運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-03-12 第58回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月十二日(火曜日)    午後三時二十八分開議  出席委員    委員長 門司  亮君    理事 大久保武雄君 理事 大竹 太郎君    理事 木部 佳昭君 理事 板川 正吾君    理事 兒玉 末男君       浦野 幸男君    加藤 六月君       河野 洋平君    山口シヅエ君       井上  泉君    太田 一夫君       古川 喜一君    松本 忠助君  出席政府委員         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         運輸政務次官  金子 岩三君         運輸省自動車局         長       鈴木 珊吉君  委員外出席者         通商産業省重工         業局次長    本田 早苗君         通商産業省重工         業局自動車課長 田中 芳秋君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  交通安全対策に関する件(自動車安全規制に  関する問題)      ————◇—————
  2. 門司亮

    門司委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  自動車安全規制に関する問題について、まず、運輸省から説明を求めます。鈴木自動車局長
  3. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 それでは御説明申し上げます。  交通安全関係のうちで運輸省が分担しております範囲は、自動車車両構造とか設備の関係安全規制という問題が主でございます。それ以外に自賠法の関係等がございますけれども、特に安全規制の問題につきましては、そういった保安基準関係が主たるものでございます。  そこで、実は昨年来特に車両安全規制につきましては、特にこの委員会をはじめといたしまして、国会でいろいろお取り上げになったわけでございまして、非常な御心配をお願いいたしたわけでございます。お手元に実は資料をお配りいたしてございますけれども、そのうちの一枚紙のほうで「自動車安全規制実施項目」というものがございます。昨年は、ここにまとめましたように、特にダンプ関係あるいは大型トラック関係につきましての保安基準安全規制を行なったということでございます。ここにありますように、たとえば運行記録計とか速度表示装置とか、あるいは二重安全ブレーキ装置あるいは側面及び後面の防護装置、そういったような点につきまして、実施期日がここにございますが、そういうことで保安基準改正をいたしました。さらにはまた、ダンプだけにつきましては自重計をつけるというようなことで現在行なっております。特にダンプ等につきましては、ここにございますけれども、そのほうの関係はこの二月一日から施行されまして、現在までに約四万両のダンプカーがその届け出をいたしまして白い表示をつけております。それは四月一ぱいまでにおそらく推定いたしまして全部で十七、八方になると思いますけれども、その程度の数のダンプカーにそういったような規制が課せられると思います。現在四万台ちょっとオーバーいたしますが、届け出がされております。そういうようなことでございます。  そこで、さらに運輸省といたしましては、実はかねがねこういった保安基準につきましては、もっと積極的に交通環境変化とか、あるいは技術発展とか、そういったような情勢の変革とか発展に応じまして適切な手を打っていくべきではなかろうかということを反省いたしております。そこで、実は私のところの技術関係部長も、昨年アメリカ欧州に参りまして、欧州では特に国際道路条約関係の、こういった保安基準関係会議がございまして、そこにオブザーバーで出ております。  そういったように、アメリカ欧州方面安全基準の問題も参考にいたしまして一応研究いたしました結果が、実はお手元にございますような「自動車安全規制の強化について」という資料でございます。この中で、たとえば十四項目ばかり研究いたしました結果、これをぜひ安全規制に取り入れまして保安基準改正に取り入れていきたいという一つの案でございます。ここにございますように、この中にも表がございますけれども、たとえばシートベルトというものを乗用車につけるとか、あるいは安全まくらをつけるとか、あるいはスクールバスの色を特殊の色に一定してしまう、また、大型トラックとか大きいバス等につきましても、アンダーミラー、特別に下が見えるようなミラーをつけたり、それからガラスの質を合わせガラスにしまして、ひびが入らないで、かつ割れないというような質のものにする。それから、ブレーキ高速時や坂の場合に特別に焼き切れないようなブレーキにするとか、いろいろここにございますが、内容については後ほどまた申し上げたいと思います。  そういうことで十四項目ございまして、これを現在検討いたしておるわけでございます。これは私だけの意見ではもちろんいけませんので、メーカー、また、これを使うユーザー、そういった関係団体に対しましてこの案を示しまして、いま意見を聞いております。その意見が出そろいました結果、さらに検討いたしまして最後的な決定をいたしまして、四月中には道路運送車両法に基づきます省令がありますが、それの保安基準改正に持っていきたい、かように考えておる次第であります。  なお、これ以外に、さらに先ほど申しましたように、環境変化に応じまして、積極的に改正すべきものとかいうことにつきましてまた第二次の研究をいたしたいというように考えております。この際、ただ思いつきではいけませんので、過去の衝突事故、そういったような実例から調査いたしまして、そういったような調査並びに裏づけになりますところの試験研究、そういったものを合わせましてしっかりしたものをつくるべきであると思っております。この点につきましても十分御理解をいただきまして、なおまた十分よろしく御審議を賜わるようにお願いいたしたいと思います。  以上でございます。
  4. 門司亮

    門司委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 門司亮

    門司委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許すことといたします。大久保武雄君。
  6. 大久保武雄

    大久保委員 わが国経済の成長に伴う輸送需要増加は、ここ数年来自動車台数の急激な増加をもたらしました。現在一千万台を突破したといわれております。ことに乗用車伸びが著しく、昭和三十七年には九十万台であったのが、いまは四百万台、こういうことで、自動車必需品になって国民の足になった、こういう非常に大きな変化がきておると考えられます。一方交通事故による死傷者は、昨年は死者一万三千六百十八人、負傷者は六十五万五千三百人で、死者は減少してまいりましたが、負傷者は大幅な増加を来たしておる、こういう状況であります。特に最近は都会において自動車の渋滞が激しくなり、追突事故の激増とともに、これに基づく悲惨なむち打ち病に悩む被害者増大を見ておることは、まことに遺憾であります。かくのごとく、死傷者が未曽有増大をしている現状は、自動車国民の足、国民必需品となっているだけにこれを見のがすことはできないのであります。いまや自動車はつくればよい、もうかればよいという量産の時代から、安心して乗れる、国民の命を守るという質の時代に入ったといってもよろしかろうかと思います。この意味において、三十万人もいるといわれるむち打ち対策については、昨年の本委員会において私は質問をいたしました。その際、安全基準の作成につきまして質問いたしましたが、自動車局整備部長から、四十三年三月中に新規準をつくりたいという答弁がございました。これに基づき目下保安基準に関する政令の内容検討しておられるということでございまして、私はその努力を多といたします。国会質問いたしましても実効はなかなかあがらないのが、今回は質問いたしましたものを直ちに実行に移した、これは私は非常に多とするものであります。しかし、この際さらに安全問題の基本となる考え方等につきまして、衝突の際の対策にしぼって若干の質問をいたしたいと考えております。  第一は、いま局長からお話がありました安全まくらの問題であります。安全まくらは、三年くらい前までは四社くらいの工場がこれを製造しておったものが、現在では三十六社で製造されて、年間二百万個、四十億円の生産にのぼっておるそうであります。これを運転席だけに限りますと、四台に一台は安全まくらをつけておる、こういうように普及してまいっております。しかるにこの安全まくらは、町のかばん屋自動車安全に関する深い研究も知識もなくて製作しておりますので、きわめて危険なものがあるようであります。ネジがむき出しになっている凶器まくらがあったり、刃物のように光る金具が草苅りがまのように客席にきばを向けているものもございまして、私は客席にいて、ギロチンの断頭台のようだと首をすくめたこともございます。今回の改正でこのまくら一つ基準をつくるとのことでありますが、二、三の質問をいたしますと、まくら座席の上に幅三十センチ内外のものを首の高さに備えつけるのでありますが、追突によってこのまくら中心に頭が接触すると一応考えられます。まくら中心に頭が接触すればこれは安全が保たれるでありましょうけれども追突事故というのは複雑で、その簡単にはまいらないのでありまして、左右いずれかの角度から追突された場合は、追突の力が加わった方向に物体の慣性運動が働きますので、首はまくら中心からはずれて、むち打ちとは別個の障害を乗員に与えるということも聞いております。その対策をどう考えておられるか。  次にまくら強度につきましては、日本工業標準規格を適用されることでありましょうから、その強度は保障されると思いますけれども事故が発生したときに頭とまくらとの位置間隔があり過ぎますと、この強いまくらがかえって頭に強い反発、反動を加えることになるかもしれません。反発によってかえってバウンドを大きくして前方に頭を強く突っ込むではないか、こういうふうにも思われるのでありますけれども乗客の前のほうの保護は一体どうなっておるのか、そういうことが二点。  次は、まくら乗員一人に対して一個を装置するように思いますけれども、現在認可されている中型車は六人乗りであります。まくらを義務づける場合には六個と指定するのであるか。六個を取りつけると座席の高さにまくらの高さを加えたものとなりまして、運転者は後方に対する視野を全く失うことになります。個数を減してまいりますと、乗客のうちの何人かはその安全性が失われることになりますが、その調和をどうするつもりであるか。  その次の点は、このまくら新車には強制されましても、これは初めからその設計生産を始めてまいるでありましょう。そこで、現に市中に出て使われておる車に強制するとなると、これはかなり座席の改造ということになろうかと思いますが、一体現在日本にある修理工場能力でこの現用車への取りつけを消化することができるのかどうか。また、使用中の車に強制する場合には、その準備期間を一体どういうふうに考えておるのか。これら安全まくらに関しまして、まず第一にお尋ねをいたしたいと思います。
  7. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 ちょっと技術問題がございますので、もしお差しつかえなければ、整備部長にお答えさせたいと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  8. 堀山健

    堀山説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  むち打ち病対策につきましては、いろいろな車の走行条件、たとえば車両間隔位置とか、ほかにいろいろな方法があると思いますけれども車自体について考えますと、当面とりあえず考えられる方法は、まくらをつけることであろう、かように思っておるわけでございます。  そういう意味から、実は一昨年来、日本工業標準規格俗称JISと申しますけれども、そこでこのむち打ち対策のために、俗称でいいます安全まくら、これに対する検討を進めてまいったわけであります。最近それが制定ができるやに伺っておりますので、それをそのまま私ども安全基準の中に取り入れる、かような段取りにしておるわけでございます。それでそのまくらのいろいろな規格につきましては、たとえば車製造時にそのまま車につけるという場合もございましょうし、あるいは現在の席にまたがり式にあとで取りつけられる方法あるいは突き刺して取りつける方法、いろいろな方法があるようでございます。そういうことによりまして、新車の場合にはそれぞれメーカーの立場で設計上都合のいい方法をとると思いますし、いわゆる中古車といいますか、現在市場に出ておる車につきましては、まくらは何種類か規格があることになっておりますので、そのいずれかが採用される、かように思っております。それで、そのまくら規格をきめる段階におきましていろいろな衝突のしかたを考慮に入れてつくられておるというふうに私ども伺っておりますので、技術的にはそのほうの検討がなされておるというふうに考えております。  それから数の問題でございますが、実はお手元に差し上げました安全基準の十四項目の中にございますように、少なくともこれはシートベルトと相関連するわけでございますが、運転席には必ずつける。その他の席につきましては、これは乗用車の実態から申しまして使い方がいろいろございまして、たとえば家族しか乗せない、その場合には助手席しか乗せない。あるいは商社とか役所とか、いわゆる乗用車として使う場合には、乗る人はうしろに一人しか乗らない。使い方がいろいろあるものですから、その使い方によって車両に取りつけるその選択をつけたほうがいいのではないかというふうに原案としては思っております。  修理能力でございますが、最終的にきまるまくらが、またがり式、着脱式、そういうものが出てくるはずでございまして、着脱式、またがり式になりますと、現在整備工場と申しますのは約五万軒ございます。そこで技術的にはつけられると思いますが、実質は販売会社その他でつけることとなろうと思いますので、ある期間をおけば、それはできると思います。
  9. 大久保武雄

    大久保委員 いまの整備部長答弁、一応は了承しますけれどもまくらのつくり方は技術的な方面にまかせるということでありまして、まくらのつくり方いかんによって非常に心配な面もあるようであります。私もこの間そういうことを聞いたものだから、下からくぎが二本出て、上にまくらが載っておるようなまくらを、私のくにの秘書が自動車につけておりましたから、あぶないから取りはずせと言って東京に帰りましたとたんに、うしろから追突されて、ただいまむち打ち病で入院しておる。そこで、そういった安全に関する人々の考え方が一定していないので、そういうまくらはあぶないから取りはずせと言ったとたんに、むち打ちでやられる。こういうことでございますから、国民が納得するような安全規格を早く自信を持ってつくられて、それをひとつ早急に実施されるように、さらに私は強く要望いたしておきます。  次に私がお尋ねしたいのは、タクシープラスチックの板を運転席うしろにつけておる。これは横行した自動車強盗事件予防策と思われますけれども、同時にむち打ち対策であるという若干の配慮も行なわれておるようであります。しかしながら、硬直したプラスチックでありますから、あの板に頭をぶっつければ、かえって大きな反発と傷害がそこに起こるのであります。最近、私は日曜は町の流しタクシーによく乗るのでありますけれども、最近はプラスチックの板にプラスチック製空気まくらのようなものを下げておる。これはだいじょうぶかと言いますと、だいじょうぶでしょうと運ちゃんは言っておりますけれども、あの板の前のまくら、あれは必ずしも安全じゃないんじゃないかというような心配も私はある。またあの板をはめておると、今度安全基準でつくられようとするまくらの取りつけはできぬのじゃないか。強盗よけとむち打ち対策との調和をどうされるのであるか、その点をひとつお尋ねいたしてみたいと考えておるのであります。また、私も技術者でありませんのでよくわかりませんけれども、この間新聞を見ておりますと、プラスチック工業が非常に進歩をして、ガラス繊維のようなものをプラスチックに加えていくと、プラスチックが非常に弾力性のあるものになる。そういう工業化が行なわれつつある、こういうことが新聞に書いてございました。私も交通安全特別委員になって、そういう新聞も非常に気にかかります。そういうことでございますと、あのうしろの板もかなり弾力性のある板が工業化されつつあるんじゃないか。この辺はどういうふうに考えておられるのか、プラスチックの板についてのお考え方をお尋ねしたいと思います。
  10. 堀山健

    堀山説明員 先ほど申し上げましたいわゆるJISで最近きまるわけでございますが、その中で、まくら、こういうぐあいにガラス仕切りのようなものに付随した場合どうするかということも、いろいろ出てくるかと思いますので、その面を調整した上で、現実にいまお話しのようにタクシーでは仕切り板についておるのがございます。ただそういうものは今後どうするかということにつきましては、JIS基準がきまり次第、それとの調和においてきめたい、かように思っております。
  11. 大久保武雄

    大久保委員 まくらはつけられますか。(板川委員仕切りがあればまくらはいいと書いてあるんじゃないか」と呼ぶ)
  12. 堀山健

    堀山説明員 いえ、これはそうではございませんで、一般的な議論として、考え方を書いたわけでございますから、一般的には、当面車両構造の面では、むち打ち対策としてはまくらをつけることが適当であろう。そのまくらはどういう規格まくらがいいかということに対しましては、日本工業標準規格でいずれきまりますので、それをそのまま採用いたしたいというのが実は原案でございますが、いまの御質問は、これに関連して、タクシーについては現に運転席乗客との間に仕切りがついてあるが、これはどうかという御質問かと存じます。これもいま申し上げましたように、そのJIS規格がきまった結果、それと仕切りとをどういうふうに調和させるかということについては、それがきまってから検討いたしたいと思います。
  13. 大久保武雄

    大久保委員 なお検討するということでございますから、十分ひとつ御研究を願いたいと思います。  次に、私が先般も触れましたが、ネットの問題でございます。野球のバックネット、テニスのネットゴルフ練習場の金網、あれはボールが飛んでいきますと、反発しないで力が吸収されて、ボールが下へ垂直に落下する、こういう原理から、自動車安全装置としてのネットを備える研究が進んでおる。ネット構造、材質の強度伸び等研究によって、より理想的な安全装置に発達させることは不可能ではないと考えるわけであります。またネットを現に実用化しておるタクシー会社等があるやにも新聞で拝見をしたわけであります。私先般ネットを備えつけた自動車にも試乗してみました。そこでネットというものはある程度開発が進んでおるということも考えられるのですが、タクシー会社等が、あるいはバス会社等が実用化した結果はどうであったか。またこれがかなりの水準まで開発されておるならば、これはまくらとはまた違った意味において、かなり安全性が広範に高いということも考えられぬでもないが、これはいかが取り扱われるか、承りたいと思います。
  14. 堀山健

    堀山説明員 このたびお手元に差し上げました項目には、むち打ち対策としてまくらということばを使っております。これは現にそういうものがある意味において普及いたしておりますし、今後これを規格の上でいいものに変えようということがありますので、わかりやすい意味まくらということばを使っておりますが、確かにネット一つ方法だと私どもも考えております。ただこれは張る場所によりましては、たとえば前のほうに張りますと、先方の視野がどうこうという問題があろうかと思いますが、考え方としてはネット一つ考え方であるというふうに考えております。したがって、これは先ほども申し上げましたように、この案について生産者あるいはユーザー関係の各団体意見を聴取しておりますが、それらの総合結果とにらみ合わせまして、技術的に確信が持てれば、まくらと同じような扱いで規制したいと思います。最終的にはまだ試験その他についていまデータを持っておりませんので、きまるまでにその辺を考えたいと思っております。
  15. 大久保武雄

    大久保委員 ネットまくらの一種として今後検討を進めていきたいということでございますから、了承して今後の研究を待ちたいと思っております。  次に安全ベルトであります。きょうの新聞で、フランスの参謀総長飛行機事故でなくなって、スチュワーデスが一人助かったと書いてある。航空機事故のときにスチュワーデスが一人助かる場合が間々ありますが、その場合は、スチュワーデスベルトを締めてなかったという報告もときどきあるわけです。そこでベルトというものは一体どれだけ安全上有効であるか。私も昔航空におって、ベルトについてはいろいろ批判があったことを聞かされておりました。航空医学実験隊動物テストによりますと、衝突のときの強い衝撃によって、ベルトにくくられておった動物の内臓が破壊されて、心臓の血液が慣性運動で体外へ流れ出す、こういうことがいわれておるわけであります。競走用自動車のように前に進む一方のやつは、これはひっくり返った場合にベルトの効用があると思いますけれども、両方が衝突するといったような場合に、ベルトがはたして有効であるかどうか。聞くところによりますと、アメリカのフォードでは、ベルトはむしろ凶器である、こういう結論も一部にあったやに聞くのでありますが、今度の安全基準の中にベルトを加えられますと、国民は非常にそれに信頼性を高めて、これで安全だ、こう思うでございましょうが、その点についての確信はいかがであるか。また実験ベルトはだいじょうぶだ、こういう確信を持ってやられるのであるかどうか、この点も質問しておきたいと考えております。
  16. 堀山健

    堀山説明員 これは非常な高速といいますか、百キロとか百五十キロで衝突する、こういう場合でございますと、乗っている人間はどのようなことをしてもただでは済まないと思います。ただ実際問題として、ある速度以下で衝突するような場合は、まくらもそうでございますけれども、非常に極端な条件で当たった場合には、それほどの効果はないと思います。ただ実際に、たとえばまくらの場合で申しますと、交差点その他で二十キロとか三十キロ程度で実際にぶつかっている、そういう場合には、こういう装置があったら被害がより少なく、うまくいけばけがにならない、こういうことでございます。ベルトについてもやはり同じことでありまして、非常に極端な条件でやりますと、つけないよりはいいかもしれませんが、つけておっても全然無傷ということはあり得ないと思います。いろいろな条件のもとで、そういう意味である一定の条件のもとで、これがあったほうがよろしいというふうに私どもは考えております。いろいろな実験が行なわれましたし、今後もしなければいかぬことでございますけれども、あることによってある程度被害が小さくなる。ただ先生のおっしゃいますように、ベルトにしてもまくらにしても、こういうものがあるからむちゃくちゃな運転をしてよろしいということにはならぬかと思います。最悪の場合、当たったときに保護されるというふうに私ども考えております。
  17. 大久保武雄

    大久保委員 安全まくら安全ベルト安全という字をつけますと、つい人間というものは何をやっても安全だ、こういうふうに考えたがりますから、この辺は今度は一番技術的に信頼されております運輸省で規則を出されるのでありますから、十分その辺を勘案して御決定を願いたいと思っております。  次に、ブレーキの問題が書いてあるようですが、せんだって聞きますというと、むち打ちは車が安全に停止しておればわりと被害が少ないということを聞いております。そこで、ブレーキを踏んで停止すると、オートマチックにきちっと車がとまってしまうといったようなブレーキが、何か開発されたということも聞いておるのでございますが、これも確かにむち打ち対策としては、一つ技術的な進歩したブレーキが開発されたのじゃないかと思うのでありますが、このブレーキの項を見ますと、そういうのは入っていないようでありますが、そういう新しい開発のブレーキについて、むち打ち対策との関係で、何らかの考慮を払われたのかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  18. 堀山健

    堀山説明員 この十四項目入れましたのは、先ほどもども局長から概括的に申し上げましたように、いろいろなことを考えなきゃいかぬ。その中で、現在自信が持てるというものを十四項目とりあえず選んだ。今後いろいろな試験研究の結果、確信の持てるものについては二次、三次というふうに増強してまいりたい、こういうことでございます。したがいましてブレーキ装置につきましては、ここに書いてありますのは、連続ブレーキをかけますとブレーキがきかなくなる、あるいは長い板を連続してブレーキをかけますと、特に空気式ブレーキでありますと、たとえば日光のいろは坂をおりると、まん中辺からタンクのエアがなくなって、ブレーキ・ペダルを踏んでもとまらない、こういうことを防止しよう。これについてはある程度実験その他もできましたので入れたということでございます。先生のおっしゃった面につきましては、そういうアイデアがあるということは、報道その他で聞きましたけれども、まだそこまで技術的に私どもとしては十分詰めておりませんので、この機会には入れてございません。
  19. 大久保武雄

    大久保委員 次にお尋ねしたいのは、エアバッグというものであります。これは衝突の瞬間にガスが気化膨張して、風船のようにバッグをふくらませて、人間がこれにぶつかっても、風船にぶつかったようなもので、何らの障害も起こさぬしかけになっておる、こういうことを聞いております。これはおもしろいアイデアであると思っておるわけです。最近アメリカのフォードが四十人の技術者を投入してこれが開発に努力をして、ついに安全装置としてのエアバッグの実験までこぎつけた、こういうことが報道されているようであります。聞くところによりますと、この原理は日本の民間研究所で開発され、すでに昭和三十八年日本で特許を取り、また米英においても特許権が確立した、日本人の開発した原理に基づくものであるということであります。日本で開発された原理がアメリカで実用化されて、そのアメリカで実用化されたものを高い技術料を払って日本技術輸入をするということは、これは不合理じゃないか、通産省、運輸省は、こういったような日本の民間で研究された原理を実用化していくということについて、どういったような指導をしておられるのであるか、この点をひとつお尋ねをいたし、またエアバッグについて、これを日本においてどういう開発をされるつもりであるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  20. 堀山健

    堀山説明員 エアバッグの問題でございますが、そういう実験その他があるというふうに私どもも報道その他で伺っております。確かに一つ考え方だろうかと思います。ただ、現段階では、先ほどるる申し上げましたが、まだそこまでいっていない、規格まではめていない、こういうことであります。民間の実用品につきましては、これは私どもできるだけそういうもので安全——まあ公害の問題もございますが、そういう点について有効であるものについては今後とも採用してまいりたいと思いますが、ただ、これにはやはりさらに実験なりそういうものの裏打ちをいたしたいと思っております。その意味では、私ども船舶技術研究所に研究部門がございますので、一般的に民間で実用開発されたものにつきましては、これを制度化する場合におきましては、その研究所で試験検討する、そして有効なものであればそれを採用するというシステムをとっておりますので、今後そういうものについて、現在もそうでございますが、そういう形でいろいろなアイデアを取り入れたい、かように思っております。
  21. 本田早苗

    ○本田説明員 谷田部というところに業界の、自動車試験場があるのであります。ここでお話のありましたエアバッグにつきまして、昨年八月に一応実験をいたしておりまして、今後この改良を続けていきたいという現状でございます。
  22. 大久保武雄

    大久保委員 私が申し上げたかったのは、日本人が日本人の頭で原理を開発して、その原理が外国の手によって実用化され、その実用化されたものを日本が高い外貨を払って買ってくる、これは日本の産業開発にとってまことに残念ではないか、こう思うのであります。そういう衝撃という学問自体が非常に最近の学問であるから、なかなかそういう技術者もいない。またあとで質問しようと思うのですが、そういうことに対する工業会の熱の入れ方も少なかったという面もあろうかと思いますけれども、そういう新しい衝撃に対する技術であればあるほど、やはり官庁はこまかい神経を使ってそういう芽を伸ばしてやる、こういう含みがなければならぬと思うのでありますが、これは行政の一つのかまえのしかたでありますから、通産省の一番大事な心がまえの問題ですから、藤井通産次官はどういうふうにお考えか……。
  23. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 お話しの点は私も全くごもっともと考えます。とかく日本においては原理原則的な発見は戦前からあっても、それが実用化しない、こういう点がございます。そのためにすでに大久保先生も御案内のように、おととしから大型プロジェクトというのを技術開発の大きな柱にいたしておりまして、いつでも研究室の段階から企業化する過程を政府で援助していこう、補助していこうというかまえ、これが私はいままで欠けておった。それがいま御指摘のような問題にも直接関係をしておると思うのでありまして、交通安全技術開発のために、いまのようないわゆる芽ばえは、ひとつ大いに今後政府もバックアップしなければならない、このように思います。以上お答えいたします。
  24. 大久保武雄

    大久保委員 一応了承いたしました。  次に、事故調査安全基準関係について質問をいたしたいと思います。  自動車事故件数は非常に膨大な件数に達し、死傷者が六十六万人にも達しておる、こういうことでございますが、その事故の原因は非常に雑多であると思うのです。これらの事故原因を技術的に追及、調査してまいりましたならば、いかなる装置が最も安全であるか、従来使われていた装置をどう改良すべきかといったような点が、前向きに分析されてくると思う次第であります。聞くところによりますと、この追跡調査は、現在警察の協力のもとに、民間の事業として行なわれているよしであり、自動車業界が七百万円、オートレースカーの補助が千三百万円、合計二千万円で実施しておるということであります。先ほども申しますように、六十六万人もの死傷者があるこの自動車事故の究明を、単にこういうような民間まがいの調査にまかせておくということはおかしいじゃないですか。政府は一体何をしている。海難の調査につきましては、七十年の伝統を有する海難審判所がありまして、四億円の予算で、海の上で起こった海難の原因の究明を行なっておる。また、航究機の事故につきましても、政府は事故調査委員会をつくって、これが活動しております。事故が相次いで起こりました昭和四十一年には、五千万円の経費を投入しておるようであります。しかるに自動車につきましては、民間の金二千万円に依存するだけであるというていたらくである。なぜ最大の死傷者を出しておる自動車事故の究明について、政府は傍観しておるのであるか。政府は予算を取り、制度をつくり、近き将来において、この最大の死傷者を出しておる、交通地獄とまで言われておる、この自動車事故の追跡調査について、政府自体が乗り出す、こういう決意があるかないか、これは総理府でありましょうか、代表してひとつ答弁をお願いしたいと思います。
  25. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 交通安全対策を推進いたします上におきまして、御指摘のような事故の追跡調査をするということの必要性は、まさに御指摘のとおりでございます。この点につきましては、従来関係各省庁におきまして、それぞれの分野におきまして、安全対策に必要な調査を行なっております。特に警察におきましては、事故発生原因につきまして、一番関係が深いわけでございまして、これも数年前から事故分析という点を非常に重要視いたしまして、現在に至るまで事故の分析は逐次行なっております。ただ、これを総合的に将来の交通安全対策に結びつけるという段階になりますと、率直に申しまして、まだ必ずしも十分でない点がございますので、今後総理府におきましても、関係省庁と十分連絡をとりまして、せっかく各省庁でやっている事故分析調査を、もっと有効に施策に役立つように、その総合調整をやってまいりたい、かように考えております。
  26. 大久保武雄

    大久保委員 次に私がお尋ねしたいのは、安全基準の国際化についてであります。最近、米国のほかカナダ、スウェーデン、オーストラリア等の国で安全基準制定の動きがあるそうであります。世界十四カ国の自動車製造業団体で構成しているBPICAは、去る十二日各国政府に対して、各国が個々に制定しようとしておる自動車構造に関する安全基準を、国際的に統一してほしいといったような声明文を発表いたしました。わが国の自動車工業会からも代表が派遣されるそうであります。なるほど各国政府が個々に安全基準を制定すると、メーカーはそれぞれの基準に合わせて車の設計開発をしなければなりませんので、自動車の量産方式の利点を失うだけでなく、これは通商上も悪影響を及ぼすことがあろうかと思う次第であります。聞くところによりますと、欧州のように自動車で次々国境を越えて往来の激しいところでは、国連の中のECEで、欧州自動車安全基準を討議しておるということであります。米国は欧州に資本輸出をしておりますし、また米国内の国内需要が非常に大きいのでありますから、それほど国際基準についての関心がないのかもしれませんが、しかし、日本自動車の輸出は経済運営の非常に大きな使命でございますので、国際的な安全基準の設定がされるかされないかということは、これは非常に大きな経済上の影響がくるであろうと思うのであります。  そこで政府は、この安全基準について、ECEに入るということができるのかできないのか。ECEは欧州諸国とアメリカも入っておりますね。欧州諸国とアメリカでやっておって、日本だけがオミットされておる。その日本自動車生産はすでに西ドイツを抜いてアメリカに次いで世界第二位である。そういう日本がすっかり仲間からオミットされておって、そうしてECEが安全基準をつくっておる。そういうことを一体傍観しておってよろしいのかどうか。ECEの正式メンバーに入れろということを日本は言ったのかどうか。またどうしても入れなければ、これほど大きな死傷者を、世界の人類に与えておる交通機関の安全基準でありますから、これは人道の上からいっても、国際連合において日本はさような安全基準をつくり得る国際機関をつくることについて、何らかの発言をする必要があると思いますが、政府はそういう措置をとったか。またこれからいかなる措置をとろうとするのであるか、この点をひとつ運輸省、通産省から意見をお述べ願いたい。
  27. 堀山健

    堀山説明員 ただいまお話がありましたような、実は国際的に自動車構造装置を統一しようという考えがございます。実は事の起こりはヨーロッパでございまして、御承知のようにヨーロッパは国が地続きで続いております。したがって、わずかな時間でどんどん国境を通過するわけであります。したがって、国境通過をお互いに便利にしようということから、御承知のようにいわゆる国際道路交通条約というものができまして、その中で運転免許、あるいは車両構造、あるいは車の登録、通関のしかた、こういう点について、できるだけ共通してルールをつくって、お互いに便宜をはかろう、こういうことがだんだん発展してまいりまして今日に及んでおるわけでございます。おっしゃるとおりヨーロッパの域内だけでなくて、世界中が同じような基準でやるということは理想であろうかと思います。ただ現状ではそれぞれの国の国内事情がありまして、一ぺんにこのこまかいところまで、規格を統一するという段階までいっておりません。現在あります道路交通条約は一九四九年六月に制定されまして、ちょうど日本はオリンピックの年にこれに加盟をしました。そしてことしこれの改正案が出ておりまして、現在関係省庁とともに改正の草案に対して意見検討しておるところでございます。ちょうど約二十年前にできたのを現在改正しよう、こういうことでございます。その中身を見ましても、車の構造装置にのみ限定して見ますと、制動装置とかあるいは灯火類、こういう面についてはかなりきびしく従来から比べますと規制が行なわれるようになると思いますが、その他の面につきましては、きわめて抽象的な基準しかできておりません。これはそれぞれの国のいろいろな情勢があるために、なかなか事こまかにきめられないというのが現状がろうと思います。ただ先ほど先生もおっしゃいますように、ヨーロッパのECEの下部機構でございます車の構造装置に関する作業部会では、かれこれもう二十四回目になりますか、委員会を開きまして、各方面にわたって検討をしておることは事実でございます。それが逐次規制の段階となって交通条約の実施細目としていろいろ将来出てくるのではないかというふうに思っております。私もできるだけ国際的に規格は統一さるべきであろというふうにもちろん考えておりますし、またそういう提案がなされることを希望しておるわけであります。ただそれに際しまして、ECEと申しますのはヨーロッパの経済委員会でございますので、要するにヨーロッパの域内の地域経済委員会日本は当然域外ですから入ってない。日本はアジア極東委員会のエカフェのほうでございます。したがって、いまの段階では当然入っていないということでございます。それからアメリカはいろいろないきさつがあろうかと思いますけれども、域外でありますけれども、正式メンバーとして入っているということでございます。先般実は私もこの委員会に、作業部会に参加する機会を得てつくづく感じたのでございますが、おっしゃいますように、アメリカ安全基準をつくる、ヨーロッパがたとえばあのECEの中でもそういうものをつくったといっている。それから日本日本で逐次基準を強化していく、こういうことになってまいりますと、なかなか統一というのは非常にむずかしいと思います。そこで、私どもも域外ではありますけれども、ぜひ何かこういう実質的に世界的な基準をつくるためのECEの部会でございますので、何らかの方法でぜひ正式メンバーとして入りたいというふうに考えております。今後外交ルートを通じて、できるならばそういう方向で進めたいと思っております。それが不可能であってもオブザーバーその他の資格で政府からもだれかを出席させる、こういう方法はぜひとりたいと考えております。こういうことによりまして、原案ができる段階において日本意見が述べられるという機会を得ませんと、原案ができてあとでいろいろ議論してもなかなかむずかしい点がありますので、できるだけ原案を作成する段階において日本意見が述べられる機会が与えられることを非常に希望しております。
  28. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 お説のとおり、時代は国際化時代でございまして、通産省の立場におきましては、御指摘のごとく、この輸出振興という面から、すでに自動車の輸出に占める地位というものが近年急激に増してきております。したがって、御指摘のごとく、たとえ欧州における国連の経済委員会でありましてもすでにアメリカはこれに加盟しておるわけでございますから、いままでは参加を要請されておったという受け身の立場でございますけれども、私は大久保先生御指摘の御趣旨は全く同感でございまして、外務省とも相談し、通産、運輸両省と相相談してこの問題はひとつ積極的に推進すべきである、このように考えます。
  29. 大久保武雄

    大久保委員 金子運輸政務次官からも承りたいのですが、いまも話が出ておりましたように、ECEでは域外のアメリカは入っているのです。欧州機構である自動車安全基準に域外のアメリカを入れておいて日本を入れぬというのはおかしいじゃないか。私はきょうは外務省に出てこいと言った。外務省は運輸省、通産省から一致した要請があればいつでも出します、きょう出ることはどうかごかんべんをいただきたい。外務省はむしろ、外務省が積極的に外交をリードするくらい気魄があってよかろうと思うけれども日本の外交はまことに残念です。そこで運輸省金子政務次官、通産省藤井政務次官というような優秀な馬力の強い政務次官がおるんだから、外務省を説き伏せて、アメリカは域外で入っておって日本は域外であるから入れない、これはまことに黄色人種をばかにしたものだ。あなたたちがひとつ一致して話を合わせて外務省をゆさぶってこれを交渉させてください。金子運輸政務次官から御発言を願いたい。
  30. 金子岩三

    ○金子政府委員 御趣旨は全く賛成でございます。御意見のとおりに考えております。
  31. 大久保武雄

    大久保委員 最後に、自動車工業についての行政指導のあり方についてお尋ねをしたい。  自動車工業は、高い技術水準にあって高速交通機関としていま時代の脚光を浴びる花形産業になっております。しかしその反面、死傷者が六十六万人といったような社会不安をかもしておる。自動車のスピード化、近代的な流線化が進んでいるのに反しまして、自動車人間の命に対する保護、安全対策ということがどれだけ進んでいるか。人力車の時代とあまり変わっていないじゃないか。人力車の時代よりも、スピードが高速化すればするほどそれは乗客に対してかえって安全を失なわしておるのではないか、こういうことが心配されるわけであります。昨年運輸委員会におけるむち打ち対策に対する私の質問から、運輸省安全基準の作成に乗り出しましたことは喜ばしいことでありますが、通産省はいかなる行政指導を安全基準という上において工業会に対してとっておられるのか。  次に私は、たとえば自動車がどんどん売れる。しかしその売れる自動車が、かばん屋がつくったタキシードにちょんまげをつけたようなまくらをちょこんとつけておる。自動車の車体は実に流線型で近代的なタキシードであるが、そこについておるまくらはちょんまげである、そういったようなまことに変なかっこうの近ごろ走っておる車のありさま、一体あれでいいのか。商品というのは安全でなければ、完全でなければ商品価値はないでしょう。完全でない商品というものが売られますか。安心ならないという商品に百何十万円、何百万円というお金を払う。そしてスピードが早ければいい、流線がぴしゃっとしておればいい、あと命は知りませんよといったような車に、何百万円の商品価値をつけること自体が、私は経済原則から見てもおかしいと思う。そういったような車に対してまくらを備えつけるということについては、最近デラックス車には乗用車につき出したようです。しかし、今度の安全基準の設定で、これは大衆車にも初めからまくらをつけた安全性能を備えた新車が、技術の総合された上において設計されてこれから出ていくのであるかどうか、この点を通産省に伺いたい。  さらにお尋ねしたいのは、先ほど言いましたように、エアバッグだけでも日本で開発した原理に対してアメリカは四十人の技術者を投入してこれを実用化する開発をやっておるわけですね。アメリカのフォードの実にたくましい前進精神だと私は思うのです。一体、日本自動車工業にそれだけの企画があるのか。半期に百億円の利益をあげておるといわれておるメーカーがある。大メーカーは、昭和四十三年度は一社で五百億円の設備を投資するというのです。一社で五百億円です。四十三年度設備投資の中に一体幾らの安全装置の開発に対する設備投資が行なわれておるか。昭和四十二年度、昭和四十一年度は、設備投資の中にはたしてどれだけの安全基準に対する設備投資が行なわれておったのか、この点を私は通産省に説明を願いたいと思う。半期で百億円の利益があげられたならば、その一%を安全装置に出したとしても、すでに一社で半期で一億円は出されるわけなんです。通産省は自動車工業会を監督しておるのですよ。自動車工業会の設備計画あるいは利益金の配分というものにあたって、従来いかなる安全装置の開発についての指導をし、また今後いかなる指導をしようとしておるのか、この点、ひとつ政務次官並びに事務当局からとくと納得のいく説明を承りたいと思っております。
  32. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 お説のとおり、交通安全対策の万全を期するためには、交通道徳あるいは交通規制、その根底をなすものはやはり安全技術開発という、こういうことであろうと思うのです。その点につきまして、いま、まことに示唆に富んだ御指摘があったのでございますが、工業会に対してどのようなかまえを通産省はしておるかという問題を申し上げる前に、まず通産省がやっておりますことを簡単に申し上げて、工業会の安全、公害対策に対する研究費の現状を御報告させていただきます。  御承知のごとく、本年から学会及び民間の協力を得まして国立の機械試験所の中に自動車安全公害研究センターを設置をする。四十二年度当初予算において二億一千三百万円、四十三年度御審議を願っております予算の中に三億七千二百九十万円、自動車安全に関する技術研究の促進をはかる、こういう柱を立てております。  第二番目は、自動車安全に関する部品、装置、機械等の生産体制を確立するために開発銀行に特利の融資ワクを設ける、こういったことをいたしております。  また、先ほどお話が出ておりましたような自動車安全に関するいわゆるJISマーク、タイヤであるとか、ガラスであるとかあるいはまた安全まくら、特に安全まくらJISマークは三月中に完成する予定に運びが進んでおるようでございます。  それから自動車安全研究に関する鉱工業技術試験研究のために補助金を交付しております。四十二年度の実績は、四件で千三百六十万円、こういった状態で、積極的にようやくこういう問題について政府も通産省も腰を上げておるということは御理解いただきたいと思うのでありますが、ちょっと申し添えさせていただきたいのは、先ほどのエアバッグですね。例の日本人が発明してよそがやっているという問題に関連したお答えがちょっと落ちておりましたから……。  これは自動車工業会が特許権を買い取りまして、そして共同で開発をいたしまして各社でこれが実用化の研究を進めておる、こういう現状でございます。  自動車メーカー研究開発に占める安全、公害対策内容でございますが、われわれの手元で調べました自動車メーカー十二社の安全、公害対策費を研究費と研究設備費の合計で見ますと、四十年度が二十三億円、四十一年度が四十五億円、四十二年度が、これは実績見込みでありますが、八十二億円、四十三年度は現在計画中のもの百四十億円、こういうふうになっておりまして、すでに四十年度から四十二年度まで三カ年間に合計百五十一億円の投資が行なわれておることを物語っております。四十二年度の実績見込みの内容でございますが、研究費が四十五億円、これは自動車工業会全体の研究費の二一・一%ということになっております。それから研究設備費が三十八億円、これは全体の設備投資に対して一・九%、こういうことになっておりますが、四十三年の分については目下調査中でありまして、この割合はかなり大幅に増加するものと考えられるわけでございます。しかし、最近のいわゆる交通戦争といわれる時代になりました今日、いま御指摘のような自動車業界の経営の状態を考えますと、まだまだ奮発してもらわなければならない、このように思うわけでございますから、御指摘の点は十分われわれも考えまして、行政指導の万全を期したい、このように考えております。
  33. 本田早苗

    ○本田説明員 次官から詳しく申し上げましたのでつけ加えることはございませんが、先ほどお話のありました点で鉱工業技術試験研究補助金の交付をやっておりますが、先ほど大久保先生のお話がありましたように、ブレーキが停止したときにきくような自動装置はどういうふうになっておるかということでございますが、四十二年度の研究費の交付対象になっておりまして、三年計画で研究を進めることになっております。現在は商品ができておりますが、さらに引き続き改良研究する現状でございます。一つつけ加えておきます。
  34. 大久保武雄

    大久保委員 終わります。
  35. 門司亮

    門司委員長 板川正吾君。
  36. 板川正吾

    板川委員 時間がございませんから簡単に質問いたしますが、報告されました十四項目にわたる第一次の規制項目、これとアメリカ側がやる安全基準として発表しておる二十項目、これとの関係はどういうことですか。これをまず伺います。
  37. 堀山健

    堀山説明員 実は、アメリカは連邦政府としての安全基準をつくりましたのは、例の二十項目でございまして、これはことしの一月一日から実施した、こういうことでございます。日本昭和二十六年に道路運送車両法というのができまして、その省令でございますが、保安基準というものがございます。そこに安全項目が載っておるわけでございます。歴史的にいろいろな車の使用条件が違うために、いわゆる規制のしかたが変わっておったわけであります。しかし、逐次いろいろな面で調整をしてまいりまして検討した結果、逐次追加をしていって、だんだん似てきたということでございます。今度この十四項目規制いたしますと、こちらのほうが規制項目が多いわけですが、これを追加いたしますと、アメリカと違いますのは、霧とか霜、これを防止する装置とか、あるいは高速衝突したときにハンドルが吸収される、こういうものはまだ日本ではその段階にきておりませんので、今後の問題として考えております。その他室内の、いろんなぶつかったときにひざとか腰を保護するために、内装品をなるべくやわらかくするとか、そういう面が実質的にはある程度制度としてはできておりますけれども規制の面ではまだ十分でない、こういうところが大筋として違うところではないかと思います。
  38. 板川正吾

    板川委員 この第一次、これは強化項目なんですが、全般として考えられる中で四十二項目あったはずであります。第二次、第三次という安全規制の強化のスケジュールというものはどんなふうに考えておるのですか。
  39. 堀山健

    堀山説明員 これは繰り返しになりますけれども、二月の初めに、私ども自体としては少なくともこれだけ実行できるという自信のあるものを取り上げたわけでございまして、これを各生産メーカー、部品、車体、そういったものを生産する団体、それからトラック、バスとか自家用とか、そういう車を使うグループの団体、このおのおのに意見を求めたわけでございます。で、意見がいろいろ出ておりますが、これをいろいろ取りまとめまして、四月中にはこの十四項目についての保安基準をきめる、こういうスケジュールでございます。それで、実はこれをつくる前にいろんな多くのものを考えたわけでございますが、確信が持てるといいますか、これは強制するということになりますと、たとえば車の数が非常に多いわけです。現在、先ほどいろいろありましたが、去年の六月にすでに各自動車入れまして一千万台、こういうランクになっております。そこで全部の車を規制するということになると、少なくとも一千万両を対象にして考えなければいけない。そうしますと、特定の車についての規制ということになると簡単でございますし、数も少ないからいいのですけれども、対象次第によっては、そういう生産のことから全部考えなければなりません。それかといって、きめて二年も三年も後に実行に移すというものでも困る。できればきめて少なくとも一年以内には何とか実行できる、こういうものを選ぶというのが筋じゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。これも実はそういうことでおおむね一年待てば現物がつくということを頭に入れております。したがいまして、あと二次、三次、いろいろ考えておりますけれども、これはやはり実際にそういうものをつけた効果、それを実験なり試験なり、これは私どもの役所だけでなくて、他の研究機関あるいは民間でもそれぞれ考えている面があると思いますが、そういうものを考えた上で実行して十分自信があるし、生産化の見込みがある、こういうことを踏まえて二次、三次という規制をしてまいりたい、かように考えております。
  40. 板川正吾

    板川委員 この規制の中で、バンパーの高さが各車のクラスによって違うのはやむを得ないと思うのですが、ダンプ乗用車と同じでいいというわけじゃないが、しかし、同じ級の乗用車なら乗用車にしても、小型、軽にしても、各社によってバンパーの高さがまちまちですね。これは衝突した場合にそこで衝撃をある程度吸収するというのがバンパーの役目なんです。それが高さが違えば、衝突のショックを吸収しずらいと思うのです。それで、この十四項目の中にはバンパーの高さの規制というのがないのですが、これはどう考えておるのですか。
  41. 堀山健

    堀山説明員 今後検討してまいりたいと思います。ただ、今度の十四項目でも、先ほど申し上げました道路運送車両法に基づく保安基準ということを考えておりますけれども、ものによりましては型式承認をするときの基準として使うというものも出てくるかと思います。バンパーのようなものはあるいはこういう基準としてきめたほうがいいのか、あるいは型式承認なりあるいはJISという形できめたほうがいいのか、その辺、どういう形で……。(板川委員「高さを一定したらいいじゃないか」と呼ぶ)はい。その高さをどういう形できめるほうが合理的であるかということは、今後なお検討してまいりたいと思います。
  42. 板川正吾

    板川委員 各社を見ると、前が低くてうしろが高かったり、うしろが低くて前が高かったり、同じ車で一定してないのですね。だから、これはある種のクラスの車には高さがこの程度、バンパーの構造についても若干の差があるのはいいとしても、高さでは一致させるように基準を設けたらいいだろうと私は思うのです。そうでなければ、食い違ってぶつかったらそこで衝撃を吸収できないのじゃないか、その点をひとつ考慮してもらいたいと思うのです。  それからダンプ自重計、これはかなり技術的にむずかしいのだけれども、期日までに開発されて心配ないという状態なんですか。ちょっとこの点、何か非常に自重計が正確に働きできるようなことにいまの自動車構造はなってないものですからむずかしいと思うのですが、これは心配ないのですか。
  43. 堀山健

    堀山説明員 自重計につきましては、先般このダンプ規制法で自重計をつけるということがきまりまして、これは運輸省と通産省の共同省令でつくるということになったわけでございます。この実施時期は、五月から三カ月間の間にこれを実施する、こういうことに相なっております。そこで昨年から、どういうものができるかということでいろいろ検討してまいったんでありますが、その商品の規格をつくりました。これは大きく分けて二種類ございまして、一つダンプカーは油圧機構で荷台を傾斜させる、こういうことになっておりますので、その油圧機構を使ってはかるという方式と、荷台に積めばハネがたわむ、そのたわむところではかるという、大きく言えばその二種類が原理として働くわけでございます。私ども基準をきめてからメーカーその他が申し出た中にはおおむねそういう二つの種類のものがございます。それで私どもとしては、その規格をきめまして、これをきめました以後に、五月一日から七月一ぱいで約十四万台近くの車に取り付けなければならない、こういうことになりますので、できるだけそれに即応できるように心がまえております。ただむずかしいと申しますか、商品としては何とか間に合うと思うのですけれども、取り付けて、それが正確に——取り付けること自体は簡単だと思うのですけれども、それが正確に精度の中に入るかどうかということは実は計量法の範囲に入るわけでございまして、普通の整備工場で取り付ければそれでいいというものではございませんので、その辺は計量法のほうを担当されている通産省のほうからいろいろお伺いいただきたいと思うのですが、私ども、できるだけきめられた範囲内に全部完了したいというふうに努力するつもりでございます。
  44. 本田早苗

    ○本田説明員 自重計の問題につきましては、いま運輸省からお話があったとおりでございますが、その精度等につきましては御承知のとおりのような使用状況でございますので、かなりアローアンスが生ぜざるを得ない。ただ弊害を少なくしたいということで、下は一五%、上は二五%のアローアンス内の表示をできるものということでございますが、開発の状況から聞きますと、その製品としてはかなり精度の高いものがつくれる。そしてその開発は大体完了しておりますが、使用中に狂うおそれがあるので、アローアンスを大きくしておる。しかし精度としてはその範囲内では出せるということでございまして、製品としてはかなりいいものができるという見込みでございます。
  45. 板川正吾

    板川委員 つけたときは正確だったがすぐこわれてしまうというのでは意味がないのであって、ひとつ持続性があり、しかも精度の高いものをつくるように、予定どおりつくられる、こういうことだと思います。  そこでもう一つ伺いますが、自動車のハンドルに、右ハンドルと左ハンドルがあるのですが、日本は左側通行ですから右ハンドルです。ヨーロッパ大陸、アメリカは右側通行で左ハンドルですね。これは右ハントルと左ハントルはどちらが——日本では右ハンドルですから、右ハンドルのほうが追い越ししやすい、安全性がいい。ところがアメリカの輸入車は左ハンドルのまま現在販売されています。以前は日本で組み立てまして右ハンドルに直したのですが、いまはそうじゃない、そのままになっておりますが、左ハンドルの場合に危険じゃありませんか。どうですか。日本の交通関係において左ハンドルというのは危険性があるのじゃないかどうか、これをひとつ伺っておきたい。
  46. 堀山健

    堀山説明員 世界的に申しまして、交通方向と逆の方向にハンドルがあるというのが一般の定説と言っちゃ変ですが、大体そういうことになっておりますし、国によって規制のしかたがいろいろございます。はっきり規制している国もありますし、規制をしておっても部分的に規制しておる、特定の車について規制をしておる、それから全然規制をしていない、そういう国がございます。日本ではその意味では規制をしておりません。ただいろいろな従来の経験なり、外国のいろいろな資料等から右ハンドルがいいということでそういうぐあいにしておるわけです。それで、したがって、ただ特殊な車につきましてはやはりどうしても左ハンドルでないと困る。たとえば道路清掃車とか、非常に特殊な車については、むしろ道のふちぎりぎり一ぱいを通る、そのためにはどうしてもそういうものは支障を与える、そういうものは別として、一般用としては右ハンドルのほうが適当である、こういうふうに考えておりますので、したがって、国産の車は右につけさせておる。ただ外国車についてどうかということでございますが、これについては非常にむずかしいのでございますが、逆にそれを左に……(「左ハンドルのものは輸入させないようにしたらどうだ」と呼ぶ者あり)そこらは非常にむずかしい問題もございまして、そこに規制の面では規定をしておりません。ただ、実際問題としての外車を運転しておるドライバーは、いま非常に車が、どちらかといいますと、だんだん大衆車も入ってまいりましたけれども、一般に高いデラックスな車が多いので、現実に非常に慎重な運転をしておる。そういうことでこのハンドル位置にかかわらず事故が非常に少ないのではないか、かように考えております。
  47. 板川正吾

    板川委員 左ハンドルですと、日本の交通事情からいって、前の低速車を追い越す場合には、その車の右側を通るのです。ですから運転者は左にいて、車がある程度出て、運転者の視界に入るようになってから安全が確認されるのですね。ですから、なるほど輸入車で高い車を使っておるから運輸手も気をつけておるかもしれません。しかし日本の交通事情からいうと、これはやはり危険な構造ですね。だからアメリカアメリカ基準に合わなければ輸入をさせないといっているのですから、もしアメリカの高級車が日本に入る場合には、昔のように右ハンドルに直して輸入させるようにしたらこれは日本安全基準に合うんじゃないですか。これはだれが考えたって日本の交通ルールからいって、左ハンドルというのは危険ですね。これと左ハンドルの日本における事故の割合といいましょうか、こういう点を交通警察のほうで検討したことはございませんか。事故の立場から分析したことはありませんか。
  48. 鈴木光一

    鈴木(光)政府委員 まことに申しわけありませんが、そういう観点からの調査のデータを持っておりませんので……。
  49. 板川正吾

    板川委員 ひとつそれはこういう発言もあったので、関係者が検討してみてください。  それで、これは今度アメリカの場合と逆に、アメリカの車を日本で売る場合には右ハンドルに直してこい、こういう指導をしたっていいのである。アメリカ安全基準ばかり日本が守って、こっちの安全基準を向こうの車が守ってくれないのでは困るのであって、そういう点は今後はひとつしかるべく主張をしてもらいたい、こう思います。  それから、もう二つばかり伺いたいのですが、大久保さんの話にも関係しておるのですが、二月二十七日の朝日新聞に、邦正美という人が「米国の安全運転教育」ということで、わりあいにまとまった論文といいますか、報告書があるのであります。これは、米国では交通安全というものの三つの条件というものをどう考えているかというと、第一は自動車道を整備することだ。そうしてその自動車道に交通標識を整備する。これが交通安全一つ条件。第二の条件は、自動車安全構造というものを高めていく。いま報告されました安全基準というようなものをさらに高めていく。これが第二。第三として、安全運転の制度的教育の充実だ、こう言っております。特にそこで強調しておるのは、第三の安全運転の制度的教育の充実ということをわりあい詳しく報告しております。そして、米国では自動車安全運転の教育を小学校、中学校、高校で実際教育を行なっておる。そしてこれは必須科目になっておるのだ。またその教育を受けたからといって免許がただでくるのじゃないのだ。こういうことで、この安全交通というものに対して基礎的教育をやっておる。その費用はどうかというと、自動車メーカーが各小中高校に車を寄付したり、ガソリン関係者がガソリンを寄付したりして、その費用の七割はそういったカンパによって教育を行なっておる、こういうことです。そういう点からいいますと、この日本メーカーなどはいま少し安全教育というものに理解と協力を持つ必要があるのではないだろうか、こう思うのです。  これは運輸省でも通産省でもいいのですが、自動車生産台数と保有台数を四十二年から四十五年までちょっと言ってみてくれますか。わかりますか。——四十一年が生産台数が約二百三十万台、四十二年が三百十五万台、四十三年が四百万台、四十四年になると五百万台になるのではないか。アメリカ生産台数が、四十二年が九百二万台というのですから、人口の割合からいうと、人口がアメリカ日本の二倍ですから、日本の四十三年の四百万台というのとほぼ一致するんです。そうして保有台数も昭和四十五年では千八百五十万台になる、こう言っておるのです。こういうように生産台数が年々百万近くふえてき、保有台数が年間二百万台から三百万台ふえていく、こういうことになりますと、日本の交通事情というのが全く変わって、自動車のはんらんによって交通が非常に渋滞をする、こういう状況になりつつあると思うのですね。  これをヨーロッパの諸国と比較してみたのです。日本の場合には、面積の八割以上が山岳地帯ですから、面積当たりというだけじゃいけないと思うのです。そこで日本の関東地方、オランダ、ベルギー、これは面積が大体同じようですから、この関東地方、オランダ、ベルギーと比較してみた。関東地方の面積が、平方キロにして三万二千、オランダが三万四千、ベルギーが三万一千。そして一平方キロ当たり人口密度というのは、関東地方が八百十六人、オランダが三百六十六人、ベルギーが三百十人、そしてその自動車の保有台数を一九六五年で比較しますと、日本が二百四万台、オランダが百五十三万台、ベルギーが百五十七万台ということになる。しかしこれは一九六五年、二年前の話で、これを六七年、昭和四十二年で比較いたしますと、日本は三百十万台見当になるのですね。ですから、オランダ、ベルギーよりも面積当たりで人口は約二倍半、そして自動車の保有台数も約二倍ということになります。ですから、この関東地方という平野の地域、この地域を見ますと、ヨーロッパよりも人口も非常に多いし、自動車台数も多いということになるのですね、これが昭和四十二年で比較して。しかも四十二年の保有台数一千万台が、四十五年、三年後には一千八百五十万台になるというのでしょう。これは運輸省資料でちょっと見たのですが、四十五年で一千八百五十万台、こういうように急速に自動車がふえていった場合に、一体この関東地方、東京を中心とする首都圏の交通事情というものはどういうふうに変化するだろうか、こういう点を運輸省なり交通警察なり建設省なりというものがひとつ本気で考えないと、自動車のはんらんによって交通が渋滞をして、結局文明の利器だといいながら、それが効力を発揮しない、こういう条件になるのじゃないでしょうかな。これをひとつ、交通安全というのか、そういう立場から見ても私は問題だろうと思うので、自動車の保有台数の増加に伴う交通安全というものをどういうふうに考えておるか、ひとつ各省で意見を出してもらいたいと思うのです。
  50. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 全般的なことから申し上げます。  御指摘のように、わが国の自動車の保有台数は年々急速に伸びておりまして、昭和四十五年には相当な数字になろうかと思われます。その場合に、都市におきます交通が非常にふくそういたしまして、交通渋滞の現象が起こるということが特に一番問題になろうかと思われますので、私たちといたしましても、今後におきます都市交通の問題をどう解決するかということに今後大きな重点を置いて検討してまいりたいと思っております。この点につきましては、基本的には昭和三十九年に内閣総理大臣の諮問機関でございます交通基本問題調査会というものがございまして、これが答申を出しております。この答申はかねて御承知かと思いますが、交通体系部門、大都市交通部門、交通安全部門の三部に分かれておりまして、そのうちの第二部の大都市交通部門におきまして、大都市の交通が将来いかにあるべきかということをいろいろといっているわけでございます。  ごく簡単に申し上げますと、これはわかり切ったことでございますが、第一には、要するに都市の過密化対策をどうするか、それから都市内の再開発をどうするかという問題がございます。いずれも大きな問題でございまして、それはそれといたしまして、それ以外に現象面におきましては、要するに道路網の整備あるいは立体交差化、もっとこまかい点から申しますと、交差点、踏切その他の問題、もう一つは交通規制の合理化、これはたとえば信号機を自動感応系統式にいたしますとか、あるいは一方通行、交差点におきます右折禁止の規制を強化する、あるいは駐車禁止の規制を強化する、こういういろいろの問題がございますが、こういう施策を講じまして、都市交通の将来におきます交通渋滞緩和あるいは交通安全に対処すべきである、こういう答申を出しております。したがいまして、大体の方向といたしましては、政府はこの答申が出たわけでございますから、その線に沿いまして種々検討いたしております。今後も非常にこの問題が重大な問題になると思われますので、一そう努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  51. 鈴木珊吉

    鈴木(珊)政府委員 運輸省といたしましては、いまも総理府のほうでございましたけれども、やはり都市交通の問題が主だと思います。これは単に交通の面からでなしに、産業立地の問題、そういった面からも見ないといかぬ。したがいまして、全般的な面から見ていかぬと交通だけの現象にとらわれても解決できないというふうに考えております。したがいまして、その面につきましては、首都圏整備委員会中心に政府としての意見をまとめております。さらに経済企画庁のほうも地域開発という観点から取り上げておりますので、そういった大きな計画の一環として対策をとっていくべきじゃないかと思います。  さらに、運輸省だけで申しますと、実はこういう問題を考慮いたしまして、昨年の四月に運輸省の中に運輸経済懇談会という大臣の私的な諮問機関でございますけれどもつくりまして、そこでただいまの都市交通の問題、特に過密化対策の問題並びに貨物の物的流通などはどうあるべきか、その二つの点をテーマに取り上げまして、大きな目から見てどうあるべきか、これは人口問題が出てきますし、そういったような立地問題もございます、あるいは生活のレベルの問題もございますので、大きい目から見てどうあるべきかという点をいま検討しております。  それから、特に物的流通のほうの問題は、都市交通にも関連がありまして、たとえば過密化都市のまん中にある市場とかそういったような流通の関係のものを極力郊外に出していく、そこでもって流通団地というものをつくってトラック輸送とかそういうものの流れを円滑に持っていく。それで過密地帯の中にそういったものが入らぬというような、そういったようなことも考慮に入れまして、いま検討いたしております。したがって、これができますと、どうあるべきかという進み方が運輸省なりにも解明されてくるのじゃないかと思っております。非常にむずかしい問題だと思いますので、今後努力したいと思います。
  52. 板川正吾

    板川委員 この問題、ひとつまた私も首都圏整備委員であるし、そういう首都圏全般のことからも議論しているんですが、またあとで詳細にやりたいと思います。  ただ、この安全教育の普及、これはひとつ関係者に考えてもらいたい。業界に財団法人をつくらして、そこにカンパを願って教育の普及をするということも一つだろうと思うのです。業界の中でそういう動きがないでもないとちょっと伺っておるのですが、これはもちろん業界のカンパだけにたよるべきじゃないのですが、ただアメリカの例なんか見ましても、七割がそういう業界の理解ある協力によって費用がまかなわれている点もあるようであります。これは真実は私もわからないのですが、報道によるとそう言われておりますから、そこで、ひとつ政府もいたすが、業界もそういう協力をして、交通安全の教育を子供のうちから仕込んでいくというふうにしたらどうか。この辺でこういう問題を取り上げて考えてもらいたいことを要望いたします。  時間がありませんから、以上をもって私の質問を終わります。
  53. 門司亮

    門司委員長 松本君。
  54. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 最初に金子政務次官にお伺いするわけでありますが、本日配布されました、「自動車安全規制の強化について」この第一次の規制の十四項目は、いつから実施されますか。それをまず伺いたい。
  55. 金子岩三

    ○金子政府委員 目標は、四月中にまとめて実施いたしたいという予定であります。なお、こまかい点は事務当局より説明いたさせます。
  56. 堀山健

    堀山説明員 この案は四月中に取りまとめまして、道路運送車両法保安基準としてきめるということでございます。それで、先ほどからお話ししておりますように、二月の初めに内容を、自動車生産する団体、たとえば車、車体、部品、こういった車の生産者団体及び車を使う団体、たとえば自家用車、トラック、バス、タクシー、こういった車を使う人、全部合わせて十団体だと思いますが、それにそれぞれ意見を求めております。その意見参考にしてしんしゃくいたしまして、四月中に基準をまとめる、こういうことでございます。その意見の中には、まだ全部集まっておりませんけれども、たとえば、項目によりましては、すべての車に規制するというものもありますし、特定の車にするというものもございます。全部の車ということになりますと、相当の数になります。そういたしますと、そういうものを設計して、生産過程に入れて、車に取りつけてやるということになりますので、時間的な問題が入ってくると思います。個々の項目について、いつから実施するということについてはこれからきめますけれども、おそくとも一年以内には、そういうことがきまれば実施するということを一応目途にしております。
  57. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 公明党といたしまして、自動車安全基準というものを昨年の秋につくりました。その際に、前の局長の原山さんに私お伺いしたことがございます。そのときに原山さんいわく、これは基準があるからその必要はないという御答弁であったというように記憶しております。それからまだ幾日もたってない。ばかに自動車局のほうでは、この問題に対して急速に準備が進んだようにも思われるのでありますけれども、この点いかがなんでございましょうか。いわゆるアメリカでつくったところの基準の制定に刺激されて、少し拙速のうらみがないのか。いまもお話があったのでございますけれども、業者にも十分意見を聞くことは必要だと思います。アメリカの例をとるまでもございませんけれどもアメリカでもこの基準を定めるに際しましては、実に慎重に審議をしております。  その方法としては、第一番目に、規制の案を公知しております。日本の国では、公知したということは、私は聞いておりません。十二、三の会社に聞いたというが、書面できっと聞いたと思いますけれども、公にそれを聞いてない。こういう点、私は非常に残念に思うわけです。  第二番目に、アメリカではこの規則に利害関係のある人の意見を提出する機会を与えております。これもこれからやるのだと思いますけれども、ぜひやってもらいたい。第三番目に、集まった意見を公知しております。そして第四番目に、採用された意見をやはり公知します。そしてさらに第五番目に、関係者に規則の修正、撤回する要求を含むところの歎願書を提出する権利を与えております。このように念には念を入れて決定の上発表したのがあのアメリカ基準です。それに比べまして原山局長が、昨年私が聞いたときには必要がない、二、三カ月たった今日は、大いにその問題が必要があるらしく、運輸省はじめ考え方が変わっております。この点どうしてこのような状態になったのか。まず金子政務次官にその間のいきさつをお伺いしたい。
  58. 金子岩三

    ○金子政府委員 ずっと古いいきさつがあるでしょうから事務当局から説明いたさせます。
  59. 堀山健

    堀山説明員 昨年、前に御返事したのを私、ちょっと覚えておりませんけれども構造装置安全については、現在道路運送車両法に基づく安全基準というものがあるから、これをそのときの事情に合わせて、逐次研究開発を進めた結果を採択して、基準の強化をすれば、別に新しい法体系をつくらなくてもいける、そういう意味でたぶん御返事したのではないかと考えます。
  60. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 原山局長が現在この席におりませんし、聞くわけにいきませんから、この程度にとどめておきますが、十二、三の会社に聞かれた、さっき聞きましたタイヤのほうはどうなったのでしょうか。少なくとも自動車というからには、車体と車輪、タイヤと大きな関係があると思いますが、タイヤのほうの会社に対しては、この諮問をしたのでございましょうか、どうでございましょうか。その点ちょっとお聞かせ願いたい。
  61. 堀山健

    堀山説明員 十二、三の会社というふうないまのおことばでございましたけれども、先ほど言いましたように、車の生産者団体、いわゆるカー・メーカーと称せられる団体、それから車体をつくる団体、部品をつくる団体、そういった団体を対象にして、意見を求めたわけでございますから、その団体に加入する各会社、団体はいろいろあると思います。バス、トラック、タクシー、自家用になると非常に多いわけですが、これは、実際数を必ずしも十分把握しておりませんけれども、数としては多い数字だと思います。  それからタイヤにつきましては、アメリカ基準では、タイヤが摩耗する限度というものをきめております。私どものほうはまだ規制する段階、速度条件その他が一般的に低いものですから、今度の段階ではそこまで規制の提案をしなかった。したがってタイヤ協会にはその意見は求めておりません。
  62. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは今後タイヤ協会のほうに聞く考えはありますか。
  63. 堀山健

    堀山説明員 第二次以降の規制について、タイヤについての規制を考慮に入れますときには、当然意見を求めることになります。
  64. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 政務次官にお伺いしますが、ここできょう配布になったものですから、どうぞごらんになってください。この配布になりましたうちに、「これらのうち技術的解決をみた別紙の十四項目を今般第一次規制強化項目としてとりあげることとした。」とあります。そしてこれの一番最後のページには、注の2のほうに、「2安全まくら及び6前面ガラス破損時の視野確保の項目は、現在専門家により審議されている技術基準が確定次第規制することとする。」このようにあります。一体十四項目は決定されたから出すんじゃないでしょうか。このまくらの問題についてもいろいろと、さっき大久保委員からもお話がございました。また、ガラスの問題にしてみても、これはたいへんいろいろ問題を含んでおります。そこで、現在専門家により審議されて、技術基準が確定次第規制するとうしろのほうには書いてある。一体全体、これはどっちがほんとうなのか。この点を私はっきりしていただきたい。また、先ほどの大久保委員質問の際の堀山整備部長は、自信が持てる十四項目を発表した、こう言われております。自信の持てない二項目があるなら、この二項目を除いて十二項目を発表し、そしてこの十二項目について決定して、あと一年間にやっていこう、こうなるべきじゃないかと思いますが、その点いかがでございましょう。
  65. 堀山健

    堀山説明員 お答えいたします。まくら等前面ガラスにつきましては、日本工業標準規格で非常に近い時期にきまるということがはっきりしておりますので、これから具体的に規制をしてまいります時期と合うということで、こういう表現をしたわけでございます。
  66. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 了解しました。  それでは、最後に政務次官にお伺いしますが、昨年、われわれのほうで自動車安全基準検討いたしました。そのときに自動車安全対策研究所、これは公明党の案でございますが、自動車安全対策研究所というものの設立を検討しております。そこで、昨年十二月十四日の当委員会におきまして私が質問いたしましたときに、田中通産省自動車課長は自動車安全公害研究センターを開設した——先ほどもまたいろいろと次官からもこの内容についてお話もございましたが、実際始まってからどんな成果があったのか。この成果についてひとつ御報告をいただきたいわけであります。
  67. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 まあ創立まだ日が浅いので、具体的な成果がどの程度出ておりますか、事務当局のほうから答弁いたします。
  68. 田中芳秋

    ○田中説明員 御指摘の点でございますが、四十二年度におきましては、まず無人自動車というものをつくり上げたわけでございます。これは人を乗せまして高速衝突させますとその人にも危害を与えます。やはり人なくして自動的に走るものでなければならぬ。それが高速時における衝突状態はどうなるかという形でございます。それからなお、自動車だけで走らした場合の機械の特性、その辺がどうなるかというような点を、この高速無人自動車を開発することによって現在追跡をいたしております。それからあと衝突いたしました場合の簡易なシミュレーターでございますが、衝突いたしましたときに車体がどのような構造でひずみが起こるか、危険度はどういうかっこうになるか。こういうような点を調べます設備を入れたわけでございます。いずれも四十三年度に継続いたします。工事、研究が継続いたします段階でございますので、まだきわ立った結果という形にはなっておりませんのは残念でございます。四十三年度さらにこれらを本格的に追跡をいたすことによりまして、安全関係の基礎資料の確立につとめたい、かように思います。
  69. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 たくさんの研究センターをつくることはけっこうでございますが、その成果はいつになってもあらわれないというようなことでは困る。何としても、いまの交通の渋滞、交通事故の頻発、そういう面から考えて、一日も早くその成果をはっきり世の中に問うて、こういうものが出たというふうにやらなければ血税のむだ使いであると私は思う。そして、のんびりやっていいものと、急いでやらなければならないものとあります。きょうのいわゆる安全規制の強化というようなものは、念には念を入れてやらなければなりません。しかし、いまのお話しのような公害の研究センターのようなものはどんどん金を注ぎ込んでもやらなければならないことと思いますので、この点しっかりとひとつやっていただきたいことを強く注文いたしておきます。  それから八木総務副長官いらっしゃいませんので、宮崎さんにお伺いするわけでありますが、交通事故防止に関する総合的研究の推進、こういう問題について、各省庁の各研究機関においてそれぞれやっております。しかもまた、いまのお話をひとつプラスしますとたいへんな数になっておるわけです。一体この種の機関が幾つあるのか。私が調べましたところでも七つ、七省にわたっております。いまのを入れますと八つになる。こういうものを統廃合して効果的な研究をする考えがあるかないか。この点をひとつ伺ってみたいわけです。
  70. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 各省庁の研究所は、やはり行政機関の一部でございますので、これを統廃合いたすということは、もちろん考え方としてはあるわけでございますが、実際問題といたしましては行政機構の非常に大きな変革でございますので、慎重に検討を要する問題であろうと思っております。それは将来の問題といたしまして、当面総理府といたしましては、率直に申しまして各省庁が関係研究機関においてそれぞれ相当研究を実施いたしておるにもかかわらず、それが総合的に効果的に生かされないといううらみも全然ないわけではございませんので、今後は各省庁が引き続き研究をいたすことといたしまして、その成果というものをなるべく総合的にむだのないように、交通安全施策に反映いたしていきたい、そういう方策を検討していきたい、このように思っております。
  71. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いま宮崎さんからたいへん有益なお話がございました。ぜひそらしてもらって、研究の成果を、それぞれの官庁が結果を出したものを相互に見せ合うなり話し合うなりして、そうして効果的な研究を進めていただきたいと思う。調べてみましてもずいぶんいろいろとダブったものがあるように思われる。そういうものはぜひともこの際整理統合すべきじゃないかと思うわけです。  試みに、これは皆さんも御存じだと思いますが、警察庁の科学警察研究所、ここでもやっておりますが、これは歩行者保護の施設の有効度に関する研究を第一テーマとしてやっておるようであります。それから第二のテーマとしましては、運転者の適性の検査基準及び安全運転動作の基準の確立に関する研究、それから心理的運転欠格者を排除するための検査基準を確立する、こういうようなこともやっているようです。また、さらに交通需要に応じて作動する広域系統式信号機群の制御に関する研究、あるいはモデル地区内外の交通量の調査を行なうとともに、その成果をもとにして広域交通管制に必要な信号機のシステム、デザインに関する研究、あるいは広域系統式信号機群の作動に関する研究、モデル地区において交通量に応じてサイクルオフセット及びスプリットを適当に選択できる信号機の中央制御に関する基礎研究、こういう研究を警察庁でやっておる。  また運輸省の船舶技術研究所では、自動車衝突時における乗員安全性に関する研究自動車衝突事故を起こした際に乗員被害を最小限に食いとめるための車体の構造とか内部構造に関する研究であります。それから自動車の検査場用の総合検査機械の研究自動車検査場、整備工場等において使用する検査機械の開発研究をしている。それからさらに、制動力不平衡に基因する事故防止の研究、走行中の自動車の制動時に各車輪に加わる制動力の不平衡による事故防止の研究、それからさらに新しいところでは、アイソトープを利用するブレーキ材の摩擦及び摩粍の研究、こういうのが運輸省でやられておる。  また自治省の消防庁では、救急医療及び応急手当の標準化に関する研究、これを中心課題としてやっておる。  それから文部省の統計数理研究所においては、道路交通における環境因子と事故発生との関連についての統計分析、道路構造安全施設、交通量、交通規制方法等の環境因子と事故率との関係調査研究している。文部省あたりでこれほどのことをやっているわけであります。  通商産業省におきましては、工業技術院の機械試験所で、道路網における自動車交通の模擬再現方法に関する研究、また自動車の自動操縦機構の研究、無人自動車及び追突防止装置を開発し、自動車安全性確保に寄与する研究追突防止装置及び自動操縦装置の改良研究、これなんかはいまお話のあったものとまるっきり同じように思うわけであります。それから自動車部品の安全性に関する研究自動車部品の安全性の向上をはかって、自動車事故を防止するための研究であります。それからまた、自動車用の霧灯に関する研究、霧の濃度の基準を求めるとともに、野外の霧との関連性の検討、各濃度の霧について基準光源、各種霧灯の配光及び光度の研究、あるいは自動車用タイヤの研究自動車の走行中の運動特性を解析する研究、及びタイヤにかかる初期応力、繰り返し応力、繰り返し速度、周囲温度の変化等に関する研究、あるいは自動車ブレーキ系統の研究自動車の制動時における各種の実験研究、これは通産省の分野です。  それから建設省の土木研究所では、防護さく及び道路標識についての研究、これをやっているようであります。  それから厚生省の精神衛生研究所、ここでは運転者等の精神医学的研究自動車交通事故を精神的側面から追及し、交通事故防止対策の確立をはかる研究。  このように七省にも分かれ、そして二十項目にも分かれた研究をまちまちにやっていることは、そしてまたこの中にも、もっともっと具体的に検討を加えていくならば、ダブっているものが相当にあるのじゃなかろうかと私は思うわけであります。こういうものをこの際統廃合して、そうしてまた研究の成果はお互いに持ち寄るというふうな方法をとっていただいたならば、一そうりっぱなものができるのじゃなかろうかと思うわけであります。この点についてさらに一段と検討を進めていただきたいと思うわけでありますが、この点宮崎さんのお考えをもう一度あらためて聞いておきたい。
  72. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 交通安全対策につきましては、率直に申し上げまして数年前までは各省それぞれ非常に熱心にはやっておりましたが、必ずしも総合的でない点もございました。しかしながらここ数年来は、総理府が各省庁と密接な連絡をとりまして、交通安全対策そのものにつきましても、だんだん総合的な対策ができかかっております。したがいまして、そうなりますと、研究の段階におきましてもどの省がどの部分を担当するのが一番効果的であるかということがだんだんはっきりしてまいりまして、特に予算関係におきましては便宜上私のほうで取りまとめいたしておりますので、その段階で少なくとも大きな部分についてはダブらないように気をつけております。四十三年度の予算につきましても運輸省と通産省がそれぞれ自動車安全性について研究いたすことになっておりますが、これも事前に十分に打ち合わせをいたしまして、両省の研究がなるべくダブらないようにいたしております。今後は先ほど御指摘がございましたように、これらの各省庁の研究の成果をできる限り効果的に使いますように、私どものほうも十分努力をいたしたいと考えております。
  73. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 もう一度宮崎さんにお伺いするわけですが、今後研究を要する問題として、事故を頻発する運転者の中には、いわゆるてんかんの病を持った者が非常に多いということが最近大きな問題になっております。これの研究をはかる必要はないか、もしやっているとするならば、どこでやっているのか、その成果をお伺いしたいわけです。  もう一点は、アルコールめいてい者並びに睡眠剤及び精神安定剤の乱用者に対する精神医学的研究、これも非常に事故を起こす率が多いわけであります。これをどこでやっているか、その成果について伺いたい。
  74. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 ただいま御指摘の点は二つとも運転免許制度の問題でございまして、直接的には警察庁の所管でございます。私の聞いております範囲によりますと、最初のてんかんの問題でございますが、これは脳波テストをいたしますと、てんかんは大体七、八割は発見ができるということになっております。ただ現在の医学におきましては、この脳波テストをいたしますと、大体一人につき四十分ないし五十分かかるということでございまして、もちろん運転免許不適格者は事前に排除することが最も望ましいわけでございますが、すべての運転免許の受験者に一々このテストをやっておりますと、ただでさえ運転者が免許をとるのに非常に日数がかかりますので、将来これが簡易かつ確実に発見されるまでの間は次善の策といたしまして事後に非常にあぶないと思われる者につきまして精密な検査をいたしましてこれを発見し排除するというのが、私の聞いております範囲で現在の警察庁の方針でございます。それから覚せい剤その他の中毒者につきましては、これを的確に発見する方法がまだ医学的に完全に確立されていないように聞いておりますが、警察庁におきましても精神医学会でございますとか、その他医学関係の権威者にいろいろ相談いたしまして、なるべく早い時期にそういうものを的確かつ敏速に発見できる方法を開発する点におきまして、現在検討中のはずでございます。
  75. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 警察庁の鈴木交通局長は——それでは宮崎さんにこのことを伺っておけばわかりますが、いわゆる運転免許申請に際して精神に異常があるかないかということを診断書を添付するこの方法が廃止された、世界のもの笑いだったざる法が廃止されましてから、何か支障ができたか、またこれにかわるものを考えているかどうか、その点をひとつお伺いしたい。
  76. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 これも警察庁の直接の問題でございますので、また別な機会に詳細警察庁にお聞きいただけば幸いと存じますが、私の聞いております範囲では、廃止いたしましたのがごく最近でございますので、その後特に問題はないように聞いております。  また、これに変わる方法でございますが、これも私の聞いております範囲では、現在のところはぴたりとする方法がなかなかない。したがって、もう少し時間をかけて検討いたす。それとあわせて、性格的に運転に向かないという者がいるわけでございますが、これをペーパーテストで発見するという手段でございますが、これが現在ある程度、先ほど先生御指摘になりました科学警察研究所でも研究中でございますので、こういうものが実用段階に入りますと、それらの面で不適格者が相当事前に排除されることになるのじゃないか、このように聞いております。
  77. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは最後に伺いたい点は、きょう発表になりました十四項目の中でございますが、先ほどもいろいろ大久保委員からもお話がございました。第一番目のシートベルトの点でございますが、これらについては材質を規定して規格に適合させる、そういう規定をつくる必要があるかないか、材質の問題でございます。相当いろいろな製品が出ておりますが、シートベルトをつくるときの材質そのものが問題でございますけれども、材質を規定する必要がないか、そうして規格に適合させたところの規定をつくる必要がありはせぬかと思うわけですが、どうでございましょう。
  78. 堀山健

    堀山説明員 シートベルトの材質の問題でございますが、今度この中にいろいろ織り込みました中で、先ほどから再々出てきております日本工業標準規格、いわゆるJIS、これにきまったものはできるだけこの中に織り込むということで考えております。したがいまして、ベルトも当然JISできまったものを採用するというふうに規制するつもりでおります。
  79. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 一年間の研究期間がありますから、十分なものができ得ると期待しております。  安全まくらについては、先ほど来大久保委員からお話がありましたのでやめますが、第七番目のブレーキの問題であります。ブレーキの中でいわゆる三〇%斜面に駐車できるパーキングブレーキといいますか、こういったものを考える必要はないか、それから、油圧ブレーキ系統の故障を表示するところの警告灯、こういうものの必要はないか、この点いかがでしょうか。
  80. 堀山健

    堀山説明員 考えますといろいろな項目が多いわけでございます。で、これはとりあえず第一次規制としてきめたわけでございますが、御指摘のような面については、規制の強化の中に逐次織り込んで考えてまいりたいと思っております。
  81. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから、先ほども申し上げましたタイヤでございますが、タイヤの安全基準を定める必要があると私は思う。公明党で前につくりましたときにも、セーフティ・リミット・タイヤ、こんなことばでわれわれは呼んでおるわけでありますけれども、いわゆるこの部分まで使ったならば危険だ、それが一般のなれない女の方でもすぐわかるような、そういうところのタイヤをつくってはどうか、こういうふうな考え方を持っておるわけでありますが、タイヤについても、先ほども申し上げましたように、車輪と車体から形式されておる自動車でありますので、この点も十分検討する必要があると思います。この点についていかがでしょうか。
  82. 堀山健

    堀山説明員 当然今後考えるべき問題だと思います。ただ、アメリカでいろいろ行なっておりますけれども日本と使用条件が違いますので、日本なりの条件として考えたいと思っております。
  83. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いろいろお伺いしたいこともありますが、きょうはこれで終わることにいたします。      ————◇—————
  84. 門司亮

    門司委員長 それでは、おはかりをいたすことがございます。  この際、参考人の出頭要求に関する条件についておはかりいたします。  交通安全対策に関する件について、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 門司亮

    門司委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 門司亮

    門司委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会