○阿部(昭)
委員 私は、ただいま議題となりました新
都市計画法案並びに新
都市計画法施行法案に対し、
日本社会党を代表し、その重要な点について反対の討論を行なわんとするものであります。
今日のわが国における
都市社会は決定的な行き詰まりと混乱を引き起こし、人間
生活の
基礎的環境条件を全く喪失し、きわめて深刻な事態にあるのであります。大
都市への急激な人口集中は、住宅難、交通戦争、公害、災害の激発、緑地や遊園地などのない今日のこの潤いのない非人間的な
都市の姿を現出したのであります。他方において、地方農村社会の人口流出はいわゆる過疎現象を引き起こし、わが国農業と農村社会を根本的崩壊過程に追い込み、大きな打撃を与えつつあります。
私は、今日のこの深刻なる
都市問題こそは、一言にして、積年にわたる保守政治の失政によるものであり、保守政治の本質と限界を端的に物語っていると思うのであります。今日の行き詰まったわが国
都市社会の姿こそは、企業利益の追求をすべてのことに優先させてきた保守政治が、体質的にもたらした当然の結果であるといわねばならぬのであります。この事実は
保利建設大臣も認めているところであります。
都市改造政策は、企業利益の追求や単なる
経済合理性の追求ではなしに、そこに住む生きた人間を中心に潤いのある、人間味豊かなものでなければならぬのであります。
都市改革の政策は、進歩的な社会政策と
計画的な推進によってこそ着実に行なわれ得るのであります。
総理が、寛容と調和を言い、調和と風格ある社会などと言う、ことばだけを何万言演説されましても、戦後歴代内閣の中で一番の右傾化内閣といわれる
佐藤総理のもとでは、この新
都市計画法が目ざしている、健康で文化的な
都市生活及び機能的な
都市活動を確保するなどということは、木によって魚を求めるようなものと思わざるを得ないのであります。
私は、以下、われわれの主張を展開せんとするものでありますが、第一に、本
法案の最大の欠陥であり、われわれの容認し得ない点は、
地価安定策について
政府は何らの保障、何らの歯どめを示しておらないのであります。
地価の高騰を野放しにしておるという点であります。今日の
都市計画の課題は、
都市の秩序なきスプロールを防止し、はてしなき
地価の高騰に対し、いかにしてこれを
抑制し、安定させるかということが根本にあるのであります。われわれはこのような立場から、国及び都道府県、また市町村の出資による
土地基金を設置し、
市街化区域における
土地の
売買、貸借等の権利移転をすべてこの
基金によってのみ一元的に行ない、
基金がこの
土地の管理と運営とを行なうことによって
土地に対する投機や
思惑を
抑制し、
土地基準価格を定めるための
審議会を設置することなどによって
地価安定を確実に実施することを提案してきたのであります。また、
税制による
開発利益の社会還元の
措置を提案したのでありますが、われわれのこの現実的な、しかも正しい提案は、各方面の共鳴と賛同を得たのであります。
政府・自民党も、このような情勢の中で、われわれの提案からははるかな後退ではありますが、
土地基金の設置、
基金による
土地の先買い権、
基金に対する資金の裏づけ、さらには、
市街化区域内の
土地の有効
利用促進と、
投機的取引を
抑制するために
税制上の
措置を講ずるという
修正が行なわれたのであります。これらはかすかな一歩前進であります。しかしながら、本院における昭和三十九年の
地価安定対策強化に関する決議、また昭和四十一年、四十二年、本院における
土地収用法案の審議に際し、
地価安定対策についての
佐藤総理の答弁があるのでありますが、これがただの一度も尊重され実行されたためしがなかったのであります。
佐藤内閣のその場しのぎのから手形政策の歴史的経過がございまするから、なかなかもって信用できないのであります。
次に、本
法案は、
住民に対し私権の制限を明らかにしたという点でまさに、画期的であります。また、
住民に対し
負担と義務を強要しながら、
住民に
計画参加と権利の保障を認めないということも、まことに特徴的であります。これは二十世紀後半の近代文明国家のやり方ではなくて、十六世紀時代の封建国家における帝王のやり方であり、まさにこの事実は、戦後一番の右傾化内閣と呼ばれる
佐藤内閣らしい、なるほどのやり方と思わざるを得ないのであります。
われわれは、
都市計画の遂行による
都市改革の目的は、ただ
一つ、
住民の幸福にあると信ずるのであります。
都市計画策定の過程において、
住民の積極的な参加を保障し、
計画確定後における
住民の協力による
計画の実行性が確保されなければならぬのであります。われわれは、そのために、
都市計画の策定権者は市町村長でなければならぬと主張するのであります。市町村に
都市計画審議会を設け、
計画策定以前に公聴会を開いて
住民の意見を十分に聞き、
計画を
一定期間縦覧に供し、不服申し立ての道を開き、
一定期間縦覧後において初めて
計画は確定するという、
住民の参加と協力、
住民を中心とした
都市計画策定手続
制度の確立を提唱してまいったのであります。これに対し、
都市計画権利者が必要があると認めたときは、公聴会の開催等、
住民の意見を反映させるために必要な
措置を講ずるという
修正や、自治法上の
審議会を市町村に設置することを
約束してはおるのでありますが、依然として
住民の権利は何ら保障されるに至っておらないという、あいまいな規定になっておるのであります。
次に、われわれが特に重要視しなければならぬのは、この新
都市計画法実施に際し、その
財政措置については、従来の
都市計画事業からほとんど前進しておる事実が見られないのであります。一方的に
住民と
地方公共団体にしわ寄せされておるという点であります。この点はわれわれのとうてい容認し得ないところであります。われわれは、市町村が
都市計画に基づく
公共施設の整備に要する経費に充てるために起こす
地方債については、他の
地方債に優先させること、この
地方債の元利償還に要する経費については、その市町村の
基準財政需要額に算入する、地方道路譲与税の増額と市町村に対する譲与、また
都市計画先行投資の
財源措置、
都市計画事業に対する国庫補助は事業費の三分の二とすること等々、われわれの主張は
政府当局と並行線をたどり、依然として激しい対立の姿に置かれているのであります。
第四点は、農業を圧迫し、農民
生活に与える大きな不安についてであります。そしてまた、わが国の地方総合
開発計画の策定されておらない今日の現
段階から見て、今後のわが国全体の進路と、今日の
都市計面
がいかなる位置づけを持って相関連するかということが何ら明らかにされていないという点であります。二十世紀の終末における
段階は、人類が決定的な食糧危機に見舞われるといわれておるのでありますが、今日のこの新
都市計画法案が、わが国の長期的な総合的
計画の中でどれだけの
農地を
市街地として食いつぶさんというのであるかということが不明確であります。わが民族の食糧自給体制や食糧確保の
計画など、これらとの関係は全く明らかにされないのであります。われわれは緑と潤いのある
都市社会、快適な住宅と居住環境の整備のために、
土地の合理的な
利用を長きにわたって提唱し続けてまいったのでありますが、しかし、同時に、
市街化の中に没し去っていく
農地に対し、反面においてはわが国土の中に積極的な
農地開発が行なわれて、それこそ調和ある
計画的な発展がなければならぬと思うのであります。これが今日の
佐藤内閣の政策では著しく後退している点であります。
また、
都市計画ということは、国民に対し、あすへのエネルギーを養うに足る快適な住宅を供給することであり、環境を整備するということであり、この住宅
計画を明らかにすることは当然の責任であると思うわけであります。
土地提供者に対する
生活再建の
措置と責任を明らかにすることであり、
調整区域は、農業振興の
地域として十分な農業投資を行なうべきこと、
市街化区域においても、
一定の
優良農地については、
農地法上、
税制上、
農地としての保護を受けるべきといった具体的な主張を行なってまいったのでありますが、これが一部実を結ぶこととなって、幾つかの点で
法案修正が行なわれることになったのであります。
さきに指摘いたしましたとおり、
土地基金の設置と
土地の先買い権及びその資金対策、公聴会の開催、
土地の有効
利用の
促進と、投機的投資を
抑制するための
税制上の
措置、
土地を提供する者に対する
生活再建の
措置、
市街化区域内の
優良農地の取り扱い等について、また住宅建設と環境整備について明らかにするという
修正が行なわれることになったのでありますが、これらの
修正は、確かに一歩ささやかな前進ではあります。
また、現行法が大正八年、半世紀前に制定されて以来、かたかな法文というスタイルにも示されているように、今日の急激な
都市社会の変化に対応し得ない、全くの前時代的な陳腐なものであることはもちろんであります。その
意味で、今日の本
法案に歴史的な期待と希望が大きく集中することは、けだし当然のことであります。しかるに、今日この
法案が
都市計画の
土地利用の野放しを
抑制するだけにとどまって、さきに指摘いたしましたように、最も大切な
地価安定対策の欠落をはじめ幾つかの根本的な点で欠陥を持っているばかりでなく、今日の保守政治と資本家本位の政策がもたらす
都市の暴発に対して、とうてい実効のある成果を期待することはできないのであります。
われわれはかような観点に立って、今後も、われわれが今日まで主張してまいりました潤いのある豊かな
都市形成のために
努力することを申し上げまして、本
法案に対する討論を終わりたいと思います。(拍手)