○阿部(昭)
委員 大臣の御
答弁の限りでは私もよくわかるのです。しかし、現地において、この
法律が
施行されて
市街化区域、
調整区域、農業振興
区域、こういうぐあいに区分をして地図に色を塗っていくということになります場合、どこをどのように
市街化区域にするかは、
東京におって、あるいは出先をいろいろ持っておっても、
建設省で全部やろうといったって、それは無理だ。当然、県の関係機構なり
市町村なり、そういうところで具体的な地図を塗っていく作業はやるようにするんだ、こうおっしゃるのですが、実はその場合いろいろな問題が起こってくる。たとえば私の
地域で
——私の
地域は、山形県庄内という、今度
全国で米づくり
日本一の県なんです。この県のどまん中で、
都市近郊はいまどういう
状態が起こっておるかということになると、
二つの流れがある。
一つは、農地を売って宅地化して区画整理をやる。そういたしますと、私の記憶では、この四、五年ぐらい前までは、農地の値段というのは、十アール当たり大体三十万から四十万ぐらいが農地の普通の売買価格であった。ところが、
都市近郊の十アール当たりの農地を、区画整理をやり、宅地化をやって、そうして
整備をして売ってまいりますと、ほとんど三百坪四百五十万ないし六百万ぐらいになる。この農地を宅地化して売って、そうして遠隔の地に農地を買い求めていこう、こういう動きが非常に大きくなってきております。
都市近郊の皆さんが農地を宅地化して売って、売った金で新たに遠隔の地に
——十キロ、十五キロないしは二十キロ離れた
地域に新たな農地の買い求めをやっていく。それがなぜ可能かということになると、
一つには、稲作技術の技術革新で、昔のように四つんばいでたんぼの草取りなどをやらぬで、除草機で一ぺんやってしまった
あと、除草剤か何かで片づけてしまう。それから防除や何かにいたしましても、全部大がかりな機械でやってしまう。小型トラックか何かでたんぼに出かけていくのでありますから、十五キロや二十キロの遠隔の地なんかは、稲作経営上は全然苦にならない、ネックにならぬという現象が起こってきておるのであります。そのため、三百坪の農地を五百万程度で売った皆さんは、十キロ、二十キロ離れた、そういう
都市化の現象が起こらぬ農地、将来とも宅地化の可能性の起こらぬような場所に農地の買いあさりに進出をするわけなんです。四、五年前までは、将来そういう宅地化といった可能性の起こらぬような地帯の農地は、せいぜい一反歩、十アール三十万ないし四十万であった農地を、一挙に百万、百二十万という価格で、十キロ、二十キロ離れた場所に農地の買い占めに出ていっておられる。農業だけはやめない。
都市近郊はスプロールがあり、
土地の値もある程度、四百万、五百万で売れるものですから、これを手放して遠隔の地に買いにいく、こういう現象が起こっておる。私
どもの
中心をなす十万の町から二十キロくらい離れた中間部あるいは山にほんとうに近いような農地さえ、全部百万からそれ以上の値になってきているのです。このことは、
建設省が国道のバイパスの用地買収なんかやっておられますが、これなんかも大体百万以上で買わざるを得ない
状態です。河川改修の流域農民が相当恩恵を受けるであろう場合でさえ、やはり八十万かそこらの価格でなければ用地の確保ができない。さらに国鉄の線増工事が起こっておる、複線工事が起こっておる、この用地でさえ、やはりたんぼのどまん中を走っておる国鉄の線路でありますから、将来宅地化などの可能性は出てこない、この場合の用地買収さえ、百万以上の金でなければ全然手に入らないという現象が
都市近郊で起こってきているのです。したがって、将来この
法律が
施行された場合に、私
どもの現場でどういう状況が起こるであろうかというふうに思いますと、
都市近郊の農民は、
市街化区域にぜひ入れさせていこうという動きが出てくる。
市街化区域にぜひ指定をしてもらって、やはり宅地化をして、
土地を値をよく売っていきたいという動きが
土地所有者の間に出てくると思うのです。もう
一つは、農業をよすわけにはいかない、農業以外に生活や何かの可能性は全然持たない、希望や意欲を持つこともできない、したがって農業を離れるわけにもいかぬし、
市街化区域設定は困るという
意見の人と、ぜひこの
市街化区域の設定をしてもらいたいという動きが
都市周辺において非常な争いとなって起こってくると、私
どもは私
どもの現地の状況から判断をしておるわけです。その場合どっちが強力かということになりますと、私の見方は、やはり
市街化区域にしてもらうという議論のほうが強いと思うのです。したがって、
大臣がいまおっしゃるように、
市町村なり県なり、現地の実情によく通じておる皆さんのところで、地図の上に色を塗るような、ここをこうしようじゃないかという相談をやらせるのですから、そこは弾力的にとおっしゃるのですけれ
ども、結局するところ、私の判断では、
市街化区域を相当やはり広く設定していくという動きになるであろうというふうに、私の
地域の
現状をいろいろ回って相談したり話し合ったりしておるのですが、そうなっていくだろう。その場合に、優良農民である皆さんが、その
市街化区域内に農地を持っておった場合、
市街化区域は勢いどうしても広い面積になっていくと思います、その中に残された優良農民、優良農地というものは、将来農業をやっていく可能性は成り立たぬという
状態が起こってくる。したがって、
大臣は弾力的にとおっしゃっても、そうはいかないのではないか、こう思うのです。