○下山
参考人 私、
全国農業共済協会副会長の下山でございます。
先日この
委員会の
委員長のお使いが見えまして、去る三月八日の本
委員会での各先生方の御発言の速記録を拝見したわけでございますが、各地を視察なさいまして、そうして、農家のビニールハウス経営者の切実なる
災害対策についての真剣なる御討議も拝見いたしたわけでございます。
実はこのビニールハウス等に対しても、これを共済制度に何とかならないだろうかということは、現在自民党国会
対策委員長をされております長谷川四郎先生が農林水産
委員長をなさっていましたときからも一部話がありましたし、また
木村先生からも一部話がありまして、私どもも寄り寄り研究をしておったのでありますが、御案内のとおり、家畜共済制度の改正なりまたことし四月から入っております果樹共済保険の改正の問題等もありまして、具体的に
検討が深く進められておらないということをおわび申し上げます。
ただ、きょうは、これについてまだ実行はしていないのでございますが、農業共済に対してこれが実行できる
可能性があるかどうか、あるいはこれの見通しについて
意見を述べるようにということでございますから、私のほうで、いままで考えておりますようなことを御参考までに申し上げたいと思います。
私ども
全国農業共済協会では、御案内のとおり、農林省の農業
災害補償法に基づいて、末端は農業共済事業として各組合を通じてやっておるのでありますが、本体の仕事は、農事、蚕繭、家畜でございまして、これは必須共済あるいは義務加入――家畜共済は義務加入になっておりまして、法律で強制されております。一定の耕作面積以上を持っておる者は義務加入、もう
一つ任意共済という、農家の建物を中心といたしまして、主としてこれは風水害と火災を農家の建物が受けた場合にその
災害を補てんするという事業、これは任意共済でやっております。これは農家の建物損壊共済というので、薄い。パンフレットでございますが、
全国農業共済協会としてお手元に差し上げておりますものでごらん願えばおわかりと思うのでございますが、まだ四十一年の実績しかわからないわけでありますけれども、これは各農家が建物あるいは納屋等を持っておりまして、それが火災、風水害、雪害等で
被害を受けた場合にその損害を支払いするところの保険と、それから風水害とか雪害は抜きにして、火災オンリーの損害に対して支払いをする場合と二つがありまして、前者を第一種共済といっておりまして、県によって火災、風水害、雪害等をまるめて事故としておるのが少ないので、後者の火災のみで損害を受けた場合、これをやっておるケースが多いのでございます。全国的に総括的に四十一年度の末で見ますと、引き受けております共済金額は全国で一兆二千億ほどありまして、その中で前者の火災と風水害と雪害等を事故の対象としておりますのは、約二千億円、残りの火災のみの損害を対象としておるのが約一兆円というような形になっております。四十二年度の末は、この三月末で締め切っていま集計しておりまして、両方合わせて大体一兆五千億ほどになっておるわけでございます。
そういうような
関係で、この園芸
関係、
施設園芸のビニールハウスの
関係を農業共済で取り入れるということになれば、当面、農作、蚕繭、家畜等とは違いまして、必須共済でなくて任意共済、建物の共済と同じような形でもっていくよりしかたがないんじゃないか、かように考えております。しかし、ちょうどここに
稲富先生もおいでになっておりますが、昔、十数年前に、やはり雪害ではございませんが、福岡のなたねの
災害に、風水害等各種の
災害に対して、雨の害等に対して、
政府の再保険の保証がなくて共済をやったことがありました。農林省が勧めてやったのでありますが、
相当大きな数千万円の
災害が出ました。ところが、農家のこれが
政府の再保険につないでなかったので、
あと支払いに非常にお困りになったというようなケースもあります。そこで、私どももいろいろほかのことも考えまして、この園芸
施設のビニールハウスの損害というものは大きいのだから、そういうような構造改善を中心とした農家のために、こういうようなことに対して何か共済事業をして損害をカバーすることについて協力したいのはやまやまでございます。しかし、これは先生方に申し上げるのはおかしいのでありますが、
災害のあったときに、
補助金とか見舞い金を出す制度とは違いまして、農業共済という
一つのルールに入りまして、平素掛け金を積んで、そうして
災害のあった場合には、これだけの
被害のあった場合には、何割の損害には何割の、どれくらいの給付額を出すという
一つの約束ごとに基づいて、そのルールに基づいてやるということでございまして、その場合に、そういうようなルールが少しこちらが安全を見てやれば、入ってくる
施設農家としては希望がないだろうというようなことがあります。それかと言ってルーズになれば、支払いに欠損を生ずるというようなことがございますので、こういうような、異常
災害と私たちが言っております普通、通常の
災害とは違って、今回の雪害等でもその地帯には珍しい
災害ですので、異常
災害と私らは言うておりますが、この異常
災害の場合にこの事故を保険共済とする場合には、やはり国がどうしてもめんどうを見る、私のほうでは国が再保険するということを言っておりますが、建物の再保険は、これを全共連に去年から三割分だけすることにいたしましたが、ほかの農作、蚕繭、全部国がおしりを見ております。おしり日の丸ということで、国が見ております。したがいまして、今回も園芸
施設、こういうようなビニールハウスの
関係を共済で取り上げる場合には、国がやはり再保険を、何らかそういう裏づけをする保証がないと、福岡のなたね共済というような苦い例もありまして、そういうようなこともあるのじゃないかと思っております。したがって、やる場合には国がどう考えるかということも念頭に置かなければならないと思っております。
それからいま申し上げたように、どうしても約束ごとでございますから、平素から一定の計算に基づいて掛け金を積む、それからやはり事務をするための事務費が要る、そういうような諸経費をどういう形で取るかということが必要でございまして、国が掛け金の
相当部面を農作、蚕繭、家畜では持っておりますが、はたしてこの場合に国がどれくらいの
補助金を出せるか、その事務費と並びに純掛け金の料率について国がどのくらい
補助金的なものを出せるかどうかというようなことも、
一つの前提になると思います。それからこの間、農林経済局長がお答えになっておったようでございましたが、まだ残念ながらこういうような
施設に対する雪害なりその他のビニールハウスあるいはガラスのフレームに対する正確な全国的あるいは県別の
被害統計が把握できておらないのが実情でございます。推測すれば推測できないこともないのでありますが、特に去年、ことしなどの異常の
関係で類推することもおかしいのでありまして、言いかえますれば、
被害統計が把握できない。まだしてない。それに基づいてやはり料率等が、純保険料率、純掛け金がきまるわけでございますから、そういうようなものを、いま園芸局なりあるいはビニールハウス協会で調べておられるようであります。農林省でもそうでありますが、まだ私どもには、大体の見積もり等はないことはないのでありますが、これをもって掛け金料率を査定するだけの自信を持つような統計がキャッチされてないということが実情でございます。
それから、こういうような事業をやりましても、そういうような受ける
災害をほとんど全部これでカバーするということはできない。農作においても、七、九、六十三で六割三分を全滅の場合補償するというようなことになっておるわけでございますから、どうしてもここに事故保険というものをやらなければならぬ。その場合に、こちらが共済金で支払った残りの不足金といいますか、
災害の金は、国の
災害融資との
関係はどういうふうにするか、それらのこともやはりわれわれ研究しておこうということで、目下研究をしております。
以上申し上げたような
一つの点が前提となりまして、それで許されるならば、それらが何か解決がつくならば、われわれのほうとして何かこの共済も農家のためにぜひやりたいというように考えております。この間の局長の御答弁でも、任意共済をやるにつきましては、省令の十七条改正で追加すればこれはできることはすぐできる、法律的の裏づけができるわけでございますが、ただそれを追加して法律の裏づけをしても、さっき申し上げたような一定の料率なりあるいは約束ごとで農家がはたしてついてくるか、保険的に申しますと保険の需要がはたしてあるのかどうか。
災害があったときに
補助金をもらうとかあるいは多額の融資を受けるのだったら農家は喜ぶけれども、こういう約束で平素から何がしかの掛け金を出して、そうしてやっておる、こういうような共済事業に対して、このルールに対して、
被害を受ける農家がはたしてついてくるものかどうかというような、保険需要の面から見てまだ幾分の不安を持っておるわけでございます。私どもはそういうようないま申し上げたようなことを前提として考えた場合には、考えられる共済事業の設計といたしますれば、加入はやはり建物と同じような任意加入、農家の自由加入にしまして、一定の資格を持った人が同意を得て、そうしてこの組合等に加入してくるという任意加入の方式をやはりとっていくよりほかに方法がないだろう。共済の目的は
施設園芸の
施設、特に農林省とかまたは県の一定の規格に基づいてそうして共済の運用
委員会か何かが――仮称でございますが、認めた
施設に対して加入を認めるというような方法をとっていったらどうか。そうしてこれはやはり一年一年の計算をやる短期共済で、一年間を共済期間としてやる。一年のものを積み上げる。農家の建物共済も、われわれのほうでやっておりますのは、一年一年の短期共済でやっております。
それからてん補の方法といたしましては、やはり一棟当たり――農家でも、いま農家の住むおもやが
一つとかあるいは作業場が
一つというように、一棟ずつに分かれておりますから、やはり各一棟一棟で、温室園芸をやりますれば、百五十坪のものを、一棟のものを単位として引き受けをする。
それからてん補の金額につきましては、これはいろいろ考えがあるのでありますが、大体全滅した場合に最高八〇%、いわゆる建築費、特に資材費の八〇%ぐらいを支払う。それからこれは共済では道徳危険、モラルリスクといっておりますが、やはり農家の
被害を受けた人も、損害があった場合には自分が損害をこうむるということの道徳危険をなくするために、足切りと申しておりますが、一割程度の少額の損害の場合には少額損害不てん補というような制度をとっておりまして、足切りといって一割か二割程度の少額の損害については支払いをしない。最高八〇%で少額の場合はやらぬ。そうなりますれば、全損を受けた場合に七割ないし八割程度の資材の購入費が支払いできるというようなことを考えております。
それから共済事故といたしましては、気象上の原因として雪害、風害、ひょう及び火災、こういうようなものを考えたらどうかということを考えております。
それから料率につきましては、共済金額でさっき申し上げたように、掛け金料率の
関係がまだ
被害の
実態がわかりませんからちょっとむずかしいのでありますが、
災害の
実態に即応する料率にしなければいかぬ。いまの火災
関係は、火災オンリーの建物でございますれば、一万円に対して大体二十円前後の掛け金になっておる。これは事務費の一部とそれから純
災害率、合わして大体対万二十円、これは営利会社に比べたらずっと安いのでありますが、それから風水害と火災と雪害とを入れたいわゆる第一種共済でありますと、大体掛け金が対万四十円ないし五十円、倍になっております。そこへもってきて、
施設の共済では、今度雪害なりひょう害が重要ですが、その
被害は
一般家屋とは違いますから、これを入れますれば、当然また何がしかの掛け金がかさまって、火災の上に雪害、ひょう害でございますから、掛け金がまたそれの二倍ぐらいには当然なるということを覚悟しなければならぬだろうということも考えられます。
それからその場合に農家の
負担はどうするかというと、原則としては大部分は農家
負担でして、一部分を国が
補助する。これは国会の先生方にお願いいたしまして、そういうような農家
負担をなるべく軽減するようにできれば、農作、家畜並みに、事務費はもちろんですが、純掛け金の
補助あたりを国が出していただければ非常にけっこうだと思います。
それから
災害がなかった場合にどうするかということですが、雪害あたりは特に十何年ぶりとか
相当長年に一度というような大きな
災害、大きいかわりにレアケースでございますから、
災害がない場合には一定の制度として無事戻し制度を設けようということも考えております。
それから料率の徴収は、これはやはり掛け金前納で、前に徴収しなければならないというような
一つの構想を考えております。
また保険責任と事務費の
関係は、さっき申し上げたような
関係がございまして、保険責任が、全部
災害を受けたものを払うということは、これは道徳危険も起こりますし、いろいろな問題が起こりますので、やはり一定限度の責任、いわゆる通常責任は連合会が持ち、その他の、上は
政府が持ってもらうような責任額の持ち方を考えてもらういわゆる再保険的な考えを取り入れてもらったらけっこうだと思います。
それから不足金
対策としましては、幸い私どもに農業共済基金がございますから、農家の責任の場合で
政府が再保険をしてもらってもまだ組合なり連合会が不足金がある場合には、それを支払うための不足金の融資は農業共済基金でこれを貸し付けることができるというような、これも法律改正が必要でございますが、これをやるということであります。
それから事務費は掛け金の一定限度を付加しますが、純保険料に一定の事務費を付け加えるのでございます。これはやはり
政府から何がしかの
補助を
一般共済と同じようにしてもらう。事務は必ずしもわれわれの共済組合ばかりでなくて、場合によっては園芸組合等にも委託することができる、こういうような構想を考えて、わりあいかってなこともございますが、
相当この制度はむずかしいのでございまして、先刻申し上げたように、二、三年前から先生からも御注意もあって、研究せよということになっておったのでありますが、研究すればするだけ、なかなかむずかしいし、いろいろな条件を前提としてやらなければいかぬということです。今回お呼び出しを受けて、
意見を述べろということでございますが、非常にかってなことでありますけれども、再保険なり、
相当程度の事務費なり純保険料を国が助成するということにして、そしてこの制度をやらしていただければ非常に幸いだ。したがって一定の約束ごとでございますから、こんなものができないわけはないのでありまして、そういうような条件がかなえば、また
被害統計がもうちょっと集められれば、これは
一つのルールに乗せることができるのではないか、かように考えております。全国的に見ましても、ここ一、二年急激に
施設園芸の火災が多くなりまして、農家のためにもこの
関係は非常に必要だと思っておりますが、いま申し上げましたような隘路が
相当ありまして、これらについてひとつ御協力を賜わりたいことをお願い申し上げまして、
意見といたします。(拍手)