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1968-05-15 第58回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 小沢 辰男君 理事 佐々木義武君    理事 田川 誠一君 理事 橋本龍太郎君    理事 藤本 孝雄君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       大坪 保雄君    海部 俊樹君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       世耕 政隆君    田中 正巳君       竹内 黎一君    中野 四郎君       中山 マサ君    西岡 武夫君       増岡 博之君    箕輪  登君       粟山  秀君    渡辺  肇君       枝村 要作君    加藤 万吉君       川崎 寛治君    後藤 俊男君       島本 虎三君    平等 文成君       八木 一男君    八木  昇君       山口 鶴男君    山本 政弘君       本島百合子君    浅井 美幸君       伏木 和雄君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 園田  直君         労 働 大 臣 小川 平二君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  出席政府委員         総理府人事局長 栗山 廉平君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         労働大臣官房長 石黒 拓爾君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局次長    成田 寿治君         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         大蔵省銀行局保         険部長     新保 實生君         労働省労働基準         局補償課長   長岡  貢君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 五月十三日  委員竹内黎一君及び三ツ林弥太郎辞任につき、  その補欠として石田博英君及び有田喜一君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員有田喜一君及び石田博英辞任につき、そ  の補欠として三ツ林弥太郎君及び竹内黎一君が  議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員西岡武夫君及び大橋敏雄辞任につき、そ  の補欠として福永一臣君及び北側義一君が議長  の指名委員に選任された。 同月十五日  委員福永一臣君、島本虎三君、八木昇君、山田  耻目君及び北側義一辞任につき、その補欠と  して西岡武夫君、石橋政嗣君川崎寛治君、山  口鶴男君及び浅井美幸君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員石橋政嗣君川崎寛治君及び山口鶴男君辞  任につき、その補欠として島本虎三君、八木昇  君及び山田耻目君議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 五月十日  保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案  (山本杉君外一名提出参法第一四号)(予) 同日  保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案  (参議院提出参法第一四号) 同月十四日  ソ連長期抑留者の処遇に関する請願外六件(小  川平二君紹介)(第五二五一号)  民営職業紹介事業手数料改正に関する請願(  齋藤邦吉紹介)(第五二八三号)  原爆被害者援護法制定に関する請願神近市子  君紹介)(第五四〇八号)  同(本島百合子紹介)(第五四〇九号)  美容師法の一部改正に関する請願世耕政隆君  紹介)(第五四一〇号)  しんきゆうマッサージの健康保険適用改善に関  する請願池田清志紹介)(第五四一一号)  阿久根市の三笠簡易水道事業国庫補助に関する  請願池田清志紹介)(第五四一二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月同日  福岡身体障害者職業訓練所写真植字工科新設  に関する陳情書(  第三二五号)  理容営業施設適正配置基準設定に関する陳情  書(第三二六号)  心身障害児者総合基本法早期制定に関する陳  情書(第三二七  号)  むちうち症患者対策に関する陳情書  (第三二八号)  むちうち症患者対策等に関する陳情書  (第三二九号)  救急医療体制確立に関する陳情書  (第三三〇号)  失業保険金受給制限並びに内容改善に関する陳  情書(第三三一  号)  老齢者失業対策事業就労保障に関する陳情書  (第三三二号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第三三三号)  医療保険制度改正反対に関する陳情書  (第三三四号)  健康保険法の一部改正に関する陳情書  (第三三五号)  健康保険制度における助産給付に関する陳情書  (  第三三六号)  国民健康保険事業に対する国庫負担率引上げに  関する陳情書(第  三三七号)  同  (第四一三号)  国民健康保険療養給付費国庫補助増額等に関す  る陳情書外一件  (第三三八号)  生活保護基準引上げに関する陳情書  (第三三九号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  案の成立促進に関する陳情書  (第三八五号)  医師及び看護職員確保に関する陳情書  (第三八六号)  保健所の医師確保に関する陳情書  (第三八七号)  食品衛生行政に関する陳情書  (第三八八号)  日本脳炎を予防接種法接種種目に追加に関す  る陳情書  (第三八九号)  予防接種に起因する傷害の補償に関する陳情書  (第  三九〇号)  失業者完全雇用対策確立等に関する陳情書  (第  四〇八号)  せき髄損傷障害者援護に関する陳情書  (第四〇九号)  外傷性せき髄損傷障害者援護に関する陳情書  (第四一〇号)  むちうち症センター設置に関する陳情書  (第四一一号)  公共事業労務者賃金引上げ等に関する陳情書  (  第四一二号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  案の成立促進等に関する陳情書  (第四二九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八三号)(参議院送付)  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  3. 山本政弘

    山本(政)委員 実は過去二回、仙台工作賃金不払い賃金だけではありませんけれども、一時金、それから退職金、そういうものの不払い問題についてお伺いをしたのですけれども、昨年の六月に組合側で、一時金、それから賃金不払いについて仮差し押えをいたしました。それから七月に会社側会社解散、それから全員解雇をやった。そしてそれに対して川岸工業第三者異議申し立てをいたしました。  それで仙台地裁は、川岸を相手にして昨年十月に仮処分の提訴をしたわけですけれども、仙台労働基準局不払い事件について四十二年の八月に告訴をいたしまして、その件について実は四十三年の四月に不起訴処分仙台地検がいたしました。私が聞いたところによりますと、その不起訴処分理由が、仙台工作を不起訴にしたのは、支払い能力がないというのが主たる原因であったというふうに聞いております。   〔委員長退席田川委員長代理着席〕  もう一つは、川岸工業についてそういう嫌疑が不十分である、だから取り上げることができない、こういうふうな話を聞いておるんですけれども、そのいきさつについてちょっとお伺いいたしたいと思うのですが、これは刑事局のほうですか。
  4. 豊島英次郎

    豊島説明員 刑事局長が支障がございますために私から申し上げさせていただきます。  仙台工作事件につきましては、事件が、告訴告発にかかるものと、それから労働基準局送致にかかるものと二様にあるわけでございます。事件の中身は、昭和四十二年六月、七月、八月、この賃金未払い事件ということでございまして、月を単位にいたしますので三つの事件があるということになるわけでございます。  それで、六月分の賃金未払い事件につきましては、仙台地検及び仙台労働基準監督署告訴及び告発を受けて、そして捜査をいたしました。それから、七、八月分の賃金未払い事件につきましては、先ほどの六月分の賃金未払い事件をきっかけにいたしまして、仙台労働基準監督署があわせて捜査をされ、その事件仙台地検送致いたしております。  なお、仙台労働基準監督署告訴告発を受けました六月分の賃金未払い事件につきましても、同監督署から仙台地検事件送付がなされております。  これらの一連の事件につきまして、仙台地方検察庁では捜査の結果、ことしの四月三日に御指摘のように不起訴処分事件を付しておるわけでございます。  不起訴理由は、私どもの処分の部類で言います嫌疑不十分という結論になっております。不起訴理由の詳細につきましては、実はすべての事件につきまして内容の詳細を申し上げておりませんので、この点は要点だけにとどめさせていただきたいというふうに思うわけでございますが、不起訴理由要点は、結局、仙台工作の容疑事実は、仙台工作代表取締役であった工藤憲男、それから親会社であるといわれております川岸工業代表取締役である工藤栄、この両名が共謀して、そして仙台工作のために賃金未払いをしたのである、これが送致事実及び告訴告発事実になっておるわけでございますが、この両名及び仙台工作株式会社につきまして、結論はどういうことになったかと申し上げますと、結局賃金支払いができなかったのは、やむを得ない事由によって支払いが不能になったために賃金が支払われなかったのであるという一応の認定に達しております。したがって、いま申し上げた者らにつきましては不起訴ということになったわけでございます。  それから親会社であります川岸工業が疑問の対象になってくるわけでございますが、この点につきまして、不起訴理由の中では、川岸工業仙台工作とは、これはあくまでも別個法人である、したがって川岸工業賃金支払い義務があるというふうには認められぬのであるという事情理由書の中に書かれております。  以上のような理由によりまして、事件は不起訴処分になったということでございます。
  5. 山本政弘

    山本(政)委員 いまお話のあったように、やむを得ない事由により支払い不能である、これが第一点、第二点は、川岸工業仙台工作別個法人である、こういうお話です。  私はお伺いしたいのですけれども、仙台工作を不起訴処分にした理由というのが、支払い能力があるかないかということが不起訴処分にする一体理由になり得るのかどうか。つまり賃金不払いであるという事実に対して、その事実に対して、払うべきか払うべきでないかということが、審議というんですか、考えられるべきであって、支払い能力があるなしということは第二次的な問題に当然私はなり得ると思うのです。あなたのようなお考えになると、支払い能力がなければ、かりに類似のような問題が起きたときには、すべてそこにおる従業員は、給与をつまり支払いを受けなくてもいいという結果になるでしょう。そうすると私はたいへんおかしなことになると思うのです。その点は一体どうお考えなんでしょうか。
  6. 豊島英次郎

    豊島説明員 この事件につきまして認められております事実といたしまして、先生指摘のように賃金が支払われておらないという事実は、まず前提としてあるわけでございます。支払い得なかったという事情が次に問題になるわけでございますが、単純に、能力がないというふうに裁定書も言っておるわけではございません。通常社会通念からすれば、普通、会社はかく努力するであろうと思われる基準というものが抽象的には考えられるわけでございまして、そういう基準から見て、本件の場合には支払いができなかったことはやむを得ぬのだというのが結論でございます。
  7. 山本政弘

    山本(政)委員 川岸工業というのは私はそういう意味——仙台工作川岸工業のことについての別個法人であるということはあとでお伺いいたしたいと思うのですけれども、昭和三十九年の十月一日から昭和四十年の九月三十日までの決算赤字が一千百万円、それから昭和四十年の十月一日から昭和四十一年の九月三十日までの赤字が六千三百万円、この事件は四十二年でしたか、昭和四十一年の十月一日から昭和四十二年の三月三十一日まで、この赤字が一億二千万円なんです。そうしますと、昭和四十一年の十月一日から四十二年の三月三十一日までの会社従業員に対する賃金支払いというのは大体月六百万円。半年で計算いたしますと三千六百万円になりますね。そうすると従業員がただ遊んで仕事をしないでそのままに給料をもらったとして三千六百万円。仕事をしているのですよ、現実に。しておって一億二千万円の赤字が出ている。私はそういうことを考えますと、どうも仙台工作かあるいは川岸工業か知りませんが、その辺に決算の上において粉飾をされているような気持ちがするわけです。そういうことを考えますと、支払い能力が、社会通念としてあなたのおっしゃるように、あるなしにかかわらず、私は検察庁のほうが起訴、不起訴の判断の資料としたことについて、何か捜査上非常に不十分な点があるわけです。同時に、これは仮差し押えもしております。仙台工作の。それが一つの財産ですから、それを処分することによってたとえ全部ではなくても、賃金あるいは一時金、退職金の一部というものが支払えるはずなんですよ。しかし、それが川岸工業のものだということで、実は異議申し立てがあったわけでしょう。そうするとどうもその辺がいま申し上げた決算上の問題、それから異議申し立てというようなことを考えていくと、あなたのおっしゃるように、別個法人であるというふうには私はどうも考えられない。  しかも、これは私はこの前の委員会で質問をいたしたのですけれども、一人会社といいますか、商法上において親会社子会社があるというときには、子会社というものが、親会社が一切の支配権を握っておる場合でも、その場合には結局第三者に対して不利益を与えてはならないということで、商法上は結局親会社子会社責任がある場合に、そしてその責任が果たされない場合には、親会社がかわって果たすべきであるというこれは判例も出ているはずなんです。それが私は商法上に言う一人会社だと思うのですけれども、そういうことをこの前申し上げたのです。どう考えても別個法人であるからというふうに割り切って、つまり川岸工業に対して免責ということはちょっと考えられないような気がするのですよ。その点ひとつもう一ぺんお答えをお願いしたいのですけれども。
  8. 豊島英次郎

    豊島説明員 不起訴理由の報告の中で、詳しくこの親会社子会社の間の関係につきまして触れておりませんので、具体的な事実に即して私から答弁することはできないのでありますが、おっしゃいますように、商法上一人会社、つまり一人のみの社員によって子会社が構成されておるといったような会社がしばしばあるわけでございます。そういう会社の場合に、これは会社法上は別個法人になっておりますが、第三者との関係で、たとえばこのような賃金不払いの事案につきまして、親会社賃金債務を負うかどうかという点がおそらく御論点なんだろうというふうに思うわけでございますが、仙台地検が判断しました基本的な理屈は、会社法別個法人である以上は、親会社に対して債務負担をさせるということは不可能だという前提があるので、先ほど申したような追って書きがついておるということだというふうに思うわけでございます。そういう考え方がはたして抽象論として正しいかどうかという点でございますが、先生のおっしゃいますように、そういう一人会社の場合に親会社責任を負うんだという理論構成をする学説の中に、子会社法人性をそういう場合は否定されるんだ、乱用のある場合は否定されるんだというような理論があるように聞いておりますが、しかし、少なくとも私が知っております限りにおきまして、子会社権利乱用に基づきまして当然に法人性が否定される、つまり無効になるといったような形での判例というものはないんじゃないか、少なくとも現在の裁判例考えられております限界内では、やはり別個法人である、乱用があった場合には、会社法上裁判所に対しまして解散命令を得て解散せしめて、それによって否定していくといった手続しかないんじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。法律上の御議論として、先生おっしゃいますような法人の否認ができるんだという、当然にそれが無効になるんだという学説上の御議論はあろうかと思うのでございますが、少なくとも仙台地検考えました別個法人であるという考え方の中にはそういう理論が入っていないし、またそういう理論はちょっとわれわれの実務処理上は、取り得るのは無理じゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  9. 山本政弘

    山本(政)委員 私はつまりこういうことを申し上げたいのですよ。親会社子会社の株式の全額を取得しているのだ、しかも商取引の上においても慣行としては通念として、子会社がやっていることはすべて親会社のやっていることとして一般的には考えられておる、これは名刺を使ったり、それから荷札にしろ、いろいろな書類上にしろ、そういうふうになってきている。だから本来なら、株式会社の本来の形というのは、これは複数人の結合した団体ですね。しかし、そうじゃないということになれば、私は子会社のいわゆる仙台工作の場合には、何というか実際は会社の本質というものが失われておるんじゃないだろうか。だから、そういうことからいえば、当然親会社というものは責任を免れないということを言いたいわけで、実は一体性があるということを言いたいわけですよ。そういう場合に、川岸免責になり得ることはあり得ないんじゃないかということを申し上げているので、じゃお伺いしますが、検察のほうで起訴する場合一つ条件が必要ですね、起訴する条件がありますね。それが結局賃金不払いだということで実は起訴したわけですね。そうすると賃金不払いということで、その支払い条件があるなしということで、起訴するか不起訴処分にするかということがきまるわけだけれども、使用者賃金支払い義務を当然怠っておると思うのですよ。そして働かして賃金を払わないというのは、これはあなたのおっしゃる社会的な通念からいって、私は使用者には道義的な責任があると思うのです。かりに親会社子会社が一体化されておるとすれば、これは仮定の問題でけっこうです、そうするとあなたのおっしゃるように商法上は別会社であっても、別個法人であっても、親会社子会社従業員に対して支払い義務がありますかありませんか。
  10. 豊島英次郎

    豊島説明員 別会社であります以上は、親会社債務不履行について責任を負うということはあり得ないというふうに考えております。先生が先ほどおっしゃいましたように、親会社子会社関係が非常に密接な場合には、道義的に援助すべきであるといったようなことはそのとおりだというふうに思うのでございますが、刑事罰則適用する上におきまして、当該法人を処罰するとか、あるいは当該法人代表者を処罰する、あるいは従業員を処罰するといったような角度からながめます場合に、あくまでも、法人別個でありますと、その両者の関係が一人会社というような密接な関係にありましても、やはり責任を問うことは無理であるというふうに考えておるわけでございます。
  11. 山本政弘

    山本(政)委員 そうすると、私は法律論というのはよくわかりませんけれども、法律適用というものは、あまり広くは解釈できないというふうに私自身は考えているわけです。法の乱用ということから、できるだけ狭義に考えるべきでしょう。しかしその反面に、法の適用というものは、あなたのおっしゃるように、ある程度社会通念上、常識的な面というものがきわめて大きいと思うのです。とするならば、法によって守るべきものが守られないというケースが、中小企業倒産とか何とかということになってきますと、今後たくさん出てくる。そうすると、一体法はそのことに対してどうしなければならぬのか。ただそれは切り捨てごめんでやられていいのかというと、私はそうじゃないと思うのです。法にはそういう意味での救済措置というものが当然私はあり得ると思うのですけれども、この仙台川岸の場合でも、そういうことで、あそこの従業員をそのままにほったらかしておくということは、私はちょっと理解できないのです。昨日も行商人たちが二人お見えになっていました。去年の七月ごろから行商をして、いつ退職金がもらえるのか、賃金がもらえるのか、一時金がもらえるのかということでしんぼうしておられる。それをそのままにしておいていいのかということになります。その辺は一体法救済規定というものはないのですか。
  12. 豊島英次郎

    豊島説明員 この場合の、企業とそこに働いております労働者との実態関係がどうなっておるかという点につきまして、私、詳しい知識はないので、あまりえらそうな答弁は何もできないのでございますけれども、非常に大きな労働政策上そういう場合にどうするかといった問題は、非常にむずかしい問題があるのだろうというふうに思うわけでございますが、われわれが所管いたしております刑事責任の追及という狭い穴からのぞいた場合に、いまの親会社刑事責任を追及できるかという点につきましては、先生指摘のような事情がありましても、これは消極にならざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  13. 山本政弘

    山本(政)委員 そうしますと、こういう仮定というよりか、実際にもあるのじゃないかという危惧もありますけれども、あなたのおっしゃるようなことになると、労働基準法というものは空文にひとしくなりますよ。たとえばある会社がインチキな子会社をつくって、従業員を働かしている、そして何か操作をやって倒産になる、そうすると金が払えないからということで、そのまま従業員ははったらかしにされている、こういうケースだって考えられる。こういう経営者が、今後不況になればなるほど出てくるという可能性はあると思うのですよ。もちろん、法的にはそういうものは処罰し得るんだというけれども、仙台川岸との場合にそういうあいまいなものが残っているように、しろうとから見ても私はどうも危惧を感ずるのです。もっとその点について調査をお願いをして、はっきりとした態度をとっていただかないと、いま申し上げたようなことが起こり得るという可能性が出てくるのではないか、こういう心配をいたします。そういう点についてお答えをひとつお願いしたいと思うのです。
  14. 豊島英次郎

    豊島説明員 法体系の上からの理屈の話にしかならないのでございますけれども、先生おっしゃいますような一人会社というものにつきましては、いわゆる株式会社法上はいわば認められておるといいますか、有限会社等については認められておらないというのが現行法規だというふうにわれわれ考えておるわけでございます。株式会社につきまして、それではそういった会社権利乱用のきざしがある場合には、やはり会社解散という措置によってまかなうというのが現行法規一つの手続だろうというふうに考えておるわけでございます。そういった意味合いから、実際にそういう一人会社というようなものは、法律上否定すべきであるという御議論、これは会社法全体系の上でどういうふうに考えるかという問題があるわけで、私自身がお答えできる範囲内の事柄ではないわけでございますけれども、少なくともこの川岸工業ケースにつきまして、一体どういうふうに考えるかという点になりますと、具体的な事実を踏まえて考えないと、一がいに私、議論ができないだろうというふうに考えております。
  15. 山本政弘

    山本(政)委員 再度十分な調査をお願いをいたしまして、次に移りますけれども、検察庁の不起訴処分の決定に対して、仙台の労働基準監督署では、犯罪を構成する事実があるという確信を事務局としてお持ちになっているようです。  それから第二番目には、労働者保護の立場を守る監督署としては、不起訴の決定がたいへん残念であったということも書いております。これはつまりいま言った嫌疑不十分というのですから、疑わしきは罰せずということだろうと思うのですけれども、そういう議論労働者企業というものの前にそのまま放置されておるということに対しては、たいへん理解に苦しんだという表現を現地ではしているのです。  一体そういうことに対して、今後、これは労政の仕事になるのですか、あるいは基準局の仕事になるのですか、一体どういうふうに指導なさるつもりか、あるいは対処なさるつもりか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  16. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 現地の労働基準監督署におきましては、労働基準法違反と認めまして、送検をいたしたわけであります。それを検察庁で受けまして、ただいま質疑応答がございましたような形になったわけでございますが、嫌疑不十分ということになったわけでございます。  送検いたしますまでは、労働基準監督機関の所掌に属しておりますが、送検後の起訴するかいなかといった問題につきましては、労働基準監督署の権限の範囲を越えておりますので、私から申し上げることはいかがかと思います。  一応法的な手続としては完了いたしておるわけでありますが、しかしこの問題はいろいろ労使間の紛争があったことが基礎になっておるわけでございまして、現に不払い賃金を払うかいなかというような問題につきましては、たとえば仙台工作社の機械施設等を仮差し押えをしておる、それは川岸工業の所有である、その仮差し押えを解除するならば賃金は払いましょうといったようなやりとりもなされておるようでございますので、そういったような問題を労使が冷静に客観的にさらに考えるというようなことが、いままでお話がございました法的な取り扱いとともに、たいへん大事なことじゃないかというふうに考えられるわけであります。労働基準法での手続といたしましては、一応尽くすべきところは尽くしたのでありますけれども、そういった本件特有のいろいろな問題はまだあるようでございますので、労使の間においてさらに十分な話し合いをされまして、賃金不払いといったような事実を解消する方法がまだ残されているのではないかという点に十分着目して善処されますことを期待いたしたいのであります。
  17. 山本政弘

    山本(政)委員 それでは時間がございませんので、この件に関しましてはお願いを申し上げて、次に移りたいと思うのですけれども、告訴告発をする場合にしても、労働基準局検察庁との間では十分密接な連絡をとるようになっておるだろうし、それから基準局がそこまで踏み切る場合には、十分な調査をしていると私は思うのです。もちろん検察庁のほうでも万遺漏ないように措置をおとりになっての上でのことだと思いますけれども、なおひとつ十分調査をお願いして、従業員に対して何とか将来をお考えになっていただきたい、こういうふうにお願いいたしまして、次に移ります。  同じ全国金属に属するのですけれども、日本ダイヤモンドというのがございます。これは従業員が百二十名ほどだったのですが、現在は五十二名ほどになっております。これは昭和四十二年九月二十六日に全員解雇、工場閉鎖の通告があった。四十二年九月二十七日に退職金協定ができた。おそらく全員解雇、工場閉鎖があったので、急いで組合側会社側との間で退職金の協定がなされたのだろうと私は思いますけれども、四十二年十月二十日以降完全に操業が停止された。それから昭和四十三年一月二十九日に会社解散になって、退職金が千四百六十万円未払いになっております。そこで四十二年九月二十七日の退職金の協定をやったときの中身を大ざっぱに申しますと、勤続一年ごとに基本給の一ヵ月分とし、端数七ヵ月以上は一年とする、勤続一年未満の者は一年とする、会社の都合による解雇は右の二倍とするという協定の中身であるわけなんですけれども、これが払われておらぬ。そして四十三年三月二十一日には、移動禁止の仮処分が甲府の地裁で決定をされている。  そこで工場をなぜ閉鎖したかという理由なんですけれども、これは香港の暴動で商社が閉鎖をしたということが第一、二番目はダイヤモンドの原石が高くて採算が合わないということ、第三番目は荷主、これはベルギーのアントワープだそうですけれども、ここから原石を送ってこないという理由であるようです。  私は、ダイヤモンド工業会に実はお伺いをいたしたのですけれども、ダイヤモンドの原石というのは、昨年の三月と九月ではそんなに原石が高いというほど上がっておらぬ。つまり特別にバイトとかダイスとか、そういうものに使用する工業用原石というものは、今日の段階で一割か二割高くなっておりますが、しかし、そんなに原石は高くなっておりません。こういうことでございます。それから原石を送ってこないということについても、実は私の知っている人で、いま仕事をやっている人がありますが、現実には工業用ダイヤモンドというのは、大体家内工業と言っていいくらいの仕事であります。そうすると工場閉鎖の理由のいま申し上げたような三つのうちの二、三というのは、これは理由にならないと思うのです。そういうことで工場が閉鎖されているのですけれども、この点についての事情を御説明いただきたいと思います。
  18. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私どもが承知いたしておりますのは、昭和四十二年七月一日ごろからダイヤモンド原石の輸入が漸次できなくなり、事業の継続が次第に困難視されるようになってきたという背景のもとに、先生指摘のような従業員の解雇、企業閉鎖というような措置をいたしたようでありますが、このような企業の閉鎖なり解雇につきまして、適当であったかどうかという点、特に企業が閉鎖したいという理由につきまして、とかく批判的な見解を述べるというのはいかがかと思いますので、この点は、以上申しましたようなダイヤモンド原石の輸入が漸次できなくなり、事業の継続が漸次困難になってきたという事実は承知いたしておりますけれども、その企業閉鎖の当否につきましての見解は、遠慮させていただきたいと思います。
  19. 山本政弘

    山本(政)委員 そこで豊島さんに再度お伺いしたいのですけれども、日本ダイヤモンド株式会社の役員というのは、実はアイゼンベルグ商会というものの役員が全員そのままに、なっているわけであります。そしてそれの事実上の経営者というのは、ショール・アイゼンベルグというイスラエルの人ですが、その人が、昭和三十四年に日本ダイヤモンド株式会社の前身である共同工芸というの工場を甲府市内に持っておったわけですけれども、韮崎市に工場誘致計画があったので、それに乗って韮崎市に移転をした。そして昭和三十四年に実は二万坪の土地を韮崎市からもらっているわけです。もらってという言い方は語弊がありますけれども、一万坪は無償で、残りの一万坪は坪千五百円で払い下げを受けているわけです。そうしてその一部を実は売却している。本来ならば二万坪ですから、かなり大きな工場になるわけですけれども、先ほど申し上げたように、工業用ダイヤモンドというのは家内工業に近い。ですから、そんなに人が要らないので土地を遊ばせておった。だから約束違反で、その後五千坪というものは韮崎市に返せということで返還を余儀なくされたという事実もあるわけです。その後その残りの一万五千坪は、そのまま所有になっていたわけですけれども、アイゼンベルグ商会のほうへ順次一万五千坪の所有権が移転をしてきたわけです。そうして私が申し上げたように、最後には会社を閉鎖していったということになると、ここにも何か擬装倒産というようなにおいがするわけです。  これを見ますと、重役、あるいは株式、すべてが結局アイゼンベルグ商会というものに握られておる。会社支配権、株、重役全部をアイゼンベルグ商会というものが握っているわけですから、あなたのおっしゃるように、日本ダイヤモンドというものは別個法人だけれども、これも一人会社というふうに見られなくはないのですね。そうすると、ここでまた、川岸仙台工作と同じような関係が、アイゼンベルグ商会と日本ダイヤモンド株式会社の間に出てくるわけです。そういうものが出てきたときに、先ほどあなたがおっしゃったように、商法別個だからということで責任の所在があいまいにされると、ここにまた五十何名という人たちが路頭に迷わなきゃならない。法の不備かもしれませんが、どうもそういうものがあるような気がするのです。未払い退職金賃金と同様に払うべきものだというふうに理解されていると思うのですけれども、そういうものがそのまま放置されたままになっているという事件が、今後たくさん起こってくると私は思うのです。しかし、あなたのおっしゃるように、法律というものはそれほど拡大解釈すべきものじゃないということになると、そういうものがまかり通ってくるということを実は私は危惧するわけです。これは続々とあります。私の手元にあるだけでも、これは全金の傘下ですけれども、七社で八億何ぼのものが出てきているわけですね。どうもそういうことになると、法というものが、守られるべき人を守らないで、守らないでいい人を守っているような気がするわけです。その点についてのお考えをひとつお聞きしたいのですが、一体どうなさるおつもりなのか。
  20. 豊島英次郎

    豊島説明員 御指摘の問題は、結局労基法上の労働者保護という範囲よりももっと広い問題が、御指摘のようにあるのだろうと思うわけでございます。たとえば、先はどの子会社の財産を親会社が不当に横領する、あるいは役員が詐欺破産のようなことをやるということになりますと、それ自体が一つの刑事犯罪になり得る場合がもちろんあり得るわけでございます。ただ、先ほどから申し上げておる点は、一人会社というものの性格そのものが、つまり、その会社会社財産の限度においてその責めに任ずべきものだというシステムのものでございますので、その限りにおいてしか債権者に対して責任を負えない、したがって、いろいろな債務不履行の事実が出てくる、それをどうするかという問題になりますと、これもいわゆる民事的な問題になってくるわけでございます。ただ、先ほど最初に申し上げましたような詐欺破産であるとか、あるいは子会社の財産を親会社が横領するといったようなことになりますれば、これは別個に刑事犯罪として考える必要があるということであろうと思います。
  21. 山本政弘

    山本(政)委員 アイゼンベルグ商会のショール・アイゼンベルグという人が、結局日本ダイヤモンドの土地を自分のものにしているということなんですけれども、親会社子会社という関係で、子会社の日本ダイヤモンドが持っている土地を自分のものにする場合に、これは会社の役員ですから、特別の利害関係を持っている人ですね。そうすると、その人が自分が役員であるところの子会社の持っている土地を自分のものにするについては、会社ですから当然役員会を開いて議決をすることが必要だと思う。その場合には、特別の利害関係人は、自分の利益のために議決権を行使することができないというふうなものが当然あり得るのだと思うのですけれども、そういうものはあるのですか、ないのですか。
  22. 豊島英次郎

    豊島説明員 御質問は、刑事犯罪を離れましてわれわれの所管ではございません商法上の問題でございますので、ちょっと私からの答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  23. 山本政弘

    山本(政)委員 いずれにしても、きょうは時間がありませんので、次の問題に移らせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げた数字では七社で八億八千万円、これは賃金未払いです。予告手当、未払い退職金全部含めて、この中には川岸工業、日本ダイヤモンドが入っております。わずか七社で八億八千万円のものが不払いになっている事実は、今後の中小企業倒産が、先月だけでも私の記憶が間違っていなければ六百十二件ですから、その前の月は千件をこしておるんですから、そういうのが続々と出てくると思うのですよ。そのことに対して、ひとつ何とか措置してやらなければ、これは弱い者がそのままほうり出されていくという結果にしかならないと思うのです。そういう意味で、基準局も言っているそうですけれども、何か法的な救済措置があるのではないかというような気がいたしますし、ぜひお考えを願いたいと思うのです。豊島さん、ありがとうございました。  原研の方はお見えになっておりましょうか。
  24. 田川誠一

    田川委員長代理 科学技術庁原子力局次長が来ております。
  25. 山本政弘

    山本(政)委員 実は、原子力研究所の使用者の、労組に対する介入問題でお伺いをいたしたいと思いますけれども、原子力開発というのは、こういう言い方は何ですけれども、ビッグサイエンスというのですか、とにかく巨大な科学の最大のものだといわれております。政府も、原子力の平和利用ということを言っており、最重要施策の一つとしていままでに一千億円の費用を投じております。そこで働く研究員というか働く人は、放射能の障害とか、爆発の危険というものをはらんでいる職場にいるわけですが、研究に非常に慎重さが要求されると思うのです。と同時に、そういう研究というもののほかに考えなければならぬことは、安全や保健というものが要求されると思います。そうすると、本来なら、ここの原研の場合では、労使関係については、縦の関係についても十分意思が疎通しなければならぬだろうし、横の関係についても、つまり縦、横の関係についてほんとうに意思が通じてなければたいへん危険だと思うし、そういうチームワークというものが必要だと思うのです。だが聞くところによりますと、労使関係について不当に介入をしていくというようなことがあり、しかも三月でしたか、ロックアウトをやりました。私どもの常識から考えれば非常に前近代的なことが行なわれているというようなことがあるわけです。  そこで、時間がないので単刀直入にお話しいたしますが、原子炉の研究所講師の任命にあたって、昭和三十九年の七月かち四年間にわたって、組合の歴代の中央執行委員長をつとめてきた三名の人々が全部、組合活動を行なったということで講師からはずされているわけです。この三人の人たちが講師からはずされたのは、率直に申し上げて、労働組合の活動をやったからはずされたのか、あるいはそうでない他の理由によってはずされたのか、そのことを実はお伺いいたしたいと思うのです。
  26. 成田寿治

    ○成田説明員 日本原子力研究所で毎年二回原子炉の研修をやっております。したがって、年二回講師の任命が行なわれておるわけであります。ことしの四月十日付をもちまして、四十三年度の上半期の原子炉研修の講師の任命がありまして、それを見ますと、昨年度の下半期のときの講師が八十四人ありましたが、今年度の四十三年度上半期の講師としては、五十八人に減っております。したがって、昨年度八十四人のうちで二十八人が今度あらためて任命されなかったということになっています。そして、その二十八人の中に、先生指摘の、現在の原研の労働組合委員長の鶴尾氏、それから元委員長の五藤氏、それから市川氏、この三人が入っております。  この点につきましては、所側に対しても、その理由を聞きましたのですが、これは決して組合活動をやったから、あるいは組合の執行部の役員であったからという理由ではずしたのではなく、大体この三氏の方の講師になった期間を言いますと、鶴尾氏は昭和三十七年からやっております。それから市川氏は昭和三十六年からやっております。ただ五藤氏は四十一年からやっておりまして、大体御両人は六、七年、非常に長い期間にわたっております。それから五藤氏でも二年間にわたっております。所側では、決して組合活動をやったという理由でやったのではなく、一般的な基準によってやって、特に最近は、長くなっている方はローテーションを考えるといいますか、新しい人にかわってもらうという方針でやっておりまして、一般の研究者にとっては、この研究所の講師というのは、非常に時間的な負担になる点もあるので、そういう意味で、なるたけ長くなった方にはかわっていただいて、適当な、研究室長とかあるいはその他研究を実際やっておった人にかわってもらう。しかし、それもそう長い期間にわたらないように、一般的な基準で今度の任命をきめたので、決して組合活動をやったとか、組合の執行部の役員であったからという理由ではないというふうにわれわれは聞いております。
  27. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃお伺いいたしますけれども、あなたのおっしゃる一般的な基準というのは、要するに講師の時期が長かったか短かったかというそれだけのことなんですか。それは一般的な基準になり得るのですか。おそらく基準ということだったら、こういうこと、こういうことというのが出るはずですね。そういう基準があるはずで、講師の期間が長かったとか短かったということは、一般的な基準理由になり得ないと私は思うのですよ。
  28. 成田寿治

    ○成田説明員 いま一般的な基準と言いましたが、それは決して、つくられたもので、外へ公表されておるものではありません。こういう問題に関連して、研究所の理事側からわれわれはいろいろ聞いて、その理事側の内規的な基準がどうであったかということを聞きましたところ、これは決して組合活動をやったからではなくて、任期の問題とか、それからいままでやっておった委員長なり前委員長にかわって、新しくその講座を持つ人は、大体いま担当の研究室の室長をやっておる人が二人任命されておりまして、そういう現在の職務あるいは業務の繁忙関係とか、いろいろな点を考えて、総合的に判断してやっておるというふうに聞いております。
  29. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ一般的な基準とか、内規の基準ということについて、私もあとで再度お伺いしたいのですが、基準というものは外部に出さないにしても、少なくとも講師をかえる場合には、現在の講師という人に対して、私は、やはり十分に理解して納得してもらう必要があると思うのです。一体そういう措置をおとりになったのかどうか。その点はいかがなんですか。
  30. 成田寿治

    ○成田説明員 その点、私もはっきり聞いておりませんのですが、新しい人の任命のときには、仕事の繁忙関係、その他から、来ていただけるかという事前の了解はやっているようでございますが、やめていただく方に事前に具体的な了承をとっておるかどうかは、私はまだちょっと調べておりませんので……。
  31. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、五月のたしか十七日の週刊読売ですか、それを読んで、非常に興味を感じたから、原研の方にも御連絡をしてあれしたのですが、あそこに——ここに持ってきております。これは名前を入れて、もと東芝におった方が書かれておるのですが、やはりそういう原子力の研究に携わった方が書かれておる。ここに書かれておるのは、研究者は金よりか、つまり給料よりか、自分の研究というものをほんとうにやらしてもらえるかどうかに最大の関心があると、こう書いておりますよ、この人は。科学に携わる人は、それだけ純粋な気持ちがあるのですね。だったら、あなた方が講師を任命されるときには了解がつけられるけれども、講師をやめさせるときには本人の意向を聞かない場合もあるという、そんなばかなことがありますか。
  32. 成田寿治

    ○成田説明員 この任免は、役所でなくて、日本原子力研究所の理事長がやっておりまして、役所のほうで、具体的に事前にやめる方に聞いたかどうか、まだはっきりしない点があります。  それからもう一つは、原子力研究所の講師というものは、研究自体でなくて、外部から若い人が来まして、その研修で、自分の経験なり、自分がやっておる研究を教えてやるということで、もちろんそれに非常に重要な意味もありますが、ある人にとっては、また研究の時間がかえって制約されるという人もあるやに聞いております。
  33. 山本政弘

    山本(政)委員 つまり原研というのは、教育機関でもあるし、研究機関でもあると思うのです。だから研究に携わる人は、私が申し上げたいのは、教育に対してもそれほど純粋であろうということなんですよ。あなた方、そういうことをおっしゃっておるけれども、現実に鶴尾さんにしても、五藤さんにしても、それから市川さんにしても、この理由というものは、あなたのおっしゃるような理由ではございません。少なくとも私の手に入れた資料によったら、一人は外部の圧力とちゃんと書いてある。一人は不明の理由理由はわからぬけれども、ともかくやめてくれと言っておるのです、上司のほうから。もう一人のほうは、あなたのおっしゃる、独断でやめさしておるのですよ。その三つの理由というのは、理由にならない理由ですよ。あなたのおっしゃるような内規的な、一般的な基準に当てはめて任命したり、それから辞任をさしたりしたことじゃないのですよ。だからそういうことが、冒頭に私が申し上げたように、慎重を要し、そして最も安全を要するような職場でそういう労使関係があっていいのかということを言っているのですよ。労政局長、一体このことについてどうお考えになっているのです。
  34. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま山本先生指摘のように、つい最近におきましてJPDRのシフト制をめぐりましていろいろ紛争がございました。幸いにいたしまして協定が結ばれまして妥結をいたしましたので、その点は私どもも話し合いがついたということは非常にけっこうなことだというふうに考えておるわけでございますが、おっしゃいましたような、そういう非常に重要な仕事でございますし、日本の科学技術の今後の発展につきまして、非常に重要な使命を持っておる研究所でございますので、労使関係が円滑に正常な形でいくということが特に必要な職場であるというふうに私どもも考えておりますので、今後におきましてもできるだけ紛争のないように、そして労使の間で十分な話し合いができまして、納得的な雰囲気で事が運ばれるということが望ましいというふうに考えております。
  35. 山本政弘

    山本(政)委員 原研に働く人たちは、私は純粋に科学的な立場に立ってやっていると思うのです。だから本来ならば、そういうことばというのは語弊があるかもわからぬけれども、つまり政治ということについてはあまり関心がない、むしろ研究一本に打ち込むという、そうあるべきはずなんです。あるべきはずという言い方も、これは語弊がありますが、そう言うことが一般的でしょう。だけれども、政治意識が何で高くなってくるか。お読みになっていないのだったら、一ぺんぜひ私はこれを読んでいただきたいと思うのです。この人の書かれたことについては、政治と科学の接点に立っておる原子力研究所員のことが、きわめて微妙ではありますけれども、言われていますよ。なぜ政治的に関心を持たなければならないかということが言われておる。そして、外部の圧力があるということも、はっきりとではないけれども、言っているのですよ。もし平和的に利用されるべきものに対してそういう外部的な圧力があったとすれば、政治的意識というものが、関心が高まるのは当然じゃありませんか。私は、国民としては政治的な意識が一般的に高まるということは望ましいことだと思うし、たとえ研究所員でも政治に無関心ではあり得ないと思いますよ。しかし、あなた方がお考えになっていることは、必要以上に政治的に関心があり過ぎるというお考えが先入観としてあっておるはずなんですよ、研究所に対して。だから、そういうことに対して、理由のない理由によって辞任をさし、あるいは任命をしているというような事実が行なわれるのですよ。  労政局長の御答弁は、私はよく理解できました。あなたに、いまのことについての御答弁をぜひお願いしたいと思うのです。
  36. 成田寿治

    ○成田説明員 原子力の開発、平和利用の促進というのは、日本にとって最も大事なことでありまして、これを円滑にやっていくためには、特にその執行に当たっております原研等において、労使関係が非常に提携して、協調して、円滑にやっていかないといかぬということは、私も先生のおっしゃる御趣旨、全く同感でございます。ただ、今度の事件に対して、私、週刊読売をまだ読んでいないので、帰って即刻読むようにしたいと思いますが、われわれが所側にいろいろ尋ねましたところでは、決して外部の圧力でやったとか、理由は言えないというような、そういう答えでなくて、さっき申し上げましたような説明でありましたので、ここでそう答えたわけでございまして、一般的なお考えとしては、先生の御趣旨と全く同感でございます。
  37. 山本政弘

    山本(政)委員 私は要するに、学問と思想というものに対する自由というものは、やはり守らなければならぬと思うのです。そういう意味で、あなたがそういう御返事をもしも原研の当局者のほうからいただいたというならば、私はここで申し上げます。これはメモをとってほしいということで私はメモをとってもらったのですけれども、私の独断で君をはずすことを了承した。これは先ほど申し上げた独断ですよ。またこの話は去年から出ておる。研究所は客商売だ。外からきらわれる売り子をわざわざ出す必要もなかろう、こう書いているのですよ、現実に。まだありますよ。サービスで講師を出しているのであるから文句をつける者がいる。理由はともあれ、サービスで講師を出しているなんて、そんなばかなことが、一体原研のように最も科学というものの粋をやっているところで、そういう考えが出ていることがおかしいのです。そしてここには言えないけれども、外部の圧力があったということも書いてある。調査をしてください。その外部の圧力というのは一体どんな圧力なのか。
  38. 成田寿治

    ○成田説明員 その点については真相を調査したいと思います。
  39. 山本政弘

    山本(政)委員 報告いただけますね。
  40. 成田寿治

    ○成田説明員 わかり次第報告いたします。
  41. 山本政弘

    山本(政)委員 それじゃ最後に、なぜ私がいままでのことを申し上げるかといいますと、三十八年に組合の書記長をしておられた方が——これは研究員ですよ。この方がやめられたのです。やめられるというよりか、ことばとしてはやめさせられたということのほうが、退職の経緯を伺ってから、正しいと思うのですけれども、昨年の秋に英国から招聘された。留学する際に、従来の慣例を無視して強制退職させられたという事実があるのですよ。しかもそれは、本人はちゃんと理事の人にも、それから直属の上司の人にも話をし、そして了承を得て留学の準備をして、日本を立つ寸前に、事務上の手続で留学さすわけにはいかぬという。あなたは一般的な基準というものに従って任命をされたんだというけれども、このときには一般的な基準というものはないわけだ。この人がそういう事件を起こしたというから、起こされたあとになって一般的な基準がつくられているのですよ、内規というものが。だから私は、歴代の、組合の三代の執行委員長が、そういううき目にあったということも、昨年の秋の、前の書記長ですね、その人たちの例証から見て、あなた方のおっしゃるように、一般的な基準に従って云々ということがすなおに私には入りかねるということを申し上げておるのです。この人は三十八年に書記長だったわけです。三十八年の書記長の人が四十二年に留学するというときに、しかもちゃんと了解を得ておるのに、一体事務上の手続が違うというのだったら、事務上の手続が違うという問題があるならば、あなた方どうして事務上の手続がこうだということで、なぜ親切に事務上の手続をしてやらないのです。どこかにあなた方が、要するに組合に対する介入、あるいは労組員に対する一つ考え方を持っているから、そういうふうになるのじゃないですか。その点はっきりひとつお答え願いたいと思うのです。
  42. 成田寿治

    ○成田説明員 三十八年の委員長の方が、去年外国留学で解任になって行ったということは、われわれまだ詳しく聞いておりませんので、これも調べてお答えしたいと思います。  それから個々の人の任免については、これは原研の理事者の問題でありまして、われわれは、科学技術庁としては、直接には相談にあずかっておらないのでありまして、一般的な方針の問題として、行政上おかしいとか、適当でないというときに指示をし、また向こうが相談に来たときに指導してやるということになっておりまして、科学技術庁と原研の理事者との間では、かなり人事については直接間接の関係にあるという点をお答えしたいと思います。
  43. 山本政弘

    山本(政)委員 こういう際ですから、私は名前をちゃんと出したほうがいいと思います。そのうき目にあった人は、書記長の好村滋洋という人です。そのときにその人は阿部担当理事にちゃんと話をしているのです。直属の上司は浜口室長、それから上田部長、これはちゃんと話をしている。これはプリントではありません。ちゃんと鉛筆で書いたものを持ってきているんです。これだけのことをきちんと再三口頭で話をし、了承を得て、出張手続までやっているわけですね。立つ寸前においてそういうことがなされているのです。そして理事者自身が、そのことについてうしろめたさを持っているから、ちゃんとここに弁解しているのですよ。あなたは、科学技術庁は原研に対しては任免とかという監督について、そうきちんとはやっていないといったお話があった。しかし少なくとも監督官庁でしょう。そうして政府が一千億円という金を出しているのですよ。先ほど申し上げたように、非常に慎重に、非常にチームワークを要求されるこの職場で、もっとそういう点では監督があっていい。いい意味の監督があっていいはずですよ。それがないがしろにされるんだったらかえっておかしいじゃありませんか。  最後にいまの私が申し上げたことに対して再度御答弁をお願いし、同時に、労政局長のほうからも労使関係についての考えをお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 成田寿治

    ○成田説明員 原研に対して、科学技術庁原子力局が監督官庁であることは、原研法にもはっきりしておりまして、われわれは十分監督の責任義務を感じております。ただ個別的な人事案件につきましては、そのつど役所のほうへ持ってこない、また持ってくるべき問題でもないのでありますが、ただ一般的な問題として、方針の問題その他政策の問題として重大な問題をはらんでいるものにつきましては、事前にわかれば事前に、あるいは事後、いろいろ監督なり指導をしておりますし、今後もそういう趣旨でさらにそういう面の強化をはかって、御心配のないようにしたいと思っております。
  45. 松永正男

    ○松永政府委員 私どもの一般的な考えといたしましては、先ほど申し上げたとおりでございます。個々具体的な問題につきましては、私ども確実に把握をいたしておりませんので、何ともいま申し上げにくいのでございますが、いずれにいたしましても、理事者側も労働組合側も、原子力研究所が持っております責任といいますか、そういう重要さに立脚をされまして、労使双方とも改めるべきところは改める、そして十分な話し合いをし、平和な関係を保っていく、トラブルをできるだけ防止するという態度で臨んでいただきたいと思います。
  46. 山本政弘

    山本(政)委員 松永さん、ことばを返すようですけれども、労使双方改めるべきところは改める、これはそのとおりなんです。しかし、この件に関しては、少なくとも使用者側できちんとしなければだめなことなんですよ。こんなばかなことがまかり通っておったらどうします。先ほどから申し上げているように、いまの原研の中でロックアウトなんて考えられませんよ、そういう非常識なことは。しかも人事面ではそういうことが行なわれておる、こういうことなんでしょう。労使双方が改めることは当然のことなんですが、いまの段階でより改めなければならないのは一体だれだということなんですよ。そのことを私は申し上げているので、これは大臣にひとつ御答弁をお願いします。
  47. 小川平二

    ○小川国務大臣 労使双方云々ということは、一般的に申し上げたことと御理解いただけるかと存じます。これは先ほど労政局長が申し上げましたとおり、とりわけ平和な、円満な労使関係が望まれる大切な職場でございます。今回の使用者側の措置が不当労働行為に該当するかいなかは、最終的には労働委員会が事実の判断に基づいて決定すべきことでございましょうから、私どもがこれをとやかく申し上げる立場ではないと存じますけれども、かりに不当労働行為にあらざる場合におきましても、この種の場合には事前に十分了解、納得を得る手段を尽くすべきであることは当然でございます。さようなことが全く行なわれなかったということであれば、これは遺憾なことだと存じておるわけでございます。
  48. 山本政弘

    山本(政)委員 以上で私の質問を終わります。
  49. 田川誠一

    田川委員長代理 川崎寛治君。
  50. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 生命保険の外務員、外野の安定制度という問題は、古くから議論されている問題でありますし、労働省あるいは大蔵省においても、それぞれ努力をいたしておりますことについては十分認めているわけでありますけれども、なお巨大な金融機関、大企業の中で、こうした不安定な雇用のあり方が存在するということは、許してはならないと思います。そこで以下数点にわたってお尋ねしたいと思います。  まず、基準局長にお尋ねをいたしたい点は、この四月一日から労災保険の拡大適用が行なわれることになったわけでありますが、生命保険関係従業員に対する労災の適用数は現在何ぼになるか、お尋ねいたしたいと思います。
  51. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 生命保険会社で労災保険に加入しておる者の現状につきまして、実は四月一日以前におきましては任意加入でございましたので、その適用関係はあまり明確になっておりませんが、四月一日以降五人以上の規模の事業につきましては強制適用になりますので、どの程度のものを予測しておるかという点につきまして、いま生命保険会社だけのはございませんが、金融保険業といたしまして、四月一日以降強制適用になるであろうというものの予想は、事業数として三万、すでに任意加入の手続によりまして入っておるものが約一万、差し引き二万程度のものが対象になるというふうに考えております。  なお、労働者数について申し上げますれば、全体の数は八十一万九千、すでに任意加入で入っておると思われますものが五十一万八千、新しく適用対象になるというものが三十万一千、こういうふうに予定いたしておりまして、目下適用拡大に伴う加入の手続を促進いたしておるところでございます。
  52. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは金融業全体ですね。金融保険業全体で労働者数八十一万が予想されるということ。現在、これまで任意加入が五十一万といたしますと、新規は三十万、こういうことですね。そういたしますと、この二月の金融保険業の外務員の登録数、財務局を通しての数字は、百十万をこしておると思うのです。そうしますと、この中から生命保険関係の外務員については大体どれくらいになるか。——これは一応私はずいぶん前ですけれども、連絡があったときにそのことは言ってあると思うのですがね。
  53. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 連絡をしたというお話でございますが、実はそういう連絡をちょうだいしておりましたら、私どももさっそく調べたのでありますけれども、いま手元に調べたのがございません。ただ調べるといたしましても、先生よく御承知のとおり労働関係があるものについての適用でございますので、生命保険の外務員であって労働関係なしと思われるものにつきましては、その実数を把握するということがなかなか困難な面もあるわけでございます。いずれにいたしましても、調査いたしますけれども、現在用意してまいりませんので御了承いただきたいと思います。
  54. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、できるだけ早い機会にその内容をひとつ検討していただいて、適用者についての御報告を願いたいと思います。  それでは次に、現在生命保険二十社の外務員の登録数、これは四十二年三月の数字によりますと募集人で八十九万四千七人、このうち代理店が三十八万七千六百二十三、そういたしますと、登録されております外務員の数は五十万六千三百八十四人と、こういうふうに統計から見ますと出ておると思うのです。しかもその中の実働は三十万四千三百六十五人程度、こういうふうになっておるわけでありますけれども、特にここで問題になりますことは、四十一年の四月から四十二年の三月までとってみますときに、新規登録が三十五万二千七百、登録抹消が三十三万八千五百と、こういうふうに数字が出ておるわけです。この点、大蔵省のほうではそのようにそれを確認されますか。
  55. 新保實生

    ○新保説明員 大体おっしゃるような趨勢でございます。
  56. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、最も近代的といいますか、今日の日本の経済構造の中でこれだけの大企業である金融機関の中に働いておる者が、三十五万入ってきて、約九五%程度そのうちまた消えていく、こういうたいへん不安定な就業状況を続けておるわけでありますね。こういう不安定な就業状況というものをいかに解消していくかということは、大蔵省並びに労働省にとっても非常に大きな問題だと思うのです。先ほど言いましたように、三十万をこす実際に働いておる人たち、そのうち健康保険や厚生年金の適用されておりますのは二十五万人程度というふうに見られるのですが、その点はどうですか。
  57. 新保實生

    ○新保説明員 ただいま保険適用の人員につきましては資料がございませんので、後ほど御連絡いたしたいと思いますが、新規登録と業務廃止の件数につきまして、一言づけ加えさせていただきたいと存じます。  非常に仰せのとおり移動が激しいわけでございます。私どもとしましては、この問題の解決にいろいろの角度から対策をやっていかなければならない。現に三カ年計画を持ってやっておるわけでございますけれども、ただ数字の点につきまして、私ども一部実態調査をやったわけでございます。そうしますと、ただいまおっしゃいました三十五万新規登録をして、その登録された人が三十三万やめていく。そういうことではなくて、それまでに何年間か新規登録されておる人がたまっておるわけでございます。その昔、登録された人もやめていく、そういう者を含めて登録抹消が三十数万、これは先生御承知のことだと思いますけれども、そういう要素がございまして、われわれこの解決のためにまず実態を確認しなければならないというので、一部——約一万一千人についてでございますけれども、調査をやったわけでございます。一年を経過しないうちにやめてしまう人は一体幾らおるのか、そういう角度で調査をいたしたわけでございます。  そういうことでまいりますと、これは具体的に申しますと、四十一年六月三十日現在の在籍者について調査をしたわけでございますが、その時点では、まだ一年たっていなかったような人がやめる率は六二%、相当高うございます。それから四十一年六月三十日までに一年以上二年未満の人の業務廃止率は四八%、だんだん在籍の年数が長くなるにつれまして業務廃止の率は低くなってくる。これは一応常識的に考えられるわけでございますが、そういうものを全部トータルをして平均をいたしますと、業務廃止率は四五%、逆に裏から申しますと、残る人が五五%、そういう数字も部分的ではございますが、一応出ておるわけであります。
  58. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは職安局長にお尋ねしたいと思いますが、失業保険の適用外務員数はどれくらいありますか。
  59. 有馬元治

    ○有馬政府委員 四十二年の一月現在で三万四千人でございます。
  60. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしますと、生命保険の外務員に対する失業保険の適用についてという職安局長通達を三十七年の八月八日になされておるわけでありますけれども、その時点では失保の適用人員は何ぼだったわけですか。
  61. 有馬元治

    ○有馬政府委員 一万八千人でございます。
  62. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 次に、四十二年の一月十九日にあらためてまた生命保険外務員に対する失業保険の適用についてという通達を出されておるわけですね。この時点では何ぼになりましたですか。
  63. 有馬元治

    ○有馬政府委員 通達を出した時点では二万九千人でございます。
  64. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そういたしますと、四十二年の一月十九日の通達を出した時点で二万九千ですね。それが一年たったわけですが、四十三年、ことしの一月末で三万四千というと五千しかふえていないわけですね。なぜ改善が進まないか、伸びないか、この点についてはどういうふうにお考えでありますか。
  65. 有馬元治

    ○有馬政府委員 外務員の雇用関係と、それから収入の性格等が非常に不明確でございますので、これを全面的に適用するというわけにはなかなかいきかねる、こういう事情がございまして、できるだけその辺の改善を加えて適用拡大をしていきたいと思っておりますが、そういう実態がございますから、保険の適用としては徐々に伸びておる、こういう状態でございます。
  66. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 内容が非常に不安定だ、こういうことでありますけれども、それを安定させるということがこの通達のねらいであったんじゃないかと思うのですね。そうですか。
  67. 有馬元治

    ○有馬政府委員 失業保険の適用通達でございますので、雇用関係を安定させろとか、いまの委任契約をどうしろというほど積極的な指導通達ではございませんけれども、できるだけ現実に即して雇用関係を明確化し、賃金関係を明確に把握して適用拡大の方向へ持っていけ、こういう通達でございます。
  68. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ大蔵省のほうにお尋ねしますが、四十年の保険審議会の答申に基づいて専業外務員制度を重点とした募集制度の合理化と継続率改善についての大蔵省通達を出されておるわけですね。そして、これは各社に対して四十三年度を達成目標とする具体的な改善計画というものを大蔵省に出させる、こういうことでまいったわけでありますが、この点は具体的にどのように進められ、そして改善されたか、その効果があがっておるのかどうか。いまの労働省のほうの御答弁によりますと、たいして改善されていないという数字の実態だと思うのです。その点いかがでありますか。
  69. 新保實生

    ○新保説明員 三カ年計画の実行状況を数字で申しますと、まず専業外務員の定義でございますが、これは通達にも書いてございますように、過去二ヵ年間においてずっと成績をあげていたという外務員を呼んでおるわけでございますが、その専業外務員の実働外務員——まあ登録はされておりますけれども、実際には成績をあげていない、睡眠しておるという者もございますので、実働外務員を確保し、専業外務員、これは過去二ヵ年間において引き続いて成績をあげているものでございますが、その割合を申し上げますと、三十九年度末、通達を出す前は三三%であったわけでございます。それが四十年度末におきまして三六・二%、四十一年度末におきまして三九・六%、四十二年度末はまだわかりませんけれども、まあ非常にわずかではございますけれども、多少は向上しておるという状況でございます。
  70. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ですから、その点で外務員の継続率の改善と同時に、その根本にあります外務員の安定という問題についても当然指摘をし、その点の改善策を促していたと思うのです。だから、それが具体的にどう改善されてきたか、その改善のかまえが各企業においてなされていると大蔵省は見るのかどうか。
  71. 新保實生

    ○新保説明員 具体的な施策について申し上げますと、一つは給与の安定ということでありまして、これは昔は純粋の歩合給と申しますか、請負給、しかも一定の期間内に一定の成績をあげなかった場合には減額するとか、あるいは身分を失う、そういう、職員の側から見ますと非常に不安定な給与制度、あるいは身分制度になっておったわけでございます。そういうことでは外務員が定着しないというようなことで、具体的に申しますと給与のうちに固定給の占める部分をだんだんふやしていく。これは各社別に見まして、だんだんその実はあがっておるようであります。と申しますのは、一方私どもが決算面でいろいろなデータを検討しておるわけでございますけれども、新契約費——新しく契約をとるために必要な経費というものが実はだんだんふえておるわけで、これはある意味においてはコストの低下という面と非常に逆行するわけでございますけれども、しかしその理由一つ一つ検討していきますと、その大きな理由は、新入職員に対する給与体系の変更、つまり固定給部分のウエートが高まってきている、そういうところにかなりの原因があるということで、これは全社的に見ましても、そういう事実は指摘できるわけでございます。   〔田川委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕  それから正規の職員になる前に、いわゆる俗に申しますと見習いの期間があるのでございますが、その期間中は一定の給与を保障する。いままでは必ずしもそうではなくて、一定のノルマと申しますか、そういうものがあって、それが達成されないと給与は十分もらえないという仕組みになっていたのでございますが、そういう点も改善すべきであるという努力を各社がやっております。それからいま仰せになりましたような失業保険金、そういう社会保険の適用ということも、これは雇用関係があって、そういう関係の認められるものについてはできるだけ拡大をしていく。そういういろいろな施策を講じておりますほかに、教育の制度もそれを専門の職業としてやっていくにふさわしい教育をしてもらう。もっとも日本の特殊性といたしまして、これは外国の募集人制度にはない特徴でございますが、中年の家庭婦人が副業としてやる。外務員の構成を見ますと、約八割近い数字が家庭の主婦でございますので、そういう方々は一生これでやるというつもりで募集人になられる人ばかりではありません。大部分は一定のときがくれば家庭の事情その他でやめていく。最初からそういうお考えで入ってこられる人がかなりおるわけでございます。そういう点はまた日本的な特徴でございますので、いい面は残しておかないといけないことはありますけれども、いずれにしましても給与、待遇、身分制度、そういうところで、職員が定着する、そういうふうに各社とも努力しておる次第でございます。今後ともやっていくということでございます。
  72. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いま御指摘はございましたが、それでは失保の問題について労働省にお尋ねしたいのですが、失保の適用の問題について企業に対する指導、これは通達は各県知事になされておるわけでありますけれども、この三十七年以来の通達というものが具体的に企業側に対してどのように指導、それから実行なされてきたかという点についてお尋ねしたいと思います。
  73. 有馬元治

    ○有馬政府委員 再度にわたる通達は知事に対して行なっておりますが、同時に、関係の労使に対しましても、この趣旨は十分徹底さしておるわけでございます。問題は、先ほどから御指摘がありましたように、雇用関係の実態が不明確である、そういうままに外務員制度が維持されておるというところに、失業保険の適用という角度から見るならば、適用されておる外務員が非常に少ない、こういう実態があるわけでございます。この各県の通達は、労使関係双方に対しまして、十分その趣旨を徹底いたしております。
  74. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 労働大臣、いまお聞きのとおりなんですね。雇用関係の実態というものが、そういうふうに非常に不安定なんですね。ところが、労災の政令改正によって適用数も相当ふえると思いますが、これは後ほど実態を御報告いただくとして、失業保険以外の厚生年金とか、あるいは健康保険というものは、少なくとも二十四、五万程度は適用されておる。ところが失業保険については、いま局長御答弁のように、一年間たってもなおかつ改善されたのがわずかに五千だ。そういたしますと、登録をされている五十万をこす外務員、実働の三十数万という中を見てみましても、他の社会保険関係は、そういうふうに、厚生年金なり健康保険が適用されておる、しかし、この失業保険は、いま言うように、雇用関係が不安定である、こういうことで、失業保険の適用は非常に低いわけですね。これは労働行政の上からいいますと、近代的に日本の経済が高度化していく、あるいは高度化していくというそこには、当然にそれぞれの企業における雇用の安定あるいは雇用関係の近代化ということが並行しなければならぬし、それがむしろ基盤にならなければならぬと思うのです。ですから、そういう実態がそうだから、こういうふうに御答弁になりますけれども、労働行政の立場から、こういう不安定な点、それから社会保険の関係でもきわめて不統一である、一方は適用されている、しかし、一方の失業保険については適用されない、こういう実態について、労働行政の責任者としての労働大臣の立場から、この点についての御見解、あるいは今後どうすべきだというふうにお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  75. 小川平二

    ○小川国務大臣 これは生命保険の外務員が、雇用の関係、あるいは収入の正確という点で、明確ならざるものがなお多く残されておりますので、これを明確ならしめるために、判断の基準等も逐次改善をいたしまして努力をいたしておるわけでございます。この点につきましての労働省の努力はまあ評価していただけるかと存じます。これからもこの方針に沿いまして、これがはっきりいたしますにつれて適用の拡大をはかっていきたいと存じます。  労災、失保両方の保険で適用の件数等に違いがあります点は御指摘のとおりでございます。これは両方の制度の性格の違いから出てくる点もございますので、この点はやむを得ざることと存じております。  いずれにいたしましても、生命保険の外務員の雇用がきわめて不安定な状態にある、御指摘のとおりでございますから、これからも改善のために研究をし、また努力を続けていかなければならない大切な問題だと存じております。
  76. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは、最賃の場合にもいろいろ議論がありましたし、またなされてきているわけですけれども、最低生活を保障できないという、そういう企業ですね、それは存立、つまり極端にいえば存在しなくてもいいんだ、これはアメリカで最賃制が議論になりましたときに、ルーズベルトはその点の指摘もしておるのですよ。先ほど大蔵省の新保部長は、日本的な雇用だ、日本的な社会の関係が存在するという点を言われておるわけでありますけれども、しかし、その点はやはりより近代化させるというためには、つまり先ほど大蔵省側も指摘をされておるように、二年以上になりますと、その定着率は非常に高くなっておりますね。問題は一年以内でどんどんやめておる、先ほども六二%でしたか、という御指摘でありますけれども、そういたしますと、一年以内あるいは二年以内にやめていく、あるいはやめていかざるを得ない、そしてそれは日本的だ、これではやはり済まないのではないか、こう思うわけです。  ですから、この点については、いま労働大臣は、より近代化させる点について労働行政の責任者の立場から指導したい、こういうことでございますけれども、この点はもう少し強い立場で、つまり企業の経営というものが先に立って、そこに働く労働者の生活の安定なり雇用の安定なりというものが、企業の経営が優先をしてネグレクトされるということは、やはり改められなければならぬと思うのですね。この点についてはもう少しひとつきちんとした姿勢といいますか、方針をお述べいただきたいと思うのです。
  77. 小川平二

    ○小川国務大臣 これは確かに安定局長から答弁申し上げましたように、日本に固有な社会構造というような観点からも理解さるべきことであろうかと存じますが、いずれにいたしましても離職率が非常に高い、と申しますことは、労働条件を含めまして、全体として職場としての魅力に乏しいということが根本の原因であろうと存じます。こういう点につきましては、経営者の側においても十分研究をし、反省の余地があれば反省をしてもらう必要があると思います。さような意味で、労使関係、雇用関係の近代化という点につきましては十分研究をいたしまして、労働省としてこれを助成する余地がありますればあとう限りの努力をしたい、こう考えております。
  78. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 結局労働力不足だ、労働力不足の今日の社会の中で、なおかっこうした毎年の抹消率が九五%、こういうふうな、つまり決して単年度で言っているんじゃないですけれども、三十万をこえる外務員が脱落していく、こういうことのためには、結局それを補うために、さらに新しいものを補充しておるわけですね。補充というか、常に新規を入れておる。結局新規のものの入れ方というのが問題になってくると思うのです。そうすると、その三十万をこします見習い外務員を採用して補っていく。そして先ほど新保さんの御指摘のとおりに、これは婦人層が多い、こういわれるわけです。そうしますと、この吸収のしかたというものには当然異常なものがあることが予測をされると思うのです。事実、異常な吸収のしかたをしておる、こういうふうに思います。そこで、各社の姿を見ておりますと、懸賞や、あるいは奨励規定というふうなものをやって、入社をあっせんした者には特別の金品を支給したり、あるいは特別の利益を与えるというやり方をする。さらには、一年じゅう無差別無制限に外務員の新規採用を行なって、大量導入をはかっていく、こういうことがなされておるわけですね。  そこで、この点は職安法の関係で問題になってまいると思うのです。つまり、紹介料を取って就職あっせんをするということは、つまり私設の職業紹介業というものを、現に末端の機関長にそういうことを強要していくということになれば、そういう懸賞なりあるいは特別の利益なりというものを与えるやり方をしてやるならば、これは私設の職業紹介所が何十万と存在をするということにほかならないと思うのです。そこで、生命保険会社にこういう私設の有料職業紹介事業というものを労働大臣は認可をしておるのかどうか、この点をお尋ねしたいと思うのです。
  79. 有馬元治

    ○有馬政府委員 外務員の募集につきまして、安定法上、有料の職業紹介事業として認定はいたしておりません。   〔藤本委員長代理退席、橋本(龍)委員長代理着席〕 法律関係はそういうことでございます。
  80. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 あと審議の時間の関係があるそうですから急ぎますが、そうしますと職安法四十一条——ちょっと具体的にお尋ねしましよう。「増員功労加算規定」という規定を会社に設けて、具体的に規定を持ってやるという場合に、たとえばこういうのがあるのです。「被推薦者がその月に挙績した換算成績の全額を、推薦者の成績に加算し査定する。」こういうぐあいに、新しく入れた者に対してはそういう加算のやり方をするということは、これは職安法の四十一条なり労働基準法の六条なりというものに該当するのではないか、こう思いますが、その点いかがですか。
  81. 有馬元治

    ○有馬政府委員 多くの場合、直接募集でいわゆる募集行為をやっていると思います。そこで、職安法の規定上は一応抵触しないような形で外務員の募集が行なわれておると思いますが、なお実態をよく調べまして、遠隔地からの募集その他によりまして、職安法に抵触する場面が実態としてはあるのではないかと思いますので、実態をよく究明した上で善処いたしたい、かように思います。
  82. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 たとえば新聞を見てみましても、新聞等にもずいぶんいろいろ保険会社の求人広告が出ております。これらの点については、もうすでに、いまおっしゃられるように、あるのじゃないだろうか、こういう御答弁があったわけでありますから、十分感じておると思うのです。そこで、この点についてはひとついま御答弁のように、職安法違反、そういう求人のしかた、あるいは労働基準法違反、そういう問題を、この際強制的に一ぺんきちんと実態を調査をするということについて明確にしていただきたいと思います。
  83. 小川平二

    ○小川国務大臣 十分調査しまして、職安法あるいは労働基準法に違反するおそれのあるような事実が判明いたしました場合は、峻厳な態度で臨むつもりであります。
  84. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 最後に一つ、失業保険法の問題については、これは先ほど言いましたように、私は業界というものを見ますときに、しかもそれが未亡人であるとか、あるいは子供の教育のためであるとか、いろいろ理由はあるにしましても、たいへん努力をしておる。しかし実態が、雇用関係が不安定であるためにどんどん落ちていっておる。そして縁戚募集、縁故募集という程度で募集をすると、もう限界に来て落ちていく、こういう形で、たいへん非近代的な雇用状況をなしております。さらには社会保険関係においても、局長も認められたように、感じておられるように、たいへん法的にも無法地帯であるという感じがあるわけです。これらの点については、ひとつ早急に実態を究明をされると同時に、また労働省と大蔵省の間においても、これらの改善については格段の努力を願いたいと思うのです。大蔵省においては、ことしの夏ごろまでに改善策についてさらに前進をさせるというふうに伺っておるわけでありますが、ただこれまでこれらの改善について、労働省と大蔵省の間で、十分に連携をとってやってきたのか、あるいは関係しておる労働省、大蔵省、さらには生命保険協会、あるいは外務員の組合、そうした四者の間で十分に話し合いをし、あるいは改善のために具体的に進めていくという点について、前向きの御答弁を願いたいと思います。
  85. 小川平二

    ○小川国務大臣 本日は実情についていろいろと御高教をいただいたわけでございますが、御指摘をいただいた点につきましては、この際あらためて十分な調査を行ないたいと存じます。また労災、失保両法の適用につきましては、先ほど来申し上げた方針に即しまして、あとう限り適用の拡大をはかってまいりたいと存じますし、今後この雇用の安定あるいは労働条件の改善に関連する問題につきましては、関係の官庁とも十分連絡をとって対処いたしていきたいと思います。
  86. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ではもう一つ、ひとつ大蔵省側に、大蔵大臣出ておられませんけれども、担当の部長として方針を明確にしていただきたいと思うのですが、どうも大蔵省にしてみれば、保険業界という企業のほうの、つまり経営の立場というものが先になりがちだと思います。しかし、これらの点については、近代化していくという立場から、労働省側とも十分にひとつこの改善については連携をとっていただきたい、こう思います。その点いかがですか。
  87. 新保實生

    ○新保説明員 仰せの線で努力いたします。
  88. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わります。   〔橋本(龍)委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  89. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 山口君。
  90. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 当社会労働委員会は、社会保障全般に関する議論を大いに展開をいただいている委員会でありますから、この社会労働委員会に参りまして、社会保障制度審議会、この問題に関連いたしましてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  田中総務長官がお見えでありますからお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、私は、去る四月二十五日、本会議におきまして、政府提出の地方公務員法の一部改正案、世にいうところの地方公務員の定年制法案に関しまして質疑をいたしました。その際、田中総務長官に社会保障制度審議会の答申に関連いたしましてお尋ねをいたしたのでありますが、その際、田中総務長官は次のように答えておられるわけであります。本日、私、速記録を持参いたしました。「社会保障制度審議会におきましても定年制ということにつきましては賛成であるということになっております。」かように田中総務長官はお答えになりましたね。それは事実でございますか。
  91. 田中龍夫

    田中国務大臣 そのとおりでございます。
  92. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 お尋ねしたいと思うのですが、田中総務長官は、昭和四十三年、ことしですね、三月一日の社会保障制度審議会が、地方公務員の定年制に関連するところの「昭和四十二年度における地方公務員等共済組合法の規定による年金の額の改定等に関する法律等の一部を改正する法律の制定について」の答申というものをお読みになっておられるのですか、一体。
  93. 田中龍夫

    田中国務大臣 拝見をいたしました。
  94. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ここには次のように書いてありますね。「定年制そのものを地方公務員に導入することの是非については、議論のあるところであるが、本審議会はこれには触れない。」こう書いてありますね。そうして、以下、この定年制法案に関連いたしまして、地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案がついております。この部分について、社会保障制度審議会は次のように答申で言っておりますね。「このような案が政府部内においてまとまったことは理解に苦しむ。」「全く他を省みない短見である。」こう言っているわけですね。したがいまして、定年制法案に関連して地方公務員等共済組合法の改正については、社会保障制度審議会は否定的な答申を出しているのですね。しかも定年制自体については、本審議会はこれに触れないと言っているじゃないですか。一体どこに社会保障制度審議会が定年制に賛成したということが書いてあるのですか。なぜ大臣は、そのような答弁を本会議でなされたのですか。
  95. 田中龍夫

    田中国務大臣 お話のごとくに、この審議会の答申が、これには触れないということに相なっておりますのでありますが、その間の審議会のいろいろと論議の中には、これは絶対反対であるという方もございますれば、あるいはまたその必要性を認める方もあるやに聞いております。  そこで、この答申が私が賛成であると認めると申しましたことは確かにオーバーでございまして、その点は深く改めなければなりませんが、しかし、この答申が、「本審議会はこれには触れない。」という点が一つと、それからもう一点は、もし定年制を実施しようとする場合において、これが実施された場合におきましても、退職手当の割り増しなり、あるいは私的有期年金等その団体の負担において処理すべきものであって、これを他の団体とプールの関係において負担を加重すべきものではないのだ。なおさらに、その場合においても、支給開始の年齢、あるいは勤続年数等において条件を強め、またその額も厳格に減収の範囲内にとどめるべきであるというふうな、いわゆる定年制というものを積極的に反対はなさりませんで、年金経済という面に示唆をお与えいただいて、もしこれが、年金が実行された場合においてはという姿において、対抗措置と申しますか、この導入後の措置についての自治省の諮問案にかかわる案を示唆するような文言が書いてあるわけでございまして、当時の私の気持ちといたしましては、積極的に反対がなかったということ、それから年金の問題については、年金経済の問題で非常に御心配になっていただいてはおりますが、これは反対であるということではない。そういうふうな意味で反対でないということがイコール賛成であるとは申しにくうございますが、しかしここに、これには触れないということが第一、それからもしやるならばという前提のもとに、善後処置と申しますか、対抗措置が述べられておるという点で肯定的であると私どもは感じたわけでございます。
  96. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの御答弁は、たいへん私は矛盾があると思うのですね。触れない、反対でないということと賛成であるということは違うでしょう。  それから後段の、定年制自体の問題ではありませんが、総務長官の言うところの年金経済の上からいって、ここにも書いてありますが、定年制を導入して退職年金の適用を再雇用者にした場合は、賃金は六割程度で済む。そういった特定の団体が賃金の切り下げで得をする。しかも、年金を支給する場合には、これは公務員の積み立てによるお金が相当部分入っておるのであって、そういうことは、地方共済の負担に転嫁することは、全く筋を誤まるものだということについても触れておるわけです。そういうものに触れておるから、定年制に賛成をしておるんだというような解釈をすることは、これは私は全く違うと思うのですね。当委員会にも社会保障制度審議会の委員の方がおられますから、あるいは場合によっては関連のお尋ねもあるかもしれませんけれども、少なくともこの定年制については、「議論のあるところであるが、本審議会はこれには触れない。」ということは、明確に書いてあるじゃないですか。触れないということが一体何で賛成であるということになるのですか。これは全く誤まりですよ。これはオーバーな表現とかいうことで済まぬと私は思うのです。全く誤りだ。明確にしてもらいたいと思うのです。
  97. 田中龍夫

    田中国務大臣 触れないという反面に、やるならばこうこうだということも後段にございます。そういう点で賛成と申すことはオーバーでございまして、この点はあれいたしますが、しかし、これは積極的に絶対反対であるという答申にもなっておらないと存ずる次第でございます。
  98. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それはオーバーとかいうことじゃないでしょう。触れないということと、賛成であるということは一体どう結びつくのですか。触れないと書いてあるところを、賛成だとあなたは言われたのだ。これはオーバーとかなんとかいうのじゃなくて、間違いか間違いでないかどっちかでしょう。これは間違いじゃないですか。はっきり間違いと言ってください。そう言わなければおかしい。
  99. 田中龍夫

    田中国務大臣 賛成であると申しましたことは、これは間違いでございましょう。しかし、この問題が賛成だということもまた絶対反対であるとも書いてはないと存じます。その点ひとつ御了承をいただきとうございます。
  100. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 もっとはっきり間違いなら間違いだと言ってくださいよ。  それから私は、さらにこの問題について言いますが、昨年の予算委員会における成田質問で、水田大蔵大臣の財政演説の際に、公定歩合の引き上げを大蔵大臣がやったかのごとき発言をしたわけです。ところが、御案内のとおり公定歩合の引き上げは、日銀の権限なんです。その点を成田さんがおつきになって、そうして水田大蔵大臣は本会議においてこれを訂正したでしょう。そういう前例はあるのですよ。ですから、これは大臣、私は間違いだとはっきり認めていただきたい。とすれば、いま申し上げたように、財政演説において水田大蔵大臣が間違った発言をして  これは本会議で取り消すという手順が当然なんですから。私も議運の委員なんですから議運で問題にしますが、これは別として、はっきり本会議であなたが賛成だと言ったことは間違いだ、社会保障制度審議会は触れないと言ったのだから、それは間違いだ、そのことをまずはっきりしょうじゃないですか。しかしながら、ということなんかではだめですよ。
  101. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  102. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 速記を始めてください。  委員長からおはかりいたします。  ただいまの山口君と総務長官との質疑応答に関連いたしまして、後刻理事会において相談をさせていただきますから、それまで暫時休憩をいたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時十九分開議
  103. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。田中総務長官。
  104. 田中龍夫

    田中国務大臣 社会保障制度審議会におきまして定年制に賛成であると申しましたのでありますが、審議会の答申では、これには触れないということに相なっておりますので、それを審議会が賛成であると申しましたのは、私の間違いでございまして、訂正させていただきとうございます。
  105. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ただいまの答弁でその点は明確になりました。しかし、この問題につきましては、総務長官が本会議において発言をせられた事柄であります。委員会において釈明はいただきましたが、本会議において誤った御答弁をされたことに対する訂正は、これは当然本会議でなされるのが至当だと存じます。この点、私も議運の一員でもありますから、党とも相談をいたしまして、また当然本会議で訂正せられるべきであるということの考え方だけ、ここで私ども申し上げておきたいと思います。
  106. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 質疑を続けます。平等文成君。
  107. 平等文成

    ○平等委員 私は、農村の職業病について厚生省と労働省に御質問申し上げます。  最近農村の近代化ということが盛んにいわれておりますが、その裏面では、農村には依然として一般と違う幾多の障害事故や、農民独特の疾病が盛んに発生しております。特に農民病といわれる農村の職業病は、農業生産に専心している農民、日夜一生懸命に働いておる老若男女を、骨の髄から苦しめているものでございます。農村の職業病といわれるこれらの農民病の発生には、主として次の五つの原因がいわれております。  一つは農耕地や社会環境からくる寄生虫、伝染病、二つは取り扱う動植物による傷害、三つには農作業の過労からくる疾病、四つには農機具や家畜による外傷、五つには農薬による慢性、急性の中毒でございます。  これらの農民の職業病は、農村の近代化のかけ声とはうらはらに、農民の幸福と農業の繁栄をむしばんでいるものでございます。毎年四季を通じ、全国の農村に大ぜいの患者が発生しております。  さらに最近各種の農業機械から生ずる障害や、農薬の中毒による被害も非常に増加しております。これらの農民の職業病に対する国の治療施策が国民から強く要望されているのでございますが、労働省と厚生省に二、三お尋ねいたします。  まず第一に、農業災害に対する補償と保険についてのお考えでございます。これら各種の農業の災害と疾病について、農民にも一般産業の労働者と同様に、労災補償保険制度の確立が必要と思われますが、今後農民にも労災法に準じた法的措置をとるお考えがあるかどうか、これを労働基準局長にお伺いいたします。   〔小沢(辰)委員長代理退席、佐々木(義)委員長代理着席〕
  108. 長岡貢

    ○長岡説明員 農業におきます農民の業務災害の発生状況等にかんがみまして、労災保険におきましては、昭和四十年の法律改正によりまして、自営農業者につきましても、特に農業機械による災害発生状況が非常に多いというようなところから、一定の農業機械を使用するものにつきまして、特別加入を認めておるところでございます。しかし、自営業者全般につきましては、業態の特殊性というような点から、災害の発生の状況等につきましても的確に把握しがたいというようなところから、さらにまた、災害の防止等につきまして有効な処置をとることがなかなかむずかしい、さらに雇用保険というものの性格から、本質的に相当の制約がございます。自営農民があまりにも多く、労災保険の面から問題がある等々から考えてみますと、労災保険の全面的な適用というのは非常に困難であるというのが現状でございます。
  109. 平等文成

    ○平等委員 それでは次に、続いてお尋ねしますが、これらの法的措置を、当面早急には困難であるとするならば、農作業の従事者に対する国保の医療給付について特別の措置をお考えになっておりませんか。
  110. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ただいま国民健康保険の御質問だと思いますが、先ほど労働省から御答弁申し上げましたように、労災に適用になります以外の農民の方々は、御承知のように国民健康保険の被保険者になっておりまして、この保険の制度の性質といたしまして、いわゆる業務とは無関係に保険給付を行なっております。お尋ねの点でございますが、やはり性格からいたしまして、特別にこれを抜き出しまして給付率その他を変えるということにつきましては、制度のたてまえからいたしまして非常に困難だと思います。  ただし、この国民健康保険は、御承知のように自営業者を対象にいたしておりますが、非常に大きな構成比をもちまして農民のほとんどがこの被保険者でございます。先生おっしゃるような観点からいたしまして、今後、国民健康保険の給付率その他の改善をやりまして、充実をいたしてまいりたいというふうに考えております。いままで、御承知のように世帯員は五割給付でございました。世帯主だけ七割給付でございましたが、本年一月から世帯主、世帯員、全被保険者につきまして七割給付を実現したわけでございます。今後給付の改善につきましては努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  111. 平等文成

    ○平等委員 次に、農民は農作業中に、農業機械によって災害を受けておるのでございます。また農薬の散布によって慢性、急性の農薬中毒を非常に引き起こしております。これらの農作業は直接に災害、疾病を伴っておるものでございますが、これらに起因する疾病について、その認定を地方自治体が行ない、一般給付率七割を引き上げ、十割給付をするなど、当面の措置を講ずべきだと思いますが、厚生省ではいかがにお考えになりますか。
  112. 梅本純正

    ○梅本政府委員 先ほど申しましたように、この給付率につきまして、特別の階層だけにつきまして、あるいは特別の疾病だけにつきまして、その給付率を厚くするということにつきましては、非常に困難であると現在のところ考えます。  ただし、先生おっしゃいますように、農業に基因する疾病というものにつきましては、非常に重要な問題として騒がれてきておる問題でございますので、この点、先ほど労働省からお答えいたしましたように、労災の適用の問題でいくか、あるいは国民健康保険一般の給付率を引き上げるということによりまして実現していきますか、今後抜本的な改正も現在進行しておりますので、その過程におきまして十分先生の御意向を受けまして検討いたしたいと思います。
  113. 平等文成

    ○平等委員 厚生大臣にお尋ねします。これら農作業中に発生しておる不具廃疾者、生活不能となった人たちに対するいろいろな救済策をお伺いしたいのでございますが、最近特に重農機械が導入増加になりました。また農薬散布の普及も非常に多くなっております。これがために生活不具者となる農民が非常に増大したのでございますが、これら農作業中に起きた廃疾者について国民年金を特別に配慮する考えはございませんか。これらの人々の将来の生活の保障は国民年金制度にかかっておるのでございます。農作業中に起こる不具廃疾者については、労災法と同様に国民年金制度の中で考慮すべきものと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  114. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま御指摘のように農民の災害は、あるいはその他の疾病は、一般疾病と同じように国で取り扱われておりまするが、この特殊性と、それから何ら補償のない点から、幸い年金の再計算の時期でもございまするし、なお各党から農民年金についての問題も大きくいわれておりますので、そういう面で十分検討していきたいと考えております。
  115. 平等文成

    ○平等委員 次に、やはり大臣にお尋ねします。  農薬中毒に対する国の施策が農村において強化されるようにお願いしておりますが、昨今は各種の農薬普及によって急性、慢性の農薬中毒による障害が非常にふえております。これら農民が、農作業による労働強化や、人手不足に苦しんでおることから、何とか免れるために使った農薬が、かえって農民の身を滅ぼすことになっておるわけであります。  これら有毒な農薬に対する徹底的な御研究と施療対策、また業者への取り締まり、監督の強化が必要と思われます。たとえば昭和四十年度において農民が農薬によって自殺し、自殺未遂した者だけでも九百件に及んでいる事実から見て、農薬に対する農民の適切な啓蒙運動及び業者の取り締まりがぜひ必要と考えられますが、大臣はいかにお考えになりますか。
  116. 園田直

    ○園田国務大臣 農薬についての被害は、いろいろ論じられておりまして、逐次これが大きな問題になろうとしております。なお、いままでにおきましても急性に慢性に、自殺があったりあるいは直接皮膚や内臓に被害があったり、あるいは長期に使用するために器官をこわしたり、こういうのがいろいろございまするので、いままでも毒物及び劇物取締法によって指導し、特に毒性の強いものに対しては特殊な取り締まりなり指導を講じておるところでありまして、全国の防除指導員とも協力をしてやっておりまするが、これはやはり新たな問題として、この農薬の製造個所についての指導の問題、あるいは監督の問題、もう一つはその農薬の取り扱いの問題等について、十分研究並びにこれに対する対策を強化しなければならぬと考えております。  なお、農薬の毒性についても、いままであらわれていないいろいろな毒性があって、ドイツ等ではこれに対する研究も進んでおるようでありますから、早急にこれに対する対策を講じたいと考えております。
  117. 平等文成

    ○平等委員 次に、農夫症という問題でございますが、現在、日本農村医学会では、農夫症ということばが生まれ、盛んに議論が行なわれております。これは生活の非合理化、肉体的過労の蓄積、精神的苦痛、栄養不良、寒冷障害等の原因によって普遍化し慢性化した疾病ということになっております。厚生省でも一生懸命でこの研究をしておられると思われますが、厚生大臣は農夫症に対していかにお考えでございますか。またこれに対する予算的措置その他について、わかりましたらお知らせ願います。
  118. 村中俊明

    ○村中政府委員 農夫症についてのお尋ねがございましたが、農村医学会で、十年ほど前に農夫症というものの定義をいたしましたが、御承知のとおりこれははっきりした病名ということではなくて、幾つかの症状を集めて、農民に多い一つの症候群の定義をしたわけでございます。この中に、ただいま御指摘のございましたたとえば過労からくる肩こりとか、あるいは労働の形態が最近はだいぶ変わりましたけれども、当時はしゃがんで仕事をする時間が多い、それからくる腰の痛み、あるいは水の中で仕事をする冷えの問題、あるいはこの冷えから関連してくる夜尿の問題、あるいは疲れ、目まい、貧血、こういう農民の中の幾つかの訴えをもとにしまして、その訴えが三つ以上組み合わさった場合にはどうなるか、あるいは四つ以上組み合わさった場合にはどうであるかというふうな一つ考え方をもとにしまして、農夫症という定義をつけたわけでございます。  こういう症候群から出てまいります病気の中には、たとえば運動機能障害になるリューマチの問題、あるいは夜尿症から関連して出てまいります萎縮腎の問題、あるいは栄養の低下の問題、こういった慢性的な疾病というのが出てまいるわけでございます。これらの問題の除去には、学界でもいろいろ農業関係の病院を中心にいたしまして、グループで研究あるいは治療の検討をいたしておりますが、私どもが聞きました範囲におきましては、地理的な、あるいは気候的な環境もさることながら、一番大きな問題は、社会的な要因による問題だ。たとえば労働条件というふうな問題を取り上げてみましても、非常にからだに影響が強い。あるいは家庭環境を見てまいりましても、精神的な気苦労と申しますか、こういった因子が農村の家庭の中には相当多い。あるいは生活環境にいたしましても、飲料水の問題、あるいはし尿の問題で農村以外の他地域と比べて相当劣悪である。あるいは生活の慣習自身についても、いまでも一升めしというふうな習慣があって、それが結果的には、カロリーはとれていても良質の蛋白質がとれないための栄養の欠陥と申しますか、劣悪な状態が出てくる。あるいはただいま御指摘のございました生活環境がよくないために、寄生虫とか伝染病の発生もしやすい。  こういうふうな社会環境の改善ということが農夫症の解決の一番基本になるというふうな学界のシンポジウムの結論など出ておりまして、私どもといたしましても、現在八百二十の保健所があるのでございますが、その中で農村、漁村に主として行政あるいは指導をいたしておりますのは四百二十ございます。これを農山漁村型、あるいは僻地型という名前を使っておりますが、こういう四百余りの保健所に対しては特にそういう地域の住民の生活に密着した健康指導をする。そういうふうな体制を昭和三十五年からとり始めております。  あるいはまた母子健康センターというものの設置を——現在五百くらいあろうかと思いますけれども、農村で生まれた赤ちゃんの死亡率が非常に高いというふうなことで、こういう施設で分べんをするというふうな指導もここでやっておるわけでありまして、さらに昨年、一昨年から保健所の所在地だけが比較的潤う——保健所の所在地から離れた地域にも、言いかえますと、農山村、僻地、そういうところにも保健衛生の指導が及ぶような、移動保健所という構想を打ち出しておりまして、現在これに全国の八百の保健所の約六百くらいが該当いたしておりますが、そういう移動保健所の活用をいたしまして保健所から離れたいわゆる農山漁村の健康指導をいたしております。  なお、多少話がそれますが、こういう農村の健康問題を医学的に取り上げている研究に対する援助の問題でございますが、これは従来とも厚生科学研究費あるいは医療研究費というふうな形で、若干でございますけれども援助を申し上げておるようなわけでございます。  今後もこの問題につきましては、非常に対象人口が大きいということ、しかも、都市と農村との経済的な格差が歴然としているというふうな実態を見合わせまして、できるだけそういう健康に恵まれない対象地域に対する保健指導というものに力を入れてまいりたい、こう考えております。
  119. 平等文成

    ○平等委員 もう一度厚生大臣にお願いするのですが、農薬中毒に関する国の施策強化をぜひまたお願いしたいと思うのであります。  昨今は、各種の農薬普及によって急性、慢性の農薬中毒による農民の障害が非常に激増しております。これは初め農民が農作業による労働強化や人手不足を免れるために使用した農薬でございますが、今日かえって身を滅ぼすことになっているものでございます。有毒な農薬に対する徹底的な御研究をさらに進めていただき、施療対策、業者への取り締まり、監督の強化がぜひ必要と思われます。  また、先ほど承りました農夫症に対する厚生省の理解も十分いただき、非常に感激しております。現在、日本の農村の政治と経済が、すでに日本の農村はどうにもならなくなっておる。あとできることは、厚生施設と医療施設によって農民を救う以外には、私どもは方法はない。農村の崩壊というのはまつ正面にきておるのでございます。ぜひ厚生大臣の前向きの姿勢をさらに進めて、農民を救うため、日本の農業を救うために皆さんの御奮起を切に御要望申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  120. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの御意見は、十分拝承いたしました。私も農村出身で、みずから農業を経営した経験がございます。まさに農民こそは、今日までの社会の下積みであったばかりでなくて、犠牲となってきております。その多年にわたる犠牲がいろんな農夫症となってあらわれておるわけであります。したがいまして、この農夫症その他の問題については、御意見を十分検討いたしまして、徹底的に善処したいと思います。  なお、農薬の毒性につきましては、私一前々からひそかに研究をしておるところでございますから、これまたこの充実、毒性の研究あるいは取り締まり、取り扱い、こういうものに対する強化は必ずやりたい、こう考えております。
  121. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員長代理 八木一男君。
  122. 八木一男

    八木(一)委員 厚生行政について厚生大臣並びに関係の政府委員に御質問を申し上げたいと考えております。  先日、法案の審議の際に、身体障害者の職業を確保する問題について同僚委員から御質問があったと思いますが、厚生大臣はその点について熱意を持って当たられるお気持ちであろうと思いますが、これについて総括的に伺いたいと思います。
  123. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま御指摘の点は、非常におくれておりますからこそ十分注意をして、これに重点を置いて、これの保護、あるいは更生、あるいはその他のための施設を進めていきたいと考えております。
  124. 八木一男

    八木(一)委員 身体障害者の問題については、民主的な各政党、団体においても、いま熱心に問題の推進に当たっておられますし、政府のほうも、この点について熱意を持って当たる気持ちでおられようと思います。身障者あるいはまた心身障害者の問題については、たとえば発生の予防、それからその能力を回復することについての問題、またその間の教育の問題、また職業訓練の問題、それからその間の生活をまかなうための障害者に関する年金、その他そういうような援護の問題、それからそういうことを全部まかなうための施設の問題、そういう問題がございますが、その中で職業の問題が非常に大切であるということは、各界の意見の一致をしたところであります。  先日委員会で、たとえば身障者に適する新しい職業を開拓しなければならないという御質問の御答弁の中に、たとえば電話交換手というような問題については、視力障害者にとってある程度の教育をし訓練をしたならば、障害を受けていない人よりももっとその能力を発揮できるというような問題があったわけであります。そういうような身障者に適した新しい職業を開拓するそれ以前に、普通の職業にどんどんつけるようにする。それから身障者特有の職業、職場について開拓をしていくということが大事であることはもちろんでございますが、ことにいままで歴史的、伝統的に身障者の中の視力障害者が、徳川時代から職としてやってきておりました、昔はあんまという名前で呼んでおりましたけれども、最近はあんまとか、マッサージとか、指圧とか、そういう名前で呼ばれている医療に関係のある、また健康に関係のあるそういう職業については、視力障害者のためにその職域を確保するということが非常に大切ではないかと思うわけでございます。その点についての厚生大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  125. 園田直

    ○園田国務大臣 御意見のとおりであると考えております。
  126. 八木一男

    八木(一)委員 この問題については、視力障害者だけではありませんが、視力障害者を非常に多くの部分とする職業について、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等に関する法律というのがございます。数次の改正の中に、その中で無免許者の取り締まりを非常に厳重にしなければならないとか、盲人の職域優先について特に考えなければならないとかそういう議会の意思を表明した附帯決議をつけて、昭和三十九年に一番最近の改正案が通っていま施行をされておるわけでございます。そのことは厚生大臣十二分に御承知だと思いますが、伺っておきたいと思います。
  127. 園田直

    ○園田国務大臣 承知しております。
  128. 八木一男

    八木(一)委員 そういう法律と附帯決議がございますのに、最近その法律なり、当委員会の趣旨に反したことが、方々で非常に行なわれている状態であります。いわゆるサウナぶろというところで、マッサージが方々で行なわれて、盲人を主体とする免許を持っている人たち仕事を非常に蚕食をしているという事実について、厚生大臣が調べられましたことについて、大臣から、また局長から、両方からひとつお答えをいただきたいと思います。
  129. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま御指摘のありました三十九年の法律改正のときの附帯決議のありました時代に比べまして、最近におきましては特にトルコとか、あるいはサウナというような、その当時にはなかったような施設ができてまいりましたために、マッサージ、あんまあるいはそれに非常に類似したような業態の領域が非常に広がっております。このために、現実にははたしてあんまマッサージなのか、あるいはそうではないのかというような境界、領域がまぎらわしいものが非常に多くなっております。したがって、また現実には当然あんまの業務と認めなければならないものを、無免許者がやっていたというようなことがあることは確かでございます。こういうような趣旨で先般来、昭和三十八年にそれらの取り締まりの通知をいたしておりますし、また最近におきましては特に関西地区等でトルコ、あんま等の業態でまぎらわしいものがあるというので、この取り締まりについて強化するようにという通知を出して指導をいたしております。
  130. 八木一男

    八木(一)委員 そのような通達を出しておられることについてはいま伺いましたけれども、サウナぶろというものが全国各地にぐんぐんふえて、そこでマッサージ類似行為を——特にそこでサウナマッサージと称したり、美容マッサージと称したり、だれしもがマッサージと考え内容のことを、その中でほとんど全部が無免許で公々然とそういう営業をしておるということに対して、実効のある取り締まりはほとんどしておられないのではないか。おられたならばあんなものがどんどんふえるわけはなし。  そこで、全鍼連というあんまマッサージの団体の人の話を聞きますと、一万数千人の人がそういうことをやって職域を侵しているというような話でございますが、厚生省に伺うと、厚生省の調べでも、その方々が、時点は違うかもわかりませんが、すでに六千人ぐらいそういうものがいるというお話だそうであります。そういう大ぜいの人たちが、ちょっとでももぐりがあったならば、特に目の悪い人を主体とするそういうあんまマッサージの業に、睛眼である、ほかの仕事につける人が、その仕事を侵略するということは、この法の精神からも、いまの厚生大臣の御信念から見ても許されないことでございますのに、取り締まりが非常に緩慢であるか、あるいは取り締まりをしておられないのか知りませんけれども、そういうことがどんどんふえていくということについては、直ちにそのやり方を変えられて、こういうものがふえないように、またふえていままでできたものでも、無免許でそのような——当然免許を持っておる、しかも盲人の大部分の人の職場を侵略させるような行為、これは停止さしていただかなければ法律を守る官庁とは言えないと思いますけれども、それについて大臣のお考えを伺いたいと思います。
  131. 園田直

    ○園田国務大臣 これは御指摘のとおりでありまして、数回、都道府県からも照会が来ておりまするし、これに対して局から通達をいたしておりますが、一片の通達は何ら効果がなくて、各所において睛眼者が、視覚障害者の職域を圧迫するばかりでなく、言われるとおり無資格の者が、マッサージでないと称して、実際には名前をマッサージと呼び、配布する券などもマッサージ券というものを配布しておる、あるいは広告を見ますとマッサージつきというようなことでやっておるようでございます。  そこで、これをどう取り締まるか、いろいろ事務当局に検討を命じております。いろいろむずかしい問題もありますが、いずれにしても警察当局とも連絡をとって早急に取り締まるべきである、こう考えております。
  132. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の前向きの御答弁、非常に満足をいたしますが、事務当局はこの問題について、いま私のほうから数字を申し上げましたけれども、どのくらいの人数の者がそういう法律に許されない営業をやって、それでそういう盲人を主体とする免許を持った人の職場を荒らしておるかということについて調査を十分にされておるわけでございましょうか。局長、その人数もすっかりわからないような御答弁でありましたけれども……。
  133. 若松栄一

    ○若松政府委員 先生もすでに御承知のように、あんまマッサージの資格を持っておる人間の数は、睛眼者が約二万五千人程度、それから盲眼者が約三万四千人程度でございます。したがいまして四と六程度の割合で睛盲があるわけであります。現実にサウナとか、トルコというようなものが、どのくらいあるかということになりますと、これは千軒程度ではないかといわれて——私とも正確な調査をいたしております。出してありますので、そこで数人ずつ働いておるとしても数千人おるはずだという予測をいたしておるわけであります。この中で一体真にマッサージの施術所として資格を持っておる者、施術所の資格を持っていない者、持っていないところについては、当然これはあんまマッサージを業としてはならないわけでございますが、それが実際はマッサージという看板を掲げておるのもありますし、まぎらわしい名前を持っておるのもございます。また、中央のあんまマッサージの審議会等にお伺いいたしましても、はたしてそこで行なわれておる業務が、あん摩マッサージ師法によるあんまマッサージであるのか、あるいは通常ふろ屋の三助といわれるような肩たたき、湯もみという程度のものか、あるいはそれとの中間的なものか、なかなかその業務の判定が困難である、そういう意味で、はたして業務に違反しておるかいないかということも、現実に専門家がその実態を現地に即してよく調べないとなかなかわかりにくい。また一面そこに働いておる者が、有資格であるかないかということも、一々正確な調査は必ずしもやっておりませんが、ある者は当然免許を持ってやっております。ある者はないものもあるということで、事実上非常に調査が困難であることは間違いございません。そういう意味では私どもも確かに監督取り締まり等についてはまだ熱意の足らぬ点は多々あると思いますが、何ぶんにも非常に業態が多くて手が行き届きかねるというのと、事実上判定に非常に困難があるというところから、警察等にお願いいたしましても、どこをどういうふうに判定して、どこから違反としていいのかというような点もありまして、この点は中央の審議会さえも非常にもてあましておるという実情がございます。
  134. 八木一男

    八木(一)委員 たとえば、池袋等のサウナの経営は一例でございますが、もっとひどいのがたくさんありますけれども、サウナマッサージ、美容マッサージというようなことばを使って、それをする者を募集する。それから免許を持っていない未経験者でよろしい、短期講習をしますというような募集をしておる。これは短期講習で資格を取れるものじゃない。それから広告自体に、未経験者を求むとか、でよろしいという広告をしておるのです。それを見ても、そこでやっておる者が未経験者、または免許を持っていない者が大部分であることはわかるわけです。その取り締まりといっても、ほんとうにやる気であれば、マッサージしているところに——婦人のマッサージであれば、風紀上の問題があってちょっとやりにくいかもしれぬけれども、大部分が男子でございましょう。施術をしているところにちょっと行けば、あんまをやっているか、マッサージをやっているか、そんなものはわかるはずです。ただ、事前に行きますよといって行ったら、向こうはのがれて、ふろ屋の三助さんの肩たたき程度のことしかしていません。向こうは営業を続けてもうけたいと思うから、そう言うにきまっていますよ。ほんとうにやる気があれば、どこに逃げるわけでも隠れているわけでもない、施術をしているところがわかるわけですから、取り締まる気があれば、こんなことは一ぺんにわかるわけだ。大体審議会のほうは、附帯決議の事項でも、四年間もあの事項について審議決定をしていないような審議会です。審議会の意向なんというものは、取り締まりにはそんなに関係ない。そうじゃなくて、これは役所のほうでやっていただかなければならない。この附帯決議の条項を、四年かかって審議決定できないような手ぬるい審議会ですから、それをまた手ぬるくなくしていただかなければならないが、取り締まりを審議会に聞くとかそんなことではなしに、直接に厚生省が取り締まりのほうに連絡してやっていただかなければならない。こんなものはわからないはずはない。大体見たら、あんまをやっているか、マッサージをやっているか、ただふろ屋の肩たたきを一分間やってやめているのか、二分間やってやめているのか。床屋さんで散髪のあとでぽんぽんとやる、あの程度のものであるかどうかということは、一ぺんにわかるわけです。わかるのをそういうふうに困難だとおっしゃるのは、いままでしておられなかった。これからもほんとうにやろうという気魂があまり見えないということになろうと思う。りっぱな医務局長でおられますから、厚生大臣があれだけの決意を示されたのですから、ほんとうにいままでのやり方を取り返して強力に取り締まりをやるのだ。やるために警察がやるのか、自治体がやるのか、そういうことであったら、もう各地のところに局長や部長自体が出向いて、断じて即時厳重にやってもらわなければいかぬ。そのくらいの勢いでやっていただかなければならないと思います。ひとつそういう決意をこめてはっきりとお約束をいただきたい。いつからすぐ取り締まりにかかるか、連絡の時間がありますから、全国一斉に、あしたでもあさってでも即時にその取り締まりにかかる、そういうお約束をいただきたいと思う。
  135. 若松栄一

    ○若松政府委員 取り締まりの非常に困難な点だけを強調いたしましたけれども、御指摘のように、明らかな違反者もあるはずでございますので、そのようなものについては、今後徹底的に取り締まっていきたいと考えております。  なお、現在各地で医務主管課長会議等もやっておりまして、この点等についても特に注意をいたしておりますが、適当な機会に主管課長会議等にも、全部各地の者が集まりました時点におきまして、さらに徹底した指示をいたしたいと思っております。
  136. 園田直

    ○園田国務大臣 ちょっと私からも申し上げておきますが、いまの問題は私も非常に頭を悩ましている問題なんです。それで、むしろ取り締まりが困難であるということに目をつけて、逆にそういうものがのさばっているというか——九州弁ですが、そういうこともございます。  そこで、いま言われておりますように、第一は−実は私どもも行ってみました。そうすると、入り口にちゃんと料金が書いてある。中には、マッサージつきは幾らとか何は幾らとか、ちゃんとマッサージということばが書いてあるのです。こういうのはマッサージということが明瞭にわかるわけですから、これらは都道府県その他と連絡をして、いままでは、それに対する方針だけは通達をして、そういう取り締まりに対しての通達は、正直に申し上げますと具体的にやっていない。そこで第一は、やはりこの広告、それから呼称あるいは店内にマッサージ——マッサージと自分で言っているのですから明瞭なんです。そういうものと、それからもう一つは、資格を持っているかどうかの調査はできるはずですから、そういうことから分類的に逐次始めていけば、もうそれだけでも相当な効果はあるのじゃないか。何も手をつけきらぬというところに問題があるのじゃないか、こう思いますので、あすからとは約束はできませんけれども、責任を持って事務当局と相談をして、これを検討して早急に手をつけていきたいと思います。
  137. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の前向きな御姿勢には敬意を表したいと思います。  ちょうど私の次に申し上げようと思うことを積極的におっしゃっていただいて、非常にありがたいと思います。少なくとも法令の示す、サウナマッサージとか美容マッサージ、そういうことばを使うことは、それが免許を持っている人で全部やっていない限りは違反になるわけですから、それは直ちに捕捉ができると思う。ただ、名称の点だけですぐ取り締まりにかかられると、名称だけ抹消して逃げようとするおそれがあると思いますから、いままで名称を使っているところはすぐわかりますから、名称の点と同時に、そこではほとんど大部分が無免許ですから、直ちに無免許者がいることを突きとめて、無免許者の営業をさせない。また、全部なり大部分がそういうものであれば、そのサウナぶろの中のマッサージサービス部門みたいなものを、即時に営業的にやめさせるということをやっていただきたいと思うわけでございます。あんま、マッサージの問題は、免許のほかに法令の示す施設、設備が必要なわけです。無免許でやるというのと、その施設、設備がないところでやるということの二つの違反がありますので、その点について厳重にやっていただきたいと思うわけでございますが、大臣のお約束になりましたように、大至急に検討されて、大至急にひとつ取り締まりを強化をされるということを、ぜひお願いをいたしたいと思います。その点でもう一回大臣の前向きの御答弁をいただきたいと思います。
  138. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりに早急にいたします。
  139. 八木一男

    八木(一)委員 医務局長に御質問をしておきたいと思います。  大臣の御決意どおりに、事務的の点について、ほかの用務もおありだと思いますけれども、一日一日盲人を主体とする資格を持った人の職場が侵略をされておりますので、事務的にも大臣の御決意のとおり最大限度に至急にお取り計らいをいただいて、また、そのやられることについても強力にやっていただく。また、こちらの政府のやろうとすることを、もともと法令に違反してもうけようとしているのですから、悪知恵の発達している人がかなりいるから、裏をかかれないように、ぎゅうっと現場をつかまえてそれをやるというふうにしていただきたいと思います。取り締まりが来るまでに、いままで一人免許証があって二十人無免許でやっているところを、そのときだけ一人の免許者だけで、これでうちは免許を持っていますというような裏返しをされないように、そういうことを厳重にして取り逃がしをしないように、そのようなことを急速にやっていただきたいと思いますが、医務局長の御答弁をいただきたい。
  140. 若松栄一

    ○若松政府委員 大臣の御趣旨を体しまして、強力に実施してまいりたいと思います。
  141. 八木一男

    八木(一)委員 このあんま、マッサージの問題については、前から、医療関連の行為を主体とするマッサージの問題と、それから健康を保つ保健あんまという問題について、両方の名義をはっきりして確立したらどうかというような、全鍼連や日盲連のいろいろの御意見があることを医務局長は聞いておいでになると思いますが、いかがでございますか。
  142. 若松栄一

    ○若松政府委員 三十九年の法律改正以前その論議が盛んであったことを承知しております。
  143. 八木一男

    八木(一)委員 そのことについてひとつ前向きで御検討、御推進を願いたいと思いますが、御決意のほどを伺っておきたい。
  144. 若松栄一

    ○若松政府委員 実は議論が起こりましたのはかなり前でございますが、三十九年の法律改正のときに、こういう趣旨を盛り入れていきたいということで検討したことがございます。しかし、そのときにも、保健あんまと医療あんまというものを明確に区別することがなかなか困難であるということで、これを明確に分離することが困難である。   〔佐々木(義)委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 また、その当時の御意見といたしまして、少なくとも保健あんまについては、その地域ごとに睛盲の比率を定めて、晴が盲を凌駕しないようにという趣旨も含めまして、検討いたしたことがございます。しかし何分にもその限界がかなり困難であったということがございましたし、その後におきまして、いわゆる理学療法士というようなものができまして、逆に、医療あんまといわれるものの中の直接医療的なものが、はっきり理学療法士のほうに肩がわりされてきたという事態がございます。そういう意味で、最近はどちらかといいますと、医療あんまと保健あんまというものの区分というものが、理学療法士ができました以上は、残ったあんま、マッサージの中でさらにそれを区分する必要があるかどうかということも考えられまして、最近におきましては、実はこの区分の議論はあまりやられておりません。
  145. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御意見は局長の御意見ですか、あるいは審議会の空気か、また団体の空気か、ひとつお伺いいたしておきます。
  146. 若松栄一

    ○若松政府委員 主として審議会の空気等でございます。といいますのは、先ほどのサウナ・トルコ等の場合の例で申しましたように、あんまという業務の範囲をどこに求めるかという線の引き方が非常にむずかしいということに関連しての意見でございます。
  147. 八木一男

    八木(一)委員 いま言われましたのは、大体審議会の御意見だと思います。審議会は、この全鍼連とか日盲連とか、そういうあんま、マッサージのことを一生懸命にやっておられて、そういう方々が全部まとまって相談される協会である。それからまた日盲連は、特に盲人の方々の団体ですが、そういう団体の御意見をあんまり反映しておらないと思うのです。また委員の構成も、そこに出ていられてもごくわずかで、この日盲連や全鍼連の方々の意見をかみしめて検討する方が、この審議会の構成に少ないんではないかと思います。何でも医に関係があるからというんで、たとえばお医者さまという方ばかりとか、何かどこかの大学の教授であるとか、何とか博士であるとかいうことで、自分のほんとうの専門のことについて確言されるのはいいですけれども、関連のことについて熱心に考えている団体の意見を、ほかの医学博士であるとか何々教授だとかいうことで、あまりじっくりかみしめもせず、観念的にその問題に賛成しないとか、あと回しにするとか、そういう傾向があるんではないかと私は想像するわけです。それに、このあんま、マッサージ、はり、きゅう師の方々のための審議会ですから、そのような、いわゆる医学者だけが圧倒的な多数で、また意見の大部分を占めるということでは、ほかの医学や医事関係のときにはお医者さまの人員が多くなければいけませんけれども、少しバランスを失しておるように思います。  それから、実質的に内容についての論議で、そういう方々の意見が強すぎるんではないかというふうに思うわけです。前にOT、PTのことで試験制度についても似たようなことがあって、睛眼者であってそういう学校の権威のある先生のような人が、目の見えない人が試験を受けるのにどれだけ苦労するかというようなことについて非常に理解のない試験基準をつくって、問題になったことがあるようであります。そういう傾向がありますから、審議会といっても、そういう構成をその方々に適当なような構成に直していく。それから人員についても、厚生省が委嘱をされるのは、ほんとうにそういう気持ちを代表したりそういうことを理解したりする人を入れていかれるということをされる必要があろうと思います。  それからまた、審議会がそういうことでこの附帯決議のことも四年間かかってもできないような状態であれば、それを督励することも必要ですし、また審議会がそういう状態であれば、医務局自体、厚生省自体で、そういう問題について各団体の意見を十二分に聞かれまして、いい判断で問題を推進されるという原動力になっていただく必要があろうと思う。そういうすべてについて、全鍼連だとか日盲連等の話を十二分に聞いていただいて、前向きに対処していただきたいというふうに考えるわけでございますが、局長の意見を伺いたい。
  148. 若松栄一

    ○若松政府委員 審議会につきましては、先生御承知のとおり、大体あんま、はり、きゅう、柔道整復の業界の代表の方四名、それから医師であり、そういう物療関係に非常に経験並びに理解のある方が四名、それから学識経験者といたしまして、盲学校の先生であるとか、あるいは特にそういう療術行為に対する理解者であるというような、そういう業界に比較的同情のある、理解のある方々を四名というような構成が主でございます。したがって、いわゆる近代医学をやった人たちの独壇場ということにはならないように構成も配慮し、また人選にも配慮しているつもりでございます。まあ今後も、そのような本来の趣旨に沿わないような方向でこの審議会が運営されることのないように、十分注意してまいりたいと思います。
  149. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。このあんま、マッサージ、はり、きゅう、指圧をやっている方の全国的な団体があることは、厚生大臣御承知のとおりでございます。その人たちが、その中の非常に大きい部分の盲人を含んだ方々が、職域を守るために、またそれを前向きに前進させるために一生懸命に考え、一生懸命に要請をしておられるわけであります。また日盲連のほうで、唐人の立場で全鍼連といろいろ連絡をとられて、意見を統一して、厚生省その他関係団体に御要請を申し上げているわけでございます。ですから、厚生省あるいは医務局自体で、これからもいろいろな要請が出ると思いますが、その全国的な二団体の意見を十二分に聞いていただいて、行政措置で直ちにしていただくことはしていただきたいと思いますし、また法律改正その他が必要であるときには、そういう点について御推進を願いたいと思いますし、また審議会が、いま医務局長の言われるような内容であれば非常にけっこうでございますけれども、それについても、もしその二団体からいろいろの要請がありましたときには、その運営なり構成についてもぜひお考えをいただきたいと思うのです。その点についてひとつ厚生大臣の前向きの御答弁を伺いたい。
  150. 園田直

    ○園田国務大臣 審議会の問題でございますが、すべての審議会にも関係する問題でありますが、特にこの審議会については、いろいろそのほかに御意見等も承っておりまするから、この審議会の設置されておる目的に沿うておるかどうか、個人的に、いいかどうか、これは時期を追うて検討したいと思っております。   〔小沢(辰)委員長代理退席、佐々木(義)委員長代理着席〕  なおまた、時期が来なくとも、審議会の委員として不適当な行為があれば、辞職勧告もあえて辞さないところでございます。  なおまた、それまでの間、いろいろ盲人の方々の団体の御意見等は、私も事務当局も十分注意をして聞くようにいたしまするし、その御意見をいわゆる盲人保護の目的に沿うようにやっていきたいと考えております。
  151. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣のすべての点で前向きの御決意を伺わせていただいて、非常にありがたく存じます。特に当面の急でございますサウナで  マッサージをやって、盲人を大部分とする、資格を持ったあんま、マッサージ、はり、きゅう、指圧をやっている方々の職域を侵している事実をなくすように、至急に万全の強力な対策をとっていただくことを御答弁をいただきまして、ほんとうにありがたく存じておる次第でございます。どうか大至急に一番万全な方法をとっていただくことを心から要請をいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  152. 園田直

    ○園田国務大臣 了承いたしました。      ————◇—————
  153. 佐々木義武

    ○佐々木(義)委員長代理 次に、内閣提出社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案を議題とし、審議を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。浅井美幸君。
  154. 浅井美幸

    浅井委員 厚生大臣のお考えを承りたいと思いますけれども、本来、社会保障というものは、国家的な見地に立ってすべて政府の事業としてこれを行なわなければならない、このように私たちは考えております。ところが現実には、予算の措置の不十分さと生活保護基準が非常に低いために、国民の最低限度の生活保障さえも脅かされておることは、衆目の認めるところであります。こうした財政難によるところの社会保障の貧弱さは、特に社会事業において、著しくこれが民間社会事業へのしわ寄せの形になってあらわれています。社会福祉事業は、養老、救護、精薄、養護、母子、保育などの多方面にわたっておりますけれども、それを担当するところの公営事業は、その施設数、設備内容、財源、予算などからいって、国民の必要を満たすだけの施設も設備も非常に貧困であります。したがって全国には、これらの施設に入る人たちあるいはその家族の人たちが、数多くこの救済措置を待っております。こういう事態から、勢い民間の施設や事業の協力を必要として、民間施設への委託制度が発展したものと思います。  ところで、国が民間施設の機能を買い上げるという立場から、業務委託費を支出して、その補充的役割りを果たさせております。民間事業も財政難のために非常に困っております。私は、社会福祉事業はすべて公営で行なうべきである、すなわち国と地方公共団体によってこれを行なうべきであるというふうに考えておりますが、大臣はこの点についてどのようにお考えでしょうか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  155. 園田直

    ○園田国務大臣 国及び地方公共団体の責任においてやるべきことは御指摘のとおりでありますが、法律的解釈については局長から答弁いたさせます。
  156. 今村譲

    ○今村政府委員 いまお話のありました、社会福祉を全部公立でということでございますが、その施設の運営、あるいは老人なり身障なりの援護ということは、厚生大臣あるいは都道府県知事が法に基づいた公的責任においてやるということは、御説のとおりでございます。ただ、具体的に施設をつくります場合に、これが全部都道府県立、市町村立でなければならぬかという問題でありますが、方向といたしましては、公立がどんどんふえております。戦前はほとんど民間ばかりで、しかもまだ六千施設ぐらい民間がございますが、公立は大体一万近い。どんどんふえております。ただ、中には昔から先祖代々、社会事業の精神でやっておる人もあります。非常に処遇のいいところもある。それからたとえば重症心身のように、宗教的な団体あるいは宗教的な気持ちでやっているところで民間の美点も発揮されるというところもございますので、公立でどんどんつくってはまいりたい、まいるべきであると思いますが、民間社会事業もいいものは伸ばしていきたい、こういうふうな気持ちでございます。
  157. 浅井美幸

    浅井委員 いいものは民間等でも伸ばされることについては、私も反対意見ではないわけですけれども、社会福祉国家というたてまえからいくならば、結局、民間施設の貧弱さ、貧困さ等は、これは御承知のようでありますので、それに対する新しい政府施策といいますか、もっともっと充実した、いわゆる不足を補う意味においても、政府施策においてこの事業はやるんだという強い姿勢がないと、いまのままで、いわゆる民間にもいいものがあるのだからという考え方では、かえって焦点がぼけてしまって、そうしてその発展を望めないのではないか、そういうふうに私は憂慮しますので、この点について大臣に、今後のこういう社会福祉という立場から、大幅な前進、大幅な日本の福祉の向上のために、これらの施設に対する大臣の抱負といいますか、決意というか、その点についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  158. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりでございまするから、今後こういう事業に対する助成金あるいは職員の問題、そういうものについて大幅に改善をしていきたいと考えております。
  159. 浅井美幸

    浅井委員 次に、議題の社会福祉事業振興会法についてお尋ねいたします。  配付を受けた資料の年度別の貸し付け原資の推移を見ますと、政府の出資金が昭和四十年以降一円も出ていない。で、借り入れ金、すなわち財投によるところの借り入れ金は、昭和三十九年度が三億円、四十年度が六億円と、以後年を追って増額しておりますけれども、この点については、どういうわけでこのように出資金がゼロになったか、お聞かせ願いたいと思います。
  160. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。これは先生いまごらんになっております資料でわかりますように、二十九年から民間社会事業の施設整備のいわゆる融資をしようということでできたものでありますが、最初政府出資毎年一億円、ときには九千万、こういうふうにきて、三十八年度に一億五千万ということでありましたが、その三十七、八年ごろから毎年一億円ぐらいの出資をもらってそれを貸したのでは、民間施設、養老院一カ所ぐらいつくるのがせいぜいだ、これではとてもだめじゃないかというので、一挙に政府出資を大幅にやってもらうか、あるいは財投でも導入するかしなければ、民間社会事業の資金需要には応じ切れないというふうな要望が非常に強くなりました。それで、結論から申し上げますと、三十九年度に従来どおり一億円の政府出資をもらいましたが、いわゆる長期資金、財政投融資を三億円いただいたわけでございます。  そのときにいろいろ議論がありましたのは、出資金と借り入れ金とほんとうは両方ほしい。しかし現実問題としては二十億、三十億でも非常に不足であるというふうな民間の施設の需要に応じまして、急遽伸ばせるのは財政投融資である。その部分の利ざやといいますかは全部一般会計から補てんをしてもらう、そうすれば資金量がふえるということで踏み切りまして、六億、十億、二十二億、二十八億というふうなもので、資金量の確保が先決だということで踏み切ったわけでございます。
  161. 浅井美幸

    浅井委員 なぜ出資金をやめたのか、いまの点で私ちょっとわからないのですけれども、社会福祉事業振興会法の第四条の中には、「振興会の資本金は、政府がその全額を出資する。」このようにありますけれども、先ほどのいわゆる財投からの借り入れ金となりますと、この条文は事実上空文化しておるように思いますけれども、その点はどうでしょう。
  162. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。これは医療金融公庫法も、大体の公庫、公団というもの、法律に基づくものは「政府がその全額を出資する」と書いてございます。と同時に、振興会法の三十条を見ていただきたいと思いますが、いわゆる短期借り入れあるいは長期借り入れということで、振興会は借り入れ金をして貸し付け原資に充てることができるという規定もございます。この両方が許されるわけであります。  で、特殊事情としましては、四十年度以降政府出資がされておりませんのは、これは振興会ばかりじゃなしに、非常に財政が窮屈になってきたというので、財投資金を入れて、それの利ざや補給を全部一般会計で持つから、政府の出資はかんべんしてもらいたいということで、これは本省だけじゃございませんで、関係各省ほとんど全部そうでありますけれども、そういう方式に変わってきたわけでございます。これはもちろん一億、二億、三億というふうな程度をもらいましても、貸し付け原資としては非常に少ない、財投も並行してやらなければならぬという事情はよくわかりますけれども、私どもとしては、言うまでもなく財投の六分五厘と貸し付け金による差は全部一般会計で持ってくれるということであるならば、当面の資金量としては財投のほうが先決だということでございます。ただ、出資金は出さなくていいということではございませんで、そのときの財政状況に応じまして、できるならば出資金も並行してもらいたいという気持ちはありますけれども、なかなか一億、二億ふやしてもらっても、それよりか財投をふやして利差を全部一般会計で持ってもらったほうが、当面の社会事業の需要には合うんだということでやっておるわけであります。
  163. 浅井美幸

    浅井委員 ちょっとお尋ねしますけれども、出資金というのは、これはやはり返していただくものなんですか。それとも出したままでいいのでしょうか。借り入れ金というのはやはり返さなければならない、返済の義務があるように思うのですが、出資金の場合は返済の義務がないように私は思っております。この点はどうでしょう。
  164. 今村譲

    ○今村政府委員 これはお説のとおりに、出資金ならば、その公庫、公団がある限りにおいては、ずっと出しっぱなしということでございます。しかも利息は何もつけません。ただ、三十条にあります借り入れ金は、当然返さなければなりませんが、社会事業関係の、たとえば十億資金運用部から借りますと、大体二十年、条件によっては十八年、いろいろありますけれども、二十年間借りっぱなしで六分五厘の利息を一般会計のほうから補てんをしてもらって資金運用部資金に返す、こういうことになりまするので、それは毎年毎年二十億あるいは三十億というふうに借りてまいりますが、二十年というものは長期資金でございますので、その間の利差の補てんだけを一般会計がすれば、出資金と同じように安定した資金として使える、こういうことでございます。
  165. 浅井美幸

    浅井委員 いま安定した資金とおっしゃいましたけれども、大臣、いわゆる社会福祉国家という名前で、社会福祉の充実ということは口先で言われております。ところが、財政難、財政難ということで、財政が逼迫したからといってこのような形に変わってきておる。社会福祉事業は金によって運営されておるわけであります。それが事実上このように口先とは全然違う。この点について、大臣どういうふうにお考えですか。
  166. 園田直

    ○園田国務大臣 理論から言いますと、御指摘のとおりに政府出資金を増大していくのが当然でありまして、ただいまは、正直に申し上げますると、政府出資金を拡大していくことは困難であるから、金利は一般会計から補給をして、実質上には困らぬようにしながら資金ワクを急速に拡大したいというためにとった臨時の便法であると考えておりますので、将来はやはり御指摘のとおりに出資金として伸ばしていくべきである、こう考えております。
  167. 浅井美幸

    浅井委員 臨時の便法という大臣の御答弁でありましたけれども、借り入れ金というのはやはり返済しなければならない。出資金とは性質が全然違うわけですからね。臨時の便法ではたしてその運営がいいのかどうなのか。また、その後この点について将来返済の時期が来るわけですが、返済の時期について、そのときには一体どうするのか、その点大臣どうでしょうか。
  168. 今村譲

    ○今村政府委員 かわってお答え申し上げます。  これは立場を逆にしまして、いわゆる民間社会事業家のほうから考えますと、これは政府出資金から借りようが、財投から借りようが、振興会では五分一厘一毛ということにしておりますが、たとえば十八年、二十年で返すことはやはり同じでございます。  振興会としましては、いま、大臣からお話がありましたように、本来から言えば、第四条にありますように、全部貸し付けに足る、需要に応ずるだけの出資金を出してもらえば一番いいわけでありますけれども、それが財政硬直化その他いろいろな事情がありまして、そうもなかなかまいらぬ。ふやしても一億か、せいぜい二億、三億という程度だ。ところが二億、三億という貸し付け原資では、民間社会事業のほうの需要を満たし得ないということで財投になりました。五分一厘一毛と、財投は六分五厘の利子でございますから、その間の利ざやを全部一般会計で持つということになりますれば、民間のほうは、従来と同じベースで、同じような条件で振興会に二十年あるいは十八年ということで返還していけばよろしいという、実益から申しますならば、民間としては資金量はふえただけ非常に助かる、こういう状況でございます。しかも資金運用部資金を借りる場合、非常に長期でありますので、民間が逐次返す。それをためて資金運用部に返していくと同時に、また別個に毎年資金運用部から金を借りる、こういう仕組みでおりますので、直接的には、出資金でなくても、民間には資金量がふえた分だけ有利になる、こういうことであります。
  169. 浅井美幸

    浅井委員 三十条にそういう借り入れ金をしてもいいというふうに出ているところは、どの点でしょうか。もう一ぺん説明していただけませんか。
  170. 今村譲

    ○今村政府委員 これは三十条の第一項に、「振興会は、厚生大臣の認可を受けて、長期借入金若しくは短期借入金をし、又は社会福祉事業振興債券を発行することができる。」という規定がございます。短期借り入れば借り入れしていませんし、振興債券もまだやっておりません。長期の資金的には、資金運用部から相当の金を借りられるわけでありますので、長期資金のほうが有利であるという判断で、この条文に基づいて借り入れをいたしております。
  171. 浅井美幸

    浅井委員 そうすると、いまの第三十条のあれと、第四条の「政府がその全額を出資する。」ということとは矛盾いたしませんか。「長期借入金若しくは短期借入金をし、又は社会福祉事業振興債券を発行することができる。」ということがありますけれども、この「全額を出資する」といううたい文句、第四条と第三十条のこの関係性については、私は、「全額を出資する」ということの意味とちょっと矛盾しておるように思うのですが、この点はどういう解釈をしたらいいですか。
  172. 今村譲

    ○今村政府委員 これは、出資金というものの範囲だけで貸し付けしなければならないというならば当然矛盾いたしますが、たとえば医療金融公庫でも、「政府がその全額を出資する。」という出資金というのがありまして、そのほかにやはり財投を借りておる。環境衛生金融公庫でもほとんど全部そうであります。事業資金という全体のワクがありまして、その中で、政府から出資されたもので貸し付ける部分もあれば、どうしてもそれで足りなければ、長期資金をよそから導入してきてそれを貸す。したがって、その総計が振興会なら振興会の総事業資金になる、こういう形になっておるものと私ども考えております。したがって、四条による出資金の範囲内でしか事業をしてはならないという規定ではございません。その辺ひとつ御了承を願いたいと思います。
  173. 浅井美幸

    浅井委員 出資金は四十二年度もゼロになっていますけれども、このあり方、出資金がゼロでいいのかどうか、この点厚生大臣どうでしょうか。
  174. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほど申し上げましたように、ちょうど公害防止事業団の場合にもこういう問題が起こりまして、事業団の理事長は、ぜひ少額でもいいから政府出資をふやしてほしいという問題が起こったわけでございまして、理論から言えば、やはり政府出資がこのようにふえていくのが当然でありますが、現状として、なるべく広範囲に出資をしたいというつもりでやったわけでございます。
  175. 浅井美幸

    浅井委員 じゃ、この振興会の目的達成のために、厚生省当局は大蔵に予算要求をしたのでしょうか。そして要求したけれども削られたのですか。
  176. 今村譲

    ○今村政府委員 お答えいたします。実は二、三億でも、そういうほんとうの意味の利息のつかない自己資金ということで要求しようということで、省内でいろいろ検討はしたわけでございます。しかし御承知のように、厚生省の予算要求全部で二五%増しというふうなワクがありました。そのほかにもいろいろ要求したい事項がございますので、結果においては大蔵省には要求いたしませんでした。そのかわり財政投融資を大幅にふやしてもらって、それの利差補給、これが約二億近くになると思いますが、それは当然大蔵省に要求するということで、出資金としては要求いたしませんでした。
  177. 浅井美幸

    浅井委員 大蔵省の方お見えになっておりますか。いまの点についてお答え願えますか。いまの利子補給の要求についてどうなっておりますか、あわせてお答え願いたいと思います。
  178. 辻敬一

    ○辻説明員 先ほど社会局長から御答弁申し上げましたように、社会福祉事業振興会に対しまして三十九年度までは毎年出資を行なっておりましたことは、御指摘のとおりでございます。その結果、三十九年度におきましては出資金の合計が十億五千万に達しまして、振興会の経営基盤も相当充実されるに至ったのでございます。一方、民間社会事業の資金需要が旺盛でございまして、資金量の拡大が要請されておりました。かたがた一般会計の財源事情が特にきびしくなってまいりましたので、三十九年度から財政投融資資金の導入を行ないまして、四十年度から出資を取りやめて全面的に融資方式に切りかえることとしたものでございます。これに伴いまして、資金運用部からの借り入れ利息の六分五厘と振興会の貸し付け利息の五分一厘一毛との差額につきましては、一般会計から事務費とあわせて補助することといたしておりまして、四十三年度におきましては三億一千四百万円。前年度が一億七千五百万円でございますので、一億三千八百万円ほどの増でございますが、所要額を計上いたしております。したがいまして、原資が出資でなくて財政投融資資金でございましても、この利差の補助と相まちまして十分振興会の業務の円滑な運営をはかることができる、かように考えておる次第でございます。
  179. 浅井美幸

    浅井委員 十分円滑な運営がはかれるという点はまた問題点があろうと思いますけれども、いまの利子補給の点について要求したとかというお話ですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  180. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。これはいま大蔵省のほうからお話ありましたように、四十二年度の社会福祉事業振興会の国の予算措置は一億七千五百万ということでございました。それに対して四十三年度は三億一千三百九十三万ということで、大体八割くらい多い予算になっております。これはその前の年二十二億の借り入れ金でいわゆる利差補給をやっておりましたのが、今度は二十八億の財政投融資で、相当ふえております。その部分のいわゆる金利差補給というのが非常に多うございます。それで一挙に対前年から一億三千八百万くらいふやしてもらったということであります。これはそういう計算でございます。
  181. 浅井美幸

    浅井委員 了解しました。大蔵省の方けっこうです。  次に、第三条の中にさらに「振興会は、必要な地に従たる事務所を置くことができる。」このように出ておりますが、民間社会福祉事業の施設の整備、経営の改善、施設の実情把握、またその振興等から、ブロック別の地域に事務所を設置することのほうが効果的な面があるのじゃないか、このように思いますけれども、この点に対する見解を承りたいと思います。
  182. 今村譲

    ○今村政府委員 おっしゃいますように、民間社会事業に対するいろいろな便益という点では、少なくとも八ブロックぐらいなところに置いて、地元でいろいろな世話役ができるということにしたいとは実は考えております。ただここ二、三年で十億から一挙に三十億くらいにやっとふえた。ところが民間社会事業施設に融資します場合には、たとえば養老施設をつくりますならば、そのめし代から何から県のいわゆる措置費といいますか、事務費の関係もありますので、窓口を県にして、県知事の意見をとっております。そうして県全体の施設整備計画とにらみ合わせて、これはけっこうでございます。金を貸してくれというような意見書をつけて県から振興会のほうにくるという、事実上も代理みたいなかっこうをやっております。いまはそれで一応間に合っておりますけれども、将来もっと資金量がふえ、貸し付け件数もふえれば、県ばかりでなしに、少なくとも相当の地域にこういうふうなものをつくりたいと考えてはおりますけれども、ちょっといまの資金量、年間にして件数もまだ三百件とかそこらのものでございますので、そこまで一挙に踏み切れないのじゃないかと実は迷っております。
  183. 浅井美幸

    浅井委員 現在の段階で資金量も少ないし、貸し付け件数も少ないので必要がないというお話でございますけれども、先ほどから私の言っている点は樹立していただきたいわけですから、早急にこの実現に努力もしていただきたいと思います。  いま各県というお話が出ましたが、各県の社会福祉協議会に対する委託費が昭和四十年以来平均して一県当たり大体四万円で据え置かれておりますね。この四万円の費用では積極的な活動ができない。したがって、最小限六万円くらいに上げてほしいという話が出ておりますけれども、これに対する御見解はどうなっておるか、ひとつお願いしたいと思います。
  184. 今村譲

    ○今村政府委員 お話のように、四万円というと非常に少ないので、実は私どももぐあいが悪いのですけれども、社会福祉協議会というものは、そもそもは民間の社会福祉施設の連合体、世話役みたいなものでございまして、二十七年でございましたか、発足当時からここが中心となっていろいろやっておったといういきさつがございます。したがいまして、最初三十六年ころ二万円というのがやっといまになって四万円という状況ではありますけれども、そのほかに県に対して別個に協議会としての補助金というのが相当額に達しております。せっかく一県平均にして六人の人件費を補助するというふうなこともあわせてやっておりますので、勢いこっちのほうの力が足りませんでしたけれども、これは今後とも増額に努力してみたいというふうに考えております。
  185. 浅井美幸

    浅井委員 今後とも努力されるそうでございますが、いつごろから六万円くらいになるのでございましょうか。
  186. 今村譲

    ○今村政府委員 四万に二万で、金額にしますと、四十六県でございますから百万円くらいで、実はどうというようなことがないような気がいたしますが、実は県社協の本来の補助金というものは、四十三年度三人を六人に人件費を一挙に倍にしてもらったといういきさつがございまして、主力がそっちにいっておったのでございますけれども、なるべく早くそこまで持ち上げてみたいと考えております。
  187. 浅井美幸

    浅井委員 大臣、どうでしょうか。たった百万くらいのお話だそうですか……。
  188. 園田直

    ○園田国務大臣 御意見承りましたから、十分その方針に従って急ぎます。
  189. 浅井美幸

    浅井委員 それでは次に移ります。  保育所の事業についてでありますけれども、保育所は第二種社会福祉事業に入っておりますが、児童福祉法の第三十五条の三項、これと社会福祉事業法の第四条との関連性、これについてどのように考えられておりますか。——言いましょうか。児童福祉法の三十五条の三項は「市町村その他の者は、命令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。」それから社会福祉事業法の第四条では「社会福祉事業のうち、第一種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする。」このようになっておりますけれども……。
  190. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。社会福祉事業法の、いまお読みになりました第四条の第一種社会福祉事業と申しますものは、たとえば老人とか重症心身とかを、二十四時間、県知事とか市町村長とかの責任において預かっておくもので、これは人命にまでかかわる重大問題でありますので、個人とか適当なものでやってよろしいというかっこうにはしたくない。したがって、国、都道府県、市町村、あるいは社会福祉法人というがっちり固まったやかましい法人でありますけれども、それにやらせることを原則とする。したがって、保育所は日中だけでありますので、これは第二種社会福祉事業ということになっておりますので、第四条の第一種社会福祉事業の限定には入らないということになります。
  191. 浅井美幸

    浅井委員 いや、だからその入らないのは、児童福祉法の中では「市町村その他の者は、命令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。」というようになっておりますね。
  192. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御指摘のように、保育所は社会福祉事業法によりまして、第二種社会福祉事業になっております。したがいまして、現行におきましても、市町村立のほかに民間の社会福祉法人あるいは財団法人等で保育所を経営するということをやっておるわけでございます。
  193. 浅井美幸

    浅井委員 質問の意味がちょっとおわかりになっていないようですが、次に進みます。  この保育所をつくっている市町村は、これは例外なく超過負担で悩んでいるわけです。したがって、四十二年の七月三日付の「昭和四十二年度地方財政の運営について」という自治事務次官の通達が各都道府県知事に出されておりますが、この中に経費の効率化ということについてうたってあります。その中に「必ずしも地方団体が直接実施する必要のない事務事業、たとえば各種会館等の施設の運営、し尿、じん芥の収集処理、保育所の経営、学校給食の実施、庁舎の清掃管理等については、各団体の実情に応じ地方団体の十分な管理監督の下に、その民間委託または間接経営等を積極的に推進するとともに、各種試験研究機関の統廃合についても努力されたい。」このようにございますけれども、こうなってまいりますと、先ほどの児童福祉施設を設置するという児童福祉法、厚生省の言い分と、この自治省の言い分は少し違うように思うのですが、この点どうでしょうか。
  194. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 保育所が第二種社会福祉事業であります関係で、市町村あるいは民間特殊法人等におきまして経営が行なわれているというのが実情でございます。その際に、市町村の保育所を設置するという点につきましては、先生御承知のように、地方自治法第二条第二項あるいは第二条第三項におきまして、いわば市町村の固有事務といたしまして保育所を設置するということに相なっております。それを受けまして、児童福祉法の三十五条第三項におきまして、地方公共団体、市町村がこういった固有事務を実施するために保育所を設置する場合、児童福祉施設を設置する場合には、都道府県知事の認可を得ることが必要である、こういうふうになっておるわけでございます。同時にまた、御指摘の事務次官通達が昭和四十二年に出ておるわけでございますが、私ども厚生省といたしましては、単にその財政的の理由だけで保育所の経営を民間に委託経営するというようなことにつきましては、社会福祉事業自体の性格からいいまして相当問題があるというふうに考えております。  そういうふうなことでございますから、自治省の通達の趣旨もございますけれども、もし委託するような場合には、非常な厳重な条件のもとに、たとえば、その経営のいろいろな財政的な負担なり、あるいは設備拡充等のような負担が民間の受託施設にかかって、かえって社会福祉が後退するということがあってはならないというふうな条件のもとに考えるべきじゃなかろうか、かように思っておるわけでございます。
  195. 浅井美幸

    浅井委員 いまの御答弁のように、確かに民間の問題はいろいろとありますが、これはみんな財政の問題であります。したがって、財政の裏づけの必要性に迫られております。これは政府としてはもっともっと強い姿勢で臨まなければならないように私は思います。  次に、職員の待遇改善でございますけれども、施設の運営の合理化、適正化は、熱意と能力のある職員によって初めて可能になるといわれております。そこで、有能な人を得るためには、それにふさわしい処置をとらなければなりません。振興会の業務の中の一つに「社会福祉事業施設の職員等社会福祉事業に関する事務に従事する者の研修、福利厚生その他社会福祉事業の振興上必要と認められる事業を行う者に対し、必要な資金を貸し付け、又は助成を行うこと。」という規定がございますけれども、この点についての現状は一体どうなっているのでしょうか。
  196. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。いまお読みになりました条項の二十三条第一項第二号でありますが、福利厚生をやるようにできておりますけれども、実はこれには制約がありまして、第二項に、振興会がそういう職員の福利厚生ということをやる場合においては、毎事業年度の利益金があって一ですから、欠損補てんとかなんとかいう、差し引くものを差し引きまして、積み立て金をやって、それでなおかつ剰余金があるという範囲内においてのみ助成を行なうことができる、こういう規定が実はあるわけであります。  そこで、最初先生お話しになりましたように、毎年相当の政府出資金がありますならば、これは利息なしに五分一厘で貸すということになりますと、ある程度の利益が出てくる。金利引き下げにも充てると同時に、福利厚生にも回し得るという状況であったわけでありますけれども、最近の三十九年以降におきます政府資金の非常に窮屈な点、それから財政投融資に切りかえて全部その利差は一般会計で持ってもらう、こういう状況では剰余金というものが出てくる余地がない。これは全部一般会計で持ってもらうということでありますので、この条文は、申しわけありませんが、現在は実際そこまで手が出し得ない、こういう状況になっております。   〔佐々木(義)委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕
  197. 浅井美幸

    浅井委員 これも実情は確かにいま御答弁のとおりであります。この点も改善が急がれるわけであります。  時間がありませんので次にまた急ぎますが、老朽の民間社会福祉施設の状態であります。この整備は、いろいろと五カ年計画だとかいって立てられておりますけれども、大臣、これは昭和四十五年度で終わりますか、どうでしょう。
  198. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。これは終わりません。ということは、まだ木造施設は相当残っております。私どもの統計からいいますと、社会福祉法人とか民法三十四条法人というものは、最近四十一年の三月の調査でありますが、約六十六万坪全国で施設がございまして、そのうちで三十六万坪、約五五%がまだ木造でございます。それから四五%が鉄筋あるいはブロックといういわゆる近代化したかっこうでやっております。ここ数年つくる新設のものはほとんどすべて鉄筋なりブロックでやっておりますが、昔以来の古いものがまだ三十六万坪も残っておるというので、第一次は五カ年計画五万八千坪、危険なものは全部完了いたしました。それで第二次は三カ年計画で約二万五千坪やるということでございますが、三カ年計画が済みますころには、また老朽化してだんだんおかしくなるという建物が出てまいりますので、これはまたその実態の調査に基づきまして、五カ年計画、あるいは思い切って十カ年計画というふうなかっこうにして、完全な無利子という制度で建てかえを強行していきたい、こういうふうに考えております。
  199. 浅井美幸

    浅井委員 要するに、それは当然三年たち、四年たち、五年たてば、そのとおりふえてくるのはあたりまえです。私の申し上げているのは、五カ年計画あるいは三カ年計画は、その計画に従って実施されているかどうか。これについて対策あるいは計画が非常にずさんである、おくれている、その点を指摘しているのです。その点はどうですか。
  200. 今村譲

    ○今村政府委員 第一次の三十八年から四十二年までの計画は全部で五万八千七百二十四坪でありますが、これはきちっと割り当てをいたしまして、約五万七千幾らでありますけれども、ほとんどそのとおりに実行いたしております。したがいまして、第二次の三カ年計画も、これは均等で約八千坪ずつ進行するわけでございますけれども、これもそのとおりに進めていきたいというふうに考えております。
  201. 浅井美幸

    浅井委員 最後に、民間の社会福祉施設の整備についてはどのような財源措置がとられているのか、この点についてお知らせ願いたいと思います。
  202. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。大きく申し上げまして、たとえば昭和四十二年度を例にとりますと、民間、公立全部ひっくるめて社会事業施設につぎ込みましたのが、大体百億前後でございます。そのうちで民間につきましては、国庫負担金が十二億四千七百万、約十二億五千万、それの二分の一を県がつけますから、約六億数千万つけますが、両方合わせまして国と県との補助金が、若干の端数はありますが十九億。それから共同募金、お年玉、自転車振興会、船舶関係というふうなものをひっくるめまして、大体二十四億五千万という金が民間だけの社会事業施設に出ております。それから振興会のいま御審議願っておる貸し付けが四十二年度で二十四億。こういふうなかっこうでありますので、大体六十七億ぐらいが国、県、それから民間のいろいろなお年玉とかなんとかいうふうなもの、それと振興会の貸し付け、そのほかに市とか町村で単独に補助しているもの、これははっきりつかんでおりませんが、やはり数億から十億前後あるのではないか。こういうふうに考えますので、大体七十億から八十億前後の資金が民間に流れる、こういうふうなかっこうでございます。
  203. 浅井美幸

    浅井委員 いろいろとお聞きしましたけれども、私たちが願っておるような社会福祉というあたたかい手は差し伸べられていないというのが、私はいまの日本の現状ではないかと思うのです。これはみな全部財政措置によって十二分にカバーできる問題でありますので、この点は厚生当局の強い姿勢を今後出していただきたいと思いますし、幸いいま国会において心身障害者の基本法の設置の機運も出てまいりました。これも、今国会で成案になるか、あるいは次回の国会になるかは問題点になりますけれども、そのような国民世論といいますか、あたたかい手を差し伸べようという姿勢が非常に強くなってきているわけです。厚生当局のこの点に対する強い姿勢を私は心から望んでおきます。  最後に心身障害者基本法に対する園田さんの大臣としての御見解を承りたいと思うのです。
  204. 園田直

    ○園田国務大臣 心身障害者の基本法は、これは当然障害者対策の憲法にも匹敵するものでありますから、私のほうでこれは当然提案をすべき筋合いのものであったわけでございますが、残念ながら、具体的な対策に追われて、今日までそういう基本のものができなかったことは、まことに申しわけございません。幸いに各党で御準備をされると聞いておりますので、これは一刻も早いほうがいいわけでありますから、それを私どもから出しますと同様に考えて、これの成立を期待し協力をしたいと考えております。
  205. 浅井美幸

    浅井委員 以上で質問を終わります。たいへんありがとうございました。
  206. 藤本孝雄

    ○藤本委員長代理 田畑金光君。
  207. 田畑金光

    ○田畑委員 まず第一に、これは局長でけっこうですが、社会福祉事業振興会の資金の面で、昭和二十九年から昭和三十九年までは、毎年一億前後の出資がなされてきておるわけです。三十九年度までの出資の合計が十億五千万円。ところが四十年度以降は、万事その財源を償還金と借入金に依存するという形をとっておるわけです。それまでは、三十九年度までは出資金だけでまかない、三十九年度を境に以降は借入金だけに依存しておる形をとっておるわけでありますが、なぜこのような方向の転換がなされたのか、その事情は那辺にあるのか、まずこの点からひとつ承りたいと思います。
  208. 今村譲

    ○今村政府委員 お答え申し上げます。これは私のほうとしましては、毎年一億ぐらいのことでは、一億円を民間施設に回すとあっという間になくなる。要するに需要は何十億とあるわけであります。したがって、大幅にこの出資金をふやしてもらいたいという気持ちはございました。しかしちょうど四十年ごろから財政が非常に苦しくなるということで、いろいろと折衝の結果でありますけれども、公庫、公団の政府出資がほとんどとまって財投に切りかえて、そのかわり利差は一般会計で補てんするというふうな大きな方針といいますか、傾向になってまいりました。それにやむを得ず従わなければならなかったという点と、それから私ども内部の事情としまして、一億や二億の出資金をもらってそれを貸しているのでは焼け石に水だ、したがって、むしろ財投で大幅にふやしてもらって、それを民間社会福祉事業に流すのが先決問題であるというふうなこっちのほうの事情もございまして、四十年から一般会計はなしに財投一本でいったわけでございます。そのかわり三億、六億、十億、二十二億、二十八億というふうに非常にワクがふえました。民間社会福祉事業は、理由はどうあれ、貸し付け条件は従前と同じで量がふえたというだけ非常にありがたいというふうな気持ちもありまして、私どもは財投の方式でまずワクを広げたいのだという気持ちで出かけたわけでございます。
  209. 田畑金光

    ○田畑委員 その他の機関も同じような方向になったので、社会福祉事業振興会についても財投に依存する形になった、出資でなくて借り入れ金に依存する形になったという御説明でありますが、一億とかあるいは九千万の出資と申しましても、なるほど総体の額から言うと少ないかもしれませんが、政府の出資ということになれば当然無利子ということになるわけです。借り入れ金ということになってくると、これは当然資金運用部の資金であるので、六分五厘の利息を払わねばならぬ、こういうふうなことになるわけで、したがって資金の性格から見てより望ましいことは、出資金をだんだんふやして、足らざるところを借り入れ金でまかなう、こういうようなことが、コストの面から見ても、資金運用の効率の面から見ても、また振興会が事業を進めるにあたってより効率的な運営ができるであろう、このように考えておるわけでありますが、これは大蔵省あるいは政府の方針が、この種資金については出資をやめて借り入れ金に万事依存するという方針になって、そのためにこのような形をとるようになったのか。局長の答弁によれば、一億では微々たる額だから借り入れ金のほうが有利だというようなお話、なるほど一面そういうことも言えるでありましょう。そうしてまた、三十九年度から四十年度を見ますと、借り入れ金は三億から六億、四十一年度はこれが十億、四十二年度は二十二億と倍にふえておるわけです。ところが四十三年度になってきますと二十八億と、比率から見ましても増額が非常に押えられておるわけです。たまたま財政硬直化というようなものがこういうようなところにあらわれたかなという感じもするわけでありますが、それにしても、二十二億が二十八億というと増額の比率から見ても、少な過ぎるという感じがするわけですね。ことしの一般会計の伸びを見ても、たしか一一・九%前後、約一二%は伸びているわけでありますが、これを見ますと伸び率があまりにも低過ぎるが、これは一体どういうことか。やはり私は、一方において出資も確保しながら、同時に足らざるところを借り入れ金でまかなっていくというのが、本来のこの種社会事業振興会の性格から見ても望ましい姿じゃないか、このように感じておるわけでありますが、この点について大臣の所見を承っておきたいと思います。
  210. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりでございますが、他のものが一割から二割ふえておる時期にこの貸し付け金は二八%ふえておるわけでありまして、やはり貸し付け金を拡大するためにやむを得ずとった事態であると考えております。
  211. 田畑金光

    ○田畑委員 率直にお尋ねいたしますが、四十三年度の厚生省が——社会局のほうがと言ったほうが適当かもしれませんが、当初予定したのは二十八億前後ですか。ところがこの資料によれば、振興会の資金の需要に対して、借り入れ申し込みに対して、実際に貸し出しておる金額というものは約半分ですね。半分しかまかない切れない、こういう状況になっておるわけですね。そういう点から見るならば、この借り入れ金の二十八億も、当初厚生省が要求した額に比べると相当削られてこういう結果になっておる、こう見ておるわけですが、このような状況のもとで今後の施設の整備について自信が持てるのかどうか、この点を明確に承りたい。
  212. 今村譲

    ○今村政府委員 お話のように、四十一年度では貸し付け申し込みに対する四五%ぐらいしか貸しておらない。四十二年度で四十四億に対して二十四億ですから、五四%ということで約一〇%足らずの伸びが出たわけであります。私どもは、これを一〇〇%というわけにはまいりませんけれども、相当パーセンテージを上げたいというふうな計算をいたしまして、要求そのものは、しかも財投一般の伸びも考えなければなりませんが、たしか三十一、二億ぐらいを理財局といろいろと話をした。そのほかにプラス償還金というものが二億あるいは二億五千万ほどありますので、合わせて三十四、五億に近い線で折衝しておった。詳細の数字は忘れましたが……。ということで、結果においては二十二億が二十八億に、それに償還金二億を入れまして合計の貸し付け源資三十億、こういうふうにきまりました次第でございます。したがって私どもとしましては、これをせめて六〇あるいは七〇%ぐらいのところまで伸ばしていけば、選別上貸しつけられないものもいろいろありますので、相当の実績になるのではないか、こういうふうに考えますので、今後ともいろいろ努力したいと思います。
  213. 田畑金光

    ○田畑委員 これはひとつ大臣にも特に念頭に置かれて、四十四年度の予算問題もすでに事務段階では間もなく始まる時期にも入ってくるわけでありますから。  いま局長からお話がありましたように、借り入れ申し込みに対し貸し付けの比率を申し上げますと、四十年四六%強、四十一年四五%強、四十二年度はなるほど五四%強という形になっておりますが、大臣の唱えておられる厚生行政の充実強化という点から見ますならば、これはいま局長の答弁がありましたように、三十五億前後を期待していたにもかかわらず二十八億に削られざるを得なかったということでありますが、十分ひとつ予算確保については格段の努力をお願いしたいと考えております。大臣としては、来年こそは園田厚生行政の真価を発揮するしないの一番大事な年ではないか、こう私たちは見ているわけでありますが、この点について大臣の御所見を承っておくことにいたします。
  214. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のように、きわめて大事な年であると私も同様に考えておりますので、極力予算獲得には留意したいと考えます。
  215. 田畑金光

    ○田畑委員 いろいろな法律に基づく施設の現状というものは、先般来質問があったと思いますが、相当不足しているわけです。たとえば老人福祉法の問題、身体障害者福祉法の問題、児童福祉法の問題等々、いろいろな法律に基づく施設の不備というものは、われわれが行くところ必ず耳にする問題でありまして、この充実強化というものは速急の問題である。特に生活力の水準以下である人を対象にする、これがほんとうの政治の課題であると考えているわけでありますが、一体現在入所を必要とする人々に対してどの程度施設が不足しているのか、それは、たとえば保育所の場合、あるいは老人福祉施設の問題、あるいは身体障害者福祉施設の問題等々、いろいろな施設にわたっているわけでありますが、要収容者に対し施設の不足というものはどの程度にのぼっているのか、これをひとつ承りたいと思います。
  216. 今村譲

    ○今村政府委員 これは、たとえば老人を先に申し上げますと、明治以来、養老院と言っておりますが、一生懸命つくりましたのが大体八百で、六万五千人くらいの収容力でございます。ところが、六十五歳以上の日本の人口約七百万でございますから、〇・九%、要するに一%に及ばないわけであります。いろいろな世論調査あるいは実態の聞き取り調査をやりますと、三%くらいの人が、やはりできればそういう施設に入りたいというふうなこともございました。そうしますと三%、二十一万。それで、かりに現在七万ありますと、十四万を今後何年か後に整備しなければならない、こういうふうなことになります。  それから、身体障害者が全国で百十四万人ございますけれども、現在、四十三年度の予算全部完成しますと、百七十施設くらいで約一万人の収容でありますが、実態調査をいたしまして、施設に入れてもっとよくリハビリテーションの訓練をすれば社会に復帰できるという人、また看護者もなくて家で悲惨な目にあっているという重症の人、全部をひっくるめますとまだ四万人くらいある。したがって、これをなるべく早い機会に四倍くらいに増設したいというように考えております。それから保育所、これはあと回しにさせていただきます。  そういうふうなことでございまして、施設数につきましてはまだまだ不十分であります。そういうふうに考えております。
  217. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ただいま御指摘のございました保育所なり、あるいは精神薄弱児施設、あるいは重症心身障害児施設等に関しまして、お答えを申し上げたいと思いますが、保育所につきましては昭和四十年の調べがございまして、昭和四十二年から四十六年までの間の五カ年に三十万人の子供さんを保育所に収容する必要があるということで計画を立てまして、設置を促進しておりまして、端的に申しますと、三十万人の子供さんに対しまして約三千九百カ所ばかり保育所が必要でございます。四十二年におきまして約七百カ所以上、子供の数にいたしまして六万近くの子供さんを収容することに成功したわけでございます。こういったことでございますので、四十三年度以降は、毎年約六万人の子供さん、施設にいたしまして七百カ所から八百カ所くらいの保育所をつくりたいということで、さきに申し上げました三十万人の保育所を早急に措置しなければならない。子供に対する施策は明るい見通しで進んでいっておる、かように思っております。  ただ、重症心身障害児につきましては、現在まで一万六千五百名の子供さんを収容しなければならないのでございますが、施設は二千九百ベッドくらいしかございません。したがいまして、なおあと一万三千から一万四千のベッドが必要であるということでございまして、この点につきましては、あと六カ年くらいの間に重症心身障害児の子供を収容するようなことで、いま懸命に努力をいたしておるわけでございます。  それから、精神薄弱児につきましては、現在まで施設には約二万、精神薄弱児及び精神薄弱者、おとなのものにつきましては約二万八千の収容能力を持っておりますが、私どもの調査によりますれば、どうしても施設に収容しなければならない子供及びおとなは約十万近くございます。これにつきましては、なかなか容易ならぬ仕事ではございますけれども、これもできればあと十年間くらいの間には収容したい、かように考えております。
  218. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの御答弁を承っておりましても、福祉施設を見ても、身体障害者の施設あるいは児童福祉施設を見ましても、重度身体障害児、障害者施設の今後の整備を予測しましても、現状においては要収容者に対する既存施設というものは三分の一ないし五分の一、こういう状況にあるわけですね。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕 ことに、児童局長お話の最後にありましたように、十年後には需要に応ずるような整備をはかってまいりたいというようなことでございまするが、これから十年も待たなければ処理ができないというのは、まことに遺憾なことであり、行政の大きな立ちおくれではないか、このように考えておるわけです。しかし、それにしても、いろいろな施設の整備については、それぞれの担当局において長期計画のもとに年次の実施を進めておられるものと考えるわけでありますが、今後の長期計画というものを特に社会局長にお尋ねいたしますが、先ほど局長の御答弁になりました諸施設について、これからの年度計画、それに要する財源等々について計画をお持ちであるかどうか。お持ちであるならば、今後どういう年次計画で充足していこうとするのであるか、この辺をひとつ御説明を願いたいと思います。
  219. 今村譲

    ○今村政府委員 これはいまのお話にありましたように、各施設ごとに、老人福祉法あるいは児童福祉法というように、私ども行政事務的にはそれぞれの計画を持っております。ただ問題は、それが毎年毎年の予算折衝のときに、たとえば公共事業費が伸び率が四・七であるから社会福祉は一〇%の伸びだというような程度のことで、一々二億円、三億円くらいの増額というようなかっこうでおさまったのでは、現実はそのとき勝負になってしまうというので、これは大臣からも、少なくとも社会福祉全般にわたる施設整備計画というものを打ち出して、これは厚生省の大きな政策だということで、公的に認めてもらう年次計画というかっこうにして、それがたとえば、道路整備何カ年計画とか、住宅対策なんかの計画のように持っていかないと、そのときのテンポに左右されて非常におくれるというので、その計画をきちっと官房を中心にしてまとめろという指示をいただいております。私どもせっかく明年度の予算編成時期までにまとめたいということで作業をしております。
  220. 田畑金光

    ○田畑委員 そうしますと、いまの御答弁には私は非常に大事な問題を含んでおると思うのですが、来年度の予算要求の時期までには、いま言ったような社会福祉の諸計画について長期計画を作業してつくり上げて、それに基づいて今後の毎年の予算要求を進めていくというような、そういう年次計画を準備されるということですね。それは、来年度の予算編成までには必ずそういう計画をつくって、その計画に基づいて予算折衝あるいは行政を推進するんだ、このように理解してよろしいわけですね。   〔委員長退席、小沢委員長代理着席〕
  221. 今村譲

    ○今村政府委員 そういう心組みでいま作業をやっております。ただ問題は、予算編成の場合、先生御承知のように、三割以内とか二割以内とかいうふうな一定のワクがありまして、これは閣議決定できまるわけであります。その辺で、たとえば医療保険なり年金なり、あらゆる面で増額要求がありますので、それとの省内の調整をどうするかというふうな問題も、今後いろいろ詰めなければならない問題がたくさんございます。それにしても、私どもとしましては、現実的にとにかく予算になり得るような計数を積み上げたいというふうに現在努力しておる最中でございます。
  222. 田畑金光

    ○田畑委員 私はその点で、特にこれは大臣に希望するわけでありますが、局長の答弁の中にありましたように、道路であるとか、港湾であるとか、鉄道であるとか、こういう公共事業については、それぞれ長期計画を持ち、また長期計画に基づく財政計画を裏づけとして進めておるわけでありますね。それでもなおかつ社会資本は企業資本に比べると立ちおくれておるというのが現状であるわけで、ことにまたその中でも、社会保障の面における社会福祉施設の立ちおくれというものは、なお一そうレベルダウンしているというのが今日の実情ではないか、こう考えておる。そういう面においては、すみやかにひとつ年度計画を立てられて、わが国の社会福祉の水準はこういう見通しで、このようにすみやかに欧米並みにするんだ、こういう方向で努力を願いたいと考えておるわけです。  今度のこの法律改正案の資料を見ますると、第二次老朽民間社会福祉施設の整備計画が数字的にも出ておるわけでありまするが、この老朽の程度というのは昭和四十一年四月三十日現在で調査がなされておるわけですね。第一次計画、第二次計画がここで予定されておるわけでありますが、先ほどの質問、そしてまた答弁でもありましたけれども、当然また四十五年度までの間には、特に木造施設などについては早急に整備を必要とすると判断しておるわけで、私は、第二次計画は四十三年から四十五年まではこれこれだということになっておりますが、四十五年度を待たずして、その木造施設などについては、この第二次計画の中で四十三年−四十五年はもっと拡大して整備を進めるべき必要があるんではないか、このように考えておるわけでありますが、そういう点から見ましても、先ほどの借り入れ金二十八億の問題等についてももっと御努力を願う必要があると判断するわけで、今後、第二次計画の実施に関連して、こういう問題をどのように処置していこうとする計画であるのか、この辺をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  223. 今村譲

    ○今村政府委員 いまの点、おっしゃいますように、道路計画あるいは住宅計画でも、第何次五カ年計画、その最終を待たずに途中の年次でいろいろ調査をして、次の段階の準備をするということでありますと同様に、私どもも、なるべく早い機会にもう一回老朽度調査を全木造施設についてとりまして、それで第三次といいますか、あるいは第二次の修正といいますか、その辺で徹底した施設設備建てかえ計画というものを進行さしていきたいというふうに考えております。それに関連する融資問題、国庫補助問題、これが施設整備の長期計画と当然からむ問題でありますので、それとからめて大至急に作業を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  224. 田畑金光

    ○田畑委員 社会福祉事業振興会は資金を貸し付けるわけでありますが、老朽施設の改造などについては無利子で貸す、こういうことになっております。一般の貸し出しについては、利息についてどのようになっておるのか、また今後どうしようとするのか、この点ちょっと御説明願いたいと思います。
  225. 今村譲

    ○今村政府委員 これは原則としましては五分一厘一毛ということでございますけれども、三十五、六年ごろだったと思いますが、いわゆる無利子期間二カ年とかいうふうなものをつけまして、実質上にしますと四分をちょっと切るものもありますし、四分二、三厘というものもありますし、たとえば五年もので九カ月の据え置き期間を見ますと、一番低いのは三分八厘、それから長期のものでも四分一厘とか、いろいろありまして、実質通算しますと五分一厘までいっておりませんが、これは私ども将来なるべく、開拓者の営農資金とかあるいはいろいろな金融系統を調べまして、これをもっともっと下げていきたい、こういうふうに考えておりますけれども、何しろ現在のところは、原資をとにかくふやすということが先決問題のようにせっつかれておりますので、つい利子の実質引き下げについてはまだ十分な検討をいたしておりませんが、これも並行して進めていきたい、こういうふうに考えております。
  226. 田畑金光

    ○田畑委員 振興会の貸し出しの対象でありますが、資料を拝見するといろいろな貸し出し対象になっておるわけでありますが、大まかにいって、いわゆる無利子資金、そうでない一般貸し出しの利息を取る貸し出しの対象、貸し出し額、これはいま数字的にどのような状況になっておるわけですか。
  227. 今村譲

    ○今村政府委員 振興会で貸しております。たとえば四十一年度では十二億七千万ほどの貸し付け、それから四十二年度では二十三億九千八百万、約二十億の貸し付けということでありますが、そのうちの大部分は平均的に五分一厘一毛ということで、これは据え置き期間の長短によって若干変わってまいります。四分を切るのもありますけれども、それが大部分でありまして、このうち老朽施設に貸し出しておりますのは、国庫補助が二分の一で大体五億円毎年出しておりますので、それに見合って県が四分の一、自己負担四分の一でありますから、大体三億ないし四億くらいのものが、いわゆる無利子の部分として、老朽の利子補給が一般会計でつくものとして、この中に含まれております。
  228. 田畑金光

    ○田畑委員 これは償還財源も相当な比重を占めておるわけでありますが、償還について、たとえば滞っているとか、こげつくとか、あるいは延びているとか、こういう面の運用状況についてはどういうことになっておりますか。
  229. 今村譲

    ○今村政府委員 これは私ども実はふしぎに思うくらい償還率はよろしゅうございまして、大体ここ四、五年は九八%あるいは九八・五%というふうな状況でございます。普通の商売と違いまして、非常にりちぎな人方でございますので、きちっと返してくる状況でございます。
  230. 田畑金光

    ○田畑委員 償還のいいというのはけっこうなことですが、またあなた方のほうでしぼり方もきついのじゃないかということですね。ということは、原資が限られておるからしぼらざるを得ないということだと思いますね。もっとやはり原資をふやして——別に償還がルーズになってもよろしいという意味じゃなくして、とにかく原資が限られておるので、したがって優先順位から見ても、相当な施設に対象が限定されておる結果、償還について、いまお話しのように、局長、非常にいい内容だということで自慢しておられるようだが、反面またこれは財源の不足がそういうようなことにもなっておるのだということも、私は反省すべき一面があるのじゃないかと見ておるわけであります。  最後になるわけでありまするが、これも先ほど質問があったわけで、重複するようなことになるかと思いますけれども、社会福祉施設の職員の数が相当不足しておるとわれわれは耳にしておるわけでありまするが、所要人員に対してどのような状況にあるのか。これがまた確保策についてどういう計画をお持ちになるのか。さらにまた施設職員の待遇改善については、毎年予算編成時期に関係の人々から強い訴えを繰り返し聞くわけでありまするが、施設職員の処遇改善等について、今後どのような計画のもとにこれを進めていかれようとするのであるか。この辺もまた承っておきたいと考えるわけです。先ほど児童局長から保育所の問題等についていろいろお話がありましたが、保育所の職員などについて、同時にひとつ今後の処遇の改善、所要職員の確保等についての方針なり計画なりをひとつ承っておきたいと思います。
  231. 今村譲

    ○今村政府委員 私から一般的な点をお答え申し上げます。  これは社会福祉施設の全部の職員が十四万五千人、それで公立が八万三千人、民間が六万一千人という、八対六というふうなかっこうで六万人ほどおるわけです。これは現在各施設の、百人定員なら職員が何人いなければならないという最低基準には大体合っております。ただ問題は、最近若手の有能な職員が、民間産業が非常にいいものですから、そっちのほうに引き抜かれたりということで、だんだんいい人を得ることがむずかしくなってくる。ところによっては、学校出たての何も知らぬ若い人が入ってまいったり、または。パートタイムみたいな人を事務職員に間に合わしたりというふうな状況でありますので、逐次充足状況は悪くなるのじゃないかというふうな心配をいたしております。それで、給与改善と、それからたとえば保母一人が三十人というのを二十五人にするというふうな定数の増加とか、労働の緩和というふうな問題等、毎年やっておりまして、本年度もある程度の内容改善はできたわけでありますが、今後とも給与、それから定数、処遇全般というものの改善に進んでいきたい、こういうように考えております。
  232. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 児童福祉施設におきましても、ただいま社会局長が答弁いたしましたような方向には変わりございませんが、特に保育所は毎年七百ヵ所以上できるわけでございます。したがいまして、保育所に働く保母さんの確保に伴いまして、その処遇の改善なり、あるいは受け持ち児童数を少なくするというふうな問題が大きな問題になっております。  詳しく申し上げますならば、現在のところ、保育所におきましては、三歳児以上の子供につきましては、子供三十人につき一人ということになっております。三歳児につきましては、子供二十五人につき一人ということになっておりますし、三歳未満児の子供につきましては、子供六人につき保母さん一人という基準になっておりますが、特にいま問題になっておりますのは、三歳児の子供につきまして受け持ち児童の数をもっと減らすべきである、二十人に一人にすべきである、こういう強い意見も出ております。したがいまして、特に保育所におきましては、受け持ち児童の数を減らすことによりまして、保母さんの処遇の間接的な改善にするようにつとめなければならないと思います。  なお、保母さんの数が相当大量に必要になるわけでございまして、そのためには、保母の養成機関の拡充という問題が大きな問題でございます。現在のところ、全国で保母養成機関の数は昨年まで百五十九でございましたが、四十三年度におきましてはその数を百八十ばかりにいたしまして、三十近くふやすということもやっておりますし、また保母の資格を取得するのは、都道府県の知事の試験によることになっております。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 現在、県で一回しか試験をやらないところもございますので、こういった県につきましては、年に二回やるように指導するということも必要であろう、かように考えております。
  233. 田畑金光

    ○田畑委員 私は質問を終わるわけでありまするが、とにかく、いま質問、そうして御答弁にありましたように、施設の充実の問題、あるいは施設に働く職員の処遇の改善、あるいは要員の確保、あるいはまた訓練等々については、さらに一そうの御努力を払われるよう切に要望し、あわせて財源措置などについてもこういう面にもっと力を注ぐことこそ行政並びに政治の当然のあり方である、このように私は見ておりますので、関係各位の御努力を切に希望して、私の質問を終わります。
  234. 八田貞義

    八田委員長 次回は明十六日午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十七分散会