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1968-04-23 第58回国会 衆議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)    午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 大石 武一君    理事 鍛冶 良作君 理事 小山 省二君    理事 四宮 久吉君 理事 田中 武夫君    理事 華山 親義君 理事 吉田 賢一君       篠田 弘作君    丹羽 久章君       葉梨 信行君    長谷川 峻君       水野  清君    赤路 友藏君       勝澤 芳雄君    森本  靖君       鈴切 康雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君         外務大臣官房会         計課長     山崎 敏夫君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         厚生政務次官  谷垣 專一君         厚生大臣官房会         計課長     高木  玄君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         社会保険庁年金         保険部長    中村 一成君         農林省農政局長 森本  修君  委員外出席者         厚生大臣官房企         画室長     首尾木 一君         自治省行政局行         政課長     林  忠雄君         会計検査院事務         総局第一局長  斎藤  実君         会計検査院事務         総局第三局長  増山 辰夫君         会計検査院事務         総局第五局長  小熊 孝次君         医療金融公庫総         裁       安田  厳君         専  門  員 池田 孝道君     ————————————— 四月二十三日  委員大野明君及び柳田秀一辞任につき、その  補欠として葉梨信行君及び赤路友藏君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員葉梨信行君及び赤路友藏辞任につき、そ  の補欠として大野明君及び柳田秀一君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十一年度政府関係機関決算書  昭和四十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十一年度国有財産無償貸付状況計算書  (外務省所管厚生省所管医療金融公庫)      ————◇—————
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  厚生省所管及び医療金融公庫について審査を行ないます。  まず、厚生大臣より概要説明を求めます。園田厚生大臣
  3. 園田直

    園田国務大臣 昭和四十一年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算大要について御説明申し上げます。  まず一般会計歳出決算については、予算現額六千一億一千百余万円に対して、支出済み歳出額は五千九百五十七億二百余万円、翌年度繰り越し額は十九億三千八百余万円、不用額は二十四億七千余万円で決算を結了いたしました。  以上が一般会計決算大要であります。  次に、特別会計大要について申し上げますと、厚生省には五特別会計が設置されております。  まず第一は、厚生保険特別会計決算でありますが、健康、日雇い健康、年金業務、四勘定をあわせて申し上げますと、一般会計から四百二十四億八千九百余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額九千五十一億二千百余万円、支出済み歳出額四千八百五十九億二千五百余万円でありまして、差し引き四千百九十一億九千五百余万円の剰余を生じ、これをそれぞれの勘定積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  第二は、国民年金特別会計決算でありますが、国民年金福祉年金業務、三勘定あわせまして申し上げますと、一般会計から七百四十八億六千五百万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額一千五百十一億七千五百余万円、支出済み歳出額八百九十六億四千五百余万円、翌年度繰り越し額二十二億七百余万円でありまして、差し引き五百九十三億二千百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立てたほか、翌年度歳入に繰り入れて、決算を結了いたしました。  第三は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計については、一般会計から十四億七千四百余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額二百七十二億一千七百余万円、支出済み歳出額百八十億八千三百余万円、翌年度繰り越し額七千六百余万円でありまして、差し引き九十億五千八百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  第四は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計については、一般会計より四十四億六千四百余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額三百七十一億百余万円、支出済み歳出額三百五十九億四百余万円、翌年度繰り越し額八億四千四百余万円でありまして、差し引き三億五千百余万円の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  第五は、あへん特別会計決算であります。  あへん特別会計決算額は、収納済み歳入額八億七千四百余万円、支出済み歳出額二億七千五百余万円でありまして、差し引き五億九千八百余万円の剰余を生じ、剰余金はこの会計の翌年度歳入に繰り入れました。  以上が厚生省所管に属する昭和四十一年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算大要であります。  最後に、本決算につきまして会計検査院から指摘を受けた点がありましたことはまことに遺憾にたえないところであります。指摘を受けました件については、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一そう厳正な態度をもってこれが絶滅を期する所存であります。  以上をもちまして厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算大要について御説明を終わりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 大石武一

  5. 増山辰夫

    増山会計検査院説明員 昭和四十一年度厚生省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項が七件、今後の予算執行等にあたり留意を要すると認めましたものが二件でございます。  まず、不当事項について説明いたします。  一三四号及び一三五号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険保険料徴収に関するもので、いずれも保険料算定の基礎となる報酬の把握が的確に行なわれなかったため保険料徴収不足していたものでございます。  一三六号から一三九号までの四件は、国庫補助金経理当を得ないものとして、法定伝染病予防事業及び簡易水道施設等整備事業において入院費の控除が過少であったり、管理費が過大に交付されていたり、または配水池の側壁、底版等コンクリト工事の施行が不良となっているものでございます。  一四〇号は、国民健康保険普通調整交付金交付につきまして調整対象収入額算定が適正を欠いているというものでございます。  次に、今後の予算執行等にあたり留意を要すと認めましたものについて申し上げます。  一件は、補助金等の額の確定に関するもので、交付決定年度終了後、額の確定処理に至るまで相当年月を経過しているものが見受けられ、額の確定を遅滞すると補助事業等の成果の確認と補助金等の過不足額精算とを遅らせることとなるので、今後、処理促進について配慮の要があると認められるものでございます。  他の一件は、補助事業により設置したし尿処理施設管理に関するもので、処理実績施設処理能力を著しく下回ったり、清掃法に基づく水質基準に適合しない水質放流水を放流したりしていて設置後の管理が適切を欠くと認められるものが見受けられましたので、今後、し尿処理計画についての検討維持管理について配慮の要があると認められるものでございます。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  6. 大石武一

    大石委員長 次に、医療金融公庫当局資金計画事業計画等についての説明を求めるのでありますが、便宜上、委員会会議録に掲載することにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。   〔説明書本号末尾に掲載〕
  7. 大石武一

    大石委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。華山親義君。
  8. 華山親義

    華山委員 大臣が御出席になる時間に限度がありますそうで、私の質問する順序も一応考えてはまいったのでございますけれども大臣にだけとりあえず御質問いたします。その間秩序のないこともあろうかと思いますけれども、御了承願いたいと思います。  お聞きいたしたいことば、明年度を期しまして国民年金についてこれを根本的に改正されるということを今日聞きますけれども、どういう方向国民年金改正されますか、その大綱を伺いたいと思います。これにつきましては事務当局でもよろしゅうございます。簡単にお願いいたします。
  9. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金につきましては、昭和四十一年の再計算期におきまして二倍半にのぼる引き上げを実施いたしたのでありますが、その後におきます所得水準の向上あるいは物価の高騰等要素を勘案いたしますとともに、また一面被用者保険であります厚生年金保険の再計算期が明年に迫っておるのでございます。これらの要素を勘案をいたしまして、通常の例でまいりますと四十六年が再計算期になるものでございますが、厚生年金及び国民年金あわせまして、両制度につき基本的な検討を加えたいということで、ただいま関係審議会におきましてそれぞれ御検討いただいておるという段階でございます。
  10. 華山親義

    華山委員 このことにつきまして最近農民年金の声を聞きますけれども農林省のほうでは農民年金をこの国民年金改正にからめてと申しますか、関連さしてともにやってまいりたいというふうな意向を私にお答えになりました。農民年金につきましては、この所管はその際に農林省なのか厚生省なのか、その点大臣の御方針を伺いたい。
  11. 園田直

    園田国務大臣 農民年金は、ただいまのところでは農林省検討してもらって、その案を受けて審議会にかけて、それを私のほうで受けることになっておりまするが、所管は私のほうでやることになっております。
  12. 華山親義

    華山委員 厚生省のほうでも農民年金についての研究をなすっていらっしゃるということでございますけれども、どういう方式でどの程度の研究をなすっていらっしゃいますか。
  13. 園田直

    園田国務大臣 私のほうでは、御承知のとおりに農林省内で専門検討しておるのと、審議会専門部会を設けて検討願っておりますが、大体がこの問題は農村、農業の将来に関する重大な問題でありまするから、専門的なことは農林省審議会のほうの御意見を十分聞くこととして、私のほうはそのあとで別個につくるか、あるいは年金改善の中に繰り入れていくか、どちらでやるべきかということを検討しておるわけでありまして、年金内容そのものについては農林省意見を聞いてからやりたいと思っておりますが、ただ年金改善をはかる場合に、これは一般年金と別問題でございまして、やはり農民年金というものは農民老後保障であり、しかも、こういう時期で離農する者が非常に多い。それを若い人や御婦人の方々が農業の将来に希望を持って、離農しないでじっくり農業近代化をされるように、老後の安定と保障を与えるという特殊なものを持っておりまするから、年金改善の場合に、年金の中へ入れようとすれば、それは技術的なむずかしい問題がありまするから、そういう点をただいま検討いたしております。
  14. 華山親義

    華山委員 国民年金法の第一条を見ますと、憲法第二十五条の趣旨に基づいてこれをやったということに、簡単に言いますと書いてあります。農民年金もやはり憲法の実体に、二十五条に基本を発するというお考えでございますか。
  15. 園田直

    園田国務大臣 仰せのとおり、その点に重点を置いて考えたいと思います。
  16. 華山親義

    華山委員 そうしますと、これは社会保障一環である、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  17. 伊部英男

    伊部政府委員 この問題の取り扱いにつきましては、ただいま大臣の御答弁にございましたように、関係省におきまして十分検討を加えておる段階でございますし、またそれぞれの審議会におきましても検討を進めておる段階でございます。したがいまして、その内容につきましては今後の問題でございますが、基本といたしましてやはり農民老後保障をより改善していき、より充実していくということに重点を置くことになろうかと思うのでございます。したがいまして、基本的には社会保障制度一環と考えられるのでございますが、この制度の構成の過程におきましては審議会あるいは関係省等とも十分打ち合わせまして、その他の調整も可能であれば織り込んでいくということも考えられると思います。
  18. 華山親義

    華山委員 厚生省考え方といたしまして農民年金社会保障制度一環として行なうものであるということを私は了解いたします。それでよろしいと思いますけれども、これに農業的政策というものを加味いたしますと、社会保障的な色彩が薄らぐ、あるいは曲げられるおそれがある。したがって、農民には農民としての社会保障が必要だ、その観点に立っていかにあるべきかということでなければならないと思いますけれども、私のそういうものの考え方につきまして、先ほどの大臣お答えの中にはいろいろ離農についての問題といたしましてやりたいんだということもありますので、そういう点でややゆがめられはせぬかということを心配いたしますけれども、いかがでございますか。
  19. 園田直

    園田国務大臣 先ほどお答えいたしましたのは、あなたの御意見と同じ意見でありまして、離農をするとかその他のようなことにそれを使ってはならぬという意味でございまして、あくまで老後保障農業に従事する人の将来を考えてやるべきだ。政策的な意味を加えてはならぬという意味でございます。
  20. 華山親義

    華山委員 それでわかりましたが、そういたしますと、これを所管するのが厚生省であり、また社会保障一環として行なわれるということでわかりましたけれども、これを審議する、決定する過程におきましては、審議会といたしましては年金制度調査会ですか、年金審議会というものの審議を経、かつ社会保障制度審議会審議を経て行なわれるものと思います。そういうふうに了解すべきと思いますが、どうでありますか。
  21. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま先生御指摘のとおり国民年金審議会におきまして、昨年春以来本会議におきましても検討いたしておりますし、さらに農民年金部会におきましても、農民のニードと特殊性を中心として検討を進めておる段階でございます。さらに関係省におきましても十分協議をいたしておる段階でございますので、もう少し煮詰まった時点におきまして、国民年金審議会農民年金部会及び本会議におきまして、明年度年金制度全体の改正方向を見きわめつつ妥当な結論を出したいというふうに考えておる次第でございますが、その結論が出ました暁におきましては、御指摘のように当然社会保障制度審議会に諮問するという運びになると思います。
  22. 華山親義

    華山委員 農林省のほうに伺いますが、この前伺ったところによりますと、三月末までに農民年金調査会研究の結果が出ますので、それによってさらに審議を続けたいということで答申待ちのようなお答えでございました。その後一カ月を経ておりますが、調査会からはどういう答申がありましたか、伺いたい。
  23. 大石武一

    大石委員長 農林省はいま委員会提案理由説明をしているそうですから、恐縮ですが農林省はちょっとお待ちください。すぐ参るそうですので、なるべく別なほうの質問をやってくださいませんか。
  24. 華山親義

    華山委員 大体農林省お答えを聞いてからまた進めようと思ったのでございますけれども、まあそういうことでございますから一応中断……。大臣、何時までおられるのですか。
  25. 大石武一

    大石委員長 これから一時間くらい特別におられるそうですから。
  26. 華山親義

    華山委員 それでは、この問題はあと農林省お答えを聞きましてからまたお尋ねいたします。  ほかのことに移りますけれども大臣といたしましてはあるいは聞いておいていただくだけでいい問題もあるかもしれません。会計検査院留意事項について伺いたいと思います。何ぶんにも決算というのは、各省に全部またがってやらなければいけないし、私もそうすみからすみまで法律を知っているわけでもございませんので、お聞きすることがあるいは妙なことを聞くとか、幼稚なことを聞くものだというふうになるかもしれませんが、その点ひとつ御了承の上、教えていただきたいと思います。  急に厚生省ということにきまりましたので、下勉強も少なかったかと思いますが、御了承願いたいと思います。  そこで、会計検査院報告によりますと、留意事項といたしまして、地方に対する精算的な事務と申しますか、前年度以前の交付が非常におくれておるということが指摘されております。この点について伺いますけれども会計検査院のほうでも指摘しておりますけれども、われわれから見ますとまことにどうも、三年も四年も前のものまでまだ未決定だという状態、大臣はそういうことのないようにこれから万全の努力をするということでございますけれども、具体的にはどういう努力をなすったのか。これからどういう方向でこれを改善されるおつもりか。これは事務能力の問題であって、特に会計検査院報告を詳細に見ますと、地方報告がおくれたということよりも、地方報告に対しまして本省処理がおそいということが主たる原因のようにも見えます。今後本省においてどういうふうにしてこれを早く片づけることをなさいますか伺いたい。
  27. 園田直

    園田国務大臣 補助金等担当各課において、機会あるごとに、補助事業者等に対して事業実績報告書提出期限厳守等について十分指導督励するほか、御指摘のとおりに、額の確定事務促進するために実績報告書提出期限に応じて区分整理し、少なくとも毎四半期分取りまとめ随時交付額確定を行なうよう厳重に指示するとともに、官房会計課に常時補助金等確定状況を明確にする体制を整えて、補助金等交付額確定の一そうの促進をはかるべく処置したいと考えております。
  28. 華山親義

    華山委員 これは私もよくわからないので、幼稚な質問かもしれませんけれども、前年度の分を精算的にする。また金を交付するというふうなことが行なわれるわけでございますか。
  29. 高木玄

    高木政府委員 会計検査院から御指摘を受けましたものは、補助金の額の確定事務が非常におくれているという点でございます。この額の確定が非常に遅延いたしておりますのは、補助金等事業実績報告書、この提出を求めまして補助金の額の確定をするわけでございますが、この提出期限間接補助金等につきましては、つまり県を通して市町村に出すというような間接補助金等につきましては、翌年度の五月末日ないし六月末日がその提出期限になっております。その提出を受けまして初めて補助金の額を確定する。その確定事務が内部の事務遅延等によりまして非常におくれた。この点の御指摘を受けたわけでございます。
  30. 華山親義

    華山委員 確定をいたしますと、足りない分はこれをまた地方交付するわけでございますね。
  31. 高木玄

    高木政府委員 確定の結果もし補助金超過交付になっておりますればその額の返納を求め、不足の場合にはそれを追加交付する、かように相九ると思います。
  32. 華山親義

    華山委員 一つの例として伺いますが、保育所事業費といいますか、施策費といいますか、そういうふうなものが実際よりも初めに何か地方から要求がありまして出すのですか。いまおっしゃった五月までに報告があってはじめて前年度の分を出すことになりますか、どういうことになりますか。
  33. 渥美節夫

    渥美政府委員 当該年度保育所に対しまする措置費を国から支弁いたしますが、それは当初の予算で見積もられました金額につきまして、概算交付をいたすわけでございます。ただいま会計課長が御説明いたしましたように、精算を待ちまして確定する、その場合に余った分の場合には返していただく、それから不足の場合には追加して交付する、こういうふうな手続をとるわけでございます。
  34. 華山親義

    華山委員 地方から返してもらうのは別問題といたしまして、足りないから地方交付する場合には、予算というのはどこから出るのですか。その年の前年度なら前年度出納期までの問題として取り扱われるのか、翌年度予算から出るのか、その点どういうふうになっておりますか。
  35. 渥美節夫

    渥美政府委員 予算支出のしかたにはいろいろあると思いますが、たとえば当該年度におきましての予備費で出す場合もございます。あるいは翌年度の場合には補正予算というものを組んで出すという方法もあろうかと思います。
  36. 大石武一

    大石委員長 華山さん、農林省から農政局長が参りましたから、そちらを先にしてもけっこうでございます。
  37. 華山親義

    華山委員 それではあとでまたお聞きいたします。農林省がおいでになったそうですけれども農民年金について三月の末までには農民年金研究会ですか、そこからの研究結果を得て、それに基づいて厚生省ともお話し合いをするということであり、いま伺えば厚生省のほうでは農林省のほうからのそういう結果に基づいたものによってさらに年金審議会の小委員会等審議したいということで、農林省からの答申を、出方を待っているようなお話でございましたけれども調査会からの答申は三月末までにはあるということでございましたけれども、もう一カ月もたっておりますから、当然出たことと思いますけれども、その内容をひとつ概略を御報告願いたい。
  38. 森本修

    森本政府委員 研究会のほうで鋭意検討を進めていただいておりますが、結論的に申し上げますと、まだ最終的な答申といいますか、報告は私どものほうではいただいておりません。何ぶん御案内のように、研究会としましては昨年来地方に参りまして、各種の実態調査等をいたしております。また学識経験者等からもアンケート調査といったようなこともやっております。そういう面と実態面年金のあり方について検討してまいりましたものとよく突き合わして、最終的な練り上げをしたいということで、多少慎重といいますか時間がかかっておりますけれども、間もなく私どものほうに取りまとめをして報告があるものというふうに思っております。
  39. 華山親義

    華山委員 この前は三月末までということでございましたが、いまになって間もなくということでございますけれども、いつごろなんです。
  40. 森本修

    森本政府委員 ちょっと最終的な研究会の開催の日時はまだきまっておりませんが、私どもとしてはできるだけ早くということを言っておりますので、そう遠くない将来にお取りまとめができるものというふうに期待をいたしております。
  41. 華山親義

    華山委員 そういたしますると、調査会の何らかの答申といいますか、そういうものがまいりますと、さらに農林省でそれをもとにして農林省のものの考え方をきめなければいかぬわけですね。どうなんですか。
  42. 森本修

    森本政府委員 私どもが伺っておりますのは、研究会としましては基本的な考え方なりあるいは内容の主要な点ということでやっていただいておるようでありますが、もちろんそういう考え方自体についても多少政府として検討を要する点もありますし、またそれを実施に移しますには、細部にわたっての検討が必要であろうというふうに考えております。
  43. 華山親義

    華山委員 そういうふうな調査会答申をもとにして農林省研究をなすって、それを厚生省に持ち込んで、そうしてまた厚生省のほうではこれを年金審議会の小委員会にかけて、そうして今度は年金審議会の総会にかけて、そして今度はそれを社会保障制度審議会にかける、こういうふうな順序になりますならば、とても常識的には来年には間に合わないのじゃないでしょうか。どうなんですか。
  44. 伊部英男

    伊部政府委員 社会保障関係のことでありますので、私からお答え申し上げたいと思いますが、従来厚生年金あるいは国民年金その他の問題にいたしましても、やはりたとえば五年ごとの再計算をするとか、非常に重要な改正になるのでございます。したがいまして、通例の予算は八月末までに編成をいたしまして大蔵省に提出をするわけでございますが、八月末までというわけにはなかなかまいりませんで、大体秋に審議会意見が煮詰まり、それと同時に政部部内も関係省あるいは財政当局と打ち合わせをして、予算に織り込んで、最終的な政府案の形を国民年金あるいは社会保障制度審議会に諮問するという手順でございます。したがいまして、この問題につきましては、すでに基本問題をそれぞれの省におきましていろいろな形で研究が進んでおりますし、また前年度におきまして基本的な相当大規模な調査も実施いたしておりますので、この進行ぐあいで、従前の厚生年金あるいは国民年金改正等をした経験から申しまして、十分四十四年度に達成し得る、かように考えております。
  45. 華山親義

    華山委員 私は新聞の切り抜きを持っておりませんが、何かアンケートをなさったとおっしゃいますけれども、アンケートをなさったところが、農民年金というものについてはアンケートの結果は反対が多いということを新聞に厚生省の発表として、正式に発表なさったかどうか知りませんが、厚生省のほうから出たということが書いてありましたけれども、その事実はどういうことでありますか。
  46. 園田直

    園田国務大臣 これは昨年厚生省で行なった国民年金改善の調査で、農民の方が老後農民年金にたよりたいという回答がわずか七%であったということだと思いますが、これは数字だけを見てやりますとそうでございますが、あるいは調査のやり方がまずかったのかどうかわかりませんが、この中で農業経営をまかせたあと老後の生活をどうするのかという調査をすればよかったのですが、その中に自分で働ける間は自分で働きたいという回答が七〇%あったわけでありまして、その七〇%のあとの率を言っているわけでありまして、数字が七%であったということは、何も農民老後農民年金にたよりたいという気持ちが少ないというのじゃございません。やはりどんどん農村の家族も核化いたしておりまして、農民の中で老後農民年金にたよりたいという率はどんどん上がって、しかも熱心になっておる、こういうふうに判断いたしております。
  47. 華山親義

    華山委員 それじゃいろいろなことで、他の委員大臣の御出席時間中に御質問したい方がおありなそうでありますから、私はいまここでやめますけれども、一応私ここでお伺いをいたしました結果、農民年金は、これは社会保障一環であるということ、特にこの中に特有な農政の問題を持ち込むものでないということ、それから、この審議にあたっては年金研究会あるいは社会保障制度審議会審議を経て、厚生省所管のものであるということ、こういうことだけはわかりました。  じゃ、ここで私一応打ち切りまして、厚生大臣いらっしゃる間に御質問なさる方あったらひとつ……。
  48. 大石武一

  49. 赤路友藏

    赤路委員 実は、厚生大臣質問をするべき筋ではなさそうなんで、官房長官に出席を求めましたが、出られないということで、ひとつ厚生大臣に私のほうからお願いをする、こういう形になるかと思います。  先ほど大臣のほうから決算に関する説明をお聞きいたしましたが、この説明の中の第四、原爆障害対策費、これがあります。これは当時内地爆撃でやられた、特に原爆の障害者に対する対策費である。また第五は恩給関係費のうちの遺族及び留守家族等援護費でありまして、これは当時の戦争の犠牲者に対する対策であります。いろいろ四十一年度決算面を見てまいりましたが、当時内地で爆撃を受けた被害者に対しては何もしていない、調査すらもできていない、こういうような実態ではないかと思う。そう考え合わせてまいりますと、たとえば軍人恩給につきましては遺族の団体がある。あるいはまた海外引き揚げ者につきましては海外引き揚げ者の団体がある。あるいは農地問題にいたしましてもそのとおりなんです。それぞれ戦争の被害を受け、戦争によって犠牲を受けた方々はそれぞれ団体をつくって、団体の力でもって、もっと率直に言いますと政治圧力をもって自分たちの立場を守っておる。ところがこの内地で爆撃を受けた方々にはそういう団体がない。力がないからというのでほってある。しかも戦後もうすでに二十年になるのでありますが、これはかなり大きな問題ではないか。実はこの点については厚生省所管ではないかと思いまして、きょう質問をさせていただくつもりでありましたが、どうもあちらこちら調べてみましたが、所管が明確でない。所管官庁が明確でないということはやっていないということであり、またやる気がないとも解釈できないではない。  ここに三月二十九日の週刊読売がありますが、特別企画で「日本空襲」というのをやっておる。私はこの一番トップに書かれておることを読みまして非常にショックを受けたのですが、「美濃部東京都知事に三月十日、一人の老女から一通の手紙が舞いこんだ。「二十三年前のあの三月十日の大空襲で、墨田公園で主人をなくしました。あれから、身寄りもなく、館山(千葉県)でお寺のご厄介になっています。軍隊で死んだ人の遺家族には年金が出ていますが、戦災者にはなぜ出ないんでしょうか」」こういうことなんですね。これはそこらのお店屋さんで売っておるわけですから、ここにおいでの方々もおそらく相当お読みになっておると思う。読んで数字を見、そのときどういうふうにお感じになったかは私は存じません。しかし、何かこうマンネリズムになったというのですか、あまりぴんと感じておらないように思うわけなんです。  これは私は質問というのではない。ここに数字が出ていますが、その数字を全部一ぺん合わしてみました。北は北海道から南は九州鹿児島まで、ずっとそれぞれ死者の数、負傷者の数、それから家屋の被害、こういうものが数字的にあらわされてきておるわけです。この死者の数を全部総計いたしますと死者が四十五万五千九百十八人、これは内地の爆撃で死んだ死者。それから負傷者が三十六万三千五百九十二、家屋は二百五十二万一千二百十八、こういうふうに数字が出ておるわけです。この数字がどこまで正しいものであるかは私にはわかりません。しかし、読売のほうでは、爆撃を受けた各被害地でかなり押えてきた数字ではないかと思う。読売新聞がここまで数字が出せるわけなんです。そうすると、もっと正確なものが——これがかりに正確でないとしますならばですね。もっと正確なものが政府のほうで出せるはずですね。一新聞社が出せるものを政府が出せないということは私はないと思う。私はこの数字を見てみまして、たとえば広島の死者は二十万二千九百九十七、これは原爆で、これが死者の数としては一番大きい。次は東京です。九万六千三百十八。ずっとこう見てまいりますと、各県の爆撃の規模の大きさ、そうしたものとこの数字とがかなり合っておる。だから、全然根拠のないものではないと思う。ただ、これだけの膨大な被害者が国内においてあった、それに対してほとんど何の措置もとっていないというところに問題があるのじゃないかと思う。もちろん国の財源には限度があります。何ぼ何とかしたいと思いましても、救いたいと思いましても、財源がなければやれることではない。ただ、私が遺憾に思いますことは、政治圧力があったら聞くということ、政治圧力に押されてその人たちの言い分は聞いておるが、全然力のない者に対しては何もしてやれないという、ここに私はやはり問題があるのではないかと思う。いずれこれは政府のほうでその所管をきめて、その所管官庁が中心になってぜひやってもらわなければならぬ問題だと思います。したがって、このことを厚生大臣に申し上げることはやや筋が違うかもしれません。しかしただ、私はお願いしたいことがあるのです。官房長官も出てまいりませんし、副長官も出てきませんので、園田さんにお願いしたいのは、ぜひ何かの機会に閣議でこれを出してほしい、そうして少なくとも政府の態度を明確にしていただきたい、これだけをお願いするわけです。別段答弁を求めてどうこうという問題ではありません。当然やっていただかなければならない問題、それが今日まで放置されておる。しかももっとむき出しで申しますと、どちらかというと各官庁ともに逃げ腰になっている。それでは私はいかぬと思う。この際やはり前向きの姿勢で取っ組んでいただく。このことをひとつ厚生大臣にお願いをいたします、こういうことでありまして、別段答弁を求めてどうということではありません。お願いいたします。
  50. 華山親義

    華山委員 中断いたしましたが、先ほどの問題を取り上げますけれども精算段階において金が足りないというふうな場合には予備費ということをおっしゃいましたね。これは一般会計予備費と思いますけれども、そういうものは出たことがあるのですか。
  51. 渥美節夫

    渥美政府委員 私の所管の範囲におきましては、過去におきまして予備費で出したこともございます。実は昭和四十二年度の児童保護措置費につきましても、予備費で出したものでございます。
  52. 華山親義

    華山委員 それはこの予備費というものは、私間違えておるかもしれませんけれども、この決算書によりますと、職員の給与の引き上げ等について予備費で出ていて、措置費自体について予備費から出ているのではないように見えます。この点どうなんですか。
  53. 船後正道

    ○船後政府委員 ただいまお話しの児童措置費等を含めまして厚生省所管のいわゆる精算補助の系統に属する経費の予算上の扱い方でございますが、これは先生御承知のとおり、最終的には精算額によって金額を確定する、ところが精算事務というのは、翌年度になりまして各事業主体である市町村なり府県なりが決算をいたしまして、実績報告書を持ってくるという手続が要りますので、中央で数字が集まりますのは、何と申しましても八、九月のころになるわけでございます。そういたしますと、そのころになりますと、当該年度予算はもはや使用できませんので、その精算額に対して不足があるという状態でございますれば、その翌年度予備費で措置するかあるいは補正予算で措置するかあるいは翌々年度の当初予算でその額を計上するか、このいずれかの手段をとってまいるわけでございまして、どの手段をとるかはその年その年の財政事情によって違っておったわけでございます。  ところで、たとえば四十二年度のそういった義務的経費につきまして、実行過程でもって不足する見込みが非常にはっきりしてきた、第四四半期に至りましてかなりの不足がはっきりしてきたというふうなことになりまして、なお予備費の残額があるという状態でございますと、これはいわゆる補充使途的な経費でございますので、予備費支出の理由になるわけでございます。予見しがたい予算不足という理由に該当いたしますので、そういった場合には当該年度中でありましても見込みによりまして若干の予備費を追加する。精算はもちろん一番初めに申し上げましたように正式な手続を経ますので、これは半年以上おくれるということで予算措置をいたしてまいっておるわけでございます。
  54. 華山親義

    華山委員 今後もその方針に変わりございませんな。
  55. 船後正道

    ○船後政府委員 もちろん精算経費の扱い方は原則としてそのような方向でまいりたいと存じますが、ただ四十三年度予算につきましては、御承知のとおり編成方針といたしまして、恒常的なる補正要因を排するという状況で編成されておりますので、四十二年度精算不足につきましていかなる措置をとりますか、これは四十三年度予備費で措置するかあるいは場合によっては四十四年度の当初予算に見込むか、こういった手段になろうかと存じますが、いずれにいたしましても精算の金額はここで補てんするという方向処理するわけでございます。
  56. 華山親義

    華山委員 最近厚生省から出された通牒でございます、それによりますと、従来の例とは違って各指定都市及び府県につきまして一定のワクを与えたような通知が出ておりますけれども、これはどういう意味でございますか。なぜことしこういうふうな金額のワクを示したのでございますか。従来のような精算であるならば、これはそれでいいようなことであって、その前に出ているところの、資格のない人を入れてみたり、資格のない人から金をとらないようなことのないようにしろということは私にもわかりますが、それだからといって、それに関連しておまえのところはこの程度だというようなワクを示したということ、これは一体どういう意味なんですか。
  57. 渥美節夫

    渥美政府委員 児童福祉施設に措置されている子供たちにつきましては、その必要に応じまして施設におきまして指導教育をすることにしておるわけでございます。そこで、児童福祉施設の中で保育所につきましては、先生御承知のとおり最近非常に需要が多いわけでございます。したがいまして国で支弁をいたしますところの保護措置費も逐年相当大きな金額になっていることは御承知のことと思うのでございます。ところでまた一般的に子供に対する保育の思想というのは、都市農村を問わず非常に普及してまいりまして、非常な需要の増大になってきておるわけでございます。ただもちろん児童保護措置費は国費でございまして、一般に適確に使用するように指導するのは当然厚生省の私どもの仕事であると思っております。したがいまして従来から児童福祉施設、特に保育所につきましては適正にその保護措置費が使われるように指導督励をしておるわけでございます。したがいましてその需要の増大と経費の適正な使用、ここいらに両てんびんにかけてなかなかむずかしい問題があると思いますけれども、しかしながら国といたしましては当然適確に保育にかける子供たちを保育所に通わせるということに邁進すべきものである、かように考えております。そういう意味で従来からも保育所措置費につきましては適確に使用するように通知を出して督励をしてまいったのでございまして、四十三年度におきましてもその趣旨にのっとりまして行政を行ないたい、かように思っておるところでございます。  先ほど先生のお話のありましたように、県につきましては、大体当該県におきまして四十三年度におきましてはこの程度の予算額が見込まれるということの通知を出したのも、先ほど申し上げましたような趣旨の一端にほかならないのでございます。それはいわば目標ワクといいますか、そういうふうな見地から示したわけでございます。的確な保育行政が行なわれるように指導した一環である、かように私どもは考えておるわけでございます。
  58. 華山親義

    華山委員 前のほうにおっしゃった趣旨は私はよくわかるわけであります。運営について、経費はまた的確でなければいけない、それはわかります、そこまでは私は依存はありません。これは会計検査院でもほんとうにやってみたらいい。無資格のものに入れてみて金を取らなかったりいろいろなことがあるということはいけないことだと私は思いますから、そこまではいいのですけれども、金額を示してやるということになると、一般市町村では、じゃこのワクの中でやらなくちゃいけないんだなということになるじゃありませんか。またあなたのほうから出した通知というのは、そういうふうに響くのですね。先ほどお伺いすると、精算のことは従来と変わりがないのだ、こういうことなんです。そうだったならば、何もワクを示さなくたっていいわけなんです。なぜこういうワクを示したのか。へたいたしますと、無理をしてでも市町村はそれに押し込んじゃって、そして保育行政といいますか、保育所の機能がそれだけ削消される傾向が出てこないかということを私はおそれる。そうして私の聞くところによりますと、大体大都市等についての資料しか持ちませんけれども、これらの都市の考えておったところの、あるいは予算として計上しておったところのものの七〇%あるいは八〇%しかこないワクをはめる、ワクは七〇%ないし八〇%ということなんです。非常な恐慌を来たしているわけですね。そういうふうな、何か一定の金額のワクにはめ込めてしまうという意図があって出されたとするならば、私は大きな誤りだと思うのです。またそういうふうな誤解を起こすような通知というものは、私は社会保障の原則から申しましてもおかしいと思うのですね。この点どうなんですか。
  59. 渥美節夫

    渥美政府委員 四十三年度予算につきまして、その問題に関しましたことなので御説明さしていただきたいと思いますが、四十三年度における保育所措置費につきましては、昨年の四十二年度の当初予算よりも約四十五億ばかりふえております。しかも保育所に入所をさせる子供たちの数も、四十二年度に比べますと六万人もふやしておるわけでございます。そういうふうなことで、私ども保育所行政の重大性にかんがみまして、この保育対策は積極的に意欲的にやるという体制で進んでおるわけでございます。したがいまして、保育行政を決してそのままに据え置くというふうな意図は毛頭ございません。大いにやろうという考え方でございます。同時にまた、各都道府県におかれましてもいろいろな保育の行政をやっていらっしゃるわけでございます。したがいまして、ある程度の目安というものも置いていただかないといけない、こういうふうな見地に立ちまして今回は、四十三年度におきます一応の予算額といいますか、金額を示したにすぎないのでございまして、保育行政自体につきましては、その予算的な手続といいますかやりくりといいますか、この点につきましてはあまり問題はない。したがいまして従来のような保育所の整備計画あるいは保育所に子供を入れて十分に教育をするという体制は、何ら変更はないというふうに考えております。
  60. 華山親義

    華山委員 くどいようですけれども、何ら変更がない、目安を示した、そうしてこまかい数字を示して、おまえのところにはこれだけの金でいきますよ、こうやったら、その範囲に狭められるのじゃないですか。各都道府県というものは、私も府県の役員をいたしましたけれども厚生省の言うことは絶対なんです。おれの言うことは絶対なんだということを考えて通知を出してもらわなければ困る。これがたとえば指定都市でないところの県庁に行きますと、県庁ではその金額で計算をして、おまえのところはこれだけの金額なんだといったら、その中へ押し込めるか、超過負担をするか、そういうことになってしまうのですね。それからまたあなたのほうから示された、したがって県庁から示されたものよりも精算した結果大きな金額が出ても、これは厚生省から示された金額、県庁から示された金額よりも多過ぎるというので、それに合わせるようなくふうをするかもしれない。しかし先ほどお聞きしますと、精算事務というものは従来と変わりがない、こういうことであるならば、金額等にワクをはめるというふうなことはこれは出過ぎているんじゃないか。何かそこへおさめようおきめようとするものの考え方があるからじゃないですか。
  61. 渥美節夫

    渥美政府委員 先生から七〇%くらいに四十二年度より減額になっているというふうなお話がございましたが、実は私先ほど御説明いたしましたように、四十二年度予算につきましては、保育所に措置される子供の数は全国的に六万人もふやしておるわけでございます。予算額も四十二年度当初予算に比べまして四十億以上ふえておるわけでございます。したがいまして、一応そういった四十三年度における各都道府県ごとのワクというものもその分だけふえているわけでございまして、その六万人という増加の定員につきましても、実は私ども昭和四十年に全国の要保育児童調査を行ないましたその結果によりまして、昭和四十二年度から約五カ年の計画によりまして、三十万人の子供を保育所に新たに措置しょうというふうな計画の一環でございまして、したがいまして、その数字を示すことによりまして、各都道府県ごとに保育児童を据え置くとかあるいはふやさないということに相ならぬ、かように思っております。また、御承知のように、四十三年度におきましては予算全体が一応総合予算主義をとっておる関係もございまして、一応の目安といたしましての金額を示しただけにとどまるわけでございまして、もちろん大蔵省主計局のほうからお話がございましたように、精算補助というようなたてまえには全く変わりがないわけでございまして、そのような考え方で進んでいきたいというのがその通牒の内容でございます。
  62. 華山親義

    華山委員 私の言うことは少しおかしいかもしれませんが、ちっと聞き捨てにならないですね。総合予算主義だからああいうふうな通知を出したということは了解できない。総合予算主義だから精算事務に影響があるとかなんとかいうことになるのですか。これは大蔵省に聞きたい。総合予算主義というものは、とにかく法律では八〇%は国で持つんだ、実績によって精算をするんだ、そういうことと総合予算主義は何か関係があるんですか。
  63. 渥美節夫

    渥美政府委員 いま私総合予算主義というふうなことばを申し上げましたが、精算につきましては、当然その精算によりまして必要な額を十分の八を国が負担するということには何ら変わりがございません。ただ、全体として、四十三年度予算につきましては一応の目安というものを立てていきたいというふうな気持ちにほかならないわけでございます。
  64. 華山親義

    華山委員 あなたは衆議院議員の私に対してはそうやわらかく目安という程度で言われますけれども、末端の市町村はあの通知はそういうふうには響きませんよ。そうしなければいけないんだということになっちゃう。それで、この制度は金によって束縛されるものじゃない。金によって束縛しようとするならば、八〇%というものを変えたらいい。その根本原則をそのままにしておいて、そしていままでの精算主義というものをそのままにしておいて、ワクを示すということは私は非常におかしいと思うのですね。一課長の名前で出されておりますけれども、私は非常にこのやり方というものはおかしいと思う。原則はいいです。厳密にやらなくてはいけないということは何度通知されてもいいと思う。しかし、金高を示すということは清算主義の原則に反する。何らかの意味で従来の清算主義は変わらないのだ。通知は出したけれども、これよりも少なかったものは取るし、多かったものはさらに従来と同じような方法でやるのだということを各市町村に徹底してもらいたい。いかがですか。
  65. 渥美節夫

    渥美政府委員 ただいま御指摘の児童家庭局の企画課長からの通知でございますけれども、もしいろいろな誤解が生ずるというふうな点がございますれば、従来のような方式である、清算主義であるということは前から言っておるわけでございますが、いまのような問題点や疑問等が特に生ずるというふうな場合におきましては、この点につきましては、さらに繰り返しまして清算主義の趣旨を徹底するように周知いたしたい、かように考えます。
  66. 華山親義

    華山委員 それからこの点につきまして、こういうふうなワクの中で努力するところの努力目標を示したのであるとか、いろいろなことが私の耳には入ってきて、各都市あるいは県庁等でも、これは社会保障につきましてこの問題ばかりでなくて、いわゆる清算主義をとっておるところの保護世帯の問題、そういうところまでみな全部及んでくるのではないか。そして、それがあなたの言われた総合予算主義と関連があるのではないか、こういう考え方を持っておりますので、それは誤解である、間違いであるということをよく徹底していただきたい。そういうことをいたしませんと、超過負担の傾向が起こりますし、また現在の単価——大臣がいないからぐあいが悪いのですけれども、これが児童保護施設措置費手帳、これは手帳じゃないです。こんな大きなものは手帳という名前——名前のことはどうでもいいです。これを全部見て研究をしなければ追及できないわけです。委員長見てごらんなさい、これが手帳なんだから……。いかに府県や市町村の役人というものが苦労しなければいけないかということがわかる。しかし、これをもっと簡略にしろということは、中身を勉強しておりませんからあえて私は申しませんけれども、これだけのことをやる。そしてこの中を見ますと、いろいろな点で、たとえば人件費にいたしましても、看護婦さんは二万円程度、こんなことで一体やっていけるのかというところが随所にあるわけです。この単価だけでも、いわんや今度の通牒によって超過負担だということをおそれるから私は申し上げたわけでありますが、なお七〇%と申しますのは、これは東京都で、あるいは京都で、これだけかかるであろうというふうな予算措置をしたかどうか知りませんけれども、それに対して今度の通知は七〇%であったということなんです。もしも東京だとか京都、あるいはそういうところの推算が間違いがなければ、八〇%の七〇%ですから、八〇%を持つべきところを七、八、五十六で、五割から六割しか持たないという結果になる。これだけ御注意を申し上げて要望いたしておきます。これはワクで縛らないようにお願いしたい。  その次にし尿処理の問題について留意事項がございますから伺いますけれども、この中にし尿をくみ取り運搬するところの業者について触れておりますね。会計検査院の先ほどの御報告にはそのことをおっしゃいませんでしたけれども、それが書いてありますね。書いてありますが、自治省はし尿処理についてのくみ取り運搬、それは業者にやらせるということを基本方針にしておる。ところが会計検査院で調べたところが、業者の取り扱いが悪い、こういうふうに言っておる。自治省としましてはそういうものを委託して業者にやらせるという方針をとる以上は、業者に対しましての指導等につきまして、特に留意しなければいけないと思いますが、自治省はいままでこの点についてどういう指導を市町村にしておるのですか。
  67. 林忠雄

    ○林説明員 自治省は毎年度の財政運営に関する通達等でこの問題に触れております。御承知と思いますが、「地方経費の効率化」という項目の中で、具体的にいいますと、「地方団体の事業のうち必ずしも地方団体が直接実施する必要のないもの、たとえば各種会館等施設の運営、し尿、じん芥の収集、処理」云々と書いてありまして、これらにつきましては、「各団体の実情に応じ地方団体の十分な管理、監督のもとにその民間委託または間接的経営等を推進するとともに」といういい方をして通知をしております。この通知の趣旨は、経営を効率的に使う上にこういうような仕事については地方団体の管理、監督を十分にやって、住民に対して迷惑をかけないような体制をとった上で、それを民間に委託するという方法も考えられるから、そういう方法もその団体の実情において考えろ、こういうことをいっておるのでありますので、民間委託を基本にしろといっておるわけのものではないと考えております。
  68. 華山親義

    華山委員 厚生省に伺いますが、時間が長くなりますから読みませんけれども、法律の趣旨によりますというと、民間委託を禁止してあるわけじゃない。しかし原則は直営なんです。ただし民間に委託した場合には云々と書いてあって、自分でやることが本則じゃないのじゃないですか。
  69. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 清掃法の中には、ただいま御指摘のように、やはり委託の問題あるいは許可業者ということが法律上きめられておりますけれども、法律の全体の基底を流れる精神というものは、やはり市町村みずからがこの責任をとるというところにあるわけでございます。したがいまして御指摘のような特定の条件のもと、非常に制約された条件のもとに初めてそういうものを認めておる、こういう趣旨でございますので、私どももやはり考え方として、清掃法の精神から見まして、直営というものが望ましい、こういう精神でございます。
  70. 華山親義

    華山委員 両省の間で矛盾をしておる。「必ずしも」という字もついておるし、「管理、監督のもとに」という文句もついておりますけれども、自治省の考え方というものは、財政を基本にして委託事業はやらしたほうが安上がりだということなんです。根本的にはそういうことなんでしょう。委託のほうが安上がりだから委託をさせなさい、しかしそれにはよく監督してやりなさい、こういうことなんじゃないですか。
  71. 林忠雄

    ○林説明員 私の所管外の財政のほうのことでございますが、いま先生おっしゃったように、そちらのほうが安上がりだということを重点的に言っておるのではないと私は考えております。財政は全体的には効率的に使わなければいけないので、それに応じていろいろな方法を考えろという一つの例としてあげておることば確かでございますが、ただいまの厚生省の御答弁のごとく、清掃の責任はやはりあくまで市町村が負うべきものでございまして、管理、監督が十分にできなくて、委託した結果住民に対して迷惑をかけるような処理のしかたをしておるとすれば、それは市町村の責任で、悪い。したがって市町村はかりに財政の効率化の面で委託するにしても、ここに書いておりますように、住民に対して迷惑をかけないように配慮した上で委託したほうが適当な場合には、委託をしたほうがいいということを指摘しておると思いますので、私は両省の考え方に差があるとは実は思っておりません。
  72. 華山親義

    華山委員 よけいなことを言わなくたっていいじゃないですか。よけいなことですよ。委託事業をやりなさいなんて言わなくたっていいじゃないですか。特に委託事業をやりなさいという、そういうものの書き方をすれば、委託事業でやらなければならないんだなと思いますよ。そうしてその中に、私も読んでおりますけれども、清掃事業ばかりでない、いろんなものがあった。市町村の直接やる事業をできるだけ縮小して、そしてこれを民間にやらす。そのほうが安くできるんだというものの考え方が根底にあるわけです。私はそういうものの考え方には相当の疑問を持ちますし、厚生省の言われるとおり、直営でやるのが原則だ、こういうふうに言っているわけです。それで、自治省よりも厚生省よりも私のほうが、ほかのことは私はだめですけれども、こういうふうな実態については私は知っていると思うのですね。まあ東京都と地方、それは違いますよ。違いますけれども、し尿処理というふうな仕事、とうとい仕事でございましょうけれども、こういうふうな仕事を  一日とにかくああいう職場の中でやるということ、これはたいへんなことですよ。だれが好んでこういう仕事をやりますか。とにかくこういう仕事をやる人は老人ではできない。若い人なんです。しかもこの若い人は次第に少なくなっているわけですから、地方公務員としての一応安定した給料と一生の間の生活の一応の保障、これがあるからこそやっておるのですよ。それを業者にやらせる。業者がそんな保障をしませんよ。業者にやらせると業者はもうける。給料は値切る。それだから人が少なくなる。人が少なくなるから集めなければいけない。し尿処理処理場まで持っていくのはたいへんだから途中で捨てる。それで農村あたりでは腸チフスが蔓延するというようなことはずいぶんある例なんです。もう少し実態を見て自治省はやるべきだと思うのですね。し尿処理を民間企業にやらせるなんということは私はもってのほかだと思うのですよ。清掃事業でも同じです。民間事業にやらして監督をして、その業者に対しましてこうしろああしろと言ったって、業者だってだれも自腹を切っているわけじゃない。もうけながらやっているんだから、どこかで手が抜ける。し尿処理については、これは私は重大な問題だと思う。私はきょうばいまここでは申しませんけれども決算の事項でいろいろ会計検査院の御教示を事前に総括的に受けた。その際に会計検査院の係官は、このし尿処理のくみ取り、運搬の欠陥というものを強く言っておられた。いまそういう実態において、これが改善されない場合において、うかつに自治省がそういう通牒を出されることについては、私は反省を求めたいと思う。きょうは責任の方がおいでにならなければ責任の方のほうから、私、またお聞きいたしますけれども、どうですか。
  73. 林忠雄

    ○林説明員 財政のほうからこういう通牒を出しますについても、常にそういう点十分に検討しておることと存じますが、さらに財政当局のほうにもよく話をして、十分検討いたしたいと思います。
  74. 華山親義

    華山委員 この中にはし尿処理のほかに、私はそれでもいいなと思うこともございますけれども、し尿処理のほかにいろんなものが書いてありますね。これは大体、私もその委員の一人ですけれども、私は反対したんですけれども地方制度調査会昭和四十一年十二月の答申からもとはきているんでしょう。しかし、大体調査会というものは、これは役人がつくるんですよ。それを出して、そうして何かやっぱり委員の御意見もあるでしょうから、その中でこう違ってくるんでしょうけれども、もとは私は自治省がお出しになったろうと思うのです。その中にいろんなことがありますけれども、たとえば言われたとおり、「実施する必要のないもの、たとえば」といたしまして「各種会館等の施設の運営、」まああまり大衆には関係のないことだと思うのです。それからその次に「し尿、じん芥の収集処理、」こういうふうな仕事を民間にやらせることは私はどうかと思う。それから「保育所の経営」ということがある。厚生省、どうですか。保育所の経営を民間にやらしていいのですか。
  75. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 保育所の問題は御承知のように公立それから私立それぞれございまして、公立でなければならないというふうには、いまの制度自体、また私たち運営も考えていない状況でございます。
  76. 華山親義

    華山委員 そうするとこの答申は、公立であって経営を民間にやらせるということなんです。公立の趣旨に反するでしょう。それから読んでいきますと「学校給食の実施、」とございますね。これは文部省に聞かなければいけませんけれども、学校給食の実施を民間にやらせるなんということは、はたして衛生的な処置というものがほんとうにできるのか。この点につきましては、私は、いっか問題になっております職業紹介の問題ですね。労働省の問題ともからんでくると思います。それから「庁舎の清掃管理、」これなんかは、掃除くらいは私は民間にやらしたっていいと思うし、ガラス窓を直すことなんかは県庁の職員は自分でできないからこういうのはいいと思うんですが、こういうふうに自治省というものは財政ということに相当目がくらんでいるんですよ。何でも安上がりの方法をやるという方向にいくというならば、私は、とんでもないことだと思いますし、し尿処理につきましてはひとつ再考を願っておきたい。このことを申し上げたいと思いますし、厚生省も監督といったってなかなかそうできるものでもないし、大体、し尿処理を自分が経営しようなどというお考えの人もいるかもしれぬから差しさわりがあるかもしらぬけれども、そんなに人格高潔な人はいませんよ。公共のために働こうと思ってそういう事業を経営するなんという人は私はあまりないと思う。もう少し実態を見ていただきたい。   〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 これから特に労働力の不足するときでございますから、その点注意していただきたいと思うわけであります。厚生省のほうも自治省のほうもよく考えておいていただきたい。御意見を伺っておきたい。
  77. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 し尿処理の問題につきましては、これは非常に重要な問題であろうと思います。いまの御指摘のございました収集運搬の問題につきまして、自治体との関係もいろいろあろうと思いますが、これは御指摘がございましたように、清掃法の趣旨が、これが主体であるべきだと考えております。厚生省といたしましては会計検査院指摘を十分考えなければなりませんが、指摘を待つまでもなく、清掃法の趣旨によりまして今後の指導をやっていきたい、かように思っております。
  78. 華山親義

    華山委員 それでは私の質問をこれで終わりますが、その点につきまして保険料の徴集の不当等につきましては昨年も申し上げましたところでございますのでことしは重ねて申し上げませんが、十分に徴集のできますようにひとつ御努力を願いたいと思います。
  79. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 吉田賢一君。
  80. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと予定外でありますけれども、せっかく主計局の次長が見えておりますので、劈頭にごく簡単に一点だけ伺っておきたい。なおこの問題につきましては、また正式にあらためまして詳しく伺う機会を別に持ちたい、こう思っております。  先年来大蔵省におきましてもだんだん御研究になり、またことしはアメリカまで事務官を派遣せられて御調査になり、あるいは財政審議会にもおかけになるとか聞きました、例の予算制度のPPBSの問題でございます。これにつきましてPPBSの導入と厚生省予算の関連点でちょっと伺ってみたいと思います。  厚生省予算には、別にこれからあとで聞くのですが、たとえば児童の養護施設がございます。特に民間の養護施設の食費の額の適否の問題であります。その他職員の給与の適当かいなやの問題があるわけであります。これはやはり受ける児童の立場はもちろんのこと、これを運営し施設努力する人々の立場も、また国のこの種の政策の実行の上から考えましても、基本的な一つの問題点になっておる様子なんでございます。そこで、全国に相当数できて次第に増加していこうとします養護施設につきまして、要するに児童の福祉施設一環でございますが、食費がもし栄養量に満つる程度に給与されない、組まれておらぬ、したがって、児童の体質並びに発育がよって非常に阻害される事実がある、こういうことがだんだん指摘されておっていまになっておるわけでありますが、としますと、この養護施設の運営の経費のうちの、いまのたとえば食費とかあるいは職員の給与というようなものにつきましても、食費のごときは栄養学的にどのようなものをどの程度与えれば何歳の子供には適当であるとかあるいは足りないとかいうことは、これはもう明らかでございます。したがいましてこの種の情報を集めるということは、これはもうたやすいことでございます。ところが現実におきまして、たとえば物価の変動ありいろいろな児童のための栄養物の価格の変動がありいたしましても、なかなかに適当な額の予算が組まれておらぬということになると思うのであります。そういうようなことを思いますと、これは一つの例でありますが、その前提となった一切の諸条件を、特にいまも指摘したような点につきましては、事前に十分に資料を準備してかかるならば、これは食費が足りないとか足りなさ過ぎるとか栄養に適当にあらずとかそういう問題は起こらぬ、こう思うのですがね。  それからもう一つ、たとえば老人の福祉対策といたしまして、いま定年退職後の老人たちは過剰でございますが、労働力過剰であることは国民公知の事実である。そこで職場開発の問題が爼上にのぼっておるのでありますが、これもきょうは事務当局に伺ってみたいと思うのでありますが、これとても全国的にどのような年齢層、健康、職歴、能力あるいは適当な登録というようなものは、これは行政的に指導すれば何でもないことなんですね。全国的にこれはすぐに掌握ができる問題でないか、こう思われます。  さらにまた指摘すると、たとえば児童遊園の問題であります。これも厚生省所管であります児童遊園の充実というものは、これはやはり児童福祉施設といたしましては現下非常に重要でございます。したがいましてあらゆる意味におきましてこれも重要施設の一つでありますが、人口分布であるとか年齢構成であるとか地域関係というものあり、これも客観的に資料の収集なんかさほどむずかしい何年も要する問題でないと思うのです。要するにいま指摘いたしました三つは、予算作成査定の上におきましてもそんなに困難な、多くの資料を何年もかかって準備するという必要はない、こう思うのでございますが、こういうような予算におきましてできるだけ早い機会に十分準備をして、そしてスタッフも養成してPPBSを厚生省予算に取り入れるという方向へ持っていってはどうだろうか、こういうふうに考えております。大蔵省としましても去年の実績がどうの、あるいは予算要求がどうのということを単に数字の上で、机を前にしてつき合っていくというような従来の簡易な御経験というようなことからずっと進歩して適応していく可能性があるのではないか、こういうふうにしろうとながら考えるのでありますが、この点はどうでございましょうね。
  81. 船後正道

    ○船後政府委員 PPBSの問題は、先生もよく御承知のとおりアメリカで主として国防省予算を中心に発達いたしました財政処理に関する一つの技術的な手法でございます。いろいろなややこしい手続もあるようでございますが、要するに一つの行政目的に対しましていろいろな手段がある。これはいずれも相互代替性がある、こういった諸代替案を深く検討いたしまして、どの案をとるのが最も効率的であるか、最小の費用をもって最大の効果をあげる方法は何であるか、こういうことをいろいろな最近の統計学あるいは電子計算機、こういった科学的な手法を駆使いたしまして追求する、こういう手段であるとわれわれは了解しておるわけでございます。  そこでアメリカにおきましても、やはり国防予算というような比較的目的もはっきりしておれば、これに対する手段もかなり物量的に比較が可能だというあたりに主として発達したわけでございまして、これを他の分野の予算にどのように応用するか、アメリカでも現在まだ開発の途上にあると聞いております。私が聞きました限りでは、たとえば社会保障関係の経費でございますと、そこに代替策というような問題がある。これにつきましては病院を整備する問題もございましょうし、技術者、医師を訓練する問題もありましょう、また新薬を開発する問題あるいは外科的な手段を開発する問題といろんな案があるわけでございまして、これをどのような時期的な点、どのように開発費用を投じながらやっていくのが所期の目的を達するのに一番いいかというようなことをいろんな角度から検討していくというふうに聞いておるわけでございまして、対象の選定ということもなかなかむずかしいように聞いております。やはり目的がはっきりしておって代替案の間に相互に比較が可能であるというようなことが必要なわけでございます。私どもも最近ようやくこの研究に取りかかったわけでございまして、今後は各省とも相談いたしまして——これはまあ何と申しましても各省の側におきましてやはりイニシアチブをとるべき問題でございます。先生も先ほど御指摘のように、いままでの予算の編成のしかたというものが必ずしも科学的じゃない、合理性に欠けるという点があったことはわれわれも、残念ではございますが、やはり認めざるを得ない。どうすれば国民の税金が最も効率的に使用されて所期の行政目的を達成し得るか、これはわれわれのみならず、各省真剣に考えねばならぬ点でございます。そうでございますので、先ほど御指摘ございました三つの問題でございますが、いずれも重要な問題でございます。これにPPBSの手法をどのように導入し得るか、今後検討してまいりたいと思いますが、その前にいま企画庁のほうで、いわゆるシステムアナリシス、これはPPBSの某礎になる手段でありますが、これの開発も検討しておられます。他方各省におきましては、いろんな統計データというものを整備いたしまして、問題が起こりますれば、すぐに効果測定ということが可能になるような体制もしく必要もございます。そういった準備も同時に並行して進めるという方向で今後進めてまいりたいと思います。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この間の委員会におきまして、実は国鉄の総裁に、四十六年に三兆円の借金ができる、またそのときには年間二千二百億円の利息を払わねばならぬ、膨大な赤字をかかえていくこの国鉄は、やはり予算制度、財政そのものの本質に取り組んでいくというような態度がなければ、いたずらに国に求めるというような考え方では解決しますまいということを私は切言したのでございますが、これも言うならば御提言を申し上げたのでございまするので、そこでアメリカにおきましても、国防省の予算から発達したことは著名なことでございますが、ジョンソン大統領が全省に向かって、やはり可能な範囲適用すべきことを声明いたしまして以来、これはたとえばニュヨーク市におきましても、あなたのほうの事務官も御調査になって指摘しておいでになりましたし、その情報もございますが、技術的なもの、原理等々につきまして、大学に人を派遣して研究調査せしめるというふうにしておる、こういうことでございますので、このコンピューターの使用の盛んなことが最近日本の企業上における一つの傾向らしゅうございますが、こんなときでありまするから、私はやはりある代案を持つという一つのあり方も大事らしい、重要な要素らしいですが、しかしその前にやはりあらゆる基礎になる情報をできるだけ正確に集めていくということが一番問題で、これが困難で、こいつには相当手がかかるらしく承るのでございますので、私はやはり私らの立場におきましてひとつ各省の実施官庁に向かっていろいろと御要請はいたしますが、大蔵省としましてもこれは予算作成の責任省で、査定なさる責任省でございまするので、特に主計局は八月から出てくる各省の予算を見ていかなくちゃならぬというお立場でありますから、これはもう日進月歩というよりも、刻々進歩する一つの予算作成の原理であろうと思いますので、やはり主計局が声を大にしておっしゃった財政硬直打開の一つの大きなきめ手になるというふうに、だんだんとみんな理解をし出したようにわれわれは考えております。せっかくのことでございますから、あなたがおいでになったことを機会に、いま三つの問題だけを御提示したのでありますけれども、どうか現実にひとつそちらも御研究になって厚生省にもおすすめしてもらいたい、こう思います。やはりおっしゃるとおり、国民の大切な血税でございますので、ぜひとも少ない経費でよりよい効果をああげて、そうして行政目的を達してもらうということを国政に対して期待しておる次第でございますから、どうぞこういう辺は、いわゆる政治性じゃなしに、中立的な立場におきまして、何党何派の問題じゃございません。これはもうPPBSそれ自身が政治的に中立と学者も言うておりますから、中立的立場におきまして、長い間の日本の予算制度の伝統はこの際に大きに飛躍をするときにきたんじゃないか、こう思われますので、ひとつせっかく御努力のほど御要望を申し上げておきます。  なお、これは財政制度審議会におきまして具体的にことし調査なさることになるのでございますか、その点どうなんでしょう。
  83. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど先生も仰せのとおり、先般の財政制度審議会の総会で、出張してまいりました者がアメリカの状況を御説明申し上げたのが現段階まででございます。今後さらにこのアメリカの制度を詳しく研究するというのが一つの勉強でございます。  それから、これを日本の予算制度にどういう手順で導入していくかということを、われわれ今後勉強せんならぬわけでございます。その際には、もちろん各省のほうにも可能性の有無、それからそのためにはどの程度の経費が要るかということも確かめていかなければなりません。そういった手順を終えました上で、いずれまた財政制度審議会におはかりする機会があろうかと思いますが、目下のところ、その点では具体的な計画はございません。
  84. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あなたはもういいですからどうぞ……。  厚生省のほうに伺います。きょうは、大臣がただいまおいでになりませんので、結論大臣にいただくことにいたしますが、皆さんは非常に重要な事務の中核におられますので、むしろ実質的には大事な御答弁もいただくことになるわけでありますので、どうぞそのおつもりで、締めくくりは別といたしまして、以下私の指摘する問題につきましてぜひともできるだけはっきりとしておいていただきたい。  第一点は、一番簡単なのでございますが、私は先般予算分科におきましてちょっとかいつまんで御指摘申し上げたんでございますが、例の児童手当の問題でございます。これはもう懇談会も何べんもおやりになっておるし、あのときはまだ意見がきまらぬとおっしゃっておりましたけれども大臣はかなり意欲的な御答弁になっておりましたので、もうそろそろ、あと二、三カ月いたしますと四十四年の予算が顔を出してくるわけでございますので、四十四年に日程にのぼるということであるならば、もう大体固まっておらなければいかぬと思うのでございますが、この児童手当制度は日本の社会保障制度の、言うならば最後の締めくくり的な形におきまして、それほど重要な関係にあり、全世界の先進国で実施していない国はなし、こういうのでございますことは、これもまた申し上げるまでもございません。でありますので、幾たびか各歴代大臣は積極的な御意見があったのでございますが、来年何らかの形で顔を出すのかどうか、どの辺までこれは固まっておるのか、その辺をこの機会に聞かしておいていただきたい。
  85. 首尾木一

    首尾木説明員 先般、児童手当問題につきましては児童手当懇談会におはかりいたしまして、現在検討中であるということをお答え申し上げたわけでございます。その後さらに一回児童手当懇談会が開催されまして、現在までのところ、先回申し上げましたように対象児童の問題あるいは制度の立て方の問題その他の問題をやりまして、前回は財源問題というようなことにつきまして各委員意見交換を行なったということでございます。ただ先回申し上げましたように、懇談会といたしましての具体的な結論というものを一本にしぼるというところまでにはまだ至っておりません。各問題につきまして、それぞれ非常にむずかしい問題がございまして、先生方の間でさらにいままでのこれらの討論を持ち寄りまして先般的に検討をする、それによって私どもが御要望いたしましたように、懇談会といたしましてはできるだけ早く結論を出すように努力をしよう、こういうふうにやっていただいておるわけでございます。私どもといたしましては、この夏ごろまでに最終的な結論をいただきまして、できるだけ来年の予算に間に合わせるように事務的には極力努力いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  86. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 一番の難点は、対象をいかにするかということのほかに、むしろ財政の問題、財源の問題、何千億円の金が要るというような考え方になっておるので、そこがともかくひっかかってしまっておるのではないかと想像されるのであります。これにつきまして実は大蔵省の考え方も聞いてみたい、こう思っておりますが、これはあさって聞くことにしたいと思いますけれども、政策の優劣というか順位が、社会保障はともかく、日本におきましてはできるだけ充実させねばならぬという位置を持っておる。それから児童手当の問題は解決しなければならぬことであるというふうになりましたならば、その方法、それから対象あるいは運営ないしは予算の問題につきまして弾力的に考えてはどうだろうか。あまりある一つの方法にとらわれてしまっては、この種の問題は成長いたしません。たとえば老人に対する国民年金の問題でも、私どもの友人である木下大分知事が国会の体験をもちましてぱっぱとやりました。そうすると、金額は少ないけれども、あちらでは絶賛です。そういったことが燎原の火のごとくなったということも私考えられるということになりますので、いま全国的に地方公共団体がそれぞれいろいろな意味で児童手当を出すことをやっておりますが、そういうことも思いますと、この段階で最終的な完璧を期する案を得なければ結論にならぬというお考え方よりも、もっと弾力的にお考えになっていくというのも一つの方法じゃないだろうか。これはやはり日本の国の財政事情もあることでありますので当然でございますが、そういうふうで懇談会もさることながら、そこは厚生省は主管庁といたしまして懇談会に特に折り入って御相談になって、そして何らかの結論を出して、一案二案、三案でもいいじゃありませんか、出すというふうに考えられぬのですか。だから、ここは代案も持ち、弾力的に考えるというふうに、ある一つのものだけをかたく持って、そして結論しなければいかぬというお考え方では、またことしだめになるんじゃないだろうか。また四十五年でやるというようなことになってきましては、これはどうだろうか。こういうことをやると、大臣の国会における答弁も信用できぬ。私ども速記録を読んでみますと、歴代大臣は積極的に答弁をしておられます。そんなものいきませんとか、とてもむずかしいでしょうとか、否定的な、消極的な意見を言う人は、だれ一人もないのでありまするから、私はやはりこの種の問題の解決はできるだけ早くしなければいかぬと思いますので、事務当局としましてもひとつ懇談会に十分にお話しになって、夏ごろまでなら夏ごろまでにほんとうに一、二、三の代案を持つぐらいにして、結論を得るというふうにいってもらうということが望ましいと思いますね。そうして来年度における財政の状況ともにらみ合わせまして、ともかく実施に移る、こういうふうに準備されたらどうだろうか。そうすると、大臣も初めからきめやすいと思います。もし四十四年度予算に頭を出さなんだら、総理にしましても答弁に対しまして追及を受けます。そういうことさえ私どもは思いますので、内閣の一つの重要な施策である、こういうふうにお考えになって、あなたら事務のほうは一刻も早く結論を得るように御努力願ってしかるべきだ、こういうふうに思っておりますが、どうでございましょう。
  87. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 大臣がすでにお答えをいたしておるかと思いますが、この問題につきましては、先生の御指摘のように、財政の問題その他いろいろと難関がございます。しかし、わが国の社会保障制度の中でいわば残されておる一番大切な部門でございまして、厚生省といたしましては担当いたしております省として、これはもう積極的に進めてまいりたい。先ほど担当しております事務のほうからお答えいたしましたように、四十四年度予算に間に合わせるためには、どうしましても夏ごろまでには何らか結論を出さなければなりません。そういう心づもりで積極的な取り組み方をいたしてまいりたい。その際に、先生がいま御指摘になりましたようないろいろな顧慮を払う必要がある、こう思います。  一枚腰、二枚腰というふうにいろいろと案もあるかと思いますが、それも十分に検討さしていただきまして積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  88. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 企画室長にお尋ねしておきたいのですが、大体国の負担すべき予算額はどのくらいというふうに踏んでおるのでしょうか。これは何も最終的な意味で伺うんじゃありませんが、数字はどの辺を去来しておるんでございましょうね。
  89. 首尾木一

    首尾木説明員 ただいま申し上げましたように、財源負担の問題で非常に大きな問題があるわけでございます。総額といたしましては、いつも申し上げておるとおりでございますが、これは規模によりましてかなり違うものでございます。かりに全子につきましてやるといたしますと、月額一千円というような少額にいたしましても年間三千億円費用がかかる。二千円にしますと六千億というような形になろうかと思います。それからさらに対象児童を二子以降ということにしぼりますと、対象児童は約半分になりますので、金額的に申しまして二千円の金額で約三千億円といったような金額になろうかと思います。いずれにしましても、そのような総額でございますので、もしそのような大きな制度を発足させるという前提に立ちますと、その総額を一般財源によるということはとうてい困難かと考えております。したがいまして、そういう際にそこに事業主の負担なり、あるいは本人の負担なり、あるいは国の負担なりというものをどの程度にかみ合わせるかということが非常に問題になるわけでございまして、その点につきましては、ただいまのところ、大体何割といったような結論というものを私ども持ち合わしておりませんが、しかしながら考え方といたしましては、そのような大きな制度になる場合には、やはり拠出制といったような形のものを頭に考えざるを得ない、かように考えております。
  90. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 時間がなくなってきましたのでごく簡単に要点だけ申し上げます。  民間の養護施設の食費が現実の栄養に足りないほどに少ない。それからまた、このような物価が上昇一途をたどっておりまするときに、大切な児童の栄養に足りないような食費を給与するということではいかぬ。同時にまた、職員にいたしましても一定の規格がございまして、これもなかなか少ない。民間の五十人以下というようなところではどうにもならぬ。首が回らぬような状態でございますが、優秀な人はそこで資格なしにいたずらに働かなければならぬ、こういうことになっておるのでございますが、この運営費につきまして、もっと物価関係等を考慮いたしまして、そして内容を充実する、そして児童福祉のうちのほんとうに重要な施設につきまして、できるだけ充実した運営ができ得るようにひとつ特に配慮してはどうか、こういうふうに思っておりますのですが……。
  91. 渥美節夫

    渥美政府委員 先生御指摘のとおり、児童福祉施設の中でも養護施設は非常に数も多く、そこに育っておりますところの子供も三万数千名というふうな数になっております。したがいまして、そこで生活する子供たちに対しまして、よい食事を提供するということと、その子供を指導訓練、教育していただける児童指導員なり保母さんの給与、あるいは職務環境を向上させるということは、まさに必須の問題であろう、かように考えて、私どもも逐年予算編成におきましては十分努力を払ってまいったところでございます。  食費につきまして申し上げますならば、四十三年度予算におきましては、四十二年度予算に比べまして一〇%以上の増額をしたのでございます。具体的な数で申し上げますと、四十二年度におきましては、一日一人当たりの食費が百七十円というものでございますが、四十三年度におきましては百八十七円、かようにアップしたわけでございます。この増額いたしました内容といたしましては、物価の値上がり分を補てんするとともに内容改善し、たとえばカロリー数におきましても、一般の子供のようなカロリーを摂取できるように考えたのでございます。しかしながら、百八十七円でも非常に少額だと思います。したがいましてこの点につきましても、来年度、四十四年度予算におきましても、さらにもっと改善努力をいたしたい、かように思うわけでございます。  さらに第二の問題といたしましての職員の処遇の問題でございます。この点につきましても、毎年行なわれますところの公務員のベースアップに見合うベースアップをいたすことはもちろんでございますけれども、さらに児童指導員なり保母がめんどうを見ますところの、一人当たりの子供の数を少しずつ減らしていくということによりまして、子供に対する教育の内容も向上される、こういうような見地に立ちまして、四十三年度におきましては、学齢児以下の子供に対しまして——従来は八人の子供に対しまして指導員、保母が一人というふうな、非常に負担がかかったわけでございますが、これを子供七人に対しまして児童指導員または保母一人というふうに配置いたすことによりまして、その労働環境の改善をはかることといたしたわけでございます。なお本年度におきましては、職員の方々の給与状況あるいは職場の状況、こういった実態調査を行ないまして、今後さらに改善すべき問題につきまして勉強したい、かように考えておるところでございます。
  92. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 二は、身体障害の児童を持つ、養護者の保険の問題でございます。これは身障者を子供に持っております親といたしましては、自分がなくなったあとどうなるだろうかということは、だれに聞きましてもほんとうの悩みらしいのでございますが、これを実際的に救済するために一種の保険制度を行なっておりますのは、神戸市その他あちらこちらで出てきたようでございますが、なかなかおもしろい施設のように考えられます。もし死亡いたしましたようなときに、残された身障児童にしかるべき金額を生活の必要費として与えていくという制度、これは国の責任でやるべきでないか。地方公共団体と申しましても、国の財政の硬直の余波を受けまして、今後かなり硬直すべきものと思われますので、こういったところでさえ現地の要請に応じて、このような施設が続々と行なわれるような現状を思いますと、ひとつ国が全責任を持って何らかの形で——方法、内容等々については、相当のまだ研究の余地はあると私は思うのですが、ひとつ踏み切って、来年は何とか頭を出されてはどうか、こういうふうに思うのですが……。
  93. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 この問題は御指摘のように、すでに一部の都市で実施をされておる状況でございます。厚生省のほうといたしましても、四十三年度予算に、このための必要な調査費を用意いたしておりまして、何とか実現いたしたいと考えておりますが、いまの考え方といたしましては、かなり広域なものを考える必要があるのじゃないかと思いますけれども、この四十三年度における調査費を十分活用いたしまして、この問題に対しては何とかめどをつけたい、こういう考え方で取り組んでおります。
  94. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 三は、老人福祉対策の問題でございますが、これは申し上げるまでもなく、厚生省の統計等によりましても、だんだんと日本人の年齢が老齢化しつつあるようでございます。医学の進歩、出産の減少、そして次第に平均寿命が延びてきた。四十一年におきましては女性は七十三・六一歳、男性が六十八・三五歳というふうな状態らしい。そこでこれのずっと先を思いますというと、昭和六十年には人口の一割以上が六十五歳以上になってしまう。六十歳以上といたしますと、一割四分四厘、こういう状況になってまいります。そこで民法も改正されまして、家督相続、家族制度崩壊、こういうときに老人の問題というものはどこも同じでありましょうけれども、日本におきましては将来非常に大きな問題になります。ところが現状を見ますというと、私、幾つかの老人施設をあちらこちら視察したのでございますが、どうも生きていきなさい、早う死になさいと言わぬばかりの施設のような感じがしてならない。言うならば生きる希望、生きる楽しみをあそこへ行ったら失ってしまう。現に入った人が三月目にはぼうっとしてお日さんに当たっておる。隣に棺おけがないかというような生活になってしまう。これじゃ一体何のための老人施設かわからぬ。一種のうば捨て山になってしまう。これは根本的に改めなくてはならない。ことに私は新しい職場開発、この点につきましてはあさって労働省から職安局長も来てもらうつもりをしておりますが、このようないまの施設におきまして、中高年齢層の労働力はダブついております。たとえば求人に対する求職の比率を見ましても、四十一年度は五十歳以上は五倍です。驚くべきことであります。新聞の伝えるところによりますと、新潟県の農業共済連の総務部長さんですか、五十五歳で定年になって百二十万円退職金をもらって、七十万円か、何かに使って、さらに仕事を求めて、まじめ一方の人だったと下僚は言っておりますが、まじめ一方の人が遺書をふところに抱いて自殺した、人生をはかなんで。こういうことを思いますと、これはやはり重大な問題がひそんでおると私は思います。言うならば家族構成がだんだんと、いわゆる核家族といまは言っておるのですか、核家族化と言っておりまして、夫婦きりとか、夫婦に子供一人とか、夫婦の片一方と子供とか、そういうふうな家族化してだんだんと家族構成が、人間が減っていっております。五人何ぼとかいっておったのが、いまはだんだん減っていきます。減った中で、六十五歳以上の老人が安穏に人生の最後をそこで生活するということば困難です。というようなことを思いますと、私は積極的な職場開発が重大ではないか。東京都もやっておるようでありますが、職場開発につきましては、さっきも主計局に言ったように、全国的にどこにどんな老人がいるか、年齢いかん、職歴いかん、健康いかん、そしてまた能力いかん、こういうものを全部すっかりと登録させちゃって、そして新しく生きる、言うならば新しい人生をそこに開拓さすというような協力をしなければいかぬ。職安へ行って五十、六十の老人が頭を下げて何か仕事がございませんか。これはあわれですよ、そんな卑屈ななにはいけません。もっと私は積極的に、労働力の開発そして職場開発をこの人らによってするといたしますならば、若年労働力の欠乏、そして中高以上がだぶつくという現状に対して、大きな新しい期待をし得るんじゃないか、私はこう思われますので、一挙両得です。まさに一挙両得です。こうなりますので、ここは労働省と横の関係になりますけれども、主管庁は労働省かもしらぬ。しかし老人に対する福祉施策の一環と考えるならば、厚生省であります。厚生、労働両省は一本になりまして、総合施策としまして積極的に職場開発をする。そして求職五倍というようなこんなだらしない状態を一掃してしまう。こんな状態で社会福祉あり、福祉国家途上にありなんて、そんなことは言えません。老人は早く死になさい、ちっとでもよけいスウェーデンのように自殺しなさいといわんばかりの状態でないかとさえ私は考えます。だからこの点につきまして老人問題はまだいろいろとございますけれども、一点だけきょうは御指摘申し上げます。ひとつ積極的に取り組んだらいかがでしょう。
  95. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御指摘のように老人問題というのは非常に大きな問題だと思います。家族構成が変わってきておりますし、さらに人口、年齢の問題がそういう状況になっております。老人ということば自体も改めたほうがしかるべきじゃないかというような、いろんな変化が出ておるわけでございまして、御指摘のとおりだと思っております。四十三年度におきましては、従来のいわゆる老齢福祉年金の増額でありますとか、あるいは支給制限の緩和をいたしますとか、さらにいわゆる老人クラブの増設の問題というようなことをいたしますが、同時にいま特に御指摘いただきました積極的な老人の適性、それを開発いたしましての就職のあっせんという問題、これに厚生省のほうといたしましても手をつけるつもりで、予算をお願いをしておるわけでございます。これはもちろん本格的に考えますと、労働省の問題になると思いまして、労働省とともどもにやらなければなりませんが、御指摘のような老人福祉対策の一つといたしまして、老人の適性あるいは簡易な職業のあっせんというようなものをやっております民間団体等に対して、特に大都市に近い地域、大都市を中心といたしました地域に四十三年度は限定をいたしますけれども、とにかくそういうような仕事に対しての補助等をいたす、こういうことで四十三年度には手を触れておるわけでございまして、御指摘のとおり、これは将来もっと大きく、本格的に取り組まなければならぬ問題でございますので、関係各省ともよく相談をいたしまして、今後この問題の処理は強力に進めてまいりたい、かように考えます。
  96. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 答弁は要りませんけれども、四十四年に骨格を打ち出していかれることを特に御要望申し上げておきます。  それから第四に、都外の医療施設の医師不足ということは至るところで聞くのでありますが、非常に重大な問題であります。はたしてそれの原因は何にあるのか、不足実態いかん、そうして国民の保健みたようなことに地域格差があってはならぬと私は思うのです。やはりどんな山間僻地に住もうとも、国が保健につきましては相当な責任を感じていかなくちゃならない。ところが公共の医療機関におきましても医師が不足して困るということはしばしば聞くことでございますので、山間僻地の無医村をなくするという、ああいうような素朴な考え方でなしに、具体的に病院を持ち、そして医師を出す。そして病人がそこらに多くおるが、町に出るのにはそれぞれの経費が余分に要る、こういうような状態がずいぶんとあるのでございますので、これはひとつ目をかえて、もう少し正確なデータ、詳細なデータをもとにいたしまして、これが具体的実態、解決の対策をひとつ論議してみなければならぬ、こう思っております。この点につきましてあなたのほうで相当な御用意もあると思いますが、きょうは時間の関係もありますので多く答弁は要りませんが、ぜひとも十分に御調査になって、これらの対策というものを抜本的に立てるということを、ひとつ検討してもらわんならぬと思っております。それはよろしゅございますか。
  97. 谷垣專一

    ○谷垣政府委員 御指摘のように、医師の不足という問題が非常に大きな問題になっておりまして、この対策に苦慮しておるわけでございます。現在全国の医師の数がおよそ十一万一千名ぐらいございます。これは前年に比べまして千三百九十人の増になっておる状況でございますが、医師の絶対数が医療需要の増加に比較いたしましてとにかく不足をいたしております。この問題が一つ。それから医師の偏在の問題でございますが、これは地域的にかなりアンバランスがございます。ことにいま御指摘になりました、いわゆるへんぴな地域におきまする不足の問題は深刻でございます。これらの問題に関しましては医師の養成そのものから始めまして、対策を講じていかなければならぬと考えております。先生の御指摘になりましたような問題は、これは単に厚生省だけの問題では解決できない、文部省との問題もございますし、いろいろあろうかと思いますが、今後十分にひとつ考えて進めてまいりたい所存でございます。
  98. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 赤路友蔵君。
  99. 赤路友藏

    赤路委員 先ほど華山委員のほうからも会計検査院のこの報告の、補助金について質問がございました。この面での答弁があったわけなんですが、どうもこの会計検査院報告を見てみますと、これでいいのかという感じがちょっとするわけなんです。補助金の適正化法をちょっとけさ読んでみたのですが、第三条に「補助金等に係る予算の執行に当っては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、」云々とこう書いてある。何もこれは補助金関係だけではありませんが、特に適正化のこれにはこういうことが書かれております。  そこでお尋ねしたいのは、第七条一項の五号に「補助事業等が予定の期間内に完了しない場合又は補助事業等の遂行が困難となった場合においては、すみやかに各省各庁の長に報告してその指示を受けるべきこと。」こういうことがある。十八条では補助金返還を命ずるということがある。十九条ではそうした場合に一日二銭の割合で加算金を納付せしめる、こういうことがあるのですが、補助金を返還せしめる、そうした事例が何件くらいありましたか。それから一日三銭の加算金を取った事例があればひとつ示してほしい。
  100. 高木玄

    高木政府委員 補助金の執行に関しまして、今般の会計検査院検査によりまして、補助金の額の確定事務が非常に遅延しているということが留意事項として御指摘を受けたわけでございます。それで、私どもは四十年度以前の補助金の額の確定が非常に遅延しているという御指摘でございますので、その後鋭意事務を督励いたしまして、本年三月末をもちまして、御指摘を受けた未処理の分はすべて額を確定いたしました。この御指摘を受けた未処理確定の総額は百六十六億一千九百余万円でございますが、いま申しましたように、本年三月末までにこの数字につきまして額の確定を行ないましたところ、返還金としてその一%弱に相当いたしまする一億五千七百余万円を生じております。これにつきましては補助金適正化法に基づきまして返還の命令を出しております。
  101. 赤路友藏

    赤路委員 返還の命令を出した。三銭の延滞は取りましたか取っていないですか。
  102. 高木玄

    高木政府委員 返還命令を出しまして九十日以内に返還がない場合にその延滞金を取ることになっております。まだ命令を出したばかりでございますので、そこにまで至っておりません。
  103. 赤路友藏

    赤路委員 こういうこまかいことを申し上げるのはどうも……。会計検査院のこれを見まして感じたことば、何かそのままであまりにも温情を持ち過ぎたといいますか、補助金を出した。せっかく補助金はものにならなければいけない。こういうのでできるだけ被補助者と申しますか、地方団体なら地方団体の立場を考えておやりになったのだと思います。しかしその結果がかえって被補助者のほうのだらしなさといいますか、あるいはそれに便乗したというような形でこういった結果になったのだと思います。その点今後十分ひとつ御注意を願って、温情をお持ちになることはけっこうだし、それが政治の本筋だと思います。しかしそれだけではいかぬ。やはりきちっとけじめをつけるべきところはけじめをつけていただきたい、このことをお願いいたします。  それからここのところでやはりあるわけなんですが、「補助事業により設置したし尿処理施設管理について」、こういうので、第二次五カ年計画でし尿処理施設が六百五十三カ所、こういうふうになっております。この竣工した施設のうち二五%、百四十三施設についてその管理状況の検査をやったら、どうも清掃法に基づく水質基準に適合しない水質放流水を放流している、こういうふうに出ておるわけです。最近公害問題が大きく取り上げられておりますだけに、私は、この点非常に注意をしていただかなければならぬ点じゃないかと思う。  そこでお尋ねしたいのは、このし尿処理場の浄化された廃水ですね、これは検査されておると思うのですが、この点どうなんですか。
  104. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 放流水につきましては厚生省のほうでも基準をきめてございまして、それに合いますかどうかは検査をするようにやっております。各施設ともやってはおります。
  105. 赤路友藏

    赤路委員 基準はどういうふうになっていますか。
  106. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 放流水の基準はいわゆる生物化学的酸素要求量、BODと言っておりますが、水の中の有機物を端的にあらわす数字だとされております。その生物化学的酸素要求量というものが三十PPM以下であるというのが一般的な基準でございます。ただし、その流します先が利水上あるいは環境衛生上ほとんど心配がないと思われる場合には六十PPMまで、それから外海等に直接流すという場合でありましたら百二十PPMまではいいという、こういう三段階の仕分けでございます。一般的には三十PPM以下という基準でございます。
  107. 赤路友藏

    赤路委員 三十PPMが一つ一般的な基準になっておる。これでたとえば川に放流する場合あるいは海浜で放流する場合、やはりその生物に対する影響、それでいまお話のあったように一般的には三十PPMであるが、その事態に対応してやはり適時その基準は変更される、こういうふうに理解していいですか。
  108. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 三十PPM以下ということでございますので、その条件に応じるようにできるだけ少なくするということが目標でございます。
  109. 赤路友藏

    赤路委員 ここのところ非常にむずかしいところなんで、ただこういうところで議論をしておると、これはいろいろ言い方があると思うが、現実にやはり問題の起きるところなんですね。だから三十PPM以下ならいいのだ、こういうふうにかりにしたとしましても、それが一体魚なら魚、具なら責その他の生物にどういうような影響があるか。一番公害関係、特にこういう水質を汚染するようなおそれのある場合、これは生産者のほうと申しますか、たとえば漁民などの立場からいいますと、魚が死滅するようじゃ困るわけです。それからもう一つ、水がよごれたために魚が寄ってこない、忌避するという事態もこれまた困るわけたんです。だからある程度流した放流水のそういう中でなおかつ何とか生存し得ると申しますか、それでも成長がとまるわけなんですが、ただ魚とかその他の生物の立場からだけ言うということは非常にむずかしい面があります。しかし少なくともそうしたことが考慮の中へ入ってこれはやられたければならぬ。率直に申します。私はむき出しでものを言うほうなんで失礼に当たるかもしれませんが、六百幾つある。これは厚生省で一々検査しているわけじゃないでしょう。そうすると排水口の検査というものは、これはおそらくその市なり町村なり、施設のある地方公共団体に委任しておるのだと思います。おそらくそういう通達はお出しになっておるかもしれません。率直に申しますが、昭和三十三年に水質保全に関する法律がでまた。工場排水規制法ができた。それでそれぞれ全部各省分担ができているわけですね。それに対する責任官庁はできているわけです。ところが一例をとりますと、でん粉関係ですね。これは都道府県の知事に委任されておるが、全然やってません。もう十年になります。それではどうにもならぬのです。だからこのし尿の場合、ぜひそうした面をかなり厳格に、どうであったという報告をやはりとっていただきたいと私は思う。それがあるいは本省のほうから行ってやった場合と担当者がやった場合とで違う場合があったとしましても、私はやはりそれだけの配慮をひとつしてほしいと思います。そういたしませんと、せっかくのものが生きてまいりません。いろいろし尿、排水の問題があちらこちら出てきておるけれども、そうしたところに何か原因があるように思う。いまここで私がそれでは検査したやつを何ぼでも出せと言ったってちょっと困るだろうと思いますから私はそれは申し上げません。ただつくってやった、し尿処理ができたんだと言うだけでは意味がない。それでなくして、できたし尿処理がほんとうに正しく浄化されたものが出されておるかどうか。この点は先ほど局長のおっしゃった三〇PPM以下で、それでいろいろな条件によって変わる場合、これはやはり考慮の中へ入れなければならぬと思いますが、やはり誠意を持ってこれに当たってもらう、そういうふうに希望をいたします。  それで検査をやっていただくことにいたしまして、まことにあれなんですが、第一次計画があって、それで今度は第二次五カ年計画に入ったわけですね。これは資料としていただけますか。第一次計画と第二次計画。
  110. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 三十八年から続けてまいりました第一次計画はいわば終了いたしておりますが、その計画、実績等は差し上げたいと思っております。それから第二次計画はただいまその措置法につきまして国会で御審議をいただいておるわけでございまして、正確にはその法律が通りましたあと政府といたしまして閣議決定をするという段取りでございますけれども、しかし私どものほうでいま予定をしております資料でよろしければ、その資料を差し上げたいと存じます。
  111. 赤路友藏

    赤路委員 下水道整備緊急措置法案要綱ですか、これを見てみますと、し尿処理五カ年計画と下水道整備五カ年計画とは、これは非常に密接な関連を持たしておるわけです。下水道五カ年計画  は出ているんですか。
  112. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいま先生御指摘のとおり下水道の整備五カ年計画、それから特にそれに関連いたしますし尿の処理の五カ年計画、お互いに調整をいたしまして決定をするということになっておりまして、下水道のほうと両方ともに五十五国会でございましたか、国会に提出されたのであります。それで下水道のほうだけが昨年の秋に通過をいたしまして、清掃施設五カ年計画、それとともに歩くべきものがおくれましたので、ただいま急いで御審議を願っているという状況でございます。したがいまして下水道計画とし尿処理五カ年計画とは当然調整をして決定すべきものであると思います。
  113. 赤路友藏

    赤路委員 それではできましたときにそれをいただきたいと思います。そういうふうにしまして、ついでですからもう一つちょっとお聞きしておきますが、し尿処理関係はあれですが、いまのごみの焼却関係ですね。これがちょっと清掃関係へ全部入ってしまっている。そうして決算面で見てみますと、四十一年度はごみの関係は三億そこそこですね。だからし尿処理の九分の一くらいになっていますね。清掃施設全体で支出済み歳出額が三十二億、その中でし尿消化槽のほうが二十七億、ごみの処理施設が三億二千五百万、こういうふうになっております。そうするとし尿処理の大体九分の一ということになるのですが、大体ごみの処理で一番問題になりますのは大都市及びそれに次ぐ都市だと思います。これはやはり考えていかなければならぬので、どうも見てみますと、何かし尿処理とこれとは少しバランスが合わないように思います。それが一点お考えおき願いたい。  それからごみの処理に最近焼却をして堆肥をつくっておるのがありますね。これは何カ所ぐらいありますか。
  114. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 第一点のほうの補助金がし尿とごみの間で非常にアンバランスだという御指摘はまことにそのとおりでございまして、清掃法の中で補助金のほうがきめられておりますのがし尿だけ。したがいまして、ごみのほうはいわば普通に言いますところの奨励補助金という形をとっておるわけでございます。そうした形でアンバラスがありますことは御指摘のとおり、私どももやはり大都会その他、ごみのほうも特にこれから生活水準の向上によりましてごみの量が非常にふえてまいります。またごみの質も非常に変化をいたしまして、技術的にも困難な問題に当面することはわかり切っておりますので、ぜひこれの拡大につきましては努力いたしたいと思っております。  それから第二のほうの肥料にいたしますのはいわゆる高速推肥法、コンポスト法といわれているものだと存じますが、全国でいま幾つありますかちょっと失念をいたしておりますけれども、最近はそのものを新設するという傾向はほとんど見られないという状態でございます。
  115. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと言っておきたいことは、これは非常に遅効性のものになるわけです。だから、いわば酸性土壌を中和すると申しますか、これには非常に有効なようです。ただ問題は、やはり価格が案外高いところにある。言えることは、ごみを焼いてそれでもって堆肥ができて、それを土地改良の中へ使っていく、こういうことになりますと、まあまあごみもただ夢の島みたいにほっておくんでなしに、何か非常に大きな効果をもたらしておる、そういう面ではできるだけこういうものを活用する。そこではやはり価格問題というものが表へ出てまいるから、その点ひとつ農林省あたりと十分話し合って、特にこれは砂地地帯にはいいようでございます。その点ございますので、ひとつ御相談くださいまして、できるだけごみのほうも力を入れていただきたい、このことをお願いしておきます。  それでは、この決算説明厚生保険特別会計の二四〇ページ、これを見てみますと、三十七、三十八、三十九年と借り入れ金はないわけです。それから四十年に四百六十二億借り入れをいたしております。そうして四十年に借り入れた借り入れ金は四十一年に決済をしておるわけですね。そうしてあらためて四十一年は八百六億八千七百万円の借り入れをやっておるわけです。こういうことになりますと、この借り入れというものはえらい短期になるわけですね。一年借りてはまた返す。また一年借りるという、こういう短期の借り入れ金になりますが、これはどういうことですか。
  116. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 厚生保険特別会計の健康勘定についての御指摘でございますが、御指摘のとおり四十年度に四百六十二億借りまして四十一年度でそれを返しまして、それで新たに八百六億借りている、こういう借りかえを継続いたしておりますが、これは健康保険の赤字が三十九年度くらいから出てまいりました。しかし累積の黒字がございまして積み立て金がございましたので、三十九年度は、赤字でございましたけれども、その積み立て金を食いつぶして借り入れ金をやらないで済んだわけです。四十年度からそういう積み立て金がなくなりましたので、赤字は依然としてふえるということで借り入れ金をやった。これはまあ年度越えの借り入れ金ということで、一度年度々越えるために借り入れ金をいたしまして、そうして年度を越えたらすぐ返す、そうして新たに一時借り入れをいたしまして——一時借り入れ金でありますと、国庫余裕金ができました場合に、それを借りかえますと、国庫余裕金になりますと利子をつけない。借り入れ金ですと利子がつきますから、それで、一時借り入れに借りかえをしてやりますと利子が非常に節約できるということがございますので、いつも借りかえてやっておる、こういう現状でございます。
  117. 赤路友藏

    赤路委員 どうもここのところわかりにくいのですよ。それじゃこういう尋ね方をしましよう。この四百六十二億というやつは、事実返しましたか。
  118. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 四百六十二億は四十一年度で返済いたしましたけれども、その財源がございませんので、やはり資金運用部から一時借り入れをやりまして、それで払う、借金をして一応また返す、こういうかっこうでございます。
  119. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、一時借り入れになっておるわけですね。それでこれは利子は出さぬでいい——そうですね、利子は払ってないでしょう。
  120. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 一時借り入れにいたしますと、一時借り入れである間は払わなければいかぬのですけれども、一時借り入れをやっておりまして、そして国庫余裕金がときどき出るわけですが、そういうときに大蔵省に二百億とか三百億とか、そのうちから国庫余裕金に振りかえてもらうわけです。その間だけ、その国庫余裕金に関する限りは利子がつかない。こういう形で、一時借り入れ金全部が利子がつかないわけではない。国庫余裕金に振りかえた分だけ利子がつかない、こういうことでございます。
  121. 赤路友藏

    赤路委員 それはややこしいから、ずばり利子は払いましたか払いませんかと聞いておる。
  122. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 四十年度に利子が十五億五千八百万でございます。
  123. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、これは何分になりますか。
  124. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 利子を払いますときには六分五厘で払いますけれども、ただ、先ほど申し上げましたようにときどき国庫余裕金に振りかえるということになりますと、その分は利子がつかない。借り入れ分については六分五厘の利子を払っております。
  125. 赤路友藏

    赤路委員 それで、この会計の資金運用部への預託金がだいぶあるのですね。一兆何ぼありますね。それじゃこれをちょっとお聞きしますが、資金運用部への厚生保険からの預託、これは大蔵省所管資金運用部特別会計貸借対照表、これの貸方のところに、一兆八千百九十八億三千三百三十一万幾ら出ておるわけです。これだけ資金運用部へ預託しているわけですね。その資金運用部へ預託しておる利子は何ぼもらうのですか。
  126. 中村一成

    ○中村政府委員 年利六分五厘の利子がつきます。
  127. 赤路友藏

    赤路委員 これだけ預託しているのだよ。だから、いろいろあればあるのでしょうが、金利は差はないのだからもうこれでいいよ。金利に差がない。六分五厘で借りて六分五厘で貸しておるのだからゼロだから、自分の金を使っているのとあまり変わりませんな。そういうことになりますか。
  128. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 利子の点では先生おっしゃるように同じでございますが、結局厚生保険特別会計勘定が四つございまして、健康勘定年金勘定とそれから日雇健康勘定業務勘定、こう四つあるわけであります。それでいま先生御指摘になりました一兆数千億というのは大体年金勘定積み立て金でございます。厚生年金積み立て金、これはいまどんどん積み立てをやっておりますので、その金でございます。赤字が出ておりますのは健康勘定のほうの赤字でございます。それから厚生保険特別会計は一本でございますけれども勘定は全然別に独立になっておりまして、したがって直接に健康勘定年金勘定から金を借りるというわけにはいかないので、一たん資金運用部に入れて、それから借りるというかっこうになるわけでございます。
  129. 赤路友藏

    赤路委員 いま資金運用部のそれは年金勘定だと言いましたね。そうすると、この「年金勘定五箇年度間積立金増減明細書」この「決算参照書」の一七五ページの区分のところに「資金運用部預託金約定期間七年以上」これが四十一年は一兆四千四百十四億何がし、これとあなたの言う年金勘定の積み立てと金額がだいぶん違うのだ、食い違いがある。そうしてこれをちょっと計算してみたのだが、「対前年度比較の差」というのがあって、これと四十年を合わせますとちょうどこの四十一年の一兆四千何がしになる。だからこちらのほうの出しておる貸借対照表の年金の預託金と、この預託金の金額が四千億くらい違う。これはあと質問があるのでしょうから、あらためてまたあれしますが、この点はひとつ調査しておいてください。
  130. 中村一成

    ○中村政府委員 正確な資料を持っておりませんが、積み立て金は、厚生保険のほかに船員保険特別会計年金部門がございますので、その部門も積み立て金がございまして、したがいまして厚生保険だけではございません。   〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 赤路友藏

    赤路委員 会計検査院の方おいでになりますか。——私決算は初めてですけれども、だいぶ読ましていただいたのですが、もう少しわれわれでもわかるように書いていただきたい。まるで数字が合わないので、あちらこちらと一生懸命にやってとうとうわからぬままで聞いてみますと、これとこれとの金額からこっちとこっちを引いたらこうなりますと言う。なるほど計算するとそういうことになります。しかしそういう説明は全然ない。だからこれを調べるのに頭が痛い。そういうところがございますので、会計検査院——会計検査院じゃないか、大蔵省の主計局だ。主計局のほうでもできるだけ丁寧にやっていただきたいと思うのです。
  132. 大石武一

    大石委員長 次に、外務省所管について審査を行ないます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。吉田賢一君。
  133. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 外交問題はしろうとですので、そのつもりで願いたいのですが、要点をできるだけ簡単に述べまして、大臣の御所見を伺うことにいたします。  ジョンソン大統領が三月末にベトナム和平の提案を行ないました。これは一面戦争の行き詰まりもあるかと思いますけれども、あるいはドルの危機というものが重要な原因になっていることは見のがすことができません。そういうことやら、それからまたこの三月にストックホルムで、英、米、仏、伊、独、カナダ、日本など十カ国の蔵相会議がありました、あのときにドル支援を決議されたようでございます。その代償といたしましては、アメリカの国際収支の改善に協力するというようなことが相当約束されておるというふうにもいわれておるのでございます。そこで私は、いまのこのような国際情勢の大きな変化から影響を受けます日本の低開発国への援助の問題、率直に申せば南北問題についての日本の主として経経的立場は今後どうあるべきかということが、相当重大な課題になっておることは見のがすことができぬと思うのでございます。そこで外務省といたしましては、刻々の精細な一切の情報を掌握しておいでになると思うのでございますが、東南ア並びに低開発国への国際的な援助態勢というような面から考えまして、直接、間接にどういうふうにアメリカのドル危機が、またアメリカのドル危機を切り抜けようとするあらゆる努力が影響するのであろうかという辺を簡単でよろしゅうございますから、ひとつお述べを願いたいと思うのです。
  134. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカの最近の国民の世論の中には、少しアジアへ深入りし過ぎたという感じがある。したがってベトナム戦争が終わったならば、そのリアクションがある程度起こる。しかし、だからといってアメリカがアジアから手を引いて孤立主義的なアメリカに返るわけにはいかないことは明らかでございます。軍事的にいっても、相当アジアの諸国に対してアメリカはコミットメントをしておるわけであります。したがってベトナム和平が達成したからといって手を抜くわけにはいかない。現に各国が、ベトナム和平への機運が出てきて、相当な不安があって、そのために韓国の大統領もホノルルでジョンソン大統領と会談しておるということも、やはりアメリカのアジア政策に非常な変化がくるのではないかという懸念もその背景の中にもあった。したがって、アメリカとすれば、アメリカが約束しておることに対してこれをほごにすることはない、こういう立場を貫かざるを得ない。また低開発国、ことにアジアに対する援助というものについては——ヨーロッパ諸国は、これは戦後復興してきて、相当アフリカなどに対する経済援助というものの役割りを果たしておるわけであります。アメリカもまたラテンアメリカ地域に対してはやっておるわけであります。しかし、アジア太平洋国家としてのアメリカというものは、アジアの将来に対して非常な関心を持ってきておる。これはアジアから手を引くことはできない。そうなってくると、アジアに対するアメリカの援助というものは、できるだけアジアの地域協力、またアジアばかりでなしに、その他太平洋先進諸国が責任を分担してもらいたいという機運が出てくると思います。しかし、何と言っても、今日は、世界の経済力の上からいったら、半分はアメリカの経済が世界全体を合わしたものに対抗するだけの力を持っておるのですから、このアメリカがやはり低開発国援助というものに対して相当今後ともやるんだということでないと、南北問題の解決といっても容易なものではない。南北問題の解決といわれておる低開発国の開発の諸問題に対するアメリカの寄与というものに対する期待は、そう減少していくとは思われないのでありますから、そういうリアクションが起こってきても、アジアに対してアメリカがいままでやっておったことから手を抜いていくということはできない、軍事的な色彩というようなものはできるだけ地域的に分担してもらいたいという機運は出てくると思います。しかし、それとてもなかなか手を引けない。ましてや経済協力というものは——経済ばかりじゃなしに、社会、経済、そういう開発を通じて民生の安定向上をはかろうという方向に対するアメリカの今後の協力というものは、容易に手を抜くことはできないのではないか、私はそういうふうに思っております。現にジョンソン大統領がボールチモアの演説の中で、ベトナム戦争に関連してではありますが、将来アジア開発のために十億ドルの資金を出すつもりである、その中にはハノイも含めるのである、こういうような演説をしたこともございますし、したがって、われわれとしては、将来ともアジアの社会、経済開発に対するアメリカの寄与というものはやってもらいたいということを強く考えており、アメリカのアジアに対する協力政策がそう激変するというふうには見ていないのであります。できるだけみなが分担してくれという機運は出るけれども、アメリカが手を引いていくという形において、アメリカのアジアに対する協力の体制が急に変わるとは見ていないのでございます。
  135. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ベトナム平和の実現の問題ですが、ちょっと前提として触れておきたいのは、朝鮮動乱もやはり二年ほどかかったと思いますが、ジョンソン大統領は秋の選挙に立候補しないということになっておるようです。としますと、これは数年かかるというような見通しになり得るんじゃないだろうかというふうにも考えるのですが、その辺は大臣としては大体どういうふうなお見通しを持っておりますか。
  136. 三木武夫

    ○三木国務大臣 数年というと、これはたいへんなことで、また数年かかるということになれば、世界が期待しておるとはだいぶん違ってくる。ただ、しかし、前のベトナムとかラオスなんかのいわゆるジュネーブ協定でも、一年二カ月くらいかかっています。そういうことですから、ああいう提案があってすぐにベトナムに対する和平が達成できると考えることは、これは少しものごとを楽観的に見過ぎると思います。しかし、数年ということになれば、それは片づいたというんでなくして、何かだんだんと戦争が縮小していって、まあ北爆もやまり、北からの浸透もやまって、だんだんといって、急に一つの休戦協定とかいうのでなしに、なしくずし的に全体が縮小されていくというような形の収拾策なら何年ということもあるでしょう。何らかの形で休戦協定というようなものをつくって、そして一応戦争に対する収拾をつけようというときには、数年とは考えていないわけです。しかし、すぐにベトナム和平が達成できるというそういう簡単なものではないが、そんなに数年もかかるということになれば——それは収拾のしかたが休戦協定方式でなしに、なしくずし収拾方式ということになれば、そういうことにも考えられましょうが、今度の場合はそうはかからないのではないかと見ておりますが、しかし、短期間にはこれはなかなか解決はできない、そう思っております。
  137. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 もとへ戻りますが、そうしますと、この秋までには片がつき、和平実現にいくことはなかなか困難だということが常識のような感じもいたします。ジョンソンが引退しましても、いまのような大臣のお考えはアメリカが踏襲していくものであろうか。対立候補の人があとを受け継ぐというふうなことになると、すっかり変わっちゃうんじゃないだろうかというようなことも考えられる。ロバート・ケネディあたりにいたしましても、かなりいろいろ考えの違った面を織り込んだ点があるようでございます。しかし、低開発国への援助問題というのは、これは大統領がかわりましても、そんなに大きな変わり方をしないと見ていいのでしょうか。この点はどういうことになりましょうか。
  138. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大統領がだれになろうが、もう一ぺんまた戦争が激化していく、そういうふうな形にはなかなかならないのではないかと思っております。やはり方向としては、戦線は縮小していく方向ではないかというふうに見ておりますが、大統領は非常に強大な権限を持っておるわけですから、大統領によっていろいろ違うかもしれぬが、しかし、方向としてはそうである。それはアメリカを見ていても、タカ派とハト派とかいわれても、何とか早くベトナム戦争を片づけようという片づける方法によってタカ派あり、 ハト派ありで、いつまでもベトナム戦争を長く続けていけという世論がアメリカにあるとは私は思わない。そういうことですから、ああいう世論政治の国でありますから、どの大統領が出てくるにしても、戦争は収拾の方向に向かっていくとは思いますが、その間に紆余曲折があるだろうということは先ほどお答えしたとおりであります。  そこで、低開発国援助に対しては、アメリカのドル防衛といいますか、国際収支の上から言ってもこれは気前よいアメリカではなくなるかもしれない。国会などにおいても海外援助というような予算支出というものは相当きびしくなる可能性を持っておると思います。しかしやはり低開発諸国に対してできるだけの援助をして、そして低開発諸国の平和と安定をはかっていこうというこのアメリカの政策、戦後ずっとそういう政策で世界の安定のためにアメリカは貢献してきたわけです。ヨーロッパなどでも、今日の復興、安定の陰には、アメリカのマーシャルプランということがきいておることは明らかであります。したがって、そういう対外的な援助を通じて世界の安定をはかろうというこのアメリカの基本政策が急激に変わって、アメリカが孤立主義的なアメリカに閉じこもるというこは絶対にない、援助の出し方が相当いままでよりもやはりきびしくなるであろう、こういうことだろうと思います。
  139. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこでまた一面から見ますと、ドル危機、ドル防衛対策というものが、たとえ三十億ドル、四十億ドルの赤字対策にいたしましても、日本経済、日本人から考えましても、かなりこまかいところまでその対策が立てられているようにも感ぜられます。たとえば、こまかくはありませんけれども、二、三羅列してみますと、民間資本の海外投資やら融資が相当制限される。これは日本といたしましては、多額の資金導入をアメリカからしてまいりました過去の実績から考えましても、相当大きな影響があるのじゃないだろうか。またアメリカ人の海外旅行を制限する、あるいは観光客を誘致するという説さえありますが、これはどうか知りませんけれども、そういうことやら、ごく最近に出ました連邦準備銀行の五%の金利の引き上げ、これとても何か三、四十年ぶりだそうですね、というようなことがありますし、それから例の輸入課徴金にしましても、五%の輸入課徴金ということが最終段階に来ているようでありまして、ケネディラウンドの繰り上げ実施等によりまして実現しないかもしれぬともいわれ、あるいはそれは無理だともいわれておりますが、こういうような辺から考えましても、なかなか日本に対する関係は、相当厳密に正確に判断をして、その上に対処するというかまえを持つのでたいといくまいじゃないだろうか。一般論的な、一般的なアメリカの態度と申しますか、対外政策、低開発国への政策あるいは経済協力等々でなしに、具体的にあらわれてまいりましたこの数個の点、こういう点から見ましても相当きびしく出てくるのじゃないだろうか。その中で私どもは低開発国への関係をさらに考慮、検討すべき段階に来ておるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点どうでしょうね。
  140. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはやはりアメリカは今度の国際収支に対しては非常にこまかく拾っていますね。そういう点でこれは国際収支の均衡を得たいというアメリカの政策は、まことにきめこまかくやっておるわけであります。ただしかし、一方において、ベトナム戦争というものが続いているわけです。これに対する国際収支へのはね返りが十五億から二十億ドルぐらいのはね返りがある。三十億ドルといわれておる中で相当な部分を占めておる。これがだんだんと終息していく方向に向かってきますと、いまは低開発国の援助もやる、ベトナムの戦争も継続していくというところになかなか国際収支の上においても困難の度合いを加えておることは明らかであります。これがベトナム戦争というものが収拾の方向に向かってくれば、いまのように援助も戦争もまた国内の建設もというのと、アメリカの国際収支の事情にも変化がくる可能性も持っておりますから、いまベトナム戦争が継続されておるときとはまた低開発国援助に対しても多少のゆとりが出てくる可能性も出てくるということで、そう悲観的に——しかし戦争がまだまだ激化していくという前提ではこれはやはりきびしくならざるを得ないのであって、収拾していくという過程の中においては、やはりそんなに低開発国援助に対して、これが従来に比べて非常なきびしさを加えるというふうにも考えられないのではないか、こういうふうに見ておるのでございます。
  141. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 日本経済は底が浅いといわれますし、戦後も数回にわたってインフレになり、あるいはまた不況が来、等々いたしまして、もっと不況が続くのかと思うたら、さにあらずで、一、二年ですぐに直ってしまったというようなことで、ヨーロッパあたりにおきましても、ドイツあたりとだいぶん事情が違うらしいのであります。こういった底の浅い日本経済という立場から考えますと、いまおっしゃるようにきめのこまかいアメリカのドル防衛対策、和平対策というようなものに日本もきめこまかく一々検討していくという体制はくずすべきではないんじゃないか。たとえばいまのベトナムの和平が実現するといたしますと、特需収入が八億ドルですか、あるいは間接特需が十億ドルともいわれ、どうもはっきりしないようでありますけれども、そういうことにいたしましても、あるいは増税の実施ということになりましたならば、相当消費も低下せられて貿易に影響するのではないかということも考えられる。そこへ持ってきて、一方、イギリスのポンド切り下げの問題にあらわれておりますイギリスの経済、財政の一つの病的状況というものが、これも一九七一年にはアジアからイギリス軍を引き揚げていくというようでございますが、そういうことにもなる。またそれは別の意味におきましてアジアにおける各国の一種の国際緊張のもとになるのではないであろうか。たとえば、言うと言わずと国防に対する考え方がまた直截になってくるのではないであろうか、軍事的な経費が増額してくるのではないであろうかというような影響もある。これはいろいろな角度から観察すべきですけれども、しかしそういうふうにアメリカのこまかいドル防衛対策というものとイギリスのポンド下落、国際的なポンドの信用がなくなって財政収縮的な行き方になるということもあわせ考えますと、今度またこれは両方とも日本の立場に直接間接、特に低開発国との関連におきまして相当これまた真剣に考えて秤量をしていかなければならぬ問題ではないであろうか、少なくとも重大な要素ではないであろうか、こういうふうに思うのでございますが、この辺はどうなんでございますか。
  142. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まあこれから日本とすれば、アメリカとしても、アジアに対しての介入のしかたというものがいままでよりもできるだけ責任を分担してもらおうという形になることは明らかであります。そのことがやはり東南アジア地域においても、防衛についても、できるだけ自主的な努力というものが要請されてくると思います。あるいはまた経済の開発の面についても、自主的な努力あるいは地域協力というものの必要性がもっと加重されてくると思います。しかし、日本の場合はアメリカの肩がわりという意味ではなくして、実際日本は、経済力の上からいっても驚異的な発展を遂げて、生産力が世界の第三位とか、こういわれてきますと、何か、国際的な日本に対する期待というものが高まってくるということは、今日の経済力からして自然な勢いなんですね。そこで、日本からいえば、国内にいろいろやらなければならぬ、海外に対する援助の前に国内に解決してもらいたいものがもうたくさんあるという国内の事情と、国際的な期待、この間にはさまって、今後低開発国援助というものがいろいろな波紋を日本の経済の上にも投げると思います。しかしこれは、日本が国際社会でセルフィッシュな国だという、これも長い目で見ると日本のためになるとは私は思わない。したがって今後、そう国力不相応なことはできませんが、アメリカの肩がわりというような意味ではなくして、いずれにしても、将来日本が産業構造も変わってまいりますと、重要な市場はアジアの市場であることは間違いはないわけです。すぐに、産業発展の段階が一足飛びに重化学工業になるわけはない。そういう意味において、アジアの経済との間には、そういう面からは日本の市場として非常に期待のできる面があるわけでありますし、また日本の安全という上からいっても、周辺の諸国が絶えず戦乱のちまたになっているということで日本の安全が確保できるわけのものでもない。そういう国の安全、国の将来の経済発展からいうと、肩がわりということではなくして、将来日本の安全と経済的発展を達成しようとするならば、いま苦しいけれども、その中で相当くめんをしてアジアのために尽くそうということが日本のイニシアチブにおいて行なわれることは、国益に合致するのではないか。いますぐには勘定には合わないでしょうけれども、国の勘定というものはそんな二年や三年の目盛りでいいかどうか、やはりもう少し長い計算を立ててやることが国の発展につながるのではないか。そういうことを考えてみると、これはアメリカがアジアから手をだんだん引いていく、その肩がわりに日本がされるんだ、そういうふうに考えないで、日本の安全と発展のために、アジアの安全とアジアの発展というものがぜひとも必要なんだ、こういう角度から日本のイニシアチブでできるだけのことをアジアにするということが、やはり日本の今後の方向である。したがって国民にもそういう一つの日本の方向というものを理解してもらってできるだけのことはしてやらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  143. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いま私が二、三指摘しましたことは、もちろんこれは重要な条件としてぜひ考えなければならぬことであると私は思います。ただしかし、日本のアジアの平和、世界の平和に貢献し得る道は、武器をとって立つ国ではなし、核兵器をもって、対峙する国ではなしいたしますので、平和的な道にあらゆる努力をするということが、特に国連の発展のあとを考えてみましても、いまの国際社会におきましては、言うならば一つの当然の責務かもわからぬというような立場に私は立っておるということをひとつ申し上げておきたいのであります。したがいまして、アメリカがドル防衛でいろいろと対策を立ててやっておるので、日本がそれを肩がわりされるんじゃないかというので心配するというような、そういうような小乗的なものの考え方じゃなしに、どうしても日本は日本の立場で省みて、南北問題に対し、低開発国への援助問題に対しまして、積極的に前向きでこれに対処するということ、経済的にも技術的にもあるいは文化的にも、その使命、責任があるんじゃないかという高い立場に立って進んでいくことが根本の立場である、私はこういうふうに考えております。  そこで、南北問題に議論を移さなければいくまいと思うのでありますが、去年東京でエカフェの総会がございましたときに、あれはマレーシアの代表でございましたか、かなり日本を先進国の一つとして意識したかどうか存じませんけれども、共同でアジア経済開発に協力する義務がある、そういうものを自覚してその用意を示すべきだというような、かない強い、言うならば協調、協力を求めるというよりも、当然だと言わんばかりの態度に出て、そして多数の国がこれに同調していくということになったらしいのでありますが、この辺はまた一つの世界の低開発国の一群の国々のあり方として、これは国連内部における勢力の分布にも影響しておると思いますが、われわれは考えていかなければならぬ、こういうふうにも実は思うのであります。  そこで、低開発国に対しまして国際的な援助をするという問題に移っていきたい、こう思うのですが、これは資金援助、技術援助、あるいはまた貿易等を通しましての援助、いろいろあるようでございますが、なるべく重点的、限定的、効果的に、日本の分を過ぎないように、適当な、妥当な範囲においてと、こういう辺ハ相当また大事に考えておかねばならぬときではないであろうか。と申しますのは、アメリカ如上のごとし、イギリスまたポンド下落以来右のとおり、西独にいたしましても、エアハルト内閣の経済財政政策はいわば失敗でございます。したがって世界の奇跡であった興隆一途をたどりましたドイツ経済というものが、これまた一種の収縮状態にだんだん進んでいるというようなことになってきておりますので、そこで日本の立場は相当これも判断を誤らない、正確な前途判断のもとに進めていかなければなるまいじゃないか。ドル関係から見ると、四十一年度援助総計九十億ドルのうちアメリカが四十六億ドル出しているのであります。西独が六億ドル、仏が十三億ドル、イギリスが九・七億ドル、日本は五・三億ドルというようなことになっておるようでございますが、そういう辺を考えてみますと、重点的に、限定的に、効果的に、どうすることが大きな目的に沿うゆえんであるのか、これが日本の国策として非常に大事なかなめになるのじゃないだろうかというふうに思うのですが、こういう辺はどんなものでしょうね。
  144. 三木武夫

    ○三木国務大臣 吉田さんのお説のとおり、あり余る金でありませんし、国民からいえば、家も要るし、道路も要るし、下水も要る、こういう中で海外に援助をしようというのですから、これを最も効果的に使うということに対して、政府は国民に責任を負うていると思います。  これについては、一つにはアジア開銀というものが生まれて、これは調査のスタッフも、臨時であっても相当そういうものを持って、緻密に検討を加えてやりますから、こういう地域的な金融機関が生まれたということはアジア開発の一つの進歩だと思います。それにいろいろな特別基金が生まれて、農業開発などもそういうアジア開銀を窓口にして推進していこうという、これは一つの方法であります。やはりこういう地域的開発のための金融機関は強化していく必要がある。これは低開発諸国でも二国間でなしに、どこの金かわからぬわけですからね。開銀の金というのは金にひもがついていない。そこに非常に受け入れやすいものがありますね。そして銀行自身が相当日ごろ調査のできる余地もありますから、これは強化していこう。日本も相当な出資をしておるわけです。やはりそればかりでもいけないわけでありますから、二国間でやるわけです。その二国間でやる場合に、やはりわれわれとしても一番有効で喜ばれて——そういうふうに資金を出すためには、まだ相手国自身もいろいろな調査機関が整備しておるわけでもありませんから、われわれとしても調査団なんかをひんぱんに出しておるわけです。そしてその国に最も効果的な開発の方法というものを検討を加えておるわけでありますが、こういう機能はもっと強化しなければなるまいと私は思います。そうして金額に限度があるから、でるだけ重点的にやる必要もあるでしょうね。そしてまた、私外務省へ行ってから追跡調査というものをやかましく言い始めて、ただ、金を出してしまったらそこで終わりとしないで、それを出発点にして、実際にその金がどう生きておるのかということを追跡調査してみて、次に援助をする場合の大きな反省にもし、参考にもしなければならぬということで始めております。こういうあとの追跡調査とかあるいは計画であるとか、いろいろな角度から、できるだけその資金が効果的に使われるようなくふうはいまもやっておりますが、この問題に対してはもっと真剣に取り組む必要がある、こういうふうに考えております。
  145. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 取り組み方でありますが、たとえば政府の借款という、政府が全責任を持ってやることが主たるものになるのですか、あるいはまた企業が政治を理解いたしまして、それに協力するというようなことを並行して行なうのであろうか。あるいはまた大きな広い意味におきまして国連の機構を背景といたしまして、できるだけそれを活用して、日本がイニシアをずっととっていくということが出しゃばっていくようなことにならぬようにするのが正しいのだろうか。その辺は一体何が主たる力になるのでしょうか。どういうものでしょうか。
  146. 三木武夫

    ○三木国務大臣 民間の場合はやはり採算を計算して、自分の事業の浮沈に関係しますから、真剣に検討していく。民間の海外に対する投資というものは、これが有望な事業である限りは、われわれとして奨励すべき立場にあるわけです。ただ、その資金の出し方についてはいろいろな制約もありますが、私がここで言っておるのは、政府間の借款の問題については、いま言っておるように、十分に向こうの計画も聞き、こちらの調査もしてこれが有効に使われるような配慮がどうしても必要である。そうでないと、せっかく政府が借款によって経済援助を与えても、それがあまり有効でないということになれば、日本の国民に対しても現地に対しても、せっかくの日本の企業というものがそれだけ国民的な規模で受け入れられないわけですから、この点については特に注意をしてまいりたいと考えております。
  147. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、十年ほど前に、アメリカでアジアの平和の問題をあちこち聞いて回ったことがあるのですが、そのときにちょっと感じたことでしたけれども、やはりアジアの問題についてはアジアの国が一番詳しく実際を知っておる。実際を詳しく知って、正確な前提、資料のもとに国策を立てることが常に必要である。ましてや、低開発国に対する援助の問題、南北問題解決の一つの大きな柱になるような援助の問題は、特に国情あるいは社会、経済の実態、政治のあり方、制度、そういったものをこさいに、厳密に、正確に調査されて、その上に立って行なうことが絶対に必要でないだろうか。  あるいは、去年、この決算でございましたが、大臣にインドネシアの救援の問題をちょっと伺ったことがありましたが、そのときなんかでも、インドネシアが工業開発に相当資金を投じて片寄ってしまった、食糧をおろそかにした。そこで飢饉が起こる。たとえばインドにいたしましても、インドはともいたしますと工業開発、重工業に走ろうといたしますね。ところが、何のことはない、インドにおける米麦の生産というものは日本と比べましたら何分の一という、そんなに貧弱な生産性しかないような農業をほったらかしておいて、そして低開発国があちらこちらに食糧の輸入を求めなければならぬという現状にあることも考えすすと、やはり一そう現実の実態に即して効果のある方法、そして即効的な方法というよりも、むしろ長期的に観察をいたしまして、たとえば電源の開発をするとか、ダムをつくるとかそういうようなことに、長い目で見てなるべくその国の貧困がなくなる、あるいはまた社会、経済を開発していくということに協力するという角度から問題を進めていく。これはお抜かりなくそうやっておられるものと思いますけれども、アフリカのガーナとかナイジェリアあたりがいろいろと経済建設に失敗しておりますから、あんな実例を考えてみますと、どうもそういうことを一そう痛切に感じるのでございますけれども、それはどうでございますか。
  148. 三木武夫

    ○三木国務大臣 実際、そのとおりだと思います。食糧の問題を、吉田さん御指摘になりましたが、現に東南アジアでも、戦前は食糧の輸出国が多かったわけですが、いまほとんど輸入国になってしまっておる。だからインドネシアでも、スハルト政権になって、食糧の増産ということに非常に力を入れて、まず食生活の安定からやらないと、国はなかなか安定しない。ただしかし、農業国になれということはいやがるのですね。やはり一方において工業化もやっていかなければ、何か日本が工業国で、君のほうは農業国でやっていけという、そういう国際分業的な考え方には非常な抵抗がある。だから一方において農業、食糧の増産をやりながら、やはり工業化も進めていく。工業化も、あまりすぐに野心的な近代工業でなしに、やはり農業の開発に関連する工業というものは相当幅広くあるわけですから、そういう可能な必要な産業の開発をして、やはり根本は食糧の増産、まず食生活の安定というところから地道な開発をしていかなければならぬという気分が各国とも生まれてきておるわけで、日本が提唱して生まれた東南アジア開発閣僚会議においても、まっ先に取り上げたものは農業開発基金、これを開銀の中に置くという制度、これは実現しましたが、それと漁業開発センター、みな食糧に関係する問題をまっ先に取り上げて、みなもその必要を感じて取り上げたわけでありますから、だんだんといろんな失敗の歴史を繰り返しながら、東南アジア諸国の開発というものは相当地道になってきた。食糧の増産というものに相当な開発のウエートが置かれてきておるというのが今日の傾向でございます。
  149. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 時間もないようですから、ごく簡単に走って、一、二聞いてみたいと思います。  一つの問題は、やはり低開発国との貿易を通じてこれを援助するという場合ですが、これはほとんどが一次産品で、原料でございます。したがいまして、たとえば特恵関税を実施する、これも重要な課題のようでありますから、特恵関税を実施するということになりましたならば、日本におきましても、日本の底の浅い経済はよほどしゃんとして、たとえばインフレを抑制して、そして価格を安定して、金融財政政策もあやまちなく行なって、そして中小企業その他にしましても、近代化するというふうにしておきませんと、これはやはり援助をいたしながら——また援助というものは当然アメリカなりドイツなりイギリスなりが減るのでありましょうから、減らぬという議論もあるかもしれませんけれども、減りましたら、当然国民所得の一%という約束は実現せにゃいかぬと思うのですね。ということになってきますると、それは援助はよけいするは、特恵関税で入ってくるのはどんどん入ってくるし、日本の弱体産業は生産性は上がっていかないし、近代化しないしというようなことになりましたならば、日本自身がまた混乱しやしないか。先進国らしいつらをしていきまして、途中でへこたれるということになりゃしないかということも実は心配するのでございますが、その辺につきましては、これは深甚な配慮をしながら、しかし国際的責任、義務、アジアにおける先進国としての責任は果たすというだけの確固たる信念で、相手国に対して信頼を失わないようにすべきだということは、これはもう当然であります。南北問題というものはかなり民族的な感情もあろうと思いますし、また簡単に経済で割り切れぬような貧富の大きな差があるのでありますから、その辺のことも考えておるのですが、いかがでございますか。
  150. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本の場合は、先進国といっても、産業的には中小企業、、零細な農業をかかえておりますから、先進国型の経済といえない弱い部面を持っておる。ところが低開発諸国は、援助といっても限度がありますから、やはり貿易の拡大、こういうことの声が次第に強くなってきておるわけです。まずみずから努力せよ、こういったときに、それは貿易拡大で結びついてくるわけですね。みずから努力せよといっても、何か外貨をかせぐのには貿易するよりほかにないと思うので、無から有は出てこないわけです。そのために工業製品についても、日本はもっと程度の高い工業国になって、われわれにチャンスを与えてもらいたい、初歩的な産業は低開発国にまかして、程度の高い工業国になってもらいたい、伸びてこようとする低開発国と競合して芽をつむようなことをしないでくれと、切実な訴えであります。もっともなことだと思うのです。そう言っておるなら、すぐにそういうことで特恵関税というようなことですれば、これは先方の労働力は日本より安いですから、なかなか太刀打ちできない。だから、どうしても吉田さんの御指摘になった産業の高度化といいますか、産業構造の高度化というものでだんだんと程度の高い工業国になって、やはり初歩的な産業というものは低開発国にまかすということにならないと、いつまでも低開発国の工業と競合しておったのでは、これは先進国といっても低開発国との関係はなかなかスムーズにいきませんからね。しかし時間がかかりましょう。農業の面においても、やはり向こうは何といっても国民の大部分は農民ですから、第一次産品というものに産業の重点がかかっておるわけです。そこで、日本はたとえば飼料作物など、あんなものはアフリカから買い、アメリカからも相当買っているわけですから、そういうものを東南アジア諸国の中で開発して輸入する。たとえばタイのトウモロコシなんかというものは、急激に日本に対する輸入が増加していますからね。だから生産費が半分くらいの安い米を輸入してということになれば、農家が非常な打撃を受ける。しかし、どうしても外国から買わなければならぬようなそういうものは、市場を東南アジアなどに振り向けていく努力も要るのではないか。そういうことで、援助ばかりではなしに、貿易拡大のための協力というものも、日本としては低開発協力の大きな部分である。やはり日本の産業をそれだけ計画的に高度化していくことと、そうして遠いところから買っておる市場は、できるだけ近辺の東南アジアに転換していく、こういう一つの配慮がないと、なかなかアジアと日本との関係というものは緊密には汗らないということを感じます。
  151. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私、実はまだ半分しかいってないのですけれども、時間がないので切りますが、ちょっと大事な点だけを固めて三つ申し上げて御答弁をもらっておきます。  一つは、やはり日本の貿易の問題なんです。いままでは何といいましてもアメリカ本位であります。ほかは、ヨーロッパといっても、開発途上国といいましても、これは問題になりませんです。したがって、従来のようなアメリカ一辺倒的な貿易市場というよりも、たとえばアメリカ中心を、ソ連にも西欧にもというふうに振り向けて、市場を拡大していくということが一点。  それから、内に顧みまして、日本は、これも釈迦に説法ですけれども、明治以来百年の間に工業生産中心にずっと伸びてきましたので、社会開発がおくれています。社会開発がおくれているというところにまだ問題がございますから、この大きなアンバランス、格差というものをなくする、これにほんとうに真剣に努力しなければいかぬ。  もう一点は、日本の農業あるいは繊維工業がこれまた生産性が低い。この低い生産性を高めていくということにいたしまして、そして競争力に耐えていくというふうにせなければいくまいのではないか、こういうふうに思うのです。ことに労働賃金がべらぼうに安い低開発国でございますので、この辺のこともあれこれ考えまして、少々高くても日本は買うて、優に材料として消化し得るという、高い生産性のものにするという内部的な改造をみずから顧みてしなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思われますので、これを締めくくり的に御答弁いただいて、これで終わります。
  152. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本の貿易市場でありますが、アメリカとの貿易をどこか市場を振りかえていく可能性というものに対してお話があったが、これはなかなか容易なことでない。貿易の三割も占めておる。この市場に匹敵するというと、ほかの国々との貿易が拡大したといっても、共産圏貿易だって全体からいえばそんなに大きな数字ではありません、将来伸びるにしても……。だからアメリカの市場というものを、あまり簡単に市場転換が可能であるという考え方は、私は実際には即さない考え方であると思います。しかし日本の貿易というものは、政治形態のいかんにかかわらず、貿易だけはできるだけどこの国ともやるのだという積極的な貿易政策を日本の政府はとっているわけでありますから、できるだけ世界各国に広く日本の貿易市場を広げていくという努力もしなければならぬ。そして一つの国に対してあまり片寄らないということは理想的ではありましょうけれども、それは貿易の規模を拡大していくという方向で、アメリカの貿易にかわって市場をどこかに見つけ出すというのではなしに、拡大の形でやるべきだと思います。また、いま日本の貿易の半分以上は低開発国ですから、低開発国の貿易も数字の上からいえばだんだんと上がっていますから、先進国貿易ばかりでなしに、低開発国貿易が全体の貿易の中で半分以上を占めつつあるという事実も無視することはできません。貿易というものは、あそこは多過ぎるからよそへかえるというのじゃなくて、あそこも多いことを維持しながら、よそのほうも貿易を拡大していく。とにかく日本の貿易の規模を拡大しなければ、経済成長というものは頭を打ってしまうのですから、そういう積極的な輸出振興政策のほうが私は日本の国益になる、こう考えています。
  153. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 社会開発、それから日本自体の農業が非常に低生産性であります。その他軽工業、たとえば繊維工業、そういうものがだんだんと追っかけられてくる。この辺について相当てこ入れして、近代化して生産性をあげて、そして低開発国から原料をやや高くとも買い取る、そういうふうにすべきでないか、この点はどうです。
  154. 三木武夫

    ○三木国務大臣 実際アジアから見れば、日本という国はたよりにされておる面がありますから、そうなってくると日本が繊維工業についてもこれを近代化して、相当高級な製品になっていく。そして低開発国からできるだけそういう初歩的な製品というものは買うという努力をしないと、向こうがそのことによって自分の国づくりをやろうとしておるのを、それをみんなチャンスを与えないということではなかなかうまくいかないですから、したがって日本はできるだけそういう方面では中小企業対策というものをはかる。大企業というものは自分でまかしておいてもやるわけですから、中小企業というものに対しては、もう少し近代化のためにてこ入れしていくべきでしょうね。そしてそれが高度な製品を出せるようにして、低開発国との競合をできるだけ避けていくという努力、高くても買ってやれということはなかなか——商売というものは、政府機関でもあれは別ですけれども、高い物を買うということは、自由経済のもとではむずかしいのですが、それよりも日本の中小企業というものが近代化されていく、そして製品が高度化されていくという努力が必要だと思います。
  155. 大石武一

    大石委員長 次回は公報をもってお知らせすることとして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十五分散会