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1968-03-21 第58回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十一日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 沖本 泰幸君   理事 小宮山重四郎君 理事 齋藤 憲三君    理事 始関 伊平君 理事 石川 次夫君    理事 三宅 正一君 理事 内海  清君       大石 八治君    岡本  茂君       桂木 鉄夫君    角屋堅次郎君       三木 喜夫君    近江巳記夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       天野 光晴君         科学技術庁長官         官房長     馬場 一也君         科学技術庁研究         調整局長    梅澤 邦臣君         科学技術庁振興         局長      谷敷  寛君         科学技術庁資源         局長      鈴木 春夫君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君  委員外出席者         厚生省医務局総         務課長     上村  一君         厚生省国立がん         センター病院長 塚本 憲甫君         農林省農政局参         事官      田所  萠君         農林省農政局植         物防疫課長   安尾  俊君         農林省農業技術         研究所病理昆虫         部長      岩田 吉人君         工業技術院総務         部総務課長   片山 石郎君         工業技術院発酵         研究所長    七字 三郎君         参  考  人         (東京葛飾赤         十字血液センタ         ー所長)    森下 敬一君         参  考  人         (佐久総合病院         健康管理部長) 松島 松翠君         参  考  人         (理化学研究所         副理事長)   住木 諭介君         参  考  人         (理化学研究所         主任研究員)  見里 朝正君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(対ガン科学、農  薬の残留毒性科学的究明及び低温流通機構等  に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 沖本泰幸

    沖本委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  対ガン科学に関する問題調査のため、本日、参考人として東京葛飾赤十字血液センター所長森下敬一君に御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、御意見の聴取は、質疑応答の形でお述べいただきたいと存じますので、さよう御了承願います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。斎藤憲三君。
  3. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 厚生省その他から係官出席と思いますが、いまわが国ガンに対する関係機関及びその予算をひとつ概略お知らせを願いたい。
  4. 上村一

    上村説明員 厚生省の行なっておりますガン対策でございますが、特にガン対策として取り上げましたのは昭和四十一年度ごろからでございます。そのころからガン専門医療施設整備でありますとか、あるいは研究助成でありますとか、あるいは医師等専門職員技術向上のための研修、そういうものをやってまいりまして、四十三年度の予算案では、厚生省関係の経費といたしまして二十六億七千万円計上いたしております。  やっております施策の第一点は、ガン診療施設整備でございます。これは国立がんセンター中心にいたしまして、全国のブロック地方ガンセンターを設け、各都道府県ガン診療施設というものを整備してガン診療施設を組織的に体系化をはかりたいというのがねらいでございます。先ほど申し上げました二十七億円の予算の中でこのために充てておりますのが二十一億七千万円でございます。これが第一点。  それから第二点は医師等専門技術者の養成でございますが、いま申し上げましたガン診療施設整備に合わせまして、ガン診療に従事する医師でありますとか、あるいは診療X線技師その他の技能を向上させるために、当初は国立がんセンターをはじめとする三つの施設で、四十二年度からは四つの施設で、毎年研修を実施いたしております。  それからガン対策の第三点としましては、ガン研究推進でございます。厚生省では臨床部門における研究を、文部省では学術研究をというふうに、役割りを分けていたしておりますが、四十三年度予算は、厚生省で行ないます臨床部門における研究につきましては二億五千七百万円、このために計上いたしております。  それから最後が集団検診でございます。ガン早期発見のために集団検診を実施しておりますが、四十三年度予算案ではこのために二億三千万円計上いたしまして、胃ガンなり子宮ガン集団検診車整備でありますとか運営の補助、それから、こういった集団検診に従事する技術職員研修を行なっておるわけでございます。  以上が、厚生省中心になって行なっておりますガン対策の概要なり、その予算額でございます。  お話しになりましたガン関係機関というものはどういうものがあるかというふうなお話でございますが、診療施設研究施設、それから研修施設を兼ねましたものとして国立がんセンターがございます。それからいま八つのブロック国立なりあるいは公立地方ガンセンターというのがございますが、ここでは診療と、それから研修、場合によれば研究も行なうようにいたしております。その他、先ほど申し上げましたように、都道府県単位ガン診療施設というものを国立病院あるいは公立病院整備いたすことにいたしております。  これが厚生省関係でございますが、その他、科学技術庁なり文部省関係がございます。民間のものとしては、御案内の癌研究会が持っております研究所なり病院があるわけでございます。
  5. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 文部省来ていますか。――文部省研究体制係官が見えたら伺いますが、ただいまのガンに対する厚生省施策というものは、ようやく本格的になったという感じをいたすのでございますが、このガンに対する研究体制民間との接触というものは一体どういうところで行なっているのですか。民間研究体制、それから厚生省研究体制、そういう、何らか連携を保って広くガン問題に取り組んでいるというような体制はあるのですか。
  6. 上村一

    上村説明員 先ほど申し上げました、厚生省で計上しておりますガン研究費につきましては、国立がんセンターの中にガン研究助成金の運営打ち合せ会というのを持ちまして、そこでガン研究助成金交付対象となるような研究課題の選考なり、それからそういった課題に対しまして交付しようとする研究費予定額の作成、こういつた仕事をしておるわけでございます。そして、この打ち合せ会は、がんセンターの総長を会長にいたしまして、関係行政機関なり国立がんセンター職員、それから学識経験のある方々にお願い申し上げまして、そうして、いま申し上げましたような仕事をしておるわけでございます。研究課題につきましてこの打ち合せ会できめましたものを公募いたしまして、公募されたものに対しまして、いま申し上げました打ち合せ会で検討して、必要な研究費を交付するというような扱いをしております。したがいまして、いま御設問のようなところは、厚生省が持っておりますガン研究費を配分する過程の中で行なわれるということになるわけでございます。
  7. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 現在のガンにおかされておるいわゆる罹病者の数ですね、大体でけっこうですが。それから年々どのくらい死亡しているか、それからこれは一体ふえているのか減っているのか、これを簡単に、もしわかったらお知らせを願いたいのです。
  8. 上村一

    上村説明員 ただいま、ガンにおかされておる患者の数というのは、手元に正確な数字の持ち合わせがございませんが、ガンによって死亡した者の数でございますが、御案内のように、ここ十年以上もわが国死亡率の中で一番上位を占めておりますのが脳卒中でございますが、悪性生物による死亡というのは昭和二十八年以来その二位になっております。それで人口十万対比で見てまいりますと、昭和二十八年に悪性生物による死亡が二位になったわけでございますが、人口十万対比で八二、それが毎年伸びてまいっております。そういたしまして四十一年では、二十八年に八二であったものが人口十万対比で一一〇・八になっております。この間の十数年間というのは、毎年人口十万当たりの死亡率というのは高くなってきております。
  9. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうしますと、毎年ガン研究に多額の研究費をつぎ込み、そうして、ガンに対する設備を拡充し、そして、ガン死亡率がふえているということになりますと、結局いまやっていることはガン実体を把握しないということですね。どう考えますか。その点、もし研究が効率をあげて、そして、ガン実体を把握して、それに対する対症療法というものが着々功を奏すれば、ガン死亡率というものは減っていかなければならないわけです。それがだんだんガン死亡率が高まっていくということは、ガンに対する今日の知識では押さえ切れないというのか、それともまた、ほかの現象で、早期発見によってガンというものが多くなっておるのか、そういう点についてひとつ……。
  10. 上村一

    上村説明員 いまお話しのように、年々ガン死亡率というのは高くなっておりますが、それはその研究が実態に合わないからといいますよりも、むしろ先ほどお話しになりましたように、早期診断によってガンとして診断されることが確実になってまいったということが考えられますというのが一つと、もう一つは、寿命が延びてまいりまして、ガンにかかる年齢の階層というものがふえてまいったことも一つ原因じゃなかろうかというふうに考えます。
  11. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 実は、私、きょう対ガン問題に関してここで質問をしたい、こういう考え方を持ちましたのは、この間新聞に、富国生命小児ガンに対して毎年一億円ずつ十年間寄付をするという記事が出たのです。これを読みますと、ガンによって小さな子供が毎年生命を奪われる数というものは千五百人にのぼっておるという。これが小さな子供としての生命を奪われる病気においては最高の率を示しておるのだという記事であります。それを読みますと、ただいま御説明がありましたように、寿命が延びたからガンの率が高くなったということには、これは当てはまらぬ。小児ガンなんだ。小児ガンがだんだん年々死亡率が高くなって、ついに子供死亡率最高を示す病気だということなんです。いまのお話とはこれは合わないのですね。ですから、私はもちろんそういう生命が延長されて、そこにガン患者もたくさん出るかもしれないし、あるいは早期発見によってガンの確率が高まるということもあるかもしらぬけれども、小さな子供死亡率ガンによって年々高められておるということからいうと、結局、ガンというものは、幾ら金をつぎ込んで研究をやってみても、はっきりしたガンに対する根本的な病理学的な結論というものは見出し得ないのだというふうに考えるのですが、どうですか。がんセンター塚本病院長、そういう点どういうふうにお考えになりますか。
  12. 塚本憲甫

    塚本説明員 私がこれから申し述べることが斎藤先生の御期待に沿うかどうか別問題でございますが、ただいまの、小児ガンがふえているというので、寿命が延長したということと話が別じゃないかというお考え、一応ごもっとものように思えるのでございますが、ガンの占める中では、先ほど申し上げましたように十四歳くらいまでを含めましても千四百とか千五百とかいう実数が出ております。したがいまして、全体からいうと、そのふえ方プロポーションというものはそう大きくはないと思います。ただ、小児ガンがなぜふえてきているかという問題になりますと、非常にむずかしいいろいろな問題もございますし、この小児ガンと称するものの大部分が白血病であるということ、それからまた、そのほかには、先天的なかなりの異常によって生後にガン化したものがかなり含まれている。そういう二つのことを考えますと、ほかのガンでも近来非常にふえているものがあったり、この説明はまちまちでありますし、非常にむずかしい問題で、なかなか軽率に予断は許されませんけれども、ある学者は、小児ガンがふえてきているのは、かなり妊娠中に放射線を使うというような問題もふえてきておるであろうし、放射線との関係を否定することはできないという考えの人もありますが、実際の研究に基づいてそういうはっきりした数字がまだ出ておりません。  それからもう一つは、白血病の発生というものは食物、ことに栄養価の高い食べものと関係があるということを言う学者もございます。そういうことを見ますと、われわれが子供のときに食べていたものから見ますと、いまの子供ははるかにいい栄養をとっておりますし、たん白質もふえております。ネズミ実験で恐縮ですが、同じネズミ白血病をつくります実験で、いい食餌をとらせるとパーセンテージがふえてくるなどということから、そういうことを言っておる学者もありますが、これも私はその真偽のほどはよくわかりません。  大体そういうことが、小児ガンがふえているということに関して私の知っておることであります。
  13. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 まあ世間では、ガンはタブーだ、あまりガンということを口にすると、それは人格を疑われるぞというまでガンというものは非常にむずかしい問題だと私は思います。ああすればガンがなおるとか、これがガン原因だとかということは、今日の医学の進歩においても、その原因を追求してもなかなか追求し切れない大きなむずかしい問題だと思うのです。   〔委員長退席内海(清)委員長代理着席〕 私、きょう特にこの委員会で、本来ならば関係大臣出席のもとにこの問題をひとつ考えていただきたいと思ったのでありますが、そういうふうにもまいりませんでしたが、出席厚生省及び科学技術庁一つ問題を提起して御回答を得たいと思いますことは、昭和三十七年の四月二十五日に科学技術振興対策特別委員会で、ガンの問題に対するディスカッションをやったわけであります。それに出席をせられましたのは、なくなられました田崎勇博士、それから東京医科歯科大学の太田邦夫博士、それからSIC牛山医学博士東京慈恵会医科大学付属東京病院荻原医学博士、こういう方が参考人になって、そしてここで終日ガンディスカッションをやったわけであります。それは牛山博士SICというものは鼻くそだ、こう田崎勇博士が言ったということが週刊雑誌に出たわけです。それをこの委員会で取り上げまして、いろいろ論議を重ねたのでありますが、そのときに私は、これを読みますと、もう六、七年前のこの記事でございますが、こういうことを言っている。自分はこの委員会において、牛山博士のつくられたSICという注射薬ガン効果があるとかないとかということを取り上げて問題にするのではない。牛山博士田崎勇博士SICに対する考え方の食い違いをただすのだ。というのは、この牛山博士SIC製造方法に対しまして、ガン患者静脈血を無菌的に取って、その血漿を分離してこれを無菌五プロポリタミンの中に培養していくんだ。そうすると、そこに点の細菌があらわれる。それが十日ほどたつと球菌に成長していく。さらに温度を適正にし、数日これを培養していくと桿菌になる。その桿菌をタンク培養して、その代謝産物を精製して、そうしてこれを注射薬にする。SICというものはこういうものなんです。ところが田崎博士は、そんなばかなことはない。カエルの子はカエルで、ヘビの子はヘビだ。点菌球菌になって、球菌桿菌になって、そうして、代謝産物注射薬にするというとガンにきくなんということはもってもないことであるということなんですね。私がこの委員会のときに執拗に当局に要求をいたしましたのは、どっちが正しいか実験をするということが必要じゃないか。田崎博士は、ガンの大家として、オーソドックスな最高の地位にある。その田崎博士が、牛山博士SICをつくる過程における点菌球菌桿菌という過程というものは、そんなことはあり得ないのだ。一方、牛山博士は、田崎博士は勉強していないのだ、あなたはちっとも実験していないからそういうことを言うのだ、あなたは時代おくれの勉強なんだという論争だったのです。だから、これを厚生省実験しろ、しかもガラス張りの中で実験しろ、立ち会い実験をやれ、これは何でもないことだということで、そのときの尾崎医務局長に言うたのですけれども、とうとうやれないのです。金は科学技術庁調整費を出すというところまでいったのです。ところが実験をやれないのです。どういうわけか、どうしても実験をやれない。それに対してたびたび要望書というものが出てきたのです。ここへきょう参考人としておいでになっております森下博士も名を連ねておりますが、岐阜大学教授千島博士東京新宿日赤病院長鈴木博士東京竹内病院長嶋博士、それから化成協会物性研究所高橋医学博士が名前を連ねて、私あてに、ガン研究推進のためSICを含む諸問題の客観的な検討政府に要望いたしますと、要望書が来たのです。それでまたやったのです。これでもってSICに対して三回やっているのです。どうして実験をしないのか、どうしても厚生省はこの実験をやらないのです。予算がないというから、それじゃ科学技術庁調整費を出して、じゃ実験をやってくれ、それでもやらない。いまだにやらないのです。そうして、牛山博士はこの間の、昭和四十一年四月七日、ぼくは落選して、おらなかったときです。その速記録を見ると、牛山博士はここへ来ているのだ。そうして、やはり同じことを言っている。一体そういうことがあっていいものかどうかということなんですね。それは七、八年も、しかも国会でもって四回も同じ問題を追及して、そうして、科学技術的に検討を加えるべき重大な問題に対して、科学技術庁調整費を出しましょう、こう言っているのに、厚生省はその実験を拒否してやらない。そういうことがあっていいものかどうかということを私は非常に疑問に思っているのですが、これは大臣に聞くのがほんとうなんだけれども、大臣代理と思ってひとつ答弁してください。――それじゃそれをひとつあとで検討しておいてください。これは重大な問題だと思うのです。だから私はさっきも申し上げたとおりに、SICガンというものに対して効果があるとかないとかということを取り上げているのじゃないのですよ。こういうことは国会において取り上ぐべきものじゃないと私は思う。SICというものはガンにきいてもきかなくても私には関係ないんだ。ただ問題になったのは、SICを製造する過程における、ガン患者から無菌的に血液をとって、それをセントリーフユガールにかけて、血球と血漿を分離して、その血漿を五プロポリタミンに培養する。そうすると微生物が発生してくる。それをさらに培養していくと、今度はそれが大きくなって球菌になっていく。それをさらに培養していくと桿菌になっていくという。それが鼻くそだと田崎博士は言う。これは冥途に行かれたから、ガンで倒れられたからあれだけれども、速記録を見るとよくわかる。それが正しいか正しくないか、どっちが一体正しいんだということの追求を科学技術庁調整費でもって厚生省にやってくださいといっても、とうとういまだにやらない。それじゃ二十七億円ガン対策のために金をかけているといったって、そういう肝心のところはやらないんだ。一体どういう研究をやっているのか。これは非常に広範にわたるでしょうから、ここでどうのこうのというわけじゃありませんが、それはひとつあなたのほうでもよく考えていただきたい。だから、いまから問題にすれば、SICというものを実験対象として取り上げてくれるかどうか。ここに科学技術庁政務次官がおられますから、科学技術庁に頼んで、調整費から実験費を出してもらう。こんなものは幾らも要りはしない。そういうところをガン研究において長らくの間論議されたのですから、これはひとつ取り上げてもらいたいと思いますが、一体そういう研究をやってないのですか、そういう実験をやってないんですか。どなたでもいいんですが。
  14. 内海清

    内海(清)委員長代理 ちょっと齋藤委員に申し上げますが、さっきの御質問のは、いま厚生省のほうに当たっております。それで大臣局長は、参議院の予算委員会で来れないそうですから、政務次官にでも来てもらおうかということで、いま当たっております。お含み願います。
  15. 塚本憲甫

    塚本説明員 私はそのころにまだがんセンターにおりませんでしたのでよく存じませんが、第五十一回の科学技術振興対策特別委員会議事録がここにございます。これを見ますと、がんセンターにおいても久留博士のところでSICに対する実験をやっておられます。それはおそらく科学技術のほうの予算ですか、厚生省予算でしょうかわかりませんけれども、がんセンターでやっておって、その結果がマイナスに出ているということが書いてあります。あまり詳しい御説明は避けますが、これを読んでいただければわかるのではないかと思います。ですから、先ほど齋藤委員がおっしゃったように、全然手をつけずに拒否しているというわけではないと私は了解しております。
  16. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、SICをいじった人はたくさんあるんですよ。SIC否定論というものは、私はやってみた、私はやってみたなんだ。そうじゃないんです。私の要求しているのは、なぜ牛山博士にやらせぬかということです。ガラス張りの中で。  一体あらゆる生産事業というものは、特許権よりはノーハウが大切なんです。それを、SICを取り扱ったこともない者が、どういう観点でもってSIC実験をやるのかわからぬ。それでマイナスだという。それは発明者を冒讀するものです。なぜ一体発明者にやらせないんだ。だから私が要求しておるのは、ガラス張りの中でSIC発明者である牛山博士にやらせなさい。そうして、顕微鏡はみんなでのぞけばいいじゃないか。ところが、私やりました、私やりましたというが、一体だれが証人としてそれを見ておったのです。そういうことは発明者を冒讀する実験というものです。なぜ一体ガラス張りの中ではっきりした体制でもってやれぬのか。どうなんです。
  17. 塚本憲甫

    塚本説明員 私がいま申し上げましたのは、牛山さんがおつくりになったSICを使って、確かなガン患者に用いて、その効果を見たという意味で、これは別に牛山氏のそのつくる過程についていろいろ議論したわけではございませんけれども、その結果がネガチブだったということを申し上げたのであります。
  18. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私が言っておるのは、SICが病人にきいたとかきかないということを問題にしておるんじゃないということを言っておるのでありまして、SICをつくる過程において、点菌球菌になり、球菌桿菌になって、そうして、その代謝産物精製物SICになっておるんだという牛山博士の主張に対し、田崎博士は、そんなばかなことはない、点菌球菌になり、球菌桿菌になるなんていうことは、カエルヘビになったのと同じことだから、それは鼻くそだと言った。その実験をやりなさいと言っておる。それをやらないのです。だから、それだけ学問上において大きな差異を来たしておるところのものに対して調整費を出すから実験をやってくれ、しかもガラス張りでやってくれ、その発明者がみずから立って実験をやるやつを、周囲から正当な実験であるか実験でないかということをはっきり監視しながら立ち合い実験をやってくれというのに、厚生省はやれない。そういうことがあったんでは私は研究費というものははっきりした体制において使われていないのじゃないかと思うのです。それはセンターの病院長としてどうお考えになりますか。
  19. 塚本憲甫

    塚本説明員 どうもSICに関してしろうとだものですからお答えがあまりうまくできないかもしれませんが、いまのように球菌桿菌になったり、また、それがどうなるとかいうようなことが、そういう実験の間に行なわれ、それがガンにきくというような、そういうことまでわれわれの常識は進んでおりませんので、それは、つまりできたもの自身が効果があるないでこの段階では判定するよりしようがないじゃないかと思います。ただ、細菌学的には非常にそういうことは奇妙なことで、おそらくそういう意味で故田崎博士がそういう極言を使ったという形であらわしたのではないかと想像いたします。
  20. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは水かけ論になりますからやめますが、点菌球菌に成長し、球菌桿菌に成長するということがないと言うなら、それは、ダーウィンの進化論というものはのっけから否定してかからなければならぬ。そうでしょう。そういうことがあり得るかあり得ないかということを確かめるのが実験なのですから、SICガンにきくとかきかないとか、そんなものはわれわれ問題にしていません。そういうことでこの論争を科学技術振興対策特別委員会で取り上げたんじゃないのです。はたしてそういう現象というものが微生物の世界にあるのかないのかということを追求しようということが論争の焦点であった。それを厚生省がやれないというなら、微生物というものの進化というものに対して厚生省は何らの責任も興味も持っていないということだな、逆から言うと、やらないんだから。尾崎医務局長に対してこれは執拗に迫っておるが、どうしてもやると言わない。そうして最後に尾崎医務局長が私に言ってきたのは、何とかプライベートにやらしてくれ。私は、プライベートに実験なんかやってもらう必要はない、やはり公式の実験をやってもらうということを要求したが、とうとうやれなかった。だから、これは今後もひとつ問題として残しておきたいと思います。   〔内海委員長代理退席、委員長着席〕 いずれ文書なり何なりで大臣あてに要望しておこうと思っておりますから、あまりこういう問題で時間をとるというと本論に入らないことになりますからやめます。  ところが、この第五十一回国会科学技術振興対策特別委員会議事録第十四号というのを読みますと、きょう参考人としておいでを願いました森下敬一博士参考人としての陳述がここへ出ておるのでありますが、これを読みまして、一体こういう陳述がこの委員会で行なわれたのに対し、どうして問題にならないでこれがほっておかれるかということです。というのは、当時の文部事務官の渡辺大学学術局情報図書館課長も来ておられます。これはどういう関係で来られたか。厚生事務官の公衆衛生局企画課長の宮田千秋さん、厚生事務官、医務局総務課長の中村一成さん、厚生技官の国立がんセンター病院長、それから牛山さんと、いろいろな人が出ておられますが、ここで森下博士が陳述をしておられるのです。これは私落選しておるときですから、知らなかったのです。そうしたところが、こういう本を私は手に入れたのです。こういう「血液ガン」という本があるから手にとってみたところが、社会党の原代議士が委員長の席についておる。これはまさしく部屋も国会委員会ですね。ところが、うしろをひっくり返してみたところが、第五十一回国会衆議院科学技術振興対策特別委員会議録と書いてある。それで非常に興味を持って私は読みました。ところが、これはたいへんなことが書いてある。一体なぜこれが物議の種をかもさないで平穏に過ごされておるのかということであります。それでお忙しい中を御本人の森下博士においでを願って、きょうはわずかな時間でありますけれども、ここでひとつ論争の種を植えておきたい。きょう一回で終わらないですよ、大問題ですから。  第一に、森下博士国会における陳述というのは、「このガン問題というのは、私たちが十年ほど前から提唱しております新しい血液理論というものを土台にしなければ、ほんとうの対策というものは立てられないのではないかというような考え方を持っております。」こう述べておられるですね。そうして、血は骨髄でできるものではない。骨髄で血ができると考えておるのがいまの医学ガンだ、血は腸でつくられるのだ、こういうことが一つですね。それから、ガン細胞は分裂増殖しない。それから、赤血球は可逆的な作用を持っておる。まだほかにも書いてございますが、時間もございませんから私なるべく簡潔にきょうの焦点をしぼりたいと思うのでありますけれども、森下博士に伺いたいのですが、一体われわれしろうとは、食ったものが血になるのだと、こう考えておる。それは食ったものが血になるのでしょう。その食ったものが血になるということは、胃と腸とでもって血をつくるのだと、こう考えておる。なぜ一体事新しくここへ血は腸でできるのだということ、いわゆる腸の血造説を持ち出しておられるのか。ほんとうに現在の医学では、血は骨髄でできると考えておるのですか、それをひとつ伺いたいのです。
  21. 森下敬一

    森下参考人 現在の定説では、赤血球、それから白血球の一部は、いわゆる骨髄組織の中で生産されているというのが世界の定説であります。しかし、この考え方にはたいへんいろいろ矛盾あるいは不合理な点がございまして、私、かれこれ約二十年ばかり血液の生理学をずっと、現在でも学んでおるものでありますが、そういう立場から考えてみますと、非常に大きな問題をはらんでいる定説であるというふうに考えておりまして、実際にいろいろと実験を行なってみますと、現在信じられている定説であるこの骨髄造血説は明かに間違いである。実際に、私たちのからだの中を流れている血球細胞というものは腸でつくられているということを確証いたしました。これを提唱したのは十年ほど前であります。以来これは正式に、もちろん生理学会をはじめとしていろいろな学会で提唱いたしておりますが、ほとんど顧みられている学説ではございませんで、極端に申し上げれば、黙殺されているという状態であります。しかし、いま斎藤委員がおっしゃいましたように、これは、常識的に考えてもわかることでありますが、われわれ日常の食物が実際に消化液の作用を受けて、そうして、これが腸の粘膜の中に取り込まれて、赤血球という細胞につくりかえられておるというふうに理解すべき問題である。そういうことを、私たちは科学的な立場で、科学的に実証したということであります。
  22. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、骨髄は血をつくるのだ、従来はこの学説によって医学の根本的な考え方がきまっておる、こういうことですか。――そうすると、生物生命を保持していく上において、特に動物世界において、血液によって細胞が全部培養されていく、その血液が腸でできるのだという説と、骨髄でできるのだという説とが分離しておっては、そこから一切の医学的な考え方というものは違っていくんじゃないかと思うのですが、それはどうですか。それじゃ、そこからいろいろな医学的な考え方というものは違っていくのですか。
  23. 森下敬一

    森下参考人 私たちの新しい血液理論によりますと、食べ物が腸の粘膜で赤血球という細胞に変わりまして、この赤血球がからだの中を循環いたしまして、すべての体細胞に変わっていっております。肝臓の細胞も、ひ臓の細胞も、あるいは皮下脂肪であるとか、骨髄脂肪であるとか、あるいは筋肉の組織もまた赤血球からつくられているのでありまして、言いかえますならば、食べ物は血になり、そして血は肉になるという東洋古来の考え方に逢着するわけであります。こういう理念というものが現代医学あるいは生命科学の中に存在しておらないということが、数々の問題を引き起こしている根本的な原因である。現在ガンをはじめとして文明病というものが盛んに広がりつつありますけれども、こういう病気がなぜ起こるのか、あるいは、それに対する対策というものがなぜできないのかということをいろいろ突き詰めてまいりますと、食べものが血になり、血が肉に変わっていっている。そして、この血液と体細胞との間に可逆的な関係がある。血が肉になったり肉が血になったりというような、そういうダイナミックなものの考え方が存在しておらないというところにほんとうの原因があるというふうに私は考えております。  であるがゆえに、われわれの血液理論というものが、文明病対策の根本理念として取り上げられなければならないであろうし、あるいはわれわれが健康長寿を保つというような意味でも、こういう考え方をぜひとも理解する必要があるということを約十年来私たち提唱してまいったわけであります。
  24. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、いまのお話によりますれば、食べた食物は腸の粘膜を通して赤血球になる、そして、あらゆる組織をつくっていく。が、しかし、場合によっては、その赤血球によってつくられたあらゆる体内の組織というものは、可逆作用によってまた血に戻り得る、その血に戻り得るときに骨髄の作用を必要とするんだということですね、ここに書いてあることは。まあそれに対してはさらに、現代の医学からいきますと大いに反論があると思います。これは根本的な問題でありますから。その反論を承っておりますと時間がありませんから、いずれこの次にその反論を承りたいと思います。これは重大問題です。  それからもう一つ。ここに、ガン細胞は分裂増殖しない、これは赤血球がガン細胞に変わるんだ、赤血球が常に何らかの作用によってガン細胞に変わっていくんだから、それは分裂しないし、増殖しない。これはたいへんなんです。私がいままで読んだ――私のところにも、興味を持って何十冊というガンの本がある。が、しかし、その中の大半は、ガン細胞の分裂増殖、きわめて急速なガン細胞の分裂増殖と書いてあるんですがね。ここなんです。それを、どうしてこういう大きな新しい――正しい説であるかどうかはわからぬとしても、いやしくも医学博士の学位を持ち、そうして、赤十字の血液センターの所長をしておる地位にあって、どういうことで参考人としてこの委員会に呼ばれたのか、その当時のことはよくわかりませんけれども、とにかく、その当時の委員及び委最長のいろいろな相談の結果、適当であるとして呼ばれたんだろうと思うのです。ここでこういう陳述をしておるのです。ガン細胞は分裂増殖しない。これはたいへんなことですよ。もしガン細胞が分裂増殖しないということが正しいとしたら、いままでのガンに対するいろいろな説というものは全部間違いだということなんです。私の知っている限りでは全部間違いだということになる。どうですか、これは、病院長。
  25. 塚本憲甫

    塚本説明員 私は血液生理の専門家でありませんが、先ほどの血液のことも含めてお答え申し上げますと、われわれは、体細胞が異常な増殖をし、どんどん分裂してできた腫物をガンと言っているのでありますが、ガン細胞が分裂しないということは、根本から反対になっているわけです。
  26. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ここで、きょう委員会を開いていただいて、参考人に来ていただいて貴重な時間をいただいた価値が出てきたわけです。一方は、ガン細胞というものは、赤血球が血液の状態によって異種細胞に変化していくのだ。だから、赤血球が異種細胞に変化していくのだから、次から次にガン細胞ができていって、そのガン細胞というものは何も分裂繁殖しないのだ。どんどんふえていくんだ、めちゃくちゃにふえていくことはふえていくんだけれども、そのふえ方というものは、決して細胞の分裂増殖によらないのだ、赤血球がガン細胞に変わっていくのだという、これは森下博士の説ですね。ところが塚本国立がんセンター病院長は、単細胞が分裂繁殖していくのだから、そういう説に対してはまっこうから反対だ。さあこの実験をひとつやってもらいたい。これだけはっきりした対立というものが浮かび上がった以上は、これはどうしても科学技術振興のたてまえから解決していかなければならぬわけです。これは政務次官どうですか。こういう問題を解決していくのに調整費というものがあるので、いままで科学技術庁ではガンに対して三回調整費を出しておる。その金額は大体一億円に近い。何の目標に向かって調整費を出したか、調整費を出した目標と結論というものを私は聞いておりませんけれども、進歩に対する効果というものは全然なかったように私は思う。ですから、こういうように、一方は、血液が変形をしてガン細胞をつくっていくのだ、一方では単細胞が、いわゆるガン細胞が一つできると、いまの病院長のお話だと血液の中にガン細胞が一つできると、これがどんどん分裂繁殖していってたくさんになってくる。全然根本的に違うんですね。こういうところを詰めていかないと、私はやはりガン問題というものは解決しないと思う。科学技術庁ガンに対しても大いに取り組んでおられるのですからこういう問題を取り上げて、お金がなかったら調整費から出してやる、それでどっちが正しいかという実験をやるということを私はお願いしたいのですが、どうですか。
  27. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ガンの問題につきましては、先生先ほどおっしゃいましたように、第四十国会のときにこの委員会で取り上げられました。それが三十七年でございます。それから三十八、九年まで私のほうの特調費で、できるだけガン厚生省研究に補強の金を出しまして、四十年ごろから厚生省のほうでガンを重要対策に取り上げましてガン研究費はそこから相当ふえてまいりました。そして現在までまいりましたので、私たちのほうは特調費でガンのほうの補助をしておったということであります。その間に確かに問題はSIC等にて起こりました。この件につきまして、厚生省とわれわれのほうと御連絡をとりましたが、いわばこの研究を事実上――ちょっと私も昔のことで忘れておりますが、引き受けてやってくださる研究者を見つけるところに非常な苦労があったのが厚生省だと思います。したがいまして、私どもは、調整費がございますから、これからも厚生省のほうと十分に御連絡してやらせていただきたいと思います。
  28. 三宅正一

    ○三宅委員 関連して。ただいまの斎藤委員の御報告、私、実に重大だと思うのです。私自体、ガンに対して学会から治療界から非常な努力をしておられることは承知しておりますが、実にガンの診断についても治療についてもこれからだと思うのです。現に私の非常に印象に残っておりますことは、私の知人が背中が痛くて痛くてどうしようもないというので、方々の医者に見てもらったがどうしてもわからない。癌研で田崎先生にお願いをいたしまして、レントゲンをうんととってもらった。そうしたところが、田崎先生が私にレントゲンを見せられまして、ガンのけは全然ないと言っておられましたけれども、痛みは去らない。その後、結局背骨のりしろのところにガンがありまして、順天堂病院でその人は死んだのであります。そして、御本人の田崎先生自体もガンでなくなられたのであります。私は、そういう意味におきまして、ほんとうにどうにもならぬことをガンというのですから、ガンというだけあって、いかにガンというものが業病であるかということを痛感いたします。そういう意味におきまして、世界的に現代の医学が追求いたしまして、ガンに対しましては、その原因がわかっておるかどうか知りませんが、原因についても、いま申されましたとおり、森下さんといろいろ意見が違ったりいたします。ほんとうにまだ模索の状態ではないかと思うのであります。したがいまして、そういう意味においても、行政府なんというものが、こういう学術的なことについて、内容に干渉すべきではないけれども、学界における偏見であるとか、派閥であるとか、そういうものに左右されて、民間の医者の中で、とんちんかんな議論が出ることもあるでしょう。あるけれども、ほんとうにわかっていないし、日本の最高の権威である癌研においても、たった一週間か二週間前の、背骨のうしろにガンがあるのがいまのレントゲンではわからぬで、最後にわかって、順天堂で死んだというような事態を見ても、その意味において行政府は、学界におけるそういう論争などに対して金を出したり、いろいろいたしまして、それぞれ全体として発展させるということが、私は、その任務じゃないか、研究調整費の任務じゃないかと思う。斎藤君が、さっきの問題についてあとにするなんと言っておられますけれども、こういう問題については、ほんとうに幅広く論争させたり、それに便宜を与えたりする。先入観を持たない。厚生省の医務局長が、オーソドックスの医学者として、学界における定説を支持される、それはよろしい。けれども、こういうわかっておらない問題については、異説に対してだって相当に金をかけるべきだと思うのであります。  時間がいただければ、私はついでに質問いたしますけれども、たとえば、小児ガンなんというものは、実は私はこの間までほとんど知らなかったのであります。そして、いまも承りますと、白血病原因だというか、白血病のことを言っておられますけれども、私は、小児ガンの増加などについては、最近の科学技術の発展による公害関係の影響があるのではないかということを、私ども医学に全くしろうとの直観で感ずるのであります。特に、きょうこれからやります農薬の問題などについて、ともかく、われわれの子供のときには、チョウチョウは飛んでおる、バッタは飛んでおる、ドジョウはおる、タニシはおるということで、田園というものが実に楽しかったのでありますけれども、これがおらなくなってしまった。それによっていもち病がなくなったということはけっこうだけれども、同時に米の中に農薬の悪い、ほかの動物を殺しましたものが入っておりまして、それをたくさん食っておりまする間に人間の生命に大きな影響を及ぼすということは、しろうとの感覚のほうが正しいと私は思うのであります。そういう意味におきましても、あとからもう一ぺん時間をいただいて、小児ガンのことについては聞きまするけれども、ただいまの斎藤君の議論は、ひとつ委員長が扱われまして、委員会全体の意見として、ひとつそれをやらしたらいいと思うのであります。やってもらわなければならない。ともかく、研究をして、一つ意見を出して、それが学界の定説と違ったからといって、ただ排撃するのではなしに、公平な立場で試験する。それ自体にはたいした権威がなかったけれども、その付属物で何か大きな発見があったりすることがままあるのですからして、私は、そういう点は、斎藤君の意見委員会としてもほんとうに支持してやらなければならないと思いますから、ちょっと関連発言を求めた次第であります。田崎さんの話も出ましたので、ひとつ病院長から、私の発言に対して御答弁がありましたら答弁なり、教えていただくことがありましたら教えていただきたいと思います。
  29. 塚本憲甫

    塚本説明員 いまの小児ガンの問題、そういうことがどういうことからふえてきたかというようなことですが、いろいろ――御説のとおりであります。  ただ、誤解がございましたようですから、もう一ぺん私から斎藤議員に対してもお答えさせていただきますと、単細胞からガンができるのではなくて、からだのどこかの細胞、体細胞、それが、何の原因かわかりませんけれども、あるときにそういう変な細胞に変わって、どんどん分裂して増殖していくのがガンだということを私はいま申し上げた。これが一つであります。  それから血液ガン関係、これは、私は血液の生理学者でございませんから詳しいことは存じませんけれども、放射線ガンをなおすという立場から私たちが従来やってきましたことから申し上げますと、先ほど申し上げましたように、体細胞からできますから、胃からできたガンは、胃の粘膜の構造がどこかに残っているような意味のガンになります。これをわれわれは腺ガンと申しております。皮膚からできたものは、皮膚の構造を残しながら、非常に鬼っ子になって、こういうところにかいようができたりしてまいります。一方、血液の細胞と申しますもの、ことに赤血球と申しますものは、その中に核もございません。核があるなしは、細胞の生き死にということとかなり密接な関係がございます。したがいまして、赤血球の、最後にからだを回っておりますときの役目は、肺に行って酸素と炭酸ガスを交換するに必要なヘモグロビンというものを持ってからだを回って歩いておるわけでございます。オルソドックスな説必ずしも正しくはないかもしれませんけれども、われわれが食べましたものから血となり、肉となる、これはある意味で真理だと思います。しかし、血液というものは、そういう赤血球のほかに血奨というものがあって、それで栄養を方々へ送っておるわけでございます。その血奨は、確かに腸管から取り入れた養分を運んで適当なところへ持っていっております。そういう意味で、そういう死んだ細胞が、どういうことか知りませんが、お考えは自由でございますけれども、それがガンのもとをなし、また、それが血液に返っていくというような考え方というものは、われわれの医学常識ではちょっと考えられない。ですから、それは実験をしてくださるとおっしゃれば、そういう場面もあっていいかと思いますけれども、少なくともガンというものはどういうものか、そしてそれは、確かに、いまおっしゃったように、大家である先生が見ても見つからない。これは幾らもあることで、われわれも大いに反省して、大いに努力をして、もっと勉強しなければいけないと思っておりますが、そういう研究としてまだまだわれわれが取り上げなければならないたくさんの問題がありますし、そういう意味も含めて根本の問題も考えていただくということはたいへんけっこうだと私は思います。ただ、いままでの学説が非常におかしくて、新しい説がぽんと出てくれば、それをなぜ取り上げないかという、それだけの議論というものは、いろいろな立場から考えがあると思うのです。  問題は、そういう意味で、私たちも大いに勉強はしてまいりますけれども、もう一つ重大な問題は、骨髄ではなくて腸から血液ができる。それは少なくとも私たちが習い――これは何も、外国のまねをしているとか、そういう意味じゃございません。胎生期には、血液というものは方々でできてきます。子供のときはまだ長骨でもできます。しかし、おとなになりますと、血液というものは、ある一定の量があれば足りるものですから、それで、血液をつくっているのはおもに、背骨にある短い骨の骨髄でありまして、そこを取って細胞を見ますと、血液の最小のものであるような非常に未熟な細胞から順序を追って最後の血液までの細胞が発見されます。そういうことが、われわれが血液が骨髄でできているという説を支持しておることのおもな原因だというふうに御了解いただきたいと思います。
  30. 三宅正一

    ○三宅委員 病院長から承りたいのですが、私のさっき話しましたことは全く私のしろうとの勘でありますから、違っておるかもしれませんけれども、先ほど申しましたとおり、小児ガンというものは最近非常に注目されている。最近非常にふえている。これは単に診療技術の進歩によってその発見が多くなされてきたというだけではない。私はそれほどガンの診断がおくれておるとは思いません。しかしそれだけではなくて、私の勘では、いま申しましたように、空気の中における近代産業の悪い公害的な影響だとか、農薬の中における影響だとか、いろいろのそういう影響があるのではないかという勘がいたしますが、実際上診断されたり研究されたりしたあなた方の判断におきましても、どうして急に最近子供ガンがふえてきて、そして、その原因は大体どこにあるかという点についてちょっと御答弁をいただきます。
  31. 塚本憲甫

    塚本説明員 これはさいぜん私同じことを申し上げたのでございますが、三宅委員がまだおいでになりませんでしたので……。  一説によりますと、非常に微量にふえておる放射線というような環境も関係がありはしないかという説もございます。これもはっきりしたことではございません。もちろんそういう意味で、全部いろいろなそういうものを含めた環境的な因子というものを否定できないということが一つ。  それから、先ほどちょっと申し上げました白血病というものは、わが国は、諸外国に比べますと、ふえたようでもまだぐっと低い状態でありまして、これも説でありますからあまりはっきりしませんけれども、たん白食を多くとると、つまり国民の栄養が上がってくると、むしろ白血病はふえるのだという説もございます。これの真偽も、私は自分で調べたわけでございませんのでわかりませんが、動物実験でそういう結果を、ネズミ白血病について出している学者がございます。
  32. 三宅正一

    ○三宅委員 ありがとうございました。
  33. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 関連。関連ですから簡単に伺わしていただきたいのですが、いま三宅先生の質問の中にこういうことがあったのです。公害等によってその発ガンということを促進さしておる、こういうことはないかというお話ですね。これはお答えがなかったのですが、私は、幸いにその方面の研究をしておられる森下先生が見えておりますから、ひとつ聞かしていただきたいと思います。と申しますのは、この間動物園の動物が次々にガンで死んでおる。ああいう非常に野性味を持ったものがガンで死ぬということは、やはり現在のこの空気中に何かそういう発ガンを促進するようなものがあるのではないか、こういうぐあいのことを、これも三宅先生ではありませんけれども、しろうと的に考えるのです。なお、このごろのいろいろな調味料の中にガンを促進さすものがあるということ、森下先生の研究の中にもはっきり出ておるわけです。名前を一々あげるといけませんから、ある有名な飲料のごときは、そういう役割りをしておるといわれておるわけですね。これは私は、やはり厚生省からおいでいただいて十分そういうものを取り締まっていただかなかったら、うそつき商品が出たからといって、それであわてて取り締まる、こういうことではもうおそいと思うのです。そういう食料からくる問題、それから公害からくる問題、こういうことについてひとつ森下先生のお話を聞かしていただきたいと思います。
  34. 森下敬一

    森下参考人 いまおっしゃられましたように、大気汚染であるとか、あるいは排気ガス、ばい煙というようなものが肺ガン原因になっているであろうということは、十分に想像されるところであると思います。私が調査した範囲では、去年上野動物園の動物が四十何匹か、これはいろいろの種類の動物でありますが、肺ガンだけではありませんが、ガン性の病気で死んでいるということであります。もちろん、こういう動物は別にたばこを吸っているわけではございませんが、実際に肺ガンで死んでいる。その原因は那辺にあるのかということでありますけれども、やはり一番大きな問題は、彼らが自然な環境から離れて人間がこしらえた不自然な食べものをあてがわれながら、しかも、こういう不自然な大気汚染の中で生活を強制されているというところにあると思います。したがいまして、動物の文明病といいますのは、これはガンだけではございません。たとえば、豚がコレラにかかるとか、あるいは牛が結核にかかるとか、あるいは動物園などではキリンが胃かいようで死んだりカバが糖尿病で死んだり、犬がノイローゼぎみであったりというように、人間社会の中でいろいろな病気を起こして死んでいっている、その動物たちの文明病の起源というものが人間の文明病の起源でもあるというふうに考えるべきだと思います。そういう広い立場に立って私たちは、特にガンだけをということではなくて、文明病対策というものはもっと大きな立場でわれわれ考える必要があるのではないかというようなことをいままで唱えてまいったわけであります。たとえば、栄養問題もそうであります。現在唱えられておる栄養学に対しましては、私自身非常に大きな間違いがあるということを長年唱えてまいりました。そのほかにも、いろいろ問題があるわけでありますが、とにかく、もっと巨視的に、大きな観点というものを踏んまえて、そうして、こういう病気の対策というものを考えていかなければ、コップの中の小さな思索では問題は解決しないというような気がいたします。  それから、ついでにここで私、はっきり申し上げておきたいと思いますことは、ただいま塚本先生が血液の問題についていろいろ意見をお述べになっていらっしゃいました。これは全くそのとおりであります。現代医学のピークに立っておられる先生でありますから、既成概念の頂点に立っていらっしゃる方でありますから、既成概念を否定するということは、とりもなおさず、御自分の存在を否定するということにもつながるわけでありまして、それはとうてい私はできないことだと思います。しかし、たとえば、いま塚本先生がおっしゃられた考え方の中に、赤血球が成熟その極限に到達した細胞である、これは現在の血液学の定説でありますが、この考え方が私はそもそも間違いである。私の考え方では、食べものが材料になって腸でつくられた細胞でありますから、きわめて原始的な細胞であります。しかるがゆえに赤血球の中には何十種類もの酵素があり、しかも、エネルギーがプールされている。最近これはわかった事柄であります。いままでは極端に成熟をした、老いぼれの、死の一歩手前の細胞であるという考え方で赤血球を見ていたわけでありますが、その考え方にそもそも大きな間違いがあると思います。最近の生化学の進歩は、赤血球の中の無数の酵素が含まれている、あるいは、エネルギーがちゃんとプールされていて、死ぬまぎわの細胞がなぜそういうものを持っているのか、いまの医学的な常識では説明がつかないという段階であります。そういうことから考えましても、もう根本的にやはり考え方の土台が違っているというような気がいたします。  それからガン細胞の分裂についてであります。いま塚本先生がおっしゃいましたように、ガン細胞というものは、体細胞が突然変異を起こして異常な細胞になって、その細胞が無限に分裂増殖をする細胞であるというふうに説明をされました。これは現在のガンに関する定義であります。世界の学者が、ガンとはそういう病気であるというふうに信じております。そういう意味ではもちろん間違いのない考え方でありますが、しかし私の立場から申し上げますと、そういうことももちろん承知の上で、からだの中にあるガン組織というものは、私は分裂増殖をしておらないというふうに見ております。しかし、実際にガン細胞の分裂がきれいに映画の中にとらえられたりしております。東京シネマでつくられましたガン細胞に関する映画などを見ますと、ガン細胞の分裂というものは実にみごとにとらえられております。が、それはそういう特殊なガン細胞が示す行動であって、すべてのガンがそういうふうに体内で分裂増殖をしているのではないと思います。もしガン細胞がほんとうに分裂増殖をしているのであれば、たとえば、現在がんセンターで入院あるいは手術をされたガン患者さんのその組織の一片を持ってきて、そして顕微鏡の下でガン細胞の分裂というものは観察されてしかるべきであります。しかし、そういう観察がなされたという報告は、私は一例も聞いておりません。実際に手術をして、ガンの組織というものは幾らでも、いつでも、随意にわれわれは取り出すことができるわけでありますから、そういうガン細胞が分裂増殖をしているかどうかということは、確かめようと思えばいつでも確かめられるはずであります。そういう実際のガンの組織というものを取り出して、そして、顕微鏡の下でそれを観察した学者というものは、私はいないと思います。実際には、われわれのからだの中では、定説はガン細胞の分裂ということでありますけれども、赤血球がガン細胞に変わっていることは、ほぼ間違いのない事実だと私は確信いたします。実際に、最近フランスでも、ガン研究の権威であるアルぺルン教授が、ガン細胞というものが分裂しているかどうかということについては、これは詳しく触れておりませんけれども、小さなガンの種になる細胞が寄り集まって、そうして一個の典型的なガン細胞に発展をしていくのだという説を唱えまして、そういう報道がヨーロッパではなされております。そういうことを見ましても、分裂増殖だけではなさそうである。分裂増殖一辺倒ではいけないのではないか。たとえば、現在のガンの治療薬にいたしましても、ガン細胞は分裂増殖をするから、その分裂を抑制するような化学物質であればガンはなおるであろうというふうに、きわめて単純に、機械的に考えてその開発が進められているわけでありますが、こういう考え方のもとでは、私は幾ら研究費をつぎ込んでもしかるべき抗ガン剤というものはできないというふうに見ております。また、いままで長年私はそういう考え方を講演会で述べたり、あるいは私の著書の中ではっきりと明記いたしております。  ガン細胞が赤血球からできるということにつきましては、私が八年前に書きました「血球の起原」という本の中でそれをはっきり述べております。たとえば、吉田肉腫の場合でありますが、あの吉田肉腫の細胞というものは、実際にはほとんど分裂増殖をしておりません。種を動物の腹腔の中に植えつけますと、まず必ず腹膜に出血性の炎症が起こってまいります。そして、腹腔の中にまず血液が浸出する、赤血球が腹水の中にたくさんまざり始めるということを前提にして、初めてガン細胞はふえるのであります。吉田肉腫の細胞というものは増殖していっております。その過程を、私は八年前に書いた私の本の中ではっきり指摘いたしております。吉田肉腫の増殖というものも、私は、腹膜の炎症が起こらなければ、腹膜の炎症を起こさないように処置してこの吉田肉腫の種を植えつけたのでは、絶対にこの肉腫細胞は増殖をしないであろうというふうに想像いたしております。炎症というものが背景にあって、血液が腹水の中に出てくるということが前提条件である、そうしなければガン細胞はできない、その赤血球がお互いに融合し合いまして、そうして一つガン細胞に発展をしていくということであります。  また、実際にこの吉田肉腫の細胞を観察してみますと、形がまちまちであります。もし一定の分裂方式で細胞が増殖していくのであれば、ほとんどきまった形の細胞ができなければならないのに、増殖している細胞は全く千差万別であるということも、でき方が単に分裂増殖ではないということを物語っているように思われます。  それから、話はだいぶ前にさかのぼりますが、さっき斎藤議員が申しておられました無菌的な血液を培養して、そうして点状の小さなバクテリアが発生をし、これが球菌になり、桿菌に発展をしていくことが実際にあるのかどうか、これは国の機関でひとつはっきりさせろということを申しておられましたが、この問題につきましては、私自身すでに、SIC牛山氏とは全然別個に実験を行なっております。私はSICの問題とは一切無関係に、血液というものは無菌的な条件のもとで、試験管の中で放置しておけば、一体最後にはどういうふうに変わってしまうものであろうかというようなことを追求する目的で、大学時代に大ぜいの研究員を使いまして、こまかく探索をいたしました。その結果は、この八年前に書きました「血球の起原」という本の一〇〇ページ、それから今度出しました「血液ガン」という本の一五ぺ-ジに、その写真も掲載をいたしまして、その結論を披瀝いたしておりますが、これは無菌的な血液であっても、血漿の中に、これは実は赤血球の中にそういう点状のバクテリア様のものが発生をいたしまして、これがだんだん発育をいたしまして、そうして球菌になり、かつ、桿菌にまで発展をするという事実を私は認めております。  この問題は、国家の機関で追求せよということでありますけれども、私はその必要はほとんどないのではないかというような、むしろ逆の考え方をしております。といいますのは、はっきりとそういうふうになるのでありまして、牛山氏が無菌的に血液を培養して、ああいう桿菌様のものが得られたというその事実に対しましては、私は絶対に間違いがなかったというふうに判定できると思います。  ただ、そういう桿菌様のものを材料にしてつくられたSICという化学物質がガンにきくかどうかということは、私は臨床医でありませんので、これは全くわかりません。そういうことをこの際つけ加えておきたいと思います。
  35. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 もうだいぶ時間が過ぎましたから、あとの農薬問題に割愛をいたしまして、他日またこの問題でひとつ実態を突き詰めてまいりたい、そう思っておりますが、塚本国立がんセンター病院長のお話は、私の考えておったとおりのことをお話し願ったわけです。私もそう思っておった。そう思っておって、あらゆるガンに対する施設というものに対しては、私も興味を持ってずいぶん努力をした一人であります。放射線医学総合研究所の設立なんかに対しましては、私なんかもずいぶん努力をいたしましてやったのでありますけれども、なかなか放射線だけでガンを退治するという理論も実際もまだ生まれてきていない。どんどんガン患者はふえていく。同僚島口代議士もつい先日ガンでなくなられて、あした追悼演説があるというようなわけであります。  ただこの際、私、委員長及び先輩同僚の委員の方にもお願いしておきたいのでありますが、これは森下学説とそれから塚本病院長お話は根本的に違うのです。どうしてこういうものが同じ医学博士でおって違うのかというぐらいに違う。これは全くふしぎなんですね。私は何げなくこれを読んでおったのですけれども、話を聞くとそうなんです。赤血球は極度に成熟分化を遂げた細胞、すなわちエンドセルであって、ヘモグロビン現象だけでもって酸素を運ぶだけにしか役立たないというのは、院長のおっしゃるとおりなんですね。ところが、それが根本的な間違いだと書いてある。大体、医者で、医学博士という肩書きを持っておって、赤血球の実体もよくわからぬというのはおかしいじゃないですか。そうでしょう。一体なぜ赤血球の実体というものを把握しないのかと私は思うのですよ。もし森下学説が正しくして、赤血球というものが幾多の機能を持っておって、これが一切の人間の組織を構成していくのだということが立証されたとしたら、いままでのお医者はどうするのですか。いままでの医学者というのはどうするのですか。腹を切らなくちゃならない。それから、血液だって、もう人間の血液というものは、できてしまうとあまり要らないのだから、骨髄でもって血をつくっているんだという説、一方は食うものがどんどん血になっていくんだと、これも全く反対なんです。私なんか大食いのほうですから、食ったものは血となって、やはりその血のために細胞が新陳代謝しているんだと思っているのです。また、そうでなければこの肉体というものは保っていかないわけなんですね。だから去年の人はことしの人じゃない。一年間たつと全部細胞が新陳代謝してしまう、その新陳代謝の原動力は血だ、そうすれば年を取れば年を取るほど若い細胞をつくろうというには血が要るわけでしょう。成人は血が一ぱいになれば、あとたくさん要らないのだから、骨髄でちょこちょこやったらいいなんていう、そんな説は私は賛成しないのです。だから、お話を承れば承るほど、きょうの森下学説というものと既存の学説というものは対立して、これは別なものです。そういう中に、何を対象として一体ガン対策の金を二十七億円も出しておるかということなんです。効果があがっていればいいですよ。一つ効果があがらないじゃないか。ますますガン患者はふえている。ガンというものはわからないのだからというて許されているけれども、ほかの科学技術振興に対する金の使い方でこんなことがあったら一体どうなる。この間三木先生から、ラムダ1、2、3は失敗したのでもって東京大学は痛棒を食ったのです。ガンはどうだ。毎年二十億、三十億の金を使っておって、だんだんガン患者がふえていく、そういうことに対してやはり行政庁としては、新しい根拠ある説というものは勇敢に取り上げて、これの実験を追求していくというところに、新しいガン対策というものが見出されるのでしょう。これはまあ行政庁にひとつお願いをしておきたいのです。  私の崇敬する加藤与五郎という理学博士がおられた。この方は昨年九十五歳でなくなった。三百も特許を取られた。が、しかし、その特許を取られた、その特許、発明をどうしてされたかというと、ずっと研究をしていって、研究をしていって目標がわからなくなったときに、その辺から枝道に入ったんじゃ研究というものは成り立たないのだという。出発点まで戻ってこい。そして、研究の目標というものが正しいか正しくないかということを再検討して、また新しい研究体制を形づくらなければ新しい分野というものは見出し得ないということを私は聞いたのです。  だから、ガン対策も、いままで一生懸命やったけれども効果はあがらないのだから、世界的にあがらないことは確かなんだから、そのあがらない原因を追求していると、白血球の問題、造血の問題そういう問題が出てきた。だから、ある意味においては、一方、一つ研究体制として出発まで下がってきて、腸の造血説と、それから赤血球、白血球の問題、そういう問題を真剣に、森下学説というものは正しいのか正しくないのかということを追求するということは、ガン対策として非常に大切なんじゃないか。私、これに書いてあったものですから「血球の起原」という本をゆうべさがして読んでみました。これだけの血液研究をしている本が日本にほかにあったらひとつ病院長紹介してください。これはずいぶんりっぱな研究をしたと私は見ている。だから、こと血液に関してこれだけの研究をしておられる方が、赤血球というものは、ある場合においてガン細胞に変化していくのだ、だからガン細胞は分裂増殖しないのだ、そういうことが正しいか正しくないかということは私は追求できると思う。そこに新しい根拠が見出されればまたガンの新しい研究体制も樹立されると、こう思うのでありますが、どうかひとつ委員長におかれまして、この問題は、三宅先輩の言われるように、大切な問題だということをお取り上げくださいまして、また機会あるごとにこの問題に対して論議を重ね得られるようにお取り計らいを願いたいと思います。  どうもありがとうございました。
  36. 沖本泰幸

    沖本委員長 森下参考人には長時間にわたって貴重な御意見をお述べいただきまして、たいへんありがとうございました。本問題調査のためにたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。     ―――――――――――――
  37. 沖本泰幸

    沖本委員長 次に、農薬の残留海性の科学的究明に関する問題について調査を進めます。  本問題については、本日、参考人として、医学博士佐久総合病院健康管理部長松島松翠君、理化学研究所理事長住木諭介君及び理化学研究所主任研究員見里朝正君、以上三名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、たいへんありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  なお、意見の聴取は質疑応答の形式で行ないますので、そのように御了承願いたいと思います。  それでは、質疑の申し出がありますので、これを許します。石川次夫君。
  38. 石川次夫

    ○石川委員 きょうは早朝から松島部長をはじめとしてたいへん長いことお待たせいたしましたことを恐縮に存じます。  ただいまは齋藤委員のほうから非常に重大な関心の的であるガンの問題について質問があったわけでありますが、私がこれからしようとする農薬の問題も、ガンとは違った意味で日本人全体の健康にかかわる問題ではないか、きわめて重要な問題として質問をしたいと思っておるわけでありますが、この委員会ではかって何回もこの問題を取り上げられておるわけです。去年も五月の二十四日の本委員会におきまして、やはり皆さん方関係者の方にお集まりをいただいて、農薬の問題について逐一質問を申し上げております。したがいまして、たいへん重複のきらいがあると思いますので、極力重複を避けながら、この前の質問後の経過がどうなっておるかということに重点をしぼって質問をしたい、こう考えておるわけでございます。  それで一応念のために申し上げますと、日本の農業が発達をした大きな原因は三つある。これは一つは育種科学、品種改良である。二つは肥料の化学というものが発達をし、またこれが非常に大量に生産できるようになったということ。それから第三番目には、農薬が特に日本は世界で一番発達をしているのではないかといわれておりますけれども、昭和二十五年には一年間二十億くらいしか使わなかった農薬が最近では四百億をこす。単位当たりではおそらく世界で最高、アメリカの二倍半も使っておるというような状態で、いもち病というものを大体ほとんど皆無の状態にまで追い込むことができたというようなことも、これは農薬の大きな功績だということは論をまたないと思う。ただし戦前に十種類しかなかった農薬が、現在では四千五百種類もあるというような発展ぶりを示しておりますけれども、カーソン女史の「沈黙の春」に書いてありますように、沈黙をするのは、先ほど三宅委員のほうから話がありましたように、ただチョウやドジョウやホタルだけではなくて、最近の調べによりますと、コウノトリが日本ではたいへん珍しい存在で、だんだん減っておる、壊滅状態に近い。これも調べたところが、文化財保護委員会の発表でありますけれども、たくさんの有機水銀が体内から発見をされた。結局は、有機水銀を食べたドジョウ、タニシというようなものをえさにしたそのコウノトリがやはり絶滅に近づいているという状態になっておるわけであります。  私がおそれるのは、この有機水銀の害が、阿賀野川の事件、水俣病の事件ということで、日本じゅうの関心を集めておりますけれども、これは急性の場合だけであります。ところが、こういうように、タニシがいなくなり、ドジョウがいなくなり、ホタルがいなくなる、それからコウノトリもいなくなるという状態が、今度は人間に慢性という状態でもって普及をした場合には一体どうなるのだろうか、こういう点に対する研究はほとんど行き届いておらないわけです。そういう点で、農薬には少なくとも三通りあるわけでございますが、一番使われておるのは有機燐剤であります。次が有機塩素剤、三番目に有機水銀でありますが、特にこの有機水銀が非常な猛毒を持っておりますことは、それは定説でございます。この有機水銀を使っているのは、アメリカでは種の殺菌にだけ使っておる。日本ではこれはいもち病の対策として、外国から非常に貴重な水銀の原体を四百トンも輸入して、これを日本じゅうにばらまいておる、こういう状態であります。アメリカでは種の殺菌にだけしか使っておらない有機水銀であります。ほとんどは有機塩素剤を使っておる。有機燐剤も使っておりますが、有機塩素剤はアメリカでは牧草にはまいてはいけないということになっております。イギリスでは農業に使ってはいけないということになっております。ところが日本では、有機水銀それ自体も大量に散布をしておるという、まことにおそるべき状態になっておるわけであります。そういうようなことは、どうしてもやめてもらわなければならぬ。水銀の害がどうのこうの、これも農林省あたりから出ているものだと、たいしたことはないのだというような、製薬会社の片棒をかついだような意見が盛んに出ておりますけれども、私は決してそういうものではないと思うのです。そういうことで最近の統計といいますか、最近の農民に与える影響、阿賀野川とか水俣病は別といたしまして、昭和三十九年のたいへん古い統計によりますと、ミズムシに塗った水銀から発病して死んだというような例も含めまして、死んだ人が十二名、あるいは中毒患者が百七十五名、これは保健所を通って正規に発表された数でありますが、最近はそれはどうなっておるんだということ、特にこの中毒患者でありますけれども、農民のうちで四〇%以上の人が農薬を使ったことによってのいろいろのしびれとかその他のからだの不調を訴えておるというのが実情であります。使っている農民、これは直接の被害者でありますけれども、最近の農薬を使って受けるところの農民の被害の状態は一体どうなっておるかということを、厚生省あるいは佐久病院から来ていただいている松島博士あたりから、その後の、農民のこれから受ける被害の状況、そういうものがおわかりでしたらひとつ教えていただきたいと思うのです。
  39. 松島松翠

    ○松島参考人 佐久総合病院健康管理部長をしております松島でございます。付属の財団法人日本農村医学研究所の農薬中毒部の研究主任もいたしております。  農薬中毒、特に急性中毒の実態につきましては、いままでいろいろデータが発表されております。特に日本農村医学会を中心としまして、全国十六病院での急性中毒の実態調査によりますと、いまお話がございましたように、それを使用している農民の約四二%が散布期間中に何らかの症状を訴えております。ただ、これは症状を訴えていることでございまして、この中には、ほんとうの意味の中毒、それから農薬アレルギーによる症状、そういうものも含まれております。また、この中には相当重いのから軽いのまですべて含んでおります。その大部分は病院あるいは医師等を訪れていないわけでありまして、実際に訪れているのはその数%にすぎません。  最近また私たち日本農村医学会で、今度はそれを一歩進めまして、病院へ来た臨床例の集計をしようということになりまして、実は昨年一年間やったわけでございます。これは全国全部で五十五の病院で、実際に病院の窓を訪れた農薬障害者と思われる患者について調査を行ないました。散布期間中を中心としまして全部で三百十三例ございます。  その病気の内容を申し上げますと、いわゆる急性中毒と思われるものが百三十六例、それから湿しん、皮膚炎――この中にはアレルギーと思われるものもかなり含まれておりますが、そういうものが百十四例、結膜炎あるいは角膜炎という目の障害のものが四十四例、それから急性あるいは慢性肝臓炎と思われるものが十一例、気管支炎あるいは肺炎と思われるものが九例、咽頭炎、喉頭炎が九例、その他ございますが、大体そのような内容でございます。これは大部分が急性でございますけれども、中には慢性と思われるものも若干含まれているわけでございます。  その中で私たちが一番問題にしておりますのは、やはり農薬の慢性中毒でございます。特に、非常にたくさん使われております有機水銀が、実際それを使用している農民あるいは一般国民にどんな障害を与えているかということが一番問題であろうかと思います。ところが、慢性中毒というのはたいへん判定がむずかしいわけでございます。急性中毒でございますと、農薬を使ってすぐこういう症状が出たというふうに因果関係がはっきりしておりますけれども、慢性中毒は、非常に長い期間にわたって、少しずつからだに入って、それがこういう症状を起こした、そういうことをつかむことは医学的になかなかむずかしい。また、われわれのからだには、外からいろんな環境的な因子が作用しておりますから、一つ病気が出たからといって、それがすぐ農薬が原因であると断定することは非常にむずかしいわけでございます。しかし、そうかといって、じゃ農薬は全然だいじょうぶだということもまた、これは言えないわけでございます。私たちはやはり疑いの目をもって農薬がおそらくは関係しているのじゃないか、そういうような症例をやはり気をつけて見る、また、そういう症例を少し集めて分析するということが必要ではないかと考えたわけでございますが、実はこれは私たちの病院の近くの患者でございますけれども、こういう症例もございます。  これは農夫でございますが、六十歳の男でございますけれども、約十年くらい前からずっとセレサン石灰、これは有機水銀でございますが、そういうものをずっと使っております。たまには全身がひどくかぶれたこともございます。そういう人が十年くらいたちまして、だんだん全身がだるいと訴えてきた、あるいは非常に疲れやすいと訴えてきた、そこで肝臓機能検査をいたしますと、慢性肝炎といったような状態が認められます。頭の毛の水銀をはかってみますと、二二七あるいは二六・二TTMというように、普通の人よりは若干多い。  もう一つは、三十六歳の男でございまして、これは昭和二十四年以来ウスプルン、シミルトンあるいはセレサンなどというような有機水銀剤を使っております。これは十年ぐらい前からどうも頭痛、耳鳴りがする、あるいは全身がふるえる、ときどき呼吸困難が来る、それから悪寒戦慄、記憶力減退、それからろれつが回らないということがございます。これは三十六歳の男でございますので、いわゆる老人に似たそういう症状が出てくるのはちょっとふしぎなわけでございます。これがやはり神経障害の症状で、この人も頭の髪の毛の水銀をはかってみましたら、一七・八二あるいは一六・七二というように、ちょっと多い。  それからもう一つ、三十一歳の男、これは某農薬工場の従業員でございます。入社後すぐ農薬の生産に従事しております。これは特にホリドールとか有機水銀でございますが、二年後目まい、からだがふらふらする、あるいは呼吸困難がする、やはり手がしびれるとか、同じような症状を起こしております。肝障害と神経障害を兼ねております。頭の髪の毛をはかってみますと、やはり一八TTMほどありまして、ちょっと多い。  以上のような例がときどきあるわけでございまして、頭の髪の毛の水銀が普通の人より多いということだけで、すぐこれが水銀のためということはなかなか言えないわけでございますけれども、しかしそれが全然関係がないというふうにも断定できないわけでございます。  有機水銀は、御承知のようにアルキル水銀とフェニル水銀とございまして、アルキル水銀は脳に非常に蓄積する、フェニル水銀はむしろじん臓とか肝臓に蓄積するといわれております。  したがいまして、肝臓に蓄積した場合、肝臓疾患を起こす危険はないかということが考えられるわけでございまして、私たちもそれをいろいろ気をつけて見ております。やはり最近、どうも肝炎とか、あるいは慢性肝炎、肝硬変症というような病気が少し多いような感じがいたします。それと農薬との関係ははっきりわかりませんけれども、そういうような状況がございます。  あるいは、すでに御承知と思いますが、茨城県の猿島というところで流行性肝炎がございまして、これは一応流行性肝炎、ビールスによる肝炎ということがいわれておりますが、その中に一例解剖したところ、非常に水銀を多量に含有しておるものが見られております。ビールスが非常に関係していると思いますが、水銀もそれに何らか関与しているのではないかという疑いもあるわけでございます。  それからじん臓へたまりますので、何かやはりじん臓の疾患を起こすのではないかということで、私たちもいろいろ調べておりますが、これははっきりした証拠がまだつかめません。  それから問題は、脳とか脊髄とかの神経の障害でございます。私たちのほうで特に最近ふえておりますのは、先ほどの症例にもありましたように、何となく全身がしびれる、あるいは下半身が麻痺してくるという病気でございまして、一部ははっきりスモン病といわれるものもございますが、はっきりそうとも言えない、何となく診断名がつかないというような病気も最近ふえてきております。水銀をはかってみますと確かに多い。あるいは珍しい病気でございますが、筋萎縮性側索硬化症というような病気がございます。これはめったに起こりませんけれども、原因は不明とされておりますが、どうも最近ちょいちょいぶつかるようになりまして、そういう中毒が脊髄に何らかの障害を与えるのではないかという疑いもございます。これは水銀ではございませんけれども、BHC等でそういうような病気が起こったという症例報告もございます。  実際の臨床例、特に水銀を中心とした慢性中毒については、そういったような状況が出ております。  私たちは人体に確かに水銀を含有していると申しましても、いままでは全水銀の量しかはかれなかったわけでございまして、全水銀量となりますと、天然にも若干ございます。あるいは先ほどの話もありましたように、工場のばい煙であるとか環境の汚染から来るものもございますが、これがはっきり農薬から来たものであるということを調べるには、やはりフェニル水銀ならフェニル水銀という形で、あるいはエチル水銀ならエチル水銀という形で分析しなければいけないわけでございまして、そういうやり方で特に最近毛髪等を分析してみますと、毛髪の水銀は実はたいへんアルキル水銀が多いということがわかっております。これはほかの大学の教授、たとえば東京歯科大学の上田教授もそう言っておりますが、毛髪水銀がふえるていのは、主としてアルキル水銀がふえていることが関係しているのではないかというふうに言っております。そうしますと、ではアルキル水銀のふえ方はどこから来ているかということで、私たちいろいろ分析しましたが、やはりこれは食べものから来ている面もかなりあるのではないかということで、農作物中における残留農薬の分析をしたわけでございます。特にフェニル水銀、アルキル水銀という分け方で分析したわけでございますが、米の中には確かにフェニル水銀が見られます。かつて、お米の中に出た水銀は、もう有機水銀ではなくて無機化しているのではないかというような御意見もあったわけでございますけれども、実際に調べてみますと確かにフェニル水銀が分析されます。大体〇・〇三四PPMから多いのは〇・三七〇PPMくらい分析されます。これは神戸大学の喜多村教授もそのようなデータを出しております。私たちはこれを炊飯したわけでございます。煮たお米、つまり御飯におきましてもかなりのフェニル水銀が分析されまして、煮沸しても分解されないようでございます。  なお、野菜中のいろいろ水銀を分析してみますと、野菜中にはアルキル水銀がかなり見つかります。なぜかといいますと、野菜とかあるいはくだものには土壌殺菌としてアルキル水銀をかなり使うわけでございます。特にエチル塩化水銀とか、あるいはメトキシエチル塩化水銀等を使用した例につきまして、そこでとれた野菜を分析してみましたところ、白菜には〇・〇一六から〇・二〇、あるいはキュウリには〇・〇五〇から〇・一〇、あるいはレタスには〇・一一三、パセリには〇・〇二四から〇・〇四五、セロリには〇・〇二五、そのほかキャベツ、ナス、トマト等もやっておりますが、以上PPMの単位でございますが、そのようにアルキル水銀が分析されております。  そういう点がやはり人体のアルキル水銀の増加となっているのではないかというふうに推測するわけです。  フェニル水銀がお米に見つかり、あるいはアルキル水銀が野菜に見つかる、これはWHOの許容量からいいましても、はるかにその許容量を越えているわけでございまして、こういう状態がどんどん続いていきますと、やはりいろんな障害を人体に起こしてくる危険があるのではないかというふうに思っているわけでございます。  人体に対する危害といいますのは、単に薬剤が直接細胞に害を与えるだけではなくて、先ほどのアレルギー的な反応もありますし、あるいは催奇形を起こす、あるいは発ガン作用を起こすという危険もあるわけでございます。それがすぐそのまま引き起こす危険があるとは断定できませんけれども、このまま続けていくならばそういう危険も出てくるのではないかというふうに考えるわけでございます。そういう農薬による動物実験もやっておりますけれども、一応その実態ということで、以上報告させていただきます。
  40. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 厚生省におきまして慢性毒性等の実態をどの程度に把握しているかというような御質問でございましたが、先ほど松島参考人からのお話もございましたように、非常にこの把握はむずかしい問題でございます。行政的に私どもは、どの程度起こっているかということは的確に把握しておらないわけでございます。学界等のそういうデータを十分参照するという態度でございます。しかしながら、すでにこういう水銀の問題につきましては、特に人体に対する影響、あるいは測定の方法、いろんな問題が残されておるわけでございますけれども、さようなもの、が決定をするという段階を待たずいたしまして、こういうものの使用あるいは残留の排除になるような施策というものをまず進めるべきだということで、すでに御承知のとおり、四十三年を最後といたしまして有機水銀の農薬を使わないという方向で、農林省とも鋭意作業を進めているような実情でございます。
  41. 石川次夫

    ○石川委員 松島博士から御親切な御説明いただきまして、大体急性の問題につきましては、いろんな場で問題にされておりますから、ここでは特に取り上げないことにしたいと思いますが、慢性の場合も、農民がこれを使って慢性化しているのではないかという症例につきましては、いまいろいろお話を伺ったわけであります。  ところで、問題は、農民ももちろん直接の取り扱い者でございますから問題でありますけれども、残留水銀が土壌から吸い上げられて米その他のものに残って、それを食べたものが蓄積をされて、それが一体どういう慢性としての症状をあらわすかということが非常な問題だろうと思うのです。そのまず手始めとして厚生省に伺いたいのでありますけれども、これは昭和四十一年の三月あるいは昭和四十二年五月の二回、その前にもおそらくあるのじゃないかと思いますけれども、アルキル水銀の土壌殺菌用に使った場合の残留毒性調査一体どう進んでおるかということを質問をいたしております。それに対しましては、大体使わない場合の五十倍くらい残留するというふうなことがいわれておりますけれども、精密な調査というものはまだできておらないということになっておるわけです。その後の調査は進んでおりますか。
  42. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 食品につきましての残留量というものを中心調査を進めてまいりました。昭和三十九年から四十年も予算をもって継続をしてまいったわけでありまして、リンゴとかキュウリ、トマト、ブドウ、米というものにつきましては、ただいままで大体の数字を得ております。  米について申し上げれば、これはいろいろと検体によりまして差がございまするが、〇・〇七PPMから〇・二八PPMまでの水銀総量といたしましてのデータが出ております。  それから、リンゴ、キュウリ、トマト、ブドウ等につきましては、生産地あるいは市場等においてもそれぞれ分けて調査が進められてまいりましたけれども、総括的に申し上げれば、生産地あるいは市場におきましても、検体の中で、検出できないというものが最も多い割合でございます。しかしながら、決してゼロだというわけではございませんで、〇・〇一から〇・〇三程度のものが見出されておるという報告もあるわけでございます。さような程度はただいままで一応明らかにされてまいりました。
  43. 石川次夫

    ○石川委員 アメリカではフェニル酢酸水銀の許容量は人体一キログラム当たり〇・〇〇〇〇五ミリグラム、これはもうゼロですね。人体では絶対にフェニル酢酸水銀はとってはならないという別な言い方だと思うのです。〇・〇〇〇〇五ミリグラムですから。こういうふうにきわめてきびしい許容量というものの基準を設けておる。日本はそれに対しては、こういうような許容量というものの基準はまだきまっておらない。したがって、いま調べたところでは、〇・〇五から〇・二あるいは〇・三ぐらいの例もあるようであります。たとえば外国人が向こうでは一・八PPM、日本に来るとすぐふえる。日本に来るとすぐふえるといっても、一番多いと思われる米は食べていないと思うのです。したがって、米以外のもので日本の食物の中には相当残留水銀があるのではないかということがこれから推測をされるわけであります。日本人も外国へ行くと毛髪の中のPPMは相当減る。外国人並みになり日本に来ると、とたんにふえるということになるのでありますけれども、先ほど松島博士の御発表によりますと、慢性の有機水銀の中毒ではなかろうかと推測をされる例の中で、二十二・何とか、二十六・二とかいう例が出ておるわけです。これはどう考えても、水銀の害というものが慢性化したいろいろな症状の中にないとは言い切れないと思うのです。一つや二つの例では、そう断定することは根拠としては弱いのかもしれませんが、これはどう考えても無関係とは考えられない。そういうことで、いままでもフェニル酢酸水銀の影響というものはじん臓、肝臓、ガンというものになってあらわれるのだ、あるいはまた、白血病もそれが原因じゃないかということをカーソン女史もいっております。これは確認をされておらないようでありますけれども、代謝機能というものが相当阻害をされるということは疑う余地がないと思うのであります。  ここで伺いたいのでありますけれども、きょうは農林省の局長来ておらないのですか。――これは非常に重大な問題だと思うので、局長が来ていないことは私は非常に不満なんですけれども、代理の方でどなたかひとつ御説明を願いたいと思うのは、農薬の許可基準の問題であります。  農薬取締法の第三条第一項第三号に、「当該農薬を使用するときは、危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に著しい危険を及ぼすおそれがあるとき」は不許可にする。これはまたおそるべき取り締まり法規だと私は思うのです。これは私から申し上げることは釈迦に説法だと思うのですけれども、アメリカでは一応仮許可を与えます。これは大体だいじょうぶだという実験をして、これはだいじょうぶだと認定したときには仮許可を与える。しかしながら、ほんとうの許可を与えるまでには、白ネズミでもって二年間、犬なら一年間、それで慢性化するかどうかということをよく調べた上で初めて本許可を与えるということになる。それだけ人間の生命あるいは健康というものを非常に大事に考えておる。そのことのあらわれが、カーソン女史が「沈黙の春」を発表して非難ごうごうという問題もあったのですけれども、これをケネディが取り上げてウィーズナー報告というものにつくり直した。というのは、これは人間の健康を尊重しようという立場から、カーソン女史の本というものを率直に取り上げてアメリカじゅうの大問題になった。そのアメリカじゅうの大問題にしたアメリカでは、一番害のあると思われる水銀剤を使っていないですね。使っていないところでおそれだけ問題になっている。日本の農薬の取り締まり基準は一体何ですか。「危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に著しい危険を及ぼすおそれがあるとき」は不許可にする、こんなしり抜けな、人間の生命、健康を軽んじた法規はないと思うのですよ。私はこの前もこの点については質問をし、これは絶対に直すべきだ、慢性その他を徹底的に究明をして、人体に影響がないのだ、こういうところまできわめた上で初めて許可をするというふうにこれをつくり変えなければいかぬじゃないか、こういうことを申し上げたのですが、これは変わっておりますか。
  44. 田所萠

    ○田所説明員 農薬取締法の条文につきましては、現在、いま先生の御質問のおことばとは違って、このままでございます。ただ、農薬の登録許可をする場合におきましては、毒性のあるものその他につきましては、厚生省のほうと十分連絡をとりまして登録の許可その他をやっておるわけでございます。
  45. 石川次夫

    ○石川委員 厚生省と連絡をして、これは農薬として許可をしていいかどうかということを判定をするということは、この前も答弁で伺っております。それはもう当然だと思うのです。しかし農薬取締法それ自体が長期慢性なんということは全然考えておらないという、きわめて非科学的なものです。とにかく、直接使った農民がそれによって非常な影響を受ける。ところが、これは危険防止方法を講じた場合においても、というんですけれども、実際は、私も農家のまっただ中におりますからよくわかっておりますけれども、手袋を使えとか、防毒マスクをせよとか、いろいろなことを言ったって、それをじかにやって、その晩えらい寝込んでしまうというふうなことをしょっちゅう私も近所で見ているわけです。危険防止方法を講じていないからそんなのはかまわないのだということになるわけですね、この法規からいえば。「危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に著しい危害を及ぼす」というふうな、こういう取り締まり基準はないと私は思うのですよ。これをぼくは直ちに直してもらいたいと思うんです。こんなずさんなやり方では、日本人の健康を守れないと思うのです。農薬取締法の第三条第一項第三号を変える意思があるかどうか、これをまず伺いたい。
  46. 田所萠

    ○田所説明員 ここに載っております。人畜に害のあるということでございますが、これはそれを使用する人の問題についての問題でございまして、先生のおっしゃっておるように、慢性毒性だとか、要するに残留毒性の問題につきましては、いままであまり検討がされていなかったのございます。いろいろと慢性毒性の問題が問題になりまして、現在厚生省のほうとそういう残留毒性の問題につきましては検討を進めまして今後農薬登録をする場合におきましては、こういう残留毒性の問題につきましても、農薬検査所におきまして十分検討した上、厚生省と連絡をして実施するということになっております。  なお、残留毒性の問題につきましては、今後農薬の安全使用基準というものをつくりまして、残留の許容量の範囲内で農産物にそういう問題が起こらないように安全基準をつくりまして実施をするということで現在進めております。
  47. 石川次夫

    ○石川委員 どうも答弁がはっきりしないのですがね。このように長期慢性あるいは残留毒性というふうなことが問題になりまするし、これは直接扱う人だけだという意味かもしれませんけれども、そういうものも含めての許可基準というもの一を私は考え直さなければいかぬと思うのですよ。このままではどう考えても納得できません。特に危険防止方法を講じて正当に使用して人蓄に著しい被害が出たとき初めて不許可だというようなことは、どう考えてもわれわれの常識に合わないですよ。これはいま参事官の立場じゃ、自分が責任を持ってどうこうということは言えないかもしれませんけれども、これは絶対に変えるべきです。これは変えなければ、日本人の健康を考えないのだ、これは製薬会社の立場に立ってものを言っているのだということになりますよ。これはぜひひとつ考え直してください。  それから、いまの残留毒性の問題とあわせて、有機水銀は体内に入ると無機化するというような御説明をこの前受けて、はたしてそうかと言いますと、どうも確信がないというような話であったわけであります。このほうの研究はまだ十分ではないのだ、無機化して排せつをする――これは可溶性はあるというふうなことは学者では説明ができているようでありますけれども、無機化されて体外に排せつをされるのだというようなことについては、どうもこの点について確たる証明はできておらないように思って、これも研究材料になっているわけです。この点の研究厚生省のほうでお調べがついたのかどうか。あるいはまた、松島さんのほうではこの点をどうお考えになっておるか、この点をひとつまず伺いたいと思います。
  48. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 農薬の水銀の動物体内における慢性毒性関係につきましては、非常に重要な問題がございますので、国立衛生試験所等で研究を継続しておるわけでございます。ただいままで私どもが研究の中間として承知しております点は、一般に動物に有機水銀を与えました場合には、大体そのままの形で毛髪の中等に検出されるという姿が、いま一番定説的になっておるデータでございます。動物の場合でございますが、体内で特別に他のものに変化していく、そういう結果はいまのところ得られておらないという状態でございます。
  49. 松島松翠

    ○松島参考人 私のところではそういう実験はやっておりませんが、神戸の喜田村教授が動物実験をやっております。ネズミでやっておりますけれども、喜田村教授は、人体内に摂取されたフェニル水銀はかなり分解して排出されるというふうに申しております。しかし、先ほども申し上げましたように、毛髪に確かにフェニル水銀は見つかるわけでございますので、一部は分解されるかもしれないけれども、大部分はやはり残るのではないかというふうに考えます。
  50. 石川次夫

    ○石川委員 有機水銀が無機化するかどうかという問題は、去年の答弁では、厚生省では無機化するんだというふうなことを言い切っておったのですよ。それはちょっとおかしいじゃないかと言ったら、きょうの御答弁では、無機化はしないという御答弁というふうに私は承っておきます。したがいまして、これはある程度は可溶性はあるかもしれないけれども、そのまま、有機水銀のままで体内に残留する危険性が多いということを確認をされたので、それだけに有機水銀の害というのは、真剣に取り組まなければならぬ課題になってきているのではないかと思います。  そこで、時間がだいぶたちますので、はしょった質問になりますけれども、理研の方にお伺いをしたいのでありますが、去年も理研の住木さんには来ていただきまして、いろいろ懇切に御説明を受けまして、感謝をいたしております。ところで、ブラストサイジンとカスガマイシンのその後の生産設備、生産能力といいますか、これは抗生物質として、有機水銀にかわるものとして非常にわれわれは注目をしておるわけでありますが、ただ問題は、値段が二割ほど高いのではないか。しかしながら、これを大量生産して、水銀にかわるものとして用いることになれば、生産設備というものも合理化されることを通じて値段も下げ得るであろうというようなことも含めて、このブラストサイジン、カスガマイシンというものの将来は洋々たるものである。かてて加えて、こういうふうな農薬は日本独得のものということで、輸出の新しい産業として開発をする余地も大いに出てくるのではないか。そういう意味における前途もきわめて洋々たるものがあるのではないか、こういうふうにわれわれは期待をいたしておるわけであります。その点現状はどうなっておりますか。その後の変化、経過があれば、ひとつお知らせを願いたいと思います。
  51. 住木諭介

    住木参考人 ただいまの御質問に対して、私、商売上のほうのことはほとんど関係いたしておりませんので、わかりませんけれども、培養単位は、ミリリッターほぼ千単位近くまで上がっております。昨年申し上げましたときは五百単位か六百単位、一つのタンクの単位で申しますと、コストは半分近く下がっておるということだけは申し上げられると思います。それが市販の売価がどうなっておるかということは、私には全然わかっておりません。  それから海外に対しましては、ブラストサイジンはある程度南米その他に出ておるということを、ただ聞いておるだけでございまして、どれだけの量が輸出されておるか、そういうことも私はわかりませんので、御返答できないことをはなはだ残念に思います。
  52. 石川次夫

    ○石川委員 これは去年の御答弁ですと、原料百四十五トン、粉剤にして十四万五千トンの能力がある、こういうふうに御答弁をいただいておったわけであります。これは理研の方が直接生産に携わっておるわけではございませんから伺うことはちょっと的を得ないかもわかりませんけれども、その後十四万五千トンというワクが、単位が倍に上がったということは非常にけっこうでありますが、この量それ自体も粉剤にしてどれくらいになるかということがおわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  53. 住木諭介

    住木参考人 先ほどの御質問は、私どもが参りましたときに、科研化学、つまりカスガマイシンとブラストサイジンを製造している会社の重役が参りまして、そういうこまかい数字をあげたのでございまして、私ではなかったと記憶しておりますが、また、私としてはそういうことを知る由もないので、その御答弁はごかんべん願いたいと思います。たぶん久保という向こうの重役が来てこまかいデータを言ったと思います。
  54. 石川次夫

    ○石川委員 どうも失礼しました。去年は久保さんから説明を受けたわけであります。  それで、農林省の植物防疫課長がおいでになっておりますけれども、植物防疫課長はその辺がおわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  55. 安尾俊

    ○安尾説明員 ただいま先生の御質問にございました二つの抗生物質そのものについての数字は、いま手元に資料がございませんので申し上げかねますが、四十二年度にさらに五つ新しいいもち用の農薬が出まして、現在十種類非水銀系の農薬があります。これの生産は、いもち病の防除面積に使用するに十分の量が生産できるということから、四十三年度は全面的に非水銀農薬に切りかえる、こういうふうにいたしたいと思います。
  56. 石川次夫

    ○石川委員 私の聞きたいところの焦点の一つはそこにあったわけでありますけれども、去年の答弁でも、四十三年の四月から全面的に有機水銀は使わせないということになって、代替の過程としては、去年は六〇%から七〇%を水銀でないものに代替する、昭和四十三年の新しい年度、四月からは一〇〇%水銀を使わせない、こういうふうな確約をされておったので、その点がどうなっているかということが一番の問題であったわけですけれども、その点は実情としてそういうふうに実現できますか。
  57. 田所萠

    ○田所説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、安尾課長から御説明申し上げましたように、四十三年度から全面的に切りかえるということで計画を進めております。それで末端におきます防除基準におきましても、水銀農薬を基準の単位からはずしております。そういうことで全面的に指導しておりますし、それから業界のほうに対しましても、水銀農薬の製造登録を全部破棄すると申しますか返還してもらうということで、製造を全面的にストップさせております。
  58. 石川次夫

    ○石川委員 世界でどこでも使っておらない有機水銀を日本だけが使うということによるところの相当な慢性化というものがおそれられておったので、それを全面的に切りかえるということが実際できるとすれば、それは一つの進歩だと思います。その点は、日本人の健康を守るという立場で、日本人が特に米をたくさん食い、米の中に一番滞留する可能性もあるという実情にかんがみて、ほかの国ではどこも使っておらぬわけですから、この有機水銀をぜひ取りやめるということに全力を費やしてもらいたい。しかし、それだけで問題はもちろん解決したわけではありません。有機燐剤なり有機塩素剤というものもまだまだ残っておるわけでありますから、そういうものにかわって、いまのいもち病その他の点につきましては、ブラストサイジンとかカスガマイシンというものができてきた。あと、塩素系のもの、燐系のものというようなもので代替をすることになるわけでございましょうけれども……。  あと一つ理化学研究所の方にお伺いをしたいのでありますけれども、天敵を養成するという研究ですね、そういう問題、それからこん虫の変態、たとえば卵から幼虫になり、サナギになり、成虫になるという過程で特殊なホルモンが要る。そのホルモンに対してある作用を加えることによって増殖をしないように押えていくという問題、あるいはコバルト六〇によって、交尾はするけれども不妊の状態にするという問題、こういう問題については、アメリカでは大体三つくらい成功しているというようなことも伺っておるわけでありますが、日本では、この研究一体どのくらい現状として進んでおりますか。その点、理化学研究所の方がよろしいのかどうかわかりませんけれども、おわかりの方、ひとつ教えていただきたいと思います。
  59. 住木諭介

    住木参考人 いまの御発言は、理化学研究所に新しくできつつあります新農薬研究部の今後のテーマを決定します非常な重要な点でございまして、私としては、人畜無害で、そして、りっぱに薬効を発揮する農薬をどんな考えでもって進めていったらいいかということを非常に悩んでおります。そして、外国の専門家あるいは日本の専門家などに、どんなような方法があるだろうかというようなことを伺ってきております。  それは大別しますと、ほぼ七つに分かれます。そのうちには、いま石川議員がおっしゃいましたような方法も入っております。  その第一で不妊剤でございます。妊娠しない、不妊剤を用いる。それには二つございまして、第一は、先ほど言われましたガンマレイ、コバルト六〇を――そのこん虫ならこん虫を飼いまして、雄なら雄、雌なら雌、こん虫によりますけれども、それを飼育しまして、そして、雄なら雄を集めまして、それに死なない程度のコバルト六〇を照射いたします。そうすると、その照射されました雄は、世の中に出ていきまして、雌と交尾はいたします。けれども、産卵はしない。こういうアイデアのもとで実行に移しまして、アメリカの一、二の地方ではそれに成功しておる例がございます。それから、不妊剤を用いますのに、コバルト六〇を使わないで化学的な避妊剤を用いて、これをたとえば食べものの中に入れておくとかなんとかして、コバルト六〇の照射装置というようなむずかしいものを用いないで、化学的な避妊剤でこの目的を達しようとする考え、つまり不妊剤の考えでございます。  第二が誘引剤、こん虫を誘う材料でございまして、これでいま世界的に最も研究されておりますのが性的誘引剤でございます。雄が出しますある物質のにおいでもって、数十キロ向こうの雌が全部集まってくる、あるいは反対に、雌が出しますある性的有機物質によって雄が集まってくる、そういう性的誘引剤を持ってきて、そこで殺す。あるいは産卵所――こん虫が卵を生みます場所は大体きまっております。産卵所に特有のにおいを持つものを使いまして、そこに虫を集めまして殺す。あるいは特殊光線、戦争中よくたんぼでやりました、紫外線でもって、その光線の波長に応じまして、あるこん虫はそれに誘われて集まってまいります。そういうふうな誘って引き寄せる誘引剤を使って人畜無害の農薬にかえたい、こういうアイデアが一つ。  それからもう一つは天敵でございます。これは、世の中はよくしましたもので、ある稲にたかる虫がありますと、それを食う虫がまたある。そういう天敵を利用するのでありますが、ここに新しく天敵として問題になってまいりますのは、品種改良にも関係いたしますがこん虫の品種改良、たとえば稲に対しましては、稲は食わないけれども、稲のたんぼに発生しますところの雑草のみを食べる、そういう品種改良。植物ならず、それを荒らす虫、そういうもの品種改良をするというようなことも一つの天敵の新しい利用法と考えられます。  それからもう一つはバイラス。バイラスはそのバイラスの特有性によってこん虫あるいは細菌、微生物に寄生いたします。そして、それを殺しますので、そういう有効バイラスを見つけ、しかも、そのバイラスは人畜に無害である、そういうものをさがし出しまして、それを用いるというような天敵の利用法がございます。  あとは非常に消極的になりますけれども、第四としましては食物忌避剤、食べようとしてもその忌避剤があると、そのにおいによって食べることができない、そういうようなものをさがし出しまして、そしてこん虫の寄りつくのを防ごう、あるいはそのこん虫を根絶しようということでございます。  それからもう一つは植物の、稲なら稲の品種改良、二化メイ虫に対して非常に抵抗性のある品種をつくる、植物自身の品種改良というようなものを第五番目に私は考えております。  それから第六番目には、殺菌剤としてはいろいろなものがあらわれてまいりました。たとえば、いもちに対しても、水銀剤を使わないいろいろの塩素系の化合物が出てまいりましたが、こういうふうな殺菌剤としても人畜無害のものをいろいろ考えていく。これには抗生物質ももちろんその中の一つに入りまして、現に理研では、水銀にかわる、日本において農薬として大きな害をなすものは何かというふうなことを考えまして、それは砒素であろうというわけで、砒素にかかわる抗生物質をさがしまして、これをついに発見に成功いたしまして、正式に使用されているかどうか私わかりませんけれども、見本的には使用されまして、非常な成績をあげている。これはポリオキシンという名前をつけておりますが、そういうふうに砒素にかわる新しい抗生物質も理研の農薬研究部において発見されております。  それから最後には既存の農薬。非常に人畜に害がある、そういう農薬でも、そのどの化学構造が人畜に害があるのか、そういうところを確かめまして、そして、それに対して化学構造を改良いたしまして、そして無害のものにしたらどうかというような、以上七つの方針を私考えておりまして、これを日本の全国の農薬の研究者、あるいは特に私の関係の深い理化学研究所の農薬研究部に、こういうアイデアのもとでもって新しい農薬を一日も早く考え、つくり出すように、こういう方針でやっております。  それから、いままで日本でやりました農薬の研究中最も研究の足りない点は、農薬がその二化メイ虫なら二化メイ虫にさくけれども、それが稲のからだ、ホストのからだに入ってどう変化していってどうなるか、そういう研究が非常に少ない。それから、あるいは粉剤あるいは乳剤としてまきますと、それが土壌中に蓄積いたします。土壌中において、いろいろな微生物がございまして、それがどうこわしているかというような研究も、人手が足りませんものでほとんどやっていないというのが日本の現状でありまして、これから新しい農薬ができましたならばそういう二つの点、植物体内においてどう変化するか、あるいは土壌中に蓄積するのかしないのか、そういう二つの点も同時に研究して、そうして、それを新しい農薬として取り上げるべきじゃないか、こういうふうに理化学研究所の農薬を担当しております住木参考人としては考えておる次第でございます。
  60. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 関連して。水銀の害毒は長年の間論議し尽くされた問題でありまして、これにかわるべき農薬を昭和四十三年度一〇〇%用いられる段階にまで至ったということは、非常に喜ばしいことだと思います。ただ、どなたでもけっこうですから、これはきわめて簡単に答えていただきたいのですが、日本はいままで一年に相当量の有機水銀をたんぼにまいたわけですけれども、これを四十三年度に用いないように切りかえるといっても、その土壌に残留しておる有機水銀が相当量あれば、これは数年間は稲にやはり残留毒性として残って人間がこれを食べるということになるのだろうと思いますが、この日本の田畑における水銀の残りというものはどのくらい土壌に含まれているかということは、十分検査をしておるかどうか。検査をしているなら、している、していないなら、していないと、ひとつ簡単にお答えを願いたいと思います。
  61. 岩田吉人

    ○岩田説明員 いままでの水銀がどのくらい蓄積しているかということの調査はありませんが、実験的に私のほうでやったものがあります。といいますのは、いままで水銀を使っていなかった土を用いまして、これはポットでありますけれども、まいたとして百年分くらいの水銀を入れまして、そうして、経時的にその水銀量をはかっております。そうしますと、五ヵ月ないし六ヵ月でPMAとしてはなくなってしまいます。それから、全体の水銀量としてはその後もありますので、PMAがほかのものに変化しているのか。それとも何かほかの理由か、その辺はよくわかりませんけれども、とにかくPMAとしては減ってしまいます。それから、そのときに畑状態にいたしますと、畑状態の場合は全水銀量も徐々に減ってきます。湛水状態よりも早く減ってきます。そういうことから、非常にたくさんつぎ込んだわけでございますから、いままでの量でいえば、そんなに長く残っているものではないだろう、こういうふうに推測をしております。
  62. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 実は通産省の工業技術院発酵研究所で二、三年前、水銀集積細菌というものを発見したわけですね。これはアメリカで非常に大きな反響を呼んでおる、こういうのでありますが、その研究実態を文章によって見ますと、微生物を培養すると、そこへ水銀が全部集まってくるという。これを見ますと、工業的に廃水から水銀を回収するとか、あるいはいろいろなものにまじっている水銀を除去して、その害毒を除去するとかというようなことでいま計画をされておるようであります。ただ、ここに「ライフサイエンスの立場から毒物の無毒化の機構を追究するための好個の材料として貴重なものと思われる。」こう書いてある。ですから、発酵研究所長が見えておるようでありますけれども、この水銀集積菌というものは培養すれば幾らでもタンク培養まで持っていける。微生物でありますから、無限大の増殖というものがきくわけですね。そうして、水銀の入っているところの廃水等にこれを入れると、その菌のまわりに水銀が集まってくる。だから、水銀を除去することができる。これは工業用として大いにやっていただきたいと思います。が、しかし、いま問題になっているように、日本の食料の中に有機水銀が残留毒性として残っておって、髪の毛を検査すると、普通の人間の十倍とか二十倍とかいうおそるべき水銀を保有しておって、いつ水俣病になるかわからぬという危険状態の人がたくさんおるのです。特に農薬排水が流れ込むようなところにはたくさんそういう人がおるということであります。また、先ほど石川委員質問にお答えになった当局のお話によりましても、農薬の毒性によっていろいろな疾病状態におちいっている人というのは、これは表向きはああいうふうな統計しか出ていないですけれども、実際われわれの秋田県あたりのいもち病と、それからリンゴのモニリアと戦っているようなところに行きますと、病院に行くと、入院しているのがほとんど農薬の災いによってやられている人間なんです。それが統計にはわずかしか出てきてないのです。だから、そういう場合に、私はこういう水銀集積菌というものを、体内に飲ませるのか注射するのかわからぬけれども、いわゆるライフサイエンスのたてまえから応用していって、これが水銀の解毒剤になるということであれば、私はまた水銀禍に対する一つの方法だ、こう考えておるのですが、工業技術院及び発酵研究所ではそういう点に対してどういう研究体制をしいているか、これをちょっと説明していただきたい。
  63. 片山石郎

    ○片山説明員 現在のところ、水銀の集積菌につきましては、先ほど先生のおっしゃいましたような工業的な関係でもって研究はその後続けておるわけでございますけれども、ライフサイエンスというようなかっこうで生体にそれを活用するというところまでは、現在のところ、まだ手をつけておらないというのが現状でございます。詳しくは発酵研究所長がおりますから……。
  64. 七字三郎

    ○七字説明員 ただいま齋藤先先のお話にございますとおりで、私どもの発酵研究所では三年ほど前から、水銀微生物と私たち申しておりますが、水銀を何らか分解なりできるような菌はないだろうか、こういうことで研究に着手しております。水溶液中の水銀を分解し、さらにあるいはそれを回収できるようにできないだろうかということが主な目的でございます。その結果、非常に水銀に耐性の強い菌が見つかりました。シウドモナス属でございますが、このものは細胞の外に無機、有機いずれの水銀化合物をも吸着する、あるいは結合するというような、現象的にそういうことを応用いたしまして――その後さらにその生理をいろいろ調べますと、吸着しました水銀分子を次の段階で気化してしまう。気化する段階のときには、無機的に変えて気化するというようなことが逐次わかってまいりました。そういう機能を持ちます菌をどういうように活用いたしまして、いろいろな面に役立てるようにいたしますか、今後大いに努力いたしたいと存じておるような段階でございます。  したがいまして、ライフサイエンスの一環ということでございますが、この有効なそういうアクティビティー、活性がどういうことに原因するのかというようなことは、今後さらに学問的にもべ-シック的に十分検討いたしまして、これから何らか有効的なものが分離できるか、あるいは酵素との関連などをも追求いたしまして、先ほどのようなライフサイエンスの一環としての役に立てるような方向へも推し進めていきたい、このようなことを感じているわけであります。それにいたしましても、また各方面の研究機関等の御協力も得まして、なるべく早くそういうことの解決ができますように努力したいということを念じているわけでございます。
  65. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 「ライフサイエンスの立場から毒物の無毒化の機構を追究する」――まあ、これは研究者の立場としてはあまり出過ぎたことは言えない、責任が大きいからというようなことをお考えになっておられると思うのですけれども、水俣病対策というものはいままでないのですね。体内の水銀を直ちに排出せしめて、その病気をなおすべき目標を定めた対策というものはなかなか見当たらない。これはどうなんですか。まだ動物実験はやらないのですか。動物実験をやらないということになれば、一体なぜやらないのか。こういうものが見つかって、ライフサイエンスの立場から毒物の無毒化をはかるということになれば、勢いマウスかラビットかあるいは犬か、そういうものの動物実験をやるのが私は研究者の責任上当然の仕事だと思っているのですけれども、どうしてこういうことを書いていて、そういう動物実験ということばがここに出てこないのですか。金がないのですか。
  66. 七字三郎

    ○七字説明員 毒物に関連のあるいろいろな研究をしておるわけでありますが、動物実験を必要とするというような場合もだんだんと生じてまいります。従来は関係のところにもお世話になったりしてやっているものもございますが、今後は研究体制の強化といいますか、整備ということの一端といたしまして、そういう動物実験の実施についても検討させていただきたい、そういう方向に行けるようにいたしたいと存じておるわけであります。
  67. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ここへ谷敷振興局長が出ておられるようでありますから申し上げますが、この問題も、せっかくこの委員会において水銀禍というものがしょっちゅう論議されておる。特にいま阿賀野川の水銀禍は、一体農薬であるか工場排水であるかという最後の決定というものは科学技術庁の責任であるということにだんだんなってきておるようであります。そういう意味において、この水銀問題を解決するということは重大な問題だと思いますから、通産省、それから厚生省、農林省よく御相談願いまして、もしこういう水銀集積菌というものが人体の中の有害水銀を除去し得る作用を持つということであれば、これは画期的な一つの方法である、こう思うのです。廃水の中から水銀をとるとかとらないとか、そんなものは幾ら値があるか私ら関心がないけれども、いやしくも事人命に関する問題に対してもしも効果を示すということであれば、これは重大問題でありますから、そういう各省庁にまたがる緊急に関する実験科学技術庁が担当する、その立場において調整費を持っておるんだということから、うしろで政務次官も聞いておられますから、その点よろしくお願いを申し上げたいと思うのであります。  それからもう一点、農薬に対して、これは私の落選中のあれでまことにおそれ入りますが、これは私の名前が出ておるのです。岩本説明員という、やはり工業技術院の方でございますが、私が長年研究をいたしております木酢液がいもち病にきくかきかないかという実験を、私、落選中に発酵研究所にお願いをして試験をしていただいた、その結果報告が岡良一委員質問によってここへ出ておるわけであります。それによりますと、木酢液は五%以上の濃度では完全にいもち菌の生育が阻止される。それから二%でもかなり生育が阻止される。酵母菌は木酢液の一〇%の濃度にも発育を阻止されないというように書いてあるのです。そういたしますと、酵母菌が一〇%の木酢液によって発育を阻止されないということは、これは植物に対する有効菌の発育というものに対しては何ら支障がないということです。私の実験からいきますと、酵母菌はこの木酢液一〇%、二〇%においてはますます繁殖を助長してくるんです。一方、いもち菌はこれによって発育が阻止されるということになります。何で一体そういう特殊の作用が木酢液の中にあるかということは、結局これはわからぬ。分析をいたしてみますと、有機成分が三百種類も出てくるけれども、それ以上の分析はいまの分析の技術ではできない。その三百種類の有機成分の中の何が一体かくのごとき現象を来たすのかということはわからぬけれども、私がやっておりました実験をさらにトレースしていただくために、発酵研究所にお願いいたしましたところ、木酢液というものは二%でいもち菌に相当の効果があり、五%では完全にその発育を阻止する。しかも、一〇%の溶液で酵母菌の発育に何らの支障を来たさない。こういう農業にとってぴしゃっとうまく当てはまるものというものは世の中にない、私はこう思うのですよ。もしこういうものがあったら、ひとつお示しを願いたい。残留毒性を残さずして有害微生物を殺すというものは私はないと思うのです。それはカナマイシンであっても、いわゆる抗生作用によって相手方の有害微生物の繁殖をとどめるというところにあれはあるもので、殺すのじゃない。そういうふうに有害微生物をぴしゃっぴしゃっと殺すだけの力を持っておったら、必ず残留毒性として残って、人体及び動物に影響を来たすというのは、これはいままで立証されたことなんですね。ところが二%で効果があり、五%で完全に阻止し、一〇%で酵母菌に何らの支障を来たさないというようなものがあったら、これは私は一つの天恵だと考えておるのであります。それで木酢液というのは、御承知のとおり、植物を乾留したときの煙を冷却してとるのでありますから、これはある意味においては植物の輸血作用なんであります。でありますから、その最も貴重な植物の有機成分が土壌に還元されるところに、私は、植物を育成するエネルギーというものが発生して、それがほんとうの、いわゆる害毒を除去しつつ有効成分を助成して、植物を完全に育成する原動力だと考えております。ですから、そういう点について、ひとつあらためていもち菌に対する木酢液の効能というものをお取り上げを願いたいというのが、貴重な時間を拝借した理由であります。これはぜひひとつ振興局長におかれましては、いま木酢液の実験というのはほかの方面でもってやられつつあるのですから、これを何とか一枚加えて、昭和四十三年度いもち病の発生したところへばあっと木酢液をまいて、そうして、いもち菌が繁殖していくかいかないかということの実験というのは、これはたやすいことでありますから、何でもないことでありますから、ひとっこれをお取り上げ願いたいと思うのでありますが、それに対する御所見を念のために伺っておきたいと思います。
  68. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいまの木酢液の問題でございますが、先般木酢液は一部特調費でやらしていただいておりますが、それに基づきまして、いまの先生の御意向その他を尊重いたしまして検討させていただきたいと思います。
  69. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 どうもありがとうございました。
  70. 石川次夫

    ○石川委員 いままで農村のほうで危害防止月間というものを農林省と厚生省で協力をしてやっているやり方を見ると、直接取り扱いを注意するということだけであって、残留毒性が土壌に残り、それが植物の中を伝わって、それを食べる人体に影響があるというようなことまでは、ほとんどやっておらなかったと私は思うのです。そういうことからして、いままで水銀が非常に使いなれておるし、また、非常に効果があるという先入観があるわけで、今度昭和四十三年から水銀を全部やめて、別のものに変える、抗生物質に変えるといっても、末端ではなかなかそういう教育は徹底しておらないのじゃないか、こういう懸念があるわけです。したがって、そういうふうに根本的にいまのような毒性があるのだということから説明をして、どうしても水銀というものは使ってはならないのだ、どうしても今度の四月から、四十三年度からは全面的に切りかえるのだという教育が徹底しておるかどうか、そういうことを徹底させることができるかどうかという点での見通しを、農林省のどなたかひとつお知らせを願いたいと思います。
  71. 安尾俊

    ○安尾説明員 ただいま先生からお話しございましたように、従来からも急性毒性を主体といたしまして、それの危害防止につきましては、厚生省、農林省、それから都道府県並びに関係団体が一緒になりまして、毎年五月の十五日から一ヵ月間、危害防止月間としまして、危害防止につとめてきたわけでございます。  そのほか、私のほうで所管いたしております病害虫防除所というものが旧郡単位に一つずつございます。そこにおきまして、やはり農薬の安全使用につきましての講習会を実施してまいっておるわけでございます。本年この安全使用対策といたしまして八千万円予算を要求いたしておりますが、その中におきまして、さらにいろいろ農薬の安全使用につきましての教材等も含めまして、指導の徹底をはかりたいと思っております。  なお、指導だけでございませんで、農薬の残留対策を推進していくにつきましては、末端の防除の体制を十分に整備いたしまして、共同防除でむだな農薬をまかないように、そして、安全使用をはかるようにということから、末端の防除組織の整備にも努力してまいりたい、こう考えております。
  72. 石川次夫

    ○石川委員 とにもかくにも、毒ガスをまいておるような水銀を今後は使わせないという方向に行ったことは一歩前進だと思うのですけれども、これはぼくは実際いままでが論外だったと思うのです。使っていることがどうかしていたのではないか。ほかの国ではどこも使っておらぬわけですから、これでどうやらほかの国に近づいてきつつあるということにはなりますけれども、御承知のように、有機燐剤あるいは有機塩素剤、有機弗素剤というようなものが、まだまだ有害な農薬として残っておるわけなんで、水銀を使わないということで問題が解決したなどということにはとうていならないわけです。佐久総合病院長の若月さんは、この問題にたいへん熱心に取り組んでいただいて、私たちも感謝いたしておりますけれども、その報告によりますと、有機燐剤のEPNを与えた場合に、キジは十二・五ミリグラム、スズメは〇・〇八ミリグラムでもって死んでしまう。きわめて微量です。それから比較的毒性が弱いといわれているBHC、これは有機塩素剤でありますけれども、ウズラは三・六ミリグラムでもって死んでしまう。それからキジのつがいに二ヵ月ほど、ほとんどあるかないかの微量なBHCを与えてみると、ほとんど無精卵になってしまう。したがってキジは繁殖をしないというような記録がいろいろと出ておるわけでありまして、ただ単に、こういうふうな鳥獣類に影響を及ぼすということだけではなくて、先ほど来いろいろと申し上げておりますように、人体に影響があるということの点がむしろ大きいのでありますけれども、そういうものも含めて、日本におきましては、アメリカでやっておるように薬害調査の専門研究というのはほとんどなされていないのではないか、こういうことを指摘せざるを得ないと思うのです。これは一体どこでやるのかという問題です。これは梅澤調整局長も来ておられるわけでありますけれども、どこもやるところがなければ、これこそ調整局の任務として薬害の調査というものを専門的にひとつ調整をしてやらせるということを積極的にやらなければならぬ。これは重大な課題ではないかと思うのです。  それとあと一つは、農薬の開発の予算でありますけれども、これもアメリカあたりでは年間六十億円といわれておりますけれども、これは相当大きな金額で使い切れないのだというふうな話も、これは私が仄聞したところによると、そういう話が伝わっております。これまた日本においては非常に予算が少ない、こう思っております。そういう点で農薬の開発の予算あるいは薬害の調査というものを専門研究家にゆだねて、これを積極的にやらせるという点がどうしても抜けている。新しく薬を開発するほうには、これは理化学研究所住木さんからもいま伺いましたところが、ポリオキシンというような、砒素にかわるものが新たにまた発見をされた。前にはブラストサイジンとかカスガマイシンというような世界的な農薬というものも発明されておるという点で、また、いまでは理研の中で五つの研究室というものを設けて新しい農薬の研究に従事をされておる。その成果もかなり見るべきものがあるという点で感謝はいたしておりますけれども、それにしても、まだまだ農薬の開発の予算というものが日本においてはきわめて少ないという現実と、いま言ったように、薬害の調査というものをどこかが専門的にやるという形をほとんどとっておらないという点で、これは一体、これからやるとすればどこが分担をするのか。これはどうしてもやらなければならぬ問題で、予算なんかも非常に少ないとすれば、一体これをどうしてわれわれとしてはこれから予算の獲得に努力をすればいいのかという点がかいもく見当がつかないような状態でありますけれども、この点についてどなたかおわかりの方はひとつ御答弁願いたいと思います。
  73. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 薬害の問題につきましては、技術上非常にやり方としてむずかしい問題だと思います。と申しますのは、相手のある問題でございまして、食糧としてあるいは農産物としてそのものに対して、ものによっての違いというものが出てくると思います。したがいまして、その研究を進めます場合には、やはりそっちのほうを扱っている研究部門と一緒にやっていってこそ進むのじゃないか。その間の共同体制の調整、あるいはその間に起こりました緊急課題の問題そういう点について科学技術庁としては十分御協力さしていただきたい、こう思っております。
  74. 谷敷寛

    谷敷政府委員 ただいま予算お話がございましたが、科学技術庁関係では、理化学研究所がもっぱら農薬の研究をやっておりまして、この予算昭和四十二年度は約一億五千万円、四十三年度もそれに近い金額でございます。なお研究室は四十二年度まで六つの研究室ができまして、四十三年度もう一つ追加になって七研究室になるわけでございます。御承知のように、四十三年度の予算は非常に窮屈でございまして、新しい人員の増加等は非常に押えられたわけでございますが、農薬につきましては研究室を一つ新設いたしまして、人員も新しく七名増員するということで、非常に力を入れてやっておる次第であります。
  75. 石川次夫

    ○石川委員 理化学研究所は、いま申し上げたように非常に成果をあげておりますけれども、それにしても一億とか二億足らずの予算ということで、これはちょっと問題にならないと思うのです。民間の製薬会社はそれぞれもちろんやっております。やっておりますけれども、これはあくまでも売らんかなであります。これをやれば害虫防除に益があるんだということでこれが一体人体にどういう影響を及ぼすのだということは二の次、三の次。しかも、農薬の取り締まりの基準というのは、先ほど申し上げたような非常にしり抜けな、ずさんなものになっているというところに乗じてどんどん新しい害毒をまく、というと極端かもしれませんが、そういう結果になっておるわけであります。したがって、私が申し上げているのは、農薬の開発の予算というものを何とかもっと拡充強化しなければならぬということをこの委員会で確認をしたいということが一つと、それから農薬の害毒につきましての調査というものが、専門研究がほとんどなされておらない。これも非常なしり抜けだと思うのです。これは非常にむずかしい問題であることは私もわかります。わかりますけれども、いかにむずかしい問題であろうとも、この調査というもの、土壌の中、あるいは植物の中、先ほど住木博士が言われたような意味での専門的な研究がどうしても必要だ、これなくしては農薬の開発というものも逆にできてこないということにもなるわけであって、これが抜けているということは非常な盲点ではないかと思うのです。これは科学技術庁がその間をとってこういう新しい分野――新しい分野というよりも、当然やらなければならなかった、忘れられた重要な部門というものを拡充強化するということについて、ひとつぜひ努力をして、その実現に邁進をしてもらいたいということをお願いをいたしまして、私申し上げたいことはまだたくさんありますけれども、時間もたいへん超過をしておりますので、参考人の方にいろいろ貴重な御意見を伺ったことを感謝をしながら、また、この農薬の問題についてはその後の経過というものを見ながら、一年に一回か二回は必ず私は質問するようにしたい、こう考えております。ひとつ御協力をお願いしたいと思います。きょうはありがとうございました。
  76. 三宅正一

    ○三宅委員 関連して一つ。たいへんきょうは参考人の方々、いい示唆を与えていただきまして感謝いたします。  一つだけ私は大局的なことについて御答弁が願えればお答えを願いたいのでございます。それは私は、日本は農薬を使っていることでも世界一でありますが、化学肥料を使っていることも世界一の国なのであります。私どもしろうとながら考えていることは化学肥料をあまりむちゃくちゃに連続投用いたしますことが土地を非常に荒らしておるのではないかという感じがいたすのであります。酸性土壌とかいろいろ……。その意味においては非常に大きな目から見ると、巨視的に見ますと、化学肥料の弊害は一体どうするか、これはわれわれの古い同僚で黒沢酉蔵君なんかは健土政策ということを言っておられます。土地が健康でなければ、その中から出てきました植物を食っている人間のからだも健康にはならぬ。牛などでも、土地の健康なところの牧草で育たなければほんとうのいい乳は出はしないということを言っておられたのでございますが、私はそのとおりだと思います。したがいまして、きょうは石川君などが水銀の弊害について非常に突っ込んだ質問をされまして、私ども傾聴いたしたわけでありますが、大局的に見ると、日本では化学肥料の非常な多量施用、農薬の多量使用ということによって土地全体を悪くして、ちょうど都市においては空気の公害、水の公害でその民族の健康が阻害されていると同じ意味において、日本の土地全体が荒らされてきているのではないかという感じがいたすのであります。これは小さいそれぞれの分野の専門的研究でできることでなしに、総合して民族の健康という見地からほんとうに考えなければならぬ問題だと思うのであります。これらの点について何らか総合的に考えておられるか、もしくは弊害が出てきているから施策考えなければいかぬぞという点について、すでに認めておられますれば、その点についての御答弁を願いたい。認めておられなければ、私しろうとの発言でありますけれども、大局的見地でひとつ考えていただきたいと思うのであります。  これは農林省の関係にももちろんなりますし、厚生省関係にもなりますし、それから、佐久病院関係については、農村でお医者さんの立場ですから、土地のことまでどうこうということは、そこまで気づいておられるかどうか知りませんけれども、しかし良心のある医者が研究しておりますれば、必ずそういうところに思いをいたさざるを得ないと思うのであります。そういう盲点を解決しなければ、私は民族が繁栄していきながら実は滅亡のふちへだんだんと近づいていくことになると思うのであります。できましたらば、佐久病院の先生からも、理研の関係の方からも、農林、厚生両省からも、これはほんとうなら幕僚を連れてきた大臣に言わなければならないことであり、もしくは総理大臣予算委員会で言わなければならないことでありますけれども、ひとつ御答弁を願えましたら願っておきたいと思います。
  77. 松島松翠

    ○松島参考人 たいへんむずかしい問題であると思いますが、農薬といい、肥料といい、なぜこんなに使われるようになったかという一つ原因考えてみますと、やはり農村の人手不足、省力農業ということが非常に関係しておると思います。ですから、これは現在の政府の農業構造改善事業あるいは農業のあり方と密接にぼくは関係しておると思います。ですから、こういう農薬はあぶないから使っちゃいけない、除草剤を使っちゃいけないと言いましても、農家の人はやはり人手不足だから、田の草を取るひまにやはり除草剤をまかざるを得ないわけです。ですから、やはりこれは農業全体から考えていただかないと解決がつかない問題ではないかというふうに考えます。
  78. 三宅正一

    ○三宅委員 農林省の関係もしくは厚生省関係で御答弁を得たいのですが、多肥農業で化学肥料を非常に多量に使うということが土地自体を荒らし、それから、土地から出た生産物が人間のからだに悪い影響を及ぼすということについて私は全くしろうとの、しかし農村に入っておりました者の感覚で申し上げておるのですが、そういう事実について肯定されるかどうか。それをまず第一に聞きたい。肯定されますれば、大きな方針については、きょう来ておられます一部局の関係じゃありませんので、もしお伺いするとすれば政務次官政府を代表して御答弁願おうと思いますが、そんな形式的な答弁を求めてもしかたがありませんので、求めませんけれども、私は科学者としてのそういう点についての注意を政治の上に喚起する必要があると思いますので、御答弁願えたら御答弁願いたいと思います。――答弁なければよろしゅうございます。注意を喚起しておきます。
  79. 沖本泰幸

    沖本委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は長時間貴重な御意見をいただきまして、たいへんありがとうございました。本問題の調査のためにたいへん参考になりました。厚くお礼を申し上げます。  たいへんありがとうございました。     ―――――――――――――
  80. 沖本泰幸

    沖本委員長 次に、海洋資源開発及び低温流通機構等に関する問題について質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 この前、科学技術庁長官に対しまして所信表明に対する質疑を行なったわけであります。そのときに、海洋の開発利用について質問したわけでありますが、予算委員会大臣出席なさる都合で煮詰めるところまではいかなかったわけであります。きょうは御出席を得ておりませんので、残念でございますが、副大臣ともいうべき次官が出席されておりますのでお聞きしたいと思いますが、この海洋開発の問題については、これは世界各国でも非常に注目されてきております。本年の二月の十八日に東大海洋研究所所属の新造研究船白鳳丸三千二百二十五総トンが初めての遠洋航海から帰ってきたわけであります。千島、ラバウル、ハワイ等、太平洋八十日間一万五千海里の航行であったと聞きますが、いままで太平洋にはマンガン鉱が一兆トンも埋蔵されておる、このようにいわれておったわけであります。事実、今回の調査でラバウルとハワイの中間におきまして六千メートルの海底はアスファルト道路のようにマンガンで舗装されておった。こういう事実が調査によって明らかになったわけであります。こういう点からいきましても、海洋開発は、まさに洋洋たる未来をはらんでおるのではないか、私はこのように思うわけであります。  ところで、それに対するわが国の開発状況あるいは研究状況はどうであろうか。この前の質問でも申し上げましたが、全くお寒い状態であります。たとえば、本年度予算における科学技術庁の海洋調査における予算というのは、昭和四十一年から着工しておる潜水調査船の建造に一億五千六百七十五万三千円。海洋科学技術調査として三百七十八万四千円、合計一億六千五十三万七千円、その他いろいろな研究機関もあろうかと思いますが、総額合わせても、私は約三十億ぐらいと思います。全くいまの現況を考えますと科学技術庁あるいは運輸省、水産庁、各大学の研究室、全くのばらばらなそういう行政であります。これは日本の四面海に囲まれたそういう状況から考えましても、これからはどうしても海洋開発というものに目を向けていかなければならない。こういう点において、まことにばらばら行政というものを憂うるわけであります。この点において、この行政を一元化していく考えがあるかどうか、この点を次官に対してお聞きしたいと思います。
  82. 天野光晴

    ○天野政府委員 長官の所信の表明につきまして、その補足的な質問に私が答えることはちょっと順序が逆だと思いますが、問題が問題でございますから、私の考えておる点を申し上げて御了解願えればたいへんけっこうだと思います。  ただいまお話がございましたように、現在世界の各国で完全に未開発の地点というのは海の底だけじゃないかという感じがいたします。そういう点で、これからの開発の方向は、やはり海洋開発に注ぐことが全世界の大きな流れであると考えます。そういう点で、特に日本は領土が狭い国でもありますし、今後大きくいわゆる海洋開発に力をいたすことが日本の政治の大きなポイントでなければならないというふうに私は考えております。  そういう点で、ただいま御指摘のございましたように、現在各省庁に分かれておりまして、予算額も大体三十億程度きりございませんし、通産、運輸あるいは農林等に分かれておりまして、いわゆる一元化するということがやはり将来大きな力で海洋開発をする柱であると考えております。そういう点で、おそらく世界各国とも同じような考え方で急速にスピードをあげまして海洋開発に出てきておる現状にかんがみまして、日本の現状におきましては、やはりこれを四十四年度には大きく推進をする必要があるのではないか、そういう点につきましては、各省庁に分かれておる現在のこの問題を一括して一元化してやるような方向に持っていきたいというような考え方を持っております。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、先ほども、世界各国の開発が非常に進んでいる、こういう話をさせてもらったわけでありますが、米国等におきましても非常に広い分野で調査が行なわれております。予算等においても日本とはまるでけた違いの額であります。一九六六年には海洋開発特別法案が議会を通過しまして、同法案に基づいて議会に海洋開発特別委員会が設置されました。御承知と思いますが、委員長にはハンフリー副大統領みずからが就任しておるわけであります。このように、米国をはじめとして、非常に海洋開発に積極的である。この政府の積極的な姿勢にこたえるかのように、いままで人工衛星やロケットを製作している米国の宇宙産業メーカーが海中開発に乗り出してきております。すでに米国の宇宙産業の企業上位五百社のうち三百社までは、すでに海中開発の機器分野の企業化に取り組んでいる、こういうような現況であります。ここで、先ほど次官から将来一元化を進めていく、そういうまことに積極的な発言をいただいたわけであります。米国においても、このように海洋開発特別法案、先ほど次官もおっしゃいましたように、これからは非常にビッグサイエンスとして海洋開発は見ていかなければならない。日本においても原子力開発、さらにいま問題になっております宇宙開発、私はこの三本の中に海洋開発をどうしても入れていかなければならない、このように思います。そういう点から、将来当然この海洋開発基本法案、さらには海洋開発委員会等を設置して、積極的なその推進をはかっていかなければならない、このように思うわけでありますが、次官はどういう構想をお持ちでおられますか。
  84. 天野光晴

    ○天野政府委員 近江委員も御承知のように、宇宙開発も一元化すべきであるということで、今国会に一元化を促進する委員会の設置法案が提出されております。そういう関係から、国が大きな目標に向かって施策を執行するにあたりまして、各省庁に分かれておったのではどうにもなりませんので、これをやはり一本の力強いものにして開発を進めていくというたてまえになるようになりますれば、当然基本法的なようなものも考慮の余地はあるべきだというふうに考えております。いま現在の段階では、そこまでいっておりませんし、なかなか、いわゆる官僚閥とでもいいましょうか、いわゆるセクト的な考え方からきて、一本化することも非常に困難な問題であろうかと思いますが、一元化されるという段階になりますれば、当然基本法的なものも考慮に入れて、国の大方針を決定すべきものであるというふうに私は考えております。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この海洋開発に関しまして、もう一点お聞きしておきたいのですが、今後のこの洋々たる海洋資源の開発を考えますと、結局ビッグサイエンス、科学技術の大型化、巨大化の傾向に私はなってくると思います。それについては、当然巨額の費用と高度な技術水準、大量の優秀な科学技術者が必要になってくる、そういう点におきまして、今後はわが国としても、世界のそういう趨勢におくれることなく、明確なるそういう方向づけと、そしてまた、目標、計画、責任体制というものを、いま次官が答弁されましたわけでありますが、そういう基本法なり、あるいは委員会なり、あるいはそうした一元化のもとに進めていかなければならない。さらに重要なことは、国連におきましても、広大な海洋の開発という意味で、昨年末の十二月の十八日、国連総会が、全会一致で海底の平和的利用とその資源の人類のための利用に関する決議を採択したわけであります。おそらく今秋の国連第二十三回総会においては、一つの大きなテーマとなって展開することは私は間違いないと思います。こういう点において、今後はわが国としても、さらに国際連合の関係機関、あるいはまた、国際学術会議等に積極的に参加をする、あるいは国際協力をしていく。さらに、技術輸出、輸入あるいはそうした技術交流というものを積極的にしていかなければならない。また特に日本は、東南アジア等については重点的に今後協力体制をとっていかなければならない。したがって、東南アジア諸国に対して、技術者の派遣あるいは各種技術センターの設置あるいは研究連絡、技術指導、助成補助あるいは工業品貿易の拡大をはかる必要が私は当然大事であろうと思います。そのように、国際協力をさらに私は推進していかなければならない。このように考えるわけです。この国際協力について、次官の御意見を聞きたいと思います。
  86. 天野光晴

    ○天野政府委員 現在黒潮の調査等につきましては、国際協力もして総合的にやっておるわけでございます。そういう点で海洋の問題であり、海中の問題でもあり、私は非常に不勉強でわからないのですが、領海以外の海の所有者は一体だれなのか、これは非常にむずかしい問題であろうと思いますが、いずれにしろ、各国との連絡協調をして当然やるべきものであると思いますし、そういう点では、日本より先進国のカも借りるであろうし、後進国に対しては協力もするというような体制を整えていくべきであるという考え方をいたしております。現在の状態でも国際協力あるいは交流等はやっておりますので、日本の――一元化ということは一番大きな問題だと思うのですが、一元化に伴いまして、要するに予算の増額等もできるわけでありますから、そういうのとにらみ合わせをいたしながら強力に進めてまいるべきであるというように考えております。
  87. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは海洋開発については終わりたいと思います。  次に、この大臣の所信表明の中にも「食品加工技術の近代化に関する調査等を実施してまいります。特に、かねて推進してまいりましたコールドチェーンにつきましては、いよいよこれまでの事例的実証調査の成果を関係行政機関施策に反映させ、その具体的な推進につとめてまいりたいと存じます。」このように表明されておられるわけです。この食品加工技術の近代化という問題については、保存等の問題も入っておりますし、これはわれわれの食生活になくてはならない技術であろうかと思います。また、もしもその運用を誤れば、これは人命に大きな危害も起こってくる、弊害も起こってくる、このように非常に危惧しておるわけであります。こういう点におきまして、そういう観点からこの食品加工技術の近代化という問題、それに関連した問題を質問してみたいと思います。  まず食品添加物に関する問題点でありますが、食品衛生法第六条によれば「人の健康を害う虞のない場合として厚生大臣が定める場合を除いては、」これはカッコでありますが、食品添加物は使ってはいけないと規定されておるわけです。現在三百八十種類ほどにものぼるものが厚生省指定の食品添加物としてあるわけでありますが、これはすべて人の健康をそこなうおそれがないということを確認されておる、このように了解してよろしいですか。
  88. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいまお述べがございましたように、食品添加物は厚生大臣が認めた場合でなければ使用ができないわけでございます。ただ、絶対に無害かというような意味の御質問であったかと思います。はっきり申し上げまして、使い方によりますれば、やはり毒性を持つというおそれのものはあるわけでございます。したがいまして、さような毒性のあるものにつきましては、使用の方法を制限する、あるいは使用するべき事例と申しますか、使用すべき食品を指定する、あるいはその使用量を指定するというようなことで、万々被害がないようにという配慮のもとにやむを得ず認めておる、こういうようなのが原則でございます。
  89. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのように害があるということもいま答弁されたわけでありますが、しかし一応としては人の健康に無害であるという立場に立っておられると私は思うのです。それでは、あくまで人の健康に無害であるという科学的なデータを今度の委員会でも私は提出してもらいたいと思う。それが一点。  それから無害であるというような、その実験等についてはどういう実験をやっておるのですか。
  90. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 新しく添加物が出てまいりますような場合、当然これは厚生大臣の承認を必要とするわけでございます。その際には、その申請に際しまして、とりあえずは急性毒性――短期間に摂取することによって起こる急性毒性のデータというものを提出させる。また同時に、添加物でございますから食品に使用した場合の有用性でありますとか効果、あるいはその分析法といったようなものもあわせて申請をさせまして、これを厚生大臣の諮問機関でございます食品衛生調査会、その中には添加物部会あるいは毒性部会というものが設けられておりますけれども、そこにはかりまして慎重な検討をいたすわけでございます。  しかしながら、その調査会で検討にあたりまして慢性の毒性――先ほど来非常に判定のむずかしい問題であるというようなこともございましたが、そういう慢性毒性についてさらに検討をなさるというような場合におきましては、その方法等も指示いたしまして、慢性の毒性についてのテストの結果をまたさらに提出するような指示をいたすわけでございます。この慢性毒性の問題は、御承知のとおり一般に非常に長期な動物実験等を要しますし、また、その判定も技術的にもいろいろ困難な問題があるということでございますので、あらかじめやはり急性毒性の有無によってまずふるいにかけてしまう、そのあとでさらに慎重に第二段といたしまして、必要であれば慢性毒性のデータを出す、こういう仕組みでございます。しかし、その出されましたデータは、それも外部でいろいろと行なわれて申請されるわけでございますけれども、できるだけ権威のある、たとえば国内のいろいろな研究機関というようなところが少なくとも二ヵ所以上そういうものについて証明を要する、あるいは外国の権威ある文献というものがあれば、さらにそれと国内のデータとあわせて出すというようなことで、慎重を期しておるわけでございます。しかし、最終的にこういったようなデータについてなお疑念があるということであれば、国立の衛生試験所におきましてこの毒性試験を行なうということで判定をしていこう、こういう仕組みで大体安全をはかっておるわけでございます。
  91. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまその急性あるいは慢性の話があったわけですが、事実上は、要するに急性毒性の試験のみで行なわれておるというのが現状だと私は思うのです。そこにおいて、この長期間にわたる慢性毒性の試験をやらずに指定するということは、私は非常に軽率なことだ、このように思うのです。これは事人命に関することです。そういう点でお茶を濁しているという態度について、私は非常によくないと思います。いま、世界のそういうようないろいろな調査あるいはデータ等に基づいても考慮している、こういうようなお話がありました。しかしいままで、たとえばWHO、世界保健機構あるいはFAO、国際食糧農業機構等で発ガン性食品添加物として多くの着色料、保存料、酸化防止剤等が使用不可と、このように勧告されているわけです。これらのリストに載っているもので日本がその使用を許しているものがある。あなたよく御存じのはずですが、これはどういうわけですか。その点はあなたの答弁と食い違いがある。
  92. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 FAOやWHOにおきましても、逐次この検討を重ねて毒性があるかどうかという判定を下し、だんだんに新しい知見を得まして各国に勧告をする、こういう態度でございます。  したがいまして、さような勧告がございました場合に、わが国でもやはりただいま御指摘のようなタール色素等につきましては、四十年でございますか、約十品目については削除いたしまして、現在では、その限りにおきましては、たとえばイギリスが二十六ぐらいのタール色素を認めています。あるいはスエーデンが十七、アメリカが九というような状態に対して、日本は十四というような状態でございまして、そういったような点では、ほぼ正しい姿勢のほうへ逐次進めている、こういう状況でございます。  また、ズルチン等につきましても、これも外国でも使っていない、使うべきでないというような問題がございまして、この点につきましても、四十二年に、きわめてわずかの場合に限り使用許可をいたしまして、あとは全部禁止をするというような措置をとりました。  逐次、そういうようにWHOのほうの勧告が出てまいり、それをまた日本の実情をよく検討した上で、有害と思われるものはなるべく削除する、こういう方向で進んでおるわけであります。
  93. 近江巳記夫

    ○近江委員 なるほどそういう勧告に基づいてそういう措置をなさっているという、その態度はわかりました。だけれども、それは全面的なそういう削除じゃ決してない。あなたのことばを返して言えば、要するに、わが国の試験では一応毒性が立証されていないからというような、そういう考えで、まだまだそういうような有害という勧告を受けながらも残しておるのがあるわけです。結局諸外国では毒性がある、こういう実証のデータに基づいて禁止になっている。それを、日本でそれが立証できないからといってそれを許しておくというのは、私はあまりにも無責任な態度だと思うのです。この点どうですか。
  94. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のような点は、私どもも十分配慮してまいりたいと思っているわけでございまして、必ずしも日本で害があるということが完全に証明されなければこういうものは手をつけないという態度ではございません。また、諸外国におきますデータをつかみましても、これがいわば決定的なデータであるかどうかという点については、いろいろ問題はあろうかと思います。しかしながら、いま御指摘のように、かりにこういう問題についての私どもの態度としては、いわば疑わしきを罰せずということじゃなくて、多少でも疑念があれば、それはなるべく排除するというのが基本方針でございます。  しかしながら、一面におきまして、わが国の食品のいろいろな流通でございますとか、あるいは食品全体に行き渡る問題というような関係から、どうしてもそれが最小限度なければその製品が成り立たないというような問題もやはりあるわけでございます。できればそういうようなものが早くなくせるような技術開発が生まれることを期待しておりますけれども、万々そういうものがなければその製品がどうしても成り立たないというような場合におきましては、最小限度にしぼり、最小の安全圏の中でとどめながら当分見ていく、こういうことがやむを得ない措置になっているわけでございます。
  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 指定するときに確固たるデータもなく、業者の要求に動かされてずるずると追認する、そういうルーズな行政運営は、日本の厚生省の姿の中にありありと見えるのです。ですから、世界一の食品添加物のはんらんする国になってしまった、私はこう思うのです。業者の利害と国民の生命、健康とどちら大事かということを、まずあなたにお聞きしたいと思うのです。
  96. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 もちろん申すまでもなく国民の健康が優先すべきでございます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、根拠もなく野方図に許可してきた、こういう数多くの食品添加物、これは結局諸外国ではっきり毒性ありと認められているわけですよ。また、使用禁止にもなっているわけです。たとえ日本の試験機関がそれを立証していなくても、そういう、事人命に関することであるならば、疑わしいと思われるものについては、私は使用をストップさせるべきである、そして、さらにそれを実験していって、間違いないということになってから使わせればいい。それが人体にどういう悪影響を及ぼしているかわからない。どうですか、この考えは。
  98. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 おっしゃる点はごもっともでございますけれども、私どももやはりそういう基本的な態度ですべてこういうものは臨みたいと先ほど来申し上げているわけでございます。  ただ、急性のような毒性、そういうようなものにつきましては非常に明らかにわかりやすい問題でございますけれども、この人体に対する影響というものが特に慢性にわたります場合には非常にむずかしい、ほんとうに害があるかどうかの判定がむずかしいものもあるということが一つございまして、そういった点については、多少議論の分かれ目がなお残るというものがあり得るわけであります。しかしながら、明らかにこれは――明らかと申したら言い過ぎでございますが、有害の疑いが濃いというような場合には、私どももおっしゃるとおりの姿勢でやはりこれを削除し、また変えるべき点は変えていく、こういう姿勢で臨んでいるつもりでございます。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術庁は、大臣がこのような食品加工技術の近代化ということを言いながら、こういう人体に大きな影響を及ぼしておることについての、ほんとうにそうした調査、あるいはまた、さらに無害のものに推進していく、そういうようなことについてどれだけ力を入れていますか、局長、答弁してください。
  100. 天野光晴

    ○天野政府委員 現在の段階では、厚生省の所管で国立衛生試験所でこれを検討を加えておるわけであります。私たちのほうでは、最近添加物の乱用についていろいろ問題が多くなりましたので、資源調査会において、食品添加物の諸影響に関する調査というものを現在行なっております。検討を進めておりますので、おそらくこの調査が近いうちに結論が出るのではないかという見通しでございますので、それによって改善策が打ち出されました場合においては、私どものほうでは早急に、この問題の関係省である厚生省と連絡をとりまして処置をとるようにいたしたいと考えております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 それではさらに入っていきたいと思うのですが、食品添加物として法規上使用が許されている防腐剤というものは何品目あるのですか。名前も言ってください。
  102. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 ただいまいわゆる防腐剤、保存料と称しておりますのは、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サルチル酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、それからパラオキシ安息香酸イソブチル、同じくイソプロピル、同じくエチル、同じくセカンダリブチル、同じく安息香酸系のブチル、プロピル等がございます。それからプロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、ラウリルトリメチルアンモニウムー2・4・5ートリクロルフェノキサイド、こういった種類でございます。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、防腐剤の使用基準というものはどういう方法になっているのですか。どういう方法で決定されるのですか。
  104. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 決定のしかたにつきましては、先ほど来申しましたように、急性毒性の問題、あるいはわかっておれば慢性の問題というものを考慮いたしまして、使用基準としましてはその許容量というものを指定しております。それからなお、食品の種類というものを、使われる場合には、こういう食品に限り使うというふうなこともそれぞれ検討した上で、指定をされ、制約をしているというわけでございます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 ネズミ試験をやって使用基準というものをきめていらっしゃる。このネズミ試験も、この場合急性毒性だけの試験ですよ。急性善性のテストをどうしてやらないのですか。
  106. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 動物実験につきましては、その急性毒性以外に、慢性のテストが必要であれば、それはやるというたてまえでやっておるわけでございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、たとえば着色料あるいは漂白剤、こういう他の食品添加物と相乗作用についてのテストをやらないということは、私は非常に危険だと思うのです。この点はなぜやらないのですか。
  108. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 御指摘のとおりのことを、私自身も痛感をしている問題でございまして、いままでは、率直に申し上げまして、個々の品種についての毒性というものを中心にしてイエスかノー、あるいはその基準をきめてきたというのが実態でございます。しかしながら、たくさんの添加物というものがいろいろな食品に入って、同時にからだの中に入ってくる。こういう時勢になりました上におきましては、これから私どもは単に個々の添加物の毒性というもののみならず、それを含めた、これは非常にむずかしい判定だと存じますけれども、そういう総合性のある立場というものをどうしても加味しなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。この場合にはおそらく二通りの方法が考えられるかと思います。一つはいま御指摘のように、相乗作用があるという面でお互いが悪い方向に働く場合、それからやはり化学的物質でございますので、万が一の場合にはあるいはお互いの害を打ち消すような拮抗作用というものもあるかと存じます。この点につきましては、いわゆるそういう理論的な可能性だけは私ども考えておるわけでございますが、今後はやはり御指摘のように、なるべくそういう総合的な、他の品目との関係において配慮ができるような、そういう研究調査というものを進めてまいらなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 この防腐剤の使用について、非常にこのごろ分野が広くなってきているわけです。もち、あるいはパン、みそ、これはもうよく知られたところでありますが、最近には牛乳にまで入っているのではなかろうか、こういううわさも――これはうわさです。私は確証はありません。なぜなら、三日も四日も置いておいて牛乳が腐らないというような話も聞いているわけです。これはあくまでうわさでありますが、あらゆる食品にこういうふうに野方図に使わせていいかという問題なんです。この点についてどうお考えになっていらっしゃいますか。
  110. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 まさに添加物というものは、必要やむを得ざる場合に限って限定すべきものだと私は考えております。決してあらゆるものに野方図にやるべきものではない、これが原則だと存じます。  しかしながら流通機構と申しますか、食品の動く範囲あるいは消費者のほうからのまた好みというようなものが、実は私どもの悩みになるほどに非常に拡大してまいりまして、その過程でやむを得ないというものがふえてくるという傾向にあることは、これは否定できない事実かと存じます。しかしながら原則としてはやはり必要最小限度に押えるというのがたてまえでございます。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで実際にそういう食品を加工しているそういうところの許容限度量というのが、ほとんど守られていないじゃないか、こういうことを聞くわけです。たとえばソルビル酸、これなどは非常に広く一般に使われておるわけでありますが、食肉あるいは魚肉、ソーセージ等には、法定の十三倍ぐらい使われた例もあると聞いておりますが、これについてのそういう監視体制がゼロに近い。つまり保健所のこの検査項目の中に防腐剤が入っていますか。食品工場では使いほうだいになっている、こういうことがいわれておるわけです。この点どうですか。
  112. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 食品衛生の監視体制が、現状において非常におびただしい食品のはんらんに対応いたしまして不足であるということは、私どもも痛感をいたしておるわけであります。しかしながら、こういう添加物等の検査というものにつきましては、やはり検査は随時実施をしておるわけでございます。そういうような違反があれば、これは食品衛生法の違反事項としてそれぞれ処置をしていく。ただこれが十分に行き渡って間然するところなくやれるかといいますと、非常に膨大な食品の製造量であり、またたいへんな種類でございまして、その点が完全に行き渡っているかと言われますと、間にいろいろな不適当な事例が出ておるということを私どもは認めておるわけでありまして、いまの食品衛生監視員という限られた能力あるいは地方の衛生研究所等の試験検査の能力というものにもおのずから限度がございまして、そういうものの中で、ただいま御指摘のような事態がなるべく起こらないような能率的な検査方法というものを早く打ち立てたい。ただいまそういう点からも検討を続けているような状態でございます。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 そう言いますけれども、保健所の職員では、最近の食品添加物は職員の手に負えない複雑な定量分析を必要とするわけで、手をあげているのが現状です。保健所は、実際あなたが第一線に行って聞かれたらわかると思いますけれども、そういう技術水準では検定できないような複雑なものがある。こういう検査のできないようなものを許可するのは私はおかしいと思うのです。この点どうお考えになっていらっしゃいますか。
  114. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 保健所におきますいろいろな検査の中には、御指摘のように、能力の上から非常にむずかしい問題がだんだん出ております。保健所でやれます範囲のものは保健所で検査をいたしておりますけれども、こういう化学的な成分の定量等につきましては、保健所の衛生監視員が随時現場を回ったり、一斉検査等の場合に検体収去いたしまして、そのあとでそれを県の衛生研究所において分析をする、これが大体の体制でございます。しかし、その上でなおかつ、そのデータ等について十分できないような場合には、国の衛生試験所に送付いたしましてそこで検査をする、こういうかまえでやっておるわけでございます。
  115. 近江巳記夫

    ○近江委員 結局食品衛生の行政、現場の保健所のあり方なんですが、これはちょっとはずれると思いますけれども、保健所職員仕事の中に、食品衛生法による店舗の許可事務、あるいは本来の事務でない、厚生省の外郭団体である食品衛生協会の、要するに会員募集やあるいは会費集めというような雑用があって困っている、こういうような声もあるわけです。本来の衛生監視ができない、このようにこぼしておるわけです。公務員に外郭団体の会費集めをやらせていいかどうか。また、何かというと定員が少ない、そういう逃げ口上です。こういう国民の健康に一番第一線に密着している保健所のこういうような機構で、これだけ人体に害があるといういろいろなデータがあるのですよ、そんな状態でほっておいていいのですか、これは。
  116. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 まことに保健所におきます。たとえば食品衛生監視員というものの数は全国で約五千何名という状態でございますけれども、そういう数をもってしましても、御指摘のように非常に膨大なものに対応いたしましてはなお不十分という組織事情は、十分私どもも認めておるのでございます。ただ、いま御指摘のように、保健所の食品衛生監視員が、よけいな外郭団体の仕事をしているというような事実があるといたしましたら、私どものほうからそういうお願いした覚えはないと思いますけれども、十分そういった点は私どもも取り締まってまいりたいと思います。  ただ、非常に数が限られ、かつ、先ほど来御指摘のように、これでやれるかと思われるようなむずかしいそういう試験検査というものの段階にも入っております。片一方におきましては、すでに都道府県でもやっておりますように、そういう監視員の能率を高める意味の、たとえば衛生検査車というような車をもって機動的に動いて回るというようなことで能率をあげましたり、また、先ほど来、私からも申し上げておりましたように、これだけ膨大なものに対応いたしまして、国民がどこかでチェックされる――先ほど来御指摘のように全然知らない顔で通っているじゃないかという御不満に対しまして、御不満を除くという意味において、限られたものを何とか有効に組織的に全国一体の網といたしましてやっていく、そのやり方をいま検討しておる段階でございます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 お聞きしますけれども、さらに防腐剤の中でサリチル酸というのは非常に有毒の薬物である。世界で日本だけがこれを許可しているのです。この理由は何ですか。
  118. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 サリチル酸をいま日本だけが認めておりますのは、実は日本酒というものがあるからでございます。日本でも日本酒以外にはこのサリチル酸は認めておりません。これは歴史的にかなり古い、戦前、もっと明治のころからどうも開発されたらしいのでございますが、そういう日本酒の腐敗を防ぐという意味においてこれにかわるべきものがまだないというので、やむを得ず日本独特のものになっておりますのは、日本酒というものがあるために残ったような次第でございます。何とか御指摘のようにこのサリチル酸にかわるようなものが清酒に保存剤として生まれますことを私どもは非常に期待をしておるわけでございます。日本独特だといわれるのにはさような背景がございます。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 サリチル酸で肝臓障害が起きるということはみなよく知っておられると思いますけれども、酒一・八リットル中に五百ミリグラム、あなたよく御存じと思いますが、全国では三百トンもの大量のサリチル酸が使用されている。たいへんな問題です。たしか明治の前期にサリチル酸というものが許可になって以来そのまま使われている。もっと毒性の少ない防腐剤をなぜ開発しないか、局長に対してお聞きします。それから科学技術庁に対して私は聞きます。両者から答えてください。
  120. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 現在一リットルの中に〇・二五グラムというような基準で、それを許容限度といたしまして認めております。なぜできなかったかと御指摘いただきますと、全く私自身はそういう感じがいたすわけでございまして、従来からこの問題は識者の間でもいろいろと議論され、何とかならぬのかといわれておりながら、各方面での御研究もあったと存じますけれども、どうしても長期間にわたってそういうような酒の保存に適したものが出てこない。実態がそういう結果になっておるようなことでございます。私ども決してこれを無関心に見過ごしておるわけじゃございません。何とかこれにかわるものが出てほしいという念願を持って従来からやっておるわけでございます。
  121. 鈴木春夫

    鈴木(春)政府委員 科学技術庁といたしまして、こういった重要問題、そういった問題についていろいろ調査しているわけでございまして、今回もこの食品添加物の問題を取り上げておるのもそういった意味でございます。こういうところから、そういった重要問題についてどういうふうに今後検討していかなければならぬかというような問題を十分われわれとして詰めた上で、その対策を打ち出していきたい、こういうふうに考えております。
  122. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に北洋漁業の魚類の鮮度保持のためにクロルテトラサイクリン、これは抗生物質ですよ、これを食品の添加物として使用を許可している。こういうような危険は薬物をなぜ許しているのですか。両方から答えてください。
  123. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 これはかなり前に食品衛生調査会で議論があった末に結論が出たものだと存じます。もし私の記憶に間違いがなければ、テトラサイクリンを使いますのも、直接魚の中に浸透しないというような形で使うという条件のもとに認められたようでございます。
  124. 近江巳記夫

    ○近江委員 サケ等におきましても、さしみのかわりに食べたり、タラコなんかもなまで食べたりするのですよ。そういうような点において、この点は今後ほんとうに真剣に取っ組んでもらわないと、これはほんとに人命に関係があるわけです。それからまた、食品衛生法の第七条には、食品は抗生物質を含有してはならない、このようにあるのです。この条項に違反している。特に塩もの、この場合には、先ほど私申し上げたように加熱せず食べるところの可能性というものが非常に多いわけです。こういう点からして、これは私は禁止すべきだと思うのですけれども、どうですか。今度は厚生省科学技術庁考え方を明らかにしてください。
  125. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 食品衛生法の第七条は成分等の基準をきめるという形のものでございまして、添加物として認められました場合には、その基準なり使用方法なり、こういったものを第七条で規定をいたしまして、それが脱線した使い方あるいは脱線した量にならないというようなことを目的として規制されておるわけでございます。ただいまのテトラサイクリンは私どものほうで使わせております抗生物質でございますが、これはただいま申しましたような条件の中特定の魚の場合に用いるということでございます。ただ、私どもやはり先ほど来申し上げましたように、抗生物質というものがいわば人体の治療薬として使われておる薬でありましても、いろいろな菌の耐性問題でありますとか自然の抵抗力の問題でありますとかいう問題がかなり議論されたはずでございまして、そういう観点からは、やはり最初に申し上げましたように、できるだけそういう天然のものにそういうものを使わないという態度で処理をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  126. 鈴木春夫

    鈴木(春)政府委員 ただいまの御質問の件につきましては、直接的には厚生省の問題でございますのでそちらのほうでいろいろ処置していただくことがあるかと思いますが、科学技術庁といたしましても、もっと広い面からいま検討を進めているわけでございます。どういう点かと申し上げますと、こういったものを使わないでもいい、そういったような方法、こういったものについてもやはり研究を進めるべきではないか。というのは、たとえば冷凍するというようなことで、そういうものを使わぬで済むという道があれば、それにこしたことはないわけでございますので、広くそういった面でひとつ考えていきたいというように考えております。  なお、いまの抗生物質の件につきましては、国際規格としまして、これの使用の可否についてもいま検討されておるように伺っております。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど魚を言いましたけれども、野菜にも、たとえばレタスとかミツバあるいはキャベツ等にも抗生物質のヒトマイシンが鮮度保持のためと称して使用されていることが発見されている。これは昭和三十一年に発見されている事実があるわけです。これはストレプトマイシン等を含んだ農薬の一種ですよ。このような法違反の行為をほっておいていいんですか。先ほど科学技術庁の資源局長がおっしゃいまして、直接には厚生省がやっているということですけれども、これは科学技術庁も重要なテーマとして取り上げているのですよ。そんな、あなた無責任な、だんだん答弁できなくなってきたら厚生省です。そんな無責任な態度はやめてください。科学技術庁として重点項目として取り上げている、こういう問題は。こういうような状態でほっておいていいんですか、厚生省
  128. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 私、ヒトマイシンが野菜に使われているということは実は承知していなかったわけでございます。もしそれが明らかに使用されておるとすれば、食品衛生法の違反といたしまして措置をしてまいりたいと思います。十分調査をしてみたいと存じます。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのことについて、それじゃたとえば抜き打ち検査をやるとか、そういうようなあなたの考えがあるのですか。
  130. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 必要がございましたら抜き打ち検査、その他一斉検査、いろいろな点で手段を通じまして実施は可能でございます。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 さらに、ナスやトマト等の出荷前に農薬のホリドール、先ほども農薬の問題が非常にあげられておりましたが、あるいはエンドリン、これは有機塩素剤でありますが、これをかけると非常につやがよくなる、こういうようなことも行なわれている。どういうようにこれの取り締まりをやっているんですか。
  132. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 従来残留農薬の問題につきましては、どの程度残っておればいいかといういわゆる許容限度というものがきめられていなかったわけであります。これは三十九年以来厚生省では農林省と共同いたしまして、いろいろな食品の残留の実態をまず洗い、また同時に、その間におきましてWHOやFAOの勧告が出てきたこと等も勘案いたしまして、ごく近い機会にリンゴ、ブドウ、キュウリ、トマト、まず四品目でありますが、この四品目に対する砒素、鉛、ガンマBHC、DDT、パラチオン、この五つの農薬というものの種類につきましては、それぞれの最終の残留限度というものをきめる手はずになっております。たぶん私どもがこちらへ参っているときに食品衛生調査会に諮問いたしました答えが得られているかと存じますが、それに基づきまして早急な告示措置をとりたい。  それから、これは、単に私どもの厚生省だけが最終のそういう許容限度をきめただけでは実際は違反食品が山のように出てまいるわけでございまして、したがいまして、この問題は農林省とも十分打ち合わせを続けてまいりまして、かような限度を最終的に越さないような農林側の散布基準あるいは農薬を使用する時期、かけ方、かようなものまでこまかく実は御指導いただいて、それによってこの許容限度を越さないようにしよう、まず手始めに、いま申し上げたこの部門を近いうちに告示をする段取りになっております。  なお、その他の食品につきましても、ただいま実態の調査をずっと続けておるわけでございますが、逐次こういうような食品の実態と、それからそれに対応しますところの規制の実際上の散布上の技術というものとがマッチする段階で次々にやはりかような限度をきめてまいりたいと思っておるわけでございまして、ようやく、御指摘いただきましたけれども、そこまで到達をしたというわけでございます。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 農林省は全然お答えになりませんけれども、私が名前を言わなかったのが悪いのですが、農林省としてはどう考えているのですか、それからそのあと科学技術庁答えてください。
  134. 安尾俊

    ○安尾説明員 ただいま厚生省の環境衛生局長から御説明がございましたが、農林省といたしましても、厚生省が逐次おきめになります許容量に対応しまして、これに違反しないような農薬の安全使用基準をきめて、将来許容量のきまったものにつきましては、逐次それに違反しないような指導の徹底をはかりたい、こう考えております。
  135. 天野光晴

    ○天野政府委員 私たちのほうでは、先ほど答弁申し上げたわけでありますが、実質的には現在は厚生省所管あるいは農林省所管でやっております。それですから、許可あるいは許可を逸脱したものの処罰等の問題はその両省でやっておるわけであります。それにしても最近非常に食品添加物の問題が大きくなってまいりましたので、私のほうでも今後の最善策としてどういう方法をとるべきかということで、先ほども申し上げましたが、資源調査会でこの問題を検討中でございまして、近日中にその結論が出る見通しでございますので、その結論にのっとりまして、関係各省と連絡協調の上この問題を処置していくという姿勢を持って前向きでやっているわけでありますから、その点ひとつ誤解のないように御了解願いたいと思います。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんからあとできるだけ簡潔にしますが、さらにパラチオン、これは有機燐剤です。これはホウレンソウとかキャベツ等の鮮度保持のために使われて出荷されている。これも同じ問題です。さらにAF2、これはとうふの殺菌剤の成分ですね。これについて私はあまり知りませんから、その毒性あるいはその成分、これについて簡潔に答えてください。
  137. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 いまの御指摘のものは、ちょっとこちらで調べて後ほどお答えいたします。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 わからないならしかたありませんが、当然所管として、人体に影響があるわけですから、よくそういうことは掌握しておいていただきたいと思います。  それから、科学技術庁としては、コールドチェーン、これも非常に研究開発をされている、こういうシステムがどんどんと普及しているわけです。そういう点において、このような危険な防腐剤あるいは食品添加物、これは私は大幅に削っていかなければならぬ、このように思っているわけです。それもやらずに、言うなら業者本位の甘い、そういう使用基準すら大幅に破っていることがわかりながら使用さしている。私はほんとうにもってのほかだと思うのです。今後徹底的なそういう取り締まりをやっていただきたい。  まとめて最後に答弁をいただきますが、私はなぜこういう問題を出したか、結局現在認められているものの毒性の洗い直しを根本的にやらなければならない。その結論が出るまでは危険と思われるものの使用をストップさせる、そういう緊急措置をとるべきである、私はこのように思うのです。この点についてどうですか、関係各省、三省から答えてください。
  139. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 第一点の、取り締まりを厳重にやれという点につきましては、私どもも、先ほど来申し上げましたように、最大の能率をあげていきたい。それからそれも単に行き当たりばったりというものじゃなくて、単に一つの県というものじゃなく、日本全国を一つの網の目にいたしまして、製造あるいは生産、消費という、その流れの中で有機的な連携を各県に持たせながら、日本全体としての取り締まりというものがより適切にいくように、これに対処してまいりたいと思います。  それから、ただいま御指摘のように、過去に認めましたからといって、それをそのまま存置するということは、決してこれは妥当ではないと存じます。いままでもさような形で過去に認めておりましたものについても、これは逐次落とすものは落とすという態度をとってまいりましたし、またさらに制限するものは制限するという措置もとってきているわけでございます。そういうことで、これはいろいろな学問の進歩あるいは新しい知見の進歩というものもあるわけでございます。決して過去に認めたから永久に既得権であるという態度ではなくて、その時々刻々に応じて適正な処置をしてまいりたい、かような態度でまいりたいと存じておるわけでございます。  なお、文献その他等から見ましても、必ずしも明らかでない毒性というものもあるかと存じますけれども、たとえば、先ほど御指摘のようなサリチル酸等につきましても、ただいま国の機関でも慢性の毒性試験を施行いたしておるようなわけでございます。そういう態度をもちまして、逐次過去のものについても整理を進めてまいりたいと思っております。
  140. 安尾俊

    ○安尾説明員 農薬につきましては、低毒性農薬の開発、それから普及の推進をはかりますとともに、厚生省のほうとも緊密な連絡をとりましてより安全な使用を進めていきたい、こう考えております。
  141. 鈴木春夫

    鈴木(春)政府委員 科学技術庁といたしましては、こういった関係の実態をいま調査しております。そういった面で十分その内容を詰めまして、今後それに対応した措置をとっていく方法を打ち出していきたいと思っております。それにいたしましても、実際害毒があるというような実態がありますれば、できるだけ早くそれに対応すべきである、こういうふうに考えます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 ではこれで終わりますが、要するに私がこの問題を取り上げたのは、ほんとうに人間のとうとい生命に大きな危害を及ぼすものである。確かにただいまは、私も海洋開発を取り上げましたが、ビッグサイエンスの時代です。しかしそれは全部人間があって開発される。その生命をいいかげんな状態でほっておくということについては私は承知ができない。これは小さい問題と考える人もあるでしょう。私は、そういう考え方はあってはならぬと思う。科学技術庁としても、食品加工技術の近代化ということはうたわれているわけです。うたった以上は真剣な取り組みをやってもらいたい、私はそう思うのです。それに対して、科学技術庁の次官に最後の締めくくりをお願いしたいと思います。
  143. 天野光晴

    ○天野政府委員 先ほども申し上げたのですが、科学技術庁のとるべき態度としては、現在のそうした問題を今後よりよく持っていくためにどう措置するかということが基本的な姿勢だと考えております。そういう点で、もうすでに科学技術庁はこれを取り上げまして、先ほど来申し上げましたように、資源調査会で検討して近日中に必ずこの結論が出る予定でございますので、その出ました結論によりまして、各省庁と連絡を密にいたしまして、御期待に沿えるように努力を続けてまいりたいと考えております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 以上で終わります。
  145. 沖本泰幸

    沖本委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十三分散会