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1968-03-15 第58回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十五日(金曜日)    午後二時十八分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 小沢 辰男君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 藤本 孝雄君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       大坪 保雄君    海部 俊樹君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       中野 四郎君    中山 マサ君       増岡 博之君   三ッ林弥太郎君       箕輪  登君    粟山  秀君       渡辺  肇君    岡本 隆一君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山田 耻目君       山本 政弘君    本島百合子君       大橋 敏雄君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         文部省初等中等         教育局長    天城  勲君         文部省大学学術         局長      宮地  茂君         厚生政務次官  谷垣 專一君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省医務局長 若松 栄一君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      望月哲太郎君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十五日  委員平等文成君及び浅井美幸辞任につき、そ  の補欠として岡本隆一君及び大橋敏雄君が議長  の指名委員に選任ざれた。 同日  委員岡本隆一辞任につき、その補欠として平  等文成君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  医師法の一部を改正する法律案内閣提出、第  五十七回国会閣法第八号)  厚生関係基本施策に関する件(食品衛生に関  する問題)      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。山田耻目君
  3. 山田耻目

    山田(耻)委員 最近有毒食品販売、いわば食品衛生法違反をする事件がしばしば新聞紙上をにぎわしておりますが、国民の目には、いろいろと目新しい食品が、マーケットなどに最近たくさん並んでおりますけれども、ああいうふうな新聞記事などが出ますと、少なくとも国民の食生活、国民衛生、健康の上からも不安がつきまとって離れない。たまたま私は社会党の国民生活局長をいたしておりますために、こうした投書が非常にたくさん参ります。こういうふうな状態は、一つ厚生省監督なり指導行政というものに、ゆるみがきているのではないだろうかという懸念すらございます。ゆゆしき問題でございますので、きょうはこれらを少しただしていきたいと思います。  最近、いろいろと食品衛生法に抵触をする有毒食品事件が、どのように発生をし摘発されておるか、それをひとつ話していただきたいと思います。
  4. 松尾正雄

    松尾政府委員 最近の事例をあげて申し上げたいと思いますが、昨年の十月でございますけれども東京都で食品衛生関係テストカーが巡回をいたしまして摘発した問題に、どら焼きの問題がございます。これはどら焼きの中にデヒドロ酢酸というものが検出をされまして、これは直ちに廃棄処分を行なった事例でございます。  それから同じ十月でございますが、鎌倉の保健所におきまして、トマトジュースの飲用をいたしておりましたら、少しおなかのぐあいが悪いので検査してほしい、こういう問題がございまして、これらの製品について検査をいたしましたら、かんのすずの成分が規格以上に溶出をしておるというような事例がございました。  これらについては、一連のそういう製品ロットにつきましても全部調査をいたしまして、回収を命じるというような処置をとっております。  それから同じ年の一、二月ごろに、おもに中華用の食器でございますけれども中華どんぶり、スプーン、そういったものにつきまして、鉛とかカドミウムというような重金属の発見がございました。これもそれぞれ処置をいたしております。  そのほか、一昨年の四十一年には、かまぼこの中から中性洗剤発見をされまして、これにつきましてもやはり製造販売の停止というような処置をとっております。  それから森永のドライミルクの中に一やはり子供が飲みたがらないというような事件が出てまいりまして、それも東京都で調査をいたしましたところ、ビタミンCが多量に入っておるという問題が出まして、そういうビタミンCがたくさん入り過ぎたために非常に溶けにくいし、また酸味が強くて子供が飲みにくい、こういうような問題がございまして、これは全製品回収をいたしております。  かようなことが最近の具体的な事例でございます。
  5. 山田耻目

    山田(耻)委員 昨年の秋からいろいろと摘発をされた事件だけでも四件、五件というふうにあります。しかもどら焼きにいたしましても、トマトジュースにいたしましても、中華どんぶりの朱にいたしましても、かまぼこにいたしましても、森永ミルクにいたしましても、国民の非常に多くの人たちが食用に供しておるものであります。こういうものだけはかろうじてわかった。そうしていろいろ回収処分なり廃棄処分をやった。  ところが、こういう非常に国民の多くの人たちが利用している部分発見がしやすい。ただ、この発見をしやすい部分の中でも、法律で定めておりますような臨時検査、収去によって発見をされたものというものは非常に少ない。国民皆さんたち申し出により、訴え出によって発見されたものが多い。こういうことになりますと、食品衛生行政というものは非常に弱いような気がいたします。だから、法律の十九条なり十九条の二にきめておりますようないわゆる食品衛生監視員製造部門におります食品衛生管理者、こういう人たち厚生省との関係の中で、法律上はパイプがつながっているけれども、実際の行政指導検査の中では、まさにパイプがつながっていない。   〔委員長退席藤本委員長代理着席〕 こういうことが、消費者が訴える前に発見できない一つの要因であろうと私は思います。こういうものが発見されました、回収させました、廃棄させましたということだけでは、厚生行政が全きを期しておられるというふうには私は受け取りがたいので、この種の問題については、厚生省としては一体どういう手だてをしてきたのか、それについてひとつお伺いしたいと思います。
  6. 松尾正雄

    松尾政府委員 御指摘のように、飲食物によります被害というものから国民を守りますために、ただいま御指摘になりましたような食品衛生監視員というものを各都道府県及び政令市、保健所を設置します市にも置いておるわけでございます。ただいまの食品衛生監視員の数は、四十一年度末で五千九十四名に相なっておるわけでございます。  この食品衛生監視員が中心になりまして、食品の収去、検査をいたしました状態が約三十七万五千件ぐらいございます。指導監督をいたしました施設数が約二百五十三万件ぐらいにのぼっておるわけでございまして、この中で二万九千程度のものについては、それぞれの行政的な措置をしております。こういう状況でございまして、限られた能力で非常にたくさんの食品のものを相手にいたしておるわけでございますけれども、ただいま申しましたような網の目によりまして、できるだけ十分なチェックをしていこう、こういう態度で進んでおるわけでございます。  それから、なお輸入食品関係につきましては、主要な十の港に国の食品監視員を駐在させておりまして、輸入食品検査を実施しております。  また、年間約一千万頭以上をつぶしておりますところの食肉につきましても、約二千五百名の屠畜検査員が、屠場におきまして事前にそういう問題を指摘する、こういう態勢で万全を期しておるわけでございますが、ただいま御指摘のように、そういう監視員制度を十分に活用すべきだという努力はいたしておるつもりでございますけれども、やはり自主的な規制というものも必要でございます。そういう意味で、ただいまお述べになりましたような乳製品でございますとか、あるいは添加物等製造加工等につきましては、食品衛生管理者というものを置きまして、みずからの手でもひとつしっかり取り締まっていってほしい、また食品衛生指導員というものも、昭和三十五年から、講習等によりまして養成をいたしまして、やはり業界内部におきましても、みずからの手で衛生的に実施をしていく、そういういわば両方一体となりましたような態勢で安全を期したいという努力をしておるわけでございます。
  7. 山田耻目

    山田(耻)委員 一応巡視員なり指導員なりを強化して、完ぺきとはいかぬけれども、大体完ぺきに近い態勢をしいておる、こういう局長の御答弁でございますが、問題は、いま局長が申されました衛生法違反として摘発をした四件ないし五件の事件の中で、食品添加物違反というのが非常に多いわけでございます。森永ミルクビタミンC多量混入の点については、必ずしも添加物違反として指摘することができないかもしれませんけれども、その他ほとんど添加物違反、有毒なのでございます。こういうものが処理をされていくのには処罰が軽過ぎる。国民生命と引きかえの仕事でございますから、処罰が軽過ぎるから、石川五右衛門のことばじゃないけれども、浜の真砂が尽きてもなかなか尽きそうにない事件なんです。ところが、巡視員なり指導員なりを強化して、少なくともこういう法違反というものが起こらないように、国民生命を守っていく大切なものであるから努力をするということとうらはらに処罰関係があると思うのです。こういう点についてはどういうお気持ちをもって臨んでおられるのか、その立場をひとつ述べていただきたいと思います。
  8. 松尾正雄

    松尾政府委員 食品添加物違反が多いということは、私どもまことに残念でございます。添加物自体につきましては、これがやはり一面有毒な面もあるという点でございまして、しかしながら、一面ではまた消費者の食料という観点から、あるいは製造技術の進歩その他に応じまして、あるいは流通複雑化ということに応じまして、ある程度そういうものを使わなければ食品として流通保存ができない、こういう問題もございますので、その点はあわせながら、しかし同時に、これが継続的にまた長期的にとられていく、そういう性質のものでございますので、添加物自体につきましても、そういう総合的な見地から基準なり、あるいはその品目の制限なりというようなことを基本的には厳正な態度処置してまいりたい、そういったようなのが基本的な問題でございます。また御指摘がございましたように、私どものほうのそういう食品衛色監視員制度を使いまして、できるだけの努力をして摘発をし、収去をし、検査をしているわけでございます。そういったような点で、違反があればやはり厳正な態度でとにかく措置をするという態度を堅持してまいりたいと思います。
  9. 山田耻目

    山田(耻)委員 厳正な態度で臨んでいただくし、そういう立場指導の裏側に付随をしておりませんと、悪質な有毒食品を使う事件というのは消えていかない。そういう立場に立って十分指導なさるということを聞きまして、いろいろと理解できることもあるわけでございますが、きょうは少し局長報告にない、返事を聞くことのできない問題について若干審査を進めていきたいと思うのでありますが、その前に、昨年の九月の八日、十月の十一日、本委員会におきましてわが党の河野委員、民社党の田畑委員のほうからクロレラヤクルト製造のもとである抽出液の中に金属マンガンが多量に混入をされておる、こういう立場からの議論が展開をされました。  これに対して、十月十一日の本委員会で、局長のほうから四項目にわたる調査報告がなされております。この第一項には、抽出液製造中に有毒マンガンを使用しておるという事実は認められております。  ところが、その後一体これがどうなったのか、少なくとも国民新聞なりあるいは国会議事録等で認識をした程度というものは、そこで切れております。そういうふうな行政というものは国民に親切でもないし、問題を解決をしていくために適切な措置がなされておるという判断を与えるという資料にもなりません。一体このけじめはどうなさっておるのか、これらについてお伺いをしておきたいと思います。
  10. 松尾正雄

    松尾政府委員 昨年九月に、厚生省から御報告を申し上げました。その段階におきまして、原液製造工場におきましてマンガンを入れたという事実が発見できなかったということを御報告申し上げてあるわけでございます。しかしながら、同時にその後におきましても、こういう問題につきましては、私どもといたしましても十分関心を持ち、厳重な検査で追及していきたい、こういうことも申し上げたと思います。私どもといたしましても、そういう態度をもちまして昨年の十一月二十四日に全国十二のそういう製造工場のありますところで、一斉に同時刻をもちまして、その工場内のいろいろな抽出液なり製品なりを収去し、検査し、そしてその結果を分析するということを行なってみたわけでございます。その結果といたしましても、最終製品におきましては心配するようなマンガン量というものは検出できないというような結果に相なっておるわけでございますが、かような措置をとってまいりましたけれども、万が一でも疑いを持たれるような結果を出してはいけないということで、そういう一斉の検査も行なったわけでございます。  また、あのときにもいろいろと御指摘がございました。クロレラ培養という段階におきましても、マンガンというものを、かりに栄養素であるということであっても微量でも使うことがどうかというような御指摘もあったかと存じますが、私どもはやはりクロレラ培養過程におきましても、そういう疑わしいものが出るということがないような行政指導を続けておるわけでございます。
  11. 山田耻目

    山田(耻)委員 培養段階でも、栄養素としてマンガンを使うことは禁止をしたい、使わせないようにしたい、そういうお返事でございまして、けっこうだと思います。そういう態度はきちんと整理をしていただいて、そういう疑わしいマンガンという有毒性のものを栄養素として使うということは、改めていただかなければなりません。きょうは私はマンガンの問題について触れるつもりではございませんが、関連しますので簡単に触れたわけであります。  いま一点、昨年十一月二十四日にあなたのほうで全国一斉検査をおやりになった。これは私が別の立場から、厚生省のほうにきびしい申達をしたわけです。放置していてもらっては困ると言った結果が、十一月二十四日の一斉立ち入り検査になったのであります。実はその報告書を求めていたが、昨日いただきました。私はいろいろな党の仕事関係あるいはこちらの関係等もあって、しばしば厚生省と接触する機会が多い。しかし、こういうふうな資料がそういうふうに長く放置されておるということは私はいけないと思います。  そういう怠慢さをここで指摘するというよりも、いただきました資料を見ますと、抽出液の一斉検査でございますけれども一つ会社製品で五千倍もマンガン検出誤差があるとは一体何か。おかしいと思われないでしょうか。私みたいなしろうとでも——京都抽出液の中には〇・〇〇六PPM、佐賀の抽出液の中には三四PPM、五千三百倍の誤差があります。一つ会社製品です。いま局長がおっしゃったように、去年の十月十一日あなたが河野委員にお答えになった第一項の中で、確かに抽出液には栄養素として使っておる、しかしこれはやめざせたい。いま私に対する答弁もそれはやめさせたい、いけないとおっしゃっているわけです。ところが十一月二十四日の一斉検査の場合には、五千三百倍の誤差がある資料がここに出てきておるわけです。こういうものに厚生省が疑惑をお持ちにならぬのだろうか、そういうふうな状態添加物なり食品行政をやられておったのではこわいなあという気が私はするのですよ。これに対する解明と、昨年十月十一日この委員会河野さんに答弁なさった金属マンガン混入はやめさせたいという約束と、いま私に答弁なさってやめさせたいというこの約束と、この現実処理は一体どのようにお考えになっておるのか、お話しいただきたいと思います。
  12. 松尾正雄

    松尾政府委員 先ほど申し上げましたように、少なくとも培養段階におきましても、結果として疑われるような行為をやめるようにという行政指導は、ずっと続けておるわけであります。ただいま御指摘のような抽出液自体についてかなり誤差があった。私どものほうでも実はただいま御指摘のような非常に低い値というものが従来より出ております。その低いほうの値というものがなぜこんなに低くなったのかということについても御指摘のような疑問は持っておるわけでございます。なぜそれがそういうふうに低かったかという答えを、まだ得るに至ってはおらないわけでございますが、こういうマンガンのような数値のばらつきというものが、先生御承知のように自然界の中にもかなり分布しておるものでございますので、そうしたようなものがどこからこういうふうに差をつくったのか、そういう自然の分布状態等から見まして、必ずしもはっきりしたそのものを私どもはまだつかみ得ないわけでございます。むしろ低いほうの値が出てきたことにも、測定誤差なり、そういったようなことで疑問は感じておる、こういう状況でございます。
  13. 山田耻目

    山田(耻)委員 自然マンガン含有量が〇・三PPMということは、大体そこらあたり基準になっておるということは学問上も明らかにされておりますね。ところが三四PPMというのは、どんなにごらんになったって、天然自然のものというふうな理解はむずかしゅうございましょう。私は専門家ではありませんから何ですけれども、この三四PPMマンガン含有検出されたということは、去年の十月の段階であなたがお調べになりました、抽出液の中には金属マンガンを入れている、そういうことをこの委員会でも報告なさったとおりがまだ続けられておるというふうに判断をなさるのが、こうした食品行政担当者であるあなたのものの見方、考え方でなくては困るような気が私はするのですが、どうでしょう。
  14. 松尾正雄

    松尾政府委員 私どもも、前の御報告のときにもございましたし、そのような疑念があるということをおそれまして、検査の際にも、そういう特別のマンガンを投入しているかどうか、あるいはそういう製品を持っているかという点を、十分注意をさせて実は検査させたつもりでございます。  その結果としては、そういう事実を発見できないという報告を私どももいただいておるわけでございますので、一応大量のそういうものを入れるような行為は、まず私どもはとめ得たという結果を、信念を持ったわけでございます。ただ先ほどの数字につきましても、私どもも実ははっきりしたその仕分けをし得ないという段階であると申し上げましたのは、食品の自然の中にもかなり分布の高いものがございまして、先般引用されておりました水道許容量水準が〇・三であるということは申し上げてございますけれども、実際の自然界にはもっとたくさんの含有したものも実際はあるわけでございます。そういうふうなものがございますので、クロレラ抽出液自体にどの程度のものが自然に出てくるものか、こういった点をまだ私どもは明らかにし得ないというような段階にある、そういうわけでございます。
  15. 山田耻目

    山田(耻)委員 やはりこの点は、河野さんのときのあなたのやりとりと似通っておりますので、あまりここで時間をとっても残念なのでやめますけれども、ただあなたのこの報告書の中で、あなたが非常に力説されているのは第二項なんですよ。河野さんの質問、私の質問の中にも、原液の中に金属マンガン混入しておるという質問のしかたはしていません。抽出液の中に入れておるということを指摘しているのです。あなたの報告書の第一点は、「日本クロレラ株式会社において、クロレラ培養のため、栄養素として微量マンガン、鉄、銅、カルシウム等を使用していたことが判明いたしました。」こう書いてあるのですよ。その抽出液に入れておることもやめましょう、そういう指導を強化をいたしましょう、これがきょうの私に対する答弁です。ところが、これは十月の段階のあなたの答弁です。そのときも同様の答弁をなさっておるはずです。十一月二十四日、どうもまだおかしいというので一斉検査をあなたにさせましたところ、〇・三PPM天然自然の基準量だけれども、ここには三四PPMと入っておる抽出液があるじゃないか、ある、これはあなた方の一斉検査です。そうしてその中には、今度は〇・〇〇六PPMというたいへん微量のものになってしまっておるものもある、一つ会社製品ですよ、と私は言っているのです。  あるいはこの前のあなた方の答弁書を見ると、上のほうを検査したら少なくて、下のほうはたまっておって多かったのだろう、こういう意見もあったやに私どもは仄聞しております。ところが抽出液の中には、そういうふうな上と下で濃度の違うような状態にあるものではない。これは学問的段階でもいろいろいわれておるようでありまして、データもございます。だからこの表を見ますと、いまだ抽出液には金属マンガン混入されておるという判断を私はせざるを得ないような高度なマンガン量検出されておるけれども、あなたは、天然の中には〇・三PPMといわれるが、中には高いものもあるのだろう、こういうふうな答弁食品行政担当責任者であるあなたからなさるというのは、あなたが会社代表者ならいいですよ。国民生命健康を預かる厚生省責任者であるあなたが、これは天然のものでも〇・三どころじゃない、それの百倍も高いものが天然の水の中にある場合もあるかもしれぬというような答弁をなさったのでは、国民生命を預かっていく、そういうことを審査する社会労働委員会審査として、私はどうも残念な気がするのです。もう一度その点について、これからどうするのか、これからは厳格に取り締まるという立場をお示しになるのか、そこらあたりを含めて答弁してもらわないと困ると思います。
  16. 松尾正雄

    松尾政府委員 この問題につきましては、マンガンというものを添加物として食品の中に入れる——この添加物として入れることは違反だという態度で、これはごうも変わっていないわけです。したがいまして、添加物として入れることは絶対違反であるという態度はひとつもくずしておりません。しかしながら、そのもとになるようなクロレラ自体についても入れるということはやはり大きな疑いを持たれる、そういったことも私ども行政指導でなくすというふうにはっきりお約束を申し上げておるわけでございます。ただ、ここにございますような数字につきまして、そういう高いのがあるという御疑念が起こられましたものですから、私どもが調べた範囲におきまして、たとえば日本お茶の中にも非常に高いマンガンというものがあるわけでございます。〇・一二PPMという水道基準というものは、これを越えたら害であるという意味——あの引用が悪かったのかと存じますけれども最終製品はそれ以下であるというような表現を使っておられましたが、そういったことからあるいは〇・三PPMというものについて、これを越すことが非常に有害であるという御印象を与えたかというふうに存じますけれども現実には自然の中に、お茶中等にもまだたくさん含まれておりますので、したがいまして、添加物として入れていくという態度については、これは私どもは絶対に容認しないつもりでございます。  しかし、測定をした結果としましてそういう高いものが出たということは、必ず添加物を入れたという証明になるかと言われますと、そこのところはやはり自然のものが存在しておりますので、いま私どもは入れてないというふうにいろんな検査をした結果としては推しておりますけれども、その数字自体が高いのが出てくるということについては、そうだからといってそれがゼロである、あるいはきわめて低いものでなくてはならないということにはならないということを申し上げておるわけでございます。添加物としてのこのマンガンの使用ということは、これは厳然たる態度をもって臨んでまいります。
  17. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたのおっしゃる添加物としては認めがたい、絶対許さない、しかし抽出液段階ではあるいは天然のもの——お茶の話までお出しになるのだが、そういうことでときには高いものがあるかもしれぬ、しかし十分調査をしていきたいというお話のようですが、このクロレラ抽出液というのは商品で売ってあるというように出ておるのです。一つ会社でつくるこのかんに入っておるのです。このまん中のものです。ここに書いてありますよ、クロレラ抽出液と。一つ会社でつくっておる。このかんの中を検査してみたら、一つのかんには三四PPM、たいへんな量ですよ。一つのかんには〇・〇〇六PPM——あなたのそう言うことが会社擁護論とは私は思いませんけれども食品行政を担当する責任者としてはやはり一応疑惑の目で見ていくという立場をおとりにならぬと、私は正しい食品行政はできないと思うのですよ。〇・〇〇六PPMのほうがあたりまえで、三四PPM、たいへんなもの、五千三百倍も含まれておるのが出てきた。これは天然のものが多かったんだろう、こういうことではなかなか行政をなさるあなたの立場としては私はいただきがたい態度なんです。そういう点を十分念頭に置いて、これからきびしい指導をしていただく。結論としては今後は使用させない方針で臨む、抽出液には混入させない方針で臨むという立場を言われておりますから、十分責任を持って実行していただきたい。もしも今後の検査で、あるいはらしき疑いが濃厚になってきたときには、あらためて責任を求めることになろうと思いますから、そういう点十分念頭に置かれて国民の健康を守るための行政をやってほしい。  これがきょうは中心ではございませんから次に進みたいと思います。  最近、こういう乳酸菌飲料その他に工業用カゼインが使われておる、こういうことがいろいろ私のほうの投書なりあるいは追跡調査の中で明らかになってきているのでありますけれども、こういう事実はいかがでございましょう。
  18. 松尾正雄

    松尾政府委員 カゼインあるいは工業用カゼインが、ことによったらそういうふうに使われているかもしれないという情報は、最近私どももキャッチしております。
  19. 山田耻目

    山田(耻)委員 私の調査によりますと、昭和四十一年ごろ、脱脂粉乳の輸入が一時制限されたことがありました。そういう立場から通関ベースの輸入状況を調べてみました。農林省の牛乳製品立場から指導しておる部門も調査をして資料を取り寄せてみたのでありますが、工業用カゼインが逐年非常に大幅な増加の度合いをもって輸入されておる。これは工業用カゼインでございますから無税でございます。自由品目で輸入されております。これは俗に言えばのりの原料であります。アート紙なんかに塗っておいてこれを塗装のときに使う。昭和四十年の輸入量が一万七千二百八十六トン、そうして翌年脱脂粉乳の輸入が制限されましてから急激にふえまして、昭和四十二年は二万五千五百三十八トンの輸入になりました。五十五億七千三百万の輸入の取引を行なっておるわけであります。この工業用カゼインというものをこうした乳酸菌飲料あるいは牛乳を基礎とする製品の飲料に混入をするということは一体どういうことになるのでございましょうか。局長その点答弁してください。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  20. 松尾正雄

    松尾政府委員 食用のカゼインにつきましては、現在も添加物という形で行なわれておるわけでございますが、御指摘のような工業用のカゼインが食品に添加されるということであれば、これはその工業用カゼインの品質の問題、中身の問題とも関連をいたします。したがいまして、そういう工業用のカゼインの品質を早急に私どもも調べて対処したいと存じております。
  21. 山田耻目

    山田(耻)委員 この工業用カゼインがクロレラヤクルトに使われておることがどうやら事実のようであります。いまのマンガンの点も、また工業用カゼインの混入の点も、私はゆゆしき問題だと思うのです。もしもこれが実際に使われておるとしたら、厚生省に届け出る表示すべき製造基準にも書いてございますか、ないでしょう。そういうことは書いてございません。私も厚生省のものを調べてみました。書いてございませんが、こういうことを一般の世評としては——局長もそういうものが混入されておるということは認めると言われておるということは私も聞いた。その段階で話をとめておくからこういうことになるんですよ。これがヤクルトに使われておるということになったら、一体あなた方何を仕事をしておるのだろうか、また一つ疑いも出てくることになりますよ。一体その点についてどういうお考えで行政をおやりになっておるのか。もしも事実であったらどうしようとなさっておるのか。その点についてひとつ答弁願いたい。
  22. 松尾正雄

    松尾政府委員 私どもも、そういう情報を早く承知しておりましたならば、私ども自体でさっそくに手をつけまして、いろいろ調べてまいるつもりでございます。私どもがそういう情報を得ましたのがごく最近でございまして、したがいまして、まだ実際の調査にまで至っておりませんけれども、そういうものにつきましては、やはり早急に厳重な調査をいたしまして、こういうようなものが使われるということは厳に阻止してまいりたいと思っております。
  23. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたは、最近お聞きになったというのですが、私がなぜ四十年から四十二年の工業用カゼインの輸入実績を申し上げたかといいますと、一つは通関ベースでは脱税の疑いがある。農林省のほうは、日本の畜産に与える影響が甚大である。この二つの結論はそれぞれの部局で検討されておるところなんです。ひとりこれを取り締まる厚生省では、これが食品化されていくということをたったこの間聞いたのでまだよう調査しておらぬ。これはどうでしょうか、厚生大臣、少し怠慢じゃないでしょうか。入れておれば入れておるで、これが基準に定められておる乳固形分として認めておるのか認めてないのか、その立場すら厚生省にないならばナンセンスだと私は思う。これは大臣、どうでしょうか。
  24. 園田直

    ○園田国務大臣 まず、先ほどのマンガンの問題について申し上げますが、御意見のとおりでありまして、食品衛生取り締まりの観点からいえば、会社の責任で添加したのか、あるいは無過失責任で製造過程中の誤りがあるのか、いずれにいたしましてもマンガン含有量が多いということが問題でございますから、そのいずれであるかにかかわらずそれに関係があるのは検討後の取り締まり処分の問題に関係があるわけでありまして、国民衛生上からいえば同じであります。そういう観点から調査をしたいと思います。  なお、いまの工業用カゼインの税が安い等のために食用に使っておるおそれがあるという御意見も十分拝聴いたしましたので、それぞれ検討したい。ただし、具体的に申し上げますとたぶん会社が準備いたしますから、これ以上は申し上げませんが、厳重にやっていきたい。
  25. 山田耻目

    山田(耻)委員 十分調査をしていただく。これは及ぼす影響が広うございますから、特に日本の農業経済には関連をして影響するところが多いのでございますし、脱税の疑いも出てくる問題でありますから、しかも片方では国民の健康に至大の影響を与えるという点もありますから、こういう点を十分調査していただいて、これは調査しっぱなしというわけにはいきませんよ。必ず明らかにしてもらわないと、この段階で終わっておると国民はますます疑惑を持ちますから、この点はひとつ明確にしていただくようにお願いいたします。  それから次に、たいへんお気の毒なんですが、このヤクルトにデヒドロ酢酸混入しておるという事実があるわけであります。これも有毒食品であります。一体ヤクルトの製造過程をここで申し述べていただきながら、その製造過程のどの分野にデヒドロ酢酸がどれだけ入っておるかということを明らかにしていただきたいと思います。
  26. 松尾正雄

    松尾政府委員 ヤクルトは原液というものを、濃い原液をつくりましてそれをそれぞれの希釈いたします希釈工場に送って希釈をいたしまして、いわば飲用に供する商品という形で配達をしておる、こういうのが大ざっぱに申し上げます工程でございます。こういう乳酸菌や発酵乳に入れますところの、ただいま御指摘デヒドロ酢酸という防腐剤は、その限度といたしましては、一キログラムに〇・〇四グラムというものが限度として使用が認められておるわけでございます。したがいまして、私どもはその〇・〇四グラムをこえるものというものは、最終製品につきましてはもちろんのことでございますけれども、その前の段階におきましても、それをこえておるということは現在きめられたデヒドロ酢酸の使用限度をこえるものであるということで、これは違反として取り締まっていく、こういう態度でございます。
  27. 山田耻目

    山田(耻)委員 抽出液段階、それから原液段階、それからそれを希釈してびんに詰めて直接国民の口に入る段階、大体三つの部門があるわけです。これに対していま局長のおっしゃいましたのは、十万分の四以上添加をしていたら法律違反であるから取り締まっていく、こういう御答弁でございますね。
  28. 松尾正雄

    松尾政府委員 そのとおりでございます。
  29. 山田耻目

    山田(耻)委員 抽出液段階デヒドロ酢酸ソーダをどれだけ使っておるか、原液段階デヒドロ酢酸をどの程度使っておるか、そうして最終工程のびん詰めで幾らになっておるのか、それをひとつ申していただきたいと思います。
  30. 松尾正雄

    松尾政府委員 私どもは実際何キログラムをどういうふうに使っているかということは一々存じておりませんけれども原液段階でも〇・〇四をこせばこれは限度以上に入っておるものだということで、そういうことで処理をしていくということでございます。
  31. 山田耻目

    山田(耻)委員 幾ら入っているのですか、それを聞いているのです。知らぬとは言わせませんよ。
  32. 松尾正雄

    松尾政府委員 いままで検査をされましたようなものでは、たとえばそういう量をオーバーしているということで、それぞれ処置をいたしたものが、四十二年中にありますことは私も承知しております。そういう点からの処分をした報告をいただいておりますけれども、ここにいま幾つ入っていたかという数字はちょっと持ち合わせていないわけでございます。
  33. 山田耻目

    山田(耻)委員 局長のそういう答弁はずるいと私は思うのです。大体日産千二百万本、それだけのヤクルトが、全国民のうちで一割以上愛飲されているわけです。しかも、国民保健飲料として使われておる。それがどこかに摘発されたことは聞いたけれども、内容は知らない、そういうふうな答弁というものは私は少なくとも委員会でしてもらっては困ると思いますよ。一つの県で、きわめて部分的に起こった事件食品衛生法違反である。これは県にまかしてあるから、保健所にまかしてあるから、まだ報告がきておらないから、よくわからないというのと、少なくとも二都道府県以上にまたがり千二百万本の使用というものは全国にまたがっておると思うのですよ。その中に、限度をこえてデヒドロ酢酸が入っておるということで、どこかで部分的に摘発されたことは聞いておるけれども、よく知らぬ、こういう答弁というのは委員会では許されませんよ。もう一ぺん課長とよく相談して答えてみなさい。
  34. 松尾正雄

    松尾政府委員 御指摘の点、量の御質問であったと思いましたので、その量のほうは実はこちらのほうへ持ってきておりませんので、手元にないと申し上げたわけでございますが、発酵乳の原液段階では、都道府県でいろいろ検査をいたしまして、量がオーバーしておるというものが、四十二年中に報告がございましたものは、営業停止が六件、廃棄処分が八件、それから販売停止、返品というのが四十四、始末書で処分したのが三十という結果が出ているわけでございます。中身につきましては、いまここに数字を持ってまいっておりません。どのくらいの量が入っておって、そうなったかということは、こちらのほうにも一々の報告はまいっていないようでございます。
  35. 山田耻目

    山田(耻)委員 おっしゃりたくないか資料を持っておられぬのかわかりませんけれども、たとえば「クロレラヤクルトの抽出液製造工程」というものが厚生省に届いておるはずですよ。ヤクルト株式会社がつくったものです。この中を見ましたら十万分の四ではありませんよ。ここに書いてあります。この表を見ると、デヒドロ酢酸ソーダが一%入っておりますよ。一%のデヒドロ酢酸ソーダをデヒドロ酢酸に換算しますと、十万分の八百十入るということになるのです。この乳酸菌飲料に対しては十万分の四しか入れられません。これは原料の段階でも入れられないと局長はさっき答弁したばかりでしょう。それが抽出液には十万分の八百十入っている。十万分の四と十万分の八百十ではだいぶ違いますからね。そうして、その抽出液のその下の原料工場製品原液には十万分の十二入っております。そうしてこれを三倍に希釈をして処理工場であるびん詰め工場から国民に売り出すときには十万分の四になっております。昨年暮れ東京都庁で摘発をしました中でこの数字が出ているのですよ。これは東京都だけで飲んでいるクロレラじゃないのです。全国国民保健飲料として飲んでいる。その中にはそういう製造工程で法違反が行なわれておるのです。これは局長、明らかに六条違反でございましょう。いかがでございますか。
  36. 松尾正雄

    松尾政府委員 食品衛生法の第七条の違反になるわけでございます。
  37. 山田耻目

    山田(耻)委員 一体これはどうなさろうとなさるのですか。いま私が申し上げた抽出液段階で十万分の八百十、原液段階で十万分の十二、この七条違反はどうなさろうとするのですか。
  38. 松尾正雄

    松尾政府委員 私ども、不勉強の点はこれから至急に検討させていただきたいと存じますが、従来私どもが中心になりまして検査をする段階では、もっぱら国民が直接飲用に供する段階ということをやはり一番重点においてやってまいりました。したがいまして、従来は最終製品というものについてもっぱら基準をこえておるかどうかという点でチェックをしておったというのが事実でございます。しかしながら、そういう途中の過程におきましても、やはり厳重な注意を払わなければならないということは、これはいろいろな事故というようなことも考えあわせまして当然配慮しなければならない問題でございます。私どもひとつ早急に勉強させていただきたいと思います。
  39. 山田耻目

    山田(耻)委員 乳肉課長のほうと相談なさって七条違反ということを言われたのですが、この原液は商品なんですよ。六条違反にもなるじゃないですか。最終工程とあなた方はおっしゃっておりますけれども、独立した商品ですよ。
  40. 松尾正雄

    松尾政府委員 第七条というのはいわば基準、規格というものでございまして、先ほど来申し上げましたように〇・〇四という規格は認めておりますので、それをこえれば規格違反である、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  41. 山田耻目

    山田(耻)委員 六条にいう原液販売したことによる違反はどうなりますか。
  42. 松尾正雄

    松尾政府委員 少し勉強不十分でございますけれども添加物というもので、食品という形になって添加物が入れば確かに六条違反という解釈が成り立つわけでございますが、その抽出液というものが、そのものが食品であるといえるかどうか、あるいはその食品のまた添加物と申しますか、そういう性質であるかどうかというのはもう少し詰めさせていただきたいと思います。しかしながら、先ほど言いましたように規格、基準という形では問題が七条に明らかに違反になるという  ことになります。
  43. 山田耻目

    山田(耻)委員 まあ基準違反する、七条の違反であるとおっしゃること、それも私は肯定をするのですよ。これを肯定しますけれども局長のおっしゃるのは、最終処理工程の段階で十万分の四をこえなければ違反でない、しかしながら、七条の規格、基準には違反をする、こういう立場で述べておられるのでありますけれども、その抽出液をつくる工場は独立しているのです。これは昨年の九月八日、十月十一日の議論のときにも、田畑金光委員質問の中で、別の会社のたてまえをとっておるけれども、資本金も重役もみな一人の人間じゃないか、同じ人間じゃないかと言われたら、調査不十分でよくわかりませんという答弁局長はしているわけです。いま私が聞いております抽出液に十万分の八百十を入れてつくっている会社は独立しているのです。原液をつくって十万分の十二を入れている会社全国で十一あります。これは十一が全部独立しているのです。そしてびん詰め工場全国で百十二か百二十かあります。これも全部独立しているのです。一つ一つ食品をつくっているのです。そうなりますと六条違反になりませんか。十一の原液工場は、それをつくってそして販売をしているわけです。全国百十二の処理工場に対して、これを買え買え、そして二倍か三倍に薄めて売れ、これはいい食品だぞと、これが原液です。私のいなか——山口県のいなかでありますけれども、私百姓です。田植え時期なり稲刈り時期になりますと、農協が一斗かんに入ったヤクルトの原液というものをお百姓さんに分けてやっておるのです。一升びんでそれを買うていって、お百姓さんは薄めて飲むわけです。三倍に薄めるよりか二倍に薄めたほうがおいしい、こういって飲んでいますよ。それが私はこの十万分の十二入っておる原液かどうかはわかりません。しかし原液をそういう方向に売らないとだれが保証できますか、独立した商売ですから。原液を売る商売じゃないですか。だから私は販売を禁止すべき六条の違反ではないかと言っているのです。独立した商品です。どうなんですか。
  44. 松尾正雄

    松尾政府委員 ただいま御指摘のような形で原液を渡すとすれば、これはやはり販売をいたしておる。第六条にも触れるということになります。
  45. 山田耻目

    山田(耻)委員 六条にも触れるということになりますと、この原液をつくっておる原液工場会社に対して、一体厚生省はどういう手だてを講じようとなさっておるか伺いたいと思います。
  46. 松尾正雄

    松尾政府委員 ただいまの山口県の例でお話しになったようなケースというものは、これは厳重に調べておきますが、少なくとも原液を薄めてそういう形で販売ずるということを前提にしてこういう製品を私どもが許可している、そういうものを認めている。そういう認めた前提がくずれるような販売のしかた、売り方というとと自体がやはり私は適当でないと考えております。したがいまして、その点は、そういうたてまえからも厳重にひとつ指導いたしたいと思います。  なお、原液自体がそういうような形で売られてまいりますということ自体が問題でございますが、現在のたてまえでいけば、御指摘のように、原液自体が食品として許容量をこしているということであれば、これはやはり違反であります。したがいまして、そういう点では早急に手を打っていきたいと思いますけれども、もう一つの点は、私どものほうでただいまいろいろと法制的にも考え方を詰めようと検討中でございまして、いま御指摘のような売られ方をするということになると、これは全く論外になりますが、現実製造し、かつ先ほど御指摘のように千二百万人という方がお飲みになっていらっしゃる、そういう食品としてこれを確保するための一つの方法として、やはり防腐剤をある程度使わなければ成り立たない、末端に行って腐ってしまう。末端ではゼロであることが望ましいし、また現実に薄めてすぐであれば、短時日の間に飲まれる食品でございますから、すぐであればおそらく防腐剤という問題は起こらないわけでございます。それが製造しかつ販売される過程で、輸送その他の関係である程度防腐剤を入れなければ製品自体が腐敗してしまう、手に渡らない、そういう問題もあわせて考えなければならぬ。したがいまして、これは食品衛生添加物等の取り扱いに関する一つの問題でございますが、基本的なまた問題にもなってまいります。法制的にただいまのような体制だけでいいのかどうかということも、慎重にひとつ検討したいといま寄り寄り検討中の問題でございます。
  47. 山田耻目

    山田(耻)委員 真剣に検討してもらうと言うが、それはお役所のいつもの答弁です。私は国会に出ましてもう何回、何十回と聞いていることばなんです。検討してもらって善処していただくことは、一つの方法として私も反対をしません。ただ明々白々としておることなのですよ。抽出液にも十万分の四、原液にも十万分の四、そうしてびん詰めされたものにも十万分の四、これが許された限界なのです。それが抽出液には十万分の八百十、原液には十万分の十二、これだけ入っていることを承知をして今日まで放任した理由は一体何か。検討しましょうというのは悪かったということでしょう。私はこういうことはあまり言いたくございませんけれども、こういうことが、私が追跡調査をしておる中で浮かび上がってまいりました。あるいは投書の中にも出てきておりますけれども、前の乳肉衛生課長の恩田某氏は、独立しておるからだめなんだ。あなたのいまおっしゃっておるように、もうどこへも売ることのできる品物である。独立して固有の商品になっておるからどこへでも売れる。それを固有の独立した商品にせずに抽出液からびん詰めまで一貫した作業にしたらどうか、そうしたら最終工程で十万分の四になれば法七条なり六条の違反にはならぬじゃないか、こういう知恵を業者につけておるとさえ言われておるのですよ。  ところが業者は独立しておりますから、全部合併されるとうちの会社がつぶれるというふうな、俗に言う平たい気持ちもあって抵抗したといううわさも飛んでおります。最終処理工程で十万分の四を越えていなければいいじゃないかというあなたのことばとそういううわさが似通っておるわけです。私は知らなかった、いまから調査して何とかして善処して検討したいということに当てはまらない。それは現に全国で四、五十件に近い摘発を受けておるじゃないですか。去年の暮れの十二月二十四日ごろには東京地裁の摘発を受けておる。その中にはいま私が言ったような基準をオーバーしたものが入っておる。それで三日間の営業停止、三十日間の執行猶予、こういう罪の重たさ軽さというものを私は別に述べますけれども、明々白々としている違反事実がある。それも全国にまたがってある。それをなぜ厚生省は取り締まらないのか。厚生省がつぶれぬ限りヤクルトはつぶれやせぬとだれか豪語したと言われておる。とういうふうにかんぐられてどうなりますか。かんぐられるような材料があるんじゃないですか。大臣、一体これはどうします。私は園田大臣はILO時代から非常に親しくしていただいて、あなたの人格にほれております。こういう立場だけは厳格に規制してもらわないと、私はほれそこなったということになりますから、そういうことを十分念頭に置いて答弁してください。
  48. 園田直

    ○園田国務大臣 御意見は十分承りましたので、御意見に基づいて直ちに調査をいたしまして、それぞれ検討いたしたいと思います。
  49. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたも調査で逃げてはいけませんよ。それはほんとうにずるいです。入っておる事実は認めておる。地方で摘発された事実も認めておる。認めていて調査をし検討いたしますというのは、これは大臣、どういうことでありますか。
  50. 園田直

    ○園田国務大臣 たとえば、いまおっしゃったような原液というものが、最終商品の材料として例外的な売り方をされていないのかどうか。あるいは例外的にはされておるとすれば、それは違反であります。そういう問題もありますが、ここで具体的に申し上げることは、今後いろいろ処置をする場合に、私は障害になると思いますので調査検討と申し上げているわけであります。
  51. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣は少し錯覚しておられます。原液が商品として他に売られていなくて、そうして最終的に処理工程でびん詰め工場に売られて、ここしかお得意さんがない。たった一つのお得意さんに売られて、そこで最終工程で十万分の四になっておれば違反ではないというふうなお考えに見えるわけです。それではいけないのです。そうじゃないのです。原液工場自体が独立した商品製造会社でず。原液というものを製造する会社です。この中には、十万分の四以上入れたらいけないということで摘発されている。十万分の四以上入れたらいけない。だからこれは違反なんですよ。十万分の十二入れたら違反なんです。その違反を、明々白々なんですから、どうなさる気かと私は聞いている。
  52. 園田直

    ○園田国務大臣 私は、その原液をつくっている工場が独立しておって、最終の飲料たる商品をつくる工場と一貫された作業にないから、例外的な売られ方をするおそれがあるということは御指摘のとおりでございますが、ただ原液をつくっている工場が、飲料としての商品をつくっているのか、あるいは端末工場で、この飲料水の原料をつくっているのか。これは法制的に見るとやはり検討しなければならぬ問題だと思います。
  53. 山田耻目

    山田(耻)委員 その独立した商売で、それを二倍ないし三倍に薄めたりして、だれにでも飲める製品——シロップみたいなものですよ。シロップも、あれを買うてあのまま飲むとにがいくらい甘いですよ。それを二倍か三倍かに薄めて飲まないと飲めませんよ。シロップをつくっている会社と端的に考えればいいのですよ。薄めて飲もうが濃くして飲もうが、本人はかってですよ。それを山田耻目の会社にしか売ってはならぬという品物をつくっている会社というものは、商法の上からもどこからもこれは言えないのです。独立した製品会社ですから、だれに売ろうとかってなんですよ。だから売る危険はある。売らないという保証はだれにもできない。会社が左前になったらどこへ売るかわからぬです。売るかもしれない。ただ、現在では売ってないかもしれない。しかし、よそに売った。特定の会社のみに売ったということだけで法律違反に問われることはないと私は思う。それは、そういう製品をつくっているところに添加物違反があるわけです。そのことで処罰をされておるわけです。それは正しい扱いだと私は思う。正しい扱いだと思うというのは、こういう事実がありますよ。あるのだから、これを一体厚生省、厚生大臣はどうなさろうとしておるのかと私は聞いておる。
  54. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御意見を承りますと、そこはやはり原液をつくっている工場であるから、一般商品の飲料水をつくっている工場ではないということの理論もやや薄弱であって、山田委員がおっしゃっているようなことがどらも強いような気がいたしまするが、いずれにいたしましても、ただここでただいま即答する段階ではございませんから、早急な時期にお答えを申し上げます。
  55. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうやらわかっていただけたよろでありましてありがとうございます。やはり独立した製造工場であるというたてまえ、しかも食品をつくっておるたてまえ、そこに添加物の限界を越えておる。デヒドロ酢酸混入しておるという事実、これをお認めいただければ——それを販売しておるわけですから、六条、七条の違反ということは明らかなんですから、これに対してどういう処罰をする、何をどうするということは、きょうこの委員会の席上でお述べになることはむずかしかろうと思う。ただ、全国的にまたがっておる問題ですから、その中身については十分御検討いただいて措置してもらわなければ困りますが、これはきょうもあすもあさっても続いているのですよ。品物は売られているのですよ。その意味ではきわめて時間を急いでもらわなくちゃ困ります。これはあらためてこの委員会報告をいただくということになります。  もう一つの角度からお尋ねをしたい。去年の八月の十二日に全国乳酸菌協会——これは社団法人でありますが、ここの阿曾村千春理事長のほうから、なぜヤクルトのみに原液段階で十万分の十二を認めているのか。わしらみたいに全国に二千いる業者の乳酸菌協会が入れれば直ちにつぶされてしまう。ヤクルトだけはのうのうとやっている。だからこの際、保存食品であるからしばらくひまもかかる、そのためにわれわれにもこれを許してくれという要請書が坊大臣に出されております。一体これはどのように始末なさるお気持ちですか。法というものは万民に平等でなくちゃなりません。片一方が盗人でも見のがしてやる、片一方はちょっとしたこそどろでも厳格に法のさばきを受ける、こういう差別のある国に日本をしてはなりません。一体どのようにこれを扱ってきたか、その経緯を明らかにしてもらいたい。
  56. 松尾正雄

    松尾政府委員 御指摘のとおり、そういう差別をつけた取り扱いはいたすべきではございません。私が参ります前の陳情のようでございますけれども、そういった差別をつけた取り扱いをすべきじゃないということで、その後、先ほど申しましたようないろんな、摘発違反件数として処分した中には、いまの御指摘の点も入れてあるはずでございまして、そういう態度は私どもは、差別をして扱うつもりはございません。
  57. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣、よろしゅうございますか。私は色めがねをかけてものを見たり演説をするわけじゃないのですよ。何も根拠のないものを申し上げているのでもありません。役職柄投書がたくさん来まして、それだけで私は動いておりません。それに基づいていろいろ調査をします。そうして申し上げている。いまの事柄の中にも、明らかに差別の取り扱いがあるわけですよ。これは、前段の原液十万分の十二入れておるところは、もう早いので去年の八月ごろから摘発されているのです。しかし依然として続いておる。厚生省が倒れなければおれは倒れやせぬという横着な声まで民間に聞かれている。こういうものが片一方で温存されて、片一方で厳格にされている。これは盗人にも何ぼかの理屈があるでしょう。さっきの局長答弁の中でも、いまのあとと前との話の継ぎ穂を一つにして言っては御迷惑と思いますが、別に三分の理屈と言っているのではないのですけれども最終処理工程で十万分の四という意見があります。この最終処理工程を十万分の四というものの言い方は、乳酸菌協会が坊大臣に要請した文書も中身の精神はそれなんです。その途中の輸送とか工程の中では少なくとも十万分の十二か十五ぐらい入れさしてくれぬかという要請書だと思う。その要請書の資料を私は見ておるのです。そういうことになりますと、告示三百七十号を手直ししなければならぬ時期が来る。この要請書を認めるとすれば告示三百七十号を手直しせなければならぬ。この二途にかかってきておるわけです。しかし現行法というのは厳重に守られていかなくちゃなりません。だから、大臣が始末をしたいとお約束をいただいておる中には、現行法としてどう始末をするのか、そうして告示三百七十号を改正するとすればどういうふうに改正するか、この二つがやはり精査されて答弁いただかなければ、この問題の決着にはなりません。私は世間さまのあげ足を取るだけで国会質問を終わりとうございませんから、やっぱり国民に晴れるもりは晴らしてあげたいし、安心をして乳酸菌飲料というものを保健飲料として飲ましてあげたい。そのためには法の定めるところによって安全が守られていく、この立場を法のたてまえで整備していくということが一番大切なような気がします。  特に、冒頭申し上げましたように、最近はたいへん有毒食品が多い。それでなくても国民は不安を持っている。特に非常に膨大な量を生産し販売をしているクロレラヤクルトに対しては、そういう意味で、いけないところはいけないということで始末をし、そうして改める、法改正なり告示の改正については、そのような始末をしていく、二本立てをもって検討していただく、結論づけていただく、よろしゅうございますね。
  58. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの御意見は十分理解をいたしました。私も御信頼をいただいたように、山田委員の御人格は十分存じておりまして、国民飲料という観点から、高所から意見を述べていることは心に銘じて承っております。抑せのごとく、調査の上、一方のほうが最終工程において飲料品としてやるためには、現段階においても原液の場合十二でいいという結論が出れば、あとのほうにもこれは許すべきであるし、あるいは一方がだめだというならば現在やっているところはこれは取り消すべきである、この点は私もはっきりいたしております。厚生省がそこまで延びました事情は、後刻調査いたしますが、私のただいまの感じでは、たぶん、山田委員質問されたとおりに、現行法における現在のやり方というものは疑義がある、したがって、新しく許可することにちゅうちょをしたために延びたものだと考えておりますが、いずれにいたしましてもただいまの御意見は十分わかりました。御意見と全く私は同じでありますから、その方針で検討し、処置をいたします。
  59. 山田耻目

    山田(耻)委員 予定の時間が参ったようでございますので、ぼつぼつ終わりたいと思いますが、非常にじみな問題でありますけれども、きわめて重要な問題です。なかなか平素痛みはないガンですけれどもやはり命取りになるガンですから、問題の処理を誤っていただかないようにお願いしたいと思います。  きょうお聞きしましたのは、第一番は、抽出液マンガン分、これは入れてはならない、そういう行政指導を強くするという立場一つ明らかにされました。これはこれからのまた抜き打ち立ち入り検査等で明確になりますので、今後再びこういう問題が出てくればやっぱり厳重なる処罰を行なう、こういう立場一つ御確認をいただきました。  二つ目には、工業用カゼインを使っておる。これが発酵乳の基準である乳固形分の三%を含有量として厚生省が認めておるのかどうか。そういう立場にも触れられないほど厚生省答弁はあいまいもことしておるのです。入っておるといううわさは聞きましたけれども、まだはっきりはわかりません。しかし農林省のほうは、明確に入っております、そのために畜産には影響を与えてまいりました。片一方では脱税の疑いがあります。食品に携わっておる厚生省だけが、うわさは聞いておりますという程度では、国民の健康を保つ厚生省としてははなはだもってけしからぬじゃないか。この点については、きょうはきちっとした結論を出しませんけれども調査をいただきましてこれの基準も明確にしていただかぬとなりませんし、これもやはり三百七十号告示の改正に通ずる問題でありますから、ここらあたりもひとつけじめをつけていただく。  最後に、デヒドロ酢酸の使用についてですが、これは明確になりました。六条、七条違反であるということも明らかになりましたので、現行法上の処罰をどうするか。将来三百七十号告示を変えて全体に公平な取り扱いができるような道筋を開く、これは大臣のお約束であります。しばらく時間をおきましてこの問題の結論をいただきたいと思いますから、きょうはこれで終わりたいと思います。  たいへんありがとうございました。      ————◇—————
  60. 八田貞義

    八田委員長 次に、内閣提出医師法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  臨床研修を受くる者の地位等についての昨日の田邊君の質問に対する統一見解を、政府より表明される予定でありましたが、いまだ調整がととのわないようでありますので、この点を留保の上、他の諸点について審議を続けたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。岡本隆一君。
  61. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いまから十年ほど前、園田厚生大臣が社会労働委員長であった時分に、私はこの委員会に所属しておりまして、きょうは久しぶりでこの委員会に出てまいりまして、何か水の中へ帰った魚のような気がいたすのでございます。  事は、私も医者でございますので、われわれの後輩に関する身分上の重要な問題でございます。またこのインターン問題についての紛争がすでに十年近くなって、次第にそれが激化いたしてまいっております。したがいまして、これは日本の医制の上でもって放置できない重大問題にまで立ち至っておりますので、今国会をもって何とか円満な解決をしていただきまして、日本の医療行政がうまく進むようにしていただきたいということを私は心から念願いたしておる次第であります。  そこで私は、たしか昨年でございましたと思いますが、予算委員会で佐藤総理に質問いたしまして、インターン問題は放置できないのではないか、そしてまたこのインターン制度というものは、学校を卒業してそのまま、技術が未熟なままに診療の第一線に立たれる場合には、国民の側からは少し不安である、だから安心して医療が受けられるような方法を講じる必要があるが、それと一緒に、またその間の生活は国家のほうでめんどうを見る必要があるのではないか、こういうことを私は主張したのであります。そのときの佐藤総理の答弁は、お医者さんが自分の技術を身につける、そういうふうな修業の期間に対して、国がそんなお金を出すなどということはできません、こういうきわめて冷たいそのときのお答えでございました。しかしながら、やはりその後政府部内で反省があったのではないかと思いますが、とにもかくにも医師法の改正という形が出てまいりまして、そしてインターン制度をやめて、大学を卒業すると同時に国家試験を行なって免許を与える、そして医師としての資格において研修をしてもらおうというふうな制度に進んでまいったということは、これは非常にけっこうなことだと思うのでございますが、しかし、問題点がいろいろ残っておるようでございます。  そこでまず第一に、インターンが一年であった。ところが研修期間は今度は二年になっておる。これはどういう理由で二年に延ばされましたのか。一年でもよかったのではないか。多きに越したことはございませんが。一年を二年に延ばされた理由はどういうところにございますか。大臣からお答え願いたいと思います。
  62. 若松栄一

    ○若松政府委員 従来のインターン制度の場合の一年を、今度の研修で二年にしたという理由につきましては、これは直接的には医学部卒業後の研修に関する懇談会の御意向に沿ったわけでございますが、懇談会における議論の過程におきまして、一年ではやはり少し少な過ぎる、現実に医局で勉強している若い先生方をほかの病院等へお世話をする場合に、安心して出せるのはまず二年程度だということが話題になっておりまして、そこら辺の感覚がこの二年という期間の決定にかなり力があったものと考えております。
  63. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういたしますと、旧制度のインターンにおけるところの研修の目的と、新しい今度の制度におけるところの研修の目的とは変わってきた、内容もまた変わってくる、こういうことでございますか。
  64. 若松栄一

    ○若松政府委員 前のインターン制度の場合におきましては、一応医師として必要最小限度の技術を身につけさせようということでございました。ところが今度の場合は、一応卒業前の教育過程等も改善することによって、卒業後直ちに医師としての資格を与える。卒業後行なわれる今度の研修は、むしろそれぞれ各人が志望する診療科の技術、知識を、専門的な観点を含めてある程度深めていこうという意味がございますので、前とはかなり違った観点に立つものと考えております。
  65. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういたしますと、内容を整理いたしますと、インターンははた目で見ておりましてもきわめて無意味でございました。私も、インターンの人を私の病院で少し使ってくれないか、こういうふうななにで隔日に来てもらっておりましたが、私のほうでは直接診療にはタッチささずに、記録を書くというふうな仕事をしていただいておりました。いずれにいたしましても指定病院の中で勉強しないで、半ば半分は働きながら、しかも当てもない一年を待っておる。そして医師国家試験を受けるというように横から見えました。だからこういう制度は、これは若い一年間をこのようなむだな使い方をさせたのではかえって人間を殺すのではないかということを私もかねて考えておりまして、インターン期間は無用である、無効である、逆に害があるとすら私は思っておりました。だから、そのインターン期間をなくする。同時に、いま局長が言われました、卒業前教育を改善するということによって、インターン期間に目的としておられました医師としての必要最小限の教育は、もう卒業前の教育の中に全部含め込んでしまう、押し込んでしまう。そして新たなる研修期間というものは、これは私どもの若いころにあったいわゆる医局生活、大体いま大学懇談会のメンバーというのは大学の先生方であると思いますが、とにかく医者は卒業の免状を取って二年くらいは医局の中で実地の修練をしたほうがいい。またそうでなければ、一本立ちして、独立して診療を受け持たせるということは少し無理だというふうなのが大体基本的な考え方になっておりますが、そういうふうなシステムを今度医療制度の中に取り入れる、こういうことのように理解されますが、それでようございますか。
  66. 若松栄一

    ○若松政府委員 大体先生のおっしゃるような方向だろうと思います。
  67. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうなってまいりますと、医局ではこれはなるほど勉強でございます。しかし、医者というのは一生勉強なんですね。私も、いまはもうタッチいたしておりませんが、二十数年間医者としてやってまいりましたが、一人一人の患者が、全部が勉強の材料でございます。そしてまた少しむずかしい症例に出っくわしますと、そのたびに本を繰るし、わからないことはまた先輩なり大学なりへたずねて行って勉強する。一つ一つの症例が医者にとっては勉強でございます。したがいまして、未熟ではあるといいながら、卒業いたしまして医局へ入りますと、やはり三月ぐらいの間は先輩と二人で患者を受け持っております。主治医は先輩であり、新しく入った者はその患者を見せてもらうというふうな、助手的な形で見ておりますが、三カ月ほどたちますと、独立して患者を受け持たされます。それからがほんとうの勉強が始まるわけですね。そして一年たちますと大体四季の病気を見ます。そうすると四季に移り変わって出てくるところのいろいろな症例についての一応の経験ができますから、一年ぐらいたてばまあまあ医者としての相当な技能を発揮できるようになってくるわけであります。しかしながら、一応独立して患者が受け持てるというふうになってまいりますと、検査から何から全部自分でやりまして、その上で、上には教授がいるわけでありますから、先生がいるわけでございますから、大きな間違いのないように、先生がきちっと回診その他をしながら見てくれております。先輩もまためんどうを見てくれます。わからないことはみな相談しながらやりますから、一応医者としての、適当なことばでないか知りませんが、医療労力というふうな、労働単位といいますか労力としては間に合っているわけであります。だから、その点になってまいりますと、これはそれ相応の報酬があるべきであると思います。  ところが、大臣も御承知のように、医科大学というのは他の学部より二年期間が長うございます。二年よけい大学で勉強をしておりながら、卒業して、いままではほとんど無給でございました。それが出るにいたしましても一万五千円や二万円ではあまりに低い報酬である。しかも、それが間に合わないのかといえばけっこう間に合うわけなんです。たとえていえば、民間の医療機関、われわれのところで看護婦学校へ通う生徒を採用いたします。そういたしますと、高等学校を出て看護婦学校へ通う子供は、看護婦学校へ通いながら勉強いたしておりますが、やはり高等学校を卒業した者としての処遇をしているわけなんです。だから、いやしくも大学を出て、そこで一労働単位として働きながら、しかも十分とまではいかなくても一応間に合っておる医師に対して、二年間の長きにわたって一万五千円ないしは二万五千円で縛るということは、あまりにも低労働を強要するものである。おまえは修行だから勉強するんだから、正当な報酬をもらえなくてもしかたがないじゃないか、こういう考え方は昔のでっち奉公、徒弟奉公の封建時代の考え方です。少なくとも近代的な労使関係、あるいは近代的な——医学なんていうものは最も近代的な科学を駆使しておる領域でございますが、そういう医学の領域において、そのような前近代的な労使関係というものを、そのまま研修の名において持ち込むということはいかがなものかと思うのでございますが、厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  68. 園田直

    ○園田国務大臣 理論的には御意見のとおりでございますが、御意見の中にもありましたとおりに、いままではインターンというものについて、勉強中の者に国家が手当を出すといろ制度はないというようなことで押し切られておりましたので、それを、インターンから研修生にかわって、一方は医者になるまでの予備校の教育、一方は医師の資格を持った、医師がさらにみがきをかける段階というように持ってまいりましたが、報酬の点については今度お願いしている、準備している金額で十分であるとは決して考えておりません。しかしながら、制度の転換期にあたって、ようやくここまでこぎつけてきたようなわけでございまして、将来は御意見の方向に従って、逐次一人前の医師としての対遇をすべきであると考えております。
  69. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういたしますと、報酬は不十分だが、一応は予算措置上やむを得ないということでございますが、それなら今後は力関係でとっていけ、こういうことになってくると——いまのインターンの紛争というものは、一つにはそういう待遇上の不満、地位の不安定ということ、これに対する不満ということもございますが、しかしながら待遇上の不満、そこそこの年配になってまいっておりますし、ぼつぼつ結婚もしなければならぬ、中には子供ができたという人もあるにもかかわらず、そのような、暮らすにはるかに足りない給与に甘んじて、その二年間を過ごせということに対する不満も、今度の紛争の大きなファクターの一つでありますが、そういうことでありますと、なかなか円満解決といいますか、いま起こっている紛争を両方が喜んで解決するというふうな域にはほど遠いことになってくるのでございますが、それもやむを得ない、こういうお考えでございますか。
  70. 園田直

    ○園田国務大臣 制度の転換期で、ようやくここまで持ってまいりましたので、将来に対する努力に期待をいたして御了承願いたいと思います。
  71. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 委員長から、身分の問題については触れるなということでくぎをさされておりますので、はなはだお尋ねが困難になってまいりましたが、それでは研修の方針でございますが、いま承りますと、局長からの御答弁によりますと、従来はいわば医師としての最小限の知識を得ることだった。だから各科を回る。そうして公衆衛生的な知識を研修するためには、研修にも回る。こういうことでございましたが、今度はそういうことがなくなって、研修病院に入ったらすぐ医局へ入って、そうして自分の研修したい、自分が覚えたいと思うところの、将来標傍したいと思う診療科へ医員として入る、こういうことでございますか。
  72. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のように、今度の研修の基本的なあり方としては将来専攻しようとする専攻科の勉強をするということでございますので、通常的に申しますと、やはり自分の希望する医局に入って研修をする。ただし、いままで大学の先生あるいは懇談会の先生方に御相談申し上げておりますのは、やはり専門課程に入るといいましても、当然自分の専攻するものの関連領域の勉強は十分させる必要がある。したがって、たとえば内科を専攻する方も、小児科、放射線科あるいは研究検査科というようなところを適当に勉強する。そういう意味で、関連領域は勉強するように基本的な方針を立てたいというふうに考えております。
  73. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これはそういう行き方もあると思うのでございますが、私はここでいまの、あなたのほうの厚生省で指定される指定病院になるようなところ、そういうところはいずれも大病院です。大病院では非常な経営の合理化が進んでいるわけです。たとえていえば臨床検査なんかみんな中央システムです。そうしますと、だんだんあまりに経営の合理化が進んできて、それで一切のものが中央化されていきますと、お医者がかたわになっていくのですよ。たとえば極端なことを申しますと、一外科でどんどん手術しておった。さあ小さな病院へ行きます。そうすると急に盲腸の患者らしいのが来た。白血球の検査をしようとしても白血球の数の計算ができないんですね。全部計算機械へ回ってしまう。今度は自分が小さな医療機関で外科の主任になった。それじゃその外科手術をするための消毒——上着、外套、帽子、手袋、そんなものをどういうふうにするか。自分の手の消毒は手術室でやっていますから知っています。しかしながら、提供されるところの消毒された白衣をさっと腕へ通すだけが清潔の手段ですから、そういう器具の消毒はもちろんのこと、消毒というものは全然何も知らない、そういうふうになってくるわけです。消毒なんて簡単なものだとおっしゃいますが、しかしながら、糸の消毒なんかずいぶんむずかしいものです。糸の消毒がうまくできていなければ化膿するんですよ。手の消毒だけじゃなしに、糸の消毒というものは非常にむずかしいものです。  そういうふうなことをほんとうに覚えるのには、実際大病院の中にいたら覚えられないんですよ。だから昔は、いまでもそうだろうと思いますが、医局に一年ほどおりまして、大体いけるなと思ったらどこかへ出すんですね。そしておまえちょっと武者修行してこいということで、外部の小さな——たとえて言えば、厚生省関係しておられる施設でありますとか、組合立病院であるとか、あるいはその他の中小病院の、どちらかといえば小病院です。ときにはそこで独立で診療を担当したり、あるいは先輩のいるところへ助手として入って、そこで小さな病院でのいろいろなやり方というものを見て、自分が将来小さな施設を運営していくときにも、そこでやれるようないろいろなことを身につけるわけです。だから、あなたが頭から大病院でなければいい医者になれないんだ、そしてそういうところの施設でなければ研修できないというお考え、これはなるほど一応理屈としては、理論的には成り立つのです。しかしながら、実質的には、それじゃそれだけの大きな資本と、それだけの人手を持たなければできないような医療行為の運営というものが、日本の医療機関の中で何%あるか。日本の医療機関——医療機関というと語弊がありますが、日本の医師のうちの九〇%は中小以下の病院もしくは診療所で働いている。そういう大病院で働いて生涯を送れる人というのは五%くらいでしょう。  そういうようなことでありますと、研修内容というものを、私は、大病院で二年間というふうな規定そのものに少し矛盾がありはしないか。だから、もう少しこれはあなたのほうのお考えというものを、何と申しますか、なるほどある特定のそういう指導者のおるところで、基礎的な技術を覚えなさいという意味でならわかります。しかしながら、それを一つの資格のごときものにしよう。二年間そこでやったから、これはりっぱなんですよ。そこで二年やらぬものはだめなんですよ、こういうふうな資格のごときものにしようという考え方には、私は問題があると思う。むしろそういうところに、たとえば一年いました、そうしてまた中小病院へ行って二年、三年苦労して勉強してきた。そうしてわからぬことは、これは生涯勉強でございますから、みんな医者は自分の良心に基づいて勉強いたしておりますそこで、自分みずから先輩に尋ねながら、いろいろ勉強したという人のほうが、むしろ医者として熟した医者がある場合できるのではないか、こういうふうな考え方も成り立つと思うのでございますが、そういう二年間研修した者はこれは登録されております。登録医でございます。指定病院で二年間勉強したものは登録医でございます。医籍に登録してございます。しかし二年勉強せぬ者は、半年かけても、それはそれから後よそへ行って、小さな病院で一生懸命勉強して、それでまじめに勉強してきた、十分な素養を持っておる、しかしそれは登録されておりません。私はこういうことはきわめて不自然であって、そういう制度を、身分的なものと言うと語弊がございますが、やはり医籍といえば、これは身分法なんです。医籍に登録するというのは、医師法の中の最も中心的な部分なんです。その医籍の中へそういう不自然なものを持ち込むということは、これはいかがかと思うのでございますが、厚生大臣、私のいまの説明をお聞きになって、あなたはいかがお考えになりますか。
  74. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの御意見は、非常にありがたく拝聴いたしました。したがいまして、研修の内容あるいは方法等をきめる場合には、それぞれの審議会あるいは協議会等に、厚生省の意見も付して、御意見のとおりしたいと思います。  なお、それから来る登録の問題でありますが、これは身分のつもりでやったわけではございません。ただ、国家が研修に対して責任を負うということを明確にするためにやったわけであります。しかしながら、これを登録するということがいかにも身分のあれであるかのごとき誤解を与えるとすれば、それはまた検討しなければならぬ問題であると思いまするが、それは今後審議の過程において委員各位の御意見を承って検討したいと考えております。
  75. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 もう一つ大きな問題があるのですがね。これは、いまの研修制度というものを制度化していく場合に、厚生省の考え方は、一応卒業した者は全部研修病院に入ってください、そうして二年たったらそれぞれおのがししのところへ身の振り方をつけてください、こういう御意向のようでございますが、そういうことになってくると、いま研修病院に指定されるほどの施設はない。しかしながら十年、二十年医療機関を運営してきて、相当熟練したところの臨床医があり、そうしてそれらの人がたとえて言えば厚生省であるとか、その他の機関が運営しておるところの、たとえば社会保険病院であるとか、あるいは健康保険組合病院であるとか、あるいは民間の医療機関でもありましょう、あるいは鉄道病院であることもあれば、各種の農村の組合病院であるとか、いろいろな医療機関が全国にあります。そういうところでは、なかなか青年医師が得られなくなる。いままででありますと、大学等から、一年ほどたてば、私が先ほど申しましたように、交代に出向の形で順繰りに助手を回してもらっているわけですね。それで、そういう医療機関は、人員の充足がうまく運転しているわけですね。ところが、こういう教育指定病院で、二年間ぴしっとやらないとだめなんだということになってまいりますと、そういう人事の交流がとまるわけですね。そうすると、中小病院では非常な人手不足が起こってくる。現に起こっておるわけなんですが、いま起こっておるのは、そういう関係じゃなくて、国家試験を受ける人がほとんどとまっておった。そのため、大学では、それぞれ人手不足だから、外へ出向さしていたのを、交代がなくとも引き戻している。医者がないけれども、交代はありませんが、返してくださいというようなことで引き揚げられて、困っている病院がある、現在は。しかしながら、この制度が二年間ぴしっとくぎづけということになりますと、いままで行なわれておった各種大中小の医療機関間におけるところの人事の交流が、たいへん困難になってくると思うのでございますが、こういう場合に、その大学なら大学、あるいは教育病院なら教育病院の長が、自分のかわりにこの人に指導をまかしたら、二年の間に半年や一年指導をまかしても、研修課程として、決して研修は不十分でないと認定したらそれでよいという考え方なのですか。やはりこれは教育病院として指定しておるのだから、その施設から一歩でも出たらだめなんだ、一歩でも出たら、そういうふうな解釈をすることができないんだ、こういう考え方なのか、いずれかということをひとつお答え願いたいと思います。
  76. 若松栄一

    ○若松政府委員 この制度の創設によって、地方の比較的小さい病院に対する人事交流が拘束されるのではないかという御意見でございますが、これはある意味では、将来の問題でございますので、どう予測するかということによっていろいろ考え方が違ってくると思います。  非常に端的なことを申しますと、大体従来は、一年間インターンがありましたので、いわゆる大学卒業後一年間インターンをやって、それから医師になる。それから少なくとも一年間勉強してからいわゆる武者修行ということで出るといたしますと、結局、学部卒業後二年たって初めてそういう外へ出るということになります。今度は、学部卒業後二年間勉強して、武者修業に出るということになりますので、そういう意味の期間的な問題は、あまり大差がなかろうという点が一点でございます。  それから、今度の二年間の研修の間において、その施設にどうしても縛りつけておかなければならないのか、あるいは、ある程度自由を認めるのかという問題でございますが、これは私ども、そういわゆる強制的なものではございませんので、それほど厳格には考えておりません。いままでいろいろの大学の先生方等とお話し合いをしている段階におきましても、大学自体がある程度アフィリエイテッド・ホスピタルというような形で、一つの大学と、それと関連した病院というものを考えて活用していくということもあるのじゃないかという意見が出ておりますので、それからの問題は、これから実際、当たりまして、御意見を聞きながら弾力的にやっていきたいと考えております。
  77. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは、研修生に対して給与が出ます。その給与の性格でございますが、これは、先ほど委員長が言われました身分の問題と関連があるのでございますが、それは給与なのか、あるいは奨励金なのか、労働に対する報酬なのか。そして、その研修費というものは、それは機関に出ますのか、あるいは研修しようという人間に出るのか、その辺のところはどうなんでしょう。
  78. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの問題は、予算的な細部の措置等になりますると、先ほどの身分の問題に関連いたしますから、それはあとで答弁をいたしますが、ものの考え方は、労働に対するお金、ただし、それが手当でいくか、何でいくかというところまでは、あとの身分の問題で違うわけでございます。
  79. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 一応それは、労働に対しての報酬である、そういうふうに……
  80. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの答弁は、ちょっと誤解を与えますので、取り消しまして訂正をいたします。  医療協力に対する謝金、こういうつもりでございます。
  81. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうしますと、その謝金というものは、謝金を出すための原資として機関に入っていくのか、あるいはその機関というものは抜きにして、政府が個人に、いかなる機関で働こうとも、あなたがどこで働こうとも謝金を出しますよ、こういう性質のものなのか、どちらになりますか。
  82. 若松栄一

    ○若松政府委員 この問題は、ただいま出ております各施設における処遇の問題と非常に密着してまいりますので、その処遇のあり方によって出し方が違ってくるわけでございます。ただ、私どもとしては、一般会計のものと国立大学その他のものとありますので、それぞれの場所によって出し方その他が全部変わってくる、そういうことになると思います。
  83. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうすると、議論が進まぬのでございますから、やむを得ません。それはまた、結論が出ましてからお尋ねさしていただきます。  そこで、またしかしその研修費と関連のある問題でございますが、大体厚生省は、公私立大学並びに指定病院に対して千四百四十五名の人員の配置でございます。それから国立病院に対しては二百名、それから国立大学については六百三十六名というところの研修生の配分をしておられます。これはまあ何といいますか、一応のものであるというふうに理解をいたしておりますけれども、しかし文部省とそれから厚生省関係の予算とは融通はつかない。流用できない。そういたしますと、国立大学については一定の数を縛りつけて、ワクはもうきまってしまっておる、こういうことになるわけです。ところが、多くの学生諸君は国立大学に残りたい。また国立大学は非常に多くの収容力を持っております。この二十四の国立大学が六百三十六名でありますから、一つの大学について三十名足らずですね。そういたしますと、講座が二十以上あります。そうすると、一講座一名、多いところで二名というふうな割り振りになってまいります。それが二年間としても、研修生は一講座について二、三名、多くても四名というふうな研修生より入っていかない。ところが、大学に残りたいという者はたくさんある。また一講座当たり、大体慣例でありますと少なくも十名、多いところは二十名毎年医局入りをしておる。ところが、そういうところへ入ってくるのが非常に少ない。あとは大学院学生とおっしゃるのだろうが、しかし大学院学生といえどもそうたくさん——医局入りしておる者が、大学院学生以外で十名やそこらはどんどん入っておったわけですね。それが二名以下に限定されるということになってまいりますと、これは希望する者とそれから定員との間のたいへんなアンバランスがございますが、これは一体どうなるのか。もし多くの人が大学へ残りたい、こう言った場合には、そしてたとえていえば、いや、そんな他の病院へ行くのは困る、研修費をもらえないでも、大学へ残りたいというふうなことで大学へ集まって、割り当てられた研修指定病院へは志望者が非常に少なかった、予算が余ってきたというふうなことがあっても、それは何ともならないのか。やはりその人に対して、研修生全体に対して与えるというものであれば、それらの人が動けば、動いたところへ金を動かしていくべきではないか。つまり、きめられたところのワクの中へ人を流し込むのではなしに、一応ワクはつくりました、しかしながら人が動いたら、その動きに応じて金は動かしていく、研修費は動かしていく、こういうお考えなのか、これは大きな問題でございますが、いかが大臣お考えでございますか。
  84. 若松栄一

    ○若松政府委員 おっしゃるとおり、研修生が自分の希望するところへじかに定着することができないという点は、この制度の運用上やはり一番大きな欠点の一つであると私ども考えております。そういう意味で、この予算を全部一本にいたしまして、それは文部省でも、厚生省でもけっこうですが、一本にして全部に融通がきくような形で予算が組めれば一番よかったと思います。ところが、現実には予算が三本の形になりまして、厚生省における一般会計の補助金と、厚生省の国立病院の特別会計の予算、文部省の大学特別会計の予算と、三つに分かれてしまいましたので、その間の融通が非常にきかなくなったという点は、確かに大きな欠点であります。私どもは、きまった以上やむを得ませんので、できるだけその欠点を少なくしていこうというふうに努力はいたします。ただ、このようなことになりました経過中におきまして、大学医学部卒業後における教育研修に関する懇談会、あるいはその後の大学病院長学部長会議、その他の御意見におきましても、大学が希望者をそのままうのみにして、一つの大学に百名、百五十名というように続けてまいりますと、大学としてもとてもそれだけの教育を確実に行なっていくことは不可能である。したがって、やはり大学といえども、ある程度自分の研修を、責任を負い得る範囲内でとどめるべきである。したがって、何らかの形で大学においても定員制を設けるべきであるという意向が非常に強かったのございます。同時にまた、大学の先生は自分のところで無制限に採りたいというお気持ちもございます。そういういろいろの意見が出てまいりましたが、やはり定員制は確保すべきであるという意向で懇談会の答申等も出たわけでございますので、そういう意味で、無制限ということはこの際チェックしなければならぬ。ただ、現行の予算の組み方では、確かに不自由であるという点は反省いたしておりますので、将来は、来年度以降は実情にできるだけ近寄せる形で検討していきたいと思います。
  85. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうすると、いまの局長のお答えによりますと、無制限というわけにはいかぬ。それはそうでしょう。それはわかります。しかしながら、従来持っておる実績、あるいはわれわれが大学をずっと考えましても、年々一講座十名くらいの入局者がなかったら、大学の医局は、教室は動きませんよ。少なくとも大学の教室というものは、一番は教育ですね、大学の使命ですから。教育と研究と診療と、三部門持っているわけです。それを年々十名ほど入っていくところの——医局十名というのは、あまり多い講座じゃございませんよ。年々十名くらい入っていくところの新入局者の手によって、その大学の三部門が運営されておる、これが実態です。  あとで大臣に見ていただこうと思って持ってまいりましたが、これは松下さんが出している「PHP」という小さいパンフレットでございますが、その中に「裏方さんの待遇」というのがあります。これは気象研究所長の荒川秀俊という人が、自分が入院した体験を書いておる。大学病院で年期を入れるお医者さんと、大学の病院で無給医局員として朝早くから晩十時ごろまで一生懸命になって患者の診療に無給で働いておる人、ほんとうに頭が下がるように思う。しかも、それに対する酷使はひどい。労働基準法もくそもない。とにかく夜を日に継いで働いて、ほんとうに気の毒だということを書いておりますが、このとおりなんです。私らの若いころの医局員というものはこのとおりで、万年当直をしながら、二人、三人の若い医者が宿直室で週に二日も三日も連続泊まって、半ば研究半ば診療に従事して勉強してきたものです。いまもやはりそういうようなことが行なわれているわけなんですね。だから、大臣、あとでこれをお読みいただくと大学の実態というものがわかりますが、いまそのように運営されておる大学、そこへぴたりと二人や三人、あとは何だ、大学院学生だ、こういうことになってまいりますと、大学側がもう運営していけなくなる。教育それから研究、診療の三部門を運営していけなくなる、私はこう思うのでございますが、これは学術局長、大学のほうで、六百三十六という数で、あと大学院の学生さえもろうたら、これで大学の運営はできるんだ、こういう自信を持って六百三十六という員数をなにされたのか。  それからもう一つ厚生省にお尋ねをいたしますが、厚生省がもし人が余って予算が余ったら文部省へ回してもいいという腹を持っていられるのかどうか。この二点についてそれぞれからお答え願いたい。
  86. 宮地茂

    ○宮地政府委員 文部省の、国立大学で引き受けます臨床研修生の数でございますが、実はこの臨床研修生と申しますものは、一応医者の免許状を持った者の教育でございますので、いわば医者の現職教育ということになるんじゃないかと思うのです、従来のインターンと違いまして。したがいまして、多少形式ばるかもしれませんが、一応医療行政を所管しておられる厚生省において、まずこれは全体の臨床研修生について一応窓口と申しますか、いろいろな省にまたがると思いますけれども、そういう、医療行政を所管される厚生省立場が、一応窓口的でもあるし、また一つ一つのいろいろな考え方をまとめられるところになるという考え方を私どもは持っております。  そういう考え方から臨床研修生の全体の数なりあるいは大学病院あるいは国立病院への割当は、もちろん文部省としても御相談に乗り、いろいろ御意見も申し上げましたが、全体を勘案して、厚生省のほうでそれぞれ、このくらいでいくのが適当であろうというようなお話になって、私どももそういう前提で、国立大学に一応割り当てられました臨床研修生については、国立大学が責任を持って研修を引き受けましょう、そういうことになった次第でございます。——私がただいま不用意に臨床研修生と俗語を使いました点、訂正さしていただきます。大学を卒業して医師の免許状を持ち、臨床研修をする医師でございます。が、一応俗語で申しましたので、御了承願います。
  87. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 ちょっとお答え漏れがあるのですが、年々十名ずつほどの医局員が入っていった、ところが今度は一講座一名か二名より入っていかぬ。残りは大学院学生——大学院学生は学生ですから、別ですからね。職員じゃないのです。いままでは、無給医局員といえども、入った者は職員だったわけです。現実には職員として働いておったですよ。それが年々十名、十五名。身分はいかにあろうとも、とにかく講座の中で教育には直接タッチはしませんが、教授のいろいろな講義の準備をしますよ。私らも医局に入って、白墨を持っていったり、図を持っていったり、図をかける準備をしたり、あるいはこういう図を描いておけと言われたら、それを前の日に行っておそくまでかかって描いたり、そういうことをしておりました。そういうふうな教授の教育のお手伝いもしています。それから診療の手伝いはもちろんしています。それから研究のお手伝いもしています。教授の出されたテーマについて、動物実験も、ひまひまを見てやっております。あるいはこういう患者についてはこういうことを調べろ、特に教授が興味を持っておられる病気の患者が入ってこられると、非常に詳しい検査をやります。それは研究のお手伝いです。全部やっておるのです。そういうメンバーが年々十人、十五人入ってきておった。ところがそういうメンバーがぴたりと供給がとまるのですよ。それで大学は運営できるのかといって、私はお尋ねしておるのです。文部省としてはそういう点で大学が非常に困るだろう——現に困るということを大学側から私に言ってきているのだ。だから、そういう点どうなんですかと聞いているのです。
  88. 若松栄一

    ○若松政府委員 大学がいまのようなことで困るか困らぬかということは、文部省からお答えいただきますが、この定員をきめるということにつきましては、確かに厚生省が主導権をとっております。主導権といいますか、発案をしておりますので、その意味で私から先に御答弁申し上げますが、今度のそれぞれの配分を考えます場合に、従来の実績を考慮いたしたわけでございます。最近の一、二年におきましては、国立病院の試験ボイコットというような形で、非常に非平常化した状態にありますので、一応今度できるだけ平常化した状態になっていただきたいという願望を込めまして、これほど異常事態にならなかった平常年度を一応考えまして、その際に、三十七年、三十八年、三十九年の三カ年の平均をとってみますと、三千百二十四名の卒業生の中で、いわゆる教育病院で研修いたしましたものが千九百一名、そうして医育機関、大学の付属病院で研修、インターンをいたしました者が千二百二十三名、この状態におきましては、医育機関に四、一般指定病院に六という比率でインターンの実習が行なわれたわけでございます。これをこのままではとてもいかぬだろう、一応まず腰だめ的に五〇、五〇ということで計算いたしました。しかしその際に、今度はすべての卒業生が研修するのでなしに、大学院学生はあらかじめ大学院に入りますので、結果といたしましては今度の明年度の計画におきましても、一応三千三百五十六名の卒業生が出るうち、いわゆる教育病院に受け入れを予定しておりますものは千百四十一名でありますので、およそ三分の二は大学に残り、三分の一が教育病院に回るという計算になるわけであります。
  89. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それは局長、次元が違うのです。どう違うかといいますと、インターンというのは当てもない一年、いわば昔の若い青年が兵隊にいって二年間、自分の人生目的からいえば無為に終わってくるのと同じですね。それは、その間に兵隊をやって性根が入ってきた、しっかりしてきたという人もあるかもしれません。とにかく一年間というのは法律上きめられておるから、しようがない、いってくるんだ、しかし、自分はここで勉強するんだということで、インターンを終えたらみんな大学の医局に入っておるのです。インターンを終わってそのままいまの国立病院に残ったというのはあまりないのです。みんなやはり大学に入って勉強したがるのです。だから、あなたのおっしゃるインターンにいった実績はこうでございますということと、大学の医局に入局した実績はこうでございますということは違うのです。その議論は成立しないのです。当てはまらないのです。だからそういう割り振りの口実にはならないのです。それだからといって研修生をそのように割り振ってしまわれたら大学では入局者はないのです。そうでしょう。インターンに二年いく間はありませんわね。そしてあなたのほうはそこにまたいろいろ疑惑も出ているわけです。言わずもがなのことでございますが、なかなか厚生省うまいことを考えた、一年を二年に延ばして、安い給料で自分らの病院に縛りつけて、それから後も歩どまりを残して、まあ国立病院の定員確保の道具にこの研修生制度を使おうとしておる、こういうような言わずもがなの疑惑すら出てきておる。必ずしもそこまでのことは考えておられないと思いますが、しかし、そう言っておる人もあるのですよ。また学生諸君の反対の中には、そういう強硬な反対もあるのです。おれたちを安い給料で国立病院で使う気か、けしからぬという反対意見もあるのですよ。  その問題は別として、私の申しますのは、そういうふうにして当てもない一年を送らなければならない。それならどこでもいいわ、一年どこぞで遊んでこようか、それなら自分の郷里に近いところがいい。学生が東京でインターンをやれば生活に困る、国元へ帰ればまあまあどないしてでも一年過ごせるということで、それぞれの地方へ散らばったものを、いや、それはみんな希望するところはこのとおりでございますとおっしゃるのでは筋が通らない。また、そういうようなことで将来をきめてしまわれたら大学の運営に困るのです。だから大学の先生が、これでは大学はもう成り立ちません、教育もできません、こう言ってきておる。そのとおりなのです。私もそう思います。だから、あなたのほうで、思いのほか地方の教育病院そのほかに希望者がなかった、しかし大学のほうにはたくさん希望者が残りました。これはやはり研修生全体に出した予算ならそれをプールして、その金はその人の動きに応じて動かすべきである、こういうことを私は申し上げておるのです。しかしながら、予算のワクがありますから流用できません、これは国全体の医療行政のあり方から見たら少ししゃくし定木じゃないか。そういうことにこだわらずに、来年は実績を見てやりますということでございますが、しかし本年から大体みなの希望するところで研修しなさい、研修するところへは金をつけてあげます、ただし無制限では困る、そのとおりです。だから、それぞれ自分のほうで従来の実績、それからまたその施設あるいは陣容、そういうふうなものから見て、一応それは審議会で検討されたらいいでしょう。審議会でこの程度の定員なら妥当であるというようなものを設ける、それを越えたものについてはやむを得ないでしょう。しかしながら、そういうふうな定員までは一応認める。だから、あなたのほうはどれだけのものを指定されようと、それは自由です。だから約二千三百の定員予算、これは通ってしまえばその予算についてはやむを得ないでしょう。一応定員としては、二千五百になるか三千になるか四千になるか知りません。この病院なら教育機関としてよかろうと思うところでそれぞれ定員をきめさせる、そして希望者はそれぞれの定員の範囲内において希望したところに行かせる、そしてそこへ金をずっと流していく、こういうふうなことは不可能でないし、またそうすべきである、こういうふうに思いますが、大臣、いかがですか。
  90. 園田直

    ○園田国務大臣 御意見を承りまして、本年度の算定に誤りがあったと思います。しかしながら、予算の流用が二省にまたがっておりますので動かすことができるか、あるいはどのようにしてできるか、こういう点を検討してみたいと考えております。
  91. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 公私立大学と指定病院との間、これは流用はききますね。そうすると国立病院の分二百名が残ってくるかもしれぬ。それから国立大学が足らぬと思うのです、希望者がうんとおるのだから。せめて国立病院と国立大学とを流用させるというわけにはいかぬのですか。厚生省が金を放せばいいのでしょう。文部省にやったらいいのじゃないですか。
  92. 園田直

    ○園田国務大臣 それはいまのような御意見も言われておるようで、十分わかっております。したがいまして、私としては金を手放すことはいささかも拒むものではございませんが、予算の技術上どうなってくるか、この点を検討いたしたいと思います。
  93. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは大臣にお伺いいたしますが、私が先ほどから説明いたしましたことで、この数字の基礎に誤りがあったということはお認めになりますね。いま局長が言われましたように、インターンが入った模様でもって割り振りした。しかし、実際、インターンを経て医局へ入るその趨勢とはうんと大きな開きがあるのです。医局へ入る場合のものの考え方で事を処しないから、学生諸君の考え方との間に非常に大きなズレが出ているわけですね。そこがまた今度の、これじゃ困るという大きな反対理由の一つになっておるわけです。だから、そういう点の誤りを認めていただけるなら、予算というのは何ぼでもまた先で更正できますね。更正すればいいのですよ。予算の編成の基礎に誤まりがあったということがはっきり認識されますならば、それは一年間の間に更正すればいいのですから、更正されることにやぶさかでない、こういうことになるのではないかと思うのですがね。
  94. 園田直

    ○園田国務大臣 算定の基礎数字がなかったために算定が適切でなかったということは認めます。認めますが、予算技術上どのようになりますか、研究してみたいと思います。  ただいまのをさらにもう一回答弁をいたしますが、事務当局でつくった目安というものは、これは基礎数字がないために、いろいろ努力してやったものであります。しかしながら、御意見等を承りますると、インターンと研修制度は違うという時点の相違において、御意見のとおりに、大学に残りたいという医師の方が多いような感じがありますので、現実にそのような場合には、その学生の諸君の希望をなるべく達成できるような目的を持っていろいろ検討をいたします。
  95. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それではもう一度進めまして、ことしは研修生については二千二百八十一という算定が出ております。残りは大学院の学生だ。しかしながら、将来研修費が増額され、落ちついて勉強できるというふうな環境が生まれて、非常に多くの人が研修生になることを望むようになったような場合、別に学生にならなくても、——いままでは金がもらえないから大学院にでも行って、そして学位を少しでも早くとるようにしようかというふうなことで大学院に行った人もある。それで、それは夜働きながら、苦学——一種の苦学でございますが、大学を卒業したものは、みんな夜働きながら、昼——夜を日に継いでというような、昼は勉強、夜は働くというようなことをしながら五年、十年研修をやるというのが実態なんです。だから、そういう場合に、多くの人が研修費を受けながら勉強するというふうなことを希望する場合には、この定員をふやすということも同じような御趣旨の中に入ってくると思いますが、いかがでございますか。
  96. 園田直

    ○園田国務大臣 いまのは、学生ばかりではないのですね。新しいお医者さんばかりでなくて、古いお医者さんの場合もですか。
  97. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 研修生の割り振りです。いまは二千二百八十一と八百五十、三千百三十一の割り振りが、将来大学院に入るのと、研修生で二年やりたいという人のほうが、今度募集してみたらたくさん希望があったというような場合には、実績に応じた配分をされますかということを尋ねておるわけです。
  98. 園田直

    ○園田国務大臣 それは御意見のとおりでございます。
  99. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それではもう少し時間をいただきまして……。  同じような医療機関で働くものの中に、看護婦の問題があるわけですね。それで私、前に予算委員会の分科会で大臣にもっといろいろお尋ねをしたかった。ところが、十分時間がなかったためにお尋ねできなかった点を、きょうもう少し聞かしていただきたいと思うのでございます。  いまは研修生の制度ができ、これが改善されていくことの中から、日本の医療技術陣の一番中心になるお医者の封建性がだんだんなくなってくるのに、これが今後の大きな前進に役立つであろうと思うのでございますが、同じように看護婦の教育の中にも非常な封建性が残っておるわけであります。それはやはり徒弟制度的な形で看護婦の養成が行なわれている、こういうことです。最近病院でいろいろ事件が起こりましたね。それについては看護婦の絶対的な不足が大きな要因である。その看護婦の不足は、正看護婦と准看護婦の数に非常なアンバランスがある。これはこの前数字を合わせて、看護基準は四、四、二ときめられておるのに、看護婦の実態は一と三だということ。それからまた養成機関の定員もアンバランスで一と三だということも、この前の議論でおわかりになっていただけたと思うのです。だから、これからこういうふうなことを是正をしていただかなければならぬのでございます。  その看護婦の養成でございますが、現在どこが責任を持ってこの四、四、二の基準看護を——これは健康保険の制度の中ではございますが、しかし基準看護として日本の医療の一番軸ともなり柱ともなっておる医療制度の中の健康保険の中に、基準看護として四、四、二という数字を出しておられるということは、少なくとも病院たるものは正看護婦四名に対して准看護婦四名、補助婦二名、それだけの人的構成をやれ、こういうことなんですね。ところが、養成機関では一と三の比率でしょう。政府の要求は四と四、いわば五と五です。ところが、養成機関は一と三です。正看が九千四百に対して准看の定員は二万七千ですから、一と主なんです。しかも、その准看護婦のほうが免許取得修業年数が長いのです。正看護婦は短いのです。だから修業期間というものを考慮に入れていくならば一と五くらいの開きがある。おわかりになりますね、大臣。だから制度は四と四で同数を要求しておきながら、しかも養成機関としては一と五よりも大きな開きがある。それでは日本基準看護制度というものはできっこないと思うのでございます。だからこういうふうな制度と実態との矛盾ですね。これは早急に解決していただかなければならないのでありますが、そういうことについての責任は一体どこにあるのですか。どこでやっていただけるのですか。
  100. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のように、日本では看護婦と准看護婦が分かれております。そのために健康保険における基準看護等を実施する場合に四、四、二というような基準が用いられております。  ところが、現状はどうかと申しますと、四十一年度末におきましては、総数で申しますと、看護婦の総数が二十四万六千ございますが、このうちいわゆる看護婦が五一%、准看護婦が四九%になっております。しかしお話のように、養成している数は准看護婦のほうがはるかに多いため、だんだんこの基準がくずれつつあります。現在、四十二年におきます養成施設の入学者を見ますと、大体看護婦が一万名、それから准看護婦は看護高校も含めまして約三万、これはこの前申し上げたとおりでありますが、そういうことになりますので、これが将来続けばこの一対一の基準が相当くずれてくることは確かでございます。そういう意味で、私どもも近年におきましては、できるだけ看護婦の養成をふやしたい。また准看護婦から看護婦に移行できるような道を大きく広げたいということで努力いたしておりまして、特に准看護婦が看護婦に昇格していくためのいわゆる進学課程というものを、大いに助長しようと努力しております。進学課程の施設の数が、三十八年には五十一施設でございましたけれども、四十二年には九十八施設、約倍近くになっております。したがって、その収容定数もほぼ倍近くになっております。まだこれでは非常に足りませんので、これらの努力もさらにやっていきたいというふうに考えております。
  101. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうすると、看護婦教育というものは、一応厚生省の責任においてやっておる。そして厚生省努力してここまで持ってきた、こういうことなんですか。
  102. 若松栄一

    ○若松政府委員 看護婦の養成の直接的な事業は、すべて国が責任を負っておるものではございませんけれども、国内における看護婦の需給が円滑に行なわれるように、また健康保険の基準看護等を実施するために必要な看護婦と准看護婦との割合を、適正化していくような努力をしていくことは、厚生省の任務であろうと存じます。
  103. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これは医療法で入院患者四に対して一名の看護要員というものを要求され、同時にまた健康保険の制度の中で、基準看護というものをおきめになる。そうすると医療需要が非常に高まっていくと一緒に看護婦の、医療従業者の人員の要求もふえていく、必要になってくるということは同じなんですね。それで国はいろいろな物資についての需給計画をやりますが、同時にやはりそういう国民皆保険というふうな国の社会保障の制度の柱を立てていく場合には、それに伴う人的構成というものも国がやはり需給計画を立てる、これは私は当然であると思うのです。だから国民皆保険という制度をつくり、医療需要をぐんぐん伸ばす、その結果として平均寿命が七十歳に延びてきたのです。そういうふうな国の制度として国民皆保険の制度を完全に運営していくためには、それに必要な人的構成というものもやはり国が計画を立て、それの充実をはかっていくという考えに立ってもらわなければならぬ。  ところが現在は、看護婦の養成というものは、全部医療機関にほとんどまかされている。そして各病院が、自分のところに必要な看護婦の養成をやる。これがその主たる形ですね。だから、なるほど国がやっておる看護婦の養成施設というのは九十四あるそうでございますけれども、しかしながら、それはほとんど国立病院、国立大学というふうなところで行なわれている。看護婦の養成所は九十四、それから准看護婦養成所は五十九、国がやっておるのがあわせて百五十七あるのですね。しかしながら、それはほとんど国立病院あるいは国立療養所というふうなところで行なわれておる。自治体がやっておるのも、それぞれの県立病院であるとか、県立大学あるいはその他のところでやっておって、それで医師会の養成所も二百九十あるわけであります。そういうふうにいたしまして、その一部の看護高等学校ですか、高等学校の看護衛生科と申しますか、そういうふうなものを除いたものについては、ほとんどが医療機関の中で養成されている。いきおい自分のところで必要なものは自分のところで養成しろというのが、看護婦養成のたてまえになっておるわけでありますね。だから、医師会病院では、ほとんど准看護婦学校でございますし、医師会の経営しているのは、看護婦の学校が少しで、准看の学校が二百八十四と、ほとんど准看護婦でございます。看護婦学校の施設数においては、正看の三百七に対して准看の学校が七百四十八と、一と二の比率でございますけれども、しかしながら、その定員になってまいりますと、先ほどのように、九千四百と二万七千というふうに一と三との関係になって、准看護婦のほうが圧倒的に多いというふうな、非常に何と申しますか、不均衡な、ことに政府の要求と不均衡な看護婦が出てくるわけなんです。だからこういうふうなことは民間の医療機関にまかし切りで、厚生省自体が、あるいは国自体が、日本の看護体系をこうするのだ、——前回の会でお尋ねいたしましたが、一体国の看護体系というものはどうなんだ。正看でいくのか、准看でいくのか、その正看、准看の関係というものが非常にアンバランスであるということを申しておりましたが、これは学校の養成課程でも、やはり国が指導性を持って、また国がもっと金を出して、積極的に看護婦を養成するという姿勢をとっていただかなければならぬと思うのでございますけれども、厚生大臣、いかがでございますか。
  104. 園田直

    ○園田国務大臣 従来の慣例とか、あるいは惰性がありまして、御指摘のようなことになっておりますが、御意見のような姿勢で取り組みたいと考えております。
  105. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これは一足飛びというわけにいかないと思いますが、しかしながら、こういう事実を十分把握していただきまして、やはり国が求めておるところの看護体制というものを、国みずからが積極的に確立していくという意欲を今後——四十四年度の予算には必ずそういう意欲を、なるほど委員会でがんばったかいがあったなと私が思えるような予算の編成をひとつお願いいたしたいと思います。  それからもう一つお尋ねいたしたいことがございますが、この看護婦の養成課程において正看護婦と准看護婦との間に、あまりにも大きな開きがあるということです。御承知のように正看護婦は高等学校を出て、それから高等看護学院に三年行くのです。中学を出て高等学校三年、それから看護学院三年、そういうコースですね。だから、これは短期大学よりも上です。短大よりも一年長いです。ところが、准看護婦は中学を出まして、そのまま准看護婦学校に二年入ったら准看護婦になるのです。そういたしますと、高等学校卒業の一般教養がないわけです。ところが、このごろ教育程度が非常に高くなってまいりまして、ほとんどは高等学校を出ておりますね。もういろいろな町の一たとえば電気器具の松下電器だとか、日立だとかいうテレビを組み立てている子でも、高等学校を出ているのですよ。にもかかわらず、正看護婦と一緒に働いておると言いながら、しかし人が足りなければ夜勤勤務にもつきます。独立でもって患者の容態を判断し、適切な応急処置も講じなければならぬというふうな、高度な判断を要求される看護業務につくのに、他の一般の教育水準から見るならば、少し低くありはしないか、この准看護婦の制度は、昔、高等小学校を出て看護婦学校へ入る。それで准看護婦になるという、これは大正から昭和の初めにかけての教育課程がそのまま残っておるから、こういうふうな形が現在残っておると思うのでございますが、これは少し高めていく必要があるのではないか、一般の教育水準が、ほとんどの人が高等学校を出るというふうな段階になりましたから、やはり看護婦も、高等学校卒業程度の教養課程を要求しても当然であるし、またそうすべきではないか。  さらにまた、そういうふうにするのには、現在の准看護婦の学校を、定時制の高等学校のような形にして、定時制高校のような教育課程に伸ばすことによって一般教育もして、それで准看護婦にするというふうな新しいコースですね。そういうふうなものを考えていただいたらどうか。というのは、今日中学校を出まして、二年間准看護婦学校に入って准看護婦になった者は、ほかの人は高等学校を出ている、自分は高等学校を出ていないというので、それから定時制の夜間高校に行くのですよ。そうすると、夜間高校を出るまでには六年かかってしまうわけですね。准看二年と夜間高校を四年間、六年間かかって、やっと高等学校卒業の資格を得る。これは別に資格というものは必ずしも本人の価値をきめるものではないにいたしましても、やはり何と申しますか、自分の友人諸君が高等学校を出ると、自分も高等学校を卒業しているという、何と言いますか、教養を持っているという形をとりたいというのでありましょう。そこまで勉強する子供は、学校に行かなくても、それだけの教養は持っておるのですけれども、やはりそういう教養を持っている者ほどそういろ資格を得たがる。だから、私は横から見ておりまして、それがかわいそうに思えるのですね。  准看学校を出て、さらにまた夜間高校に四年間通う。その四年間夜間高校に通うのには、非常に勤務上の摩擦が出てくるわけであります。と言いますのは、夜間高校でありますから、五時から十時ごろまで。ところが、それが女の子にとっては、おけいこをしたりするゴールデンアワーになりまして、他の者に全部しわ寄せがいくんですね、勤務割りで。だから朋輩同僚から、ときにはいろいろ何と言いますか、不満の声を浴びつつ夜間高校へ通っておる。だから何とかしてこういうことをしなくても、准看になると一緒に高等学校になれるような制度というものを考えるべきじゃないか。だから、医師会看護婦学校なんかも、一ぺんにということは困難かもしれませんが、その中に四年制の定時制コースというものをつくって、それと同時に、准看学校の定時制コース、准看になれる高等学校コースというものをつくってもらう。これは初中関係のなにになるかと思うのです。  それからもう一つは、従来のような、医療機関にまかせ切りというのではなしに、高等学校の中に衛生看護科をもっとふやすことはできないか。衛生看護科というのは、これは母性としての教養なんです。料理や裁縫ができるということも大事でございますけれども、やはり衛生看護というのは重要な部門でございますから、衛生看護というものを教養として与える。そして、衛生看護科の高等学校コースをもっとつくって、衛生看護科を出れば、半年程度のインターンをやらして、そこで国家試験をして看護婦にするというふうにすれば、看護婦の供給はもっと順調にいくのではないか。だから、厚生省のみにまかせずに、あるいは厚生省が文部省とよく話し合って、衛生看護科をもっとつくることの中から看護婦の供給を増していく、こういうことを考えていただいたらどうかというふうに思うのでございますが、文部省並びに大臣からお答えを願いたいと思います。
  106. 園田直

    ○園田国務大臣 准看護婦と正看護婦の開きが大き過ぎる、それから、准看護婦さんが非常に苦労されておる、准看護婦から正看護婦への道を開こうとしてもなかなか困難だ、そういう諸問題からしても、御意見のような方向に文部省とも連絡をしつつ検討してみたいと思います。
  107. 望月哲太郎

    ○望月説明員 高等学校で准看護婦の教育を行ないます衛生看護科が新しく設けられましたのは、昭和三十九年度からでございますけれども昭和四十二年度で、現在七十九学科、入学定員にいたしまして三千八百二十五名が設置されております。  いま岡本先生おっしゃいましたように、看護の教育というものは、女性の教育としても内容が非常に意義のあるものでございますので、文部省といたしましても、高等学校におきますところの看護の教育につきましては、今後十分その充実に努力をしてまいる考え方でおります。  なお、御参考までに申し上げますと、文部省といたしましても、せっかく高等学校でつくられました衛生看護科の教育の内容が、ほんとうに充実したものであるように、そして、そういう学科を今後置こうとされる場合に、それが一そう容易になるように、補助金の面におきましても、昭和四十一年度に初めて設備の補助金、これは三分の一補助でございますが、一千万円を計上いたしまして、四十二年度におきましては、さらに施設にまでその補助金を広げまして、設備で二千五百万円、施設で二千万円を計上しております。なお、来年度の予算におきましては、原案に設備三千万円、施設三千五百万円、四十二年度に比べまして二千万円の増額をするようにいたしまして、この面でも私どもとしては今後十分力を入れて一そう充実をしてまいりたいと思っております。  それからもう一つ、ただいま岡本先生から、従来准看の養成施設に行きながら夜間の定時制に学ぶ子供たちが、肉体的にもまた精神的にも非常に負担が重いので、現実には二年の准看護婦の養成施設の教育を終わって、さらに四年間の高等学校に通われる方も多いというお話でございましたが、私どもといたしましても、勤労青少年の教育におきます二重負担をできるだけ軽減して、一方で准看護婦養成施設等で准看護婦になるための勉強をしながら、同時に高等学校卒業の資格をとりやすくするという配慮から、従来昭和三十五年から実施しておりました高等学校とそれ以外の技能教育のための技能教育施設におきますところの教育との連係というものを、さらに拡大をいたしまして、准看護婦の養成施設で学ばれた教育の一定部分を高等学校の単位に見直すということで、准看護婦の養成施設に通いながら高等学校の資格も、従来よりもできるだけとりやすくするということをいたしたいと思いまして、昨年の十二月にその関係の法令の改正をいたしまして、四十三年度からはそういうことが実施できるような措置をとりましたので、あわせてお話し申し上げておきます。
  108. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうしますと、私が申しましたいままで二年コースであった准看護婦学校を、定時制の四年制の准看護婦学校にするというような道がもう開けておる、こういうことですか。
  109. 望月哲太郎

    ○望月説明員 そういうことではございませんで、准看護婦の養成施設に入っている子供さんが、同時に高等学校の定時制に席を置かれておる場合に、従来は准看護婦の養成施設で学ばれたものは、要するに高等学校の単位に見直されていないために、毎日学校に登校しなければいけない、相当長い時間学校で学ばなければいけないということでございますので、その一定の部分——要するに、高等学校の定時制にも席を置き、准看護婦の養成施設にも席を置かれておる場合には、准看護婦養成施設で学ばれた教育の一部を高等学校の単位にして、そこのところは学校に出てくるという負担をできるだけ軽くして差し上げて、従来よりもできるだけ容易に高等学校卒の資格がとれるようにして差し上げたい、こういうことでございます。
  110. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 実質的にはそういうことは不可能なんです。准看護婦学校に通っておる子供とうものは、働きながら通っておるわけで、大体午前と夜間とを民間の診療所で診療のお手伝いをする、そうしながら午後だけ学校に通う。医師会学校はこういう実態が多い。それから国立療養所あたりは、実習というような形で、朝から一日働きながら、ある二、三時間を病院の中にあるところの養成機関で講義を聞くというふうな形でやっておるわけです。だから、ときには夜勤にもつくわけです。だから、そういうような高等学校に行っておるというような子供はきわめて少ないわけです。それよりもむしろ准看学校を終えてから、さらに四年間行かねばならぬというのがかわいそうなんですね。だから、私が申し上げるのは、それなら、午後行っておるところの医師会学校なんかでも——一部は、医師会学校の中でいままでの准看学校をそのままやってもいいです。その中で、定時制の看護婦高等学校というものを設けて、そこで、四年間通えばいろいろ英語とか、国語とか、一般の高等学校で教えるような科目も習い得て、それと一緒に看護婦として必要な生理、解剖、その他のことも習える、そうして四年の間にきちっと高等学校卒業の資格も得られるし、それだけの教養も身につく、こういうような制度を道として開けないだろうか、こういうことを申しておるわけなんです。
  111. 望月哲太郎

    ○望月説明員 先生のお話の中で——高等学校の教育には一応現在一つのワクがございますから、そのワクに乗ってまいりませんと、高等学校とは言えないわけでございますが、いまの先生のお話の中で、たとえば定時制の衛生看護科を私立で設置をなさる場合、それに対して私どもは現在でも、先ほど申し上げましたような補助金等は公立学校の場合と同じようにそれを活用していただきまして、施設、設備等についてはできるだけ充実をしていただけるような措置は考えておるわけでございます。
  112. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうすると、私、文部関係のことはよく知らないので、またもう一ぺん調べてお尋ねすべきかもしれませんが、定時制高等学校には、施設について、あるいは教員の構成とかというようなものについて、相当制限があるのです。だから、いままでの医師会看護婦学校あたりがそういうことをやろうと思っても、なかなかその資格の点とか施設の面では欠けるところがあるので、だからやはり新しい道を、看護婦養成の課程の中にそういう道をつくるという考え方に立たなければ、なかなかそういうことは困難であるかもしれないと思うのです。あなたではちょっときょうこういう問題について直ちにいまお答えをいただくことは無理かと思いますが、そういう実情があるということ、そして、若い、看護婦を志す子供に、せめて高等学校卒業程度の教養という希望が非常に多い。せっかく准看護婦になりながら、苦労しながら、さらに四年続けなければならぬ、続けたいというような子供がたくさんいるということ、こういうことをよく御認識願って、ひとつ十分こういう子供たちのしあわせのために便宜的な措置を考えていただくように、私はきょう、十分検討していただくようにお願いをしておきたいと思うのです。  それからもう一つ、厚生大臣にお尋ねいたしますが、医療機関が看護婦の養成をほとんど責任を持ってやっております。それに対するところの助成がきわめて乏しいわけなんです。厚生省のほうからもっと補助金でも出れば医師会でも施設を建てまして、看護婦をもっと多く養成するとか、あるいはそれぞれの、たとえば療養所もそうでありますが、国立病院あるいは日赤にいたしましても、いろいろな機関が自分のところで必要な看護婦だけでなしに、社会の要望に、社会の需要にこたえるための看護婦養成ということがやれると思うのです。現在では、補助が全然ないから、自分のところで必要な最小限度というふうなことになっておるのが、看護婦供給の非常に不足である大きな原因であると思うのでありますが、これはやはり厚生省としては真剣に取り組んでいただいて、看護婦養成が、民間の機関あるいはその他のところでどんどんできるような助成の道、これをひとつ講じていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  113. 若松栄一

    ○若松政府委員 御承知のように、看護婦の養成が、ほとんど病院に付属した形で行なわれておるのでございますので、これに対して一律に実施することはなかなか困難でございますが、従来からありますような施設については、その施設の整備あるいは設備の強化ということについて助成をしてまいっております。しかし、残念ながら、私的の医療機関が行なう養成につきましては、いろいろな問題がございまして、いろいろな形で努力はしておりますけれども、いまなおこれを達成できておらないことはまことに残念であると思っております。ただ、看護婦の生徒に対するいわゆる修学資金等につきましては、公私の別なく、できるだけ拡大していきたいというふうに存じております。
  114. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 看護婦が非常に少ないということが、結局看護婦の労働が非常に強化されるということの原因になるわけです。どこの病院でもそうでございますが、夜勤が非常に多い。それで、ここに出ておる統計なんかを見ましても、大体月のうちの十日から二十日の夜勤をやるというのが六〇%をこえておる。だから、六割以上の者が十日から二十日の夜勤をやっておる。そして、人事院の裁定が出て、八日以上は夜勤まかりならぬというふうになっておるが、国立の医療機関の中ですら、十日をこえて夜勤をやらしているところが至るところにある。厚生省としてこれをどういうふうに、いつごろまでに解決しようというふうな考え方を持っておられますか。  これは結局看護婦養成に力を入れられないから、いつまでたってもこれが解決できないのです。民間医療機関なんかでもそうなんですね。たとえて言えば、看護婦には早出というのがある。それは朝六時ごろから出て八時間やる。あるいは十二時から出て午後八時までやるおそ出というふうなものがございますね。そういうふうな勤務を合わしていきますと、実際月のうち午前八時から午後五時までというような正常な勤務につけるのは三分の一というふうなのが、どこの病院でも看護婦の生活の実態なんですね。こういうふうな変則勤務というものが、結局、結婚生活と両立しない、勢い結婚したらやめざるを得ぬというふうなことに変わっていくわけなんですね。だから、こういう変則勤務をなくするのには、人を豊富にする以外に道はないわけなんで、そういう点で看護婦の養成にもっと真剣な心がまえを持って、同時に、こういうふうな変則勤務というものを解決する。これは人道問題でもあると思うのですね。いままでは一応人道主義に基づいて、そしてヒューマニズムの立場から看護婦という仕事になったのだ、白衣の天使なんだ、これは奉仕するものなんだ、−確かにそのとおりです。働く者はその気持ちで働いております。医療機関に働く者に奉仕の気持ちがなかったら、こういうことはやれないのです。私の病院でも、毎週一回は必ず朝礼をやりまして、朝礼のときにいつもそれを繰り返しております。医療機関に働く者から奉仕の気持ちを取り除いたら、これはだめだということをいつも申しております。しかし、そういう奉仕の気持ちで働いておりましても、そのことは、あまりにも変則勤務が続きますと、人間でございますから、肉体的に続くものではございません。また、結婚すれば家庭生活というものもこれは大事でございます。一方的に奉仕ばかり強要ざれたのでは、やっぱり医療機関にいる者もかわいそうだ。だからそういう点で、厚生省としてどうしていただけるのか、いまの努力をうんとすると一緒に、いつごろにはこんな事態は解決できるようにするなにを持っておられるのか、一応御所見を承っておきたいと思うのです。
  115. 若松栄一

    ○若松政府委員 御指摘がありましたように、看護婦の勤務形態が非常に不規則であり、過重であるということは、御指摘のとおりだと思います。特に夜勤の回数を減らすということは、看護婦の勤務をやわらげるために一番重要な問題であることも重々承知いたしております。しかし、また、先生も御存じのように、この夜勤の回数を減らそうということは、絶対数の増加にかかってくるわけでございます。  ところが、現実には看護婦の就業者数というものは、現時点におきましても三万名近く不足している。これが昭和四十六年ぐらいになって初めて理論的な数でまあまあどうにかなろうか——理論的な数というのは、現実においてはまだ足らない数でございます。そういう事態でございますので、現在の時点におきまして夜勤を著しく改善いたそうといたしますと、数万名の看護婦が足らないということになり、結局回り回ってまたどこかで勤務が過重になってくるということにならざるを得ないわけでございますので、解決の一番の要点はやっぱり絶対数の増加、もう一つ絶対数の増加が急速にできない場合においては、やはり勤務形態をできるだけくふうして、回数を減らしていく。たとえば看護単位の編成のしかたであるとか、あるいは夜間と昼間の勤務の編成がえであるとか、あるいはもう一つの問題は、看護婦の勤務環境を改善することによって幾らかでもその過重な負担をやわらげるというような、消極的な方法でも、できるだけ強化しながらやっていくということにならざるを得ないと思って、私どももいろいろな方面からできるだけ努力をしたいと考えておるわけであります。
  116. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 久しぶりに委員会に出てまいりまして、いろいろ意見の変換の中から、だいぶ大臣にはわかっていただけたと思います。ひとつきょう議論いたしました成果を十分生かしていただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  117. 八田貞義

    八田委員長 次回は来たる十九日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十分散会