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松平参考人 松平でございます。
自動車タイヤの安全の問題について申し上げたいと思います。
自動車タイヤは、御
承知のように、世界的にどこでも同じ
規格でつくられております。そして、同じ
規格でつくられるようになっておるわけでありますが、多少
各国によりまして、その車の種類によって多少の違いがありますが、
一般的にそういう
状態であります。しかも使われるのは、新しい
タイヤ、またはそれがだんだん古くなって使い古した
タイヤ、いろいろの
使用の
条件が変わってきております。ここらに
自動車タイヤの安全の問題に非常にむずかしい点があると思います。
これから、差し上げております
印刷物について申し上げたいと思います。
まず第一に、
アメリカの
自動車タイヤの
安全基準、これができましたが、それについて申し上げたいと思います。
アメリカは毎年五万人ほどの死者、百数十万人のけが人が
自動車事故で出ております。これは非常に大きな問題でありますので、
自動車の
運輸安全法というのがこれに基づいてできまして、
自動車タイヤの
安全基準もこれによって出たわけであります。
アメリカでは、この
安全法は、交通安全の
教育、
道路施設その他の
改良、
自動車及びその
付属物の
改良、こういう三つの柱によって安全の問題を解決しようとしております。初めの二つは、大体
アメリカで前々から実行されておったのでありますが、さらにこれを強化し、今後
自動車とその
付属物の安全問題に取っ組もうというのが今度の
安全法でございます。
それで、
自動車タイヤにつきましては、現在きめられておりますのは、新品の
乗用車タイヤの
安全基準というのがきめられております。これは
各種の
タイヤの寸法をきめ、それぞれの強さ、それぞれの
耐久力試験及び
高速試験に合格するかいなかということによってこの
タイヤの
規格をきめ、それぞれのその合格した
品物が
使用される、あるいは
販売されるということになっております。合格した
製品にはマークを入れます。その
タイヤの
サイド面に、横に
空気内圧それから最大の
負荷量というようなものを入れまして、
一般の人にわかりやすくするのが、この
基準法でございます。大体これはことしの正月初めから
実施されることになっておりますが、今後は
小型の
トラックタイヤ、
大型の
トラックタイヤまた将来は
リキャップタイヤの安全の問題もきめられることになっております。
次に、この
自動車の
安全基準に対して
日本の
タイヤ業界はどういうふうに
具体策をとったかということについて申し上げたいと思います。
米国のこの
タイヤの
安全基準の
試験は、一番大きな問題は
耐久力試験であります。これは普通八十キロメートルの速力で走らせて
試験をいたします
試験基準であります。また
高速試験は八十キロからだんだん
スピードを増しまして、百三十六キロまで耐え得るかどうか、こういう
試験を行なっております。
日本では
名神国道ができるようになりましてから、だんだんと
高速で使うところの
タイヤがふえてまいりました。また実際にそういう道ができたので、この
高速での
使用の
タイヤの
実情がわかるようになってまいりました。それまではほとんど五十キロ以上の
スピードを出して走ることができませんので、そういう
試験はできなかったのでありますが、こういう道ができ、また実際の
試験機とこの実地の
速度での
試験の成績との
関係もだんだんわかるようになってまいりました。そういうようなときに
アメリカで
タイヤの
安全基準というものが出ましたので、
各社ともこれにできるだけマッチするような方策をとりまして、ここ一年間ほど
研究したのでありますが、どこの
会社も全部
タイヤ安全基準にその
性能が合格しております。この
印刷物の一番
最後に
参考にあげてございますが、
各社の
米国の
安全基準に通ったか通らないかというそのコードの番号が
各社に下げられてきておるわけであります。それで本年の一月から
タイヤ会社で製造しておりますところの
タイヤは
アメリカに輸出しておるものは全部合格された
品物が出ておるような
実情でございます。
さて、先ほど述べましたように
小型の
トラック、
大型トラック、また将来の問題であります
リキャップタイヤというような、修理の
タイヤというようなものにつきましての安全の問題がこれからの
研究の焦点になるわけでございますが、これに対してはいろいろまだ問題が非常に複雑でありますので、結論は出ていない
状態でございます。
第三番目に、
タイヤの
安全対策に対する
企業の考え方を申し上げます。
交通事故がだんだんと激増しておりますので、
自動車タイヤの製造、
販売をしております
立場から、できるだけこれを最小限に持っていきたいというのがわれわれの念願でございまして、一生懸命にこの
努力をしております。できるだけこの
目的に沿うような
性能を持った
タイヤ、すなわち
高速安全性がある、
耐久力がある、また
操縦性もよろしい、すべらない、また
自動車が振れないというふうな性質を備えた
タイヤをつくるようにいま
努力いたしておるわけでありまして、また安全の問題に対しましては、
タイヤ協会内に
タイヤ安全
委員会というのを設けて
各社共同でこの
安全対策を進めておるような現状でございます。ただ
一つ申し上げたいのは、
日本では
乗用車のみならずバン型の、
小型を含めた
小型トラックまたは
大型トラックによる
事故が非常に多いわけでありますが、ここで、先ほど述べました
運輸省令によるところの
保安基準で、
トラックタイヤにつきましては特別に
規格以上の過荷重が認められておるわけであります。この
保安基準ができました当時は、五十キロ以上の速力で走る道がなかったわけでありますから、これでよかったのでありますけれ
ども、現在のように各地で
高速の道ができておるときには、
高速で走れば
自動車はあるいは
タイヤも同様でありますけれ
ども、それに持っておる慣性、イナーシアはその
速度の自乗に比例するわけでありますので、
速度が非常に早くなるということは非常に大きな影響があると思います。また、ブレーキをかけてもとまりにくいわけでありますので、こういう点で
高速運転されるときにはこの点が考慮されるべきではないかと思います。また、同時に一番初めに申し上げましたように、
自動車タイヤは世界じゅう同じ
規格でつくっておるわけでありますので、できるだけこの
規格に合わせたいと思うのでございますが、
日本で、こういうふうな特殊な
基準がありますために、なかなかこれが合わせにくいことがあります。こういう点は安全問題の解決のためにはすっきりしなければならぬ問題ではないかと私は思うわけであります。
それから、
タイヤの安全問題に対しての
研究開発でありますが、
各社の
研究開発でありますけれ
ども、まず、第一にちょっと詳しく説明いたしますが、
使用条件、すなわち
速度とか荷重とか空気圧というような問題であります。これは
タイヤの
基準になります。
自動車タイヤを
高速試験機で走らせます、またときによって特別にスタンディングウェーブが起こるような
試験をいたします。そういうような、また、実際に名神
高速で走ったような場合、また、谷田部の
高速試験場で走らせた場合、また、
自動車のサーキットで実際に運行させ、こういうような実際の
試験の結果を見たときに、
速度が早くなって荷重が大きくなると
タイヤの発熱は多くなる。そうして
タイヤが早くいたむ、また破裂するわけであります。この
タイヤの破裂をできるだけ防いで使うというためには、空気圧を常に一定に保つということが必要でありますが、これは
自動車の
タイヤのメーカーの仕事でありませんので、実際に使う人の管理の問題になってくるわけであります。これはわれわれの管理外の問題になっておるので、この点非常にむずかしいと思いますが、だんだんと空気漏れの少ないところのチューブレス
タイヤ、こういうようなものがだんだん安全走行のためには必要だといわれておりますので、こういう方面にだんだん向けていかなければならぬのではないか、こういうように考えておるわけであります。
また、
耐久力でありますが、
タイヤの
耐久力を強くしようと思えば、
タイヤに使いますところのコードの枚数をふやすとかいたしますれば、
耐久力、強さは増してまいりますけれ
ども、これを
高速で走らせますと、そういうふうにしたものはかえって発熱が多いわけであります。強くしようとすれば発熱が多い、こういうジレンマを——
タイヤコードをできるだけ細くしてしかもじょうぶなコードを使うというようなこと、すなわちナイロンとかポリエステルのコードのようなものを使って、薄くて同じだけの強さの
タイヤをつくるというようなことにいたしまして、発熱にも強い、
高速にも耐え得る
タイヤをつくるというようなことをやっておるわけであります。今後は幅の広い
タイヤ、またラジアル
タイヤというように、構造の面も改造いたしまして、そうしてより
高速に安全な
タイヤの
生産というものに心がけております。また振れとか、すべりとか、
道路面把握、またそういうような
自動車操縦性に
関係のある問題について申しますと、
自動車の
運転に支障を来たさないように、トレッドの模様とか、あるいはトレッドに使いますゴムの質とか、あるいは
タイヤの構造というようなものをいろいろと
研究しておりますが、また工場で製造いたしますときも、いつも品質が一定するような加工方法をとるような設備をやっておって、しかも
タイヤのバランスをできるだけ一様にし、そして振れの少ない
タイヤをつくるということに
努力をしておりますが、これもある程度の限界があります。また、
自動車タイヤメーカーのほうでは、オートレース用のレーサー
タイヤもつくっております。これはレースをやるのがほんとうの
目的ではないのでありまして、
高速で安全な
タイヤ、また、横すべりのない
タイヤ、いろいろそういう
高速の安全
タイヤの技術につながりますのでこれをやっておるわけであります。また、雨水だまりの
道路あるいは雪の上、氷の上での
タイヤのすべりというようなものも
研究の対象となっております。
それから
タイヤの損耗度でありますが、
タイヤが摩耗して模様がなくなれば、すべりどめの
効果がなくなるわけであります。
タイヤには、ウエヤーインジケーター、安全サインというのがつけてあります。こういうような
タイヤでありますが、新しい
タイヤはこの模様でありますけれ
ども、これがだんだん減ってまいりますと、こんなふうに変わってまいります。それがもう
一つ減りますと、こういう
状態にまで減ります。ここのところに安全のサインが出ております。こういうふうにして、大体の、
最小限度ここまで使えばもう
タイヤを取りかえるかあるいは修理するかというような限界を示しております。こういうのを
タイヤのメーカーで協会と打ち合わせて宣伝もし、PRもしておるわけであります。新品の
タイヤに比べて、使い古した
タイヤはどのくらい強さが残っておるかというのは、これは使い方で全部違います。幾らまで走ってもだいじょうぶということは言えないのでありまして、これは使い方がじょうずであれば強さが残るし、使い方が悪ければ早くいたみます。じょうずに使った
タイヤは数回のリクリエート、修理もききますが、そうでなければ早く、一回でもう使えない
タイヤになると思います。
アメリカで
安全基準ができておりますけれ
ども、こういう点については、全然いまのところは問題に触れていない。非常にむずかしい問題でありますので、問題にしておりません。こういうような
実情でありますが、われわれはこの現状にあきたらずに、できるだけいろいろの点で、材料の面、構造の面あるいは
生産の技術の面におきましても一そうの安全
タイヤの製造に
努力するつもりでおります。
それから安全の問題に対して各
企業はどんなふうにやっておりますかと申しますと、数年前から、合理的に
タイヤの
規格をきめるために、
日本自動車タイヤ協会内に
道路委員会、
試験委員会というのを設けておりまして、それで
共同で実地の
試験をやっております。その結果、JIS
委員会、
設計委員会とも打ち合せまして、だんだんとその
試験を続行しておるわけであります。また、
企業の内部におきましても、それぞれ
試験設備を
整備して、実地
試験をやっております。また、
名神国道が開通してからは、いままでできなかった
高速運転、また谷田部においてもそういうような
試験をやりまして、
高速運転時の安全問題というようなものをだんだんと解明することができる
状態になってきております。
試験機としましては、現在三百キロ以上の時速で走るところの
試験機もありまして、それで
試験も行なっておるわけであります。現在名神で走っております
高速バス用の
タイヤというのは、百キロ以上も走ることができまして、それで故障が少ないのでありますが、そういうのはこういうような
試験機で
研究した結果でございます。それからまた先ほ
ども申しましたが、レーシング
タイヤの
研究は、
高速時においての
タイヤの破壊現象とか、
道路の把握力の改善、
高速でカーブを切ったときの横すべりの
防止、特に雨中でのレースの安全走行というような、極端な
条件での
試験をやりまして、そうして安全
タイヤの
設計に貢献したい、こういうわけでございます。大小
各種の
タイヤの回転
試験機だとか、
操縦性の
試験機、
高速タイヤ試験機とか、あるいはスキッドパット、ハイドロプレーニング
試験設備等、各
企業でいろいろな安全なり
高速につながるところの
試験を現在やっております。また、そういう設備をしておりまして、最近では毎年全体で約一億ぐらいのそういうような設備の
投資をしておるわけであります。それから
名神国道、谷田部の
高速試験場その他
自動車サーキットを借りまして、実地
試験をやっておりますが、普通の道では
高速の走行はできませんので、そういうような
試験をやっておりますが、毎年これにやはり一億ぐらいの
試験費をかけております。この
試験費の中には
タイヤの
試験代は大体含まれていないのであります。
最後に、消費者に対しての安全走行のPRの問題について申し述べます。
先ほ
ども申し上げましたように、
タイヤは新しい
タイヤをつくるだけが一応
自動車タイヤ会社の責任でありますけれ
ども、しかしこれが安全に
運転、走行されるためには、
最後までその安全が保たれる必要があります。そのためには、どうしても実際に使われるところの消費者に安全のPRをする必要があると思います。それで
各社は
各社発行のPRの雑誌あるいは
タイヤの
使用方法等の解説的なパンフレットを盛んに出しておりますが、またその
使用の方法、
高速走行に対してどういうふうになっておるかというようなことを、
タイヤ協会を通じて、これは「
タイヤの正しい
使用法」というのを前に出しましたが、目下新しいのをまたつくって出そうとしております。近日これを消費者の
各位に配ると思いますが、できれば全国の一千万台になる
自動車の保有者
各位あるいは潜在するところの免許所有者にも、実際にこういう点が行き渡るようにするためには非常に大量の頒布が必要になってくるわけで、この費用は一
タイヤ協会だけではちょっとまかない切れないものだと思うわけであります。これを何とかしたいと、こういうふうに考えております。また、
業界はテレビあるいはラジオを通じていろいろとこの
自動車の安全の問題について現在PRをしておる現状でございます。
以上述べましたように、
自動車タイヤの
各社は
自動車タイヤ協会と連合いたしまして現在われわれのやれる範囲のところはやっておりますが、まだ多数の問題が残されておると思うのでありまして、いま盛んに
日本の
一般で安全問題が論議されておるときでありますので、われわれもこの線に沿いましてできるだけ
努力したいと思っております。