○小渕
委員 ただいま提案になりました
小笠原諸島の
復帰に伴う
法令の
適用の
暫定措置等に関する
法律案に対する
附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表して、私がその趣旨の説明を行ないます。
案文はお手元に配付のとおりでありますので、案文の朗読はこれを省略いたしますので、御了承願います。
昨年十一月、佐藤総理大臣、ジョンソン大統領、両首脳会談の結果、
小笠原諸島の早期返還について合意を見、引き揚げ旧
島民の
方々のみならず、全国民待望の夢が、平和時における領土返還という画期的事実として歴史の上に定着することになったことは、まことに喜びにたえないところであります。
本
法案審査の経過を顧みて、多くの
政令事項があり、また今後検討
調査を要する事項がきわめて多いので、特に次の諸点に関し、
政府に対し適切な配慮を要望したいのであります。
第一は、
小笠原諸島復帰に伴い、同諸島が旧
島民の引き揚げ後二十数年間自然の荒廃のままに放置されてきた現状にかんがみ、冬暖く夏涼しい海洋性気候の島々の美しい自然を生かし、全国民の願望にこたえ、広い視野から自然と産業の融和した新しい村づくりを目ざして、
小笠原諸島の
復興計画の早期確立とその開発の促進に十分な
努力をいたすよう要望するものであります。
第二には、
父島に居住する現
島民の生活の安定についてであります。御承知のように、現
島民は
米軍施政下で医療、教育、住宅、生活環境施設等、
米軍依存の生活になれてきたのでありますが、
米軍撤退に伴う生活不安に困惑を感じていると思われます。
政府は、この現住民の生活激変に対する不安をできるだけ解消する
責任があると考えます。特に、日本語教育と本土教育への接続並びに就業機会の供与については、特別の
努力を要望したいのであります。
第三に、
復興計画及び
復興法の策定についてであります。荒廃の極にあるとさえいえる
小笠原の島々は、おのおの特殊な
事情がある点は理解できるところでありますが、土地
所有権の確認、病虫害防除対策その他
復興開発
計画の樹立のための基礎的な
調査であって、長期を要しかつ徹底した
調査を必要とするものは、どうしてもこれを早期に着手し、的確な判断をなし得る措置を急ぐことは、当面緊急のものと考えるのであります。
的確な資料に基づいて明らかとなった
小笠原各島の特殊
事情を適切に盛り込んで
復興計画をつくり、
復興法の調整に当たるよう
政府は最大の
努力をいたされたいのであります。
この
過程はきわめて困難なものがありましょうが、
計画の策定にあたっては、国、
東京都は、同島
復興開発のにない手である旧
島民の意向を十分に反映することにつとめるとともに、国は、
地方自治法の
本旨にのっとり、
東京都との分担を明確にしつつ、緊急かつ適切な協力を行なうことを要望するものであります。
また、
計画は、
小笠原の各島の実態に基づく総合的な
計画として策定されるよう特段の
努力をいたされたいのであります。
第四に、
復興計画の実施についても、前項に述べたように、関係者の緊密かつ効率的な協力を
前提として、各島の実態に応じた施策をできるだけ同時に進めるよう、一刻も早く帰島したい旧
島民の
立場を考慮に入れ、適切な配慮を望むものであります。
これらの所要の経費については、強制引き揚げさせられた旧
島民の帰島援護の問題と、荒廃の極にある
小笠原の特殊
事情をも勘案し、
現行法上長高率を下回らない
補助等、特別の財政措置を講じられたいのであります。
第五は、
硫黄島における特殊
事情として、その不発弾処理及び戦没者の遺骨の収集は、
復興開発ないし旧
島民帰島の
前提とも考えられます。特に戦死者御遺族の
立場から見て、その遺骨の収集をすみやかに実施されるよう要望するものであります。
第六は、本法における権利の調整に関し、旧小作人に対する特別
賃借権、漁業の操業制限、土地使用権の設定、緊急
事業のための土地使用等の措置に関連し、本土における
現行法体系の
立場から、また
復興開発
段階までの措置について、本決議の趣旨に応ずる配慮を特に要望するものであります。
第七は、日本軍の命令に従って強制引き揚げを余儀なくされた旧
島民が帰島し、その生活の再建をはかるために、これに必要な再建資金に関しては、特別の長期低利の融資を行ない得るよう特段の措置を講じ、引き揚げ旧
島民の長期にわたる忍苦の生活にこたえるよう特に要望するものであります。
最後に、本土より千余キロを隔てた
小笠原の島々は、その交通、通信施設の早急整備がその
復興開発のキーポイントとなるので、
政府は、当面の交通確保はもとより、将来の
小笠原の交通、通信の整備に最大の
努力をいたされたいのであります。
以上をもって趣旨の説明を終わります。(拍手)
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〔参考〕
小笠原諸島の
復帰に伴う
法令の
適用の
暫定措置等に関する
法律案に対する
附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当つては、次の事項に関し、遺憾のないよう適切な配慮を行なうべきである。
一、
小笠原諸島の
復帰に当り、その荒廃の現状に鑑み、
政府は国民の願望に答え、その自然と産業が融和した新たな村づくりを目指し、
復興開発を促進すべきである。
一、
復帰に伴う現
島民の生活の激変に対し、その不安の解消に努め、就業並びに子弟の教育等生活安定につき、適切な措置を講ずること。
一、
復興計画及び
復興法については、これに必要な基礎
調査の実地を急ぎ、これに基づく
小笠原の特殊
事情に即し、国・
東京都並びに旧
島民など関係者の緊密かつ適切な協力により、各島にわたる総合
計画としてこれを策定すること。
一、
復興計画の実地に当つては、各島の実態に応じた施策をできるだけ同時に進めうるよう配慮するものとし、必要な経費は、
現行法上の最高を下廻らない効率
補助をとる等十分な財政措置を講ずること。
一、
硫黄島における戦没者の遺骨は速やかにその収集を図ること。
一、農地法の
適用については、
復興法の施行に応じて、速やかに
適用できるよう措置するとともに、自作農による農業振興を図ること。
一、漁業者の生活安定を図るため
小笠原諸島周辺海域における漁業秩序の確保、乱獲防止等について万全の対策を講ずること。
一、本法による土地使用権の設定及び緊急
事業のための土地使用等については、土地
所有権者等の権利の保護に充分配慮すること。
一、
島民の生活の再建を図るため、その特殊
事情を勘案し、特別の長期・低利の融資を行ないうるよう措置すること。
一、本土及び各島間における交通・通信施設を早急に整備すること。
右決議する。
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