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板川委員 監査の結果については、ひとつあとで詳細に報告を願いたいと思います。
それでは私、以下、民鉄、
バス等の
経営問題等に
関連する問題を
質問いたしたいと思います。ただし、私はこれに対する答弁はあえて要求はいたしません。そのかわり、ぜひ、こういった問題点を指摘いたしますから、来たるべき国会において十分な資料等をもって答弁していただきたい、あるいはこれの具体化のために事実をもって示してもらいたい、こういう意味で申し上げたいと思います。
第一に私が申し上げたいのは、
地方民営
鉄道に対する対策であります。
実は
運輸省に、民鉄の将来はどうなるのだということを聞く場合に、ほとんどそれに対する対策というのがないのです。運賃をケース・バイ・ケースでやるとか、あるいは多少の補助をするとかという程度しかない。これでは、これからの民鉄に対する対策とはいえないと思うのです。たとえば
道路の急速な
整備、自家用車のこれまた急速な普及、住民の
都市集中化、国民所得の向上、こういう
経済、
社会の変動によって、いわゆる
地方の
中小私鉄、これが大きく斜陽化していることは事実なんです。今後五年から十年たって、一体
地方の民営
鉄道というのはどういうそうした
社会、
経済の影響を受けるだろうか、またそれによって
地方民営
鉄道、私鉄がどのような変貌を遂げるだろうか、その予想を
運輸省としてどういうふうに
考えておるだろうか。それに対する政府の対策というのは、あるいは指導の方針というのは、具体的にどういうものを
考えられるか。こういう点についてぜひ、次の国会のときに詳細に答弁できるように御用意を願いたいと思うのです。
参考までに申し上げますと、そうした
社会、
経済の変動、これに対抗する手段として幾つか
考えられます。たとえば、隣接する
地方鉄道を数社合併をして、あるいはその所有する
バス路線等も一体化をはかって
経営の基盤を強化するということも、一つの方法でありましょう。そういう方針は持つのか持たないのかということもありましょう。それから合併会社に対して税制上、金融上の恩典等を与えて、これを育成するという方法もあろう、こう思います。そのほかの点もありますが、こういうような点。
それから、
地方鉄道軌道整備法という法律がございます。これはこの間もちょっと触れましたが、鉄
軌道整備法というのは議員立法でありまして、条文はまことによろしいのであります。しかし、その
内容というのは実は有名無実でありまして、実質的にはたいして効果がないのであります。いま
地方鉄
軌道か非常な危機——
社会、
経済の大きな革命的なといいましょうか、大きな影響を前にして変貌を遂げようというときに、本来であれば、この鉄
軌道整備法が有効に作用すればいいと思うのですが、実際は作用しておりません。ですから、こういう鉄
軌道整備法等が法文のとおりに作用できるような運用をはかるべきではないかという点も
考えられるのではないかと思います。
要するに、今後の私鉄の対策については、運賃値上げ等によって一時
経営を何とか保つというものもありましょう。あるいは、合理化して権衡を取り戻すような措置もありましょう。あるいは、
バスに転換せざるを得ないというものもありましょう。とにかく、こうした予想される幾多の対策に対して、
運輸省はどういうような具体的な指導方針をとられるのか、ぜひひとつそれを次の国会で明らかにしてもらいたいと思います。
それから次は、これまた
地方の民営
バスの対策です。これは何回か論じられておりますが、これまた
地方鉄道と同じように、
道路の
整備、自家用車の普及、あるいは
都市集中化、国民所得の向上、こういうような
社会、
経済の影響を
地方の
バスがどういうように受けてくるだろうか、予想される将来をどう
考え、政府はこれに対していかなる対策をとろうとするのか、これまた具体的に研究をして、ひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
やはり参考までに申し上げますと、自家用車の普及、
道路の
整備が
地方バスにどのような影響を与えるのか。この自家用車の普及でありますが、これは
運輸省がさきに発表した資料によりますと、これは自家用車というよりも
自動車保有台数でありますが、
昭和四十六年には二千百三十四万台という予想を立てております。これは二輪車、三輪車を含みますが、二輪車、三輪車はごくわずかになってきております。
昭和四十七年には二千四百五十二万台、約二千五百万台、昨年の六月が一千万台ですから、昨年から見ますると二倍半近く
昭和四十七年までの五年間にふえるのです。こういうように
地方の——自家用車は
地方において特にふえるのですが、ふえてきますると、
バス経営にどのような影響を与えるだろうかという点。それから
バスの乗客は、こういうふうに自家用車が普及してまいりますと、通勤とか通学が主となりまして、一般客はもう
バスはあまり
利用しなくなる、こういう傾向になります。
それから運賃値上げという説がありますが、専門家の説によりますと、運賃値上げというのは、もう一回ぐらいは何とかきくだろう、しかし、もう一回も上げたら、もう運賃値上げで
バスの
経営が改善されるということはない、値上げすればするほど、それは自家用車に逃げる、こういうようなことが専門家の間に予想されておるのであります。そういう傾向等も
考えてもらいたいと思います。
それから賃上げはことし五千円ありましたが、おそらく来年は五千円以上あるでしょう。そして世間並みの待遇をしなければ運転手、車掌は参りませんから、これはどうあっても世間並みの待遇は、
地方バスといえ
どもしなければなりません。またそれに対して、合理化でワンマンカー等をふやすという
考え方もありますが、ワンマンカーというのはあまりふやすべきではないと私は思う。これは厳格に法律のたてまえからいっても、特定の場合にやむを得ずやるのであって、このワンマンカーをやたらにふやすべきではないのでありまして、やはり合理化といっても運転手、車掌の二人は最低必要なのであります。こういう
社会、
経済の状況から
考えて、
経営者はどういう態度をとるかというと、今度の春闘を通じて、たとえば四国の高知県
バスとか土佐とか、こういう
地方の
バス会社がとりますように、こういう状態になったらやむを得ないから不採算
路線を切り捨てよう、たとえば一日一万円の収入がなければやっていけない、一万二千円の収入がなければやっていけないというときに、八千円、七千円というような
路線の
バスはやめちゃおう、こういうことになってくる。赤字
路線を全部やめていこう。いままでは、どんどん伸びている時期だから、いまは赤字でもやがて黒字にたるということで持っておったけれ
ども、これは人口が
都市に集中して過疎化してくるのですから、黒字になる予想もない、それじゃやめちゃおう、こういう対策をとるに違いないのであります。しかしやめようとすれば、これは
大臣の許可が必要であります。
大臣は、おそらくこういう地域では、通勤通学者しか乗らない状態ですから、通勤通学者の足を確保するために、公共性を確保するためにということで許可を渋ってなかなかしないだろうと思うのです。これが普通です。そうしますと、織田大蔵じゃないが、五万円の罰金を払ってもいいからやめちゃおう、こういうものも出てくるかもしれません。しかしそういう場合に、一体どういう対策を持っているだろうか、立て得るだろうか。
自動車局長は何か、マイクロ
バスが非常にいいとかいうような説をこの間ちょっと言いましたが、ああいう臨時的、緊急的なものは通常の
輸送機関じゃないのです。通常の
輸送機関はやはり、
バス経営者が責任を持って
経営するという形をとらなくちゃいけないのですが、たとえばこれは
道路運送法にありますように、通勤の足を確保するために、事業の管理の委託という制度がありますね。たとえば、
バス会社は赤字でやっていけない、だからこれをひとつ市町村に管理の委託を申し込んだ場合に、市町村がこれに対して、ぜひその
バス路線は必要だというなら、市町村がその管理の受託をする、こういう方法もあるだろうし、また、赤字に対する市町村の補助というものもあるでしょう。そういうようないろいろな対策をとって、ともかくも
地方住民の足を確保するという体制を、これからとらなくちゃいけないと私は思う。過疎地帯における
地方バス、しかも赤字
路線バスをやめようとする場合に、どういうような対策を今後とられようとするのか、この点等を考慮されて、ひとつ次の機会に方針を明らかにしていただきたいと思います。
次に、私鉄と大
都市通勤
輸送対策について。
鉄道関係でございます。これからの
鉄道輸送という
交通運輸の使命というのは、私は通勤通学者の足を確保する、こういうことに尽きると言っては過言かもしれませんが、まあ尽きるのじゃないか、こう思います。乗客の四分の三、大半が通勤通学者ですから、
輸送の使命の重点は、通勤通学、定期券
利用者の足を確保する、こういうことにある、こう思います。
ところで東京、大阪、名古屋、この三大
都市、大
都市の
交通の特徴はといえば、いま言った通勤通学の
輸送というのが特徴であります。通勤通学の
輸送は、イコール定期券
利用者の
輸送であります。また、これからの
鉄道輸送機関の使命というのは、先ほど言いましたように通勤通学の
輸送でありますが、大
都市輸送の実情を見ますと、私鉄がどの程度の役割りを果たしているかということを見ますと、この三大
都市圏を中心にしまして、定期券
輸送の四九%が私鉄、
国鉄が三八%、公営
企業が二二%となっております。首都圏、東京都を中心に
考えてみる場合に、
国鉄が四七%、私鉄が四五%、公営が八%。しかし、名古屋地区では私鉄が六二%、
国鉄が二%、公営
企業が二七%という定期券
輸送の率を占めております。特に名古屋
地方では、
国鉄が、定期券
輸送は私鉄に全部まかせるのだ、定期券
輸送をしたのじゃもうからぬ、こういうふうなことで、私鉄にまかせるということを、この間国政調査に行ったときに向こうの
局長が
説明しておりましたが、名古屋
地方では私鉄が定期券
輸送の非常な役割りを持っておるのですね。こういうように、大
都市の定期券乗客の
輸送における私鉄の役割りというものは、
相当な役割りを果たしておる、まずこういうことをひとつ念頭に置いていただきたいと思います。
それから、
都市の人口の集中化というのを、
運輸省の、
大臣の諮問機関である運輸
経済懇談会、ここで資料を出しておられますが、首都圏だけを拾い上げてみますと、
昭和四十年に二千六百十六万人の人口であったのが、六十年には三千九百七十八万人と予想され、その間一千三百六十二万人の人口が首都圏に集中をされる、こういう資料が出されております。それから通勤人口も、
昭和四十年には百三十九万東京都心に通勤しておった者が、六十年には三百八十六万人、四百万人近くなる。これを現在の中央線並みの
輸送力で
輸送しようとすれば、
鉄道を二十四本ないし二十五本新設しなければならない、こういう資料が出ておりますね。これはどうしてそういう計算をしたかというと、東京都に流入する人口の九割が
鉄道を
利用するものとし、しかも、その九割のうちの六割がラッシュに集中されるという計算をして、そうして二十四本ないし二十五本新設しないと
輸送ができない、こういう説を立てております。これは、二十五本というのは混雑度一五〇%です。現在の混雑度は二三〇から二七〇ぐらいだろうと思いますから、混雑度を緩和すると二十四、五本。ところが混雑度を現在程度にしますると、二〇〇%程度にしますると一九本ということになりますが、大体二十本前後とにかくつくらなくちゃいけないということになります。ところが、それを全部
国鉄でやるというわけにはいかない。私鉄にもその
輸送量の
増加分を
輸送する任務もあります。
そこで、私が具体的に伺いたいのは、これは返事はもちろんあとでいいんですが、現在の私鉄の
輸送力、
都市の大手私鉄の
輸送力が、現行の設備、いまの複線の
輸送力、それから八両編成の二分半のヘッド、こういう程度の
輸送力の限界がいつごろくるのだろうか、限界がいつごろくるか。あと五年後、六年後、八年後か十年後か、それをひとつ調べてもらいたいと思います。
そうして、これはいまの設備を複々線化していかなければ
輸送力が増強できないと思いますが、複々線化する場合に、これはもう当然、踏切の
関係からいって
高架にしなければだめであります。
立体交差にしなければ、複々線の場合にはもう
交通遮断状態になりますから、これは
道路を
高架にするか、
鉄道を
高架にするか、いずれにしても
立体交差にしなければだめでありますが、その
立体交差に要する費用というのが、伝えられるところによるとキロあたり二十億程度かかるといわれております。キロ当たり二十億ということになりますると、五十キロの
路線を
高架にしますと一千億円です。まあこれは二十億から十五億といわれておりますが、一千億円から七百五十億円。三十キロの場合でも六百億円。とにかく一割の利子としても六十億ないし百億という金がかかって、これはとても私鉄でこれをやっていくというわけにはまいらない。これはどうもやっていけません。そういう場合に、
国鉄の
輸送力については
国鉄の
建設公団があって、これが担当しておりますが、こういう場合に私鉄の複々線等に対する民鉄の
建設公団をつくるとか、あるいは
鉄道建設公団の任務の範囲を広げてそれにやらせるとか、いろいろ説もあるようでありますが、一体どういうような方針をとられるだろうかという問題。もし国が
相当な投資をして施設を貸与するということであれば、これは、民営
鉄道の
経営の主体というのは一体どういうことになるか。いまの民営方式でいいのであろうか、あるいは、いわれるように公団方式なりをとらざるを得ないであろうか、そんなような
問題等を念頭におきまして、
都市の人口の集中、それから
輸送力、どうしても
鉄道によって
輸送せざるを得ませんから、その場合に私鉄はどういう変貌を遂げるのか、それに対する
運輸省の方針というのがどういう方針であるか、ぜひ次回にまとめて資料を示しつつ答弁を願いたいと思います。
それからもう一つは、大
都市交通の規制の問題ですが、これは西欧の諸国でも
運輸大臣が非常に困っておるのですね、大
都市道路交通の麻痺状態に対して。西ドイツでもフランスでもイギリスでも、
運輸大臣が非常に困って、どうしたらいいかというのでいろいろ対策を立てております。もちろんこれは
運輸大臣だけの仕事じゃないでしょう。
建設大臣もあるし、自治相もあるでしょう。しかしやはり
交通の任務を担当するのは
運輸大臣ですから、
運輸大臣がひとつ中心になって、一体この
都市交通、路面
交通をどういうように規制されようとするのか、
自動車はふえる、
道路はそれほどふえない、ますます
道路の
交通の渋滞が行なわれる。そうしてドライバーはむしゃくしゃするから、たまりかねて広い
道路へ出たときにスピードを出して事故を起こす。公害は起こる。いろいろな弊害があるわけでありまして、この
都市の
交通行政というものを一体
大臣はどういうふうに
考えて、どうやろうとされておるのでしょうか。いまのままで、このまま野放しにして、行き詰まってもしかたがないということじゃないと思うのでありまして、何らかの方針なり抜本的な対策というものを
考えなくちゃいけない、それをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
時間がありませんから最後に、
地方鉄道法の改正についてこれまた伺っておきますが、
地方鉄道法は非常に陳腐化しております。現在にもう当てはまらない条文が非常に多いのです。たとえば三十条以下の、政府による民営
鉄道の、私鉄の買収という規定がありますが、これは、政府がいま買収することはありません。
国鉄または
国鉄建設公団ということに読みかえ規定もありませんから、この三十条以下の私鉄の買収、補償、こういった規定は実は有名無実化して、これまた空文化しておるわけであります。これに対して、いま
国鉄が
地方鉄道を買収して
国鉄の新たな
輸送計画を立てるというのが方々で予定がありますが、この法律を改正して、江若
鉄道のような紛争が起こらないように
整備をする必要があるのじゃないだろうか。さらにその罰則の問題ですが、これまた福島
交通織田大蔵社長の場合に、われわれもひっかかりましたが、許可なく事業廃止しても罰則はありません。過料が千円です。あとは
大臣の役員解任権しかないのであります。廃止を強行しても罰則がないというのはおかしいのであります。したがって、この罰則規定等もこの際直したらどうだろうか、こう思うのであります。
以上の諸点についてぜひ、次の国会でけっこうでありまするから詳細な、具体的な資料をもって示しつつひとつ答弁を願いたいと思います。