運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-04-25 第58回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十五日(木曜日)    午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 沖本 泰幸君   理事 小宮山重四郎君 理事 佐々木義武君    理事 齋藤 憲三君 理事 始関 伊平君    理事 福井  勇君 理事 石川 次夫君    理事 三宅 正一君 理事 内海  清君       岡本  茂君    桂木 鉄夫君       田川 誠一君    村上信二郎君       松前 重義君    三木 喜夫君      米内山義一郎君    近江巳記夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 園田  直君  出席政府委員         科学技術庁科学         審議官     高橋 正春君         科学技術庁長官         官房長     馬場 一也君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君  委員外出席者         経済企画庁水資         源局参事官   宮内  宏君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         農林省農政局参         事官      田所  萠君     ————————————— 四月二十五日  委員岡本富夫君辞任につき、その補欠として近  江巳記夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(有機水銀残留  毒性に関する問題)      ————◇—————
  2. 沖本泰幸

    沖本委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  有機水銀残留毒性に関する問題について、質疑の申し出がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  3. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いま天下注目阿賀野川中毒事件が、政府責任において結論が出されようとしております。この事件については、しばしば本委員会をはじめ国会の各委員会で論じてこられましたし、学界でも意見が出されておりまして、非常に問題化し、果ては人権問題として新潟地裁でも裁判にかけられておりまして、真犯人は、昭電の工場廃液か、または新潟地震当時ありました被災農薬かでいま争われておりますことは、周知の事実でございます。そこで私は、種々論議し尽くされた本事件原因について、いまさら論議しようとは思っておりません。  ただ、きょう申し上げたいことは、再び水俣のあやまちを繰り返さないために、その原因究明のために、政府責任をもって調査したはずであろうと思うのです。いまとなって各省間の見解が食い違っていることが、どうしても納得がまいりません。これが第一点であります。  第二点は、科学技術庁は、研究費を出して、厚生省農林省調査をさせ、そのために臨床研究班疫学研究班試験研究班をつくり、調査研究を続け、まだその上に、厚生省食品衛生調査会答申を加えて、昭和電工排水中毒事件の基盤をなしている、それだけでも病気が起こる可能性があるが、それに短期濃厚汚染が加わったと断定しておるわけであります。それを、なぜこの科学的な、政府が行なった研究に対し、同じ政府部内の、しかも研究調査をしなかった科学技術庁通産省が、見解をまとめるという立場でこの結論をぼかそうとしておるのか、非常に不可解でならないのであります。これが私の疑問の第二点であります。  そこで、結論はいろいろありますけれども、私のいま考えますことは三つございます。その一つは、科学者研究者のせっかくの研究をこれでは冒涜するのではないかということ、それから二番目は、科学や真理を尊重せねばならぬ科学技術庁やり方とは、これは私は思えない。まだはっきりと見解を出してはおりませんけれども、漏れ承るところによると、この結論をぼかそうとしておるような印象があります。これは科学技術庁やり方としてはどうにも納得がいかない。第三点は、こういうことになるのは政治的な圧力が加わっておるのではないか、このように疑いたくさえなるわけであります。このことも、結論として私たちはぜひ究明したい根拠であります。  そのように考えまして、きょうはこの結論を出された調査班厚生省責任者である大臣にわざわざおいでいただきましたので、大臣の御見解を最初にお伺いいたしたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 御指摘阿賀野川事件に対する結論が近く出る段階にございまするが、科学技術庁からは正式あるいはまた非公式に、その結論に対する方針が私のほうに示されたことはございません。ただ、技術庁のほうからいわれておることは、さらにもっと詳細な資料がないかということがしばしば要求されておるということを聞いております。新聞で私は拝見をいたしましたので、その朝、科学技術庁長官に、新聞でこういうことを拝見したのだが、もしそのようなことであるならば私は不服である、これについては十分反論を加えたいと、こう申し入れましたところ、技術庁長官は、事務局のほうで検討しているようだが、まだ科学技術庁としての結論ではなくて、自分のほうにも来ていない、したがって、自分のほうに来たならば十分私と話し合う、こういうことでありましたから、私は、さらにいままでの経緯を申し述べて、そして、科学技術庁結論を出す際にはぜひ私の納得も得てからしてもらいたいということを申し上げておる段階でございます。
  5. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私も、いま御答弁がありましたように、非常に微妙な段階であろうと思います。大臣信念を持って、そして、厚生省にまかされた、いわゆる疫学班臨床班試験班、こうした三班にまかされたこの科学的な調査研究というものを自信を持って守り通すお考えがあるかどうか、ということが私は問題だと思うのです。まだそういう段階ですから、いまおっしゃったように、正式にはお話はないでしょうけれども、巷間伝えられて、いまこの問題をめぐって大きな政治焦点になろうとしておるわけです。わが党といたしましては、これは黙過することができないということで、この科学技術対策特別委員会では取り扱わないということになっておったのですけれども、党としては黙っておられない、こういうことになったわけでありますので、大臣確信のあるところのお答えを聞きたいと思います。
  6. 園田直

    園田国務大臣 先ほどの御質問の中にも、政治的な圧力があるという話もあるというようなお話がございましたが、少なくとも私の省にはいかなる方面からも、一切ございません。今後におきましても、そのようなことがかりにありましょうとも、断じて私は受け付けいたしません。  ただ、私はこの際、私の決意の一端を申し上げて御了解を願いたいと思いますことは、足尾銅山の例にいたしましても、水俣の例にいたしましても、公害というものに対する認識を、政府も与野党の各位も、それから財界方々も、国民方々も、ここではっきりしていただきたい。私がこの問題に対して、厚生大臣としての権限において認定せんとするものは、犯人認定が目的ではございません。被害にあって非常に悲惨な思いをしておって、どこからも救われることがなくして、単に国の医療その他において一部補われている程度の人々が、十年、二十年わけもわからずにやっておるということが重大な問題でありまして、したがって、その人々被害を受け、一生にわたって非常な苦しみを受けている。それは、要するに、産業公害であるか、あるいは不可抗力のものであるかということを認定することが私の職務である、私はこのように考えています。その経緯として、だれがおもな犯人であるかということが出てくる問題でありまして、裁判所における裁判と、私が公害認定する場合の認定方針とは、そこに大きな開きがなければならぬと私は考えております。しかも、この公害が、ただ近時社会問題になったというばかりではなくて、憲法に規定された人権問題からいたしましても、いままでのようなあいまいなことでこれが見のがされるならば、私は、公害などというものは幾ら対策をやってみたって、それは単に口実だけで、何にもならぬ。ここは一つのけじめをつける場所である、私はこのように考えておりまするから、各方面意見も聞き、陳情も承りまするが、あくまで今日までの研究班研究いたしました資料経緯及びそれに対する私の公害に対する考え方、あるいはその他も考えて、断じて所信どおりにこれは方針を貫きたい、このように考えております。
  7. 三木喜夫

    三木(喜)委員 非常に力強い御決意を承ったわけであります。その無事の市民、国民に対してそういう害の及ぶことに対する、厚生大臣としての職責上からくるところの責任感あるお答えは、これでよくわかりました。私は、当然そうなければならぬと思いますけれども、私は問題をほかへ移す気持ちは全然ありません。  ただ、きょう言っておることは、原因がどうだ、犯人がどうだという、そういうことを追及するということでなくて、むしろ厚生省責任のある立場でなさったことを、大臣としては断固としてこれは間違いがないということで押されるかどうかということをお聞きしているわけです。その焦点にしぼって、もう一回お聞かせいただきたいと思います。
  8. 園田直

    園田国務大臣 私は、私の出しました結論は間違いはないと考えております。この信念を貫く考えでございます。
  9. 三木喜夫

    三木(喜)委員 あなたが出された——いわゆる厚生省が出された結論ですね、いまおっしゃるのは。そうですか、もう一ぺん……。
  10. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  11. 沖本泰幸

    沖本委員長 速記をとめて。   〔速記中止
  12. 沖本泰幸

    沖本委員長 速記を始めて。  石川次夫君。
  13. 石川次夫

    石川委員 いま三木委員のほうから質問がありました、厚生省臨床研究班試験研究班疫学研究班、その中の疫学研究班のほうで出された答申結論だけを申し上げると、これは「阿賀野川メチル水銀化合物汚染を受けた川魚を多食して発生したメチル水銀中毒事例で第二の水俣病というべきである。」それからさらに、これは昭和電工鹿瀬工場で、「アセトアルデヒド製造工程中に副生されたメチル水銀化合物工場排水によって阿賀野川に流入し、アセトアルデヒド生産量の年々の増加に比例してその汚染量も増し、」その川魚に蓄積されたものを沿岸住民がとってこれを食べることによって「人体内に移行蓄積し、その結果発症するにいたったものと診断する。」こういう結論でございますね。そのとおりでよろしゅうございますか。
  14. 園田直

    園田国務大臣 いまお読みになったとおりでございます。
  15. 石川次夫

    石川委員 通産省からどなたか来ておられると思うのですけれども、通産省のほうでは、昭和電工鹿瀬工場という可能性もある。あるいは日本ガス化学松浜工場、あるいはまた農薬、こういうふうないろいろなものが複合してこういうふうな事態になったということで、疑わしきは罰せずということで、この厚生省結論は少し穏当ではない、正当ではない、こういうふうな見解を発表しておると聞いておりますが、その点いかがですか。
  16. 吉光久

    吉光政府委員 通産省といたしましても、原因物質有機水銀でございますこと、あるいはまた、昭和電工鹿瀬工場からもメチル水銀が排出されておるということ、そのことにつきましては、別に異論があるわけではないわけでございます。そのとおりであるというふうに思っておるわけでございますけれども、ただ、私ども今回の事件につきまして、ある特定の期間の中に多数の患者が集中的に発生したということをどのように理解したらいいかという点につきまして、確信をもってお答えすることができなかったわけでございまして、原因が複数であるというふうな、あるいは、ほかの工場であるというふうな結論ではないわけでございまして、そのわからなかった点をそのまま科学技術庁のほうに御申達申し上げたという次第でございます。
  17. 石川次夫

    石川委員 実はきのうの新聞にも出ておったそうですが、新潟大学教授日本神経学会の会長のようでありますが、椿博士も、これは明らかに厚生省結論と同じ結論を、再確認のような形でもって、所信の表明として発表されておるようであります。この調査の過程は、われわれ専門家ではありませんからよくわかりませんけれども、メチル水銀農薬の中からは出てこないわけです。フェニル酢酸水銀ということはわかりますけれども、メチル水銀というものは、昭和電工鹿瀬工場から出る独特のものであるというようなことを確認された。ただ、日本ガス化学松浜工場がどうかということについては、現地を視察した結果、そこからは絶対に阿賀野川には流入はしない、こういうふうなことが実証されておるようでありまして、どう考えても、通産省のほうが言われていることは、私はふに落ちないといわざるを得ないと思うのです。  そのことは別にいたしまして、大臣が来ておられますから重ねて申し上げますけれども、たいへん力強い結論を聞きまして、われわれとしては頼もしく思うわけであります。この厚生省結論は先ほど読み上げたとおりであります。それから通産省は、疑わしきは罰せずということでありますけれども、日本経済新聞あたりの、財界を相当背景とした新聞ですらも、公害の場合に疑わしきは罰せずという論理はおかしいではないかというようなこと、これはもうほとんどわれわれの常識のようになっておるわけであります。疑わしきは罰せずということだけで、この問題の焦点をぼかすというようなことであっては、公害の場合には絶対に相ならぬ、こういうことでありますので、この点について厚生大臣にひとつ見解をお伺いしたいと思います。
  18. 園田直

    園田国務大臣 疑わしきは罰せずということばがときどき使われるのでございますが、私は、かりにこの公害の発生の原因者がだれであるかということがわかったとしても、罰する権限は全然ないわけでございます。ただ、公害認定したら、そのあとに出てくるのは、どのようにこれを補償し、どのように援護をしていくかという問題が私の責任でありまして、それをやる上については、これが公害であるか公害でないかということを認定するのがあと職務でございます。したがいまして、罰する権限もないし、罰するつもりもございませんが、ただ、私の言いたいことは、ただいま読み上げられました文章は、あくまでこれは学問的に研究をされた事実のみの結論でございます。したがいまして、今度はそれが、経路がどうの何がどうのという不十分な点もあるかもわかりませんが、事公害については、裁判所の法廷のごとく物的証拠なりその経路がことごとく実証されなければ認定できないものではないと私は考えております。
  19. 石川次夫

    石川委員 最後に、いろいろこまかい点で補償の問題その他聞きたいこともありますけれども、これは科学技術委員会としての分掌ではないと思いますので省略いたしますけれども、厚生大臣はどうかいまの信念をひとつ貫いていただきたいと思うのです。疑わしきは罰せずということばは、確かにいまの場合穏当を欠くとは思いますけれども、しかしながら、どうもいろいろな雑音が入りまして、原因が不明になったままでうやむやにされるということは、この際絶対に許すべきではない。先ほどお話しになりましたように、これじゃ公害対策が成り立たないということにもなるわけでありますから、この点はひとつ所信を貫いてき然とした態度でそれをやっていただきたいということをお願いいたしまして、私はこれで終わります。
  20. 沖本泰幸

  21. 三宅正一

    三宅委員 ただいま大臣き然とした御答弁を拝聴して、私、非常に喜んでおるのであります。  私は、実は足尾鉱山の鉱毒問題をちょっと調べまして、鉱毒問題というものが、公害問題というものがいかにむずかしいかということを痛感いたすのであります。  それは渡良瀬川の鉱毒問題が起きまして、たとえば島田三郎氏だとか、それから、当時の木下尚江氏だとか、大ぜい見に行きまして、神田青年会館でその報告演説会をやった。そこへ古河男爵の女中が聞きに来ておりまして、その真相のひどいことを報告しましたらば、男爵夫人神田川へ投身自殺をした事件を起こしておるのであります。それで田中正造は明治天皇に直訴されるというような事件を起こして、ほんとう天下を沸騰さして志士仁人が奮闘いたしたわけでありますが、今日に及びましても、まだこの古河足尾鉱山の鉱毒というものは残っているのであります。いかにむずかしいかということであります。  今度の問題などについて見ましても、厚生省は実にりっぱな結論を出しておられますが、通産省などが非常なあやしげな結論を出しておるように見えますことは、これを企業だけの責任に負わせますと会社がつぶれてしまう、そういう意味において、企業がかわいいからということでぐずぐずにしてしまって裁判をやるといっても、民間の弱いものが裁判をやって、その間に死んでしまったら、あと食っていけないじゃないか。そういう意味におきまして、平和国家における科学技術政策の根本というものは、新しい技術開発いたしますれば、原子力を開発したら水爆や原爆ができるのですから、どうやって産業開発に並行して公害を防ぐかという大きな立場に立ちまして、初めから水銀などの流れるような危険のある化学工場については十分な監督をされる姿勢が第一。  第二は、会社がつぶれるかもしらぬということで、結論をあやふやにするというようなことでなしに、結論結論としてちゃんと出す。私は、科学技術庁があやふやな結論を出しましたことは、科学に対する冒涜だと思って、実は非常に憤慨をいたしたのであります。  第三の問題は、その間裁判が片づかなければ、ある学者がそれはその原因じゃありませんとかなんとか言ったことのために、大臣も言っておられますとおり、その問題が解決しないうちは国もどこも手を出さないということでは問題にならない。だから、今度の事件、あるいはイタイイタイ病だとか、あるいは有明湾の問題だとか、さらにいろいろの新しい、硫酸を使ったり水銀を使ったりする産業開発が行なわれることによる公害に関しまして、ともかく死ぬ者が起きたりいろいろしたら、原因究明などは別にして、まず救済をする。そうして、その責任がどの部分まで会社にあるかということで、会社にはあとから金を出させる。同時に、そういう意味において、あらかじめもっと国の姿勢として公害など起こせぬような準備をさせて仕事をさせる、こういう姿勢をこの際つくり上げることが、今度の問題の大きな犠牲者を生かすゆえんだと思うのであります。そういう意味においては、そういう立法もまだ十分に行なわれておらない。特に科学技術庁あたりが非常なあやふやな、どっちにも顔を立てるような結論を出すことは、これはほんとうに悪いと思うのであります。そういう意味におきまして、厚生大臣が非常なき然たる御答弁をくださいましたことは、私は非常にありがたいことと思うのであります。  その意味において、きょうの委員会やり方などについても、大臣に申し上げることではないが、時間がないから言うのだけれども、この委員会は私は延ばしてしまったらいいと思うのです。時間がなくて急にやりましたからなんだけれども、少なくとも官房長官、それから厚生大臣経済企画庁長官通産大臣農林大臣科学技術庁長官というようなものがみんなそろったところで、この問題の当面の解決についてどうするかということが一つ。それから、公害対策全体をどう進めるかということが二つ。それから、経過的にどうやって多くの被害者救済するかということが三つ。これらの問題を総合的に解決するところに生きた政治というものがあると私は考えるのでありまして、厚生大臣としての園田君でなしに、国務大臣としての園田さんに、そういう線でひとつ閣議を引っぱっていただいて、この機会に日本における公害対策一大躍進をするという線に持っていかなければ意義をなさぬと思うのであります。その点についての御決意なりお考えを承りたいと思います。
  22. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御意見のとおりでございまして、したがって、私がただいま考えておりまする紛争処理救済法律案というものは、そういう事件が起こったならば、被害者救済することは、とりあえず国家が立てかえて救済をしておいて、そのあと紛争処理をやる。その紛争処理は、先ほど申し上げましたとおりに、裁判所判定とは違いますから、公正取引委員会みたいな相当権威のある、しかも、厳正公平に紛争判定をするような処理委員会をつくりたい、こういうことを骨子にして法律案考えておりますが、残念ながら今日まで提案できないことはまことに申しわけないと考えております。  それからなお、公害についてでございますが、御指摘のとおりに、公害というものは科学的に実情を見て判定をして、企業のほうにいろいろ痛手があるならば、それはほかの方法で企業保護考えるべきであって、私が一番言いたいことは、公害は野球のゴロと同じでありまして、起こったあと幾ら追っかけてみても被害は大きいし、救済できるものではありません。むしろ前もってかまえておいて防ぐという立場から企業計画なり工場を設置される場合に、まず人命の保護、流域の住民の健康、こういうものをみずからが考えられて、そのワク内で企業計画をされるというふうに、公害を救うのではなくて、公害を防ぐという立場にならなければ、ほんとう公害というものは消滅はしない。そういう点においても、私はこの際は、やはり国民全般の問題であって、企業方々もみずからそういうことについての御反省を願いたいと考えております。
  23. 三宅正一

    三宅委員 いずれもう一ぺん徹底的に議論をしたいと思いますが、きょうは時間がないそうです。あと関連質問がありますから、これだけにしておきます。
  24. 沖本泰幸

  25. 内海清

    内海(清)委員 時間がございませんので、要点だけお伺いしておきたいと思います。  先ほど大臣は、大臣の確固たる信念をお述べになりまして、まことに敬意を表するわけでありまするが、ただ私がここでお伺いしておきたいと思いまするのは、この結論が出ました後に、いろいろな問題が出てきておる。たとえば、この食品衛生調査会には、患者からメチルしか出ないから農薬でないという結論ができておるようであります。ところが、最近の四月十七日の新聞によりますと、愛媛県におきましては、農薬水銀中毒が出ておることが報ぜられております。あるいはまた、いままでの調査の基本になっておりました面でも、新潟地震当時、新潟港の倉庫から農薬が流れ出ていないという、これが出ておりますが、これまた最近の四月五日の毎日新聞によりますると、その当時その倉庫から農薬が他に出されておる。これはいま検察庁で調査中でございます。その経過が出ております。こういうふうな結論以後におきまして、原因追究に対しまする問題がいろいろ出てきております。あくまでもこの原因追究は最も科学的にやられるべきものであって、大臣お話しのように、政治的な圧力が加わることは絶対排除しなければならぬと思いまするが、一応そういう結論が出た以後におけるいろいろな問題が出てきたものに対しましては、厚生省としてはどういう態度でお臨みになりますか。その点をお伺いしておきたい。
  26. 園田直

    園田国務大臣 その後いろいろ事件が起こっております。いま御指摘の四国の問題、それから対馬の問題、そのほか、いろいろ問題が起こっておりまするから、その場その場でやはり学問的な研究をしてやりたいと思いますが、私がいま申しておりますることは、私は阿賀野川に関する研究班結論というものを基礎として今後措置していきたいということでありまして、もちろん学問的ないろいろなことがあればこれも十分取り入れた上、私は最後裁定をする決意でございます。
  27. 内海清

    内海委員 そうしますと、これらの問題もさらに究明をして、その結果最後の断を下される、こういうことでございますか。
  28. 園田直

    園田国務大臣 その場所場所でやることでございまして、そのほかのことの究明ができなければ阿賀野川裁定ができないとは考えておりません。ただ、そういうものは参考にはいたします。
  29. 沖本泰幸

    沖本委員長 大臣、どうもありがとうございました。  斎藤君。
  30. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ただいま厚生大臣は、厚生省結論をあくまでも堅持して、これによって阿賀野川水銀中毒を解決していくという御趣旨を述べられたのでありますが、それは厚生省立場として一応われわれも了承するのでありますが、通産省はこれに対して必ずしも同意を表しておらないようであります。もちろん、水銀中毒事件は、その原因のいかんにかかわらず、これは事実問題でございますから、一般公害問題としていわゆる社会的にこれをいかに解決するかということは非常に大きな問題で、ぜひとも善処していただきたいと思うのでありますけれども、この阿賀野川水銀中毒事件が、昭電の鹿瀬工場の廃液から流れ出たメチル水銀の中毒だと断定するには、まだ幾多の疑念が残っていると私は思うのであります。  また、通産省から厚生省に出しましたいろいろな質問書がございます。これに対する厚生省の回答というものは必ずしも万全ではない。だから、私は、この問題は、まだまだ科学的に追究していく余地がたくさん残されていると思う。先ほど石川委員から、科学技術庁の回答というものははなはだあいまいもこたるものである、そういうおしかりを受けたようでありますが、私が一切の問題を勉強してみますと、あの回答でもまだまだ出過ぎた回答だと思う。科学的に検討すべきところの問題が幾多残っておるのであります。とにかく鹿瀬工場から一体どれだけのメチル水銀が出たか。このメチル水銀の物性というものは一体いかなるものであるか。あのメチル水銀の物性というものは、私の知っている限りにおいては、完全に水溶性のものである。だから、あの阿賀野川の水量からいきますと、大体五百億分の一ないしは七百五十億分の一、すなわち〇・〇〇〇〇と〇が四つぐらいつくPPMなんであります。そういうものが三十年も流れておって、その間に幾多の自然現象があった。それには一度も水銀中毒が起きないで、今度はいきなりあそこでもって魚がひっくり返り、そして、集団的な水銀中毒症状が起きたということは、これは従来の歴史的な経路から見れば、とうてい科学的に想定し得ざるところの突発現象なのです。そういう問題に対して科学技術庁科学的な判定を下せなんて言ったって、これはできっこないので、もしやったとしたら、それはインチキ判定だと私は思うのです。ですから、この問題は、厚生省厚生省立場において、大臣は、厚生省結論によって、あくまでもこの水銀問題を解決しようと思っておられるけれども、通産省のいわれることは、またこれも考えようによっては一理がある。一体〇・〇〇〇〇何PPMというような薄い水銀の含有水溶液がどんどん海に流れていってしまう。その水の中にそれだけの希釈された水銀がどうして一体海底のモとか魚のえさになるかということです。これは希釈溶液でもって魚を飼ってみた報告書も出ていますけれども、〇・〇〇〇〇と〇が四つもついたPPMでもって魚を飼ってみたって、魚の中にはメチル水銀は蓄積されないという。もし蓄積されるならば、いつでもそこに魚が浮き上がって死んでいなければならないわけです。はたして一体メチル水銀の物性はそういうものであるかどうかという、物性の判定もまだついてないのです。だから、いろいろ調べてみますと、この阿賀野川水銀中毒ほんとう原因というものは、私はまだまだつかめていないと思うのです。いやしくもその阿賀野川水銀中毒に対して科学的な結論を下すということになれば、こんないままでの研究班結論によってはだめだ、私はこう思っているのであります。もっともっと研究、追究をする必要があると思っておるのでありますが、一体科学技術庁はそれをどう考えておられるか、ひとつお考えを承りたいと思う。
  31. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 先ほど厚生大臣からお答えのございましたように、ただいま各省庁と意見の調整中でございますので、たいへん申しわけございませんけれども、私どもの判断そのものをこの機会に与えますことは、今後の予断を引き起こすようなことにも相なると思いますので、具体的に研究班自体の結論に対しましての批判ということは、申しわけございませんけれども、今日の場合におきましては御容赦願いたいと思います。
  32. 沖本泰幸

  33. 三木喜夫

    三木(喜)委員 本筋に戻ります。いま齋藤さんが言われました魚の問題もありますけれども、やはりこういう問題は食物連関の中でいろいろ科学者研究しておる問題で、いきなり魚が非常に少ないPPMの濃度の中でそういう中毒を起こすような濃縮をするとは言われない。これは科学者がいろいろやっておることで、私たちはその範囲内にきょうは入ろうとは思っておりませんし、いま齋藤さんのお話では短期局域濃厚汚染を、いわゆる昭電側のとっております説をいま言っておられたようであります。疫学班では長期広域汚染を主張しております。こういう問題の原因の追及とかあるいは材料というものについてもっともっと追及すべきだという論議は私はあろうと思います。齋藤さんのお説には私も一理があろうと思いまして、その点を否定するものではありませんけれども、きょうの段階で、三年間もかかって、専門家が調べに調べて結論を出したという今日、われわれ原因がどうだ、材料が足らぬじゃないかということを言うだけの力はありません。そこで私は、きょうはその立場からはようものを申さぬわけでありますけれども、ここで問題にしたいことは、いま科学技術庁も引き合いに出されておりましたし、通産省も引き合いに出されておりましたが、通産省科学技術庁農林省、それから厚生省と、四省が鳩首協議をなさって、そして今回の調査研究については、厚生省研究班研究をまかせる、こういうことでまかされた経緯があるのじゃないかと思うのです。そういう経緯があるとするならば、いまの段階において、科学技術庁科学的な研究をしていない、通産省科学的な研究を連めておられないので、一にかかってこの研究班政府としては責任をまかせたはずなんです。その中には多少欠けたものがあるとしても、それがいま結論を出してきたわけなんですが、そういう観点から私はこの問題をとらえていきたい。われわれ政治家がとらえるのは、三年間みっちりそこにおって、研究班と一緒にやったのじゃないですから、とやかく言う資格は私たちはいまのところないと思うので、ただ通産省にもお聞きしたい、あるいは科学技術庁にもお聞きしたい、そういうことがあなた方がまかされたのかどうかということを一ぺんここで私聞いておきたい。両省ともひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  34. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 本研究は、四十年の九月に、関係各省が今後の中毒の防止対策の確立というようなことを目標といたしまして、それぞれの各省庁の行政に関連のありますことでございますので、関係各省からひとつ総合的な研究をやってほしいというお申し出がありました。当庁で、お知りおきのとおり、特別研究促進調整費を支出いたしたわけでございます。研究の手法につきましては、関係各省の連絡協議会をつくりまして、そこにおきまして大綱を決定いたしました。四つの項目の中で、金額にいたしますと八百何十万円だと思いましたが、四つは厚生省研究をお願い申し上げ、水棲生物におきますところの水銀の分布ということにつきましては、これを農林省にお願い申し上げたわけでございます。したがいまして、研究の全体の構成につきまして各省庁が協議をいたしました上でお願い申し上げたわけでございますが、先ほども申し上げましたとおり、やはり各省庁の行政にそれぞれ関連をいたすとこでございますので、その結果につきましても各省庁で十分に御協議を願う、こういう形をとっております。
  35. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いや、科学的な研究はここにまかされたのかどうかということです。
  36. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 疫学的な手法によりますところの検討につきましては厚生省に、それから水棲生物の水銀の蓄積の分布調査に関しますものは農林省にお願い申し上げました。
  37. 吉光久

    吉光政府委員 ただいま科学技術庁のほうからお答えあったとおりでございまして、研究はいまのような分担でまかされておるように聞いております。ただ、国といたしましての総合的な結論というものは、これは厚生省のほうで、いまの三班の研究の結果が提出されましたときに、私のほうがいただいた文書でございますけれども、それぞれの専門的研究の結果の報告が提出されたといたしまして、その次にさらに、厚生省としては食品衛生調査会にかけて意見を徴することとするというのが第二に入っておりまして、最後の第四のところに、国としての結論科学技術庁において関係各省の意見が総合され出される予定であるというふうな結びになっておるわけでございまして、先ほど科学技術庁のほうからお答えございましたように、研究はすべてそれぞれの専門家におまかせになったわけでございます。そして、国としての結論につきましては、科学技術庁におきまして総合して出されるというスケジュールで初めからこのこの研究が進められておったというふうに私どもは了解いたしております。
  38. 三木喜夫

    三木(喜)委員 農林省から田所参事官見えておりますか。  私は、いまお聞きしたように、科学的な研究はそれぞれ農林省厚生省にまかされた、そして専門的な学者が、いろいろ言い分はあろうと思いますけれども、それでも信念をもって結論を出された、これは並みたいていじゃないと思うのです。こういう政治情勢の中でこういう結論を出そうということになると、非常に勇気が要る。それを出しておられるということを私たちは一応認めなければならぬ。それのいい悪いということに四省でどうせお話しになり、最後結論科学技術庁が出されるのだと思います。あなた方がそれを認めて必ずそれをやれと私はここで強制しているわけじゃありません。それは科学技術庁でお考えになったらいいわけですけれども、今回のことにつきましては、厚生省農林省は、こうした研究班研究したことを支持しておられる、こういうように聞いておるわけなのです。農林省としては、これは大臣来ておられぬですが、いよいよとなれば大臣に来てもらわなければいかぬと思います。あなたでは役不足だというわけではありませんけれども、責任ある立場最後は答えていただきたいと思いますけれども、きょうの段階ではひとつ農林省立場をあなたのほうから御説明いただきたいと思います。
  39. 田所萠

    ○田所説明員 農林省といたしましては、魚介類の問題につきまして、一九六六年の三月に、日本海区水産研究所が報告しました「阿賀野川における魚介類ならびに底棲生物の分布調査」という資料厚生省のほうに提出いたしておるわけでございまして、今度の研究の中心は、厚生省のほうで三班の研究班をつくりまして実施をしていただいたわけでございます。その研究結果につきましては、非常に権威のある方々調査でございますので、農林省といたしましては、それにつけ加えるべき意見はございません。
  40. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ちょっとはっきり言うていただきたいのですが、農林省として、あなの立場として、農林省はこういう見解を持っておるということを明快にひとつお答えいただきたい。今度のいわゆる調査班結論を出したことに対する御意見を承りたいのです。
  41. 田所萠

    ○田所説明員 厚生省研究班の報告につきまして、農林省といたしましては、いま申し上げました調査資料以外のことはやっておりませんし、そういう点で厚生省研究に対しまして、それを支持いたしております。
  42. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ただいま、農林省としてはこれを支持しておる、こういう御意見をいただいたわけであります。  そこで通産省にひとつお聞きしたいわけですが、私はこの問題を大局的にながめましたときに、鹿瀬工場が下流から上六十キロメートルにあって、しかも患者は河口に発生している。そして、二十七人のうち五人が死んだ。途中には東北電力の揚川水力発電ダムがありまして、下流で起こっておるのはおかしいじゃないか。それなら上流でも起こるはずじゃないかというような、いろいろな論議がいままで戦わされました。それから、また、委員の中からも、どれも十分調査せず、昭電ときめてかかって調査しているのは不公平である。短期汚染説をとられて、途中非常に川が長いのに患者が一人も出ていないのはおかしいじゃないかというような意見も出されたわけであります。そういう論議をいろいろ私たちが聞いてまいったその結論として、私が先ほど申し上げましたような立場で、きょうここで論議せねばならぬのではないだろうか。政府責任をもって見解を出しかけた。その取り扱いがあれやこれやと引っくり返るようでは困るという立場でいま質問をしておるわけですが、まずこの三研究班結論を出した。それに対して、科学技術庁厚生大臣に対してまた質問をされておる。その結果、食品衛生調査会がまたこれに調査した結果をつけ加えた。いわば研究班を審判にいたしますと、審判が大体審判を下した、しかしそれでははっきりしないということで、ここに食品衛生調査会というものが判定をまた下して、そうして食品衛生調査会結論を出しておるわけなんであります。私はそういうような立場でこれが進められておるものだと思いますが、高橋審議官、そういうような立場であろうと思うのですが、この経緯ですね、どうですか。
  43. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 四十二年の四月に、ここにございます中毒事件の特別研究報告書の厚生省分担研究分、なお農林省でおやりいただきました研究の結果というものは、この中に同時に援用されております。この報告書をいただきました際に、これは臨床班試験班、それから疫学班の各研究班の報告がそのままの形と申しますか、総合的な調整と申しますか、そういうようなことのなされていない各研究班のそれぞれ援用はされておりますけれども、独立した形で三研究班のものが、これにまとめられて出てきたわけでございますので、そこで私どものほうは、たとえば試験研究班の結辞と疫学班の結辞等におきまして多少字句の上から見ますと、合致していないようなところも見受けられたわけでございます、それらの点もございますので、これの総括的な見解厚生省にお願い申し上げたわけであります。したがいまして、厚生省は、それに基づきまして、食品衛生調査会の議に付せられまして、そして食品衛生調査会の先生方は、これも新たに研究をされたわけではございませんけれども、従来のこの資料に基づきまして、疫学的な立場から御判断をされまして、総合的な意見といたしまして四十二年の八月に答申をなさいました。  以上のような経過でございます。
  44. 三木喜夫

    三木(喜)委員 四十二年八月に、特別研究班の最終報告をもとに検討した食品衛生調査会答申は、工場排水中のメチル水銀を含む水銀化合物が長期にわたり川魚に蓄積し、これを食べた人間の体内にも蓄積していた。これが事件の基盤をなしたということを一として報告しております。二として、それでも患者発生の可能性があるが、新潟地震直後の一年間に何らかの原因で魚体内の蓄積が急増し、それが基盤と重なって患者が発生した。三番目に、一時的濃厚汚染の原因は、入手し得る資料の範囲では、いまとなっては何とも言えないという三点を骨子として報告されておるようであります。したがって、ここでもはっきりとどこが原因であったかということを明示しておるわけです。  そこで科学技術庁にお聞きしたいのですが、科学技術庁では、これは非公式に漏れた、そういう発表をしたことはない、こうおっしゃるのですけれども、なぜこれを否定するような——この新聞にはこういう書き方がしてあります、「ぼかされた“真犯人”」ということで出ておるわけなんですけれども、科学技術庁科学を大事にし、そして真理を追求するという立場で、御自身がやっておられないのですから、やはりそれにまかしたところの意見を尊重するというたてまえをとられるのが私は普通じゃないかと思うのです。この辺もお聞きしたいと思います。それをこういうような書類がなぜ出ていったのか、その書類がほんとうだとすれば、なぜこんなに真犯人をぼかされたかということが納得がいかない。しかしながら、なぜぼかしたかということは、きょうは問い詰めません、これはもっと先の段階だろうと思いますから、そうでなくて、なぜこんな書類が出ていったのか、十五日に大体発表するというのが、それ以前にこれは出ておるようにも思いますし、これは十八日の新聞ですけれども、その辺をひとつお聞かせいただきたいと思う。
  45. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、私どもまだ事務的な検討の段階でございますので、庁といたしましての結論は出ておりません。  御質問のございました十三日でございますかの新聞の紙上に出ましたことにつきましても、したがいまして、私どもの関知するところではございませんが、十五日に発表予定というお話がございましたけれども、これは端的に申しまして、当日、十三日の朝刊に記事が出ましたので、当庁のクラブの方々に対しまして、今後の私どもの作業の過程をいかにするかという考え方を申し上げましたわけでございます。内容の原案につきましてお示しいたしました事実もございませんし、繰り返しますが、どのような形で、どういうようなものが出たかということは、私ども直接わからないところでございます。
  46. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それがおかしいのですよ。それをぼくはきょうは聞きたい。わからぬと言っても、どの新聞もみな書いておるでしょう。私、当時の新聞をみなここに置いておるんですが、もしこんな真犯人をぼかすという結論がないのなら、どこが原因であるかということをぼかすのではないのなら、こういうようなものが出ても出なくても、あなた方には責任がないわけであろうと思うのです、厚生省が調べたとおりなら。悪意でこんなものを書くはずはないと思うのです。どこからか出ておるわけです。だれかが話されておるわけです。責任ある人が言わなくて、こんなものが漏れるはずはないと私は思うのです。その辺は一つの事務のミスだったかもしれません。だから、これは真意でないのかあるのか。真意にしても、こんなものは私らは表に出したのではないんだ、こういうことなんですか。その辺がちょっとわからないのです。これで論議を呼んでしまっておるのですよ。私たちも非常に心配しておる。科学技術庁という、真実を追求する庁がこういう態度では、ぼくらはこれから信用できないという気持ちにならざるを得ないわけなんです。それで聞いておるわけなんです。漏れたから、漏れたその中に都合の悪いことが書いてあったから、私は知りません、これでは困るし、漏らしてみて、みんなが納得すれば、それなり行ってしまうかもわかりませんしね。私は漏らしました、と言えるのかもしれませんし。その辺が、どうも私は解せぬわけですよ。不可解なんです。
  47. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 私も、当庁の検討のグループの責任者でございます。私どもの作業の過程におきましては、当然役所におきますところの事項を漏洩するようなことのないように十分配慮いたしたわけでございますので、私といたしましては、内部の資料が漏れましたということにつきましては、これは絶対ないというふうに考えております。  それから、内容につきましては、先ほど申し上げておりますように、検討中でございますので、その検討の途中におきまして、何らか資料が漏れたのではなかろうかという御疑念もあると思いますけれども、これにつきましても、当然に私どものほうで事務的には十分に注意いたしたわけでございますので、これが第三者に漏れたということはないだろうということは確信いたしております。
  48. 三木喜夫

    三木(喜)委員 これは出てしまっておるのですから、どこからか出ておるのですから、いたし方ないと思いますけれども、それはそれとして、正しい結論を今後考えていただいて、正式には出るんだろうと思います。  ひとつ通産省にお聞きしたいと思うのですが、通産省は、昭和四十二年十二月二十八日、通産省見解を出されております。これは、「たとえば、鹿瀬工場原因説について考察するに、同工場からメチル水銀阿賀野川に排出されたことは認められるが、これを四〇キロメートル下流の限定された地域において特定の時期に集中的に発生」することはどういう原因であるかという、その「資料は不十分であると思料する。」こういう見解を出されておるわけです。だから、直接原因であるということは断定できない、こういうふうに言われておるわけなんです。やはりこういうことを出されたのですか。
  49. 吉光久

    吉光政府委員 いまお話しのとおりの文章で出しております。
  50. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうすると、この昭電が四十年一月からやめた。そして、この工場が終わったときに、にわかに患者が少なくなっている。いわゆる患者の場合は、そういう水銀の含有量がだんだん少なくなっていったというような、こういう一つの事例を示しておるわけなんですが、もし昭電にやましいところがなければ、その資料を——資料がなかったとあなたがおっしゃるならば、通産省はこの昭電を監督される立場にあるのになぜこのときにいろいろな資料を出してもらいたいということを、これは疫学班なんかが言っているわけですけれども、操業日誌とか、そういうものを出していないのです。それはあなた方の責任じゃないですか。そういうことは、あなた方は資料がないと言っておりながら、資料を出さないところをむしろそのまま認めておいて、資料がないといって、そのことをけなすということは、自分自身をけなしていることになるのじゃないかと私は思うのです。中身は私は知りませんよ。中身は、どれが原因でどうだということは探求しませんけれども、あなた方の論理の順序として、どうも考察するような資料がない。資料がないというように、疫学班とか臨床班に拒否をしておるのが昭電だったということです。それなら、なぜ、通産省は、そういうような資料をみずから出すように指導されないのですか。これは、私、どうも大きな疑問に逢着しているわけなんです。
  51. 吉光久

    吉光政府委員 ただいまの鹿瀬工場の操業日誌の問題でございますけれども、私ども厚生省から伺っておるところによりますと、食品衛生調査会調査段階におきまして、鹿瀬工場の昭和三十八年の七月から昭和四十年一月までの操業日誌の写しを食品衛生調査会のほうに出しまして、そこで操業関係についての検討が行なわれたというふうに厚生省のほうからは伺っております。
  52. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それは一つの言いのがれでありまして、きょうは時間がないから私もそのことは論じ詰めませんけれども、とにかく、今度の裁判の場合にも写しが出ているようだ。あなたの場合のときにも写しだ。現物そのものを出して、公明正大ならば、そうやるべきだったと私は思うのですよ。昭電のために私も非常に惜しむ立場にあるわけです。それでなかったら、疑われてもしかたがないわけなんです。そうしておいて、あなた方の見解では、いい資料がなかったということを言っておられる。これは不可解しごくであるということを言っているのです。いい資料が出るようにしていただきたい。写しだというお話がいまあったでしょう。だから、実物そのものを出して、こういうぐあいに操業しております、このときからこういうように減らしましたというようなことをやるべきだったと私は思います。  今度また日をとられるということでございますし、長くやるとほかの方に影響してきますので、おきたいと思いますけれども、要するに、私が申し上げたいことは、水俣病を再び起こさないということで、このことに取り組んでいただいておるはずだと思いますけれども、今回もまた、この原因追究というものをいろいろな関係でぼかしてしまいますということなら、それがまた第三、第四の水俣病が起こるような原因になるのじゃないかと思います。不十分であろうかと思いますけれども、幸いこれの調査研究に当たったところの責任研究班があるのですから、この意見というものを十分に検討していただいて、そして、政府として、ごちゃごちゃになった見解を出すのではなくして、統一した見解を出していただきたい。各省まちまちの考えでは困ると思うのです。その点をお願いしておいて、自後の問題は、大臣が来られてからお聞きしたいと思います。それについて科学技術庁見解をまとめられる最後の省であろうと思いますから、高橋審議官の御意見を承っておきたいと思います。
  53. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 先生の御示唆のとおり、十分に各省庁と連携をとりまして、内容につきまして慎重に検討を加えまして、先ほどの御懸念のないような結論を出したいと思っております。
  54. 三木喜夫

    三木(喜)委員 これで私の質問を終わります。
  55. 沖本泰幸

    沖本委員長 齋藤君。
  56. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 科学技術庁にちょっと伺っておきたいのですが、昭和四十二年十二月二十八日、科学技術庁長官に対して通産大臣から、「新潟阿賀野川流域における水銀中毒に関する特別研究について」という回答書が出ているのですね。これに対して科学技術庁はどう考えておられるのですか。  まず第一に、「一般的究明」というところで、「メメル水銀の水溶性」、それから第二番目に「メチル水銀の土砂等への被吸着性」、それから第三に「各種濃度(特に極超低濃度)のメチル水銀溶液中におけるニゴイその他の食用魚介類の飼育実験によるメチル水銀の魚介類体内蓄積状況」、四「各種濃度のメチル水銀を含有する食餌を投与されたニゴイその他の食用魚介類の飼育実験によるメチル水銀の魚介類体内蓄積状況」「これらの諸点に関し、特別研究班報告書は貴重なデータを含んでいるが、なお疑問の点を残していると考えられるので、当省は、厚生省に対し、別添(1)のような照会を行なったが、これに対し、同省より別添(2)のような回答を得た。しかし、この回答もまた、特別研究班報告書以上のデータを含んでいない。」これをずっと見ると、先ほどぼくが申し上げたように、第一、メチル水銀の物性というものを満足する回答というものが厚生省から出ておるかどうか。それを科学技術庁はどう考えていますか。
  57. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 たいへんにお答えにならないで申しわけないと存じますけれども、この通商産業大臣から当庁長官あての文書というものは、調査会の結論に対します各省の御意見を承りました際に出てまいったものでございますので、現在各省庁との調整の、そのものずばりと申しますか、事項でございますので、当庁でこれに対します見解をこの席で申し述べますことは、先ほど申し上げましたとおりに、影響があると思いますので、御容赦を願いたいと思います。
  58. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 これは、昭和四十二年九月二十日には、通産省吉光化学工業局長の名前で、厚生省の環境衛生局長松尾正雄殿というのに「新潟水銀中毒事件に関する厚生省見解について」一書出ていますね。これによると、メチル水銀の物性というものがわからないと、この問題に対する判定というものは、何人も一言半句これは口も開けないのじゃないかと私は思う。たとえてみれば「疫学班資料によれば、年間一五〇−二〇〇キログラムのメチル水銀工場内で副生されたといわれるが、かりに、その全量が工場外に排出されたとしても、メチル水銀の水溶性が高ければ、阿賀野川の水量三〇〇トン一秒に希釈され、濃度としては約五〇〇億分の一という極端に低い濃度になるものと考えられる。このような低濃度のもとでいかなる過程により魚が汚染されるのか。」これは一にメチル水銀の物性の問題なんだね。一体、完全に水に溶解されている五百億分の一のメチル水銀が、どうして魚を汚染するかということなんです。そんなことは、いままで例がないのです。だから、そういう物性もはっきり調査結論に出てこないで、これはメチル水銀によるのだ。そのメチル水銀の物性というものは、いかなる過程を経て、ああいう瞬間的ないわゆる一年の間に——三十何年間起こさなかったような現象を、しかも河口で起こしたのか、そういうことを究明してはっきりした認識を得なければ、この阿賀野川水銀中毒事件というものはどうして起きたかという判定は下せないわけでしょう。だから、私の申し上げているのは、これはもうメチル水銀中毒事件というものが起きたのだから、この被害者に対して国家がいかなる救済の処置を講ずるかということと、それから、この原因究明するということは、おのずから別個に考えなければ、始末はつかぬじゃないですか。まだ、この問題に対するメチル水銀の物性もはっきりしないのに、どうして一体こういうものが起きたかなんということを言ったって、雲をつかむようなものだ。それに対して科学技術庁結論を出そうなんということは大それたことで、出せるはずはない。また、調整費を出して、この問題に対して科学技術庁が統一見解を出しますなんということをもし言うたとしたならば、それは科学技術庁は身のほどを知らぬということなんだ。やれないことをやろうというようなことを言っておるのであって、私は調整費というものはそういうものではないと思っておる。それは、厚生省農林省と、その他関係各省間において意見の統一が尽くされない、事実を究明するのに予算もないし、困っておるから、それをひとつ研究しなさいというので調整費を出したのであって、その調整費を出したから、科学技術庁が、この大きな問題に対して統一見解をみずからの認識において出なさければならぬなんて、そんなばかなことは私はないと思うのだね。それは根本的に考え方が違うのです。私はそう思う。ところが、これをよく読んでみると、いろいろな参考書類、これは、三宅先生が八日に阿賀野川の問題を質問されるというので、私は二日ほど前からこの資料を出して読んでみると、読めば読むほど不可解である。ところが、神戸大学教授の公衆衛生学の喜田村正次さん、こういう方のものを読むと、もうこれはメチル水銀だから鹿瀬工場に間違いないという説もまた出ておる。しかし、さっきお話ししたように、どういう過程を経てその魚が汚染されたということには言及してない。これはあるいはプランクトンかもしれぬと書いてある。そうすると、一体、プランクトンがメチル水銀というものを持って歩くのかどうかということだ。また、この間、私はちょっと言及したけれども、水銀集積菌というのが発酵研究所で出ているね。だから、そういう水銀集積菌というものが阿賀野川の水の中におるとすれば、〇・〇〇〇〇一PPM溶けておるその水によって、水銀集積菌というものは猛烈な繁殖をするかどうかということです。もっと逆説的にいえば、新潟地震のときに、その川に投下されたところのたくさんの水銀量というものが、この水銀集積菌のえさになって、そこに驚くべき水銀集積菌というものが繁殖したかもしれないのだ。これは一つの微生物で、プランクトン系統のものだから、これを魚がえさとして食ったら、それは猛烈な中毒を起こすかもしれない。何にもその真相は究明されてないじゃないか。ぼくのような浅薄な科学知識の上から見ても、まだこの阿賀野川水銀中毒の真相というものはちっとも究明されてない。ここで統一見解を出そうなどということは、これはとんでもないことで、それこそ科学技術を冒涜するものだと私は思うのだ。やめてもらいたい。そんな大それたこと、柄にもないことをやってもらって、それが日本科学技術の断定だなんて言われたら、私はとんどもないことになると思う。だから、この阿賀野川水銀中毒事件によって公害をこうむられた方をいかにして救済するかということは、これは治政的に、社会問題として、別個の問題として取り扱って、あくまでも、阿賀野川水銀中毒事件を契機として、いわゆる有機水銀の物性からひとつ検討を加えていって、その確たる物性に基づいて公害を阻止する。物性さえわかっておれば、これは二度と再び水銀中毒事件は起こさなくて済むのだから、まずこのメチル水銀がどういう物性によって動物、植物に影響を与えるのかということからひとつ検討を加えて、もう一ぺんこの科学技術的な調査研究というものは、さらに研究の歩を進めてもらいたいと思う。そういう立場から通産省は一体どう考えておるか。あなたはいろいろな問題を厚生省に出しておられるようですが、局長、どう考えておられるのですか。
  59. 吉光久

    吉光政府委員 御指摘のような問題もあろうかと思うわけでございますが、いまの有機水銀の魚介類に対する蓄積等の問題につきましては、過去の水俣で起こりました事件を契機にいたしまして、いろいろの角度から従来研究が進んでおったわけでございます。と同時に、もう一つは、水銀の分析技術が最近どんどんと進歩いたしております。そういう分析技術の進歩とからみ合いまして、研究もだんだん微細なところまで入っておるというのが現状ではないかと思うわけでございますけれども、私ども、先ほどお話のございましたように、厚生省のほうの食品衛生調査会でどういう議論をされ、どういう資料をお使いになってああいう結論を出されたかという内容が全然わからなかったわけでございます。したがいまして、こういう点についてはどういうふうな考え方をしていたか、こういう問題についてはどのような資料をお使いになったかというふうな点について、まず予備知識を持つことが回答を出す場合に必要である、こういう認識のもとに、実は厚生省のほうに対して御質問いたしたわけでございます。私どもが科学技術庁に対して御意見申し上げました段階におきましては、私どもとしてはちょっとまだわからないというふうな感じでいたわけでございまして、そういう角度から科学技術庁に対して御意見を申し上げた、こういう次第でございます。
  60. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 もうやめますが、私は何も昭和電工に関係あるわけではありませんが、昭和電工株式会社から出したいろいろな書類を見ましても、ガスクロマトグラフという分析機で検出したメチル水銀というものに対しましても、いろいろな問題がまだ残っておるようであります。それからまた、アルキル水銀とフェニル水銀が動物の体内に入ったときにどういう変化を起こすのかというようなことも非常に大きな問題じゃないかと思っております。だから、これはなかなかむずかしいんだと思います。そういう点は私のほうでももっと勉強いたしますが、当局においても、考え納得のできない点がたくさん残っているのだけれども、これはもう差し迫った問題だから統一見解を出さなければいけないんだということになると、結局わからぬという統一見解になってしまうわけです。私は、わからないという統一見解に終わるんじゃないか、こう思っているのですよ。私は、この問題を契機として有機水銀中毒というものを絶対になくしようという公害的な立場からいったら、それはもうナンセンスだと思うのです。だから、あくまでもこの問題は掘り下げてもらいたいと思うのです。掘り下げればできると思うんだ。とにかく不可解なところを追及していって、その原因をはっきりさせるということが科学技術なんだから、こういうものはわからない、わからないところはほっておけ、そしていいかげんな統一見解を出せということでは、私は絶対に承服できない。そう思うのです。だから、そういう点は十分納得のできるような研究をして、納得のできるような統一見解を出してもらいたい、それだけお願い申し上げます。
  61. 沖本泰幸

  62. 三宅正一

    三宅委員 私が尊敬する齋藤君の御質問を清聴したのですが、もちろん私どもしろうとですから、しろうとの直観だけでありますが、今日この問題について第一に世間が非常に注目しておりますのは、科学的審議が政治勢力やいろいろなもので曲げられているんじゃないか。いやしくも科学技術庁ともあろうものが、そういう点については、ちゃんと、ほんとう科学的良心に従った判断をしなければいかぬぞ、そういう姿勢が曲げられておるんじゃないかという点が、第一の世間の疑惑であります。  さらに第二の点は、園田大臣も言っておりましたし、齋藤君も言われましたけれども、これだけ騒がれておるにかかわらず、弱いものが置き去りにされて殺されてしまうというようなことをほっておいてよろしいか。かりに原因究明は、将来の対策もあるから時間をとって徹底的にやるにいたしましても、政治姿勢として、明らか水銀の中毒でひどい目にあっているものの救済だけは、少なくともこの国会でやれるようにしなければいかぬ、この間の予算でやれるようにしなければならぬ、そういう点の姿勢であります。  第三の問題といたしましては、いやしくも平和国家、軍事目的に科学技術開発などをやらない平和国家においては、新しい技術開発というものは必ず公害を伴う。西洋のよくきく薬を飲めば必ず副作用がある。それと同じ意味において、私は、新しい技術開発と同じウエートをもって、公害対策というものと国の姿勢においてほんとうに取り組まれなければならないと思うのであります。平和国家における科学技術政策の根本はそこにあると私は思うのであります。  こういう根本的な問題について議論をいたしますにつきましては、それぞれの分担をしておられます各省の人々でなしに、関連の閣僚がみんな来てくれてやらなければ問題にならぬと思いますので、私は委員長に特にお願いいたしますが、あまり遠からざる適当な時期に、われわれの希望しております各閣僚を集めまして、総理大臣が来れなかったら官房長官を呼んで、それで私は少なくともそういう姿勢についてただしたいと考えますので、これは事務当局に答弁を求める筋じゃないと思いますから答弁を求めませんけれども、もし科学技術庁等で、それは全くの誤解であるとかなんとかいうことがありましたら、言っておいてもらいたい。私は、少なくともその姿勢において、外部の力で曲げられたというふうに世間が考えるような印象が少しでも出るということは、政治に対する権威を冒涜するものだと考えますので、それだけのことを申し上げておきたい。答弁があったら聞きます。
  63. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 三宅先生の、今後の姿勢に対します点については全く同感でございますが、政治的な云々で私どもが従来の検討におきまして姿勢を曲げました事実、あるいは今後そのようなものによりまして姿勢を曲げるようなことは決してございませんので、その点だけは御了解願いたいと思います。
  64. 三宅正一

    三宅委員 そのとおりだと思います。思いますけれども、たとえば、今度私どもがかんにさわりましたことは、ともかくだれが持っていったかわからない、そういう答弁をしておられますね。事前に変な、まとまらない素案のようなものが出て、それが厚生省などの見解と非常に違った見解である。これは必ず何かの疑惑が世間から出ますことは当然だと思う。まさか科学技術庁の事務当局の諸君が良心を曲げられたりすることはあると思いませんけれども、そして、かりに原因がどこにありましても、日本に必要な産業でありますから、それをつぶすようなことをせずに、国は国として公害対策として援助したらよろしいのでありますけれども、ともかく、原因についてはもっと明白にしなければいかない。私どもしろうとだけれども、神さまの目から見たら、イタイイタイ病の原因有明湾の問題の原因も大体わかっていると思うのであります。木を見て森を見ざるこまかい理屈が混迷におとしいれておるだけであって、神さまの目から見たら、大局において大体の判断はきまっておると私は思うのであります。これが間違っておりますれば、私ども技術のしろうとでありますから、喜んで権威者の意見を承りますけれども、いやしくもそういう誤解を起こさせるようなことをしてはいけないし、その原因の有無は別として、現実に大ぜいの者が死んでおるのをほっておくという政治はあるべからざることでありまして、もし政府のほうにおいてぐずぐずしておるならば、議員の発議においても、こういうものこそ超党派でもって科学技術委員会で、あるいはここと公害委員会で、議員立法で少なくとも救援の方法だけは立法するというくらいの気がまえは、立法府に席のある者として当然持たなければならぬと思います。しろうとでありますから、私は発言を遠慮しておりましたけれども、その点についてひとつ委員長に、この次はそういう意味で全部顔をそろえてやっていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  65. 沖本泰幸

    沖本委員長 次に、石川次夫君。
  66. 石川次夫

    石川委員 時間がありませんし、それから三宅委員が言われますように、担当の責任者といいますか、大臣が集まっておられないので、あまり決定的な質問ができないと思うのです。日をあらためてやりたいと思っております。聞きますと、最近は対馬のほうでもイタイイタイ病が発見された。御承知のように、渡良瀬川の問題は百年戦争といわれておりますが、ずいぶん長いことかかってなかなか原因究明できない。富山県のほうでも、小矢部川といいますか、ここではメチル水銀の魚が発見されたということで、これからその対策を考えなければならないというようなことで、相次いでこれに類する公害が出ておるわけでございます。  三宅先生からも言われましたように、資本主義といいますか文明が進みますと、人間性が喪失するという問題と同時に、人間の健康、生命がむしばまれるという現象があちこちに出ておるわけであります。これを阻止するということなしに、ただ、いたずらに科学技術科学技術を推進することだけで事足れりとすべきものではないということ、これは言うまでもないと思うのであります。そういう点で、今度の阿賀野川事件は絶好の機会でございますから、何とかこれを起点として今後の公害に対する対策を科学技術の観点から解明していかなければならない、そういう意欲をもって取り組んでいきたい、こう思っておるのでありますけれども、ここにおられる方は全部そうでありましょうが、われわれは残念ながら全くしろうとであります。しろうとの勘にたよるような質問でまことに恐縮でありますけれども、先ほど、齋藤委員のほうから質問がありまして、水銀の害あるいは物性というものは解明されておらないということでありますが、この前、農薬問題で私もこの委員会で若干質問をしたことがあります。それは主としてフェニル酢酸水銀有機水銀あるいはアルキル水銀のもたらすところの弊害、あるいは人体に及ぼす影響ということでありましたが、これは物性も明らかにされておらないというお話でありました。まことにそのとおりだと思うのです。しかしながら、これが代謝能力というものを相当阻害して、腎臓とか肝臓とかを著しく脅かす、あるいは白血病の原因になっているのではないか、あるいはガンの原因もこういう水銀がもたらすのではないかということで、少なくとも農薬としての有機水銀を絶対に使っちゃいかぬということをわれわれは前々から強く要求し、ことしの四月からは、いもち病にはアルキル水銀あるいはフェニル酢酸水銀といった有機水銀は使わないというようなところまで、言質を取りつけることができたわけであります。メチル水銀はそういうものとどういうふうに違うのかということはよくわかりませんけれども、一連の有機水銀であるということは論をまちませんし、またメチル水銀を蓄積した魚が発見されたという事実も、これは否定することができないと思います。  そこで、私も、前に原子力潜水艦が日本に寄港するときに、放射能がどう蓄積されるかということについて学者の意見をいろいろ聞きましたけれども、魚介類とか海藻には相当——そのとき入ってすぐその外に排出されるということではなしに、どんどんどんどん蓄積をされているというような実態が、日本の学者の手によって初めて明らかにされ、放射能というものはただ単に流れてしまえばそれでおしまいではなくて、魚介類にも海藻類にも全部それが蓄積をされていく、したがって、それを食べることによって、人間に対する影響というものはおそるべきものがあるのではないということが証明をされているわけです。水銀がそれと同じ性格のものであるかどうかわかりませんけれども、これがやはりある程度蓄積されるということは、人間のからだの例をとっても明らかだと思うのです。頭の毛の中にどんどん水銀がたまって、それを検査することによって阿賀野川の問題の究明をするという順序を経ておるわけでありますから、したがって、水銀は人間の場合ある程度体外に排出されるということがわかっておるようでありますけれども、しかしながら、魚介類や海藻類などというものは、おそらく放射能の場合と同じような形で蓄積をされる可能性が大いにあるのではなかろうか、これは全くのしろうとの意見であります。そういうことで、しかもフェニル水銀というのは有機水銀でありまして、水銀というのは外国では全然使わせておりません。日本だけが使っておる。農薬に使っておるということも、これは絶対に使っちゃいかぬというようなことで、何回もこの委員会その他を通じて意見が出ておったわけであります。メチル水銀も、その例外ではないと思うのであります。ただし、それが、はたしてどの程度、どういうふうに、具体的に人間のどの部分に影響するかというようなことについての究明は、また、未知の分野に属するところではあろうかと思いますけれども、しかしながら、メチル水銀がおよそ今度の場合の原因であろうということは、これはしろうとが考えてもそうではなかろうかと思わざるを得ないと私は考えております。  そこで、先ほど来のお話で、水量が三百トンというふうなことであるから、非常に水量の多いとろに水銀が流されたって、これはたいしたことがないのだというふうになるかもしれませんけれども、外国では、御承知のように、フェニル酢酸水銀なんかの許容量をきめております。これは人体一キログラム当たり〇・〇〇〇〇五ミリグラムであります。こういうふうなことであって、もうおよそ水銀というものは、これはただ数字を出しただけのことで、絶対にあってはならぬというのが、アメリカの学会あたりできめておるところの一つの基準であります。これはフェニル酢酸水銀でありますから、メチル水銀と同じに扱うわけにはいかぬかもしれませんけれども、とにかく猛毒であるということだけははっきり言えると思いまするし、したがって、水量が三百トンもあるのだからということは論拠にならないのと、あるいはまた、水銀が魚あるいは海藻類、魚介類、そういうものに蓄積をされていく可能性が大いにあるのではないかという感じがしてならないのと、あるいは水量が三百トンといいますけれども、私は阿賀野川をよく知りませんが、聞きますと、これは相当水量の多いときと少ないときという変化が激しいというふうに聞いております。したがって、百四十トン以下という水量の場合も一年のうちには相当あるのだというようなことがいわれておりますので、一がいに三百トンを水準として判断をするわけにはいかないのじゃなかろうか、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。  厚生省のほうでは、四十一年の三月二十四日に一応の結論が出ておったわけです。ところが、通産省のほうから合議をいたしました場合に、どうも一部資料が足りないのではないかということで、この結論が順送りになりました。そのあとやっと四十二年四月に、疫学研究班であります。さらに、四十二年八月に、食品衛生調査会のほうで、先ほど私が読み上げたような、これは明らかに鹿瀬工場原因であるという明快な結論が一応出たわけであります。  ところが、通産省のほうでは、御承知のように、先ほども申し上げましたけれども、日本ガス化学浜松工場あるいは農薬というようなものも、昭和電工と同じようにその原因一つに数えられて、複数的な原因であるからこれを断定するわけにはいかないというような話があったわけであります。ところが、昭和電工鹿瀬工場のほうでは、アセトアルデヒドの製造にあたりまして一ぺんにたくさん出たといいますけれども、相当生産量が上がっている時期であったというふうなこともあるようでありますが、少なくともその処理方法というものが昭和電工日本ガス化学とでは全然違っておるようであります。山積みになって、どんどん風雨にさらして、その廃水がどんどん川の中に流れているという状態が昭和電工であります。日本ガス化学のほうでは、これを全部ドラムかんに詰めかえて、表に廃水が出ないというふうな処理のしかたをしているわけであります。したがって、こういうふうな状態からいいますと、日本ガス化学のほうに責任を転嫁するわけにいかぬということが客観的に証明されているようであります。  そうなると、あと農薬ということになりますけれども、残念ながら、魚をいろいろ調べてみた結果では、フェニル酢酸水銀は入っておりません。エチル水銀も入っておりません。これは明らかにメチル水銀だけが魚の中に蓄積をされておるというようなところからいえば、これは農薬の影響ではないということは、ほぼ確実ではないかと思うのであります。  そうなれば、どう考えても、厚生省疫学研究班並びに食品衛生調査会のほうで出した結論が——物性論やその他専門的なことを言われますと、困りますが、私自身もよくわかりませんが、どう考えても、これはやはり、すなおに、昭和電工が少なくともおもなる原因になるということだけは言っても間違いではないのではないかという感じがされてならないのであります。  そういう点で、厚生省のほうからもおいでになっておるようでありますけれども、もし私がいま申したことについての御意見があれば伺いたいし、あるいは、いろいろな水の分析その他で農林省もたいへんこれに苦労をされて研究をされておったようでありますので、その水の検査あるいは魚の検査はどこでやったかわかりませんけれども、そういったものの調査の実態というものは一体どうであったかということについて、ひとつお伺いしたいと思います。
  67. 野津聖

    ○野津説明員 ただいま御指摘いただきましたように、厚生省といたしましては、科学技術庁の総合研究費をいただきまして、約二年近くの年月を費やしまして三班の研究が行なわれまして、その結果に基づきまして、食品衛生調査会でその結果を検討、審議いたしまして、先ほど先生のお読みになられましたような答申をいただいたわけでございます。この考え方は、厚生省といたしましては、正しい考え方であるというふうなことで、これに意見をつけませんで、科学技術庁のほうにこれが厚生省考え方でございますということで見解を申し上げた段階でございます。
  68. 田所萠

    ○田所説明員 農林省のほうは、これは水産庁の研究所でやりまして、水産庁関係の方がきょう見えておりませんので、内容的に私よくわかりませんが、聞くところによりますと、水産研究所でのデータを厚生省のほうに渡して、厚生省のほうでいろいろ調査してもらった、検査をしてもらったというふうに承っております。
  69. 石川次夫

    石川委員 どうせまたあらためてこのことは審議をし直さなければならぬ性質のものでございますから、あまり追及はいたしません。  そこで昭和電工それ自体の中にも水銀の関係によるところの患者がかなりおるらしいということで、行ってそこを調べようという段階になりましたが、絶対にこれは中に立ち入って調査をさせるということはさせないというようなことも報告をされております。それから、厚生省でも、この結論を出すために研究をしようといたしましたところが、大体二カ月半ばかり立ち入り禁止を食っておりますね。通産省のほうの通産大臣の承諾を得なければ立ち入ってはいかぬというようなことで、二カ月半ばかり立ち入り禁止になっております。これはどうもその辺のところが私はふに落ちないのであります。なぜすなおにそういう検査をさせないのか。自信があるなら、なお堂々とこれは検査をさせたらいいのじゃないかと思うのですが、どうもそういう点でふに落ちないところがあります。  あと一つは、昭和電工それ自体が相当政治的な背景が多いのだということが巷間に流布されておるわけであります。政治的な背景が相当大きい。したがって、どうしても通産省あたりは、こういうふうな背景というものにこだわって、あまり断定的なことは言えないということが巷間言われております。これは定説に近いような形になっておるわけであります。そういうふうな疑念を持たせないようなすっきりした結論を、どうかわれわれのようなしろうとにもわかるような結論をぜひ出してもらいたいと思っておるわけでありますけれども、そこで最後一つ意見だけ申し上げておきます。  私は、齋藤さんと別の観点から、物性がわからぬじゃないかというようなことではなしに、科学技術庁がこういうことをやるのは不適格だという考え方を私は持っております。その一つはどういうことかというと、現地へ行って実際に調べたというのは厚生省だけなんですね。農林省や何かから資料を全部もらって、現地へ行って、専門的な学者が立ち会って、長い間非常な苦労をして、この現地に当たって調べたという実績を持っているのは厚生省だけであります。科学技術庁は、通産省なりあるいはいろいろなところのデータを集めて、それを総合調整、判断をするんだという立場になっておるようでありますけれども、しかし厚生省以上の権威をもって断定をするという力は、私は科学技術庁は持っておらないと思うのです。そういう点で不適格であるし、現地で現実に調べないで、書類の上だけでこれを検討しようということにも相当問題がある、こう私は思わざるを得ないのであります。  それとあと一つは、科学技術基本法案をいずれ審議にかけるのでありますが、私はこのときも痛感したのでありますけれども、科学技術庁で扱っている科学技術というものは一体何だといいますと、ビッグサイエンスと、それにつながるところの研究、これだけなんです。一般的なほんとうの基礎研究というものは全然科学技術庁には入っておりません。そういうふうなことで、この科学技術庁という名前はたいへん科学技術全体をつかさどるようなかっこうになっておりますけれども、実はビッグサイエンスに関連のあるような事項が主として取り上げられておるというかっこうになって、科学技術の全体を総括するという力も、そういう分掌にもなっておらないのが現在の実態だと思うのです。したがって、この科学技術庁はビッグサイエンスをやるということと関連をして、たとえば、原子力にしても、宇宙にしても、これはやはり巨大科学であると同時に巨大産業であるというようなことを通じて、そういうことが因果関係になっておるのかどうか知りませんけれども、通産省から相当多くの人が来ているわけです。文部省からも来ておる人もありましょうが、ほとんどが通産省からで、出先機関みたいな感じを呈しておる。これまた定説になっております。したがいまして、どうしても通産省意見には従いやすいかっこうになっておるのじゃないか、これまただれしもが見ておるところであります。したがいまして、通産省の言うことには一番科学技術庁は弱いんだということと、科学技術庁それ自体が、ほんとう日本科学技術全体を統括をしているという立場にはない。現地の調査もやっておらないというような、いろいろな点から見て、科学技術庁が取りまとめるということ自体がきわめて私は当を得なかった措置ではなかったかというふうに感じておるわけであります。したがって、現地も見ないで書類の上だけで、しかも自信がないというふうなことであるならば、私は調査を返上したらどうか、これはとても科学技術庁の手に負えることにはならない、こういう感じがしてならないのであります。科学技術庁がこれを扱うことは不適格である、こういうふうに断定せざるを得ないわけでありますけれども、これは大臣がいないところで言っても始まりません。高橋さんにこれを言ってみたところで適当な答弁ができるとは思いません。ただ意見だけを申し上げておくわけでありまして、世間の疑惑を招くようなおそれのないような、すっきりした結論が出るようにしたいという考えで一ぱいでありますけれども、きょうは時間もありませんし、いずれあらためてこの点についてはとことんまで質疑をしたいと思っておりますので、意見だけを申し上げて私の質問を終わります。
  70. 沖本泰幸

    沖本委員長 次に、内海清君。
  71. 内海清

    内海(清)委員 時間がございませんで、ごく簡単に御質問申し上げたいと思います。なお、私はこの問題についてはいわばしろうとでございまして、常識的な立場から御質問申し上げたいと思います。  いままでいろいろ論議されてまいりましたが、いずれにいたしましても、このことを科学技術庁結論を出すことがどうかということは別にいたしまして、私は、この原因は、あくまでも科学的な立場に立って究明をされなければならぬということです。同時に、たびたび皆さんからも申されましたけれども、これに政治的な圧力を加えるようなことがあっては、これはまた相ならぬ、こういうように思うのであります。したがって、これはあとから申しますが、被害者救済その他につきましても、おのずから政府としてはとるべき立場があるのじゃないか、かように考えるのであります。  そこで、まずお尋ねいたしたいと思いますのは、通産省関係ですが、先ほどからの議論で通産省がいろいろ批判されておるようでありますが、通産省結論につきましては、私も実は拝見いたしました。ところが、通産省がこの結論を出すについては、先ほど厚生大臣は非常な信念をもって御答弁になりましたが、通産省もおそらく確固たる信念の上に立ってこれを出されたと思うのであります。そこで、われわれ、いわばしろうとにわかるように、この際通産省の詳しい説明をひとつお聞きしたいと思います。
  72. 吉光久

    吉光政府委員 通産省のほうで出しました意見の概要につきましてお答え申し上げます。  通産省といたしまして、あれこれ直接現場に参りまして調査するとかいうふうな調査手段はとらなかったわけでございまして、先ほどお答え申し上げましたように、厚生省におきます特別研究班調査報告書、それから食品衛生調査会答申、あるいはまた、その意見を出すまでの過程におきまして厚生省との間でやりとりいたしました文書というようなものをもとにいたしまして、それらのデータが基礎になりまして意見を申し上げたわけでございますけれども、端的に申し上げまして、この事件原因物質有機水銀である。こういう点につきまして、あるいはまた、昭和電工鹿瀬工場からもメチル水銀は排出されておるという事実につきましては、実は異論のなかったところでございます。ただ、いろいろと文献等を調べてまいりますうちに、どうしてもわからない、あるいはまた、最終的にわかるまでには分析技術のさらに進歩というものにまたなければならないかと思われる点もないわけではないわけでございますけれども、従来のいろいろの文献のみでは理解できないような問題があったわけでございまして、ただ、これは今回の事件究明と申しますよりか、より以上に、将来におきます水銀による公害事件というものの発生を防止するために必要な研究というものがまだ相当残っておるのではないだろうか、このように感じたわけでございまして、これが一般的な究明の問題として、さらに研究が続行されてしかるべきものではないかというふうに考えたわけでございます。  と同時に、一番理解しにくかったのは、やはりある一定の時間内におきまして、非常に多数の患者が集中的に発生したというふうな、そういう事実につきまして、どういう理解のしかたをしたらいいかという点につきましてのいろいろな資料というものがなお不十分ではなかったであろうかというふうなことで、以上の二点を科学技術庁に対する見解として申し述べたわけでございます。  ただ、こういう公害問題につきまして、いつまでも原因が確定しないというふうなことになりますれば、先ほど来お話が出ておりますように、被災者が救いのないような状態におちいるというふうなことになりますので、こういう原因究明の問題とは別に、やはりそういう被災者救済の問題につきましては、積極的な措置を具体的にとるべきではないであろうかというふうなことをもつけ加えまして、以上三点概括的に御報告申し上げたわけでございます。
  73. 内海清

    内海(清)委員 そういたしますと、通産省としては、現地について調査したわけではない。したがって、厚生省調査による資料をもとにして判断された、こういうことだと思うのでありますが、その厚生省資料で、あなた方が通産省として納得しがたい問題は、厚生省と十分論議されて、なお納得がいかなかったのかどうか。ただ、厚生省資料をあなた方のほうの手で調査した結果、あなた方がこういう結論を出されたのかどうか。その点はいかがですか。
  74. 吉光久

    吉光政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、この事件につきましての国の最終的な結論というものが科学技術庁において取りまとめられるというふうなことにスケジュールがきまっておりましたので、したがいまして、それぞれの各省がそれぞれの各省の立場科学技術庁意見書を提出するというふうなことでございまして、先ほど来の問題点等につきましては、厚生省にいろいろな照会はやっておりますけれども、意見書を書く段階におきましての突き合わせはいたしておりません。
  75. 内海清

    内海(清)委員 もちろん意見書を出す場合は、通産省見解でありますから、通産省独自の立場でやらるべきで、これは当然だと思うのです。しかし、厚生省資料納得しがたいものについてはあくまでも通産省立場において十分論議して、なお納得しない。したがって、通産省意見書を出す場合に、通産省独自のかような意見が出た、こう理解していいですか。
  76. 吉光久

    吉光政府委員 意見書を提出いたします前の段階で私どもの持っております疑問点につきまして厚生省にお尋ねをし、そして、それについて厚生省からの回答を得まして、その回答も含めて検討いたしました結果意見書をつくった、こういう状況でございます。
  77. 内海清

    内海(清)委員 それでは、通産省といたしましては、この意見書に対しては十分確信を持って通産省立場で出された、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  78. 吉光久

    吉光政府委員 私ども先ほど申し上げましたようなデータを前提にいたしましては、こういうふうな結論が出てまいったわけでございまして、現物の事実関係等につきましてさらに違った事項がございますとか、あるいは私どものいままで承知いたしております資料以外の資料というふうなものが出てまいれば別でございますけれども、現に私どもに与えられております資料から判断いたした限りにおきましては、通産省の出しました意見について、いま特別にどの点がどうであったというふうな気持ちは持っておらないわけでございます。
  79. 内海清

    内海(清)委員 大体通産省考え方はわかりました。  そこで、いまの通産省答弁に対して、科学技術庁はどういうような態度を持っておられますか。
  80. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 ただいまお話のございました十二月二十八日付の文書をいただきまして、先ほどからお話がございますように、他の三省からもそれぞれ年末までに御意見が出ておりますので、そはらを総括いたしまして総合的な判断をいたすべく、各省といま交渉中でございます。
  81. 内海清

    内海(清)委員 時間がございませんので、いずれまた、あと掘り下げて質問することといたしますが、私が第三者的な立場で、いままでの論議その他いろいろな資料を見まして不審に思いまする第一点に、新潟地震後に一時的に、しかも河口付近だけに限りまして患者が出たというお話が先ほどもございました。齋藤委員からも御質問がございましたが、それから、魚が異常な浮き上がりをした。それから、毛髪の中の水銀量が非常にふえておる、こういうふうな問題が全部限られた時期に、限られた場所で起きておるということであります。ところが、この辺の問題につきましては、どこからも、いままで、十分われわれが考えても納得するだけの説明がされていないように思うのであります。時間がございませんからひとつこれは簡単にお答えいただきたいのでありますけれども、厚生省あるいは通産省あるいは科学技術庁、御意見がございましたらひとつお伺いいたしたい。
  82. 野津聖

    ○野津説明員 食品衛生調査会答弁にございますように、昭和三十九年八月から四十年七月にわたっての患者の発生あるいは魚体内の水銀蓄積量は高められたということにつきましては、調査会でも、新潟地震あるいは集中豪雨及び昭和電工鹿瀬工場におけるアセトアルデヒド製造の操業停止前後における管理の状態などについて検討いたしたわけでございますが、新潟地震に関しましては、新潟港埠頭倉庫に保管中の農薬阿賀野川への投棄あるいは流出農薬の塩水くさびによる阿賀野川への溯上をその原因とすることについては、これを裏づけておりませんし、また、これを否定しておるような資料もある。ただ、集中豪雨とか、あるいは操業停止前後におきます管理の不備によります工場排水の河川汚染というものにつきましては、現在のところでは有無を推定することは非常に困難である、こういうふうなことで、食品衛生調査会では、審議の結果、結論が出ているわけでございます。
  83. 吉光久

    吉光政府委員 先ほど全体の返事を申し上げました段階におきまして、その点に一部触れておりましたけれども、簡単に申し上げますと、通産省といたしましては、いまお尋ねいただきました原因につきましては、確信を持って一つの判断を下すというふうなことができなかったわけでございます。
  84. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 当庁といたしましては、検討いたしておる段階でございますけれども、ただいま厚生省通産省からおっしゃいましたような意見は当然頭に入れて検討いたしております。
  85. 内海清

    内海(清)委員 いまの点が一番原因究明を混乱さしておる問題じゃないかと思うのであります。なるほど、河口の人がよけいに魚を食べたかもしれません。しかし、魚を食べるのは河口の付近の人のみではないと思う。あの沿岸の上流あるいは中流の人も、すべて魚を食べております。ところが、河口付近でそういう患者がよけい出たという、この関連です。魚は河口付近にのみおるのじゃございません。中流にも上流にもおるはずである。しかるに、中流やあるいは上流には魚の浮き上がりもない、患者も出ていない、こういう状態です。先ほど齋藤委員からもお話ございましたが、六十五キロも上流にありまするその工場排水でもって、その中間には全然害を与えないで河口だけにこれが発生しておるという、これは工学的に考えましてもあり得ない問題ではないかと思うのであります。しかも、三十年も続いておりまして、その間にそれが起きていないという、このなぞを解明しなければならぬと思うのです。この問題が真相究明の一番のかぎではないかと私は考えます。しかし、いまの御答弁でもこの点は明らかにされていない。この点を解明することが一番中心ではないかと思いますが、それに対する御見解を伺いたい。
  86. 野津聖

    ○野津説明員 食品衛生調査会答申にもございますように、その基盤をなしておりますのは、昭和電工鹿瀬工場におきまして、アセトアルデヒドの生産高の増加に伴うメチル水銀を含む水銀加合物が流出しまして魚を汚染したということが、食品衛生調査会の第一の項目にあがっておりますように、基盤をなしていると考えておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、第二項目にあがっております昭和三十九年八月から四十年七月にわたる定型的な症状を示す患者の多発については、先ほどお答え申しましたように、これを推定するということは現時点では非常に困難である、こういうふうなことになっているわけでございます。ただ、この「基盤をなしているものと考えられる」というあとに、「この状態のみでもメチル水銀患者発生の可能性がある」ということも、食品衛生調査会答申の中に入っておるわけでございます。
  87. 内海清

    内海(清)委員 そのことは厚生省でお考えになりまして、科学的に解明しても十分根拠があるとお考えですか。
  88. 野津聖

    ○野津説明員 研究班の三班の研究の報告書をもとにいたしまして、さらに食品衛生調査会におきまして、その方面の専門の学者の方にお集まりいただきまして、十分検討して出していただいた結果がこの答申の形をとっておりますので、科学的な根拠があるというふうに考えておるわけでございます。
  89. 内海清

    内海(清)委員 われわれは、その点について一つの疑問を持つものであります。したがって、われわれがしろうと的に見ましても、なかなか納得がいかない。一時的に一定の場所に限ってこういう状態が起きたということにつきましては、私どもはどうも納得がいかない。三十年も、しかも六十五キロも上流に、いままでやってきたものが、それまでになかったのに、ここでこの時期に起きたということについては、なかなか納得がいかないのであります。これは、私どもしろうとでありますから、厚生省としてはこれは科学的な根拠があるとして報告になっておるのでありますから、科学技術庁といたしましては、この点についてさらに私どもの納得のいくような究明をさるべきである。それにつきましては、科学技術庁、どういうふうにお考えになりますか。
  90. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 繰り返しになりますが、いま厚生省からお話もございましたように、食品衛生調査会の御答申は長期汚染というものが基盤になっておる、しかし一定の期間に多数患者が発生いたしましたのは、それに何らかの短期的な侵襲が加わりまして、魚の多食ということのほかに、魚体内のメチル水銀の含有量が高められて、両者が重なって多数の患者が発生したのである。しかし、その短期的な水銀の侵襲というものの原因につきましては、資料からは十分にわからないという御趣旨でございます。それが答申の二つのパラグラフの一つの大きな柱になっておりますので、当然ここに書いてございます諸事項につきましては十分に検討したい、こう思っております。
  91. 内海清

    内海(清)委員 短期的ないまの問題が究明されていない。それがわれわれの納得いかないところです。あの時期に、なぜあの地域にそういうふうに出てきたかということであります。この点は私どもが十分納得いくような究明をしていただきたい。これは強く要望しておきたいと思います。  それから時間がありませんが、次に、これは全く私しろうとでありますから、そのつもりで聞いていただきたいのでありますけれども、食品衛生調査会におきましては、患者メチルしか出ていないから農薬ではない、農薬であるならばメチルのほかにエチルやあるいはフェニル、こういうものも出るはずだということをいわれておるのでありますが、これに対しましては、なおいろいろ問題があるようであります。このことがはたして科学的に究明されたのかどうか、こういう点があると思うのであります。これはあるいは学者の前提の置き方によって違うかもしれませんが、こういうことにつきましての厚生省並びに通産省、この方面の御見解を承りたいと思います。
  92. 野津聖

    ○野津説明員 農薬による原因を排除いたしましたことにつきましては、三研究班研究報告及び学識経験者であられる食品衛生調査会委員の先生方によって十分検討された結果、そういうふうな否定の結果が出たわけでございますので、これは科学的に検討された結果だと了解いたしております。
  93. 吉光久

    吉光政府委員 的確にお答えできないかもしれませんけれども、私どもの読みました文献の中では——これは阿賀野川関係ではございません。文献の中では、農薬によりましてもメチル水銀によって中毒したというふうな事例が出ておることは承知いたしております。ただし、阿賀野川におきますところの農薬関係につきましては、実は私ども資料を全然入手いたしておりません。したがいまして、阿賀野川における農薬につきまして、はたしてどうであったかということにつきましては、御答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  94. 内海清

    内海(清)委員 この問題は非常にむずかしい問題だと思いますが、この問題につきましても、いわゆる実験室等における実験はいろいろされておるようであります。これによれば、いろいろあるようでありまして、したがって、これがあの場合の阿賀野川でどうかという問題は、なかなか実験できない、むずかしい問題だと思いますけれども、しかし私どもが考えます実験室等における実験の一つの要素ではなかろうか、こういうふうに思うのであります。  これにつきましては、時間がございませんが、ただ、私は、先ほど大臣にも申し上げましたけれども、これは他の場所においてはやはり農薬によって水俣病というふうなものが起きておる。こういう事例はあるわけで、これは先ほど申しましたように四月の十七日の毎日新聞に出ておりますが、愛媛県においてその事例がすでに出ておるのであります。これらもやはり一応原因追及の一つの素材ではなかろうか、こういうふうに思うのであります。これらの点もさらに究明していただきたい、こう思います。  それから、時間がございませんからかけ足で、いままでのいろいろの調査資料に見ますと、この間も大臣にちょっと申しましたが、地震当時、新潟港の倉庫から農薬が流出したかどうかという問題、これが論争のまた一つの種になっておるのでありますが、これは、当時の県の通達では、農薬が流れたということで、いろいろここに県の衛生部長名で出された書類もあるわけです。いわゆる農薬が流れたから十分注意せいということでありましょう。ところが疫学班では、これは流失はなかったと判断をした、こういう報告がされております。これも、この疫学班の中に衛生部長も入っておられますので、この衛生部長の意見が強かったと考えられるのでありますが、一体どちらが正しいかということで、この問題につきましても私ども、しろうと的に考えましても疑念を持つわけであります。この点はいかがか、ひとつ厚生省見解を伺いたい。
  95. 野津聖

    ○野津説明員 地震というふうな非常な災害の起きました場合には万全の策をとりますのが、県の衛生当局の立場としての当然な措置ではないかというふうに考えております。したがいまして、非常に最悪の場合を予測いたしました形での通知を出しますのは、これは県の衛生部長としましては当然の措置であったと私どもは了解いたしております。  ただ、実際にその農薬がどういうふうになりましたかということにつきましては、疫学班におきましてこまかい調査をいたしました結果、あるいは帳簿等と照合いたしました結果、流失がなかった、こういうふうに認めているわけでございます。したがいまして、地震というふうな非常に大きな災害の時期に行ないました手と、それから研究班という立場でやりました内容といたしましては、当然研究班立場の流失しておらないということは研究的な立場でございますし、また、県の通達を出しましたのは緊急の措置という立場で、当然県民の健康を守るという立場でございますので、立場的に非常に違う問題であろうと私は了解いたしておるわけでございます。
  96. 内海清

    内海(清)委員 なるほど、そういう答弁もあろうと思いますが、その後のいろいろの資料を見ましても、一切出ていないという数量的な資料が出ております。ところが、これも四月五日の毎日新聞でありますが、新潟県で農薬を川に投棄したという問題があります。それを調べましたところ、一切倉庫から出ていないという——商船倉庫であります。そこから当時持ち出されておる。これはいま警察庁の保安局の保安課で調べております。こういうふうな問題、そうすれば、これが事実とすれば、この資料というものはきわめて不備なものであったということがいえる。これは名前もずっとあがっております。警察庁からの報告があるわけであります。この点はどうお考えになりますか。
  97. 野津聖

    ○野津説明員 四月五日の新聞は私も拝見したわけでございますが、現在こまかい点につきましてまだ取り調べ中のようでございますので、現在の状態では確実なお返事は申し上げにくいと思います。
  98. 内海清

    内海(清)委員 これは仮定になって恐縮ですけれども、もしそれが事実であるならば、当時の倉庫課長の名前から営業課長の名前、それからだれに移ったということでずっと一応の調査は出ておりますが、事実であったとするならば、この資料というものがきわめてずさんなものであったということに相なると思うが、これは仮定で恐縮ですけれども、そのときにはどうなさるお考えですか。
  99. 野津聖

    ○野津説明員 ただいま申し上げましたように、どうもまだ実性が明らかになっておりませんものでございますから、策弁は差し控えたいと思います。
  100. 内海清

    内海(清)委員 それでは事実が明らかになった時点において、また御質問申し上げたいと思いますが、時間がございませんので質問はこれで打ち切りますが、ただ、先ほど来齋藤委員なり三宅委員からお話しがございましたが、いずれにいたしましても被害者救済の問題、これは焦眉の問題だと思うのであります。でありますから、分ければ原因究明と今後の公害防止と患者救済ということに相なると思うのであります。この原因究明は、あくまでも科学的に徹底的にやっていただきたい、こう思うのであります。したがって、今後の公害防止は、この原因が明らかになったときに科学的な防止をやるういうことに相なるでございましょう。患者救済の問題は、まことに気の毒な問題でありますから、この問題については、先ほど厚生大臣からもお話がございましたけれども、政府のこれに対する結論が一日も早く出ることを希望する。これは国で救済を肩がわりしておきまして、そして、原因究明には、さらにそういうことに対する政治的な圧力などがかからぬようにこれをやってもらいたい、こういう要望でございます。これらの点をはっきり区分してやることが必要だと思うのでありますが、これにつきまして、通産省意見書にはこのことを書かれておりますが、科学技術庁を含めまして他の各省のこれに対する御意見があれば承りまして質問を終わります。見解ございませんか。
  101. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 当庁といたしましては、冒頭申し上げましたように、本特別研究促進調整費によります研究の取りまとめでございます。その点につきましては、先生方からお話のございましたように、公明正大にこれをやろうと思っております。援護問題あるいは公害防止問題につきましては、一般的には当然だと思いますけれども、これはむしろ関係各省からお答えいただいたほうがいいと思います。
  102. 野津聖

    ○野津説明員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、私のほうとしても十分これに取り組んでいきたいというふうに考えております。
  103. 沖本泰幸

    ○沖委員長 次に、近江巳記夫君。
  104. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がほとんどありませんので、数点だけお聞きしたいと思います。  まず、科学技術庁にお尋ねをいたしますが、昭和四十年に科学技術庁から九百六十四万円の調査費が出されまして、通産、厚生、農林、それから経企庁に調査を依頼されたわけでありますが、その依頼された件に対して、あくまでも信頼をもってその依頼をされたのか、ただ、資料をとるぐらいの意味で依頼されたのか、その辺の見解を聞きたいと思います。
  105. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 ただいまの御質問の中で、具体的に研究をお願い申し上げましたのは、厚生省農林省、両省でございます。もちろん、それぞれの所管行政に関連いたしますところの研究でございますので、十分なる調査研究をお願いできるという前提で御依頼申し上げたわけであります。
  106. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで十分な調査研究ができるという観点で依頼をした、その結果について、あなたのほうとしては十分な信頼に足るものとしてそれを依頼されたわけですか。その辺はどうなんです。
  107. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 ちょっと私の説明が不十分だったと思いますけれども、この中毒事件が発生いたしましたので、これに関連いたしますところの関係省庁でこれの原因究明いたしまして、将来の対策を講ずる必要がある。しかし、各省の行政に関係いたしておりますことでございますし、また、研究的な内容につきましてもそれぞれの関係がございますので、総合的にやりたい。そこで予算その他の関連もございますので、科学技術庁から特別研究促進調整費を支出いたしまして、この研究をやりたいというお申し出があったわけでございます。それに基づきまして、当庁で各省の連絡会を開きまして、それぞれの分担とその研究内容を御協議の上定めまして、二省庁にその研究を御依頼申し上げた、こういうことでございます。
  108. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術庁としては、現地へ行って調査をやったのですか。
  109. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 私どもは厚生省及び農林省調査をお願いいたしましたので、それぞれの関係省庁が現地におきましての調査研究を担当されたわけでございます。私どものほうが関連をいたしますのは、食品衛生調査会答申に対しましての各省庁の意見の調整という段階でございますが、これも従来の国会の審議の際にいろいろお話があったと思いますけれども、新たに研究は行なわない。これは事件の再現性の問題もございまして、それから、結論をできるだけ早くというお話もございましたので、要するに、従来の資料の範囲内におきまして検討をいたすということにいたしたわけでございます。したがいまして、それ以後におきまして、これは関係各省も全部同じと思いますけれども、その後には現地調査等は行なっておりません。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術庁が出されたのはあくまで原案でありますから、結論でないとは思いますが、しかし、非常に大きな影響を与えておるわけです。たとえば、科学技術庁がその原案を出したことによって昭和電工の上田取締役は、「厚生省食品衛生調査会報告に対する正当な評価だと思う。これまでの研究は克明な調査がされていないのに「昭電が犯人だ」と断定していた。これでぬれぎぬが晴れてうれしい。」こういうふうにも言っているわけです。また、被害者のほうは、また、政府企業の代弁者になったかと政府に対する不信というものが非常に大きく広がっているわけです。これだけの重大な、たとえ原案であろうと発表するに際して、それだけの十分な資料なり、また現地調査に基づく上での発表であるかどうか、科学技術庁は、先ほどからお話が出ておりましたが、書類だけ、報告だけに基づくそういう見解を原案として発表している。きのう「二十四日新潟市で開かれた日本神経学会新潟大学医学部椿忠雄教授は、「阿賀野川沿岸の有機水銀中毒——新潟大学における研究」と題する講演で「この事件原因昭和電工工場廃液」だと正式に意見発表した。この講演は、同会の会長として行なったもので、同教授が中心となって進めてきた新潟大学医学部の「有機水銀中毒特別研究班」の三年間にわたる研究成果の結論として述べられた。同教授は講演で、この中毒事件原因は、科学技術庁が打出しているように「汚染源断定は困難」ではなく、明らかに昭和電工鹿瀬工場の廃液に含まれていた有機水銀が、川魚を媒介として人体に蓄積されたために発生したものであると断定した。」このように新聞にも発表されているわけです。こうした影響に対して、科学技術庁として、現時点において、どういうような考えにいま立っていらっしゃるのですか。
  111. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 近江先生の御質問の中に、当庁が原案を発表したというおことばがございましたけれども、本委員会におきまして再三申し上げましたとおり、当庁といたしましては、まだ原案を得るに至っておりませんので、その点は御了解願いたいと思います。したがいまして、禁経学会の椿先生の御発表その他に対しますところの批判というものも、この段階におきましては留保さしていただきたいと思いますので、御了解願いたいと思います。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 あまり時間もありませんので、次の機会に譲りたいと思っておりますが、いままでのこの種の事件についていろいろ経過を見ていきますと、実際に全部うやむやに葬り去られております。先ほどからも話が出ておりますが、熊本県の水俣湾で起きた事件でありますが、この水俣病で百十一人の患者が発生して四十一人が死んでいる。あと非常にいろいろな障害で苦しんでいる。阿賀野川事件にしても、五人が死んであとの人が非常な苦しみを受けている。こうしたことが全部要するに原因がわからないということで、うやむやにされているわけです。こういうような事件というものは、これからますます科学が発達し、さらに工場等の規模が大きくなってくる、そうなってくると、さらに増大してくることが考えられるわけです。したがってこうした問題について真剣な取っ組みというものがなければならない、このように思うわけです。実際この種の事件を見てみますと、みな訴訟しているわけですが、ほとんどが民事訴訟になっている。大体このような事件で民事訴訟をした場合に、当然片方は大企業被害者ほんとうにその日の生活にも困るような人がやはり告訴しているわけです。全然立場というものが違うわけです。法の原則として疑わしきは罰せず、先ほどからもいろいろな話が出ておりましたが、しかし公害に対して刑事原則というものがそれじゃ適用できるかという問題になってくると思うのです。東大教授の刑事法の教授である藤木さんが発表しておられるわけですが、時間がありませんから全部はここで読めませんが、「経済力に大きな差のある大企業相手の訴訟では、一般の民事裁判の原則にしたがって、企業が加害者である疑いがそうでない可能性よりも濃厚であることを立証すれば十分だ、としたところで、原告側の不利は目に見えている。この上に、「疑わしきは罰せず」の立場によれというのでは、企業責任の追求は恐らく不可能になってしまい、」こういうことを発表されておる。また、この人の意見として、そういうことになるならば、「企業の利益を過当に擁護することになる。もし刑事的な立場に立って事に当れ、というならば、まず、事件の公共性からみて、真相の究明を徹底的に行えるよう、犯罪捜査機関と同程度の強制調査権限をもった産業警察のような機構をつくるなどの方策を考えるほうが先決である。ところで、疑わしきは罰せず、という原則も、決して、事件の全容を細部までくまなく証明せよ、という意味のものではない。情況事実から推論して犯人を断定することも許されている。」そして「首なし事件」をずっとここにあげていらっしゃるわけです。こういう点において、たとえその被害者がいろいろなこういう訴訟をしていったとしても、これは実際に判定はむずかしいし、こういうような状態でいつまでも引っぱっていく、そうすれば、これは実際に弱い被害者というものは事人命にも関するわけです。生活も維持していくことができない。こういうような現時点を考えたときに、このような状態をいつもいつも繰り返していっていいのかという問題になってくるわけです。そういう点について、科学技術庁としては、どういうぐあいに考えているのか、特にこの法というような立場……。
  113. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 御質問の御趣旨、非常に重要なことだと思うのですが、これは、本件に関しますのみならず、公害問題に対します一般的な問題でございまして、これに刑法を適用するかどうかというような問題につきましては、私どもは答える権限と知識を持っておりませんので、留保さしていただきたいと思います。もちろん、当庁といたしましては、種々の公害問題を解決いたしますために、基本になりますところの科学技術的な意味開発研究、こういうものの振興と申しますか、そういう点につきましては、関係各省と十分に連携をとって推し進めていきたいという所存でございますが、その他の点につきましては、特に当庁として申し上げる立場でございませんので、答弁を保留さしていただきたいと思います。
  114. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ちょっと関連ですが、いまの答えでちょっと納得いかぬのですが、これはどうとらえておるかということで質問されたと思うのですよ。新潟大学の椿さんがその研究の結果を発表しておられるでしょう。新聞に載りましたね。これをどうとらえておられるかということです。椿さんというのは、今度の研究班とどんな関係があるのですか。
  115. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 椿先生の神経学会におきます御発表は、実はまだ内容をこまかいのを拝見いたしておりませんので、私も新聞紙上で拝見した段階でございますが、今回の特別研究臨床研究班にお入りになっております。従来とも、この道におきましては非常に権威者であられるということは、私も存じあげております。  具体的な研究の論文の内容を私はまだ拝見いたしておりませんけれども、先ほど近江先生の御通読になりました点でございますと、大体この研究班研究の事実に基づきましての御見解であろうというふうには思っております。
  116. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そうでしょう。だから、私が申し上げたいのは、科学技術庁としてああいう見解が漏れたかどうかわからぬけれども、ああいうことが公になってしまった、その段階で、臨床研究班におられたこの椿先生はたまらぬようになってこういう発表をされておるのですよ。科学立場に純然として立って、敢然としてこれに手向こうておられるのですよ。何のためにそういう混乱が起こったかということを非常に遺憾に思っておられるのだと私は思うのですよ。内容については検討してみますと言ったって、われわれわかるはずはないでしょう、この人が何年もかかって一生懸命やったことですから。科学技術庁、そういう簡単な御答弁をしてもらっては困る。そういうとらえ方をしてもらいたいと思う。その答えがいまさあっといなされてしまうような答弁で終わってしまっている。そういう突き詰めた論議もその後にして、もっと真剣に科学技術庁質問者の焦点をとらえて返事をしていただきたいと思う。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 私もほんとう一つの問題で一時間、二時間やりたいのですが、時間がありませんので問題提起だけいたしておきます。  先ほどから私が言っておりますように、ここで問題になるのは、結局科学的に判断しましたとかいろんなことを言っておりますが公害問題で一〇〇%科学的に因果関係を証明するということは至難なことです。ですから、ここで勘ぐって言うならば、科学性ということを隠れみのにして問題をぼかすこともできるわけです。このことについて、私もいろいろ調べたわけでありますが、岩波書店から出ておる「現代資本主義と公害」、この本の中にも「このため、その工場排水水俣病の唯一の原因であると証明しなくても、会社側に賠償義務を認めさせることは、立法上、裁判上妥当であるという学説も有力になりつつある。」こうした訴訟問題における一つ考え方というものは、ここにも出ておるわけです。こうした問題も、今後、次の委員会でもいろいろと質問していきたいと思います。  最後に、要するに問題は、原因がどこだとか何だとか言っておる間に、患者はどんどん死んでいくし、生活はぶっつぶれていくわけです。したがってこれに対してどうしていくかということが一番大事な問題です。したがって、この前にも、国あるいは地方公共団体あるいは企業拠出による基金制度等を設けていくというような話が出ました。佐藤総理は常々、人命尊重あるいは社会開発というようなことを言っておられるわけです。五十五国会で公害基本法が通過いたしました。そのときに、これは仮称ではありますが、被害者救済法案といった内容の法案を五十八国会に提出する、このように総理も言っておられるわけです。しかしながら、そうしたことは全然提案もされておらないということは、結局、現在の佐藤総理以下、政府企業の代弁者だ、この論拠を証拠づけるものではないか。ほんとうに人命の尊重と救済考えるならば、ほかの法案をほっておいてもまっ先にそれを提出すべきだ。それをうやむやにしておる。しかも、科学技術庁は現地に調査も行かずにこういういいかげんな、いいかげんなというのはなんですが、要するに、現地の調査にも基づかずに資料だけでそういうふうな原案を漏らしておる。非常に無責任態度だと思います。いずれにしても、被害者のことを考えると非常に気の毒です。そこで、何としても早期の救済の措置をとってあげなければならない。ここで、仮称でありますが、救済法案の立法を急ぐべきである。そして、当然その内容に盛り込まれると思いますが、基金制度を具体的に早急に実現していかなければならない、私はこう思うわけです。これに対してどのように考えていらっしゃいますか。厚生省、それから科学技術庁農林省、一応関係当局全部言ってください。
  118. 野津聖

    ○野津説明員 私のほうで公害救済について直接主管しておりませんので、こまかい点については申し上げられませんけれども、本件につきましては、当然この救済というものは早急に行なうべきだろうと考えております。したがって、できるだけ早く法的な措置を講じまして、気の毒な方々に対する救済が進めていけるような方法をとっていくように、また帰りまして上司にも伝えたいと思っております。
  119. 吉光久

    吉光政府委員 御指摘いただきましたとおりでございまして、救済制度というものが早期に確立されるということにつきまして、私どもも厚生省とよく連絡いたしまして、その方向で問題の解決を前進させてまいりたい。このように考えます。
  120. 高橋正春

    ○高橋(正)政府委員 ただいま化学工業局長から言われましたとおりでございまして、関係の各省において十分に御協議の上御処理相なりたいと思っております。
  121. 田所萠

    ○田所説明員 農林省も、通産省が先ほど申しましたように、主管庁である厚生省と十分連絡をとりまして、厚生省のそういう案がすみやかに進むことを期待いたしたいと思います。
  122. 宮内宏

    ○宮内説明員 全く同じ意見でございます。
  123. 沖本泰幸

    沖本委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時一分散会