運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-23 第58回国会 衆議院 社会労働委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前九時四十七分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 小沢 辰男君 理事 佐々木義武君    理事 田川 誠一君 理事 橋本龍太郎君    理事 藤本 孝雄君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君       大坪 保雄君    海部 俊樹君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       竹内 黎一君    増岡 博之君      三ッ林弥太郎君    箕輪  登君       渡辺  肇君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    内藤 良平君       西風  勲君    平等 文成君       八木 一男君    山田 耻目君       山本 政弘君    本島百合子君       和田 耕作君    伏木 和雄君       關谷 勝利君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         総理府人事局長 栗山 廉平君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         通商産業省化学         工業局長      吉光  久君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         郵政政務次官  高橋清一郎君         郵政省人事局長 山本  博君         労働政務次官  井村 重雄君         労働大臣官房長 石黒 拓爾君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         議     員 西風  勲君         議     員 島本 虎三君         議     員 田邊  誠君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         労働省基準局賃         金部長     渡辺 健二君         建設省計画局建         設課長     高橋  明君         日本専売公社総         務理事     山口 龍夫君         日本専売公社職         員部長     池田  博君         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道常         務理事     井上 邦之君         日本電信電話公         社副総裁    秋草 篤二君         日本電信電話公         社総務理事   井田 勝造君         日本電信電話公         社職員局長   山本 正司君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 四月二十二日  委員島本虎三辞任につき、その補欠として石  橋政嗣君議長指名委員に選任された。 同日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として島  本虎三君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員八木昇辞任につき、その補欠として内藤  良平君が議長指名委員に選任された。 同日  委員内藤良平辞任につき、その補欠として八  木昇君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十九日  港湾労働法の一部を改正する法律案島本虎三  君外十一名提出衆法第二六号)  身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案  (田邊誠君外十一名提出衆法第二七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案  (田邊誠君外十一名提出衆法第二七号)  港湾労働法の一部を改正する法律案島本虎三  君外十一名提出衆法第二六号)  最低賃金法の一部を改正する法律案内閣提出  第二号)  最低賃金法案河野正君外九名提出衆法第一  号)  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  田邊誠君外十一名提出身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  3. 八田貞義

    八田委員長 提案理由説明を聴取いたします。西風勲君。
  4. 西風勲

    西風議員 身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  私は提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由内容を御説明申し上げます。  憲法第二十七条は、すべて国民は勤労権利を有し義務を負うと定め、身体障害者といえどもその能力に応じて勤労する権利義務を負い、かつ同時に憲法第二十五条に定められた健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有することは、いまさら言うまでもないところであります。  現在、わが国における身体障害者の総数は、政府調査によりますと昭和四十年八月で約百十六万といわれ、そのうち十八歳以上のいわゆる労働力人口に該当するものの数は、およそ百十四万以上に達し、昭和三十五年に比較いたしますと、この五年間で実に三十四万人以上の増加を示しているのであります。さらに近年、先進外国におきましては身体障害者範囲に含まれておりまする精神薄弱者の数は二百八十万と推定され、そのうち労働力人口に当たる数は百八十五万の多きにのぼっているのであります。  しかるに、昭和三十五年に身体障害者雇用促進法が制定されて以来、職業紹介の充実並びに職業訓練強化等により、これら身体障害者雇用促進に一応の施策が講ぜられたとはいうものの、一般労働市場における人手不足にもかかわらず、身体障害者雇用の伸びはきわめて低率にとどまっている実情であります。すなわち昭和四十一年に政府調査したところによりますと、身体障害者雇用率官公庁においては一・五%、民間事業所におきましては一・一%のそれぞれ雇用義務が定められ、これにより官公庁では約三万六千名、民間事業所では約七万五千名が雇用され、全体としてはほぼ法定雇用率に達しているのでありますが、定められている雇用率が諸外国に比較して著しく低いため、一向に目立った改善が見られたいのであります。いわんや精神薄弱者につきましては、国の施策不足と相まって、全くといっていいほどその雇用の機会が与えられないまま放置されているのが実情であります。  すでに諸外国におきましては、イギリス身体障害者雇用法、西ドイツの身体障害者雇用法、オーストリアの身体障害者雇用法をはじめ二十カ国以上が身体障害者のための雇用立法を制定し、積極的にその雇用促進につとめているのでありますが、高いところでは一〇%から三〇%にのぼる雇用率が法的に義務づけられ厳格に実施されているのであります。これらを見るまでもなく、わが国身体障害者雇用率はきわめて低く、諸外国に比べて著しく立ちおくれているといわなければなりません。しかも近年における身体障害者増大にかんがみ、その雇用率を引き上げる等抜本的施策を講ずることは、いまや国家の急務であります。  このようなわが国における身体障害者雇用実情にかんがみ、この際現在の雇用率を国及び地方公共団体並びに三公社等におきましてはさしあたり七%以上、その他民間事業所におきましては三%以上にそれぞれ引き上げる等、身体障害者に対してもひとしく憲法に定められた勤労権利義務並びに生活を保障する必要があると考えるものであります。これが、この法律案提出する理由であります。  次に、この法律案内容について概要を御説明申し上げます。  まず第一に、国並びに地方公共団体と三公社等の公法人につきましては身体障害者雇用率を七%以上、民間事業所では三%以上にそれぞれ引き上げることとし、同時に現在、政令にゆだねられておりまする雇用率を法文に明記し、法的にもその義務を明確にすることといたしました。  第二に第十一条に定められた国等範囲を拡大し、事業種類に応じてその他の政府関係につきましても身体障害者雇用義務づけることといたしました。  第三に、雇用者が単に身体障害者であることを理由として、賃金その他労働条件について不利益な取り扱いをしてはならない旨の規定を設け、身体障害者の地位と権利を守らせることといたしました。  以上が、本法律案提出する理由並びにその概要であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御賛成くださることをお願い申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  5. 八田貞義

    八田委員長 次に、島本虎三君外十一名提出港湾労働法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  6. 八田貞義

    八田委員長 提案理由説明を聴取いたします。島本虎三君。
  7. 島本虎三

    島本委員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました、港湾労働法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由並びに内容について御説明申し上げます。  港湾労働法は御承知のとおり、昭和三十年代の日本経済発展に伴う輸出入貨物増大によって、港湾荷役の重要さが一段と高まったのに引きかえまして、港湾労働者は、低賃金、長時間労働、非近代的な労働環境のために、不足を来たしてまいりましたため、この労働不足に対処し、港湾の健全な発展を達成するという観点から、日雇港湾労働者常用化を目ざして昭和四十年に制定されたものであります。  しかるに、制定以来二年を経過した今日でも、当時主要な問題とされ、港湾の非近代的労働環境の根源であるとされましたやみ雇用は減少のきざしを見せていないのであります。その原因は、港湾運送業者がこれまでどおりに、港湾労働者を低賃金、無権利のままに長時間労働に追い立てるという考えを変えていないということもありますが、現行法の不備とも相まって、公共職業安定所労働基準局が、港湾労働法趣旨理解せず、業者賃金統制的行為に手をかすという結果を生じているところにあるのであります。そのために、日雇港湾労働者常用化を促進し、もって港湾労働者雇用の安定と生活向上をはかるべき港湾労働法は、その本来の目的とはうらはらに、無名無実の空洞化したものになりつつあるというのが今日の実態であります。  また、日雇港湾労働者就労日数は、政府調査によりましても、一カ月平均十五日に満たないのであります。したがいまして、一日の収入で二日の生計を立てなければならない計算になりますから、当然、労働時間が長くならざるを得ないのであります。労働省調査によりましても、港湾労働者の一日当たり労働時間は、他の産業に比べまして平均一時間以上も長くなっているのであります。しかも、港湾荷役波動性といわれておりますように、貨物の集中する時期には、二十四時間労働はもちろんのこと、三日、四日と連続の作業が続くのが当然のこととされている実情にあります。これは、港湾労働時間が、労働基準法労働協約あるいは就業規則等尺度とするのではなく、出入港する船舶の滞港時間がそのまま労働時間になるというおそるべき非近代性に基因するのでありますが、二日、三日と連続して続く作業が、人間の能力や体力の限界を越えた労働であることは言うまでもありません。このような長時間労働は、当然に労働災害増加となってあらわれております。労働災害基本調査によりますと、四十一年七月から九月末までの三カ月間に、港運業におきましては実に五千八百五十人の死傷者を出しているのであります。このような危険な条件に置かれながらも、日雇港湾労働者が長時間労働に従事せざるを得ないのは、以上申し述べましたように就労日数が限定されているため、その雇用がきわめて不安定な状態に置かれているからであります。  低賃金と長時間労働労働災害というこの悪循環を断ち切り、日雇港湾労働者の極度にゆがめられた生活向上させる道を改善しなければ、現在の労働不足のおりから、港湾労働力の確保が一そう困難になるばかりでなく、現在、大阪港、神戸港に顕著にあらわれておりますように、港湾労働者の流出を防ぐこともできないと考えるのであります。こうした現状を放置しているならば、ひいては港湾そのもの発展を妨げることになることは申すまでもございません。港湾に健全な労働環境をつくり上げるためには、何よりも現在、荷役作業の主力となっております日雇港湾労働者就業日数を高めることが必要であると考えるのであります。  以上がこの法律案提出する理由であります。  以下、この法律案概要について御説明申し上げます。  まず第一に、第十六条を改正し、天災等の場合を除き、登録日雇港湾労働者以外の労働者を、日雇港湾労働者として使用することを禁ずることといたしました。  第二に、第十六条の改正に伴いまして第十九条を全面削除することといたしました。  以上が、本法律案提案理由とそのおもな内容であります。何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御賛同あらんことを心からお願い申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  8. 八田貞義

    八田委員長 次に、内閣提出最低賃金法の一部を改正する法律案、及び河野正君外九名提出最低賃金法案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。海部俊樹君。
  9. 海部俊樹

    海部委員 最低賃金法の一部改正法律案についてお尋ねをいたしますが、最初に労働大臣に、政府提案法律案についてお尋ねいたします。  過日の提案理由説明を承りまして、改正要点並びにそのねらいとするところはどももおよそ理解をしたのでありますが、全体の問題として、ただいまILO各種条約批准を要求しておりますが、特にモース事務局長のほうから、ことしは国際人権年だということで、人権に関する要求が盛り込まれておる条約批准してほしい、こういう通達が来ておるでわけあります。もちろんその中にこの二十六号条約は入っておりませんけれども、私ども理解からいうと、最低賃金をきめる二十六号条約は、国際人権年にふさわしい、これに準ずるものであると内容を認めておるでわけあります。そこで今回の政府改正は、このILO二十六号条約批准するような内容のものに変えていきたい、こういうお気持ちできょうまで審議会にも御相談をなさり、その答申を得られて法律をつくられたわけでありますが、この改正案が通りますと、二十六号条約批准することができるようになっておるかどうか。できるようになっておるとすれば、どのようなプログラムで批准に持っていこうとしておられるのか、労働大臣の御見解を承りたいと思います。   〔私語する者あり〕
  10. 八田貞義

    八田委員長 静粛に願います。
  11. 小川平二

    小川国務大臣 お答えいたします。  いわゆる業者間協定による方式ILO二十六号条約との関連、つまりこの業者間協定方式が、ILO二十六号条約に抵触するかいなかという点については論議の分かれたところでございます。いわゆる業者間協定方式が、労働者側のイニシアチブを認めておらないから、労使対等参加の原則に反するではないかという議論もございましたし、そうではないので、これは三者構成審議会審議された上で決定されるのだから、二十六号条約とは抵触せずという意見もあったわけでございます。さきに政府審議会に対しまして、最低賃金制の今後のあり方を諮問いたしました際、ILO二十六号条約に抵触しないような形で答申をお願いしたい、こういうことで御審議を願ったわけでございます。その結果、ただいま御審議をいただいておるような法案に具体化された趣旨答申をいただいたわけでございますが、この法律に定めておりまする二年の経過期間が満了いたしました暁には、ILOに抵触するやいなやの疑義は完全に解消するわけでございますから、経過期間満了後、できる限りすみやかな時点で批准がなされるように努力するつもりでございます。
  12. 海部俊樹

    海部委員 承りますと、この答申はいわゆる中間答申だ、こう言われております。中間答申ということは、ただILO二十六号条約批准できるようにするだけのものである、審議会は今後も審議をどんどん続けられて、最終答申が出るようなふうにも承っておりますけれども、その辺のところはどう判断になっておられますか。
  13. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 最低賃金審議会の現在の審議状況とも関連いたしますので、私から答えさせていただきたいと存じます。  最低賃金審議会におきましては、最低賃金制基本的なあり方につきまして、昨年五月答申をいたしました後におきましても引き続き検討いたしておるわけでございます。現在におきましては基本問題小委員会というのを特別に設けまして、全国産業一律最賃方式とか、産業別職業別地域別賃方式とか、そういう最低賃金決定方式などにつきまして、基本的なあり方をいま検討いたしておるわけでございます。その中には賃金決定方式もございますし、決定機関の問題その他がいろいろあるわけでございます。  今回御審議をいただいております法案内容は、業者間協定を廃止するという内容のものでありますが、基本的なあり方ということになりますれば、さらに最低賃金決定方式決定機関につきましてもどうすべきかということの検討の必要がございますので、結論はどのように出ますか予測は困難でございますが、引き続いて審議をいたしておるというのが現状でございます。
  14. 海部俊樹

    海部委員 私ども最低賃金というものは、ただ単にILO二十六号条約批准ができるかどうかということでいい悪いをきめるべきじゃなくて、むしろより実効的、より効果的なものでなければならぬと思っておりますので、たとえ批准できるような内容になりましても、今後審議会等と十分御相談いただきますことを要望いたしまして、次の質問に移っていきたいと思います。  このごろの経済高度成長によって格差が縮まり、賃金上昇してきた。特に人口構造の激しい変化による若干労働者賃金上昇は目ざましいものがあるわけでありますが、提案理由説明にもございますように、このような状況の中でもなお改善から取り残される労働者に対して、より効果的な最賃制度が必要である、こう大臣おっしゃっておるわけですが、このような状況の中でなお改善から取り残される労働者というのは、一体どういう種類の人のことをとらえておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  15. 小川平二

    小川国務大臣 二重構造と呼ばれておりまするおくれた経済構造、なお近代的ならざる分野を広範に残しておるわが国経済構造のもとにおきまして、規模別格差あるいは地域別格差が、なお広く残存いたしておるわけでございます。いまおことばにありましたとおり、最近における賃金上昇改善は、非常に顕著なものがあるわけでございます。中小企業と大企業賃金格差も逐次縮小を見てきておりますけれど、それでもなおも零細規模企業で働いております労働者あるいは中高年、婦人の労働者等は、一般賃金改善に立ちおくれて、なお取り残されておる、こういう人々が相当たくさんおるわけでございます。そこで、こういった低賃金労働者につきましては、重点対象業種中心として改善をはかってきておるところでございまして、ただいま適用労働者の数が約六百十万人ございます。そのうちで五百三十一万人が中小企業労働者、かような数字になっておるわけでございます。いま御審議願っておる法律が幸い成立いたしましたならば、審議会方式に基づく最低賃金中心といたしまして、これまで最賃が適用されておらない労働者をも含めまして、すみやかに改善をはかっていきたい、このように考えております。
  16. 海部俊樹

    海部委員 先ごろ中央最低賃金審議会委員の方が中心になられて、労使代表政府も参加しまして、先進国最低賃金制度調査するための調査団外国に派遣されたと承っておりますが、その中で、何か政府案改正と申しますか、これのモデルになるような、理想的な最低賃金制度を行なっていた国がございましたか。あったとすれば、世界の先進国の最賃の実情を、簡単でけっこうですから、どなたからか御答弁いただきたいと思います。
  17. 渡辺健二

    渡辺説明員 私、昨年の中央最低賃金審議会調査団にお供いたしまして参りました。簡単にそれを申し上げたいと存ずるのでございますが、各国最低賃金制は、ヨーロッパにおきましてもそれぞれの国の実情によりまして非常に違っておりまして、各国が自分の国の賃金構造あるいは経済実情等に合ったいろいろたやり方を、それぞれやっておるでわけあります。ごく簡単に申し上げますと、イギリスにおきましては、業種別賃金審議会というものを設けて、業種ごとにきめることになっておりまして、そのための審議会が、五十七業種に現在設けられておるような状況でございます。それからフランスにおきましては、一方に全職業最低賃金と申しますものがございまして、それが全国民間労働者に対しまして、地域的な区分は三区分ございますが、格差の少ない最低賃金政府によってきめられております。その上に産業別協約拡張適用方式による最低賃金が設けられておりまして、これが非常に広範に適用になって、実質的にそれがかなり多くの産業の事実上の最低賃金をなしておるわけでございます。それからイタリアにおきましても大体協約拡張適用と類似のやり方最低賃金が行なわれておりますし、そういうように、私ども回りました国におきましても、国によりまして非常にとっております制度はまちまちでございまして、これを見てまいりました委員も、やはりその国の実情に合うような制度というものを考える必要があるということを痛感された次第であります。
  18. 海部俊樹

    海部委員 社会党の案に対して提案者にちょっと御質問したいと思いますが、過日の提案理由説明で、労働者生活の安定と労働能率向上産業の平和を維持するためには最低賃金は必要だ、こうおっしゃっております。私も全くその点には同感でございますけれども法案内容の第一点で、政府案社会党の御提出の案と全く違いますところは、いわゆる全国産業一律制、これに尽きると思うのであります。そこで最低賃金適用については全国一律制を採用いたしたのであります。わが国のように、いまだに産業別業種別地域別賃金格差が存在し、なおかつ低賃金労働者が多数残されている状態では、この制度の実施があくまでも必要であると思考いたしますと提案者はおっしゃっておりますけれども、むしろ私どもの考え方では、このような格差が存在しておるときでありますので、全国産業一律は非常にむずかしいんじゃなかろうか、こういう判断に立つわけであります。そこで、これは私個人の判断ではなく、たとえば経済新聞有力紙の論調を見まして、全国産業一律論に対しまして、たとえば最低賃金審議会の運営よろしきを得るなれば、現在の審議会方式は、形式だけの全国産業一律最低賃金よりもよほど実効のあがる、つまり最低賃金制のねらいとするところにかたった最低賃金を決定できるであろう、こういうようにもいっておりますし、あるいは提案者もおっしゃっておるように、日本では現実に格差が大きいわけでありますが、格差が大きい場合、一律の最低賃金を決定したら、これは実効の少ないものになってしまうか、企業を成り立たせなくしてしまうか、あるいは最低賃金が守られなくなってしまうか、そのいずれかである。そしてそのいずれもとるべき道でたいというように教えておるわけでありますけれども全国産業一律制をいまの日本現状で直ちに適用して混乱が起こらないという御判断をお持ちなのか、あるいは、どうしてもこれをすぐやらなければならぬと主張なさる根拠と申しますか、それについて簡単に御説明いただきたいと思います。
  19. 田邊誠

    田邊議員 最低賃金法をきめる際に、一体どこに尺度を求め、どれを基本にするか、ということに対しては、海部委員の御案内のとおりだと思います。私どもは、労働者労働力というものをいかに高く評価をし、その価値を向上させるかということにその基本を置かなければならぬと考えるわけであります。いままで、ややもすれば企業を主体に考えてきた最低賃金制というものが、いわゆる日本最低賃金法を有名無実に終わらせてきた最大の要因であろうと私は思うわけでありまして、そういった点からいたしますならば、今後近代国家として日本が成り立っていくためには、どうしても労働の価値を高く評価をする、こういうことがまず必要であろうと私は思うわけであります。確かに、現在日本において業種別なりあるいは地域別に若干の格差があることは、これは事実でございましょう。しかしわれわれとしては、いま労働大臣の言われたとおり、日本経済の二重構造をなくし、日本の今後の正常な経済発展を遂げるためには、どうしてもこの低賃金層をなくしていくことが最大の要務であろうと考えるわけで、諸外国の例を先ほど出されましたけれども、確かに各国におけるところの最低賃金法は、それぞれの様態によって違います。しかし、たとえばフランスの場合におけ全る国的、全産業的最低保障賃金というものも、当初は二五%ぐらいの地域差を認めざるを得なかったのでありますが、その後労働者の要求も熾烈になり、そしてまた、いわば経済圏も広がってまいりましたから、逐次その差を縮めてまいり、八%から、一九六三年以降は六%に縮まってきておるという状態であります。イギリスの場合も一律制と、若干の地域差を認める二つの方式をとっていることは御案内のとおりですけれども、しかし、全国市場において競争する立場にある産業については、これは一律制をたてまえとしているわけであります。地域差を認めているのは、地方地方において限定をされておる産業、たとえば小売り業やあるいは洗たく業、そういったものに対して若干の地域差を認めて、これも最大限七%の地域差に縮まってきておるという状態であります。したがって、諸外国におけるところの地域差を若干認めておるという状態も、いわばもうすでに過去のものであります。今日以降において、もし諸外国において新しい最低賃金法を採用いたしますとするならば、おそらく私は全国一律制をとる方向に進むのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  しかも御案内のとおり、近来若年労働力が非常に不足してまいりました。しかも日本各地域におけるところの生活水準も上がってまいり、都市と農村とにおける格差も縮ってきている状態であります。こういう状態でありますから、私どもとしてはこの際にこそ、いわば労働者の最低生活を規制するという、こういう最低賃金法案については、これはやはり全国一律制を採用して、その上に立って労働者の地位と生活向上をはかる、こういうことが政治に課せられた最大の任務であろうと思うのです。若干の地域差なり業種別の差というものをそのまま容認するような形では、いわば最低賃金法の意味は半減をする、こういうふうに私どもは考えざるを得ないわけでありまして、この際ひとつ勇断をふるって、一律最低賃金法の制定に踏み切るべきときがまいった、こういうふうに私は考えるのであります。
  20. 海部俊樹

    海部委員 田邊委員にお尋ねしますけれども、ことばじりをとらえるようでたいへん恐縮でありますが、ただいまSMIGのことを例に出されましたので、私もSMIGのことについてお尋ねしますが、確かに最近SMIGは、四%まで減ってまいりました。田邊委員御指摘のとおりであります。しかし四%に減ってはまいりましたけれども、現実にフランスにおいてはパリ・セーヌ地区の賃金が高騰いたしまして、SMIGの果たしておる役割りというのはほんとうに一番下級の労働賃金の底入れであって、現実にSMIGと、実際にきめられていく賃金との格差は、今日では二五%から最大限四〇%の格差が出てきて、SMIGの位置というものは最低の底入れにしかすぎないというような報告が、これはエコノミストにも出ておるわけでありますし、あるいはときどき全国一律の最低賃金制として報告されておりますアメリカにおける公正労働基準法最低賃金にいたしましても、確かにこれは、厳密にはそうではございませんが、全国産業一律に非常に近いような形できめておりますが、これの適用を受けて賃金修正をはかることができたのは、かろうじて南部の低賃金労働者だけであったというようなことであります。そうしますと、理屈、理想としては全国、全産業一律にきめるほうが明快であるかもしれませんが、現実に一番レベルの低いところの底入れにはなるけれども、それ以上の中位あるいは高位の労働者に対しては、この労働の価値を、田邊委員おっしゃるように、正しく評価するためには、それぞれの地域に応じたきめ方がやはり必要ではないか。たとえば現実の問題として、物価そのものをとらえても、物価の地域差があるわけでありますから、その物価の地域差という現実を無視して全国、全産一律で持ってまいりますと、やはりこれは一番低いところの人々だけの救済に終わるのではなかろうか、こんな気持ちがいたしますので、やはり社会党のおっしゃるこの案の中にも全国、全産の上に地域別業種別の上積みも組んであるようでありますので、私どもとしては直ちに全国、全産一律に踏み切るわけにはまいらぬという気持ちはそういう意味から持っております。  それから、ついでに御質問しておきますが、社会党法案の第二条の中に「最低賃金額は、必要生計費、一般賃金水準その他の事情を考慮して、定める」こう書いてございますが、「その他の事情」というのは一体何を頭に置いておられるのか。その中に、企業の支払い能力を考慮に含まれておるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  21. 田邊誠

    田邊議員 最低賃金はあくまでも労働者生活に値する最低の賃金を規制するのでありまして、最高賃金を限定するものではございません、この点は海部委員もよく御案内のとおりであります。  私は古い例を出すわけではございませんけれども、一九三三年にルーズベルトは、最低賃金を決定する場合に、生活賃金より低い賃金を支払っているような企業は、アメリカで存在する価値がないんだというようなことまで明言しておるわけであります。最低賃金をきめる一番の基本は何かといえば、労使がこれに当たって当事者として協議をしてきめることにあります。労働協約にあります。したがって私ども提案いたしました最低賃金法案の中に、御案内のとおり、労働協約によるところの最低賃金の決定をこばむものでないことを規定しておるのであります。それに上積みできるような産業ができ、その大部分が労働協約によって、労使の協議によって賃金がきめられるとするならば、これを拡大適用しようという制度はあくまでも残しておるわけでございまして、法定最低賃金というのは、いまあなたもおっしゃったように、労働者、使用者の間できめることができないものを、最低国で保障してやろうじゃないか、こういうところに実はその基本があるということをぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。  もう一つ、御質問のありました最低賃金委員会における取り扱いでありますけれども、私どもはもちろん企業の支払い能力――企業の支払い能力という文句の中には、実はいろいろ危険な連想をするようなことばがございますけれども、これはもちろん企業の利潤を確保した上に立っての支払い能力をいままではいっておったのであります。そこに非常に問題があるわけですけれども、一応それはおくといたしましても、われわれは、最低賃金委員会は、出席をしておる労使の全会一致制できめることにいたしておるのであります。このことをあなたがお考えいただきますならば、使用者は使用者の、いわば企業の中におけるいろいろな支払い能力を含めた実態について意見を吐くでございましょう。労働者労働者の立場に立った生活保障を要求するでありましょう。その上に立って、公益委員を除いて労使が話し合いをして、出席委員の全会一致できめるところに今度の私ども最低賃金委員会の性格づけが実はあるわけでございますから、あなたの御心配のような問題は、この最低賃金委員会における決定の過程で解消する、こういうふうに御理解をいただきたいと思うのであります。
  22. 海部俊樹

    海部委員 企業の支払い能力の問題に関しまして、本会議における社会党の皆さんの御意見を承っておりましたら、田邊委員もいま触れられましたように、私の生まれたころにアメリカのルーズベルトが何とか言ったそうでありますが、支払い能力のないものは社会的な価値がないというようなことで、これは考慮しなくてもいいんだというように聞き取れましたので、私はこれはたいへんなことだと思っておった。そんな古い話ではなくて、ごく最近でも、わが国の元総理までやられた有名な人が通産大臣のころに、いろんな法規を無視したがために、中小企業の五軒や六軒つぶれてもしようがないんだというような意味のことを言われたために、本会議で不信任の非難まで受けたことは事実でありまして、私どもはやはり産業の平和――これは社会党もおっしゃっておりますが、企業の平和というものもある程度考えていかなければならぬし、同時に、労使双方が平等の数できめるのが最低賃金をきめる二十六号条約の精神でもありますから、企業の存立というものを全然無視するようなきめ方をされると非常に心外である。もちろん労働者労働も大切でありますけれども産業の育成も大切でありますので、国民的基盤に立ってお考えを願いたい、こう思ったのでありますが、時間がございませんので、これ以上突っ込んで議論することはやめたいと思います。  最後に、これは労働大臣に特にお願い申し上げておきます。  ILOにおけるわが国の立場、今日まで果たしてきました使命、いろんなこと等を勘案いたしますと、国際人権年でもあるこのことしに二十六号条約批准できるような体制を整備されて、そして混乱を防ぐための経過期間が終わったならば、ちゅうちょすることなく一刻も早く批准されるのはもちろんのこと、ただ批准したから最低賃金制度は万々のものになったというのではなくて、さらに審議会等とも問題を詰めていただきまして、できれば政府案に対して野党案が出るようなことではなくして、野党にも御賛成願えるような次元の高い最低賃金法ができ上がりますことを私は心から希望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  23. 小川平二

    小川国務大臣 御発言の御趣旨にはまことに御同感でございます。経過期間満了後においては、一刻も早く批准がなされるように努力いたしたいと存じますし、最低賃金制の今後の基本的なあり方につきましては、審議会の御答申を待って、わが国実情に即してさらに実効ある形で最低賃金制の普及推進が行えるようになればまことに幸いだ、かように考えております。
  24. 田邊誠

    田邊議員 海部委員はアメリカの大統領のことを昔のことと言われましたけれども、これはあくまでも企業をつぶしていいと言っているのではない。労働者生活基本にし、これを重要視する中で最低賃金をきめるべきだ、こういうことでルーズベルトの例を出したのでございます。三十年前もそのとおりでございますから、ましていわんや現在の近代国家においては、労働者生活賃金というものを基本にした最低賃金をきめるべきである、こういう趣旨を申し上げたのでありまして、企業の支払い能力云々の問題を私どもは全然無視するような形でこれを押し通そうというような考え方では毛頭ございません。あくまでも十分労使が話し合いをされて、適切な最低賃金をきめることが必要である、こういう意味合いでございますので御了承いただきたいと思います。      ――――◇―――――
  25. 八田貞義

    八田委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山田耻目君。
  26. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 例年のことでありますが、物価が上がるし、生活は苦しくなる、こういうことで、労働者の賃上げ要求がことしもかなり熾烈に展開されております。きょうはなかんずく政府に関係の深い三公社五現業の賃金要求の推移について質問いたしたいと思っております。特に今朝来の新聞を見ますと、今月の二十五日半日ストライキ、二十七日には半日ストライキを上回る規模の行動を起こして要求を実現をしたい、こういうふうな、今日までの折衝過程に対する不満から、やむにやまれないそうした行動の決意をする。こういう事態が報道されております。委員会におきましても、こうした問題は決して軽視できるものではございません。それだけに一日も早く円満に紛争が解決をされますように願うとともに、具体的な措置を求めなければなりません。そういうような立場から、与えられました時間、若干質問を行なっていきたいと思います。  きょうは特に労働大臣並びに総理府関係、郵政、運輸、三公社五現業、それぞれの責任者をお呼びいたしましてお伺いするわけでございますが、お断わりをいたしておきますけれども、時間が非常に限られておりますので、おもに労働大臣などを中心にいたしたいと思いますから、それぞれの企業間の責任者はそれぞれが解決への責任者でもございますので、十分このやりとりをお聞き取りの上、問題解決のために努力を願いますように、お願いをしておきたいと思います。お呼びしましたけれども、部分的にはお聞きしない方もあるかと思いますが、あらかじめ御了承いただきたいと思います。  そこで、労働大臣にお尋ねをするわけでございますが、いま申し上げましたように、三公社五現業が戦後最大の一つの抵抗行動組織をする、こういう事態におとし込んでいくというのは、政府の行政上の指導なりあるいは対策にやはり私は欠陥があると思うのです。その欠陥というものをひとつ指摘をしてみたいと思いますが、昭和三十九年に春闘がかなり大きく荒れましたときに、時の総理大臣でありました池田さんと、総評春闘議長でありました太田薫さんとの間で、事態を収拾するために問題の一番焦点にさわって結論を出したことがございます。  その結論がおおむね二つございますが、一つは三公社五現業の職員の賃金をきめていくのは、法律に定めてあるように、民間賃金の動向をまず参酌をする、二つ目には物価の上昇あるいはその他を勘案をして、遜色ないように三公社五現業の賃金はきめていかなければならぬ、そういうことを念頭に置いて調停なり仲裁は行なっていくんだ。言いかえますならば、三公社五現業の賃金というものは、民間賃金の動向と物価などの動向を考慮してきめていく、そのきめ方は調停なり仲裁で自主的にきめるんですよ。政府は介入いたしません、こう立場が大きな柱として一つきめられたわけなんです。その柱に基づいて労働組合側も了解をしたし、そのままの姿が今日まさにとられておるかどうか、これが賃金紛争解決の一つの柱です。  当時の問題で解決された柱であります二つ目は、今日三公社五現業には当事者能力が欠けている、この当事者能力を与えなくちゃいけない、それが無用なトラブルを起こしたりお互いに不信感を造成することになる、だから当事者能力を与えるという立場で抜本的な改定検討に入ろう、こういうことが二番目に約束をされたわけです。  たまたまILOのエリック・ドライヤーが日本に参りまして、こうした問題等を調査して、抜きがたい労使間の不信感というものは、いま総理と太田薫氏との間で取りまとめられたような事柄が十分果たされていない、スト権を奪った代償措置としてのそういう事柄が十分保障されていない、ここに抜きがたい不信感が醸成をされておるので、労使懇談会等を開いて問題の解決に積極的に当たるよう、こういう勧告がなされております。これを池田総理も受諾をされました。総評も、意見はつけましたが最終的には受諾をいたしました。  いま私が申し上げましたような、こうした三十九年時におけるこの三つの問題点解決への措置が果たされていたならば、申し上げますような二十五日なり二十七日に迎える戦後最大といわれる紛争も、私はもっと変わった形で処置されていたのではないかと思いますよ。そういう措置を怠ってきた政府の責任というものがこの事態を起こしてきたのではないだろうか。まず大きな幅でございますが、この幅の中でひとつ御回答いただいて、あとは当面しておる細部の問題に入りたいと思いますので、それについてまずお答えいただきたいと思います。
  27. 小川平二

    小川国務大臣 お答えいたします。  三公社五現業であれあるいは公務員であれ、賃金を含めまして一般的な労働条件改善ということにつきましては、もちろん政府は強い関心を持っておりますし、今後もそういう方向で努力すべきものだと信じております。ただいま御指摘がございましたとおり、賃金の決定に際しましては民間賃金あるいは公務員賃金、生計費その他の事情を勘案して定めるというたてまえを従来もとってきておるところでございます。  また当事者能力の点につきましては、公共企業体の予算が賃金、給与をも含めまして国会で決定される。そのことからいたしまして、公共企業体の当事者能力がある程度制約を受けることはやむを得ないことだと存じます。したがいまして、当面は現行制度のもとにおきまして与えられたワクの範囲におきましても、あとう限り当事者能力を発揮できるように弾力的な運用をはかってまいりたい、まいるべきだと考えておるわけでございますが、ただいまおことばにございました根本的な解決ということにつきましては、公務員制度審議会で御審議を願い、その結論を待って対処したい、このように考えております。公務員制度審議会も御承知のような事情で再開がだんだん遷延いたしておりますが、ただいま総務長官の手元で鋭意努力をいたしておると聞いておりますので、一刻もすきやかにこれが開かれますように私ども期待いたしておる次第であります。
  28. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 第一点の、民間賃金なり生計費支出なり、物価上昇その他を勘案して賃金をきめるものであるということについては御異議がないようであります。私もけっこうだと思います。問題は、法改正を唱えがらも、当事者能力の分野を保障していくということについては、あれから四年たちましたが、まだ総理府で検討中ということでございまして、これはたいへんな不満でございます。このことがいたずらに紛争を長期化させたり、非常に陰惨なものにさせていく大きな原因でございます。その原因が、四年間も指摘をされ、双方で合意に達していながら、いまだ放置されておる、これはひとつ政府の怠慢を失点として認めていただかなければいけませんよ。日々労働者は生きておりますから、めしを食っていっておりますから、当然、民間賃金の動向なり、物価変動に対しては、賃金要求をいたします。その権利を持っておりますから。その権利を持って日々動いておる労働者に、こういう土俵設定が四年間も放置されておる。このことによって生ずる混乱というものは、これは政府の失点ですよね。その点はひとつ……。私は第一点については了解いたしました。第二点の問題については、やはり政府はいろいろな事情はあったでしょうけれども、このまま放置していたということは、私は失点としてまず認めていただきたいと思います。
  29. 小川平二

    小川国務大臣 実際問題といたしましては、従来もっぱらILO関係の諸問題について審議がなされておったわけでございますが、もちろん残された問題もたくさんございます。もともと法律に基づいて設置された審議会であり、総理大臣がこれに諮問をいたしておるわけでございますから、これがすみやかに軌道に乗らないということにつきましては、私もきわめて遺憾なことだと存じております。これがすみやかに軌道に乗りますように私といたしましてもこれから努力したいと思っております。
  30. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 一応政府の怠慢は、これから努力をなお一そう積み重ねて何とか早く正常化したいというお気持ちで、ひとつ失点を認めていただきたいと思います。  そこで問題は、いまの当事者能力が半ば欠けているということを、公労法上はある意味では正常な姿で通し得る法文を備えておると思います。たとえば国鉄総裁にしても、あるいは三公社五現業それぞれの責任者が労働組合と賃金支出について協定をする、その協定が予算総額をこえている場合は、その協定自身は効力を伴わないぞ、しかし協定は、労使双方当然協定し得る権能を民法上有する、二つの食い違いがあるわけでございます。これを法第十六条では、予算上資金上不可能な協定を締結した場合には、直ちに国会の承認を求めなければならない。国会の承認を求めたならば、この協定は有効になる。その間協定が一時寝かされておるわけでありますが、しかし、そういう協定を結ぶことを妨げてはいないのであります。それがいまあなた方のお考えになる当事者能力の範疇では、あたかも協定を締結することすら妨げているような指導をなさっておるわけです。予算総則をこえて協定するようなことをしてはならぬぞ、だからゼロ回答をしなさい、あるいは不満足であっても、そこで積極的に話をまとめるという努力をせずに、調停、仲裁に移行するという逃げ道を求めておる。これがいたずらに紛争を強化さしていく道になっておるのです。ですから、法十六条に基づいて両当事者が、賃金協定を結んで、その賃金協定の額を民間賃金の動向なり、生計費支出なり、物価上昇の動向をにらんで協定を結べば、そのことは当然協定としては価値を有する。ただ、それが予算上資金上こえる場合には、その協定を国会に出して承認を得なさいよ、これが十六条であります。この十六条のとおりにやられておれば、当事者能力論というものはもっと変わったものになってきたわけであります。その法十六条に示す方法を、なぜきょうまで積極的に担当大臣としての労働大臣はお進めにならなかったのか、将来進めるつもりなのか、それをひとつ聞いておきたいと思います。
  31. 小川平二

    小川国務大臣 十六条の仕組みは仰せのとおりでございまして、協定を結ぶことは随意でございます。ただ、これが予算上資金上不可能な場合は、国会の承認が必要になるわけでございまして、承認があればさかのぼって効力を発生する仕組みになっておるわけであります。ただ、協定を結びます場合は、予算総額との関連で、予算の総額をこえれば直ちに予算上資金上困難という事態が起ってくるわけでございますが、仲裁裁定の場合はそれだけでは予算上資金上困難という事態は出てこない、この点が違っておると存じます。したがいまして、実施上の観点から、当事者が協定で解決するという方法を避けて仲裁に持ち込むということは、実際問題としてはあり得るし、あったと存じます。政府が協定を結ばせたいような指導をした事実は私はないと信じております。
  32. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 労働大臣、あなたおっしゃって  いることは私わかるのですよ。わかっておるのですが、過去の調停委員会なり中裁委員会答申をごらんなさい。なぜ両当事者は団体交渉をもっとしないのか、なぜ団体交渉で煮詰めて、法十六条に定める協定が結べないのか。団体交渉もろくにせずに、すぐ調停、仲裁にすべり込んでくる。二カ月たてば調停、一カ月たてば仲裁、こういうエスカレーターにすぐ乗っていくような労使慣行をやっておるところに、今日の紛争の原因があるのじゃないか。こういう答申がみな出ておるでしょう。それを三公社五現業の責任者の人は、まあ団体交渉で幾らやってみたって大蔵省がにらんでいかぬ、最後は大蔵省に日参をせなければ賃金紛争の解決はできない、こういうことが念頭にあるのです。念頭にあるから、二十五日のストライキをあなたらすぐ違法と言う。こういう事態を呼び起こしていったのはあなた方の責任ですよ。団体交渉をさせていかないから。団体交渉をさせていって、協定を結んで、お互いの自主能力でやるんですから、結んだその協定は双務協定ですから、労使とも責任を負いますよ。労働組合も責任を負う。その協定が予算上資金上不可能なときには、国会の承認を得なさいよと書いてある。そのとおりを過去一度も実行したことがない。公労法が二十五年にできてから一度もやったことがないじゃないですか。労働大臣労働行政の最高の責任者でしょう。なぜそれをやるように積極的に指導しなかったのか。今日やる用意があるかどうか聞いておるのですよ。
  33. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま大臣からお答えを申し上げたとおりでございますが、先生ただいま御指摘のように、労働協約を結びました場合に、国会の御審議を願って、国会の承認があれば、それは実施可能になる、この点は仲裁裁定も同じであります。しかし、予算上資金上可能か不可能かということになりますと、仲裁裁定対協定または調停の場合におきましては、予算上資金上可能か不可能かという要素が変わってまいります。これは御承知のように、公社法あるいは給与特例法等におきまして、また各政府関係機関予算の総則におきまして、仲裁裁定については賃金総額を変更し得るという規定があるためであります。これはどういう考え方で立法がされておるかという点につきましては申し上げるまでもないのでございますが、公社等の公共性に基づきましてその経理、予算というものが国会で定められた方針に基づいて運営さるべきものである、国民に対する責任という面から、国民の代表である国会の意思によってきめられた予算によって運営されるというところからくる公共性の要請だと思うのであります。片や労使関係の面におきましては、おっしゃるように自主的な解決が最も望ましいし、仲裁よりはもし調停段階で解決できればそのほうが望ましい。しかし調整の制度といたしましては、仲裁が最終段階でございますので、最終段階については国会でお定めになりました予算といえども、仲裁裁定についてはその関係で特別の地位を与えておるということになるかと思うのであります。したがいまして、公共性というものと労使関係の要請からきます自主決定というものとの調和を、仲裁という時点において求めておるということが現行体制だと思うのであります。  そこで、おっしゃいますように、われわれの労使関係の観点からいいますと、できるだけ前段階で、自主解決の実態で解決されることが望ましいのでありますが、制度といたしましては現在は仲裁でその調和を求めておる。調停の段階で求められるかどうかということが一つの問題点ではなかろうか。あるいはさらに進んで自主解決ということと公共性というものをどう調和させるかということになるのではないかと思うのであります。  そこで制度そのものは、そういう観点で検討さるべきものであると考えるのでありますが、現行法の運用でどうするかということになりますと、たとえば昨年のように調停で相当煮詰まった、しかし姿は仲裁という形になった、それは調停でありますれば、現行法におきましては予算上資金上可能になるすべがない。そこで仲裁という段階を経過することによりまして、予算上資金上可能になるということから、おっしゃるように協定を結び、あるいは調停案を受諾して協定を結び、国会の御審議を願うという方法も開けておりますが、予算上資金上可能にするという方法を選んだ、それに近い実態が昨年の実態ではなかったかと思うのであります。現行制度をどのように活用するかという観点からいいますと、おっしゃるような綿もございますが、昨年のような方向で活用をするということも、一つの有力な行き方だと思うのであります。そういう意味におきましては、労働大臣はどちらを選ぶかということでございますが、やはり現実にその当事者が解決するのにどれが一番いいかという判断をした場合に、どちらの道を選んでもそのときどき、その実情に応じて私は甲乙つけなくてもいいのではないかというのが私ども基本的な考え方でございます。
  34. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 労使が自主的にきめても、第三者の仲裁にいっても、いずれでもいい、こういうふうな御意見のようですが、現状の解決は確かにあなたのおっしゃるように前者の解決というのは――いまちょっと雑音がございましたが、三十一年に一度あるわけですけれども、これは非常に単位が小さいものですが、大きなものについては例がない。あとほとんど仲裁段階で始末をされている。私はアメリカの例をあえて引くわけではございませんけれども、いわゆる労使関係というものは御存じのように社会立法でございますから、どうしてもやはり労使双方が納得して結ぶ協定、これがこの問題の解決の最優先さるべきものなんですよ。しかも一番価値がある。アメリカの場合でも大統領委員会が決定をしても、それが不服でストライキに入るのです。日本の仲裁委員会に匹敵する結論を下されても、それを不服とする場合にはストライキに入る。本来労使の問題というものは、そういうようなものなんですよ。だから、労使問題の一番の正常な形を築き上げていく道というのは、労使関係で協定を結ぶこと、そうして双方がそれに責任を負うこと、これが一番正常な解決であろうと思うのですよ。これからの日本の将来を考えてみますと、やはりその段階にまで双方がお互いを尊重し合う段階の労使関係ができ上がっていきませんと、私はこういう紛争というものは消えていくものじゃないと思いますよ。その意味ではいずれでもいいというふうな立場というものは、私はお捨ていただいて、やはり仲裁の段階でも法三十五条で資金上予算上不可能なものは、十六条に基づいて国会へ提出するのですよと書いてあるのですから、その限りにおいては労使が協定を結んだ結論も、仲裁の裁定をされた結論も、それが予算上資金上こえておるときには、国会の承認を得ることになっておる。ただ、政府の一様の今日までの一つの意思の表現というものは、仲裁が出たら尊重いたします。これだけが、ここ両三年明らにたってまいりました。しかし、労使間協定が結ばれたら尊重いたしますという態度は、いまだに一度もない。ここに私は問題があると思うのですよ。本来労使関係は、労使が片づけるものを、第三者である土俵にまかせて、第三者のふんどしで相撲をとっているというふうな状態がベターじゃないでしょう。そういう立場を考えていただくならば、私は労使関係できめていく事柄に最善のこれからの指導の力点を置いてほしい。この立場から当時者能力についてのいまの、確かにございますね、仲裁の決定があれば賃金規定の変更がなし得る、こういうことが非常に大きな障害になっておりますから、そういう立場を踏まえて解決へのための努力をしてほしいということを特に要望しておきますから、この点はあなた方も御異存はないと思いますから、よろしくお願いいたしたいと思います。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕  そこで、最近の問題に入っていきますが、いま申し上げたような前提に立ってみますと、どうでしょう、私鉄の賃金が出ましたが、大体大手が昨年一三・一%のアップに対して、ことしは一三・七%のアップであります。〇・六%昨年よりふえておる。民間一般の動向を見ますと、ことしは一四%をこえております。昨年よりも二%程度前進をいたしております。こういうふうな民間賃金の動向を踏まえて、政府としても当然三公社五現業の賃金がきめられていくと想定なさっていらっしゃると思いますが、聞くところによりますと、昨日労働大臣、官房長官と一緒に三公社五現業の代表と会われまして、公労協の諸君と会われまして、昨年並みはひとつ何とか出せるようにそれぞれの企業に働きかけてやりたい、こういうふうな回答をなさったようでありますが、一体この昨年並みということと、いまの民間賃金の動向との対比は、一体どういうお考えで昨年並みという結論をお出しになったのか、一応そこらあたりをお聞きしておきたいと思います。
  35. 小川平二

    小川国務大臣 昨日なされました回答は、もちろんあとう限り民間賃金の動向をも把握し、同時にまた経営の事情を考えてなされた回答であると思います。  実は、御指摘にございました昨年並み云々ということは、官房長官も申し上げておらないわけでございまするし、私も昨日の会見の際、そういうことを申し上げた記憶はないわけでございます。
  36. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 では、きのうの会見でどういうふうな御返事をなさったのですか。それを聞かせてください。
  37. 小川平二

    小川国務大臣 いま御指摘の部分につきましては、実は記憶がございません。うそを申し上げておるのではありませんので、いろいろなやりとりがございましたから、あるいはそのような印象をお受けになるような発言を、官房長官ないし私がしたかもしれませんけれども、ただいま仰せになりましたようなことばでお返事をいたしておらなことは事実であります。
  38. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 私がいましゃべったような印象を受けるようなことを言ったかもしれないがという、そのしれないがという内容はどういうことを申しておられるのですか。
  39. 小川平二

    小川国務大臣 昨年どおりというようなおことばでございますが、昨年は調停の段階で事実上事が落着をいたしておるわけでございます。先ほど来いろいろ申し聞けのありました趣旨から考えましても、私どもも調停段階で事が妥結するということは望ましいことでありまするし、また、従来の賃金紛争のあり方から考えれば確かに前進でございますから、ことしもそうありたい、昨年同様の形で妥結することが望ましいと、かようなことは確かに申し上げた覚えがございます。あるいはそういうことが、引き上げの幅について昨年同様にしたいと申し上げたかのような感じをお与えしたのかもしれないと、いまこの場で考えておる次第でございます。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 結局大臣の御趣旨というのは、昨年は久方ぶりに調停段階で実質的な解決をして――形式は仲裁に移行したけれども、そういうふうな、ある意味では自主解決に近いような段階での解決が望ましい。幅についてはまあ触れていないような言い方でございまするが、大体主点は解決の方法ということに置かれていたというふうにおっしゃっているわけです。それでよろしゅうございます。  そこで、これはあなたも冒頭にお話になりましたように、民間賃金の動向その他を勘案をしていわゆる三公社五現業の賃金はきめらるべきであるということについて、異存はたかったわけでございますが、申し上げましたように、私鉄大手について〇・六%の増、民間については一、二%の増、大体民間は物価上昇等もはね返ってきて去年よりこういういい回答が出ております。そこで、これはまあ政府の直接関与なさることではなかったと思いますが、きのうの三公社五現業の動きを見ますと、去年より一%程度下回っておる回答でございますね。これじゃ実際には法の精神が順守されて、三公社五現業の諸君の――一応形式的に法的にもスト権は奪われておる、こういう人たちに対処して上げる賃金査定の基準としての民間なり物価、こういう関係を受けての回答としては、あまりにも常識はずれであるという印象を私は新聞を見ながら受けるわけであります。一々これに対して労働大臣の意見を具体的に述べられることはできないと思いますし、その時期でもないと思いますけれども、いずれにしても法の精神で言われておる民間賃金の動向、その他生計費支出の増大、あるいは物価上昇等を勘案をしてきめらるべきであるというこの考え方については、私の意見に同意をいただけますね。
  41. 小川平二

    小川国務大臣 その点は、そのとおりでございます。御意見のとおりだと存じますが、同時に、その他の事情、たとえば経営の事情も当然参酌されてしかるべきだと考えております。
  42. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 国で経営する事業でありますし、三公社五現業どの一つを見ましても、これはなくてもいいというふうな事業はございません。ましてや三公社などに至りますと、これはたいへんな作業量あるいは基幹産業としてのものを持っておりますので、企業間の格差というものもあるのは大体おかしいのでございまして、これは政府の出資金なりいろいろなものも違うわけでございますから、現在持っておる資産状況も違うのでございますから、そういう国で打つべき手が打たれずにいて、そうして企業格差があるからというふうな言い方というものは、私はやはり、公社経営者はみな来ておりますけれども、一々聞く時間がありませんから聞きませんけれども、これは政府としてそこに企業格差を見出すということは許せない、これは国会としても許せないと思います。そういうものはやはり大きなウエートを持って論議されるべきものではなくて、それぞれが公共企業体の職員としてそれぞれの生産にいそしんで、そして民間企業賃金の動向なり、生計費支出の増大等を見ながら要求する賃金でございますから、そこらあたりはあなたの最初に申されたような意見というものが主体であって賃金がきめられていかなくちゃならぬ。企業格差などというものが主体であってはならぬ。こういう立場だけは政府の立場としてきっちりと理解してもらわないと、紛争を解決する道筋には通じませんから、その点は主体は民間賃金の動向などなどに中心を置いて進めらるべきであるということについては、ぜひとも同意をいただかなければならぬと思うのでありますが、よろしゅうございますね。
  43. 小川平二

    小川国務大臣 これは、法律にも明記してあるところでございますから、十分その点は考慮すべきである、当然のことと存じております。
  44. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間がなくなりましてあれですが、また基本に戻りますけれども、やはり当事者間で協定を結ぶのに一番近い形のものは、現行法では調停でございますね。調停は労使双方出まして意見を述べて、そしてそこで調停の取りまとめがなされるわけでございますから、やはりその調停の段階でのまとまりというものは、昨日あなたがおっしゃいましたように、昨年と同様まとまってほしい、こういう気持ちはひとつしっかりと固めていただく。よろしゅうございますね。固めていただく。  二番目には、おっしゃっていましたように、そういう調停なり仲裁機関に政府がいろいろ介入をして――これはILOでも強く指摘をされておりますね、こんなものに介入してはいかぬ。だからその介入をしてトラブルを拡大するというのではなくて、この調停、仲裁については政府は介入したい、そして自主的に判断をされ、賃金決定がなされていけば、所要の法手続に従って国会で片づけていく、こういう段階を踏んでいくわけでございますから、政府は絶対介入をしない。この二番目の立場をひとつ御承認いただけるかどうか。
  45. 小川平二

    小川国務大臣 これは独立の第三者機関でございますから、これに政府が介入してならぬことは当然でございます。御趣旨は全くそのとおりだと考えます。
  46. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間がまいりましたので、おりなくちゃなりませんが、各関係省三公社五現業、たくさんお見えいただきましてありがとうございましたが、いま私と労働大臣の間でいろいろ経緯を申し上げましたように、一つの中心は、両当事者間が責任を持って片づけていくものである。そうしてその段階に、調停機関という一つの団体交渉の延長兼第三者機関というものを持っている。その段階でまとまっていただくように労働大臣のほう、政府のほうも努力をする、私の委員会に対する要求もそれであります。一致点を見出しました。ただその中で賃金の基礎になるべきものは、主体は民間賃金の動向あるいは生計費支出の増大、物価の値上がり、こういうものを考えてきめていく。賃金の中身が主体であって、企業間の問題、こういうものには政府の中にもいわゆる格差があった、援助の方法等も出てきております関係上その問題は原則として考慮に入れるべきものじゃなかろう、こういう明確なものではございませんが、大体主体は民間賃金の動向なり生計費その他を考えてきめるということを念頭に置いて、これからの調停段階で最後の仕上げをひとつ願わなくちゃならぬと思います。これが三公社五現業関係省の皆さんをお呼びした一番の気持ちでございます。そこらあたり十分含んで処理をしていただくように、いま私と大臣とのやりとりは、そういうことを多く求めております。でき得べくんばそういうことの中で、政府がもしもいろいろとみなさんたちに調停作業、仲裁作業の段階で介入をしてくることがありましたら、そういうことが労使間紛争を今日までこんなに混乱させてきたのですから、断固として拒絶をしてもらって、政府としては絶対そういうことはないとおっしゃっていますから、ありとすれば断固として拒絶をしてもらって、自主的に当時者能力を拡大をし、協定を結べばそれを法に基づいて国会に上程をしていただく、こういう道筋でこの賃金紛争が解決されていくように強く念頭に置いていただきたいと思います。  いま一つは、二十五日並びに二十七日の行動に対して皆さんたちは警告を出されて、違法な争議行為ということで処罰をされてきたのが過去の例であります。いまも私労働大臣とやりとりをいたしました当時者能力の問題が片づいておればもっと形は変わったろう。それが政府の怠慢で今日まで実を結んでおりません。こういうこと等も十分配慮なさって、こうした混乱を増大させる責任の大半は政府の無策の中にあるんだということも念頭にいただいて、労働者に対してきびしい処罰の方向をとられたりすることのないよう、一日も早く最初申し上げました主体の点で円満に労使双方が解決されるように格段の努力を願わなければならないと思います。  これらにつきまして、それぞれの方の御意見を伺うのが至当でございますけれども、時間がございませんから、一応そういうことを御理解をいただきまして、いただく幅は私と大臣とのやりとりの中でいま申し上げたわけでございますから、そのように御了解いただいて、ますます御協力を願いたいと思います。よろしくお願いします。終わります。
  47. 八田貞義

  48. 河野正

    河野(正)委員 最近労使問題として一つの特色でございますのは、企業の合理化というものが積極的に推進される、そういう合理化攻勢の中での労使紛争というものがかなり激化する方向をたどりつつあることは、私どもも今日まで非常に遺憾に感じてきた点でございます。特に労使問題というものは、労使間の円満な話し合いということがきわめて大事な問題でございまして、そういう意味でやはり労組法の第六条、この精神というものがお互いに尊重をせられなければならぬ。その労組法第六条の交渉権というものをお互いが尊重する。そのことが一つには労使紛争を円満に解決し得る一つの条件にもなるだろうということを私どもは痛切に感じておるわけでございます。  したがって、本題に入ります前に、ひとつ労働大臣から御見解を承りたいと思いますのは、いま申し上げますようにこの労使間の話し合いという問題、特に労組法第六条の尊重という問題、こういう問題についてひとつ大臣の御見解をまずもって承っておきたい、かように考えます。
  49. 小川平二

    小川国務大臣 ただいま御指摘がございましたとおり、労使の紛争はあくまで相互の信頼の基礎の上に立ちまして、話し合いで平和に解決されることが望ましいと存じまするし、引用なさいました六条の規定も、まさしくその趣旨を鮮明したものである、このように理解しております。
  50. 河野正

    河野(正)委員 そこで、時間の制約等もございますから、具体的な問題に直ちに入ってまいりたいと思います。  特に私がこの問題を取り上げてまいりました趣旨は、具体的には昨年の十二月十四日の当委員会でございますが、この委員会でも取り上げてまいったのでございますけれども、いま私が指摘をいたしました労組法第六条ないし労使間の話し合いというものが適切に行なわれない。お互いに労使双方の信頼感というものが阻害される。そういう点から十二月の段階におきましても取り上げてまいった問題でございますが、さらに同じようにこの四月十日、福岡の中央郵便局において職場交渉をめぐり、その中で集配の第二課長でございます鶴賀正四という課長が、全逓の組合員でございます亀田亥久雄、栗原東洋彦両君に対しまして暴力をふるったという、こういう具体的な案件でございます。この問題はすでに新聞紙上におきましても、労使交渉の中で課長が組合員に体当たりかして、労組員二名にけがをさせた、こういう報道もなされているわけでございます。先ほど申し上げますように、すでに十二月の段階においても労使間の話し合いというものが円滑に行なわれない。そういうところに労使間の紛争の原因なり端緒というものがあるわけでございますが、また再びこのような案件が起こってまいりましたことは、私どもはきわめて遺憾に考えておるのでございます。私ども、当委員会でいろいろ論議をいたしますのは、そういう案件が新たに起こってこないように、できるならばそういう案件というものを再び起こさないようにという意味で、ここにいろいろ論議を重ねておるわけでございます。そういう意味では再びこういう同じ職場の中での問題を取り上げなければならぬということは、私ども非常に遺憾に感じておるのでございます。  そこで、この点については、せっかく郵政次官おいででございますから、郵政次官のほうからひとつ御見解を承っておきたい、かように思います。
  51. 高橋清一郎

    高橋(清)政府委員 郵政省といたしましても、当然この点は、いまお話ございましたように、正常な労使関係を確立するという念願のもとに大いに努力しておる次第でございます。いまお示しになりましたような事犯が――事犯ということはことばはちょっといけませんけれども、事件そのものが出ましたこと自体につきましては、遺憾に存じております。
  52. 河野正

    河野(正)委員 そこで、その遺憾はけっこうでございますけれども、こういう問題がたびたび繰り返されることは、これまた全く遺憾なことであって、われわれやはり委員会でお互いに精力的に質疑を重ねる以上は、再びこういう案件が起こらないようにというための配慮というものが、処置というものが行なわれなければならぬというように私どもは考えるわけです。  そこで、これは刑事事件にも相当する事件でございますから、きょうは警察庁からも御出席をいただいておりますので、ひとつ警察庁からもその間の経緯等についての御報告を願いたい、かように考えます。
  53. 三井脩

    ○三井説明員 ただいま御指摘の事案は、四月十日に起こったものでございます。この全逓におきます。また福岡郵便局におきます問題につきましては、かねて労使の紛争と申しますか、続いておりましたので、警察も不法事案、ことに暴力事案が起こらないように重大な関心を持って見守っておったわけでございます。四月十日のときにおきましても、昼休みに話し合いその他が行なわれたということであり、またすわり込みの事案等もありましたので、この状態がどうであったのかという点を管理者側に問い合わせましたところ、特に事案というようなものは起こらなかったというようなことでございましたが、翌日の新聞によりますと、集団交渉で組合員二人がけがをした、こういうようなことでありましたので、この点につきまして、直ちに当時現場におりました人、ことに鶴賀課長及びその目撃者である副課長その他数名の方につきまして、事情を聴取したわけでございます。その結果、いまお話しのように、集団的な交渉の際に、その場を出ようとした課長との間に、からだの触れ合いがあったというような事情が明らかになったわけでございます。現在までのところ、管理者側、つまり新聞によりますと、転倒事案を起こさせた側について事情を聴取いたしましたので、今度はころんだ側、組合側につきましても事情を聴取するために、二十日の日に、出てきていただきたいということを申し入れておりますので、本日お見えになって事情が聞ける、こういう状況になっておるわけでございます。  もとより警察といたしましては、この種労働争議の問題につきましては、あくまでも平和的に労使双方が自主的に問題を解決されるということを期待しておりますし、法の精神もそういうことであろうと思っておりますが、同時にまた、いろいろその他に事案が起こりまして、行き過ぎたことになりますと、警察の立場におきましても、そういう事案が起こらないように処理をしてまいりたいという意味で関心を払っておるところでございます。四月十日の事案につきましては、現在そういう段階で事情を調査しておるという状況でございます。
  54. 河野正

    河野(正)委員 これは、私が申し上げました労組法第六条の精神というものがお互いに尊重されなければ、なかなか労使間の慣行というものはうまく進むものではないというような意味で取り上げたわけでございますが、そういった職場交渉をめぐってのいまのような暴力事件でございますから、そういう意味で、せっかく労働大臣としては、この労組法第六条というものは、当然労使間で尊重されなければならぬとおっしゃっておるけれども、現実にはいまのような事態になっておるわけであって、私どもは非常に遺憾に考えておるわけであります。そこで、いまのやつは、暴力を受けたほうの組合員に対する事情聴取が行なわれておらぬということでございますから、いずれ早急にこの間の事情というのは聴取をして、とるべき処置というのは厳重にとっていただきたいと思います。  そこでもう一件、実は同じ職場の中で、一月十日でございますけれども、この一月十日においても、中園実主任が、これは業務上の問題でございますけれども、自分の説を主張し、その主張に従わぬといって、勤務中の今永公男君を突き飛ばしてあおむけに倒した、しかもこのほうは、五日間の打撲と同時に、はめておりました腕時計を破壊をする。これは勤務中に、勤務上の問題で自分の説に従わぬということで暴力をふるったということで、すでに公務執行妨害、暴力行為で告発をいたしておるということがいわれておるわけでございますが、これは一月十日の時点の案件でございますので、すでに十分警察庁のほうも御調査いただいておると思うのであります。その間の経緯について御報告を願います。
  55. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの今永書記長に関連いたします事案は、四月五日の事案というように私たちは報告を受けておるわけでございます。  これは四月五日の午後五時五十分ごろに、約七十名の組合員と管理者側四名の間にトラブルがございまして、その際に組合員を押し返すというような事案が行なわれて負傷をしたというような事情をこの今永書記長が漏らしておる、こういうことを警察のほうにおきまして聞き込んだわけでございます。この点につきまして事情を聴取しておりますが、この被害者と称される今永書記長についても事情を聴取するということで調査を進めておるわけでございます。先ほどの四月十日の事案と同様に、近日中においでいただけるものと期待をいたしておるわけでございます。
  56. 河野正

    河野(正)委員 いまのような御報告は、私どもが承っておりますと何か全くずさんで、実は四月五日もあるわけです。ただ、私が特に一月十日の事件を取り上げたのは、一月十日の事件についてはすでに告発をしておるということでございますので、これはもう一月十日のことですから、たぶん事情等十分調査をされておるだろう、こういう意味でお尋ねをしておるわけです。そうしませんと、この四月五日の問題もございますし、先ほど申し上げましたような四月十日の問題もあるわけですから、それらの点についてはまだ調査が十分でないとおっしゃったから、それならば実際に現在告発中の一月十日の事件はどうですか、こういうふうにお尋ねをしておるわけです。  そこで、四月五日の事件の概要について御報告があったわけですが、なるほどそれはそれなりにあるわけです。やはり今永書記長がこぶしで突き倒されたという案件はあるわけですけれども、一月十日の事件はすでに告発されておるという案件でございますので、あらためてひとつ御見解を承りたい、かように思います。
  57. 三井脩

    ○三井説明員 一月十日の件につきましては、私たちはまだ報告を受けておりません。告発ということでございますから、告発先がもし地検あてでありました場合には、地検で直接処理をするということもございますので、あるいは私たちのほうへ報告がきておらないのかとも思うわけでございますが、その点については報告を受けておりませんので、調査の上その状況について明らかにいたしたいと思います。
  58. 河野正

    河野(正)委員 実は、私どもが特にこの問題を重視して取り上げておりますのは、いま申し上げますように、労働大臣は、労使間の慣行を円満に行なわしめるためには、お互いに十分話し合いをしなさい、しかもそれが労組法の六条の規定でございます。こういうお答えであったわけですけれども、残念ながら、これはもう、社労委員会の労使間の紛争の大部分は、実は郵政関係の案件ばかりですよ。しかも同じ職場で次々に、このような役所の中で、国の機関の中で、暴力事件というものが行なわれることは、全く困ったことだと私は思うのです。それはどこの社会で暴力事件が行なわれても困りますけれども、特に国の機関の中で、このようにたび重なる形で暴力事件が起こることについては、私どもは全く容認することはできない。しかもいま申し上げまするように、その暴力事件が起こってまいりました発端というものは、組合運動を抑圧しよう、押えていこうということに端を発して行なわれたことについては、まことに残念でございますけれども、私ども委員会としても非常に遺憾だと考えております。こういうことでは、正当な職場要求を暴力で拒否する、こういうふうな見解をとられても私はいたし方なかろうと思うのです。  そこで、この点については、労働大臣もいま二つ三つの具体的な案件をお聞きになったわけですけれども、たとえばこういう暴力事件というものがあっちこっちで起こったということについても問題はあります。ところが、いま申し上げまするように、同じ職場の中で、しかもたびたびこういう暴力事件が国の機関の中で行なわれるということについては、労使慣行について適正な指導をやらるべき労働大臣としてどのようにお考えになるのか。いままでこの委員会においても、労使間の紛争というものがしばしば取り上げられてまいっておるわけですけれども、単にこの委員会の中でいろいろ論議しても、そういう論議の中から、お互いに反省すべきものは反省する、改めるべきものは改める、もし悪い点があれば厳重に処置するということにならぬと、私どもここで貴重な時間を費やし、また精力的にいろいろと論議いたしましても、その効果は全くないわけですから、そういう意味で、特にこのようなたび重なる暴力事件というものが労使間の慣行を阻害しておる、こういう意味でひとつ労働大臣の見解を承っておきたいと思います。
  59. 小川平二

    小川国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、労使の紛争はあくまで話し合いで自主的に解決されるべきものでございますから、たとえいかなる理由があったにせよ、労使の紛争に際して暴力を用いるというようなことは、これは論外だと存じます。そういうことの起こってきた原因が那辺にあるのか、それぞれいろいろ複雑な事情もあり、経緯もあるかと存じますが、もし使用者、管理者の側において、心がまえにおいて欠けるところがある結果であるといたしますれば、これは強く反省を求めなければならないことだと存じております。
  60. 河野正

    河野(正)委員 これは経過がどうでありましょうとも、暴力行為が行なわれてよろしいということではないわけでございますから、したがって、やはりいまのように、単に暴力事件が起こるということではなくて、同じ職場でたび重なって起こってまいっておる。これらについては、たとえその起こってきた原因が何であろうと、どこに端を発しておろうと、少なくとも管理者として反省しなければならぬことは当然のことだと思うのです。そういうことが引き続いて許されるとするならば、私は率直に言って管理者としての資格はないと思うのです。  そこで、いま大臣からも、適切な指導というものが行なわるべきだという御見解でございますから、単にここで論議をしてお答えを願うということだけでなくて、具体的に、もう自今そういう紛争というものが起こらないように、ぜひひとつ厳重に指導を願っておきたい、こういうように思います。  それから同時に警察庁のほうには、単にこの告発が検察庁にやられようとやられまいと、そういう国の機関の中で暴力行為が行なわれておるわけですから、しかも、私どもが現地に参りましていろいろ承るところによりますると、しばしば私服警官あるいは警察官の方が局舎内に入っていろいろ調査をするというか干渉するというか、そういう行動も行なわれておるというふうに私どもは承っておるわけです。ですからこの一月十日の、中園主任が組合員であります今永君に暴力をふるった事件等も、おそらく御承知の上ではないかと私どもは考えております。どうも官側がやりましたことについては非常に消極的で、労働組合がやりますると非常に積極的にこういう問題を取り扱うという傾向がないではないと私は思うのだ。どうもそういう傾向が最近は強まってきておる。そういう意味で、私はぜひ警察庁としても姿勢を正すべきものは正して、ひとつ厳重に処置をやっていただきたい、こういうふうに思います。時間がございませんから、そういう要求を特にいたしておきたいと思います。そういったところに、いろいろ組合の正常な活動をできるだけ押えていこう、これが一つには私は不当労働行為の具体的なあらわれだと思うわけですけれども、それらについては、今日まで労働組合に加えられましたいろいろな抑圧政策の具体的な事例というものがたくさんございます。一々あげますと、これはきょうの質問の二人分、三人分の時間を与えていただかなければできぬほどたくさんございます。非常に私ども残念に思います。  そこで、いずれそういう問題はあらためて取り上げるとして、いま一つ私は人権問題をここで取り上げてみたいと思います。これも昨年の十二月十四日の当委員会において、福岡中央郵便局の大賀忠彦君の人権問題についていろいろここでお尋ねをいたしました。その際法務省の人権擁護局長からも、この大賀忠彦君の問題については人権侵害の疑いきわめて濃厚だ、こういう意味での御意見を承って、当時高橋政務次官からも陳謝の意が表明されたわけです。  ここでちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、この大賀君が胃の切除をやったわけですが、その後輸血の関係で血清肝炎を引き起こしておる。胃の手術をやって、いわゆる黄色い血でございますが、そういう輸血をやったために血清肝炎を起こして現在も病臥中ということで、先般来もそういう意見を申し上げておりましたが、これらについて再び公傷認定が行なわれたかどうかですね。この点についてもこの際ひとつお聞かせいただきたい。これは郵政政務次官のほうからお願いします。
  61. 高橋清一郎

    高橋(清)政府委員 仰せになりました内容については、正直に申し上げまして、あなた御自身から飛行場で私聞きました。事、重大でもございますので、早速本省に参りまして人事局長に対し、河野正委員のほうからしかじかのことがあった、先般の事件に関連してこういう進行状況があったので、ぜひ細部にわたる検討をしてほしいと強く要請いたした次第でございます。なお、具体的なことにつきましては局長から答弁いたさせます。
  62. 山本博

    山本(博)政府委員 二つお答えをいたしたいと思います。  一つは、先ほど来福岡中央郵便局の問題についていろいろ御指摘がございました。率直に申し上げまして、非常にたくさん郵便局はございますので、郵便局の中には労使間の関係が私たちのものさしから見ても、必ずしもうまくいっていないという状況も、まだ全国的に見ますと幾つか残っております。これはどちらが悪いとかいうことじゃなくて、やはりそれぞれに多少是正すべき点が残っているというのが私の率直な判断でございます。したがいまして、労働組合との間にも、不十分た事案があったら一つ一つお互いにその事案を出し合って直していこうということで、そういう両者の意思疎通の機関も設けまして、こういう問題の対処のしかたを中央においては行なっております。この問題も、おそらく中央のほうからあるいは提起があるかと思います。私のほうなりに、御指摘がありましたので調べております。なおそういうルートを通じて十分解決をしていきたいというふうに考えております。  二番目の問題につきましては大賀君のあと始末の問題でございますが、現地のほうから最終的にいろいろな資料がまだ整っておりませんけれども、方向としてはそういう方向で解決をしようという気持ちでおります。
  63. 河野正

    河野(正)委員 そこで、いま一つ案件をお示しして、これは特に法務省のほうにお答えをいただきたいと思います。  それはやはり福岡の西郵便局でございますけれども、久保敏博君、この人は三月十二日に、四月十一日まで胆石症、胆嚢炎で休みたい、こういう診断書を提出をされておるわけです。そしてその途中で御本人が、幾らか病状も軽快したので、そこでひとつ室内作業でどうだろうか。ところが池田課長、集配課長ですが、それならば医証を持ってきなさいということになりまして、実は胆石症、胆嚢炎であるが、軽作業はよろしい、屋内作業はよろしい、こういう意味での医証を作成をしてもらって提出をした。ところが、この集配課の池田博という課長は、局内には内務作業というのはないのだ。だから君は集配に出かけなさい。さもなければ徹底的に休んで療養しなさいというようなことを言明されたので、無理をして集配に出かけた。そうしたら先般の大賀事件ではございませんけれども、久保君もまた胆嚢炎で倒れて入院しなければならぬ、こういう経過になっておる案件でございます。そこで、やはり先ほど労働大臣からも、お互いの相互信頼というおことばもあったようでございますが、医師が軽作業、内務作業、これをやりなさいと言ったにもかかわりませず、だめだと言って、いわゆる外務作業、集配をやらせる、こういうことが人道上許されるのかどうかですね、私どもは非常に疑問を持つのです。しかも、さきには大賀事件がございましたし、また一昨年には吉竹君というのがそういう同じようなケースで胆嚢炎で手術したわけですが、最終的には死亡をしたそうです。なくなったそうです。こういうように、一方では暴力事件が次から次へと行なわれる、一方においてはいま申し上げますように、医師が証明を出してもその証明を無視して、そして一般作業をやらしたために本人は非常に健康をそこなう、こういうような人権侵害とも思われる案件というものが次々に起こってくる。  そこで、私はまずこの際、法務省の人権擁護局長の御見解を承って、最終的には労働大臣なり高橋郵政次官の見解を承りたいと思います。そういう意味で法務省のほうからひとつ御見解を承りたいと思います。
  64. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 私ども人権擁護という立場からいきまして、職場内におきましてやはり職員の生命や身体が尊重されるということは望ましいと思います。職員の健康というものが十分に管理されることが、やはり私どもの立場からは望ましいと考えます。  ただいまの福岡中央郵便局におきます久保敏博さんの事件は、私どもただいま初めて伺いましたので、事実関係がわかりませんので、事実関係につきましては後に調査いたしたいと思います。
  65. 河野正

    河野(正)委員 いまのは中央とおっしゃったけれども、これは西のほうです。福岡の西です。今後調査をして適切な処置が行なわれるわけでしょうけれども、もしその医師が内務作業をやらせなさいというふうな証明を出して、そういう証明を無視して一般の外務作業をやらせるというようなケースであったとすれば、そのことは一体、健康を害したりあるいは人権を侵したりするようなことにならぬのかなるのか、それについて一つの御見解を承りたい。
  66. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 お尋ねの件、私ども職場の内容が十分わかりませんので、内務作業というようなものがあるのかないのか、その辺わかりませんので、ただいまのお答えで十分のお答えできかねると思います。
  67. 河野正

    河野(正)委員 いま私が申し上げましたのは、――それは内務作業があるかないか、私どもに言わせれば、たとえば書留の授受だとか、それから大ものの区分ですね、たとえばビルなんかはたくさん郵便物が固まって参りますから、そういうような大ものの区分ですね、あるいは事故整理、私どもは、内務作業があるかないかとおっしゃれば、内務作業はこのようにありますと、こう言うわけですけれども、それは別にして、いまのように医師が内務作業が適当であるという診断書を書いたのに、その診断書を無視して、そうして一般作業をやらせる。集配ですからね、例のスクーターに乗って集配して回るわけですから、そういうことが健康をそこなうということになりはせぬかどうか、あるいは人権をそこなうことになりはせぬかどうか、こういうことをお尋ねをしておるわけです。
  68. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 一般的に申しまして、当該職場の作業内容、それから当該職員の病気の病状の程度その他などを勘案いたしまして、そして職員の健康という点に注意していただいて処理していただくのが最も望ましいと思います。
  69. 河野正

    河野(正)委員 その健康を阻害したり、あるいは生命を阻害するという判断は、いまのおことばによると何か集配課長がやるような印象を与えるわけですけれども、やはりそういう判断というのは医師が行なうべきじゃないでしょうか。医師がそういう判断をしたにかかわらず、健康のことはわからない、病気のことはわからぬ一般の職員がやるべきではないと私ども考える。そういう判断というものは、やはり健康について十分知識があり理解がある医師の判断に従うべきだと私ども考えるわけですが、その点いかがですか。
  70. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 健康状態について医師の判断に従うべきことはお説のとおりでございます。
  71. 河野正

    河野(正)委員 そういうことで、この久保君の問題についても、医師が内務作業が適当である、させなさい、こういった証明を出しながら外務の仕事をやらしたということは、いま法務省から最終的な結論がございましたように、その判断というものは当然医師が行なうべきだということですから、その医師の判断を無視をしてやらしたことについては、当然この久保君の健康をそこなわしめ、また人権をそこなわしめたというように私ども理解をいたしたいと思います。  そこで、私の持ち時間があと二、三分でございますので最終的に申し上げますが、このような、全国的にあちらこちらと散在してこういう案件が起こっても問題がございますが、いま申し上げたようなことが同じ職場の中で同時に集中的に行なわれておる。暴力事件あるいは人権侵害事件、これはもう明らかに労使間の慣行というものが適切でないということは私ははっきり判断できると思うのです。これは一例か二例なら判断のつけ方があると思いますけれども、たび重なって同じ職場の中で暴力事件が起こる、しかも一方においては人権侵害、職員の健康管理あるいはまた人命尊重というのが全然無視されるということは、私はこれはもう理由がどこにあろうと、どういう理由があろうと、そういう労務管理というものは許されないと思うのです。そういう意味でひとつこの際、労働大臣郵政政務次官のほうから率直な御見解をお聞きしたい、かように考えます。
  72. 小川平二

    小川国務大臣 私ども事実については知悉しておるわけではございませんけれども、かりに御指摘のように、人権を侵害する種類の事件が、一カ所に集中的に起こっておるというようなことでありますれば、確かにこれは容易ならざる問題であると存じます。私どもにおきましてもあとう限り事実を調べ、また事情も聴取いたしまして、その種の事例を根絶するのにどうしたらいいかということを研究してまいりたいと思っております。
  73. 高橋清一郎

    高橋(清)政府委員 もちろん、先ほどから申し上げておりますように、労務管理のいかにあらねばならないかということについては、事あるごとに、当郵政省といたしましても、機会をとらえてはお説のような方向に参ることについて、正直申しまして今日努力はいたしておるのであります。たまたま、いまお話にありましたように、こういうような問題が、特に先ほどのおことばの中に、労働組合との紛争の場が、郵政省が一番数が多いぞというようなおことばがございました。またそういうことに関連いたしまして、河野委員という人格者がこうした社会労働委員会に出られて、私に対してなり、郵政省に対して質問の場が持たれるということそのこと自体に対して遺憾だというふうに考えておるのであります。ただを問題はあなたもお医者さんでございますが、そういう意味から申しまして、人権の問題については特に意を用いてこられたと思うのであります。ただ、お示しになりました福岡西局の問題についてでございます。河野委員のお話をそのまま御聴取いたしますと、一方的に管理者の何ら――いわゆる重労働、過重労働と申しますか、そういうようなことが一方的にとられたというような印象にとられておりますので、弁明を申し上げる意味ではございませんけれども、一応の過程くらいは申し上げて、親切気はあったのだという一言だけは申し上げなければならぬと思うのであります。  病名につきましては、いまお示しになりましたように、残念でありますけれども、本人久保君は胆嚢炎の持病をわずらっておったということは事実でございます。ただ問題は、先月の十二日から二十日までに、いまの胆嚢炎で休んでおった。ところが、翌日二十一日に出局いたしましたときに、管理者側といたしましては、だいじょうぶかと念を押して聞いておるのであります。本人もやはり勤務に勉励と申しますか、非常な仕事熱心の人であろうと思うのですが、そういう点では私はいい組合員であろうと思いますけれども、だいじょうぶですと答えておるのでございます。でありますけれども、現場におきましては、あなたのお説にもありましたように外勤であります。外勤でありますが、そういうような持病の過程もありますので、事故処理と申しますか、室内作業につかせたわけでございます。二十二日の日でございますが、出勤いたしましたので、本来の配達につけたという過程でございます。翌日不幸にして欠勤した。その際診断書で、お説のように今月の九日まで欠勤届けが出された。その後今月の十日に出勤いたしましたので、再度だいじょうぶかと聞いたところが、だいじょうぶだと答えたということであります。したがって、十日から十一日の二日間本来の配達につけた。十二日の三時半ごろに帰ってまいりまして、事故処理いたしましたあと休憩室で休んでおった。たまたま組合員の皆さま方が心配してその場を見たものでございますから、どうしたのだと尋ねると、調子がよくない、それじゃすぐ車で病院へ行けというようなことで、いまのような過程をたどったということでございます。ただ書いたものを読むだけではないかというお考えでございましょうけれども、私はやはり部下を信じております。部下のほうから、こういうものを責任を持って書くのでありますから、それを私はそのまま受け取っておるわけであります。その辺についていろいろ問題が出てまいりましょうけれども、やはりこれを文言としてあらわすからには、これはもう局長をはじめとして、それぞれ現場とよく連絡をとりまして、いやしくも国会におきまする答弁の資料でございまするから、そういう意味におきまして、いままでの過程を見ましても、非常に権威あるものであると考えておりまして、いままでの経過等については疑いを差しはさんでおりません。したがいまして、今日私が読み上げましたものにつきましても、私は信じて疑わぬ次第でございまして、福岡西局の問題に関しましても、本人の病状等についても、至れり尽くせりとは申しませんけれども、あとう限りの配慮がなされたということは申し上げられると思います。
  74. 河野正

    河野(正)委員 政務次官から非常に良心的なお答えをいただくものと考えて、これで定刻時間どおりやめようと思っておりましたけれども、やはり一言言わざるを得ない。  二、三問繰り返してお尋ねしましたように、そういう場合の判断というのは何によるのかといえば、やはり一番病気のことに詳しい、健康のことに詳しい医師の判断によるべきではないかということを、二、三問繰り返して申し上げておるのです。ですから官側はどうであろうと、本人がどう言おうと、医師が軽作業が適当だと書けば、それに従うべきだと私どもは言わざるを得ぬのです。ですからだれが何と言おうが、病気なり、健康管理については、最終的に医師の判断にまかすべきだ。法務省のほうもそうだと言っておるのです。私どもはそうあるべきだと思うのです。私どもが医師として診断する場合は、本人はどうもありませんと言っても、その人が病気であれば、やはりお休みになるべきだという勧告をすると思うのです。ですから、本人がどう言おうと、また官側がどう言おうと、医師の証明というものがあればすべて医師の証明に従うべきだ、そうじゃないですかという議論を先ほどやって、そのとおりですと法務省もおっしゃっておるわけです。そのとおりであれば人権侵害にならぬとおっしゃっておるから、いまあなたが言われるように本人がだいじょうぶですというからやったんだということは、また話を蒸し返す結果になると思うのです。ですから、その点あなたは、法務省も人権侵害を考える場合にはやはり最終的な判断によるべきだとおっしゃっておるわけだから、その方針にはあなた方も従ってもらわなければいかぬと思うのです。それに従わないとなれば、それはまたここで話を蒸し返してやらなければならぬので、やはりいろいろ言うたけれども判断としては医師の証明に従うべきであった、こういうことを申し述べておいてもらわなければ困ります。
  75. 高橋清一郎

    高橋(清)政府委員 医師の診断書がすべての前提条件とならなければならないということは申すまでもございません。ただ、そういうような病状にある者を、医師の診断書が出されればそのままをすべての前提だというふうに考えないで、むしろ診断書がなくても、ぐあいが悪いという場合には、より以上にこまかいところに配慮して、健康状態に常に留意するということ自体が局側のとるべき態度であると思っておりますので、さらに一歩前進するわけでありますけれども、そのくらいの気がまえでやるべきだということであります。先ほどのようなことを申し上げました意味も、いやしくも人権侵害といわれるような不祥事がないように常に注意すべきだということは当然のことでありまして、診断書が出てまいりました場合には、当然それに準拠してすべての処置をとるということは、局側としてあたりまえのことであります。今後そのような考え方で善処いたしてまいりたいと考えております。
  76. 八田貞義

    八田委員長 山本政弘君。
  77. 山本政弘

    山本(政)委員 昨年の十二月十四日のこの委員会で、私が労働基準法の九十五条寄宿舎生活の秩序、それから事業附属寄宿舎規程の第四条一項一号についての外出、外泊の規定についてお伺いをいたしました。そしてそのときに、後日調査をして報告をする、こういうお話がございましたけれども、これはいまだに報告をいただいておりません。そしてそのときの見解では、法的な事業付属寄宿舎であるかどうかがわからぬ、こういうお話がございました。この点について一体その後どういうふうな調査をなされたのか、そしてまた、どういうふうな指示をお与えになっているのか、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  78. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 この前先生の御質問をいただきました後におきまして、ただいま御指摘の寄宿舎等の問題につきましては、監督署から担当監督官がおもむきまして、詳細に実態を調査いたしたわけでありますが、この前御指摘の宿舎につきましては、労働基準法上の事業付属寄宿舎と認められるかいなかという点については、検討いたしました結果、労働基準法上の事業附属寄宿舎規程に該当する。したがいまして、寄宿舎規程を作成して届け出るという手続については欠くるところがございますので、労働基準法に違反するという観点から、至急に規則を作成して届け出の手続をとらしめたというような措置を講じた次第でございます。  先生御承知かと存じますが、問題とされました三名の労働者につきましては、一名が本年の一月十六日で退職され、一名が現在病気療養として休業中であり、一名の者が三月二十七日より出勤をいたしておる、こういう関係に相たっておるわけであります。現在一名の方が出勤しておるわけでございますけれども、出勤の状態も通常の状態であるようでございます。一、二、年末一時金とかそういった問題についてこまかい問題があるようでございますけれども、監督署といたしましては、引き続きこういった問題について注意をいたしておる次第でございます。
  79. 山本政弘

    山本(政)委員 事業付属の寄宿舎の規程がつくられておるけれども、なおかつ外出その他について、私が聞いた範囲では、実質的にまだ時間の制限とかあるいは届け出制とかいうものが残っておるようなので、そういう点について再度ひとつ監督をお願いしたい、こういうことを申し上げて次の質問に移りたいと思います。  基準法の三条に「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」こうあるのですけれども、ことしの社内報にキューピーの専務が「今年の抱負」というのを出しておるわけであります。その一部分を御紹介いたしますと、「味の素さんのマヨネーズ業界進出と旧労問題の処理と、外と内との二つの面で大きな問題をかかえた年は、未だ曾て一度もありませんでした。いわば二十年にして始めて迎える大きな試練の年であります。」こう書いてあります。そしてそのあとに、「亦旧労の問題は、都労委、中労委、地裁を通じ、勝敗はともかく、会社側と左翼組合、いいかえれば民主々義と共産主義の戦ひであり、キユーピーの社内にとどまらず調布市民を始め全会社、全組合を含めて注目されている問題であります。」こう書いて、そのあと「キユーピー全従業員とその家族並に関連会社の人々数千人の生活を一体誰が保証してくれるのでありましようか此の一事をもってしても旧労の考え方が間違って居り、それを断乎排撃してゆく事が、キューピー全従業員の生活の保証の為に絶対必要なものであるという事がおわかりいただける事と存じます。」、こう書いておるのです。こういう考え方が、事業の経営者としてノーマルな、あるいは世間一般でいう常識的な考えであるかどうか、この点をどうお考えになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  80. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働基準法第三条の問題をいま提示されましたので私からお答え申し上げますが、労働基準法第三条に違反するかどうかという点につきましては、ただいまの御質問の内容から判断いたしますと、信条による差別的取り扱いというふうにも解せられますけれども、この問題につきましては、労働者個々人につきまして信条による差別待遇があったかどうかということの事実の判断をしなければならぬわけでございまして、いまお読みになるような書きもの自体から、直ちに労働基準法第三条に違反していたという判断がなされるかどうかという問題になりますと、やや問題があるのではなかろうかと存じます。ただいまお読み上げになりましたような内容の考え方を、経営者が明らかにすることはノーマルであるかどうかという判断になりますと、これは法律問題、私どものやや所掌を越えた問題のようにも存じますので、いまにわかに私の所掌する範囲の問題として申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  81. 山本政弘

    山本(政)委員 私は、いま申し上げたことが労働基準法三条に直接に抵触するとか、そういうことを申し上げたのではなくて、そういう考え方が事業主にある場合に、それが第三条に抵触する行為というものを惹起するおそれがあるのではないか、だから事業主としては一体そういう考え方を持つことが正しいのかどうか。第三条に触れるか触れないかはあとでお話をしたいと思います。そのことについての考えを実はお伺いいたしたいので、この点についてはひとつ大臣にもう一度お伺いをいたしたいと思います。
  82. 小川平二

    小川国務大臣 御質問の御趣旨は、そのような見解を使用者が表明することは、三条違反の行為を誘発するような雰囲気を醸成するおそれがあるから、そういう意味で好ましくないと思うがどうか、かような御趣旨であろうかと思いますが、さような御趣旨であるならば、私も同感でございます。
  83. 山本政弘

    山本(政)委員 もう一つ事例を申し上げたいと思います。つまりなぜこういうことを申し上げたいかと申しますと、前回も質問をいたしましたけれども、労使のトラブルというものが、事業主の考えによってかなり起きる可能性が多いということを申し上げたいからであって、ここにありますのは、やはりキューピーの会社の社外で配布せられたものであります。そしてこれは率直に申し上げまして、会社がまいたかどうかわかりません。しかしそのときの状況など考えますと、これは会社のほうでまいたのではないかという疑いも実はあるから申し上げたいのですけれども、冒頭に「真実はこうだ」ということが書いてありまして、そして「暴力行為は行はれていない」、こういっているのです。この文書によりますと、「休憩時間が終り作業に入る時、同僚がポンと肩をたゝいて「サァ仕事をしよう」と言うと、これを暴力をふるわれたと主張し、暴力ではないというと、見解の相違だという。」ということで、つまり暴力行為を否定しておる。しかもこのチラシをまいた方々の名前が五人ここに書いてありますけれども、これはいずれも会社をやめられた人たちの名前を、姓と名前というものを継ぎはぎに合わせて出しているのです。しかし、ここに書かれておるようなことがもしも事実だとするならば、組合員がからだを悪くして入院をするような事態も起こらないだろうし、それから出勤することをいやがるというような事態も起こらないだろうし、ましてや、もうすでに三十七年から裁判にまで持っていったような事件というものは起こってこないだろうと思うのです。  まあしかし、それはともかくとして、どうも私が考えますと、経営者のほうが一貫して一つの偏見を持って労働者側のほうに当たっておるような気がするわけで、それを申し上げたかったから言ったわけですけれども、四十二年の一月七日に再就業命令が出て、そして会社は七日に三名の人たちに就業をするということで、実は一応の手続をとったわけです。ところが八日の日に今度は復職の手紙が内容証明で来た。ところが九日の日に今度は再解雇の通知がまた来たということで、七日に復職、そして八日に本人の手元に復職の手紙が届いた、そして九日にもう一ぺん再解雇をしておる。そういうことになりますと、先ほど申し上げたことから、どうもただこれは手続だけを一応やって、そして初めから再解雇を目的にした手続をやってきたのではないか。非常に手の込んだやり方をやってきておるのではないか、こういう気がするわけです。そしてこれは中労委の救済命令を履行しないための脱法行為ではないかというふうに私は実は考えるわけですけれども、その点はどうでございましょう。
  84. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま先生御指摘になりました組合三役の関係でございますが、東京都労委から不当労働行為事件として争いがありまして、中労委におきまして救済命令が出ておるわけでございます。この救済命令に対しましてもし使用者側が異議がある場合には、これに対して裁判所に提訴をいたす権利法律上保障されておるのでありますが、使用者側のとりました態度は、救済命令が出ました後に、御指摘のように一月の七日に原職復帰をさせる意思表示がありましたが、私どもの資料では、翌々日の一月の九日にまた再解雇というような形をとっておるのであります。ところが、その裁判におきまして中労委命令に対しては一切争っておりませんので、四十二年の一月の二十日ぐらいだったと思いますが、法律の規定に基づきまして中労委の命令が確定してしまったわけであります。したがいまして、一応原職復帰の形をとって前の中労委の救済命令は満たした、しかし別の理由で解雇した、こういう意味ではなかろうかと思うのでありますが、法律的には、いずれにいたしましても中労委はこの三名を原職に復帰しろということを命じておりますので、しかもそれが確定をいたしましたので、これは明らかに確定をいたしました中労委命令の違反でございます。したがいまして、中労委におきましては、七月になりまして東京地裁に対しまして、中労委の確定命令に違反をしておるという通知をいたしたのであります。東京地裁は本年に入りまして、一月の二十五日にキューピーの会社に対しまして、現実に原職復帰をさせておりませんので、中労委の確定命令の違反といたしまして二百万円の過料の決定をいたしております。これに対しまして、三月になりまして使用者側から即時抗告をしておる。現在この即時抗告をめぐりまして東京高裁で審理されておるという状態でございます。おっしゃいましたように、どちらかの側から見ましても、どのような形をとりましても、労働委員会の確定命令違反である、なすべきことではないということは明確に申し上げられると思います。
  85. 山本政弘

    山本(政)委員 どうもありがとうございました。その辺でたいへん明確になりました。  もう一つお伺いいたしたいのは、解雇取り消しということは原職復帰ですね。その原職の復帰というのは、一体実態からいうとどういうことを原職の復帰というのか。私は、解雇の撤回ということだけが原職の復帰ではない、職場に本人が戻って少なくとも働くということが原職の復帰だと思うのですけれども、この場合は、一月七日に撤回をして、八日にその本人の手元に通知が届いておる。おそらく九日は出るつもりだったかもわからないと思うのですけれども、それが九日にまた再解雇ということになっておるとすれば、これは原職復帰あるいは解雇の撤回ということに実態としてはならないと思うのですけれども、その辺をどうお考えになっておるか、あわせて御答弁をお願いしたいと思う。
  86. 松永正男

    ○松永政府委員 中労委の命令におきましても、同人らが解雇された日以降解雇されなかったと同様の状態を回復させなければならない。こういうことを言っておりますので、そこでその内容といたしまして、「原職又は原職相当職に復帰せしめる」ということを言っておりますので、通常の場合はもといた職場に帰す。しかしいろいろの事情がございましょうから、客観的に見まして、もといた職場に相当するような職場ということが命令の内容でございます。
  87. 山本政弘

    山本(政)委員 三名に原職復帰ということで解雇の撤回がございました。これは話が違いますけれども、前の組合役員でなくて、若林さんほか二名のことですが、若林さんのケースを申し上げますと、原職復帰をしていま働いておるのですけれども、会社のほうで毎日その日その日に担当の上司が業務についての指示を与えておる。だから少なくとも若林さんの場合には、その日その日によって仕事の内容が違っておる。これはやはり先ほどお話があった原職の復帰にならないのではないか、そういうことが一つ。  それからもう一つは、会社の人たちが若林さんの存在を無視をしてほとんど口をきかない。たまたま口をきくと、業務上の命令によって上司が指示をするというようなことで、これもたいへん常軌を逸した行動であるし、常軌を逸した会社の態度だと思うのですけれども、その辺はどうお考えになっておりますか。
  88. 松永正男

    ○松永政府委員 私どもも、復帰をいたしました一名の方につきまして、どのような就労状態であるかというところまで事実関係を的確にはつかんでおりませんが、一般論といたしまして、原職というのはもといた職場、それからその職場がたとえばもうなくなってしまったというような場合、あるいは係争中に他の従業員が就業をしておって、その人を配転しなければそこへ帰れないというような事情、いろいろな事情があるかと思うのでありますが、そのような事情全体を見まして、原職または原職相当のところへ帰すのが至当である。そうしてまた、いまおっしゃったような労務管理の態様におきまして、これも具体的にはお話だけでは私判断できないのでございますが、一般的に、たとえばその職場は毎日毎日作業が変わって、ほかの方もやはりそのようなことで毎日作業命令が与えられるというようなことであるのかどうか。それからまた、一緒に働いておられる他の従業員の方との関係につきましては、これはどのような雰囲気になっておりますかわかりませんが、そのこと自体は、それだけであれば中労委の不当労働行為案件との関係は必ずしもない。ただし、その場合に使用者側が、たとえば旧労の組合員であるがゆえに差別的な取り扱いをするということになりますと、やはり不当労働行為という問題も起こってくる可能性があるというふうに思います。
  89. 山本政弘

    山本(政)委員 冒頭に申し上げました三条にやはり抵触しますね。しませんか。つまり不当労働行為ということが成り立つかどうかということです。
  90. 松永正男

    ○松永政府委員 労働基準法三条と労働組合法にきめてあります不当労働行為とは一応関係がございません。したがいまして、三条に違反するかどうかということは基準法の解釈でございますが、組合法の第七条におきまして、使用者が、労働組合員であること、あるいは労働組合を結成しようとしたこと、あるいは労働組合の正当な行為を行なったこと等を理由にして差別的な取り扱いをいたしますと、七条違反で不当労働行為になるということでございます。
  91. 山本政弘

    山本(政)委員 この事件の発端になったのは、従業員就業規則、これは昭和三十三年四月一日に会社側でつくったものです。あえてそう申し上げますけれども、その従業員就業規則にのっとったと思うのですけれども労働基準法の二条に「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」こう書いております。そこで、三十三年四月一日の使用者によって作成された就業規則というものが、何か今回の解雇に利用されておるという言い方は不適当かと思いますけれども、それに基づいて解雇されているような気がいたしますが、昭和三十七年七月六日に組合が結成されて、その後にたしか就業規則をつくろうとしたことがあると思うのです。しかし、ともかくもいま適用されている、つまり解雇の理由になっているのは三十三年四月一日の就業規則でやられておると思うのですけれども、この就業規則は合法であるかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
  92. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御質問の内容を伺っておりますと二つほどの部分があると思いますが、一つは、労働基準法第二条第一項の「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」という点の問題と、それから就業規則の手続その他が有効であったかどうかというふうにいま拝聴いたしたのでありますが、労働基準法上、就業規則は使用者が制定するというたてまえになっておりまして、労働者の過半数を代表する者の意見を聞く、こういうたてまえにたっておるわけでございます。そこで所定の手続がとられておりますと、労働基準法第二条第一項違反の問題は、就業規則に関する限りは出てこないと思うのでございます。  ところで、就業規則作成について手続上違反があったかどうかでございますが、私ども捜査いたしましたところによりますと、いま先生が御指摘の三十三年のその月日に相当するものについては、実は承知しておらないのでありますが、三十三年におきましては、十一月十二日に就業規則の一部改正をした、そして従業員代表氏原という人の名前で意見書が添付してあったというふうに承知いたしております。この方が労働者の過半数を代表するものでありますれば手続上欠くるところはない、かように存じます。
  93. 山本政弘

    山本(政)委員 三十三年四月一日に就業規則がつくられている。そして三十八年十一月一日に就業規則が実は改正されているわけです。私はなぜそういうことを申し上げるかというと、三役の再解雇の時点というのは、先ほど申し上げたように昭和四十二年一月九日になされているわけです。そうすると、一月九日になされた再解雇というものは、昭和三十八年十一月一日の就業規則にのっとってしかるべきだと私は思うのです。しかしそれは、三十三年四月一日の就業規則四十五条の四項にのっとって再解雇がなされている。これははっきりと会社が、再解雇の理由について、就業規則四十五条の四項に基づいてするということが出ているわけです。そうすると、効力がなくなった就業規則に基づいて再解雇をしているのだ、私はそういうことになるのではないかという感じがするわけです。  しかも、三十三年四月一日の就業規則というものは、一方的に会社がやったものであります。つまり使用者は労働者を代表する者の意見聴取を行たっておらない。そのときの組合の人数というものは六百九十四名、そして第一組合は四百六十名であったわけです。そうすると、当然私は第一組合の人たちの意見を聞くべきだと思うのですけれども、その意見が聞かれておらない。しかも会社は、親睦団体である温交会に意見聴取をした、こういうふうに言っているわけです。同時に、この温交会は、いま申し上げたように全従業員の親睦団体で、会長は社長が任命をする、しかも職制も加入している、こういうことなのです。そうすると、そういう就業規則を適用することによって再解雇をすることがはたして正しいのかどうか。もう一つは村上さんもお話しになったように、九十条でいう労働者の過半数を代表する者の意見を聞いて就業規則がつくられるんだとするならば、過半数を占めておる組合の意見を聞かずになされたこの就業規則というものによる再解雇というものはやはり無効ではないか。だから私が申し上げたいのは、一つは就業規則そのものが効果がない、効力のあるものではなかったということを実は言いたいわけで、そういう就業規則にのっとって再解雇をやっていることがはたして正しいのかどうか、このことをお伺いしたいのですけれども、この点についてひとつお考えを聞かしていただきたいと思います。
  94. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 私ども調査では、三十年十一月二十二日、三十三年十一月十二日、三十八年十一月十四日という日付で改正がなされたという調査がございますけれども、いま御指摘の三十三年四月一日の改正という点につきましてはちょっとわかりかねますので、さらに調査をいたしてみたいと思います。  ただ御指摘の問題は、就業規則に基づく解雇という問題と、それから不当労働行為として扱われました解雇という問題と、二つあろうかと思うのでございます。そこで、就業規則に違反してなされた解雇という問題でこの問題を処理するのが妥当であるか、不当労働行為として中労委の結論が出ておるわけでありますから、そういった観点から問題を処理するのがいいのかという問題がございます。これを御承知の上での御質問と思いますが、なお実態をよく調べまして検討してみたいと存じます。
  95. 山本政弘

    山本(政)委員 中労委の救済命令によって原職に復帰された人は全部で六名ですね。そうしてそのうちの三名だけが再解雇された。そうすると、その三名の再解雇の理由、これは基準局長か労政局長か、どちらにお伺いしたらいいかわからないのですが、もう一ぺん確認したいのです。どういう理由で再解雇になっているんですか。
  96. 松永正男

    ○松永政府委員 中労委から東京地裁に対しまして、不当労働行為救済命令不履行通知というのが出ておりますが、その通知の中に記載されたところによりますと、「会社は、前記ラッピングマシンヒーター切断事件は、組合の謀議により発生したことが、本件救済命令交付後判明したので、その当時の組合幹部三名の責任を問い、再度解雇したものであると説明した。」、こう書いてございます。ラッピングマシンヒーターの切断事件という、そのラッピングマシンというのは私よくわからないのでありますが、そのような理由のようでありまして、あとから判明したのでその責任を追及して解雇をした、こういう言い方になっているようでございます。
  97. 山本政弘

    山本(政)委員 これは基準局長にお伺いしたほうがいいのかもしれませんが、つまり就業規則を一つくるときに、あるいはそれを変更するときに、労働者側で使用者側が提示した労働条件に不満な場合に、これに対抗するためにラッピングマシンの電源をかりに切断をするというようなことは、これは合法であるか違法であるか、その点どうでしょう。
  98. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 単に就業規則作成上だけの問題にとどまらないように思いますが、就業規則は、御承知のように、労働基準法第八十九条の規定によりまして、使用者が作成し、そうして労働者の過半数を代表する者の意見を聞く、こういう手続になっておるわけでありますが、その使用者の定める就業規則の条件に同意しない場合には、通常の場合は、労使の間に意見の不一致を見るということで労働争議の状態になるわけでございます。その労働争議解決の手段といたしまして、これは先生御承知のように、争議行為等があるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、法の予想しておりますのは、就業規則のより高次の労働条件に関する規範として労働協約を予定しておるわけでございまするので、労使の間で意見がととのわないという場合のさらに上位の規範設定としては、争議権というものを背景にいたしました集団的な交渉の場におきまして労働協約の設定ということが望まれるわけでございます。そこで、就業規則に反対だからといって機械を打ちこわすことが適当かどうかというような意味じゃないと私は思うのでございますけれども、解雇決定までのいろいろな背景があって、それが就業規則の解釈上どのように情状酌量すべき条件であるかどうかということになりますと、話は別であると思います。ただ、これは三十三年当時の就業規則かどうか存じませんが、私どもが会社のほうから調査のために得ました就業規則を見ますると、五十八条の第八項に「機械設備を毀損し又は機械の運転を停止する等、故意に作業遂行を妨害した時。」という条項がありますので、これは私の推定でございますけれども、この条項が問題になり得るのではなかろうかというふうに想像するわけでございます。
  99. 山本政弘

    山本(政)委員 時間がありませんので、非常にちぐはぐな質問になって申しわけないのですけれども、少なくともこのことだけは言えると思うのです。昭和三十八年の、いま局長は十一月の十四日とおっしゃいましたけれども、これは私は十一月の一日でも十四日でもいいと思いますが、その当時の従業員は約五百名、そして第一組合が約二百三十名、第二組合が百五十名おったと思うのです。その中で第一組合の約二百三十名の人たちの意思が無視されて就業規則がつくられたのではないか、私自身の調べた範囲ではそういう疑義がありますので、これはぜひひとつ御調査を願いたいと思います。  それから再解雇の理由として、四十五条の四号を理由にして、四十六条で諭旨解雇をやっていると思いますので、これは基準局長に、この就業規則をあとでお渡しいたしますので、一ぺんこれも再確認していただきたい。  ともかく、いずれにしても、ラッピングマシンを切断するということについても、ここに文書がありますが、何か会社側が従業員の女の子に強要して、ラッピングマシンを切断したとあなたが言ってほしいとか、言いなさいということを強制したという事実も、私は聞いております。そういう意味でこのキユーピーの事業主のあり方というものは、冒頭に申し上げた考えに基づいて運営されておるとすれば、これはたいへん正常を欠くものだと思いますので、この点ひとつ監督官庁として十分に指導をしていただきたい、こう申し上げて私は質問を終わりたいと思います。
  100. 八田貞義

    八田委員長 加藤万吉君。
  101. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 アンモニアの第二次大型化計画について、商工委員会あるいは予算委員会の各委員会で、それぞれ問題点の指摘をしてまいりました。その討論経過を経て、順を追って、以下、現況についての問題点並びに通産省の考え方をお聞きをしたいと思います。  分科会で、最近の臨海工業地帯の拡大といいましょうか、これに伴って都市の開発が集中化をしているのではないか、こういう質問を行ないました。通産大臣は、これからの各地方、地域の開発問題から見て、都市の集中化の傾向については慎重を期したい、こう答弁をされました。そこで私は、最近の化学工業の構造変化に伴う都市の集中と後進地域の開発問題について、一体どういうようにお考えになっているのであろうかということを、まずお聞きしたいと思います。  具体的に、いまアンモニア問題で起きておりますのは、たとえば東洋高圧の砂川であるとか、あるいは日東化学の八戸、当面の一番中心であります日本化成の設立に伴って東北肥料の秋田工場等が問題になるわけであります。そこで、秋田市におけるいわゆる新産都市の指定に伴って、アンモニアの大型化によって、東北肥料がアンモニア部分を日本化成に吸収されてまいりますから、必然的に地域的に産業の縮小ということになるわけであります。秋田は、東北肥料に限らず、昭石の平沢あるいは日石の秋田石油化学、尾去沢等々がいわゆる縮小ないしは閉鎖の傾向にあるわけです。  そこで最近、通産省で工業立地計画の調査を始められるというように新聞で報道されております。一体この工業立地計画というものと、新産業都市なかんずく化学産業における構造変化、化学肥料工場の集中化、これに伴う行政指導を、こういう新産都市なりあるいは工業整備特別地域等の地域についてどのようにお考えになっているか、化学工業局長から聞きたいと思います。
  102. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘いただきました問題、非常に重要な問題でございまして、同時にまた、非常に範囲の広い工業立地計画あるいは新産都市というふうなものとの関連性の問題でございますが、実は私ども企業局のほうで、産業立地適正化法と申しますか、そういうふうな法案を準備いたしておったわけでございますが、その間におきます基本的な考え方と申しますのは、やはり日本の都市が過密化しておる、その過密化現象をどのように解消していくか、同時に工場適地につきまして、広く国内全体の国土開発と申しますか、そういう角度から見直して見る必要があるのではないだろうかというふうな基本的な考え方から、出発いたしておったわけでございます。  いま具体的に御指摘の肥料の大型化の問題にからみ合いまして、そういう問題についてどのように考えるかという御質問であろうかと思うわけでございますが、御承知のとおり、肥料の大型化の問題というのが設備の廃棄を伴う非常に大きなドラスチックな構造改善計画でございます関係上、どうしてもここには現実論として、原料関係の輸送事情に非常にふさわしい港湾と申しますか、そういうふうなものが必ず伴わなければならないというふうなことになろうかと思うわけでございます。したがいまして、たとえばいま具体的に御質問いただきました日本化成の問題につきましては、工場計画としては小名浜のほうにきまっておりますけれども、ただこれが小名浜のほうに立地するということによって、現にございますところの東北肥料の秋田工場のほうが閑散としてしまって、そしてそこでは工業が行なわれないということになるのもいかがと思われますので、秋田工場につきましては、いまのアンモニアそれ自身は小名浜のほうで製造いたしますけれども、秋田工場自身のさらにいろいろな部面につきましての拡充計画、これを確実に打ち立てていただきたいというふうな要請を東北肥料のほうにいたしたわけでございまして、東北肥料といたしましても、秋田につきまして相当の拡充計画を準備いたしておるわけでございます。  基本的に申し上げまして、こういう大型化問題に対応いたしますと、先ほど申し上げましたような、港湾施設等の問題が非常に大きな問題になるわけでございますが、ただ、これがどこかに転移するということによってどこかにさびれる町が出てくるということで、やはり全国の国土の総合開発の面から申しましてもあまりりっぱなことでないというふうに考えておりますので、そういうふうな線に沿って問題を処理してまいりたい、このように考えております。
  103. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 具体的に秋田――これからあと出かせぎ問題で秋田の先生方がお話しになるようですが、秋田の労働力はそういう意味では比較的豊富にあるわけですね。そして秋田の市へ行けば、御承知のように尾去沢がありますから、硫酸を伴う工場の設置という条件については、きわめて原料的には非常にいい条件がある。問題は、最近いろいろ取り上げられております飯島に港をつくるという問題ですが、政府はどういうふうに財政投資をして、同時に硫酸製造を――硫酸を使って燐酸なら燐酸の工場を大型プラントでつくるというようなことも一つの方法ではないかと思う。日本全体の肥料状況から見て、これは必ずしも適地条件かどうかは別としまして、そういう角度で東北肥料内部の新しい事業分野を開拓するということもさることながら、同時に、そういう立地条件に合った、しかも燐酸にいたしましても大型化の計画が進んでおるわけですから、それに合わせて集中化をされる肥料部門と、スクラップ化される工場とその都市の周辺、これを新しい新産都市として拡大する、そういう方向が化学工業局の行政指導といいましょうか、あるいは省内の議論といいましょうかに持ち出されてしかるべきではないか、こういうふうに思うのですが、この点はどうでしょう。
  104. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話ございましたように、秋田地区には低廉な硫酸源があるわけでございますので、この秋田地区におきます低廉な硫酸源を基盤といたしまして、東北肥料の秋田のほうの工場におきましては、硫酸、塩酸、あるいはまた燐酸、過燐酸というようなものを、最も立地的に有利である硫酸源というものを活用して、新しく工場の拡充計画を現在つくりつつあるわけでございます、お話しのように、この地区自身はそういう状況でございますが、同時にまた、いまのそういう燐酸を中心にいたしました大型化問題というふうなものも検討する必要があるということで、そういう点につきまして、実はまだ結論を得ておらないわけでございますけれども、このアンモニア計画につきまして、ある程度の見通しの問題と並行いたしまして、そういう大型化問題につきましても積極的に取り組んでまいりたい、このように考えているわけでございます。
  105. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 当然のことでしょうが、燐酸もありましょうし、過燐酸部門の新潟の工場もありましょうし、そういう観点で、肥料部門の非常な構造変化といいましょうか、それに伴ってさびれていく都市といいましょうか、あるいは工場といいましょうか、これの振興策と雇用対策というものを常に並行的に御検討の課題の中に入れていただきたい。同時に、工業整備特別地域なり、あるいは最近の工業立地計画の調査の中にこの問題も組み入れて御検討をしていただきたい、こういうふうに思います。そしてこれを具体化していくのには、通産大臣が国会で言われましたように、いわゆる慎重を期して運ぶということになろうかと思いますので、より一そうの検討を行なっていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、第二次大型化の現在申請しているグループないしは申請しようというグループは、十グループですか。
  106. 吉光久

    ○吉光政府委員 そのとおりでございまして、十グループでございます。
  107. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 この申請をいつごろ出されるかによりましょうけれども、おおむねのめどとして、いつごろまでに各社の申請の審査を行ない、同時に、アンモニアのワクを含めて認可を行なう予定ですか。
  108. 吉光久

    ○吉光政府委員 この大型化の目標としております年次は、四十六肥料年度でございます。したがいまして、施設建設にはおおむね二年間かかるという前提で考えまして、今年度及び来年度の二年間程度にわたりまして申請が出てくるものだ、このように判断いたしております。
  109. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 申請はそう出るでしょうけれども、通産省としては、四十六肥料年度にあわせてやるとすれば、いつごろまでに各社の認可――いわゆるワクを含めて認可を行なわれるその時期的なめどはいつかということです。
  110. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほど申し上げましたような申請に従いまして、一応の目標といたしましては、この問題についての最終結論を、おそくとも来肥料年度一ぱいには出さなければならない、こういうふうに考えております。
  111. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 一番早い申請、同時に認可は東洋高圧ですね。  それから最近、日本化成が申請を出されておりますが、日本化成についてはいつごろまでにそのワクと認可をされる予定ですか。
  112. 吉光久

    ○吉光政府委員 現在、最後の調整をやっております。したがいまして、そうおそくならない時期に最終決定ができるのではないか、このように考えております。
  113. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 最後の調整というのはどういう内容ですか。
  114. 吉光久

    ○吉光政府委員 何と申しましても、この大型化計画で一番重要なポイントと申しますか、それは将来の設備過剰につながっては困るという意味から、設備の大きさを一応千トン基準ということにいたしておりますけれども、その会社の過去の生産実績等から判断いたしました場合に、どの程度のものが最も適当であるか、あるいはまた、そこで原料源をどういうものを使うのかということにもからむわけでございます。そこらの問題を最終的に判断いたしたいという点が第一点でございます。  第二点は、やはり今度の調整要領の中でもうたっておりますように、労働力の問題につきまして、どういう考え方でどういうふうに、たとえば余剰人員等が出ます場合に、それをどういうふうにどの部門に吸収してまいるかというふうなことにつきまして、最終的に的確な判断をやりたいという意味で、以上の二点について目下問題を煮詰めているところでございます。
  115. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 後半の第二点の問題はあとで聞きますが、第一点の肥料のオバーフローの問題ですが、それに関連して、三菱化成の黒崎の計画でこの総ワクの認定がおくれている、こういうことはありませんか。
  116. 吉光久

    ○吉光政府委員 現状におきましては、黒崎工場との調整問題ということは考えておりません。
  117. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 アンモニアのワクの問題はきわめて重要な問題で、これからの各社のいわば命運をかけたような課題だろうと私は思うのであります。  そこで二つお聞きしますが、一つは、第一次アンモニアの大型化計画のときに、各社の増ワクのワクの割当がありましたが、それが各社それぞれ吸収する能力のなかったところがありますね。たとえば日本水素の場合には、そのはみ出たワクを三菱化成の水島に回したということがありますが、今度の場合、そういう過去、第一次大型化計画に基づくアンモニアのワクと、それから第二次の大型化計画に基づくワクを戻すとか戻さないとかいうことは考えられますか。またそれが、日本化成の第二次大型化のワクの問題をめぐって、あるいは認可をめぐっておくれているという原因にはなっておりませんか。
  118. 吉光久

    ○吉光政府委員 今回の大型化計画におきましては、スクラップ・ビルドと申しますか、小型の小さな設備をスクラップ化しまして大きなものをつくるというような基本方針でいるわけでございまして、前回の第一次におきましては、そういう意味でのスクラップ化ということにはあまり大きなウエートを置いていなかったわけでございます。したがいまして、前回の第一次の場合におきましては、一律に二割増というふうなことでやったようでございます。したがいまして、ワクの貸し借りというふうな問題、それは二割増の中で一部を委託生産をして、どこかで大きな設備を使ってもらったほうがかえって安いアンモニアが取得できる、こういうことから、そのワクを一時他の会社に預けるというようなことがあったかと思うわけでございますが、今回におきましては、先ほど申し上げましたような趣旨で処理いたしておりますし、同時にまた、たとえば先ほどお尋ねがございました日本化成の場合におきましても、中小の専業の肥料メーカーが一体となってある一つプラントをつくるというような場合におきましては、その場合の一つのメリットと申しますか、何かの恩典をそこに与えたいというふうな基本的な筋の考え方も入っております。したがいまして、以上のような感覚で、要するにスクラップ化する能力と、また新しく生産増強する能力、それに先ほど申し上げましたような中小の肥料専業メーカーと申しますか、そういうものの具体的な形での大型プラントの建設というものにつきまして特別のメリットを与える、こういう方向で処理いたしたいと考えておりますので、ワクの貸し借り問題というふうなことは起こってまいらないだろう、このように考えております。
  119. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 通産省は、いわゆる千トンを一つのスタンダードにして、その前後の計画ということ。聞くところによると、日本化成については、九百トン前後のアンモニアのワクで云々というような話であります。そうしますと、私は、これは弱小資本の立場を多少考えながらの発言でありますけれども、千トンのワクがあるならば、かつて第一次の大型化で大資本のほうは貸し借りが百トン前後あると聞いておりますが、あるとすれば、千トンのワクに戻して、千トンのワクで日本化成を発足させるというのも一つの方法ではないか、こういうように思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  120. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話ございましたように、日本化成の計画では千トン計画ということで申請が出てまいっておるわけでございますけれども、私ども率直に考えまして、パー・デーでございますが、九百トン程度が妥当ではなかろうかというふうに考えておるわけでございますが、と申しますのは、この計画の場合におきましては外熱に低廉なCOGを使用する、そういうふうな計画でございます。他のプラントの千トンプラントに匹敵する低廉なるコストで製品が仕上がるであろうというふうに想像できるわけでございます。と同時に、需要の状況から見ました場合に、千トンプラントをつくりました場合には、少なくとも操業当初におきまして相当稼動率が低くなるのではなかろうかという点を心配いたしておるのでありまして、むしろ操業当初から相当高い稼動率で工場が動くことのほうがより効率的ではなかろうかという判断をいたしておるわけでございます。もちろんまだ最終的に九百トンというふうに決定いたしたわけではないのでございますけれども、九百トン程度が妥当なところではないであろうかというふうな考え方を持っておりますことは事実でございます。
  121. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 まあ企業の側ではないんですから、これ以上この問題は追及しませんが、私はあとで触れる完全雇用を守るという立場から、あるいは肥料専業メーカーがそっちを向いて、多角的な経営をしている資本との競合関係が起こるわけですから、それに耐え得る体質というものを通産省の指導体制の中で与えていくということが必要ではないか、この点は特に留意をして本問題の処理に当たっていただきたい、こういうように思います。  それから、東洋高圧が堺の計画が千トンで認可がおりたわけですが、いま一つのワクの問題は、やはり今度の工業用アンモニアをどのように各社に分配するか、ワクをやるか、これは硫安協会で各社別の話がまとまらずに、通産省の指導にまかせるということに私ども仄聞をしておるわけです。通産省は工業用アンモニアについてはそのワクをいわば決定をする権限を業界から与えられておる。したがって、そのワクの決定なしに各社の認可をおろすことは少し問題の焦点を煮詰めずして行なっているんではないかというふうに考えるわけです。そこで、工業用アンモニアの、まあ通産省の資料をいただきましたから増設のワクはわかっておりますが、そのワクを各社にどういう形で割り当てられようとしておるのか、数量的にはどうなっておるのか、この辺をお伺いをしたいと思います。
  122. 吉光久

    ○吉光政府委員 非常にむずかしい問題でございますけれども、先生御存じのとおり工業用のアンモニアの需要先がカプロラクタムでございますとか、あるいはアクリロニトリルでございますとか、硝酸でございますとか、尿素でございますとか、いろいろあるわけでございますが、そういうふうな製品を前提にいたしまして、過去におきますところの生産実績、当該工場において過去においてどの程度の生産実績を持っておったかどうか、さらにまた需要先における将来の設備増強がどういう形で推移するかということを念頭に置きました上でただいま十の計画が提案されておりますので、十の計画に対して公平なる配分をいたしたい、このように考えておるわけでございます。と申しますのは、ともいたしますと、工業用ということに籍口されまして全体の肥料用のアンモニアの需給が圧迫を受けるということにたりますと、これまたゆゆしい問題でございますので、いま申し上げましたような基本的な考え方で処理いたしたい。このように考えておるわけでございます。
  123. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 かつて宇部興産が工業用のアンモニアを肥料用に転換をしましたけれども、これはまあ市況が強いときですからいいと思いますが、もし工業用のアンモニアを公平に分配する、こう言われますけれども、結局は使用の先ですね。需要先に応じて、その工場規模によってワクが割り当てられるということになるわけですね。そうしますと、まあこんなことは少ないと思いますけれども、肥料用のアンモニアにもし工業用のアンモニアが――たとえば旭化成がいま需要先として相当あるわけですが、その旭化成が工業用のアンモニアをかりに申請したとしまして、そのワクが認められるということにたると、旭化成に送る工業用アンモニアは各社としてはオーバーフローになるわけですね。それが肥料用の需給に回されるということはないと思いますが、これはいかがでしょう。
  124. 吉光久

    ○吉光政府委員 旭化成におきましても工業用アンモニアの計画もあるやに聞いております。ただ先ほど御指摘いただきましたように、旭化成は従来工業用アンモニアの大きな需要先でございます。したがいまして、ここに供給いたしておりました各社のアンモニア供給計画に非常に大きなそごを与えるということになっては、これまた御指摘をいただきましたとおり大きな問題でございます。そういう意味で、実はこれはまだ申請を見ていないわけでございますけれども、旭化成の計画が出ました場合には、特にいまのような点に着眼いたしまして慎重な処理をいたしてまいりたい、このように考えております。
  125. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 まあ私は率直に言って、東洋高圧なり日本化成にワクを与える前に、工業用アンモニアはいかにあるべきかということを――通産省がそれぞれ各社別にワクをあげて、そして認可をするということが正しいあり方ではないかというように思うのですよ。しかし現実には先発グループが資本投下を行なっているわけですから、それほど私は詰めようとは思いませんけれども、特に旭化成の問題が起きたときには、それがいま答弁がありましたような形で起きる可能性がありますから、これはこれから起きるあとの日本化成を加えて十グループのワクあるいは認可については特段の配慮をしてもらいたいと思うのです。また私どもも、もしその次元で問題が起きるならば再び国会で本問題を取り上げざるを得ない、こういうように思いますので、ひとつ慎重な配慮をしていただきたいというふうに思います。  それで、先ほど話がありました第二点の問題、いわゆる大型化によって人員が完全に吸収されていく、やはりそこに失業問題が起きないということが調整要綱の第五項の五号に書かれておるわけです。ところが現実に日本化成の場合は近々に認可が下りるということですが、そうなりますと、人員の吸収がその次元で完全に行なわれているというふうに通産省が判断をしなければいかぬわけですが、通産省側に提出されている企業の人員吸収は完全雇用が守れるという形になっておりますか。
  126. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在最後の詰めをいたしておるわけでございます。ただいままで話を、これは会社側から伺ったわけでございますけれども、伺いました範囲内におきましては、おおむね吸収の見通しがあるというように考えていいのではたいであろうかというふうに判断いたしております。しかしまだ最終的な決定はいたしておりません。
  127. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 最終的な決定がしてないということで答弁を逃げられちゃうと困るのですがね。いまこの問題をめぐって労使間でストライキが起きているわけですね。もちろんこれに関連して賃金問題もありますが、とりわけ人員問題というのは労使間ではきびしい問題として取り扱われているわけです。そこで私が予算委員会で質問しまして、その後通産省側から、本問題についてはそのつど御相談に応じましょうということで資料をいただきまして、いろいろ検討してみました。確かに合理化後の人員は吸収ができるというように数字的にはなっているわけです。ところが、たとえば東北肥料の例をあげれば一番いいわけですけれども、おたくから私どもにいただきました資料では、たとえば本社人員は七十二人、そして合理化後も本社は七十二人、こういうようなことになっているわけです。労使間の話では本社は七十二人だけれども、合理化後は四十人になる、要吸収人員が本社だけでも三十二人ある、こういうわけです。通産省からいただいた資料と労使間で出ている数字を突き合わせてみますと、これは正確な数字ではありませんから多少そごがありますけれども、東肥の場合は、現人員が九百九十一名、合理化後は七百七十六名、吸収人員である二百十五名と自然退職するであろう二十五名があるから、結果的に全員が雇用できる、こういうようにおたくからは説明がありました。ところが組合側では、合理化後は会社が提案しているのは五百九十六名。二百十五名は通産省に説明しているように確かに吸収します。それから自然退職が三年間に六十二名、それを差し引いてまいりますと、百五十五名ぐらいがどうしても吸収できない人員として余る、こういうことをいま団体交渉の席上で言っているわけです。数字的には自然退職のとり方によりましょうけれども、会社は百二十五名どうしても最終的には吸収ができない、こういうことにいま言っているわけです。もしこれが事実だとするならば、通産省はこの認可を出しますか。調整要綱の第五項第五号に基づいて、こういう状況でもあの調整要綱の指導に適合するという立場で認可を出しますか、いかがでしょうか。
  128. 吉光久

    ○吉光政府委員 具体的な数字での御質問でございましたので、数字で御返事申し上げなければならないわけでございますけれども、私ども伺っております会社計画の数字は、今回設備の廃棄に伴って、直接、間接出てまいる余剰人員についての計画書が出されておるわけでございまして、いまお尋ねいただきました数字は、それ以外のさらに一般部門等における合理化人員と申しますか、そういったものも含まれておる数字ではないであろうかというふうに考えるわけでございます。  この調整要領で直接的に扱っております問題は、これはあくまでも、設備のスクラップ化に伴います。それに従事しておりました直接、間接の従業員、これについて吸収の見通しがあるということを前提にいたしておるわけでございます。もちろん一般的な人員の合理化計画等につきましても、それぞれ慎重な配慮が必要であるということは当然であろうと思うわけでございますけれども、この調整要領自身は、先ほど申し上げましたような線でできておりますので、一般的な、そういう会社が新しくできます場合等におきまして、この大型化問題と切り離された形で行なわれます人間問題、労働力問題と申しますか、こういう点につきましては直接触れておらないわけでございまして、ただ、お話しのような問題が円滑に進むということは私どもも同じ立場でございますので、もし問題があるようでございましたならば、具体的な問題として配慮いたしてまいりたい、このように考えるわけでございます。
  129. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 東肥の場合アンモニア部門がなくなって、本社は現人員で、七十二人でその後も運営するというのですよ。これが妥当だと思いますか。アンモニア部門がなくなって、基幹部門がなくなって、本社人員は七十二人。通産省に出しているのも七十二人、合理化後も七十二人になります。正しいと思いますか。間接部門ですよ、これは。
  130. 吉光久

    ○吉光政府委員 私ども実は、会社の職員の七十二名が、合理化後におきましても七十二名という点につきまして、これを圧縮しろというふうなことは、会社のほうに申し上げるわけにもまいらない立場にあるわけでございます。あるいは将来これが合併への動きというふうなものもあるやに聞いておるわけでございますけれども、その場合には、また新しい本社人員というふうなものが必要になってまいるということになろうかと思うわけでございますけれども、ただ、七十二名あるいは九十六名というふうなものが多過ぎるということで査定をいたすというわけにはまいらないかと思うわけでございます。
  131. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 私が言いたいのは、アンモニア部門がなくなることによって、それに関連する間接部門がありますね。当然本社の場合はそうなると思うのです。これが人員が減らないでやらせるようだったら、東北肥料は減価償却も相当残っているわけですし、企業の実態からいったって、間接経費を減らさなければならぬ実態があるのですから、弱小メーカーとしてつぶれてしまいますよね、極端にいえば。私はそんなずさんな計画で人員の吸収が行なわれるというふうに認定される通産省に問題があると思うのです。完全にずさんですよ。日本水素についても、各パート別の人員表を私は組合から調べてまいりましたけれども、これを見てまいりますと、吸収するのは直接部門だけですよ。あとは、機械工が二名とか検査が二名とかその程度で、たとえば人事、庶務、こういう関係の人が一つも減らない。日水の場合でしたら千何名今度は減っていくわけですから、人事なんかでは当然その意味でも減るわけですよ。人が減れば人事関係は減るのがあたりまえで、一般的な常識です。  時間がありませんからこれ以上私は言いませんけれども、人員吸収については、東肥、日水の提出した案についていま一ぺん検討してもらいたい。そして間接部門の把握、通産省の場合にはアンモニアの系列、たとえば合成であるとか、あるいは施設であるとか、いま一つはいわゆる管理部門、それからアンモニアがなくなることによって起こる直接部門の中の間接部門、ここまでひとつお調べ願いたいと思う。そして、それが完全に吸収される、そういう条件を踏まえてやっていただきたいと思う。聞くところによりますと、組合側は、いわゆる間接要員も含めて完全雇用協定を結んでくれ、こう言っているわけです。会社も、何とかして完全雇用をするように努力しましょう、こう言っている。努力するということは、たとえばアンモニア部門がなくなって他のメタノール部門とかあるいはコークス部門が拡大する。その中に吸収することも方法論としてあると私は思うのです。いつその事業を開拓するということは別にしても、その事業を開拓してそこに吸収しましょうということは言えると思うのです。二年先、三年先のことですから、そこまで企業拡大をする中では、完全にいわゆる間接部門の人間も雇用を整えていきます。そういうことは企業側としては当然言われることばだろうと思う。いまどこのパートに全部吸収せよと言ったって、これはなかなかできないでしょう。しかし、三年の間に当然新規の事業を考えるわけですから、その中に完全に吸収していきます。労使間では完全雇用さえ守られればいいわけですから、生産計画がどうであろうと新しい事業計画がどうであろうと。したがって、完全雇用協定を結ぶということが通産省の指導いかんによっては可能だと思う。いかがでしょうか。組合側がそういう角度で要求する雇用協定あるいは雇用に対する取りきめ、これについて労使間にまでくちばしをいれることはできませんけれども、少なくとも認可の段階でその問題まで言及されて指導される気持ちがあるかどうか、ひとつお聞きしたい。
  132. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘いただきました線に沿いまして、さらに慎重に検討さしていただきたい、このように考えます。
  133. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大臣、ひとつお耳に入れてこれからの行政指導を実はお願いしたいのですが、実はアンモニアの大型化計画は十グループに分かれておりまして、たいへんな化学産業構造変化です。これに伴って余剰人員が出てまいります。私ども推定ですから何万出るということはわかりません。したがって、一方では、通産省における新規事業の開拓ないしは先ほど論議しました燐酸の大型化、あるいはコークスの部門、メタノールの部門、あるいは将来起こるコチレンの大型化そういう部門に吸収されると同時に、労使間ではこれがきわめて雇用問題として重要な課題になりつつあります。組合としては当然のことですが、完全雇用協定を要求しておるわけなんです。これは石炭と違いまして、実は拡大再生産の中の人員の縮小、同時に合理化なんです。したがって私は、拡大再生産の中では当然余剰人員は吸収される、またそうしなければいけないと思っておるのですが、これから起きるであろう化学産業の大型化計画、これに伴う雇用、この雇用について大臣は、たとえば資本の側に、いままでの私の話の経過を踏まえて、どういうような要請といいましょうか、指導を行なわんといたしておるかをお聞きしたいと思います。
  134. 小川平二

    小川国務大臣 私ども、計画の具体的内容をただいままで実は研究をいたしたことがありませんので、きわめて抽象的、一般的なお答えになるかと存じますけれども、合理化ないし大型化に伴って配置転換その他労働条件の変更が起こるということはあり得る、十分想像でき得ることと存じます。さような場合には、申すまでもないことでありますけれども、事前に労働組合側の納得を十分得る努力をすることが当然でございまするし、労働者側におきましても事態を正しく認識していただいて、平和的に解決をしてほしいものだ、このことを強く願っておる次第でございます。
  135. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 私がお願いしたいのは、縮小再生産の場合には、たとえば炭鉱の場合、離職者が出るという条件が起きると思うのです。拡大再生産の場合には、本来合理化によって人員整理が起きてはいけない。転勤ができないとかいう特別な条件があるときは別といたしまして。したがって私は、労働省側としては、拡大再生産の場合には、たとえばそれを認可する通産省に対しても、あるいはこれから起きてくるあらゆる産業の分野に対して、拡大再生産の場合に完全雇用を守るように行政指導しなさいということを、閣議あるいは各省に御連絡あってしかるべきだと思うのですが、この点に対する見解はどうでしょう。
  136. 小川平二

    小川国務大臣 処理の方向といたしましては、ただいま御指摘の方向が疑いもなく正しいと存じます。そこで、そういう場合が起こります場合には、私どもといたしましても、与う限りそういう方向で協力をしなければならないと考えております。
  137. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 これで終わりますが、いま当面は日本化成の新しい設立、それからその後起きるであろう三菱化成の鹿島グループですね。日東化学等々が起きてまいりますから、ひとつ労政局長もよく事情を把握をしていただいて、通産とあるいは現地の労使関係を把握をしていいだいて、適切ないま言ったような角度からの指導をお願いを申し上げておきたいと思います。大臣ひとつよろしく御指導願いたいと思います。  終わります。
  138. 八田貞義

  139. 内藤良平

    内藤(良)委員 あまり時間もないようですけれども、私は季節労働、出かせぎ労働者賃金の不払い問題、これだけを少しく御質問したいと思っております。  歴代の大臣も、この季節労働、出かせぎ労働賃金不払いにはいろいろ配慮をしていただいておりますし、法律的にはきわめて薄弱なんですけれども、行政措置等をしてやっていただいておりますので、漸次改善されておるようでありますけれども、まだ、私たちに対してのいろいろな労働者からの申し出によりますと、賃金の不払いというものが多いと思っております。しかも土建業界が多いのです。その傾向はやはりいまだに過去と同じであります。どうもこういう面は改善がなかなか進まない。  一つの例を申し上げますと、東京の基準局管内ですね。ここで昨年の十一月二十二日に、労働者が関係の監督署に賃金不払いで申告をしております。きょうは四月の二十三日であります。五カ月たっております。五カ月間たちましても、いまだにこの賃金の不払い問題は解決されておらないわけであります。今日のこのスピーディな世の中にどういうわけかと思うのですが、これは労働者の数は大体二十人ぐらい、不払い賃金の総額は百二十万程度。これは労働者の方々にもいろいろ欠陥はあります。それは完全無欠ではありません。いろいろ欠陥はありますけれども、しかし監督署へ訴え出て、またわれわれにも出身県の関係がございますので連絡があり、われわれも及ばずながらいろいろ援護をしてまいっておりますけれども、肝心の東京基準局なり担当の監督署がやっておるわけでありますが、察するに人員の不足もあると思いますけれども、現場の監督官の皆さん、働く皆さんもたいへん苦労が多いと思いますけれども、それにしても百五十日にもなっても解決しないというのは、特に問題があると思うのです。  これは一つの例でございますけれども、このことを取り上げてたかなか全部は律せられないわけでありますが、私その中で感じてまいりましたのは、いまの労働基準行政、監督署に対する労働省の指導といいますか、そういうものはどこら辺にポイントを置いておるのか。労働者賃金の不払いに対して、不払い賃金を解決すること、このことに第一義を置いておるのか。それとも、賃金を不払いにしておる業界の皆さんの立場をまず取り上げて、そういう中で賃金の問題を進めようとしておるのか、こういう点ですね。私たちから見るならば、第一に賃金不払い問題は、基準法によりましても、労働者の訴えによりましてこれをいち早く調査をして、そしてまずもって労働者賃金の不払いを解消する。そして、土建業界に多いところの元請とか下請とか孫請とか、こういう関係は、この賃金不払いがある一定の支払いをなし得たあとでも、業界の中においてこれを調整していく、こういう方法がいいじゃないかと思うわけでありますけれども、どうも今日までの状態を見ますと、現場の監督官の皆さんはそこへポイントを置いていないようであります。業界の皆さんの立場を尊重するのが強いのか。あるいは労働者の申し立てが薄弱なのか。いろいろ事情も違うと思いますけれども、私は、第一に労働者賃金不払い、この問題を、今日の基準法だけじゃありません、関係の法律なりあるいは関係の方々すべてを網羅して、これを早く解決して、それから漸次内容等につきましても調整改善をしていく、こういうことが第一義じゃないかと思うわけでありますけれども、現実におきましては、どうもそういうようなぐあいにいっておらないのであります。大臣もおいでになりますので、いかようにお考えになっておりますか。どのようにして本省から現場まで貫いた線が出ておるのか、これをまずお聞きしたいと思います。
  140. 小川平二

    小川国務大臣 賃金の不払いは、労働者本人の福祉という観点から考えましても、また家族のことを考えましても、これは非常に大事な問題でございますから、私どもの基準行政の一つの大きな重点であり、眼目となっておるわけでございます。幸いにして近年賃金不払いの件数は横ばいでございます。中小企業の倒産等がだんだんふえてきておることは事実でございますが、少なくともそれと並行して不払いの件数がふえていくという状態ではございません。その中におきまして、ただいま御指摘の建設業関係の賃金不払い件数が圧倒的に多いのでございまして、したがいまして、私どももこの点につきましては非常に大きな関心を持ち、絶えず指導を強化いたしてきておるわけでございます。お話の出ております出かせぎの場合におきましては、労働条件、契約条件等が単なる口約束というようなことで明確でない。そのために賃金不払いが起こりやすいのみならず、起こりました場合の解決にも手間どるというような事情もございます。私ども、建設業は一つの重点業種としてきょうまで特に濃密な指導をいたしてきておりますが、最近の事態にもかんがみまして、これから先もこれを強めていこう、何とか効果のあがる方法を講じていこうと考えておるわけでございます。具体的にはただいま基準局長から詳しくお耳に入れます。
  141. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま大臣が申し上げました線に沿いまして、出かせぎ労働者の多い建設業につきましては、他の産業に比較しましても格別に濃密な監督を実施いたしております。特に最近数年におきましては、三十九年は四万五千、四十年は五万四千、四十一年は八万三千、四十二年もほぼ同数の八万二千四百というように、全建設事業場の三分の一以上のものは確実に回っておるという状況に相なっております。しこうして監督の重点としましては、災害防止と賃金不払いを最重要事項にいたしておりまして、監督の結果、違反がございまして送検をするといった件数も、たとえて申しますと、四十一年におきましては送検件数千六百二十件のうち建設業関係は六百六十八件、四十二年は全産業で二千三百六十九件のうち八百五十九件、かなりの送検もいたしておるような次第でございます。しかし、何ぶんにも作業場が転々として変わるということ、それから大臣が申しましたように、契約条件が明確でたいということのために、御指摘のような十分でたい点がございますことは、私ども日ごろ深く戒めておるところでございますが、そのための手段といたしまして、現在雇い入れ通知書という、形式はごく簡単でございますが、だれと契約を結んだかというその雇用関係を明確にするということ、賃金雇用期間等を文書にしておくという慣行を拡大したいと思いまして、いま一生懸命努力しておるところでございます。賃金不払いの起きた事例を見ますると、その使用者がだれかわからない。下請のまた下請のまた下請ということで使用者が明確でないということ、契約条件が明確でないということからいたしまして、解決に非常に手間どる場合がございます。おそらく御指摘の東京局の例などは、それに該当するのではなかろうかと存じます。そこで、ただいま申しました雇い入れ通知書制度をさらに徹底すると同時に、不払い事件が起きました際に、先生御質問の後段にございました、個々の業者だけでなくて、元請も含めたところの賃金支払い体制というものを考えることができないかという考え方につきましても、法制的には責任はないのでございますけれども、運用上、元請とか、あるいはより高次の請負業者が社的責任のある場合には、賃金不払い解消のために一役買っていただくというふうな方向で行政指導はいたしております。  なお、制度として四十一年から確立したものは、賃金不払い事件を起したものにつきましては、四半期ごとに、建設大臣認可の業者に対しては労働省から、都道府県知事認可の建設業者に対しましては都道府県の労働基準局長から通報いたしまして、入札参加の資格選考の場合には、格別厳格にこういった問題を条件にしていただくといった措置をとっております。これは相当件数にのぼっておりますけれども賃金不払い解消にかなりの効果をおさめておるというふうに存じておる次第でございまして、最近、ごくわずかではございますが、建設業における賃金不払いの件数もやや減少ぎみにあるということが申し上げられると存じます。
  142. 内藤良平

    内藤(良)委員 皆さんの御努力は、ぼくたちもいろいろ関係労働者からも聞いておりますし、感謝もしております。ただ、くつの上からかくような感じで、なかなか徹底していない面があるわけでございます。これはいま局長も、元請で払う責任はないけれども云々という御発言がございました。ところが、どうもこの賃金の不払い問題をわれわれもタッチしてみますと、やはり元請業者が最終的に――たとえば労働基準法の補償の問題でも、最終的には元請業者が負担しておりますが、ああいう精神を具体的にしなければ、どうもこの賃金の不払い問題は大幅に解消できぬのではないかと、ぼくたちは実際を通じて思っておるわけでございますが、そういう点を労働省としても感じておりませんか。元請業者が乗り出さなければ、具体的に、実際的に解決できない傾向にあるということはお認めになりませんか。
  143. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 法的に賃金支払い義務が元請にあるかどうかということになりますと、これは否定的に申し上げざるを得ないということを言っておるのでございますが、精神といたしましては、たとえば元請において代金の支払い遅延があったとか、あるいは下請業者の選択が適切でなかったとか、そういった場合には元請に払っていただくようにいろいろ働きかけておるわけでございます。四十年、年度途中でございますが、通報制度発足以来の件数を調べてみますと、元請に責任ありといたしまして元請を通報した例が二百二十八件でございまして、この元請業者賃金不払い解消のためにいろいろ努力をした、こういう実績があるわけでございます。  ただ残念ながら問題は、建設業者と称しながら登録を受けていないもの、登録しているかいないか不明のものが、ただいま申しました通報いたしましたものについて調べますと、三カ年の総件数二千九百二件、そのうちで登録していない業者が千三百七十四件、それから登録しているかどうか不明のものが三百七件、こういう数字でございまして、半数以上のものが登録していないか不明か、こういう状態にございます。これがこの賃金不払い解消のためには非常にむずかしい問題でございまして、一方においては、元請業者の社会的責任を考えましていろいろ尽力していただくと同時に、登録もしていない、登録しているかどうかわからない、こういう多数のいわゆる建設業者にどう対処していくかということが非常に重要な問題であろうと思います。この問題につきましては、ひとり労働省のみで解決し得る問題ではございませんので、建設省等とも十分連絡をとりまして、問題の所在はここにあるということについでの認識にそう違いはないわけでございますから、  こういった問題の所在を明確にして、さらに賃金不払い解消のために一そう努力をいたしたい、かように考えます。
  144. 内藤良平

    内藤(良)委員 いまのお気持ち、われわれもありがたいと思っております。そのとおりやっていただきたいと思います。ただ、まだ現場にいまの局長の気持ちなり大臣のお気持ちが徹底しない面があるのではないか。ぼくもタッチしました中で、こういうことを言う方もおるわけであります。最近は労働者がずるくなりまして、過般、建設次官から元請に対するいろいろな要望が次官通牒で出た、あれが出てから、労働者同士がぐるになって賃金未払いということで訴え出て、それが元請の段階にいって、そして元請から金を出させる。そうしますと、二重取りになるのじゃないか。元請もいろいろな面を考えまして、早く出してしまう。そうなると、どうも労働者側が少しずるくなったのじゃないか、こういうような印象を持って、なかなか元請のほうに話を進めない、こういう現場での指導をされる方もおるように労働者からも承っておるわけであります。  それから、この出かせぎの賃金払い問題につきましては、組織労働者でもございませんので、何といいましても、一般的に労働問題には暗いのですね。そこで何かにつけまして、無知といってもいいような状態もございますし、また東北方面、秋田方面あるいは九州方面から出てくる方々は、監督署に出かけること自体がなかなか容易じゃないわけでありますね。そういう点もございますせいか、どうも労働者側の言い分をすなおに取り上げないで、いま申し上げたような見方をして、ある意味では業界のほうに肩を持ち、さらには出身県の代議士に関係労働者が訴え出た場合、代議士に話を持っていくことはかえってものごとを紛糾せしめるのだ、君たち代議士のほうに問題を持ち込んだために、どうも簡単にきまる問題も長引いたじゃないかというようなことを、労働者に関係官がお話をするということもある。私は具体的に聞いております。こういうことは、どうもいまの大臣なり局長のお考えが、現場のいわゆる働く監督官の皆さんに徹底しておらぬ。何か労働者を疑いの目で見る、あるいは賃金不払い解消に協力しておる代議士をじゃま者に考える、こういう気風があるように、私、関係労働者に聞いておりますけれども、その点はいかがでしょう。
  145. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 第一線に徹底していないじゃないかというお話でございますが、国会議員の先生方から私も幾つかお伺いしたこともございますし、そういう点につきましては、問題は、気の毒な労働者賃金不払いを解消するということが根幹でございまして、だれがどう言ったとかこう言ったとかいうことにはかかわりのないことでございまして、むしろ事実を発見し得なかったことをいろいろな方面から知り得ることができたということは、たいへんありがたいことでございますし、いま御指摘のような言説があったということであれば、私もはなはだ遺憾に存じます。現に私どもいろいろお伺いしましても、そう言ってはなんですが、たいへんありがたく拝聴して第一線に連絡をいたしておるようなわけでございます。十分注意をいたしたいと存じます。  ただ、これははなはだたになんですが、地域的に見ますと、関西方面の労働者には賃金不払い事件が非常に少ないのであります。私も東北方面の出身でございますが、賃金不払い事件がどうも東北関係の出かせぎ者に多いということにつきまして、これは送り出しの状態からいろいろ心がけなくちゃいけない問題もあり、それとまた気質が違うという点もあろうかと思いまして、そういう点から私どもは、特に東北方面の出かせぎ労働者につきましては、そういった気質も十分わきまえまして手厚い指導ということに心がけねばならないというふうに存じておる次第でございます。  そのような気持ちでやっておりますが、ただ具体的な手段、方法といたしましては、元請と下請の賃金二重取りにならないかというようなこと、そういうことはあり得ないのでございまして、今日まで事件を扱ってみまして、契約条件が明確であればそういうことは起こらないわけであります。ただ口約束で、だれが幾ら払うというのが明確でないために、支払い義務者である使用者が明確でないので混淆を来たすということがあり得るので、そういうことはないように十分注意をいたしたいと思います。いずれにいたしましても、契約条件の明確化ということが本問題解決の基本をなすというふうに私ども考えております。  重ねて申し上げますが、だれそれがどういうふうな連絡をしたからどうとかいったようなことが万々ありませんように、今後十分第一線にも注意をいたしたいと思います。
  146. 内藤良平

    内藤(良)委員 そこで、やはりこれはいろいろ労働者側にも問題がある。いま局長のおっしゃるように、東北方面の方々は九州方面と違って、少しくのろいといいますか、人がいいといいますか、いろいろ特性もあるようであります。ただ東京方面は何といっても東北方面の方が多いわけでありますし、今日の肉体労働では貴重な労働力になっておるわけでありますが、どうもこの賃金不払いの数が多いせいか、現場の監督署の皆さんに、いま局長が発言の親切な気持ちが徹底しないのはどういうわけなんでしょうか。人員が足りないせいか、あるいは業者側と話し合いがあまりうまく行き過ぎて、労働者側を軽んずるのか。そこら辺を徹底して、一応現地の実情を把握されたことがございますか。いわゆる労働過重、人間が少ないために、たくさんの賃金不払い問題が出たために、あなたのおっしゃる親切にやりたいという気持ちはあるけれどもやれない状態にあるのか、それとも、事業所がたくさんあってなかなか回り切れないために、業界の皆さんと話しだけをして労働者のほうとあまり認をしない、おのずとそういう惰性ができておるのか、何か基準行政の中でそういう徹底しない点があるようなことを、実際に現地を回ってそういうものをとらえるというようなことぐらいは、いままでございませんか。そういう経験はございませんか。
  147. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 たてまえといたしまして、労働基準監督官は司法警察権を行使するわけであります。ですから、外形内実ともにいわば中立的な立場で仕事を執行したい、こういう考えがあるわけでございます。これは、日本のみならず、国際的に労働基準監督官の執務のあり方というのはきまっておるわけでございます。したがいまして、だれがどうしたとか、これがどうしたとか、あるいは本省から言ってきたからこうするというような事柄の処理自体は、本来のたてまえとしてはいろいろ考えようがあろうと思います。ただ、そういうことと離れまして、そういった基準法違反の事実をできるだけ各方面から情報として知り得るということはたいへんありがたいことでございますから、先ほど私が申し上げましたような気持ちで事を処理していかなければならないと存じておるわけでございます。  ただ実際に不払い事件を扱ってみますと、業者がたとえば大島のほうに夜逃げしたらしいというような問題もございまして、大島まで出かけていって業者を見つけて払わしたというようなケースとか、 いろいろやっておるつもりでございます。したがいまして、むずかしい問題が数多く出ますと監督署の負担は非常にふえます。先ほどもしばしば申し上げておりますように、契約条件が明らかになりまして、使用者はだれか、雇用期間はいつまでか、賃金額は幾らかということがはっきりしますと、事の処理は非常に楽になります。しがいまして、件数がある程度ありましてもなめらかに処理できる。逆にそれが不明確だと一件を処理するのに数カ月を要する、こういうことにもなりますわけでございます。そこで、監督官の定数が少ないということもございますが、もって基本的には契約条件を明確にして、問題が起きましたならば、一件当たりの処理手数がもっと省けますようにいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  148. 内藤良平

    内藤(良)委員 ここで論議をいたしますと、いま局長のようなお気持ちで現場の皆さんもがんばってくれておる。また現場でがんばってくれておる良心的な方々もおるわけであります。その点私たちも感謝しますが、これはどうもそういうことで、出かせぎの労働者につきましては、組織労働者以外でもございますので、できるだけひとつ手厚いサービス精神を大いに発揮されて行政を御指導願いたい、こういうぐあいに思っております。  それから、一つこういうケースに私タッチいたしましたが、これはたいへんなことになるのじゃないかと思っておりますが、賃金の不払い問題ですね。これは元請、下請、孫請、この段階、それから労働者、こうなるわけであります。ところが労働者の仲間でちょっと気のきいたのを請け負いさせるわけですね。請負ですね。そうしてこの代表と契約をして、それで、これは請負契約だ、こういうことでやっているケースがあるわけであります。これはもちろん登録業者でもありませんし、何もそういうものじゃないのですけれども、集まってきた労働者の気のきいたのをかしらにして、それと請負契約をして、そうしていわゆる賃金の支払い関係は、その気のきいた男と労働者の間を使用者と被使用者の関係にしてしまう。そして孫請の段階の方は、その労働者の代表の方との折衝だけで、ほかの労働者の関係は何もないのだということで、いわゆる請負契約というかっこうですね、そういう形を整えてしまうために、労働者の皆さんに賃金が未払いになってしまう。その中間の方に賃金がいく、そこでトラブルが起きてしまう、こういうことですね。こういう場合になりますと、これはやはり建設業の関係になるというさっきの御発言がございました。そこでこの建設業関係ですね。これはやはりどうしても私は労働省のほうからメスを入れてもらわなければならぬと思うのです。  最近私のタッチした中では、右翼の団体に関係のある方がいま申し上げたようなケースをやるわけです。ですからそれは登録の業者じゃございません。業者じゃない方が下請、孫請の関係で労働者を集めてきまして、ただ労働者を集めた段階で、契約だ、下請だ、請負だ、こういうことで仕事をしているわけですね。さっき局長から、とにかく業者じゃないからどうにも困るという話がありましたが、そういうケースに当てはまるわけです。それがさらに右翼のような団体に関係のある方がそういう方面に乗り出してきている。そして労働者のピンはねのようなかっこうになるわけですね、実際的には。その問題について、賃金不払い問題でいろいろあなたのほうの労働省の監督官も接触をしていくわけですね。ところがそこのその関係の方へ参りますと、今度は元請までなかなか話が進まないわけです。なぜかと言いますと、その方が元請のほうに因縁をつけるんですね。これはおれが息をかけた労働者の関係なんだから、おれのひもがついている労働者の関係なんだから、おまえのほうで、これに対して元請だということで賃金を払ったらいけないんだ、もし払った場合にはおれのほうはただおかない、こういうような意味の発言があるために、賃金を早く支払ってこの問題を早目に解決しようというぐあいにおたくのほうで指導なさる、あるいはまた元請業者もその気になって払う気持ちになるわけですね。あるいは建設業者には次官通牒もございますので、元請業者は名を惜しんで早く払おうとする。ところがそれを、中間に入ったいま申し上げたような方が、これはおれのなわ張りで、おれの関係の労働者なんだから、おれをさておいて直接賃金を払う、そんなことはならぬというわけで、せっかく賃金を払おうとした元請業者も、これは態度を保留してしまったわけです。そういうケースがあるために、案外簡単に解決すると思われる賃金問題がいまだに解決をしていないでおる。こういうケースに私はいまタッチしておるわけであります。こういう状態について労働省としてどういうぐあいにお考えになりますか。しかも監督官はその状態を是認して、それを突破していけないでおるわけです。現実において。その中間の右翼の団体に関係しておるような方、その方がいわばそういう一つのいやがらせのような、おれのなわ張りなんだからおれがやるんだというようなことで、元請までなかなか話を持っていかせない。そういうことを監督官が、それを突破して元請に持っていって早くきめよう、こういう状態に進めないでおることもあるんですね。こういう状態が監督官の段階でとどまっておるのは、その業者の方に妥協しておるというぐあいにお考えになりませんか。
  149. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働基準監督官は、労働基準法違反問題について権限を行使するわけでございますから、もちろん元請の理解のもとに問題を解決する場合少なくたいのですけれども、法的に元請に対して賃金支払い義務ありとして賃金を支払わせるということはできないわけでございます。したがいまして、直接使用者である者に対してのみ賃金を支払わせるという法のたてまえからいたしまして、そこにおのずから限界があることはやむを得ないことと思います。妥協したかどうかというような見方をするなら、相当やったけれども法的には権限行使が不可能だというふうに見えるか、いろいろあろうと思います。ただ、御指摘のようなケースにつきましては、本来の使用者であるかどうか、労務供給業者であって本来の使用者であるかどうかといった別の問題もあるわけであります。しこうして、いわゆる悪徳業者と申しますか、そういったものとの結合関係、就職経路の問題が、何らかの形でもっと合理的な形に整えることができないかどうか、いろいろ関連した問題があろうかと思います。もちろん監督官としては、賃金不払い問題解消のために努力はいたしますけれども、そういった関連を持つ周辺のいろいろな条件といった点を考慮いたしまして、総合的に問題の処理を進めていきたいというふうに私ども考えておるわけでございます。
  150. 内藤良平

    内藤(良)委員 そうしますと、いまの監督官の権限の段階になりますと、そういう事態になりますと、なかなか権限外だから進まぬ、進めない、やっていけないという、こういうお考えですね。業界の問題等になりますと、労働基準監督官として。さっき私が申し上げたようなケースになりますと、監督行政では、監督をする限界外だ。だからなかなか進まない。そうしますと、賃金不払い問題はその段階でもうストップしちゃう、どうにも手がつかぬ、こういうことになりますか。
  151. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ちょっと私のことばが足りませんので誤解をいただいているかと思いますが、ポイントはだれが使用者であるかどうかということございます。ですから、先生御指摘の労働者を集めたという者が使用者であれば、当人に賃金支払いの義務がございます。したがいまして、問題が壁にぶつかったわけではありません。また、使用者でない元請に支払わすということについては、いろいろ説得なり勧告をいたしたり協力を求めますけれども、使用者でないものに賃金を支払わすということは法的に困難だ、そこに一つの限界があるということを申し上げておるのでありまして、それがそうではなくて、実は下請という形をとっているのだが、使用者は元請である、こういうことでありますれば、その元請が使用者ですから、賃金支払い義務があるわけでございます。そういうふうに使用関係を明確にして事を処理するわけでございますが、その関係が不明確で、だれと労働契約関係を結んだのか明確でないといったようなケースが少なくたいので、問題の処理についてかなりな困難があるということを申し上げておるわけでございますが、手のつけようがないといった意味のものではない。あくまでも基準法二十四条違反は二十四条違反として処理をするということでございます。
  152. 内藤良平

    内藤(良)委員 だからちょっと、くつの外からかくようなところがあるんですよ、いまのこの出かせぎの賃金不払い問題は。いまの問題も、孫請といいますか、元請、下請、孫、ひこ、つまり下請のその下、そこら辺になりますと、トラブルが起きるともう払うあれがないのですね。それがおっしゃる使用者であるわけです。基準法から見ると使用者になる。ところが、実際それを進めて賃金を払わせる、働いた労働者賃金をもらうという状態は、どうしてもそれの上へ行かなければならぬのですね。孫請の場合ですと下請、下請から元請、そこら辺までいかたければならぬ。結局、最後は元請の段階へ行かなければ賃金の問題はきまらないというのが、土建の場合の大体の状況なんです。あなたもこれはおわかりでしょう。土建業者の場合は元請へ行かなかったらなかなか解決できないですよ。ただそれはいろいろの面で行政指導でやっているわけですね。だから、それは法律上のあれはないからと言うが、局によってはうまくやっているところもあるわけであります。  ただ私たちこういうふうに考えてまいりますと、この賃金の不払い問題というものを、われわれも労働者から訴えられる。あるいは監督署の皆さんも訴えられる。いろいろ手数をかけてやっておる。最後にまいりますと、使用者の関係はありますけれども、元請の段階にいかなければ解決しないのですね。そこで、あたのほうでほんとうに出かせぎ労働者の、恵まれない、東北の人のいい、少しのんびりした連中の賃金不払い問題を一〇〇%解決してやろうというお考えになるならば、行政の面でもまず元請をつつく、元請をやる、そこでいち早く賃金の不払い問題を解決さしてしまう。そのあとで、下請、孫請、ひこ請と、こう四段階もありますけれども、その問題はその業界の中で時間をかけて話をしていく。何かそういう方法でも強く出さなければならぬ。昨年の場合は十一月二十日ごろに問題ができて、十二月の年末には金をもらっていなかへ帰りたいと思った。ところが、それはいまお話しの使用者という関係、それから下請、孫請の関係、その方がまた右翼団体のなかなかのボスで、土建業者のしきたりも知らないし、登録業者でもない。いろいろなトラブルが重なりまして、労働者も年末にはお金ももらえないで、泣く泣く運賃を借金して帰ったわけです。そういう状態を見ますと、あなたがもう少し行政指導的に元請にばあんといくようなことをやはりいまの段階に出さなければ、なかなかせっかくの親心が生きないような状態にもなっているのじゃないか。しかも、どうも最近は現場の方々も、賃金不払いがあまり多いものですから、労働者側を軽んずるような空気がある。これはいろいろな原因があるかもしれません。働く皆さんが過重労働だとかいろいろな問題があるでしょうけれども、どうも労働者を軽んじて、そして局長のような親心、大臣のようなあたたかい気持ちで一生懸命やってくれるという、そういう気風が薄くなってきているのではないか。そういうのが表裏からんでおろうと思うのですけれども、その辺どうですか。
  153. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 たてまえの問題になりますと、やはり契約条件は明確にする。だれに使われておるのか、賃金は幾らもらうのかという程度の条件すら明確でないということは、現代社会においては期待できないことではないか。通常は、やはりだれに使われておるのか、賃金は幾らもらうのか、それすら知らないで労働関係に入るということを正さなければならない。そこが根本ではないかと存じまして、雇い入れ通知書という簡単な書類ですけれども、作成するように懸命に努力をいたしておるわけでございます。そういう制度一般化しました後に、なおかつ不払い事件が多いのかどうかという観点から、私ども少し問題を見たいと思うのでございます。  そういったもとを正さずに、いきなり下請の賃金不払い問題は元請が処理するということを考えることは、筋論としてもいろいろ問題があろうかと思います。しかし、気持ちはわかりますので、私どもは通報制度などを活用いたしまして、元請が、たとえば代金支払いが遅延をしたとか、あるいは前に賃金不払い事件を起こした下請であるにかかわらず再度これを使用したとかいったような、幾つかの社会的に見て責任を問われてもやむを得ないといったようなものについては、先ほどの通報制度等を活用いたしまして事を処理しておるわけでございまして、一般的に元請に責任を持たせるという点については、なお慎重に検討すべきだろうと思います。しかし、個別問題の処理としては、先ほど来しばしば申し上げておりますように、元請の協力も得まして問題を円滑に処理したいと念願いたしておる次第でございます。
  154. 内藤良平

    内藤(良)委員 もう少し時間をいただきます。  建設省の方、おいでになっておりますか。やはり問題が土建業界の問題が多いものですから、建設省のほうにも話がいくわけですけれども、どうしてもこの下請とか孫請とか、こういう二段階、三段階の段階でトラブルが起きますと、まず賃金不払いの問題になる、こういうケースがほとんどなんですね。さっき村上局長も言いましたように、登録業者でない方が請け負っておるわけですね。下請、孫請あるいはひこ請の段階、これは登録業者でも何でもない方、あるいは小頭のような方が請負をやっておるわけですね。ところが、これがやはり賃金不払いの元凶になるのじゃないかと思うわけです。それは、労働省のほうではなかなか手が及ばない限界がある、これは土建業界のほうの問題あるいは建設業法ですか、こういう問題ということになるというお話だと思います。これは労働省としてなかなか手が及ばない、こういうところだと思うのですけれども、今日の建設業法を見ますと、登録を受けてない方々にはいろいろ制限がありますね。登録を受けなければならぬというのがあります。第十条とか、あるいは第五章の「監督」のところの第二十八条にこういうのがある。すなわち第二十八条の一項の第六号は「建設業者が、その請け負った建設工事を第十条の規定に違反する者に請け負わせたとき。」となっていまして、結局建設業者が未登録の業者に下請をさした場合には、これは監督を受けることになっていますね。これはもっと強く言いますと、この段階で営業停止か何かやれるわけでしょう。このことは、土建業界の出かせぎの働いている現場の場合は、往々にしてあるのです。下請までは登録業者ですね。元請は一流の会社、下請は登録業者、孫請の段階になるとこれは未登録の業者、ひこ請になると、未登録というよりも全然経験も何もない。あるいは孫請の段階でも、さっき申し上げたように、右翼の役員の方で、いままでは全然別の業種をやっておったのを、今度下請業者にたって、建設業の登録もとらないで、だれかの名前を借りて人間だけ集めてそして下請をしておる、こういうケースですね。孫とかひこの段階はこうだらしなくなりますから、そこら辺で問題がごちゃごちゃになってしまう。村上局長のおっしゃるように、双方で労働条件をぴしっと合わせる場合においては問題ない。そのとおりなんです。ところが未登録業者のような方々は、労働条件をあまりぴしっとやらないで人を集めて使ってしまうのですね。未登録の連中というのはそういうのが得意なんです。そういう関係だから、労働者がやりたいと言っても適当にごまかされる。あるいはお互いにそういうことなんか問題外にして働いてしまう。賃金の問題でトラブルが起きてまいりますとどうにもならぬ状態ですね。これをいま建設業法の中で規制をしていくことになりますと、この第五章の「監督」の段階、これを活用してまいりますと、未登録業者を使った建設業者はいろいろ規制を受ける。営業停止を受ける。これを大いに活用すれば、土建業界の出かせぎの皆さんの賃金不払い問題も相当セーブされるのじゃないかと思うのですけれども、いかでございますか。あなたは課長さんございますけれども、ひとつ。
  155. 高橋明

    高橋説明員 お答え申し上げます。問題点の所在はいま先生のおっしゃるようなことだと思いますが、ただ残念なことに、現在の建設業法では、政令で軽微な工事を行なう建設業者は登録しなくてもいいというのがございます。その政令で定める軽微な工事というのは、国会方面の御意見もございまして、昭和三十年ごろ、五十万以下の工事については、そういう工事を行なう建設業者は登録する必要はないということになっております。したがいまして、末端の孫請といいますか、ひこ請業者になりますと非常に零細な工事を受注するものですから、法律上登録を受ける必要はそもそもないということになります。  それからもう一つは、それよりも若干大きな工事を請け負う業者で登録する必要がある業者につきましても、一ぺん事件を起こして営業停止になり、さらに営業停止にも違反をして登録取り消しにもなった前例のある業者は、確かにもう二度といいますか、登録の取り消しを受けてから当分の間は新規業者としては登録を受けられないことになりますから、新規業者として、建設業者としてまた労働者を使って請負工事をやるということはできないのでございますけれども、そうでないも一のは、現在建設業法の登録要件が軽微でございまして、つまり建設工事に関して十年の経験のある者を一人雇えば建設業者になれる。自分は建設工事に関して全然経験がなくても、だれかそういう人を一人雇えば建設業者になれる。そういう建設工事に関して十年間の経験のある者といいますと膨大な人数にのぼるわけですから、いわば建設業法による登録要件がきわめて甘いためにどんどん業者がふえていく。最近では毎年二万以上新規登録業者がございます。そういうことですから、したがいまして、賃金不払いのみならず、各種の労働関係の不祥事態を防止するには建設業法の登録要件を改めなければいけない、そして建設業の業者の資質を向上しなければいけない、体質を改善したければいけないということが考えられるわけでございますので、昭和四十年の十二月以来、中央建設審議会でこの問題を議論していただいて、最近、この一月二十六日に答申が出たわけでございます。  その答申によりますと、いまお話ございましたような、暴力団とか、いかがわしいものはどんどん業者として認めない、つまり許可をしないというようなことができるわけでございますが、まだそこまで手が届きませんので、現在登録法のままで考えなければならない。登録法のままで考えた場合にいま言ったような問題がございますが、建設省といたしましては、いま御指摘の条文を適用いたしまして、年間大体百五十件ぐらい、未登録業者に下請さした建設業者は一応指示処分にしております。指示処分をしたにかかわらずもう一回無登録業者を下請に使った場合には、今度は営業停止をやる。営業停止をしてもまた事案を重ねた場合には、登録取り消しをするというようなやり方でやっておるわけでございますが、何せ非常に業者がどんどん出てくるものですから、なかなか完全な意味での実効はあがらないかと思いますが、現行法で考えますと、そのような措置しか考えられないのであります。
  156. 内藤良平

    内藤(良)委員 それで大臣、いままで私いろいろお話したようなことで、なかなか微妙な関係にあるのです。私は、建設業法改正の問題、そこまでは言及しませんけれども、現在の業法によっても、ある程度登録をしていない方は規制されるあれがあるのです。現在の法では、五十万以下の金額、これでまた何か抜け道があるようなことをお話しになりました。五十万以下は軽微なことで要らないというわけですね。これは金額で押えている。ただそのことで、建設の現場あるいは出かせぎの皆さんが働く土木現場で、登録しないずぶのしろうとの方とか、あるいは右翼のような方とか、何か一もうけたくらんでおる方々が、農家出身の労働関係には全然無知な方々を引っぱり込んで、そして一もうけしようという余地があるわけなのです。この下請、孫請とかひこ請とかいう段階は、どうにも労働省としては手が出ない。そこで建設省の関係のほうになるのですが、建設省でも、やはりいまお話しのように抜け道があるわけです。抜け道があるために、賃金の不払い問題というのはまず大体ここら辺の段階で多くやられているのじゃないか。そうして純朴な東北の出かせぎ労働者が、この段階で賃金不払い問題で辛酸をなめておる、私はこういうことだと思うのです。これをどうして解決したらいいか、これはなかなか正しい答えは出ないと思いますけれども、ただ歴代の大臣は、出かせぎ者の皆さんの賃金不払い問題にはたいへんあたたかい気持ちを持たれて、法律上はないけれども行政措置で、あるいはでき得るならば将来立法まで持っていきたいといろいろ御努力をしておられる。そういう歴史的なものがあるわけです。   〔委員長退席、田川委員長代理着席〕 私は、やはりそういうのを継承して――労働省でもなかなか手が出ない、建設省でもちょっといま困っているというところだけれども、働く皆さんが困っている。しかもこれは筋肉労働者です。出かせぎの労働者が働くような労働力ですね。この筋肉労働、これはなかなか都内にはないのです。大阪でもないし、名古屋でもないと思います。ほとんどこれは東北方面の、しかも農家出身の皆さんがこの貴重な労働力になっているわけです。ただ賃金の不払い問題があるものですから、最近はそっちの方面、土建の関係には行かなくなってきているわけですね。私こんなことを言うのはおかしいけれども、立場をかえて言いますならば、将来土建業界には必要な労働力が集まらない問題が出てくるのじゃないか。賃金不払い問題が発生するような状態が、業界の中でも法的にも温存されているわけです。だから、これは労働者の立場だけでなくして、土建業なり日本の建設を考えた場合に、これは早くメスをいれてやはりこの点を改善すべきじゃないかというふうに私は考えるわけなんです。単なる出かせぎ労働者賃金の不払い問題だ、もう労働基準というわれわれの所管外だ、こういうところにとどまるのではなくして、あるいは建設省の皆さんも、建設業界では長らくの間の歴史的なもので、こういうことがなければ仕事をやっていけないのだという方もおりますけれども、それでは私は、今日の労働力の需給関係から見まして早晩行き詰まる、労働力の確保ということが。いまの五十万以下の事業量の軽微の項がはびこるという段階で賃金不払いという問題が出てくる。   〔田川委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことでありますから、やはりこれは労働省も建設省も政府全体で取り組んでもらわなかったら、日本の建設のためにも大きな支障を来たすことがあるのじゃないか、こう思うのですね。これは大臣、ひとつこの点将来の話になるけれども、いままでの労働省の歴史的なあれもあるのです。出かせぎ労働者に対するお考えを、ひとつ具体的なお答えをいただきたいものだと思っておりますが、いかがでしょう。
  157. 小川平二

    小川国務大臣 出かせぎの問題につきましていろいろ御高教を賜わったわけでございますが、元請の問題につきましては、先ほど局長からお耳に入れましたように、法制的にはこれはどんぴしゃりという手がなかなかないかと存じますが、あくまでも元請の社会的責任において解決してもらうほかない問題だと思いますが、その点では、これまた先刻御説明をいたしました通報制度というようなものは、相当これは有効じゃなかろうかという感じがいたしております。なお、この点につきましては、非常にむずかしい問題と存じますけれども、なお私ども研究をいたしてみたいと思います。  また、お話を伺っておりますると、請負契約を擬装して単なる口入れ稼業的なことをやっておるのじゃなかろうかという印象を受ける面もございます。そういうことをかりにやっておるといたしますると、これは職安法で禁止いたしておりまする労務供給事業に当たるわけでございますから、いまそういう御注意をいただきましたので、具体的な事例等につきましてお知らせをいただけば、さっそく実地について検討をいたして是正をさせたい、かように考えます。
  158. 内藤良平

    内藤(良)委員 もう少し議論をしたいと思いますけれども、きょうはもう時間もないようですけれども、この土建業界の問題、それから下請の問題、登録業者の問題等については、また時間をいただいて具体的にもう少し御質問をいたしたいと思います。  ただ局長さんにひとつ、これは簡単な要望ですけれども、現場の方も努力しておられますし、御苦労も多いと思いますけれども賃金不払い問題は、やはり労働者の窮状を取り上げてやるというようにさっきあなたの御発言があったが、あのお気持ちで一貫してぜひ御指導を願いたいと思います。どうも最近は、わずらわしいようなことを態度や口吻に漏らされる方、あるいはみんなが一生懸命にやっておりましても、そういうこと自体がかえってじゃまになるようなことを漏らされるような方とか、あるいは労働者自体に、君たちがまずいからこうなるんだというぐあいに冷淡に発言される方等を、関係労働者からよく聞きます。そういうことではせっかくの大臣なり局長の親心が生かされない。長年の出かせぎ労働者賃金不払い問題に対する労働省のサービス精神というものが生かされておらないのではないかと思いますので、この点はなお徹底していただきますように要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  159. 八田貞義

    八田委員長 本日はれにて散会いたします。    午後二時二十五分散会