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1968-03-12 第58回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十二日(火曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 佐々木義武君 理事 竹内 黎一君    理事 橋本龍太郎君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       大坪 保雄君    海部 俊樹君       齋藤 邦吉君    澁谷 直藏君       中野 四郎君    中山 マサ君       増岡 博之君   三ッ林弥太郎君       箕輪  登君    粟山  秀君       渡辺  肇君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       平等 文成君    八木 一男君       山田 耻目君    本島百合子君       伏木 和雄君    關谷 勝利君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁労務         部長      江藤 淳雄君         通商産業省鉱山         保安局長    西家 正起君         労働大臣官房長 石黒 拓爾君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省安全衛生         局長      大野雄二郎君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道常         務理事     井上 邦之君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月九日  委員八木一男君及び八木昇辞任につき、その  補欠として北山愛郎君及び川崎寛治君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員川崎寛治君及び山北愛郎辞任につき、そ  の補欠として八木昇君及び八木一男君が議長の  指名委員に選任された。 同月十一日  委員大橋敏雄辞任につき、その補欠として浅  井美幸君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員加藤万吉辞任につき、その補欠として河  上民雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河上民雄辞任につき、その補欠として加  藤万吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。海部俊樹君。
  3. 海部俊樹

    海部委員 最近新聞をにぎわしております、いわゆる順法闘争という問題がありますが、私はこの順法闘争と、それが行なわれるに至りました原因になっておる国鉄の五万人合理化の問題について、国民の立場から、二、三の点をお尋ねをいたしたいと思います。  第一は、この合理化は、いわゆる首切りにつながるものではないかという取りざたもされておりますし、あるいはまた、たとえ首切りでなくとも、国鉄がいろいろ計画しておられる十月から始まるダイヤの増発に人員が要る。その人員を生み出すために、いろいろ配置転換をなさっておるのですが、それに無理があるのではないか。いろいろなことが言われております。  第一番目に、首切りにつながるものかどうかということと、このいわゆる五万人合理化案なるものの要点だけを簡単に国鉄から御説明をいただきたいと思います。簡単でけっこうでございます。
  4. 石田禮助

    石田説明員 お答えいたします。合理化問題というものは、首切りには絶対に関係ないということをまずもって申しておきます。  何がゆえにわれわれは合理化というものに進まなければならぬかと申しますと、御承知のとおり国鉄経営につきましては、国鉄法の第一条にも書いてありますような能率的な運営をして、そして国鉄を発展せしめるということ、これが私に課せられた使命であります。それで、御承知のとおり国鉄の最近の状態というものは、経費はえらい勢いでふえているが、収入というものはなかなか思うにまかせぬということ、しかもわれわれは、独立採算のもとにこれを経営してまいらなければいかぬ。そういう場合に、これはどうしたらいいかということになると、できるだけ収入をふやし、できるだけ経費というものを合理化する、こういうことになるのであります。  それで、国鉄の第三次計画で、ことしの十月の一日になりますと、ダイヤの改正があって、輸送力というものがだいぶふえる。ここにおいて、これに対する人が約三万人要る。また労働時間の短縮によりまして、二万人の人間を入れなければならない。合計、輸送力増強と、それから時間の短縮というので五万人の人が要る。これを新たに入れてやるということは国鉄としては大問題だ。さらに、いまの労働情勢からいきまするというと、これから労務者を入れるということはなかなかむずかしくなってくる。この傾向というものは、今後ますますひどくなるのではないか。そういう情勢に直面いたしまして、国鉄としてはこの五万人を外から入れないで、いまおる四十七万の人間から、機械化近代化によりまして浮かしてくる。それを必要とする方面へ配置転換をする。こういうことでございまして、それによって、組合ではあるいは労働量の強化だとかいうようなことを言っておりまするが、絶対にそんなことはない。要するに人力を機械に変える、またはやり方を変える。たとえば、その一番いい例は、例の保線の仕事のことで、御承知のとおり重労働人海戦術で、大ぜいの人でやっておる。かくのごときことはこれからの労務関係から申しますと、また人の問題からいきますと、とてもできるものではない。これをできるだけ機械化をして、あの人間というものを浮かしていこう、こういうようなことでありまして、根本においてわれわれは、どこまでも輸送の安全というものを根本にして合理化を進めていきたいということであります。
  5. 海部俊樹

    海部委員 当局と、それから組合のほうと、両方から資料をもらいまして、近代化の内容について、あるいはその言い分について、いろいろ私どもも読ませていただき、検討もいたしました。これが当局からいただいたたくさんの資料であります。それから、これは組合からもらったものでありますが、きれいときたないは別として、それを読んでおって、私がしろうと考えで非常に気になりましたことは、いわゆる合理化によって、いま総裁がおっしゃったように、輸送の安全を確保しなければならぬという国鉄の大きな使命があるにかかわらず、今度の合理化によってこの安全性がそこなわれるのじゃないか。もっと極端なひどい言い方をすると、安全性犠牲にした上に合理化が成り立っておるのではなかろうかと考えられるような疑点が二、三ございますので、私は率直に申し上げて御答弁いただきたいのでありますが、その第一点は、新聞紙上にもいろいろ明らかになっておりますように、いわゆる機関助士の廃止の問題であります。きょうまで機関士を二人乗務させておったのが今後一人になった。そういたしますと、一人乗務になったがために、日本ではどうか知りませんが、アメリカにおいては二人の機関士を一人にしたがために衝突事故がずいぶんふえた。この表に出ておりますように、二人を一人に変えたら、こうずいぶんふえたとなっております。私はこの問題について、一体危険はないのか、一人に減らすことによって、こんなに衝突事故がもし起こるとしますと、国民安全確保の上からいって重大な問題になると思いますので、この点についてのお考えを御披瀝を願いたいと思います。
  6. 石田禮助

    石田説明員 いろいろなことを世間では申しておりまするが、私がここにはっきり申しますことは、国鉄というものは、輸送の安全というものを犠牲にして合理化をするということは絶対にやらぬ。われわれから言えば、輸送の安全があって初めて輸送力増強が行なわれる。これは事実を御説明申したら御納得いくと思いますが、われわれは輸送の安全のためには、過去六年の間に千八百億もの巨額の投資をしておる。また、単に陸上ばかりでなくて、海上においても、輸送の安全に対しては最善の努力をしておる。すでに御承知のとおり青函連絡船あたりで、あのぼろ船九隻でもって一隻当たり千二百人もの輸送をしておった。これを全部新式の最も安全な船にかえた。あるいは宇高連絡におけるあの危険な航路に、安全な船を三隻入れたというようなことでありまして、この点については、この方針はどこまでもわれわれは守るということを御承知願いたい。  詳しいことについては副総裁から……。
  7. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの総裁答弁を少し補足させていただきます。  先生のいま御指摘になりました資料につきましては、私ども十分読んでおりますが、ただいまお開きになりましたアメリカ事故のことでございますが、これは踏切の事故がふえた。これは組合諸君も認めておることで、アメリカにおける非常な自動車台数増加に伴う事故増加であります。これと乗務員の数とは関係ございません。その点は、組合諸君にもはっきり申しましたら、それはよくわかりました、こういうように申しております。ただ、一時に全部機関助士を降ろしてしまうということではございません。大体機関助士というものは、蒸気機関車時代蒸気をたく、すなわち機関車動力自分でつくり出して走るということに機関助士の発端があったわけです。したがって、電車のように、初めから動力を他から供給を受けて動かすというものにつきましては、これは初めから一人でやっております。  ところが、御承知のとおり蒸気機関車というものはだんだんなくなりまして、蒸気のかわりにディーゼルあるいは電気というふうに、動力を人、つまり乗っている人間の力でつくり出さないで動けるような車ができてきたわけでございます。それは全く電車と同じでございます。その意味機関助士仕事から動力をつくり出すという仕事がなくなったわけでございます。したがって、その一番大きな仕事がなくなった以上、機関助士というものは要らなくなるということが一点。  もう一つは、いままでは信号機機関車動力車との間には何にも関連がなかったわけでございます。すなわち、信号機の現示を乗務員が目で見るということによって、信号機動力車関連がつけられておったのでございますが、私どものほうにおきましては、昭和三十六年以来、全力をあげまして信号機動力車機械的に結びつけるということをいたしました。それは世間に言われておりますいわゆるATSでございます。この信号機の現示が、ある形でもって必ず物理的に動力車にあらわれるという関連関係が初めてできたわけでございます。そこにおきまして、機関助士がいままでやっておりました仕事の相当大きな部分、第一にさっき申しました動力の発生というもの、信号の注視、この二つがおのずから不必要になったということと、もう一つはよくおわかりのとおり蒸気機関車の場合と違いまして、最近の電気機関車あるいはディーゼル機関車は、機関士が一番初めの、車の先頭に乗っておる、したがいまして、蒸気機関車の場合は、線路の片側しか見えませんが、前面が全部あいておりますので、新しい機関車ディーゼル機関車電気機関車等の場合には、電車と同じように、前面が全部一人で見えるたてまえになっております。それらの主として三つの理由によりまして、いわゆる蒸気機関車を除きました機関助士というものは、おのずからその使命がなくなってきておる、こういうことでございます。
  8. 海部俊樹

    海部委員 機関助士の問題はそれで理解いたしまして、次に、合理化計画の中に、国鉄業務外注化考えておられる面がいろいろあるようであります。業務外注されるということになりますと、国鉄は、最初申されたように、国鉄法という法律があって、公共福祉を守るためにやっておられる業務でございますが、その仕事の一部を外注することが法律的にできるのかどうか、あるいは外注を予定しておられるものは、諸外国の実例なんかと比べて国鉄の営業に支障がないのかどうか、その点、副総裁でもけっこうでございますから……。
  9. 磯崎叡

    磯崎説明員 国鉄仕事外注いたします際には、ただいま総裁が申しましたように、国鉄法第一条によりまして能率的な運営をするということがきめられております。しかも国鉄仕事は、国鉄法の第三条によりまして、どういう仕事をせよということになっておりますが、それのどの部分自分でやるか、どの部分外注するかということにつきましては、戦前からもう、いわゆる鉄道省時代から、外部に仕事をやらしておる面がたくさんございます。すなわち、必ずしも国鉄職員自分でやることを必要としない事業等につきましては、戦前といえども外注いたしておりましたが、最近の状況によりまして、ことに問題は機械——国鉄以外における日本産業分野の非常に大きな発達によりまして、いわゆる産業の分化ということが起こってまいりました。何でもかんでも国鉄がやるのだという体制から、もちはもち屋にまかせるという意味のある程度の保守は外の人に頼む、専門家に頼むというふうな形に分化すると同時に、たとえば掃除だとかというふうに、必ずしも国鉄職員によってすることを必要としない仕事、それらにつきましては、これはどの企業でも同じだと思いますが、企業外のものにゆだねる。もちろんいろいろ法律的な制約はございますが、その制約範囲内で企業外にゆだねる。これは企業経営本質だというふうに考えるわけであります。
  10. 海部俊樹

    海部委員 そういたしますと、外注される部分が出てまいりますと、いわゆるそれは国鉄職員以外の人が、国鉄業務の一部を行なうことになりますが、国鉄職員及び労働組合には、御承知のように、公労法適用がございます。外注を受けた職員もしくは組合には、公労法適用は当然ないわけであります。そういたしますと、争議権に関する法制上の取り扱いといいますか、公労法適用のたてまえが異なってまいりまして、同じ国鉄業務でありながら、公労法適用を受ける組合と受けない組合、受ける仕事と受けない仕事、こういったものが混同してくると思うのでありますが、この点についてはどのようにお考えになっておるのか。公労法の精神からいって、これは疑問があるのではないかと思うのでありますが、いかがお考えですか。
  11. 磯崎叡

    磯崎説明員 公労法の第十七条によりますれば、国鉄職員争議その他をしてはいけないということになっております。また国鉄法によりますれば、国鉄における労働関係公労法規定によるというふうに規定がございます。したがいまして、国鉄職員なるがゆえに公労法適用を受けるわけでございますので、ただいま先生のおっしゃいましたとおり、国鉄職員以外の者が国鉄業務をいたした場合には、公労法適用のないのは、これは当然であります。  しからば、国鉄以外の職員国鉄業務をするということによって、公労法に予定されておる公共福祉の維持ができるかどうかという御質問かと存じますが、先ほど申しましたとおり、いま外注等考えておりますこと、またあるいは外国あるいは日本の私鉄において、その会社以外のものにやらしておることは、いわゆる輸送本質の問題でなしに、必ずしも国鉄職員をもって直営することを必要としない範囲仕事ということに考えておりますので、そのために国鉄業務全般、すなわち国鉄法第一条に定められる事柄が、大きな影響を受けるということは考えておりません。しかしながら、場合によってはそういうことがあり得ますので、十分、それらにつきましては外注した会社のいろいろな労働条件等につきましても、われわれのほうでも始終注意をいたしまして、そういった事態が起こらないようにいたしますけれども本質的には国鉄業務本質ではないという意味におきまして、公労法のいう国鉄公共福祉の保持はできるというふうに考えておるわけでございます。
  12. 海部俊樹

    海部委員 国鉄もやはり合理化機械化近代化されなければならぬと私は思いますし、また諸外国の例を見ても、合理化近代化が行なわれておるわけでございます。いまいろいろ私どもが第三者的な考えで、こう両方資料を読ませていただいた疑問を申し上げてみて、安全は必じ確保してやっていく、いろいろお話を聞くわけであります。そういういいお話ならば、労使の間でどうして話し合いがうまくつかなかったのか。最近いわゆる順法闘争というものがこの合理化をめぐって行なわれておるわけでありますが、この順法闘争というのもまた実に奇妙きてれつなものでありまして、私どもが友人から聞くと、順法と言うからには、じゃ闘争をやっていないどきには順法じゃないのか、日ごろは法規に違反したことをやっていらっしゃるのか、闘争中だけ法規を守っておるのかどうか、もしそうだとしたら、日ごろ国鉄のおっしゃる安全性というのは闘争中だけしか守られない、まことに奇妙なことになります。新聞なんか読んでみましても、駅長さんの名前の掲示すら、この順法闘争ということばを使っていらっしゃる、と、なりますと、国民としては非常に迷うわけでありまして、法律を守ってもらうと電車が狂って足が乱れる、これではたいへん困るのでありますが、一体これはほんとう順法闘争なのか、あるいは違法闘争なのか、一回明確なお答えをしていただきたいと思います。
  13. 石田禮助

    石田説明員 いわゆる順法闘争でありますが、結論から申しますればこれは順法闘争じゃない、不法闘争だと私は思います。ということは、つまりこの国鉄ダイヤというものは非常に過密ダイヤである。ゆえにこれを是正する上において手心を加える、こういうことが組合あたりのいわゆる順法闘争の根拠だと思うのでありますが、国鉄過密ダイヤのもとに運送をしておるが、しかし、過密ダイヤ過密ダイヤであるけれども、それによって、その下につくられたダイヤというものに対しては、相当な安全のマージンというものが入っている、現にそれをやっていて何ら故障なくいっているということなんです。たとえば最近における争議なんか見ましても、要するにわざとおくらしておるのだ。わざとおくらしている結果はどういうことになるかというと、結局ダイヤが乱れる。ダイヤが乱れるということは輸送力が減るということと同時に、事故原因をなす。決してこれは順法闘争ではない、不法闘争だ。しかもあれだけ多くの人に迷惑をかけてやるというようなことは、これはよほど考えてもらわなければいかぬということを私は申し上げます。
  14. 磯崎叡

    磯崎説明員 ただいまの御答弁を若干補足さしていただきます。  そもそも順法闘争という名前が起こりましたのは、御承知のとおり終戦直後のことでございます。このときには、実際戦争中のいろいろな事由によりまして、たとえば機関車スピードメーターがなかったとか、あるいは避雷針がなかったとか、いろいろな物理的な条件で、確かに車両状態が悪かったことは事実でございます。そのために順法闘争と称しまして、整備の悪い車には乗らないという時代がございました。現在は御承知のとおり、そういった車両の不備というようなことはまずほとんどございません。たとえばこの間、一件ございましたことは、ちょうどこういう天気のいい日に、電車窓ガラスをふくワイパー、あれがこわれているから乗らないというふうなこともございました。これが順法かどうか一応別といたしましても、整備的にはその程度のことでございまして、問題はダイヤを守るか守らないかということが現在の焦点でございます。ただいま総裁が申しましたとおり、ダイヤ作成の問題と現実運転の問題との二つに分けて申し上げます。  ダイヤ作成につきましては、これは私ども昔から非常な苦心をして今日のダイヤをつくっておりますが、まずダイヤというものは常にツー・セクション・クリアと申しまして、二つのセクションをあけておくという原則によってつくっております。したがって、ダイヤを守るということは、これが一番大事なことだ、これが一番規則だ。しかしながら、ただいまのお説のとおり、たまたまお客が非常に多かった、あるいは車両が故障したというようなことでダイヤが守れなくなる場合があります。たとえば冬のように、非常に急にお客がふえたというような場合には、現実ダイヤが守れない場合あります。その場合にはどうするかと申しますと、信号機の指示と、それから制限速度によって運転するという規則になっております。したがって、規則をかってに解釈いたしまして、そしてダイヤを結果的に乱すということは決して順法ではございません。たとえば、過般の闘争におきましては、制限速度四十五キロで走れというどころを、組合側といたしましてはこれは三十キロで走るのだという、何ら理由なしに、四十五キロという科学的にきまりましたものを三十キロで走れということにつきましては、それによってダイヤが乱れる。現に私自身も連日、その日は電車に乗っておりましたけれども、平常ならば四分五十秒で行く運転時間、それをその日は八分かかっている。しかも、前には電車が全然ないというふうなことは、これは明らかに順法闘争という名に隠れたひとつのスローダウンというふうに考えざるを得ないわけであります。
  15. 海部俊樹

    海部委員 この順法闘争というのが非常に脚光を浴びたと申しますか、初めて世間の注目を集めましたのは、たしか昨年十二月十二日から十四日までである、こういうふうに新聞には書いてありますし、特に去年の例で言いますと、三日間で東京の国電の運休千百九十一本、おくれた国電が六千三百十八本、乱れた足が三百万人、「この結果には、国鉄当局はもちろんのこと組合でもびっくりしたほど。」で、これは「半日スト以上の効果」があったのだから“国労の重要な戦術に昇格”しわけだ。」こういうような報道が新聞には出ております。当局組合がびっくりされるほどですから、受ける国民のほうの影響もたいへんなわけであります。こういったものがほんとう順法闘争なのか、違法闘争なのか、私ども国民の側から見て判断に苦しむわけですが、ただいま言われたように、たとえば、公労法の第一条というものは、公共企業体の正常な運営最大限に確保し、公共福祉を増進し、御丁寧に、擁護する目的を持つ、こう書いてあるわけであります。そういたしますと、国鉄労使というものは協力をして公共福祉を増進し、擁護しなければならぬにかかわらず、いま副総裁お話にありますように、何か注意信号のときには四十五キロ以下で運転すればいい、これが安全規則になっておりますが、それを三十キロ以下にせい。あるいはおくれが出た場合には、取り戻さぬでもいいから、次の人におくれたままで受け継いでしまえというようなことが公然と指令をされておるようでありますけれども、そうなると、国民の迷惑というものは非常に大きくなっていくわけであります。こういった行為は、やはりわれわれの側から見ても、少なくとも順法とは言えないのじゃないかという気持ちがいたしますが、これによって、国民の受ける大きな迷惑を考えますと、これはやはり公労法の第一条の目的と、あるいは第二項に義務がございまして、この主張の不一致を友好的に調整するために、最大限努力を双方は尽くさなければならないと書いてあるのでありますから、何か乗客不在の、国民不在のこういった迷惑のかかるような状態で放置しておいてはいけない性質のものだと思うわけであります。  私は、そこでこういった順法闘争というものが、もうこれで終わってしまって、今後永劫に起こらないというならばあえて追及はいたしませんけれども、何か聞くところによりますと、再び今月の二十三日ごろより順法闘争をやるんだ、国民の足が乱れることを覚悟してこれをやるんだというようなことを承っておりますけれども、それは一体事実なのかどうなのか。あるいはそうとすれば、それまでに近代化合理化計画について、組合当局の間で何らかの話し合いの進展の可能性が残っておるのかどうか、この見通しについてお尋ねをいたしたいと思います。
  16. 石田禮助

    石田説明員 お答えいたします。順法闘争をやらない場合には、正常な輸送力というものを維持することができるわけであります。順法闘争をやるというと非常に輸送力が減って、それだけ迷惑をかける。これはもう順法闘争というものがいかなるものなのかということは、この結果に見て私ははっきりしていると思う。  それで、大体今度の機械化近代化の問題につきまして、問題は十五あったのでありますが、これはわれわれは合理化の手法としてぜひともやらなければならぬと考えましても、一々これは組合のほうと相談して、組合を納得さした上で実行してきた。現に十五のうちでもって今日まで解決したものは十三、あと残るところは二つ、その中に一人乗り、二人乗りの問題があるのでありまして、要するにわれわれといたしましては、ぜひとも組合というものがほんとう国民のために、ことに社会福祉のためを考えて、ああいう順法闘争というような、大ぜいの人に迷惑をかけるというようなことについては、これはよほど考えてもらわなければいかぬ。近くまたやるようなことが新聞やなんかにも載っていますが、これはただいま組合のほうとせっかく折衝中でありまして、それまでの間に何とか問題を解決して、ああいう迷惑のかからぬようにしたい、こういうことで最善の努力をしておるわけであります。
  17. 海部俊樹

    海部委員 昨年来の御努力によって、組合との間に、合理化問題で話がだいぶ詰まってきておるということはよく承知をいたしておりますが、特に最近二、三の新聞を読んでみますと、特にその中に書いてあることで、話し合いがだいぶ詰まってきて、双方の対立点もわずかにしぼられてきた。そして時間短縮についても公労委の調停案どおりに二時間短縮することに話はきまったのだ。そうであれば、なぜ一般利用者を踏み台にした実力行使が必要なのか疑問も出てくる。要は国民の信を失わないうちに双方が誠意をもって話し合うことである。大体こんな論調で終始一貫しておるわけであります。とにかく三月二十三日から行なわれると予想されておる順法闘争は、絶対にこれは未然に防ぐのだという態度で最後の話し合いを詰めていただきたいと私は思うのでありますが、この話し合いを詰められることと、それからもう一つ公労法違反のもし疑いがあるとするなれば、この順法闘争をやめてもらうような国鉄側の態度と決意というものとは、これは二本立てでおやり願わなければならぬと思うのです。私が入手いたしましたこの資料にもし間違いがなければ、この国鉄の東京地方本部が出して全員に配られた「きめられたことを、しっかり守ること……」こうわざわざ書いてあるこの指令には、最初申しましたように、遅延時間の持ち越しを絶対に行なえ、回復運転は絶対にするなということが書いてありますし、注意信号の場合は、四十五キロ以下であるから、四十五キロにこだわることなく、なるべく低速、のろのろ運転を行なえ。この場合三十キロ以下とする。数字まであげてはっきりこう書いてあるということになりますと、結局それはどういうことになるかといえば、公労法の第十七条は、業務の正常な運営を阻害する一切の行為を禁止するとともに、御丁寧に、それを共謀し、そそのかしてはならない、こう書いてあるわけでありますから、教唆、扇動、共謀一切が十七条違反になるとするなれば、こういうそそのかすような文書をお配りになられたり何かして、そして国民にたいへんな迷惑がかかるということは、これはやはり別の角度から禁止をしてもらうように当局はしっかり御指示を願いたい。この二本立てでいっていただかなければならぬと思うのであります。  最後に私は労働大臣に、労働行政の最高責任者としての大臣にお尋ねをすることでありますけれども国民の足がこれだけ乱れ、これだけ迷惑をいたしたのであります。公労法規定されておりますスト権の問題で、一体これがほんとうにストなのか、サボタージュなのか、ただいまの短い時間の質疑では残念ながら明らかになっておりませんけれども、私どもはこれはやはりサボタージュではなかろうかという気持ちがするのでありますが、何はともあれ、三月二十三日から再びこういうことが行なわれる。しかも、はっきりと公労法違反であることがわかる半日ストというようなことばが出てまいります以上、これは労働大臣としては放置しておかれるわけにはまいらぬだろう、こう思うわけであります。公労法に関して、直接の管轄の責任者ではないかもしれませんけれども、こういった国民が非常に迷惑をするという観点に立って、三月二十三日からの順法闘争は絶対に阻止をするという御覚悟があるのかどうか。おありになったらひとつ両方の間へ入っていっていただいて、何とか阻止するように御努力を願いたいと思いますが、大臣の決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  18. 小川平二

    ○小川国務大臣 いまるるお話が出ておりますけれども、いわゆる順法闘争と言われるものにいろいろな形があろうかと思いますけれども、従来、既存の法令あるいは規則等の合理的な解釈からして、当然だと考えられておったような業務上の慣行、万人ひとしく当然であると考えておるような慣行に対して、一方的な解釈がなされ、一方的にこれが違法であるという主張がなされて、その結果、正常な業務運営が阻害されるというような事態が起こりますると、これは公労法十七条に違反する行為であると言わざるを得ないと考えます。当面の事態が、かような基準に照らして違法であるかどうかということは、これは事実を十分調査しなければならない問題でございましょうし、最終的には、権限を持つ第三者機関の判定に待つことだろうと思うのです。いずれにしても、これはきわめて遺憾な事態と申さなくてはなりません。私どもも、これが一日も早く平和的に処理、解決されることを切望しておるわけであります。  合理化によって体質を改善していかなければならない、能率を高めていかなければならないということは、これは私企業においてであろうと、公共企業体においてであろうと、常に存在しておる要請だと思いますから、合理化自体に反対すべき理由はいささかもないと思います。ただ、合理化が多くの場合労働条件の変更を伴いますので、使用者側においては申すまでもありませんけれども、事前に十分労働者側の理解と協力を得る努力をしなければならない。これを怠るべきではないと思います。また、労働者側においても、事態を正しく認識をしていただいて、協力をしていただくことが望ましい。ことに国鉄のような非常に高度の公共性を持っておる企業体におきましては、労使双方とも国民に及ぼす迷惑ということを十分念頭に置いて、責任を自覚していただきたいと考えておるわけであります。遠からず同じような事態が起こるのじゃなかろうかということが想像されるわけでございますが、いま海部委員のおことばにもありましたように、あらゆる手段を尽くして、事態が平和に解決されることを切望しておる次第でございます。
  19. 海部俊樹

    海部委員 時間が超過いたしましたので、もう私はこれでやめるつもりでありますけれども、結論を申し上げますと、一昨年の十二月二十七日に公労委がこの問題に対して調停案を出しておるわけでありまして、それは労働時間の短縮とともに、やはり国鉄合理化近代化では、労使とも協力をしろということになっておりますので、この調停案は労使双方で受諾しておられるわけでありますから、これに基づいておやりになるのはもちろんのこと、そんな調停案よりは、もっと公労法そのものに、やはり義務として、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限努力をしろ、こう書いてありますので、どうか最大限努力をお願いして、再び順法闘争が行なわれることがないように、決意をひとつ示していただきまして、最善の御努力をお願いいたしたいと思います。一言決意だけを承ってやめておきます。
  20. 石田禮助

    石田説明員 ごもっともな御主張と考えます。われわれのほうといたしましても、事が多数の人に非常な迷惑をかけることになるのでありまして、ゆえに組合の良識に訴えて、円満のうちにこの問題を解決して、こういうトラブルの起こらぬということに対して最大の努力をいたしたいと考えております。
  21. 八田貞義

    八田委員長 河野正君。
  22. 河野正

    ○河野(正)委員 きょうは人命保安、安全という立場から、当面いたします一、二の点についてお尋ねをし、御見解を承ってまいりたい、かように存じます。  そこで、時間の制約等もございますから、直ちに本論に入りたいと存じますが、一つは昨年の九月二十日、福岡の板付におきまするアメリカ軍の基地内で起こりましたいわゆる危険物タンクの爆発事件についてでございます。この爆発事故によりまして、一名の労働者がとうとい一命をなくしましたし、三名が爆風その他によって負傷する、こういう事件が発生をいたしたわけであります。  ところで、私きょうここで取り上げてみたいと思います点は、冒頭に申し上げましたように、人命の保安、安全という立場からでございますが、特に私どもが重要視いたしますのは、この問題が米軍の基地内で起こってまいりました事件であるだけに、きわめて大きな特色というものがあると思います。それはいままでもしばしば基地内で大小の労働災害というものが発生をいたしたわけですけれども、今度の場合は、当面の責任者が業務上過失致死、こういうことで刑事責任を問われたというのが、きわめて大きな特色だと思います。しかもそれがいわゆる基地内で起こった事件であるがために、一切の基準法なり、労働安全衛生規則なり、そういうものが順法されない。そういうものを背景として今度の事件が起こった。しかもその当面の責任者が、刑事上の責任を追及された。こういう特異な事件であったのでございます。  そこで私は、この際今後の問題もございますから、そういう不幸な事件があってはならぬわけでありますけれども、今後の問題がございますから、やはり米軍基地という、そういう特殊性、特殊な事情にある環境の中での労務管理というものが一体どうあるべきか、こういうことについて、この点はひとつ具体的には施設庁長官おいででございますけれども、特殊事情、環境下にある労務管理というものは一体どうあるべきかということについて、労働大臣の御見解を承りたい、かように思います。
  23. 小川平二

    ○小川国務大臣 米軍の施設あるいは作業場に対して行ないまする労働基準監督官の監督につきましては、御承知の、いわゆる地位協定がございますので、監督の権限がこれらの施設に及ぶたてまえになっておるわけでございます。具体的な監督権限を行使いたしまする際には、基本労務契約の第十七条によりまして、監督する際の目的あるいは根拠法規、これを明記した文書で米軍に通知をする。米軍の諸規則あるいは保安計画を適宜に考慮し、また業務運営の状況、計画に支障を来たさない時期に行なうということになっておるわけでございます。米軍の施設に対する監督は、必要に応じて随時行なっておりますし、今後も適切な措置をとってまいろうと思っております。さらにこまかい点になりますれば、基準局長から答弁を申し上げます。
  24. 河野正

    ○河野(正)委員 まことに残念ですけれども、いまの大臣の答弁につきましては納得がいかぬわけでございます。と申し上げますのは、今度起こった板付の爆発事故というものは、いま大臣がお答えになった立ち入り検査とか、あるいは基準法上、さらに労働安全衛生規則上定められた事項というものが実施されないというところに、今度の板付の事故原因があったというふうに私どもは判断をいたしておるわけでございます。  そこでいま大臣お答えになったように、随時指導監督というものが行なわれるというふうなこととは現実の状況というものは非常に隔たっておると私どもは理解をいたしておるわけであります。そういう意味で、むしろ大臣が今後基地内の労務管理というものはいろいろ制約はあるけれども、できるだけひとつその制約を排除して、そういう不幸な事件というものが起こらないように努力する、こういう御見解を承るかと私は予想しておりましたけれども、案に相違して随時行なっておるのだからというような御見解を承ることは、まことに遺憾だと私ども考えます。
  25. 小川平二

    ○小川国務大臣 これは基準法の適用が一般的になされているのか、どのような方法でなされているのかという点に対する御質問かとも思ったわけでございます。今回のことは、非常に遺憾な事件であることは申すまでもございません。私といたしましては、今後かようなことが再び繰り返されませんように、鋭意努力をする心境であることは、これはあらためて申すまでもないわけでございます。今回この災害についても現地の調査をいたしまして、アスファルトの加熱の方法、ドラムかんの作業台の改善ということについて指導をいたしまして、米軍においてはそれに基づいて安全な基準の設定を行なっているというような事実もございます。今後もこの点につきましてはあとう限りの努力をするつもりでおりますから、どうぞそのように御了承いただきたいと思います。
  26. 河野正

    ○河野(正)委員 今度の事件が遺憾だったということは大臣御表明のとおりだと思うのですが、と同時にこの安全基準の設定等については、今度の事故が起こった後に設定されたという経緯があるわけですね。こういう安全基準の設定等が従来から行なわれておる、もちろん労働基準局が立ち入り検査をして適時行なわせるというような状況のもとであっておれば、私は今回の爆発事件というものは防げたのじゃなかろうか、こういう感じを持つわけであります。  そこで、今後の問題については禍を転じて福となすと申しますか、とうとい犠牲でございましたけれども、そういう犠牲の上に立って安全基準等の設定を行なったということは一つの進歩だと思います。ですけれども、従来はそういうふうな一切の基準あるいはまた労働基準監督署の直接指導というものが行なわれない、そういう状況下にあったということが、今日のきわめて遺憾な事件を誘発する原因であったというふうに私ども考えておるわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように今度の事件の特殊性というものが、責任者が刑事責任を追及されたというのがきわめて大きな特色でございます。そこで、いま検察庁でも書類が送検されておりますから、その書類に対しまする判断についての検討を行ないつつある段階だというふうに私どもは承っておる。ところが労働基準監督署のほうからいろいろ実態の調査をしたいというふうなことで、十六項目の質問書が提出されたというふうに私ども承っておるわけでございますが、それらに対しまする回答というものがどういう回答がなされたか、ひとつ明らかにしていただきたい。
  27. 小川平二

    ○小川国務大臣 詳細につきましてはただいま安全局長からお耳に入れさせますが、今回のことがアスファルトの成分に関係があったと思われるわけでございます。その後にこのアスファルトの中に危険物が含まれておったということが米軍の側から明らかにされたのでございます。したがいまして、労働者のほうに手落ちがなかったという事実はきわめて明瞭になっておるわけでございます。  なお、こまかい点をただいま安全局長から御答弁いたさせます。
  28. 大野雄二郎

    ○大野政府委員 一月九日に十六項目の質問が出されまして、それに対して一月二十五日に回答がまいっております。その回答は十六項目全般に関するものではございません。この十六項目のうち一番問題でございましたのはアスファルトの成分でございます。その点につきましてはおくれまして二月七日に回答がきております。この回答の中におきまして、初めて危険物と認められるアスファルトが使われていたということが明らかになった次第でございます。したがいまして、そういう観点からいたしますと、米軍自体のほうも正式に危険物が入っていたということを明らかにしたのは今年に入ってからでございますので、その作業当時において、いま問題になっております労働者の責任を追及することはやや筋違いではないかというふうに考えております。
  29. 河野正

    ○河野(正)委員 いま、局長からお答えになりましたように、十六項目の質問状に対しまして、特に私どもが重要視しておりましたアスファルトの成分について回答があった。私ども承知しております範囲におきましては、従来使っておりましたものにはAP3、これが発火点が八十度、それから今度のアスファルトの成分はRC3、これは発火点が二十七度。労働基準法の定めによりますと、発火点六十度以下というものが危険物に指定されておる、こういうことだそうであります。そうしますと、従来は八十度の発火点であったのが、今回のは二十七度ということでありますから、これは非常に危険性の高いものであるということは明らかな事実である。そういう危険性の高いものであるにもかかわりませず、それ相応の処置がとられなかったということについては、これは全くこの刑事責任を追及することはお門違いだということはいま局長さんもお答えでございましたから、私どもはそれはそのとおりだと思います。したがって、私どもが非常に重要視しておりました刑事責任を追及されたということは、最終的には米軍側の手落ちだったということが明らかになったわけですから、今後の検察庁の態度というものもおのずから変わってくるだろうというふうに私どもは理解をいたしておるところでございます。  そこで問題は、いまのような経緯に基づきまして、この補償の決定等がかなりおくれておるという状況にございます。したがって、刑事問題を追及したそのことについてはアメリカ側の手落ちであって、本人の手落ちでないということが明らかになったわけですから、その点は一応私どもも満足をするところでございますが、いま一つはそういう事故に基づいてとうとい犠牲者を出した、それに対する補償関係の作業というものは非常におくれておる。私はやはりこれは当然、アメリカ側の手落ちによってそういう事故が起こったわけですから、早急に解決してもらわなければならぬというふうに考えるわけですが、その点については、長官御出席でございますからひとつ経過を御報告願いたい、かように考えます。
  30. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 ただいまの板付の基地における爆発事故の損害賠償の問題でございますが、これにつきましては、死亡されました佐藤勘次郎さんの遺族に対する損害賠償につきましては、私のほうで請求書の提出を促進するようにお話を申し上げておりましたところ、本年の二月六日に請求書が提出されましたので、これに基づきまして検討の上、なるべくすみやかに、今年度内にも補償を行なえるようにいたしたいと存じておる次第でございます。  それから、なお、重傷を負いましたあとの二人の方につきましては、ただいま療養費を支給しておるのでございますが、これにつきましては、この方々が全治されるのを待ちまして、損害賠償請求書をすみやかに御提出願うようにお話し申し上げまして、その上ですみやかな賠償をいたしたい、こういうふうに考えております。
  31. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、この問題についての最後ですけれども一つお尋ねをしておきたいと思いますのは、今後の基地内におきます保安、安全という問題についてどう取り組んでまいられるか。いままでは、率直に申し上げますと、日本側の姿勢というものが、私は必ずしもよかったというふうには考えられない節がございます。たとえば、今度基準監督署が基地内に入って調査をいたしました。これは、労働基準監督署が基地内に入って調査したわけですけれども、その調査目的は、基地内の見学というのが目的になっているわけですね。それは、実際調査してきた内容については同じことでございましょう。ございましょうが、そのゲートを入る際の目的というものは、見学が目的だ、そういう名目で基地内に入って調査をしてきたという経緯があるわけです。それはもちろん、見学で入っても調査で入っても、見てくることは同じかもわかりませんけれども、やはりこれは役所のやることですから、筋を通してやってもらいたい。立ち入り検査なら立ち入り検査という筋を通して検査せらるべきが至当であって、何でもかんでもとにかく基地内に入れればいいのだというようなことで、今度の場合のように、基地内の見学という形で基地内にお入りになっておるという経緯もあるわけです。そういうことについては、私どもはやはり満足するわけにはまいりません。今度不幸な事件が起こったわけですけれども、今後の基地内におきます労働者の安全あるいは保安、こういうものについてはいろいろな規制があるわけです。地位協定その他によって規制があるわけですけれども、そういう規制の中でどう取り組んでいくか、こういう姿勢について一言、この問題については最後ですけれども労働大臣と施設庁長官からひとつお伺いをしておきたい、かように思います。
  32. 小川平二

    ○小川国務大臣 先ほどお耳に入れましたところからお察し賜われるかと存じますが、非常にやりにくい面もございます。ございますが、このことを契機にいたしまして、基準監督の面で権限が正しく行使されますように鋭意努力をしたいと存じます。そのことが日米友好という観点からも望ましいことであると信じておりますから、一生懸命及ばずながら努力をいたしたい、かように存じております。
  33. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 ただいま起きました事件につきましては、現地の労働基準監督署の調査結果及び関係者の皆さま方の御意見を伺いました上で、アスファルトの問題、あるいは安全教育訓練等につきまして、作業基準を適切にやっていただくようにといったような面を米側に対して申し入れるつもりでございますし、また今後この事件等を契機といたしまして、基地内における安全ということについては、ただいま労働大臣からお話のありました御趣旨もございまするし、十分に安全が保たれるようにということについて米側の一そうの留意を喚起し、そうしてなるべく安全な措置が行なわれるようにということを話し合ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  34. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、人命の安全、保安という立場からいろいろお尋ねをした第一の点が、基地労働者の問題であったわけです。  第二が国鉄の問題でございますが、アメリカの学者によりますると、一つの大事故が起こった背景には二十九件という中事故がある、しかも、この二十九件の中事故の背景には三百件に及ぶ小事故がある、こういうことがいわれておるそうでございます。私どもも今回の国鉄の五万人合理化の中で、特にきょうは人命の安全、保安ということでございますから、この合理化の中で、安全性という問題とどういう関連があるのかというような立場から、ひとついろいろお尋ねをしてまいりたいというふうに考えます。したがって、今日国鉄当局としては、一兆七千億の借り入れ金もあるというようなことでございますから、私ども合理化すべてを否定するものでもございませんけれども、しかし、この合理化安全性、特に安全性が低下するという議論、こういう問題はきわめて重要な問題でございますし、特に国民側から申し上げますると、列車に乗車いたしますと、自分の命というものを国鉄に預けなければならぬ、そういうことでございますから、安全性という問題については、単に国鉄の従業員ということでなくて、国民としてもやはり重大な関心を持たざるを得ないというのが私どもの率直な意見でございます。  そこで、まず第一に、総論的にお尋ねをしておきたいと思いまする点は、合理化安全性との関連、これがどういうことであるのか、この点については、基本的な問題でございますから、労働大臣からも御見解をお述べいただいて、さらに国鉄当局の御見解を承りたい、こういうように考えます。
  35. 小川平二

    ○小川国務大臣 これは一般的、抽象的にしかお答えができないわけでございますけれども安全性の確保という要請、合理化の要請、この二つを何とか労使の相互の理解、信頼の基礎の上に立って話し合いをしていただいて両立させるような努力が願わしい、これが本来両立し得ざるものであると考えなければならぬという理由はもとよりないのでございますから、そういう努力を十分やっていただきたいということを切望しておるわけでございます。
  36. 石田禮助

    石田説明員 今度国鉄合理化をすることによりまして五万の人間を生み出したい、こういうことでありますが、それにつきましては、さっきから私が強く申し上げておりますように、安全性犠牲にしての合理化じゃない、国鉄というものは安全あって初めての輸送力なんだというこの根本のわれわれの方針につきましては、もうさらにくどくど申し上げる必要はないと思います。  ただ、問題は、結局合理化国鉄としては生きるがために、発展するがために絶対必要な条件だ。ただ問題は、合理化の手法ということで安全性というものにかかってくるわけでありますから、国鉄は絶対に安全性犠牲にしないということを繰り返して申し上げておきます。
  37. 河野正

    ○河野(正)委員 合理化というものは、安全性を無視したものではないというお答えでございます。私どもそうあってもらいたいと思う。ただ問題は、ただのそういうお答えを聞いただけで納得するわけにはまいらぬのであって、要は合理化を行なわれる中で、はたして安全というものが保てる実態であるのかどうか、ここが私は非常に大きな問題だと思います。そこでいろんな立場からそれらについての追及ができるわけですけれども、きょうはあとにも後藤委員の発言もございますし、そういう問題もございますから、特にきょうは国鉄業務の部外委託と安全性との問題ですね。さらにもう一つ突っ込んで申し上げますると、この国鉄業務の部外委託と職業安定法との関係というものについて、逐次具体的な事実を提示しながらひとつ御見解を承ってまいりたい、こういうふうに思います。  そこで、まず最初に労働大臣に一つお伺いをいたしたいと思います。  この国鉄業務の民間委託、たとえば清掃業務であるとか休養室の管理、ボイラ、使い番、燃料業務、構内入れかえ作業、こういうような問題が、まだほかにもございますが、二、三、例をあげますると、そういう具体的な例がございます。こういう、いま申し上げましたような民間委託の職種を提示しながら、その形式、実態等をつぶさに指摘を申し上げまして、そうして二月の三日、二月の七日の両回にわたりまして、それらに対しまする労働大臣の見解を求めたのでございます。その際、労働大臣は、国鉄業務委託の内容は職安法上違法と見られる、こういうことを明らかにされました経緯がございます。そういう御見解が今日も変わっておらないのかどうか、ひとつその辺の御見解をお聞かせいただきたい。
  38. 小川平二

    ○小川国務大臣 河野委員、それからその次に国鉄関係の労組の方々とお目にかかりましてお話し合いをした事実がございます。そのときどういう問答をいたしましたか、一々詳細に記憶いたしておるわけではございませんけれども、職安法がかような規定を設けております趣旨をまずお耳に入れたと思います。それから一例といたしまして、請負契約をしました場合、かりに国鉄職員が現場におって指揮監督をするというようなことであると、これは明らかに職安法に違反することになるでございましょう。その場合に、国鉄職員が契約の履行を監視あるいは確認する意味で現場におるというならば、これは差しつかえありますまいけれども、指揮監督するということになると、これは抵触する疑いが濃厚である、かようなお話もした記憶があります。ただ、国鉄が現にやっておりまする請負契約というのが、場所によりいろいろ違っておるようでございまして、個々の事例を私知悉いたしておるわけでございませんから、現にやっておることがことごとく違法であると、かようなことは申し上げたはずはございませんけれども、たとえばいま申されましたような事例、使い番とか、起こし番ということも、実は私お恥ずかしいですが、そのとき初めて伺ったわけです。使い番というようなものも、全体として有機的な一体をなして行なわれる作業の一環としてならばともかく、それが単独で行なわれると、相当これは問題があるんじゃないかと存じます。かようなことをお耳に入れた記憶がございます。
  39. 河野正

    ○河野(正)委員 まあひとつ、静かに当日の論議を思い起こしていただきたいと思います。私どもは、一つには形式論議をやりました。形式的な点からいろいろ御見解を承わりました。いま一つは、実体論についての御見解を承りました。少なくともその両面からいろいろ御見解を承ったわけでございますけれども、その結果、形式論の中にも明らかに、後ほど申し上げますけれども、この職安法違反のおそれがあるという点が指摘をされて、その点については肯定をされたというのがその当時の実態だと思います。ただ実体論は一体どうだということについては、なるほど大臣は、それぞれ起こし番がどうだとか使い番がどうだとかいう実態はわからぬのでというようなお話があったと思います。しかし、いやしくも形式論の中では、明らかにこれは法に合致しない点があるということは明らかにされたと思うわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  40. 小川平二

    ○小川国務大臣 契約の内容がいかなるものであるか、また契約はともあれ、現にやっておることがどういうことであるか、実は私自身調べたわけでもないのでございまして、お話を聞いた限りではどうもちょっとあぶないと存じます、こういうお返事をしたと思います。
  41. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、今度は国鉄側にお尋ねをいたしますが、国鉄側は二月十六日の労使の団交の席上で、業務の民託、外託というものが、職安法に違反するのではないかという提議はあるけれども国鉄としては職安法に違反しないという見解に到達をしたということを明らかにされたそうでございます。大臣は、先ほどからお答え願っておりますように、職安法違反のおそれがあるという見解を述べられておるわけですけれども国鉄当局はそうでないというような見解を述べられたそうでございます。職安法に違反しないという根拠、大臣が言っておりますにかかわりませず、国鉄側が——これは職安法の所管大臣は労働大臣でございますけれども、その大臣が、疑いがきわめて濃厚だと指摘されておりますにかかわらず、そうでないと言い切られました論拠、根拠についてひとつ国鉄側の御見解を承りたい。
  42. 磯崎叡

    磯崎説明員 国鉄業務の外部委託の問題と職安法の問題につきましては、実は率直に申しまして、私どもも勉強不十分だったことは事実でございます。その点は私率直に認めざるを得ないと思います。ただ、一月の下旬に先生方が現地においでくださいまして、いろいろ現地の具体的問題について御注意を賜わったことも事実でございます。その後、いろいろおくればせながら私どもも研究いたしました。ただ実体的に、私どものほうはもちろん国鉄でございますので、法律の有権解釈はできませんのでございますが、私どものほうなりの狭い視野しか見解は持ち合わせませんし、これは労働大臣が公権的な解釈をなさるのは当然でございます。ただ私どものほうから申しますと、職安法四十四条の御指摘と思いますが、いろいろ書物などにも四十四条の趣旨というものの解説等もございます。いわゆる昔の非民主的な雇用関係というものに対する非常に大きな宣言だというふうに承っておりますが、私ども考え方自身として、そういうことにもとると申しますか、そういうことをあえて侵すというような気持ちは全くなかったわけです。したがって、仕事の内容につきましても、職安法四十四条に規定され、また施行規則の第四条に列記されております四つの項目の一々につきまして抵触するというふうには考えておらないのでございますが、ただ冒頭申しましたとおり、この外部委託をするに際して、職安法に対する心の配慮が足りなかったということは事実でございますので、それから発生している契約書あるいは組合との話し合いの内容等につきまして、疑義があるというふうにお考えになる点もあったわけでございますが、その点については改めるのは当然だと思って改める。内容につきましては、私どもといたしましては、実体的に職安法四十四条並びに施行規則第四条に列記されました第一項の四項目のいずれにも該当するものでないというふうに考えておる次第でございます。
  43. 河野正

    ○河野(正)委員 この点ひとつ労働省に御見解を承りたいと思いますが、少なくとも私が労働省から報告を受けた範囲によりますと、労働省が国鉄当局からいろいろ事情聴取をいたしております。その中で国鉄側は、文章上の表現のしかたはまずかった、しかし、法に抵触するような意図はなかったんだというような見解が述べられたというふうに実は承っておるわけでございます。このことは、意図があろうがなかろうが、国鉄当局が職安法違反を犯したという、この表現の中で非は認められておるというふうに私どもは理解をするわけです。たとえばこれは、こういう引例のしかたがいい悪いは別でございますけれども、交通事故を起こしますね。それは交通事故を起こそうという意図があって起こすわけではないでしょう。しかし、起こってきた事故はやはり事故だと思うのです。ですから、職安法違反を犯す意図はなかったにしても、現実にその形式の上でそういう疑いが出てくれば、当然職安法違反に該当すべきであって、自分の意思がなかったからそうでないということにはならぬと私は思うのです。それは引例のしかたがいい悪いは別として、交通事故しかり。だれも交通事故を起こそうと思って起こす者はいない。たまたま起こった。起こす意思はなかったけれども、起こったという現実は、やはりぬぐい去ることができぬと思うのです。そういう意味で私は、二月十六日の労使間の交渉の中で、国鉄側が職安法の疑いはないということを言い切られることについては、いささか言い過ぎの点があるんじゃなかろうかというふうに思うわけですが、この点はいかがでございますか。
  44. 小川平二

    ○小川国務大臣 河野委員に最初にお目にかかりました直後に、労働省といたしましては、この問題について国鉄注意を喚起いたしまして、適法な形でものごとを進めてほしい、かような申し入れをいたしたわけでございますが、私どもの受けました印象といたしましては、いま副総裁から答弁がございましたように、職安法について十分研究をしていなかったのじゃなかろうかという感じがいたしております。すでに契約が締結されておるといたしますれば、法律に違反する部分を、これは組合との合意も必要でございましょうけれども、追加的な合意をしてもらって、直すなり、とにかく法律に触れない形でものごとを正しく進めていただきたい、かような申し入れをいたしておりますので、おそらく国鉄は、その方針に従ってその後の処理をいたしておることと存じます。  ただ、その後のこまかい点になりますと、もしお尋ねがありますれば担当の局長から御答弁申し上げます。
  45. 河野正

    ○河野(正)委員 その後、指導で改善をされたということは、やはり違法の疑いがあったから指導をやられたわけじゃなかったですか。
  46. 小川平二

    ○小川国務大臣 そのとおりでございます。疑いがありましたので、これはおそらく知らずにおやりになっていることだろうけれども法律に触れますから、こういう注意をいたしたわけです。
  47. 河野正

    ○河野(正)委員 法律というものは、自分の意思にかかわらず起こってきた現象について、違法であるか適法であるかということを判断するのじゃないでしょうか。そうすると、たとえば国鉄が言い分として法に抵触する意思はなかったのだと言おうが習うまいが、現実に違法であるものは違法だというふうな判断を行なうべきではないでしょうか。
  48. 小川平二

    ○小川国務大臣 それはもう当然でございます。おことばのとおりだと思います。したがいまして、契約が締結されておるけれども、まだ実際に仕事を始めておらないというような段階であるならば、契約そのものを改定していただきたい、かように申したわけであります。
  49. 河野正

    ○河野(正)委員 いずれ具体的問題については後ほど触れて、ケース・バイ・ケースで明らかにしていきたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、二月十六日の公開の席上において、国鉄当局が職安法違反のおそれはない、こういうふうに言い切っておるわけですが、もう労働省としては、今日一切職安法違反に対する疑惑は晴れたというふうに判断なさっておるわけですか。
  50. 小川平二

    ○小川国務大臣 私といたしましては、そういう申し入れをいたしましたので、その趣旨に沿って国鉄が事を進めていてくれるであろう、このように期待をしておるわけでございます。その後個々の事態がどうなっておりますか、実は私いま全部を知悉しておるわけでございませんから、その点については担当者から答弁いたさせます。
  51. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘の問題につきましては、ただいま国鉄の副総裁から御答弁ありましたとおりでございまして、私どもも去る二月七日の大臣と動労との会見以来、国鉄当局側に職安法の規定する労供の禁止条項に触れないようにということでいろいろと指導申し上げました。その結果、国鉄側が外注に出す場合の委託作業請負契約の契約条項の案につきまして、部分的にまずいところがございました。これにつきましては十分私どもの見解をいれていただきまして、法に抵触しないように修正をいたしております。  その際一番問題になりましたのは、御承知のように施行規則の四条第一項第二号、すなわち、請負業者の従業員に対する指揮監督の問題、この二号の御認識が多少不十分であったというような感じがございました。最初の原案を、随所におきまして修正をしていただきました。  労供問題は四つの条件がございまして、一番問題になるのは、いま申しました第二号の指揮監督の問題、それから第四号の単純労務の提供であるかないかの問題、この二点が非常にむずかしい問題でございます。私どもも労供問題を取り扱った経験は、港湾だとか、あるいは建設、造船といった部門におきまして、いわゆる組業者式なものがございまして、それが労供の実態を備えながら請負契約で作業をやっておる、労供違反だというケースが多いわけでございますが、今回のように国鉄のような大きな企業が、部分的な職場を外注に出すに際して、この労供違反の問題が出た、そういう疑いが多少出てきたというケースは初めてでございますので、国鉄当局側にも十分御指導申し上げまして、違反のないような外注方式を考えていただく、こういうふうな指導を目下加えておる段階でございます。
  52. 河野正

    ○河野(正)委員 いみじくもいま有馬さんがお答えになったように、目下そういう指導を加えておるということなんですね。ですから、二月十六日時点においてそういう一切の職安法違反であるという疑惑が晴れたということじゃないわけでしょう。晴れたということなら、何も目下そういう指導を加える必要はないと思うのです。ですから私は、今日一切の職業安定法違反の疑いが晴れたというふうに労働当局はお考えになっておるのかどうか、これをひとつ明確に大臣からお答えいただきたいと思うのです。
  53. 有馬元治

    ○有馬政府委員 いま申し上げましたのは、契約文面における一つの問題点を指摘して御修正をお願いしたわけでございますが、労供違反の問題は、四つの条件のいずれに違反しても労供であるというふうに認定されますので、第四号の単に肉体的労働力の提供にとどまるかいなかという問題がもう一つあるわけでございます。これはやはり国鉄側が、どういう職場をどういう形で請負作業に出そうとしておられるのか、その実態をよくきわめてみないと、一般論として、これはいかぬとか、これは合法であるというような判断を下すわけにはいきませんので、具体的な外注内容を検討した上で判断をすべきではないか。  さらに突っ込んで言いますと、形式的には合法的であっても、実態が脱法であるという場合も次の段階にはあると思います。そういった各種の面からこの問題は考えていかなければならぬというふうに思います。
  54. 河野正

    ○河野(正)委員 労供が行なわれるについては、施行規則で四つの条件があるわけですね。四つの条件を満たさなければならないわけです。ですからいま局長からも御指摘になったように、一つは契約案文等の形式上の問題があると思うのです。と同時に、一方におきましては、やはり実態がこの四つの条件を備えておるかどうかという論議というものが行なわれなければならないと思うのです。その際、少なくとも二月の三日、七日の時点においては、私どもの提議に対して、労働大臣は、職安法違反のおそれがある、したがって、法律に合致するよう行政指導をしたいという明快なお答えがあっておるわけですから、私は、二月十六日時点で、国鉄当局が一切そういう職安法違反の疑いがなくなったんだと言い得る状態であるのかないのか、この点について労働大臣どうですか。
  55. 小川平二

    ○小川国務大臣 二月の十六日は、労働組合の幹部各位にお目にかかった日だと存じますが、その時点で違反の事実があったかないかというお尋ねでございますか。
  56. 河野正

    ○河野(正)委員 私ども組合の代表者と会ったのは、二月の三日と七日なんですね。その時点では法律違反のおそれがある、疑いきわめて濃厚である、したがって、法律に合致するように行政指導をしたい。極端に言うと勧告をしたい、こういう御意図だったというふうに私どもは理解をいたしたわけであります。そうしたら、二月の十六日は労使の交渉が持たれたわけですね。団体交渉が持たれた。その席上においては、国鉄側は、そういう職安法違反のおそれがあると提議されたけれども国鉄当局としては、職安法違反のおそれがないという見解に到達したということを明言されておるわけです。ですから、私は、職安法違反の疑いがあるということが今日も生きておるというふうに理解をしておるわけです。ところが一方では、もう一切そうでないんですと言い切っておるが、そういうことが言い得る実態にあるというふうに労働大臣としてはお考えになっておるのかどうかということです。
  57. 有馬元治

    ○有馬政府委員 十六日という日は、私どもよくわからないのですが、おそらく国鉄当局組合との団交のあった目じゃないかと思います。その時点でどういうやりとりがありましたか、私ども承知してないのでございますが、その時点で当局側から、これから外注するものは一切職安法に抵触しないんだというふうな言明があったということはいま初めて聞くわけでございます。おそらく先ほど申しましたように、委託作業請負契約の草案について、まずいところは修正をお願いした、そういう経緯がございますから、契約文面としてはこれでいいのだというような受け取り方で当局がそういうふうにおっしゃったのじゃないか、これは私の推測でございますけれども……。したがって、それ以外の面について全部労供違反はないのだというふうにもしおっしゃったとすれば、これはもう少し具体的に問題を詰めてみなければわからないのじゃないかという感じがいたしますので、いまの十六日のやりとりについては、先生の御質問を通じての私の推測でございますから、あるいは国鉄当局側からお話があったほうが正確じゃないかと思います。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 そうでないのです。二月十六日の時点においては、国鉄労使の公開の席上で、交渉の席上で、職安法違反のおそれがないという見解に到達したということをおっしゃっておるが、労働省側としては、二月の三日、七日の両日にわたっては、職安法違反の疑いがありますと、こう言い切っておるわけですね。そこで二月十六日、国鉄が職安法違反のおそれはございませんと言い切ったが、そういうことを労働省側も認め得るというふうにお考えでございますかどうかということを言っておるわけです。私は正直言って、率直に言って、今日もなお職安法違反の疑いはあるという認定に立っていますから、二月の十六日、国鉄側がそういうことを言うということは、いささか労働省のこの行政指導に対して問題があるのじゃなかろうか、こういうことを考えておるわけです。そこで労働省としては、現在国鉄の職安法違反にまつわる疑いは一切晴れたというふうにお考えになっておるのかどうか、そういうふうに見解が変わっておるのかどうか、そこを大臣から聞きたいと言っておるのです。
  59. 小川平二

    ○小川国務大臣 十六日に国鉄側がさような見解を表明したということをいま承ったわけでございますが、私どもはそれに先立って、適法な形でものごとを処理してもらいたいという申し入れをいたしておりますので、あるいはそれに基づいて契約の案文あるいは契約そのものを適法な姿に国鉄が改め、すでに十六日の時点では改めておったのかもしれないと存じます。そうであれば、その点を国鉄が適法であると、とう申しておるのじゃなかろうかと想像されますが、いまなお違反の事実が続いて存在しておるかどうかということは、個々の事例についての事実の判断になると思います。それはその個々の事実について詳細に事態を見きわめてみませんと、ただいまこの場で何とも申し上げられない。われわれとしては国鉄法律に違反しない形で、組合側の了承もとった上でものごとを進めていてくれるものと期待をいたしておるわけでございます。
  60. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、ひとつ労政局長にお伺いしたいと思うのです。二月の三日、七日の両日にわたって労働大臣が労政局長、職安局長も含み、職安法違反のおそれがあるということを明言されたことは、これは否定することができない事実だと思うのです。そこで、今後行政指導をされる段階があるわけでございますが、行政指導をして、これならば一切の職安法違反の疑いが晴れるという時点まできたときには、この問題を提起したのは私どもですから、私どもに対する了解というものが必要ですね。そういう手だてを踏んで、最終的に国鉄当局に対して、これでよろしいという回答を行なうというのが当時のお約束です。これはそういうことに変化はございませんなということを、私どもは労政局長についてもたびたび申し上げてきたところです。ですから、そういう手続というものは行なわれていないわけですね。もう大体行政指導をしてきた、この程度ならよかろうというところで、交渉が持たれておらぬわけですからね。ですから私どもは二月の三日、七日の労働大臣の見解というものが、なお生きておるという判断に立っておるわけです。ところがいまのような、行政指導したからおそらく国鉄当局がこの四十四条に違反しないように改善されただろうというような御見解では、それは私どもに対する約束違反ですからね、これは了承するわけにまいりません。そういう、私どもをペテンにかけるような態度をとられるならば、もう今後一切社労委員会の審議に協力できませんよ。全く無視しているではありませんか。職安法違反の疑いが晴れるまでの行政指導が行なわれてきたならば、その時点において、この程度でどうだという見解というものを私どもに聞くというお約束でございますことは、労政局長も否定できぬと思うのです。今日はそういう作業が行なわれておらぬわけですからね。当然二月三日、七日の労働大臣の見解というものは、今日生きておるというように私どもは判断をしてやるわけです。この点は労政局長どうですか。
  61. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま河野先生おっしゃいましたように、河野先生動力車労組の幹部の方々がおいでになりまして、この問題につきましてお話し合いをいたしましたのが二月の三日だったと思います。それでその際に、動力車労組のほうからいろいろな具体的な資料を提示をしていただきまして、その中には国労と公社の外注に伴う労働条件についての協定というのがございまして、その協定に伴う確認事項がございます。その確認事項の中の文言が適当でないというようなものも含めまして、契約書の草案から、いろいろな資料が御提示になりました。そこで私どもといたしましても、先ほど大臣が申されましたような疑いがある部分がございますので、その日に直ちに国鉄職員局長においでを願いまして、その担当者の方も同伴を願いまして、職安の係官も来てもらいまして、私の部屋で、動力車労組が提供をされました資料について逐一当たったわけでございます。そして違反の疑いのある部分は、たとえば指揮監督をするというような表現につきましては、全部改めるということで、さっそく文案を改めると同時に、実態におきましてもそういうことをしないということを、職員局長も言明をされたわけでございます。したがいまして、発注契約について私どもは、全部が全部見たという自信はございませんけれども、その際に動力車労組が提供されました資料はもとより、そのほかにも類似のものはないかという念を押しまして、その類似のものについても当局で心当たりのあるものは出された、それにつきましても、不適当な個所はこう直したらよかろうということを係官が指導をいたしまして、その結果、とにかく現在思い当たるものは大体これで直します、それから実態におきましても、契約書のとおり実施するつもりですというようなことを約束して帰られたわけでございます。しかし、先ほど職安局長が御答弁申し上げましたように、それではその契約書に基づいて、個々具体的な職場におきます委託業者の作業の実態と、それに対する国鉄当局の実際の動きがどういうふうになっているかということにつきましては、そのやり方自体の実態にまで立ち入って調べたわけではございませんので、労供違反というような事態が全くないと断言することはむずかしかろうというふうに思うのでございます。これは、今後、先々におきましても、やはり契約履行の状況、職場の実態というものが違反するかしないかという問題は、ほかの業種ももとよりでございますが、国鉄の職場におきましても、理屈上あり得ないとはいえないというふうに思うのであります。ですから、そういう意味におきましては、それぞれの受託業者の従業員と国鉄の職場の間において、そのような事態が起こってまいった場合に、国鉄当局としては実態的にも職安法達反をする意思はない、こういう言明をしておられるわけでありますから、そういう実態はないとは考えますけれども、起こり得ないとは断言はできない、その点を職安局長が言われたと思いますし、それから二月十六日の団交の際に、国鉄当局がもしそのような答えをされたとすれば、それはいま言ったような意味で思い当たるところの文書上の問題は訂正いたしましたし、それから実態においても違反をする意思はないという意味で言われたのではないかというふうに推測をされるのでありますが、その後におきまして、たとえば国労と公社との間におきまして、燃料業務外注に関する労働条件に関する協定というようなものも新しく締結をしておられる事実もあるようでございまして、組合が、御承知のように国鉄関係で三つございますので、それぞれの労使の間のやり取りや、あるいは了解というものは、いろいろ違う面もあるかと思うのでありますが、私どもといたしましては大臣も申しましたように、労使の間で、それぞれの組合との間で十分な話し合いが行なわれて、了解された上で事は進められるということを強く期待をいたしておりますので、河野先生のおっしゃった御意向も、国鉄当局職員局長に十分伝えてございます。
  62. 河野正

    ○河野(正)委員 要するに、私が言っておるのは、国鉄当局は二月十六日の時点で一切職安法違反の疑いというものは晴れた、こういうことを明言なさっておるけれども、私どもはなお疑いが残っておるという判断に立っておるということを申し上げた。その際、労働省がどういう判断をなさっておるかということについても聞きたかったのですけれども、そこで私は一例だけ申し上げます。実は先週の月曜日に北海道に実態調査に参りました。そうしてこれこれについての資料を今週一ぱい——先週のことですが、先週一ぱいに御提出願いたい、こういう希望を申し上げておきました。ところが出てまいりました資料は、昨年の夕刻でございます。ですから実はいろいろ検討したかったわけですけれども、昨日の夕刻出てまいりましたので、——それがどうしておくれて提出されたかは、それは意地悪い質問でございますから申し上げません。そういう意地の悪いことを申し上げようと思いません。ですが、その中で一点気づきましたのは、北海道車両整備株式会社と、札幌の鉄道管理局長との間に、民託についての契約書が取りかわされております。ところがその契約書は二月の二十一日付でございます。ですからおそらくこの職安法違反の問題が提起をされて契約内容が改められたという疑いが出てまいります。ですが、きのうの夕刻参りましたので、その点は前の契約と照合するわけにまいりませんが、いずれにいたしましても、その他の資料はもうすでに昔からできておるわけですね。たとえば就業規則は三十八年からできておりますし、それから安全管理規則は四十二年からできておるわけですから、おそらく契約文も以前からできておったろうと思うのです。それが今度の職安法違反の問題が提起をされたので、急遽この契約内容というものが改められたというふうに判断せざるを得ぬのです。それにいたしましても四十三年の二月二十一日付なんですね。国鉄当局が一切職安法違反の疑いが晴れましたと言ったのが二月十六日のことです。職安法違反に抵触しなければ何も契約を改める必要はないでしょう。少なくとも二月二十一日に改められたわけですね。ここに改められたものがありますよ。これはやはり従来締結されておった契約案文については職安法違反の疑いがあるという一つの想定のもとにやられたというふうな理解をせざるを得ないと私は思うのです。しかもそれは二月二十一日のことですね。ですから、十六日までは古い契約書だったわけですから、おそらく職安法違反の疑いがあるような契約内容というものが締結されておったというふうに判断せざるを得ぬと思うのですよ。これは一例でございますけれども、そういう点から見てまいりましても、二月十六日に一切職安法違反の疑いが晴れたというふうに理解するわけには私どもはまいりません。後ほどいろいろ具体的な例を出しますが、これは、契約の案文の形式的な点、あるいはまた形式的な点が完全であればいいということではなくて、一体実態はどうかという実体論もあるわけです。それらについては後ほど申し上げますけれども、この二月十六日時点で一切職安法違反の疑いが晴れたのだというふうな見解を国鉄側が述べられたことは、実は私どももまことに遺憾だと思う。  そこで実は、わざわざこういう事例を取り上げてその非を強く指摘いたしておるわけですけれども、なぜこういう問題を取り上げたかと申しますると、実は旭川では三月十日から、燃料かん、ボイラ、休養室管理、その他使えばございますけれども、そういう民託が強行されておるわけですね。一切の職業安定法違反の疑いが晴れて、そういう問題について実行に移されるということについては、それは組合がどうであろうとこうであろうと、どうにもならぬことだと私は思います。しかし今日なおこの問題が解決しないで、しかも労働省が行政指導中の段階の中でそういう問題を一方的に実行することはどうであろうか。この点私は指摘したい。ところが、おそらく国鉄当局は二月十六日に一切疑いが晴れたという考え方ですから、もう一切何でもやってよろしいという考え方かもわかりませんけれども、それでは全く労働省の存在価値というものはなくなりますね。これは国鉄側が判断するのではない。労働組合が判断するのではない。職安法に違反するかしないかということは、これは労働大臣が判断すればよろしい。ところが、国鉄側の一方的な判断によってこういう問題がどんどん次から次に強行されるということでは、全く労働省の存在価値がなくなってしまう。労働大臣の権威にも関すると思う。労働大臣の権威からも、こういう問題についてはひとつ率直な御意見を承りたい、こういうことであります。
  63. 小川平二

    ○小川国務大臣 労働省が注意を喚起し指導いたしておるにもかかわらず、今日なお明白に法律に違反する事態があるといたしますれば、これはおことばのとおり労働省の権威にかかわる問題でございます。ただ、実態がどのようなものであるか、私自身知悉しておりませんので、これは実態を見ての話になります。一般的にはお話のとおりであると存じます。
  64. 河野正

    ○河野(正)委員 一つは、いま申し上げましたように、形式的な問題がございます。一つは実体の問題がございます。そこで私は、その実体論に入る前に、ひとつ具体的な例を出して形式的な論議をしてまいりたいと思います。  動力車労働組合でございますが、労働組合の提案いたしましたものへの回答というものが、四十二年十月十九日に当局側から示されておるわけです。その六項目目には「外注作業に対する検収と責任等」という項目があります。それにはこういうことが示されておるわけです。「鉄道管理局長等は車両の検修等を部外委託する場合は、監督員を置き請負人の作業の監督指示並びに請負作業の完了したものに対して局長等の指示にもとづき引きとり検査を行わせる。」こういうふうな回答が出されております。これは正式な回答なんです。そうしますると、形式的な問題でございますけれども、管理局長が部外委託する場合には監督員を置き、その監督員が請負人に対して作業の監督指示を行なう、このことが施行規則の第四条第二項の「作業に従事する労働者を指揮監督するもの」に該当するかしないかという問題の提起がございます。しかも、その監督員に対します定義というものは、四十二年十二月二十四日付、運転関係車両検査作業請負事務基準規程の二条六項に「「監督員」とは契約担当役から当該作業の監督、指示及び支給材料の引き渡し等を命ぜられた職員を言う」こう書いてある。こういう形式というものが職安法施行規則第四条の二項に該当しないのかどうか。
  65. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘は昨年の十月時点での当局組合のやりとりのようでございますが、この時点では、先ほど副総裁からも率直にお話がありましたように、当局側も不勉強であったということでございまして、私どもも二月当初から、契約案文あるいは従来の労組とのやりとり、覚え書き、いろいろなものを見せていただきまして、随所に請負会社の従業員を当局側が直接監督指示をするというふうな場面が相当あります。これはやはり御指摘の二号違反でございますので、改めてもらいたい、自今改めるということで話がついております。したがって、まだ残骸が残っておる点はあると思いまするが、その点は今後随時是正をされると思います。そういうことでございます。
  66. 河野正

    ○河野(正)委員 随時是正をされるということは、なお是正されてない部分が残っておるということじゃないでしょうか。その点どうですか。
  67. 有馬元治

    ○有馬政府委員 当局側が再三おっしゃっておりますように、職安法違反をする意図はない、不勉強であったということからいまのようなしっぽが出ておる面がございますけれども、これは済んだ、文面で修正の機会は随時あると思いますけれども、精神としては違反する意図はないということでございますから、われわれが請負契約の模範文について御指導申し上げた経緯がございますから、以下これに右にならえで、直接指揮監督するような、あるいは指示監督するような場面は随時請負業者の側の責任者を通じてやる、当局側はあくまで契約の履行監視のための確認をする、こういう立場に全部改めるということになっておりますので、文面上残骸が残っておっても、精神としては、違反をしないという精神で貫かれる、かように思っております。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 不勉強であった、そういう意図がなかったなら、たとえ違法であっても違法でないという御見解ですか。少なくともそういう残骸が残っておると残っておるまいと、これも一つの形式ですけれども、四十年十二月十三日の労使間の協定の中では、外注化に伴う問題の中で、「請負者側の作業の監督等に当たる職員は、最低一人を指定することとし、その他実情に即して処置する。」こういう職安法施行規則の第四条の二項に該当するような文章が出てきておっても、そういう意図がないということであれば、不勉強であったという理由であれば、そういう違反行為は免れるということですか。これは非常に重大なことだと思うのですよ。それなら交通事故でも、さっき引例しましたけれども自分の意思がなくて起こった事故については一切責任を負わぬでいいということですか。そういうものじゃないと思うのですね。どうも有馬さん、きょうはずいぶん答弁がゆがんでいますよ。何でゆがめたか知らぬけれども
  69. 有馬元治

    ○有馬政府委員 私は別に答弁といいますか、解釈をゆがめておるわけでも何でもございませんで、形式論理から言いますと、先生御指摘のように、四十四条違反というものは強行法規でございますから、その時点で文面上も形式上も実体も違反しておるということであれば、これはやはり強行法規違反でございます。しかしわれわれは、その違反を過去にさかのぼって云々するつもりよりも、将来に向かって違反のないように御指導申し上げたいということで、二月以来当局側を御指導申し上げておるのでございまして、法律の形式論理からいったら、御指摘のような事態がかつてあったかもしれません。しかしこれをいま云々するつもりはない、われわれ行政当局としては、将来に向かって違反のないようにということを当局側に御指導申し上げておる、こういう状態でございます。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 全く労働省は、大臣聞いてください、怠慢ですよ。これは元来われわれが提議するまでもなく、職安法を忠実に実行しようとする労働省みずからが提議しなければならぬ問題ですね。それを労働省が見逃がしておったからわれわれが提議をしたわけなんですよ。この法律を忠実に守らせるということは労働省の責任ですよ。たまたま私どもが提議したから労働省は初めて気がついて、そして行政指導をやってきた。だから、自分たちが気づかぬで行なわれたことについては一切が不問だといういまの職安局長答弁については、全く納得できませんよ。将来が問題であって過去はどうでもよろしい——そういう法律違反に基づいて労使間の協定は行なわれておるわけでしょう。私は法律違反に基づいて行なわれた協定は効力はないと思うのです。それなら一体そういう協定はどうするかという問題が当然起こってくると思うのです。ですから、過去は過去だ、今後の問題を解決すればいいんだというようなことでは困るし、そういう労働省の姿勢だから、問題があるにかかわらず旭川は三月十日に強行しておるでしょう。私は、国民の前にはやはりこういうものはきちっと整理して、出発するものは出発しなさい、こういう建設的な意見を述べてきたつもりです。それにもかかわらず、なおいま論議の過程の中で強行するとは何事です。労働省は、過去のことはどうでもよろしい、今後さえ一応筋を通してもらえばよろしい、そういう姿勢ですから、おそらく旭川は労働省をばかにして、軽視をして強行実施をしたと思うのです。私は一つは、国鉄側も悪いけれども労働省のいまのような姿勢にも問題があると思うのですよ。いまは主として形式論ですけれども、実体論でいろいろ論破していきますけれども、そういう姿勢はやはり問題だと思うのです。やはり法律を忠実に守らせなければならぬ立場にある労働省ですから、法律が厳格に守られておるか守られてないかについては十二分な監視をしていかなければならぬと思う。それを、不勉強だったからとか、そういう意図がなかったからとか、そういうことで一切を不問にされるならば法律の必要はないと思うのです。それは意図がなかったということは、あるいは情状酌量すべき余地はあるでしょう。あるでしょうけれども、意図がなかろうが、不勉強であろうが、違法行為は違法行為です。そうでしょう。そういう労働省の姿勢については私は非常に問題があると思うのです。この点大臣どうですか。
  71. 小川平二

    ○小川国務大臣 いま御指摘がありましたような契約の条項になっておるといたしますれば、これが違法であることはおそらく一点疑いの余地がないと存じます。国鉄法律に違反する意図を持っておらなかったとしても、あるいは法律の存在そのものを知らなかったといたしましても、違反の事実にかわりはありません。私どもそれを否定するつもりは毛頭ございませんし、またいま当事者からの指摘を待たずに、そういう事実があれば積極的に労働省が是正するという態度でなければいかぬというおしかりも、これもそのとおりだと存じます。この問題につきましては、私ども決して注意をしてしっぱなしという気持ちでおるわけではないのでありまして、最後まで事態を監視いたしまして、見届けまして、正しい解決がなされるように努力するつもりでございます。どうぞそのように御了承願います。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 もう大臣も御承知だと思いますけれども、仙台におきましてはすでに組合側から、仙台鉄道管理局長、それから東北鉄道整備株式会社当局が職安法違反の疑いで告発されておりますね。私は、これはむしろ労働大臣が摘発するというのか、告発するというのか、それがたてまえであって、労働組合が告発するなんていうことは、適当な筋合いのものではなかろう。むしろそういう違反のおそれがあるならば、労働省が告発という処置をとるべきだと私は思うのです。しかし私どもは、何も告発をして罪人をつくるのが目的ではありませんから、適切な行政指導が行なわれることを期待いたします。しかし、行政指導が行なわれておる段階において、あえてさらに民託を強行するという態度はいかがなものだろうか。少なくとも職安法四十四条違反の疑いがあることは事実なんですね。ずばりそうであるかどうかは別として、疑いがあることは事実なんです。これは後ほど具体的な例を幾つか提示をして論議したいと思いますけれども、そういう疑いが一切晴れて、そして実施をするということならば、これはまたやむを得ぬでございましょうが、そういう疑いがまだいろいろ行政指導されつつある段階の中にありながら、あえて強行実施をするということは、これはいかがなものだろうかと思うのです。こういう国鉄側のとってまいりました態度というものが、適当な態度というふうに御判断になりますかどうか、ひとつ大臣の率直な御見解をいただきたい。
  73. 小川平二

    ○小川国務大臣 先ほどもおことばがございましたとおり、かりにさような事実があるとすれば、これは労働省の権威にもかかわる問題であり、さようなことはあり得べからざることだと思います。ありますれば直ちに是正をさせます。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 そこであと後藤委員も控えておられますから、今度は形式論ではなくて実体論についていろいろ御見解を承ってまいりたいと思います。  今度、国鉄業務の民間委託という問題が職安法に抵触するのではなかろうかという疑問が出てまいる事例が幾つかございます。その中の最も特徴的な点を幾つか例をあげて、実体論についてひとついろいろ論議をいたしてまいりたいというふうに思います。  当初私どもがこの問題を提起いたしました当時、労働省もそういう見解であったわけでございますけれども一つは使い番というのがございます。これは小さいことですから、あるいは国鉄総裁あたりは十分御承知でないかと思いますけれども、当初労働省もその使い番の実体を聞いて、これはいかぬと率直に見解を明らかにされたのが当時の実態だったと思います。私が現場においていろいろ見聞をいたしてまいりました使い番の実態でも、これは全く単純労務の域を脱するものではございません。助役室に使い番の人がおりまして、机の前に箱があって、その中に助役が指示した紙きれが行きますと、それを持って走っていくというだけの単純労務であって、これは一つの顕著な単純労務の例だと思います。実体論からやはり論議いたしませんと、ただ契約書の案文だけを書いて、それでつじつまを合わそうということでも困りますので、こういう実態がどういう問題であるかというような点について、労働省側で実態を捕捉しておられますれば、ひとつお聞かせをいただきたい。
  75. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘の使い番という職場は、私どもも初めて聞いたのでございますが、実態を調査いたしました結果、大体河野先生が御指摘になったような任務を持っておる職場でございます。そこで、これが職安法上、外注に出した場合に抵触するかどうかという問題でございますが、これはまさに四条の第一項の四号に規定される条件であるかと思います。そこで、先ほど大臣が冒頭にお答えになりましたように、この使い番の職場をそれだけで外注に出すということになれば、これは典型的な単純労務の提供ということで、労供違反になると思います。  ただ当局側は、これをほかの休養室の管理業務と一体として考えて委託をされようとしているのじゃないかと思います。そこで一体性の問題が次に問題になると思うのですが、そこら辺が一体的な作業分野であるのか。かりに一体的な作業分野と考え外注しても、使い番については、これは部分的に労供違反だというふうな解釈が成り立つのか。私どもも、国鉄全体の大きな作業の一環の中に占める休養室管理業務と使い番との関係については、しろうとのせいか、ちょっとそのつながりは正直言いましてわかりにくいところもございます。そういったことで使い番のところは、先ほどから申し上げておりますように、四号違反の疑いがなお残っておるという問題のところだろうと思います。契約文面の監督指揮の問題、これについては文面上改めていただいたわけでございますが、四号違反の問題については、さらにどういう範囲の職場、作業について外注をさせようと当局側はしておるのかどうか、具体的にして考えておるのか、こういう点をよく究明してみないと、四号違反の問題まで全部違反はないのだということは言い切れないのでございます。したがって、先ほど十六日の問題がいろいろ議論されましたが、十六日の問題としては、契約文面における二号違反の問題はなくなってきたと言えると思いますが、なおこれについても、今後の実態、運営がどうなるか、文面だけの脱法的な問題ではないがという問題は残ります。そのほかに、いま御指摘のような職場については単独に切り離せるのかどうか、あるいはほかの作業と一体的に考えて一括合法的な請負として成り立つのかどうか、そこら辺が四号違反の問題と関連して判断しなければならぬ点でございまして、私どももなおこれは疑問を残しておる点でございます。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 これは実体論から申し上げますと、使い番ほど顕著な例はないと思います。単なる飛脚的な性格を持っておるわけですから。しかし時間もございませんから、多く申し上げるこができぬことは残念ですけれども、それと同時に、一方においては重要な業務命令を伝えるわけですね。たとえば乗務する機関士が病気になって乗務できないという場合に、今度はかわりの予備乗務員に対して乗務を命令するというような非常に重要な業務命令を、書いた文章ですけれども持っていくわけです。そういう業務を民間に委託することがいいか悪いかという問題も別にございます。一つはいまの職安法違反の問題、一つはそういう重要な業務を民間に委託することがいいか悪いかという問題もあると思います。ですが、これは非常に顕著な例だというふうに私どもは理解いたしておりますので、いずれ時間があればこの点についてはさらに論議をしてまいりたいと考えます。  それからもう一つ、私ども実態を見て非常に顕著だと思いますのは、休養管理室の起こし番です。これはいろいろ現場を見て回りますと、一番新しい施設では電気方式、ブザー方式、それから空気方式というのがあるのです。時間が来ましてボタンを押すと、ふとんの下に空気まくらの大きいやつが入っておるわけですよ。そうしてそれにはこんな大きなパイプがついておるのですね。それで圧搾空気が一瞬にして入るものですから、ふとんの下の空気まくらが一瞬にして膨張する。それでぽんとはね起こされるという仕組み。これはボタン一つ押せばいいんですね。それからブザー方式というのは、ブザーを押すとブザーが鳴りますから、それで起きる。これは全く受付でボタンを押すだけの業務。どうする、こうするかは、ちゃんと運転助役からの指示があるということですから、そういう業務が単純労務でないのか。これはもう常識で見れば明らかです。これを民間委託することは、いい悪いは別として、法律上問題があることは明らかなんです。  それから燃料業務に関する問題がございます。これはいろいろ現場の意見を承って、われわれもいろいろ質問等をやって承知した範囲ですけれども、たとえば北海道のごときは練炭と塊炭を混炭します。ところがこれは勾配によって非常にカロリーを調整しなければならぬわけですね。非常に急勾配のときには、カロリーがたくさん要るから塊炭をふやす。そういうようないろいろな作業をする業務です。そういう業務について検収をすると当局側は言っているのです。ところが塊炭も豆炭もまっ黒けで、どっちがどのくらい入っておるかということは、あとで検収したってわかるはずはない。やはり混炭する時点において監視、監督しなければ、適正にカロリーの調整が行なわれたかどうかということを判断することはむずかしいと思うのですね。もう混炭してしまったあと、ほんとうに契約どおりに混炭が適正に行なわれたかどうかということを判断することは、これは大臣、しろうと考えでもむずかしい問題でしょう。どっちも黒ですからね。白と黒なら別ですよ。ですから、当然こういう混炭等については、燃料指導係が現場において指導監督するというのが現状だと思うのです。そうしますと、さっきの形式論に戻りますけれども、職安局長が作業の監督に要する職員というものを置く項目ははずすといっても、それはもう文章上の問題であって、現実にはやはり燃料指導係というものが現場で監視、監督しなければ、この混炭によってカロリーの調整が適切に行なわれたかどうかということを判断することはむずかしい、こういうことなんですね。だから、形式論と実体論があるということは、私はそういうことを指摘をして申し上げておるわけなんです。たとえ形式が伴っても実体が伴わないわけですね。だから、この形式論と実体論、両面が完全なものでなければならぬということを強く申し上げておるのです。いま申し上げますのは、たくさんございますうちの一例でございますけれども、燃料業務に関する問題があります。  それから、時間がございませんから重ねて申し上げますが、ボイラの民間委託、外注、こういった問題についてもいろいろ問題点がございます。これはおそらく国家試験の免許を持っておる汽かん士が法律上一切の責任を負い得るというたてまえで、国鉄側は職安法違反のおそれなしという御判断かと思いますけれども、それならば、ボイラが故障をしたり、基準法で定められた年一回以上の定期検査を行なった場合は一体どうするのでございますか。その点は私の意見ばかり言ってもおもしろくございませんから、国鉄当局の御見解を承りたい。
  77. 井上邦之

    ○井上説明員 ただいま先生御指摘の点につきましては、ただいまここに資料を持ち合わせておりませんので、後刻詳細調べて御報告申し上げます。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 これは資料は要らぬと思うのです。ボイラが故障をしたり、それから定期検査のときには休まなければならぬ。洗かんしなければならぬですから休まなければならぬ。そういった場合にやはり蒸気が要るわけです。だから何も資料は要らぬわけです。これはボイラが故障したりあるいは定期検査のときに休まなければならぬ。洗かんをしたり何かしなければならぬ。これは基準法で年一回やらなければならぬたてまえになっておる。その間はどうしますかということです。
  79. 井上邦之

    ○井上説明員 場所によって異なると思いますけれども、私が現場で経験いたしましたのによりますれば、たいがいそういう場合は代替機関車蒸気を起こしていると思います。
  80. 河野正

    ○河野(正)委員 その際、機関車を使った場合には民託はどうなりますか。
  81. 井上邦之

    ○井上説明員 そういう場合は臨時の場合でございますので、当方の庫内機関士がやります。
  82. 河野正

    ○河野(正)委員 機関士が全部やっておるわけですか。
  83. 井上邦之

    ○井上説明員 そういう臨時の場合だけでございます。
  84. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで私が実体論についていろいろな問題点があるということを申し上げているのです。このボイラが故障したり、それから定期検査のときには当然休むわけですから、それにかわるべきものは蒸気機関車なんです。ところが蒸気機関車蒸気を送る際には民間の作業員がどういうことをやっておるか、そこが問題なんですよ。その場合、民間作業員というのは全くノータッチでございますか、どうですか。
  85. 井上邦之

    ○井上説明員 現地の事情につきましては、私はあまり知悉いたしておりませんけれども、いままでの経験によりますれば、民間側はノータッチではなかろうか、かように存じます。
  86. 河野正

    ○河野(正)委員 そういう認識不足で、職安法違反でございませんなんてこの国会の席上でおっしゃるから困るのです。職安法違反の嫌疑はないと胸を張っておっしゃるなら、私どもの疑問に対しても堂々と胸を張ってお答え願いたいのです。何も詳細な資料は要らぬでしょう。何かその数字が要りますか。要らない。そういうていたらくで、しかもこの国会の席上において堂々と職安法違反のおそれはございませんなんとおっしゃるから、私ども納得できぬ、こう言っているのです。いやしくも職安法違反のおそれがないということならば、一切私どもの疑問に対してお答えになるだけの準備が必要だと思うのです。ところが私どもが質問してもお答えできないようなていたらくで、しかも一方においては法律違反でございませんというような大それたことをおっしゃるから納得できぬと言うのです。何もあなたをいじめようという意味じゃないですけれども、いやしくもここで職安法違反じゃないとおっしゃっているのだから、それならやはり一切私どもの疑問についてお答え願わなければならぬわけです。われわれの質問に対して、疑問に対して答えもできないで、それでしかも職安法違反でございませんなんということは、いささかいかがなものだろうと思うのです。どうせこれも不勉強だったということでしょうけれども、これは不勉強だからといって済まされぬのです。法律違反であるかどうかという、これは法律論議ですからね。これは考え方を聞いているわけではないのです、法律論議ですから。これは法律に抵触すれば、どなたか知らぬけれども、一年以下の懲役、一万円以下の罰金ですよ。ですから不勉強では済まされぬのです。これはこの六十四条に違反すれば一年以下の懲役、一万円以下の罰金なんですよ。そういう罰則があるのですよ。ですから不勉強でございます、知りません、実態がわかりませんでは済まされぬ問題なんです。そういうことで、しかも法律違反でございませんなんというような御見解はちょっと困ると思うのです。
  87. 井上邦之

    ○井上説明員 先ほど来、国鉄は職安法違反はしないと大きなことを言いながら、非常に不勉強だというおしかりをこうむって恐縮でございますけれども、実は、先ほど来先生がおっしゃっておられます団体交渉の場で、国鉄は職安法違反はもはやないんだということを言い切ったというお話でございますけれども、その場に居合わせた者がここにおりませんので、どのような発言をしたか私もよくわかりませんが、もはやそのおそれがないと言ったのか、この問題については常時労働省と緊密に連絡をとり、御指示を仰ぎながら事を進めておるので、職安法違反の問題については、今後そういう心配はないんだという意味で言ったのか、その点がはっきりしないわけでございますが、その場でもはやないんだと胸を張って言ったとも私思われませんので、その辺はひとつ御了解いただきたいと思います。  それから、先ほど来、具体的な問題について先生お話しになっておることにつきましては、協定には別に書いてあるわけでもございませんので、その点で私はっきりここでお答えできないと申し上げただけでございまして、もし問題がありますれば、具体的な事実を調べてまた御報告申し上げる、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  88. 河野正

    ○河野(正)委員 それならば、もし二月十六日の時点において、職安法違反の疑いはないという見解に到達したというようなことをおっしゃったとすれば、それはお取り消しになる御意思があるのかないのかということが一つ。もしそういうことを実際言っておったとすれば、それは組合側に対して取り消す、そういう御意思があるのかないのかということが一つ。  もう一つは、実体論ですが、これは何もむずかしい問題でないわけです。その機関車を使った場合に、民託というものがどういう状態にあるのかということを尋ねておるわけですから、ノータッチならノータッチでけっこうです。関係しておるなら関係しておるでけっこうです。その点だけを簡明率直にお答え願いたいと思います。
  89. 井上邦之

    ○井上説明員 団交の場でどのような発言をしたか、詳細に私わかりませんが、もし先生のおっしゃったとおりのことを言ったとすれば、それはまだ今後問題が残っておるわけでございますから、それは取り消さなくちゃならぬと思います。ただ、その発言、ことば自体がわかりませんので、この場で取り消すということは申し上げられませんけれども、もしそのとおりであれば取り消します。  それから、後段のお尋ねに対しましては、これはノータッチであると私は思います。
  90. 河野正

    ○河野(正)委員 まことに残念でございますけれども、ノータッチじゃないんです。そのタッチしている部分が職安法違反のおそれがあるから、特に私は取り上げておるわけです。ですから、そういう認識のもとに職安法違反でございませんというようなことを言い切られることについては、いかがなものかと思うのです。ノータッチでないんです。現実にタッチしているのですよ。そのタッチしている部分が、私が指摘しておる職安法違反のおそれがあるという部分なんですよ。ですから、そういう認識のもとでかってなことを言ってもらっちゃ困る。  それから、これはいろいろあるのですが、点保火番、これも現実の問題からいたしますと、やはり非常に問題がございます。特にこの点保火番の場合は、一時間前に機関車を整備して、それで乗務員に渡さなければならぬ。ところが下請ですから、乗務員のほうがこれはだめ、だと言えば、総裁ダイヤは何としても守っていかなければならない、こういう先ほどの御説明でございましたけれども、そのダイヤが狂うというはめが起こってまいりますね。したがって、どうしても正確にダイヤを守っていくということになれば、やはり機関士が常時整備の段階において監視、監督しなければ、結果的には乗務員が受け取れぬというような事態が起こってくる可能性が出てまいります。そういたしますると、せっかく総裁は、国民の足のためにダイヤというものはぜひ正確を期していきたい、こういう御意図でございますけれども、そういう御意図というものがくずされてしまうという問題でございます。こういうような数々の実体論から申し上げますると、職安法に抵触する実態というものがあるわけです。ですから、おそらく労働省のほうは形式的な方面だけをいろいろ行政指導したと思うのです。ですけれども、現場に参りますと、形式的な部面だけを改善いたしましても、実態が改善されなければ、やはり問題というものは今後残っていくと思うのです。私はせめてそういう問題が解決された暁において、たとえば旭川なら旭川においても実施をしてもらいたかったと思うのです。そういう問題をまだ残しながら強行されたということについては、私ども絶対承服することのできない点でございます。そのほかいろいろございますけれども、後藤委員もおられるようでございますから、いずれ機会をあらためて、なお私どもの納得のいかぬ点についてはひとつ論議をいたしてまいりたいと思います。  そこで、これは別な角度から見るわけですけれども、大体今度の民間委託業務を見てまいりますと、軽作業と申しますか、単純作業というのか、そういう部分が切り捨てられるという状況にあるようでございます。そこで、これは私の専門的なことですけれども、身体障害者雇用安定促進法というのがございます。大体国鉄側の資料を伺いましても、年々歳々労働災害が若干減っております。これは非常に慶賀にたえぬところでございますけれども、しかしながら、なおやはりかなりの労働災害が出ております。しかもこの身体障害者雇用促進法では、それぞれ企業が一定度の雇用に対しまする責任があるわけです。ですから、この軽作業というものがだんだん民間に切り下げられていった場合に、こういう身障者の職場というものがどうなるだろうかという心配を私はするわけです。この点について国鉄当局労働省の方面はどういう御見解でございますか、ひとつ承っておきたいと思います。
  91. 磯崎叡

    磯崎説明員 身体障害者の問題につきましては、私のほうでも年間二百ないし三百の公傷者が出ておることはたいへん残念でございます。一時よりは減りましたけれども、それだけの公傷者が出てまいりました。本質的にどうしたら業務上の過失傷害を減らせるかということが第一の問題だと思いますが、しかし絶無になることはなかなかむずかしいということになれば、やはりそれによって犠牲になった諸君をどう職場へ迎え入れるかということが一番大事だと思います。それにつきまして、今度いわゆる合理化して外に出す仕事が、主として軽作業なりあるいはわりあいに単純な仕事ということになりますと、確かに先生のおっしゃったとおり、ある程度そういう諸君の職場が狭められるというふうにも考えられます。しかし一方私どもといたしましては、まだたとえば営業関係の第一線でわりとからだを動かさないでやる仕事と申しますのは、車掌とかいうものでなしに、すわったままでやれる仕事等も相当ございますし、実際問題といたしまして、いままでと全然違ったそういう方面にけがのあと就職させた、転勤させたという事例もございますので、できるだけそういう諸君の職場が狭まらないように、また、たとえば駅の出札などにいたしましても、必ずしも身体障害者がやれないという仕事でないというふうに考えますので、そういった新しい職場について、できるだけそういった不幸な諸君の職場を拡張してまいりたい。しかし、どうしても全く五体が身動きならぬという諸君は、また別な角度で救済するというふうに考えてまいりたいと思います。しかし何とかそういう諸君の職場が狭くならないように努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  92. 有馬元治

    ○有馬政府委員 身体障害者の雇用促進法は、御承知のように、国鉄のような政府機関の場合には一——三%の雇用率になっております。したがいまして、現状はまだ若干下回っておると思いますが、今後軽作業部門が外注方式になりますと、国鉄当局としては一——三%の雇用率をそのままかぶっておりますので、だんだん残された直営部門の範囲で一——三%を達成しなければならぬ。逆に、切り離された軽作業部門におきましては、これは純然たる民間になりますので、雇用率は一——一%ということに相なります。身障者の職場としては、軽作業部門は向く職場が多いと思いますのと、それから一——一%という民間並みになりますので、その辺は、身障者の雇用促進という観点から見ると、実態的には従来と変わらないというふうに思います。
  93. 河野正

    ○河野(正)委員 ただ問題は、やはり雇用促進法に基づいて、その一定の歩合だけは雇用の責任があるわけですから、それはいいと思うのです。ただ軽作業の分がなくなりますとやはり無理がくる。だから、その雇用の責任は当局側にあるわけですけれども、実際職場に入るといたたまらぬようになって、本人みずからがやめなければならぬ。たとえばある区間を往復しなければならぬ、ところが足が義足だというような場合には、なかなか往復しづらいというようなことで、みずからがやめなければならぬというような心配も起こってきはせぬかという気がするのです。そこで私、今度のいろいろ合理化の状況を見て一番心配を感じましたのは、軽作業をどんどん切り離した場合に、一体身障者がどうなるだろうかということです。一定のワクがございますから、それは雇用されるわけですけれども、実際に残っていることに無理がくるという心配が出てきはせぬだろうかということを強く感じましたがために、これは特に申し添えて、そういうことのないように御配慮願いたいと思います。  それから、あと後藤委員が控えておられますので、私だけという場合でもございませんから、最後に御見解を承っておきたいと思いまするのは、なおこの職安法違反の有無がいろいろ論議されておる過程の中で次から次と民託が強行されていくというところに、私は非常に残念な点があったと思うのです。ですから、やはりそういう一切の疑惑というものを晴らして、その上に立って実施をされるということであればこれは別な論議ですけれども、今度私は非常に残念に思ったのは、いままだこの問題がいろいろ論議され、労働省がなお行政指導に基づいて改善を行なわしめておる段階なんですね。そういう段階になぜ強行しなければならぬか。この点は、私ども部外者ですけれども、非常に納得のいかぬ点です。ですからそういう職安法の違反があったことは事実ですから、正すべきことは正す、改善すべきことは改善する、そうして実施に移すなら移すという手だてというものが行なわれなかったところに、私は非常に残念な点があったと思うのです。これは私は建設的に申し上げます。非常に残念だったと思うのです。ですから、願わくはこういう問題については、労使間の問題ですから、労働省も法律を忠実に額面どおり実施してもらうという指導、また国鉄側も、そういう問題の解明に当たりつつある段階で強行されるということでなくて、やはりそういう疑惑があるならば、そういう疑惑というものは一掃して、その上に立って実施をするという襟度が必要だと思うのです。そういう点が今度欠けておったところに、私は非常に大きな問題があったと思うのです。そういう意味で、今後労働大臣も、私がいま申し上げたような方向でぜひひとつ行政指導をして、いたずらな紛争が起こらないように配慮を願いたい。国鉄側も、やはり正すべき点は姿勢を正して、その上に立って労使間での話し合いを煮詰めていくという襟度というものが、私は必要だったと思うのです。旭川のごときは、私は非常に残念だったと思うのです。大体、労働省側もいろいろ行政指導して、その点、来るところに来るという見通しもわれわれは承っておった。何も一日、二日を争って断行すべき事柄でなかったと思うのです。これは法律事項ですからね。金の問題でないんですよ。これは法律違反の疑いがあるかないかという問題ですから、その点を十分解明をして、労使間の話し合いというものが煮詰められるべきだというふうに私どもは判断をいたします。今後はそういう欠けるところがないように、国鉄当局側としても反省をし、配慮をしていただきたい、こういうように思いますので、いま申し上げましたことについて、ひとつ大臣からと国鉄当局からの御見解を承りたいと思います。
  94. 小川平二

    ○小川国務大臣 おことばにありましたような方針で今後対処いたしていきたいと存じます。また、形式と実体というようなおことばもございましたから、これから先は実情の把握にも十分努力をいたしまして、正しい解決がなされますようにつとめる所存でございます。
  95. 磯崎叡

    磯崎説明員 私ども国鉄側といたしましても、いままで配慮が足りなかった職業安定法の問題について種々御指摘を賜わりまして、今後、いま先生のおっしゃいましたような方向で、名実ともに間違いのないようなやり方をしてまいりたいというふうに思います。
  96. 八田貞義

    八田委員長 後藤俊男君。
  97. 後藤俊男

    ○後藤委員 先ほど国鉄総裁のほうから、五万人の合理化については絶対に首切りには関係ないんだ、こういうお話を聞いたようなわけですけれども、現在、五万人の合理化の問題につきまして、この中身の目的と言うとおかしいですが、時間短縮の要員の問題、さらに十月の白紙ダイヤ改正の要員問題、これらを動かすのだという言い方はおかしいかもしれませんけれども、そういうようなことで五万人の合理化ということが今日問題になっておるわけです。たとえば一週間に二時間の時短を行なう、そのためにこれだけの職員が要るからこれだけふやすのだという話ならわかるのです。そうではなしに、どこかから浮かして持ってきてこれをやるのだ、こういう考え方が一つとしてあると思います。それから、それに伴いまして、先ほどから長時間にわたって外注の問題が提起されております。先ほども総裁が言われましたが、海部委員の質問に対して、直接運転には関係のない部分外注するのだ、だから公労法上云々という心配はないと思うけれども、今後注意をしてやっていく、こういう説明だったと思いますが、そのことにつきましても問題が残っておりますから、それはあと回しにしまして、いま申しました外注と民間委託、これらが行なわれますと、自然に配置転換ということが問題になってくると思います。  実は私、この間天王寺の管理局へ現地調査に行きました。御承知だろうと思いますが、あそこは吹田工場の一部が鳳地区にありました。これが吹田のほうへ今度合併されてしまう。さらに、竜華の機関区の一部が鳳地区にありましたが、これを今度竜華のほうに合併してしまって、そこの部分はなくしてしまう。これは一例にすぎませんけれども、いまのようないわゆる合理化計画に基づいて、全国的にやはり配置転換というのが伴うと思います。そうなってまいりますと、国鉄で働いておる労働者の皆さんも、一家を持ちながらそこで生計をしておられる。なるほど組合当局の間におきましては、配置転換の場合には本人の意思を尊重してやっていくのだ、こういう協定は確かに結ばれておりますけれども、それならそれなりに全部そういうふうに消化されるかというと、私はそうではないと思います。年はとってきたし、三十年間も四十年間もやってきた仕事が変わってしまう、しかも家から離れた遠いところへ配置転換で行かなければならぬ、行くかやめるかどっちかだ、こういう場面に追い込まれる人もたくさんあると私は思います。そういうような点から考えてみますと、先ほど総裁が言われたように、五万人の問題につきましては、絶対にこれは首切り関係はないのだ、こういうような言い方をされますと、実情とは少し変わってくるのじゃないかというふうに私は考えておるわけなんです。私は、いま申し上げましたところにつきましては、おそらく相手方の組合であります国労なり動労といたしましても、五万人合理化の、一〇〇%その問題だけではございませんけれども、一部の問題として今日のような情勢になってきておる、この点だけはひとつ明確に御確認願いたいというふうに思います。  それから、もう総裁行かれるのでございますから、総裁のおられる間にもう一つお尋ねしたいわけでございますが、先ほど河野委員からも話がございました。さらにその前に海部委員から一番最初にいろいろな質問がありました。そのときに総裁なり副総裁のほうから、順法闘争は明らかに違法闘争である、こう言われました。違法闘争である、法律に間違った闘争である、違反しておる、こういうことを明らかに指摘されておるわけでございますけれども、あの順法闘争は、御承知のように、各駅におきましても、機関区におきましても、どこの職場におきましても、作業内規に従ってその内規どおりの仕事職員はやっていく。結果的には正常なダイヤの運行ということにならぬから、公労法一条にひっかかるぞ。言わんとしておる気持ちはわかりますけれども、そうではなしに、毎日毎日の勤務が、就業規則に従って、しかも作業ダイヤに従って現場におられる多くの職員の人が作業をした、その結果として列車にこういうふうに影響をしたのだ。と申しますと、作業ダイヤであるとか、あるいは作業内規その他たくさんございますけれども、これらがはたして今日の過密ダイヤに適しておるか、適しておらないか。とにかく列車がおくれたのだからおまえたち違法闘争だ、こういうふうにきめつけられる点につきましては、私は非常に疑問を持っておりますし、違法であると言われるのなら、どの法律に照らして違法であるか、現場で働いておる職員の問題としてひとつお答えをいただきたい。作業内規に従い、就業規則に従い、そうして順法闘争法律に従って作業をやっておるわけでございますから、そういう観点のもとからお答えをいただきたい。この二つについてお願いをしたいと思います。
  98. 石田禮助

    石田説明員 配置転換の問題でありますが、後藤さんの言われる御心配は、私はもっともだと思います。職員の都合の点から言えば、自分がいやなところに行かなければならぬこともあるし、自分のうちを去っていかなければならぬということもあります。この点は、五万人の合理化をやるについて、われわれとしても一番頭の痛いところであります。でありまするが、国鉄運営については、どうもこれは労務者にはなはだお気の毒であるが、やはり忍んでもらわなければならぬことであります。ただ、その苦痛をできるだけ少なくするために、まず第一に、さっき後藤さんの言われたような、本人の希望を聞いて、できるだけその希望から遠ざかることの少ないようなところに移したい。さらに宿舎その他につきましては、ひとつわれわれとしても必要なら新築をして、その点についても困難を緩和してやりたいということでありまして、大体私が聞きましたところでは、五万人の配置転換をやりまするが、そのうちでほんとう配置転換になるのはまず五千人だろうということを申しておりました。この点につきましても、今後この五千人をできるだけ少なくするというようなことにわれわれとしては努力したいと考えております。  さらに順法闘争の問題でありまするが、要するにわれわれが職員に希望するところは、やはり国鉄の指示するところによってやってもらえばいいのだ。ところが、実際の順法闘争をやるのを見ますと、国鉄の指示するところではなくて、組合の指示するところによってやっておるという点がはっきりしておる。つまり、順法闘争をやることによってダイヤが乱れ、そしてあれだけの大きな輸送力が減って、たくさんの人に迷惑をかけるということは、結局順法闘争というものはああいうディスターバンスを起こす原因になっておる。かかるがゆえに、われわれは順法に対して違法、こういうことを申しておるのでありまして、この点はひとつ十分御了承願いたいと思います。
  99. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま、国鉄順法闘争に対して違法であるという説明でございますけれども、ただ、私は、実際の面を考えてみましても、今日の国鉄過密ダイヤ、こういう情勢の中における数多くの国鉄の作業があると思います。これらも全部計画、企画に基づいて内規ができておるんだ。これは総裁も、こまかいところは別問題にして、そういうことは十分御了承だと思います。ところが、国鉄の過密、輸送量が非常に激しい、こういう今日におきましては、平素から国鉄職員がかなりの犠牲考えながら、とにかく内規はこうだけれども汽車をおくらしてはいかぬのだ、こういう気持ちのもとに、かなり協力し、かなりの犠牲のもとに平素は正常なる運行が行なわれておるのではないか。これは総裁も、口には出されませんけれども、そのことは十分わかっていただいておると思うわけです。ところが、闘争になってまいりまして、順法闘争、少なくともその職場職場できめられた規則に従って仕事をした場合に、結果的に汽車がおくれる。おまえらは、闘争であろうとなかろうと、やはりふだんどおりしっかりその犠牲考えてやっていかぬかと言われる。言われんとされる気持ちはわかりますけれども、これが違法闘争である、こうはつきり言明されますと、次々いろいろな問題が出てくるんではないか、こういうふうな気も私はいたします。この順法闘争につきましては、組合組合なりに見解を持っておると思います。また、皆さんのほうは皆さんのほうとしまして、正常なるダイヤを確保するために、汽車がおくれたからおまえらは間違ったことをやっておるんだ、こういうようなきめつけ方をされるということにつきましては、愛情豊かな総裁でございますので、ぜひそういう点につきましても今後十分考えていただく必要があろう、こういうふうに思う次第でございます。
  100. 石田禮助

    石田説明員 御承知のとおり、国鉄のいまの輸送力というものと輸送需要というものの状態は、私がくどくどしく申し上げる必要はないと思いますが、要するに、三十一年ごろを一といたしますと、四十年度においては旅客は六倍以上にふえている。そうして貨物は三倍以上にふえている。しかも路線の輸送力というものはわずか一・三にしかふえていない。そこにおいて、つまり過密ダイヤがある。これは国鉄としてははなはだ好まないことでありまするが、どうも国鉄の施設に対する政府なり国会なりの愛が私は足りなかったと思う。そういうことで国鉄をここまで追い込んできた。われわれ国鉄としては、とにかくこれだけの輸送需要がある以上は、これだけの路線の貧弱なる増加をもってしてもやはりこれはやらなければならぬということで、ずいぶん苦しい話であるが、努力しておる次第でございまして、この点については国鉄職員も十分御承知のことだろうと私は思う。ただ、過密ダイヤであるが、今日の国鉄ダイヤというものは、その間に相当にマージンというものを安全率を見てつくってあるのでありますからして、そのとおりやるならば、ああいうような混乱を起こすことはない。現に、順法闘争をやらないときにおいては、何ら困難なしにやっている。こういうことは、それが順法闘争をやるためにああいうふうになるということになれば、原因はやはり順法闘争にあるということを私は断言して差しつかえないと思います。そういうことであれば、やはり国鉄職員としては、あたりまえにいけばうまくいくのだから、何もしいてそんなひん曲げてやる必要はないじゃないか、それがために多くの人に迷惑をかけるということになれば、これは国鉄職員としてもわれわれの考えと同じようにちゃんとやってくださいということがわれわれの希望であります。
  101. 後藤俊男

    ○後藤委員 いまの話は最後に、国鉄総裁としての希望である、こういう話でございますので……。  ただ、私は、この順法闘争そのものが、先ほど海部委員からいろいろ話がありまして、その海部委員の質問に対して、とにかくあれは違法闘争だ、こうきめつけられたのは、どうあろうとこうあろうと、普通にさえやっておれば汽車がおくれぬものを、汽車がおくれるから違法であるというふうに総裁は言っておられるのだと思うのです。それは新聞等なり、いろいろ第三者的な国鉄業務の内容を十分承知されない人は、往々にしてそういうふうな考え方も起きてくるかもわからぬと思います。しかし私も国鉄に約四十年間つとめておりました。順法闘争もやってまいりました。いろいろなことも私はやってまいりまして、自分の身の体験から私は申し上げておるわけなんです。これはまた同じような話になってまいりますけれども総裁が先ほどから言っておられるように、今日とにかく過密ダイヤでひどいものだという実情であるというのは、もう総裁が見られようがだれが見られようが、これは一緒だと思いますけれども、はたして各現場における作業内容がその過密ダイヤに適しておるかどうかということなんです。たとえば、汽車が発車しましたらうしろを見なさい、うしろを見て安全だと思ったらそのまま進んでいきなさい、途中で一ぺんうしろを見なさいというようなたくさんな内規があるわけなんです。さらにまた、東京駅なり大阪駅なり吹田なり、そういったところの入れかえ等につきましても、何時から何時はこうやって、何時から何時はこうやってという作業ダイヤが厳密に組まれておるわけなんです。そのとおり実行していくと結果的におくれる。そうするとあなたは、違法だから処分する、こう出られるわけです。そこに問題はないか、まだまだ考える余地はありませんかということを私は言っておるわけなんです。だから私は、先ほどから総裁が言われるように、どうあろうとこうあろうと、とにかく汽車がおくれるということは、おまえら間違っておることをやっておるからだ、ふだんどおりやればいいのだ、こういうようなことでございますけれども、そういう考え方ではなしに、いま私が申し上げましたような内容につきましても、もっと十分考えていただく必要があるし、実情というものを十分つかんでいただく必要があろうというふうに私は考えておる次第でございます。それで、先ほどから総裁は一時にお帰りになるという約束でございましたので、ちょっとおくれましたけれども、私の申し上げましたことも十分聞いていただいて、約束でございますので、これでお引き取りをいただきましてもけっこうでございます。  それで、午前中二時間なり二時間半にわたって河野委員のほうから、かなり具体的な問題から、法律的論議から、いろいろ長時間やられました。一般的に委託問題につきましては、その中心は大体話をされたと思うのですが、具体的問題については動力車労働組合関係の問題が多かったように私聞いております。  そこで、それ以外の国鉄の外部委託の問題です。これはたくさんあろうと思います。さらに、先ほどから話をいたしております五万人合理化計画の中にも、これは違反するかしないかというような問題もかなり計画されておると私は見ております。これらの問題について一つ一つ例をあげますと、これはたくさんございます。たとえば駅からデパートへ渡るところの集改札口の問題、さらには神岡線のほうに参りますと、駅長さんと助役さんはおられるけれども、それ以外の人は民間委託、さらには名古屋のほうにまいりますと、名古屋港駅ですが、駅長さんと助役さんはいらっしゃいますが、それ以外は全部民間委託に入れかえようという計画がされておる。これは実施はされていませんが、行なわれようとして計画中だと聞いている。その他中間駅につきましても、駅長さん、助役さんはおるけれども、一名ないし二名の人にその作業を委託されておる、こういうような計画もたくさん今日あるように私は考えておるわけなんです。それから、さらに名古屋におきましては、名古屋の東港でございますが、貨物の修繕場の問題です。現在国鉄職員が七十八名からおるところです。そこを助役さんにしてしまって、あとは全部民間委託をしてしまおう、こういうような計画も五万人合理化の中に計画されておると私は聞いております。  そこで、こまかい一つ一つのことを私は申し上げる気持ちはございませんけれども、先ほどの海部委員の話じゃございませんが、やがて二十三日には国労も闘争をやるそうだが、双方が真剣に話し合いをしてそういうことは何とか解決しなければいかぬぞ、わかりました、こういうような返答だったと思うのですが、それなら、この五万人の合理化の中に、いま申し上げましたような、先ほどから二時間、二時間半にわたって、職安法の違反である、こういう疑いを持たれるような問題がたくさんこの合理化の中にも入り込んできておるし、現在においても、絶対にそういうことはやっておらないということではないと思います。現実にやられておる仕事の中にもそういうのがあろうと思います。しかも国鉄におきましては、労使双方の間で、いま申し上げました問題のみが中心ではございませんけれども、これらの問題も労使間の問題となって二十三日の戦いがやられる、こういうようなことになってきた場合に、午前中河野先生から言われた問題、さらにいま申し上げましたところの五万人合理化の中における違法という疑いのあるような外部委託の問題、これらの問題を一体どう処理されるつもりなのか。やはり二十三日には闘争をやって労使双方の団体交渉にまかしておかれるのか、そういう疑問のある問題につきましては一応当局は提案を保留するのか。提案を保留しておいて、これは間違いないということがはっきりした場合に、これを実行に移して提案をする、そういうふうにされるつもりなのか、その辺のところをひとつ具体的に、職安法違反であるというように疑われる問題については一応保留して、こうするならこうするというような考え方をひとつ明確にしていただきたいと思いますし、さらに労働大臣もおいでになりますので、海部委員の質問の中にもありましたように、ものごとを円満に解決するためには、今日の時点において、いま申し上げましたような点を十分考える必要があろうと私は思うわけでございますので、いま質問いたしました点について、ひとつできればはっきりとした方針をお示しいただきたい、こういうふうに思います。
  102. 磯崎叡

    磯崎説明員 五万人の合理化の問題は、先ほど先生おっしゃいましたが、私のほうは素手で五万人の合理化ということをやっておるわけじゃございませんで、すでにいままで二千数百億、約三千億近い金をかけていろいろな機械的な設備、装置を行なったことを前提として五万人の合理化ということはおのずから出てきたのであります。五万人の内容といたしましては、たとえば輸送関係で一万三千人、あるいは検修の近代化で一万七千人、保守の近代化で一万三千人、その他いろいろございますが、そういったこまかい積み上げの上におのずからこういうものが過剰人員として出てくるということでございます。このうち、すでに過般総裁も申し上げましたように、これは何も去年の暮れから唐突として起こった問題じゃございませんで、約一年間にわたってるる組合と私のほうとで話をしてきた問題でございます。今度二十三日という時点を控えましても、残っている問題は全部というわけではありません。ある程度片づいた問題もございます。したがって、もし先ほどのお話のように、法律上疑義があるというふうな点につきましては、具体的な問題として十分労働省の御指導をいただいて、組合と話をしてまいるつもりでございます。
  103. 有馬元治

    ○有馬政府委員 職安法違反の問題は、午前中の議論でもおわかりのとおり、非常にむずかしい問題でございまして、具体的な点になりますと紙一重の議論になりまして、判定がなかなかむずかしい場面が多いわけでございます。その上に、この問題に関連をして国鉄合理化問題について労使で話し合いをしておる段階でございますので、われわれとしましては、具体的な作業請負の問題についても、国鉄労使が良識を持って話を煮詰めていただきまして、この過程において法律解釈の問題が関連してまいりますので、私どもといたしましても、積極的に労使双方を御援助、御指導申し上げたい、かように考えておるわけでございます。
  104. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま、国鉄の副総裁なりあるいは職安局長のほうから、労使の団体交渉の推移に従って、これは間違っておる、これはだめだぞと職安法に照らして御援助申し上げたい、そうしてこれらの問題を解決していきたいのだ、こういうふうな説明と私は聞いたわけでございますけれども、ただ、私先ほどから申し上げておりますのは、同じことを何回も言う必要はないからもう言いませんけれども、河野先生のほうからいろいろお話がございまして、単純な作業で申し上げてみましても、雑務作業の問題から、使い番の問題から、燃料業務の問題から、休養管理の問題から、ボイラ管理の問題と、これらの問題につきましては、かなり職安法違反の疑いが多い。さらに安全ということを考えると、国鉄のほうで指揮監督ということになってくると、これ以外にも多くの職安法違反の疑問を持つ問題がたくさんあるのではないか。さらに先ほど申し上げましたように、国鉄の五万人合理化の中にも、先ほど言いました出改札の問題なり、構内入れかえの問題なり、あるいは列車移動中の清掃の問題なり、あるいはデパートの出改札の問題なり、あるいは機関区方面にいきましてはA検査の委託の問題なり、あるいは新幹線の検査の問題、委託の問題なり、数えれば切りがないほど、私はたくさん五万人合理化の中身としてはあると思っておるわけなんです。これが午前中の論議におきまして非常に疑いが濃い。全部が全部どうということではございませんけれども、疑いの濃い問題もたくさんあるということが、きょうの午前中のいろいろな論議ではっきりしてまいりました以上は、労働省として、一体それならこの問題を、労使双方が団体交渉をおやりになるんだから、われわれは第三者的にこれを見ておって、そしてできるだけひとつ援助していこう、こんなのんきなスタイルでいいのかどうかという点を私はお聞きしたいわけです。いままでのように、職安法違反云々の問題をまだ国会で取り上げておらない時点ならそういうことになるだろうと私は思いますけれども、二時間なり三時間なりの長時間論議におきまして、疑いが濃いことははっきりしておると思います。午前中の問題といたしましても、河野委員のほうからは五つか六つの問題が出されましたが、それ以外に、駅関係のその他の問題でもかなり問題があると思うのです。それと同じように、職安法違反の疑いを持つ合理化計画があるのではないか、疑問がある、これは解明する必要があるというのが、午前中の論議の結論だと私は思います。そういう問題を労使にまかせておいて、おれらは第三者でこっちから援助していくんだ、問題が起きたらその問題のときにいろいろ相談をしてやっていくんだ、こういうスタイルで、労働省としてあるいは職安局長としていいのかどうかという点なんです。さらにそれ以上何ともしようがないんだ、こういうお気持ちなのか、それらの点をひとつ労働大臣のほうからお答えをいただきたいと思います。
  105. 小川平二

    ○小川国務大臣 私どもの基本的な考え方、また今後に処する態度につきましては午前中にお耳に入れたところでございますが、いまおことばにありますように、この委員会で論議されました諸問題以外にもいろいろな問題があるんじゃないか、こういうおことばでございます。私どもといたしましては、当事者から問題の提起がありますれば御相談にも応じますし、事の性質いかんによっては、勧告もし、是正をいたしてまいりますが、さらに積極的に労働省といたしましても絶えず注意をいたしまして、疑わしい事実がありますれば取り上げて正しい解決がなされるように努力をいたしてまいりたいと存じております。ただ、労使間の紛争の問題は、私どもが介入すべき事柄ではございませんから、それに伴いまして、私どもの権限の範囲内で御相談に応じ、助言を申し上げるという場合は、これはあり得ると思いますけれども、これはどこまでも労使双方がお互いに信頼し合って、とことんまで話し合うという態度で解決をしていただくことを切望しておるわけでございます。
  106. 後藤俊男

    ○後藤委員 午前中の論議から引き続いた形で私、話をしておるつもりでございますが、長い時間論議されまして、いろいろな話が出てまいりました。さらに、先ほど申し上げましたように、四つか五つの具体的問題も提起をされました。これらの問題を一体どうするんだといえば、労働省は労働省として、国鉄当局のほうからそういう話があれば相談にも乗りたいしというような、いろいろな見解があるわけでございます。ただ、この五万人合理化の問題の中でも、一つ二つや三つや五つの問題なら話は単純にわかってくると思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、営業関係から技術方面の関係から、ありとあらゆる職場において業務委託の問題がたくさんあります。ここにも私資料を持っておるわけでございますけれども。そうなってまいりますと、職安法違反については、これは違反である、これは違反でないというようなことをここで論議をいたしておりましても、時間をつぶすばかりでございますから、きょう午前中なりただいまここまでの論議で、職安法の違反の問題については国会で明らかになったのでございますから、疑問であるような合理化計画のいわゆる外部委託の問題については一時保留をして、その間に違反であるかないかという結論を早急に出す。違反でないということになれば、これは労使間の問題として堂々と論議される。違反であるということになれば、私はこれは労使間の問題に出るまでもないような気がするわけでございますので、その辺、もう少しすっきりと考え方を出していただきたい。これは国鉄の方針にも大きな影響がございましょうし、さらに労働省としても、きょう問題になったような点をはっきりするためには、考え方をきちっとしていただく必要があろうということで、いま申し上げました点を再度お尋ねするわけでございます。
  107. 小川平二

    ○小川国務大臣 本日御指摘のありました幾つかの問題点につきましては、従来ともあとう限り実情の把握につとめてきておりますけれども、ただいまおことばもございますので、一そう積極的に個々の事例につきまして実態を究明いたします。いささかでも疑いの点がありますれば、是正をするための措置をとるつもりでございます。
  108. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは、国鉄の副総裁のほうにもちょっとお尋ねするわけでございますが、労働大臣としては、いま言われたように、疑問を持たれる問題については早急に解明をしてきちっとしたい、一口に言ってこういうことだと思います。  そこで国鉄が、いま労働組合に対して五万人の合理化を提案されております。その中に、きょう問題になりました職安法違反ではないかという疑いを持つ合理化の提案もあると思います。その問題については、労働大臣も早急に何とか解明したいのだと言っておられるのですから、いま申し上げました疑問を持つ合理化計画外注問題については、その時点まで一時保留するという考え方でいかれるのか。そうではなしに、疑問は疑問としておいて、いままでどおりに五万人合理化実施計画を強硬に進めていこうというおつもりでおられるのか、その点をひとつお尋ねいたす次第です。
  109. 磯崎叡

    磯崎説明員 私のほうといたしましては、もちろん労使間の問題が一点。それから、労使間の問題以前の問題として法律上の問題、二つあるわけでございます。法律上の問題につきましては、先ほど職安局長が言われましたとおり、私どものほうも必ずしも法律に精通しているわけじゃございませんで、十分労働省の御指導をいただきますが、労使間の問題といたしましては、そういった御指導を仰ぎつつ、具体的な問題として私どもとしては既定方針どおりやってまいりたいと考えます。
  110. 後藤俊男

    ○後藤委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、河野先生の指摘されました問題と、それ以外にも五万人合理化計画の中にかなり疑問を持つ点がある。これは労働省のほうでははっきりと把握されない点もあろうと思いますけれども、それらも全部含めて法律違反になるのかならないのかという点も、早急に責任を持って解明をしていただくように、労働大臣に対してお願いをいたしたいと考えますし、これらの問題につきましては、私は別に五万人の合理化にブレーキをかけようの、どうのこうのというようなけちな根性で言うておるわけではございませんので、国鉄当局といたしましても、午前中なりただいまの話等を十分考えていただきまして、とにかく順法した方向で、この五万人の合理化問題につきましても、慎重に間違いのない方向で扱っていただく、このことだけはぜひお願いを申し上げたいと存ずる次第でございます。終わります。
  111. 八田貞義

    八田委員長 田畑金光君。
  112. 田畑金光

    ○田畑委員 私、CO立法、すなわち炭鉱災害による一酸化炭素中毒に関する特別措置法の適用について若干お尋ねしたいと思いますが、その質問をする前に、この際鉱山保安局長から、去る一月二十日、北海道美唄炭鉱におきましてガス爆発が起きて、死者十六名、負傷者四名、計二十名の罹災者を出しておるわけです。この原因が何に基づいて起きたのか、こういう点についても、すでに当局としても調査をなされておると考えておりますが、現段階までの調査の結果を、災害の実情とその原因探求の結果を御報告願いたい。同時に、十六名の死亡者が出ておるわけであります。また四名の傷病者も出たわけです。この死亡の原因は何に基づくものであるのか、こういう点もあわせて御報告をいただきたいと思います。
  113. 西家正起

    ○西家政府委員 いま先生からお話しございましたように、ことしの一月二十日に北海道におきまして重大災害が発生いたしました。まことに遺憾に存じておる次第でございます。先生は災害直後御みずから調査をいただいたわけでございまして、はなはだ現地の事情にはお詳しいと思うのでございますが、一応災害の概略等につきまして御説明をさしていただきます。  美唄市にございます美唄炭鉱株式会社の美唄炭鉱常盤坑におきまして、四十三年の一月二十日の十八時十五分ごろガス爆発が起こったわけであります。災害個所は二坑区域三片下九番層坑道付近でございまして、大体坑口から二千二十メートル入ったところでございます。深度は海底面下三百八メートル、その辺で起こったわけであります。今度の災害の種類はガス爆発でございまして、死亡十六名、負傷者四名、計二十名の罹災者を出したわけでございます。  当美唄炭鉱の中の常盤坑には、千三百四十名の労働者の方々が働いておりまして、この中が新坑と二坑に分かれておりまして、災害のございました二坑には、労働者が六百六十四名働いておるわけでございます。災害の発生いたしました三片下九番層坑道は、昨年の四月二十四日から巻立から掘進を始めました坑道掘進個所でございまして、災害当日までに五百二十六メートルが掘進されておったわけであります。災害の起こりましたのは、この坑道掘進の一番奥の部分、二立でございますが、当日二番方といたしまして、二坑区域には百三十一名の鉱山労働者が入坑いたしておりまして、採炭、掘進、それから仕繰り等をやっておったのでございます。  災害により影響を受けました部内には、二十三名の鉱山労働者の方々が配番されておりましたが、そのうち三名の方々は、災害と同時に坑外のほうに脱出をされております。それから、災害直後、二名の方々は負傷をいたしましたが、直ちに救出されておるわけであります。残り十八名の方々につきまして、未昇坑者がございまして、鋭意救出作業に当たったわけでございますが、二人の方を翌々日の十九時二十分に生存者として救出をいたしましたほか、十六名の方々は、二十四日の九時ごろでございましたか、一番最後にいたしまして、十六名全員遺体として収容したような次第でございます。  災害の原因でございますが、直ちに現地の監督局から監督局長以下を派遣いたしまして、鋭意原因究明に当たったわけでございますが、いろいろ調査した結果、現在の段階では、最終結論ではございませんけれども、一時的には湧出をいたしましたガスにハッパの火がつきまして爆発を起こした、こういうことがほぼ確実だというふうになっております。なお、こまかい点につきまして、どういうかっこうで異常湧出ガスが出たのか、あるいはハッパの作業がどういう段取りで行なわれたのか。この辺につきましては、何分関係者全部死んでおりますので、それぞれ試験場並びに北海道大学等に依頼をいたしまして、詳しいガスの量、ハッパを一回やったか、二回やったか、こういったことにつきまして今後さらに究明をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  災害の起こりました直後、通産省といたしましては、熊谷政務次官を団長とする調査団を翌日直ちに派遣をいたし、種々の対策樹立に当たったわけでございます。  死亡者の十六名の方々のうち、八名が一酸化炭素中毒死でございます。五名が圧風による胸部とかその他の圧死でございます。三名が火災によります焼死でございます。一名が両下肢切断の出血死。以上が死亡者の死因の内訳でございます。  通産省といたしましては、この災害にかんがみまして、ガスの少ないところでも爆発が起こるということに着眼をいたしまして、直ちに比較的ガスの少ないところに対しても、十分にガス検定をおろそかにしないようにということで、各監督局を通じまして、全鉱山に対して通達をいたします一方、業界に対しても同種の警告文を出した次第でございます。  まず第一にガス検定の励行を徹底的にやらせる。なおガス検定がもし何らかのぐあいでできないことも予想いたしまして、ガス自動警報機等の設置基準を定めまして、あらゆる作業個所にこれを設置させるようにいたしたような次第でございます。そのほか、一酸化炭素マスクの個人携帯の促進並びに使用方法の徹底、それからガス警報機のさらにいいものの開発並びに普及、こういう点につきましても、鋭意努力をいたすようにいたしておる次第でございます。簡単でございますが……。
  114. 田畑金光

    ○田畑委員 災害発生の状況並びに原因の探究、あるいは保安の確保に関する行政指導なり、今後の努力目標については、鉱山保安局長からおおよそ説明がなされましたので、この程度で局長に対する質問はとどめておきたいと思いますが、私自身も、いまお話がありましたように、二月五、六日にわたりまして、衆議院石炭特別委員会の委員として現地を調査して帰ってきたわけでありますが、ことに私はここで問題として取り上げたいのは、幸いに傷病者の人たちも、一酸化炭素中毒症状におかされていない、こういう所見が医師からされたのを聞きまして、安心をいたしたわけでありますが、ただその中で、坂口新八郎君、四十四歳、この一人は現在なおかつ労災病院に入院中だと聞いておるわけであります。当時われわれが病院に見舞いまして、いろいろ担当の医師の所見を承ったわけでありますが、二月五日現在でございます。「二週間余を経過せるも現在なお半昏睡状態にあり、神経学的及び脳波所見より、事故当時何らかの機転により低酸素状態下にあったため、脳機能が広汎に障害されているものと推測される。」これが労災病院の神経科の小野寺勇夫担当医師の所見であるわけであります。この患者のその後の状況はどうなっておるか。このことについて基準局長から簡単に御報告をいただきたいと思うわけです。
  115. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ただいま御指摘の坂口さんの療養状況の問題でございますが、奇跡的に生還をしたということで地元の人々も非常に関心を払っておられるわけでありまして、その後いろいろ私のほうにもお申し出があったわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、意識不明で脳細胞が広範に障害されているというような医師の判断は、その後も相当期間継続いたしておりまして、三月十日現在で私どもが現地から聴取いたしました状況によりますと、まあ意識はあるが反応を示さない、そうして脳細胞が広範に障害されておって、いわゆる治癒するかしないかの見込みは目下立たない、こういう状況でございます。  これも先生承知のところでございますが、この坂口さんの入院加療中の病院は、いわゆる指定病院ということに相なっておりまして、療養に必要な諸経費は労災保険から全額支給するわけでございます。もし不幸にいたしまして、今後治癒しないという状態が継続いたしますれば、三年までは現在のまま、三年後は長期傷病補償給付という名称に変わりますが、療養が従来と同様継続することは、これは御承知のとおりでございます。また、休業補償が年金に変わりますという差はありますが、ほぼ現在の状態が、療養につきましても、休業中の補償につきましても、なおるまで継続する、こういう態勢のもとに坂口さんの療養につきましては万全を期したい、かように存じておる次第です。
  116. 田畑金光

    ○田畑委員 その件について、実はわれわれ、特に労働組合の代表あるいは会社側の代表からも強く要請されたわけでありますが、この坂口さんの症状というのは、一酸化炭素中毒患者と症状の酷似しておる酸素欠乏症患者であって、この際、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法の適用をぜひ受けさしてもらいたいということは、単に労働者の側からだけでなく、美唄市当局のほうからも強く要請されたわけであります。そこで、当時出席されました労働基準局長とも、この特別法の解釈、運用によって適用できるのじゃないかというような質疑応答をやったわけでありますが、現地の局長だけでは、この特別法の解釈では、なかなかそこまで範囲を広げることは困難なような印象を受けたわけです。だがしかし、大臣もお聞きのとおり、局長説明にありましたように、明らかにこの坂口さんの症状というのは、坑内のガス爆発に基づいて起きた事故なのであります。しかも十六名の死亡者の中には、一酸化炭素で死亡したと明確に検診されたのが、約半数の八名もいるわけであります。したがいまして、われわれといたしましては、こういう同じような災害から、坑内のガス爆発によって生まれた症状を持つ患者についても、当然このCO立法が適用されるものだと解釈してよろしいのじゃないか、こう思うのでありまするが、この特別法を適用されることによってどの程度の実益があるかどうかという内容についてはとにかくといたしまして、当然この法律適用することによって、その他の一酸化炭素中毒症患者と同様な処遇をすべきである、療養を行なうべきである、こういうように考えておるわけでありますが、この点についてどのような所見を持っておられるのか。それを明確にひとつ承っておきたいと思うわけです。
  117. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 この点については、現地の関係者からもいろいろお話がございました。これについては、CO立法の趣旨と、それからその必要性、実益がどの点にあるのかという点について、こまかく私からもお話し申し上げまして御了承を得ておるわけでございます。  つまりCO法による特別措置の内容は何かというと、健康診断をしたり、配置転換をしたり、あるいは従来使っておりました住宅などの福利施設を使うとか、そういう内容でございまして、これは現に療養しておる方々については、健康診断などはするまでもない。必要ないわけであります。CO法でも、現に療養中の者については、健康診断は必要ありませんから適用していないとか、結局アフターケアの問題にいたしましても、これは治癒のあとの問題でございます。そこで実益としては介護料の問題が残る。その一点だけでございます。ところが労災保険でも、看護料というのは当然療養費で支給できるわけでございます。もともと、炭鉱災害による、しかも一酸化炭素中毒だけについてなぜ特別立法をつくるのかという点については、いろいろ政治的な背景は別にいたしまして、労災審議会でも、この立法を審議するときには非常に議論があったわけであります。なぜ炭鉱災害だけに限るのか、なぜ一酸化炭素中毒にだけ限るのか。精神、神経の障害を来たすということについては何もCO中毒に限らぬわけであります。それを承知の上でなぜCO中毒だけについて特別立法をするのかという立法の趣旨については、理論的にも非常に問題があって、それを私どもが割り切りましたのは、一酸化炭素中毒が発生するというのは、これは所々方々で発生する可能性がある。ガスを使うところですと家庭でも起こるわけであります。しかし、大量にかつ非常に重篤なCO中毒患者が発生するというのは、炭鉱における一つの特殊性である。しかも、発生いたします場合に、一人、二人でなくて何百人、三井三池のごときに至りましては千人をこす罹災者である。こういうことになりますと、個別企業の力をもってしては処理できないものがある。こういう点から、大量にかつ重篤な患者が発生をする、こういった特殊性を認めました上で、こういう立法をするのが妥当ではないか。政治的背景は別にいたしまして、審議会で検討いたしましたときには、そういうことでこの特別法の制定について了解を得たような次第でございます。そこで酸素欠乏症はどうかということになりますと、現在までの経験に徴しまして、大量に発生する、何百人も何千人も生ずるということは非常に稀有なことであり、また類似の脳神経障害の問題もありますが、炭鉱災害の中毒とはやや趣を異にするということで、問題はあるが、しかし限定するのが妥当であろう、こういう態度をとったわけであります。  そこで、御指摘の坂口さんについてこの法律を解釈によって適用するかいなかについては、医学的にCO中毒症でございません。したがいまして、CO中毒症とみなすということはできないわけであります。しかし、実益の点から見まして、このCO中毒症特別措置法をまつまでもなく、具体的に同様な処遇はできないのかという点については、それは配慮をいたしますというふうに答えておるわけであります。配慮ということになるとどうかということになりますと、きわめて限定された内容のものであります。そういう点で、現在は入院して療養費は全部払い、休業補償も払うということでありますので、私どもの誠意を御了解いただきまして、現地の関係者は一応のお聞き取りいただいたようなわけでございまして、今度問題が生じますれば具体的に適切な処置をとりたいと考えております。
  118. 田畑金光

    ○田畑委員 本鈴も鳴りましたから、この質問はこの次の機会に継続して行ないますが、ただ、局長答弁の中にもありましたように、現在の状態において特別措置法の適用を受けなければ当該患者が非常な損失を受けるのかどうか、その点についてはそうでもないということを私自身も認めるわけであります。だがしかし、この特別措置法ができた政治的な背景、そうしてまたこの措置法の目的とするところは、お話しのように、特別に介護料というものが制度化されたこと、あるいはアフターケアの措置についていろいろなことが義務づけられている等々あるわけでございまして、したがって、一般的な理解といたしましては、炭鉱災害、しかも坑内のガス爆発事故による災害でこのような症状が起きた人、たまたまそれは酸素欠乏という原因に基づいてできた症状だ。これは医学的な所見でありますから、それを信ずるほかはないわけでございまして、われわれしろうとの目から見るならば、一体どこに炭鉱災害から起きた患者を甲と乙に区別する理由があるか理解に苦しむわけであります。したがいまして、この点については局長お話のように、単に配慮するということだけではこれは私は納得しかねるわけであります。この点について、もっとこの法律の解釈によって運用できないかどうか、このことですね。これはその他の問題もありますので、あらためてあなたと意見をかわしたい、こう考えております。きょうのところはこれでひとつ終わっておきましよう。      ————◇—————
  119. 八田貞義

    八田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  厚生関係基本施策に関する件調査のため、日本赤十字社副社長田辺繁雄君に参考人として御出席を願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、日時等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 八田貞義

    八田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は明後十四日午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五分散会