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1968-04-24 第58回国会 衆議院 商工委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十四日(水曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 海部 俊樹君    理事 鴨田 宗一君 理事 中川 俊思君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       岡本  茂君    木野 晴夫君      小宮山重四郎君    坂本三十次君       始関 伊平君    塩谷 一夫君       丹羽 久章君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    久保田鶴松君       佐野  進君    楯 兼次郎君       中谷 鉄也君    永井勝次郎君       三宅 正一君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商産業省重工         業局長     高島 節男君         労働政務次官  井村 重雄君  委員外出席者         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 四月二十四日  委員田中榮一君及び永井勝次郎辞任につき、  その補欠として木野晴夫君及び平岡忠次郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員平岡忠次郎辞任につき、その補欠として  永井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事島村一郎君同日理事辞任につき、その補欠  として海部俊樹君が理事に当選した。     ————————————— 四月二十三日  北海道地下資源開発株式会社労働者の処遇に  関する請願細谷治嘉紹介)(第四三五一  号)  同(永井勝次郎紹介)(第四四〇四号)  同(山口鶴男紹介)(第四四〇五号)  同(横山利秋紹介)(第四四〇六号)  中小企業振興事業団金融施策強化改善に関す  る請願井出一太郎紹介)(第四四四五号)  同(小川平二紹介)(第四四四六号)  同(小沢貞孝紹介)(第四四四七号)  同(吉川久衛紹介)(第四四四八号)  同(小坂善太郎紹介)(第四四四九号)  同(下平正一紹介)(第四四五〇号)  同(中澤茂一紹介)(第四四五一号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四四五二号)  同(林百郎君紹介)(第四四五三号)  同(原茂紹介)(第四四五四号)  同(平等文成紹介)(第四四五五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  通商産業基本方針に関する件並びに私的独占  の禁止及び公正取引に関する件(鉄鋼企業の合  併等に関する問題)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事島村一郎君から理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 御異議なしと認めます。よって、海部俊樹君を理事指名いたします。(拍手)      ————◇—————
  5. 小峯柳多

    小峯委員長 通商産業基本施策に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  6. 堀昌雄

    堀委員 本日は、最近新聞紙上で伝えられておりますところの八幡製鉄富士製鉄合併問題についてお伺いをいたしたいと思います。  最初にお伺いいたしたいのは、戦後から今日までに至る日本鉄鋼業の果たした役割りといいますか、それについての功罪というようなものがあろうかと思うのであります。これは通産大臣では無理かもしれませんから、重工業局長がまだ見えないので、企業局長からひとつ……。
  7. 熊谷典文

    熊谷(典)政府委員 所管局長でございませんので、抽象的なお答えになるかと思いますが、お許しを願いたいと思います。  御承知のように、経済の発展に応じまして鉄鋼需要伸びました。特に日本輸出振興考えます場合に、機械等輸出が重点的にならざるを得ないと思います。そういう面に鉄鋼業といたしましては相当低廉で、しかも、安定した鉄鋼を供給したということが言えると思います。それと同時に、日本輸出構造といたしまして、将来は機械等中心にならなくてはいかぬと思いますが、現段階におきましては鉄鋼輸出相当かせいでおる、こういうことでございまして、輸出でも国内でも両面にわたって、経済伸びに応じて鉄鋼に課せられた使命を果たしておる、こういうように考えていいと思います。
  8. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話は功のほうですね。よかったほうをお触れになったわけです。重工業局長、いま伺っておりますのは、過去における鉄鋼業功罪というようなことについて伺ったのですが、企業局長はプラスの面をお触れになりました。しかし、鉄鋼業は、特に最近においてはいろいろな面で問題をかもしておるわけであります。設備投資なり生産調整なりについてはかなり問題をかもしておると思うのですが、マイナスの面をちょっと少し答えてください。
  9. 高島節男

    高島政府委員 現在の鉄鋼業のかかえておりますいろいろな問題点でございますが、一つは、御承知のように現在各社の間での将来の需要を見越しまして、これがいままでの経済の成長よりは一般に鈍化してくることも頭に置いて、その需要は比較的将来の伸びがないであろうと思いながら、なおかつ、片方設備のユニットが大きくなっておりますから、その大きな設備をして自分のところがコストダウンをし、自分の力を業界の中で大きくとろう、こういう観点から設備競争が非常に激烈である。全体から見まして、設備競争をそういうふうにしてまいりますことは、将来の需要とのかね合いでは非常に問題が出てまいりますが、その間における相互の合理的な解決、理性的な判断というものに著しく欠ける点があるかと思われます。その観点から、通産省といたしましても、産業構造審議会鉄鋼部会を設けまして、自主調整中心としつつ何とかこれを解決していこうという努力を重ねてまいっていることは御承知のとおりでございますが、これは毎年なかなか難航いたしてもめているということが第一点。  それから第二点は、こういった熾烈な競争がとかく行なわれがちである機械とかいうものと違いまして、品物による特性があまりございません。したがって、お互いの間で量産してコストダウンするよりしようがないということから、設備競争も激しくなってまいりますが、生産の面でも、一定需給計画を立てる際にも、それぞれ思惑がありまして、各社間での競争販売面相当の激烈な影響を及ぼしております。この結果、いろいろと周辺におります平電炉業者、これは中小企業法律的な概念には当たらぬものも相当ございますけれども、いわゆる中堅企業と、それよりさらに小さい型の中小企業というようなものの間に相当影響が出てまいるという状態でございまして、これが現在あらわれております鋼材不況ということになるかと思います。  いずれにいたしましても、後者のほうは鉄鋼業自体の問題でございますが、前者のほうはひいては国民経済全体に設備投資を非常にあおりまして、私のほうの所管機械工業等では、一つ鉄鋼業からの注文の波というものに振り回されている傾向もあり、全体の設備投資に対してある意味でいい影響を与えておらぬ、こういうように認識しておるわけであります。
  10. 堀昌雄

    堀委員 通産大臣、いま一連の話をお聞きをいただいて、それではいまの、特にあとのほうのマイナス面はずっと昔からあったかというと、そうではないわけです。大体三十五、六年ぐらいを境として、その前は必ずしもいまのような激しい設備競争というものは起きておりませんでした。それじゃ一体これはなぜそのときまではあまり起きていなくて、それから激しくなったとお考えになるか、通産大臣のお考えをひとつ承りたいのです。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり日本産業界の様相が、もとは軽工業主体であったわけでありますが、だんだん重化学工業、そういうものに置きかわってまいりまして、そしてそれが輸出面においても相当な力をあらわすようになったということのために鉄が急に忙しくなった、そういうことに伴う現象だと私は理解しております。
  12. 堀昌雄

    堀委員 私は、この問題にもう一つの角度があったと思うのです。それは御承知のように三十六、七年ぐらいまでは資金の受け入れ先といいますか、世界銀行鉄鋼業には非常に大きな比重を占めておりました。ところが、御承知のように世界銀行は、財務比率一定限度に押えて、財務比率の関係でなければ融資をしない。要するに、必要以上の設備投資をしようとすれば、どうしても増資によって財務比率を一応コンスタントにしなければならぬという制約が実は働いておったことが、私は、やはり設備投資を今日のように激化をさせなかった一つの大きな理由である、こういうふうに判断をしておるわけですが、通産大臣いかがでございましょうか。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは世銀の政策でございますから、確信を持ってお答えできませんけれども、まあ情勢によってこの財務比率の適用のしかたも少し弾力的になった、こう思われます。
  14. 堀昌雄

    堀委員 企画庁長官にお伺いをいたしますが、現在ももちろん世銀の借款はございますけれども、実は昭和三十七年くらいまではかなりきびしかったものですから、当時住友金属はついに無額面株を発行するという段階に立ち至りました。私は当時、このような大企業の無額面株の発行について、やや問題があるということで大蔵委員会で取り上げたことがあるわけでございますが、そうまでしなければならないほど、実は融資がいろんな点に影響を持っておったと思います。ところが今日こういうことになってまいりましたもとの一つには、私はやはり、金融側の無秩序な競争といいますか、本来資本主義社会であるならば、融資をするものは、少なくとも財務比率がある一定条件に合って行なうというのは、これは世銀がやっておるように、私どもはそれが望ましい、こう考えたわけでありまして、かつて融資ルールの問題を都市銀行提起をいたしました場合にも、私はやはりそのファクターの中には、当然財務比率を見ながら融資考えるべきだという問題提起をいたしておりましたが、なかなかそうなってないという問題があるわけであります。この点については、私は、過当競争鉄鋼が行なっておることは、鉄鋼自体にも問題がありますけれども、あわせてそれを許してきた金融側にも問題があるんじゃないか、私はこう思うのですが、企画庁長官いかがお考えでございましょうか。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはりそういうことがあったように思います。
  16. 堀昌雄

    堀委員 そこで私は、しかし今日の鉄鋼業がここまできたという中には、いま重工業局長お答えになりましたように、確かに過当競争によるところの日本経済全体に与えた非常に大きなマイナス面もあったと思いますけれども、今日まで鉄鋼業国際競争力を持つことができるようになったのは、私はやはり競争原理がよく働いてきたということも非常に大きなある面でのメリットではなかったか、こう考えておりますが、通産大臣、その点はいかがでございましょうか。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 仰せのとおりだろうと思います。
  18. 堀昌雄

    堀委員 そこで現状で、私はそう考えてまいりますと、合併という問題がなくても、日本鉄鋼業というものが、もしその企業に与えられておる責任自覚をして良識ある行動をとられるならば、私は必ずしもこのような形の合併が必要でないのではないか合併をしなければ避けられないほどのものなのかどうか、ここが私は今度の問題の一つの大きな焦点だと思うのであります。  通産大臣にお伺いをしたいのは、八幡というのは日本で一番大きなシェア会社富士というのは二番目に大きなシェア会社でありますね。この大きな会社同士合併をするということは、一体それをすることなくしては、日本鉄鋼業は今後うまく発展できないのかどうか、そこらについての通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体の傾向として、なかなか押え切れない状況になったのではないかと思います。その原因は、業界の主観的な方面にもありましょうが、一面においては、客観的に大型化してまいりまして、一つの溶鉱炉を建てても、そこがもうそれだけでも二百五十万トン増産というようなことになりまして、その両面から設備調整ということが非常にむずかしくなった、そういうことが言えると思います。
  20. 堀昌雄

    堀委員 いや、私が申し上げておりますのは、もちろん設備が大型化してきておるということは一つの問題だと思いますけれども、ただ、それは合併でなければ避けられないものかどうかということなんです。要するに、いまの状況は、御承知のように、私はこの前もこの委員会で申し上げましたけれども、こういう問題になっていると思うのです。設備投資競争する場合に、私がいつも申し上げておることは、もし自分たちだけで自主的に競争してやりたいというのなら自由に認めたらいいだろう、そのかわり、もし不況になっても、過去に繰り返したような粗鋼減産のような法律に基づかざるような処置をとらないということになって、片方は、要するに自由競争なら最後まで自由競争責任企業が持つ、こうなれば私は問題がもう少しすっきりしたのじゃないかと思うのですが、過去における通産省のやり方は、設備投資は大いにやらしておいて、そうしてそれが生産過剰になれば一律粗鋼減産というような、公正取引委員長がたびたび問題を提起するような処置によって、実は設備の過剰を切り抜けていく、これが二回も続いておったわけですね。私は、やはり資本主義社会なら、自由にやるなら自由にやらせて責任をとらせる、もしそうでなしに政府の側の調整を聞いてくれるのなら、さらに調整を聞いた上で生産過剰になったときは政府考えよう、どちらかに割り切るべきだという議論を何回かしてまいりましたけれども、今日まではその結論が出ていないのです。中途半端な形でやったことが今日の設備競争を起こさせた最大原因である、こう私は判断しておるのですが、その点は企画庁長官はどうお考えになるか、それから公正取引委員長はいまの問題についてどう考えるか、通産大臣はどう考えるか。いまの順序でひとつお答えをいただきたい。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにおっしゃるような問題があったわけでありまして、通産省が事実上指導的な立場設備調整をしてきた、生産のほうは、これは自由であるということで、設備のほうで調整をしよう、こういうことでやってきたわけでありますけれども、やはりそこになかなかすっきりしないものが確かに従来ございました。公販価格といったような問題もありましたし、どうもいままでやってきたことはなかなかすっきりいたしませんで、ともすれば設備のほうはどんどんかってにやってしまって、そうして市況が低迷しますと、何か役所の力を借りてどうかしたいというような気配が従来しばしば見えました。最近は通産省も、かってに設備をおやりになるのなら、もうどうぞ業界御自身で処理なさらなければいけない、役所の知ったことではありません、こういう態度を最近とっておられるように思いますが、それはたいへんけっこうなことでして、従来なかなかそうすっきりしない面もあるように見ておりました。
  22. 山田精一

    山田政府委員 従来行なわれておりました生産調整でございますとかあるいは公販制、これらは公取立場といたしましてはあまり好ましくないもの、かように考えて、従来対処いたしてまいっております。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうも基礎工業でございますので、鉄鋼業だけでの、内輪都合でこれを調整するとかいうようなことがなかなかできない。でありますから、内輪都合で手控えておったら急に景気が上昇いたしまして、そしてとうとう外国から鋼材を買い入れなければならぬというような騒ぎすら起こったわけでありまして、やはりある程度は十分に余裕をとっていかなきゃならぬ。しかし余裕をとっていくといたしましても、景気がそれに追随してこなければ、また生産過剰におちいる。鉄以外の全体の立場からこれを調整しなければならぬ。そういったようなことを絶えず繰り返すということは、私はあまり賢明な方法ではないと思うのであります。
  24. 堀昌雄

    堀委員 いま企画庁長官公取委員長及び通産大臣お答えになりましたことは、少なくともこれまでやってこられた鉄鋼設備あり方及び生産調整公販価格という価格制度あり方については、いずれも問題があったというふうにお答えをいただいたと思います。  そこで、それでは一体この問題は合併によらなければ解決ができないかというと、そうではないのではないか、やはり企業自体が置かれておる社会的責任についてもっと自覚をされて、そういうビヘービアに立たれるならば、私はやや問題はないのではないかと思いますが、ややともするとこれまではシェア争いに実は終始をされておった感じがしてならないわけであります。このことは単に鉄鋼だけではございません。日本企業はあらゆる企業シェア争いで今日まで過当競争を繰り返してきた、こう私は判断をしておるわけでありますが、ここには日本経営者の反省をしてもらわなければならない点が非常にあると思います。  そこで、この問題を踏まえてもう一つだけ先に伺っておきたいのは、アメリカ鉄鋼というものはかつて非常に大きな力を持っておりましたけれども、今日日本鉄鋼業に比べても、国際競争力の点では必ずしも十分でないのではないかという感じがいたしておりますが、このアメリカ鉄鋼業が今日のような状態になった一番大きな原因は一体何にあったのか、これをひとつ企画庁長官お答えいただきたいのです。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よくは存じませんが、しばしばアメリカ鉄鋼業界人たちが言うことは、何といっても米国の労銀の水準が非常に競争国に比べて高い、これはしかし鉄鋼に限ったことでは本来ないわけでございますけれども、しかし非常に高いということ、それからやはり長いこと世界の非常に大きなシェアを持っておりましたために、幾らかその上にあぐらをかいた、転炉なんかにいたしましてもそうでございますが、設備更新等を怠った、こういうことの結果だというふうに、しばしばこれはアメリカ鉄鋼業界の人が申すことでございますが、そんなふうに聞いております。
  26. 堀昌雄

    堀委員 公取委員長伺いますが、いまの問題、確かにそれも理由だと思うのですが、一番土台をなしておるのは、アメリカ鉄鋼業管理価格、これが今日まで設備更新をさせなかったり、いろいろな条件をもたらした最大原因ではないか、今日のアメリカ鉄鋼業の立ちおくれの最大原因だ、私はこう考えておるのですが、アメリカ鉄鋼管理価格ですね、公取委員長いかがお考えでしょうか。
  27. 山田精一

    山田政府委員 私、アメリカ鉄鋼業につきまして専門に研究いたしたことはございませんので、従来人から聞きましたりした聞きかじりにすぎませんが、一番大きい原因は、鉄鉱石の所在地が従来五大湖地方でございましたのが枯渇いたしまして、南米から運ばなければならない。しかも工場海工場でなく、奥地にあるというような点がかなり大きいように聞いておりますが、ただいま御指摘の点も確かにその一つの大きな要因であろうか、かように想像をいたします。
  28. 堀昌雄

    堀委員 そこで大臣にお伺いをいたしたいのは、私は合併の是非の前に、日本鉄鋼業の将来の姿というものを考えてみる場合には、やはり競争原理というものが常に生きていなければならない、これはやはり現状ではどうしても一つの大きな原則だろうと思うのです。もし管理価格のようなものが腰を落ちつけるならば、そこには適正な競争が阻害をされてくる結果、どうしてもやはりシェアあぐらをかくということが二次的に起きてくる、これが私はアメリカ一つ鉄鋼業の教訓ではないのか、こういうふうに考えておるわけですが、大臣はその点についてどういうふうにお考えになるか、お答えをいただきたい。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカにおいてもアンチトラスト法ですか、そういうものがありまして、そうおおっぴらに、管理価格が殿様の行列のようにまかり通るということはできないようになっておるようでありますが、しかし、それの問題はしばらくおいて、私はやはり競争原理というものはどこまでも立てていかないといかぬということについては、御指摘のとおりだと思います。
  30. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いよいよ八幡富士合併の問題に入るわけでありますが、一体このような大きなものが合併をいたします場合に、一番問題になりますのは独禁法十五条の一項の、「国内会社は、左の各号の一に該当する場合には、合併をしてはならない。  一 当該合併によって一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」というのが当面の法律としては一番重要な問題点になろうかと思います。昭和三十年五月に、当時の公正取引委員長横田さんは、この合併のこの項に触れて、要するにシェア三〇%前後が一応その基準になるのではないか、こういう答弁が実はあったわけでありますが、公正取引委員長は今日の段階ではどのようにお考えになっておるか、それをお答えいただきたいと思います。
  31. 山田精一

    山田政府委員 御指摘のとおり、昭和三十年五月三十一日の参議院の商工委員会におきまして、当時の横田委員長は、「大体一つ業界で約三〇%近い——あるいは二五%から三〇%近い生産能力、実績を持っておりますものに対しましては、」「一応相当警戒をいたすと申しますか、注意をいたしまして」云々という御答弁を申し上げておるのでございます。私は、いまでもそれは変わらない、かように考えております。と申しますのは、三〇%近いものは一応相当警戒をいたすラインであるということに基づきまして、十分慎重に考慮をいたしてまいるべきものである、かように考えておりますが、ただ機械的に三〇%をこせば直ちにいかぬとか、三〇%未満であれば絶対によろしいとか、かように運用いたすべきものではなかろうと存じております。
  32. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これは重工業局長のほうにお伺いをいたしますけれども、一体八幡富士が占めておりますシェアはどの程度になっておるか。銑鉄、粗鋼普通鋼熱間圧延鋼材一般大型形鋼、それから厚中板熱間圧延広幅帯鋼冷間圧延広幅帯鋼、一体シェアがどのくらいになっているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  33. 高島節男

    高島政府委員 八幡富士合併いたしました場合、四十二年の暦年ベースのところでとってまいりますと、粗鋼では三五・七%ということになっております。あと品種ごとの資料はやや不正確でございますが、現在手元にありますおもな品種で申しますと、一番ウェートの多い厚板のほうでは三二%四十二年になるかと思います。これはただいろいろと厚板ミル等が今後できてまいりまして、むしろ過当競争のほうの品種ではないかと思います。冷延の薄板では三九%程度になりますが、これも設備が他社においても相当に進んでまいっておる状況にございます。むしろほかの圧延鉄板とか線材とかいうものではいずれも、三七くらいのところが線材、あるいは圧延鉄板では二六、こういう辺でございます。問題点はむしろ特殊の製品で、全体の鉄鋼のうちでのウエートが少のうございますが、一、二%しかウエートのない品種相当集中度が高くなってくるというものがございます。それはレール、重軌条でございまして、これは鉄鋼に占めるウエートは一%弱でございますけれども、しかし今回合併をいたしますれば八七%程度のことになります。需要業界が国鉄であるという特殊の性格は持っております。それから鋼矢板、シートパイル、これは必ずしもこの品種がすべて当該需要をまかなっていくものとは限りませんが、そういう品種といたしましては、これは九四%程度のものになるのではないかということを考えております。それからブリキ、珪素鋼板といったような特定の品種、いずれも一%ないし二%程度のウエートしかございませんが、シェア率としては六〇%をこすというところにまいるのではないか、こういうところまでいま勉強いたしております。
  34. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話のようにかなりシェアが高いわけですが、私はちょっと通産省の資料を計算してみて感じておりますのは、熱延の広幅帯鋼の場合には——これは大手六社しか資料をいただいていませんが、大手六社の資料で見ますと、これは三社で五三・五%、冷延広幅帯鋼でいきますとやはり大手六社の中でありますが、五八・一六%、いずれも大手六社の中でだけ見ても実は非常に単位が高いわけです。熱延広幅帯鋼冷延広幅帯鋼のようなものは中小ではあまり出していないと私は思うのですが、局長どうですか。熱延広幅帯鋼とか冷延広幅帯鋼のようなものは中小でかなり生産量がありますか。私はこういうものはほぼ大手の製品だから、六社のシェアというものが九〇%くらいあるのじゃないかと思うのですが、ちょっとそこを答えてください。
  35. 高島節男

    高島政府委員 大体御指摘のとおりではないかと思います。広幅だけでのこまかい資料をちょっと持っておりませんが、広幅は中小は非常に少ない。冷延はあるかと思いますけれども、熱延のほうは比較的少ないと思います。
  36. 堀昌雄

    堀委員 公取委員長、いまのように相当主要なものについて見ましても大体三〇%までじゃないですね。全部三〇%以上、おまけにこれは四〇%台のものもかなりある。さっき局長お答えになった特別な品種については、これはもう独占的なものが二、三ある。こういう条件になっている場合に、これはただこれまでのように警戒を要するとか相当慎重になるということと——実は私どもが心配をいたしておりますのは、やはりさっきここで一連のお話をしてきましたように、一体これほどのシェアがあるものがその気になればかなり私は競争は制限をされるであろうし、同時に価格についても一種のリーダープライスのようなものをつくって、かなりそれで押せる条件が実は出てくるのじゃないか。これは実はいま私が申しておるのは単に八幡富士そのものについてのシェアでありますが、御承知のように八幡富士の系列というものがかなりあるわけであります。ちょっとあわせてそれを伺っておきましょう。重工業局長、いま主要な鉄鋼の中でこの六社の次には日新ですね。次は中山ですか、品種によっては大谷、あとこまかいものがずらっとありますが、大きいものの資本系列をちょっと答えてください。
  37. 高島節男

    高島政府委員 一貫作業をやっておりますところだけで申しますと、御指摘のとおり日新が二%程度あったかと思います。これはただ企業としての拡張意欲といいますか伸びというものは、将来にわたってあまり期待できないような感触になってまいっております。大谷は現在資本系列に入っているというわけではございませんで、御承知のようないきさつがあるだけで、現在のところは切れております。
  38. 堀昌雄

    堀委員 いまの日新が入りますとこれはウェートは、特殊鋼なりあるいはステンレスのような変わった品種でありますけれども、これが持っておりますシェアというものが、また実は品種によってはばかにならないウェートを持っておる品種があるわけでありますから、これらを勘案して、一体この問題について公正取引委員会は今後のそういう公販価格的なもの、あるいはいろいろなその後に起こる価格における問題ですね、そういうものを含めてこの合併をどう考えておられるか、ひとつお答えをいただきたい。
  39. 山田精一

    山田政府委員 これから取り上げて調査をいたすことになるかもしれない具体的な案件につきましては、私の立場といたしまして、どうであろうかとかこうであろうとかいう予断的なことを申し上げますことは差し控えさせていただきたいとお願いをいたします。抽象的に申し上げますれば、十分慎重に厳正に調査をいたしたい、かように考えております。
  40. 堀昌雄

    堀委員 もちろんいま私も結論を認めるとか認めないとかいう答えをいただくつもりではないわけです。しかし、少なくともこれまでの横田委員長のあの発言の経緯から見て、先ほどいまもこれは変わらないとおっしゃったわけですね。あの中では二五%から三〇%まで非常に問題がある、こうなっておるわけですね。今度は大体三〇%から三五%も問題があるのだけれども、三五%をまだ上回っておるわけですね。さっきお答えになっておるように粗鋼状態でもそうであります。おまけに今後の見通しは、やはり八幡は清水に一号をいま建てておる。それが矢つぎばやに君津に二号を建てよう。もしいまのようなことが進むならば、早晩ここで五百万トン粗鋼で違ってくるということになるわけでありますから、今後の方向というのは非常にシェアは拡大をされる方向にあって、決してこのシェアが今後低下する方向に私はないと思いますから、その点で一体こういう合併が行なわれたときに、それの競争状態にあるかどうかを公取は何をもって判断をされるか。競争状態にあるということでなければ合併は認められないわけですから、じゃ一体そのものさしを何に置いて考え、どうされるのか、考え方をひとつ……。
  41. 山田精一

    山田政府委員 先ほど申し上げましたごとく、合併につきましては市場のシェア、それから企業の数、企業規模の順位等が主要な判断要件でございますが、そのほかに業界競争状況判断いたします資料といたしましては、競争企業との事業能力の比較、それから関連業界の当該企業との取引状況、新規企業の参入状況、それから代替品との競争関係、輸入品との競争関係、かような点を総合的に判断をいたしてまいりたい、かように考えております。
  42. 堀昌雄

    堀委員 そこで、もしかりに合併をされたとしますね。もしかりに合併をされたとして、いまのようにいろいろ勘案をなさって認められたという場合を仮定をいたしましょう。しかしいまおっしゃったいろいろなファクターがそのときと変わってくると思うのです。経済現象でありますから流動的でありますから、変わってきて、競争状態がきわめて制約をされてきたということになったときには、排除命令が出せますか。
  43. 山田精一

    山田政府委員 それはそのときの状況によりますが、当該企業の独占状態になりますとか、あるいは不当な取引制限になりました場合には、処置できるわけでございます。
  44. 堀昌雄

    堀委員 ことばが抽象的ですから、いまの話は私の問題の出した出し方もややドラスチックでありますけれども、私どもが心配をしますのは、このような合併がもたらす場合のメリットのほうは私はそう取り上げて多く言わなくてもいいんじゃないかと思うのです。それよりもやはりデメリットがどういう形で起こるかということが確実にチェックをされた上でなければ、合併を認めるべきではないのではないか、私はこういうふうに考えるわけですが、通産大臣、その点はどうでしようか。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは公取委員会において十分に、ひとつ厳正に、しかも慎重に御調査をいただいていくべき筋合いになっておりますので、私としてはいまこれに対してどうこうということはちょっと申し上げにくいのですが、ただ三十五、六年のころと今日の状況では、全く国際間の門戸が自由に開放されておりますので、三〇%があるいは三五%、四〇%になっても、国内だけで独占形態であるとかないとかいうようなことはもう論じられなくなっておる。ものにもよりまするけれども、そういうふうに国際間の門戸が開放された今日においては、多少これは趣を異にして考える必要があるのではないかということを考えております。
  46. 堀昌雄

    堀委員 実は四月二十一日の新聞を見ますと、こういうふうになっておるわけであります。「鋼材は昨年二月以来、十五カ月間にわたってほぼ一貫して下げ続け、ことしにはいってからは市販開始来の安値記録を更新した品目が続出したが、」「八幡富士合併方針が明らかになったことがきっかけである。これまで激烈な競争を展開していた業界一、二位の両社の合併方針が固まれば、当面、多少でも競争が穏やかになることが予想されるし、ひいては粗鋼減産などメーカー間の協調による抜本的市況テコ入れ策もやりやすくなろうというわけである、このため、すでに大手専業メーカーが採算難から減産に入ってその効果が現われ始めていた軽量形鋼がまず反発し、その他の品目でも採算線を割り込んで底値接近との見方が出ていたものが反発の手がかりをつかみ、軽量形鋼を追って上げに転じた。」  要するに、八幡富士合併をするということが、まだ事実合併も何もされていないわけですが、そのことだけですでに商品市況はもう上向きになるというほど、実はこれらの市況の問題というものが敏感に作用をしておる。ですから、もしここに書いてありますように、また私もその点ちょっと公正取引委員長にお伺いをしておきたいのですが、昨年から例の銑鉄の輸入ワクとの関係で何か少し減産が昨年後半は行なわれていると思うのですね。前半は別ですが、その減産はトータルとしては経済の情勢に応じたことですから、そのこと自身が非常に悪いと言うのじゃありませんけれども、そのやり方はどうも何か地下カルテル的感触に私は感じているのですが、公正取引委員会はどういうふうに感じていらっしゃいますか。
  47. 山田精一

    山田政府委員 昨年後半の減産は、主として国際収支の不調に対処いたすもののように考えまして、特に問題ありとは考えなかったわけでございます。
  48. 堀昌雄

    堀委員 それは私もそっちに比重があるからこれ以上申し上げませんが、今後の問題として、ことしの後半におそらく鉄鋼の需給の問題というのは相当きびしい状況が起きてくるのではないか、まずこう考えておるわけですが、その点について見通しを、これは重工業局長のほうから答弁いただきましょうか。
  49. 高島節男

    高島政府委員 鉄鋼の需給の見通しは、現在経済全体の見通しが曲がり角に立っておりますので、私どもきわめてむずかしい段階にあると考えるわけでございます。経済がこのように引き締められているゆえんは、一つは国際収支という観点、これが一番強いわけでございますから、銑鉄のスクラップ等の輸入に対してあまりにも生産の規模が拡大していくということは好ましくないという一般的な感じを持ちまして、業界とも抽象的な指導はいたしましたが、大体のところこの上半期は前年度下半期の横ばいぐらいの感じに行くのではなかろうかという見通しを持っております。一般的に、これは景気の波と国際収支とのかね合いでいかなる総合的な経済政策がとられるかによって非常に違ってまいるかと思いますが、どちらかといえば先行して悪いところへ下がっておりまして、今後秋口から下半期にかけましての様相は非常にむずかしい段階になってまいるのではないかと思います。しかし上期のところは、大体いまの横ばい程度の線で行けばそうこれ以上突っ込みはないのではないか。先ほど御質問のございましたちょっと最近直ったという点、合併の問題も思惑的に織り込んだ面もあるかと思いますが、底入れも、それぞれある意味では、非常によくなりはしないと思いますが、何とかつながっていくという感じじゃなかろうかと観察いたします。
  50. 堀昌雄

    堀委員 鉄鋼は毎年巨額の設備投資をいたしておりますから、今年もその設備能力、生産能力はおそらく後半相当に大きくなってまいるだろう、こう考えられるわけであります。  そこで、ちょっと横道でありますけれども、重ねて大臣に一ぺんお伺いしておきたいのは、こういう合併の話が出てきております今日、先般中小平電炉メーカーに対しては品種不況カルテルをひとつ考えたらどうかというような通産省の指導があるように聞いておりますし、私もそういう品種によって非常に価格の低落しておるものについては、品種不況カルテルをつくられることについては反対でないわけです。ですからそういうような法律の定めに従って処置をするということ以外には、今後はこの問題についてこれまでのような安易な処置をとらないということは、この際明らかにしておいていただきたい。特にこれは八幡富士合併という問題を前に控えておりますので非常に私重要な問題だと思いますから、その点をひとつ通産大臣からお答えいただきたいと思います。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この前あなたに御答弁申し上げたと思いますが、粗鋼減産不況カルテルというものは、ただ鉄鋼界だけの都合で軽々にやるべきものでないという考え方を持っております。
  52. 堀昌雄

    堀委員 そこで私どもは、今後もしかりにこの合併が起きたとした場合に、こういう一つ考え方があるのではないかと思いますのは、御承知のようにこの八幡富士はかつては日鉄という国の出資を持った実は民間の会社でありました。今後私どもは将来的な展望に立ちますならば、この八幡富士は、おそらくいま持っておりますところの、あるいは八幡の遠田であるとかあるいは富士の室蘭、釜石のような陳朽設備をスクラップして新しくビルドをしていくということが必要になってくるのだろうと思うのです。その場合に、特にきわめて規模の大きい、そうして財務比率必ずしも十分と言えない八幡のような場合に、少しこれについては国家的な配慮を行なうことによって、かつての日鉄のように、まあ私どものことばで申しますならば、公私合営の鉄鋼会社というものを、もし合併が行なわれるとするならば検討をしてみる価値があるのではないか。もしこれが公的な影響力の範囲に入りますならば、私はそこに起るところの不当ないまの競争制限その他については公的に介入ができるわけでありますし、また利潤その他の問題についても、この間宮澤さんに逓信委員会でも申し上げたように、基幹産業である電力の場合の、要するに公正報酬のような形で、いまの基礎産業である鉄鋼についても、公私合営となるならば非常に指導がしやすくなり、そこで初めて私は低位、安定の価格というものがプライスリーダーとして生まれてきて、それが日本の全体を引っぱっていくことになるならば、非常に将来の日本鉄鋼あり方については安定して、そうして国民の不安のない姿が生まれてくる、こういうふうに考えるわけですが、これについてひとつ通産大臣のお考え方を承りたいと思います。
  53. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これを国家管理あるいはそれに似たような形態にまで持っていくということにつきましては、私は今日の情勢、段階ではよほど慎重を要する問題であって、むしろ安易に自分の独占的な特別な地位になれて、国際競争の面からいっても非常なおくれをとるようなマイナス面が働いてくることになりますので、やはり相当自由な形態において経営をするという方式をとったほうがよろしいと考えております。
  54. 堀昌雄

    堀委員 まあ、いまの問題はものの考え方でございますから、通産大臣のお考えはそれでそれなりのものでありましょうが、それならば、今後そういう民間の巨大な独占ができる場合に、これを確実にチェックをしながら適正な競争原理を生かしていく、そうして不当な利潤がそこで上がらないようなふうに、一応価格が国民のため、あるいはユーザーのために適正な条件に置かれるということのためには、私はこれはちょっと公正取引委員会でこれをチェックしていくというのについては、公正取引委員会のいまの機構は人的に見て非常に無理がいくのではないか、こういう考えがするわけです。  そこで、これはもう一つ私は提案をするわけですが、私は、公私合営になるならば、いろんなそういう国民から見て不安を感じるおそれがない運営ができる、こう思ったわけです。そうして同時に、公私合営になるから競争をしてはならぬというのではなくて、適正な競争がこのほうが確保されると思いますけれども、まあものの考え方ですからそれはさておくならば、行政委員会としての、たとえば鉄鋼行政委員会というようなものが置かれて、そうしてそこにたとえば大蔵省、企画庁、通産省というような人たちが入って、ニュートラルな形におけるところの生産設備、価格、これらについての指導ができるようなひとつ民主的な委員会が置かれて、それによって国民が納得するような競争状態を確保していくということを考えるぐらいの必要があるのではないか、こう思いますが、それについて企画庁長官どうお考えになるか、ひとつ……。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう議論は確かにしばしば耳にもいたしますし、私どももそういう可能性というものを考えないわけではございません。フェアトレードでないものは、これは公正取引委員会の監視のもとに是正されるということでありますが、アンフェアではないがしかしあまり常識的に適正ではないといったような、そういう段階のものは確かにあるだろうと思います。あるだろうと思いますが、しかしそれを何か機構をつくって監視したり直していくということのメリットと、それからデメリットと、どっちだろうというふうに考えますと、先ほど公益事業のフェアリターンということを仰せられましたけれども、やはり自由競争のもとでは、新しい技術なり新しい設備なりを持った者が当面大きな利益を受けるということは、むしろ当然であるし、それがあるから自由競争というものが可能なのだという考え方をいたしておりますので、あなたのところはちょっともうけ過ぎるじゃないかというようなことは、実はめったに言わないほうがいい、やはり新しい道を発見した者はそれだけの報酬がある——まあ時間がたてばそれはだんだんに消えてしまうわけでありますけれども、そういうことのメリットのほうが大きいというふうに考えますので、先ほど言われましたようなことは、問題もあるし、考えられないわけではないのですが、実際にそういうことをやることは、結果としてメリットとデメリットとを考えますと、どうも弊害のほうが多くなるのではないか、私はそういう気持ちでおります。
  56. 堀昌雄

    堀委員 私が言っておりますことは、競争原理が確保されておれば、いまあなたのおっしゃったことでいいのです。競争原理が確保されておる中でもし新しい開発によって何らかの収入が生じてくることは、私はいいと思います。しかし、そうではなくて、いまこの合併を契機にして起こってくる可能性というのは、競争原理が阻害をされる方向に問題が起きてくるのではないか。だから、その競争原理が阻害される方向に起きてくるものを指導をし、チェックをしていくのに、なぜ私が鉄鋼行政委員会というものを提起しているかといいますと、八幡富士というのは、かつては日本製鉄であって、やはり通産省との過去の経緯がいろいろありますから、それ以外の後発各社にしてみますと、もしこれがさらに一つの形になって通産省だけがこれを指導していくということになれば、競争の場合でも必ずメリットは日鉄にいくだろうという疑心暗鬼が生まれてくる可能性があると思っておるわけです。だから、行政は公正中立であるべきだと思いますけれども、人間がそう感じることはやはりやむを得ないし、特に今度はこれが業界第一位だからということで、順序は常にここがトップだというようなことになってまいりますと、やはりこれは通産省と日鉄の関係でそうなるのだということになりかねないし、競争阻害の問題についても、いろいろな点で通産省が指導をすることは必ずしもフェアに見られないおそれもある。それならば、中立的なそういう行政委員会のようなものがあって指導したほうが、国民も納得をするし、競争は確保されるし、望まいしいのではないか、これが私がいま問題提起をした一つの背景でございます。  時間が参りましたから終わりますけれども、今度のこの問題は単に鉄鋼だけの問題ではありません。当面する重要な問題が次々に起きてくる情勢にあることは確かに間違いがないと思いますけれども、特に私はこの際強調しておきたいことは、企画庁長官も国民生活の立場に立って、物価その他の問題はあなたの所管の中にあるわけでありますし、さらに、物価と直接は関係がありませんけれども、適正な競争を確保するという責任公正取引委員長の中にあるわけでありますから、ひとつ皆さんのほうでは、十分今後予想せられるデメリットに対して国民が納得できるだけの排除をする道を確立をした上ででなければ合併を安易に認めることはないということをここで御発言をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。ひとつ企画庁長官公正取引委員長にお願いをいたします。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題について、非常にいろいろな方面から分析してお尋ねがございまして、それに対しては心から私敬意を表します。言われるような弊害が起こりませんように、将来に向かっても十分そういうことを確保する道を考えるということは確かに必要でございます。そういうことを考えまして、やはり判断を進めていきたいと思っております。
  58. 山田精一

    山田政府委員 現在及び近い将来にわたりまして十分競争原理が確保されるという見通しがございます場合にこれを認めるというふうに、十分慎重に、また厳正に判断をいたしたい、かように考えております。
  59. 小峯柳多

    小峯委員長 中村重光君。
  60. 中村重光

    ○中村(重)委員 まず先に通産大臣にお尋ねいたします。  合併旋風と申し上げたほうがいいと思うのですが、産業再編成、合併が相次いでおる。そこで八幡富士の大型合併構想というのが明らかにされた。まあ新聞を通じて通産省考え方というのが実は出ておるわけです。端的に申し上げると、通産大臣も山本通産次官も手放しで歓迎をしておる。経済企画庁長官も、管理価格を若干警戒しながらも、この合併に対しては、まあ賛意を表するというような意向のようでございます。堀委員の質問に対しては、慎重な態度をもって弊害がないように対処したい、そういう結論的なお答えが実はありましたが、その弊害、これは合併をしても弊害をなくするようにしたならばいいじゃないかということにも実は通じてくると思うのです。また公取委員長答弁を伺っておりますと、少なくとも合併に対しては歴代委員長の中で独禁法に対する一番うしろ向きの考え方を持っておる、こう私は感じます。国民は八幡富士合併に対してたいへん心配しておるのではないか。一、二位というようにランクされる程度の大型企業、これが一緒になるというのですから、もう国民は独占価格、管理価格というものによって物価が引き上げられてくるということを敏感にいま受け取っております。これが一緒になってくるわけですから、国際競争力がこれによって強化をされて、日本経済力が強まってくるのだというようなそういう受け取り方を、通産大臣が言われるように感じとっていない。むしろこれによって物価が非常に引き上げられてくる、管理価格というものがさらにこの後強められてくるのだという警戒心というものが強い。それはいままで企業にいたしましても、無責任設備投資、かってな競争というものをやってきた。その結果、鉄鋼産業というものに競争の行き過ぎというような形が非常にあらわれてきた。もちろん国際的な関係もそれはあるわけです。そういうたびに通産省がとってきた態度を考えてみてごらんなさい。行政措置によってこれを保護するというようなやり方をするとか、あるいはカルテル行為をやりなさいというので、盛んに何というのか指導をしてくるというような態度をおとりになる。むしろ、そうした無責任企業あり方に対して反省を促していく、そういう行き過ぎた競争を押えていくというような、そういう積極的な指導をとってきたということは、かりそめにも通産省は言えないと私は思う。だから、通産大臣をはじめいま通産省のとっておる態度は、私は間違いだと思う。少なくともこの合併というものが管理価格というものをさらに強めていく結果になるのではないかというようなこと、合併をしなくとも国際競争力はもうすでについているのだから、これをさらに真の意味の国際競争力を強めていくという方法はほかにないのかどうか、そこらに少なくとも通産大臣は頭を使っていくということですね。そういうことがまず優先されてこなければいけないのではないかという感じが私はいたします。  そこで端的にお尋ねをいたしますが、この八幡富士というものが合併をしなければならないというように、通産大臣はほんとうにそのとおりお考えになっていらっしゃるのか。合併をしなければ国際競争力というものがないというように判断をされているのか。そこらあたりのお考え方をひとつ伺ってみたいと思う。  それから経済企画庁長官に対しましても、いま堀委員の質問に対して、その考え方はわかりましたけれども、私が申し上げた管理価格というものがこの後強められてくるという方向になることは否定できないと思うのですが、これに対してはどのような考え方で対処していこうとお考えになっていらっしゃるのか。産業再編成ということを強調していらっしゃるわけでから、必然的に管理価格という弊害が出てまいりますから、どういう具体的なそうした弊害を押えていくための構想をお持ちになっていらっしゃるのか、ひとつお聞かせ願いたい。  それから山田公取委員長は、私は歴代委員長の中で、この独禁法に対してはきわめてあなたはうしろ向きだ、こう申し上げたのですが、そうでないというようにお考えになっていらっしゃるか。お考えになっていらっしゃるならば、いままで歴代の委員長がいわゆる三〇%ラインをもって警戒ラインということであったわけでから、八幡富士の場合はその警戒ラインというのをはるかに越えるということになる。それでもこの合併というものが独禁法を骨抜きにするというような、これは十五条は言うまでもないわけですが、そういうことにはならないというようにお考えになっていらっしゃるのか、そこらあたりひとつお答え願いたいと思う。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは別に八幡富士の問題に限った問題じゃございませんが、最近の資本自由化の段階においては、やはり国内における設備競争にあまりふけるというようなことは避けまして、ほんとうに合理的な大経営をやるということの必要が起こってきておる。競争力をお互いに減殺し合って独占の上にあぐらをかくというのじゃなしに、もっと国際企業として大経営の立場でいろいろな問題を考えるという必要がすでに起こってきておるのであります。こういうことによりまして、いわゆる技術の総合的な開発というものも可能になってまいるわけでありまして、それから企業の運営の面においても、もっと高い立場からこれをやり直す、改善を加えるというようなことも可能になってまいるのでありまして、ひいてはこれは国内需要、国民、そういうものに対しても非常にプラスになる、私はこう考えております。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 鉄鋼業界の場合、上位二社がかりに合併をすることになると、競争制限的なことが起こるのではないか管理価格的なものが出てくるのではないかということにつきまして、私は具体的な実情を考えてみますと、おそらくそういうことにはならないのではないだろうか。従来の他の各社のビヘービアを見ておりますと、とてもとてもそういうことにはなるまいという感じのほうが実は強うございます。やはりあとから追っかけてくる各社の意欲が相当強うございますので、しかも、技術的にもどんどん進んでいく社会でございますから、管理価格というようなことはおそらく起こらないのではないかという感じが私としてはいたしております。しかし、それでも一応形態的には御心配のような点があるわけでございましょうから、これは公正取引委員会がどういう裁断をなさいますかは別といたしまして、かりに一定条件のもとにお許しになるというようなときには、本来公取委に調査をされる権限もいろいろございますけれども、合併に際して、法律の権限に基づくといなとにかかわらず、今後起こりそうな点については十分定期的に報告を徴される、これは当然会社側も御協力をすべきだと思いますが、そういうことをしていかれまして、特定の商品の価格が長いこと硬直するかどうかということを見ておいていただく。同業の他社がほとんどの製品については似たようなものをつくるわけでございますから、それと比較をするならば、この価格が動かないということが一定管理価格的な意思によってそうなっておるのか、あるいは物理的に下げられないのかということは当然わかるはずでございますので、やはりそういう調査、調査と申しますよりは報告を公正取引委員会に向かってさせるといったようなことは、もし管理価格といったようなおそれがあるのであれば、それを排除するのに有効な方法ではなかろうかと私は考えております。
  63. 山田精一

    山田政府委員 先ほど堀委員の御質問にお答えいたしましたごとく、具体的なケースにつきまして予断的にこれはどういうという見込みを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じますが、私どもといたしましては、先ほど来申し上げました基準に照らしまして、独占禁止法を十分忠実に運用いたしてまいりたい、かように確信いたしております。
  64. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうもあなた方三人のお答えを聞いてみると、私どもの常識とははるかに違っておりますね。私は、宮澤長官の答弁でそういうことを聞こうとは思わなかった。管理価格が起こらないとあなたはほんとうにまじめにお考えになっていらっしゃいますか。少なくとも佐藤内閣の中において、宮澤企画庁長官に対する国民的な期待というものは大きいと思うのです。あなたがそういう現実遊離な御答弁をなさるとは——佐藤内閣の人気は二八・五%というように落ちも落ちたり、これはもう最低の内閣なんだけれども、そのあなたが、八幡富士合併に対して、これは管理価格なんというものは起こってくるとは思われないというようなお答えは、私は、失礼だけれども、常識はずれだと思う。これは資料を見てもわかるように、一〇〇%になるのも幾つか出てくるのですよ。そうすると、五〇%だとか六〇%とかいうものもあるんですね。それから、こういう超大型の企業が出てくることになってまいりますと、そのシェアだけでなくて、投資調整の問題あるいはカルテルを結ぶといったような場合でも、企業の意思によってこれは支配していきますよ。そうすると、必然的にそうした管理価格、独占価格というようなものが起こってくるわけですね。これは正常な競争なんということは考えられません。第一、同業の企業が同一の品種をつくるんだからそういうようなおそれはないのだ、それをずっと見ておればいいんだからというようなお答えなんだけれども、そんなことは考えられますか。こういう大型企業が存在をいたしますと、自由自在にできますよ。経済界はそんなになまやさしいものじゃないはずです。あなたはもうわかり過ぎるくらいそこはわかっていらっしゃるのです。  通産大臣は、技術の総合開発、それから企業運営という点からこれは絶えず改善を加えていかなければならないんだからと、こうおっしゃる。それはわかりますよ。わかるけれども、それじゃこういう大型企業をつくり出さなければそれができないのか。政府はそうした研究開発等についても本腰を入れていかなければならぬと私は思う。そういう点は政府も弱い、また企業にそれを期待されるという点もある。しかし、それはそれなりに、それを合併だけによって求めていこうとする考え方は正しくないと思う。それこそ創意くふうというものをこらして、そうした研究開発というようなものを絶えず追求していくということでなければならぬと私は思うわけです。  そこで、通産大臣は大体独禁法というものは必要だとお考えになっているのだろうか、端的にひとつそれをお聞かせ願いたい。必要だとお考えになっていらっしゃるならば、こういうふうに次から次に産業再編成という形で大型合併というようなことを歓迎をしていく、そういうことをどんどん進めていくということになると、独禁法そのものは事実上——これは歴代の通産大臣が大穴をあけるとかなんとかと言ってきたんだけれども、大穴どころでなくて、これは事実上崩壊するという形になるんじゃないかという気がいたします。そのようにお考えになっていらっしやらないかどうかということです。  それから、私は、山田委員長に対して、見込みについて答えてもらいたい、こう言ったんでなくて、少なくともこうした合併に対して歴代の委員長はそれなりの考え方というものがあったわけですね。だから、あなたは従来の委員長と比較をいたしますと、少なくともこの合併問題については非常に後退をしているという印象を強く受ける。だから、その点に対しては、あなたは歴代委員長の国会における答弁と、今回のこうした合併に対してはどのようにお考えになっていらっしゃるか。これはあなたのほうでは具体的に生産集中等の調査もおやりになった。そこで八幡富士と——これはあなたのほうから出した資料によってはっきりしているんだが、一社の集中度、三社の集中度、五社の集中度というものがあるんですね。だから、八幡富士合併に対してはどの程度の集中度になるかということはおわかりになっていらっしゃる。だからして、三〇%がまず警戒ラインということであったんだけれども、平均は三六%とかといわれているのですが、五〇%以上、七〇%以上、一〇〇%というものが相当あるわけだから、こういうことは合併として好ましいのかどうか。合併をしたらどういう結果をもたらすかということについては、単なる見込みについて云々ということよりも、あなたが判断してしかるべきですよ。だから、合併の申請があってから考えましょうということじゃなくて、少なくとも事前に、この合併は好ましいのか好ましくないのかということに対しての意思表明ぐらいはなさる必要があると私は思う。どんどん事が進んできて、あなたの手元に申請書が出ましてからは、摘当でないとお考えになってもだめですよ。あなたはその書類を突っ返すほどの勇気は出てこないと思う。そんな段階まで進んで、あなたの考え方なりあるいは委員会考え方によって支配し得るならば、いまの審判制度だってもたもたしないで、もっとどんどん進みますよ。押されてあなたはどうにもこうにもできないでいるのだから。そこまでこないうちにそういうことを防止していくという態度くらいあってしかるべきじゃありませんか。私はこの問題だけをもってあなたにいろいろ言っているのじゃなくて、ずっとあなたがとってきておられる経過から考えてみて、もっとあなたには勇気と、こうした問題におくれないように対処していくというような態度が望ましい、こういうことで申し上げておるわけですから、それぞれお答えを願います。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 独禁法の必要があると認めるか認めないかというお話でありましたが、これはとかく独占の上にあぐらをかいて、独占価格をもって、いわゆる企業エゴイズムというものを極端に発揮するくせがございますので、これに対して消費者を守るという意味においての独禁法は必要でございます。ただ、独禁法を守るのあまり、その企業が時勢におくれをとるとかあるいは国際競争に耐えないということになると何にもならない。でありますから、この二つのものはいわゆる二律背反ではない。十分に企業の機能を生かしてこれを活発に運営する、一方においては独占価格の上にあぐらをかくな、この両方は同時に守れるものでございますから、片一方を強調するのあまり片一方を角をためて牛を殺すというようなことのないようにしなければならぬということであります。
  66. 山田精一

    山田政府委員 私どもの立場は準司法的の仕事をいたしておりますので、たとえば悪いかもしれませんが、私は裁判長に当たるわけでございます。したがいまして、当事者の陳述も何も聞きませんうちに、予断的に、原告が不利であろうとかあるいは原告に見込みがあるだろうとか申す立場にございませんために、とかく御納得のいくような意見の表明をいたしがたいわけでございまして、その辺は十分御理解をいただきたい、かように存ずる次第でございます。  独禁法はどこまでも忠実にこれを運用いたしてまいります覚悟でございますことをあらためて重ねて申し上げておきたいと存じます。
  67. 中村重光

    ○中村(重)委員 いままで私が申し上げたようなことをやった経過がなければ別ですよ。あるのです。たしか朝日とサッポロビールの合併のときに、非公式に好ましくないというような態度表明をされたことがある。前にできて、どうしてこういう超大型企業合併に対して、申請を待ってから考えましょうなどというようなことを言うのかということです。そういう点が、あなたの場合、歴代の委員長と比較をするとうしろ向きですよ。あなた自身も正直に言えば心配しているのでしょう。十五条は、これはもうあってなきがごとし。独禁法そのものが崩壊してしまう。だから、独禁法にかかってくるのは何か。俗にいうざこがかかってくるということで、小さい中小企業のカルテル行為等について公取はあさっていくということ以外に何が残りますか。あとで言いますけれども、再販の問題だって、これは態度がさっぱりわからないようなことになってきておるのだけれども、もう少ししゃんとしてもらいたい。このような重要な合併問題に対して、四十四条の二項で内閣を通じて国会に意見を申し述べるというような規定があるのだから、私はこういうことを活用してかかる必要があると思う。それだけの重要な問題であると私は思う。だからあなたは、四十四条によって内閣を通じて国会にこの合併問題について意見を述べるという意思をお持ちになるかどうか、ひとつこの際はっきりお答え願いたい。
  68. 山田精一

    山田政府委員 委員会におきまして検討いたしました結果、さようなことになりました場合には、そのとおりいたしたい、かように考えております。
  69. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ委員会は合議制ですから、公取委員長としてのあなたの考え方はいかがですか。
  70. 山田精一

    山田政府委員 委員会で合議いたします前に、私個人の考えを申し上げますことはいかがかと存ぜられますので、差し控えさしていただきたいと存じます。
  71. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたは、この合併問題について事前に、申請が出てから検討いたしましょうとかいうようなことを一々何も委員会を開いて新聞談話等を発表されたりしているのじゃないでしょう。委員会は合議制であるにしても、委員長として委員会を代表していろいろと発言をされたりすることがあるのだろうと思う。現に四十四条に、重要な問題について内閣を通じて国会に意見を述べるというようなことがあるのだが、こういうことが少しも生かされていない。だから、あなたが具体的に、今回の八幡富士の場合にというようなことで言いたくなければ、こういう制度を活用していかなければならないというようにお考えになっていらっしゃるのか、この問題はそれほど価値のないものだとお考えになっていらっしゃるのか、抽象的でけっこうなんだから、ひとつお答えを願いたい。
  72. 山田精一

    山田政府委員 一般的に申し上げますれば、十分必要に応じて活用さしていただきたい、かように考えております。
  73. 中村重光

    ○中村(重)委員 具体的にお尋ねをするのですけれども、三菱三重工の合併、その他大型企業合併がいままであったわけですが、合併の実績としてどういうことになっているのかということですね。あなたのほうに対して合併の申請が出ているわけです。今回、富士八幡合併に対しても、二重投資を防止するとかいろいろなことを言っているのですね。実際の申請にあたっては具体的な内容を盛り込んだ形で申請が出ていると思う。だから、従来の大型企業合併についての実績がどうなっておるのかということです。
  74. 山田精一

    山田政府委員 合併は、年々大小取りまぜまして非常な件数がございます。最近におきましては年間大体八百数十件ございます。これは御承知のように事前届け出制でございまして、先方から届け出がございます。そうしますと、原則として三十日以内にこちらが意思表示をしなければ、それで届け出は有効になる、かようなたてまえになっております。  最近の大きな合併の実績についてというお尋ねでございましたが、昨年、四十一年におきましては日産及びプリンス自動車、それから兼松、江商、四十年は東洋紡と呉羽紡、それから三十八年に三菱三重工、大阪商船と三井船舶、このような大型の合併の例がございます。
  75. 中村重光

    ○中村(重)委員 それをお尋ねしたのじゃないのです。三菱重工等についても合併をしてから何年になりますか、三年か四年かになりますね。ですから、合併するにあたってあなたのほうに申請が出ておるわけだから、それについてあなたのほうでお認めになった。その他、大型企業の、たとえば日産とプリンスとの吸収合併もあった。そういうのが合併の申請どおりに結果があらわれてきているのか、具体的にはどうかということですね。それから弊害というようなものは、あなたのほうで考えていなかったような幾多の弊害というものがもたらされておるという事実がないかどうか、そういうことを尋ねておるわけです。
  76. 山田精一

    山田政府委員 従来の例におきましては、これという弊害が特に出てまいっております例はございません。合併後におきましてのシェアは、大体において横ばいが大部分でございます。
  77. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう少し私は尋ねたいのだ。ということは、三菱重工の合併の際に、日産の場合もそうなんですけれども、たとえば労働問題に対して、低きにはつけない、高きに合わせるのだという答弁であった。現実にはどうなんですか。それから下請企業に対しても、この合併によってきびしい選別融資であるとか、その取引条件等について不利になるようなことはしないという答弁が私の質問に対してなされた。現実はどうなのか。労働者の労働条件等についても、高きにつけたのじゃなくて低きにつけている。そして、いわゆる組合の分裂化をはかって、会社の意に沿うような形に組合を育成をしていって、そして、会社が好ましくないというような組合に対しては弾圧をやって、どんどんとこれを小さくしていくというようなやり方をやっているわけだ。だから、八幡富士合併の場合等についても、そのもたらす影響というものがどういうことになるかということ、これはシェアだけの問題じゃないのです。労働問題にも当然影響を及ぼしてくるでしょう。下請企業にも影響を及ぼしてくるでしょう。   〔委員長退席、鴨田委員長代理着席〕 特にこの両社が合併をするということになってまいりますと、富士の室蘭、八幡八幡製鉄所、こういうところは機械も老朽化していますよ。だからしてこれは縮小されてくる。そうすると地域ぐるみに、これはちょうどいまの産炭地の状況のような、それに近い形のものが生まれてくるわけです。この合併の問題というのは簡単な問題じゃありません。私があなたにお尋ねをしたのは、そうした地域ぐるみにどうこうというようなことをあなたに伺おうとは思わないんだけれども、かつてこの合併に基づいて答弁をしてこられたのだから、その答弁のとおり実績があがっておるのかどうか、実績がそのとおりになっておるのかどうかということなんです。具体的に申し上げた下請の問題とか労働問題であるとか、その他幾つもある。少しもあなたのほうは追跡調査をしていらっしゃらない。だからおわかりにならない。だからしてそういう抽象的な御答弁になる。私は政府委員を通じて、こうした問題についてもお尋ねをするからということをあらかじめ御連絡申し上げておいたのだから、もし少し具体的な答弁というものがなされなければならぬと思う。そう思いませんか。
  78. 山田精一

    山田政府委員 十分な追跡調査ができておらないというおしかりでございましたが、下請関係等につきましては常時監視をいたしておりまして、特にこれという問題は出ておりませんことを御報告申し上げたいと存じます。  労働問題につきましては、所管のお役所においてやっておられますので、私どもといたしましては手が回りかねます次第でございます。
  79. 中村重光

    ○中村(重)委員 そういうことで答弁になりましょうか。そうならば、下請はあなたのほうも下請代金支払遅延等防止法等について関係がある。しいて言えばそういうことになる。しかし少なくとも労働問題に対しても、いま申し上げた中小企業問題その他全般的な問題について、合併の結果がどうなるのか。この合併を認めるにあたって、こういうことについてはどのような考え方で対処するのかということに対しては、私が先ほど申し上げたような答弁がなされておるわけです。ところが、最近のように大型合併というものが次から次になされておる。その場合において、従来の合併の実績というものがどういう形であらわれておるのかということについての関心というものは、当然あってしかるべしなんだ。ないということは私は無責任だと思う。他の関係の省庁がこれをやるんだから、自分のほうは知らぬのだというようなことでは、少なくともこの合併の問題について、あなたは正当な答弁をしたことにはならないと思う。そうじゃありませんか。
  80. 山田精一

    山田政府委員 事後管理につきましては、関係省庁とも御連絡いたしまして、十分慎重にいたしてまいりたいと考えます。
  81. 中村重光

    ○中村(重)委員 宮澤長官にお伺いいたします。この合併によって、これは八幡富士ということだけじゃありませんが、王子系の三社の合併というものも、おそらくこれは時間の問題だろうというふうに感じられるわけですね。ですから超大型企業がどんどん合併をしていくということになってくると、勢い金融の再編成という点についても、ややテンポを早められてくるだけではなくて、現在構想されておるところの再編成ということとは形を変えたものが出てくるのじゃないかと思いますが、それらの点に対してはどのようにお考えになりますか。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あり得ることだと思っております。
  83. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのはよく聞き取れなかったのだけれども、いわゆる産業と金融の関係ですね。産業界と金融界、これは御承知のとおり、従来は金融支配という形、これは上位、下位といえば、むしろ上位という形だ。こういうように、産業の大型化という形になってまいりますと、産業上位というような形というのか、それに変化が生じてくるのではないかというような感じがいたしますが、それに対してあなたはどのようにお考えになりますか。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来産業人には産業人のイニシアチブというものがあり、相違があるわけでございますが、従来確かにいま仰せのようなことがありまして、金融のほうがイニシアチブをとってしまうようなことにどうもなりやすかったと思います。したがって、両者の関係で、産業がその立場を回復していくということは、私はけっこうなことだと思っておるのでございますが、ひとつそういうようなことになってしまえばそれでよろしいわけでございますけれども、その途中において非常に大きな資金需要が一社から出てきて、そして金融のほうが幾らか——どう申しますか、従来ともかく資金の面である程度の投資の調整ということができておったわけでございますが、そういうことが中途の段階でできにくくなるというような場合は、これはひとつ警戒をしておかなきゃならない場合だと思うのでございますが、基本的には私は、産業人が自分のイニシアチブで仕事をしていくというようになることは、たいへんけっこうなことだろうと思っております。
  85. 中村重光

    ○中村(重)委員 いろいろもっと具体的にお尋ねしたいのですが、時間の関係がございますから、あらためてまたお尋ねをいたします。山田委員長にだめ押しみたいになりますが、お尋ねいたします。  私は、先ほど申し上げましたように、申請書が出る前に非公式に、かつてサッポロビールの場合等におやりになりましたように、この合併というのが好ましいのか好ましくないのかということについての意思表示は、私はなされるべきだというように思うのですが、あなたはその意思はありませんか。
  86. 山田精一

    山田政府委員 サッポロビールの場合に、公正取引委員会といたしまして意思表示をしたということは聞いておりませんが、一般的の問題といたしましては、必要がございました場合にはいたしてまいりたい、かように考えます。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、申し上げました独禁法四十四条によって、内閣を通じて国会に意見を述べるという問題については、委員会の合意がなされていない段階で決定的な答弁をすることはできないとおっしゃった。私はあらためてそれをできるではないかということで、いろいろは申しませんが、少なくとも委員会の同意が得られるならば、こうした重要な問題であるから、やはりこれを活用していくというような考え方が必要であるというようにお考えになられるかどうか、ひとつ……。
  88. 山田精一

    山田政府委員 一般的な問題といたしまして、必要に応じて十分活用させていただきたいと考えます。
  89. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ、あなたが答弁を慎重になさることはわかるけれども、どうしてもう少し、公取委員長として重要な地位にあるんだから、こういう制度がある、おそらくこの後の合併でもこれほど大きいマンモス企業合併なんということはありませんよ。これは日本国内だけじゃなくて、国際的にも相当注目されている。してみると、この四十四条なんというのは、今回の場合にこれが活用されないということになってくるならば、活用するときがないということになってくると思う。一般的とかなんとかいうことじゃなくて、私はいまあなたの考え方として、そうしますということを即答しろとは言ってないんだ。委員会において合意が得られるならば、やはりこの種のものは重要であるから、四十四条を活用するということも考慮しなければならないのではないか、そう思うというような答弁くらいあってしかるべきじゃありませんか。
  90. 山田精一

    山田政府委員 十分検討をいたしたいと考えます。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 もう時間がないからやむを得ぬが、ともかく山田委員長、あなたには非常に残念です。もう少し独禁法の番人として、いわゆる自由主義経済のもとに公正な、有効な競争力というものを強めていくということが日本経済の発展になるし、国民生活の安定向上に通じていくわけなんだから、そのことをあなたが至上命令としてお考えになるならば、もう少し勇気を持って国民の期待にこたえていく、そういうことでなければならぬと私は思う。いたずらに産業人の意向にこびへつらうというような、そういう態度というものがあってはならない、こう思います。しかしその点に対しての答弁はあえて求めません。  そこで、最後にお尋ねいたしますが、集中度の調査というのがなされて、私どもの手元にもこうしていただいたわけですが、肝心かなめの管理価格の調査というのはどうしていらっしゃるのです。私が先般予算委員会で申し上げたように、合成洗剤とバターを二年間やって、まだ結論が出ていない、まだそこらでもたもたしておるというようなことではどうにもならぬと私は思う。この管理価格に対して、もっとじっくり腰を据えて調査をする、そうして公正にこれに対処していくという態度でなければならぬと思いますが、どこに問題があるのですか。
  92. 山田精一

    山田政府委員 管理価格の問題は、御指摘のとおり私どもにとりましてはきわめて重要なる問題でございますので、これに全面的に取り組んでまいりたい、かように考えております。従来、遺憾ながら手不足そのほかの事柄に追われまして、どうもはかばかしくいかなかった点ははなはだ残念なのでございます。しかし問題の対象もまた非常に複雑な、むずかしいものでございまして、公取の全力をあげましてこれに取り組んでまいりたい決意でございますことを申し上げておきたいと存じます。  それから、前段において御指摘いただきましたことは全くそのとおりと考えます。一部にこびへつらうなどという考えは毛頭ございませんことを確認させていただきたいと思います。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 宮澤長官、あなたもいわゆる生産集中度の問題、管理価格の問題については、当然強い関心を持っていらっしゃると思うのです。ところが、先般の予算委員会でもあなたもお聞きのとおり、いまも質疑応答の中でありましたように、二年越しなんですよ、合成洗剤とバターと。それはおやりになることはけっこうですよ。それすらもまだ結論が出ない。ところが、いまこのことだけは山田委員長正直にお答えになったわけだけれども、人手不足、これほど範囲も相当広いんだし、重要な仕事を五人や七人でやれったってできるものじゃありません。だからあなたも閣内において、この公正取引委員会の陣容をもっと強化していく、そうして的確にこうした調査をやる、そうして経済の安定と国民生活を守っていく、こういうことをさせなければならない。そのことは経済企画庁としてあなたに最も関係が深い問題だし、私は、その点は重要であると思うのですが、どのようにお考えになりますか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに同感でございます。国民生活の立場から公取の陣容を強化していただきたいということをいつも実は思っておりますのみならず、四十三年度の予算編成に際しましては、大蔵大臣及び総理大臣に、実は私どもの直接の役所の予算要求は何もいたしませんでしたが、公取の人員だけはひとつ考えてもらいたいということを私からお願いいたしましたような経緯もございまして、私ども国民生活にとって、御指摘の点はきわめて必要なことだと思います。今後もそういう努力を私いたしたいと思います。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 再販制度の問題ですが、あなたのほうでは品目の洗い直しをする、そういう態度でおられた。ところがその後、新聞談話によると、いろいろとなお検討しなければならぬような面も出てきた、だから慎重に対処していきたい、そういうことでありましたが、短い談話でございましたからはっきりいたしません。その点はどうお考えになっていらっしゃるのか。私どももその後小売り業界の方々から陳情書を受けたりいたしまして、確かに問題点もあるような感じはいたします。いたしますけれども、かといって、そのままそれを放置しておいてよろしいということにはならない。だから、問題になっているおとり販売というのが実際どういう姿で出ておるのか、これが再販制度をそのまま存置しておかなければならないというほどこのおとり販売というか二重価格の弊害というものが大きいのか、その点はあなたのほうでどのように把握をしていらっしゃるか。それと慎重に検討していかなければならぬと言っておられる。それはどういうことを意味するのか。なお、あなたのこの再販制度に対する基本的な方針の変更ということまでになるのかどうかという点ですね。それらについてひとつ考え方をお聞かせ願いたい。
  96. 山田精一

    山田政府委員 再販制度に対しまする基本的の考えは何ら変わっておりません。ただ、御指摘のございましたような零細な小売り業者の利益、これも十分守らなければならない法益があるわけでございまして、その辺の実態を十分調べて、その上で判断をいたしたい。またおとり廉売等につきましても、その実態を調べましてこれを的確に把握いたして事を定めたい、かように考えておる次第でございます。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 再販制度というのは、あなたも御承知のとおり小売り店が非常に過当競争をする、したがって何とかして小売り店の過当競争を防止していって倒産を防がなければならないということが、この二十四条の二を独禁法の中に取り入れたということになっているわけですね。いささかもメーカーの保護というようなことが念頭にあって、この制度というものを考えたのではなかった。むしろ品質の向上なんということがあったわけです。ところがこの再販制度というものが、肝心かなめの小売り店の保護ということよりもメーカーの利益を守るということに働いてきているということ、そしてこの再販制度というものをなくした後に、ほんとうに困るのはだれか、メーカーなのか小売り店なのか、あるいは消費者なのか、こういうことをやはり考えてみなければならない。それから高価な化粧品をはずす、こういう。そうすると、はずすと過当競争になってくる。これは過当競争というのか自由競争ということになるのか、そうすると価格は下がる。そうすると千円以下——あなた方のほうは五、六百円以下とお考えになっておったように伝えられておったわけですが、そういう需要者である大衆が使うところの比較的安い化粧品、そういうものがこの再販制度の中に残されるということになってくると、高級化粧品は下がったけれども、大衆の使うところの化粧品は下がらないということになってくると、大衆がばかを見るという形になっていくことも考えられる。だから、そこいらも慎重に検討してみなければいけないのではないかということですね。  それから内容的に公取がそこまでいっていいのかどうか知りませんけれども、契約内容、これは北島委員長当時にこれを改正しようとした際は、内容の公開なんということも考えておったわけですが、親企業と下請企業の関係と同じなんですが、メーカーがみずからの優位な地位を利用して、小売り店に対して非常に無理な契約内容を押しつけてくる。リベートの問題しかり、マージンの問題しかりであります。その他契約内容をあなたはお読みになっておわかりだろうと思う。もう非常に締めつけがきびしくなっています。そういうような問題にまでメスを入れて、やはり小売り店を守る、そしてまた消費者も守っていく。メーカーはこれはほどほどにもうかってもらえばいいわけなんです。いたずらにこの制度がメーカーを守ることに働いておる。  それから先ほど宮澤長官は、管理価格なんというものはないのだろうとおっしゃったのだけれども、しかし再販制度というものも確かにこの管理価格の温床になっています。これは事実。だからそういう点についてメスを入れて、少しまじめに取り組んでもらいたい。正直申し上げて、宮澤長官と山田公取委員長に大きく期待をされているのですから、そこをひとつ真剣に検討を加えて、これに対処してもらいたいということを強く要望いたしまして、私は質問を終わりますが、ひとつ長官と委員長お答えをいま一度聞かしてもらいたいと思う。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 再販価格維持契約というものは、広い意味での管理価格であることは私は御指摘のとおりだと思います。ただ、これを守る法益があるということで一定のものについてこれは認められておるわけでありますけれども、確かにもう十何年たちますと様相も違ってきております。そうしてメーカーの保護に事実上なっておるのではないかということも、私はやはり御指摘のような点があると思います。したがって、この点公正取引委員会がいわゆる洗い直しの作業を進めておられるわけで、私どもお役に立つことがあれば何なりと側面から御支援はいたしますと申し上げておるわけでありまして、洗い直しが済みまして早く告示になることを期待をいたしております。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕
  99. 山田精一

    山田政府委員 御指摘の諸問題につきまして十分検討いたしまして、適正な結論を出したいと存じております。またメーカーが不当な地位の利用によりまして、販売店に条件を押しつけておるというようなケースは、今後十分に調査いたしまして、それぞれ対処をいたしてまいりたい、かような考えでおります。
  100. 小峯柳多

    小峯委員長 中谷鉄也君。
  101. 中谷鉄也

    ○中谷委員 簡単にお尋ねをいたします。  通産省にお尋ねをいたしますが、通産省は事務次官が十八日に記者会見をされて、公取委員長と会って、大型合併と独禁法問題の意見を統一したいという趣旨の発表をされた、こういうことが報道されております。通産省はどのような目的で公取委員長とお会いになるのか、そういうことが事実なのかどうか、この点をまず最初にお答えいただきたい。
  102. 熊谷典文

    熊谷(典)政府委員 お答えいたします。経済の情勢は変わってまいりますので、通産省といたしましても、独禁法の運用については、これは公取の主管でございますが、いろいろな情勢は申し上げるということで従来からいろいろ御連絡を申し上げておるつもりでございます。今回新しい形の合併が出てまいりましたので、一般的に意思の疎通をする段階にきたのではなかろうかということも考えております。しかし、われわれのほうといたしましても、これにどう対処するかを十分検討した上で公取ともいろいろ御連絡を申し上げたい、かように考えておりますので、いますぐこれをどうこうするという考え方はございません。将来の方向を申し上げた次第でございます。
  103. 中谷鉄也

    ○中谷委員 委員長にお尋ねをいたします。  大型合併の問題について、通産省公取委員会、特に委員長とお会いをして意思の統一をはかりたい、こういう趣旨の希望を持っているようでありますが、公取委員長のこの点についての御見解はいかがでしょうか。
  104. 山田精一

    山田政府委員 産業界経済界の実情につきましては、私どもも調査をいたすのでございますが、専門に所管をしておられます通産省の御意見は十分拝聴いたしたいと存じております。
  105. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、通産省に次にお尋ねをいたします。公取委員長のほうからも同時にお答えをいただきたいと思いますが、去る十一月のいわゆる運用に関する覚え書きの、少なくとも現在問題になっておりますのは合併に関する問題、これらの問題についてこの覚え書きを、大型合併という当面する問題の中で、さらに運用面の中で修正をするというふうなことを通産省としては希望しておられるのかどうか。この点はいかがでしょうか。同時に同趣旨の質問について公取にもいたしたいと思います。
  106. 熊谷典文

    熊谷(典)政府委員 四十一年の十一月に公取合併あるいは設備調整につきまして考え方をお互いに意思の統一をはかったわけでございますが、今後会いますということは、実情を御説明申し上げるわけでございまして、あの基準自体、ものの考え方自体、現在の段階で変える考え方はございません。
  107. 山田精一

    山田政府委員 一昨年の十一月のいわゆる覚え書きは、現在においても変更は要しないものと考えております。
  108. 中谷鉄也

    ○中谷委員 公取委員長に独禁法十五条の解釈の問題としてお尋ねをいたしたいと思います。要するに独禁法十五条というのは「制限することとなる場合」というのが、問題の解釈の中でいろいろな解釈があると思うのです。そこで、公取としては次のような見解はお持ちなのでしょうかどうか。たとえ独占能力を発揮しなくても、そうした能力を持たすだけでこの十五条の先ほどの「制限することとなる場合」というのに当たるのだ。要するに、実質上市場独占の危険性がないものであっても、独占能力を持っているということが「実質的に制限することとなる場合」に当たるのだというふうな説は学説上もあるわけです。公取の「制限することとなる場合」という解釈はそのようなものなのでしょうかどうか。念のために、事実問題ですし、法律の解釈ということでお答えをいただいて、そうして、実はこれはこういうことであったのだということを申し上げるのもおかしなものですから、これはもと公取委員鉄鋼連盟の顧問弁護士をしておるという石井さんが今度の合併問題についての争点はこの点なんだ、要するに、独占能力を発揮しなくてもそうした能力を持たすだけでもこれは困るのだという説が公取の中にあるということを述べておって、この点が争点になってくるのだから、この点について、公取についてひとつ説得しなければならないという趣旨の——そう書いてありませんけれども、そういうふうなレポートをきょうの新聞にお書きになっている。法律の解釈として、十五条の解釈として、ひとつ公取委員長のほうからお答えいただきたい。
  109. 山田精一

    山田政府委員 ただ能力だけではなくて、相当程度の蓋然性がある場合に、プロバビリティーがございます場合にいけないのだ、こういう解釈になっております。
  110. 中谷鉄也

    ○中谷委員 委員長にお尋ねをいたします。蓋然性というおことばをお使いいただいたわけです。危険性とか確実性とかいろいろなことばがございますね。そうすると蓋然性ということば、これは可能性ということばよりもまさに程度が高いことばなんでしょうか。少なくとも危険性とか、いうてみれば現存明白の危険だとか、要するにあるいは現実の力だとかということとしては理解をしておられないわけなんですね。そういうものとは区別した意味での蓋然性ということばをお使いになったわけですね。
  111. 山田精一

    山田政府委員 そのとおりでございます。
  112. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私十分に読んでいないわけで、独禁法実務講座、前の公取の事務局長の竹中さんの編集された本の中には、不正確であるかもしれませんが確実性ということばをお使いになっていたように私記憶があるけれども、そうすると、いまの御答弁の限りでは、確実性と蓋然性なら蓋然性のほうがより広い概念ということになると思いますが、もし私がそういうふうに読んでいたとすれば、確実性ということと蓋然性ということは違うことだとお答えになったというふうに、当然ことばの上からはそういう常識になるのだけれども、そういうことにお伺いをしてよろしいか
  113. 山田精一

    山田政府委員 ことばの使い方でございますので、その使った人の主観にもよると思いますが、確実性と蓋然性はほぼ近いものではないか考えます。
  114. 中谷鉄也

    ○中谷委員 蓋然性と確実性がほぼ近いなどとおっしゃっていただいたら、これはもう非常に問題があると思うのです。みずから裁判長と称しておられるのですから、ひとつそういうふうなことばづかいについては厳密にお使いをいただきたいと思うのです。特に運用覚え書きの中で公取の姿勢だとか独禁法のいわゆる骨抜き論も出ているときなのですから、これはひとつ私のほうから要望をしておきます。  そこで、私に与えられた時間はあと十分ばかりしかないのですが、続けて公取委員長にお尋ねをいたしますが、今度の合併というのは、これは何といいましても超大型合併ということで、国民はひとしくこれを注目していると思うのです。またこの合併について、合併の届け出が受理され、公取においてそれが許容されるということになれば、今後十五条についての問題というのはほとんど起こらないだろうということが言われています。私もそうだと思います。そういう中でこの問題について公取委員長の御答弁は、慎重かつ厳正に本件について調査をするということをおっしゃった。まさにそういう姿勢であっていただきたいと私は思いますが、しかし調査に着手していない。届けがまだ出ていないということではありますけれども、非常に大きな問題だということは当然予想もできるし、そういう心がまえで御準備をいただかなければならぬ。  そこで一つお尋ねをいたします。要するに届け出があってから、普通の何百件と許容されている合併については、たいてい三十日あるいは三十日の期間を短縮をしてこの問題の処理をしておりますが、特例を設けてさらに六十日延長するということも法は認めております。合併問題についてすでに論議されましたところの三菱重工の問題について、たしか三十日延長になったはずです。そこで、この問題についての処理の中で国民は納得のいく調査をしてもらいたいということを希望しておる。慎重かつ厳正にやってもらいたいと思っておる。そういうことで三十日の届け出期間というのも、必要があったらと言うけれども、当然私はこういう場合は必要があるのではないかと思う。延長をする可能性も十分あると思っておるけれども、これはとにかく調査に着手しているとかいないとかということじゃなしに、まさに公取のそういう問題に対する厳正な取り組みの姿勢の問題だと思うけれども、まずこういう点についてお答えをいただきたい。
  115. 山田精一

    山田政府委員 もしかりに届け出がございますすれば、当然さようなことになるかと考えております。
  116. 中谷鉄也

    ○中谷委員 六十日の延長などということはかつてないことだと私は思いますけれども、そういうこともあり得るということでひとつ厳正にやっていただきたい。  いま一つ、この問題については需要者あるいはまた同種の競争会社、さらにいわゆる消費者——この場合に同僚議員のほうから企画庁長官にお尋ねがあるかと思いまするけれども、国民一般は運賃の問題だとか入浴料金の問題などと違って、なかなか鉄鋼の問題というのは直接飛びつきにくい問題なんですけれども、いわゆる国民としての消費者というふうな人たちを集めて、公聴会も当然お聞きいただくべきものだと私は考えます。三菱重工のときも何か一日ほどおやりになったそうですけれども、この合併というのは文字どおり空前絶後、今後あるかもしれませんが、一番大きなものだと思いますけれども、そういう公聴会を相当規模の中でお開きいただくことを公取の姿勢の問題として私は希望したいと思いますが、御答弁をいただきたい。
  117. 山田精一

    山田政府委員 もしさような場合には、当然公聴会を開く必要があるかと想像をいたしております。
  118. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、そういう公聴会を開くということになると、その公聴会の性格というのは、一体どんな人たちに意見を聴取されるのかというようなことについてお答えをいただきたいと思います。一般論としてでも、厳正かつ公正な調査という中で、少なくともこういう人からはこの種の場合には公聴会の中において意見を聴取すべきだろうというようなことについてひとつお答えがいただきたい。
  119. 山田精一

    山田政府委員 公述人は、こちらからお願いいたします公述人と、それから官報に告示いたしまして希望者を募りまして、その中からやっていただく場合と両方あるわけでございますが、こちらからお願いいたします公述人といたしましては、まあ常識的に考えまして同業関係、それからその製品の需要者関係、それから一般公益を代表される関係等は当然含まれるものであろうと考えます。
  120. 中谷鉄也

    ○中谷委員 公取委員長にばかりお尋ねをして非常に恐縮ですが、あと一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  同僚の中村議員が四十四条の問題をお取り上げになりました。しかし、私は一度この機会に四十条の問題を公取委員長にお尋ねをしておきたいと思うのです。今度は法律の解釈ではございません。四十条には「公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは」、結局「情報若しくは資料の提出を求めることができる。」という規定でございますね。そこで、先ほどは公取委員長の御答弁としては、おそらく三十日の期間を延長しなければならない問題が起きてくるだろう、あるいは公取としては公聴会を開くというふうなことになるだろうというふうな趣旨の御答弁があったと私は理解をいたしましたが、少なくとも、私が何べんも繰り返して申し上げておりますように、非常にこれは日本経済の将来を左右する大きな合併だと私は思うのです。そこで、もうすでにこの問題が現実の問題となっている。ただ、事実上の、手続上の、法律上の届けというものがまだ出てきてないという段階です。まさに第四十条を御発動になる必要のある場合だと私は思いますけれども、情報もしくは資料の提出を求められることを努力されるべきだと思いますけれども、逆に言いますと事前の調査というようなことになるだろうと思うのですけれども、そういうことをおやりになる意思があるかどうかということをお尋ねいたしたいと思います。  同時に、言わずもがなのことではありますけれども、私が本日冒頭に通産省とお会いなりますかということをお聞きしたのは、一般的な情報の収集あるいは意見の交換ということだという御答弁があって、私はそれは当然だと思いますけれども、少なくとも公取というのは準司法的な機関だということ、これは公取委員長が常に強調しておられるところですけれども、通産省と会って、この合併問題について、何かかりにも合併をすべきだろうというような話があったというようなことになれば、たいへんなことだと思うのです。そんなことは絶対にないということは私も信用いたしますが、そういう観点からも、通産省とお会いになるのもこの四十条の精神、規定に基づいてお会いになるのだというふうに理解してよろしいかどうか、これをお尋ねしておきたいと思います。
  121. 山田精一

    山田政府委員 事実につきましては十分通産省御当局の御意見を伺いたいと思いますが、そのデータを判断いたしますのは、どこまでも私どもの立場判断をいたしたい、かように考えております。  なお、事前の調査をするかどうかというお尋ねでございましたが、これも必要に応じまして、あるいは届け出を待たないでも調査をいたすこともあり得る、かように考えております。
  122. 中谷鉄也

    ○中谷委員 実は労働省に対する質問が残っているわけですが、関係の方おいでになっておらないようなので、委員長のお許しをいただきまして、一応中断をいたしまして、五分ほどあとで時間をいただきたいと思います。
  123. 小峯柳多

    小峯委員長 佐野進君。
  124. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私も、きょうは鉄鋼合併問題を中心にして、先輩各位のあとを受けて質問をしたいと思うのです。通産大臣がいないのもまたきょう残念なうちの一つなんですが、最初に端的にひとつお伺いしておきたいのですが、日本経済がいま置かれておる方向は、いわゆる企業独占の方向に進みつつある、こう指摘せざるを得ない趨勢にあるわけですが、この独占ということに関して、いまの日本経済の趨勢ということに対して、経済企画庁長官、公取委員長どう判断しておるか、まず最初に聞いておきたいと思うのです。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 独占の方向に進んでおるとは判断しておりません。ただ、独占というのは、厳密に申せば、モノポリーということを言われたと思いますが、そういう観点で言いますと、オリゴポリーの方向には進んでいる、かりに寡占というのでございますか、そういう方向には全体として進む趨勢にあるのではないか。これはどこもそうだと申し上げるわけじゃございませんが、そういう傾向があると見ております。
  126. 山田精一

    山田政府委員 経済全般が独占あるいは寡占の方向に動いておるかどうか、これはいろいろ理論的には問題の多いところであると存じます。私どもが先般実施いたしました生産力の集中度の調査によりましても、まだ若い産業におきましては、むしろ分散の傾向がございます。集中度が低下をいたす傾向にございます。それから、やや年をとったと申しますか、成長が鈍ってまいりました業種におきましては、集中度が高まってくる傾向があるようにはっきり見受けられました。したがいまして、一般傾向としてどちらかという判断は軽々にはできないかと存じます。今後の成長度がいかが相なっていくか、またその業種によりまして、かなり違いがあるのではないか、かように考えます。
  127. 佐野進

    ○佐野(進)委員 非常に慎重なお二人の答弁なんですが、私はいま日本経済が内外における諸条件の中で置かれておる立場を端的に見詰めた中で、企業のいま取り組みつつある姿は、これは中小企業問題はしばらくおくとして、大企業間における趨勢としてはいわゆる独占——独占という表現が適切でないとするならば、寡占あるいはまた企業の集中合併による資本の巨大化、あるいはその中における設備の合理化あるいは人員の削減、こういうような形の中における必然的な趨勢のもとに立たされておる。これはだれも否定することのできない事実じゃないかと思うのです。いま企画庁長官はそのことに関して、寡占化の方向ではあるけれども、独占化の傾向ではない、こういうぐあいに言われておるわけですが、これは独占論と寡占論と、またそれとそうでないのと、いろいろ言っている時間的余裕はございませんが、しかし、企業がなぜ集中していかなければならないか、なぜ集中しなければならないという形の中で今日のような事態が起きておるか、この根本的な原因については、じゃどう判断されるか、あとの質問の関連がございますので、ひとつ聞いておきたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幾つか理由があると思いますが、一つは、やはり資本等々の自由化によって国際間のから紙が取り払われる、そういう事態に対処してわが国の企業も規模の利益を追求していかなければ、国際的な競争力を失うという自覚一つあると思います。  それから技術の進歩によりまして、設備そのものが大型化していく。そういたしますと、それはなかなか一社だけでそういう大きなものを有効に活用することはできないということもございますから、共通の設備を使おう、あるいはむしろそれならば一緒になろう、そういったような動き、これももう一つ理由であると思います。  それから人手、労働力がだんだん少なくなっていく、それによって従来のように労働集約的な企業をやるということができなくなりまして、なるべく資本集約的にやっていかなければならない、こういうこともまた一つ理由であろうかと思います。
  129. 山田精一

    山田政府委員 集中にも規模の大小、非常に差があるわけでございますが、ごく一般的に見ますると、ただいま企画庁長官が言われましたような、結局合理化、それから規模の利益を追求する、この点にあるかと思われます。
  130. 佐野進

    ○佐野(進)委員 したがって、私はいま長官ないし委員長が答えられたような、そういうような形の中で行なわれつつある今日の企業合併というものが、これは単に鉄鋼だけに限らず、あらゆる業種に波及しつつある。いわゆる通産省なり経済命画庁長官なり公取委員長の、今回の合併問題があらわれた直後における新聞記事をはじめ各方面におけるところの発言というものを私が総合的に判断すると、非常に政治的に——いわゆる企業の利益ということよりも政治的にこの問題に対して取り組まんとする姿勢、こういうものが非常に強いように感ずるのです。ということは、先ほど中谷委員のほうからお話ございましたけれども、いわゆる通産大臣の談話あるいはまた山本次官のある新聞に対する特別寄稿という形の中における表現、こういうものが、いまやまさに八幡富士合併は天の声である、いわゆる日本企業を存続せしめ、日本経済を発展せしめていくにはこれ以外にないのだ、その合併を進める過程の中に起きつつある問題については、何とか弊害は取り除いていかなければならぬけれども、合併こそ日本経済というか企業が存立する最高の道であるということをみんな言っておるじゃないですか。みんなおっしゃっておりながら、いま言ったように、独占化の方向でないのだ、あるいはしいて言うならば寡占化の方向だということは、いわゆる今日の八幡富士合併するということが、独占資本の、いわゆる企業の独占というか何というか、独占禁止法に示されておる各条文と相対照してみたとき、どこにそうでないという条文をさがし出すことができますか。さっき中谷委員から質問のあったとおり、四十一年の十一月ですか、通産省公取との独禁法解釈におけるところのお互いの覚え書き交換という形の中で、独禁法運用に関する一つの解釈の基準を出しておることは事実でありますね。それと照らし合わせてみても、今日のこの八幡富士合併というものはまさにその覚え書き以上のものであることは、もう先ほど来、中村先生の質問に対して公取委員長は答えませんでしたけれども、おそらくおなかの中ではそうだと思いながら、しかし立場上答えられなかったと思うのです。そうすると、いま経済企画庁長官がお話しになっていることは、表現上、独占化の方向に進んでおるのだということは言えない、独禁法があるたてまえ上言えないから寡占化——じゃ寡占と独占はどう違うのかということになってくると、これはまた非常に議論が出てくると思いますけれども、そう判断せざるを得ない。しかもその背景に、いま少しく慎重に対処しなければならぬ政府関係各機関が、もろ手をあげて賛成するような態度をあらわしておるということは、まさに不勤慎きわまりない。新聞記事を私ずっと見ているけれども、みんなそうですよ。どうしてあなた、独禁法のたてまえ上あるいは日本経済の現在置かれている立場から、この問題に対して慎重に対処しながら、あるべきものに対して政府の政策としてこうあるのだということを慎重配慮の上に打ち出さないのですか。軽率きわまりないと私は思うのです。そのことがいいかいかということは、これからの経過がありますからね、その結果がどうなるかわかりません。そのことがよかったのか悪かったのか、それはわかりませんよ。わかりませんけれども、少なくとも政治の衝に携わる者の立場としては非常に行き過ぎではないかと思うのです。したがって、今度の富士八幡合併問題は政治的勢力を背景にし——政治的勢力と言うのは適切でないかもわからないけれども、むしろそれに支配され指導された形の中で合併問題が起きておるのじゃないかという疑念を持たざるを得ないのです。しかもそれが八幡富士という両方の会社の中における積み重なった合併の機運の上昇に伴って、必然的に合併の姿が出てきたならいいのですけれども——まあこれはあとから質問しますけれども、そうでない。両社の社長が単にある場所において偶然——偶然ということはないけれども、合併の意思表示をした。しかもその記事は新聞社のスクープとして一大センセーションを巻き起こしたといわれる。こんなばかなことがありますか。そういうような関係からするならば、いまの宮澤さんの御答弁は、非常に当面調子のいい答弁だといわざるを得ないと私は思うのですがね。政治的な判断と、独占と寡占との問題についてもう少しひとつ御答弁願いたいと思います。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず独占ないし寡占という問題でございますけれども、先ほどちょっと申し上げかけましたように、厳格な意味で申して独占というのは私はモノポリーを意味するものだと思います。その次にやはりデュオポリーというものがあると思います。この場合には二占でございますから、非常に競争制限になりやすいと思っております。私どもがその次のオリゴポリーということを申しますのは、これは少なくとも二つでない、数個の企業ということでございましょうから、この状態においては十分に競争関係が本来成り立ち得るものである。ただ、もう雑多の無数にあるという場合に比べれば、それは多少の危険が確かにございますから、それは注意をしなければならないということは先ほど来申し上げておるところでございます。  そこで、わが国の企業の中で、少なくともある程度成長した若くない企業についてはそういう集中の方向にあるということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、それはどういう理由によるものであるかということについても、先ほど私、三つばかり理由を申し上げました。そこで、したがってそういうことは国の経済全体として、日本経済競争力等の観点から好ましいと考えるわけでございますが、消費者の観点から言いましても、先ほど公取委員長の言われましたように、合理化ということが一つの動機であるといたしますと、合理化によってコストは本来下がるべきものでありますから、したがって消費者にとってもこれは決して悪いことでない、こう考えるべきだろうと思う。ただ問題は、もしその間に競争制限的なような話し合いがあれば、それはもう別でございますが、そういう危険が多少あることも確かでございます。これは排除する方法があるわけでございますし、消費者の観点からいっても——これはいま特定の会社のことを申しておるのじゃございません。一般論としてそういう傾向は悪いことではない。ただ、これに対処する弊害を除去するようなことは十分に努力をしなければならない。またそのための制度もあるわけでございます。  さて、今回の問題につきまして、何かこれに介入をしたとかあるいは干渉をしたとかいうことがあるかとおっしゃれば、それはもちろん全然ございません。両社の間で出たり消えたり長年しておりました話が、たまたま両社間で合意に達したということであると思います、経済社会発展計画でも、弊害の除去について十分な注意を払いながら、国際経済全体の中で見てわが国経済がそういうふうに進むことは望ましいと判断をいたしておるのでございますから、私どもそういう大きな方向づけは職掌柄いたすべきものと思いますけれども、今回の場合何か介入したといったようなことはもちろん全然ございません。
  132. 佐野進

    ○佐野(進)委員 水かけ論を言ってもしようがないが、しかし、少なくともこういう問題についてはいま少しく通産あるいは経済企画庁、特に公取の場合においては慎重な態度でいかなければ、どう考えたって資本の自由化に対応するために企業合併が必要である、もっと端的にいうならば、アメリカのドル防衛に対するしわ寄せが日本経済にどういう影響を今後与えるかということについては非常に重要な問題になってくる。貿易の振興もそうです。すなわち、日本における現在のいわゆる資本主義経済体制下における経済政策全般の中からどうしていかなければならぬかということについては、企業としても国の政策としても、それぞれの関係官庁が検討することは当然だと思うのです。ただしかし、象徴的にあらわれている八幡富士合併問題をとらえて、いまやまさに時来たれりとばかり、これを中心にして、もちろん世論のわき上がることは当然だけれども、それに拍車をかける形の中において、これが資本の自由化に対応するために、あるいはドル危機に対応するために、あるいは貿易振興をはじめとする日本経済の将来に対応する唯一の策であるかのごとき錯覚を全体的に与えるということは——私は八幡富士合併問題を契機として日本経済が非常に重大な転機に立たざるを得ないと思えばこそ、これに対する政府の取り組みというものは、慎重かつ積極的なものがなければならぬと思うのです。これは慎重を前提としての積極的ですよ。ただ通産大臣は、どこかの場所に行って、非常にいいことだと言って、きょうの質問の答弁に対しては非常に慎重にやるんだというような印象を持つような、そういうものであってはならないし、これに浮かれて、八幡富士がやることだからおれもおれもといって何ら実態にそぐわない企業なども合併しなければならぬ、合併することが時代の流れだということになってしまっては、そこらから派生するいろいろな問題が多いだけに、政府に対してこの点は強く注意を促しておきたい、こう私は思うのです。  そこで、第二点に入るわけですが、いままで経済企画庁長官が言われた、合併が行なわれなければならない外的な要因についてはいまお話があったようなことでわかるのです。それから内的な要因についても、いま委員長の言われた設備の合理化とかどうとかというお話でわかるのですが、八幡富士合併の問題をはじめとして、各企業合併をしようとする基本的なねらいは一体どこにあるのか。非常に抽象的な質問ですが、あと具体的な質問をいたしますから、さっき言われた点以上に内的な要因としてひとつお答えを願いたいと思うのです。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お答えの前に、恐縮でございますけれども、先ほど政府関係者が、いろいろ意見を申し述べておると言われました中で、公正取引委員長も何か積極的に意見を述べられておるように聞こえるようなお尋ねでございましたが、これは私そういうことはないように思います。お立場公正取引委員長が何かこれについての意見を言われたということは、私ないように思いますので、これは差し出がましゅうございますが、私から申し上げておきます。  それで、先ほど申し上げましたようなことがおそらく両者の間の考え方であろうと判断いたしておりますが、それにもう一つつけ加えますならば、この両社間のシェア競争というものが長年設備投資について非常に深刻でございまして、その結果他社がいろいろな意味で好ましくないあおりを受けておったということは事実と思います。業界の秩序ということば、ごく常識的な意味でございますけれども、その結果、日本経済全体にいろいろな好ましくないゆれを生じておる。冒頭に重工業局長が言われたようなことがありますので、やはりそれについての実業家としてのいろいろな反省などもきっと両社の間に手伝っておるのではないか、詳しい事情は私もよく聞いておりませんが、そんなことではなかろうかと思っております。
  134. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私もいろいろ調べてみたのですが、八幡富士合併しなければならぬ内的要因というものがあるのですよ。あるからこそ合併ということになったのだろうと思うのですけれども、しかし、この内的要因のある中で一番問題になるのは、いわゆる古い施設を有する企業であるだけに、新しい施設を有する企業に対応するためにやはり踏み切らざるを得なかったということになってくると思うのですけれども、時間がないということですから、これをいつまでやっていることはできませんが、ただ私は内的要因ということが企業合併という形の中で企業の再建がなし得られる最大条件であるかどうかということについては、非常に問題があると思うのです。むしろ企業合併をした過去の経過からいって、合併に基づくところの効果をあげた企業はもちろんあるでしょうけれども、全体的に飛躍的に企業の発展を来たしたという実態、実情はそう多くないように——私は過去の事例の中でいろいろあると思うのですよ。そうしたとき、もし八幡富士という巨大なる企業合併したことによっていろいろな面でマイナス点があらわれてきたりすると、これはたいへんなことになりますね。しかし、政府はそれのちょうちん持ちをした。いまちょうちん持ちしているということが適切だと私は判断する。宮澤さんは違うと言っておられるようだけれども、通産省は少なくともちょうちん持ちしているということになると、これはたいへんなことだと思うのです。時間がないのでたいへん残念だけれども、こういう点について、内的要因に基づく企業合併というものが、しかも独占的に、他業界に与える影響がきわめて大きいとするとき、この内的条件克服の手段として企業合併を認めるということは公取委員会としてはどうお考えになりますか。そして通産大臣としては内的要因が今日の企業合併一つの重大なる要件であると御判断されるかどうか、この点ひとつ聞いておきたいのです。
  135. 山田精一

    山田政府委員 八幡富士合併につきましては、当事者及び関係者からまだ何ら事情聴取いたしておりませんので、そのねらいがどこにあるのか私存じませんでございます。仮定の問題といたしましては、お答えを差し控えたほうがよろしいかと存じます。
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 旅先で私がその地方の新聞社の人たちに会見した際に、この問題を聞かれまして、いま資本自由化されて、そして技術的にもあるいは経営的にも企業が大型化しなければならぬという情勢にあるんだが、その他の理由はしばらく省くとして、こういう方向としては好ましい方向であるということを話しました。いまあらためて内的要件ということでお話がございましたが、結局、国内のせり合いからくる肩の荷を軽くして、そして大経営、それからまた大型の技術の合理化、こういったようなことがやはり企業の内的要因としてこういう合併が少なくとも促進されてきておるということは、私は認めざるを得ないし、またこれは悪いことじゃない、こう思います。
  137. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は今度の合併問題が、これは八幡富士だけでなく全体的に言えることは、もちろん外的要因、内的要因に基づいて、いろいろの困難があろうけれどもその合併をしなければならないという、むしろ企業独自の持つ体制からするならば望ましいことでなく合併している場合が多いと思うのです。いわゆるこの合併というものが、単なる小企業を大企業が吸収するという形の中における合併でないだけに、そういう感を深くするわけです。  そこで私は、結論に入る前の一つとしてお聞きしたいのですが、八幡富士という巨大産業の合併は、必然的に日本におけるところの大企業間における合併を促進する一つの契機になると思うのです。それだけでなくて、むしろ金融機関、さっき中村さんも御質問なさっておられたけれども、金融機関の合併、旧財閥の復活、財閥と言うのは適切かどうかわからぬけれども、そういうことに必然的に結びついていかざるを得ないと思うのです。こういう面における日本経済の将来の趨勢から見て、こういう金融機関の、いわゆる大銀行の大合併というようなことに対して、これはどういうようにお考えになり、どう判断されて取り組もうとするか。これは通産省と、企画庁長官がいませんから公取委員長でいいですから、簡単に答えてください。
  138. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大銀行の合併ということは、私はまだうわさにすら聞いておりませんですが、もともと所管外でございまして、これに対してこういう場所において私からお話しすることは少し遠慮したいと思います。
  139. 山田精一

    山田政府委員 私もまだ全然その話を聞いておりませんが、もしさようなことがございます場合には、競争の実質的制限になるかならないか、この見地から判断をいたしたい、かように存じております。
  140. 佐野進

    ○佐野(進)委員 通産大臣おとぼけがじょうずだということで、この前、ぼくの本会議の質問でとぼけられてしまって何も答えられないから困ってしまうんだけれども、しかし八幡富士という大企業合併は、いわゆる産業資本界におけるところの一大変化を来たす契機になるわけですね。これはしたがって、そのことが必然的に金融資本の再編成を促すということは、何も通産大臣所管でございませんからでなくて、少なくとも閣議を構成する一人として、そういうことに対する判断が成り立たないなんということは、あまりにもわれわれの質問をばかにしている答弁だと思わざるを得ないわけですよ。ばかにされてもいいですがね。しかしそういう点について私はここでいま通産大臣を相手にしていろいろ言いません。  そこで、最後に私は質問申し上げたいのですが、こういう形になってくると、必然的に今度の八幡富士合併問題は、日本における独禁政策の重大な転機に立たされた問題である。いわゆる独禁法が形骸化すか、公取委員会というものが単なる弱い者いじめの公取委員会になるかどうかという重大な転期に立たされる時期だと思うのです。したがって、この問題については先ほど来いろいろと言われておりますが、冒頭、私は独占という問題を提起して質問を始めたわけですけれども、この八幡富士合併問題に対して、出てこなければわかりませんということは、この場所における答弁としては当然だろうと思うのだけれども、いわゆるシェアにしても何にしても、独禁法に触れることは間違いない状態で、ただ残されたのは政治的判断だけ、政治的判断公取委員会が押し切られるかどうかということだけ、その政治的判断通産省がどの程度力を込めて押し切っていこうとするかどうかという、いまやまさに通産省公取委員会のここにいる両者の激しい力関係によって最後の態度が決定せられようとしておる。ところがいまおとぼけ大臣の椎名さんを中心にして、非常に通産省は積極的な姿勢を示しておるから押し切られる可能性がある。そういう点について、私は、公取委員会をいわゆる独禁法の立場に立って日本経済の将来、消費者の将来の利益のためにこの問題についてどう取り組まんとするか、この決意をお聞きしたいし、先ほど経済企画庁長官にはその点についてお伺いしておりますが、通産当局の通産大臣から聞いておりませんので、本問題に対する政治的な圧力というものをどの程度、もうすでに加わっておるのですけれども、今後取り組まんとする姿勢においてどの程度の決意をもって臨まれるのかお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  141. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどもその御質問に答えたのでありますが、独禁法を犯すことになるかならぬか、企業合同がですね。企業合同かあるいは独禁法を順法するかというような二者択一の、二律背反といいますか、どっちかだ、独禁法に従えばもう合同なんかできない、合同をやれば独禁法というものを圧迫するということになる、こういうふうな考え方は私は全然とっておらないのでございます。独禁法は、私から申し上げるまでもなく、独占的な経済的な力を利用して、そして消費者あるいは社会全体に対して不利益を与える、そうして自分だけのことを考える、企業の独善、エゴイズムと申しますか、そういうあらわれである、こういうことに対して、それを矯正する立場に立つのでございまして、これは私もとにかく消費者でございます。そういう立場から、そういうような不届きな経済的独占力をもって国民を圧迫するとか社会の秩序を撹乱するとか、そういうことはどうもそれは私個人として許すわけにいかない。でありますけれども、企業が時代に順応して合同いたしまして、そしてそれによってより以上の国際競争力を、正しい意味での国際競争力を発揮していくということは、これはもう別にそれ自身が独禁法に反するゆえんじゃございませんので、両方とも、これは両立する立場にあるもの、かように考えまして、少なくとも両社の合併によってそういう悪の部門がもし出てくるような場合には、それはもう公取委員会の驥尾に付してわれわれもそういうわがままを押えるというほうに回ることは当然なんでございます。こういう点は両方指導によって十分に達成し得るものと考えております。
  142. 山田精一

    山田政府委員 私どもといたしましては、慎重に厳正に判断をいたしまして、独禁法を忠実に適切に運用いたしてまいるつもりでおります。
  143. 小峯柳多

    小峯委員長 中谷鉄也君の保留の質問を許します。中谷鉄也君。
  144. 中谷鉄也

    ○中谷委員 一言だけお尋ねをいたします。労働省に次のようなことをお尋ねいたしたいと思います。  要するに、午前中から論議をいたしましたのは、八幡富士がかりに合併いたしましたならば、資本金が二千三百億円以上になる、従業員が八万一千人近くになるということでございます。そういうふうな状態の中で、合併のメリット、デメリットというのはいろいろな点から論議されなければなりませんけれども、合併に伴って、たとえば従業員の人員整理であるとか労働条件の低下、特に、いわゆる合併に名をかりて継続的な労働関係を打ち切ってしまうというふうな、人員整理というようなことが行なわれやすい状況があると私は思うのです。こうだとすると、合併という名で従業員に非常な犠牲をしいることだと私は思う。また同時に、不当な配置転換などというようなことも合併という名において許さるべきことではないと思います。  そこで労働省としては、これらの合併に伴う労使の問題を、単に労使の問題としてのみこれを放置し静観しているわけにはいかないだろうと思う。労働省としてこれらの問題についてどうお考えになるか。特に大企業合併に伴う下請の労働者の同種の問題が私はあるだろうと思う。これらの問題について、ひとつ労働省としての見解と、具体的な措置があるならばその措置をひとつ御答弁いただきたい。質問はこれだけでございます。
  145. 井村重雄

    ○井村政府委員 お答えを申し上げます。近時、新聞紙上に出ております八幡富士製鉄合併は、まだ出たばかりでございまして、事実いかように行なわれるのか、仮定の問題であろうかと存じますが、いまお尋ねの点につきましては、私ども労働省といたしましては、いわゆる企業合併あるいは合同というものが、人員整理あるいは賃金の引き下げ等を前提とした合併、合同であってはならないと考えております。いわんや下請及びその他についても非常な利害関係が多分にあると存じますから、労働者が失業状態に追い込まれるような条件であってはならないということについては十分注意をもって見守っておるような状況でございまして、逐次そういうことが進行いたしますれば、それぞれ労働省といたしましても十分指導をしてまいりたいと存じます。
  146. 小峯柳多

    小峯委員長 午後三時から再開することとし、この際休憩いたします。    午後一時三十三分休憩      ————◇—————    午後三時二十三分開議
  147. 小峯柳多

    小峯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田泰造君。
  148. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 午前中からの各委員の御質問で大体いろいろなことが出尽くした感じがいたすのでありますが、特に最近の大型合併の問題につきまして質問をいたしたいと思います。  新聞紙上で報道されました八幡製鉄富士製鉄、あるいはこれを契機にどんどん各業界で大型合併が行なわれる気配でございますけれども、これにつきまして、合併のメリットといいますか、その必然性につきましては了とするものでございます。ただ日本のこういう大企業合併いたしますときに国民経済に与えるデメリットといいますか、どういうふうにお考えになっておられるか、個々的な問題から質問を申し上げたいと思います。  まず日本鉄鋼のコストの問題について具体的な質問をいたしますが、鉄鋼のコストが非常に不安定でございますけれども、その不安定の一番の根源は何であるか、どういうところに根源があって鉄鋼価格が安定しないのかという原因について、通産省からまずお答えをいただきたいと思います。
  149. 高島節男

    高島政府委員 お答えいたします。鉄鋼の需給関係は、むしろ需要関係が一つは非常に不安定、予測がしにくいところにございます。これは日本経済自身の成長率がとかく高く、若い経済として行き過ぎる傾向がある、そうすると引き締めであと伸び率がなくなるということを繰り返しておりまして、需要の予測ということが非常に困難であることが一つございます。それに対しまして鉄鋼のほうは、午前中も御説明いたしましたように、現在六つの企業がございまして、これがそれぞれの力、およそ似通った、互角のものであります。それぞれの競争力は相当のところまで参っておりますけれども、六社いるために、限られた、しかも予測が非常につかみがたい需要に対しまして、とかく設備投資が行き過ぎがちになっていくといった関係で、コストそれ自身というよりは需要と供給設備との関係という間の出合いがふつり合いになるという傾向がとかく強く、今日の需給関係のかじのとり方が非常にむずかしい現状にあるかと思っております。
  150. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの御答弁で需給関係が出合いが公正じゃないというようなお話がございましたけれども、いまこれを八幡富士合併をかりに認めることによって、どういう形で需給のバランスがとれるのか、そういう意味のコスト安定に寄与するようなメリットが生まれるのか、そのことについて御答弁を願います。
  151. 高島節男

    高島政府委員 合併が行なわれたといたしまして、ただいま指摘いたしました問題との関係をたどってみますと、まず供給面におきまして、現在各社はそれぞれ大きな設備計画を持っております。技術が進歩いたしたために、一基の溶鉱炉を建てますと、二百五十万トン程度の大きなものが一度にできる。需要のほうはつかみにくいのみならず、最近経済成長の度合いも安定成長路線になってまいりますと、そう大きな需要伸びがもう期待できない。一人当たりの鉄の消費量が五百キロをこすとそろそろ屈折点に入るというのが先進国の例だというような点もございまして、需給関係に不安を抱きつつ、しかも設備をすれぼ非常に大きいと、こういう形に現在なっております。そこで合併が行なわれますと、少なくとも八幡富士においてそれぞれの製鉄所の計画がございます。これがめいめいの間では現在の立地地点が、自分のところが一番先にやるべきであるという感触で見ておるわけでございますが、それをしぼりまして、一つの製鉄所で三つ候補地があれば、そのうちのこれを両社として一番先にやるというところに集中してくるのではなかろうか、こういう感じ一つ抱いております。  それからさらに品種ごとにいたしますと、いろいろな品種のものを両社でつくっておりますが、その間に品種調整等も行なわれまして、大量生産の利益というものがはかられていく余地があるかと思います。  さらにコスト的なものといたしまして、両社それぞれ研究投資をやっております。八幡富士も世界の企業の中で相当のところまで現在参っておりますが、その研究のスケールは世界的なUSスチール等に対しては相当にまだ遜色がございます。これを合わせて一本にすることによって研究投資効果が期待できるのではないか。これは何が生まれてくるかわからない点ではございますが、そういう形になることによって、効率があがるんではないか。その他交錯輸送をいたしておりましたり、総がかり費がよけいかかっていたりすることは、これは一般合併の例に準じまして、八幡富士の場合でも相当のコストダウンの効果が期待できるんではないかというように考えております。
  152. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの合併をすることによりまして、かりに新しい会社のメリットは、国際競争力を付与されて非常にいい方向に向かうということは、これは簡単に想像できます。ただ、設備調整の需給のバランスをとる場合に、投資単位が一つ減っただけで、シェアは三五・六か八%らしゅうございますけれども、そのほかのいわゆる大手のメーカーもあることですので、その間ではたして設備調整が完全に行なわれるかどうか。コストを決定する上に、設備調整ということは、投資問題を抑制することが非常にたいへんな難問題だと思うのですが、その問題は、いままで産業構造審議会鉄鋼部会でいろいろ審議されても、極端に言うならば、通産省も非常に行政指導はしてまいりましたけれども、結果的に見れば野放しの状態であったというような批判をされてもしようがないような現状であろうと思うのでございます。そういうことで、投資単位が二つのものが一つになった、そのことだけで設備調整ができるかどうか。通産省は、かりに仮定しまして、合併後の設備投資がうまくいって、需給のバランスがとれるというような、どこにそういうお考えをお持ちでしょうか、再度御答弁を願いたいと思います。
  153. 高島節男

    高島政府委員 ただいま御指摘産業構造審議会鉄鋼部会、これは毎年設備調整で苦労をいたしておりまして、ことし四十二年度も、まず各社の間にある意味で順序をつけてまいりまして、将来の需要が四十二年度ではかなり強いといいますか、現在の設備余力に対して、将来の需要との間にある程度バランスがとれるという観点でございましたから、高炉の着工を相当数やってよろしいという姿勢をとったわけでございますが、その後の事態は、さらに投資をする必要性といいますか、需給関係から予測しまして、非常にむずかしいことではございますが、簡単に大きなものをここでつくる必要が出てこない、しばらく慎重に検討してもいいんじゃないかというような客観情勢にございます。そこで、そういう事態にございます際に、これからの設備調整はきわめてむずかしい。ことしの鉄鋼部会ではこれはなかなか結論が出にくい性格であろうと思いますが、その際に八幡富士というものの合併の問題がちょうど出てまいりました。これはおっしゃいますように、確かに投資単位が一つ減っただけで、あと四つほど相当シェアを持った生きのいい会社が現在おります。これが相当に強い力で投資の希望というものを述べてくるものもあると予想されるところでございますが、いずれにしても、今度合併の当事者になろうとする両社は、これまたそれぞれ新しい製鉄所の計画を持っておりまして、その間の調整が比較的円滑についていけば、これからの高炉の建設、ことしの問題をさばく際に、その建設予定基数が相当に限られている現状においては、この合併が全体のムードを静める若干の寄与にはなり得るのではないか。それがすべてを解決するものとは思っておりませんが、これが起こったということは、一つそこにやりいいきっかけを持ってきたんではないかと思います。しかしこれは単に私どもの予想でございまして、実際の部会に臨みました際に、まだ合併も済んでおりません際でございますから、両社がいかなる主張をするかということは、ちょっと予測に苦しむところでございます。
  154. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 この合併問題につきまして、公取委員長あとで御質問申し上げますけれども、いま局長の御答弁で、後発会社といいますか、いままでの大手六社のうちのあとの四社も非常に生きのいい会社で、企業財務においては、あるいは八幡富士を上回っておる。シェアにおいてはうんと低いですが、上回っておる会社でございますので、いままでの投資単位が一つ減っただけで、設備調整ができるかどうかということは、われわれは非常に疑問を持つのです。いろいろな意味で経済関係に関心を持たれる一般の国民の方々は、あるいは八幡富士が後発会社の追い上げで非常に苦しくなった。現状では鉄鋼は低い底値にいっております。それだけに経営内容も非常に苦しい。そういうことを合併という、いわゆる通産省の行政指導、いま局長の言うように、合併することはまだ未定のことでございますので、ここで論議することは適当じゃないと思うのですが、まず新聞の報道によりますと、おそらく大型化は通産大臣以下歓迎の方向だと思うのです。また国際競争力を持たす意味で、われわれも妥当な線だと思うのですが、それについて、その事後、合併後でないと、その指導なり設備に対する根本方針が出ないということでは、私は少なくとも行政指導としては適当でないのじゃないか。いろいろな大型会社合併が行なわれようとするときに、合併後について通産省はどういうふうに考えるか。たとえばこの八幡富士についても、設備調整をどうして需給のバランスをとるのか、そうしてコスト安定をはかるのかという、いかなる指導方針を持っておられるか。これは将来化学会社とか、あるいはうわさにのぼっておりますいろいろな会社がどんどん合併をしてまいると思うのです。そのことについて、合併は推奨するけれども、あとのいわゆる大型企業に対する政府の指導方針、行政指導、根本的な施策がなくて、それだけで国際競争力に勝つからどんどん合併すればいいんだというような考え方では、私は適当じゃないと思うのです。あと通産省はどういうふうに指導をしていくか、そういうビジョンを持って初めて合併に対する推奨もでき、またそういう指導もとれるのじゃないか。その指導なくして、合併は大いに歓迎だ、そういう意向表示だけでは——あとでまた御質問しますけれども、国民経済に与える、あるいは合併できないようなほかのもっと以下の企業に対するいわゆる政治不在といいますか、そういう形が国際競争力に勝とうという大義名分の旗じるしだけで処理されては困るのだ。したがって、大型企業に対して合併後どういう指導をするか。たとえば八幡富士鉄鋼に一例をとってみますと、いままでもどう調整しても調整のつかなかった設備調整が、投資単位が一つ減っただけで、八幡富士を助けただけで終わらないのか。したがって、それにメリットを与えたけれども、国民経済には何らメリットは与えなかったというような結果が招来するということははたしてないのか、という問題について御答弁を願いたいと思います。これは、あと通産大臣にも、大型化の大きな問題がいま出ておりますので、その基本施策といいますか、どうするのだというようなお考えお答え願いたいと思います。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まず、鉄鋼界を代表するこの二社の間でも、とかく国内におけるなわ張り競争といったようにとられるような行動がなくはなかった。むしろそういうことがきっかけで鉄鋼業全体のなわ張り争いといったことが一そう激化されたというようにとられてもしようのないような状況であったのでありますが、それが今度はこういうことで、まず上のほうの二つがもとのさやにおさまって、そうして大きく国際企業として先頭を切るということにもしなるならば、大型の合同というものが正しい意味においてこれからスタートが切られるということになるのではないか、むしろそういうことをわれわれは非常に望んでおる、こういうことになると思います。問題はまだありますから、あまり先のことを先ばしって考えることはどうかと思いますが、ビジョンというものをお尋ねになりますからお答えするのでありますが、とにかく視界を一そう広くして、そして国際企業としての矜持を持つと同時に、国内的には鉄鋼業に関する限りにおいては高度の技術革新の先頭に立つ、またその経営においてもまず逐次手がたい合理化を断行いたしまして、そして一そういいものを安く供給する、ひとつこういうような範を示してもらいたい。その間にあって、ただ独占にあぐらをかいて、いよいよ企業のエゴイズムを発揮するというようにとられることは、私はただいまの両企業の首脳陣にはそんな気持ちはみじんもないと思いますが、いやしくもそういうふうにとられるようなことがあれば、これは大問題でございますから、われわれは公取委員会中心にして、あくまでそういう点については断固たる態度をもってこれを許さない、こういう方針のもとに、今後いやしくも国民からこういう方面で疑いをかけられるようなことのないように、全くガラス張りで仕事をするような気持ちで、そういう独占的な行動はみじんもない、そういう姿をひとつあらわしてもらいたい、こう考えております。今後これをひとつの契機として大型の合同が次々と行なわれるだろうと思いますが、それのほんとうの模範になるように、大所高所に立って行動してもらいたい、かように考えております。
  156. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 なるほど現在の八幡富士経営者が、いま通産大臣答弁のように、国民経済全般の上に立ったお考えをしていただけるりっぱな経営者であるというふうに私は考えたいのです。ところが、経営者はやはりかわっていくことですし、また、もともと八幡にしても富士にしても、だんだん後発会社の追い上げでシェアが低下していって、何となしに自分企業の危機感が深くなったということから、国際競争力をつけるという意味と同時に、自分企業、あえて言うならばいわゆる企業エゴイズムといいますか、そういう企業の利益そのことだけ、そういう両面から今度のいわゆる合併に踏み切ったと思うのです。したがって、経営者のモラルに負うところ大きいというような考え方じゃなくて、通産省そのものがしからばどういう——あとでこれは御質問いたしますけれども、値段の点でも国民経済影響を与えるような、そういう値段のきめ方はおそらくしないだろうけれども、大きなシェアを持った、いわゆるリーダーシップをとった会社として設備調整がおそらくいままでと違ってうまくいくだろう、一つに結集した大きな会社ができるのですから。いくだろうと同時に、逆にまたコスト面でもあるいはリーダーシップをとれるような会社一つできたという裏返しの考え方も私はできると思うのです。そうした場合に、そのコストが将来硬直して、いわゆる管理価格といいますか、そういうことが絶対に起こらないというような保証はないと思うのです。それを押えるような歯どめがどこにあるか。これは通産省の行政指導で経営者のモラルに訴えるのじゃなくて、そういう意味ぢゃなくて、どこに歯どめがあるか。法律的に何をもってそれを規制しようというのか。管理価格が絶対に生まれないという保証もないと思うのです。そういった意味で設備調整がうまくいって需給のバランスがとれるであろうという想像は、おそらく逆にひるがえしたならば、また管理価格が生まれるのじゃないかというような論理にもつながってくる。それほど指導性を持った会社一つでき上がるのだ、それに対して通産省はどう考えるか、こういう問題についてひとつ明確な御答弁を賜わりたいと思います。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、申し上げるまでもなく、経済上の優位の地位を乱用して独占力をふるうということの絶対にないようにする、こういう趣旨で今後もっとこれを掘り下げて、具体的にどういうような監督方法をとるかということをもう少し具体的にきめて、これを順守させるようにするばかりでなしに、これはもう場合によっては世間に明らかにして、そして定期的にこれを行なっていく、こういうようなことをわれわれはいま考えておりますが、今後これをもっと研究いたしまして、具体的に詳細に規定したいと考えます。
  158. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの私が御質問申し上げたことでございますけれども、通産省合併について、大型合併を非常に推奨なさっておる態度そのことについては、国際競争力を持つということで私は非常にけっこうだと思うのです。ただ一つ欠けておる点は、いま御答弁にもありましたようにその歯どめの構想を早く国民の前に提示すべきだ、それがなければやはり国民は一るの不安を持つであろう。たくさんの会社から寡占になり独占に移行していく、したがって、そのはね返りが国民の上に返ってくる、消費者の上に返ってくる、そういう危惧はみな持っておる。したがって、誠心誠意そういうことのないようにいたしますという具体的な手段を、こういう構想で、こういうことで、こういう歯どめでこうしたいというようなことを、早く国民に、いま御答弁のように知らしていただきたいと思います。これは私の要求でございます。連日の新聞ではもうすでに合併は——これからまた公取委員長に御質問しますけれども、おそらく既定の事実のごとく、なるであろう、おそらくそういう考え方が大勢の考え方じゃないか。この間私は通産省のある人に言ったんですが、公取の意見も出ないときに、いわゆる申請が出たからといって、そういう意味であまりにも合併推進の世論を喚起するような新聞報道は、私は慎むべきじゃないかというようなことまで申し上げたのです。午前中の御答弁を聞いておりますと、公取委員長は現在の段階ではまだ答弁しにくいという時点がある。現在の段階通産省はほとんどの人が、おそらくこれは通産省としては踏み切るんだというような考え方がもうすでに充満しておるということです。この点につきましては、これは青写真が出て、こういうことで、したがって合併は推奨するんだという条件を早く国民の前に提示をして、その不安を一掃するように私は努力をしていただきたいと思います。  次に公取委員長にお尋ねいたしますが、私は、現在のこの日本経済力が非常に進歩してまいりまして、国際競争力を持つ意味でも大型合併ということはいや応なしに進んでまいると思います。これは大かたの方向であろうと思います。この時点をとらえて、公取が、極端にいえば独禁法骨抜きの、なくてもあってもいいじゃないかというような、そういう合併論議がまかり通ってしまっているような、いわゆるこれはひがみかもしれませんが、国民の一人としてそういう考え方を持つのでございます。したがって公取委員長、いわゆる独禁法の番人として少ない数で日夜非常に御苦労なさっておることはわれわれほんとうに感謝申し上げますが、はたしてその機能が、せっかくの歯どめが、通産省もいま申されておりますように、その歯どめができていないというなら——いま歯どめになるのは、いわゆる公取委員長責任の権限にかかったことなんです。したがっていま合併どうこうということは、午前中の質問で私わかりましたので質問いたしませんが、独禁法についてはたして委員長はどう考えておられるか、たとえばこの八幡富士に限らず将来の起こり得る大型合併について、公取委員長立場としてどういうお考えか、基本的な線を聞かしていただきたいと思うのです。
  159. 山田精一

    山田政府委員 大型の合併につきましてもいろいろなケースがございまして、私どもは独禁法第十五条のたてまえから、これを客観的に判断いたしてまいりたいと思います。すなわち言いかえますれば、一定取引分野において競争の実質的制限になりませんものは、これはどんどん認めていくつもりでございますけれども、いやしくも独禁法のねらいといたしまするところの一定取引分野における競争の実質的制限になるような合併は、これは認めるべきでないと考えます。その方向で十分起こってまいります合併のケースは、一般的に申し上げまして、慎重に厳正に判断をいたしてまいりたい、それによって独禁法を適切にまた忠実に運用いたしてまいりたい、かように考えております。
  160. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 公取委員長にいろいろ御質問申し上げたいことがたくさんあるのですが、朝からの質問で、私拝聴しておりまして、それ以上、午前中以上のお話がもう出そうもありませんので、むしろ合併の以後の通産省の指導、そのことのほうが私は現実の問題として非常に重要になってくると思いますので、これは高島局長にお伺いしたいのですが、設備問題ですね。いわゆる企業が将来安定するのにはコスト面だけでは私はだめだと思う。コストと設備ですね。その両面から産業体制を変えていかなければなかなか解決しないと思うのですが、その設備について合併を認めた以後、先ほども御質問しましたが、どういう形で設備調整をするのが一番好ましくて、需給の安定をはかるためにそういう姿がいいだろうか。もちろん私らの調査した結果によりますと、日本企業、少なくともいま合併する八幡にしても富士にしても、諸外国に比べて非常に企業財務が悪うございます。したがいまして、そういうことを国際競争力というなら、そういうことを踏まえた上でどういうふうな指導をしようとしておるか。設備投資がいわゆる資本に対して大き過ぎると思うのです。そこらをどういうふうに調整しようとするか、その基本構想がないと合併についての是非、それを私は語れないと思うのです。したがって、局長のそういう意味のお考えをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  161. 高島節男

    高島政府委員 将来の設備調整あり方でございますが、これは合併問題と必ずしも必然的に一〇〇%結びつくことではないと思います。しかしここに合併ができまして、鉄鋼業界の姿勢も、お互いの間のシェア争いということが、見方によりますが、ある意味では激しくなるという見方もございますけれども、しかしこのトップの企業合併によって、その間における設備についての相互の争いという問題は、ある意味でここで終結することが期待されるのではないか。そういたしますことによって全体のムードがどうなってまいりますかは、まだ予測を許しませんが、若干のそこに調整をいたします際のやりやすさというものは期待をいたしていいのではなかろうかと個人的に考えております。現在の設備調整のやり方は、先生御承知のように産業構造審議会鉄鋼の大手六社の社長もそれぞれ入りまして、これも一つのメンバーになって、そこできめたことに従う、こういう体制になっておりますが、問題の展開の順序としては、やはりその相互の間における自主調整と申しますか、お互いの間の十分議論を尽くした意見の集結によって極力結論をつけたい、こういう努力をしつつ、片方どうしても解決のつかぬ面は、第三者の委員も加えた審議会全体における意見として結論を出していくという方向の努力をいたしておるわけでございます。したがいまして、今回八幡富士合併いたしました際における将来の両者のビヘービアというものは、その間の自主調整をやります場合にも相当合理性が期待されていくのではないかということを一つ念頭に置いておるわけでございます。  さらに合併と直接つながらないと思いますが、日本鉄鋼業は若い新しい設備をどんどんつくっていっているということで、世界各国に相当競争力を誇示しておるのでございますけれども、そうは言うものの、戦前からの設備がかなり今回合併いたします八幡富士等にはございます。他の社にも若干ございますが、そういうものに対しまして今後新しく立地をしてまいります製鉄所との間に一種のリプレースと申しますか、そういう関係が多少出てくるのではないかという時期に入ったと思います。今後の成長度合いがスローダウンし、設備のユニットは大型になってくるという時代の一つの結論として、そういう方向にかなり進んでいく実態が期待されるのではないか合併と直接の関係はありませんが、合併というものは、こういった事態を若干ながらいい方向に持っていってくれるのではないかという個人的な期待を抱いておる次第でございます。
  162. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 日本企業とそれから各国の鉄鋼業のコストの比較、これは「現代の鉄鋼産業」というこの本で私は読んだのですが、これを見てみますと、日本アメリカ、イギリス、西ドィッなんかに比べまして、いま局長の申されますように、企業が若い。設備投資の期間が非常に短うございましたから、企業は技術革新にどんどんついていったということもあります。ありますけれども、何にしても結論的には非常に減価償却費が高いということとそれから金利が高いということ、そのかわり労務費が安い。もう一つは、他の国に比べまして税金が非常に安いということでございます。いわばアメリカなんかの三分の一、西ドイツもやはり三分の一くらい、イギリスでは約半分、ということは、私この表を見て感ずることは、日本鉄鋼業は非常に国際競争力を付与されるように伸びてきましたけれども、税金を総体的に、いわゆる租税特別措置によりまして非常に恩典を受けて、その荷重が少なくて、いわゆる国民の大きな犠牲の上に伸ばしてきた。これは数字のとおりですよ。だからそういうことが言えると思うのです。したがって合併のメリットを考える場合に、企業内のメリットそれだけに重点を置くと、いわゆる国民経済に対してはそれがすなわちデメリットになりはせぬか。将来コストの問題で、先ほどちょっと質問しましたけれども、これは公取委員長にも質問します。合併あるいはそれを許可するかどうかということはこれからの問題でございますので、もしかりに合併されて、いま局長の御答弁のように、非常に設備調整なんかいままでやりにくかったところが、投資単位が一つ減って、リーダーシップをとるようなものが一つふえたことによって楽になる、うまくいくのじゃないかという想像の御答弁ですが、それとうらはらに、先ほども申し上げましたように、将来コストをきめる場合に、あるいはコスト的にもリーダーシップをとれるような形が生まれる。したがって、それがはね返って、国民経済的には消費者が高いものを買わなければいかぬようなそういう形にならないか。将来そういう管理価格が生まれるというようなことは、これは公取委員長立場として、現在の鉄鋼業界公取委の関係でそういう想像はできないでしょうか。そういう想像があり得るでしょうか。
  163. 山田精一

    山田政府委員 鉄鋼の具体的の場合については、まだ調査に着手しておりませんので何とも申し上げかねるわけでございます。ごく抽象的に申し上げさせていただきますが、もしも——これはかりにでございます。一般論としてかりにでございますが、合併をいたしました結果、価格が管理価格化するようなことがございますような場合には、それは認めるべきでない、かように考えております。
  164. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 いまの公取委員長の御答弁で、価格が管理価格になるようだと、認めるべきではないという御答弁ですが、それは合併を認めた以後起こり得ることだと私は思うのです。したがって、それを認めるべきじゃない、合併後のコストを認めるべきじゃないということですか。
  165. 山田精一

    山田政府委員 私が申し上げようといたしましたのは、かりに合併をいたした後において価格が管理価格化するという懸念がございます場合には、合併を認めるべきではなかろう。逆に申し上げますれば、管理価格化しないという保証がございますときにのみ認めるべきであろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  166. 吉田泰造

    ○吉田(泰)委員 時間がございませんので、最後の質問をいたします。  公取委員長の御答弁のように、そういういわゆる厳正な態度でこの合併問題に取り組んでいただきたいと思います。  なお、最後に通産大臣に御質問をいたしますけれども、先ほども御答弁をいただきましたが、この大型合併がどんどん進行していく、国際競争力はどんどんついていく、ただそのことについて将来の国民経済にいわゆる悪い影響、独占的な価格を打ち出さないような通産省の指導要綱といいますか、何によってどうするかということを国民の前に明示をしてもらいたいということが一点と、もう一つはそれ以外の政府のあるいは通産省の行政指導で、国際競争力の付与ということで合併を勧奨されて、そういう形でますます力のついていく会社、だんだん大型化していって、それに残る、いわゆるその選に漏れた会社、あるいはその大型化のために出てくる余波といいますか、そういうものに対する配慮をどうしてやっていこうとしておるか。産業全般に大型化をどんどん進めていく、それ以外のいわゆる漏れた企業に対する指導のあり方、この二点について最後の御質問をしまして私の質問を終わらしていただきます。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどお約束したように、この点は国民の深い関心のあるところだろうと思いますので、これをできるだけ早く具体的に取りまとめまして、そして国民に明示し明確に指示をいたします。なおこれによって行政指導をする、その何と申しますかその指導の内容等もできるだけこれをガラス張りにいたしまして、そしていやしくもそのような点に国民から疑いを持たれない、安心感を与える、こういうことに重点を置いてやってまいりたいと思っております。  それから、これが必ずしもこの際合同、提携等によって特別に行政指導や国際競争力というものを強化する必要のないもの、あるいはまたまだそれが実現しないもの、その他中小の企業等につきましては、それぞれその客観的情勢に応じて国際競争力を強めるということに主眼を置いた行政指導というものを一段と強化してまいりたい、かように考えます。
  168. 小峯柳多

    小峯委員長 岡本富夫君。
  169. 岡本富夫

    岡本(富)委員 最初に独禁法の番人である山田公取委員長にお聞きしたいと思います。  八幡富士、この大型の合併をするにつきまして、この認可にあたってどういう面が障害になるか、これについてひとつ明確なるお答えを願いたいと思ます。
  170. 山田精一

    山田政府委員 当面問題となります可能性のございます鉄鋼二社の件につきましては、午前中も申し上げたのでございますが、私ども公正取引委員会は準司法的機関といたしまして、たとえば悪いかもしれませんが私は裁判長の立場に立つものでございますから、具体的の案件につきましてまだ当事者、関係者の申し分も全然聴取しておりません、また調査もしておりません段階において、予断的な意見というものはぜひ差し控えさせていただきたいとお願いいたす次第でございます。抽象的に申し上げますれば、独禁法の第十五条に規定いたしてありますとおり、一定の取引の分野において競争の実質的制限になるかならないか、この点を十分慎重に厳正に判断をいたしてまいりたい、かような考えでおります。
  171. 岡本富夫

    岡本(富)委員 あなたが新聞に報道されている中で、両社が合併するとそこの生産シェアが三六%近くになる。かつて国会においてあなたが三〇%をこえると警戒ラインである、こういうように発言されたことがありますが、この問題と前に発言された三〇%の警戒ラインとを考えますと、この両社の合併というものはすでにこのシェアにおいてぐあいが悪いという面が一つは出てくるんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  172. 山田精一

    山田政府委員 私、いままでまだ当面問題として取り上げておりませんケースでございますので、粗鋼生産が何%というようなことを申しましたことは全然ございません。それから三〇%云云と申しますのは、これは元の横田委員長時代に参議院の商工委員会において、大体二五%から三〇%前後を一応の基準としまして危険なる線と、こういうふうに御説明をいたしたことがございますので、それを踏襲いたしましたわけでございます。一応危険なる線として以後慎重に検討をいたす、その一つのメルクマールと考えておるわけでございます。
  173. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうしますと、そうしますと、この許可にあたりましては、あなたはちょうど準司法、すなわち裁判長みたいなものであるというお話でありますが、要するに最後の判断を下すのは公取委員会である、こういうように解してよろしいでしょうか、どうですか。
  174. 山田精一

    山田政府委員 そのとおりでございます。行政委員会といたしましての公正取引委員会でございます。
  175. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この問題について、通産大臣、最後の判断を下すのは公取委員会であるということをいま山田委員長が話されましたが、それでよろしゅうございますか、どうですか。
  176. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろんそれでよろしいのであります。
  177. 岡本富夫

    岡本(富)委員 いろいろとこの問題については審議されましたので、私は簡単に、しかも一番大事な面を質問いたしますが、通産大臣は二十二日に中部の産業連盟創立二十周年記念式典に出席されましたか、どうですか。
  178. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 参りました。
  179. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうして名古屋の中区の中日ビルで記者会見をなされた。そのときに八幡富士合併問題について、新聞の報道によると、この「両製鉄の合併は好ましい現状だ。公正取引委員会に文句をいわせないだけの用意と覚悟がある」こういうようにあなたが発表されておりますか、どうですか。
  180. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうことが私の耳に伝わったのですが、ある新聞社では、どうも椎名があんな場所でこんなことを言うはずはない、それで、少しこれは耳のほうがどうかしてやしないかというので問い合わせがございましたから、そのとおりだ、文句を言わせぬなんというそういう意味じゃなしに、この合同によって国民に迷惑をかけるようなことがあっては毛頭ならぬ、そういう点は公取委員会に十分協力して、もうほんとうにガラス張りの中で通産省としての権限において十分な監督をして、さような不安の念を抱かせることのないようにしたいということを言ったにすぎない。文句を言わせぬとかなんとかいう、そういう対立的な観念でものを言った覚えは毛頭ない、そういうことを言いましたところが、ああそうかと言って、その新聞社のほうではちゃんと訂正して、私の意味が伝わるように書いたようでございます。
  181. 岡本富夫

    岡本(富)委員 ちゃんと活字にあなたの記事が出ているわけです。「「八幡富士両製鉄の合併は好ましい現状だ。公正取引委員会に文句をいわせないだけの用意と覚悟がある」と語った。」これはやはりこれらしいことをあなたが言っているんじゃないかと思うのです。いま、そんなことを言った覚えがないというようなお話でありますが、私は、こういう言い方であれば先ほど言ったところの公取の権限をすでに無視してしまった。何か意図があるか、あるいは先ほどからもいろいろと質問があって、まだ十分な調査もできていない、またそれだけの申請も出ていない、こういうような時期に、これはあなたのいまの話では、あるいは新聞記者が間違うたのかわかりませんけれども、もうすでに許可をしていいんだというような権限外の発言をしているところにぼくは問題があると思う。この点どうですか。
  182. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 だから私が申し上げたように、そういう対立感を持ってこの問題を私は考えたことがない。公取委員会というものは、とかくおちいりやすい企業エゴイズムというもの、これを独走させない、そういう趣旨の、これは必要な機関であります。でありますから、そういう公取委員会という名前も私は言ったかどうだかわからぬが、とにかくいやしくも独占力をふるうというような、国民に不安とか疑いを持たせるようなことのないように、もしも実現した後においては、ほんとうにガラス張りであらゆる不安、懸念というものを解消するようにやらせるべきであるということを私自身は考えておる、そういうことを言っているのです。
  183. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうしますと、このときの発言はこれは間違いである、あるいはまたそれに近いようなことを言ったのであればこれは取り消す、こういう意味ですか、どうですか。
  184. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ですから、いま申し上げるように、そういう対立感を持ってものをしゃべった覚えはないから、間違いです、それは。
  185. 岡本富夫

    岡本(富)委員 はっきりとこの記事は間違いである、こういうように訂正なされば、それで了解しておきますが、今後地方へ出たときに放言ということもちょいちょい、ありますけれども、大事なこういう発言であれば、もうすでに八幡富士は合同していいんだというように、もう通産省あるいは政府がきめているというふうに感じられるような発言は、ぼくはいけないと思うのです。  そこで、次に、この大きな企業合同が行なわれた場合に、競争制限によってくるところのコスト高、先ほどからもいろいろと質問されておりましたけれども、大体輸出コストと国内コスト、こういうのがきめられるのが普通なんですが、いままででも私は実際に鉄の問屋さんの話をちょいちょい聞いたし、また、この問題についても問屋さんの話を聞いてみますと、鉄の価格が自由にメーカーでもってきめられる。これでないと売れない、今度はこれになったからと、簡単にメーカーでもってきめてこられるというわけです。上がった場合は、まあ小売り屋さんは、在庫を持っているからそれだけもうかったなんて言っていますけれども、これは今度は消費者に対して困るわけですが、こういうコストに対して、通産省としてそれが適正価格であるかどうか、こういう面に対するところの指導あるいは発言、あるいはそのコストに対して、あまり高くすれば、これは高いじゃないかとか、安くしろとか、こういうような消費者に対する保護はできるかどうか、これについて、これは高島さんにお願いしたいと思います。
  186. 高島節男

    高島政府委員 鉄鋼につきましては、公定価格制、認可制等をとっているわけではございませんから、コストと価格というものをにらみまして公的にきめていくというわけにはまいり得ない体制になっておりますが、たとえば昨年の正月からいまごろにかけまして、御承知のように、価格が非常に暴騰いたしたことがございます。その原因は、先ほどもお答え申し上げましたように、設備需要というものの間のバランスをとることが非常にむずかしい。景気が過熱ぎみになりましたときは、これは非常に高騰をしてまいることになりますので、その際には、各メーカーに対しまして、価格引き下げのために輸入の措置あるいは増産の措置等々を実質的にお話しいたしまして、その結果、相当のところに実効をおさめました。ところが逆にその間に今度は景気の動向が弱い目が出てきて、引き締めが続いて行なわれるということになってまいりますと、また現在のようにどこが適正価格かの判断は非常にむずかしゅうございますが、そのラインを相当に割ったところの一般の値段になってくる、こういうところに価格の変動が非常に激しい波及をするというむしろくせを出しておるように鉄鋼について見ておるわけでございます。したがいまして、これに対して極力現在のような事態に、むしろ暴落し過ぎないよう、あるいは暴騰をするようなことのないようにいたします方法としては、やはり先ほどからいろいろと御議論がありました将来の需要を見越した設備投資あり方、これを景気の予測と同時に的確にとらえまして、適正な設備規模にしていく、そしてその間においての若干のゆれは調整指導によってやっていくという方法をとっていくのが今後の方針ではなかろうか、また現在の制度もおおむねそのラインに沿って努力をいたしているという現状でございます。
  187. 岡本富夫

    岡本(富)委員 いままで富士八幡両社が別々にあったときでも、たとえば薄板あるいはまたいろんなその種類によって操短をしてみたり、あるいはまたそういうような方式によって単価の引き上げがあったり、そういう例をたびたび私は聞いておる。その上に今度は、この両社が合併して大型になりますと、ますますそういう価格の操作というものは一企業で簡単にできるようになってくる。こういう面を考えますと、この合併問題については相当いろいろ条件をつけ、またそれを取り締まる何らかの歯どめと申しますか、措置がないと、これはぼくは危険である、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  188. 高島節男

    高島政府委員 鉄鋼の需給関係は、片方設備を非常に大きくしていく本能がある、それが将来需要となかなかバランスがとれない方向へ行きそうな一般的な可能性があるように思います。したがって、メーカーの恣意によって価格を決定するというような方向は今後とりにくい性格の物資ではなかろうか。どちらかと申しますと、非常に代替性のある品物と申しますか、どこのメーカーがつくっても同じような品物ができてくる品種がわりあいに多うございますので、一般的にはそういう懸念が比較的少ないものではないだろうかという感じを持ちます。ただ、特定の品種によりましては、今度の合併等の場合にも議論されますように、相当シェアを占めるものがございます。こういうものについては、新しく設備をいたしますものに対して、設備調整の場合にそれを優先していくとか、あるいは対外の競争関係を一そう導入いたしまして関税等の措置も考えるとか、そこには現在われわれのとり得る手段は幾多あるかと思います。したがって、今後富士八幡合併ということがもし実現いたしますれば、鉄鋼業界においても非常に大きな変化の招来されることでもございますので、その事態に即応して、設備の面でさらに厳重な将来にわたっての規制を強化いたして努力いたしてまいりますと同時に、価格等においていやしくも硬直的な動きといったようなものがあります場合には、厳重にこれを監視し、また合併の場合のこれは一つの社会的な制約条件といったようなことにもなってまいります。合併をする以上、そういうことはやらぬのだということが、これはまた国民に対する合併当事者の意思でもあるように推察もされますので、そこに依存いたしまして今後の指導を強化していく姿勢でまいりたいと思っております。
  189. 岡本富夫

    岡本(富)委員 この不況カルテルというような、そういうような申請が出た場合、これは公取委員長としてどういうような態度で臨まれますか。
  190. 山田精一

    山田政府委員 先ほども申し上げましたごとく、法律の条項に従いまして十分慎重に、また厳正に制断をいたしましてまいりたい、かように考えます。
  191. 岡本富夫

    岡本(富)委員 いろいろと論議は先ほどの委員の話で大体出尽くしましたけれども、ただ最後に一点、いま高島さんは企業のモラルにずいぶん依存をするような話でありました。今度合併するについては、その面には市場あるいはまた国内に大きな変動がないように気を使ってやりますというような話があったわけでありますけれども、私どもも対外的、要するに外国の資本に対しての対抗策は、これは確かに必要である、こういうように思うのです。しかし、いままで輸出品とそれから国内品とを見ておりますと、国内品は高くて輸出品が非常に安い、輸出の赤を国内でカバーしている、こういうような面が見受けられたわけです。これは鉄鋼品ではありませんけれども、電気製品なんかも、私が事実携わったのだからよくわかっておる。ですから、そういう面の取り締まりも、要するに国内の物価を上げるようなことのないように特にひとつ配慮をしていただきたい。これを最後に通産大臣にお願いして、私の質問を終わりたいと思いますが、どうですか。
  192. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のごとく、国内物価に対しまして悪影響がないということはもちろんのことでありますが、むしろ国内物価を引き下げる、これを契機にいろいろな合理的な運営の改善等もやりやすくなりますので、むしろ積極的に国内物価も下げるというくらいの勢いでやらせるようにいたしたいと思います。
  193. 岡本富夫

    岡本(富)委員 では、時間が参りましたから終わります。
  194. 小峯柳多

    小峯委員長 玉置一徳君。
  195. 玉置一徳

    ○玉置委員 長時間にわたりましたので、簡単に二、三お伺いして終わりたいと思います。  第一点は、八幡富士、その他王子製紙の合併等々ですね。集中排除法ができまして、こういったものを集中排除した、それぞれの企業に分けましたのが再び同じような方向に来ております。もちろん国際間の競争にたえるために企業の合同が望ましいことはよくわかりますが、以前にわざわざそれを分割したときの要因はすでになくなったかどうか、まず第一点、政府当局からどなたでもけっこうですから。
  196. 高島節男

    高島政府委員 集中排除法の適用を受けました企業で、八幡富士があることも事実でございます。一般的に集排法の適用を受けたものがその目的に即してもう今日において必要がないのかという御質問でございます。一般的な話で重工業局長の私からお答えいたすのはちょっといかがかと思いますけれども、集排法の適用がありましたのは昭和二十二年、その後経済の規模は非常に国内的にも拡大をいたしてまいっております。さらに海外の経済においてはいよいよ競争が激しくなってまいっておりまして、その間の経済条件は全く違ってきておって、企業の規模の拡大というものが今後必要な段階に入っているのではないかという一般的なことは御理解いただけるかと思います。  さらにいま一点、集排法のねらいは、いわゆる財閥解体と申しますか、特定の財閥の支配にある企業を解体して、一般民主的な所有に移すという形が一つの目的であったように記憶いたします。その点からいたしますと、今日再び企業体が合併しようとしているものの、株主は一般にこれは散っておりまして、これが散った形でまた統合されるという形になりますから、集排法本来の目的とはもう無関係な段階に入っているのではないか、こんなふうに感じております。
  197. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで大臣にお伺いしたいのですが、国際競争力をつけるために、企業が集中合併いたしまして競争力を強めるということは、貿易立国をたてまえとするわが国の現状におきましては、いろいろな弊害を予想はされますけれども、何人といえどもこれを反対阻止するということは非常に困難な問題じゃないか、こう思われるわけです。そこで三〇%というシェアの問題も、ほぼこの程度なら、率でいけば競争の原理をまずまず残しておけるのじゃないかという一つのめどである、まためどにしかすぎないという言い方もできると思うのです。そこでこの富士八幡製鉄だけの問題じゃなしに、これから自動車産業のごときはもう少し大きな企業力でやらなければいかぬということは、これは政府並びに一般社会の通念にもなっておることも事実であります。そこで、その場合に国民生活その他中小企業ともに、企業独占、寡占の弊害を来たさないようにどうするかということが一番問題でありまして、その点については皆さんからいろいろたくさん質問もありお答えもあったのであります。  そこで私は、企業合同を二つに分けてみたいと思うのです。たとえば、ある財閥系ということは悪い意味で言うのじゃございませんけれども、企業力を強めるために重化学と鉄鋼とその他のものが一緒に寄るというような合併の場合がここに間間見受けられます。これが第一点。それからいまの鉄鋼の二つとかあるいは自動車産業の場合とかいう場合と二つが見得ると思うのですが、その二つの場合に、その三〇%というものをたとえばどういうように考えいかなければならないか、これはちょっと考えるべき要点じゃないか、こう思うのです。これにつきまして、ひとつ大臣からお答えをいただきたいと思います。
  198. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 二つにお分けになったというねらいは、鉄なら鉄という同種の合同の場合と、それからそうではなくて、資本合同という意味において重化学工業も一緒くたにする、こういう場合と、この二つの場合でございますか。——よく異種の企業合同というものはアメリカあたりにおいてはもう非常に広く行なわれておるようでございます。特別の機械工業がとんでもない観光事業なんかと合同するとか、そういったようなことがございますが、これはこれでやはり経営力と申しますか資本力と申しますか、そういう点におもに重点を置く、あるいは人材という点があるかもしれません。そういうような点で、合同してお互いに助け合う、協力し合うという点に相当なうま味があるからああいうふうに広く行なわれるのではないかと思いますが、日本ではあまりどうも、ないことはないけれども、そうたくさんない。合同の形でそういうふうにでき上がるのではなくて、ある企業の主宰者が、まあ現金収入を、プラント輸出などまでやっていると企業のその日の小づかいに困る、そういうような関係で観光会社なんかを兼営したり何かしているのはありますけれども、合同によってそういう形ができ上がっている例を私は寡聞にしてあまり存じません。主として日本では、どっちかというと同じ種類あるいは原料と製品、そういったような縦の関係においてあるいは横の関係において共通性があるというような場合が多いのではないかと思われますが、この前者のほうは実際のわれわれの行政面にあらわれておりませんので、あまりその区別を明確につかんでおりません。
  199. 玉置一徳

    ○玉置委員 公取委員長にお伺いします。  いずれにしましても、企業の集中合併というものは寡占体制にならぬかどうかということと、過去のイメージの財閥の復興という感じもせぬでもございません。したがって、いま二つに分けました質問がちょっとまずうございましたが、企業集中という形で、金融機関を中心にしましたような旧三井系、旧三菱系の合併のようなものが企業を強くする意味で行なわれております。これは企業を強くする意味であります。片方のいまの八幡製鉄とかは、企業を強くすることもありますけれども、当面世界の競争力にたえていき、生き延びていき、勝ち抜くためにやる合併で、これは若干のニュアンスの違いがあり得ると思います。われわれは間々昔の旧財閥の復興のような巨大資本の集合体という感じも持つのですが、そういう二つの点に対して公取としては、こちらに対してはどういう考え方、こちらに対してはどういう考え方、何かの差異を持って今後お考え、お取り扱いになるかどうかをお伺いしたい。
  200. 山田精一

    山田政府委員 異種の企業合併をいたします場合、たとえば、お尋ねの趣旨は、造船会社と車両会社とが合併をいたすというような場合かと存じますが、かような場合については、その商品についてのシェアの増大ということは直ちには起こらないわけでございます。したがいまして、御指摘のございましたような資本力の強大化によるところの市場支配力が出てこないかどうかという点で、十分調査をいたす必要があろうかと考えます。同じ品種の、同じ製鉄会社同士合併という場合には直ちにシェアの拡大が出てくるわけでございまして、この点をまず優先的に考え、そのほかの条件をあわせ考えまして、やはり市場の支配が起こるか起こらないか、この点で考えていく必要があると存じます。やや角度は違いますけれども、突き詰めましたところは、やはり一定の取引市場における競争の実質的制限になるかならないか、これに尽きるかと思うのでございます。
  201. 玉置一徳

    ○玉置委員 もう一点は、この合併につきまして、公取委員会が事前の審査として十分な調査をされると同時に、事後の監視も十分に通産省公取でやっていただかなければいかぬことは、いままで質問が多く集中したと思います。  そこでまず、公取の事前審査の場合に、残ります五社と申しますか六社と申しますか、この方々の意見を十分に聴取をしていただきたい。その場合に、ややともすると法律的に何かこれをチェックする方法がないかということが問題になりますけれども、また一方聞きますと、二つが一緒になったって十分に勝負ができる、だから役所が変にいらわないでほしい、そしてほんとうに公正な競争をさしてくれというような意見もあるやに聞きます。これをどういうふうに評価されるか。  第二点は、平炉その他の中小企業がこの大合併影響をどうこうむるか。いまのままで、八十幾社をほうっておいていいのかどうか。あるいは逆に、自動車産業その他、製品をうんと使わなければならない人々がこれによってどういう不利益をこうむるおそれがあるかという心配、そういったものを調査されることによって適切な措置を講ずべきであると思うのですが、この二点について公取委員長お答えをいただきたい。
  202. 山田精一

    山田政府委員 かりにそういうようなことが起こってまいりました場合には、ただいま御指摘競争関係にあるところの同業者、またその商品を需要いたしますところの業者、それからさらに一般の消費者あるいは学識経験者等の御意見を十分拝聴いたしました上で判断をいたすことにいたしたいと思います。
  203. 玉置一徳

    ○玉置委員 その事後の監視をきびしくしていきます、行政指導をいたしますというようなこともいろいろありますが、そのことは実際はよっぽどの場合でないと、なかなか困難ではないかと私は思います。それよりはむしろ経済企画庁あたりの国民生活の保護の立場から、こういう問題だけではなくて、合併したものをどうという意味じゃなしに、合併しない場合にも、常時国民生活を保護し中小企業を保護するような立場からの法的整備あるいは権限の付与、こういうものが必要じゃないだろうかと思うのです。公取のほうももう少し整備強化ができるような法的措置、定員の増がないと、いまのままではお気の毒に、こまかいところまで手を回すことができずに、その年その年の最も当面の緊急課題であると思われる重点項目について手を触れておいでになるのだろうと私は理解します。こういう意味におきまして、通産省においては一体どういう行政指導ができ得るのか。もしもやらなければならない必要があれば、どういうようにされるのか。その次は、公取としては何らかの法的措置もしくはその他の十分な措置をするのにはどういうことをやろうと思われるか。それについてはどれだけの整備が必要と思われるか。公取委員長並びに通産大臣からお答えをいただきたいと思うのです。
  204. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事後の問題は、これから十分に具体的に研究を進めてまいりたいと思いますが、いやしくも国民から、あるいは世間から、独占権の上にあぐらをかいて企業エゴイズムをたくましくするというような疑いをかけられることは毛頭ないようにしなければいかぬと思います。  事前の問題について、ちょっと聞き漏らしましたが、これは消費行政をもっと強化するとか、あるいは中小企業の育成、助成をもっと強化するということであろうと思いますが、これはしばしば申し上げているとおりでありますので、一応省略さしていただきます。
  205. 山田精一

    山田政府委員 八幡富士の問題につきましては、これは仮定の問題でございますから、お答えを控えたいと思いますが、過去において合併をいたしました会社についての例を申し上げますと、やはり私どもの役所といたしましては、それが独占禁止法に触れるような行為をするかしないかを監視をいたしていく、こういうところに限られると思います。その方面にまた努力をいたしておるわけでございます。  お説のとおり、人手が非常に少ないのでございますが、私どもといたしましては、少ないなりに全力をあげて取り組んでおるのでございまして、今後これは相当充実していかなければなるまい、かように考えておるわけでございます。
  206. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後に通産大臣にお伺いしたいのですが、先般倒産の問題が出ておりました大谷重工業の問題はどうなっておるか。これについてもし万一のことがあった場合に、関連産業をどのようにして守るという具体的な決意があるかどうか。第三点、同じ問題でありますが、私の心配しておりますのは、先ほど申し上げましたように、八幡富士合併いたします、寡占体制ができます。それでどうという問題よりは、平炉その他の中小企業の育成強化をして、このごつくなった巨大な高炉の御連中と伍して、それはそれなりの公正な競争ができ得るように手を入れなければいかぬのじゃないだろうかという問題から関連いたしまして、たとえば八幡がその大谷を系列において一つのてこを入れるといたしましょう。そうしますと、八十数社の平炉の中において、そういった巨大な企業の系列に入ったものはようございますが、残りのものとの公正な競争はどうするのかという問題が出てくると思うのです。そういう意味では、よほど気をつけないと、この六社なり五社なりがそれぞれそういったところを系列化しだしますと、系列に入り得ないものは落後せざるを得ないのじゃないだろうか。これのほうにも寡占の心配を私はするのです。こういう問題につきまして大臣からお答えをいただき、補足する必要があれば、公取委員長から補足をお願いできればと思います。
  207. 高島節男

    高島政府委員 大谷重工業問題の経過を私から申し上げまして、大臣からあとお答えをいただくようにいたします。  大谷重工業は、今般その経営自体がかなり悪化いたしまして、これは確かに現在の平電炉業者生産いたしております小棒あるいは形鋼その他の品種、さらにまた厚板、そういうものが非常に悪いということも影響をいたしておりますが、企業自体の経営に遺憾ながら相当思わしくない点があったということが原因となりまして、相当危機に瀕した状態になりましたわけでございます。その際通産省といたしましては、いよいよこれがいけなくなりますれば、先般立法されました、倒産関係の関連の企業の救済を保険によってやっていく制度等の指定の用意をいたしておりましたが、まず第一には、何とかそういった事態を回避いたしまして、影響の少ないようにいたしませんと、関連の担保の債権者等々、中小企業が多うございます。そういった方面への影響を回避したいということで、大臣の御指示に基づきまして、まず関係の商社、それから当然でありますが銀行、そういう方面に懇請をいたしまして、現在八幡製鉄の稲山社長が本件について建て直しを考えられまして、銀行あるいは商社筋と御折衝中でございます。本日は朝から委員会に入っておりまして、こまかい様子はわかりませんが、どうやら大筋についてのある了解点に達したもののごとく見えまして、先刻新聞にもその旨がどうも発表されたらしい様子でございます。私ずっとこの委員会におりまして間接の連絡を受けましたので確信を持ちませんが、どうにか安定をしてくるのではないかと思っております。ただ、こういった形でやってまいりますのがいいのかどうかということでございます。ことに他事業者に対しての影響、系列化というような点について若干御説明をいたしますと、平電炉業者生産中心は、小棒、厚板、形鋼という辺にあるかと思います。その中でローカル需要の多い小棒というものに特化していくことが平電炉業界全体の一つの行き方ではなかろうか。そして、現在古い設備でやっております厚板等からは、漸次撤退をしていくというのが合理的な姿勢であるかと思います。大谷においては、この方向に向かうことをちゅうちょをしたために今日の事態を招いたのではないかと思いますが、かえってほかの中小メーカーのほうはそのあたりの動きもございまして、現在苦しい中でも経営の維持に必死になっておるという状態でございます。ある程度の系列化ということは、これはいろいろその企業の性格にもよりますが、やむを得ない面も多分に出てくる。しかしその分野は、小棒を中心にローカル需要をまかなう方向で確立されていくというのが今後の平電炉業界の進み方ではないかと思いまして、鉄鋼部会に平電炉小委員会というものを設けまして、学識経験者の御意見も徴し、関係業界の意見も十分に徴して、目下対案を進めておる状況にございます。
  208. 小峯柳多

    小峯委員長 通産大臣、何か補うことがございますか。通産大臣
  209. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま高島局長から申し上げたとおりの経過でございますが、大体峠は越したとは言えないが、越す可能性が見えてきたと申し上げてもよろしいのではないか。ただしかし、万一の場合を考慮いたしまして、かねてから関連の中小企業をよく調べまして、商社なり金融機関なりにこれを通告をいたしまして、そしていよいよ事ある場合には、手おくれにならないように金融的救済の手段を講ずる、こういう準備をしております。
  210. 山田精一

    山田政府委員 大谷重工関係につきましては、二つの点で、一つは下請の関係、第二の点につきましては御指摘の系列化の問題につきまして、独禁法に触れることのないように十分監視をしてまいりたいと思います。
  211. 玉置一徳

    ○玉置委員 宮澤さんがおいでになったから一言何か言うておかないと申しわけないと思いますので、一言お伺いしておきます。  先ほども申し上げましたが、国際経済の動向を考えまして、国際競争力に耐えるだけの企業集中はやむを得ない措置だというのが大体の認めるところだと思います。そこで、その他の寡占体制の悪いところをどうチェックするかが皆さんの議論の中心でありますが、これもなかなかむずかしいことでもあります。そこで問題は、中小企業やあるいは関連の諸企業をどう具体的に守るかということにひとつ徹底的に御勉強いただきたいわけでありますが、もう一つこの際お伺いしておきたいのですが、この際中小企業を守る、ことに私なんかよくこのごろ感じますのは、中堅企業を育成する施策が日本の金融機関その他に乏しい。五千万円までという中小企業金融公庫なんかのあれは五、六年前の金額であって、いま一番大事な自動車産業その他の部品産業なんかに開銀融資があまりにも行き渡っていない。先ほども申し上げておったのですが、平炉その他の産業をどうするということのほうがいま非常に大切なことであって、大企業そのものはそれなりの競争をやっていくのですが、これはまたどこかでチェックをしてもらうようにしますけれども、平炉産業その他の中小企業、あるいはこれに関連するものがしわ寄せを食らわないように、いろいろな施策を思い切ってこの際やるように心がけていただきたい。同時に、そういった中堅企業を育成するための諸施策が政府に足りない。ただいま申し上げました金融にしろ、五千万円ストップで、あとは開銀だ。こういう巨大産業の合併通産省も非常に望ましいと見ておることをとやかく非難するわけじゃありませんけれども、えてして大企業のほうに力を入れ過ぎるということを言われるきらいもあると思いますので、こういう機会に中小企業並びに中堅企業の育成に、政府は思い切って姿勢を正していただきたいと思うのですが、ひとつあなたのお立場からの決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに私は一つのポイントだと思います。中小企業にもたいへん問題がございます。これについては国会でもしばしば御議論があって、私どもも及ばずながらかなり金融サイドなんかは整ってきたと思いますが、いわゆる中堅企業というものが、どうもいままであまり議論の対象になっていないわけでございます。ことに両面から問題があると思いますが、企業自身がしばしば同族的であったりする場合には、これはやはり経営の方針の問題に関係がございます。やはりこれは強制するわけにはまいりませんけれども、よその血液も経営の中に入れていくというようなことが必要な場合が間々あるのではないか、こういう問題が一つ。それから金融面で確かに開銀にもはまらないし、しかし、そうかといって中小企業金融公庫でもないというところがちょうどその途中あたりにございまして、これは業種によっては、その業種としての育成の補助金などがある場合もございますが、一般的な金融はどうもちょっと及びにくい。開銀の地方融資というものがわりかた有効なときがございますけれども、確かにいままであまりやらなかった問題でありますけれども、これからいろいろな問題になってくると思いますので、それらの点についても十分これから施策を配慮していかなければならないと思っております。
  213. 玉置一徳

    ○玉置委員 開放体制下に自動車産業その他大企業だけやりましても御承知のとおり部品工業が、六割くらいがその中に占めておるわけです。その部品工業が弱いということが、日本の自動車産業なら自動車産業のやっぱり弱さじゃないか。だからその企業だけが切り離して強くなることだけじゃなしに、それと同格にその関連産業を育成しなければ、先ほど申しました寡占の悪さの、親がますます太くなりますから相対的に子供が弱くなるということは言い得ると思うのです。どうぞひとつ、集中合併なんかの場合には、こういうことも通産省なり政府当局がお考えいただいて、全部同じような強さにしなければ、弊害のほうが出やすいという点だけは、ひとつ十分御注意をいただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  214. 小峯柳多

    小峯委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、明後二十六日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会