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1968-04-24 第58回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十四日(水曜日)    午後一時三十七分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 福家 俊一君 理事 石野 久男君    理事 帆足  計君 理事 曾祢  益君       青木 正久君    池田正之輔君       大村 襄治君    佐々木義武君       福田 篤泰君    松田竹千代君       毛利 松平君    森下 國雄君       山口 敏夫君    山田 久就君       木原津與志君    黒田 寿男君       田中 武夫君    田原 春次君       高田 富之君    山内  広君       伊藤惣助丸君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         大蔵政務次官  倉成  正君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君  委員外出席者         外務省経済局外         務参事官    鈴木 文彦君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵大臣官房財         務調査官    上林 英男君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         農林省農林経済         局国際経済課長 増田 甚平君         農林省畜産局参         事官      立川  基君         食糧庁総務部長 小暮 光美君         通商産業省通商         局国際経済部長 川田 通良君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 四月二十四日  委員宇都宮徳馬君、大平正芳君及び世耕政隆君  辞任につき、その補欠として佐々木義武君、森  下國雄君及び大村襄治君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員大村襄治君、佐々木義武君、及び森下國雄  君辞任につき、その補欠として世耕政隆君、宇  都宮徳馬君及び大平正芳君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 四月二十四日  アジア=オセアニア郵便条約締結について承  認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送  付) 同月二十三日  非核武装宣言に関する請願横山利秋紹介)  (第四四九九号) 同月二十四日  ベトナム戦争反対等に関する請願松本善明君  紹介)(第四六二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議  定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締  結について承認を求めるの件(条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  千九百六十七年の国際穀物協定締結について  承認を求めるの件(条約第五号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーブ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定締結について承認を求めるの件、及び千九百六十七年の国際穀物協定締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 昨日に引き続いてケネディラウンドの妥結に伴う三条約案について質疑をしたいと思いますが、昨日ちょうど通産大臣がお見えでなかったので、通産大臣関係の部分を留保しておりましたので、その点から質問に入りたいと思います。  実は昨年十一月十八日のポンド平価切り下げによって、ポンド決済手段としているところの外国貿易、ことに中国貿易でありますが、このために中小商社が七、八億円の損失を出した。そのころに切ったところの手形が、大体決済が四月から六月ごろに来る、ちょうど国内では御承知のように金融の引き締めでございまして、十分に資金の手当てがつかない、見通しがつかない、そういうことで、このままで推移するならば、十二、三社あるいはそれ以上の中小商社が倒産するのではなかろうか、このようにいわれておるわけでございます。特に中小商社に対する中小企業政策一環ともあわせ考えて、何らかの救済方法はございませんか。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ポンド切り下げの結果、受け取ったポンド値下がりをして、結局初め予期した結果を得ることができなかった、そういうことでございますれば、何とか困らないように事後の努力をしなければならぬと思いますが、たとえば当該商社から十分事情を聴取いたしました上で、これに対する経営方針相談なりあるいは金融あっせんなりというような方法をとることもできようかと思うのでございます。具体的にはいろいろな場合があるだろうと思いますが、いずれにいたしましても、ああいう経済界にとっては予期せざる災害に似たようなものでございますから、通産省としても、十分にできる限りの努力をしたいと考えております。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は、政治的答弁とでもいいますか、できるだけの手当てをすると、こういうことでありますが、具体的に、それではそれらの商社が一体どこに行って頼めばいいのか、そのための窓口といいますか、まあ十数社のために特に窓口を別に置いてくれということも無理かと思いますが、一体そういう関係はどこへ行って頼めばどういう方法があるか、もう少し具体的にお示し願いたいのであります。  さらに、私が聞いているところでは、たとえば肥料とか鉄鋼、こういう関係はある程度メーカーが損失をカバーしてやる、こういうこともいわれておるわけなんです。したがいまして、そういう方法もあわせて、中小商社がちょうど危機だといわれている、四月から六月にかけてあぶないということですから、具体的にどこへ行って、たとえばだれとまで言わなくても、何の窓口まで行って、どういうようにすればこういう救済方法がある、そういうふうに、もう少し具体的にお示し願いたいと思います。
  6. 原田明

    原田政府委員 先生指摘の問題につきましては、すでに昨年ポンド切り下げられました直後から、そういう中小の、特に輸出専門商社に対する対策というものについて考えなければならぬということで、われわれも各種の方法検討しておる次第でございます。ただ、一番基本的な問題であります為替リスクという問題につきましては、なかなか問題がむずかしい点もございますし、かたがた、これをどの程度国が見るべきか、あるいは業界自体対策によってカバーすべきかというような基本的な問題もございますので、いまだ、これさえあればだいじょうぶというような明確、具体的な対策まで達していないわけであります。しかし、先生おっしゃいますとおり、六月ごろその支払いの問題が起こってくるというような問題もございます。私どもも、それぞれの輸出業者が、それぞれの立場でいかなる対策を講じ得るかということを考えました場合は、たとえば大阪地区でございますと、大阪商工会議所とか中小貿易連盟立場でございますとか、あるいは名古屋、神戸、京都、その他、それぞれの貿易協会あるいは国際貿易促進協会でございますとか、それぞれの業者方々が所属しておられる団体もございます。まず一番最初、そういう団体方と御意見を交換いたしまして、どのくらい問題が起こるであろうかというようなことを調べまして、それからまた、そういう団体で御意見なり対策なりおまとめ願いまして、その上でこれは災害に似ておりまして、非常に大きく数字を言う方もありますし、必ずしもそうでない方もあり、いろいろな問題がございますので、そういうものを合わせました上で、何とか対策を講じたい。最後には、やはり私ども特に貿易振興局というものは、こういう困った場合にその貿易振興のための対策を考えるということが仕事でございますので、通産省としても、各通産局、それから中小企業庁とよく御相談をいたしました上で、先ほど大臣からもお話のございましたような具体的対策によりまして、実際問題として各会社がお困りにならないように、しかも輸出振興されますように持っていきたい、こう考えておる次第でございます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 一口に言えば、その商社が加入している団体を通じて、その団体がそれらの加盟というか、参加といいますか、商社のいろいろの損失とかその経過等をまとめて、そうして通産省のあなたのところへ行けば、親身になって相談をしてもらえるのですね。いまあなたのおっしゃった団体の中に、たとえば国際貿促というような話も出ましたが、それでは国際貿促等で具体的に商社のそういうことを調べましてあなたのところへ行きましたならば、いま御答弁のような御相談をしていただけるものと了解してよろしいですか。
  8. 原田明

    原田政府委員 各商社方々はいろいろの団体に所属しておられまして、ダブっておったり、いろいろされるわけでございます。したがいまして、どの団体と特定いたしませず、もちろんどなたにもできるだけのごあっせんなり努力をしたいと考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばこの種の問題につきまして、これは大蔵省だろうと思うのですが、設備等輸出為替損失補償法というのがいまありますね。それにのせてもらいたい、それによって何とかしてもらいたいというような意見が出ておると聞いておりますが、具体的に陳情とか何かありましたですか。
  10. 奥村輝之

    奥村説明員 先ほどお話を伺っておりますと、日中貿易関係お話のようでございますが、私どもは、そういうふうな種類の取引に伴う為替リスク、これは通常為替予約方法によることもできます。また、商社内部におけるマリー方法によることもできます。その他、商業ベースによる処理方法が可能でございます。したがって、その問題と、設備等輸出為替損失補償法とは、私どもは直接の関係はないと考えております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 設備について、輸銀法定義と、この設備等輸出為替損失補償法定義は、同じ文句が書いてあるのです。片や輸銀では、たとえばインドネシアの問題等についてそういうことが行なわれておる。通産大臣は、先日の参議院の予算委員会だったと思いますが、そこで、これは輸銀に関連してですが、設備とあるのに商品にまでそのワクを拡大したのはどうかという問いに対して、「等」で読むのだ、こういう答弁をしておられる。輸銀法と、それからただいまの設備等輸出為替損失補償法との定義が一緒なんです。だから、その間において私は区別があるとは思わないわけです。  その前に伺っておきたいのは、むしろ、この法律は現在生きておるのですか、死んでおるのですか。
  12. 奥村輝之

    奥村説明員 形式的には生きております。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、この法律で現在何もやっていないのですね。聞くところによると、この法律に対する予算というか、そういったものも皆無である、実際は動いていない、こういうことを聞いたわけです。そこで、あなたは、ほかの方法がある、こういうように先ほど言われたわけです。しかし、この法律が生きておるならば、この法律でどんぴしゃりいけるのじゃないか。ただし、過去の損失に対してこれで救済してくれというような意見があるようですが、これはいわゆる三条補償契約ができておりませんから無理な話だと思うのです。そこで、過去の分につきましては、いま通産大臣等に確認をしたような方法でまいります。今後は、この法律によってそういうことに対する損失補償契約が結べるのではなかろうか、こう考えるわけですが、いかがでしょうか。
  14. 奥村輝之

    奥村説明員 問題は、短期為替取引に伴う損失、それから中期長期の問題、二つに分けて考えるべきだろうと思います。そこで、消費財等について御質問の中に御指摘があったわけですが、こういうものは、通常現金決済あるいは非常に短期ユーザンス決済ということでございます。したがって、商業ベースによる予約も可能でございますし、また、先ほど申し上げたことを繰り返すことになって恐縮でございますが、商社の中のマリーによる処理も可能でございます。そこで、そういうふうな商業ベース短期予約等処理できないような、長い期間にわたる代金の回収を伴うような場合における為替リスクをどうして救うかということが問題になろうかと思います。これは私どもとしていま考えておりますのは、やはり第一には、建て値を何にするかということではないかと思います。通貨の中には比較的勢いの弱い通貨もございます。かなり強い通貨もございます。また日本業者立場からいたしますれば、円建てにしておけば損も得もないということになるわけでございます。したがって、建て値をどうするかということが一つの解決方法であり、これがコマーシャルベースを通じて相手方と商談の一環として、為替リスクをカバーするための方策として考えなければいかぬ、その他いろいろあると思うのです。いろいろなクローズをつける方法等もございます。あるいは通貨自体をいろいろなものを使うというようなやり方もございます。これはあまり詳しく申し上げる場合ではございませんから申し上げませんが、要するに、そういうことで私ども設備等輸出為替損失補償法というものを今後動かせるのか動かせないのかということになりますと、動かす気持ちはないわけでございます。この法律は、もともと昭和二十七年に、各国通貨交換性も回復していなかった特殊な事態において、日本の輸入を促進するために、そういうものに役立つような輸出について、中期長期輸出について為替損失補償をしようという趣旨から発足したものでございますので、世界経済がだんだんそういう意味で交換性を回復し現在に至ったいまは、この法律を通じてこの問題を処理するということは正常な方法ではないというふうに思います。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 いま頭から、この法律はもう動かす気持ちはない、これは議論の外になると思います。長期のものはこれで見るが、短期のものはというようなことであるならば、先ほど言ったように、輸銀法の十八条の三号の定義ですね。定義と申しますか、その「設備等」の定義ですね。この輸銀法の十八条の三号というのは、輸銀の業務を定めた規定なんです。それとこの法律の二条四号でしたかの定義、これは同じなのだ。だから、長期短期というとこで分けるのであるならば、私は了承できかねるわけです。何となれば、相手の国によってその解釈が変わる。これはむしろ輸銀の問題でこの前やったわけです。それから、円建て決済等の問題については、かつて予算分科会で、あなたでしたか、若干の議論をしましたので、それはやめます。  具体的に言うならば、日中貿易決済方法は今度フランスフランでやるということにきまったわけです。しかし、大蔵省等は、円という話がつくならば、それは歓迎するといいますか、じゃまをしない、こういうことなのです。しかし、円ということについては交渉の過程でまだそこまでいかない、そこでフランでやるという。しかし、フランはいま動揺はしないと思いますが、ポンドは再び動揺してきらわれているようです。このようにドル必ずしも安全ではない。このようなときに、キーカレンシーというか、国際通貨為替変動なり切り捨てによって損失をこうむるときには、何らかの救済方法設備等輸出為替損失補償法がだめだということならば、通産大臣に特に考えてもらいたいのは、輸出保険によってカバーをしてもらいたい。これは輸出保険法の第三条六号の「本邦外において生じた事由であって、輸出契約当事者の責に帰することができないもの」これに私は当たるのではないかと考えます。この議論あとにしますが、その前に、現在の設備等輸出為替損失補償法を動かすという気持がないのなら、これは廃止法を出しなさい。ともかく法律は生きているのですよ。あなたは形式的にと言うが、形式的にしろ生きているのですよ。法律が生きている限りは、これを運用するための予算というものを当然考えねばならない。もし実質的に法律を動かさない。もう要らないのだということならば、さっそく廃止法の手続をとるべきだと思います。それを調べてみますと、二十九年から実際動いておりません。残務整理とか何とかという名目で残っておりまして、最終的に昨年の十一月ですか締めたということですね。その間残務整理があるので置いておったとするならば、締めたらもう廃止すべきだと思うのです。したがって、廃止法を出すかどうかということは大蔵省、それから先ほど輸出保険によって救済の道はないか、そういうことについては通産省、御答弁をお願いいたします。
  16. 奥村輝之

    奥村説明員 いまのお話、私どもはできるだけ建て値する通貨を変える、決済通貨をかえる、あるいは決済のときのクローズをいろいろとくふうする、こういう方向にいままで指導してまいりまして、いろいろ障害もございますが、今後ともそういう方向に進んでいきたいと考えておりますので、御指摘の点については十分検討いたしまして、そういう方向検討いたしたいと考えております。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 実際使う気がないならば廃止しなさい、こう言っているのですよ。検討の余地はないのですよ。形式的にしても、置いておくならば予算をつけなさい。法律があって全然予算をつけずに、これは動いておりません、われわれもこれを使う気持ちはありませんと言っているのですよ。そうでなくても法令全書が大きくなるばかりなんですよ、法律が多くできて。そういう動かぬようなやつは、少しこれは整理すべきだと思うのですよ。だから、検討じゃないのですよ。それははっきりしております。どうです。
  18. 奥村輝之

    奥村説明員 御説のとおりであると思います。
  19. 原田明

    原田政府委員 ポンドに限らず通貨の価値の切り下げがございますと、これは輸出保険法の第三条第六号の事由に該当するという点は、先生指摘のとおりであると思います。したがって、そういう事故がございましたならば、保険になるかどうかという点につきまして、やはり輸出振興という立場から詳細な検討を加えたわけでございますが、保険事故となるためには、その事由によりまして、輸出契約に基づいて輸出貨物代金が回収できないとか、あるいは輸出ができなくなったというような事態が必要になるわけでございます。これは第三条に書いてあるわけでございますが、その場合に、輸出契約に基づいて輸出貨物代金を回収することができないという事態ポンド切り下げの場合に起こるかというふうに考えますと、ポンド建て契約をいたしておりまして、ポンドの代貨、つまり輸出代金を払ってまいりますと、契約が履行されたことになりまして、輸出代金が回収されてしまうわけでございます。したがいまして、その保険保険金を払う条件になっております保険事故が起こって、代金が回収できないという事態は起こらないかっこうになりますので、どうもこの保険法の現行の解釈では、やはりちょっと救済がむずかしいという状態が起こるわけであります。問題は、外貨契約どおり受け取りましたあとの円の手取りが減るということでございます。これは先ほどから先生指摘為替リスクの問題でございますが、そちらのほうにどうしても話が移りますので、現在の保険法のたてまえでございますと、どうしてもやはり保険金を払うということにまいらないのではないかということで、非常に困った状態が起こると考えております。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 三条の何号か忘れたけれども為替変動によってというのもあるんでしょう。だから、私は考え方だと思うのですよ。
  21. 原田明

    原田政府委員 為替の制限もございますし、それからそれがございませんでも、先生指摘のとおり、為替切り下げがありますと、それは本邦外において生じた輸出契約当事者の責めに帰することができないものでございますから、事由になるわけでございます。しかし、保険金を払いますためには、第三条最初のほうに戻りまして、そういう事由によりまして、輸出契約に基づいて輸出貨物代金を回収することができなくならないといかぬわけでございますが、向こうポンド契約をしておりまして、ポンド代金を払ってまいりますと、契約は履行されてしまうわけでございます。したがいまして、保険金を支払うという条件が満たされないということになりまして、保険という対象からいくと非常にむずかしいという状態になります。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 中国貿易にも保険はつけておるのですね。保険契約は結んでおるのですね。三条適用として、いまおっしゃったように、かりに中身が減っても、いわゆる代金支払いが行なわれた、したがって、三条適用からいうならば、ちょっとむずかしい。そうなれば、何らかほかの方法を考えるとか、あるいはそのような項目を第三条の中に起こすか、そういう必要があると思うのですね。  そこで、これはむしろ政策論といいますか、立法論というようなことにもなりますので、大臣、お聞きのようなことで、現在の輸出保険法であるならば救済ができないという。しかし、私は、やる必要がある、やらねばならぬ、ことにドルポンドその他のいわゆる国際通貨といわれるものが動揺を続けておる今日では、輸出を拡大していくためには、そういうリスクに対する補償は必要だと思うのです。したがいまして、それは、もし現在のリスク保険法三条によって読めないとすれば、項を起こすべきだ、あるいは他の方法を考えるべきであると思いますが、大臣、ひとつ政治的な政策論としての答弁を願います。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま局長から申し上げたように、保険事故ではあるけれども、それによって現実に支払いが行なわれたわけであって、ただ為替値下がり変動によって損失が起きたのでございますから、それはどうもいまの輸出保険制度では救われない。むしろ、これは為替リスクによって生ずる損害の補償という問題にやはりなるのではないかと思います。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 そうなると、救済方法はあるのですか。
  25. 原田明

    原田政府委員 私どもも、先生指摘のような考え方で、保険で救うことができるかどうかというものを検討したわけでございます。結局保険は、先ほど申し上げましたように、契約をしまして、その契約どおり履行されないというときにかかることになりますので、いまの場合でも、向こうがキャンセルをしたとか、代金をほんとうに払ってこなければできる。今度は、それじゃポンドないし外貨建て代金を払ってきても円の手取りが少なくなるというような場合には保険がかかるようにしたらどうかということでございますが、これをやりますと、結局そういうあぶない通貨だけについての保険というものにみなが集中をしてまいる、そして、あぶなくない通貨については保険は全然かけない、あぶない通貨についてはみな保険をかけるというような状態が非常に起こりやすいわけでございます。そうしますと、今度は輸出保険法のたてまえで収支償うようにしようと思いますと、大体為替切り下げがあるかもしれないというような程度為替切り下げ率を予定をいたしまして、それを十分にカバーし得るような保険料でも取らない限りは保険が成り立たないという状態になりますので、結局は、先ほどから先生指摘のございました為替リスク損失補償法といいますか、その問題をどちらの制度でやるかというのと全く同じ結果になるわけでございます。したがいまして、いずれにしましても、財政といいますか、そういう形で国が為替リスク補償するという方針をとるかどうという問題の踏み切りがつかない限りはできないわけでございます。そういうことでございますので、いまのところでは、保険でこの為替リスクをカバーするということに踏み切るということは非常にむずかしい問題ではなかろうかと思います。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 そう言うと、議論がしたくなってくるのですが、これはあらためてしますけれども、インドネシアの問題につきましては再融資、交換公文の交換をやってまでも百八十二億というなにを払っておるのでしょう。きょうのあなたの答弁と先日の決算委員会における答弁とは若干違うのです。そうなりますと、保険料率を上げねばならぬという——それは法のたてまえですよ。ところが、そうでなくて、インドネシアの焦げつき債権といいますか、代金回収困難なやつに対しては、簡単に百八十二億円ですか、払って、予備費の支出なりあるいはまた一般会計からの流用をやっておるのでしょう。だから私は、相手国のいかんによってその取り扱いを変えることはどうかと思うのです。同時にこれはどちらのほうで救済するかは別としまして、そのような場合——これは現在、ドル自体もあぶないのですよ。あぶなくないというなら、まだ議論がありますが、そんな場合に何らかの措置をとらない限り、このケネディラウンドの一つの理想である貿易の拡大という線には沿わないのではないか。これは事務的な段階ではなくて、通産大臣なり外務大臣からもっと政治的な答弁を私はいただきたいと思います。でなければ、そういう国際通貨が不安定のままであるときに、何らかのリスクに対する補償がなくて、ケネディランドの理想であるところの貿易の拡大がやれるのかどうか。ときにはつまらぬ理屈までつけても払っておるじゃないですか。そうでしょう。時間の関係がありますので、私これ以上あまりやりたくないのですが、そういう答弁をなされるなら、もう一度インドネシアの問題に戻して議論を続けなくてはならないことになるのです。したがって、輸出保険法でやりにくいということであれば、為替リスク補償ということに対して考えるか、何らかの方法において考えるという前向きの答弁なり、施策を検討することの答弁がない限り、ケネディラウンドの理想とするところの世界貿易の拡大ということにはなりませんよ。したがいまして、そのような答弁であるならば、この三条約案に対しましてもわれわれは考えねばならない。ケネディラウンドの大理想を掲げながら、一方においてその理想を達成することに危険な状態があるということに対して、理屈を言っておるときじゃないと思うのですよ。現在の法律においてそれが困難であるとするならば、法の改正もよかろう。あるいはもう一つ進んで別な法律をつくることもいいでしょう。そのことは私は必要だと思うのです。これは通産大臣、あるいは貿易拡大の理想という上に立って経済外交の立場からの外務大臣の御答弁をお願いします。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 インドネシアのときは、あれはもう大混乱のあとですから、向こうの国立銀行の金庫はもうからっぽで、金がないのですから……。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 インドネシアはいいですよ。ぼくの質問に答えてくださいよ。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 できるだけ考えますが、当面はフラン建てになるので、これはもうそういう問題が再び繰り返されないで済むと思います。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 ドルだってあぶないのですよ。ドルが足りないのですよ。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 だけれども、中共のやつは……。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 ぼくは簡単にいこうと思っておるのですが、私たち社会党が質問すれば、中共だ、ソ連だ、北朝鮮だけだと考えるのは、あなた方間違いですよ。少なくとも私は、もっと広い視野に立って、ケネディラウンドの大理想であるところの世界の自由貿易の拡大という上に立って、片や国際決済の手段とせられておるキーカレンシーが不安な状態にある、そのリスクに対する補償ということが考えられなくては、その理想達成はほど遠いではないか、こう言っておるのですよ。だから、中国だとか北朝鮮だとか、そういう狭い考えではないのですよ。ぼくはもっと高所大所に立って、少なくとも大臣以上の高所に立って議論しておるのです。
  33. 奥村輝之

    奥村説明員 これは私から答えまして申しわけございませんが、今後世界貿易の拡大ということは、御指摘のとおり非常に大事なことでございます。私どももその観点は忘れているわけではございません。ただし、そのやり方をどうするかということでございますが、いまこういうふうな為替損失為替利得は、輸出も輸入も両方あるわけでございます。輸出が悪ければ輸入がよいというふうに、両方あるわけでございます。この点は、先年は問題点をよく御洞察なさっておると思います。したがって、問題の解決は、いままでも除々に進んでまいりましたように、通貨をどうするか、建値をどうするかということで解決してまいる。そういう方向でだんだんと解決が進んでいるわけでございます。過去を振り返ってみると、為替問題に対する認識が一部においては薄かったために、ああいう問題も起こっているわけでございまして、決して、いま私ども答弁しておりますことは、世界貿易の拡大に反する方向ではないというふうに信じております。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 そうじゃないのですよ。いまもはっきり言ったでしょう。ドル必ずしも安定じゃないのですよ。安定しておるというなら、あなた国際金融局だ。一戦交えましょうか。そんなことをやるとほかの人に影響するから言っているのです。だから、これは事務ベースの答弁ではないのです。そういうケネディラウンドの理想達成のためにこういう欠陥がある。こういうリスクに対して何らかの救済方法を考えなければ、そういう自由貿易の拡大という理想には到達しないのではないか。二人も大臣おられるのですよ。私は、当該の貿易担当の通産大臣、それから大きな意味で経済外交担当の外務大臣から、もっと政治的な高所に立っての答弁を要求しているのです。事務ベースのことじゃないのですよ。あなたが私と議論したいのなら、あらためてまたいつでもしますよ。金買い上げの価格に至るまで、あなたが希望ならいつでもやりますよ。ひとつ両大臣から御答弁をお願いします。
  35. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御熱心な田中さんの貿易拡大の熱意、承ったわけでありますが、事務当局も為替損失補償というのは大問題ですから、ここであなたが御満足のいくような答弁はできないところは無理からぬ点はありますが、しかし、貿易拡大の見地から、この為替に対するリスクというものは、諸外国でもこれに対してやはりいろいろな方法も講じておる国もあるのかもしれません。だから、これを非常に御期待願っては困りますが、この問題は、大蔵大臣とも、通産、外務などでこれは研究いたすことにはいたします。しかし、このことか直ちに何らかの成案が——これに対する損失補償をするのだという政府の意図の表示とは受け取らないで、これを研究いたすということで、ひとつ御了承を得たいと思うのでございます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 将来のことで、うっかりそうやると言えばどんなことになるかわからぬ、こういうことで、慎重な御答弁であることば了承します。しかし、研究だけでなく、ひとつ貿易の拡大という上に立って何らかの措置が出ますように、政府において御検討願うようにお願いします。  最後に一点だけ、資本自由化の問題なんですが、アメリカは日本に自動車の資本自由化といいますか、自動車の自由化を迫っておる。片やアメリカは、昨日以来議論をしておりますが、いわゆる保護貿易主義が横行しておる。それと関税の定率の引き下げといいますか、いわゆるケネディラウンドの理想、こう考えたときに、資本自由化に対してどういう考え方を持ち、具体的には自動車の自由化に対してはどうやるべきなのか。と同時に、そのことがアメリカの要請であるならば、アメリカにその見返りの要請として何をやるか。そういう問題があるかと思いますので、これもひとつ両大臣からお伺いします。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま資本の自由化は進行中でございますが、ただ、自動車等に関しましてはまだその時期にあらずというので、これを実行しておりません。アメリカはしきりにこの自動車関係の自由化を催促している。もしこれを十分の国際競争力をつけないで自由化をいたしますと、どういうことになるかといいますと、申し上げるまでもなく、これは貿易の自由化と違って、資金力、販売力、技術力、あらゆる力を持って乗り込んできて、まだ足腰の弱い、十分に太刀打ちのできない日本の業界というものは相当に痛めつけられてしまう、こういうことになりますので、できるだけ早く国際競争力をつけまして、できるだけ早くエンジンの自由化なりあるいは自動車そのものの自由化に踏み切る、そういうただいま準備過程でございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 外務大臣、昨日以来いろいろの問題を掲げて御質問したわけであります。あるいは南北問題、あるいは経済援助、貿易の拡大、いろいろ申しました。いまの資本自由化にしてもそうだと思う。理想主義と現実主義をどのようにマッチさすのか、そして、その中において日本のナショナルインタレストをどう守っていくのか。しかし、それがあまりにも日本は国益主義にとらわれてということで、諸外国から非難を受けないように、これはたいへんむずかしいと思うのです。外務大臣の昨日来の御答弁は、大体においてわれわれも賛成できるわけなんです。しかし、これはきのうも申しましたが、一つの理想主義というようにも思うわけなんです。たいへん恐縮ですが、三木さんに対しまして、三木大臣はいいことを言う、しかし実行が伴わないのが残念だというような世論の一部があることは御存じだと思います。どうかそのような世論に対しても堂々とお答えができるような、理想と同時に実行をもってやっていただくようお願いして、私の質問を終わります。
  39. 秋田大助

    秋田委員長 石野久男君。
  40. 石野久男

    ○石野委員 通産大臣はほかの委員会で急がれているそうですから、通産大臣にひとつお尋ねいたしますが、あとでまた聞くことですけれどもケネディラウンド実施にあたって、特にアメリカと日本との関係が、必ずしもケネディラウンドの本来の趣旨である貿易拡大という側面に沿うようにスムーズな発展をしていくようには思われない、われわれは懸念を持っているわけです。特に最近ドルの不安というのが依然として続いておる。こういう時期に、ドルの安定という問題が、最近は特に世界的に、この秋のIMFの総会前までにもう一度やはり混乱がくるんじゃないかというような、そういう評判といいますか、懸念が行なわれておるのですが、通産大臣は、貿易を拡大するという側面から、ドルというものに対してどういうような見解を持っておられるか、一言聞かしていただきたい。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最近公定歩合が上がりまして、目下五分五厘でございます。こういう問題と離れて、ドルそのものの価値いかんということが依然として関心の種にはなっておると思いますけれども、ただいまのところは、これの切り下げとかいうようなものは心配されておらない状況ではないかと思うのであります。そういうことは、ドルが関心の的にはなっているけれども、しかし、いま貿易をやる上においてそれがじゃまになってなかなか取引契約もまだできないというようなところにはいっていないと私は考えております。
  42. 石野久男

    ○石野委員 ドルの問題については、あとでまた経済企画庁長官も来ますし、そのときにひとつ論議したいと思うのですが、いま通産大臣が言われておるように、手放しでドルを見ておるというような事情じゃないようにわれわれは考えるのです。  ここでお尋ねしたいことは、いま田中委員からも問題の指摘がありましたように、為替リスクの問題も一つありますけれどもケネディラウンド実施によって、実質的に日本貿易が拡大するということよりも、そのために非常に障害の出てくる部面があるわけです。先般、大蔵大臣もここの席に来てもらったときに、ケネディラウンド実施に伴う対中国貿易におけるところの格差拡大の問題をいろいろ論議しました。政府当局が考えている以上に問題が深刻であるということも、大蔵大臣、外務大臣ともどもに認識されるような状態であった。そのときに、大蔵大臣は、ケネディラウンド実施に伴う国定税率の改正、関税定率法の改正等に伴って出てくるそういう対中国貿易、あるいはその他の非ガット加盟の諸国に対して出てくる問題等について、そういう予測しない悪条件、そういうものに対する対策は、すべてこれは通産省の担当だから、通産省処理するはずだ、こういう大蔵大臣答弁があったわけです。  私は、政府がケネディラウンド実施にあたって、特に関税定率法の改正をやったあとで出てくる問題は、必ずしも通産省だけの責任だとは思いませんけれども、しかし、大蔵大臣は、そういうふうに言っておるのですが、時間がありませんので、どういう問題がどうだということはここで言いません。もうすでに通産大臣もよくわかっておるだろうと思う。大臣はそういう対中国貿易で出てくる、むしろわれわれから言わせれば、政府が対中国の政策をそのままケネディラウンド実施とかみ合わせて、むしろかえって逆に敵視政策的にとられるような結果をもたらす、そういう政策をやっているんじゃないかというふうにさえ思われるほど、やはり格差が大きい。こういう事情を通産省はどういうふうに対処するか、それをひとつ大臣から聞かしてもらいたい。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ケネディラウンド実施に伴って、中共産品と同じ産品で、中共以外の国との関税の格差が出てくるのはごくわずかでございます。大体中共との関係は、御承知のとおり正常化されておりませんけれども、しかし、原料、材料あるいは食糧等につきましては、国定税率においても非常に安いものになっております。そういうことで、協定税率を落としましても、大体中共の産品は非常に軽い関税でございますので、格差が出てこない。わずかに二〇%くらいが格差がついておりますけれども、これはKR品目外のものが六%、KRのものは一四%、その一四%のうちで、生糸であるとか、絹織物であるとか、こういったようなものは、たとえ相手方が中共であろうとなかろうと、わが国の生糸業者あるいは絹織物業者は、いずれも中小企業というよりか、むしろ零細企業、そういうものの産業保護の立場から、これは特別な扱いをしなければならぬのでございまして、一四%のうちの大部分は生糸、絹織物、その他のものはもうパーセンテージがごく小さいのでありまして、わずかにそこに格差がございますが、これについては、関税上の問題でいま急にどうこうというわけにいかない。これは期日も迫っておりますし、この事柄に手をつけると法律上の問題になりますので、間に合わない。それで、その結果非常に困る業者ができてきた場合には、これは別途の方法によってこれを緩和するとか等の救済手段を検討したい、こう考えておる次第であります。
  44. 石野久男

    ○石野委員 時間がないので、私はあまりこまかいことは言うつもりでいませんでしたが、この前大臣に来てもらうつもりだったのです。ところが、大臣はここへ見えなかったから、大蔵大臣にはこまかく話をした。いまの大臣の説明は、やはりこの前私が質問する以前の政府の考え方と同じことなんですよ。見方は非常に表面的ですね。通産省から表をもらっております。いま大臣の言われたように、格差がついているものは二〇・二%で、そのうち六%はKR譲許品目以外の格差であって、あとKR譲許品目の格差は一四・二%だ、こういう表はもらってあります。それは金額ですね。これを品目にすると、その六%に相当するものは十一品目で、一四・二%に相当するものは三百四十五品目であるということは、これは通産省から出ている表なんです。これらのものがそれでは国内産業とどういうふうに競合するかという点については、必ずしも政府の言うとおりではないのですよ。これはもうここで私はこまかくは言いませんが、たとえばこの前私が要求した資料もここへ来ております。この資料をずっと見ましても、この中にはやはりKRとかなんかの格差の前々からついてないものが多いのであって、格差のついてないものをずっと調べてみましても、国内産業と競合するのはほとんどないのですよ。その問題は、あとで政府と業者間とで一応突き合わせでもしてもらわなければ、私はほんとうのことがまだ通産省ではわからないのではないか、こう思っております。  私の聞きたいのは、問題は、こういう情勢を正しく把握してないために、政府としては、ケネディラウンドというのは全体として貿易を拡大する方向でいっているのだから、そういう趣旨でやるのだということを前々から外務大臣も言っておるし、大蔵大臣も言い、また通産大臣もそう言っているわけです。しかし、事実上、今日アメリカとの貿易の問題が、ドルの危機あるいはまたSDRの今後の見通し等についても、必ずしも私たちは確定的に安定した見通しを持つことは非常に困難だと思うのです。こういう段階で、私は、ケネディラウンドの趣旨に沿う日本貿易拡大という問題からいくならば、どうしても貿易構造の問題にやはり視点を合わしていかなければならないのじゃないか。アメリカを中心としている貿易の構造、依然としてそれにしがみついておったのでは、とてもこの危局を乗り切ることはできないだろうという、われわれはこういう全般的な貿易についての見方をしているわけです。そういう観点で、実は対中国貿易というものは非常に重要だと私ども思っているわけなんです。通産大臣は、この中国貿易の今後というものについてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本といたしましては、何よりもまず貿易拡大ということが経済政策の基調でなければならぬ。そういうわけでありますから、相手の国の政体がどうであろうと、あるいはイデオロギーがどうであろうと、とにかく貿易はどこまでも拡大していく、こういう考え方でございますから、中共ともそういう方針でまいりたい、こういう考え方であります。
  46. 石野久男

    ○石野委員 大臣のその考え方からすれば、ケネディラウンド実施ということによって中国貿易が少なくとも減少する方向にいくということは本意でなかろうと思うのです。そういうことはどうでもいいのだという考え方ではおそらくなかろうと思いますが、いかがですか。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうけちな考え方は持っておりません。
  48. 石野久男

    ○石野委員 けちな考え方は持っていない、けっこうなことです。ところが、いま私が提起しましたように、ケネディラウンド実施に伴って関税定率法の改正があり、国定税率の改正をしておるわけですね。そして、譲許表に即応するようにある種の部門の手直しはしました。しかし、実際には三百五十何種類というものが事実上関税格差が出て、仕事がしにくくなってきておるというこの実情は、やはり否定できないと思うのです。大臣はその点はお認めになりませんか。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国内産業への影響ということも十分考えまして、それからまた、国内の需給事情ももちろん同時に考えなければならぬ、そういうことを検討いたしまして、税率の改正にだんだん踏み切ってまいる、こういうことでございます。また、協定税率と同じ税率を適用することが適当と判断される場合には、国定税率も下げるということにやぶさかでない、こういう方針をとっております。
  50. 石野久男

    ○石野委員 この税率の改正の問題は、先般の大蔵当局との論議の中でも、もうすでに税の改正法案は通過して成立しておるわけです。そこで、問題になるのは、税率の改正をしたあとで、来年度までのずっと運用過程の中で、三百数十品目に相当する、これは現在三百二十九の商社関係しておるわけですが、こういう商社が実はこの税率の格差のために非常に仕事がしにくくなる。その仕事がしにくくなるということから、場合によっては倒産という事情も出てくるわです。これはただ商社が倒産するということだけではなくて、この前も話をしたことですが、税率の格差があるために、中国産品が第三国を経由して日本に入ってきてもりっぱに商売ができるものがたくさんあるわけですよ。通産大臣、こういうやり方をしますと、第三国を通じて輸入された品物というのは、日中の貿易関係からいえば、御承知のように、これはバーターでやっていますから、輸入したものに見合うものの輸出ができるわけですよ。ところが、中国産品が実際には第三国を経由して入ってきますと、中国貿易はそれだけ減ってしまうわけです。むしろ見返りを出すという範囲が狭まっていくというような、中国貿易については事志と違う方向へ向いていくわけですね。そういう実情がいまもうはっきりしておるわけです。ですから、これは中国の側からしますと、どうもやはりおもしろくないわけです。友好商社としてもおもしろくないし、中国の側でも、こういうやり方をなぜ日本の政府がやるのだというような観点に立つわけです。大臣すでにおわかりのように、LT貿易は今度覚書貿易になって、その中で積極的に貿易拡大に努力しようという体制をとっておる時期に、ケネディラウンド実施ということによってこういう弊害が出てくることは、これは友好貿易のたてまえから非常にまずい。これをやはり政策の路線で変えなければいけない。だから、われわれから言わすと、こういう問題は関税定率法第五条の便益関税適用する等の処置をして、むしろ大きな高次のたてまえから、政府が予測しない悪条件を克服していくということが、むしろこの段階では非常に大事なんじゃないかと思っておるわけです。こういう問題について、やはりもう少し通産当局のたてまえからもそのことを考えるべきじゃないか。大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  51. 倉成正

    ○倉成政府委員 便益関税の問題でありますので、私のほうから……。関税定率法の第五条の便益関税は、協定税率の適用を受けない特定国の特定貨物について、協定税率の範囲内で有利な税率を適用する制度でございます。これはもう詳しく申し上げなくとも石野委員よく御承知のとおり、国交を回復してない国に対しては便益関税適用した国は一つもないわけでありまして、このガット加盟国、あるいはこの協定に参加いたしましても三十五条を援用しておる国々でありまして、わが国に対する差別を実質上してない国に対して適用しておる。こういうわけでございますから、中共に対して便益関税適用するわけにはまいらないということは政府の方針でございます。ただし、先ほど外務大臣からもお答えがございましたように、今度のケネディラウンドの結果、中共から入ってまいります品物の中で、大豆とか銑鉄とか、こういうものをそのまま格差をつけるということは、わが国の経済にとっても、また中共との貿易にとっても適当でないと判断いたしまして、これは国定税率を協定税率まで下、げたということであります。
  52. 石野久男

    ○石野委員 いま次官は、国交関係のない国でそういうことをやったためしがない、こう言うのでありますが、そんなことはないですよ。戦後、インドネシアと国交関係のない時期にそれをやっていますよ。それからまた、アルジェリアとの関係では、関税差別はあるけれども、便益関税をやっておるでしょう。だから、そういう問題を、ここで時間を非常に急いでおるわけですから私は追及はいたしませんけれども、調べてごらんなさい。これは戦後ちゃんと、インドネシアとの間には、一国交関係のないときにやはり通商協定も結んでおるし、貿易協定も結んでおるでしょう。それからアルジェリアは、やはり相当な関税差別をされておるけれども、現にこれはやはり便益関税適用しておりますよ。だから、そういう状態の中で中国との貿易についてこれをやらないということになると、政府はやはり一貫して政府の対中国敵視政策というようなものをここで具体的に政策としてやっているんだ、こう言わざるを得ないわけです。大臣、こういう問題はそれこそ、先ほど田中君からも質問があったように、政治的な立場でもう少しはっきりと、全般的な国の貿易拡大という側面から問題をとらえるべきじゃないか。民間ではとにかくLT貿易だ、やれ覚書貿易だというようなことをやっているときに、こういうような逆行する体制はこれは改むべきだというように考えるのが、どうなのです、大臣
  53. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もうできるだけ、国交正常化が行なわれてないけれども、ワク内においては極限まで、とにかく両国の間の貿易、物資の交流については努力してここまで持ってきておるわけで、まだ若干残っておるこれをどうするかという問題でございますが、これはひとつ今後大蔵当局とも十分に連絡をとって、できるだけ御趣旨に沿うようにやってまいりたい、こう思います。
  54. 石野久男

    ○石野委員 大臣、大蔵大臣、外務大臣ともどもに、いま提起した問題については問題の内容がわかっているはずなのです。そこで、その問題については、私は、あるものを取り上げ、あるものをどうでもいいと言うのと違うのですよ。全般的な立場でこれに検討を加えてもらわなければいけない。それには実情を正しくつかんでもらわなくてはいけないと思うのです。  そこで大臣、いま業者は非常にこまかい調査を各品目についてしているのです。これは一九六六年、六七年の輸入全品目についてこういう調査をしておるのです。関税番号、品目を全部出しまして、協定税率、譲許税率、それから輸入統計の番号を、中国からの輸入量がどういうふうになっているか、中国からのその金額はどういうふうになっているか、あるいは全世界からの輸入に対してどんな比率をとっているかという、非常にこまかい表を出しております。これは通産当局がなかなか手が回らないからやらないのだろうと思いますので、こういう膨大な調査をいまやっておりますから、通産当局はこれをひとって取り資料とし上げて、積極的にその実情を把握してもらいたい。これは関税当局も、大蔵省のほうでもそういうふうにひとつやってもらいたい。そうして事実を正確につかんだ上で、差別待遇がないようにしてもらいたいということを特にこの際ぼくは大臣にお願いしたい。大臣どうですか、こういう資料を積極的に資料として取り上げて、検討を加えてくれる用意がありますか。大蔵省ともども
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 調査のための資料といたしましては、有効なものはあらゆるものを集めて研究しておりますから、御提供を願えればけっこうです。
  56. 倉成正

    ○倉成政府委員 大蔵当局としてもできるだけ強勉したいと思います。同時に、石野委員よく御承知と思いますが、やはり関税は相互主義でございますから、日本の場合も、無条件でただ中共に対して協定税率を適用するというわけにはまいらないと思います。やはり中共の側の事情も十分こちらによくわかるようなぐあいに、やはり国交が回復してないというのが非常に不幸なできごとでありまして、その中でやるわけですから、中共の事情等についてもできるだけこちらが理解できるようなことをこれから努力していきたいと思っております。
  57. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  58. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 通産大臣質問いたします。  今回ケネディラウンド交渉が妥結し、七月一日からわが国も関税の段階的引き下げを行なうため、ジュネーブ議定書を審議しているわけでありますが、この際、中国貿易について若干の質問をしたいと思います。  今度二千百四十七品目について関税の引き下げが行なわれますが、中国はガット締結国ではありませんから、譲許関税がそのまま中国からの輸入品には適用されるわけではないわけであります。銑鉄、大豆等十数品目については同じ関税適用する手当てをしておりますが、中国から輸入されるところの六百三十五品目のうち、五五%に相当する三百五十余の品目については、今度の譲許関税適用されないのであります。これは中国からの輸入品に対してますます関税格差をつけることになって、中国貿易を縮小させられる方向になるのではないかという見方があるわけであります。しかし、先ほど来の答弁からも、中国貿易の拡大をはかっていく、そういうことと逆行するわけであります。そのことについては先ほど所信を伺ったわけでありますが、この問題について、さらに政府は、中国からの輸入品は金額にして八〇%は協定関税と差はないから大きな問題ではない、このようなことも言っております。しかし、格差のつけられた二〇%の品目は三百五十余、これに関係する商社はまた三百五十社というくらい多きにわたっております。さらにこの商社関係する業者は十倍ぐらいあるのではないかとも見られております。しかも、この商社関係する中小企業の問題については、非常に大きな問題があるわけでございます。この関税定率法の一部改正案が大蔵委員会で採決されたときに、ケネディラウンド実施によって協定関税適用されない国との貿易が阻害されないような万全の措置を講ずべきである、こういう趣旨の附帯決議が可決されたわけでありますが、そのときに大蔵大臣は、御趣旨に沿って善処したい、このような答弁があったわけです。その善処するということでありますが、どういうふうにするのか、具体的に伺いたいのであります。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大蔵省から来ておりますから……。
  60. 上林英男

    ○上林説明員 ただいまの附帯決議につきましては、大蔵大臣が御答弁申し上げましたように、その附帯決議の趣旨に沿いまして政府として努力いたすつもりでございます。すなわち、政府といたしましても、中共貿易につきましても、できるだけ拡大の方向努力をいたしてまいる所存でありますことは言うまでもないわけでございますが、具体的に申しますと、今回のKR税率実施によって国定税率と協定税率の間に格差を生ずることとなるようなものにつきましては、具体的には、中共が主として関心のあるような品目につきまして、国内産業への影響を考えながら、国定税率改正の際に個々に前向きに検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  61. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、ここでいまの検討することはさておき、もう少し具体的に品目について聞きたいわけでありますが、しかし、その品目にしても非常にこまかいというか、なかなかたいへんでありますし、また、こういう問題の一つ一つの品目を検討していたのでは、根本的な問題の解決にならない、このように考えるわけです。そして、できるならば一括して関税格差を撤廃するような措置をとらなければならないのではないか、こういうふうに考えますが、その点伺いたと思います。
  62. 上林英男

    ○上林説明員 御質問の点は、便益関税適用したらどうかというお話であろうかと思いますが、本件につきましては、たびたび御答弁申し上げておりますように、ただいまの中共との国交が回復されていない状況、あるいはそれに伴いまして便益関税——便益関税と申しますのは、お互いに最も安い税率を適用し合う、したがってまた、それが確認され、かつ、そうでないときには外交関係によってそれを是正していくという方途が講ぜられ得る国に対して行なうものでございますので、中共を便益関税適用国にするということは考えておらないわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げましたように、今後の課題といたしまして、関税定率法の改正の際に、国内産業の状況等も考え合わせながら、支障のないものにつきましては、できるだけその差をなくすように検討してまいりたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  63. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 関税定率法第五条にある便益関税適用国に中国を入れない、こういう答弁でありますが、その理由については、先ほども国交が回復してないからと答弁がございましたが、国交回復してないから適用国にならない、こういう法的な根拠がありますか、大臣、いかがでありますか。
  64. 上林英男

    ○上林説明員 便益関税適用国というものは、いわゆる承認をした国、国交回復した国であるかどうかという点につきましては、必ずしもそれに限るということには限らないと思っております。ただ、先ほど御説明いたしましたように、便益関税と申します趣旨から申しまして、お互いに最も安い税率を適用し合う、したがって、その場合に、その状態を確認されるような状況であり、あるいはそれが阻害された場合には、外交関係等を通じてそれが是正されるような国、そういう状態にある国に対して便益関税適用する、そういう趣旨から申しまして、いま申しました中共などにつきましては、便益関税適用することがむずかしい、こう考えておるわけでございます。   〔委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕
  65. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は大臣に伺っているわけでありますが、私は法的根拠はないと思うわけです。ほんとうはもっと言いたいわけですが、時間がありませんから、簡単に申し上げます。たとえば閣議で決定したり、あるいは政令で定めれば、これは可能である、国交が回復していないからだめであるという根拠はない、私はそのように思うわけであります。しかも、先ほど石野委員からもございましたように、確かに、終戦後、インドネシアと国交を回復しないときに、わが国においては、通商条約かあるいは貿易条約かはわかりませんけれども、結んだことがあるわけであります。大臣の所見を伺いたいと思います。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体、こういう国と国との協定でございますから、お互いにその相手国と外交関係あるいはそれに準ずるような場合を前提としないと成り立たないわけであります。   〔鯨岡委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、こういうものは国交正常化された国だけでしか行なわれないということが特別に書かれていなくても、実際上の関係は、当然外交関係というものを前提とするというようなたてまえでできておれば、これはやはり国交が正常化された国同士で行なわれるもの、こう解釈しているのではないかと思います。  インドネシアとの関係は、どういうことであったか存じませんけれども、その当時は、まだおそらく日本が独立しておらない占領政治下にあった時代で、原因は別にあったかもしれぬ。とにかく、ここに外務大臣がいらっしゃいますから、その点は外務大臣からお答え申し上げたほうが……。
  67. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先ほど石野先生から、またただいま伊藤先生から御指摘のインドネシアの点でございますが、インドネシアはガットに早くから入っておりました。そして、日本がガットに加盟いたしましたのは一九五五年でございます。したがいまして、当然協定税率というものが適用されていたわけでありまして、先ほどお話のように国交関係とは別に関係ないわけでございます。
  68. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一問。先ほどもありましたが、相手国が日本側に対して関税の差別をしている、こういう理由から適用されないということが理由の一つになっているようでありますが、これはまたたくさん問題があるわけですが、大臣が次の委員会等も予定されておりますので、簡単に申し上げます。  これはやはりいままでの日中貿易を見た場合に、日本商品が輸出されて、中国の関税によって一ポンドでも阻害されたことがあるかどうか、これはないわけです。さらにまた、中国という国は、日本と違いまして、関税がたとえあったにしてもこれは形式的なものだけであって、実際には差別なんかない、このように思うわけです。そしてまた、差別をしている国というのがほかにあります。これも先ほど出ましたが、アルジェリアがそうですね。これは完全な関税差別をしているわけです。しかし、これは便益関税適用国になっているわけですね。そういう点からも非常におかしいと思うわけです。なぜこういうような差別をしている国に対しても適用しながら、差別しない中国に対して適用しないのかということです。通産大臣から伺いたいと思います。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こちらのほうに専門家が来ておりますから、ひとつ専門家のほうから……。
  70. 上林英男

    ○上林説明員 中共の関税制度等につきましては、必ずしも明らかでないわけでございますが、私ども日本貿易振興会の資料などによって知っておりますところでは、中共の関税率は、個々の品目につきまして最低税率と普通税率があるようでございます。そして、この最低税率につきましては、中共と国際貿易協定締結している国に適用している。わが国はもちろんそういう協定がございませんので、普通税率の、高いほうの税率の適用を受けているように承知しております。もちろん、これは中共の状態がよくわからないのでありますけれども、そういう資料を持っているわけでございます。  それから第二に、アルジェリアの点につきましては、おっしゃいますとおり、最近におきましてアルジェリアがわが国に対しまして高い税率を課するようになっておりますが、これにつきましては、ただいま外務省のほうで、その高い税率を廃止し、最低税率の適用を受けるように鋭意努力をしていただいているところでございます。そして、お互いに貿易拡大のために低い税率を適用し合うということは望ましいことでございますから、その方向にせっかく努力をしていただいているところでございます。もしそれが不可能であるということがわかりました場合には、もちろんそれ相応の措置を考えなければいけない、こういうように考えておるのでございます。
  71. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣に聞いてもわからないから伺ったのですけれども、あなたのお話はジェトロの調査での話だと思うわけです。しかし、これは先ほども申し上げましたように、資本主義における関税と社会主義における関税と、観点が違うのですね。たとえそうであっても、先ほども言ったように、一ポンドでもわが国においてはそういうものによって阻害されたことがあったか。ないじゃありませんか。その点について伺いたい。
  72. 上林英男

    ○上林説明員 中共のような、いわば計画的な公営の貿易を主体といたしておりますところでは、関税率の価格に及ぼす影響その他につきましては、なかなか確たることを申し上げられないわけでございます。しかしながら、いま申し上げましたように、資料によりますれば、そのような税率の差があるということでございます。具体的にはどういう影響があるかということは、いま申し上げましたような事情からなかなかむずかしいかと思っております。
  73. 秋田大助

    秋田委員長 石野久男君。
  74. 石野久男

    ○石野委員 宮澤経済企画庁長官にお伺い申し上げます。  ドルがまだ非常に安定度を回復していないという実情で、ケネディラウンド実施したときに、貿易拡大の上でどういうような影響が出るだろうか、そういう点について大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かにドルそのものは不安定でございますし、ポンドもそうでございますが、OECDあたりで見ているところでは、それにもかかわらず、今年の世界の輸入量が前年対比で大体七%くらい増加があるであろう。これはアメリカ、西ドイツ、フランス、ベルギーなどの景気拡大を見ているわけでありますが、ケネディラウンドはすでに一部の国では実行に移されておりますから、それを合わせてのことであろうと思います。大体その見通しでよろしいのではないかと私は考えております。
  76. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、きのう田中委員質問に対して、ドルをまんべんなくあんばいすることができなくなったので、国際協力を要請されるようになった、こういうように答弁なさっておるのですが、その意味はどういうことですか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少し長い御答弁をいたしました途中に、そういうところがたしかあったと思いますが、結局、世界各国の中で、そのキーカレンシーがあっちへ行ったりこっちへ行ったりしておれば、それで貿易ができるわけでございますけれども、アメリカ側に片寄ってしまうとか、あるいはアメリカ以外の国に片寄ってしまうとかいうことになりますと、決済の手段にこれを使うことが非常にむずかしくなる、そこで、という意味で申し上げたのでございます。
  78. 石野久男

    ○石野委員 先ほどちょっとお尋ねしたのですが、ドルの安定の問題についての大臣の見通しはどうでございますか。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私、アメリカが国内政策としてドルの安定をはかる諸施策、増税でありますとか、いろいろあると思いますが、それをちゃんとしてくれることがまず第一に必要であろうと思います。それ以外では、わが国を含めまして、各国がいろいろな協力をできる限りする、こういうことでございますから、それらの条件がまあまあ満たされましたら、そんなに私は心配することはないのではないかと思います。
  80. 石野久男

    ○石野委員 すでに私たちが新聞報導等でなにしておりますように、マーチン米連邦準備銀行理事会議長が、ドルの先行きについて、必ずしもいい見通しだというような見方をしないで、非常に危機感を訴えておるわけですね。そういうような状況もかまえて、いまの大臣の見解なんですか。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 マーチン氏は昨年からかなり強い調子でああいうことを言っておりまして、今回の場合は、アメリカの増税案がなかなか通らない、難航しておるということを頭に置いて、ああいう発言をしたものと思います。つまり、マーチンの考えでは、片手で戦争をやり、片手で偉大なる社会をつくるということは無理であって、アメリカの経済はむしろ戦時経済というふうに認識をしてもらいたい、こういうことを言っておるわけでございますから、それで増税案をぜひ通してもらいたい、また政府も歳出を削減してもらいたい、自分のところでは金利を上げていく、こういうふうに立場上でもございましょうが、相当強い調子で言っておるわけでございます。しかし、そのマーチンが、本来、金一オンスというものは三十五ドルほどの値打ちはないんだということを逆に言っておるわけでございますから、彼自身は、ドルの将来について、このままであれば別でありますが、そういう諸施策がとられれば、その悲観をして考えておるのではないと思います。
  82. 石野久男

    ○石野委員 マーチンの見解は、いろいろなショックを世界的にいま起こしておると思うのです。  SDRの問題について、昨日大臣は、今日の世界がSDRに気づいたことはたいしたものだ、こういうふうにおっしゃったですね。SDRが今日の国際金融の不安を解消するということについて、大臣は的確な信頼をそれに持っておりますか。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 SDRというようなものは、やはり各国が世界貿易の拡大に協力をするという、そういう精神の上に築かれておりますから、その前提になるのは、みんなが協力し合うということが前提でございます。その前提の上に立って、こういうものがとにかく出されることになったということは、金とかドルとかだけでない、新しい信用決済の手段を人類が考えたという意味で、たいしたことだというふうに申し上げたわけであります。したがって、そういうものが出せるように現実になる段階になりますと、問題の解決の糸口といいますか、それが開けるわけでございますから、このSDRの量そのものがドルや金にとってかわることになるというのはまだまだ先でございましょうけれども、あるいはそういうことはないのかもしれませんが、こういうもので救いの道があるということになれば、やはり全体は落ちつく方向にいくのではないか、こう思うわけでございます。
  84. 石野久男

    ○石野委員 SDRがドルポンドに取りかわっていけるようなものなのかどうなのか、これが一つ問題があると思うのです。そういう点については、大臣は、それを取りかわって代行できるものだというふうにお考えなのですか、この引き出し権というものは。
  85. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはやはり、いまの段階では、補完し得ると申し上げたほうが正確であったと思います。先ほどちょっとそこのことばづかいが適当じゃなかったと思います。
  86. 石野久男

    ○石野委員 ジュネーブ大学の国際研究所で三日間ほどにわたって国際通貨専門家会議が開かれた。一昨日の四月二十二日に、コミュニケをそこで出しておりますね。これは主として会議には個人の資格で銀行家とかあるいは学者、実業家が参加しておるわけですが、そこでは通貨の信頼を回復させる唯一の効果的方法として、金の公定価格を二倍に引き上げようという決議をしておるわけです。こういう呼びかけをしたということが報ぜられておるのですが、こういう問題について宮澤長官の所見はいかがでしょうか。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過去三十数年の間に、一般の物の価格はほとんど例外なく相当に上がっておるわけでございますから、金の価格だけがその間上がらない、依然として同じ価格であるということは、そもそもおかしいではないかということは学者もよく申しますし、それとしては私ども別にそれに異存があるわけじゃございません。ただ、この問題がたまたま先般来のゴールドラッシュとか基軸通貨の危機とかいうことと関連して出てまいりましたので、そういうごたごたしたときに、現実の問題としてそれを取り上げるのは不適当だ、こういうふうに私は思っております。
  88. 石野久男

    ○石野委員 希望的にいえば、今日の問題としてそういうような取り上げ方をするのは不適当だと大臣の言われる意味はよくわかるのです。しかし、事実問題として、ポンドドルの相場が下落していって、金の相場が上がってくる、こういうような実情が出てまいりますと、今度SDRをもってドルの危機を救おうとする意図、そういう考え方というものは、案外思ったようには成果をあげられないのじゃないか、いわゆる国際通貨としてのドルを安定化させるのはやはり非常にむずかしいのじゃないか、こういうようにわれわれは思うのだけれども、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  89. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、結局御質問の点を詰めていきますと、もう一ぺんゴールドラッシュのようなものがあって、そして金の取引価格が非常に実勢価格として上がっていくかどうかということに帰着すると思うのでございますが、いまは御承知のように、公的取引と民間の売買とを切ってしまう、そしてパリとかロンドンとか、少しずつの取引があるわけでございます。この場合、昨年の十一月以来値上げを見込んで買いました人たちが、ある程度利食いをしておるであろう、しかし、その利食いの幅は実は非常に小さいのだろうと思いますが、しかも、金利のついた金で買ったものが、当分金の価格が改定になる見込みはないということで、いつまで持っておれるだろうか、利食いをするチャンスがない部分が多いだろうと思います。のみならず、南アが年間に十億ドルぐらいの新産金があると思いますが、これがどこに売ってくるか。アメリカはじめ十カ国蔵相会議の国は、金は買わないということを一応言っておるわけでございますから、そうしますと、南アの金はどこに売るのかということになりまして、多くのものは、自然この自由市場に売られることになるのではないかとすら考えられるわけです。そうしますと、需給は実はむしろ供給過剰というふうなバランスになってくるのではないか、一応そう思われますので、そこで先般のようなことは起こらない。したがって、石野委員の言われましたように、このドルが金との関係でデバリュエーションを迫られるということはないのではないか、一応そう思うのでございます。学者の議論、あるいはこういう場合の話でなく、一般論として、三十年間も金の値段だけ動かないのはおかしいじゃないかということについては、私は別段異存はございませんけれどもドルの問題についてはそのように考えております。
  90. 石野久男

    ○石野委員 今度引き出し権としてなにしますSDRというのは、やはり国際金融の上における現行制度の混乱を根本的に改めるものだというふうにはわれわれはちょっと考えられないのです。同時にまた、このSDRというのは、やはりこれに協力する諸国間の積極的な協力体制というものが出なければ、その成果をあげることは困難だろうと思うのです。この前、ストックホルムで十カ国蔵相会議があった。そこでは、なるべく金は売らないように、買わないようにしようということまでも話したのであるけれども、その後、やはりポンドはきのう、きうと暴落をしておりますね。それに反比例して金の値段が相当上がってきておる。こういうような状況が出てまいりますと、国際間の協調体制というものは非常にむずかしくなりやせぬだろうか。ことにドルポンドに関しては、まずやはりドルの問題についてはポンドが先行するわけですけれどもポンドは、日中の関係決済通貨としてフランに切りかえられたわけです。こういうポンドフランに切りかえられていくという体制の中で、ポンド決済通貨としておった国々のポンドヘの依存度、またそれを通じてのドルヘの依存度、こういうものからむしろフランに変わっていくという、こういう国際的な関係でのポンドドル、そしてSDRと、こういうものにつながっていく反面、今度フランならフランというものが相当積極的に世界的な信頼度を高めていく、こういう関係が出るというと、ドルの位置づけをSDRの中で確立させていくということが非常にむずかしくなりやせぬか、こういうように思いますが、その点はどうですか。
  91. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ポンドが、このたびイギリスが相当強い国内の措置をとろうとしておりますが、それが成功いたすといたしまして、一応今度はそうすればやや落ちつくと思いますけれども、しかし、やはりポンド圏というものは御指摘のようにどうしても縮小していく傾向にあると思います。キーカレンシーとしてのポンドの役割りは、今後増大するということはおそらくないのではないかというふうに思うわけでございます。しかし、ドルについては、これはキーカレンシーでなくなるということになりますと、世界の取引がほとんど七割方できないことになりますから、そういうことは考えられない。やはりキーカレンシーとして信用を維持していくために、お互いに協力するということが必要であろう。それで、いまフランのことを御指摘になったわけですが、まず、そこに幾つか問題があると思いますが、フランスとしてフランをキーカレンシーにするつもりがあるかないかといえば、それはもうおそらく間違いなくないと思います。自分の通貨をキーカレンシーに出すということは、国内の政策が非常にとりにくくなることでありますから、そういうことは第一フランスが好まないであろうし、また、かりにそういうことになりました場合に、そのフランが信用を維持できるかといえば、それはとても維持できないだろうと私は思うのでございます。ですから、小さな個々の取引で、一応これをフラン建てにやっていこうというようなことは間々これからもございましょうし、あるいはマルクというようなものもあるかもしれませんが、どうもそれらのものはキーカレンシーになるとは考えられにくい。また、それらの国がそれを希望しているとも考えられにくいわけであります。そういたしますと、やはりドルを主体にして何かを考えなければならない、それがSDRということになるんじゃないかと思います。
  92. 石野久男

    ○石野委員 ポンドの位置が非常に低減していくということはもう世界周知の事実だ。ドルがやはりキーカレンシーとしての役割りを依然として持ち続けていくだろうということになると、やはりアメリカの国際収支が安定するということが前提でなければそれはできないだろうと思うのです。アメリカの国際収支の側面でそれが安定化する、あるいはまた将来に対してむしろよくなっていくという見通しについては、今日の情勢でちょっと見通しは立たないのと違いますか。もしそれが見通しを立たそうとするならば、どういうことをいまここでアメリカに対して要求しなければならぬだろうか、こういう問題が出てくると思うのですが、大臣は、そういう点では、アメリカの国際収支を改善するために、いま何と何がそれじゃ大事なことになるだろうか。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ことしの初めにアメリカの大統領が出した国際収支の改善策というのは、大体において必要なことを言っておるのではないか。もちろん中には私ども不適当と思うものが明らかにございますけれども貿易では三十億ドル以上の黒字が出ておると思いますので、そこで結局、海外投資が一応流出になっておる。ドゴールに言わせれば、ですから安いドルでもって外国の金を買っておるのだ、そういうことになるわけでございますが、ですから、そういうことであるとか、あるいは旅行、ツーリズムでございますけれども、そういうものの削減とか、こういったようなことが適当な措置なのであろう。そしてその裏づけとしては、やはり国内の経済を締めてもらわなければならない。それは歳出の削減も増税も必要であろうと思うのでございます。そこへこのベトナム戦争を休戦に持っていこうという意思表示をしたわけでございますから、そういたしますと、経済諮問委員会の報告では、休戦が実施されてから一年半ぐらいで大体百五十億ドルぐらいの軍費の節約があるということを言っておるわけでございますから、それらの施策が大体そのとおり進みますと、ほぼアメリカの国際収支というものは黒字に転ずる、こう見てよろしいのではないかと思います。
  94. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、長官の見通しは、結論的に、だれでも考えるように、ベトナム戦争を終結させるということが前提にならなければいけない、それでないと黒字を回復するということが非常にむずかしい、こういうふうに究極的には——もちろん国内的には増税だとかいろいろなものがありますよ。あるけれども、それだけではとても国際収支の改善はなかなかできないでしょうから、だから、休戦というものがあって、しかる後一年ないし一年半というところでようやく百五十億ドルぐらいの回復度が出てくるんだ、こういうような見通しだということですね。
  95. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ジョンソン大統領の年頭の発表は、三十億ドル改善するということの中に、ベトナム戦争を終結するということは勘定におそらく入れていなかったと思うのでございます。それからまた、マーチンのような人は、先ほど指摘のように、ドルの危機を叫んでおりますけれども、これはだからベトナム戦争をやめろと言ったことはなくて、むしろ国内の偉大な社会建設のための経費なり何なり、両手でおのおの別のことを一ぱい一ぱいするわけにはいかないと言っておるように思います。ですから、どの部分を減らしましても、経済的な効果は似たようなものでありますから、ベトナム戦争をやめるということも一つの方法であろうと考えます。
  96. 石野久男

    ○石野委員 大臣、マーチンのこの前の発言ですね。その発言は、究極するところ、増税をやらなければいかぬ、それから、この段階でアメリカ自体としてはやはり保護的な貿易政策をとらなければいかぬというように訴えておると、こう私は読み取るのですが、大臣はあの演説をどういうふうに読み取っておりますか。
  97. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私、テキストを詳しく読みませんでしたので、ちょっとその点にお答えしにくく思うのでございますが、私の理解が間違っていなければ、マーチンは保護貿易主義をとれとは言っておらないように思うのでございます。むしろマーチンは、自由貿易のこういう世界の流れというものは逆行させてはいけない、いけないからこそ、やはり国内でいろいろな措置をとらなければならない、むろん投資の制限ぐらいは反対ではない、むしろ積極的であったかと思いますけれども、保護貿易主義をしなければいかぬといって呼びかけたのではないように私は解釈しておったのでございますが、なお、テキストをしっかりは読んでおりません。
  98. 石野久男

    ○石野委員 マーチンは、一〇%の増税が一年間も論議されて決着がつかないでおるということば悲劇である、個人の所得は大幅にふえて、消費支出が増大して、国民総生産をふくらませた、赤字財政は二百億ドル以上にのぼっておる、生産増三%のときに物価が七%上昇しておる、制御できぬインフレに向かい、それは制御できぬデフレを招く、こう言っているのですよ。国内の消費需要が強く、物価が上昇すれば、輸入を刺激して輸出を妨げる、したがって、繊維とか鉄鋼その他の保護貿易の機運が高まることは目に見えるごときものであると、こういうふうに言っているわけです。この見解は、やはりマーチン自身アメリカの国際収支を改善するために少しもてらってないものの言い方だろうと思いますし、また、それだからこそ、世界的にもショックを起こしたのだというように私は思うわけです。アメリカはやはりこういう実情のもとに置かれておるのではないか。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点の解釈でございますけれども、このままほっておけば、結果としては保護貿易を強めるようなことになるぞ、だから早く処置をしなければいかぬ、こう言っているのだと思いますので、私は、マーチン自身は自由貿易を信じておる人だというふうに思っております。しかし、アメリカの経済がそこまでいっているのじゃないかと言われる点は、確かにマーチンは事態をかなり思い詰めて訴えておりますから、やはり少し効果も考えてのことかもしれませんけれども、概してそういうことではないかと思います。
  100. 石野久男

    ○石野委員 マーチンは、その最初に、アメリカが国際収支改善をしなければ、ドル切り下げ、世界的な通貨切り下げに向かうだろうと言っているわけですね。したがって、アメリカの国際収支の改善の見通しいかんということがきわめて重大なことになると思うのです。これは別にマーチン自身が誇張して言うのではなしに、事実がそうだというふうにわれわれは見ているわけです。したがって、国際通貨切り下げの段階までいくようになってまいりますと、これはやはりSDRの効果を無にしてしまうということに通ずるだろう、こういうふうにわれわれは考えるわけです、だから、そこのところは、国際収支改善という問題をいま長官の言うように結局ベトナム出費を節減するということを前提として考えるということになれば、これはやはりベトナムの和平交渉はどうなるかということにかかわる問題だ、こういうように言わざるを得ない。
  101. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうであるか、あるいはそれがうまくいかなかったときに、アメリカ自身のいわゆるグレートソサエティー建設のためのいろいろな経費を削るか、そのいずれかというようなことになる。
  102. 石野久男

    ○石野委員 経済企画庁長官はほかの委員会に要請されているようですが、私はまだもう少しこのケネディラウンドに関連してお聞きしたいことがある。だから、ほかの委員会で時間があきましたら、なるべくこちらへ来ていただくことをひとつ委員長了解していただいて……。
  103. 秋田大助

    秋田委員長 了承します。
  104. 石野久男

    ○石野委員 それでは長官、帰ってください。  外務大臣にお尋ねしますが、いまの経済企画庁長官のドルに対するものの見方、特に国際通貨として今日ドルが非常に危機に直面しており、それをどのようにして安定化させるかという問題の究極点は、やはりアメリカの国際収支の改善、その国際収支の改善ということについては、またそれを突き詰めていくと、究極するところ、国内的ないろいろな施策もあるが、やはりベトナム戦争の平和的解決の方向が決定的な問題解決の根である、こういうふうに宮澤長官は意見を述べられた。大臣は、それに対してどういうふうにお考えになりますか。
  105. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま私も聞いておったのですが、大体官澤長官の言われるとおりだと思います。
  106. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、これはベトナム戦争の平和的解決の路線が進まない限り、SDRに対するわれわれの確信というものがなかなかつかめないというふうにやはり見ざるを得ない、こういうふうに私は思いますが、大臣はどうですか。
  107. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま宮澤君のここで言われておったのは、ベトナム戦争とグレートソサエティーをめぐるアメリカの国内支出、これを犠牲にし、しかも増税などをやる国内施策をとるかというふうに、ベトナム戦争ばかりに重点を置いて答弁をされておらなかったようです。私もそう思います。
  108. 石野久男

    ○石野委員 企画庁長官は、確かにベトナム平和解決だけがすべてだとは言ってない。国内的な増税の問題もあるし、あるいはグレートソサエティーの出費に対して、それを削限するというような、こういう問題もあるということも言われておった。しかし、われわれ数字の上から見ても、結局大きな額を占めるのはやはりベトナム戦争ですね。  ここでベトナム戦争をあれこれ論議しておるのは、法案の審議の中ではちょっと無理ですが、当面一つ二つだけ大臣にひとつ聞いておきたいのですが、和平交渉の予備交渉をするという点で、ラスクがこの前十カ国ほどあげたりして候補地というものを出しました。これはハノイからまともにけられたわけです。今日外務省がつかんでおる、ベトナム交渉が大体どういうところで行なわれるかということについての情報は、どういうようなところでございますか。
  109. 三木武夫

    ○三木国務大臣 新聞ではにぎやかにいろいろ場所について論じられておりますが、アメリカとハノイとの間に直接の折衝が行なわれておると思います。したがって、この問題は、そう遠い将来でなくして場所の問題は解決をするのではないか、こういうふうにわれわれは考えておるのでございます。
  110. 石野久男

    ○石野委員 国際情勢の問題についてはまたあとでお聞きするとしまして、きのうきょう、先ほども宮澤長官にお尋ねしましたように、ポンドの危機がまた顕在するような状態になってきました。同時に、日中の貿易ポンド建てから今度はフランへ切りかえるということを、きのうやはり中国と日本との友好商社関係での話し合いが行なわれたわけです。これは全体として、イギリスがアジアからだんだんと対外政策を後退させていくという、ああいう状態を背景として、世界的な情勢になってくる傾向がございます。ことに共産圏関係ではほとんどやはりポンドからドルへ移り、それからドルからまたフランへ移っていくという、こういう傾向が出てきているわけでございますね。こういう状態で、ポンド建て貿易協定というものがだんだんそういう傾向になってきているという世界の情勢を大臣はどういうふうに見ますか。
  111. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いままだ、日中関係決済フランを使おうということで、ほかには、こういうフラン建てがポンドにかわってそういう決済方法が拡大していくというふうにはわれわれは見ていないのでございます。
  112. 石野久男

    ○石野委員 東欧諸国はすでにポンドからドルへ移りましたね。
  113. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはあり得るですよ。
  114. 石野久男

    ○石野委員 ところが、ドルが最近必ずしも信頼感が得られないということから、フランへ移りつつある状態ですよ。だから、そういう傾向が出るんですよ。これはまあしかし、これからあとのことですからとかく言いませんが、しかし、少なくともこれはアジアでいえば、北朝鮮とかあるいは北ベトナムとか、こういうところ、それにマレーシアなんかでも、だんだんポンドからの傾向をずっと縮小してきているわけですね。ポンドを縮小してドルに移っていくという態勢があるわけです。このポンドの暴落という問題は、ポンド相場が落ちていくということは、SDRの体制を固めていく上に、もっと端的にいえば、ドルとの関係がありますから影響が出てくると私は思いますが、そういう影響は出るとは考えませんか。
  115. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まあ、この二、三日ポンドが弱いわけですが、四十億ドルのささえもございますし、ポンドの将来には、少しやはり様子を見てみなければ、ポンドというものの将来を断定するのには早い、こう思っております。また、東南アジアなどに対しても、ポンドからドルに移っていくような傾向はありますが、フランというものがそういう国際的な決済通貨として拡大しておるというような傾向はいまのところございません。
  116. 石野久男

    ○石野委員 私は、このSDRの問題で、SDRがほんとうに国際金融不安を解消できるかどうかということについては、これは大きな問題だと思うのです。SDRがほんとうに国際金融の不安を解消するという体制を確立するためには、いろいろなやはり条件が必要だと思いますけれども、そういう問題について大臣はどういうふうに考えていますか。
  117. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まあ、これは新たなる一つの仕組みが考えられたわけですが、国際的にこのSDRを育てていくという国際協力というものがやはりどの程度真剣に行なわれていくかということに、それはかかっておるのではないかというふうに考えております。
  118. 石野久男

    ○石野委員 これは、SDRというのは国際的な協力にかかっていることはもう間違いない。そういうことになってくれば、結局いまのところ、フランスがこの問題についていろいろな苦情を持っているわけですね。協力しつつもやはり意見を持っているわけです。フランスのSDRに協力する一番寄りどころというのは、アメリカの国際収支がどの程度改善されるか、その努力がいかに行なわれるかということにかかってくるわけであります。そういう点で先ほどから論議をしているわけですけれども、しかし、私は、それとはまた別個に、SDRそのものがほんとうに安定性を持たせる本質的なものを持っているのかどうかということ、これが一つ問題だと思うのですよ。だから、ここのところの政府の見解をひとつ……。
  119. 奥村輝之

    奥村説明員 先ほど外務大臣から御答弁がございましたように、SDRの成功のためには、まず第一に各国の協力体制ということが必要であります。その次に大事なことは、各国の節度と申しますか、ディシプリンと申しますか、規律、経済の規律と申しますか、これが大事でございます。そういう意味で、先生先ほど指摘のように、フランスの主張が位置づけられていると私どもは考えるわけでございます。やはり今後世界経済の拡大的な発展というものを考えます場合に、いままでのように金と、それから赤字によって放出された基軸通貨というものだけでは、世界経済の拡大は望めない。そこで、準備資産としてのSDRというものをつくらなければならない。これにについてはいま言ったような前提がある。しかし、どうしても私どもとしてはこういうものを成功させるように努力をしてまいらなければならない、こういう立場であろうと思います。
  120. 石野久男

    ○石野委員 この基準通貨、それから準備通貨ですね。特にSDRがそういう形でそれでは世界的にばらまかれていったときに、それはたとえばアメリカならアメリカの国際収支が十二分に改善しない中で、SDRというものだけが先行して、そうしてそれが世界的にばらまかれていくという情勢の中で、インフレヘの影響というものは出てきませんか。
  121. 奥村輝之

    奥村説明員 SDRの創出を幾らにするかということにつきましては、御指摘のように、世界経済の現状を見ながら、それは単に一年ずつの状況でなくて、五年間というような期間の世界経済の見通しというものを見まして、インフレになるかデフレになるか、経済の状況というものをつかまえて、適当な量を創出していく、こういうことでございます。しかも、アメリカの経済、アメリカの国際収支の改善というものは、やはりSDRが成功するために必要であるということは、ひとしくみんなが認めるところであります。
  122. 石野久男

    ○石野委員 ですから、SDRを活用していきますと、結局世界的な流通性を高めていくわけですよね。これはSDRをなにして、とにかく準備通貨というものをどんどん出していくという形になれば……。そういう形になると、それは言うまでもなくドルを各国へばらまくことになるでしょうな、この段階では。ほかのものじゃないんでしょうから、おそらくポンドでもなかろうし、フランでもなかろうから、ドルがばらまかれていく。そうなると、アメリカのいわゆる国際収支上の赤字を拡大しないでそういうことが可能かどうかという問題が一つありますね。その流通性を高めることによってドルがばらまかれ、そうしてアメリカのやはり赤字がむしろ拡大していくということになると、これは安定性を欠くことになるだろうと思う。そういう問題が新しく起きてきやしませんか。
  123. 奥村輝之

    奥村説明員 ちょっと御質問の意味がはっきりしないのですが、SDRというものは、これはもう先刻御承知だと思いますけれどもドルとかポンドと同じように流通する通貨ではございません。これは準備通貨でございます。したがって、各国がいまやっております、中央銀行あるいは通貨当局が市場においてインターペンションと申しますか、相場の支持政策をやる、そのために必要な外貨、これを調達するために、この準備資産から資産をしむけることによって他の国から必要な通貨を調達するというような仕組みでございます。しかし、根本的な問題は、あくまでもこれによってインフレが起こるか起こらないかという御質問であろうかと思いますが、これはつまり私どもは過去五年間大蔵大臣会議をやってまいりまして、国際収支の調整をいかにすることが一番うまい方法であるか、国際収支の調整過程と申しますか、そういう研究を続けてきたわけでございます。そういう意味で、経済の節度というものがなければSDRは成立しない。また、SDRの創出についても、インフレ、デフレ、こういうものがどういうふうな見通しであるかということをよく検討し、その全体の合意の上で、どれだけのSDRを創出していくというような議論になるわけでございます。そこのところは確かに問題点であり、十分検討せられて、創出の量がきめられてくる、こういうことになるわけでございます。
  124. 石野久男

    ○石野委員 もちろん、SDRというものはドルそのものではないわけです。これは引き出し権ですからね。けれども、結局流通性を高めていくということをしなければ国際金融の混乱を救うということができない、あるいはその危機を救うことができないという実情にいま置かれていると思うのです。そうなりますと、引き出し権というのは、当然やはりドルを相当程度準備しておかなければ、実際にSDRの成果というものは出てこないわけだ。要するに、SDRというのは、引き出し権としてそれを引き出し、使えるということにならなければいけないのだから、引き出せなければこれは何の意味もないわけです。そこで、その引き出しということがアメリカの国際収支との見合いで、アメリカにそれだけの余力がある場合はこれは問題ありませんよ。余力もないのにそれを増加発行といいますか、するならば、当然これはインフレというものを引き出すことはもう間違いない。したがって、SDRが成果的に世界経済の上に、特に国際金融の上で効果を出すためには、アメリカの経済自身が相当健全化されていかないと実際にはかえってあぶないものになってくる、こういうことになるのじゃないですか。
  125. 奥村輝之

    奥村説明員 SDRは、アメリカの国際収支が改善せられまして、そしていままでダブついておったというのはちょっと誤弊がございますが、過剰であったドルがだんだん少なくなってくる、こういうことがアメリカの国際収支の改善がもし進めばあり得るわけでございます。一方では国際的な貿易の規模は毎年高くなっていく。これはそう持っていかなければならないし、そういう方向であろうと思いますが、そのときに、各国ともやはり国際収支の改善というものをして、国内経済との関係がございますが、できるだけ世界の成長発展をはかっていかなければならぬということに考え方の根本があるわけであります。一体SDRでどういう通貨を引き出すのかといえば、別にドルを常に引き出す必要があるわけではございません。フランスフランでもけっこうでございますし、ドイツマルクでもけっこうでございます。リラでもけっこうでございます。要するに、その国の国際収支が黒字基調にある、あるいは準備が豊かであるという国から、SDRを使って引き出しをするというかっこうになるわけでございます。
  126. 石野久男

    ○石野委員 二十三日に開かれたOECDの第三作業部会で、アメリカの本年第一・四半期の国際収支は短期資本移動の面を除けばほとんど改善の徴候が見られない、こういうふうに見ている。第二・四半期の予想も明るいとは言えない、こういうふうに見ておるわけです。そういうたてまえから、ことしの秋の総会前までに不安定中の安定を保てるのではないかという見方が広がっておったけれども、かえって今日では、現在の米国の国際収支の見通し、その対策のあり方などから見て、その前にも再び波乱が起こるのではあるまいか、こういう見通しがOECDなんかでも非常に強く観察されておる、こういうふうに報道されておるわけですが、このような情勢を日本大蔵省はどういうふうに見ておりますか。
  127. 奥村輝之

    奥村説明員 先刻企画庁長官からお話がありましたように、アメリカのほうは、本年の初頭の大統領教書等で、対外的投資を削減する、あるは与信を削減する、旅行を削減する等々のことで三十億ドル程度の赤字の縮減をはかるということを言ってまいったわけでございます。また、これを裏づけるというか、裏打ちするために、国内政策として先般は連邦準備銀行の公定歩合を引き上げた。また、この間は追い打ちをして引き上げたわけでございます。増税法案等についても、歳出の削減についても、アメリカ政府としては非常な努力をしておるように私どもは聞いておるわけでございます。したがって、こういうふうないろいろな政策がいつどういう形で実現されていくかということにかかるわけでございますけれども、いずれにしても、手はいろいろと打たれておるわけでございます。その効果がこれから出てくる。ただし、私ども第三作業部会の数字については外に出すことを禁ぜられておりますので、まだいまの段階では申し上げられないわけでございますが、おおむねいま御指摘のあったような数字があります。ありますが、今後の発展、今後の改善についてはアメリカも努力するし、いままでの政策も効果を発揮していくということを私どもは考えておるわけでございます。
  128. 石野久男

    ○石野委員 いずれにしても、アメリカの現状というのは、そんなに手放しで見ておれるような状態ではないことだけは間違いないと思うのです。私は、こういう情勢の中でいまケネディラウンドの法案の審議をしておるわけですが、ケネディラウンドはそれ自体貿易拡大をねらっているものですから、それは非常にけっこうなことだ。しかし、一方で、特に日本なんかの場合というよりも、世界じゅう——このケネディラウンドはアメリカがまず呼びかけた問題だ。その呼びかけたアメリカ自身が、先ほど田中君が言うように、理想主義と実利主義との競合が各所に出てきておる。このケネディラウンドにわれわれ参加する半面において、どうしても貿易面におけるところの構図、これをもう少し佐藤内閣としては考えなければならぬのじゃなかろうか。ケネディラウンドを一方で実施するこの実情の中で、われわれは貿易拡大の側面、特にアジアの貿易が大事だ、こう思いますし、先般来、中国貿易などのことについても、大臣にいろいろお聞きしておるところですが、いまこそ日中の貿易というものがきわめて大事な時点に立たされておる、こういうふうに私は思うのですよ。  そこで、三木大臣にお聞きしたいことは、大臣はいつも対中国政策については前向きの御答弁をなさっておる。田中君もさっき言いましたように、なかなかこの実行が行なわれないというところに問題があるわけです。大臣は、ことしの外務大臣の演説のとき、非常に高邁な演説をなさった。そこでは、「こうした環境は、平和に生きていこうと決意する日本に、基礎条件として、次の三つの方向を与えました。」こういうふうに言って、一、二と言って、三番目に「そして日本は、隣接するアジア大陸とは、脅威も受けず、脅威も与えず、相互尊重の善隣関係を持たねばならぬということであります。」こういうふうに演説されておるのです。この「脅威も受けず、脅威も与えず、」ということの「脅威」というのは、先般佐藤総理がアメリカに行って、ジョンソンとの間で共同声明を出した。その中に中国の脅威というのが入っておりますが、あの脅威という意味なのですか。
  129. 三木武夫

    ○三木国務大臣 あの佐藤総理とジョンソン大統領との共同声明の中には、一番重点を置いたのは、東南アジア諸国というものが、やはり中共などの影響を受けて非常に不安定になるというようなことのないように、強い、しっかりした体質を持った東南アジアになることが必要である、そのために日本はできるだけ経済的な援助をするということに重点が置かれたのが共同声明の精神だと私は考えております。
  130. 石野久男

    ○石野委員 そこで、大臣の施政演説で言われた「脅威」というのは、特にどういうことをこれは意味していたのか。「隣接するアジア大陸とは、脅威も受けず、脅威も与えず、」ということの内容はどういうことなのか。
  131. 三木武夫

    ○三木国務大臣 「脅威」というものの内容にはいろいろありましょうが、まず軍事的に申せば、やはり日本日本の安全保障政策から日米安保条約を結んでおりますが、これは各国とも非同盟諸国を除いて集団安全保障体制の中に世界はあるわけです。日本もそういう意味において日米安保条約を結んでおる。その結んでおることは、そういうことによって、われわれが常に言っておることは、これはどこの国に対しても敵視政策の結果集団安全保障体制を持っておるのではない。日本の防衛という目的のためにこういう条約を結んでおるのである。したがって、集団安全保障条約を持ちながらも、そのことがいずれの国、中共ももちろんその中に含まれるわけでありますが、脅威を与えない。そしてできるだけ平和的に共存していこうということが、いわゆる「脅威を与えず」ということの中に含まれる。また、われわれも中共にそういうことを期待したいということでございます。
  132. 石野久男

    ○石野委員 このケネディラウンドの問題を通じて、対中国貿易は、先般来話もありましたように、いろいろな格差がついてきたり何かして、事実上日本業者も困るし、また、対中国的な関係もいろいろとやはり憶測されるような側面が出てくる。そのことは私は先ほど来申し述べました。問題は、やはり日本と中国との貿易関係なり国交関係というもの、あるいはその友好関係というものは、いまこそ改善されていかなければならないときである。ケネディラウンドというのは平和と世界貿易拡大のためにやるのだということは、これは口がすっぱくなるほど言われておることですけれども、しかし、われわれは、やはりここで出ておるケネディラウンドそのものだけでは、今日日本の持っておる生産設備、それの生産力、それを全部おおいかぶせていくだけの力量はないわけです。これは東西の両方に対して手を差し伸べるという政治的な勇気がないといけない時期じゃなかろうか。ほんとうに貿易を拡大しようとすれば、そういう経済外交政策というものをはっきりと打ち出されないと、ケネディラウンドそれ自体にもまだいろいろな問題が残っておると私は思うのです。事実上、やはりドル関係だとか、あるいは金の問題とか、そういう問題が陰に陽にこのケネディラウンドの成果に影響してくるのでございますし、しかも、その見通しは必ずしも安定的な明るさを持っているわけじゃありませんから、それだけにわれわれは一方にはケネディラウンドに足を踏まえながら、一方にはやはり従来非常に非友好的であった部分に対して友好関係を確立するということがなければ、本来のケネディラウンドの趣意に沿わないだろう、こういうように私は思うのです。そういう点で、大臣は、いま中国との関係ですね、貿易だけじゃありません、中国とのいわゆる外交関係について、今日どういうことを積極的にやるべきであるかということの御所見をひとつ聞かしてもらいたい。
  133. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中共の外交関係というのは、国交をお考えになっておるとするならば、今日の段階では、これは諸般の諸条件が整っておる時期だとは思わない。現在は、この段階でそこまで日中関係を改善するということはわれわれは考えていない。やはりいま貿易とか文化、人間、こういう一つの接触面があるわけでして、中共との間に接触を保ち続けておるわけですから、こういう点で中共との接触を強化していくということが当面の政策としては適当である。その間、日中間の外交関係とはいかないまでも、いろいろと日中間に障害がある、この障害がある点はできる限りそれを取り除いて、いまやっておるような接触面を強化していくということが当面考えておる点でございます。
  134. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、国交がいますぐにはなかなか行なえない、とにかく両国の関係を改善するという方向でいくのだ。総理もそういうふうに言っているわけです。しかし、また同時に、総理は、従来の外交方針を変える必要はない、こういうふうに言っているわけですよ。そうすると、従来の外交方針、佐藤政府のとっておった外交方針というのはどうあろうと、中国の側からすると、ジョンソン・佐藤共同声明などを通じて見られているように、佐藤内閣は中国に対して敵視政策をとっている、こういうふうに見ているわけです。同時に、やはり二つの中国をつくる陰謀を持っているのだ、こういうような見方をしております。こういうような問題は、やはり日本の佐藤政府の側で、もしそうでないならそうでないというふうにはっきりしなくてはいけませんし、もうそうであればこれはしかたがない。われわれも従来見ているところでは、やはり中国が言うように、そのようにしか見えないんだが、事実上政府はそういう大勢に対して、特に外務大臣はそういうことに対する中国の見方に対してどう対処されようとしておるか、この際、ひとつ所見を聞かしていただきたい。
  135. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私が両国の間に障害があるということを言ったのは、お互いにいろいろ政治体制も違いますと、どうしても、理解し合うということが、普通の自由世界に比べてやりにくい条件があるわけでありますから、したがって、お互いに猜疑心というものを持っている。   〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕 そういうことで、お互いの両国の事情というものに対してわれわれも理解してない面も多い、また向こうもそうだと思います。そういうことで、中国に対して日本が敵視政策というものはとっていないことは、これは石野さんお考えになっても、日本は中国に敵視政策をとっておるというふうな点はありません。われわれは中国との間にはできるだけ善隣友好の関係を確立したいと心から願っておるのであります。また、現に日本が敵視政策とか戦争政策とか、こういうものをとり得る関係ではないと私は思います。中国との間にできるだけ善隣友好関係を確立させたいということが内閣の大きな方針であることは間違いないと思います。ことに台湾との問題に対して、二つの中国をつくる陰謀なんかに加担するわけはないのであります。これはやはり日本が中国の現状をつくったものでもなければ、またこれをどうしようというものではなくして、現実にそういうことになっているわけであります。日本がそういうものをつくる陰謀に加担したということは、これは事実に反します。そういうことは加担をしてない。どうか、そういう意味で、石野さん自身も、日本の国民、ことに政府の持っておる中共に対する考え方、この誤解を解くことに御協力を賜わりたいと思うのであります。
  136. 石野久男

    ○石野委員 私は、日本が中国に対して友好関係を持つようにということは、積極的な努力をしておるのだし、政府がそういう間違った考え方を持っておる場合にはこれを改めるようにさせなければいかぬということで、真剣に考えておるわけですが、たとえば、今度古井さんとか田川さんたちが行って覚え書き貿易協定をしましたときに、政治三原則というのが出たわけです。この政治三原則というのは、先ほど大臣も言われたように、敵視政策をとらない、二つの中国をつくる陰謀に加担しないというような内容を持っているものなんですが、こういうような政治三原則というもの、これをやはり政府がはっきりとした態度でささえるということをやらないと、私は、やはり中国に対する将来の佐藤内閣のとっておった政策というのは、やはり敵視政策だと言われてもしかたがない内容を持っておるのじゃないか、こう思うのです。事実上やることなすことがそういうようになってしまっているわけですから、これは意図すると意図しないとにかかわらず、結果的にそうなってきているわけだし、むしろわれわれから言わせれば、意図的なものだとさえ思われる。だから、いまここで中国との関係を改善していこうとすれば、政治三原則というのは、どこの国だってやはり二つの国をつくってはいけないわけです。朝鮮だってそうだし、ベトナムだってそうだし、中国だってそうなんです。日本だって、沖繩が別に離れておって、それが二つの国の形になっていることは決して好ましいことではありませんから、そういう陰謀に加担するということばで先ほどお話がありましたが、そういう事実を解消するために政治が行なわれなければいけない。そういう意味からしますと、私は、政治三原則というのは、だれでもどこでもそれはあたりまえのことじゃないかというふうに思うわけですよ。ところが、この政治三原則というものの要求しているものと、それから従来の政策とは、ちっとも矛盾していないのだというような考え方をとりますと、これはちょっとやはり問題のとらえ方としては欺瞞になると私は思うのです。そういう点で、外務大臣はしばしば、従来の佐藤内閣の政策と、今日のいわゆる政治三原則やなんかの問題とは、ちっとも矛盾していないと言っておるけれども、それは中国では、三木外務大臣はぺてんを言っている、こういうふうにむしろ言っているわけですね。たとえば新華社通信ですか、これはこういうふうに外務大臣に対して言っているのです。「外相三木武夫は、日本人民を欺くためにでたらめな論調を大いにふりまき、佐藤政権の推進している気違いじみた中国敵視政策を、日中関係の政治三原則と何ら矛盾しないと述べている。」こう大臣のことを言っているわけです。それは共同通信でさえ、こういう人だましの談話を国内向けの宣伝であるとさえみなしているという報道を出しているわけです。ことばのニュアンスはともあれ、その真意、やはり新華社通信がいうようなものの見分け方というものはすべきだと私は思う。この際、私は、外務大臣に、中国との関係を改善しようとするならば、どうしてもそういう基本的な問題でもう少し突っ込んだ討議が加えられなければいけない。従来のやり方をずっとやってきているようなことでは、とても中国との間の改善はできないのではないかというふうに考えるので、これらの問題ともにらみ合わせながら、中国問題については、従来の考え方、それより出られないのだというようなことではなしに、アジアにおけるところの日本立場、特に中国との関係を明確にするための外交路線を、この際はっきりとひとつ聞かしていただきたい。
  137. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、特にいまさら私の考え方を変える必要はない。私は、中国との関係、これをやはり善隣友好関係を維持することが、これが極東のためにもあるいは日本のためにも、中国のためにも必要であるということを言い続けてきたので、この際に特に中国政策に対してあらためて自分の見解を述べる必要は感じておりません。従来の考え方、したがって、私が内閣の閣僚でもあるし、佐藤内閣の外交政策が中共敵視政策をとり、二つの中国をつくる陰謀に加担する、そういうことは断じてありません。どうか、日本の外交というものに対してそういう説をなす者があったら、ともにその蒙を開いてもらいたいと願うものでございます。
  138. 石野久男

    ○石野委員 ともに蒙を開くということば、佐藤内閣がそういう態度をとっていなければ、それは当然われわれは蒙を開く努力をしなければなりませんが、たとえばジョンソンとの共同声明の中で、中国をアジアの脅威であるというふうな言い方をする。これはおそらく三木さんの本音ではなかろうと思うし、佐藤総理はどういうことを意図しておったか知りませんけれども、アジアにおいて脅威になっておるのは、いまアメリカの帝国主義、ベトナムにおけるああいう戦争が一番脅威になっておると、率直に言いますと私どもは思っているわけです。そういう観点から言いますと、ジョンソンとの共同声明で、中国をアジアの脅威であるというような言い方をするところに、むしろ日本の佐藤内閣の問題点があるだろう、こういうようにわれわれは考えているので、これはきょうのこの論議とは別ですから、他日また大臣意見をかわさなくてはいけないと思っております。  いま問題になっておる案件について、あと進めますが、穀物協定の問題でお尋ねしますが、まず、この穀物協定が小麦貿易規約と食糧援助規約の二つで構成されるようになった、そのいきさつはどういうことなんでしょうか、お聞きしたい。
  139. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 その点につきましては、過日御説明申し上げましたとおり、従来小麦協定というものが一九四九年以来ございました。しかしながら、今度のケネディラウンドの交渉にあたりまして、穀物と食肉と酪農製品につきましては商品協定をつくろうじゃないかという話が出ました。しかも、穀物といいました場合は、小麦に限らずそれ以外の粗粒穀物等も含めようという考え方でございました。さらに食糧援助というものがこれに入ってまいりました経緯につきましては、御存じのとおり、従来世界の小麦の流通の約三分一というものがいわゆる特殊取引で行なわれておりまして、特殊取引というものは、要するに食糧の援助であったわけでございます。したがいまして、その食糧援助というものもある程度それを協定の中に取り入れないと、世界の穀物の流通の安定あるいは価格の安定ということに非常に大きな影響を及ぼすものであるから、それをもひとつ取り入れるべきであるという考え方が、アルゼンチン、カナダあるいは豪州等々から出てまいったわけでございます。結局そういうことの考え方が入りまして、今度できました穀物協定では、穀物の価格安定とともに、もう一つ食糧援助というものも同時に入ってきた、こういう経緯でございます。
  140. 石野久男

    ○石野委員 この協定を見ると、二十三条と二十四条を除けば前の小麦協定とちっとも変わらないのですね。どうしてその小麦というのを穀物というふうに変えなければならなかったか。またその意図はどういうことなんですか。
  141. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 前の部分は、先ほど申し上げましたとおり小麦だけでございましたが、今度の場合には、小麦のほかに、いわゆる粗粒穀物、大麦とか燕麦とかあるいはトウモロコシとか、そういうものについてもひとつ考えようということで話が始まったわけであります。結局結論といたしましては、粗粒穀物については結論が出ませんでしたけれども、意図的には穀物全体という形で出てまいったわけでございます。  また、穀物協定の中の援助の部分につきましては、小麦のみならず、粗粒穀物、あるいは日本が希望をいたしました点では特に米も含むという形になっておるわけでございます。   〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 石野久男

    ○石野委員 この穀物協定ではやはり問題になるのは、合衆国にあてた書簡だろうと思うのですよ。この書簡の中で、第二条に対する留保をやはりしておるわけです。この留保についてはまあいろいろ問題があったんでしょうけれども、その後、この留保の意図したものがほんとうに日本にとってよかったのかどうなのかということなどが、われわれとしても考えざるを得ないものが多いわけでございます。特にこれを留保することによって、食用穀物というものの形態で援助を提供するという体制が出てきたわけですね。で、この書簡に書かれておる食用穀物その他の農業物資の形態で援助を提供するということの中で、「受領国の必要を考慮して、その援助の相当な部分」この「相当な部分」というのは、三木さんは前に、半分以上だ、こういうふうに言っておりました。この半分以上のものをそれでは主として何で援助するのか。
  143. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この穀物協定をいろいろ議論されたときは、米を主として考えておったわけでございます。
  144. 石野久男

    ○石野委員 米を考えるというのは、結局日本米ですか。
  145. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先生も御存じのとおり、かつてインドに対しまして緊急援助をいたしましたときには、米は東南アジアの米を買って、そしてインドに回したということでございまして、現在一応考えておりますところは、国内産というよりは、むしろ東南アジア、たとえばタイあるいはビルマ等の米を買って、そして米を必要とするインドネシアとかあるいはインドとかに回す。そうすることがそれぞれの国の片貿易の是正にも役立つということの考え方に立っておるわけでございます。
  146. 石野久男

    ○石野委員 現在でもこれは米で相当額は出せるような体制になりますか。実際問題としてはどうですか。
  147. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 実際問題といたしましては、先生御存じのとおり、東南アジアの米の生産国の輸出余力というものは、確かに戦前に比べまして減っておりますが、しかしながら、まだそういう体制はとり得るだけの輸出余力というものがあり得ることは事実でございますので、とり得ると考えております。
  148. 石野久男

    ○石野委員 端的に申しますと、やはり留保した当時の事情からいえば、日本は後進国に対して援助する場合は、なるべく農業生産を増強するための資材等によって代替しようという考え方が強かったわけですよ。食用殻物そのものを出すという意図はあまりなかった。それが従来の日本の後進国に対する援助の姿勢だったと思います。それはそうだったのでしょう。
  149. 三木武夫

    ○三木国務大臣 従来主張しておったのは、単にそのときの食糧援助というのでなくして、農業開発、これをやらなければいかぬということで、これが絶えず日本の主張の背景をなしたものでございます。
  150. 石野久男

    ○石野委員 そういう主張の背景をなしたものが、今度は援助の半分以上は食用穀物だということになると、これは従来の後進国援助の姿勢を変えたということにもなるわけですね。
  151. 三木武夫

    ○三木国務大臣 変えたわけではないので。やはり今度の場合でも、援助の相手国の希望によって農業物資というものがどれくらいの数量になるかということになるわけで、まあ、ああいう国際会議の場合、国際協力という面もありますから、従来の主張を全然変えたということではないけれども、まあ食糧が現に不足しておる、こういう国に対して援助を与える、端的なのは食糧であることは間違いないわけですから、そういうことも考えながら、主張を全然変えたというわけではないが、やはり端的にその必要に応じた国際協力という形から、こういうことにいたしたわけでございます。
  152. 石野久男

    ○石野委員 国際協力けっこうなんですけれども、しかし、別にあり余る金で援助するわけではありませんし、ことにこれは単なる援助だけじゃなく、外交が入っていると思うのですよ。政策が入っていると思います。したがって、やはり日本が海外に対する外交政策上、有利に展開される側面を持たなければ意味はない。そこまで問題は、従前は、なるべくやはり農業生産を拡大するという側面での援助をすることが究極的には食糧援助につながるのだという方針があったわけです。しかし、相当な部分というものは過半だというのだから、援助の半分以上は結局なまのままの食糧ですね。しかも、それは日本の食糧じゃなくて、海外の諸国で生産される食糧だ。おそらくそういうことになると思う。その中で、やはり穀物協定の主張された点は、アメリカの余剰農産物等をどういうふうにさばくかという問題が非常に中心になったというふうに巷間伝えられもしておるし、われわれもそう見ている。そういう手にまんまと乗せられないのがいいと思うし、また、それではあまりにもアメリカがかって過ぎやせぬか、こういうふうにも思ったりするわけだ。そこで、こういう書簡をもって申し上げそうろうというやつが、アメリカの小麦をそこへ入れるんだということに相なりましては、これはちょっとやはり日本の政策がどこかへ飛んでいってしまったということになりやせぬか。事実上相当部分を食用穀物の買い入れを行なわしめる場合に、東南アジアにおけるところの米で補えればけっこうですよ。しかし、東南アジア自身がそれをなかなか補足するだけのものを持ってないという事情もあるし、結局はこれはアメリカの小麦になってしまうんじゃございませんか。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本が食糧援助する国々、アジア諸国というものは、やはり米の消費地でありますから、私はアメリカの小麦に置きかえることはないと思っております。また、農業開発こそ必要であるという日本の政策の変更でないと私が申し上げておるのは、一方において農業開発基金、これは日本の提唱によって生まれたことは事実であります。やはりこういう食糧が足りぬという事実に対しては、端的に食糧の援助というものが実際問題として必要なことは明らかでありますので、従来の日本の主張を変えたのではなくして、上積みということになるわけでございます。
  154. 石野久男

    ○石野委員 ことしの援助額は大体どのくらいになり、そしてまた、ことしは特に後進国としてどういう国々へ援助することになりますか。
  155. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 今年度の予算措置といたしましては、一般予算に、先生も御存じのとおり、年額いわゆる五十一億円の半額を予定いたしております。また、どういう国に対してケネディラウンドのもとにおける食糧援助をするかということにつきましては、今後これが御審議を得、御承認を得ました後に、それぞれの国と話し合いをしてまいりたい、そう考えております。
  156. 石野久男

    ○石野委員 先ほど大臣からお話があったように、東南アジアは大体米を食べる国々が多いわけですから、そこへ米の援助であればこれは適正ですが、小麦ということには——小麦が食べられないわけじゃないけれども、必ずしもその地域住民の嗜好に合うものではない場合が多い。私は、どこの国のものをどこへどう持っていって悪いということを言うのじゃないけれども、こういう国際的な協定を結ぶ過程で、いつもいままでアメリカが非常にわがままな言い分なり主張なりをこういう協定の中へ入れてきていると私は見ているのです。この協定の中でも、やはり相当な部分をアメリカの小麦を無理に押しつけられるというようなことがあるとすれば、これは援助には変わりはないけれども、政策の面からいうとおもしろくない。また、そういうようなことを政府が黙って見ておったのでは、結局、してやられたことになりやせぬだろうか、こういうように思うわけですよ。かねてこの問題で交渉していた宮澤さんは、米国の農業生産者を利するだけの援助には応じられないと言っておりました。ところが、最終的には、米国の小麦を買うドルになって、基本原則もくずれてきている。宮澤さんは、わが国の経済政策の基本は、低開発国に直接食糧を与えることではなくて、低開発国の食糧生産の基盤を整えるための開発に協力すべきである、こういうように言ってきて、わが国の援助を受ける国は、米でなく、アメリカの小麦がほしいというふうな要求をしてきた場合に、アメリカの希望にまんまと乗せられる、アメリカの農業生産を援助するようなそういう形にしたくないということを言っていたのが宮澤さんの言い分でした。この協定がもし私が先ほど危惧したようなことになると、低開発国の食糧援助を通じてという名目を通じて、アメリカの農業をやはり援助するというような結果になる。それでは、やはり日本の後進国に対する農業生産拡大を含んだ食糧援助という趣旨とは、全然違うことになってしまうので、それをどこかでやはりチェックする体制、そしてまた、少なくともそういう問題に対する日本の政策を具体的に入れていくような性根がなかったら、これはだめなんじゃないかと考えるわけですね。そういうことに対する政府のやはり確固とした考え方というものを、この際聞かしておいてもらいたい。
  157. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石野さんも、この穀物協定をめぐる波紋というものは御承知だと思います。アメリカは、日本が留保をつけないでこの条約に加盟することを非常に強く求めたのであります。日本は、筋道が通らないということで留保をつけて、自主的な判断でやる、こういうことで、この点についてはアメリカと見解を異にして、非常に強く日本の主張を通し続けたのでございます。われわれの自主的な判断、このことが後進国の食糧援助を通じてアメリカの農業政策を助ける、そういう性質のものではないのでありますから、そういう考えがあれば、あんなに波紋を描いてこの条約日本立場を主張し続ける必要はなかったのでありますから、自主的判断で行動をする、この留保条件に従ってわれわれは行動をいたす考えでございます。
  158. 石野久男

    ○石野委員 私は、普通の経済外交というのは、あくまでもその国の自主性というものが貫かれていないと、特にこういう援助などということになれば、それはどういう形で、借金でかりに援助したにしても、最終的にはわれわれの税金でこれは援助することになるのだから、それがわが国の生産に寄与するということでない場合は、そういうことからわれわれは遠ざかる、そういうことをやめる、こういうことをはっきりさせなければいけないだろうと思うのです。その点は、ひとつ大臣のほうでも十二分に考えておいてもらいたいと思うのです。  この穀物協定の小麦の価格帯問題では、すでに同僚議員からいろいろと聞いたところですが、一つだけお聞きしておきたいのは、今度協定された中に、特に「メキシコ湾岸の港におけるFOBでの最低価格及び最高価格の表は、この規約の有効期間について次のとおり定める。」こういうことになっていて、カナダのマニトバ一号、これは従前ですと、この価格帯というのは、カナダの五大湖岸の倉庫渡しのFOB、こういうことだったですね。それが今度メキシコ湾岸ということになります。ここでは一ブッシェル当たりの値段は相当違ってきておるですね。どのくらい違っておるのか。そしてまた、これは小麦の価格帯を引き上げるという作用もしておるし、全体として小麦の値段を引き上げるというようなことになってくる結果になるのじゃないか。そういう点をひとつ説明してもらいたい。
  159. 小暮光美

    ○小暮説明員 五大湖の倉庫渡しで、元の協定では下限が一ドル六十二セント二分の一、今回の協定ではマニトバはガルフから出ませんけれども、マニトバがガルフから出ると仮定した場合ということで、フレートとか港湾チャージを使って計算し直しませんと、直接の比較はできないわけでございますが、ガルフで下限が一ドル九十五セント二分一ということになっております。したがって、この一ドル六十二セントと一ドル九十五セントを、そのまま比較するわけにはいかないことは先生の御指摘のとおりだと思います。その比較をいたします際に、諸掛かり、チャージがございます。  ちょっと余談にわたりますが、わざわざガルフに変えましたのは、交渉を通じて明らかにされた点としては、五大湖のところが冬の間凍りますから、凍るために、そこで十セントくらい諸掛かりが変わってくるわけです。夏場と冬場の間の気象条件で、すでに十セントの差があるということで、基準としてはまことに不適当だということで、ガルフに持ってまいったわけです。ガルフにはそういう差がございませんので、季節によって幾ら上がったかというところはやや違ってまいるわけです。私どもの計算で、マニトバ・ナンバーワンで考えまして、新しい価格帯はおおむね十セントないし二十セント引き上げになっております。十セントの幅がございますのば、夏場と冬場のフレート諸掛かりの違いがあるのが主たるものであります。
  160. 石野久男

    ○石野委員 それから、いま一つお聞しておきますが、小麦の相場は最近どういう方向を向いておりますか。
  161. 小暮光美

    ○小暮説明員 昨年のただいまごろ、協定が最終段階にございましたころと、いまの時点とを比較いたしますと、実勢はかなりの値下がりになっております。
  162. 石野久男

    ○石野委員 同僚議員があとで待っているので、時間を迫られておりますから、あと一つだけお聞きしておきたいのですが、食糧援助規約の二条の第一項に「粗粒穀物」というのがありますね。この粗粒穀物というのはどういうものですか。
  163. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 粗粒穀物の中には、トウモロコシとか大麦、それからグレーンソーガムといいまして、コーリャンの一種みたいなものがございますが、そういうものを含んでおりまして、米は粗粒穀物の中には含んでおりません。
  164. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、これは米は含んでいないわけですね。
  165. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 入っておりません。
  166. 石野久男

    ○石野委員 書簡の中で、食用穀物は米を除外しない、こうあるわけですね。それからこちらで、開発途上にあるところの援助は小麦——大体ここでは粗粒穀物には米は含んでいないというと、書簡とこことの関係はどういうふうになりますか。
  167. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 第二条で小麦及び粗粒穀物というもので援助するということになっておりますが、日本の場合は、小麦あるいは粗粒穀物は大部分輸入しておりますので、それを全部留保いたしまして、そのかわり書簡におきましては、特に米を含むという字を入れさせて、米でできるという余地を残したという関係でございます。
  168. 石野久男

    ○石野委員 この点は、先ほどから私が心配している点で、書簡では確かに米が入ったわけですよ。しかし、本規定のほうでは米は入っていないわけですよ。したがって、この例外規定というような形で留保条項の中に入るわけでしょうが、これのふえん性というものは非常に期待薄ですよ。したがって、やはり政府が相当程度これは努力しませんと、この書簡との内容というものは具体的には効果はあらわさないだろうというふうに思われるわけですね。そういう意味から、やはり本協定をわれわれ批准するにあたって、書簡は確かにそういうふうに書いてあるのだけれども、本規定の場合には粗粒穀物の中に米が入っていないのだから、日本の側で注意をしなれけば、これはもう粗粒穀物そのものでいっちゃうわけです。言うなれば、結局は、悪いことばでいえば、ごまかしだ。ごまかされるということになるわけですね。したがって、こういう点は——当時新聞はこういうふうに書いております。宮澤長官が大筋でまとめてきたときはわが国の主張が通ったと受け取られたのだが、その後の細目交渉でうっちゃりを食った、こういうようにやゆしております。私は、この援助規約というものは多分に後進国を援助するのであるけれども日本の場合はあまりにもアメリカの小麦に引きずり込まれていはせぬだろうか、こういうふうに思います。したがって、これらの点については特に政府が関係当局のほうで留意をしませんと、書簡の意味というものは、むしろ床の間に飾った飾りものにしかすぎなくなってしまうだろうということを注意すべきじゃなかろうか、私はこう思います。こういう点では、これは外務大臣だけじゃなしに、農林省の関係があると思いますから、農林大臣なんかも特にこれは注意をすべきである、こう思うのです。大臣の特にこの点についての所信を聞かしておいてもらいたい。
  169. 三木武夫

    ○三木国務大臣 農林大臣にも伝えます。そして注意をいたします。
  170. 石野久男

    ○石野委員 私は質問を置くわけですが、ケネディラウンド実施は、いろいろな意味において世界貿易を拡大するという意味では、その趣旨は非常にけっこうなことではありますが、事実上不安定な要素を多分に持っているわけです。ことに世界の通貨不安定というものが背景にあって、それがアメリカを中心にして非常に激動しているという事情にある。ケネディラウンド自身は、アメリカのドルを守るということに基調がある。そういうところから訴えられていったものだというふうにわれわれ見ております。そのドルが依然として不安定な状態にあるし、しかもまた、ドルを守るためのSDRというようなものについても、なお各国の協力体制が必ずしも手放しでこれは安全だということもいえないと思うのです。したがって、そういうような情勢がわれわれの危惧する方向に向いていくならば、ケネディラウンド実施したけれども、必ずしも貿易の拡大ということにはならないで、むしろ逆にそれがいろいろな形で足を引っぱるというような結果が出てきたら、場合によりますと、通貨に対するドルへの密着度、それからケネディラウンドに忠実であるということのために、日本の経済が逆に八方ふさがりで、羽がい締めを食うというような結果が出てくるかもしれない。私は、その段階におけるところの日本の経済外交の路線からいきますと、一方はケネディラウンドをかまえつつ、片方で日本みずからの自主性を持ったところの経済外交がないというと、きわめて危険なものであるということを積極的に申し上げておかなくてはいけないと思うのです。大臣、やはりそういう点について明確な方針をお出し願わなければいけない、こう思います。特に、私は自分の言い分をここで申し述べるために言うのではなくて、そういう内容を持っておるものであるということを積極的に政府に対して訴えたい。やはりそういう問題については全然お考えになっていないのか、それともそういう点については何がしかの配慮をなさっておるか、最後にひとつ聞かしていただきたい。
  171. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石野君の言われる点にいろいろごもっともな点も多い。これはやはりケネディラウンド実施するについてはいろいろな問題点が私はあると思います。そういう点で、政府が日本の国益を踏まえて、ケネディラウンドを通じて、世界貿易の拡大にこれが真に役立つように十分な配慮をしながら努力をいたしたいと思います。
  172. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  173. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣に伺いたいのですが、米国の輸入課徴金をやめさせるために、EECはケネディラウンドの繰り上げ実施を考え、またわが国もこれに同調しております。現在ガットの場で交渉が行なわれておるわけでありますが、米国はEECの条件が強いということで難色を示しておるように聞いております。課徴金問題についての政府の見通しを伺いたいと思います。
  174. 三木武夫

    ○三木国務大臣 伊藤さんもいま御指摘のように、EECが四月十七日と十九日、これは非公式な会談をして、アメリカとの間に話し合いをしたわけですが、まとまらなかったわけです。その中の一つは、御指摘のように、ASPに対するEECの条件がきびし過ぎるというようなこともありて、近くまた第二回の会談を開くことになっておるわけです。このケネディラウンドの繰り上げ実施ということが実施されるならば、アメリカも輸入課徴金という制度に対して根本的に検討しようという態度だと思います。したがって、われわれはEEC諸国とも連絡をとりながら、われわれ自身もケネディラウンドの繰り上げ実施ということに対して同調するという態度を明らかにしております。しかし、それはそれとして、アメリカに対しても、こういうアメリカの従来の主張に矛盾するような輸入課徴金の制度というものはぜひ思いとどまるようにということで、EEC諸国とは別個に、また外交ルートを通じて、強くアメリカの善処を要望しております。しかし、いまのところは、アメリカ自身の政策の決定に属しますので、ここでこうだと断定はできませんけれども、輸入課徴金の制度を思いとどまらしめる可能性もある。しかし、まだ断定的には言えないというのが現状でございます。
  175. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国がケネディラウンドの繰り上げ実施を行なう際の条件として、三つあげておるわけですね。これは、EECその他主要国がこぞってケネディラウンドの繰り上げ実施をすること。第二番目として、これにより、米国が輸入課徴金ないし国境調整税、輸入制限立法等の貿易制限措置をとらぬこと。三番目として、米国政府が四〇二A条のすみやかな廃止に最善の努力を払うこと。この三つをあげております。この中で、米国政府が四〇二A条のすみやかな廃止に最善の努力を払う、こういうことが出ておりますが、これはどういうことなのか。それから、この四〇二A条の対象となっているわが国の輸出品の中にはどんなものがあるのか、これを伺いたいと思います。
  176. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 アメリカの関税法四〇二A条というのがございまして、先生御存じのとおりでございますが、これは特殊な関税評価制度であります。FOBプライスあるいはCIFの価格ということではなくて、FOB価格または国内価格のいずれか高いほうによって課税する。たとえば日本からの場合ですと、日本の卸売り価格あるいは工場渡し価格というものを基準にしまして、そしてそれに対して関税をかけるという特殊な制度でございまして、従来日本輸出品の中で非常に影響を受けておりますのがラジオの真空管で、これが一番多うございます。真空管に限らず、制度といたしましては、そのほかに化学品、機械類にも波及する可能性のある制度でございます。したがいまして、従来、ケネディラウンドの交渉をする前からも、アメリカに対して、こういう評価制度をやめるようにということで強く働きかけてまいっておりますが、何ぶんこれは立法事項でございますので、行政府といたしましても、これはなるべく早くやめたいけれども、立法府の関係もあるのでなかなかやめられないのだ、時期としてはっきり断定的には言えないのだということを言っております。さきのホノルル会談におきましても、わが国からこれを強く要望した経緯もございますが、行政府としては、立法府との関係で、やめたいと思うのだけれども、なかなか実現しない、はっきりした断定的な期日を言うことは現在はできないのだという態度に出ているわけでございます。
  177. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この四〇二A条が廃止された場合にわが国における利益はどの程度になるかということですが、それを……。
  178. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 関税評価の特殊な制度でございますので、四〇二A条が廃止されまして、普通のFOB価格あるいはCIF価格というものを基準にした関税評価が行なわれますならば、それによって当然に日本輸出自身が安定的になるということでございます。日本輸出品につき、日本の国内価格ということで恣意的に評価されますと、どうしても関税がどの程度かかるのかはっきりいたしませんので、日本輸出自身が不安定になる。しかしながら、これが廃止されますと、その輸出にあたって安定した効果が出てくるという点が一番のよい結果ではないかと考えるわけであります。
  179. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣に伺いたいのですが、最近SDRについて、フランスの棄権はあったが、交渉はまとまったわけです。IMF協定の改正案も発表されました。このSDRによって国際通貨の不安もまたある程度緩和されると考えられます。しかし、これで問題が片づいたというわけにはいかない。米国の国際収支が改善されることが前提条件でありますけれども、しかし、それだからといって、米国が輸入課徴金やその他の貿易制限措置によって国際収支の改善をばかろうとすることは、また本末転倒ではないか。米国の国際収支悪化の原因は貿易収支ではなくて、ベトナム戦争にある、このようにいわれておりますが、国際収支改善のために米国はベトナム戦争をやめるのが本筋である、このように私たちは考えております。政府は輸入課徴金に関する交渉において、米国の従来の政策を改めるように強く申し入れるべきじゃないかというふうに考えるわけですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  180. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはドル防衛、結果的にはアメリカの国際収支に影響を与えておることは事実でありますが、国際収支の動向と直接に結びつけて、いろいろベトナム問題を論ずるということには無理があると思いますが、伊藤さんの御希望されるように、これまた私どもも一緒に考えておるのであります。ベトナムの平和のきざしといいますか、両戦争当事国で話し合ってみようという機運が出てきておるのです。そうでなければ、平和のきっかけというものがないわけです。ハノイとアメリカとの間に話し合いを始めようという機運が生まれて、場所の点でごたごたしておりますけれども、しかし、このせっかく生まれてきた平和のきざしがあと戻りするとは私は信じていない。やはり時間はかかっても場所もきめられるであろうし、長い長い話し合いにはなるでしょうけれども、平和の方向に向かって忍耐強い努力が続けられることを期待して、こういうことが結果的には、アメリカの国際収支にも、アメリカの環境がよくなるわけでありますから、プラスになることになる。御希望のように歴史は動いていく、こう考えております。
  181. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 食糧援助の問題について伺いたいと思います。  食糧援助というのは、従来小麦協定にはなかったものでありまして、今回の協定で初めて取り入れたわけです。この小麦協定という商品協定に食糧援助という異質のものが入った。先ほど伺いましたけれども、その点について、もう一歩具体的にその背景を伺いたいと思うのです。また、ケネディラウンド交渉の経緯を調べてみても判然としないわけです。穀物協定に関する交渉において食糧援助という問題が出てきた経緯を伺いたいと思います。
  182. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最近、低開発国に人口の増加、食糧の増産のアンバランスが起こっておる。ことにそのために、干ばつとかいろいろな自然の悪条件に出っくわしたところに食糧飢饉が起こる。インドの一昨年の例などもそうであります。そういうときに、やはりみなが寄り合って、相談し合って、そうしてその事態に応じて各国が食糧援助をして、その食糧の飢饉に対処しておる、こういう不安定な形で食糧の援助が行なわれておる。ところが、世界の食糧の生産というものも、アメリカも余剰農産物などを持っておった時代と違ってきて、食糧のそういう飢饉の場合のみならず、低開発国の中には食糧の輸入国が多くなってきて、腹一ぱいめしが食えぬという国が相当ふえてきて、ちょっとした条件が悪ければ、政治の不安定もあるいは自然条件の悪化も食糧問題を起こしてくる。少し計画的に食糧増産をやって、そういう食糧援助というものに対してそれだけの国際的な一つの準備というか、国際的なそういう仕組みをつくっておくことが必要なのではないかという声が起こってきた。これは必ずしもアメリカの農業政策という、そういう次元でとらえるべきではない。やはりめしが食えぬというくらい悲劇なことはないですから。そういうことが出発点で、その方法論において意見が違ったのは、非常にたてまえが違うではないかということでいろいろ意見は違ったけれども、ねらい自身としては、こういう食糧援助の安定した仕組みができたということは、私は一つの進歩だと考えております。
  183. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この食糧援助は、米国が従来行なってきた余剰産物の肩がわりでないと思いますけれども、米国は、食糧援助の問題について、わが国やEECなどの反対にもかかわらず、この問題が解決されなければケネディラウンドの交渉の決裂も辞さない、こういう強い態度で臨んだというふうに聞いております。どうしてアメリカがそれまでに食糧援助の問題を重要視したかということがわからないわけでありますが、その点について伺いたいと思います。
  184. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカの余剰農産物も底をついてきたし、食糧問題を解決するためにはやはり国際的協力が必要である、アメリカばかりがこれを背負っていくということではアメリカの国民を説得できないというような面からも、そういうふうなことになってきた一つの原因があると私は思う。アメリカがひとりでそういうことをすることに対しては、余剰農産物でもあれば別ですけれども、そうでないときには、政府が国民自身を説得する力はなかなかない。やはり国際的な協力というものによってこの食糧不足というものに対処していきたいという考え方が、相当強いアメリカの主張となってあらわれておったことは事実だと思います。
  185. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国は食糧援助規約第二条の留保を行なっておりますが、そのかわり、わが国の割り当てにひとしい額を米または農業物資で援助を行なうことを約束しております。その上、わが国が食糧援助を行なった結果について食糧援助委員会に報告すること、これも約束しております。こういう点を考えると、わが国の援助が小麦から米または農業物資に変わったことを除けば、留保は形式的なものにすぎないと思うわけです。米国の主張する食糧援助を受け入れるものではないという、この点について、大臣の考えを伺いたいと思います。
  186. 三木武夫

    ○三木国務大臣 伊藤さん、やはり日本もこれだけの国力を持ってきたならば、食糧不足という事に対して、国際的な協力に日本も一翼——一翼といったらおこがましいが、国際協力に一枚加わるという責任を今日の日本の地位というものは持ってきておる。そういうことで、そのやり方に対して日本はみずからの判断において行なうという留保をつけながら、こういう世界的な規模で行なわれる食糧不足に対処するために応分の寄与をするということは、私は日本として当然のことだと考えております。したがって、やり方に自主的な判断という留保をつけたということでいいのではないか、私はこう考えるのでございます。
  187. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国は食糧援助に反対し、結局は第二条を留保したのでありますけれども、わが国が留保を行なった真意は、小麦需要の大部分を輸入しているわが国が小麦による援助を行なうことは、新たな外貨負担を負うことになる、わが国としては、農薬、肥料等によって援助を行なえば外貨負担にならないし、また、援助は開発途上国の農業生産の開発に寄与するものというわが国の主張を通すことにもなるという点にあったと考えられるわけです。しかし、食用穀物、これは米を含んででございますけれども、こういう書簡の表現は小麦を除外することにはならないし、また、米で援助するものであっても輸入しなければならないという点では同じだと思うのです。その上、相当な部分を食用穀物で援助すると約束しているのであるから、わが国の外貨負担になるし、農機具や肥料を主体とした援助を行ないたいというわが国の主張は通らなかったと言わざるを得ないと考えられます。この点について大臣の考えを伺いたいと思います。
  188. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、日本日本の責任を分担するというたてまえの上に立っておりますから、その方法論についてある程度日本の主張というものは通されておる。米といいますけれども、東南アジア諸国の数少ない米の生産国からは相当米を買ってくれという要望があるわけです。このことは、貿易のバランスの改善あるいはまた東南アジア諸国からの貿易の拡大にも通じますし、ただアメリカから小麦を買って援助するというのとはだいぶん中身が、性質が違ってくると思います。しかも、一方において農業物資も日本は援助の中に入れるというのでありますから、相当日本の主張が取り入れられたものであるという評価を行なっております。
  189. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 さらに、この食糧援助に関する書簡において、わが国が農業物資で援助を行なう場合は、相手国に日本の援助で浮く外貨で食糧を買わせるよう強く推奨し、かつ最善の努力を払う、こういっている問題もあると思うのです。一体、相手国にこのような強制ができるのかどうか、これも伺っておきたいと思います。また、わが国がこのような約束をさせられたということは、わが国の援助が米国の農業生産者を利することになるのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  190. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この食糧援助は善意の政策でありますから、強要するわけにはいきません。しかし、慫慂はいたします。強要はしない。そういうことで、相手国の意思を尊重してやることによってこの目的を達成できると考えております。
  191. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国の援助額は、年間計算しますと五十一億円ぐらいになります。この相当な部分、大体二十五億円以上ですか、これは米で援助を行なうわけでありますけれども、この援助に向ける米も海外から輸入しなければならないわけでありますが、これをたとえば中国から輸入する考えがあるかどうかということであります。
  192. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 現在のところ、そういう考えはまだ持っておりません。先ほど大臣が御説明いたしましたごとく、特に東南アジア諸国、タイとかビルマとか、その他日本との貿易関係におきまして貿易のアンバラスを常に主張しておりますので、そういう国から米の買い付けをいたしますれば、その貿易バランスの改善にも役に立ちますし、そういたしますれば、そういう国に対する日本輸出も伸びるということでございますので、そういう観点を主として現在は考えているわけでございます。
  193. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 三月六日に日中覚書貿易というLT貿易にかわる中国との貿易を結んだわけでありますが、これによりますと、往復約一億一千五百万ドルくらいにのぼるわけですけれども、しかし、これは、昨年から見た場合には三千八百万ドル程度逆に縮小する、そのようにいわれております。この日中覚書貿易が伸びないのは吉田書簡がその背景にある、これはだれでも知っていることであります。しかし、そのほかにも、日本側が中国米の輸入を昨年の二十万トンから十万トンに減らしたということに見合って、硫安や尿素の輸出が同じように若干押えられているともいわれております。わが国の食糧援助に向ける米を中国から輸入することになれば、トン当たり六万円から六万二、三千円としても、二十五億円以上では約四万トン程度が買い得るということが計算上成り立つわけです。四万トン以上の米を中国から輸入すれば、日中覚書貿易もある程度伸びていくように考えられるわけですけれども大臣の所見を伺いたいと思います。
  194. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中国との米については、日本の需給関係、東南アジアの米の生産等ともにらみ合わして、弾力的に考えてまいりたい、こう考えております。
  195. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 肉のことについて伺いたいのですが、報道によれば、農林省は煮沸した肉の輸入を認める、こういうような方向を打ち出したように報ぜられております。そして来月中にもアルゼンチンと煮沸牛肉輸入に関する覚書を取りかわして輸入に踏み切る、こういうように言われておりますが、事実かどうか、伺いたいと思います。
  196. 三木武夫

    ○三木国務大臣 畜産局長が幸い来ておりますので……。
  197. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 かねがねアルゼンチンから煮沸肉の輸入についての要望がございます。現地において調査をいたしました結果、煮沸肉という形で特定のオートメ化されました合理的な工場において生産されたものにつきましては、口蹄疫の心配がないということが明らかになりましたので、現在輸入をいたしますにつきましての条件について協議をいたしておる状態でございます。
  198. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは中国の食肉の布石でもある、こういうふうにいわれておりますけれども、たとえば将来中国が煮沸肉を輸出したいということを通告した場合には、これを受け入れていく考えがあるかどうか、これは外務大臣どうですか。
  199. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御質問の点につきましては、同じ条件でございますれば考慮するということになろうかと思います。
  200. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 同じ条件であれば輸入することも考える、こういうわけですね。わかりました。  以上で終わります。
  201. 秋田大助

    秋田委員長 これにて三件に対する質疑は終了いたしました。
  202. 秋田大助

    秋田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーブ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定締結について承認を求めるの件、千九百六十七年の国際穀物協定締結について承認求めるの件、以上三件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  203. 秋田大助

    秋田委員長 起立多数。よって、三件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました三件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  205. 秋田大助

    秋田委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後五時十四分休憩      ————◇—————  〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕