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1968-04-17 第58回国会 衆議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十七日(水曜日)委員長の指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  産業構造並びに貿易対策に関する小委員       海部 俊樹君    坂本三十次君       塩谷 一夫君    田中 榮一君       丹羽 久章君    橋口  隆君       中村 重光君    永井勝次郎君       堀  昌雄君    玉置 一徳君       近江巳記夫君  産業構造並びに貿易対策に関す  る小委員長          海部 俊樹君  産業金融に関する小委員       天野 公義君    宇野 宗佑君       内田 常雄君    岡本  茂君       櫻内 義雄君    武藤 嘉文君       佐野  進君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    塚本 三郎君       岡本 富夫君  産業金融に関する小委員長   宇野 宗佑君  鉱業政策に関する小委員       鴨田 宗一君   小宮山重四郎君       始関 伊平君    島村 一郎君       田中 六助君    中川 俊思君       岡田 利春君    多賀谷真稔君       古川 喜一君    吉田 泰造君       近江巳記夫君  鉱業政策に関する小委員長   鴨田 宗一君 ————————————————————— 昭和四十三年四月十七日(水曜日)     午後一時三十一分開議  出席委員    委員長 小峯 柳多君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 鴨田 宗一君 理事 島村 一郎君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    小笠 公韶君       大橋 武夫君    岡本  茂君       海部 俊樹君   小宮山重四郎君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       始関 伊平君    塩谷 一夫君       田中 六助君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    久保田鶴松君       佐野  進君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    古川 喜一君       三宅 正一君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    岡本 富夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君  委員外出席者         通商産業大臣官         房審議官    楠岡  豪君         参  考  人         (鐘渕紡績株式         会社社長)   武藤 絲治君         参  考  人         (旭化成工業株         式会社社長)  宮崎  輝君         参  考  人         (貿易研修セン         ター理事長)  堀江 薫雄君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 四月十六日  北海道地下資源開発株式会社労働者の処遇に  関する請願淡谷悠藏紹介)(第四〇一六  号)  同(加藤勘十君紹介)(第四〇一七号)  同(川村継義紹介)(第四〇一八号)  同(久保田鶴松紹介)(第四〇一九号)  同(河野密紹介)(第四〇二〇号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第四〇二一号)  同(島本虎三紹介)(第四〇二二号)  同(中井徳次郎紹介)(第四〇二三号)  同(中嶋英夫紹介)(第四〇二四号)  同(中村重光紹介)(第四〇二五号)  同(芳賀貢紹介)(第四〇二六号)  同(長谷川正三紹介)(第四〇二七号)  同(松前重義紹介)(第四〇二八号)  同(森義視紹介)(第四〇二九号)  同(柳田秀一紹介)(第四〇三〇号)  同(山本弥之助紹介)(第四〇三一号)  同(安井吉典紹介)(第四一二三号)  化粧品再販契約制度に関する請願谷口善太  郎君紹介)(第四〇三号)  同(小川半次紹介)(第四〇三三号)  同(大村襄治紹介)(第四〇五六号)  同外一件(亀山孝一紹介)(第四〇八四号)  同(細田吉藏紹介)(第四〇八五号)  同(愛知揆一君紹介)(第四一二〇号)  韓国しぼり帯揚製品輸入禁止に関する請願  (小川半次紹介)(第四一二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件(激動する現下  の国際情勢に対応する産業貿易進路に関する  問題)      ————◇—————
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  本日の議事に関し、参考人として鐘渕紡績株式会社社長武藤綜治君旭化成工業株式会社社長宮崎輝君、貿易研修センター理事長堀江薫雄君、以上三名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用の中を本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとう存じます。  本日は、激動する現下国際情勢に対応する産業貿易の新しい進路について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りたいと存じます。  なお、御意見開陳はおおむね一人十分程度におおさめ願うようにお願い申し上げます。御意見開陳あと、各委員からの質疑がありますので、御了承願いたいと存じます。  それでは、まず武藤参考人にお願い申し上げます。
  3. 武藤絲治

    武藤参考人 本日、わが国の国政に携わっておられる皆さまの前で私のような者がお話をしますことは器でないと思いますが、いささか繊維企業経営の経験に基づきまして所見の一端を申し上げまして、皆さまの御教示を仰ぎたいと存じます。何ぶん時間がわずかのことでございますので、まず大ざっぱな結論を申し上げて、後ほど持たれます質疑応答におきまして、必要あらばまたお話をさしていただきたいと存じます。  さて、産業貿易は、世界各国にとりまして、非常にむずかしい問題になってきておりますが、特に、わが日本におきましては、資源がほとんどなく、外国から原料を輸入いたしまして、それを加工して輸出しなければわが国経済は成り立たないというこの国の体質と申しましょうか、条件と申しますか、そういう国柄でありますから、輸出わが国にとりまして死活にかかわる国の根本問題でございます。  ところが、現在わが国では、いろいろの原因がありましょうが、根本は、国際競争力低下しているため、この重要な輸出が伸び悩んでいると私は考えるのでございます。  そこで、どうすれば輸出を伸ばすことができるかということになりますが、とかく輸出といえば、相手国の事情を問題にするのでございますが、私はむしろ問題は、国の外にあるのではなく、国の内にあるのだと考えておるのでございます。つまり輸出を伸ばし得る体制と申しますか、環境と申しますかができ上がっておるかどうかということがこの輸出振興の最も重要な基盤になると思うのでございます。  この体制とか環境を築き上げるためにはいかにすべきかということがまず根本であり、先決問題であると存ずるのでございます。貿易も平たく申せば一つの商売でございますから、輸出をすることによって利益が上がらなければその貿易は成り立たないのでございます。  そこで、利益を上げるために考えられることは、コストすなわち生産費国際的に見て競争し得るものでなければならないということになりますが、わが国におきましては、個々の製品ではいろいろ相違はございますが、全般的に見まして、国際的に見まして、コストが年々高くなりつつあることはまことに私は憂慮すべき問題であると存ずるのでございます。このコストの点におきまして国際競争に打ち勝たなければ、わが国輸出は決して伸びないばかりか、ひいてはわが国経済の破綻を来たすことも明らかでございます。したがいまして、このコストをいかにすれば国際的に見て低くすることができるかを十分に検討し、輸出振興に役立ち得る輸出体制の確立が現下の最大にしてまた最も重要な問題であると私は確信をいたします。  そこで、このコスト国際的に見て何ゆえに高くなっておるかという原因には、国内のインフレーションがございます。最近、西ドイツ経済省から過去十年間の各国生計費が発表されておりますが、その統計を見ますと、最も高くなっておるのは日本でございます。それは五三・九%の騰貴でございます。ポンド危機に悩んでおる英国ですら三二・七%でございます。また西ドイツは二六・一%でございます。それから米国がそのうちで最も低く、一八・七%しか上がっておりません。これらの数字によりましても、日本がいかに強いインフレーションを起こしたかということがわかるのでございまして、昨今、円の切り下げなどといわれるようなデマと申しますか、うわさが出ておるのも、こういう数字背景になっておるのではないかと推測されるわけでございます。  このインフレーションが、海外からの大きな借金によりまして火消し役をつとめてもらったにもかかわらず、このような大きい生計費騰貴を起こしておるわけであります。これがコスト上昇を来たした大きな原因一つになっておると私は考えます。  かつては世界に輝かしい輸出実績を誇りましたわが国綿製品輸出が、国際競争力低下をいたしまして振わなくなったのも、コスト高が大きな原因になっておると思います。五年前に十四億平方ヤールの綿織物を輸出したのでございますが、昨年はそれが九億六千万平方ヤールに減少いたしまして、価格で競争できない部分わが国紡織業の持つ高度な技術によってかろうじて補っているというのが現況でございます。もっともこの綿製品輸出不振の背景といたしましては、御承知後進国綿紡績の興隆が大きな原因であることは否定はできませんが、それに次いで大きな原因は、先ほど申し上げたこのインフレーションによってコスト国際水準よりか高くなっていることでありまして、これによって国際競争力低下したためと考えられるのでございます。  このように、このインフレーションが進行いたしますと、輸出は救うことのできない状態におちいるのでございます。したがって、通貨価値の安定する方向に大転換をしなければならない時期が来ておると私は考えるのでございます。  戦時、戦後の統制時代を経まして、コストマインドと申しますか、コストに対する意識が以前よりは非常に薄らいできておるのではないかと見受けられるのでございます。またエクスポートマインド輸出につきましての意識も、そういう関係で、以前から見ると非常に薄らいできておるのではないかと思うのでございます。さらに産業経済の見方も、国際経済の中における日本というよりも、日本の国内的な観点から事物を考えやすい傾向が強くなっているように思われるのでございます。今後、日本産業貿易振興にあたりましては、具体的な問題もさることながら、ちょうど時計のぜんまいのように、この隠れた部分に動くマインドの目に見えない問題も大きな問題であって、私はこういう問題も十分検討しなければならぬのではないかと愚考する次第でございます。  最近、輸出振興のために企業に一定の輸出責任を持たせるとか、産業別輸出責任制度をつくるとかいう話を聞くのでございますが、そういうことのできるのは保護産業だけが可能でございます。御承知のように、関税あるいは金融保護を受けない、保護産業以外の産業内地需要によって大きな利益を上げることはできないのでございます。つまり国際価格に引き寄せられる性質のもの、すなわち常に国際競争を受けているものは、内地価格が高くなれば、たとえば昨今のように、わが綿業国において綿糸輸入が盛んになるというような現象が起こるのでございます。すなわち、昨年の綿糸輸入は、その輸出よりも約四千トンも多くなっており、そのほとんどがパキスタンの綿糸でございます。かつて外貨獲得に寄与しましたわが国綿製品輸出はその本来の姿を失い、綿糸におきましては輸出国から輸入国に転落するというような全く憂うべき事態に立ち至っているのが現実の事実でございます。したがって、輸出責任を持たせる義務輸出保護産業にとっては苦痛ではありませんが、一般産業は必ずしもこれと同列に考えることは非常に間違った考え方じゃないかと私は思います。  さて次に、国際競争力低下につきまして考慮すべきものに労働力に関する問題がございます。これはわが国全体から見ましても大きな問題でございまして、特に最近生産業における労力不足コストアップにも影響しておるのでございます。この現象物心両面原因があると考えられます。特に昨今、昭和元禄といわれる消費景気が起こっておりますが、この消費景気は長年のインフレーションの結果でもあると考えられます。この消費レジャーブームは、わが国労力を必要以上に消費レジャーの面に誘導し、また働く人々もこの方面を好んで就職する傾向が顕著であると思われるのでございます。特に中小企業におきましては、労力不足による生産量低下とともに賃金上昇によって利潤はますます失われつつあるような現況でございます。  中小企業わが国輸出の中に占める割合はまことに大きいのでございます。たとえば合成繊維にいたしましても、その原糸あるいは綿は大企業によって生産されますが、その綿や原糸紡績や織布の段階におきましては大部分中小企業において生産されるのでございます。最近の中小企業大量倒産わが国産業貿易における重大な問題になってきておると考えるのでございます。  このほか、わが国で行なわれております米価をはじめ公定及び準公定または管理価格を毎年引き上げるやり方とか赤字公債発行は、いずれもインフレーション抑制の見地から十分検討さるべき問題じゃないかと考えるのでございます。  今日の経済不安、国際収支の不安、社会不安、国民生活の不安をもたらしたインフレーションの弊害を除去するために、いまこそ合理的な計画に基づく総合政策を実施すべきであると考えるのでございます。もちろん、いま直ちに急激な政策の変更はすべきではありませんが、少なくとも現在以上のインフレーションを起こさぬようにいろいろな対策を打つべき時期ではないかと考えるのであります。  いずれにいたしましても、この際総合的対策によりまして長期的に通貨価値を安定さすことが、私は貿易振興の最も基本問題と考えております。物価賃金政策もその一つでございますが、この政策は単独に実施いたしましても効果がないことはすでに実証されております。  最近のロンドン・タイムズの社説で論じられておることでございますが、英国所得政策、すなわち物価賃金政策は取り締まりだけでは成功しないといわれており、国民のコンフィデンス、つまり英国経済の回復に対する信頼感英国民が持つように考えなり気風が変わらなければ有効でないと論じておるのでございます。日本についていえば、昭和元禄というような一般気風を変えてしまわなければだめだということになるかとも考えられるのでございます。こういう問題は、為政者の指導と、教育やまた一般国民の努力によらなければ解決できない問題であると考えるのでございます。  いま一部でいわれておりますように、少し引き締めれば景気もあまり悪くならずに再び好景気がくるというような安易な考え方は非常に危険であると考えるのでございます。いずれにいたしましても、今日まで進んだ不安な状況を安定させるためには、大きな困難と戦う勇気と忍耐が必要でございます。  この際、為政者の奮起と決意と、国民全体の自覚と力強い協力によりまして輸出体制を強化し、国際競争力を涵養して、わが国産業貿易に新しい時代を築き上げていかねばならない事態に直面していると確信をいたす次第であります。  まことに簡単でありますが、以上、私の卑見を申し述べた次第でございます。(拍手)
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、宮崎参考人にお願い申し上げます。
  5. 宮崎輝

    宮崎参考人 時間がありませんので、それではさっそく私の意見を述べさしていただきます。原稿を用意しませんで単にメモでございますので、はなはだことばが十分でないかと思いますが、よろしくお許しをいただきます。私は武藤さんのお説にダブらないような範囲で申し上げたい。  まず第一点は、通商政策をぜひ確立していただきたいということであります。と申しますのは、最近問題になっておりますように、サーチャージの問題であるとか、あるいはクォータ制の問題がございますが、クォータ制といえどもLTAというような国際間の協定を結ぶという方法と、輸入自体を制限する方法と両方考えておられるのですが、鉄については後者のほうをとろうとしております。しかし繊維については、ただいまお話がございましたようにLTAができておりますから、羊毛及び加工製品につきましても綿のような協定を結びたいとして、いまホーリングス法案両院協議会にかかっておるような次第でございますが、こういう事態に直面いたしまして、私どもはこの間アメリカに行って——日本実業人アメリカの行政府なりアメリカの国会の人に陳情に行くなどということは、ないそうです。まことにどうもあなた方は占領ぼけしているということを、あとで私は個人的に会ったときに言われたのであります。こういうことも私どもとしては万やむを得ないと思って実はやってきたわけでございますが、非常に感じますことは、特にアメリカのものの考え方というのは非常にドライでありまして、これは今度のベトナム戦争に対するジョンソンの打ち出し方を見てもおわかりになりますように、ナショナルインタレストを考える場合においては、もうもろもろの小さな問題に拘泥しません。断固として彼らはやるわけです。その点は輸入制限の問題なりサーチャージの問題につきましても、要するにアメリカを説得する方法は、何か与えることだ。利益を与えるからやめてくれと言うか、そうでなければ、おまえはそういうことをしたらこういうふうに損するぞ、だからやめなさいと言うしかないわけですね。私どもが何も武器を持たないで陳情に行って、頼みますというのでは、通らないのですよ、アメリカという国は。  そこでお願いしたいことは、通商政策の国としての一貫性でございます。きょうは商工委員会でございますから通産省の方は十分おわかりと思いますけれども、外務省はもちろんですが、通産、農林、大蔵、こういう各方面に問題がわたっておるわけですね。通産省でいろいろと御苦心になりましても、たとえば日本穀物を十一億ドルアメリカから買っておる。アメリカ穀物の団体とも会ったのですが、彼らは日本に対して、そういうサーチャージその他に対して一番懸念を抱いておる人たちでございます。今度フリーマンが来たのもそういうわけでございますが、この人たちが、大豆たばこを非常に日本よけいに売っているわけです。たばこ日本消費の六割売っているそうです。六千万ドルになるそうですが、この人たちに対してわれわれがかりに——大豆アメリカから二億二千万ドルも輸入しておりますが、一億ドルどこかから買う。中共のほうはLT貿易で今度大豆が問題になって、結局は中共は売ってくれなかったそうでありますけれども、かりに一億ドル実際の輸入をわれわれは減らすのだ。たばこ中共でも最近できておりまして、私たちも肥料を売っておりますからよくわかりますが、そういうものをわれわれは現実に減らすのだということになりますと、これは農林省の所管になるわけです。農林省人たちに言わせますと、何といってもアメリカの物は買いやすいのだ、またトランスポーテーションもいいのだ、こういうように考えられるのは当然でありますけれども、私は、そういう意味では通産省だけの問題ではなしに、農林省もひとつ考えていただく、そういう総合的な施策をお願いしたい。  それから最後に、輸出がもうかる輸出であるというために、たとえばボーダー・タックス制度をヨーロッパはとっておる。日本はない。いろいろな制度、たとえば項目は六つばかりございますけれども、われわれとしてはほとんどメリットを感ずるような制度はないわけです。それは結局は税制そのものを考え直すという問題もありますけれども、そういう基本的な問題もございますが、やはり金の問題になるのですが、そこへいきますと、大蔵委員会は、おそらく大蔵省の味方で、金を渋いほうへ渋いほうへと御賛成になるのじゃないかと思いますが、そういう意味で、今度の問題をほんとう閣僚会議あたりで取り上げたのだろうか。何回も議論して、たとえばケネディラウンドを繰り上げ実施するということを英国が言い出してから日本も言い出したわけです。あれは日本が前に言えばもっと効果があった。しかもアメリカ関税法四百二十条を撤去してくれという希望条件のようなものを出したのですが、あれは私から言わせますと、はなはだ常識に合わない。EECASP制を廃止してくれということは、当時ケネディラウンドが妥結したときに条件がついていた。これはわかる。しかもASPと四百二十条とは根本的にアメリカ関税法上のウェートが違うわけですから、四百二十条の廃止をしてくれるということは非常にありがたいのであって、これは私自身が被害を受けているからよくわかりますが、しかし、それは不可能な条件ではないか。そういうことをほんとう日本国家全体として、あるいはEECとの関連において、総合的に考えられた上でああいう案が出たのであろうか。しかもタイミングがどうであろうかという点について、そういうような国全体としての、単なる行政の場でなしに政治の場で通商問題をぜひお取り上げいただきたいということを考える次第でございます。  それから第二は、こういうことに関連いたしますが、結局通商問題というのは相互性でございまして、今度私どもが非常に言われましたのは、日本はいわゆるネガチブ品目が非常に多過ぎる。これはファウラー財務長官に言われたのですが、なるほど調べてみますと、百六十五ぐらいあるそうです。そのうち四十三はガットで認められておるそうですから百二十二になるわけですが、内容を見てみますとそうたいした品目ではないが、項目だけは非常によけいに見えるのです。七面鳥まであげておるそうじゃないかと言われたのですが、日本七面鳥は食わないのですよと言うたわけです。帰って調べましたら、七面鳥だけは幸いに削除されているそうですが、そういうように項目ばかり多くてあまり実効がないものが多いということは、われわれにすぐアイテムだけ拾って言われるわけです。ですから、こういう点をひとつぜひ総合的に考えていただきたい。特に自動車の問題が非常にいまは問題でございまして、実は昨晩も、いまアメリカから議員の諸公が見えておりまして、パーティーがございましたが、異口同音に言いますのは自動車の問題でございます。一方交通じゃないかということが言われておりますが、これも自動車立場はわかります。単なるタイムテーブルの問題にすぎないのであります。決して日本政府がやらないとは言ってないのだということをわれわれは繰り返し言ってきたのですが、常にこのことが言われます。もちろん日本アメリカ国力の差というものがございまして、私はミルズ委員長に会いましたときに申し上げたのは、ゴルフでもハンディがあるじゃないか、日本アメリカは十対一以上の力の差があるのだから、同じことをやれと言われても無理だから、ハンディを与えてくれということを言うたのですが、いや、日本はドイツ以上の国力があるので、もうお互いに相互主義を考えていい時期に来ておる、これはアメリカ知識層その他の一致した意見でございます。そういう点で、ぜひひとつ日本でも譲るべきものは譲るということをお考えいただきたいと思います。  それから次に、もう一つどもが通商問題で考えねばなりませんことは、やはりアメリカに対する貿易の依存度が——実はアメリカのGNPから見ますと、日本輸出の三分の一がアメリカに依存しておるということは、私は決して高過ぎるとは思いません。しかしながら、アメリカという国はある意味においては非常にかってなと申しますか、わがままと申しますか、そういう国でございまして、自由貿易を主張しておるというのは、たとえば自動車は完全に競争力を持っておるから自由貿易を主張しておる。競争力がなくなると保護貿易になる。はっきりしておる。アメリカの従来の保護貿易と自由貿易の争いというものははっきりしておる。そういう意味において、われわれ日本の商品がだんだん競争力を持ってくると、どうしても保護貿易の議論の対象になってくるということでありまして、したがって、まず問題は二つあると思いますが、一つアメリカ以外に広く貿易の市場を分散する。これは私ども合繊メーカーは、とうにソ連はむろん、中共も東欧圏もチェコも全部やっております。やっておりますが、中共問題も、たとえばプラント輸出はまだできません。こういう障害をぜひなくしていただきたい。私どもは国にすがってどうこうしてくれと言う前に、じゃまがないようにしていただきたいということがほんとうの希望でございます。私たちは自分の実力で何とかやります。  それから第二は、そういうような障害をなくする問題のほかに、やはり市場はできるだけ広く分散して、しかもアメリカとあまり競合しない品種を選んでいくということ、これは私ども当然努力いたします。ですからそれに対する先生方の裏づけのある方法をぜひおとりいただきたいということでございます。  これに関連いたしましてもう一、二御希望を申し上げたいのは、通商産業省のいろいろな諸政策に対しまして、最近いろいろな、たとえば構造改善その他の問題がございますけれども経済に追いつかないわけです。経済の進歩は非常にテンポが速いものですから、法律ができたあとで見ると、当時の事情が変わってしまったということで、いわゆる朝令暮改ではないかというような非難を通産省の方々にされますと非常に困りますので、これは当然経済責任でありまして、通産省責任ではございませんから、そういう意味ではフレキシブルにぜひ通産行政がいきますように、法律ができたからそのとおりやれということをあまりおっしゃらないように、ぜひお願いしたいということでございます。  もう一つは、外資法の運営と外為法の問題、これは通商に関係がありますが、アメリカその他から日本に資本が入ってくる。われわれの資本も出ていくわけです。出ていきます場合に、日本はいまだに外為法の厳重なしばりがございまして、なるほど標準決済とかいろいろな方法がございますけれども、われわれは送金するときに非常にチェックを受ける。向こうは自由に入るということがございますので、われわれはジョイントベンチャーを海外につくっていきますから、まず物を売る、次はプラント、次はジョイントベンチャーをつくっていく、こういう方向をたどるについて、日本の外為法の運用その他に、もう少し自主性があるようにしてもらいたい。  それから技術導入につきましても、近く自由化をするということが新聞紙等でいわれておりますけれども、その内容を拝見しますと、役所の方は非常に頭がいいものですから、自由化をしたようにして、ほんとうは従来とあまり変わらないということが実は行なわれておるわけであります。これは今度私ども言われましたのは、日本の資本の自由化はごまかしであるということを、ニューヨークの新聞記者会見で、アメリカの記者から言われた。つまりそういうことになりませんように、ほんとうに自由化するなら自由化するということ、自由化できないものならしないんだというようなことを、これからの技術の導入、それから自由化に対してもぜひとっていただきたいということでございます。私は外資法の問題については、運営上、外資法の第一条のあの目的を利用いたしまして、設備の制限、特に増設の場合に許可を要するという条件をつけまして——なるほど第十四条では条件をつけるようになっております。条件をつけることによって設備規制をする、あるいは技術導入を許可することの条件として、業界の調整を行なうという、非常に広い意味にあの法律が活用されておりますが、これはもちろん一方においては、非常にメリットのあるじょうずな行政のしかたでありますけれども、しかしある意味においては、法律の範囲を離れておるのじゃないかということもございまして、ほんとうに行政訴訟を起こせば、ああいう条件をつけることは、ある場合においては裁判では無効になるかもしれない。これは通産省をやめられたある高官に聞いても、非常に疑問だとおっしゃっておるのでありまして、そういう法律の運営について、私はもっと正直にしていただきたい。と同時に、私どもは、将来技術の導入をするとか、あるいは外に出ていくという場合に、あまりいろいろな干渉はないようにしていただきたい。むしろ大企業はまかしていただいたほうがいい。むしろ中小企業あるいは流通機構に対して通産行政はいくべきじゃないか。特に冒頭に申し上げました通商政策の国家的な相互性に向かって、通産省が中心になって推進していただく、これを諸先生方が十分にサポートしていただくことが大事じゃないか、そういうふうに思います。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  次に、堀江参考人にお願い申し上げます。
  7. 堀江薫雄

    堀江参考人 私もごく大まかなことを申し上げまして、あと御質問いただいたら幸いであります。  本日、私どもがまかり出ますにつきましていただきました御案内状に、激動する国際情勢ということがございましたが、全くそういったことであろうと思うのであります。ことにこういった激動する国際情勢の中で、日本国際収支や、また皆さん方お伺いいただいておりまする日本産業貿易、そういったことを考えるわけでございますから、私はごく簡単に日本の置かれた国際環境といったようなものをお話し申し上げて、御参考に供したいのであります。  御案内のとおり、現在曲がりかどにきたといわれる国際経済情勢でありまするが、大戦争が済んで二十三年もたちましたわけでありますから、古い秩序とかあるいは古い指導権による経済運営といったものが限度にきて、それがちょうど入れかわるような時期に立ち至っておるのではないか、そんなに思うのであります。しかし、そういった激動する国際経済情勢でありますけれども、しいて申しますなら、貨幣側面と申しまするいわば国際金融、為替、国際資本、この面に一挙に難問題が出てきたわけでありまして、貨幣側面以外の経済実体面はそんなに私は悪くない、ことに一昨年、昨年にかけて景気後退に見舞われておった国々も、政策よろしきを得て経済拡大のほうに向かっておりますから、たいしたことはない、そんなふうに思うわけであります。日本国際収支は昨年来赤字を続けてきまして、多少心配されたのでありますが、ここ二カ月来だいぶ持ち直しておりますが、もともと国際収支問題は、物価問題と並んでわが国経済にとり最も重要な問題であります。そして日本国際収支の置かれた国際経済環境はどうかというわけでありますが、私、結論的に最初申したとおりであります。  御案内のとおり、貨幣側面では昨年十一月の英ポンド切り下げ以来国際高金利が定着をしていくとか、為替相場が動揺するとか、あるいはたびたびのゴールドラッシュ等の現象を経まして、ついに金プール会議の結果、金の二重価格制の出現があり、その後御案内のとおり、ストックホルムの十カ国蔵相会議で曲がりなりにもSDRの発動を決定を見ましたし、また昨日十六日には、ワシントンで開かれましたIMFの理事会で、その法制化、法文化そういったことを採択決定いたしたのでありまして、そういったことが反映して、ようやくしばらくの間小康状態を呈しておるように思われるのであります。しかし、国際金融、為替市場の安定は、基本的にはまだ収拾されておりません。SDRそのものの結論も妥協の結果でありまするので、フランス的な要望やあるいはアメリカの思惑、これらが妥協されたことになっておりますので、これが現実に実際に実行されて、金やドルにかわる、ないしこれと同等のものになるかどうかについてもまだ問題があるのであります。問題は、やはり曲がりなりにも国際通貨の役割りを果たしておりまするポンドとドルの防衛がどうなっていくか、ことにアメリカのドル防衛がどうなるか、アメリカ国際収支がどうなるか。早い話がアメリカの増税法案、昨年の八月に上程されていながら、まだ下院で通る確たる見通しもないといったようなことであるわけでありまして、これらの動向を見守りながら、模様見の中間安定といったふうに解釈していいのじゃないか。その意味国際経済の貨幣的側面でありまする金融、為替には、今後とも、非常に安心ができないといったことが実情のように思うのであります。  しかし、貨幣側面以外の実体経済の面ではどうかと申しますと、金融、為替面の不安、動揺のために従来期待されておりましたほどの経済成長はないにしましても、世界経済が昨年度よりは拡大傾向にあるのは事実でありまするし、すなわちアメリカも依然戦争経済にあるとはいえ、実質経済成長が四%以上を期待せられておりまして、一部には過熱を心配されておるのであります。また西ドイツやフランスを中心にしたEEC全体も四%程度の成長と見られております。その上EEC諸国では御案内のとおり、昨年までの景気後退から立ち直るために、自分たちのためでありますが、そのほかドル防衛にも協力するというようなために自国の経済拡大政策や刺激政策を取り始めておりまして、あるいは多少国際収支を犠牲にしてでも国内景気振興策をとり始めておるのであります。これは世界経済全体にも喜ばしいことと思われます。世界貿易全体の伸びはポンド切り下げ以前の見通しに比べますと少し低くなっておりますが、それでもおおむね年率七%世界貿易の拡大が予想されております。英国の国立経済社会研究所の見通しによりましても、大体七%くらいであろうと見ておって、昨年よりややいいのであります。ただし本年の景気回復のにない手が主として各国政府政府投資であって、民間設備投資の本格的な回復は世界的にいまだしという状況のように思われます。  多少長期的に見ますると、過去五カ年間の世界経済の平均成長率というものは大体五%前後、OECD諸国全体でありますが五%強でありましたが、世界貿易の伸びでは八%といった数字になっております。この数字はこれから先五カ年間には、いろいろと問題が出てきておりまするので、それほど大きくは期待できない。しかしながら、これまた大きな問題としまして、御案内の一九三〇年代に資本主義が極端に縮小化して非常な困難になった苦いあの時代に比べまして、現在の世界経済の困難や問題は、はるかにまだ御しやすいと思うのであります。したがいまして、どうころんでも一九三〇年代の苦い経験を繰り返すことはあるまい。それは御承知のとおり、戦後二十三年の世界経済世界貿易をささえてまいりました国際経済国際金融協力がしっかりしておるからかと思う次第であります。  そこで、日本の問題を一、二申し上げまして、私の話を終わりたいと思うのであります。まず国際収支のとらえ方であります。国際収支の問題は、物価問題同様すこぶる重要な問題である。毎年政府が行ないます次年度あるいは長期的な経済見通しで予測する国際収支見通しというのは、御案内のとおりしょっちゅう狂うことが多いのであります。これは一つ国際経済の状況そのものが急変するといった外的要因がありますし、ほかに日本国際経済情勢の見通しの判断が不正確であること、また一つには国際収支を長期的全体的な視野で考えていないことのあらわれのように思うのであります。こうして国際経済国際金融の情勢判断が不正確であることからときに時機を失する対策をとり、わが国経済の成長が阻害された事例も少なくなかったし、日本の場合、外貨準備そのものは本来薄い上に、ときどきの情勢によって大幅に増減するという余裕のない国際収支対策を続けてきたのが事実だと思うのであります。今日のように国際金融、為替、資本市場が非常な動揺を続けており不安な情勢のときに、かつてのような高度の経済成長政策をとるよりも、むしろ安定成長をはかっていくことが必要である。そのために金保有の増大をも含めて適正な外貨準備、それはわが国の場合やはり二十五億ドルないし三十億ドルは必要であると思われまするが、これをある期間、計画的に継続的に積み増ししていく、そういった政策をとらなければならないと考えるわけであります。換言しますと、国際情勢の曲がり角に来て、その変化に対応しながら、なおかつゆとりのある外貨準備を持つようにすることが重要である。また、いまや日本経済のような大型経済を運営するにあたりましては、単にドルだけに依存する、貿易でも同様であって、主としてアメリカ経済に依存するといったようなことは、必ずしも妥当ではなく、適当な外貨対策、また適当な貿易の相手先といったものをあわせ開拓、促進することが必要であると思うのであります。そうして、国際収支問題というのは国全体の問題でありまするので、大蔵省なり通産省なりといった一省のみの問題ではなく、また経済企画庁のような、ああいった試行錯誤の試験的なやり方でなくて、政府全体で長期的な総合的な視野を持って処理されていっていただきたい。先ほどお二人の話した問題と相通ずることでありますが、世界経済の見通しでも、また国際収支計画でも、そういう立場から全体計画を総合的に樹立してほしいと思うのであります。  それから、もう一つ申し上げますと、日本国際収支の中で、いま一番弱点と申しますると、何といっても、貿易外経常収支、特に海運収支であります。数字は御案内のとおりでありまして、貿易収支が本年せっかく悪くて十二億ドルの黒字であるのに対しまして、貿易外収支は十二億五千万ドルといったような赤字を計上しておる。したがいまして、この貿易外経常収支、特に海運収支を改善することが、今日のわが国国際収支対策の重要課題であると思うのであります。御案内のとおり、外国船の輸出につきましては、いろいろ金融その他の便宜を与えながら、邦船建造に対しましては、それが必ずしも厚くなかった。これは過去において、歴史的ないろいろの背景があったと思うのでありますけれども、御案内のとおり、日本貿易物資の積み取り比率は、日本船がせいぜい四二%、それから外国船が五八%といったような数字になっておりまして、貿易が盛んになって、輸出輸入も大きくなるほど、この海運の収支が赤くなるといったことは、はなはだ困ることでありまするので、その意味からも、これは運輸省といった一省だけの問題でなくて、全体の国策としてお取り上げいただいて、早急に解決していただきたいと思うのであります。  最後に一つ、私は昨年来改組発足しましたソ連東欧貿易会といったものの会長をいたしておりまするので、その立場からお願いいたしたいのであります。世界経済が多極化に進んでいく、東西問題も南北問題も含めまして、だんだんそういう情勢に進みますことにかんがみまして、もろもろの輸出対策なり、また産業競争力の対策もありますけれども、その一つとして、対社会主義圏の貿易拡大にも大いに格段の見直しをしていただきたいと思うのであります。御承知のとおり、最近締結されました日ソ通商協定でも、年間六億数千万ドルといったような大きな数字になって、貿易そのものは相当程度順調にきておりまするが、次の段階としまして、やはり共産圏地域に対する経済協力といった問題があるわけであります。御案内のシベリア開発なども、これはたいへんおもしろい問題でございまして、日本は一億の人口の単一市場であり、単一国民経済である。片一方で資本主義を最大限に発展させたアメリカ経済があり、またお隣に共産主義五十年の計画経済をやって、ともかくも成功したソ連経済がある。この間にあるわけでありますけれども、いずれ世界は紆余曲折を経ながら、やはり一つのマーケットに進むというようなことを考えますと、東西交流問題についてもアメリカ自身があれほど前向きになっておる際でありますから、日本の場合シベリアの安くていい資源が簡単に手に入るといったようなことなら、開発輸入その他大いに進めてしかるべきではないか。その際に、どうも西ヨーローッパ諸国で、景気後退の関係もありましてか、近年クレジットその他の諸条件がたいへんよくなっておる。日本はそれができないというようなことでありますけれども、せめて西欧諸国で提供し得るような、その程度のクレジットあるいはその他の諸条件をつけていく、そしてせっかく近くにある重要な原材料資源日本のために開発輸入して、そして輸出する。そうすることによって一億の人口が高度な生活ができるのであります。大蔵省、輸出入銀行その他この点については、はなはだしぶいのでありますが、その点貿易振興策はたくさんあると思いますけれども、これも一つ重要な問題として、経済協力の問題をひとつお取り上げ、お考え願いたいと思うのであります。  あと御質問に応じましてお答えいたしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 小峯柳多

    小峯委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見開陳は終わりました。     —————————————
  9. 小峯柳多

    小峯委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  10. 佐野進

    佐野(進)委員 いまお話をお三人の方々から伺いながら、それぞれの業界に非常に大きな影響力を持つ方々ですから、私が聞くことは何か皆さんに非常に悪い感じを与えるような質問になるかと思って、心配しながら実はきょう質問しようと思っていたのですが、お話を聞く範囲の中では、私どもの考えておる点と全く一つに合ったようなところが非常に多いので、社会党の議員がどうもというような気になりましたが、いま田中先生がお話しになっておりましたけれども、これは佐藤総理大臣や通産大臣や外務大臣に、いまのようなお話をよくしてもらいたいものだ、こういう感じを持って実は聞いておりました。それは単にお話をなさった方々が資本家の立場にあるとか、あるいはどうであるとかいうことでなくて、激動する世界経済事情というものが、そういうようなものの考え方に立って日本経済に対する取り組みをしなければならない、産業並びに貿易の伸展についてはからなければならない、そういう時期にきておるのではないか、こういう点もあわせ考えながら、お話をお伺いしておったわけであります。以下お三人の方に、三十分程度ということでございますので、非常に意を尽くさぬ面もありますが御質問申し上げ、あとベテランである堀先生以下いらっしゃいますから、十分ひとつ御質問していただくということで、ポイントがずれておるかもわかりませんが、ひとつ御答弁をお願いしたいと思うのであります。  まず第一に武藤さんにお伺いいたしたいと思うのですが、いろいろお話のありましたことについては、私どもの心配しておる面と全く合致するものが多いのであります。特にその中で一番問題になりますのは、日本の海外援助、海外協力という一つの政治目的を達成するために、アジアをはじめとする低開発国と申しましょうか、こういう国々に対して、日本はいま非常に多くの援助をしなければならない、すべきだということで、海外援助を強力に推進しようとしておりますし、してきております。そういう面から出てくる必然の重要課題として、いわゆる繊維、雑貨等を中心とする、だれでもが飛びつきやすく、生産に対してきわめて早く着手できる、こういう部面におけるところの低開発国援助の具体的な成果があらわれつつあるわけです。したがって、そういう面からいたしますると、援助をして、新しい資材を投じ、安い賃金をもって労働力として雇用することができる。そういうことになれば、機械が新しいし賃金が安いのでありますから、出てくる製品がきわめて廉価になることは当然であります。したがって、その上にさらに低開発国援助ということが、いわゆる南北問題の世界的な趨勢の中で、特恵関税を供与するとか、いろいろな保護対策世界的な趨勢で立てられてくるわけです。しかも自国の援助において自国の近隣にある諸国でそういう状態が出てくるとすれば、国内の産業が既存の施設の上に、高進するインフレ下において対応でき得ないことは当然であります。当然だけれどもそれをしなければならないとすると、国内産業に従事するそういう部面における人たちが必然的に世界競争の中に、あるいは間接的な影響の中で国内競争の中に脱落していくことは当然であります。こういうようなことに対する施策日本政府としても、われわれとしても一生懸命考えながら対策を立てておりますが、いまやまさに進みつつある海外経済協力の影響は、そういうものを大きくおおいかぶせて、とうとうとして流れていこうとしております。そういう面から見ますと、いまのお話の程度のことでは、いわんやパキスタンにおけるところの進出、私どもとしては経済競争の中においてはそう注目しない国と考えられておるところですら、わが国輸出よりも輸入のほうが多くなるという状態であるとすれば、はだにアワを生ずるような感じにならざるを得ないと思うのですが、こういうことに対して、武藤さんの御見解なり対策なりをこの際お聞きしておきたいと思うのであります。
  11. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。ただいまの御質問でございますが、これは相当総合的に検討しなければならぬ問題で、軽々に結論は出せませんが、御承知のとおり、わが国がどうしても近隣のアジアの後進国の兄貴となって、いろいろな意味で援助してやらなければならぬという歴史的な過程は、私どもはこれを認めなければならぬし、またやらなければならぬし、現にやっておるわけでございます。確かにそういう点につきましては、われわれ大企業も相当の脅威を受けているということは、もうすでに台湾なり韓国にも今後合繊工場ができるということになりますと、そこにできました綿なり糸なりを、いまおっしゃったわが国よりも非常に安い三分の一というような賃金、そういうもので生産されますると、とうてい競争しにくいということの脅威はあるのでございまして、御質問の御憂慮の点は私も憂慮しておる点でございますが、さてこれをどうしたらいいかということになりますと、どうしてもやはり、大きく言えば産業構造を改革していかなければならぬという大きな問題に通ずるということは一つございます。しかしここで考えられることは一つ国際分業、いわゆる日本後進国国際分業的な政策を打ち出していくということ、賃金の安いところでつくったほうが安ければつくっていく、そのかわりに国内でつくらなければできないような技術のものは日本でつくっていくというふうに、対立的に考えないで、後進国日本とが何か一つEECのようなブロックとしまして、お互いに有無相通じていくいわゆる国際分業というようなシステムというかプリンシプルでこれをお互いの利益に結びつけられないかということが一つ考えられる案でございます。ただ、それをどう具体的にやるかということになりますと、相当いろいろな面から検討してやらなければなりませんから、軽々に申し上げることはできませんが、私の一つの構想を申し上げれば以上のとおりでございます。
  12. 佐野進

    佐野(進)委員 そこのところでちょっと違ってくるのです。軽々に申し上げられないというお話ですが、おそらく業界としては、もちろんこういう場所だから軽々に申し上げられないということで、武藤参考人自身は軽々どころか重々一つの判断を持っておられるのだろうと思うのです。またその判断がなければ、今日繊維業界を取り巻くきびしい国際環境の中で日本産業に対する責任が果たし得ない。もちろんそれが先ほど来お話しのように通産当局という一つの省だけでこういう問題の取り扱いはできないから、政府の総合的な施策の中でそういう問題の処理をはかるべきだ、こういうお話ですから、もちろんいわんや参考人お話のようにこれが絶対だというようなことはなかなか言えないと思うのであります。しかし、私はいまこそそういう点についてこれはもう当面する産業界はもちろん、労働界をも含めた形の中においても十分対処して取り組みを行なわなければならない時期に来ておるのではないか、こう考えられるわけです。お話しの一つ一つを聞いてみれば全くその点について共感するところ多いわけでございます。  そこで、もう一つだけ聞いて次に進みたいのですが、国内におけるインフレを押えること、これが国際貿易産業貿易に対する最大の課題であり、国際競争にうちかつ最大の課題である、こうお話しになりました、全くそのとおりです。必然的にコストが上がっていくわけですからそうでありますが、これに対する構造的な面、対外的な影響からくる面についての考えについてはいまここで申し上げられませんということですから、聞こうとはいたしませんけれども、しかし、コストに対応するというお話の中で、いろいろありますが、出された国内インフレを終息せしめるという形の中において最もきびしい環境の中にある繊維業界の代表的な方として、武藤参考人の私案でもいいですから、これからどうされたらいいかということについての一つ方法があったら、ここでお示しを願いたい。
  13. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。大きな問題を質問いただきまして、私は当惑しておるのでありますが、さっきの問題に関連いたしますが、結論的に申し上げますと、やはり産業構造を改革しなければならぬということは、つまり後進国産業と違った産業構造にしていかなければならぬ、こういうことでございますから、綿業一つにいたしましても、やはり綿業はだんだん後進国に譲っていく、それなら綿業に従事しておる産業はどういうふうになっていくかということになりますと、やはり後進国でできない合化繊のほうに移行していくとか、あるいはある意味においては労働の大きな配置転換といいますか、産業構造の変化に従って、経営者もあるいはまた労務者もそちらのほうにかわっていかなければならぬという大きな問題が一つあるわけでございます。たとえば綿の構造改革にいたしましても、そういう点を憂慮いたしまして、私はむしろ綿の構造改革なんかは二、三年したらこんなのんきなことであったかというほど深刻な事態が来る。というのは、いまいろいろ後進国の綿業の振興状態を考えますと、どうしてもコストの点から見てもなにから見ても、少なくとも高級綿布以外は競争力がないという結論が出るわけでございますから、わが国のいまの千二百万錘の綿紡績はあるいは半分しか動かないという時代が来るかもしれません。そういうことはやはりいま申し上げた総合的に中小企業対策あるいは大企業対策、いろいろな点からこれに対処しなければならぬので、軽々には申し上げられないと申し上げたわけです。  それからその次のインフレの問題ははっきりしておる問題でありまして、結局輸出振興というより国内の生産をふやし、国内の消費をふやすという経済成長から当然信用の膨張、そういうことからインフレが今日起こっておるわけでございまして、そのことは必ずしも悪いことではございませんが、やはり度合いの問題だと思うのであります。インフレーションといいましても、他の国よりも、さっき申したように英国でさえも三二%というのが日本では五三%も生計費が十年間に上がるということは、インフレの度合いにおいても問題があると思うのであります。  ではこれをどう収束するかというお話ですが、これは収束はできないと思うのであります。一たん膨張したものをもとの状態に返すことはできないわけでございます。そういう意味から申し上げますと、どうしてもいまのような国内の消費を盛んにしていくということよりも、やはり輸出振興していくという政策に転換していかなければならない。それとともに、もう一つ、これはやはり政府支出をもう少し縮小しなければならない、あるいはもう少し行政を改革するとか、いわゆるチープガバメントというものをつくらないと、これはなかなか押えがたい問題であるし、それとともにまたムード的にも、いろいろ申し上げたようなムードの解消というようなことも大切ではないかと思うのでございますが、このインフレをどう押えるかということについては、あまりにわかり切った問題でございますから、私がくどくど申し上げるまでもないことだと思います。
  14. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは次に宮崎参考人にお伺いいたしたいと思うのですけれども、課徴金の反対でアメリカへ行ってお帰りになったということで、アメリカの政界、財界の人たちの持つ考え方並びに対策ということについてるるお話をお伺いいたしたわけですが、当面する課徴金制度をはじめとするドル防衛に対するアメリカ考え方は、いまお話しのように全く自国経済の安定というか、そういうものに対応する日本の果たす役割りについて協力を求める、その一環として、課徴金の制度をはじめ、保護貿易に類する一連の対策、あるいはまた海外経済協力に対する要請その他のものが出てきていると思うのであります。そういう中で日本が受ける影響は、課徴金制度が発表されたとき、これが実施されたのでは海外貿易はたいへんなことになるぞ、ことしの赤字は当初予定した金額をはるかに上回ったものになるのじゃないかということで、騒然とした空気が実はあの当時財界はじめあらゆる方面にあがっておったと思うのです。そういうような形に対する反対、陳情、そういうことが行なわれた。現在その実施が延ばされておるという形の中で、やや安定したというか、安堵感というか、今日そういう形で推移されておるようでございますが、しかし事態は決してそんなに甘くなく、むしろ形を変えて、強力な反対があったならばその反対を巧妙にというか、具体的にすりかえながらその目的を達しようとするということが歴然として読まれるわけであります。また、そうならなければアメリカは自国の経済を守ることができないわけです。そうすると、日本の受ける被害というものは、単純な形であらわれないで、非常に複雑な態様をもってあらわれてくるということが当然予想されるわけです。  そこで、私ひとつお伺いしてみたいと思うのですが、参考人は、通商政策の確立ということによって一体化した行財政というか、政府施策の中でいろいろな問題について解決をはかっていくべきだということは一貫して強調されておるようでありますが、一番問題になるのは、アメリカ日本に対して不満に思うことは、アメリカが課徴金制度をつくるということに日本が不満に思うと相対置するがごとく不満に思うのは、資本自由化をはじめとする日本の対米協力に対する熱意の不足だということだと思うのですが、そういうとき、日本が強要される形の中で資本の自由化を受け入れなければならない事態、こういうものが当然予測されてくるわけですが、この資本の自由化に対していま少しく、参考人日本の現在の経済情勢の中でどの程度資本の自由化に対置する対策を立てておくべきかという点についてお考えがあるならば、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  15. 宮崎輝

    宮崎参考人 それではお答え申し上げます。おっしゃるとおり、アメリカ日本に対する不満は、資本の自由化が非常におくれておるのみならず、先ほども新聞記者会見の話を申し上げましたけれども日本の資本の自由化はある意味のごまかしではないかという印象を全部持っておるわけです。ですから、これをそうじゃないんだということを示すことがやはり必要でございまして、一番の焦点は自動車でございますね。あまり他の業種のことを実は申し上げたくないのですが、実際向こうはそう言いますからそのまま正直に言いますが、実はもう至るところで言われるのは、自動車、少なくともエンジンの自由化ですね。あるいは関税のもっと引き下げ、これをなぜやらぬか、これは非常に保護主義者に対して心理的ないい影響を与えるというようなことを繰り返し繰り返しあらゆる階層の人から言われたわけです。ですから、それに対して私は、先ほど申し上げましたように、やるんだ、日本政府はやるといっているんだ、ただタイムテーブルだけの差なんだから、もう少し待ってもらえばいいんだという話をしましても、なかなか納得いたしません。と申しますのは、アメリカ自動車業者というのは自由貿易主義者でございまして、アメリカにエマージェンシーコミッティーというものができまして、あの中にフォードが入っておまりすが、あれに入ったためにフォードのトラックは買わないという運動が一部に起こっております。ですから、そういうような意味においては、当面自動車が一番問題に取り上げられておりますが、その他は、やはり先ほど申し上げましたように、ネガチブアイテムが日本は非常に多い。これが、調べてみますと、あまり実効がないような品目ばかりが多い。実際にその実効があるのかと私疑いますが、特に農産物や水産物が非常に多いのです。そういう点について、やはり項目が多いということは、何となく日本が非関税障壁をうんとやっているのだという印象を受けているようでございますから、これは通産省所管ではございません、おおむね農林省の所管というものが多いようでありますが、そういう点を、先ほど申しました日本政府全体としての一貫した方針として、あまり日本に対してもメリットのないようなものは項目をどんどんはずしていくというようなことを、この際、別に強要されたからというのじゃなしに、日本一つの方針として打ち出していくことが必要ではないだろうかというふうに思います。しかし、もちろん資本の自由化というのは向こうが希望している一つ条件でございますが、当面はやはり先ほど申しましたように、何らかのメリットを与えてくれということですから、これはケネディラウンドの繰り上げ実施ということを、日本は貧者の一灯だけれどもわれわれは協力するのだという、これは非常に多としております。ですから、むしろあなた方はアメリカに来ないでEECに行きなさい、ドゴールを説得してくれ、フランスの財界は賛成でドゴール政府が反対なんだから、ドゴールを説得してくれ、こう言われたのですよ。まあそういうことでございます。
  16. 佐野進

    佐野(進)委員 宮崎さんにもう一点お伺いしたいのですが、時間がありませんから要点だけ申し上げます。  そうすると、私はいま日本経済界を席巻しているという表現が適切であるかどうかわからないのですが、資本自由化に対応するということで、これはお聞きするのはあるいは堀江さんのほうが適切なのかどうかわかりませんが、企業の大合同ということが続々と出てきているわけですね。たとえばけさの新聞にあらわれている八幡と富士が合同し世界第二位のスチール会社ができるというような形、あるいは王子三社、その他経済界の激動が、資本の自由化に対応するという形の中で始まっておるわけです。これによって日本経済に対して将来どういうような方向があらわれてくるのか、あるいはまた中小企業界に対してどういうような情勢が出てくるのか、これは私どもとしても非常に気になる問題なんですが、このアメリカの資本の自由化に対応するという形の中における企業合同という打ち出し方、これはアメリカだけでなく、日本に対して資本の自由化を要請するという形の中で出てきている課題としてこれを受けとめるべきか、あるいは日本経済の発展の自然の姿の中における企業の集中的なものとしてこれを受けとめるべきか、あるいはそのことが日本の当面する激動する経済情勢に対してどのような役割りを果たすのか、これはたいへん質問がどうもかえって似つかわしくないかもわかりませんが、もし何ならば堀江さんにあとでお伺いしたいと思うのでございますが、たまたま資本の自由化ということがアメリカの要請であるということと、国内におけるそういう非常に大きな動きがあるということと対応して何か御判断が示されるなら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  17. 宮崎輝

    宮崎参考人 私は日本企業は全く小さ過ぎると思うのです。それは現にわれわれ化繊メーカーのピック・スリーと申しておりますが、ビッグ・スリーの合計の利益がデュポン社の利益の十四分の一なんです。それからアメリカのATMIのリーダーでありますバーリントン一社の利益が、われわれ化繊メーカーのビッグ・スリーの利益と同じなんですよ。しかも彼らは内部留保が非常に厚いのです。そういう意味においては、内部留保という面から見まして、日本の合繊業界といえどもちっとも競争力があるとは思わない。しかしながら、一体競争力とは何かということですね。これは非常に問題でございますが、たとえば私自分で現に中小企業のやっておるような仕事をやっておりますけれども、それを中小企業の下請にやらしたのと私自身がやりましたのとでは、われわれ絶対にかなわないのです、中小企業人たちに。同じ技術を教えてやりますと、それは非常に簡素なマネージメントをやりまして、非常に小回りがきくのです。ですから、そういう意味で、アメリカといえども中小企業は厳然として存在しておるわけです。それでりっぱに生きておるわけです。ですから、ただ大きいということだけではちっとも競争力じゃないんじゃないか。ただ無用の競争をするために乱立しているのは悪いですから、非常にスムーズに合同が行なわれるならばそれはけっこうだけれども、私いろいろな経験からいいまして、合併合同いたしますと、まず人間が余ってくるのです。それは課長をつくり、部長をつくり、次長をつくるということをやらざるを得ない。日本は外国のように簡単にやりませんけれども、まず重役そのものがものすごくふえるでしょう。それをどう整理するか。意思の疎通を欠く。そうすると、これは目に見えないたいへんなマイナスなんです。ですから、大きくするときには、そういうよけいなものを全部除くだけの十分な自信があるというときにおいてこそ私は大合同をやるべきだというふうに考えております。これは自由化にかかわらず、いかなる場合においても常にやるべきことだ、ただし、やるのにはいまのような前提条件が必要だというふうに考えております。  それから中小企業の問題がございましたけれども、これは私先ほど触れましたように、中小企業というものは社会政策的な意味から取り上げるのか、産業政策的な意味から取り上げるのかという問題がございますけれども、やはり政治でございますから、社会政策的な要素も入ってくることはやむを得ません。しかし、先ほど申しましたように、中小企業には大企業のできない生きる道が十分にあるわけですね。これは世界が示しているわけですから、方法よろしきを得るならば十分に立っていける使命とまた存在理由がある。要するに、これから行き方と皆さまの御指導のいかんだ、私はこういうふうに考えております。  不完全でございましたが、以上で……。
  18. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、最後に堀江参考人にお伺いして終わりたいと思います。  私、お話を聞いて非常に感じたことは、参考人のいままでやってこられたことが銀行の方向だということですが、金融資本の巨頭だというのでひとつ大いにと思っておったのです。お話を聞く範囲内においては、非常に新しい感覚をお持ちになってお話をしておられるので、きょうは聞き方にちょっと戸惑いを生じておるわけですが、それはそれとして、せっかくの機会ですからお聞きをしたいと思うのですが、古い指導権が限度にきておる、経済界もそういう新しい情勢に対応すべき事情の中にきておる、こういう御説明があったわけです。私、日本経済の現状を、過去から現在にわたっていろいろな面で私なりに勉強をしてきて、そして将来どうするかということについていろいろ考えておるわけなんですが、経済理論ということになると、いわゆるマルクスかスミスか、あるいは新しくはケインズかというようないろいろな理論があります。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕 日本はこれから古い指導権が変わろうとか、いろいろな表現がございましたけれども、いまこれから激動する国際経済情勢に対応して、日本の持つこの特殊な土壌の中における理論的な支柱を何に求めていったらいいのかということについて、これは話がきょうの状態に合わないかもわかりませんけれども、私もいろいろ考えながらきておるような点もありますので、せっかくのお話でございますから、いわゆる現在における経済的な指導理念というものは一体何に求むべきかということをお考えをお伺いしながら、もう一点お伺いして終わりたいと思います。
  19. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。二つのお話をしていただきましたが、私、銀行家ということでございますが、四十年余り銀行に関係しておりましたけれども、もっぱら国際金融と申しますか、外国為替銀行ばかりやっておりまして、いわば貸借主義に基づく銀行はたいしてやらなくて、売買主義に基づく、売ったり買ったりの銀行をもっぱら経営しておりましたので、どちらかというと、為替一筋の商売人的な感覚であったかと思います。そういう意味で私のお話を聞いていただいたら幸いだと思います。  これからの経済理論につきましては、もう経済自体が、対象そのものがずいぶん変化もいたしますので、マルクス主義とかあるいは正統派のオーソドックスとかいうことでもいけないと思いますけれども、やはり日本経済理論だけを追求しているということにはいきかねるんではないか。御案内のように、アメリカでもニューエコノミックスの実験が相当行なわれて、これまた一つの成功であったと思います。その意味におきまして、ケインズの流れをくむニューエコノミックスあたりは、日本に今後もまだ取り入れる余地がずいぶんある問題ではないか。しかし、取り入れる際に、アメリカの土壌と日本の土壌は明らかに違うわけでありますから、それらを勘案しながら、経済政策はおのずからやり方やニュアンスを変えてこざるを得ない、そんなふうに思うのでございます。また同時に、経済理論そのものがお互いに交流しておるわけでありまして、共産主義理論とオーソドックス理論は必ずしも交流しませんけれども、ニューエコノミックスあたりと社会主義経済計画はある程度歩み寄ったり、お互いに取り入れたりということであるわけであります。そういう意味におきまして、経済経済実態もそうであるように、私はやはり社会主義諸国の実際の経済運営におけるやり方というものは取り入れてしかるべきじゃないか。日本は自由経済法則は守っていき、また特に自由企業方式は厳然と守るでありましょうけれども、その間にやはりゴスプラン的な全体の相当強力な計画を取り入れるということは、今後ますます深くならなければならぬじゃないか、そんなふうに思うわけであります。お答えになりましたかどうか……。
  20. 佐野進

    佐野(進)委員 最後に、それではまた堀江さんにお伺いして終わりたいと思うのです。  そこで、いまのお話でよくわかるのですが、いまいわゆる対米輸出が三分の一を占めるといわれている今日、さらにこれについては将来伸びるということもいろいろな面から予測されますが、しかし東欧、ソ連経済あるいは中国貿易ということは、必然的に日本経済がまさに成長発展していき、低開発国のお家芸をはねのけながら一はねのけるということばは適切かどうか知りませんが、そういうきびしい国際環境に対処しながら伸びていく道はもうそれ以外にない。低開発国を自分たちの力でもって開発して、そこへ商品を売り込んで、そこの中でまた日本経済を自立させる。もちろん長期的な展望では成り立つとしても、当面する対策としてはきわめて迂遠の道であるし、その間日本経済がもち得るかどうかということになると、たいへんないろいろむずかしい条件が出てくると思うのです。そうすれば、いまお話しのようなソ連、東欧圏をはじめとする対共産圏貿易というものは非常に高いウエートを占めてくる。そこで、そういう面についての対策ということになると、御承知のとおり佐藤内閣は輸銀の対中国使用についてすらかたくなな態度を守り続けておる。共産圏に対する貿易についても幾多の制限が対米貿易に比べるとあるわけです。これは私ども責任なんだけれども、私どもはそういうことはっとにわかって要請しているのですけれども、そのことは政府としての形の中においてなかなか解決でき得ない。解決でき得ないことを、経済面からどのような形においてこれを打開するような方法があるかということについて、お考えも当然あると思うのですが、いまのお話ではそうすべきだという方向を示唆なされているわけですが、現実にさらに拡大する具体的な対策、これはたとえば中小企業部面におけるところの対策が必要なのか、あるいは大企業が直接的に相当程度政治的にあるいは財政的に手を打つことが必要なのか、もし、そういう面で私どもにお示し願える点があるならお示し願いたいということを聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。
  21. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。後進地域に対する経済の協力、発展という問題につきましては、日本のような立場からいいますと、南北問題においても、あるいは東西貿易においても、東西経済関係においても同じ行き方で考えていいのじゃないか、そんなに思います。また、大勢としましても、たとえばベトナム戦争あたりがいつ停戦、休戦になるか知りませんけれども、こういった大規模戦争が何らかの形でスローダウンすれば、その次に来るのはやはりこの軍事費がそういった後進地域に対する投資なり開発なりのほうに置きかえられていかざるを得ない。もちろんアメリカのごときは国内の開発も考えておりますけれども、全体として世界規模でそういった形、すなわち国際的な社会保障といったようなことで、南に対しても、また東西問題におけるそういった地域に対しても同じことが行なわれていくのではないか。これは国家あるいは政府の段階においても、これがこの次の段階の大きな問題でありまするし、また、企業の側におきましても、先ほど御質問応答がおありになりましたけれども、一方で中小企業の存在も明らかに強力に存在しながら、しかし、同時に世界の市場がだんだんと単一化していく、大型市場化する。したがって、需要も大型になってくるというような情勢になりますと、企業合併、合同、提携といったようなものが進んでくる。その際に、企業の経営というプライベートの立場からいっても、やはり大きな投資を後進地域に対してもやっていくということになるのであって、公の部門、私の部門、両サイドからこういった貿易、それも特に単に売ったり買ったりじゃなくて、投資なり開発なり経営なり、それを含めて出たり入ったりということで今後進んでいくのであろう。日本の場合、政府のいわば南北問題に対する協力もさることながら、企業側がこの次はこの方面に本格的に取り組んでいくということになってくるように私は思うのであります。また、共産圏諸地域につきましても、原則、たてまえは同じでありまして、もしシベリアに諸原料が格安に、しかも運んでくる道も楽にあるということが相当確実なら、そこに私企業のリスクにおいてでも投資をしていく、その間経済体制、政治体制も違うということから、いわゆる法的な固めは極力進めますけれども経済というのはやはりだんだんとそれぞれ高いところから低いところに流れていくように進むものでありますから、世界経済全体がそういった単一化あるいは共同化に進む際に、政府も、あるいは企業立場としても、その方向に次の強力な発展の方向が確かにあるというふうに私は思います。
  22. 宇野宗佑

    宇野委員長代理 堀昌雄君。
  23. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話を聞いておりまして最初に感じましたことは、私もこの前アメリカに行ったときも感じたのでありますけれども経済というもの自身はやはり本来合理性のあるドライなものだろうと思うのですが、日本人というのはどうも国民性からして、そこに何か、こっちが遠慮すれば向こうも少し配慮するだろうという、向こうは配慮しないことがわかっているにかかわらず、常にどうもこっちが遠慮しておるという感じが非常に国際的な貿易上の問題ではマイナスを積み重ねてきたのではないだろうか。その点、さっき宮崎参考人のおっしゃった、やはりコマーシャルベースの話というのは、向こうがこうするならこっちはこうすると、対応できるものなしにお願いをしても問題は片づかない。どうも日本は、政治の面でも、たくさん陳情がくると、何となくそれに引っぱられるような、まことにウエットな国情になっておりますから、ついそれが出ていくのだろうと思いますが、これをそういうふうにドライにしていくためには一体どこから改めていけばいいのかということですね。私どもは全くそう思いますし、出先の連中に聞いてみますと、繊維協定のような問題でも、向こうでは繊維協定で減らしているというのは、それは君たちかってに減らしているので、こっちは知りませんよ、こういう態度だ、そういうことを向こうの連中は言っているのですが、どうも実際にはそうなっていない。出先の連中はわれわれにそういうことを申しておりながら、実際には常に何か自主的にやって、それで何とか食いとめようというようなかっこうになっておると思うのですが、これについてのお考えをちょっと三人の参考人の方から一つずつお伺いしたいと思います。
  24. 宮崎輝

    宮崎参考人 お説のとおりでございまして、実は私アメリカと約二十年ジョイントベンチャーをつくっておりますが、アメリカの、特にこれはアメリカ人ですが、非常に合理的なことは、絶対に譲らない。それからものを与えるときは必ず取るということを徹底しますと、かえってアメリカ人は尊敬をいたします。そして非合理であるにかかわらず頼まれたら譲るという態度をとりますと、こういうような経営態度であるならば、よそから頼まれたときも譲るのではなかろうかという非常に不安を感じます。ですから、そういう意味においてはほんとうに顔色を変えて議論いたしますけれどもあとはからっとしていて、そういう徹底した合理主義を貫くことが経済においては、特にアメリカにおいては非常に大事だ。私は長年の経験からしてそういうふうにしておりますので、言うべきときは遠慮なく言いますし、アメリカ人はフランクと言いますが、フランクに言うわけです。これはしかし私は非常に僭越でございますが、政治の場合も同じことでございまして、むしろ政治はより以上にドライじゃないだろうかというふうに思います。政治、経済は政経分離なんて言いますけれども、実は不可分でありまして、アメリカだってやはり政治的な姿勢というようなものがありますし、それから中共だってそうでしょうけれども、やはり政治の場においても発言を非常に遠慮しているのではないか。たとえば私は今度プレスクラブでワシントンで会合しますときに、日本の新聞記者から言われたのですが、日本人はもう少しものを言え、一三〇%言ったときにまずまず半分くらい聞いてくれる、ところがあなた方は三〇%しか発言していないじゃないかということをアメリカにおる日本人の記者から言われたのです。そういう意味で私は思い切って言いましたけれども、そういうふうにものをはっきり言い、そうして取引するものはするという態度を私どもはこれから明確にとっていくべきだということで私はとっております。全く同感でございます。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕
  25. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまのお話で、経済をやっていらっしゃる皆さんは、非常に合理性がなければ成り立ちませんから、本来身についていらっしゃると思いますが、どうも貿易というのは経済だけじゃなくて、経済と政治、いまおっしゃるように不可分にくっついている。その不可分にくっついている政治の側がどうもドライでないと私は思うのです。まことにウエットなんです。私は今後の日本貿易の最大の問題は、いかにして政治をドライにするかということだと思うんです。政治をドライにするということはさっきいろいろお話がありましたが、これは思想の問題じゃないのです。思想の問題じゃなくて、経済ベースの問題から政治をドライにするということになっていかなければいけないのではないか。ですから課徴金の問題がどうしてもうまくいかないときには、さっきいみじくも御指摘になったのですが、ひとつ大豆アメリカから買うのをやめて、中国からどさっと買うのだという姿勢がもし国内でどんどん出て、それがアメリカに伝われば、やはり経済というものはそろばんですから、そのそろばんをこっちと合わせてみたら、これはやらないほうがいいかなということになると私は思うのです。だから実は輸入課徴金の問題が出たときに、衆議院の本会議で決議しようじゃないか。けしからぬ。大体アメリカケネディラウンドなどということをいって、貿易自由化だのなんだのといいながら、ともかく自国の利益のためにはそんなことをほったらかしてやるということはけしからぬという決議を本会議でやろうといって、実は衆議院の商工委員会でみな与野党ともに一致してきまったら、政府が待ってくれと言うのですね。そんなことをやられたらどうもまずいという。全く私どもは皆さんのお話を聞きながら、少しつめのあかをせんじて佐藤さんたちに飲ませたいと思うのです。こんな姿勢で一体、皆さん方が経済ベースでやろうとお考えになっても、ものは始まらないんじゃないか。やはりそういう意味における経済外交というか、経済外交に臨む政治の姿勢に根本的にどうも誤りがある。これを今日正さなければ、この激動する情勢に対処していけないんじゃないか、こう思いますが、その点について武藤参考人からちょっと……。
  26. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。私も全く同感でございます。結論を申し上げますと、宮崎さんから大体お話がありまして重複しますとなんでございますが、補足的に私の考えを申し上げたいと思います。  全く日本人がいろいろ経済問題を折衝いたしますときに、多くの誤解は遠慮からくるわけなんです。私どもも多くの会社と提携をしておりますが、その際は、契約上の権利は権利、義務は義務としてはっきり論争して、ときにはもう決裂もやむなしというところまでいきますと、かえって事がまとまるのが私の経験でございまして、全く今日の貿易の問題におきましても、もう少し合理的に、しかも主張すべきを主張しないで、ただ相手に何とかしてくれという態度は、相手をして理解せしめるよりも、ますます非常に疑惑を持つような点もあるかと思いますので、私どもは私企業立場におきましても、国際的に仕事をしておまりす者の経験から申しますと、どちらかといいますと、少し言い過ぎてけんかになりやしないかということのほうがうまくいくので、遠慮しておりますと、かえって話が混乱するようなことがございます。  ことに日本人は、腹芸といいますか、まあこう契約しておいても、少し困れば少しまけてくれるだろうというようなことになりまして、困ってきてそういうことを言い出すと、非常な不信感を持ってきます。それよりも初めからはっきりとしておきますと、非常に信頼して契約も長く続くというようなことでございまして、こういう私企業の経験をいろいろ申し上げることもなんでございますが、大体宮崎さんので尽きておると思いますが、私も同じような経験がありますので、補足的に申し上げたわけであります。どうかひとつ、国政に携わる皆さまは、この貿易の問題につきましても、もう少し日本の権利を主張するということをしていただきたいと思います。それとともに義務は守らなければなりませんが、私は、日米の問題にいたしましても、実は、以前綿業会談におきまして、相当日本の綿布の輸入制限をするというようなときに、それじゃおまえのほうからおれたちはこれだけ綿を買っておるじゃないかというようなことで、もうかけ引きよりも現実にバランスシートでおまえのほうが得しているじゃないかというようなことでいきますと、案外向こうはおこるよりも耳を傾けるというような経験を持っておるわけでございます。  はなはだ至りませんでしたけれども……。
  27. 堀昌雄

    ○堀委員 ひとつ与党の皆さん、田中さんもこの間アメリカに行ってこられたわけですけれども、ああやってアメリカに行くことよりも、私は衆議院の本会議で決議することのほうがはるかに影響力があると思っているのです。ところがそういうところが、腹芸はどうも自民党の人のほうに多いのでしょうか、ともかくその腹芸もどかんとぶつかるのならいいけれども、どうも不十分なんで、その点はどうぞひとつ与党の皆さん、いまの話を生かしていただきたいと思います。  その次に、これは武藤参考人にお伺いをしたいのですが、さっきお話しになったことの中で、歴史は繰り返すといいますか、今日日本の綿業というのは、ちょうどイギリスの綿業のあとを行っているように思います。私は、今後の日本のいろいろな問題というのは、かなり流動的でありますから、たとえばいま金融の問題等につきましても、新しいあるべき金融制度ということで、ただいま法律もかかってまいっておるわけでありますが、日本繊維業の将来といいますか、綿糸はもう、いまお話がありましたからよくわかるのですが、繊維業全体としてのあるべき姿、そんなに長期的なことは無理でございますが、大体十年から十五年くらいの先を展望してひとつとお考えが承れればと思うわけです。というのは、やはりそういうあるべき産業構造との関連で貿易という問題もやはり考えなければならぬ問題になってくるだろう、こう思いますので、その点について武藤参考人にお聞きします。
  28. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。日本繊維の将来ということにつきまして、繊維といっても天然繊維と合繊とこの二つに分かれるわけでございますが、率直に結論から申し上げますと、つまりことしは明治百年、また紡績も百年でございますが、この一世紀にわたって日本貿易のチャンピオンでございましたわが国の綿業というものの将来は、私は非常に憂慮すべき状態だと思います。  その第一の点は、やはり労働集約的な産業でございますから、労務の条件、あるいは労力量とか賃金というものが他国と比べて優位でなければ、優位と申しますか、すぐれておらなければこれはとうてい成り立たないわけでございまして、先ほども申し上げたように、その点は年々労力量も減ってくる、しかも賃金も上がっている、こういう状態でございますから、少なくとも天然繊維のうち綿を中心としました産業は相当急速に縮小せざるを得ないのではないかと私は考えております。  その半面、合繊のほうは、これはまだまだ相当大きな成長産業として期待できるのではないか、そういうふうに考えております。この貿易面にはっきりあらわれておりますのは、過去五年間の統計を見ますと、綿布では約三割輸出が減っております。それに対しまして合繊のほうは何と、これはもとの数が小さいのでございましょうが、七倍くらいに伸びておるのでございまして、年々いわゆる沈み行くものと浮かび行くものとの差が非常にくっきりと描き出されておるわけであります。  そういう点から見ますと、日本の、つまり労働を主体にする天然繊維というものは相当早急に縮小せざるを得ないのではないか、ということは、主観的でなく客観的条件がだんだんそうせしめてくるということが考えられるわけでございます。  そういうことを申し上げると、結局はだんだん後進国に天然繊維を主体にした繊維工業というものは移行せざるを得ない。半面、私は合繊というものは日本の新しいチャンピオンとして、これはやり方によっては世界と競争できる新しいチャンピオンがここに育っておるのではないか。明暗こもごもでございますが、そういうものを考えますと、私はやはり天然繊維につきましては縮小するという考えですべて考える。それから合繊のほうは成長していくという考え方で対処していく。それからもう一つ、先ほどの御質問にもあって関連するかと思いますが、一つの案といたしましては、やはり労力が豊富であり賃金の低廉である後進国に綿業などは積極的にどんどん移設したらどうか。そうしてむしろ日本でつくる合繊の綿を供給したらどうか。日本はむしろ原料供給の立場において、はなはだ遺憾ながら綿は買わなければならぬ、羊毛は買わなければならぬ、しかし後進国にやった綿紡績は、必ずしも綿紡績ではなくして、今日わが国におきましても紡績の約三分の一は合繊にかわりつつあるわけでありますから、少し機械を手入れすればいつでも引けるわけでございますから、そういう意味において、失うようでありますが、得る道はむしろ、とうてい彼らとは太刀打ちできない労力の問題につきましては、むしろ進んで後進国へ移設していく、あるいは援助していく、そうしてその紡績に合繊の綿を供給していくということになれば、また一つ国際分業のような有無相通ずる形もできるわけでございまして、いろいろこういう大きい問題ですから論じ来たりますと時間もなんでございますから、少し急ぎまして結論的に申し上げますと、私はおそらくこの日本の綿布の輸出というものは、今後五年の間には半分になってしまうのではないか。これは日本ばりでなく、私どもが、かつて十六年前に英国のバックストンに綿業会談がございまして、そのとき、十六年前英国は、われわれは十四億平方ヤール世界輸出するのだと言って主張してやまなかったのでございますが、その後十六年の今日に至りまして、英国はどうかと申しますと、わずか三億平方ヤール輸出になって、その反面約八億ヤール輸入しておりますから、差し引きいたしますと五億ヤールですから、輸入国になってしまった。こういう事実を直視いたしますと、やがて日本も、諸条件はますます綿業にとってはきびしくなっておりますので、この点は為政者におかれましても、また私ども業界に携わる者といたしましても、相当の覚悟を持って、この天然繊維の、百年輝かしい歴史をつくってきましたこの綿業の、ほんとうに将来のきびしい情勢に対処する対策をいま打ち出さなければならぬときではないかと考えております。はなはだ不行き届きでございますけれども……。
  29. 堀昌雄

    ○堀委員 次に宮崎参考人にお伺いしたいのは、課徴金の問題というのは、いま少したな上げになっているような感じがいたします。確かに、アメリカがベトナム政策ほんとうに転換をするならば、現状におけるアメリカ国際収支の赤字というものが改善されるであろうことは間違いがないと思いますけれどもアメリカにおいでになって、そして現在の新しい情勢の中で、この課徴金については宮崎参考人はどんなふうにいまお考えになっておるか、それをちょっと承りたいと思います。
  30. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは諸先生方が一番お詳しいと思いますが、実はきょうはガットの会議がジュネーブで開かれておりますが、あれでEECが出しました二つの条件アメリカのセリングプライスをやめることと、これからの保護貿易政策をとらないこと、その他ありますけれども、要約すると二つの条件ですが、これに対しましてアメリカ側は、それは不可能であるという回答をしておるやに聞いております。そしてそれがきょうあそこでどういうふうに妥結いたしますか、アメリカとしては、せっかくEECその他が協力してくれるんだから、やりたくはないけれども、いまのように、たとえばアメリカのセリングプライスというのは、アメリカの国会の付議事項である、それを期限を切って廃止してくれというのは国会を拘束することですから、政府としては約束しかねる。これは表向きの理由としてはまことに当然だろうと思うのですが、そこをどういうふうにきょう話がまとまりますか、それによって私は課徴金の問題の運命はきまると思います。私はむしろ、この課徴金よりもクォータ制度がどうなるかということ、課徴金の問題がかりに廃止になった場合には今度はクォータ制の問題がさらに強く出てくるのじゃなかろうかというふうに見ておりまして、この辺のところが非常に痛しかゆしでありますけれども、イースターが明けますのは二十三日だと思いますが、そのころにアメリカ両院協議会でクォータの問題が正式に結論が出ると思いますが、いまその辺のところを注目して見ておるところで、いまのところ、きょうの結果が出ませんと、きょうは結論を申し上げるのは早過ぎるかと思っております。
  31. 堀昌雄

    ○堀委員 向こうがやることですから、こちらからいまそう憶測をする必要もないとは思うのでありますけれども、ことしの国際収支の問題というのは多分に、武藤参考人のほうでは国内の問題を非常に重要視されておるわけで、私も国内の輸出ドライブがどういうふうにかかるような状態になるかということも、一つの側面としてあると思いますが、同時にやはり、こういうサーチャージの問題なりあるいはクォータがどういうかっこうできまるのかということが輸出に非常に影響してまいるかと思いますが、双方非常に関係があって、その輸出の状況によってはさらにまた国内の引き締めを強化しなければいかぬ、こういう問題が来るだろうと思うのです。  私は、実はことしの政府政策をずっと見ておりまして、いまやっております経済政策は誤りだという判断をしておるわけです。それはなぜかと申しますと、金融引き締めだけでここを乗り切ろうというのがことしの政府政策だと私は思います。ことしの予算の状態というのは、いろいろな角度で議論をしてまいっておりますけれども、私は過去二回の引き締めに比べて非常に甘い経済成長、要するに高い成長を見込んだ見通しが立てられておりますから、それに基づいて政府の財貨サービスの購入のワクの範囲で予算を組みました、こういう話でございますが、政府の財貨サービスの購入の伸び率そのものが非常に私は本年度の経済に対しては高過ぎる、こう考えておるわけであります。金融をいま引き締めておりますことの結果が、どういうかっこうに起こってくるかといえば、実はいま窓口で締めております資金は、昨年度の設備投資のしりをいまここで払うというのを締めているわけですから、私は本年度の設備投資は、たしか鉄鋼あたりの一連の、君津をはじめとしての高炉建設の所要資金は三、四百億くらいしかないだろうと思うのです。そんなものは、どうせことし調子がよくなれば来年ゆるむわけですし、ゆるんできた来年金を払えばいいわけですから、設備投資を拘束する力はないわけですから、結局引き締めをすることによって去年の支払いの金がない、去年の支払いの金がないのは企業間信用で下へずらせる、これが中小企業の倒産にはね返るだけであって、全くいまやっております窓口規制なり金融の引き締めというのは需要を抑制する政策になってない、こういう判断をしておりますから、何としても政府として政府需要を大幅にうしろのほうへシフトさせて、需要をいかにして圧縮させるかということなくしては、私はこの国際収支の改善ということは非常にむずかしいのじゃないか、こう感じておるわけでございます。当面、最近の国際収支の指標はやや明るさがあるようでありますが、私はこれはいろいろな問題を予期して、少し関係産業界いま突っ込んで出しているんじゃないか、下半期のクォータの問題なりサーチャージの問題、いろいろありますから、少し押し込みぎみに出ているものの一つのあらわれと、鉄鋼ストの備蓄用その他の問題がプラスアルファしているんじゃないかと思いますので、現在の輸出入の状態というのは必ずしも安心できないのじゃないか。特に輸入の状態というのは、木材なり食糧品なりいろいろなものがかなり高い水準でいっておりますから、私は輸入がなかなかそう簡単に下がらないのではないか、こう判断しておりますから、そういう限りにおいて、私はどうもことしの経済政策という問題は、よほど政府がその気にならないとうまくいかないのじゃないか、こう思っておるわけでありますが、それについて、たいへん総合的な話になりますけれども、ことしの国際収支を改善をして、ともかく安定的に処置をするためにはいま一体何をしなければならないかという点について、堀江参考人から先に伺います。
  32. 堀江薫雄

    堀江参考人 いまのお話、実は私も伺いながら全然同感でございます。日本も同様金融と財政の面におきまして、金融に荷がかかり過ぎている。しかも金融の限界を知ってか知らずか、ここに荷がかかり過ぎて、財政の荷が軽過ぎるという感じがするのであります。よその国でありますけれどもアメリカが同様でございまして、御案内のとおり、財政による引き締めというのはほとんどなされない。一つはベトナムとか国内対策の問題もありますけれども、早い話が昨年八月に提案されながら、まだ全然曙光の見えない例の増税法案、その他財政の圧縮ができない。この点についてアメリカ自身も困っておりますが、同時に世界全体が迷惑をしておるというのが現状ではないかと思います。日本の場合、実態がおっしゃるとおりであって、企業間信用なりまた特に大企業金融力を非常にたくわえてきました近年の状況から言いますと、前回の引き締めのときのように金融引き締め政策にあまり多くを期待しても効果はない、人気の上で非常に金詰まりの不景気だという点を加えましても、効果のほどは少ないというふうに考えられますし、また一方皆さん方のおつくりになった予算が、非常に抑制したとはおっしゃっていますけれども、よく見ていわば中立予算であって、実質的にはかなりまだ放漫な面もあるという点からいって、このほうの抑制が何らかきかないと、やはり金融に荷がかつだけでなくて、全体の国際収支回復はおくれるのじゃないかという印象を私は持っておるのであります。しかし、国際収支全体の問題だけを取り上げますと、一つ国際経済環境、それから一つは国内の企業その他の問題でありますが、国際環境は、一番こわいのがやはりアメリカの課徴金とかクォータの問題が端的に響くという意味でまだ不確定でありますけれども、悪い悪いといいながら、国際環境は実体面で多少よくなっておると私は見ております。悪くない。  それに加えて国内の輸出体制というものは、輸入が昨年かなりたくさんに輸入規模の高かったときに原材料その他が入っていることと、それから設備が過去の設備で相当近代化もしており、大型化もしておるので、この際国内需要を抑制するいまの状況が続けば、相当人気的ではありましても、輸出は続いて出るのではないか、それに私は期待いたしております。日本の特徴としまして、国内を引き締めると輸出に出ていく効果がほかの国以上に端的に早いということからいって、国際収支全体の見通しについては、あるいは先生よりか私多少楽観的ではないか、そんなに思っております。政府の見通しが輸出百二十一億ですか、輸入が百数億といったことでありますが、私は輸出のほうももう少し出ていくだろう、それから輸入はもっと大きいだろう、それにしても貿易収支についてはあるいは二十億近くできるんじゃないか、そうすると全体の国際収支につきましては貿易外経常収支の非常な大問題を含めましても、新しい年度そんなに赤はなくて済む、せいぜい数億、一億か二億、その程度で済むんじゃないか、こんなに思っております。  これは、一つ日本的特徴であるかもしれませんけれども金融引き締めが、実態はそれほど効果がないし、限界があるにかかわらず心理的と申しますか、人気的に輸出マインドにささえられておる効果も見のがしがたいというふうに思います。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題についてお二人の方から、御意見がありましたらちょっとお答えいただきたいのですが、いかがでしょう。
  34. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。私は、国際収支につきましては非常に悲観しておる一人でございます。と申しますのは、悲観する理由があるわけでございます。と申しますのは、日本輸入輸出の実態がこの数年相当変わってきております。実例を申し上げますと、池田内閣のときに非常な経済成長をおやりになった。その間に不況にぶつかった。そのとき引き締めをやって輸出ドライブでどんどん出された。そのときの状況と今日は非常に変わっていると思うのでございます。そのときの状況は、何といっても外国からどんどん借款をして原材料でも輸入した、どんどん生産をやったというので、原材料にしても製品にしても、いわゆるキャピタルストックが相当あったと思うのです。出そうと思えば相当しぼり出される、歯みがきでいえば中身があったと思うのです。ところがいまは、そう以前のようにキャピタルストックがございません。それとともに輸入の内容が、先ほどからお話もございましたように、以前は輸入ということは輸出するための原料を輸入する、こういうのが日本の本来の輸出の形でございましたが、今日は輸入が終着駅のようで、もうすでに出ない輸入がずいぶんございます。たとえば電力にいたしましても、以前は重油の使用量が約六%でございましたが、現在は三〇%重油にいたしておりますから、これは輸出できないということでございます。内需で消化されてしまう。また家畜の飼料にいたしましても、それから人間の食う食糧にいたしましても、相当な金額が輸入されて、内需で消費されてしまう。そういうふうに輸出につながらない性質の輸入部分がずいぶん多くなってきておりますので、これをカットするということになりますと、電力の問題、国民生活に直結していろいろな影響がくる問題がありますから、これは輸入を打ち切れないという性質のものでございます。そういうふうに考えますと、輸出はどうかといいますと、その後、国際生産費比較をいたしますと、日本のものは相当高くなっておりますから、ドライブをかけても、大損をすれば別として、そう簡単にはいかないのじゃないかと私は見ております。  そういう観点から見ますと、堀江さんの御意見よりはやや悲観的でございますが、紆余曲折はあっても、本質的にどうしても日本国際収支はもっと思い切った対策をしないと、単なる金融引き締めとかいうようなことでは、これは一時はちょっと情勢のあれによってしのげても、今後、来たる年も来たる年も国際収支の問題が日本経済をゆさぶる相当大きな問題になりはしないかという心配をしております。現に、どちらかというと買うものがどんどん多くなってきております。出すものといいますと、いまの話で課徴金なりクォータなりができますと、そこに非常な支障がまいりますし、いろいろな点から見まして輸出がますます困難になってくる。こういうときに、輸入もそう以前のようにカットはできない、そしてバランスを合わさなければならないということになりますと、単なる金融引き締めよりもう少し思い切った根本対策をいたしませんと、国際収支につきましては決して楽観を許さない現状ではないか、これが私の見解でございます。
  35. 宮崎輝

    宮崎参考人 お二人の御意見に尽きておりますが、私ちょっとふえんさしていただきますと、去年は輸出する玉がございませんでした。これは私の関係する商品でございますが、そういう意味では、実は内地がもうかるから輸出が出ないのだということのほかに、実際輸出する玉がなかったのです。ところが、ことしは幸いに玉があります。  それともう一つは、内地の流通が当用買いに変わってきまして自然に余ってまいりましたので、そういう意味では輸出余力が製品上出てきたということは去年とは違います。これはやはり金融引き締めの影響が特に繊維品には端的にあらわれますから、それが違うのが一点であります。  その次の第二点でマイナスの面は、機械を新しくつくります場合に、まだ現在でも去年より約二割機械代が上がっております。そういう意味において建設費が高くつきますので、二割ほどよけいかけて同じ生産量しかできないわけです。償却金利が高くつくだけコストが高くつくということで、これからの商品はそれだけ競争力のない商品になります。この秋から冬にかけて機械の発注量が減ってまいりますから、ようやく機械が下がるかなと思って、その近所で設備投資をしたほうがりこうじゃないかと思っておりますが、そういうマイナス面がありまして、これは将来に響いてまいります。  それからもう一つ問題点は、実はこれは日本の非常に基本的な問題ですが、国際競争力を持つ商品というものが日本は非常に限定されております。たとえばいまおっしゃるように、合繊であるとか、あるいは鉄であるとか、その他電気関係の製品であるとかいうように限定されておりまして、一方、雑貨のように後進国でできるものは、サーチャージがかかろうがかかるまいが、どんどん脱落していっているわけです。これは輸出の面から韓国、台湾に食われつつあるわけですね。こういう現象があって、輸出が減っている、伸びないわけです。こういう意味がありまして、これは先ほど私が陳述いたしましたように、非常に大事な通商政策の一環になりますが、特定な産業だけが競争力を持ちますと、どうしてもそれに対する輸入制限であるとか、あるいはサーチャージであるとかいう問題が起こりますから、日本のあらゆる製品が競争力を持って、そしてじわっと伸びまして、ほかの人があまり騒がないような状態で総合して輸出が伸びる、そういう通商政策を——先ほど申しましたいろいろ当面いたしますサーチャージとかクォータの問題のほかに、長い目で見たそういう日本産業政策をとらないと、私は長い目で見て日本の生産をささえる輸出は伸びないというふうに考えております。  当面の問題といたしましては、輸出入を予言することは非常にむずかしゅうございますが、私が関係しております商品では去年よりも実は伸びておりますので、余力のあるところはやはり去年よりは伸びていくだろうというふうに考えております。結局、最後の数字は、出てみませんと何とも私にはわかりません。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に堀江参考人にお伺いしたいのですが、実は昨日のIMFでございますか、SDRが一応話がついたかっこうになっております。しかし、どうも私、SDRという問題が、ほんとうに期待をされておるような流通を円滑にするのかどうか、私はこれはどうも実は非常に疑問があるわけです。片やSDRがあるにせよないにせよ、やはりドルがある程度安定をしない限りは、これは話にならないんじゃないか。その場合に、これはベトナム戦争の問題ですから、まだ全然わかりませんが、全体の流れを見ておりますと、アメリカ国際収支というのは、何もベトナム戦争になったからこうなったのではなくて、途中で一回くらい少し黒になったことはありますが、もうずっと傾向的に赤になっているわけですから、そのことはやはり私はEECなり日本等を含めて、そういう産業構造の変革といいますか、鉄一つをとってみましても、ともかく日本の製鉄がここまでこれたのも、ないところに新しい設備投資をしたということだろうと思いますし、アメリカは、まだなかなかスクラップにできない施設をかかえておるという意味でもやはり生産性がよくないし、転炉なんかの比率を見ても、日本は非常におくれているものですから競争力が出てきたと思うのですが、全世界的にやはり産業構造的な変化がありますから、どうも私は、長期的な見通しに立つと、なかなかSDRぐらいのことでうまくいかないんじゃないかという感じを持っているのです。ひとつそういう国際金融の面で、堀江参考人に、これはいまからSDRにけちをつけるわけではありませんけれども、これはやはり非常に重要な今後の課題だろうと思いますので、ちょっとお伺いをして、これで終わりたいと思います。
  37. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。大体私の考えておったことも堀先生がひそかに懸念を持っておられることと一致するのであります。SDRはやはり人為的の通貨である。しかし曲がりなりにもストックホルム会議で、大体十票のうち九票の合意を得た。そしてお話のとおり、昨日十六日にIMFの理事会、これは理事の数は約二十人でありますが、一応全会一致の決定を受けて発足することになったというのでありますが、一つは、従来の経過で、四年の歳月を経てようやく趣旨が合意になった。あの四年間の論議の過程を見まして、考え方が、ヨーロッパとアメリカ、イギリス、カナダ、日本とはかなり違っておるわけでありまして、呉越同舟の妥協の産物である。そういったことが依然として今度のストックホルムの妥協にまだ存在いたしておるのであります。御案内のとおり、選択的な不参加権とか、あるいはIMFで発動する場合に、八五%マジョリティーといったようなことが確定したことがその例でありまするほかに、SDRの性格そのものと、それからSDRと金との関係、またSDRとドルとの関係、これがいまだ不明確でありまする点から、制度ができることは事実でありまして、おそらく一年余りで実行に入るかと思いますけれども、できた暁、まず発動するかしないか、そこで一つ関所があり、発動したあと各国がどの程度に受け入れられ得るかという問題で最も大きな関所があるのではないか。もともとマーチン総裁自身が言っておりますように、木は育てるものであって、つくる、クリエートするものじゃない。そのことばと同じように、SDRがいわば第三の通貨というようなことですくすくと育つには、まだまだほど遠い。またその間にヨーロッパ、これはすなわち金を中心にした考え方がフランス以外にも御案内のとおり残っておりますし、そういった考え方と、それからドルの現状のままでやっていくといった考えとが大きく今後とも介在すると思いまするので、相当の年数を経て、うまくいっても年数がかかってだんだんと育っていくものではないか、そのように思うのであります。したがいまして、先生のおっしゃるとおり、やはり来たるべき相当期間の間、国際通貨制度の中核をなすのはやはり金とドルであって、ことにドルの安定が一番大事だと思います。国内引き締めその他ドル節約三十億ドル、その他の実績が成功するという見きわめてもつかないと、ことばをかえて言いますと、少なくともアメリカ国際収支の安定の客観的きざしができないと、世界各国がついていかないことではないか。  ところが、これまたもう一つ問題がありまするのは、ベトナムに対しても同様でありまするが、アメリカは大国過ぎて、大国なるがゆえに、また経済力が強いがゆえに、自分の国の通貨に対する見方が相変わらず甘過ぎるといったことがありまするので、そういう点からいってドルの安定が最も大事であるのに、ドルがはたして安定化の路線を通ってくれるかどうか、この点が非常に問題の点であると思います。しかしそうはいっても、一国の通貨が国際決済通貨になっておるのでありますから、一国の利害だけで国際通貨を運営されては迷惑は世界各国が負うという意味で、世界の最も専門的な世論をアメリカに集中して、ドルの安定をはからせるということも一面の義務かと思うのであります。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  39. 小峯柳多

  40. 田中六助

    田中(六)委員 私は自由民主党を代表する意味ではございませんが、各党の方々がそれぞれなさっておりますので、重複しない程度に御質問をしたいと思います。  宮崎参考人もこの課徴金と貿易制限の問題でアメリカにお行きになって、私も党を代表いたしまして向こうに参って、全く宮崎参考人と同じようなことを感じて帰ってきているわけでございます。ただ私が思いますのに、今回のアメリカの措置というものは、やはり何と申しましてもベトナム戦争と、それから選挙の年であるという二つのことがバックグラウンドにあると思うのです。したがって、輸入課徴金とかいろいろな輸入制限措置法案というものが日本に向けてなされたかどうか。これはそうではなくて、実はEEC諸国に向かってなされたのが日本に一番響くというようなことで、経済界もそれから私どもも向こうに行ったわけでございますが、向こうに行った私の感じは、ほんとうに国会議員が向こうの国会議員にいろいろな陳情をするというようないやな気持ちが残って、アメリカの人々と接しておると、だんだん説得力がなくなるわけです。それは困ったときには、ほんとうアメリカがいままで日本と共同してきておって、こういう問題で日本が一番先に、よし、そんならおまえのところに協力してやろうとくるなら話がわかるが、それが全然逆の方向にきておるということに、やはり問題があると思うのです。今回の経験から、一国だけに日本貿易量の三〇%を依存するというようなことはどうかという感じを宮崎参考人も持たれておりますし、それから堀江参考人もそういうような貿易の多極化を言っておりますが、しかし当面具体的な措置といたしましては、やはりアメリカとの貿易というものが、当分の間日本貿易の基本になっていくことは事実でございます。したがって、アメリカにいろいろなことを要求する前に、自動車部分品の自由化とかあるいは鉄鋼の自主規制の問題もございましたが、この際逆にアメリカの物資を積極的に買ってやろうというような働きかけ、あるいはまたアメリカ輸入する物資について、ドルの負担にならないような何らかの措置をやってやるとか、そういうことも考えてやるのが、やはり日本と米国との間のいままでの長い間の協調関係からして、向こうの立場になるということも日本にとっては必要じゃないかと思うのです。そういう点につきまして何かいいアイデア、あるいは何か気のついたことがございましたら御意見を述べてもらいたいと思います。宮崎さんにお願いします。
  41. 宮崎輝

    宮崎参考人 実はそのことにつきまして、われわれのミッションの中からこういう提案をしたのです。アメリカはいま綿花作付を制限しておるじゃないですか、いま現にわれわれはソ連から日本全体の綿花の所要量の一二%を購入しております。そこまで触れたのです。われわれはアメリカからもっと綿花を買いたいのだ、一億ドルないし一億五千万ドルの買い付けの余地がある。それはわれわれとしては具体的に文書で出したわけです。そういたしますと、アメリカがいまいわゆる貿易収支の改善を五億ドルはかっておる。しかしアメリカは一九六七年で三百十億ドルの輸出をして、四十一億ドルの黒字を出しておるじゃないか、それを五億ドル改善するくらいのことであれば、いまわれわれはかりに一億五千万ドルくらいのものをよけいに買い付けてやる余裕があるんだ、そのほかにアメリカのビッグビジネスがもっと国策に協力して輸出にドライブをかけてくれないか、そうしたら五億ドルくらいの改善はできるじゃないか、これはわれわれ非常に言うたわけです。それに対しまして向こうは、これは国務省の人でしたけれども、それは実はビッグビジネスに言ったんだけれどもアメリカのビジネスマンというものは、もうからない輸出はしないんだというのですよ。そこが日本と違うわけですね。したがって、さっき言いましたケネディラウンドを相手方のほうで繰り上げて実施してくれますと、それだけ輸出しやすくなりますからね、そういうふうに言ってもらって初めてアメリカのビジネスマンは乗るんだ。こういうのはわれわれにはちょっと理解しがたいことであって、危急存亡のときであるならば、もう少しアメリカ企業家自体が国家の利益を考えて行動すべきじゃないか、われわれとりあえずは一億ないし一億五千万ドルは買いますよと、こういう提案をしたわけです。しかしアメリカはそういうようにビジネスマン自身が日本とは違った態度をとりまして、これは繰り返し繰り返し私どもは主張して向こうと合わなかった点であって、輸入を押えるというのじゃなしに、輸出をもっとふやしなさい、そして五億ドルぐらいの改善をやるのは何でもないじゃないですか、こういうのが私ども意見との分かれ方でございましたけれども、しかし向こうの、たとえば製造業者協会というのがありますが、その会長がその意見に対しては非常に拍手をして賛成してくれました。ですから全部の意見としては、貿易を減らしてバランスするのではなくて、拡大してアメリカの収支を改善するんだ、それにはやはり日本もそういうのに協力してほしいということで、私どもケネディラウンド繰り上げに賛成だということを申し上げたわけでございます。
  42. 田中六助

    田中(六)委員 アメリカのやり口は、まあビジネスライクで、私どももいろいろ考えるわけでございますが、現在のアメリカの状態から見ますと、やはりもう少し、主張することだけではなくて、向こうの立場に立つということもまた考慮の中に必要じゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、ちょっとアメリカがこういう措置をとると日本からふっ飛んでいくというようなことが、日本並びに日本の将来にとってプラスかということは、われわれ政治家も十分考えておりますが、貿易をよその国にもう少し変えていくというような場合、さっきソ連との貿易、シベリア貿易あるいは中共との貿易ども、各参考人も触れられておりますが、中共貿易の将来につきましてどういうふうに見られておるか、どの程度の価値判断をなさっておるか。御承知のように往復一億ドルの貿易の話し合いはついておりますが、その決済の方法については問題が残っておりますけれども中共貿易の将来ですね、経済人として経済的にどの程度の評価をしておられるか、武藤参考人はじめ、三人の方々の御意見をお伺いしたいと思います。
  43. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。この貿易の問題につきましては、確かにいわゆる一方交通でないわけでございますから、相手のことも考え、こちらのことも考えてやるということになるわけでございますが、そういう点から見まして、確かに私どもも相手の立場ということも考えなければなりませんが、ただ、こちらが相手の立場を考えても、向こうがこちらの立場を考えてくれませんとまことに困った問題になるわけでございます。そこで、いろいろな問題もございましょうが、つまりいまの貿易をもう少し分散したらどうか、確かにこれは理論的には必要な問題ですが、いまああいうふうにわが国貿易の三割が対米貿易だということは、これは勝手に片寄ったわけではなく、結果においてああいう現象ができているということでございまして、結局そこには有無相通ずるものが両国の間にあるという関係があるわけでございます。しかしながら、御承知のように、確かに日本貿易の三割というものをアメリカ一国に依存していることは、日本立場から見ましては、非常に考えなければならないものである。そこで考えられることは、何と申しましても頭数から申してソ連、中共貿易をどうするかということでございますが、これは確かに私は長い目で見ますと、やはり潜在の需要といたしましては非常な大きな需要があるし、わが国もこのソ連なりまた中共との貿易はぜひとも進めていかなければいけないということは、これはもう異論はないわけでございますが、ただ、ソ連とか中共の国柄がいわゆる計画経済でございまして、買い付けにつきましても非常に一方的でございます。たとえばあるときはどんと買う、あるときは買わないという、不安定が非常にあるわけでございます。たとえば羊毛の買い付けを見ましても、相場のいかんにかかわらず、買うときは豪州でどんと買ってしまう。そのために非常に値が上がるというようなこともございますが、要するにそういうようなこともございますから、そういう点は相手国とよく話し合って、もう少し有無相通ずる形にどうしても持っていかなければならない。それで、さっき宮崎参考人からお話がありましたとおり、日本も相当綿花をソ連から買っているわけでございますから、これらの点につきましてはやはり相当ソ連貿易も拡張の方向にまいっているわけでございます。ただ国柄が違いますし、決済の方法とかあるいは貿易という考え方そのものが、自由貿易というより計画貿易というような形で、この点を日本が十分配慮しながらどうやって貿易をやっていくかということが一つの課題でございます。ただ潜在的な需要から見て、ソ連と中共をのけて日本貿易を考えることは、これは非常に無謀なことで、好むと好まざるとにかかわらず、やはり中共あるいはソ連貿易というものは、いろいろな点から見ましても有無相通ずる幾多のものがございますから、これをぜひとも長期計画によって進めていく、そしてまたそれによって必ず私は両国の共通の利益を見出し得る問題がたくさんあるのじゃないかということを考えておるわけでございます。
  44. 宮崎輝

    宮崎参考人 お答えいたします。ソ連との関係では私は非常に経験があります。実はプラントを二回ほどソ連に輸出いたしました。二千五百万ドル一回、今度一千二百四十万ドル一つやりましたが、特に今回は世界十六カ国の競争の中で私のほうにきまったわけです。ソ連貿易についてはそういう意味でプラント輸出というものが非常に有望でありますが、このときやはり問題になりますのは、先ほど来も話が出ました延べ払いの条件であります。あとは技術さえよければノーハウ・フィーはかまわずに払ってくれる国柄です。それで、非常に正確に約束を守ります。こういう意味ではソ連という国は将来プラント輸出の場としても重要であるということをまず申し上げたい。  それから第二は、御承知のようにソ連は軍事的に非常に優秀な、強大な国でございますけれども、モスクワやレニングラードにおいでになればわかりますように、婦人子供はだいぶ服装はよくなりましたけれども、紳士諸氏に至ってはまだまだという段階ですから、ほんとうに衣料の世界はこれからなんですね。そういう意味では最近非常に合繊の二次製品が出てまいりました。ことしも非常に出てまいりました。このソ連に対しましては、アメリカも実は非常に働きかけておるわけであります。アメリカ実業人は向こうにたくさん行っております。そして現にプラントを輸出しようとしております。ですから、表向きは一応アメリカは国務省の認可が要るそうですけれども、対ソ貿易というものに対してアメリカは非常に熱心である、日本と競争していくんだというような体制にあることをわれわれは十分に認識しなければならない。これは同時に将来中共に対しても当然起こると思うのです。確かにアメリカに行ってしばしば非公式に言われましたことは、中共が十年ないし十五年後に原子力を非常に強大化してきた場合に、これはよけいな話ですが、中共と原子戦争をかけてアメリカ日本を守ると思っているのか、こう聞くのですよ。いや、そんなことは思っていませんよ。いや、それならいい。こういうことを言っておりますけれども、これはアメリカ人の実際の常識なんですね。ですから、私どもアメリカの実業家に会ってよく知っていますが、何とかして中共貿易したいという気持ちは十分にあります。ですからベトナムを通じ、その他を通じて中共との関係がよくなってくれば、必ず私はアメリカ実業人中共に乗り込むと思うのです。だからわれわれはいまのうちに、しかも現在EECはもうどんどん入っておるわけですから、いまのうちにわれわれは中共の問題と真剣に取り組んで、プラント輸出もやれるようにしておかないと私はおくれると思うのです。私ども実業人ですから、政治がどうあろうと、北ベトナムにもみな行っておるのです。チェコ、ポーランド、ルーマニア全部私どもは行っておる。ですから、そういうような問題を離れて、われわれは長い目で見て、もう中共とこれはやっておくべきだ、こういうふうに考えております。その潜在需要たるや、あの人口で、あの綿布をまとったまことにあわれな服装をしておりますけれども、これはソ連の革命の歴史のあれと同じように、必ず消費財に向かってくるということは当然でございまして、私はやはりソ連、中共とわれわれは非常に密接な経済圏を将来考えるべきだということをほんとうに真剣に考えております。これはアメリカへ行って聞かれたときにも、EECができたようにやはりわれわれはアジアでそういう組み方をせざるを得ないのだということをはっきり向こうの人に言いました。そういうつもりでおります。
  45. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。いまお二人の参考人お話で大体尽きておると思いますが、多少ふえんする意味で申し上げます。中共、北朝鮮、ベトナムに対する問題と、それからソ連並びにあとの八つの東欧諸国とモンゴル、この問題と多少区別して考えたほうが便宜かと思います。ソ連や東ヨーロッパ諸国につきましては、日本との貿易は今後も着実に伸びると思います。しかし、いまソ連だけで六億三、四千万ドルの実績が昨年でありますけれども、その多くはいわゆる標準決済に基づく普通の貿易であるわけであります。ソ連もある程度着実に伸びておりますが、これに加えるにシベリア開発その他いま宮崎さんのお話のようなプラント輸出について延べ払い条件がよくなるとか、あるいはその他に引き取り保証、その他技術的な問題があり、特に国のたてまえが違います点を法制的にある程度固め得るというようなことになりましたら、一つの飛躍が来るのでありまして、六億ドルの年間輸出貿易が十億ドルくらいには案外早くいくのではないか。東ヨーロッパとの関係におきましても、規模は小さいように思いますが、大体同じようなペースで進みそうに思います。それから中共その他アジアの社会主義圏につきましては、これはやはり長期的、基本的な見方と、さしあたりの問題があると思いますが、さしあたり短期の見通しとしては、御案内のようにあっちこっちに手かせ足かせやレッドテープがありまして、これは日本と中国の両サイドにあるわけであります。そう急速には伸びがたいと思いまするが、何ぶん中共だけで七億の人口がある。そして文明の進歩とともにやはり個人の生活水準も消費水準も上がっていくわけでありますし、また産業が開発されましても、先進国相互間の貿易というものはむしろ大きな発展の要素でありますから、中国が相当工業化が進んできましても、お隣であり、かつお互いに人口が多いということで、長期的に見ました場合に最も有望な市場である。また、これを開拓するのは日本人の一種の宿命的な使命であるというふうに考えまして、どちらも今後努力すべき地域だと考えております。
  46. 田中六助

    田中(六)委員 三参考人の見解非常によくわかりました。私も今回のアメリカの措置で、アメリカというのはちょうど国際連盟を自分で提唱しておいて参加しなかったように産業貿易の拡大、貿易の自由化を一人で背負ったようなことを言っておきながらこういうことをするということに非常に矛盾を感ずる。日本貿易立国であるし、こういうことを考えると、やはり貿易ということ中心で各国との貿易を多角化しなければいかぬというふうに考えておりますので、宮崎参考人が言われましたように、条件の排除さえしてくれれば商売はおれたちでやるんだというそのお気持ちを十分認識して、私どもは、足かせ手かせともなっているその条件の排除には一生懸命つとめていきたいというふうに考えております。  それから、最近の金融引き締めの問題でございますが、世界貿易の見通し、先ほどOECDの見通しを七%くらい拡大の見通し、まあ六・五%というふうに見ておる人もありますが、非常に明るい見通しでございますが、日本の場合、現在の金融引き締めにロスがあるという見解もございましたが、このままの引き締めを続けていくことがどういうふうに影響するか。過度の引き締めが、むしろ競争力を強めなくちゃいかぬのが競争力を衰弱させるという過去の例もございますし、そういう点でもいろんな意見に分かれると思いますが、この点につきまして、私の持ち時間があまりありませんので、簡単にお三方の御意見を伺いたいと思います。
  47. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。金融引き締めの問題でございますが、実際問題として相当影響が出てきておりますが、ただ先ほどもお話のありましたように、金融引き締めだけやっておりますと非常な片寄った現象が出てくるのじゃないか。もう少しやはり総合的に、金融引き締めと同時にいろんなものをやはり引き締めていくという対策がなされませんと、まず中小企業あたりが相当脆弱になって、さらに倒産を生むような状況に至る、憂慮する事情もあるわけでございますから、引き締めを強めたらどうかということになりますと、さてどうなるかということは実際むずかしいのですが、やはり中小企業には相当その影響があらわれるのじゃないかと私は見ております。
  48. 宮崎輝

    宮崎参考人 お答えいたします。金融引き締めがありますと、かえって金がよけい要るのです。これは特に選別融資をいたしますので、一部の優良企業は金に困りません。しかし、非常に金をよけい借り込むわけです。そうして準備をしておくわけです。ですから中堅以下のところには金が回らぬわけです。それでどうするかといいますと、私どもはその金で中小企業の倒産を防ぐわけです。何のことはない、私どもがクッションをやるわけです。金融機関の役割りをやるわけです。こういうのがいま現に端的に出ておるわけです。にもかかわらずいま倒産が非常に続いておりますが、つまり結局私は、金融引き締めというものはさっきお話が出ましたが、もっと日本輸出を助長するのだということにありますけれども、先ほども鉄鋼その他の投資の話が出ましたけれども、いまほんとうに現に金融引き締めの効果輸出ドライブに必ずしも貢献をしていないと思います。実際はちょっと金を貸してやればすぐ輸出のできるところには金が回らない。大きな一けた違う——他の事業のことをあまり言っちゃ悪いですけれども、鉄とか電力とか自動車とか、そういうところに金が大きく回って、一けたも二けたも違う小さいところがいま倒産しておるという、金融引き締めの悪い面がいま出てきておるわけですから、私はそういう意味金融引き締めだけでいく政策はもうそろそろ考え直さなくちゃならないのじゃないか、社会問題だというふうに考えております。しかも私どもは金がかえってよけい要る。借金もよけい要るし金利もよけい払っておるということで、つぶさに私どもは経験を持っておりますから、金融引き締めというものはでき得べくんばほかの政策で行けぬかなというように思っております。
  49. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。金融引き締めの効果につきましては、最初の先生とのお話でやりとりいたしましたので、大体尽きておると思うのでありますが、しかし金融引き締めの目的が国際収支の改善、それからできればその間接効果として国内の成長に多少ブレーキをかけ、物価の高騰に抑制作用を及ぼすということであろうと思います。物価につきましては、日本のような物価体系、賦払い信用制度も非常に発達していないというようなことに対して金融を締めたところで、たいして効果はないのであります。ことに消費者物価は金融引き締めをしておってもじゃんじゃんと上がっておるというのが現実でもありますし、この効果はない。それなら国際収支についてどうだということにつきましても、これはおおよそ限界があるということは、お二人のお話にも、また私の先ほどの発言にも申し上げたとおりであります。しかしそれかといって、いまの段階で国際収支が相変わらず赤字基調であるときに、引き締めをいま解除することはできない、これもまた事実だと思いますので、私としましては、現在の引き締めはさらに続けていく、しかしできれば選択的な引き締めをやっていく。ことに輸出ドライブに必要なものに対する特別の金融はむしろ積極的に大いに盛んにする、たとえば長期の輸出に対する長期輸出手形を日本銀行で割るとか、あるいはその種の長期金融に対する輸出奨励といったようなものが考えられる。いまは御案内のとおり、輸出貿手についてのみ六カ月以下の再割引が認められておりますけれども、この種のことはすでに英蘭銀行でも行なわれておるようなことであって、そういった輸出振興ないし輸出につながる経済協力の振興に役立つような面は、全体の引き締め基調にかかわらずむしろ大いにゆるめる、あるいは積極的にさらに貸し増しをしていくといったような選択的な配慮が必要でなかろうか。  それからもう一歩、金融引き締め効果には限界である以上、やはり財政面からする金融、財政のミックスといったことがいま非常に必要でなかろうか、そんなふうに思います。
  50. 田中六助

    田中(六)委員 私もこれで最後にしたいと思いますが、先ほどから堀江参考人から国際収支の問題が出ておるわけでございますが、国際収支の天井、この問題は輸出性向とか輸入性向との関連があって、どこにどういうふうな天井を設けるかということは非常にむずかしい問題でございますが、国際収支の問題について、三点だけ堀江参考人にお伺いしたいと思います。  まず第一は、外貨の保有高というもの、それは各国によってまちまちでしょうが、日本の場合どの程度あればいいのかということについて、堀江参考人は二十五億ドルから三十億ドルあればいいというふうにおっしゃいましたが、その点をもう少し補足した説明がほしいということです。  それから、日本の金の保有高、金塊の保有高は、三億三千万ドルか三億五千万ドル程度でございますが、この金の保有高が少ないということで今度のゴールドラッシュのときにいろいろあわてた意見があちこち出たわけですが、一部には金の持ち高が問題ではない、高度成長政策というものが大きく飛躍し日本経済が飛躍したのは、やはり金利も何もつかない金を持たないで、要するにドルを持ってこの経済の成長というものがなし遂げられたという見解もあるわけです。しかしいずれにしても、将来とも金価格の引き上げ問題あるいはひいては通貨の一斉引き下げとか、世界貿易というものはわれわれの皮膚で感ずる限りインフレ傾向にあるわけでございますので、われわれの外貨の保有高の中で、金という問題はやはり頭からはずすわけにはいかない。この金の保有高を外貨の中でどの程度にしておったらいいか、非常にむずかしい問題ですが、御見解を伺いたい。  それから最後に、堀江参考人が、私の聞き違いならば別でございますが、国際経済世界経済など全体的な見通しが政府並びに一般的にまずい、へただというようなことをおっしゃったと思うのですが、このへたな具体的な何か例がございましたら……。それからそれに対する対策ですね、そういうものがございましたら述べていただきたい。  以上、三点をお聞きして終わりたいと思います。
  51. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。第一問、外貨準備の問題であります。御案内のとおり日本国際収支、特にその中での貿易収支規模も、輸出が百二十数億ドル、輸入が百数億ドルないし百十億ドルといった規模に相なっておるわけでございます。外貨保有高について何億ドルあればその国の国際収支並びに貿易収支について適正かといったきめ手の論理ないしは理論はないわけでありますけれども各国の例その他から考えまして、また国際決済の面で大きな支障がきたようなことを考えた万一の場合を予想いたしまして、まず実務家の常識は、輸入規模の三カ月分といったものが一応最低ラインではなかろうかといったような、ばく然としておりますけれども、そういった一つの腰だめ的な考え方があるわけであります。これはちょうど当座預金に対して幾らぐらい確実なキャッシュ準備を置いたらいいかといったような問題であるわけであります。当座預金につきましても、イギリスあたりではやはり二五%といったものはいつでも払い得るようなキャッシュまたはキャッシュ類似の形で用意をしなければならぬといったその考え方と同じでありますが、日本の場合、百ないし百十億ドルの輸入規模に対して三カ月分といいますと、やはり四分の一でありまして、そういうラインから申しましてもまず二十五億ドル以上あったほうがベターだ。ことに御案内のとおり、国際経済国際金融社会が動揺いたしてまいりますと、その意味で動揺に備えるためにもバッファーは厚くしなければいかぬということから、それが必要だというふうに私考えておりまして、多ければ多いにこしたことがないのでありますけれども、最低二十五億ドルくらいは必要だというふうに考えております。しかし、これを調達するには、長期に借りてきて準備を厚くするというのじゃなくて、やはり毎年毎年の国際収支に極力黒字をつくって、それで累積をしていくという方法が考えられるわけであります。  次に金の問題であります。外貨準備の中の金のあり高というのは多少微妙な問題で、なかなか発言しにくい問題でもありますけれども、また同時にお話のありましたように、将来長きにわたって国際金融制度の上で金の貨幣的役割りがどの程度続くかといったようなむずかしい問題とも考え合わされるのでありますけれども、私見をもってしますと、SDRが発動するという事態になりましても、発動する過程の現在までのいきさつから考えて、SDRが金と全然離れた人為的通貨として受け入れられ通用するということは考えられないのでありまして、直接、間接何らかの形で金に関係を持つということがどうしても必要だと思うのであります。したがいまして、その意味からも外貨準備の中の金のあり高はやはり多いにこしたことはない。お説のとおり、金で持っておりますと保管料がかかるだけであって、利息も生まないという点はありますし、また日本の場合は高度経済成長を続けるためにそういった外貨準備は一ぱい一ぱいのぎりぎりで使ってきた、ためる余地がなかったといったことは事実でありますし、それでよかったのでありますが、過去は過去として、金が非常に少なかった責任はまずたなに上げて、今後ともやはり外貨準備のうちの金を極力ふやしていくといった努力はSDRができた後といえども必要ではなかろうか、そんなに思います。御案内のとおり、いま三億三千万ドルの金であります。これに対しまして、ドイツでも外貨準備の約五割は金で持っております。それからフランス、スイス、ベルギーのごときは八割以上を金で持っておる。あれほど困ったイギリスでさえ外貨準備のうち金を四割以上持っておるわけであります。それから、通貨の関係から申しますと、金に一番縁遠い通貨は、やはりカナダドルとか日本の円とかであって、アメリカのドルは決して金に縁遠いわけではないのであります。やせてもかれても世界の金保有量四百億ドルのうちの百億ドルを持っておるわけでありまして、アメリカなどは、むしろまだ金に近いくらい金を持っておるというようなことを考えますと、日本も、たとえば経済成長を多少安定成長に切りかえてでも、外貨準備を厚くするとともに、その中の金のあり高もふやしていくといったことは当然ではないか、そんなに思うのであります。  それから、先ほども国際収支を総合的に長期的に打ち立てなければならぬといった発言を、私申し上げましたけれども、これは例もありますが、特に国際収支をウォッチする日本の見方が、何と申しますか、やはり大蔵省中心であって、片一方経済評論家的なような立場から経済企画庁がこれを見ておるといったことで、もう少し緊密に有機的に総合的に、やはり内閣全体で国際収支を常にウォッチしておる、そして特に海外経済情勢とか、日本国際収支に影響を及ぼすような国際政治経済情勢が出てきますと、極力あらかじめ早く知ることと、それの日本への影響を極力計算する、短期の国際収支見通しも、また国際経済見通しも、また長期にわたる計画もそういうことが必要ではないか、そんなに思うのであります。昭和三十年代に御案内のとおり極端な国際収支危機が三度ありました。あのときでも、国際収支情勢を、もう少し総合的に足元をにらみながら、また海外あるいは国際経済金融情勢をにらんでおれば、少なくとも三カ月くらい早く準備あるいは対策がとれたのじゃないか、こんなように思うのであります。四十年以後になりまして、御案内のとおりアメリカ政策が出てくる前に、国際経済情勢は変わっておるわけでありますから、そういったことは完ぺきとはいかなくても、相対的には予防手段も多少考えられるというようなことを考えまして、長期的、総合的に国際経済情勢の把握と国際収支のとらえ方を、全国的と申しますか、日本的あるいは全内閣的に考える方法はなかろうかというのが、私の発言の背景であったわけであります。
  52. 田中六助

    田中(六)委員 どうもありがとうございました。
  53. 小峯柳多

  54. 中村重光

    中村(重)委員 参考人お三方のきわめて率直な御意見を伺いまして、激動する日本経済の中に非常に真剣に取り組んでいらっしゃるという感じを受けまして、非常な力強さを実は感じたわけです。  そこで、同じ問題をそれぞれお三方にお伺いしたいと思いますけれども、時間の関係もございますから、もし私の質問で、前の参考人の方にお尋ねをしたことで関連したことがお答えを願えれば、なお幸いだと思います。  最初に武藤参考人にお尋ねをいたしますが、御承知のとおり繊維、雑貨等を中心としましての中小企業輸出の規模というものが例年低下をしてきている。五〇%程度からいま四五%を割るといったような程度になってきております。かてて加えて、アメリカ市場において開発途上国の追い上げで非常に窮地におちいりつつある。その上に課徴金の制度が実施される、あるいはまたこれが見送られて他の方法がそこに実施されるということになった場合、さらには特恵関税の問題も当然これは実施されるであろうと予想される。そうなってまいりますと、中小企業の現状というものはますますもって苦しくなるというふうに思うわけであります。そこで中小企業が競争力を持つために、どのような道を選ぶべきであるかという点。繊維産業中心になろうと思うのでありますが、それらの点についてのお考え方をまずお聞かせを願いたいと思います。  それから、繊維産業の問題でございますが、御承知のとおりに労働集約的な産業から資本集約的な産業へと転換していくということになってまいります。現状は三交代制が実はとられておるようでありますが、これがはたして成功し得るのかどうかということと、それから開発途上国等において労働集約的な産業としても、労働賃金等が非常に安いわけですから、十分な競争力を持っておる。加えて設備の近代化というようなこと等がずっと進んでまいりますと、ますますもって競争力が高まってまいりましょうから、日本の現在の制度切りかえという形の中で競争力を保持していくということが、これがはたして成功し得るかどうかということについても、ひとつお答えを願いたいと思います。
  55. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。中小企業の問題は、国の問題としてもきわめて重要でございますが、私は繊維産業に従事しておりますので、小さな窓からのぞいて問題を考えたいし、また意見を申し上げたいのでありますが、今日中小企業が非常に弱体化しつつある原因が二つあると思います。  まず第一は、やはり中小企業というものは金融的に非常に恵まれてないと申しますか、先ほど宮崎参考人からもお話がありましたとおりに、金融引き締めでも、何と申しますかその最もきびしい面は中小企業になる、こういうようなことを見ますと、全く日本中小企業はどこにいくかということを考えますと、これは非常な深刻な問題でございます。ただ、ここで大企業とか中小企業というものをあまり概念的に考えると、非常な錯覚になると私は思うのでございます。かつてアメリカで大企業中小企業のラジオの討論会がございましたが、私はそれを聞いておりました中で、非常に感じましたことは、大企業中小企業というものは一つの山みたいなものだ。頂を論ずるかすそ野を論ずるかだ。その例といたしましてフォードという巨大な企業は、二百七十の中小企業の上にささえられておるのだ。こういう話をしておりましたが、これはアメリカだけでなくして、わが国においてもそういうことが言い得ると思います。今日、鉄にしても自動車にしても繊維にしましても、むしろそのすそ野をささえ、また頂上をささえているのは中小企業だと思うのであります。しかも最も恵まれてないと思います。たとえば金融政策を見ましても、いろいろな点におきましてあまりに大企業に片寄り過ぎて、中小企業と大企業との関係、国全体の姿を見失っている面がありはしないか、こういうふうに考えるのでございまして、今日中小企業はもう労力の点におきましても一等困っておるわけでございます。というのは、かつて中小企業というものは非常に豊富な労力を持っておるということがわが国中小企業の強みでございました。それとともに物が安くつくれる体制を持っておったということでございます。そのいわゆる長所は、いまなおまだあるわけでありまして、先ほど宮崎参考人中小企業でなければやれないし、また中小企業のほうが安いのだと言われたのは確かにそうでありまして、たとえば合繊というような近代産業を見ましても、それを糸に紡いだり機を織って輸出するのはやはり中小企業がやっておるわけでございます。やはり金融引き締めになりまして、そのたがが弱れば、われわれ系列が助けて、結局同じことなんでございます。ただ力の関係だけなんでございます。ただ今日大企業の問題はあまり恵まれ過ぎている。もっと中小企業の問題についてやはり総合対策を立てまして、そうして中小企業を強化することが、したがって大企業を強化することになると思うのでございます。中小企業がつぶれれば私は大企業もつぶれてしまうと思う。だから今日全体的に見ますと、むしろもっと中小企業を重点的に施策を打ち出しましてこれを強化することが国の産業の興隆になりますし、また先ほどからのお話しの輸出振興も、この中小企業が健全でなければ大企業だけ残ることもできませんし、また大企業であればさらに高いコスト輸出しなければならぬ、こういう問題がございまして、他の業界のことを申し上げることははなはだ慎まなければならぬと思いますが、自動車にいたしましても、安くつくるのには下請で大部分やらなければ安くつくれないというのが日本の現状でございます。そういうふうなことを考えますと、特に中小企業の点につきましては、今後このままほうっておけばますます労力は大企業に行ってしまう。そして中小企業のほうへは労力が行かないで、今日の中小企業の倒産の実態は労力が来ないために倒産しておる。単に金融だけでなく人手が来ないのだ、仕事をやれないのだ、こういうことからの倒産もずいぶん数多くあると思うのでございます。以前は倒産といえば金融から来たものでございますが、今日は労力倒産ということばはございませんが、結局労力が来ないから仕事ができない。また労力が来ても非常な高い労力をもって使わなければならぬから、それでは中小企業が採算が成り立たぬ。こういうのが中小企業がいま最も直面している悩みじゃないかと思うのでございます。  それで、繊維工業につきましても、その点私どもはやはり大企業として見るだけでなく、中小企業を含めた政策を考えないと結局は大企業が困ってくると思う。というのは、私どもでもいろいろなことをやりましても、その生産の大部分というものは中小企業の手をかりて輸出しているわけでございます。また商社にいたしましても、中小企業輸出してないというか、商社でやはり賃紡させたりあるいは賃織りをきせて商社の名で輸出しているわけでございます。実際やっているのは中小企業がやっているのでありますから、これらに対しましても、もう少し労働政策から申しましても、中小企業労力が枯渇しないようなひとつ配慮をする必要があるのではないか。たとえばこれはほんの一つの案でございますが、フランスでは消費面に従事する労務者には人頭税というのが課せられており、自然生産面に労力が移行していくような政治をやっておりますが、もう少しやはりその面についても、ただ労力が自由に流れてくるのだ、しょうがないのだといえば、これは私ども繊維工業の関係におきましては、中小企業が金よりまず人の面から非常な憂慮すべき状態に入っていくのではないか。むしろ金よりも今日——こういう話を申し上げるとなんですが、ともかく人手を貸してくれたら仕事しますというような時代になっておるわけでございますから、その点は結局、なぜ労力中小企業に行かないのかということを国全体から考えなければならぬ。それにはやはりさっき申したレジャーブームとか、あるいは消費面に人が行ってしまって、むしろ中小企業の生産面には人が来ないということは、やはりある程度政治によって労力の流れを国全体の立場から抑制するような人頭税といいますか、あるいはいろいろな方法でそういう面も必要じゃないかと思います。  それと同時に、今日もう大中小の賃金差というものがなくなってきたわけでございます。だから中小企業としましては全くうま味もなければ、中小企業がかつて持っておった武器をだんだん失ってきた、こういうような状況でございますので、御質問がございましたので少々いろいろな横道へ入ったような答え方もいたしましたけれども、私が最も憂慮しているのは今日の中小企業の問題でございます。  これを繊維工業から見ますと全くいろいろな事実をもってお答えできると思いますが、時間の関係もございますので、現状こうだということだけ申し上げ、またこれはひとり繊維工業のみならず、わが国産業政策あるいは輸出振興政策から、恵まれない中小企業にもう少しこの国の政治なり何なりから社会政策の面も私は必要だと思います。また産業政策的に見ましても、特にこの中小企業を強化することが大企業を強化することだというこの関係を理解いただきまして、そういうことについてはぜひとも国民一体となって中小企業問題を今後取り上げていくことが、私がさっき申したようないわゆる大企業利益にもつながっていく問題にもなると思うので、はなはだ粗雑なお話をしましたが、以上をもってお答えといたします。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 繊維工業に対する問題点といいますか、景気変動の波が繊維工業の場合は非常に激しいわけですね。その関係もありましょうが、繊維工業に対する政府施策というものも非常に混乱をしておるという感じを受けてならないのです。まあ非常に生産過剰である、したがって過剰紡機を凍結させてこれを廃棄させるという繊維新法にありますような政策をとる。もう朝令暮改みたいになるのです。これを直ちに緩和する、緩和したかと思うとさらにこれを引き締めていこうというように、非常な混乱をしている。これは計画的でなくて、あるいは見通しの誤りといったようなもの等々もあるんだと思うのございますが、繊維工業に対する政策の問題点として、これは国際競争力の関係も出てまいりますから伺うのでありますが、この点に対してひとつ御意見を承ってみたいと思います。
  57. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。繊維産業の問題につきましては、御承知の構造改革がもうすでにできております。ところが、その後非常に情勢が変わりまして、むしろ思わない綿糸高、そういうような市況によりましていろいろな問題が生じたのですが、私は基本的にまた長期的にはどうしてもやはりああいう構造改革をいま打ち出しておかなければ、先に行って困る問題ができるのではないかと考えるのでございますが、何と申しましても、いまもうかっている紡機をスクラップにするというようなことは実際問題としてはこれはどうもやりたくないという気持ちもわかるのでございます。その辺をどう調整するかということでございますが、結局、やはり先ほどの綿糸高というようなものも非常に異常な現象なのでありますから、やはりもう少し情勢を見ていけばこの構造改革というものが理解されるし、またみなの協力によってこれは実施されるようになっていくのだと思いますけれども、私は構造改革について自体には誤りがないと思うのですが、ただそのときのいわゆる異常な、綿糸が思わない高くなってもうかってきたというような状況から、どうもあれは困るじゃないかというような問題が出ているのでありまして、長期的に見ては、どうしてもああいう問題をやらないと日本繊維工業というものは将来非常なむずかしいところに入っていくということは、先ほどから申しているように、やはり錘数から見ましても、たとえば英国のごときは戦前の二割五分になったわけでございます。ドイツのごときも三割六分、大体先進国は戦前の設備の三割か四割になった。ただ日本だけが戦前と同じぐらいの錘数に回復した。そうしてしかも先進国におきましては倍以上に——倍じゃありません、もっと、三、四倍にふえたわけでございます。そういうふうに考えますと、どうしても日本も先進的な国といたしましていまの設備がはたして維持できるかどうかという問題になりますと、やはり長期的に考えると、漸次過剰設備は処理をいたしまして、そして新鋭設備にして競争力を持たすという方向については、私は誤りないと思いますが、時期としては非常にやりにくい時期になったというのが現況でございます。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 次は宮崎参考人にお尋ねいたしますが、先ほど御意見を伺いましたのをそれぞれメモをいたしておるわけですが、アメリカの自由貿易の主張というのは競争力が強い場合、競争力が弱くなってくると保護貿易主義に進む、確かにそのとおりだと思うわけです。全く身がってだというふうに感じているわけです。ところで、アメリカとの課徴金問題等の交渉にお出かけになられたわけですが、そのときに受けられた感触として御意見があったわけです。単なる陳情ではなくて、アメリカが求めるものを与えることだ、それなくしては非常に現実主義的な国であるからなかなか交渉はスムーズに進むものではないという意味であったのだろうと思うのであります。そこで、課徴金の問題等に対しましても、ケネディラウンドの繰り上げ実施、これをEEC諸国が言う前に日本が先に言ったならば非常に有利になったのではないかという御意見があったわけです。実はこの問題に対しまして、私ども商工委員会としましても真剣に取り組んでいるわけです。そこで、ケネディラウンドの実施の問題に対しまして、EEC諸国からの働きかけによって日本もこれに同意するということになった。私は藤井政務次官にも実は申し上げたのですが、ダブルパンチを受けるようなことになるおそれはないかどうか、それと、日本は、アメリカに対して実に忠実で協力し過ぎるくらいに協力をしてきている、その日本が進んでおみやげを持ってアメリカに対して課徴金の実施を見合わせてくれというようなことを言うということは適当ではないのじゃないか、もう少し日本としては当然の権利の主張というものがあっていいのではないかというようなこと等、私ども意見を申し上げたこともあるわけですが、宮崎参考人からお話がありましたアメリカの身がってな主張というか、考え方というか、それに対して進んで日本がそうしたおみやげを持って交渉する、アメリカがこれを望んでいるから与えるという問題との結びつきというものがどこにあるのだろうかということでございます。また御意見の中に、この資本自由化に対してアメリカ日本を信頼していない、非常な不信感を持っているのだ、日本はごまかしているのだというようなこと等と関連しての御意見であったのだろうと思うのでございますが、それらの点に対して宮崎参考人はどのようにお考えになっていらっしゃるか。それから、先ほどお述べになりました二つの点についての関連性というものをどのように私どもは受け取ったらよろしいのか、一応伺ってみたいと思います。
  59. 宮崎輝

    宮崎参考人 お答えいたします。実はアメリカの人の考え方は、過去においてアメリカ日本に十分やってやったんだ、たとえば戦後、ヨーロッパでもマーシャルプランをやりましたけれども日本にもいろいろ援助をやったのだ、なるほどガリオア、エロアなりで多少の返済はあったかもしれないけれども、われわれは日本を今日まで助けてきたのだ、にもかかわらず今度アメリカほんとうに困ったときにはただ陳情だけかと、こういう私どもとは非常に違ったセンスを持っているということをまず御理解いただきたいのです。したがって、そういう考え方があるものですから、困っておるのだから何かやってくれ、それがいまおっしゃったEECとわれわれと一緒にやるケネディラウンドの繰り上げ実施ということになるわけでありますが、そういうような何らかの見合いがほしいのだ。それともう一つは、いまの保護主義者というものをなだめるのに、やはり何らかの心理的なものでもいいから自由化を急いでくれ、特に自動車のように非常に自由貿易主義者であるものが、アメリカに対しては日本のものがどんどん入るのに、日本には非常に入りにくいというようなことはやはり片手落ちだ、だから心理的な効果もあるから自由化の問題をひとつ早めてくれないか、こういうようなことがありまして、そうしてそのほかにもいろいろ、日本アメリカ以上にいろいろな関税障壁がたくさんあるじゃないかということを言いまして、少しでもいいからそういうものを撤回してくれればアメリカ保護主義者の運動を抑制するのに非常に効果がある、こういうような議論であったわけであります。  日本アメリカに対して非常に協力をしてきたということは先生のおっしゃるとおりでありまして、たとえば先ほど話が出ました金も、日本は買わないでドルでやってきた。そういうこともドゴールあたりと比較いたしますと、まことに日本はよく協力してきたと思うのであります。そういう点においても私どもも十分にそういうことは申しましたし、言い分がありますけれども、また先ほど申したように、アメリカは逆に、過去においてやってやったから日本がもう一人前以上になったのだから、せめて何か助けてくれよというようなバックグラウンドのもとに、しかもその上にプラス、アメリカ人らしい先ほど申しました非常にものを割り切って考える国民でありますから、やめてくれというからには何か与えてくれ、それであるいはさっき言いましたように、やるならばこういうふうな損をいたしますよというようなことがないと、アメリカに対しては説得力がない、やはり日本は困るんだからといって、繊維産業及び雑貨業界はいかに困るかということをデータを出して盛んに説明いたしましたけれども、そういうことは数字の上の争いになりまして、私のほうから言えばそんな大きな損は出ないのだ、こういうことを向こうの商務省の人は言っておりまして、そういうことからして話にならないというのが私の得た印象でございます。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 中国貿易の問題は詳細にそれぞれの参考人から御意見を伺ったわけですが、確かに御意見の中にございましたように、決済の問題というのが大きな問題点というようになろうと思うのです。ポンド不安ということになってまいりますと、これは中国としても考えなければならないというような傾向が出ておるわけであります。これがどういう形になるのか、フラン建てによる決済ということも考えておるようであります。あるいはポンド決済という形はそのままにして損失補償という形で考えたらどうかというもろもろの考え方というのが新聞紙上等で伝えられておるわけでありますが、この見通しがどういうことになっていくのであろうか。  それから中国貿易を伸ばす上において私は経済界の方にも実は注文があるわけです。注文と申し上げては適当かどうかわかりませんが、中国貿易をするのに大企業が自分の企業の看板をかけないで、第二会社をつくって、何かこそこそしたような形でやっている。これは確かにアメリカに対する気がねというようなこと等、いろいろあるのだろうと思いますが、やはり貿易を伸ばしていくということになってまいりますと、いろいろの影響を配慮するということは当然のことでございましょうが、この段階においては大企業、大メーカーがみずから中共貿易をやるというような看板を堂々と掲げてやるということがどういう影響が来るのであろうか。それらの点に対して宮崎参考人にお尋ねしておるわけでございますが、ざっくばらんに私も申し上げたわけでございますが、この点について御意見を伺いたい。また、ほかの参考人の方からも、もし御意見を伺えれば幸いだと思います。
  61. 宮崎輝

    宮崎参考人 私ども中共との貿易を別に遠慮はしておりません。ただ中共側がたとえば友好商社であるとかいうような、そういうものを使わないといかぬというものですから、それでそういうところを使っておるだけでありまして、私どもは堂々とやっております。これは私なんか肥料も一やっておりますが、肥料なんかも全くまつ正面からやっておりますし、繊維中共は御承知のようにEEC日本と非常に大きく競争しておるのです。肥料も同じですけれども繊維は特にイタリアです。われわれは中共の市場を非常に争っておるわけです。そういうことではEECとの間にある程度調整もしまして、中共は窓口が一本ですから、これはEECの側とも協力しながら堂々と中共の市場を争っているということでありまして、先生の御心配のような裏でこそこそするような態度はとっておりませんから、どうぞ御安心を願います。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 時間がございませんから、それではほかの問題をお尋ねすることにいたします。  これも宮崎参考人にお尋ねいたしますが、先ほど御意見の中に西欧諸国における中小企業の健全な経営のあり方についての御意見があったわけです。私も昨年実はアメリカその他ヨーロッパ諸国に参りまして、中小企業の問題に対して関心を持っていろいろと伺ってみたのですが、日程の関係で深く突っ込んで調査することが実はできなかった。ところが、中小企業に特別に日本のようなたくさんな法律をつくったり何かした中小企業政策というものが行なわれておるようには感じない。ところが格差があまりないようですね。りっぱに中小企業として健全な運営が行なわれている。ここに根本的な違いがある。日本では大企業中小企業との格差が非常にはなはだしい、経済の二重構造という特異な現象がある。こういうことがやはり日本経済を安定させないことになっておるのではないかと思うわけですが、中小企業政策として欧米諸国で行なっておる特徴的なもの、またそうした健全な運営がなされておるということについてその特徴というものはどういうところにあるのか、それらのことについての御意見を伺えれば幸いだと思います。
  63. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは私見でございますが、欧米の中小企業日本中小企業を比較いたしますと、歴史的なバックグラウンドが非常に違うと思うのです。つまり欧米では中小企業というものが生き延び得るものが生き延びてきて、そうでないものはもう消えたという歴史の上に今日のヨーロッパやアメリカ中小企業があると私は判断しております。ところが日本は、御存じのようにたとえばアクリルファイバー一つを例にとりますと、これはアメリカより十年おくれてスタートいたしました。これはニッターというものを使うわけですけれども日本にはニッターというものが全然ないのです。私どもは十年かかりまして、機械を入れて貸してやったりしましてニッターを育てました。そしていまどうやらニッターらしいものが日本にできてまいりましたけれども、こういうのはすでに欧米ではりっぱに育っておりますね。だからそういう意味では十年、二十年私ども繊維の関係で加工をやっている人はおくれている。これはプラスチックも同様でございまして、プラスチックの加工のメーカーは、日本では大きなメーカーが何社かありますけれども、たとえば高圧ポリエチレンのフィルムをつくるような実に零細な加工屋さんがあるわけですが、これも石油化学がやはりアメリカと比較すると十年か二十年おくれているわけです。その間にヨーロッパやアメリカではりっぱに加工業者が育って、それでりっぱにそういうものを消費して、自分で技術を開発し得るだけの力ができている。そして同時に、そういうものを販売する流通機構もできておるわけです。ですから、そういう意味におきましてそれぞれのスペシャリティーのある製品をつくる。繊維も、たとえば織物あるいは特に紡績なんかでも非常に近代化しておる。ユニフィルの機械をつくりまして、六人で百台を三交代でやるわけですから、これでしたら賃金が上がっても響きません。これは量産品ですから、合繊のように多品種少量でいきますと、どうしてもこういうユニフィルのものは使えない。たとえば合繊のジェットルームを使いますと、百台も二百台も持てるわけですが、しかしこれは量産品だけしかできないわけです。そういうものはアメリカでやっておりますが、日本ではアメリカで開発できないものをアメリカ輸出しておりますから、そういう意味ではまだ日本のほうが手のかかるものをつくっている。これはさらに日本もできなくなって、韓国か台湾にいまつくらそうとしている。こういうふうにまだまだ日本中小企業というものは、国家がいろいろと手を加え、また私どもメーカーがいろいろと育成をいたしまして、スペシャリティーもあるし——マネージメントにもまだ問題がございます。スタッフもおりませんので、IEとかそういうものを全部指導といってはおこがましいのですが、そういう協力をして一つ一つ育ててきた中小企業の中には、りっぱに一人立ちできるものもできてまいっております。そういうものが日本全体にできたときに、私は日本中小企業の問題は欧米並みになるのじゃないかと考えております。いまは過渡期じゃございませんでしょうか。そういうふうに考えます。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 次は堀江参考人にお尋ねいたしますが、御承知のとおり日本産業の集中度というものは非常に上昇してきたわけでございます。ところが日本の公正取引委員会が先般産業の集中度の調査をした結果を見ますと、高度に成長した産業というのは集中度が非常に低い。むしろ成長の度合いが鈍っているものが集中度が高くなっているというような調査結果が出ておるわけです。産業の集中をはかるということは、生産コストをずっと低下させること、また産業を高度化するということにどう結びついてくるのかということに実は疑問を持っておるわけですが、あまり生産が集中してまいりますと、御承知のとおりに管理価格とか独占価格とかいう問題が出てくるということになりますから、私どもそういう意味でいまの再販制度の問題に対して、管理価格の温床であるということで実は問題視しておるわけです。ただいま私が申し上げましたいわゆる生産の集中はコスト低下させる、あるいは生産を上昇させるということとの結びつき、その効果というものに対してどのようにお考えになっていらっしゃるか伺ってみたいと思います。
  65. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。この問題実は私も自信はございませんけれども、海外各国の事情を見ますと、企業が集中するのは単に製造だけでなしに、非常に大きな要素としましては、技術の開発がなかなか追いつけない、ことにたいへんな投資が要るという場合に、たくさんの企業一つになって一つの優秀技術を開発したり、開発されたものを輸入するといったようなことも一つ原因だと思います。  もう一つは、セールスの対象になるマーケットが非常に大型化しておるのが世界的な傾向でありまして、そのためには生産設備資金それからマーケットの流通段階における消費量というようなものを考えますと、大企業の場合集中していくほうが有利だ、そろばんに合うといったことではないかと思います。先生のお話しの高度に産業が発達したものほど集中の度合いが少ないというのは、ある期間をとってのお話じゃないかと思いますので、産業そのものの初期から計算すると、もうすでにそういったものはいつの時期にか集中しておったのではないかと私想像するのでございますが、いかがでしょうか。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 最後に堀江参考人にお尋ねいたしますが、先ほどソ連貿易の問題にお触れになりました。私も一昨年ソ連へ参りまして、シベリア開発並びに沿岸貿易の問題に対しましていろいろと調査をいたしましたし、要路の方々の意見も伺ったわけです。そこで、シベリア開発の問題に対しましては、御承知のとおり日本の財界との話し合いが進んでおるようでございますが、クレジットの設定の問題等からなかなか困難視されて、話が進んでいない。ソ連の貿易、シベリア開発というのが、クレジットの設定二十年というようなことをいわれている。そうして製品払い、ものができてそれを払っていくということ等に対して、なかなか日本政府としても踏み切っていない。それらの点に対してどのようにお考えになっていらっしゃるかという点、それから沿岸貿易の問題に対しまして、これは元来中小企業の分野であるというように私どもは考えていたわけですけれども、実際は大企業が沿岸貿易も独占しているといってもよろしいと思うのですが、この点にも中小企業の分野というものは非常に低いのです。また沿岸貿易のあり方についても、ソ連の貿易は御承知のとおりバーター制ということになっておる。それがフィンランド方式というものとはたいへん違っているような面もあるようでございますが、この沿岸貿易を伸ばしていくということについてはどうあるべきかということ等について御意見をひとつ伺ってみたいと思うのです。
  67. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。シベリア開発の問題につきましては、実は昨年から話が具体的になってまいりましたわけでありまして、御指摘のようにクレジットの条件それからもう一つ引き取り保証の問題がひっかかっておるのでありますけれども、日ソ間で日ソ合同経済委員会ができ、その下部機構のような形で小委員会もできておるのでございまして、森林資源開発とか銅の開発、石油の小委員会というようなものもできております。共通した問題はクレジット条件や引き取り保証の問題でありますが、まず手始めに、森林資源開発のような比較的小規模のクレジットであり、引き取りも計画的に引き取り得るようなものを何とか片をつけたいということでございます。ただ、たまたま日本貿易国際収支の逆調問題もありまして、多少たな上げになって延びておるのでありますが、遠からずこういった問題も両方の歩み寄りによってある程度できる時期が来るんじゃないか、そんなふうに思っております。  それから沿岸貿易は御指摘のとおり中小企業が多くやっておりますが、日本の場合は日本の各地、それからソ連の場合は東シベリア、沿海州といったところでありまして、主として日常物資やあるいは融通し合いやすい物資について、両国側の民生も考えて、だんだん強化していこうということでありますが、私ども大賛成であって、多少技術的な問題もございますし、また資金、資力の問題もありますけれども、今後このほうも伸びていくものと信じております。
  68. 小峯柳多

  69. 玉置一徳

    玉置委員 参考人には非常に長らくまことに恐縮でありますが、もうしばらくお許しをいただきたいと思います。  課徴金その他の輸入規制に伴いまして、わが国貿易品、ことに繊維製品輸出緊急対策としてどのような方策をとればいいか。先ほど来宮崎参考人から概括的なお話がございましたが、御承知のとおり本日ジュネーブにおいてEECの諸国並びに日本アメリカ、イギリスという国々が集まりまして、この課徴金の問題につきましてアメリカと話し合いを詰めております。明日朝くらいになればその概況がわかってくるんじゃないかと思いますが、私はおそらく、いままでの国際環境からいたしますと、課徴金の問題はケネディラウンドの歩み寄りによりまして何とかなるんじゃないかという感じがいたしますが、ひょっとすると、そのまま輸入規制の問題だけがほっておかれて進んでいくのじゃないかという懸念も非常にたくさん持っております。かような意味におきまして、もしも——もしものことを申し上げましてまことに恐縮でありますが、そういった輸入規制等でこちらの貿易に不利益をもたらすような何らかの措置が講じられた場合は、恒久的な輸出振興策は別といたしまして、わが国繊維製品輸出のために緊急に手を打たなければならない、私たちはこう思うのであります。このような意味におきまして、従来とられております割り増しつき特別償却あるいは若干の市場開拓資金というようなものだけではちょっとぐあい悪いんじゃないか。輸出振興について業界の奮起を促す意味でも何らかの措置を政府が、ことに通産省はとる努力をしなければいかぬと思いますが、どういうようなのが一番ぴたっと当たるか、御意見をいただきたいと思います。
  70. 宮崎輝

    宮崎参考人 そういう最悪の事態が発生しないことを希望しておりますが、万一そういう事態が発生いたしました場合に、私は、いま御指摘のとおり、日本では六つばかりいろいろな制度がございますけれども、これは即効的な効果はございません。しかし、かりにサーチャージがかかった場合には——これは五%になるかわかりませんが、サーチャージがかかりました場合には、いわゆる利益が減るということでありますから、これに対する対抗策はやはり利益をもって報いるというしかないと思うのですが、事クォータになりますと、輸出の絶対量が減るものですから、どうしても国内に回すかよそへ回すかしかとりあえずないわけです。ですから、そういう意味においてサーチャージもさることながら、クォータはより実際いやなことなんです。いずれにいたしましても、サーチャージにいたしましても、クォータにいたしましても、アメリカがそういうような方法をとるような事態になりましたならば、私は——日本で御承知のように一ぺん輸出所得控除制度というのがございましたね、あれをガットに反するというのでやめたわけですが、しかし今度私はアメリカに行ってみましたが、サーチャージをかけるにいたしましても、必ずガットの場に出してそして堂々とやるということをアメリカは言っておりました。でしたら、われわれもガットの場にあの輸出所得控除制の問題を出して、あれを堂々とやってもらいたい、そういうようなことが日本として一番効果的じゃないかというふうに思っております。もちろん報復措置その他は別でございます。
  71. 玉置一徳

    玉置委員 武藤参考人にお伺いいたしたいのですが、話が飛び飛びになりましてまことに恐縮でありますが、割り増しつき償却の話が出ましたので、ついでにお伺いしておきたいと思います。  私たち繊維産業の構造改善を進めてまいりまして、ことにメリヤスその他の分野でありますが、機械が、その技術が日進月歩でございますので、種々雑多の様式ができておる。いまのような償却では、耐久年数だけの償却でございまして、いわゆる耐久年の半分ぐらいで古品になってしまうというので、その寿命のとおりの償却にせめて直してもらいたいという要望が非常に強うございますが、どのようにお考えになりますか。
  72. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。私も全く同感でありまして、今日の技術は非常に進歩いたしますものですから、できるだけ早く償却するということにしませんと、以前と違いまして日進月歩と申しますか、メリヤスのみならず、あらゆるものが、そうなっておる。そういう関係で償却を早くするということについてはもう当然しなければならないし、私ども同感でございます。
  73. 玉置一徳

    玉置委員 先ほど来お話がございましたのでどうかと思うのですが、話の順番として一言だけ触れておきたいと思うのです。  後進国の追い上げでありますが、先般ニューデリーで行なわれました特恵問題は一九七〇年までに何らかの具体案をこしらえるということで、そのプロセスだけをきめるにとどまりましたことは、われわれ想像しておったよりはまあまあという感じを持ったのが実感でございますけれども、やがてそれは何らかの形であらわれてくることは事実だと思いますし、先ほど来の話にありましたとおり、開発途上国の紡績織機等の増加はほんとう日本とは違いまして、ものすごいものがございます。これらの国々はすでに自給率を満たしたというよりは、相当思い切った輸出力を持ったということでありまして、しかも先ほど来のお話のように低賃金の昼夜二交代で、しかも台湾に皆さんがお行きなさって見てこられた中小紡績の方々のように、かなり欧米の新しい機械を全部備えつけている。日本ではいま五カ年計画でわっさわっさと構造改善の緒につこうと思っているが、向こうは先進各国の与えるいろいろな援助によりまして最新の機械を買っておる、こういうような現状でございます。わが国繊維製品が今後いかにあるべきか、この問題につきましては先ほど武藤参考人からもお話がありましたので省きますが、先ほどのお話のように、だれが見ても、ことに化繊を除きまして紡績のほうでは構造改善をやらざるを得ないことは事実だと思います。ただ、その時期、方法、運営の問題が非常にむずかしい。ことに中小企業の織布に至りましては、これはむしろ社会的な問題のほうが大きいのじゃないかというような感じすら現地を見てまいりましてするのでありますが、この現在とりつつある構造改善の政策の運営について御批判と申しますか、どういう点を直していかなければいかぬか、ひとつ御意見がございましたら武藤参考人並びに宮崎参考人からお答えをいただきたいと思います。
  74. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。先ほども申し上げましたように、構造改善自体は時代の要請に応じてやらなければならぬ政策だ。しかもその運営をどうするかということになりますと、これはやはり実態をながめながらその実施をしていくという臨床的な面もなければならぬと思いますが、しかしなかなかこれはむずかしい問題がございますが、やはり一たんきめた政策につきましては少々苦痛があっても、これを乗り越えていくというような気持ちでお互いにやることが先にいって楽するのではないか。はなはだ抽象的でございますが、運営といいますと、それじゃどういう時期にどう運営をしたらという仮定も立てられませんので、私の考え方といたしますと、やはり処方せんは間違っていないんだが、薬の飲み方もある程度病気のあれに応じてかげんしていくというような手かげんが必要な面もあると思います。
  75. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは私は織機と紡機に分けて考えてみたいと思いますが、構造改善ということの一番大事なことは、先ほど御指摘のとおり、台湾、韓国ですら超近代的な設備になっている。ところが、日本はある意味においては百年も前の機械といいますか、非常に古い型のものが非常に多いという意味において、やはり近代的な設備をどうしてつくらしていくかということが一番大事だと思います。それにしては織機の場合は一千二百億ですか、ああいうような相当な金が出ますので、構造改善というものは、現在の法律では、ある意味では織機の構造改善である、そういうふうに私は思っております。しかし織機にいたしましても、具体的に私どもの業者から見ますといろいろ問題があります。非常に低利の金を貸すがごとくになっておりますが、あれには手数料が要ります。もう一つ非常に問題は、私どもが自分の金で買いますと、こんなことを国会で申してどうかと思いますが、二割くらい安く買えるのです。ところが組合をつくりますと公定価格になりまして、高いのです。二割高いと金利償却がどれだけふえるでしょう。  それからもう一つの問題点は、三対二になって一つ減ります。こういうことで本心は喜ばないのです。ですから一応申し込んでおりますけれども、金のある人は自分で安く設備を買って、織機台数を減らさないでやります。こういう問題があることをひとつぜひ——私どもはよく裏のことを知っています。そういうことを御承知いただきたいということでございます。  それから紡機のほうも、これは紡機のほうは御存じのように、ややもすれば世間では廃棄することが目的であって、廃棄したその費用をみなが分担するのが構造改善のごとくに解誤しているのではないか。その廃棄というのは、かりに百万錘やりましても三十億ですから、これは一千万錘でありますから一錘三百円の負担ですね。これを五年でやりますと、一錘一年六十円。こういうものをやるだけが構造改善じゃないのです。単なる試算にすぎないのであって、その三十億では、私の計算では新鋭機は五万錘もできないのです。ですからそうじゃなくて、近代的な設備ができるような、もっと有利な資金をいかにして政府その他が織機のようにめんどうを見ていただくか。織機は組合をつくるから問題がありますが、自分だったら安くたたいて買いますから、そういう意味で、ぜひ紡機の構造改善も人に負けないようなりっぱな紡機が早く近代的なものができるように、ただ廃棄の問題はすでに使えないものしか残っていないのですから、その使えないというのは、設備そのものが古いか、人がいないかで動かないものが残っているのであって、それがスクラップ化したからといって生産がふえるわけでもなく、近代化するわけでもなく、三十億業界に金がばらまかれるだけですから、その辺のところを十分に御理解いただきたいと思います。
  76. 玉置一徳

    玉置委員 適切な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  そこで先ほどこれもお話がございましたが、日本の化繊といえども、私は後発国がどんどんいま設備をしつつあることは事実だと思います。技術的に追いつくには若干の日数はかかると思いますけれども、そこでこういった問題を踏まえまして、紡績におきましても化繊におきましてもありますが、競争原理をちゃんと確立しながらデュポンやCICとの国際的な競争力をどうつけるか。それで先ほど申しました競争原理は失わない、こういう中で、企業集中というものはどういうように行なったらいいのか。おかしな言い方になりましたが、要するにある程度大きくならなければ勝負はできない。だからといって官僚統制のようになったのではもうだめだ。この二つの調和点をどの点に求めるべきか。私はおやめになりました前の経団連の会長さんに一言申し上げたこともあったのですが、国民経済という一番充実した観点と、それから競争原理、過当競争があまりにもふえると、国民経済的にはロスができる。これは鉄鋼の設備のことで申し上げたことがあったのですが、それを財界みずからがあるところで調整するような機能を発揮しない限り、やはり一番皆さんのいやな官僚の統制的なものが行なわれるのもやむを得ないんじゃありませんか、ということを申し上げたのですが、こういうことを踏まえまして、企業国際競争力をつけるための問題と、それから競争原理をあくまでも残していくというところでどの程度の企業集中というものが望ましいとお思いになりますか、どなたでもけっこうですからひとつお答えいただきたいと思います。
  77. 武藤絲治

    武藤参考人 いまの企業集中ということでございますが、これは国際的な比較をしないと問題がはっきりしないと思います。たとえば合化繊でも自動車でも、それら日本産業を規模的に国際的な比較をいたしますと、全く小さなものなのでございまして、日本では相当大きいと思っても、今度も八幡と富士と一緒になってはじめて世界二位になる、こういうようなことなんでございますから、実際問題としましては、国際競争するというたてまえでは、やはり日本企業もある程度集中をしなければならぬと思うのでございます。ただ御承知のとおりに、集中にはプラスとマイナスとございますので、マイナスの面は、あまり過大な集中になりまして寡占的になると、競争原理がだんだん薄らいでくる。こういうことで集中しながら競争原理の上に立ってやっていく、こういうことが一等願わしいんじゃないかと思いまして、どこまでも国際競争ということには、やはり競争の原理が動いていかなければならぬ。  そこで話がはなはだ横道に入りますが、ともかくドイツが、第一次大戦のときにインフレーションでほとんどもう国がつぶれかかって、それから労働争議や、その他非常な労働の不安のために国が非常な不安な状態になった。そしてヒトラーの出現になって、そしてまた第二次大戦で敗れたわけでございますが、そういう経験からきたと思いますが、ドイツが今回の敗戦でみごと国を建て直しましたのには、いわゆる二つの柱があると私は思うのでございます。その一つは、連邦銀行法というものによりまして、ドイツのマルクをできるだけ国の内外で安定していくという政策を主眼にした法律と、それからもう一つは、競争制限禁止法という法律がございまして、競争を制限するようなものを禁止していく。ちょうどいわゆる公取のようなあれでございますが、この二つの法律によってドイツは建て直ったということがいわれておるのでございますが、ドイツはその点を見ますと、ドイツ自体の企業の集中というよりも相当きびしい競争の原理に立っていわゆる産業の進歩をはかっておるように思います。もちろん必ずしも集中がないとは申しませんが、どちらかというと、ドイツは集中よりも競争原理によって産業を伸ばしていこう、こういうふうな行き方をして、非常に成功をおさめたと思います。  これは、集中ということにつきましても、相手を見てどうかということになりますと、日本で相当集中しても、向こうの足元にも寄らぬという企業もございますし、しかし全体的に見ますと、国際競争をする上においては現状をもう少し集中的にして過当競争を直し、また集中することによってのプラスをできるだけ出していく。そして半面、いま申し上げたような競争原理というものを盛んに働かしていくような政策をとるのが一等妥当じゃないかと思います。  はなはだなんでございますが……。
  78. 玉置一徳

    玉置委員 先ほど来話がございましたように、化繊の問題にしろ、いずれは後発国もある程度追いついてくる。そこで非常に資源に乏しい日本といたしましては、どこまでも技術のほんとうの開発でなければならないんじゃないか。それでいままでナイロン、ポリ、アクリル、ビニロンにいたしましても、その大部分はやはり技術を導入したものである。ここで日本の将来とも繊維産業ほんとうに生かす道は、私は紡績の織機にいたしましても、いまの化繊のほうの技術にいたしましても、新技術の開発でなければいかぬ。これについていま各社とも研究所をお持ちなすってお気ばりいただいておりますのは、私も現状をよく承知いたしておりますが、なお今後一そうの力をこれに入れることをやるんだったら、どういう体制が望ましいのか、御意見ございましたらお聞かせいただけましたらしあわせでございます。
  79. 宮崎輝

    宮崎参考人 これは御承知のように、合繊というのは、ほんとうはいま緒についたばかりです。これからです、ほんとうに。特にアクリル繊維は、物性を変えることができます。それから最近例のスピンドローといいますのは、デュポンでやっておりますが、いまスピードが千メートルですが、三千メートルで出ます。三千メートルでボビンで巻くわけですね。そうすると建設費が半分になるわけです。ですからそういうことで、合繊の製造の機械自身が革命的な情勢にいま入ろうとしておる。ですから先ほど償却の話が出ましたけれども、何もニッターに限らないのです。化繊自身がものすごい償却をしないことには追いつかないのです。そういうことでございます。  それからもう一つ、先ほど言いました物性そのものを変えられる、これはエステルはわりあいに物性を変えることはむずかしいのです。しかしアクリルは物性的に変えられます。それから各エステルとかナイロンとか、そういうもののコンジュゲートができます。グラフト重合ができます。そういうことでキャタライザーを考えると、もとからもとの重合の段階において変えることができるというのは、これから革命的に変わろうとしているわけです。いま一番の問題は、合繊の欠点は吸湿性がないということです。吸水性がないから帯電するわけです。ですから、これはウォッシュ・アンド・ウエアのメリットですが、逆に帯電するわけです。ですからこの吸水性の問題を解決したら天然再生繊維の分野にどんどん入っていけるわけです。コストは下がる、再生繊維は下がらないで上がる。人件費は上がるし原材料も上がるから。そういう意味で合繊の世界はこれからであります。  そこで、どういう研究をしたらいいかといういまのお尋ねでございますけれども、これはたとえば各会社ともに同じ研究をしているじゃないか、あれはむだじゃないか。戦争中に研究を一緒にやったことがありますけれども、あれをやりますと、研究はとまってしまうんですよ。やはり研究も競争なんですね。その研究に勝ったのが結局生き残るわけです。ですからそういう意味ではぼくは何社かのものは将来必ず生き残る。それはものすごい研究をわれわれもいましております。それで世界の研究のレベルはすぐドイツとベルギーの特許に出ますから、すぐわかります。どういう研究が進んだなということ。そうするとくふうと言っちゃ悪いのですが、その特許に触れない今度は別な方法がありますから、それに向かって研究を進めていくというようなことで、常に当面の研究を進めておりますから、私はわれわれ何社かが真剣にいまの研究を続けているこの態度を続けていけば、勝ち残っていけるというふうに考えております。
  80. 玉置一徳

    玉置委員 先ほどから御質問申し上げました競争原理と集中の原理なんと申し上げましたのも、実は化繊の工場に参りまして、あまりにも技術の日進月歩なのに驚きました。そういう意味でもいまのは少し多いような感じもいたしましたし、大きいのが強いわけですから、競争原理と、配分したもので何かができるのではないかというような感じもしましたのですが、いまの御説明も、一社ずつではなしに、何か気の合った二社ずつぐらいが一緒にされたらと、こういうふうな感じがしましたのと、国は国でまた違った分野の一番基礎的なものをやるとかいうようなこともお考えいただいていいんではないか、こう思ったので申し上げたわけであります。  最後に労働問題ですが、私は各地の構造改善を見まして非常に感じますのは、ことに中小企業においてその点が多いわけですが、労働問題による構造改善がこれは必至である。だから商売で勝ち残るというだけではなしに、労務者の不足をどう補うかというところから見ましても、機械だけの構造改善ではなしに、社屋その他すべての福利施設につきましても、小屋の中でやっているというようないまの姿を各所で見まして、これはもうどこかやるときには中小企業の社屋そのものからやっていく。二つの、機械の構造改善と、もう一つのそういう団地その他の構造改善のいろいろの助成と相またなければ、ちょっと残り得ないのではないかという感じが非常にいたしました。西脇へ行って申し上げておったのですが、島根県、鳥取県からの新卒の転入がどんどんなくなってきつつあります。しまいには縫工場というのは現地で、近回りでどれだけ人が集め得られるか、しかもそれは最後は家庭の主婦であるぞ、しかもそれは職場の優秀なところに集中するのだぞという考え方でやらなければ無理だというようなことをお話をしてきたことがあるのですが、もう明日から激減していく中学の新卒というようなものを考えましたときに、ほんとうは業界そのものにあまりほんとうのことを言い過ぎるのもこわいような気すら中小企業のところに行きましたらするのですが、こういう観点から見て、どういうように構造改善をやっていかなければいかぬか、その点をひとつお考えいただきたいのと、もう一つ、先ほど申しましたことで宮崎参考人にこれはお伺いしたいのですが、私はあまり日進月歩の技術の革新のきつい化繊の実態を見まして、あのように投下資本数百億円をどんどん投下して、それが完全にフル運転を二、三年した時分には次の新技術による新しい合化繊が出ておるというような現状であります。これは会社そのもの、企業そのものにすべてお互いに保険をおかけにならぬといかぬじゃないかという冗談を言うておったことすらあるわけでありますが、日進月歩の企業に対して、企業の指導者の皆さんはどうお考えになっておるか、前者は武藤参考人から、後者を宮崎参考人からお伺いいたします。
  81. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。実は、あまり理屈を申し上げないで実際問題をお話ししたいと思います。ちょうど六年前でございましたが、イタリアの経済使節団が私のほうの淀川工場へ参りまして、私もみずからいろいろ案内をして説明をしたのです。そのときに、もう日本賃金は貴国と同じことになりましたと申しましたら、その点はいやよくわかっているのだが、ただ一つ日本へ来て非常に違った問題を発見した、それはまるで日本は軍隊で工場を動かしているのじゃないか、年齢的に見てもほとんど若い同じような年齢が来ている、というのは、学校からそのまま工場に入ってくるから、まるで軍隊のような労働者じゃないか、これがわれわれにはできないことだから、賃金なんか問題じゃないのだという話を聞いて、私はその当時、もうひとつ切実に感じなかったのでございますが、自来六年間しまして、労務事情を考えますと、どうしても新卒をすぐ工場へ入れて仕事をするというようなことはできない時代が来たので、たとえば紡績にいたしますと、むしろ付近のパートタイマーとかあるいは通勤で企業をやる。ただいたずらに寄宿舎を建てても人が来ないのじゃないか。むしろもう、あるところで仕事をしていく。それはドイツの、私どもが独占提携している会社が、ニッティングはオートメーションができるものですから、それは非常に集中的な膨大な工場をつくっていますが、それからできたものを縫製します、ミシンをかけますところは、たくさんの町に工場を分散しておる。そういうわけで集約的な労力、集約的な仕事は、つまりその工場の規模というのは労力量によってきまってくるのだということで、労力のあるところへ持っていっている。しかも私どもが非常に深刻に感じたのは、そのドアに三カ国語で書いてありますから、むしろドイツ人だけでなく、中へ入ってみますと、イタリア人なりギリシア人も働いているというようなことで、そういう点から考えると、日本は欧米に比しますと、労働事情はまだまだいいのじゃないかというふうに考えるのでございます。そういう意味から見ましても、先ほどの問題と関連しますが、私は労働集約的な仕事というものは、集中よりむしろ分散してこまかくいかなければいけない、そういう意味において、中小企業の仕事としてこれは育成すべきじゃないか、こういうのが私の考え方でございまして、むしろ大会社はもっと合繊とか、資本のほかにまた非常な販売力を必要とするようなところに企業の体質を改善していく。しかも、いまある中小企業は、そういう意味においてむしろ中小企業に仕事を譲って、そしてそれの周囲の労力で立ち行くような姿にしていくことが最も適した形じゃないかというのが、私の私見でございます。  そのほかに、あとの問題は宮崎さんがお答えになると思います。
  82. 宮崎輝

    宮崎参考人 御説のようにそういう非常に日進月歩でございますが、企業というものはよくしたものでございまして、大体三年で半分を償却いたします、定率でやりますから。ですから償却は、いま七年ですから、五年でほぼ終わります。償却が済みますと、その次に近代的な設備にかえますから、常に私どもは、定率で特別償却を全部フルにいたしまして、そして早く固定資産の負担を軽くしていく。その間に、まことに新しい革命的なものが出たらそれへ置きかえる。そうでなければ、それをさらに改良した安くできる設備を次につくっていく。こういうことを繰り返し繰り返しやっておりまして、そして固定費の面でも競争できるし、比例費の面においても競争できる、こういう道を歩いておりまして——実際心配したら合繊も石油化学も何にもやれません、おくれるほど有利ですから。しかし、おくれたらマーケットがもちません。そういうことで、ちょうど鳥が、いろいろな保護色で生きていくように、環境に応じながらわれわれは実に真剣に設備を改良し、償却しながら生きていく。そしてさっき言いましたような研究をしながら、最後には——最近は技術は売ってくれません。こっちが何かの技術を持っている、そうしたら向こうと交換で売ってくれますから、ですからどうしても自己開発のいい技術を持たないといけない。それは異質の技術でもいいのです。それと交換するんだということで必死になって開発をやっております。ですから何とかやっていけると思います。
  83. 玉置一徳

    玉置委員 構造改善をやりましてもう一つ気がつきますのは、在来の、ことに繊維製品につきましての問屋と申しますか流通の簡素化をもう少ししなければ、あるいは合理化しなければ、非常にむずかしい点があります。こういう問題につきまして、あるいは先ほど申しました償却の問題につきまして、またいろいろお伺いする機会があると思いますので、どうぞひとつそのときは御教示を願いたいと思います。おそくまでどうもありがとうございました。
  84. 小峯柳多

  85. 岡本富夫

    岡本(富)委員 私でもうおしまいですから、もうしばらくごしんぼう願います。時間もたいへんおくれましたので、簡単に数点だけお聞きしたいと思います。  きょうの参考人の皆さん方が来てくださって、こういう話はほんとうは通産大臣の椎名さんやあるいは外務大臣の三木さんに聞いてもらったら一番よかったと思う。なぜかならば、ひとつここでお聞きしたいことはアメリカの課徴金問題でございます。この課徴金問題につきまして、私、先般の商工委員会政府に対していろいろとお聞きしたわけです。と申しますのは、私の住んでいる兵庫県なんですが、ここには神戸のケミカルシューズそれから三木、小野の金物あるいは西脇の織物あるいは豊岡のかばん、そういうものがアメリカにまで輸出されておりますけれども、この課徴金の問題で非常にみんな不安を感じているわけです。それで、この間政府に対して話しましたところが、いま民間のほうでしっかりやってもらっておりますから、大体目鼻がついたらこちらから行きます、こういうような答弁だったので非常に私は不満であったわけです。そこでいま宮崎参考人からのお話で、あまり政府はいろいろ干渉してくれるな、われわれでやっていくんだ、こういうようなお話がありました。現在の政府の外交政策に対して非常に信用をなさっていないのじゃないか、こういう考えもそこで浮かんだわけでありますが、この輸入課徴金問題について、これはアメリカのほうが撤回をするんでしょうか、あるいはまたそのまま施行するかどうか、この推移についていまのお考え、あるいはまた意見をお聞きしたいと思うのです。  最初に武藤さんからお願いしたいと思います。
  86. 武藤絲治

    武藤参考人 お答えいたします。課徴金の問題は、宮崎さんがこの間行かれて実際の面に当たっておられますが、私見を申し上げますと、私はこの課徴金の問題も結局要するにドル防衛の一環でございますので、アメリカから見たならば、これはある意味の当然の権利と申しますか、また当然の防衛策だ、こういう立場を堅持しているわけなんで、これはなかなか根深いものでございまして、割り当て制とか輸入制限とかいうものはどうかと思いますが、むしろ課徴金のほうはなかなか予断を許さないというか、非常にこれはアメリカがやる可能性が多いように思われます。そういうわけでございまして、こういう見通しは非常にむずかしいわけでございますが、課徴金の問題につきまして、ただ一つ考え方といたしますと、やはりドル防衛の一環としてやっていることに日本が反対するということも、理論的なあれからいうとなかなかむずかしい問題になりますけれども、要するにそれに対抗するということは、繊維で一例を申し上げますと、一番大きな影響を受けるのは中級品でございます。高級品になりますと、かりに五%ぐらいかけられましても——それはかけられないほうがいいですけれども、非常に困ったということには採算上ならないわけで、そういう面から見ると、ただ困った困ったでなく、やはりこちらも自衛的に、つまりそれだけ課徴金をかけるなら、こっちはこういう作戦で対抗していくというような自主的な方法も、一挙にはいきませんでも、考え得るんじゃないか。たとえばアメリカへ出しております毛織物とかあるいは綿製品でも、高級品になりますと非常にマージンがございますから、やや困りはしますが、中級品以下のような困り方はしないし、また中級品ですと、化繊のごときは相当、四割くらい減りはしないかとか、あるいはまた綿製品にいたしましても二割五分や三割は減りはしないかということが考えられるのでございますが、ものによってその影響が違うということも御参考までに申し上げたいと思います。
  87. 岡本富夫

    岡本(富)委員 先般この課徴金問題につきまして三菱商事の寺尾さんからお聞きしたのですけれども、大体輸出のマージンは二、三%だ、こういうようなお話がありました。新聞報道によりますと、二億ドルあるいは三億ドルくらいの影響があるんじゃないか、こういうお話がありましたので非常に心配しておるわけですが、宮崎さんがお行きになったときの状態あるいはまたあなたのお考えですね。全体を見て何とか課徴金問題を解決できるかどうか、これをひとつお聞きしたいと思うのです。
  88. 宮崎輝

    宮崎参考人 お答えいたします。この課徴金は、先ほどもどなたかの先生からお話がございましたように、きょうジュネーブでガットの会議で出ておりますので、あれが曲がりなりにも妥結すれば、私は課徴金はかからないで済むのじゃないかと思っております。万一かかりました場合は、やはり日本から出ている、特に二次製品が非常に大きな影響を受けます。それから雑貨がそうです。その場合の計算を私どもはしておりますが、それはたとえば後進国を除外するかしないかとか、パーセントが何割であるかということによって違いますけれども、その場合の影響も計算しておりますし、特に課徴金を日本側において全部かぶろかどうかということも問題になります。もちろん強い商品は、現にわれわれは契約しておりますが、前に課徴金がかかったときには、アメリカのインポーターが負担するのだというような強い商品もございます。しかしこれは非常に少のうございまして、やはり中小企業のつくるような最終品になるほど影響は大きいというふうに考えております。でまああしたになってどうなりますか、私どもは情報をいろいろとっておりますけれども、いまのところは課徴金がかからない方向にいっているんじゃないかと思っております。  ただクォータの問題が残っておりまして、これも先ほど申し上げましたように、イースター明けにどうなりますかですが、ゆうべも各議員との懇親会がありまして、アメリカの議員さんが見えておりますからいろいろ聞いてみたのですけれどもアメリカ人たちのおっしゃることは非常におせじがおじょうずですからわかりませんけれどもアメリカとしては単に一つ一つの問題を取り上げるのではなくして、パッケージで、鉄その他を全部含めて保護貿易でいくのか、自由貿易を貫くのかという、そういう場面で問題は解決するのじゃなかろうかというのが、私がただいままで得ている情報でございます。
  89. 岡本富夫

    岡本(富)委員 よくわかりました。  次にベトナム特需についてでありますが、去る三月三十一日にジョンソン声明がございましてベトナムに平和のきざしが見えてきた。そこで年間十四億ないし十五億ドルの、また十九億ドルという説もありますが、この特需がこれでなくなるのじゃないかというような懸念もされるわけでありまして、わが国輸出額の一〇%をこえる、こういうことを考えますと、この影響あるいはまた今後予想されるところの販売面について、堀江さんにお聞きしたいと思うのですが、どうでございましょうか。
  90. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。いまお話しのとおり、三月三十一日にああいった非常に歴史的な発言がされたのでありますけれども、その後半月たちましても、まだ折衝の会議開催地さえきまらないといったようなことが、やはり今後のベトナムの成り行きに考えなければならない要素じゃないかと思うのであります。  私、あの直後に、新聞の座談会や、あるいは書いたこともあるのでありますけれども、ベトナムの停戦それから休戦、それからその終息のしかたにつきましては、いろいろな方面から研究もされておるようでありますが、一挙に某月某日を期してたちまち休戦あるいは戦闘行為が終わる、したがってアメリカの兵隊が大量に引き揚げるということにはならないようであります。それは朝鮮動乱のようなおさまり方でもそうであったし、ことに今回は、北ベトナムその他仏印三国や中共もうしろに控えておりますしいたしますので、アメリカの五十五万近くの兵隊が大量に一挙に引き揚げるということができる事態はよほど先ではないか、そんなに思う次第でありまして、終戦ないし停戦のあり方自体に、相当だらだらと長期に続く期間が考えられ、その規模も相当規模のものが今後続いて残るだろうということも考えられるわけであります。  そうなりますと、周辺国に余恵を及ぼしておるベトナム特需につきましても、一挙にこれがなくなるということはまずない。その上に、あれだけの大事をあの現地で引き起こしたあとでありますから、アメリカはもちろんでありますし、アメリカ以外の先進工業国におきましても、あとの復興は当然の責務だといったことも考えられるわけでありまして、復興特需もある程度つながってこざるを得ないというようなことも考えますと、おっしゃるような二十億とか三十億とかいったような特需が急激になくなるわけではないと思われます。  またその上に、アメリカ本国におきましても、五十万の兵隊が一挙に五十万も帰ってくるといったようなことはさらに考えていないようでありますし、また経済的な側面におきましては、昨年の夏発足したアクリー氏を中心にした大統領経済諮問委員会で、その終戦後の、あるいは停戦後の研究をしたものがありまして、本年一月末の大統領経済報告にもその片りんが出ておりますけれどもアメリカ国内における偉大な社会、その他対内経済政策あるいは福祉政策、こういったものに政府出費をつないでいくといった考え方も明らかになっておるようでありますから、そういう意味で、ベトナムが今後どうなるか、そのおさまり方に相当年数がかかり、あるいは月数がかかり、しかもそれがジグザグの形でおさまっていくというようなことと、あとの処理もかれこれとつながるものもあるので、それほど心配する必要はなかろう。しかしまあ準備し、努力しておくことは賢明だと思うのであります。
  91. 岡本富夫

    岡本(富)委員 輸出輸出業者がほとんどこれを行なっているわけでありますが、最近、これは去年の八月以来、輸出標準決済方式の変更、すなわちLCの廃止を政府が行なおうとしておりますけれども、このLCは、御承知のように、中小の輸出業者が資金がない、そのために信用によって銀行から即座に入るというシステムですから、これがなくなりますと、中小輸出業者というものは死活問題となってくると思うのですが、これについての御意見堀江さんからお聞きしたいと思うのです。
  92. 堀江薫雄

    堀江参考人 お答え申し上げます。標準決済その他の新しい簡素化ないし廃止の問題でありまするが、これはやはり自由化の一側面だと思います。しかし国際間の取引に信用状が必要なことはおっしゃるとおりでありまして、その限りにおいて、今後とも信用状ベーシスの貿易が続けられる、それは間違いないことであって、むしろ当局が考えておられるのは、多分そういったことの報告や、統計の必要のためのそういう報告ないし許可事務をやめていくというようなことで、為替銀行界でもむしろ大いに歓迎しておるところであります。しかし実態面におきまして、日本輸出業者が外国の輸入業者から受け取る信用状につきましては、これはそのこと自体で大きな役割りを果たしておりまして、輸入業者の信用を保証する、また信用状に基づいた手形が組まれた場合は、その支払いを発行銀行が保証しておるといったことでありますので、信用状ベーシスの輸出入が行なわれることは、当局のそういった措置にかかわらず、今後とも続いていくものと思うので、御安心いただきたいと思います。
  93. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうすると、LCは完全に廃止されるということはないと考えていいと思うのですが、非常にたくさんの中小業者があるわけでして、これはどうか私どもも力を入れて廃止しないようにいたしたいと思いますので、特に貿易センターの理事長さん、お願いしたいと思います。  それで、時間がありませんから次に進みますが、アメリカのこのドルがベトナムの戦争のために相当出た。あるいはまたいろんな条件があったと思いますけれども、ドル防衛をしなくちゃならなくなってきた。ところがドゴールあたりは相当金を買い込んだりして、そして金がなくなってきた。要するにゴールドラッシュですね。こうなってきますと、やはりイギリスのようにポンド切り下げですか。そうするとこっちもドルの平価の切り下げというようなことが考えられるわけでありますけれども、この間のジョンソンさんの突然のああいう声明から考えますと、これはだいぶ考えておかなきゃいけない、こう思うのですが、現在アメリカに行かれて、あるいはまた向こうの状態で、そういうようなきざしというものはなかったでしょうか、宮崎さん、お願いしたいと思うのです。
  94. 宮崎輝

    宮崎参考人 実はニューヨークで総領事の主催で晩さん会がございましたが、そのときにアライドケミカルとか、そういう大きな会社の社長、会長のほかに、銀行及び信託会社の社長が見えておりました。向こうの非常に有力な方だそうです。この人たちの一致した意見は、つまり金の一オンス三十五ドルを必ず上げるというのです。つまり評価下げということになりますから、七十ドルとまでは言いませんけれども、必ず上げる時期がくる、アメリカの銀行家はこういうように見ておりますね。日本の実業家は一向騒がないのはなぜかというので、これは総領事もそう言っておりましたけれども、実はそうしたらどうなるかということで、佐藤さんがああしてバンカーで非常に詳しいものですから、非常に質問がございまして、そのとき佐藤さんの御回答は、要するに一ドル三百六十円というのは、日本国際収支がいい限り変わらないんだから、何も金の三十五ドルというのは、七十ドル以下になっても影響はないんだ、こういう回答をされたら、向こうは黙っていましたけれども、しかし向こうはこう言います。向こうのバンカーの意見は、要するに、必ず一ぺん金の評価下げをやるのだ、そうして一ぺんやったらこれが十年続く、十年続いたら金の準備通貨という使命から離れるのだ、つまり金というものは通貨の準備から離れていくのだ、そうなったら金の値段は大体一オンス七ドルか十ドルに下がるのだ。というのは、金というものは使えば工業で、ほかに入れ歯にするとか金の茶がまくらいしかないわけですから、金そのものの用途はないんだ。要するに準備通貨ということで価値があるのだから、準備通貨からはずせば全然値打ちはなくなる。十年後にはそうなる、こういうふうに私どもが会ったアメリカのバンカーたちは異口同音に言っておりましたね。これは私の専門ではございませんので、私がコメントするわけではございませんが、そういう情報だけをお伝え申し上げておきます。
  95. 岡本富夫

    岡本(富)委員 どうもありがとうございました。そうすると、ドルのかさの下にあるといわれております円のほうも、ずいぶんこれは考えなければならなくなると思うのですが、その問題はそのくらいにいたしまして、最後に一点だけお聞きしたいのは、先ほど、アメリカへ参られましたら、いつまでもアメリカ日本を守っておる、十年先まで守るというようなことを考えておったらおかしいじゃないかというようにアメリカの実業家から話があった、こういうお話がありました。したがって、いまから中共に対してあるいはソ連に対しても商売のほうで相当向こうの市場獲得をしておかなければならない、こういうお話がありました。ということは、いつまでもアメリカの核のかさの下でおれる日本ではない、こういうようにも考えられるのですが、宮崎さん、どうでございましょうか。
  96. 宮崎輝

    宮崎参考人 私は政治家ではございませんからどうかと思いますけれども国民の一人として私見を述べさせていただきます。  実際にアメリカの実業家や新聞記者あたりで個人的に非常に親しい人とわれわれが酒を飲みながらよく夜中まで話をしているのですけれどもほんとうアメリカが、中共が十年後に誘導弾を完成し、そうしてアメリカ本土に達するような水爆ができたときに、日本を守るためにアメリカ中共と戦争をしてやるんだ、戦争をして守ってやるんだ、それは考えないのが常識と私は思います。ですから、これは私どもで話し合ったのですが、自然に中共の軍事力が強化するに従って沖繩も引き揚げていく、日本からも引き揚げていく、これはもう必然だ。だからほっといたって沖繩は日本に返ってくるのだ。しかしながら沖繩の県民があまりにもかわいそうだ、ああいう立場で。何かまことにわけのわからぬような立場で沖繩県民がおることはかわいそうだ。だからわれわれは返還を請求するのだというのが私の考えですよ、こういうふうに彼らに私も答えたんですよ。わかった、それはよくわかるというのでありまして、私はやはり日本がよその力に依存して何もやらないでおいて、そうしてわれわれは経済だけを発展しておけばいいのだというような時代ではない。これはこんなことを言うと、また倉石発言みたいになるかもしれませんけれども、私は代議士先生ではございませんから、そういう意味ではほんとうに国を自分で守るという覚悟と同時に、やはりやがてはアメリカ中共と手を握るということをよく考えて、その現実の上に立って中共政策も考えるべきだ、貿易あるいは通商ですね。これは、私ども実業家ですから、そんな話はよくわかるのですよ。全くそう思います。それだけお答えしておきます。
  97. 岡本富夫

    岡本(富)委員 最後に、下請代金支払遅延等防止法というのがあります、中小企業を守る一環といたしまして。この問題を、いまのところはざる法と言われておりますが、もうひとつ強力にしなければ、中小企業を守れないんじゃないか、こう思うのですが、これは武藤さんから——それでは宮崎さんからひとつ……。
  98. 宮崎輝

    宮崎参考人 これはまことにごもっともです。ごもっともでございますが、ざる法というのは、御承知のとおり、はなはだ例を引いて悪いのですが、売春防止法もざる法でございましてね、ざる法といえばざる法でございますが、しかし、やはりその法律は法律なりに効果を発揮しておりますから、あまり強くやられますとまたほかの困る人も出てまいります。法律は要するに調和の上に成り立つということだと思いますので、一方にはざるだけれども、一方のほうはあまりシビアであっても困るということで、まあ一概にざる法とおっしゃらないで、ないよりはいいんだ、それは徐々に改良していくんだというふうに御理解いただければありがたいと思います。
  99. 小峯柳多

    小峯委員長 参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次回は、明後十九日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十三分散会