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1968-05-09 第58回国会 衆議院 沖縄及び北方問題等に関する特別委員会 第14号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月九日(木曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 小渕 恵三君 理事 本名  武君    理事 川崎 寛治君 理事 美濃 政市君    理事 永末英一君       大村 襄治君    上林山榮吉君       古屋  亨君    箕輪  登君       山田 久就君    中谷 鉄也君       帆足  計君    依田 圭五君       斎藤  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  出席政府委員         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         気象庁次長   増田 誠三君  委員外出席者         総理府特別地域         連絡局監理渡航         課長      守谷 道夫君         法務省民事局第         三課長     住吉 君彦君         大蔵省主計局主         計官      原   徹君         大蔵省主税局総         務課長     中橋敬次郎君         文部省初等中等         教育局審議官  佐藤  薫君         農林大臣官房調         査官      結城 庄吉君         農林省農地局管         理部農地課長  小山 義夫君         水産庁漁政部長 岩本 道夫君         運輸省海運局参         事官      野村 一彦君         運輸省航空局飛         行場部長    梶田 久春君         労働省労働基準         局労災管理課長 桑原 敬一君         労働省職業安定         局失業保険課長 増田 一郎君         自治省行政局行         政課長     林  忠雄君         自治省財政局財         政課長     首藤  堯君     ————————————— 五月九日  依田圭五君が議長の指名で委員に補欠選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置  等に関する法律案内閣提出第一〇四号)      ————◇—————
  2. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案審査のため、来たる十五日水曜日、参考人出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人意見聴取は、連合審査会において聴取することとし、参考人人数及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。箕輪登君。
  6. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 小笠原の返還に伴いまして、現島民及び帰島する旧島民生活の安定について、若干お尋ねしたいと思います。  この法律を読んでみましてまず思いますことは、現住民住宅敷地等について法定賃借権設定いたしておりますが、土地所有権者境界確認はどのようにして行なうつもりでおりますか。まずそれを聞きたいと思います。  また、正当所有権者法定賃借権に不服な場合は、国に対して補償などの要求ができるかどうか。これらを含めまして、政令の考え方をお尋ねいたしたいと思います。
  7. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  戦前におきます土地所有権の帳簿、登記簿でございますが、それは戦火で焼失しておりますので、現在登記簿そのものはないわけでございますが、現存する土地台帳公図がございますので、それをもとにいたしまして資料の整備をはかって、所有権境界確認をしていきたいというふうに考えております。また、現在実施中の旧島民意識調査によりまして、土地関係所有状況あるいは移転状況等についても調査をいたしておりますので、その結果に基づきまして、いま申し上げました土地台帳公図等資料とあわせまして、十分確認をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、もちろん境界確認につきましては、今後実地に測量を実施いたしていきたいというふうに思います。  そういうことで、関係者申告等を考慮していけば、大体確認できるのではないかというふうに考えております。  それから、旧所有者に対する賃借権設定関係での問題でございますが、その点につきましては、アメリカ施政下におきまする現島民使用関係は、一応アメリカ施政下においては合法的なものであったというふうに認められますので、それと今度本土復帰したときの本土法令に基づく所有権との調整、こういうことになるわけでございます。そういう関係でございますので、その関係調整するために賃借権設定という形で処理したい、こういうことでございますので、直ちに補償問題等は出てまいらないと思いますけれども、ただ、何といたしましても、旧所有権者が帰島しようという場合に、自分土地が使えないという状態が出てまいりますので、その点につきましては、国有地の貸し付けあるいは国有地との交換というようなことで処理いたしまして、帰島の場合の障害にならぬようにしたい、そういうふうに考えております。
  8. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 それでは、現地に進出するたとえば国の小笠原総合事務所あるいは東京都の機関、そういった現地進出の諸機関住民が採用されるようにこの法律で書かれておりますが、どの程度採用されることに考えておりますか。もし採用されなかった場合、残る者があったとする場合、これらの生活安定措置をどのように考えておるか。  それから、小笠原がわが国の施政権下に入ってくることによって、従来われわれが聞いておりますところでは、約二百ドルくらいの月収がある、七万円ちょっとの月収がある。それらが、返ってくることによって、むしろ現在の島民アメリカの軍に働いている給料よりも少なくなるのではないか。そうすると、従来より生活が苦しくなるのじゃないかというようなことも心配されるわけであります。それでも大体現地進出の、国あるいは地方機関に吸収されて雇用される場合には生活は何とかやっていけるのではないかと思うのですけれども、それらの点もあわせて、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  9. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先生のいま御指摘になりましたように、現在、現地島民の方の収入は多い方では二百ドル、大体平均百五十ドルくらいだろうと思います。そういう収入を今後いかにして確保していくかということは非常に困難な問題だろうというふうに考えます。ただ、やはり本土とのバランス考えてみますと、そこまではなかなかいかぬかもしれぬけれども、できるだけ本土生活とのバランスが維持できるようにはかっていくということは当然だろうと思うのですが、そのために政府関係機関、それから地方公共団体、その他の機関現地に来られる場合には、できるだけ現地の方に就職機会を与えるという意味で配慮してほしいという意味規定を設けているわけでございます。それにどの程度就職が可能かという点は、今後どの程度の規模の機関が設けられるかということにもからんでまいると思うのです。ただ、何しろたとえば気象関係等非常に技術程度の高いところにはそういう知識のない方は就職できませんので、そういう技術的に程度の高い機関にはなかなかむずかしいと思いますが、できるだけ就業指導職業指導等をやりまして、就職機会をできるだけ広げていきたい、そういうふうに考えております。
  10. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 できるだけ就職機会を広げてまいりたいという前向きの御答弁があったわけでありますが、先ほどお尋ねしたとおり、できるだけ就職機会を与えるように考えていきたいというだけではなしに、施政権が実際日本に返ってきて、日本統治権が及ぶ状態になるその瞬間から失業者が出てくるようでは、これはたいへん困るだろうと思うのです。収入の道がなくなってしまう。そういう問題も、国あるいは地方公共団体出先機関雇用者として吸収されなかったような場合を考えますと、非常に現地人たちは不安に思うだろうと私は考えるわけです。それらの人たちに対してどういうふうに措置していくか、これもあわせて御答弁願いたいということを申し上げたのですが、答弁漏れになっているからちょっと……。
  11. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  現在五十七名の方が米軍に雇用されております。その中でどの程度政府関係機関あるいは地方公共団体機関で雇用できるかという点は、先ほど申し上げましたようなことで、まだはっきり申し上げ得る段階ではございませんが、しかし、たとえば現地の方は非常に英語が得意でございますので、そういう特殊技能を生かして就職あっせん等は十分できるだろうというふうに考えるわけです。これはもちろん現地において英語を活用する機会というのはむしろ少ないかもしれませんが、本土においてはそういう機会も相当ふえるわけでございますので、そういうことも考えますれば、英語能力等を活用するという一つ就職指導の道もあるわけでございまして、そういうことでさしあたって五十七名の方の就職の問題につきましては、いま失業保険あるいはこの法案で重要視しております駐留軍離職者に対する措置法等によってある一定期間はまかなえるわけでございまして、その間にいろいろ技能的な指導をして、十分その能力に合うような職業をあっせんしていくという努力はしていきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  12. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 厚生省にちょっとお尋ねしたいのですが、非常に前向きの答弁をいただいたわけですけれども、かつなお、雇用関係が結ばれないという心配が完全に消えたわけではないわけであります。そして、もしも雇用関係が結ばれない、また本土にも来る意思がないという人々で生活困窮者が生じた場合には、やはり本土並み、あるいは特例でさらに考えていただいて、生活保護法適用等が行なわれるかどうか伺いたい。——厚生省からは来ておりますか。
  13. 梅本政府委員(梅本純正)

    梅本政府委員 社会局長がお答えすべきでございますが、そういう生活困窮者が出ました場合には、当然生活保護適用になるものというふうに考えております。
  14. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 文部省にひとつお尋ねしたいのですが、現地島民はいままではほとんど教育に関しては何の不安も持っておりませんでした。ところが、今度復帰がかなったことによって最も不安な問題の一つ教育だと聞いているわけであります。特にいまの子供さんたち青年たち日本語教育を全然受けておりません。したがって、日本語特別教育ということが必要になってくるわけでありますが、これらが本法の暫定措置と関連して、どのようにこれからの日本語特別教育というものを考えていくか、これを文部省からお答えをいただきたいと思います。
  15. 佐藤説明員(佐藤薫)

    佐藤説明員 おっしゃるとおり、教育の問題は非常に重大でありまして、全体の教育としては、当然日本国民に対するという観点から、日本国民と同じように全般を進めていくわけでありますが、先生のおっしゃるとおり、日本語が問題でありまして、その場合に、実際に日本語をだれが教えるかという問題になります。したがって、いま私たち考えておりますのは、たとえば小学校中学校につきまして教員を配置する場合にも、普通とは違いまして、相当手厚い配置をする必要があると思いますが、そういう先生のお力をおかりしまして、当然、小中の生徒に対してはもちろんのこと、また、一般島民においてもそういうことを進めたい。しかし、まだ具体的にどうするということについては、はっきりきめておりません。
  16. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 まだ具体的にきめてないけれども、これはやはり早急にきめてもらわないと、現地島民は全部心配をしておる問題だと思いますので、早くおきめいただいて安心をさせていただきたいと思います。  それから、やはり文部省に関連してお聞きいたしますが、いま小中学校のお話は出ましたが、御承知のとおり、高校以上になりますと、父島にはハイスクールがございません。また、カレッジもありません。そこで、中学校を出た人方は、ほとんどグアム島かあるいはハワイのほうまで行って、いわゆる留学というかっこうで勉強されているようであります。そこで、この人方が非常に心配なのは、日本復帰した場合に、自分たちはもうアメリカのほうに留学できない。しかも、ハイスクールカレッジに通っている学生さん方も、ほとんど学資がかかっていないのですね。承りますと、父島米軍将校の添書か何かをもらっていって、グアムハワイの向こうの将校の家庭にそのまま住まわせてもらって、そのかわり、何か軽い労働ぐらい手伝うという条件、それで、学資もほとんどかからないで通っておりますが、自分たちは、日本復帰した場合に、日本ハイスクールあるいはカレッジに通わなければいけなくなるであろう、その場合に、いま言ったように、百五十ドルないし二百ドル以上もらっておった自分たち生計も、そんなハイクラスの生計でなくなってしまうだろう、それから、さらに、教育費も両親が出さなければならない、こういうふうになってくると、勉強ができないのじゃないかという心配を持っているかに聞くわけであります。これに対して、文部省はどのような対策を考えておられるか、御答弁いただきたいと思います。
  17. 佐藤説明員(佐藤薫)

    佐藤説明員 お答えいたします。  まず、ハイスクールでございますが、現在、グアム島には二十人おりますが、二年、三年生は卒業まで米軍が引き受けてくれるようであります。残ったのは一年生の十名でございます。なお、さらに、この六月に卒業します中学校生徒十一名、合わせて二十一名の問題が当面の問題でございます。まず、その学校につきましては、東京都とも話し合っておりますが、東京都の計画としては、現地高等学校をつくって、そこに入れたいという考えを持っておるようでございます。  次に、お尋ねの学資の問題でございますが、日本本土の場合であれば、当然育英会育英資金もありますが、それでは当然不十分でありますから、たとえば同和でもらっておりますような特別の奨学金もございますし、また、いろいろ別途考えるべき措置があると思いますが、具体的ははっきりきめておりませんけれども、何らかの手厚い措置はしてあげなければならないと考えております。  カレッジの場合も、なかなかむずかしい問題で、具体的には出ませんが、当然、育英会資金以外に別途の措置考える必要があるのじゃないかというふうに考えております。
  18. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 義務教育課程は九年ありますね。その義務教育課程において、いま日本教師はいらっしゃるのですか。
  19. 佐藤説明員(佐藤薫)

    佐藤説明員 現在はおりません。
  20. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 これからは、本土から日本教師が行って教えることになるわけですか。
  21. 佐藤説明員(佐藤薫)

    佐藤説明員 大体そういう考えでございまするが、人数としては、本土の場合よりもよほど手厚い、多くの人数を配置すべきであると考えております。
  22. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 その場合、教師給料はどうなりますか。
  23. 佐藤説明員(佐藤薫)

    佐藤説明員 当然、本土の場合でも僻地手当がございまするし、そのような手当は支給すべきでございますが、それは教員だけではなく、全般の公務員に関係いたしますので、文部省だけでもきめられませんので、各省と相談いたしまして、歩調を合わせながら、手厚い手当てをしたいというふうに考えております。
  24. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 それじゃ文部省はよろしゅうございます。  また厚生省の問題になりますが、いま文部省の言った教育の問題、それから、これからお尋ねする厚生省医療の問題、この教育医療は、いままで全く小笠原島民たち心配してなかったようであります。特に米軍保護のもとに、ちょっと重い病人が出ますと、航空機を使ってグアム島へ連れていく。盲腸ぐらいでも、もうグアム島で手術をしておる。今度日本復帰してきますと、グアム島へ持っていくわけにいきませんし、一々こっちへ持ってくるわけにもいきますまい。そこで承ったのでありますが、大体東京都が、まあうそかほんとうかわかりませんけれども、日本からお医者さんを派遣することになった、給料は大体三十万円できまったとかきまらないとかという話を聞いております。そこで、問題になってくるのは、日本から一人のお医者さんが行った場合に、その人はおそらく内科系統の人だろうと思います。あらゆるものを見れる人でないのではないかと、こっちにいて老婆心ながら心配しているわけです。この点、厚生省は何かお考えがあるか、あるいは、これは東京都の問題であるから都が心配することだけれども、このように聞いているというような情報がありましたならば、お知らせを願いたいと思います。
  25. 梅本政府委員(梅本純正)

    梅本政府委員 医師並びに医療機関の問題でございますので、厚生省といたしましては、医務局が中心になっておると思いますが、私のほう、保険関係からも非常に関心のある問題でございます。やはり医療機関の問題につきましては、東京都と以前から話し合いを続けておりまして、医師並びに医療機関の問題につきましては東京都で手配をしていただくというふうになっておりまして、ただいま先生のおっしゃったように、医師の派遣の問題については、そういうふうに聞いておりますが、現在のところ、われわれの保険局関係の直診でございますとか、そういう点まではまだ議論が出ておりませんが、今後できるだけ医療に支障のないように、東京都と十分御相談をいたしまして、進めていきたいと考えます。
  26. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 これは、保険局長さんですから、あまり詳しく聞いても御答弁がいただかれないかもしれません。医務局の所管ですからわからないでしょうが、いま申し上げたように、ただ内科のお医者さん一人派遣した——本土では、僻地に無医部落もありますが、そこにお医者さん一人派遣した、それだけでも僻地の人は喜びます。しかしながら、どうやっても、非常に遠く離れた離れ島では、そのお医者さん一人で処置できないような問題がたくさんあると思うのです。その場合に、いま申し上げたように、米軍はすぐ軍用機を使ってグアム島に運んで安全に手術もしてくれるし、高度の診察あるいは検査をやってくれていたわけですね。したがって、日本復帰することによって、従来どおり高度の医療体制がしかれるであろうかどうかということが、島民のやはり重大な不安の一つであろうと考えますので、総合病院を建てれといったってなかなかそうはいかないわけでしょう、なるべくそうした不安のない方向に、ひとつ東京都とも御相談いただきまして、措置をとっていただきたい、かように考えます。  そこで、今度は保険局長さんの専門の問題でありますが、従来は、いま申し上げたように、米軍のほうのもとに完ぺきなと言えるような医療体制がしかれていたわけです。しかもその完ぺきなと言えるような医療体制の中で、医療費というものは一銭もかかっていないのです。今度日本復帰することによって、日本法律のもとで、日本医療体制の中で医療給付を受けるかっこうになるだろうと思いますが、そうした場合に、健康保険国民健康保険というものがおのずから出てくるわけであります。そうすると、従来は金はかかっていなかったのだけれども、今度からは保険料をまず払わなければいけない。国民健康保険などは健康保険と比べて御承知のとおり保険料がたいへん高いわけです。政府機関に吸収された人たちは、共済組合共済保険で処理されると思いますけれども、政府機関やあるいは地方公共団体機関に吸収されなかった人たち、これらは国民健康保険だと非常に高い保険料を払い、かつその保険証を持って診療所に行った場合に、さらに初診料あるいは入院料あるいは薬価の一部負担だとかいうようなことで、負担金がかかりますし、完全給付でありませんから、一〇〇%の給付をやっておりませんから、金を出さなければ医療にかかれない、こういうことになってまいります。これを見ますと、年金局長さんも来ておりますが、年金だとかあるいは労働省関係労災保険失業保険だとかいうようなことは書いてありますが、その医療保険の問題については、この法律で全く触れていないように私は思います。しかし、これを触れないでおくことは、むしろ島民に不安をつのらせることになるのではないかと思いますが、この機会厚生省考え方をはっきり言うことによって、それが安心を与えるのだ、あるいはまた将来改善を要するなら改善を要するということで、われわれも前向きに考えていきたい、こう思いますので、以上申し上げた点に対する厚生省保険局長としてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  27. 梅本政府委員(梅本純正)

    梅本政府委員 医療保険関係につきましては、その暫定法には出ておりませんけれども、健康、生命に関係することでございますので、小笠原諸島復帰すれば、本土に施行されております医療保険関係法律が直ちに適用されることになるという形で、もう自動的に適用されるような考え方で、その暫定法には出てないわけでございます。御承知だと思いますが、ただ手続上、国民健康保険につきましては、条例を制定しなければならないという手続がございますが、暫定法にも出ておりますように、職務執行者条例を制定することができるという規定がございますので、復帰と同時にできるだけ即日条例が制定できるというふうに指導いたしたいというふうに考えております。まずそういう形で医療保険関係法律は即日適用になるようにしたいという考え方一つでございます。  それから、御指摘の例の負担問題でございますが、ほとんどのさしあたり関係者は、国民健康保険が問題になろうと思います。やはり国民健康保険法適用するということになりました場合には、国民健康保険法の各条項によりまして実施をしていただくということになれば、法律制度のたてまえとしては、保険料を拠出願うということは曲げられないというふうに考えます。しかし、御指摘のように、経済情勢が変動するわけでございますので、その辺の特殊事情考えまして、いわゆる国民健康保険には減免措置もございますし、あるいは財政措置として特別の事情ということで、特別調整交付金を交付するという制度もございます。そういう点は十分にこちらも考えておりまして、どの程度減免実施するかということにつきまして、ただいま東京都とも相談をいたしております。できるだけ大変動が起こらないような形で島民のために前向きに考えてみたいというふうに考えております。
  28. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 もう一つ関連しまして。——医療給付の内容はどうなりますか。一〇〇%いままでやっておるわけです。今度国民健康保険では一〇〇%になりません。特に家族の問題もあります。どうお考えですか。
  29. 梅本政府委員(梅本純正)

    梅本政府委員 その点は、現在本土適用されております法律がそのまま適用になりますので、やはりこの給付の割合、その他の関係につきましては、本土と同じ状況にならざるを得ないというふうに考えております。ただし、その点につきまして、現行法令制度におきましての保険料減免措置、その他負担の軽減をはかり得る制度を活用しまして、できるだけ負担を軽減していきたいというふうに考えております。
  30. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 まだ東京都との打ち合わせもすっかり終わってないようでありますから、この機会にお願いしたいことは、東京都との打ち合わせ、これから再三機会を持たれると思いますので、厚生省考え東京都の考えを一致させて、なるべく経済変動、百八十度の転換みたいなものでありますから、島民医療の面で負担のかからないような御相談を速急にまとめるように御努力いただきたいと思います。  総理府にお尋ねいたしますが、生活環境の整備はどの程度行なわれておりますか。
  31. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お尋ねの点は、ただいまの生活環境ということでございますか。——現在四十四世帯あるわけでございますが、その四十四世帯に供給されます水道は、米軍の水道を利用しておるわけでございます。それから電気は火力発電がございます。それも米軍が現在つくってそれを運営しておるわけでございます。その水道及び電気の供給につきましては、非常に低廉な額で供給を受けておるという現状でございます。
  32. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 そこでお尋ねしたかったのは、水道、電気が非常に低廉な額で供給を受けておる。水道も簡易水道程度のものだろうと思いますけれども、今度の復帰によって、水と電気は生活に欠かされないわけですが、この水の料金、電気の料金が従前と比べてどの程度変わる予定ですか。全く変わりませんか。
  33. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  水道はたぶん村営ということになるかと思いますが、現在の四十四世帯に対する水としては現在十分でございますので、いまの時点においてどの程度の料金を取る必要があるかということは、まだ検討はしておりません。電気につきましては東電が大体引き受けてくれると考えております。このほうも料金はまだわかりません。
  34. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 まだそこまで煮詰まってないようでございますから、これ以上お尋ねいたしませんけれども、だんだん話しておってもおわかりのとおり、各省にまたがる事項で全部が同じことは、やはりそれぞれの生活、経済、そういったものが激変してしまうわけですから、そこに生活環境、またそれに伴うところの料金というようなものがあまり大きく変わらないようにやってやるのが親心ではないかというふうに考えますので、今後煮詰めていく段階において、そういうことを頭の中に御考慮いただいてお進めをいただきたいと思います。
  35. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 いまの先生の御指摘の点は、現実に料金がきめられる前に十分よくその事情をそれに反映するように指導してまいりたいと思います。
  36. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 旧島民がいますぐにでも帰島して、かつての自分土地考えられるようなその場所に建築等を行ないたいというときに、どういう手続をしたらいいのか、政府はその手続等について旧島民に対して適当な周知の方法を講ずる必要があると思うのですが、現在そういうことを考えておられますかどうか。
  37. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問の点につきましては、先ほど申し上げましたように、土地境界が必ずしもはっきりしないのが現状でございますので、極力その土地台帳の復元とあわせて、現状の境界確認に努力する予定でございます。ただいまの御指摘の点につきましては、具体的にその土地が十分その者の所有に属するということが確認できるように、その台帳の記載事項等と照合いたしまして、その土地の上に建物を建てる場合の建て方等について指導をしていきたいというふうに考えております。この場合におきましても、土地の形質変更の禁止の規定がございまして、具体的に旧島民が帰島する場合には、その事務所長の許可を得て建物を建て得るというようになっておりますが、そういう場合におきましても、争いがあとに残らないように、十分指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  38. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 これはどこに聞いていいのかわかりませんけれども、あるいは総理府か労働省か、いま五十七名の島民の方々が米軍に雇用されておるわけですね。そこで今度米軍が帰ってしまう、こういうことになりますと、一応そこで米軍との雇用関係は切れてしまう。そこでお尋ねしたいことは、その際に米軍が五十七名の方々に退職金を出す考えがあるのかどうか。またこの件については下相談をされておるという話も聞くわけですけれども、退職金を出していただけるならば、どの程度退職金を出すものか、この点お答えいただきたいと思います。
  39. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  ただいまの点につきましては、外務省を通じまして米側に折衝いたしましたところ、支給するという意思は表示されているわけでございます。ただ、どれだけどういう方法でというような細目については、まだ十分煮詰まっていないわけです。
  40. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 本土の例もあります、沖縄の例もありますから、そうした例にならって、できるだけ退職金を出してもらえるように、あなた方のほらが窓口になって外務省と相談されて、ひとつ善処していただきたい、かように要望しておきます。  それから、もうこれで終わりますが、この法律案を見ますと、国民年金、それから労働省関係で労災、失業保険離職者対策などで特例措置考えておるようでありますが、この特例措置の概要というものは全くわかりませんか。概要でけっこうですから、厚生省から始まって労働省、ひとつその概要をお答えいただきたい。
  41. 伊部政府委員(伊部英男)

    ○伊部政府委員 御案内のとおり、昭和三十六年四月一日以来、わが国は国民皆年金になっているわけでございますが、小笠原島民につきましては、もとより適用されていないわけでございます。したがいまして、復帰後、もとより国民年金適用されますが、復帰前の期間、この期間を将来の年金給付を受くるにつきまして、年金給付が確保されるような措置を講じたいということで、ただいま政府内で検討いたしておる段階でございます。
  42. 桑原説明員(桑原敬一)

    ○桑原説明員 労災保険につきましては、保険制度でございますので、保険に加入しない前の事故につきましては補償ができないような形になっておりますが、現在特例措置を設けまして、以前の事故につきましても、復帰時におきましてまだ療養中とか障害が残っているとか、そういった給付事由がございますれば本土並み給付をいたしたい、そういう意味のことを考えております。
  43. 増田説明員(増田一郎)

    増田説明員 失業保険につきましても、ただいま労災からの話がありましたように、復帰前の期間につきまして給付を行なうということは、現行法のたてまえではできないわけでございます。したがいまして、特例措置を設けまして、復帰前につきましても、その期間被保険者であったものとみなしまして給付を行ないたいということでございます。  次に、駐留軍関係離職者に対する特例措置でございますが、御承知のように、現在駐留軍関係離職者に対する特別措置法がございます。これと同じような内容のものを駐留軍関係離職者が失業されている場合に行ないたいということでございまして、具体的な内容を申し上げますと、おもなものは、離職後三カ年間この方々が失業されております場合は就職促進手当というものを出すわけでございます。その他各種の援護措置がございまして、自営の場合には自営支度金、移転の場合には移転資金を出す、こういったようないろいろな措置がございますが、本土並みのそういった駐留軍離職者に対する手厚い措置考えたいということでございます。
  44. 箕輪委員(箕輪登)

    箕輪委員 各省庁それぞれ、たいへん前向きの姿勢で、小笠原の今後の問題について御検討いただいていることは私も十分認めることができたと思います。  最後に要望でありますが、何回も言っておりますように、戦争の惨禍で不幸にして外国の統治権が及んでいたわけでありますが、その外国の、アメリカ統治権が及んでいたときよりも、悲願がかなって日本施政権が及ぶようになって、生活の環境やあるいは諸制度の面で劣るようなことがあっては、島民の方々あるいは旧島民の方々のために私どもはいけないというふうに考えておりますから、どうかいまのお気持ちを持たれまして、ますますかつてよりもいい町づくり、国づくりをやってくれる、こういう方向でお進めいただきますことを心から御要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと考えます。
  45. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 小渕恵三君。
  46. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 それでは、箕輪議員に引き続きまして、ただいま議題となっております法案につきまして若干の御質問を申し上げ、政府の考え方確認いたしておきたいと思います。  最初に、最近終わりの初めということばが使われるのでありますが、これはベトナムの戦争の終局的、究極的平和を目ざして和平交渉に入ったことをさし示すことばに使われるわけであります。この表現の流儀をかりますと、それこそ小笠原のこの問題につきましては、これからの島民あるいは現住民の努力はもとよりでありますが、やはり政府ないし都のこれからの施策の努力に待つところが大きいのではないかと思っております。それこそこの表現をかりますと、小笠原の問題はこれからが初めの始まり、最も最初であるというふうに考えられると思います。こうした点につきまして政府の努力に待つところが大きいわけでありますので、この際最初に政務次官から、政府としての決意をお伺いをいたしておきたいと思います。
  47. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 ただいま最後に、箕輪議員からいみじくも御指摘があったとおりの気持ちでなければならぬ、こう思っておるわけでございます。せっかく本土復帰ができた、本土の全国民がそれに対して拍手かっさいをしてこれを迎えておる。しかるに現地の現住されておる方々のその生活様式なりあるいは生活のレベルなりそういうものがそこなわれるということであったのでは、何のための復帰ぞと、こういうことになるかと思います。そういう意味でわれわれがとりあえずまず心配しなければならぬことは、またそれが暫定措置法の一番のねらいでもあるわけでありますけれども、現在住んでおられる現住民の方々に対してそういう不安感をなくすきめのこまかい配慮をしていかなければならぬということであり、また引き揚げて、これからひとつこの復帰を希望しておる方々に対して希望を持って帰れる環境をつくりあげる、こういうことだと思うのであります。もちろん、それらのことの最終的な結論というものは、復興計画が立案され、それもひとつできるだけすみやかにやるつもりでおりますが、その復興計画というものは、結果的には四十四年度からそれを進めていかなければならぬと思いますが、四十四年度からすみやかにそれらの不安感をなくするような具体的施策が進むように政府全体としていま鋭意調整をし、それに対する準備を進めておる、こういうことでございます。われわれは以上申しましたような見地に立って、この現住民並びに復帰希望者、全国民が納得できる、そういう体制整備というものにつとめてまいりたい、こう考えております。
  48. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 さて、法案の内容について承りたいわけであります。先ほど箕輪議員は、文部、厚生関係についてお伺いをいたしたのでありますが、きわめて多岐にわたりますので、私は特に、総理府、防衛庁、運輸省、大蔵省、この各省に関連する問題にしぼってお尋ねをしてみたいと思います。したがいまして、質問の要項も多いのでありますので、簡略に御答弁をいただきたいと思います。  最初に総理府にお尋ねをいたしますが、この法案を作成する段階におきまして、すなわち旧島民あるいはそれを代表するといいますか、小笠原協会、あるいはまたこの復帰に伴って強い期待と幾分の不安を持っている二百数人の現住民、こういう人たちの希望なり要望なりという点について配慮されたかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  49. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  小笠原協会の方々の御意見というようなものは、前々からわれわれとしては十分伺ってはおりますので、そういう点は顧慮しながら立案したつもりでございます。ただ、現地の方々につきましては、この一月の十八日から二十七日まで調査団を派遣しております。その段階で現地の方々の御希望を十分伺ったわけでございます。そして、それをこの法案にも織り込んできた、こういうことであります。
  50. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 こまかいことに入ります。  この法案の二条で、現住民生活安定がそこなわれぬよう配慮すると示しているわけでありますが、具体的に言いますと、復帰をした段階から、俸給者にとっては一応収入の道が閉ざされるわけでありまして、もちろん貯金そのほかのたくわえもあると思いますけれども、そういった点について具体的にどう措置されるか、お伺いいたします
  51. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、五十七名の方が米軍に雇用されております。その中でフルタイムで勤務されておる方は大体三十名くらいだろう。したがって、一番問題になるのはその方々だろうと思います。そういう方々につきましては、さしあたっての問題としては、先ほど労働省の方からお答えがあったように、失業保険それから離職者対策等ということで収入の点は一応考えておるわけでございます。また、何といいましても、産業的にいいますれば、すぐにできそうなのは水産関係だろうと思います。そういうことで水産関係の問題についても十分配慮して、収入は何とか確保できるように努力するというつもりでおります。
  52. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 この点につきましては、念には念を入れてひとつ配慮をお願いいたしておきたいと思います。  次に、本法案におきまして、旧島民の定義をいたすにあたりまして、一応昭和十九年三月三十一日まで島に在住しておった者ということを規定をしておるわけでありますが、この基準の日の決定をしました理由についてお伺いいたします。
  53. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 昭和十九年の三月三十一日と申しますのは、ちょうど終戦前に強制的に引き揚げの行なわれたのが昭和十九年の四月の四日でございましたので、その直前の三月三十一日を一応基準にいたしたわけでございます。この点につきましては、アメリカ側から六百万ドルの見舞い金が出た際におきましても、この日を一応基準として分配をいたしております。そういう過去のあれもございますので、基準日をこういうふうにきめたわけであります。
  54. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 この昭和三十六年における六百万ドルの授受に関する交換公文に基づいての配分もその日を一つの基準日とされておるようでありますが、これは例外的ケースかもしれませんが、数がどのくらいになるかわかりませんが、この配分の段階におきましては、それ以前にも特殊な事情本土に渡っておった人たちにも配分されたというふうな話も聞いておるのですが、この点はいかがでしょうか。
  55. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  本土へ引き揚げられたあるいは小笠原から住所を移された方の中で、たとえば就学の場合、応召の場合、あるいは徴用の場合、そういうような関係の場合は、実際上は住所は移っておりましても、取り扱い上は依然として生活の本拠はもとのところにあるというのがいままでの考え方でございます。そういう意味で、そういう方々に対しては、依然としてその時点において住所は小笠原にあったという扱いをいたしてきております。
  56. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 そうすると、今回の法律に基づいてもそうした処置がされるということで確認してよろしいわけですね。——けっこうです。  次に、本法案は政令委任事項がきわめて多いわけであります。第二条の趣旨を貫き通すためにもすべて政令にゆだねるということでありますので、われわれとしても相当注意を払っていかなければならない、こう考えるわけであります。  そこで、政令予定事項につきまして、先ほど申し上げた各省で現在の段階で考えられておるものがありますれば、ひとつ御披露いただきたい。聞きますると、総理府が一応打診したところによりますと、各省庁合わせますと約七、八十の政令事項があるとも承っておるのでありますが、先ほど申し上げました各省でお示しできる点については、お示しをいただきたいと思います。
  57. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 御指摘のように、相当政令できめなければならない事項があるというふうに考えております。これは奄美のときにも相当多数ございまして、これは各省別に政令を出していただいた経緯があります。そういうことから言いまして、今回も相当の特例を認めていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。この第八条の一号から五号まで掲げておりますもの以外に、いまおもなものを申し上げますと、たとえば道路交通関係で自動車とか原動機付の自転車等につきましての運転資格という問題がございます。これにつきましては、現在小笠原でそういう自動車を運転しあるいは自転車を使っている現状を考えまして、一定の期間は本土の道路交通法による資格を持たなくともそれが運転できるように処置したい。それから食糧管理法で配給関係がございますが、そういうものにつきましても、いま直ちに食糧管理法に基づく配給のいろいろな手続をとるわけにもまいりませんので、こういう点についても特例を設けていきたいというふうに考えております。また水産業協同組合、さしあたっていますぐに問題があろうかと思いますが、こういう組合をできるだけ早くつくっていかなければならないと思いますので、その点について必要ならば特例を設ける、あるいは昔、小笠原で漁業を営んでいた方々につきましては、場合によれば準組合員的な資格を与えるということも考えられるのではないかというふうに思います。それからあと出入国管理に関しましては、これはあそこに外国人がそのまま在留することも考えられますので、そういうための特別措置あるいは予防接種につきましての特別措置あるいは計量の単位に関する事項等につきましての特別措置ということが考えられるわけでございます。
  58. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 政府は過去かなり積極的に各般の調査を行なっておるわけでありますが、これからも専門的、技術的調査を続けていかなければならないというふうに考えます。そこで、現在まで行なわれた調査とは別に、今年中にどのような調査の計画がありますか、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  59. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  一月十七日から二十七日までの十一日間にわたる総合調査の結果、さらに専門的、技術的な調査が必要だということで、三月三十日に二十名、四月十三日に十八名、四月二十二日に十七名、なお四月九日にグアムを経由して水産関係の者を三名派遣しております。今後まだ、具体的に申し上げられませんけれども、それらの調査結果を総合的に検討してみた上で、必要に応じて専門的な調査をさらに続行していきたいというふうに考えております。
  60. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 そうした調査を通じていよいよもって大きな復興計画が作成されてくるものだろうというふうに予想するわけでありますが、この復興計画につきましては、一部奄美方式を採用するという考え方も出ておるようでありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  61. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  奄美方式というのは奄美の復興のやり方ということであろうかと思いますが、奄美の場合は、一応計画は知事が立案しまして、それを内閣総理大臣が承認して復興計画を立てるという形を、もちろん審議会にもかけておりますが、そういう形をとっていたと思います。  この小笠原の場合におきましては、奄美と違いまして、と申しますのは、奄美におきましては一応社会秩序がそのまま維持された形で引き継がれております。ところが小笠原の場合には強制引き揚げで、ほとんど住民がいなくなった、そのあとはほとんど無人の島であった。米軍が一部使っていても、その大部分は放置されていたという状態でジャングル化しておりますので、この復興につきましては奄美の場合とはやや違って、やはりそういう特別の事情考えて、やや考え方を変えていかなければならぬのではないかというふうにいま考えております。
  62. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 そのことは当然なことだろうというふうに考えます。しかし、やや似た形で返還されました奄美の過去の例もあることでありますので、奄美方式による復興計画というものについても、十二分の検討がされたと思います。この復興計画に基づいて奄美が今日まで大きな発展をしておるわけでありますが、しかし、計画の中にも、よくよく検討すれば、幾ぶんなりとも改善をすべき点も、あるいはあるのではないかということを考えますので、十二分にこの奄美方式なるものも検討されまして、これからはひとつ小笠原方式といわれるようなものも作成しつつ、計画を一日も早くプログラムの予定の中に入れてほしいということを希望しておく次第であります。  次に、ある新聞が報じておるのでありますが、島民の帰島に対するお気持ちを次のように書いております。「島へ、小笠原出身の人々の会話はこの一言で始まる、心はすでに島にある」と報じておるわけでありまして、一日も早い帰島をこいねがっているのが旧島民の心持ちであろうかというふうに推測するわけであります。そこで、引き揚げた島民には、本年内にも帰島したいという希望を持っておる者も少なくないと聞いておりますが、これらの人々に対して政府としては当面どう考えていかれるか、その点についてお伺いしたいと思います。
  63. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 やはり一番その点を心配しなきゃならぬと思うのですが、できるだけすみやかにというのが帰島希望者の意見でありましょうし、われわれとしましても、いわゆる生活基盤あるいは産業基盤というものを帰れる環境にできるだけすみやかにつくり上げるということでなきゃならぬ。そういう意味で、とにかく四十三年度中は復興計画に対する具体的計画を詰めて、そうして四十四年度からそれらの基盤整備というものをやって帰れる環境整備につとめてまいる、こういう心組みでその期待にこたえてまいりたいと考えております。
  64. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 おっしゃるとおりの配慮が当然なされるものと考えます。  そこで、小笠原村の村づくりをいろいろ考えておられるわけでありますが、その村づくりを考える上に、総理府としては三つの段階を踏んでいこうということを考えておられると承知しております。一番目は、返還直後の緊急措置の必要な時期、それから二番目には、計画をする段階、第三番目には、公共建設が始まる段階、こういうふうに推移させていこうという方向のようでありますが、そうしますと、四十四年度に島民を帰していくということになりますと、第三段階が終了した段階というふうに考えられるわけですか。
  65. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  ただいまお話しのような段階で行くことになるといたしましても、たとえば、土木建設事業を遂行する上におきまして、本土から人を派遣してしなければならないという場合におきましては、当然旧島民の方でその適任者があればそういう方に行っていただくというようなことにもなるわけでございまして、また、そういう配慮をしていくのが当然だろうと思います。そういうようなことで、帰島そのものがその三段階が完了した後ということには必ずしもならぬわけで、むしろ、機会があればできるだけ希望者に帰島していただくということだろうと思います。
  66. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 この点については、帰島の気持ちとこの計画の進捗状態、こういうものが、いずれにしても、帰った場合に安定した生活ができなければなりませんので、その辺はちぐはぐにならないようにひとつ十二分な配慮を要望しておきたいと思います。  さらに、島づくり村づくりあるいは帰島対策につきましては各島同時に行なってほしいという要望も御承知のように出ておるわけでありますが、その方法論について、政府の考え方をお聞きしておきたいと思います。
  67. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  各島同時にというような希望はもちろん承知しております。ただ、何といたしましても、父島におきましては、ある程度準備も進んでおりまして、ある程度生活環境も整備されておるわけでございますが、母島におきましては、全然無人であるということからいいまして、そういう条件の差がございます。また、硫黄島につきましては、現在米軍が使っておりますけれども、米軍の使っていないところは原野化しているわけでございますが、そこは不発弾が多く、また遺骨も多数あれでございますので、そういうようなことを考えますと、同時開発方式というようなことではなくて、むしろ個々の島の特殊事情を十分考慮した上でできるだけ早く開発していくということではないかというふうに考えております。
  68. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 一応総理府に対する質問はこの程度にとどめまして、次に防衛庁にお尋ねをいたしたいと思います。  すでにこの法案が本会議で趣旨説明をされました段階におきまして長官のほうから答弁がされておるわけでありますが、いま一度再確認する意味でお尋ねをしておきたいと思います。  日米共同声明及び返還協定上の防衛の問題が起こってくることはあたりまえのことだろうと思います。そこで、小笠原の防衛計画については防衛庁としてもすでに検討を終わっているというふうに新聞でも伝えられておるわけでありますが、一応返還された段階におきまして、防衛庁としてはその防衛の規模についてどのようにお考えであるか、御説明をいただきたいと思います。
  69. 宍戸政府委員(宍戸基男)

    ○宍戸政府委員 返還後の防衛計画につきましてはせっかく検討中でございまして、まだ十分に煮詰まっていない段階でございますが、大筋だけ申し上げますと、有事に際しましては、海上自衛隊が行なうわが国の船舶の海上交通の保護のためのいろいろな艦艇の基地とか航空機の基地、そういったものにこれらの諸島は大いに有用であろうというふうに考えられます。平時におきましては、有時に備えてのいろいろな訓練のための艦艇、航空機等の訓練のための基地に利用されるということになろうかと思います。そういった前提を立てまして具体的な計画を練るわけでございますけれども、全体の計画は十分できておりませんけれども、大ざっぱに申し上げまして、父島あるいは硫黄島あるいは南鳥島、合わせましてそれぞれ分遣隊ないし派遣隊程度のものを常時置けば平時には十分ではないか、そうして全体の人数的な規模といたしましては、全部合わせて大体二百名程度のものになろうかというふうに現在では考えております。
  70. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 派遣はいつの時点で行なわれますか。
  71. 宍戸政府委員(宍戸基男)

    ○宍戸政府委員 これもそれぞれ任務の差によって違いますけれども、逐次増強していく。現に引き継ぎに備えまして、父島と硫黄島に六名程度の連絡員をすでに派遣しております。さらに引き継ぎが近づきますと、これももっとふやしたいというふうに考えております。十数名以上の者を派遣いたしまして、実際の引き継ぎに支障のないようにいたしたい。いろんな機材、施設が動いておりますので、それが瞬間でもとまらないようにいたさなければなりませんので、それにそごのないように派遣をいたしたい。こういうものは逐次派遣をいたします。現実にわれわれのほうの計画、任務に移りました段階では、先ほど申し上げましたような落ちつきました姿では、全体としまして二百名前後のものと考えておりますけれども、一ぺんに二百名派遣する必要は必ずしもないので、年度を追いまして逐次増強していくというふうになろうかと思っております。
  72. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 装備は大体どんなものを考えておられるんですか。
  73. 宍戸政府委員(宍戸基男)

    ○宍戸政府委員 島によって違うと思っております。父島におきましては、これは御承知のように主として港でございまして、航空基地としてはほとんど地域がございませんので、現在の米海軍が使っております施設を引き継ぎまして、艦艇の訓練基地に必要な程度の装備、施設をつくりたい。それから硫黄島、南鳥島におきましては、これは港がございませんで航空基地でございます。現在米軍がすでに使っておりますので、それをそのまま引き継ぐのが大部分でございますけれども、それに若干の通信その他の施設を付加するという程度のことは必要かと思っております。
  74. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 そういたしますと、人員の面あるいは装備の面から考えましても、第三次防計画の中で当然処理できる問題だというふうに考えてよろしいわけですか。
  75. 宍戸政府委員(宍戸基男)

    ○宍戸政府委員 そのとおりでございまして、先ほど申し上げましたような規模でございますので、三次防を特に修正、改正をお願いするというふうなことは考えておりません。
  76. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 それから、自衛隊は防衛の面のみならず——広くいえば防衛の範疇に入るかもしれませんが、各般の便宜供与を今日まで与えていただきましたし、あるいはこれからもお願いしなければならぬこともあるかと思います。そこで、本会議におきまして、わが党の青木議員の質問に対して、増田長官は「自衛隊につきましても、その方面に協力せよというお申し出がございまするならば、積極的に協力申し上げまして、開拓あるいは土木事業等にこちらの力を相当注ぎまして、そうして、りっぱな夢の島を実現いたしたい、こう考えておる次第でございます。」こう発言をされておられるわけであります。  そこで、現在までかなり便宜供与を調査そのほかではかられておられるわけでありますが、こうした便宜供与というものは、防衛庁内の法規といいますか、そういうもののいかなるものによって行なってきたか、また将来行ない得るものか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  77. 宍戸政府委員(宍戸基男)

    ○宍戸政府委員 お話しのように、現在までも部外の方に対して相当な支援をいたしております。その大部分は輸送業務でございます。今後も考えられることは、当座は大部分が輸送業務ではないかと思います。少し落ちつきましたら、輸送のほうが先に行きまして、それから土木工事等の支援があるいは必要になってくるかもしれません。  その根拠法規のお尋ねでございますけれども、自衛隊法の第百条に、土木工事等の受託という規定がございます。これは自衛隊の訓練の目的に適合する場合でなければいけませんけれども、そういう条件のもとで、地方公共団体あるいは国等が自衛隊に土木工事や通信工事、その他政令で定める事業の施行委託をいたしますと、自衛隊はそれを受けて実施するというふうな規定があります。輸送事業等につきましては、それを委任されました政令で規定をされております。こういった規定によって、土木、輸送事業等を受託して行なう、こういうことになろうかと思います。
  78. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 現在でも、災害出動そのほかの点につきましても自衛隊がかなり協力をしていただいて感謝されておることは、言うまでもないことだろうと思います。小笠原の問題につきましても、現在の法規上可能であるというのであるなれば、積極的に協力をしていただきまして、小笠原の開発にも力を尽くしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  防衛庁、けっこうです。  次に運輸省にお尋ねをいたします。  小笠原諸島には、交通運輸の施設及び機能の充実整備が現在重要な課題となっておるわけでありますが、当面、海上輸送についてはどのようにお考えでありますか、お伺いをいたしたいと思います。
  79. 野村説明員(野村一彦)

    ○野村説明員 お答えいたします。  ただいまの段階におきまして考えられますのは、大きく分けて二つあると思います。  第一は、復帰直後の復興関係の輸送と申しますか、復帰直後には相当の人員及び資材の輸送が必要となってくると思いますので、この点につきましては、関係各省と連絡をとりまして、国の船を用いる場合は国の船を用いるというような点も考えますが、もし必要があれば、私どもでごあっせんして、東京都等の協力を得まして、民間の船を、都と申しますか、そういうところで用船をして、必要な人員、資材の輸送に当たるということも一つの方法かと思いまして、それも内々検討いたしております。  それから、一段落をいたしましたならば、これは相当将来になるかと思いますけれども、貨客船をもって旅客定期航路事業を、これは戦前も行なわれておりましたので、そういうものが行なわれるということを期待いたしておりますし、実は民間の船会社のほうから、非公式に、そういう事態になった場合には自分たちの会社でやりたいという申し出も受けております。そういう状況であります。
  80. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 いま国の船並びにあっせんによる民間船の利用、こういうことをあげられたわけですが、前段の国の船というのは、一体どういう船を利用することが可能ですか。
  81. 野村説明員(野村一彦)

    ○野村説明員 先ほど御答弁がございましたように、防衛庁関係の船をもし利用できる場合にはそれをお願いすることもあると思いますし、また運輸省の内部におきましても、海上保安庁、あるいは場合によっては、気象の関係の業務が主になる場合は気象庁ということもありますので、そういう船で利用できるものはそういう船を利用するということもあろうと思います。
  82. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 これは政府の判断でありましょうけれども、当面必要と認められる場合でありまして運輸省に要請のあった場合には、運輸省に所属する船の利用についても積極的にお手伝いをする意思がある、こういうことでありますか。
  83. 野村説明員(野村一彦)

    ○野村説明員 この件につきましては、総理府が中心になられまして、自治省それから私どものほう、その他関係各省、東京都を入れて随時協議をしておりますので、総理府と申しますか、そういう、復帰のこの問題の中心になっておられますところの御判断によって、私どもやるということであります。
  84. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 その問題に対しまして、将来は民間の航路を開設したい、こういう御意思のようでありますが、海路と別に、航空路の開設の問題についてはいかがでありましょうか。
  85. 梶田説明員(梶田久春)

    ○梶田説明員 小笠原の開発と民生安定のためには民間航空用の飛行場の設置というものがやはり必要であると私どもは考えております。ただ、御承知のように、かりに父島に飛行場を設けるといたしましても、きわめて立地条件というものには問題がございまして、先般四月の下旬でございますが、私どものほうの専門官を派遣いたしまして、現地調査をさせましたら、相当な難工事だということでございます。しかし、これは不可能ではございません。今後の本土との連絡といったものを考えました場合には、どのような規模の空港が最も妥当であるかといった問題も含めまして、現在調査結果をさらに検討中でございます。  なお硫黄島には、現在三千メートルの飛行場がございますが、現在米軍が使っておりますけれども、今度の返還に伴いまして、私ども防衛庁のほうでこれが引き継がれるというふうに伺っておりますが、運輸省といたしましては、できれば硫黄島の飛行場を民間ジェット級の訓練飛行場にも共用さしていただきたいということで、これまた先月下旬調査団を派遣いたしましてつぶさに調査したわけでございますが、問題は飛行場の建設あるいはそれに付帯いたしますいろいろの施設の整備等に関連いたしまして、御承知のように硫黄島には港がございませんので、そういった面で、輸送、さらに整備された後におきます補給の問題等も含めまして現在検討中でございます。
  86. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 実情につきましては、御説明よくわかりました。  父島の飛行場の問題はやはり東京から父島に飛ぶということを考えますと、それに適応するような飛行機の発着のために現在の飛行場では狭いということはよくわかりますし、また山があってなかなか基準に合わないということも理解できますけれども、しろうと考えでありますが、父島から小さな飛行機で八丈まで飛んで、そこへ行けば、東京−八丈間は飛んでおることだし、いろいろな面で便利であろう、こういうことで、むずかしいかもしれませんけれども、将来は父島にも、大型の発着できる飛行場はともかく、八丈と往復できるような飛行機の発着のできる空港というものも考えてもいいのではないかというような気もいたしますので、もしお考えがあればお伺いしておきたいと思います。
  87. 梶田説明員(梶田久春)

    ○梶田説明員 御指摘のようないろいろの方法について現在検討中でございます。たとえば、いまお話しのございましたように、現在使用いたしておりますYS級の航空機でもって八丈経由父島ということも考えられますが、御承知のように、航空機は燃料の塔載等を含めまして、代替空港というものを指定していかなければ、途中で故障の場合におりる所がないということもございます。そういった問題は、硫黄島の飛行場、父島さらに本土近くでは八丈島等の関連を考えまして、現在いかなる航路が可能であるかといった問題も含めて検討中でございます。
  88. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 次に気象の問題についてお伺いいたしますが、過般NHKのテレビを見ておりましたら、南鳥島に気象観測所を建設するようなことを主張したのでありますが、あの画面を見ておりますと、すでに計画が相当でき上がっておって、敷地の選定やらその他がなされておるようでありますが、この南鳥島の観測所についてお伺いすることと、それから小笠原諸島におきましては、たとえば気象の点につきましてはあるセンターみたいなものを設けまして、その他硫黄島とか父島に支局のようなものを設けるのか。それとも同じような規模で考えられる島に点在させるのか、この点について簡単でけっこうでありますから、御答弁いただきたいと思います。
  89. 増田政府委員(増田誠三)

    増田政府委員 南鳥島につきましては、御存じのとおり、現在アメリカの気象局の職員によりまして地上気象観測並びに高層の気象観測を実施いたしております。小笠原返還協定によりまして、この測候所が日本に引ぎ継がれることになるのでございますが、気象庁としましては非常に重要な拠点でございますので、ぜひ南鳥島に観測所を設けまして必要な観測を実施したい、こういうことで目下準備を進めておる段階でございます。  それから第二の点でございますが、第二の点につきましては、何と申しましても気象観測上の拠点としましては父島が一番重要ではないかと思っております。さしあたっては父島にも観測所を設け、南鳥島にも観測所を設けるという方針で進めておりますが、将来の方向としましては、父島のほうになるべく観測の密度を濃くいたしまして、父島が主たる観測所になるような方向で計画を進めたい、このように考えております。
  90. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 次に、海上保安の問題についてお尋ねしますが、この点については先般、中曾根大臣のほうからも本会議場で答弁がございましたが、巡視船を派遣をする、こういう御答弁のようであります。現在保安庁には巡視船が何隻ありますか。——それでは運輸省に強く要望いたしておきますが、小笠原を含むところのあの地帯というものは、きわめて広大な海原であろうと考えます。そこで現在でも北海道あるいは日本海その他巡視船が活動しなければならない地域はかなり広範囲でありまして、巡視船の数も必ずしも満足すべき数字ではないだろうというふうに考えております。したがいまして、おそらく明年度の予算ができ上がる段階におきましては、新たにこういう地域が含まれたということを前提にして、さらにこの点におきましても充実強化するように要望いたしておきたいと思います。  運輸省けっこうであります。  時間もありませんが、最後に大蔵省にお伺いをいたしておきたいと思います。  まず最初に、先ほども議論いたしたのでありますが、この法案におきましては、政令による施策が非常に多いわけでありまして、大蔵省におきましては、現在小笠原の現住民が所持いたしておりますドルの帰属の問題が、これからの沖縄の復帰、将来を見通す上にも重大な問題だろうと思いますが、この点についてどういうお考えでありますか。
  91. 原説明員(原徹)

    ○原説明員 ドルの問題につきましては、奄美の場合、今度の場合、いろいろやり方が違います。今度の場合には、協定には何にも書いてない。書いてないと申しますことは、現地住民が持っておるドルをそのまま日本が引き継ぐ、こういうことになるわけでございます。今度の場合は金額が十数万ドル程度だと思いますが、そういうことでドルを日本側が引き継ぐということになったわけでございます。  沖縄の場合に一体どうなるかということは、やはりそのときの問題としていろいろ交渉しなければならない問題であろうかと存じますが、今回の例がそのまま直ちになるかどうかについては、まだ十分見通しが持てないという状況であろうかと存じます。
  92. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 次に、総理府や自治省では、これからの一応の計画につきまして、これは新聞の伝えるところでありますが、生活基盤や産業基盤を整えるために五年間で約百五十億程度の公共投資をしていきたい、こういっておるわけであります。これについては大蔵省が非常に渋い、こういうことが出ておったわけでありますが、この点についていかがお考えでありますか。
  93. 原説明員(原徹)

    ○原説明員 復興計画につきましては、ただいま総理府のほうからもいろいろ御答弁がございましたように、今後行ないます専門的、技術的な調査を行ない、そして住民の帰島意思の確認の上に立ってやるということでございます。その際戦前の小笠原復帰する、完全に元へ戻すというようなことはどうもあまり実際的ではない、やはり新たな角度で新しい方向を見出して、そうしてやらなければならぬだろう、そういうふうに考えます。その際一体百五十億とかいろいろいわれておりますが、どういう積算であるか、私どももちろん承知しておりません。しかしながら、ともかくそういうことで、小笠原特殊事情を十分に考慮して必要な措置を検討したいと考えております。
  94. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 いまの数字につきましては、これはどの程度の積算があっての話か私も知りませんのでけっこうでありますが、これは長期な計画に基づいて、いずれにしても多額の投資がなされなければならぬということは当然なことだろうと思っております。そこで、この法案ができますと、長期計画とは別に、この法律に伴って各般の施策が講じられてくるだろうと思います。しかしながら、四十三年度の予算では、各省ともそういった予算の措置がなされておらないだろうと思いますので、おそらく予備費からの支出というような問題になるだろうと思いますが、この点につきまして大蔵省としても積極的に——ということは、ことばはどうかと思いますが、適切な処置を各省と話し合ってされることを希望いたしておきたいと思います。  それから、もう一つ希望しておきたいことは、現地の国有財産、これは物件でいえばおそらく土地が主たるものではないかというふうに考えますが、これから土地の高度な利用のために国が利用する面もあるでしょうし、また個人がこれを使用するというようなこともあります。後者の場合にはおそらく払い下げというような問題も起こってくるだろうと思いますが、そうしたときにぜひいろいろ疑惑の生じないように、これまた適切な処置のなされるように希望いたしておきたいと思います。
  95. 原説明員(原徹)

    ○原説明員 ただいま御指摘のとおり、四十三年度分の予算につきましては、ただいま具体的な何をやるかということにつきまして各省で検討中でございます。私どもこれを聞きまして、必要な予算につきましては、既定の予算でまかなえない分につきましては予備費で対処したいと思っております。  それから、ただいまの国有財産の払い下げにつきまして疑惑の起こらないようにしろということでございますが、十分注意したいと思います。
  96. 小渕委員(小渕恵三)

    ○小渕委員 これで終わりますが、小笠原の問題はすべて実はこれからの問題であるというふうに考えております。そこで、小笠原村の村づくりにあたりまして望みたいことは、戦後他国の施政権下に残されてきたこれらの島々を、旧島民の希望することばかりでなくて、日本国民すべてが持っておる夢を満たし、言うなれば俗悪な観光地化するというようなことを排しつつ、楽しい美しい平和な地に育てていくことを期待してやみません。そうしたために政府として各省庁間の連絡協調をさらに緊密にして、同時にまた国と都との関係も円満にいたしまして、これから最大の努力をひとつ政府にしていただきたいことを強く要望いたしまして、政務次官から御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  97. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 全く御指摘のとおり、同感でございます。取り急ぎは現住民に対するあたたかい配慮、続いて帰島希望者に対する配慮、同時にやはり日本的視野に立った将来の小笠原をどのように位置づけするか、それがやはり復興計画の基本になると思いますので、その中でせっかくの小笠原復帰が全国民の願望にこたえられるような、そういう姿にしなければならぬと思いますので、閣僚会議等十分に活用して御期待に沿うようにいたしたい、こう思っております。
  98. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 大村襄治君。
  99. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 二十数年ぶりに小笠原諸島復帰するに伴いまして、われわれはこれをあたたかい気持ちで迎えるとともに、現島民さらに旧島民相携えて小笠原の復興開発ができるような環境づくりをこれからいたさなければならないと思いますが、私はこれから主として行政的側面につきまして関係各省にお尋ねをいたしたいと思います。  最初に総括的な問題といたしまして、副長官にお尋ねいたしたいと思います。  この法案の第二十六条を見ますると、総合事務所の規定がございます。また第十八条を見ますると、小笠原村の設置に関する規定がございます。また国と村との中間に位する東京都の関係もございます。いわば国、東京都、小笠原村、三者が協力して島民復帰、今後の建設、開発に当たるものと考えられますが、二十三年も放置され、かつての数千人の住民がわずか二百人そこそこに減っております。これをいかにして復興するか、非常にむずかしい問題があると思うのでありますが、この三者の関係をいかにして効率的な行政をやっていくか、その点について副長官のお考えをまず伺いたいと思います。
  100. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 御指摘のとおり、現在住んでいるのは二百名程度、それだけに二百名程度で村の形成というわけにまいりませんので、村に対してはこれからの帰島というものも含めて、長期的な視野に立って、りっぱな村づくりというものをしていかなければならない。そのためには各島ごとにすぐ村をつくるというわけにもまいりませんので、取り急ぎはこの小笠原全島について一つ村をつくるということにいたしておりますが、それは短期的に見てそうせざるを得ないということでございます。やはり帰島の促進と相まって実情に即して村の形成をやっていかなければならぬ、こう考えております。それから、それが村形成をして、行政能力を持つまでの間は、やはりその第二十六条の総合事務所においてやっていかなければならぬ分野が非常に多いと思います。村の行なう事業、国の当然やらなければならぬ事業、国の出先仕事と地元の仕事とを兼ね備えた一時的形態というものが当然あるわけでございますので、それらの間におきましては、自治省、東京都、現地というものに緊密な連絡をとって、万遺憾なきを期していくように暫定的には考えていかなければならぬじゃないか、こう考えております。
  101. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 大体のお考えはわかったのでありますが、長期的な見通しもございますが、さしあたり復帰に伴いまして、いろいろな体制を整える必要があると思うのであります。この総合事務所の点でありますが、第二十六条の第三項によりますと、自治大臣の管理に属するものとし、内部組織は、自治大臣が国の行政機関の長と協議して定める、そのようにされておりますが、この総合事務所のさしあたりの規模、内容等については、どのようにお考えであるか、これは自治省からお教え願いたい。
  102. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 現在関係各省庁と打ち合わせ中でございますので、まだはっきりは確定しておりませんけれども、当面復帰してまいりますと、少なくとも現地へ出向しなければならない国の仕事というものも相当いろいろのものが予想されます。たとえば、さきの御質問に出ておりました土地の権利関係の確定、土地の価格の確定というようなこと、あるいは植物の防疫とかその他いろいろございますので、当面現地でやらなければならない仕事については、できるだけ関係各省庁と打ち合わせの上、総合事務所において一括してやるというようなことを考えております。  それから法律上、現地ですぐやらなければならない仕事には属さないかもしれませんけれども、事実上、現地としていろいろな仕事が出てまいると思います。復帰のための基礎調査その他のことも非常にたくさんございますが、旧島民の帰島は直ちには始まらないといたしましても、いずれ間もなくこれが始まるとすれば、旧島民の帰られる方と現にあそこにおられる方との技術的な総合調整、そういうことがこの総合事務所の主体的な仕事になってくると考えております。現在内容と規模につきましては、関係各省庁と相談中でございますので、いまの段階ではちょっとお答えできかねます。
  103. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 次に、都庁の関係ですけれども、行く行くは民生関係等、相当都の行政も多く行なわれると思いますが、さしあたり警察とかそういう関係はどうなる見通しですか。警察庁の方がおられないのでなんですけれども……。
  104. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 都の出先機関の問題については、実はこの法律に触れておりませんが、これについても特に密接な連絡をとりつつ現在打ち合わせを進めております。都の仕事として復帰の即日から行なわれる仕事は、教育関係とか民生関係とかいろいろあると思いますが、いま仰せの警察についてもあると思いますが、それぞれ必要な人員を復帰と同時に派遣してやるというふうにいたしております。いまお話しの警察についてはやはり数名の警察官を派遣いたしまして、一つの警察署あるいは分署、そういうものをつくってやられるように聞いております。
  105. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 今度は村の問題をお尋ねしたいと思います。この法律案の第十八条を見ますと、「この法律の施行の日に、東京都に属する小笠原諸島の区域をもつて小笠原村を置く。」というようになっておりますが、東京都に属するというのは、文言を見ますと、小笠原諸島の区域にかかるように見えますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  106. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 そのとおりでございますが、現実には今度復帰する区域は全部東京都に属しておりましたところでございますので、これはその関係をはっきりしたというだけでございまして、特に限定するという意味はございません。
  107. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 大体わかりましたが、この第十八条は、第五条第一項の規定にかかわらず——第五条は御承知のように従前の区域という関係なんですが、そうすると小笠原村が東京都の統轄するところに属するとか、ものによっては指揮監督を受けるとか、そういう関係はどういうふうに理解したらいいのですか。
  108. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 第五条第一項を書きましたのは、都との関係ではございませんで、主として村そのものというつもりで書いたわけでございます。つまり、従前は小笠原に五つの村がございましたので、この五つの村が従前の区域をもってそれぞれ五つという意味ではなく、全体を一つの村にするという意味だということでございます。第七条を書きましたのは、新たに村を設置する場合には、第七条にありますので、その条文そのもので設置する、そういう意味でございます。
  109. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 いろいろな資料によりますと、現在小笠原にはアメリカ施政権下でカウンシルと呼ばれる住民代表の機関がある。今回提案されております第二十一条の「機関の特例」の規定の第三項を見ますと、「執行機関の附属機関として村政審議会を置かなければならない。」とあります。この村政審議会は選挙が行なわれるまでの議会のかわりの審議機関とも見られますが、一体この村政審議会の実態は何か、また従来の現住民自治機能との関係はどうなるか、この辺について伺いたい。
  110. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 現在の考え方といたしましては、現在御指摘のような自治機能がございますので、なるべくこれを生かした形で新しい機能を取り入れたいという考え方でございます。端的に申しまして、この村政審議会というのは、最初は、現在、復帰のときにおりますカウンシルを実はそのまま充てるべきではないかと考えております。それからさらに復興が進みまして、逐次住民が帰っていきますと、現在の現地住民とそれから帰島民とがだんだんと混在して新しい村を形成してまいります。いずれかの段階において自治法上のはっきりした村となりますが、その間におけるいろいろな処理を、現在持っております自治機能と帰っていかれました者との調整考えて、その審議会その他の構成も逐次そのときどきに応じて形態を変えていく必要がある、そのように考えております。当面は村政審議会に現在のカウンシルをそのまま充てるのが妥当ではないかと考えております。
  111. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 そういたしますと、こまかいことは政令にゆだねられているようでありますが、この政令で、審議会の委員の定数とか選任の方法等は大体従来の方法を踏襲するというふうに予想してよろしゅうございますか。
  112. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 現在その点は検討中でございますが、従来の方法というのも、実はあまりつまびらかにはつかんではおりませんが、予備選挙、本選挙というような非常にむずかしい手続を経て選任をしておられるようであります。その辺は、それが非常に複雑であればより簡易な方法ということも考えられると思いますので、よくその辺の実情をつかまえた上で、政令で確定いたしたいと思います。
  113. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 関連しまして第二十条では「設置選挙の特例」で「「自治大臣の指定する日」と読み替えるものとする。」とあります。八郎潟のような設置の例などもございますが、一体どのくらいの期間この特例をお考えなのか、お伺いいたします。
  114. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 それはまさに復帰後の復興の進捗ぐあいと旧島民の方々の帰島との関連でございますので、何年ぐらいにどのくらいの方が帰られるかということがいまちょっとつかみにくいと思いますが、この立場といたしましては、一応相当数の島民が帰られて自治法上の自治村として完全な社会形態がなされるときということを考えておりますので、二年後になりますか、あるいは四年かかるか、その辺はちょっといまつかみかねております。
  115. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 次に、法案の第三十一条で「国及び地方公共団体の施設等の供用」を掲げてありますが、当面どのようなものを予定しているか、自治省並びに大蔵省のお考えを伺います。
  116. 林説明員(林忠雄)

    ○林説明員 たとえば、いま米軍が使っております冷蔵庫がございます。ああいう気候で食品その他の貯蔵には欠かすべからざるものでございますが、これを自衛隊ないしは新しい国の機関が引き継いだ場合には、そういうものの供用ということは考えております。  それから、水道や電気は大体復帰直後きわめて早い機会に村営あるいは東電のほうに移管してやるということになると思いますが、その前に経過的期間があるとすれば、これはこの間、この措置によりやられるというふうに考えております。
  117. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 少し税の関係をお尋ねしたいと思います。  第八条第五号に「国税又は地方税に関する法令適用についての経過措置に関する事項」という規定がございますが、住民の担税力も少ないので、本格的に復興するまではあまり税負担を過重に求めるべきではない、要するに経済の実情に応じた課税を、国税、地方税ともに行なうべきだと思いますが、この点につきまして自治省並びに大蔵省の考え方を聞きたい。
  118. 中橋説明員(中橋敬次郎)

    ○中橋説明員 現在までの調査によりますと、小笠原諸島におきましては、特別の税法が施行せられていないようでございます。わが国におきますところの所得税に相当いたしますものが特例としましてとられているだけの状況でございます。月五ドル以上の所得を有する者は、その人的事情のいかんにかかわりませず収入額の二%を納めるということになっておりまして、これが大体内地の所得税に当たるものだというふうに考えられております。  ところで、そのほかの税法がございませんので、今回の復帰以後の措置につきましては、原則といたしましては、復帰日におきまして現在内地に施行せられておる税法が適用になることにいたしたいと思っております。もっとも、それによりましても、所得税につきましては、現在及び今後におきます島民の所得の状況、それから現在の内地におきますところの所得税に関する課税最低限等から考えますと、そう所得税の負担をすべき人が出てくるとは思えないような事情でございます。特に、本年途中で復帰しました以後につきまして初めて内地の所得税の対象課税所得が出るわけでございますから、復帰いたしました本年においては、当然課税所得というものは半分くらいの金額になるものでございますから、税額としてはそう出てこないというふうに予測せられます。  それから、そのほかの間接税等につきましての法規でございますけれども、これを施行いたしますことによりまして、現在のところでは島内にそういった間接税の課税される物件を生産する事業所というものがないようでございますから、さしあたっての課税ということも起こってこないように考えられております。もっとも、内地で現在施行せられております印紙税というのがございますが、これは私人間で取りかわされます一定の文書につきまして印紙税を納めるという制度になっておるのでございますから、これを直ちに施行いたしますと、十分印紙税法について認識のない現在の島民に課税事態が起こってくるということも予測せられるものでございますから、これについては約半年くらい施行をずらしまして、その間に十分法律の趣旨を徹底いたしたいと思います。  それ以外については、大体復帰日以後のある一定の期間の猶予を置きまして、それぞれ青色申告に関する承認の手続でございますとか、酒類販売業を行ないますところの免許に関する経過措置でございまするとか、あるいは貿易会社についての事業年度の届け出でございますとか、そういうものについて猶予期間をもって申告をするような措置を経過措置として考えておる次第でございます。
  119. 首藤説明員(首藤堯)

    ○首藤説明員 ただいま国の税法について御説明がございましたことと関連をいたすわけでございますが、地方税法につきましても、小笠原諸島復帰と同時に一応小笠原村の区域にこれを施行することといたしたいと思っておりますが、その施行に伴います経過措置について、国の税法の取り扱い等に準じた経過措置をやはり定めていく必要があろうかと思っております。  たとえて申し上げますと、法人の住民税、事業税等については法人税法の施行に関する経過規定に準ずるとか、あるいはたばこ消費税についてはたばこ専売法の暫定措置等関係で経過措置等をきめますとか、あるいは個人の住民税、事業税等につきましての課税標準となる所得をいつからのものにするかとか、そのようなものを考えておるわけでございます。
  120. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 税の関係は大体わかりましたが、特に自治省に要望しておきたいと思いますが、固定資産税につきましては、土地の把握の問題、それから評価の問題、把握が非常に不十分じゃないかと思いますので、そういった点は周到に慎重に進めていただきたいと思います。  なお、関連しまして、地方交付税の問題ですが、復帰しましても当分は力がないのでありまして、相当内地からの援助がないと自治体も成り立たないし、住民の福祉も守れないと思うのでございます。第三十二条に「負担金、補助金等の特例」規定もありますから、こういった点を活用して、地元の負担はなるべく少なくて済ませるような方法を講ずべきであると思いますが、それでもなおかつ負担が若干伴うことも予想されますので、そういった場合には地方交付税制度の運用、普通交付税並びに特別交付税を含めての地方交付税の適切な運用が必要だと思います。この辺についての自治省のお考えを伺いたいと思います。
  121. 首藤説明員(首藤堯)

    ○首藤説明員 小笠原に関連いたします地方団体特に小笠原村につきましての財源措置につきましては、ただいま御指摘のありましたとおりに私どもも考えております。  いままでの例といたしましては、領土復帰に伴いますものにつきましては、奄美でございますとか十島村の例がございますし、それから新たに公有水面の埋め立てによって誕生しました大潟村の特例等があるのでございますが、そのようなものを十分参考にいたしまして、適切な財源措置を、交付税の配分を行なっていきたい、こう考えております。  その際、ただいま御指摘のありましたように、村の経常的な行政経費、これはもちろんでございますが、復興等に関連をいたしまして生じます地元の負担ないしは特殊な事情によります行政経費、このようなものも十分算入ができますように努力をいたしまして、実情に合った財源措置につとめていきたい、こう思います。
  122. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 きょうは農林省はお見えですか。——それではちょっとお尋ねします。  小笠原の産業の中心は、農業及び水産業が中心と認められますが、当面の法的及び実態面の施策をお尋ねいたしたいと思います。
  123. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  お話しのように、小笠原におきます産業は、農業、水産業が中心であろうと思います。その意味で農業について十分考えていかなければならないわけでございますが、農業につきましては、先ほども触れましたように、現在の状態が非常に農地と認められないような状態になっておりまして、そのままではもちろん農業経営を営んでいけるような状態ではございません。そういう意味で今後この点については十分配慮していかなければならぬわけでございますが、さしあたって法的に問題になりますのは、引き揚げ前に持っていた耕作権をどう処理するかといいますか、あの当時の耕作権を何らかの形で復帰の時点において措置をしなければならないだろうというふうに考えるわけでございます。と申しますのは、旧島民が帰島しまして農業を営んでいくということになりますと、どうしても耕作権の問題が出てまいるからでございます。戦前におきまして農家戸数の中でもいわゆる自作、小作に当たる者が八〇何%にもなる状態でございますので、そういう点を考えますと、やはり耕作権についての措置ということが当然必要になってまいります。そういう観点から、この法案におきまして、戦前の耕作権を一応何らかの形でといいますか、結局賃貸借関係になるわけでございますが、その賃貸借関係になるように措置をとっているわけでございます。この法案におきまして設定される賃貸借関係は、この法案によって一応の保護措置をとっておりますので、そういう関係で、旧島民が帰島して農業を営むために開墾をした場合には、その関係については農地法の保護をしないで、この法律案によって保護していくという措置をとっているわけでございます。もちろんある一定の期間がたちますと、農地法も全面的に適用していく関係になりますが、そうなった場合には、その時点における農地法の規定によってそれに適用するような措置がまたとられることになろうかと思います。耕作権につきましてはそういうことでございます。  それから水産関係におきましても、やはり引き揚げ後の状態は、まあ現島民がある程度の漁業を営んでいたわけでございますが、その二十年間にわたって非常に蓄積された資源がございますが、その資源が乱獲等によって枯渇するようなことがないようにいたしませんと、現島民生活にも響きますし、また今後帰島する漁民の方々の漁業にも響いてまいるわけでございますので、その点に配慮いたしまして、この法案においては、そういう現島民及び旧島民の方々以外の人には漁業をすることを認めないという措置をとっております。  法的にはそういう措置をとっておるわけでございますが、事実関係といたしまして、実際問題は、日本本土の漁船が以前にいわゆる領海侵犯というような状態になってアメリカ軍に拿捕されたという事態もございましたが、そういうようなことを考えまして、本土の漁船が復帰前において資源を荒らさないように措置をやはり考えていかなければならぬわけでございまして、その点につきまして、水産庁からすでに本土の漁民に対しては行政指導をいたしております。また同時に監視船を派遣いたしましてその監視をするように目下検討中でございます。
  124. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 農業及び水産業についての当面の施策のあらましはわかりましたが、なお二、三点お尋ねしたいと思います。  ただいまお話しの農地の点でありますが、農地法は当面施行しないこととし、特別賃借権者による耕作着手をお考えのようでありますが、相手方が確認できない場合にもすぐに着手できるものかどうか、この点を重ねてお尋ねいたします。
  125. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  第十三条におきまして、いわゆる特別賃借権設定保護を加えておりますが、その中で新たに賃借権設定する場合、これはこの二十年間に旧耕作権が消滅している場合でございますが、そういう場合に、借りていた人は賃借権設定をし得る立場になるわけでございます。その場合に相手方がどこにいるかわからないという状態が当然出てまいりますので、その場合の措置といたしましては、第十三条の五項によりまして申し出にかえて公示をするという方向でその賃借権設定をはかっているわけでございます。したがって、この貸借権が設定されるというのはもちろんこの法律が施行されてから一年後からでございますので、その段階になりますと帰島の意思もはっきりしてまいると思います。そういうことで、そういうはっきり帰島の意思を持った方々にはこの五項によって公示という方法で賃借権設定をして開墾をしていただくというふうに考えておるわけでございます。
  126. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 漁業の制限については参事官からあらまし御説明があったのでありますが、この法案の第十六条を見ますと「海域で農林省令で定めるもの」、あるいは第二項では「農林省令で定める者以外の者には、前項の許可をしてはならない。」いわゆる省令に大事なことがゆだねられているのでありますが、水産庁あるいは農林省の方がおられましたら、この辺の御方針を説明していただきたい。
  127. 岩本説明員(岩本道夫)

    ○岩本説明員 水産庁からお答え申し上げます。  小笠原の漁業は、戦前も重要な産業でありましたし、戦後も重要な産業の一つになろうかと存じますので、その資源の培養等、漁業の振興には一段と力を用いていきたいと考えておりまして、漁業のやり方につきましても、戦後の空白によりましてどんな施設もあまり残っておりませんし、また漁業そのものもグアムの需要に限定されて少ししかやっておりませんので、それらの事情を勘案いたしまして、特に小笠原諸島周辺三海里の範囲内におきましてはみだりに関係のない方々が入り込んで資源を荒らすことのないように、それらの範囲を指定いたしまして制限禁止をやるつもりにしておりますが、なお必要がありますれば、島と島との間で間隔が三海里以上あるというようなところにつきましては、必要な限度に応じまして、海域を指定して制限措置をとっていきたい、かように考えております。
  128. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 いまの三海里の根拠ですが、ひとつ御説明願いたい。
  129. 岩本説明員(岩本道夫)

    ○岩本説明員 漁業の規制をやります場合に、必ずしも三海里にとらわれる必要はないと思いますけれども、従来わが国の立場としまして領海三海里説をとりましてやってまいりました関係上、復帰前におきまして米軍との関係で、三海里は領海であるとして三海里の中に入ってはいけないという指導をいたしております。したがいまして、三海里以内におきましてはかなり資源も蓄積されておりますので、そういう諸般の事情を勘案いたしまして、必要な範囲の海域を指定したいと考えております。
  130. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 時間がないので先に進めますが、ジャングルにおおわれた島の農林業を開発するためには相当な建設資金を必要とすると考えられます。小笠原協会あたりの資料を見ましても、関係の方々が制度金融、系統金融なりの活用を強く要望されているようであります。現在、なお農協等が整備のされていない今日、そういった問題をいかにして進めたらいいか、ひとつ総合的な問題ですから、参事官でもけっこうですから、お答えを願いたい。
  131. 結城説明員(結城庄吉)

    ○結城説明員 小笠原の農業の開発につきましては、戦前との事情からしましても、当然投資産業になろうかと思うわけでございます。農業を開発するにあたりまして現在いろいろ問題があるわけでございます。その一つには、あの地域は二十三年余りにわたりまして放置されておりまして、御指摘のようにジャングル化しておるわけでございます。したがいまして、境界の画定あるいは権利の調整というものが非常に今後問題になろうかと思いますし、また当該地域は、わが国で侵入を防止いたしておりますいろいろな植物病害虫が多発をいたしておりますので、開発にあたりましてこれらの徹底した防除をする必要があろうかと思うわけでございます。  第三点としましては、戦前と違いまして、国内におきましてビニールハウス等の技術がかなり進歩いたしておりますので、これらと拮抗する農業経営ということを考えなければならないと思うわけでございます。これらに関しまして、農業開発にあたりまして、御指摘のように建設資金あるいは制度資金、系統資金というようなものが多分に要ろうかと思うわけでございますが、農業開発自体、ただいま申し上げましたようないろいろの問題点をまず技術的あるいは専門的に把握いたしまして、これらに対処するという前提におきまして、さらには帰島民の意識を十分に把握いたした上におきまして、農業だけの問題に限らず小笠原復興に関しますあらゆる総合的な施策の一環として検討してまいらなければならないというふうに思っておるわけでございまして、農協あるいは開発方式自体につきましても、これらの総合的な国の施策全体の中におきまして検討を慎重にしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。それに伴いまして、所要の資金につきましては、それぞれ今後検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  132. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 第三十二条の「負担金、補助金等の特例」でありますが、「政令で特別の定めをすることができる。」とされておりますけれども、この特例のおもな対象はどんなものがあるのか、参事官にお伺いします。
  133. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  この条項は奄美のときにもございまして、奄美のときには義務教育施設に関する国庫負担の特例が定められた例がございます。そういう例がございまするが、先ほどからいろいろ話が出ておりますように、小笠原諸島の現状が非常に特殊な状態になっておりますので、そういう点を考慮いたしまして、東京都、小笠原村が行なう事業に対して特別の負担、補助等を考えてまいりたいと思っております。
  134. 大村委員(大村襄治)

    ○大村委員 最後に副長官の所信をお尋ねいたしたいと思います。  長期的には復興法を確立すること、さしあたりの問題としましては帰島の促進とこれに伴う援護措置の問題、いろいろ財政、財源措置を伴う問題がたくさん予想されるわけでありますが、しっかりした見通しと計画を樹立するとともに、随時適切な援助措置の運用を行なうべきだと思いますが、これについての副長官の所信をお尋ねしまして、私の質問を終わります。
  135. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 御指摘のとおり、また、たびたびお答えを申し上げておりますように、綿密なこの復興計画というものを立てて、それが早期に実現できるように財政的配慮をして、そうして帰島者並びに今後進出する人たちに喜んでもらえる、そういう態勢をつくるということが大事であるわけであります。今回の暫定措置法では、取り急ぎ現住民に対する措置並びに今後帰島する人たちに対する配慮というものに限定をいたしておりますけれども、最終的にはやはり復興計画、復興施策ということになってまいると思いますので、それらに対しましては、三十年近くの間あのようにブランクになっておる地帯でございますから、普通の事務的な感覚ではなくて、特別な配慮を加えて、これがひとつ万全を期するように仕向けていかなければならぬ、そういう気持ちで復興計画の策定につきましても十分配慮をし、それが実施についても、前向きでひとつこれを検討してまいるようにいたしたい、こう考えております。      ————◇—————
  136. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 この際、連合審査会開会に関する件についておはかりいたします。  小笠原諸島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律案につきまして、本日、地方行政委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。この際この申し入れを受諾し、連合審査会を開会することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、連合審査会は来たる十五日水曜日午後一時から開会することとし、先ほど委員長一任に決定いたしました参考人意見聴取も行ないたいと存じますので、さよう御了承願いたいと存じます。  暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————    午後三時二十七分開議
  138. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。依田圭五君。
  139. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 小笠原暫定法に関連いたしまして、所管の方々に御質問申し上げます。  まず第一に、この法律の底を流れておる考え方といいますか、方法論といいますものは、まず父島を開発をして、それから順次時期を見て、様子を見て——実際問題としてはそうなる可能性があるわけでしょうけれども、母島、硫黄島のほうへいろいろの開発を及ぼしていこうという考え方、俗に言えば父島重点主義といいますか、そういうような考え方が底に流れていると実は推測をいたすわけです。しかし、帰島希望者にいたしましても、あるいはもろもろの権利関係にいたしましても、昭和十九年に戦争のために強制疎開になりました時点におきましては、三島の五カ村が同時に引き揚げておるわけですね。同時に引き揚げておるのだが、それの復興計画なりあるいは帰島のいろいろな問題につきましては、まず父島をやる——母島は無人島だからやむを得ないという立場によって、硫黄島もなかなか困難だというので、まず父島をやって、そうして順次やっていく、こういうわけなのです。戦前は七、八千人がおったというのですから、何千人かおります膨大な帰島希望者で、そのうち約千二百人が八丈島におるというわけで、私も社会党の小笠原対策特別委員会の事務局長として八丈島に行きまして、公会堂などを借りまして、講演会あるいは何回かの座談会をやりましたが、その経過から見ても、まず母島へ帰りたいあるいは硫黄島へ帰りたい、こういう人がたくさんおるわけなんです。しかし、政府の暫定法の基本的な方法論は、まず父島をやって、それから母島のほうに、あるいは硫黄島のほうに順次御希望に応じて措置いたしましょう、こういうことなんです。私はその辺に——たとえば小笠原村を一村まず興す、それから戦前は五つあったわけですから、そういう点にいろいろのこまかな問題が、十九年の時点では同時であった、しかし、それを戻す場合には、順次やっていくというギャップが私はあるんじゃないか、この考え方についてまず副長官にお聞きしたいと思います。
  140. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 おっしゃるとおり、一視同仁、みんな一緒に帰れるようにするということがいいのでありましょうけれども、しかし、現実に二十年間のブランクの間にジャングル化していて、人が住める態様ではない。直ちに帰れる場所とすれば父島である。そういう意味で、父島優先というふうに結果的にはなっておると思うのでございますが、それは、父島の完成を見て、そしてあとその他に移るということではなく、やはり過去もそうであった、行政の中心でもあったところでもあるわけですから、そういう意味で、父島の先行、しかし、あとを非常におくらすということではないのであって、帰島される方々の数だとか意識だとかいうものを勘案しながら、それぞれの場所がその帰島態勢ができるようにしむけていくという責任は当然政府にあるわけでございますから、われわれとしては、そう長期的に全部に及ぼすということではなくて、できるだけすみやかにそれらがそれぞれ住めるような態勢に持っていかなければならぬと思いますが、取り急ぎの形として、御指摘のように、父島が一番最初になるというのは、現在は、あそこにああして住んでおるという実態の上にそうならざるを得ないのではないか、こう思っておるわけであります。
  141. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 住んでおるのは父島なんですね。母島は無人島なんです。しかし、この暫定法によって、自分の故郷に帰って、島の復興に協力いたしたいという気持ち、念願を持っておる人は、母鳥にも硫黄島にもあるわけなんですね。あるんです。そういう人たちの希望を、漁業権にしろあるいは農業の開発にしろ、そういう人たちを、ともかく、しばらく待ってくれ、父の人だけは帰ってくれ、それでとりあえずやってください、しかし、母と硫黄島の人はまだ困るから、しばらく内地のほうで、本土のほうで待機しておってくれということに私はなるのではないかと思うのですが、その辺を一体どういうふうに調整するのですか。
  142. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 母島出身者あるいは硫黄島の出身者は、復興計画で帰れる態勢ができるまで内地で待っておってくれというふうに限定しておるわけではないわけであります。もちろん、帰島意思が強く、とりあえず父島にでもその一歩を印したい、こういう方々に対しては、それ相応の対策を立てることは当然でございます。しかし、帰れるということは生活ができるということでなければならぬわけでありますから、生活ができるようにするためには、ジャングル化しておるところの復興には、父島よりはおくれざるを得ない。そういうおくれだけの間は、ひとつ八丈島で待機していただくか、あるいは父島で待機していただくか、そういうことは、やはりやむを得ざる措置として認めざるを得ないのじゃないかと思います。
  143. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 ここに母島の帰島希望者の希望率七八%、千三百五十九、これは、回答者の中の数ですから、数は非常に少なくなっておりますが、その他硫黄島にも七九%もあるわけですね。北村には八〇%もある。こういう膨大な旧島民の帰島の希望率。こういう人たちに対して、現実にまだ船便がないとか、あるいは港湾施設が不十分であるから、とりあえず皆さんは父島で待機してくれ、宿屋かどこかでとまって待っておってくれ、こういうような措置、しかも、漁業権その他が一年以内は一応その権利を認めるとか、いろいろ法律の随所に規定をされておるわけです。あるいは、あとで聞きますが、借地権の問題につきましても、非常に不確定な規定のしかたしか、むしろ規定がないようなことを私は心配しておるのです。  この質問に関連して聞いていきますが、どうも父島の重点方式なるものが、三島同時開発方式か何か、名前のつけ方はいろいろあると思うのですが、同時に引き揚げておいて、そうして現地復帰させるときには、あるいは島を返してもらうときには別々だというところに、昔ありました漁業権、何種類も、また、幾つもの組合員がございましたこれらに対する扱い、あるいは借地人、小作権、そういった、特に母島などは非常に農業の活発なところなんで、これらに対する小作権の保護なんかは、申し出期間あるいは時効あるいはその扱いの権利の放棄をさせられる法定の期間、私はいまここで個々の問題を詰めるゆとりはありませんが、何か無理があるのじゃないか。それから、母島と硫黄島に関連して、役所が何か特別扱いをするような措置をしてやらぬとならないものが出てきやせぬかということを非常に心配するのですが、重ねてひとつ御答弁願いたいと思います。
  144. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 ことばが足らなかったかもわかりませんが、決して父島優先、母島、硫黄島はあとでよろしいという考え方を持っておるわけではありません。先ほど来申しておりますように、物理的にそうならざるを得ないような現在の環境がそうなっておるから、だから、父島ならいま直ちにでも帰って何らかの生活ができる基盤というものがある。そういう意味で、父島に帰ることが優先されるように、そういうふうに印象づけられると思いますけれども、しかし、今後のこの小笠原諸島における生活の態様というものを考える場合に、午前中にも御議論がありましたように、主としてやはり水産業というものがイの一番に重視される、次いで農業だ、最後にやはり観光だ、こういったようなことになるのじゃないかと考えます。そういうふうに考える場合に、水産業については、たとえば母島でやるんだ、しかし、母島には生活環境としてまだ完備しておるものがないが、しかし、ベースキャンプを張ってでもひとつ直ちにやるというような意欲のある帰島者の方々がおありになるならば、もちろんそれに対応できるような準備というものを急いでやる、そういう心がまえについては、決して母島をあとにする、硫黄島をあとにするという考え方はございません。ただ、しかし、われわれとすれば、帰れるようにして帰して差し上げるということが一番望ましい姿だ、そういう意味では、やはり一歩おくれざるるを得ない、そういう現実論を申し上げたので、意欲の面では、同じ扱いにいたしたい、こう思っております。
  145. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 それじゃ、それに関連して、何か最初の方法論から私はだいぶ心配をしておるのですが、具体的な問題を言いますと、たとえば農業については、たくさんの防疫関係の仕事があるわけです。推定数十億といわれておるようですが、これは農林省に聞きたいのですが、たとえばミカンコミバエとかアフリカマイマイとか非常にむずかしい害虫がおって、この害虫の駆除の方法がいま問題になっておる。飛行機の上から駆除するのか、あるいはキジやその他の天敵を利用するのか、あるいは穴をあけてやっていくのか、その期間、費用、それから、それをやらない間はここで作物をつくるわけにはいかぬし、つくった作物をよそへ持っていくわけにはいかないし、若干グアムから来てすでに問題になっておる。この前も農林省の調査団では、ほとんど話にならぬようにたくさんの害虫が集って、調査の結果、とれるという状態になると、この膨大な予算と扱い、それから期間、——私は、一年も二年もかかるのじゃないかと思うのですが、そういうようなことを、一番条件の整った母島の農業の開発に対して、よほど急ピッチに扱ってもらわないと、母島の農業の小作権者は、地主も小作権者も含めて、これまたいつ帰れるか。父島に行ったってだめなんですから、母島に行かなければだめなんですから、その間に対する交通の方法もないし、どうしようもない。  ですから、ここでひとつ聞きたいのは、農林省に、その農業の防疫関係を一体いつやるかという点が一点と、それから、復興計画、これは一番最後に聞かなければならぬ復興計画ですが、これまたいつごろまでに国会に、どの程度の規模で提案して、母島にどのくらいの人間を一体定着させるか。この八〇%もある帰島希望率の中から御希望に沿うように扱っていくか、その辺を大まかに、これは最後の質問になるわけなんですが、これを最初に聞いておかぬと、いずれそのうちに何とか順次やっていきます、現在あれば、——あれは希望に応ずるといったって、あるかないか、八〇%もあるのですから、ぼくは常識的にあると思うのです。あれば、それに対する措置考えていただいて、それを法律の中に盛り込むなりあるいは行政指導の中に見込んでおくなりしておいていただきたいわけですよ。だから、防疫と、それからもう一つは復興計画のアウトラインについて、時期その他予算の捻出のしかたについて、お聞きしたいと思います。
  146. 結城説明員(結城庄吉)

    ○結城説明員 復興計画に関しましては、総理府ないしは自治省からお答えするのが適当かと思いますが、農業開発につきましても、国の各面にわたります復興計画との関連において、その一環として計画を立てるべきだと思っておるわけでございます。  植防の問題につきましてお答えいたしますと、ただいま御指摘のとおり、あの地域におきましては、わが国にいままで発生しておらない病害虫、たとえばミカンコミバエあるいはウリミバエあるいはアリモドキゾウムシあるいはアフリカマイマイというようなものがかなり発生しておる可能性が強いわけでございまして、これに対する防除の方策というもの自体、いままで国内では経験をしておらないわけでございます。したがいまして、現地におきまして技術的に詳細な調査をしなければ、実質どの程度の発生度合いなのか、あるいはそれに対応する防除の方策はどういう方法をとるべきかというようなことは、相当綿密な調査をしなければならないと思うわけでございます。したがって、それを徹底的に防除するということになりますと、お説のとおり、かなりの資金量が要るのじゃないかと思うわけでございますが、その推定も現在はまだできないわけでございます。八丈島で昨年ネモグリ線虫が発生した例があるわけでございますが、これにつきまして小規模の面積、温室でございますが、防除をいたした際に、数千万というかなりの金額を費しておりますので、小笠原全島にわたりまして徹底的に防除をするということになりますと、当然かなりの経費は伴うかろうと思うわけでございます。その防除の実施時期をいつにするか、あるいはどれくらいの期間が要るか、あるいはどういう方法をとるかというような問題につきましては、現在植物防疫関係の専門的な調査団が行っておりますので、それが帰りまして、それで十分かどうか、これも約一カ月に満たない調査でございますので、十分かどうかわかりませんが、その結果報告等を聞きまして慎重に対処してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  147. 八木政府委員(八木徹雄)

    ○八木政府委員 復興計画でございますが、たびたび申し上げておりますように、ただいま内地在住者の意識調査というものを進めております。近々のうちにそれが集計できるというかっこうになると思うのでありますが、われわれはその意識調査というものを一方に住民意思として十分に尊重しながら、またすでに一月の実態調査、その後各省が進めておる具体的調査、そういうものと並行いたしまして、できればことしの予算要求時期、いわゆる四十四年度の予算要求時期までに復興計画のいわゆる第一次五カ年計画といいますか、そういうものもひとつ策定をして、そして四十四年度予算から具体的に実施ができるような運びに持っていきたい、そういう心組みでいま鋭意準備をしておるところでございます。
  148. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 いま帰島希望者が錯綜してといいますか、種々雑多な希望者があると私は思うのです。一つは旧島民土地を持っておる人、一つ土地は持っているけれども帰島する意思はない、永住する意思はない、しかしまた永住しようにも、島の実情がわからないから、とりあえず一ぺん行って見てきたい、こういう人、それから利権帰島といいますか、全然関係ないけれども、何とかして権利だけでも留保しておこうとか、あわよくば観光地を買っておこうとか、観光資本あたりの進出との関係で、種々雑多なそういう情勢の中にあるわけですね。ですから、利権帰島者的な分子と、法文の中にはどこにもないのですが、どういうように——たとえ一人でも二人でもないはずなんですが、それを一体どういうように見分けてどういうように防止するか、同じ日本人ですから、全部国土復興の熱意に燃えて純真な気持ちで小笠原に対処するであろうことは想像にかたくないのですが、人間社会のことですから、なかなかむずかしい。  それからもう一つ、この法律のどこにも書いていないのですが、一ぺん帰って様子を見て、その実情を見てからいよいよ永住の気持ちを持って帰りたいという人に対する具体的な措置、これがないわけなんです。これは何か考えておりますか。
  149. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  利権帰島的な、そういうような関係をどういうふうに押えていくか、こういう問題でございますが、まず第一に、第十二条におきまして、いわゆる特別賃借権設定するという関係になっておりますのは、これは農業をやるということを前提にして特別賃借権設定しておりますので、昔たまたま耕作権を持っていたというだけで、農業をやらないような方は、この特別賃借権の恩典には浴さないわけでございます。そういう点で、これではもちろんこの権利を有するという形は出てまいらないと思います。むしろ第三十五条で土地の形質の変更等の制限の規定がございますが、これによりまして復興の円滑な、また計画的な遂行をするのに支障があるような、そういうものは、一応この制限規定で押えていきたいというふうに考えておりますので、大体いまお話しのような点は問題がないのではないかというふうに考えております。ただ現状をよく見てから帰島の意思をはっきりさせたいという方につきましては、特にこの法律では規定がございませんが、しかし、先ほど申し上げました特別賃借権設定関係で申しますれば、この第十四条の二項におきまして、相当の期間を経過しても耕作をしないという場合にはこの賃借権は解除されると、こういうことになっておりまして、そういうような規定の裏面におきましては、そういう一度ちょっと帰ってみて、土地事情その他をよく見きわめて、農業をやっていけるという自信を持つ期間は十分あり得るというふうに考えております。
  150. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 実は父島と母島あるいは硫黄島の開発の順序が三島同時でないというところから来るいろいろの問題について、さっき農業の防疫関係の問題の展望を聞いたのですが、御答弁の内容が全然ないわけですね。これは日本国内でいままで経験したことのない猛烈な害虫に対して、しかも何十億と推定される予算、これをしなければ小笠原の農業の問題は取り上げられない、こういうときに、何回も行かれているわけですから、しかも専門家が行っておるわけですから——私はこのことだけじゃないのですよ、母島や硫黄島の方々がおくれることを心配しておるのです。いま言ったように、利権帰島といいますか、観光資本、観光用地か何かのためにすぐ行動するような不心得な分子、そういうものに野放しに小笠原が置かれて、しかも政府の開発方式が、昭和十九年の同時に疎開した、同じような権利を持っている方々に対して、同じように現状が扱えないというので、順序をつけてやっていく。それについては、防疫の問題につきましても、一体何十億もの予算をどこからいつ出して、どういう方法でやるのだ、これをもうちょっと詰めてこの席で答えをもらわぬと、いずれそのうち慎重審議でやりますなんということじゃ、母島や硫黄島に農地を持っている帰島農民は困るのですよ。目安を立てなくちゃならぬわけですよ。一緒にやってくれるならいいですけれども、母島のように、天幕や何かを張って希望者を募って、硫黄島でも同じように募って、現状はこのとおりでございます、あきらめてください、このようにたいへんな荒れた土地なんですよというなら話もわかりますが、父島の農民はどんどんやっていくけれども、母島や硫黄島のほうはあと回しだ、とりあえず父島の知り合いにでもちょっと泊っていて時期を見てくださいというようなことでは、たとえば、そのために被害を受ける人がたとえ一人でも二人でもあっては事は重大であると私は考えざるを得ないのですが、農林省のほうで、これは一例として害虫の駆除についてもう少し内容のある御答弁を聞かしてもらいたい。
  151. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 私からお答えさしていただきたいと思います。  先ほど副長官からお話がありましたように、父島、母島、硫黄島につきましての開発の順序につきましては、それそのものを別扱いするというようなことではなく、父島自体、現在二見港が一応は使えるような状態でございます。そういうことで資材等を運搬するにはやはり父島を使わざるを得ないわけでございますので、父島にまずそういう労働力を一応確保するということが必要ではないか。もちろん母島を開発するにはその父島労働力を活用するということが必要だというふうに考えるわけでございます。計画の総合的といいますか、そういろ観点から、いまの資材の運搬等の便のために父島を活用していこう、こういうことでございます。そういうような関係で、各島についての開発の順序等につきましては、総合的な開発計画において、それはある意味ではそういう有機的な関連性を十分持たした形の計画を立てるということで先生の御指摘の点はカバーできるのじゃないかというふうに考えております。  いまの植物防疫につきましては、もちろん積極的に早期にやらなければならない問題だと思いますが、母島に旧島民の方に帰ってもらってということになりますと、それでは収入の問題がどうだとか、いろいろな問題が出てまいります。あるいは水の問題とか、あるいは電気の問題とか、そういうような問題が解決をいたしませんと、どうぞお帰りくださいというわけにもまいらないので、そういう意味では多少母島はおくれるかもしれないということを申し上げているわけで、植物防疫のような問題はそれとはやはり別個に考えていけるのではないか。したがって、これはたぶん農林省もそう考えているのだろうと思いますけれども、植物防疫についてはできるだけ早くその対策を講ずるというふうな考え方でいきたいと思います。
  152. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 長官にお聞きしたいのですが、実は昭和十九年に強制疎開になりましたときには、三つの島、たとえば漁業協同組合であれば五つ、村の数でいえば五カ村、これが同時に引き揚げておるわけですね。しかも二十三年たった今年、この七月一日であるかどうか知りませんが、法律のでき次第これがいよいよ日の目を見るわけです。そのときには現状がそうだからやむを得ないとは私も考えますものの、まず父島に全力投球して、そして無人島である母島のほうへは順次順を追ってという、硫黄島もそうですね。だんだんにやっていくということなんですが、帰島希望者のパーセンテージからいっても八〇%以上の帰島希望率があるわけです。たくさんの母島や硫黄島の帰島希望者がおるわけなんですね。その人たち父島の開発に乗りおくれないように、——いま観光資本がおどったり、利権帰島者的な分子がいろいろやったり、土地の買い占めその他もあるでしょう。あるいは漁業権の問題もある、乱獲の問題もある、あるいは漁業基地を荒らされるような問題もあるでしょう。そういったようないろいろな問題があって、たかが五十キロしか離れていない母島の問題につきまして時期を失しますと、旧島民の権利が相当になくなったり否定されたり、回復できないような状態まで荒らされるようなこともあるわけですね。しかし現在、現状がやむを得ないから政府はそういう方法をとるのだといっておるわけですね。私は、同時開発方式のような考え方は無理でありましょうとも、何か加味してもらわないと、まず父島重点開発だ、それから随所に波及さしていくのだ、これは現地を見ていただきまして、現地の実情はやむを得ないのだとおっしゃれば、実際われわれも質問の立場からも困るのですが、あらゆるこまかな問題がそういう点から発生してくるように私は思うのです。その一例として私は防疫の問題を取り上げたのです。あと借地権の問題もあるのです。これは順次聞いていきます。まず大きな方針の問題について、長官からひとつ御方針を聞きたいと思います。
  153. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 お答えいたします。  同時開発方式ということばを使っていいか悪いか、これはなかなかむずかしいところでございますけれども、しかしながら、現実の問題といたしましてなかなか容易なことでないことは、これはもうよく御承知のとおりでございます。ただ、あなたが御心配になっておられるような、いわゆる火事どろみたいな利権屋が入り込んだり、あとあとそれがしこりになって全体の開発ができなくなるような、そういうふうなこともあってはならない。そんな関係で、この暫定法の中を貫いております考え方と申しますものは、現在おります住民ですね、これに対しては一応落ちついてもらわなければならない、その当面のいろいろ具体的な処置ができるようにし、また権利関係も安定させるように考慮を払う。他方また帰島の希望者に対しましては、この意識調査もしておるような状態でございますが、これまた硫黄島あるいは母島、そういうところも、いまここでへたなことをして、あとあとどうにもならないというようなことがないように、あなたのおっしゃる御意図と同じような気持ちで、なまじっか投機的な権利の発生だとかなんとかいうふうなことがないような防止処置を暫定法といたしましては講じて、結局、おっしゃる同時開発方式の精神と申しますか、同じような気持ちでこれは十分考えてあると存じております。
  154. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 長官の御答弁はまことにどうもけっこうなんですが、一体現実にこの扱いの中にそういうことが、たとえば一カ条なりあるいは何かにそういうことが明記されてあるとかなんとかいうならともかく、たとえば漁業権の問題にしても、七つもあった漁業組合のうち一番立ち上がりの早いのは父島ですよ。現に八丈島から漁業組合が、政府の返還もはっきりしない、法律も通らない段階において行っておりますよ、一つや二つじゃない、何艇団も行っておると私は思うのです。私が二、三カ月前に八丈島へ行ったときも、漁業組合は独力でも行きたい、五十トンの船があれば行けるんだから行きたい。私たちが行くときは少なくとも六百トン以下、千トン以下のものは困る。今回行った藤丸は千二百トンの船なんですね。なるほど沈没しないで行くだけなら、これは五十トンでも行けるのです。これは腕っ節のいい、目先のきいた、気合いのかかっておる漁業組合がまず父島を拠点にやりまして、これは旧島民ですから相当漁業権の拡大解釈も、あるいは拡大使用もできるわけです。何年かあとにゆっくりでき上がって、母島の連絡船か何かでき上がり、硫黄島の連絡船ができ上がったころ、そのころの漁業権者、あるいは借地権者、あるいは小作権者、これは私は力が全然違うと思うのですよ、全然気がまえも違う。一方はともかくも何年も前に、あるいは何カ月も前に力一ぱい張り切ってやってきているわけです。一方はようやく、そうですが、ぼつぼつ行けますかというので、役所から連絡か何か受けて立ち上がるわけですから。もうそのときには旧島民は確かにあれですよ、乱獲防止の問題で水産庁にわれわれもお願いに行きましたけれども、定置制の漁業でやたらとっているわけですよ。これは旧島民以外の静岡県だとか、各地の、東北の県だとか、四国の県がとっているわけです、領海内におきまして。これは水産庁に取り締ってもらいたいということを申し込みました。今度は旧島民の力の強い組合は——七つもあるうちで弱いやつもありますけれども、これはどんどんやっていきますよ、一本の組合ができるのかどうか知りませんけれども。実際問題としてその点で、あるいはこれから物資がどういう形でもって、アメリカのあれを離れますから、今度島内だけでもってまずやっていくわけですね。そうするとどういう形でもって内地から品物を買い取って、それに給料を払って、いままでは年収が三千ドルあったというので、それをやっていくわけです。物価が違うわけですから、倍ぐらいになるわけです。肉など持っていったって三倍にも四倍にもなる。こういう流通機構、小売り機構、販売機構、これらにつきましても、母島に住んでいた旧島民父島に行けるころには、父島はもう蓄積された資本、あるいは先に行ったいろいろのメリットというものから、立ち上がりが早いものがかってに母島にも硫黄島にも進出することは目に見えているわけですよ。あらゆる点においてそういう問題が発生するので、何らかそれを——帰るときは一緒であった、昭和十九年に一緒に国策のために引き揚げたんだ、しかしいよいよ島がわれわれの手に戻ってくる、しかしその復興計画にタッチする段階が違うのだというときに、一万人に近い旧島民なんですから、やはり相当綿密にこまかく段階をつけて保護してやらぬと困るじゃないかという点を非常に心配するのです。
  155. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先生のお話はまことにごもっともだと思います。ただ先ほど副長官も触れられたように、現在母島には水の問題もそれから電気の問題も全然設備がございませんので、その意味であそこにすぐに帰ってくださいというわけにはいかない状態であるわけでございます。そういうことで実は父島に一応帰っていただいて、それから母島に行くようなそういうことを考えざるを得ないのじゃないかというふうに思うわけですが、特にいま御指摘の水産業協同組合の問題につきましては、現島民、それから母島・父島、硫黄島を含めた旧島民の方々で一応一つの組合をつくって、同じ条件で漁業を営んでいただくというふうに持っていくべきであろうというふうに考えるわけでございます。そういうふうにいたしますれば、先生の御指摘の点は、まあもちろん御指摘のように母島そのものに住んでそこを根拠地として漁業をやる場合とは多少は不利の点が残ると思いますけれども、いま申し上げましたような生活環境、そういう整備のしてない現時点においてはまあ一応やむを得ないのじゃなかろうか。しかしその点は十分復興計画を樹立する段階で考えていきたい、そういうふうに思うわけです。
  156. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 それはひとつ強く要望しておきます。  その次に借地権の問題です。小作権や漁業権については若干の保護規定されておるのですが、宅地、借地ですね。特に借地あるいは店舗、住宅その他を借りておりまして、これは私、八丈島に行きまして直接聞いた問題なんですが、ある借地権者がおるんですね。それから地主もおるんです。具体的な名前を申し上げてもいいのですが遠慮しておきます。その人は直接二人は二十三年間交流しておらない。しかし地主がどこに住んでおり、借地人がどこに住んでおるかもわかっているのです。この人が小笠原に帰りますときに、こういうケースは多いと思うのですが、自分の借りておる土地、借りておる家——家じゃない、家はもう朽廃しておるわけですね。しかし土地は残っておるわけです。この借地権の保護についてはどういうように規定されておりますか、この法律の中では。
  157. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  宅地の借地権につきましては、特にこの法律は触れておりませんけれども、その点につきましては復興計画の一環として住宅対策は当然考えなければいかぬと思います。したがって、その対策の一環としてそれは考えていくべきものと考えております。
  158. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 それは住宅対策でもって都営住宅なりあるいは国の住宅なりをつくっていただくのはけっこうなんですが、店舗を持っておる人、商売でもやりたいという人、具体的には商売なんです、私の知っておる具体例は。ある商売なんですが、商店を経営したい人、しかし土地は借りておったんで地主はこれに対して、昭和十九年には借りておった、期限があるかないか私も知りません、期限のある場合と期限のない場合に分けて、これが現在その借地権という権利の主張ができるのかどうか、これをひとつお答え願いたいと思うのです。
  159. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  昔の賃借権は、昔というか、戦前あった賃借権は、大体農地の場合ですと、期間の定めのない賃借権が多かったと思います。その意味で現在も賃借権として存続しておるものが多いのではないか、かりにそれが消えていても、期間が経過して消えていても、この法律では別の新しい賃借権として設定する、こういうふうにやっておるわけでございますが、宅地の場合には大体が期間の定めのある賃借権であろうと思います。そういうことでございますれば、ほとんど契約期間は経過しておるということで、権利そのものは消滅しているものと考えておるわけでございます。
  160. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 宅地の場合は期間の定めのある契約だなんていうことは、それはあなたのお考えであって、町の実情はそんなのじゃないですよ。ほとんど借地借家法も知らずに、期間の定めのないほうが宅地の場合にはもうほとんど多いのです。現に私も家を借りておりますが、期間の定めのない契約をしておりますよ。そんなことはたくさんあるのです。けれども、たとえば期間の定めがあったとしても、二十三年間のうちにたぶんなくなったであろうという推定、そういう前提の立て方は少し無理があるのじゃないかと私は思う。では、二十二年間に消滅した、期間が経過したとしても、昭和十九年からことしまでの二十三年間、その間の経過を一体ネグってよろしいかどうかという問題。これは国家の国策の要請に応じて協力をして、元気一ぱいに十九年時点ではやっておった者が、そして内地で苦しい生活をして、ようやくこのうれしいあれがきまったら、とたんに自分土地はなくなってしまったのだ、こういうことはこれ自体も一つの問題なんです。これは期間の定めなき場合には、一体どういう救済方法があるか。これは明確にしていただかぬと困ると思うのです。
  161. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  ちょっとことばが足らなかったようでございますが、期間の定めのない契約は現在も生きておると思っております。
  162. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 そうしますと、期間の定めなきものは現在でも生きておる、こういう理解に立ってよろしいですね、御答弁のように。  それではもう一つ、その間に期間が消滅したりした場合はどういう扱いになるのですか。
  163. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 期間の定めのあるものにつきましては、これは当事者同士で定めた期間でございますので、その期間の経過によって契約関係はなくなると思います。
  164. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 昭和十九年から国の政策によって強制疎開をされたということについての救済はないのですか。
  165. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 先ほど農地のことについて申し上げましたのは、やはり小笠原の復興に一番重点的にやっていかなければならないのは農業であろう——もちろん水産もあるのでございますが、土地関係では農業であろうというふうな観点から、農業をやる旧島民の方にできるだけ早く帰ってもらって、農業を興してもらいたいというふうに考えているわけでございまして、そのために小笠原復興の一環として特に農業を重点的に考えて、その農業に関する旧権利については一応この法案のように、保護といいますか、新しい権利を設定していくということが、公共の福祉に適合するものとして考えて立案したわけでございますが、宅地につきましては、先ほど私が申し上げましたように、住宅対策の一環として処理できる……(依田委員「店舗ですよ」と呼ぶ)住宅対策の一環として、それも含めて処理できるというふうに考えておりますので、そういう方法でこの問題は解決したいと思っております。
  166. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 私がお聞きするのは店舗あるいは住宅ですが、あなたの言うのは、お上が住宅をつくってやる、そこへ入りなさいという意味の住宅なんですね。しかし、そういうように、昭和十九年以前の居住者がそういう希望を持つかどうかわからないのですよ。まず昭和十九年時点において、宅地、店舗の措地権を持っておる者の保護を一体どういう形でもってこの法律規定しておるのかということなんです。それをお聞きしているのですよ。そのうち、あなたの御答弁の中から出てきたのは、期限なき借地権については現在も保護します、これからも保護していきます、借地権は認めていきますということですね。それが一点。  それからもう一つ、私があらためてお聞きしているのは、二十三年間に期間満了しました借地権についてはどういう扱いをしますか、これをお聞きしているのですから、その点についてお答えを願いたいと思います。
  167. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えがちょっと足らなかったかもしれませんが、宅地の期間の定めのないものの考え方は、民法上の契約関係が依然として現在も続いているというふうに考えるということを申し上げたわけで、この法律では特にそれについて何らの規定をしてはいないわけでございます。現在の時点におきましてその契約関係が存続しているものについては、この法律では何ら触れていない。触れていないと同時に、われわれの解釈では民法上の契約関係は依然として生きているというふうに考えているわけでございます。期間の経過したものについては、それと同じような意味で何にも触れていないわけでございます。
  168. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 いないから、どうして保護してやるのですか。自分の意思でもって引き揚げたわけじゃないのですよ。国策に沿うて引き揚げているわけです。その人たちをほっておいていいのですか。ほかの人は漁業権でも何でも保護しておきながら、借地権者だけはあきらめてくれということですか。
  169. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  先ほどお答えしたわけでございますが、その宅地関係につきましては、住宅対策の中でそれを処理していく予定であります。
  170. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 本人の希望は、政府や都が建てた住宅に入るかどうか、そんなことはわからぬ。方角が悪かったり何かすると入らないのですよ。昔、自分がいた土地に家を建てたいのですよ。それが物理的にその土地がなくなったり何かしたケース、これはケース・バイ・ケースで処理していただけばいいのですが、現に母島は無人島です。しかし母島で店舗を借りて経営しておった人はおりますよ。これに対して硫黄島や父島など、母島と全然関係のないところで国の住宅や都の住宅に入ってくれと言ったって、入るかどうか、それはわかりませんよ。
  171. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたしますが、私が先ほど申し上げましたのは、当事者間の契約関係でございますので、もちろん、もといたところにあらためて契約関係を結べばその宅地を使用することは可能なわけでございます。その点については自由に当事者同士にまかしているわけでございまして、どうしてもその契約関係が成立しない場合には、住宅対策の一環としてのその住宅に入っていただくようにしたい、こういうふうに考えております。
  172. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 この法律保護の理論構成に少し飛躍というか、無理があるのじゃありませんか。農業権者、漁業権者あるいはその他の方々に対すると同じような、質量ともに公平な対策を借地権者に対しても与えてやらぬと、あなたがその人には家を建ててやりますと言っても、たとえその人が一人であろうが二人であろうが、私は量は問題でないと思うのですよ。こちらが家を建ててやるということは関係ないのです、心がまえとしてはよろしいのですが。私は、旧島民の十九年時点における旧借地権の保護を一体どうしてやるのですかということをお聞きしているのであって、これは法務省もおいでになると思うのですが、どうか明確に御答弁をお願いしたいのですがね。
  173. 住吉説明員(住吉君彦)

    ○住吉説明員 お答えいたします。  依田先生のおっしゃる借地権でございますが、これは建物所有を目的とする賃借権または地上権を借地法では借地権と言っております。したがいまして、建物が朽廃によって滅失するとかあるいはその他の原因で消失するということになりますと、借地権は当然に消滅をいたします。したがいまして、戦前に建物所有のために他人の土地を借りていたとか、あるいはその土地の上に地上権を設定して、いまお話しの、たとえば商店を経営していたというような場合には、法律的には借地法上の借地権は消滅している、こう考えるのが正当であろうかと思います。
  174. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 それは六法に書いてあるのですよ。それは一般的な場合なんですね。そうじゃなくて、これは国の施策によって無理やりに疎開をさせられたものなんだから、そういう立場に立って、漁業権にしても、あるいは現在現地にある法定賃借権ですか、これだってそういう意味でもって無理に——地主もはっきり、内地におるでしょう。しかしアメリカとの生活の中でそこに賃借権をもらった者は保護しようということがこの暫定法の中に出ておるわけでしょう。なぜ旧島民の中で借地権者だけを規定からはずしておるのですか、これに対する保護措置をどこかにとってないのですか・それをお聞きしているのですよ。あなたのおっしゃるのは、これはもう日本人なら全部法律に従わなければならぬことなんですね。しかし、この人たちは特別な措置でもって強制疎開させられたのです。その人に何らかの保護をしてやるのが当然じゃありませんか。そういう立場でこの法律は一貫しているのじゃありませんか。どうして借地権だけは除外するのですか。
  175. 住吉説明員(住吉君彦)

    ○住吉説明員 農地につきましては、戦後自作農創設特別措置法を経由いたしまして、いわゆる農地解放ということが本土においても実施されております。ところが、宅地につきましては、宅地解放というようなことが実際問題としては議論にはなりましたけれども、結局本土においても宅地を解放するというような施策は特段にとられておりません。ただ、たとえばある一都市が空襲によって焼失するあるいは大火によって焼失するという場合に、罹災都市借地借家臨時処理法という法律をもちまして、その地域の開発を借地人の手によってやっていただくというような思想から、いま申します借地法の特別法ができております。ところが、たとえば戦時中、間引き疎開といいますか、大都市の一部に類焼を防止するために疎開を強制されたというような方々——これは本土においてのことでございますが、そういう方々につきましてもその借地権の保護ということは特段の措置を講じておりません。そういう法体系のバランスからいたしますのと、いま御指摘の借地法の考え方自体でございますが、借地権をどう見るかというところから、おのずと農地とは違った扱いになるのじゃないだろうかと私は考えます。
  176. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 関連して中谷鉄也君。
  177. 中谷委員(中谷鉄也)

    ○中谷委員 法体系ということであれば、むしろ先ほど依田委員が何べんも繰り返し繰り返しお尋ねしているように、全部とにかく疎開をしてしまった。あなたがいみじくも言われた間引きではないわけなんですね。だとすると、法の考え方からいいますと、罹災都市借地借家臨時処理法の考え方に沿うべきである。だとするならば、先ほど言ったように、たとえばかなり繁華なところでお店を持っておった、おそらく今度そういうところにお店ができるだろう、しかし建物が心ならずも朽廃してしまったために借地権が滅失したという場合には、特例法を設けて、処理法の考え方で借地権が生きておるのだというふうにしてやるべきではないか。私これは全くの関連質問で一点だけでありますけれども、あなたは法体系のたてまえからいっておかしいとおっしゃるが、法体系の考え方からいうならば、むしろ処理法の考え方が正しいのだ。これはむしろ政治の問題だ。あなた自身もあまり法律的にどうのこうのとがんばらぬほうがいいと思うのです。法体系がどうのとかではなくて、これは政治の問題です、どう処理するかという問題だから。あなたがそういうふうにおっしゃるなら、むしろ処理法的な考え方適用さるべきじゃないか、適用することがむしろ正しいのだというふうに私はお答えいただきたい。そしてあと依田さんのほうから、ひとつ長官の御答弁を求めるような質問を私はしていただきたい、こういうふうに考えます。
  178. 住吉説明員(住吉君彦)

    ○住吉説明員 政策の問題ということでございますと、高度の政治的な判断が必要でございましょう。したがいまして私からお答えする筋合いじゃないかもしれませんけれども、われわれ法律家といいますか、その面からだけ見ますと、いま御指摘のように、罹災都市借地借家臨時処理法の考え方を導入するという考え方もあるじゃないかということは、まことに御指摘のとおりでございます。しかし……(中谷委員「それ以上言わぬほうがいいです」と呼ぶ)はい、それじゃこれで終わります。
  179. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 あるじゃないかではなくて、罹災処理法のそういう法の理念を導入して——他のケースには導入してあるのですよ。特別扱いをしているのですよ。これは長官からお聞きしたいのですが、その点をどういうような形でもって保護してやるか、ひとつはっきりお答え願いたいのです。
  180. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 法律理論の問題はなかなかむずかしいところがございましょうが、先ほど御質問にもありましたような同時開発の理念とか、また今後の開発のいろいろな基本的な方針の確立を待って総合的にやるとかいうような場合に、いまお話しのような旧権利者の原権の第三者への対抗要件を強く主張といいますか、もちろんそれは調整を必要とするような面が非常に多く出てくるのじゃないかと、まあ常識的でございますけれども考えるのでございます。そういう点は、たとえば総合事務所が設置されて、そして旧権利者との間に、当面は現地の現住者との間の権利の調整の問題、さらにその次は帰島されまする方々の間の権利関係調整の問題、それからいまお話しのような第三者に対する対抗要件を持っておられるような旧権利関係調整の問題、こういうふうな問題がやはり小笠原の今後の開発には一番むずかしい問題として最後まで残ってくるのじゃないかと考えられます。いまの御質問の骨子は、そういう場合に、たとえばこれを国が特定の価額でもって買収して原権を提供するとか、いろいろな方法もいずれは講じなければならぬのじゃないかと思います。私、法律の、しかも特に戦争中の疎開あるいは罹災等の借地借家法の中における特例法のようなものはよく存じませんけれども、しかし今日の小笠原の開発ということを眼目に考えます場合には、どうしても旧権利者との関係において調整を必要とする面が非常に多い。それから旧権利者の権利をやはりある程度まで保護、保障する措置がいずれは根本的に考えらるべきではないか、こういうふうな政治家としての考えを持っております。
  181. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 この問題は私もまだ十分納得できない。しかし同僚議員から、また専門家もおりますから、詰めをある程度やっていただきたいと思います。  次に、先を急ぎますから簡単にお答え願えばけっこうなんですが、小作権の問題です。これは第十三条の四項、「特別の理由がある場合でなければ、」この「特別の理由」というのを政令できめるそうですが、これは一体どんな内容のものを考えておるか、一言聞きたいと思います。
  182. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  政令で定める予定にしておりますのは、権利を放棄した場合とかあるいは解除事由があって解除されたような場合、そういうようなことを考えております。
  183. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 この土地の借地の問題は、実際は口約束が多くて、なかなか島における、実際の登記制度なんかもあったでしょうけれども、そう円滑にまんべんなくいっているわけじゃないと思うのです。口約束のようなことが多い。おそらく賃貸料、期間あるいは面積、そういう問題で地主と小作人との間、旧権利者との間になかなか話し合いがまとまらない。こういうものをよほど保護してやらぬと、事実上この政令の内容が重大な内容を持ってくるのですが、これは全部解約されてしまいますね。キャンセルされてしまうと私は思うのです。ですから単に権利放棄、これはもう問題にならない。しかし権利を主張しながら条件が折り合わない場合は、一体どういうように具体的にやっていくのか、政令内容をもう少し詰めてお答えを願いたいと思います。
  184. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  協議がととのわないときは、実は第七項で東京都知事のあっせんを求めることができることになっております。もちろんあっせんのできない場合、その他のあれといたしまして、さらに第十五条で第十条を準用しておりますが、第十条によりまして、裁判所で非訟事件の手続によって条件をきめる、こういうことでございまして、この協議がととのわないということだけで特別賃借権を行使できないという事態にはならないわけでございます。
  185. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 財政の面をちょっと聞きます。奄美大島の補助率というのは非常に高かったのですが、離島振興法と奄美大島の補助率とを比較してみましたら、非常にたくさん差があるのです。たとえば学校などの場合には二割くらい違うのです。十分の六・六が十分の八、やはりあらゆる点でもって奄美は優遇を受けておるわけです。今回小笠原の問題につきましては、おそらく東京都がやると思うのですが、これについての補助は、法律では三十何条かに出ておるわけですね。第三十二条に「負担金、補助金等の特例」を定めております。この政令の内容またその考え方についてひとつ具体的に聞きたいと思います。奄美との関連、離島振興法も含めてですね。
  186. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 奄美のときに相当高率の補助をしておるわけでございますので、奄美と比較して奄美より低いような補助ということは、まずちょっと小笠原特殊事情から考えまして、そういうことはない、こういうふうに考えております。できるだけ小笠原特殊事情考えまして補助したい、そういうふうに思っております。
  187. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 そうしますと、公共事業関係は奄美の場合はほとんど一〇〇%ですね。それからその他の事業におきましても、土地改良あるいは文教施設関係、保健衛生関係は全部四分の三、文教は十分の九、それから林業関係も十分の八、大体倍くらいの補助を出しております。これはいまそれを下らざるということが御答弁にありましたが、そのとおりにお聞きしておきますから、ひとつしっかりやっていただきたいとお願いをいたして、この質問を終わります。  次に、これは具体的な問題を少し伺いたいのですが、時間がだんだん迫ってまいりましたので、急ぎます。  生活程度の維持の問題がいま現地で非常に問題になっておるのです。これは大体二百ドルくらいもらっておると言っておるのですが、これがきまりましたら、アメリカ軍のほうは全部離れるわけですね。そうしますと、内地から船でもって持っていくという問題が一つある。この船の費用を一体どうするかという問題、まずこれをひとつ具体的にお聞きしたいと思います。それから物質、これをどのような形でもって補給するのか。それから現地雇用関係、その収入をどのようにして保障するか、簡単でけっこうでございますから、具体的に話してください。
  188. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  船の問題につきましては、午前中にも御質問があったわけでございますが、当分の間はどうしても国とかあるいは地方公共団体のいわゆる公船を利用して輸送せざるを得ないかと思います。しかしできるだけ早く民間航路をつくるように運輸省で指導される予定になっておりますので、それが早く実現することを期待しておるわけでございます。収入の点につきましては、大体調査団の調査によりますれば平均して百五十ドルくらいであるわけでございます。そういう収入が、もちろん復帰に伴いましてアメリカ軍が引き揚げますれば、五十七名の方は一応失職ということになりますけれども、その五十七名のうちでフルタイムで働いておられた方は、大体三十名くらいであろうと思います。そういうことでございまして、あとの二十七名はほかの仕事をかねてやられるとか、あるいは家庭の仕事をやりながらつとめておられた方々であると思います。そういうことで、これにかわるべき収入をどうするかという点につきましては、いろいろ職業指導等を今後積極的にやっていきたいと思っておりますが、さしあたっては失業保険あるいは駐留軍離職者対策の法律を一応準用していきたいと思っておりますので、そういう手当て、就業指導等をやって、できるだけ早く就職能力を持つようにしたいと思います。  なお、就業の機会につきましては、これも午前中お話がありましたけれども、政府及び地方公共団体その他の機関が、できるだけ職員その他に住民を使うという形で就職機会を与え、また復興事業を遂行してまいります途上におきましては、もちろん労働力として希望する方にはその復興事業に参画していただく、こういうようなことで収入の点は考慮していきたいというふうに考えております。
  189. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 だんだん話が小さくなって恐縮なん  ですが、あと二、三点です。  この船の予算がばかにならないのです。これをひとつ何とか具体的にお願いしたいのと、それから現地一つの消費者協同組合的なものだと思うのですが、BITCというのがあるのです。このBITCと物資を配給したりあるいはやったりするのですが、これと内地のほうから持っていく——おそらく東京都が持っていくと思うのですが、どういう形でか、民間のベースが確定するまでの間、相当補助してやらなければならぬと思うのですが、この調整の問題が実はあるのです。まず物価が全然違うのですね。米は食管法によって現地まで持っていってくれるからいいと思いますが、その他のものは全部倍とか三倍とか、値段が偉うわけです。これについて、特に人件費は、現在国家公務員でも地方公務員でも遠隔地手当が二五%ついておるのですが、二五%くらいじゃ話にも何にもならないわけです。極端に言うと、二〇〇%も三〇〇%もつけてやらぬと、とても向こうで生活ができないわけです。その辺のことについて、法改正も関連してくるのですが、どういうように御指導になりますか。まだありますが、まずその三点ぐらいをまとめてお聞きしたいと思います。
  190. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 現地の物価の問題につきましては、本土と遠隔の地であるということから来るそういうマイナスの問題は、当分の間はもちろん公船を使って輸送せざるを得ない関係で、ある程度考慮できると思いますが、今後民間航路ができまして、その民間の船によって輸送する段階になりました場合に、その運送料等につきましては、先生の御指摘の点も十分考慮して指導していただくようにしたい——これは運輸省で指導していただくことになるかと思いますが、そういうふうに考えております。  それから遠隔地手当の問題につきましては、先生の御意見について十分検討してみたいと思います。
  191. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 最後に、母島は無人島なのですが、これの沖港に突堤ぐらいはつくらぬと、まず行くこともできないわけです。メートル当たり二百万としても、五十メートルで一億くらいの予算がすぐにかかってくるわけですし、それから硫黄島の不発弾や遺骨、こういった問題をやるのにもすぐにお金が要るわけですね。しかし、それをやらぬことには手も足も出ないわけです。  それから、これは運輸省の関係なんでしょうけれども、飛行場は七百メートルくらいしがなくて、いまは使えない。聞くところによると、夜明山というところの近所につくるよりほか方法がないということなのですが、これは推定十億も二十億もかかるだろう。これは復興計画の内容になってくるかもしれませんが、飛行場については復興計画ができるまでの間全然考えないのかどうか、それとも考えるのか、とりあえず父島の飛行場の小さいのを直して——これは現実には直して使うことはできないと私は思うのですが、それならば近所に応急の飛行場でもつくるのか、飛行場というものは復興段階が正式に発足するまでは全然考える余地がないというようにきめてかかるのか、これについてお答え願いたいと思います。  それからもう一つ、魚族の保護に関連いたしますが、東京都に漁業調整規則があって、改正をしようとしておるのです。これを改めて小笠原までやるということになると、たいへんな仕事になるのですが、これは運輸省なり水産庁のほうで何か考えておるのかどうか。こういうことは国の費用で相当めんどうを見てやってもおかしくないと思うのです。最初の船便の費用なんかと同じなんで、国費で見てやってもおかしくないと思うのですが、その点どうですか。
  192. 梶田説明員(梶田久春)

    ○梶田説明員 飛行場の件に関しましてお答え申し上げます。  私どもは、硫黄島並びに小笠原父島に対しましては、先月末それぞれ調査団を派遣いたしまして、現地調査をいたしております。私どもの考え方といたしましては、ああいった非常に隔離された島でございますので、そういったところの民生の安定、開発という観点からは何とか飛行場を設置いたしまして、航空機による連絡というものが実現しなければいけないのではないか、こういう考え方からいろいろ現在検討しているわけでございます。ただ、御指摘のように、現在あります飛行場は、父島の飛行場あとは七百メートルといわれておりますけれども、すでに両端が波浪のために破砕されておりますし、現在の航空機の型式からいたしまして、なかなか適当な場所が見つからない。先ほどもお話がありました夜明山周辺ではせいぜい千百メートルくらいの滑走路しかとれないのではなかろうか、しかもそれをやりますについては相当な経費がかかるということで、航空路のいろいろな形態がございますが、たとえば、硫黄島の現在あります三千メートルの飛行場との関連においてどういったコンバインの方法でやれば最も合理的な航空路の開設ができるかといった問題も含めまして、目下早急に検討いたしておる段階でございます。
  193. 岩本説明員(岩本道夫)

    ○岩本説明員 水産資源の保護と漁業取り締まりの問題についてお答え申し上げます。  アメリカ施政権が移っております間の空白期間中にあまり漁業はやれなかった関係で、小笠原周辺の三海里の範囲内は非常に魚族資源も回復、蓄積されておると思います。したがいまして、これを大事にして今後小笠原諸島に帰って漁業を営む人のために大事にとっておくということはきわめて重大な問題であろうかと思います。現在まだ施政権が向こうにあります関係で、小笠原周辺三海里には入れないことになっておるわけでございますが、アメリカのほうでもこの復帰間近ということで取り締まりの手をゆるめる傾向がございまして、不心得な者があらわれて三海里の中に入ってその資源を荒らすという傾向もなきにしもあらずという情勢でございますので、復帰前後を中心に特別な取り締まりをやりたいと考えておりまして、近く四百トン級の取り締まり船を派遣いたしまして、復帰前後の当分の間はそれによって取り締まり、魚族資源を保護するという体制を固めております。また、その点につきまして海上保安庁なり東京都とも連携を密にして万全を期したいと考えておりますが、将来の恒久的な対策につきましては、取り締まり船の建造等相当多額の経費のかかることでもございますし、財政当局との御相談も要ることでございますので、復興計画の一環として十分検討してまいりたい、かように考えております。
  194. 野村説明員(野村一彦)

    ○野村説明員 ただいま先生の御質問の中で港湾関係の御質問がございましたが、実は私海運局でございまして、港湾の事情につきましては詳しく存じませんが、運輸省で過般調査団を出しました中にも港湾局関係の専門家が行きまして、ただいま調査をいたしておるところでございます。  それから、連絡の船の運航の問題でございますが、私ども復帰直後の復興期間中は復興関係の人員、資材の輸送ということが非常に大きな問題になってくると思いますが、これは総理府、自治省、東京都等とも連絡をとりまして、できるだけ国の船等を活用して、それによって人員、物資の輸送に当たり、一段落いたしまして普通の状態になりましたならば貨客船をもってやることができると思いますけれども、また、事実やるようにということで実は内々調査をやらせておりますが、民間の船会社におきまして一定の条件のもとにやりたいという申し出を非公式にやっている会社もございまして、この点いま準備を進めているわけでございます。
  195. 依田委員(依田圭五)

    依田委員 一応質問を終わります。
  196. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 美濃政市君。
  197. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 まず最初にお尋ねしたいことは、土地の所在です。土地の所在が明確にされるのかどうか、そういう書類が確実に保存されておるのかどうか、それをお伺いしたい。
  198. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  登記簿は焼失いたしておりますけれども、土地台帳とそれから公図はマイクロで一応保存されておりましたので、その復元によりまして帳簿的なものはある程度把握できるわけでございます。ただ、現地状況が、何しろ二十年間放置されたということから、なかなかその境界がはっきりしないケースが多いのではないかということを心配しているわけでございますが、調査団の調査によりますと、多少、何といいますか、目じるしになるようなものもあるようでございます。そういうものも十分活用し、また旧島民の所有関係等も調査をいたしますので、そういうものを総合的に判断して、また場合によれば実測調査等もやって、その境界を明確にするという方向で作業を進めていきたいというふうに考えております。
  199. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 どうもちょっと答弁があいまいのようでありますが、いわゆる登記簿は焼滅したのですか。登記簿はない、で、普通行政上の土地台帳というのは、いま固定資産税といっておりますが、当時ここを明け渡したときは特別税反別割りといっておったのです、そういうものをかける行政上の土地台帳である。土地の所在を確認するということになると、登記簿は焼滅しておるということになりますと、いわゆる法務局にある分筆図面というものがなければ、そんな標識や何かで全部の、まあこの資料によると土地権利の所在というものがかなりの筆数に分かれておると思うのですが、それを間違いなく法律上きちっとするというのは、やはり場合によっては実測でなくて、こういうふうになっておるときは、いわゆる境界を明らかにする測量調査をやって、標ぐいを打たなければ、島はほとんど原始林に返っておるというのでありますから、それをするには、どうしても土地台帳についております分筆図面というものが喪失しておった場合には、私はそんな行政上の土地台帳や何かで、まあ所有者面積はわかるでしょうけれども、土地の所在を明らかにするという方法に足るものではないと思うのです。それはどうなっておりますか。
  200. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 登記簿は焼失しておりますけれども、土地台帳の付属地図といいますか、そういうものは存在しております。したがって、それを基礎にして先ほど申し上げましたように旧良民の調査それから実測等を加味し、また現地における何らかの目じるし等を十分調査して、境界の画定をやっていきたい、そういうふうに考えております。
  201. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 そうすると、もう一回ちょっと聞いておきますが、法務局の土地台帳はなくなったが、図面はあるということですね。図面があるのであれば登記簿が存置されているはずですが、どうもそこがちょっと理解できないのです。
  202. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 私が申し上げましたのは、土地台帳とそれから土地台帳の付属図面が現存している、こういうことでございます。マイクロフィルムで保存されているものを今度復元いたしまして、それを利用したいと思っております。
  203. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 その土地台帳は法務局の土地台帳ですか、課税対象の行政上の土地台帳ですか。
  204. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 東京都が所有しておりますものでございます。
  205. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 まああると言うから、なんですが、どうもいまの答弁の範囲では、普通、当時の状況あるいは国内の態勢として、連絡測量とか何かやったことがあるところでは、行政庁に土地の所在を確認する図面があるところがありますけれども、通例はないのであります。当時は、戦時中には連絡測量とか区画整理的なものはまだこの島はやっていないはずです。東京都に土地の所在の全筆を確認するに足る分筆図面があるとは通例常識的にはちょっと理解できないが、あるのかもわかりませんが、それは間違いないのですか。もう一回確認しておきます。
  206. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  小笠原の全島が百四平方キロメートルでございますが、そのうちいわゆる民有地が大体二〇%ぐらいだと思います。したがって、その民有地につきましては東京都が課税関係で十分調査しているわけでございます。その資料土地台帳として、またその付属図面として残っておるわけでございますので、だいじょうぶだろうと思います。
  207. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 次に、農業関係についてお尋ねをいたしますが、まず第一点として今回の第十三条の規定でございますが、島が返って、この第十三条の規定で処理していきますと、農地については非常に封建的な旧地主制度が再現していくことになると私は思うのです。なぜかと申し上げますと、この資料によりますと、先ほどもお話のありましたいわゆる二〇%程度、このうち畑として官有のものはない。それから村有地が若干ある。組合、会社所有というものが全畑の六・八%ある。それから個人農業の当時の分類を見ますと、専業農家のうち半数近いものが小作農であるということになっているわけです。全島で専業農家戸数百八十三戸のうち八十九戸は小作農家、本土にはこういう形態はないわけです。現在農地で耕作しないいわゆる神社佛閣所有というものはありませんよ。また現在の農地法においては所有も認めておりません。それから専業農家であって純然たる小作農というものは本土にはまずないといってもいいのではないですか。兼業農家等が、その経営の実情によっていま賃借が行なわれておりますから、請負耕作、賃借というものは一部ありますけれども、現在の日本本土における専業農家というものはまず一〇〇%といってもいいと思うのですが九十何%、自作農ですね。それをこの第十三条で、こういう形態で処理していくということは、これは二十年の中において、先ほどもお話しのありましたいわゆる自作農創設特別措置法によって農地というものは買収しておる。神社仏閣所有というものは現在も認めていない。非耕作的な者が農地を所有して貸し付けるという行為は、現在の農地法も認めていない。だのに、この島が返ってくると、旧地主制度が直ちに復活していくんだ、こういうことはあり得ないと思うのです。言うならば、全く非常識な、農地の制度については封建的な再来をここでやるんだ、旧地主制度の復活をやるんだという法律なんですね、この第十三条というものは。これは私ども断じて認められぬと思うのです。こんな非常識な処理方法というのはあり得ないと思うのです。
  208. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  第十三条は、先生の御指摘のように、旧耕作権を特別賃借権という形で復活しようというものでございます。その意味先生が御懸念されるような地主、小作関係が復活するのではないかというふうに考えられますけれども、実際問題といたしましては、何しろ二十年間の空白状態がございますので、その間における昔の地主、小作関係のずっと継続しておったような、そういう状態が直ちに再現するとは私どもは考えられないと思うわけでございます。その点につきましては、この法律が特に農地法を適用しないで特別の規定を設けたという点は、現在農地ではございませんけれども、もともとは農地であった、既墾地であったわけでございます。そういう意味で普通の未墾地買収のような形で処理するのは——もともと未墾地買収というのは、その本来のたてまえは、農地でなかった所を農地にしよう、こういうことでございますが、この小笠原におきましては、昔、農地であった、だからすぐにでも農地になるはずの所でございます。そういう意味で農地法の規定で未墾地買収というようなことを考えないで、昔、小作人であった方が帰島して、直ちにその土地を開墾すれば農地に復元できるということから、そういう方向で帰島してもらうためにこういう措置をとっているわけでございまして、農地法は近い将来当然適用されるわけでございますので、その適用の段階におきまして、先生の御指摘になったような状態がもしあるとすれば、それは当然農地法によって処理される、こういうことになりますので、御懸念のような点はまずない、そういうふうに考えておるわけでございます。
  209. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 それはおかしいですね。いまの解釈は根本的に誤っておるのじゃないですか。  先ほども宅地の問題で話があったわけですが、宅地であったところが宅地でなくなった。これは賃借法からいっても、本人の意思によって使用が中断した場合にはそれでいいんでありますけれども、この場合、もと農地であったものが現在農地でなくなっておる現況は、その原因は当該耕作者の意思によるものではないわけですね。いわゆる委任統治領として占領行政が続いたということが原因なんであります。当該農家の意思によってそうなっておるのじゃないわけです。ですから、これが委任統治領になっていなければ、自作農創設特別措置法は島にも及んだでしょう。あなた方の見解は及ばなかったと思っているのですか。小笠原島には、自作農創設特別措置法があっても、委任統治領でなかった場合、この島は除外されたのだ、そういう判断に立つようなものの考え方でこの島の復帰を迎えようとする判断は、根本的な誤りですよ。その点どうですか。小笠原島だけは、委任統治領ではなくて本土であったとしても、自作農創設特別措置法の適用は及ばなかったというのですか。それはどうですか。
  210. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  もちろん現況が農地であれば農地法の適用がございます。したがって、昔の自作農創設特別措置法の適用があるわけでございます。しかし、農地でなければ、その点は適用がないというふうになりますのは当然だろうと思うわけですが、施政権アメリカにあるということから、自作農創設特別措置法は、かりにその当時農地であっても適用し得なかった状態でございますので、その点を十分考慮しながら、返ってきた段階では現在農地でないというようにこれははっきり認識できるわけでございますので、その点を考慮して特別の保護措置考えながら、新しい特別賃借権設定して開墾をしてもらう。そして農地になって、いわゆる既墾地として十分扱い得る状態になりますれば農地法の適用がされる。その時点においていまの所有関係は処理していきたい、こういうふうに考えております。
  211. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 それは長官どうですか、根本的なあやまちでないですか。これは全国でも現在草地開発等を行なっております。そういう考え方でやっていないでしょう。たとえば五百ヘクタール以上になれば国営パイロットでやる。千ヘクタール以上になれば大規模草地でやっている。この島の開発はそういうものの考え方でなしに、いわゆる旧自作農創設特別措置法では——法律はなくなっておりますが、あれば直ちに適用すべきですよ。現在私どもの考えからいくと、この島にあった二千ヘクタール余の農地というものは、農地として解釈をすべきです。木がはえておるから山だという解釈ならば、この島に農業を復元しないという解釈ならば、その解釈でいいと思うのです。この島をもとの農地に開発して農業に復元するのだというのであれば、それは法律上も農地として解釈すべきです。耕作の用に供せぬ、あるいはこの島におった農民がみずからの意思で耕作を放棄したわけじゃないわけですから、木がはえておってもジャングルになっておっても、返ってくると同時に農地として解釈をして、法律適用をして開発を進めるというのが当然だと私は思うのです。そうしないと、いまの時代に、そういうジャングルになっておるところを小作地で開発さすという進め方、賃借権利は小作地で、個人の努力で畑になって、地価が上がればそれは全部地主の地価値上がりの所得が増大するという、そういう非近代的な姿勢でこの島を受け入れるというこの第十三条は、根本的な誤りである。長官はどう考えますか。
  212. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 私から答弁させていただきます。  現況が農地でないということは事実でございまして、農地法のたてまえからいいますと、そういうところはもちろん農地法の適用がないわけでございます。しかし先生の御指摘のように、この島が強制的な引き揚げで農地でなくなったという事実は御指摘のとおりでございますので、その点を十分考慮して、そのやや中間的な措置といいますか、特別の賃借権設定して、それを一方で保護しながらその開墾を促進してもらう。その開墾の促進に際しましては、もちろんいろいろ政府のほうで援助をしていくことになろうかと思いますが、そういうようなことで、現況は完全に農地でない、したがって農地法の適用はないけれども、昔、農地であって、しかも強制引き揚げによって農地でなくなったという事実を加味してこういう制度考えたわけでございますので、その点御了承願いたいと思います。
  213. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 長官の見解はどうですか。そういう見解でよろしいのですか。
  214. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 これは非常にむずかしい根本問題がここには伏在しておると思うのでありますけれども、ちょっと御質問の趣旨がどうもはっきりしませんが、反間をお許しいただくならば、小笠原がこういうふうな現状になっておる、終戦後二十年間で、まだ権利関係や事実問題として非常にこんとんとしておる状態、そこで、日本内地の場合には、国内では全部農地解放ということがすでに行なわれておるのだから、小笠原の復興にあたっては、まず旧地主の権利関係を国が一応買収なり何なりで摘除して、そうしていわゆる新耕作権を認めて、初めから、開発のときに自作農創設の、そういったラインでやるべきだという御質問のように受け取ってよろしゅうございますか。
  215. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 最終はそうなんです。
  216. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 それも確かに一つ考えと存じますが、いま担当官からの話も、究極においてはそういうふうになる過程において、土地所有権者の原権というものを認めておるように考えられますが、この担当の、農林省の担当官から、ちょっとこれを作案いたしました見解をまず聞いていただきとうございます。
  217. 小山説明員(小山義夫)

    ○小山説明員 戦争が全くなくて、あるいは占領という事態がなければ、当然小笠原にも農地改革が行なわれたであろうということは先生のおっしゃるとおりであろうと思うのであります。そこで、直ちに農地法を適用して、そういう農地改革と同じようなことの内容のことをやっていくということをかりに想定いたしますと、御承知のように、買収、売り渡しの制度で引き上げてそれをやるわけでございますが、旧自作農創設特別措置法にいたしましても、現行の農地法にいたしましても、地主といいますか、土地所有者が小作地を持ってはいけないという制限がございますので、それを越えておりますと買収をする、今度売り渡しをするときには、その小作地において農業をやっておる小作人が、りっぱに農業をやっておるという事実を踏んまえまして、農地法の規定でいえば自作農として精進する見込みのある者に売り渡しをするということになるわけでございます。そういう方式を現状の小笠原に当てはめますと、現在は農地の状況になっておらないし、小作人がそこにおいて現実に耕作を行なっておって、その人であればりっぱに、農地さえ売り渡せば自作農として精進する見込みがあるというふうに個々のケースについて判断ができる、そういう現実がございませんので、直ちに直接的な買収、売り渡しという方法で、小笠原において農地改革式のことをやることはむずかしいわけでございます。私どもがそういう、先生のおっしゃるような趣旨のことを、どういうふうな手順でやれば終局においてそういうことができるであろうかということを考えますときに、ほんとうにその小作地をその耕作権を持っております人に売り渡しをすれば、その人がほんとうにりっぱに自作農として精進をしてもらえるかどうか、その判断の問題になるわけであります。その認定が直ちにはできないものですから、今度の暫定措置法で、ともかく島に帰ってりっぱに農業をやろうという意思と能力のある方にとりあえず帰ってもらって、開墾をしてもらって、農業をやってもらう、その現実をまずつくっていただいて、そのために必要な規定は、制限措置にしろ、緩和の措置にしろ、必要なものを全部手当てをいたしまして、そういう人たちにりっぱに農業をやっていただくという現実をつくっていただく。通常の農業経営がそういうふうにして小笠原で一般的に行なわれるような時期になりますれば、直ちに農地法を適用する、こういう段取りを考えております。農地法を適用いたしますと、御承知のように不在地主は全く小作地の所有は認められませんし、それから在村にしても、東京都でございますと〇・七ヘクタールという制限面積がございますので、それを越える小作地の所有があれば直ちに買収をして、りっぱにその農地について農業をやっておられる小作人にその土地を売り渡すという買収、売り渡しの規定が働いていくわけでございます。そういう途中の、暫定の経過的な手順を経ませんと、現在のように長い間のブランクがあって、現況が農地でなくなっているという事実があるものですから、買収、売り渡しということが、事務的に技術的に直接的にはできないということでございます。
  218. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 いまの農地課長の見解は、農地法を適用して、現行法によって買収、売り渡しをするというが、この方法は私は二つの方法があると思うのです。一つは、帰ると同時に、農地については、これは私の考えは、旧地主の権利を認めるには現況はどこまでも未懇地である、しかし、旧地主の権利も、未墾地にせしめたものは地主の意思で未懇地になったわけじゃないのですから、これはやはり一括買収をして売り渡しをすれば、開拓者を入植せしめるような、いわゆるみずから入植をしてそれを畑にするという条件を付して入れるわけです。入らなければ、その土地は再買収をするわけです、間違いは起きませんから。その方法が一つあります。それからもう一つの方法は、そういうことを言うならば、その中でしからば開墾に関する経費等は全額に近い国庫補助で進めるのですか。これは買収するといっても、畑になってしまえば畑で買収するのでしょう。畑に変えてその上で買収するというのであれば、地主はぬれ手でアワの恩恵をこうむりますね。それは国家の一〇〇%の補助金制度か、あるいは旧地主の土地のまま国営パイロット方式のようなことで、いまの時代ですから機械公団でも持っていって、国費で開墾をやって、そして畑にして、それを、つくる農家の実態を見て買収して売り渡す。その間の経費は大幅に国庫で負担するというのであれば、これは現実に帰った農民の犠牲にならないからいいですけれども、そういうジャングルになっている島へ農業をやろうという者を帰して、そして農民の血とあぶらで畑にして、既墾地になれば農地として旧自作農特別措置法時代の原始取得価格で買収するわけにはいかぬでしょう、いかに現行の農地法を適用するとしても、評価額が変わっておりますから。この特別措置法の原始取得価格で買収することは不可能でしょう。そうすると、その間地価が上がるという分は地主に不労所得が出るわけです。その不労所得を地主に出す犠牲は、ジャングルに入って働く農民の犠牲になるわけです。そういう開発の方式はないじゃないですか、こう思うのですね、いまの現況において。
  219. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 先生のおっしゃいますことも、農地のほうの担当官の申しておりますことも、思いは大体同じようなところにいっているのだろうと思うのです。結局、農地解放の場合におきましても、地主の権利を認めなかったわけじゃないので、やはり地主の権利は一応肯定して、そうしていま先生のおっしゃるのは、それを安い値段で買い取るか、高い値段で買い取るか、そこに不労所得が出るか出ないかという問題でございますが、現在のような適正価格で——適正価格といっても、ジャングルでございますから、適正価格でもってもし国が買い取った、そうすると、結局もとの方法でも、国が一応買い取って、それを今度は売却したわけでございますから、国有地に一応して、そしてそれを耕作能力のある、また実際に耕作を希望する者に、国が今度はゆっくり一人一人セレクトして、乱売しないで、計画的にやるというやり方が非常に合理的ではないかということにもなりますが、やはりその場合でも、旧農地解放を適用するという場合でも、一人一人の地主の原権というものは一応認めておるわけだろうと私は思うのです。そうすると、大体今後のやり方が、これは暫定処置でございますから、一応土地所有権者の原権を認め、今度はそれをどれだけの買収価格で買収し——旧小作人といいましても、現在は耕作を放棄しておる諸君でございますから、それが全部帰るとも必ずしも限らない、その辺これからの施策に待つことになる。また、むしろ先生の場合は、旧小作人にはそれが帰島の意思があろうがなかろうが、耕作能力があろうがなかろうが、義務的に売却しろ、ここまでおっしゃっているようでもないように理解するのでございますが、そうしますと、現在農林省の担当官がこれを開発計画として考えているのとほぼ近いものになりはしないだろうか。結局いろいろな表現の違いはありますけれども、われわれの考えておることも、また農林省の考えも、先生のお考えも、ほぼ同じような帰結になりはしないか、かように理解をいたしますが、いかがでございましょう。
  220. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 もちろん私も耕作の意欲があろうとなかろうとという考えではないのです。当然島に籍を持って、帰る者を優先しますけれども、開発された面積に対して入植戸数が足らなければ、新規もいいわけですから、真にやはりこの島で農業を営む者でなければこれは話にならぬと思うわけです。  そこで確かに二つの進み方があると言ったのは、そうすると、第十三条でこういうことをやりますと、これはいわゆる所有権は、地主というものが存在しておっても、現行の本土で進めておるパイロット開拓方式、国営開墾方式、これは所有権があっても進められるわけですか。そうすると、開拓方式は、いわゆる九五%以上の国庫負担で、二千数百ヘクタールですか、これを国営開墾方式で進めて、そうして昔の権利所在その他を優先して耕作に従事せしめる、それが完了して農地法によって買収、自作農化をしていく、こういう考えですか。その開墾方式とからんでくるわけです。その国営開墾方式でなしに、ジャングルへ昔と同じように農民を入植させて、そうして農民の血と汗とあぶらで開墾して、地代の値上がりが全部その地主の不労所得になるという開拓方式をとるというのだったら、おそらく開発は進まぬだろうし、いまの時代に、そんな条件で、帰ろうと思ってみても考えてみたらばかばかしくなってやらぬということが起きるかもしれません。どっちかでなければ、現在の常識、制度に合わないと思うわけです。国がいわゆる一定価格で買収して、入植して農業に精進する見込みのある者を入植せしめて農業開発をしていくということ、もう一つは、この第十三条でいく場合であっても、これは現在全部ジャングルなんでありますから、土地所有者のいかんにかかわらず、国営パイロット方式で九五%以上の——現在人がいないのですから、九五%というのはおかしいのですね。一〇〇%国営開発でやって、そこへ入植せしめる。そうして買収は、その場合は畑で買収して、地主の不労所得が出ても、地主に不労所得を与えたのは国が与えたわけですから、農民の血とあぶらということにはなりませんから——しかし、いまもちろんこの自作農創設特別措置法というものは、地主の権利は十分認めて、買収、売り渡しということになりましたけれども、あの時点における買収価格というものは、原始取得価格方式がとられまして、価格そのものについては、確かに法律上は買収といいましたけれども、あの戦後の急激な悪性インフレの中で、地主が国から支払われた代価というものは、買収などというものに該当する代価でなかったわけです。没収といっていいわけですね。そのためにいろいろ紆余曲折があって、旧地主補償というものもやっているわけでしょう。ですから、今日になれば時代が変わってくるからそういうことはできないが、農民の血とあぶらの犠牲で地主に不労所得が生ずるような開発方式で進めるというのであれば、この第十三条は根本的に、これはそうでない方式をとらなければならない、そう思うのです。
  221. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 第十三条をこう規定いたしますことが、今後のそういった開発の農政上の問題に対しまして決定的な否定を遂げてしまうならばこれは非常に重大でございますが、私は第十三条のこの規定によっても、今後のこれに後続します復興法はどうせつくらなければならぬわけでございますから、その復興法によってそれらの点を十分できるんじゃないかと思う。むしろ暫定的に、まあ旧地主の原権を認めないというならば別でございますが、一応農地解放であっても原権は認め、そうして今度はそれが、いま先生が言われるように一応適正な価格で——不当ないまのあれじゃなくて、適正な価格で地主から国が買い取る場合には、その国有地をいまのお話しのような考え方もこれからとれるんじゃないか。まあ私はこの第十三条は第十三条としてお認め願って、それからあとのそういった問題を十分いろいろと先生方の御協力なりで十分に検討して、先ほど来お話があったようないわゆる火事どろみたいな無統制なことではなく、やはり同時開発といわれるような考え方の中にも、業態別にもやはり整った計画的な今後の農政のあり方を具現できるんじゃないか、かように思うわけでございますが、これは農林省のほうから何か追加でも、お話があったらどうぞ……。
  222. 美濃委員(美濃政市)

    ○美濃委員 ちょっとその前に、長官、何か時間の予定があるそうですね。ですから、私の質問も、これで時間の関係で、あと漁業のほうでも関係があるから、きょうは終わらないと思うのです。ひとつ、この法案審議の中で、しからば長官の言われた御協力によってという、私どもの意図ははっきりしておるわけですから、私どもの努力もさることながら、この第十三条でいくのならいくで、あとの私の言っておるいわゆるパイロット方式で全額国営開発で進める。その点を、この第十三条とそれから農業振興、入る農民の入りやすい、いまの近代化社会において本土で進めておる国営パイロットや何かの入植条件、これをきちっと第十三条のあとの自後方式を裏づけしてもらいたい。それをひとつ政治的に明確にしてもらえば、十三条方式が必ずしも妥当でないとも考えません。きょうでなくてよろしゅうございますから……。
  223. 田中国務大臣(田中龍夫)

    ○田中国務大臣 それでは私、中座をいたしますが、ただいま第十三条のこの問題はあくまでも暫定法の問題でございまして、この考え方で一応あれしまして、今後の小笠原の農業開発等々につきましては、ほんとうにこれは国としても重大な問題でございますから、われわれ政府のほうも対策本部を中心に鋭意努力いたしますが、復興法の成立の計画の過程におきましては、ひとつどうぞ党派を超越して国家のために御支援と御協力をひとえにお願いいたします。
  224. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 中谷君。
  225. 中谷委員(中谷鉄也)

    ○中谷委員 ちょっと参事官に私は資料要求をしておきたいと思います。  第十三条の関係ですが、事実関係が私には必ずしも明確になっておりませんので次回に質問いたしますから、明確にできる範囲でひとつ御準備をいただきたいと思うのです。第十三条の法律のたてまえは、拝見をいたしますと、特別賃借権、そうしてその特別賃借権は、第十三条第一項によって設定されたものと、そうして現に基準日に存した耕作を目的とする賃借権で、この法律の施行の際存するものとの二つに相なるということになっています。  そこでまずそのあとのほうの、第一項により設定された賃借権でない、法律施行の際存しておったところの賃借権、それが先ほどの参事官の御答弁では、期限の定めのないところの農地についてはその後段に当たるのだというふうなお話があったわけです。しかし、そういうようなことがいわゆる農地法の考え方からいって、未墾地あるいはジャングル化したというふうなこととの関係において一体どうなるんだろうかという、私、疑問があるのです。これは農林省にお聞きすればすぐわかることなんですが、私が資料要求をいたしたいのは、現に存しておる賃借権——設定する賃借権でない、現に存している賃借権の内訳をひとつ明確にしていただきたい。すなわち永小作権、地上権そうして期限の定めのないところのものがそれに当たるのだということになると、これは私の一つの推定ですけれども、おそらく期限の定めのないところの賃借権というのがほとんど大部分を占めておったのではないかと思う。そうすると第十三条の本来のいわゆる設定される賃借権というよりも、むしろ保護され検討さるべきは、期限の定めのない、現に存在しておると参事官のほうで答弁しておる賃借権についての保護規定が十分かどうか、これが一つ論議の対象になってくるだろうと思う。そうすると第十三条の法文を検討してみますると、設定された賃借権についての保護規定はかなり詳しくあるのですけれども、現に存在している賃借権についての保護規定については若干欠けている。むしろ非常に問題がある条文だと思うのです。しかし事実関係が明確でないので、いわゆる現に存在しておる賃借権の内訳をひとつ次回までに明確にしていただきたい。その事実関係の上にのっとって質問をしたいと思うのであります。この機会にひとつ資料要求をしておきます。
  226. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  ただいまの御要求でございますが、現に存している賃借権といいますか、耕作権の分類等につきましては、ちょっと資料が手に入らぬと考えられます。それで私先ほど申し上げました点を補足させていただきますと、本土の一般的な傾向といたしまして、耕作を目的とする賃貸借は、大体が期限の定めのないものが多かったというふうに判断しているわけでございます。そういう意味で、そういうことから類推いたしますれば、小笠原においてもそのほうが多かったのではないかというふうに考えるわけでございます。  ただ先生の御指摘の、期限の定めのないもので現に存するものの保護規定が弱いのではないか、こういう御指摘でございますが、新たに第十三条で設定いたします賃借権と同じ扱いにしているつもりでございます。
  227. 中谷委員(中谷鉄也)

    ○中谷委員 資料要求が何か非常にやみくもの資料要求であってはおかしいので、じゃ一点だけ、こういう点は御検討していただくということでひとつ指摘をしておきます。  第十四条の第二項、これはいわゆる設定された賃借権に関する規定でございますね。そうでございますね。そうしてこの規定は相当の期間を経過しても、いわゆるその土地について耕作をしないときには、賃借権にかかる賃貸借の解除をすることができるという規定です。逆に申しますと、こういう特別な事情なんだから、相当の期間は賃借しなくても解除できないんだという、むしろ賃借人を保護する規定だというふうにも私は理解できる、というふうに私は読んでいるわけなんです。それは別として、そうすると従来から存しておったところの賃借権、要するに期限の定めのなかった賃借権については、この第二項と同じような規定がないわけですね。そうすると、これが返還された、そうするといわゆる耕作しないというようなことになって、これは解除といったようなことになってきた場合においては賃借権設定されない、存在しておったもののほうがかえって保護されないという問題だって出てくるのじゃないか。また逆に言いますと、届け出をして賃借権設定してもらったほうが権利が明確になる。賃借権自分はあるのだと思っておった。そういうようなことであると思っていたけれども、実際所有者との間に紛争が生じた。賃料についての紛争の処理規定はあるけれども、賃借権の存否についての紛争の規定というのは一体この条文のどこに基づくのか、これは詳しくひとつ私次回にお尋ねをいたします。しかし私の資料要求というのは、そういう趣旨で資料要求したということだけをひとつ申し上げておきます。
  228. 加藤(泰)政府委員(加藤泰守)

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  第十四条第二項は、実は特別にこの法律によって賃借権設定したという事情から考えまして、特別の解除権をつけ加えたわけであります。したがって、むしろそのほうが弱い、極端なことをいえばそういうことになると思います。
  229. 床次委員長(床次徳二)

    床次委員長 次回は、来たる十四日火曜日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十一分散会