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帆足委員 きょうは
大蔵大臣おりませんが、
ケネディラウンドの問題は、行政上の問題となりますと、技術的にこまかなことがたくさんあろうかと私は思います。また、議員の職責としてはとても目を通し切れないくらいこまかな点、項目がたくさんあろうと思われる。
それで、従来、行政あって
政治なしというのが戦後の特色だと思うのです。インフレーションのために、いかにも大きな
政治が行なわれているような現象形態が見えますけれども、それはインフレーションという魔術が自己運動しているのでおりまして、この大増産大所得倍増も、決して
政府の
政策の結果ではなくて、庶民は重税に苦しみ、インフレーションのために塗炭の苦しみにおちいって、その反対給付として国家資本が増大して、そして存外大きな仕事がやれているというのが、私は事の本質だと思います。
なぜこういうことから言い始めたかと申しますと、戦前における
大蔵大臣というものは、各大臣もそうですけれども、相当の
政治的見識を持っておりました。戦前のある時代の大臣をほめたことは、現在の各大臣にやはり
政治力が足らないということを私は率直に申して痛感いたしております。たとえばなくなった井上準之助氏にしても、相当のすぐれた
経済学者でした。私は学校を出てすぐその下で働いたのですけれども、
経済学者でありながら、コロンタイ女史の「三代の恋」という小説を、ポケットから出して、「
帆足君、これを読んだかね」と言うような新感覚も持っておられたのであります。全く対蹠的な立場におりましたけれども、高橋是清翁は、インフレーションとリフレーションの区別を当時においてさえよくわきまえておりまして、今日すでに常識になっておるケインズ学説の限界というのをあの老翁はきわめて明確に認識しておりました。そこでインフレーションの
段階を越えようとすると、彼は命を賭して一線を守るためにがんばり、ついに軍部ファッショの凶弾に倒れたことは、皆さん御
承知のとおりでございます。
したがいまして、この
ケネディラウンドの問題を論ずるにあたりまして、やはり
外務委員会としては大局を見ることが必要であろうと思います。過去二十年、
経済復興の過程において、アメリカがまず先頭を切り、やがてヨーロッパが復興してまいりました。アメリカはおのれの形、そのルールに合わして
世界をリードしてまいりました。そして、
ケネディラウンドが論ぜられ、話がまとまりつつあるときに、地球は回りまして、情勢はいま大きな転換期にあることはすでに御
承知のとおりでございます。これに伴ういろいろな矛盾もすでに
指摘されました。考慮すべき点が
指摘されたということは、私は、
外務委員会としてやはり適切な注意であったと思って、よく拝聴いたしました。
日本が
ケネディラウンドについてこれましたゆえんのものは、アメリカの看板娘としてばかりではなしに、インフレーションの犠牲において自由競争の陣列に入ることができましたが、その背後に、相対的な労賃の非常に安いこと、住宅問題の未解決、
国内における中小企業の倒産など、たくさんのアンバランスを犠牲にして、そしてかろうじて
世界競争についてきたということを忘れてはならぬと私は思います。一面われわれの
政策は成功しましたけれども、他面大きなひずみを持っておることは御
承知のとおりです。
そこで、先日、
大蔵大臣に、とにもかくにも春闘、秋闘、これでは困るではないか、預金
一つ考えても将来が不安ではないか、インフレーション、重税、住宅問題この
三つの地獄は一体どうして解決するのか、どういう手順で解決するのか、その見通しだけでもお尋ねしたいと伺ったのですけれども、私は、そのとき、一瞬の
大蔵大臣の表情で、これに答え得るだけの御見識を望むことはちょっと無理だという印象を受けました。
〔小泉
委員長代理退席、
委員長着席〕
彼は立ち上がって、インフレーションを防ぐには需要と供給のバランスをとることです、こういう答えでありました。これでは、昔、交通
政策を習ったことがありますが、交通
政策とは交通の
政策に関する学なりということを定義した大
先生がおられまして、これは東大の
先生ですが、この大
先生に非常によく似ていると思います。交通
政策とは交通に関する
政策の学なり、それで問題が済むならば事は簡単でございまして、何の本質にも触れておりません。
まず、
関税政策を考えるにあたりましても、やはり一番重要なのは、背後に国民
経済の安定、その背後のものはすなわち通貨の安定でしょうが、通貨の背後にある
三つの関所がありますが、第一はおそらく財政のバランスだと思います。第二は国際収支のバランス。第三の関門は直接の需給のバランス。この
三つの関所が、国民
経済を総合的に分析するときに考えねばならぬ関所であると私は思っております。
今日、
日本の現状におきまして、この小さな島に一億の人口が生きるのですから、平和とそれから
貿易、これが党派を越えて一番大きな命題だと思います。平和に役に立つものはすべて善である。
貿易にプラスするものはすべて善である。平和を乱すものは、どんなに主観的意図がよくても、それは悪であり、
貿易を減らすほうに役立つものは、主観的意図がどんな哲学を持っていようとも、おおむね悪であると定義して言い過ぎであるまいと私は思っております。だとするならば、この
ケネディラウンドという
一つの線、そして
日本がその潮流に半分うまく乗った線、今後そのまま潮流に乗れるとは考えられない矛盾を持っておるこの線に対しては、まず、
貿易の増大と平和についてこれが寄与するという見通しと調整がつくことが第一であろうと思います。
そこで、お尋ねするわけですが、第一に、長官のおられる問に先にお尋ねしたいのですが、
日本の通貨の安定は、現在のところ何を目標にしてお考えになっておられるか、また、国際収支の現状とことしの四月の見通し、現在の金準備、また金に準ずるものの準備はどういうふうになっているか、ちょっと簡単に御
説明を願いたいと思います。