運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1968-05-07 第58回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
四十三年五月七月(火曜日) 午前十時二十一分
開議
出席委員
委員長
八田
貞義
君
理事
小沢 辰男君
理事
佐々木義武
君
理事
田川 誠一君
理事
橋本龍太郎
君
理事
藤本 孝雄君
理事
河野
正君
理事
田邊 誠君
理事
田畑
金光
君 大坪 保雄君 海部 俊樹君
亀山
孝一
君 倉石
忠雄
君
河野
洋平
君 齋藤
邦吉
君 澁谷 直藏君
世耕
政隆君 田中 正巳君 竹内 黎一君 中野 四郎君 中山 マサ君 増岡 博之君
三ツ林弥太郎
君
箕輪
登君
渡辺
肇君 枝村 要作君
加藤
万吉
君 後藤 俊男君 西風 勲君 八木 一男君 山田 耻目君 山本 政弘君
本島百合子
君 和田 耕作君 伏木 和雄君
出席国務大臣
労 働 大 臣 小川 平二君
出席政府委員
労働大臣官房長
石黒
拓爾
君
労働省労働基準
局長 村上 茂利君
委員外
の
出席者
議 員
久保
三郎
君 議 員
加藤
万吉
君
参議院議員
小平
芳平
君
労働省労働基準
局賃金部長
渡辺
健二君 専 門 員 安中
忠雄
君
—————————————
四月二十七日
委員箕輪登
君
辞任
につき、その
補欠
として
広川
シズエ
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員広川シズエ
君
辞任
につき、その
補欠
として
箕輪登
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 五月七日
委員福永一臣
君及び
渡辺肇
君
辞任
につき、その
補欠
として
亀山孝一
君及び
河野洋平
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員亀山孝一
君及び
河野洋平
君
辞任
につき、そ の
補欠
として
福永一臣
君及び
渡辺肇
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
四月二十六日
診療エックス線技師法
の一部を
改正
する
法律案
(
社会労働委員長提出
、
参法
第一二号)(予)
労働基準法
の一部を
改正
する
法律案
(
河野正
君 外四名
提出
、
衆法
第三四号)
診療エックス線技師法
の一部を
改正
する
法律案
(
参議院提出
、
参法
第一二号) 同月二十七日
保健婦助産婦看護婦法
の一部を
改正
する
法律案
(
藤原道子
君外二名
提出
、
参法
第十三号)( 予) 同月三十日
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
(
加藤万吉
君外十一名
提出
、
衆法
第三七号) 同日
ソ連長期抑留者
の
処遇
に関する
請願
(
廣瀬正雄
君
紹介
)(第四九六九号) 五月二日
観光開発
に対する
自然保護施策
の強化に関する
請願
(
増田甲子
七君
紹介
)(第四九七八号)
原水爆被害者援護法制定等
に関する
請願
(井出 一太郎君
紹介
)(第五〇四〇号)
原爆被害者援護法制定
に関する
請願
(
吉川久衛
君
紹介
)(第五〇四一号) 同(
下平正一
君
紹介
)(第五〇四二号) 同(
中澤茂一
君
紹介
)(第五〇四三号) 同(
羽田武嗣郎
君
紹介
)(第五〇四四号) 同(
原茂
君
紹介
)(第五〇四五号) 同(
平等文成
君
紹介
)(第五〇四六号)
各種福祉年金
の
併給限度撤廃
に関する
請願
(齋
藤邦吉
君
紹介
)(第五〇六八号)
ソ連長期抑留者
の
処遇
に関する
請願外
一件(黒
金泰美
君
紹介
)(第五〇六九号) 同外二件(
小坂善太郎
君
紹介
)(第五〇七〇 号) 同外一件(
松澤雄藏
君
紹介
)(第五〇七一号)
戦争犯罪裁判関係者
に
見舞金支給
に関する
請願
(
羽田武嗣郎
君
紹介
)(第五一〇七号) 医師、
看護婦
の
増員
に関する
請願
(
八田貞義
君
紹介
)(第五一〇八号)
医療保険制度改革試案反対
に関する
請願
(
加藤
勘十君
紹介
)(第五一八三号)
引揚医師
の免許及び試験の
特例
に関する
請願
(
田畑金光
君
紹介
)(第五一八四号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
労働基準法
の一部を
改正
する
法律案
(
河野正
君 外四名
提出
、
衆法
第三四号)
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
(
加藤万吉
君外十一名
提出
、
衆法
第三七号)
最低賃金法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第二号)
最低賃金法案
(
河野正
君外九名
提出
、
衆法
第一 号)
最低賃金法案
(
小平芳平
君外一名
提出
、
参法
第 九号)(予) ————◇—————
八田貞義
1
○
八田委員長
これより
会議
を開きます。
河野正
君外四名
提出
の
労働基準法
の一部を
改正
する
法律案
、及び
加藤万吉
君外十一名
提出
の
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
の両案を
議題
とし、
審査
を進めます。
八田貞義
2
○
八田委員長
提案理由
の
説明
を聴取いたします。まず、
久保三郎
君。
久保三郎
3
○
久保議員
労働基準法
の一部を
改正
する
法律案
の
提案理由
及びその趣旨を
説明
いたします。 近時、
交通事故
は
国民生活
に
一大脅威
を与えており、これに対処する
総合的施策
の
制定
と、これを強力に推進する
体制
をつくる必要があります。そのため、
日本社会党
は、
交通安全基本法案
を別途提案いたし、
総合的施策
の目標の
幾つ
かを明示しておりますが、その中で、
交通
安全を
確保
する直接的な
施策
として、
交通安全施設
を整備すること、
車両
、
舶船及び航空機
の
安全性
を
確保
すること、そして
運転者等
の側から安全な運行及び
航行
の
確保
をはかることの三つを強調してきたのであります。 本
法律案
は、その
一つ
である
運転者等
の側からの
安全性確保
をはかろうとするものであることは言うまでもありません。もちろん
運転者等
の側からの
安全性
を
確保
するためには、
交通安全基本法案
の中で明示いたしておりますように、
運転者等
の
労働条件
の改善と適性の
確保
、
指導訓練
の充実及び
資格要件等
、
制度
の
合理化
をはかる必要があります。本
法案
はその中でも当面解決を迫られております
運転者等
の
労働条件
を改善し、
交通
の安全を
確保
しようとするものであります。
交通事故
の
幾つ
かが
運転者等
の不注意あるいは取り
扱い
の誤りとして処理されておりますが、真に
原因
は
過労
であり、
労働条件
の
劣悪
からくるものが多いことは事実であります。
事故
の
原因
となる
劣悪
な
労働条件
は、
交通企業
の無
政府
的な競争、
人命尊重
と
安全性
を押しつぶす
企業性
の追求からくるものでありますから、
基本
的には
総合的交通政策
によってその根源を除去する必要があります。しかし、直接
車両等
を
運転
する者が、いつでも
安全運転
、
安全航行
をなし得る
条件
を極力
確保
することは、
交通
安全上緊要なことであり、
運転者等
の
労働条件
を
労働基準法
にいう
原則的立場
から改善するにとどまらず、
交通
安全の側からも考慮し改善する必要があり、ここに本
法案
を
提出
した次第であります。 次に、本
法案
の
内容
について
説明
をいたします。 まず、第一に本
法案
でその対象とするものは、汽車、電車、気動車、
原動機付自転車
以外の
自動車
、総トン数五トン
未満
の
船舶
、湖川または港内のみを
航行
する
船舶
、及び
航空機
を
運転
あるいは
操縦
する者に限定いたしており、たとえば
航空管制
の仕事に従事する者のように直接
航空機
の
操縦
はしないが、安全の上からはこれと同様な
条件
下にあります者については、別途
措置
する考えであります。 第二は、
労働
時間でありますが、一日六時間四十分、一週間四十時間とし、緊張した
労働環境
にある
運転者等
の
労働
時間を短縮することによって緊張とこれに伴う
疲労
を軽減し、
安全性
を
確保
しようとするものであります。しかし、特殊な場合は
超過労働
を許容するが、一日一時間を
限度
とするきびしい
規制
をいたそうとするものであります。 第三は、
労働日
から次の
労働日
に至る
間隔
についてであります。
始業時刻
は直前の
労働日
の
終業時刻
から少なくとも八時間以上の
間隔
をとった
時刻
とし、
休養
は
最低
限八時間をとらせ、この面からの
安全性
を
確保
しようとするものです。 第四は、
割り増し出来高払い
の
賃金制
を禁止することです。いわゆる
刺激給
が
運転者
に
過労
を強要し、
安全性
を度外視させる
原因
となっておりますので、この
制度
からくる弊害を取り除き、
賃金制度
の面からも
安全性
を
確保
しようとするものであります。 なお、単純な
歩合給
についても、逐次
固定給
に移行させるための
措置
を講じ、この
制度
の全廃を企図することは言うまでもありませんが、さしあたりの
措置
として、
割り増し出来高払い
の
制度
だけは、やめさせようとするものです。 第五は、
運転者等
に対しての
適用除外
についてであります。すなわち
労働
時間については、本
法案
第六十八条の三によって特別な
規定
をいたしましたので、
労働基準法
第三十二条第二項の
規定
は
適用
しないこととし、また休日の
規定
であります
労働基準法
第三十五条第二項の休日付与の
特別扱い
は
適用
せず、
運転者等
の休日は同法第一項にのみよることとし、毎週一回の休日を与えさせ、
労働
と
休養
のバランスをくずさせないことによって
安全度
を向上させようとするものであります。 また、安全の
観点
から、時間
外労働
及び休日
労働
を
原則
として認めないこととし、
労働基準法
第四十条に
規定
されております
労働
時間及び
休憩
の
特例
も
適用
を除外し、
労働基準法
第六十一条で
規定
されております女子の時間外及び休日
労働
についても、これが
適用
を除外し、
運転者等
に対する本
法案
の
原則
である
過労
の
原因
を排除する方針を貫くことにいたした次第であります。 さらに、
年少者
の
労働
時間の
特例
についても、これを認めない
立場
をとり、
労働基準法
第六十条第三項の条項は
年少運転者等
に
適用
させないこととし、かつ本
法案
第六十八条の四の時間
外労働
をも認めないことといたしたのであります。 第六は、非
専業車両等運転者
、すなわち主としては
車両等
の
運転
に従事しない者については、少なくとも
運転
時間についてはこれを
規制
することとし、一日六時間四十分、一週間について四十時間を
限度
としようとするものです。 第七は、
継続運転
時間の
規制
によって
安全運転
を
確保
しようとすることです。すなわち非
専業運転者
を含め
継続運転
は四時間を
限度
とし、その後継続して一時間以上の
休憩
を与えない限り引き続いての
運転
を認めないものとし、長時間
継続運転
による
疲労
、
注意力散漫等
からくる
交通事故
をなくそうとするものです。 ただし、
国際航空
に従事する
航空機
の
操縦者
に関しては、その
特殊性
から、許可を受けた場合は限定された
範囲
内で四時間以上にわたる
継続運転
を認めようとするものです。 第八は、
災害
その他避けることができない場合の
労働
時間の
延長等
を
規定
した
労働基準法
第三十三条は、本
法案
第六十八条の八、すなわち非
専業者
の
運転
時間及び同じく第六十八条の九による
継続運転
時間については、事柄の性質上やむを得ず、その準用を認めることとしたものであります。 第九は、以上の
労働
時間等を厳格に守らせるため、
車両運転
時間台帳の
制度
をつくり、その実効をあげようとすることです。 以上で
内容
の
説明
を終わりますが、何とぞ
慎重審議
の上御賛同をお願いします。(
拍手
)
八田貞義
4
○
八田委員長
次に、
加藤万吉
君。
加藤万吉
5
○
加藤
(万)
議員
私は
提案者
を代表いたしまして、ただいま
議題
となりました
労働者災害補償保険法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
提案理由
と
内容
について御
説明
申し上げます。
労働省
の調査したところによりますと、去る四十一年の
労働災害
による
死亡者数
は六千三百三人、
休業
一日以上の
負傷者数
は六十八万六千人にのぼると伝えられているのであります。そのうち三人以上の
死傷者
を出すところのいわゆる
重大災害
は、前年の二百七十六件に対し三百八十七件、それに伴う
死傷者
は前年の千四百六十二人に対して二千八十九人と、それぞれ前年に比較して四〇%近い
増加
を見せ、
労働災害
が年々大規模化する
傾向
を示しているのであります。 特に最近の特徴として注目すべきことは、
動力運転
による
災害
の比率が高まり、また
職業病
の
発生
も四十一年は二万五千六十三件と前年に比べて七・六%もの
増加
を見ていることであります。これらの
傾向
は新しい技術の導入や新原材料の採用といった
生産体制
の急激な
変化
にもかかわらず、
保安対策
や
労働条件
などについての
対策
がきわめて立ちおくれているところに最大の
原因
があると言わねばなりません。 このため
労働基準法
に基づいて
実施
される
定期健康診断
によりますと、四十一年に
診断
を受けた九百四十六万人のうち、五十九万人が何らかの
疾病
があると報告されているのであります。
疾病
による
労働日数
の損失については、いまだに正確な統計は得られていないのでありますが、明らかにされております調査結果から類推いたしますと、全
労働者
の約二%が毎日
休業
していることになるわけでありますから、
日数
で
年間
二億日、その
賃金額
は三千五百億円にのぼると推定されています。 これに対して、
政府
の
労働災害対策
はきわめて不十分かつ不満足と言わねばなりません。
労働省
はこれまでも
昭和
三十四年以来、第一次、第二次の
産業災害防止
五カ年
計画
を策定し、
安全対策
の推進をはかってまいったのでありますが、その
基本
はあくまでも
安全運動
や
安全期間
といったいわば
労働者
の
精神主義
に立脚した
啓蒙活動
が
中心
であって、最も必要とされている
監督行政
、
安全確保
のための
施策
が全く欠けているのであります。一例をあげますれば、かねてより強く要求されております
基準監督官
の
増員
にいたしましても、一向にそれが実現されず、現在二百四十万に達するといわれている
労働基準法適用事業所数
に対して、
監督官
はわずかに二千七百人にも満たず、
労働省
みずからが十年か十二年に一度の
監督
よりできないと指摘しているのであります。しかも最近の
労働災害発生件数
の約七〇%以上は、百人
未満規模
の
中小零細企業
で
発生
しているといわれ、これは
保安面
や
安全施設
に投ずる余力が大
企業
に比較して乏しいということもありますが、国の
監督行政
がそこまで行き届いていないことにも大きな
原因
があると考えるものであります。 しかも、
現行
の
労災保険
による
補償
は、全く不十分というほかありません。本来、
労働災害
や
職業病
で
負傷
したり病気になった
労働者
は、
療養期間
中の
賃金
はもとより、その
生活
が完全に保障されねばならぬはずであります。
労働災害
の
原因
が、かかって
企業
の怠慢による
安全対策
の不備に由来するものである以上、
労働者
が働くことができなくなった場合には、その
労働能力
の減退に応じて、正常な
生活水準
を維持し得るに足る
補償
がなされなければならぬことは、言うまでもありません。もし、不幸にして
労働者
が
死亡
した場合には、家族はもとより、その他の被
扶養者
に対しましても、これらの人々が正常な
生活
をし得るような
補償
がなされねばなりません。 しかるに
現行労災法
によりますと、たとえば不幸にして
死亡災害
にあった場合、月給三万円の人であれば、妻一人の場合は約十一万円、妻子五人の場合でさえわずかに約十八万円の
年金
より支給されないのであります。また、
両親
が五十五才以下の独身の
労働者
である場合には、
年金
ではなく、わずか四百日分の一時金が支給されるのみであります。それとても
両親
、兄弟がいなければ支給されないという驚くべき
実情
に置かれているのであります。
交通事故
による
自動車賠償保険
でも三百万円、
航空機事故
におきましてもすでに八百万円という
補償
が行なわれている事実を見るまでもなく、
労働災害
による
補償金額
は全く
劣悪そのもの
と言わねばなりません。加えて
現行労災法
がいわゆる
メリット制
を採用しているため、
企業
はできるだけ
災害件数
を減らしたがる
傾向
にあり、
業務
上の
災害
でさえ私病として扱われるケースがきわだって多くなる
傾向
にあると伝えられています。また、
通勤途上
における
交通事故
による
災害認定
についても、すでに約二十カ国にのぼる諸外国で
労災適用
の
範囲
に含まれているのでありますが、わが国におきましてはまだそれが法的に明確にされていないのであります。
労災
の
認定
にあたっては当然、
通勤途上
の
災害
も含まれるべきだと考えるのであります。 以上のような
実情
にかんがみ、この際
労働災害防止
に対して、国がより積極的な
施策
を講ずることはもとより、さしあたり
労災保険
の
給付額
を改善し、
被災労働者
の
生活
を保障することは、国家の急務と考えるものであります。以上が本
法律案
を
提出
する
理由
であります。 以下、この
法律案
の概要について御
説明
申し上げます。 まず第一に、
労働基準法
の
適用
を受ける全
事業所
に本法を全面的に
適用
することといたしました。 第二に、
労働者
が
業務
上の
負傷
または
疾病
による
休業
に伴って支給される
休業補償給付
は、
現行
の六〇%から一〇〇%に引き上げることといたしました。 第三に、
障害補償給付
はすべてに
障害補償年金
及び
障害補償
一時金を支給することとし、
障害等級
第一級の場合は
給付基礎日額
の二千日分の一時金と三百六十五日分の
年金
を
最高
に、十四級の場合の
給付基礎日額
の百日分の一時金と三十日分の
年金
を
最低
とし、それぞれ
障害等級
に応じて引き上げることといたしました。 第四に、
現行
の
長期傷病給付
の
制度
を廃止するとともに、
業務
上
災害
の場合の
解雇制限
の
期間
を、
現行
三年から五年に延長することといたしました。 第五に、
死亡
に伴う
遺族補償給付
は、
遺族補償
一時金と
年金
を併給することとし、
遺族補償
一時金の額を
現行
の
給付基礎日額
四百日分に三百万円を加えた額、また
遺族補償年金
は
給付基礎日額
の
現行最低
三〇%を六〇%、
現行
の
最高
五〇%を八〇%にそれぞれ引き上げることといたしました。 第六に、
休業補償給付
及び
障害補償年金
、
遺族補償年金
の場合、
平均給与額
に
年間
五%の変動があったときには、それに応じて
年金額
をスライドさせることといたしました。 以上が本
法律案
の
提案理由
とその主たる
内容
であります。何とぞ
慎重審議
の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(
拍手
) ————◇—————
八田貞義
6
○
八田委員長
次に、
内閣提出
の
最低賃金法
の一部を
改正
する
法律案
、及び
河野正
君外九名
提出
の
最低賃金法案
、及び
予備審査
のため本
委員会
に付託されております
小平芳平
君外一名
提出
の
最低賃金法案
の三案を
議題
とし、
審査
を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。
加藤万吉
君。
加藤万吉
7
○
加藤
(万)
委員
最初に、私は本
法案
を審議するにあたって、
大臣
の本
法案
に対する
基本
的な
姿勢
といいましょうか、政治的な
態度
についてお伺いを申し上げたいと思うのです。 実は、
現行
最
賃法
が施行されて今まで
実行段階
にあるわけですが、今度
提出
される
法案
が、第十六条を
中心
とするいわゆる
審議会方式
を
中心
に
改正
をされる。しかもこの十六条は、
法案
で見ても明らかなように、
大臣
や都道府県における
基準局長
がその
提案権
を持っておるという、きわめて、私どもの
立場
からしまするならば、官僚的なにおいが非常に強いわけであります。したがって、
政府
の
施策
の
いかん
によって、あるいは
大臣
の
政治姿勢いかん
によって、本問題が、せっかくの
改正
の機会にもかかわらず、現在まで
実施
をされておりまする
現行
最
賃法
、すなわち
業者間協定
を
中心
とする最
賃法
の
引き延ばし的要素
を実は持つわけでありまして、
現行
の最
賃法
が、
業者間協定
によるということが
基礎
である限り、これの行き詰まりからきた本
法案
の
改正
という
観点
から見ますると、この政治的な
姿勢
がきわめて重要なる意義を将来にわたって持つようになるわけであります。 そこで、私は多少現在まで至った
経過
の中身を申し上げて、
池田内閣
以来続いた本
法案
に対する
政府
の
態度
の
幾つ
かの間違った点、あるいはときには屈折をした点、こういう
角度
を
経過
的に申し上げて、一体その
経過
の中で、
労働大臣
はどの
角度
から本
法案
をこれからかりに可決された場合に
実施
をしていくのか、そういう
態度
をお聞きしたいと思うわけであります。
大臣
も御承知でしょうが、
業者問方式
というのは、当時
労働省関係
のある役人が、当時の
中小企業
のあまりにも
劣悪
な
賃金状態
を何とか改善する方法はないかということで、例の
静岡
の
かん詰め
による
業者間協定
がその発足であったわけであります。ところが、この限りにおいては
善意
な
意味
に私は実は
業者間協定
を
理解
をし、また、その運営をはかっておられたというふうに
理解
をしておるわけです。ところが、この
静岡
の
かん詰め
あるいは伊予のミカンの
かん詰め
等々が、
業者間協定
として拡大をされ、それが
最低賃金法
というふうになったところに第一の
問題点
があったわけであります。いわゆる
業者問
が、
中小零細企業
に働く
労働者
の
賃金
を多少でも引き上げようという
意味
で、
善意
な
意味
で当時の
労働基準局
が取り上げたのに、いわゆる
最低賃金制
のないために起きたソシアルダンピングの国際的なそしりを——この
業間者協定
をもって
最低賃金制
とする、そこの
態度
をきめたところに、実は
善意
であった
業者間協定
が、いわば
最低賃金法
とは似ても似つかない形になって、
日本
のいわゆる最
賃法
というふうに言われるようになったわけであります。 そこで、問題になりますのは、この
業者問協定
による
最低賃金
ができまして
実施
をされる
段階
で、実は
一つ
の
変化
があったのであります。すなわち当初は、
日本
の
高度成長
も、
中小企業
の
零細下請
という場には、あまり
影響力
といいましょうか、なかったのでありますが、
日本
の
高度成長
が
独占
の集中という
段階
に入りまして、
中小企業
がそれぞれの支持を持たない、あるいは
中小企業
独自がそれぞれの
シェア
を持ち、あるいは独立的な経営を営むそういう方向がだんだんとなくなりました。特に
昭和
三十八年以降の
高度成長政策
というものは、
中小企業
を
下請系列
の分野に実は巻き込んでいったのであります。したがって、
地場産業
あるいは
中小企業
が、独自の
市場
と独自の
採算制
を持つ
独立性
というものが非常に阻害をされてまいりました。私は、いわゆる
高度成長期
のこの
段階
は、
日本
の
寡占化体制
が進む第一歩であったというように
理解
をするわけです。そこに当初起きた
善意
の
業者問協定
による
賃金
の引き上げ、それが
最低賃金法
として組み込まれたところに実は問題が出たのであります。すなわち
日本
の
独占
がより蓄積を高めなければならない、そのためには
日本
の二重
構造
あるいは
経済
、
賃金
の二重
構造
そのままの
状態
をより温存するために実は
最低賃金制
が利用されるという
経過
になったのであります。ここにまず第一の問題がありました。したがって、
業者間協定
がどのような外面をつくろうとも、それがいわゆるILOが指摘をする
最低賃金制
あるいは国際的に見て
最低賃金制
であるというふうに
理解
されるには至らなかった
理由
があったろうと私は思う。 そこで、
大橋大臣
のときにそういう
傾向
に対して、
高度成長政策
と
所得倍増計画
が実は並行的に
実施
をされたのであります。私は、
池田内閣
のときの
業者間協定
の
扱い
は、その
高度成長政策
と
所得倍増政策
を、ある
意味
においては有機的に結びつけたと思うのです。たとえば当時
大橋大臣
が、
最低賃金制
の
あり方
について付言をされたことは
大臣
御案内のとおりです。
大臣
は
審議会
でこういう発言をされております。ある程度例外的な
条件
を除けば
全国
一律も無理ではない、最
賃制
の
あり方
については、
労働者側
の意見と
経済政策
を調和させて定めていきたい、こういうように実は述べたのであります。そこで私は、
大臣
、ここは明確にひとつ御記憶を願いたいと思うのですが、この
池田内閣
の
所得倍増政策
、
高度成長政策
、この中に
中小企業
の位置づけが実は出ておったのであります。すなわち、
大橋
さんが、
全国
一律制を敷くことも一部を除いては無理ではないと言った
観点
というものは、
全国
一律制の
賃金
を敷くことによって、
中小企業
の
近代化
あるいは大
企業
の
寡占化体制
、
独占化体制
にあまりにものみ込まれている
中小企業
の
シェア
、
市場
、そういうものを
最低賃金
の
全国
一律をてこにして直そうという気があったような気が実はするのであります。
政策
の中に、そういう
観点
があったような気がします。
高度成長政策
は、大資本ももちろん拡大するけれども、同時に、
日本
の二重
構造
の、しかも底辺をささえる
中小企業
の分野もそれなりに拡大し、それなりに、そこに働く
労働者
にも
所得倍増政策
の恩恵を受けさせよう、そういう
経済政策
、政治
政策
の面に
変化
があって、実はいまのことばになってあらわれたというふうに私は
理解
するわけであります。 したがって、
最低賃金制
を、今日までたくさん
審議会
で論議してまいりましたが、
最低賃金制
を
日本
でどうつくるかということについて、私は五つの
観点
があったと見ております。
一つ
は、
日本
の低
賃金
構造
を打破しよう、いわゆる二重
構造
といわれているこの
中小企業
の低
賃金
構造
を打破しよう、そのためには、
全国
一律制でなければならないという思想が
一つ
ありました。いま
一つ
の考え方は、これは諸外国に見られる形でありますが、いわゆる
最低賃金
というものは労使協定を
中心
にして進めていこう、そして、労使協定の中の
賃金
の協定化、それが業種であれ、あるいは産業であれ、あるいは地域であれ、その労使間協定の
賃金
を一般に普遍化する、そういう
最低賃金制
の
あり方
を求めていこうというのが
一つ
でありました。
全国
一律というものと、いま言いましたように、
最低賃金
を目ざすものとしては、労使間協定の一般拡張
適用
、この二つの
角度
で進めていこうというのが
最低賃金制
をつくる
一つ
の
角度
の意見としてあったわけです。あとの討論をしやすくするために、私は、これを第一と第二というふうに名づけてみました。 それから第三には、
池田内閣
当時とられた、いわゆる
最低賃金
を
規制
し、
中小企業
の
近代化
をはかろう、そして
中小企業
の低い生産性を引き上げることによって、
最低賃金
額をもっと引き上げていこう、こういう考え方がありました。これを私は第三の発想というふうにいっているわけであります。そして、
大橋
さんのときに、
全国
一律の
最低賃金制
も一部を除いては考えられないこともないと発想したのは、実は、二と三の結合の意見だったというふうに思うわけです。 なお、加えて
大臣
は、先ほども申し上げましたように、いわゆる
経済
の発展と調和というものをそこに加味していけば、そういう方向も考えてもいいという発想、意見を実は言われたのであります。したがって、私は、
大橋大臣
、
池田内閣
当時といっていいでしょうけれども、当時は、二と三が
一つ
の指標になって、
一つ
には労使間協定によって一般拡張
適用
していこう、同時にそれに伴うためには
中小企業
の
近代化
をしよう、そのためには
最低賃金制
をくさびに打ち込んでいく、そういうものが結合して、
大橋
労働大臣
の発言になってきた、こういうふうに実は
理解
しているわけであります。 第四番目の発想は、先ほどの、
高度成長期
の
段階
に、
独占
の関係大資本が、低
賃金
あるいは
経済
の二重
構造
を温存し、その蓄積の中で
高度成長
をはかろうとした、その発想であります。私はこれを日経連の発想とよく言っているのであります。
日本
経営者連盟が考えておった発想は、
高度成長
というか、所得倍増というか、
池田内閣
当時の発想をどこでなしとげていくのか、それには、いままである
日本
の
経済
の二重
構造
、
賃金
の二重
構造
、そういうものを温存して、その蓄積の中で
独占
の飛躍をはかろう、そのために必要な
最低賃金制
とはどういうものだ、そういう発想がありました。これが
一つ
あったわけであります。これを私は、第四の発想、こういっております。 それから第五の発想は、これは
中小企業
の側から見た発想であります。それは、
高度成長
で大
企業
がどんどん拡大しましたから、若年
労働
力が不足してまいりました。不足してきましたから、
中小企業
の分野には、若年
労働
力の不足から
賃金
の競争が当然行なわれてきたのであります。
企業
が、
近代化
はしないけれども、若年
労働
力は何としてもとらなければいけない。その競争のあおりが大
企業
の初任給の引き上げ、あるいは
中小企業
間の初任給の引き上げとなってあらわれてまいりました。大
企業
の初任給にくさびを打つわけにまいりませんから、
中小企業
の方々は、やむを得ず、それでは
業者問
の協定によって、この辺で
労働
力を
確保
しようではないかというのが、いわゆる
業者問協定
となってあらわれたというように私は思うわけであります。 以上、五つの
観点
の
最低賃金制
の今日までの発想の
経過
の中には、紆余曲折、あるいは時には非常に屈折点を設けてあったと思うのです。そして、それでは現在
業者間協定
によるどういう
最低賃金制
が
実施
されているかと申しますと、いま言った四と五とが結合して、すなわち、大
企業
の低
賃金
政策
による資本の蓄積、五の、
中小企業
の初任給のワクはめによる
労働
力の
確保
——この四と五が結合して、
業者間協定
による
最低賃金
という方向になっていると思うのです。
大臣
、これは
最低賃金
の答申がありました
幾つ
かの年代を追ってみますと、そのことが実は明らかになるのです。たとえば、最初は
業者問協定
でありました。その次は目安
賃金
と地域の
賃金
、その次は、目安
賃金
の場合に、地域だけにして、業種のことを削除いたしました。そして、この次にきたのは、実は
審議会方式
による今度の
最低賃金法
の
提案理由
になっているわけです。 そこで、問題は、こういう
経過
をずっと見てまいりますと、
最低賃金制
というのが、いわば、業者間によるものと、それから基準局ないしは
政府
を
中心
とする視点と、どこをつかんでいくかという、そういう
観点
からながめて、今日の
業者間協定
による
最低賃金制
が行き詰まったというように私は実は
理解
をいたしておるのであります。 そこで、私は
大臣
にお聞きします。当初申し上げましたように、本
法案
は、いわゆる十六条を
中心
とする新しい
角度
のものを求めようとしているわけであります。私は多少そこに期待がないわけではありません。ところが、冒頭に述べましたように、いままでのプロセスをずっと見てまいりますと、時の内閣、時の
大臣
、あるいは時の
経済政策
によってものすごい屈折点があるわけです。
大橋大臣
のときと石田博英
大臣
のときとは、私どもに言わせれば、九十度ぐらい
最低賃金
に対する
角度
が曲がったと見ているわけであります。そこで、いま私は五つの
観点
からの最
賃法
の発想を言いましたけれども、
大臣
は、本
法案
を提起するにあたって、この五つの
観点
のうち、どこから本
法案
についての
態度
、政治
姿勢
をお持ちになるか、まずお聞きをしておきたいというように思うわけであります。
小川平二
8
○小川国務
大臣
ただいま、るる御高教をいただいたわけでありますが、もっぱら
業者間協定
を
中心
に運営されてまいりました
最低賃金制
だが、おことばのように、大資本の要請に応じて二重
構造
の温存をはかろうというような意図のもとに運営されたものだとは私は考えておりませんし、この
制度
が現実に規模別格差の解消、したがって二重
構造
の解消に役立ってきておる、このように考えておるのでございます。 いま、この
最低賃金制
に関連をして、五つほどの
観点
があるというおことばでございました。第一は、
最低賃金制
度なるものは、低
賃金
を打破して二重
構造
の解消に役立つべきものである、かようなお考えであったと存じます。もちろん異存はございませんし、今後もこの方向で運営されてしかるべきものだと考えております。 また、この労使間の協定を
中心
として、これを未組織の分野に及ぼしていくという考え方が正しい、かようなおことばもあったかと存じます。これは確かに
一つ
の考え方でございましょうし、むしろこれが、労使の自主的な交渉によってきまった
賃金
が拡張
適用
されるという考え方は望ましいことであると言えるかもしれないと思います。ただ、さような形の
最低賃金
が実効をあげるための前提がわが国においてはまだ十分整っておらないのではないか。産業別協約が普及しております諸外国、ドイツ等もそうであると聞いておりますが、かような国におきましては、協約が未組織の
中小企業
等に拡張
適用
される、現実にそのような方式が
中心
になっておる、かように聞いておりますが、わが国におきましては、
労働
協約はもっぱら
企業
別に行なわれておる。個々の
企業
を越えて、産業別に協約が行なわれるという事例にはなお乏しいようでございまするし、また、
企業
間にもなお大きな格差が存在している、かような状況のもとにおいては、この公式が十分な効果をあげ得る前提が欠けておるのではないかという感じがいたしております。考え方といたしましては、おことばにあらわれております趣旨を否定するつもりはございません。 それから、
最低賃金
なるものは、
近代化
をはかり、生産性を向上させるためのものであるというおことばがございました。これまた全く御同感でございます。合理的な
賃金
が設定されるということは、
近代化
あるいは生産性向上の契機になる、かように考えておるわけでございまして、現にそのような方向で、今日までの
最低賃金制
度というものが役立ってきておると私は考えておるわけでございます。 この五つの
問題点
がそれぞれ関連をいたしておると思いますが、第四番目に仰せになりましたのは、寡占、
独占
体制
を推進するために、二重
構造
を温存させる日経連的な考え方のもとに
最低賃金制
が運営されてきておるのではないかというおことばでございますが、私どもは、そうではない、現にこの二重
構造
の解消に不十分だという御批判はあるかもしれませんが、現実に役立ってきておると考えておるわけでございます。 それから最後に、最近における若年
労働
力の不足、これに伴う
中小企業
における初任給の上昇という事実を御指摘になりました。確かに今日まで行なわれてまいりました
業者問協定
が、
中小企業
にとってはさような事態に対処するための自衛手段であった一面があると存じます。この点を決して否定いたすわけではございません。 要するに、御指摘になりました五つの点につきましては、私も全く同感でございます。そして、かような方向に背反するような姿で最
賃制
が運営されてきたとは考えておらないわけでございます。
大橋大臣
のことばも引用なさいましたが、
労働者側
の意見を十分尊重して、
経済政策
と調和せしめるような姿でやれ、こういう趣旨のことばであったという仰せでございますが、これまた私、全く同感でございます。これから先もそういう心がまえで運営がなされるべきものだと信じております。 なお、この
法案
を
提出
いたしました
理由
については、かねて
提案理由
でお耳に入れたとおりでございます。いろいろただいま御高教をいただいたわけでございまして、答弁として不十分であるか存じませんが、またお尋ねがございましたならば、それに応じて申し上げさしていただきます。
加藤万吉
9
○
加藤
(万)
委員
大臣
、
中小企業
の
賃金
を上昇させて格差を解消させるというのは、
最低賃金
の本来的意義じゃ私はないと思うのです。当初、一番初めに申し上げましたように、
静岡
の
かん詰め
で、
業者間協定
でもって基準局の人が非常に骨を折られた。その骨を折られたというのは、その人の発想は
最低賃金
ではなかったのですね。少なくとも当初は、これではあまりにも
賃金
が低過ぎるじゃないか、したがって、
業者問
で幾らかでも引き上げて最賃を詰めていけ、そういう
意味
で、私は格差解消、低
賃金
を多少でも引き上げていこうという意図のいわゆる
業者問協定
だったと思うのです。私はその限りにおいては、
大臣
が言われる
業者問協定
の
最低賃金
が実効をあげたということはわかるのです。しかし、
最低賃金制
度といういわゆる国内の政治
制度
として設けた場合に、それが本来持つ
最低賃金
の意義というものと
中小企業
の
労働者
の
賃金
を引き上げるという作用とは違った要素を持つと思うのです。たとえば御承知のように
最低賃金制
がしかれて、もしも一定額がきまれば、米価にも、あるいは社会保障の
生活
保護基準にも、それぞれが引用されることは間違いありませんね。ですから、
中小企業
の低
賃金
を引き上げるというだけであるならば、
業者問協定
による行政指導でよかったわけです。私はこの
政府
が出されておる
提案理由
を見まして、今日、
適用
者は六百何万かになってきた、そのことはこの
最低賃金制
が実効があったという取り上げ方はどうも合点がいかない。それは
中小企業
の
労働者
の
賃金
を引き上げることに役立ったけれども、
最低賃金制
としての本来的機能を果たしたかといえば、これは否定的
態度
をとらざるを得ない、私はそう思う。したがって、
大臣
が言われるように、前段の
意味
で今日の
業者問協定
が実効的役割りを果たしました、確かに私は
賃金
格差が是正されたことも認めます。しかし、格差が縮小されたということは
業者問協定
によってできたことであって、
最低賃金制
によってできたかどうか、実は疑問符を打たざるを得ないわけです。したがって、もしそれによって
賃金
格差が縮小したとするならば、それは
業者問協定
の行政指導でよかったのです。それを強めれば、今日六百万ぐらいのものはできたでしょう。十六条とか十一は除いて、九条、十条によってできたと私は思います。したがって、それが上がったから、
現行
の最
賃法
が有効、実効性があったのだという、
最低賃金制
度としてあったということについては、私はどうもうなずくわけにはいかないのですが、そこら辺の見解は
大臣
、どうお持ちになりますか。
小川平二
10
○小川国務
大臣
ただいまの御発言の点が御質疑の眼目ではなかろうかと思うのですが、私がはなはだのみ込みが悪いために——これは皮肉を申しておるわけでも何でもないのでして、もう一度ひとつお聞かせをいただきたい。
加藤万吉
11
○
加藤
(万)
委員
大臣
のいまの答弁では、いわゆる
業者間協定
を
中心
とする
最低賃金制
の普及によって
中小企業
の格差は是正されたじゃないか、したがって、実効があったのだ、こういま言わたわけです。したがって、私が言うように、
現行
までの
最低賃金法
が、
独占
の蓄積や何か、そういう役割りではないかということを否定されたわけですね、
大臣
。ところが、
中小企業
の
賃金
の格差を縮める、いわば
中小企業
の
労働者
の
賃金
を引き上げるだけの作用ならば、それは
最低賃金制
という
制度
でなくても、各
業者間協定
を行政指導すればできるわけです。
最低賃金制
というものは政治的
制度
でありますから、単なる
賃金
を引き上げるための行政指導的役割りでないわけですね。ですから、前段の
意味
だけだったら、私は
大臣
の言うことを
理解
しますけれども、
最低賃金制
としてこれが実効があり、しかも逆に言えば
最低賃金制
にしたから
賃金
の格差の是正があったのだということは、これは少し
現行
まであった
最低賃金制
を買いかぶり過ぎたか、あるいは本来行政指導でやられる面を
最低賃金制
という形で擬装されたかどっちかではないか、こういうように実は言っておるわけです。
小川平二
12
○小川国務
大臣
私は、的をはずれた御答弁になるかもしれませんが、間違っておりましたらまた御指摘をいただきとうございますが、
業者間協定
は、拘束力を持ち、罰則を伴う
一つ
の
制度
、すなわち
最低賃金制
度であることに間違いはないと存じます。この
制度
が存在することによって現実に
賃金
の格差が縮小してきておる、ここのところまでは言ってよろしいことじゃなかろうか、こう思います。
加藤万吉
13
○
加藤
(万)
委員
いわゆる
業者間協定
は、法的拘束力を持つから、それで上がったんだ、今度はこう言われましたね。確かに法的拘束力を持ったところに
最低賃金制
と名づけたところが
政府
側に言わせればあると思うのです。しかし、私どもの考え方を言えば、業者者協定を行政指導されて、たとえばマグロの
かん詰め
の業者が集まって、どうだ、ことしは地場
賃金
が少し高くなったから、この際あまり過当的に
賃金
を上昇させずにここでひとつきめようじゃないか、このきめた中のある業者にそれを逸脱をした行為があったならばアウトサイダーにするぞ、それで事実上その経営者に対して制裁
措置
を加えていけば、法的
措置
がなくても可能になる
条件
があるわけです。ですから、私は、
業者間協定
による行政指導その他が
賃金
を引き上げたということは認めます。しかし、それが
最低賃金制
という
制度
によってなされたというのは、少し買いかぶり過ぎじゃないか、いわばその行き詰まりが今度の
審議会方式
による
改正
にあらわれてきたんじゃないかということを聞きたいわけなんですよ。
村上茂利
14
○村上(茂)
政府
委員
技術的
観点
から申し上げますと、
最低賃金制
と一口に申しますけれども、その
内容
とするところは、その
最低賃金
をどのようなきめ方をするか、きめ方の問題、それからどういう機関がきめるかという機関の問題、それからきめる場合に何人がイニシアチブをとるかという手続の問題、それから具体的な額の決定の問題そういう要素があるのではなかろうかというふう一に存じます。 この四つの
観点
からの組み合わせを見ますと、外国の例を見ましてもいろいろな組み合わせをしておるわけでございます
現行
のわが国の
最低賃金法
は、主として
業者間協定
という業者が発議したものと、それから
労働
協約という労使の意見が合致したものと、それから
審議会
に
労働大臣
または都道府県
労働基準局
長が諮問をした場合という、その形を
中心
にしたきめ方をしておるわけであります。そういう
観点
から申しますと、だれが事実上の発議をするか、あるいは法律上有効な発議をするかという
観点
からの場で考えますと、いろいろな型があるんじゃないか。たまたま
現行
最
賃法
がそういう形になっておりますから、
加藤
先生はこの方面に従来からタッチしておられまして非常にお詳しいわけでございますので、
経過
をたどりながら
業者問協定
方式の
問題点
を指摘されたわけでありますけれども、現在
改正
法案
として
提出
いたしておりますものは、むしろその方式を
審議会
中心
の方式に変えるということでございまして、いま申しました形としては、その点においてはかなりの
変化
を見せるのじゃなかろうか、こう思うわけでございます。 なお、四つの要素があるのではないかという見解を述べましたが、きめ方の問題として
全国
一律がいいか、産業別、職種別がいいか、地域別がいいかという問題、機関として
審議会
中心
、それだけでいいのか、
労働
協約という方式を交えるか、主として
中心
機関は
審議会
だというのでいいのか、額はどうするといった問題があるわけでございますが、そういった機能の組み合わせが、冒頭に
加藤
先生いろいろ見解をお述べになりましたいろいろな考え方があると思いますが、そういった点につきましては、そのときにおける
経済
情勢なり
経済政策
とかみ合わせましていろいろなきめ方が考えられるのじゃないかというふうに存じておる次第でございます。
加藤万吉
15
○
加藤
(万)
委員
村上さん、私はだから言っているのです。イニシアチブと組み合わせというのはいろんな方式があるわけです。業者間できめて、それを一般
労働
協約に拡張できるようにすればいい。そういう行政指導をすれば——それは
最低賃金制
じゃない、協約
賃金
でありますけれども、協約
賃金
でも
中小企業
の
賃金
は上昇させることができた。問題は、
労働省
がどういう指導
体制
を
中小企業
労働者
に向かってとるかということが一番の問題です。私は、
中小企業
の
労働者
の
賃金
を引き上げるということと、
最低賃金制
としてある
制度
というものと、ここには
一つ
の壁といってはおかしいが、
制度
としてあるものと
賃金
を引き上げるというものとは別個な問題じゃないかと思う。もちろん最終的には
業者問協定
によっても
賃金
が上がったことは事実です。しかし、組み合わせ、イニシアチブを
労働基準局
がとって、そこに
労働
組合をつくらせ、その地域の
労働者
に一般
労働
協約を
適用
して、それを一般拡張して、いわゆる十一条によって
適用
していくということになると、
業者間協定
による
最低賃金制
度がなくても、
中小企業
の
労働者
の
賃金
は上がったはずだと言っているのです。ですから、
業者問協定
による
最低賃金制
度があったから格差が縮小し
中小企業
の
労働者
の
賃金
が上がったという見方、取り上げ方はあまりにも過大評価ではありませんかということを実は私は言っているのです。どうでしょう、専門的な話ですから
基準局長
に聞いたほうがいい。
村上茂利
16
○村上(茂)
政府
委員
私ども、過去数
年間
におきます
最低賃金
額のきめられた額の上昇の率と、一般
賃金
の上昇率を比較いたしますと、実は上昇率としては、
業者間協定
方式ではありますけれども、
最低賃金
額の上昇率のほうが高くなっておるようなのが
実情
であります。ただ、この点を私は特に強調しようとは思わないのでございまして、
業者問協定
の持つわれわれの期待した意義というものは、
最低賃金制
度にわが国の労使関係者がなじんでおらなかったというのが過去の事実ではなかろうかと思います。もしそれが、産業別
労働
協約が相当ございまして、その拡張方式を用いることによって、わが国の
最低賃金
方式が考えられるという実態がございましたら、そのような
角度
からアプローチするということも考えられるかとも存じます。しかし、先ほど
大臣
がお答えいたしましたように、個別
企業
を越える産業別なり職種別の
労働
協約というものは、わが国で少なかったという事実がございますし、そして
企業
間に規模別に
賃金
の格差があっというのも事実でございます。 そのような環境、
条件
の中で、
最低賃金制
というものをどのように取り上げ、なじませていくかという
政策
的配慮をいたしましたときに、いろいろ問題はあろうが、
業者間協定
方式というものが取り上げられ、いまや六百万の
労働者
に
適用
されるという
制度
に展開してきた。そして
最低賃金
というものによって拘束を受けるという、そういった
一つ
の経験がいま現実に見られるわけであります。そのような
意味
で、
業者間協定
方式がわが国の
最低賃金制
の普及拡大に役立った功績というものは、単に
賃金額
の引き上げということのみならず、そういった面においても大きな意義があったのではなかろうか、かように存ずるわけであります。
加藤万吉
17
○
加藤
(万)
委員
これは、ここでこの論議をやったら運動論と結びついてたいへんな議論ですから、専門家的な議論になってしまいますから申し上げませんけれども、
一つ
だけいまの答弁の中で指摘をしますと、確かに一般の
賃金
の上昇よりも、
業者間協定
によって
賃金
のアップ率が高くなった。たとえば目安
賃金
をきめて、あれは二年後、甲地域では一六%くらいになりましたでしょうか、確かに上がっている。それでは大
企業
の初任給の上昇率と最底
賃金
の上昇率と比べればどうなりますか。大
企業
の初任給の上昇率のほうが高いですよ。
業者間協定
によって
中小企業
の
賃金
のアップ率が一般の
賃金
のアップ率よりも高くなったというのではなくて、若年
労働
力の不足からくる、需要供給からくる
最低
初任給の引き上げが、逆にいえば
中小企業
の若年
労働
力の初任給を引き上げたといっても過言でない。ですから、
最低賃金
ですから、平均
賃金
のアップ率と片一方の
中小企業
の
賃金
のアップ率で比較するのが妥当かもしれませんが、実際にある
業者間協定
による
最低賃金
というのは、実は若年
労働
力の
最低
初任給になっているわけです。所によっては多少違いましょうけれども、おおむねはそうです。そうなりますと、大
企業
の初任給のアップ率と
中小企業
の初任給のアップ率とを比較して、どっちがより高い伸び率を示しているかというと、率直に言って同額かむしろ大
企業
が少し上じゃないか。それに追いつこうとするために、
中小企業
は
業者間協定
の額を次から次に上げていかなければいけない。そういう現象があったのじゃないでしょうか。 ですから私が言いたいのは、
業者間協定
による
最低賃金
が
中小企業
と大
企業
の
賃金
格差を縮小したというのは、
制度
として縮小されたのじゃなくて、一方には
労働
力の需要供給の関係、一方には、本来業者間がそういう形で上げなければ
労働
力の
確保
ができないという関係等々から生まれたというのが五〇%以上の比重を占めるのであって、
業者間協定
によって引き上げられたという
観点
は、その
意味
からいえば一〇〇のうち四〇になりますかあるいは五〇になりますか、そういうふうに見るべきではないかということを言っているわけです。というのは、あとで実はこの
業者間協定
が二
年間
さらに延長するということがあるものですから、相当私はこの部分が気にかかっているところなんです。私はそういう見方を実はしているわけです。したがってこの点については、あとでもし答弁があればいただきたいと思いますが、さほどいわゆる論争になるところではないのです。 ただ、私はここで
大臣
にいま一ぺん念を押すように聞きますけれども、私が一、二、三、四、五とあげましたうちの四の、
中小企業
の低
賃金
、
経済
や
賃金
の二重
構造
の温存によって
独占
の蓄積をはかろうとしての意図、そういう
意味
で
業者間協定
をつくったのではない、あるいはそういう
意味
に今後も持っていこうとはしていないとおっしゃられました。そして一と二と三と、最後の
中小企業
の初任給の引き上げを多少カバーをするために
業者間協定
があったということは多少なりともお認めになったのですけれども、そうなりますと、
大臣
のこの問題に対する
基本
的な
姿勢
は、いわば
一つ
は
日本
の低
賃金
をこれで早くなくそうという意図。いま
一つ
は、できれば、そういう土壌ができるならば、労使間協定の一般拡張
適用
を拡大して、労使間によって
賃金
をきめていくということが正しい。ただそういう土壌がないから、残念ながらいまのところはできないとしても、そういう方向が正しい。それからいま
一つ
は、
最低賃金
がある
意味
においては
中小企業
の
近代化
に役立ち、
日本
の
中小企業
の生産性を高めて、それによって
労働者
の
賃金
が引き上がっていくという、そういう展望も持ちたい。この三つは、これから
大臣
が
審議会方式
によって当たっていく場合にも考える視点であるかどうかを、いま一ぺん確認しておきたいと思います。
小川平二
18
○小川国務
大臣
先ほども申し上げましたように、いまおことばにありましたような視点に立って運営をしていく、これはもう当然のことだと考えます。
加藤万吉
19
○
加藤
(万)
委員
そうしますと、やや私と共通の場ができているわけですが、私は先ほど四と五によって
業者間協定
が今日まで運営されてきて、いわゆる大
企業
の資本蓄積を二重
構造
の中でそれを活用しようとした資本の日経連方式、とこう簡単に言いましたけれども、それと
中小企業
の初任給の大幅なアップあるいはそこにおける競争、それを阻止するために
業者間協定
がその役割りを果たしてきた。その二つを結合した中で今日まで運営されてきたのではないかというふうに私は推定をしているわけです。私はこの二つを結合したものをかりに日経連方式と、こう言いましょう。そうではなくして、四のことは、最後の
中小企業
の問題は多少ひっかかるにしても、一と二と三、いわば
大橋大臣
が述べられた程度の、たとえばある程度の例外を除けば
全国
一律
最低賃金制
ということを考慮しても、討議の対象にしてもいいのだとか、ことばは忘れましたが、あるいは最
賃制
の
あり方
は、
労働者側
の意見と
経済政策
とを一致し、調和させて、そして定めたいという意見、まあこれをかりに池田方式と、こう私は名づけてみましょう。そうすると、どちらに比重が高いかといえば、今度の、といってはおかしいが、今度の
労働大臣
は池田方式に立って
審議会方式
の
中心
的な運営をされる。いま一度、念を押すようですが、こういうふりに
理解
してよろしいでしょうか。
小川平二
20
○小川国務
大臣
労働者側
の意見は十分尊重して、これを
経済政策
と調和せしめるという方向は、これは疑いもなく正しい方向である、かように考えております。
加藤万吉
21
○
加藤
(万)
委員
私の言っているのは、
労働者側
の意見を聞くというだけではなくして、
最低賃金制
がわが国に
実施
をされる土壌といいましょうか、
基礎
となる政治的
角度
ということを実は問題にしているのです。いわゆる
最低賃金制
というものは、業者間で提起をして
審議会
できめる方式はもうだめなんだ。いわば、
労働省
が
審議会
にも諮問されているように、これではILO二十六号条約に抵触する部分が多くてというようなことばがあったようですが、これではいけないのだ。したがって、
最低賃金制
というものはいわば労使間の
賃金
の設定、これは協約化される場合もあるでしょう、あるいは
審議会
で、労使間でこの額がいいという額をきめる場合もあるでしょう、それを
審議会
という
角度
できめる場合もあるでしょう。いわば業者間によってやるのではなくして、労使間の
賃金
をきめるという、平等の
原則
の上に立った
賃金
をきめるという、その
角度
からこれからは
日本
の
最低賃金制
をつくっていくのだ。そういう政治的
角度
で
大臣
はお取り組みになるのかどうかということを私、実は聞きたいわけです。
小川平二
22
○小川国務
大臣
方向といたしましては仰せのとおりだと存じます。労使双方の意見を十分取り入れて運営していくべきだと考えております。
加藤万吉
23
○
加藤
(万)
委員
少し
角度
を変えますが、本法は中賃の答申に基づいて法の
改正
をされ、今国会に提起をされた、こういうふうに
理解
してよろしゅうございましょうか。
小川平二
24
○小川国務
大臣
そのとおりでございます。
加藤万吉
25
○
加藤
(万)
委員
この中賃の答申は、御承知のように冒頭に「現
段階
における
最低賃金制
の取
扱い
について」と、こう書いてある。一体この現
段階
というのはどういうように
理解
したらいいのでしょうか。私はこの中を、あるいは
審議会
の
経過
を見ますると、
基本
的な問題あるいは根本的な問題はまだまだ討議をする余地がある。したがって、当面、いわゆる現
段階
ですね。現
段階
では、こういう
最低賃金制
の取り
扱い
がいいのではないかといういわゆる中間答申、こういうふうに見ておりますけれども、こういう見方、そしてそれに基づく
法案
の
提出
、こういうことでよろしゅうございましょうか。
小川平二
26
○小川国務
大臣
おことばのとおりでございまして、
最低賃金制
の今後の望ましい
あり方
がどのようなものであるべきかという点につきましては、先ほど御指摘のありました
全国
全産業一律最賃方式をも含めて御検討願っておるわけでございます。今回の答申は、文字どおり中間答申でございまして、
最低賃金制
の最終的な
あり方
がいかようなものになろうとも、そこに至る過程において少なくともこの点だけは改めなければならない、そういう趣旨の答申である、こう
理解
しておるわけであります。
加藤万吉
27
○
加藤
(万)
委員
これは後ほどたいへん重要な問題にかかってまいりますから、いま一ぺん確認をしますが、
基本
的な根本的な
改正
については、最終的な
あり方
が将来は浮かんでくるだろう。しかし、当面はこの部分だけの
改正
が必要である。そういう
審議会
の意向に基づいて、
法案
の
内容
も、当面はという、そういう全体の
理解
をしてもよろしいのでしょうか。
審議会
の答申は
大臣
が言われたとおりだと思う。ただ、
法案
の
内容
は、当面は、現
段階
ではということばで表現される
角度
で
法案
も提起をされている、こういうふうに
理解
してよろしゅうございますか。
小川平二
28
○小川国務
大臣
中間的な答申に基づいた当面の
措置
と御
理解
いただいてけっこうでございます。
加藤万吉
29
○
加藤
(万)
委員
この答申には、
法案
でもそうですか、いわゆる
現行
業者間協定
を二
年間
併存する、そして併存する過程の中で十六条方式に移行する、そういうように私は
理解
をしているのですが、これは間違いないでしょうか。
小川平二
30
○小川国務
大臣
経過
期間
中においては、二つの方式が並んで存在をしていくわけであります。
加藤万吉
31
○
加藤
(万)
委員
業者間協定
の二カ
年間
のいわゆる併存ということと、根本的あるいは
基本
的
改正
をする審議との関係はどうですか。
村上茂利
32
○村上(茂)
政府
委員
ちょっと私から答申の趣旨と関連することでございますから申し上げます。
経過
期間
の二カ
年間
併存するということばの使い方でございますけれども、新設ができないという
意味
では、十六条方式とは同じ
状態
にはないわけでございます。新設されますのは十六条方式でございます。ただ、従来の
業者間協定
は
賃金
を引き上げるための改定、その他引き上げる機能だけでございます。同じく生きておると申しましても、金額を引き上げるために
改正
をするというだけの
意味
しかないわけでございますから、
制度
的には十六条方式が
中心
になったというふうにも言えるわけでございます。若干のことばのニュアンスの問題でございますので、私から申し上げたいと存じます。
加藤万吉
33
○
加藤
(万)
委員
大臣
、私の質問に答えてないわけです。私は、二カ
年間
の
業者間協定
の延長、それは併存でもいいし、あるいは新設——新しい業者間における申請の額の引き上げだけがその間に行なわれる。これは多少技術的、というより
扱い
上の問題ですから私は言いませんが、私は、二カ
年間
そういう形であるということと、
審議会
の十六条方式によって生まれてくるものを新設していきますということと、そうしていま
一つ
、
大臣
が言われた、これは当面の
段階
のものである、中間的なものである。したがって、
基本
的、抜本的な
改正
は当然あるわけですね。わが国の最終的な案というのはある。その案が、この
期間
の関係からいってどうなりますか。それでは、いつごろ
基本
的な、抜本的な
改正
というのが本国会に提起をされるか。あるいは
審議会
の討議の目安はいつごろつけられるか。
小川平二
34
○小川国務
大臣
ただいまの御質問は、
審議会
における状況がどうなっておるか、最終的な答申が出るのはいつごろか、こういう御質問であろうかと存じますが、審議の状況につきましては、ただいま
基準局長
から申し上げます。
村上茂利
35
○村上(茂)
政府
委員
審議会
からございました答申の趣旨とするところは、
最低賃金
方式の廃止ということは、これは決定的な意見であるわけでございます。したがいまして、この
措置
は暫定であるとか、当分とかということではないわけでございます。——失礼いたしました。
業者問協定
に基づく
最低賃金
方式の廃止ということは、これは当分の間ではございません。最終的な意見として出てきておるわけでございます。したがいまして、その部分を受けております今回の
改正
法の部分は、当分の間という趣旨のものじゃない。
業者問協定
に基づく
最低賃金
方式の廃止、これは永久的なものとなるわけでございますが、その他将来の
最低賃金制
度の
あり方
においてどうするかという点については、できるだけすみやかに結論を得られるよう引き続いて検討を行なうという意向を、
審議会
そのものが答申の中で表明されておるわけでございます。 そこで、今後得られます結論がどのようになりますか、いま予測はできませんが、先ほど私が申し上げましたように、一口に
最低賃金制
と申しましても、きめ方の方式の問題をどうするとか、いろいろあるわけでございます。そのようなものをどのように考えるかという問題があるわけでございます。したがいまして、今後
審議会
で慎重に検討されるわけでありますが、それが法律
改正
という形でどのようにあらわれるかということについては、いま直ちに予見をすることは困難でございますが、少なくとも
最低賃金
審議会
が昨年五月の
段階
で答申をいたしましたその答申の趣旨におきましては、
業者間協定
に基づく
最低賃金
方式の廃止ということも明確に打ち出し、
基本
的問題については引き続き検討を行なう、こういう
態度
をとっておりますので、それを
政府
として受け止めるかという点については、先ほど
大臣
がお答えを申し上げましたとおり、これは中間的なものと考える、こういう
態度
で臨んでおるわけであります。
加藤万吉
36
○
加藤
(万)
委員
大臣
、実はいまたいへんなことが発言されておるわけです。
業者問協定
による移行
措置
は二
年間
認めるわけですね。そうして十六条方式に移行するわけですね。十六条方式によるものは永久的にといま言われたのですが、——いまの発言では、
審議会
の
あり方
については永久的なものにして、その問において抜本的と、こういうふうに発言されたような気がするのですが…。
村上茂利
37
○村上(茂)
政府
委員
私が答弁申し上げましたのは、
業者間協定
に基づく
最低賃金
方式の廃止ということは、これは当分の間じゃございません。これは恒久的な廃止でございますということを申し上げたので、
審議会方式
云々ということを、私、申した記憶がないのでございますが、もしそのようにおとりいただきますと多少の誤解があると存じます。
加藤万吉
38
○
加藤
(万)
委員
私の誤解は解けました。 問題は、二
年間
の
業者間協定
の移行
措置
を行ない、今度十六条に移行する。そうして移行したあと、その間にも中賃の
基本
問題小
委員会
では進められているわけですね。これは三十八回の
審議会
の議事録、有沢会長がこの問題を最終的に締めくくる際に、いろいろ申し述べられた点が
幾つ
かあります。たとえば
全国
一律最賃の問題にしても、あるいは地域別最賃の問題にしても、あるいは業種別、産業別、それらの組み合わせ等、いろいろな問題が出ておるわけです。いわゆる中間答申の
経過
の中でも実は出ているのです。したがって、これは答申にありますように、できる限り早く
基本
問題小
委員会
で討議しましょう、こう言っておるわけですね。そうすると私は、四十二年に答申をされ——その前に目安
賃金
のワクを一時はずし、その次は
審議会方式
になってきた。この二年以内ないしは一年半か二年半でございますが、その方式の
経過
からいって、本法の暫定的処置というものは答申があってから二年ないしは三年、そういうように見ていくのが過去の
経過
から見て正しいように思うのですが、
大臣
どうでしょう。
小川平二
39
○小川国務
大臣
どうもいまお読み聞かせくださった点は、ちょっと開き漏らしておるかもしれませんけれども、そのお読みになった中に二年あるいは三年というものがあるのかどうか存じませんけれども、これは必ずしも二年と限定しなければならないとは考えておりません。最終的な答申が、いかなる形でなされますか、なされた場合には、その答申の線に沿ってさらにまた法律の
改正
ということを考えなければならないと存じますけれども、それがいまから二年以内でなければならない、三年以内でなければならないとは考えておりません。
加藤万吉
40
○
加藤
(万)
委員
いや、そういう考えるとかなんとかじゃなくて、この審議の
経過
からいって、そのくらいが目安になるんじゃないですか。したがって、当面の
措置
である、暫定の
措置
であるというふうになってこなければ、
政府
側の提案の論旨が合わないんじゃないですか、こう言っているわけです。
小川平二
41
○小川国務
大臣
非常にむずかしい御質問でございます。
審議会
においてはむろん鋭意、きわめて精力的に審議をなさっていただいておるわけでございますから、最終的な答申が出るのはあまり遠い将来であろうとは考えておりませんけれども、さりとて、これが二年以内でなされるかどうか、そういう保証もないわけでございまして、遠からざる将来に答申がいただけるものというふうにまあ
理解
するほかはないと思います。
加藤万吉
42
○
加藤
(万)
委員
いわゆる暫定的であるということは、これは確認されたわけですね、当面の暫定的な問題だと。だとするならば、
政府
側は、次に出てくる
基本
的な最
賃制
の
期間
についていつごろまでに期待をするか、ないしは目安をつけるかということは当然あってしかるべきじゃないですか。先ほど
大臣
のこの問題に対する政治
姿勢
を実は聞きましたけれども、その政治
姿勢
というのは、本来あるべき
日本
の
最低賃金制
の
確保
について、
大臣
がかわるたびに屈折するようなことでは困りますよ。したがって、当面はこの
法案
を出すにしても、
大臣
が次に期待する答申案、あるいは
大臣
が持たれる
最低賃金制
に対する政治
姿勢
の
角度
からくる答申は、いつごろまでに期待されるか、このことを聞きたい。
小川平二
43
○小川国務
大臣
これは
審議会
の答申そのものも、将来の
最低賃金制
の
あり方
については、その間においてできる限りすみやかに結論を得られるよう引き続き検討を行なうことが適当だと言っておられるわけでございます。したがいまして、ただいまこの時点である程度明確に、大体二年後とか、三年後とか申し上げるわけに実際のところいきかねるわけでございます。私どもといたしましては、何ぶんこれは根本問題を御審議いただくわけでございますけれども、ただいまのところ、両三年後には答申がいただけるもの、このように期待をいたしております。
加藤万吉
44
○
加藤
(万)
委員
各条について多少触れていかなければいけませんからまいりますが、
昭和
四十一年の十月に山手
大臣
が中賃の答申を受けるに当たって所信の表明をされました。その際に、ILO二十六号条約に適合する答申をぜひひとつ出していただきたいと言われたわけです。前回枝村
委員
が本問題について多少質問をしました。その際に、村上
基準局長
から疑わしい点があるので、今回の
改正
でこれらの部分は削除しましたこういう答弁がありましたが、これは
基準局長
から確認したほうがよろしいと思いますが、
基準局長
は疑わしい点があるので、今回の
改正
でこれらの部分は削除した、とこうこの前の枝村
委員
の質問に答弁をされたのでございますが、これは確認してよろしゅうございますか。
村上茂利
45
○村上(茂)
政府
委員
その前後をちょっと……。
加藤万吉
46
○
加藤
(万)
委員
ILO二十六号条約について、これに適合する答申をお願いをしたいということを山手
大臣
が申し上げまして、それが中賃の答申になってまいりました。その答申の結果を経て今回の
法案
の
提出
には、疑わしい点があった分は、今回の
改正
でこれらの部分は削除しましたというふうにあなたが答弁されておるのですが、これは確認してよろしゅうございますかと聞いているのですが……。
村上茂利
47
○村上(茂)
政府
委員
あるいは私の前にいたしました答弁が十分意を尽くさなかった点があったのかもしれませんが、ちょっと私も明確に思い出しませんけれども、四十一年二月の
段階
でILO二十六号条約に関する問題を追加諮問をいたしました。その際に
政府
としましては、「海外における
最低賃金制
の現状等広い視野から御検討いただくようお願いしたところであり、ILO第二六号条約との関係についても、これに含め検討されるものと存じておりますが、この際、これを明確にする
意味
で、
最低賃金法
が同条約に適合するよう、答申をたまわりたく、」と、こういうふうに申し上げておるのでありまして、その疑義がある云々の点を指摘されましたが、おそらく「これを明確にする
意味
で、」というその追加諮問のことばに相応する部分に、そういう疑義のあるということばになったかと存じまするが、なお答弁の趣旨は、十分
理解
していないかもしれませんので、さらに御質問を承りまして答弁したいと思います。
加藤万吉
48
○
加藤
(万)
委員
その点はそれでいいのですよ。 そこで
大臣
にお聞きしますが、ILO条約は御承知のように各国における
労働
基準について
最低
を条約化し、あるところは勧告をしているわけでありますね。私は、ほかの
委員会
でも申し上げましたけれども、わが国のように世界第三位の鉱工業生産力を持つ国が、ILOの
最低
基準に合致をするということは、いわば
最低
の
条件
であって、もし望むならば、世界第三位にふさわしいような、後進国に対して指導標を与えるようなわが国の立法が必要ではないか、こういうふうに実は考えるわけです。そういう
意味
では
最低
の基準をおとりになるという場合でも、ILO条約の二十六号なり、あるいは勧告三十号をきわめて厳格にとらえる必要があると思うのでありますが、この点について
大臣
はどういう所信でしょうか。
小川平二
49
○小川国務
大臣
御趣旨のほどはよくわかるのでございますが、いま御指摘の三十号勧告は、支払い能力云々ということには触れておらない……(
加藤
(万)
委員
「そこまでは言われなくてもいいですよ。」と呼ぶ)いや、その御質問であろうと承っておりましたので申し上げるわけですが、御趣旨は仰せのとおりだと思います。
加藤万吉
50
○
加藤
(万)
委員
私は、
労働大臣
として、世界第三位を誇る工業国の
日本
として、ILO条約は批准をする、ないしは勧告に沿うというならば、当然の
措置
として先進国的役割りを指導標としてお求めになることが必要ではないか、そういう
意味
では今回のこの問題が、ILO条約を批准するということが、非常に重要な部分になっているだけに、厳格にその部分をおくみ取りになって法文化する必要があったのではないかというふうに思うわけです。それに対する
大臣
の所信をお聞きしたいわけです。
小川平二
51
○小川国務
大臣
その点は仰せのとおりでありまして、条約のみならず、勧告の趣旨をも、
実情
に即してあとう限り取り入れる、こういう
態度
で臨むべきだと存じます。
加藤万吉
52
○
加藤
(万)
委員
先回りをされてしまいましたけれども、そこでいわゆる第三条の問題になるわけです。 第三条は、もう私が指摘するまでもなく、ILO条約が、
現行
第三条の
最低賃金
の
原則
ですね。「
労働者
の生計費、類似の
労働者
の
賃金
及び」いわゆる「
賃金
支払能力を考慮して」とありますが、一体
賃金
の支払い能力というものを、どういうようにこのILO条約から見て対比をされるのか、お聞きをしたいと思うのです。
賃金
の支払い能力をなぜここに挿入しなければならなかったのか、あるいはそれがILO条約に抵触しはしないか、この点をお聞きしたいと思うのです。
小川平二
53
○小川国務
大臣
やはり
最低賃金
を決定いたしまする場合に、ほかのもろもろの
原則
とともに、通常の
企業
の一般的な支払い能力というものは考慮すべきであろうと考えております。そうでありませんと、通常の
企業
の支払い能力をはるかに越えたところで
最低賃金
が設定されるということでは、産業
経済
に混乱を生ずることにもなる、かように考えております。 またILOとの関連では、一九五八年ILOの条約勧告
適用
専門家
委員会
というものの報告によりますと、この報告では、適当な
生活水準
の維持ということのほかに、このように書いております。「最もしばしば見出される基準は、定められた
賃金
率を支払う
企業
の能力、一般的な
経済
、
状態
、類似の職業において支払われる
賃金
率および仕事の性質である、」このように述べてもおるわけでございまして、ILOの条約、勧告をも含めました最賃に関する
基本
的な考え方と必ずしも矛盾してはおらない、こういうふうに
理解
をしておるわけであります。
加藤万吉
54
○
加藤
(万)
委員
公明党さんにちょっとお聞きをいたします。 公明党さんの出されている最賃
法案
第三条は、やはり
最低賃金
の決定について定義をされておるわけです。公明党さんの案は、第三条で基準生計費、十八歳の
労働者
が健康で文化的な、いわゆる憲法に保障されている
最低
生活
に必要な
賃金
をここに挿入されているわけです。そこで、いま
大臣
の所信が明らかになりましたように、ILO条約は、御承知のように、いわゆる
一つ
は生計費、いま
一つ
は条約による一般拡張
賃金
、いま
一つ
は類似の
労働者
の
賃金
、こういうふうになっているわけですね。したがって、公明党さんの第三条は、いま
政府
が提案されている第三条の
企業
の支払い能力という面については全然触れておられないし、
大臣
が答弁になった分とはおよそ意見が違うわけです。そこで、公明党さんの、第三条の基準生計費を
最低賃金
に持ってこられた
理由
と見解をこの際お聞きをしておきたいと思います。
小平芳平
55
○
小平
参議院議員
お答え申し上げます。 一般的通常の
企業
の
賃金
支払い能力が、
賃金
を決定する場合の
一つ
の要素になるということは、私たちも十分考慮に入れて論議をいたしましたが、しかし、国が
最低賃金
を法的に強制する、きめるという場合に、かつては極貧
労働者
あるいは苦汗
労働
の禁止というふうなところから、
最低賃金制
度というものが一般的にとられるようになったという経緯、あるいはまた、現状において
労働者
の
最低
生活水準
を
確保
できる
労働者
の
最低賃金
をきめるという、こうした国の
政策
的な見地からきめる
賃金
でありますから、ここでいま
大臣
が申されましたような、では通常の
企業
の
賃金
支払い能力をどう判断しきめるかということは、実際問題として抽象的にきめようがないというふうに私たちは考えました。現に、その
最低賃金制
度が行なわれていない
企業
でも、
中小企業
が空前の倒産をしているという現状から考えても、支払い能力がないために
最低賃金
を
実施
するのが困難と目されるその
中小企業
を守るという
政策
は、単に
最低賃金
をきめる場合に、それを考慮に入れるなら倒産しないで済むが、それを考慮に入れなければ続々倒産していくということとは別個の問題として、もっと
中小企業
に対する
政府
の
政策
が——現状においても倒産に次ぐ倒産で、ある地方では
企業
の蒸発というのが流行語になっているような現状、こういう点は、やはり
中小企業
対策
は、そういう面からもっと力を入れていただきたいというふうに考えております。
加藤万吉
56
○
加藤
(万)
委員
そうしますと、
中小企業
に
近代化
政策
なり、あるいは
中小企業
の育成
政策
が行なわれれば、やはり公明党さんが言われている第三条、
生活
費を可能にする
条件
はわが国では存在する、そういうふうに見てよろしゅうございましょうか。
小平芳平
57
○
小平
参議院議員
先ほども、
委員
から指摘されておられましたように、国民総生産はすでに四十一兆をこえて世界第三位であるというだけの工業力を持ち生産力を持っておりながら、しかも
労働者
の
賃金
だけは低く押えられ、一人当たりの国民所得は二十何番目前後というような現状は、もっともっと十分に改善する余地があるというように考えまして、私たちとしても、類似
労働者
の
賃金
あるいは通常の
企業
の支払い能力を全く無視して、架空な
最低賃金制
をきめろという考えは毛頭ありませんが、しかしながら、
最低賃金法
の趣旨は、そういうような
企業
の支払い能力がいいか悪いかというところに趣旨があるのではなくて、
労働者
の
生活水準
の向上、
生活
可能な
最低賃金
がいま十分支払われていないという現状から見て、第一に必要なことは
労働者
の基準生計費の保障である、このように考えておる次第であります。
加藤万吉
58
○
加藤
(万)
委員
いまの御趣旨の限りにおいては、わが党が求めている
最低賃金
の額の決定方法とは相違がないというように実は判断いたしました。そこで、通常の
企業
の支払い能力とは一体どういう
条件
のことを言うのでしょうか。私は
最低賃金
の払えないような
企業
、逆に言うならば、通常の
企業
の支出能力——通常の
企業
といえば、
最低賃金
の支払われる
企業
というように私は
理解
しますが、この点はどうでしょうか。通常のという
意味
は一体どういう
意味
でしょうか。
村上茂利
59
○村上(茂)
政府
委員
法的な
意味
においてはまさに通常でございますから、社会通念に従いまして、そのときその
状態
における平均的な
状態
を考えるわけでございます。しかし、これはそのときどきに調査をいたしまして、当該
最低賃金
を決定する際の調査の際にこれもあわせ行なって判断するということになるわけでございます。年々
経済
情勢の
変化
によりまして具体的な標準というのは変わるわけでありますから、調査によって判断せざるを得ないということに相なろうかと存じます。
加藤万吉
60
○
加藤
(万)
委員
それでは第一の
原則
ですね。
労働者
の生計費、その次に類似の
労働者
の
賃金
をきめていって一定の額が出たとき、通常の
企業
の支払い能力がないことによってその
賃金
は下げられますか、下がりますか。
村上茂利
61
○村上(茂)
政府
委員
一つ
の基準としては、通常支払われる
賃金
という考え方が出てまいりますが、それは当該
最低賃金
をきめる際に関係する業種なり産業におきまして、どのような
賃金
が払われておるかということが、現実の問題として調査の対象になるわけでございます。したがいまして、それとの関連において
最低賃金
の額をきめる限りにおいては、支払われるかどうかという点についての疑念も解消するということになろうと思います。
加藤万吉
62
○
加藤
(万)
委員
そうすると、生計費、類似の
労働者
の
賃金
ですよ。これは払われておるわけですから、さらにそれによって決定された額が通常の
企業
の支払い能力によって減額されるというのは一体どういうことですか。そんなことはあり得ることではないじゃないですか。
村上茂利
63
○村上(茂)
政府
委員
法の定める
条件
としては、御指摘のように生計費とか、通常の
賃金
とか、支払い能力となっておりますが、それは個別的に孤立したものではなくて、要するにそれを総合して判断するというのが法の精神であろうと存じます。したがって、実際の
賃金額
を決定するにあたりましても、いろいろな消費者物価指数であるとか、あるいは家計費調査であるとか、そういうものを用いますし、それから
賃金額
については、いろいろな調査をしましてそれによる。それからまた、支払い能力の点につきましても、たとえば地域最賃でございますと、その地域における最近の産地の状況調査をするといったような調査をいたしまして、総合的に勘案して額をきめる、こういうことにいたしております。
加藤万吉
64
○
加藤
(万)
委員
だから、そういうことを判断する、そういうものが支払われる
企業
はいわゆる通常の
企業
でしょう。そういう周囲の
賃金
状況とか、あるいは地場の
賃金
相場とかいうのは、それは通常の
企業
の支払いでしょう。通常の
企業
が支払えるわけでしょう。だとするならば、それは通常の
企業
の支払い能力が問題じゃなくて、周囲の
労働者
の
賃金
環境が問題なんですよ。ですから、生計費と周囲における
労働者
の
賃金
、それによって
最低賃金
額をきめても、周囲の
労働者
の
賃金
の要素には、当然通常の
企業
の支払い能力というものが含まれているわけですから、そうすれば、わざわざ第三項の通常の
企業
の支払い能力というものを挿入する必要は何もないじゃないですか。
村上茂利
65
○村上(茂)
政府
委員
お説のような
状態
でございますと、
最低賃金
を若干高目にきめました場合に、それ以下のものがどれくらいの人数あるいは率であらわれるかという判断をいたしました際に、それが相当ひっかかるということになりますれば、個別
企業
にとっては
賃金
支払いは……
加藤万吉
66
○
加藤
(万)
委員
それはおかしいですよ。考えてみなさいよ。それ以下の人がないから——それ以下よりうんと下がる、いわゆる周囲の平均以下の人が多くあったら、この地域の
賃金
は、通常なる
企業
の支払い能力以上に払っているわけでしょう、通常の
企業
は。もしこの層が——ここにきめようと思ったけれども、この下の層が多かったというならば、ここの地域の
最低賃金
はこの下にきまるべきでしょう。きまるべきですよ、これが周囲の
賃金
の状況ですから。周囲の
労働者
の
賃金
の状況というのは、いわばそこの地域、あるいは業種なら業種のいわゆる平均的な要素になるわけです。どうしたって平均的な要素になりますよ。こっちの下が多くて、ここの上が少なくて、ここにきまったというようなことは、周囲の
労働者
の
賃金
を
一つ
の対象にする限りは、そんなことは起きませんよ。どうですか。
村上茂利
67
○村上(茂)
政府
委員
マクロ的な議論とミクロ的な議論があると思うのですが、額をきめまして、その
適用
を受ける
労働者
なり使用者の
範囲
がどれくらいに及ぶかという場合に、ある
企業
にとっては、その
最低賃金
額以下の
賃金
が支払われている
労働者
がかなり多いという場合に、引き上げた場合に、経営としてどのような影響を持つかということはやはり問題たり得るわけであります。しかしそのウエートが、
最低賃金
額をきめる際の最も重要な要件であるかどうかという点につきましては、そういう要素も考えて総合的に判断するのだというふうに冒頭に申し上げたとおりでございますので、そういう趣旨から判断すべきだと思います。
加藤万吉
68
○
加藤
(万)
委員
結局、局長、あなたの考えの中には、そこにおる
労働者
の平均的な
賃金
を
一つ
の基準にしてではなくて、そこにある
企業
の平均的な基準になるのですよ。たとえば五十人の
企業
が五つあって、五百人の
企業
が五つあったとしますと、この平均はそのまん中ですね。ところが片一方の
労働者
は二千五百人ですよ。片一方は五十人ですから二百五十人しかいないわけです。だから、
労働者
の平均ということですと、
企業
の平均的な支払い能力とは違うのですよ。あなたの考えは、
企業
の平均的な支払い能力を頭に置いているから、
労働者
の
賃金
を、その地域では平均的なところを押えようとしても、この
企業
がつぶれてしまいはしないか、そういうものが下に多くできる可能性があるわけです。
企業
の数としては多くできる可能性がありますよ。私は、このあと問題になります例の「大部分」の問題、十一条方式の拡張の場合に、大部分は一体
労働者
をとるのか、
企業
をとるのか、これは大問題になると思うのです。
最低賃金
をきめるときに、周囲の環境としては、その地域の
企業
の平均的な
賃金
をとったら、こちらの
賃金
は一万五千円、向こうは五万円、たとえば平均してみたら二万五千円だということになってしまう。ところが
労働者
の平均的
賃金
、五万円の
労働者
が二千五百人、一万五千円の
労働者
が二百五十人いるのとは違うのですよ。あなたの考え方でいくと、そういう発想になっていくから、あとの十一条のときにも
企業
の大部分がというようなことが入ってきてしまうわけです。これは十一条を扱う場合にもこの問題が非常に出てきますよ。どうですか。私は局長に聞きますけれども、
労働者
の数をもって平均的ないわゆる周囲の環境の
賃金
の基準としますか、いかがですか。
村上茂利
69
○村上(茂)
政府
委員
私が申し上げておりましたのは、
最低賃金
額の決定のときの問題であったわけですが、それが十一条まで展開されましたので、
観点
をどこに合わせますか問題でございますが、平均的な問題と、それから現実にその地域内に分布しておる各
企業
なり
労働者
の
賃金
分布というものがどういうものであるかということをつかまざるを得ない、
最低賃金
額をきめまして拘束力を持たして従わせるという場合に、引き上げて直さなければいけない
企業
なり
労働者
がどのように分布しておるかということで判断せざるを得ない、その際に
企業
の支払い能力という考え方が生きてきはしないかということを申し上げておるのでありまして、それを最重点に考えるという思想ではございません。したがいまして、十六条方式の運営にあたりまして、
労働
組合と使用者が同列に扱われておるその考え方は、そのような、先ほど申しましたことと関連して扱われているのではないかという点については、私は必ずしもそうは思っていないわけでございます。
加藤万吉
70
○
加藤
(万)
委員
それでは、
大臣
にお聞きします。いわゆる生計費、それから周囲の
労働者
の
賃金
、これが私は主だと思うのですよ。そうして
企業
の支払い能力というものは、通常の
企業
の支払い能力ですから、当然第二項に実は含まれておる、通常の
企業
の支払っている
賃金
が、その周囲の
労働者
の
賃金
のいわゆる平均
賃金
になるというのですから、標準
賃金
になるわけですからこれが含まれている、こういうふうに私は
理解
する。したがって、第一、第二が主であって、もしかりに認めるとしても、第三の要素は従である。いま局長は、これは三つのことをまとめて平均的に見る、こういう答弁ですけれども、私の言うのはそうじゃなくて、これとこれとが主で、公明党さんも答弁がありましたように、生計費あるいは文化
生活
を営む
条件
、あるいは周囲の
労働者
の環境、あるいは
賃金
、そういうものが主であって、そしてそれが遂行できるかできないかは次の
角度
として
企業
の支払い能力の問題を見ていくべきである、こういうふうに私は
理解
し、この
法案
の三条についてもそういうふうに
理解
しておりますが、もし間違いであったらひとつ指摘をしていただきたいと思います。それでよろしゅうございましょうか。
小川平二
71
○小川国務
大臣
これはこの三つの指標のうちのどれに重点を置くべきかという問題ではなくて、そのときどきの状況に従いまして総合的に判断すべきであると考えております。
加藤万吉
72
○
加藤
(万)
委員
大臣
、ILO条約は、それを総合的に見ろとはいっていないのですよ。たまたま
大臣
が先ほど
説明
されたことは、生計費と周囲の一般
労働
協約、その拡張
適用
と
賃金
、そしてもしそれがなかった場合には周囲の
労働者
の
賃金
状況、そしてそれを判断する従的な問題として、先ほど来
大臣
が答弁されたことを実は
規定
しておるのですよ。ですから
大臣
が、それは同じですと、こう言われたのでは、これは
最低賃金
額の決定の
基礎
ですからたいへんなことになってしまうわけです。
小川平二
73
○小川国務
大臣
ILO条約というおことばですけれども、先ほどお耳に入れました条約勧告
適用
専門家
委員会
の報告におきましても、「最もしばしば見出される基準は」として、最初に「定められた
賃金
率を支払う
企業
の能力」、これを一番先に出しておるわけであります。これは必ずしも順位を付しておるわけではなかろうと思います。これと並んで「一般的な
経済
状態
」とか、「類似の職業において支払われる
賃金
率」云々と、こう書いてあります。ILOそのものは、どの基準に最も重点を置かなければならないというような考え方をとっておるわけではないと存じます。
加藤万吉
74
○
加藤
(万)
委員
理事
間の話があるそうですから、ここで少し
休憩
いたします。
八田貞義
75
○
八田委員長
この際、午後一時まで
休憩
いたします。 午後零時十分
休憩
————◇————— 午後一時十二分
開議
八田貞義
76
○
八田委員長
休憩
前に引き続き
会議
を開きます。 質疑を続けます。
加藤万吉
君。
加藤万吉
77
○
加藤
(万)
委員
先ほど、最
賃法
第三条について、特に「生計費」、「類似の
労働者
の
賃金
」、そして「通常の事業の
賃金
支払能力を考慮して」という問題について、いろいろな
角度
から質問をしました。おそらく
大臣
はお聞きの過程でおわかりになったと思いますが、「通常の事業の
賃金
支払能力」ということを入れる必要が主観的にも客観的にもないと私は思いますので、本文は、本来的にこの第三条から削除すべきが至当だろうというふうに思います。 そこで、さらに各条について御質問を申し上げます。 まず
最低賃金法
の十一条、すなわち、
労働
協約に基づく
最低賃金
の決定について、幾点かを御質問申し上げたいというふうに思いますが、この十一条は、私は実はこういうふうに考えるのであります。フランスにおける
最低賃金制
の発展の
経過
、あるいはヨーロッパの先進的な諸国はそうでありますが、労使間のいわば協約化された
賃金
が、地域別であれ産業別であれ、その
賃金
を主体にして
最低賃金制
という土壌ができたことは、
大臣
も御案内のとおりであります。わが国においては、先ほども御指摘になりましたように、いわゆる労使間協定によって
最低賃金
が定められるというのは、二つの
問題点
から非常に困難な
条件
があるわけです。
一つ
は
日本
の
労働
運動がきわめて浅いということであります。それから第二の
条件
は、いわゆる
中小企業
が
中小企業
自体の分野を持っていない、たとえば大
企業
の系列であるとか下請であるとかという関係、さらに
中小企業
がきわめて零細化をしているという関係で、そこに
労働
組合が組織でき得ない。したがって、そういう
条件
が十一条による
最低賃金
額を策定することを非常に困難にしているわけですが、私は、本来
日本
の
最低賃金
は十一条方式によってあるべきだという考え方を、実は持っているわけです。
全国
一律の
最低賃金制
は、
日本
の低
賃金
構造
をなくすという側面と、いま
一つ
の側面は、いわゆる産業別なり地域別なりによって、労使間協定による一般拡張
適用
、こういう形にその二つが相まって、
日本
のいわゆる
最低賃金制
による低
賃金
構造
の改革という面が行なわれるのが本来的な
あり方
だということを、私は思っているわけです。これは前段に私が
大臣
に質問を申し上げたとおりであります。 そこで、そういう
角度
から問題をながめてまいりますと、この十一条の中に「同種の
労働者
及びこれを使用する使用者の大部分が
賃金
の
最低
額に関する定を含む」云々とあります。いわゆる「使用する使用者の大部分」という定義は、
最低賃金制
をつくる場合、一般拡張
適用
する場合に、きわめて問題になるところであります。そこで私は、本法と同一的な要素、要件を持っております
労働
組合法の第十八条、すなわち地域的な一般的拘束力との関係を見まして、おそらく十一条は、労組法十八条のさらに
最低賃金
をきめるための拡張的法則であるというふうに
理解
をしておりますがゆえに、十八条は「使用者の大部分」が含まれていないにかかわらず、十一条で「使用者の大部分」という問題が含まれている、この
変化
は一体どういう関係で生まれてきたかということを、ひとつお聞きしたいと思います。
小川平二
78
○小川国務
大臣
労働
協約を拡張
適用
する方式が望ましいという御趣旨の御質問が冒頭にございまして、これに対しては、先刻御答弁を申し上げたとおり、一言にして申しますれば、おことばにございますとおり、この方式がなおわが国の土壌に適しておらない。その
理由
は、これまたおことばにございましたように、
一つ
は
労働
組合運動の歴史が浅いということと、もう
一つ
は、要するに
日本
の
経済
の後進性ということに帰着するということでございましょう。しかし、その考え方そのものを決して否定しておるわけでもないことは、これまた先ほど申し上げたとおりでございます。 そこで、ただいまの御質問は、この最
賃法
十一条の方式による最賃の問題であったと存じますが、これを
労働
組合法十八条によって
労働
協約を拡張
適用
していく場合と対比しての御論議であったと存じます。これは一方では罰則をもって使用者を義務づけるという問題でありまするし、
労働
組合法十八条のほうは、かりにこれに違反しました場合にも民事法的な問題にとどまるわけでございましょうから、これを直接に対比して議論をすることが必ずしも適切であるかどうか。同じでなければならないという
理由
は必ずしもないのではなかろうかと考えております。おりますが、今日までこの十一条方式による最
賃法
の
適用
が非常に少ないということは、確かにただいま御指摘のあった点にも関連があると存じます。この要件、しぼり方があまりきつ過ぎるという点にも若干の関連があるのではなかろうかという感じを、私もまた抱いておるわけでございます。この点につきましては、ただいま御審議を願っておる
審議会
で特にひとつ御検討願って、改善の余地があれば改善をすべき問題ではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
加藤万吉
79
○
加藤
(万)
委員
いま
大臣
が言われたように、本問題については、もう山手
労働大臣
のときに、その諮問の趣旨に関して発言を行なっておるわけですね。「
現行
最
賃法
第十一条の
労働
協約に基づく地域的
最低賃金
は、これまでの運用の結果から見て、その決定の要件が制限的に過ぎるのではないか」、こう実は言われておるわけであります。そうしますと、山手
大臣
の発言は四十一年ですね。
大臣
は四十一年から今日まで、四十二年の答申を受けて法を
改正
するまでの二
年間
、実は同じことを言われているわけです。現
大臣
も山手
大臣
も実は同じことを言われているわけです。私はこの文は、これはだれが見てもおかしいことなんで、当時もう
大臣
が指摘をしておるわけですから、本法の
改正
にあたっては、この部分は少なくとも削除されていかなければいけない問題だろうと思うのです。特に私は、
業者間協定
による延長という形に今度
審議会
が見られないためにも、いわゆる十六条方式による形が従来の
業者間協定
の延長ではないということを区切りをつける
意味
でも、十一条のこの部分をなくして、十一条方式による一般拡張による地域別的な
最低賃金
を一方では拡大をしていく、そういう姿に、正しい方向に法文は
改正
をされてしかるべきではなかったかと私は思うのですが、いかがでしょう。
小川平二
80
○小川国務
大臣
確かに
一つ
の
問題点
であると考えておりますことは、ただいま申し上げたとおりでございますが、山手
労働大臣
が
審議会
に諮問をいたしますに際して、特にこの点に触れておるわけでございます。「その決定の要件が制限的に過ぎるのではないか等」云々と書いて、「検討を要すると思われる問題もあります」ので特に
審議会
の御検討をわずらわしたい、という趣旨で諮問をいたしておりますので、私どもといたしましては、審議の結果答申がなされた上で
改正
に着手するということであるならば着手しよう、こういう考え方をとっております。
加藤万吉
81
○
加藤
(万)
委員
私は抜本
改正
まで待つ必要は全然ないと思うのです。いわゆる現
段階
における
改正
の時点でも——そこが問題だということは、当時の
大臣
も指摘され、現
大臣
も指摘されておるわけですから、だとするならば、本
改正
について、いわゆる諮問事項でなければ——この面については特別に諮問しているのですから、中賃のほうはどういう見解とどういう答申をいただけるでしょうかという、いわば、催促と言ってはおかしいですけれども、そういう
態度
であってしかるべきではなかったかと思うのです。それが今回の場合にはないわけですね。ですから、どうしても法全体の体系、
改正
案の体系から見ますと、
業者問協定
の延長として
審議会方式
だけが、いわゆる九条、十条がなくなって
審議会方式
だけがとられたということであって、
審議会方式
をとるということは労使間の平等の場をつくったということなんですから、だとすれば、十一条の一般拡張の
適用
による地域的な拡張を労使間の協定
賃金
として拡大をするという方向に
労働
行政の指導標があってよかったと思うのです。いかがでしょう。
村上茂利
82
○村上(茂)
政府
委員
内容
が技術的な問題もございますので、私から御答弁申し上げますが、
現行
法の十一条があまりにも制限的でありまして、いろいろの問題があるということは御指摘があったとおりでございますが、これを技術的に見ますと
幾つ
かの
内容
があるわけでございます。
一つ
には、御指摘のような「使用者の大部分が」と、「大部分」という使用者に関する
条件
が入っております。それからまた、改定などをいたしました場合に「全部の合意による申請」がある。その「合意」を、たとえば判をとりまして確認するとか、こういう手続がございます。それからまた、
改正
をします際に、経営者側ないしは
労働
組合側に組織変更がございましたときに、従来の関係労使をどのように解するかという問題があるわけでございます。 そこで、十一条については問題があるということは、ほぼ労使双方共通した認識であると申して差しつかえないと思いますが、具体的に、たとえば改定をする前に組織変更がございまして、従来の当事者を
改正
する場合にどのように扱うかなど、いろいろ技術的に固める必要がある問題がございます。そういった問題もございますので、現に中央
最低賃金
審議会
におきましては、
基本
的な検討項目の中に取り入れまして、鋭意検討を進めておるような次第でございます。気持ちといたしましては、できるだけ早く答申をいただけるように期待いたしておりますが、何ぶんにもそういった問題につきましてまだ結論を得てない、いろいろ御意見が戦わされておる、こういう
段階
でございますので、御了承をいただきたいと思います。
加藤万吉
83
○
加藤
(万)
委員
経過
についてはわかります。 そこで
大臣
に、これはまたあらためてお聞きしますが、結局いまの局長の話ですと、いわゆる労組法十八条による一般拡張
適用
、それと十一条の一般拡張に対しては、労使間にそれほどの意見の相違がないということです。労組法上
規定
している一般拡張の
適用
のいわゆる「使用者の大部分」という問題ですね。これについては、最
賃法
の十一条についてもそれほど労使間に異論がないとなりますと、先ほど
大臣
が答弁されておりますように、労組法では民事上の制限があるだけであるが、最
賃法
ではいわゆる罰則上の問題があるから、そういうたてまえからいって使用者の同意を求める部分を拡大するのだという理論的根拠は薄いわけです。いわゆる法の
規定
する罰則、民事という、そういう
観点
から見ると十八条と十一条とは違いがあるのだというのではなくて、十一条、十八条はその趣旨においては大体同一だ、しかもその同一の趣旨は労使間が認めているのだ、こうなりますと、問題は
改正
の時期をいつにするかという問題だけであって、民事上あるいは罰則上起きる課題ではないのでありますが、
大臣
、どうでしょう。
小川平二
84
○小川国務
大臣
罰則を伴うかいなかという点に関連をして、私が先ほど申し上げましたことは、一応そういうことも言えるのではなかろうかという
意味
で申し上げたので、これは決定的な問題だとは必ずしも考えておらないわけでございます。また、この点に問題があるという点について、労使その他関係者の考え方、方向としてはほぼ一致しておるということも、ただいま局長からお耳に入れたとおりでございます。ただ、特にこの点を指摘して御審議をお願いした経緯もございますし、
内容
的には技術的にいろいろ問題があって、現に研究を続けていただいておる、こういうことでございますから、答申がなされるに先立ってこれの
改正
を企てるということは遠慮しなければならない、かように考えております。
加藤万吉
85
○
加藤
(万)
委員
これは
基準局長
にお伺いをしますが、かつて、たとえば滋賀の亜炭、それから高知の石炭、あるいは秋田の木材、北海道の木造船、こういうところで十八条に基づく一般拡張
適用
がありましたね。私は、あの運動、あの協定下の労使間の
あり方
は、
日本
のこれからの
中小企業
におけるいわば労使間の平和的土壌といいましょうか、そういうものをつくるいい慣行だというふうに実は
理解
しておったわけです。そしてあの行為が、たとえばその中には
賃金
部門もありますし、ときには愛媛のように、愛媛のあれは新居浜の金属機械でしょうか、あの場合には
労働
協約的要素も持っておりましたけれども、いずれにしてもああいう形で運動が進められ、労使間が安定していくということが、
日本
の
中小企業
の
近代化
運動のためには非常によろしい、そういうふうに私は考えておったわけです。ところが今度十一条にそれがやや吸収されたわけですね。吸収されたというのは、少なくとも
賃金
部分については十一条方式が優先的になりますから、一般的
労働
協約の面よりも——
労働
協約の中で
賃金
の部面が非常に多いのですから、その部面が吸収されて十一条に行った結果、一般拡張
適用
がきわめて少なくなった。この資料にもありますように、総人員が十六万人ですか、地域的のやつは。業態で六業態ですか。きわめて少ないですね。一体この
変化
を
基準局長
はどういうふうにお考えになりますか。特に私は、前段の十八条の拡張
適用
によって起きた
労働者
数と、その後十一条によって起きた
労働者
数あるいは協約締結の数字、これが少ないと思うのです。すなわち、そういう断層はどこから起きたと いうふうにお考えになりますか。
村上茂利
86
○村上(茂)
政府
委員
御指摘のように、
労働
組合法第十八条によります
労働
協約の地域的拡張の例は、従来も五件ほどございましたが、そういう形で
最低賃金
が普及されるということは、これは諸外国の例に徴しましても、姿としては望ましいことであるわけでありますが、
現行
最
賃法
の十一条の具体的な運用を見ますると、現在まで七つ奈良県の例がございますが、何ぶんにも法定
条件
がかなり厳格でございますから、当初期待いたしましたような
増加
を見ておらないわけでございます。これには、
労働
協約の拡張
適用
をなし得るような土壌と申しますか、
基礎
条件
がさらに成熟することを私どもは期待いたしたいのでありますが、一方におきましては、この法定
条件
が厳格に過ぎやしないかという点にもあるわけであります。 そこでこの問題は、過去の経験に徴しまして、是正すべきは是正する必要があろうと私どもも思いますが、ただ
労働
組合法第十八条と全く同じでいいかどうかという点になりますと、
労働
組合法十八条のほうは、たとえば修正権を
委員会
に認めておる。それから先ほど
大臣
が申しましたように、最
賃法
の十一条のほうは罰則の
適用
がある。そういった異なる点があるわけでございます。そういうものを同じ
条件
にするか、あるいは依然として罰則の
適用
というものを考えつつニュアンスを異にする性格にするか、ここらは議論のあるところでございまして、問題があるということを意識いたしておりますが、しからばどういう形にしたらよいかという点については、なお論議を進めなければならない、このように考えておる次第でございます。
加藤万吉
87
○
加藤
(万)
委員
私の言うのは、十八条そのまま持ってこいなんということを言っているのではない。いわゆる考え方としては、そういう
あり方
が正しいと思われるならば、この際私は、使用者の大部分であるとか、協約締結者の使用者あるいは
労働
組合の全部の合意であるとかという問題は、法律上の文章は削除されるのが至当ではないかと思われるのです。
労働
組合法十八条で五つができ、私の手元の資料では、十一条では六つ、十六万人しかありませんけれども、この片方の
業者問協定
の普及率があれだけ高くて、片方が件数では六件しかないなんというのは、やはり災いしているのは「使用者の大部分」の問題だろうと思うのです。たとえば、この間局長にもお願いしましたけれども、兵庫県の尼崎の塗料の場合を見ても明らかですね。業態としては大中
企業
を含めて五つ、それから小で四つ、人員は片方が約二千名以上ですね。いわゆる十一条の一般
適用
を受けようというのは二千名以上です。ところが片方は八十人しかいないのですよ。ところが、使用者の区分で見ると、片方が五つで片方が四つですから、これは「使用者の大部分」にならないわけです。その結果、申請をしましても、「使用者の大部分が」ということにひっかかって、事実上十一条の
適用
ができない。そこで私は、先ほども論議しましたように、
労働者
の大部分でとらえるのか、あるいは
企業
の大部分でとらえるのかどうか、この十一条の場合がきわめて重要な要素になってくるのですから、そういう事実からいっても、十一条
適用
労働者
がここで一番望ましいといいながら、十一条による一般拡張
適用
が少ないということで、いまの部面がきわめて大きな災いをしているのではなかろうか。したがって、今後の方式が十一条、十六条方式でいくとすれば、十一条部門を相当拡大をするということが一方では考えられていかなくてはいけない。一方では
中小企業
の助成策もあるでしょう。あるいは
近代化
政策
もあるでしょう。しかし、十一条を相当の部分
日本
の
労働
運動の中に誘導的に持っていかなければならないという
労働
行政があるとするならば、少なくとも十一条の「使用者の大部分」であるとか「全部の合意」であるとかいう
法案
の文体は除かれるのが至当ではないかというように私は思うのですが、いま一ぺん、検討中というのではなくて、はっきりした結論をお下し願いたい、こう思います。
村上茂利
88
○村上(茂)
政府
委員
現行
法は「大部分の使用者」、こうなっておるわけでありますが、その「大部分」が四分の三という考え方をわれわれとっておりますが、それがいいのかどうか。かりに法を直ちに
改正
できないとしましても、運用上これをどう考えたらいいのかという問題があり得るわけでございます。私どもは、この運用につきまして、たとえば御指摘の尼崎の塗料製造業の
最低賃金
などの例を見ましても、
労働者
の率から見ますと八〇%が
適用
を受けておる、使用者のほうが五六%である、こういう形になっておりますものをどういうふうに考えたらよいのか、当面現実に問題が出てきておるわけであります。こういった問題につきまして、何らか運用面において考えられないか。いま検討いたしておるわけでありますが、ただ何ぶんにも中央
最低賃金
審議会
で検討しておるといういきさつもございますので、最終的な判断は
審議会
の結論にまたなければなりませんが、何らか運用上緩和の方法はないかといったような点について、目下検討いたしておる次第でございます。
加藤万吉
89
○
加藤
(万)
委員
この論争はこれ以上やりませんが、
大臣
お聞きのように、第三条のときにも、実は私は使用者の事業場の数を問題にしたわけです。ここでも使用者の大部分という問題を実は提起したわけです。このことが、実は最
賃法
全体を通して、いわゆる業者、資本、その
立場
を擁護した法律ではないかという
労働者側
の疑心暗鬼の目で見られている。したがって、いま局長のほうから、運用上配慮する点があればやるというお答えでありますから、この面は十分省内で検討していただいて、いわゆる
労働者
の大部分によってすべてが成立をしていく、そういう方向にぜひとも御検討願いたいと思います。 問題の
中心
であります
審議会
を
中心
とする十六条について、
幾つ
かお尋ねをしてみたいと思います。 いま、十六条方式に基づいて実際に
実施
されている業態あるいは件数は、何件ありましょうか。
渡辺健二
90
○
渡辺
説明
員 件数で申しますと、ただいま三十件でございます。
加藤万吉
91
○
加藤
(万)
委員
これには十六件しかないが…。
渡辺健二
92
○
渡辺
説明
員 三月末で三十件でございます。今年に入りましてから、かなりまた新しく十六条方式に基づきます
最低賃金
の決定がなされております。
加藤万吉
93
○
加藤
(万)
委員
これは十二月三十一日ですよ。三カ月の間に十四ふえたのですか。どういう業態ですか。
村上茂利
94
○村上(茂)
政府
委員
十四件は、四十三年に入りましてできたものでございまして、どういう業態かと言われますと、ちょっとお答えしづらいのでございますけれども、昨年、明けて一昨年でございますが、四十一年六月に千葉で初めて十六条方式の
最低賃金
が設定されたわけでございますが、その後山口、滋賀北海道等に四十一年中に十六条方式の最賃が設定されたわけです。当初、いわゆる十六条方式は職権決定方式で、これによってはたして実際に即した適切な最賃設定が可能であるかどうか、いろいろな見方もあったわけでございます。運用いたしてみますると、この後四十二年中に、かなりの件数、約十件ほどが設定された、そうして、本年に入りましてまだ三カ月しかたたぬのですけれども、十四件が設定された、こういうことになっておりますが、この
理由
は、
一つ
には、十六条が発動する要件として、
業者間協定
方式の
最低賃金
が設定された、しかしなおかつ「困難又は不適当と認める」という、十六条で定めております
条件
が満たされる例がかなりふえてきた。こういう状況にかんがみまして、十六条方式がだんだん設定されまして、かなりスピードがついてきたというのが
実情
でございます。 〔発言する者あり〕
八田貞義
95
○
八田委員長
静粛に願います。
村上茂利
96
○村上(茂)
政府
委員
したがいまして、十六条方式による運用の客観情勢がだんだん熟してきた、かように考えてよろしいかと存じます。
加藤万吉
97
○
加藤
(万)
委員
十六条の代表的な例は炭鉱ですね。それから全鉱、化繊にあるわけです。いま金属鉱山のもの、その状況はどうなっておりますか。
村上茂利
98
○村上(茂)
政府
委員
金属鉱業の
最低賃金
につきましては、目下中央
最低賃金
審議会
で
改正
の諮問をいたして、いま検討中でございます。 〔発言する者多し〕
八田貞義
99
○
八田委員長
静粛に願います。 〔「議事進行」と呼び、その他発言する者多し〕
村上茂利
100
○村上(茂)
政府
委員
十六条方式につきましては、ただいま御答弁申し上げたとおりでございますが、要するに
現行
最
賃法
十六条は、一定の事業、職業または地域について、
賃金
の低廉な
労働者
の
労働条件
の改善をはかるため必要があると認める場合において、第九条第一項、第十条、第十一条などの
規定
によって
最低賃金
を決定することが「困難又は不適当」だという場合に初めて発動できるものでございますので、十六条が発動されますために、九条方式、十条、十一条方式がある程度つくられて、そうして「困難又は不適当」という判断が必要であったわけでございます。そこで
業者間協定
の普及に伴いまして「困難又は不適当」というふうに判断できる
条件
が整ってきた、その
条件
も見のがすことのできない
一つ
の大きな
基本
的な問題だろうと思います。
加藤万吉
101
○
加藤
(万)
委員
いまの私が言ったのは、そこを聞いているのじゃなくて、九条、十条がここで削除されるわけですね。削除されて、いわゆる
賃金
審議会方式
によってすべてが行なわれるようになるわけですね。その際に、従来の十六条によって
適用
されている件数が、一体有効な機能を果たしたか果たさないかが、これから
審議会
を
中心
とする討論の中で非常に重要になってくるわけです。そこで、
一つ
の例を言えば、炭鉱の場合でも、全鉱の場合でも、あるいは繊維の場合でも、十六条方式が実効的な価値があったのだろうかということが問題になるわけです。そこで私は、たとえば石炭の場合、炭鉱の場合には、この十六条による決定がおりたあと、一体炭鉱
労働者
は、これで事実上
最低
限を引き上げられるものが、たとえば全産業の中の一〇%なり一五%あったものだろうか。あるいは金属鉱山の場合に、その人員があって
最低賃金
額が上がったものだろうかどうだろうか、こうお聞きしているわけです。
村上茂利
102
○村上(茂)
政府
委員
十六条方式によりますところの
最低賃金
の実効性の問題ですが、これは新しく設定されたときと、その後数年を
経過
したときと、それかどのような実効性を持つかという二つの問題があるわけです。十六条方式で
最低賃金
が設定されましたときには、その影響率というものは、それ以下の
労働者
がどの程度引き上げられるかという点は十分調査して設定いたしますので、これが有効な機能を持つことは当然でございますが、その後
賃金
上昇との関連において具体的に機能しなくなるのではないかという御懸念があろうかと思います。これはいかに有効適切にその改定を行なうかということにかかっておるわけでありまして、そういう点を考慮して運用の結果を判断しなければならぬと考えております。
加藤万吉
103
○
加藤
(万)
委員
問題は発議権ですよ。 〔発言する者多し〕
八田貞義
104
○
八田委員長
静粛に願います。速記がとれませんから、静粛に願います。
加藤万吉
105
○
加藤
(万)
委員
実効性があったかどうかということが、いま
基準局長
の発言でも、その次の賃上げの
段階
で
賃金
が引き上げられてくれば、実効性があらわれない部面があったわけですね。特に全鉱の場合なんか、今日改定要求をしていますけれども、この改定要求がもしも二年後あるいは十年後に起きた場合に、現実に起きている
賃金
引き上げによって、この実効性が失われてくる場合が非常に多いわけです。今度の十六条は、御承知のように、
労働大臣
と
基準局長
、発議権が、そこしかないわけです。だとするならば、十六条方式によってやるにしても、
労働大臣
と都道府県
基準局長
がどの地点でどの時期に行なうかによって、実効性が何もないという結果が生まれるわけですよ。したがって私どもは、十六条方式の中で、発議権という問題は
労働大臣
に限るべきではない、
基準局長
だけに限るべきではない、むしろ発議権というものは、法人格である
労働
組合あるいは
労働者側
委員
にもそういう方向がとられてしかるべきではないか、でなければ、
審議会
の構成が平等で進むというILOの三十号勧告に対しても抵触するのではないか、こう言っているのですが、この点はどうですか。
村上茂利
106
○村上(茂)
政府
委員
石炭、金属鉱業にいたしましても、現にあります
最低賃金
の決定の経験から申しましても、それぞれ
労働
組合なり関係者がいろいろ御意見を
提出
されまして、それを受けて
審議会
で審議をした、こういう経験から見まして、法的にはいわゆる申し立て権というものは明らかに定めておりませんけれども、過去にそういう経験を積んでおります。したがいまして、法律上の形式は、
労働大臣
または都道府県
労働基準局
長が諮問する、こうなっておりますけれども、十分労使の意見を伺いまして、その希望を反映する取り
扱い
を過去においてなしてきたのでありますし、今後におきましても、法の運用にあたりましては、労使の御意向を一そう反映するようにつとめてまいりたい、かように考えております。
加藤万吉
107
○
加藤
(万)
委員
問題は実効性があるかどうかですよ。
労働
組合が問題の提起をしましたけれども、問題はその影響率が実際に反映されているかどうかです。 〔発言する者多し〕
八田貞義
108
○
八田委員長
静粛に願います。
加藤万吉
109
○
加藤
(万)
委員
たとえば炭鉱の場合に、
労働者側
の要求は、下請組夫についてもその
影響力
を拡大しろ、こう言っておるわけでしょう。ところが実際に下請は、掘進もやっておるところは削除される。あるいは下請関係は削除されておる。実際に石炭の十六条方式による
最低賃金
の影響率はゼロにひとしかったと言ってもいいのじゃないですか。問題は、労使間の意見を聞いたけれどもその実効性があらわれないところに、私どもは建議権に対して疑義を持っているわけですよ。したがって私の言いたいのは、十六条方式を
中心
とする場合には、
労働大臣
、
基準局長
発議権もさることながら、同時に
労働
組合が発議をし……。 〔「
委員長
、議事進行」と呼び、その他発言する者多し〕
八田貞義
110
○
八田委員長
速記にとれないから、静粛に願います。
加藤万吉
111
○
加藤
(万)
委員
これが
審議会
の場で、その方向というものがILO条約から見てもあってしかるべきじゃないかというのが、私の質問の
内容
なんです。これは
大臣
に答弁してもらいたい。
小川平二
112
○小川国務
大臣
審議会
に調査、審議を求めますのは行政官庁でございますが、従来とも、その権限の行使に際しましては、労使双方の要求、主張に十分耳を傾けてきておるわけでございます。また
審議会
はこの
最低賃金
の改善等について建議を行なうこともできるわけでございます。建議が行なわれました際には、
政府
として当然これを尊重しなければならないこと、これも申すまでもないことでございます。また、ILOは労使対等参加の
原則
を定めておりますけれども、十六条方式はこの
原則
に背反するものだとは考えておらないわけでございます。 〔「質疑終了」と呼び、その他発言する者多し〕
加藤万吉
113
○
加藤
(万)
委員
私は、いまのような、現在まで行なわれてきた十六条の
適用
の事例ですね、それを見ても、実効性があり、あるいは影響率が高ければ、問題は相当前進的に見ることはできるのです。ところが、もしもその実効性が非常に低いという場合には、
労働大臣
とか
基準局長
の職権による
賃金
の抑制策に結果的にはなってしまうのではないか。結果的にはまたなっているのじゃないか。したがって、そういう疑問を持っている
労働者側
に、十六条方式が今後
中心
になってやっていきますよという、その確信を得させる
条件
というものを
幾つ
か整備をしなくてはいけないのではないか、こういうように思うのです。 そこで、これは質問をいたしますが、本法の二十七条に、
労働者側
の建議の問題があるわけです。ところが、この二十七条の建議権は、いわゆる
提案権
ではないわけです。いわばいままであった
業者間協定
の決定に対していろいろ建議をする、あるいは
業者間協定
に対しても
労働者側
の不利益な部面を進言する、こういう
意味
の権限であって、法人格を持つ産業別
労働
組合あるいは地域の一般協定によってできている
労働
組合が建議をするという趣旨とは、二十七条は違うわけですね。したがって、
審議会
の正常なる運営をはかるためにも、二十七条の権限をより拡大あるいは
改正
を提起をすべきではないかというのが私の見解ですが、これは
大臣
でも
基準局長
でもいいから御答弁願います。 〔「質問が長過ぎる」「まじめな質問をしているのに何だ」と呼び、その他発言する者多し〕
八田貞義
114
○
八田委員長
この際、暫時
休憩
いたします。 午後一時五十七分
休憩
————◇————— 〔
休憩
後は
会議
を開くに至らなかった〕