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1968-05-15 第58回国会 衆議院 沖縄及び北方問題等に関する特別委員会地方行政委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)     午後一時十一分開議  出席委員   沖繩及び北方問題等に関する特別委員会    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 小渕 恵三君 理事 本名  武君    理事 川崎 寛治君 理事 美濃 政市君       大村 襄治君    箕輪  登君       猪俣 浩三君    中谷 鉄也君       依田 圭五君    吉田 泰造君       斎藤  実君  地方行政委員会    委員長 吉川 久衛君    理事 大石 八治君 理事 細谷 治嘉君    理事 山口 鶴男君 理事 折小野良一君       青木 正久君    永山 忠則君       太田 一夫君    河上 民雄君       依田 圭五君    松本 善明君  出席国務大臣         農 林 大 臣 西村 直己君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  出席政府委員         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         法務省民事局長 新谷 正夫君         厚生省国立公園         局長      網野  智君         厚生省援護局長 実本 博次君         農林省農地局長 和田 正明君         水産庁長官   久宗  高君         運輸省港湾局長 宮崎 茂一君         自治政務次官  細田 吉藏君         自治省行政局長 長野 士郎君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   丸山  昂君         文部省初等中等         教育局審議官  佐藤  薫君         文部省初等中等         教育局地方課長 別府  哲君         文部省管理局教         育施設部助成課         長       宮地 貫一君         農林省農地局管         理部長     中野 和仁君         農林省農地局管         理部農地課長  小山 義夫君         自治省行政局行         政課長     林  忠雄君         自治省行政局振         興課長     遠藤 文夫君         自治省財政局財         政課長     首藤  堯君         参  考  人         (東京都知事) 美濃部亮吉君         参  考  人         (旧小笠原諸島         在住者)    藤田 鳳全君         参  考  人         (東京小笠原         対策本部幹事) 日向 美幸君         参  考  人         (旧小笠原諸島         在住者)    平野 哲夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置  等に関する法律案内閣提出第一〇四号)      ————◇—————   〔床次沖繩及び北方問題等に関する特別委員長委員長席に着く〕
  2. 床次徳二

    床次委員長 沖縄及び北方問題等に関する特別委員会地方行政委員会連合審査会を開会いたします。  先例により、私が委員長の職務を行ないます。  小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案を議題といたします。  本案趣旨につきましては、すでに本会議においてその説明を聴取したことでもありますので、お手元に配付いたしました印刷物をもって趣旨説明にかえ、直ちに審査に入りますので御了承願います。  本日は、本案審査のため、参考人として、東京都知事小笠原対策本部長美濃部亮吉君、東京小笠原対策本部幹事日向美幸君、旧小笠原諸島在住者藤田鳳全君、同じく旧小笠原諸島在住者平野哲夫君、以上四人の諸君に御出席を願っております。  この際参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ御出席をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。さきに御通知申し上げましたとおり、本委員会におい審査中の小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案につきまして御意見を拝聴し、審査参考にいたしたいと存じます。つきましては、忌憚のない御意見の御開陳を切にお願い申し上げます。  なお、議事の進め方は、最初参考人お一人おおむね十分程度の御意見開陳を願い、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じますが、美濃部参考人には、所用のため午後一時四十五分に御退席になりますので、まず美濃部参考人に御意見開陳を願い、質疑があれば御答弁を願います。  美濃部参考人は先般現地を視察され、直ちにじかに島民要望等も承っておられることと存じますので、この際あわせて御意見開陳を願えれば幸甚に存じます。美濃部参考人にお願いします。
  3. 美濃部亮吉

    美濃部参考人 私、美濃部でございます。小笠原返還につきましては、政府及び国会の御協力を得まして、心から感謝いたしますとともに、お礼を申し上げる次第でございます。小笠原返還につきまして、私一応現地を見る必要がございましたので、九日と十日と行ってまいりました。そのとき島民方々とも二時間くらいお話し合いをいたしまして、いろいろのことを感じてまいりましたので、そういうことをもあわせてお話し申し上げたいと思います。  小笠原返還いたしますれば、東京都に帰属するわけでございます。しかしながら、ここでは国と都と、それぞれ法律によってやるべきことがきめられておりますので、おのおの分担いたして開発を進めると同時に、国と都との間に非常に密接な協力関係が樹立されなければ、小笠原開発も円滑には進むまいと思いまして、都と国との間の協力関係を円満にかつ密接にしていきたいと望んでおります。  その場合に、都の側といたしましては、この小笠原の問題に対処いたします姿勢といたしましては、第一には、ここを平和の島としたい。小笠原戦争によって島民方々が非常な被害を受けておるのでございますから、それが日本の領土に返還された上は、戦争においのしない平和の島として開発していきたい、そういうふうに存じます。  さらに第二といたしましては、従来やはり東京都の一部であったわけでございますから、それを踏襲いたしまして、東京都に帰属すべき島であると考え、ここにおいても地方自治原則を固く守っていきたい、そう考えております。  第三に、島民がどのくらいここに帰ってこられるか、まだ詳細にはわかりませんけれども、おそらくは三千人から五千人、小笠原に帰ってこられると思いますが、旧島民方々はいままで非常な御苦労をなすっておられるので、何とかして住みやすい、安定した生活を送ることができるようにして差し上げたい、そう存じております。  そういうふうな基本的な姿勢小笠原問題に対処してまいりたいと思っておりますが、このたび現地を、わずか二日でございますが、それも上陸いたしましたのは硫黄島と小笠原父島でございまして、詳細なことはわかりませんし、それから東京都の派遣した調査団はけさ帰ってこられたばかりでございまして、この調査団報告もまだ承っておりませんので、非常に詳細なことは申せませんけれども、あちらに参りました感じとしては、小笠原開発は非常にむずかしいということを痛感いたしました。全島——父島硫黄島も、おそらくは母島その他の島も、私たちの背の一倍半ぐらいございますギンネムと申しましょうか、ギンネムの木でおおわれて、島全体がジャングル化しております。これを農業、農地に適するように変革するには相当の労力が要るのではないだろうか、そういうふうに感じております。  それで小笠原の問題を措置してまいりますためには、二つの問題があるのではないだろうかと考えます。一つは、現在約二百人の方々が住んでおられます。これはヨーロッパ系と申しましょうか、欧米糸方々でございます。そしてこの方々返還という事態によって起こるいろいろな変化に対して非常な不安の念を持っておられます。それは大きく申しますれば、いままでのような収入が得られるだろうか、それから、生活物資その他がいままでのように供給されるであろうか、そうして、お子さん方教育、それから学校を終わった後の就職、そういう問題がどうなるだろうかというようなことについて、非常な不安感を持っておられるようでございました。特に親として子供教育の問題が非常に不安の種になっておりまして、二時間ほどお話し合いをしましたうち大部分が、子供教育がどうなるんだ、そうして、日本学校を卒業した後にはたして就職できるだろうか、そういう子供の将来に対する問題が、二時間の大部分を占めていたという状態でございます。  現在のところ一世帯当たり平均収入が約九万円でございます。もちろん高いのと低いのといろいろでございますが、その差もそれほど大きくはございません。月額一世帯当たり収入九万円と申しますれば、内地と申しますか、本土の平均所得よりもむしろ高い状況でございます。そうして毎日の生活物資島民方々がその中から買っておられますけれども、電気水道教育医療というふうなものは、若干、電気水道料金を出しておられますけれども、まあほとんどただも同然でございます。そういう状況島民現地にいまおられる方々生活を、返還を差しはさんでどういうふうにしたらば平穏に引き継いでいくことができるか、これは相当むずかしい重要な問題である。  ことにいままで英語教育を受けてきたいまの教育問題、そうして、約二十人の方々グアムハイスクールに通っておられる、この二十人のグアムハイスクールにいる人々をどうするか、なかなか頭の痛い問題であるというふうに思います。  それからもう一つの問題、つまり返還の引き継ぎ、そしていま住んでおられまする現地人にそれほど大きい変化を与えないでうまく引き継ぐという問題が一つ。それからもう一つは、三千人ないし五千人前後小笠原に帰ってこられる、そういう方々に安定した生活を確保するためにはどうしたらいいだろうか。これは、言うまでもなく、小笠原におい産業を起こすことが何よりも必要でございますが、この三千人ないし五千人の方方の生活を維持していけるような産業をどうやって起こしていくか、これはなかなか重大問題でございますので、調査団報告あるいはその後の引き続いて行なわれるであろう調査を基礎にいたしまして、慎重に検討した計画を立てて、その計画に従ってやっていく、そういうふうにしていかなければならないのではないだろうかと思います。  それと関連いたしまして、目先産業としてすぐにでも相当盛んになり得る要素を持っておりますのは漁業でございます。魚類は非常に豊富でございます。しかしながら、ここに底びき網のような大量捕獲の近代的な漁具を持った船団と申しますかが外から入ってまいりますと、これはいかに現在魚類が豊富であっても、二、三年たてば底をついてしまうでしょう。それをどういうふうにして防ぐかという問題であるとか、とにかく小笠原の島々は日本においても有数の風光明媚なところであると存じますが、そこに観光資本が無秩序に入り込んで荒らされてしまってはたいへんである。そこでそういう観光資本の無秩序の侵入を防ぐためには、国立公園国定公園か、そういう措置を講じなければならないと思います。これを平和な島として、また一千万都民のレクリエーションの地として発達させていくためには、観光資本の無秩序な乱入を防がなければいけない、そうも思っております。  このように、取り組まなければならない問題は山積しておりますし、その解決もたいへんにむずかしいし、またそれに必要な資金というものもばく大にかかるであろうと思います。もちろん都といたしましてもできるだけのことはいたしたいと思いますが、ことに資金の面におきましては都の力をはるかに越えた巨額な資金が必要であると思われますので、小笠原が占領されていたということはわが国全体の責任でございますので、国といたしましても、資金をはじめとして最大限度の御協力を賜わりたい、そういうふうに考えております。  私の意見を述べます時間は若干過ぎておりますので、もし御質問がございましたならばお答えすることにいたしまして、私の話をこれで一応終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 床次徳二

    床次委員長 美濃部参考人に対する質疑の申し出がありますので、これを許します。依田圭五君。
  5. 依田圭五

    依田委員 簡単に知事に、いま法案を審議しておる最中でございまして、その立場から少しお聞きいたしたいと思います。  知事は、昨年の十一月にこの問題が大体輪郭が出てまいりましてから、いわゆる小笠原三つ原則のようなことを新聞紙上で御発表になっておりまして、その一つは平和な島、その一つ行政主体東京都でやってもらいたい、その一つ事業実施東京都で、国費の負担をひとつ大幅に援助してもらいたいようなことを言われておられました。その後、知事御自身が島に行かれ、また暫定法並びに協定がだんだんに骨格をあらわしてまいりまして、実際にはもうこの両三日のうちにこの問題が決定を見る段階にまいっておるわけであります。いまの状態の中で、知事は、小笠原諸島開発の基本的な理念におきまして、従来と同じようなやはり考え方を堅持といいますか、お考えを変えずに、その理想に向かっておいでになる基本的な姿勢においでになるかどうか。いま安保条約下におきまして島は返還されるわけであります。平和の島といいましても、一つの制約が本法案の中にあるわけであります。  また、行政主体におきましても、自治大臣の同意を必要とするような内容がございます。この点につきまして、それらをあわせて御意見を聞きたいと思います。  もう一点は復興計画でありますが、復興法が出てまいりますので、これに対する知事の御意見を聞きたいと思います。  もう一つは、知事さんは以前から物価美濃部さんといわれておられましたが、実はいまお話を聞きますと、九万円くらいの給料を取っておるというお話でありますが、これはドルを換算をして日本の貨幣で九万円であって、もしここで現地の人を採用いたしますと、これは東京都庁で採用いたしましても、小笠原支庁と申しますか、これは地方公務員法のベースでいくよりしかたがないのでありまして、とてもいま九万円なんというお金を払う手段、方法はないわけであります。  また、肉がグアムから来ておるのと内地のいまの肉の値段一つ例にとりましても、倍以上になっております。これらを含めて、生活物価の問題を、これから現在住んでおる方々並びにこれから島にお帰りになるであろうというたくさんの人々も含めまして、どういうように処置なさるのか、聞きたいと思います。また、政府に要請なさるお気持ちがあれば、その点もあわせてお聞きしたいと思います。  また、教育であります。それは現在おられる方のことにつきましてはいま知事お話しになりましたが、これから何千人が帰るわけであります。それらの方々子弟について、一体都は国とどのような相談をいたしまして処置をなさるのか、教育問題を取り上げていただきたいと思います。  最後に医療でありますが、これは東京都におきましても無医村の解消はなかなか困難な問題でありまして、公的医療機関を、審議いたしまして献策をいたしましても、都の財政の中ではなかなかできない。今回伊豆七島の無医村の問題の解決すらなかなか思うにまかせない状態の中で、二千キロをこえます、それから非常にこれからたくさん渡っていく人も最初は重労働せざるを得ないと思います。それらの人々医療問題について、あわせてお医者さんの派遣をも具体的に含めて御意見を聞きたいと思います。  以上でございます。
  6. 美濃部亮吉

    美濃部参考人 お答えいたします。  最初の、基本的な姿勢と申しますか、理念と申しますか、それは前と全然変わっておりません。しかしながら、東京都に帰属するということは、おかげさまでそのとおり実行されましたので、先ほども申し上げましたように、今後の問題といたしましては、地方自治原則を守っていきたい。しかし同時に国との協力はその限度においてできるだけ密接にしていきたい。それから平和の島としたいということは全然前と変わりはございません。そうしてさらにもう一つ先ほども申し上げましたが、何とかして帰ってこられる島民皆さま方生活の安定をはかりたい、この三つ小笠原問題に対処する場合の私の基本的な原則であると申し上げてもよろしいかと思います。  それから復興計画でございますが、私は、小笠原に対する問題がうまく解決されるかされないかということは、一にかかって復興計画が実情に即した、そうしてほんとうに慎重に検討された計画であるかどうかということにかかわっているのではないかと思います。いまのところまだほんとう計画を立てるに必要な資料が十分にそろっておりません。今日帰られました調査団報告あるいは現地で調べましたいろいろの状況、そういうものを勘案して、国とも協力しながらほんとう計画を立ててまいりたいというふうに思います。  それから生活問題でございますが、これはもちろん二つの問題がございまして、いま現地にいる方々の問題と新しく帰島される方々の問題と二つございます。それで、現地におられる方々は、その就職口はほとんど全部が国あるいは都の仕事をすることになり、何らかの形において国なり都なりの役人ということになるだろうと存じます。そうすれば法律の規定に従った俸給を得なければならないことはもちろんでございますけれども、僻地手当と申しましょうか、そういう手当が約倍くらいつき得るのではないかと思います。そうしますと、平均九万円を維持するということはできませんけれども、そうしてまた若干それが減るということは皆さん覚悟をしておられるようでございますが、平均六万円から七万円のところに押えることはできるのではないかと思うのです。しかし、その場合に、もう一つ非常にむずかしい問題がありますのは、八丈島をはじめとする伊豆七島の島民生活水準との間にあまり大きい格差ができる、そうして伊豆七島の島民が非常に不平に思う、そういう状況をかもし出してはいけないので、そこが一種の二律背反的な関係にあるので、その点は慎重に考慮をしなければなるまい、そう思っております。  それで、それとにらみ合わせて、生活の問題といたしましては、実際にはいろんなむずかしい問題がございます。つまり生活物資をどういうふうにして輸送するか、その価格はどういうふうにするか、向こう価格を相当詳しく調べましたところ、確かに牛肉内地価格に比べまして非常に向こうは半値くらい安くなっております。しかしながら、その他の商品の価格内地価格とそれほど変わりはございません。それで物資はたいへんに不足しております。それですから、牛肉値段をどうするか、これはオーストラリア、ニュージーランド等から冷凍肉を輸入することによりまして、若干はどうしても高くなりますけれども、それほど高くしないで済むのではないだろうか。あるいはマトンというふうな安い肉を送るという手もあるし、この点は慎重に考えたいと思っております。  ただ、問題は水道電気でございまして、これはいままでほとんど無料に近い低い料金で供給されております。そして水道現地の二百人とそれからアメリカ軍の五十人と、二百五十人一ばい、一ばいでございますから、島の人口が急激にふえますと、水道は何とかしないと水が不足するという問題がございます。まあ電気のほうは、アメリカ発電機をそのまま受け継ぎますればまずまずいくだろうと思います。  それから、教育の問題は非常にむずかしいので、しばらくの間は英語で教えなければいけないので、英語日本語を教えるような能力のある先生を求めることができるかどうかという問題。それからこちらから帰島をされる方々子弟教育、これは簡単と言っては悪いですけれども、建物を建てて、そうして先生を送れば、小学、中学、それから高等学校は建てなければならないと思いますけれども、何とかやれるのではないだろうか。日本語の読み書きができない現地方々子弟教育をどうするかということが、たいへんにむずかしい問題だと思っております。  それから医療も、いまお話しのとおり、小笠原に行くお医者さんがいるかどうか。また手術その他の応急手当てを必要とするような病人が出たときにはどうするか。いままではグアム島に送って手術その他をやっておりましたが、これからは自衛隊の飛行機などをお借りして内地に送るという以外に方法はない。しかし医者は何とかして探して常駐させなければなるまいと思っております。  その他、内地との間の定期航路の問題。それから現在の飛行場は五百メートルくらいでどうにもなりませんが、父島飛行場を拡張することはほとんど不可能に近い状態でありますので、この飛行場をどういうふうにして七百メートルか千メートルの飛行場をつくるのか、そういう問題もございます。  それから、先ほど申し述べるのを忘れましたが、硫黄島にはまだ太平洋戦争のときの遺骨がたくさん残っております。と同時に不発弾がジャングルの中にごろごろしております。そしてその遺骨はそのころ掘りましたざんごうの中に埋まっております。そのざんごうはアメリカ軍の手によって埋められてしまっておりますので、この遺骨をできるだけ早く内地に持って帰って御遺族の方々にお返ししたいと思うのでございますが、いまの不発弾の問題、それから地下に埋まっているのをどういうふうにして探し出すか。この硫黄島の遺骨の問題も決して容易な問題ではないと思っております。
  7. 床次徳二

    床次委員長 松本善明君。  知事は短時間でお帰りになりますが、あと東京都におきましては行政部長がおられますから、後刻御質疑を願いたいと思います。
  8. 松本善明

    松本(善)委員 知事構想もお伺いしましたし、時間のこともありますので、大きな考え方について二つお聞きしたいと思います。  一つは、この小笠原が二十三年間日本から離れておって返ることになったのはきわめて当然のことでありますが、大きくいえば、これはやはり戦争の結果である。これは日本民族にとっても、そういう意味で再び同じようなあやまちをおかさないという点で、そういう点ではっきり心にとめておかなければならない問題だと思います。知事は施策の中にもそういう点を生かされるお考えがあるかどうかということが一つ。  それからもう一つは、これから帰る三千人ないし五千人の人たち、これはもちろんそういう意味での戦争犠牲者であると思います。この戦争犠牲を受けながらいまなお苦しんでおる人もあると思います。そういう人たちの帰島に関しましては、特別の配慮をしなければならないと思います。そういう二点につきまして、知事考え方構想お話しいただければと思います。
  9. 美濃部亮吉

    美濃部参考人 最初の御質問に対しては、私も全くそのとおりでございます。そうして、それにこたえますためには、何にもまして平和な島として、火薬のにおいのしない島として、これを開発していきたい。そしてまた、いま申し上げました硫黄島の遺骨をできるだけ早く内地に持って帰るようにしたい。しかし、何よりも大切なのは、平和の島として開発していくことである。そのことによってわれわれ全部が背負っております戦争に対する責任感を十分果たしていきたい、そう考えております。  それから、まだ具体的にどういうふうにするかということはございませんけれども、旧島民の方方の帰還に際しましては、最善の、最大の便宜を与えたい、そう考えております。
  10. 床次徳二

    床次委員長 美濃部参考人には貴重な御意見の御開陳を賜わりまして、厚くお礼を申し上げます。     —————————————
  11. 床次徳二

    床次委員長 次に、藤田参考人意見開陳をお願いします。
  12. 藤田鳳全

    藤田参考人 陳述に先立ちまして、一言感謝のことばを申し上げたいと存じます。  強制疎開以来二十三年もの長い間、帰島も許されなかった小笠原島民が日夜小笠原のことを夢みて、いつ帰れるか、帰島、帰島でもって過ごしてまいりました。このたび施政権の返還になりましたことは、これは全く小笠原島民にとりましては、ことばをもって表現もできないほどの喜びでございまして、これもひとえに国会、政府並びに東京都のたゆみなき長い間の御尽力のたまものと存じまして、まことに感謝感激のほかはございません。ここに旧島民を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げる次第でございます。  さて、そこで御審議の小笠原諸島復帰に伴う暫定措置法の問題でございますが、私どもの考えを率直に申し上げさせていただきたいと思うのであります。  この法律は、旧島民ができるだけすみやかに帰島し、そして生活の再建ができるようにするための御配慮と、また現在小笠原に住んでおる二百名の住民の生活の安定がそこなわれないようにする、こういう御配慮のもとにつくられるものと私どもは承知しております。この御趣旨につきましては、私どもはまことに賛成でございまして、何ら異議ないところでございます。しかし、小笠原島民の帰島をすみやかにする、こういう点におきまして、またこれから復興法をつくられる、そういう場合を考えまして、小笠原島民が非常に心配しておる点もございますので、そういう点を申し上げさしていただきたいと思うのであります。  まず第一の問題は、この法律は、米軍によって引き揚げ後すぐ帰島を許されておる約二百名の現地住民に対する措置あるいは援護が主でございまして、過去二十三年にわたって日夜帰島の悲願を胸に抱き続けてきた島民に対する配慮はあまり厚くなく、薄いのではないか、こういうふうに考える点がございます。  御承知のように小笠原島民は、昭和十九年に、文字どおり着のみ着のままで本土に強制疎開を命ぜられまして以来、全く塗炭の苦しみを続けてまいりました。そして栄養失調とかあるいはそういう苦しみのために、一家心中、親子心中などというものもたくさん出まして、数字を申し上げますと、十二件、十八名の一家心中、親子心中も出たぐらいでございます。こうしたような悲惨な生活を味わってまいったのでございます。しかし、これも帰島さえできれば生活はすぐにも再建できるのだ、こういう希望を抱いておりましたので、その苦難をものともせずに、戦い続けてまいったのでございます。  そして、過去二十三年にわたる長い間、一日としてその小笠原を忘れずに、いつ帰れるだろう、こういう帰島の夢を抱いてまいったのでございます。昨年十一月十六日日米共同コミュニケが発表されたときは、小笠原島民はほとんどこれを泣いて抱き合って喜んだぐらいでございます。そして近々のうちには日米協定が成立されて、日米協定が成立されればすぐにも帰島はできる、こういう考えを持ちまして喜んでおったのでございますが、その後すでに半年を過ぎております現在の状態から申しまして、一体帰島はいつごろになるだろう、こういう心配がいま非常に多くなってきておるのが事実でございます。  私は、この措置法案に対しまして、異議を申し上げるという意味では決してございませんが、小笠原の旧島民が帰島をするにしましても、島は先ほど知事さんがおっしゃられましたように、全くこれはジャングル同様になっておる。自力で家を建てることができるというような者はほとんど一人もないのであります。この法律によりますと、島民ができるだけすみやかに帰島し、生活の再建をはかるようにするものだ、そのためにつくる法律だと申されましても、帰島のために一体どのような援護措置を講じてくれるかというような点がございませんので、この点においてたいへん心配もしておるような次第でございます。  この法律が通過いたしますと、まず現地住民の対策といたしましては、これはまことに私どもは至れり尽くせりではないかと思っておりますが、二十二年もの長い間、帰島を待ち焦がれて塗炭の苦しみをなめてきた小笠原島民の対策といたしましては、まだ親心が少し足りないような法律なのではないかといったようなふうにも感じられるわけでございます。  第二の問題は、行政措置の問題でございます。この暫定措置法案によりますと、全島を一村にする構想でございます。これにはちょっと私どもは問題を持ってまいったのでございます。戦前には父島に二ヵ村、母島に二ヵ村、それから硫黄島に一ヵ村、合計五ヵ村の村がございました。私どもは町村合併の線に反対するわけではございませんが、とにかく距離の非常に離れている、父島−母島三十二キロ、またさらに母島から硫黄島までが百五十五キロあります。こういう離れた島を一村にするという構想でございますが、これは現在父島以外に住民が住んでおらない、住んでおらないところに村をつくるのはこれはおかしいじゃないかということでこのような構想を立てられたものだと思いますが、旧島民にとりましては、すぐにも帰島したい、こういう考えを持っておりますおりから、こういったような措置は、帰島はなかなかおくれる、帰島は相当先になるのだ、そういう前提条件のもとにこうした全島一村というような構想を立てられたのではなかろうかというふうに心配いたしている向きがありますので、これはあえて住民が帰れば分村すればいいのでございますけれども、なかなか開発も帰島もおくれる、そういう前提のもとにこういった構想を立てられたのではないかということでたいへん心配している向きがありますので、その点申し上げておきたいと思います。  それから次の第三の問題は、先ほど知事も申されましたように、硫黄島の問題でございます。硫黄島に帰りたいという人は現在どのくらいあるか、まだ調査報告は出ておりませんが、硫黄島は御承知のように二万の日本の将兵と五千のアメリカの将兵がなくなった非常に激戦地でございまして、いまなお地表といわず、壕の中といわず、遺骨が相当たくさんあるそうです。それからなおまた不発弾が至るところにごろごろしている。こういったような島に早く帰れといっても、これはとても帰れない。そういった島の不発弾処理とか、遺骨の収集とかいうものをまず考えていただきまして、住民の帰島を早めていただくようにお願い申し上げたい、こういう線でございます。  それから第四の問題は、これは直接にはこの法案とは関係がないかもしれませんが、旧島民を早く島に帰していただく、そういう関係においては非常に関連がありますので、申し上げさしていただきますが、先般の政府調査団報告によりますと、まず父島にベースキャンプを置いて、それからその他の島を開発していく、まず父島を先、それからこの島、それからこの島というぐあいに非常に消極的に地区地区と開発していこう、こういうような御構想のようでございますけれども、これは最初開発され、最初帰る人たちは非常によろしいのでございますが、他の島に帰ろうとする人たちは非常にこの問題につきましては神経を刺激しているのでございます。したがいまして、開発されるならば、この島は先だ、この島はあとにする、そういったようなことのないように、その条件に従って、その開発の大小はこれは別でございますが、やはり同じような時期にこれに着手をして、そうしてひとつどの島にも帰りたい島民を帰していただく、こういう御配慮を願いたいと思うのでございます。住民といたしましては、先ほど知事さんが申しましたが、漁民の人たちはもう魚が待っている、いますぐにも帰りたい、また農民といたしましては、帰りまして土地を開墾して種をまかなくちゃ収穫はないのでありまして、帰りまして一日も早く島に取りつきたい、もうそういうことでもってほとんど帰心は矢のごときものがございますので、何千人帰るかということはいまのところはまだはっきりしませんけれども、開発に対しましてはそういう一つの心づかいをもってお願いしたい、こう思うのでございます。  次に第五の問題は、諸般の事情から考えまして、これを国でやる、東京都でやるということにつきましては、いろいろ険路があるのではないか、こういう気がいたしますので、ここに開発事業団とか、あるいは開発の特殊会社とかいったようなものをつくりまして、そういう機関に開発に当たらせるということが、この小笠原開発が最もスムーズにいくことになりはしないか、こういうふうにも考えられますので、ぜひ御検討をお願いしたい、こう思うのでございます。  それから次の問題は、主として現地住民の問題になりますけれども、借地権と使用権の設定の問題でございますが、この法律案によりますと、他人の土地の上に家を建てた者に対して、今後十ヵ年の権利を認めるということ。これに対しまして、これは少しどうかというような人たちがけっこうございますので、そのことも一言申し上げておきたいと思います。また、この私有地を国または公共団体が使う場合、所有者に断わりなく、何らの同意なくしてこれを使用することができるようになっておるが、これはどうも一方的な措置ではないか、何かもっと方法はないかというようなことも叫ばれておりますが、私は法律家ではないので、こういうことはよくわかりませんが、適用の場合、十分御留意の上でもってお願いしたい、こう思うのでございます。  以上は島民が現在最も関心を示している二、三の問題につきまして申し述べたのでございますが、先ほども申し上げましたように、島民が一番知りたがっておるのは、まず帰島の場合、国や都がどういう援護措置を講じてくれるものであろうか、この問題。第二の問題は、島を開発して島民生活を再建するためにはどのような措置を講じてくださるか、この問題。次には一体、いつごろ帰島できるのだろう、この三点でございます。二十三年もの長い間放置されまして、島はもう荒れ放題になっておる。これは無人島同様になっておりますので、島の開発ということはなかなかたいへんなことでございます。したがって、かような法律をつくられることは、最もよく理解のできるところでございますが、まず島民が早く帰りたい、非常にそう思っておる人が多いのでございます。ぜひひとつ御配慮を願いたい。私どもは別にこの暫定措置法案に何ら反対するわけではございません。ただ、そういったような御配慮をお願いしたい、こういうことでございます。  これで私の陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  13. 床次徳二

    床次委員長 ありがとうございました。  次に、平野参考人にお願いいたします。
  14. 平野哲夫

    平野参考人 私がいま御紹介にあずかりました平野でございます。  この席で小笠原返還並びに再開発につきまして、私がここで意見を述べるという機会を得ましたことを非常に喜んでおります。これから述べます事柄は、戦前小笠原に農業関係の仕事について約十年おりました。その後海軍省の南方政務部付で南方、ジャワ、セレベスへ回って帰って、現在、八丈島に住んでおります。そういうようなことから見まして、あたたかいところを回ってきた農業の一技術者として、あるいは小笠原に住んだその経験から、私の一個人の意見をこれから述べさせていただきたいというふうに存じております。  まず日本の国土の中に一ヵ所くらいは公害のない、しかも人間のくさみのない、いわゆる文字どおりの楽園があってもいいのではないかということでございます。また、小笠原におきましては、それがなし得るという可能性は、やりようによっては十分できると私は思っております。それで、これは国家的にも、小笠原の住民のためにも、いわゆる福利と、そして平和を築き上げ得るような島にしていただきたいということでございます。  次に、産業を起こさなければ島の開発はあり得ないということでございます。  次いで、小笠原のあのいい自然を愛して、そして天意にかなったような島づくりをしたい。常に自然と産業ががっちりと融和したような島、しかも飾り気のない人間的なもので、飾らない自然的なものをありのまま出した、いわゆる自然公園的な観光地にしたいというふうに考えております。そして、全島民が協和あるいは融和できるような、そういった理念で、ほんとうに——小笠原島の三十幾つあります群島の名前は、ほとんど家族の名前がついております。父、母、兄、弟、妹、姪、甥というふうについておりますが、文字どおり今後家族的な島につくり上げたいというふうに私は念願しておるわけでございます。  けさも私、小笠原から帰りました調査団を迎えに行きましたところが、硫黄島の戦没者の遺骨が参りましたけれども、私の同僚もあそこで戦死しております。そういう意味からいきましても、再び戦争の巻き添えを食うことのないような平和な島をつくり上げるようにしたい、こういうふうに思っております。これは決してむずかしいことではなかろうというふうに、二十三年の間、自然に返ってしまっておるのですから、やりようによってはできるのではなかろうかというふうに私は考えております。  まだまだいろいろ農業、あるいは観光、あるいは生活環境につきましても、それぞれ多少意見を持っておりますが、概念としますと、いま申し上げたような事柄を基本にして、今後あそこの開発をぜひお願いしたいというふうに考えておる次第でございます。(拍手)
  15. 床次徳二

    床次委員長 ありがとうございました。  日向参考人には、補足意見がなければ、委員質疑において、お答えを願うことにいたしたいと思います。  これにて参考人の御意見開陳は終わりました。     —————————————
  16. 床次徳二

    床次委員長 これより藤田参考人平野参考人日向参考人に対する質疑を許します。依田圭吾君。
  17. 依田圭五

    依田委員 それでは簡単に質問をいたします。  まず第一に、日向東京都の行政部長さんにお尋ねいたしますが、今回の暫定法の内容からいいますと、国の機関と、都の機関と、それから小笠原村の機関と、この三つが一緒になりまして、現在無人島に近い状態の島、これから一千キロ先のかなたにある島を開発していくわけでございます。しかも、これ以外に、いわゆる国の縦割り行政がパーセンテージはともかく、若干でも総合事務所のほうではそれを全部やめてもらって、文字どおり総合行政にしたいということで、いま国のほうでは努力いたしております。この三つの、実際にはその中で東京都が中心になってやっていくと思いますが、どういうようにやっていかれますか、自信のほどと御希望があればこの際お聞きいたしたいという点が一点でございます。  次に、昭和十九年以前におい東京都が持っておりました施設なり土地なりで、国あるいはいろいろ現地方々に実際使われておって、東京都に復帰しておらないものがあると思うのです。これを相当東京都に返さないと、東京都の仕事は円滑を欠くのじゃないか。またその半面には国のほうの施設で東京都が使うような場合、必要とするようなもの、これに対して一体どういうお考えをお持ちなのか。またその具体的な現在どのくらいで将来はどういうように数がふえていくのか、あるいはそれほど数はないのか、その辺も含めてお聞きしたいと思います。  その次に、平野さんにお聞きしますが、われわれが聞いたところでは、小笠原の農業問題につきましてはたいへん権威であるということをお聞きいたしておりますので、その面から、その経験を通しましてぜひ御意見を承りたいのですが、実は農業開発以前に、農林省がいま苦労いたしており、調査団が苦労してデータを集めておりますが、アフリカマイマイであるとかミカンコミバエであるとか非常にむずかしい学名があるようでありますが、まだ全然日本の植物、農業にはない害虫がアメリカ側のグアムを通しての関係で入ってきておる。ですから害虫駆除をしない以上は、菜っぱ一つ、大根一本といえども内地へ持ってくるわけにはいかぬという実情にあるようでありますが、これには何十億かの予算がかかる、駆除の方法につきましても、山全体を飛行機から消毒する方法あるいは消毒の機械を一本一本土の中に一メートルおきくらいに入れていって消毒する方法、あるいはキジやその他天敵を利用して害虫を駆除する方法などあるようでありますが、とてもむずかしい。この復興法をわが社会党のほうでは一年以内に出してもらいたいということを要請しております。農地法の関係なんかで不在地主を排除いたしまして、いわゆるほんとうに島へ帰って耕作をしようという者を保護する立場から、現在農地法が暫定法では停止されておりますので、どうしてもこれを復興法と一緒にしまして、可及的すみやかにやらせてもらいたい、こういうことなんですが、まだ一年くらいの段階では、現地の一番中心になる産業である農業が全然話にならぬ、まだ駆除の序のとば口、入口をうろうろしている段階であるというに至っては、予算が数十億円という点もたいへんでありますが、そういう時間的な問題もあるので、その点をお聞きをいたしたいと思います。  それから藤田さんには、いまお話を聞きますと、母島関係の漁業権これがたいへんどうも——小笠原協会で扱いまして現在母島に帰ろうとしている人は二千人くらいおります。そのうち何百人かは漁業権者であるわけです。あるいは農業をやっている人もあるわけです。農業のことについては平野さんにお聞きしておりますので、藤田さんには漁業の問題につきまして、具体的に政府のとっております暫定法の基本的な理念というものは、まず父島にベースキャンプを置いて、母島は無人島であり、硫黄島はまだ遠いですから、父島開発をやって、それからあとで母島と硫黄島に行きたいという考え方なんですね。しかしそれでは母島の漁業権者を保護するわけにはいかない、ですから同時開発方式にして、母島にもとりあえずベースキャンプを置いてこれをもやってもらう、硫黄島は二百キロも先ですからいろいろ都合もあろうが、母島はわずか三十キロか四十キロ先なんですから、父島に対してやるのと同じような努力を母島に対してもやって、一刻も早く母島にも同時に早く帰ってやりたいという旧島民に対して保護しなければならないとわれわれも考え、あなたもお考えのようでありますが、その点についてもう少し詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  18. 日向美幸

    日向参考人 ただいまの依田先生からの御質問でございますが、総合事務所と東京都の関係機関との関係をどうするかというお尋ねでございます。この法案によりますと、総合事務所が国の機関として設置されることになっておりますが、現在私どもその所掌の事務の中身につきましては、十分にわかっておりません。しかし、都の事務あるいは国のほうから機関委任事務として都に委任されておる事務を処理するために、都といたしましては地方自治法百五十五条によりますところの支庁を設置するとともに、またこの法案にあるとおり、小笠原村の役場の事務を処理しなければなりません。そこで島の開発と住民の生活の安定のだめに、私どもは責任を持って努力する考え方でございます。しかし、当面小笠原諸島自体が、私も硫黄島に三回と、今度知事に同行いたしまして父島を視察してまいったわけでございますが、きわめて狭い現地でもございます。こういうようなところに対して、私も国のほうに対してお願いいたしたいことは、いま依田先生からおっしゃったとおり、この総合事務所の中に国の機関はなるべく一本になっていただきたいということが、特に私どもが希望するところでございます。東京都の支庁とそれから総合事務所との関係を一体化した形でやっていくことが最も効率的でもあるし、同時に人間的な面におきましても、チームワークのとれた行政をすることによって、現地開発と同時に、これからの住民の福祉の面においても十分にそれが役立っていくのではないか、これは必要欠くべからざるところでございます。  それと同時に、いま一つお願い申し上げたいことは、それらの島に派遣される関係の職員でございます。御案内のとおり、父島自体でも東京から千キロも離れているところでございます。ここに行かれる国の職員、あるいは都の職員の方々は、おそらく家族と別れて、この遠い島に渡って、そこで不便な、きわめて環境の不便なところで仕事をしていかなければならないという、そういう立場に置かれているところでございますので、どうかあちらのほうへ派遣される職員の給与、特に諸手当等につきましては、特段の御配慮をお願い申し上げたい次第でございます。これが総合事務所と支庁並びにその職員に対する考え方でございます。  それからただいまお尋ねの第二点でございますが、確かに東京都におきまして、引き揚げ前におきましては、小笠原小笠原支庁というものがありまして、それが本来そのまま戦争がなく、また強制引き揚げというような事態がなかったならば、そしてこの地方自治法が施行された以降におきまして、各都道府県並びにそれらの関係機関は、当時国有財産であったものがそれぞれ都道府県の財産としてそのまま引き継ぎを受けたわけでございます。しかし、これが小笠原の場合には、御案内のような状態で、東京において使用しておりました土地あるいは職員の官舎等の施設等が現在は国有財産になっているわけでございます。そこで、こういうものにつきましては、私ども国のほうにお願い申し上げまして、現在その支庁の規模あるいは職員の派遣人員、そういうようなものとのかね合いにおきましても、国のほうと十分に相談をいたしまして、そうして東京都にその土地を譲渡をしていただきたい、かように考えておりまして、よりよりこれに対しましては、国のほうに対しましても、その事情を訴えながら、今後ともお願いを申し上げたい、かように考えている次第でございます。
  19. 平野哲夫

    平野参考人 お答えいたします。  小笠原の害虫、その他小笠原の農業の開発につきましては、非常な難問題がたくさんありまして、実は害虫も確かにその中の一つの大きな問題でございます。仰せのとおり、ミカンコミバエは、私が当時あちらにおりましたときに、その当時の裏南洋、サイパン、パラオ方面から参りました船が、小笠原の二見港に寄港しましておろしたくだものの中に入っていたものらしく、それがきっかけで局内にまたたく間にふえた。また、アフリカマイマイにおきましても、あれは食用カタツムリだと申しておりますけれども、実際は食用カタツムリとは全く別でございまして、ある一島民が高い金で買って飼育していたものが広がったものでございます。そういうような一つの処女地みたいなところへ害虫が入りますと、またたく間にふえるというふうなことは、えてしてあることでございまして、今回再開発をいたしますにつきましても、その虫を殺すということは非常に困難が伴う。非常に金がかかるでしょうし、また時間的にも相当かかるのではなかろうか。しかも、一網打尽に全島に薬をまくこともけっこうですけれども、あそこにはこん虫学的に貴重なこん虫もあるように伺っておりますので、それも非常にむずかしいというふうなこともございます。しかし、いずれにしましても、野菜とかいろいろなものをつくりますのには、いま申し上げましたような、こん虫なりカタツムリのようなもの、あるいは野ネズミもだいぶおりましたが、そういうようなものも一応退治するということは、やはり専門家の方方の御研究と相まって、そうしてできるだけ早く駆除をするようにしていただきたいというふうに考えております。  そのほか、農地のことなんですけれども、あそこは戦前非常に経営規模の大きな農家がありました。大体一農家平均三ヘクタール、多い方は五ヘクタールあるいは四ヘクタールというふうな相当大規模の経営をなさっておられました。これから生産性の高い農業をやりますのにはやはり規模拡大が必要でございますし、あるいは共同施設をじょうずに利用するということ、共同作業をいかに取り入れていくかというふうなこと、そういうような事柄はこれからの農業の必須条件でございますが、そういうふうなことをいたしますのには、どうしても農地を団地化しなければ今後非常にむずかしかろうというふうに考えるわけであります。ところが、聞くところによりますと、何かあそこに観光の目が非常に向けられているようでございまして、本土資本による、あるいは土地の価格で利権がついたような、つまり土地を確保して高くなったらうまく売りましょうというふうな方方のためにかき回されてしまうというようなことになりますと、農業は細分化されますし、寸断されてしまいます。これが私たちが非常に心配している事柄の一つでございます。こういうふうなことで、農業の適地とみなされる地域には、極力団地化して、そこに共同施設なり共同作業あるいはいろいろな規模拡大、安定した経営ができるように御配慮願いたい。私は現在伊豆七島の八丈島に住んでおりますけれども、八丈島の現在がそのいい縮図であります。台帳にはもちろん山林になっておりますが、農地になるべきところを次々と売られてしまって、規模拡大をしようにもどうにもならぬ。しかも買った方々がそこに家を建てるなり事業をおやりになるならば、まだその土地に所得税なり何なり入りますけれども、何ら家も建てない、事業も行なわない、土地を獲得しているだけというふうなことでは、全く農民は指をくわえて見ているようなことであり、そのために地価はぐんぐん上がってしまって農民の手ではとても買い求められないというふうな現状になっておるわけです。それと同じようなことが小笠原に起きたのでは、私たち農業に携わる者といたしましては非常に心配されるわけでございます。  それから農業の後継者の問題を非常に心配しているわけです。現在八丈島にはたくさん農業者がおりますが、その人たちの半分行くか何分の一行くかわかりませんが、行きます人たちのほとんどがもう五十代になろうとする年齢層の人たちばかりでございまして、そういう人たちが行っても、後継者があるかないかというふうな心配がされますので、これは先ほど美濃部知事も申されましたが、職業教育のできる高等学校、つまり全寮制の高校で農業と水産の二科目で十分教育をしていただく、しかもそれは小笠原関係者だけにとどまらず、全国の有為な青年を募集して現地教育し、そうして卒業した暁においては現地で長期低利の資金なりあるいは農地取得資金なりを与えて、そこでりっぱに農業創設ができるようなことにしていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  20. 藤田鳳全

    藤田参考人 ただいまのお尋ねに対しまして、母島の漁業の問題につきましてお答え申し上げます。  母島は、小笠原諸島のうち一番産業の重要なところでございまして、まず、農業におきましても漁業におきましても産業の中心地でございまして、この島の開発をおそくするようなことは、母島の人たちにいまたいへんに大きな衝撃になっております。いま、まだ政府調査表を見ないとよくわかりませんけれども、小笠原に帰る人も、父島よりもむしろ母島のほうが多いのではないかと私どもは想像しているような状態でございます。なおまた、お尋ねの漁業者の問題におきましても、現在は父島よりも母島の漁業者が積極的でございます。漁業者というものはなかなか威勢がよろしゅうございまして、もう返還協定の発効と同時に船団を組んで母島に乗り込んでいって魚をとりたい、政府の施策のまごまごしているものを考えておったのでは、よその船に来られて全部魚場を荒らされてしまう、このようなことがあってはたいへんだという、これはうそかまことか、私どもはよく調査したわけでもございませんが、全国の漁業者がいま小笠原の漁場をねらっておりまして、一説には、七十隻くらいの中・小型船が小笠原をねらっているとか、九十隻の漁船がねらっているとか、さまざまのことを言われまして、そうして現在いろいろ漁業者の話を聞きますと、大量ではないが、ぼつぼつ小笠原の周辺にほかの漁船が出かけて、米軍はほどんどいま監視をしておりませんので、夜になると漁場に入りまして、そして魚をとって帰って、伊豆七島あたりで相当たくさんの魚を売っているというような話がございますので、私どもはこの対策としまして、この措置法にはなかなか島民、漁民が喜ぶようなことも書いてございますので、私どもはこの措置法をとやかく言うわけじゃございませんが、とにかく漁業者は一日も早く帰りたい、魚が待っておる、ちょうど魚の上を船が走っておるくらい魚がわいておる。とにかく二十三年もの間ほとんど魚をとっておらぬ。これは当然もとからよい漁区でございますので、そういったところに漁業者が早く帰りたい、早く行って魚をとりたい、これは人情でございます。したがいまして、いろいろなことがありましても、ぜひひとつ母島のほうの開発も、父島開発されると同時に開発するようにしていただきまして、漁民がすぐにも行かれるようにお願い申し上げたい、こう思っておるわけでございます。そのぐらいにしておきます。
  21. 床次徳二

    床次委員長 委員長から申し上げますが、参考人に対する質疑は約十分程度にお願いいたしますが、また参考人の御答弁も簡潔にお願いいたしたいと思います。あとお二人を予定いたしておりまして、三時ごろまでに終わりたいと思います。  山口鶴男君。
  22. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 委員長の御注意でありますから、きわめて簡潔にお尋ねしたいと思います。  藤田参考人にお尋ねしたいと思いますが、ただいま参考人がお述べになりました小笠原村一ヵ村の設置では実情に合わないのではないかという御意見には、私どももきわめて同感であります。以前五ヵ村でございましたが、私どもといたしますれば、少なくとも父島、母島、硫黄島、この三つぐらいの村を設置することが、地方自治の本旨にのっとり、住民の福祉を達成する道ではないかという感じを持っているわけでありますが、そこでお尋ねをいたしたいことは、今回の法律によりますと、まず小笠原村を設置をする。それからとりあえず村長の職務執行者を任命する。そして議会がございませんから、村政審議会でもって運営をしていく。そうして、法律によりますと、自治大臣が指定した日から起算して四年以内に村長の選挙及び議会の選挙をやるようであります。私は少なくともこのような長い期間ではなしに、すみやかにこの地方自治法に基づくところの長の選挙、議会の選挙というものが行なわれまして、文字どおり住民自治が達成されることが必要ではないかと思うのであります。  そこでお尋ねしたいことは、資料によりますと、昭和十九年三月の調査では、小笠原全島に七千七百十一人の方が居住しておられた。そのうち父島に居住された方が五六%、母島に居住された方が二七%、硫黄島に居住された方が一五%、北硫黄島に居住された方が二%とお伺いをいたしております。このうち、現在それぞれの各島に対して帰島を希望せられております方々の数がどのくらいおありでございますか。やはり村づくりをすみやかに達成するためには、帰島せられる方が、ある程度の数あるということが必要条件ではないかという気がいたしますので、もちろんこれは御要望のございましたような国並びに都がいかに帰島のための援護措置を講ずるかということが基本だと思います。そのことはまた当委員会で議論があると思いますから、その点は省きまして、とりあえずこれらの各諸島に対して大体いつごろまでにどの程度の帰島希望者がおありであるか。この点、小笠原協会といたしましてどのような御調査がなされておられますか、この点をお伺いをいたしたいと思うわけでございます。
  23. 藤田鳳全

    藤田参考人 ただいまのお尋ねでございますが、私どももこの小笠原島を、このような地域の離れているところを全島一村というようなことを聞きまして、ちょっとあ然といたしたわけでございます。しかし、これはいつでも分村できるんだ、こういうようなお話も承りましたので、そうしてくれればいいとは実は思っておるのでございますが、何ぶんその帰島がずっと先になる、そういう前提のもとにこういう措置をとられたとしますと、私どもは非常に問題があるので、すぐにも、あしたにも帰ろう。先ほども申し上げましたように、漁民のごときはすぐにも帰りたい、そういったような気持ちを抱いておるやさきに、このような地域の離れたところを全島一村にするということは私どもは全く納得のいかないことだと思う。これはいまでもそう思っておるわけでございまして、まずその点、私どもとしましては、これはどうもおかしいのじゃないかと思っておるのはそのとおりでございます。  それから村政を執行する場合、その職務執行者あるいは村政審議会を置いてやる、こういったようなこと、ぼくらは行政上の問題についてはしろうとでございましてどうかと思いますけれども、まずその点はひとつ国なり都なりで、島民が帰って生活を満足に営む、島を再建できるように御指導される上においては、これはぼくらとやかく申し上げることもないと思います。選挙にしましても、島民帰りましたら早く選挙権を執行したい、こういうのはやはり国民として私どもは当然のことだと思っております。そういう措置も早くできるようにお願いしたい。  それから父島に五六%、母島に二七%、それから硫黄島に一五%、北硫黄に二%、これは七千七百十一名引き揚げた当時の住民の分布でございますが、父島に五六%おる。これは、父島というものは、小笠原のメーンアイランドでございまして、ほとんど官庁街でございます。それから軍の施設もございまして、そういったような人たちが、事務に携わる者が多いのであります。産業に携わる者は、何としても母島の二七%、これは全部が産業に携わっておるのでございます。したがいまして、小笠原開発はまず、先ほどお話がありましたが、観光ということは、将来は、風光明媚な土地でございまして、また気温に恵まれた、日本では二つとないいい場所でございますので、これは当然行なわれるでございましょうけれども、小笠原開発産業を中心として、まず農業それから漁業、この二つの戦前の主要産業を中心とした開発を早急に指導していただくようにお願いしたい、こう思っておるのでございます。  現在、帰島の希望者は、共同コミュニケの発表される以前だと思いますが、東京都におきまして調査したところによりますと、大体四、五千名帰島者があるということを聞きました。いま総理府でもって調査いたしておりますが、まだ集計ができておらぬようでございます。私どもの想像といたしましては、やはり母島が一番帰る人が多いのじゃないか、こう思っておりますので、開発はぜひ同時に、同じベースキャンプを父島にも母島にも置いてやっていただきたい、また硫黄島の人たち帰りたいが、現在あのような状態では帰れないから、やはり硫黄島にもベースキャンプを置いて、大なり小なり開発をしていただきたい。まあ、かってな御注文かもしれませんが、そのように私どもは考えておる次第でございます。
  24. 床次徳二

    床次委員長 川崎寛二君。
  25. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ただいま藤田参考人から、非常にあせっておる帰島希望者のお気持ちを切々と訴えられたわけであります。この点につきましては、暫定措置法案を審議いたします過程においても、要するに今度は復帰に伴う暫定措置だ、そこで問題は次の復興法だ、こういうことに政府側は答弁をしておるわけでありますけれども、一番いま帰島希望者の方々が不安に思っておられる点、それはこの協定なり措置法なりが効力を発生した、次に、四十四年度におい法律ができ、復興開発の予算が発効する、その段階までの間の移行措置が一番やはりいま不安ではないかと思うのです。それらの点について、帰島希望者の方々と国なり都なりとの話し合いがどのような形で行なわれてきたか、このことをお答えいただきたいと思うのであります。  それから、都のほうとしては、そこの、つまり次の本格的な復興開発予算がきちっと出るというまでの間、いまこちらにおられます旧島民方々のそういう悩み、あせりというものを考えますとき、都としては一体どのように対処していかれようとしておるか、あるいは国との間でこれまでどういうふうに話し合いを進めてこられたか、その点についてひとつ明らかにしてもらいたいと思います。  それから第二点は、復興法あるいは復興開発計画について、都なりあるいは旧島民なり、さらに現住民の方々もありますけれども、そうした方々が参加をして、復興法なり復興開発計画なりというものを策定をしていく、そういう策定に参加ができる審議会というものの設置についてどういう御希望を持っておられるか、その二点をお尋ねしたいと思います。
  26. 藤田鳳全

    藤田参考人 お答え申し上げます。  現在まで私どもと国とどういうお話し合いをされたかというような御質問だと承りますが……。
  27. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ひとつ遠慮なく言ってください、うしろにおるからといって御心配せぬように。
  28. 藤田鳳全

    藤田参考人 どうも私のほうは国や都からは、おまえたち島民に過ぎないんだという御意見でまだながめられておるんではないかというような気もいたしますし、私どもの団体は財団法人でありまして、国からも都からも若干ずつ補助金をもっております。そういう関係もありまして、あまりかってなことをしゃべるとただおこられるだけでありますので、とにかく遠慮してお話し申し上げて、ただお願いしておる、そういうのが実態でございまして、こうしてくれ、ああしてくれということは、いま初めて私どもは要望案というものを出しました。私どもの協会の中に小笠原復帰対策委員会というものをつくりまして、そしてこの中に農業部門、漁業部門、建設部門それから文化部門と、こういったような部門を設けまして、その部門においてさまざまな具体的な対策をいま立てつつございまして、詳しい要望案に沿いまして、ひとつ明細な御要望を申し上げておきたいというのが私どものいまの考え方でございます。私どもはただじんぜんとして手をこまねいているわけではなくて、いろいろやりますけれども、金はなし、力はなしというようなぐあいでありまして、いまのところまず政府東京都に対しましてどのような青写真をつくってくれるか——とにかく二十三年も空白がございまして、裸で引き揚げまして、ほんとうに塗炭の苦しみをなめたのは小笠原島民でございます。内地の人は帰れないんだ、こういう頭がありましたが、小笠原人たちはあすにも帰れる。日本アメリカとの間柄なんだから、施政権はともかくとしても、住民の帰島はできるんだろう、私どもは常にこう思っておりましたので、帰ったならばというような頭がありまして、そういうことのためにすべての島民が貧乏しておる。生活の再建は、本土に生活の基盤を置こうとしなかった。こういう誤った私どもの考え方のために、小笠原島民は非常に苦労したのでございます。したがって、裸で引き揚げさせたのは国である、大の虫を生かすために小の虫が犠牲になったんだ、そういうたてまえで、ひとつ親心を持って、今度帰る場合も、家もただで建てていただく、それから帰るまでの運賃とか荷づくりもしてもらうとか、あるいは帰った場合の産業資金もうんと出してもらう。私どもは甘ったれるわけではありませんが、そういった気持ちでもってお願いしよう、これはぜひひとつ国会の皆さま方にも同情ある気持ちでもって対処していただきたい、こう思うのでございます。東京都に対しましても同様でございます。  そういう点でもって、私どもはただとにかくお願いするよりしかたがない。だから早く青写真を示して、帰れるような状態をひとつ示してもらえないか、これが私どものお願いでございます。
  29. 日向美幸

    日向参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  都が、従来旧島民方々にどういうようなことをしてきたかということでございますが、これは私どもの地方課の中に、小笠原関係の仕事を所掌させるためにその分室を設けておったわけでございます。そしてこの返還をされるずっとこちらへきてから、そういうものに対してのいろいろの相談、あるいは東京都ばかりでなくて、各関東一円あるいは静岡等に散在いたしております旧島民関係の所在あるいはそういうようなことも確認するとともに、いろいろの連絡等もとってまいった次第でございます。そういたしまして、同時にやはり島民関係方々、そういう関係につきましては、都も苦しい財源の中から小笠原協会に助成をいたしまして、そうして何とかその小笠原の旧島民方々が一本の形の姿の中でなるべくまとまって、そしてその中で最大公約数の意見を出していただきたい。同時に旧島民関係につきましては、政府関係の御指導をいただきながら、あるいは協力をいただきながら、私どもも協力申し上げながらやってきたつもりでございます。  それから次に復興の関係の問題でございますが、これにつきましてもいろいろと国のほうの関係におきまして、開発あるいはそのことにつきましての具体的な計画もお立てになり、あるいは御心配をしていただいていることになると思いますけれども、先ほど知事が申し上げましたとおり、私どもの考え方の中には、伊豆七島とのバランスという非常にむずかしい一つの問題があるわけでございます。そういうような関係から、これにつきましての関係については、その復興というものは相当に慎重にやらなければならないのではないかというようなことから、地方自治を尊重した形の中において、やはり東京都も何らか実質的な形においてこの復興の計画を樹立する中に参画するような形をつくっていただきたい、かような点を熱望する次第でございます。
  30. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 藤田さん、もう一つ、その復興開発審議会なりそういうものについて。
  31. 藤田鳳全

    藤田参考人 私どもの現在一番重点を置いているのは復興開発の問題でございまして、とにかくこの復興開発は、まず島に帰るのは島民でございますので、まず島民の要望、島民の希望というものを十分参考にして、つくるならつくっていただきたい。ただこれはお役所が上から、こういう状態にしておまえたちを帰すのだから、おまえたちはよけいなことを言うなというようなお考え方ではなくて、まず帰るのは島民でございますので、ぜひ島民の要望を十分しんしゃくして、たとえば小笠原調査しますにしましても、まず相当数の島民を参画さしていただきたい。私どもは、東京都の調査団に八名の代表が今度は参画いたしましたが、その人たち意見を聞きまして、まずこの程度ではまだ困るから、島民自身が今度はあそこの調査をしたい、しなければならぬというような要望がございますときは、ぜひまたそういう要望もいたしたいと思っていますが、そういう点におきまして、まず審議会をおつくりになりますにしましても、まず島民の要望ということを重点に置いてつくっていただきたいというのが希望でございます。
  32. 床次徳二

    床次委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見の御開陳を賜わり、ありがとうございました。ここに委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍子)
  33. 床次徳二

    床次委員長 これより政府に対する質疑に入ります。斎藤実君。
  34. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 小笠原諸島復帰に伴う暫定措置法案に関連して御質問いたします。  総務長官にお尋ねします。私は漁業権の問題についてお尋ねをいたします。昭和三十七年に、小笠原島民に対して、アメリカから六百万ドルが日本政府を通じて支払われた。この六百万ドルは、小笠原島民全体に対して、これは見舞い金なのか補償金なのかということについてお尋ねしたいと思います。
  35. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 その六百万ドルは見舞い金と了承いたしております。
  36. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 この六百万ドルの中で、漁業関係者に支払った二億八千八百万円、これも見舞い金であるというふうに考えてよろしいかどうか、お尋ねしたいと思います。
  37. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 内容のこまかい点は、担当官から御説明いたさせます。
  38. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  全体が見舞い金ということでございますので、漁業関係者に対する配分金につきましても、見舞い金として考えております。
  39. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 わかりました。漁業関係者に対しても、これは見舞い金である。  次に、小笠原の旧漁業権は、いつの時点で消滅をしたのかどうか、お尋ねいたします。
  40. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  小笠原の施政権が昭和二十一年の一月二十九日にGHQの覚え書きによりまして本土の行政権から分離されまして、占領軍が行使いたした関係で、一月二十九日以降は日本法令適用されない状態にあったと思います。このことは、昭和二十七年四月二十八日に平和条約が締結されまして、平和条約第三条で、アメリカに対して小笠原の施政権が与えられたということから、もちろん法律的に考えますと、そのときに確認されたわけでございますが、しかし実際問題といたしまして、日本の施政権が行使できましたのは一月二十九日まででございますので、したがって漁業権につきましては一月二十九日限り消滅したというふうに考えております。
  41. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 御承知のように、漁業制度改革に伴って、小笠原を除く日本の漁民に対しては補償があったわけですね。したがって、小笠原の漁業権に対しては、いま参事官の答弁があったように、昭和二十一年の覚え書きでこれは消滅したのだから補償する必要はないわけですね。この点はどうですか。
  42. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 御説のとおりでございます。
  43. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 それではいまの御答弁、昭和二十一年の覚え書きで消滅しているのであるから、漁業権に対しては補償する必要はないという答弁なんです。いままで、政府小笠原諸島の漁業権をどうするか、漁業権が眠っておったのか、あるいはそのまま存続しておったのか、あるいは補償をすべきではないかと、いろいろな説がありまして、こういういろいろな政府の見解が違っておったわけです。これは「昭和二十七年十月二十三日付東京都経済局農務課長よりの通知」として、水産庁長官から都知事あてに通知が出ているわけです。これはどういうことかというと、「一、小笠原諸島は現在日本の行政権が及ばないので当該地域における漁業権の期間更新は不可能である。二、将来同島に日本の行政権が及ぶようになった場合には、漁業法施行法の規定に依り昭和二十七年三月十四日に消滅したものとして補償が出来るような立法措置を講じたい。」という、これは水産庁長官から都に対する正式な通知なんです。この通達に対して、どうお考えですか。
  44. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  水産庁長官の出されましたその通達につきましては、私総理府でございますので、その意味は私から申し上げるのはちょっといかがかと思います。水産庁長官がもうじき見えるようでございますので、その点は水産庁長官にお尋ね願いたいと思います。
  45. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 総理府にお尋ねをしたいと思いますが、戦後小笠原諸島から相当な人数が引き揚げてまいりました。それで一たんまた欧米系の方が小笠原に帰られたわけです。それで当時漁業を営んでおった人が何人おって、日本に引き揚げた方が何人で、それから帰島された方が何人か。
  46. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 その点はわかっておりますので、担当官からお答えいたさせます。
  47. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  これは昭和十四年の資料でございますので、御質問の引き揚げの時点と多少食い違いがあるのではないかと思いますが、引き揚げの時点におきましては、漁業者は世帯数として百七十一世帯、構成人員といたしまして千七十五人でございます。この方々は、現島民の方は入っていないということでございますので、全部引き揚げられた人たちでございます。
  48. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 小笠原に帰った方は千七十五人のうち何人ですか。
  49. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 この中には島にお帰りになった百二十九名の方は入っていないわけでございます。
  50. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 そうしますと、小笠原の漁民の漁業権というものは、いま見舞い金だという答弁がございましたけれども、これは将来そういう請求があれば当然補償するという考え方をとってよろしいですか。
  51. 久宗高

    ○久宗政府委員 御質問の前段を伺っておらないわけでございますが、漁業権の補償につきまして関連いたしましてお答えいたしますと、すでに御答弁があったかと思うのでありますが、小笠原の漁業権の存否につきましては政府部内におきまして相当長期間をかけまして検討してまいったわけであります。旧漁業法の適用は、小笠原諸島に対します日本の施政権が戦後分離されたことによりまして解除されておりますので、旧漁業法に基づく漁業権は法律の形の上では消滅したと言わざるを得ないのでございます。したがいまして、厳密な意味におきます旧漁業権に対する補償措置は行なわれないということにならざるを得ないわけであります。しかしながら、これにつきましてはすでにお話があったと思うのでございますが、旧島民に対しまして三十七年に二十二億円が見舞い金として配分されまして、そのうち、旧漁業者に対しましては二億八千万円が交付されておるわけでございます。この性格につきましては、見舞い金というお話でございますが、御存じのとおり、一切の請求権につきまして半永久的なクレームを排除する意味のものでございますので、実質的には漁業権を行使できないことによります損害というものはこれによって埋められたと解せざるを得ないと理解しております。したがいまして、漁業権それ自体の形式的な補償は対象がございませんのでできないわけでございます。ただ、私どもといたしましては、実態から申しまして、そこに漁業者がおらない、つまり強制的にこちらに帰らざるを得なかったという事情と、その後に非常に大きな空白期間がございますので、今後の漁業の振興計画と合わせまして、旧漁業権の行使に非常に近い形で実際に帰られました漁民の方々が漁業秩序の形成ができますように前向きでお手伝いをしたいというふうに考えております。
  52. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 長官は先ほどお見えになりませんでしたから、もう一ぺん申し上げますが、昭和二十七年八月七日付で水産庁長官から都知事あてに通知が出ているわけですね。その中で「将来同島に日本の行政権が及ぶようになった場合には、漁業法施行法の規定に依り昭和二十七年三月十四日に消滅したものとして補償が出来るような立法措置を講じたい。」こういうふうにいっているのですよ。ですからいまの長官の答弁とだいぶ違うわけですね。
  53. 久宗高

    ○久宗政府委員 この問題につきましては、たしか昨年の暮れの国会におきましても御答弁申し上げておるわけでございます。確かに御指摘のように、昭和二十七年でございましたか、これはたまたまその時期に旧漁業権につきましての更新の時期が来ておりまして、旧島民方々から少なくとも更新の手続だけでもしてもらいたいというお話があったわけでございます。当時私どもといたしましては、講和ができましてほかが全部片づいたにもかかわりませず、小笠原の問題がああいう形になっておりました状況でございますので、厳密に申しますと、その段階でただいまお答えしておりますような形式的な漁業権はすでに消滅しているのだということを申さねばならぬ立場であったと思います。しかしながら、当時の水産庁長官といたしましては、まず更新についてのお尋ねでございますので、行政権が及ばないということをお答えしますと同時に、ただいまお読み上げになりましたように、しかしながら、将来この行政権が返ってまいりました場合に立法措置を講じて、一般の内地の漁業権が消滅した時期に消滅したような形をとって何らかの措置をしたいということをお答えしたわけであります。これは役所で出しましたお答えといたしましてはいわば破格のものでございまして、厳密に申しますと、当時政府部内におきまして漁業権の存否を全部問い合わせて正式にお答えするとすれば、形式的には漁業権は消滅してしまっておるので処置がつかぬということだけしか申し上げられなかったかと思います。しかし、それをあえていたしませんで、更新はできませんが、何とか考えますというお答えをしたわけでございます。当時悲嘆に暮れておられました漁民の方々——小笠原島民方々は漁業者が多いわけでございますので、これが当時非常な力づけになったことは否定できないと思うわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、その後におきまして、幸いにいたしまして、北方の問題、南方の問題が同時に旧漁業権の問題と関連いたしまして措置が行なわれたわけでございます。先ほど触れました六百万ドルの問題はそれと関連するわけでございますので、事情が変更しておるわけでございます。したがいまして、最終的なお答えといたしましては、前段で申し上げたような形にならざるを得ないということでございます。
  54. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 わかりました。六百万ドルの中身は見舞い金であり、補償金的なものである、こういうわけですね。この水産庁長官の通知は、日本の行政権が及ぶようになった場合は補償するということは違うのだ、こうとってよろしいですか。
  55. 久宗高

    ○久宗政府委員 二十七年の段階ではそういうことを申し上げたかったわけでございます。またそういうふうにしたいと思っておったわけでございます。その後三十年代になりまして、小笠原につきましては、先ほど申しましたような一切の請求権云々という問題がございまして、それで六百万ドルというものが交付されたわけでございます。さような点から形式的にも内容的にもいわゆる旧漁業権の補償という形はとれないということでございます。しかしながら、それで事が済むというわけでございませんので、振興計画とあわせまして、できるだけの御援助をしたいということでございます。
  56. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 わかりました。いろいろ回りくどい答弁であるわけでございますが、事情が違ってきたから、その当時の政府の見解は間違いであったと、こういうわけですね。私は何も補償しろとかなんとかいう意味じゃないのですよ。事情が変わってきたし、返還の時点になって、これははっきりすべきだ、政府の見解を。そういう意味で私は申し上げておるのです。  それからもう一ぺん最後に念を押しておきたいことは、この六百万ドルの金の中に見舞い金でありまた補償金であるというものが含まれておるので、今後漁業権に対しては一切これで終わったのだというふうに政府のほうで解釈をしているのかどうか、最後にこの点だけお尋ねしておきます。
  57. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  この日米の覚え書き、この六百万ドルの配分についての覚え書きの際におきましても、その点につきましてはやはり財産権あるいは利益を享受し得なかったことから生ずる損失に対する見舞い金として交付するという考え方でこれが交付されることになったわけでございまして、その損失ということに対する見舞い金という形をとっておりますけれども、実質的には損失を補てんしているわけでございまして、この六百万ドルによりまして補てんは行なわれているというふうな判断をしておりますので、さらにこれに対して手当を加えるつもりはございません。
  58. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私はいま水産庁長官にお尋ねしておるわけです。ですから、長官、事情も変わってきたし、六百万ドルの中には補償的あるいは見舞い的なものも含まれておるのだという見解ですから、私はそれでいいと思うのです。ですから、昭和二十七年に水産庁長官が出した通達は、事情が違っておるからこれは変更になったのだ、こういう先ほどの長官の答弁なんです。ですから、そうですかということを私は伺っておるわけです。あくまでも前の二十七年のそれにこだわるのかどうか……。
  59. 久宗高

    ○久宗政府委員 さようでございます。
  60. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で質問を終わります。
  61. 床次徳二

    床次委員長 官房長官が出席されましたので、この際質疑を許します。川崎寛治君。
  62. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 二十数年間放置をされていよいよ復帰をするわけであります。ですから、本来ですと総理大臣にぜひ本委員会にも出席願って、いろいろとお尋ねいたしたかったのでありますけれども、それができません。そこで、これは決して総務長官との権限の関係云々ではございません。復帰になりますと、各省にわたってまいりますし、次の復興法ができるまでは総理府あるいは自治省、そうしたいろいろ各省にわたる問題でございますので、特に官房長官に出席を願ったわけでございますから、そういう立場からひとつ御答弁を願いたい、こう思います。  一つは、先ほど東京都の美濃部知事にも参考人として御出席いただいていろいろと陳述を願ったわけでありますが、昨年十一月の首脳会談の前にも都知事は総理に会われましたし、総理も会っていただいていろいろと両者の間では話し合いいたして円満に進んでまいっておると思います。  そこで、都知事がここで陳述をされました、そしてまたこれまで基本的な方針としてまいっております三つ原則といいますか、それは、平和の島にしていきたい。それから第二番目には、東京都に帰属をする。こういうことになりましたし、小笠原村が創設をされる。こういう過程でございますので、そうした現実に立ちまして、全く放置をされておって完全なジャングルであるという点からするならば、これはもうほんとうに国の全面的な施策が行なわれなければ開発はできないわけでございますが、そこにひとつ国の援助を全面的に受けながら地方自治原則を守っていきたい、こういうのが第二点であります。三番目には、現地の現在おる島民、それから帰島島民生活安定をはかっていきたい。こういう三つの大きな原則を都知事としては持って、これから対処していきたい。国と十分話し合って対処していきたい。政府として、これらの点については十分話し合ってやっていけるかどうか。やっていけると思いますけれども、その点についての御見解をお述べいただきたいと思います。
  63. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 いまのお話の中にありましたように、政府東京都の間は終始円満にやってまいりましたし、またいよいよ返還が実現することになりましたので、なお一そう東京都の間の連絡を密にいたしまして、将来帰島される旧島民並びに現島民の間に不安のないように、また小笠原諸島がせっかく返ってまいりまして、国へ返ってきてよかったというような島にしたい、こういう方針で将来開発計画を進めたい、こう考えております。
  64. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 次に、この立法の形でありますが、実はこれは昨日の委員会でもいろいろと審議をいたしました。政令に非常に委任をしているわけなんですね。この立法の形というのは好ましくないと思うのです。今日各国の立法の傾向を見てみましても、世界的にどの国も、国民主権という立場からまいりますならば、こまかい規定まで法律で出しております。法定しているわけです。ところが、このことにつきましては、急であった、それからたいへん多岐にわたっておる、だからとりあえず政令で、こういうことでございますが、しかし立法過程としては、急だから、そして多岐にわたっておるから、いいことだから、これでは済まないと思うのですね。やはり法律の形というものはきちんとしておかなければいけないと思います。ですから、こうした政令にたいへん委任をしておる。しかもわれわれがこの法案を審議をする過程においても、ついにこの政令の案というものは知らないまま、いま最終的な審議の段階に来ておるわけですね。ですから、こういう多岐にわたり、これほど権利関係の政令委任をしておる法律というものは、奄美の場合があるんだ、こういう答弁もございましたけれども、これは許されないと思うのです。むしろ戦後の立法の傾向を見ますと、最近はなおさらのことたいへん政令に委任をしていく形というものも出ております。ですから、この点についてひとつ官房長官の見解を伺いたいと思います。
  65. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 今回のこの法案の立法形式と申しますか、法制的見地から申しまして、決して満足すべき内容とは私も考えておりません。ただ、御承知のように、長い間日本の施政権から離れておりまして、もう島内はほとんどジャングル同様の場所が多い。島民もわずかに百七十四名という現状を考えますと、直ちにいま本土で行なわれております法令小笠原諸島にすべて施行することがはたして実情に合うかどうかという点もございます。また、今回、急遽、昨年の日米会談以来、幸いにして復帰が実現するということでございますが、その復帰を早からしめる上におきましても、できるだけ早くこの復帰に関する暫定措置を講じたい、こういう政府の方針からあえてこの法案の御審議を願っておるわけでございます。したがいまして、内容的にはいまお話がありましたとおり、法制的に幾多考えなければならぬ点がございますが、ただきわめて暫定的な措置であり、またかえってこの本土に行なわれております諸法令を直ちに小笠原諸島に実施することにおいて生ずる社会的混乱もございまして、そういう点を彼此勘案いたしまして、しかも国民の権利義務に関することは、これは極力法律事項として規定しておりますが、その中でやや技術的な問題についてはこれを政令に委任するという措置をとらざるを得なくなったのが実情でございます。御了承願います。
  66. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そうじゃないですよ。具体的な実施についての執行命令的な面を政令に委任しておるというだけならばともかくとして、委任命令の面まで政令にゆだねておるわけですね。たとえば第三条の選挙の問題ですね、これは国政参加というのは国民の基本的人権の一番根本なんです。こういう選挙の問題についても政令にゆだねておる、こういうことになるわけです。ですから、こういうやり方というのは、暫定なんだ、そして二十数年間放置をされておって、いま直ちにしなくちゃならぬから、しかたがないのだ、こういうことではいけないと思うのです。つまり法律というのは形で、こういう形がとられますと、これは当然先例になってくるわけです。だから、極端にいえば、こういう授権法的な形のものということは、国民主権の立場からいってもいけない、こう思います。昨日総務長官も、この点については、政令委任の非常に多いということについては緊急やむを得なかったのだ、こういう答弁をしておられますけれども、これは立法形式としてたいへん問題だと思うのです。だからこういうふうに権利関係の面までこんなにたくさん政令に委任をしておる形の立法形式というものは、これはたいへんいけないと思います。この点もう一度ひとつお伺いしたいと思います。
  67. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 重ねて申し上げますとおり、決して私ども満足すべき法体系とは思っておりませんが、ただ、いま御指摘のありました選挙は、この法案の、あるいは小笠原返還協定そのものの御審議の都合によりまして、はたして来たるべき参議院選挙が間に合うかどうかという時間の問題がございます。その点の考慮のもとに一応この法律からは選挙に関する、公職選挙法の施行について直ちに規定することなく終わっております。いずれにいたしましても、これはあくまで暫定措置でありますから、できるだけ早い機会に国内本土の法令をこの小笠原諸島適用するように取り運びたい、こう考えます。
  68. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 内閣法の十一条には「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。」こういうふうにあるわけですね。ところが法律で規定をしておるからいいのだ、こうはならないと思うのです。憲法の趣旨からすれば、こうした広範な白紙委任、一方的な委任というのは許されないと解するのが定説だと思います。原則的な点についていかがですか。
  69. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 原則的かつ理論的にはいまお話しのとおりだろうと思います。ただ問題は、先ほど申し上げましたとおり、小笠原諸島というものが急にわが国に返ってきた。しかも島内のいろいろな実情から申しまして、むしろそのほうが社会的混乱が生じない措置であるという意味において、しかも暫定的にこういう措置をとらざるを得なかったという点を御了承願いたいと思います。
  70. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 実はきのう資料要求として政令案の内容提示を要求したのだけれども、それが間に合っていないのです。この点については、本来ならこれは国会の問題ではありますが、私は、国会の中に政令審査特別委員会が設けらるべきだ、これはいま党の中においては政審において私たちは検討しておるわけですけれども、政令審査委員会というものが設置をされて、そこに政令が出されてくる、つまり政令は政府の事項だ、国会の審議事項じゃないという形のものは、これはいけないと思うのです。党においてはすでにちゃんと設置をされて運営されておるわけですから、この政令審査については私たちは国会の問題として検討していきたいと思います。しかし、これほど広範にわたる政令の内容について、出しますと言ったけれども、結局間に合わなかったということになりますね。ですから政府の基本的な姿勢として、そういう立法過程、これはあなたも政府の諸公を去られたら議員ですから、国会議員として、国権の最高機関としての権威を確立するその任務を持っておられるわけですね。そこで、それならばひとつこの際こういう機会に——立法過程についてある程度の不利という点をお認めになられた。でありますから、この際、政令については、そういう審査特別委員会というのが国会にできるまでの間は一これはすでに実行しておる委員会もございますが、各省はそれぞれの関係委員会法案審議の際にその政令案の内容というものをあわせ出して、そうして法案の審議をやる。参考資料としてでもいいですよ。いま当面の段階で、いずれにしてもその法案審議の際には政令案の内容というものを関係委員会に出しますということについて政府としてお約束できますか。
  71. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 私はかつて委員会の席でそういうことを言ったことがございます。確かに政令に委任した場合に、その政令の内容について立法府からの意思が全然表現もできないということは、私はある意味では立法機関の権威に対してまことに申しわけないと思っております。しかしながら、いままでの制度的に申しまして、そういう場合に政令全部を正式に委員会等でお示しする例もなかったように覚えておりますが、今回のこの法案につきましては特異の事情において提出したような事情でございますので、今後政令の内容につきましてはできるだけ政府といたしましても、立法機関である各委員会に御連絡するように努力したいと思います。
  72. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 いまの点で政治的に答弁をしておられますから、なかなかつかみにくい点がございますが、しかし立法——つまり法案審議に際して関係の各委員会に出すようにするというふうに理解をしてよろしいですね。
  73. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 できるだけそのようにいたします。
  74. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それから、先ほど参考人からいろいろ御意見を伺ったわけでございますけれども、つまりこの暫定措置法が成立をする、それから返還協定が効力を発生する、次には、本格的な問題は、四十四年度の予算、こういうことになってまいりますね。そこで、そこに復興法が出されて、それの裏づけの予算が出る、こういうことになってまいりますが、先ほども旧島民人たちは非常にそれまでのつなぎの一いまがいま、効力が発生した、帰っていいんだ、しかし、実際には、帰るについてもたいへんないろいろな不安をたくさん持っているわけです。そこで、その点の青写真が非常に欠けておるという点を、参考人の御意見を伺っておっても感じます。また、本委員会でこの法案を審議する過程においても、その点は非常に感ぜられるわけですから、これは各省にまたがる問題でございますので、政府としては、当面の青写真、それから復興開発計画を策定するにあたっての固まった復興開発計画ということではなくて、復興計画を作成するにあたっての基本方針といいますか、大きな柱を、骨組みを提示しながら、それに対して、現地人たちあるいは帰島する人たち、さらには学識経験者あるいは当然都あるいは政府各機関、そういうものの十分な民主的参加のもとに、そういう当面の問題と次の復興開発というつなぎを遅滞なく推し進めていただくということについての政府の基本的なお考えをお述べいただきたいと思います。
  75. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 東京都がおもでありますが、本土におられます旧島民の方が一日も早く小笠原諸島にお帰りになりたいという気持ちは十分わかります。さりとて、いまの小笠原諸島の現状を見ますと、そう早急にこれが復興開発ができる状態ではございません。また、各島民の方が無計画に帰られては、先ほどお話がありましたような、理想的な小笠原諸島の再建もできません。そこで、私どもは、現在の小笠原諸島の島内の実情、それから現在の島民の数、そういう点から見まして、いま直ちに政府責任において具体的なブループリントはつくれないのではないか。したがって、いま政府におきまして、本土におられる旧島民方々の意識調査を実施いたしております。その意識調査の結果、どの程度の島民の方が帰られるか、すなわち、帰島の規模というものをはっきりつかみまして、その上に立って、どういうような産業を興せばいいか、また、どういうような公共施設を小笠原諸島政府または都が行なえばいいかというようなことがおぼろげながら出てくると思います。そういうものをつかみまして、復興計画をつくるのが、大体ことしの秋をめどにしてやりたいと政府考えております。その上に立って、それに関する必要な法案の御審議を願いたい、こう考えております。先ほどお話しのありました昭和四十四年度の予算には、ぜひそういう復興計画を盛った予算を提出したい、こう考えております。
  76. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 この秋に復興計画をつくる前に、法制的に帰れるということになったら、力のある者が先に帰るのです。そして、今日まで帰島を夢みていながら、しかし、現実には力がないからなかなか帰れない、受け入れの態勢ができていないから帰れない、こういう人たちが一ぱい出てくるのです。そうすると、先に帰った者が、どうしても先に足場を築いていく、そういうことも実際予測されるわけですね。ですから、それらの点については、その先のことはわかります。しかし、当面帰りたい人、帰る人たちについてのそういう問題というものを各省——総理府が窓口になっておりますが、それらの点は政府としてよほど腹を据えてやらないと、秋までの間に、あるいは四十四年度の予算が執行される前にいろいろの問題が出て来てしまう。ですから、政府として、よほど強い、総合的な、これに対処する態度というものを打ち出してこなければ間に合わぬと思うのです。そして、いろいろな矛盾が一ぱい出てくると思うのです。だから、そこの点の腹がまえというものをひとつはっきりしていただきたいと思います。
  77. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 政府では、いま申し上げたような計画的な帰島を実現してまいりたいと考えております。ただ、中には、一日も早く帰島したいという方も出てこられましょうし、また、そういう復興計画でなしに、個人の力で自分の思うとおりの仕事をやりたいという方もあると思います。そういう方々を渡航制限その他で——もちろんこれは制限するわけではありませんけれども、そういうことも起こり得ると思います。私どもは、政府みずからがそれを規制するようなことはもちろん考えられもしませんが、東京において、そういう方々に対する行政指導を、できるだけ無計画な帰島をなさらずに、政府または都が計画しているような復興事業に参画されるように指導してもらいたい、こう考えております。
  78. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 小笠原が、昨年の首脳会談の結果、こうして返ってくる、こういうことでありますけれども、次には、問題は沖縄ですね。沖縄の復帰ということについては、当然に、より一そうピッチがあげられなければならぬわけです。今回の暫定措置法案というものを審議する過程、そういうものから通してみて、つまり、小笠原の場合には、現地に自治体の形がない、住民も少ない、また、ジャングルになっている。そういう特殊な事情があって、これまでの調査、あるいはそういうものの資料というものがきわめて不十分であるために、どろなわといいますか、非常にばたばたしなくちゃならぬ面というものが十分に理解されると思うのです。しかし、こういう経験から見まして、沖縄の復帰というものに対して今後準備をしていくという点について、この際ひとつお尋ねをしておきたいと思う。  時間の関係がございますから、まず二点にわたって私はお尋ねしたいと思います。  その一つ復帰の問題で、一つは基地の扱いだ、こういうことは総理がたびたび答弁をしてこられた点でございます。基地の扱いについては白紙だと言っておられました。ところが、いま総理府にございます沖縄問題等懇談会、この中に基地問題研究会というのが設置をされました。これは政府が金を出しておりますね。
  79. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 基地問題専門会でございますか、これは沖縄問題等懇談会の正式な下部機関ではございません。座長としての大浜さんと久住さんの両委員が、御自分の意見をまとめる上においてそういう専門機関がほしいというので、みずからの発意で設置されたものでございますが、その費用につきましては——沖縄問題等懇談会の費用は政府で支弁いたしております。その費用の中で、便宜専門委員会の費用もまかなっているというのが実情であります。
  80. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そういたしますと、沖縄問題等懇談会には政府から金が出ている。基地問題専門委員会においてもその費用でまかなっている。そして、官房長官は常時これに出席されておる。新聞の報道を見ますと、大体常時出席をしておられるように見受けられるのです。そういたしますと、官房長官が出席をされるということは、総理の意向を受けてこれに出席をしているというふうに見てもいいんじゃないか、こういうふうに思います。  そこで、この基地問題専門委員会というのが一つまりいま政府の各機構を見ますと、少なくとも沖縄の基地に関するこの種の専門機関というのは、これ以外にないと思うのです。外務省も検討しておるかしらぬけれども、しかし、政府の総理大臣なり官房長官なりの手元でやられておるのはこれだと思うのです。そうしますと、基地問題についての政府考え方というのはここから出てくるいろいろな意見、案、そういうものを参考におきめになられる予定でございますか。
  81. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 基地問題専門会というのは、私常時ではございません。四回行なわれた中で二回出席しております。ただし、それはあくまでオブザーバーという立場で出席しております。しかしながら、この専門部会といえども、沖縄問題懇談会、いわゆる沖懇とは関係がございません。そういう意味におきましては、間接的に沖懇を通じて政府に対する意見を具申するという立場にありますので、この専門部会の基地問題に対する意見が、どう結論が出ますか、今後の問題になりますが、それが直ちに沖懇の答申の中における基地問題の結論とは必ずしも同一ではないと思います。しかしながら、そういう関係であります以上、大きな影響力があるということは否定できません。私どもも基地問題専門会議意見が沖縄問題懇談会のこの問題に対する答申にどういうふうにあらわれるか、非常に関心を持って見守っておるところでございます。
  82. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それじゃ、この際ひとつ原子力潜水艦の問題について、こういう機会でございますので、お尋ねしておきたいと思うのです。端的にお尋ねをします。きょうアメリカから三人専門家が来る、こういうことでございますが、日米共同調査をやられるのかどうか、この点を伺いたい。
  83. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 その共同調査という意味合いでございますが、いずれにいたしましても、原子力潜水艦、これは軍艦でございますから 軍機上、日本の科学技術庁で資料を集めるにいたしましても、とうていこれに達し得ない部分があることは当然でございます。したがって、アメリカ側の許す範囲におきまして資料の提出あるいはデータ等の提出を要求するのは、調査専門家においても当然しなければならないと思います。そういう意味において、調査が共同的に行なわれるという意味においては共同調査であるかもしれません。しかしながら、あくまでその調査によって生ずる結論は、日本政府責任においてそれを決定したい。そういう意味におきましては共同調査ではないかもしれません。そういう意味合いの共同調査でございます。
  84. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 きのう朝、佐藤総理が安全性が保障されぬ以上寄港は当分断わるということを閣議で言われた。ところが、夕方はその趣がだいぶ変わってきましたですね。そして、「原因が明確になるまでと発表したのは誤りであり、安全性が確認されるまで寄港してもらっては困るという意味である」こういうふうなことで、たいへん後退をしておるわけです。これは、国民の安全を守るという場合には、不安を除くという場合には、科学者がとります最悪の事態というものを考えて、そこから逆に詰めてくるという態度でなければならないわけです。ところがこれまでは、政府の三十九年のアメリカ側の口上書等に対する態度にしても、アメリカが言っておるのだから間違いがない、こういうことでやってまいった。プエブロの問題でもたいへん失敗をしておるわけでありますけれども、今回もこの問題はたいへん国民に大きな不安を与えておる。そして一日にして政府の態度というかニュアンスが変わってきておるという点は、たいへん解せないと思うのです。アメリカに対する、つまり国民の安全が大事なのか、アメリカの極東戦略が大事なのか、その点についてはもう少しき然とした態度であってほしいと思う。ひとつ明確にこの点についての御答弁をお願いしたいと思う。
  85. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 こういう問題に対処いたしまして、政府が国民の安全というものを第一に考えることは、これは当然の立場であります。したがいまして、今回の佐世保における異常放射能の問題、これはあくまで真相と申しますか、原因を究明することに政府の態度に変化は毛頭ございません。ただ事柄が事柄でございますから、その原因がどういうふうに出てまいりますか、そういう調査の限界と申しますか、そういう問題もあらかじめ考えなければならぬという立場でおりまして、そういう原因が究明されて、日米とも結論が出るような事態に立ち至るまで原潜の寄港そのものを遠慮してもらうとかあるいは拒否するのがはたして適切であるかどうかという配慮もございまして、私どもといたしましては、あくまでも真相の究明はしなければならぬし、またそれをやる責任はございますけれども、その真相は日本政府の手で責任を持ってやることは当然でございます。そのためにわが国民の不安また地元の市民の安全というものが確保されなければ、今後の入港については、当然アメリカも考慮してもらうことであろうし、また日本政府といたしましても、それまでは入港について遠慮してもらわなければならぬという態度は、毛頭変わりございません。
  86. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは本委員会直接の問題でございませんので、もっと詰めてまいりたいけれども、遠慮したいと思います。  ですから、最後に一点お尋ねをしておきたいのは、私は沖縄に参りますたびに、那覇の港に停泊をしておる原潜の姿を見てまいっております。ほとんどそのたびに見てきております。那覇の港あるいはホワイトビーチが原潜の寄航地になっておるわけですね。そこで沖縄の現地でもこの佐世保における問題以来たいへん不安が起きております。そこで松岡主席も民政府側にいろいろと相談を持ちかけておるようでございますけれども、施政権がないからと、こういって手をこまねいておるべきではない、こう思います。ですから、アメリカ側と話し合ってひとつ本土から——沖縄の現地には専門家がいないのですから、それは明らかなんですから、早急に不安を解消させるために、本土から専門家を派遣して、この那覇港なりホワイトビーチなりに対して調査を行なう、そういう方針をお持ちになっておるかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  87. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 まだ現在のところそこまで考えておりませんが、当然日本返還される沖縄諸島でございますので、琉球政府の要求があれば、政府としても前向きで考えたいと思います。
  88. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 終わりますけれども、琉球政府の要望があれば前向きで考えるという、ただ考えるということだけじゃなくて、実行する、調査団を派遣しますというくらいの少し強い姿勢を出していただけませんか。
  89. 木村俊夫

    ○木村(俊)国務大臣 その点はよく検討さしていただきます。
  90. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 終わります。
  91. 床次徳二

    床次委員長 次に政府に対する質疑を順次許します。  なお、先刻の理事会の協議により政府に対する質疑は一人三十分程度にお願いいたします。依田君。
  92. 依田圭五

    依田委員 自治省の方がおいでになる前に総理府にお聞きをいたします。  まず第一点は、この国の縦割り行政が総合事務所の中にどういう関係関係を持ってくるかという点についてお聞きしたいのですが、小笠原総合事務所が設置をされて、その職員の任命は第二十七条によって自治大臣が行なうということになっております。しかし、それに至るまでの暫定法の法案の審議の範囲の中におきまして、総理府が中心になって国の縦割り行政ができるだけ整理されて、島については一本で総合事務所の中に総合されるというような形が理想的なんですが、現実には一体どこまでそれが行なわれておりますか、もう全然心配の余地がないのか、まだ一、二の省において十分な話し合いの段階にあるのかを明確にしてもらいたいと思います。
  93. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘のように小笠原総合事務所で国の事務が全部行なわれるということが、小笠原の特殊な事情を考えますと望ましいと考えるわけでございます。ただ、たとえば防衛関係とかあるいは気象関係とかあるいは労働法規がちょっと異なりますので、営林関係等そういうようなものはこの小笠原事務所でというわけにはちょっとまいらぬだろうと考えるわけでございます。そのほかの事務につきましては、まだ各省と十分話し合いが進んでおりませんので、どの程度のものがこの事務所でやることになるのか、ちょっと現段階においてはお返事いたしかねるわけでございます。
  94. 依田圭五

    依田委員 これは小笠原だけでなくて、いままでの国の出先機関の問題は、いろいろ従来の経験に照らして、非常に混乱しているわけですね。なかなか排除できない。まして一千キロもかなたにある島の開発について、総合事務所の中に完全に包含できないということになりますと、島に行ってまでも一貫行政といいますか、建設省は建設省、あるいは農林省は農林省、それぞれがその立場に立って自分の権限を行使したいんだということでは仕事にならない、こう私は思うわけなんです。重ねて、まだお話し合いの過程にあるものについてはどんなものなのか、明確にして、その見通しをはっきりさせてもらいたいと思います。
  95. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 重ねての御質問でございますが、いま申し上げましたようなものは少し無理があるのではないかというふうに考えるわけでございます。そのほかにもたとえば郵政事務なんかも労働法規が異なります関係で、私はやはり別のものとせざるを得ないのではないかというふうに考えております。その他の事務につきましては、先ほど申し上げましたような段階でございまして、まだ各省との間で十分煮詰まっていない状態でございます。
  96. 依田圭五

    依田委員 まだ十分煮詰まっていないと言われるとどうにもならぬので、これは一段とひとつ努力をしていただいて、総合事務所の職員を自治大臣が任命をしてやったところが、第二十八条で、国の「関係行政機関の長は、それぞれの所掌事務に関し小笠原総合事務所の長その他の職員を指揮監督する。」こういうような条項までつけまして親切にやっておるのに、その出先機関がまたがってに出るのでは話にならぬから、その点は一段と努力をしてもらいたいと思います。  次の一点は、母島の漁民の帰りたいというのは、最低、すぐ名前が出るだけでも百は下らないそうであります。おそらく数百あるのではないか。七月の幾日かにこの問題がいよいよ日の目を見ましたときに、この人たちを一体、母島については自分の経験あるいはかつてのいろいろの関係があるわけなんですが、どうするのですか、それはしばらく待たせるのですか、それとも一たん父島に呼んで、その意向に沿うような協力を当局はしてやろうとするのですか、その点をひとつ具体的にお聞きしたいと思います。
  97. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、漁業者の世帯といたしましては百七十一、これは昭和十九年三月現在でありますが、世帯員としては千七十五名ということでございます。したがいまして、この漁業者が母島ばかりというわけではないと思いますので、母島の方々の中で漁業を営んでいた方々がどの程度あるのか、ちょっと私いま把握しておりませんが、もちろん母島が先ほど参考人の御意見のように、昔水産及び農業の中心的な立場にあったということでございますので、そういうふうに母島が産業的に重要な地位にありますことは、十分今後の復興の段階で考慮していかなければならないと考えるわけでございます。父島に二見湾という非常にいい港がございまして、現在あそこで百七十四名の方々生活しておりまして、その関係で水とかあるいは電気とかそういう一応の生活を営める状態にあるということ、そういう事実を前提にいたしまして、復興の段階におきましてもここを十分活用して父島、母島の開発をやっていきたい、そういうふうな考え方でいるわけでございます。母島につきましてもできるだけ早く開発ができるように復興計画におきましては十分配慮をしたい、そういうふうに考えております。
  98. 依田圭五

    依田委員 参事官に聞きますが、大体今度の帰島希望者の中では、母島と硫黄島に帰ろうという希望者の方が父島より多いわけなんですよ。そのしかも大部分は、母島に帰ろうというわけなんです。ですから、先ほど参考人が述べていましたように、農業においても漁業においても、中心は、ウエートは母島にあるんだ、こういうことになっておるわけですね。これは小笠原協会という元島民の組織体のキャップが来て、ここで証言といっては少し強いのですが、意見を言っておるわけです。しかもここに政府のほうでつくられました調査票に従いましても、硫黄島が七百二十五人、母島が千七百九十四人、これは父島の二千六百四十七人よりも多いのですね。しかもそのうち一体何人が帰って漁業をし、何人が農業をしようかという数字はとっくにつかんでおられるわけでしょう。その数字の上に暫定法を組まれたんじゃないかと思いますが、まずその数字を明確にしていただきまして、その上に立ってなぜ暫定法でこのような方法をとらざるを得なかったかということについて、これはひとつ長官のほうからまとめて御答弁願いたいと思います。
  99. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 昨日申し上げました私のほうでいたしました意識調査の中におきまして、なお島別なり何かその他のこまかいデータ、結論が出ておりません。ただいま作業中だそうでございますが、しかし、何にいたしましても、先ほどの代表と申しますか、参考人意見等も私拝聴いたしておりましたが、お話しのように、母島、硫黄島等にも非常に希望者が多い。しかし、これが開発は、御案内のとおり、硫黄島ともなりますと、不発弾の処理の問題やら御遺体の問題やら、いろいろございます。また母島の問題となりますと、いまの先行投資の問題とは相関関係を持っておると存じます。  それから先ほど来のお話にもいろいろありましたように、旧島民なり現島民の権利関係は、これは確保してやらなければいけないと思うのでございます。と同時に、不規則に無統制にかってにやっちゃいかぬのだ、やはり希望は希望とし、また権利は権利として守りながらも、計画性を持ってやっていけ、こういうようないろいろな御意見がある次第でございまして、ただいまのお話、母島並びに硫黄島等の帰島希望者の問題につきましては、今後も十分検討いたし、また御相談もいたしてまいりたいと思います。
  100. 依田圭五

    依田委員 長官のおっしゃる御答弁の内容、わからぬではないのですがね。ただ先ほど参考人意見にもあるように、母島の方々の権利行使が相当おくれる。そして先ほど川崎さんも言っておったように、力の強いものがどんどん島に渡って、自分たちのいろいろな問題を解決して、法律の上では暫定的に権利関係を凍結をするような処置はとってあるものの、事実関係として進んでいく。なぜ復興法を早く出さないか。農地法の問題につきまして、美濃さんも言っておるように、十三条の問題で、旧地主が、開墾をして自分で汗を流す気持ちがないのに、いたずらに島の権利だけを確保して、そしてそれを観光会社に高い値段で売ってみたり、また観光資本がそういうところにつけいってやる。そうしてしかも大きな土地の中にぼつぼつとそういう農地や何かが発生するために、全体の島の開発がおくれるというような点をわれわれは一連の問題として考えて心配をしておるわけなんです。そのうちの一つに、母島に対する措置がおくれることによって旧島民の具体的な帰島の気持ちが充足されない、その気持ちに沿うことができないということを心配するわけです。その前提になる数字を政府のほうはとっくにつかまえて、それを分析して、そして現状に照らしてはこういう方法しかないのだということでこの暫定法をつくられたというふうに私たちは当然考えておるわけであります。その点について、姿勢の問題か何かで、お気持ちはわかるのですが、母島の人間、千八百人もいる中から、たとえ何百人かがきょう帰って農業をやりたいのだ、またきょうは漁業権を確保して自分の生活の開拓をしたいのだという人を、一体父島にどういうふうに連絡して、父島のどういうキャンプに入れて、どういうふうにして母島に対する指導なりあっせんをするのか、それが具体的に暫定法上のどこの法条に照らして綿密に企画され、また措置されているのかをひとつ御答弁願いたいと思います。
  101. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘の点、特に母島につきまして、母島に帰島される方々に対する措置がこの暫定法の中のどこにあるか、こういうお話のようでございますが、実は帰島される方々の帰島にマイナスになるような状態が出ないように、この暫定法におきましては処置しておるつもりでございまして、たとえば耕作権の特別賃借権の設定というようなものもございますし、また漁業資源の確保につきましての措置もそういう趣旨でございまして、この暫定法におきましては帰島される条件をつくりたい。少なくとも、帰島されるについて、それがなければ帰島をするのが非常にむずかしくなるという状態をなくする意味におきまして暫定法をつくっているわけでございまして、先生の御指摘のような点につきましては、今後の帰島計画の段階で十分実現するように努力したい、そういうふうに思うわけでございます。
  102. 依田圭五

    依田委員 実は東京都と国の関係なんですが、きのう私は参事官から、奄美方式といいますか、奄美群島開発計画に盛ったような、いわゆる離島振興法より若干強い——長官はおらないのですか。
  103. 床次徳二

    床次委員長 長官はいま参議院の採決で、すぐ帰ってまいります。
  104. 依田圭五

    依田委員 それでは政務次官でけっこうであります。細田さんにお聞きしますが、参事官が奄美を下らざる補助率で東京都に対して——これは地方行政委員会でえらく問題になっております都市開発の問題が、たいへんな負担が東京都にあるので、これはそういう方針でいくということを明確にお答えをいただいております。これはきょうあらためて聞く必要はありませんが、長官がおいでになると思いましたので、あらためて長官からと思いましたが、ちょっとあれですから、政務次官からひとつその点をさらに再確認の意味でお答えを願いたいと思います。
  105. 細田吉藏

    ○細田政府委員 実は昨日の加藤参事官の答弁も私よく聞いておりませんので、加藤参事官から先に一応お答えして、そのあと私お答えいたします。
  106. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 私の発言がもとでの御質問でございますので、私一言補足といいますか、きのうの発言のあれにつきまして、私の考えをちょっと申し上げる意味で発言をさせていただきます。  私、実はきのう、小笠原諸島の特殊事情を考慮してと、こういうふうに申し上げたつもりでございまして、この特殊事情を考慮してということから判断いたしまして、もう少し詳しく申し上げますれば、特に小笠原は、今度できます小笠原村というものが、財政的にも何も現在素地がございませんので、そういうようなことを考えますと、小笠原村に対する補助あるいはその他の援助ということは、十分奄美のときと同じように考えていかなければならない、こういうふうに申し上げたつもりでございましたが、もし違うふうにおとりでございましたら、その点ただいま訂正さしていただきたいと思います。
  107. 依田圭五

    依田委員 それはだいぶ話が違う。きのうの速記録を私ここに持っていないけれども、きのうは明確に奄美群島を下らざる補償を東京都並びに公共事業その他においても行なうとあなたはおっしゃった。それなのにまたきょうは、いやきのうのお話とは違うのだ、それは小笠原村に対するだけなんだ、こういうお話ですが、それでは、毎日おっしゃることが少し違うということになると、きょうばいいですよ、あしたは採決か何かあるでしょうからたいへんなんですが、毎日違ったんじゃ、あすはまた違う答弁を私ども聞かざるを得なくなるのじゃないですか。この問題は大きい問題なんです。あなたの段階ではもうわれわれは終わった、御答弁をいただいたと思って理解しているのです。それをあなたのほうで先に御答弁になって、実はきのうのあれは全体じゃない、村に関係するだけなんだ、こう局限をされて話を小さくされたんでは実は困るので、きのうの速記、答弁に関連をして、細田政務次官のほうにその点をひとつ御答弁願いたいと思います。
  108. 細田吉藏

    ○細田政府委員 昨日の速記録を私見ておりませんし、伺ってもおりませんが、ただいま加藤君から補足の説明もあったようでございます。また昨日も御答弁申し上げておるようでございます。私どもの自治省としての考え方を申し上げたいと思います。  実はあとから御質疑等もあろうかと思いますが、復興法、これにつきましては急いで政府の中でも意見を取りまとめて、できるだけ早く出さなければならぬ、かように存じておるわけでございます。その段階におきまして、政府として最終的な決定をいたしまして、国会の御審議を願う、当然こういうことに相なろうかと思うわけでございます。奄美と小笠原は非常に事情が違います。私をして率直に言わせれば、小笠原のほうがよりもっとむずかしい問題がたくさんあるように思うわけでございます。そういうわけでございますから、奄美につきましていろいろ前例もあるようでございますが、小笠原開発復興法が一日も早くできますように、政府といたしましてはできる限り補助率その他について考えたい、かように思っておるわけでございまして、いま直ちに私ども限りで奄美の方式と同じかどうかということまではちょっといま申し上げにくい状況でございます。政府の各省の間の意見調整もございますので、早急に取りまとめたいと存じておりますが、御趣旨につきましては十分尊重いたしまして検討いたしたい、かように存じておる次第であります。
  109. 依田圭五

    依田委員 参事官はあれでしょう、総理府のチーフ、中心になって、執行機関の代表者として政府見解を答弁なさっているのでしょう。きのうば最低奄美以上の援助をしようということを確約をしてくれまして、そしてきょうは自治省の政務次官がそんなことはできない、十分に相談をしてやろうということになりますと、われわれは何時間も、これだけでも二時間も三時間もちょうだいしていままで何点か質問してきたことが、キーポイントになりますと、あなたのお答えは全部否定されたり、ネグられたりして、そういうことでよろしいのですか。これはこの問題以前に運営の問題としてその点の御答弁をお願いいたします。
  110. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 私きのう申し上げましたことは、まあ先ほど申し上げましたような意味で特にどこどこということをはっきり申し上げたわけではなくして、小笠原の特殊事情を十分考慮してというふうに申し上げたつもりでございまして、したがいまして、いま政務次官が御答弁になりましたように、現段階におきましては、もちろん各省との間で十分調整が進んでおりませんけれども、私はそういう意味小笠原の特殊事情を十分考慮して補助されるように努力したい、そういう趣旨で申し上げたつもりでございます。したがいまして、もし先生に私の発言が不十分であったために御迷惑をおかけしたといたしますれば、その点お許しを願いたいと思います。
  111. 依田圭五

    依田委員 まあ実は何点もあるのですが、私のほうは重要な点だけにしぼって御質問をしておるのです。そのつど出てきた話が、次の日には変わってしまうということになりますと、これは質問をする必要がないわけですよ。きょうは細田さんが政務次官として御出席であって、細田さんに聞くと、きのう聞いた政府代表の答弁、加藤参事官の答弁とまた違ったことを言われる。じゃあした今度は長官がお出になったらまた違う答弁が出ると話にならぬと思うのですよ。ですから、また明日も委員会があるようでありますから、明日あらためて時間をもらいまして、私は長官に説明をしていただく機会をもらいたいと思います。きょうはほかに質問点がありますが、これ以上この問題を詰めましても答弁の方がそういうことであれば、またあしたは二重の手間になりますから、この辺で……。
  112. 床次徳二

    床次委員長 後刻総務長官が見えますので、あらためてまた答弁させます。  山口鶴男君。   〔「定足数がないぞ」と呼び、その他発言する者あり〕
  113. 床次徳二

    床次委員長 いま委員出席方を督促いたしておりますので、ひとつ質問を続けていただきましょう。——質疑をお願いします。極力いま集めていますから……。
  114. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いま総務長官も自治政務次官もおりませんので、事務的な問題だけまずお尋ねしましよう。  「第四章、村の設置」この関係についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、まずこの小笠原村という村を置く、こう書いてございます。しかもその場合「東京都に属する小笠原諸島の区域をもつて小笠原村を置く。」地方自治法五条には「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による。」こう書いてあるわけです。ところが、今回返還されました地域、いわゆる小笠原村となります地域については、かつて東京都の区域と申しますか、従前の区域と申しますか、その区域でなかった地域が含まれておるでしょう。これは一体どういう関係になるのですか。自治法第五条との関係でお尋ねをいたしたいと思います。
  115. 長野士郎

    ○長野政府委員 従来この法律に規定しております小笠原諸島の中で、御指摘のように村の区域に含まれていなかった区域、島があるようでございます。そういうことでございますので、この法律におきましては小笠原諸島の範囲というものを一応第一条で規定しておりまして、そして地方自治法の意味では従来の区域によるということではございますが、同時に小笠原諸島全体の区域をもって小笠原村を置くということで、その間の間隙と申しますか、そういうもののないように小笠原のために法律に規定をした、こういうことだと解しております。
  116. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 沖の鳥島という島がありましたね。これは東京都の区域ではない、いわば天領といいますか、直轄の地域だったそうですか、そのとおりですか。
  117. 長野士郎

    ○長野政府委員 ちょっと記憶がはっきりいたしませんが、たしか御指摘のように、南鳥島などは以前の東京府の区域に属してはおりました。当時閣議決定をもちまして東京府の区域に入れたという措置をいたしましたことは記憶をいたしておりますが、その島を何村に属するものであるかということには戦前にはなっていなかったように記憶いたしております。
  118. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、ここに書いてございますように、旧大村、旧扇村袋沢村、旧沖村、旧北村または旧硫黄島村に属していなかった地域についても、ただいまお話のあったような地域も含めて今回小笠原村とする、こう理解してよろしいわけですね。
  119. 長野士郎

    ○長野政府委員 そのとおりだと思います。
  120. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほど参考人の方から意見開陳もございまして、わが意を得たりという気持ちもいたしたのでありますが、依田委員がお尋ねをいたしました開発計画にも関連をして、小笠原村一ヵ所を設置した場合に、当然かつて小笠原に居住しておられました七千七百名にのぼる方が、何か父島だけが開発をされまして、母島並びにこの硫黄島については置き忘れられるのではないかという懸念をいたしておりますことは、十分当局も考えていただきたいと思います。かつて父島に二ヵ村、母島に二ヵ村、硫黄島が一ヵ村、こういう形で五ヵ村あったわけですね。少なくともこの三つの主たる島があるわけでありますから、父島並びに母島、そして硫黄島並びに北硫黄島、これをあわせまして合計三つの村を置くということが、今後の小笠原諸島開発、復興ということを考えた場合に、私は当然なことではないだろうかという感じもいたすのであります。特に先ほど参考人の方からお話がありましたように、母島につきましては漁業の関係もございましていち早く帰島したい。しかもかつて七千七百余名の方々の二七%の方が居住しておられました母島につきましては、大部分の方がこの帰島を希望しておられる、こういう実情でありますことを考えましても、当然小笠原村一村ということには無理があるのではないか、少なくとも三ヵ村にすべきである、かように思うのでありますが、この点、長官にお尋ねしたいと思うのですが、いかがでしょうか。実情に即して三ヵ村置くということに踏み切ったらどうでしょうか。
  121. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 ただいま御審議をいただいておりますのは暫定法でございます。この暫定法はあくまで暫定措置を規定するものでございますが、将来ともに小笠原は一方村であるということとは私考えておらない。現実に母島にも人がおりませんし、硫黄島も米軍がおるだけでありますし、そういう状態のところに、ほとんど人間のおらないところに何か何方村ということも、暫定法の時点、この段階では私は一方村でいいのではないかと存じます。復興法ができてまいります場合においてさらにどんどんと帰島者が出てまいる、こういうふうな実態をとらえまして、必要に応じて自治体を形成したらどうであろうか、かように考えております。
  122. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いま私ども地方行政委員会では、都道府県合併特例法案という法案を審議しております。どうも自治省の考え方なり政府考え方を見ますと、町村合併以来、都道府県を含めて何でも合併をしたい、こういう非常に間違った考え方をもっておる。その端的なあらわれが今回の小笠原にもあらわれておるのではないか。せっかく五つあったものを一村に無理にまとめる、しかもその範囲たるや非常に長い遠距離を隔てた島島、そういうものを一まとめにする、まさに広域行政と申しますか、都道府県合併等の思想に相通ずるものがある。こういうことは間違いですよ。田中総務長官、どうも自治省は合併したがって困っておりますので、そういった悪い思想に毒されることなく、あくまでもいまお話にもございましたような住民の立場というものを考えて、そしていま私がここで要望いたしましたような、さらには旧小笠原島民方々が希望しておられるような道をすみやかに実現していただきたい、いかがでしょうか。
  123. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 暫定法の段階から復興の過程におきまして、必要に応じまして私どもはさよう考えたいと存じます。
  124. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほど総務長官は、母島なり旧硫黄島には人がおらぬ、だからとりあえず二百人ほど原住民の方々がおられる父島、それを中心にして小笠原村を置くという意味にとれます御発言もございました。  私はそこでお尋ねをしたいと思うのですが、小笠原村の機関の特例、これは実はたいへん問題があると思うのです。住民があまりいない。また島によっては住民がおらない。だからとりあえずこの暫定法としてこういう形をとるんだということですが、そこで自治省にお尋ねしたいと思いますが、こういうふうにいままで人が住んでおらなかったところに村ができる、こういう例は以前ございましたね。八郎潟を干拓をいたしまして、大潟村という村を設置をした。その場合に、法律といたしましても、大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律というものをつくりまして、そうしてどうやって新しい村づくりをしていくかという特例に関する法律をおつくりになった前例がありますね。  そこでお尋ねをしたいと思うのですが、この大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律のこの機関の特例に関する規定と、今回の小笠原暫定措置法に規定しておりますこの機関の特例と非常に違っていると思うのです。なぜこのように著しく違うのですか。時間もありませんから、私は端的にお尋ねしたいと思うのですが、かつて政府はこの小笠原を直轄にしたいというまさに地方自治の本旨を踏みにじる不当な見解を発表せられました。わが党はこれに対して直ちに反論をいたしました。地方自治法の規定その他からいきましても、直轄論などということは全く不届きであるという意見を発表いたしたのであります。今回政府におきましては、私どもの主張をある程度取り入れまして、東京都の中に小笠原村を置くということで、直轄論というものはなくなったかに見えるのであります。しかし、現実に機関の特例でまいりますと、この大潟村設置の場合と著しく違って、当該都道府県知事あるいは当該都道府県議会、この権限というものが大幅に侵されて、そしていわば直端思想に準ずるような形がこの法律にはっきりあらわれている。このことは私は非常に遺憾だと思うのです。なぜ大潟村の場合と今回の小笠原村設置にかかわります特例についてはこのような差別をしたのですか。いかなる根拠でさような措置をおとりになりましたのですか、お尋ねをいたします。
  125. 長野士郎

    ○長野政府委員 お話しの大潟村と小笠原村の設置、それに伴う機関の特例について必ずしも同じでない。その点は、一つは現在小笠原村には二百人程度の現地に住民が現在居住はいたしておるわけでございますけれども、まあ言ってみれば、それが現在すぐに選挙権、被選挙権を持つという状態ではないということが一つございます。それからもう一つは、この小笠原村ということは、現在法律上の一つの言ってみればフィクションのようなものでございまして、地方公共団体というものはその地域と住民とによって一定の地域社会というものを構成するという実質が必要なわけでございますが、こういうものがない、こういうことがございます。それからもう一つは、それにもかかわらず、従来から現地には現在の村政的なものに対してある種のカウンシルというものがあったようであります。そういうものがございますので、なるべく住民の意向を反映するために、村政審議会と申しますか、そういうものを設けて、意向を反映することができるようにしたほうがいいのではないか。また同時に、大潟村と異なりますところは、とにかく非常に遠隔の地に小笠原村が所在しておるということでございます。そういう点をかれこれ考えました際に、機関の特例ということにつきましても、いま御指摘にございましたが、大潟村の場合と違った扱いということが出てきた、そしてそれ以上の他意はないということでございます。
  126. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私の聞いておりますのは、都道府県知事あるいは議会の権限というものが、大潟村の場合と違って、何といいますか、不当に低く押えられているのではないか、いわば直轄思想というものがそこに端的にあらわれておるのじゃないかという点を指摘いたしたかったのであります。  例をあげましょう。この職務執行者の任命という場合、大潟村の場合は知事が県議会の同意を得てこの吏員のうちから任命するという規定ですね。ところが小笠原村については知事自治大臣の同意を得て任命する、こうなっておるでしょう。なぜこんなところに自治大臣が突如として顔を出すのですか、おかしいではないですか。私は当然この点は東京都知事東京都議会の同意を得て任命する。この大規模な公有水面の埋立てに伴う村の設置に係る地方自治法等の特例に関する法律、このとおりになぜ書かなかったのですか。そういうところに何か直轄思想というものがあらわれておるのじゃないか。それを私はおそれるのですよ。これはどういうことなんですか。
  127. 長野士郎

    ○長野政府委員 先ほども申し上げましたような観点と、もう一つは大潟村と異なりまして、戦後長い間わが国から離れておりました、そして今度返ってきたわけでございます。そういう意味で国としての責任ということも考えなくてはいけない。それからまた非常に遠隔の地でもあり、そこで今後の小笠原村の措置なりいろいろな復興なりというものは国と都と村、こういうものが三者一つになって実施をしていくという体制を整えていくことが適当ではないか、こういうような考え方から機関の特例にもそういう考え方が出ておる、こういうことに御了解を願いたいと思うのであります。
  128. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 まああえて私が言うならば、これらの規定は一つの地方公共団体に対する特別な法律ですね。といたしますならば、憲法第九十五条の規定からいって、こういった一つの地方公共団体の特例に関する法律を規定しょうという場合は、当然住民投票に付すべきであるという規定があるわけですね。ただ現実の問題として、小笠原に現在二百名程度の現地人の方しかおいでにならないという中で、いろいろ問題があるわけでしょうが、しかし少なくともこういう規定は地方自治の本旨というものを大切にせいという趣旨から、憲法のあの第九十二条以下の規定があるのだろうと思うのです。といたしますと、ここで私は憲法の議論をしようとは思いませんけれども、少なくとも東京都という地方自治体、小笠原村を含めて広い地域を包括する広域行政を担当するところの東京都、その地方自治体、この意見というものを十分に尊重するということが、私は憲法なり地方自治法が命じている精神だと思うのです。しかるに 今回の小笠原の場合は、あとで私はまた行政機関、小笠原総合事務所について議論をしたいと思いますが、そういったものを含めて、何か自治大臣とかあるいは国の機関というものが非常にのさばっておる、何か東京都の、自治体というものの権限を侵そうとしておるということは非常に問題ではないですか、どうですか、地方自治法の権威者である行政局長、今回の法律はおかしいと思いませんか。
  129. 長野士郎

    ○長野政府委員 大潟村との比較での御指摘でご一ざいますが、大潟村と小笠原村とは、私が申し上げるまでもなく、その置かれておる状況、条件が非常に異なっておるわけでございます。そして大潟村につきましては、村の設置ということもございますが、同時にあそこに事業団という政府機関がありまして、それが村の事業というものをほとんど一手に引き受けて行なっておる。これは政府機関がそれを実行していくという体制をとるわけでございます。小笠原村につきましては、これはそういうことでなくて、村なり都なり国なりというものが今日までの小笠原の空白というものをいかにして埋めていくか、それに対しては都だ村だというだけでなくて、国としても当然に責任を負うべきではないか。ただその場合にその三者がその責任というものを、お互いに大体意志が疎通し、連絡がとれ合うというようなところで事業を今後進めていくということも必要ではないか。また同時に、小笠原村自体は先ほどちょっと申し上げましたが、いわば村という法的な一つの擬制をここでつくるようなものでございまして、いわばこれから村になる前の一つの経過的な一時期を現在は過ごしつつあるという状況だということになると思います。したがいまして、村に職員もおりませんし、村の住民が何をする能力もございません。そういう村を国と都が一緒になってその内容を充実させ、住民を定着させ、村づくりをやっていくということにこれから次第に進めていくわけでございまして、そういう趣旨から申しましても、国と都と村の三者、三位一体ということを考えて、こういう規定を置くほうが適当である、そういうふうなことで立案がされた次第でございます。
  130. 床次徳二

    床次委員長 ただいま農林大臣がお見えになりましたので、この際、農林大臣に対する質疑を許します。美濃政市君。
  131. 美濃政市

    ○美濃委員 私は小笠原諸島復帰に伴う暫定措置法の中で、主として農業関係について質疑を重ねてきたわけです。私の考えではこの法律の七条、十三条に疑義を持っておるわけです。この法律趣旨の中では、この島の復帰に伴う産業は、農業と漁業である、こういうふうに答弁が行なわれておりますが、私はこの法律措置では農業振興ができない、こう思うわけですが、これに対して、所管大臣である農林大臣の見解を承りたい。
  132. 西村直己

    ○西村国務大臣 現在の小笠原の実態の状況をどうつかむかというので、いろいろ、政府のほうでも調査団を出しましたが、現状におきましては、かなり荒れている、これは申し上げるまでもない。そこで非農地になっている現状に対して、これを法律的にどうつかんでいくか、制度的にどうつかんでいくかという問題について、私どもとしてはこれから意見を立てて、そうして実施に移してまいりたいと思います。その中でもっていろいろの方式を取り上げまして、そうしてそれによって農業上の復興をはかってまいりたい、かように考えております。
  133. 美濃政市

    ○美濃委員 きょう参考人意見を聞いたわけでありますが、特に現在八丈島で農業改良普及所の所長をしております平野さん、この方はもと小笠原に駐在をしておった技術員の方であります。この参考人意見によりますと、もと小笠原の農業者で、現在八丈島にもかなり引き揚げてきておる者がおるが、年齢はすでに五十歳をこえておる。考えてみますと、あのような理由で農業を放棄して引き揚げてきますと、土地条件というものが農業には要りますから、おそらく農業者であっても、現在は農業をしていない者が主体をなしておる。すでに五十歳をこえておる。そうすると、その後継者、いわゆる子供たちは、ほとんど何らかの職業で生計を立てておる。そういうことになりますと、この法律の十二条で、いわゆる旧耕作権を認めて、農業の振興、復活をはかるといっても、はたして何人帰ることになるかわからないという話をしておられます。したがって、新たな基本的な島の農業の開発計画を立てて、新たな入植ということも考えなければならぬのではなかろうかという意味の発言をしておられます。したがって、そうなりますと、問題になってくることは、十三条によって旧賃借権の復活だけで開発をしていく、またそのことは前にも申し上げておりますが、これからの農業はいわゆる旧権利の復活の範囲の構造では、生産性の高い近代的農業はできない。この小笠原島に限らず、本土の中においても農業問題は御存じのように生産性の問題が論争されておる。農業政策は非常に問題になっておる。こういう時期に、この島がもとの形の農業の復活を、法律上位置づけをして、農業の振興をはかるということには問題がある。したがって、そこにはいわゆる集団経営なりあるいは近代的な生産性の高い形態を取り入れていかなければならない。そうするとこの十三条の措置で、しかも、八年後ぐらいに農地法を適用するという考え方では、全く農業振興という実情に合わない、こう考えるのです。しかも、この開発を進める過程において、旧賃借権の復活でありますから、この面だけは、帰って耕すと言えば進むでありましょう。その他は全く民法上の地主の所有権にゆだねられまして、開発したくなければ、それを政治的に開発を進める何ものもない、こういう状態におちいっていくと、跛行的な状態、民法上の所有権によりまして、開墾するもしないも、全く地主の自由意思ということになります。そういう状態で近代的な農業が形成できるとは思わぬわけです。この点に対して非常に法律措置が不十分なんであります。重ねてその点の考え方を承りたい。   〔床次沖縄及び北方問題等に関する特別委員長退席、吉川地方行政委員長着席〕
  134. 西村直己

    ○西村国務大臣 小笠原農地開発、選定は、いま非常に荒れておる状態であります。この権利関係もなかなか明確化するには事実上困難な面もまだ残っておると思いますが、農地開発につきましては、開発の適地、地目選定、それから特に帰島者の意向、旧所有者と申しますか、それはやはり一応十分実情を把握しなければいかぬ、これが前提だと思います。そして基本的には脱行の開拓パイロット方式でいろいろ今後助成する。それに対して所有者といいますか、そういうような権利者と入植したいという人との権利関係を十分設定した上でやってもらう。それで初めて私どものこの条文にあらわれているものとマッチしていくのじゃないか、こう考えております。
  135. 美濃政市

    ○美濃委員 いままでの質疑の中で、総理府長官は、質疑を重ねてきた中では、大体開発の想定できる時期に農地法を適用する必要があるんではなかろうかという趣旨の答弁もあったわけですが、私が考えるに、差しあたり境界が不明確でありますから、第一段階、帰ってくれば測量する必要があると思います。土地の所在というのは原始林で不明確であります。測量が必要である。そして開発計画を立てる過程において、農業のいわゆる振興の基本方針もきまる。開拓パイロット方式なり何なりけっこうだと思います。そういう方式で開発計画が立った時点におい農地法を適用して、いわゆる現在の自作農を推進する体制で農業開発を進めていくべきである。まあ現時点においても、私はこの七条、十三条は削除すべきである、現時点で直ちに農地法を適用すべきであるという考えに立っておるのでありますけれども、それもいろいろの説明を聞いてみますると、事情もあるようであります。この七条、十三条を修正するということになると、かなりこの法律の体系全体にも影響してきますから、短い期間の中で修正は無理だろうというふうに考えて、一応この法律はこのまま通すにしても、短い期間でそういうきちっとした期間に農地法を適用して、そして先ほど申し上げた、真にこの島に近代的な生産性の高い農業が振興できるような措置をとるべきである。この点についての考え方をひとつ承りたいと思います。
  136. 西村直己

    ○西村国務大臣 小笠原につきましては、旧島民の権利というもの、これはやはり何といってもひとつ考えなければならぬ。しかし、同時にやはり開発というものは大事な問題であります。それを調整するのにどうするか、ここにひとつ御議論があるだろうと思います。そこで、私どもとしては、開拓者の、いわゆる帰島者の意向をしっかりつかむと同時に、土地がとにかく、ジャングルと言っては何でございますが、荒地とやぶみたいになっておるということでございますが、これ自体をしっかりつかみまして、測量とか旧権利の設定とか確認とかいうものが行なわれて、その間には開発適地であるとか、地目選定というものが全島的にそれぞれの島についてはできることになりまして、そしてその間に今度帰りたい人あるいは入植したい人との間に、またそれぞれが話し合って権利を設定して、そして少しでも早く開墾なら開墾というものが始まり、農地としての形ができてまいりますれば、私は農地法の適用というものも一日もすみやかにやるようにしていきたい。そして近代農業にふさわしい自営農家というものがそこに立っていくであろう、こういうように考えます。
  137. 美濃政市

    ○美濃委員 大体質問趣旨に合致しておりますから大体了解できるわけですが、そういたしますと、この法案を提出しておる総理府長官にお伺いいたしたいと思いますが、長官の趣旨も、開発を想定した時点等とにらみ合わせて、できるだけ早い時期にという御見解だったと思うのです。そうするとこの七条の二項を修正削除することについては、法律の体系へ影響を及ぼさない。この二項の両大臣の説明とはかなり違っております。この二項を削除する必要があると思います。削除しても、この二項削除だけでは法律の体系に影響を及ぼしません。これはいわゆる「耕作の目的に供することができることとなるまで」で、七条の前段はいいが、そういう趣旨で、この際やむを得ぬと思うのでありますが、二項は削除しておいたほうが、これを進める過程において、——この法律を見ますと、誤解が起きるといけません、二項は修正削除することが適当でないか、かように思うのですが、御見解を承りたい。
  138. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 二項の中で御指摘の問題は、「通常の期間を考慮して定めなければならない。」この段と思うのでございますが、むしろこれを削除しろというお話でございますが、これがあったほうが、いつまでもほうっておかないということから、暫定法といたしましてはかえってよろしいのじゃないかと存じます。まあ私どもはさように考えておる次第でございます。
  139. 美濃政市

    ○美濃委員 この法律は各省にわたっている法律だと思いますが、先ほど申し上げましたように、農業振興につきましてはできるだけ短い期間に、法律的にも予算的にも、主管省である農林省、農林大臣の主管で進めるように、こういう体系の法律というものは、これは農林省に限らず、できるだけ早くいまの体系を整えてそれぞれの所管大臣が政府として力を入れて進めていく、こういう体制にすることを強く要請いたしまして、質問を終わります。
  140. 吉川久衛

    ○吉川委員長 山口君。
  141. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほどから、直轄思想のあらわれが今回の暫定措置法に数々出ているということを指摘をいたしました。時間もありませんから、これ以上このことについてはお尋ねをいたしませんが、条例のきめ方でもそうですね。条例をきめるにあたっては、大潟村の場合は知事の承認を得て条例を設ける、こういう規定になっています。ところが今回の小笠原村については、職務執行者が村政審議会の意見を聞いてこの条例をきめる、こういう規定です。ここでも大潟村に比べて小笠原村は知事の権限というものが抹消されていますね。こういうところが数々あるわけですよ。私はこれはたいへん遺憾だと思います。お答えは同じでしょうからこれ以上繰り返しません。  そこでお尋ねをします。聞くところによりますと、アメリカ軍がこの地域を占領しております際に、現地人の方から五名程度の方を選んで五人委員会というものを設置しておったそうであります。今回のこの村政審議会は、その五人委員会をそのまま充てるおつもりでありますか。その点が一つ。  それから、やがて帰島者の方々が数多く出ると思うのですね。そういたしました場合に、現地民の方々だけによる五人委員会を村政審議会にしたのでは、非常に片手落ちだと思います。次第に移住いたします帰島者の方々を、この村政審議会にどのように任命をされていくおつもりでありますのか、これをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  142. 長野士郎

    ○長野政府委員 当面、村政審議会は、お話しのように、現在五人のそういうカウンシルを構成している方がおられるようでございますが、そういう人を用いて村政審議会をいたしたいと考えております。ただお話がありましたように、以後こちらから島民の方が帰島してまいりますので、それに応じまして、委員の任期なり定数なりというものは弾力的に考え、実情に即するように合わしてまいりたい、このように考えております。
  143. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それからこの議会の議員及び長の任期の特例ですね。政令案を拝見いたしますと、四年という任期を短縮をするという趣旨で政令を定めるおつもりのようでありますが、大潟村の場合は明確に法律で二年と規定していますね。だったら、今回についてもこの任期については二年として、政令で云々というようなことを書かぬで、二年なら二年、一年なら一年、きちっといたしたらどうなんですか。それが一つ。  それから大潟村の場合は各種行政委員についても触れておられますが、今回の場合は行政委員会、農業委員会等ですが、こういうものについて全然触れておりません。こういうものは一体どうするのですか。教育委員会等も、当然教育考えれば置かなければならぬでしょう。そういうものはどうなんですか。
  144. 長野士郎

    ○長野政府委員 議員や長の任期につきまして法律で明確にいたしませんでしたのは、帰島の状況がどういうふうに進行してまいりますか。そのぐあいが明確でないのでございましたので、現在もその点はなお明確になっておりませんが、そういうことからいたしまして、二年といってもどんどん帰島してまいりますと、二年では長過ぎる。あらためて選挙を行なうべきだというような事態になっても適当ではございませんので、一応政令にゆだねるということにさしていただいたわけでございます。  それから他の小笠原村の執行機関、御指摘のようにこの法律の上でははっきり書いてございません。これは法律の二十五条によりまして政令に委任をしていただく、こういうことにしておりますが、と申しますのは、現状で直ちにいろいろな機関を、地方自治法なりその他の法律で定めますところの村の機関をそのまま設置するということは、現状では必ずしも適当であるとは思いません。したがいまして、そういう点につきましては、いわゆる村長の職務執行者にある程度権限をゆだねるという形も暫定的には必要ではないかというようなこともございますので、政令でそういう特例が定め得るように考えておるわけでございます。また同時に、次第に帰島されまして、そういう仕事について通常の組織が設け得るというようなときには、そういう組織に移行するということができるようにということも考えております。
  145. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そうしますと、村政の職務執行者というものは非常に権限が強大だということになりますね。とすれば、大潟村のように、知事が議会の同意を得て任命するというのが、まさに私は地方自治の本旨から筋ではないかと思うのですよ。それが何ですか、自治大臣というのがぽんと顔を出すというところに、私はいまの御答弁のことからいきましても、また法律からいっても、直轄思想のなごりがあるということを指摘せざるを得ないと思うのです。  時間もないですから、先に進みますが、この長及び議会の議員の選挙でありますが、「自治大臣が指定した日から起算して四年を経過した日の前日までの間に」という規定がございます。これはどうなんですか、いまの予定ではおおむねいつごろ、何年後にこの選挙というものをやるのか、またこれは当然帰島者の方々の移住経過、そういうものとのかね合いだと思いますが、なるべく早くそういった変則的なものは解消すべきである、あくまでも地方自治の本旨にのっとる、正規の地方自治法に基づく村政の確立、これが一日も早いことが必要だと私は思うのです。総務長官にお尋ねしたいのですが、どうなんでしょうか、こういつた正規の村政というものが完成される日は復興計画との見合いにおいておおむね何年後、昭和何年にはこれを実施する、こういう見通しはございますか。
  146. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 私どもは実はそれが知りたいのでございますが、一日も早く軌道に乗った復興になりたいというためには、まず帰島者がどの程度になるのか。それでわれわれのほうは意識調査をいたしましたり、それからあとあとのことを、ほんとうに早く常態に復したい、かように考えております。いまの段階はまだそういったことがどうも、先ほども申しますような、政府のあるいはまた都の先行投資によっての条件と相関性を持っておるものでございますから、非常に把握しにくいということが悩みでございます。さような関係からかようなふうになっております。
  147. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 まあ長官の善意はわかるような気がするのですが、しかし、長官みずからがそれを知りたいということでは、これはいかにもたよりない話じゃないですか。少なくとも政府としてはこの程度の年数でもって、ある程度の先行投資もやり、資金も投じて、復興計画をはかっていく。、とすれば、反面、帰島者の方々調査もやりまして、おおむねこの時点ではこのような形という青写真を持つべきじゃないですか。どうもいまの長官のお答えでは、私もそれを知りたいというようなことで、全く私どもとしては残念な御答弁だと思うのですね。これはいかがなんですか。
  148. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 一応この暫定法で処理さしていただきまして、その実施の状況を見まして復興法をお出しいたしまする明年度の段階におきましては、これは青写真といたしまして相当明確なものを把握いたしたい、かように考えております。
  149. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私もそれを知りたいというようなあいまいなものではなしに、ひとつ政府の総力をあげてこの復興計画の青写真を作成いただきまして、一日も早く帰島希望の住民の方々の御期待に沿うような、しかもまた地方自治の本旨にのっとる村政確立が一日も早からんように御努力をいただきたいと思います。  次は総合事務所の件でありますが、この総合事務所も私はたいへん規定がおかしいと思うのですね。「総合事務所は、自治大臣の管理に属する」という規定が二十六条にございますね。そうして職員についても、「職員の任免は、自治大臣関係行政機関の長と協議して行なう。」こういうことですね。こういうところにも都道府県知事というものは全然出ていないじゃないですか。これはおかしいと思うのです。私はむしろこういうものは、地方自治の本旨からいえば、資金は国が出すとしましても、復興計画責任は都が持つという原則、百歩譲って、政府の管理下にこういう総合事務所を設置するとしましても、当然行政機関の長というのは、国の機関のものばかりではなしに、当該都道府県知事東京都知事と十分協議をする、こういう規定が必要じゃないかと私は思うのです。こういうところにも直轄思想みたいなものがあらわれているような気がしてなりませんが、これはどうなんでしょうか。
  150. 長野士郎

    ○長野政府委員 小笠原総合事務所につきましては、小笠原諸島復帰しました場合に、これは当然に国のいろんな出先機関というものが設置されるというのが普通の状態でございます。しかし、小笠原諸島のようなところに多くの国の縦割りの機関をそれぞれ設置することは、能率からいいましても、また小笠原諸島の復興というものを国と都が一つになって考えていくというようなことから考えましても、非常に能率も悪いし、合理的でもないというようなことからいたしまして、小笠原諸島にかかわる国の行政機関の事務を処理するため、現地の国の総合行政機関としてこういうものを置く、もちろん、たとえば気象観測の関係でございますとかあるいは航路標識等の関係でありますとか、どうしても、国の行政機関の中でも総合事務所に入りにくいといいますか、親しまないものもございます。しかし、それ以外のものは総合事務所に入れて、そうして国の行政も総合的に小笠原では実施ができるようにいたしたい、こういうことでございます。  御指摘のございました自治大臣関係でございますが、これは、現在そういう事務所を考えました場合には、一体どこがこれを管理するかということになると、国家行政組織法上は必ずしも明確でないということもありまして、自治大臣としては、地方公共団体でありますところの都なり村なりとも連絡調整というものを本来の任務としておるわけでございます。そういうこともございますので、自治大臣が世話役として小笠原総合事務所の運営に当たっていく、こういうのが最も実情に適するのではないかということでございます。これは国の出先機関を総合したものでございますので、これを都知事の管理下に賢くというわけにはまいらないわけでございます。そういうことで、そういう総合事務所をここに置くことが絶対、小笠原の復興なり帰島の援護なりいろいろいたしますために、双方に都合がいいのじゃないかということで、特別に設けようとしておるわけでございます。
  151. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 国の出先機関だからこういう書き方をした、こういうことでありましょうが、自治省にしたということの中には、いま行政局長の答弁では、東京都なり小笠原村という自治体とも、連絡調整という意味自治大臣が適当である、またそういう意味で地方公共団体との連絡は十分配慮をするという御答弁のようでありますから、この点はひとつ都並びに村——村の長も、これは自治大臣と都が協議してきめるので、そこで自治大臣が出ておるのはどうかということを申し上げましたが、それはさておきましても、地方公共団体との連絡調整というものに十分配慮をいただきたい、このことは強く要請をいたしておきます。  次に教育の問題でありますが、美濃部知事現地民の子弟教育が一番心配だということを当委員会でおっしゃられました。まさにそのとおりだろうと思います。現地民の方々が教師をどうやって確保するかということも非常に心配だということで、文部省の方もおいででありますが、そういった方々教育、それからまた帰島者の方々がふえていきますならば、教育施設、小中学校高等学校、こういうものの設置ということが当然必要だと思いますが、そうした場合の教師の方々の給与等も非常に配慮しなければならぬことは当然でありますが、そういった教育施設に対して当然国が全額国庫負担という形で設置をするくらいの気がまえが必要ではないか、この点はいかがでしょう。
  152. 宮地貫一

    ○宮地説明員 教育施設の面について申し上げますれば、帰島希望者の数に応じまして、将来復興計画に即応して特段の配慮をしていく考えでございます。
  153. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 きわめて簡単な御答弁でありましたが、美濃部知事参考人として当委員会で述べました希望なり、ただいま私が指摘をいたしました問題につきましては、十分ひとつ文部省として配慮をいただくように要請をいたします。  最後に私は、厚生省の国立公園局長がお見えですから、お尋ねしたいと思います。  美濃部知事も、小笠原につきましては、水産業と観光を主にし、農業を従として平和な島をぜひとも確立をしていきたいと、こう言っておられるわけであります。観光ということはたいへん重要だと思います。ただ問題は、いわゆる大資本と申しますか、観光資本が入り込みまして、この地域を食い荒らすということを一番私は懸念いたすものであります。この法律を拝見をいたしますと、第三十五条だったと思いますが、「土地の形質の変更等の制限」というものがございまして、「三年をこえない範囲内において政令で定める日までの間は、何人も、小笠原諸島において土地の形質の変更又は施設若しくは工作物の新築をしてはならない。」という規定がございます。ただその場合、「小笠原諸島に住所を有する者が、現に使用している土地について行なうとき」はよろしいというような特例がございます。そこで懸念しますのは、観光資本が実質には資本を持つ、ところが法人たる代表者は小笠原に現在住所を有する者を充てるというようなことをした場合において、現実に観光資本の手による施設というものができ得る可能性というものが出てくるのではないだろうかという点を懸念をいたします。そういうことはないのか、この点を総理府のほうにお尋ねをいたしたいと思うのが第一であります。  それからまた、三年以内という規定がございますが、この間にできれば国定公園なり国立公園なり、こういったものに指定をすべきではないかと私は思うのです。自然公園法による特別地域、国立公園の場合は、特別地域におきましては厚生大臣の認可がなければ施設をすることができません。それから国定公園の場合は都道府県知事の許可がなければ施設をすることができない、こういう規定がございます。そういたしますと、風光明媚の地域でないかと思いますので、あるいはこの地域の環境等からいきましても、国立公園ないしは国定公園たるにふさわしい地域ではないかと類推するのでありますが、国立公園局としては、この指定をお考えになっておるのか、また聞くところによれば、予備費等を流用いたしまして、現に指定のための調査もされたいという御計画もあるやに聞いておるわけでありますが、少なくとも一この第三十五条の規定、三年以内に政令で定める日までの間にこういった公園の指定をいたしまするならば、この島が都知事をはじめ住民の方々、さらには国民全体が希望するようなほんとうにりっぱな島、都知事のことばをかりれば、戦争においや火薬のにおいのしない平和な島にしたい。またがって現地におられました方の参考人の方の御意見では、文字どおりこの島を公害等のない、平和な島にされたいというようなお話もございました。そういう意味国立公園局としてはどのような御計画でおられますか、この点お聞かせをいただきたいと思うのです。
  154. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 最初の第一点につきましてお答えいたします。  第三十五条の三号におきましては「この法律の施行の際、小笠原諸島に住所を有する者が、現に使用している土地」ということでございますので、御懸念のようなことはまずないと思います。  また第四号におきまして、移住する者の場合におきましても「その者の用に供する建物」ということで非常に限定をされておりますので、御懸念のようなことはまず考えられないというふうに思っております。
  155. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 この範囲内はね。
  156. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 はい。
  157. 網野智

    ○網野政府委員 自然公園法は自然を保護するということに重点を置きながら国民の保健と休養のために利用するものというこの両面を持っております。小笠原諸島につきましてはまだ十分な調査をしておりませんが、いままでのおよそつかんだ範囲内におきましては、亜熱帯の海洋島としてもすぐれた自然景観を持っているように伺っております。第一回の政府調査団が大体そういうことを言っておりますが、ごく最近東京都が小笠原諸島に多数の調査団を派遣したわけでありますが、政府もこれに参加いたしまして、私どもの造園関係を専門にいたしておりますところの職員を二名参加させていろいろ調査をさせておるわけでございます。今回の調査によってもそれほど詳細な調査ができるというわけでもありませんので、今後さらに詳細な調査をしていかなければならないと思っておりますが、将来の方向といたしましては、国立公園国定公園という方向で、調査の結果によってそういう方向の指定をやってまいりたいと考えております。  いつまでにやるかという問題でございますが、これは従来の公園の指定等につきましても調査に相当の日月がかかる、こういう例もございますので、できるだけ急いでやりたい、こういう気持ちを持っております。
  158. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 これでやめますが、三十五条の三号、四号の規定の運用につきましては、ただいま参事官からお答えがございましたが、ひとつこの点は私の質問いたしました趣旨で厳格に運用をいただきたい。同時にこの三十五条の規定からいきますと「三年をこえない範囲内において政令で定める日まで」にこの「土地の形質の変更等」の制限があるわけでございますので、この政令による期間が切れないうちに、厚生省におきましては国定公園ないしは国立公園、できるだけ特別地域という形で自然を保護すべき地域につきましては指定をする、こういう形でぜひとも対処をしていただきたい、そういう決意で規定につきましては対処いただけますか、この点を確認をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  159. 網野智

    ○網野政府委員 もちろん三年もたたないうちに国立公園かまたは国定公園、こういうことで指定をしていくような方向で努力をしてまいりたい。いろいろ土地の所有権者との調整の問題あるいは国有地との調整の問題さらにただいま先生がおっしゃいました保護計画特別地域あるいは特別保護地区、これをどういうぐあいに設定をするか、こういうような問題等につきましては、今後の調査によってそういう面の作成について鋭意努力してまいりたいと思います。
  160. 吉川久衛

    ○吉川委員長 細谷治嘉君。
  161. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まずお尋ねいたしたいのですが、この小笠原というのはどこに帰属するのでしょうか。どこの都道府県に帰属するのか。
  162. 長野士郎

    ○長野政府委員 東京都でございます。
  163. 細谷治嘉

    ○細谷委員 東京都に帰属するというのは、どこに書いてあるのでしょうか。
  164. 長野士郎

    ○長野政府委員 これは従来からそういう考え方をとっておりまして、奄美群島が復帰いたします場合にも、そのときにそういう考え方になったと思うのでございますが、奄美群島にいたしましたところで、小笠原諸島にいたしましても、従来鹿児島県なり東京都に属しておった地域が、施政権を分離されたという状況からわが国に返ってくるということになれば、従来帰属しておったところに返ってくるということは当然であるという考え方に立っております。それが一つには地方自治法を受けましたところの従来からの地方制度によりまして、都道府県は従来の区域をもって区域としておるというものが、一時的にいま遮断されておった事情にすぎないというような考え方でございますので、法律には規定しておりませんけれども、東京都に属するということは当然だという考え方に立っております。
  165. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この法案の村の設置という第十八条、「地方自治法第五条第一項及び第七条第一項の規定にかかわらず、この法律の施行の日に、東京都に属する小笠原諸島の区域をもって小笠原村を置く。」こう書いてある。ところで第五条第一項というのは、「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による。」こういうことでありますから、第五条第一項を排除しているわけでしょう。従来の区域というやつは排除しているわけですね。それから第七条の第一項というのは、「市町村の廃置分合又は市町村の境界変更は、関係市町村の申請に基き、都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を自治大臣に届け出なければならない。」この規定も排除いたしたわけですね。そうしてこの法律施行の日に、いつの間にか東京都に属している、こうなっているわけですね。法律的には根拠がないわけですよ。これは一体どういうことなんですか。
  166. 長野士郎

    ○長野政府委員 その意味を実は先ほど申し上げたのでございまして、旧来東京都に属しておりました小笠原諸島が、施政権の分離という形で離れておりましたけれども、それがわが国に復帰してまいるということになれば、当然に東京都にそれば所属するのだという考え方、これは前例も奄美群島のときにございます。そういう前例に従って、法律上当然そういうように考えられるという考え方でございます。ちなみに、この十八条につきましては、十八条の規定で東京都に属するということをいっておるわけじゃございません。十八条の規定は、この小笠原村のことをいっておるのであります。小笠原村につきましては、そういう意味で、ここの「東京都に属する小笠原諸島の区域」というのは、当然東京都に属しておるという考え方で書いておるものでございます。そしてその「第五条第一項の規定にかかわらず」と申しますのは「従来の区域による。」ということになれば、これは旧五ヵ村が出てくるということになるわけでございますので、そこで地方自治法の五条一項の規定にかかわらずその区域全体をもって小笠原村を置くということになれば、市町村の廃置分合、御指摘のありました地方自治法の第七条の規定が当然に働くということになりますので、その第七条の規定にかかわらず、この法律ではこの第十八条をもって旧五ヵ村でございますか、そういうことになりますものを、小笠原諸島について小笠原村を直接この法律で置くということにいたしました関係上、五条一項、七条一項の規定にかかわらずという、これは小笠原村についての特例ということでございます。
  167. 細谷治嘉

    ○細谷委員 たいへんおかしい話で、小笠原村のことを書いているんだということでございますけれども、この市町村の帰属をきめる規定は、自治法の五条の一項、二項。一項というのは、従来の区域によるんだということ。この「従来の区域」というのは、この自治法というものは二十二年にできたのでありますから、そのときはもう小笠原というものは、潜在主権はあったかもしれませんけれども、日本のものじゃなかったわけですね。そうでしょう。この規定は七条を排除しているのであって、そうしますと、もう一つはっきりするのは、七条の二という規定があるわけですね。二に、無所属区域の編入「法律で別に定めるものを除く外、従来地方公共団体の区域に属しなかった地域を都道府県又は市町村の区域に編入する必要があると認めるときは、内閣がこれを定める。」と、こう書いてあるのです。私は、こういう姿からいきますと、これはどういってもぽつんと十八条に「この法律の施行の日に、東京都に属する小笠原諸島の区域」という書き方はおかしいのであって、これは、協定に基づいた小笠原諸島というものは東京都に帰属するということをこの文章の冒頭かどこかに書くべきですよ。そういう点では、この地方自治法の五条、七条、七条の二、こういう問題からいって、私は、これはたいへんな問題があると思う。それは小笠原村のことをいっているんだ、こういうことでございますけれども、あるいは奄美のことに逃げておりますけれども、問題がありますよ。これはやはりぴしゃっとはっきりすべきだ、こう思うのです。これはおそらく、長野さんは笑っておりますけれども、自治法をよく知らない総理府のほうで書いたんじゃないのか。そんなばかなことはないですよ。これは総務長官、どう思うのですか。これは帰属をはっきり法律で定める以外にないわけですよ、こんなところで五条の「従来」ということは排除しているわけですから。これはやはり明確にしておかなければいかぬ、そう私は思うのですが、どうお思いですか。
  168. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 本法ができるにあたりましては、私のほうで単独にやったわけではございませんで、自治省ともよく打ち合わせをいたし、また法制局とも十分に話をしてあるわけでございまして、これはむしろ施政権が返還された場合には、あらためて東京都に編入する手続を必要としないという一つの大前提に立って理念が統一されていると存ずるのでありますが、なお法制上の問題につきましては、ひとつ担当のほうから……。
  169. 細谷治嘉

    ○細谷委員 政務次官、どうですか。
  170. 細田吉藏

    ○細田政府委員 先ほど行政局長がお答えしたとおりだと私は思うのです。ということは、「従来の区域による。」というのは、これは小笠原のかつての五つの村がございます。これは潜在主権がございますから、私は「従来の区域」というのは、そこまで拡張して解釈してしかるべきだ、かように思うわけでございまして、これによって東京都になるのだということに解釈はできる、かように考えておるわけであります。したがって、この条文の中で「東京都に属する小笠原諸島」では、なぜここでこういうことを、そういう理論からすると、言う必要があるかという議論に対しましては、あるいはこれは「東京都に属する」と書く必要がなかったのではないかと思いますが、明確にする意味で、小笠原諸島の上につけた、こういうふうに解釈して大体よろしいのじゃなかろうか。もちろん違った解釈方法もできるかもしれませんが、私ども立法の趣旨としてはそういう趣旨であろうと思います。
  171. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はやはり、後ほどまた沖縄等の問題も出てくるわけでありますけれども、きちんとしておくべきだと思うのです。いま政務次官が潜在主権というのは、自治法五条の一項の「従来の区域」というのは、潜在主権があったんだから、返ってきたんだから、従来のとおりになったんだ、だからわざわざ「東京都に属する」なんということは必要ないのだと言われる。これを見ますと、どこにも東京都に帰属するという根拠はなくて、いまおっしゃったのは潜在主権があったということだ。「東京都に属する」というのはここにだけ出てきているわけです、形容詞として。根拠がないわけです。自治大臣が、あくまでも潜在主権というのはもう五条一項の「従来の区域」の中でいいんだ、こういうことであるなら、もうまぎらわしい。ですから、「東京都に属する」というのはお消し願ったほうがいいと思うのです。まぎらわしいですよ、これは。わざわざここで断わった。ここまでやるならば、はっきり第一条か何かに、返還された協定に基づく小笠原東京都に帰属する、こういうふうにぴしゃっと書くべきだ。それがおいやなら、「東京都に属する」なんという、いまの政務次官のことばであれば、これはお消しになったほうがいいのではないか、それだけ言っておきます。時間がありませんから。  そこで、先ほど来、山口さんからも質問があったのでありますが、一体これは自治省が主導権を握っているのかと思うと、東京都知事考えというのは自治大臣がチェックするということになるわけですね。それから村政審議会というのも政令でございます。職務執行者も政令でございます。何でもかんでも政令ですよ。言ってみますと、都の知事というのは、ただ自治大臣の同意を得て職務執行者をきめるということだけです。あとは全部条例なんというのはないのです。条例の条の字もない。こういう形、そうして自治大臣がそこまで介入しておりながら、この法律のどこにも自治省設置法の一部改正をするというのはないのですよ。総理府設置法の一部は、附則で改正されているのです。自治省設置法の一部は改正されていないんですよ。何の権限で自治大臣はこんなところにくちばしを入れるのですか。設置法は変わっていないのですよ。
  172. 長野士郎

    ○長野政府委員 自治大臣がこの法律の条文でいろいろ出てまいる、自治省設置法との関係はどうだということでございますが、これは実定法でございますので、この条文で自治大臣の権限というものが加わりますと、これは自治大臣の権限になることは当然であります。またそれを裏打ちいたすような意味もございまして、各省設置法の中にはそれぞれ権限を書いておりますが、その他法律に基づいて云々というのがありまして、この場合には、この法律に基づいて自治大臣に認められた権限ということに相なりまして、自治省設置法の中で自治省の権限ということに相なるわけでございます。
  173. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そういうふうにその他というところで逃げるから、私はまた申し上げなければならぬ。あなたのところでいま都道府県合併特例法という法律を出していますね。その法律の附則に、この法律ができた場合には自治省設置法はこういうふうに変わるとちゃんと書いてあるじゃないですか。この法律はなぜ——総理府設置法は変わっているのですよ。総理府の任務というのは三条で変わるのですよ。何だって自治省設置法を変えないのですか。その他で逃げるのですか。総理府だってその他で逃げていいはずですよ。ここに総理府だけ変えるのはおかしいですよ。こんなばかな話はない。
  174. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 総理府設置法の改正の点でございますので、私からお答えいたしたいと思います。  総理府設置法の規定は、そのままにしておきますと、依然として小笠原を総理府が所管するようなことになりますので、小笠原返還になりますれば一応はほかの区域と同じように扱うという一般的な意味合いをもちまして、いわゆる総理府の特別地域からはずしまして、本土の一部としての扱いをしよう、こういうことでございます。
  175. 細谷治嘉

    ○細谷委員 それだから私は言っているわけだ。総理府設置法のほうをはずしておいて、自治省設置法のほうは何も加えないで、その他の中でございますというような、そんな逃げ口上は許せない。これはやはり法律を直さなければいかぬ。自治大臣がこれだけ介入してくるんだから、これはやはり自治省設置法の一部改正を附則のどこかではっきりしておいていただかなければならぬと私は思うのですが、総務長官、いかがですか。こんなばかなことはありませんよ。自分のところだけは除きましたといって、そして自治省設置法は、いやその他の中ですなんて、そんなばかなことはありません、ほかの法律案でそんな例はないのですから。あらゆる法律案が出た場合には、ちゃんとそれぞれの関係の設置法の一部を改正する法律案というのが附則に出てきておるのですから、直していただかなければ了承するわけにはいかぬ、お答えを願います。
  176. 細田吉藏

    ○細田政府委員 小笠原諸島東京都に所属する、こういうたてまえをとっておるわけで、総理府のほうを直しましたのは、いま加藤参事官からお答えしたとおり、これが入っておったのではなお総理府が所管するごときことになりますから、これは絶対に削らなければいかぬ、こう思うわけでございます。小笠原諸島については、自治省設置法の中で特別なことを書かないことが即東京都として今後扱うのだ、暫定的にはいろいろなことがございますけれども、そういう趣旨でございますから、私どもは自治省設置法を改正しなくても、いまの自治省設置法でやれる、またそのほうが——特に小笠原について何か自治省のほうでこういうことをやっているというような形になるので、むしろそうでないほうが本筋じゃないか。東京都なんだ。これは御承知のように、政府の中でもいろいろな意見があったわけです。しかし、われわれは終始一貫これは東京都なんだ、こう言っておりますので、このほうがよろしいんじゃないか。  それから、実は法案を直します際に、全部設置法が変わっておるかどうかということは、私の承知しております限りでは、特にいままで入っておらないような権限が設けられます際には入っておる場合が多いと思います。しかし、それも一般の、さっき行政局長がお答えしましたように、法律の条文だけで、設置法には触れないで、いまの設置法の中で読めるという場合には設置法の改正をしない例も多々ある、かように存じておりますので、今回はさようなふうにいたした、こういうことでございます。
  177. 細谷治嘉

    ○細谷委員 了承できない。ああ言えばこう言う。逃げ道ばかり——山口質問に対しては、自治大垣がくちばしをいれなければいかぬ理由をるる述べて、私が今度は別の面から質問いたしますと、その他の中でやっていけるんだ。これは暫定法でありますから、確かに時限立法です。限時法です。それならば、私が先ほど言った都道府県合併法というあなたのほうの案だって、十年間の限時法です。それなのに自治省設置法を変えようとしているのでしょう。その他の中でやらないではっきりしているのですから、やはりその分は自治省設置法の改正をやって、そして東京都にぴしゃっと、この法律に関する自治大臣の権限というのが全部移った、小笠原村に移ったという段階でその分を修正すればいい。それはだめですよ。適当にここだけことばでごまかそうといってもだめです。
  178. 細田吉藏

    ○細田政府委員 さように適当にごまかそうなんというふうに考えているわけではございません。さっき私どもの立案いたしました趣旨を申しあげているわけでございます。  なお細谷先生のおっしゃいますように、法律がでるごとに事こまかく設置法を改正していくという方法一つ方法であろうと思います。しかしながら、何らかの形の法律が出た場合に、それを絶対に設置法の中で一々変えなければならぬかどうかということは、これはその法律の内容によりまして判断してしかるべきではないか、かようなことでございますので、私ども政府の中の法政局ともいろいろ相談いたしまして、今回のこの法律については現行の設置方でやっていける、かように判断いたしたということを申しておるのでございまして、あなたのおっしゃるようなお説は間違いであるとかなんとかいっている意味ではございませんので、ご了承願いたいと思います。
  179. 細谷治嘉

    ○細谷委員 法律というものは政府がつくるものじゃないのです。国会がつくるものなんです。国会かつくるというものである以上は——政府考えはお聞きしましたけれども、従来の総理府設置法にあった部分を削った。そしてこの暫定法に移ってきた。暫定法では明らかに自治大臣の権限というのを拡大されておる。その部分については一つの省のものを削ったわけでありますから、これはやはり自治省設置法に明記しておくべきです。それは暫定法が生きている間だけだから、未来永劫のものじゃないから入れないんだというわけにはまいりません。限時立法でもあなたのほうは自治省設置法の一部を改正しようとしているのですから、理屈になりません。これは総理府設置法のほうをいじらなければいいのですが、総理府設置法のほうだって、最後には「他の行政機関の所掌に属しない行政事務」といっているのですから、最初からこんなものを入れなくてもやれないことはなかったということですよ、潜在主権しかなかったのですから。それをわざわざ書いてあるのを削ったのですから、範囲が縮小されたのですから、これはどうしてもびしゃっとしておくべきではないか、こう私は思うのです。いわんや、これからその復興法とかなんとかいうのが出てきて、自治大臣の仕事はこれから多忙をきわめ、重要さをきわめるものでありますから、これはぜひともそうしていただかなければならぬと思うのであります。この法律のおもやのほうである総務長官、そうなさったほうがよろしいのではないかと思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  180. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 ただいま参事官からお答えいたしましたように、私のほうのケースは、これは特別の地域でありまして、これをやはり落としませんと、もとの筋へ返らない。私のほうで落としたのをく、度は自治省のほうでお引き受けいただくわけでございますが、ただいまも政務次官なり担当の方たが言われますように、法制局その他、これにつきましては十分検討いたしてまいったようでございます。御意見は十分拝聴いたしましたが、やはりこういうふうな法律上の問題はいろいろと見解があるようでございます。どうかひとつこの辺——もちろん、おっしゃるように立法は国会のほうのあれでございますが、私どもはその範囲内におきまして、大体法制的にこれでよろしいという見解を持っておる次第でございます。
  181. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治省設置法という法律を見ますと、自治省の権限というのは、ずっと数えますと、第一項だけでも具体的に三十五もあげているのですよ。一つの省のものを削ったら、これは三十五を三十六にするのはあたりまえのことじゃないですか。最後の三十五に「前各号に掲げるものの外、法律に基き、自治省に属せしめられた権限」と確かに書いてあります。それでやろうというのでしょう。しかしその前の三十四をずっと見ていきますと、そして、私が現に国会で審議しております限時立法を見ましてもそう書いてあるのですから、これはあなた方メンツの問題じゃないですよ。やはり筋の問題というより、きちんと整理すべきものは整理すべきだということを私は申し上げておるわけです。これはひとつぜひ再考をいただきたい、こう思います。  いろいろ質問をいたしたいことがあるのでありますけれども、復興法というのはいつごろできるのですか。
  182. 細田吉藏

    ○細田政府委員 私どもといたしましては、小笠原返還ができましてとりあえずの暫定は今度のこの法律でやるわけでございますけれども、一日も早く復興法を制定いたしまして、本格的な復興に取り組まなければならない、かように思います。しかし、先ほど来御答弁がございまして、いろいろ調査等も、すでに始まっておりますが、いたさなければならない。こういうことでございますので、目標といたしましては四十四年度には発足できるように、通常国会また予算編成、これにはどうしても間に合わせるというようなつもりで急ぎたい、かように存じておる次第でございます。
  183. 細谷治嘉

    ○細谷委員 その復興法というのはどこが主管省となっておやりになるのですか。
  184. 細田吉藏

    ○細田政府委員 奄美の場合も同様でございまして、自治省で所管をいたすことになろうかと存じておる次第でございます。
  185. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いつから始めるのですか。四十四年からというよりも、この法律ができたらすぐ始められるのでしょう。
  186. 細田吉藏

    ○細田政府委員 作業といたしましては、今日でも実はその準備段階は始まっておるわけだ、かように思いますので、できるだけすみやかに始めたいと存じております。
  187. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そのことは、今度の暫定措置法の中の条文にどこかあるでしょうか。何条ですか。
  188. 細田吉藏

    ○細田政府委員 第三十六条に復興法の制定という条項がございます。
  189. 細谷治嘉

    ○細谷委員 三十六条に復興法の制定というのがございますが、これは自治省がおやりになるというのですね。先ほどお話によりますと、いまもうそろそろ復興法の制定の準備を始めておる。この法律の中にちゃんと書いてございますね。それも自治省設置法をいじらぬで、自治省設置法の四条の一項三十五号の規定の中でおやりになるというのですか。小笠原のことについては、都に帰属したのだから、もう未来永劫自治省設置法はお直しにならないということですか。
  190. 細田吉藏

    ○細田政府委員 復興法を制定いたします際に、自治省設置法の改正で明確にいたしたい、こういうふうなことで進めておるわけでございます。
  191. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私がこうまで詰めましたので、やはり政務次官、苦しまぎれに法律に字句を加えたり削除したりするのは都合が悪いですからなんですけれども、それなら来年度、四十四年というのははっきりしてください、三十六条に書いてあるのですから。今度やっておいたほうがいいですよ。それが筋です。これはきちんとしたやるべき仕事なんです。ですから、これはぜひそうなさったほうがいいでしょう。  いろいろ心配があるのですが、あと二点だけ伺いたい。  この暫定法を運営するのにお金はどのくらいかかるのでしょうか。
  192. 長野士郎

    ○長野政府委員 暫定法の実施に伴いまして、この小笠原総合事務所の組織あるいはそれ以外の気象観測とか、航路標識とか、いろいろな組織なり機材なり設備の整備、それから電力関係等につきましての施設の引き継ぎ、あるいはまた、基本的にこれは復興法にもつながるわけでございますけれども、農業、林業、水産業その他復興計画を立てますための基礎的な調査をさらに進める、それから土壌の調査でございますとか、あるいは試験的な圃場を設備するいろいろな基礎的な仕事、それから帰島の援護でございますとか、現地に対する施設なり機材なりというものがございまして、具体的にそういうものを現在拾い上げまして詰めておるところでございますが、まだ全体の額がどの程度になるかということは現在のところ固まっておりませんので、金額について申し上げかねるのが現状でございます。
  193. 細谷治嘉

    ○細谷委員 総務長官、大体おたくのほうが主務省ですね。自治省の設置法を改むべきのを改めないでやったのですから、あまり政務次官を追及してもしょうがないと思うけれども、おたくのほうが厳然とした主務省ですから、どのくらいか見当を教えてください。
  194. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 この暫定法が通りますまでの間は私のほうの仕事でございまして、これがさらに成立いたしまして復興法に移ります間、自治省のほうに移るわけでございます。  私どもが考えておりまするこの暫定法は、むしろこれからいろいろなことが暫定処置として出てまいります。各省ともにこれに対しましては既定経費をもって一応充てまして、さらにどうしてもまかない切れないような件につきましては予備費で出さなくてはならない、かような次第でございまして、この暫定処置がいつから、どのようになるか、またどのケースをどう処理するか、見通しのつかない現在の状態におきまして、暫定法の御審議をお願いをしたわけでございます。  来年度の予算に、復興法ができまする場合におきましては、これは一応の青写真と申しますか、一応の計画によりまして、予算の申請をいたさなければならぬ。それは八月三十日の概算要求の時期ということになりますが、暫定法の現時点におきましては、なかなかそういう点がはかり知れないというのが現実の実態でございます。
  195. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はある程度、四十三年度においてこの程度の金が必要ではないかということを、うわさとして耳に承っております。それはア・フュー億円ズ。ア・フュー億円ズは、両三年という二、三ということではないようですよ。ア・フューというのは、常識的には五、六ということをいわれるらしいのですが、そのア・フュー億よりもやや上回っておるというのを聞いておる。そしてそれは大体予備費を充当すると伺っておるのですけれども、いまあなたのお話ですと、既定経費の中から適当にということで、どうもはっきりしませんが、これは大蔵との関係があってわざわざここでは隠しているのじゃないですか。きわめて英語の常識の、ア・フューをやや越えているということでもいいのですよ。
  196. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 私どもはそのア・フューというのが両三年と存じますので、五、六年になっては困りますが、これはいまの既定経費の項目におきまして各省がやっていただきますが、ただいま申し上げましたように、不足の場合におきましては、どうしてもやはり予備費を充当していただかなければならぬ。これが既定経費でまかなえない、予備費で充当する——予備費は予見しかたいいろいろな経費の支出のためにあるわけでございますから、そこで残念ながらこの暫定法に基づく経費はこれこれだということが明確に申し上げられないところが、この御審議を願う私どもの一番苦しいところでございます。その辺どうぞよろしく了としていただきとうございます。
  197. 細谷治嘉

    ○細谷委員 了とするもくそもなくて、大臣、ア・フューというのは、沖縄の返還についての佐藤さんの解釈が両三年ということで、英語の常識というのは大体五、六年ということなんです。それよりも上回っているらしいのですが、ただ私が要望しておきたいことは、そのうちの四十分の一か五十分の一くらいしか——先ほど参考人か来ておる際に、援護関係の費用というのはきわめて軽視されている、こう言われておりますが、要求なのかきまったのか知りませんけれども、その四十分の一ぐらいしか援護関係の費用というのは見ておられないようです。これではとてもだめではないかと思うのです。参考人は、きわめて貴重な援護関係のことがこの法律案に書いてないことはたいへん残念に思う、こう言っておりました。法律に書いても実がなければいかぬのであります。私はこの際、ここでそういうことを法律に書けということを要求しませんけれども、少なくとも私どもがうわさに聞く援護費というのは、ほんとうに微々たるもののようでありますから、これについては、今日この暫定法の重要な柱だと思いますから、格段の御努力を願いたい、こう思うのです。
  198. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 先ほど参考人が何と申しましたか存じませんが、この法律に書いてなくとも、この援護関係のことは非常に重大な問題でございまして、行政措置といたしまして援護をいたしてまいることに相なっております。   〔吉川地方行政委員長退席、床次沖縄及び北方問題等に関する特別委員長着席〕
  199. 細谷治嘉

    ○細谷委員 最後に一点、この職務執行者というものが都知事の任命で自治大臣の同意を得てできるわけですけれども、それと国の機関であります小笠原総合事務所長というのはどっちが上なんですか、どっちが下なんですか。両方とも並列されるのですか。どういうふうに調整をとられるのですか。これは美濃部さんも言っておりました。やはりこれは一体的に推進されなければならぬということが重要なことでありますけれども、この暫定措置法案を見る限りにおいてはわからない。どういうふうにおやりになるつもりですか。まあしかし、職務執行者というのは自治大臣の同意を得るのですから、政府の息のかかった人、そして政府の任命の総合事務所長というのがおるわけですから、そこのところがかなめのように思うわけですけれども、この辺はどういうふうに運営なさるのですか。私はこの際多頭政治はよろしくないと思うのです。どうなんですか。
  200. 長野士郎

    ○長野政府委員 小笠原総合事務所と、東京都が設けるであろうと私どもも予測しておりますが、都の出先機関との間におきましては、やはり相互に緊密な連絡をとりまして、実質上一体として小笠原の復興なり開発に当たる、こういう体制が私ども望ましいことだと思います。ただこの暫定措置法では、小笠原総合事務所についてだけ規定をいたしております。その他のことはこの中では規定し得なかったのでございます。これは今後東京都と密接な連絡をとりまして、そういう相互の緊密な協調体制がとれますようなぐあいに組織化してまいりたいというふうに考えております。
  201. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私はいま心配しているのは、第二十八条など、その代表的な縦割り行政というのが出ていると思う。「関係行政機関の長は、それぞれの所掌事務に関し小笠原総合事務所の長その他の職員を指揮監督する。」というのですから、長だけじゃないのですよ。長のもとにその他の職員が監督されると思ったら、いやそれどころではなくて、各省の行政機関の長は、小笠原総合事務所の長ばかりじゃなくて、その下にある職員まで指揮監督するというのですから、これは縦割り行政がずっと通っちゃっているのですね。こんなことだから私は心配しているのです。ですから美濃部さんが心配しているような、国の機関、そうして都の機関、そうしてやがてできるであろう村の機関、三者というのがばらばら、その上に各省の縦割り行政の弊害というものが及んだら、これは私は憂慮すべきことになるのじゃないかと思うので、やはり一体的に運んでいただきたい、こういうことを特に思うものですから申し上げておるわけです。これについて、これからおれがやるのだ——政務次官、法律のことは知らぬふりで、そうしておれがやるのだ、こう言っておりますから、政務次官の所信を聞いて私の質問を終わります。
  202. 細田吉藏

    ○細田政府委員 この二十八条には指揮監督の条項がございます。また二十七条では自治大臣関係行政機関の長と協議して、その職員の任免を行なうということになっておりまして、この限りでは、おっしゃいますように、縦割り行政の弊害がこういうところまで出てくるおそれがある、これは十分気をつけて運用しなければならない、これはおっしゃるとおりだと思います。十分心して運用しなければならぬと思います。現在の小笠原以外の内地状況考えてみますと、この小笠原と比較していただきますと、この長につきましては、ほんとうの気象とかいうようなもの以外は一つにしてということで、内地の縦割り行政というものがここに弊害が及ばないように配慮いたしたわけであります。しかし、関係各省ございますのでこういう形になっておりますが、運用といたしましては一体的な運用をあくまでもやる、縦割り行政の弊害をなくしていかなければ、小笠原の復興などできるものではない、かように考えておる次第でございまして、そのように運用してまいらなければならぬ、かように思っておるわけでございます。
  203. 床次徳二

  204. 松本善明

    松本(善)委員 いままでなされました質疑に重複しないように質問したいと思います。  いま一番大事な問題は、旧小笠原島民が帰島して平和に農漁業をやれるようになるということが一番大事であると思います。先ほど復興計画のことが出ておりますが、復興についての構想なり考え方がいま政府はあるのかどうか。そして、そういう方向でどういうようなことをいままでやってきておるのかということを、まとめて話していただきたい。
  205. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  復興計画構想という御質問でございますが、もちろん、この復興計画についての基本的な考え方が完全に政府の中で確定しているわけではございませんので、申し上げることも非常に抽象的にならざるを得ないわけでございますが、何しろ小笠原が御承知のような状態でございますので、小笠原と本土との間、それから小笠原諸島の中の交通あるいは通信等の施設を充実していくこと、整備していくこと、それから小笠原におきます産業開発するためには、やはり農業、水産業等が中心にならざるを得ませんので、そういう点についての十分な調査及び基盤の整備をいたしまして、農業、水産業の振興をはかっていきたい。それから結局、先ほどからお話がありますような新しい村としての小笠原村、この小笠原村が自主的な村になるように、現在、かりにこの法律が通りましても、村といいましても、その村落形成等が十分でありませんし、公共施設等も整備されていない現状でございますので、村といっても非常に不備な状態でございます。そういう村をほんとう意味の自治体として十分行政がやれるような村をつくっていく、そういうことが当然復興計画の中に入ってくる事項だと思います。それにからみまして、旧島民の帰島をどういうふうに援護していくかというようなことが復興計画の内容となっていくものと考えているわけでございます。
  206. 松本善明

    松本(善)委員 いままで政府のほうで出しました調査団の回数あるいは人数、こういう点、ちょっとお答えください。
  207. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 一月の十八日から二十七日まで、これは各省の方々をもって構成いたしまして二十六名、東京都の方も参加され、及び旧島民の方も参加していただきまして、第一回目の調査団を構成して調査を全面的にいたしたわけでございます。その後の調査といたしましては、三月三十日に出発いたしまして四月の五日に帰られた調査団、これはいわゆる専門的な部面になりますけれども、約二十名をもって構成しています。気象関係とかあるいは通信関係、それから防衛庁の関係で米軍の施設、動産を引き継ぐ関係がございましたので、その調査を合わせてやるために二十名の方が派遣されております。それから四月十三日に、これは東京都の方が、水道あるいは医療教育、港湾施設、それから将来東京都の小笠原支庁をつくる段階で必要な調査、それから郵政の関係で郵便、それから発電関係で東電の方、それから植物貿易の関係で農林省、合計十八名の方。それから四月の二十二日に、やはり東京都の方で生活保護の関係とか、あるいは労働関係とか、あるいは漁業関係、それから気象庁、運輸省、あるいは海上保安庁、郵政の関係では電信関係、それから東京都の関係で戸籍事務、そういう事務の関係調査に十七名の方が出発されております。それから四月九日にグアム経由で水産関係の指導を兼ねまして水産庁及び東京都の方、合計三名の方が行かれております。それから東京都の関係の方が今月八日の日に出発されてきのうお帰りになっております。いままでの調査団関係はそういう状況でございます。  それから一つ落としましたが、五月四日の日と五日の日、これは防衛庁長官が行かれましたが、そのときに合わせまして硫黄島まで、厚生それから防衛それから総理府の係官が行きまして、遺骨収集及び不発弾処理の調査をいたしております。
  208. 松本善明

    松本(善)委員 先日外務委員会で防衛庁長官が、現在の米軍の施設を自衛隊がすべて継承するということは協定の締結前に閣議で了解されているというふうに答弁されたわけです。  総理府長官に伺いたいのですけれども、この閣議了解というのは何月何日に行なわれたのか、そしてこれは飛行場などを何も自衛隊が管理をしなくてもいいはずだと私は思うのですけれども、この点について総理府それから自治省はどういう意見を述べたのか、これについてお答えいただきたい。
  209. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 いまのお話、どうも明確に存じませんので、さっそく調べましてお答えいたしましょう。
  210. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、飛行場その他米軍が使っておりました施設を自衛隊が管理をするということについては、閣議の中ではそう重大な問題としては論議をされなかったのでしょうか、総務長官の記憶にないというぐらいだから。
  211. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 だいぶ前でございましたが、防衛庁長官から御報告のような姿におきましてお話は伺ったことはございます。
  212. 松本善明

    松本(善)委員 閣僚の一人として長官にお聞きしておきたいのですけれども、なぜ自衛隊が飛行場を管理しなければならないのか。運輸省の航空局でもいいはずだと思うのです。そういう点についてはいま長官どういうふうにお考えでありますか。
  213. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 根拠といたしましては、佐藤・ジョンソン会談によりまする共同声明によりまして、日本側が漸次引き継ぐというふうなことでございますから、当然安保条約の規定に基づきましてやったものと心得ます。
  214. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、確かめておきますが、日米共同声明に基づいて米軍の施設は当然に自衛隊が管理をするべきものである、したがって、何の怪しむ点もない、こういう趣旨でございますか。
  215. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 いろいろ米軍の基地と申しましてもたいした基地はないのでございますけれども、飛行場その他の施設でありますとか、あるいはまた海上警備の問題でありますとか、ロランでありますとか、そういうふうな内容でございますから、防衛庁のほうにおきましてロラン以外の線はこれを引き継ごう、こういうことに相なっておると存じます。
  216. 松本善明

    松本(善)委員 私の申しましたのは、さっきその前に長官がお答えになったことを私なりに理解して、これでいいのかということをお聞きしたのです。それは日米共同声明に基づいているので、自衛隊が米軍の基地を管理するのは当然のことで何ら怪しむに足らない、こういう趣旨でありますか、こういうことなんです。
  217. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 共同声明の趣旨に従いまして日本政府がいたした次第でございます。別に特段のことはないと存じますが、当然のことであろうと考えております。
  218. 松本善明

    松本(善)委員 防衛局長に伺いたいのですが、先日増田防衛庁長官は、小笠原の施政権返還に伴って三次防にプラスアルファを予備費で要求するということを答えておりましたけれども、どの程度の予備費を要求するということになっておるのか。
  219. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 予備費の額につきましてはまだ検討中で、具体的な金額をお答えする段階までまだ至っておりません。
  220. 松本善明

    松本(善)委員 現在小笠原の米軍施設がある土地で、旧小笠原諸島住民の所有する土地はどのくらいでありますか、これをお答え願います。
  221. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  小笠原諸島全体は百四平方キロでございますが、その中で七七%ぐらいが国有地のはずでございます。したがって、それ以外は民有地、こういうことでございます。
  222. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておりますのはそういうことではなくして、米軍の施設がある土地で旧小笠原諸島住民の所有する土地はどのくらいなんだということです。
  223. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 その土地の面積をはっきり計算しておりませんけれども、まあ父島におきましてはそこに旧民有地が少し施設の中に入っているようであります。硫黄島におきましては滑走路の一部が民有地のようでございます。
  224. 松本善明

    松本(善)委員 これは施政権返還後にどうなりますか。
  225. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 施政権返還後におきましては、もちろんいまの父島の施設とそれから硫黄島の滑走路の点につきましては、日本が引き継ぐことになっておりますので、一応日本が引き継ぎ、その施設そのものは国有ということになりますけれども、その国有施設そのものが乗っております土地の使用関係につきましては、この法律十二条におきまして一応暫定的に措置をとっているわけでございます。
  226. 松本善明

    松本(善)委員 これは結局米軍の施設をいつでも自由に使わせるように置いておく、そのために旧住民の土地が取り上げられるという結果になるのじゃないかと思います、この十二条は……。こういうアメリカに対する追随の態度というものはいろいろ感ずるわけですけれども、返還協定の五条の請求権の放棄の問題についてもやはりそういうことを感じます。  全島がジャングル化した小笠原の現状、それから二十三年間帰島をはばまれて苦しんだ旧小笠原島民の損害の補償の責任というのはアメリカにあると私たちは思うのですけれども、この問題についていままで政府の答弁の中で、四月十九日の衆議院本会議では三木外務大臣は「日本人に間する特に提起されなければならぬ請求権の実体はない」ということを答弁いたしました。それから昨日の外務委員会で外務大臣は見舞金という形で処理ができておるということで請求権というものを今度の協定で放棄した、こういうことを言っておるのです。どうもこの両方とも一貫をしないように思うわけです。  総務長官にお聞きしたいのですけれども、この請求権の放棄について、旧島民はこれは戦争犠牲者であります。ジャングル化してしまって非常な被害を受けておるわけです。この請求権の放棄についてはどういうふうに考えておられるか、はっきりした考えをお聞きしたいと思います。
  227. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 外務大臣の言われましたのは、御承知のとおり六百万ドルの見舞金でございまして、実際的にはそれが当時の引き揚げられた方々に対しまする大きなかてになっておるわけでございます。それから今回の協定によりまして一応引き継ぐ時点におきまして、その時点で債権、債務の関係を切るという形に相なると存ずるのでありますが、その後におきまする諸般の問題は、日本政府の権限におきまして処理すべきものである、かように考えておりまして、その返りました時点におきまして、これが処理されたものとみなされる、かように存じます。
  228. 松本善明

    松本(善)委員 どうもよくわかりませんが、六百万ドルのことも私存じておりますけれども、放棄した請求権の総額というのはどのくらいなんだろうか、旧小笠原島民の受けた被害というのはどのくらいに計算をしておるのか、これをお聞きしたいと思います。
  229. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 三木大臣の御答弁の中で請求権のことに触れられた点につきましては、その金額その他交渉の段階で私漏れ承っておる限りにおきましては、具体的にはそういう問題はないように聞いております。請求権そのものを具体的に放棄したかどうかという点につきまして、私の聞いておる限りにおきましては、そういう請求権があるという判断はしておられないように聞いております。
  230. 松本善明

    松本(善)委員 六百万ドルにしろ金が来ておる、非常に少ないと思いますけれども、一体島民についてどういう損害があったのか、その総額を計算しないで六百万ドルが多いとか少ないとかいうことは言えないのじゃないかと思うのです。旧島民がどんな被害を受けているかということについて、政府のほうでは計算もしてないというふうに伺ってよろしいですか。
  231. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 六百万ドルとのからみにおきましては、その六百万ドルをアメリカ側が示した段階で、こちらとしても資料その他から判断しまして、一応その損失の補てんに見合うものと考えてあれを受領したわけでございます。したがって、あの関係におきましては、財産権及びその利益の損失につきましてはあの六百万ドルでまかなわれている、そういうふうに判断しているわけでございます。その他の請求権、今度の協定によりまして特に請求権があるというふうには聞いていないわけでございます。
  232. 松本善明

    松本(善)委員 これは相当たいへんな問題だと思いますが、小笠原の旧島民は家を失い土地を失い、すっかりジャングル化してしまって、これからどういうふうに生活をしていこうかということを考えておるわけです。その被害総額が六百万ドルで済んでいる、ツー・ペイになっているという考えなんです。そうしたらもうすっかり、小笠原島民は何も要求することはできない、援護措置も何も問題にならぬのではないですか。そういう考え政府がおるのですか。六百万ドルで一切の被害がもう済んでおる、そういうことですか。
  233. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 私の申し上げましたのは、請求権としてアメリカ側との関係におきまして、一応、特に使用できなかった財産上の利益の損失という点につきましての見舞い金の算定が六百万ドルになった、こういうふうに申し上げているわけでございまして、もちろん今後帰島に際しまして、帰島の促進をはかることは当然でございます。それに基づきまして旧島民生活を再建できるように、この法律もその趣旨を明らかにしているわけでございますので、全然その援護をしないということを申し上げたつもりはございません。旧島民の帰島につきましては積極的に援護していきたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  234. 松本善明

    松本(善)委員 いまの答弁では旧島民はとうてい納得できないというふうに思いますが、時間の関係もありますので、さらに聞きたいと思います。  この法律の二条では、「旧島民ができるだけすみやかに帰島し、生活の再建をすることができるように配慮する」——「配慮する」ということばがあり、現住民に対しては「生活の安定がそこなわれることのないように努めなければならない。」と書いてある。旧島民に対しては配慮だけなんです。これはやはりかつて戦争犠牲者として、もとのように生活できるようにしなければならぬ、そういうふうに考えるべきではないかと思いますが、この法律考え方では、旧島民に対する帰島に政府は非常に冷たい、力が入ってないというふうに感じますが、どうでしょう。
  235. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  この二条におきまして「配慮する」という表現と「努めなければならない」という表現に差を持たした意味は、私、立案の段階では考えていないわけでございまして、この法律におきまして旧島民に対しましては御承知のように耕作権の問題あるいは漁業資源の保護にからんでの問題というようなことを考え、今後帰島に際しましては、旧島民の方も国の機関あるいは都の機関等に就職ができるように配慮するというようなことを考え、また現島民につきましては、現在生活をしております関係でその生活がそこなわれないように賃借権の設定とか、あるいは先ほど申し上げましたような旧島民と同じように漁業関係の資源保護にからみまする一つの地位を与える、その他失業対策等につきましても配慮しているわけでございます。
  236. 松本善明

    松本(善)委員 長官に伺いたいのですけれども、援護の問題は非常に大事だということを言われたわけですが、これは何か法律で援護措置を定めるというようなお考えがありますか。
  237. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 その問題は暫定法ではございませんで、復興法におきまして明確にいたさなければならぬ問題である、かように考えております。
  238. 松本善明

    松本(善)委員 現在、小笠原の米軍と雇用関係にある労働者で、けがをしてアメリカから補償を受けておる者が二名あるというふうに聞いております。これは施政権返還後だれが補償するのかということ。  それから、小笠原の施政権返還に伴って米軍が撤退をし、そのことによって離職した者に対する退職金、失業手当はだれが払うのか。この二つ……。
  239. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  現在、労働災害を受けた方二人でありますが、その方につきましてはすでに米軍が治療して、治療は一応済んでおるようでございます。したがいまして、その点につきましてはアメリカ側のいわゆる外国人賠償法の適用があるかないか、その点はっきりいたしませんけれども、もしありとしますれば、アメリカ側が今後の賠償ということの任に当たるわけでございます。この点につきましては、協定の五条一項のただし書きで放棄していないものに入るというように考えられるわけでございますが、しかし、本土におきましての労災関係の方には年金等の支給も考えておりますので、その点とのバランスを考えまして、この法律におきましては第五条で特に手当を設けたい、そういうふうに考えているわけでございます。  なお、アメリカ軍の引き揚げに際しましての離職者につきましては、退職金は一応アメリカ側が支払うように聞いております。したがいまして、アメリカ側が退職金を支払いましたあと、離職者の就業の手当て等につきまして、第六条の特別の規定によりまして促進をはかっていきたいと考えておるわけでございます。
  240. 松本善明

    松本(善)委員 最後に政務次官にお聞きしておきたいのですけれども、先ほども同僚委員が直轄思想ということでいろいろお聞きしておったわけですが、そのときの行政局長の答弁は、国と都と村が三者一つになってやる必要があるということが趣旨であります、この法律の二十一条できまっています職務執行者の任命について自治大臣の同意を得なければならない——確かに国と都と村が一体になることはけっこうでございますけれども、しかし、そのために自治大臣が同意をしなければ都知事が職務執行者を任命できないというようにする必要は全くないと思うのです。そういう意味で行政局長の答弁は別に答弁になっていない。何ゆえに自治大臣が同意をして初めて任命できるようにするのか、これは自治権の侵害ではないかというふうに思うのですが、これについての政務次官の見解を聞きたいと思います。
  241. 細田吉藏

    ○細田政府委員 しばしばここで問題になっておりますように、小笠原は二十数年間の空白がございまして、先ほど来からもお話が出ておりますが、国として相当思い切った復興に対する措置を講じなければならない、かように思うわけでございます。そういう点におきまして、他の地域とは異なる特別な事情がございます。したがいまして、私どもは、この職務執行者につきまして自治大臣が同意をいたしますということは、反面、自治大臣といいましょうか、国といたしまして、大いにこういう点について——都だけにどんどんやってもらうということも当然でございますけれども、国として少なくとも復興については大いに努力するという責任も非常にあると思うわけでございます。そういった意味で、これをどういうふうにきめるかということでございますが、三者一体となってひとつやる。こういう趣旨自治大臣の同意を必要とする、こういうことにいたしたわけでございまして、これだけをもって、地方自治の本旨に反したり、自治権の侵害になるというふうには考えなかったわけでございます。
  242. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっと納得いきませんのでもう一度伺いたいのですけれども、国が金を出すのはけっこう、それから援助をするのもけっこうだと思います。しかし、それを都知事——その住民の選んでいる都道府県にやらしていく、これが当然の地方自治ではないかと思うのです。金を出すから、その職務執行者については同意を得なければならぬというようなことにする必要は全くない。どうしてそうしなければならぬかということについての政務次官のお答えは十分伺えなかったと思うのですが、なぜ同意を得るようにしたのかという点について、端的にもう一度お答えいただきたい。
  243. 細田吉藏

    ○細田政府委員 先ほど申し上げましたように、小笠原の復興につきましては、ほんとうに国と都と、そしていわゆる村と一体になってやっていかなければならぬ、こういう非常に特殊な例になっておりますので、自治大臣の同意を必要とする、かようなことにいたした次第でございまして、きわめて特殊な事態でございますのでそういう形にした、こういうことでございます。地方自治の面からいいますと、それだけ後退しているということは御説のとおりだと思いますが、こういう特殊な事情でございますのでかようにいたしたような次第でございます。他意があるわけではございません。
  244. 松本善明

    松本(善)委員 やはり自治権の侵害になるということを私は申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  245. 床次徳二

    床次委員長 中谷鉄也君。
  246. 中谷鉄也

    ○中谷委員 総務長官のお答えをいただく前に、厚生省の援護局長にお尋ねをいたしたいと思います。  昨日も長官の御答弁をいただきましたが、硫黄島の遺骨収集の問題についてであります。  援護局からは硫黄遺骨収集資料を作成して配付されておりますが、その末尾に添付されておりますところの硫黄島戦闘経過要図、これを見るときに、当時、戦没者は、陸軍一万二千七百二十三名、海軍七千四百六名。これらの同胞がいかに戦ったか、そしていかに死んでいったか、そのことをまのあたりに見るような気がするわけなんです。そこで、小笠原返還にあたりまして、硫黄島の遺骨の収集ということはどうしてもやらなければならない仕事であるというふうに私は思います。そこでまず、厚生省設置法等にも明らかなように、遺骨の収集は国の仕事であることは明らかであると思いますが、その点を確認をいたしたい。同時に、いわゆる東京都に編入された小笠原村の所属であるところの硫黄島、こういうふうな状況のもとにおいて、遺骨収集については東京都にどのような協力を求めるか、これは全く国のお仕事としておやりになるのかどうか。この問題についてまずお答えをいただきたい。  次に私がお尋ねしたいのは、遺骨収集の問題は、これは文字どおり、どんなに予算が要ろうが、どんなに困難であろうが、なさなければならない国家としての責任がある仕事であると私は考えます。一体この遺骨収集について、厚生省としては、いつごろから本格的な調査に従事し、どのような作業のプログラムの中で行なおうとしておられるか。予算の問題については、一体どの程度の予算——これは幾ら要っても、使わなければならない、用意をしなければならないところの課題であり、問題であると思うけれども、どのような予算を予想しておられるか、これらの点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  247. 実本博次

    ○実本政府委員 まず第一点の問題でございますが、先生のお示しのように、厚生省設置法第十四条の三には、「未帰還者等の状況調査及び死亡処理並びに旧陸海軍関係の死亡者の遺骨及び遺留品の処理に関すること。」という規定がございまして、この規定が、国家機関の中での厚生省が戦没者の遺骨の収集を行なっている根拠でございます。  これを、東京都の区域に編入された場合に、やはりそのままでやるかというふうな御質問趣旨と承りますが、これは国内、国外を問いませず、旧陸海軍関係の死亡者の遺骨の収集につきましては、厚生省がこれを行なうということになっておりますので、国が引き続き、この問題につきましては全面的に処置をしてまいりたい、かように考えております。ただしその際に、地方公共団体としていろいろな協力をお願いするということは、事実上あり得ることでございます。  第二点の遺骨収集、特に先生のお尋ねは、硫黄島についての遺骨収集を中心にしてのお話だと思いますが、先生おっしゃいますとおり、この遺骨収集につきましては、どんなことをしても、どれほど予算がかかろうと、遺骨の収集を完了しなければならないということはお示しのとおりでございます。これが返還されますと同時に、いろいろほかの地域と違ったむずかしい条件がございますので、そういう点につきましては、単に厚生省だけの力でできない部面もございまして、関係方面、特に防衛庁、総理府の各関係機関と寄り寄り協議いたしておるところでございます。何をやりますについても、まず硫黄島の特殊な状態から見まして、遺骨収集を最初にやっていただくということで、いまその計画について協議いたしておるところでございます。
  248. 中谷鉄也

    ○中谷委員 午前中の美濃部参考人の発言の中にもありましたけれども、すでに調査の結果明らかになったように、十八キロメートルに及ぶトンネル、それがその後米軍によって爆破されて、入り口をふさがれているというような状態になっている。さらに不発弾もかなりある。このような中で遺骨収集は、国のために散ったところの多くの人人に対する非常に敬愛な気持ちを持って収集をしなければならない非常に困難な作業であると思われるのでありますが、この本件の調査——本格的な作業に取り組む前提としての調査はすでに行なわれておりますけれども、いわゆる本格的な調査というのはいつごろ行なわれるか、どのような規模で行なわれる予定か、ひとつ局長の御答弁をいただきたい。
  249. 実本博次

    ○実本政府委員 先生お話にもありましたように、あの硫黄島の遺骨が眠っている状態と申しますか、場所というものがいま立ち入り禁止になっておりますので、二十七年、二十八年と、占領行政が樹立されましたときに、国が参りました調査に基づいた資料だけしかないわけですが、それによりましても、相当な長い壕の中に、それも数十あるといった壕の中に、不発弾なんかと一緒に眠っておられるというふうな状態であるわけでございますので、これを普通の遺骨収集の場合のように、ただ厚生省のほうから出かけていって、事前にいろいろな資料にたよりながら調査をやる、こういうことは無理な条件でございますので、そういう状態で、どういう技術屋なり、どういう装備をした人がどれだけ行けばいいかということをまず調査しなければならないと思います。そのためには、そういう幾つもある壕の中に、一説によりますと、硫黄島の特殊な地質なり特殊な条件から壕がふさがれている場合が多い。その壕の中に亜硫酸ガス等が充満しているというような場合もございます。そうなれば、そういうところをまずボーリングでもしてみて、安全な条件にしてその中に捜査に入るというふうなこともございますので、それを処理するためのいろいろな技術的な機械、装備、あるいはどういう技術家を連れていくかというふうな調査をまずどうしても徹底的にやらなければならない。これはやはり返還がきまりまして、完全にこちらのサイドでものごとがすべて行なわれるという時点に至りました直後、なるべく早い機会にと、具体的にまだ寄り寄り相談いたしておりますが、かりにこの七月一日に返還されるとなれば、二、三カ月の間にはそういう調査にかからなければならないのじゃないかというふうに考えておるところでございます。
  250. 中谷鉄也

    ○中谷委員 長官にお尋ねをいたしたいと思います。  昨日遺骨の収集の問題について長官から非常に熱意のある御答弁をいただいたと私は思います。まさに遺骨の収集の問題はあらゆるものに先行して超党派的に取り組むべき問題であるというふうに私は考えます。長官はそれに対して、それ以上の非常に誠意のある御答弁があったと思うのですが、ひとつこの機会に、国民感情を持ち出すのではなしに、私の全く個人的な感情を率直に長官に申し上げて、お答えをいただきたいと思います。あえて国民感情という僭越なことばを使いませんが、私の個人的な感情として問題を提起いたしたい。と申しますのは、摺鉢山の一番頂には勇敢に戦ったといわれるアメリカ合衆国の海兵隊員のための記念碑が厳然として建っている。しかし考えてみると、一番高い摺鉢山にそのような勝者の記念碑が建っている、その下には二十何年間鬼哭啾啾として遺骨が放置されたままである。三木外務大臣はジョンソン大統領に対して、この記念碑が長く存置されることを念願するというところの書簡をお出しになった。そのような考え方一つの理性的な考え方であろうかと思いますけれども、われわれの同胞の遺骨が野ざらしになっておるという状態の中で、一番高いところに記念碑が建っていることについて、少なくとも私は個人的に納得しがたいわだかまりを感ずる。  そこで、参事官にお答えをいただきたいが、まずそのような摺鉢山の上に建っている記念碑というのは、暫定措置法の立場からいうと、どの条文によって今後その存在の根拠があるのか、法的根拠は一体何条なのか、これはどういう工作物に相なるのか、このことをお答えいただきたい。  同時に、私は長官にひとつお答えをいただきたいけれども、もしこのままでこの私の感情が単なる個人感情としてしりぞけられるのでないとするならば、少なくとも私は、私の父親が、私の兄が硫黄島で戦死したとすれば、これは二十何年たってもやはり一日も早く遺骨の収集をしてもらいたい。それがしかも自分の家族が勝者の記念碑の建っている下で野ざらしになっておるという状態は耐えられない。そのことも私は、一日も早く遺骨の収集が行なわれなければならない一つの理由であるように思う。そういうふうな私の考え方はどこかに偏狭なものがあるのだろうか。私は必ずしもそうは思わないけれども、ひとつ長官の率直な御答弁をいただきたい。少なくとも私は、外務大臣が言っておるような、このような状態のもとにおいて長くここに存置されることをただ手放しで大統領に書簡を出すような気持ちにはなれない。この点についてお答えをいただきたい。
  251. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。  暫定措置法の中にいかなる根拠があるか、これは十二条にありますが、後ほどまた……。  それから、ただいまのお話しのように、摺鉢山の上にありまする米軍の戦勝記念碑というものに対しましては、われわれ国民感情としてどうしてもそれだけでは済まされないものがございます。最後の最後までお国のために戦っていかれました護国の英霊に対しまして、われわれもまた勇敢に戦っていただきました将兵の記念碑をぜひ建てなければならぬ、かように考えております。  それから御遺骨の問題でございますが、摺鉢山のところにありました壕だけが岩盤の掘さくによってできておるのであります。あそこの洞窟の中の御遺体も一日も早く収集しなければならぬ、かように考えております。さらに摺鉢山以外のところのものは、御承知のとおりにあそこは土地が非常にもろいところでございまして、あの当時の抗道はもうほとんど埋まってしまっておると見なければなりません。これらの御遺骨の収集につきまして、おっしゃるように超党派的に、ほんとうに全国民的な姿において、英霊をりっぱにわれわれとしてお守りし、また御遺骨の収集に当たりたい。またその組織その他につきましては、先生方に御協力と御相談をいただきたい、かように考えております。
  252. 中谷鉄也

    ○中谷委員 いわゆる遺骨収集のための予算は、少なくとも予備費からでも支出されるということであろうかと思いますが、一言だけお答えをいただいて、御退席ください。
  253. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 ただいま援護局長お話しになりましたように、事、この件に関することは、もうほんとうに例外中の例外と申しますか、どんなことがありましても十二分の予算をとってやらなくてはならぬ。暫定的には予備費なり何なり万全を期します。
  254. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ、参事官にお尋ねいたします。  そこで私は、何も偏狭な考え方を持つことが現在正しいとは思わないわけなんです。ただ、しかし、三木外務大臣のジョンソン大統領に対する書簡にお書きになっているような、アメリカのほうの記念碑がある、だから日本のほうのも建てましょう、それで仲よくというには、あまりにも硫黄島の現実は遺骨がいまなお野ざらしになっている、何か私は納得のしないものがあるということを申し上げた。  そこで、摺鉢山の山の上にアメリカ合衆国海兵隊の記念碑のあることが、いかにもあたりまえであり当然である、そうしてそのことが何か直ちに許容されているように理解している向きもある。そこで私は、記念碑のことであって、こういう言い方はある意味においては誤解を生むかもしれないけれども、あえてお尋ねする。一体記念碑が、どのような法根拠で、あるのですか。先ほど長官がちょっとおっしゃった十二条だとすると、一体これは何だろうか。施設なのだろうか、工作物なのだろうか、これは当然私が申し上げたように工作物だろうと思う。そうすると、一体この工作物は「公用又は公共の用に供するもの」としてどういうことに相なるのか。アメリカ合衆国の軍隊が使用した区域を含むとあるけれども、公用というのは「条約に基づく提供の用を含む。」とある。一体この記念碑はどこに入るのか。日米安保条約の何かに入るのかということを私はあえてお尋ねをいたしたい。もちろん十二条のどこにもその根拠がないのだというふうなことを御答弁になったから、取れということを申し上げるつもりはない。そういうことを言うつもりはないけれども、少なくとも私が明確にしたいというか、お答えをいただきたいのは、日本の領土の硫黄島の摺鉢山の一番高いところにあることがあたりまえであり、当然であるという考え方がもしありとするならば、私は一応ただしておきたいと思います。いかがでしょうか。
  255. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先ほど長官は、十二条に、こういうふうに申し上げたわけですが、もちろん十二条の条約に基づく提供云々という関係は全然ございませんので、米軍が安保条約に基づきまして提供施設区域の一部として利用するという含みで申し上げているわけではございません。現に工作物がある、しかも米軍がつくった工作物でございますが、そういうものがあるということを前提にいたしまして、その工作物を今後どういうふうにしていくか、たとえば国の公用というわけにはまいらぬかもしれませんが、摺鉢山自体は国有地でございますので、そういうことになりますと十二条の問題ではないというほうが正しいのでございまして、私ちょっと、私有地かと思いましたので、失礼いたしました。そういう国有地の一部であるということで、国有地の管理の一形態として今後どういうふうにもっていくかということは、三木大臣の書簡の問題もございますので、そういう点も含めて今後具体的に検討していくべきものと考えております。
  256. 中谷鉄也

    ○中谷委員 いずれにしても国有地のところに結局アメリカの海兵隊の記念碑がある。そういうふうな記念碑は、まさに日本の国有地なんだから、日本の国のほんとうの好意、恩恵によってアメリカのその記念碑は建ち得るのである。とにかく日本の国の恩恵と好意なしには何ら建ち得ないのだ、高いところに建っておるのはいかにもあたりまえのようなという考え方をもし持つとするならば、国家互恵平等の原則に著しく反する、こういうことだけは私は——このような発言はある意味においてはきわめて偏狭なものとしてとられるおそれはあるけれども、私はやはり現に遺骨が野ざらしになっているという状態のもとにおいては、このことだけは申し上げておきたいと思うわけであります。まさに国有地管理の問題としてアメリカ日本、三木外務大臣のジョンソン大統領に対する書簡の中においてはこのことはお約束しておるけれども、国有地管理の問題としては今後他のいろいろなところにおいてまた論議さるべき問題だ。こういうふうに約束をしたからといって、お手紙を差し上げたからといって、直ちにそれが当然というものではなかろうと思いますが、この点はいかがですか。
  257. 加藤泰守

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  三木大臣の書簡でございますので、外務大臣として出されたということは十分考慮に値するわけでございますが、しかし、先ほど申し上げましたように、国有地でございますので、国有地管理の中で十分検討される余地はあるというふうに思います。
  258. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そういうことを私があえて質問いたしましたのは、遺骨収集ということに現在の政府の大きな責任があり、むしろ国民の悲願があるということを前提に置いて私は質問したので、他意がないということを申し上げておきます。  そこで一言だけ農林省にお尋ねをいたしたいと思います。  農地の問題については、同僚委員から実態に即した非常に詳細な質問が出ましたので、私のほうは一点だけお尋ねをして質問をとどめたいと思いますが、暫定措置法の十四条一項には「許可」ということばが出ております。すなわち「特別賃借権を譲渡し、若しくはその特別賃借権に係る土地を転貸し、又はその特別賃借権に係る賃貸借の解除をし、若しくは解約の申し入れをしてはならない。」するということは許可が必要なんだ、こういうことで「許可」ということばが出てまいります。次に二項については、前項、第一項の規定によって設定された賃借権、要するに特別賃借権のうち当時賃貸借が終了しておった者、その者について設定された賃借権については、相当の期間を経過しても耕作をしないときには、東京都知事の承認を得て、その賃借権にかかる賃貸借の解除をすることができる。ここで問題になることは、「相当の期間」ということの内容だろうと思うのです。  そこで、「許可」あるいは「相当の期間」というふうなものを解釈する具体的な内容であり、特に「相当の期間」ということについては、私は賃借権者を保護するという立場からお尋ねをしたいと思うのですけれども、まず「相当の期間」の中にはどのような客観的な条件が考えられるのでしょうか。考えられなければならないのでしょうかということをお尋ねいたします。たとえば、暫定措置法はできたけれども、復興法がまだ制定されていない。したがって復興計画ができていないという客観的な阻害条件も、相当な期間を経過しないものとして理解さるべきである。あるいはまた、交通、運輸の便がいまなお万全でない、開墾耕作にきわめて困難であるという事情も相当の期間を経過しない客観的な条件として配慮さるべきである。さらに通信の問題もしかりであろう。教育の問題というのは、ただに人間は耕すだけではなくて、そこで人間としての最低限度生活を営なまなければならない。教育の環境整備ということも相かかわってくる問題であろう、住宅の問題もしかりであろう、さらにジャングル化したものに対するところの国あるいは地方公共団体のいわゆる防疫等の措置というふうなものが行なわれるということも、これまた相当の期間というものの客観的な条件になるだろう。そのほかにどのようなものが条件として配慮されなければならないだろうか。これはみだりに解除さるべきでないという前提で私はお尋ねをする。同時に、はたしてしからば、そのような客観的条件の中において、主観的な条件というか、個々具体的な条件というか、所有権者対賃借権者の個人対個人の中において規定するところの相当の期間を判断する判断基準になる条件というものは一体何だろう、この点についてもひとつ御担当の立場からお答えいただきたいと思います。まだ質問がありますけれども、これだけで質問は終わっておきます。
  259. 中野和仁

    ○中野説明員 ただいまの十四条の規定は、先生がお述べになりましたように、賃借人側の保護の観点から置かれておる規定でございます。したがいまして、一つには東京都知事の許可をいたします場合も限定的に考えておりまして、たとえば本人が老人でありまして、後継者の一人に譲渡をするような場合、あるいは病気で一時転貸をする場合等、制限的に考えたいと思っております。  それから二項の場合、申し出によりまして、できました賃借権について知事の承認を受けまして解除ができるということでございます。そのときの相当の期間につきましては、先ほどお述べになりましたように、復興法のことがあり、あるいは交通、運輸等、そういうもので開墾が具体的にできる条件ということができません間は、当然この相当期間に含まれないと思います。それ以後考えられるわけでありますが、ここにおきました規定の趣旨が、大体全面的に開墾ができるという状況になりまして、多くの人が入っていくというような段階になりましても依然として開墾に着手しないといったような状況がある程度の期間続きました場合には解除ができるというふうに考えております。したがいまして、本人が帰りまして非常に広いところである、一部開墾をいたしましてまだ残っておる、その残っておるところはまだほうってあるということで相当の期間にするということは考えておりません。それからまた、島によりまして、そういう状況が違うと思います。したがいまして、具体的には、事案が起こりました場合に、その事案ごとに判断をすべきだというふうに考えております。
  260. 中谷鉄也

    ○中谷委員 終わります。
  261. 床次徳二

    床次委員長 以上をもって連合審査会は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十二分散会