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1968-05-15 第58回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 青木 正久君 理事 田中 榮一君    理事 野田 武夫君 理事 福家 俊一君    理事 石野 久男君 理事 曾祢  益君       伊藤宗一郎君    小渕 恵三君       佐藤 孝行君    世耕 政隆君      橋本登美三郎君    福田 篤泰君       箕輪  登君    山口 敏夫君       山田 久就君    木原津與志君       黒田 寿男君    田原 春次君       高田 富之君    帆足  計君       松本 七郎君    伊藤惣助丸君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     藤波 恒雄君         外務政務次官  藏内 修治君         外務省中南米・         移住局長    安藤 龍一君         外務省欧亜局長 北原 秀雄君         水産庁次長   森沢 基吉君  委員外出席者         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         水産庁生産部海         洋第二課長   吉崎 司郎君         水産庁調査研究         部調査官    松下 友成君         専  門  員 吉田 賢吉君     ――――――――――――― 五月十五日  委員池田正之輔君宇都宮徳馬君、毛利松平君  及び大平正芳辞任につき、その補欠として佐  藤孝行君、小渕恵三君、箕輪登君及び伊藤宗一  郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員伊藤宗一郎君、小渕恵三君、佐藤孝行君、  箕輪登君及び松本善明辞任につき、その補欠  として大平正芳君、宇都宮徳馬君、池田正之輔  君、毛利松平君及び谷口善太郎君が議長指名  で委員に選任された。 同日  理事小泉純也君同日理事辞任につき、その補欠  として青木正久君が理事に当選した。     ――――――――――――― 五月十四日  在日朝鮮人帰国に関する請願外二十三件(枝  村要作紹介)(第五一九五号)  同(大柴滋夫紹介)(第五一九六号)  同(浜田光人紹介)(第五一九七号)  同(長谷川正三紹介)(第五一九八号)  同外一件(広沢賢一紹介)(第五一九九号)  同外一件(米田東吾紹介)(第五二〇〇号)  同外一件(大柴滋夫紹介)(第五二八九号)  同(浜田光人紹介)(第五二九〇号)  同外一件(平等文成紹介)(第五二九一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第五三七三号)  同外一件(岡田春夫紹介)(第五三七四号)  同(只松祐治紹介)(第五三七五号)  同(浜田光人紹介)(第五三七六号)  世界連邦平和国家宣言に関する請願天野光晴  君外三名紹介)(第五二八二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十四日  在日朝鮮人帰国に関する陳情書  (第三七九号)  日米及び日英原子力協定承認促進に関する  陳情書  (第三八〇号)  非核武装及び核兵器禁止に関する陳情書  (第  四〇六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  日本国ニュージーランドとの間の漁業に関す  る協定締結について承認を求めるの件(条約  第一四号)  メキシコ合衆国領海に接続する水域における  日本国船舶による漁業に関する日本国とメキ  シコ合衆国との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第一五号)  航空業務に関する日本国政府レバノン共和国  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第八号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国政府セイロン政府  との間の条約締結について承認を求めるの件  (条約第九号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国デンマーク王国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  (参議院送付)  船員の厚生用物品に関する通関条約締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一六号)(参議  院送付)  アジア=オセアニア郵便条約締結について承  認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送  付)      ――――◇―――――
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任及び補欠選任の件についておはかりいたします。  理事小泉純也君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう許可するに決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、委員長理事青木正久君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 秋田大助

    秋田委員長 日本国とニュー・ジーランドとの間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件、及びメキシコ合衆国領海に接続する水域における日本国船舶による漁業に関する日本国メキシコ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して議題とし、審査に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。世耕政隆君。
  6. 世耕政隆

    世耕委員 日本ニュージーランド並び日本メキシコ両国の間における漁業協定に関しまして御質問申し上げます。  この協定を拝見しておりますと、たいへん御苦労の末このような結果になったと思うものでございます。私、いまから個条的に申し上げていきたいと思うのでございますが、よろしくお願いいたします。  最近、この協定だけではなくて、世界各国では、領海をきめて、漁業水域自分の国の手によってきめていくというような傾向があらわれてきております。今度の協定の場合に、この協定を結ばなければならなくなったいろいろな事情があろうかと思います。これは、ニュージーランドメキシコ両国が単なる漁業のためだけにこの領海をつくったのか、あるいはそれとも何かナショナリズムに由来するものか、あるいは防衛上の機密保持のために起こってきたのか。特にニュージーランドは、面積は日本の国の約三分の二で、人口はきわめて少なくて三百万に満たないというようなことを伺っております。こういうことから、海岸線の防備に非常に敏感になっておるということも伺っております。この点どうなのか。つまり、本協定ができなければならなくなったいろいろな理由というものをお聞かせ願えればけっこうでございます。
  7. 高島益郎

    高島説明員 ただいま先生の御指摘漁業水域の問題につきましては、一九六〇年のジュネーブにおきます国連海洋法会議におきまして、領海の幅員を定めるいろいろな努力がなされました。その過程におきまして、アメリカカナダ提案によりまして、領海を六海里とし、その外側にさらに六海里の漁業水域を設けることによって十二海里の領海要求を押える、そういうことが妥協案として提出されました。ただ遺憾ながら、この提案は採択に至りませんで破れましたけれども、その後、これを契機といたしまして、世界の国に、領海の外に漁業水域を設けるという傾向がだんだん出てまいっております。特に国内法によりまして、一方的に六海里の漁業水域あるいは九海里の漁業水域領海外側に設けるという、非常に一方的な傾向がふえまして、わが国、特に海洋漁業に従事しております国にとりましては、非常な影響を受けておるわけであります。今般御承認をいただきますメキシコとの協定及びニュージーランドとの協定も、そのような国内法によって一方的に設定された漁業水域に関しまして、わが国漁業利益を確保するための実際的な取りきめをここに定めるという趣旨のものでございます。  先生の御心配の、いかなる理由によってこのような水域を設けることになったか。これは私ども調査した限りにおきましては、もっぱら自国の漁業利益を確保するということでございます。つまり、ニュージーランドの場合でございますと、領海三海里、その外側にさらに九海里の漁業に関します排他的管轄権を主張するという立場に基づきまして、そのような漁業法の改正をなされました。これが現在ニュージーランドがその水域におきまして一方的に漁業管轄権を主張しておる根拠でございます。それからメキシコにつきましても、同様に漁業利益を確保するという観点からやはり国内法が制定されまして、ニュージーランドの場合と違いまして領海は九海里でございますが、その外側にさらに三海里の漁業水域をその法律によって定め、そこで排他的漁業に関する管轄権を主張するということでございます。
  8. 世耕政隆

    世耕委員 この協定内容を拝見いたしますと、ニュージーランドとの契約は一九七〇年の十二月三十一日までになっております。メキシコとは一九七二年十二月三十一日まで、時間のずれがだいぶんございます。この点が一つ私はよくわからない。  もう一つは、ニュージーランドとの協定フェイズアウトといった形の方法になっているように思われます。協定のある結び方が、メキシコニュージーランドとの間には違った点が多分にある。条文の文章もかなり異なっておりますので、この点を御説明いただきたい。
  9. 高島益郎

    高島説明員 先ほど御説明いたしました漁業水域を一方的に沿岸国が設定した場合に、その水城におきまして、過去の伝統的な漁業実績がある国の実績を大体尊重するというのが現在におきます国際慣行でございます。ただ、過去の漁業実績がどの程度のものかということによりまして、三年とかあるいは五年とかあるいは永久にというふうに、継続を認める場合の期間が違うわけでございます。ニュージーランドの場合におきましては、日本操業実績、これは一九六三年から試験操業に入りまして、実質的には六四年から操業に入っております。したがいまして、ニュージーランド国内法を制定されましたのが六六年の一月からでございますので、過去の実績といたしましては、実は実質的に申しますと二年間しかなかったわけでございます。ただ、日本のほうといたしましては、たとえ二年の実績であっても、これを一方的に排除するということは認められないということでもって、国際司法裁判所にまでこの問題を提起しようということでかけ合った次第でございますけれども、結局そういうことに至りませんで、今回の協定に達したわけでございます。また、メキシコの場合は、これは実績といたしましては一九六二年からございますけれども、これも実質的に申しますと、六四年からの実績が大体過去の重要な実績になっております。そういう関係で、実績期間が必ずしも長くないということが一つと、もう一つは、メキシコ国内法で、過去、これまで伝統的に漁業実績のある国につきましては、国内法によりましてこれから五年間を限って操業継続を認めるという国内法がございますが、これは日本のほうといたしまして、国内法を認める立場にはございませんけれども、そういう国内法があって、メキシコといたしましては、五年以上の操業継続を認める場合にはないわけでございます。そういういろいろの観点を考慮いたしまして、ニュージーランドの場合につきましては、七〇年でもって日本操業が終わる。それ以後は日本はそこへ入っていけないということになるわけでございます。ただ、メキシコの場合は、とりあえず五年間だけの協定締結いたしまして、それ以後はまたその前の時点におきまして、その後の日本操業継続をどうするかということをあらためて協定交渉するという立場でございます。したがいまして、協定期間は五年間に限っております。ニュージーランドの場合は、協定期間は無期限ということで、七〇年後はそこに入っていけない。メキシコの場合は、その後につきましては、五年間に限ってのみ操業継続を認めることになっておりまして、その後につきましては現在定めておらないということでございます。
  10. 世耕政隆

    世耕委員 よくわかりました。つまり、メキシコとの場合は、この協定期間が過ぎても、その後は話し合いに応ずる、もう一つニュージーランドとの協定の場合は、一応この期限内で打ち切りということになっている、そのように解釈してよろしゅうございますか。
  11. 高島益郎

    高島説明員 そのとおりでございます。
  12. 世耕政隆

    世耕委員 この協定を結ぶ以前、おそらくこの両海域におきまして日本漁船操業していたと思うのでございますが、この協定の中における年間漁獲高の約束と、それ以前の自由にお魚をとっていた場合の日本漁船漁獲高実績でございますね、これはとの協定の中で大体量は確保されているのかどうか、お伺いいたします。
  13. 森沢基吉

    森沢政府委員 漁業実態についてのお尋ねでございますが、先ほど高島参事官からもお答え申し上げましたように、ニュージーランドにつきましては、一九六三年から試験的な操業を開始しまして、本格操業は六四年からでございます。現在約六千トン程度漁獲高を上げておりますが、この条約締結によりまして、ここで操業いたします日本のおもにタイの母船式はえなわ漁業でございますが、これの実績はおおむねこの条約によって確保されるということは申し上げられると思います。特にニュージーランドとの間には、船の規模でございますとか、船団の数でございますとか、そういうものにつきましては、ごらんのとおり規定がございますけれども、一方、メキシコにつきましては、そういう船の隻数等につきましては協定はございませんで、大体過去の漁獲高の平均を見まして、五年間で一万五千五百トンというふうな協定内容になっております。この数字は、昭和四十年から四十二年まで日本遠洋カツオマグロ漁業がこの水域におきまして操業いたしております実績をベースにいたしまして、それの五年間分、大体年間に三千百トン程度でございますが、一万五千五百トンが確保されておりますので、過去の操業実態から見まして、実績は十分確保されているということが申し上げられると思います。
  14. 世耕政隆

    世耕委員 大臣のほうはお時間がないそうでございまして、先に大臣にお伺いしたいと思うわけでございます。これから日本漁業は御存じのように、遠洋漁業に負うところが非常に大きいわけでございますが、これからよその国の沿岸に近いところでやるような遠洋漁業の場合には、だんだんこういった形で締め出されていくと思うのでございますが、これを今後外交上からは、どういう角度で日本漁業保護していかれますか、その点をひとつ外務大臣にお伺いしたいと思うのであります。
  15. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘のように、各国とも領海を拡大する傾向がある。日本は三海里ですが、実際問題として六海里説をとっておる国が少し多いのではないか。大体よく似た程度であります。しかし、日本の場合は三海里。三海里でありますが、もし国際的に合意に達するならば、これは日本も検討するにやぶさかではない。ところが、海洋に関する会議でも話はなかなかまとまらないのですね。それで、日本は三海里を主張しても、相手は違法な、名前は漁業水域とか、領海そのものではないまでも、いろいろの主権を主張するわけですからね。領海の拡大的な法律的な効果を持っておる。これはしかし原則論ばかりでも片づかないものですから、現実的な解決方法として二国間の漁業協定を結んでいく。しかし、こういうことは、実際から言えば、領海範囲というものをちゃんと国際的にきめて、そうしてその間においては漁業に対しては制約を受けるというようなことにすれば、二国間協定を結ぶ必要もないわけですが、なかなかそこにいかぬのですから、まあこれは不徹底なことですけれども、現実的にその国の特殊事情を考えながら、漁業の取りきめを行なって安全操業をやり、日本漁業権益というものを確保するというよりほかに実際的な解決方法はないという状態でございます。こういう見地から、日本漁業の従来のいろいろな実績もありますから、今後それを維持して、わが国漁業というものが、こういうように世界的に領海を拡大することによって日本漁業実績を阻害されることのないように、できるだけこれを確保するために今後とも努力してまいりたいと考えております。
  16. 世耕政隆

    世耕委員 私、政治に関係するようになりまして一年になりますが、一度は野党の方のようにまっこうから反対するような演説というものをやってみたいと思ったんですが、なかなかできません。この協定の場合も、やはりたいへん微に入り細にわたって非常に努力されて、文句の申し上げるようなところもないと思うのでございますが、大臣におかれましては、これからこういったことに関連していろいろ外交交渉を行なわなければならないと思うのでございますが、日本外交交渉の場合、どういう点が一番、何といいますか、相手の国に対して、交渉なさるときにちょっと弱点があろうかと思いますが、どういうふうな点で御苦労なされるのか、その点をちょっと伺いたい。
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 日本漁業というものは、諸外国に比べてなかなか発達しておりますから、魚族保護というものについて、根こそぎやってしまうような場合もなきにしもあらず、そういうことで、諸外国に比べて、漁業日本が非常に優秀であるために、ほかの国の漁業日本と競争したときにはかなわない。日本漁業が魚を徹底的にとるというようなことがあって、魚族保護という点について問題がある場合もある、相手国としては、日本漁業は今後ある程度、そういう魚族保護だとか、あるいはまたその国の漁業者が立ちいくように、そういうことも考えてほしいというようなことが、漁業交渉の場合に持ち出される点でございます。
  18. 世耕政隆

    世耕委員 大臣に対する質問はこれで打ち切らせていただきまして、またあとで他の方に御質問いたします。
  19. 秋田大助

  20. 石野久男

    石野委員 大臣にお尋ねしますが、この問題で一番われわれ注意しなくちゃならぬのは、先ほど世耕委員からも質問がありましたように、各国が思い思いに自分領海指定をする、あるいは水域指定をするということに対して、われわれがどういう態度をとるかということ、わが国がどういう態度をとるかということだと思います。特に、日本がいま領海を三海里としていることをこれからなお国際的な諸関係の中で持続していけるかどうかという問題がここで出てきているんじゃないか、こう思うのです。大臣は、やはり三海里説をわが国としてはこれからもなおずっと続けて主張していくつもりでおるのか、それとも、この問題については、各国事情勘案の中で、わが国態度を何か新たに考えなければならぬような段階にきておるのか、これは前にもちょっと聞きましたけれども、この際、ひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  21. 三木武夫

    三木国務大臣 いま、石野さんも御承知のように、少し領海を拡大していく傾向がありますね。しかし、国際的な合意ができない限りは、これはやはりみながそういうことにしようということにならなければ意味がないわけですから、国際的な、みなが一致した領海というものがきめられない間は、三海里というこの日本の主張を維持してまいりたい。で、各国がみな領海をこのようにしようではないかということで国際的合意が達成できるならば、日本もこれに対して耳を傾けないということではない。それができるまではやはり三海里でいきたい、こういうことでございます。
  22. 石野久男

    石野委員 いま上程されておりますこのニュージーランド並びメキシコ両国に対する条約は、その形式の上においても、また内容の上においても違う点がある。特に政府統一見解といいますか、そういう問題で、ちょっと疑義を差しはさまなければならぬような問題があるわけです。たとえばニュージーランドの場合ですと、これは基線から六海里と十二海里の間の処分、こうなっておりますし、それからメキシコの場合になりますと、基線から九海里と十二海里の間の水域、こういうふうになっているわけですね。したがって、このメキシコニュージーランドの間には、基線から六海里、基線から九海里という、六海里と九海里の間の問題をどういうふうにするかという問題が一つあります。それからまた、われわれが考えておる三海里説はそのときどういうふうになるのか、こういう問題に対する明確な回答がここでは出ていないわけです。こういうような問題を承知の上でこの条約を結ぶということについての外務省の考え方、そういうところを明確にしていただきたい。
  23. 高島益郎

    高島説明員 ただいま大臣からお答えございましたとおり、領海に対する態度、それから漁業水域に対する態度、それぞれ各国に統一したものはございません。統一した国際法が実はないわけです。日本につきましては、領海は三海里、漁業水域につきましては、国際的な合意があればこれは有効である。現に日本は、韓国との間にそのような漁業水域の取りきめをしておるわけであります。日韓漁業協定におきましては、それぞれ十二海里の範囲内で漁業水域を設定し得るということを定めております。したがって、日本は、漁業水域そのものを否定するものではありません。国際合意があれば差しつかえない。  ところで、ニュージーランドの場合は、ニュージーランド領海は三海里、日本と同じたてまえをとっております。ただ、漁業水域につきましては、従来、一九六〇年以降の慣行で、大体領海外側六海里から十二海里までの範囲内で過去の操業実績を認めるというのが、現在各国のとっておる慣行でございます。これは欧州にそういう漁業条約がございまして、この中でも一九五三年から六二年の十年間漁業実績、それにつきましては、この領海外側六海里からさらに十二海里までの範囲内、いわゆる外側六海里について操業継続を認める、そういう慣行がございまして、この慣行に従って、ニュージーランドの場合につきましても、日本外側六海里の範囲内で過去の実績を認めさせたというのが、この協定内容でございます。  また、メキシコにつきましては、これは領海は、日本は三海里でございますけれども、メキシコは九海里の領海を主張しております。こういうことで、双方の法律的立場はまっこうから対立いたしますので、その点は、お互いに法律的立場をこの際全然主張し合わない、実際的解決といたしまして、九海里から三海里の範囲内、つまり、十二海里までの問の三海里について過去の操業実績を認めさせたということでございます。これは法律的立場は、メキシコのほうの協定に書いてございますとおり、それぞれ法律的立場を害しないということで、日本が決してメキシコの九海里を認めたわけじゃなく、また、メキシコ日本の三海里を認めたわけじゃなくて、実際的解決といたしまして、外側の三海里についての操業継続を認めたというのがこの協定のねらいでございます。
  24. 石野久男

    石野委員 慣行が先行するということになってまいりますと、結局、漁業に関しては、たとえわが国領海三海里を主張しておっても、諸外国沿岸に行った場合は、どうしても六海里の外という慣行に従わなければならないということになってまいりますと、やはり各国との間にいろいろな差があって、係争が起きるということを前提とすれば、大臣としても、日本としてもこれは大体領海を三海里などというようなことを言っていないで、六海里というようなところまで持っていくような、そういう腹がまえを心の底に置いておいて、こういう条約話し合いを進めていっている、こういうふうに政府態度を見てよろしいですか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 一九六〇年に、海洋法会議で、アメリカカナダ共同提案で、六海里の一つ提案がなされて、そのとき日本が賛成したいきさつがございます。ちょっとしたことでこれが国際的な合意に至らなかったのです。そういういきさつもございますから、みな各国が同意するならば、その程度までは国際的にみな合意が達成できるならば、日本は、領海範囲を拡大するということに対しては、過去のいきさつなどからしても、反対ではないということでございます。
  26. 石野久男

    石野委員 領海問題は非常にむずかしいことであるし、これはなかなか各国ともそれぞれの主張があろうと思いますけれども、いまの大臣の答弁などから見て、やはりわが国は、国際的に各国が妥当な線として打ち出せる線、大体六海里を軸にしていく、こういうたてまえで今後外交交渉などをしていくという考え方だというふうにわれわれは理解していっても大きな違いはありませんですね。
  27. 高島益郎

    高島説明員 実は、その点につきまして、アメリカがこの前、昨年でしたか、バートレット法を制定いたしまして、漁業水域を制定いたしました。アメリカ領海三海里でございます。現実に日米間の取りきめでは、外側の九海里、つまり、三海里から十二海里までの範囲内で漁業実績を認めさしておるわけであります。したがって、すべてが六海里だというわけでは決してございませんで、そういうふうに、国によっては、三海里の外側九海里におきまして漁業実績を尊重させ得るということでございますので、日本といたしましては、すべての場合につきまして六海里だということでは決してございません。
  28. 石野久男

    石野委員 時間の関係などいろいろ言われておりますから、論議をなるべく省きたいと思いますけれども、大臣、国際海洋法会議等にかまえて、わが国が今後領海の線をどこに置いていくかという基本的な考え方、従来のとおり三海里を軸にして各国との交渉を進めるという腹がまえが妥当なのか、それとも、この際六海里へ線を合わせていくことのほうが各国との間の話し合いがスムーズにいくというふうに考えているのか、どちらかということをひとつはっきりしていただきたい。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 私、最初に申したように、国の数としては、六海里説をとっているほうが少し多いです。しかし、それは三海里とよく似たくらいの程度で、多いといっても圧倒的に多いわけではないのです。この問題は、なかなかむずかしい点があるわけで、日本とすれば、できるだけ領海範囲というものをそんなに拡大しないほうが日本の利益にも合致するわけですから、率先して領海あるいは漁業水域の拡大のために世界の世論を喚起するような立場はとりたくない。しかし、漁業上の紛争などが起こることは好ましくないですから、世界各国がそういうことで合意ができれば、拡大することには同意するが、進んで拡大には日本は努力をしようという考えはない。実際問題して、領海範囲を国際的にこれが合意に達するように持っていくということはなかなかむずかしいので、現在のところは、そういう日本の国家的な利益も踏まえて、まあ三海里という原則でいこうという考えでございます。
  30. 石野久男

    石野委員 日本領海に対する考え方は、諸外国事情がどうあろうと、国益擁護の立場からして、三海里を基準に今後も交渉していく、こういうたてまえだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  31. 三木武夫

    三木国務大臣 そうです。
  32. 石野久男

    石野委員 そこで、そういうたてまえからしますと、たとえば、最近、インドネシアに対して一隻について年三百ドルですかの入漁料を払うことの合意をしておりますね。こういう話し合いをした法的根拠などというものはどういうところにありますか。
  33. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、入漁料ですか、入漁に対しての料金というような形ではわれわれは承諾できない。しかし、漁業の基地であるとかその他の便宜供与に対しては、何らかこれを支払うということが、実際問題の解決としては必要な場合があり得るであろう。だから、日本は、領海という考え方あるいは漁業水域に対してのインドネシア側の主張というものは認めがたい。しかし、日本漁船が向こうのいろんな便宜というものを利用する場合に対して、インドネシアの漁業の状態などから考えて、これに対してある程度の便宜供与に代価を支払うということは、日本の諸原則に矛盾するものではないという考え方です、まだこれはそこまで話はまとまっておりませんが、そういう形で解決したいという意図であることは明らかでございます。
  34. 石野久男

    石野委員 この場合、インドネシア近海というのは、入漁料など払うという意味からすれば、当然領海の中に入るということでしょうから、やはりインドネシアの基線から三海里以内に入るという場合にこれをやる、こういう意味ですね。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 いや、インドネシアは、ずっとあんなに何千と島がある、その島を結んで、内水宣言でしたか、それで漁業水域を設定しておるので、そういうことは認めがたいということで、これに対しては、その原則というものは承認せず、もしわれわれとして何らかの代価を払うとするならば、日本漁船が受ける便宜供与に対して多少の代価を払おうという以上の意味は持っていないものでございます。
  36. 石野久男

    石野委員 この六海里から十二海里、また九海里から十二海里の間の水域ですね、この水域は接続水域といいますか、こういうふうに見えるのかどうかですね。特に俗にいうところの漁業水域であって、国際法上の権利に基づくものではないとわれわれは理解しておるわけなんですよ。そこで、国際法上確立した権利ではなく、一方的な権利の主張である、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  37. 高島益郎

    高島説明員 先生指摘の六海里の範囲あるいは三海里の範囲は、いわゆる漁業水域ということで、そういう国際慣行が徐々に成立しつつあることは事実でございますけれども、国際法上の確たる根拠はございません。ただ、接続水域と申しますのは、この前領海条約を御承認いただいた際に、あの条約にはっきり書いておりますとおり、あるいは税関上、あるいは出入国管理上、あるいは衛生上の管轄権沿岸国が主張し得る範囲ということで、領海外側十二海里までの範囲というものが接続水域ということになっております。これとは全然別個のものでございます。漁業に関してのみ管轄権を主張し得る、そういう水域沿岸国が主張する、こういうわけであります。それをわれわれ称しまして漁業水域と称しております。これは接続水域とは全然別個のものであります。
  38. 石野久男

    石野委員 そういう場合に、たとえばそういうような接続水域漁業水域の場を、十二海里までというものを漁業専管水域というように、世界がこう国際法的に立法化していくというような傾向はあるのですか。
  39. 高島益郎

    高島説明員 現実にたとえば欧州漁業条約という条約がございまして、これには現在八カ国が参加しておりますが、その国の間でそのような水域領海外側十二海里までの範囲で設定いたしまして、相互に自国の漁業に関する主権を主張いたしております。もちろん、その範囲内におきまして実績のある国につきましては操業継続を認めておるわけでございます。
  40. 石野久男

    石野委員 これは大臣にまだいろいろ質問があるのですが、時間の関係がありますので、原子力局の局長来ておりますから、局長にひとつきのうの質問の続きをちょっとさせていただきます。  きょうは大臣がお見えになっておりませんから、局長にひとつお尋ねしますが、ソードフィッシュ号の問題について、原子力委員会をきのう緊急に持たれたようですが、最終報告というのをいつごろ出す予定ですか。
  41. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 いまお話しありましたように、昨日、佐世保におきます放射能問題に関しまして原子力委員会を開きまして、検討をいたしました結果、政府に対する見解が出されたわけでございまして、その中に、今後引き続き調査を行なうということが書かれておるわけでございますが、この調査につきましてはできるだけ早くやりたい、こういう体制でわれわれ進んでおるわけでございますけれども、われわれの手元にあります資料には、今後の原因分析上必要なデータに十分でない面もあるわけでございまして、これを今後調査を進めるにつきましては、米国側に対しまして資料の要求あるいは質問するということを考えなければならない。それにつきましては、政府として米国側にも協力要請をいたしておるわけでありますが、その協力によって得られる資料の内容程度等によりましても左右されるかとも思いますが、できるだけ早い機会に事態の判明をはかりたい、こういうことでございます。
  42. 石野久男

    石野委員 きょうアメリカの専門家たちが日本に来るようですが、昨日も外務大臣との話し合いの中で、アメリカから来る専門家たちの調査は、どういう資格で日本の原子力委員会なりあるいは政府と協力するのかという性格問題では、これは決して共同調査ではないのだ、あくまで毛向こうに協力を求めるだけである、こういうことで、結論は日本が自主的に出すのだということの確認をしておるのですが、そういう点は政府としてももちろんそうだろうし、それから昨日持たれた原子力委員会においても、おそらくそういう点の確認は行なわれたものと思いますけれども、その点について、このアメリカの専門家というのがどういう役割りをするかについて、原子力局長はどういうふうに考えておるか、この際、はっきりしておいていただきたいと思います。
  43. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 お話がありましたように、アメリカ側に対しましては、合同調査という形よりは、こちらからこちらの必要とする資料の提出を求めたり、こちらで疑問とする点の解明をはかるために質疑を行なったり、こういう形で行ないたい、あくまで最終結論は自主的に出す、こういう方針であることは、昨日の原子力委員会の討議の中でも話に出ていることでございまして、われわれも同様に考えております。
  44. 石野久男

    石野委員 時間の何がありますので、私はまとめて四つほどの質問をしますから、ひとつこれにお答え願いたいと思います。  今度のソードフィッシュ号の事故を発見してからの発表の時間的な問題で、それが非常に緩慢に過ぎたということは、さきのこの委員会においても、われわれは長官にもはっきり、もう少し迅速にやるようにということを言ってありますが、これはやはりそのようにしてもらいたいと思うのです。  そこで問題は、その発表について、なるべくその真実を包み隠しなく発表してもらわなければいけないのじゃないか、こう思います。私は昨日資料をあなたのほうからいただきました。この資料の中でも、新聞などの報道によりますと、ここに出ている発見個所が三カ所というのは、もう少しあって、八カ所くらい出ているということがいわれておるわけです。ところが、図面の中には三カ所くらいしか、また資料としてわれわれのところに提供されたものにも三カ所しか出ていない。これではいけないと思いますので、やはり資料は正確に出してもらいたいということが一つ。  それからいま一つ、原子力委員会が、アメリカの艦船を日本に入れるにあたって、私たちがこの問題についてはもう非常に口をすっぱくして、もう少し安全性を確認しなさいということを言っていたわけですが、その時点では、いつも、アメリカ側が安全を保障するのだからだいじょうぶなんだということが壁でして、それ以上は入れない。特に軍艦というのは機密が多いから入れないというようなことを理由にして、結局アメリカの資料を一〇〇%信頼するということから、原潜の入港というものを認めるというたてまえが原子力委員会でとられてきたわけです。しかし、今度のソードフィッシュ号の問題にしましても、それからなお、私はきょうは時間がありませんから多くを言うことはできませんが、すでに先年、三十九年の段階で横須賀で起きております放射能問題、いわゆる米潜水艦のスヌーク号の事件があるわけですね。しかし、その当時は、付近におったところの航空母艦のレーダー操作によるのだろうというようなことで、一応問題を不問に付してしまったのですが、いまから考えてみると、当時もいろいろな資料があったわけです。しかも、それは空中だけじゃなしに、海の中にも異常数値が出ておりましたから、そういうような問題などを見てもわかるように、アメリカに一〇〇%信頼を置くということのたてまえというものは、もうあんまり信頼できなくなってきた。これがやはり今度の佐世保事件だと思います。  そこで、原子力委員会が従来とっているように、アメリカの資料が安全を保障しているから、すべてそれは安全を確認するというこの態度は、原子力委員会としてはもう一度検討を加えなければならぬのじゃないか。もっと端的にいうならば、そういうものでわれわれはすべての判断をしてはいけないということをこの際原子力委員会は明確にすべきじゃないか。政府もまたこのことを原子力委員会に対して再検討させるべきだ、こういうように私は考えるのだが、その点について原子力局長はどういう見解を持っておるかということです。  それから四つ目としてお尋ねしておきたいことは、新聞なんかに出ておりますところによると、アメリカの原子力潜水艦あるいは原子力船舶というものを入れるにあたっては、一定の条件を確認しなければ入港させないのだということで、そういう条件のもとに入港させるということを今度原子力委員会がきめたようでございますね。だから、アメリカ側が一定の条件をという、その条件とは何であるか、これを明確にしていただきたい。その条件の中にいろいろな問題があるようです。新聞で読みますと、安全性の確認のための条件として、監視体制の強化、二番目は、港内停泊中及び近海で第一次冷却水を排水しないこと、第三番目に、地域住民の不安を解消する措置を日米間で協議する、こういうことが出ておる。この第三番目の地域住民の不安を解消する措置を日米間で協議するという問題が、私は非常に問題になると思うのです。これは日本における原子力施設の安全性の問題と関連しまして、当局はいつでも地域住民に対して安全性を確認させるような権力主義的なやり方をどこでもやっておる。特に私は、東海村を近くに持っておりますからそのことを強調するのですが、地域住民の不安を解消するために日米間で協議するというようなことがよく伝えられておりますけれども、こういうような考え方があるとするならば、やはりこれに対する明確な当局の考え方を知っておかなければいけないと思うのです。その点をひとつはっきりとお答え願いたい。
  45. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 第一番目の、今回の発表に時間がかかって、それが不安のもとになったのではないか、こういう御指摘でございますが、われわれ当初、二度目の調査の結果を待って発表するといったような考慮を払ったことがかえって時間が手間どりまして、そのため不安を与えたことを反省いたしておりまして、今後の発表のやり方を検討いたしたいと考えております。  資料につきましては、最初は電話だけの資料を発表したわけでございますが、その後、現地からの詳細な資料が到着いたしました既におきましては、それは全部公開いたしておりまして、ただいまお話しの、三カ所だけでなくて、八カ所も出ておるということは、このチャートで、潜水艦の回りでなくて、遠くのほうで多少のものが出ておるということをさしておるのではないかと思いますが、それらの資料をもとにいたしまして、いま分析を行なっておるのでございます。今後もその資料の真実性と申しますか、これの発表等につきましては十分留意いたしたいと思っております。  それから、原子力委員会の安全性の確認方法につきましての御指摘でございますが、相手が軍艦であります性格上、お話しのとおり、主としてアメリカ政府の声明書でありますとか、あるいは口上書で約束されましたことを重点に検討をいたしまして、それが守られるのであれば、入港しても安全は確保できるであろう、なお、監視体制は十分整備すべし、こういう態度で原子力委員会は意見を出しておったわけでございます。今後、相手が軍艦であることによる制約は若干あると思いますが、今回のような問題が起こっておるわけでございますので、これを解明するとともに、その結果によりましては、いままで約束されております口上書等の内容その他につきまして、改善なり、さらに別の制約を求めるというようなことも当然考えなければいけないと思っております。  なお、最後に御質問されました、原子力委員会で、今後入港させる場合の条件を発表しておるやの御質問でございますが、これはまだ、原子力委員会としてそういうところまで発表したことは私は存じておりません。これは今後の検討によるものと考えております。
  46. 石野久男

    石野委員 私は質問をこれでおきますが、一言だけ言っておきます。問題は十分でございませんし、あと科学技術委員会で詳しく尋ねたいと思いますが、ただ一つだけこういうことを……。  この段階で、原因の究明がはっきりしたい、対策も立たないのに、依然としてアメリカの原子力潜水艦なり航空母艦というような、原子力によるそういう船舶を入港させるということは、国民感情の上からいって許されないと思います。そういう問題をほうかむりして船を自由自在に入れるというようなことは、絶対に許されないと思うので、その点に対する対策を当然立てるべきであるし、また、そのための条件というものは当然出てくることだと思うので、そういう問題について、原子力委員会が放置しておくという手はないと思う。これからあとの問題だということで逃げることはできないので、それについての態度だけは明確にしておいていただきたい。
  47. 藤波恒雄

    ○藤波政府委員 その点につきましては、昨日原子力委員会でまとめました見解の中にも強調されているところでございます。
  48. 秋田大助

    秋田委員長 曾祢益君。
  49. 曾禰益

    ○曾祢委員 外務大臣お急ぎのようで、きわめて短時間に伺いたいのですが、何しろ一九五八年並びに六〇年の国際海洋法会議で、遺憾ながら公海における漁業の自由だけが認められ、接続水城についても、日本としては従来の主張はありながら、領海六海里、ただし接続水域六海里、そうして、その場合に従来の漁業実績を認めるというならば、それでもよかろうというところまで妥協に応じるという態度をとったけれども、それすらできなかった。したがって、現状における外務省の基本的主張は、領海三海里、また接続水域については条約に基づく、漁業専管水域等については、実際上は二国間の条約ができればそれによるということを言っておられることは、これは私はわかります。しかし、現実には、やはり各地においていろいろな問題が起こる。その具体的な処理において、ややもすれば原則が相当曲げられる傾向があるわけです。今回の二つの協定にしてもこの傾向なしとしない。加えて、現実においては、たとえばいま問題になりましたインドネシアの問題も、いろいろ弁明はするけれども、実際上は理屈の通らない、実質的な漁業権みたいな形でとられるような代償を払って、しかも、これは漁業専管水域とかあるいはその問題を離れて、全くむちゃくちゃな内水宣言というようなものを事実上認めるに近いような方法をとらざるを得ない。等々考えてくると、やはり困難なことではあるけれども、漁業専管水域について、わが国はいまの無秩序な状態では困るんで、そういったような一方的な内水宣言はいかぬし、大陸だなの主張は今度はソ連からもきている。こういうものを踏まえるならば、やはり領海のことも含めて、認められた基線から十二海里までは漁業専管水域として認める、その場合に、必要があれば三海里にこだわらない、まず六海里くらいの領海は認めてもいい、ただし、絶対の条件として、かってな内水宣言、大陸だな宣言、あるいは従来の実績を無視する行き方じゃなくて、実績のある漁業については漁業専管水域内においても入り会い権を認める、大体そういうラインで、ケース・バイ・ケースでやっていて結局押しまくられるよりも、困難なことであるけれども、日本のほうが漁業専管水域十二海里説で、領海も、三海里だけれども、場合によったら六海里までいい、そのかわり専管水域内の実績を認める、以上三項目くらいで、むしろ国際的な会議を招集するように努力すべきではないか。この点は単に私の当面の思いつきだけでなく、こういう問題に非常に関係の深い日本の海員組合、漁業関係のいわゆる漁船労協、国際的には国際運輸労連、こういうものがそういう線を出しているのですね。結局シックス・アンド・シックスできめたらどうだ。私は、むしろケース・バイ・ケースという形は、なるほど従来の三海里説を堅持しているんだと言いながら、現実にはかなりいろいろな問題になるかもしれない妥協に追いまくられていることを考えるならば、私がいま申し上げたような、国際的にもそういう例があるんですから、そういうラインでひとつ外交を進めていくほうが、今後日本漁業の利益を保護するためにいいんじゃないか、かように考えるのですが、その点についての外務大臣の御所見を伺いたい。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 いま曾祢君の言われたようなことで国際的にまとまれば、それが非常に好ましいとわれわれも思うのです。ただしかし、漁業というものがからんできますと、各国の利害というものが非常に錯綜してくる結果になりまして、国際的にいま曾祢君が御提示になったようなことでまとまるのは、将来はともかく、現在のところではなかなか見通しは立たないのでございます。しかし、言われるように、何か国際的に一つの基準というものがあれば、二国間でいろいろな漁業交渉をするよりも、そういう国際的な基準ができることがやはり好ましいということは御説のとおりだと思います。そういうことで、われわれとしても今後は努力をいたすことについてはやぶさかでないわけでありますが、それでみながまとまるかどうかというところに問題があるということでございます。
  51. 曾禰益

    ○曾祢委員 これはむずかしいことはわかっているのです。ですけれども、そういう努力を積み上げてほしい。そうでないと、結局既成事実に押されてしまう。結局こっちは何といっても追いまくられますからね。また、関係諸国から見ると、日本漁業があまり能率がよ過ぎるので、追いまくられるというセンスを持っているんでしょうけれども、この無秩序な状態を、日本だけの意思ではどうにもなりませんけれども、やはり国連等を通じてそういったようた国際的な漁業に関する秩序をつくるという努力の積み上げが、ケース・バイ・ケースで結局インドネシアのわがままに押され、あるいはソ連のわがままに押される、そういうことをなくする、そのための継続的な努力、そして多数国による一つの秩序をつくるという方向で努力してほしい、こういう意味ですから、その点、私は大体方向においては御同感だと思うのですけれども、今後の努力をもう一ぺんはっきりと伺いまして、まだ伺いたいことはあるのですけれども、同僚委員に回さなければなりませんから、私は、外務大臣からもう一ぺん御答弁を伺いましたら、他の委員にお譲りいたします。  あとは事務当局でけっこうですから、漁業協定についての質問が若干ありますので、留保しておきます。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 なかなかそのことがむずかしいことであっても、これは努力をしないと、そういうことの結果は生まれないのでありますから、われわれとしても今後努力を積み上げていくということには、われわれもさように考えております。
  53. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  54. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 近年、公海における漁業資源の保存に関する国際的要請が高まるとともに、沿岸十二海里までの漁業水城を規制する国が多くなっておるわけであります。   〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕 わが国遠洋漁業は、ますますその中にあって国際的規制を受けるようになっておるわけでありますけれども、一体世界におけるこのような中において、漁業専管水域を設けている国はどのくらいあるか、伺いたいと思います。  また、このようだ漁業の国際規制のうちに、現在わが国が結んでいる多数国あるいは二国間の漁業条約及び協定は幾つくらいあるのか、伺いたいと思います。
  55. 高島益郎

    高島説明員 伊藤先生お尋ねの意味の、法制によって一方的に漁業水域を設定している国は、現在十七ございます。これに対して、日本はいままで、ここに御承認を求めておりますニュージーランドとの協定メキシコとの協定アメリカとの暫定取りきめ、以上三件につきまして、それぞれ日本漁業実績を認めさせるような取りきめをいたしております。
  56. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このように過去に多くの漁業専管水域が設けられて、遠洋漁業は国際的規制を受けたければならないのでありますけれども、ただいま伺ったほかに、近い将来漁業協定を結ぶ予定の国はどこですか。
  57. 高島益郎

    高島説明員 現在、オーストラリアとの交渉を近く開始いたしまして、日本漁業実績を認めさせるように取りまめをいたしたいというふうに考えております。
  58. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままで漁業先進国である日本が、公海自由の原則だけを主張したとしても、各国からの略奪漁業の非難を軽減するものではないと思うのです。国際世論を味方に引き入れることは非常にむずかしいとも言われております。この委員会において海洋条約の審議の際に、領海の幅については六海里説を受け入れてもよいというような答弁があったわけですが、いままでわが国は一方的な漁業専管水域を認めないという立場に立っていたわけですけれども、このニュージーランド漁業協定漁業専管水域を認めているのではないか、こういうふうに感じられるわけであります。これからの各種の漁業交渉に臨む日本側の態度がいままでと変わっていくのかどうかということが一点ですね。また、漁業専管水域設定がいまや世界の大勢となってきている中で、今後日本はどのような態度で臨むのか、この点について伺いたいと思います。
  59. 高島益郎

    高島説明員 ニュージーランドとの協定におきまして、日本ニュージーランド漁業水城を認めたというものでは決してございません。法律的な立場は別といたしまして、日本ニュージーランド外側六海里における漁業実績を確保する実際的な取りきめを行なったというだけにすぎません。今後の考え方といたしましては、日本立場と諸外国立場がそれぞれ違う場合におきましては、そういう法律的立場は別にいたしまして、実際的解決をはかるという方針で一貫したいと思っております。
  60. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 漁業に従事することができる一定水域は、一九七二年以後においては日本漁船操業できなくなるのかどうかということが疑問なんですが、その点お願いいたします。
  61. 高島益郎

    高島説明員 ニュージーランドとの協定におきましては七〇年で日本操業が終わるようになります。メキシコとの協定におきましては七二年末までの取りきめでございまして、七三年以降の分につきましては、今後また別途交渉する可能性を残しておるということでございます。
  62. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣に伺いたいのですが、その後のことについてでありますが、どういう考えを持っておるか、伺いたいと思います。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 ニュージーランドとの間にはまだ三年間あるわけですが、それが終われば、何らかの形で日本ニュージーランドの協力関係というものを続けてまいることになると思います。
  64. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 メキシコでは、五年後には日本漁船を締め出すというふうに言っておるようでありますけれども、日本側が希望して新しくその協定を結んでいけるのかどうかという点で、関係者は非常に心配しておると思うのです。その点についてもお聞きしたいと思います。
  65. 高島益郎

    高島説明員 メキシコの現在の国内法は、実績ある国につきまして五年間のみ操業を認めるということになっておりますので、現在メキシコ政府といたしましては、五年以上の協定締結する権限はないわけでございます。したがいまして、日本といたしましても、やむを得ず五年間に限って有効な協定締結した次第でございます。したがって、将来この五年の期間が満期になる際、メキシコ国内法がどうなるかということもございますし、そういう種々の情勢を考えた上で、別途協定締結の可能性を残しておくということでございます。
  66. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣に最後に伺いたいのですが、世界の公海漁場においてわが国漁業操業はますます制約を受ける傾向にあります。このような世界の動向に対処するためには、公海自由の原則を振り回すだけでなく、遠洋漁業の開発、関係国との間で資源の合理的な確保の対策を考えなければならないと思うわけであります。今後このような問題に対して、少なくとも遠洋漁業世界各国との調和の上にどのように対処するか、その点を最後に伺っておきたいと思います。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 お説のように、公海自由の原則を振り回すだけでは解決をしない。これはその国の漁業の利益がからんでいるわけですから、原則論だけではなかなか承知をしないわけであります。そのためには、やはり各国との関係をよくしなければならぬ。日本との関係が悪いと、どうしても漁業のほうは日本のほうが能率がいいことは明らかなものでありますから、そういう点で、その国と日本との関係漁業以外の面で非常によい関係を持って、それからまた、資源の保護というものに対しても、一ぺんに根こそぎとってしまわないで、いわゆる魚族保護に対してもやはり日本が協力をする心がまえが必要である。それからまた、漁業の協力という、共存共栄という面も要るのではないか。   〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕 漁業の発達のおくれておる国々に対しては、やはりこれと協力して漁業の発達をはかるために努力をするということも必要なので、お説のように、原則論だけでは解決しないのが現状で、それを補ういろいろな関係の改善というものが必要だと考えております。
  68. 秋田大助

    秋田委員長 世耕政降君。
  69. 世耕政隆

    世耕委員 それでは、先ほどのあれに関連いたしまして、もう少しお尋ねしたいと思います。  メキシコとの協定の中で、太平洋沿岸漁業禁止区域がかなりございますが、これが禁止されたのはいかなる理由でございますか、お尋ねしたい。
  70. 森沢基吉

    森沢政府委員 御指摘のとおり、メキシコ沿岸には太平洋側と大西洋側とございます。大西洋側におきましては、問題の遠洋カツオマグロ漁業は、過去におきます日本操業実績は、この九海里から十二海里の間はほとんどネグリジブルでございまして、実態として問題にならない、そういうことでこの海域ははずれております。それから、太平洋側が日本の主漁場で、先ほど申し上げましたように、年間約三千トン程度漁獲高をあげておりますけれども、約六カ所の禁止区域が設けられておりますのは、実はメキシコにおきましては、例のスポーツフィッシングを中心といたしましてメキシコ自体の漁業が非常に盛んな区域がございます。御承知のアカプルコもその一つでございます。向こうの側から見て、漁業その他が日本遠洋カツオ・マグロと競合する区域につきましては、向こうとしてもはずしてほしいというような強い要望がございますので、いろいろ将来の紛争を防止するために、そういう合意をしたわけでございます。
  71. 世耕政隆

    世耕委員 この二つの協定が結ばれますのにはいろいろな順序を通ってきたと思うのでございますが、わが国漁業界と外務省あるいは水産庁とどういうふうな形で御相談をして、こういうふうな協定に結びつけられたのか、ちょっと教えていただきたい。
  72. 森沢基吉

    森沢政府委員 このメキシコの場合に限りませんけれども、日本漁船が非常に大きな実績を持っておるという水域につきましては、交渉に臨みます前に、外務省を中心に、農林省が入りまして、いろいろ対処方針等を御相談して、過去の実績確保をできるような方法を立てて代表団を派遣いたします。メキシコとの場合には、業界の代表、具体的に申しますと、日本鰹鮪漁業協同組合連合会、ここから役員が一緒に代表団に顧問として参加をいたしまして、向こうでいろいろ日本政府の代表団と一緒に御相談をしながらこういう協定を結んだという経過がございますので、官民一体でこういう協定にこぎつけたということは申し上げられると思います。
  73. 世耕政隆

    世耕委員 この協定を見ておりますと、相手の国とわが国との間のいろんな魚の漁獲高の制限、それから船のトン数の制限、こういったことはどうしてもわが国のほうが不利でございます。相手のほうにはほとんど規制がないようでございます。これはある程度やむを得ないと思うのでございますが、これは国際法上からいきますとどういうことになりますか。つまり、相手のほうだけが有利に立っておる、こちらはやや不利である、これを公平な立場から見ていくとどういう解釈ができるのか、それをちょっと承っておきたいと思います。
  74. 高島益郎

    高島説明員 漁業水域に関する国際的な取りきめの場合、相互に漁業水域を設定いたしまして、相互の国の漁民がお互いに規制を受けるという立て方の場合と、今回の場合のように、もっぱら日本漁船だけがメキシコに行って、あるいはニュージーランドに行って操業をするという場合に、そういう片務的な協定の場合、両方ございます。今回の場合はそういう双務的なものでございません。もっぱら日本漁業がそこに進出していって、そこで協定に基づく規制を受けるということでございます。この場合に、メキシコないしはニュージーランド国内法による規制を受けるというのではなくて、日本がそれぞれの国との合意によって自発的に受ける規制をこの協定範囲内で受けるということでございますので、日本の漁民だけが一方的に被害を受けるというふうなことではございません。また、かたがた、ニュージーランド及びメキシコのそれぞれの国の漁民につきましては、それぞれの国内法によって直接規制を受けることでございますので、これはわれわれの関知する問題ではございません。
  75. 世耕政隆

    世耕委員 これで大体終わりに近づいたわけでございますが、昭和三十六年から四十一年までの六年間わが国漁獲高の統計を見ますと、総漁獲量が年間大体平均六百七十五万トンくらいでございます。このうち、マダイが年間平均二万四、五千トンというところでございます。マグロのほうは年間平均五万七、八千トンくらいのところでございます。一方、この今度の協定によりますと、ニュージーランド漁業水域内でのマダイの漁獲高は大体六千トンに規制されております。これはわが国年間とれるマダイの漁獲高の約二五%に該当するわけでございます。メキシコの場合の協定では、マグロを中心に年間三千百トンまでというふうなことになっておりますが、これはわが国のマグロの年間漁獲高の約六、七%に該当すると思われるのでございます。これがつまり協定期限が過ぎてまいりますと、マダイもマグロもわが国の総漁獲高に対してかなりな影響をしてくる、これは勢い食生活にもいろんな影響がある。またもう一つは、これは物価にもたいへんはね上がってくるんじゃないか、こういうふうなことを心配するわけでございますが、この協定が終わったあとの対策ですね。魚が足りなくなる、タイが足りなくなる、マグロが足りなくなる、こういうおそれがあるのでございますが、これに対する対策はどういうふうに考えておられるか。  もう一つは、操業海域というのは、何もニュージーランドあるいはメキシコの周辺だけではなくて、ほかにもまだ新しく開発できる場所があるんじゃないか、こういう点を含めまして、水産庁のほうから御説明をいただきたいと思う次第でございます。
  76. 森沢基吉

    森沢政府委員 第一点の問題でございますが、マダイにつきましては、世耕先生いまおっしゃいましたように、日本のマダイの総生産高は約二万二千トンくらいの量がございます。そのうち、ニュージーランドが御指摘のように六千トン。カツオ・マグロにつきましては、五万トンとおっしゃいましたが、これはカツオ・マグロを含めまして五十万トンでございます。したがいまして、メキシコのこの当該水域におきます三千トンという数字は、日本遠洋カツオ・マグロ全体から見ますと、そう大きな数字ではございませんので、日本のきわめて重要な主漁場であるということではないと思います。  いろいろ食糧問題にからみまして御質問が第二点としてございましたが、われわれ、水産物の長期需給計画というものにつきましても、寄り寄り経済企画庁あるいは農林省の内部でいろいろ相談をし、検討いたしておりますが、世界的には、先ほど外務大臣からお答えがありましたむずかしい問題がいろいろ出ておりますけれども、水産庁といたしましては、遠洋漁業につきまして、さらにもっと積極的な姿勢で資源開発を、国民に食糧、たん白を安価に提供するという立場と、漁業自体の経営の問題と、いわゆる食糧政策と漁政と両方の面からやっていくべきであるという姿勢に実は立っておりまして、そのためには、世界の各公海で試験操業並びに調査のできる船がほしいということで、実は昨年三千二百トン型の大型調査船を竣工いたさせまして、すでに稼働いたしております。ことしも五月の末ごろから、南方海域に調査試験のために出動することに相なっております。同時に、今年度の予算におきまして、この政府の大型調査船だけでは広い海洋でございますので十分でございませんので、おもな漁業でありますマグロと底引きと、それからきんちゃく網漁業につきまして、業界に政府のお金を出しまして、政府の調査船と車の両輪のごとく、世界の漁場開発を行なうというふうな姿勢を今年度において示しております。  この可能性でございますが、現在世界漁獲高約五千数百万トンでございますけれども、いろいろ専門家の見るところ、現在の技術をもってしても、二倍あるいは三倍程度の量産は世界的にも可能であるということをFAOあたりで盛んに議論しております。したがって、私は、特に日本の場合には、南方海域に重点を置きまして、今後遠洋漁業のためにも、また食糧資源の開発のためにも、かなり前向きに開発ができるものというふうに考えております。
  77. 世耕政隆

    世耕委員 先ほどマグロの総漁獲高をちょっと一つ単位が間違っておりまして、失礼いたしました。おっしゃるとおりのものが正しいと思います。  最後に、もう一つお尋ねしたいのでございますが、漁業のいろいろな技術が次第に開発されてまいりました。これは世界じゅうの傾向だろうと思いますが、特に日本の場合は、それがまた一段と進んでいるのではないかと思います。そこで、今度の協定の場合、いろいろな漁業水域がきめられてしまいましたが、こういうふうに漁業水域がだんだん各国でやかましい存在になってまいりますと、これにあまりとらわれると、たいへん今後の発展が期待されない。そこで、その漁業水域の外から、いろいろな方法漁業水域の中にいる魚をおびき出すような方法はないか、つまり、トンビが油あげをさらうような形になるわけでありますが、もちろん、日本漁船がトンビで、相手の国はさらわれるほうなんでありまして、柄のいいことではないけれども、そういった方法が何かあるんではないか。つまり、漁業をもっと科学的に、いろんな方法魚族の配置を取りかえていく。あるいはもう一つは海流ですね。海流を変えていく、あるいは海のプランクトンのようなものを一定の水域におびき寄せて、そうして魚族を引っぱり出していく、いろんな科学的な方法があるのではないかと考えるのでございますが、この点に関しまして、現在行なわれているいろいろな実験、あるいは研究の段階、今後の見通しを教えていただきまして、最後の質問にいたしたいと思います。
  78. 森沢基吉

    森沢政府委員 科学的な問題についてのお尋ねでございますが、いろいろ漁業水域等が設定されておるけれども、その外側魚族をおびき出す方法はないかということでございます。これは現在の研究の段階におきましては、たとえば沿岸の定置網漁業等におきましては、特定の電波を使いまして、あるいは照明を使いまして、魚を定置網の中にうまく導入をするというふうな方法はすでに開発され、企業化をいたしておりますけれども、いわゆる広い公海、海洋上で、いま世耕先生のおっしゃいますようなものをやるということにつきましては、まだまだ現在の技術水準では到達し得ない段階ではないか。むしろ私たちは、魚の習性を十分調べまして——たとえばタイであるとかタコなんかは、産卵のために接岸をいたします。産卵が終わりますと、いわゆる水域の外に出てまいります。そういう魚の実際の習性をよく調べまして、公海上に魚が出てきたときに、日本がとるということが現実問題でございます。いわゆる電気を使いますいろいろな漁労手段というものは、ソ連もかなり研究をいたしておりますし、日本でもそういう研究は続けておりますが、残念ながら、世耕先生のおっしゃいますポイントを射るような段階はまだ研究の実態ではないということでございます。  それから、海流を変えることはできないかということでございますが、これは何しろ広大な海洋で、私専門家ではございませんで、原子爆弾等を使ってできるかどうかというようなこともあるかと思いますが、おそらくこれは現段階では無理であろう、むしろ私たちは、海の中にいろいろな構造物を入れて上昇流を起こして、そこヘプランクトンを集め、魚を集めて漁労するという手段を、日本沿岸においてはいわゆる魚のアパート、魚礁という形でやっておりますが、広い海洋におきましては、海流を変えるということは、おそらく人為的には不可能ではないか。  それからプランクトンでございますが、これは、プランクトンをいろいろ集める方法というのは、光等を利用してあると思います。それから、プランクトンをおびき寄せて魚を集めるというだけでなくて、現在の世界の大勢は、プランクトンを食糧化することができないかという研究段階に入っております。一例を簡単に申しますと、南氷洋のあの鯨がだんだん減ってまいりまして、いろいろ国際的に問題になっておりますが、鯨が食べますオキアミという一種のプランクトン、ちょうどこれくらいのエビに似たような水族でございます。これらをとる方法を開発することは、いま日本でも研究いたしておりますが、こういうプランクトン自体を食糧として利用することが可能であろう。FAO等の統計といいますか、推計によりましても、南氷洋のいまのオキアミだけでも約五千万トンのストックがあるということを申しております。したがって、プランクトンをじかに食用にするという時代は、そう遠くない将来において、一部のものについては実現をするであろう、そう考えております。そういたしますと、世界漁獲高は、先ほど二、三倍と申し上げましたが、さらにオーダーを上げて変えるという夢も、実はわれわれ持っておるわけでございます。
  79. 秋田大助

    秋田委員長 曾祢益君。
  80. 曾禰益

    ○曾祢委員 メキシコとの協定の第十条によって、一応一九七二年十二月末まで効力を有するとなっております。ところが、第十一条によると、第十条の規定にかかわらず、いずれか一方の政府も、との協定の効力発生の日から一年後には、いつでも六カ月の予告つきで廃棄することができる、かような規定がございます。私は、これはいろいろ苦心の結果がこういうふうになったと思うのですけれども、まことに、国際的な取りきめとしては異例中の異例じゃないかと思うのです。一応期限をきめておきながら、それにもかかわらず、この協定が発効後一年たったら、いつでも六カ月の予告つきで廃棄することができる。何のために協定しておるのだかわからない。五年間協定をしておいて、一年たったらいつでも廃棄できる。こんな人をばかにしたような協定というのは、私は初めてみたのですが、一体どうしてこういうことになったのですか。御説明をいただきたいと思います。
  81. 安藤龍一

    ○安藤政府委員 お答えいたします。  本件は、一見奇異に感ずる点があるかとも考えられますが、これはメキシコ国内の業者等の関係から、これがメキシコアメリカとの間の米墨漁業協定の中にも書き込まれたものでございます。しかし、現在予測できる限りでは、この協定の有効期間中にこういったことが起こるということは予測されていないのでございます。   〔発言する者多し〕
  82. 秋田大助

    秋田委員長 静粛に願います。
  83. 曾禰益

    ○曾祢委員 それは答えになっていないと思うのですよ。どうしてこういうへんてこりんな協定をしたのですか。十条で五カ年間となっておる。大体五年間協定ですが、実際上は、この協定の発効前にも、試験的にこういう取りきめ的なことをやっておる。十条でこういうことを言っていて、十一条で、一方的に通告すれば、効力発生の日から一年の期間後は廃棄できる、ほかにこんな条約をつくったことがあるでしょうか。もしこういうものをしょっちゅうつくっておるのだったら、国会として政府を信用できなくなるのですが、どういうことなんですか。
  84. 高島益郎

    高島説明員 先ほど安藤局長からも御説明いたしましたとおり、この前にアメリカとの問の同種の協定がございまして、その際に、メキシコもやはりがんばって……。(曾祢委員メキシコアメリカのでしょう、そんなものは理由にならぬじゃないか」と呼ぶ)それがございまして、それと同じ規定を置いてくれという強い主張がございまして、われわれ非常に反対したわけでございます。その後、この協定に付属いたします了解覚書の第四項におきまして、「メキシコ政府は、協定に従って操業区域内で漁業に従事する日本国船舶に対して税金、手数料その他の課徴金を課する意図を有しない」という方針でございますけれども、ただメキシコ国内法上の観点から、「日本国船舶に対して税金、手数料その他の課徴金を課することを希望するときは、両国政府がこの問題につき協議を行なうことが了解された。」ということでございまして、これはわれわれといたしましては、公海におきます日本漁業につきまして、いかなる場合にも日本管轄権が害されるということになっては困るというので、これはメキシコ国内法上のたてまえもございますけれども、もしそういうことがあった場合には、日本としてはこの協定を廃棄する権利を留保したいということを主張した経緯がございまして、これはそういう観点から、理論上の問題でございますけれども、もし国内法で、どうしてもメキシコ日本漁船に対して課税しなければならないということになった場合には、日本としてはたてまえ上、課税を受けてまでメキシコ水域操業継続するというわけにいきませんので、そういう観点から申しますと、日本といたしましても、一年後に双方の都合によって廃棄できるというととは都合がいいということで、これに合意した経緯がございます。
  85. 曾禰益

    ○曾祢委員 そうすると、私が申し上げた前提は、日本としては安定操業ができたほうがいいだろうというのでこういう協定ができたと思っているのに、いまの御説明によると、日本としては安定操業にならなくてもいいんだ、場合によったら、向こうで国内的な課税等を強化するような場合があれば、日本側から廃棄してもいいんだ、無協約状態でやるんだ、こういうつもりで協定したのですか。だったら、初めから協定しないほうがいい。
  86. 高島益郎

    高島説明員 ただいま申し上げましたのは、もっぱら理論上の問題でございまして、メキシコは、国内法上どうしても課税権を留保したいということでございますので、万一それが現実化した場合には、日本としては、そういう課税を受けるということは、公海上に関する限りどうしてもできませんので——もちろん、そこで漁業協定をやめるということではございませんけれども、新たな漁業協定締結する必要があるということで、この協定を一年後には理論上廃棄し得る可能性を残したほうが、むしろ日本立場からいってもよかろうということで、こういうことにしたわけでございます。
  87. 曾禰益

    ○曾祢委員 これは、ほんとうなら事務当局を責めるのはおかしいのであって、外務大臣に申し上げることなんですけれども、私どもは、こういうこともやむを得ないだろう。一応国際法上の権利である領海三海里だけはがんばっているけれども、現実には一つ一つバイラテラルな協定によって実際上それを曲げているのです。曲げてつくる以上は、せめて基本的にはシックス・アンド・シックス、ただ入り会い権を認めるというようなことで、なるべく国際的な海洋の原則に従った漁業専管水域を認める。その場合には公海、三海里にこだわらないというようなことに努力をしていただくことが必要であろうということで、これは外務大臣と意見が合致したわけです。同時に、こういったような協定をつくるのは、やはり安定操業が目的なんであるから、この規定にかかわらず——向こうの立場があって、向こうもアメリカとの先例があるので第十一条をがんばった。その十一条のメリットを、場合によっては日本もこれを援用して廃棄することがあるんだというようなことは、言わぬほうがいいんじゃないですか。むしろそうではなくて、こういう規定は一応先方の必要上入れてあるけれども、外務当局としては——これは政務次官からお答えを願えればけっこうなんですけれども、そういうことがないように、向こうの課税もこれはないというふうに了解し、こういう協定をつくった以上は、十条によって五カ年間の効力を持たせる。世耕委員との質疑応答の中にもあったように、むしろ五年だけにととまらず、一応先方の国内法上のたてまえで五年になっているけれども、双方の都合がよければ、さらに新しい協定をつくるなり、この協定をさらに延長するような交換公文等をつくって、やはり話がついた以上は安定操業をやるのがほんとうじゃないでしょうか。十一条の規定を入れたことについて、そんなつべこべ、へんてこりんなあれなんか言わぬほうがいい。安定操業をやる決意があるということなら、われわれはこの協定に賛成する。こういうことになるんじゃないですか。政務次官お答え願いたい。
  88. 藏内修治

    ○藏内政府委員 ただいま曾祢委員から御指摘になりました点は、まさにそのとおりでございます。理論上から申しますと、先ほど政府委員からお答えをいたしましたような理屈になるわけでございますが、この協定を結びました趣旨は、日本メキシコとの間に安定した漁業関係締結したいということが趣旨でございまして、メキシコ政府も、課税権を発動しようという状態にはただいまあるわけではございません。今後やはり全般的な日墨関係を改善し、友好関係を深めていく過程において、漁業関係もまた安定していくだろうと思います。そういう御趣旨のとおりの外交努力を今後重ねてまいりたいと思っております。
  89. 曾禰益

    ○曾祢委員 最後に一点だけ。これは、この協定をわれわれが承認するにあたっての希望みたいなものですけれども、御承知のように、一九六七年の四月以来、スペイン領サハラに領海六海里の接続水域を設け、われわれのマグロ漁業等に対する一つの規制が強く行なわれ、また、お隣のモーリタニアにおきましても、同年の三月十五日以来、非常にめちゃくちゃな基線を引きまして内水の範囲を広くし、加えて、新基線から十二海里まではさらに領海だという、まことにめちゃくちゃな一方的な措置をとりました。このためにわが国の、特に遠洋のマグロ漁業に従事する船舶の拿捕事件等がひんぴんとして起こっていることは御承知のとおりだと思うのです。したがいまして、これらの問題については何とかならぬのか。これは外務当局でも決してほうっておいたわけではないようでありまして、モーリタニアのほうは、新興国でなかなか話も通じない。スペインのほうは、わがほうの片貿易であるというような関係でなかなか強硬で、今日までその実績があがっていないようであります。  この問題については、船員側の全日本海員組合等からは、日本側の業者に自粛をすすめているにかかわらず、やはりある業者は公然と向こうの——いい悪いは別として、向こうの一方的に設定した区域に入って、しょっちゅう拿捕事件を起こしている。そこで、こういうことでは困るので、すみやかに、スペイン及びモーリタニア政府との間に漁業交渉をもっとしっかり詰めてもらう。わがほうの漁業が十年間実績がないところが一つ痛いのですけれども、まあまあ、ニュージーランドやこのメキシコの例にならいつつ、せめて当分の間のわが国漁業実績を認めさせることで何とかバイラテラルな協定をつくってほしい、これが当該業者並びに船員の切なる希望だと思うのです。  そこで、この問題については、特に本年の四月四日付で、全日本海員組合の組合長から水産庁長官に、いま申し上げたような、すみやかな漁業交渉の開催と安全操業の確立等々について特に強い要請があったのです。これについて一体どういう措置をとっておられるのか、これは外務及び水産両当局からはっきり伺っておきたいと思います。
  90. 北原秀雄

    ○北原政府委員 お答えいたします。  スペインに関しましては、実はニュージーランドとの協定その他の協定等を先方の政府に送りまして、こういうラインによって何とか交渉を開始したいということを——これはほんとうにカンでございまして、実はずっとこの話を続けております。先方は、どうしてもまだ応じたくない、研究中ということで延引されております。もう一つの問題は、その間、先方の水産業界と日本の業界との協力の問題が出てまいりまして、これがまた政府をして交渉開始を遷延させる一つの口実というふうな形になっております。いずれにいたしましても、交渉開始にこぎつき得ませんので、私ども非常にざんきにたえないのでございますが、できる限りの努力はやりたいと思います。  もう一つの問題は、実はラスパルマスというものをかかえておりまして、これは実は、われわれから見た場合には、非常な恩恵をスペインに与えているというふうに考えます。先方はなかなか、これまたうまい汁を吸いつつ、またいろいろな理屈を申しております。こういう水産関係全般の日本・スペイン間の問題を取り上げまして、何らかでき得る限り御期待に沿うような、ひとつハイレベルの交渉もせざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  91. 曾禰益

    ○曾祢委員 モーリタニアは……。
  92. 北原秀雄

    ○北原政府委員 モーリタニアは、私所管外で、直接担当しておりませんので、これはひとつ水産庁次長のほうから……。
  93. 森沢基吉

    森沢政府委員 モーリタニアの問題でございますが、曾祢先生指摘のとおり、スペイン領のサハラ沖と同様、日本遠洋漁業並びにカツオ・マグロ漁業、それは主体は遠洋トロールでございますが、漁業の重要な漁場でございます。最近御承知のように、非常にべらぼうな基線と十二海里を設定いたしましたが、これにつきましては、おもにタイ、タコの主漁場でございますので、何とか早くモーリタニアと交渉を開始したいというのが私たちの考え方でございまして、外務省とも御相談の上、近く予備交渉に入るという見通しがございます。昨年民間使節団等も参りまして、いろいろと向こうの業界と意見を交換し、向こうの政府とも意見を交換した経過もございます。いろいろ技術協力等の話も出ておりますが、いずれにしても、そういうものを含めまして近く予備交渉の段取りになるということは申し上げられると思います。  スペインにつきましては、先ほど北原局長からお答えのとおりでございますが、実は、ここも非常にアフリカ沖の重要漁場でございますので、実はスペインが水域法を出しました直前、昨年の一月、私、マドリードへ飛びまして、いろいろ向こうの政府の水産関係の方、外務省の方とお話をし、当時おられました関大使ともいろいろ御相談をしたことがございます。そのときのスペイン政府の考え方では、日本操業実績を認めるための交渉はできるという内容法律でございましたけれども、その後、議会に提案されまして議会修正がございまして、現在のところ、残念ながらスペインの漁業水域内における外国漁船操業は、一九五三年から一九六二年の十年間継続的に漁業をやっておる実績のある国と交渉するのだということに相なっております。日本実績は一九五九年からでございますので、そのスペインの法律とはズレがございまして、スペイン政府としては、事務的にも直ちに交渉に入るということがむずかしい事情があるようでございますが、お互いに漁業国でもございますので、私たちは、水産庁ベースにおきましても、また外務省にお願いしましても、何とか早く交渉に入る糸口をつくりたいということで、今後も努力を続けたいと思っております。
  94. 曾禰益

    ○曾祢委員 先ほど私の発言の中で、マグロ漁業と言いましたが、これはいま水産庁から言いましたように、遠洋トロール並びにカツオ・マグロの漁業というふうに訂正しておきます。  それで、そういうわけですし、またインドネシアの問題もありまするし、こういったような国際漁業の問題、話を広げれば北洋のソ連関係もありますが、少なくともいまの西アフリカの問題、それからインドネシアの問題、これらの問題について大いに交渉を進めて、すみやかなる操業の安定をはかっていただきたい。強く希望いたしておきます。
  95. 秋田大助

    秋田委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。
  96. 秋田大助

    秋田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  日本国とニュー・ジーランドとの間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件、及びメキシコ合衆国領海に接続する水域における日本国船舶による漁業に関する日本国メキシコ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、両件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  99. 秋田大助

    秋田委員長 航空業務に関する日本国政府レバノン共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国政府セイロン政府との間の条約締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国デンマーク王国との間の条約締結について承認を求めるの件、船員の厚生用物品に関する通関条約締結について承認を求めるの件及びアジア=オセアニア郵便条約締結について承認を求めるの件、以上五件を一括して議題といたします。     —————————————
  100. 秋田大助

    秋田委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。藏内政務次官。
  101. 藏内修治

    ○藏内政府委員 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国政府レバノン共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  わが国航空企業の世界一周路線及び南回りヨーロッパ路線を拡充するため、同企業のレバノン共和国への乗り入れの権利を確保する必要が生じましたので、昭和四十一年六月以降同国政府と航空協定締結のための交渉を行ないましたところ、合意が成立しましたので、昭和四十二年六月二日に東京でこの協定の署名を行なった次第であります。  この協定は、わが国レバノン共和国との間の定期航空業務を開設することを目的とし、業務の開始及び運営についての手続と条件とを規定するとともに、両国の航空企業がそれぞれの業務を行なうことができる路線を定めているものでありまして、わが国がこれまでに締結した多くの航空協定と形式においても内容においてもほぼ同様のものであります。  この協定締結により、両国の航空企業は、それぞれ両国間の定期航空業務を運営する権利を与えられるのみならず、わが国レバノン共和国との間の友好関係も一そう促進されることが期待されます。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国政府セイロン政府との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、セイロン政府との間の所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための条約締結するためコロンボにおいて交渉を行ないました結果、昭和四十二年十二月に至り案文について最終的合意に達しましたので、同年十二月十二日にコロンボにおいて日本側在セイロン日向大使とセイロン側ワニナヤケ大蔵大臣との間でこの条約の署名を行なった次第であります。  この条約は、本文二十一カ条及び付属議定書からなっており、その内容のおもなものは次のとおりであります。すなわち、相手国内にある支店等の恒久的施設を通じて事業を行なう場合の利得に対する相手国課税につきましては、これをその恒久的施設に帰属する部分に限るという方式によることとし、船舶、航空機の運用から生ずる所得につきましては、相手国において租税を半額軽減するものとしております。また、投資所得のうち配当に対する源泉地国課税につきましては、セイロンが源泉地の場合は、配当支払い法人に課されるセイロンの所得税及び配当受け取り法人に課される付加税のみを課すこととし、わが国が源泉地の場合の税率は、二〇%をこえないものとしております。配当以外の投資所得に対する源泉地国課税につきましては、銀行業を営む機関が受け取る利子及び著作権の使用料は免税とし、特許権等の使用料は、半額軽減することになっております。さらに、政府職員、百八十三日をこえない短期間役務を行なう滞在者、短期滞在の教授、学生、事業修習者が受け取る報酬、手当等は、原則として滞在地国において免税とするものとしております。また、二重課税回避は、それぞれの国の税法の規定に基づき、日本国及びセイロン双方において外国税額控除方式によって行なうこととしておりますが、セイロンで生じた配当及び特許権の使用料等に対するセイロンの租税わが国で控除するにあたり、一定要件のもとにみなし税額控一除を認めることになっております。  この条約締結によりまして、二重課税回避の制度を通じ、貿易、技術輸出、企業進出等の経済関係が安定的な基礎の上に発展し、また、文化的交流が促進されるものと期待されます。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国デンマーク王国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和三十四年三月十日に署名され、同年四月二十四日に発効したデンマークとの間の所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための条約を全面的に改正する新条約締結について、昭和四十二年七月以来デンマーク政府との間で交渉を行ないました結果最終的合意に達し、昭和四十三年二月三日に東京において三木外務大臣とデンマーク側シュトフェンアデラー駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。  この条約は、本文三十カ条及び付属議定書からなっております。その内容は、現行条約の規定の全般にわたって、OECDのモデル条約案の規定をできるだけ採用しつつ改正を加えたものであります。条約内容及び現行条約との相違点のおもなものは、次のとおりであります。すなわち、現行条約では、相手国に支店等恒久的施設を有する法人の利得に対する課税相手国が自国に源泉のあるその法人のすべての利得に対して課税するという方式によることとされているのに対し、新条約は、その恒久的施設に帰属する利得に対してのみ課税するという方式によることとしております。船舶及び航空機による国際運輸業所得につきましては、現行条約では、一定の登録要件を満たすものにつき、相手国における租税を全額免除していますが、新条約は、そのような要件なしに全額免除としております。また、配当、利子及び使用料に対する源泉地国における税率は、現行条約では、配当、利子、使用料とも一五%の税率とされているのに対し、新条約は、親子会社問の配当については一〇%、その他の一般の配当については一五%、利子及び使用料については、親子関係の有無にかかわらず、それぞれ一〇%と軽減しております。さらに、政府職員、百八十三日以内の短期滞在者、二年以内の短期滞在の教授及び教員並びに学生及び事業修習者の受け取る報酬や手当等につきましては、現行条約と同様に、滞在地国で課税されないこととしております。また、二重課税の排除の方法は、現行条約と同様、両国とも外国税額控除方式によることとしております。  現在両国間の経済関係は緊密になりつつありますが、新しい条約締結によって、両国間の経済交流は一そう促進されるものと期待されます。  次に、船員の厚生用物品に関する通関条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  国際海上交通に従事する船員にとって書籍、雑誌、映画フィルム等厚生用物品は、その航海中の生活において必要度のきわめて高いものであります。この条約は、このような物品の外国への搬入、他の船舶への積みかえ等が円滑に行なわれるようにするため作成されたものでありまして、これらの物品についての再輸出を条件とする輸入税の免除等について規定しております。  世界の主要船舶保有国の一つであるわが国としては、この条約の当事国となることにより、これらの船舶の船員がその航海中に厚生用物品について多くの便益を受けることができ、船員の厚生増進上大いに望ましいことであり、また、外国船舶の船員にも同様の便益を与えることにより、国際協力の観点からも有意義なことと考えられます。  次に、アジア=オセアニア郵便条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由の御説明をいたします。  この条約は、地域的郵便連合の一つであるアジア=オセアニア郵便連合の基本文書であり、連合の組織、任務、加盟国間の通常郵便物の取り扱い等について規定しております。この連合の目的とするところは、地理的に近接していく多くの面でつながりの深いアジア及びオセアニアの地域の諸国がその地域に特有な郵便上の問題を協力して検討し、連合諸国間の郵便業務の効果的運営をはかるとともに、万国郵便連合の場においてこれらの国の共通の利益を守るための体制をつくろうとすることであります。  わが国は、古くから万国郵便連合の加盟国として郵便業務の国際的発展に努力してまいりましたが、アジアに位置し、かつ、この地域の諸国と密接な協力関係にあるわが国としては、近隣諸国との郵便業務を一そう円滑に運営することができるようにするためにも、また、これらの国との関係を一そう緊密なものとして行くためにも、この連合に加盟することはきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。  以上五件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  102. 秋田大助

    秋田委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  以上五件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来たる十七日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時三十三分散会