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1968-04-19 第58回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月十九日(金曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 福家 俊一君 理事 石野 久男君    理事 曽祢  益君       青木 正久君    大平 正芳君      橋本登美三郎君    松田竹千代君       毛利 松平君    山口 敏夫君       山田 久就君    木原津與志君       田原 春次君    帆足  計君       伊藤惣助丸君    松本 善明君       斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君  委員外出席者         経済企画庁調整         局貿易為替課長 熨斗 隆文君         外務省経済局外         務参事官    鈴木 文彦君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵省関税局企         画課長     渥美 謙二君         大蔵省関税局国         際課長     岩田 善雄君         大蔵省関税局関         税調査官    坪井 哲郎君         農林省農林経済         局国際経済課長 増田 甚平君         通商産業省通商         局国際経済部長 川田 通良君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 四月十八日  委員伊藤惣助丸君辞任につき、その補欠として  渡部一郎君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員渡部一郎辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十八日  在日朝鮮人の帰国に関する請願(中村重光君紹  介)(第四一三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議  定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締  結について承認を求めるの件(条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  千九百六十七年の国際穀物協定締結について  承認を求めるの件(条約第五号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定締結について承認を求めるの件及び千九百六十七年の国際穀物協定締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題となし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 ケネディラウンドに関連する三つ協定は、わが国貿易政策上非常に重大な協定だと思っております。私は、このケネディラウンドが国際的な問題として取り上げられるようになってから今日までの経緯、それからそれが条約として成立したときに、日本貿易の上にどのような効果が出てくるかということについて、必ずしも政府が考えているようには楽観的に見ていないのであります。この際、外務大臣に、ケネディラウンド効果をあらわしたときにどの程度貿易上の利益が出るか、その評価についてひとつ聞かしていただきたい。
  4. 鈴木文彦

    鈴木説明員 お答えいたします。  いま石野委員から御指摘ございましたように、ケネディラウンドと関連しましてできましたこの三つ案件が、日本の特に貿易上、経済上どの程度効果があるかという御質問でございますが、ケネディラウンドの結果、相当大幅な関税率引き下げが広範囲な品目にわたって行なわれる、これは事実でございます。特にわが国がその貿易構造から申し上げまして、原材料を輸入しまして、それを加工して製品輸出の形で輸出するという国柄から申し上げまして、完成品関税引き下げ相当大幅に行なわれることが、日本の今後の輸出機会拡大する上において不可決の要件であったわけでございます。特に日本産業構造重化学工業品に移行する、また、そうしなければ日本経済発展はできないという国柄から申し上げまして、特にこういった工業品完成品、いわゆる重化学工業品分野における関税引き下げが、非常に日本の今後の輸出機会増大という点から重大であると思います。ケネディラウンドを概観しまするに、わが国のかちとりました関税譲許は、主として完成品重化学工業品分野においてほとんど大部分のものを占めておるわけでございます。したがいまして、日本輸出拡大という長期的な観点から、ケネディラウンド関税譲許の持つ効果は非常に大きいものがあると思います。もちろん、これは若干期間をおく問題でございますので、数量的にどのくらい日本利益になるかということはちょっと申し上げるのは困難かと思いますが、これが関税譲許日本に及ぼす効果でございます。  それから第二に、アンチダンピングと申しますか、ガット六条に関連します国際協定でございますが、従来、日本輸出品は、主要な先進国におきまして、ダンピング容疑ということで、ダンピング防止措置がそれぞれまちまちの国内法運用にまかされておりましたために、やや恣意的に乱用されておったという事実がございます。ケネディラウンドにおいては、関税譲許のほかに、関税以外の貿易障害もできるだけなくそうというのが一つの大きな目的でございました関係上、たまたまこのダンピング防止実施ぶり関税以外の貿易障害になっておるという点からとらえられまして、何とかしてダンピング防止法実施する場合に公正な基準を定めて、各国統一した運用ぶりをしようというねらいから、関係国が集まりまして議論した結果できましたのがこの第六条に関する協定でございます。これはいわばダンピング防止に関する国際的なコードを統一的なものにしたという点で非常に意味があるものと思います。特にわが国は、アメリカイギリスあるいはカナダというような主要先進国におけるダンピング防止実施ぶりにあたって、相当程度輸出に悪影響を受けたという従来の経験からかんがみまして、このコードが実際に効力を発生することになりますと、日本輸出が従来の恣意的な各国内法制実施から離れまして、非常に公正な基準のもとに行なわれるという点でわが国輸出に非常に好影響があるかと思います。  それから、第三の穀物協定でございますが、これは従来の国際小麦協定を受け継いだというかっこうになりますが、実質的な日本利益、つまり、輸入国としての利益は、価格が高騰しました場合においても、わが国の必要な輸入量価格帯の中で、つまり、最高価格以下でその供給保証を受けるという点が一番の大きい利益であろうかと考えております。
  5. 石野久男

    石野委員 いま、どれもみんな総ずくめにいいことばかりのようですが、しかし、ガットホワイト事務局長が、繊維品関係では思ったような成果があがってないということをもうすでに言っておったし、ことに綿とかあるいは繊維製品関税引き下げの幅があまりにも小さ過ぎて、しかも例外が多過ぎるというようなことで、失望だというような意見も発表していることがありました。また、日本がとにかくケネディラウンドで期待しておった鉄鋼とか、あるいは繊維なんというようなものについては、必ずしも従来の希望どおりにはいってないというふうに見られる面がある、こういうようにもいわれておるわけです。むしろ、このケネディラウンドは、やはりアメリカ国際収支改善ということが主たるものになっておって、それが世界貿易量拡大の線に乗せという美名で実は行なわれておるのだとさえいわれておるわけです。アメリカが非常に強く主張したこのケネディラウンドが、ようやく条約として成立するかもしれないという段階で、特にアメリカ課徴金の問題だとか、あるいは国境税の問題であるとか、いろいろアメリカ自身自国利益を守るための施策がむしろ大きく出てきておるというような事情です。今日この課徴金の問題についてはいろいろな論議をされておりますが、きょうの新聞によると、たとえば日本アメリカと、われわれの同僚である各党がアメリカ議員団懇談会をやっておる。この懇談会の席上で、アメリカ課徴金の問題で非常に強い態度を示したと、きょうの新聞報道しているのです。特にアメリカ側は、日本が非自由化品目の解除、資本の自由化で大幅な譲歩をする見通しもないので、課徴金制度は近く米議会で可決されるだろう、こういうふうに言っている報道があります。また、きょうの日経によると、ガット主要国会議は、きょう再びジュネーブで会議を開くそうであります。それは主としてEECが提案しておるところの付帯条件であるいわゆるASP廃止と、それから新たな保護措置を設けないという二つの譲許アメリカにつけさせる、このことについての協議をするのだということもいわれております。これらの課徴金問題等についての見通しはどうなのか、こういう点で、政府がいま得ている状況を特に大臣から聞かしてもらいたい。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 石野君の言われたガット及びケネディラウンドアメリカドル防衛のためになされたものだ、そういうふうには政府は考えていないのであります。このことによって世界貿易関税による差別というものが少なくなっていって、貿易拡大し、あるいは関税ばかりでなしに、世界の景気全体にもこれはプラス影響があるということで、これはアメリカドル防衛というより、世界貿易拡大を願って、世界各国とも歓迎をして、非常な長期にわたる努力をしたわけでございます。   〔委員長退席小泉委員長代理着席〕 それだけの期待を持ってケネディラウンドがいろいろな利害を調整して妥結をしたわけでありますから、このときに、アメリカ輸入課徴金のような制度を置くことは、ドル防衛のための短期的なものであっても、ケネディラウンド妥結精神にも反するし、このことが悪い連鎖反応を起こす危険もあるというので、世界はことごとくアメリカ措置に対して反対をし、アメリカもまた、いまアメリカ議員輸入課徴金制度実施されるだろうというふうな発言を御指摘になって、もうそうなるんではないかという石野君の御発言がありましたが、われわれはそうは思っていないのであります。いまEEC諸国アメリカとの間にも折衝が続いておりますし、日本も、できるだけ輸入課徴金のような制度実施されないように、EEC諸国アメリカとも連絡をとりながら努力をいたしておるのであって、いまこれをあまり悲観的なことになるだろうという断定を下してはいないのでございます。何とかしてこういう制度は阻止せなければならぬということで、その望みが全然ないとも政府は思っていないわけであります。  また、ガット非公式会談は、御指摘のような事実があることを承知しております。
  7. 石野久男

    石野委員 日米議員会議とかというのがいま行なわれているようですが、そこで、アメリカが、課徴金制度の問題は、これはおそらくアメリカ議会を通るだろうということをいっている。他方、EECのほうでは、課徴金問題について、特に今度の輸入課徴金阻止のためのガット主要国会議で、結局各国アメリカ協力して繰り上げ実施をしようというにあたっては付帯条件をつけたい、こう言っているわけですね。その付帯条件というのが、いまも言ったようなASP廃止ということと、それから特に新たな保護措置をとらないようにということをアメリカに要求しているということなんですね。しかし、報道によると、EEC付帯条件は、米国政府ばかりでなく、議会もしばることになり、米国は受け入れがたいとして、これに対しては何の約束も取りつけをしなかった、こういっているわけです。こういう報道があるんだから、それに対する見通し、また、もしアメリカがそういうような態度をとったときは、どういうふうに日本としてはそれに対処していくのか。
  8. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生が御指摘のとおり、EECのほうでは、ケネディラウンドの一年間繰り上げ実施と、それからアメリカに対しては繰り下げを一年間認めようということを提案いたしまして、条件を二つつけたわけでございます。問題は、いまの御指摘のとおり、ASPを来年の一月一日までに廃止することと明確な条件にいたしたために、そういうことでは、アメリカ政府のほうとしましては、ケネディラウンド交渉の際に、すでにASP廃止のために最善の努力をするということは約束をしているわけであります。もしできない場合は、EEC譲許することもこの段階から困るということになるわけでございますので、問題は、そこのところを明確な固定的な条件ではなくて、前のケネディラウンドのときにEECアメリカとの間でなされましたようなことであるならば、アメリカ側としましても、おそらくその点は受け入れるのではないかという感じがするわけでございまして、そういう問題を中心にいたしまして、現在、先ほど先生指摘のとおり、ガットウインダム・ホワイト事務局長中心にいたしまして、これらの妥協案と申しますか、もう少し柔軟性のある措置を考えようという状況で事が進みつつあるわけでございまして、おそらくそういう柔軟性のある表現ということにつきまして、さらに検討が行なわれるという状況ではないかと思うのであります。したがいまして、私どもの現在の感触といたしましては、そういう方向でものごとが進んでいくのではないかと判断をしておりますし、また、そういう方向でものごとが進むように現地にも指示しておるわけでございます。
  9. 石野久男

    石野委員 ASPの問題は、また新しい保護措置アメリカがとるということは、EECだけではなくて、日本だってたいへんな影響が来るわけだし、ケネディラウンドそのものの本来の趣旨がそれではかなえられなくなってくる。この課徴金の問題とかあるいはASPに対する問題それからアメリカの新しいまたどんな保護措置が出てくるかわかりませんが、そういうものに対する政府対処のしかた、これはわれわれが非常に重要視しているところなんです。大臣はこういう問題についてどういうような対処のしかたをしてきたか。また、これからどういうようにしようとしているか。それをひとつ聞かしてもらいたい。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 日米間には日米経済貿易閣僚会議などもございまして、このときに、日米間にはそうたくさん問題があるわけではないわけでございまして、日本が常にアメリカ側に対して善処を要望するのは、輸入に対する制限的な措置、これはアメリカの従来の主張にも反し、また世界全体の貿易拡大をも阻害することになるので、自由貿易主義の上に立っておるアメリカみずからがそういう輸入制限的な措置を講ずることは、アメリカの従来の主張に対する大きな矛盾ではないかということで、強く反省を求めて、昨年度の閣僚会議においても、ラスク長官ジョンソン大統領なども、次々に出てまいりました繊維とか鉄鋼に対する輸入制限に対しては、かなり強い表現を用いて行政府としての意向をわれわれに表明し、善処約束したようないきさつもあるわけであります。そういう会議ばかりでなく、外交的な折衝の場合には、一切の制限的措置に対しては、日本政府アメリカ注意を強く喚起してまいってきておる次第でございます。
  11. 石野久男

    石野委員 注意を喚起してまいっておるということですが、どういうことをやっていたんですか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 たとえば具体的にそういう制限の法案が出たときには、日本政府アメリカ政府に対して強い申し入れをしてアメリカ反省を求める、また、これに対して政府ばかりでなく、いろいろ民間等協力も得てアメリカに対する働きかけもする、こういうことでございます。
  13. 石野久男

    石野委員 アメリカヘの申し入れ、あるいはまた民間協力を得てそういうことについての措置をしてきたということであるが、いままでどういうことをやってきたか、その成果はどういうふうにあがってきているか、その点をちょっと聞かしていただきたい。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 あらゆる会議のとき、日米閣僚会議あるいはまたホノルルの会議、最近の会議ではそういう会議があった。それから申し入れについては、外務大臣からジョンソン大使下田大使からアメリカの国務省に対して最近申し入れをいたしたことは御承知のとおりです。  民間は、ケネディラウンドをめぐっての輸入課徴金の問題が起こってからは、佐藤喜一郎君などを団長とする民間使節アメリカに対して送って、アメリカ政府民間の各方面と会い、日本意向を伝えた。その間アメリカに対しては経済使節団を毎年送っておるわけでございます。   〔小泉委員長代理退席委員長着席〕 昨年度は木川田一隆君を使節団団長として送って、これが中西部、広範な地域で各方面指導者あるいは財界、政界の指導者と会見し、アメリカのハンフリー副大統領とも会って、こういう輸入制限的な措置自由貿易主義に反するような措置に対して、アメリカに今後ともそういうことをできるだけ抑制してもらいたいという注意を喚起している、こういうことが最近やった事例としてはございます。
  15. 石野久男

    石野委員 それで結局、課徴金問題その他については、具体的に前進の方向が出てきておるのですか、どうなんですか。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 課徴金も、初めの勢いではアメリカは決行しようというような勢いであったが、いまはEEC諸国とも話し合いをして、何か他に方法があればそういうことを再検討しょうという段階に来ておることは、御承知のとおりでございます。また、繊維鉄鋼に対するいろいろな輸入制限的な処置は、一応昨年度はやまったわけであります。こういう点の実際の効果は、日本ばかりの努力ではございますまいが、あらわれておることは事実でございます。
  17. 石野久男

    石野委員 課徴金問題とかあるいはアメリカ保護的処置というのは、一つ引っ込めれば一つ別に出てくるという形で、必ずしも皆さんの交渉の全面的な勝利にはなっていないと私は思うのです。むしろ、やはりEECが真剣に討議をしており、また、ガットでそういう討議をしておられる。ASPなんかの問題などは、具体的にわが国にだって影響してくる。特に保護処置がどういう形でとられるかわからない。こういう状態のときに、もう少し徹底的にそれをやり、成果をあげさせるようにしなかったら、税率の繰り上げ実施というものの効果、これはやはりこちらの側が非常に損をすることばかりになっていくだろう、その成果はあがってこないだろうというふうにわれわれは見ておるので、アメリカケネディラウンドに対する善意な努力がわかり、それが日本貿易本来の目的に沿うような成果がもう少し出てこなければいけない、こういうふうにわれわれは見ておるわけです。そういう点では、いまのところ、まだこれというきめ手が何にも出てないと見ていいんじゃないか、こういうふうに見るんだが、政府としては、何かそこに、実際約束税率のなにを早く趣旨に沿って繰り上げ実施をしてもいいんだという見通しになるような、ことにきめ手になるようなものをいまつかんでおりますか。
  18. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生の御指摘になりました見通しと申しますか、政府のほうでも考えておりますことは、EECあるいはイギリス中心としたEFTA諸国とも共同いたしまして、ケネディラウンドの繰り上げ実施という形で、輸入課徴金その他のアメリカ輸入制限的な処置を阻止しよう。したがいまして、繰り上げ実施をいたします場合には、あくまでもアメリカがそういう措置をとらないということが前提になるわけでございます。最近、繰り上げ実施の全般的な——世界の主要な貿易諸国EFTA諸国あるいはEEC諸国日本を含めまして、この働きがかなり強まってきておる。しかも、現在ガットのほうでこのことが具体的に検討討議されておるということでございますので、政府といたしましては、それによって輸入課徴金その他のアメリカ貿易制限的な措置を阻止しようという見通しのもとに、考え方を進めてまいってきているわけでございます。
  19. 石野久男

    石野委員 大臣はじき参議院のほうに行かなければならぬようですから、質問はまだやらぬといけませんけれども、一つだけ大臣に聞いておきたいのは、たとえばアメリカ輸入課徴金などをやめさせるために、ケネディラウンドの繰り上げ実施というようなことをアメリカ以外の国がいろいろやるという、相対的な関係をいま考えられているようだけれども、しかし、向こうがそういう保護処置というものについての考え方をあきらめないで、いろんな形で出してきているときに、こちらが繰り上げ実施だけやるというと、これはたいへんな片手落ちになってしまって、特に日本なんかの場合は決して得はしないと思うのです。したがって、繰り上げ実施というのには、一つ見通しを持ってやらなければならぬだろうとわれわれは思っている。それをやらなかったらたいへんな損になってしまう。結果的には損になるだろう。大臣は、この繰り上げ実施の問題については、どういうところをめどにしてそれをやろうとしておるのか、それだけをひとつ先に聞かしておいてもらいたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 損になるという計算ではないので、向こうがそれをやらぬ、向こう輸入課徴金のような制度はとらぬということが行なわれるということを前提にして考えておるわけでありまして、そういうことから計算していきますと、輸入課徴金のような制度実施されれば、日本輸出にも相当影響があることに中小企業なども影響を受けるだろう、こういうことで、やはりケネディラウンド精神を生かしていくためには——そういうことで、それがまた連鎖反応を起こして、そのことばかりでなしに、やはり世界貿易の上にも悪い影響を与えるから、それを阻止しよう、ケネディラウンドの繰り上げ実施というのは、そういう現在のそろばんのみならず、世界貿易拡大貿易障害をなくしていこうという趣旨からいっても、それがプラスである、こういう判断のもとにこれにわれわれも賛成をしておるものでございます。
  21. 石野久男

    石野委員 アメリカ善処方を期待してそのことをやるのはいいんだけれども、実際には日本輸出が伸びなければだめなんですからね。だから、そういう意味では、たとえば輸入課徴金というものについての何か一つ日本との話し合いの線が出たとしても、今後は別に業種別数量制限とかなんとかというのが出るとか、あるいは日本自身自主規制をやらなければならぬというような問題が出てきますと、実際には何の成果もないということになってしまう。むしろ輸出増大にはならない。逆に、場合によってはかえって輸出が減るというような結果も出てくることが予想される。そういうようなことを全体を含めて、繰り上げ実施という問題は考慮されなければならないだろうと思うのですが、大臣は急ぐようですから、こまかいことについてはまた論議をするとしても、そういう点についての大臣の配慮がなされておるのかどうかということだけをちょっと……。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 これはどこの国もやはり自国利益というものに対しては厳格ですから、われわれも、そういう点で、経済の面については、日本利益を守るということに対しては厳格に考えざるを得ない。したがって、いろいろものの判断をする場合に、ただ日米友好関係というようなことだけで経済の問題を律せるわけではないのでありますから、これは十分に総合的にいろんな利害得失判断して、そうして日本としての政策決定が行なわれることは、石野君の言われるとおりに考えております。われわれもさような考え方のもとにおいて日本の方針を決定いたしておる次第でございます。
  23. 石野久男

    石野委員 大臣は急ぐようですから、また、帰ってから聞きたいと思います。  課徴金問題は、繰り上げ実施の問題と相関的な関係で、やはりアメリカ保護処置をするということの事情、ケネディラウンドを提唱したアメリカのその本来の趣旨と、今日アメリカがドル危機を救うためのいろんな処置をいろんな形でやっておる、その中で、当然アメリカの国内的な操作というものをやらざるを得ないような事情に追い込まれているという実情、これはもうわれわれ、どんなに好意的に見たって見のがすわけにはいかない。特にポンド、ドルの危機からのSDR問題がいま出てきて、この線から各国は、やはりアメリカに対する国内での特に問題点になるのは、ドルの危機はどこからきたかという点についての原因探査ですが、そういう点でいろいろな要請をしておると思うのですよ。その要請の中に、ドルの危機の一番大きい問題はベトナム戦争だ、それに対する出費だ、こういうことが世界的に客観的な事実として認められておる。おそらく今度のSDRの問題を論議するにあたっても、それに対する対処方は、各国から強い要求があったはずだと、こう思うのですね。私は、大臣いまいませんが、大臣輸入課徴金の問題でアメリカに対する申し入れをするにあたって、どういうようなことを日本としては申し入れをし、そしてアメリカ善処方を要求したかということについて、もう少しこまかいことを知っておく必要があるように思うのです。また、それを知らないと、どうも論議が進まない。で、日本アメリカ閣僚会議等を通じて、たとえば外務大臣からジョンソンに対して、あるいは下田大使がまたそれぞれの関係部門に対していろいろな申し入れをした、そういう申し入れの具体的な内容のあらましのところをひとつ次官からでも聞かせてもらいたい。
  24. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、二月でございましたか、二月二十日ごろに下田大使から国務省のロストウ次官にも申し入れいたしましたし、また、三月の初めになりまして、三木大臣からジョンソン大使にも申し入れをいたしましたが、その申し入れの荒筋と申しますと、これは一つは、ケネディラウンドというものができたこの際に、アメリカ貿易制限的な措置をとるということは非常に困る。まずいことではないか。しかも、貿易制限的な措置をとれば、それが世界的に一波万波を呼ぶというような形になりまして、世界貿易は縮小過程に入る、これは非常にまずいことではないか。そういうことによってアメリカの意図するドル防衛措置自身も否定されるのではないかという観点。それから、日本との関係につきましては、アメリカ輸入課徴金というようなことをとれば、日本貿易構造から見て、一番大きな被害を受けるのは日本だ。特に繊維とか雑貨とか、中小企業関係が非常に大きな影響を受けて社会的な問題になるので、こういうことは絶対にとらないようにということを申し入れたわけでございます。  いま申し上げましたのが主たる要点でございます。
  25. 石野久男

    石野委員 それに対してアメリカからはどんな答えが出たのですか。
  26. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 アメリカのほうも、従来から申しておりますが、ことしの初めにロストウが参りましたときにも申しておりましたが、現在のドルの危機といいますか、問題は、対EEC、国際収支の黒字国との関係が非常に大きいわけであるので、主たるねらいは対EEC黒字国との関係である。したがって、日本とかイギリスとかカナダとかいった、そういった国際収支の面で難局に立っている国に対する影響はなるべく少なくしたいということであります。したがって、アメリカ自身としても、輸入課徴金というものをどうしてもやらなければならないというふうにきめているわけではなくて、目下盛んにEEC諸国とも国境税について相談しているのであるから、日本の言っていることはわかるから、十分検討したいというのが先方の答えの趣旨でございます。
  27. 石野久男

    石野委員 そうすると、これはEECとの交渉が軸になっておるから、EECとの交渉がまとまらなければ、日本目的にしてはいないけれども、結局日本があおりを食って一番大きい被害を受ける、こういうことになるわけですね。
  28. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 もしアメリカ輸入課徴金のようなものを実施いたしますとすれば、そういうことになるわけでございますので、それはおかしいではないかということを言いましたし、そしてアメリカは、それでは日本EECを説得してもらえないかということを言ったわけでございます。私どももEEC諸国に十分働きかけたわけでございます。
  29. 石野久男

    石野委員 働きかけたり、あるいは仲立ちをしたりすることはけっこうだけれども、仲立ちをするというのは、第三者的な立場で仲立ちするのと——しかし、それを実施された場合、一番大きな被害を受けるのは日本だ、だから、これは仲立ちどころではない。日本自身利益を守るためにやらなければならない仕事ですね。しかし、その見通しは、たとえば、いま課徴金問題についてきょうの新聞などを読むと、十九日再びジュネーブで開く見通しになった、こう言っておるわけですから、きょうやるわけですね。したがって、いまのところの見通しは、かいもく日本政府としてはわからない、あなたまかせだ、こういう形でこのケネディラウンドに臨むということですか。
  30. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 政府考え方といたしましては、先生が御存じのとおり、三月の上旬、さらには三月の中旬、EECのほうでケネディランドの繰り上げ実施という形でこれが討議され始めた段階で、日本といたしましても、アメリカ輸入課徴金実施するよりは、むしろケネディラウンドの繰り上げ実施という形でいくほうが、それを阻止するのに役立つならばけっこうであるということを明らかにいたしたわけであります。その後、イギリス態度を明らかにし、その他の各国態度を明らかにしたわけであります。そういった世界的な動きというものを政府といたしましても助長いたしまして、そしてアメリカ輸入課徴金というものを阻止し得ればこれが日本の国益に一番沿うということを判断いたして、その方向イギリスをはじめとするヨーロッパ諸国、それからEEC諸国に働きかけてまいっております。その結果といたしまして、ガットもそういう線に沿ってそれを大いに助長しようという考え方が強まりまして、十七日に第一回の非公式会議をやりまして、その段階では十分話が煮詰まりませんでしたので、十九日、きょうまたこれからやろうといたしておるわけであります。その点の見通しにつきましては、先ほど先生の御質問に対してお答えいたしましたとおり、何らかASP廃止問題についてのいろいろな表現等について妥協の余地があるのではないかと私ども見ております。その方向でまとまるように努力させている段階でございます。
  31. 石野久男

    石野委員 そうしますと、たとえば、きょうガット会議EEC側のつけておる付帯条件の問題が討議されるわけですね。日本としては、こういうような交渉がうまくまとまって、課徴金関係の問題が解決する、なお、ASP問題についても、付帯決議が入ればこれは一応なくなることでしょうけれども、それがはっきりしなければ、日本としては、このケネディラウンドによるそれぞれの条約協定というものに無条件で入っていくということは必ずしも得にはなりませんね。
  32. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 わがほうの政府態度を明らかにいたしましたことは、ケネディラウンド繰り上げ実施に賛成だということについては、三つばかりの前提がついております。一つは、主要貿易国が同じようなことをするということ、つまり、EEC、EFTAあるいはカナダ等でございます。二つ目が、これによってアメリカ輸入課徴金、それ以外のほかのいろいろ保護貿易的な制限的な措置をとらないということでございます。三つ目につきましては、日本の場合は、ASPはさほどEECほどの関心は強くないわけでございますが、もちろん関心はございますけれども、アメリカ関税法で四〇二A条という特殊な関税評価制度がございますから、これはやめるように最善の努力をしてまいりたい。この三つ前提といたしております。したがって、ガットの場合におきまして、主要貿易国との間に話し合いがまとまれば、そういう前提のもとで日本も繰り上げ実施に踏み切っていくという形でございます。この観点から、現在御審議をいただいておりますこのケネディラウンド三つ案件につきまして御賛同を得ますれば、さっそく七月一日からまず第一次の関税引き下げをするわけでございまして、あと、その後の繰り上げの大要につきましては、またあらためて世界主要貿易国との間の話し合いの結果というものによりまして、その後あらためて検討するという段階になろうかと考えております。
  33. 石野久男

    石野委員 EEC話し合いがどういうふうに落ちつくかによって、日本の出しておる三つ条件効果もまた違ってくるわけですね。実際にその条件が満たされるかどうかもわからない。そこで、EEC関係での話し合いがまとまらない状態のところで、先ほど、日本は仲立ちをしていろいろEECに対しても話し合いをしていっているのだと言っておりますが、きょう現在、このガットでの話し合いの中で日本は何かの役割りをしておりますか、ガットでのいまの付帯条件等に関する交渉の中で。
  34. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ガットのこの会議が、本来は今月の十一日に開かれる予定であったわけでありますが、EEC態度が明らかになりましたのが九日であったわけでありまして、十一日が延期されまして、十七日にまづ第一回が行なわれ、本日また行なわれる段階にあります。その間わがほうのジュネーブにおる代表に対しましても、EECの代表、ガットの事務局長、イギリスの代表等々といろいろと非公式に話し合いをさせております。そういう関係で、先ほど申し上げましたとおり、特にEECのつけたASP廃止条件の書き方が若干柔軟性を持ったような表現に変わってくるという方向努力しておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたとおり、わがほうも前提として三つ条件をつけておりますが、そのうち、二つはEECと完全に一致しておるわけでございます。と申しますのは、主要貿易国が同じようにすることと、アメリカ課徴金その他の貿易制限をとらないという点が一致しておるわけでございます。問題は非常に狭まっているという感じがいたしておるわけでございます。
  35. 石野久男

    石野委員 狭まっておるのだけれども、現実にガット日本EECアメリカとの間に入って話し合いをまとめていくための、何か特別の訓令とかなんかが行なわれておるかどうかということです。
  36. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 その点は、特別ということではございませんが、たとえば、この十七日の会議の際にも、わがほうの代表が午さん会をやって、やわらかな空気の中でアメリカEECの連中が話をする、その間に、若干日本としても意見を言うという形のことはやっております。
  37. 石野久男

    石野委員 もし課徴金問題がEECその他の話し会いの中でまとまって、一応そういうことはやらないということになったとしました場合に、アメリカはそれにかわるものとして、先ほどから言っておりますASPもありますけれども、また別個の形で業種別数量制限などというようなものを打ち出してくる可能性があるやに聞き及んでおるわけですが、これについての情報は政府側としてどういうふうにキャッチしておりますか。
  38. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、御存じのとおり、昨年の秋、十月ごろに、ホーリングス法案といういわゆる輸入割り当て、輸入制限法案が出てまいりました。先ほど三木外務大臣も申しましたとおり、当時、政府としても正式の申し入れをいたしました。その後、アメリカの行政府政府当局としては、そういうものは絶対反対だということで、昨年の十一月に、大統領自身が、自分の任期中にはそういうものは拒否権を発動しても阻止するということを明らかにしたわけでございます。それが今回になりまして、現在はっきり出てきておりますのが、いわゆる繊維制限に関するホーリングス法案であります。これは上院におきまして、所得税の減税をしないことを延長する法案が付加法案としてついたわけでございます。それは現在両院協議会でもって検討中でございまして、一番最近の情報では、今月二十四日に両院協議会が開かれて、この問題についての取り扱いがきまるというふうに聞いておりますが、私どもがいろいろと聞いております、あるいは働きかけているところでは、現在の様子では、繊維輸入制限に関するホーリングス法案は、両院協議会の場において否決されるというか、取り去られる可能性がかなり濃いというような情報を得ているわけであります。その他の昨年提出されました鉄鋼、電子機器部品、ガラス製品というものにつきましては、現在のところ、まだ具体的な審議が一向に行なわれていないわけでありまして、こういうものについても、アメリカ政府当局といたしましては、こういうものが通らないように最善の努力を尽くすということは、昨年来明らかにいたしておるところでございます。
  39. 石野久男

    石野委員 アメリカでの議会の審議がどういうふうに進んでいくか、まだ憶測の域を脱していないわけですから、政府の言っておるようにいけば、ケネディラウンドを設定するということの意味に沿うと思いますけれども、そうでなく、予想されるように輸入制限という法案が議会を通るということになりますと、これはケネディラウンド本来の趣旨に沿わないことになり、特に日本の打撃が非常に大きい。それを通過させないための日本側の努力というものが、アメリカ議会等に対して特に行なわれたであろうか、こういう点が一つと、いま一つは、むしろ日本の業界では、そういうような法案が出てくると困るから、自主規制をしていこうじゃないかという考え方があるやに報道されておるわけですが、そういうようなことを条件としてアメリカのほうで法案を通さないというようなことになっておるのかどうなのか、その間の事情はどうでありますか。
  40. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいまの前段のほうでございますが、政府といたしましては、アメリカ政府に対して、通らないように最善の努力をするように働きかけてまいりましたし、アメリカ政府自身も、そういうことに努力するのだということを言っております。討議会関係などのいろいろなルートを通じまして日本側の意図を明らかにしておりまして、つい最近の事例といたしましては、先生も御存じのとおり、自由民主党の議員団が行かれまして、先方の上院議員三十一名の方々に会われて、そういう点はいろいろと働きかけたわけであります。第二番目の、輸入制限に対する日本自主規制云々の問題でありますが、これは結局、日本の全般的な大きな目で見ての秩序ある輸出、したがって先方をあまり刺激しないようにという考え方から、ものによっては自主規制をしておるものも当然あるわけでございまして、わがほうも自主規制をするから輸入制限をしないようにという行き方もございますし、あるいはわがほうといたしましては、日本自身利益から考えて、秩序ある輸出という体制を通して、これから急激に伸びて先方に市場撹乱を起こさせ、その結果として輸入制限のようなことが起こることのないように努力することが日本自身の国家利益である、こういう観点からも続けてまいっておるわけでございます。また、先般来問題になっております鉄鋼の稲山発言というものもございますが、これにつきましては、具体的にどういうふうにするかという状況にはまだなっていないわけであります。
  41. 石野久男

    石野委員 政府としては、たとえば稲山発言などにつきましてはどういうふうにしておるのですか、その問題は取り上げて検討しておるのですか。
  42. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 これにつきましては、関係省とも十分打ち合わせて、どういうふうに対処するか、検討いたしております。
  43. 石野久男

    石野委員 ケネディラウンドというのは、貿易拡大するために相互に努力し合うということが本来の目的であります。ところが、アメリカは、自国利益を守ろうとするためにかえって譲許率をいろいろ設定したこと、それからまた、繰り上げ実施をさせるということに伴って日本がそれに協力するということをすればするほど、こちらのほうで自主規制が出てくるということになると、本来の貿易拡大の意図とは逆に、むしろ重い責任ばかり日本は背負ってしまうというようなことになって、アメリカはそれでいいかもしれないけれども、日本にはちっともよくはないじゃないかというしろうと考えがわれわれはするのだけれども、そういう点については、政府としてはどういうふうに考えますか。
  44. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生指摘の、何でもかんでも日本自主規制をせざるを得ないということになりますと、これは非常にたいへんな問題かと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、秩序ある輸出によりまして先方の市場に撹乱を起こさせないということが、日本輸出を大きく伸ばしていくための一つの手段だろうと思うわけであります。そういう観点に立つならば、これが日本利益にならぬとは言えないのではないか、むしろ、そういう秩序ある形で伸ばしていくことが、長い目で見て日本貿易拡大につながってくるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  45. 石野久男

    石野委員長 一昨日曽祢氏の質問に対して、このケネディラウンド実施する段階で、アメリカ日本に対して、あるいはまた日本アメリカに対して、それぞれ貿易実績上から得られる拡大利益の量、それについての政府の御答弁があったようです。それによるというと、日本アメリカに対しての利益を得られる点というのは十二億三千万ドルぐらいですか、アメリカのほうが日本から得るものが十一億六千万、そのうち、無税ですでにもう処置されているものを差し引くと八億八千万ドルである、こういう御答弁があったように、私はちょうどそのときいなかったのですけれども、ちょっと聞き及んでいるのですが、大体そんな状態なんですか。
  46. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生指摘のとおりでございます。ただし、これは一九六四年の貿易の数量を基礎に置いた状況でございます。しかしながら、御存じのとおり、日本貿易は、重化学工業がぐんぐん伸びておりまするから、その後の事態を考えまするならば、この状況のバランス以上に日本としては利益があるというふうに私どもは考えているわけであります。
  47. 石野久男

    石野委員 こういうような情勢の中で、たとえばアメリカが特に課徴金関係とかあるいはASPその他の特別な保護処置というものをとってくる場合、その影響が特に出てき、またそれが額の面でどういうふうに出てくるかということについて試算をした何かありますか。
  48. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ASPにつきましては、現在すでにアメリカは持っている一つ制度でございまして、これは普通の関税評価と違うではないかということで、その廃止が迫られておるわけでございますし、ケネディラウンド交渉の中で、アメリカ自身はその廃止のために努力することを約束されたわけであります。現在最終的に課徴金、これはどの程度のものになるか、たとえば五%になった場合どの程度のものになるか、いろいろ試算をやっておりましたけれども、必ずしもそれは確定的なものではない。主として私どもが一番関心を持ちました点は、何と言いましても、輸出利益のわりあいに少ない繊維、雑貨、そういうものがかなり大きな影響を受けるということでございまして、その点は十分考えていたわけでございますが、ただいま申しましたとおり、ケネディラウンドの繰り上げ実施ということで、輸入課徴金が行なわれないというようなことで、そういうことで努力いたしておりますし、現在までの考え方で、大体その可能性がかなり強くなりつつあるのではないか。先ほど申し上げたとおりでございます。
  49. 石野久男

    石野委員 日本輸出を地域別に見ると、たとえばEECだとかアメリカだとか、大きく地域別に見て、その比率のぐあいはどういうふうに現在の状態ではなっておりますか、本年に入りましてから。
  50. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 非常に大ざっぱに申し上げまして、日本輸出の市場といたしまして、大体先進国が五五%程度、それから後進国が四〇%程度、それからいわゆる社会主義国、共産圏諸国が五%程度というふうになっております。
  51. 石野久男

    石野委員 その先進国のうちで、今度先進国を各大陸別というような形で、経済圏の形で分けると、どういうふうになりますか。
  52. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 先進国約五五%の中で、大体北米、すなわちアメリカ、カナダ、これは先生の御存じのとおり、アメリカが昨年約三十億ドル見当でありますし、カナダは日本輸出がたしか約三億五千万程度だったかと思いますが、そういたしますと、五五%のうちの約三二、三パーセントはアメリカ、カナダという形になるかと考えます。あと、EEC諸国に対する日本輸出の面におきましては、欧州諸国全部で約二・七五%と昨年の比率ではなってございます。これは貿易全額でございますから、輸出につきましては一三%になっております。欧州諸国全部、そのうち、EEC日本輸出の構成比の中では五%ちょっとというふうになっております。
  53. 石野久男

    石野委員 このEEC関係は、日本輸出製品に対しては非常に差別をきびしくしているという実情を、私、昨年西欧諸国を歩いたときに、各国でそういう雰囲気を見てきておるし、また、統計の上からでも、そういうことが出ている現状で、西欧諸国におけるところの日本に対する差別の状況というのは、どんなぐあいになっておりますか。
  54. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御指摘EEC諸国は、御存じのとおり、一番成績の悪い、対日差別の数が多いのはイタリアでございます。現在の計算では、大体百四品目というものを対日差別をしております。その次にいままで悪かったのはフランスでございますが、先般フランスの交渉妥結いたしまして、その結果によりまして、今後一、二年のうちに、大体フランスの対日差別は西ドイツとベネルックスとの中間ぐらいになるかと思います。現在ベネルックスが二十八品目の対日差別を持っておりますし、ドイツが一番成績がよい。と申しましても、差別でございますからいいわけじゃございませんが、比較的に見ますと、十九品目というものを持っております。この問題につきましては、ほとんどここ十年間ほど、対日差別の減少あるいは縮小ということにつきまして政府として鋭意努力してまいりまして、かなり進歩してまいったわけでございまして、残っておりますものは、先方から見ますと非常なハードコアという、主として繊維と若干の陶磁器というものに減りつつあるわけでございます。
  55. 石野久男

    石野委員 この西欧諸国の貿易額というのは、全体として一一%で、輸出が一三%という話で、そういうものについてケネディラウンド実施を繰り上げてやるということが、こういうように差別の品目が非常に多いということとの関連で、日本貿易面で必ずしもそう大きく利益するようには見受けられない、このように私は思いますが、それは違うでしょうか。
  56. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生の御質問に従いまして、一応対日差別の品目を国別に申し上げましたけれども、おもにイタリアの場合をとりましても、全体の日本輸出に占める金額というものは、かなり小さくなっております。特にドイツのような場合には、私も正確に現在覚えておりませんが、一〇%以下、せいぜい五、六%のものというふうになっておりますので、もちろん、この差別自身は今後ともなくするように努力はいたしてまいりますが、関税引き下げによって、その他の大部分の品目というものの輸出利益というものは大きく伸びる可能性があるということは、当然言えるんではないかと考えます。
  57. 石野久男

    石野委員 アメリカ貿易の問題では、先ほどから課徴金問題等もあるけれども、いま一つきわめて重大なのは、ドルの問題だと思うのです。ドルの問題については、すでにジョンソン声明が特にベトナム戦争に対する問題と関連で出て以来、SDRの世界的な一つ会議といいますか、協議の問題に発展していっております。ドルが今後非常に安定していくかどうかという問題についての見通しは、きわめて重大でございますが、そのSDRを実施することについてのアメリカの国内的な努力、あるいはまたベトナム戦争等に対してのアメリカの積極的な処置、そういうようなものがないというと、これはドルの安定というのは出てこないように思う。ドル問題については、あとでまた経済企画庁長官にもひとつ聞きたいのですが、貿易面から見て、アメリカのそうしたドルの安定のためにとられるであろう国内処置、そういうものがケネディラウンド実施と競合するという形、ケネディラウンド実施しようとしてもなかなかそれができないような条件をつくり出してくる可能性は、非常に私は多いと思うのですよ。それはすでに先ほどから言っておるように、課徴金問題等一つの課題でありますし、それを実質的に今度のガット会議の中でEECがどの程度まで話し合いをつけていくかわかりませんけれども、こういうドルの安定ということを考えながら見ていきますと、ケネディラウンドというのは、そう簡単に、はい、よろしゅうございますという形では私たち受けとめることができないように思うわけですよ。いま政府は、ケネディラウンドを特にこういう案件を提出して、なるべく早くこれを可決せよということで、与党も政府側も一生懸命やっているようですけれども、やはりいろいろな条件がまだ不安定だという中で、特にアメリカのドルの問題との関連性というものはきわめて重要だと思うのだが、そういう点であなた方はどういうふうに見ているか、ひとつ……。
  58. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生指摘のとおり、アメリカがいろいろ課徴金その他をやろうということを考えるような下地には、やはりアメリカの国際収支の問題が大きなウエートを占めておりますし、そのほかの要素といたしまして、アメリカの国内の保護貿易というものが考えられるわけでございます。国際収支の安定という観点に立ちますれば、ただいま先生指摘のとおり、ドルの防衛の問題国際通貨の安定、これが非常に大きな影響を及ぼしてくるわけであります。しかしながら、ドルの防衛の問題国際通貨の安定につきましては、SDRの協定の問題もだいぶ話が進展してまいりましたし、他方、アメリカの国内で増税あるいは支出の削減ということによりまして、アメリカの国内景気自身、経済自身というものに、若干インフレ要因というものを除去することが、これまたアメリカの国際収支の改善に役立つことは当然でありまして、そういう点に立ちますと、先ほど御指摘のとおり、ベトナム支出というものが今後減っていく可能性があることは一つプラス要因であろうということが考えられるわけでありまして、そういうもの全部相まちまして、アメリカの将来の国際収支の見通し一つの歯どめができ、若干明るくなりつつあるということは、先ほど先生の御指摘のとおり、国際収支面から見ました場合には、制限的な措置アメリカがどうしてもとらなければならないということにはならないわけでありまして、そういう点で、私どもも、いまのような世界の国際通貨情勢の進展あるいは好転、及びアメリカの国内的な増税その他の努力というものが相まちまして、国際収支の問題がかなりめどが立ってくることを期待しているわけであります。
  59. 石野久男

    石野委員 大臣にお聞きしますが、ケネディラウンドの問題は、貿易拡大することがもちろんその主軸になっているわけですけれども、しかし、アメリカの国際収支の問題は、これとは切り離しては考えられない内容を持っていると思うのです。ことにケネディラウンドそれ自体は、一九六〇年のときにやはり呼びかけが出てきているということを見ますと、アメリカも、ドルが今日のような危機になるということは、当時はまだそこまで予想していなかったと思うのです。しかし、現状では、ドル危機というものは、SDRの救済を求めてもなおかつ安定するかどうかの見通しが非常につかないという事情であるとわれわれは見ておるわけです。ドルの安定の問題とケネディラウンド関係について、大臣はどういうふうに考えておりますか。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 SDR、特別引き出し権制度も、早ければ今年の暮れにでも実施されるようなことになろうと思います。このことが国際通貨の安定の上に非常に寄与するであろうという期待を持って、日本もこれに参加するわけであります。したがって、われわれとしては、ドルの安定ということが日本利益にも合致しますから一これは絶対にどうかということはなかなか予測できませんが、しかし、世界各国ともやはりいま金本位というわけにもまいらないわけです。したがって、ドルというものが国際通貨のキーカレンシーになっているわけでありますので、お互いにこれはみな協力し合おうという世界的な雰囲気も生まれておるわけでありますから、われわれとしても、そういう点でやはりドルの安定に寄与するという前提のもとで、これが非常に不安だという予測の上には立っていないわけでございます。
  61. 石野久男

    石野委員 不安な予測には立っていないというのは、それは一応の政府考え方ではありますけれども、私のいま聞いているのは、ドルの安定の問題とそれからケネディラウンド実施との関係、そういうものについて政府はどういうように考えているかということです。
  62. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御質問の点でございますが、ケネディラウンド自身はすでに実施を始めている国もございます。現在までのところで、大体十一カ国が引き下げ実施し始めているわけでありまして、ことしの一月一日からアメリカ、カナダ、オーストラリア等々がやっております。問題は、ケネディラウンド交渉の際に、それぞれの国内事情から本年の七月一日から実施約束している国が、日本をはじめEECイギリス等が主要国になっているわけであります。したがいまして、ケネディラウンドが考えられた際に、ドルの問題というものは必ずしも同じにリンクされていなかったということは当然だろうと思いますし、ケネディラウンド実施とドルの問題というものは、直接の関係はないのではないかと存じます。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、ドルが安定するということが、また世界貿易を安定した決済手段をもちまして拡大することになりますので、そういう意味では、彼此相まちまして世界貿易拡大に寄与し得るという考え方に立ち得るのではないかと思うわけでございます。
  63. 石野久男

    石野委員 ドルの問題は、ここではあまりそこに入っていると審議がちょっとできませんから、あとでまた話を進めるとして、ケネディラウンドの問題については、特に総理が昨年アメリカヘ行ったときに、ジョンソンとの共同声明の中の八項でこれをうたっているわけです。その後、ずっと日本アメリカとの関係を見ると、ここでうたわれている、たとえば「両国は、貿易とその他の国際取引の一そうの自由化をもたらす諸政策を支持することを再確認した。」というのですが、実はやはり問題がたくさん出てきてしまって、自由化をもたらすような政策の再確認とかなんとかいうけれども、逆に問題が多く出てきたということのほうが意識されるのですが、両国の間に緊密な協議をすべきことに意見は一致して、それのために具体的な施策をするということが書かれておるんだけれども、この共同声明に基づいて何かそういう処置をしておるのですか。
  64. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 その点は、先生御存じのとおり、ちょうど総理が昨年訪米されました直前、先ほどお話し申し上げましたとおり、十月の半ばごろにアメリカ議会に非常に多くの輸入制限法案が提出された。そういう背景がございますので、相互に、日本アメリカ自由貿易主義を確認して、その方向努力しようじゃないかということをうたったわけでございます。その後段の段階につきましては、アメリカの、その当時もそうでございましたし、日本もそうでございましたが、国際収支上にかなりの難点が出てまいっておりましたので、そういう点も含めまして、日米間の経済関係について緊密な話し合いをしようということになったわけでございますが、その具体的なあらわれが一月のホノルル会談になったわけでございます。
  65. 石野久男

    石野委員 この共同声明によると、日米合同委員会の中に小委員会をつくることになっておるのですが、それはやはりその小委員会をつくって、しかもケネディラウンドについての特別な審議をどのようにしておるのですか。
  66. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま申し上げましたとおり、その小委員会というものの会合が、ことしの一月ホノルルで、それは事務当局同士の会合でございますが、行なわれたわけでございます。この際にも、日本側は当然ケネディラウンドの観点からそれを意識し、したがって、ケネディラウンド精神に反するようなアメリカ輸入課徴金とか、あるいはその他の制限的な措置を絶対とらぬようにということを強く言ったわけであります。その観点からは、先方からいたしますと、日本貿易自由化を大いに期待したいということを言ったことは事実でございます。
  67. 石野久男

    石野委員 小委員会向こう日本貿易自由化を要望しているというけれども、しかし、実際に課徴金問題その他は、先ほどからの話では、ほとんどEECアメリカとの話し合いがきまらなければ日本はどうにもならぬというふうな実情だということだけははっきりしているわけです。大臣、このケネディラウンドの問題で、課徴金問題にもう少し日本がイニシアチブをとれるような対処のしかたというのはあるのですか。やはりEECできまらなければ日本としてはどうにもならぬという状態なんですか。その問題についての大臣の外交上の処置といいますか対策、そういうことをどういうようにお考えになっていますか。
  68. 三木武夫

    三木国務大臣 それはやはり日本側だけではいろいろ対処する方法はない。私は考えられない。そのために今日まで日本もできるだけの努力をしてきたのですけれども、こういう問題の解決には、EEC諸国協力してすることが目的の達成のためには有効である、こういう判断協力しておるのであって、問題は、どうしてそのようなアメリカの意図を思いとどまらしめるか、それにどういう方法が有効かという角度から考えるべきであって、日本だけでしなければ、よその国と協力してすることは日本のメンツにかかわるとかなんとか、そんな問題でもないわけでありますから、それは虚心に考えて、そのほうが有利なりと考えて、EEC諸国協力をしているわけであります。
  69. 石野久男

    石野委員 課徴金問題のよってくるゆえんのものは、結局アメリカ国際収支改善にあると思うのですよ。国際収支改善の問題では、貿易の面でアメリカはもう御承知のように黒字を出しているわけですね。結局国際収支の悪化というのは、ベトナム戦争に伴う出費とか、あるいは対外的な援助、それは経済的援助もあれば軍事的援助もありますが、そういうものの累積であるということはもう間違いないわけですね。そういう見方は、政府としても別にそれは違うというような見解ではないのでしょうね。大臣
  70. 三木武夫

    三木国務大臣 そのベトナムの戦争あるいは対外経済協力、こういうものが国際収支の悪化の大きな原因の一つであることは、われわれもさように考えております。
  71. 石野久男

    石野委員 課徴金の問題を何とか日本の有利なように排除していこうとすれば、当然アメリカが持っておる病根に触れなければならないだろうと思うのです。課徴金を要求するアメリカ態度というのは、何かの形で課徴金類似のものを、ケネディラウンドにおいて前面に押し出しながら、背後にやってくるというゆえんのものは、国際収支上悪くなる原因があるからです。そうすると、その悪くなる原因というものが、主としていまの段階ではベトナム戦争に対する出費だと見ていいと思うのです。そういうものに対して日本が全然アメリカに対する声を出さずに、課徴金を何とかやめろというような交渉をしても、これはとてもだめだろうと思うが、政府はそういうようには考えていませんか。
  72. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、いろいろ対外援助であるとか、ベトナム戦争というものは、国際収支に直接関連してそういう方針がきめられるものとは思いませんが、しかし、間接的にはいま御指摘のように影響があるわけで、ベトナム和平への一つの希望を生ぜしめるような事態が起こっていることは、このことはアメリカ国際収支改善にも役立ち得ると考えます。したがって、われわれは、アメリカの国際収支協力というものでなくして、アジアにおける平和、安定を一日も早く達成できるという、これは日本国民の共通の願いでもあるわけでございますから、そういう角度から、せっかく生まれたこの平和への暁光を実を実らすようにわれわれは努力協力していきたいと考えております。
  73. 石野久男

    石野委員 この課徴金問題について外務大臣がジョンソンと会った、あるいはまた下田大使をしていろいろなことを交渉さしたり何かしているということの中で、このベトナム問題に全然触れないで交渉しておったのでは、これは何の意味もないと私は思います。大臣は、いまベトナム戦争に対する出費もやはり一つの大きな理由であろう、そういう答弁でしたが、私ども見るというと、やはり国際貿易の上では黒字が出ておるわけですよ。いまアメリカの国際収支上の問題を見ると、戦争に対する出費あるいは経済援助——経済援助といっても昔のようにはありません。だから、主として戦争出費というものが大きいということは、だれが見てもわかるわけです。一つの理由ということだけではない、むしろそれがほとんどの理由だということがわかれば、最も善良な友だちとしての三木さんは、そのことに対して何かものを申さないで課徴金問題の解決点のしんに触れていくということはできないだろうと私は思うのですよ。大臣は、とにかくいろいろな面で世界平和も考えながら、日米間の経済交流も考え、貿易拡大も考えていくという、そういう外交施策の上でアメリカに対する善良な忠告をするとすれば、善良な忠告だけではなしに、日本自身利益のためにそれは必要なんだと思います。この前に何か口上書かなんかを持ち込んで向こうとの話もしているというのですが、そのときには、そういう問題には全然触れなかったのですか。
  74. 三木武夫

    三木国務大臣 これは御指摘のように、十五億ドルくらいの国際収支上の負担にベトナム戦争がなっているといわれている。そういうことが大きな部分を占めていることはこれは明らかでありますが、しかし、いま言ったように、これは国際収支という一つのカテゴリーの中で考えられるという性質のものでもないわけでありますので、われわれとすれば、こういういま和平への空気が起こり始めたことが、結果的には国際収支の上においてもいい結果をもたらすことは、これは申すまでもないわけでございます。今日の日米関係の中でわれわれが話をする場合に、ベトナム戦争というものに非常に多くの時間を費やすわけです、日本とすれば。だれでも日米関係を考える場合に、ベトナム問題というものが、日米間の中でいろいろ話し合う場合に大きな議題になることは当然のことでございます。だから、あらゆる場合において、日米間の話し合いのときにはベトナム問題、しかもこれを平和的に早期に解決するという角度から、日本は必要な助言もいたしておりますし、和平達成促進への努力日米間においてもなされてきておるわけでございます。
  75. 石野久男

    石野委員 ケネディラウンド実施というものが、やはり貿易拡大方向をねらっておるのが最大の目的でございますから、日本としては、やはりこのケネディラウンド実施するにあたって、アメリカのそうした課徴金とかなんとかを排除して、アメリカのわがままをやめさせなければいけないと思います。同時に、このケネディラウンド実施することが、日本貿易の面で非常に悪い面が出たり、あるいはまたそのことのために非常に障害を受けるというような部面が出てくると、これはまずいことだと私は思うのです。  特に最近の情勢から見て、私は、中国との貿易の問題は非常に大事だと思っております。私は、先ごろLTの問題で、中国との問のとだえたLTの道を開くという役割りをさせてもらいました。その後、古井氏や田川氏たちが、中国との貿易についての新しい、一年間でありますけれども、覚書貿易協定というものを結んできたわけでありますが、大臣、この中国貿易拡大については、積極的にその方向を打ち出すべきだというふうにお考えになっておられるか、それとも従来のように、中国についてはあまり当たらずさわらず、政経分離というような形の線でほうりっぱなしにしておくというような考え方でおるのか。この際、ケネディラウンド実施にあたって、大臣の中国貿易に対しての考え方をひとつ聞かしてもらいたい。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 日本は、実際貿易拡大していくよりほかに日本経済拡大はないわけでありますから、政府は、政治形態のいかんを問わず、常に積極的に貿易拡大をする。それは中共においても例外でない。これが方針でございます。
  77. 石野久男

    石野委員 ケネディラウンドは、ガット加盟国に対する一つの適用であります。それによって率を下げて貿易拡大ということをねらっておるわけですね。しかし、共産圏はガットに入ってないところが多いわけですから、そこで、このケネディラウンド実施にあたって、それが期待しているような線にはなかなか入ってこない。このことが、逆に、日中の貿易という問題についていろいろな問題を引き起こしてくるわけです。  ケネディラウンドに関連して、政府関税定率法の改正をやったわけです。その関税定率法の実施によって、中国との貿易の面では予測しないトラブルが出てくるわけです。大臣は大体御承知だと思いますけれども、およそのことを私から申し上げますと、ケネディラウンド実施にあたって、定率法を改正しました。それによって、輸出入額の大体八〇%というものは救済できることになった、こういうことになるわけであります。しかし、品目の上でいきますと、まだ三百五十余種類のものがその二〇%の中にあるわけでございますね。この二〇%、八〇%という比率は昨年度のものでございますから、今年度は米の輸入が非常に減ったので、おそらく七五%、二五%になるだろう、こう思うのです。金額の面では二五%、数量の面では五〇%近いものが救済されないままに、税率の上では格差がついてくるという状態になってきました。こういう事情は、日中の貿易の上では非常に障害です。大臣も御承知だと思いますけれども、ことに金額にして二十数%、品目にして三百五十余種類というものを扱う商社というのは、きわめて零細な商社であります。この諸君が、格差がついた場合に商売ができにくくなっていくという事情があるわけです。こういうものは早急に救済しなければならないだろうと思うのです。ほうりっぱなせば業者はつぶれるわけです。つぶれるだけじゃなくて、日中の間の貿易量も減ってくるわけです。日中の貿易量というのは、御承知のようにバーターのような形になっておりますから、輸入が減れば輸出が減ってくるという状態になってくるので、こういう状態に対して政府当局は特別な配慮をすべきだというふうに私は考えるのですが、大臣はそういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 ケネディラウンド実施されていくことでもありますし、関税引き下げるという世界的な傾向でもあるわけです。中共がガット加盟国でない特殊な事情にありますけれども、国定税率については、日本の産業への影響ということをやはり無視するわけにはいかぬ。そういうことの影響も頭に入れながら、できるだけ引き下げていくという努力をしたいと考えております。
  79. 石野久男

    石野委員 政府はよく答弁に、日本の産業に影響するということを言うのですね。日中の問題で、特に今日三百余種類に関係する品目日本の産業にどういうふうに競合関係を持つか、これは実際に調べておるのですか。
  80. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、関係の当局のほうで十分いろいろと御検討になっておるわけでありまして、私どもの聞いておりますところでは、たとえば生糸というようなものが一つの特色の品目ではないかというふうに承知いたしておるわけでございます。
  81. 石野久男

    石野委員 生糸、生糸と言いますけれども、生糸は、いま日本輸入国なんですよ。どんなふうにしたって、これは輸入国です。中国のものが入らなかった場合に、日本の産業がそれで——もう生糸生産は、蚕がものすごく生産されたという状態ではないですね、現状は。だから、これは私は違うと思うのです。政府としては、もう少し日中の問題を具体的な問題で検討する必要があるんじゃないかと思います。いま日中問題で、国定税率は動かせない、そして、それは日本の国内産業に影響を及ぼしてはいけないからだという趣旨は、これはもちろん関税は国内産業を保護することが目的ですから、私もそれは間違っているとは言いません。しかし、事実上起きている日中の問題を問題別に検討を加えますと、そういうものはほとんどないですよ、実を言いますと。この事実をもう少し明確にする必要があると思うのです。私は、これは大臣にお尋ねしますが、いままではよく国内産業に影響があるということで逃げてしまいますけれども、実際問題としては影響がないんですよ、ほとんどのものは。そういう事実が明らかになれば、こういうような八〇%金額でやっているんだからいいじゃないかというようなことを言っておって、三百数十種類の商品を取り扱う数百の商社がそのために倒産する、混乱を来たす。商社、商社といいますと、いかにも貿易商社だけのことのように聞こえますけれども、実は商社とメーカーとがくっついているわけですよ。中国貿易の場合は、メーカーが寄り合いまして商社をつくっておりまして、その商社が取引したものを持ってきて仕事をしている。こういうような関係があるわけです。したがって、他の欧米諸国とはだいぶん違った面のあることは考えなければいけない、こう思いますが、そういう点の検討をもう少しすべきでないか。大臣は、その点いかがお考えですか。
  82. 三木武夫

    三木国務大臣 これは個々に検討することにしましよう。そして関税固定税率改正の際には、それができるだけ引き下げられるように個々に当たってみることにいたします。
  83. 石野久男

    石野委員 個々にこの審議をしていただくのはけっこうなんです。そこで、私は、今日のように日本経済が激動している中で、御承知のように、黒字の事業をやっている方でも、金融がつかなければみんな倒産していくわけです。ことに中国貿易をやっている、これらの三百数十種類の品目を扱っている商社筋のあり方というものは、零細といったって、そんなにべらぼうに零細というわけじゃないけれども、やはり仕事の上であまり一年間もそういう差別がついてしまったら、これはほとんどつぶれてしまうのですよ。そういうものに対する方策を考えなくてはならぬじゃないか。その点は大臣、どういうふうに考えますか。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 中共貿易商社といわれる人たちの非常に困っておるという事情は、通産省などにおいていろいろ調べがついているのかもしれませんが、私自身は承知しなかったわけでございます。中共貿易商社がいま非常に苦境に立っているということは承知しておりませんでしたが、これは通産省とも連絡をとって、実情などを調べてみたいと思います。
  85. 石野久男

    石野委員 通産当局がきょうは大臣にも来ていただくはずでしたが、いないようですが、これはひとつ検討を加えてもらわないと困ると思うのですね。私は、このケネディラウンド実施が直接日中貿易影響してくるという事実を踏んまえながら、それに対する対策をとらないでケネディラウンド実施ということに入っていきますと、日中貿易の上では非常に大きな混乱が起こると思いまするので、これはぜひひとつ、法案なら法案ができ上がるまでの間に、政府のしっかりした態度を示していただきたいと思うのですよ。それは大臣、ひとつ考えていただけますね。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 法案の出る前に示せということはかなり無理なことですが、あなたがこの点に対してよく実情を調べるようにということはごもっともですから、法案というものと切り離して、十分に調査をいたすことにいたします。
  87. 石野久男

    石野委員 私は、この法案が出るまで具体的な成果を全部示せということではないのですよ。ただ、こういうことを理解してほしいというのです。調査するということはわかりますけれども、これは七月一日から実施することになるわけです。七月一日から税をそういうふうに変えていきますと、半額なら半額になって税率が変わってきますね。変わった場合に、中国から入るものと、それからガット加盟国、いわゆるケネディラウンドの適用によって入るものとの差が非常に大きいものが出てきます。その大きいものが出るために、処置されるまでの間に、商社がつぶれてしまうという結果が出てくる緊急な状態があるから、私は言うのですよ。  たとえばこういうことなんですね。一例を申し上げますと、ブラウスなどの問題がございますね。ブラウスは、いま中国のものが日本にたくさん入っております。こういうものがいま普通の何でいきますと、あれは三〇%ですか、それが今度新しいものができますと二一・二%で、九%くらいの差が出てくるのですよ。そういうことになってまいりますと、この品物は中国から入らないで、逆に香港経由で入ってきても商売はできる、こういうのです。そういうことになってくると、大臣、こういう結果が出るのですよ。中国のブラウスが香港を通って日本へ入ってまいりますと、事実上いままでと同じだけの量が日本に入るわけですよ。そして、中国貿易の量は減ってしまうわけですね。減ってしまうと、日本輸出量がそれに見合うだけ減る。しかも、中国の品物はメイドイン香港とか、ちょっと手を加えた形で日本に入ってまいります。あるいは手も加えないまま入ってくるだろう。手を加えないままで入るというときには、原産地証明でそれはちゃんと識別するのだということを関税当局は言うのですけれども、事実上はほとんどこれができないだろうというのが常識です。こういうことになりますと、結局、中国の側から見れば、そのために輸出量が減ってくる、日本としては輸入が減ってくるわけです。そして日中の間の貿易量は減るという結果が出てまいります。のみならず、この施策は、一つは、中国から見ますと、非常に日本の巧妙な敵視政策である、こう見るわけですよ。したがって、貿易の実績の上においても非常に損をするし、政策の上においてもやはり敵視政策をとったかのように見られて、非常な不利を受ける状態があります。これはただ単にブラウスだけの問題じゃございませんので、たとえば先ほど言う生糸の問題もあれば、あるいはその他皮類の問題とかじゅうたんとか、いろいろなものがございます。  そういうことがございますので、私は、やはりこの対策は、この案件が通過するまでの間に適切な回答を全部出せということじゃなくて、七月一日に実施することを追っかけて適切に、そういう不利になるのを補完するというその方針が出てこなければいけないのじゃないか、こういうことなんです。いま私の聞いているところでは、たとえば定率法を変えました場合に、これは来年また新たに変えるまでの問は空白になってしまいますから、ことし変えた率でいきますと、その格差がついたままで一年間進んでいくわけですね。その一年間の間に、日中貿易をやっているものはみなつぶれてしまうという状態になるのです。これはあまりにも残酷なやり方になります。これに対する処置をどういうふうにするかということがいま問題になると思うのです。そういう点で、大臣はそれに対する配慮のしかたをどういうふうに考えていられるか、特別な配慮をする用意があるかどうかということをひとつ聞かしてもらいたい。
  88. 三木武夫

    三木国務大臣 方針については、最初に申し上げたように、この問題に対しては前向きに検討していきたいということを申し上げたわけでありますが、これはいろいろ実情の調査もしなければなりませんし、短期間の間にいろいろ御指摘になった問題をこうする、ああするということを申し上げることは困難かと思います。ただ、いま申したように、この問題は、やはり個々のものについてできるだけ引き下げていこうという方針のもとに検討をするということで御了承を得たいと思います。
  89. 石野久男

    石野委員 私は、この際、通産省の方がおれば通産省の方にちょっと聞きたいのだけれども、この三年来の間に日中の間の貿易の実績がどういうふうになっているか、そしてそれが今度のケネディラウンド実施によって格差がどういうふうについてくるかということの調査がもしできておれば示してもらいたい。
  90. 川田通良

    川田説明員 お答え申し上げます。  まず最初の、最近三年間の日中貿易の実績でございますが、輸出入合計を申し上げますと、昭和四十年に四億六千九百万ドルとなっております。四十一年には六億二千百万ドルでございます。四十二年には五億五千七百万ドルでございます。したがいまして、四十一年から四十二年にかけましては、約一〇%と減少いたしております。  それから御質問の次の点、ケネディラウンドによって関税引き下げが日中貿易にどういう影響を及ぼすかという点でございますが、この点は、日中貿易に限らず、ほかの加盟国との間の関係におきましても、今回の五年間の引き下げによりまして、正確にどれくらい貿易がふえ、あるいはわが国輸入がふえる、あるいは相手国の日本からの輸入がふえるという計算は、非常にむずかしゅうございますので、できておりません。しかしながら、先ほどの政府委員からの答弁にもありましたとおり、私どもはかなり大幅に将来の日本輸出は伸びていくと期待しております。  そこで、日中関係につきましては、先ほどお話がございましたように、幾つかの品目につきまして格差ができることになります。しかしながら、これは五年間に五分の一ずつ行なわれるわけでごごいまして、最初の一年度に若干差ができたとしても、それがはたしてどれほどの影響があるか、これは今後の成り行きを見なければ正確な推測はむずかしいのではないかというように考えております。
  91. 石野久男

    石野委員 いま調べができていないようですが、たとえば、先ほど言いましたように、日中の問の貿易の金額にしても、二〇%ないし二四、五%というものが、ケネディラウンド実施に伴って、従来のままでほうりっぱなしにされてしまう。それだけは従来と格差がついてくるということだけは明らかなわけです。それらの品物についての実績と、それからそれがどういうふうになるかという対策を早急にしてもらいたいと思うのです。そういう資料をひとつ出してください。それによって実際に日中の間に出てくるところの問題点というのを明確に示していただくことが大事だと私は思う。大臣、日中貿易というのは、これはこちらが努力をすれば、私の見るところでは、いまの状態の倍にも三倍にもすぐなる状態にある地域だと思うのです。アメリカの場合は、従来日本アメリカは仲よくやってきたことでありますから、政府としても、別にそれをきょう急にどうこうするということは考えていないでしょうけれども、しかし、先ほど来見てもわかるように、アメリカ自身が、国内的諸事情から、やはり輸入制限とか何かをせざるを得ない国情にあることだけは間違いない。日本をはじめとしてEEC諸国がいろいろな努力をして、アメリカ課徴金だとか、ASPだとか何かを排除する努力をしておっても、なおこれはずっと続いていくということだけは間違いない。見通しの上からいえば、日本貿易は、アメリカとの関係で従来のように手放しで見ておるわけにはいかないことだけは間違いないと思う。現状、日本の国際収支なりあるいはまた輸出増大の問題からいって、日中関係は非常に大事だ、こう思います。その日中関係の大事なときに、日本政府が中国に対する友好関係、友好的な精神を持っていない、もっと端的に言うなら、敵視政策を持っているというような見方をされることは、私は、非常に損なことだと思うのです。また、政府はそういうことであっはいけない、こう思うのです。いまのように格差が出てくるということは、中国にとっては非常にいやな見方をしているわけですね。私は、事実上、向こう貿易関係の諸君ともいろいろ話をしたことがありますが、ケネディラウンドによって出てくるような問題についても、やはり向こうも一応考えておるわけですよ。全然無視しているわけではありません。そして、いまのような状態で、零細なものがはずされていって、結局、石炭だとか、あるいはまた銑鉄だとか、大豆だとかいうような大ものばかりがケネディラウンドと歩調を合わせていく。あとの零細なものがほうりっぱなしにされるということについての政府のやり方は、非常に大資本本位であって、むしろ中小に対して非常にえげつないやり方をしているんだという見方、もっと端的に言うなら、中国から言えば、友好な人民に対して政府は独占の立場で非常に妨害を加えておると見ておるように私は見てまいりました。それだけではなくて、現実には、それは友好商社に対する打撃だというふうにも出てくるわけです。そういうような問題は、ひとつ早急に排除されるべきだと思うのです。大臣は、そういう点は全然考慮しませんかどうか、ひとつ……。
  92. 三木武夫

    三木国務大臣 中共自身の側でも二本立ての税率で、高いほうを日本に適用しておる関係もありますから、これは、貿易は相互主義的なものでありますから、日本もできるだけ国定税率引き下げていくよう努力し、また中共も、こういうような最恵国待遇がない間柄の貿易拡大していこうというなら、中共自身の努力も要ることでしょうし、全部日本ばかりの責任だというわけではないので、やはり両国の関係を改善していこうというためには、両国が努力をしなければならぬ面があると思います。全体としては、中共貿易というのは、大きな見通しとしては伸びていくでしょうから、相互の努力によってできるだけ関税上の差別をなくしていこうという相互の努力が必要だと思います。政府もまたそういう方針のもとに、今後国定税率引き下げ検討していこうとお答えをしておる次第でございます。
  93. 石野久男

    石野委員 大臣は、中国が関税上の差別をしている、こう言うのですが、しかし、それは実際に何か具体的に調査して押えているところがあるのですか。これは大蔵でもそういうことを言うのだけれども、事実上、関税上の差別をつけられておるために日本輸出が伸びなかったとかなんとかは一ぺんもないのですよ。これは別に日本だけじゃない。たとえば広州の交易会とか、上海の交易会とか、天津とかいうようなところへ各国がみな入り込んでいるのですよ。そういう中での取引の上で、そういう政府が言うような関税上の差別をされているというようなことの具体的な事象は一つもないのですよ。何か具体的にそれを示すようなものはあるのですか。
  94. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 私どものほうでその一つの根拠といたしておりますものは、一昨年でございましたか。ジェトロがつくりました「日中貿易の手びき」というのがございますが、その中で、中共の関税率は二種類あるとして、日本からの輸入品についてはむしろ高いほうの税率がかけられているということが、品目をあげて書いてあるようでございますので、それを一応の根拠にいたしておりますが、何ぶん国交がございませんので、政府レベルでこれを確認するという方法は、現在のところないわけでございます。
  95. 石野久男

    石野委員 いま中国問題については、大臣も大体わかると思いますけれども、日本では、非常に友好的な部面のものと、それから非常にそれを阻害し妨害する面と、両方あるわけですよね。それから、ジェトロなんかも、私は、そうだということは言いませんけれども、とにかくやはり非常に好意的に見ている場合と悪意で見ている場合、ことに確かな資料に基づかないで資料を出しているような場合が多い。これは非常に確かな資料で出ている参考資料というようなものはけっこうなことですけれども、間違った資料を資料として使うということほどばかげたことはございませんし、また、それは非常に将来を誤るものだと言わなければいけないと思うのです。私は、資料として使う場合は、それは信憑性がいずこにあるかということを明確にしなければいけないと思います。  これは余談ですけれども、たとえば私は今度中国に行きまして、特に中国の諸君が言っておったことは、たとえば中国のほうで「大字報」が一つ出る。その「大字報」が中国の外で報道されるわけでですね。その報道されたときに、その「大字報」がいかにも中国の実情を示したように報道されます。ところが、中国の「大字報」というのは、もう御承知のように、百家争鳴で大衆討論をする。その大衆討論する場として「大字報」が出るわけですよね。だから、「大宇報」というのは、討論の過程なんです。結論じゃありません。討論の、結論でない、過程であるからこそ、新聞記者諸君に対しては、写真をとっちやいけないなどということを向こうでは言っているんですよね。したがって、やはり出ているものが結果として否定される場合もあるけれども、また肯定される場合もあります。いかにも日本に確かなように報道されたことが、大衆討議の中で否定されてしまって、きょう出ておった「大字報」はあした消えてしまう場合がたくさんあるわけですけれども、そういうようなことで、中国をあたかもそれが真実であるかのような判断をしておりますと、全く見当違いの中国政策というものが出てくるわけです。私は、そういう点で、中国の諸君が、新聞記者諸君が「大字報」を新聞に出して、それをあたかも真実のように報道しているのについて、怒りをもって、激怒の形でものを言っていることを聞いてまいりまして、まさにそうだと私は思っておるのです。だから、信憑性のないものを事実として判断するということは非常に間違いだと思います。  それで、現実に中国貿易をしている諸君が、中国の関税上の差別のために非常に不利をこうむっているというようなことが業者の間にあれば、政府当局が言うまでもなく、業者自身がよくわかるわけなんですよ。ところが、現在、日本の中国貿易をやっている業者諸君は、そういうことをこれっぽっちも感じていないのですよ、各国との取引の問で。むしろ感じていることは、吉田書簡だとかいうようなものの障害を感じているわけです。あるいはココムというもの、扱いの上で非常に障壁が出ている。それは向こう側の障壁ではなくて、日本側の障壁ということを日本商社ははだで感じているのです。こういう事実を日本政府が知らないと、日中の貿易はなかなか進まないと思う。先ほどからお話のありますケネディラウンド実施にあたって、国内産業に影響するということなどについても、あたかもそのことだけを聞けばそうかと思うけれども、事実調べてみると、そんなものはほとんどないのですよ。実を言いますと、ありません。それからまた、いまのように関税上の差別というようなことを言うけれども、これだって、調べてみたら、そんなことはほとんどないですよ、業者自身はですね。それは書類として数字か何か出ているかもしれぬが、そういうのは日本の政策を誤らすことです。政府は、そういう誤った路線の上を歩んじゃいけないのじゃないかと私は思うのですよ。そういう意味で、そのケネディラウンド実施にあたって、政府があげているいろいろな、われわれから言えば格差のついてくる条件というものは、いうなれば、故意に捏造されているといっても、これは言い過ぎでないほど、われわれにとっては笑止千万なことなんです。こういうような実情、しかも、そのことの中では、商社がつぶれていくわけですね。現実につぶれていきます。先ほど通産の川田さんからのなにでは、これは五年間にわたって分割してやっていくから、そんなに急な打撃ではないと、こう言っておりますけれども、商社はそうは言っておりません。商社はそんなに甘っちょろいと考えていないです。それは、公定歩合を一厘上げるか下げるかによって敏感に影響するのが日本の事実上の経済ですよ。関税率が五%、八%、場合によれば一五%違うということが、敏感に影響しないとかなんとかいうものではありますまい。かりに四分の一ずつにしたところで、それが四%になったり五%になったりするわけですから、だから、私は、もう少し現実にこれによって打撃を受ける商社諸君の、あるいはそれに関連する産業の立場というものを好意をもって考えてやる必要があるのではないか、こういうように思うのです。そういう意味で、ただ紋切り型の処置のしかたというものは間違いである。何かやはりこの問題を緊急に対策を講じないと、商社が十数年間、二十年にわたりまして努力してきた今日までの業績は、みんなそのことのために商社がつぶれちまうんですよ、実のことを言うと。これはほっておくという手はない。これをほっておくということは、政府は大商社とか大資本に対しては非常に好意的な立場をとるけれども、中小、零細の資本に対しては全く冷淡無比だ、残酷なやり方である、こういうふうに言わざるを得ない。しかも、それはやはり中国に対しては敵視的に見える面がありますから、それはひとつ大臣、何か資料をもらって答弁するだけでなしに、政治家としての立場で所見を聞かしてもらいたい、対策を。これはきわめて大事なことなんです。
  96. 三木武夫

    三木国務大臣 中国問題に対して石野君いろいろお話しになったのですが、自由諸国と違って、資料も、統計の資料というものもほとんどない。情報なども、新聞記者の交換ということも行なわれておりますけれども、いろいろな制約もあって、情報の提供というものが——共産主義諸国というものがもう少し自由にできますと、これはお互いに理解を増進するために、世界の平和のためにも私はいいと思うのですけれども、あまりにも閉鎖的ですよ、自由世界から考えたら。われわれなんかでも秘密はないです。うしろにおられる新聞記者諸君熱心な取材活動でして、全部出るわけですね。これに比べたら、全く共産圏に対してはわれわれ自身が一体どういうことだということがわかりにくい仕組みになっているわけです。このことは、私は世界友好関係の増進の大きな阻害になっていると思うのです。やはりこのことがいろいろな点でもう少し明らかになることによって、そんなに損をすることはないと思うのですよ。損をすることはない。それが明らかになったからといって、他国の攻撃を受けるというようなこと、そんなばかなことはいまできるわけじゃないし、もう少し共産圏が大胆に統計あるいは実情というものを世界に知らす努力も要るのではないか。石野さん、日本政府をお責めになりますけれども、私は、やはり共産国の政府にもものを申したい感じが非常にするのであります。そういう情報を知らないで、おまえ実情を知らないではないか、知らなさ過ぎるではないかと言うが、なかなか実情がつかめない仕組みになっておる。その仕組みにも問題があるのではないか。こういう点で、これは急にそう言ったからといってあすからどうというのではないが、これはやはり共産圏もそういう点でできるだけ正確に、われわれの情報を誤らしめないような資料を提供するように努力をしてもらいたい。そういう共産圏になってもらいたいと願うわけでございます。私も、そういう困難な事情でありますけれども、困難な事情で急にすぐにこれが大きな変化ということが期待できないでしょうから、中国に対しては、もう少しいろいろな実情調査に対しては、外務省においても力を入れていこうと思っております。いま御指摘の商社などのことについても、これは通産省とも連絡をとって、実情はこれは調べてみたいと思っております。しかし、あなたの御質問を聞いて、私の率直な見解もここに申し添えておきたいと思います。
  97. 石野久男

    石野委員 これは大臣は、中国側の情報の提供が足りないからだということでなにするけれども、いま中国と日本関係は、御承知のように、これはまだ戦争状態が続いているわけですね。それで、その中で、できるならば、平和条約が結ばれなくても、国交回復ぐらいはしてもいいというふうに持っていけば、もっと接近していくと思うのです。ところが、それもできないので、結局、今日では経済交流とか人的交流というようなことでやっておりますね。ところが、中国の側は、人的交流の面では非常に門戸を広く広げて受けているのですよ。情報を提供というか、人の交流は、情報の提供の一番大きいルートになると私は思うのです。もちろん、政府間で統計とかなんとか出すのも非常に大事だけれども、それ以上に、人的交流がやはり情報交換の一番大きい問題になると思うのです。ところが、日本のほうでその人たちを受けることはとめているんですよ。これは三木さん、あなたのところでとめているんじゃないの、人的交流は。だから、そういうような問題は、そんなことを言いますと、かえって吐いたつばが自分の顔に落ちてくるということになりはせぬだろうか。むしろ日本の側が情報提供の門戸を閉ざしてしまっている。向こうはむしろ人的交流は、さあ見てくださいと言っているわけでしょう。その行った人がいろいろな文句を言うかもわからぬけれども、日本は、日本の下関さえも入れないというなにをとっている。これは私が国交が回復してないんだから大きなことは言えませんけれども、しかし、大臣がいまそんなことを言うのだったら、大臣自身がもう少し中国側の人を入れるというような腹の太いところを出していかなければ、そのことばは通用しないんですよ。それはどうですか。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 これは国交回復しておってもわかりにくいんですよ、共産圏のほうは。石野さんよく御存じかも知らぬが、私にはわかりにくい。共産圏のいろいろな自由世界が持っておるような統計とか実情とかいうようなものは、非常にわかりにくくなっているんですね。この仕組みというものが、もう少し正確にその国の動向がつかめるような、一つの自由世界のような状態になってきたら、私は、世界友好関係というものは非常に増進すると思うんですね。そういう点で、全体の仕組みがわかりにくくなっておる。そしてまた人間の交流も必要ですけれども、そういう交流のためには、やはり何かお互いにお互いの内政に不干渉で、お互いの立場を尊重するとか、日中関係にも私はこういうものをもう少し両方が礼儀正しいつき合いの方法があると思っておるんですよ。両方から考えてみる必要がある。常に国際関係というのは、一方的問題ばかりとも思いませんね。それは日本反省すべきものもあるが、向こうもいろいろ考えてもらわなければならぬ点もあるし、そういう点でいろいろ今後検討を要する点がありますが、しかし、全体として共産圏というのはわかりにくい。資料などに対してもわかりにくいということはいろいろ言われましたけれども、どうも中国に限らず、ほかの共産圏でもなかなかわかりにくい点があることは事実で、これが自由にその国の事情をお互いに知り合うようになってきたら、どんなに世界というものは、各国友好関係が増進されるであろうかと、常に私は考えておるのであります。
  99. 石野久男

    石野委員 もっと自由にお互いがわかるようになれば非常にけっこうだということは、これは私も賛成ですよ。ただ、やはり各国はそれぞれ政治体制も変わっておりますし、経済機構も違うわけですよ。また、経済の運営のしかた、政治の運営のしかたというのは、おのおの違います。だから、そこまでいくと、今度は哲学の問題に入ってくるんですよ。したがって、私は、資本主義社会における一つの哲学と社会主義社会におけるところの哲学との問題点をここでぶつけ合っていっても、これは基本的な問題で違いがありますから、そこで、どの程度か可能な限りにおけるところの外交上の問題になってこようかと思うんです。そういう両国の間における外交上の可能性の問題の端緒を開くものとして、国交回復とか、あるいは日中の間でいえば戦争状態の終結が、もう早急にやらなければならぬわけですね。しかし、外交上の関係からそれはできないでおる。そういう中で、われわれはそのことを前提としてものを言うわけなんですけれども、そのことに対する努力を怠っていて、そして問題が起こったらそれにぶつけていくというようなやり方は、非常にひきょうな態度だと思うんですよ。だから、大臣がそこまで言うんだったら、もう少し積極的に国交回復の問題につぎ込んでいく、あるいはまた平和条約の問題につぎ込んでいくという態度をとられれば、いま大臣の言われることは、私はそのまま受け取ります。しかし、政府は、向こうの側では国交回復の問題については提起しておるし、あるいはやりましょうと言っておっても、むしろ日本の側でからを閉じておるというような実情を私たちは見てきております。問題はこちらにあるのです。そういう状態のときには、私は、その問題はその問題でまた論議をすれば別ですけれども、今日、日中の貿易の問題を論ずるにあたっては、やはり今日の問題としてそれをどうするかということを考えなければならぬのじゃなかろうか。だから、大臣がもしどうしてももう少し情報交換をよくやれとかなんとかいうことを言うならば、やはり国交問題とか平和条約の問題まで論じていくことが大事である。それはここの状態のときにはなかなかできないとすれば、今日ケネディラウンドに続いて出てきている、政府間の貿易でない、具体的に民間貿易で積み上げてきた、この努力をくずすようなことがあっては困る。ケネディラウンドがその民間努力の積み上げの業績をくずしてしまうような結果が出ることは、本来の目的ではなかろうと思うから、聞いているのですよ。大臣は、ケネディラウンド実施によって日中問の貿易の積み上げがくずれていっても、それはしかたがないのだ、それは向こうの情報が足りないからしかたがないのだ、こういうようなお考えでいまのようなお話をなされたのですか。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 それは私の真意を曲解するものです。何もケネディラウンド実施に対して情報を提供せぬから、くずれてもしかたがない、これはまた非常に飛躍した一つの仮定ですが、そういうふうには考えていない。だから、非常に困難な中でも、可能性という範囲内においてこれを考えていくよりほかはないのですね。できないことをできるような幻想を抱くことは意味のないことですから、できる範囲内のことでこれを改善していこうということでしょう、実際的には。私が言っておるのは、これは国定税率なども引き下げるような方向検討を加えましょう。ケネディラウンド実施されることでもあるし、商社は、友好商社が非常に苦境に立っているという石野さんの問題の提起に対しては、実情をよく調べてみましょう。あまり誠意のない答弁ではないですよ。
  101. 石野久男

    石野委員 誠意はよくわかります。  そこで、もう一つ大臣は実情を十分認識してないと言うと失礼だけれども、実際問題としてこういう実情があるということをもう一ぺん私は申し上げますが、いまのように国定税率についてもひとつ考えよう、非常に誠意のある答弁、私はそのままいただきましょう。問題は、それが時間的にブランクが長いというと、これはやはり実効が出てこないということをひとつ考えていただきたいのです。ですから、問題はいま具体的に出ておる。七月一日からケネディラウンド実施されますと、それによって受ける障害が強く出てきますから、それを救済する手段をひとつ考えてもらわなければいけない。これはあとで大蔵大臣が来られたときにまた聞きますけれども、いまの大蔵当局のあれでありますというと、国定税率の改正ということはまた来年でなくてはできないわけですよ、実を言いますと。本年度きまったもののほかは、来年でなければ実際にはできないという実情になります。その間につぶれてしまうということが問題になるわけです。ですから、私は、そういうふうな問題をほうりっぱなしということは無慈悲だ、こういうわけです。だから、大臣のいま言われた問題は、その期間における処置のしかたとして、何かやはり政府が特別な処置をなさる努力をしてくれないと困る、そういうことを言うのです。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 これは法律改正も伴うようでありますから、そういう手続の問題もございますから、私は期限を切ってお約束はしにくい。法律改正の問題もありますから、そういうことで、できるだけそれが検討の期間がすみやかに行なわれるように、検討いたしてみましょう、努力いたしてみましょうとお答えをしておきます。
  103. 石野久男

    石野委員 大臣の誠意のほどは私わかるのですよ。わかるのだけれども、事実上これによって起きる障害は非常に時間の問題になっているという実情は、これは認識してもらわなくちゃいけない。そしてしかも、法律の状況からいいますと、法律改正が行なわれなければ、これは次の法律改正の段階までは空白になるわけです。これはほとんど見捨てられた形になってしまいます。それではやはり実質的な救済にはならない。だから、その処置のしかたは、従来の法的関係からいえば、もう来年までいくことになってしまうので、口の先ではいいことを言っておっても、具体的には成果があがってきませんから、それをやはり具体的に救済する手段、方法というものを施策の路線で出してもらわなければいけない。私は、その処置の方法について配慮していただけるかどうかということを聞いているのです。その点について、これはもちろん通産や大蔵とも相談しなければならぬことですから、大臣単独ではできないと思いますけれども、大臣は、その点について、そのことを考えの中に入れて善処するという配慮があるかどうかということをここで聞いておきたい。
  104. 三木武夫

    三木国務大臣 いま申したように、いろいろな手続問題もありますから、時間的な約束はできぬけれども、ケネディラウンド実施も行なわれることでもあるので、期間的にも、その検討をする期間というものをできるだけすみやかに検討をすることにいたします。  それから、友好商社のことは、もう少し実情を調べてみたいと思います。
  105. 石野久男

    石野委員 私は、まだ大臣にたくさん質問があるのですけれども、同僚議員大臣質問がある、与党の理事さんからそういう要請がありますので、委員長、まだたくさんありますから、保留しまして、これで一応中断しましょう。
  106. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  107. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このケネディラウンドの問題に入る前に、外務大臣に二点だけ質問したいと思います。その一つは北爆停止の問題、もう一つはB52の問題であります。  一日のジョンソン声明によって、北爆の一方的部分的停止が行なわれて、現在では北ベトナムとの和平場所を交渉段階に入っておる、こういうふうにいわれております。この都市の候補地が、いま米当局からリストが出ておる、こういうようにいわれておりますが、その現況について伺いたいと思います。
  108. 三木武夫

    三木国務大臣 昨夜、ラスク長官からジョンソン大使を通じて和平会談——和平といいますか、今度の予備会談の場所として東京を提供してくれてもいい考えがあるかということで、そういうことならば喜んで提供いたしましょうという返事をしておきました。昨夜のことでございます。
  109. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 できるだけ積極的に予備会談の場所としてさらに推進していただきたいと思うわけであります。  もう一点はB52の問題でございますが、あの声明以来北爆がやむかと思ったわけですが、逆に、あれ以来北爆が盛んである。特にラオス国境に近いアシャウ渓谷ですか、その地点についての爆撃がすごいといわれております。いまのようなお話からも、沖繩からB52が北爆に発進しているとすれば、非常に大きな障害になるのではないかと思われます。そこで、すみやかに沖繩におけるB52の撤去を要請すべきではないか、このように考えますが、外務大臣の所見を伺いたい。
  110. 三木武夫

    三木国務大臣 沖繩は、御承知のように施政権を日本は持っておりませんから、条約上には、そういうことは可能であることは申すまでもない。B52が沖繩の基地におるということ……。しかし、いろいろ住民に対して不安な感情を与えておることは事実でございます。昨日、アンガー高等弁務官に対して、佐藤総理も、住民の不安という見地から、この善処方に対して要請をしたようであります。アンガー高等弁務官も、これはもう、時期は約束はできないけれども、そういう極東情勢等もにらみ合わすのでしょうが、撤去という方向検討をされることに、そういう意味の返答があったように承っております。時期を明示したのでありませんよ。しかし、永久に沖繩の嘉手納飛行場をB52の基地にする意思はないので、そういう情勢等ともにらみ合わして、B52の撤去については考慮をされるということであったと聞いております。
  111. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 報告というか、聞いたわけでございますね。外務大臣として、やはり日米会談等も常時あるわけでございますから、その席上でも、当然住民の意思を尊重されて主張すべきではないか、このように考えますが、御所見を伺いたい。
  112. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、私自身からもアメリカに対しての善処を要請いたしました。その後も機会があるときに、このB52の問題は話に出るわけでありますが、その場合に、正式にアメリカからB52の永久の基地にする意思はない、そういう話を正式にアメリカ政府の意思として伝えておるわけでございます。B52があの飛行場に移駐したときとは極東情勢は変化も起こっておりますので、B52は、時期の点ははっきりは申せませんけれども、将来撤去されることは間違いがない、こう考えております。
  113. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に外務大臣に伺いたいのですが、ケネディラウンド妥結して貿易拡大に向かおうとしているやさきに、米国の国際収支の悪化からゴールドラッシュが現出し、ドル不安が深刻なものとなる一方、米国輸入課徴金、また数量制限等の動きもあると伝えられております。これはわが国輸出に暗い影を落としているのではないかと思います。この際、わが国貿易地域の転換を真剣に考えなければならないわけだと思います。その意味においても、七億の人口を有する中国との貿易拡大をはかることが最善の道ではないかと考えるわけであります。そこで、最近のジョンソン大統領のアジア政策の転換のきざしからも、中国との友好関係を樹立して、政府貿易協定を結んだらよいのではないか、このように考えられますが、大臣の将来の見通しを伺いたいと思います。
  114. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほど申し上げましたように、政治形態のいかんを問わず貿易拡大していこうという方針であります。しかし、日中貿易政府協定をやって貿易拡大をせよということですが、いまのような民間貿易の形態で中共貿易拡大をはかりたいと考えております。
  115. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 またあとで述べますが、中国との友好関係を増進するためには、まず人事交流を円滑にしていくべきではないか。また、友好貿易代表部の相互設置も考えてもいいと思うわけです。たとえばソ連なんかについては、日本相当大きな代表部が実際設置されているわけでありますが、中国の場合は非常に小さいわけであります。その点についての大臣の所見を伺いたいと思います。
  116. 三木武夫

    三木国務大臣 中共貿易拡大の傾向にあると思います、長い目で見れば。したがって、いろいろな改善を加えていかなければなりませんが、現在のところ、いまのLT事務所、こういうことで貿易拡大していく方向努力したい、こう考えております。
  117. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほども同僚議員からお話がございましたが、人事交流については、わが国から中国に対しては一万人近い人たちが訪問しておる。反対に日本に来ている人たちは約二百人程度である。非常に格差がある、このようにもいわれております。こういう点についてどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  118. 三木武夫

    三木国務大臣 人事交流ということは、私はいいことだと思います。各国が人事を交流して、そしてその人事交流に対して——日中の人事交流でもいろいろな障害が起こってくるわけですね。両国が国交を回復していない困難なときに交流するのですからね。その立場をお互いに理解し合って、礼儀正しい人間の交流というものをお互いにくふうするということにすることが、人事交流を円滑に持っていく道だと思います。日中の青年交流についても、いろいろ考えなければならぬ点がたくさんに私はあると思います。そういう障害をできるだけなくしていこうという努力日本も中国側もすることによって、青年交流というものを円滑にしていくくふうが必要である、こういうふうに思っております。
  119. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それについても、いままだ国交は回復してないわけであります。ソ連の代表部は非常に大きいわけです。それに比べまして、中国は非常に小さいわけです。これも政府の許可があれば、おそらく中国の代表部は相当大きく、あるいはソ連と同等に日本に代表部を置くかもしれないわけです。なぜそういうように許可されないのか、大臣の真意を伺いたいと思います。
  120. 三木武夫

    三木国務大臣 中共の代表部を置きたいという話は聞いておりませんが、ソ連は日ソ共同宣言によって、平和条約締結されておりませんけれども、やはり相互に大使を交換して、日本からもソ連に対して在外公館を幾つか持っておるわけでありますから、ソ連の場合と中共の現状を比較して不公平ということは当たらないと私は思います。
  121. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いままでもございますように、LT貿易等においては、ソ連と中国と比べてみますと、ずっと中国のほうが多いわけです。したがって、そういう点からもやはり認めるべきじゃないか、このように思いますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  122. 三木武夫

    三木国務大臣 どうも金額ばかりでもいかぬ点もあるわけですね。金額が多いからというばかりで……。ソ連などとは国交を回復しておるわけですからね。平和条約はできてないが、国交回復しておるのでありますから、それに比べて、貿易の金額が多いというその角度ばかりでも、政府の在外公館というものの設置については、そういう角度からばかりは考えられませんので、いまのところ中共側からそういう希望も聞いておりませんし、中共の通商代表部を東京に置くということは現実の課題ではありません。
  123. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえば中国からそういう希望があれば考えるということでございますか。
  124. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろ仮定をして、それにお答えすることは適当でないと思います。
  125. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 一部商社の間では、特に両国の商品陳列館とでもいうべきものを設置して、今後どんどんとそういう交流をはかりたい、こういう話も聞いておりますが、それについて大臣のお考えをお聞きしたい。
  126. 三木武夫

    三木国務大臣 各地において見本市はやっておるわけですから、そういういま言われるような目的というものも、相当大規模に達しておるのじゃないでしょうか。
  127. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に移りますが、西ドイツや英国などはココムの禁輸品を中国に大量に輸出しておると聞いております。わが国もこの際ココムを撤廃すべきじゃないかと思いますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  128. 三木武夫

    三木国務大臣 いまお話の、イギリスとか西独がココムの規定を全然無視するくらい共産圏貿易をやっているというお話でしたけれども、私どもはそういうふうには承知していないのでございます。しかし、ココムの規定については、椎名通産大臣も国会で、これは検討を加えようということを言っておられますので、通産省が中心になって検討をいたしておることと考えております。
  129. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 さらに、中国との貿易を伸長させるためには、輸銀使用に踏み切るべきではないかと考えられます。これは中曾根運輸大臣と、吉田書簡については消滅した、こういう発言がありましたし、また佐藤総理もこれを否定しなかったし、肯定したのではないかというふうにも報道されております。しかし、その後の答弁等を聞いておりますと、まだはっきりしないわけでありますが、大臣のお考えをお聞きしたい。
  130. 三木武夫

    三木国務大臣 輸銀使用につきましては、具体的な問題が起こったときに、いろんな角度からこれに検討を加えるのを許すということにしたらいいと私は思っております。
  131. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 吉田書簡については。
  132. 三木武夫

    三木国務大臣 吉田書簡というものは、個人の出した書簡でありますから、だから、吉田書簡が両国間の取りきめのような拘束力を持つものでないということは明らかでございます。
  133. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは中国貿易にとっては非常に有害になっておるといわれております。完全に撤廃する考えがあるかどうか。
  134. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、吉田書簡を撤廃だの緩和というのはおかしいことではないか。撤廃するとか緩和するとか、両国で取りきめたものでもないのに、そういうふうに言うことが私はふしぎなんです。だから、私は、吉田書簡撤廃とか緩和とか、そういう論理にはくみしない。いろいろ総合的に判断して、個々に輸銀使用の具体的なケースが出てきたときに、政府判断を加えて、ノー、イエスを言えばいい、こういう考えであります。
  135. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、大臣のいまの所見については反対であります。なぜならば、これから貿易拡大していく。確かに佐藤総理も、中国とは政経分離でやっていく、しかし、一つは吉田書簡であるとか平和条約は別にして、こういうふうに答弁なさっております。しかし、それは別にできないものであります。ということは、いまも言いましたように、その書簡によって、条約と同じようにそれが有効に働いて、そして実際にはその貿易の障害になっている。そういう事実からいっても、私は問題であると思います。大臣の率直な答弁を伺います。
  136. 三木武夫

    三木国務大臣 私はやはりそのようには思っていないのです。あれをいつまでもそのままにしておいて、撤廃しなければならぬ、緩和しなければならぬ、吉田書簡をそういうふうには思っていないのです。だから、私は率直に申し上げたのであります。
  137. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 相手がどう考えようとも大臣はそういうふうに思わないというわけですね。わかりました。  それでは次に移りますが、通産省の問題ではないかと思いますが、中国からの食肉輸入の禁止を解除する考えがあるのかどうかということであります。最近食肉が非常に値上がりしておりますし、これを押えるためには、現在禁輸しております政府の方針を変えるべきではないか、このように考えるのでありますが……。
  138. 三木武夫

    三木国務大臣 これは口蹄疫とか技術的な問題があるようですから、そういうことで農林省から答弁いたします。
  139. 増田甚平

    ○増田説明員 戦前、中国の大陸におきましては、御承知のように口蹄疫であるとか、牛疫ですか、そういう病気がございましたので、家畜伝染病予防法に基きまして、食肉等は輸入禁止になっておるわけでございます。戦後、中共の時代になりましてからのそういう病気の現状等、必ずしも明らかになっていないという状況になっておりますので——民間の団体による調査等は若干行なわれたようでございます。ただ、私どもとしては、まだ十分安全であるという状況になっておりませんので、今後ともそういうような調査を進めて、病気がなくなった、安全であるというようなときになりましたならば、家畜伝染病予防法に基づく輸入禁止ですか、これを解除していきたい。現在はそういう病気の問題がございますので、輸入は禁止している状態になっております。
  140. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一問聞きたいのですが、安全でないと言われる具体的な問題点を教えていただきたいと思います。
  141. 増田甚平

    ○増田説明員 問題点としましては、一つは、過去における口蹄疫の発生状況とその実害の程度、これが必ずしも明らかになっていない。第二点は、いままで行なわれました口蹄疫の撲滅方法の具体的な経過ですが、これを必ずしもはっきり私どもつかんでおらない。第三点といたしましては、口蹄疫のワクチン、これの性状とか種類、製造法あるいはその使用目的等、これが必ずしもはっきりしない。こういうふうな技術的な点がまだ若干詰め切っておりませんので、先ほど申し上げましたように、絶対に安全だというふうにいま考えていないということでございます。
  142. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣に伺いたいですが、やはり先ほどから言いましたように、中国との友好関係の樹立を阻害しておるものは、台湾との平和条約であるということは、すでに御存じのとおりだと思うのです。このために、政府は中国との正常関係に踏み切れないでいる、このようにも思えるわけです。また、中国を承認することになれば、二つの中国を認めるという形にもなるから、やはり現在としては現状どおりというふうに広いっておるようでありますけれども、しかし、いわゆるジョンソン大統領のあの声明以来、米国の中国政策も転換しつつある。ベトナムの和平のきざしから、そのようにも考えられるやさきでもあるわけです。したがって、積極的に今後中国との友好関係樹立のための姿勢、外交路線というものを打ち出すべきじゃないか、このように思うわけです。大臣の所見を伺いたいと思います。
  143. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、いまアメリカが中国政策を転換しつつあるとは見ていないのです。国際関係というのは、常に流動、変化というものがあるわけでありますから、むろん将来において変化がくる日もあるでありましょう。しかし、アメリカがどうあろうとも、日本アメリカよりももっと深い関係を日中関係に持っているわけです。地理的にも歴史的にも文化的にもいろいろ持っているわけです。経済的にもそうです。したがって、現在できることとできないことがあるが、できることの範囲内において、できるだけ関係を改善していこうという努力をすることは、もう当然のことだと思っております。
  144. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私の質問は以上で終わります。
  145. 秋田大助

    秋田委員長 松本善明君。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に若干お伺いしたいと思います。  この関税一括引き下げをなぜアメリカが提唱したとお考えになっておられるか、外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  147. 三木武夫

    三木国務大臣 これはケネディ大統領のときに提唱されたわけですが、やはり世界貿易拡大しようという——これはいろいろそれに矛盾することをその後アメリカがやっている場合があります。しかし、全体としてのアメリカの目標は、自由貿易による貿易拡大というのがアメリカ政府の方針であることは、これは事実でしょうね。EECもでき、そうしてそういうことで関税一括引き下げによって世界貿易拡大し、経済成長を高めていこうという、そういう最初の意図というものは、やはりかなり理想主義的な面があったと私は思っております。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま外務大臣EECのことを言われましたけれども、EECの中にアメリカが進出をしていくという考えはあったのではないでしょうか。
  149. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま先生指摘のとおり、アメリカのケネディ大統領関税一括引き下げというものを提唱いたしました一つの考慮の中には、確かにEECというものができる——EECは御存じのとおり、域内関税が全部なくなりまして、そうして対外関税が共通関税になるわけでありますから、その対外関税を大きく引き下げることが、結局世界貿易拡大につながるということを考えたことは御存じのとおりだと存じます。しかしながら、先ほど大臣が申し上げましたように、本来自由貿易というものを提唱して、世界貿易拡大に熱心なアメリカとしましては、そういう点からも、さらにはEECの設立ということも一つの考慮に入っているというふうに考えるわけでございます。
  150. 松本善明

    ○松本(善)委員 あの当時、アメリカは非常に妥結を急いだのでありますが、その妥結を急いだ理由、それはどういうところにあるというふうにお考えになっておりましょうか。
  151. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 先生承知のとおり、ケネディ大統領は、通商拡大法というものを一九六二年に成立させました。その通商拡大法は五年間の期間であったわけでございまして、その通商拡大法の権限によりまして、関税一括引き下げということを実施しようとしたわけであります。通商拡大法の期限が五年でございますので、一九六七年の六月末にそれが切れるということでございましたので、妥結を急いだということはございます。また、なるべく早く関税一括引き下げというものが実現すること自体は、アメリカのみならず、それに参加いたしました各国日本も含めて非常に有益であったというふうに考えるわけでございます。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に伺いたいのですが、アメリカの国際収支あるいはドル危機の問題とこれは関係なかったのか、この点については外務大臣はどう判断しておられますか。
  153. 三木武夫

    三木国務大臣 ケネディ大統領が提唱したときは、アメリカの国際収支あるいはドル防衛との関連においてこういうことを提唱したものではない、こう判断しております。
  154. 松本善明

    ○松本(善)委員 妥結の時点においてはいかがでしょうか。
  155. 三木武夫

    三木国務大臣 直接には関係はないと思いますが、間接的にはいろいろ考えれば関係がないとは——経済的な諸問題というのは、いろいろな相互関係を持っておりますが、直接的な関連があるとは思いません。
  156. 松本善明

    ○松本(善)委員 一九六七年五月十七日のニューヨークタイムズの社説では、世界貿易自由化によって最大の利益を受けるのは、世界最大の輸出国たるアメリカであることを忘れてはならないということが出ております。この関税一括引き下げということで、やはり一番大きな、一番強い資本主義国であるアメリカが、一番大きな利益を得るだろうということは容易に考えられるわけでありますけれども、この点についての外務大臣の御見解はいかがでしょうか。
  157. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカにもなかなか抵抗があったんですね。ですから、ケネディラウンド妥結したあとに保護貿易主義的な動きも出てきて——それはアメリカ輸出貿易の点については、関税引き下げられるということは非常にプラスの面もありましょうが、また、やはりアメリカに対する各国輸入という面でも、これは増大する傾向がありましょうから、アメリカだけがこのケネディラウンド妥結によって得をするというふうな計算はないと私は思います。これは、やはり関税障壁が撤廃されていくことになれば、各国とも公正な競争が行なわれて、そのことは、やはり各国に対して長い目で見ればプラスになる。アメリカだけが利益を受けるからこういうふうな提唱をしたというふうにケネディラウンドを見ることは、少し片寄った見方ではないかと思います。
  158. 松本善明

    ○松本(善)委員 長い目で見ればプラスになるというふうに言われたわけでありますが、当面はいかがでしょうか。
  159. 三木武夫

    三木国務大臣 当面でも、このケネディラウンド交渉は個別的にも非常にやって、みなギブ・アンド・テークですから、そんなに各国とも損をするようなことにはなっていないということで、各国ともそろばんをはじいてみて、こちらのほうが譲許したのに対して、相手もまた譲許するから、各国とも利益を受けるというわけで、このケネディラウンドアメリカだけがテークということではないので、やはりギブ・アンド・テークという一つのバランスがとれてこれが妥結したものだと思います。
  160. 松本善明

    ○松本(善)委員 アメリカだけというふうに言っておるのではないんですが、アメリカが最大の利益を得るのではないかというふうに考えているのですが、いかがでございましょうか。
  161. 三木武夫

    三木国務大臣 貿易のスケールが大きいですから、そういう意味において利益するところも大きいでしょうが、スケールが小さい国は、小さいスケールにおいてみなやはり利益するのですから、スケールの点からのみ、アメリカが最大の利益者であって、何か利益を独占するような考え方は、これは偏見だと思います。
  162. 松本善明

    ○松本(善)委員 アメリカは、先ほど外務大臣も直接的とは言わなかったけれども、ドル防衛にもプラスになるし、それから海外進出を多くするという利益を得ると思うのです。いま外務大臣の言われましたギブ・アンド・テーク、日本は一体どういうテークを得たのか。これは大まかに言えば何と何ですか。
  163. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 特にアメリカだけに関係いたして申し上げますと、先ほど石野委員の御質問のときにもございましたが、日本が与えた譲許は一九六四年ベースで約十一億六千万ドル、それに対しましてアメリカから得た譲許というものは十二倍三千万ドルということでございます。しかしながら、先ほどお答え申し上げましたとおり、日本の場合には、そのうち、譲許をいたしましても、アメリカ等から食糧を原材料で輸入しておりまして、この場合には大部分無税でございます。したがいまして、譲許の十一億六千万の中に、無税の据え置きというのが二億八千万ほどございます。したがいまして、新しく出すという意味での譲許というのは、それだけ少ないわけでございまして、他方、日本の場合は、御存じのとおり製品、半製品の輸出が大部分でございますから、相手国の関税が下がれば、それだけ日本輸出に対する利益というものが多くなるということは、当然おわかりいただけるかと考えるわけでございます。
  164. 松本善明

    ○松本(善)委員 あるいは大蔵大臣のおられるときのほうがいいのかもしれませんけれども、その話が出ましたので、ちょっとお聞きしておきますが、日本アメリカ輸出をしておるもののおもなものはどういうものか、それからアメリカからの輸入品はどういうものか、双方の関税を比較をしてお答えいただきたいと思います。
  165. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 わが国からアメリカ輸出いたしております大きなものといたしましては、繊維関係が昨年の実績によりますと、約三十億ドルくらいのうちの三億七、八千万ドルでございますし、さらに鉄鋼関係がかなり大きなウエートを占めております。さらに機械、最近におきましては自動車等も非常に大きく伸びておりますし、さらには電子機器、こういったものが非常に多いわけでありまして、どちらかといいますと、一次産品、原料的なものは非常にウエートが小さいわけでございます。若干の食糧、水産物だけがございます。それに対してアメリカから輸入しておりますものは、御存じのとおり、農水産物関係は約十億ドルございますが、食糧、小麦とか大豆とか、あるいは木材等がございますし、綿花等も入れますとさらに大きくなってまいります。日本の対米輸入のほとんど半数以上がそういうものになるかと考えるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたとおり、日本の製品、半製品に対する関税というものが下がりますれば、非常に大きく日本輸出が伸び得るということでございますし、現実に日本輸出の伸び率というものは、ほかの国に比べましてかなり高いわけでございます。先生も御存じのとおり、大体世界輸出の伸び率を七%ぐらいまでにいたしますと、弾性値が二倍以上ということになっておりますので、こういうことを考えますと、よけいに日本にもたらす利益が対米関係だけから見ましても、かなり大きいというわけであろうかと考えます。
  166. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本の対米輸出品、これはおもに工業製品が多い。この関税相当高いものでしょう。日本輸入品の関税は低い。この間に格差があるということは御存じのとおりであります。この格差の是正は、この交渉の中で何もなされなかったのではないかと思いますが、どうでしょうか。一括引き下げだから当然だといえばそうかもしれないけれども、この格差是正には何のプラスにもならないというものではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  167. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ケネディラウンド交渉過程におきまして、一括引き下げ前提としての、すでに存在する関税格差がございます。これはいろいろと討議されました。たとえば鉄鋼その他につきましても、そういう点が討議されたわけであります。したがいまして、全然考慮に入らなかったというわけではないと私どもは考えておるわけでございまして、アメリカの、日本からの輸出に対する関税平均は一八・二%程度でありますが、これが今度の関税引き下げによりまして約一〇・七%の平均関税のレベルになるというわけでございます。他方、日本輸入のほうにつきましては、大体一七%程度だったものが一〇%ぐらいのレベルになるというわけでございます。
  168. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっとよくわからないのですが、一括引き下げで、どういうわけで関税格差の是正が考えられているということになるのですか、それを具体的に説明してほしいのです。
  169. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 関税格差の是正に関連して出てまいりましたのは、必ずしも全部の品目につきまして五〇%下げたわけではございません。ものによっては二〇%あるいは一五%ぐらいの引き下げというものもございます。相手の国が関税の高い場合には、相手はほかの品目についてはたとえば五〇%下げ、日本の場合には三〇%下げるという考え方もあったわけでございます。そういう意味で、関税格差もある程度考慮に入れられたというふうに考えるわけでございます。
  170. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本アメリカとの関係でどういうふうに縮まったのかということを具体的に説明してもらいたい。
  171. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 個々の具体的品目につきましては、いろいろとそれぞれの国、日本の場合あるいはアメリカの場合で、関税の率がもちろん違うわけでありますが、先ほど申し上げましたとおり、アメリカ輸入関税の平均のレベルというのが一八・二%ぐらいでありますし、日本の場合には約一七%程度であります。そして今度それぞれ大体一〇%程度まで下げるわけでありますので、そういう意味におきましては、個々の品目によりましてはいろいろ格差がございますが、全体の平均のレベルとしましてはあまりそういう点についての格差がなかったし、また今後の機会におきましても、その格差を大きくするということはないというふうにいえるのではないかと思います。
  172. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、今度のケネディラウンドで是正がされたというのではない、いままで格差がなかったのだ、こういうことをいま言われておるのですか。
  173. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 アメリカの場合には、そういう意味において、大体において一七%から一八%ばかりでございますので、若干においてそれらの多いところがあり得ると思いますが、全般の概略論といたしましては、先生のおっしゃるとおりだと思います。
  174. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、関税の面では、特別にこの条約によって日本利益を得たということはないわけですね。
  175. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいまの御質問は、対米関係ということであろうかと存じまするが、関税の率が下がるということは、全般の水準が下がることは、これはやはり日本にとって利益でありますし、これは相互の問題かとも存じますが、日本の場合にはよけい輸出の伸びがそれだけ高いわけでありますから、ほかの国に比べまして、受ける利益というものがしたがってそれだけ多くなるというふうに当然いえるのではないかと思います。
  176. 松本善明

    ○松本(善)委員 この委員会でもすでにだいぶ問題になっておりますが、非関税障壁の除去ということについては、政府はこの経過でどういう努力をし、どういう成果があったのかということをお聞きしたいと思います。
  177. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 御指摘の非関税障壁につきましては、わが国主張によりまして、一九六四年でございましたか、ガット大臣会議の際に、ケネディラウンド交渉の三本の柱の中の一つになったので、非関税障壁もこれの除去に努力するのだということになったわけであります。その観点から、ケネディラウンド交渉におきましては、各国に具体的に十分働きかけたわけでありますが、結果といたしまして、御存じのダンピング防止法関係の国際コードというものがまとまりまして、これは非関税障壁除去の大きな一つのステップだと考えるわけであります。あと、いわゆるアメリカの特殊な関税評価制度とか、あるいはヨーロッパ諸国等の対日差別とか、あるいはバイアメリカンのような非関税障壁、こういうものにつきましては、必ずしも進展はケネディラウンド交渉自体におきましてはなかったわけでありますが、これと並行いたしまして、各国との間にいろいろと二国間交渉もやりまして、かなりの進展はその後も見つつあるという状況であるわけでございます。
  178. 松本善明

    ○松本(善)委員 ダンピング防止の問題ですけれども、この条約によって、アメリカの現行ダンピング防止法が、これは変わるのか、これはどういう影響アメリカに対しては持つのか、その点をお聞きしたいと思います。
  179. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 現在、アメリカはこの防止法自身を変える意図はないわけでありますが、それの運用の改善というものが期待されておりまして、もちろんアメリカはこの国際コードに従って運用していくというふうになりますので、アメリカとの関係におきまして、日本がその面で受ける改善という点におきましては、たとえば提訴の要件といたしまして、ダンピング、いわゆる通常価格よりも下回っているということの証拠のほかに、今後は損害——もちろんアメリカは損害ということも一つの要件にいたしておりますが、その損害の証拠もはっきり具体的に提出しなければならないということになりますし、またさらに、いままで特に日本輸出に対しまして制限効果を持っておりました、ダンピング容疑がある場合に関税評価を差しとめるわけでございますが、関税評価を差しとめますと、日本輸出がそれだけ不安定になりまして、したがって、輸出が伸びないということが一番問題だったわけでございますが、今度はそういう関税評価の差しとめにあたりましても、損害の証拠が十分あるということが一つの要件に加えられてまいりましたし、また、従来は無制限に評価の差しとめ期間が続いたわけでありまするけれども、今度の国際コードによりますと、評価差しとめは三カ月間というふうに限定されるようになっております。また、従来は評価差しとめが遡及適用されておりましたのが非常に障害でございましたけれども、今度の国際コードによりますれば、そういう遡及して評価を差しとめるということは認められないということになります。こういう点で、かなり改善を見るということになろうかと考えます。
  180. 松本善明

    ○松本(善)委員 この条約のできることによって、むしろ、これに従ってやれば、もっとダンピング防止法の強化ができる、いわば合法的な根拠を国際的に与えられた、あれで規制をしておるようだけれども、あれにのっとってやる限りは、ダンピング防止という名のもとに非関税障壁としては相当強力なものになる、こういう意見がありますけれども、これについては政府としてはどういうふうに考えておるのですか。
  181. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 あるいはただいま先生指摘のような御意見があろうかとも存じまするけれども、少なくともダンピング防止法関税適用にあたりましての要件がきびしくなるわけでありますから、したがって、どうしてもその乱用ということもしにくくなるということではないかと思いますので、私ども政府の見解といたしましては、これによって、各国ダンピング防止関税適用が統一的な基準に従って改善されてくる、そういう意味では非常にプラスになると考えておるわけであります。
  182. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本経済新聞などの論調でもアメリカでは現行ダンピング防止法を強化をするという保護主義の動きが、議会で現実化してきておるというような論調を出しております。こういうような論調は政府は無視をしておるというか、考えていないのですか。これができればもう安心だというような考え方でいるとすれば、たいへん甘いと思うけれども、いかがでしょう。
  183. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、先生も御存じのとおり、ガットの第六条で、すでにダンピング防止税の問題が出ておるわけでありますが、問題は、それの運用にあたりまして、必ずしも各国一律といいますか、統一された基準で行なわれていなかった、ある国によってはかなり恣意的に行なわれていたというところに問題があったわけでありまして、今度の国際コードによりましては、そういうことがなくなるわけでありますので、非常に改善だと考えておるわけであります。また、先生指摘のとおり、アメリカ議会のほうで現在ダンピング防止法というものを改善する——改善するといいますか、強化する動きがあることも事実でございますが、これに対しましては、行政府のほうは、いま国際コード精神に従っていこうという形でもって、これに同意を表明していないわけでございます。
  184. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵大臣がお見えになったので、大蔵大臣にお聞きしたいと思います。  先ほどもお見えになる前にお聞きしていたのですけれども、このケネディラウンドによって最大の利益を得るのはアメリカではないかということを御質問しておりました。大蔵大臣の御見解ではいかがでしょう。これは関税が一括引き下げになれば、アメリカ貿易において一番大きな利益を得るということになるのではないか、こういう趣旨です。大蔵大臣としてはどういう考え方でおられるか。
  185. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 各国が自分で関税譲許をすると同時に、それに見合ったものを相手に譲許を求めるということで、みんな話し合いがきまっていっているのですから、各国別にどこが一番得するかと言われても、おそらく各国別にみな均衡がとれた形でなければ妥結しないものでありますから、この問題については、全体が全体として利益になるということであって、特定国が特に有利ということはないのじゃないかと私は思います。
  186. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうお答えになると、多少逆戻りをするのですけれども、先ほど外務大臣は、アメリカ貿易のスケールが一番大きいので、そういう点ではアメリカが一番利益を得るかもしれぬという趣旨発言をされたのであります。ニューヨークタイムズも、先ほど示して申したのですけれども、やはり最大の利益を得るのはアメリカだということを忘れてはならぬということを論じております。そうすると、大蔵大臣のお考えでは、そういう考えは間違いだということでありますか。
  187. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうではございません。そういう形で妥結したものですから、国別にどこが有利ということにはなっていないというのが原則でございます。現に日本あたりにしましてもそうでございますが、実際には今度のケネディラウンド日本に有利か不利かといいましたら、大体有利ということになっておりましょうし、アメリカの場合も、これは貿易規模が非常に大きいのですから、大きい国が比較的有利なものを持っておるということは、これは一般的には言えるんじゃないかというふうに考えております。
  188. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵大臣のおられる時間はそう長くないと思いますので、お聞きしておきますが、なるほど工業製品の輸出については、対米貿易日本利益を得るかもしれない。しかし、日本に入ってきます農産物という点では、この結果日本の農業が大きく脅かされるという問題があると思いますが、その点については大蔵大臣は、この点でもやはり日本利益になっている、こういうふうにお考えですか。
  189. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ケネディラウンドの問題におきましては、農産物のような点も、特に日本の不利にならぬように考慮されておりますので、そういう御心配はないと思います。
  190. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは具体的にお聞きいたしますが、この関税引き下げによって輸入増大するというふうに思われる農産物は何であるか。現実に関税引き下げによって増大するもの、それからその他の影響によって増大するだろうと考えられるもの。
  191. 増田甚平

    ○増田説明員 現実にと申しましても、先ほど御説明もあったろうと思いますけれども、私ども、関税引き下げによってどういう品目がどういうふうに伸びるかという、いわば計数的な計算はやっておりません。これはもちろん貿易障害一つであります関税の下がることによって、輸入量増大することは予想できますけれども、どの程度という、数量的といいますか、これは予想されない。それから、先ほども質問に関連しまして大臣からお答えありましたように、私どもとしては、日本農業への悪影響とはならないような形で関税引き下げ譲許したということになっておりまして、たとえば日本農業の根幹といわれております米麦でございますとか、あるいは酪農品、それから成長部門である果樹の一部、こういうものについては譲許しておりません。譲許したもののおもなものは何かということでございますけれども、たとえば大豆のように、これは農産物であると同時に、油脂の原料であるというものでありますとか、あるいはコーヒー豆であるとか、ココア豆といったように、日本では生産がなくて、しかも低開発国がわりあいに関心を持っておるものということになっておりますので、明確にどの程度輸入量が伸びるかということは、計数的には申し上げられません。もちろん、貿易拡大をねらいとした関税引き下げでございますので、輸入量増大というものは考えられると思いますけれども、わが国農業に大きな悪影響というものは考えられないのではないかというふうに思うわけでございます。
  192. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵大臣、先ほど、わが国にはそういう点でもたいした影響のないようにと考えて妥結されたのだというのは、いま農林省で言ったように、農産物輸入について関税引き下げられてもたいして日本農業には影響ないのだ、たいしてふえないのだという判断をもとにしている、こういうことでしょうか。
  193. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 影響のあるようなものについては、譲許を行なわなかったということでございます。
  194. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは聞きたいのですが、このケネディラウンド国際小麦協定を組み入れた。いままで別であったのがなぜ一つになってきたのか、この理由を御説明いただきたいのです。
  195. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 これは先生も御存じのとおり、一九六三年、六四年の大臣会議におきまして、今度の関税一括引き下げ交渉にあたっては、単に工業製品のみならず、農産物の貿易の安定した流通ということを一つのねらいにいたしまして、そういう関係で、この国際穀物協定というものも中へ入ってきたわけでございまして、本来の目的では、小麦食糧のほかに、酪農品とか牛肉等につきましてもそういうことをやる考えであったわけでありますが、こちらのほうは落ちまして、たまたま小麦協定というのが現在ありますが、それにかわるものとして、国際穀物協定というものが同時に扱われるようになったわけでございます。
  196. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは食糧援助の協定が、この小麦にさらにくっついてきた、これはどういうわけなんでしょうか。
  197. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 その点は、先生も御存じのとおり、最近になりまして、いわゆる食糧援助というために回し得る余剰食糧というものが、アメリカにおきましてもかなり底をついてきたということで、今後輸入食糧というものはやはり大事であるので、それをやる以上は、必ずしも輸出国のみならず、輸入国も若干負担すべきではないかという考え方一つ。それからもう一つは、従来の小麦協定におきまして、それの中で規制されます普通の小麦貿易のほかに、いわゆる食糧援助という形でいろいろと貿易が行なわれていたわけでありますが、それが通常の小麦貿易あるいは穀物貿易というものに及ぼす影響というものも無視し得ないという観点から、むしろ豪州とかあるいはアルゼンチンとか、そういう国の、そういう食糧援助という形でいく小麦の流れというものを、全体の小麦協定あるいは穀物協定の中で考えるべきであるという主張が出てまいりました。その両面から、この食糧援助の問題が穀物協定の中に取り入れられてまいったわけであります。   〔委員長退席小泉委員長代理着席
  198. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまの答弁では、アメリカの余剰農産物が底をついてきた、それの肩がわりということが政府の口からも言われたのだと思いますが、大蔵大臣、お聞きしたいのですが、そうすると、輸入国であります日本が食糧援助をしなくてはいかぬ、この点については、どういう考えでこの問題に対処をしておられるのか、お聞きしたいと思います。
  199. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう御承知と思いますが、日本は留保いたしまして、日本の立場において援助に協力するということを外国も認めてくれたといういきさつになっております。
  200. 松本善明

    ○松本(善)委員 その留保しておる点は知っておりますけれども、このアメリカ合衆国政府にあてた書簡の中でも、五%の割り当てにひとしい額の援助をする、それから米を除外しないで、食用穀物またはその他の農業物資の形態で援助するということを約束しておるわけですけれども、その援助の相当な部分を食用穀物の形態で拠出をするということになっている。やはり食糧援助は一切しないのだということではないと思うのです。食糧輸入国である日本が、アメリカの肩がわりの食糧援助をしなければならないというふうに考えられた根拠、考え方、それからその相当な部分というのは、どのくらいのことをいうのか、それを大蔵大臣に聞きたい。
  201. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御指摘のとおり、この書簡において、わが国国際穀物協定の食糧援助規約の第二条を全部留保いたしまして、そのかわりに、政府としての、国としての意図表明を行なったわけであります。この中で、米を含む食糧によって相当部分を援助を行なうということを意思表明いたしております。特に米を含むというところに非常に意味があるわけでありまして、わが国といたしましては、小麦の大きな輸入国であるので、外国から小麦を買ってそれをもって援助するということはとても考えられないことであります。しかしながら、米による食糧援助ということは、過去にも別途実績がございますし、そういう観点から、米を含む食糧による援助、また相手国の要請によりましては、食糧のみならず、農業用物資、いろいろ農薬とか肥料とか、そういうことによりまして相手国の農業増産に寄与することが・また非常に大事であるというわが国経済援助の一つの立場も、そういう意味で貫いてきたのではないかという考え方でありまして、何もこれはアメリカの肩がわりでやるということではございませんで、日本自身の独自の判断によってやろうというわけでございます。
  202. 松本善明

    ○松本(善)委員 ここで中断いたします。
  203. 石野久男

    石野委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、ケネディラウンド実施に伴っていろいろのいい面と悪い面とがある。先般、関税定率法の改正のときに、大臣に、国定税率の改正の問題でいろいろお聞きしました。その節、大蔵委員会は附帯決議をつけたわけです。あの附帯決議で、特に対中国問題で出てくるトラブルの解決をすることを院は政府に対して要請したし、政府もその附帯決議を受けて努力するということであったのですが、実際なにすると、税率の改正というのは年度ごとに変わっていきますから、ことし変えられたものを操作していくと、もう来年までは救済手段がないという実情が出てきますね。対中国関係の商社筋はその間に耐えられないという実情が出てくるわけです。けさほども実は外務大臣にその点はお話ししたのですが、こういう問題を放置しておくと、日中関係で仕事をやっておった商社というのは、みんなつぶれてしまうという危険が出てくる。こういう点についての救済の手段は、この附帯決議の趣旨の中からどうしてもやってもらわなければならぬということになっているのですが、事務局で聞いたら、それはなかなかできないということになってきちゃって、大蔵委員会でつけた附帯決議の意味はかいもく根っこなしということになってしまったというふうに私は実は説明を聞いたわけです。そういうふうに取り扱われるのかどうか、この点ひとつ大臣考え方を聞かしてもらいたい。
  204. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あのときも御説明いたしましたが、国定税率改正のときに、前向きに今後解決していきたいということを述べたわけでございまして、いまでもその方針でおります。
  205. 石野久男

    石野委員 その方針でいると、この前の附帯決議ではこういうことになるんじゃないですか。大蔵委員会でつけた附帯決議は、「協定税率が適用されない国との問の貿易が阻害されるような結果にならないよう貿易の振興のため万全の措置を講ずべきである。」という附帯決議であったわけです。この内容というのは、実はるる大蔵委員会のときにも私が申し上げたような、ああいう事情があるので、それに対して善処するということを与野党の理事の問で話し合いがついている、だから、石野君あまり聞かぬでくれ、大体話がついているからということだったわけだ。私も大体そういうふうに理解したから、だから、ケネディラウンド実施することによって、対中国貿易をやっている商社筋が関税格差が出ることによる打撃は、大蔵当局、特に関税当局の配慮によって救済できるという可能性を実はやはり期待しておったのですね。それが全然だめのようだということが、実は私不勉強で最近わかったわけですが、大臣はあのときの気持ちでおるということになれば、実質格差が出る、商社がつぶれていく、倒産するということを救済する手段、方法が全然出てこないということになってしまう。この点どういうふうに配慮するか、それをひとつ大臣に聞きたい。   〔小泉委員長代理退席委員長着席
  206. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府としましては、中共貿易拡大はばかっていきたいということを考えておりますが、今回のようなときに協定税率との間に格差ができてきたということはやむを得ないことでございまして、中共との格差をつけるために協定税率をつくったわけではございませんので、そこに今後いろんな問題は出てくると思いますが、日中貿易拡大するという意味から、国内の状態等国内産業への影響を考えながら、残された格差のあるものを徐々に解決していきましょうということを申し上げたわけでございまして、それを解決するのにはどうしたらいいかと申しますと、まず、やはり政府としてこういう問題を取り上げようというようなことをきめましたら、これを関税議会にかけて、そうして了承を得たものを法律にして国会の審議をお願いするという順序になろうと思いますので、簡単にこれをすぐ解決するという方法はございませんので、これはもう当然そのおつもりだったと思いますが、また私どももそういうふうに申しておったわけでございますが、それ以外のことを考えられたとすれば、これは誤解でございます。
  207. 石野久男

    石野委員 いま大臣からそういうふうに話があると、これは大蔵委員会理事諸君とももう一ぺん話をしなくちゃいけない。ことに附帯決議の内容として盛られたものは、ケネディラウンド税率実施にあたって国定税率との間に差が出る日中貿易の商社が、金額としては二〇%ないし二五%、日中の総額からすればわずかなものですけれども、業種あるいはその商社数からいくと非常に大きいわけですね。品目からいうと五〇%近いものになるわけです。商社をいえば三百五、六十社になってきますから、こういうものの打撃をどういうふうにして救うかというのが附帯決議の内容だったと私は理解しておったわけです。しかし、いま大臣が言われるようなことであるとすると、これは全然救済できない。商社筋は、この附帯決議が持つ意味というのは、そういうような状況が出たときの施策を何か考えてくれるということだというように、ほとんどの商社は理解しているのですよ。したがって、いま大臣が言われるようなことでいきますと、関税定率法を改正するということでまあことしやってしまえば、来年までまる一年あるわけです。その一年の間にこの商社が実質的に打撃を受けて倒産するという実情がもう目に見えているわけです。これはほっておくわけにいかない。これは通産ともひとつ相談しなければいけませんけれども、具体的にそういう問題が出てくるので、私は、いまそれに対するどういう名案があるかわかりませんけれども、やはりこれは何かひとつ考えてもらわなければいけないのじゃないか、こういうように思うわけです。きょうこの時間に、私は大臣に、こうするああするという返事はいただけないかと思いますけれども、少なくともこれについては当面、来年の四月までだめなんだとか来年七月までだめなんだということにしてはまずいですから、具体的な行政措置なり何なりの方法を考えなければ実質的にまずい結果が出るだろうということをけさ外務大臣にも言ったわけですよ。また大臣にも、そのことを何か政府として考えてもらいたい。何かそういう措置をする用意があるかどうか、この際、大臣に聞いておきたいと思います。
  208. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何か商社が倒産するとかなんとか、私どもは、そこまでのこれが問題であるかどうか、こういう実情については調査したいと思います。
  209. 石野久男

    石野委員 大臣、いま中国と貿易している商社というのは約三百三十社くらいあるわけですよ。そのうちで、資本金が二百万円以下というような商社が百六十余社あるわけです。そういうものがこの打撃を一番受けるわけです、実を言いますと。今日たとえば八幡や富士のような大きな鉄鋼が合併していくというような段階で、独占がぐんぐん進んでいくときからいえば、こういう零細企業はどうでもいいというふうに政府が考えているなら別ですよ。こういう零細な商社、これは日中の問題を言うときはすぐ商社だけが出てきますけれども、商社はみんな関連産業を伴っているわけですよ。けさほども、またこの前の大蔵委員会のときにも、政府の答弁では、やはりこれによって国内産業に打撃を与えちゃいけないから、こういうことをよく言いますけれども、実は日中の関係では国内産業が競合する産業があるんじゃなくて、このこと自体で国内産業がつぶれてしまう、こういう状態なんです。この事実はやはり明確に理解してもらわないといけない、こう思うのです。そういうことですから、私は、大臣には、ぜひひとつそういうことも含めて、これに対する対策を政府のほうで考えるという用意だけははっきりここで約束してもらいたいと思うのです。何かの方法を考えなければしょうがないだろうと思うのです。ほうりっぱなしでおくというなら、関税定率法の改正は来年まではしかたがないのだという、味もそっけもないような大臣の答弁であれば、これはまた別ですけれども、この事実がはっきりしているときには、大臣何か考えるべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  210. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、商社の実情も調査いたしますし、それについてどうするかといういろいろなことは考えたいと思いますが、関税でこれを考えるということは、さっきから申し上げているように、これは法律の問題でございますので、そう簡単に便宜的なものがあるというふうには私いま考えていません。
  211. 石野久男

    石野委員 そうしますと、関税の問題でこういう好ましからざる状態が出てくるわけですよ。ところが、関税の問題で具体的に危機がきている、倒産が目の前にきているということがはっきりしているのに、関税の問題で救えないということになると、どういう点でこれらのものに対して手を差し伸べて施策をするか。これは政府としてほうりっぱなしにしておくのか、それともこれを考えてやるのかということの分かれ道でございますから、政府はひとつそれでは関税でできないならどういうことでやりますか。
  212. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 きっき話しましたように、一応検討はいたしますが、実際問題としては私は非常にむずかしい問題だと思います。ですから、これは必ずこういうふうに善処する、よくするということは、いまのところ私からはちょっと言えません。
  213. 石野久男

    石野委員 この問題は、やはり通産大臣外務大臣も一緒にいて論議するほうが私は一番いいと思うのです。大臣が非常に苦しい、やりにくい問題だということは、真実をそのままあけっぱなしで言われているのですから、私はその点はよくわかるのです。だからといって、これをほうっておけないという事実もあるわけです。だから、この問題は、関税の問題ではどうにもできないということになれば、これに関連する産業あるいは商社筋というのはほうりっぱなしで、目の前で倒れていくのを手の差し伸べようも何もないという実情にあるのですから、これは何とか方法を考えていただかないと困るだろう。私は、この審議の中で、特にケネディラウンドというのは、貿易増大するという目的わが国もこれに参加したと思うのですけれども、ところが、それがわが国の中で、特にそういう、これからますます発展しようとするものの芽をつまんでいく、こういうことになるならば、やはりそのケネディラウンドそのもののあり方について検討を加えなければならぬようなことも出てくるわけです、実を言いますと。私は、大の虫を生かすためには小の虫を殺せというようなことでこの問題は見ているかどうかわかりませんけれども、しかし、日中の問題は、大臣も先ほど言われるように、拡大する方向へ行きたいという意向は持っているということもはっきりおっしゃっているわけですから、われわれはそういう日中の貿易を広げようとするときに、具体的にはかえって、いままで政府貿易のない間、民間の友好貿易でせっせせっせと積み重ねてきた諸君を、このケネディラウンド実施によってゆえなくつぶしてしまうという結果が出るということは、これはどうしても政治的に放置することのできない問題だと私は思うのですよ。だから、この問題については何か一つ方法を考えるという方針が出なければ、私もこれは納得できないわけです。大臣は、いま関税定率法ではどうにも手が出ないと言うが、これはどういうふうにしたらいいか、またあるいはここで考えられなければどうするのかという問題ですね。はっきりやはり政府の一もうほうりっぱなしだということでは、どうにも私は引き下がるわけにいかないので、何か具体的に政府が責任を持ってやはりわれわれにお約束してもらえるものを、そういうものをここではっきり示してもらわないと困る。
  214. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、これはもっぱら通産行政の問題じゃないかと思いますので、通産省にもいろいろ考えていただくということにするのがいいんじゃないかと思っています。
  215. 石野久男

    石野委員 そうすると、大臣、これは関税のほうで出た障害を今度は通産が補って、その穴のあいたところを埋めていかなければならぬ。これは通産行政上出てきた倒産とかなんかじゃないんですよ。完全に大蔵当局がケネディラウンドに参加するということから出てくる結果として生まれてくるものなんで、それを通産におっかぶせていくというのは、これは大蔵としてはちょっと身がってじゃないのですか。
  216. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、私どもも十分検討はいたしますが、問題が国定税率の改正という問題に関する限りは、これはそう簡単にいかないので、いまそう申し上げているわけであります。
  217. 石野久男

    石野委員 これは大臣が言うように、国定税率法の改正が伴う限りにおいては、その処置のしかたというのはもう手のつけようがないという状態になっている。しかし、具体的には、この前から言い、いまも言っているように、悪い結果が出ることはもう事実なんですよ。それによってやはり商社筋が打撃を受けるということも事実なんですよ。政府貿易拡大ということをやったにもかかわらず、それがこういう予測せざる事態が出てきている。その原因はどこにあるかというと、もちろん中国はガットに加盟してないからということなんです。しかし、ガットに加盟してないからとか、あるいはまたいろいろと差別待遇があるとか、いろいろな理屈はあるというけれども、政府自身が何かもう少し好意的に考えれば、それを救済する手段が関税の面でもあるのじゃなかろうかということさえもわれわれは実は考えるわけなんですよ。だから、そういうことを全然考えないで、通産行政にまかすということをやっても、これはおそらく通産当局も困ると言うだろうと思うのですよ。手の施しようがなかろうと思うのですよ。何かひとつ政府の中で、この問題に対する連合対策委員会のようなものをつくるとかなんとかして、具体的にはそれによって倒産が起きないような歯どめをどこかでしてもらわなければいけない、こういうことだろうと思うのです。そういう対策委員会なり何なりをつくる用意があるか、大蔵大臣としてそういうことに対しての考え方はどうか、ひとつこの際聞かしてもらいたいと思います。
  218. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それをするのには、やはり実情をつかまないと対策は出てこないと思います。この問題は、やはり政府で実情をよく調査する、さっき外務大臣もそういうお答えをしたそうでございますが、それからいろいろの対策を考えるということが必要じゃないかというふうに考えております。
  219. 石野久男

    石野委員 私は、こういうこまかいことでなるべく時間をとりたくないのだけれども、実質上の問題からいいますと、外務大臣が実情を調査するというのと、大蔵大臣が実情を調査するというのと、内容がずいぶん違ってくるわけですよ。大蔵大臣のほうは、関税を課するということの中から出てくる、その直接の関係部署なんですよ。外務のほうは、やはり条約上の取り扱いとかなんとかいうことで、問題の当たり方というものは、間接的と言っては悪いですけれども、そういう関係になります。ですから、外務大臣が実情を調査するというときの受け方としては、私はそれはまあということで一応は受けるけれども、大蔵大臣にそう言われて、しかも大蔵大臣は、それは通産の行政ですから通産にまかせますというふうな形で答弁されると、ちょっと私もあとがおそろしくなってしまう。これはほうりっぱなされちゃうという感じになる。むしろ、やはりこれは、具体的なる事象というものは皆さんが調査しなくとも、現実に目の前で倒れていく何はおるのだから、これはひとつ——その調査といいましても、官庁の調査だけだったらこれはとてもだめだと思うのです。むしろ、具体的に商社の自身の声をそのまま受けとめてくれないと、従来の調査でいきますと、半年や一年すぐかかってしまって、私がいま心配しているようなものはちっとも救済できない。私の心配しているのは、具体的にそういう倒産する事実やなんかは出ないようにしてほしいということですから、内閣、政府の中で、そういうことについての対策委員会のようなものを早急につくるという方法などを考える。大臣中心になってでもいいし、呼びかけになってでもいいのですが、そういうことをする用意がありますか。
  220. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、各官庁それぞれ主管事項がございまして、貿易とかに関する問題でございますから、商社行政をやっております通産省がやはり中心になって実情を調査し、対策を立てるなら立てるというようなことをすべきじゃないかというふうに考えております。もしその商社の実情がこうで、これに対して金融の必要があるとかなんとかいうときに御相談を受けるということでしたら、これは大蔵省の管轄でもございましようし、大蔵省もいろいろ御相談に応じますが、いま言ったように、関税問題ではそう簡単にいかぬ。そのほかのことということになりましたら、やはり産業行政を主管している官庁中心で実情を把握し、対策を立てるということが一番筋じゃないかというふうに私は考えております。
  221. 石野久男

    石野委員 いま大臣がそういうように話のあったようなことは、やはりただことばの上だけではいけませんから、現実に一日、一日ごとに危機が近づいてきます。だから、政府の中でそういうことを具体的に対策をするような考え方大臣としてもひとつ閣議等で提起してもらう、こういうことを私はこの際大臣の所信としてはっきり聞いておきたいと思うのですが、大臣はそういうことを積極的にやってくれる御意思があるかどうか、ひとつこの際お聞かせ願いたい。
  222. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御趣旨のあるところは十分わかりますので、関係閣僚と私は相談いたします。
  223. 秋田大助

    秋田委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  224. 秋田大助

    秋田委員長 速記を始めて。  午前中の会議はこの程度にとどめ、本会議終了後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕