダムを施工中でございます。
  85. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 インフレの収束について非常に効果があった、ある程度効果があがったといいますか、その点については事実だろうと思いますが、たとえば六六年に緊急円借款をしましたね。三千万ドルですか、このうち、たとえば生活に非常に密接だと思われる農産物のための肥料、これは一昨年の六六年では七百四十万ドル、昨年の六七年では五百三十万ドルというぐあいに、肥料も六六年よりは六七年のほうが少なくなるというような事態が起きておる。一体これはどのように理解すべきか。さらに、各国から昨年二億ドルですか、それがきたときには、なるほどおっしゃるとおり一時はインフレが収束したでしょうけれども、ことしの旧正月を境にまた端境期になって上がってきたということになると、何といいますか、ちょうど砂に水をかけたような、何らあとに残らないで、ただ吸われっぱなしではないか、こういうような感じが非常に強いわけですけれども、この辺はどういうようにお考えになっておられますか。
  86. 上田(常)政府委員(上田常光)

    ○上田(常)政府委員 お答え申し上げます。実は、インドネシアの物価のとり方でございますけれども、場所によりましても、厳密に申しますと、たとえば米をとってみましても、ジャカルタの米の値段とスマトラの米の値段では非常に違いがございます。それからまた、先ほど私は年間を通じておよそこのくらいと申し上げたのでありますけれども、その一年の間にもいろいろ、たとえば端境期になりまして米が少し出回らなくなりますと、そのときには一般に物価が少し上がってくるというようなことがございます。特にいま先生御指摘の、昨年の終わりごろから今年の初めにかけますと、これまた少し一般の物価が上がっておりますが、これは実は各国が昨年初めに与えました援助による外貨をすぐ使い果たし、しかも、それがちょうどだんだんお米の端境期にかかり、片や昨年干ばつがございましたというような関係等、悪原因が重なりまして、昨年の暮れくらいからことしの初めにかけましてやや物価が上がってきて、不安定な様相を示しておるということはございます。でございますから、地域的にまた期間的に、同じ一年の中でも月によりまして相当動いておるということは事実でございますが、ただ、全般的に見てまいりますと徐々にいいほうへ向かっておるといわざるを得ないのじゃないかと考える次第でございます。
  87. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 それでは、外務大臣が忙しいそうでございますから、いまのことは一時中断して、外務大臣にひとつお尋ねいたしたいと思います。  ことしの先月二十四日、インドネシアのセダ大蔵大臣でございますか、閣議後の記者会見で、日本援助状態が非常におくれておるならば経済的な報復をとらざるを得ない、このようなふうに言ったそうであります。これは新聞に報じられております。その具体的なあらわれが今月に入ってから、九日明らかになりました例の大使館の査証料、これが問題となって出てきたわけでありますが、一体私どもの援助がおくれると——従来からいろいろな形の援助があったわけでありますが、いまに相手のほうから経済的な報復措置をとられなければならぬということ、これはガットで禁止しておるそうでありますが、こういうような措置として大使館の査証料、特にほかの国と比べれば非常に率の高い〇・四%というのが出ておりますが、そういうふうな事態に処しまして、外務大臣どのようにお考えになって、どのような措置をとられておりますかお尋ねします。
  88. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 セダ君がどういう発言をしたか、国内的ないろいろ事情もあると思いますが、いずれにしても、インドネシアの経済安定再建に対しては、日本はこれはもう非常に大きな援助をする国であることは間違いないのでありますから、報復というようなことがインドネシアから日本に対してとられるというような意味のものではない。大使館の経費のために千分の〇・四ですか、そういうのを援助以外のインボイスに対して査証料をつける、そういうことを大使館がやり始めた。これはもう日本インドネシアの通商条約にも違反しますし、ガットの勧告もあり、五月九日ですか、西山大使を通じて、これはもう直ちにそういうことはやめてもらいたいということでいま交渉をしておるわけであります。どうも現地の大使館の発意でそういうことをやった、こういうのですけれども、しかしこのことは、いま申したように条約違反でもございますので、外交交渉を通じてそういうことを一日も早く解消するように努力をしておる次第でございます。これを日本に対する経済報復とはとっていないのであります。インドネシアというのは、日本援助というものをインドネシア自身が非常に大きな期待をしていますし、だから真正面から報復というような性質のものではないと思います。
  89. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 報復ということばは、これは新聞紙上で報じられたことであります。形を変えて、ほかの新聞では援助を牽制球というふうにいわれております。これが多少のかけ引きにはなっておるのでありましょうけれども、しかし、そういうふうな日本インドネシアとの関係において、経済報復ということばは非常に悪いかもしれませんが、そういう、逆に相手政府が出てくる空気といいますか、態度といいますか、そういう問題——この前に三宅委員も言われましたが、アメリカが海外援助をし三実際あけてみればあまりありがたがられてもいない。日本だってエコノミックアニマルといわれて、実際には警戒をされておる。これは一つの象徴的な事件であろうと思うのです。やはりかけ引き上の牽制球であれば幸いでありますけれども、そういうふうに相手の側が必ずしも日本の従来の援助について、フランクにお互い同じ方向を向いてともにやっていこうというわけではなかろう、これが私は非常に問題だろうと思う。その点、外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  90. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 私どもがやはり海外の経済協力というものをやります場合に非常にわれわれが苦心するところは、新興諸国はわりあいにものの決定が民主的な形はとっておりますけれども、大統領とかなんとか、そういう地位の人がそのことは非常にきめやすいのですね。ところが日本の場合は、これは非常にいいことだと思いますが、国会においても非常に健全な野党勢力を持っておるわけです。だからなかなかちょっとしたことは承知しないのですからね。そういうことで、インドネシアからすれば、もっとやはり日本政府援助を行なうに際しても、まだ国会で基金法が通らないでも、大体これくらい援助するというようなことのコミットメントを与えるくらいのことはできるであろうと考えているのですよ、向こうは。ところが日本の場合は、日本政府というものはそんな自由に、いろいろな国会の法案などの根拠なくしてよその国に援助を約束するようなことはできないのですね。それは、国会においてもそういうことをやらなければたいへんなことになる。そういうことでその間のギャップがあるのですよ。向こうから言えば、それくらいのことはできそうじゃないか、こちらから言えば、こちらはたいへんな批判の前に常に政府は立っているわけですからね。そのギャップが、何か日本が好意を持たぬような印象、日本の何かセルフィッシュな、やればやれることをやらないんだというように通ずる場合がある。この点はわれわれとしてもやはり今後とも努力していかなければ、日本はやれることをやっていないという感じを持たしておるのですね。こっちはやれるだけのことはやっておるのだけれども……。日本政治形態からくるところのひとつの民主主義が非常に徹底しておるわけですね。そういう意味でギャップがあることは事実で、今後とも、この点は外交上においてもやはりもっと日本を理解させるための努力はしなければいかぬ、そういうことだと思います。
  91. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 たいへんおほめをいただいたわけであります。  最後に一言だけ、ひとついまの問題に関して、西山大使を通じて厳重な抗議を申し込んだそうでございますけれども、表向きの理由になっている大使館の費用に充てるために、かりに〇・四%ではなくても、ある種の品目に限って定額というのはガットでも一応認めておるところだそうでありますが、そういう点、今後の話し合いで完全撤廃をさせるというのかどうか、それとも話し合いによっては、ある種の品目に限って定額というところまで妥協して大使館の費用を生むのか、その点の見通しを聞いて、外務大臣の退席をいただきたいと思います。外務大臣に対してはこれで終わります。
  92. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 この海外経済協力基金も、皆さんおそらく御承認をいただけると思いますから、そうなってくれば、日本インドネシアに対しても、援助というものに対して日本態度を明らかにすることができますから、そういうことでこの問題は私は解消する、こう考えています。だから、率をどうこうというのでなくてこれは根本的に解決をしたい。インドネシアの本国政府も、こういうことに対しては、大使館のその処置というものを承認していないという報告をわれわれは受けておるわけであります。したがって、これは解決するというふうに考えております。
  93. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 それでは、前の質問に移りたいと思いますが、先ほど日本援助が一〇〇%とまではいかなくても、有効に使われておるのか、多少相手の国の内政干渉になるような話も非常にあると思うので、私も恐縮なんですけれども、これは日本の国民の血税の中から金が出されておるので、そういう点で多少くどく話を申し上げるので、誤解のないようにしていただきたいと思うのです。  それで、長官にお尋ねしますが、最近インドネシアでは例の国会議員の自動車購入にからむスキャンダルといいますか、大問題になっておるようでありますし、暫定国民協議会の中では総選挙を大体延ばすというふうな取りきめもやっておるようでありますが、そういう意味で、今後インドネシアの政情、国情というものが、ほんとうに安定と復興の方向に向かっておるというふうにお考えになっておるのでありますか。その辺の長官の見通しといいますか、そういう問題をお聞きしたいと思うのですが……。
  94. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 私も千葉委員と同じように、相手の内政に干渉にならないようにと、同じ精神で遠くから見ておりますことを申し上げるわけでございますが、過去を振り返ってみますと、本来インドネシアが経済をつくり上げるという過程では、やはり農業あたりからじみちに始めまして、食糧需給をまず安定させて、そうして中小企業を育て、さらにその上で大きなプロジェクトをやっていくというふうな道をとるのが一番じみちなやり方ではなかったかと思います。事実は、しかしなかなかそういう方法では、政権をとっております指導者が国民に非常にはでに映るような——農業なんてものははでなものでございませんから、これはいわば人心を収攬する短期的な方法としては、とかくはでに映るものをやりたがる。これは悪意ではありませんでも、ありそうなことでありますが、そういったようなふうにかなり従来の援助が使われたのではないだろうか。そして、先ほど外務省の局長からお話のありましたように、プロジェクトも途中までいきまして未完成のまま置かれておるということであれば、結局これは千葉委員の言われるように、現在の生産面における効率はゼロであるということになってしまう。ただ、投資としてはゼロではない。残っておればその次がいけるわけですが、生産には何ら当面貢献しないという、そういう無計画性というものがやはりずいぶんあったのではなかろうかと思うのでございます。ですから、その点はまたBEについても言えることでございまして、あとは輸入権を売りましたら、それを別途に会計に積みまして、その会計を産業投資なら産業投資に充てる、こうしていきましたら、ちょうどわが国の場合見返り資金がいまの開発銀行になりましたようなああいう資金の循環が起こって、そして産業投資が進んでいくのでございますけれども、これを人件費か何かに払ってしまいましたらいっとき限りのことになるわけでございます。およそ、そういう産業政策及び財政政策両面で計画性を欠いておったのではないだろうか、これが援助が十分な効率をあげ得なかったかなり大きな部分の原因ではないかと思うのでございます。また民生が安定しない原因でもあろうと思います。どうもその辺のことに、せんだって皆さん見えて話をしていますと、かなり気づいておられるようでありまして、そういう面ではだいぶん問題がわかってこられたのではなかろうかと思うのでございます。しかし、これで政治の面で民主主義というものがわれわれの考えたような形で確立されていくのか、あるいはまた別の形の安定になるのか、その辺は、国民性も違いますし、よその国のことで何とも、ことに私にはわかりかねるのでございますが、経済政策の面では、いままでなぜ成功しなかったかということがかなりわかってきておるのではないだろうか。国際関係が一般に安定いたしましたら、それもインドネシアの再建には好材料になるだろうと思われますので、民生安定といったような面から見れば、私は、徐々にではあってもいい方向に向かうと期待してもいい理由があるのではないかと思っております。
  95. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 何でも六九年から新しい五カ年計画をインドネシアでは実施する、このように言っておるそうでありますが、例のロッテルダムの会議で取りきめになったといわれておる三億二千五百万ドルですね。そのうち大体商品援助を期待しているのが二億五千万ドル程度、あと七千五百万ドルですか、これはプロジェクトを期待しておる、このように言われておりますね。もし日本が現在この審議しておる六千万ドルに減額になったならば、おそらく三億二千五百万ドルというのは減って二億ドル以下になるのじゃないか、もしそのように仮定するならば、そうすると単なるインフレ収拾だけにまた今年度も終わってしまうのではないか、これを毎年毎年繰り延べていけば、だんだん負債の償還期限も来ておるでしょうし、悪循環を繰り返す、いま仮定の話で言いましたけれども、そういうふうなことになるのじゃないかと思いますが、そういう点の見通しはどのように見ておられますか。
  96. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ロッテルダムの会議は、私も報告を聞いたそれに基づいて申し上げるのでございますけれども、三億二千五百万ドルということは、別段総体の数字としては確定をいたさなかったようであります。それは一つには、わが国のように最終的な態度をきめ得ない立場にあった国があるからでもありますが、他方で国際機関の援助等がどうなるかということも明確でなかったからでもあるようであります。そうして、今後を考えてみましても、わが国からどういう援助をするにいたしましても、それは商品援助の部分が相当あることは、これは間違いないと思いますが、一部はプロジェクトがあるかもしれませんけれども、また一部は食糧援助があるかもしれないと考えられますが、今年の場合、プロジェクトというものは、おそらくは大部分のものが従来やっておりましたものの仕事の続き、たとえば先ほどの三Kダムのごとき性格のもの、あるいは現にあります設備の補修、そういったようなものにこの際は限られるようでありまして、先方の当面の目的は消費物資を入れて、そうして民生を安定させて、他方で財政で開発資金をつくる、こういうのが目的のように思われるわけであります。  ですが、この商品援助というのは、毎年毎年長く受けておるというのはほんとうは本筋のことではございませんから、それである程度消費物資が入り、貨幣の価値が安定に向かえば、やはり今度はそのプロジェクトのほうへ基礎的なプロジェクトから始めていくべきものだろうと思いますから、先々はそうなるのがよろしいのだと思いますが、今年はインドネシアはとてもそんな事態でない。とにかく民生と貨幣価値を幾らかでも安定さしたい、こういうふうに考えておるようでございますから、インフレを促進するようなはでなプロジェクトをまた新規に始めるというようなつもりではないように見受けております。
  97. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 インフレを防ぐに精一ぱいだというお話、十分わかりましたが、向こうで立てておる五カ年計画というのが、長官の見通しでは順調にいかれるというような見通しを持っておられるかどうか。
  98. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 何かこれは議会のようなところで、長期計画としては農業とそれから交通、通信、港湾といったようないわゆるインフラストラクチュア、それをやるという基本方針が何か確認されたのだそうでありまして、具体的には何もまだきまっていないのだそうでございます。これが成功するかしないかということは、結局政治の指導者、それから国民一般の資質とか働く意欲とか、最終的には結局人の問題にかかってくるというふうに申し上げるべきではないかと思います。
  99. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 何でもスハルトさんのブレーンの学者の見通しだそうでありますが、経済自立のめどは七四年ごろだろう、で、本格的に実質的な開発に進むのはそれから五年過ぎた七九年だろうというのが、何でもブレーンの人の話だそうでありますが、そうなると、現在暫定協議会ですか、この中で問題になっておるという五カ年計画もずっと先のほうにずれておるわけですね。ですから、そういう点から考えてみても、民生の安定といいますか、そういうものをはかるための今度の処置というものは、どうもいままでやった繰り返しにすぎないという印象、それから、従来からインドネシアにまつわる日本の投資なり融資なり援助というものが単なる浪費に終わったというようなそういう国民の印象が深いだけに、今回の場合は非常に慎重にあらゆる角度から検討を加えなければならぬのじゃないか、私はこのように思っているわけです。そういう問題について、いま言われた、一時しのぎと言っては失礼ですが、そういったとりあえずの処置というふうに今回の場合は考えておられるのか。長期的な観点からどのようにお考えになっておるのか。くどいようですが、もう一ぺん……。
  100. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 それはなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、いまから十五年ほど前でございますが、前の第一次大戦後のドイツのインフレを収束させました例のシャハトでございますが、シャハトに会いましたときに——当時シャハトはインドネシアの経済顧問をいたしておりましたが、インドネシアの経済のために私は三つのアドバイスをしておる、それは、第一も働けということ、第二も働けということ、第三も働けということであると言ったことがございます。おそらく同じ事情がいまでもあるに違いないと思います。国民が働くというためには、腹が減っては働けないわけでございましょうから、それで商品援助ということも必要であろうと思います。国民がそういう意識を持つかということ、及び政治の指導者が国民のそういう意識をふるい起こさせるだけの資質を発揮できるかどうかということ、それがしょせんは、この五カ年計画が成功するかしないかということのかぎになるのではないだろうか。私どもは、そういうふうに国がなっていくためにできる限りの援助をしていきたい。しかし、しょせんはインドネシア国民自身の決意なり資質にかかることであると思います。
  101. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 大蔵大臣がおいでになったようでありますから、観点を変えまして大蔵大臣にお尋ねしますが、今度の援助をするにあたって、国際協力ということをかみ合わせながらやるのだ、このように先ほどお話があったのですが、最近のインドネシアに対する各国の企業の進出状態、これを見ると、実際は、協調しながら開発援助するというよりも、たとえばニッケル、ボーキサイト、この両品目の国際入札といいますか、そういった問題を見てみますと、実は非常に激しい各国の資本の間の角逐があるのではないかというふうに見られるのです。  そういう点で、先ほどお互い国際協力をし合いながらやっていくのだというお話でありましたけれども、実際は非常に激しい資源のぶんどり合いというものが展開されておるのが事実だろうと思うのですけれども、その点、どのようにお考えになっておりますか。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕
  102. 奥村説明員(奥村輝之)

    ○奥村説明員 現在まで私どものほうは、インドネシアに対しましては林業あるいは鉱物資源、その他の資源開発のためにPS方式ということで、これは生産分与方式でございまして、いわゆる資本の投下による出資という形ではございませんけれども、そういう形で協力をしてまいりましたが、今後ともそういうふうな資源の開発日本経済の発展にも役立つ、またインドネシアの経済開発にも役立つというものについては、有効な計画である限りは進めてまいりたい、こういう考え方で臨んでおるわけでございます。
  103. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 たとえば一例を申し上げますと、この間のニッケルの開発権の争奪戦といいますか、例のスラウエシ島のマリリ鉱山の開発権をめぐりまして、わが国からニッケル製錬五社が盛んに調査団を派遣し、使節団を派遣したりして参加しましたが、結局カナダのインターナショナル・ニッケルというのですか、俗にインコと言われておりますが、インコにさらわれてしまった、こういうこともあるわけです。  ですから、先ほどからずっと話がありましたように、コンソーシアムによってそれぞれ分担し合いながら経済開発をやるというような表向きの話がありながら、実際に中身の問題に入ってしまうと、そういうような各資本間の角逐といいますか、争奪戦というものがあるので、その点先ほど大蔵大臣は、国際協力をし合いながらと言いましたけれども、それとこれとは非常に違った要素があらわれているのではないか、その点についてどのようにお考えになっているのか。
  104. 奥村説明員(奥村輝之)

    ○奥村説明員 先ほどお答え申し上げましたように、PS方式でいままで出しております金は三千万ドルをこえる金でございます。スラウエシのニッケルその他、国際的な各企業が関心を持っている事業もあることは確かでございます。しかし、各国ともそれぞれ資力に限度もございますし、いろいろな問題がございますので、私どもとしては先般来、債権者会議というもので協力をしていく、また資源開発その他についても、日本も資力に限度がございますから、その中でやり得るものをやっていくということで、これは決して矛盾するものではないと思うわけであります。現在まで私どもとしては、お互いのためになるものについてはかなり手をつけているわけでございまして、企業間の問題ももちろんあろうかと思いますが、政府ではいかんともいたしがたい事情もございますので、その点で、決して両者は矛盾するものではないと考えております。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 決して矛盾するものではないというあれでありましたが、おもなる鉱産物のうち、銅をとってみても、ニッケルをとってみても、ボーキサイトをとってみても、石油をとってみても、すずをとってみても、インドネシアで産するといわれているそれぞれの品目についてみても、いまニッケルだけ申し上げましたが、つけ加えてボーキサイトについて申し上げますと、従来スマトラの近くにあるビンタン島をやっておったそうでありますが、それ以外のすべての開発権というものはアメリカのアルコア社に独占されてしまった、こういうような現実があるわけです。ですから、いま申し上げましたように、ニッケル、ボーキサイト、銅、すず、石油、こういうようないずれの品目をとってみても、そういうような激しいつばぜり合いがあるので、これは民間の資本だけだといってしまえばこれは別でありますけれども、民間の資本同士のけんかであるというふうにいってしまえばこれは別ですが、いま申し上げましたように、さっきからこの援助にからんでコンソーシアムというような、パリ会談だ、ロッテルダム会談というふうにしていろいろやっておきながら、反面こういう事実が起きているのを、くどいようですが、どのようにお考えになっておるのかということを申し上げておるわけなんです。
  106. 原田政府委員(原田明)

    ○原田政府委員 インドネシアが先生御指摘のような鉱物資源、木材資源等に非常に富んでおって、そのために世界各国がこれに目をつけているということは御指摘のとおりでございます。現に、インドネシア側も昨年の一月に外資導入法を制定いたしまして、本年二月までに三十数件外資導入の認可をしたということが伝えられております。ただ問題は、インドネシアの経済、政情不安ということのために信用のあるパートナーが不足しておるとか、現地資金の調達が困難であるとか、インフレが解決しないといったような問題のために、現実の具体化された投資として進んでまいりますにはまだ相当の困難があるということでございまして、各国ともその困難を解決しながら、しかし相手国の経済のためにもなり、ひいて投資する国の側にとっては資源開発に役立つというような投資を進めようとしておる現状でございまして、私どもも、そういう投資環境の整備あるいはその他の状況の改善によりまして、御指摘のような分野でインドネシア経済に貢献をしながら、しかしほかの先進各国におくれをとらないように努力をしたい、かように考えております。
  107. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 ほかの先進各国におくれをとらぬようにという話の趣旨は私もわかりましたけれども、先ほどから言っておりますように、もしコンソーシアムというお互いの取りきめで援助をやる、悪くいえば、国家資本によってそういうふうな——これは別な観点ですが、国の資本によって一応地ならししておいて、いま言ったように、ある場合には三菱商事を中心にした木材の開発とか、ある場合には昭電、住友のビンタン島の開発とか、そういうふうなぐあいに、観点をかえていえば、地ならしをしながらこちらもやっていくのだ、こういうようなお考えであるかどうか、そのように見るのは非常にひねくれた見方であるのかどうか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  108. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 それはやはり先ほど言われましたように、これは別な話だというふうなお尋ねであって、別な話として申し上げたほうがいいのではないかと思いますが、コンソーシアムのほうはコンソーシアムでありまして、資源開発というほうは民間の、たとえば先ほどアルコアの話をなさいましたが、そういったような企業の進出する力が強いところが進出していく、結局、これは一つは資本力の問題であろうと思うのでございます。相当長い期間を覚悟して投資をするということになりますと、ある程度それを国が助けることができるとしましても、その国の助ける条件いかんも、非常にいい国と悪い国が——企業の背後にある国でございますが、ありますし、企業自身の蓄積もまた国によって非常に違います。どちらかと言えば、わが国の企業は蓄積はようございますし、政府の支援体制も、諸外国に比べれば相当条件はからいわけでございますから、そういう点についてはなかなか思うようにまいらぬところがある。しかし、これはその援助あるいはコンソーシアムとは一応全然別の話という意味のお尋ねとして承りますし、またそういうふうに私もお返事をしておるわけでございます。
  109. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 時間も来たようでありますが、最後に、いまの問題についてさらに別な観点から言えば、ナショナルインタレストのお互いの衝突という点についてお尋ねしてみたいのですが、コンソーシアムの中で、少なくともアメリカも三分の一、日本も三分の一、同額程度を負担してくれ、現に、いまきまっているアメリカ援助額は六千万ドル、日本の出方をうかがっておるのではないかというふうに巷間伝えられておるわけですね。まあ行く行くは三億二千五百万ドルのうち、できるならば一億一千万ドル、しかし、まあおそらくいまの模様では九千万ドルに日本のほうで値切るのではないか、それからいや八千万ドルも出さないのではないか、いや六千万ドルぐらいだろう、いろいろいわれておるけれども、長官も、相手のある話だからということで、額の点についてはいまだに明示をされておりませんけれども、そういうふうにコンソーシアムという中で日本はある程度分担をしいられてくる。そうして、いま申し上げましたように、その裏ではそれぞれの国の資本がお互いにぶつかり合っている。何といいますか、こういう姿を見ておりますと、私は基本的には、資源を確保するという点ではナショナルインタレストに通ずる意味で、いいとか悪いとか断定は下してはおりませんけれども、そういう点でやや国力にふさわしくないような分担をしいられて、実際中をとってみれば、銅にしても、ボーキサイトにしても、ニッケルにしても、全部主要なる鉱山資源というのは資本力とかなんとかということで、け散らされておるというふうな姿をどのように見るか、そういったことが国際協力という美名の中でもし行なわれておるとするならば、日本の国民の血税が、はなはだ事志と違うようなところに結果として使われていくのではないか、このような心配をしておるわけです。  そういう点について最後に、何といいますか、せっかくの金が決してむだにならないように使われるという保障なり見通しというものをお尋ねしてみたいと思います。
  110. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 お尋ねの含意はよくわかっておりますが、コンソーシアムによる援助は、今日は、三宅委員が御指摘になりましたように、そういう考え方でやるべきものであって、両国の関係が一般的にそれによって友好関係が増進される、日本に対する信頼を先方も深める、そういうことの結果、資源開発でもひとつまたやってくれるか、それではこちらも民間ベースでやりましょう、そういったような友好関係と理解の上に基づいてなされるべきものだと思うのでございます。先方から申しますれば、相当な資源を持っておるわけでありますから、これをどういう形で開発するかということは先方の国にとっては一つの切り札でございましょう。一番自分たちの国益に沿うように開発を許可するということは、先方としては、当然の立場であろうと思います。ですから、私ども、援助というものとそれとを、千葉委員も結びつけておられませんので、私も結びつけずに、むしろ援助は両国の親善関係をそれによって深めることができる、その結果、またわが国の技術なり何なりに信頼をして、資源開発もひとつ一緒にやらないか、こういうふうに進んでいくのが理想的な状態なのではないだろうか。お答えとしては、多少御質問の含意よりきれいごとのお答えをしておるかもしれませんが、考え方はやはりそういうものであるべきだろうと思います。
  111. 千葉(佳)委員(千葉佳男)

    ○千葉(佳)委員 それでは最後に、先ほど申し上げましたが、要望です。冒頭に申し上げましたような、ジープその他の軍需品が、今回の国会の模様を見ながら、もしこれがきまった場合には直ちに成約する、本契約ができる、そういうふうな事実が起こらないように、そして、そういうものが非常に国民の疑惑を生みますから、決してそういうことが——私の単なる杞憂に終わればいいわけでありますが、しかし、これが円借款で行なわれるというふうに新聞でも報じられておりますし、三井物産のほうでも談話を発表しており、信憑性が非常に高い新聞記事じゃなかろうかというふうに私は見ておるわけです。そういうものがゆめゆめ起こらぬようにしてほしいというのが希望的な意見であります。意見というよりも、その辺に強くくぎをさして、私の質問を終わりたいと思います。
  112. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 佐野進君。
  113. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大蔵大臣が、五時からどうしても所用があるということで席をはずされるということですから、大蔵大臣にしぼって、五時まで質問をいたしたいと思います。関連する質問がほかの大臣に出るかもわかりませんが、問題は大蔵大臣にしぼりたいと思います。したがって、質問の方法が若干ずれてくるわけですが、その点は、ちょっと唐突になるきらいもありますが、御了解いただきたいと思います。  まず最初に、大蔵大臣は、かねて、ことしの予算の編成について、いわゆる補正予算を組まない、あるいはまた、総合予算主義を貫く、こういうことをたびたびあらゆる機会において発言しておられるのですが、その場合におきましても、災害等突発事故が発生した場合には除くという留保、それもできるだけやらないでいくという答弁が繰り返されておるようでありますが、いま起きつつある十勝沖地震災害というような問題と関連し、今年度予算については当初のその方針を貫くという考えのか、補正予算を組むというぐあいに方針を変えざるを得ないという考えなのか、この際冒頭にお聞きしておきたいと思います。
  114. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 非常に大きい災害があるというような場合は別でございますが、通常の災害の場合ならば、本年度は十分そういうものにも対処し得る予備費というものを充実さしてございます。また、そういう問題が起こりましたときには、ひとり予備費の使用だけじゃなくて、やはり既定経費の活用もいたします。たとえば今回のような災害、これはまだ実情を把握しておりませんので何とも申し上げられませんが、いままでの新潟地震そのほかの地震の例から見ましても、本年度はそういう既定経費の活用、予備費の使用によって十分対処し得る、予算補正なくしてもやっていけるというように私はいまのところは考えております。
  115. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そうすると、現在の地震の災害の程度がわからない、わからないけれども、いまの見通しでは、予備費の流用等によって、補正予算を組まずともやっていけるのだ、こういうような答弁でありますが、そうすると、いま問題になっている海外経済協力基金法の改正に基づいて、インドネシアへ、援助金等を含め六千万ドルの援助をするということがかねて言明され、予算にも計上されているわけですが、しかし、巷間伝うるところによれば、ロッテルダム会議、あるいはスハルト大統領の来日、そういうような経過の中で、当然増額が確約されつつある。あるいは政治的な表現としてそのことは言明でき得ないけれども、実質的な取りきめとしてはすでに確約があるということが世上一般に常識化している。しかも、その金額が三千万ドルあるいは二千万ドルというように具体的な数字まであげられて世上流布されているわけですが、これらの予算、これらの金額は出すのか出さぬのか、上積みするのかしないのか、あるいはまた、せざるを得ないという場合においては、それではどこから支出をするのか、この点をひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  116. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 御承知のように、昨年は全く予期しない問題が起こりまして、どうしても輸銀だけで援助するわけにはまいりませんで、予備費等の抱き合わせによって処理するよりほかしかたがないという事態でございましたが、こういう抱き合わせというようなことはどうしても避けたいということから、今回、いま御審議を願っているような基金の改正をお願いしているという事情でございますので、私は、少なくともインドネシアに関する限りは、いま、この予備費を使用するというようなことはしないというつもりでおります。  それじゃどうするのかということでございますが、いま、アメリカでも、対外援助費が国会を通るかどうかわからないという事態でありますので、アメリカ自身も、この援助額の最終決定はおそらくできないだろうと思っております。同様に、わが国におきましても、国会がまだこの予算を認めていないのでございますから、これがきまらない間に私どもが外国と援助の額をきめるというようなことはすべきではないということで、インドネシアに対しては、きょうまでこの問題の約束もしませんし、保留してございます。したがって、この法律の改正案が認められ、基金の予算が承認されるということがございましたら、その上に立ってインドネシアとの交渉も私どもはやるつりもでございます。その場合には、この予算の範囲内において取りきめをする。予算の補正をやったりあるいは予備費を使ったりするような事態を起こさないで、この基金の予算の範囲内の取りきめをしたい、援助をしたい、そういうふうに考えています。
  117. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大蔵大臣、あなたのいわゆる議会上における答弁としてはそれでいいと思うのですよ。しかし、基金の予算が認められるということは、もう予算が通っておるわけですから、それに対して基金予算として幾らかということはきまっておるわけですから、その内容をどうするかということについては、いわゆるインドネシア援助として基金法改正に際して六千万ドルを出すということは、限定された予算としてきまっておりますね。しかし、基金の財源としてきめられた中における操作というものは、どのような形で行なうのですか。  それから、既定経費のワクの中でインドネシア援助というものが行なわれ得ないということはあり得ない——いまの答弁の予算の範囲内ということは、いわゆる六千万ドル以上一銭も出さないというのが予算の範囲内という解釈なのか、あるいは既定経費のワクの中で若干の操作をするということが予算の範囲内なのか、この際、ひとつ明確にしておいていただきたい。
  118. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 予算はきまっておりますが、予算を使用する場合に商品援助ができるかできないかということでございますので、この法律改正が通れば、初めてインドネシアへの経済援助が基金を通じてできるということになると思います。その場合の予算というのは、基金の予算の範囲ということでございまして、まだインドネシアに対してはっきり六千万ドルというふうにきめておるわけではございませんので、話のいかんによってはあるいはそれより増すということがないとも限りませんが、いずれにしましても、この予算の範囲内においてしか私どもは行ない得ないというふうに考えています。
  119. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そうすると、参議院、衆議院をはじめいままで経済協力基金の問題についてはたびたび委員会、分科会、予算委員会等において議論がありました。正式に法律案の審議として商工委員会の審議にかかったのは一昨日ですか昨日ですかというようなことですが、審議が続けられております。その際、六千万ドルだ、六千万ドルだと明らかにしておるじゃございませんか。したがってスハルト大統領が来日されたときも六千万ドルだということがはっきりしておるわけです。はっきり言われておると思うのです。その上積みについては、先ほど外務大臣も言っておられたが、国会の審議の経過を通じてみないうちにそういうことは言えません、こういうことで表現されておったわけです。そうすると、いまの大蔵大臣の御説明によれば、いわゆる六千万ドルということではなくて、予算の範囲内において基金の中からインドネシア援助の金額はきまっていくんだ、こういうように理解していいわけですね。
  120. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 私どもの当初予算においては一応六千万ドルという予定を持っておりました。しかし、それでは話のいかんによって一円の上積みもできぬかという問題になりますと、この基金の予算の範囲内においてのやりくり、これが可能な範囲においてそう厳格に六千万ドル以上一円も出せないというふうには考えていない、こういうことでございます。
  121. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そうすると、いわゆるインドネシアに対する援助は基金全体の予算の関連の中できまっていくということになれば 基金予算が決定せられておるわけですから、結論的に言うならば、この法律が通れば、その法律が通ったということを前提にして、インドネシア援助資金については基金を通じて予算の範囲内において青天井、いわゆる他における具体的な援助目標があったとしても、それを削減してでもこの方面に使用できる、こういうぐあいに解釈していいんですね。
  122. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 この基金の四百四十億という資金額は、いずれにしろ、今後いろいろ起こり得る必要なものを想定しての金額でございますので、この中でいま言ったような六千万ドルに上積みをする余裕というものがどれくらい出るかということを考えますと、私どもはいまのところその余裕があまりないというふうな考え方を持っております。
  123. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 ところが大臣、いわゆる海外経済協力、海外援助というものは基金だけではないわけです。輸出入銀行における援助もあれば、政府が直接あらゆる事情に沿うて、いわゆる日韓条約に基づいて——これはもちろん基金を通じての援助等もございますが、あるいは民間ベースの援助等いろいろあります。そうなりますと、いまの御説明によれば、輸銀がインドネシア援助に対してことしは全然金を出すということはしないというぐあいに解釈してよろしいわけですね。
  124. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 輸銀からの援助が困難であるということから、基金を通じてこれを出せるように改正するというのでございますか、今年度は輸銀からの援助は全然考えておりません。
  125. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そこで、おかしいのですが、これは決算を見なければわからないということになろうと思うのですが、輸銀から援助しないという形は、現在のインドネシアに対する援助が非常に大切だと主張される政府のいままでの見解から見ると、非常に矛盾しているように見えるわけです。基金法の改正は、御承知のように、いわゆるプロジェクト援助だけでなくして、いわゆる物品援助、商品援助を行なうということが基金法改正の大きなねらいでしょう。これはいまインフレ高進に悩みつつあるインドネシアに対して、いわゆる商品を提供する形の中において経済の再建をはかってやろうということでお考えになっておられるわけでしょう。そうすると、この基金において使われるということの大部分もそこに力点が置かれるわけです。しかし、本来輸出入銀行が取り扱っておる経済の発展なりいわゆるプロジェクトの充実なりそういうようなことに対しては、当然援助の対象のワクの中に入っていかないということはどだいおかしいんじゃないですか。そうすると、インドネシアの援助というものは今後商品援助を中心とする基金における援助をもって限定する、こういう大臣の答弁ということになりますと、私どもは来年度の決算においてその点についてはよく内容を調査して、きょうの速記録と対比しながらさらに検討していきたいのですが、いまの答弁でいいですね。
  126. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 低利の直接借款ということは輸銀ではできないということでございますので、向こうの求めている条件の援助ということを輸銀でやらせるということはできませんので、これは基金にやらせたいというのが今後の改正の趣旨でございます。
  127. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大臣、できない、やらせない、こうおっしゃっておられますが、現に去年やっておるのです。去年一千万ドル増与と五千万ドルの供与をしておるのです。そうするとこれは違法行為をやったということですか。非常に不都合だったということはわかりますけれども、できないと断定されることは、できないことを去年やったということは、去年は違法行為であって、違法行為をあえてやったのだということになるのじゃないですか。
  128. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 輸銀のベースでできることは、これは当然できることでございますが、御承知のように、インドネシアの債務の負担を軽くしてほしいという向こうの要望に沿うというためには、輸銀において低利の直接借款をするというわけにはまいりません。そこで一般会計の予備費で無償供与というものを一千万ドル加えて、それによって向こうの負担を軽くした、輸銀は輸銀として輸銀ベースの援助を行なった、こういうことで、いわゆる抱き合わせ方式で去年はやったわけでございますが、こういうやり方を避けたいというのが今度の私どもの考え方で、そういう向こうの負担を軽くするようなソフトな条件による援助というようなものは、今後基金においてこれを扱ってもらうということが妥当であって、輸銀にこれをさせるということは事実上できないということでございます。
  129. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大臣、したがって、私は先ほどから申し上げておることは、去年やったことがそれなら違法なのかどうか、悪かったということなのかどうなのかということをお聞きしておるんですよ。
  130. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 違法ではございませんで、そういう予測しない事態に遭遇したんでございますから、一千万ドルの贈与というものは予備費をもって支出したということで、違法ではございません。
  131. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 違法ではないけれども、問題のあったことはいままでの審議の過程で明らかにされたわけでしょう。したがって、そういう問題のあることをやりたくないからということで、今度法律改正を出しておるわけでしょう。しかし輸銀というものが、インドネシアに対する、あるいはインドネシアと限定しないけれども、これから基金法が改正されてその運用に基づいて援助する。その国に対しても輸銀というものが同じような形の中で、もちろん品目は違う、やり方は違うとしても、同じような援助をやるわけでしょう。そうすると、いまの大臣の御答弁ではやらないということになっておるということになると、今度の六千万ドルというのは単なる商品援助に限定されてくる、これは問題があるんじゃないですか。その点いかがでしょうか。
  132. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 輸銀はそういう低利の直接借款は今後やりません。しかし、たとえばパキスタンにしろセイロンにしろ、いま商品借款をやっておりますが、これは輸銀ベースでやれるからやっておるんでございまいして、インドネシアのような条件のものは、このベースは輸銀では今後しないということになろうと思います。
  133. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 おかしいですね。パキスタンだのインドだの、その他の国に対しては輸銀ベースの援助をしておる。しかも商品援助を行なっておる。インドネシアだけのケース、インドネシアだけのケースとたびたびおっしゃいますけれども、この法律のどこの条文にインドネシアに対する援助と書いてあるんですか。これはインドネシアの援助じゃないですよ。基金法の改正によって世界各国あらゆる国に対してこの商品ベースの援助をやることができるということに法律を改正するんですよ。あなたのおっしゃるようなことだったら、この法律の改正案については、インドネシアに関してとかインドネシアについてという表現がなければ適切じゃないんじゃないですか。非常に矛盾しているじゃないですか。その点いかがですか。
  134. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 輸銀においてできない援助をこの基金で行なうということでございまして、たとえばセイロンに対する援助というようなものは、条件が輸銀においてできる条件でございますので、輸銀ベースでこれはやっておるということでございます。インドネシアのような条件の国がまた他から起こってきたというようなときには、これは輸銀ではやはりやれません。
  135. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 だから、いま私の御質問申し上げておるのは、これはインドネシアについてということで、これから起きるということを予測するなんてことは失礼なんですね、どこの国に対しても。いわゆる三分以下の金利でなければお金を貸すことができない国がどこかに起こってくることを予測するなんてことは、たいへんそれぞれの国に対しても失礼なものの言い方になりますね。あるいはもしもざっくばらんに無償供与なら無償供与で表現されるなら、これもわかるんですけれども、いわゆる輸銀ベースといえども金利がかかるわけですから、そうであるとするならば、この基金法というものの改正は、いわゆるインドネシア向けだ、こういうぐあいに解釈せざるを得ないと思うのですが、その点についてはひとつはっきり御答弁願いたいと思います。  それから、時間がなくなってまいりましたから、私この前本会議で質問しておいてどうしてもお聞きしたいという点があったわけです。それは、いまの予備費の問題と関連しての話で、いまの輸銀ベースの問題といいましたが、もう一つは、この輸銀使用という問題に関係して一番問題になっておるのは、日本経済が当面するいわゆるドル防衛その他の中で、外国との貿易を進めていかなければならぬということになると、必然的にアメリカのいまの情勢、国内情勢、国外情勢等の関連の中において、対共産圏貿易というものが非常に重要視されてくる。アメリカはいまや日本を乗り越えて直接中国と貿易をするのではないかということが、この前ここへ来られた財界の有力者の方々の意見の中においてもはっきり示されておるわけです。そうなると、それに一番障害になっておるのが、いわゆる吉田書簡にからむ中国との輸銀使用の問題が、相変わらず暗礁に乗り上げたことによって、それができないのだ。しかしこの中においても中曾根大臣とか椎名通産大臣とかいうものは、相当積極的に輸銀使用を認めようじゃないか、それが今日日本経済の繁栄のために必要なことだということをたびたび発言されておるということを聞いておるのですが、あるいは三木外務大臣も非常に前向きだということなんですが、直接輸銀の担当大臣である水田大蔵大臣は、この共産圏貿易、特に中国貿易との中においては輸銀使用についてどういう見解をいまお持ちになるか。海外経済協力という形の中において輸銀の占める役割りが非常に大きくなりつつあるとき、このことについてひとつ御見解をお示し願いたいと思います。
  136. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 貿易振興のためにあるこの輸銀でございますので、私は輸銀の資金の使用は国によって差別すべきでないというふうに考えています。したがってこれは今後共産圏の問題におきましても、まあケース・バイ・ケースで考えていくという政府の方針は全然変わっておりません。
  137. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 政府の方針が変わっていないということは、ケース・バイ・ケースという表現は、ケース・バイ・ケースで認めないんだという表現でいまやっておるわけですね、事実上の問題として。ケース・バイ・ケースで対処して認めていくんだということでなくて、ケース・バイ・ケースで対処して認めていかないんだ、こういうことになっておるから、この前中国側からいわゆる輸銀使用を認めないならば今後の船舶の輸入その他について云々というような話もあったやにわれわれ聞いておるわけですが、したがってケース・バイ・ケースという表現が、個々の事例については認めるという前向きの形の中において、具体的な事例としてどういう問題があったら認めるというような形になるのか、ひとつここでお示しを願いたい。幾つもケース・バイ・ケースがあるわけですが、ひとつここでお示しを願いたい。たとえば船舶はどうですか。
  138. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 主管官庁としての考え方は、認めないためのケース・バイ・ケースでなくて、前向きのケース・バイ・ケースというように私は考えております。
  139. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大臣、もう時間がないからはっきり言ってくださいよ。だからいままで何回も認めてくれという陳情なり要請なりが業者のほうからおそらくあったと思うのです。したがってその場合、いままで認めてきていないということは、あなたがどう言われようとも、認めないためのケース・バイ・ケースだ。いわゆる正論に対しては反駁でき得ないけれども、政治的な現実の前においては適当な言いのがれとしての表現だというふうにいわざるを得ないわけですよ。したがって具体的にいま申し上げているのですが、たとえば船舶その他具体的な問題について、あなたはこれから出される問題について認める御決意であるかどうか。この点ひとつ主管大臣としてお聞かせを願いたいと思うのです。
  140. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 主管大臣としては、そういう問題で国によって区別するという考えはありません。
  141. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 だから、何回も何回も言っている問題だから、ここいらでひとつ大臣、言いにくいなら言いにくい、それは佐藤さんの口から言わせなければだめなんですよ、あなたが幾ら私に言ったところで。そういう答弁はできませんと言うなら、それはいいですよ。しかしできるならできるともう少しあなたが前向きの発言をしていたら、佐藤さんといえども、それは水田さんだめですよとはおっしゃらないと思うのですよ。だからこの際もう少し、ケース・バイ・ケースで問題が提起されてきたときは前向きの姿勢で、その品目については認めるように努力します、こういうことをここで言ってくださいよ。国別に差別はしないど言うのだから、品物の面においても差別をしないで、できるだけ前向きに取り扱おうと言うくらいできるでしょう。できないならできないでいいですが、その答弁をひとつ聞きたい。
  142. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 できないとは申しません。ケース・バイ・ケースということは、一般的には言えないので、問題が出た場合に、その問題についての審査をして、認めるものは認めるという措置をとることがケース・バイ・ケースでございまして、これは問題にぶつからなければ、全般的にこうだということは言えません。
  143. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 非常に心配してうしろから応援していますけれども、私はもう少し突っ込みたいのですが、時間が来ましたから、大蔵大臣に対する質問は終わりたいと思います。  今度のいわゆる基金法の改正というものが、非常に便宜的に取り扱われ、いわゆる輸銀と基金との関係がその中でどうなるのか、いまは通産大臣が担当大臣のような形ですが、実際はそうじゃない。これこそ便宜的に通産大臣がなっているだけで、あるいは通産大臣関係もあるだろうけれども、事実上の焦点に立つのは、大蔵大臣だと思うのです、輸銀がそうなんだから。そうしたときに、こういう不明確な区分の中で、ただ政治的な情勢で、アメリカの要請等があるからといって基金法を改正して——ベトナム援助の内容についてこれからまだいろいろと議論しますけれども、そういう内包する問題に目をおおって、ただ単に政治的な立場にのみ立つということは非常に心配だと思うのです。それから、予備費を流用しない、補正予算を組まない、六千万ドルだ、こう言いながら、実際上法律が通ってしまえば、あとはこっちでかってにやりますよ。そのことがロッテルダムなりスハルト来日なりのような形の中で、すなわち国会、国民の目をおおわしめて、政府相手方と手を結んで約束しておるということは、きわめて不見識なことじゃないかと思うのです。  それからもう一つは、輸銀使用ということが、これからの国際貿易の中で、日本がいわゆる共産圏貿易に指向しなければならない必然的な趨勢にあるとき、いつまでもそういうようにケース・バイ・ケースという形の中で逃げるんじゃなくして、ケース・バイ・ケースとしての形の中で積極的に許可し認めていくということをひとつやっていただきたいと思うわけですが、これに対するお答えを聞いて、大蔵大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  144. 水田国務大臣(水田三喜男)

    ○水田国務大臣 いまのおことばの中にも、国会がこれを承認して済んでしまったらあとはかってにやるのではないかというようなお話がございましたが、これはもう私どもの考え方とは全く違います。私は昨年IMFの総会に行って演説をしましたが、この開発途上国への援助というものは先進国の義務だ、今後自分たちは十分の協力をするつもりだが、ここでむずかしい問題が両方の側にある、一方は全部人にたよるというのではなくて、自助の体制をとっている国でなかったらわれわれの援助がむだになる、つまり援助を受ける国はそれだけの受け入れの体制について十分考えてもらいたい、同時に援助するほうの先進国において一番むずかしい問題は、国民に十分この援助を納得させることである、御承知のように、日本先進国とはいいながらまだ開発途上国のあれを持っている国でございますから、国内においては中小企業の金融にしましても、この金利そのほかの条件にしましても、これは十分な体制が整っている国ではございません、こういうときに、外国に対しては非常に有利な条件でこれを援助するということになりますと、国民がよほどこのことを理解してくれて、国内体制の整備もこれからすると同時に、一応国力を持ってきた国は、自分の国よりもまだ開発がおくれていると思われる他の国に対して援助することは義務だということを十分に国民が理解してくれなければやれないのですから、われわれの仕事は今後こういう理解を国民に求めることだ、こういう話をいたしましたが、私はそういう気持ちでございますので、今後国民総生産の一%を目標として他国の援助経済協力をするということは、これはもう政治としてもたいへんな仕事であり、大きい義務であると思います。したがって、一円の金をこの援助に支出するについても、国会が済んだら政府が内緒でかってにやれるというような態度をもって将来これは押し切れる問題ではございませんので、このインドネシアの問題も、国会が済んで両国が折衝したときに、この程度は援助しなければいかぬかもしれないというような折衝の過程も全部国民にわかる形で、変に隠すとかなんとかいう問題ではございませんで、はっきり国民に理解してもらう形で、今後こういう問題に対処しようというふうに考えておりますので、この点はまたひとつ御了解も十分得たいと存じます。  それから輸銀は、先ほど申しましたように、今後私どもはそういう態度でいきたいと思いますので、今後いろいろな事態が起こったときの政府態度を見ていただければわかるのではないかと思います。
  145. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  146. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 速記を始めてください。      ————◇—————
  147. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 この際、内閣提出、北海道地下資源開発株式会社を廃止する法律案を議題といたします。  本案は、去る四月十六日、提案理由の説明を聴取いたしております。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  148. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 北海道地下資源開発株式会社法を廃止する問題については、本委員会あるいは社会労働委員会で再三質疑がありました。私は、きょうがこの問題に対して最後だと思いますので、長官にお伺いいたしたいと存じます。  これまでの国会答弁では、民間改組をする、こうおっしゃっております。現時点では、私は、この前の、会社のほうの参考人の答弁によっても、存続は不可能である、こういうふうに聞いております。したがって、解散をするかどうか。と申しますのは、開発庁の見解では、会社法を廃止しても商法上の会社は残る、こういうお答えでありました。そうしますと、会社法に基づいて会社の定款がつくられる、これを変更しなければならない、定款を変更しても会社は成り立たない、こういうことになると、解散する以外にはないんだと思いますが、この点、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  149. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 この法案が通りましても、会社そのものは存続すると思います。存続はいたしますが、どうしても経営が成り立たないという場合には、解散はやむを得ないと思いますが、その前に、やっぱり解決しなければならない問題があるのです。というのは、どういうことかといいますると、この法律案は出しましたけれども、好んで出したものでもありませんし、それだけでなくて、その会社に働いておいでになりまする従業員の生活の問題があるものですから、そいつをないがしろにして、ただ単に民間会社に移行して、そして解散するんだというようなことは、あまりにも非人情的じゃないか、それは政治じゃないと考えておりまするから、会社存続の過程におきまして、そういう問題を一切解決して後、やむを得なければ解散する、こういう形をとるべきものだと思います。
  150. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 生活の問題もありますけれども、同時に、再就職、特別退職手当あるいは残務処理の問題もありますので、この点は、ぜひこういうものを片づけておいて、そして解散をするという手続をとっていただきたいと思うのです。  時間がありませんので次に進みたいと思いますけれども、特殊法人で働いておるそういう人々について、今後こういう問題が起きたときには、政府責任で全職員の再就職を、ひとつあっせんをしていただきたい。しかし、その前に、あっせんをする場合にでも、交渉の過程においていろいろ問題が出てくると思うのです。と申しますのは、これは就職先の労働条件を保障してもらうという場合に、たとえば転職にあたりまして事前に提示された労働条件を下回るというようなことが往々にしてありがちでございます。そういう点についてひとつぜひお考えを願って、御努力を願いたい。  それからもう一つは、再就職のあっせんにあたって、本人の希望をぜひ尊重してもらいたい。これは大臣もたびたびそういうことについて私どもにお約束していただきました。  それから、もう一つは、再就職が確定するまでは、身分あるいは給与についてひとつぜひ、十分考慮していただきたい、こう思うのですが、この点についてお考えを聞きたい。
  151. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 山本委員のおっしゃいましたことは、全くごもっともでありまして、それなくしてあたたかい政治とは言えませんから、そのとおりにやりたい、まあやる、こういうことだけははっきりと確約してもよろしいと思います。
  152. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 ただ、その前に、いままでたいへん大臣もお骨折りを願って、この点私どもたいへんありがたいと感謝をしておりますが、どうもやはりあっせんが、私どもが予想しておるよりもずれてきているような気がいたします。そういう意味では、開発庁にできれば対策本部、しかし、ともかくもそういうものができない場合にでも、何かやはり責任の所在を明確にしてもらって、窓口をひとつきちんとしていただきたいと思うのです。そうしないと、いろいろこの先に問題があるし、また、道内の就職にしても、これは開発庁の長官責任者でありますから、道内就職者がおそらく三十名近くあると思います。そういう面について、関係の方面にひとつぜひ再就職に対する考慮をするように、指示をできればしていただきたいと思うのですが、この点はできますでしょうか。
  153. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 全責任は当然私が負います。実際の仕事の面は事務次官に担当してもらいまして、私にかわって、事務次官と一緒になって伊藤秘書官にやってもらっております。  それから、いまの場合は、開発庁の首脳部をあげて就職あっせんをやっておるような状態なんでありまして、道内における就職ももちろん、御本人の御希望によりまして、ぜひそういうことがかなえられるように努力するつもりでおります。
  154. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 たいへん具体的な就職先についても大臣に御心配をかけておりますが、特殊法人あるいは民間の企業、それから道内の就職、私どもたびたびそういう御配慮の結果をお伺いしております。しかし、同時に、ここでひとつぜひこの点だけはお願いをしておきたいことは、中高年齢層、それから事務職員、こういう人たちは、私は再就職がなかなか困難だと思います。したがって、そういう人については、ひとつでき得れば、私の希望から申しましたら、これは特殊法人のほうへ何とか就職するように配慮していただきたい。と同時に、いま三名ですか、病気療養中の者がおります。この方で一番長いのは、全治するのは三カ月後ぐらいになるのじゃないか、こういわれております。そういう人たちについても、ほかの人たちは就職した、しかしそれだけ取り残された、こういうのでは私ども気の毒だと思いますので、この点もぜひ大臣のはっきりとした御答弁をお願いしたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  155. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 中高年齢層の就職のあっせんも、こちらのほうで責任を持ちまして、非常に困難とは思いますけれども、やはりそういう年輩の人ほど家庭的に非常に多端だと思っておりますから、そういう点では御本人の御希望を聞きながら、思い切って努力をしたいと思っております。  それから、病気の人がおいでになるということは初めてお聞きいたしました。全くお気の毒にたえません。なおられることを条件にして、もちろん就職のごあっせんをいたします。それから、再起不能の病気でありましたならば、どうしたらいいかということは、これは御本人にも会いまして解決策を立ててみたい、こう思います。
  156. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 会社の解散の時期と関連いたしますのですけれども、もうかなり百三十名の従業員は気持ちの上ではあせりを持っていると思うのです。いろいろごあっせんを願っておりまして、面接はしたということも聞いております。しかし、現実にはまだ再就職がきまったという人は一人もおらないということになりますと、私のほうではよく従業員のあせりの気持ちもわかりますので、ひとつそういう点をぜひ急いでいただきたいと同時に、法案の審議中でなんでございますけれども、でき得れば、これは事務上の手続もあると思いますが、六月末ごろまでに全員が再就職できるように、これもひとつ御努力をお願いしたいと思います。その点についても、一問一答のようでたいへん申しわけないのですけれども、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  157. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 面会いたしまして、就職のきまったのは十一人おるそうです。大成建設が九人だそうですが、きまりました。それから、ボーリング会社が二人きまったそうであります。逐次面会日をきめまして、それは解決してまいりたいと思います。六月一ぱいをめどにいたしまして、私も思い切って努力するつもりであります。大半は六月一ぱいにきめられると思いまするけれども、もしも若干おくれるような人がありましたならば、若干の時間だけ御猶予くださるようにお願いを申し上げておきます。しかし、何といたしましても、こういう就職の問題、生活の問題は、いつまでも等閑に付すべきものではないと思いまするから、六月一ぱいをめどにいたしまして解決したい、こう思います。
  158. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 いま、就職がすでに十何名か決定せられておる、こうお伺いしたのですが、私も初めてお伺いしたのですけれども、たいへんありがとうございました。  こういうことを申してはなんですけれども、今回の統廃合というのは、地下資源株式会社の場合には政府責任でおやりになったわけですから、私は、政府責任でひとつ退職金その他の問題についても格別の考慮を払っていただきたい、こう思います。  それで一番心配なのは、一体財源をどうするのか。この前のお話によりますと、政府は資産を処分して財源に充てる、こうおっしゃっておる。一体それだけ退職をされる方々に特別に配慮をしていただくような財源があるのかどうか。それから資産の処分というのは、これは支払いとの関係でありますが、六月までに私どもは完了していただきたい、これは就職が六月までに努力願えるということになればですね。それからもう一つは、資産の処分が間に合わない場合がある。これは事務的な解散の手続もあると思いますので、そういう場合に特別に配慮を願って借り入れをするというようなことができるかどうか、この点についても大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  159. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 退職の場合の資金の確保でありまするが、今日まで次官以下に話をいたしまして確保しておかしたつもりであります。なお現時点において調査をしてみます。持っておりまする資産を売却すれば、十二分に間に合うようであります。その売却がおくれる場合には、借りる場所も決定いたしておりまして、その貸してくれる場所は、その資産の評価までもしてくれておりまするから、それは借りてでもその処置だけは万全を期したい、こう考えております。
  160. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 どうもありがとうございました。  それからもう一つ、これはいずれにしても残務整理ということが出てまいります。そうすると、いま北海道のほうで工事をやっておりますけれども、これはいままでの参考人の方々あるいは組合の方々の話を聞いてまいりますと、どうもやはり解散以外にないという気がいたします。そういたしますと、いま継続中の工事の引き受け手があるかどうか、こういう心配が出てくるわけです。そうすると、その次に考えられるのは、契約不履行、損害賠償というようなことになると、いまおっしゃったような資産の処分と関連しまして、一体どうなるかという点を実は危惧いたします。この点についてと、それからもう一つは、就職をする方々はいいですけれども、残務処理にいずれにしても職員が残るわけですね。その方々についてもやはり私は、これは大臣、病気になった方々についても御配慮を願えるということですから、当然そういう方々についても責任を持って再就職のあっせんをお願いできると思いますけれども、その点について確認をいたしたいのですが、いかがでしょう。
  161. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 残務整理に残られた方々の就職のごあっせんも、もちろんいたします。それから、現在仕事をやっておりまして、途中でやめなければならない、それから他の会社にそれを受け継いでもらわなければならない、こういう問題も出てくるだろうと思います。そういう点でも、前々からお話をいたしておりましたが、万全を期してみたい、こういう考えなんでありまするが、まだ相手の会社とはその相談をしておりませんものですから、引き受ける場合には条件が出るだろうと思います。そういう条件などを照らし合わせまして、金銭で解決できるところはもちろん金銭で解決する。その金銭が退職金や何かに影響するような場合には、他に仕事のあっせんを北海道開発庁がやるなどということによって、いろいろの角度からその契約しておった仕事を他の会社に受け継いでもらうように努力してみたい、そして必ずそういう方面でこの問題は解決して、早くきれいさっぱりとしてみたい、一生懸命でやるつもりでおります。
  162. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 与えられた時間が二十分だそうで、最後に二つだけ、これは確認いたしたいと思うのです。いままで私の質問申し上げた点で、大臣のお答えを聞いておりますと、私どもとしては、たいへん至れり尽くせり、おそらく従業員も非常に喜ぶと思うのですけれども、このことについてひとつ責任を持ってぜひやっていただきたいと思う。これは私は再度申し上げて何ですけれども、政府の意向でこういうことをやられるのですから、あとになっていま大臣のお答えされたことが履行されないということでは実は困ると思うのです。今後も行政の統廃合があり得ると思いますし、私は行政の統廃合について必ずしも反対をいたしません。しかし、特殊法人の整理統廃合にあたって、職員を今日のように大臣をはじめいろいろと心配をし、あっせんをしなければならぬということは、私はたいへん遺憾だと思うのです。そういう意味で、整理統廃合ということについては、やはり人員の再就職といいますか、生活の保障といいますか、そういうこと、それから労働条件、これを切り下げないというようなことを、ひとつぜひここで御確認をいただきたいと思うのです。  なおあと私は、少しずつ、就職がずれてきておることを先ほども申し上げましたけれども、ぜひひとつできるだけ早く全力をあげてやっていただきたいと思います。この点についての大臣のお答えをお願いしたいと思います。
  163. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 就職のことにつきましては、六月をめどにいたしまして、全力を尽くして解決に努力するつもりであります。それから、この問題は、ほんとう政府の一方的な行為で行なわれたものでありまして、働いておいでになりました方々にとりましては、非常に大きなショックだったろうと思います。それを社会党の皆々さまが間にお立ちくださいまして、事を円満に処理してもらいました関係上、社会党のあなた方の面目をつぶすようなことは、私はこんりんざいいたしませんし、従業員の人々とはこれからお目にかかることはないかもしれませんけれども、皆さまとは日常顔を合わせねばならない立場におりまする関係上、決して面目をつぶすようなことはいたしませんから、その点はどうか御安心くださいまするように、特に今度の問題で御協力くださいました各位には、心から厚く御礼を申し上げます。
  164. 山本(政)委員(山本政弘)

    山本(政)委員 大臣の非常に誠意ある御答弁がございました。私は大臣の誠意を信頼いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  165. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 玉置一徳君。
  166. 玉置委員(玉置一徳)

    ○玉置委員 北海道地下資源開発株式会社法を廃止する法律案要綱につきまして、簡単に質問をいたしておきたいと思います。  北海道開発庁長官にお伺いいたします。一点は、廃止するということにきまりますれば、なるべく早く廃止されることが、私は諸般の事情にかんがみまして、いいんじゃないか、こう思います。  そこで質問の第一点は、ただいまも御指摘がございましたとおり、何を申しましても人間の再就職ということが、一番大事なことである。これは政府責任をもってすみやかに、現在を下回らない条件で希望をしんしゃくしながら、十分な御配慮をいただきたい。  第二点は、民間会社にこれを移行するような趣に承っておりますけれども、いろいろな事情でその民間会社がまた再整理をしなければいけないような事態になるかもわかりませんし、そういう点もよく展望を明らかにせられまして、この点もひとつ含めて、再就職ということを考えなければならない時点に立ち至るやもわかりませんので、その点も十分にひとつお考えいただきたい。  三つ目は、これをまず当初に意図しましたところ、ほぼ完了したといいますかあるいは諸般の事情でなかなか困難であるというようにいいますか、それはともかくといたしまして、撤収するわけでありますので、これにかわるべき方途といたしまして、それぞれ民間の鉱山会社等が探鉱をやりたいというような場合には、北海道東北開発公庫というような機関もありますので、同じように目的が十全に達し得るような御配慮をいただきたい。  この三点につきましてひとつ誠意ある御回答をいただきますれば、私のほうも質疑を打ち切りたいと思います。
  167. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 お話しの点は全くごもっともでありまして、民間会社に移行いたしましても、実際といたしましては経営が非常に困難である。困難であるということは、働いておいでになる人々が、全部が全部といってよいほど、とても民間会社になった場合には経営が困難である、こういうことを異口同音に言っておられますから、民間会社に移行はいたしましても、まず整理に全力を注ぎまして、その整理の重点は再就職の問題であります。整理に重点を注ぎまして、それが大体残務整理を残して完了いたしましたならば解散すべきものだ。その時期は非常に早いほうがよろしい。こういうことに相なりまするし、これは皆さんの一致した御意見のようでありますから、それを目途にして、思い切ってそういう点で努力してみたいと思います。何と申しましても生活ほど大切なものはありません。その生活が一日でも二日でも脅かされるなんということは、自分の身になったならば非常に大きな問題だと思いまするから、庁では全力をあげてこの問題に取り組んで、思い切って努力をしたい、そうして早くおっしゃるとおりに解決したい、こういうつもりで全力を傾倒いたします。今日までも努力してまいりましたけれども、今度はこの法案が通るということになりますれば、非常に急がなければならないと思いますから、思い切ってやらしてもらうつもりであります。
  168. 玉置委員(玉置一徳)

    ○玉置委員 最後に要望しておきたいのですが、民間会社をつくりまして移行しまして、若干残すというような場合に、若い働き手と申しますか、そういう方々が他へ就職がしやすいわけであります。そうすると、なかなか思うように陣容が編成し得ないようなこともあり得るかもわかりませんので、もう思い切って再就職を全部さすというようなことにもなるかもわかりませんので、その点もひとつ十分に配慮をいただきたい。  それから同じ出しますのだったら、すかっと退職手当もきれいに、みんなの御要望にこたえて、そこにおかしな問題を起こして、その問題のために、かえっていろいろな経費がよけいに要るというようなことにならないように、ひとつ英断をもって善処されることをお願いいたしておきまして質疑を終わりたいと思います。
  169. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 何人か残して経営が可能かどうかということも考えてみたのですけれども、それは無理なようです。無理なようですから、やはりおっしゃるとおりすきっとしたい、こう考えております。
  170. 小峯委員長(小峯柳多)

  171. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 時間がありませんので簡潔にお答え願いたいと思います。  なぜこの会社を廃止するようになりたか、明確にあげてください。
  172. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 北海道の地下資源を開発するという当初の大きな目的はあったのでありますけれども、途中経済事情が少し変わってまいりましたものですから、当初の目的どおりにいかなくなったことが一つなんであります。そうでありますから、この際無理に経営を維持せしめることによりまして当初の目的が達成されなくなっただけでなく、会社に働いております人々にもいろいろな点で不安、疑惑を持たせることもまたどうかと思いまして、この際いっそ解決したほうがいいだろう、こういうことで民間会社に移行する、こういう方針をとってみたのであります。
  173. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 それから、これを廃止する最も大きな原因は非常に大きな赤字を出したためで、現在の赤字は幾らありますか。こまかい数字がわからなければ概数でよろしい。
  174. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 四十一年度末で三億一千二百万円ばかりであります。
  175. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 これだけの赤字を出した原因というのが、ただ経済事情だけによるのですか、その点はどうですか。
  176. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 やはり不正も何もありませんでしたけれども、経済情勢の変化と見て差しつかえないと思います。
  177. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 臨時行政調査会の指摘した理由として、一、業績の実態が著しく本来の使命からかけ離れている。二、事業のほとんど全部が営利的事業であるにもかかわらず赤字の累積を重ねている。三、本来の使命である国策探鉱、自主探鉱において探査方式が未確立である。こうした理由をあげているのです。このとおりですか。
  178. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 大体そのとおりであります。
  179. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 この指摘した点を見ていきますと、これは要するに監督官庁の大いなる責任だと私は思うのです。これはどこがいままで責任を持っていたのですか。
  180. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 通産省と北海道開発庁でありますが、監督が非常に不行き届きであった、こういう点は重々申しわけないと、これはおわびを申し上げておきます。
  181. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 私があげた三点の一番として業績の実態が著しく本来の使命からかけ離れている、この中でももう少し分けていきますと、政府、監督官庁の国策探鉱に対する指導方針の誤り、これはこまかくあげれば幾らでも事実があります。また北海道開発庁における意欲と指導性の欠如、また当社役員の国策探鉱に対する意欲の欠如、こういうことが大きくあげられているわけです。また経済情勢の変化、さらに二番目の赤字累積の原因として天下り官僚の無為無策、無能、社長以下は全部天下り官僚である。名前も全部わかっておりますが、特殊法人としての制約とかいろいろな点はそれはあると思いますが、率直に大臣責任を認められたわけですから、私もこれ以上は言いませんが、そういう当初の計画等において、またその後の推移においても、そうした対策が非常に手ぬるかった、こういう点においては、今後国民の血税をもってやっていくわけですから、十分に注意してもらわなければならない、このように思います。この新会社に移行していく場合において、どういう方向でその新会社を持っていきますか。
  182. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 この法案が通りますると、民間会社になるのであります。民間会社になりましても、とても経営ができないというような状態であります。  それの一番大きな理由は、従業員の人々は民間会社に移行した場合に、この会社を維持経営していくことがむずかしい、こういうものの考え方なのでありますから、これはやっぱり適当な機会にこの会社は解散の処置を講じなければならないであろう。意欲があったならば別でありますけれども、意欲のない現状において、それを、なおかつ叱咤勉励して維持経営せしめることは無理だと思いますから、当然解散しなければならないだろうということを大体考慮いたしております。  その際における再就職の問題につきましては、先ほど山本委員や玉置委員に御答弁申し上げましたとおりの処置で、生活に不安を与えないように一日も早く解決したいと思っておりますので、努力するつもりであります。
  183. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 それからこの会社の内容を見ていきますと、社長、取締役三名、監査役二名、これで現在いわれているのは退職金が三千四百万円で、赤字の約一割を退職金に充てる、これは事実ですか。
  184. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 そういうようなことを考えたようでありまするけれども、それは監督官庁として全部押えておりまして、そういう処置はさせないように考慮中なのでありまして、まず働いておいでになります従業員を中心にものを考える、言いかえますれば、従業員の退職金を中心にものを考える、そうして残りがありましたならばその方面に回してもまた可なり、こういう考えで指導をやっております。
  185. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 時間がありませんから終わりますが、私はほんとうにこうした前途に不安を持っている従業員に十分な処遇をしていただきたい、このように思います。これだけ不安に追い込んだのは、何といってもやはり役員の責任です。何といっても監督官庁の責任です。この点において、いま労使間で話がついておるようでありますが、トラブルなしにこの問題を解決するということは約束できますか。
  186. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 その点につきまして、組合と話し合いの途中において社会党の北海道関係の議員の人々の非常なごあっせんをいただきまして、トラブルなしで解決できるようになったことを非常に感謝申し上げております。
  187. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 先ほどもお話がありましたが、社会党の皆さんも一生懸命やっておられるのはよくわかっております。われわれも一生懸命やっているわけです。これは党派を越えて事、従業員に関する問題でもありますし、これからの将来の問題もあるわけです。長官のそういう発言に対してでありますが、どのようにわれわれの態度を見ていらっしゃるのか、その点、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  188. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 どうもほんとうに御親切なおことばをちょうだいいたしまして、ありがとうございました。私も陰で一生懸命になって御協力くださいました方々はたくさんおいでになる、こうは思っておりましたけれども、やはりいままで私の目に触れた方しか私がことばに出さなかったことは、はなはだ申しわけないと思っておりまして、非常に御協力くださいましてありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
  189. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 それはそれでいいのですけれども、要するに、私は何かことばが足らぬように思うのです。ですからもう少し全部の皆さんが納得する答弁をなさったらどうか。そうしたら私、終わります。
  190. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 ここにおいでになります委員の方々、たいへんありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。一々お名前をお呼び申し上げますれば非常にけっこうでありますけれども、実はお名前を存じ上げない方もおいでになりますから申し上げられない。全員にお礼を申し上げます。それだけでなくて、おいでにならない方でもトラブルを起こさないように、一日も早く従業員の人々に不安を与えないようにと思って懸命の御協力をくださいまして全く感謝にたえません。あらためて厚くお礼を申し上げます。
  191. 近江委員(近江巳記夫)

    ○近江委員 これで終わります。
  192. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 おはかりいたします。  本案の質疑はこれにて終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、本案の質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  194. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決いたします。  北海道地下資源開発株式会社法を廃止する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  195. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  196. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 次に、ただいま可決いたしました本法律案に対して、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。中村重光君。
  197. 中村(重)委員(中村重光)

    ○中村(重)委員 自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党共同提出にかかる附帯決議案について、四党を代表して、その提案の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     北海道地下資源開発株式会社を廃止する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、今後特殊法人の整理統廃合にあたつ て職員の人員整理及び労働条件の切り下げを行なわないこととし、北海道地下資源開発株式会社法の廃止にあたつては職員の処置を次の通り 実現するよう責任をもつて努力すること。  一、再就職斡旋にあたつては、本人の希望を尊重し全職員の再就職確定を六月末までとする。  二、再就職先の労働条件は現行の労働条件を下回わらないこと。  三、再就職が確定するまで現行の給与を保障すること。  四、特別退職手当は、退職時に全額支給すること。 以上であります。  御承知のとおり、北海道地下資源開発株式会社にとっては、同社をめぐる諸事情の変化、特に監督官庁の監督不行き届き、経営者の無能等があげられており、今回廃止のやむなきに至ったことは、まことに遺憾であります。しかし、北海道地下資源開発株式会社法の廃止は、直接的には特殊法人の整理、再編成という政府の方針によるものでありますので、同社の民間移行、再編成にあたっては、職員の身分、労働条件については不利益を来たさないよう、就職のあっせん、その他すべての面にわたり、責任を持って処置することが、政府の当然の義務であると存じます。このような見地から、具体的措置については、労使協議の上、その線に沿って実施することが必要であります。  以上が本附帯決議案の趣旨であります。委員各位の御賛同をお願いいたします。
  198. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 以上で、趣旨の説明は終わりました。  直ちに採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  199. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、北海道開発庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。木村北海道開発庁長官
  200. 木村(武)国務大臣(木村武雄)

    ○木村(武)国務大臣 満場一致で御決議なされました御趣旨は、全身に体しまして、貫徹するように努力さしていただきます。  どうも御協力ありがとうございました。     —————————————
  201. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 おはかりいたします。  本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  203. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 引き続き、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。佐野進君。
  204. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 宮澤さん、担当大臣だからずっとおられるので質問したいと思ったのですが、三木外務大臣が何かお時間の都合がおありだということでございますので、外務大臣にしぼって、また質問を申し上げたいと思います。  「政府の窓」という六七年二月十五日号の雑誌、これは政府から出しておるのですが、三木外務大臣は、「一九六五年の実績では世界第五位の四億八千六百万ドルの規模に達した。これはわが国の国民所得の〇・七三%にあたる。」こういうことを説明せられて、わが国経済協力について巻頭にいろいろな御意見を出しておられます。これを基礎にいたしまして、外務省のほうで計画されておる海外経済協力の問題につきましては、一九七一年、昭和四十六年度におきましては、総計十三億六千三百六十万ドル、いわゆる一九六五年に比較いたしますると、三倍になんなんとする海外経済協力の増加を計画せられ、これがそのときにおけるところの国民総生産に対比して一%になる、こういうように言っておられるわけであります。したがって、外務省並びに外務大臣は、わが国海外経済協力ということについては、非常に雄大な構想と、そしてまたそれに対しては、非常に責任感というものを持っておられるわけです。しかし、現実わが国海外経済協力の現況、それに対比するわが国国内経済事情、海外経済協力に対応する諸制度の整備、こういうものは遺憾ながら十分なる態勢にあるどころか、きわめて不完全なる態勢にあって、どの書物を見、どの法律を検討してみても、そのような事実に至っておらないわけです。そういうような態勢の中で、今回出された経済協力基金法の一部を改正する法律案の内容を見るに、ますます混迷を来たし、ますます本来の海外経済協力の大きな目標と逸脱して、目前に起きつつある具体的事象にとらわれた改革をなさんとするがごとき印象が、先ほど大蔵大臣に私は質問をいたしましたが、あらわれておることは、きわめて私は不満足の意を表せざるを得ない。外務大臣が表現せられ、あるいは国際的に日本がその責務を果たさんとする前途に一つの暗雲を呈するような気さえするわけです、今度の改正案は。したがって、この点について、海外経済協力に対する基本的な考え方外務大臣からお聞かせを願いたいと思うのです。
  205. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 佐野君の御指摘のように、日本国内にたくさん問題をかかえておることは、御指摘のとおりであります。住宅、道路、農業、中小企業、いろいろと問題をかかえておるわけでありますが、しかし今年度国民総生産が世界の第三位になる。この地位というものは、いろいろ国内に問題をかかえておるからといって、国際的責任から免除される地位ではないということであります。そこに何か国内の事情と、国際的な期待との間に非常なギャップがある。このことが、ごく短期間に見れば、これは何とかかんとかいってお茶を濁すことができるでしょう。しかし長期的に見れば、日本の国益に合致すると私は思わないのですよ。やはりそういう、国内に問題をかかえておっても、それをやりながら、やはり国際的にも経済協力、ことに新興諸国に対する経済協力というものに対して、これが国内の諸問題を解決してからというのでは、これはもう時期的におそい。これをやりながら、やはり日本が国際的な責任も果たしていこうという態度でなければ、いまは勘定は合っても、もう少し長期的に、日本日本の利益というものを考えたときに、これは日本の利益に合致しない。だから国会等においても、私どもはいろいろ問題をかかえておるけれども、責任を果たさなければならぬということを強調し、またいろんな場面においても、国民の各位に対しても理解を求める努力をいたしておるのでございます。したがって、私は、やはりいろいろな困難はあっても、これだけの経済的な成長を遂げた日本が、その地位にふさわしい国際的な協力をするために、今後は努力をしていきたい。そうでなければ、日本アジアの一国であるし、アジアの唯一の先進国だと言っても、何にもたいしたこともしない先進国というものは、アジア諸国からそれは必ずしも長い目で見れば尊敬を受ける立場にはなり得ない、こういう点で、その困難な中にあっても日本海外経済協力というものをますます今後充実していくために外務大臣努力をしたい、こう考えておる次第でございます。
  206. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 冒頭の御説明でございましたから長くてけっこうですが、これからは時間がたいへん短いようでございますので、私もきわめて簡潔に御質問しますので簡潔に御答弁を願いたいと思います。  そういたしますと、冒頭申し上げましたように、一九六五年が四億八千六百万ドル、そうして一九七一年が十三億六千三百六十万ドル、こういうような飛曜的な増加を続けていくことになるわけですね、毎年毎年のこの五カ年計画は。これを引き続きやっていく、国際的な情勢、国内的な情勢の変化、これは当然予見されつつあることですが、やっていくという外務省の方針を堅持される、こういうことでございますか。簡単でけっこうですから…。
  207. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 この佐野君の読み上げられました数字は、やはりわれわれ外務省自体においても決定しておる数字ではないわけです。それは長期的に年次計画を立てることは好ましいとは思いますが、正直に言えばできてないですよ。そういう点で、いまお述べになった数字というものはわれわれが検討を加えた数字ではない。年限は何年ということではありませんが、国民所得の一%、またこの間のUNCTADでは総生産の一%、その目標に向かってだんだんと努力をするということで、日本は何年の間という期間を切ることに対してはこれは留保いたしたのであります。目標に向かってできるだけの努力をするという約束でそれに近づけていきたい。年度的な、そういう数字的な検討はいまだいたしておらないというのが実情でございます。
  208. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 それではいまのことについて外務省の経済協力局、局長がいますかどうかわかりませんが、担当者は外務省当局としてはこのような発表を全然していない、こういうように大臣の答弁ですから理解してよろしゅうございますね。
  209. 上田(常)政府委員(上田常光)

    ○上田(常)政府委員 この試案は、いま外務大臣も御説明しましたとおりの性格でありまして、ただ当時外務省から新聞に一応こういう事務当局の考えだけれどもこういうものをつくっているということを話したことはございます。しかしそういう意味で話したのでございます。
  210. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そういう意味で話したかどういう意味で話したか、話したということは事実なようです。したがって大臣が全然考えてもおりませんとかどうとか言われても、あなたの部下で事実そういうものを発表せられ、それが一つの資料として私どもの手元に来ておることは間違いないことですから、したがってそういう点については、これからの質問の関係もございますから、ひとつ部下の方とよくお打ち合わせの上、御答弁を願いたいと思います。  そこで、いま当面しておる海外経済協力についての基金法の姿勢が出ておるわけですが、この内容は、いわゆる大臣がお話しになったように、長期的な日本の国際的な責任、あるいは国内における経済力の伸展、そういうものに伴って、当然ある時期において果たすべき役割りがこれこれだということで金額をおきめになっていく。それが約一%になっていくのだというようなことで計算をなされておるのでございますが、それはしかしあなたが計算なさっているのではなくして、いわゆるOECDの機関の中においてそういう要請が行なわれたということは、これはもうよくわかっておるわけです。しかし現実にいま行なわれつつある海外経済協力というものが真に日本の国力にふさわしく、日本国民の総意に基づいて日本国民の海外発展、発展というよりは海外の経済協力姿勢の中から出されているものだということは、遺憾ながら佐藤内閣成立以前の海外経済協力の実態とそれ以後における実態とを比較するとき、歴然とした差が出ておるわけです。したがって、私どもは好むと好まざるとにかかわらずこのことはいまのアメリカのいわゆるドル防衛政策の一環として、日本アメリカのドル防衛政策に協力する一つの具体的なあらわれとして、海外経済協力というものをことさら佐藤政府は取り上げ、これを強調しこれを国民に押しつけておるのではないか。真に国民がみずから経済的な安定と繁栄、国際的に自立したアジアにおける先進国であるという自覚に燃えて海外経済協力をやろうというような、そういうところには到達していないような中で、政治的にこのプログラムは進められておるような感じがしておるわけです。そういたしますと、現在アメリカ政策は非常に激変、激動を続けておりまして、アメリカが保護経済政策をとるとか、あるいはまたアジアから手を引くとか、あるいはまたもっと飛躍して中国との直接交易に入るのではないか、こう言われておるようなとき、日本海外経済協力という問題については、いま少しく時勢を見ながら具体的に取り組んでいく必要があるのではないか。目先の行動に、激動にわずらわされ過ぎるのではないか。そういう点についてこの機会にいま少しく根本的な対策を立てられる必要があるのではないかと考えるわけですが、御見解を承りたいと思うのです。
  211. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 私は、アメリカのドル防衛の一翼をになうためにアジアに対しての経済協力をやるんだというこの考え方には承服いたさないのであります。それはアメリカに比べたら日本のほうが——アメリカは大きな自由世界責任を持っておるリーディングネーションであっても、しかしアジアではないんですからね。日本はやはりアジアに対する関係というものはアメリカよりも私は深いと思う。日本が将来経済的に発展をしていこうとする場合、どうしたって将来の日本のマーケットというものはアジアが一番大きなマーケットであることは間違いないし、アジアが安定してくれなければ日本の平和とか安全ということにも非常な不安をかもし出すことは、これは明らかであります。ベトナム戦争というものがどれだけの国内的な不安をかり立てておるかということは、これはわれわれ経験済みですから。だからむしろアメリカのドル防衛に日本が片棒をかつぐのではなくして、日本アメリカを引っぱっていかなければならぬ。アメリカのような世界一の経済力を持っておる国がやはりアジアのためにもっと貢献しなければいかぬ。軍事的でなしにアジア経済社会開発のためにアメリカはもっと力を尽くしてもらいたい。だから向こうのドル防衛に引っぱられるのではなしに、これからの日本自分がイニシアチブをとって、自分も出さなければ説得力がないですね。人の金ばかり当てにするようなことでは説得力がないが、自分もできることをやって、その実績の上に立って日本アメリカを引っぱっていかなければならぬ。ドル防衛どころではない、日本アジアに対する開発の熱意がアメリカを引っぱっていく、それが私は日本立場であると思います。それだけのアジアとの関係の深さは、アメリカに比べたら日本はずっと深いということであります。安全のためにも繁栄のためにも深い。そういうことで、何かドル防衛に日本が協力するためにアジアに対する経済協力をやるんだということは、何かさか立ちした議論だと私は思っています。
  212. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大臣の御説は御説としてこれまた承っておきますが、アメリカのドル防衛に協力するのではなくして、日本の自主的な立場に立つ海外経済協力をやるんだ、こういうことになりますと、一番問題になるのは、日本の自主的な立場というのは一体どこに根拠を置くのか。それはアジアの一角にある。すなわちアジアの一角にあるということは、その至近的な距離を国際的に見てみれば、好むと好まざるとにかかわらず中国がある、韓国がある、北朝鮮がある、ソビエトがある。それではこういう国に対する経済協力は一体どのようにしていくのか。韓国は日韓条約に基づいて一つの具体的なプログラムが進められておりますが、その他の国に対する、もっと至近的な地理関係にある国々に対する海外経済協力については具体的に見るべきものがない。見るべきものがないどころか、具体的に敵視政策に近いとすら感ぜられるような政策がいま続けられつつある。このことについて、いま大臣のお考えはちょっと実情とそぐわないような気もしますので、ひとつお聞きしておきたいと思います。
  213. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 日本に国力が十分あれば、日本海外経済協力というものももっと範囲を広げていいでしょう。しかし、日本はそれだけのものがないのですよ。これは、いまでさえ、いろいろ国内においても海外協力海外協力と言うけれども、そういう力があるなら国内問題にもっと力を入れてもらいたい、こういう声が国民の中にあることは、これは無理からぬ点があるでしょう。だから、日本はそれだけの資本の蓄積も十分ではないし、海外に対しての経済援助とか協力ということは十分できないですから、したがって、現在においては、国交が回復しておる国、日本と国交を持っておる国が援助の対象になることは、現在の日本の資金の状態から見てやむを得ないことである。もっと国力がふえてくれば、ジョンソン大統領でも、ハノイにまで援助する、こう言っておるのです、戦争しておる相手まで——ボルチモアの演説では、十億ドルをベトナムの復興のために援助する、その中にハノイも加わっておる、こう言うのです。そういう資力があれば、そういう態度というものは当然の態度だと私は思います。日本は遺憾ながらそれだけの資力がないですから、国交回復の国に限らざるを得ないことはやむを得ないと考えております。
  214. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そうすると、大前提が非常に具体的になってきたわけです。いわゆる海外経済協力日本の果たさなければならぬ使命だ、しがって、その中心的な目標がアジアの地域に向けられる、しかし、これは国交が回復しておるのが前提だ、こういうぐあいに三段論法になってきておるのですが、私は、いま北ベトナムに対するジョンソン大統領の言明があって、現実にハノイと、国交の回復していない敵視政策がとられつつある国とすら現実に和平会談が進められつつあるとき、日本がいま中国と政治的に国交は回復されておらないとはいいながら、経済の交流の面あるいは人的な交流というものが相当程度行なわれつつある、いわゆる敵対国でない形の中で、敵視政策があるかないかということはともかくとして、敵対国でない形の中における一つ関係が存在しておると思うのです。そうするならば、日本がそれに対する支援をするしないということはともかくとして、経済的に交流することに対する障害があるとするならば、これを除去することがいま日本政府の果たさなければならぬ当然の責務であるし、外務大臣はそのことに対して積極的なる取り組みをしなければならぬ、こう思うわけです。具体的に言うならば、今度改正される経済協力基金の対象国に中国なり北朝鮮を想定することも可能でしょうし、あるいは、もっと具体的に言うならば、先ほど大蔵大臣に対して質問しましたけれども、輸銀使用をはじめとする、わが国経済の持つ力の範囲内において中国との門戸を経済的にもう少し広げる必要があると思うのですが、この点について外務大臣の御見解をお聞きしたい。
  215. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 いま申したように、海外経済協力基金は、これは援助の性格を帯びるわけですから、日本と国交を回復しておる国でもなかなか援助というものの要請にこたえられないのですから、海外経済協力基金の対象国というものがやはり国交を回復しておる国に限られることはやむを得ないと考えます。ただ、輸銀なんかの問題については、これは政府態度は、具体的な問題が起こったときに具体的な問題として検討をいたしますということで、初めから、輸銀は国交を回復していない国には使わないという原則を持っておるわけではない。具体的な問題ごとに政府はいろいろの点から検討を加えて、これに対して自主的な判断をいたしますという答えでありますから、プリンシプルとして、国交を回復していない国には輸銀を使わぬというプリンシプルは政府は持っていないということでございます。
  216. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 それでは具体的に御質問いたします。  いま問題になっておる日立造船のプラントについて輸銀を使用することは当然可能だと思うのですが、いかがですか。
  217. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 問題が具体的になってきたときに、政府が自主的に判断を加えてこれにノー・イエスを言うというのが現在の立場でございます。
  218. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 したがって、具体的になっておる問題としていま提起したわけですが、この問題についての御見解をお聞きしたいと思うのです。
  219. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 うわさは一ぱいありますよ。けれども、まだ問題が具体的になっておるとは言えません。しかし、問題が具体的になれば、政府は、従来言っておるように、自主的な判断を加えてこれに対してどうするかということをきめる、こういうことでございます。
  220. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 したがって、具体的になりつつあるという前提の中で、出てきた場合どうするかということを外務大臣にお聞きしておるわけです。
  221. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 いろいろ、輸銀の場合は、その具体的な問題に政府が判断を加えるという自由を政府は持ちたい。いまいろいろ佐野さんはこの問題はどうするのだ、あすこの輸銀の使用はどうするのだと言うけれども、一々問題を仮定してお答えすることは適当でない。問題が出たときに政府は判断を加えます、こういうお答えをするよりほかないと思うのであります。
  222. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 それでは、わが党には中村先生とか堀先生とかいろいろおられるから、またもっと突っ込んだ御質問もあると思いますから、私は次に進みたいと思います。  次の問題については、私は、いま問題になっておるこの海外経済協力基金法の改正の対象がインドネシア向けであるということは、先ほど大蔵大臣に質問してそのとおりだというような御答弁をいただいたわけですが、そうなりますると、一番問題になるのは、基金法は改正した、そうして資金はお貸しする、そしてそれによって商品の購入が行なわれる、これはいいとか悪いとかは別として、そうなるのですが、一番問題になっておるのは、去年いわゆる五千万ドルの輸銀融資と一千万ドルの無償貸与を行なって、インドネシアの当面する経済困難を救済するのだということで、いろいろ議論がありましたが、やりました。ところが、それに加えて四千五百万ドルのいわゆるリファイナンスをいたしておるわけです。この四千五百万ドルのリファイナンスというものは、いままでの海外経済協力に対する、具体的に輸銀融資並びに経済協力基金によるところの融資ですが、そういうものに対する、あるいは借款、いろいろな問題がございますが、そういうものについて、その法律のたてまえからいって、当然適当にその事業が成り立つ、これは輸銀においても基金においてもそうですけれども、それができ得ないという状況の中で政府が判断されて、そして交換公文に署名をされ、そしてリファイナンスが行なわれた、こういうように解釈いたしますると、いわゆる一九六五年以前の四億八千万ドルというきわめて限られた金額の中においてすら四千五百万ドル、いわゆる一割に近いお金がインドネシアだけで再融資をしなければならないという事態があったわけです。これから毎年国民生産力の増強に基づいて海外経済協力の資金が方々に融資されるという形になってくると、これは非常に危険な制度だと思うのです。しかも、これは国会における承認を何ら要さない、交換公文に署名したということ、外務大臣自身がそれに対して責任をとったということだけで問題の処理がはかられるということになれば、海外経済協力という名のもとに、いわゆる不確定な要素を多分に持つそれぞれの国に対して、どんどんかってな——かってなということが適当であるかどうかわかりませんが、お金が使われる。それがさらに回収不能になり、さらに再融資が行なわれる。その間に輸出保険の補償がとられる。これは国民だれが聞いたって腹が立つ以外の何ものでもないと思う。したがって、四千五百万ドルのリファイナンスについては、国会においてたびたび論議をされましたが、今後これらの措置についてどうお考えになるか、同時にまた、このような措置を今後も基金法の改正なりあるいは海外経済協力費の増高に対処してどうおとりになるか、この際お聞きしておきたいと思うのです。
  223. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 一九六六年にこのリファイナンスをやったわけです。これは東京、パリ、この二回の国際会議で、インドネシアの状態というものはやはり債権の繰り延べをしなければやっていけないということで、国際会議の決定に従って四千五百万ドルのリファイナンスをやったわけでございます。リファイナンスが今後行なわれるものは——リファイナンスというのではなく、インドネシアの経済安定のための国際会議による援助が行なわれるということになっているわけで、これはインドネシアというものが持っておるアジアにおける重要な地位から考えて、これをそんなに経済的に混乱するままにまかせて非常に不安定な状態におくことは、アジア全体の安定にも世界の安定にも非常な影響を持つという国際会議の判断というものが、みながやはり協力して助け合うということになっておるわけでありますから、これがむやみに、無制限にといっても、日本はやはり資金の制約もありますし、海外経済協力基金でもその資金というものは国会の御審議を得なければならぬし、したがってまたインドネシアに対して基金から出せば国会の批判の前に立たされるわけでありますから、あるいは独裁的な国ではやみからやみに行なわれることがありますが、日本の場合は、先ほども申したのですが、これだけの強力な野党の批判というものを日本の国会は持つのですから、そんな間違ったことをすれば承知する野党でもないですからね。だからそういう点で、日本の場合むやみに海外に対して援助をするというようなことは可能なことだと私は思わないです。手続だって非常にきびしいために、スハルト大統領がわざわざ来てもコミュニケも出せなかったのですからね。それは何かといったら、この国会において手続をおろそかにして資金の約束をすることは日本の国会は絶対に許さない。これだけきびしい民主政治体制が確立しているわけでありますから、やみからやみというようなことは、佐野さん、あなた自身だって許さないでしょう。だからそういう御心配はないのではないか、私はこう考えるのでございます。
  224. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 許さない許すということは、全部に目が通るわけではございませんから、これはわからないことです。しかし、私問題にすることは、単に、インドネシア四千五百万ドルの問題、これが一番問題ですが、リファイナンスを経済協力の中で行なったのはこれだけじゃないと思うのです。これは外務大臣あと宮澤さんへの質問のとき具体的に資料を出して御説明を願う予定でおりますが、外務大臣としては、それを許さないでしょうということでなく、インドネシア援助についても総額二十三億ドルといわれる金額の中で、日本はわずかに二億四百万ドルですか、比率としてはきわめて少ない金額の債権国であります。一割に満たない債権国であります。その一割に満たない債権国がアメリカと比肩し得るような援助を去年もしたし、ことしもしようとしておる。さらにその上にリファイナンスを積み重ねるということになれば、これは世界に例を見ない巨額なる援助を一国インドネシアに対して行なっておるわけです。インドネシアにすることがいい悪いの議論はしばらくおくとしても、日本経済日本の国民の感情からしてきわめて割り切れないものが残ると思うわけです。それは過去のインドネシアに対する賠償その他いろいろの実績がありますから、その実績からしてそういう感じがあるわけです。それで、外務大臣は、リファイナンスについては交換公文の署名によって事が終わるということでなく、もっときびしい態度でこれに対処していただき、これから海外経済協力費が増高されるということを前提にして、この際決意を聞いておかなければ、ただ、野党の皆さんうるさいでしょう、あなただって認めないでしょう、ああそうですかで終わらない問題だと思うのです。いま一度御答弁をお願いしたい。
  225. 三木国務大臣(三木武夫)

    ○三木国務大臣 私は佐野さんと全く同感で、海外のいわゆる後進国に対する経済援助というものが非常に疑惑に包まれておるような、これほど政治的な罪悪はないと思っておる。ほかのことよりも、一番困っておる。その国が立っていかないような国に対して、やはり経済援助というものがいろいろなスキャンダルの種になる、これくらい政治道徳として唾棄すべきものはないと思っておる。過去においていろいろなうわさがあることは事実ですよ。厳にこれを戒めていかなければ、国民に対しても相済まぬし、また、相手国に対してもそういうことは決して両国の関係を良好にするものではない。そういう意味で今後もあなたと同じようにこの問題はきびしい態度をとることを約束します。これは許されないことであります。
  226. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 大臣、もう時間が来たというお話ですから、けっこうです。どうも済みませんでした。  それでは宮澤さんに質問を続けていきたいと思うのですが、椎名さんはもうあとちょっとでありますから……。あまり長くならないように、もうやめたらどうかという理事の方のお話でありますが、準備した関係もありますので、そう簡単にやめたのではどうかと思いますので、あとしばらくおつき合いを願います。  いま、リファイナンスの問題で三木外務大臣は、インドネシア四千五百万ドルというのは列国の会議の約束の中でそうなったということでございますけれども、これがはたしてどこにもないのか、インドネシアだけに対してやっておるのかどうか、この点について御説明願いたいと思うのです。
  227. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 当面の責任者であります大蔵省政府委員が見えておりますからお答えいたします。
  228. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 お答えいたします。過去の例に、ちょっと数字を忘れましたが、アルゼンチン、ブラジルに対する債権につきましてリファイナンスしたことがございます。
  229. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 私の調査いたしましたことによれば、ブラジルのウジミナス製鉄所あるいはチリ——ブラジルじゃなくてチリじゃないですか、リファイナンスしたということが記録上出ておるようです。したがって、リファイナンスは単にインドネシアだけの問題ではない。私は、今度の海外経済協力基金法の改正に対する一つの重要な点にならざるを得ないのではないかという心配をしておるのは、宮澤さん、こういうことなんですよ。この前の本会議でも私、質問申し上げたのでありますが、今度の法律の改正によりますと、業務方法書というものの一部を改正して物品援助その他を行なうということになっておりますが、この業務方法書の認定をするのは経済企画庁長官、あなたがされるわけですね。一たび業務方法書に基づいてその資金の割り当てが決定するということになれば、あと経済協力基金のほうの判断に基づいてその金が使われるわけですね。したがって、この業務方法書の一部を改正する今度のこの改正案というものが、その内容において、現在の基本法の体制から著しい変化を示す内容を持っておるわけですね。したがって、そういう点について宮澤さんはこのリファイナンスを含む現在の基金のあり方、運営の方法等についてどのように、現在の基金がすでに二カ所以上にわたってリファイナンスをしておるという現実の中で、さっき三木さんが言われたようなこととの関連の中で、どう判断されるか、抽象的ですが、御答弁願いたいと思います。
  230. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 その業務方法書云々と言われました意味が、私、どういうことを意味しておられるかはっきりいたしませんでしたが、基金でリファイナンスをするということはあり得ないことでございます。
  231. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 それでは柳田さん、そういう事実はあるかないか、参考にちょっとお聞かせ願いたいと思うのですが……。
  232. 柳田参考人(柳田誠二郎)

    ○柳田参考人 先ほどから基金の貸し付け金についてリファイナンス、こういう問題の御質問がありましたけれども、現在まで基金のやっておりまするインドネシアに対する援助というものはすべてプロダクション・シェアリング・システムでありまして、金で返済を受けるということはないのでございます。でありまするので、リファイナンスのカテゴリーには入っておりません。これが実情でございます。将来基金法が通りまして商品援助をやる、こういうような問題が起こった場合に、リファイナンスが起こるかどうかということは、将来の問題でありまするが、従来の貸し付け金とこれからやる貸し付け金が外交上どういうふうに取り扱われるか、差異があるかどうか、いろいろそういう問題がありますので、私どもとしては十分な注意をもちましてリファイナンスの起こることのないような仕組みをやりたい、こういうふうに考えております。もっとも、リファイナンスの問題は、基金の問題というよりも政府間の問題に当然になるわけでありますので、これは政府のほうにもひとつ十分御考慮を願いたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  233. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そうすると、さっき大蔵省のほうで言われた、ブラジルないし、アルゼンチンというお話ですからアルゼンチンということにいたしますが、ここで行なわれたりファイナンスの内容は一体どういうものか。これは大蔵省のほうでもけっこうです。
  234. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 お答えいたします。アルゼンチンにつきましては、一九六二年の債権国会議の決定に基づきまして総額一千万ドル強のリファイナンスが行なわれております。アルゼンチンにつきましてはさらに六五年六月の債権国会議におきましても一千万ドル強のリファイナンスが決定されております。  それからブラジルにつきましては一九六一年五月の債権国会議におきまして総額七百七十万ドル余の債権につきましてのリファイナンスが行なわれております。
  235. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 だから、その内容は何かということを聞いておるのです。
  236. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 アルゼンチンの第一回の分につきましては、一九六二年十二月二十四日以前に契約ができまして、六三年一月から六四年十二月末までの間に支払い期限の到来する延べ払い商業債権につきまして、元本についての半額をリファイナンスいたしております。それから一九六五年のリファイナンスにつきましては、六四年十二月末までに契約が済んで百八十日以上の期間にわたる割賦払いによるところの債権国の権限ある公的機関により保証されている商業信用及び特定プロジェクトのために認められた政府借款で、一九六五年一月一日から六五年の十二月末までの間に支払い期限の到来する債権のうち、当事者の合意によって決定されたものの元本の六割につきまして、リファイナンスがきめられました。  それからブラジルにつきましては、ブラジルの為替管理局でありますスモックに登録済みで、六一年十月一日から六六年十二月末までの間に支払い期限の到来する延べ払い商業債権につきまして、元本及び金利につきましてリファイナンスがきめられました。  ちょっと言い落としましたが、ブラジルにつきましては、六四年七月にも第二回のリファイナンスがきまっております。これにつきましては、同様にブラジルの為替管理当局でありますスモックに登録済みの契約で一定の時期に支払い期限の来ますものにつきまして、元本及び金利の七割につきまして、リファイナンスがきめられております。
  237. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 私の持っている資料では、チリに対して六百二十四万四千ドルのリファイナンスが行なわれたように書かれておるわけですが、この資料が誤りなら、あとでまた資料を……。
  238. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 ちょっと一ページ見落としまして……。チリの分につきましては、一九六五年の二月に債権国会議がございまして、その債権国会議の決定は、六四年十二月末までに契約され、かつ六カ月以上の期間にわたる分割払いの伴う保証のある商業信用及び付属リストに掲載の政府貸し付けの名目でなされた債務で六五年の一月から六六年の十二月末までの間に支払い期限の到来するものの元本の七割に相当する金額についてリファイナンスがきめられております。その日本の分のリファイナンス金額は六百二十四万ドルであります。
  239. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 だから、私が先ほど来申し上げたとおり、私の資料が正しかったことがわかったのですが、そうなりますと、何も怠慢をどうだこうだと申し上げる必要はないのですが、ブラジルで行なったりファイナンスあるいはチリその他に対しては、それぞれ海外経済協力基金がいわゆるプロジェクトとして融資されて出されておるわけです——それには全然関係ございませんか。
  240. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 リファイナンスは、輸出入銀行が実施いたしております。輸出入銀行が実施いたします根拠は、同法の十八条の五号に基づきまして実施いたしております。経済協力基金関係ございません。
  241. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そういたしますと、経済協力基金は、昭和三十五年ですか、五十数億のいわゆる輸出入銀行の業務を受けた形の中でその業務を発足しておるわけですね。そうしますと、この輸出入銀行で融資した金というのは、経済協力基金に入った場合においては、全然その性格を異にする、いわゆる権利の継承が行なわれた形の中において存在する経済協力基金というものは、輸出入銀行の業務をその範囲において、発足後においては差はあるけれども、継承した事態の中においては——権利義務の関係はどうなっておりますか。これとリファイナンスとの関係は全然ございませんか。
  242. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 ちょっとはっきり覚えておりませんが、輸出入銀行の債権のリファイナンスは先ほど申し上げましたように、輸出入銀行自体の債権のリファイナンスではなくて、民間債権であり、その他の債権のリファイナンスであります。日本の場合には全部民間債権のリファイナンスをやっております。それで、経済協力基金ができますときに、確かに出資は——出資金というか、輸出入銀行にありました経済協力基金を分離して、独立法人にしてできたものが経済協力基金でございますが、その輸出入銀行のころにありました経済協力基金というものはリファイナンスの業務を行なっておりませんでした。したがいまして、現在両者の間には全く関係はございません。
  243. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そういたしますと、参考人にちょっとここでお尋ねをして次へ進みたいと思うのですが、ウジミナス製鉄所は、いわゆる輸出入銀行の融資に基づいてその業務を開始し、今日経済協力基金融資を受けてその仕事をやっておることは事実でございますね。
  244. 柳田参考人(柳田誠二郎)

    ○柳田参考人 ウジミナスに対する基金の金融関係は、日本ウジミナス会社の資本金に対しまして二十六億ばかり出資をしておるわけでありまして、直接基金がブラジルに対しまして債権を持っているということはないのでございます。したがいまして、リファイナンスという問題は、基金につきまして起こっておりません。
  245. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そういたしますと、日本ウジミナス製鉄所ですから、ウジミナス株式会社ですか、ここに書いてありますが、そこに対して二十七億の出資をしておる。したがって、大蔵省、ここはその再融資の対象でなく、健全なる金融下においてその事業が日本政府との関係の中においても行なわれておる、全然問題ない、こう解釈していいのですね。これはまた私もいろいろ調べておることがございますので、いまの質問に対する答えがあれば、それで次に進みます。
  246. 柏木(雄)政府委員(柏木雄介)

    ○柏木(雄)政府委員 ちょっといま資料を持っておりませんが、先ほど申し上げましたように、ウジミナス会社に対する民間商業債権がありますれば、それが一定期日の間に支払い期限のくるものがあれば、そのときリファイナンスのあったことがあるかもしれません。私いま数字を持っておりませんからわかりませんが、もしそのときに支払い期限のくるものがあれば、当然、債権国会議の決定に基づきましてリファイナンスが行なわれたかと存じます。
  247. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 ここであまり時間をとるわけにいきませんから次に進みますが、これは保留いたしておきます、総裁もよくおわかりにならないような点もあるようでございますから。  私は、問題は、やりつつあることがどうだこうだというようなことについてはしばらくおくとして、さっき外務大臣のお話にあったように、リファイナンスというものの持つ影響、意義というものが非常に大きい。しかもその中からいろいろな問題点の発生が予想される、こういう点がありますので、あえて質問をいたしたわけであります。この点については保留をいたして、次に進みたいと思います。  七時までということでございますから、はしょっていきたいと思います。  宮澤企画庁長官にお伺いいたしたいのでございますが、さっき三木大臣には、ついに時間的な余裕がなかったのでたいへん残念に思うのですが、この法律の改正によって——本会議においても質問をいたしましたけれども、その業務の一部について輸出入銀行並びに民間銀行に対して委託をすることができる、こういうような形になっておるわけです。そして基金法に基づく措置といたしましては、業務方法書あるいは運営書ですか、業務の範囲に基づく業務方法書に基づいてその措置が決定せられれば、あとは基金において自主的にその仕事がなし得るという形になるわけです。そうなりまして、さらにそのことが輸出入銀行ないし——輸出入銀行は法律で決定がございますれば民間銀行にその業務を委託することができるということになりますれば、基金法の今回の改正の趣旨と合致して、将来いわゆる民間銀行に対する間接的な融質、低利において長期にわたる、そういうものが提供されるということは、現在法律を審議する過程の中においていろいろ議論があって、それについてはこういたしませんとは言いながら、条文上の解釈としてはそういう危険が当然予測されると思うのでありますが、この点についてどのような歯どめをしておるかお聞きしておきたいと思うのです。
  248. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 これは本会議でもたしか申し上げたと思いますが、今度のような場合になりますとBE、ボーナスエクスポートなんかの関係で相当雑多な品物が出てくるだろう、そして金額もおのずからおのおのがそう大きな金額でない、相当手数を食う仕事が出てくると思います。それらを基金の中で一々やっておることはなかなかむずかしゅうございますから、その事務を普通銀行に委託をしよう、方針を決定するような、白か黒かといったようなことを決定するような権限を委託するつもりはもちろんございませんし、金を預けるつもりもございません。そういういわばルーティンの事務を委託しようというので、業務ではございません。
  249. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 その事務を委託しようと思うので業務ではございません、こうお話しでございますが、法律の条文の中でその点がどこで明らかになりますか。この法律の改正する条文によれば、「基金は、経済企画庁長官の認可を受けて、第二十条第四号の資金の貸付けに関する事務の一部を」——「貸付けに関する」ということがあるわけですね。単なる事務、いわゆるそういう大まかな事務ということだけでは、拡大解釈がされる要素がここに十分にあるわけです。したがって、それを条文上に明記するということになれば、何らかの歯どめをつけない場合においては、基金といえども、やはり業務方法書並びに業務の範囲に基づいて、経済企画庁長官の認可を受けてその仕事をやることになるわけですから、事務というものがその仕事の大部分、範囲というものについてきまったことの中においてやるということであれば、当然そういうことになると思うのですが、これはいま申し上げたとおり、輸出入銀行から基金をつくり、基金がその仕事をやっておるという形の中においては、経済協力の基本であるいわゆる物品の供与というようなものはやらないということがたてまえになっておった。それを今度やるようになった。やるようになって、さらに事務を銀行に委託するということになれば、逆に基金は単なる銀行のサービス機関になっていくということが予測されても差しつかえないのではないか、こういうようなことが考えられるわけですが、その歯どめをどのような方法においてはっきりするのか。しませんということは、いま法律をつくったときのことなんです。たとえば私、話が長くなって恐縮でござまいすが、今度の経済協力基金法律ができました当時からの速記録を出して検討いたしました。読みました。そうしたら、その当時と現在では、法律の改正が何回か行なわれたにしろ、相当違った意味において基金の運営がなされていることも多々あるわけです。したがって、そういう面についてこの際はっきり聞いておきたいと思うわけです。
  250. 赤澤政府委員(赤澤璋一)

    赤澤政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、現行法でも御存じのように二十三条でもって、輸出入銀行にその事務の一部を委託することができるとなっております。この事務の委託につきましては、先ほどお話がございましたように、業務方法書でもって事務の委託の内容を現にきめておりまして、それは企画庁長官の認可になっておるわけでございます。現行の輸出入銀行に対しますところの事務委託の範囲は、業務方法書をごらんいただきますと、ここにも書いてございますが、たとえば申し込み受付の事務とか、そういうきわめて単純な事務だけを委託させておる。今度の場合においても、おそらく、こういったことも考えまして、ほぼ同じようなものを必要があれば委託する、こういうことになってまいろうかと思います。
  251. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 私の申し上げたいのは——そういうことはよくわかっておるのです。わかっておるが、輸出入銀行というものは、いわゆる基金が輸出入銀行から分かれたという形の中において、親子か兄弟のような関係があるわけです。しかし、民間銀行というものはそうではないわけでしょう。ここに委託をするということになり、さらに基金が今度改正しようとするところは、業務の範囲におけるところの一部の改正、あるいは経済の協力という形の中において、経済協力の基本的なあり方について法律において変更しようとしているわけでしょう。したがって、その持つ意味は非常に重要なんですよ。銀行という文字だけでは——いままで商社におけるところのいろいろな話がある、あるいはそれに対する金融機関との結びつきがいろいろ話があるという形の中において、あえて銀行という文字をここに挿入した意図に非常に問題があるというぐあいに考えざるを得ない、あなた方の意図いかんにかかわらず。  時間がないからたいへん残念ですが、この問題は東南アジア等という形の中で基金が発足しているにもかかわらず、現実に日韓会談におけるところの賠償金額が決定する以前において基金が融資した金額の半分近くは東南アジア等の地域外のアジアを含む地域に融資されているでしょう。法律東南アジアと規定していながら、現実の仕事は東南アジア地域以外に基金がここ二年ばかり以前においては融資されておる現状があるわけです。銀行に一部事務委託をいいながら、この解釈は自由なんだから、大臣がかわりあなた方がかわれば、時の責任者が解釈することによっていかようにも解釈することができるということについてはきわめてむずかしい問題があると思うのです。しかしこれについては、いまここでそういう点についてやっている時間的余裕がございませんから、一応この問題についてもさらに保留しておきたいと思います。  時間がございませんので通産大臣に御質問申し上げたいと思うのですが、今度の基金法の改正のねらいはいわゆる商品援助によるということにあったわけです。したがってその商品というものは、六千万ドルだ、あるいは八千万ドル、九千万ドルだ。これはさっき大蔵大臣の答弁のように、わかりませんけれども、実際上ばく大な金です。三百億近いお金がインドネシアにこれから一年間、実際上は一年もない期間の中で商品に形を変えて送り込まれるわけです。したがって、この商品を目標にして、きわめてきびしい、激しい競争がこれから行なわれるであろうということは想像にかたくないわけです。現実に昨年の六千万ドルの融資がきまった直後、いわゆる使いものにならない電気製品あるいはその他いろいろ雑多な物があらゆる商社を通じて、しかも一流の商社といわれる人たちの手を通じて売り込まれた。それを買った現地の人たちはその使い方もわからないし、その地域の実情に合わない形の中において宝の持ちぐされになっておる。こういうような現状も相当多くあるということがいわれておるわけです。したがって今度の商品供与という形の中においてどのような物品をその対象にしておるのか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  252. 椎名国務大臣(椎名悦三郎)

    ○椎名国務大臣 プロジェクトの遂行に必要な物資、それから経済の安定に資するような物資、そういう範囲においてきまっていくわけであります。それで、そういう点から見て適当でないものについては、個々の場合にこれを除外する、そういう方針を持ってこの問題を処理しようとしております。
  253. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 プロジェクトということばはわかりました。しかし、経済の安定ということは、きわめて幅広い解釈が行なわれたわけです。したがって、経済の安定という形は、現在のインドネシアの国民生活に合致する面においての経済の安定ということになるとどの程度のものになるかということは、これはきわめて疑問視されるわけです。たとえば賠償金の中で、怪獣ものの映画が賠償金として支払われた。これも経済の安定ということになるならば、映画を見て楽しんで翌日仕事に励むから経済の安定だということになれば、それっきり。カラーテレビを持っていった。カラーテレビを持っていったけれども、それを送信する設備がない。しかしそれはカラーテレビを研究することによって経済の安定に資するのだということになれば、それはまた何も文句のいいようがないということになるのです。いまインドネシアの、私は行ったことがないからわかりませんが、道路の中で、使いものにならなくなっている、ちょっと手を加えれば使いものになるという自動車がごろごろしているというようなことを「エコノミスト」を通じてですが、私も読んでいる。こういうようなことが現実の問題としてあり、去年の援助の中においてもそういう問題がきわめて多いということが指摘されておるとき、ことしの物品援助についてどのような範囲をきめるのか、この際いま少しく明確に御答弁を願いたい。
  254. 椎名国務大臣(椎名悦三郎)

    ○椎名国務大臣 具体的には事務当局からお答えいたさせます。
  255. 原田政府委員(原田明)

    ○原田政府委員 六六年におきましては、インドネシアとわが国との間でいかなる品目を供与するかについて話をしたわけです。六七年からIMFないしコンソーシアムの方針に従いまして、いわゆるボーナスエクスポートに基づく品目ならば何でもいいということになったわけです。そのときにはインドネシアの需給、消費物資需要といったようなものの観点から、一番需要の強いものにいくということで、インフレの防止、民生の安定、物価の抑制というようなことに貢献するという見地から行なわれたものといわれておりますが、ただ先生御指摘のような映画フィルムでございますとか、必ずしも早急に経済開発に役立つかどうかというような点について疑問のあるようなものは含まれておりません。その後、テレビ、乗用車の部品、スポーツ用品、映画フィルム、絹糸、生きた動物といったようなものはネガリストに掲載をいたしまして、したがいましてそういうものは出ないという方針を立てております。したがいまして現在のところでは、経済開発または民生の安定といったようなものに役立つものに限られるというたてまえに一応なっているわけでございます。
  256. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 そういうようなものを輸出する商社はどの程度に決定しておりますか。いわゆる中小業者を含む輸出業者あるいは国内におけるところのメーカーはどのような判断に基づいて決定するのか。
  257. 原田政府委員(原田明)

    ○原田政府委員 BE制度になりまして以来、どういう商社が出すかということは全くコマーシャルな取引にまかされております。したがいまして私どもとしましては、そういう経済開発に役立つと思われるような定められた商品についての輸出契約が成立をした当時者によって輸出が行なわれていくということになるわけであります。ただ、あまり一商社、大商社等に偏するというようなことがないように気はつけてまいりたい、かように考えております。
  258. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 時間がないから結論に入りたいと思うのですが、私いろいろ研究をいたしまして、インドネシアの今度の基金法の改正に基づく商品供与という形の中における現在の政府の取り組みについては、いわゆる健全なる業者、あるいは不健全と称することがいいか悪いかわかりませんが、あらゆる業者において、去年もそうでございましたけれども、ことしにおいても、きわめて激烈な競争が展開されつつあるし、そのことによってだれが利益を得、だれがマイナス点を取るのかということになれば、粗悪なる品物をただもうけんかなの形の中において供与をされたインドネシア国民が、日本に対して、日本はいいことをやったと思っても、向こうの人たちはきわめて激しい憤りを持ち、日本に対する反感を助長するようになるし、日本の国民としても、特にその形の中に、いま経済の困難な中に倒産に瀕しながらその仕事をやっておる中小企業者をはじめ多くの人たちが、その犠牲の中でインドネシアの援助が行なわれ、そのことがかえってまた逆に日本品の声価を低からしめて、輸出が阻害される一因になるということについては、そういう例がたびたびあるだけに、これは重大な関心を持っていると思うのです。したがって、こういう点については、私はもっとほかの点から少しくお聞きしたいと思っておったのですが、時間がありませんので、たいへん残念でございますが、通産大臣に、これらの、先ほど来御質問申し上げたような国際情勢の中で、海外経済協力が行なわれる。その反面、国内的な状況の中では、中小企業をはじめとし相当多くの倒産があらわれつつあるとき、こういうような海外経済協力に対比する意味において、中小企業者に対していま少し国が積極的に取り組み——海外経済協力基金が一九七一年にはさっき申し上げたとおり十三億ドル以上になる、こういうことになるならば、そのほんの一部でも中小企業のほうへ融資する道を開くならば、中小企業の健全化は当然はかられる、こういうことはだれしも確信してやまないところだと思うのです。そういう意味において、海外経済協力基金の、特にインドネシアに対する今回の法律改正に基づく商品供与の現況の中で、日本の中小企業者のために通産大臣はどういうような取り組みをする決意であるか、この際、お聞きしておきたいと思うのです。
  259. 椎名国務大臣(椎名悦三郎)

    ○椎名国務大臣 どういう商社間において取引、商談が決定するかは、これはいわゆるコマーシャルの領域に属する問題で、日本政府といたしましてはこれをコントロールしておりません。向こうのほうでも、そういうことは、新政権は特別にそういう意図を持って、まぎらわしい手段を講ずるようなことはないように思われております。ただしかし、そうは言いましても、場合によってはこれはどうかと思うような点があれば、十分に向こう政府にもこれを注意し、また国内においても、世論の力によって十分にこれを監視、指導することにつとめてまいりたい、こう考えております。(佐野(進)委員「中小企業対策について」と呼ぶ)中小企業というけれども、なかなか手の回らないような場合も——そういう健全な中小企業については、これはもちろん育成する方針でございます。
  260. 佐野(進)委員(佐野進)

    佐野(進)委員 あとのほうは聞いてなかったようですから……。私も質問する事項がまだたくさんあるのですが、七時から理事懇談会があるというお話でございますので、一応質問を留保いたしまして終わりたいと思います。
  261. 小峯委員長(小峯柳多)

    小峯委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時一分散会